予算委員会 第13号
- 発言数
- 232 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1952/12/18
会議録
○委員長(岩沢忠恭君) 只今より予算委員会を開会いたします。 本日は昨日に引続いて質疑を続行いたします。
○木村禧八郎君 先ず私は政府に、特に吉田総理大臣にお伺いいたしたいのですが、今回政府は人事院の勧告とか、或いは国鉄の裁定、専売の裁定等、それを予算に認めないで、又いわゆる野党三派でこの修正案を出したようでありまするが、政府はこれに対して応じられない態度をとつております。なぜ人事院勧告を勧告案通り応じられないか、或いは又国鉄裁定、専売裁定等、裁定委員会の下した裁定に、なぜ政府は従うことができないのか。その理由、根拠ですね、財政上の理由か或いはその他の理由か、その理由をお伺いいたしたい。これは総理大臣にお伺いいたしたい。
○国務大臣(吉田茂君) 政府としては、財政全般の考慮からして応ずることができなかつたのであります。
○木村禧八郎君 財政全般と申しますと、二十七年度の財政において措置できないということなんですか、それとも二十八年度の予算を考慮すればできないと、こういう意味なんですか。二十七年度予算だけにおいては、二十七年度の財政措置においては財源上できないということになれば、これは承服しがたい。できる、財源が別にあると思う。そこでですね、私は二十七年度の予算の範囲においてできないというのならこれは承服できないので、二十八年度の予算を考慮すればできないという理由なのかどうか、その点非常に不明確だと思うのですが、財源が足りないというのなら、財源はあります。どうしてできないのか。
○国務大臣(向井忠晴君) お答えいたします。あなたのおつしやる通り二十七年度くつきりとやれば、それは十分ではないかも知らんが、多少のことは今度の予算以上にできるかも知れませんが、併し来年度以降のことを考えますと、むしろ不可能と言つていいくらいの金高になる、そう考えております。
○木村禧八郎君 わかりました。それですから私は来年度の予算の構想が、或いは編成方針というものがわからなければ、この補正予算の審議ができない、それで来年度の予算上、人事院勧告、或いは国鉄裁定を呑むことができないのだ。そういう御答弁であるから、来年度のこの相当の金額になるその予算ですね、それについて示されないから納得いかないのであつて、来年度予算はこうなのだ、恩給がこれだけ出て来るのだ、或いは賠償がこれだけ出て来るのだ、或いは再軍備費用といいますか、保安隊の費用がこれだけ出て来るかも知れない、外債支払が出て来るかも知れない、それだから呑めないのだというのならわかります。ところが二十七年度において多少できると今おつしやいました。政府は二十八年との関連において、二十七年度補正予算について、何ら関連のある御答弁をしておりません。全然別個のように考えているから、我々はそんなら財源はあるじやないか。そうしたら大蔵大臣は、財源は多少あるというのです。併し二十八年度の予算上これはすぐ使うことができない。併し二十八年度の予算の編成の構想はどうかと言えば、それはわからない。これでは我々は審議しようがないじやありませんか。この点従つてどういうわけで二十八年度との関連において人事院勧告を実施できないのか、或いは国鉄裁定、専売裁定についてできないのか、二十八年度の予算との関連において具体的に私は御答弁願わなければこれを審議しようがないわけです。この点をもう一度お聞きします。
○国務大臣(向井忠晴君) 御答弁申上げます。二十八年度の予算編成方針は目下慎重に検討しております。そこでお尋ねの明年度の予算の中に給与の点、賠償とかいろいろおつしやいましたが、それなどは或いは概算の検討がつくにしましても、ぽつんぽつんとそういうものだけ切り離して勘定もできないわけです。それで全体のまとまつた上で国会にお諮りいたしたい、そういうつもりでございますけれども、まるでその考えがないとも申上げられませんけれども、今の御質問のようにすつかりまとまつたものを出さなければいけないとおつしやられても困るのでございます。
○木村禧八郎君 大体の、要するに私がお伺いしたいのは人事院勧告や国鉄裁定、専売裁定を呑めなかつた。それについては納得行くだけの理由がなければ、ただ来年度の予算上困難だというのではいけないのであつて、それでは承服できない。来年度はこういうたくさんの費用が出て来て、或いは補正を加えれば、来年度は一兆億円くらいになるかも知れないそういうような御答弁ならわかりますよ。ところがただ来年度相当の予算が出て来るので、できないというだけでは、或る程度まで国民が納得し得る御説明ならいいですけれども、その点ですね。
○国務大臣(向井忠晴君) 何々が幾らと申上げないでよろしければ、今おつしやるように予算規模というものは一兆近いものになることを私は虞れておる次第でございます。
○木村禧八郎君 次に裁定の問題ですが、総理大臣にお伺いいたしたいのですが、この裁定委員会は、もう総理も御承知のように、一旦裁定が下されますと、両当事者を拘束するわけでございます。それに従わなければならないことになるわけです。人事院勧告もこれは十分我々尊重されなければならんと思います。特に裁定の問題は両当事者を拘束するのですから、その裁定が政府において全部尊重されませんと私は非常によくないのではないかと思うのです。両当事者を拘束するわけです。従つて一旦裁定が下されますとそれに従わなければならん、こういうことになるのですから。而も国鉄裁定、専売裁定を見ましても、私は相当合理的だと思うのです。そうしてでは予算財源がないかといえば十分あるのですから、その点裁定の問題については総理はこれは大体その通りに……どうしても財政上困難であるというならば或いは止むを得ませんが、これまでの裁定に対する政府の考え方は少し尊重しなさ過ぎるのではないかと思うのです。裁定の問題について総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(吉田茂君) 政府としては裁定については相当考慮を払い、又研究した上に財政全局から考えて今度の結果になつたのであります。
○木村禧八郎君 どうも殊に専売裁定を見ましても、予算措置は二億六千万円でよろしい。而も専売公社の中でその経理においてできる。それだのになぜ政府はこれを認めないか。私はこういうことが非常によくないと思う。道義の高揚を説いたりなんかしても、政府みずからこの合理的な結論に対して従わないということは私は非常に悪い慣例を残すと思うのですが、只今の総理大臣の御答弁ではどうも納得行かない。この点又別の機会に担当の大臣に質問いたすことにいたしまして、次に只今向井大蔵大臣も言われましたが、大体国の政策についてははつきりはしておりませんけれども、昨日の御答弁では大体生産を拡充して行く、こういう方向に国の大きな政策を持つて行こう。こうしておるようでありますが、もう一歩突込んで我々考えますと、何のために生産を拡充するかということが問題である。而も昨日波多野議員が質問いたしましたが、今後の日本の経済或いは財政等の向う大きな方向ですが、或いはそういう政府の構想について質問いたしましたが、大体政府はそれをはつきり説明されませんでしたが、きまつているじやありませんか。大体そういう方向に向いておるのではないか、一つの方向に……。それは再軍備の方向に全体の施策が集中して向いておる。教育の問題についても、情報機関の問題についても、或いは資金計画にしても、全般の国の政策は再軍備の方向へ、総理が如何に再軍備しないと言いましても、一つの方向に向つて進んでおる、こういうことは私は否定できないのではないかと思う。この点総理が施政方針演説において再軍備はしないと言われましたが、その現実の事態と、国全体の政策の向いておる方向と、総理の御答弁になつておることと私は違つておると思う。その点について総理大臣はどういうふうにお考えになつておりますか、お伺いいたしたい。
○国務大臣(吉田茂君) 再軍備はしないということはしばしば私がはつきり言明をいたしておるのであります。而して政府が現にやつていることをどうお考えになるかあなたの判断は自由でありますけれども、政府としては今のところ再軍備は考えておりません。(笑声)
○木村禧八郎君 その再軍備をしないということと、それから国の力、国力が充実し、或いは国民全般が再軍備するという機運が盛上つて来れば再軍備されるかも知れない、こう言われるのですが、併し政策の大きな方向は、再軍備するという方向に向つているのであつて、ただ国民を黙つて放つておいて、再軍備反対の方向へどんどん行くのを放つておくわけじやない。むしろ大きな方向は、再軍備の方向に向つていて、いろいろの角度から、例えば老齢軍人に年末手当をやるとか、軍人恩給を復活するとか、或いは再軍備計画の作業をするとか、情報機関を作るとか、いろいろな点から再軍備の方向へ、又教育面においても訓育し、或いは宣伝し、奨励し、そういう方向に持つて行く、こういう政策は全面的に現われていると思うのです。そういうことは憲法の精神とどういう関係があるのです、再軍備はしないと言つても国の全体の政策が再軍備の準備のために進んでいる場合、これはやはり憲法の精神に私は違反するのぢやないかと思うのです、総理はされないと言いますけれども、全体の政策が今再軍備の備準体制になつている。そつちの方向に進んでいるのです。憲法九条を尊重すれば、そういう方向はくいとめなければならん政府が、そういう政策をとつているとするならば、これは私は憲法の精神に違反すると思う。ですから、再軍備を現実にするということと再軍備に至る段階における再軍備の準備のための宣伝或いは啓蒙、或いはそういう作業、こういうものはやはり私は憲法九条の精神に触れるのではないか。再軍備準備のためのそういうあれは総理大臣どういうふうに考えておられますか。
○国務大臣(吉田茂君) 私が只今説明した通り、現在の日本の政府の施策がどう向いているかということについての判断はお任せいたしますが、政府としては再軍備はしないのです。従つて又憲法第九条は政府は明らかに違法いたしております。(「その通り」と呼ぶ者あり)
○木村禧八郎君 それならばお伺いいたしたい。本日の読売新聞を御覧になれば、「再軍備と防衛生産」と題しまして、「政府は日本の再軍備についてしばしば経済能力が許すまでこれを行わないと言明してきたが、(一)このほど来日したアリソン国務次官補を通じて再軍備へのアメリカの強い要請が行われたこと、(二)新特需受入れにともなう兵器生産設備の拡充にからんで防衛軍の規模を早急に決定する必要に迫られた事から吉田首相もこの程側近に対し自衛力の急速な充実—再軍備の規模とその裏付となる防衛生産力—についての検討を命じた模様である、こういうふうに前書きして、元海軍大将野村吉三郎氏、元海軍省兵備局長保科善四郎中将など数名で元商工大臣の伍堂卓雄氏を中心として再軍備計画を作成し、第一次案として新聞の報ずるところでは一九五三年度、もう来年度です、においては米極東軍の現地所要量に包含されるものとして、地上兵力二十九万、海上兵力三十万トン、兵員十万、空中兵力二千八百機、こういう再軍備規模を前提として今再軍備の作業をいろいろやつているということが伝えられておるのです。これだけはつきり新聞に出ておりまして国民はどうして政府の施策が再軍備の方向に向つていないと言えるか。最近の世相の一番悪い点は、政府の言うことと現実の事態が食違うことです。政府は再軍備しないと言いながらこういう計画が堂々と新聞に出ておるのです。この本日の読売新聞に出ている記事、それは新聞記事であるから当てにならんと言われるかも知れませんが、少くとも伍堂卓雄氏を中心としてこういう再軍備と防衛生産に関する作業というもの、これは吉田総理も関連しているようでありますが、そういうことが進められているのかどうか、この点を伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 伍堂卓雄氏に再軍備について相談をいたしたことはありません。
○木村禧八郎君 これだけ大きく新聞に出ているのです。現実はどんどんそういう方向に進んでおる。併し更にですよ、政府はそういう再軍備の方向に施策をやつているかどうかは国民の又我々の判断に任せるというのですが、その判断も単なる私は主観的な立場から言つているのではないのでありまして、国民の今の全体の通念としての客観的に示された材料に基いて私は御質問しているのですから、もう少し責任ある御答弁を願いたい。 更に政府はワールド・バンク、世界銀行から今後の日本の経済の大体の見通しについて作業を要求されまして、昭和三十二年を目標とするいわゆる経済の見通作業をやつております。このワールド・バンク、世界銀行に提出されていると思います。その五ヵ年の見通しによれば、やはり大体この読売新聞に伝えられているような再軍備規模を前提とする日本の経済の再編成がそこの中に盛込まれている。そうしますと政府のこれからの全体の施策の方向というものは、十分に昨日の波多野氏の御答弁に答えられませんでしたけれども答えてなくとも、実際にはワールド・バンクに提出されたあの五ヵ年後の経済見通作業によれば、明らかに再軍備計画がその内容に盛込まれておる。今後の日本の経済は、再軍備的再編成への方向に着々と進められている。これは重大な問題です。再軍備は来年やると言つてもすぐできるものではございません。その基礎とする兵器生産、兵器生産の前提として、兵器生産を育成する基盤としての基幹産業の育成が必要です。昨日大蔵大臣はこれから生産を拡充して行くんだ、殖やして行くと言いますけれども、それが兵器生産の基盤を育成するための基幹産業の拡充では、国民生活は安定しない。そうい方向に向くことは重大な問題です。そういうものは憲法に違反しないか。直接軍備を造らなければ再軍備とは言えないか。再軍備に行くまでの段階として日本の経済の再軍備的再編成、軍事的再編成、それは来年度から資金計画にも出て来ます、予算にも出て来ます。そういうことをくるめて憲法九条の精神は解さなきやいけないのだろうと思う。現実にその方向に向つておるのに、再軍備をしないと言うから、国民はどうしても割り切れない。いわゆるWB作業と言いますが、それには明らかに今後の日本の再軍備計画を織り込んだ作業がなされて、これでは今後の日本経済は、政府はどう言おうと、軍事的再編成、再軍備への方向へ向つて行かざるを得ない。その点どうお考えか。今政府の施策は向つていないと言いますけれども、現にそういう作業が行われております。この点明らかにして頂きたい。
○国務大臣(向井忠晴君) お答えいたします。私が生産拡充と申しましたのは、再軍備の目的のものでないと私は初めから考えております。平和産業を強くしてそうして貿易に資するということが一番大切で、それが何よりも私の考える生産拡充の目的でございます。 それから只今おつしやいました審議庁の計画というふうなものが再軍備の準備行動であるというお話でございますが、私はそういうふうに考えておりません。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 審議庁で一応五ヵ年計画を立つてございますが、併しそれは主として国民所得を現在より二割増加する、又鉱工業生産を一七〇のところへ持つて参る。そうして国民生活水準を高めるということが主でありまして、基幹産業に対することが主になつております。電力、石炭、鉄等の基幹産業に関するものが主となつておりまして、何ら軍備を予想したり、或いは又自衛力を盛り込んだものではございません。
○木村禧八郎君 只今そういう御答弁ございましたが、このWB作業の前提として今後の投資、インベストメントの重点を電力、兵器、飛行機、チタン、マンガン、こういう方面に財政投資の重点を置いて行くということになつているのです。一応表面に現れたところは、機械産業或いは金属産業、こういうものを非常なウエイトを持つて拡充することになつています。そういう点一応は今後の日本の輸出貿易は軽工業輸出は困難で、重工業輸出に行かなければならん、だんだん機械を輸出しなければならんから、こういう機械とか金属産業にウエイトを置くと言いますけれども、これは延いてはすぐあすにでも再軍備に切り換える。而もその前提として兵器、飛行機と、こういうものに財政投資の重点を置いて行くということに作業の前提がなつておるのですから、今の御答弁ではそうでないと言つても、これは昭和三十二年になつてみればわかる。今はそういうふうに言つておられますけれども、それは小笠原審議庁長官が三十二年になりましたら、必ず私が言つた通りになると思うのです。今はここでそういうようにごまかして、ごまかしじやないかも知れませんが、それは現実においてごまかしになるかも知れない、三十二年になれば……。併し今もつと国民に対して本当のことを私は知らさにやいかんと思う。国民はみんな聾桟敷です。政府が言うことを本当だと思つていると、現実は違つたことばかり出て来ておるのです。 更に私はお伺いいたしたい。政府の施策が再軍備の方向に向つておらないと言いますが、幾らでも私は資料があります。それを立証立する資料はたくさんあります。又財界の方面でも大体読売新聞で伝えられたような作業をやておる。大体そのために五ヵ年計画で再軍備をやる、で、その費用は日本負担分として一兆六千八百二十四億円、アメリカさんに負担してもらう。これは虫がいい話かも知れませんが、八千百二十五億円、これをいわゆる対日軍事援助費として期待した。毎年三億五、六千万ドル程度のアメリカの軍事援助を期待して、読売新聞で伝えられているような、こういう再軍備の構想を財界では考えておる。そうして財界ではそういう再軍備構想を基礎にして、そうして兵器生産、或いは産業の拡充計画、資金計画、こういうものをやつておる、そういうものが土台になつて軍需株がぐんと上つておるんです。一般の経済は不景気なんです。軍需株がなぜ上るか、それはこういう作業が低流において、裏面において着々行われているから、軍需株がどんどん上るんです。それは株界においては非常に機微に通じておりますから、そういうことになる。これでどうして日本の施策全体が再軍備の方向に向つていないと言えるでありましようか。 更にもつと私は具体的に伺いたい。それは木村保安庁長官に伺いたい。今九州の久留米の郊外で問題になつておりますが、進駐軍が接収して来た七百町歩の土地、それを保安隊が全部よこせ、こう言つて交渉しているという話です。その理由として非常に高度の兵器を使う訓練場にする、バズーカ砲、野砲、地雷、こういうものを使用するんだから広い面積が必要だ、こう言われておる。併し保安隊はそういう兵器を一体使つていいのか。そうなれば単なる国内治安の域を脱するんではないか、この点御答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。バズーカ砲なんかを使用しておることは事実であります。併しながら今木村委員の仰せになるようなそんな高度の兵器ではありません。これは御覧下さいますれば極めて明瞭です。又地雷のお話がありましたが、地雷なんかは全然使つておりません。これは断言いたします。ただ御承知の通り我々としては相当大きな擾乱事件をやはり頭に入れて措置をしておかなければならんと考えております。その意味において保安隊員の訓練については相当の地所を要するものと考えておるのであります。久留米のお話がありましたが、この点についてはまだ私のところへは話は持つて来ておりません。
○木村禧八郎君 この保安庁法第四条ですね、或いは第六条、或いは第六十七条、或いは第六十九条、七十条等を見ますと、どうしてもそういう高度の、警察官以上の高度の兵群を持つことは許されているように思われないんです、この保安庁法を見ますと……。それで昨日の木村長官の御答弁では、大体保安隊は内乱、暴動、こういうものを鎮圧するために設けられておるもので、外国に対抗するものではない、軍隊ではないと言われるんです。それならば大体保安庁法第六十九条によると、大体が警察官等職務執行法の適用ですね、大体これに準拠してやるということになると思うんです。それを範囲を非常に逸脱する兵器を携帯し、そういう訓練をする。これは明らかに私はもう保安庁法を改正すれば別ですが、逸脱しているものと思う。こういうところも世間一般の常識からずれる。こういう法律常識では、そんな高度のバズーカ砲、地雷、そういうようなものの訓練をなすべきものではないと思つても、現実にそういうことをやつて、そのあらゆる政策の面においてずれがある。政府の表面で言うことと実際に行うこととは違つておる。これは講和後の日本の不幸だと思うんです。本当のことは知らされていない。(「その通り」と呼ぶ者あり)嘘の政治が行われておる。そこに問題があるんであつて、私はその点はつきり法律を尊重しなければならんと思う。法律はどうしても逸脱してはいかん。そういう逸脱した保安隊が兵器を持つて訓練するその訓練場を七百町歩、すでに農民が入つて耕しておる。進駐軍が撤退した後又保安隊がこれを取つてしまう。こういうことではどうしても国民が納得行かないじやありませんか、この点私は逸脱していると思いますが、どういうふうに御判断になりますか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 申すまでもなく保安隊は警察力を以て鎖圧することができないような大きな騒擾反乱とかいうことに使うものであります。今直ちにさような事態は起らんとは思つておりますが、他国の例を見まするとなかなかそうは参りません。現に朝鮮がそうでありまするし、或いは御承知の通りスペインにおいても大きな内乱事件があつたのであります。今後日本において内地の情勢、或いは国際情勢から見て、いつさようなことがあるかも知れません。我々といたしましてはいわゆるそういうときの備えを平時から持つておかなければ国内の治安といとうこは維持できないのであります。その点において私は国民も十分に了解されることと考えておるのであります。而して只今の土地の問題でありまするが、それは具体的に今私が申上げたように耳に入つておりません。ただただふだんから保安隊の訓練ということは相当私はしておかなくてはならん。その意味において或る種の演習場は持つべきものであろう、こういう考えでおります。
○木村禧八郎君 この憲法九条で禁止している戦力というのはどの程度にお考えですか。憲法に抵触する程度の再軍備、或いは戦力の保持というものはどの程度のことであるかお聞きしたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) この点につきましては前国会においてもしばしば私は申上げた通りであります。憲法第九条第二項において陸海空軍その他の戦力、いわゆる戦力というのは近代戦を遂行し得るにふさわしい能力を持つた一つの総合的力であります。これを我々は戦力と解しておるのであります。それで今申上げまする保安隊のようなものはこれは戦力ではない。最も大きな総合力と比較いたしますと、微々たるものであります。ただ内地の内乱とか或いは大きな騒擾事件とかに備えるための一つの力に過ぎないと私どもは考えておるのであります。
○木村禧八郎君 それでは先ほど私が読売新聞を採用いたしましたが、地上軍ですね、二十九万、海上兵力三十万トン、兵員十万、空軍二千八百機、これだけ装備するとしたら、これは戦力と言えますか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 我々は具体的にどれまでを持てば戦力になる、どれまで持たなければ戦力でないということは言えないのであります。そのときの情勢によつてこれは判断すべきものと考えております。御承知の通りソビエトあたりにいたしましても、私がこの前申上げた通りでありますが、一つのきな外国と戦争するような強大なる戦力を持つておる。その次に内地の反乱に備えていわゆる日本の保安隊に相当すべき力を持つている。これには高射砲を持ち、戦車も持ち、相当な武器を持つておるのであります。これは内地のいわゆる騒擾叛乱に備える一つの保安隊というもの、その次にやはり日本の或いは国警とか自警に相当すべき警察隊を持つておるのであります。かようにして各国家におきましても一種の保安隊的の力を持つておる国は相当多数あると我々は承知しておるのであります。今申上げまするようにどの数字まで行けば戦力になるとか、どの数字まで至らなければ戦力でないかということは具体的に申上げられません。その時々の精勢の判断によつてきまつて来ると考えます。
○木村禧八郎君 日本の今後の防衛については、大体集団安全保障的な防衛体制を考えておるのです。その場合どうしてもアメリカの戦力との一環において日本の戦力というものは考えられるのであります。その見地に立てば、僅かの軍備でもそれがアメリカと総合された軍備の一部にはなるのであります。こういうことが憲法に抵触しないと言われることはどうしても社会通念として判断できない、ここにも国民が割り切れないところがあるのであります。あらゆる政府の施策の面について現実に行われていることと政府が言つていることと違うのです。それで日本の経済は、財政は、金融は全体として再軍備の方向に明らかに向つているのです。ダレスさんでもそう言うのです。それですから人事院勧告も呑めないのでしよう。国鉄裁定も専売裁定もできないのでしよう。とろこがそういう説明をされればわかるのです。ところがそういう説明をされないからわからないのです。実態はそういうことです。併しこの問題は又詳細には他の機会にお伺いしたいのですが、次に時間がございませんので総理大臣にお伺いいたしたいのですが、今度の補正予算は当初予算を編成した後におけるいろいろな事情の変化を勘案して、その変化に対応するようにこの補正を組んだ、こうなつておるのです。当初予算を編成した後において最も大きく変化の生じて来たのは御承知のように、日本の経済の不景気です。この不景気が輸出貿易の激減という形において現われて来ている。従つて私は今度の補正においてはこの輸出をどういうふうにして殖やすかということに大きな重点を置かなければならないと思うのです。これも重要なものです。それに対しては何ら見るべきものがないのです。この情勢の変化のうち一番大きなものは経済変化です。これは世界経済の面もありますけれども、一体どういうところにこの貿易を拡大しようという政策が現われているか。総理は今後の、講和発効後の日本の経済を一体どういうふうに考えているのか。この輸出激減による日本経済の困難は重要です、一時的なものではございません。当初予算を組むときは、十六億一千百万ドルを輸出予想にしたのです。ところが実際は十一億四千万ドルくらいしか輸出できない。而も来年度はその輸出が十億八百万ドルまで減ろう、こういう見通しなんです。これでどうして日本の経済の自立ができますか。総理は施政方針演説の中でいろいろ輸出振興方策に触れております、言葉としては……。通商航海条約の締結とか一連の経済外交、外航船舶の増強、保有外貨の活用、東南アジアとの経済提携、こういうふうに総理は触れておられるのですが、これによつてどれだけ日本の輸出を殖やすか、輸出増進と言つたつても、本年度よりも殖えるということは……、来年度の見通しとしては本年度より減ると思わなければならない。これは重大事であります。これは根本の問題です。総理は今後の日本の経済を拡大して行く上において、自立的に拡大して行く上に一番重要な輸出貿易が行詰まつて来た。それについてのお考えとそうして輸出貿易の激減を中心とする不景気、この景気対策としてどういうことをお考えか。この点について総理大臣の細かい御答弁でなくてよろしいですが、大づかみで、大綱的な御答弁で結構ですから所信をお伺いしたい。
