予算委員会公聴会 第2号
- 発言数
- 57 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1953/02/14
会議録
○太田委員長 これより昭和二十八年度総予算について、昨日に引続き公聴会を開会いたします。 開会にあたりまして、御出席の公述人各位にごあいさつ申し上げます。申すまでもなく、目下本委員会において審査中の昭和二十八年度総予算は、今国会における重大な案件であります。よつて委員会におきましては、広く各界の学識経験者各位の御意見を聞きまして、本案の審査を一層権威あらしめようとするものであります。各位の豊富なる御意見を承ることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考となるものと期待いたす次第であります。各位におかれましては、そのお立場お立場より、腹蔵なく御意見の御開陳をお願いいたします。本日は御多忙中のところ、貴重なる時間をおさきになり御出席をいただきまして、厚く御礼を申し上げる次第であります。 なお議事の順序を申し上げますと、公述人の各位の御意見を述べられる時間は、大体二十分見当にお願いいたします。御一名ずつ順次御意見の開陳及びその質疑を済まして行きたいと思います。なお衆議院規則の定めることをちよつと申し上げます。御発言の際は、委員長の許可を受けることになつております。また発言の内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつております。これは規則であります。なお委員は公述人に質疑をすることができますが、公述人は委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承願います。 それではまず全国銀行協会連合会会長、第一銀行頭取酒井杏之助君。
○酒井公述人 私がただいま御紹介をいただきました全国銀行協会連合会会長酒井杏之助でございます。ただいままで公聴会においていろいろ有益なる御公述がありまして数字等にわたつて詳しいお話もあつたようでございますので、私は最初にこの予算に対する全体の感じというようなものをお話申し上げまして、時間がございましたら、この二十八年度予算の財政の性格の転換したということにつきまして、第一にそのことをお話申し上げ、なお金融界から見た問題点ということを第二に申し上げまして、第三に二十八年度予算の実施上にこういうことをお願いしたいということを申し上げたいと思います。実は私は今日ちよつと約束がございまして、少し早く終らせていただきたいと思います。 最初に私の申し上げましたこの予算に対する感じといいますか、全体に対する私の感覚を申し上げてみたいと思います。全体の予算については、なかなか各方面に気を配られていることがよくわかるのでありますが、同時に個個ばらばらだというような感じがするのであります。つまり有機的でないといいますか、もう少しまとまつた一つの大きな方針があつてほしいという感じがいたします。それは何かと申しますと、もつと産業に中心を置いていただきたいということでございます。大蔵大臣の御演説にも、また昭和二十八年度予算の説明という説明書にも書いてございますが、今度の予算は日本経済の発展を目標にしているということをうたつておられます。まことにそうでなければならないと思うのでありますが、それにもかかわらず、財政投資の面を見てみますと、産業にもつと中心を置いていいのじやないかというふうに考えるのでございます。なるほど財政投資は三千五十五億という数字があげてありまして、決して小さな数字ではございません。そうして昨年度に比べますと二百五十六億円の増加となつております。但しそのうち特別減税国債三百億が出ますし、鉄道公社債百二十億が出ます。なお電信電話公社債百億、これが合計五百二十億出ることになつております。従つて民間の資金の吸収が五百二十億でございますから、これを三千五十五億から引きますと、昨年度よりは二百六十四億円の減少ということになつております。その中で金融債の引受けが六十億減つております。なお日本開発銀行に対します電力、海運以外の資金が四百億昨年度より減つております。こういうことを見ますと、どうも予算の産業に対して向けておる重点が非常に薄いように思われるのであります。これは各方面からのいろいろの御意見は、もちろんこの予算に盛り上げなければならないのでございますけれども、予算という一つの固まつたものとして出される場合には、もつと国全体としての重点をどこかにお置きになる必要がある。それは私はもつと産業中心にお置きになつてよいのではないかと思うのであります。 というのは、私が金融界におりまして産業に非常に関心を持つておるという意味だけでは、ございませんので、産業中心に財政資金をお出しになりますと、経済界は決して個々ばらばらなものはございませんので、一つの大きな基幹になる産業、かりに申せば今しよつちゆう問題になつております石炭の開発、このコストをいかにして下げるかといつたような問題、それから船舶の建造の問題、あるいは鉄鋼生産の合理化の問題、電源開発の問題、みな大きな産業の問題であります。そうしてそれらは資本蓄積の少い日本の今日の経済界におきましては、その各業界の資本金をもつてこれをまかなうということも非常に困難でございますし、また借入金でまかなつてみますと、これはやはりしよつちゆう問題になりますように金利が高い。非常に金利負担が多いという結果になります。それでこういうものこそ財政資金によりまして、今の日本の資本の蓄積の及ばない点を、相当の額、また低利の資金をお出しいただくごとによつて、そういう基幹になる産業に活が入るということになります。そういう産業にばかり金を出すと、それは大企業にばかり金が出ることになつて、そのために中小企業は圧迫されてしまうという話がよく出ますが、なるほど中小企業の問題はまた別に考えなければならない問題でもありますが、ただいま申し上げたような大きな基幹産業が活動しますと、これに関連します産業は非常に種類が多いのであります。何百という種類の大中小の産業がこれに関連しております。つまりその仕事ができるということになるのであります。それでありますからそういう産業に資金を投ぜられれば、従つてそのかなりの部分が中小企業にも流れて行くのであります。また仕事のないところへただ金を出してみても、それはからまわりになつてしまうので、むだに近いものになります。それでありますから、どうしても中小企業の問題を根本的に解決する一つの方法は、やはりこの際、国の根本になる産業に力を入れて、財政資金を投ずるということによつて全体のコストも下げられますし、またいろいろな関連の産業の問題を解決することができるのであります。 従つてまた失業問題等も――もちろん失業が出た場合には、これに安定のために資金を出さなければなりませんが、できれば失業の出ないような、あるいは失業を少しでも減らすということを、初めから考えた方がいいのでございまして、従つてこれも失業問題の解決の一遂にもなるのであります。 また物価問題、これもコストの切下げということは、結局基幹産業のコストが高ければ、ほかのコストをいかに下げろ下げろといつてみたところで下げられないのでございます。基幹産業のコストを下げることによつて、漸次ほかの産業のコストも下げて行く、物価を下げて行くという物価問題にも関連して参ります。 また輸出の振興、今の日本は輸出が振興しなければ、ただ国内だけでは御承知の通り発展できないのであります。ややともすれば、国内に購買力を造出して仕事をつくればいいではないかといつたような話が出て来ますが、これも国内だけで仕事をつくり、あるいは購買力を補給してみたところで、今の日本の経済は世界の経済につながつているのでありますから、日本だけがかりにそのために少し購買力が出て、一時全体の産業が潤うかもしれませんが、それは決して長続きのする方法ではございません。従つてやはり輸出振興ということについては、根本的に力を入れなければなりません。それにしましても、日本の産業のコストが高ければ、いかに声を大にして輸出振興ということを言つてみたところでむだでございます。これもやはりただいま申したような方法によつて、関連的に輸出産業の振興もできるのであります。 また私どもが皆様から御批判をいただいて、どうも銀行の金利が高くて困る、産業の金利負担が多くて困るということは、私どもしよつちゆう伺つておりますが、私どももまことに御同感でございます。しかしこれも資金の蓄積の少い今日におきまして、資金の需要が多くて資金の吸収の少い今日の日本においては、なかなかこの金利の引下げということは、むずかしい問題でございます。これなども資金の吸収に十分な力を入れると同時に、ただいま申しましたような大きな国のもとになる基幹産業を、もつと財政資金によつてまかなつてくださつて、われわれ民間の金融機関がそういう方面では少し力を抜いてよい。またわれわれのとうてい及ばないような低利の金利で、そういう基幹産業をまかなつて行かれるということになりますと自然資金の需要が減りまして、われわれ同業者は、非常な自由競争の立場に立たされているのでありますから、黙つていても金利は下つて来る。これは根本的の問題でございます。ところがわれわれは前から、そういう産業資金の投資ということについて、ぜひ予算その他で御考慮を願いたいということは、繰返し繰返し申し上げております。しかもそのことは当局もよく御認識であり、もつともだと言つてくださるにもかかわらず、実際に今日出て参りました予算を見ますと、はなはだ物足りないという感じがいたします。これが私がさきに申し上げました全体を拝見した感じというものでございます。 まだ少し時間がございますから、先ほど申し上げましたように、第一に、財政の性格の転換ということについて申し上げます。 このたびの二十八年度の予算は、従来の超均衡ないし均衡予算的の色彩、すなわち税金による強制貯蓄的の方式を一蹴しまして、千億に上る減税、過去の蓄積資金の使用、公債の発行による民間資金の吸収等によりまして、いわゆる積極財政の線を明白に打出したことは、明年度の予算の性格の転換と見るべきものでございます。従つて財政と金融との調整の問題も、従来の方式とは全然逆になりまして財政資金の散布超過のしりを金融によつて吸収いたしまして、総合的な均衡をはかることが必要でございます。 第二に、金融界から見ました問題点としまして、二、三申し上げてみたいと思います。まず財政計画のうちに含まれております資金散布超過の要因について申し上げます。 一般会計の前年度の繰越金四百五十六億というものが今年度に出るわけでございます。また過去の蓄積資金の使用、これは資金運用部の三百九億、産業投資特別会計の二百八十五億、外国為替会計受取超過額、これは予想でございまして、ことによりますと今年は輸出があまり振いませんから、予想のようには行かぬかと思いますが、これがまず百六十億程度、それから今年度の防衛関係の費用の未使用の額を今度使うとしますと、それが三百三十億、大体千数百億の支払い超過になるはずでございます。ただ二十九年度に繰越金がどれだけ残るかということで、この通貨の支払い超過というものが、どの程度にとどまるかということがきまるわけでございます。ただいままでの金融情勢を伺つてみますと、どうもこの三月、あるいはことによりますと、四、五月くらいまでは、そう資金の放出はないのではないか。むしろ後半になつてからでないと、財政資金の放出はあまりないのではないかというように伺つておりますが、おそらくそうではないかと思います。 それから公債発行の問題でございますが、特別減税国債三百億、それから公社債の発行百二十億と百億、これは今度の予算に初めて出ました公債発行の口火を切つたといいますか、そういつたような形になつております。これもたびたび皆さんから御質問を伺つておりますが、特別減税国債三百億、鉄道公社債百二十億、電信電話公社債百億、この程度のものは、今年の後半に行きまして相当財政支出がございますし、資金の放出がございますから、今まで金融機関がまかなつておりました資金にこれだけのものが加わりましても、何とかこの消化はできるのではないかと思つております。またしなければならないと思つております。ただこの公債発行は、よく言われている通りでございますが、財源としましてきわめて容易でございます。これが消化はなかなかむずかしいのでございますが、これを発行して財源をとるにはきわめて容易でございますので、濫用されやすいということはよほど注意しなければならぬことだと思つております。それでこの消化について、今度かりに消化が非常に順調に行きましても、今度順調に行つたからその次も順調に行くだろうというふうに、あまりそれを容易に考えますと、消化が困難になりまして、結局日本銀行がこれを最後に背負わなければならないといつたような形になりまして、インフレーシヨンの素地をつくるおそれがあると思うのでございます。 最後に、今度の予算では消費支出が増大をしております。人件費の増大が前年度に比しまして百七十四億円、公共事業費の増加が百八十二億円、失業対策十七億円、軍人恩給、遺家族及び留守家族援護費三百八億円、地方費三百七十億円、こういうものが大体消費の性質を持つた支出でございます。これをやはりできる限り吸収する必要があると思うのでございます。それと所得税の減税九百億円、これを加えますと、やはり消費に向う資金が相当ございますので、今年度は特にこの流通過程に貨幣がとどまらないように、できるだけこれを金融機関において吸収しなければならない。これは私ども金融機関におります者の任務でございますが、それにつきましても、税制上、資金の蓄積がしよいように、いろいろと今度の議会でも御配慮をいただいたわけでございますが、まだ私どもから見ますと完全ではない。ことにこういう資金散布超過の場合には、何かもう少し思い切つて税金の面についてお考えをいただいた方がいいのではないかという気がいたします。これは今後日本の予算が減るということはなかなか困難ではないかと思いますので、予算支出が増加する場合には、思い切つた吸収の措置を講じなければならないというふうに考えております。 なお財政投資のことにつきましては、先ほど申し上げましたから申し上げません。それから、できましたいろいろな財政上の支出にあたりまして運用をどうするかということが、これがまた通貨増発になりやすいか、あるいは同じ出ても吸収しやすい形になるか、ということのわかれ目でございまして、この予算の運用にあたつて節約をはかり、濫費を戒めるということが非常に必要であるかと思います。予算の御審議にあたりましては、議会でも皆さん非常に御熱心に御審議になりますが、これの決算というものはどういうことになるのか、私はしろうとでよくわかりません。予算があれば大体決算というものもあるわけでございまして、これはおそらく会計検査というようなことで事後にお調べになることと思いますが、何か予算を実行する過程に考査する制度というものはできないものでございましようか。私はそういう制度ができるかどうか知りません。またそういう制度がある国があるのかどうか知りませんが、予算を実行しつつある過程で、このやり方は悪いとか、もつとこういうふうにやつて行つた方がいいじやないか――これが事後になりまして、こういうところが悪かつたというだけの批判に終つてしまうのではどうか思うのでございまして、だんだん予算の膨脹して行く過程においては、何か皆さんのお知恵でそういうしかけができないものかと、これは私しろうと考えでございますが、思うのでございます。それで通貨価値の安定ということは、私ども金融界におります者は、常々申しております。これは世間ではそんなことはあまりぎやぎや言うものではないというように、案外簡単に取扱われておる問題でございます。私どもは通貨をしよつちゆう取扱つておる者でございますから、特に真剣なのでございますが、これはしかし私どもばかりでなく、実際に勤労階級の方、きまつた収入で生活される方、あるいはまじめな企業を営んでいられる方、みんなインフレーシヨンによつては何ら得るところはないのでございます。ところが通貨価値の下落は困るということを掲げて、声を大にして主張するというところがあまりないので、ございまして、ややもすれば通貨価値の安定ということは、輕く取扱われるおそれがあるように思うのでございます。この点は私どもは特に関心を持つておる次第でございますが、国全体としてことに今日の日本の状態でありますと、各国の通貨価値が大体安定に向つておりますその際、日本の通貨価値が下落するということは、先ほど申し上げましたような貿易の面においても、いくら声を大にしても、実際上物価が高いために輸出ができないというような状態も起します。かたがたこの通貨価値の安定ということにつきましては、また国民を代表していらつしやる議員の方々にも、特に御考慮を願い、また各界にも呼びかけて輿論を起していただきたいと思うのでございます。 はなはだ私の公述はとりとめもないことでございまして大して御参考にもなりませんが、貴重なる時間を費して申訳ございません。私の公述はこれで終らせていただきます。(拍手) なお、ちよつと五分ぐらい、もし御質問でもございましたら承らせていただきます。
○太田委員長 御意見を拝聴しました。ありがとうございました。 何か御質疑はございませんか。
○石井(繁)委員 ただいま酒井さんのお話では、今年の予算の見当では、減税公債の三百億、その他二百億ばかりの公債が出ても、インフレの懸念は大体ないだろう、金融界方面等においても、そういうことについては協力して行きたいと思う、こういう御意見でありまして、昨日の土屋さんも大体さような御意見であつたと思います。各方面の一応の常識的の意見としては、さような意見が述べられておりますが、われわれが心配しなければならないのは、ただいま酒井さんの言われた通り、日本の財政規模は小さくならないだろう。ところが今年におきましては、今までの政府の蓄積をほとんど使い尽したという状態のところにもつて来て、減税公債までも発行いたしておる。こういうふうな状態である。ところが一般国民の関心は、預金よりも信託投資というものに金が向つておる。あるいは、初めに取引所を設けたときに、投機市場でなくて、投資市場であるという考え方において、今後の取引所は運営して行こう、こういう考え方であつた。ところが最近におきましては、株における配当というものは考慮しないで、その株が上るか下るかということにおいて、株式等につきましても、大衆は御承知の通り投機市場にこれを利用しておる、こういうふうな傾向であります。またその投機性を好む素因としましては、あるいは戦争があるのではないか、金の価値が下るのではないか、こういうふうな思想も底流しておるのではないかと思うわけであります。国民の思想の中にこういう傾向があるときにおきましては、インフレの萌芽が現われましても、これに対しては通貨の安定や何かを考える立場におきまして、非常に警戒をしてかからなければなるまいか、こう思うのでありますが、実際さような国民の傾向があるところへ持つて来て政府においては過去の蓄積で足りないで、減税公債等までも発行した、こういうことの国民に与える心理的影響も非常に多いのであります。そういうふうないろいろな国民の思想的な考え方、あるいはものの考え方等からしまして、日本の国をインフレ的傾向に持つて行く危険性が十分にある。そういうふうに考える必要があるのではなかろうかと思うのでありますが、この点についての御意見をお伺いいたしたいと思います。
