予算委員会 第18号
- 発言数
- 161 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1953/02/07
会議録
○太田委員長 これより会議を開きます。 昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として質問を継続いたします。 松岡駒吉君。
○松岡(駒)委員 政府の施政方針演説、並びに野党の質疑に対する答弁によりますというと、内治外交に関する政府の方針が、何らの統一がないので、その内容はきわめてばらばらのものであることを痛感せざるを得ないのであります。よつて私は今から重要な諸点につきまして、政府の見解をお尋ねしたいと思うのであります。 まず第一に、わが外交の基調についてであります。独立日本の外交の基調について、過日本会議における総理の施政方針演説、並びに岡崎外相の外交方針演説において、わが国の進路が民主主義陣営にあることが強調され、その重点としてアメリカとの親善を喋々されるの余り、外相としてはいささか刺激的な言辞を弄されたことははなはだ遺憾であります。もとより私どもは日本外交が善隣を本旨とし、その一環として、ことに日本の置かれている客観的な情勢、ないしは社会民主主義に対する国是と信念からいたしましても、対米善隣関係の持続強化をはかることに異議をさしはさむものではないのであります。いな、むしろ日本が独立いたしまして、長い占領から解放され、国民的な意識の高揚は自然ではありますが、またそれ自体何ら不健全とは言えないのであるが、しかしこの機運に乗じて、とかく無責任な対外感情のかり立てに狂奔する極右極左の策動に対しましては、これを厳に警戒しなければならないとすら考えておるのであります。この意味からいつて、最近中立とかあるいは第三勢力とかいう立場を強調いたしまして、結果的にはいたずらに感情的闘争を巻き起しつつある一部の主張に賛成できないのであります。いわんや平和の名において侵略や謀略革命から国を防衛することすら、必要でなしと主張するがごとき自慰的な平和論にも同意するものではないのであります。幸いに今回のアジア社会党会議におきまして、アジアの真の自主的かつ進歩的諸政党の共同の意思として、この種民主主義と防衛の信念を欠いた二また膏薬的な中立主義は完全に否定されまして、国連軍の集団保障主義が正しいことと、場合によつてはアメリカを含めた地域的な集団保障の必要なことが是認されましたことは、大いに意を強うするに足ると思うのであります。このことは全アジア、いな世界の平和のために、まことに慶賀すべき成果であると確信いたすものであります。しかしこのことは孤立的なアジア論や、容共的平和論の否定ではあるが、また一面アジア諸国の外交が、自主独立のものでなければならぬことを、一層強く要請するものであることもまた見のがし得ないのであります。しかるに岡崎外務大臣の演説に表われた中立論の否定は、米ソ両勢力の争いの中において、日本に何らの選択権もなく、また自主性もない対米追従の外交を唱道するにほかならないのであつて、私の断じて承服し得ないところであります。中立主義の欺瞞を指摘し得るものは、一方に対する追従主義者ではなく、真に自主、独立の立場に立つ者のみがよくこれをなし得るのであるが、以上外交の基本的な態度に関しまして、首相並びに外相の所見を伺いたいのであります。
○吉田国務大臣 お答えをいたします。松岡君のお話の、極左に偏せず極右に偏せず、善隣の外交をもつて行きたい。私もその通りに思います。また外務大臣の演説について御指摘がありましたが、思うに外務大臣もやはりあなたのお考えと同じであろうと思います。言葉の言い表わし方はどうであつたかしりませんけれども、気持は同じ気持で、必ずしも追従をもつて外交の基本方針とはいたしておらないと思います。また外務大臣の米国政府その他との間の交渉においても、拒むべきものは拒み、主張いたすべきものは主張いたしております。追従を主としておるというのは、少し酷に失しはしないかと思うのでありますが、この点は御了承を願います。
○松岡(駒)委員 先にも申しました通り、外国との親善関係の持続強化と、自主独立の外交とは、十分に調整し得るものであるばかりでなく、またしなければならぬのであります。むしろこれこそが、独立後の日本外交の基調でなければならないと確信いたすのであります。しからばこの意味におきまして、具体的には何をなすべきかということであります。まず第一には不平等な安保条約、行政協定の改訂であります。ことに行政協定中の裁判権管轄問題は、最もすみやかに北大西洋条約方式に改めなければならない。国連軍との協定が成立に至りませんことも、日本と国連諸国との関係が悪化の一路をたどりつつあることも、根本におきましては、この日米行政協定の裁判権の処理の失敗に責を帰すべきであると私は考えるのであります。外相はこれに対しましてどうお考えになるか。なお同様に調達の方式につきまして、日本の自主性と国民経済擁護の見地から改訂すべきであると思うが、これは外相がおいでになりませんから、首相からひとつお答えを願いたいと思うのであります。
○吉田国務大臣 私から一応お答えいたします。安保条約、行政協定が不平等のものであるというお考えであります。またしばしばそういうことはいわれますが、私は安保条約にしても行政協定にしても、これを不平等なりとは考えられないのであります。たとえば刑事裁判権にしましても、従来の外交の先例に従い、また従来の国際慣行に従つたものであつて、決してこれは特異といたすべきものではないと思います。たとえば刑事裁判で犯罪行為があつた軍人をつかまえておいて、これの裁判をしない、これは裁判権の考え方、また主権の考えもそうでありますが、法律の観念は常にそのときの国際の関係その他によつて始終かわつて行くのでありまして、たとえば昔日本に外国人のいることを許さないとかあるいは土地所有権を許さなかつたというときもありましたが、その後は喜んで外国人を迎える、土地の所有権も与えるというようなわけで、法律の観念、国際的の観念は始終動揺いたすものであつて、従つて刑事裁判権のごとき観念も、時々そのときの国情と、国際観念、国際の事情等によつて進歩するといいますか、退歩するかわかりませんけれども、変化はしておるということは認めなければならないのであります。また主権の観念にしても、従来は外国の軍隊を国内に駐屯させるということは、主権侵害なりと考えられておつたのも、これもまた有効的防禦というような観念心からして、外国の兵隊も駐留を許すというようなわけで、観念は始終かわるのである。私はこの現在の刑事裁判権についても、同じ観念から、ただちにこれを不平等なりと言うのは穏当を欠いていやしないかと考えます。少くとも政府はそのつもりで行政協定を結んだのであります。詳細のことは外務大臣からお答えいたします。
○太田委員長 松岡君、外務大臣が出られました。
○松岡(駒)委員 先ほど外務大臣がまだお見えにならないうちに、総理からちよつと伺つたのでありますが、外務大臣の本会議における外交方針演説、あるいは質疑に対する答弁等は、外務大臣としてはいささか適当ならざる言説があつたと考えまして、私ははなはだ遺憾に思つておるのであります。一口にいえば、アメリカとの善隣的な外交ということも必要であることは言うまでもないのであるが、ことごとくこれに迎合し、追随するがごとき印象を与え、かつ中立の問題を論ぜられるにしましても、少し無理があつたように考えられますことは、はなはだ遺憾であります。これについて外務大臣のただいまの心境をお聞かせ願いたいのであります。
○岡崎国務大臣 私はいろいろ考えた末申したことでありまして、今でも考えはかわつておりません。またアメリカとの親善関係も、むろん日本として非常に重要なことでありますが、私が強調しておりますのは、民主主義国家一般との緊密な提携、これを最も強調しておる。その一つとして、日米関係というものが当然出て参ります。そういう意味で申しておるのであります。今のところ別に意見はかわつておりませんが、どこがどうだという御質問があれば、それに対してはお答えいたします。
○松岡(駒)委員 私は必ずしも意見とかなんとかいうよりは、用語の点において外務大臣としては、いささか不穏当であつたかのように感じたので、お尋ねしたのであります。しかしあえてこれ以上繰返しません。 次に私はお尋ねしたいのでありますが、アイゼンハウアー新政権の極東戦略が、朝鮮作戦の積極化や、あるいは台湾政権の大陸反攻の助長のような、軍事的巻き返し政策の形で行われんとするところの事実にかんがみまして、日本としてはその安全に不当な脅威の及んで来るおそれのあるところの関係近接国でありますから、この立場から、あるいはまた引揚げの問題等にも関連いたしまして、十分に言うべきことを言い、また抑制してもらう点は抑制してもらうように、毅然たる態度でなければならないと思うのであります。しかるに外相は過日の外務委員会の質問に対しまして、きわめて刺激的な答弁をしておるのであります。これはどうも私は一国の外務大臣としては、いささか言葉の使い方が不謹慎ではないかと考える。むしろ私をして言わしむるならば、同じようなおそれ、同じような憂いを抱くところのイギリスであるとか、あるいはインドであるとか、その他のアジアの諸国家と連繋を保ちまして妥当な牽制外交を行うべきであると考えるのであります。首相並びに外相の御所見を伺いたいのであります。
○吉田国務大臣 外務大臣に対するお尋ねの点は外務大臣からお答えするとして、私の気持から申しますと、インドのごとき国については、日本としては宗教その他の関係がありますし、また今日においては産業的に考えてみても、インドの工業原料を取入れることが必要と考えますし、またその他の国に例をとつても、ビルマとか、あるいは東南アジア諸国にしても、同じようなこれはインドほど精神的、あるいは宗教的というか、従来の関係は薄いとしても、現在の通商経済等から申して、日本の経済を独立せしむるためには、東南アジアあるいはインドとかいうようなところからして、十分な原料の供給を得なければならぬ立場にありますので、これらの諸国に対する外交は、最も愼重に進めて行きたいという考えでおります。その他は外務大臣からお答えいたします。
○岡崎国務大臣 ただいまのお話の原則論には私も同感であります。つまり極東の平和ということについて、十分愼重に考えて行くべきである、これはその通りだと思います。しかしながらアメリカとしても、ロール・バツク・ポリシーとか、あるいは朝鮮とか台湾等の問題とか、原則的なことは出ておりますけれども、これを実際にどういうふうに実現するかという具体的の方針は、まだ出ていないようでありますので、そのアメリカの方針についても、これをただちに牽制するとか、あるいはそれを助長するとかいうような結論をもつて臨むのは、早いのじやないかと思います。但しわれわれもむろん注意しておりますが、朝鮮なり中共なりの事態につきましては、実は日本の国が一番事情を知つておるということは、いずれの国もそう考えておるようでありまして、現に吉田総理に対しても、いろいろの人が意見を聞きたいというような話もあるようであります。われわれもそういう点は、ほかの国よりも特に近いのでありますし、従来の経験もありますから、事情はよく心得ておると思つて、愼重に考えておるわけであります。本日もここへ出席が遅れましたのは、インドの大使といろいろ話をしておつて、その時間の都合で遅れたのであります。決していいかげんに考えてやつておるわけではないのでありまして、できるだけこういう問題は愼重に考慮するというつもりで研究をいたしております。
○松岡(駒)委員 言葉じりをどうこうするというのではございません。もとより外務大臣がこういう問題をいいかげんにお考えになつておるとは、私は決して考えておるのでもございません。ただ勢いに乗じてお使いになつた言葉などがきわめて不謹慎で、あるいはそれが責任ある外相としては、いささか不適当な言辞ではなかつたか、かように考える点があつたことを、私はなおつけ加えておきたいのであります。 さらに台湾の中立化の解除に際してでありますが、事前の打合せがあつたということである。そこで私はお尋ねしたいのでありますが、その際にただ内示のみをお受けになつただけであるのか。総理が昨日の同僚井出君の質疑に対してお答えになつたところによりますと、アメリカは決して無理を要求しないであろう。こういう楽観的な御答弁があつたのであります。私はそう楽観し安心しておれないような気もいたしますので、その内示されたときに、外務大臣並びに総理から、何かこれに対して御提言があつたのであるかどうか、お聞かせ願えればたいへんに仕合せだと思います。
○岡崎国務大臣 これは私が申した通り、アイゼンハウアー元帥のステートメントについて事前に通報があつたということを申し上げたのでありまして相談があつたということを申しておるわけではございません。これは事前にほかの主要な国などに、たとえばイギリスとかその他にも、報道によればやはり通報があつたようであります。われわれの方もそれを受取つたというのであります。それにつきましてはわれわれの方もそのときに、その理由等も見ましたけれども、これはアメリカが元来決すべき事項でありまして、その理由等はあとで演説の中に書いてありますことと同じでありますが、正当の理由であろうと考えておつたわけであります。
○松岡(駒)委員 私はこの際一言希望しておきたいことは、今回のことは通報があつただけだということでありますが、私の考えるところによれば、必ずしもこういうことに対して日本が提言いたしますことは、アメリカの政治に干渉するとかいうのではなくして、先ほどから申し上げるように、特殊な利害関係、隣接国家としての密接な関係があるのでありますから、今後は単なる通報ということではなく、事前に相当にやはり打合せをしてもらうくらいに、むしろ要求してもよいのではないかと私は考えるのであります。今後の御参考になれば仕合せだと思います。 第三に、領土の問題に対してお尋ねしたいのであります。私の考えるところによれば、日本国民は断じてサンフランシスコ会議の決定を領土に関する限り承服していないと確信いたすのであります。政府はこの点を強く銘記いたしましてただしかし私の言いたいことは、それだからといつて、この際に何か米ソ間の紛争に乗じまして火事どろ的とでもいいますか、ただちに領土の問題について、へたなことをやるべきではないと考えるのでありますが、いわばりくつの通る見込みのないソビエトとのことなどはあとまわしといたしましても、まず公正な議論に対しては耳をかすであろうと思われるところのアメリカに対しましては、沖縄、小笠原等の行政、立法、司法の権限を日本に返還するように、力強く交渉すべきであると思うのであります。ことにアイゼンハウアー大統領の一般教書によりますと、申し上げるまでもなく皆さんが御存じの、すなわちヤルタ協定というものを破棄することがアメリカの立場としてきわめて明瞭に示唆されておるのであります。アメリカ自身がかようなことを明らかにしておるのでありますから、日本はこの際アメリカの態度に対して、強く以上の問題について反省を求めるべきであろう、また求めなければならないと私は考えるのであります。かような強力な、そして公正な自主的な立場の主張をせずして、頭ごなしにただ中立を否定するというやり方は、政府みずからが中外に対して、米国追随外交の汚名を裏書きするにひとしいような結果となるのであります。私はこの点をはなはだ遺憾としておるのである。こういう意味において私は総理と外務大臣の所見を伺いたいのであります。
○吉田国務大臣 お尋ねの琉球その他の行政等のことに関して、これはサンフランシスコ条約といいますか、締結後、その以前からでもありますが、沖繩その他のところをアメリカが占領したのは、これは軍事上の意味合いであつて、もしあの地点が敵国というのもおかしいようでありますけれども、まあかりに言葉を簡略にするために敵国関係にあるような国に占領せられたならば、太平洋の防備という上からいつて、あるいは日本の防備という上からいつてみて、非常に容易ならぬことでありますから、何というか知りませんが、何とかアメリカの信託統治にする。そうしてアメリカの一時支配のもとに置く。その理由は軍事的の必要である。従つて軍事的以外のことは日本にまかせてもらうべきではないかということは、サンフランシスコ会議以前からも、またその後においても引続き交渉いたしております。また日本の国民の希望するところは率直に述べております。また米国当局者もこれには相当耳を傾けてくれております。これはすなわちその軍事上の必要というところからいいまして、どこまでを開放ができるか、それから権限の返還ができるかということの議論だと思います。交渉の結果はまだ明らかになつておりませんが、意見は絶えず交換をいたしております。そのために米国の当局者もわざわざ東京に来られて、私も説明をしていただいておりますようなわけで、問題は打切つておるわけではなく、絶えず交渉いたしております。詳細なことは、また外務大臣からお答えいたします。
