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15回国会衆議院1952/12/12

予算委員会 第13号

発言数
328
登壇者
17
会派数
5
開催日
1952/12/12

会議録

太田正孝自由党

○太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十七年度一般会計予算補正外二件を一括議題として、質疑を継続いたします。河野密君。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 私は、先般総理大臣が御出席になりませんので、質問を保留いたしました分につきまして、きわめて簡単に御質問を申し上げたいと存じます。今までの本会議並びに本委員会その他の委員会を通しまして、政府の考え方の明らかになりました部分について、重複して質問することは避けますが、その質疑をいたしましてもなお疑問の残つております諸点について、質問を申し上げたいと存じます。従いまして、質問が問題ごとになるかと思いますが、その点は御了承願いたいと存じます。  私が第一に御質問を申し上げたいのは、今までの政府の御答弁並びに政府のいろいろな声明を伺いましても、なおかつ明らかにすることのできない点は、政府は政治の根本方針をいかに考えておるかという点であると思うのであります。独立後におけるわが国の政治をいかなる方針といかなる覚悟をもつてなさろうとしておるのか、この点についての政府の態度がはつきりとしておらないと存じますので、その点を中心として御質問を申し上げたいと存じます。御承知のように、現下の内外情勢はきわめて重大でございますが、その最も基本的な問題は、世界が二つの陣営にわかれて相対立をしておるのみならず、わが国がその二つの陣営の接触点に当つておるという点であると存じます。敗戦後におけるきわめて微弱なる国力をもつてして、この重大なる内外の事態を乗り切るについては、おのずからそれ相応の覚悟と方針とを持たなければならないと存ずるのであります。  そこでまず第一に、首相は先般の施政方針の演説の中で、「アジアにおける平和と安定の増進に寄与するため、アジアの民主主義諸国との相互理解を深め、」云々と申しておりますが、ここに総理が述べられておりますアジアの民主主義諸国とは、具体的にどこの国を指さすのであるか、これを伺いたいと存じます。  次にお尋ねしたいのは、ソ連を中心とするいわゆる共産主義諸国、その外交方針、その世界政策というものに対して、政府はいかなる考え方を持つておるのであるか、ことに中ソ友好同盟条約について、政府はいかに考えておるのであるか、この中ソ友好同盟条約によりますと、「日本帝国主義の再起及びいかなる形式にせよ侵略行為の上で日本と結託するいかなる国家の新たな侵略を防止する決心を持ち」この条約をつくるのである、こういう建前において一昨年の二月に締結されたのでありますが、その第一条に、「日本あるいは直接、間接に侵略行為の上で日本と結託するその他のいかなる国家の新たなる侵略をも、また平和の破壊をも制止することを期す」こう述べておるのでありますが、この中ソ友好同盟条約について、日本の政府は、従つて吉田首相はいかに考えておるのであるか、これが日本に対して脅威を与えつつあるとお考えになつておるのであるか、またこれに対する対策をいかになさろうとしておるのであるか、これをまず承りたいと存じます。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お答えをいたします。第一の御質問は、日本が友好関係を結ぶといいますか、とにかくアジアの民主主義国というのはどういう国をさすかというお尋ねであります。これはどの国が民主主義国であるとか、しからざるものとか、こういうことになるとおかしな話になりますが、少くとも共産主義国、あるいはお話のような中ソ友好条約の、ごとき条約があつて日本を仮想敵国としておる国とは、友好関係に入ることができないことはもちろんであります。同時にサンフランシスコの講和条約においても、日本は平和と自由を愛する国と協力して行くということは規定してあるので、この講和条約から考えてみましても、いやしくも民主主義を愛し、自由を愛し、平和を愛するという国とは善隣関係に入るのであります。しかしながら消極的に申せば、日本を想像上の敵国といたすような国とは、日本がたとい善隣友好関係に入ろうとしたところが、これはできないことと思います。しからばいつまでもこの中ソ両国を、日本もまた想像上の敵国とするかと申せば、これは相手国、つまり中ソ両国が日本に対して友好関係に入ろうという考えを持つならば、また日本の平和、治安を妨げず、妨害するというような行為がない場合には、もちろんイデオロギーのいかんにかかわらず——一々イデオロギーを調べて、そうして民主主義国以外のものはというわけには行かないのであつて、かりに共産主義国であつても、イデオロギーのいかんにかかわらず、日本と友好関係に入りたい国とは友好関係に入りたいと思います。しかし現に、たとえばモスクワの放送にしても、あるいは北京の放送にしても、日本の治安を動揺せしむるような放送をしておる限りは、日本がかりに友好関係に入ろうと思つても入るわけには行かない。また日本との間に、日本の国民を何十万となく抑留しておる。これの返還に応じてくれないという懸案がある限りは、この抑留者に対してもただちに友好関係に入るということはできないと思います。一応お答えいたします。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 今の御答弁によりまして趣旨のあるところはわかりましたが、私があとで申し上げました中ソ友好同盟条約というものが日本を仮想敵国とし、日本と結ぶことあるべき国を仮想敵国としておるというこのものに対して、日本としてはどういう対策を考えておるのかという点について、もう一応御答弁を煩わしたいのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 これはすでに日本をもつて想像上の敵国といたしておるのみならず、海外電報といいますか、放送その他によつて日本の国民に対して敵意を表しておるという国には、日本としてこちらから手を出して接近するという方法もなければ、相手方も受付けないだろうと思いますから、ただいまのところは中ソ両国の態度が、懸案の解決に誠意を示してくれるまでは、相手方の態度を見守つておるよりいたし方がないと考えております。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 次に私がお尋ねしたいと思いますのは、吉田首相は本国会を通じまして、しばしば第三次世界大戦の危機は次第に遠のきつつある、こういう言明をいたされております。私もさように希望をいたすのであります。もとより推測についての意見を求めることは無理かとも存じますが、私のお尋ねしたいのは、首相のさような判断を下されるのは、いわゆる民主主義諸国の諸般の情勢を検討されて、第三次世界大戦の危機は遠のきつつあるとお考えになるのか、あるいはいわゆる共産主義諸国のその後の動向を検討されて、第三次世界大戦の危機は今や遠のきつつあるという御判断に立つておるのか、次に御質問を申し上げる伏線として一応お尋ね申し上げたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お答えをいたします。共産主義国と自由国家との対立関係において、両方の勢力比較というようなことは具体的には出す方法もできませんが、私がそう考えるのは実は希望的観測もあります。