法務委員会 第10号
- 発言数
- 58 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1953/07/10
会議録
○井伊委員長代理 これより会議を開きます。 委員長所用のため理事である私が委員長の職務を行います。 判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 本案は判事たる資格に特例を認める法律であると一言で言えるとおもうのでありますが、われわれは裁判官というものは他の官吏よりも最も優秀なものであるべきものだと考えている。また国家の待遇におきましても、他の官吏よりも優遇すべきものだと心得ておりまするが、その優遇をし、または特別の地位にあるというときには、それ相当の資格あるがゆえに優遇せられるものだと心得るのであります。しかるにほかの官吏と同じような資格で、おれは裁判官になつたからえらいのだとこう言われることになつては、とうていそんな優遇及び上位の地位を保てるものでないと私は心得る。機会あるごとにその主張をしておるのでありまするが、法務当局並びに裁判所においては私と見解を異にせられるか、同一の見解であるかをまず承りたい。
○位野木政府委員 ただいまの鍛冶委員の御発言はまことに御同感であります。裁判官の地位及び権威を高からしめるためには、あらゆる点でりつぱな資格を備えた人物を裁判官に迎えるということが絶対に必要でありまして、そのためにはみだりにその資格を緩和すべきものではないということは申すまでもないことと思います。
○井伊委員長代理 この際お諮りいたします。最高裁判所より説明したいとの要求があります。国会法第七十二条第二項によりこれを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井伊委員長代理 御異議なしと認め、これを承認するに決します。鈴木説明員。
○鈴木最高裁判所説明員 お説の通り裁判官に対して一般公務員よりも特別な高い給与がされており、従つてその資格も法律で限定をしておつて、だれが来ても裁判官になれるものでないというような建前にしておりますることは、新憲法のもとにおいても、旧憲法のもとにおいても同様であります。国民の裁判に対する、または裁判所に対する信頼を維持し、高める上からいいましても、裁判官の資格を緩和し、ゆるやかにするということは警戒を要することでありまして、裁判所といたしましても現在の裁判官たるの資格としてきめられているところよりも緩和して、さらにそれを広げるというような意思は持つておりませんし、現在の線を尊重すべきであるし、その資格を厳格にしておくということは将来のためにも必要であるということは異議のないところでございます。
○鍛冶委員 この法案を見ますとある程度首肯でき得るようなものもありまするが、はなはだ不可解な点もあります。そこで私は法務当局に承りたい。かような法律が必要である根本理由がどこにあるのか、人が足らぬのでこういうことをやらねばいかぬのか、それとも何らかの理由があつてやられるのか、その点をまず承りたい。
○位野木政府委員 この法案を提出いたしました理由は、大体二つ考えられると思います。第一点は、やはり裁判官、特に判事となるべき者、これが現在でも不足いたしております。これに人材を集める必要があるということが第一点。それから第二点といたしましては、部内における職員の待遇の不均衡といいますか、そういう点が理由であります。たとえばこの法律の第一点について例をとつてみますと、判事または検事として働いておつた者が応召をした。そして何年間か向うにおりまして帰つて来たという者があるわけです。その場合に在職のままで応召しておつたという場合には、その応召期間中の在職年数は裁判官の任命資格の必要年数に通算されるわけですが、たまたま短期現役というふうなことで、同様軍隊に奉仕しておつたという場合に、この者が法務官として勤務しておつても、帰つて来て裁判官の任命資格についての年数算定という場合に遭遇いたしますと、その期間は在職年数に通算されないというふうな不公平が行われます。実質的にはむしろ応召して一兵卒なんかで勤務しておつた人よりは、法務官として勤務しておつた人の方が意義があるというふうなことが逆に考えられるのでありますが、しかしそれが通算されないというふうな結果になるのであります。そういうふうな不均衡を清算しようというのが第二点であります。
