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15回国会参議院1953/03/18

通商産業委員会 閉会後第1号

発言数
36
登壇者
5
会派数
3
開催日
1953/03/18

会議録

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) それでは只今から通産委員会を開会します。  本日の議案は不正競争防止法の一部を改正する法律案、これについて先ず政府側の説明を求めます。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) それでは不正競争防止法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。  先般発効いたしましたる我が国と連合国との間の平和条約に附属しておりまする宣言に従いまして、我が国は、平和条約の最初の効力発生の後一年以内、即ち本年四月二十八日までに、いわゆる貨物の原産地の虚偽表示の防止に関するマドリツド協定に加入することになつております。  そもそも自由競争に立脚した経済の健全且つ公正な運営は、国際信用を高め、貿易を振興し、我が国経済再建の原動力となるものでありまして、政府といたしましても、すでに去る昭和二十五年、当時の不正競争防止法を大幅に改正強化いたしておるのでありまして、現在協定の趣旨はおおむね織り込まれておるのでありまするが、協定の実施上若干の点につきましてはなお不十分と思われますので、協定加入に伴い、虚偽の原産地表示を附する行為につきましては、その範囲を拡張いたしますると共に、ぶどう生産物の原産地の地方的名称でありまして普通名称となつておりまするものも取締の対象といたしますため、ここにこの法律案を上程いたした次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、速かに可決せられんことをお願いいたします。

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) 御質疑のかたは順次御発言願います。

境野清雄民主クラブ

○境野清雄君 これはマドリツド協定というものの加入国一覧表が一番うしろについているようですけれども、これにアメリカが入つていないというのはどういう意味でしようか。

下田武三外務省条約局長

○説明員(下田武三君) アメリカが加入しておりません理由につきまして、私どもの了解しているところでは、この協定の第四条に各国の国内裁判所を拘束します規定があるのでございまするが、マドリツド協定の第四条は、各国の裁判所が、どういう名称が、その名称はもう通有性を持つているから、この協定の保護を受けないでもいいのだという除外を各国の裁判所がいたすことができるという規定をいたしまして、その但書におきまして、ただぶどう生産物の原産地の地方的名称については、その通有性を理由として保護の対象から除くというような決定を各国の裁判所はできない。そういう但書を設けているのでございます。そうしますと、その結果といたしまして、例えばシヤンパンは非常にあれはありふれた名前だから、もう原産地の名称でなくて、非常に通有性のあるものだからと言つて、或る国の裁判所がその保護をしないでいいという決定をいたそうとしましても、ぶどう生産物の原産地の名称に限りましてそういう勝手な裁判所の決定はできないということを定めてあるのであります。アメリカは御承知のように非常に国内の裁判所の権限を拘束するというような国際条約には伝統的に入らないしきたりでおりますので、恐らくやはりその国内的困難のためにアメリカが入つていない。そういうふうに了解いたしております。

小滝彬自由党

○小滝彬君 只今条約局長から、法律的な立場からアメリカが反対しているらしいと言われたのですが、通産省のかたも見えていると思いますが、アメリカは相当ぶどう酒を造つている。カリホルニアなんか非常にいいぶどうの生産地なんで、そういう産業的見地はないか。何かアメリカの関係御存じのかたがあつたら、どなたでもいいですからちよつと説明して下さい。通産省のかたはいないのですか……。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) これは特許庁ではどうも……。

下田武三外務省条約局長

○説明員(下田武三君) 今小滝さんの御質問で、法律的以外に政策上の見地からやはりこれに加入していないのじやないかという御質問がございましたが、御指摘のようにカリホルニアでぶどう酒をいろいろ生産しているようで、或いはカリホルニア出身者の識者の声等が国会に反映され、或いは政府部内に反映しているということもあり得るのではないかと想像いたすことはできると思います。ただ的確なことを調査しておりませんので、確言はいたしませんが、非常に可能性のあることだと想像いたします。