○酒井公述人 ただいまの御意見に対してお答え申し上げます。実は金融界といたしましては、公債発行ということについては、御承知かと思いますが、反対でございまして、いかなる形にしても、公債を発行するということについては、反対をしておつたわけでございます。それはわずかな公債でございますれば、必ずしも消化できないとは思つておりませんでしたが、しかし、公債を発行したということで、一つの堰が切れたというようなことになるおそれがございますことと、いかにも何か資金の放出が多くなるのではないか、それが公債を発行して消化できるかできないかというようなことについて、疑念を持ちはしないかといつたようなことで、全然公債を発行せずに行くことを希望しておつたのでございますが、結局公債を発行されるようになりましたので、発行されてから、われわれ反対したのだから消化できなくてもしかたがないじやないかといつておるわけにも行きません、こうなつた以上は、極力公債の発行に協力したいと考えておる次第でございます。ただいまお話のインフレーシヨンとかいうようなものも、結局は心構え、心理的な影響が非常に大きいのでございまして、かりに今の物資と金とのつり合いからいうと、必ずしもこれくらいの財政支出があつたからといつて、物が非常に少くなつて高くなるということはないのでございます。それにもかかわらず、何か、下る心配はないだろう、上ることはあるかもしれないというので、買う人は、買わなくてよいものまでもまず先に買つてしまう、売る人は、持つていても損はないというので売らなくなる、そういうことで物価が上つて行く、そういう心理的影響を非常におそれるわけでございます。これは今の日本の物資と通貨との関係をほんとうによく説明すれば、これで物が上ることにはならないということがわかると思うのであります。ただ、そういう心理的影響が非常に強いものでございますから、上る上るということを言えば、どうしてもそういつたような傾向になるおそれがあります。 それから、先ほどお話のような有価証券界におきまする傾向も、私らは非常に心配はいたしております。というのは、民衆化ということでたいへんけつこうなのでございまして、これがほんとうに自分の持つている金のある程度の余裕を持つて有価証券に投ずるというのなら、非常にいいことだと思うのでございますが、それがだんだん高じて来ますと、ほんとうに手元になければならない金を投ずる、あるいは実際は今配当はないのだけれども、何かとんでもなく高いものにでもなりはしないかというような予想で買う者が出て来ますと、これは非常に心配なわけだと思います。幸か不幸か先ごろちよつと株の下落があつたようでございます。かえつてこういうことでばかげたことはやめようということになれば仕合せだと思つております。 もう一つ私が金融界で心配しておりますことは、地方あたりで、東京など大都会にもあるようでございますが、非常に高利に金を集めて、その高利な配当というか、月に三分配当するとかいつたようなことを勧誘しておられる向きがあるようでございます。これは今の有価証券投資より、もつと心配だと思うのでありまして、そういうことが決して長続きのするものではございません。これは、戦争後みなまじめに働いてまじめな蓄積をするという風習よりも、何かちよつとしたことでうまいことをやろう、幾分賭博的な気持が一般に浸潤しておるからでありまして、これはただ道義の高揚とか一片の説教ではだめだと思うので、懲りなければだめだと思う。結局早く懲りるような状態が出て来て、これはつまらないことをした、やはりまじめに働いて、こつこつ蓄積しなければだめだというような気持に、早くなることがよいのじやないかと思うのであります。ただいまの御質問に対しましては、まことに同感でございます。
○成田委員 ただいま、民間で非常に高利に金を借りて、配当している、これは好ましくない傾向だといわれたのですが、全国至るところに保全何とかいうような堂々たる金融機関らしきものがある。聞くところによりますと、これは投資信託法の適用も受けなければ、銀行法の適用も受けない、政府はこれを監督する道がないように私聞いているのですが、金融機関のお立場にある酒井さんとして、どういう性質のものか、その内容を伺いたい。
○酒井公述人 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。私実はあまり深い内容は知らないのでございます。ただ非常に心配しております。というのは、金融機構というものは一つの機構でございまして、その一角に何かちよつと困つたことが出ますと、言葉がちよつと変ですが、金融機構上の火薬庫といつた感じがするのであります。何事もないときはけつこうでございますけれども、そういうところに火がつくということが、どうもいろいろ不安を起すもとではないかと思います。これについては常に問題が出ておりましてわれわれも困つた困つたと言つておるのであります。困つたというと、お前たちの勉強が足りないからそういうものが出て来るのだというおしかりもこうむります。しかしこれは私どもの働いておりますところと舞台が違うのでありまして、われわれが、むだな、あまり危険なことはやらない方がよいでしようということをいくら言つてみましても、それは、自分のところで安い預金でもとりたいつもりで、そういうことを言つているのだと思われるくらいのことでございまして、これはやはり先ほど申し上げたように、早くどなたかが懲りて、これはとんでもないものにひつかかつたということにならないとだめじやないかと思うのであります。これは政府でも御心配になつていらつしやいまして、何か弊害のないようにしたいということを考えておられるということを伺つて、ぜひそうしていただきたいと思つておる次第でございます。これはむしろ一般の常識によつて、あまり利益のあるところには非常な危険があるのだということが、一般に行き渡ればよいのじやないかと思つております。なかなかむずかしい問題でございますが、御質問者のおつしやつた通り、金融上の一つの問題として、私どもも非常に心配いたしております。
○福田(赳)委員 この間私大蔵大臣に質問いたしたのでありますが、当面の金融問題として、金利問題が非常に大きな問題になりつつある。大蔵大臣、日銀総裁などが要談されて、あるいは強権を発動してまでも、金利引下げを断行するというような風聞があるが、それはほんとうかと言うたら、それはほんとうじやないと言うのです。金利引下げ問題については愼重に対処するようなお話があつたのですが、私はことしの予算を見ましても、千五百億円くらいの赤字になる。また来年のことを考えても非常な赤字を予想されておる。この数箇年間というものは、これはたいへんな財政資金の放出が予想されるのだが、これに対しまして金制問題というのが大きく資金対策上問題になつて来ると思うのです。それでどうしてもその財政から放出される資金を吸収される対策が、ほんとうに強力に国策の中心として打出されて行かなければならぬ、こういうふうに考えるのですが、その際に銀行協会の会長さんとしての御意見をちよつと承つておきたいのは、もし金利の引下げということを強行するようなことがあれば、銀行界としては預金の利子を引下げるという考えに動くかどうか、それはどんなお考えでございましよう。ちよつと承つておきたいと思います。
○酒井公述人 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。本来ならば財政の支出の多いときによけい出ました通貨を吸収するということからいいます、金利が高い方が吸収できるのでございまして本来ならば金利を引上げて、また貸出しもそれによつて引締めるというのがオーソドツクスの行き方でございます、つまり本当の行き方だと思うのでございますが、一方その預金利子は引上げまして貸出金利を引下げるというのでは、これはわれわれとうていやつて行けませんので、そこに非常な悩みがございます。それで貸出金利の引下げという問題は、繰返し繰返し今まで御慫慂を受け、私どもとしましても今の産業がコストの中に相当の金利の負担をかかえていらつしやるということについては、これは確かに国際競争場裡においては、やはり一つのハンデイキヤツプでございますから、そういうようなことを考えますと、貸出金利もできるならばなるべく安くしなければならぬ、こういうふうに考えてそこに非常に悩みがあるのでございます。それにいたしましても私は一般の貸出金利を下げるということは意味がないと思うのであります。というのは別に相当の利益を得ていらつしやる産業もあるのであります。それを一律一体に金利を扱うということについては、私どもは非常に疑問を持つております。これは前から持つておるのでありますけれども、いくら私どもが持つておつても、なかなかそうならないだけのことでございます。それで先ほど申し上げましたように、基礎産業に対する金利というものは、これはやはりどうしても何か考えなければならない。これは私どもの集めた金の金利ではとうていできないのでございまして、それについて先ほどるる申し上げましたように、財政投資をふやしていただいて基礎産業の金利を引下げていただきたいということを申し上げておる次第でございます。できるならば、情勢が可能であれば貸出金利の引下げについて、応じて行きたいということは考えておりますが、ただ頭ごなしに金利を下げろということは、私はどうかと思うのであります。この点は大蔵大臣も、この間お目にかかりましたときに、いや、そんな考えは持つていない、金利が自然に下るような情勢ができて来たらば、そういうことにできるだけ順応してほしいというお話でございました。それなら非常によくわかる話だと思つて、私どももそういう金利の引下るような情勢のできることを期待している次第でございます。私の申し上げたことが、御質問からはずれておりましようか。
○福田(赳)委員 ちよつとはずれているのですが、引下げをかりに――本委員会では大蔵大臣は強権発動とかなんとかいうような乱暴なことはしない、こうはおつしやつているのですが、しかし巷間伝えられるところによると、どうもそういう態勢にあるのです。その際に金融界としては預金の利子の引下げをもつて対抗するかどうか、そういう御意図があるかどうかということを伺つているわけです。
○酒井公述人 預金の利子の引下げということはとうてい考えられません。引上げるかどうかは別問題といたしまして預金の利子を今引下げるというようなことは、とうてい考えられません。
○福田(赳)委員 さようなことだろうと思うのですが、金融界の任務というものは、本予算を実行する上にきわめて重大だ、ことに今後数箇年間における金融の任務というものは、預金吸収という意味できわめて重要な段階になつて来るので、ぜひひとつ勇敢にやつてもらいたい。金融界というものはどうも元気がない、いつも儀礼正しいようだが、大いに勇敢に堂々とやつてもらいたいということを要望、いたします。
○酒井公述人 ただいまたいへん御激励をいただきまして非常に心強く感じております。私どもはまことにいくじがないので、いつでもおしかりをこうむつておりますが、私もただいまの御激励によつて力を得ましたから、大いにひとつ勇敢にやりたいと思いますから、どうぞ皆様の御支持をいただきたいと思います。
○太田委員長 どうもありがとうございました。 次は日本海員組合長陰山寿君。たいへんお待たせいたしました。
○陰山公述人 ただいま御紹介をいただきました陰山でございます。日常身近な問題に忙殺されておりまして、予算案の内容に関しては、全然不勉強でございます。突然御指名をいただきまして、実は面くらつている次第でございます。従つて御参考になるようなお話を申し上げることはできないかと存じますが、私の立場において特に要請いたしたい二、三の点について申し上げてみたいと存じます。 私は民主主義に立脚した労働運動が日本の政治経済の復興の上に果す役割を、主観的にも客観的にもきわめて高く評価しているものでございますが、政府が前国会において労働関係法の改悪を強行した、そうして今また電産、炭労のストライキのあとを受けて、その制限その他の措置によつて、労働者の自由と権利の上に新しい制約を強化しようとしていることを、最も遺憾としているものでございます。反動勢力がみずからの地位を保持することに自信を失つて動揺し始めると、民主的な勢力に対していろいろな形において抑圧を加えるということは、歴史上しばしば繰返えされて来ているところでございますが、私は破防法のごときが、このような目的に濫用される危険が多分に存在するという意味において、むしろその改廃を望んでいるものでございまして、今政府が企図しているような労働者の団体行動の上に加える新しい制約のごときは、断じて賛成し得ないところでございます。歴史的な伝統が浅くて、組織の運営の上にも多くの未熟さを持つているのが、日本の労働組合の現状でございますけれども、そして極左の全体主義の影響を受けて、これらの労働組合の中には、闘争激発主義に走り、あるいは政治的偏向に陥りつつある者があることは事実でございます。ことに総評議会が炭労、電産等の争議指導に犯した誤りはきわめて重大であつて、特定政党の政治的な行動部隊化せんとする傾向のごときは、民主主義の労働運動の正道を逸脱せるものといえるのでございます。かくのごときは労働者自身の反省と正常な世論の喚起によつて、これが是正をはかるべきであつて、ただちに政治権力をもつて正面からこれを抑圧、断圧せんとするがごとき態度は、良識ある労働者の自主的な努力を否認するものであり、従つて階級意識を刺激して、その対立を激化するものであつて、結果するところはこれらの労働者を直接行動主義の上に立つ革命的な政治闘争へかり立てる結果になるであろうことを私は恐れるのでございます。私の所属いたします労働組合は、政治的に保障されている行動の自由も、社会的な連帯性の限界においてみずから規制して来たのみならず、階級的な利益の主張の前に、祖国の再建に負うところの国民的な義務を、他のあらゆる義務の上に置いて考え、かつ行動して来ているのでございます。さらに同志組合との協力連繋によつてこの総評の政治的偏向を是正し、民主的な労働運動の健全なる発展のための運動を続けつつあるのでございます。この目的のために同志組合及び個人によつて、民主的労働運動連絡協議会の結成総会を今日の午後持つことが予定されているのでございますが、私は私どもの運動がきわめて困難であり、眼前の事態が困難と辛酸に満ちたものであることを考えております。しかし祖国と民族の明日の運命に対する信頼と愛情をもつてするわれわれの運動が、究極において成功することを確信いたしておるのでございます。そういう立場に立つ者の一人として、政治権力によつてストライキの制限その他反動的な措置を強化せんとする政府の企図に対しては、角をためんとして牛を殺すのと同様の誤りを労働対策の上に強行せんとしているものとして、強く反対を表明せざるを得ないのであります。世界の歴史に徴してみましても、民主的な労働運動の発展の過程において多くの曲折と困難を経験することは不可避であります。ことに戦後の日本の労働組合が組織されました経緯の中にはかなり変則的なものがあり、かつ経験の浅さから結果する失敗があることは、是非の批判はともかくも、実情として理解さるべきであると思いますが、これが是正に労働者がいかに対処し、いかに反応を示すかを見きわめる時間を置かずして、一時的な傾向や現象を絶対的なものとして、権力による抑圧を企図するがごとき危険を冒してはならないと思うのであります。いま一つ重要なことは、炭労、電産等のストに示された経営者の態度であります。その立場においていろいろな言い分はあると思いますが、あの争議を長期化し深刻化して、国民生活の上に多くの悪影響を与えた責任の一半は、経営者の負うべきものであることは申すまでもないと存じます。にもかかわらずこれを追究する何らの意図の片鱗も示さずして、一方的に労働者の団体行動に制限を加えようとする政府の態度は、きびしく批判されるべきであると思うのであります。 次に私が主張したいことは税制の問題であります。ことに大衆課税を大幅に軽減することによつて国民生活の安定化を促進することの必要性については、いまさら私が申し上げるまでもないと存じますが、少くとも当面月収二万円以下の低額所得者に対する所得税の免税措置を決定されたいと思うのであります。これによる税の減収は八百億円程度ということでありますが、この程度の穴埋めは各省予算のうち消耗物件費等の節約によつてまかなうことを考えるべきであつて、勤労者の生活保障は名目賃金の増加よりも、減税と低物価政策によることが妥当であることは言うまでもないところと存じます。勤労階級の生活の安定なくしては、間接侵略の不断の脅威の前に置かれている祖国の安全を守り通すことは困難であると考えます。さらに地方税のうち、市町村民税の均等割、各種協同組合に対する固定資産税の軽減等も、同様の趣旨において断行すべきものであると考えます。 最後に海運政策について申し述べたいと思います。独立後の日本において経済の自主達成が、当面の急務であることは言うまでもございません。わが国の経済構造と立地条件から見まして、正常かつ安定した国際収支の均衡をはかることは重要であつて、そのためには貿易の伸張とともに貿易外収入の増大をはかること以外に道はないと思うのであります。さきに経済安定本部が策定しました経済の見通しに従つてみましても、昭和三十一年度において商品貿易面では約八億ドルの入超が予想されているようでありますが、この貿易じりの赤字は、引続き朝鮮関係の特需等によつて、一部を補填することが期待されるといたしましても、その相当部分が海運による貿易外収入に依存しなければならないことは明らかであります。戦争以前におきましては、今日のように特需その他駐留軍関係の臨時収入等はなかつたのでございますが、商品の貿易面における赤字のほとんど百パーセントが五百六十万総トンの日本商船隊のあげる貿易外収入によつて補填されて来たことは、今なおわれわれの記憶に明らかなところでございます。