○岡崎国務大臣 沖縄等につきましては、今の総理からのお話の通りであります。平和条約の領土の条項にはだれも満足していないというお話でありますが、これは実際の内容についてはいろいろ意見があろうと思います。しかしながら日本国民全体としては、ポツダム宣言を受諾した以上は、あの宣言の中に書いておるように、日本の領土については四大島以外のところは連合国の決定によるというこの条件を受諾したのであるから、いまさら何か言わずに、これはいさぎよくきめられたものを受入れるべきだという考えであろうと思います。その結果平和条約についても、国会では非常な多数をもつて承認されたというふうになつておるわけであります。われわれとしては平和条約をただちにどうこうするようなことをいたすべきではないと思います。但しアメリカ側の根本方針としては、先般総理も言われましたように、大西洋憲章あるいは連合国宣言というものを方針としておると思われまして、つまり領土の拡大は求めないという方針で来ておると思います。また事実そうとしか考えられないのでありますが、そのために今も総理が言われたように、原則的には、沖繩にしても、その他の島にしても、日本の主権が存在するということは認めておるのでありまして、これと軍事上の関係をどういうふうに調整するかという問題、これらの点につきましては現にそういう話を続けております。向う側にも両方の意見があつて、その点はなかなか困難な事情もあるようでありますが、事態はだんだん好転して来る、こう確信しております。
○松岡(駒)委員 ただいまの領土の問題につきましては、総理並びに外務大臣の御答弁のあつたように、今後もどうぞ強力にこの交渉は継続していただかなければならないと思います。このことをつけ加えておいて、第四の問題に移ります。 日本の独立の裏づけといたしまして、経済自立の達成のために全アジア、ことに東南アジア方面との貿易関係というものが、非常に大切であることはいまさら言うまでもございません。しかもこれが前途には、一部の国との間に賠償問題というような難件が横たわつておるのでありますから、決して坦々たるものでないことは、何人にもわかるのであります。この際、東南アジア諸国その他のアジアの未開発地域の経済開発と、その後進性の克服というものは、ひとり日本経済自立のためにのみではなくて、世界の不安解消への基本的な方策の一つであるということを、私どもは特に重要に考えなければならないと思います。この先進国と後進国との中間にあるとでも言い得るようなわが日本といたしまして、その日本の外交の基調といたしまして、広く世界に呼びかけまして、ことに国際連合機関を通じ、その早期実現に努めなければならないと思うのであります。これについて総理・並びに外相の意見を承りたいのであります。 なおこれに関連いたしまして、パリのココム・リストすなわち中共戦略物資の供給禁止の合理化とか、あるいはガツトに加入するということの促進に努めなければならないと思うのであります。政府はこれについてどういう努力をされ、かつどういう準備をお持ちになつておられるかということを、この機会にお伺いしたいのであります。これは総理並びに外務大臣から御答弁願いたいのであります。
○吉田国務大臣 お答えをいたします。東南アジア方面の開発がさらに日本の経済のためのみならず、世界の繁栄、貿易等のためにもなるということに対しては、私もそう考えております。ゆえに最近においてもそうでありますが、絶えず東南アジア方面の諸国との間に接触を保つために、人を派遣して、国会からもまた政府関係の者も絶えず旅行させ、あるいはその土地の政府当局者と話をさせております。なお私の考えは、旅行という形で、通りすがりでもつて話をするというような形では不十分である。むしろ専任というか、そこにいくらか滞在して、腰をすえて話をする、インドネシアあるいはタイにしてもそうであります。またフイリピンにしても賠償問題もありますが、賠償問題と関連をし、また関連しなくても、日本の経済あるいはその土地の開発のために研究をする、当局者と話もさせる。それには通りすがりではなくて、多少その土地に滞在して行くべきではないかというような考えで、政府各部内とも今話をしておるわけであります。また人についても考えているのでありますが、同じ考えは各国とも、すなわちアメリカにおいても、イギリスにおいても、たとえばポイント・フオアとか、あるいはイギリスのセイロンにおける会議において、東南アジアの開発の問題を研究いたしておりますので、世界ことごとくこの未開発の国を開発することが、世界の繁栄に新たなる要素を加えるものなりとして留意をいたしておると思います。しかし重要視してその地方の資源を開拓するとすれば、単に理論あるいは金だけ持つて来ても、開拓はできないので、日本の国民のような、あるいは戦争中長くその地方に日本の経済が進出して、つぶさに辛苦といいますか、戦争の苦しみを味わうとともに、その地方の地理あるいは民族と接触を保つておつた関係もありますから、日本国民が一番東南アジア地方の資源開・拓には適しているのではないかと思います。この趣意でもつて、私は絶えず日本に来た外国人に対して、東南アジアの問題を言うたびごとに、この開拓の実行は、われわれ日本人が一番適任である。ただ戦争当時の記憶がまだ残つているので、あるいは日本国民が再び侵略的の行為に出やしないかというような誤解といいますか、疑惑からしていろいろまだとやこや言うかもしれないが、今日はその時代はもう過ぎてしまつたのである。領土とかいうようなことは考えておらないのである。また貿易にしても、東南アジアを日本の貿易の市場にするとしても、まずその地方が開拓されて、その地方の富がふえるといいますか、購買力がふえることによつて、日本の市場になり得るので、ただ物を売ろうとしたところが、現在ではむずかしい。むしろ進んでその地方の資源を開拓し、その地方の購買力を養うことによつて、これを日本の市場にすることができるのである。そのためには、従来の、ただ人を出すというだけでなくて、多少常駐というか、滞留させて、そうして当局者とも懇親を結び、またいかなる仕事があるか、それがその地方の資源の開拓ということになるかということを、おちついて、多少滞在して研究する必要がある、こう考えて、その用意を今進めております。
○岡崎国務大臣 東南アジアの問題、今総理が言われた通りでありますが、今総理のお話にもありましたように、賠償にしましても、開発事業といいますか、その方面にしましても、とかく日本の利益のためにやるのじやないかという疑いも起らないでもありませんので、結局は日本の利益になることは自然でありますけれども、まず賠償にしても開発にしても、そういうことはあとまわしにして、その国の利益のために専心当る。こういう方針で行けば、だんだん理解が深まつて実現できるであろうと考えております。これにつきましては、今総理の言われましたコロンボ・プランとか、あるいはポイント・フオアとかもあります。また国際連合のエカフエの会議もありまして、エカフエの方などにもわれわれの方もできるだけこれを支持して、協力しております。また国際銀行等も、もし日本側で金を出して経済開発をするというときには、協力する考えがあるということを聞いております。つまりできるだけ日本の利益をはからないという意味で、よその国なり、国際連合なりとともに行くという方法が、一番簡単に行くのではないかと考えておるようなわけであります。 またパリにおける共産地域に対する輸出統制の問題は、われわれ日本もこれに加入して相談をいたしておりますが、これはもつぱら連合国といいますか、こちら側の自由主義国家間の足並をそろえて行く。そして合理的なところに落して行く、こういう目的でやつております。 ガツトの加入につきましては、現在会議を開いております。いわゆる会期間の会議といいますか、インター・セツシヨナルの会議を開いておりまして、ここで今日本の加入問題について種々話合いが行われております。これは原則としてきまりましても、関税に関する交渉が必要でありますが、これもできるだけ各個別にやろうと思つて準備をいたしております。今までのところまだ結論は出ておりませんが、日本の加入について特に原則的に反対をするという国はなく、イギリス等も決して原則的に反対はしておらないようであります。ただ日本側の不当なる競争で、市場が混乱するというようなことのないようにという点を懸念しておるようであります。この点さえ明らかになれば、原則的の問題は解決され、あとは関税交渉によつて実際上の加入手続を進める、こういうことになつて来るだろうと考えております。
○松岡(駒)委員 ただいまの外相の御答弁、ちよつと私はふに落ちないところがあるのであります。パリにおけるココム・リストの問題でありますが、中共に対する戦略物資の輸出などにつきましても、日本だけが特別に他の国よりも制限を多く受けておるということは、非常に間違いじやないか。急速にこれが改められなければならないのではないかと私は考えるのであります。歴史的に見ましても、日本と支那中共がどんなに深い関係を持つておるかは、これはいまさら申し上げるまでもございませんが、隣接国である日本といたしまして不幸にして世界がこういうことになつておるために、心ならずもなさなければならない輸出の制限は、他の国でやるよりも日本の国でやる方がいくらか緩和されるくらいであつてよい。自由主義諸国間においてもそのくらいの思いやりが日本に対してあつてよいはずである。そのことが世界平和のために必要なのであります。それが逆に日本の制限が今のところきついというようなことは、急速に改められなければならないことであろう、かように考えますが、その点についてどういう努力をせられ、またどういう経過であるか、御説明を願いたい。
○岡崎国務大臣 各国より日本がきつくなつておるということをおつしやいましたが、その実情はアメリカとカナダが一番厳重で、ほとんど輸出をしていないのだと思います。戦前の状況を見ますと、これは時によつて違いますが、戦争直前ごろは、アメリカの中国貿易が、中国においては第一位を占めておつたと思います。しかし今はアメリカはほとんど皆無といつてよいくらいであります。それで日本側としてはもちろん今おつしやつたような御意見もありますが、同時に近いからしてつまり朝鮮における戦闘によつて一番重大な影響を受けるものは日本であります。これが早く終るのが、日本としても一番利益が大きいのであります。そこでかりに中共の戦力を増すようなことになれば、それだけ戦争が長引くということになるのでありますから、おつしやるような意味もむろんありますが、逆にいえば、近いだけあつて、特にほかの国も率いて中共側の戦力をふやさないようにする努力をしなければならぬということもあるのです。しかし、おつしやつたような事情は、日本の業界の困難性もありますので、通産大臣等とも協議いたしまして、先般も十数品目の緩和をいたしたような次第であります。今後も諸外国との足並のそろう程度においては、なるべくさしつかえないものは緩和したい、こう考えて準備を進めております。
○松岡(駒)委員 このことを繰返しておりますと、いたずらに時間を要すると思いますから打切りたいと思いますが、この機会に私は一言申し上げておきたいのであります。それは今外務大臣の御説明の通り、日本が一番近い、戦略物資を輸出いたしまして、そのことのために日本がかえつて多くの迷惑を受けるであろうということも十分わかることでありますが、他の国で許されている程度のものは、日本に許されてもしかるべきであるということもすぐわかることだろうと思います。たとえばアメリカやカナダと違いまして、日本の経済事情は非常に困難であります。そのことは国民の生活の上にひしひしと感ずるのであります。そこへ持つて来て、どんなに努力いたしましても、中共貿易というものが、しかく簡単にわれわれが希望するがごとくに行われるとは思つていないにかかわらず、政治的の一つの意図をもつてこの問題を取扱つている政治団体があるのであります。このことは、日本の国内の治安にも重大な影響のあることでありまして、これを決して軽視すべきではございません。いたずらにそれらの人々に屈強な口実を与えるがごときことを、うつちやらかしておくべきでないと思います。この点はひとつ強くお考えくださいまして、善処していただきたいと思います。 第五にお聞きしたい。政治的にも経済的にも、日本の外交の重心を、アメリカからアジアに移すということに、努めなければならないのではないかと私は考えるのであります。世界の平和に対する脅威の最大のものが、コミンフオルムの侵略政策であるということは、あるいは賛成しない人があるかもしらないが、多くの人が認めているところであると私は信じます。しかし同時にさきに申し上げましたようなアジアの貧困、アジアの経済的な不平等、またさらに政治的な植民地支配の存続ということを決して見のがしてはならないのであります。ソ連式の新しい帝国主義支配というものが不当であることは、論をまたないのでございますが、一方西欧の植民地支配が、かえつてアジアの民族主義をソ連圏内に追い込みつつあるというこの現実を、私どもは重視いたさなければならないと思うのであります。アジアの中で敗戦国家とはいいながら、先進国としてアジア諸国の人々がある程度の期待を持つてくれておりますところの日本、戦争に負け、七年もの間占領されてはおりましたが、このばかばかしい戦争をしたために、日本はおかげで真に平和的な日本として生れかわろうとして、あらゆる困難と闘いつつあるのであります。この日本といたしましては、世界の自由諸国に向いまして、この一点を強く唱道いたしまして、すなわちソビエト式の帝国主義支配、ソ連の指導下に西欧の植民地主義というものがアジアの民族をかり立てつつある事実を強く指摘いたしまして、自由世界自身が自分たちみずからの手で、平和的にこの問題を是正することが大切である。これは日本が侵略戦争のために、かなりあちこちに迷惑をかけました罪滅ぼし的な見地から考えましても、私どもの強く主張しなければならない大切な一点であると思うのであります。かようにいたしましてこそ、初めてアジア及び後進地域において、この軍事的な障壁に劣らないところの、より根本的な平和のとりでを築き上げることができるのであろうと信ずるのであります。この民主的にしてかつ道義的な方式によりますところの平和をもつてアジアを解放し、これによる自由世界の強化、わが日本はこれを基調とするという心構えでなければならないと私は思うのであります。この点につきまして総理並びに外相の所見を伺いたい。同時にかような外交を推進いたしますためには、政府の外交とともに、民衆と民衆が直接に接触するという、いわゆる国民外交が必要であろうかと考えるのであります。政府はこの国民外交に支援を与える用意があるかどうか。この点において重ねて総理並びに外相の所見を伺いたいのであります。
○吉田国務大臣 お答えをいたします。今お話のアメリカの植民地的政策がアジア諸民族を刺激する。そのために日本が先に立つてアジア民族を指導する、こういうようなお話のように思いますが、さてアメリカ政府の対アジア政策が、今お話のような植民地的にアジアを取扱うという考えを意識的に持つているとは私は考えません。
○松岡(駒)委員 それはアメリカのみを対象としたのではありません。西欧の植民地主義であります。
○吉田国務大臣 西欧といつても、今日はイギリスの東洋における勢力も大分衰えて来ておりますし、かりに植民地化せんとする政策をとつたところが、今日の英連邦といいますか、英国の勢力では、これはできないことだと思います。そういう言葉の言い方、重点をどこに置くかというようなことは別としまして、いずれにしても、ただいま申したように、日本としては東南アジア、あるいはアジア隣国との間に、善隣関係を打立てるということはむろん大事なことでありますが、隣国とけんかをしておつてということであれば、日本自身の治安も脅かされるわけでありますから、善隣外交、ことにアジア諸国との間に最もいい関係に入ることに努むべきであるということについては、私は御同感であります。またこれのために従来相当努力いたしたつもりであります。たとえば台湾政府との間にもなるべく早く条約を結ぼうと努め、あるいはフイリピンその他との間においても、善隣関係を打立てるために今日努力をいたしております。タイ、あるいはビルマ、仏印その他に対しても同じような考えで臨んでおります。ゆえにアジアにおける諸民族諸国との図に、最も親善な友好関係を打立てることについてはむろん政府も努めますし、お話のようにこのために国民外交ということも最も大切であることは申すまでもありません。そのために私は東南アジアあるいはタイ、ビルマ、インド等に、なるべくたくさんな日本の政治家、実業家その他が旅行をしてその地方の知識を進めるとともに、その地方との間に、個人的にも親善関係ができるように考えて、最近になつても数人の人を出しております。また学生等も、これは外務大臣からお話があるだろうと思いますが、学生等を日本に招待してその世話をする、そのための予算も幾らか組んだかと思いますが、アジア地方の学生が日本に留学する、その留学生に対して相当の心配をするというような考えを持つているようなわけで、決しておろそかにいたしておらないのであります。これはお話の通り、国民外交を政府が努めましても、国民が理解を持たない、あるいは国民と国民の間において悪い関係が起るということであれば、これは決して外交の目的を達するわけではありませんから、国民外交はますます肝要と考えます。従つて野党諸君においても、同じような気持をもつて、日本の外交を進めて行くように御協力を願いたいと思います。
○岡崎国務大臣 大体もう今総理が答えられましたので申し上げることはありませんが、御趣旨は同感でありますので、われわれもそういうふうに努力いたしたいと考えます。
