本会議 第7号
- 発言数
- 12 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1953/06/16
会議録
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。 ————◇—————
○議長(堤康次郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、岡野国務大臣から経済に関し発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣吉田茂君。 〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) 第十六回国会にあたり、ここに政府の所信を述べる機会を得ましたことは、私の最も喜びとするところであります。 皇太子殿下には、去る二日、御名代として英国女王陛下の戴冠式に参列せられ、滞りなく御任務を果されたことは慶祝にたえません。(八拍手)今後、欧米諸国を御歴訪の上、十分の御成果を収められ、無事帰朝せられまするよう、国民諸君とともに祈念いたす次第であります。(拍手)最近の国際情勢は、朝鮮の休戦を初め、東西両陣営の対立が多少緩和する傾向にあるやに見受けられます。もとより共産側の世界政策が基本的にかわることはあり得ないにいたしましても、朝鮮の休戦はアジアにおける平和回復の第一歩と見るべく、わが国としては、これを契機に、アジアにおける平和建設、特に朝鮮の復興に大いに協力いたしたいと考うるのであります。今や独立後第二年を迎え、祖国再建の要務は一日もゆるがせにし得ざるものがあります。政府は、日本再建の基盤が経済の自立にあることを信じ、円、自給度の向上にあらゆる施策を行うとともに、外は正常なる貿易の振興に最善の努力を傾けんとするものであります。しかしながら、昨年以来の世界的の輸入制限と、予想される輸出競争の激化に当面いたしまして、事は決して容易ではありません。政府は、経済外交の推進とともに、商社の強化と独占禁止法の緩和による貿易態勢の整備に努め、さらに、わが国物価のコスト高が国際市場進出の一大支障なるに顧み、基礎産業の合理化を極力促進し、コストの引下げによる国際競争力の培養をはかる考えであります。 同時に、不急不要の物資、特に奢侈品の輸入については、厳にこれを戒めたいと考するのであります。また中小企業については、それが輸出産業の有力なる一翼たるに顧み、その組織化、合理化を促進し、特に金融問題については、財政資金の積極的な投入によリ、その育成強化を期する考えであります。 国際収支の拡大均衡上重大な役割をになう海運については、引続き外航船舶の拡充を推進するとともに、国際競争上の弱点を克服するための幾多の育成措置を講じ、海運基礎の強化に最善の努力をいたす所存であります。 中国貿易に多くを期待し得ない今日、東南アジア関係の重要なるは、あらためて申し述ぶるまでもありません。政府は、東南アジア諸国の繁栄のためには、資本、技術丁役務等のあらゆる協力を惜しまず、今後一層互恵共栄の関係を深めたいとの所存であります。 正常貿易の振興、国際収支の拡大と並行して最も緊要なるは、実に民生の安定であります。政府は、前内閣に引続き行政の簡素化、合理化に努め、真に国力と国情に適合した行政制度を確立するとともに、行政監察機構を整備強化し、行政運営の能率化と予算の効率的使用をはかり、もつて行政費の節約、国民負担の軽減に資する考えであります。 国民租税負担の軽減については、所得税等において本年度約千二十億の減税を実施するはもちろん、政府は、今後負担の軽減と課税の合理化を目標に、中央地方を通ずる税制の根本的改正に着手する所存であります。 国民生活の基本をなす食糧については、総合的な自給度向上をはかることが緊要であります。このため、増産の基盤である農地の拡張と改良を行うことはもちろん、営農技術の普及改善並びに畜産の振興をはかり、水産資源の維持開発に努めるとともに、農林水産業経営の安定合理化のため、金融措置、保険制度の拡充強化等に遺憾なきを期したいと存ずるのであります。(拍手) 住宅問題の解決、結核対策の強化等の厚生施設、戦傷病者遺族及び未帰還者の留守家族に対する援護並びに中共地方からの帰還者の受入れ援護等は、すべて第四次吉田内閣の計画を踏襲し、旧軍人恩給もまた恩給法特例審議会の建議を尊重し、でき得る眼力の措置を講ずる考えであります。 前内閣の争議方法規制に関する法律案も、同様にこれを踏襲し、提案いたしました。本案は、昨年の電産、炭労二大争議の苦い体験にかんがみ、前国会に提案して、解散前すでに衆議院の可決を見たもので、公共の福祉と労働争議権の調和を期する上において当然の措置と考うるのであります。 もとより、政府は、労働者の福祉についても深い関心を有するもので、重要産業の合理化と並行して、乏しい財源のうちから失業対策費を増額いたしております。 この際特に一言を要するは地方財政の現状であります。政府は、その窮状打開の一助として、今回とりあえず地方財政平衡交付金の増額及び地方起債のわくの拡大を行い、一応の調整措置をなしたのでありますが、そもそも地方財政の窮乏は、ひつきようするに地方制度それ自身に内在するものであります。自治体の財政運営についても厳に検討を必要とずるものがあると考えます。政府は、鋭意制度の根本的改革を進め、もつて国情にふさわしい合理的な地方制度を確立したいと考えております。 