政府は、三十一年度において八億ドルと予想される赤字の三割程度約二億五千万ドルを海運の貿易外収入をもつて補填するために、約三百四十万総トンの外航船腹を必要とするとして、この船腹量を確保するために、二十八年度より向う四箇年間に毎年三十万総トンずつの建造を計画して第十五国会の冒頭における総理の施政方針演説におきましても、外航船腹増強を強調されているのでありますが、二億五千万ドルの海運収入を実現するために、百二十万総トンの外航船腹を拡充すれば足りるとの計算は、私をして言わしむるならば、あまりにも楽観に過ぎるものといわざるを得ないのであります。何となれば三十一年度において二億五千万ドルの海運収入を三百四十万総トンの外航船腹をもつてあげ得るとの計算は、きわめて不安定な基礎の基準によるものであるからであります。すなわちこの計算は昭和二十六年度の運賃を基準としているものでありまして、その後における外航運賃の推移を見ますならば、当時北米の小麦運賃は十二、三ドル程度であつたものが、今日では八ドル程度に下落しておるのであります。これは二十七年の四月ごろから低落を続けた結果であつて、しかも今なお回復のきざしが見えないのみならず、今後の貿易量の状態から見ましても、当分好転を期待せしむるような材料を見出し得ないのが現状であるかと存じます。かくのごとき外航運賃の状況から見まして、百二十万総トンの新造計画をもつて二億五千万ドルの収入を期待することが困難であることは申すまでもないところでございまして、この貿易外収入の目標を達成するためには、さらに百万トンを加えた二百二十万総トンの計画が必要と考えられるのであります。政府の計画は楽観か、しからずんば消極的に過ぎるといわざるを得ないのでございます。さらに本年度における開発銀行の資金計画を見ましても、造船資金として二百二十億円が計上されているようでありますが、しかしこの中には開発銀行の二十七年度の資金計画によつて当然着工されるべき五万トンの分を含めたものでありまして、二十八年度三十万トン計画の実質は二十五万総トンであるといわざるを得ないのであります。今日の海運状況から見ますと、定期航路用の高速船の建造の必要が増大して来ているのでございますが、高速船の建造量をさらに増加するといたしますならば、この二百二十億円では二十五万総トンの建造すら減少せざるを得ないということが考えられるのであります。かくのごとく三十万総トンの計画が実質的に減少を見ることは、国家的な経済損失はもちろん旧軍工廠関係を含めて八十万総トンの能力を有すると推定されるわが国の造船業に与える影響はきわめて重大であつて、造船所能力の三分の一程度しか稼働することができず、残りの三分の二はまつたくアイドルを生じて、十万名を越える造船労働者と造船業を囲繞する二百余種に上る関連産業の従業員と、その扶養家族を合せますと百万名以上に及ぶのみならず、しかも造船所の所在する地域における地方の民生が、その日常の生計を造船所の活動に依存している実情を思いますときに、造船業におけるかくのごとき厖大なアイドルを生ずることをもたらす社会的影響が、きわめて深刻なものであることは言うまでもないと存じます。政府は公共土木事業費等に相当の予算を計上しているようでありますが、私はこの予算の是非について申し上げるのではございませんが、海運に対する財政投資はこれらのものとは性質を異にし、かすに若干の時日をもつてすれば確実に回収し得るものであることは、前例の示す事実であります。かつ造船業が厖大な総合的な組立て工業であることをあわせ考えますならば、海運に対する財政投資はかつこうの景気振興策でもあり、中小企業対策としても絶好のものといえると思うのであります。しかるに政府は依然消極的態度に終始して、せつかく外航船腹の拡充を方針としつつも、造船計画量すら下まわるごとき実情に対して、新たなる対策を講ずる何らの熱意も示していないということは、まことに遺憾のきわみであります。さらに政府の海運に対する消極性は、今次予算案においても明瞭に看取できると存じます。すなわち政府は今年度の予算である程度利子補給制度を考えておるのでありますが、これは単に財政資金と市中資金の金利の差額の補給にとどまつて、ために造船融資の金利は七分五厘が最低限となつておるのであります。この金利は英国の二分五厘ないし三分五厘程度に比較いたしますれば倍以上の高額であつて、わが国海運の国際競争における最大の弱点は、この高金利にあることは明らかでございます。このような姑息な利子補給制度では大きな効果を期待することができないのみならず、さらに金利低減の方策を講じなければ、対外競争力の増大に資するものとはいい得ないのであります。のみならず今次予算案において市中銀行の造船融資に対する損失補償制度を確立していないために、在来の市中融資の金利償還にもことを欠く現状において、今次造船に対しても市中銀行が造船融資に対して今なお協力を拒否する態度に出ている状態でございます。外航船腹の拡充のために、財政投資の積極化とともに市中融資の円滑化をはかることが絶対に必要であつて、そのために損失補償制度を確立することが、当面の急務であると考えます。かくのごとき損失補償制度は、主要海運国においてはすでに実施しているところであつてわが国においても戦前この制度が実施され、船腹増強に大きな寄与をして来たことは、あまねく人の知るところでございます。市中銀行が長期にわたる厖大な融資を継続することの困難さから、市中融資の確保のために既往の市中融資を開発銀行に肩がわりせしむることの必要を主張しているのでございますが、これを実施するとすれば、六百億円の出資でははなはだ少額に過ぎると思うのであります。聞くところによりますと、政府の当初案は六百三十億円であつたということでありますが、これは七百億円程度に増すべきものであつて、かくのごとく外航船腹を増強し、対外競争力を強化して、国際収支の改善をはかるために看過し得ないのは、わが国の建造船価の問題であります。周知のごとくわが国の建造船価は、欧州主要海運国のそれに比して二割程度高額であることは御承知の通りでございます。その結果船腹の整備を主として新造船に依存するわが国海運の対外競争力を弱化せしめているのみならず、輸出船舶の受注をも困難ならしめている現状でございまして、船舶の主材料たる鋼材の価格が、欧州主要造船国の国内供給価格より五〇ないし六〇%割高であり、わが国における船価高に少からざる影響を与えているのでございます。 さらに日本海運に加えられている重圧に、もう一つ税金の問題がございます。船舶を対象とする固定資産税は、現在の新造船について申しますならば、年間の船員費をさらに上まわる厖大な固定資産税が徴されておるのでございます。私どもは先ほど申し上げましたように労働者としての階級利益の主張の前に、祖国の再建に負うところの国民的な義務を、あらゆる義務の上において考えるがゆえに、低廉な賃金においてなおかつ耐えて、海運の復興の一日も早からんことに挺身をして来たつもりでございます。にもかかわらず、かくのごとき税金が、年間にわれわれに支払われるところの賃金よりもさらに上まわつたものが徴されているという現実に対して、この事態の改善のために、関係当局において十分愼重に検討されることを要請したいのでございます。日本の労働組合の現状のもとにおいて、日本の経済の実情のもとにおいて、われわれは憲法に保障されているところの権利を主張する、健康にして文化的な生活をなすに足りるところの賃金を要求する前に、産業の復興に負うところの労働者の義務を履行するための労働力の維持と再生産に必要な最低限度の環境の整備を、要請して参つたのであります。このような祖国の再建に寄せるわれわれ労働者の熱情が十分理解されるならば、若い浅い歴史と経験をしか持たない日本の労働運動が、その発展の過程において多少の一時的行き過ぎの現象があるといたしましても、国家権力による抑圧を考える前に、これらの労働者の産業に対するところの義務を百パーセント遂行せんとする熱意の上に立つた環境の整備に関して、国として、政府としてさらに深い愼重な理解と対策を講じてもらいたいということを申し上げまして、私の公述を終りたいと存じます。
○太田委員長 ありがとうございました。御質問はありませんか。
○中村(高)委員 ただいま陰山公述人から日本の造船、海運方面に関しまするきわめて適切なる御意見を拝聴いたしたのでありまするが、海員組合所属の組合員で、現在各所におきまして漁船の拿捕などを受けまして、朝鮮あるいは中国に連れて行かれていまだに釈放もされずに帰つて来られない諸君が、相当多数にあるということを聞いておるのでありまするが、それはどんなふうな状況になつておりますか。特に朝鮮の海域のごときは、向うは勝手に李承晩ラインなるものを引いて、そこから入つて来ればつかまえるという。日本の外務大臣は李承晩ラインというようなものは認めないというのでありますから、その間において働いておりまする漁船の諸君などは、非常に迷惑を受けておると思うのであります。その辺のことが一つと、それからもう一つ、先日新聞で拝見いたしたのでありまするが、中国の漁船の乗組員十数名の人が難船をして日本に救済をされて、海員組合でこれを長い間めんどうを見て、おみやげを持たして帰したという新聞記事が出ておりましたが、ああいう難船をしたような人を日本の政府としてめんどうを見るということは当然だと思うのであります。日本の政府としてはそういう場合何らできないようになつておりますかどうか、その辺のところをあわせてお答えを願いたいと思います。
○陰山公述人 御質問にお答え申し上げます。南支那海における漁船の拿捕問題は依然として根絶いたしておりません。朝鮮あるいは北海道方面におけるソ連等に拿捕され、抑留された船または船員の数については、現在はつきり記憶をいたしておりませんが、中共関係においては現在たしか三百五十八名であつたかと存じますが、なお未帰還の船員がございます。この早期帰還に関しましては、政府間における交渉に期待することができない実情にございますので、私どもは私どもの関係を持つ国際的な労働組合の組織あるいはインド等の組合関係者等を通して、中共側に対していろいろな働きかけをやつて参つておりますが、先ほど申し上げましたように、現在なお数百名に上る未帰還の漁船船員がある状態でございます。朝鮮の関係におきましては、ただいまお話のような李承晩ラインの問題を中心として、いろいろ問題が未解決のままになつておりますし、従つて支那海における操業に拿捕の危険が依然として伴つておるという現状でございます。 それから先般中共関係の漁船船員八名が、支邦海で漕難をいたしましたのを、日本の漁船がこれを救助してこちらに連れて来られまして、横浜でありましたか不法入国者等が収容されるところに収容されているということを聞きましたので、外務省の方に折衝いたしまして、私どもの組合がその身元を引受けるという了解のもとに、われわれにその身柄が預けられましたので、東京の最近できました海員会館に組合の責任において収容して、あとう限りの好遇をしてやつたつもりでございます。 〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕 これはその後外務省の手続によりまして、先月の末に英国船によつて中共側に送り返しましたが、当初の私どもの計画は、国交の回復してない国の船員であろうと何であろうと、ひとしく海上労働者としての気持において、遭難した場合に、これを救助するために努力するということは当然でございますが、一面私どもは在華邦人の帰還を促進するためにも、これらの中共漁船船員に対して民間団体であるわれわれの立場においても、できるだけせわをするという形が何らかの意味において役に立つのではなかろうかという配意もあつて、そのような努力をいたしました。中共の総工会あるいは海員総工会等に電報などで連絡をとりまして、必要があれば当初はわれわれの組合が船を仕立てて南支那海の洋上まで送つて行くから、中共側から船を出して、支那海上でこれらの船員を引渡すというようなことも考えてみましたし、また中共に、民間の汽船会社、貿易商社等によつて配船が計画をされて、当時その第一船が近く出港するのではないかというようなことが予想されておりましたので、この中共配船の第一船にこれらの船員を乗せて向うに送り返すということもまた一つの方法ではなかろうかというように、いろいろ組合の立場として努力をいたして参りましたが、その配船もなかなか実現をいたしませんので、先ほど申し上げたように外務省の責任において、英国船でございましたかに便乗させて、向うにたしか帰り着いたはずでございます。以上のような措置をわれわれの組合としてとつて参りましたが、こういう場合に政府の責任においてどのような措置がとり得るかということにつきましては、私確実なところを確かめておりませんのでお答えにならないかと存じますが、以上知る限りでお答え申し上げます。
○中曽根委員 陰山さんにお尋ねいたしますが、民労連の結成について非常に関心を国会側でも持つておりますが、民労連がいかなる理由から結成されたか。われわれは新聞を通して知るのみであります。すなわち総評に対して、総評の今までの指導方針や運動に対していかなる観点よりこういう運動を起されたのか。その点と、第二は現在の総評の指導部に対して、今後民労連はどういう態度をとつて行かれるか。つまり同床異夢の関係をこのまま続けて行かれるのか。あるいはこの偏向を是正するために行動を起すのか。具体的に言えばそれはヘゲモニーの奪還ということになるのでありますが、どういう方向に出て行かれるのか、その今後の御方針。それから労働法規の改正問題やその他の問題については、総評の執行部やその他に対して、どういう態度で対処して行かれるか。この二点についてよろしかつたら御見識を示していただきたい。
○陰山公述人 ただいまの御質問に対して申し上げます。総評の政治偏向に関しましては、われわれは総評の加盟団体としてその部内において、たとえば昨年の労働法規改悪反対闘争の際のごとく、極力あのような闘い方の誤りを内部機関において指摘し、その決定の上にわれわれの考え方が織り込まれるように努力をいたして参りましたが、遺憾ながら総評のわれわれが遺憾とする傾向は是正されずして、先ほど申し上げましたように多くの誤りを犯して来ているのでございますが、ことに先ごろの炭労、電産のストに関しましては、総評の指導方針が大きな誤りを犯したということ、この事実をとらえて、ひとしく大衆の組織ではあるけれども、労働組合の経済的な運動の目的を再軍備予算反対とか、平和四原則等に結びつけた政治闘争として組織して闘おうとするところの総評のこの行きかに対して、私どもは黙視することができないというので、昨年の末に全繊その他の四単産の同志が、いずれも機関において方針を決定して、総評批判に対しての態度を明らかにしたのでございますが、現在総評は日本の組織労働者のかなり多数の部分を組織している評議体でございますが、この総評に参加をしてない組合も相当数あるのでございまして、これらの組合からも総評が日本の民主的労働組合の中央における統一組織として健全に発展し、その方針をとつて行くならば参加をしようと思うけれども、総評の現在のあり方に対しては参加ができない。われわれの総評批判に同調して、日本におけるほんとうの民主的な労働組合の勢力を結集することによつて、総評の政治偏向を是正する効果をあげると同時に、さらに総評も含めて日本の労働運動の態勢を、自由にして民主的な労働組合によつて形づくつて行かなければならないのであるからして、その運動の連絡機関を早急につくるべきであるという要請が、あの批判書を昨年の暮れに百名以上の組合員を持つ全国一万七千の労働組合に送りました直後から今日まで、続々としてそういう要請が私どものところに参つたのでございます。そこで民労連という仮称の連絡機関を民主化運動の推進のために組織することを決定したのでございますが、しかしこの運動に参加をいたしております。ことにこの運動の中心として出発をいたしました全繊維労組にいたしましても、私どもの所属する組合にいたしましても、依然として総評の加盟団体であることにかわりはないのでございます。従つて私どもの運動は、いろいろ誤り伝えられているであるようでありますが、現在の段階において、ただちに第二総評を結成するために、現在の総評から離脱するというような考え方は決定いたしておりません。これは、われわれが全労連や産別の犯した誤りを批判しつつ新しい日本の労働組合の統一組織をつくるために努力いたしましたのは、大体一年半くらいかかつたと思いますが、その結果結成されたのが現在の総評でございます。総評結成されてなお多くの時日がたたない現状において私どもは現在の総評のあり方が間違つている、総評結成当時の基本綱領にもとる現在の運動方針をとつているからといつて、ただちにこれをこわすことを考えるのは時期尚早であると考えております。従つて私どもは総評の構成団体としての立場において、機関の内部においてこの偏向を是正するための努力を続けると同時に、さらに総評の加盟団体以外の労働組合にも広く呼びかけて、民主的な労働運動を再建しようとする結集された勢力をもつて外から総評の偏向を是正するための運動を続けて行きたいという考え方を持つているのでございます。従つて私どもの努力は、あるいは形の上において成功が実を結ぶことは困難であるかもしれませんけれども、私どもはできるだけの努力を総評という組織体の政治偏向を是正するためになお続けて行きたい、このように考えております。もちろん総評内部における主導権の問題等のごときは、その内部におけるわれわれの努力が、どのような結果を生むかということはわかりませんけれども、総評の偏向を是正するために、その主導権をわれわれと志を同じくする組合によつて握ることができれば、これに越したことはないのでございます。そういう努力はもちろんわれわれの運動の中の一つの考え方として当然続けられるべきであると考えております。 労働法規の改悪反対に対しての総評の方針というものにつきましても、総評の加盟団体として機関に役員を送つておりますので、われわれはこれに対してわれわれの是と信ずる意見を主張するつもりでございますが、民労連としてどういう態度をとるかということは、これは本日結成総会をあげます民労連の新しい機関において検討、決定されるべき問題でございまして私がこの場合どのような方針をとるということを申し上げるべき限りではないかと存じます。それだけでございます。
○橋本(龍)委員長代理 陰山さんありがとうございました。 御質疑もないようでありますから、次に自由人クラブ常任理事直井武夫君にお願いをいたします。直井武夫君。