○鍛冶委員 私は裁判所であろうがま外地であろうが、実際に判事もしくは検事たるの実務をやつておられた方に対してはそれほど申しませんが、そうでないものまでとられるという意味は、その気持はわからぬでもありませんけれども、先ほどから言うように、裁判官たる特殊の地位から考えてさようなことがいいか悪いか、この点の根本を聞いておるのです。第二条第二項の「陸軍法務官、海軍法務官、法務官たる陸軍の法務部将校、海軍の法務科士官、第一復員官、第二復員官、第一復員事務官若しくは第二復員事務官」こういう人は裁判でもやつておつたのですか。
○位野木政府委員 第二条第二項の改正規定の第一復員官、第二復員官、第一復員事務官、第二復員事務官というのは、その上にある「法務官たる」という文字がかかるわけであります。法務官という実質は、初めから陸軍法務官、海軍法務官、以下ずつとかわらないのでありますが、官名の変更に応じてこのように変遷いたしましたので、それを列挙いたしたわけであります。
○鍛冶委員 法務官という名前があるからなんでしようか、それとも仕事が裁判所及び検察庁と同じだからなんですか、その点を聞いておるのです。
○位野木政府委員 法務官として軍法会議における裁判官及び検察官または予審官としての職務を行つておつたのであります。
○鍛冶委員 いま少しこれらの人の実際にとつておつた職務の内容、職歴等を明らかにしていただきたい。そうでないと何ともお答えのしようがない。これは私の希望です。
○位野木政府委員 法務官として実際仕事をいつまでやつておつたかという問題を申し上げますと、内地の法務官は陸軍軍法会議法等の廃止に関する勅令によつて昭和二十一年五月十八日になくなつたのであります。それまでは軍法会議として活動しておつたのですが、そのときに内地に関する軍法会議はなくなつたのであります。そして内地の軍法会議に係属中の事件は、すべて通常裁判所が裁判することになつたのであります。しかし外地の法務官はその後も軍法会議が存続しておつたものが相当ありますので、その分についてはなお新憲法施行日の昭和二十二年五月三日までは軍法会議が存続しておつたというふうなことになつております。全部ではありませんが、現実に職務を行つておつた者もあつたようであります。そして新憲法施行後に陸軍刑法を廃止する等の政令によつて外地の軍法会議も法制上なくなつて、これで法務官はなくなつたという経過になつております。
○鍛冶委員 もう少し具体的な資料をいただくことにして質問を続けましよう。次に第三項に「電波監理委員会若しくは郵政省に置かれる審理官」を改め、「郵政省の電波監理審議会に置かれる審理官、公正取引委員会の事務局に置かれる審判官たる総理府事務官、同事務局の審査部に勤務する総理庁事務官若しくは総理府事務官」、これを入れることにいたしておりますが、これは司法事務はどういうことをやつておるのですか。
○位野木政府委員 公正取引委員会に置かれる審判官の職務内容を申し上げますと、審判官のおもな職務は、公正取引委員会の審判事件の審判手続を行うものであります。この手続は純然たる訴訟手続ではありませんが、準司法的な手続でありまして、具体的に申し上げますれば、委員会が審判の開始の決定をした事件につきまして、公開された審判廷において審判手続を行います。これには弁護士も立ち会つて行われるのであります。審判の結果、独禁法違反の事実が認定された場合には、被審人に対して一定の措置を命ずる審決案を作成いたしまして、これを委員会に提出いたすのであります。なおこのようにして決定された審判に不服のあるものは、地方裁判所を経ないで東京高等裁判所に直接不服の訴えができることになつておりますことは御承知の通りでありまして、これらは非常に準司法的なものとして、厳格な手続をとつておるのであります。 それから公正取引委員会の事務局に勤務する総理府事務官または総理庁事務官の職務内容でありますが、おもな内容は、いわば一般刑事上の犯罪の捜査に準ずるものでありまして、みずからまたは一般人の報告に基いて独禁法違反の事実を調査いたしまして、審判手続を開始するかどうか、または告発すべきかどうかについての資料を収集します。それからまた審判の確定した後におきましては、その確定した審決の遵守についての監視をする職務を持つておるのであります。これらはいずれも司法に準ずる手続でありますので、独禁法におきましては、特に第三十五条の第三項におきまして、公正取引委員会の職員の中には「検察官、任命の際現に弁護士たる者又は弁護士の資格を有する者を加えなければならない。」という規定を置いております。このようなところから弁護士の資格を有して、現にこの職員になつておられる方もあるのでありまして、そういう方が本来資格を持ちながらしかもそういうふうな準司法的な手続を常に取扱いながら、その間の経験年数を全然無視するということはいかにも不公平ではないかというふうな考え方から、このような立案をいたした次第であります。