小滝彬自由党

○小滝彬君 条約局長が今見えておりますから、ついでにお聞きしたいのでありますが、この条約で日本が権利義務を負担した場合、国民に対してその権利義務を守らすために国内法が必要であり、又罰則でもないような条約をそのまま実施するということが実質上困難なこともよくわかるのですが、併し今緊急集会にこれをかけられるとすれば、ここに条約だけではどうしても実施が困難だという理由があるために出されたものであろうと思います。学説にはいろいろ条約が即国内法になるかならんかという問題もあると思いますが、特にどうしても国内法をこういうふうに変えなければならんという点は、罰則というようなものも、私は素人ですが考えるのですが、その点をもう少し皆にわかり易く説明して頂いたら如何ですか。

下田武三外務省条約局長

○説明員(下田武三君) 仰せのように条約を締結した場合に、それが直ちに国内法としての効力を持つに至るかどうか、条約即法律論というものが採り得るものであるかどうかという点については、学者の間にもいろいろ異説があるようでございます。ただ新憲法の第九十八条の第二項で「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」という規定が、前の憲法にありませんでした規定がございます。これは日本国が締結した条約は政府も国民も誠実に遵守しなくちやならないということを定めておるのでございますから、いずれにしろたとえ条約に伴う国内法が制定されていないからという理由を以て、対外的に条約の義務を免れることができないということを規定したというように解することはできると存ずるのであります。ところで従来のしきたりから申しましても、条約に加入する前に、条約がいよいよ日本に対して実施されまするに至ります前に、関係の国内法を整備するというのが政府当局の怠つてはならない義務でございまして、それは条約は御承知のように、原則的にときとしては漠然たる規定にとどまることが多うございます。そうしますと国内官庁でその条約を実施なさろうといたしましても、或いは手続規定が不十分であるとか、或いは罰則の規定が全然欠除しておるので、その遵守を強行しようとしても不十分であるという見地からいたしまして、条約の不備を国内法で補うという措置も従来作られておるところでございます。今度只今提案になつております法律案には罰則のところは出ておりませんが、併しこの法律の全体を見ますとやはり罰則手続規定等がありまして、今度の改正と、それらの既存の条項とを併せますと完全な一体となつて、この条約の実施上に何らの不便が生じないという事態になることと存じます。

小滝彬自由党

○小滝彬君 ついでにお伺いしますが、この第二条第一項第一号中「商品ノ普通名称」の下に「(ぶどうヲ以テ生産セラレタル物ノ原産地ノ地方的名称ニシテ普通名称ト為リタルモノヲ除ク)」という但書が附くことになるようですが、これは私、英文や仏文の原文を持つていないから、或いはそれを見ればはつきりわかるかも知れませんが、これだけを見ると、ぶどうを以て生産せられたるものの原産地の地方的名称と言えば、例えばシヤンパンがある。ところがシヤンパン・サイダーみたいなのは、これはぶどうで以て作られたものではないけれども、これをただ読み流すというと、シヤンパン・サイダーのようなものも、結局シヤンパンというのはぶどうを以て生産せられたるものの原産地の地方的名称だと思うのですが、併し品物そのものはぶどう酒じやないのですが、これは引掛かるものですか、引掛からんものですか。

下田武三外務省条約局長

○説明員(下田武三君) ぶどう生産物と書いてございますので、ぶどうを原料といたしましたものだけが該当するというように解釈いたしております。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) ちよつと今の説明を補足して申上げますけれども、ぶどうを以て生産せられたものの原産地の地方的名称でございまするので、例えばシヤンパンということになればシヤンパンという字、字といいますかその名称は正にこれに入るわけです。それを使うことを抑えようというのが趣旨でございますので、シヤンパン・サイダーと申しますものもやはりこれが日本でできておるというような、はつきりした表示を伴つて使つてもらわなければならぬということになります。

小滝彬自由党

○小滝彬君 そうするとぶどうを以て生産せられたるものの原産地の地方的名称と書いてありますけれども、ぶどうを以て生産せられたるものについては、というような意味に読むわけですね。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) ぶどうを以て生産せられたものの原産地の地方的名称それ自身を使うことがいけないのでありまするので、これはぶどう酒がテイピカルな例でありますが、そのほかに使う場合もこれはいけない。