○松岡(駒)委員 次に労働と経済の問題につきまして、政府の所見を伺いたいと思います。申し上げるまでもなく、日本の経済不況は容易ならざる事態であるのでありまして、これを打開し、独立日本の経済自立を達成いたしますためには、全国民の総力を傾注するということが必要であると信ずるのであります。日本の経済を再建いたしますためには、まず重要な基幹産業、これはだれもが考えております。これを重点的に開発する、あるいはその老廃しているところの施設を若返らすということに、努めなければならないことは申すまでもございません。そのことは結局どういうことになるかといいますと、資金面においてあるいは課税の方法において結局助成と保護の方途が講ぜられることなくして、これは行い得ないでございましよう。このことは大体見通し得ることでございます。かようにいたしまして国の手厚い援助のもとに開発され、再建されたところの巨大な基幹産業というものは、幾百万の労働者の上に君臨いたすのであります。そうして国民経済の上に恐るべき支配力を振うのであります。このことはだれが何と言いましようとも、否定することのできない厳然たる事実である。そして結局結論的に申し上げますならば、労働大衆の反感を刺激し、反抗的な争議を激成せしめることとなることまた自明の理であります。私はこのことを考えて、ここに政府が抜本的な産業労働対策を確立する必要を痛感いたすのであります。過般の電産並びに炭労の争議でありますが、この電産と炭労の争議につきましては、あるいはその要求条件について、またその争議の手段並びに目的について、きわめて不健全であつたということが、労働組合内部から批判されておりますことは、(「ノーノー」)これは周知のことであります。ところがこれにも増して電力、炭鉱資本家、すなわち経営者のこの問題に対する態度は、大いに反省されなければならぬもののあつたことは、これまた言うまでもございません。かようなことを繰返していたならば、日本の経済の自立などということは、とうてい望むべくもないのであります。前に申し述べました通り、国民の総力を発揮せしむるために、政府は資本と労働と経営の三者の代表者をもつて、国民経済会議というようなものを開催する御意思があるかどうか、その具体的な方策を決定するとともに、これを実行のために万全を期すべきであると思うのであるが、この種の会議をつくる意思があるかどうか、このことを通産大臣並びに労働大臣からお聞きしたいのであります。
○小笠原国務大臣 お話のごとくに、健全なる日本経済の発展をはかるためには、労使双方が緊密に提携し、無用の摩擦を避けて、現在の困難なる事態を克服することがきわめて肝要であると考えております。その意味におきまして、健全な組合の発展と理解ある経営者の態度が望ましいのでございまして、労働者の基本的な権利はあくまで尊重しつつも、その濫用は戒め、また経営者の場合においても、お話のごとくに労働者に対抗するといつたような態度は、これはかえつて事態を混乱せしむるおそれがあるので、この点も十分認識する必要があると考えます。なお公共事業その他の重要産業の争議行為につきましても、それがはなはだしく公共の福祉と相反することのないよう、当事者の愼重なる態度が望まれるのでございまして、この趣旨を破つて社会経済に不当な混乱を巻き起すような事態に対しましては、適当な調整措置をとるほかないかと考えます。 なおお示しの資本、経営者及び労働者等につきましての三者の会議をつくる必要がないかというお話につきましては、ひとつよく検討いたしまして、これに善処することにいたしたいと存じます。
○戸塚国務大臣 経済自立と労働大衆と資本家との関係についてのお話、ただいま通産大臣からもお話がございましたが、私もこれに同感でございます。そうしていたずらに労働階級の反感を起さすようなことは、政府といたしましては考えておらないのであります、なお国民経済会議のことは、ただいま小笠原通産大臣からもお話がございましたが、私も一層研究いたしたいと思います。
○松岡(駒)委員 次にお聞きしたいことは、日本の産業、経済再建の方途を考える際に、私どもの見のがしてならない事柄は、西ドイツの産業の顕著な復興ぶりであると思うのであります。同国の政府は、高度な計画性と、労使経営協議会、こういう方法をもつてやつているのでありまして、この功績というものは、私は見のがし得ないところのまことに大きな問題だと思うのであります。すなわち、一九四九年にドイツ労働総同盟が結成されまして炭鉱であるとかあるいは鉄鋼業のような基幹産業に経営参加が認められることになりました。その経営参加というものが非常な好成績を上げました結果、国会は一昨年の四月に経営参加法なるものを制定しまして、越えて昨年の七月に同法を改正いたしまして、現行の経営基準法というものができた。ここで労働者の経営参加というものが法的に確認されることになりました。そして基幹産業におきましては、労使同数の重役をもつて重役会を構成することになり、そうして生産能率であるとか、利潤であるとか、あるいは賃金であるとかというようなものが、すべてここで調整されることになつたのであります。その他一般の産業におきましても、労働者を代表する重役が三分の一加わらなければならないことになつている。しかもわずかに五人というような工場におきましてすら、ことごとく工場委員会がつくられまして、就業時間であるとか、あるいは賃金であるとか、あるいはその他の厚生的なる施設の運営というようなことが、労使双方の手によつて、工場委員会という委員会の運用によりまして行われておるのであります。日本におけるストライキが起る都度に、西ドイツではストライキがないということを資本家側あるいは政府側あるいは新聞、雑誌等から指摘されまして、日本の労働組合運動の何か不健全性を指摘されることがよく行われるのでございますが、私は以上申し上げました通りのような意味合いで、西ドイツにおいてストライキがないということは、当然ではないかと思うのであります。このことを大いに考えてもらわなければならない。現内閣のごとく手をこまねいて、いたずらにストライキの頻発を嘆くというようなことは、まことに愚かのきわみではないかと思うのであります。 それにつきましても、私はまことに遺憾に存じておる事柄が一つあるのであります。すなわちそれはせつかく片山内閣の施政下におきまして、日本では初めて基幹産業である石炭の生産委員会というものが設けられたのであります。ところが国管法が廃止されますとともに、日の目を見ることなくしてこれは葬り去られました。私はこれを育成しておいたならば、過般の炭労の争議のごときは、あるいは避け得た、と断言はいたしませんが、避け得たであつたであろう、かように考えるのであります。吉田内閣はこの事実にかんがみまして、労働組合がよく産業再建のために協力し得るような——政治ばかりが民主主義であつてもだめです。産業を民主化して、産業民主化態勢の確立のために、極力その方途を講ずべきであると思うのであるが、どうお考えになるか。 この機会に私は蛇足のようでありますが、申し上げておきたい。もとより決定権を持つところの経営の参加というようなことは、労働組合の健全な発達と、その質的向上と相まつてでなければ困難であることは、よく存じております。しかし少くとも経営者は経営上のことを組合に諮問し、労働組合もまたこれに対してこたえなければならない、この程度の義務を課しまして、そのために労使の委員会を設け、協議と懇談をせしむるような指導と助成が必要ではないか、終戦直後における特殊な経済の事情、生活の困難を思い起しましても、私どもみずからがはなはだ遺憾であつた幾多の労働争議があるのでございますが、だからというて、ただちに経営協議会というもの、経営の参加ということが、所有権を否定し、経営権を否定するものであるというがごとき占領当局の偏見から、日本政府が唯々諾々と司令部の方針に従いましてせつかくそういう方向に向おうとしているやつを、芽をつみとつたかの観があることを、私ははなはだ遺憾とするものであります。物事にはいいことにも多少の弊害は伴うものであります。私はかようなことを考えるにつけましても、ただいま申し上げました通り、経営上の問題について経営者に対して労働組合に諮問しなければならない義務を負わす、労働組合もこれにこたえなければならない、そういうことのために協議し懇談するために委員会をつくる、こういうことを義務づける御意思があるかどうか、これをお聞きしたいのであります。これまた通産並びに労働大臣の御所見を伺いたい。
○小笠原国務大臣 通産大臣としてお答え申し上げます。ただいま御指摘の点まことに傾聴すべき御意見が多々あつたのでございます。現在も労使のいわゆる経営協議会といいますか、がありますことは御承知の通りでありますが、それは今お話のようなそう活発なものではございません。しかしこれもよく善導すれば相当の効果を上げ得るものではないかと考えております。ただ私どもが率直に申し上げさせていただきますと、今松岡さんの仰せになつたように、日本においても労使双方とも、もう少しこの西ドイツのごとき自覚を強く持ち得ることに至りますれば、さようなことがまことに適切な効果を持とうと考えております。(拍手)
○戸塚国務大臣 西独の経営の状況、なお西独の経営参加のことにつきましてのお話でございます。ただいま通産大臣もお答えになりましたが、やはり私不敏にして十分のことを承知いたしませんが、国情の相違というような点、あるいは組合の発達、あるいは資本家の観念といいますか、そういう点にもまた隔たりがあるというような気がいたしておるのであります。今後、日本はまた日本なりにだんだんそういう発展をして行くことが望ましいことだ、かように実は考えておるのであります。 なお経営協議会のことも、ただいま通産大臣からお話がありました。日本の経営者でも、だんだんそういう面に理解をもつて進んで来ている向きもあるように多少は聞いておるのでございますが、お話の法的の措置というところまでは、まだもう少し研究いたした方がよいのではないかと考えております。
○松岡(駒)委員 次にお尋ねしたいことは、国民生活の安定の方策であります。申すまでもなく、国民生活を安定する方策はいろいろありましよう。簡単なことを私は申し上げるようでありますが、賃銀を値上げして、高収入によるところの生活の安定方策と、物価を引下げて、あるいは税を軽減して生活の実質をよくして、ゆたかにして行こうという行き方と、大体二つ考え得るでございましよう。政府は一体そのうちのどの方法で、国民生活の安定をはかろうと志しておられるのであるか、まずこの点をお聞きしたいのであります。
○太田委員長 松岡君、労働大臣ですか。
○松岡(駒)委員 これは大蔵大臣と通産大臣から聞きましよう。
○向井国務大臣 ただいまのお話は、どれ一つで行くべきものではなくて今おあげになつたすべての点を、総合的に用いて行かなければだめだろうというふうに考えております。
○小笠原国務大臣 ただいま大蔵大臣の答弁の通りと存じますが、ただ物価につきましては、私どもは、いわゆる国際物価というものがございますので、国際物価までの引下げということはぜひとも必要であり、総合的にその点から見て賃金等とのことを勘案すべきであると考えております。 〔「具体的に政策を説明しなさい」と呼ぶ者あり〕
○松岡(駒)委員 どうもあまり具体的でないことは、はなはだ遺憾でありますが、これについてはまた私の方に専門家がたくさんおりますから、私はここらでこの問題は省略いたしまして、ただいまの答弁大いに不満であるけれども、次に移りたいと思うのであります。 大体両大臣の御答弁を聞きまして、いずれをとるかというのではなくて、両方とも大切だということをお認めになつた。これは私の大いに共鳴するところであります。ただ具体的でないことを私ははなはだ遺憾とする。いわんや二十八年度の予算をお読みになつておられることをお尋ねすることは、あまりにも皮肉なものの見方でありますから、よしますが、これをお読みになつておる両大臣として、ただいまの答弁をなさるということは、私にはけげんなのであります。一体私が申し上げた二つの何が行われておるのであるか、一体何が盛り込まれておるのであるか。試みに本年度の予算を見ますと、鉄道運賃では大体三割の値上げ、それから生活のためにまことに必要な米の消費価格というものが約一割、これらを総合いたしますならば、二十八年度の予算というものは、国民大衆の生活費に対しまして、大体一五%から二〇%の値上りを予想せしむるのであります。ところで減税の数字でありますが、これを差引きまして、私の計算によれば、これは赤字になるのであります。かような状態で、どうして一体国民生活の安定ということの希望をここに感ぜしめることができるのであるか。国民にこの二十八年度の予算が、自分たちの生活をゆたかにすることができるという希望を持たすことが、一体どうしてできるのであるか。答弁としてはただいまのような答弁もできるでありましよう。はなはだ失礼ながら口先でそういう答弁をされましても、事実はいかんともしがたいのである。しかも二十八年度の予算によれば三百億という公債が発行されるのであります。この公債の性質を私はここでくだくだしく論じようとは思いません。これはやがてインフレの素地をつくることは否定できないのであります。かようにいたしましてどうして一体生活の安定ということがあり得ようか。私はここでひとつお尋ねしたい。政府は物価と賃金、企業利潤の均衡のために特殊な手段を講ずる用意があるか、そういうことをお考えになつておるか、そういうことは必要でないとお考えになるか、この点を、これは総理、大蔵大臣、通産大臣のお三人からお答えを願いたいと思うのであります。
○吉田国務大臣 主管大臣からお答え申し上げます。
○向井国務大臣 必要がないとは存じません。しかしながらそれをどういたしてよろしいかということは、ただいま案を持ち合せておりません。
○小笠原国務大臣 御指摘の三つの調和ということは、きわめて大切であると考えております。但し私どもの方もその方向に向つてあらゆる施策は進めておりますが、具体的にこれでこう解決ができるというものを、今ここで持ち合せておりません。
○松岡(駒)委員 ただいまの御答弁はことごとく私の満足するところではないのであります。大いなる不満がありますが、これはこれ以上に質問を続けましても意味がないと思いますから、政府の無方針というものがきわめて明確になつたことだけでも、この質問は意義があつたということを考えましてこれについての質問を打切ります。 次に私はお伺いしたいのでありますが、過ぐる第十三回国会におきまして、各派の共同提案として、全会一致で採択された決議案がございます。その決議案は国際労働条約批准促進に関する決議案でございます。この決議案というものは、当時申し上げたことでございますが、これを短かく申し上げれば、国際労働機関を通じて、日本政府が多年対外的な不信を国際的にまき散らしておる、この対外不信を払拭、回復いたしまして、国内においては労働問題の解決を国際的な基準によつて求めようという趣旨にほかならないのであります。そうしてこうすることが公正にして健全な労働組合発達のために、欠くべからざる要件であるという趣旨であるのであります。さきに申し上げました通り、この決議案は各派共同提案であります。全会一致によつてこれは採択されたのであります。しかるにその後政府はこの全会一致の院議を尊重することなく、これを放任して顧みない。一向これを処理しようとしない。一体何というこれは議会無視、無責任な態度であるか。これははなはだしい怠慢といわなければならないのであります。これは労働者の利己的な欲求を満たさんとするがための提案ではない。各派共同一致の提案であり、全会一致のこれは賛成である。この事実につきまして総理大臣並びに労働大臣はどういう責任をお感じになつておられるか、明快な御答弁を願いたい。
○吉田国務大臣 主管大臣からお答えいたします。
○戸塚国務大臣 お答えいたします。ただいまお話の第十三回国会で決議をせられた後、非常に遅れておつたことについての御疑念は、まことにごもつともと存じますが、専門家であられる松岡さんに申し上げるまでもなく、日本は一時この条約を脱退いたしておりました関係で、十三年ほど空白の時代があつたような次第であります。その後資料を入手する、あるいは調査研究をする期間が相当長くありましたので、はなはだ遅れておつて申訳ありません。院議に対して遅れたことはまことに恐縮でありますが、今申し上げるようなわけで、その後だんだん調査研究も進みまして、今国会で工業及び商業における労働監督に関する条約、第八十一号、職業安定組織の構成に関する条約、第八十八号、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約、第九十八号、この三件を実は御審議願うはずになつておりまして、不日提案をいたしたいと考えておる次第であります。多分十五日ごろまでにはというように外務省との打合せで進めております。あるいはその通りには参らぬかもしれませんが、ともかく努めて早く御審議を願うようにいたしたい、さように考えておる次第であります。
○松岡(駒)委員 労働大臣が責任を感じ、きわめて殊勝な態度で御答弁せられまして、遅れたとはいいながら、三件でもただちに手続をとろうかというのでありますから、あまり多く追究することをよします。ただこれは論じ尽されておることであつて、私がここで物知り顔で申し上げることもないと思うが、これは非常に大切なことである。ことに吉田総理のごときは、日本外交界の大先達である、外交の第一人者をもつておそらくみずから任じられるであろうし、国民もこれは認めておるであろう。(「認めてないね」と呼ぶ者あり、笑声)こういう問題を労働大臣まかせになすつておられるということは、私は総理の国際外交に対する認識を疑いたい。今後十分御注意を願いたいと思うのであります。 次にお伺いしたいことは、政府は従来しばしば労働法の改悪を企図して、かえつてこの労働階級の反抗を激成し、そうして具体的には、年若い労働者や学生までもかつて破壊分子の群れにこれを追いやるというようなことを繰返しておられます。これにも懲りないで、またまた労働法の改悪を企てておられるかに見受けられます。いなそういう御発言がありました。それは私はおやめになつた方がよろしいのではなかろうかと考えております。むしろ政府は、取締るということに重点を置くというよりか、もう少し積極的に消極的な面を強くお考えになるよりは、積極的な面を十分にお考えになられることが必要ではなかろうか。すなわち政府は、この際先ほど申しました労働条約の批准を断行する。私の見るところでは、今労働大臣は三件とおつしやつたが、それでもないよりはましではありますけれども、新しい日本の企業家、資本家に負担をかけるというようなことをあまりしなくても、ざつと三十近いものを批准し得るのではなかろうか、私はかように考えております。そういうことが大事なのであります。労働条約の批准を断行するとか、さらに進んで公正にして健全な労働施策というものを断行する。労働階級に希望と光明を与えまして、労働階級としての自覚を感じせしめるような方策というものが、むしろより大切であるということをこの機会に十分考えていただきたい。取締るということ、監督するということよりか、さらに進んで取締るという政策よりは、積極的に希望と光明を感じせしめ、責任を自覚せしめるという方策の方が、より大切であるということに、頭を少しねじ向けていただきたいのであります。それが非常に大切なことであると私は思う。事柄はきわめて抽象的であるように見受けられますが、これにつきまして、私は総理並びに労働大臣の懇切な御答弁を願いたいのであります。