○鍛冶委員 私は総理府の事務官とか審査部に勤務する総理庁審理官などの職務の内容はわかりませんから、何と言われても私は裁判事務をやつておるということは首肯できませんが、あとで裁判所当局に伺うことにいたします。 もう一つ重大なのは今言われた弁護士でここに入つておる人、これは弁護士の登録を取消して官吏になつておるのだと思う。そうするとその弁護士も判、検事に採用される年数に通算されることになつておりますか。
○位野木政府委員 もちろんそれは裁判所法によりまして通算されます。これは特例を定めたのであります。弁護士の在職は正々堂々と正面から通算されるということになつております。
○鍛冶委員 弁護士をやめて官吏になるのでしよう。弁護士をやめてなつておるが、あなたの言われるのは、——弁護士で入つておれば、それは問題になりません。しかし弁護士をやめて入つておつたなら弁護士をやつたものとして年数が通算されるということでありますね。私の聞いておるのは官吏になるのですから、弁護士として登録しておる場合、どうなるか。
○位野木政府委員 官吏としてと同時に、その期間弁護士としても通算されるということになつております。
○鍛冶委員 それはどの規定ですか。
○位野木政府委員 そういうことはございません。官吏としてのみ通算されるのでありまして、弁護士をやつておつた時代は弁護士としての在職年数は通算されますが、官吏になつた以上は官吏としてのみ通算されるわけであります。
○鍛冶委員 そうすると、ここに書いてあるのは裁判所構成法による判事又は検事たる資格を有する者なら通算されるが、弁護士たる資格を有しておつた者なら通算されない、こういうふうに承るほかはないと思いますが、どうですか。
○位野木政府委員 これは弁護主たる資格を有しておれば、当然判検事たる資格を有するということにはなつておらないのであります。従いまして旧弁護士法時代に弁護士の試補の修習をせられておるという方は、弁護士の在職が三年以上の者のみを三年以後においてのみ初めて判検事の資格を得たものとみなすというのが従前の法制になつております。
○鍛冶委員 判事、検事たる資格を持つておつて、このような官吏になつた者には通算する、判事、検事をやつておつたと同じに認める、今あなたが言おうとされるのはこういうことなのでしよう。しからば弁護士たる資格を持つておりながらここに入つたら通算されない、こうなると弁護士たる資格を持つておつた者だけはこの特典に——これに対する賛否は別として、そのまま行くとすれば特典にあずからないというのはどういうわけなのですか。判、検事の資格を持つ者は通算されるが、弁護士たる資格を持つておる者が通算されない、その根本原因はどこにあるのですか。
○位野木政府委員 これは従前の法制上、判事または検事になる資格と弁護士になる資格とを別に扱つております。それで今問題になつておるのは裁判官を補充するという目的でありますから、裁判官の資格を有しておる者を対象にするという取扱いにして、こういう規定を置いたのであります。これを一挙に弁護士たる資格を有する者にも同様にいたしたい気持もあるのでありますが、これは従前の法制上弁護士になるのにはこう、判事になるのにはこうと取扱いを別にいたしております関係上、従前の法制を乱すことになりますので、そういうようにいたすことはできないので、こういうふうにいたしたのであります。しかしながら先ほど申しましたように弁護士の試補の修習をいたしたような方は、裁判官の資格を有しておるということになつておりますし、それから在職三年以上の場合には、三年以後のものは判検事の資格を得たものとみなすというふうにいろいろなつておりますが、そういうことから、弁護士をしておられてもこの規定の適用を受けるという場合が相当多いわけであります。
○鍛冶委員 たしか三年以上弁護士をやつておれば検事たる資格がある、十年以上弁護士をしておれば判事たる資格を持つておる、こういうふうに私は思つておるのですが、そこへ判事たる資格及び検事たる資格を持つて入れば、この適用がなされます。ところが二年もやらない弁護士が入つて、ここに三年おつた、そうすれば五年やつておつておつたということになりますが、こういうことですか、具体的にいえば……。