○国務大臣(吉田茂君) よく見通し見通しと言われるけれども、政治は占いではないのでありますからして、占いをして見通しはこうだと言つてあなた自分の独断で以てこうなるああなると政府にお聞きになつても、それは答えはできません。併しこの間も申した通り大体の世界の今日傾向として、問題は日本の貿易の縮小ばかりではない、世界的の貿易の量は減りつつある。これは世界的に、世界各国、殊に英米において慎重に検討をいたしてこれに対して対策を練つておるのであります。日本としてはこの世界の列国の貿易政策に協調して、そうして世界の繁栄を促すというところに協力して行くべきであり、又今後ともそう行こうといたしております。詳細は大蔵大臣か通産大臣にお聞き下さい。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 貿易がこの本年春以来非常に激減しておることは御指摘の通りであります。更に来年の見通しもそう明るくないことも御指摘の通りであります。併しながら日本といたしましては、これは何としてもこの貿易をもつと拡大しなければなりませんので、いろいろな方策をとつておるのであります。これは木村さんも御承知でしようが、最近例えばポンド地域など、以前にはポンド過剰に苦しんだのでありましたが、この頃は非常に輸入超過になつておりまして、そういうような情勢等も織込みまして、昨日申した日英支払協定などもそれぞれ進めておりますが、なおポンド地域へこういうふうな輸入状況に昨今なつておるから……特に最近はそれも二千万ドルくらいの輸入超過になつております。そんなような点等もありまするので、この輸出問題について特に輸入制限の緩和問題についていろいろ話を進めておる次第もございます。確かに東南アジア貿易等につきましては、これはプラント輸出などが相当話を進めておるのでありまして、これは技術を伴うので、いわゆる技術陣を送つてやることでこれが相当解決するというふうにも考えるのでありまして、こういつた方面にも相当に努力をいたしたいと考えております。ただ貿易ということは、これは木村さんに申すまでもなく一朝一夕に誰がやればこうこういうようになるのだというものではございません。従いましてあらゆる努力をそれに向つて傾注する、そういたしまして私ども来年上期の見通しとしては今日のような情勢であると思いますが、だんだんとこういつた政策が効果を奏して参り、又世界の状況もだんだんと、少くとも下期のほうに向つてはよくなりつつあるような工合に期待をいたしておる次第であります。いずれにいたしましても、その情勢に対応いたしまして、各種の政策に手を打つて参りたいと考えておる次第であります。
○委員長(岩沢忠恭君) 木村君もう時間ですから簡単に……。
○木村禧八郎君 見通し見通しと言われますけれども、本年度、二十七年度の予算八千五百二十七億の当初予算は、貿易は輸出が十六億一千百万ドル、輸入は約二十一億ドル、それを基礎にして国民所得を五兆三百四十億と押えて、それで大体六千三百億の税金が取れてそれ以外に専売益金等を入れて八千五百二十七億という予算が日本の国民所得と比べて財政規模として適当であるというふうに組まれた。ところがこの二十七年度の予算の根本が崩れておるのです。予想々々と言つたつて、政府自体がその予想を立てたのじやありませんか。そうして二十七年度予算を編成しておいて、十六億一千百万ドルの輸出ができない、十一億四千万ドルしかできない。輸入規模だつて二十一億ドルの規模が十八億ドルからに減つておる。日本全体の経済がこれでは縮小して行く。いつまでたつたつて生活水準が上りますか。政府はそういう大きな誤算を犯した。だから二十七年度予算においてもこの基礎が崩れておるのであつて、これに対してどういう措置を講ずるかということを補正でなぜやらんか。やつていないで見通し見通しと言われますけれども、政府自体が見通しを誤まつたので、政府自体が誤まつた、違つた情勢、違つた経済の変化、違つた貿易の基礎の下における補正予算を建直さなければならないのに、何らこれに示されておらないじやありませんか、そこを私は言つておるのです。 時間がございませんからこれはほかの機会に譲りますが、最後に一点だけ伺いたい。それは中小企業対策です。この中小企業対策について小笠原通産大臣は、金融面のみでは中小企業の救済はできない、救済策にならんと言われております。非常に御尤もだ。これまでの政府の施策は、ややともすると大体において中小企業対策と言えば、殆んど金融面です。中小業者が困つてから後の救済対策、いつでも……、困つてから後の救済策で、根本対策ではないのです。従つてこの中小企業対策について池田大蔵大臣……前の通産大臣がああいう悲劇を起して根本は、中小企業が困る根本の原因に対しての政府の認識と、それに対する施策が貧困だから、ああいうことになつた、認識不足だ。で私は小笠原通産大臣に伺いたい。金融以外の中小企業対策は私は二つあると思う。中小企業者の問題は一つは人口問題である。この人口政策、人口対策について吉田内閣は何らの政策を持つていない、これは農村へ行つて御覧なさい。二男、三男問題、人身売買の問題、都市に行つて御覧なさい、臨時工の問題、失業者の増加、いずれもWB作業の五ヵ年後の見通しによれば、昭和三十二年には産業合理化によつて、大体二百万の失業者が出るようになつておる。日本の産業が予定しておる政府の五ヶ年後の見通しが二百万の失業者が出る。その人口対策は何らしてない、中小企業者の困る根本の原因はここにあるんです。人口対策がない、それが一つ、もう一つは中小企業は隷属企業なんです、商店は問屋、問屋から小売になつて、隷属をしている。工業は下請企業だ。そのために一旦景気の変動が来ると、隷属的な地位にあるから皆皺が寄つて来る。この隷属的な立場をどうしてこれを擁護するか。これは企業の、企業組合ということもそうでしよう。それは金融を十分にし、或いは指導をし、この隷属的な、下請関係的な商店でも工業でもそうです。この点は私は改善しなければ、景気変動が来るたびに、その皺が中小企業者に寄つて来て、いつでも中小企業の問題が特に零細企業に起る。そこでこの中小企業対策をただ総理大臣に対して一点伺いたい。人口政策、人口問題を伺いたいのです。もう農村では行き詰つて、最近の中央公論にも中山伊知郎氏は、最近の人口増加は自然的に都市や農村にこれまで吸収して来た、自然力によつて処理して来て、もう限界に来ておる、政府は何ら政策を施さなかつた。自然力或いはマルサス的解決と言いますか、生活力のない人は自殺しろ、こういう弱肉強食的、或いは居候的というような形でとにかく処理して来たのです。こんな人口解決の仕方はないと思う。何ら政府は政策的に人口問題を解決しておりません。従つて今後政府の人口問題に対する対策如何、これは総理に伺いたい。それから中小企業対策、金融面以外の対策について根本的な対策をどういうふうにお考えなのか、小笠原通産大臣に伺います。
○国務大臣(吉田茂君) 人口問題について対策がないといつもおつしやるが、人口問題に対して対策がないばかりではなく、いろいろな問題について対策がないとあなたはおつしやるでありましよう。人口問題については曾つてこの委員会でありましたか、本議場でありましたか、申しました。人口問題というものはこれは日本の問題ばかりではないのです、世界的な問題であります。故に国際人口会議によつて、一方においては解決せんとしておるし、他方においては日本の国内産業の発達によつて余剰人口を吸収する外に方法はないはずであります。
○木村禧八郎君 不景気じやないか。
○国務大臣(吉田茂君) 何がわかるもんかい。
○木村禧八郎君 興奮しないで……。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 中小企業者対策は木村さんも御承知の通りにただ一つで行けるという名案はございません。従いましてあらゆる対策をこれに注がなければならんと思つておるのでありまして、金融はその一つであると私が申したのはその意味であります。更に租税面についても考えなければいかんでありましよう。が併し何と言いましても、中心となるものは企業自体がどういう状況に置かれておるかということであるのでありまして、従つて私どもがちよつと大ざつぱに考えますと、いわゆる三百万以下の資本金の企業者が工場で四十八、九万、それから商店で百四十万見当あるかと思います。このうち私どもが中小企業庁を中心としまして、すでに九千の工場を診断いたしました。又商店は三万の商店を診断いたしました。その診断の結果、これはこういうような療法をとつたら行けるであろうと思われる分が相当あるのでありまして、それらについて今着々と歩を進めておるところであります。ともかくもその中小商工業が非常に占めておる重大な位置に鑑みまして、何とかこれを一つでき得るだけのことはしなければいかんという考え方から、まああらゆる施策を、一言にして言えばあらゆる施策を進める以外にいたし方がございませんので、取りあえず年末は金融処置をとりましたが、これを以て何ら足れりといたしておりません。従いまして今の九千の工場と三万の商店に対する診断の結果に基まして、適切なる手をだんだんと打つて参りたい。通産省の中に中小企業庁があるのでありますから、これを中心としてあらゆる施策を進めて参りたい。併し若しこういうことをやればすぐ効果が上るかというような良い方法がありましたら、どうかお教え願えば、いつでもこれを実行に移したいと思つております。 〔木村禧八郎君発言の許可を求む〕
○委員長(岩沢忠恭君) もう五分過ぎております。
○木村禧八郎君 質問じやありません。
○委員長(岩沢忠恭君) あなたの意見はいいじやないですか。
○木村禧八郎君 意見じやないのです。最後の……。
○委員長(岩沢忠恭君) 質問ですか。それでやめて下さい、質問ならば……。
○木村禧八郎君 ちよつと関連があるのです。一分か二分ですから。最後にこれで終るのですから。
○委員長(岩沢忠恭君) 一分だけで、簡単に……。
○木村禧八郎君 総理の私に対する御答弁の態度はあれでよろしいのですか。総理はいつでも明日はどういう質問をするかという質問の要領を我々に要求する。それで我々は質問要領を出しておる。それに対して何です、あの答弁は……。いつでもどういう質問を明日するかということを我々に連絡が来るのです。ですから私はちやんと出しておるのです。それに対してああいうような答弁をされたのでは、我々はこれから出ず必要がない、併しそういう点はもつと委員長から私は十分に反省を求めて頂きたいと思う。ああいうような態度ですよ。けしからんと思う。(「賛成」と呼ぶ者あり)
○岩間正男君 今木村君から要求がありましたが、当然だと思うのです。我々は国民の代表として聞いておるのです。それで総理の耳に逆らわない甘言だけで質問するならば何の意味もない。我々はむしろ現在のこの政治の状況に対して民族を守る立場から、当然総理の耳にこれは逆らうような言葉こそ必要だと思う。民族の将来のために、従つて今木村君からそういう要求が出ておりますから、委員長は総理に対して率直明快なる答弁をされるようにこれは要請してほしい。(「その通り」「喧嘩しておるのじやないですよ」「委員長から注意して下さい」と呼ぶもあ者り)
○委員長(岩沢忠恭君) 木村君の申入れを了承いたしました。今後政府におきましても、この委員会の運営を円満に期するために懇切にお願いいたしたいと思います。
○岩間正男君 総理も今聞かれたような委員長の要請がありましたので、率直に答えてもらいたい。我々も率直明快にお聞きしたいと思う。 先ず第一にベース・アツプの問題について伺いたいのですが、今度政府は公務員のベースを約二千円程度上げたのです。併しこういうような措置によつて果して、この選挙に当つて吉田内閣が公務員に公約し、天下に公約したところの公約が果されておると考えておりますか、どうですか、この点先ず伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 政府としては国民の給与については十分考えておるが、併しながら一方においては財政全体の、全般的な見地から考えなければならんから、それで今度のような措置をとつた次第であります。
○岩間正男君 先ほどと同じような答弁なんですが、この財源的な捻出の方法については十分話があつたはずであります。私はこの点に触れようとは思わない。併し実際今度のベース・アツプをみまして、いつものことでありますがそのべース・アツプというものは名目になつており、実際は別なところに、このベース・アツプをやる、それを看板にして、実は政府の大きな政策が陰に隠れてはいないかということを私は指摘したい。僅か二千円程度のベース・アツプをやつておきながら、これに便乗して、それを口実にして一体何が行われておるか、その結果はどうかというと、一つは私はこれによつて増税の財源になつておると思う。今度の補正予算をみても、例えば源泉徴収の自然増六百六十億円、こういうふうな莫大な見積りをしておるのでありますが、その一つの大きな原因になつておるものはベース・アツプをすでに見込んで六百六十億円というようなものを見ておる。実にこのようにこれは増税の大きな財源となつておる。第二にはベース・アツプを口実にして物価を値上げしておる。先ず米価、米価については生産者価格と消費者価格の差額が、年供出約二千八百万石というふうに考えますると、この差額が六百七十五億という尨大なものになつておる。その他国鉄、電気、ガス、こういうような料金の値上げをやつておる。ちよつぴりいわばえび、たいのようにベース・アツプを与えておいて、そうしてそれを好餌として、その背面には尨大な大衆収奪が行われておる。少くともこれは財政の様相を克明に分析して行けば、はつきり出て来る姿であります。第三に今度のベース・アツプの性格をみますというと、非常に職階制が強くなつておる。職階賃金の性格がますます強く出て来ました。即ち上に厚く下に薄いという形であります。今までは上下の差が十四倍であつた。ところが今度のベースによりますと、大体十七倍にますます拡大しておる。こういう形で実際は青少年とか、婦人とか、そういう方面の生活はますます苦しくなつて来ておる。平均二千円というようなときに、一番下のほうでは僅かに五、六百円という恰好になつておる。従つてこれらの間からベース・アツプごとに生活が苦しくなるという現状が出ておる。何という馬鹿気た矛盾した形であるか。こういう三つの性格がはつきり出ておると思うのでありますが、果して政府はこのベース・アツプをえびにして、これを餌にして、たいを釣るようなことを企てはしまいか。この点これは総理に伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 大蔵大臣からお答えをいたします。
○国務大臣(向井忠晴君) ベース・アツプを餌にして増収を図ろうということは考えておりません。
○岩間正男君 考えていないといつても、事実そうじやないですか。今私は指摘したのですから、そういつても駄目です。これは考えているとかいないとかいう問題じやないのであります。そういうことはその通りなつておるじやないかということを私は聞いておる。この点をもう一回伺いたい。
○国務大臣(向井忠晴君) そういうことになつておると私は考えません。(「不誠意だ」と呼ぶ者あり)
○岩間正男君 どうもそういうところを検討されていないというのはおかしいと思う。そういう答弁では我々満足しません。併し、この結果に公務員は満足していない。満足していないというのは主観的問題ではない。生活が崩壊してとても苦しんでおるから、こういうことが出ておる。こういう点についてはもつとこの姿を見てほしいと思う。こういうようなベースの改訂で与えられたので、ますます公務員の生活は戦時体制のほうに強化されて行く。職場においては全く職階制が強化され、再び昔の東条時代に戻ろうとする現実がある。こういうことを私は恐らく大蔵大臣は御承知じやないと思う。併し大蔵省にもこれは職員組合がありまして、只今ベース・アツプの闘争のために、あす、この道の所に提灯をぶら下げてやつておりましよう。ああいう姿を見て頂きたいと思う。大蔵省の足下からそういうことが起つておるのですよ。こういうふうに我々は今度のベースの性格というものを、大きくこれは考えざるを得ないのです。 それからその次にお聞きしたいのはこの人事院勧告を仮りに八月から実施する。これは野党三派の修正案の線でありますが、こういうことをしても、今度の予算の枠内操作で十分できるのではないか。而も先ほど来、木村君の御質問にもありました点で、大きく政府は一方において、これは再軍備目当のものをリザーブしておる。そういうものには少しも傷が付かない。全く枠内操作でできると考える。現にそれができる点がある故に、昨日も付帯事項についてはこれを研究する、その額についてはまだ明確でありませんけれども。ついでにその額はどの程度なのか。それから大体遡及の方法によつて八月あたりから実施する方法をとるのか。或いは一時金で出すのか。こういう点についても、これは政府に伺いたいのでありますけれども、併しそういう方法をやつても殆んど再軍備費そのものには何ら手が付かない。従つて枠内操作で十分やれると考える。我々は今財政的に十分この点は根拠を出すことができる。こういう点は政府はどういうふうにお考えになつておるのでありますか。これは吉田総理に伺いたい、どうですか。
○国務大臣(吉田茂君) 大蔵大臣からお答えいたします。
○国務大臣(向井忠晴君) いろいろの点が問題になつておりますが、付帯決議につきましては二十日までには御返事ができるはずでございます。 それから再軍備のために金を温存して置くのだろうというお話でございますが、そういう考えは、私は良心的にはつきり申上げますが、持つておりません。
○岩間正男君 私のお聞きしておるのは、ベースの今度の付帯決議の実行に当つて大体どういう方法かということは、これは明らかにしてもらいたいと思うのです。一時金というような恰好なのか。それとも遡及してやるのか。この点はどういうふうに……、その方針はきまつておりましよう。数字的な計算はまだはつきりしていないとしてもわかると思う。その点如何ですか。
○国務大臣(向井忠晴君) 数字の細かいことは無論私には御返事ができません。
○岩間正男君 方法です。方針です。
○国務大臣(向井忠晴君) 方針は遡及ということは只今考えておりません。
○岩間正男君 それから先ほどの御答弁では再軍備費に対して隠匿していなというようなことが言われておりますけれども、これは衆議院の予算委員会でも、例えば今年度の安全保障費、或いは国防……あの未使用分、或いは平和回復善後処理費その他の問題については、今年度使うのだというような話になつておりますけれども、これは非常に尨大過ぎると思う。本年の予算の面から言つても、これは問題にならないと思う。そこでこれは政府が具体的な方策を示さなければならんと思うのですが、そういう方策については何らこれは発表がない。従つて当然やはり今、公務員、それから労働者諸君の考えておるのは、このベース・アツプの問題については、どうしてもどんなに焼石に水程度のベース・アツプが年々歳々同じことを繰返されても、そのあとには尨大な物価の値上げがやつて来る。税の増徴がやつて来る。そうして生活が破壊しておる。而も一方ではどんどん再軍備はそのような手段によつて進められておるということは紛れもない事実である。そうしてそういうような戦時体制がとられておる限りは、全然これは意味がないということは、今日公務員或いは労働者の諸君は気がついておる。従つて再軍備をやるようなそのような費用があるなら、当然これをべース・アツプ、或いは生活安定、国民のいろいろな厚生、社会保障の面に充てるべきだ、こういう点を強く要求しておるのです。今日では再軍備費が果して平和と生活安定のために廻わされるかどうかということが非常に大きな労働者の課題になつておるわけです。そういう点から、例えば総評傘下の諸君が一万六千八百円のベースの要求を出しておる。又炭労の諸君が十八歳、九千九百七十円最低賃金の要求を出しておる。この要求というものは、単なるそれは物取りだけの問題ではないと思う。今言つた日本の平和と生活安定というものを確立しなければならないというところの労働階級の本年の一つの私は強いところの要望から出ておると思うのでありますが、こういう点については吉田総理は一体どういうふうにお考になつておられるか。この点を私はお聞きしたい。例えば炭労や電産のストの問題について、吉田総理は、ストなどは贅沢だ、そういうのは富んだ国がやるべきだ、こういうことを言つておりますが、実際日本のおかれている、それらの労働者の生活条件というものについては、総理は余りに認識不足じやないかと私は思う。そういう点から、今の点を、私はこれは労働者の代弁としてどうしても伝えたいと思いますが、どういうふうな考えをもつておられますか。もう一度総理からじきじき率直にお答え願いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 再軍備はしないということは、再軍備のために費用を保存しておくとか、とつておくとかいうことはないということは、大蔵大臣も言われ、私としても再軍備はしないと言つておるのであります。あなたが再軍備するすると言つて、国民に宣伝しようという共産党の主義であるかどうか知らないが、政府は再軍備はいたしません。従つて再軍備のために国費を保存しておくようなことはしない。する場合には堂々といたします。その他のことは主管大臣から……。(笑声)
○岩間正男君 これは何遍繰返しても、さつきから同じように、木村君が先ほど詳しくそういうような点について触れましたから、これはこれ以上繰返さないつもりですが、再軍備という概念の想定がすでに違つているので、これは議論にならないことをやつておるのですが、現実はどうかという問題です。我々のこの論議は院外の大衆の生活から隔絶しておる。殊に部厚い壁によつて蔽われているこの中の論議は、形式の論議じやない。日本の歴史がどうなるかという問題なんです。日本の民族はどうなるかという問題、この点について率直簡明な大衆の、或いは民族の声が如何に反映されるか論議しなければならない。然るに再軍備の議論については、再軍備はどうだ、こうだということで、第十三国会から縷々と繰返されている。そんなことでは民族はどうなるか。もう少し虚心担壊に民族を愛する心から答えてもらいたいと思います。併しこれをやつているとほかの質問に入れませんから、これはこの辺でとどめます。 その次に参ります。その次に伺いたいのは、吉田内閣の外交方針の問題、この外交方針についてやりますと、これも時間がいろいろかかりますので、そのうちの一つの例としまして、吉田内閣はその外交を書簡でやつているところがある。いわゆる世の中ではこれを吉田内閣の書簡外交という言葉で言つている。先ず第一に吉田、アチソン書簡外交というものが書簡でなされた。そうして我々が知らない間に、いつの間にか国連に協力するというようなことが要請されておる。その次には台湾政府の承認に関する吉田書簡とというものが出ている。これは第十三国会の劈頭に随分騒いだいだ問題であります。ところが今度呉におけるところのあの英兵暴行事件が起りました。ところがこれに対して刑事裁判権が非常に日本の民族心を刺激する問題になるというと、ひよつこりとまた例のやつが出て来た。刑事裁判権に関するところの書簡というやり方であります。このように書簡というもので代弁されているところに現在の吉田内閣外交の姿がある。ところがこれには何ら国民は関知していない。そこで私は伺いたい。書簡というものの性格はどういうものだ。これは吉田総理個人の性格のものであるか。或いは一国の政府を代表した公式な文書であるかどうか。従つてその効力の限界というものはどういうところにあるのであるか。これは非常に私は外交の問題として重要だと思う。国際通念の問題とも関連がありますので、これはどうこういうになつておりますか。これを出された当面の吉田総理にこの点を伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 国際間で取交す文書の中には条約もあれば交換公文もあるのであります。これは国際通念であります。その通念によつて外交文書として出すこともあれば又条約によつて規定することもあります。
○岩間正男君 それでそれは何ですか、条約と同じような効果を持つものでありますか。無論国会の承認はない。そういう形で出されておるものだから、我々はプライヴエイトなものだと考えるのですが、いつでも公式なものとしてこれが問題になつて来る。相手方はいつでもこれは少くとも一国の総理がが責任を以て出たところの書簡である。従つてどうも条約と同じような効果で以てこれが適用されておる。ところがその内容について見ますと、これは非常に問題だと思う。以上挙げた三つの書簡について考えて見ても、どうも我々の日本の利益を守るという恰好になつていない。アメリカ側の利益、アメリカ側の都合のいいことがまるで押付になつて、それに対して迎合するような形でこの書簡は全部出されておる。これでは困ると思うのです。例は挙げませんけれども、そういう形になりますと、少くとも一国の外交、殊に吉田内閣は自身独立した、日本は独立したということを常に言つておられますが、独立した一国の外交として、このようなまるで向う側だけに都合のいい形で以て書簡が出されたということについては、この書簡の性格そのものがどうだかということと関連して重要な問題だと思うのです。それでこの点もう一度伺いたい。書簡というものはどういうような一体性格、効果を持つのか。もつと具体的に申しますと、吉田内閣がなくなつた、倒れたというようなときには、全然これは効力を喪失するものと考えていいのか、それともこの書簡というものはなおあとまで日本の国家、日本の政府を縛るものであるかどうかということは非常に重要でありますから、この際明らかにしておいてほしいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 私からお答え申上げます。
○岩間正男君 総理から聞きたいのです。あなたはあとでいいです。総理です。総理が先です。
○政府委員(佐藤達夫君) 私がお許しを得ましたので申し上げます。総理大臣が外国に対して書簡を出されるという場合はいろいろございます。その中で例えば平和条約の際に御審議になりましたような吉田・アチソン交換公文というようなものは、これは条約として国会の御審議にかけております。その他の場合におきましては、純粋の私的の書簡もありましようし、或いは行政権を預かつているかたとして、行政権を行使する方針について先方に意思表示をするという場合もあるわけでございます。純粋の私的の、ブラヴイエートの場合を除きましたそれ以外のものにつきましては、のちのちの政府をも拘束することは、これは当然であります。
○岩間正男君 総理も今の法制局長官の言を肯定されますか、総理は如何です。そういう角度から出しておられますか、書簡を……。ちよつと総理に伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 法制局長長官は政府委員としてお答えいたしているのであります。