○直井公述人 ただいま御紹介をいただきました直井であります。日ごろ考えておりますことを予算案に限定いたしまして申し上げたいと思います。 御承知のように、昨年度の国際収支を見ますと、約二億ドル余りの受取超過になつております。しかしこれは特需その他による八億二千万ドルという臨時の特殊の収入があつたからでありまして、正常な貿易関係から見ますと、差引六億ドルという不足を生じておるのであります。日本のように多額の輸入と、同時にまた輸出によつて行かなければ国家が立つて行かないという国におきまして――これはイギリスもそうでありますが――この六億ドルの正常な貿易関係における不足ということは、これは非常に大問題でありましてこれを解決するということが、今日は国民の輿論の一つになつておると思うのであります。 申すまでもなく、輸出の振興、そのために積極的には国際物価に対して割高となつておりますわが国の物価を引下げるように努力すること、さらに消極的には、物価の引上げを促進するような要因を押えて行く、この二つが国民経済の要請になつておると思うのであります。 〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 大蔵大臣の御演説の中にもそういうことがうたわれておつたのでありますが、しからば今度の予算におきまして、そういう国民の要請が具体化されておるかと申しますと、必ずしもさようには考えられない。すでにこの席上におきましても、あるいは新聞雑誌によりましても、今度の予算がインフレの要因を含んでおるということ、つまり物価高を促進するような要因を含んでおるということがいろいろ指摘されております。また一方におきまして、この予算において日本の基幹産業を育成する、あるいは物価高を引下げる、産業の合理化というような、生産的な、国民経済を強化する方面に費用が使われておるかということにつきまして多くの疑問があることも、各方面から指摘されておる通りであります。私は一々その計数についてこれを述べようとは思いませんが、概算いたしまして、本年度の一般予算におきまして約一千百五十億ほどが、前年よりも余裕として生じておる金額であります。これは防衛費の削減であるとか、あるいはインヴエントリー・フアイナンスがなくなつたとか、そういうようなことを合せまして千百五十億の余裕ができて来たのでありますが、結局これが今私の申しました方面にどういうふうに使われておるかが問題でありますが、その八割は大体消費的な性質を持つておる費目に向けられております。そしてあとの二割が食糧増産対策だとか、公共事業費だとかいうような、いわば多少とも生産的と言える方向に使われておるのでありまして、しかもこの公共事業費、食糧増産対策というようなことも、はたしてそれがどれだけ直接に今申した刻下の要請に沿うものかどうかということについては、多くの疑問があると思うのであります。そういう意味におきまして、一般的に申しまして、今度の予算が、国民の経済の刻下の急務である、かつてイギリスの内閣で言われたように、輸出か死かという切実な問題の解決に対して、はなはだ不親切であると私は考えるのであります。これは一般的に指摘されておることで、あらためて重ねて私がここで述べますのは、このことがきわめて切実なる問題であるからにほかならないのでありましてあえて私がそれを繰返した次第なのであります。 次に、具体的な点につきまして三つばかり私の予算案に関する注文なりあるいは批判なりを述べたいと思うのであります。 その第一は、防衛費の問題であります。防衛費は千四百五十億、総予算の約一五%を占めておる多額な経費であります。しかもこの経費は今後増すことはあつても、減るとは考えられない費目なのでありますが、私は今この費目が多いとか少いとかいうようなことを問題にしているのではないのであります。私が問題にしたいのは、この費目の取扱い、特に政府における取扱い方を問題にしたい。でなければ予算の一五%、しかも年々ふえるべき傾向のある費目に対して、国民は十分に納得を得ることができない、かように信ずるからであります。取扱いと申しましても、これは一部にいわれておりますように、こんな不生産的な費用は現下の日本の経済からいつて、害にこそなれ、益になるのではないから、大いに削減すべし、あるいはこれを全廃すべしという議論もあるようであります。不生産的な費用であるから、削減せよ、あるいは全廃せよという意見でありますが、しかし社会の秩序あるいは国家の治安あるいは国家の対外的な存立ということ、およそ社会、国家というものが存立する上に、裁判所だとか監獄だとかあるいは警察だとか、さらに軍隊というような不生産的支出が不可欠であることは、これは人間社会の約束でありまして、マルクス、レーニンあるいはそういうような連中でなくとも、普通の人が、人間の二千年来の経験に徴して自明のことなのであります。でありますから私は、これが不生産的な費用であるからとつ払えと、そういう意味での取扱いに対して反対しているのではないのであります。逆にかかる多額の支出に対してその協賛を求めるところの政府は、これに対してその性質、内容、その必要の程度、なぜ必要かというようなことについて、十分国民の納得が行くような処置、説明を加えてもらわなければならないと、国民の一人として考えるのであります。ところがこの費目に対する政府の説明はきわめてこれあいまいでありまして、いわゆるこの内容をなしておりますところの資材についても、いわゆる戦車というのがあるが、これを特用車ですか、特車というような言葉を用いたり、あるいはフリゲート艦は軍艦であるか、普通の船であるかというようなことを問題にしたり、結局この費目の内容であるところのものに対して、まつすぐにその必要なり性質なり内容なりを国民に訴えていない。これでは国民が十分に納得して、この費目を支出することはできないと思うのであります。いわんやこの費目が上つたり下つたりすることが、外国の要請だとか、あるいは圧迫によつてなされるというような印象を国民に与えたならば、これは最も悲しむべきことでありまして、政府はあるいは政党は、よろしくこの費目について、国民の前になぜこれが必要であるかという事情、それを説明する、訴える、そして国民とともに自主的にこの問題を解決すべきであり、自主的にこれを上げたり下げたりすべきである。もちろん現在われわれは日米安全保障条約によりまして、米国に対する防衛の義務を持つております。その限りにおきまして、米国とこの問題について折衝、交渉することはもちろんしなければならない義務であります。しかしその前に政府は国民とともに自主的にこの問題を解決して、そうして米国と交渉に当るべきではないか、かように考えております。ところがこの問題に対する吉田首相初め政府の態度を見ますと、輿論の醸成をまつて、国民感情の高揚をまつて、この再軍備問題を解決する、かように申されております。なるほど民主主義政治というものは輿論によつて動かされ、決定される政治であることは申すまでもないことであります。しかしこの輿論というものは、ただほうつておいて、捨てておいて自然に形成さるべきものでは私はないと考えております。軍事問題について、政治経済問題について輿論を形成すべき国民は、いわば、しろうとといえば変ですが、専門家じやない。政党なり政府なりがその方面における専門家である。これらの政党なり政府なりが、輿論の形成について国民に十分な材料を提供する、判断の資料を提供する、なおその上にわれわれはこの問題についてはこういうふうに考えておるのだ、こういうふうに判断しておるのだ、こういうふうな方針をとることがわれわれ国家にとつて最善の道だと考えておるのだという意見を国民の前に開陳して、初めてここに輿論というものが形成されて行くのでありまして、ただ臭いものにふたをするようにほうつておいてそして輿論の決定をまつというのであれば、これは民主主義政治の実をなさないものであり、かつ政党としての存在理由がないと私は思うのでありますが、この意味におきましてこの防衛費の問題について、私は政党なり政府なりが、十分にこの民主主義政治における指導性を発揮いたしまして、輿論の形成に努力をされるよう希望する次第であります。実はこのことはサンフランシスコ条約以来の論理的な帰結でありましてこの二年間輿論をそのままに放置しておつたということは、きわめて怠慢であると思うのであります。しかしながら一方におきましては、これに反対する側は、盛んに輿論の形成に参加しておる。働きかけておる。このことも諸君の御存じの通りでありまして自然の国民感情の沸き上るのをまつとか、輿論の帰趨の決定をまつとかいつている間に、一方においては盛んに国民に訴えておる。一方は輿論の形成に参加し、かつ形成に努力しておるのでありましていわばひとり舞台の感がある。かくのごとき状態を放置すれば、私はおそらく現在吉田首相が考えておられることとは、反対の方向に輿論が形成されるのではないかという懸念を持つものでありまして、防衛費のこの協賛に対しましては、深甚なる危惧の感を持つておるのであります。次に社会保障費のことにつきまして若干申し上げておきたいと思います。社会保障費の費目の中に、本年度におきましては新たに軍人の恩給が復活されて、これに昨年来の遺家族の援護が加わりまして、五百億という金額が計上されております。これは一面においてはなはだけつこうなことだと私は思うのでありますが、これに対しましていわゆる社会保障費として失業対策費だとかその他の費用が約六百八十億あります。生活保護費、児童保護費、社会保険費、結核対策費というような社会保障費が約六百八十億であります。この六百八十億に対しまして、今申した軍人遺家族及びその恩給が五百億という額に上つておることは、多少均衡において多過ぎるのではないかと考えるのであります。戦争によつて被害をこうむつたのは――もちろんこの人たちに対しては、私は深甚な同情を禁じ得ないのでありますが、しかし国民全体が被害をこうむつておるのでありまして、それと国民全体がその恩恵を受けることになつております社会保障費との均衡について、私は多少不満を感ずるのであります。さらに進んで申しますと、文官の恩給費が百億円ありまして、大体六百億円が今度の予算に計上されておりますが、私はこの恩給制度というものは、復活させるよりも、むしろ押えるべきものである、そうしてこれを社会保障費という性格に切りかえて行くべきではないかと考えるのであります。そういう意味におきましても、この五百億の今度の計上に対しまして不満を持つものであります。深くは存じませんが、この恩給制度といいますのは、これは古い社会の宮廷政治か封建政治か、何か国家に功労のあつた者ばかりでなく、その遺族に対しても、その労を慰めるために、その功に謝するために国家が支出しておつたのでありましよう。しかし今日のこの民主主義社会におきまして、軍人ないし官吏だけが国家に功労のある者ではありません。農民、中小企業者あるいはお医者さん、われわれの、ごときフリー・ランサーあるいは労働組合の幹部、すべてこれは国家に貢献しておるのでありましてひとり官吏と軍人だけが特別に恩給を受領する性質のものではないのであります。これは官吏だとか軍人だとか、そういうようなこととは関係なしに、だれであろうが、農民であろうが、弁護士であろうが、あるいは労働組合の幹部であろうが、一定の年齢以上に達した者に対してその扶養が非常に困難なる場合に、国家がこれを保障するという養老年金制度、それを社会保障の立場から組んで行くべきものでありまして、将来そういうふうに持つて行くべきものではないか、かように考えておるのであります。 最後に、今度増額されたものの中に地方財政に対する国家財政の援助があります。これは総額にいたしまして相当多額に上つておりまして、例の義務教育費国庫負担を合せまして本年度において昨年よりも二百七十億の増加を示しております。合計して一千七百億、これはさつき問題にいたしました国家防衛費よりもさらに多額であります。なぜこのように地方財政に対する中央財政の援助が必要であるかと申しますと、言うまでもなく、地方財政が近年非常な増大ぶりを見せておるからであります。二十四年度におきまして地方財政総額は約三千八百億であつたのでありますが、本年度の予想は、自治庁の資料によりますと八千四百十八億、四年間に二倍になつておる。これは驚くべき増額でありまして、かようなことが今後も続き、しかも国家防衛費よりもさらに多くの費用が、地方財政のために国家から流されるというようなことは、これはきわめて危険な傾向ではないかと思うのであります。地方財政の緊縮――その三分の一は人件費であると考えられますが、あるいは戦時中からのいろいろな施設の引継ぎもありましようが、いずれにせよ地方財政の膨脹をこのまま放置すべきときではない。わずか四年の間に二倍になる、それにつれて国家財政からの援助がさらに毎年増すというようなことは、きわめて憂慮すべき現象であつて、これに対しては今年度の予算には間に合わないかもしれませんが、今後十分注意されるように希望したい、かように考えております。 はなはだ取急ぎまして準備も不十分でありますが、国民の一人といたしましてここに公述を申し上げた次第であります。
○太田委員長 ありがとうございました。御質疑がございますか。
○石井(繁)委員 直井さんはソ連とアメリカの問題の研究家でありまして、要するに米ソの問題等については権威者であります。本日は予算の関係でそれを述べられなかつたのですが、政府では、世界の情勢とかあるいは各国の責任ある者の意見から、米ソの対立は次第に緩和せられておるであろう、緩和せられておるということまでは言えないとしても、米ソの戦争、いわゆる第三次大戦というものは危機が薄らぎつつある、こういうふうな意見を述べておるのでありますが、これに対して、直井さんのいろいろな米ソ等に対する御研究の結果は、どんなように観測されるかどうか、この点をひとつ承つておきたいと思います。
○直井公述人 米ソの抗争と申しましようか、従つて第三次大戦の可能性が減少しておるというようなことは、確かに日本のいろいろな問題にとつて、重大な影響を持つておる問題であります。なるほどヨーロツパにおきましては、ベルリン封鎖に対して敢然とこれに抵抗した。その後北大西洋同盟、これが曲りなりにも進捗しておるというような事情からいたしまして、ヨーロツパ方面におきましては、ベルリン封鎖当時のような戦争の切迫感が、なくなつておることは事実であると思います。しかしアジアにおきましては逆でありまして、現に朝鮮におきましてあのような状態が続いておりますし、今後南方におきましてもさらにその発展性が予想されるのでありますが、問題は戦争の危機が薄らいだか、あるいはふえたかということではなくして、共産主義政治というものから見まして、これが全世界に勝利するまでは戦争でもない平和でもないというアブノーマルな状態が続くのであります。地球の一面においてやや戦争の危機感が薄らいだというようなことは、永久に戦争の危機が遠ざかつたことではないのでありまして、一面においてそれがまた増大してもいることでありますし、かつまた全般的に戦争の危機が薄らいだと申しましても、それは一時の現象でありまして、共産主義の哲学、本質から申しましてこれは全世界を制覇するまでは、パーマネント・ウオー、永久戦争なのであります。それがあるいは平和運動の形をとり、あるいは八方戦争の形をとつて、東洋にあるいは西洋にと出没するだけでありましてその間条約だとか、約束だとかいろいろなものが結ばれるでありましようが、これも共産主義の哲学から申しますと、一時の便宜、エクスペデイエンスでありまして、究極の目的を達するまではほこを収めない。それが戦争の手段によつて目的を達するか、あるいはそれを避けつつ達するかは別問題でありますが、彼らから見れば、勝利するまでは永久の戦争状態にあるのでありまして従来の概念から申しますと、戦争でもない平和でもないという状態が、遺憾ながらここ当分続くのじやないかというように考えております。
○太田委員長 どうも御多忙中ありがとうございました。 委員にお諮りいたしますが、実は、午後に予定されております鈴木拓殖大学総長からは予算問題についての専門的なお話があると思います。それから富岡定俊氏からは保安隊の経費等についての御意見があると思います。植村甲午郎君からは、経営者側から見た予算の批判があると思いますが、実は、お客様と申しますか、公述人の方は、約束しておられて来られますので、皆様方には食事の時間等がたいへん御迷惑になつているかと思いますが、その含みで、向うを延ばすことができないような事情でございますから、ひとつかわり合つてお出になるようにお願いいたします。 暫時休憩いたします。 午後零時三十五分休憩 ――――◇――――― 午後一時四十八分開議
○太田委員長 休憩前に引続き公聴会を開きます。 午前に一言、ごあいさつ申しました通り、公述人各位には、御多用中のところ貴重なる時間をおさきくださいまして、御出席くださいましたことを、厚くお礼を申し上げます。おそらくこの御公述によつて、委員会の審議に一段の権威を加えられることと存じます。 なお議事の順序を申し上げます。公述人の御意見を述べられる時間は大体二十分見当にお願いいたします。御一名ずつ順次御意見の開陳をして、その質疑を済まして行くことにいたします。 なお衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を受けることになつております。なお発言の内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつています。委員は公述人に質疑をすることができますが、公述人は委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御承了を願います。拓殖大学総長鈴木憲久君。