○位野木政府委員 ただいまの点でありますが、裁判所法の立案のときに、裁判官の資格を高めようということから相当厳重に資格要件を規定いたしたのであります。しかもこれは実にこまかい規定を設けたのでありまして、その建前がずつと今日まで及んで来ておるのであります。それを前提として立案をいたしておりますので、前の前提の要件についてのいろいろ御議論もあつたと思いますが、これを立案した建前はそのようなわけでございますので、御了解をいただければ幸いと思います。
○鍛冶委員 私の言うのは、弁護士を三年以上やつておれば判事たる検事たる資格がある、こうなつておるのに、それが判事たる検事たる者ならば通算できるけれども、弁護士であつた者はこの法律から除外されるということになると大きな問題だと思われるので、ひとつお考えおき願いましよう、これ以上議論したつてしようがない。 その次に、第二条の第二項として次のように加えるというのですが、「弁護士試補として一年六月以上の実務修習を終え考試を経た者については、その考試を経た時に裁判所構成法によろ判事又は検事たる資格を得たものとみなして、前条の規定を準用する。」これは一年六箇月修習をやつて考試を経たのなら、当然判事になり検事になるんじやないですか。試験を受けてもまだ判事、検事でなかつたというような者があるのですか。
○位野木政府委員 弁護士試補として一年六箇月以上の実務修習を終え考試を経た者は裁判所法施行令第十条第二項の規定によりまして、裁判官の任用資格に関する規定の適用については「司法修習生の修習を終えたものとみなす」ということになつておりますが、しかしながら「裁判所構成法による判事又は検事たる資格を得たものとみなして」ということをこの規定だけで見ることは無理じやないかということから、こういうふうにいたしております。
○鍛冶委員 ちよつとわからぬのですが、司法修習を終えて試験に通つたら、いつでも判事たる検事たる、または弁護士たり得るその資格はあつたのだと思うのだが、それをここであらためていわなければならないというのがわからぬのです。
○位野木政府委員 今申し上げましたように、裁判所法施行令によつて「司法修習生の修習を終えたものとみなす」ということになつておりまして、裁判官になれるという資格を持つたのでありまして、旧法時代は弁護士たる資格と裁判官たる資格とは——現在新法でもそうでありますが、旧法におきましてはもつと取扱いが異なつておつたのであります。
○鍛冶委員 これはふに落ちないが、またあとで聞きましよう。 その次は、これは私は問題だと思う。「裁判所構成法による司法官試補たる資格を有し、陸軍法務官、海軍法務官」云々の「在職年数が通算して三年以上になる者については、その三年に達した時に裁判所構成法による判事又は検事たる資格を得たものとみなして、前条の規定を準用する。」これはおそらく試験は受かつたが、まだ司法官試補としての勉強をしておられる、今日であるならば、司法修習生としての講習を経ておらない、そういう者を特別に司法修習をやつた者、もしくは司法修習生の修習を終えた者と同一に取扱うという規定であろうと思われるが、これは間違いございませんか。
○位野木政府委員 大体そういうふうな結果になつております。
○鍛冶委員 そうするとあなた方は陸海軍法務官、もしくは第一復員官、第二復員官、及び第一復員事務官等をやつておれば、司法修習生と同様の勉強を積んだ者という確信のもとでこれを出しておられますのですか、いかがですか。
○位野木政府委員 第一復員官、第二復員官という官名を並べてありますが、これは先ほど申し上げましたように「法務官たる」という前提がかぶつておるのであります。それで法務官として三年以上、裁判官、検察官、予審官に従事した職務をとつておつた場合に、その三年に達した以後の在職年数を通算してもよろしいのじやないかという考え方であります。
○鍛冶委員 こういう法律の出るごとに議論をするのですが、あなた方は一体司法修習生というものはどういうことを勉強するものだと思いになりますか。何か裁判所に出入りさえすればそれでよろしいのですか、それとも修習生というものは特別の勉強をさせておるというお考えがあるのですか。ただ司法の門さえくぐればいいのですか。これはいつも私は問題にするのですか……。