しかし第二には英米の有力者といいますか、当局が現に言明しておるので、たとえばアイゼンハウアー元帥にしても、イギリスのチヤーチル総理大臣にしてもイーデン外務大臣もそう言つております。アチソン、ダレス等も皆そう言つておるので、少くとも第三次戦争の危機は漸次遠のきつつあるということは、異口同音に自由主義国の当局者が申しております。ゆえに私はこれを信頼して、それに希望を加えて、ぜひともそうありたいものと考えますのと、それからして事実今日戦争を始めようというものがあれば、これに対して二度の大戦のあとからもう戦争はあきておる。あきたというよりは戦争をいとう、好ましくないという感情は、これは世界を通じてであろうと思います。世界の輿論としては戦争をきらうという空気であろうと思います。私は輿論に反対をする、輿論にまつこうからして違う議論が行われようとは、世界的にも行われないと私は確信いたします。ゆえにかく申す次第であります。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 私も同じような見解に立つのでありますが、しかし私はここで吉田総理大臣にお尋ねいたしたいのは、共産主義あるいはコミンフオルムを中心とする世界政策というものに対して、どういう認識を持たれるかという点であります。私の考えるところによりますと、ソ連の外交、あるいはコミンフォルムの世界政策というのには、一つの哲学が流れておると思うのであります。マルクス、レーニン主義と一口に申し上げますが、私の解釈するところによれば、マルクス主義というのは経済の革命理論であります。レーニン主義というのは政治の革命理論であります。しかし今日ソ連並びにコミンフォルムが世界的に行つております世界政策なるものは、これはスターリン主義であつて、そのスターリン主義の根本とするものは民族の革命理論であります。民族主義を基調とする革命の理論であるのであります。この点をわれわれは見のがしてはならない、かように考えるのであります。私のはなはだ僭越な言い方でありますが、アメリカの外交政策において、ソ連の世界政策なり、外交なりを哲学的に、あるいは科学的に検討しておる政治家はダレスだと思うのでありますが、彼はあまりにもよくソ連の外交政策を知つておるがゆえに、かえつて私はその外交政策は非常に危険ではないかと思うのであります。御承知のようにコンテインメントの政策といい、あるいはロール・バツクの政策といい、最近になるところのいわゆるリベレーション——解放という外交政策にしても、私は非常に危険な政策であると思うのであります。ソ連の外交政策の基調は、今申し上げましたように民族の革命理論であつて、植民地及び半植民地の民族を解放するという一つの大きな思想を持ち、哲学を持つているのであります。これに反してアメリカが行おうとしているところの、言葉は解放であり、リベレーシヨンでありましても、これに裏づけするところの民族を奮い立たせる、アジアの諸民族を奮い立たせる一つの何らの裏づけを持つていない。哲学も持つていなければ、思想も持つていないと思うのであります。しかるにもしわが国がこの間にあつて、このアメリカの考えている外交政策をそのままに受入れて、これをアジアの諸民族の間に行わんとし、アジアの自由諸国がどういうものであるかということを検討に入れないで、アメリカ外交のあとを追うというならば、これは非常な危険な外交政策であると存ずるのであります。  そこで私は総理大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、一体日本は冒頭に御質問申し上げました、このアジアの民主主義諸国に対して、ただ信愛と友義の念を起すようにするということをもつては外交にならないのであつて、このアジアの諸民族、一方においてはアジアの植民地あるいは半植民地民族の解放という大きな旗を掲げて進んで来るソ連の外交政策、世界政策というものに対して、一体日本はいかなる旗じるしをもつていかにこれに対抗しようとするのであるか、これについて一の外交上の根本的な考え方があるならば、私はこれを中外に宣明すべきであり、これこそが私は独立後における日本の政治の根本方針でなければならないと思うのでありますが、首相の御意見を承りたいと思うのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 ダレス氏の意見がどうということはしばらく問題外に置きまして、どういうことを考えておるか実は私も存じません。これはやがて国務長官になられる人でありますから、この考え方について私は批評を差控えたいと思います。  そこで今日本政府が一にアメリカのあとを追つて、アメリカの考えだけに従つて行くのは危険じやないか、こういうことの御意向でありますが、必ずしもアメリカの考えだけを追つて行くのではないので、いわゆる自由主義国、世界の自由なり平和なりを主義としている国と一緒に行こうというのであつて、アメリカの考えに一から十まで追随外交をしているわけではないのであります。日本としておのずから日本の立場があり、ことにアジアについては特別な地理上、歴史上の関係がありますから、これを疎外する、あるいは除外するという考えは毛頭ないのみならず、特にアジアとの関係においては善隣関係を十分にして行きたいという考えを持つております。但し今お話のように民族解放であるとか、あるいは民族闘争といわれたか忘れましたが、とにかく民族意識のみを考えておるということについては、民族あるいは民族解放とかいうようなことはあまり重きを置くということはどうか。これが戦争の原因になりはしないかとも考えられます。あたかも共産主義において階級闘争といつて、そうして労使の争いとかなんとかいうようなことが、自由を妨げ、もしくはいろいろな問題を起すと同じように、民族も大事でありますが、しかしながら民族解放というその前に民族が解放されないとか、民族の独立意識とか——現にインドにしても、あるいは東洋一帯が、第二次戦争以後においては、民族意識が相当盛んに起りつつあることは御承知の通りであります。これを妨げるわけではむろんありませんが、これのみを土台として、この民族意識を率いて日本が立つとか、あるいはヨーロッパに対して、日本がアジア諸民族を率いて、あたかも解放された民族の首魁といいますか、引率者となるような態度をとることは、日本に対して一種の世界的疑惑を生ずるものでありますから、かくのごとき高遠なる理想はとにかくとして、まずさしあたり日本としては善隣関係を増進して行く。自由国家との関係を増進して行く、これをもつて外交の基調にすべきではないかと思います。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 首相の考えるところはよくわかりました。そこで私が次にお尋ねを申し上げたいのは、私の考えるところによりますと、ソ連もしくは共産主義の世界政策ということを考えると、外交の問題と国内問題とは密接不離なる関係にある。外交即国内問題であると思うのでありますが、国民感情が外国によつて植民地化され、あるいは隷属化されたという感じを持つところにソ連の働く余地があり、世界政策の働く余地がある。わが国においても、もし日本の国民が植民地化され、あるいは隷属化されておるのだという感情を持つようなことがあるとすれば、これはきわめて重大なことであり、そこにすべての間隙が生ずると思うのであります。そこでお尋ねをいたすのは、先般来いわゆる国連協定その他の問題についてしばしば本委員会においても、あるいは外務委員会、法務委員会等においても質問があつたのでありますが、この点における、私がいまだ納得できない一つの点についてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。  