○吉田国務大臣 主管大臣からお答えをいたします。
○太田委員長 ちよつと松岡さんに申しますが、総理は十二時から宮中の儀式がありますのでまことに恐縮ですが、もし何ならば午後になお続けることができるようにいたしたいと思います。
○戸塚国務大臣 労働組合に対して取締りの方ばかり気にするようなやり方がいけないので、希望を持たせるようにということは、まことにごもつともなお話であります。しかしながら、予算の関係になりますと十分には参りませんが、私も、お話のように、福祉の面とか、あるいは安全とか、能率を上げるとかいう面で、労働者が明るい方に向うごとに努めて希望し、努力もいたしたいと存じておるのでございます。取締りと申しましても、先般本会議でちよつと申し上げましたのは、決して一般に全面的な制限をするとか、取締りをするとかいうふうに考えておるのではありませんので、しばしば申し上げたと思いますが、昨冬の争議の状況にかんがみて、行き過ぎたと思われる点を、国家国民の福祉のために防止したいという限度で考えておるのでありまして、決してお話のように、弾圧とかいうような気持を持つているわけではありません。その点を御了承いただきたいと思います。なお、内容はもう少し検討してお答えいたします。
○松岡(駒)委員 ただいまの労働大臣の御答弁はなはだ不満足である。のみならず、ことにそれが限られた産業でございましようとも、私はむしろそういうことは私がさつきから申し上げている意味は、そういうことがことごとくいかぬとさほどに極論するのではないのであります。やるべきことをやつておいて、なおかつ図に乗つてべらぼうなことをやるやつは、これは制圧するということは国としては当然でありましよう。しかし、積極的に何らなすべきことをなさないで、やたらに制圧を加えるというがごときやり方は、これはいかぬ。この点を重要にお考えにならなければならぬ。国民が全部考えておるということは、たとえば火事があつちや困るということは何人だつて考える。しかし、火の取扱い方をどうしなければならないという専門的な知識を持たない者が、ただ火事だけを心配してもだめなのだ。火事を起さないためには何をなすべきかが大切なのだ。だから国民がこれを要望しているとかなんとかいうような簡単なお考えではなく、それを簡単にお考えになるのではなく……(「国民の要望はわかつている」と呼ぶ者あり)君から聞こうとしているのではない。
○太田委員長 静粛に願います。
○松岡(駒)委員 その種の議論が新聞や雑誌に書き立てられたからといつて、そういうことをいいことにして、そういうことをたよりとしてなすべきことをなさないでおくということになりますと、どんな法律をつくりましても私は法律をつくることを一概に悪いと言うておるのではないのでありますが、アメリカにおけるタフト・ハートレー法だつて、何らの用をなしていないという事実を皆さんは御存じでありましよう。だから大いに心しなければならないと言つておるのであります。私は、いたずらに攻撃せんがためにものを言うておるのではないのでありますから、どうぞこの点を特に御留意いただきたいのであります。 大体私はお昼までにはよしたいと思いまして、あまり注文をつけないで故意に時間を進めるように努力しておつたにもかかわらず、余儀なきことであろうかもしれませんが、吉田総理がお立ちになつたことは、はなはだ残念に思います。これにつきましては、午後適当な機会にお答えくださることもよろしいし、この機会にとりあえず官房長官あるいはその他の適当なりとみずからお考えになられる方から御回答願えればけつこうである。私は最後に、これは無理かもしらぬが……。
○太田委員長 松岡君に申し上げますが、午後の始まりのときに総理も出られましようから、むしろその方があなたの御趣意も達せられるであろうと思います。 暫時休憩いたしまして、午後二時半から開会いたします。 午前十一時五十九分休憩 ————◇————— 午後二時五十一分開議
○太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。 この際お諮りいたしたいことがあります。理事小坂善太郎君から辞任の申出がありました。これを許すことにいたしたいと思います。その補欠は先例によりまして私から指名することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○太田委員長 御異議なしと認めます。よつて私は本間俊一君を理事に指名いたします。
○太田委員長 質疑を継続いたします。松岡君。
○松岡(駒)委員 今から二、三の点について、とくと総理の御所見を伺いたいことがございます。その一つでありますが、総理は綱紀の粛正についてきわめて御熱心である。いろいろの批評をする者もありますが、私はそういう点については、総理は単なるゼスチユアではなくて、真にこのことをお考えになつておるものと信じておるのであります。従いましてそういう点から伺いたいのでありますが、最近灰関するところによりますと、白洲次郎氏が総理の特使としてヨーロツパに派遣されたということでありますが、これは私が聞きましたような公式な意味において、総理の特使として派遣されたのがほんとうでございましようかどうでしようか、それをまず伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 白洲君は、むろん厳密な意味で特使とかいうようなしかつめらしい資格ではないのでありますが、しかしヨーロツパの形勢にしましてもアメリカの形勢にしましても、アメリカの新政府ができてから、自然政策の変更といいますか、いろいろな意味でもつて多少の変化もあるのでありましようし、ことに日本の今日の経済、貿易その他が、不況ではないかもしれませんが、前途についてはそういう懸念もありますが、主としてイギリスの政策といいますか、イギリスのパウンド政策というようなことが、日本の経済にも相当影響を及ぼすでありましようし、今日としてはなるべく世界のうずまきといいますか、世界のいろいろな形勢の変化のうちにあつて、日本としてはなすべきことをなし、考えるべきことを考える必要があると思いますから、一言にして申せば、形勢状況視察と申していいかと思つております。特にこういう問題、ああいう問題で交渉するというのではございませんが、これは一般の状況、主として経済方面の視察のために派遣いたしたわけであります。
○松岡(駒)委員 あまり小さなことをお聞きするようでありますが、ただいまお聞きしたところではどうもはつきりしないのであります。厳密な意味であるなしにかかわらず、総理の特使としてということであるなら、これは国費をもつて派遣されるということになりましようね。従いまして、同時に、さつきちよつとお話がありましたが、その目的、任務、権限、資格、こういうことについて明瞭にひとつお聞かせを願いたいと思います。
○吉田国務大臣 これは権限は何もありません。権限があるといえば、視察が権限であり任務であります。費用は、外務省から何かの資格で出したように私は記憶しております。こういう交渉問題を引受けて行くというのではなくてこれは岡崎外務大臣から申し上げることにいたしますが、たしか顧問という名前で出したか、あるいは旅行の便宜のために大使という名前を与えておつたか、はつきりしたことは外務大臣からお聞き願うことにして、参つた任務は、あるいは使命といいますか、これは状況視察ということであります。
○松岡(駒)委員 外務大臣から……。
○岡崎国務大臣 今の白洲君のお話でありますが、白洲君は外務省の顧問になつております。今回いろいろの実情を、大使等では正式になつて、はつきりしたことはなかなか向うも言わない場合が多いので、実際の腹蔵ない実情を見てもらいたいというつもりで出しておりまして、大使の資格を付与しております。従いまして旅費等は、当然外務省から出すはずでありましたけれども、本人は、そのついでに、ひまを見て自分の視察もいたしたいということで、旅費の方は外務省の支出を断りまして自分の方の費用で行く、こういうことになりましたので、旅費は支出しておりません。外務省としては出すべきものと思つてお勧めしたのですが、そういうわけで支出しておりません。
○松岡(駒)委員 どうもその点についてこういうことを言うことは私のあまり欲しないところでありますが、かつてアメリカに白洲氏が派遣されますとき、アメリカ政府のアグレマンといいますか、ないということのためにごたごたしたことがありまして、その後派遣されたようでありましたから、そういう問題もことごとくあるいは解消したのかもしれませんが、そういうことを私記憶しておるのであります。ことにはなはだ遺憾なことには、白洲氏のことにつきましては、只見川の電源開発問題なんかに関連いたしまして事実でないことを私ども希望いたしますが、はなはだおもしろからざることをしばしば耳にし、目にいたすのであります。日本の外交はきわめて大切なときでありますから、今総理のお話の通り、あるいは外務大臣のお話の通り、あまりかたくならないで視察して来る、こういうことも大いに必要でございましよう。ただ総理の特使としてというような印象が強く出ておりますことが、私はどうもそういう点において、今外務大臣の御答弁の中にもありました通り、個人の用事を兼ねてというようなことと関連いたしましてこれは綱紀上十分お考えいただかなければならないことではなかろうか、かように考えておるのでありますが、必ずしも私はいやがらせを言うのではないけれども、重ねて総理の御所見を承りたいと思います。
○吉田国務大臣 これはどこの委員会でありましたか、私が申したのでありますが、白洲君がどうとかして自由党が金をとつたとか、これは現に裁判になつておりますから、裁判において明瞭になると思いますが、しかしこのごろはよく、人を傷つける考えではないかもしれませんけれども、いろいろうわさが立ちます。これはまことに忌まわしいことでありますが、白洲君については私は断じてないことを確信して派遣いたしたわけであります。
○松岡(駒)委員 このことはこのくらいにしておきます。 第二にお尋ねしたいことがあります。それは昨年の九月に行われました総選挙についてでありますが、御承知のごとく、政治のもとを正さなければならないというので、公明選挙のためには国民の総力をあげてと言うていいほど、せつかく努力したのでありましたが、その結果、はなはだ公明選挙を汚すところの選挙違反が多く出ました。しかも綱紀の粛正ということを思い起しますと、昭和二十三年に吉田さんは第二次内閣をおつくりになるときに、綱紀粛正を金看板として発足されましたが、吉田内閣の閣僚のうちに、最近の新聞の報道によりますと、その選挙責任者がすでに有罪としての第一審の判決を受けたというようなことすらあるのであります。(「そんなことはもう何回もやつた」と呼ぶ者あり)その種のものがたくさんあるのでありますが、これはうしろの方からもさんざん論じ尽くされておることで、そんなことを繰返さなくてもいいようなお心持ちがあるようでありますから、私はあえて長い時間くどく言おうという気持はありません。吉田さんは第二次内閣の出発に際しまして、昭電事件のあとに生れた内閣として、綱紀の粛正ということを金看板として発足されたのであります。これは単なる吉田さんのゼスチユアとは私は思わない。これはまつたく大切なことであります。そういう大切な問題の根本的な選挙にまつわる問題なのでありますが、現内閣の閣僚のうちに、だれとは申し上げませんが、ずいぶん選挙違反のために、選挙運動のための大切な仕事をやつておつた人々が姿をくらましましたり、あるいはただいま申し上げた通り、もうすでに有罪の判決があつたというような人もある。こういうことに関しましては、単に法律——いよいよの最後的な決定云々というようなことばかりではなくて、私はもう少し真剣に吉田総理はお考えいただかなければならぬのではなかろうか、かように考えるのでありますが、それにつきましての総理の御見解を伺いたいと思うのであります。
○吉田国務大臣 官紀の粛正ということは、これは第二次内閣のみならず、私が内閣を主宰しておる以上は、常に道義の高揚、官紀の粛正ということには十分心がける考えております。また一にこの点に重きを置いて諸般の措置をいたしておるつもりであります。今お話のような、閣僚のうちで選挙違反これは司法官憲その他の判決をまたなければ、単にうわさであるとか新聞の報道というようなものだけで処置はできませんが、しかし裁判が確定し黒白が明白になつた場合には、政府としては決して処置をおろそかにはいたしませんことをはつきり申し上げます。
○松岡(駒)委員 もとより最後的に裁判所において判定がなされる場合においては、吉田総理をまたずとも、どんなに官紀の粛正ということに対してむとんちやくな人が内閣の首班でありましようとも、当然しかあるべきであります。私の言わんとするところは、私はおせじを申すのでもなければ、言いがかりをつけておるのでもないのであります。吉田さんがたいへん貴族的であるとか、わがままであるとか、ワンマンであるとかいう悪口もしきりに行われますが、気節をとうとぶという傾向は私はあなたに見ているのである。そのあなたが、最後的な判決があればというような答弁ではどうも困ると思うのであります。しかしこれを三たび答弁を求めようとは私はいたしません。次に進みます。 次の問題は、去る一月二十五日、これまたしきりに本会議でも問題になつたようでありまして、従つてくどいとお感じになる自由党の諸君もおありでありましよう。がまんして聞いてください。一月二十五日の日比谷の公会堂における自由党大会における総理の言説であります。すなわち、国会の意思に反しても均衡財政を堅持するということをお言いになつておられるのであります。そこで、私は先ほど来申し上げていますような意味において自由党の党員がどうお考えになろうと、総理が、自由党の指導者として、ぜひこうでなければ国のために相ならないと、かたくお信じになることを貫くことのために、誠実に勇気を持つて自由党の党員を叱咤されることはむしろ尊敬すべきことである、何ら私どもにも異議のないところであります。しかし国会の意思のいかんにかかわらずということは、一体どういうことでございましようか。自由党員の意思のいかんにかかわらずということをお言いになつたとするならば、さつき申し上げた通り、私は何も異議はございません。国会の意思に反しても、こういう言葉をお使いになることは、私ども議会人としてこれを見のがすわけには参らないのであります。まことにこれは不都合きわまる不穏当な言説であります。現在の総理の御心境を私は伺いたいのであります。この点をどうぞひとつ。ただりくつが言いたくて言つておるのではございません。
○吉田国務大臣 実は私もそう指摘を受けて、何と言つたか演説の途中でありまして、どういうはずみにそういうことを申したか、実は私は覚えがないのであります。しかし言つた趣意は、歳出はなるべく大事に使う。たとい予算がきまつても、その予算を使い切るという気持じやないんだということを申したつもりであります。しかし言葉が足りなかつたものと思いますから、過日の運営委員会でさつぱり私はあやまつおきました。(笑声)
○松岡(駒)委員 総理がさつぱりあやまつたとおつしやるので、これ以上追求することははなはだ好ましくないのでありますが、私がさつき申し上げました通り、おそらく総理は、国のためにぜひこうでなければならないという予算案について、もう総裁のいすをかけて、総理の地位をかけて、誠実に勇気をもつてというこの心持が、今のお話の通り、知らず知らずのうちに言葉がつい滑つたということであろうかと、実は私は元から想像しておるであります。この心持はきつとあつたに相違ないと思う。しかし結果において見れば、結局閣内における予算のぶんどり、党内における予算ぶんどりを総理はお認めになつたことになるように私は思うのでありますが、その点はどうお考えになりますか。
○吉田国務大臣 決して予算のぶんどりを認めたわけではございません。しかし、むろんこれも演説会で申したかと思いますが、何と申したかそれも記憶がありませんが、従来そういう弊があり、今度もそういう傾きがあるから、役人たるものは気をつけろと申したつもりであります。しこうして今度の予算がぶんどりの結果でき上つたということをお考えになつては、まことに迷惑しごくであります。そのぶんどりを避けるために相当苦労をいたしたのでございます。またこの予算は重点的に切盛りいたした。これは大蔵大臣が非常な苦心をいたして、重点的に使うという方針で、予算を編成されたものであります。各省としてはわけ取りをしようという野心はあつたかもしれませんが、内閣の決定としましては、つとめて重点的に予算を編成するという方針で編成されたのであります。