○位野木政府委員 もちろん修習生としては裁判官あるいは検察官、弁護士たるにふさわしい修業を積むということが目的でありまして、理想といたしましてはそういう修習を経た者のみを裁判官、検察官、弁護士というふうにいたすのはもちろん好ましいことであります。しかしながら従前の建前といたしましては、必ずしもそういう原則を貫くということは法制の建前上もいたしていないのであります。このように裁判官、検察官類似の仕事をしておつた方にも確かにりつぱな方がおられると思われるのであります。そういうような人を活用しないということは国家的にも損失じやなかろうかというふうな考え方もできるのじやなかろうかと思います。
○鍛冶委員 なるほど個人々々としてはりつぱな人はおるでしよう。私は制度として言うのです。なるほど今の立法ではそういう者を採用するということが入つておる。私はそのたびごとにかようなことを認めたら司法の建前はくずれるのだと言つて来た。前にもこういう例がありました。そういう例をつくるのはいいのですか、悪いのですかということを聞いておる。あなたのようなことを考えておつたら、二年修習する者がばかばかしい。何とかしてそんなものをやめようといつてあらゆることを言つて来ておる。これが通つたらすぐまた言うて来るのは見えておる。弁護士会からこういうものは絶対反対だといつて、前もつて反対を言うて来ておる。そういう特例はなるほどあるが、あるのはあたりまえでいいことだと思つておりますか。私らの方にはこれだけが特例だ特例だと言つておる。それがあとになると前にもこういうのがございます、また同様に今度もできますがよろしく、少しぐらいはいいでしようと言われるだろうが、それが根本問題だと思う。これはいいことだとお思いになりますか、どうですか。
○位野木政府委員 もちろん先ほど申し上げましたように、理想としましてはそういうことは好ましいということはいえないのでありますけれどもみだりに範囲を広げて行つて、例外を認めるべきでないということは、むろんお説の通りでございます。
○鍛冶委員 その次は、満州弁護士令による弁護士、関東州弁護士令による弁護士、満州国の律師その他も入つておりますが、これは日本の弁護士としての資格を持たない外地の弁護士であろうかと思われるのですが、いかがですか。
○位野木政府委員 日本の弁護士たる資格を有しておる者のみについて定めておるのです。
○鍛冶委員 そんならこんなことを言わぬでもいいじやないですか。満州へ行つたからといつて、日本の弁護士たる資格を持つて行つておると思うのだが、それとも日本の弁護士としての資格をなくして行つておりましたか。
○位野木政府委員 外地弁護士の場合はすでに現行法上認められておるのであります。今回の改正案でまた新たに加えようとするものは満州国の律師であります。満州国の律師として登録をされた、しかも内地の弁護士たるの資格を持つておられた方が内地の登録は取消された、こういう場合普通聞くところによりますと内地の弁護士たる資格を有しておる人は、満州で法律事務をとられる場合の多くは内地の登録は取消さないでやつておられたということだそうであります。しかしたまたま事情によつて、内地の方との連絡がとだえて内地の弁護士の登録は取消された。しかし内地の弁護士としての資格を持つて、ほかの方々と同じように満州国で法律の事務をとつておつたという場合にこれを全然無視するということは、いかにもお気の毒であるというので、かように改正したものと考えております。
○鍛冶委員 なるほどこれは「弁護士たる資格を有する者が」となつておるのですが、そうするともう一ぺん聞きますが、日本の弁護士たる資格を持たないで、満州国の律師たる弁護士の資格を持つておる者はこれに入らぬということに間違いございませんか。
○位野木政府委員 間違いございません。
○鍛冶委員 それから第三条の二、これはどういう意味なんですか。よくわからないのですが……。「又は電波監理委員会若しくは郵政省に置かれる審理官」を「、郵政省の電波監理審議会に置かれる審理官、公正取引委員会の事務局に置かれる審判官たる総理府事務官又は同事務局の審査部に勤務する総理府事務官」に改める、これは職がかわつたからですか、かわらぬけれどもただこの法律を適用するためにこのように便宜にしたということなんですか。