その第一は、十一月二十五日の朝日新聞に、いわゆる裁判権の問題に対する国連軍の声明が出ております。その国連軍の声明の中には、日本に裁判権の問題で二つの誤解があるということが書いてあるのであります。これに対して総理大臣はどういうふうにお考えになるのであるかという点が一つと、裁判権の問題が英国水兵事件以来やかましくなりましてから、政府はしばしばいろいろな機会に声明を発し、いろいろな言明をいたされておりますが、それらのものを通覧いたしまして私が疑問といたしますのは、九月に御発表になりました吉田書簡の線と、この国連軍が声明されたる線とは、私はほぼ一致しておるように考えるのでありますが、それにもかかわらず政府はイギリス水兵事件に対してまつたく別な態度をとられた。この間における矛盾をいかにお考えになるのであるか。私の質問を率直に要約いたしますと、政府は国際条約並びに国際慣行を、吉田書簡あるいはその他によつてはつきりとしておるにかかわらず、国内的な対策としてはあたかも強硬なる意見を主張するかのごとき態度を示して、国民感情にこびるという二重の態度を示しておるのではないかという点が、私のきわめて疑問とし、遺憾とする点なのでありまして、この点について総理大臣の御答弁を煩わしたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 所管大臣からお答えします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 ただいまの御質問の点につきまして、国連側ということで出しているところの書きものがありますが、これは内容は従来外務省、われわれの方に国連側から言つて来たことを要約したものであります。別にかわつたことを言つているわけではないのであります。そこでただいまのお話の要点でありますが、いわゆる吉田書簡の中には二つの問題がありまして、一つは裁判管轄権の問題であります。それが第一、第二の二項になつております。それから第三、第四の項は、法を犯した者の身柄の取扱いをどうするか、こういうことになつております。そこで第一の裁判管轄権の問題につきましては、国際法の原則及び慣例に基いて行う、こう言つておりますが、われわれの方の主張では、国際法の従来の原則なり慣行なりは、たとえば日本の場合をとれば、国連軍が日本に来ておつて、公務以外に、あるいは国連側に提供している施設以外のところで行いました犯罪については日本に裁判権がある。つまりレシーヴイング・カントリーに裁判権がある、こういうふうに解釈しております。ところが先方は、それは誤解であつて新しい国際慣例、つまり第二次大戦中及び第二次大戦後に起つた国際慣例は、イギリスにしてもフランス、ドイツ、イタリアの例を見ても、センデイング・ステート、兵隊を送つた国の方に、施設外の私人の行為であつても、裁判管轄権を渡しているということで、つまり軍の方に裁判権を渡すのが新しい国際慣行であるというように主張しているわけであります。     〔委員長退席、小坂委員長代理着席〕 そこで国内的の措置にいたしましても、私がただいま申したような、裁判管轄権はこちらにある、身柄の取扱いはこれこれであるという主張は、その趣旨で出しているのでありまして、従いまして英国水兵事件の問題にしましても、英国側は水兵の犯行についての裁判管轄権はイギリス側にあると主張しているが、しかしいまだ日本側と話がついていないのであります。ところがついていないままにおいて日本側が日本の方に裁判管轄権があるのだという主張はおかしい、こう言つているのであります。しかしわれわれの方の吉田書簡から筋を引いて検察庁の通達までのところは、みな国際法の慣例に基く、ということは日本に裁判権があることである。ただその裁判を行うかどうか、身柄をどういうふうにするか、本人を釈放するかしないか、こういうことは別の扱いである。重いものでない限りは国連協力の趣旨からいつて身柄を引渡してもいいが、やはり裁判の管轄権はこちらにある。優先的な管轄権はこちらにある。向うにもあるでありましようけれども、こちらに優先的にある、こういう主張をいたしているのであります。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 私が申し上げるまでもなく、国際法や国際慣例に通暁されております外務省では、第二次世界大戦以後の、長期にわたつて一国の中に他国の軍隊が駐兵する場合における国際慣例がいかなるものであるかということを、御存じないはずはないと私は思うのであります。十分国際慣例というものは御存じのはずだと思う。外務省においては十分これを御存じであるにかかわらず、清原通達に見られるがごとく、あたかも日本においては日本に裁判権があることが当然であるかのごとき主張をしている。われわれ国民としては裁判権が日本にあることを主張したいのである。主張したいのだけれども、国際慣例はそういうものでないというならば、なぜ国民にそういうことをあらかじめ知らせないのであるか。国民が輿論を起し、沸騰して、裁判管轄権の問題に対していきり立つたということは、一端の責任は私は政府の態度のあいまいさにあると思うのであります。私の知り得るところによりますと、イギリスのあの監禁された水兵のごときは、イギリスの新聞その他においては、あたかも非常な国士のごとき扱いをして、向うの新聞は世界の大法を蹂躙するものは日本であつて、その犠牲になつたものはイギリスの水兵である、これは現代の英雄であるというようなことで、大きな写真を入れて向うの新聞が報道をしておる。愛国心をあおるというようなことすらやつておつたということでありますがそういうことは私はあげて日本政府の責任であると思うのであります。善隣友好を唱えるならば、日本の政府は第二次世界大戦以後、世界の慣例となつておる問題について、それほど明確なる考え方をお持ちになるならば、それをなぜはつきりなさらないのか、なぜそれを国民の前にはあたかも強がりを言い、国際的にはまつたく別の国際慣行に従う意見を表明されるという二重の態度をおとりになるのか。私はこれは吉田内閣の重大なる責任であると思うのでありますが、いかがでございますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これはお話のようにこちら側では、国内では強いことを言つて、先方には違うことを言つておるというわけではございませんで、国内で言つておると同じことを先方にも言つておる。その点は今国際慣行とおつしやいましたが、私の見るところでは、これは第二次世界大戦の最中に——たとえばイギリスが非常に危険に迫られたときに、アメリカの軍隊が行つて、そのときに行われたむしろアブノーマルな慣行を、今NATO協定等で是正しようといたしておる。戦争のときであるからして、何でもかんでもとにかく兵隊が働きいいようにして、できるだけ何でも譲つて国を防いでもらう、こういう意味で非常なアブノーマルな慣行が私はできていたと思います。従いましてNATO協定は、だんだん平和になつて来ばこれをかえるということで、今努力をいたしておる。従つてこの戦争後に行われました国際慣行というのは、まだエスタブリツシユされているものでない。むしろこれを行過ぎとして是正しようとして今各国でやつておるのでありますから、その点から見ても、やはりNATO協定の筋で行くのが、普通の新しい慣行といわるべきものである、こう思つて話を続けておるのであります。そのNATO協定の趣旨からいえば、やはり吉田書簡ということに結局なると信じておるのであります。