○鈴木公述人 昭和二十八年度の予算を中心として、今後の財政計画というものを一応見ましたところ、大体三つの要点があるように考えられます。その第一は防衛費の問題、第二は社会保障費の問題、第三は歳入の方に参りまして、特別減税のための貯蓄国債というものが新たにできて参りました。この三つがまずおもな点ではないかと思うのであります。この三つはそれぞれ相互関係を持つておりまするが、便宜上一つずつ申してみたいと思います。 防衛費の方は昨年度に比べますると、三百五十億円か減額になつております。これは安全保障費がなくなつたという関係もありましようが、とにかく一応これはいいことであると思われるのであります。昨年度は一般会計の歳出総額に対して、防衛関係の経費は二割強になつていたかと思います。本年は一割五分強に当るわけであります。なおそれについて余事のようでありますが、国債費が四分六厘くらいになりますか、そうしますと防衛費と国債費とでまず二割近くを占めることになるように思います。端的に申しますると、内の守りと借金のしりぬぐいに二割の負担をしなければならないということは、今日のわが国の財政では相当に考えなければならない点ではないかと思います。それから防衛に関する諸経費の内容を、私は具体的なことはよくわかりませんのですが、これが軍備であるとか国内治安の機関であるということで、大分議論があるようであります。この点は結局は観念上の区別になりまするが、はつきりと区別しておく必要があろうと思います。と申しまするのは、今日軍備――まあ軍備には違いありません。陸海空という軍備というものは動かすべからざる客観的な現実でありますが、さて軍備のみによつて国防を全うすることができるかといえば、どこのどんな強大国でもそれはできない相談であります。これは今日に始まつたことでなく、第一次大戦以来、国防の建前というものは世界的に一変しておりまして、現にアメリカなどでは一九二〇年でありますか、国防法の改正によりまして、この趣旨をはつきりと国防法の第三条か何かに規定しております。つまり軍と軍の背後にある潜在軍事能力を持つて、初めて国防が全うされるのだということを、明らかに規定しておるのであります。その潜在軍事能力とは何かといえば、結局国民経済全体の加戦能力であります。それがむしろ元になつて、軍というものはその基礎になるにすぎないものだ、こういう見方をしておるようであります。また第二次大戦後におきましても、アメリカの国防の建前はその方針で進んで来ておることがはつきりわかつておりまするが、そういう時代に軍備だけを強化することは、国防の全体という上から見ますると、それだけではとうてい目的を達し得ない。それからもう一つ、今日の国防というものは、どこの国でも一国だけで国防を全うすることはとうていできない相談である。これはもう客観的な現実として明らかなことであります。そこで数国対数国というような状態で国際闘争が行われることになつておりますが、そういう客観的な情勢というものは否定されませんから、いかにこれを拒もうとしても余儀ない状態にあります。ところが今日のわが国の情勢から見ますると、今後国防を充実するなどということは、財政上とうていできない相談だと考えられる状態にあるのであります。そこでわが国としては、どうすればよいかということが問題であります。現在あります保安機関というものが、軍であるとか国内治安機関であるとかいう議論よりも、一体今日の保安機関をどういう方向に向けて行くかということ、これをもつて戦争手段ということに進めるとなれば、これは限りなくどこまでも発展して行くかもしれませんけれども、国内の保安機関ということにして、そこに一線を画しておけば、たとい攻撃的防禦といいましても、防禦のための攻撃といいましても、そこには限界がありまするから、それ以上には進まないということがはつきりして来ます。この考え方が国民一般に透徹しないというよりも、あるいはこの政府の御方針がまだそういう方面に確実に徹底されていないのじやないかというような気がいたします。私ばかりでなく、世間一般が不安を持つのはそこじやないかと思われるのであります。そういう状態にありまするので、わが国としては国内の治安を維持するということは、どこまでもこれは自国で保全しなければならない、国内の治安までも外国のお世話になるということは、これはむろん独立国の対面にかけてもできないことであります。そういうわけで、国内治安を保全するための経費というようなものは、あるいは今後増加するかもしれません。おそらく増加するような傾向に向うのじやないかと思います。と申しますのは、単に国内治安と申しましても、極端な場合は内乱でありまするが、その内乱というものがだんだん国際性を持つて来ております。これは今日の場合だけでなく、すでに一九三二、三年でありますか、スペインの内乱などを見ましても、事実は数国対数国の戦争とまでは行かなくとも、はげしい国際闘争の一つであります。そういう事情で、わが国でも内乱的または国内の不安動揺というようなことは、いつでも背後に国際関係を持つて来るような傾向に進んでおりますから、そういう場合に、また一方では手段が非常に激烈に進歩して参ります。飛躍的に発展して参りますので、従前単に警察機関だけで国内の治安を保持しておりましたものが、今日ではとうていそれは不十分でありましよう。従前申しましたような、いわゆる軍備と同様な施設を必要とする、こういうことにはなるかもしれません。しかしこれは余儀ないことであります。これは時勢の進化と申しますか、客觀的にそういう情勢に向いておりますから、その意味において今後とも国内治安のための防衛費というものは、また増加を要することになりはしないかと思います。 そういう情勢にありまするところへ、社会保障費における救貧施設とか社会保険とか、これらのものが比較的貧弱のように思います。これはまだ非常に増加する必要がありはしないかと思います。そこへ歳入の方は、今日どうしても多少の減税を必要とするような苦しい状態にありまするので、これをどうして切り抜けるかという問題なのであります。 そこでいわゆる特別減税のための国債問題に入るわけでありますが、今日三百億円でありまするか、国債を減税のために発行するというふうな感じを持ちます。私どもにはそういうふうに見られるのでありますが、今国債を購入することによつて減税の対象になり得るというような人は、相当大所得の人ばかりで、一般のわれわれのような大衆階級は、ほとんどその恩恵にあずかる余地はないのじやないか、もちろん一方には、特に所得税におきまして、減税の恩典は相当今度は強く実現されるというので喜んでおりますが、いずれにしましても三百億円ばかりの国債を、これを減税の手段というような意味で特に発行しなければならないというほどの必要があるのかどうか。これは何も三百億円の国債を発行するということ、そのこと自体がただちに悪いのだというわけではありません。従前のようにあくまでもいわゆる健全財政の意味を非募債ということに置きまして、どうしても公債はいけないのだというようなきゆうくつな考えは持つ必要はないのだと思いまするし、また今日三百万円の公債を発行したところで、ただちにそれがインフレーシヨンの助長になるというようなことも思いません。しかしこれは、ただいま申しまするように、今後防衛費、社会保障費などに相当巨額の経費をますます必要とするというような状態になつておりまするところへ、国債を一般の財源に繰入れるというこの行き方が、一つの先例といいまするか、口火といいまするか、そういうことになつて、今後国債発行が定例になつて行くということになりますると、せつかく立ち直りかけて来ました日本の財政経済の安定は、まだまだ逆転するということになりはしないか、そこでこの国債は思い切つて中止して、それだけのものは他の経費の節減、特に行政整理の方に重きを置いて一この方に相当大きな余地があるだろう、こう考えられるのであります。そしていつまでも制限するわけではありませんけれども、まだまだ当分は国債券行ということは差控えた方がいいのじやないか、これが二十八年度予算を見まして、私の考えたところであります。 はなはだずさんな申し上げようで失礼でありますが、この辺で終りたいと思います。
○太田委員長 御質疑がございますか。石井君。
○石井(繁)委員 ただいま述べられたことに直接関係はありませんけれども、幸い拓殖大学の総長として私学の経営という立場にあられますので、その面についてちよつとお伺いしておきたいと思います。 御承知の通り、日本の国では、私学というものに対しては政府はほとんどめんどうを見ない。戦後学校が焼けたり何かして若干めんどうを見るようになつた。国立大学その他については足りないながらも戦後めんどうを見て参りましたが、今まで民間私学に対しての努力が足りなかつたということは争えない事実だと思います。今度私学振興費というものが、政府としては思い切つたわけでありましようが、十億円ほど予算に出ております。今後私学を充実するために、日本の経済界における人々や何かがいろいろと私学に寄付するということなどは、やはりまだ困難な状態であろうと思いますが、私学の立場においてかような点についてどういうふうにお考えになりますか。
○鈴木公述人 私学の問題につきましては、いろいろの観点から見られまするが、今日一番問題となつているところは、私学、特に私立大学が濫設されたということであります。この点が学界全体の悩みの種じやないかと思いますが、これがために、今日では大学設置審議会なども、むしろ自然淘汰にまかせて、その方向に進ませようというような方針をとつておられるようであります。これが一つの難点でありまするのと、それからもう一つは、すべて財源難に苦しんでいるということで、国家として何か補助を与えていいのじやないかという話があります。これももつともな話でありますが、しかし考えてみますると、私学全体としても、まず整理すべき事柄は少し整理してもいいのじやないかというふうにも考えられるのであります。従前高橋是清などは、大学などというものは、すべて私学にしてしまえ、そしていい大学ならその大学自身が充実して行くし、悪い大学はそこで落されてしまうのだから、それで行けばいいのだということを盛んに主張しておられました。もちろん今日ではそういうことはできませんでしよう。できませんでしようが、終戦後の学制と申しますか、全体としての学校のあり方というものは、このままではとうてい日本の実情に即応しないものだ、これはむしろ整理の方にもう少し手を打つて行つた方がよいのではないかということも考えられます。その上でどうしても国として補助しなければならないものはまだ幾らもあります。それは学術会議とか重要な研究施設でありますが、そういうような一部々々の研究に特別の金を要するものが幾らもありますので、そういうものは学校々々というよりも、むしろ国が重点主義で何らかの形でもつて経費を補助されるということになれば、その方が有効じやないかと思つております。
○太田委員長 どうもお忙しいところをありがとうございました。 次は、経済団体連合会副会長植村甲午郎君。
○植村公述人 しばらく時間をさきまして申し上げたいと思います。 申し上げるまでもなく日本の経済は、これは私ども経済人としての立場から意見を申し上げるわけでありますが、現在の経済の決算じりと申しますか、国際収支の内容を見てみますれば、御承知のように輸出あるいは船舶収入という正常の収入以外に、特需といいますか、駐留軍関係の費用が非常に多いのでありまして、これを正常な貿易収入等でほんとうにカバーするところまで早く持つて行かなければならないような状況にあると思つております。従いまして経済的に見て参りますれば、食糧も含む国内資源の増産と、輸出の振興という二つの柱に政策が集中されることを私どもとしては希望するわけであります。輸出の振興の問題については、御承知のようにこのごろの輸出貿易の状況というものは、将来伸びるのではなくてむしろ減退するような形になつておる。これにつきましては、もとより一方には外交関係と申しますか、国際関係と申しますか、相手方のある部分、すなわち賠償問題の未解決とか、通商条約がまだできていないとか、あるいはポンド圏に対するイギリスの政策がどうであるとか、そういういろいろな問題がございます。しかしながら何と申しましても、一方には、国際物価に比較して日本の物価が高く、輸出品のコストが輸出価格まで行き得ない、しかもそれが簡単にさや寄せできないというところに非常な問題があると思うのであります。従いましてこれらの点につきましては十分な施策を講ぜられることが希望される。このために産業の合理化と申しますか、コストの引下げということは絶対に必要なことでありますから、あらゆる施策が必要であろう。と同時に国際場裡において外国商品と競争するのでありますから、こちらの条件に特別のハンデイキヤツプのないようにしてもらいたい。と申しますのは、占領政策によつてできました諸般の制度あるいは法令等につきましても、日本の実情に合致しない部分が相当あるわけであります。これらにつきましてすみやかに日本の実情を考えたものにしてもらう必要がある。そうして特別なハンデイキヤツプなしに競争ができるという地位に置いていただきたい。このごろ新聞紙上で問題になつておりまするが、独占禁止法というふうな問題をとらえてみましても、法令そのものあるいは制度そのものとして見ますれば、あるいは後退になるあるいは悪くなるというような批評を受ける部面があるかもしれませんが、要するに国際場裡で日本の商品が競争するというときに、この敗戦後立上りの日本でありますから、よほど奮発しなければならない、そこへもつて来て身分不相応な重いかせをかけられたんでは、なかなか競争ができない。従つてかりにアメリカの法律よりもなお完備した制度でもつて独占禁止法ができているというようなことは、これはもとより改廃をしていただかなくちやならぬのですが、まずイギリスなり、そういうふうな制度のところまでこの制限というものをとつて、自由なる活動ができるようにしていただきたい、こういうことを希望するわけでございます。これにつきましては労働法規の一部についてもやはり同様の問題があろうかと思います。要するに身分相応の、また世間並の条件のもとに自由な活動ができるような場をつくつていただきたい、こういうことになつて来ると思うのであります。 大体ただいま申し上げたような二、三の観点から二十八年度の予算案を拝見して、若干の希望なり意見なりを申し上げてみたいと思います。一つは、先ほどの輸出価格の問題、生産コストの引下げの問題であります。そういう観点から見ましてインフレ、物価高ということは絶対に避けて参りたいということになります。今回の予算がいわゆる超均衡財政のかせを脱せられて、そこに弾力性を持つて、従来の蓄積等も使つて行くという方式をとられましたのは、自立後の初めての予算としまして私どもも賛成する方針だと思うのであります。それから投資特別会計というようなものを設けて、産業投資、生産投資についての会計を別建てにして、財政の体系を立てられたという方針につきましても、私どもとしましてはまず賛成申し上げていいんじやないか。それから減税をして民間資金の蓄積に資するというような方針をとられましたことも、もとより賛成であります。ただこの貯蓄債券という形でありますが、一つの公債財源を新しく設けたという点については、ずいぶん仲間うちで議論もございましたが、三百億を本年度発行するということにつきましては、三百億程度のものがインフレの原因になるというようには考えておらないのであります。 〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕 しかしながら支出の内容を見ますと、本来国の予算の内容は消費的な面が多いのでありますが、今回増加された部分を見ましても、軍人恩給を初めとしまして、相当消費的な経費が多いのであります。と同時にいわゆる散布超として千三百億くらいのものが予定されるという状況でありますから、このあとのやり方いかんによりましては、物価高あるいはインフレになつて来るということも憂慮されて参るわけであります。しかし金融問題と関連して万全の方策を講じられたならば、これも防止できるのではないか。今の三百億の貯蓄債券を発行することに対する是非について私ども経済界の仲間うちでいろいろ議論がありました。一番のポイントは今年度三百億ということをおそれることは一つもないのであります。ただ公債財源によることが一ぺん始まると、あととめどもなくなるのではないかということを非常に言われたのであります。従つて将来の問題として考えて、一般経費に充てるための財源として公債政策によるということは、今からやらないように特別にお願いしたい。それからこの問題はいろいろな面に関連して参りますが、補正予算の問題にしましても、ただいまのところ政府は補正予算は組まないと言つておられるように聞いておりますが、どうも毎年補正予算が組まれる事情が出て来る。ところが今までのような物価上昇、歳出膨脹の傾向をたどつて来ておりますれば剰余金が出て参りますが、今年度においてははたしてそう行くかどうか、はなはだ問題であろうと思います。従つてそういう財源をどうするかという点についても、今の安易なる公債政策によることはぜひやめていただきたい。 次には輸出振興という点、ことに日本商品の生産費の切下げという関係につきまして、これはあらゆる面から政策が講じられなければならない。すなわち税制の面、金融の中の金利の面、さらに法令の改廃というような、非常に多方面から総合的に政策が検討され、また実施されなければならないと思いますが、もとより多面的でありますから、すべてが予算に出るわけではありませんが、この予算案を拝見して、何か物足らないということを率直に申し上げていいのではないか。これらの点についての総合的な施策が予算にはあまり現われていないように思う。最近新聞紙上で拝見いたしますと、炭価の引下げ、あるいは輸出為替の取扱い等についてだんだんと政府はいろいろな施策を立てつつあるようでありますが、これらの点についてぜひ総合的にあらゆる角度からの手を集中して、輸出ができるようなコストの引下げのところまで持つて行つていただきたい。これについては石炭の価格の引下げなんかも一つの基本的な問題であろうかと思いますが、今の金利であるとか、あるいは税制であるとかいうように、そのことをきめるごとによりまして全般にひびいて参ります問題と、それから個々の産業自体が抱いております特殊の問題と両方あろうと思うのであります。従いましてこの一般的な問題はもとよりでありますが、この輸出品の製造の各段階、その原料の製造、あるいはさらにその原料となるものの輸入というような各段階、また貿易の商業としての各段階についていかなることをやればコストが引下がるかということをつぶさに検討されて政策が立てられてほしい。今の石炭の問題につきましても、これ一つがたいへんむずかしい問題でありまするが、これが解決すれば、それでは日本の機械製品が楽に輸出できるかというと、そうは行かないと思います。また解決されるといつても、そう石炭工業だけでこれを背負うだけの解決はできないに違いない。各工業がそれぞれ勉強して、ある部分を負担して、そしてコストの切り下げをするということになると思うのでありまして従つて主要輸出品であるとか、あるいはそのもとになる原料であるとか、あるいは将来有望な輸出品であるとかというようなものをとらえて、それぞれの特殊事情も検討されて、その総合的な施策の樹立に最後に当られる、しこうしてこれを急速に実行するということを、この際ぜひ政府並びに国会にお願いしたいと思うのであります。 それから次には行政機構の改革と申しますか、経費の節約の問題があります。この点につきましては、いまさら多くを申し上げる必要はないと思うのでありますが、この占領下を脱して独立国になりました今日において、諸般の占領下の政策の整理も加味して、今度は機構的にもぜひ考えてやつていただきたい。