○位野木政府委員 三条の二は、内容といたしましては第二条の第三項と同じであります。ただ前提といたしまして第二条は「裁判所構成法による判事又は検事たる資格を有する者」こういうことになつておつたのでありますが、第三条の二は「司法修習生の修習を終えた者」ということになつておる点が違うのであります。これは新しい裁判所法に基く修習をした者について同様な取扱いをしようというのがこの規定であります。そのうちの「郵政省の電波監理審議会に置かれる審理官」というように改正しようという点は、単なる法令の変更に伴う整理でありまして、電波監理委員会が昨年の行政整理の結果廃止になりまして、電波監理審議会というものにかわつたわけです。それでこういうことにいたしたのであります。それから公正取引委員会の職員の方は今申し上げた通りの事情であります。
○鍛冶委員 第五条第一項のこれもやはり同一ですか。官名がかわつたからこういうふうに出されたのですか。内容は何かあるのですか。
○位野木政府委員 第五条の関係はこの法律の第一条にあります職権の制限を受けない判事補として指名されるに必要な在職年数に今申しました法務官の在職年数を通算させようという規定であります。今までの本則の改正は、裁判官の任命資格に関するものでありますが、第五条の方は職権の制限を受けない判事補として指名されるに必要な年数のとり方であります。趣旨は同様であります。
○鍛冶委員 大体わかりましたが、先ほどから言うように、こういう法律がだんだん出て案ずと、このあとにまた出て来ることはわれわれは想像できます。ことに一番困るのは、二年間修習しなければならぬといつて大学の課程を経、長い間かかつて司法試験に及第し、さらにまた血の出るような思いをして修習をやらしておる。これはやつた者にとつてみなければわからない。しかるに行政官やその他からそれに似たものがあるといつて、こういうものをやつたら、現に修習している者はどういう感じをいたしますか。さらにまた先ほどから言うように、司法官は特別の地位があるというときに、その中にそういう特例を入れる。なるほど一人々々調べて見ればりつぱな人がおるかもしれないが、制度の上で、司法の将来の上に、私は憂うべきことだと思われるのですが、これに対して裁判所側の御意見はいかがですか。そうお思いになりませんか。さらにまた進んでこの法律に御賛成であるか、賛成であるならば賛成の理由を明確にしてもらいたい。
○鈴木最高裁判所説明員 原則の考え方といたしましては、鍛冶委員が御発言になつた通りと存じますが、つまり新しい裁判所法のもとにおいて司法修習の制度を設けて、そして司法官試験に合格した後二年にわたつて裁判所の実務、検察庁の実務、弁護士会における実務並びに学問の方を勉強させて、しかもさらに第二回試験を経て、それに合格した者が弁護士となり、裁判官となり、検事となつている現在の建前からいたしますれば、そういう過程を経ないいわゆるイレギュラーな過程を経た者を、その過程を経たと同様に取扱うという立法措置をすることは好ましくないことは言うまでもないことだと考えます。ただ司法修習生の制度が新憲法施行後の制度でありますし、旧時代の制度と新しい時代の制度とをつなぐ上の措置としてそこにいろいろな不均衡が生ずる。それを制度として放置しておくわけに行かないので、好ましくないにしても、あまり不均衡が生ずるということは、結局黙つておるわけにはいかないというので、そういう全般的な見地から見て不均衡を是正する。それも過渡的な現象として是正をする、その是正の対象になる者は人数としては決して多い人数ではない。こういう建前で、裁判所も、法務省の方が立案してくださつた点については、原則として異議を言わないで、現状においてはやむを得ない措置であろうということで、大体賛成いたしておる次第でございます。ただ根本論といたしましては、鍛冶委員が先ほどから主張せられております通り、好ましい措置ではないけれども、公平を期する上からやむを得ない。しかもその対象になる者は人数にすればさして多くない人数だということで、裁判所の方にいたしましても、これに賛成いたしておるという実情であります。
