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15回国会参議院1953/02/27

労働委員会 第10号

発言数
5
登壇者
2
会派数
2
開催日
1953/02/27

会議録

椿繁夫日本社会党(第四控室・左)

○委員長(椿繁夫君) それでは只今から労働委員会を開会いたします。  先ず理事の補欠互選についてお諮りいたします。先般本委員会の理事であつた村尾重雄君が労働委員を辞任されましたので、現在本委員会には理事が一名欠員となつております。つきましてはこの際、理事の補欠互選を行いたいと思いますが、本件につきましては、先例に従い、成規の手続を省略して、委員長において指名する方法をとりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

椿繁夫日本社会党(第四控室・左)

○委員長(椿繁夫君) 御異議ないものと認めます。  それでは私から本委員会の理事として、原虎一君を指名いたします。   —————————————

椿繁夫日本社会党(第四控室・左)

○委員長(椿繁夫君) それでは次に栃木県の珪肺労災病院を視察して来られた労働委員会を代表して、堀眞琴君からその視察報告を聴取いたしたいと思います。

堀眞琴労働者農民党

○堀眞琴君 去る二月五日、六日の両日に亘り行いました栃木県塩谷郡藤原村所在の珪肺療養所労災病院の視察の結果を御報告申上げます。  視察の目的は、近時金属鉱山労働者を中心として珪肺患者が増加しているが、これが予防対策及び療養施策は極めて不十分であるから、その実情をつぶさに調査して至急対策を確立すべきであるというので、委員会の決定に従いまして、委員長吉田法晴、村尾重雄、重盛壽治、堀眞琴の四名と同行者として磯部専門員ほか四名が参加しまして、ほかに労働省、通商産業省の当局係官並びに日本鉱業協会、全鉱組合、炭労という労使の当事者も同行され、一行は二十人を超える盛況でありました。これは各関係方面いずれも本問題が重大であること及びその緊急なる解決が迫られていることを認識されているからであろうと考えた次第であります。  さて五日の午前中、鬼怒川の清流に沿い、空気清澄なる現地療養所に到着しまして、少憩の後、同病院長大西清治博士より珪肺病についての詳細なる説明並びにこれが対策、治療法、病院開設以来の経過、今後の見通しや要望等を聴取し、続いて病院内を視察見学し、又患者多数とも懇談会を開いて彼らの要望を聴取いたしました。そのあと会議室において、病院長以下一行全員を交えて懇談会を開き、来会者のそれぞれより発言がありまして、同夕刻閉会しました。今ここにその概要を御報告いたします。  先ず珪肺症とは如何なる病気であるかと言いますと、主として金属山における珪石を含む鉱床にて稼働する労働者は、坑内において常に微細なる遊離珪酸(SIO2)の粉塵を呼吸しているので、この粉塵中珪石の一乃至三ミクロンという微少なもののみが吸収され、肺の中に溜まり、やがて珪肺症を発病せしめるものでありますが、他にも窯業、耐火煉瓦、鋳物工場等においても少なからず発生しております。この病症は一般に「ようけ」と呼ばれ、坑内夫として長年勤めれば必ずかかるものとされていました。そして不治とはいえないが極めて難治の病でありまして、患者及びその家族は極めて悲惨なる状態に陥るわけであります。このように珪石の微細なる粉塵が、肺に吸飲され、溜まつて行くのに長い年月を要するので、肺の柔軟性も徐々に失われ、硬変して行く、この間は殆んど本人に自覚症状はないので予防しにくいのでありますが、いよいよ発病すると次のごとき苦痛が次第に現われて来ます。先ず息切れがする、痰せきが出る、肺活量か減少するので呼吸が苦しくなる、顔色がやつれてどす黒くなる、肝臓、腎臓機能が減退して体力が弱る、更に結核を併発しやすく、この合併症を起すと苦痛は一層激しくなり再起の見込も薄くなります。  このように悲惨な病症であるが、その原因は当該産業における労働の必然的な結果であることは明瞭であるから、これが予防並びに治療対策を十分に樹立すべきことは人道上も法理上も当然自明のことであつて、今日の不備なる法制、不十分なる対策のままに放任し、その負担を哀れなる犠牲者の上にのみ負わせることはできないと考えます。  次に現況を見ますると、政府は珪肺対策審議会を設けまして、予防、診断及び厚生対策の各専門部を置いて対策を講じておりますが、先ず現に実施しているものは、巡回検診であります。今日までの被検診者は約五万名、病患者の発見率は一三一一五%、更にそのうち重症で医療の必要を認められるもの約一〇%でありまして、罹患者の総数は約九千名であります。  次に昭和二十四年には珪肺措置要項を定めまして、毎年約三百万円の科学研究費を計上して、そのうち八十万円を全国の珪肺研究者の助成に充てております。又同二十四年には世界に第三番目の珪肺療養所であります本院が設置された次第であります。更に本院の防止対策としては、先ず発塵防止、防塵マスクの普及指導でありますが、これらについても関係官庁の努力により相当普及しつつある様子であります。又巡回検診によつて早期に発見された軽度の患者には、職場転換をさせるよう勧奨しております。