○岩間正男君 総理はどうなんですか。
○国務大臣(吉田茂君) 同じこと…。(笑声)
○岩間正男君 只今非常に素朴な形で同じことだというお話がありましたので、まあ同じこととしておきます。そうなりますと、非常に私は重要なことじやないかと思うのです。一国のそういう外交上の重要な書簡というものが出され放しであつて、而も国会にも諮られず、国民にも知らされない。実に秘密の間に進められる。問題が起つたあとからひよつこり出て来る。こういうところに吉田内閣のつまり祕密外交、独善外交というものが性格をはつきり出していると思う。今日では覚書外交、この日本の特殊な形というものはまぎれもない事実なんです。こういうことをいつまでも続けるということは、少くとも民主政治を口にする総理の態度ではないと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういう態度は直ぐ止めて、飽くまでも国民と共に、国民の大きな輿論の上に立つて外交を律することが絶対に我々は日本の民族の将来のために言つて重要だと思うのです。この点総理はそういう気持を持つておられるかどうか、この際改めて伺いたい。我々はこの秘密外交には飽き飽きしている。日本の国民もそうだと思う。そうしてそれが日本の民族の運命と実に重要な関係を持つて来たのは今の三つの例を挙げてもわかる。なお総理に伺いますが、ほかにこういう覚書をたくさん出しておられますか。この際明らかにしておきたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 覚書文書の性質については大体法制局長官が説明せられた通りであります。如何なる文書を出しているかということは一つ一つあなたに説明はできない。
○岩間正男君 我々にじやないのです。共産党はいやだというなら目をつぶつて答えなさい。日本の国民が聞いているのです。日本の国民の代表が聞いているのです。あなたの判断でやられてはたまつたものではない。それが本当の日本の民族の利益になるかというと、どうです。刑事裁判権の問題のときもごうごうとした非難が出ているじやないか。そうして日本の隷属外交は何だという非難が出ているじやないか。この民族的な声に対して、総理は飽くまで頬かむりされるつもりであるか。我々はこういう問題については国会にかけ、又輿論に聞き、飽くまでも国会と共に外交をやるという、そういう態度を今後切り開かれる覚悟があるかどうかということを聞いているのです。こ点の決意を伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) そういう決意は言わなくても当然のことであります。(笑声)
○岩間正男君 それは大いに言つたほうがいいですよ。自由党はそれに拘束されますよ。ところが今までは自分だけでそういうことを了解するというような形で、実に不利な立場に日本は陥つているじやありませんか。こういう点から、はつきり改めて頂きたい。言わなくてもいい。それを公言されたと同じような気持で今のところは受取りたいと思う。今後態度を改めて欲しいと思う。 そこで次に伺いたいのでありますが、外交の問題です。現在問題になつているのは国連軍の協定であります。この協定が一体結ばれかかつているんだが、なかなか結ばれない一体その後どうなつたのか。なぜ一体結べないのか。結べないところの原因、又結べないことによつていろいろな、これは運営上の工合が悪いことが起つていると思うのですが、そういう点を、これは総理は明らかにして頂きたいと思うのです。
○国務大臣(吉田茂君) 只今協議中であり、何が故に停頓しているかと言つても、交渉の内容に属しますからお答えはしない。
○岩間正男君 前言を覆えされるじやありませんか。飽くまで国民と共に外交するのだと言われた反面から、もうそういうことを明らかにされない。そうして苦しくなるというと、この前の刑事問題のように、国民には相談しないでおいて書簡を出している。そうして国内に反撃が起るというと、これは国民に訴えてどうする、こういうようなことを言つておりますけれども、そういうことは私は最初から話にならんと思うのです。今難点になつている問題については、これは相当明らかにして慾しい問題があるのじやないかと思うのですが、そういう点について、これはできる話も……、勿論外交上の機密の問題もありましようから、それは飽くまで前提としない。併し少くとも今問題になつている一つのそういうような問題について、そういうものを国会を通じて明らかにするということは、少くとも民主政治家の態度だと思う。そういう点から、今の国連協定の問題について明らかにされる範囲内の問題について明らかにして欲しいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 明らかにできる範囲のことは常に明らかにいたしております。併しながら外交の関係と言いますか、国際慣例もあり、相手方の承諾なくして発表ができないこともあります。
○岩間正男君 それでは伺いたいのでありますが、刑事裁判権の所在の問題、これは今度神戸の英兵の暴行事件、こういうような事件を契機として、これは日本側は今まで或る一応の解釈をとつている、併しながら身柄は向うに引渡してしまつた。裁判権はあるというのは名前だけであつて、そうして実体は向うに引渡しているのでは、同じだと私は思う。丁度奄美大島のような立場になつているのです。日本の国土であるというようなことは、これは原則的には了承されている。併し実態はもうこれは米軍がこれを軍事基地として使つておる。こういう問題になつてはならんと思いますが、今後刑事裁判権の問題はどのように処理されるのでありますか。国連協定が結ばれない現状においては、こういう問題をどのように処理するかというか、結ぶまでの期間におけるいろいろなそういうようなものが起つて来ると思うのでありますが、その点を伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) これは、刑事裁判権の問題等は、そのときの時々、国際法の考え、通念、或いは慣例等によつて一定しているものではないのであります。今政府としては、国際慣例についてこの問題を処理しようとしているのであります。
○岩間正男君 その間は、そうすると飽くまで事件毎に処理して行く、そういう方針ですか。その点が非常にあいまいである。問題が非常にあいまいだと思うのでありますが、そういう方針でその間進まれますか、結ばれるまで。その処置について……。
○政府委員(佐藤達夫君) 只今総理大臣からお答えいたしました根本原則というものがございますから、それに則つて各事件を処理して行くことになつております。
○岩間正男君 そういう覚書というものは何ら国会に了承されていない。総理が出している、そういうことです。従つて国会並びに国民との関連においてそういうものは了承されるかどうかという問題が先ず出て来る。ところがこれは御承知のように国内の輿論がごうごうと起つている。こういう問題について、単に覚書の範囲内でやつて行くというようなことをやつて行けば、私は覚書の限界をすでに割つている問題だと思う。そこで次にお聞きしたいのですが、この問題は、総理はお話になりませんけれども、明らかに行政協定におけるところの米軍の刑事裁判権との関連で、これは行き悩んでいるのだろう。従つてここで問題になるのは、今後国連協定を結ぶというときに、二つの方式がある。それはこの刑事裁判権について行政協定の線で、つまり米軍に対してあの治外法権を認めた線に国連協定を合わせる、或いは又行政協定における線を廃棄して、飽くまでもこれは日本の主権を回復する方向へ行くか、この二つになると思うが、国連協定を結ぶ態度並びに行政協定の改正の問題が、当然行政協定の第十七条でありますか、十七条との関連において当然起つて来ると思う。つまり必要があれば、日本政府はその意思を表示して、そうして条約発効後一年後において、これを改正するところの希望を述べることができる。残念ながら希望を述べることができるくらいのところで終つているのでありますが、この条項を発動するお考えがあるかどうか。そうして行政協定の刑事裁判権の改正について、はつきり総理はこれを米側に要求するところの考えを持つておられるかどうか。この点をここで決定することが、国連協定としての関連においても、国連協定を締結する以前の問題として、事前工作として実に重要な問題だと思う。四月二十八日というと、もう相当迫つておる。今から、それを民主政治の立場からすれば、輿論と共にそういう問題をやつて行かなければならない。こういう点について、その方針を伺つておるのであります。総理から伺いたい。
○政府委員(佐藤達夫君) 外務大臣が他の機会に説明しておりますのですが、国連協定の関係におきましては、今御指摘の裁判権関係、これらにつきましては我が方としては、北大西洋関係いわゆるNATOの方式というものを根拠として折衝をいたしておるのであります。行政協定に関しましては、只今御指摘の通りの条文がございますから、もとより研究いたしております。
○岩間正男君 私は行政協定について総理から伺いたい。これは法制長官からではなく、行政協定に対して改正する意思があるかと、今刑事裁判権の問題についてだけ伺つておる。これはいかんです。これは法制局長官では仕様がない。政治的な問題です。何も法制という点から聞いているのではない。これは総理から伺つておきたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 政府委員の答弁の通りであります。
○岩間正男君 何も答弁していないんですよ。法制的な答弁しかしていないのです。今の佐藤法制局長官の、考え中でありますという、あれは法制的な立場から考えているのでしよう。これは政治問題です。外交という政治問題は何ら一法制局長官の決定される問題ではない。従つてその方針に従うなどというのは、いつから一体吉田内閣は佐藤法制局長官の下になつているんですか。(笑声)そういうことを聞きたいのではない。一国の総理として、どういような見識を持たれるかということを伺つておる。一法制局長官の関したことではございません。
○政府委員(佐藤達夫君) 政府は一体でございますから、丁度あたかも外務大臣がおりませんために、政府の今考えておりますところを申上げたのであります。法律的の問題としては、そういう条文があるということだけで説明しているわけであります。そういう条文がありますから、今考えております、研究しておりますということをお答えしたのであります。
○岩間正男君 研究しますということは、行政協定を改正する意思を以つて進みたい、行政協定の十七条を発動してあの条項でやりたい、こういう意見ですな、そう解釈してようございますか。これは総理は或いはお答えにならんようですが、総理はその点ですな、簡単でようございます、そう解釈してようございますか、ちよつと伺います。……いや、それは佐藤長官じやないですよ、これを、長官の言を総理が確認するかどうかと聞いているのに、佐藤長官が確認したらどういうことになる……。(笑声)そんな国会の論議つてないですよ。委員長、注意して下さい。
○国務大臣(吉田茂君) 政府委員の答弁即ち私の答弁であります。 〔発言する者あり〕
○委員長(岩沢忠恭君) 傍聴席からの発言を禁じます。
○岩間正男君 私はそう確認して、行政協定を改正する意思があるものだとそういうふうに我々は解釈する。これは当然のことです。その改正をしなければならない。私はその例を挙げたい。なぜかというと、米軍の犯罪事件というものは実に滔々として起つている。今日僅かに英濠軍の問題が、これは国連軍協定がないために問題になつています。併しながら実際は米軍の犯罪はこれらの英軍の犯罪なんかの何倍も起つている。私はここにはつきり政府側の統計を挙げると、国家警察の調査によるというと、大体今年の五月から九月までのこの犯罪件数を調べますというと、全部で千八件であります。その内訳は、米軍人が八百十五件、八〇%以上になつている。英軍人が百八十七件、一七%その他が一八件となつています。そうして米軍はまさに圧倒的に多い。これを犯罪別に見れば、強盗が百一件、そのうち米軍が九十件、英軍が十一件、殺人は四件、これは全部米軍であります。強姦が二十二件、米軍がそのうち十四件、英軍が八件、窃盗が百九十一件でそのうち米軍が百四十二件、英軍が四十八件、その他一件、暴行が百四十六件で、米軍が百十三件、英軍が二十三件、傷害が百三十八件で、そのうち米軍が百九件、英軍が二十二件、こういうような形になつている。こういうような形を見ますというと、我々は英軍であると米軍であるとを問わず、日本の国内のこのような治安の状態、治安の状態ということは吉田内閣はしよつちゆう口にする問題でありますが、このような形で実に五カ月間に千件以上ものこのような刑事犯罪が起つている。これは何だ。こういう事態に対してこれは当然行政協定を改革し、根本的な大量的なこのような犯罪に対してはつきりした日本の民本の民族の意思を表明しない限りは、国連軍協定の問題はどうだこうだというのは、末梢のいわばそれから出て来るような問題にかかずらつているときではない。従いまして少くともこの行政協定に関し、刑事裁判権の問題に関しての点から考えましても、これは当然、この刑事裁判権の問題、十七条の点について改正をすべきものだと思いますが、吉田総理はどうお考えになりますか。当然私はそうだと思つて、先ほどの言葉をこれは確認し、そしてこれに善処されることを望む。無論我々は行政協定のこのような局部の問題にかかずらつているものではありません。行政協定全般が日本を如何に今日のような態勢に陥入れ、軍事態勢に陥入れ、がんじがらみの手かせ足かせをかけて、日本民族の自由を奪つて来たかということは、今日あらゆるところでこの実態が発生して驚いている。あれを結ぶときには全く頬かむりをして結んでいたのではないか。今日日本国内の到る所から土地の取上げの問題、漁区の問題、或いはいろいろな接収に対する反対の問題、或いは暴行事件、あらゆる面から起つている。経済界からも起つている。すでに調達の問題については、これは直接であるか、或いは間接調達であるか、直接調達のやり方については猛烈な反撃が起つている、又日米合同勘定の混乱の問題でも、財界としてはゆるがせにならない問題だと思う。このように日本の全民族挙げて行政協定には反対している。従つて当然これは私はこの問題については善処されるのは当然だと思う。少くとも民主政治家の立場をとつておられるならば、私は当然だと思うのです。時間が非常になくなつているのでありまして、そのほかにも私はいろいろ聞きたい問題があるのであります。例えば日米合同委員会の問題であります。この日米合同委員会が今日どういうふうに運営されているかという問題、この運営が非常に一方的になされている。而もその後、発動後にきめられましたあの施設区域、この施設区域の要求、接収地が非常に今日は拡大されていると思うのです。今まで何回そのようなものが拡大され、そして今まだどのような新たな要求が起つておりますか。この点非常に重大でありますから、総理から伺いたいと思う。
○国務大臣(吉田茂君) 合同委員会は、日米双方の間に協議を以て、対等の立場で協議をしておるのであります。
○岩間正男君 対等の立場と言つても、日本の国内から起つているいろいろの要求を率直に取上げて、そうしてこれで一応協議するということになつておりますが、若しもその協議機関ということを、これは十全に果すならば、もつと国民の要求というものはこれに反映しなければならない。ところがどんどん一方的にこれは運営されていると思う。或る場合には、米本国の決定したものをこちらに持つて来て、そうしてこれは向うの係官とこちらの伊關局長ですか、局長がこれでもつて一方了承的な関係でもつてどんどん要求に応じているのが実態であります。この運営については細かくこれをやつている時間がありませんので、これは委員会においてなお細部に亘つてやつて行きたいと思う。
○委員長(岩沢忠恭君) 岩間君時間が来ました。
○岩間正男君 併しこれと関連しまして、時間がありませんので最後にお聞きしたいのですが、今申上げましたように接収の問題は非常に全国的な関心を持つていると思う。その結果、到る所に接収の害毒が流れているのです。大体駐留軍とそれから朝鮮の国連軍とのけじめがはつきりしない。これは前国会、その前、更にその前あたりから私が何度も質問した問題であります。二重性格、ある場合には、工合がいいと国連軍に変る、すぐそれが占領軍に変るというのが、今までのやりかたであります。ところがこれは講和発効後も変つていないのです。到る所そういう形で以て、朝鮮から帰つて来たところの米軍はすぐにこれは駐留軍に、朝鮮に出動する瞬間に、これは国連軍に変つてしまう。ですから例えば富士山麓のキヤンプに行つて御覧なさい、或いは北海道の豊平のキヤンプへ行つて御覧なさい。朝鮮から帰つて来たところの兵隊たちが豊平川の上流の慰安所のようなところにこれはとどまる。そうしますと、そこから赤痢菌とういうものが盛んに流れて来て、そうして非常にこの夏は、例えば札幌では赤痢が蔓延しているという事実が出ております。又富士山麓に行つて御覧なさい。富士山麓では朝鮮帰りの営兵たちがどんなふうに粗暴になつているか。それが土地の風紀というものをどんなに荒廃に導いているか。乱脈極まるものであるかを立証するたくさんのあれを私持つているが、残念ながら我々小会派のために時間を与えられていない。将来日本民族のために、実は時間を与えられて欲しいと思うのですが、これは運営の立場からいつて残念ながら講演会の形で三十分の時間しか与えられていない。我々は三時間かかつてもこのことを話したい。どうしてもこれは話さなければならないという希望を持つているが、一応委員会の決定に従つてこれでやめておきますが、こういう点の腐敗堕落という点を、私は最後に道義の高揚とに関連して是非問題にしたいと思うのは、あすこの御殿場の先に富士岡という所があります。あすこに米軍のキヤンプが、この地帯に三つありますが、その中の一つが、あの富士岡中学校のところにキヤンプができている。そうして今までの校門が鉄条網によつて遮断され、校庭を造るや、父兄たちが庭を造るというと、その校庭は直ちに接収されてしまう。そうして鉄条網が張られて米軍はそれを接収して、そこを野球場、或いはフットボール場に、これを使つているのであります。又それと同時に、全国に恐らく例がないと思うのですが、校門の二十米ぐらい先にパンパン屋が到る所に軒を並べている。そして今日富士岡の中学校は誠に米軍のキャンプと、それから今のパンパンの中に囲まれておるんです。こういう一体教育風景を現出しているのです。これは一つの特徴に過ぎません。日本の象徴的な姿、最もひどい姿であります。併しこれを放置しておいて、吉田総理はこの前の施政方針演説において愛国心と道義の高揚を叫んだ。現地視察して来た我々から見るときに何というたわけたことだと思う。こういうことを放置しておいて、こういう姿が累々として日本の到る所に起つているときに、これを放置しておいて一体愛国心や道義の高揚が説けるかどうか。その資格があなたたちにあるかどうかという問題。なぜかというならば全部はこれは吉田内閣の二つの条約並びに行政協定、その後に起つたところの吉田内閣のこの政策、いわゆる日本民族と国土を挙げて売るような政策の結果起つた姿ではないか。この問題を放棄しておいてそうして(「時間時間」と呼ぶ者あり)今日道義の高揚が必要なんだということを叫んだとしても私は問題にならないと思う。こういう問題などは当然一刻も早くとりあえずそこから隔離しなければならない。補償の問題も出て来るわけです。当然これは国家補償をしなければならん。
○委員長(岩沢忠恭君) 簡単にして下さい。
○岩間正男君 只今時間という声がありましたからそれに従いまして吉田総理にお聞きしたい。これはこのような政策をとつておつて果して、道義の高揚ということは口先だけの問題ではないか。道義の高揚は別の目的があるので再びあの時代の、精神総動員をやつて日本を軍事体制に陥れる、そのための掛声に過ぎないのじやないか、私はそう思う。そうでないというならば、はつきりあなたは今いつたような日本の腐敗堕落に対して徹底的にこれを除去するかどうか伺つておきたい。 それから岡野文相には同時にこのような事態に一日でもおくことは国辱だ、一日も早く隔離しなければならん、別な所に移さなければならん、とりあえず。ところが予算が要る、この予算がないために移せない。材木を運んでいるがこれは何とも手がつかない。
○委員長(岩沢忠恭君) 岩間君簡単に願います。
○岩間正男君 今まで四百万の金を出して村は疲弊している。土地は取上げられ富士山の火山灰地で国家補償がない。こういう所では全くこの問題は国家的補償によつて私は解決しなければならんと思うのでありますが、このような種類の問題について十分に努力をする考えがあるかどうか。この二点を伺いまして私の質問を終ります。
○国務大臣(吉田茂君) 道徳の高揚については文部大臣、政府当局において相当いろいろな施策を考えております。又再軍備のために云々、そういうことほ先ほども申しておる通り、政府は只今再軍備は考えておらない。
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。富士岡中学のことはお説の通り教育、文教行政を担当しております私といたしましては誠に遺憾でございます。只今これを移転するように準備いたし、又これに対するいろいろな財政措置は政府としてやるつもりでおりますから御了承願いたいと思います。
○岡田宗司君 昨日私が炭鉱争議に対する緊急調整について緒方官房長官にお伺いいたしました際に、炭労側は昨日の一番方から就業しておる。そうして中山第二次斡旋案を受諾しておる。この点につきまして昨日緒方官房長官に対して経営者側がこの斡旋案を受諾しておらん、これに対して政府は如何なる措置をとるかということをお尋ねした。官房長官は善処するようにお答えになつておつたと思いますが、昨日中にはまだこれについて経営者側は受諾をしておりません。本日もまだ受諾したという話を聞いておらん。一方において手と足を縛しておる。片方がすでに働き出しでおりながら、経営者側に対し政府が放置しておるというのは甚だ不公平であり片手落である。当然これに対してなすべきことがあつたのになしておらん。これは私昨日御質問申上げましたが、昨日のうちに政府が炭鉱経営者に対しまして何らかの措置をおとりになつたのかどうかという点を緒方官房長官にお伺いしておきます。
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。政府といたしましては、スト妥結後の何と申しますか後味をできるだけよくしたい、又将来の商業平和のためにこの際経営者側におきましても斡旋案を呑んでもらいたい、そういう希望から、方法はここに申上げられませんが昨日以来斡旋をいたしております。
○岡田宗司君 それでは見通しは如何でございますか、本日中それを呑む見通しがあるかどうか、お伺いしたい。
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。見通しははつきり私から申上げられませんが近くできるだろうという期待を持つております。
○白波瀬米吉君 私は二、三お尋ねいたしたいのですが、最近の経済界の事情は容易ならんものがあると思うのであります。中小企業の現在の状態は殆んど破産状態に陥つております。繊維業界も極端な不況を続けている現状でありますが、明年はこの状態から考えて物価並びに産業の見通しというものは政府はどのようなふうにお考えになつておるか伺いたい。 なおこういう現状から考えまして、何としても経済界の安定を図りそして労使ともに不安を取除くことに考えをいたさなければならんときでありますが、この点に対して総理はどういう考えをお待ちになつておるか伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 先ほどもこの問題については一応お答えをいたしたと思いますが、現在の貿易不振は外国と申すか国際の事情もあり、又国内の事情もあると思います。そこに国際の事情つまり世界の貿易が縮小されたので、これは日本ばかりの問題でなくて貿易を国の経済の基礎としている国としてはことごとく苦しんでおるのであります。その原因が例えば再軍備の停頓というか進捗しないということもあるでありましよう。又その他の原因もあるでありましようが、その原因について各国ともに打開面については考えております。従つて国際的には何かの方法が見出されるのではないか。これは希望もおりますが、緊切な問題でありますから、貿易の縮小に対しては世界的な懸念を以て世界的な政策を打立てて行くといことに各国ともに協同して努力しておるだろうと思います。これには関税の関係とかいろいろ細かい問題もあろうと思います。何らかの打開策が国際の間に出るのではないか。日本の国内事情としてはこれに関連して生産の縮小ということも起つて来つつありますが、併し中には必ずしも縮小ばかりではなくして年末において多少の景気回復の事情もあるように聞いております。例えば紡績のごときがその一つであり、紡績は年末に至つてふえ出したというような話も聞いております。いずれにしても日本は貿易を以て国策の一つにしなければならないのでありますから、そのためには或るいは合理化、国内の産業の整備を図るとか、原料を確保するとかいろいろなことがありますが、政府はその方面方面について貿易の伸張に努力いたしております。詳細は通産大臣からお聞き願います。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 白波瀬さんに極く簡単に総合的に一つ見通しを申上げてみたいと思います。日本の経済の現状は輸出の不振を中心といたしまして一般に停滞の傾向が強いのであります。今後の見通しといたしましては暫くの間はおおむねこの傾向が持続するのではなかろうかと考えます。即ち第一に輸出について申しますると、ポンド地域における輸出に好転の兆が見られませんので、一部オープン・アカウント地域に対する輸出増加を期待しても全体としてはやはり低調であろうかと見られるのであります。第二に特需についてでありますが、特需の増大について本年度内にはさしたる期待はかけられません。第三に投資活動について申しますると、電源開発、公共事業など政府賃金を中心といたしまする投賃部門を除きますると特に増加が期待いたされません。併し消費の面では今後の減税、ベース・アップ、或いは先般の米の生産者価格の引上等によりまして所得が若干増加いたしまするので、現在より幾分の増加が見込まれるのではないかと思います。なお物価につきましては一般の需給関係から見まして大体現在の水準で推移して行くのでないかと考えております。