もつともNATO協定と吉田書簡とは完全に一致しておりませんけれども、話がつくまではやはり一般に認められておる国際法、国際慣行で行くべきであつて、是正されんとしておる行き過ぎの慣行だけをとらえて、これが国際法であり、国際慣行であるというのは、これは少し行き過ぎである、こうわれわれは考えて、その趣旨で話をしておるわけであります。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 それではお尋ねいたしますが、政府としては、国連側が先般声明されたという、この声明書の内容については御同意であるわけでありますね。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これは遺憾ながら同意できないのであります。われわれの見解と違つております。従いましていまだに国連協定の話が、はなはだ残念でありますが、結末を告げていない、こういう結果になつているのであります。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 この点につきましては、いずれ別の人から御質問があると思いますから、私はそれ以上申し上げませんが、要するに私の言わんとする趣旨は、政府は第二次世界大戦の後にできた国際慣行、まだそれはエスタブリツシユされていないとおつしやいますけれども、世界的には一応それが認められておる慣行、それがあることをよく御存じであるにかかわらず、国民の声におびえて、と申しますか、別なことを言つて問題を紛糾せしめたという、その責任を政府は痛感しなければならぬ、これが私の考え方であります。私は一般の世間の世論とはいささか考え方が違うかもしれませんが、私はさように考えておるのであります。  次に私御質問を申し上げたいのは、これは再軍備と自衛力の問題であります。再軍備と自衛力の問題については、しばしば論議が繰返されましたので、私はここで同じことを何べんも繰返してお尋ねをしようとは存じません。ただ私はこの明確にならなかつた点だけをお尋ねしたいと思うのでありますが、私は率直に申し上げまして、吉田首相が再軍備はやらないのだ、憲法の改正もやらないのだということが、ほんとうにその通りに実行いたされますとするならば、私としては一つの大いなる見識として敬意を表したいと思うのであります。しかし私の見るところによりますと、国会を通じての答弁を承つておりますと、実質的な実力の蓄積と申しますか、戦力の蓄積と申しますか、これをカムフラージュする一つのものとして表明されているか、あるいは憲法違反と言われ、憲法の改正を迫られることを回避するための、逃げ口上であるかのごとき感を与えていることをきわめて遺憾といたすのであります。もしこのあとの私が推測をいたしました方であるといたしますならば、その影響はきわめて重大であると考えますので、お尋ねいたしたいのであります。  そこで私が第一に御質問を申し上げたいのは、首相の言われる自衛力の漸増というその言葉は、これは思想、経済、国力並びに今申し上げました物理的な力と申しますか、そういうものをひつくるめた総合的な意味における観念で自衛力の漸増という言葉をお使いになつているのか、それとも単に武装力、防衛力というものが戦力に至らないものを指さして、その面だけを指さして自衛力の漸増という言葉をお使いになつているのか、それをまずお尋ねを申し上げたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 これはしばしば国会で説明をいたしておりますが、自衛力の漸増ということは、安全保障条約にもはつきり書いてある通りであります。政府が趣意とするところは、国内の治安は日本の国力で守る。それ以上の外国の侵入その他組織的の集団的攻撃に対しては、すなわち海外の侵入、そうしてそれが自衛力で自衛ができない、それ以上のことは安全保障条約によつて守るという建前で行くので、この建前は決してカムフラージュでもなければ、ごまかしでもないのであります。敗戦後の日本の国力として海陸軍装備を持つということは、国力がこれを許さないのであります。これを無理してかくの、ごときことに国費を使うということになれば、国全体の国力が衰えるということになりますから、これは断じて避けたいと考えているのであります。また自衛力と軍事力ですか、軍備との差いかんということは、しばしば主管大臣から説明をいたしておりますが、なお主管大臣からこの点は説明いたさせます。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 自衛力と再軍備の問題でありますが、自衛力は今総理が言われましたように、国内の平和と治安を維持するためのいわゆる自衛の力であります。再軍備は要するに外国と戦いをする手段としてのいわゆる武装兵力であります。この間に截然たる区別があると信じております。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 私は今お話になりました再軍備と自衛力との限界の点について、もう一つお尋ねを申し上げたいのでありますが、私は政府が自衛力という言葉をお使いになるのは、これが国内的な考慮によるものであるか、国際的な考慮によるものであるかこういう点であります。もし政府が国際的な影響力をおそれて、自衛力という言葉をお使いになつておる、実質的なものをカムフラージユするということであるならば、私は政府に申し上げたいのでありますが、御承知のように九月十二日の国連安全保障理事会において、ソ連のマリク代表は、日本を国連に加盟させてはいけないという堂々たる論陣を張つたその言葉の中に、こういうことを言つておるのであります。八月四日の保安庁の開所式に際して、日本の吉田首相はこの保安隊こそは新国軍の基礎であるということを言つておる、その言葉によつても、日本が再軍備をしておるということはきわめて明確ではないか、アメリカの代表あるいはオランダの代表その他が日本は自衛力を持たないからして、国連に加盟させなければならないという理由というものは、きわめて薄弱なのだ、日本は再軍備をしておるのだ、ということをソ連のマリク代表が述べておるのであります。これによつて見ますと、国際的においては、この吉田首相の言われた保安隊こそが新しい国軍の基礎であるというその言葉というものが、非常なる影響を与えておるのでありますが、総理大臣はこの八月四日に保安隊こそは新しい国軍の基礎であると言われた言葉、その国際的な反響、そういうものについてどういうお考えを持つておられるか、これを承りたいと思うのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 ソ連のマリク氏がどういうふうに演説をいたしたか、私は存じませんが、私が保安隊に言つたことは、国を守る精神を養い、君らの愛国心というものがすなわち国を守る基礎である。諸君はこの愛国心の高揚をまず第一に考えるべきである。その愛国心の高揚を諸君に望むということを言つたのが趣意でありまして、全体の演説を、ごらんになるとわかります。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 新国軍の基礎であるというようなことはお言いにならなかつたのでありますか、また新国軍というような言葉は不穏当であるとお考えになつておるのでありましようか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 そのときは私は別段原稿を読んだわけでありませんから、何と申したか記憶はありませんが、しかしながらそういう考えではなかつたのであります。もし新国軍という言葉を使つたならば、それは不穏当でありますから取消します。