○松岡(駒)委員 この問題はこれで打切ります。 次にお聞きしたいことは、これまた他の人々も指摘されたことでありますが、私は他党の問題にとやかく言おうという意味ではもとよりないのでありまして、これは誤解のないようにお聞きを願いたいのであります。自由党のいわゆる内紛の際に、一閣僚から国会の解散ということがしきりに放言されたわけであります。それが国民に非常な不安感を与えたことは、いなむことのできない事実であります。このことはまことに遺憾千万なことでありますが、私をして言わしむれば、これを放言した閣僚個人の責任という程度のものではないと思います。すなわちそれは自由党の総裁であり、内閣の首班である吉田さんの責任であると私は思うのであります。ぜひそう吉田さんにお考えいただかなければならない大切な問題だと思うのであります。なぜこのことを私がくどく言うかといえば、過ぐる第十四回の国会における解散は、はなはだ不当な解散、不明朗な解散でありましたが、このことは、野党であるがゆえに私どもがただ言いがかりをつけているものでないことは、この場にいらつしやる多くの人々のお認めになるところである。自由党の諸君といえどもこれをいなむことができない。これこそ党利党略に専念する、そして国会を軽視して憲法の真精神を踏みにじる吉田内閣の性格が端的に露呈されたものだという印象を、国民の大多数は持つておるのであります。これを立場の相違から論ずるとのみ考えて、私の言うことを感情的にお聞きになつたりなどぜひなさらないでいただきたいのであります。いやしくも国会を解散するということはきわめて重大な事柄であります。こういうことにかんがみまして吉田総理が単に道義の廃頽を嘆き、その高揚を強調されましても、それは無意味になつてしまうのではないか。ナンセンスとして扱われるのではないか、これは私は日本の政治のために、まことに憂うべきことと思いますので、先ほど総理はきわめてすらつとした態度でものを見ていただきまして、私は満足いたしましたが、この点に関しましても、私は総理のほんとうにまじめな心境をお漏らし願いたいと思います。
○吉田国務大臣 お答えをいたしますが、解散ということは民主政治において重大なことであります。むやみに口にすべからざることは当然であります。もし閣僚においてそういう言葉を申したとするならば、これははなはだあなたとともに私は遺憾に考えます。私も実は直接に聞いたことではありません。そういう話があるからけしからぬという話は聞きましたが、その事実について今調べさしております。決してなおざりにはいたしているつもりではないのであります、この解散は単に野党のみの問題ではなく、自由党も困ります。でありますから、決してうつちやつてはおりません。
○松岡(駒)委員 私はこれをもつて打切ります。
○太田委員長 八百板正君。
○八百板委員 私は日本社会党の立場から、総理大臣の今国会に臨んで述べられました方針に対して、若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。 まず総理大臣は一昨日の委員会の席上におきまして。アメリカは日本に対して、再軍備をしいたり、あるいは朝鮮に兵隊を向けるような、日本の輿論に反した、日本が承知しないことはやらないであろう、そういう要請はしないであろうというようなことを申されました。さらにまた、日本の実情をよく知つておられるダレスさんが国務長官として立つておられるのであるから、あるいはまたドツジさんもおられるのであるから、よく日本の実情をのみ込んだ了解のできるやり方をやつてくれるであろうというふうな、きわめて楽観的な、希望的な御判断を持つておられるように承るのでありますが、私どもの考えからしますると、なるほどダレスさんは講和条約をつくつた人とおつしやいますけれども、しかしその講和条約こそは、日本の再軍備を期待して行われたものであります。そして現に再軍備は行われておる。表札さえ書きかえればそのまま軍隊になる、そういう状態の今日であります。さらにまた情報の伝うるところによると、ブラツドレー元帥は、蒋介石をして中国本土を攻撃させる一方、中共の攻撃から台湾を守る、さらにはまた満州の爆撃も起り得るというふうな情報が伝えられておるのであります。現実に鼻の先の朝鮮において戦争状態が起つておる。さらにまたアイゼンハウアーの大統領就任のあいさつの演説を見ますと、それは決して吉田さんがおつしやるようなふうにばかりは考えられないものがたくさんございます。項目をあげて述べておりますから、その中から拾つてみますならば、アイゼンハウアーは、われわれは常識と良識による融和政策の無益なことをさとるに至つたということを述べて、そのあとにおいて、兵隊の背嚢は捕虜の鎖ほど重いものではないからであるということを言つて結んでおります。さらにまた、個人の安楽よりは国家の大目的をまず第一とすべきことは、われわれ国民の一人々々が云々というふうにも述べております。さらにまた、自由を防衛する共同戦力をあげて当然負うべき任務を負うことを期待すると言つて、友好国に対してそういう期待を要請しております。こういうような点と考え合せて参りますならば、今日の日本の状態は、決してそういう楽観的に見得る状態ではないと私は考えるのでありますが、こういうふうな点について総理の所見を承りたいと考えるのであります。言うまでもなくいろいろの見方があるのでありまして、ああも考えられる、こうも考えられるという、いろいろな方向があろうと思うのであります。しかしながら、その中からわれわれはこういう方向が正しいという結論に立つて一つの方向を打出すべきだと思うのでありますが、そこには必ずその方向の中に一得一失があるだろうと思うのであります。そういう点について、一概にこうだというふうに断定して、情勢を簡単に割切るということは、日本の困難なる外交をになつて行く態度としては決して好ましい態度ではないというふうに私は考えるのであります。この点について総理大臣の所見を承りたいと存じます。
○吉田国務大臣 私の申したことが楽観に過ぎるというお話でありますが、あるいはそうであるかもしれません。私は今日まで接触した方面その他から考えてみて、その結論に達したのであります。それが楽観に過ぎたために、あるいは国の進むべき道を誤まるというふうなお考えがあるかもしれません。しかし不幸にして、私とあなたとは前提において異なるものがありはしないかと考えるのであります。すなわち、私の考え方は楽観に過ぎる、しかしながらあなたは、今は非常に日本は危険な地位に立つておるというお考えのようでありますが、私はどうもそう考えられないということは、従来しばしば述べた通りであります。これは考え方でありまして考え方でありますから、これを議論いたしても尽きないと思いますから、さらに私は前言の通り考えているということを再びここに申して、お答えといたします。
○八百板委員 政府の考え方は、アメリカの側において日本の将来を築き上げて行こうという方向をとつておられるのでありますが、二つの勢力が国際的に対立して、現に戦争が予想せられるという状態のもとにおいて、われわれは敗戦日本の独立建国の方向と申しましようか、そういうものは、当然にそういう国際対立の中に介入しないという、それこそが独立した日本のほんとうの理想であろうと私は考えるのであります。それが諸情勢の上から困難であるからといつて、許されないからといつて、しかたがないから、そこに一方についた一つの外交がとられ得るのであつて、そういう立場をとつたからといつて、中立の努力、不介入への努力は絶えずやつて行かなければならないのでありまして、その手段を尽すべきであります。それをそういう手段を尽すことを怠つて第三勢力の考え方、中立の考え方に対しては、あたかもこれを卑怯者扱いにするというような岡崎さんの外交方針をわれわれは聞くに至つては、そういう態度こそ、みずからの卑怯を他に転嫁するものだというふうにわれわれは考えるのであります。総理大臣はそういうふうな点について、どういうお考えを持つておられるか、重ねてお伺いしたいと存じます。
○吉田国務大臣 お答えをいたします。まずその前提において、第三次戦争は必至というふうなお考えのようでありますが、これは前提においてすでに私どもは異論があります。今日第三次戦争なるものは、その危険はだんだん遠のきつつあるということが、欧米の政治家の口をそろえて言つているところであります。また昨日でありましたか、どこかで申した通り、スターリン大統領でしたか、(笑声)総理大臣が自身も言つておられるように、この両勢力の対立あるいは抗争、戦争ということは考えられないのだ、資本国自身の間にある一種の紛争が生ずるということは考えられる、こう言つているのです。つまり対立している共産及び自由両勢力の間においての第三次戦争は起らないと申しておりますから、しいて第三次戦争が起るということをわれわれが主張する理由はないと思うのであります。かりに第三次戦争が起るといたしましても、われわれのとるべき態度は、中立ということではわれわれは行けない。中立論は理想論であつて、現在の国際情勢のもとにおいては、これは考えられない。これが岡崎外務大臣の主張であろうと思います。私は岡崎外務大臣の主張に同意を表するものであります。
○八百板委員 理想でありますならば、やはり理想に向つてそれを達成する努力をするのが、外交の態度であり、国を預かつている総理大臣の立場であろうかと私は思うのであります。アイクの演説を私がずつと見ますと、何かこの演説の中には、従来のアメリカの態度とかわつた一つの強い態度が私はくみとれるように思えるのであります。この態度が、国際的な緊張の度を一層強めるように私は考えざるを得ないのでありまするが、これをしも情勢は緩和されたものであるというふうにお考えになるに至つては、また前提の相違で、論議の限りでもないような感じがするのであります。かつて第二次世界大戦の時期においても、アメリカは日本に対するいろいろの声明なり、いろいろな形において意志表示をやつたのでありまするが、当時日本の指導者は、あれは単なるから宣伝だというふうな考えをもつて、常にこれを楽観的に見て参つたのであります。それらの声明、それらの出されました言葉は、現実の事態となつて実行に移されたことはわれわれの記憶に新たなとこであります。私どもはこのアイゼンハウアーの考え方が現実に具体的に実行せられまするならば、日本にとつてきわめて重大なる問題が、今よりも以上にわれわれの前に差迫つて来るということを痛切に感ぜざるを得ないのであります。 それと関連いたしまして伺いたいのでありまするが、総理大臣は国会の答弁において、自由党の党内内紛についてかれこれと野党の攻撃にあいまするや、これに対していわゆる党内の内紛論議は民主主義の現われであるというふうなことを言われたのでありまするが、そういう考え方をもつてしまするならば、当然に国内において外交論議がどんどんと活発に行われて、国内の輿論がいろいろの形において出て来るということ、甲論乙駁の状態が行われるということが、あらゆる意味において望ましい民主主義の状態であるという論法に相なるわけであります。そういう立場に立つて日本の国内がいろいろの問題にわかれて論議せられるという状態を望んでおるのであるか、それとも国論の統一という方向を期待して、総理は将来そういうテンポをもつて政治をやつて行こうとするのであるか。それと関連して、最近アメリカがとりました超党派外交教書の中に現われたその方向というものを、一体総理は日本の外交の上にどういうふうにこれを考えて行こうとするのか、この点もお答えをいただきたいと存じます。
○吉田国務大臣 お答えをいたします。私はただいたずらに議論のあることを歓迎いたすのではないのでありまして、民主政治、政党政治である以上は、互いに議論を闘わせて行く、そうして自然の帰着するところに帰着せしめて、国論の統一をはかるといいますか、国論がおのずから帰一するところに向うようになるのが民主政治であろうと私は思うのであります。超党派外交はアメリカにおいて一種の経綸といいますか、両党の間の方針となつておりますが、これはアメリカという国風、あるいはこの超党派外交という方針を堅持するに至つたいろいろな経緯があるであろうと思います。その経緯がなくて、単にアメリカが超党派外交であるからして日本も超党派外交に行くべきだということは、少しこれは国柄、あるいは政党の問の今までの経緯を無視した話であるのではないか。日本も甲論乙駁の結果、超党派外交というところに帰一することになればけつこうなことだろうと思いますが、しかしそれは国おのおの国情があつて、簡単にそうは参らないだろうと思います。私といたしては、繰返して申しますが、議論はよろしい、しかし国民の輿論なり政党の議論なりが、おのずから帰着するところに帰着することがあるべきであると私は思うのであります。
○八百板委員 総理はアメリカの立場に立つて、日米緊密の立場に立つて今後やつて行きたいという態度をとつておられるのでありますが、こちらでだけ緊密にやつて行こうとしても、あちらの方でさつぱり相談してくれないということになりますと、結局において、あちらのやつたことにあとからのこのこついて行くことになりますから、そういうことでは、緊密と申しましても、その実隷属ということになるのでありまして、独立の面目はなかろうと思うのであります。従つて私どもは、総理が絶えずそういう立場をとられますならば、アメリカに対して意見を述べて、日本の意見をアメリカの中に相当取入れさせるという態度をとつて行くべきであろうと思うのであります。今回のアイゼンハウアーの演説にいたしましても、あるいはまた教書にいたしましても、その内容を日本の立場から厳正に批判して、そして意見を述べる、あるいはまた総理の立場において文書をもつてアメリカに通ずる、そういう立場がとられなければならないと私は思うのでありますが、そういう点について何ら処置をとらず、むしろ批判を避けるという態度、さわらないで行くという態度をとつておるのであります。こういうやり方こそが、いわゆる隷属外交のそしりを受けるものだと私は思うのであります。こういう点について、この際われわれの立場を、総理の立場において明確に打出すべきではないかと思うのでありますが、これをどういうふうにお考えになるか。
○吉田国務大臣 新政権のいろいろな発表があります。たとえば新大統領の発表とか、あるいは新国務長官の発表等がありますが、これは発表された文字だけでは、真意は多くわからないことがあります。絶えずアメリカ側とは接触を保つておつて、その真意を確かめることには努めておりますが、日本に関係のないことについて、一々これに対して抗議を申すというようなことは好ましくないところであり、アメリカ側の外交その他に干渉がましきことになれば、これは日米両国間の国交の親善を期するゆえんでもなければ、礼儀も反すると思います。けれども日本の利害に関係することについては、絶えず率直に意見を交換いたしております。決して言うべきことを言わずして、そのままうのみにしておる、いわゆる追随外交はいたしておらないつもりでございます。
○八百板委員 総理のお話をお伺いいたしますと、岡崎外務大臣の述べられることは、若干考え方と申しますか、ゆとりにおいて相違があるように感ぜられるのであります。岡崎外務大臣は先日、この国際情勢の中に処して敵か味方かというふうに割切つて、中立はあり得ない、第三勢力はあり得ないというふうに物事をわけております。もつともアイクの演説を見ますと、アイクの演説の劈頭にあたつて、善の力と悪の力とかというふうに、善玉と悪玉と二つにわけておりますが、日本の場合、そういう単純なわけ方をもつて行くということは、なるほど簡単でわかりやすい説明ではございましようけれども、国を預かつて行く外務大臣の態度としては、はなはだけつこうでない立場であると私は思つております。とりわけ明日の日本を背負つて立つところの、新しい、ものを科学的に見る青年や学生等の支持を受けるということはもちろんできませんし、少くとも物事を判断して処置するという理性ある人人の支持を受けることは、不可能であろうと私は思うのであります。そういう意味合いにおいて、丁が半かというような考え方でなく、もつとゆとりのある外交をやることを希望したいのでありますが、こういう点について、外務大臣の意見をちよつとこの際述べていただきたいと存じます。
○岡崎国務大臣 あの問題は前から研究しておりまして、いろいろの角度から見た結果でありまして、これは事実なのでありますから、その事実を右か左かわからないように、自分でごまかすようなことはかえつて卑怯じやないかと思つております。これは見解の相違といえばしかたがないのでありますが、われわれとしては何といいますか、義を見てせざるは勇なきなりというようなこともあります。正しい方と正しくない方ということがわかれば、正しい方へつくのがあたりまえです。しかし今の争いを、どちらが正しいかわからないとおつしやる議論であつたならば、そこの前提の問題であります。われわれはやはりそう考えておるのであります。しかし言葉があまりよく整つてないと言われれば、これは言葉の問題でありますから、よく考えますけれども、趣旨はそういう点にあるのであります。