○白波瀬米吉君 その次にお尋ねしたいのは、明年の財政規模というものは相当膨張するのではないかというようなふうに考えられます。又一般にこう何となく感じがそういつた方向に向つておるような感じがするのでありますが、併しながらこれは何としても国民所得と見合つたものでなければならんと思いますが、現状のような状態から考えると、国民所得なるものは五兆三千二百億とかいうことを常に考えておられようであるけれども、なかなか現在の産業の状態から考えると増大はむずかしいのじやないか。そこで一体所得に対して財政規模ほどの程度のものが適当であると政府はお考えになつておるのか、伺いたいのであります。 その次に今後減税はどうしてもやつて行かんならん、積極政策はやつて行かんならんというようなことになつて来ると、曾つて吉田内閣が数回意図された行政整理の問題は今日までなかなかそう思うように参つていないのでありますが、併しながらどうしても私は思い切つた行政整理をしなければいかんのじやないかというようなふうに考えますが、総理はその点に対して如何ようにお考えになつておるか、伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 行政整理は今後も続行いたすといいますか続けて整理をいたすつもりでおります。又政府としてはその用意に取りかかつております。が政府が整理案を出しますと議会においてかえつて増加せざるを得ないようなことがあつて誠に思うように参りませんが、国会においても或いは参議院におかれても、行政整理をすることによつて行政の簡素化をなし国費を軽減することは目下の急務でありますから、政府が整理案を出しました場合にはどうぞ御協力願います。あとは大蔵大臣からお答えいたします。
○国務大臣(向井忠晴君) 予算におきましてこの国民所得と睨み合わせて歳出をやる、歳入をやるというふうな点はずつと考えて参つたのでございますが、この比率は只今までは私の記憶では国民所得の一割七分くらいが、該当しておると思うのですが、これはまあ成るたけ動かさずに従前通りの率で行けるようにいたしたいと思つております。 それから支出が非常に多そうでこれの切盛りに困るだろうというお話でございますが、全く私もそういう感じを持つております。只今財政規模を十分に国力に応じます程度に締めて行きたい。前年度の予算とそう違わない程度にまで行けば非常にいいのですが、或いはそれに多少は多くなるかも知れませんが圧縮したものをもつて御審議を願うということにいたしたい考えであります。
○白波瀬米吉君 その次に教育問題でお尋ねいたしたいのでありますが、終戦後教育制度が改革されまして大学は新旧合せて官立大学は七十二校になつております。公立の大学は二十六校、私立の大学は百六校といつたような多数の大学ができております。そして明春は十二万六千もの卒業生が出て来るわけであります。これら卒業して来る子弟は最高学府を出たといつたような感じを持つて非常な希望を持つて社会に出て来るわけでありますが、最近の就職の状況を見ますとすこぶる就職が困難でありまして、それらの希望を持つた子弟が就職難に陥つて社会に出ました場合に、思想上社会に及ぼす影響というものはすこぶる大きいものがあると考えられるのであります。これらの大学の内容に対してもまだ相当大学と言い得るかどうかという点もたくさんあるのでありますが、総理はこの新制大学というものに対して適当なる整理と申しますか整備と申しますか、を行うお考えがあるかどうか承りたいのであります。
○国務大臣(吉田茂君) 学制といいますか学校制度の改正ということは、政府として従来考えており又私としても今のような大学乱立の弊は認めざるを得ないと思います。又この乱立の弊を防がない限りは、いろいろな問題において日本の教育全体において非常な支障を生ずると思つて実は懸念いたしております。その点については政府はどういうふうに改正をしたらいいか。教育のことでありますからにわかに結論に達するということは、将来のことから考えてよくないと考えますから慎重に審議いたしております。委細のことは主管大臣からお答えいたさせます。
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。只今総理から申上げましたように大学の問題につきましては慎重に考えなければならんと思いますが、只今の大学と申しますものは大学設置審議会の答申によりまして一応政府が方針をきめてそうしてやつておる次第でございます。これまでまあできるならば整備統合したいとは考えますけれども、これも十分審議会にかけましてその意見を徴してやつて行きたいと思います。 又明年度の卒業生の就職難につきましても私ども非常に心を痛めております。お説の通りに若しこれが就職が十分できませんで市場でいわゆる浪人になつておりますと、社会にいろいろ悪い結果が出て来やせんかということも心配しております。そこで只今大学の当局に今までもございましたのでありますが就職斡旋の係がございますが、その係を強化いたしまして、同時に文部省といたしましても各方面に手を廻してその強化をますます助成して行き、同時に文部省自身出かけまして業界と大学との連絡をよくとるということにいたしてやつておる次第であります。ただ問題は、来年十二万六千お説の通りに卒業生が予定されておるのでございまして、これは実は大学卒業生と申しましても学制の改革でできましたものでございまして、もとは高等専門学校であつたのが大学になつたということになりまして、大分卒業生が非常にふえておりますけれども、過去高等専門学校と大学と両方ありましたときにほぼ十万程度の卒業生が社会に出ておつたわけでございます。でございますからできるだけ我々が就職を斡旋すれば何とかうまく就職できるのじやないかと、こう考えております。ただ希望いたしますことは、大学を出たからと申しまして今までのように大銀行とか大会社ばかりをねらつて行くということになりますと就職も十分にできないと思いますが、この際やはり求職者のほうでもよく考えて頂いて、又自分自身で策を講じて行く、学生の立場から行きましてもそういう大きな銀行会社ばかりでなしに、自分自身の腕で自分自身の事業を発展さして行きたい、こういうような勇猛心を持たれ、そうして中小企業という方面にもやはり行つてもらいたいとこう考えております。この点につきましてはほぼ中小企業のほうとも連絡協議会を作りまして、そのほうに相当数の卒業生がはけるような見込みも立てております。お説至極御尤もでございまして、できるだけ我々といたしましては来年卒業生の就職を斡旋いたしたいと、こう考えておる次第であります。
○白波瀬米吉君 就職の問題に対してはお話の通りであると思うのでありますが、今の新制大学が前に専門学校であつた時分には、それぞれの学校は相当な一つの特長を持つて各事業会社と相当なつながりを持つておつたのが、大学制度になつてからすつかりそういう根拠を失つてしまつた、真の専門学校として技術的に専門的に各会社につながるといつたような、昔の何といいますか味のあると申しますかそういうのがすつかり失われておることを一つお含みおきを願います。 合せて最近の各事業会社では新規の採用に対しては一番何を気にしておるかというと思想問題であります。思想問題のために如何によくできてもそれは事業会社としてはどうしても採ることはやめておる、というよりむしろ大学出というものを非常に危険視しておるといつたようた状態なんでありますが、それは何か政府としても、或いは文相としても、教育のあり方と申しますかそういつた点にいま少し考えをされる必要があるのじやないかと思うが、その点に対してどういうふうにお考えになつておるか、お伺いいたします。
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。お説の通りに各事業会社のほうで学生の思想に非常に敏感になつておりますと申しますか、学生の或る極く少数でございますけれども過激なことをやつたというようなことが学生全般の思想を判断する材料になつておるようでございますが、私どもの見るところによりますと、成るほど極端なことをするような学生もあることはあつたのでございますけれども、大部分はそういうような学生じやないと確信しております。そこで私どもが大学当局並びに文部省といたしまして業界にお願いいたしておりますところは、成るほど若しそういうことが心配で今の大学生を採ることは自分の会社をつぶしてしまうのじやないか、又非常に困難に陥れるのじやないかと、こういう御心配で自分の好きな人だけを採つてそうしてあとは打つちやらかすというようなことがありますと、先ほどのお説のように自分の会社だけは何とか立つて行きますけれども、社会全般が変になりましてその高等浪人が社会不安を起すということになつて、元も子もなくなるというような結果を来たす次第でございますから、私どもといたしましてはできるだけおおらかな気持で、そうして若し少々若い時期の考えとして思想過激じやないかというような者がありましてもこれを抱擁して、その会社のたくさんの人のこういうるつぼに入つてこれを一つ立て直してやろうというぐらいな考えを持つて頂きたいとこう考えております。 それからもう一つ、大学になりましてからその特色がなくなつた、これは事実だと思つております。私は文部大臣になりまして一番先に考えましたことは、どれもこれも何か画一な同じような大学になつてしまつて、昔の専門学校程度のときに非常な特色を持つて実業界で歓迎されておつたというような学生が出ることが少くなつておるような感じがいたします。この点は将来十分留意いたしまして各学校で特色をいかして、そうして社会でお役に立つような学生を養成したいと、こう考えております。
○白波瀬米吉君 次に、全国の各町村は六三制が実施されましてから、従来から教育費というものは非常に大きな町村の負担であつたのでありますが、その上六三制で新制中学校を建設するということのために、殆んど国民の基盤ともなるつまり小学校舎というものは非常な老朽な、而も危険な状態にまで立ち至つておる状態が全国至る所にある。これはまあ新制中学を作らなければならんのでやむを得んのでありますが、この現状は現在の文部省でお考えになつておる程度の財政的の支出ではとてもいかんのではないか。そこで思い切つて義務教育費というものをもう全額早急に国庫負担される意思があるかないか伺いたい。
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。六三の義務教育をいたしますのを急ぎましたものでございますから、いろいろ設備の点において不備の点がたくさん多うございますが、その結果といたしまして今まで老朽して危険に瀕してておる学校の修理も十分できていないということはお説の通り事実でございます。そこで我々といたしましては明年度はできるだけ早く老朽危険校舎を整備をいたしてやつて行きたいとこう考えて、大蔵省とも相談いたしておる次第でございます。学校の規模にいたしましても、私自身といたしましては、なるほど全額国庫負担というような意味で義務教育をして行きたいというのは理想でございますけれども、その理想に一歩一歩近ずくようには準備して行きたい。御承知の通りに明年度は義務教育費半額国庫負担法も実施されますから、そういうふうにいたしましていろいろの面で国家が面倒をみるというようにだんだん進んで行くように善処いたしたいとこう考えます。
○白波瀬米吉君 簡単に輸出の問題をお尋ねいたしたいのでございますが、各委員からも輸出の問題について御質問ございまして、簡単に申述べたいのでありますが、私は、どうも輸出の額が必要なことは非常に強調されておるけれども、実際面に当るといま少し真剣味が足らんというかどうももの足らんような感じがいたしておる。と申しますのは、昨年、この春でしたかポンドが過剰になつておるから輸出を制限する、或いは許可制にするというような方法をとられた。又これがために今日の紡績業というものは非常な行詰りを生じておるのでありますが、輸出問題に対してはもつと思い切つて施策を講じて頂く必要があるのではないか、そういうふうに考えます。その一例といたしまして私が申上げるのは生糸の問題でありますが、これは現在のような非常に減少しておりましても大体商品輸出の中ではドルかせぎとしては首位を占めておるのであります。これに対して一番困つておる問題は、為替レートの設定されたときのアメリカの物価と日本の物価を比較しますと、日本の一七〇に対してアメリカは一一二という数になつております。それは直ちにそうとは申しかねますけれども、結局為替の実勢というものとレートというものとに非常に困難である開きがあるということであります。故にドル地域に輸出することは非常に困難である。それでありますからこれらに対して或いは減税とか免税とか、或いは助成とかいう方法を講じても私は或る程度ドル地域への輸出というものは思い切つてやるべきである。現在業界では、或いはアメリカの情報としましても五ドル近くの相場であれば大体現在の三倍近くに輸出することは可能である。又向うもその程度は希望しているのだというような数字はたくさん上つておるのでありますが、これはもう私は或る程度の方法は考えても、輸出というものはできるときに思い切つて促進しておくべきではないか。ただ単に僅かな、或いは何と申しますか過去のいきさつとか、或いはいろいろなものにとらわれて物事を処理しないで、輸出というものは外貨を獲得するということが非常に大事なんです。殊にドルをかせぐということは非常に重要なことなんです。これは思い切つて輸出はそれらの方法を講じてやるべきではないかと考えるのでありますが、政府はそれに対してどういうお考えを持つておられるか、お伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 只今生糸のお話がございましたが、生糸につきましては実は率直に申すと日本人は少し高く買い過ぎるのでありまして、それで絹糸価格が出ておるというような状況でありますが、併し輸出品の大宗の一つでもございまするので、先般いわゆる優先外貨を、今までの第二類一〇%であつたのを第一類一五%まで引上げましたのでこれでよほど緩和されるのではないかと考えております。なお一般的に今の例えば輸出に対して補助金を出すか、或いは助成金を出すかという問題等については、これは実は私どもは今いろいろ輸出については相当な処置をとつておるのであります。併し何と言いましても国内で価格を下げることが、一番いわゆる国際競争力をつけることが急務でありますが併し十三国会で成立しましたあの企業合理化促進法によりまして合理化への短期償却を認めておるほかに、租税特別措置法、法人税法等によりまして重要産業に対する減免税或いは物品税につきましては輸出商品に対する免税等の措置を講じておることは、これは白波瀬さん御承知の通りであります。ただ補助金、助成金の問題になりますと国際通貨基金との関係もございまするし、輸出産業に対して特にこれを支給しますることはいろいろ問題を各国との間に起すのでございまして、まあ私どもとしては諸外国特に西ヨーロッパ諸国の実例等を今調べておりまして、あれらがどの程度やつておるか、それらのところの実例等をも一つ調査した上で十分釣合のとれた程度にこれを持つて行く。とういうような工合には考えておりますが、今申しまする通り補助金、助成金はいろいろ対外関係もございまするので急にこれを即時行うという段階には実は参つておりません。
○白波瀬米吉君 最後に伺いたいのですが、戦前には海外に農林省として生糸消費の調査事務所を設けておりました。そうして海外の情勢はもうくまなく調査してそれを参考にする。又現在もでありますが十四ヵ国合同しまして生糸の宣伝機関を作つておる。本年の宣伝費の日本引受額が六十万ドルになつておりますが、これらに対しても戦前から見ると、戦前に行われておつたことさえも、現在これほど輸出が重要だと言うておりながら行われておらんということは甚だ私は遺憾だと思います。 なお今通産大臣のお話の、海外においてはドルをかせぐために生糸の三角貿易でいろいろと利用されて、而もそれに対して日本から生糸を買つてアメリカに売つてドルをかせぐために、オランダとか英国だとかいうところがそれに相当な援助を与えておるという実例は各国ともある。なおそういう現状を見ながら日本が大事な生糸を持つておつて知らん顔をしておるということは、すこぶる輸出に対してどの辺まで考えておられるかわからんことじやないかというような感じを持つておるのであります。是非一つ一般の御心配を願いたいと思います。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 私どもといたしましても是非それはいろいろやりたいと考えておるのでございまするが、なお通商条約等がまだ締結されない向きが多いのでありまして、それらが締結されるに伴いまして戦前に置きましたような各種の施設も進めて参りたい、かように考えておる次第で、輸出につきましては少しもないがしろにせず、一層これを盛んにしたいと絶えず努めておる次第でございます。
○委員長(岩沢忠恭君) これにて暫時休憩いたします。午後は一時半から開始いたします。 午後零時二十八分休想 —————・————— 午後一時四十八分開会
○委員長(岩沢忠恭君) 只今より午前に引続き委員会を開きます。
○山下義信君 総理にお伺いいたしますのでありますが、先ずアイク次期大統領と日本の再軍備の問題につきまして伺いたいと存じます。 アイク次期大統領は、先に歴史的な朝鮮訪問旅行をいたしまして、二週間に亘る洋上の首脳会談、ホノルル軍事会談を経て帰国されたのでありますが、この二つの会談で、新政府の内外の基本政策がまとまつて、来月予定される大統領の就任式の演説や、米議会に対する大統領教書等の原稿も書き上げられたやに伝えられておるのでありますが、ともかく極東に対するアイクの考え方としては、極東政策を重視し、アジア諸国に積極的に呼びかける外交方針をとり、アジアの戦いはアジア人の手でという戦略面の推進が予想されるということは世間周知の通りでございます。結局は我が国に対しまして再軍備を強く要請して来るのではないか、或いは現にすでにそういうことになつておるのではないかということにつきまして、国民は非常に一種の不安を感じ、その成り行きを凝視いたしておるのであります。そこで総理に対しまして次のことをお尋ねいたしたいと存じます。総理は如何なる要請がありましても再軍備に応じないという固い御決意につきましては、今後お変りはないのでありましようか、如何でございましようか。先ずこの点をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 従来私が申しておる考えに変りはございません。
○山下義信君 この総理の御決意は米国側、殊にアイク新政権側に対しまして、日本の国会におきまする御言明はもとよりアメリカ側が承知しておるわけでございまするが、相当の方法によりましてその御趣旨はすでにお伝えに相成りましたでございましようか、如何でございましようか、その辺を承わりたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) これは私の所信を国会において言明しておる以外に、アメリカ政府からは何らの要請もないのでありますから、あらかじめこちらから断るというようなことも変な話で、所信は所信として国会で表明しておりまする以外に、特に外国政府に対してこの所信を伝えるというような処置はとつておりません。
○山下義信君 次に伺いますのは、アイクの朝鮮訪問の途すがら日本に立ち寄りますることを日本政府は期待されましたが、希望されましたか、或いは又そのことにつきまして要請されましたようなことがございますでしようか、如何でありましようか。と申しますのは、アイゼンハワー元帥の朝鮮訪問に当りまして、緒方官房長官は、若し立ち寄られたならば吉田総理は喜んで会談される用意があるということを新聞記者会見で発表になつておられるので、恐らくそういうことにつきまして重大な関心を払われたのではないかということが思われるのでありますが、その辺につきまして何らかのお考え、御希望等があつたでありましようか、如何でございましたでしようか。
○国務大臣(吉田茂君) 元帥の東洋方面に来られる日程等については、アメリカ政府といいますか、元帥、共和党内ではあらかじめ日程の予定はついておつただろうと思います。そこで日本訪問はしないという話は前から聞いておりましたので、併しこれは政府ではありません。私としては元帥が日本に来られたならば、日本国民も新たにアメリカに対して考え方も違つて来るであろうし、アイクという人は、これは個人的のことに亘りますが、非常に愛嬌のよいそして極く民主的といいますか、広く人に接する、まあそれによつて非常な人気があるのでありましよう。日本国民に元帥みずから会われたならば、日本国民の感じも違つて来ましようし、それからもう一つ私の考えておつたのは、元帥は四六年と思いますが、終戦直後に一度見えたのであります。私の記憶が正しければ二日間滞在されたと思うのでありますが、このときの日本の状況と今日の状況とは大いに異なるものがあるので、或いは将来の大統領になられる元帥が日本の現状を見られたならば、東洋に対する考え方も違うであろうと思いましたので、私個人としては日本を訪問せられることを希望し、友人等から私の個人的希望は述べておきましたが、政府としては日本訪問を要請はいたしませんでした。
○山下義信君 私どももアイクの訪日を見なかつたということは失望を感じたのでありますが、次に伺いますのは、首相のいわゆる再軍備反対の抑想見、お心持といいますか、その御意見というものは私は十分アメリカ側、殊にアイク政権の側近、そういう方面にお伝えになつておられることであろうと、お心持は伝つておることであろうと思いますが、すでに現在白洲特使がアメリカに滞在中でありますので、白洲使節等から私は相当お心持が伝つておるもののように想像されるのでありますが、その辺は如何でございましようか。或いは又白洲氏から何らかの御連絡、御報告等がありましたでしようか。これは総理だけではなくて、私ども国民も若しも何らかの消息がありましたならばその辺が承りたいと存ずるのでございます。
○国務大臣(吉田茂君) 白洲君をアメリカに派遣したこの趣意は、すでに国会でありましたか、委員会でありましたかで述べたと思いますが、つまり今の意思の疎通といいますか、状況疎通とか状況視察とか、一般問題について日本の状態を知らす、又一般の状況について新政権ができる前後における政情等について視察して来るようにという、これも結局は日米の間の親善関係を更に増進したいという考えから、現状について、互いにこちらの現状を伝え又アメリカの現状を見て来るように、自然新政権に対する政策というとおかしいのでありますが、心構えにもなりますから、出したわけであります。如何なる報告を持つて視察をして参りますか、近日帰つて来るはずであります。クリスマス前に帰つて来るはずであります。クリスマス後においてはワシントンにおいても或いはニユーヨーク、その他におつても人々がちらばりますからして、白洲氏の訪問の視察の助けにはならんと考えますから、まあ成るべく早く帰つて来ると申しておりましたから、近日、二、三日のうちには帰つて来ると思います。その間報告等はいたしておりません。滞在日数は甚だ少いものでありますから何らの報告はいたしておりません。いずれ帰つて来まして、そうして報告を受けた上で御披露すべきものはいたします。
○山下義信君 大変御懇切な御答弁を頂きまして多といたしますが、更に私伺いたいのは、総理の再軍備反対説でございます。これは我々はくどいほど質問いたしましたが、総理にはしばしば繰返されまして、総理の再軍備反対説というものはよく徹底いたしております。そのことのよしあしは別といたしまして、総理の再軍備反対説で御指摘になつておる論拠は二つであります。一つは、国力不相応だと、一つは、世論がそこまで盛り上つていない、この二つの論拠はたびたび繰返されましたから私どももよく覚えております。そこで国力の回復ということのときに、それなら再軍備をするかという昨日の西郷君の質問に対して、国力の回復ということと必然的には考えていないという御答弁、了承いたしますが、私はそういう意味でひつかけて御質問しようという意味ではなくて、その国力の回復ということにつきまして、衆議院の予算委員会におきましては、向井大蔵大臣が先づ五ヶ年くらい先になればという御答弁が、御説明が出たのであります。これは一つの国民の目標といいますか、この政府当局が五ヵ年くらいたつたらば国力が回復し得られるという、財政などが所望のとき切盛りができることになるだろうということにつきましては、一つの目標を得たかのごとき印象、示唆を受けたのでありますが、やはり総理も大体大蔵大臣の考えられるように、先ず五ヵ年くらいしたならば、日本の国力が回復するものであるというお見通しの下にすべての政治をやつておいででありましようか、どうでありましようか。そうしてその五ヵ年くらいたつたならば国力は回復するという大体の見通しのその根拠というものは奈辺にあるであろうかという大筋のところが承わりたいと思うわけであります。
○国務大臣(吉田茂君) 国力の回復について五ヵ年とか、三ヵ年とかいうことを私は申したことはないのでありますが、五ヵ年、三ヵ年にして国力が充実するということになれば、更に結構であります。又仮に国力が充実いたしても、軍備をせずに、憲法そのままで参るということができたら更に上々だと思います。でありますから、国力が回復したからすぐ軍備にかかるかというこの反対論法は、これは私は承知ができないと、こう考えております。さて国力は何年たつたら回復するということについては、私としては予想は申しかねます。
○山下義信君 大蔵大臣はどうですか。一つ御答弁願いたいと思います。
○国務大臣(向井忠晴君) お答えいたします。五ヵ年で国力が回復するとは私は申さなかつたつもりでございますが、幾らか今よりましになつて、幾らか金が楽に使えるかと思うという考えでございます。