小滝彬自由党

○小滝彬君 そうするとシヤンパン・サイダーはだめなんですか、いいんですか。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) シヤンパン・サイダーという具体的な例になりますると、その場合でも、シヤンパン・サイダーの原産地をはつきり、つまりどこで作つた、日本で作つたとか、或いはどこかで作つたその原産地をはつきり示すことが必要だという……。

下田武三外務省条約局長

○説明員(下田武三君) 先ほどの私の説明が不十分でございましたので、取消しさして頂きたいと思います。今特許庁長官のおつしやいましたように、たとえシヤンパン・サイダーであつて、ぶどうと関係のないものであつても、シヤンパンという名がつきますと、シヤンパン酒の売行きにも不利な影響を及ぼすというところを考えますと、この条約の立法趣旨から申しますと、やはりそういうものも禁止しなければならんという理由がございますので、特許庁長官のおつしやいましたように解釈すべきものだと思います。

小滝彬自由党

○小滝彬君 今日は特許庁だけから来ているようだけれども、一体これによつてどれだけ日本のぶどう酒業、こういう生産業に影響するか、或いは若し急に影響が起きるとすれば救済措置をとるとか、とらんとか、主管官庁ではそれだけの調査があるか、これの影響というような点について説明を願います。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) この法律適用の結果の影響でありますが、先ほど来申上げましたように、主としてこれが影響を生ずるであろうと予想されまするのは、洋酒関係の事業だろうと思います。これにつきましては、只今ここにいわゆる原産地名を表わすものとして、或いは先ほど例に出ましたシヤンパンであるとか、コニヤツクであるとか、ポートワインというような字をつけました洋酒類が現在日本で相当出ておるのでありますが、この法律はおよそそういう字は如何なる場合においても絶対にレツテル等に使つてはならんということではないのでありまして、そういうものを使いまする場合には、併せて原産地の混同の起らぬように、日本でできるのでありますれば、これが日本製であるというような、原産地をはつきり併せて表示することを要求しておるのであります。現在日本で生産及び販売されておりまするこの種の洋酒類に実際に当りましたところ、大部分その点で何らの問題の余地のないような表示に現になつておりますので、その結果この法律によりまして取締りをいたすようにしましても、おおむね現状にさして大きな影響を及ぼさないものと、かように存じております。

小滝彬自由党

○小滝彬君 そうすると第二条第一項第一号ですか、あれは赤玉ポートワインと書いてあつて、ポルトという字が使つてあつても、赤玉も出ておるし、その下に寿屋が作ると出ておるから、これは差支えないということになるのですね。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) その具体的の個々の一つ一つのレツテルは別としまして、ポートワインという字がつけてありましても、或いはその生産者が日本内にあるとか、或いはそれが日本で生産されたということがはつきりレツテル等についておりますならば、それでそのまま差支えない、こういうことになります。

小滝彬自由党

○小滝彬君 それで原産地が別に書いてあれば、名前は幾ら使つても差支えないということになれば、例えばバーガンデイという名前を使つたが、小さく隅つこに横浜で作つたというようなものがついておつても、事実上原産地の生産品と競合して考えられるのである。非常に紛らわしいので、隅つこに小さく書いても、原産地から来たものの保護にはならないので、名前の使用というものについて曾つて論議があつたことがあると私も記憶しておるわけであります。例えばウヰスキーといえども曾つては随分ドイツの裁判所で問題になつた。非常に商売人が上手にやつて、レツテルの隅つこへメイド・イン・ジヤパンと小さく書く、それじや保護にならんというので、相当この問題はポルトガルとの条約を作る時にも重大問題になつた。一時はどうしても赤玉ポートワインというものをやめなければポルトガルとの条約はできないのじやないかというような主観的な感情を持つたことは、これは下田条約局長も記憶しておられると思いますが、その点についてはその後こういうぶどう酒の原産国あたりの意向が相当緩和して来たのですか、その点条約局長に再度お伺いしておきたい。