これらも相当力を入れてなされているのでありますが、現行制度の下ではなかなか進捗しがたい事情があります。  次に本病院の開設以来の患者数は、入院後死亡者十二名、退院者八十名、退院後死亡十名であります。現在入院患者は七十九名で、昨年の増築によつて定員は百十名に拡張されましたにもかかわらず定員に満ちておりません。ここにも施策の不徹底による欠陥が窺えるようであります。食事は一日三合六勺を配給しております。カロリーは現在標準量を上廻つていると病院長は説明されましたが、患者との座談会では食事の粗末さを訴えた者が多いので、一日の食費を聞けば百五円であると言いますので、これではカロリーを上げれば一層食べにくいことになろうと考えられました。  病院の施設は一応整つているようでありますが、この種の特殊療養所並びに研究機関を兼ねるものとしては、なお不備の点が多いように見受けられました。又院長よりも、特別治療用設備であるレントゲン深部治療設備、ポータブル・レントゲンの購入、手術室の完備、化学、病理、細菌機能等の検査室の拡充整備等の必要を訴えられ、又珪肺研究の上の諸経費の不足、その他珪肺医学資料室の新設研究、連絡機関の設置活動の急務なることを叫ばれました。その他暖房としてスチームがないので珪肺に不向きなストーブを用いていること、水道の不十分、又娯楽室の狭少、不備なこと、見舞に来る家族の宿泊施設の欠如が入院者を落ちつかせない原因であることも窺えました。ここで特に注意を引いたのは、本病院の経理が、全くの独立採算制でありますこと、即ち最初病院創立の際は少額ながら国庫補助がありましたけれども、順次削減されまして今日は一文もない状態で、すべての支出を現地の収入で賄わされている点であります。いやしくもこのような国家的な施設研究機関、又特殊な産業犠牲者を収容する病院において国家が何の面倒を見ず、私営病院と同様の経営を強いているというところに、仏作つて魂入らずという施策の不徹底の一つの姿を見たと考えるのであります。  患者よりの要望としましては、先ず何よりも今日本病の完全なる予防と療養上の諸般の不安を解消するための珪肺特別法の制定を念願しております。その主なる点としまして、療養期間は三年を五年とする。休業補償費と打切補償費にスライド制を採用されたい。検診の結果認定が半年乃至一年を要するから早急に決定療養できるようにしてほしい。更に又珪肺に対する取扱が全国で大企業と中小企業とで差等が大きいから、これを何とかしてほしい。又一般医が珪肺病に対する智識が少く誤診や誤つた扱いが多い。健康保険との関係を調整されたい。それから前述の食事への不満、食費の増額要求、休業補償費に弾力を持たせよ。(現在一律六〇%、これを八〇%まで)身体障害等級を一級に上げられたい等々の要望がありました。これらについて、懇談会で労使双方の意見を聞きましたところ、労働者側としては、防塵方策としての湿式さく岩機の取扱いの困難なことや、九〇%防塵マスクをかけると呼吸が苦しいので短時間しか使用し得ないから更に研究を要するといつた点、又中小企業等の能力の限界も考慮すべきであり、年間大体十億も見積れば、我々の要望をかなえ得るわけであるから至急立法化して実施されたいという意見がありました。一方使用者側としては、企業に格差がある以上、一律に理想的な処置はできないので、徐徐に、併し誠実に進捗せしめたい等の意見がありました。  最後に珪肺審議会長としての立場から、大西博士より珪肺特別法制定についての熱心なる要望がありましたが、それは大体次のような趣旨でありました。即ち (イ) 適用範囲を職種別、業種別の双方から考えられたい。 (ロ) 珪肺の定義を明確にされたい。 (ハ) 予防は防塵方面に重点を置かれたい。 (ニ) 技能者養成で未成年者を抗内で使用する場合、ツベルクリン反応の陰性の者は使用してはならない等、人間に対する予防の面を考慮せられたい。 (ホ) 自宅と医療施設を利用する場合とを分け、経費の余計掛かる医療施設利用者には休業補償費の割増をしてもらいたい。 (ヘ) 診断については二診制をとられたい。 (ト) 珪肺患者に結核予防法で規定しているような強制入院の途を講ぜられたい。 (チ) 療養施設の不備を早急に改善されたい。  というような御話でありました。  以上で視察並びに懇談の大体を述べた次第でありますが、この視察の結果、我ら議員と関係官庁当事者との間で更に懇談を交したところ、問題はもはや珪肺対策如何というところではなく、如何にしてどのような対策をなすかという方法を具体的に検討すべき段階に到着しております。即ち単独法か、現行法の一部改正かは技術上の問題でありますが、とにかく今日急を要するとされています諸点を何とか立法化し、国家財政の許す限り、事業者の納得する限度において急速に実施すべきであるという了解の下に、本委員会として今後真剣に本問題を取上げるべきであるという意見に一致した次第であります。

椿繁夫日本社会党(第四控室・左)

○委員長(椿繁夫君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後五時三十七分散会

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