国土の荒廃が産業経済の復興と民生の安定を著しく阻害せる実情に顧み、 政府は、今後治山治水の総合的、多目的計画を実施するとともに、一面重要幹線道路及び資源開発道路、鉄道その他交通を整備し、一段の努力を払つて、もつて国土の保全及び開発に資したいと存ずるのであります。(拍手) 最後に、いわゆる防衛問題については、最近種々の論議が行われておりますが、政府は一一貫せる所信により、こうも従来の方針を変更する必要を認めておりませんのであります。 以上、政府の所信の一斑を述べましたが、国民生活の安定、文教の刷新、道義の高揚、治安の確保は、前内閣以来の不変の信条であります。(拍手) 思うに、政局の安定と祖国の再建のための強力なる施策の推進とは時局の要請であります。政府は、党派のいかんにかかわらず、同憂の各位が必ずや政府とこの認識をわかたるべきを信じ、二十八年度予算案その他重要法案がすみやかに審議可決せらるることを期待いたしてやみません。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 外務大臣岡崎勝男君。 〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
○国務大臣(岡崎勝男君) 最近における国際情勢に関連し、政府の外交方針について所信を明らかにしたいと存じます。 近来国際間の情勢にある種の変化が現われていることは、御承知の通りであります。すなわち、ソ連の新政権成立以来特に活発化した平和攻勢と、これに対応する自由諸国の動向であります。平和攻勢の意図についての自由諸国内の見解は必ずしも一致しておりません。あるいはこれをソ連政権の内部的危機に由来する宥和政策なりとし、あるいはこれを自由主義陣営の断固たる態度と防衛体制の整備に直面せるための戦略的退却なりと断ずるのであります。従つて、共産側の譲歩ぶ事実をもつて示されるまでは信頼し得ずとなす意見もあり、またこれを額面通りに受取つて、個々の具体的問題を解決しつつ、全般的対ソ関係の調整に進むべしとなす意見もあります。いずれにするも、戦争の脅威と平和攻勢とを交互に用いて、自由国家群の混乱と経済の弱体化をはかり、あわせて軍備の強化を阻止せんとするのが、いわば共産陣営の常套手段とも言うべきものであります。(拍手)それゆえ、自由諸国側も、現実の政策としては、一面、集団安全保障の体制に基く防備の努力をゆるめることなく、他面、具体的な案件については、できるだけ調整を試みんとする態度であります。もとより共産陣営の基本的な世界政策は容易にかわるものとは信じませんが、たとい一時にせよ、ソ連が合理的立場に立つことにより、両陣営間の緊張が緩和することは、はなはだ歓迎すべき次第であります。特に、朝鮮において休戦が成立し、再び平和が回復されるならば、まことに喜ばしきことであります。朝鮮問題の根本的解決には今後幾多の困難が予想されますが、この間、朝鮮の復興のため、わが国の協力を必要とするものについては、政府としても、でき得る限りの努力を惜しむものではありません。 以上のような新たなる事態におきましても、政府の基本的外交政策については、今日何ら変更すべき理由はないのであります。われわれは、今後とも国際連合と協力し、集団安全保障の理念のもとに、自由主義諸国との提携を強化し、アジアの平和維持、ひいては世界の平和維持に寄与せんとするものであります。特に政府がアジア諸国との親善関係をますます緊密にせんと欲しておることは、すでにしばしば述べた通りでありますが、最近かかるアジア諸国との経済協力につき種々伝えられるところがありまするから、ここにその一般的な構想を申し述べたいと思います。 元来、アジア諸国は、いずれも自国の経済発展についての計画を有しておりまするから、わが国としては、これら諸国自身の計画のわく内において、わが資本、技術等をもつて協力し得るものがあれば、ぜひこれを実現したいと希望しております。アジア諸国の経済がゆたかになれば、いずれはわが国の必要とする資材の入手にも、また貿易の拡大にも利するところ大きいがためであります。従つて、われわれは、目前の利益にこだわることなく、さしあたりはアジア諸国自体の利益の増進に寄与し、やがてはこれがわが国の利益ともなることを期待しているのであります。われわれは、自己のかつてな計画をアジア諸国に押しつけんとするものではなく、最も謙虚な気持で善隣友好を具現いたしたいと念願しているのであります。従つて、国連の技術援助計画や、その他各国の経済援助計画等とも、可能な限り提携して行きたいと思つております。また、この間にあつて、われわれは平和条約に規定されている賠償問題の解決を回避するが、ごとき考えはありません。すでにフィリピンとの間には、平和条約締結前といえども、中間賠償協定の調印を了し、今次国会の御承認を得るために、これを提出することにしております。仏印との間にも、ようやく賠償交渉の端緒が開かれんとしております。 なお、現在日韓会談を東京で、また日濠漁業交渉をキャンベラで行つておりますが、これも、これら諸国との親善関係の増進に資せんとする意図であります。 すでに申し述べましたように、東西両陣営の緊張がやや緩和するやに期待される情勢下におきましては、世界経済もある程度正常化に向うことも予想されるのであります。従つて、わが国としても、この際これに即応して、経済的自立の基礎を強化し、貿易規模の拡大をはかる必要は一層痛感されるのであります。自由なる貿易により通商規模の拡大をはかることは、単にわが国一国にとつて必要なばかりでなく、世界全体の経済発展と生活水準向上のためにも欠くべからざることであります。