○山下義信君 その点は又各省大臣の質疑のところで伺いますが、更に総理に伺いたいと思いますのは、その世論ということであります。それはいわゆるまだ国民の愛国心が不十分である。或いは又祖国を守ろうとする意欲がまだ、何と申しますか、十分でないということは、私はこれは議論はいたしませんが、私はそうは考えません。今日のような状態に日本がなりましても、国民の祖国を愛するという精神には、決して私は変りはないと考えておるのであります。今世論が再軍備に反対いたしておるというこの国民の心持は、これは私は理窟の上の平和論とか再軍備反対論とかいうことは、それは学者観念の上で如何様でも理窟はつきましよう。併しながら国民の素朴な感じというものは、私は大体その再軍備するということが、すぐにアメリカの番犬になるのだという気持、率直に私は言葉に衣を着せずに申上げますと、米国の番犬になることはいやだ、それから第二は、一体アメリカは日本の軍備を奪うておいて、そうして又都合のよいときには軍備をしろということは、何だか言葉が悪うございますが、日本人を馬鹿にしておるといつたような割切れない感じ、それから第三は、いつも申しておりまするように、朝鮮に出兵されるのではないか、朝鮮へ行くということはいやだという感じであります。殊に最近はアメリカの下院のマジョリティーでありましたか、リーダーでありますマーチン議員が、私も昨年会いましたが、朝鮮に日本人をやれといつた議論に対しましては、国民が憤激いたしました。こういう気持、それからこれはまあ言うてよろしいか悪いかわかりませんが、素朴な国民の大衆の気持は、アメリカがろくに援助もせずにおいて、日本に対して講和条約成立したらああもしよう、こうもしよう、東南アジアの開発にも援助しよう、或いは日本経済の上にもこうしようといつたことがあつたかのごとき印象を受けておるが、軍備に対しての援助でなくて、一体日本に対して思つたよりはあんまり援助もせずに、そうして軍備せいなんということに対する気持が…、以上申しましたような各種な気持が国民の間にあると私は思います。その国民のそういつた感情、気持というものを総理はよく御承知でございましようか、そういう気持が国民の間にあるということを:…。併し恐らくこの気持ちは白洲使節がアメリカの朝野の有力者に会われたときに恐らく私はこういうことも話されたのだと思います。この素朴な国民の持つておりまするこの気持、これは言つておりましようか、如何でございましようか。総理の御所見を承わりたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 私の軍備を許さない、しないというその根拠の一つとして、輿論が反対するからとは私申しておらないのであります。輿論が盛り上る、軍備を持つ気持に輿論が盛り上つて来たときが、即ち軍備を持つのであればすべきものであつて、今日輿論が反対しておると私は断言しておらないのであります。輿論とし、国民の気持といたしては、あなたが言われる通り、祖国愛あり、愛国心があり、そうして一部の者が軍備に反対とか、或いは朝鮮出動反対というようなことでも、それはそのときの気持といいますか、が、国民全体としては、日本の国民はつとに愛国心のある国民として知られている。その愛国心の気持があれだけの無理な戦争もできたのでありますから、急に愛国心がなくなつた、祖国心がなくなつたとは思いません。思いませんが、併しながらこの敗戦とかいろいろな不幸な事態に当つて、国民の思想というか、考え方は必ずしも従来と同じでないと思います。併し祖国愛或いは愛国心が従来のごとく盛り上らなければ国は守れないと思うのであります。盛り上つた結果変な方向に行つたということはあるかも知れませんけれども国の独立、国の安全を守るためには祖国愛であり、又愛国心がその根底をなさなければならない。それでなければ日本の国の独立は守れないと思います。それで国民の気持、或いは考え方としては、あなたの言われる通りであると私は思います。そこで米国政府として、対日政策といいますか、このアメリカ政府、国民の日本に対する気持も、時々刻々ではないかも知れませんが、年々変つております。占領当時の日本に対する考え方は今日とはまるつきり違つておつたろうと思います。これは戦争の影響もあります。日本という国は平和を害する国であり、平和の敵であるという戦争当時の感じを持つて来た。或いは米国政府もそういう感じであつたのでありましよう。併しながら六年、七年、八年に亘つて占領中に、日本国民の性格なり気持なりは十分アメリカ側は了解したろうと思います。故に初めの気持が終始一貫してはいない。大いに占領が続くと共に、継続すると共に気持は変つて来ており、又アメリカに対する我我の気持ちも違つて来ております。日本の軍備を撤去するということは、又日本に対する敵愾心と申すよりは、世界の平和を維持したいという気持から出たことと思います。それから又日本をしてスイスのような、東洋のスイスのような平和国にしたい、これも本当にそう考えて、その希望から出た気持であると思います。その気持についてはいつわりはないと思います。併し共産主義国の進撃が激しいために、日本をどうとかしようという、日本を以つてアメリカの傭兵、番犬ですか、にしようという気持はある人もありましようが、それは直ちにアメリカ国民、或いはアメリカ政府の気持ではないと私は確信いたします。故に日本に対してああしろ、こうしろ軍備をせよとか何とかいう要求は一つもいたしておりません。共に共に平和を守りまして共に共に世界の文化を進めようという気持はあつても、日本をアメリカ政策の道具として使おうという、そういう露骨な気持はないと私は思います。併しアメリカが日本と共に世界の平和を増進して行きたい、日本を導いてそこまで行かしめたい、或いは国連に入れて共に共に世界の平和を守ろうというふうな方向に日本を導きたいという気持は確かにあります。併し、直ちに日本に再軍備をせしめて、そして朝鮮戦線に連れて行こうとかいうようなことは、これは米国の指揮者は必ずしも考えておらないと思います。多少無責任な人は言論を弄するかも知れませんが、米国民大多数の気持はそう極端な考えは持つておらんと確信いたします。
○山下義信君 次は、問題が異なりますが、保安隊にアメリカ人がおるのでございましようか。若し米国人がおるといたしますというと、それは何人くらいおり、且つ又何の役目でおるのでございましようか。或いは又それは軍事顧問のような性格であるのでございましようか、その辺はどうでございましようか。御説明を願いたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 所管大臣の私からお答えいたします。このアメリカの軍人の顧問団の話でありますが、御承知の通り警察予備隊ができましてから指導方面のことが一部アメリカのいわいる顧問団の手によつて行なわれておつたのであります。現在においても或る程度行なわれております。併しながら我々といたしましては、できる限り日本の手によつてこれらの訓練等をいたしたいと、こう考えておりますので、アメリカのほうと話合いの上におきまして来年の三月までに各地におりまするいわいるキャンプ、それから引揚げてもらうことに話合いが付きました。特別に技術的な指導を受けなければいかんというような部分につきましては来年の八月まで指導を受けると。ただそこに常住いたしませずに出張という形の下にときどき行うという工合に処置したわけであります。我々といたしましては、一日も早く日本の事によつてすべて指導訓練をいたしたいと心掛けておる次第であります。
○山下義信君 これは保安隊の自主性に関しまして国民が疑惑を持つておると思います。非常に重大だと思いますので、それらの米人が保安隊に関与いたしますということにつきましては、何か取極と申しますか、協定と申しますか、そういうものの根拠があるのでございましようか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 別に正式の契約とか、約定とか、取極というものはございません。便宜上いろいろの方面から指導を受けるということで、事実関係としてやつておつた次第であります。
○山下義信君 いま一つ、問題は違いますが、最近軍人恩給の復活ということが言われまして、審議会の答申が出たのであります。これは私は朝野ともに考えなければならんということは、軍人恩赦の復活は名が悪い、実質は遺族扶助料を恩給制度で支給しようというのが大部分の問題で、軍人恩給復活ということは誠に関連附随事項であります。これは実は別個の問題である。軍人恩給の復活ということが言われておるのでありますが、私は審議会の答申案につきましては、これは遺族問題と関連のあることでございます。全国数百万の人間が非常な関心を持つておるのでございますので、これだけのことを伺つておきたい。政府はこの答申案につきまして、これを尊重される意思がありますかどうかということを先ず総理から承わつておきたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 無論これは答申案を尊重いたします。
○山下義信君 私は総理府の所管長官である緒方官房長官から、審議会の答申案に対してのあなたのお考えを聞いておきたいと思います。
○国粋大臣(緒方竹虎君) お答をいたします。この答申案につきましては、勿論その答申案の趣旨を尊重いたします。とくと慎重に研究いたしたいと思います。
○山下義信君 私は、この問題の取扱方は保安隊の隊員諸君の士気にも影響がありますかどうか、木村保安庁長官のお考えを聞いておきたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私は隊員の士気に重大な影響はないと考えております。隊員の士気については別個の方法を以て私は今後進みたいと今それを研究中でございます。
○山下義信君 明年度の予算の上でこれが相当の問題になることは言うまでもございませんが、大蔵大臣は、この問題をどう考えておられますか。最近伝えられますところによりますと、五百億ぐらい一つ考えようかと政府部内の一部で考えておられるようであります。本年度の予算も二百三十幾億使つておるのでありまして、来年度用公債の年賦償還等を入れますと、今年通りやりましても三百億要るのでありますから、来年も三百億というようなことでは今年とちつとも変らないことになります。恐らくそういうことは一部の何んといいますか、間違つたことであろうと思いますが、大体どういう考え方を大蔵大臣は持つておられましようか、その点を伺つておきたいと思います。
○国務大臣(向井忠晴君) 只今御指摘のような三百億というふうなことは考えておりません。ただこれは政府部内で各方面から十分検討いたしましてきめるつもりでございます。只今大見当も全くついておりません。
○山下義信君 最後に総理に伺いたいと思いますのは、道義高揚の問題でございます。これは施政方針の演説の中に時に特筆大書されました。このことは普通の専門的の知識を要します問題とは違いまして誰にも言えることであり、誰にも一つの意見がある。従いまして閣議等でこのことをお諮りになりますれば大変御意見がたくさん出まして、名案も出、又妙案も出ることであろうと思います。大体道義高揚ということを施政方針にお掲げになりましたが、大筋として何を狙つてこのことをお考えになりましたのでしようか、又どういうことを考えておられるのでありましようか、私は総理の御心持を率直に承わりたいと思うのであります。
○国務大臣(吉田茂君) 道義の高揚と申しますとなかなか漠としておりますが、いずれにしても国民の道義心が厚くない限りは、国として世界の列国の間に伍して行くにしましても、又人間としての生活から言つてみても、日本という国は教養の高い国である、道義の高い国であるということでなければいけない。そうでなければ列国の間に共に齢いできません。これは国際的に考えるのでありますが、又社会人として社会生活をなすにおいても道義を守るという気持がなければならない。これは申すまでもないことでありますが、併しながら不幸にして終戦直後の状態から見ますると、道義の頽廃といいますか、我々が誠に歎かわしいと思うような社会現象が幾多あるのであります。これはいずれの時に至つても道義はますます高揚せしめなければならんのでありますから、この程度とか何とかいうことははつきり言えませんが、社会現象としては甚だ面白くない現象が終戦直後以来引続いて起り、そしてこれに対して教育者は勿論のことでありましよう、宗教家も勿論のことでありましようが、国民一般として道義は高揚せしめたいという希望を持つておることは当然のことであります。然らばこれをどういうふうにしてするかということになれば、いろいろ議論もありましようが、終戦直後の状態から考えてみましても、生活が安定するに従つて道義は高揚されつつあります。そして又これは道義高揚のために生活を安定せしむるわけではありませんけれども、生活の安定が道義の高揚ということを来たすものであり、又教育としましても、これまでは社会科というような科目の下に修身は廃する、或いは歴史は説かない、地理は説かない、これは教育方面から考えてみても道義の高揚にならないと思うのであります。文部省としては、日本国民の祖国愛を高揚せしむるためにも、日本はどういう国であり、どういう歴史を持ち、どういう国柄であり、日本の国柄は非常に立派な国柄であり、この国守らざるべからずという気持におきまして青少年の教育にこういう気持を高揚せしめなければいかんと考えて、文部省に特にこの点に注意を促しておるようなわけでございます。
○山下義信君 私の持時間が十数分しかございませんので、詳しいことは又所管大臣等に質問いたしますが、私がそういう世界のものでありますから我田引水するわけじやありませんけれども、何と申しましても第一は、私は正しい宗教を一つ盛んにならしめなければいけません。淫嗣邪教が非常にはびこつておる。中には閣僚の中にもいかがわしいもののほうへ入つておる人があるのじやないかという気持もしますが、(笑声)淫嗣邪教、これは十分取締つてもらわなければ、こんなものは私はいかんと思う。それで宗教行政といいますか、それは宗教の自由を阻害するという意味でなくして、占領軍のときに、宗教関係のものを文部省からとつてしまいましたから、正しい宗教を信仰させるということが、これが今非常に抜けておる。こ淫嗣邪教を大いに取締つて、正しい宗教というものが国民の中にこれが盛んになつて行かなければならんと私は思う。私がその道の者であるから我田引水するものではないのでありますが、これは総理にも十分その辺を一つお考え願われましようかどうか、それを承わりたいのであります。
○国務大臣(吉田茂君) 誠に御同感であリます。
○山下義信君 今生活が安定しなければ道義の高揚はあり得ないと言われました総理の御答弁は私も同感であります。で、根本はそこでありますが、そこで日本におきましての戦後におきまする国民生活、社会情勢を見ましても、私は今日本で一番欠けているのは、中産階級の没落ということじやないかと思う。それで中産階級というものがしつかりいたしていなければ、この国民道義ということの進歩もあり得ない。中産階級というものの日本におきまする何と申しますか、養成というと妙でありますが、このあり方というものにつきまして総理はどうお考えになりましようか。それからいま一つは、これで私が伺うのはおしまいでありますが、修身科等を復活いたしましてその修身を誰が教えるか、修身は読み方、書き方でございませんので、修身を教える者の自身が修身が実践できなければならん。修身科を教えてその修身の実践の場はどこであるか。これは大変な問題であつて、修身科という一つの学科がふえたからといつて道義の高揚はできないと思います。大変な問題になると思いますが、それは別といたしまして、私は一番いけないのは、一つの社会現象でございますが、日本の女子が非常に薄つぺらになつて、この女子のあり方というものが大変面白くない。これは人の妻になり、人の母になる者が薄つぺらなようなことではいかん。最近は、妙なことを申しますが、これは私まじめに言うのでありますが、文学者の仲間などでも恐妻会などということで、妻を恐れるような会、(笑声)これは大変最近の日本の女子が堅実でない、私は本当にそう思う。薄つペらである、これは一つ考えなくちやならん。これが又風俗のもとになり、いろいろ社会の道徳の上にも、道義の上にも影響を来たす。私は総理は日本の現代の女子に対して一つ警告をここで発して頂きたいと思いますが、(笑声)御所見は如何でございますか。
○国務大臣(吉田茂君) 女子に対して警告ということは結構であるようでありますが、(笑声)私は実はあなたの考えと違うのであります。こう言うと、ここに男子諸君が多いからして、(笑声)何と言われるか知れませんが、私は女学校等の状態を見ましても、日本の青少年の従来の気持、従来の道徳観念は、むしろ女学校教育においてなお保れておるのじやないかという気がします。これは私は調べたわけではありませんが、女学校を参観してみまして、男の学校に参るよりも、私の感ずる気持は、日本の道義なり或いは又祖国愛といいますか、そういう気持はむしろ女子教育のほうにあるのじやないかというくらいに思つております。併しこれは感じの上のことであると思う。女子教育が衰えて、そうして女子の教養が、或いは道義が低くなれば、自然それが家庭に影響を及ぼし、それが又子供に、将来の国民に影響を及ぼすことでありますから、女子教育をしつかりいたさなければならんことは申すまでもないことでありますが、現状において如何というと、私はむしろ男子青少年に対して警告を発したいくらいに考えておるのであります。これは意見の相違でありますから、どちらがいいかということは別として、感じといたしては、率直に申せばそういうふうな感じがいたします。
○山下義信君 私の質問はこれで終りました。
○吉川末次郎君 二、三の問題について吉田総理に御答弁を願いたいのですが、第一にお尋ねいたしたいことは、先に本会議で私が吉田総理に質問いたしました政府が御計画になつて今御提出の補正予算の中にもそれのつなぎ予算が入つておると言われておりまするこの情報機関の設置の問題についてでありますが、当日首相は御欠席になつておりまして、私が答弁を促しました官房長官、それから保安庁長官並びに外務大臣の御答弁は承わることができたのでありまするが、総理大臣のそれについての御答弁は当日承わつておらんのであります。本会議でいたしました質問でありますから、本会議場で承わるのが形式では順序だと思いますが、その後一向御答弁がありませんので、大体質問の要は速記録にも載つておりますので、ここに繰り返す時間もございませんし、御了解を得ておることかと思いますので、それに基いてこの機会に御答弁を得たいのでありますが、特にお聞きいたしたいと思いますことは、総理は衆議院の本会議におきましても、又参議院の本会議におきましても、そういう新らしい情報機関の設置の構想を明らかにせられまして、それは単なる情報機関でなくして、いろいろなニュースを集めて、それを政府の参考資料に供すると同時に、広く国民の間にこれを広報するものである。即ち単なる情報機関でなくして、広報機関であるということを衆議院におきましても、参読院においても、そういう言葉を使つてお述べになつておるのでありますが、今日も勿論御意見の相違を来しているとは思わないのでありますが、両院の本会議においてお述べになりましたそうした情報の収集のための単なる機関でなくして、広報機関であるというように了解いたしましてよろしうございますかということを先ずお答えを頂きたい。
○国務大臣(吉田茂君) 本会議において述べた所見は変つておりません。本会議において明らかに申述べたと思いますが、今日宣伝であるとか、或いは又ためにするところのいろいろな誤伝、誤報が乱れ飛んでおる状態で、これは誠に民主政治の国民として、民主政治の国民が、政府がその思想の指導をするということは思いも設けないことでありますが、正確なる事実を、本当の事実をつかんで、その知識の上に判断をする、これが民主政治の基本であるべきものである。然るに事実についてはいろいろ曲解された、或いは又間違つた思想、それが政府が間違つた思想というよりも、事実或いは政府の知識において、或いは政府が集めた情報を検討した上で、政府が事実なりと信ずることを発表する、それを国民が信ずる信じないは別なことでありますが、政府がその機関によつて集め、又研究し検討したものを、政府はこれを事実と考えるということを発表して、そうして国民の知識、或いは国民の判断に委ねるということは、民主政治においてあるべきところと考えるのであります。故に情報機関と私は申したことはないと思いますが、広報機関、そういう気持でおります。
○吉川末次郎君 そうすると、当月緒方官房長官がそれについて私に答えられ、又新聞記者諸君等に官房長官が言つておられるところと総理の言つておられるところとに相違があるのであります。即ち緒方長官は、国民の間にそのニュースを流す、即ち広報機関というような役割をするのでなくして、ただニュースを政府の施策の参考にするということのために集めるだけの機関に過ぎない、このように私に答えられ、又世間にもそう発表していられるのでありますが、総理と官房長官、副総理との間におけるお考えが違うように思うのですが、それは如何でしようか。
○国務大臣(吉田茂君) 私と緒方君との間において考えの相違はないはずだと思います。そういう趣旨で以て設けたらどうだろうかということを研究してもらいたいということを緒方君に依頼しておるので、緒方君が構想を練つておるのであります。そうして如何に構想の結論が出たかということはまだ聞いておりません。又閣議にも諮つておらないのであります。いずれ緒方君からして結論について聞いたならば、政府の方針はきめます。
○吉川末次郎君 本会議における緒方氏に対する質問の中に相当私はその言を入れて申し上げたので、繰返し申上げることを、まあ時間の関係上省略いたしたいと思まいすが、結局ニュースを政府が是なりとするところの報道であるとして、そうして現在流布されておるところの、新聞その他の言論機関の報道しておるところのニュースは非常に誤まりが多いという見解において、そうした報道を積極的にとられるということは、結局国民がその問題についてごうごうたる批判をいたしておりますので、戦時中における情報局を通じての言論統制の二の舞をやるのじやないかというところの危惧から来ておると思われますが、それについての御答弁を今ここでは私は再び総理から促しませんが、まあその問題についても何か御意見があれば、簡単にでも言つて頂いても結構でありますが、それで今までの御答弁に基いて、特にもう一つそれについて聞いておきたいと思いますことは、そうした計画の発表を総理及び副総理がせられるや、期せずして世論はごうごうたる批判と反対をいたして参つたのであります。国会も又これに対して反対の声を挙げたのでありますが、そうした世論の反駁に会つて、結局初めに総理が考えていられたところの計画が非常に退却してしまつて、単なる政府の一調査機関というような、極めてスケールの小さいものになつてしまつた。こういうようにもまあ新聞は報道しておるのでありますが、そういう政府の構想が非常に退却して小さなものになつてしまつたという新聞の記事等についての首相のお考えは如何でしょうか、もう一度承わりたい。
○国務大臣(吉田茂君) この法律に対する輿論と言いますか、新聞その他における反対は、むしろ過去における情報機関の復活というところの誤解から出たものであろうと私は考えておるのであります。で、併しながら私の構想と申しますか、緒方君の構想と或いは違うかも知れませんが、私と緒方君との間は、少くとも私が緒方君に話した構想は今のような考え方でその構想の下に考えて行つておるのであります。それから以後退歩もしなければ進歩もいたさないものであります。如何なる結論を出して緒方君が見えるか、それについてはまだはつきり申上げられない、とういうつもりであります。
○吉川末次郎君 この問題はまあそのくらいにしておきまして、その次にお尋ねいたしたいことは、本朝からもたびたび問題になりまして、首相も非常に御迷惑かと存ずるのでありますが、やはり再軍備に関する問題なのであります。これは当面する国民の最大の政治問題でありまするから、国会においてしばしばそれが論議されるということは当然であるという建前から、御迷惑かと思いますが、一つ更に御答弁願いたいと思いますが、私の建前はもとよりこの党の建前といたしまして、再軍備には反対、平和憲法の擁護ということを、この間の総選挙にも掲げて来たのでありますから、その建前でありますが、併しこの議場等において再軍備反対の建前から言われておりまする再軍備反対論とは多少違うところがあるのでありまして、世間の再軍備反対論には、これは共産党のような建前から言われておるものもある。又単なる一つのまあ感情論、これは併し大衆の感情として非常に尊重すべき感情と思いまするが、一つのまあセンチメンタリズムの平和主義的な建前から言われているところの再軍備反対論もあり、又そのほか財政的な建前から、或いは憲法擁護の建前から等、いろいろ議論があると思いますが、私は実は、吉田さんは我々と非常に共通する立場においてやはり再軍備反対をしばしば御説明なり、又今朝は声を励ましてそういう言をお言いになつたのでありますが、お言いになつている通りに、正直にやはり再軍備はすべきものでないという御見解を、私は個人といたしまして実はかように了解いたしておるのであります。個人的なことを申上げることは非常に恐縮でありまするが、あなたの非常に身辺の、むしろ外交顧問であり、又曾つて一大国の全権大使であつた人、名はわざと私は申しませんが、その人とも先般一緒に飯を食つて話合いましたときに、吉田は本当に再軍備反対だ、その意味において閣僚の中に再軍備論者がおつても、自由党内に再軍備論者がおつても、彼は毅然としてその立場を持しておる、その意味において彼はワン・マンである、こういうようなことを私は聞いたのでありまするが、私はその通りじやないかと実はまあ考えておるのであります。というのは、あなたのような経験もあり、識見もあるところの外交家の建前から、外交家一個人としての建前から、現在の日本が軽々しく憲法を改正して再軍備をするというようなことは、私は心ある外交家のとるべき態度では断じてないと考えるのであります。そうであるとまあ私は信じておるのであります。そうすれば、ただ午前の会合、只今も山下君に対しても若干の御答弁がありましたが、その問題が起つて来るたびに、ただ再軍備には私は反対なんですと消極的に御披瀝になるだけでなしにもつと進んで、そうして再軍備を主張している人の論拠を衝いて理論的にはお前たちの言つているところの再軍備論というものはこういうところの破綻があるじやないか、そのようにしては国民を誤まらしめるのじやないかというように、詳細に国民大衆が理解できるような態度に積極的に出られるということが私は為政者として必要なことではないかと思われるのであります。どうぞそういうような態度を、先ほども広報機関である、或いは情報機関のことについて政府の正しい意思を伝えたいということをお言いになりましたが、情報機関のよしあしは別といたしまして、そういう態度を、或いは新聞記者会見において、或いは議院内におけるところの言論の上において、そういうような態度に私は出て頂きたいということを、あなたの身辺にあるところの外交顧問の人が私に言いました。あなたが飽くまでも再軍備反対論者である、再軍備反対のワン・マンであるということを信頼する立場からお願いするのでありますが、それで、そういうことから第一にこの再軍備を政界において率先して提唱いたしますことはあなたの反対党であるところの改進党の領袖である芦田さんであるとか、又重光さんもそれを衝いておるのでありましようし、改進党は党を挙げて再軍備を主張しておると思われるのであります。それでその芦田さんや重光さんの、或は改進党の唱えているところの再軍備論というのはどういうところの欠陥があり、どういう基礎において自分はこれに断固として反対するものであるかということを、一つこの機会に国民に訴えるつもりで明らかにして頂きたいと思うのであります。 それに附加えて、特になぜこれを私は申すかと申しますると、なおそれ以外に今日自由党内における、あなたの政党内におけるところのいわゆる民同派の動きによつて政界の不安ということがまあ非常に伝えられておるのでありますが、それにもやはりこの再軍備の問題がからみついておる。即ち芦田さんであるとか、重光さん或いは鳩山さんのような、保守党内部においてあなたに対抗するところの一つの権力を獲得することを企画しているところの人たちは、アメリカが今でも日本に一時も早く再軍備されたいという要請をしたい気持を持つておるのに乗じて、自己の権力を獲得するという建前から、一面においては又経済的に軍需工業、いわゆる工業資本的な経済背景の上に乗つてこのアメリカの要請に、非常に下品な言葉でありますが、あなたよりも進んで、一つのエロ・サービスをすることによってあなたの地位をばとつて代らんとしてておるのである。これが今日の日本の政界の不安の基礎であるということを、まあこれは一般に考えられており、又そういうことを書いておるところのものもあるのでありますが、それともからみついて……、非常に話が横道に入つたようでありますが、芦田さんや重光さん及び改進党の堤唱しているところの再軍備論に対する、あなたが再軍備反対論者としての建前からのもう少し大衆にわかりやすいような、くだいた立場において論拠を一つ明らかにして頂きたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 私の再軍備反対若しくは再軍備をいたさないということは、もう先議会からしてたびたび述べて来たことであつて、それで、併しながら改進党の諸君が何と言つておるか、我いは又重光総裁が何と言うているか、実は私はよく存じません。話合つたとこもないのであります。併しながら我々の立場は、これまでもう過去一年以上に亘つて十分述べ尽したつもりであり、その述べた述べ方が足りないかも知れませんが、私が今日まで私の議論の根拠として今申述べたことは殆んど私の友人はよく存じております。又私の議論に賛成をし、了解をしておる人も随分あるのでありますから、そこで再軍備論が例えば予算の上に現われたとか、そういうようなときには無論でございますが、現在のところは再軍備はいたさないのでありますから、予算その他において現わしておらないのは当然であまりす。が午前中に言われた諸君のように、事実においては再軍備をどんどん進めておるのじやないか、国民の知らん間に再軍備をいたしておるのではないかということを言われますが、これは私としてこれを曲解と言うか、或いは故意に曲解をしたのか、少くとも甚だ私としては迷惑至極であります。政府としては、国民が知らざる間に再軍備の準備を着々進めておるというようなことは毛頭ございません。これははつきり申します。