○八百板委員 義を見てせざるは勇なきなりということは、これは岡崎さんのことをみずからおつしやつたものだと私は思います。困難な道を避けて安易な道について、総理もおつしやるような国の中立の理想、そういうふうなものを困難だからと言つて避けて、そういう困難な道を努力しようという態度に対してこれを義を見てせざるは勇なきなりと言うに至つては、まことに笑止千万なる言葉と私は解せざるを得ないのであります。義は、言うまでもなく真実をつかみ、虚偽を憎む心であつて今日の吉田内閣が絶えずやつておるように、現実を言葉をもつて濁して、たとえば保安隊は軍隊でないとかいうようなことを申しまして、真実を惑わして何べんも何べんも同じようなことを繰返して、国民の感覚を麻痺させて、不感症に追い込めて行くというふうなやり方をとつておるということこそが、われわれは道義に反する一つの重大な、国の間違いであるとわれわれは考えざるを得ないのであります。 次に総理大臣にお伺いをしたいのでありますが、総理大臣はこの間の本会議において、重大なる発言をせられておるわけであります。この発言については、議院運営委員会において取消したとかいうことを私は伺つておるのであります。しかもその取消しは、総理自身がおいでになつて取消したのではなくて代理の者を通じて事務局の方に取消す意思を通じたという話であります。そういう手続だけでは、この問題をわれわれは十分に了解することはできないのでありますが、申すまでもなくこの問題は日本の保安隊が軍隊であるかどうかという重大なる問題に関しての総理の発言であります。すなわち総理大臣は本会議において、わが党の武藤運十郎君の質問に対してこう答えおります。「知らず知らず保安隊が軍隊になるということは、これは ━━━━━━━━━━━━━ ということを申すのであつて、保安隊が軍隊になる場合には、予算が伴い、法律が伴い、諸君の協賛によつてできるのであつて、国会が知らず知らずに軍隊ができたとするならば、これは政府のごまかしではなくて、 ━━━━━━━━━━━━━ 。」こういうふうな発言をせられておるのであります。この部分についての取消しを多分事務当局を通じてやられたのであると、私は仄聞いたしておるのでありまするが、この点について、総理大臣の直接の口を通じて、御態度をはつきりこの際述べていただきたいと私は考えるのであります。これは単なる事務的なる取消しでは済まされないことだと私は考えます。
○吉田国務大臣 当時の速記録を調べた上でもつて処置をとつたのであります。すなわち「国会が知らず知らずに軍隊ができたとするならば、」で、「ならば」です。でありますから、これはただちに国会が不明なりと申したわけではない。のみならず、それが「不明」というのがいけなければそれも取消すということを言つて取消したのであります。
○八百板委員 総理大臣が、そういう言葉のてにをはの訂正をもつて、この重大なる内容で、ごまかし去ることができるとお考えになつておりまするならば、これは重大なる問題であろうと私は考えます。御承知のごとく、これは単なる武藤運十郎君に対する答弁ではなくて、国会に対する答弁であり、同時に国民に対して与えたところの答弁であつて国民に対する最大の侮辱であるというふうに私は考えざるを得ないのであります。吉田さんは長くヨーロツパにおられ、外国におられた時間が多いようでありますから、日本のことはあまりよく御存じにならないかもしれませんが、たしか昭和の初めか大正の終りごろに強盗がはやつたことがあります。この強盗はあつちこつち頻頻と犯しまわりましたが、手口に一つの特徴がございまして、強盗に入つたあとで、物をとつてからお説教をして帰ります。戸締りが悪いからおれが入つたのだというようなことを言つて、これからは気をつけろというようなことを言つたので、説教強盗という有名な言葉になつて今日なお記憶に残つておるのでありますが、私は、この吉田さんの発言を聞きますると、何かその説教強盗にあつたような感じがしてならないのであります。(笑声)ごまかすのが悪いのではなくて、ごまかされる方が悪いのだ、後の方で与党の方からも、確かにそういう傾向があるというふうな声が聞えておりますが、すりがポケツトからすりとつて、そしてお前がぼやぼやしているから悪いのだ、こういうふうに言われたような感じがするのでありますが、そういう態度は、道義高揚を唱えられますところの総理大臣として、まことに重大なる発言であろうと私は思うのであります。単にできたとする「ならば」の三つの字を削つただけでは、この問題は解決しないのでありまして、もつとこの内容に対する総理大臣の釈明を私は要求する次第であります。
○吉田国務大臣 私の言い方についての解釈は御自由でありますが、私の気持はただいま申した通りであります。
○八百板委員 先にわが党の青森県の県会議員に米内山君というのがおりましたが、米内山君は青森県の県議会において、議員の諸君を前にして、私は諸君のように利権がほしくて県会議員になつたのではない、こういうようなことを言つて、何分少数党の哀れさ、除名をされたのであります。ところがこれは取消しておるのであります。取消しましたが、それでもなおかつ青森の県会はこれを除名したのであります。これを裁判にいたしましたところが、その除名はあまり不当だというので、その除名の効力を停止するという決定を、青森地方裁判所はやつたのであります。ところがこれに対して総理大臣は、首相の権限において、その議会の除名した態度を支持する異議を申し立てておるのであります。幸いにして裁判所はその権威を保持して、首相の異議申立てを排除いたし、結局において米内山君の意見は通りましたけれども、そういうようなことを一方において人にやつておいて、自分のときは内容をごまかして、二つ三つの言葉を削つただけでごまかす、こういうふうな態度をとるに至りましては、これは自分の立場をたなに上げてほかの方にだけ道義の高揚を説くという考え方であつて、こういう態度は総理大臣として、まことに許しがたい態度であると私は考えるのでありますが、総理大臣はそれでいいとお考えになつておられますか。
○吉田国務大臣 私は、ごまかすつもりは毛頭ないのであります。考えていることを率直に申し述べたのであります。
○八百板委員 総理大臣は道義の高揚を説きながら、自分の内閣の中に、先ほどの質問にもありましたように、選挙違反の被疑者を閣員の中に入れておく、あるいはまた閣員の中に内閣打倒の運動をやる人を入れておく、そういうふうなことをやつておいて、(笑声)一方において行政の能率化を唱え、一方において道義の高揚を説くというに至つては、そういう道義は自分の方では守らなくともいい、人にだけ守らせるという道義であつて、それこそまさに隷属奴隷の道義であります。私はそういう立場に立つて、この際総理大臣はまず閣内の道義の高揚をやるために、そういう大臣を即刻罷免して、そうして天下に向つてあらためて道義の高揚を説いてもらいたいと思うのでありまするが、総理は何とお考えになりますか。(笑声)
○吉田国務大臣 その問題は先ほど答弁いたした通りであります。そういう事実があれば取調べます。
○八百板委員 そういう事実があれば取調べるというのでありますが、もうすでに事実は歴然たるものがあるのでありますからして即刻これを実行に移していただきたいと存じます。閣僚のいすを党内の不半分子の虫おさめをするために、封じ込むために使つたり、あるいはまた刑事事件の被疑者的な者を国の外交の衝に当てたりするような、そういうやり方をやつたのでは、とても国民の上に立つて国の政治をあずかつて行くということはできないのであります。おそらくここでは岡崎さんも廣川さんも該当者がおられますから、ちよつとはつきりは言えないだろうとは思うのでありますけれども、少くとも総理大臣のそういう方針に対して、身をもつて協力するという御意思がありますならば、まずみずから辞表を出して、この際ひつ込むべきだと私は思うのであります。そういう点について廣川さん、岡崎さんはどうお考えになつておりますか。(笑声)これは決して笑いごとではないのであります。そういうふうに道義を無視するような、良心を麻痺させるような政治をやつて来たというところに問題があるのでありましてそういうところから直して行かなければならぬと思います。まず私は廣川農林大臣の心境を伺います。
○廣川国務大臣 何か私に対しての御質問のようですが、私は一体解散するというようなことを言つたことはないのであります。ただ党内が一致結束しなければ、総辞職や解散の危機があるいは起るであろうということをわれわれは言つておるのでありまして、決して解散などと言つたことはないのであります。
○八百板委員 岡崎さんの御意見を伺います。
○岡崎国務大臣 私が選挙違反の容疑のように伝えられているのは、はなはだ不徳のいたすところで恐縮しておりますが、自分がそういう疑いをかけられる理由は、こうもないと考えておりますので、その点は明らかにいたしておきます。
○八百板委員 総理大臣の常に剛直にして真実を守るという態度は、今の両人の答弁をおそらく心の中においては信じておられないだろうと思うのでありますが、なるたけ早い機会において真相を明らかにして処置せられることを、道義の高揚をとなえられる内閣総理大臣に対して、私は強く要望いたしておきます。 大蔵大臣は自分の好まないととなえておりましたところの公債政策をとらざるを得ざるに至つたのでありますが、これは自由党内におけるいろいろの事情が大蔵大臣をそこに追い詰めたというふうに伝えられておるのであります。そこで財政の筋を通すか、政党の筋を通すか、どつちを通すか、いずれもこれは両方とも曲つた筋でありまして、雲形定規みたいなものでありますが、この公債を今回限りとするのであるか、それとも来年もまたやるのか、ふやすのか、減らすのか、そういう将来に向つての財政政策の構想を、私はこれは総理大臣から伺いたいのであります。 〔委員長退席、尾崎(末)委員長代 理着席〕
○吉田国務大臣 主管大臣からお答えいたします。
○向井国務大臣 公債は今度限りにしたいということを私は希望しております。
○八百板委員 今度限りにしたいという主管大臣の意見は、同時に総理大臣の意見であるかどうか、これも伺つておきます。
○吉田国務大臣 大蔵大臣の意見すなわち総理大臣の意見と御承知を願います。
○八百板委員 今日の日本のきびしい国際情勢の中にあつて、アメリカの要請は日本の新たなる財政需要を引起すということが予想せられておるのであります。そういう新たなる事情変更が生じました場合に、これらの公債政策が今回の採用をきつかけにいたしまして、日本の財政の上に突破口となつて大きく取上げられる危険を私は心配するのでありますが、そういう点について主管大臣は、今後やらない、総理大臣も同じ考えだ、こういうふうにおつしやられましたけれども、私どもはいつも本気になつて総理大臣のお考えを伺つておりますると、急にかわつてしまつて、君子豹変などということをおつしやいます。今後も君子豹変するかどうかこの際はつきり伺つておきたいと思います。
○吉田国務大臣 私は君子豹変なんという言葉は、あなたが言われたかもしれないが、私は一度もそういう言葉を使つたことはありません。
○八百板委員 前国会におきまして——この国会の続きでありますが、情報機関に関しまして、緒方官房長官は、これは調査を主とするものであるということを繰返し繰返し述べられております。しかしながら総理大臣はこの前の施政演説において広報を主とするということを述べられておりますが、この食い違いがいまだに割り切れず、結論が出ておりません。事これに関する限りは常に緒方官房長官をして答弁に当らせるという閣議決定をされたということを私は新聞を通じて伺つておるのでありますが、これは食い違つておるのでございますから、緒方官房長官の言う通りに、調査を主とするものであつて、広報等の仕事をするものではないということをこの際はつきり総理大臣より述べていただきたいと存じます。
○緒方国務大臣 その通りでございます。
○八百板委員 政府は、いろいろの審議会がたくさんあるのでありますが、それらの審議会に対してはほとんどその答申を顧みることなく、これを取上げずに、事軍人恩給に限つてこの問題を二つ返事で取上げたという印象が非常に強いのであります。これは再軍備の前提であるというふうに言われておるのでありますが、すでにして社会保障制度に関する勧告は、社会保障制度審議会を通じて権威のあるものとして出されておるのであります。あと先が違つている。そういうふうな点について社会保障一般をまず先議して、その一環としてこれらの問題を取上ぐべきであると思うが、そういう点についての政府の見解を承つておきます。
○緒方国務大臣 旧軍人恩給の復活の問題は、再軍備を予想して措置をしたのではございません。ただ日本が独立を回復いたしまして、今後再建の仕事にとりかかります以上、古い時代の創痍を一応直せるものなら直して行きたいという考え方と、総理の施政演説にもありましたように、戦争責任を旧軍人のみにしわ寄せることははなはだおもしろくない。今後世界平和の上においてよろしくないと考えまして、十分良識のある人々に依頼いたしまして、旧軍人恩給特例審議会を設けまして、その答申に基きまして、国家財政の許す限り旧軍人の恩給を復活いたしたのであります。決してほかの社会施設を無視して、これのみやろうという考えではないのであります。一に日本が独立を回復し、再建の門出にあたりまして、これは社会正義といたしましてもとるべきであるというふうに考えて、復活いたした次第であります。
○八百板委員 一連の反動的傾向が各方面にございますので、それらについてそれぞれ少しずつ簡単に伺つて行きたいと存じます。 まず警察法の問題についてこれとの関連において伺いたいと思うのでありますが、御承知のごとく、今日となえられておりますところの警察法の改正は、警察法一本にするという考え方に立つておらるるようであります。この考え方は自治体警察、いわゆる警察の分権という考え方に反対であるという立場に立つて考えられているのであるか。従つて国家集権の警察国家という方向を望みながら、そういう改正を考ておられるのであるか。この点をひとつ伺つておきます。
○犬養国務大臣 お答えいたします。警察組織の改正をやろうということはお尋ねの通りでございますが、その眼目といたしますところは、ただいまの警察をもう少し能率化したいということと、同時にやはり国民が自分とつながりのある警察にしておきたいという二つの眼目がある。率直に申し上げて、これはよほど注意をいたしませんと、相反する傾向にある二つの重点なんでありまして、この点に苦心しておるわけであります。能率化というのは、別の言葉で言いますと、力が警察に集中せられる傾向を言うのでありまして、それは犯罪、ことに国の内外の不安状態に処して、犯罪に対処するにはよいことになるのでありますが、一方において力を集中せられた組織の中にいる警官というものは、よほどみずから心持を謙虚にしませんと、国民に対しては親しみやすくない警察になりやすい、この二つの点を目下非常に苦心をいたしまして、両立できるように考えているわけでございます。 もう一つ申し上げたいのは、国警が勝つたとか、自治警が負けたというような考えに立ちませんで、新しい日本の警察というものを、どういうふうに組み立てるかという考えでやつているわけであります。また何かお尋ねがありましたら、お答え申します。
○八百板委員 その能率ということは、警察の場合において非常に危険があるのでありまして、いわゆる点数かせぎをするということは、なるほど表の上では能率を上げたということが現われて参りますが、実際においては非常に無理をするということになりまして、点数を上げるために無理なことをするということが非常に多いわけであります。また親しみを持たせるという趣旨から言いますならば、見当をつけるところは別のところにあるのでありまして、たとえば御承知のように警察官は、ことに村などの段階になりますと、駐在巡査というのはいわば長官みたいなものでありまして、村長とか校長とか、そういう同格の立場に二十才ちよつと出たぐらいの人が当らせられるわけであります。従つてどうしてもそういう警察官の質的な向上をはかつて行くというところにこそ、親しみと尊敬を持たれる警察官の方向があるのでありましてそういうふうにして安い給料で働いておりますから、ついいばつただけ得だということになるのでありまして、そういうことのないように、信頼の置ける警察官にするためには、その待遇をよくして教養を高める、そういうふうな処置をやつて行く、そのために、地方財政においてまかなう財源が乏しいならば、これをみてやるというような財政上の処置がまず先決であつて、単なる一本化によつて能率を上げ、国民の信頼を高めるというようなことはできないのであります。これはすでに答弁にもありましたように、一本化の方向は必ず権力の集中となつてうつかりするというと、昔のように天皇の警察官などといつていばり出すような状態も起つて来ないとは保証できないのであります。私はそういう意味合いにおいて、今日二本建が弱体であるから一本にする、能率を上げるというような考え方には賛成することができないのであります。木村保安庁長官もおられますが、保安庁の任務は軍隊ではない、警察的なものだというふうな立場を常にとつておられるのでありますからして、もしそういう立場をとりまするならば、保安隊を解消して、そうして一本の警察事務として国家警察に統合する、こういうふうな方向をとつて質的に高めて行くという方向がむしろ望ましいのではないかと私は思うのでありますが、こういうふうな点について御見解を承りたいと存じます。
○犬養国務大臣 お答えをいたします。八百板さんの御心配の眼目については、私も同感なんです。今仰せになりました警察官の点数かせぎ、やり過ぎ、そういう問題については、これもあとで申し上げたいと思いましたけれども、ただいま申し上げるのでありますが、現在の公安委員会の委員の資格をもう少し拡充いたしまして、任命についても、罷免についても、十分発言ができるようにして、その作用によつて警察官が絶えず国民に対して親しみを持ち、謙虚な心持を持つようにいたしたいと存じます。 またやり過ぎについては、ただいまの刑事訴訟法百九十四条の裏づけといたしまして、司法警察官が検察官の指示、指揮に従わなかつた場合の処罰を受ける規定を今度はつきりいたしたいと存じております。その他いろいろな点においてかりに力がつき過ぎた場合の個々の警察官が、国民の実生活に及ぼします作用について好ましからざる影響が起りそうだと想像できる部面については、あらゆる角度から考えましてそれを抑制したいと考えておるのであります。