しかるに、近時自由諸国家の一部においてすら、自国の国際収支の均衡の維持あるいは一部産業の保護のため関税障壁を設け、通商制限の措置をとつて、縮小した規模における貿易の均衡をはからんとする試みも行われております。かかる措置は、率直に申して、自由主義諸国のよつて立つ基本的な理念に反するものであり、視野の狭い政策と言わざるを得ません。われわれは、各国が互いに門戸を開き、より自由にその経済を発展せしめ得るような通商貿易の制度が世界に行わるべきことを強く要請するものであります。(拍手)政府は、かかる観点から、国際通貨基金及び世界銀行に加盟し、また各種の国際経済機慶へ参加し、さらに関税及び貿易に関する一般協定、すなわちガツトヘの加入に努力しております。また個々の国々との関係では、常に貿易の拡大及び多角的決済方法の利用等の方針で交渉を進めております。しかしながら、貿易関係の正常化には通商航海条約の締結を最も必要とするものであります。政府は、去る四月、米国との間に新通商航海条約を調印いたし国会の御承認を得たいと存じ、これを提出しております。本条約は、日本商社の米国進出や従業員の渡米等を容易にするのはもちろん、わが輸出品にガット加盟国と同じ税率を適用することにより、わが国の通商活動を著しく有利にいたします。その他、現在在米邦人の大多数が従事している農業も既得権として尊重される結果、彼らの生活の基礎を安定するなど、幾多の利点を有しております。また、目下カナダ、イタリア、スペイン等とも新通商条約の締結交渉を行つておりますほか、アジア地域の諸国に対しても、その意向を照会中であります。 次に、最近発生した各種案件につき、要旨を申し述べます。最近中共地区より一万五千に達する同胞が帰還し、さらに多数がこれに続く予定でありますことは、留守家族の方々とともに喜びにたえません。(拍手)この帰還に際しては、政府の代表を忌避して、いわゆる人民管理の方式をわが国民に押しつけんとするやのきらいもありましたが、政府としては、これに拘泥することなく、同胞のすみやかなる帰還のみを念願して、必要の措置を講じて来たのであります。(拍手)またその間、在留中国人の本土送還問題も生じており、国民政府は引揚船にまる送還には反対の意向を表示しております。国民政府の反対はもちろん理由のあることでありますが、もし同胞引揚げが中絶するがごときことあらば、人道上もゆゆしき問題でありまするから、政府としては、あらゆる解決策を講じ、引続き邦人の帰還に支障なからしめんといたしております。(拍手) 近来、共産圏との貿易、ことに中共貿易について、国内にも種々の要望があります。わが国が自由諸国の一員として立つことは、もとより明白でありますが、イデオロギーの相違はただちに貿易を拒否する理由とはならず、従つて、共産圏との貿易といえども、これを阻害することは考えておりません。(拍手)但し、中共貿易については、朝鮮の休戦が成立しても、国連決議の有効な限り、一定の制限措置は持続されます。また共産国家においては、一般に経済、文化、科学等あらゆる問題が常に共産主義と結びつけて考えられ、純然たる経済の問題として取扱われない傾きが多いのでありますから、われわれが単純に経済だけ切り離し得ると考えるなら、そこに種々危険の伏在することも考慮しなければなりません。(拍手) 戦犯問題につきましては、アメリカ関係で、現在までにBC級六十五名が仮出所し、英国関係は十三名、フランスは三十八名全部に対し減刑が与えられました。さらにまた、マヌス島よりは二十二名が帰還し、フィリピンにおいては五名が独立記念日に釈放される由であります。これら諸国の配意は、まことに多とするところであります。A級の者についても、本年三月、関係人箇国との間に個別審査の話合いが成立し、すでに数名の赦免勧告書を提出しております。政府としては、今後とも戦犯問題の解決にあらゆる努力を払うつもりであります。また海外戦没者の遺骨処理については、前回に引続き、さらにアツツ島及びアラスカにそれぞれ人を派すことにいたしております。 日米行政協定については、本年四月十四日、米国に対し刑事裁判管轄権の改正方を申し入れました。現在、米国においては、北大西洋条約協定批准の手続きをとわつつありますが、これがすみやかに完了することを強く期待しております。 米国の相互安全保障法、いわゆるMSAに基く援助については、もしこれがわが国の自衛力増強のために有益であり、また国民の経済面に寄与するものであれば、これを受けることが望ましいとは考えますが、何分にも重要な問題でありますがゆえに、その内容及び関連する各般の事項につき十分検討し、遺憾のないように措置する考えであります。 米国駐留軍に提供する施設等については、最近石川県内灘の例のごとく、種々の問題が生じていることは、率直に認めるものであります。もとより、外国の援助により国家を防衛するということは、民族感情からしても問題のあることは自然でありまするし、また関係地域の住民が種々の苦情を抱く事情もよく了解し得るところであります。ただ、これら施設等は、日米安全保障条約により、わが国として必要の限度においてこれを提供する条約上の義務を有するものであります。われわれは、わが国の現状にかんがみ、この際、集団安全保障体制のもとに国の安全を確保せんと決意している次第であります。国民各位が本問題につき冷静妥当なる判断を下されるよう、衷心より希望してやみません。八拍手) 以上申し述べました通り、わが国をめぐる国際関係は複雑多岐でありますが、政府としては、常に各国と協力しつつこれに対処し、国際社会におけるわが国の地位の向上をはかるとともに、自立経済の達成に全力を尽す考えであります。議員諸君及び国民各位の深い理解と御支援とを期待してやみません。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 大蔵大臣小笠原三九郎君。 〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