それから先ほど申しました、もし将来補正予算でも出ます場合には、この財源ともからんで参ろうかと思いますが、すみやかにこの前ははなはだ私どもから見ますると、遺憾な不十分なような結果になつたのでありますが、もう一度この点についての努力をひとつお願いしたいと思います。これにつきましては、もちろん国家予算と同様、あるいはより以上の重点を持ちます地方の制度並びに財源についての御検討もますます進められて、一緒に解決されるようにしていただきたい、これが第三の点でございます。 それからもう一つお願いをしたいのは、公共事業費、それから食糧増産費の問題であります。これの使用をどうするか、効率的に使用していただきたいということを申し上げたいと思います。この政府予算の効率的使用ということにつきましては、これはどの費目についても同様でありますが、特にこの両費目については、合計しますと千五百億以上にもなりますし、またその従来の使用実績と申しますか、それについてとかくの批評を私どもとしても耳にするのでありますが、これはいかなる原因でありますか、あるいは総花的に非常に地方に広く分散される、従つて末端における金額というものは小さいものになつて、それを処理するための諸般の費用というものに相当食われて、ほんとうに目的の仕事をやるところにつぎ込まれる金が非常に減つてしまう。だからいけないのだというような意見を言う人もあります。それからあるいは、それはもちろんそうだが、さらに現在のこの予算を取扱いまする役所の仕組みと申しますか、中央地方を通じての組織があれではやはりいけないのだ。そこから根本的に改正を加えなければ、効果はあがらないというようなことを言う人もございます。この点につきましては、私どもしろうとで、まつたく机上論のようなことを申すかもしれませんが、一方このインフレーシヨンというふうな点から考えまして底の浅い、力の弱くなつておりまする日本経済に対する影響という点から考えますると、速効的と申しますか、一年のうちに効果があがつて来ればそれで何ら心配はない。ただ五年、十年とかかる大工事になれば、その間だけは生産に影響して来ないのでありますから、影響が悪くなる、そういうふうなものをたくさんやつて行くのだと困るではないかというような意見も一方には立ちますが、同時に重点的にそういう大きなものに力を入れて行かなければ、いつまでたつても根本的な改善はできない、こういうふうな見方も立つと思うのであります。ただこれは中央における政策を立てられるときには、その辺の調整というふうなものを考えていただきたいということを思いまするが、実施という面になりますると、どういうことになりまするか、かりに三本の河川のそれぞれ改修をやる、これが三年目に三本ができ上るというような、三分の一ずつというような費用の使い方がいいのであるか、またわれわれのような者から見ますると、一本ずつつくつて行く、そうすると、一本できたものについては効果が出る。あとの二本は遅れるので、関係のところは困るけれども、全体的に見れば、その方が非常に効率的な使用であるというようなことも言われるわけであります。これらの点ははなはだ書生論で、実際問題としてはたしてどういう運用ができるかしれませんが、この二費目につきましては、従来ともいろいろ批評のあるところでありますし、また私どもが多少予算問題について議論をしましたときにも、この目的はもちろんやらなくちやならぬことである。これが効果的に実際に使われるのならば、あえて惜しむところでない。しかし今まではどうも評判が悪いぞというようなことを言う人が多かつたのであります。これらの点についても、効果的な使用について特別の御研究ができるものならば、していただきたいということをお願い申し上げます。 なお、ほかにもこの政府の資金による産業投資については、できるだけ政府資金を多くして、金利を――たとえば電力のようなものの建設についての金利負担を少くして、将来に備えたい。あるいは民間の貯蓄の推進であるとかいうようなことで、若干の項目の申し上ぐべきものがあるかもしれませんが、主要なところは、ただいま申し上げた大体四つぐらいになると思つております。 私の公述はこの程度でとめたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○尾崎(末)委員長代理 ただいまの公述人に対する御質疑はありませんか。 ――それではどうもありがとうございました。 それでは富岡定俊君にお願いいたします。
○富岡公述人 かわつた人間をお引出しになりましたので、私が公述いたしますことは、少しもしかしたら委員会の御希望を逸脱しているかもしれませんので、あらかじめ項目を申し上げまして委員長の御許可を得たいと思います。 第一に申し上げたいと思いますのは、アイゼンハウアー政府によつて国際情勢の変化と見通しはどうであるか、それから日本の自衛政策及び現在の保安庁に対する批判はどうであるか、それから二十八年度の自衛策の観点からの予算の批判、国防経済の問題点というようなものに触れて申し上げます。こういう項目でありますが……。
○尾崎(末)委員長代理 どうぞ。
○富岡公述人 アイゼンハウアーのロール・バツク・ポリシーはもう喧伝されているところでございます。これに関しまして東洋の部門にどういう変化が起るか、ことに私の出身上、軍事的な問題をなるべく情報の集まります限りにおいて、具体的に分析して申し上げてみたいと思います。これは明瞭にコールド・ウオーの先手をとろうとするポリシーであり、ストラテジーであると思います。大体見ますと、ダレス・ラインは、これはサイコロジカルなロール・バツクの方を考えているように思います。アイゼンハウアーの方は力によるロール・バツクという分析になると思います。 これに関しまして近ごろ非常に神経過敏にたくさんの報道が出ておりますが、多少確からしさのあるポリシーの具体的内容を、情報を集めてみますと、一つは先月の二十日ごろダレスが両院外交委員に話したというアイクの新構想という報道であります。アイクのポリシーの骨子はさいぜん申し上げた通りと思いますが、軍事的な問題は、米軍をアジア大陸からできるだけ撤退して自由なフオースとする。どこへでも、何でも起つたときにはきき目のあるフオースにする。それから共産中国に対して軍事的、経済的圧力を海の正面から強化する、これはこういうりくつのように説明されております。人的兵力の非常に優勢な共産主義と陸上で戦うことはなるべく避けたい。米国は巨大な海上兵力を持つておるので、これを最大限に利用するのだ。それからもう一つの点は、中国大陸には米軍は使わないが、米国が苦心して非常に巨大な費用をつぎ込んで育てて来ておる国府軍をレツドと戦わすときにこれを使うのだ、アメリカのエンプロイメントと言つております。これはずいぶん失敬な言い方だろうと思いますが、使うと言つている。それで補給とか、交通とかをアメリカが握つておるのだからして、これを逸脱して過大なことにらなぬようにコントロールするのだ、こういうポリシーだ、といつております。 もう一つの情報は少し物騒でありますが、次のような世界の二十六ポイントについて、こういうポリシーないしストラテジーを状況に応じて随時に駆使して先手をとるのだ。この中の東洋に関する部分を拾い上げて見ますと、朝鮮においては共産軍を切断するために、パラシユート軍と上陸部隊を使用する。共産軍の基地をあまねく爆撃する。これは今まで盛んに言つたことであります。それから中共の交通を爆撃と奇襲によつて破壊する。それから中共にウオー・マテリアルを運ぶ船舶を阻止、あるいは拿捕する。それから米国軍をなるべく自由にするために、日本の再武装を促進する、台湾の国府軍を中共大陸に一時的に上陸作戦を許す。中国内部の国府ゲリラを援助してゲリラ戦を展開する。インドシナにおける仏印軍に対する援助をステツプ・アツプする。共産主義と闘うための反共アジア・レジヨンを募集して装備する。それから米国の余剰食糧をアジアにおける反共支援のグループもしくはソルジヤーズに補給する、こういうようなことが出ております。これは少し物騒なことでありますが、具体的に出ている問題はこんなような問題であります。これが見通しであります。 こういうものを即座に全面的にやるとは思いませんけれども、こういうことが随時に始まつて来たならば、アジアの情勢はどうなるかという見通しであります。これは非常にむずかしいことでありまして、私が申し上げても権威がないことでございますが、大体たとえば朝鮮の例をもつて定めますと、朝鮮はこういうことをやるかもしれませんが、いろいろ今の兵力等を研究いたしますと、こういう大規模な上陸とか、パラシユートとかというものは、まず起り得ないと思います。大体膠着状態だろうと思われるのであります。それから日本に対するラインは促進するというようなことは、今までも促進しており、これはあせつているラインであろうと思いますから、そう大きな変化はないと思います。一番の問題は国府がはでなことをやり始めはしないか。これはイギリス、フランスないし日本でも非常に心配されている点はこれでありますが、なるほど国府軍は、アメリカの援助によつて陸上兵力六十万と号しておりますが、実際は三十万程度であろうと思われます。しかしこれも十二日に蒋介石が言いました通りに、まだ準備中だということは事実と思われます。まだできてはいない。今やつている最中だと思います。このところは少し大きな力でありますが、非常にぎつちよになりまして海軍とか、空軍とかいうものは、まだ非常に劣弱であつて、よく報道されます今にも大陸反攻なんということはほど遠いように思われます。本年中くらいにはそんな大規模なことは起り得ないように考えられます。ただやるであろうと思われますのは、さいぜん申し上げましたアイクのポリシーの中にも出ておりますし、ヒツト・アンド・ランという形だろうと思う。これは今の兵力でもでき、漸次海上の力及び航空の力等が増して参りますと、中国沿岸に対してヒツト・アンド・ランをやることが増して来るであろうと思います。私は非常な大事が今年の前半期に起りそうにも思いませんが、後半期になりますと、さらにどういう情勢になるかわかりません。いずれにしても非常によくなつて行くとは思えないのであります。これはもろちん中国のヒツト・アンド・ランにしろ、ゲリラにしましても、つくということは、朝鮮の負担をなるべく軽くするため中共軍を牽制し、あるいはその出血によつて朝鮮休戦ないし解決に持つて行こうという力の法則だと思いますけれども、今年間もなく大きなはでなことが起るということは、軍事的に見ますとないように思われます。 仏印も同じく自由諸国の最も心配しておるところであり、われわれ日本人としても非常に心配な状況のところでありますが、これもやはりあまりよくなつて行つていない。北部仏印のがんは、南部の方まで移行し始めた非常に複雑な民族戦争の方式でありますが、これもあまりよくはなつていない。そうかといつて、中共軍が大挙侵入する、介入するという情報が、まことしやかに非常にたくさん出ておりますが、今のところは起らないと考えております。四月くらいから雨期に入りますから、そういう大きなことは起らないように思います。心配いたしますことは、さいぜんのアイクの思想の中にもありました海上封鎖の問題であります。アメリカ軍が実際に兵力をもつて直接封鎖するということは、かつて日本なんかが失敗いたしましたことを学んでおりますから、そういうことはないと思う。第一段の政治的封鎖は、すでに戦略物資の禁輸という形でやつておるのでありますから、これを強化するということはあり得ると思います。あるいは国府軍がローカルな封鎖をやるということはあると思う。しかしこれは割合に心配な問題であります。陸上で局地的に戦うということはそうありませんが、海上でやりますと、もしかすると非常に悪い状態に発展するというようなおそれがこの点にあるように思います。非常にラフな申し上げ方でありますが、大体の軍事的情勢は、アイクのプランを分析してみますと、そういう状態で、非常に心配され、宣伝されておることは当然でありますが、時間的に非常に急速にどうかなるということは、いずれもことしの前半においてはまず起らないように思われます。この問題はこのくらいにいたしまして、次は日本の自衛政策と現在の保安隊に対する批判を申し上げます。 日本の自衛政策は非常にむずかしい問題で、議員諸公の御苦心のあるところだと思いますが、私はこういうふうに考えておる。スターリンの戦略をずつと分析したり見ておりますと、東洋においては、この間の大戦後はみんな民族戦争方式をとつておる。あるいはそれがひつかかると第二戦争的な方式をとり、しかもやはり戦略的侵略が行われており、あるいは行われるだろう、とこう推測される。きわめて不屈なものであつて、また柔軟自在のものであつて自由に運用をしているというふうに観察する。従つて日本は、現在いろいろな思想で論じられて、世界大戦でも起つてソ連軍が攻め寄せて来る、こういうように直接大侵略ということを頭に描いてものを論じられている人もありますし、そうでない者もある。私は、日本に予想される侵略形式というものは、まずとつて来る形というものは、民族戦争方式ないし第二戦争方式だろうとエステイメートするわけであります。これはやはり力及び思想的にでありますが、これに対する対策を講ずるということは、独立国として当然であると思う。もちろん直接大規模な侵入ということがないとは理論的に申し上げられませんが――これは世界情勢判断から出て来る問題でありますが、今急速にそういう情勢にはならないと思う。これも第三次世界大戦というものの定義でありますが、米ソ両国が原爆を投げ合つてやるようなこと、これを第三次大戦と言いますならば、そういう大戦は急に起るような情勢にはない。それの前提の中盤戦といいますか、序盤戦といいますか、そういうところに入つている形であつて、まずわれわれが自衛いたしますのには、この民族戦争方式、あるいはこれを国内暴力革命と言う人もあります。それと少し違うと思うのですが、こういう方式に対して自衛をする、こういうことが着眼であるのが至当であると思われる。この方法は分解いたしますとたくさんありますが、まあ一口にいいますと、国内暴力革命あるいは不法侵入あるいは封鎖というような形に対して、まず国の安全を考えるというのが自衛政策だろうと思います。この何を守るのかという性格の根本をきめませんと、これはもう量から機構からみんな違つて来るわけで、第三次世界大戦の直接の大規模な侵入に対して守るのだ、こういうことはなかなかできないことでありますが、共同してでも守るのだというのを主に置くのならば、これは量からあるいは機構からみんな違つて来るわけです。これはほんとうの意味の自衛から出るべきだ、考えをそう向けて行かなくちやならぬ。今状況判断上起りやすい問題もそういう形である。しかもこれは容易なことではなく、むずかしい。仏印戦線をごらんになればわかる通り、兵力の劣勢な、装備の劣勢の方が勝つている。あれは何から来るのか、非常に複雑な形の方式であります。再軍備を勇ましくやれば解決するという問題にならない。国内戦線であり、日本人ないし日本人に近いものの闘争である。これは非常にむずかしいことでありまして、簡単に再軍備と昔の兵術戦略をそのままやつても、なかなかうまく行かないであろう。自衛というのは、ほんとうの自衛、つまり領土、領空、周海以内を守るのだ、こういうプリンシプルできめらるべきものであろうと思う。それならば、憲法問題もありますが、独立国の内戦問題のようなものでありますが、こういうことで立てて行くことが当然であると思うのであります。今そうなつておるかどうかは私は存じません。自衛といいましても、満州も日本の生命線であつた時代もありますし、南方も自衛だという時代もあります。しかし今考えるべきことは、領土、領空、周海の問題、それを安全にするのは当然のことであり、憲法の精神には反しないように思われる。 それに対しまして現在の保安隊の批判でありますが、これは軍備にあらず警察なり、あるいは軍備なりというようないろいろな論があつてすつたもんだされておる。この性格がはつきりわからないように思われる。これは新たなる守るべき力だ、これを保安隊といつております。保安隊というものでいいと思われます。警察でもあり警察でもなし、軍隊でもあり軍隊でもなしで、新たなるもので、世界各国みんなそういう種類のものを持つておる。近ごろの戦略の変化によりましてそういうものが生れて来つつある。れつきとした軍隊を持つているものが大部分であります。持つてない国はアイスランド以外にはほとんどないくらいでありますが、新たなるものとわれわれは思つていいのだと思う。しかしいずれにせよこの性格をはつきりきめないと、ほんとうをいいますと、どうして守るのだという手が出て来ない。手が出て来なければ機構もどういう機構がいいかということが出て来ない。量も何千機だ、何万人だとたくさんに言われておりますが、その根本の土台がはつきりきまつてないと、量が非常にかわつて来るわけであります。むろん経済問題もあります。こういう見地からいたしまして現在の保安庁は何だかあいまいな、気の毒な状態に置かれておる。これを放置しておくのは国家の損であると思われます。保安庁の中の機構等がいろいろ批判いたされるかと思いますが、実は私は民間にある人間で、そういうことを詳しく存じておりませんので、中の機構を云々することは控えさしていただきまして、今年度の予算の中の保安関係の予算をどう思うか、こういう点をちよつと申し上げます。 こまかい内容を知らないで批判いたすのでありますが、本年は国民総所得の二・七%に当つておるようであります。これを各国の例でもつて参りますと、現在はこういう情勢でありますから、自由諸国の例をとつてみますと、各国の国民総所得に対する国防費と申しますか、防衛費は、大体米、英、仏、西独――西独はまだきまりませんが、イタリア、オランダ、デンマーク、ノルウエー、ポルトガル、ギリシヤ、カナダ、トルコ、こういうような国々のありさまを見て考えますと、算術平均で国民所得の八・三%くらいになつております。実質的には一五%くらいでありますが、これはアメリカが厖大でありますから、算術平均は八・三%くらいになつております。これはわくを論ずるわけであります。この間の戦争前の平和時代のときの列強といいますか、それの国防費というものは、平均いたしますと、大体三ないし四パーセントくらいな比率をたどつて平らなカーブをしております。戦争が起る前にこれがぐいぐい上つて来て危険な状態を示し、戦争になりまして急にこれが上つて、最大の無理がされるわけであります。この戦後になりましてアメリカ、イギリス、イタリア、フランス等のカーブを見ますと、戦後の平和時代は平均いたしまして国民所得の六%ぐらいになつておる。