○吉川末次郎君 その問題についてもう一つ聞きたいことがありますが、時間がありませんから、省略いたしまして、別なことについてもう一つお伺いしたいと思うのですが、それは衆議院で問題になつたことでありまして、それについて多少お答えになつておるのでありますが、十一月の十日に行われました立太子式及び皇太子の成年式におけるところの総理大臣のお言葉でありますが、即ち「臣吉田茂」という言葉をお使いになつて、これは明らかにラジオ放送でも聞いたのでありますが、その「臣」という言葉は、まあ私も考えるのでありますが、これはまあ新憲法の民主主義の精神に反する言葉であると思われるのであります。それで衆議院ではお取消しにならないかと、まあ某議員が迫つたのでありまするが、飽くまでも取消さないという御答弁があつたのであります。ところが新聞紙を見まするというと、ラジオ放送では「臣吉田茂」ということをお言いになつたのですが、各新聞ともその「臣」という、家来という言葉を抜いて報道いたしておるのであります。これは新聞社が私たちと同じように、こういう言葉を総理大臣が使われるということは、国民の教育上よろしくないことであるという見解において好意的に、あなたに好意を示して新聞社がそれをわざととつたのか、或いは又政府が手を廻して、緒方官房長官あたりから手を廻して、新聞社の記事にはわざと臣という言葉を削るように運動せられたのかどうかということについての御答弁を得たいということ、時間がありませんから、すべてまとめて質問いたしますが、それが第一点であります。 それから第二点は、当日のあなたの立太子礼の寿詞というものを見まするというと、非常にまあむずかしい漢文体で書いてありまして、私のような無学の者には読んでもわからない文章なんでありますが、「天日ノ光ヲ重ネテ億兆ノ望ニ」ということも、これも少しおかしいのですが、それよりも特にお尋ねしたいととは、こういう言葉があります。「殿下降誕陽復ノ辰ニ当リ身位天序ノ統ヲ承ケサセタマフ」と「身位天序ノ統ヲ承ケサセタマフ」というのい、どういう意味なんでありますか。一つ字義の御解釈をして、無学な私たちを御教授願いたいと思うのであります。ただ私のこの無学な頭でこれを読みまするというと、「天啓ノ統ヲ承ケサセタモフ」という言葉は、何と言いますか、やはり天皇が憲法下において否認せられた、自分は神様ではないのだ、自分は人間なんだ、いわゆる人間天皇ということを天皇陛下みずから声明していられるのでありますが、その天皇陛下の人間天皇の御精神に反して、やはり旧憲法時代の神様天皇の考えに則るところのこれは文学であつて、言葉であつて、天皇陛下の御精神にこれは反するのじやないか。従つてそうした人間天皇と同様な民主主義的な天皇のあり方に終始したいと、恐らくは御勉学になつていられるととろの皇太子陛下のお考えにも反するのではないか。而もそこに「臣」という言葉をお付けになつて、自分は総理大臣と憲法に書いてあるのだからかまわないじやないかというような三百代言的なことをお言いになつていると私は感ずるのでありますが、明らかにこれは人民主権を基本とするところの新憲法の精神を蹂躙するものである。同時に天皇陛下及び皇太子殿下の御精神にむしろ背いた賀詞をあなたが言つていらつしやるということについての御見解を承わりたい。
○委員長(岩沢忠恭君) 吉川君、時間が……。
○吉川末次郎君 それじやまとめて申上げますが、質問が前後しますが、その前にこういうお言葉をお使いになつても、成年式或いは立太子式というものが単なる皇室の私事であつて、プライベート・アツフエアーであれば、これはどんなお言葉をあなたがお使いになつてもかまわないと思うのであります。併しあなたは立太子式及びこの成年式というものを憲法上の国事とお考えになつているか、或いは憲法上の国事でないとお考えになつているか。若し憲法上の国事でないとお考えになつているならば、私はこれは総理大臣の立場において今いらつしやるあなたに対して、こういうことを深く問題にいたしたくないのでありますが、それの御答弁を頂きたいと思います。国事であるという御解釈であるならば、それは先ほど申しますように明らかに憲法精神の蹂躙である。日本の将来のために非常に私は民主主義の発展の上において暗影を投ずるところのものである、こういうふうに考えますので、第一には、立太子式及び成年式はこれはあなたは国事とお考えになるか、或いは単なる皇室内の私事とお考えになるか、国事とお考えになるときには、それの憲法上の基礎を明らかにして頂きたい。法制局長官が代つて御答弁なさらないで、極めて簡単な問題でありますから、あなたに直接それの御答弁を願いたい。そうして先ほど申しましたように、この「臣」というところの言葉を新聞が取消して載せておるのは、政府が手を廻して載せないようにしたのかどうかということの問題、それから寿詞の中の「身位天序ノ統ヲ承ケサセタマフ」という言葉の意義、それからそれが人間天皇の陛下の真意に反対するものではないかという私の質問に対する御見解をお答え頂きたい。
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。新聞に何と書いてあつたか私は承知いたしませんが、併し私ははつきり「臣茂」と申したのであります。この気持は八千万国民が皇室の御慶事に当つて或いは私と同じように臣として、臣茂として国民の気持を代表した場合に申述べたことが、多くの国民の気持に副うと考えたから「臣茂」と申したのであります。無論立太子式は国事と考えます。そのために陛下は今御指摘になつたように、民主主義を最も深く遵法しておられる天皇であります。故にその天皇に対して民主主義の国民、これは尊敬の的であり、又象徴と考えておるので、「臣茂」と代表して申すのは不穏当はない。もしろ国民大多数の気持を代表したものと考えて、「臣」という字を使つたのであります。新聞がどうして「臣」という字をとつたか、それは存じません。その他二つの問題については、法制局長官からお答えいたさせます。
○政府委員(佐藤達夫君) 只今お言葉にありました寿詞につきましては、実は私も目を通した責任者でございますから、一応お答え申上げます。殊に「天序」という言葉がございましたが、これも私も調べまして、この序というのは血筋と申しますか、そういうような意味らしうございます。天という字はこれは天皇という言葉が憲法にも使われておりますから、そのお血筋ということで別段意味はないと思います。要するに世襲制度というものも憲法できまつております。それから皇統という言葉も皇室典範……、これは皇室であることは申すまでもございませんが、皇室典範の第一条に使つてあります。その点から見て、この言葉自身について別段憲法上の問題はないと考えておるわけであります。
○吉川末次郎君 非常に不満足ですが、時間がありませんから他日又再質問いたします。
○堀越儀郎君 先ほど総理は、施政方針演説において高調せられた道義の高揚と愛国心についての山下委員の質問に対して、総理は何か以前のような、国民精神総動員というような形でやられるというようなお考えでありましようか、それとも一般の国民の教養を高めて行くという意味に今後の道義高揚というものの実体をお考えになつておられるのか、そういう点についてお伺いいたしたいと思います。戦時中行われました国民精神総動員というような大きな運動を展開されるというような気持でお考えになつたのか、或いは国民の教養を高めて、国民道義の高揚を図りたいという考えであるのか、これを総理に伺つて、あと更に細かく伺いたいと思うのです。
○国務大臣(吉田茂君) ちよつと遠くてあなたの御質問の要旨を掴むことができませんでしたが、御趣旨はどういうことでありますか、
○堀越儀郎君 特に施政方針演説で展開されましたあの言葉ですね、戦時中に行われた国民精神総動員というような一大運動を展開されようというような意図の下にお考えになつたのか、或いは更に国民の教養を成るたけ高めて行こう、つまり教育尊重という意味でお考えになつているのか、或いは前の天野文相のときのように、国民の実験要領というものを出そうと文部省が計画されて非常に世論の反撃を受けて、天野さんはあつさりと引込められた、そういう点を更に又むし返そうとお考えになつているのか、そういう点もお聞きしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) お答えします。今の私の申す修身とか、歴史の教育の復活ということは、決して過去における総動員法とか、或いは天野前文部大臣の話は、私の記憶では勅語の復活というようなふうに聞いておるのです。そういう教育勅語の復活をする趣意でやるのかということであれば、何らの関係はございません。
○堀越儀郎君 これは学課内容で先ほども山下君の御質問にお答えになりましたが、歴史科とか、或いは日本の地理を教えるとか、或いは修身を復活するというようなことをおつしやいましたが、従前のままの修身をそのまま復活されようというお考えなんですか、或いほ歴史の点においてでも、元のままでは超国家主義というような虞れもあり、非常にこれは慎重にお考え頂かなければならないと思うのでございますけれども、そういう点、具体的にお練り合いになつているのかどうか、その点も伺いたいと思うのです。
○国務大臣(吉田茂君) 私の只今申した修身とか、歴史の復活という趣意は、先ほど申したように、祖国愛なり、或いは先ず日本の国が誠に立派な過去の歴史を持つておる、又立派な国柄である。歴史的に考えて見ても、地盤的に考えて見ても、日本の国は立派な国であるという祖国愛を国民に植付けべきであると、こう考えるのであります。終戦後いろいろな思想というか、或いは終戦後の一時の思想の空白のために生じたいろいろな国民の脳裡において欠陥もあつたでありましようし、又教育等についても欠陥があつたでありましよう。新らしい国家として出発する場合に当つて日本の歴史、それが過去の歴史の教え方は私はどうであつたか存じませんが、けれども、今のような趣意で以て日本の祖国愛、愛国心或いは同胞愛と言いますか、そういう気持を国民の間に養うことが日本として、新日本として出発するのに大事であるという考えで、過去における教育或いは教育の仕方等については私は余り考えておりませんでした。而して私のような気持で文部省が教育の方針を立てるならば、これは文部大臣において構想がありましようから、お聞きを願いたいと思います。
○堀越儀郎君 総理のお考えは大体わかりました。これはよほどむずかしい問題でありまするので、慎重にお考え頂きたいと思うのであります。文部大臣が出ておられれば、総理の意を汲んで具体的にお考えになつておる構想をお伺いできるわけでありますが、文部大臣見えていますか。
○委員長(岩沢忠恭君) 今衆議院に行つております。
○堀越儀郎君 それでは総理に重ねてお聞きいたしまするが、この問題については、衆議院で成田委員が質問されてもおりまするが、勿論国民生活の安定というようなことも一つは大事である。同時に国民の教養を深めるということ、つまり国際復帰に際して、国際間における日本人の信頼感を深めるということは私は大切ではないかと思います。それに対して私は総理は教育問題に対して、教養をもつと高めて行くという問題に対して非常に関心をお持ちであろうと思うのであります。その点について二、三お尋ねしておきたいことは、一つは私学の問題であります。私立学校は大学、短期大学或いは高等学校、中学校、小学校とありますが、その日本の教育の六五%、半分以上を私学が担当しておるわけであります。その私学に対して、私学振興会に対して資金を昨年出されたのでありますが、二十一億四千万円という僅かな金であります。而もそのうちの現金は三億九千万円であつて、あとの十七億五千万円というものは戦災復旧のための学校の経営者、若しくは都道府県に貸付けられた債券を割当てておるのであります。その利子を資金として運用するのでは到底賄われない。今後まだ以前の私学の早稲由、慶応、日本、法政というような非常なたくさんの大学なり、或いは私立その他の高等学校は日本の教育に対して非常な貢献をしており、且つ将来も大きな期待を持たなければならないと思うのでありますが、この私学振興会に対して僅かな貸付金の計上しか見ておられない。この補正予算では我々期待したのであり、又希望もしたのでありますが、盛られておらない。二十八年度には更にそういう点についてお考えがあるのか。第一、これは私学というものに対して従前の歴史から考えて、今後の日本の教育担当部面から考えて重要にお考えになつておられるのか。そういう点を根本的に承わつて、具体的には大蔵大臣なり、文部大臣から承わりたいと思うのであります。
○国務大臣(吉田茂君) 私は教育の専門家でありませんからして、専門的なお答えはむずかしうございますが、私の個人として、或いは総理大臣として考えておりますことは、過去の日本の教育が余りに官学に片寄り、或いは統一的と言いますか、何事も統一々々というようなふうに傾いたことが日本の教育組織の欠陥ではなかつたかと始終思つておるのであります。そういう気持は別として、又そういう事実があるかどうかということは議論の種でありましようが、とにかく私は官学等で思想を統一するということはよくない。私学は私学の特徴とするところがありましようし、各学校共に特異性があり、その特異性を伸ばして行くことが日本の教育を完全ならしむるゆえんではないか、そう私はかねて考えておつたのであります。これは過去に上りますが、、二、三年前、いつでありましたかちよつと記憶いたしませんが、私学が荒廃したと言いますか、復旧がむずかしい。そこで早稲田大学、慶応義塾その他の学校の代表者が見えまして、私学復興の援助をしてもらいたい、私は直ちに賛成いたしたのであります。併し財源はどうか知らないけれども、できるだけの何はしよう、援助もしたいと思う。少くとも私の今申したような考え方から援助もしたい。そうして今の私学復興資金とどういう関係がありますか知りませんが、思うにそのときの話などに胚胎して、政府がない予算の中からして、多少なり資金を、金を編み出したものであろうと思います。そのいきさつはちよつと私記憶はありませんが、とにかくそういう話があつた。そうして私としては私学復興のために政府として助成するのは結構な話であるということをそのときはつきり申上げた記憶があります。それから出発して今のようなことになつたか、ならないか、連絡があるかないか、私は記憶がありませんが、とにかく私としては官学一方で統一をするとか、或いは私学の特徴を廃する、荒廃せしむるということはよくないことと考えております。
○堀越儀郎君 総理の御意向はよくわかりました。それでは大蔵大臣にお伺いしたいのです。先ほど申しましたように、私学振興会に貸付けられた賃金が、二十一億のうち十七億までが戦災復旧のために貸付けられた。むしろこれは助成金であろうと私は思うので、あります。勿論教育団体でありますから、借りたものを返さんという意向は勿論なかろうと思う。返せる限りは返すだろう、丁度見返資金と同じような関係にも見られると思うのであります。それを資金に繰入て、そうして二十一億と大きく唱えながら、僅かに三億九千万円しか現金を出しておらない現状であります。それで日本の六割五分からの教育を担当しておる私学に対しては、それで十分ではないと思うのです。総理の只今の考えで、私学に対して深い理解をお持ちのことはよくわかつたのでありますが、大蔵大臣として二十八年度に私学振興という面に奨励をし、又大いに助成をして行く意味において、もつと積極的にお考えになるのか伺つておきたいと思います。
○国務大臣(向井忠晴君) お答えいたします。来年度の予算におきまして十分考慮はいたしたいと存じます。ただお言葉の積極的ということをどの点までに解釈いたしますか、又実行できますか、その点は今以つて御確答申上げるわけに参りません。
○堀越儀郎君 続いて六三制の問題でありますが、これは以前の国会に私は総理にお尋ねして非常に理解のある御答弁を頂いたのであります。六三制は早いと思つたけれども、これはやらなければいかんというので、自分のときにきめた、おれに責任があるという意味の御答弁があつて、なし崩しにでもしたいというお話が、その当時の委員会で私の質問に対して承わつたのでありますが、大蔵省と文部省の六三制に対する考え方の基調の食違いの点を大蔵大臣故び文部大臣はどう考えておられるか、これは総理のおられる前でよく御解決願いたいと思うのであります。それは文部省としては最低であります。一人当り〇・七坪の基準に達するために補助をして、六三制の学校を建てる、ところが大蔵省はすでに本年度において完成したものという御見解のようであります。ところが文部省の見解によりますると、中学校においてまだ十六万八千坪足りない、小学校において三十六万四千坪足りない、〇・七坪であります。それ以上更に一坪或いは一・二五という基準に上して行かなければならないのでありますが、最低の〇・七坪において大蔵省は大体完了したものと思うという御見解であるか、それに十大万八千坪なり、三十六万四千坪というものが文部省の考えと違つておる。事実私は公平に考えて、未だに二部教授が解消しない、又非常に狭隘な校舎によつて馬小屋校舎とまでは行かなくても、階級教室さえ残つておる現在、これは遠いところでなしに、東京都下にあるのであります。そういうふうな点から考えて、文部省の考えのほうが私は妥当ではないかと思うのでありますが、そういう点の食違いを大蔵大臣としてはどうお考えになつておりますか、それをよく承わつておきたいと思います。
○国務大臣(向井忠晴君) 只今おつしやいましたように、大蔵省は一応六三制の実行については手を尽したいと思つておりましたけれども、今の二部制になつておるとかというふうな不備の点につきまして、よく文部省と打合せまして適当な方法を講じましよう。どうせ文部省でも主張はなかなか曲げますまいと思いますが、又これから骨を折らなくちやならないと考えております。
○堀越儀郎君 それではこれは特に総理大臣にお伺いしたいのでありますが、六三制の認証債の問題であります。大蔵省では、又文部省もそう考えておられるのか知れませんが、これは自力で建てるものに半額の補助をするという建前が確立する前に、政府の督励によつて各市町村が建てたのであります。これは自力で建てたのだから補助はやらない、併しながら自力で建てられる市町村というのは少い。そのために非常な債務を負つておる。市町村長はそのために首を縊つたという例もあり、リコールに会つた例もあり、辞職しなければならない例がたくさんある。この百億に対しては殆んど補助するというようなことも考えておられないように思うのでありますが、こういうような政治であれば、率先して政府の意向を汲んで熱心にやつた、何と言いますか、正直者がばかを見るという結果になる。こういうものに対して、将来補償をしてやるというお考えがあるのかないのか、これは総理に一つお伺いしたい。具体的にはすぐにとはむづかしいでありましようが、そういう認証債の工事に対して、正直に政府の意を汲んで熱心にやつた市町村に対して非常な苦労をかけておる、こういう問題に対してどう考えられるか、国民道義の高揚という点から巻えて、正直に、黙心に政府の意を汲んでやつたものに対して放つたらかしておく、迷惑をかけ放しでは以てのほかだと思うのです。これは吉田総理の道徳上の責任ではないかと思う。これも政府として当然考えなければならん問題だと思うのです。こういうことに総理はどう考えられますか、総理の御意見を伺つておきたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) ちよつと私わかりにくいのですが、認証債ですか。
○堀越儀郎君 これは補助をするという制度の確立する前に、文部省なり、政府は、六三制の校舎建築なり、学制改革によつて早く建てなければならないということを奨励したんです。それで地方は非常に無理をして建てたのです。ところが補助の制度ができてなかつたために、その学校に対しては補助をしてないのです。
○国務大臣(吉田茂君) 六三制の学校のことですか、私は問題の性質をよく知りませんから、取調べた上でお答いたします。
○堀越儀郎君 大蔵大臣はどう思われますか。
○国務大臣(向井忠晴君) その問題は非常にむずかしい問題でして、大蔵省としますと、それの補助を出すというのは困難なんでございます。今までにも幾度もこのことは文部省とも話合つたのでございますが、只今のところでは補助を出すというふうなことを私から申上げることはできかねます。
○堀越儀郎君 総理にお伺いしますが、大蔵大臣は困難だと言われます。ところが市町村が熱心に政府の意を汲んで率先してやる。ところが正直に一生懸命にやつた者に対して、苦労をかけて、そのまま国家が見逃して、できないからといつて放つて置いて、それで平気でおられるのですか、その道義的の問題を私は伺いたいと思うのです。何とかしてやつてやりたいという御熱意、方法が見付からなければ、これは止むを得ない、仕方がないのだといつて放つて置かれるということは、これは政府として取るべき途ではないと思うのであります。この点で総理の御意見を伺いたいと思います。何とかしてやりたいという御意向であるのか、これはどうせ政府ではできないから止むを得ないとお考えになつて捨てて置かれるのか、総理の考えを承わりたい。
○国務大臣(吉田茂君) 只今申した通り、私は問題の性質についてよく存じませんから、文部省、大蔵省、両方の言い分というのはおかしいけれども、理由を聞いた上で出てお答えをいたします。
○堀越儀郎君 総理の意向はよくわかりましたが、これは単なる制度という問題に対する政治の問題であります。政治の問題だと思いますが、誠意を持つて御解決を頂きたいと思います。特に希望して置きたいと思います。それからこれは大蔵省に更にお伺いしたいのでありますが、現在老朽校舎というものは約四十八万坪ほどあるのであります。そのうちの三分の一、十六万坪というものは、すでに使用してならないと禁止しておる学校なんであります。こういう学校がありながら、現在補正予算においても老朽校舎に対する措置が講じられておらない、政府は使用しちやいけないと禁止した。その学校の改築もできないままで置いておかれるのか、二十八年度には誠意を持つてお考えになるのか、その点大蔵大臣に伺つて置きたいと思います。
○国務大臣(向井忠晴君) この点は来年度におきましては十分考慮するつもりでおります。
○堀越儀郎君 それでは総理に教育委員会の問題について伺つて置きたいと思います。教育委員会が全国に義務制でできたのでありまするが、これは甚だ詭弁のようになりますが、政府の意図に反してできたのじやないかと思うのであります。これは総理は十分この点お考えになつておらないか知れませんが、という意味は、第十三国会において教育委員会が各地にできることを一年延期しようという、そうして更に再検討を加えようという意図の下に政府は提案されたのであります、法律案を……。参議院を通過して衆議院において審議未了になつたのであります。審議未了になつたという事情は詳しくこれをここで論議する必要はないと思います。勿論政党、自由党のお考えでそうされたと思う。ところが審議未了ということは、締局政府の意思がまだきまつていない。政府の意思としてはやはり一年延期して、十分に中央審議会にかけて再考をしようというお考えであろうと私は思うのでありますが、ところが十四国会で再審議せらるべきものが、解散になつたためにそれができなかつた。止むなく従前の法令通り機械的に、自動的に教育委員会というものが各地方にできたと思うのであります。この点から考えますると、吉田内閣の傘下にある政府として、文部省の意図は教育委員会というものをこの十一月にこしらえる意思でなしに、更に延ばして、再検討を加えようとされたそのままであつたと思う。ところが十四国会が幸いか不幸か、ああいう問題になつて、審議をする期間がなかつたのでありまするが、その意図を或いは付度すると、そのままする意思でなく、止むなくできてしまつたという結果になりはしないか、そうすると全国に、任意制じやなしに、義務制に全国にできたということに対して、これは当然とお考えになつておるのか、そういうふうないきさつでできたのだから、更に再考慮をしようというお考えになつておるのか。再考慮するならば中央審議会委員というものを招集されて、お命じになつて、そうして十分検討されなければならないと思うのでありますが、そういう審議会を設けて任命される意思があるのかどうか。或いはこれを育成するとするならば、地方財政に対する非常な圧迫を加えておる。この財政の裏付をお考えになつておるのかどうか。これはもら地方の全体の要望でありまするが、改革しようとされるならば、中央審議会にかける御意図があるのか、そのまま育成されるというならば、地方財政の裏付を当然やらなければならないと思いまするが、その点文部大臣として、地方財政方面に当然お考えになるのか伺つておきたいと思います。