○国務大臣(小笠原三九郎君) 昭和二十八年度予算の提出にあたり、その大綱を説明し、あわせて府政の財政金融政策について所信の一端を申し述べたいと存じます。 昭和二十八年度予算は、前国会において衆議院の議決を経た後不成立となつた予算を基礎とし、その後の情勢の推移に伴う必要な調整を加えて編成したものであります。最近、朝鮮において休戦の見通しが濃くなつて参りましたが、予算編成の前提となる経済事情には、当面急激な変化を生ずることはないものと考えられまするので、特にこのための改編を行わなかつた次第であります。 今回提出いたしました昭和二十八年度一般会計の予算総額は九千六百八十二億円余であります。各方面における財政支出への要望は厖大な金額に上りましたが、全体としてり財政規模を極力圧縮することに努め、一般会計と財政投融資とを通じて見ますれば、不成立予算に比し若干の減少となつております。他面、税制につきましても、従来の減税方針を踏襲し、一千億円余に上る減税を実現することといたしました。(拍手) 次に、本年度予算におきましては、一般会計の収支の均衡はこれを保持しつつ、財政資金全体の収支としては、ある程度弾力的な考え方をもつて臨んでいるのであります。すなわち財政投融資の増額に努めているのでありますが、その財源については、ある程度蓄積資金の活用を予定いたしまするとともに、市中消化の可能な範囲内において特別減税国債及び公社債券を発行して、民間資金を吸収活用する等の配慮をいたしております。 次に、経費の配分に関しましては、あとう限りその効率的活用と重点的配分とに努めたのであります。すなわち、一般経費、特に行政費について節約を行いますとともに、防衛関係費を削減し、その財源を経済力の増強と民生の安定とに振り向けたのであります。 次に、予算内容のうち、おもな事項について説明いたします。 まず、歳入に関連し、税制の改正について申し述べます。すでに酒税、物品税の負担軽減等の改正を行つたのでありまするが、その他のものについては、原則として前国会に提出した税制改正案を踏襲する予定であります。すなわち、目下暫定措置として実施している所得税の軽減措置を平常化するほか、所得税、相続税等につき一層負担の軽減合理化をはかり、国民生活の安定に資するとともに、でき得る限り課税の簡素化にも努めております。次に、資太蓄積を促進するため、第三次再評価の実施、企業合理化のための特別償却、準備金制度の拡充、預貯金利子に対する所得税の源泉選択税率の引下げ等の措置を行うことといたしております。さらに、富裕税を廃止し、また有価証券の譲渡所得に対する課税を廃止して、低率の有価証券取引鹿を創設することといたしました。これらの税制改正の結果、租税及び印紙収入の総額は七千百六十一億円となり、従前の制度による収入見込額八千百八十四億円に比べますると、一千二十三億円の減少となるのであります。 次に、歳出におきまして、まず防衛支出金として六百二十億円を計上いたしましたが、これと保安庁経費約七百十九億円との合計約千三百三十九億円は、安全保障諸費を含めた前年度のこの種経費千八百億円に比較して、約四百六十億円の減少となつておらます。保安庁経費は、本予算施行の遅延等のため、不成立予算に比し約百十億円を減少しております。なお、連合国財産補償費は四億円を計上するにとどめたのでありますが、前年度の繰越金と合せますると、百億円の支出を行い得ることに相なつております。 次に、経済力の充実発展のための措置としては、まず財政投融資の面におきまして、特に電源開発、外航船建造、中小企業及び農林漁業の振興、国鉄事業の拡充等に重点を置くことといたしております。食糧増産対策及び公共事業につきましては、前年度に比し二百七十三億円を増額し、千五百十四億円を計上しており、さきに不成立となつた予算とおおむね同額であります。 次に、民生安定のための経費としては、まず公営住宅等の建設等に百二十五億円を計上し、住宅金融公庫に対する百八十億円の投融資と相まつて、住宅対策の強化をはかつております。また、生活困窮者の保護、社会保険、失業対策、結核対策等の経費は、前年度に比し百四十七億円を増加し、七百十億円にいたしております。なお、旧軍人等の恩給、戦死者遺族、戦傷病者及び未帰還者留守家族の援護措置の強化に要する経費として、不成立予算と同様、五百億円を計上いたしております。 次に、文教の振興でありますが、義務教育費国庫負担金は、半額国庫負担の建前のもとに、五百四十億円を計上いたしました。教育旛設につきましては、国立、公立及び私立を通じて、その改善に考慮を払い、危険校舎の改築等をも行う予定であります。 地方財政につきましては、義務教育費を半額国庫負担とする建前をとり、かつ最近の地方財政の収支を検討して、地方財政平衡交付金千二百五十億円を計上いたしました。これと義務教育費国庫負担金とを合計いたしますると、前年度に比し三百四十億円の増額となり、また不成立予算に比較いたしましても七十億円の増加となるのであります。なお、財政資金による地方債引受のわくを八百八十五億円に拡張し、うち六百九十五億円を資金運用部資金、百九十億円を簡保資金により引受けることといたしました。別に公募による地方債百八十億円を予定いたしております。