それが五〇年から上り始めまして、さいぜん申し上げましたように上つて来て一〇%ぐらいになつておる。これは非常な苦しいことであろうと思います。これは国柄によりまして一概には言えませんが、予算の何パーセントといつて各国を比較しても、予算の構成が違います。結局比較できますのは、国民が総所得の中でどのくらいの苦労に耐えて来ておるか、こういうことでありますが、大体今くらいの数字になつておる。それで今度は現在日本が二・何パーセントくらい、今御審議中なのはそうであります。これは私の意見は四、五パーセントまで――もちろん経済を破壊しては何にもならないのでありますから、いろいろ考えて、あるいは経済家なんかにも研究してもらいまして、四、五パーセントくらいまでには耐えて行き、また耐えなければならぬ問題だろうと思います。現在ので保安の任を尽し得るとは、そのわくからごらんになりましても無理な話で、これからどういうふうに持つて行かれるかということでありますが、やはりそのくらいは純粋自衛でありましてもかかる。費用を計算いたしますと、そのくらいの額になる。 それから最後に国防経済の問題でありますが、国防生産の方にちよつと触れて申し上げます。現在今度の予算をお通しになりますれば、保安庁もいろいろ艦艇等をつくることになるわけでありますが、これは今年度でほとんどぽつんと切れておるのでありまして、まことに手を焼く行き方であります。つまり計画的に何ら続いたものはない。どう手をつけていいかわからぬくらいのものであろうと思う。計画性が何もない。たとえば自衛力にいたしましても、一年ごとぽつんぽつんとやつて行きましても、これはできない相談で、やはり三年とか四年とか、国際情勢をいろいろ勘考されて、この時期にはこのくらいのものをでつちあげる、こういうふうな計画ができてそうして研究でも生産でも継続して行かなくてはならないと思うのであります。今年あたりはむずかしいことであります。しかしこれはおそくなつたら無論いざというとき間に合わないということがありまして、非常な負担と不経済を生ずるわけであります。早く計画性を持たすということ、これは国家のためにぜひそうしないとできない。たとえば今度の予算で保安庁の船艇をお通しになつた場合、まことに小船であると思いますが、そういうものですらこれから日本の手で基本設計をし、あるいは詳細の設計をし、材料を集めるとなりますと、ほとんど一年かかります。本年の予算ではほんとうの建造にはならぬ。来年に入つてしまう。こういうもので、しかもそれも数隻の問題は今上つておるように思いますが、こういうふうな非常な遅れが来るのであります。その次はどうかというと、まだ一つもわからない。その次は何艘つくるのかによつて違うのであります。これがさつぱりわからない。計画性がないということは非常な損であろうと思われる。 それからもう一つは、たださえ長年のギヤツプで遅れておる技術的な遅れは、これはもう追つつき飛び越さなければならぬ性質でありますが、これは何によつて追つつくかということ、やはり技術的な研究であります。その前提は調査であります。各国がどういう状態にあるか、どういう技術になつておるかということの調査であります。それでその技術研究というものが、今度の予算の中にあまりはつきり現われて来ません。どこの庁費の中に入つているのかわかりません。しつかりしたものが出ていない。同じことが、防衛をやるのに漫然と古いものをまねて、そしてそれをまた新たに日本がつくつて行く。このように、まつたく使いものにならぬものをつくるおそれがある。その根本は技術研究を早くスタートし、重点を置いていただかなければならぬ。技術研究所というもの、これこそ早くやらなければならぬ。実際兵器をつくる前にこれが進まなければならぬ。こういう事情があるように思われます。 ではこの辺で、時間があまり長くなりますから打切つて、御質問にお答えいたします。
○尾崎(末)委員長代理 ありがとうございました。 ただいまの公述に対する御質疑はございませんか。
○中曽根委員 ただいまの御公述の中の前段の情報のところで、もし万一国府あたりが、海上のローカル封鎖をやると、悪い情勢になるかもしれない、本土にとりついたような場合には、そう大したことはないが、こういうお話でございましたが、それはどこからそういう御判断が生れるわけでありますか。
○富岡公述人 それは実はこういうことが心配なのであります。国府は海軍力を、わずかでありますが、持つておりまして、台湾海峡を扼し、あるいは北上すれば、上海沖くらいに影響を及ぼす力を現在も持つております。それが封鎖をやる。封鎖は国際法上合法的にできると思うのですが、これは非常にイギリス関係あたりは苦痛とするところであろうと思います。かつ今日の前で見ておる実情は、フインランドでございましたか、どこかのタンカーが問題になつていますが、これをつかまえたらどういう問題が起るか、むろんソ連の油槽船をつかまえることができるかできないか、こういう問題で、やつたとなると、これは大陸ゲリラで、どこかの島をとつた、どこで殲滅をやつたということよりも、国際的な波及性が広いから、この問題は非常に心配である。ことにこの情報が――真偽はわかりませんが、ずつと去年、おととしからたどつて見ますと――ありますのは、中共がソ連から潜水艦を相当数もらいつつある。これは事実であろうと思います。こういうやみのようなものがいろいろなことをやり始めますと、かつてスペイン戦争中にあつたように、どこの船かわからぬものによつて船舶が沈められたということになりますと、これはしりの持つて行きようもないし、非常な波及性がある。つまり海上はそういう拡大性がよりある、こういう私の見方であります。それでその点は、地上のゲリラの大規模のものは、どうせ実力からいつても起きない。これは少したかをくくつていますが、海上でそういうことを始めることは、非常な拡大性があつて心配だ、こういうことです。しかもアメリカン・ポリシーは、それを使おうというのであります。真偽はどうかわかりませんが、アイゼンハウアーのポリシーは、海上に何か効き目を及ぼそうというのですから、その点が心配なんです。そしてそれが拡大性があつて先が見通せないということであります。
○中曽根委員 ちよつとピントがはずれるかむしれませんが、関連していると思いますから、質問いたしますが、アメリカ側とイギリス側のアジア政策が大分食い違つておるようです。今のこのローカル封鎖というような場合でも、すぐ出て来る問題でありますし、あるいは朝鮮戦争の進め方についても、非常にやつかいな問題があると思いますが、アイクの現在想像される政策を推進した場合に、この両者の調整というものは、一体どういうふうに行われるか、それが日本にどういうふうに響くか、この問題を伺いたいと思います。
○富岡公述人 これは私はしやつぽを脱ぎます。見通しはできません。今のアメリカのダレスあたりが、欧州でくぎをさして歩いている手口から見ますと、非常に強引にやるのではないか、朝鮮が苦しいという関係もありますので、相当に強引性があるのではないかと思うのでありますが、これをどう日本として調節していいかということは、私の力量の判断し得るところではありません。それからさいぜんのお答えの中でちよつと落しましたが、今の関連でありますが、非常に心配しておりますのは、引揚げ問題であります。引揚げ問題は、気の毒な人たちを日本に帰すという問題には、簡単には受取れないと思います。これは国内的な問題でありますが、それと今の封鎖ということとは、非常に関連性がある。うがつて言えば、日米離間の手にも使い得るというもう一つの心配があります。日本に直接影響を及ぼします。
○石井(繁)委員 ただいま富岡公述人は、保安隊がちよつと見当がつかない、これは保安隊のためにもまことに困るし、日本の国民にもいろいろと疑念を与えておる、この前提に立つて、一応保安隊なら保安隊をつくつたからには、はつきりした目標がなければというようなお話でした。そこで今考えられる問題としては、日本が第三次大戦に介入するとか、あるいは外敵と戦う、こういうようなことは考えの外に置くべきじやないか。国内の治安確保、こういうふうな意味においての保安隊というのが必要じやないか、かように述べられたと思います。そこで問題は、今の保安隊がどういうふうな任務と目的のために装備をされたり、訓練をされておるか、これが問題になろうと思うのでありますが、例の二十五トン戦車であるとか、百五ミリ、百六十五ミリ・カノン、こういうような問題になると、どう考えても、日本の国内に起るところの治安撹乱工作あるいはゲリラ工作、これに対抗すべきものでなく、外敵に向うべきものだ、こういうふうに思われるわけでありますが、この点についてのお考えと、また日本において治安の難がいろいろと国際的なつながりをもつて起ろうと思いますが、その起り得る国内治安の撹乱工作をするゲリラ等の装備は、一体どのくらいのものを持つたものが起り得るかというような点を、アメリカの海軍力あるいはソ連、中共等におけるところの武器などが、日本にあるいは密輸されるかもしれない、これらの想定のもとに一応伺つておきたいと思うのであります。
○富岡公述人 あとの方の装備の問題でございますが、今保安隊に適用されております装備は、私の知つております範囲では、まつたくアメリカ装備と同じである。これは私はこうだと思うのです。アメリカが保安隊を朝鮮に持つて行つて使うというつもりはないと思うのであります。それはばかばかしい限りと思うのであります。朝鮮の民族戦争方式で来ておる戦争に対して、違う民族を持つて行くということは、アメリカが経験したはずであります。すべて経験して、東洋人は東洋人という思想に気づいたのだと思うのであります。持つて行くつもりじやないと思うのですけれども、そうかといつて、日本における民族戦、あるいは外からもむろん来ましようが、これに対してアメリカは心が及んでいないのじやないか、それでアメリカの形式と同じものを持つて来て、ずつとやつておるのじやないかと思うのです。過大のものもあると思うのです。むろん過小のもののありましよう。それで百五十五ミリが大きいのじやないかと言われるわけだと思うのですが、それは片一方の方の日本の中に起る形――あるいはこれは侵入して来るかもしれません。日本人が帰つて来るかもしれません。これに対します情報は、いわゆる日本解放軍という情報であります。これは情報のことでありますから、ことに鉄のカーテンの向うにあるのでありますから、確実に申されませんが、そういう手口を、ソ連というもの、共産側というものは、使う習性を持つているということは御承知の通りであります。その侵入して来るのは、直接侵略の形かもしれません。堂々とやつて来ることもあると思います。こういう場合には、むろん武装は関東軍・プラス・ソ連式のりつぱなものになる。こういうこともあり得るわけであります。それはいろいろな形態がありますから、一概に非常に過大なりとは実は私は思つていないのであります。ただアメリカの編成とほとんど同じようなことというのは、ずいぶんのお説だというような気がするのであります。ことにさいぜん保安庁の組織がはつきりわからないと申し上げたのでありますが、一番欠けておりますのは、心理的な部分――政治的ではなくて軍事的な心理戦の部分というものが非常にあるわけであります。国内の戦場、あるいはそういう後方のことでありますから、簡単なゲリラで火炎びんを投げるということとは違つておりますから、そういう部分に機構上欠けているところがある。第一、思いをいたしておらないというように感じるのであります。 それでもう一つ武器の問題であります。これはイタリアに非常に連続して武器が共産系から入つている。もちろんイタリア政府はいろいろな手段を講じてとつております。そのとつておる武器の内容を見ますと、火炎びんなんかは一つもない。正規の迫撃砲であるとか、手榴弾であるとか、相当なものが、驚くべき数が連続して根気よく送られつつあるという情報もあります。私がでたらめにつくつたわけではありません。そういう型から行きまして、今入つているか、入つていないか、私は存じませんが、入つていないと思います。しかし入る方法は幾らもある。沿岸がからなら、入つても知らないということもあります。そういうことがあつても、兵器が過大なりとはちよつとまだ言いかねます。ただアメリカと同じというりくつはないじやないか。日本の国内の使い方、これは非常にむずかしいことでありまして、私どもが修めたような簡単な戦術戦略では、ちよつとむずかしいということなんです。従つてそれに応ずるような機構装備でなくてはならぬと思うのです。これは私はよほど研究しておりますが、私もまだこれはよく見通しがつきませんが、むずかしいということはわかります。ちよつと例をお考えになつても非常にむずかしいものである。線をひつぱつて、これから向うは敵で、こつちは味方だというのは簡単な公式であります。朝鮮のごときは、規模は大きくても、政治としては簡単な公式であります。私どもとしてはそう思う。それなら仏印はどうか。仏印あたりは実にむずかしい。正規の戦線もあれば、うしろの方で単なるゲリラでもない。要するに地域がずつと占められて行つておる。事実それはそうです。さいぜん申しましたように、がんが流れ始めたという形です。せつかくトンキン・デルタに封じ込めたような気持でおつたが、ずつと流れ出た。こういう政治というものは一体何であろうか。これに対してどういうようにしたらいいのか。フランス軍も苦心していると思うのです。装備はもちろんアメリカと同じような装備を持つているのに、やはりできないじやないかということがあつてむずかしいのであります。むずかしいというのは、今の保安庁の装備は不適なりとも言いかねるのでありますが、百五十五ミリがあつても別にさしつかえないと思うのです。わずかな数でありますし、いろいろな状況が起きるのでありますから、さしつかえないと思います。 もう一つ、機構でございますが、さいぜん申しましたように、機構の中で非常に欠けておる部分がある。今のような複雑な任務に対して、まだ機構がそこに適したようになつていないように思う。一部は昔の陸軍的なものの復活であり、あるいは海軍的なものの復活である。海軍と申しましても、警備隊は大体は護衛の任務につくものである。海上の大戦闘をやるなんてことは、およそ今世界各国になくなつておる。どの国も護衛を主とした海軍力を建設しておる。もちろんアメリカ、イギリスは別であります。大航空母艦とかなんとか言つて、これはたたく目的もありますが、ほかの中小国はどの海軍も全部護衛という単一の任務に変貌しつつあります。それは大体今の警備隊もそうなるのだろうと思いますけれども、何しろあまりないのですから、ない船を対象として言うわけには参りません。そういうことをやるのにはああいう船がいるが、それには性能が足りない。これは議員諸公がごらんになつたそうでありますが、速力が日本の船腹にも追いつかないということもあります。そういうところはまず研究すべきである。私どもは町の人間で、かつてなことを言う。それにまた引きずられても困りますが、当局は研究すべき組織を持ち、そういう向きを見越して研究される必要があると思う。
○成田委員 自衛の問題で民族戦争の問題にお触れになつたのですが、ちようどインドチヤイナの話をされました。民族戦争の場合は必ずしも装備が優秀だからといつて勝てない。インドチヤイナの場合は特に装備が悪い方が勝つた。がんが流れる例もお話になつた。機構の問題、それから戦略戦術の問題もあるでしようけれども、なぜ装備の弱いホー・チミン政権がバオダイ政権に対して勝つているか。民族解放運動ということになりますと、大衆の支持を得る――そういう点で、がんが流れると言つては非常に悪いのですが、大衆がこれを支持しているということで、装備の問題を超越してホー・チミン政権が勝つている。ここに民族戦争の一つの性格があるのではないか、こういうように考えられるのですが、どこに原因があるのですか。
○富岡公述人 私もまさにその通りで、これは根本が政治の問題であります。それは間違いございません。心理戦争といいましても、それは政治の問題がベースになつております。それなら政治だけかというと、ホー・チミン軍はやはり力を行使してはおります。力と政治であると思うのであります。私は両方がいるのだと思う。力だけで行くなんて思つたらこれはたいへんな間違いで、根本は政治の問題だと思います。これについて非常に妙なことを申し上げるのですが、これはやはり指導者という問題だろうと思う。これは共産側のことを申しますが、ホー・チミンという人は、木の下に寝、清廉であり、燃ゆる共産化への熱意を持つている。これは思想のいい悪いは別として、こういう指導者、あるいはそういう人が寄り集まつてやつておるということは、非常に違うと思うのであります。ちよつとフランスの本にも出ておりましたが、フランスの総督官邸はもう白堊の大殿堂である、総督はりつぱな自動車で走りまわつておる、これでは負ける、こう言つております。これは一つの例でございますが、政治であるということを申し上げるためなのであります。 それにもう一つはフイリピンでございます。フイリピンは御承知の通り国防相はマグサイサイという名士であります。マグサイサイという人は、これも非常に清廉であつて、これが盛り返したと私どもは思うのであります。フクバラハツプの運動をだんだん押えつけて、今は分裂をさせております。これはもろん大統領もえらいかもしれません、ほかの政治家もえらいかもしれませんが、私どもがこの人はと思う人はマグサイサイという国防大臣なんです。この人の行状を見ておりますと、やはり尊敬すべきものを持つておる。しかし要するにそれは政治であることはお説の通りであると思いますが、力の面だけをちよつと申し上げただけであります。