小坂善太郎自由党

○小坂委員長代理 河野君に申し上げますが、大体お約束の時間ですから結論を急いでください。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 承知いたしました。私は決して総理大臣のあげ足をとるつもりでもございませんから、率直にお答えを願いたいと思うのであります。  私は次にお尋ね申し上げたいのは、自衛力というものは軍備でないという考え方に対しまして、その限界を一体どこに置くかという点は、これは経済的に自衛力というものの限界を認めるのか、装備の上で自衛力というものの限界を認めるのか、この点についてもう一度ひとつ総理大臣のお考えをお尋ねしたいと思うのであります。どの点に限界を置かれるのか、経済的に一応限界を置かれるつもりであるか、あるいは装備の上において限界を置かれるつもりであるか、こういう点を明確にお答えを願いたいと思うのであります。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 かわりましてお答えいたします。自衛力は先ほど申しましたように、国内の平和と治安を維持することを目的とするものであります。ここに私は軍備と大きな限界があろうと考えておるのであります。すなわち目的の点からも、またその内容の点からも、軍備とは全然その趣を異にしておるのであります。軍備はすなわち外国との戦争を目的として武装された兵力であります。すなわち目的が違うのであります。また装備も外国を相手に戦争をするというのであれば、近代戦においては相当な武装兵力はいるのであります。しかし内地の平和と治安を維持する限度において、おのずからそこに軍備との間に大きな内容的の差異があると考えるのであります。要するに、目的と内容の点においてそこに限界があろうと私は考えておる次第であります。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 私はもし日本のいわゆる自衛力というものが、今総理大臣が御説明になり、保安庁長官が御説明になるようなものであるとするならば、もう自衛力の増強というものは限度に来ておると思うのであります。私は先日大蔵大臣に質問申し上げましたから、この際繰返すことはいたしませんが、もしさような意味の自衛力であるとするならば、自衛力というものは限界に来ておると思うのであります。現に保安隊の費用、防衛関係の費用が相当に昭和二十七年度分に計上されておる、予算も使い残されております。しかもそれはいかに政府の御説明を伺いましても、本年度内に使える見込みは立ち得るものではございません。こういうものはもし自衛力の漸増というものが、ただいま御説明のごときものであるとするならば、しこうして国際情勢が総理大臣のお考えになつておるようなものであるといたしますならば、この自衛力漸増というものは限界に来ておる。私はそこで総理大臣並びに保安庁長官に承りたいのでありますが、もう自衛力は現在の限度以上には伸ばす考えは持つていないのであるかどうか。現在の使い余しであるところの費用は、これを国民生活の向上、あるいは経済力の発展、その他の方面にこれを活用することもまた必要であるとお考えになつておるかどうか。自衛力の限界はすでに日本国民経済の上からも、経済力の上からも、国民生活の上からも、諸般の情勢上限界点に達しておると私たちは考えるが、政府もさようにお考えになつて、もうこれ以上自衛力をふやすお考えはないという明快なる御答弁を願いたいと思うのであります。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたします。国内の平和と治安を維持することをもつて保安隊の目的とするのであります。国内の情勢というものは刻々に変化して行く。もとより、御承知の通り現在においては、大きな国際的の力が国内的に動いて来ることも、これは現実の事実であります。従いまして、国際情勢その他国内情勢等は、刻々変化して行くものと考えております。ただいまのところでは、私は現在の保安隊の十一万は、相当なものと考えております。今後この情勢のいかんによりまして、これは予測はいたすことはできませんが、万一国内あるいは国際情勢から見て、日本の内地の平和が保たれるということであれば、あるいは減少することもありましようし、またこれが大きな動きが出て来れば、これは増加しなければならぬということは考えられるのであります。一概に今断定することはできないのであります。

河野密日本社会党(右)

○河野(密)委員 すでに時間が非常に経過しておりますから、簡単に申し上げます。私は総理大臣にお尋ねしたいのでありますが、独立後最初に行われた総選挙によりまして選ばれた本国会を見まして、私は総理大臣に率直に御意見を承りたいと思うのは、現在わが国をめぐつておる内外の情勢きわめて重大であるにかかわらず、現在の政治の情勢というものは、はたして国民の要望にこたえておるものであるかどうか、私は心ひそかに疑わざるを得ないのであります。現在経済界の情勢は、滞貨の山積により、貿易の不振により、失業の増大により、あるいは生活難によつて、きわめて深刻なる様相を呈しております。しかも争議は頻発し、基幹産業における争議が数箇月にわたつて解決を見ていないという現状は、国民に対して不安を与えること重大であると私は存ずるのであります。しかるに過半数を擁して内閣を組織した吉田内閣の政治の現状は、はたして今日独立後のわが国の国民の要求にこたえ、それに応ずるところの態勢をなしているやいなやということについては、私はすこぶる疑いなきを得ないと思うのであります。私たちは本国会の当初に臨んで、総理大臣から内外の情勢の緊迫を訴えられ、いかなる覚悟を持つて国民とともにこの難局を切り抜けるかという、その決意のほどを承ることができると、ひそかに期待をいたしたのでありますが、われわれの見るところによれば、不幸にしてそのことなく現在に至つておるのであります。政局の不安、この国内の緊迫せる情勢に対処して、国民とともに総理大臣はいかなる決意を持ち、いかなる覚悟を持つてこれを乗り切らんとしているのであるか。国民の中に信を置いて、政府みずから陣頭に立つて、この難局を処理するという決意のほどを、一体いつお示しになるのであるか。私はこの点について総理大臣の再思三考を煩わさなければならない点が多々あると存ずるのであります。私は最後に、現下の時局を乗り切るについての政府の覚悟と用意とを承つて、私の質問を終りたいと存じます。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お答えいたします。現在の状況については、私もあなたと憂いを同じゆうするものであります。貿易の現状は、これは世界的の現状でありますが、世界的に貿易の縮小が行われておるのであります。それに対しては各国とも、どうしてこの縮小の勢いをとどめるかということについては、いろいろな政策なり、考慮なり、会議をいたしております。また現在の独立後の日本の経済力の、すべての充実せざる今日において、ストライキとかいうようなことをいたしているときではないのであります。ストライキは、ゆたかな国がいたす一つのぜいたくである。(笑声)笑いごとじやない。日本の今日の状態においてストライキをし、電力の生産をとめ、あるいはまた石炭の生産をとめることは、私はそもそも何のことぞやと言いたいのであります。しかして現状は、お話のようなことになつていることは、政府としてもはなはだ心配いたしておりまして、これに対する善後策については、当局大臣もしきりに苦慮いたしております。しかしてこれをどういうふうにして乗り切るか、これはしばらく政府のやることを、ごらんいただきたいと思います。