地方財政の現状はまことに容易ならざるものがあり、根本的な対策を議する必要があると考えられまするが、地方団体自身においても、機構の縮小、行政費の節約等によりへ急速にその健全化をはかるよう一層努力されたいのであります。(拍手) 以上が歳出の主要なものでありまするが、予算執行の適否は、その編成に劣らず、きわめて重要な問題であります。政府は、従来とも監査制度の活用に留意いたして参りましたが、今後さらに一層これを強化し、もつて冗費の節約並びに予算の適正かつ効率的な使用をはかる所存であります。 次に、金融に関する施策について申し述べます。今後の金融政策の運営にあたつては、財政面の施策と相まつて、経済自立の達成に必要な資金を確保いたしまするとともに、通貨価値の維持について万全の配慮を加え、国民経済の健全な循環を確保して参りたいと存じます。 まず、わが国経済にとつて現下の急務である資本蓄積の促進については、民間資本の蓄積、特に企業の自己資本の充実が基本であります。幸い、昨年度中における株式発行高は千三百四十億円に達する好成績を収め、また預貯金の増加額も九千四百億円に達し、資本蓄積の成果には見るべきものがあります。この際、私は、国民諸君がこの上とも勤勉と貯蓄とに努め、冗費を省き、濫費を戒め、着実に資本の蓄積に努力せられんことを切望してやみません。(拍手)政府におきましても、国民・貯蓄の一層の増強に資するとともに、企業の内部留保の充実を促進するため、さきに申し述べましたごとき税制上の優遇措置を講ずることといたしました。 資本の蓄積と並んで、この際特に考慮すべきことは、資金の効率的運用であります。民間金融機関としては、わが国経済の現状にかんがみ、今後貯蓄の増強を一段と促進するとともに、資金の融通にあたつては、極力不要不急の資金を抑制し、経済基礎の充実、産業の合理化等に必要な資金の供給に特に配意されたいのであります。また民間企業におきましても、資金の一層効率的な使用に努められんことを特に切望いたします。 次に、本年度におきましても、財政資金をもつて積極的に産業資金を確保する方針のもとに、まず日本開発銀行の融資については、電力、造船、鉄鋼、石炭等基幹産業に重点を置いて、限られた資金の有効な活用に特に意を用いる所存であります。中小企業金融に関しましては、一般会計及び資金運用部を通じ百億円の財政資金を供給し、新たに中小企業金融公庫を設置して、一段と中小企業金融の積極化をはかる所存でありますが、なお国民金融公庫を通ずる資金供給の増加をはかりますほか、中小企業信用保険制度の改善、信用保証協会の法制化等についても、遠からずこれを実施したい考えであります。また農林漁業金融につきましては、先般農林漁業金融公庫の発足を見たのでありますが、その後の業績も順調であり、今回資金量をさらに増加いたしまして、その機能の拡充を期しております。 今日、わが国の産業にとつて国際競争力を充実するためには、生産コストの低下をはかることが緊要であり、金融機関においても、その公共的使命に徹し、率先経営の合理化と資金量の増大に努め、過度の田本銀行借入れ依存の傾向を脱却し、進んで貸出し金利の引下げを可能ならしめ、もつて産業界の要請にこたえ得るよう格段の努力を払われたいのであります。 この際特に申し述べたいことは、通貨価値の安定を確保することであります。資本蓄積のための努力も、コスト低減のための施策も、通貨の安定なくしてはその効果を期待しがたく、健全通貨の維持のためには、何をさしおいても万全の措置を講ずる所存であります。幸いにして、金融も漸次正常化の道をたどり、ある程度その弾力性を回復しておるのでありますから、この基礎の上に立つて、国庫の収支状況に対応しつつ、金融面において資金の吸収に努めるとともに、日本銀行を通ずる信用政策の弾力的運営により、財政及び金融を通ずる資金の総合的な調整に一層の努力をいたしたいと存じます。 次に、国際収支、貿易等、国際経済の問題について申し述べます。 わが国の国際収支は、昨年度においてはなお多少の受取り超過を示しておりますが、最近外貨保有高はやや減少し現在約十億ドルと相なつております。しかも、最近までの国際収支の好況も、実は特需等の臨時的な外貨収入に負うところが少くなく、正常貿易の面では、世界的な貿易縮小、国際競争激化の傾向に伴い、特にポンド及びオープン、アカウント地域への輸出が減退を見ております。このように、わが国の国際収支の現状及び将来は決して楽観を許さない実情であります。従つて、今日の国際経済情勢のもとにおいて、すみやかに国際収支を経営的な姿で均衡させるために、われわれはあらゆる努力を傾注しなければならないと存じます。すなわち、国内産業の振興、物資の活用等により自給度の向上をはかるとともに、不要不急物資の輸入を抑制し、外貨資金を経済の充実発展に最も有効に活用する方策を講ずる必要があると存じます。もとより、今後国際収支を改善し、経済を自立せしめ得るかいなかは、何よりも貿易の振興いかんにかかつており、正常な輸出の増進に対し一段と努力することが必要であります。 輸出増進のためには、まず経済外交を積極的に推進し、友好諸国との経済協力を一層緊密にして行きたいと存じます。過般日米友好通商航海条約の調印を見、両国間の経済関係は一層増進されるものと期待されるのでありまするが、今後も引続き諸外国との通商関係の改善、ガツトヘの早期加入の実現を促進し、輸出の伸長、海外市場の開拓のための努力を続ける所存であります。特に東南アジア諸国との経済提携を緊密化し、これら地域との貿易の拡大をはかり、世界経済の発展と向上とに寄与して参りたいと考えるものであります。しかしながら、貿易振興の基本は、産業の合理化、設備、技術の近代化を一段と進め、品質、価格において国際的に優秀低廉な商品の生産にたゆまざる努力を続けることにあると信じます。