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申し上げます。教育委員会は、御承知の通りに十一月一日から発足いたしております。これにつきましては、先ずいろいろ検討をしなければならんということを私ども考えておつたのでございますけれども、併し一旦実施になりました以上は、できるだけいろいろ指導助言によりまして、その間の調整を図つて運行して行きたいと思つております。併し御承知の通りに、戦後の教育改革というものは非常に広汎にできておりまして、又十分丁重にできておりますが、国情にぴつたりと合つておるものも合わんものもありまして、再検討を考えなければならん、こう考えております。そこで私どもといたしましては、先ず今まで実施されておりまして、而も実績上、これはこう変えなければならんから、ああしたほうがいいのじやないかというようなものが、実際に現われておるものから先ず手を付けて改善をして行きたいと思います。教育委員会のほうも、やはり出発いたしましたものでありますから、初め考えておりまして、これは少し不十分ではないか、これは少し実情に合わんじやないかという考えだけは持つておりますけれども、若しやりますならば、やはり一応実際の調査を見ました、実際に実施しました上で、その結果を見ましてやつたほうが、なおよりよく実情に適した改革ができる、こう考えております。お説の通りに中央審議会は極く最近に構成いたしたいと、こう考えております。無論そういうものを改善いたします場合には、その審議会にかけてよく研究して頂きまして、我々は方針をきめたい、こう考えております。又今教育委員会が出発いたしましたが、本年度の補正といたしまして、十億八千万円の平衡交付金の財政措置をいたしました。これは非常に少いではないかと、こういうような御議論もときどき伺うのでございますけれども、御承知の通りに今すぐ教育長を全部に置くというようなことも実際上はできませんし、指導主事にも成るべくいい人を選ぶために時間がかかりますし、又教育委員会ができましたからといつて、すぐ新らしい建物を建ててそれに十分なる設備をして行くというよりは、今まで市町村でありましたところの部屋の一部を借りるとか、何とかいうことで間に合せまして、今年度はとにかく十億八千万円で十分だという見込みが付いて、政府としては、財政措置をしたわけでありまして、明年になりましたら、もう少し又十分考えて、そうして実情に合つたような財政措置をして行きたい、こう考えております。
○堀越儀郎君 続いて総理並びに文部大臣、外務大臣、関係のかたにお伺いしたいのであります。教育施設の確保ということであります。これは占領中止むを得ないことであつたろうと思うのでありますが、国立、公立、私立学校合せますと四十五校、建物で三万五千坪、土地で二十一万坪、これはもう占領当初緊急止むを得ない措置だつたと、これはよく了解できるのであります。併し行政協定よりまして、一応原則的にこれは戻されたものと思うのであります。併しながら全部が全部までということはできないのでありまするが、学校施設の確保については、昭和二十四年に学校施設確保に関する政令というものが出されて、而も前々国会においてこれは法律化されたのであります。解除された場合には最優先的に教育施設に返還されるべきものであると思うのでありまするが、未だに宙に迷うておる。例えば水産大学、商船大学、或いは都内でも月島小学校、これは今にも還されるようにあつて代りができない、その代りというものに対しては何回か関係大臣のほうに我々質問もし、お願いもし、陳情もし、未だに埒があかないのであります。こういう点どう考えておられるのか、一向はかばかしくない、これは総理は御存じなければよく事情を聞いて頂きたいと思うのであります。そういう点について文部大臣はどう処理して行かれますか、これは大事な問題であります。
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。お説の通り教育施設が宙に浮びまして教育に支障を来しておる点もあるわけでありまして、これは我々は常に関心を持つて、できるだけ早く全面的の接収解除をして頂きたいと、こう考えて努力しておるわけでございます。私就任以後いろいろ調べてみますと行先がないからとか何とかいうこともあるようでございますが、それはできるだけ一つ行先を早く作つてもらいまして、そして各学校施設は教育の本旨に従いまして、そこに還つて行くように努力しつつありますから、暫く御猶予願いたいと思います。
○堀越儀郎君 今教育施設の問題につきまして文部大臣が答弁せられましたが、総理もその点について是非御協力願いたいと思うのであります。 更に私は、これは小さい問題のように思われるのでありまするが、国家の将来の食料問題について非常に重大な問題だと考えておることで、総理の御意見を承わりたいと思います。それは学校給食の問題であります。学校給食の問題は、これはもう些細な問題のようにお考えになつておるかも分らないのであります。その証拠に昭和二十七年度の予算には文部省では計上されずに削られてしまつた、僅かに農林省のの食糧の特別会計から廻わされるという状態になつておる。けれども食生活というものは今までの日本の食生活を余ほど将来考えなけれならないのじやないかと思います。殊に主食において三百万トンが足りない、約二千万石のものが足りないと言つておるが、この不足をどうするか、余りに米麦というものに依存し過ぎて来たところに従来の弊害がありやしないか、これを子供のうちから十分米のみが主食でなくてもやつて行けるという私は習慣を付けなければいけない。将来の食生活の問題において、或いは食料増産、単に米のみを食うという問題でなく、或いは蛋白質という問題、その他の問題について今まで食生活に非常に私はルーズだつたと思う。要するに飯さえ食えばいいという考え方を是正しなければいけないのじやないかと思う。この点非常にこれは大事だと思うのは、私昨年アメリカに参りまして、二世、三世の人とながく懇談する機会があつた。アメリカに生れてアメリカに育つた二世、三世が一世の人の習慣であるように、日に一度米の飯を食わないと落付かないという考え方、そういう点からすると米というものに対する日本の国民の執着というものは非常に強いのじやないかと思う。これは小さい時分から直して行かなければできないのじやないかと思います。私は米が足りないというだけじやなしに、余つてももつと食生活の改善という問題において考え直して行かなければならん。国民体位の問題、国民保健の問題からもこれは大事な問題だと思うのであります。殊に三百万トンが足りないというのでありますから、この補給を米のみに依存するという従前の習慣をどうしても子供の時代から考え直さなければならないのでありまするが、その大事な習慣を付ける給食の問題に対して、二十七年度においては文部省の予算が零になつておる、二十八年度はどうされるのか。この給食問題というのは単に学校で給食するというだけでなしに、将来の食生活の改善という国民体位の問題、保健の問題から当然考えて行かなければならない大事な問題であると思いますので、総理はこういう考え方に対して反対の御意向をお持ちなんですか、御賛成になりますか伺つておいて、更に大臣にも伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 児童給食の問題については、曾つて大分閣議でも議論になつたのであります。食生活改善という趣旨から農林省のほうに移したと記憶しておりますが、併しこれは私の考えでは単にパンを食べるだけの問題でなくして、国民として国民の食生活についてはもう少し堀下げて考えなければならんと思つております。曾つてサムスという名と思いましたが、進駐軍の衛生部長でありましたか、帰る時に私に頻りに、日本人が米を主食にしたのが間違の初めだ、日本の国中を見ると例えば山の麓或いは川辺というような牧畜に適する土地がたくさんある。その空いた土地に牧草を植えるなり或いは牧畜するなり、日本の食糧に牛肉なり牛乳を加えることによつて、日本の国民の体位は余ほど改善せらるべきはずであると言つて、瀕りに勧告して帰つたのであります。私もそうだと思つて、今なおそれを考えておるのでありますが、この間私は高知に行つたときに、高知の自分の選挙民の諸君に対してその話をして、単に米食のみに依存せず、酪農その他のものを考えなければならんと勧告し、又農林省においても全国に亘るところの牧畜奨励等についての成案を建てるように希望しておるのでありますか、単に児童給食という以外に、お話のように食生活の改善の一歩として児童にパンを食べさせるという趣旨で農林省に予算を移したと、こう承知しております。なお国民の食糧という問題については厚生省その他で研究いたしておりますから、他日成案が得られるだろうと思います。いずれにしても手取り早く申せば、日本の農業の中に牧畜を加えて、もつと牧畜を奨励すべきものと私は希望するのであります。
○小野哲君 私から以下数点につきまして総理に御質問をいたし、御答弁を煩わしたいと思います。 御承知のように終戦後やがては十年くらいになろうとしておるわけでありますが、新らしい憲法ができて以来各種の制度の改革が行われた。それが現に実施されておるわけでありまして、この中には相当再検討をしなければならないものもあるのではないか。その場合に憲法自身に触れる問題もあるし、或いは憲法に基いて制定された法律によつて樹立された制度もある、いろいろのやはり制度があるわけであります。それと同時に現在国民が非常に心配をしておりますことは、やつと平和条約が発効いたしまして、いよいよ日本が独立国家になつた。一体日本は今後どういうふうな歩みを続けて行くのだろうかということにつきましては、国民がひとしく懸念をしておる。而もその心配の最も重点となるべきものは、国民生活の安定ということである。国民生活の安定は国の経済政策がうまく行くかどうかというところにやはり問題が起つて来るわけでありまして、したがつて私がただいまから質問をいたそうとすることは、現行の諸制度の再検討という問題と、それから国の経済施策を国民が納得するように、又国民に対して方向を示し得るような方策をとる必要があるのではないか。こういうことを基礎として、なおその他に二、三の点を附け加えて質問をいたしたいと思うのであります。 先ず私が伺いたいことは、諸制度の改革の問題でありまして、実はいつでありましたか、昭和二十六年、昨年でありましか、政府は選挙制度調査会というものをお作りになりまして諮問をいたされたのでありますが、その諮問の内容となつておりますものは、日本国憲法の改正に関する国民投票制度要綱というふうなことであつたと思うのであります。これに対しまして、選挙制度調査会から本月の二日付けを以て総理大臣に対して答申が出ております。この選挙制度調査会の答申を見ますと、要は憲法第九十六条に基きまして特別の国民投票を行う。憲法改正をするためは、国会は無論発議をいたしまして、これを提案し、更に国民の承認を受ける。その場合において特別の国民投票を行うんだと、こういうことに基いた、いわば技術的な手続に関する答申であろうと思うのでありますけれども、又この答申が出たからといつて現内閣が憲法の改正の意思があるのだと、こういうふうには私は結論付けることはいたさないつもりでありますが、併しとにかく国民投票制度につきまして、政府が諮問をして而も答申が出ておるというところは、私ども国民といたしましては十分な実は関心を持たざるを得ないのであります。先の国会におきましても憲法第九条の戦力の問題につきましていろいろ熱心な質疑応答があり、論議が繰返されたことは御承知の通りであります。併し単に総理がいつも言つておられるように再軍備はしないのだ。従つて憲法は改正しない。こういうことは総理の御言名を私どもは信頼をいたいと思います。併し単にこの憲法の問題は再軍備の問題だけではないのでありまして、新しい憲法が制定されました以後において、一体我が国の国会制度は直に憲法の期待しておつた通りに行われておるか。或いは更にこれに対して附加すべきものがないかどうか。こういう問題もやはり検討しなきやならん点があるであろう。これは我々の具体的の体験によつて得られた教訓と申しますか、結果において再検討しなければならない問題もあるのではないか。或いは又地方自治制度の問題につきましても、これは別途伺いたいと思つておりますが、政府は地方制度調査会を作つて再検討いたしたいということをすでに申され、調査会も昨日から発足をいたしておるわけであります。 更に又、日本の家族制度の問題その他考えて見ますると、この新憲法の制定に伴いましていろいろの制度が改革をされ、現に実施されておる。この経過において私どもが再検討をいたしてはどうかと考えられる問題があるわけでありまして、一概に憲法論は単に再軍備との関係においてのみ私は論議するだけで十分とは考えておらないわけであります。再軍備の問題につきましては賛否両論があり、それぞれ論議をされる必要があり、又そうあるべきであると私は思いますが、これはまあとにかく別といたしましても、その他の問題につきまして制度上再検討を必要とする、而もそれが直接憲法に触れる問題もあるのではないか、たまたま国民投票制度についての諮問が出て、それに対して答申が出ておるというふうな時期であり、而も我が国が独立いたしまして真に自主的な立場において諸制度の問題を取上げて判断をし得る立場に置かれておりまする今日におきましては、諸制度の改革に伴いまして憲法自体についても再検討をして行つていい時期が来たのではないか、かように私は考えるのであります。それにつきましては単に選挙制度調査会というふうに技術的な、手続的な問題だけにとどめないで、現行の我が国における重要なる諸制度につきましてこれを再検討する、言い換えれば憲法そのものにつきまして再検討をするために、十分に国民の輿論を反映し、又国民の輿論を尊重するために国会は勿論でありますが、政府におかれましても何らか特別の機関を設けられまして、広く学識経験その他の輿論をお聞きになるようなお心積もりあるかどうか、この点につきまして先ず伺つておきたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 独立後において新日本として進んで行こうとするこのとき、法律制度その他において行き過ぎたもの、行き足らざるもの、或いは改むべきもの、こういうものは各方面にあるかどうか考えて、いろいろ委員会を設けておりますことは、例えば今御指摘の地方制度とか或いはいろいろあります。その結果を待つて政府は考えるが、今日のところは直ちに憲法を改正するために調査会を置くというような考えはございません。何となれば、憲法をそう無闇に改むべきものではない。憲法は国の大典といいますか、最も国法として重大なるものであります。それを軽々しくと言つては語弊があるかも知れませんが、国民の輿論が動いて、是非憲法は改正すべきものであるという輿論が広く国民の意思が動いて、然るのちに政府が動くべきものであり、諸制度の根本である憲法を政府みずからして改正をすると叫び出すことはどうであろうか、今日のところは政府としては憲法の改正にタツチする時期ではないと考えます。いずれいろいろ委員会において或いは学識経験者の意見も出て参りましよう、国民の輿論として憲法を改正すべきものであるという盛り上る力ができたときに政府が追随するということが、民主主義国において行くべき道でないか、いずれにしても政府が直ちに憲法改正委員会のごときものを設けまするならば、そのために却つて国論、国情が安定を欠くというようなことなども懸念せられるのでありますので、政府は只今のところでは直ちに改正委員会を設けるような考えは持つておりません。
○小野哲君 総理大臣のかねてからのお考え方から考えますと、憲法改正ということはやらないのだ、従つて只今の御答弁のように、憲法改正に必要な委員会を置かないのだ、これは論理上私は正しいと思います。ただ私が申しておりますのは、憲法を改正するために委員会を作つてはどうか、こういう意味ではなしに、現行の諸制度を見た場合に、いろいろ諸制度を改革するために委員会とか調査会がたくさん作られることになるわけでありますけれども、基本的には結局憲法問題に触れて来なければならない。従つて総理の仰せになりますように、国民の輿論が盛り上つて来た上でこれを考えるのだ、これも確かに一つの行き方であると私は思います。ただその場合に、国民の輿論をどこかで集約するところがあつていいのではないか。いつもでも国民の輿論ということで野放しにしておくということでななかなかつかみいくい。従つて憲法を改正するための委員会とか、そういう機関ではなしに、現行の憲法の中で問題点があるかないか、こういうことを再検討する、そういうことについて各方面の意見をお聞き取りになつて、更に将来国民の輿論が盛り上つて来た時に、いよいよ成規の手続によつて憲法を改正する。今急速に憲法を改正すると、こういう意味ではないのでございまして、その点はちよつと総理としては、或いは私の言い方がまずかつたのか、お聞き取り違いがあるのではないかと思います。そこで私が申しました趣旨は憲法の再検討をする、どこに問題点があるか、こういうことを研究審議をする機関を作つてはどうか、こういう意味でありますので、若しこの点について更に総理がご意見がございましたら、後ほど引続いて御答弁を願いたいと思います。 更に私は、制度の改革と関連いたしまして、制度の改革というものはとかく行き過ぎの場合もあつたり、或いは国情に副わない、こういうものがあつたことは、これはまあ管理政策の一環として行われた当時の経過から判断いたしまして、これ又やむを得ないものがあつたかたと思います。併しこれはこのままで打ち捨てていいものではないと思うのでありますが、同時にやり方によりましては逆行してみたり、或いは反動化してみたり、そういう虞れが多分にあるし、又国民から比判を受ける場合が想像に難くないのであります。例えて申しまするというと、これは地方制度の問題ではございますが、知事の公選制度はやめちやつたらどうだ、ああいうものは煩雑だというふうに、ただ事もなげに言う人もある。或いは又いろいろの免許制度があつて、こういうふうなものは統制の残り滓であるから、こんなものはやめちやつて、飽くまで自由放任の制度で似てやつたらどうだ、例えば自動車事業のようなものも免許制度があるが、こんなものはやめてしまつて、誰でも勝手にやれると、こういうふうな非常に行き過ぎたまあ非常識と言つてもいいくらいの議論をする者もある。こういうふうないろいろ行き過ぎた議論をしたり、或いは又ややもすると逆行、反動的なものに帰ろうとすような場合も起つて来るわけでありますので、従つてこれらの諸問題を本当に腹を打割つて審議或いは調査をするにいうふうなものを、やはりこれは政府が天降り的にやるという意味ではなしに、お持ちになることが私はいいのではないか、とういう意味で先ほど来適当な憲法の諸問題、或いはこれに附帯した諸制度の改革につきまして、必要がありや否や、どこに問題点があるかということも話合う、調査をする、とういうふうな機関を作られることが今日においては必要な時期になつておるのではないかということを私は申上げたいのであります。 続いて、やはり制度の問題として地方制度の問題でありますが、これも恐らく政府としましては、今回地方制度調査会を組織されまして、そこでいろいろと審議をいたした結果に基いて政府は善処したい、こういうお気持であろうと思うのでありまして、これは私も実は従来から強調しておつたものでありますので、異論は全然ないわけであります。併し新聞紙上その他、これは総理は責任をお持ちになる必要はありませんけれども、巷間いろいろと伝えるところによれば、どうも現行の地方制度、即ち憲法の定めておる地方自治の考え方から少しこれを変えて行つて、むしろ知事の公選制とか、その他いろいろの問題につきまして相当思い切つた改革をしたほうがいいのではないか、とういうことがちらほらどうも出て来ておるようであります。で、総理はかねて、我が国が民主々義を基盤とした国家でなければならんと、又それによつて国政の運営をやるのだということを明らかにされておりますので、総理御自身につきましてはかような懸念は私は持ちたくないと思うのでありますが、ややともすると、いわゆる復古的な、先ほど吉川君が言われましたが、やや感傷的な気持になりやすい、こういうふうな点を考えまして、地方制度の問題につきましても総理は将来どういうふうな工合に持つて行くことが総理御自身の御意見としてよいかどうかというふうなことにつきまして承わりたいと、かように思うわけであります。
○国務大臣(吉田茂君) 地方制度については、いろいろ議論もあり、又不平もあり、その弊害として指摘されておるところもあります。そこで政府としては、さつきお話のように、地方制度の審議会を設け、又税制の問題にしても、中央と地方との間の税の振り分けというようなことについても考えなければならんと考えて地方制度の審議会を設けております。然らば私として、こうしたらよかろう、こうしろというほどの卓見は実は持つておらないのでありまして、委員会の答申を待ち、或いは又委員会における議論を待つて考える、又考うべきであり、私民主政治と言いますか、政府が独断的にこれをこういうふうにするために、委員会を設けてこういう結論を出せというがごとき指導をするということはよくないことであると信じますが、私からしてこういうようなふうに改むべきものなりという卓見を出すだけの只今持ち合せがございませんから、もう少し時間をかして頂きたいと思います。
○小野哲君 私はこれ以上総理にはお聞きすることを差控えたいと思いますが、それぞれ所管大臣に又お聞きする機会もありますので、総理におかれましても十分一つ関係大臣からもお聞き取りを願つて御研究を願いたいということを申し添えておきたいと思います。 次は経済の問題でありますが、総理も御承知のように、終戦以来日本の経済を復興しなければいかん、復興させなければいけないというので、いつのときでありましたか、芦田内閣のときであつたかと思いますが、経済復興委員会というものを作りまして、昭和九─十一年を基準年次として我が国の経済復興の一応見通しを立てると、こういう意味で五ヵ年計画を作る作業をいたしたことがあると記憶いたしております。その後、第二次でしたか、第一次でございましたか、その後の吉田内閣になりまして、吉田総理大臣としては、占領治下において将来の経済復興計画を立てるということは見通しもつかないのだから、これを公表するわけに行かないというようなお話があつたように私は記憶をしておるわけであります。その後第三次吉田内閣におきまして経済自立計画というものが立てられ、これは周東氏が長官のときであつたかと思いますが、三ヵ年計画であつたかと思います。併しこれもやはり占領下の状態を基礎としての話であつたわけでありますので、一応の計画に過ぎなかつたわけであります。ところが、いよいよ我が国も独立いたしました今日におきましては、国民として聞きたいことは、或いはこの昭和二十七年度の当初予算の中に平和処理費であるとか、或いは防衛関係の諸費が計上されておる、こういうふうなことになつて来ると、一体日本の経済というものは将来どういうふうな方向に進むのであろうかということにつきましては、これは懸念を持つことが常識であろうと存じます。ただ問題は、一応の計画であり又見通しでありますので、従つて的確な、確定的なことはむずかしいと思いますが、国民に対して、日本の経済の将来のあり方というものはこういう方向で進めて行きたい、又そのためにはこれだけの努力をしなければ生産指数の上においてもこれだけの程度には達し得ないのだ、或いは国民の生活水準においても、今日におきましては大体七〇%程度まで回復しておるのではないかと思いますが、そういうふうな鉱工業その他重要産業の生産率がこの程度増強した場合におきましては、この程度の生活水準の向上ができるのであるということを十分に国民に示し、又納得をさせて、そして生産の増強に対して国民の協力を要請するということが我が国の経済自立のために必要なことであり、独立国家としての行政運営、国政運営のための一つの何と申しますか目安としてこれは大切なことではないかとかように思うのであります。尤も今日の金融、財政或いは経済の諸情勢を勘案いたしますというと、相当スペキュレーション的な雰囲気が多分にある、これをうつちやつて置くと或いは今後インフレの現象が起るのではないか、こういう懸念もないわけではないと私は思います。そういう意味でまあ敗戦後十年近くになりますというと、本当に我々は敗戦の現実をしみじみと感ずる時が私は来たのではないか、そういうことから考えまして、何か政府におかれましては只今申上げましたような趣旨に添いました総合的な経済の見通しを立てて、そして国民に方向を示し、更に国民の協力を求めるというふうなお考えを持つておられるかどうか、この点を伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 過去におきまして経済審議庁でありましたかが五ヶ年計画でありましたか三年計画を立てて、そうしてこれを公表しろ、或いは政府の基本政策にしろということであつたか、こういう事実がありました。これに対して私は反対いたしました。なぜかと申しますと、その当時における国際情勢も変転極まりないものがあり、第三次世界戦争が起るとか起らんとかいうような議論も盛んにされており、同時に日本としては在外機関も持つておらず、又海外に従来の商社が出ておるということもなくなつて、情報を収集するとか或いは事態を観察するといいましても、非常に限られた機関しかないものでありますから、それでこの情勢において、この事態において見通しをつける、学者の議論としては見通しがつくかも知れませんが、果してそれが実情に適するかどうか、適しない見通しをつけて、そうして発表いたすならば徒らに世論を迷わすということになるのでありますから、これは自分としては賛成できない、本年とか来年とかいう見通しはとにかくあるけれども、三年、五ヵ年ののちに亘る見通しまでをつけて、そうしてこうなるとかああなるという結論を出すということは政府としてすべきでないという考えから、大分反対が当時あつたようでありまして、その五ヵ年計画についての発表でありましたかはこれはとめました。それからその後お話のように三ヵ年計画ができたかできないか、ちよつと私記憶はありませんが、政府としてはお話のように国民をして世界の情勢を、或いは経済の方向、国内産業の進路というようなものを時々政府の資料によつて国民或るいは当業者の参考に供するということはいたすべきであり、そのために経済審議庁があるのであります。で、この研究は政府として或いは審議庁として研究を続けておりますのみならず、殊に経済、海外市場の情況等については外務省の機関としてその収集に努めさしております。今日政治、外交と申しましても主として経済であつて、従来のように政治とか何とかいうような問題については頭を使わなくてもよろしい。主として日本の貿易の伸長と、或いは又日本の産業発達のために参考になるような資料を集めて報告するようにと申付けております。これらの報告等がどれだけ有益なものであるかはとにかくといたしまして、漸次日本の商社が海外に支店等を設けるような時代になりつつありますから、これらの公私といいますか、その官民……民間の報告或いは政府機関の報告等を集めて、そうしてその集めたものについて政府が発表をするということは、これはいたしたいと考えております。さつき議論になりました広報機関もこの趣意からであります。国民が正確なる資料を得て、そしてその知識の下に或る判断をする、ここに民主政治のあり方があると考えますから、海外、少くとも外務省機関にはそう申付けてあります。又その資料を相当送りつつあると思いますが、今お話のように特に機関を設けなくとも経済審議庁はその目的のために建てられておるのであります。この機関の働きがどうなるか、有効に働けば相当有力な、有益な資料を提供することもできましよう。この機関が有力なる資料を提供するよう、又し得るように御協力を願いたいものと思います。