○北委員 私は実は外務大臣に特別委員会で質問するつもりであつたのですが、海軍に御経験をお持ちでありますから、海軍のことに関して質問をいたします。 私は英国とアメリカとが東洋政策に根本的な差があるというのは、因縁が非常に深いと思う。それは海軍の方は御存じかもしれませんが、昭和十八年一月カイロ会談で、蒋介石、チヤーチル、ルーズヴエルトが相談して日本処分方を研究した。それと相前後して南アフリカ総督のスマツツ元帥が、英国の政府の了解のもとに演説をしております。私は偶然にその演説の原稿を昭和十九年の初めに得ておるのです。スマツツ元帥は、御承知のごとく、第一次大戦のときにも総督であつたし、第二次大戦のときも総督であり、二度も総督をやつた人はこの人一人であります。この人は軍人であり、政治家であり、同時に相当の哲学者であります。御承知のごとく、国際連盟はウイルソンが主唱したのであるが、スマツツ元帥が手を入れて、最後の仕上げはスマツツ元帥がやつたといわれるくらいの、実際的政治家であります。昭和十八年、英国で演説した原稿を見ると、今日の英国の政治が全部わかります。それはこういうことを言つております。三箇条あります。大戦後はアメリカとロシアが世界の一等国になつて、英国は二等国に転落する。さらにこういうことを言つております。日本は消滅する。ソビエトのオービツトに入るということを演説しております。第二は、ヴエルサイユ条約成立後わずか六、七箇月で占領を解いて――十一月の休戦、ヴエルサイユ条約はその翌年の五月でありますから、わずか五、六箇月でもつて講和条約は済んでおり、結末がついた。今度はドイツと日本を数年占領して、ゆつくり講和条約を結ぶ、それは現に行われました。日本は六年何箇月で講和条約が一通りできました。もう一つはこういうことを言つております。ナチスの原理に学ぶところがある。いわゆる指導者原理、ヒユーラー・プリンテープ、国際連盟は小国も大国も同じ一票を行使したが、むろん実力ある国が、当時は五大国であるが、その五大国が拒否権を行使して、デイクテートしようという主張であります。驚くのは、今日の国際連合はこの形によつてできております。私は英国は日本がソビエトのオービツトに入つてもよろしいという考えを当時持つておつたと思います。ヤルタ会議に呼んで賛成し、アメリカは現にヤルタ秘密協定を否定しても、英国はこれに賛成しない。私が英国の本心を言えば、日本が東南アジアに進出すると英国との貿易の競争がこわいから、日本はむしろソビエトのオービツトに入つて、中国やソ連と貿易した方がいいというのが当時のイギリス人の腹の中にあつた。これが今日まで、緩和した形であつても依然として続いておる。日本の安危の問題より、中国と東南アジアの貿易によつて彼らの利福を得んとする根本の方針がずつと一貫しております。当時の軍に御関係のあつたあなた方はどうお考えでありますか。私の観測が誤まつておりますかどうか。英米の東南アジア制作の差はなかなか深刻だと思います。由来するところかなり深いと思いますが、いかがでありますか。
○富岡公述人 北先生の痛烈なる御観察ほどに実は私は思つておりませんが、計画的にそうやろうとイギリス人は思つておつたでしよう。しかし実情は困る問題があると思う。さいぜんの問題で私どもが観察しますのには、同じ中共を離脱させるのに、やはり終局目標は同じであつても、イギリスはにこぽん主義で行き、アメリカは力で行こうというように、政策が今わかれているように思う。いずれが成功するか、いずれが成功しないか知りませんが、しかしイギリスの太い、ねばりこいポリシーというものは、尊敬すべきところがあると思います。お答えにならぬのでありますが、そう痛烈にはちよつと言いかねますし、それほどに感じていないのであります。しかし今度は問題が起るかもしれない。今の情勢では非常にむずかしい問題が起るだろう、日本にも関係して来ると思います。
○北委員 私は憲法の第九条の問題で、戦争放棄、武装を持たぬ――これは改進党の芦田君あたりは防衛的の武装は憲法第九条でも持てると言うが、私は絶対に反対である。これは持てないことになつている。マツカーサー元帥からアメリカの国防省への報告書を見てもわかる。佐々木惣一博士は持てると言う。その佐々木惣一博士が文化勲章をもらつているが、ああいうことを言う佐々木君が文化勲章に値するか、私は憤懣にたえない。交戦権は持てない、攻めて来ても守つてはならぬ。今月十四日東大法学部教授の高柳賢三君は外国へ行つたところが、憲法第九条第二項はナンセンスだと言われたという。私は憲法の根本精神を言うと、日本は民主国家であり、平和国家であり、自由主義国家であります。その根底を守るのには、国がくずれたら守れないのだから、第九条の第二項はナンセンスとしてたな上げしてほしい。これが実際的の議論だと私は思う。私はやはり国力相応の自衛力を持てというのです。ところが最近のアメリカのある空軍司令官の発表によれば、六、七箇月前の発表とは違つて、ジエツト戦闘機と爆撃機とを五倍にし、シベリア方面に四千五百機、中共、満州方面に二千機やる。これは陸軍ばかり設けても何にも役に立たぬ。リツジウエイ将軍は、日本を去るときに、日本は陸軍を持てと言つた。私はリツジウエイと交渉した日本の陸海軍の元将校三、四名に集まつてもらつて意見を聞いたら、三十万前後だという。海軍と空軍は金がないから持つ必要はない。これは私は非常に心配しております。武田信玄は、御承知のごとく、城も築かず、本丸もつくらず、国境で守ると言つた。日本の国境は海であります。私は海で守らなければならぬと思う。陸に兵隊が十万か二十万おつても大して役に立たぬと思う。それは国内のゲリラには多少役に立つかもしれないが、空軍と海軍を増強しなければ日本の国防は全うできません。私の生れ故郷は佐渡ケ島であります。現にアメリカの潜水艦の基地にしている。今アメリカは何を築くか知りませんけれども、佐渡の一番大きな山の金北山に立入り禁止で、山の頂上に何かつくつております。これはレーダーを置くのか、あるいは高射砲を置くのか、人心はなかなかきようきようとしおります。さすがは佐渡は第一線でありますから、せんだつて婦人会が集まりまして、自衛的の国防は持つべしという決議をしております。私は大いに意を強くしておりますが、やはり海軍、空軍に国防の重点を置かなければならぬと思う。日本の国境は海であると思うが、あなたはどういうお考えでありますか。
○富岡公述人 まことに答えやすいように誘つていただきましたが、ただこう思います。日本は島国であつて前の形と違う。前は島国といつておりましたけれども、大陸から物の補給がつながれておつたから半島のようなものであつたと思う。現在は二千二、三百万トンの必需物資、食糧及び基礎資材は全部海上から来ておる。これはその面においては絶対に島国になつておる。これをソ連流の最近の戦略で言いますと、ソ連は大海軍は持ちませんけれども、そのかわりに前古未曽有と言い得る潜水艦勢力を築きつつある。今築いておるというのではありません。これはドイツがやつた例よりもさらに大規模のものであつて、この一斑をもつてして、日本にアプライドするともうすぐ海上は閉塞される。これは世界大戦にならなくともそういう事態が起るということは、スペイン等をごらんになつてもわかります。これは推測できるのであります。しかし大戦になれば大規模のものをやる。こういう場合に食糧は少しがまんできるかもしれないが、物が来なければ働こうと思つても働けない。労働を一生懸命やろうと思いましても、それはだれががんばつてみてもできないことになる。これを安全にするということは当然なことだと思います。しかしこれは今日本国民は、そのことに気づいておる人もありましようし、気づかない人もありましようが、大体アメリカがどうにかやつてくれるのだろうと思つておると思います。しかしこれはアメリカ海軍の力をいろいろ私調べてみますと、アメリカといえどもこれは負えない。半分くらいに負えるかもしれません。半分という数字ははなはだ目見当であります。相当負えるかもしれないけれども、アメリカがこれを日本に保障することはできない。その部分だけは自衛をしなくてはならぬと思います。しかしアメリカと共同しなくてはできない。今想像し得る範囲では、日本の力――経済力、建艦力等から行きまして、やはりたいへんな月日がかかると思いますので、すつかり完全に行くまでには共同しなくてはいかぬと思う。しかしこれを始めないでおけば、たいへんなことになるということは明瞭である。そういうものもいると思います。それから海軍は私はいらないと思う。さいぜんのようなことをやるのだから、それは合利的に見当はつくと思うのであります。三十万というのが合理的かどうか私はまだ研究は未熟でありますが、いろいろ今までやつてみましたところで見ると、十のグループがいる。それを師団と申しますか、スイス流に軍管区と申しますか、とにかく十のグループがいる。それが何箇師団になるかということは、いろいろなやり方がありまして私にはよく出ませんですが、そんなような見当のものがなくていいという議論は暴論であろうと思います。そういうものもいる。飛行機はもちろん、海上においても陸上においても守るのには一番能率がいいのでありますから、これを中心としての防空ということは、当然だと思います。しかしながらいずれも困難なことであります。人の装備の方が楽であります。 〔尾崎(末)委員長代理退席、委員長着席〕 船、飛行機というものは非常にむずかしいのでありましてさいぜん申し上げたことを早くお進めくださらなければ、予算をいくらお出しになりましても物はできて来ない、できて来たものは役に立たない、こういうことになるわけであります。しかしおのおのがいるんだ、それなら三等分でいるのかというと、そういうばかなことはないと思います。おのおのを計算して、おのおのできる限りの最低量を持とうとするのは当然だと思います。アメリカはまず日本を安定にするために、陸上だけを日本が受持つてくれればよろしい。アメリカの戦略基地がここにあるのですから、しつかり持つてくれなければアメリカの極東戦術がひつくり返る、そうやつてくれ、日本は自分のために守るべきであります。そういうものをアメリカは急いでおるわけです。ことにさいぜん申しましたアメリカの駐留軍をここに置いておけば、害があるだけで、ことに民族戦争というようなこともあるから、それは早く帰してくれ、それも当然であろうと思う。そのために早く日本でもつくつてくれ、それでアメリカは陸上のことを非常に急いでおる。海の方はちようどそのまん中だと思う。自分でやつてくれないとアメリカも困ることがあるからというので、この間フリゲートを、古にしましても相当数くれたということは、中くらいに急いでおると思う。 空軍の方はこういう性格があるからああいうふうに遅れておるだろうと思います。それは基地というものが日本にちやんと維持されておれば、アメリカから千機、二千機集中して来ることはきわめて容易であります。かつて朝鮮事変のときにはそうであつた。数日にして展開することができる。それだから急がないんだということもあると思いますが、第三国その他の関係もいういろいろ考えておると思います。実際この間のように、二千機、三千機ということがぱつと出ますと、アメリカさえもびつくりした。向うから反響がありましたように、これはなかなかたいへんなことであります。そつちを持つことはいいんだけれども、ついあとまわしになるだろうと思います。ちようどアメリカと日本と逆でございます。北先生の理論の通りだと思うのですが、アメリカの要求及び四囲の状況はそうでありますから、あせると思うのであります。
○中曽根委員 ちよつとお尋ねいたしたいと思います。政府との論争の中で、戦力とは何ぞやという問題があるわけです。そこで政府が答弁しておるのは、近代戦を有効に遂行し得る組織的能力が戦力だ、こういうことを言つておりますが、今までの戦争概念とこれからの戦争概念は、なるほどかわつたとは思いますが、一体近代戦を有効に遂行し得る組織的能力という戦力は、いかなる程度のものを言うか。これは国によつて違うかもしれませんが、日本ではいかなる場合にそういうことを言うか、装備その他の点を反省して見て、その辺に対する見解をひとつ示していただきたい。これが第一点。
○富岡公述人 ただいまのいかなる点という問題ですが、費用のことをおつしやるか、装備の限度をおつしやるかにもよると思うのです。これはおそらく装備のことだろうと思うのです。たとえば費用のことで言いますれば、さいぜんのように世間並――各自由諸国は一〇%、その辺を非常な苦労をしてがんばつておる。日本は非常に苦しい点もあるから半分の五%くらいという議論もありますが、この辺は世間の半分ですから、負担力から行きましても過大なものではない。それが有効適切なるなにをするリミツトだと思うのです。それで費用の方で変なことを申し上げますが、それ以下のものなら有効な内容がないじやないか。 それから装備の問題は戦力の一部に違いないと思います。燃料も何も戦力です。石油がなければ動かないから、これも戦力でありますが、憲法にいう戦力というのは、当時はむろんそんなことを一切言つたのでしようが、そうかといつて、日本に燃料一滴もやらないということは、マツカーサーといえども、アメリカといえどもなかつたと思うのです。戦力というあの字の使い方はきわめて不用意であつて、今の困難を日本に来したものだと思います。私は戦力問題は実にナンセンスだと思う。その字句の解釈を争つて、貴重な方々が貴重な時間を費すのは非常にナンセンスだと思う。それよりもこれを乗り越えるか、この憲法の中で縮こまるかということでございましよう。どうも戦力問題はまことにナンセンスで、議会で盛んにおやりになつていらつしやるのですけれども、木村さんのように巧みなる法理的答弁などはできませんから、わからないと申し上げるよりほかないので、ナンセンスだと申し上げたい。
○中曽根委員 その次にお尋ねいたしたいと思いますのは、民族戦争方式ということに関係して来ると思いますが、かりに日本に内乱や擾乱が起きた場合に、ちようどスペイン戦争のときみたいに背後におる地下の勢力が補給をやるわけです。ところがスペイン戦争はシヴイル・ウオーであつて、普通の戦争ではない。そういう場合に憲法第九条との関係、国籍不明あるいは向うの側の戦力が潜水艦で機関銃やその他の補給するということも考えられます。その場合に日本のフリゲート艦がこれを撃沈するというような場合も起るかもしれません。これは今日やつてもできる問題です。こういう問題が今考えられる法的状態で起り得ると思うのでありますが、これは憲法第九条に違反しない状態であるかどうか。つまり潜水艦を日本のフリゲート艦が撃沈するというような行為は、憲法第九条に抵触しない行為であるかどうか。この点いかにお考えになりますか。
○富岡公述人 私は実はこう思つておるのであります。あの憲法には一つの主張があると思う。日本国民としても押しつけられたにしろ何にせよ、あれは一つの平和の理想を持つておるものだと思うのであります。しかしあれは不用意にして自衛権の問題については何も言わない、あるいは解明しない。戦力の内容も解明しないが、自衛ということについてこれは何も説明されてない。全部包含されたようにも見えるし、それは常識だから当然だというようにも見える。それで今のケースでありますが、平時において――平時か、ちよつとの緊急状態でありますね。非常に平和時とはいわれない緊急状態に、日本から――領土、領海あるいは近海でも公海でもいい、そういう物資が補給される、これを捕獲しようとして捕獲できないで沈めるということは、起きるチヤンスは非常に多いと思います。これは交戦権かということであります。私は交戦権なりと思います。それは使わないと言つているけれども、交戦権だと思います。しかし、その当局はこれは自衛権でもあるという解釈でやるんだろうと思います。憲法は自衛権をイエスともいつていないけれども、ノーともいつていないと思います。
○中曽根委員 自衛権たる交戦権というような言葉が成立するかどうか、これは別個の問題で、その点はよろしゆうございます。 最後にもう一つお尋ねしたいと思いますのは、ダレスの考えには確かにあると思うのですが、日本を含めた太平洋同盟というか、有効なる集団保障方式というものを、いずれの日にか実現したいという非常な熱意があると思うのです。これがちようどラジウムの放射能のように今後あらゆる面で出て来ると思いますが、この太平洋同盟方式というものに対しては、私たちは非常に警戒的であり愼重であります。もちろん日本の憲法問題も解決しなければならぬと思いますが、現在の日本の立場から、こういうようなダレスの構想に対してどういう態度をとつたら、一番賢明な態度であるか。というのは、ある程度の有効な自衛力を持つことも必要な立場でありますし、といつて李承晩やバオダイのめんどうまで見るということは困りものである。うつかり乗れば太平洋同盟というのは、国際連盟と神聖同盟の混血児みたいなものになるかもしれない。ちようど西ドイツのもつと悪い部面になるかもしれない。そういういろいろな面を考えて、いかなる態度をとるのが一番賢明な態度であるか、お教え願いたい。
○富岡公述人 ますます問題はむずかしくなつて参りますが、私は太平洋同盟というようなことは、そういうふうに行けるような境地とは――諸民族と日本との間も行けたらありがたいことだと思います。しかしそれは現実問題であつて、現実にそういう基礎的な状態にあるか、同盟を結び攻守を助け合うという、そこまで行つてない。賠償もきまらない、批准もされてない、そういう場合に基礎もないのに一足飛びにそういうことができるか、むろん同盟は必ずしも兵力の協力を意味しないと思います。いろいろな部分があると思う。経済的の部分も文化的な部分もあります。兵力を出さないなら同盟しないというのなら、軍事同盟であります。今いわれているダレスのは軍事同盟と言つていないと思う。かつダレスはサイコロジカルのストラテジーの相当の達人だと思う。これがねらいだと思う。そういうところにおいては私はよいと思う。端的に言つて軍事同盟はナンセンスであります。ない者が集まつてしかも民族戦争を対象としている、これは欧州に予想されるものは民族戦争ではないと思う。欧州に予想されるものは直接侵略だと思う。初めは民族戦争の形をとるかもしれませんが、これは大戦に近いものでありますから、それに対して集まつてやるということはいいと思うのであります。われわれ東洋に予期されるものは、それは直接侵略もあるかもしれません、理論上ないとは私は申しません。しかし大体予期されるものは民族戦争の方式をとるのであります。東洋の弱点でありますから。それに対して同盟してやるということはそれは軍事的にはおかしい。たとえば日本軍を朝鮮に出すというようなことは、さいぜん申しました通り、ナンセンスであります。日本人がいやだというだけではない、李承晩がイエスというはずはないと思う。アメリカもよく考えてみれば、それが使いものになるかならぬかということは自明の理であろうと思う。そういう侵略に対する場合に、これをすぐ横の軍事同盟をするということも、私はおかしいと思う。ただダレスさんの言うように、サイコロジカルな問題、これは築き上げて行くべき問題だと思う。こういう同盟といいますか、友好関係といいますか、これは経済的な問題はもちろんあります。そつちの方に初め持つて行つてもらわなければ、とても軍事同盟というようなものは描きもできないし、おかしいように思う。
○太田委員長 御多用中たいへんありがとうございました。これにて公述人の御意見を全部聞き終りました。この際昨日来御出席くださいました各位にお礼を申し上げます。何かと御多忙中のところ御出席の上貴重なる御意見をお述べくださいまして、本委員会の今後の審査の上に多大の参考になりましたことを厚くお礼申し上げます。明後十六日午前十時より委員会を開会し、質問を継続することにいたします。 これにて散会いたします。 午後三時四十七分散会