小坂善太郎自由党

○小坂委員長代理 成田知巳君。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 私は総理に対しまして、施政方針演説の中にありました愛国心の高揚、道義の向上、それから国内治安の問題、さらに再軍備と憲法改正の問題、最後に補正予算修正をめぐりまして、今政局は微妙な動向に立つておりますが、これに対する総理の所見を承りたいと思います。  第一に愛国心と道義の高揚の問題でありますが、先般この委員会で自由党の植原さんが、国民の愛国心を高揚するためには、政府が向うところを示さなければいけない。そのためには、国際連合に加入すべきである。再軍備もやらなければいけないじやないかというような発言をされたのでありますが、この考え方は、まつたく愛国心を再軍備の精神的な支柱としておる、こう私たちは考えております。自由党の植原さんとはまつたく逆の立場から、愛国心の問題、道義高揚の問題について、総理の所見を承りたいのでありますが、抽象的な論としましては、愛国心の涵養、あるいは道義の高揚ということは、だれ一人反対する者はないと思います。問題はその具体的な内容であります。たとえば愛国心の問題でありますが、戦前、戦争中の旧日本帝国形成の精神的な基礎をなしておつたような、古い愛国心ではだめだと思います。また道義の問題にいたしましても、戦争中あるいは戦前の国民の自由、権利を極度に抑圧したような、古い型の道義ではだめだと思うのです。戦争中に国民儀礼が行われたが、非常に内容の空虚なものであつた。今までの日本人の愛国心というものは、非常に内容のない形式として完成されて来た。りくつ抜きの非常に非合理的な生活感情であつた。特攻隊精神などは、その病的な発現だと思いますが、このようなりくつ抜きの、内容のない愛国心というものは、ただ国を愛するために愛するのだ、国家であるから国を愛するのだ、こういう形式をとりまして、必ずこういう空虚な愛国心というものは、特定の言葉、特定の人、特定のものに結びついたところの仏神崇拝の形をとるということは、歴史が示しておると思うのです。その歴史の示すところによりますと、こういう仏神崇拝の愛国心が行われている社会では、必ず一部の権力者がその愛国心を利用しまして、愛国心の名において国民の自由と権利を抑圧する。総理大臣は立太子式の賀詞の中に、「臣茂」と恐懼感激して述べられたそうであります。この「臣茂」というのは、すなわち君天皇を意味しておるのです。新憲法は主権は在民である。天皇は現人神から人間天皇に下つた。「臣茂」ということは、主権在民の新憲法の精神を否定して、再び天皇の神格化、仏神化を行い、フアシズム支配の温床をつくつているのだ、こう私たちは解釈する。この「臣茂」という言葉は、まさに昭和の大政奉還だといつてもさしつかえないと思うのでありますが、吉田総理はこの点について、いかなる考えをお持ちか、またどういう内容の愛国心をお考えになつているか、承りたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私よりは文部大臣の方が正確にお答えができると思いますが、一応私からお答えをします。愛国心の涵養は、これはだれも異存のないことでありましよう。しかしながら従来の愛国心が単に形式的、空虚の愛国心である、その過去における愛国心の内容等についてはしばらく論じませんが、いずれにしても日本の国土を愛する、日本の国民を愛するという気持がなければ、民主政治は行われないと思います。ゆえに文部省においても、その気持でもつて愛国心の涵養に努めるはずであります。また私が何がゆえに「臣茂」と言つたが、これは賀詞を奉呈した場合の私の立場は、全国民を代表しておる気持を言い表わすべきものと考えましたから、「臣茂」と申したのであります。現に私は内閣総理大臣であります。内閣総理大臣という名前にも、「臣」という字を使つておるのでありますから、臣という言葉はいい言葉であると私は考えております。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 内閣の総理大臣で、大臣であるから「臣」という言葉を使つてもいいということは、これはまつたく言語道断であります。大臣という言葉の内容がかわつておると思います。そういう意味で、この問題はあえて追究はいたしませんが、首相の逆コースの考え方を端的に表明していると思います。  次に道義の高揚の問題について承りたい。私たちは小学校時代から、よく温和であれとか従順であれ、こういう教育を受けて、これが一等いい人格の最高条件だ、こういう教育を受けて来た。しかし温和であれとか、従順であれとか——先ほども総理はストライキの問題などをあげておられましたが、この温和であれとか、従順であれとかいうことは、これは一つの社会環境と相対的なものであります。たとえば今までは温和であれ、従順であれという教育をされて来た。しかし今回の戦争を見たら、日本人はあまりにも温順であつた。時の軍閥官僚にあまりにも無抵抗であつた。そのために今度の戦争が起きたのであります。従つて温和であれとか、従順であれとかいう道徳自体は、抽象的に考えるといい道徳かもわかりませんが、そのときの社会情勢によつては必ずしも最高の道徳にならない。日本人の幸福をもたらさない。私たちの解釈としましたならば、真の道義というものは場……(「政策について言え」と呼ぶ者あり)後ほど申します。自由平等の民主主義精神の徹底、ヒユーマニテイ精神の高揚だと思います。具体的に申しましたならば、うそを言わない行動、これが道義の高揚だと思うのですが、こういう真の民主主義精神のないところには、必ず社会というものは堕落するのです。吉田総理は、総理の方針に対して批判を加えると、必ずごきげん斜めになるのですが、これはやはり批判精神を無視していると思うのです。こういう社会では社会は必ず堕落する、真の道義の高揚はそういうヒユーマニズムの涵養、民主主義精神の徹底昔のゆがめられた温和とか、従順とかいうのは道義ではないと思うのですが、首相の見解を承りたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お答えをしますが、道義の定義は一定不変のものではないと思います。そのときどきによつて国民に対して、国民の道義として何をもつて最も大切に考えて行くかということは、そのときの事情、そのときの事態によるべきものと思います。たとえば私があなたからしてうそ八百の攻撃を受けた場合に、これに対して怒る、これは正直の道徳の発露であります。(拍手、笑声)