○八百板委員 犬養さんの答弁は、はなはだ文学的表現でありますが、今日の警察官の上にそういう気持の運営がせられますならば、問題は少かろうと思うのでありますが、方向はそうではないのでありまして、そういう点からも、もつともつと警察官の教養を高めるということにこそ力を集中すべきであつて、そういうことを怠つて、一本化、強権化、集中化の方向に持つて行くということは、行き過ぎの是正に名をかりて、権力の集中をはかるという危険があるのだということを私は指摘申し上げたいのであります。同感だ同感だと言いながら、ずるずると一本化の方向に進んでおることはまことに遺憾であります。 さらに同じような一連の軍人恩給、警察の一本化という方向と足並を合せるもののごとく、今日義務教育費の国庫全額負担の名のもとに、教員を国家公務員にしようという問題が起つておるのでありますが、この点について主管大臣の御見解を承りたいと存じます。
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。義務教育費全額国庫負担につきまして、何か中央集権化の一連のつながりだ、こういう御見解でございますが、決してそうではございません。義務教育の全額国庫負担ということは、過去数年来の輿論の要求でございます。私は文部大臣としてこれを実現することに努める次第でございます。決してそういうことではないとはつきり申上げます。
○八百板委員 半額でさえ財政上できないといつて延ばそうというときに、突如として全額ならというふうな話が出て来たのでありまして、ねらいが決してそういうところにないということは、これまた天下周知の事実であります。文教政策というよりも文教政略に使い、さらにはまた教員団体である日教組対策の具に使うというそしりが今日強いのであります。財政上これらの教員の身分について十分な処置ができないというならば、それは当然財政上の処置によつてやるべきであつてこれを国家公務員にするというような方向によつて片づけて行くということは、教育の中央集権化を来すきわめて危険な方向であると私は考えております。教員を国家公務員とするという考え方に立ちました場合には、任免権を握り、同時に教育の内容等についても中央的支配が行われるという形になるだろうと思うのでありますが、中央が教育の内容等についてわくをはめて地方に押しつける、こういうふうな形にしないで、地方々々の地域社会の実情に合つたような自由な教育をさせる、そういうふうな点をくずさない形においてこれをやつて行こうとするのであるか、この点も伺つておきます。
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私のはなはだ遺憾に存じますことは、国家公務員にすることが、何か日教組の政治活動を制限するというようなことに、副次的にはなりましようが、第一点といたしまして、国家公務員にするねらいはどこにあるかと申しますれば、ただいま御承知の通りに一つの村から隣の村に転任するについても、自分自身は退職し、同時に新規採用の形をとらなければいかぬ。それから同時に退職手当とか、公務の傷害とかいうようなことが起きましても、東京とか大阪とかいうような富裕県と貧弱な財政を持つている地方の府県におきまして、おのおのの財政のあり方によつて待遇が違つております。私は、これを国家公務員といたしまして、東京のまん中において勤めておるところの教員も、山間僻地の教員も同じふうにやつて行きたい、同時に人事の交流も生かして行きたい、こういう考えでやつておるのでございまして、決してあなたのおつしやるようなことではございません。 もう一つ、教育の画一をするのではないか、こういうようなおしかりでございますが、しかし人事権は国家公務員として文部大臣が持つて行きますけれども、これは地方の教育委員会に委任してやりますから、決して中央の統制によつていろいろやろうということはできません。同時に教育委員会というものは地方々々のローカル・カラーを生かして教育内容を十分徹底するようにするものでございまして決して文部省が地方の教育を画一的に指導してそしてこれを昔の中央集権のような形にするということには絶対になりませんから、御安心をなさつてください。
○八百板委員 村と村との間の転任とか、地方自治体の財政状態の貧富のふつり合い等が教員の給与、待遇等に影響するというようなことでございますが、こういうような問題は別の方法でいくらでもこれを救済する方法があるのでありまして、問題はやはり副次的とおつしやいましたけれども、そういう問題の方が副次的であつて、かんじんの文教政策の一貫性を持たないで、それこそその都度文教政策をやつておるというところに問題の中心があるのであつてしかもこれが一連の反動政策との関連において今回うたわれておるというところに、私どもは問題を重要に考えなければならない点があるわけであります。さらにまた同様の立場に立つて考えて参りますときに、争議権の制限について労働法の関係が問題になつておりますが、この点について労働大臣が考えておりますところの今日の労働法規の改正はどういう方向を目ざして、どの程度のものとするのであるか、これをこの際明らかにしていただきたいと存じます。
○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。その問題は本日午前中も御質疑をいただいたのでありますが、ただいま考えております点は、一昨年冬の争議にかんがみて、争議権と称してもあまり行き過ぎているというような点を考えまして、国民の受ける迷惑、公共の福祉に害があるというような点を防止したいというところに要点を置いておるのでありまして、決して反動とか、また全面的にとか、一律にというような意味で考えておるものではございません。
○八百板委員 公共の福祉を守るという態度はけつこうでございますが、ストライキの結果、いろいろ一般公衆に対して不便を与えたというような事実がある場合におきましても、その責任は決して労働者の争議そのものにのみ帰すべきものではないのでありまして、そういうストライキが起るということは、経営者並びに労働者共同の責任であつて、それから起つて来るところの公共の利益を阻害せられることを防ぐという立場に立つて、労働者の争議権のみを制限しようというような重大なる態度に行くことは、決して方向として穏当の方向ではないと私は考えるのでありますが、そういうような点について、たとえば電産の前回の争議等に対しましても、電気の消えたことによつて国民に迷惑をかけますけれども、経営者はこれによつてほとんど損害を受けない、そういうような立場にあればこそ長引くということも考えられるのであります。そういうことによつて国民大衆に与えますところの迷惑というものは、これは経営者の責任であり、その法人、事業体全体の責任であるという考え方に立つて、当然そういう場合における与えた迷惑等を会社等において償わなければならないというようなはつきりした法的な立場がとられておりまするならば、そういうことによつても当然円満に、長引かせないで解決させるような方法もあるだろうと思うのでありまして、そういうような点についてのくふうも凝らされてしかるべきだろうと思うのでありますが、それを単に労働者の争議権のみを制限するという方向に行くということは、非常に間違つた方向であると私は考える次第でありますが、そういう点について大臣の所見を伺つておきます。
○戸塚国務大臣 お答え申し上げます。私が申し上げましたのは、争議権といわれているものにも行き過ぎたものがある。なおある考え方によつては正当なる限界を越えるというような考え方も出て来るのであつて、そういう行き過ぎたる点を是正したいという意味で考えておるのである。なおそれがために共同責任であるべき経営者の方にというお話がありましたが、こういう点も何かそういう事態がありますれば、それに対し措置すべきことは当然に考えなければならぬと思うものでございます。なおこの経営者に関する方については、労働省のみで考えられることだけとは限りません。
○八百板委員 そういう点について労働省のみの立場でないということは、通産省等の関係もあるという御意見かと思うのでありますが、通産省の関係でお尋ねいたしたいと思いまするが、戦争後において今日本の重大なる改革の一つとして取上げられましたものは、言うまでもなく財閥の解体、すなわち経済力集中排除法に基くところの財閥の解体であつたわけでありますが、この財閥解体は再び日本を経済的に支配するような強力な力ができてはならないという趣旨のもとに独占禁止法が制定せられたことは、これまた周知の事実であります。この独占禁止法は、その後日本の吉田内閣の資本家擁護の逆行的、反動的傾向が深まるにつれて漸次過度経済力集中排除の内容も変化して参つておるのでありますが、今日またさらに新たに形成せられようとしておりますところの財閥の支配形態をさらに復活する、それに便宜を与えるというような危険のある独占禁止法の改正が用意せられておるように私は伺つております。この点についてこの独占禁止法の改正の方向は、独占禁止法の内容をどういうような性質に持つて行こうとするのであるか。すなわち独占を禁止するという方向に持つて行つて、ある場合について例外を認めるという方針に立つておるのであるか、それとも独占行為を是認しながら、それを規制するという方向を打出そうとしておるのであるか、これらの点について通産大臣の見解を承つておきたいと存じます。
○小笠原国務大臣 お答えいたします。独禁法改正は、目下関係官庁間で協議中でありますが、その精神といたしまするところは、経済民主化の線に沿いつつ日本産業経済の実情に照らしまして、行き過ぎとなつておる諸点を合理的に是正したいという考えを持つておりましてお話のごとくに財閥の復活をはかつたり、または消費者の利益を害するような逆行なり、ないし反動的考えを毛頭持つておりません。
○八百板委員 伝えられる方向を見ますると、国際競争に勝つためには、むしろよいものを安くつくるという自由競争こそ望ましいのでありますが、それを逆に、国際競争に打ちかつために、これらの独占禁止法の内容について、企業体を保護するような方向を、それを理由にしてとつておられるというふうな態度と私どもは見るのであります。しかしながら、重要産業を保護する必要があるというふうな立場に立つても、それを判定するところの判断が、今日の段階においてはできないのであります。はたしてその経理内容が、それを国家的に保護する必要があるかどうかというような点については、これを判断する何らの手がかりもないという状態であります、経理もわからないという状態のもとにおいて、その認定はきわめて問題であろうと思うのであります。私はそういう意味合いにおいてこの独占禁止法の改正が、そういう方向に向く危険を非常に感じておるのであります。 通産大臣に、関連する問題といたしまして、私は肥料の問題について、この際あわせて伺つておきたいと思うのであります。肥料政策については、今日言うまでもなく、農民の立場から、これを安く農民に渡さなければならないという立場があるのでありまするが、また一方において、日本の肥料工業を、輸出工業の中でどういう位置を持たせて行くかという問題もあるようであります。こういうふうな点について、通産省と農林省の見解が、必ずしも一致しておらないように私は考えておりまするが、この問題について、農林大臣並びに通産大臣のお答えをいただきたいと存じます。
○小笠原国務大臣 お答え申し上げます。昨年の夏ごろから、硫安の国際相場は急激に下落いたしまして、いろいろな点から、肥料の価格について影響いたしておることは申すまでもございません。しかし日本が相当な硫安を輸出いたしまして、輸出市場を確保することもきわめて必要でございますのと、また同時に、硫安は、今約二百万トン出ておりますが、それを若干輸出しないと、生産過剰の状態でありまして、ひいて生産制限を行う結果は、やはり国内価格を高めることにも相なりまするので、輸出をいたしておる次第でございます。しかし現在春肥の需要を控えておりまするので、現在のところは、輸出を差控えさせておる次第であります。春肥につきましてどう処理するかという問題は、過日来、農林大臣ともよく打合せまして、また現在は肥料対策審議会をつくつて、各方面の権威者を入れまして、それぞれ御研究を願つておりまするので、これらの措置につきましては、万全を期しておる次第でございます。御承知のようなぐあいでございますから、今日のところ、肥料の需給については何らの心配もなく、また価格につきましても、若干の値下げ等を国内でなし得るのではないか、これらについて全力を、農林大臣とともに相尽しつつある次第でございます。
○廣川国務大臣 お答えいたします。通産省と意見は異なつておりません。ただ農民になるべく安く肥料を供給するように、両省心をあわせて努力をいたしておる最中でございます。
○八百板委員 農林大臣にはいろいろまだ尋ねたいこともあるのでありますが、話を総理大臣にもどしてお伺いしたいと存じます。ずつと伺つて参りますと、警察の一本化にいたしましても、あるいは現に保安隊の実権を総理大臣が握る。中央政府が教員の任免権を持つて教育を左右し得るような状態に日本の教育を持つて行く。さらにはまた経済力の集中を可能ならしめるような条件を、独占禁止法の改正の名のもとに、着々と進めて行く。さらにはまたストに制限を加える。軍人恩給の復活を、社会保障一般を度外視してやつて、これを先に取上げることによつて軍人の発言権をどんどん強化して行くような結果をつくつて行く。また先ほどのお話にもありましたように、総理大臣は憲法の考え方について、疑わしい態度のままに解散権を行使するという立場を従来とつておられる。こういうように、一連の関係をずつと見て参りますと、この傾向は、どうしても中央集権的傾向に行かざるを得ないのであります。吉田さんは、そういう中央集権的傾向の中心に立つていわゆる文字通りワンマン的立場をとるような方ではなかろうと私は考えておりますが、吉田総理大臣も、いつまでも総理大臣ではないのでありまして、今日のような程度の低い政治家が幅をきかすという日本の政情のもとにおいては、いわゆる集中権力を握るということは、日本の地位を非常に不安定なものにするという危険があるのであります。またときには権力の集中的な形として、軍人が強い発言権を持つというような状態、あるいは軍人がそういう勢力や力をもつて政治を支配するという状態もないとは言えないのであります。昔はよかれあしかれ、軍隊が日本の政治に関与するという場合においても、そこに軍隊の精神が天皇中心に固められておりましたために、たとえば二・二六とか、五・一五とか、いろいろな問題がありましても、そういうような問題は、そういう立場に立つて処理せられるような状態があつたと見ることもできるのでありますが、そういう立場から、今後そういう政治の運用をするにあたつて、かつて日本の元老的な立場にあつたところの西園寺さんとか、あるいはそういうような立場のうずの中に入らない人によつて、日本の政治の運行の調和をはかつて行くという考え方をもつて政治をやつて行くという考え方が、一部にあるように私は聞いております。そういう意味で、総理大臣も適当な機会にやめられて、元老的な存在として、日本の後見人になる、こういう考え方が望ましいのではないかというふうな意見も、われわれは耳にするのでありますが、そういうふうな国の一つの運び方に対しまして総理大臣はどういうふうなお考えを持ち、そういう点について思いをめぐらしたことがあられるか。私はこの際に、参考のために伺つておきたい。
○吉田国務大臣 お話のような考え方は、夢にも思つたことはございません。
○八百板委員 もちろん私は、そういう状態が起らないことを期待して申し上げたのでありますが、しかし総理大臣もこの困難な政局の中に立つて、いつまでも総理大臣をしておられることは困難だろうと私は考えますので、やはり適当の機会にしりぞいて、うずの中に入らないで、自由党を導いて行くというような立場に立たれた方が、自由党の全体の能率からいつても、私はよかろうと思うのであります。(笑声)そういう意味合いにおいて、党内の混乱や野党攻勢にあつて、傷つき倒れるというような形に引込まれるよりは、適当の機会において、そういう道を開かれた方が賢明であろうと考えております。これはもちろん総理の答弁を必要とする問題ではございません。 さらに最近の一般的な傾向を見ますると、ことごとに占領政策の是正という名のもとに、いろいろの改革が押しつけられ乗るような傾向をわれわれは見るのであります。しかしながら占領政策の行き過ぎと二言目にはおつしやいますけれども、なるほど独立したとは申すものの、日本の位置はきわめてきびしい立場に今置かれておるのでありまして、占領中においては四つの島にとじ込められておりましたが、今日その状態は、一応独立という形になりましたけれども、実質においてはやはり依然として鎖はつながれており、いわば屋外労役を許されたという程度のものであつて独立と自由の行動半径というものは、この鎖の長さが伸びただけというのにすぎない、そういう見解をわれわれはすることができるのであります。従つて占領下以上にきびしい圧力の加えられておりますところの今日の情勢のもとにおいて、行き過ぎであるというようなことによつて、いろいろな基本問題が取上げられて、これが直されて行くということは、国家百年の大計のために、まことに日本の明日を誤るものであるというふうに、私は考えざるを得ないのであります。そういうような点について、憲法改正を初め、諸般の今日出ておりますところの諸法令の改正について、その行き過ぎの是正が、逆な結果にならないような十分な考慮を払つていただきたいということを、総理大臣に特に希望を申し述べる次第であります。 次に、私は大蔵大臣に財政に関するお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、総理大臣はお疲れでございましようし、土曜日でもございますから、もうお引取りいただいてけつこうと存じます。いらつしやらないからといつて攻撃はいたしませんから……。(笑声) 大蔵大臣にお尋ねいたしたいと存じますが、大蔵大臣は、今回の財政の目標を、まずインフレの抑制に置いておるということを見るのであります。今回の予算が総体といたしまして、インフレの要因を多分に持つておりますことは、すでに指摘せられました通りでありますから、従つてインフレの要因をどういうふうにして取除いて行くかということは、当然に方針として出さなければならないと思うのであります。この予算はインフレ予算ではないといわれておりますが、はたしてインフレ予算ではないかどうか、この点をまず伺つておきます。