すなわち、輸出価格が国際的に割高である現状にかんがみ、生産コストを引下げて国際競争力を培養して行くことが何より肝要であり、補給金政策のような安易な考え方は、極力これを排すべきであると存じます。(拍手)また、直接貿易の衝に当る貿易商社等について、その地位を強化することが必要であります。政府におきましても、近く日本輸出入銀行の機能の拡充、輸出信用保険制度の改善、貿易商社等に対する担税上の優遇措置等、貿易振興のための施策を講ずる所存であります。 先般、国際通貨基金との間に、わが国通貨の平価ば現行為替レートを基礎とすることに決定を見、今後ともわが国は現行為替レートを堅持し、国際収支及び貿易の拡大均衡化をはかつて参りたいと考えるのであります。また、過般来、政府におきましては、国際復興開発銀行からの外資の導入につき鋭意努力を重ねつつあつたのでありますが、電力設備の合理化のための融資については、近く実現を期待し得るに至りました。今後も、国際金融の正常化、為替銀行の育成強化等、国際経済面の施策については、さらに一層の努力をいたす所存であります。 今日、世界経済の情勢は、全般的には横ばいないし下押しの傾向をたどり、世界各国は、国際収支の均衡、インフレの抑制に努め、堅実な歩みを続けているのであります一このときにあたり、世界注視の的であつた朝鮮休戦も実現の機運となり、わが国の経済自立態勢を急速に確立することの必要がいよいよ痛感されるのであります。顧みますれば、過去三年にわたる朝鮮動乱が直接間接にわが国経済に与えた影響については、多言を要しません。動乱に伴う特需等の需要の増大は、わが国経済に一時的には好況をもたらし、これによりわが国経済の回復が促進されたことも事実であります。しかしながら、他面、一時の好況によつて経済の合理化、能率化を怠り、経済自立への努力がかえつて等閑に付ざれたこともまた率直に認めざるを得ないと思います。今日、わが国経済の基礎はいまだ脆弱たるを免れず、国際収支も特需等によつて辛うじて均衡を保つている実情でありまして、この際一日も早く特需依存の態勢を脱却して、経済の自立を達成せんとする決意を新たにしなければならないと存じます。 政府におきましては、長期的な視野のもとに、今後自立達成のための施策を強力に推進いたしたい所存でありますが、その過程においては幾多の困難を予想しなければなりません。財政金融政策におきましても、今後いやしくも放漫に流れることなく、安易なる考え方を排し、一層堅実な運営をはかつて行くべきものと存じます。財政については、今後種々重大な問題を控えておる観状でありますので、中央地方を通じ、行財政の刷新改善、税制の全面的改正を行い、極力行政運営の能率化、簡素化に資したいと考えておる次第であります。国民諸君におかれましても、このような政府の施策に呼応して、政府の補助、救済にのみ依頼することなく、経済の合理化、能率化への努力を通じて自立達成の一翼をになわ、れたいのであります。 以上、昭和二十八年度予算に関連いたしまして、政府の財政金融政策の大綱について申し述べた次第であります。私どもは、今日の困難な世界情勢のうちにおいて、政策の重点をわが国経済自立の達成に集中し、国民諸君の心からなる協力を得て、これが目的の実現に邁進せんとするものであります。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 国務大臣岡野清豪君。 〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
○国務大臣(岡野清豪君) 本日、第十六回国会にあたりまして、政府の経済政策の大綱につき所信を申し述べる機会を得ましたことは、私の最も欣快とするところでございます。 朝鮮動乱勃発三周年を間近に控え、懸案の休戦会談もようやく成立の運びとなつて参つたようであります。この朝鮮における休戦が実現したといたしましても、いわゆる冷戦の全面的緩和の方向に向う契機となるかいなかは、今にわかに予断を許さぬものがあるのであります。しかしながら、少くともここしばらくの間、米英を中心とする最近の軍拡の繰延べ傾向、あるいは米国の自由諸国家に対する対外援助削減方針を持続せしめる有力なる要因ともなりましようし、従つて、またこれが国際的な景気停滞の傾向を一層強め、輸出競争の激化をもたらすであろうことも、十分予想されるところであります。特にわが国にとりまして、朝鮮動乱の勃発に伴う、いわゆる特需を中心とする駐留軍関係の特別外貨収入が、国際収支の改善と経済規模の拡大にきわめて大きな役割を果して来た事実から、休戦成立の帰趨に大きな関心が寄せられているのであります。休戦交渉がまとまれば、軍事関係の特需などは減少するものと予想されますが、復興関係の特需の発注も見込まれますし、総体として急激に特需その他の特別収入が減少するものとは思われません。しかしながら、これはあくまでもさしあたりの問題であつて、長期にわたつてなおこのような特別収入が期待できるということは保証できないのであります。もとより、これまでにおきましても、政府といたしましては、わが国経済が特需のみに依存することなく、正常貿易によりその規模を拡大するよう努力して参つたのでありますが、特需が日本経済の大きな支柱をなしていたことは争えない事実であります。この日本の経済をいかにして維持し発展せしむるかは、最も重大な課題であるといわなければなりません。 