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 ちよつと関連して、簡単に一問だけ。

小坂善太郎自由党

○小坂委員長代理 西村君、午後あなたはたつぷり時間をお持ちなんですが——それでは一問だけ。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 ただいまの成田君の質問に対して、吉田総理から、「臣茂」という発言は国民を代表してというお言葉があつたのでありますが、これはきわめて重大であります。     〔小坂委員長代理退席、委員長着席〕  現行憲法では。主権在民が一つの特色となつて基本的に貫かれておる。従つて国民の代表として「臣茂」と言われたことは、私は現行憲法に抵触する不穏当な言葉であると思うのでありまして、これは総理大臣の名誉のために——総理大臣自身が日本の憲法を知らないということであるならば、これははなはだ恥辱でありますから、お取消しになつておく方がいいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 不幸にして私は取消す考えはないのであります。私は、国民の大多数が「臣茂」と言つて一向さしつかえないと考えて私に賛成しておると思います。ないのは諸君ぐらいであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 「臣茂」の問題ですが、総理が総理大臣として言つたのだと、私は一つのユーモアとして一応了解したのですが、今の答弁を聞きますと、まつたく言葉の言い過ぎがあると思うのです。総理大臣として、国民の代表として「臣茂」と言つたということになれば、これは国民主権の新憲法を無視するものだと思います。そういう意味においてぜひお取消しを願いたいと思います。たとえば新国軍の基礎だと保安隊に言つた際に、原稿をよく読んでいないから間違いであつたかもしれない、取消すと率直に言われたのですが、私はそういう率直さがほしいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 率直に申して、私は国民が私の気持に対して必ずしも反対しておるまいと考えますから、取消しいたしません。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 この問題は、時間の制約がございますから、また他の委員会で総理の所見をただしたいと思いますが……(「政策をやれ」と呼ぶ者あり)これからぼつぼつ政策をつきますから……。愛国心涵養の問題ですが、愛国心を涵養するといつても、単に保安隊に行つて愛国心を涵養すると言つてもだめなので、いかにして愛国心を涵養するかとなりますと、やはり国民の大部分、勤労者の愛国心を高揚しなければいけない。そういう人々の生活安定をはかることが愛国心高揚の中心問題だと思います。今までの政治とか教育とかいうものは、今の社会を温存し維持するために、今の社会を守ることがすなわち国を愛するゆえんである、こういう教育が行われて来たと思う。先ほど総理はストライキ問題を言わましたが、これも戦時中、戦前に言われた問題なので、日本は貧乏だ、非常に人口が多い、食えないのだから一生懸命働かなければいかぬ、超過労働もやらなければいかぬ、低賃金に甘んじなければいけない、国内分裂してお互いに争つてはいけない、ストライキをやつてはいけない、こういう思想が瀰漫しておつた。それに対して政府は政治的な圧力さえも加えて来た。今の首相の言葉は、そういう時代を私たちにほうふつさせるのです。今度の戦争で労働者はまつたく苦杯をなめさせられている。今までの政治が一体どういうものであつたかという、政治の本質を知つたと思うのです。従つてそういう愛国理論では、労働者は納得しないと思います。やはり労働者の生活を安定させ、働きがいのある生活環境をつくること、これが愛国心を涵養するところの道であると思う。ところが政府は、たとえば人事院勧告ものまない、仲裁裁定ものまない、あるいは調停案ものまない。これでは国民生活安定、勤労者の生活の安定はできないと思います。従つて愛国心の高揚なんというものは、絵に描いたもちになると思うのですが、総理はいかにして愛国心の高揚をやろうと考えていらつしやるか、具体的に承りたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 愛国心の高揚の一要素として、生活の安定ということは、むろんその通りであろうと思います。生活が安定することによつて、自然道義が高揚され、また愛国心が養成せられるということは、これはもちろんのことであります。しかしながらそのためにストライキをやる、あるいはまた電力をとめるというようなことは、これは生活を脅かすものであつて、かくのごときことをしておつたら、生活の安定はできないのみならず、道義の高揚もおぼつかないと思います。ゆえに政府としては、かくのごとき社会生活を脅かすようなことは極力これを防止したい、このために全力をあげて努めております。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 そういう考え方が現在の社会機構を温存するという考え方なのです。それで愛国心の高揚を労働者に期待することは不可能だと思います。労働者の愛国心の高揚なくして国を守るということは、不可能であるということを申し上げておきます。  次に道義の高揚の方法の問題ですが、先ほど申しましたように、道義の高揚は、民主主義精神の徹底、ヒユーマニズム精神の徹底、具体的に申しますならば、うそのない政治、こう考えているのですが、先般木村保安庁長官が、再軍備の線を明確に打出すべきである、こういう発言を閣議でなさいまして、その後副総理がこの問題について木村長官と具体的に協議され、その翌旦副総理は新聞記者団にこういう談話を発表していらつしやる。現在の国内情勢から、憲法改正を行うことは困難だと思う。この情勢のもとで、憲法第九条がある以上、責任ある政府としてはつきりと再軍備を持つのだと表現することはできないと言つているのです。この表現は私たちはまつたく奇々怪々だと思う。もし内外の情勢上再軍備をどうしてもやらなければいかぬという認識に政府がお立ちになるならば、国民に再軍備の必要を説き、憲法改正をやるのだということをはつきり宣明することが、責任ある政府の態度だと思うのです。ところが、事実上再軍備を進めながら、国内情勢が悪い国内情勢が悪いということは、今憲法改正のために国民投票をやれば負ける。だから情勢が悪いから、再軍備をやるという表現はしない、こういう考え方が今の政府の考え方だろうと思うのです。いくら政府が保安隊は軍隊でないと言つても、軍隊であるということはもう国民の常識なのです。世界の人もみなそう認めておる。小学校の生徒だつて、これが軍隊であるということは知つている。そういうことをやりながら、軍隊でない、軍隊でないと国民にうそをついている。こんな大きなうそをついている政府が、いくら国民に道義の高揚を強調いたしましても、決して国民はついて来ない。こんな大きなうそをぬけぬけと言つている政府が道義の高揚を説くということは、あたかも説教強盗のようなものである。私たちは、うそをつかない教育、うそをつかなくても生活して行けるような社会をつくることが、真の道義の高揚だと思うのですが、総理の所見を承りたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 私からお答えいたします。成田君はいかにも閣議の内容を聞いたかのことく言われましたが、どういうことを根拠にしてそういうことを言われますか、私は奇怪しごくだと思う。私と総理との間に見解の相違は少しもありません。今お読みになつた新聞は何の新聞でありますか。私は新聞でさようなことを公表した覚えはありません。しこうして……。(「あなたが言つたというのではない、副総理が言つた」と呼び、その他発言する者あり)保安隊をもつて軍隊……。     〔発言する者多し〕

太田正孝自由党

○太田委員長 静かに聞いてください。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 私はこれはしばしば繰返して言うように、いわゆる軍隊というのは、戦争を目的とした相当の装備を持つた兵力なのであります。私は繰返して申し上げます。保安隊は内地の平和と治安を維持するための最小限度の力なのであります。これをもつて軍隊ということは、もちろん間違いであろうと私は考えます。決して軍隊ではありません。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 問題を繰返すことを避けたいと思いますが、今木村長官は軍隊でないと言われた。従来の当委員会の答弁でも、目的が違うからだ、こう言つておられる。それでは、保安隊というものは、保安庁法で国内治安のために設けられているということはあるでしようが、しかし同時に、この保安隊がつくられた根本的な根拠は安保条約にあると思う。安保条約の前文にどう書いてあるか。いまだ国際的に侵略国家が絶えない。そうして日本は漸次自衛力を強化して、外国からの武力侵略に対して対抗しなければいけない。従つて外国の武力侵略に対して対抗するという目的も保安隊にはあるはずだ。そうしますと、外国から攻めて来られたときはやむを得ないと言つておりますが、攻めて来られて、これに対して守るために保安隊が出動したとしても、それは客観的には戦争状態なのです。そうしますと、やはり戦争目的のために保安隊が設けられているということになる。目的の関係から行きましても、そういう意味で自衛権の発動は軍隊ではないとか、あるいは戦争でないというのですが……。     〔発言する者多し〕

太田正孝自由党

○太田委員長 静粛に。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 外国が攻めて来た場合に、これを守る戦いというのは、私はいい、悪いということは言わない。別問題です。ただこれが客観的に戦争状態であるということは事実であると思う。そうしますと、戦争の目的のために保安隊を設けている。そうすると、目的からいつても保安隊は軍隊である、こういわざるを得ないと思うのですが、長官の意見を承りたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたします。成田君は、今の保安隊、元の警察予備隊が安保条約によつてできたもののようにおつしやつたが、これは全然間違いであります。安保条約前において警察予備隊があるのであります。警察予備隊も保安隊も、これは条文を読んでくださればきわめて明白であります。現在の保安隊は、わが国の平和と秩序を維持し、人命と財産を保護するために特別に必要ある場合に出動する部隊、こう書いてあります。ここにはつきりした観念が植えつけられるのであります。決して外国と戦いを目的とするためにつくられたものではありません。しこうして外国から不法に侵入を受けた場合にはどうするか。これはしばしば言いますように、私木村個人としても戦います。その場合に国を守るべく保安隊が戦われるのは当然であろうと思う。ただ保安隊はさようなことを予想してつくられたものではありません。今申しました通り、保安庁法において明確に規定されており、国内の治安の維持のためにつくられておるのであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 保安隊はそういう目的でつくられたものでないと言われますが、安保条約にはつきり、外国の武力侵略があつた場合に、これに対抗するために自衛力を増強しなければいけないと書いてある。従つて自衛力の増強のために、外国の武力侵略に対抗するために保安隊がつくられ、これが増強されていることは事実だと思う。従つて、そういう事態が発生した場合に、その自衛の戦争がいいか悪いかということは別問題といたしまして、そういう外国の武力侵略があつた場合に、木村さんは今木村個人としても立ち上ると言われましたが、保安隊ももちろんそれに動員される。そこに客観的に戦争状態が発生する。そうすると戦争目的のために現在の保安隊があるということになる。(「そうじやない」と呼び、その他発言する者あり)