○向井国務大臣 インフレになりますときは、金が市中にだぶつくとか、あるいは金を持つていても、物が足りなくて買えない、そういうときに起るのでございますが、今度の予算で出ます金を、貯蓄とかあるいはいろいろの金融機関の操作でもつて吸収して行く、一方生産を増強して購買力の増加に応じる、そういうことにいたせば、インフレにならないと私は信じております。
○八百板委員 大蔵大臣はインフレにはさせたくないとおつしやるのでありますか、それともインフレではあるがインフレにはさせたくない、こういうふうな御趣旨でありますか、この点伺います。
○向井国務大臣 させたいと思うはずはございませんで、させたくないのでございます。同時にならないと思つております。
○八百板委員 実際問題といたしまして、今までの蓄積を食いつぶして行く、新たに借金をする、そういう形で財源をまかなうという財政が、インフレにならないということは、非常にむずかしいことでありまして、傾向として当然インフレの傾向を持つておると断定しなければならないのであります。しからば、まず第一にインフレの一番大きい要因として取上げられておりますところの公債の問題でありますが、公債に対しては大蔵大臣はどういう考慮を払いながらこの公債を出されるのであるか、この点を明らかにしていただきたいと存じます。
○向井国務大臣 金額をなるべく少くいたしまして、そうして市中で消化のできる程度、そういうことにしましてインフレを防ぐつもりでございます。
○八百板委員 それは条件というほどのものではないのでありまして、なるたけ少くして市中消化をしたいというのは、公債そのものの条件ではなくして、公債を出される場合の大まかな希望であろうと私は思うのであります。今日伝えられますところの、公債が非常に出て参りますならば、その結果はどうしても、これを市場消化しようということになりますと、条件をよくして消化できるようにしなければならないのでありますから、その結果は当然にほかの起債市場を圧迫するという形にならざるを得ないと思うのであります。こういう点についてどういう御見解を持つておられますか。
○向井国務大臣 条件は減税ということで行きまして、金利は四分、割合安い金利でございます。それで利回りは個人の場合が一割ですか、法人の場合が一割二分ですか、あるいは違うかもしれませんが、こういう勘定にいたしましてこの条件を市中の金利にしますと、少しよ過ぎるようですけれども、減税という意味で、それから割出された利回りでございますから、不当に高い利回りはできないと思います。それからその公債の金額が市場に流れても、ほかの金融に圧迫を加えるとは私は考えません。
○八百板委員 一割二分くらいの利回りになりますと、当然それはほかの起債を圧迫するということにならざるを得ないし、それと競争してほかの方も条件をよくするということになりましようし、その結果は一般的に金利の引下げという政府の唱えております方向とは、大分違つた形に現われて参りまして、やがてはコストの引下げという合理化の方向にも反するということになつて、唱えております貿易の方針と結びついて来ないように私は考えるのでございますが、こういう点はどういうようにお考えになりますか。
○向井国務大臣 これは税金を払う人に、ある金額を限つて売りますから、だらしなく売り出すというわけでなく、従つてほかの金融に不当な圧迫を加ええるということはございませんから、それで金利のコストが上つて来て生産費が上るとか輸出ができない、そういう大きな悪影響を来すことはないと考えております。
○八百板委員 だらしなく売らないとおつしやいますが、これは無記名ですから、どこにでもまわつて行くだろうと思いますが、この点いかがでございますか。
○向井国務大臣 だらしなくと申すのは、私は金額を申すのでございます。
○八百板委員 金額をだらしなくしないとおつしやいますけれども、三百億といつても、これはどういう状態でどういうように変化して行くかわからないのであります。初めのころ私は、向井さんは何か非常にかたい、骨のある方のように思つておりましたが、今度の財政の組み方を見ますと、かたそうに見えて案外やわらかいところがありますので、非常にこれは先々の点について、あなたの言明をわれわれは信じて、インフレの要因にならないといつて、この公債政策をうのみにするわけには行かないのであります。一ぺん折れますというと、何べんも折れるのであります。吉田さんがお帰りになつてから、悪口を言わない約束でございましたが、吉田さんも、党内における福永幹事長以来、たびたび折れることを覚えまして、最近においては、しよつちゆうあやまつたり、釈明されたりするというところを見ますと、公債の点におきましても、一旦出しましたら最後、どこでとめるということなく、延びて行く傾向があるというふうに、私は心配せざるを得ないのでありまして、そういう点について、どこまで自信のある態度を持つておられるか、この点を伺つておきます。
○向井国務大臣 断然、これ以上は出さない考えでおります。
○八百板委員 大蔵大臣は、今度の財政を唱えるにあたつて、財政上持つておりますところのインフレ的要因を、金融の操作によつて、日銀の高率適用とか、あるいはそれに連なる市中金利の引下げとか、そういう形によつて調和をとつて、弾力性のある運営をやつて行こうということを言われておるようでございますが、その日銀の高率適用並びに市中金利の引下げというふうな点についての、大蔵大臣の財政金融政策に対する一貫した御構想を承りたいと存じます。
○向井国務大臣 貸出金利は、どうしても安くしてもらわなくてはなりませんから、銀行の方にはよく話しておりまして、コストの引下げに努め、貯蓄の方は、これは銀行だけが騒いでも集まるとも限りませんので、一般の貯蓄に対する考えを高揚してもらう。そうして十分に貯蓄が集まる、すなわち運用する資金がふえますと、コストも安くなります。それで日本銀行の市中銀行に対しての金融の操作の点、及び市中銀行の借入れ希望の人に対する手かげんによつてせいぜい金利の安くなる方に努力してもらう、そういう方法を考えております。
○八百板委員 期待し、努力してもらうという方向をとつても、そうなるかどうかということは、保証できないのでありまして、そういうような点について、政府は、どこまでその期待を実行させる財政金融政策上の考え方があるか、この点を伺つておきます。
○向井国務大臣 これはできないときもあるでしようが、しかしながら金の散布が十分に行くと、金融は緩慢になるものと私は見ておるのであります。緩慢な金融については、貸付の金利を銀行は下げることが必ずできるもの、そう考えておりますから、それ以上に、いろいろの人為的の方法を加えるということは、一応差控えた方が、予期の結果が現われるものと存じております。
○八百板委員 漠然と期待して、予期の結果が現われるのであろうとおつしやられますと、もう話の限りではないのでありますが、私どもは、そういう日銀の高率適用、市中金利の引下げという方向をとつて行きますならば、当然に市中銀行は、その銀行の経営の必要上、小口の金融等に対して安い金利で貸しては引合いませんから、大口で確実な方面だけを探すという形に、勢いならざるを得ない。いわゆる金融機関のコストの関係が、そこに行かざるを得ないだろうと思うのでありますが、そういうことになりますと、当然に、中小金融に対する圧迫という形になつて、その結果は、そうでなくても困難な今日の弱小産業を、一段と困難な状態に追い込める危険があるだろうと思うのでありますが、その点について、それをそうさせないような構想を、具体的に持つておられるかどうか、これを承つておきます。
○向井国務大臣 中小金融については、機関がございまして、そういう金融機関でもつて相当の努力ができるつもりでございます。それから市中銀行のいわゆる中小企業に対する貸し方が減るという御心配ですが、今までのところでは、多少そういう傾向があつたのですが、これは銀行の方に対して、いろいろの方法でもつて、中小企業に対しても、金融をあまり渋らないように仕向けるということは、われわれが考えなくてはならないことで、それは、ある点までは実現するだろうと考えております。
○八百板委員 中小企業の金融を渋らぬように仕向けるとおつしやいますが、その渋らぬように仕向ける具体的な構想を伺わないと、その点がわからないのでございますが、どういうふうに仕向けて行かれるのでございますか。
○向井国務大臣 勧誘です。勧めるということであります。
○八百板委員 勧誘しただけで、言うことを聞くような経済界であつたならば、今日問題はないのでありますが、そういう点について漠然たる勧誘に期待をかけて、この財政の方針を立てられるということは、明らかにインフン的な方向を持つたこの予算を出されました大蔵大臣の態度としては、きわめて無方針な態度だと、私はいわざるを得ないのであります。どうも大蔵大臣は、非常に話が上手で、何を尋ねても、かえるに小便みたいに、あまり反応がないので、張合いが出ないのでございますが、この際、資本蓄積の方向が、税制の改正その他の方向を通じて元来、財政政策は、貧富の差を縮めるような調整作用をこそ、一つの財政の本旨として進めらるべきものと思うのであります。これらの一連の財政経済政策を見て参りますと、そうではなくて、だんだん貧富の案拡大するような方向をとつておるのでありますが、その資本蓄積を大産業と大企業に集中するという考え方は、どこに基礎を置いて、そうした方がよいとお考えになつておられるか、この点を基本的な問題として伺つておきます。
○向井国務大臣 これは、大蔵省だけの考えることでもないかと思いますが、私の考えでは、あなたが御心配になるように、資本の蓄積が、必ずしも資本家とか、財閥とか、そういうものだけを力強くするという意味にとらずして事業を育成強化するというふうにとれば、変な現象が現われるという御心配はないと思う。例をあげますと、株式会社でもつて物を製造しておる。そこに資本の蓄積ができて、強力なものになる。能率化して、できるものが安くなる。そうするとこれは一般大衆が安いものが買えるということになる。またそこで働いている人は待遇もよくされるし、いわゆる労資協調ということもそれから出る。しかもこのごろは、製造会社というようなところの資本金は、従前のようにある一部の人が持つているのではなくして、大体金融機関とか、あるいは保険会社というものが株を持つている。そういうところに配当が行くと、そういうところが潤つて来て、それをまた利用する大衆が便宜を得る。そういう形ですから、ある製造業あたりの基幹産業というふうなものが強力になるということは、国全体の利益であつて単にその会社だけの利益というふうに考えないでいい。またその会社だけが強くなるということは、少しも国家全体の利害に反するものではないという見解を持つております。
○八百板委員 資本の集中が国家全体の利益と一致するというお考えは、古典的な資本主義のお考えだと思うのでありますが、現実において国家全体の利益と一致しないというところに、今日のもろもろの問題が起つておるということを、大蔵大臣は新たに御認識を願う必要があろうと私は考えます。分科会等においてまた詳細の御質問をする機会もあろうかと思いますので、大蔵大臣に対する質問はこの程度にいたします。 最後に農林大臣に簡単にお伺いしておきます。 ちよつと忘れましたが、大蔵大臣にお願いしたい点は、大蔵大臣はこの御演説の中でも国民に対する協力を訴えられております。従つて財政、金融、国の予算等が国民によつて協力せられて円滑に運営せられますためには、これをよく周知徹底させるような努力が必要であろうと思うのでありまして、従つてたとえば、小さなパンフレツトのようなものでもつくつて、年々予算の概況、予算の説明というものを二十万部ぐらい刷られまして、これを配布するというような御用意があつてしかるべきだと私は思うのでありますが、こういう点についてひとつ具体的に実行をしていただきたいと存じますが、やつていただけますかどうか。
○向井国務大臣 御趣意に沿うように努めます。
○八百板委員 ほんとうにやつてくださいますか。
○向井国務大臣 やるつもりでおります。
○八百板委員 簡単なものを簡単にして周知徹底して協力をさせるという意味合いにおいては、物事を複雑にしてごまかすということが一番よくないと私は思うのであります。そういう意味合いにおいてまず農林大臣にお伺いをしたいのであります。 今一番基本的問題になつております食糧の問題についていろいろ論議をいたしますにしても、これは卑近な例でございますが、たとえば食糧の管理制度全体を通じましてわれわれが見ます点は、輸入はトンでこれを計算する、供出の方は石で行く、農民自身の供出は貫数がこれに加わる、配給はキロで受けるというような状態でもつておそらく今日市民の多くの人に米一升幾らだとたずねても、すぐ答えられる人は少いというほど、複雑であります。一回の配給量が幾らということは覚えておりますが、一升の米が幾らで配給を受けているということは、なかなかのみ込めないような、複雑ないろいろの数字が使われております。これを統一いたしまして、ほんとうに農民がどれだけで米を出して、それが消費者にどれだけで配給せられて海外食糧がどういう値段で入つて来て、どういう状態になつているというような、食糧関係を歴然と国民の前にさらすということが必要だろうと思います。私はそういう意味合いにおいて買入れの場合に日本の看貫をそのまま適用することができないといたしましても、これを国内に対して公表する際には、今後統一してやられてしかるべきだと存じますが、これについて農林大臣はどうお考えになりますか、お答えをいただきたいと存じます。
○廣川国務大臣 御説ごもつともでございます。農林省といたしましては、全部やはり重量メートルに統一されているのでありますが、今までの慣習等を重んじましてわかるようにいたしたつもりでありますが、それが紛更するようであれば、これもまた考えなければならぬと思つております。
○八百板委員 私ははつきりやるのだか、やらないのだかを伺いたいのでありますが、まず今後そういう価格、数量等を発表せられる場合に、統一した度量衡のどれかをきめてやるということを実行せられる意思があるかどうか、これを伺つておきます。
○廣川国務大臣 実行いたしたいと思います。
○八百板委員 そう申してははなはだ失礼でございますが、いつまでも廣川さんが農林大臣でおられるかどうかも(笑声)これまた私は心配でございますから、必ず実行するように御配慮をいただきたいということを、くどいようでありますが、念のために申し添えておきます。 それから農林大臣にお伺いいたしたいのでございますが、岡崎外務大臣もいらつしやいますから、あわせてお答えをいただきたいと存じます。今日賠償の問題が問題になつておりますが、この賠償の問題と関連をいたさせながら、日本の農業技術をアジアの地域に持ち込んで行く、そういうふうなくふうがされていいのではないかと私は思うのであります。今度の農林省の予算を見ますと、たしか北欧でございますか、あちらの方に農業技術を視察に行くと申しましようか、技術の交換をすると申しましようか、そういう予算がちよつぴり百九十万円くらい組まれているように伺つておりますが、そういうような点をもつと日本の全体との関連において考える、そういう立場に立つて農業の技術を国際的に交換する、そういう立場と、日本の賠償問題、移民の問題、こういうようなものをからみ合せて考慮するという構想があつてしかるべきだと私は思うのでございます。こういう点について農林大臣並びに外務大臣の所見を承りたいと存じます。
○廣川国務大臣 御指摘のように、北欧並びにアメリカに日本の有為な青年を送りまして自分の持つている体験と、アメリカ並びに欧州等の方の実際を見せてみたい、こう考えているのでありますが、ついこの間も外務大臣から、南方の方に少し向けてくれぬかという申入れを受けているのであります。またわれわれの方で米を買いつける場合にも、単に日本の商社が米を買いつけるばかりでなく、もう少し技術の方もよこしてほしいという希望があることも承知いたしております。
○岡崎国務大臣 われわれも、お話のようなことができれば非常にけつこうだと思います。ただ賠償問題等は、純然として相手国の利益のためをはかるという意味でやるのでありまして、もし相手国において農業の技術がほしいと言われれば、喜んで出します。ただ日本のためをはかつて賠償をやるのだというふうな誤解のないように気をつけるために、ただいまのところは相手国の利益のみを専念として、その結果今度は間接に日本に利益が入つて来る、こういうことは当然あると思いますが、さような意味で賠償は取扱いたいと思います。
○尾崎(末)委員長代理 本日はこの程度にし、次会は明後九日午前十時より開会いたします。 これにて散会いたします。 午後五時散会