まず、日本経済の現状について申し上げますならば、昭和二十七年度の経済を全体として見ますと、鉱工業生産ほ戦前水準の一四〇%、農林水産は一一〇%、国民消費水準は九七%、国際収入バランスは約一億ドルの受取り超過でありまして、経済活動自体といたしましては、相当の高水準を続けて来たのであります。ただ問題となりますのは、最近の輸出の不振、特にポンド地域に対する輸出が依然として低調であることであります。わが国経済は、基本的には輸入依存度が高く、食糧及び綿花、羊毛、石油、鉄鉱石、粘結炭など、主要原材料の多くを海外からの輸入に仰がざるを得ないのであります。従つて、輸出の不振が継続し、他に外貨収入のない場合には、ただちに輸入量を制約し、ひいて生活水準及び生産活動の低下をもたらすことになるのであります。 これに対処する経済政策運営の基本的目標は、輸出の振興と国内自給度の向上を施策の重点として、正常貿易を中心とした国際収支の均衡を確保することであります。この場合、国民生活水準は少くとも現在の水準を保持することを前提とすることはもちろんであります。政府といたしましては、この経済自立の目標を達成するため、諸般の施策を総合的に実施して参る考えでありまして、当面の対策に遺憾なきを期することはもちろんでありますが、特に将来における経済力の充実強化に資することに重点を置いて措置して参りたいと存ずるのであります。 次に、以上の基本的構想に基いて、今後とるべき経済政策の大綱について申し上げたいと存じます。 第一に、輸出の振興であります。正常貿易を通ずる国際収支の均衡を確保するためには、まず輸出の積極的振興により外貨収入の増大をはかることが必要であります。自由主義諸国家の経済の安定と発展とを期する上におきましても、これら諸国家間の貿易を拡大することが最も肝要であることは申すまでもありません。わが国としては、経済外交を強化し、特に東南アジア諸国との経済提携を緊密にして、輸出市場の拡大をはかるとともに、企業合理化の徹底、金利の引下げ、貿易商社の強化等を通じ、国際競争力の確保に努めて参りたいと存じます。 東南アジア諸国との関係につきましては、政治、経済、文化の各面を通じ、一層相互の理解と認識とを深めて参りたいと思うのであります。特に経済提携につきましては、これら諸国の経済発展に寄与し、相互の貿易の伸張をはかることを主眼といたしたいのであります。これがため、さしあたり、右の諸国における開発及び工業化計画に即応した技術提携の積極化をはかり、その促進をはかつて参る所存であります。 中共貿易につきましては、貿易制限の緩和に努力して参つているのでありますが、ただ戦前と異なり、工業化の進んだ今日において、これに過大な期待を寄せることは困難かとも存ずるのであります。 次に、今後における輸出競争の激化に対処いたしますには、国際競争力の増強が必要でありますが、プラント、肥料等の重化学工業品につきましては、その製品価格が国際的に割高である点に問題があるのであります。従つて、まずこれら産業における設備の近代化、経営の改善等により合理化を徹底し、生産コストの引下げ、品質の改善をはかる必要があるのであります。またこれと同時に、基礎産業である鉄鋼業及び石炭鉱業の合理化をあわせ推進し、原料、素材より一貫して、国際価格に対するさや寄せ、輸出価格の引下げを実現し、輸出の増加を期して参りたいと存じます。 なお、以上の輸出振興のための方策と並行して、外貨予算の編成を通じ、奢侈的物資の輸入を抑制し、次に述べる国内自給度向上のための施策と相まつて、外貨支払いの節約の方向に進みたい所存であります。 第二に、国内自給度の向上であります。輸出の振興により外貨の獲得をはかるとともに、他方、国内資源を効率的に開発し、国内自給度を向上せしめ、これにより外貨の積極的な節約を期することといたしたいのであります。この施策の対象といたしましては、食糧及び合成繊維の増産、電源開発の促進、外航船腹の増強を重点的に取上げたいと思うのであります。まず食糧及び合成繊維の増産でありますが、二十七年度輸入総額をドル換算にしまして約十八億ドルのうち、主食は約四億ドルで二二彩、綿花及び羊毛は約五億ドルで二八%、合せて総額の五〇%にも達しているのであります。しかも、これは国民生活における必需物資であり、さらに人口の増加に伴う需要増加によつて、輸入量は年とともに漸増を続ける性質のものであります。何らの対策も講ぜずに放置するといたしますれば、五年後においては、さらに三億ドル以上の輸入の増加を必要とすることと相なるのであります。従つて、食糧及び繊維原料の自給度の向上を外貨節約方策の第一に取上げることは、最も当を得たものといわなければなりません。食糧につきましては、この際財政投融資を強化し、耕地の拡張、改良、瀞種の改善を促進して、これが増産に努める所存でおりますが、一方、米食偏重を是正し、かつ外貨節約に資するため、今後米から麦への輸入の転換を漸進的に推進して参りたいのであります。合成繊維につきましては、政府資金を重点的に投入して、増産体制の整備をはかるとともに、官庁その他公共団体等における使用を奨励して、その増産の推進に努めたいと存じます。 次に、電源開発につきましては、エネルギー源の電力への移行を推進し、かつ産業基礎を強化安定せしめるため、所定の計画通り、昭和三十二年度末までに約五百五十万キロワットの出力増加を目標として、極力その促進をはかつて参りたい所存であります。 外航船舶につきましては、本年度おおむね三十万総トンの新造を目標とし、その実現をはかつているのでありますが、今後におきましても、引続きその増強に努め、貿易外収支の改善と貿易の円滑化を期する考えであります。これがため、所要財政資金の確保に努めるとともに、市中金利に対する利子補給等の措置を講じて船価の低減をはかり、海運の国際競争力の強化に資したいと存じます。 