○鍛冶委員 過渡的に均衡がとれないと言われるが、とれないということになれば、何でも言えるわけです。どうなんです。今の修習二年というのは、新憲法後のものであります。その前には弁護士試補として一年六箇月でやつておつた。その前には司法官試補としての修習を経なかつたら判検事になれなかつた。それは少しずつかわつて来ておりますが、それを飛び越えなければならぬという理由が私にはどうしてもわからない。それから、ことにどうも司法に似たる行政官をやつておるから同じだと言われるが、われわれの考え方と根本の違いがあります。私は司法修習生をやつておるということは、ローヤーとしてはずかしからざる人格をつくり、ローヤーとしての陶冶を経ておる、これを経なかつたならば弁護士になれないのだ。これを経なければ、判事、検事になれないのだ、こういうところに司法の品位を高める根本があるとわれわれは考えておる。それを、まあこれならいいでしよう。これもかわいそうだから、これも入れてやると、あなた方自身が司法の品位を落すものである。これはどうですか。私からこう言うたらあなた方にきらわれるが、私がこれだけ言つてもわからないのは不審にたえない。この前も二人や三人なんだからというので、とうとう私は発言しないでおつたら、また出て来た。この次また来ましよう。これはわかつておる。それをどうして防ぎますか。少し考えてもらわぬとほんとうに困ると思う。
○位野木政府委員 鍛冶委員の仰せのことはごもつともしごくのことであります。でき得ればそういうほんとうの修習を経た者のみを裁判官等にするというふうにいたしたい、それが非常に灯ましいということは、私どもも衷心から同感いたす次第であります。繰返うようでありますから、あまり申し上げませんが、やむを得ない措置として、この程度のものは均衡上最小限度に認めていただいてしかるべきではないかという者のみを提出いたしたのであります。できるだけわれわれといたしましても、そういう弊害を及ばさないようにという気持から考えて来ておつたのであります。ですから、ほんとうはぱつと大きくといいますか、初めに全部均衡上これもそうだ、これもそうだと入れれば、これは一回で済んだかもしれない。しかしそれはあまりにも無責任といいますか、検討を要するのじやないかというふうなことから、一応最小限度の、こういう実際の必要があるのだという実際の必要に応じてちびちびとやつて来たという実情なんです。その点ひとつ御了察願いたいと思います。今後また非常に出て来るのじやないかと仰せられますが、それはここに書いてある内容をごらんいただいても、過去の遺物というものがほとんどです。将来は司法修修習生の修習を終えた者が公取に行つたというような場合はあり得るかもしれない。しかしこれはごく少数で、全部いまさら新しくつくるということはできないものである。また今まで必要のあるものは、大体において出て来てしまつておるということであります。どんどん新しく出て来るということはないと思います。
○鍛冶委員 位野木さんは御承知でないからそういうことをいわれるが、われわれはどれほど主張したかしれない。あなたの言われる通り、こんなものを入れる、これくらいのものは入れる、これくらいのものを入れると、あなたは資格の特例をつくつた、そのかわりにこれ以上絶対やらぬというので通した。それがまた出て来てある。あのときあらゆるものを予想して、それこそさつき言う通り、司法の門を二、三年くぐれば全部やることにしておけばよかつたかもしれないけれども、それではいかぬ。ことに今言う通り行政官は何年もやつてりつぱな人であろうとも、裁判官の資格はないと思われる。それでなかつたら裁判官が特別優遇されるわけがない。それをあなた方どう考えられるかということなんです。これ以上議論してもいけませんから、御考慮願いたい。幸い政務次官が見えておるから、政務次官から御意見を聞きたい。私がこう言うと、何か政府の政策に反対するように思われるかもしれないけれども、何とかして司法の品位を高めたいと思えばこそ言うことである。私はこれに対して反対するものではないが、どう思われるか。そうしてまたこれに対して御考慮を願えるかどうかを一応承つておきたいと思います。
○三浦政府委員 鍛冶さんの御意見は私もまことにその通りだと思うのであります。いやしくも司法の信頼と理解がなければ絶対にできないということは、もう議論の余地がないのであります。そういうような国民の信頼と理解を得てほんとうに司法の独立のためにも裁判官の権威を高めるということは当然であります。そういう点から見るならば、これは資格において、また待遇の点においても特別の措置を講じておることも当然であります。その意味におきまして、私は鍛冶さんの御意見に満幅の賛意を表するものであります。今後の問題につきましては関係者とも十分に相談しまして、十分に考慮したいと思います。
○鍛冶委員 先ほど言つた資料をあとで御提出を願うことにしまして、私はこれで終ることにいたします。
○井伊委員長代理 他に御質疑はありませんか。——ほかに御質疑がなければ本日はこの程度にとどめて散会いたします。 午後零時十九分散会