○小野哲君 私は要するに結論的に申上げたいことは、その日暮し的なさまよつた、とまどつたような気持に国民を置いておくということが政治としては適当じやないということでありますので、総合的な機関を設くべきかどうかということは、これはなお技術的に検討を加える必要もありましようし、或いは経済審議庁の機能を発揮することによつて、その目的が達成できるとするならば、それも結構だと思います。要はこれは方法論に過ぎません。方法論でありますので、政府がよく御検討になつて、適当な方法によつて、とにかくこの国民にとまどつたような気持の状態で日本の行く先をいつまでも心配させるということにつきまして、何とか政府としてもこの際十分な努力をなされる必要があるのではないか、こういう意味で申上げたわけでありますので、折角更に御研究をわずらわしたいと思います。 次に、当面の問題として伺つて置きたいことが二点あるわけでありまして、先ず第一は最近行われました或いは行われつつあるストライキの問題であります。炭労ストにつきましてはやつと解決の緒についたのでありまして、我々もほつとしたような気持を持つわけでありますが、併し今回の争議の経過を見ますというと、公共の福祉或いは国民生活又は治安の問題と関連いたしまして、私どもは相当大きな関心を寄せなければならない問題があるのではないか。国民の経済生活及び治安、この問題はやはり日本が今後自主的な国家として運営されるための基本的な条件になるわけでありますので、従つてこれに重大な影響を及ぼし又は損害を与えるという争議につきましては、余ほど私どもは考えなきやならない。それにつきましては勿論国会においても大いに論議され、且つ論及されなきやならんと思いますが、政府におかれましても果して現行制度のままでよいかどうかということを再検討される必要があるのではないか、単に制度のみならず労使の調整に関しまして具体的に如何なる施策を採ることが適当であるかということを十分に検討されまして、将来かくのごとき争議が再び発生しないように、国民が安んじてその生活を享受できるような措置をお考えになる必要があると思いますが、これに対しまして総理はどのような御構想を持つておられますか、伺つて置きたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 御心配の点は政府も憂いを同じうしております。さて、この将来に対処してどうするか、法制等についても考えるとか、或いは期間、方法等についても考えるとかという、今日関係省において実は研究いたしております。適切なる成案を得たいと思つております。 で心配をいたしておりますことは、過日来の状態について、お話のように産業方面から申しても、治安の面から申しましても、又国民の生活或いは社会生活の上において電気が消える、ガスが消える、非常な不安を与えておる。この事実は見逃すべからざる事実と考えますから、これに対してどう対応するか、関係省において、ひそかにと言うのはおかしいのですけれども、研究いたしております。
○小野哲君 最後に伺つておきたいのは、これはすでに同僚の議員からも質問があつたわけでありますが、総理の御熱意のこもつた御解決を要望すると、こういう意味で特に私から質問をいたしたいと思いますが、それは米国駐留軍の演習地の問題でありまして、特にこの附近におきましては、例えば千葉県の九十九里海岸における実弾射撃を開始されることによりまして、昭和二十三年四月以来でありますか、附近の漁民は非常な痛手を実はこうむつておるわけであります。当時、昭和二十四年、五年でございましたか、全国知事会議の席上で地元の知事からも総理に直接お話をいたしまして、その後総理が非常に熱心にこの問題につきましては解決に当つて頂いておることは十分承知いたしております。併し私もときどき現地に参つてその実情を聞き、或いは新聞紙上の報道等から考え合せますというと、これは誠に悲惨な状態に置かれておるというととを、しみじみと実は痛感をいたしておるのであります。例えて申しますると、御承知のように昭和二十三年から二十六年度に互りまして、補助金一億六千数百万円が被害関係漁民二万八千名に対して支給されておるわけであります。これは成るほど一つの救済措置として、私どもとしましても肯定をするわけでありますが、併しこの金額が末端漁民の手に僅か一日一人当り五円というふうな程度しか渡つておらない、こういうふうな状況でありまして、その海岸地帯である片貝町であるとか或いは豊海町の住民、特に漁民は非常に困難な状態に陥つているような次第であります。これは外務大臣もおられまして、いろいろ折衝を続けておられ、その御誠意は私は十分に了承いたすのでありますが、本日この機会にこの問題を取上げましたのは、要は、これは単に千葉県のみならず、各地にもございましようけれども、最も身近な所にこういう問題がある。本来ならば吉田総理に一度現地に行つて頂きまして、よく実情を見て頂きたいぐらいの私は気持を持つているわけであります。併しこの漁民が生活をやつて行きますために質種にさえ困つている、学校の児童が弁当も使えないというふうなこと、風紀上の問題もあるということを考えますというと、これはどうしても政府の責任者であられる吉田総理の格別な御熱意によつてこの問題を解決するということに願いませんというと、私は現実の政治の中でかような問題もまだ解決されないということは、国民が政治、即ち政府なり国会に対しまして信頼の念を失うということを多分に懸念をせざるを得ないのであります。この問題につきまして、さような申上げればまだいろいろ具体的な事実がありますが、こういうことがあるために共産党あたりが触手を伸ばして行こうということにもなりますので、この辺を十分に警戒をする必要がある。いろいろの事情をここで長々と述べることはいたしませんが、要は私の申述べる事実なり、又そのポイントはどこにあるかということを、篤と総理におかれましても御了承を願い、これに対して御熱意のある御措置をとつて頂きたいということを、要望をかねて総理の御所信を伺つて置きたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 九十九里浜の問題は、これはお話のように何年頃でありましたか、一、二年前にその地方の人の陳情でありましたか、代議士を通じての話でありましたか、直接聞きまして、それで私の只今記憶では、当時進駐軍司令部と交渉をいたしましたところが、非常に同情を持つて考えて、その問題の交渉は甚だ円満に進んでおつたように思います。交渉の衝にはたしか外務省が当つたと思いますが、進駐軍側においても事態をよく了解して、直ちに適当な方法を講ずるということになつたと記憶しております。実はその後において九十九里浜の問題よりは、東京湾の何とかという、魚の入ることのできないような網を張つたということが現在問題になつているようでありますが、駐留軍側においても相当考慮を、或いは心配をいたしております。そのために反米感情が激化せられるようなことがあつては、共に両国のためにならないからといつております。現在交渉の状況については存じませんが、なお当局を督励して、適当な方法の案出には考慮いたしたいと思います。
○石黒忠篤君 私は先ず食糧の問題について総理にお伺いをいたしたいと思います。 私は終戦の二十年に局に当つておりましたもので、国民食糧の問題が、実にあらゆる問題に超越して根本的の大問題であるということをそのときに痛感をいたしたのであります。これは原爆が参りませんでも、長年の戦争の結果あのときの食糧の事情は、食糧の理由のみで日本は降伏をしなければならなかつた状況であるのであります。食糧の問題は、私は実に国際間におきましても、又国内の事情といたしましても、平和の基礎であると私は考えるのであります。日本のごとき特殊の国情を持つておるところにおきましては、その戦時たると平時たるとを問わず、実に一番大きな問題だと、私は信ずるのであります。 この問題は第一に国内食糧の生産ということ、先ほども論議になりました食生活の改善ということと、人口問題ということの各方面からそれぞれの方法を尽しまして解決をしなければならんことと考えるのであります。首相はこの点に非常に留意をされて、先般からこの食糧の問題に対しまして我々農業関係者のみならず、金融、商工、学界、各方面の人をしばしば招かれまして、いろいろ意見も徴され、廣川農相をして食糧増産第一次五ヵ年計画というものを立案を命じられまして、それらに関しまする説明も承わつて、我々は日本の農業は行詰つておらない、増産の余地がなおあるということを認め、その農業の基礎条件を改善するための、主として農地改良の点を主といたしまするところの五ヵ年計画というものの案を検討をいたしまして、そうしてそれに対して賛意を表したわけであります。これはその後承わりますと、閣議の決定もあつて、政府の大方針となつたように承知をしておりまするが、今回の国会は必ずしも補正予算だけに限つたものではないと存じますのでありますが、これに必要なる法律も或いは予算措置も拝見をいたしておりませんのはどういうことでありましようか、次回の国会にこれを御提出になる、こういうお考えでありますか、それを伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 私は実は今のいきさつについては十分熟知いたしておりませんから、農林政務次官から一応お答えいたさせます。
○政府委員(松浦東介君) 只今の御質問でございますが、食糧問題に対する考え方としましては、私どもも全然同感でございます。そこでこの大事な食糧問題について閣議の決定を見ておりながら、この国会に立法措置をとつていないではないか、こういうような御質問のようでございます。これは御尤もなお話でございまして、私どもは今御承知のように食糧自給促進法を立法化したいという考え方の下に現在立案中でございますが、これは次の国会にこれを御審議を願いたい、こういう考えを持つているわけであります。
○石黒忠篤君 了承いたしました。 昨日蔵相は、次年度の予算においては国内生産というものを第一に考えるにいうお言葉があつたのであります。私はこれを聞いて非常に喜んで、向井さんは或いは貿易第一主義をやられるのじやないかと思いましたが、国内生産を第一に考えるということを言われたので、誠に嬉しく存じました次第であります。国内生産の増強につきましても、本日午前中も議論がありましたように、政府においてはそういう考えがなくても、外面から見るというと再軍備の準備じやなかろうかと思われるような産業に大いなる力を入れるというよりは、平和の基礎であるところの国民食糧の増産、而もその計画ができて、閣議の決定も済んでおるようなものに向けられることのほうがよほど大事なことと考えるのでありまするから、どうぞ蔵相におかれてもこの面に対する予算の措置というものは十分に尊重してお考えを願いたい。私は蔵相とは米の買入れのことについて古いお馴染でありますが、蔵相となられて、国内生産を第一に行われるといことになられた以上は、一つ外米を買わないで済むように今度は十分お力をお入れ願わんことをお願いたしておきます。 次に伺いたいのは、朝鮮に対しまする問題であります。朝鮮との国交、密入国、密輸、李承晩ライン、いろいろ問題がございますが、この対朝鮮の内外に亘ります問題に関しては、どうも政府の現状ははつきりいたしませんし、何だか心許なく私は感じます。これは非常に大事な問題でありまして、殊に私はこの夏対馬の全面に亘りまして視察をあまねく遂げたのでありますが、あそこのごときは十分な国の力を入れまして、そうして特別地域といたしまして開発をなさることをいたされなければ、僅か三時間で朝鮮に達しまする国境第一線にあるところであつて、而も朝鮮の人達が相当多数に山の中に、又海辺に住んでおるのであります。これに対しまして私どもは視察の結果、或いは地方制度といたしましても、特別な地方制度を設けなければならんかと思うくらい重大な地位に存じており、而もその地勢は開発上非常に困難なところが多いと思うのでありますから、政府は特にその経済開発及び保安のために特殊の特別の御配慮のあらんことを、私は国民の一人として要請いたしたいと存ずるのであります。この朝鮮の問題に関しまして、只今外務省の陣容、知識というものは、私は先に申しましたように如何にも心許なく思うのであります。これは過去の沿革の上におきまして外国でなかつた関係上、外務省の所管外にあつたという無理からん理由もあると存じますが、今日はもはや占領治下ではないのでありまして、曾つて朝鮮統治に当つたとか、朝鮮において事業をやつたとかいうような者は、好ましからん人物として見られたという時代は過ぎたのでありますから、外務省をして、総理は広く人材を糾合をいたして、その意見を聞いて、しつかりした、又朝鮮当局の如何にかかわらず、広く朝鮮人民というものを目的にしたところの、長きに亘つた十分の国策を練つて行かれるように外務省を御督励あらんことを総理に希望いたしたいと思うのでありますが、総理のお考えは如何でございますか、伺いたいと存じます。
○国務大臣(吉田茂君) 朝鮮の問題及び対馬の問題は、曾つて伺つたこともあるので、たしかそのとき国警長官でありましたか、誰かに事情を調べるようにと言つて、人を出したかと思います。それから朝鮮全体の問題については、これはお話のように、日本との間の関係において歴史的にも地理的にも密接な関係があるのでありますから、得べくんば朝鮮との国交を成るべく早く回復いたしたいと考えて、ちよつと時は忘れましたけれども、今年の四月、イギリスに現に出ておる松本……曾つての次官を中心にして、朝鮮との間の国交の回復に当らしめたのであります。ところが何分今日の朝鮮の状態は、戦争を継続しておるような状態で、又朝鮮政府としても落着かないという気持で言い表わしたほうが確かだろうと思いますが、国交調整というような問題に落着いて交渉に当る気持がないと申せば言い過ぎかも知れませんが、ないような政府としては感じがいたすのであります。従つて交渉を継続するということは、或いは朝鮮の大使ですか、公使ですか、交渉をいたしましたけれども、なかなか話が落着かないのであります。今後において朝鮮政府においても更に腰を据えて話をいたすか知れませんが、今日までのところは不幸にして落着いた話ができないために国交の回復ということに至らないのでありますが、日本政府としては、成るべく早く朝鮮との間に正常、正常と申しますか、普通の規則だつた関係に入りたいと考えております。 なお気付きの朝鮮問題について、外務省で以てなお研究しろということについては伺つておきます。そういうようにいたしたいと思います。
○石黒忠篤君 これは質問ではありませんが、午前に総理が、政府として参議院に希望をお述べになりましたことに関しまして、私は一言申上げておきたいと存じます。 行政整理の将来案を出すつもりである、そのときには十分に協議をして、協力をして、一旦整理したものを更に拡張するようなことのないようにというお言葉がありましたが、非常に含みのあるお言葉だと存じます。が、私は参議院の一員といたしまして、政府に対しまして、過般の行政整理の案のごとき、私の目から見るというと杜撰であると思うような案をお出しにならんように願いたいと存じます。(「その通り」と呼ぶ者あり)力の強いところに対しては手を触れずに、力の弱いところに対して、例えば中小企業庁のごときものを廃止するというような案をお廻しになれば、適当なる整理をすることの際に、これが左右されることは止むを得ないと私は存じます。 なお願いたいことは、行政整理を片一方でやる政府が、政府部内のデシプリンをはつきりやつて頂きたいのであります。議員たる我々に対して、官庁に現に職を奉じておるような人たちと思われるような面々が、いろいろな運動をやるというようなことは、これは総理は非常に気にしておられたようでありますが、十分なデシプリンを実行されたいということを申上げておきたいのであります。なお参議院の院の決定にも行政府としては重きをおいて頂きたいのであります。政府案として参議院に廻りましたものを、速かに賛同を申上げて衆議院に回付をいたしたものを、与党の一部の人が握つて遂に流れてしまった。そのために文相は、一旦定まつたという言葉で先ほど御言明になりましたけれども、一旦定まるというのがずるずるに定まつたというようなかの教育委員会に関しまする改正法律案のごときは、その結果が政府当初の所信のようなこととは全く反対になつて、その結果がずるずるに今回の補正予算に巨額な費用が現われて来るというような状態は、これは総理としても総裁としても、十分にデシプリンを行なつて頂きたいということを、立法府の一員といたしまして行政府に対しまして希望をいたしておきます。
○片柳眞吉君 私は時間もありませんので、問題を整理いたしまして、総理に御質問申上げたいと思います。 第一は、これは衆議院におきましてもいろいろ問題になつた点でありますが、国庫の剰余金の使い方につきまして総理の考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。これは財政法の規定もあるようでありまするが、前年度からの剰余金が約四百五十億、それから今年の剰余金はまだわかりませんけれども、或る程度のやはり繰越金ができるというような情勢に聞いておりまするが、国民経済が非常に豊かであつて、税の負担も軽いというような時期でありますれば、或いは前年度の余剰金を翌々年度に繰越すということもこれは私は結構と思つておりますけれども、併し現在のような国民から高い税金を取つて、それを国庫で何と言いますか、温めて、翌々年度に繰越すということは、どうも国民の現在の負担の現状から適当でないという感じを持つのであります。片一方では或いは老朽校舎の問題なり或いは中小企業の問題、国民生活から是非やつてほしいという問題が多々あるのでありますが、それを見送つて次に送るということは、どうも私はかような国民経済が苦しい現状において私は適当でないという実は感じを持つものであります。これは財政法の規定にも若干関連もあるようでありますが、又過去の例におきましても、前年度の剰余金を翌年度に使い切つた、或いは一部使つた先例もあるようでありますが、そういう点から、そういう剰余金がありますれば、或いはこれを減税に振替えるか、或いは積極的に生産力の増強なり国民生活の安定に使うことが日本の現段階においては必要じやないかと思うのでありますが、法律的な問題を離れまして、総理のお考えをお聞きしたいと思うのであります。
○国務大臣(吉田茂君) 大蔵大臣から答えさせます。
○国務大臣(向井忠晴君) お答えいたします。従来、前年度の剰余金は、これは剰余金を生じました翌々年度において使われますのが例でありまして、これを若し本年度の補正予算の財源に充てますと、二十七年度の予算は二十五、二十六両年度の剰余金を使用する半面、二十八年度には剰余金の繰越がなくなるということになりまして、そのようなことは特別な事情のない限り行うべきものではないと、かように考えております。剰余金は財政法第六条によりまして、この二分の一は公債財源に充てることになりまして、残りの二分の一は一般財源となる、そういう勘定でございます。今片柳さんのおつしやる通り、今使うと、今は楽でございますが、やはり来年のことも考えますと、今までの例に倣いまして、その剰余金は翌年度、即も来年度に使つて行くほうが至当であろうと考えます。
○片柳眞吉君 私は翌年度の繰越に関連して、来年度の予算の計画が大体わかつておりまして、これだけ、この程度の繰越をしなければ来年度の計画に支障があるという、そういう次年度の計画と関連しておりますれば、私は理解ができるわけでありますが、これはほかの委員からの御質問に対しても、来年度の予算計画についてはお示しがない。ただ無計画にできるだけ多く繰越すということは、どうも私は多少意見が違うのでありますが、これは意見の相違になりますからこの程度にいたします。 次に、これは総理に特にお聞きをしたい問題でありまするが、米価の決定方法につきまして、御所信を伺いたいと思うのであります。これは米価審議会で実は御諮問になつておりまするが、過去の例において、我々が慎重審議いたしまして、意見を答申いたしましても、これは採用された例が殆んどないので、例えば本年度の生産者の米価にいたしましても、我々は二日間に亘つて審議をいたしまして、いろいろ審議会の意見をよく取入れて、再び諮問をして頂きたいという答申をいたしたわけでありまするが、これに対して政府は、政府案は合理的であるという声明まで発表して政府の原案を強行されたわけであります。これは私はやり方としては極めて非民主的だというふうに考えるのでありますが、又問題の消費者米価も、実はまだ審議会が開かれておらないので、而も補正予算はすでに衆議院を通過いたしておりますから、実は半分以上成立していると言つて私は差支えないと思います。そうすると、予算がきまつてしまつてから米価審議会にかけるということでは、実は我々は非常に審議会の権威を疑うわけであります。そこでこれ又財政法なり財政法第三条の特例に関する法律などと関連をする問題だと思いまするが、法律問題を離れて見て参りましても、例えばたばこの定価なり或いは郵便料金、或いは国鉄の運賃は、これは国会において審議をするわけでありますが、国民経済なり農村の経済に最も関係のある米価につきましては、実は国会においては審議ができ得ない。間接に一般会計からの繰入れを多くするというような、間接方法から我々は審議しておるわけでありまして、これはどうも私は米価は国民経済なり農村経済にあらゆる影響を持つ問題でありますので、財政法の私は実体的な精神から見て参りましても、これは私は国会で重大な事項は審議できると、米価の問題は予算と離れては実は審議してもこれは意味がないのであります。そういう点からも私は米価を、細かい点は別といたしまして、重大な主要なる事項については国会で正面から審議できるということが私は正しいのではないかという感じを持つておりますが、これに対しまして総理の見解を承わりたい。
○国務大臣(吉田茂君) 御意見は伺つておきますが、余りにも問題が重大であり、且つ専門的でありますから、政府委員から御答弁いたさせます。
○政府委員(松浦東介君) 米価の決定方式についての御質問のようでございますが、米価について非常に御造詣の深い片柳委員の御承知のように、現在は言うまでもなく、これは法律によりまして政府の行政権執行ということできめておりますが、これを重大であるが故に国会できめるようにしては如何か、こういうような御質問のようでありますが、一応そういうことも考えられますけれども、この方法は、現在も国会できめまする法律の基準にによつて政府がこれを決定するのでございまするし、又国会の休会中に米価を決定しなければならないような時期もありますので、具体的な決定はやはり政府で決定するのが至当であるというふうに考えております。米価審議会につきましては、これは政府が独善的な考え方を避けるために、生産者代表なり消費者代表なり、或いは国会議員の中から特に御造詣の深いかたをお願いいたしまして構成いたしているようなわけでありますが、これは政府が非常に合理的な運用をしたいためでございます。なお従来の米価審議会の運営等については、これは多少改善の余地があるのではないか、かように考えております。
○片柳眞吉君 最後に簡単に御質問いたしたいと思いまするが、これは他の委員からも御質問があつた問題でありまするが、李承晩ライン及び防衛水域の問題であります。李承晩ラインは、国際法上これは効力がないというように外務当局は発言されております。併し実際韓国側で漁船を拿捕するということがありますれば、これは国際法上無効とかいうことを言つても、それは実際の被害はやはり出ているわけであります。これに対しましてはやはり国際法上無効だという線に沿いまして、強硬に一つ折衝をして頂きたいと思います。 それから防衛水域は、国連軍の作戦上必要な水域だということについては止むを得ないと存じますけれども、併し今日までの私の理解におきましては、防衛水域の正確な内容が、これが必ずしも明確ではないようであります。必ずしも絶対に漁船が入つてはいけないというわけではないようであります。この辺はなかなか折衝上デリケートな問題があるようでありますが、いずれにしても漁船がこういうことをすれば安心して出入ができるというような、具体的な一つ措置を至急これはお示し願いたい。 それからもう一つは、防衛水域は国連軍の協力のために止むを得ないということではありまするが、その結果受けまする漁業者の被害というものは、これは私は理論上当然国家が補償して然るべきであると思うのでありますが、その以上の二点につきまして御意見を承わりたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 初めの李承晩ラインにつきましては、お話のように国際法上どうであるかと言つても、現実に漁船が連れて行かれたり邪魔をされたりしては困るのであります。この点は私どもも全くそう考えておりますので、いろいろの方法を講じております。例えば国連軍側にも話をいたしております。或いは朝鮮の漁夫の品物をこちらで買つて、魚を買つたり、或いは漁具をこちらから売つてやつたりしているような事情もあるのであります。こんな関係からしても話をいたしております。実際上漁業に妨げにならないようにあらゆる方法をやつておりまするが、まだときどきそういう問題が起つて来るのであります。今後も十分気を付けてやるつもりでおります。 それから防衛水域につきましてはもう御承知の通りでありまして、いろいろの例えば密輸出、密輸入等を防がなければならんという問題があり、或いは捕虜を分散している、その捕虜の監視という……捕虜に対して密かなる連絡を断ち切るという問題もあります、或いは武器を出したり入れたりという心配もあるようであります。まあいずれにしても国連軍で止むを得ずとつている措置ではありますが、話をしてみますると、この間もここで申しましたように、国連側も成るべくこれを早くおしまいにしてしまいたいということを、関係国の経済上の被害のできるだけ少いようにするつもりであるということを言つておりますので、その方針で我々も協力をいたすと同時に、日本の漁業者の妨げにならないような措置をできるだけ講じております。只今のところ、今冬になりまして、あの方面よりもむしろ南のほうに魚は下つて来たように聞いておりますが、建前上から言うと、防衛水域といえども船が行つて魚を取つてはいけないということではないのでありまして、ただ場合によつては退去を命ぜられるということなんであります。従いまして補償の問題になると、これはなかなかむずかしいのでありまして、この点は水産庁の専門家にいろいろ調査をしてもらわなければわかりませんけれども、全然禁止区域というわけにも行きませんし、又禁止区域となりましても、なつた場合でもこの公海下でどれだけその地域から魚が取れるものであるかということは、これは一般的にはわかりますが、或る特定の区域でありますとなかなかこれも調査が困難なようでありますが、いずれ水産庁での調査を待ちまして更に研究したいと考えております。
○平林太一君 私は、(「総理がいないじやないか」「散会々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)第二に申上げたいことは、綱紀粛正の問題であります。綱紀粛正問題の中心は、大なる政治的の権力が、その力をたのんで政治を自己の用に供し、甚だしきに至りましては政治の公正を害い、或るいは国家に害毒を与うるということに存すると考える次第であります。この際総理大臣吉田茂君はこのことに関し、その経歴より、(「委員長、散会」と呼ぶ者あり)……それでは質疑中でありますが、只今総理退席せられたということの通告に接しましたので、私の質疑を明日に継続することを委員長に要請して、そのお許しを得ておきたいと思います。
○委員長(岩沢忠恭君) 了承しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十五分散会