右にあげましたうち、食糧及び合成繊維の増産により、およそどのくらいの外貨節約になるかと申しますと、五年後において、米麦千七百万石、合成繊維一億五千万ポンドの増産が達成されたといたしまして、この場合における外貨の節約額は約五億ドル余にも達するものと算定されるのであります。もちろん、これらの増産目標につきましては、資金の面においてなかなか困難な問題があり、必ずしも右の目標の到達は容易でないと存ぜられますが、あとう限りこの目標に近づけるべく努力いたしたいと存じておるのであります。なお、食糧増産、電源開発等の実施に際しましては、治山治水、道路その他とも調整をはかり、国土総合開発の見地に立つて、効率的に推進して参る所存であります。 第三に、国民生活の安定であります。経済政策の究極の目的が国民生活の向上と安定にあることは言をまたないところであります。経済自立達成の過程におきましても、少くとも現在の生活水準の維持が前提とされるのでありますし、さきに申し上げました食糧、衣料等の自給度の向上も、国民生活の安定をはかるための施策にほかならぬのであります。幸い、最近においては、国民消費水準はほぼ戦前の水準を回復するに至つているのでありますが、衣食に比し、住宅の不足はなお著しく、特にこれは都市においてはなはだしいのであります。政府といたしましては、公営住宅の充実等、積極的に住宅の建設を推進いたす考えであります。また雇用につきましては、輸出の振興、国内自給度の向上に伴う積極的な施策を通じ、雇用機会の造出拡大をはかり、民生の安定に努めて参りたい所存であります。しかしながら、ここで申し上げておきたいことは、平均消費水準といたしましては、ほぼ戦前に復帰いたしました今日、奢侈的消費はしばらくこれを抑制し、所得の増加はこれを貯蓄して、重要産業に対する投資に振り向ける心構えが必要ではなかろうかと存ずるのであります。すなわち、経済自立達成のためには、消費より投資、国内需要より輸出振興を目標として、この際国民諸君の御協力を切望いたすものであります。 第四に、中小企業の安定であります。中小企業につきましては、産業上、社会上に占めるその重要性にかんがみ、今回政府資金百億円をもつて中小企業金融公庫を創設し、長期資金供給の円滑化をはかることといたしたのでありますが、さらに、中小企業信用保険制度の整備改善などの措置と相まつて、既存の金融機関の融資の促進をはかつて参る考えであります。なお、経済の発展に対応するよう、その設備の近代化、協同組合の活用、共同施設の強化等を推進し、輸出並びに関連産業に占めるその地位の安定をはかりたい所存であります。 以上のごとき諸施策の実施にあたりましては、相当巨額に上る政府資金の投下を必要といたします。石炭、鉄鋼、硫安、機械などの基礎産業ないし輸出産業における合理化、食糧及び合成繊維の増産、電源開発の促進、外航船腹の増強等、以上の諸施策に必要な政府資金は、今後五箇年間に約一兆円にも達する見込みであります。もとより、これらの需要のすべてを満たすことは財政的に困難でありましようが、今後財政資金からの産業投資を考慮するに際して、その重要度、緊急性につき総合的に判断し、重点的かつ効率的な投下をはかつて参りますとともに、一方、財政金融の一体化を通じ、国内資金の調整をはかりつつ、資金供給源の確保をはかつて参りたいと存ずるのであります。このため、政府においては、税制を改正して、民間における資本蓄積の促進に努めておる次第であります。企業においても、冗費を節約して、資本の充実、経営の健全化に努め、将来の経済発展のための基礎をつちかうべく留意せられたいのであります。 以上は政府の経済政策の大綱について申し上げたのでありますが、これらは今後長期にわたる経済政策の基本的方向でありますので、具体的施策の決定したものにつきましては、本国会に提出いたします予算案、法律案におきましても、極力その実現に努めておるのであります。 なお、この機会におきまして、二十八年度における経済規模に関して一応の推定をいたしますならば、貿易規模は、最近の傾向から推しまして、輸出ほ約十二億ドル、輸入は十八億ドル程度となつて、前年度の規模と大差なく推移するものと思われ、特需などの特別収入も急激な変化はないものと予想されますので、国際収支としては大体均衡を保持するものと存じます。鉱工業生産につきましては、最近の生産状況をほぼ横ばいの形で経過するものと考えられますが、年度としては昨年度に比し約一〇%の上昇を見、昭和九—十一年基準で一五四%程度となるものと予想せられ、これに伴い国民所得も上昇して、約五兆八千億円余に上るものと推計されます。 今後における日本経済の前途は、特需の動向、輸出の推移、賠償負担等、いずれを取上げてみましても数多くの問題を蔵し、まことに容易ならねものと申さねばなりません。しかしながら、国民一人々々が日本経済の自立を願い、独立国家の国民として、かたい決意と不屈の努力とをもつて政府の施策に協力せられますならば、これが打開は決して難事ではないのであります。 私は、ここに、国民諸君に対し、今後わが国経済の進むべき道を明らかにし、これに対する所信を披瀝するとともに、相携えて日本経済の自立達成に邁進いたしたいと存ずるものであります。(拍手) —————————————
○今村忠助君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、明十七日定刻より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時二十六分散会