下田武三外務省条約局長

○説明員(下田武三君) このマドリツド協定自体が実は今御指摘のポルトガルでございますとか、フランスでございますとか、ぶどう生産物の非常な生産国がやかましく言い出しまして、別に万国工業所有権保護同盟条約というものがございますが、その工業所有権保護同盟条約の規定では手ぬるい、どうしても原産地表示を表示するだけを目的とする特別条約が必要だということを主張して来まして、そういう国が中心となつてマドリツドで会議を開きましてできたのであります。それで日本はこの協定に戦前には入らない、従つてこの協定の義務は負わないという立場にあつたわけなんでありますが、平和条約でこの協定に入りますことを約束させられたわけであります。それで戦前におきましては、この協定の当事国たるポルトガル等と日本との間には、今お話のような問題が現に発生しましたことがございます。併しながらこの協定に入りますと、日本もポルトガル、フランスと齊しくこの協定上の義務を負うわけでございますから、お話のような紛争は今後は発生する心配がない、そういうふうに思つております。

小滝彬自由党

○小滝彬君 今特許庁長官の言うには、隅へ原産地を明示して使つていれば、こういう名前を使つてもいいと言うが、特許庁長官は考え違いをしていないか、或いは僕の考え違いかも知れませんが、相当重大なる解釈の相違を生じやしないかと思うので、質問したのです。

長村貞一特許庁長官

○政府委員(長村貞一君) 私先ほど申し上げました説明をちよつと補足さして頂きます。条約の精神は只今局長から説明申上げましたようなところにあります。これを承けました国内法としての不正競争防止法の運用になるわけであります。この現行法の不正競争防止法の建前で申しますと、商品の固有名称を普通に使用する方法を以て使用する行為は、それ自体は差支ない。現行法はそこに不当生産物については特例を設けてありますので、仮にその不当生産物のシヤンパンならシヤンパンというものが、すでに普通名称になつておつた場合におきましても、それを使用する行為は構わないというのではなくて、つまり日本製ということをはつきりしなければならんわけでありますが、その場合に先ほど御説例にありましたように、或いはこの隅のほうに、まあ極端に言いますななば、ちよつとわからないようなふうに小さく書くという程度でありますと、私はやはり問題になると思う。私がはつきり表示と申しましたのは一見誰が見ましても取引上これは日本で出来ておるということがはつきりするように併せて書けば差支ない、こういう意味で申上げたのであります。

小滝彬自由党

○小滝彬君 条約局長にお尋ねしますが、そういう程度で一体条約の義務の履行ができると条約局長はお考えになるかどうか。

下田武三外務省条約局長

○説明員(下田武三君) この例は、この協定の締約国間におきましても、又締約国と然らざる国との間で、非常にヨーロツパで主として起つた事例でございますが、紛議を生じております。それで只今特許庁長官も言われましたように、シヤンパンとか、或いはポートワインとか名前を使いましても、そこにはつきり国名を標示するというようにして、同時に誤解を生じないような措置をとつてあれば、シヤンパンとかポートワインの名前を使うこと自体は、今度の協定に参加しても差支えないことになるのじやないかと考えております。

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) ほかに御質疑ございませんか……。別に御発言もございませんようですから、質疑は終つたものと見て差支えありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) 異議ないものと認めます。  それではこれから討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。

小滝彬自由党

○小滝彬君 私はこの法案に賛成するものであります。

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) ほかにございませんか……。別に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。本案を原案通り可決することに御賛成のかたの挙手をお願いします。    〔賛成者挙手〕

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) 全会一致と認めます。よつて本案は原案通り可決いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容と、爾余の手続は慣例によりまして委員長に御一任をお願いいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君) 御異議ないと認めます。  次に本案を可とされましたかたは例によつて御署名をお願いいたします。    多数者意見者署名     栗山 良夫  境野 清雄     古池 信三  小滝  彬     左藤 義詮  重宗 雄三     松平 勇雄  木下 源吾     小松 正雄  西田 隆男     石川 清一

結城安次緑風会

○委員長(結城安次君)それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後二時五十八分散会

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