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 自衛力増進のために保安隊がつくられたということをおつしやいましたが、これはそうじやないのであります。自衛力増進を期待するということが書いてある。保安隊の目的は私が今申し上げました通りであります。決して外国と戦いを目的とするためにつくられたものでありません。これは私は繰返して言うております。さつき河野君に対して答弁いたしましたように、軍隊と保安隊との区別は、いわゆる一つの大きな目的の点から、しこうしてその内容、装備の点から、この二つに限界があるだろうと思う。その二つの点から見ても、保安隊は決して軍隊でないと、ここにはつきり私は断言するのであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 この問題はこの程度にしまして、次に再軍備の問題と憲法改正の問題ですが、世上大体憲法第九条を改正することが、今問題になつている憲法改正の問題だと思うのですが、これは私は憲法改正じやないと思うのです。と申しますのは、明治憲法から新憲法に移るときも、時の当局は憲法改正といつておつた。しかしながら新憲法の言葉が示すように、明治憲法は完全に廃止されて、新しい憲法が生れた。国体の変革があつた。この新憲法は申すまでもなく二大支柱に立脚している。その一つは憲法第九条を中心にした平和主義なのです。他の一つは民主主義を基調にしたところの国民の人権の尊重である。この二大支柱の上に乗つかつておるのが新憲法だと思うのです。やるやらないは別としてもし憲法第九条を改正するということはこの二大支柱の一つをなくすることなので、新憲法は根本的に性格がかわると思うのです。従つて憲法の改正じやなくて憲法の廃棄だと解釈するのが正しいと思うのですが、総理はどうお考えになつておりましようか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お答えをしますが、政府は再軍備をいたす考えがなく、従つて憲法改正の考えはいたしておりません。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 そういう意思があるかないかという問題ではなしに、憲法第九条が改正されたときに新憲法は根本的に性格をかえる、憲法の廃棄だ、こう解釈するのが正しいと思うのですが、どうかと御質問したのです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 解釈は御自由であります。しかしながら政府はそういう問題について答弁をいたしません。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 次にこれは当予算委員会でも問題になつたのですが、自由党の星島さんが憲法第九条と国連の武力制裁、国連に対する協力義務の問題に触れられたときにこう言つておられた。すなわち憲法第九十八条第二項の日本国が締結した条約はこれを誠実に遵守することを必要とする、この二項は条約その他の国際法が憲法その他の国内法に優先する、こういう解釈をとつていらつしやる。日本が国際連合憲章の第二条に定めるあらゆる援助を受諾した以上、憲章第四十三条の義務履行のために兵力をつくり、この兵力を国外に派遣することも、条約が憲法に優先する以上、憲法第九条のもとにおいてもやり得るのではないか、こういう質問をしていらつしやる。これに対して総理は、国連に加入を予想して軍隊を置くことは早計である、こう答弁されているだけでありまして、明確なる答弁がなされていない。星島さんもどういう意味かそれ以上追究されていないのでありますが、国際法と国内法といずれが優先するか、自由党の方はよく横田喜三郎博士の説をとられるのでありますが、御承知のように、美濃部達吉博士は横田氏とこの問題について論争している。一定した解釈はまだ学界にもついていないと思うのですが、私たちの解釈では、憲法第九十八条第一項で憲法は国の最高法規であるとし、第二項で政府は条約を遵守しなければいけないので、憲法の範囲内において条約を締結し、その条約を遵守する義務がある、そういうものは精神的な規定である。従つて当然憲法が条約に優先する。従つて自由党の諸君、特に星島さんが考えておられるように、憲法の解釈で条約が憲法に優先するという考え方で兵力をつくつたり、兵力を国外に派遣することは許されない、こう考えるのでありますが、政府の所見を承りたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 政府はもとよりでありますが、いかなる政府でもおそらく憲法の規定に基きましてその範囲内で条約をつくることに実際はなると思います。法理論は専門家に別に御説明願うことといたします。従つてわれわれが憲法に違反するような条約を結ぶわけはないし、また条約なるものは必ず国会の承認を得るわけでありますから、そのときにも十分なる審議の期間があると考えております。しかし現実の今御指摘になりました国連憲章との関係の問題は、これはいろいろ意味が違いまして、たとえば軍隊のない国は国連に入れないかというと、そうではなくして、現に軍隊がないから軍事上の義務は果すことができないということを声明した上で、国連に加入しておる国もあります。また実際上軍隊を持つておる加盟国でありましても、特別の協定を結んだ上でなければ、安保理事会の決定に基いて軍隊を派遣する義務は出て来ないのであります。しかるに今特別の協定を結んでいる国は一つもないわけで、現に朝鮮の出兵のごときも、あれは総会の勧告に基いて、それをやつた方がいいと思う国だけが自発的にやつておるので、国連に加入したるがゆえに軍隊を持たなければならぬという義務も法律的には出て参りませんし、またかりに軍隊を持つておつても、これを海外に派遣しなければならないという義務も、特別な協定がない限りは出て来ないわけであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 憲法に違反するような条約をつくる意思はないと言われますが、これは当然のことであります。問題はすでにその再軍備の方向を促進しようとする線から、この憲法解釈で条約は憲法に優先するのだ、だから第九条をそのまま存置しておいても、軍隊をつくることは決して憲法違反にならない、こういう線が強く出て来ておる、そこに問題がある、そこでこの条約と憲法はどつちが優先するか、この法律的な見解を政府当局にはつきり承つておきたいのです。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 お話の通りに、学問上の問題としては、相当有力な説として、条約は憲法にまさるということを言つておる説がございます。しかしこれは最近においてはどの程度有力であるか、多少疑いを持つわけであります。学問上の問題は別といたしまして政府といたしましては、たびたびあらゆる機会に申し上げておりますように、御承知のように、憲法第九十九条の条文がございまして、天皇から国務大臣、それから国会議員、その他の公務員は、この憲法を尊重しなければならぬということが書いてあるわけであります。従つて条約の締結に当ります公務員も、あるいは御審議になります国会議員も、当然その内容は憲法に適合するようにという心構えのもとになさるものであり、またなさるべきものであるというふうに考えておりますから、憲法に違反するような条約を締結されることは、今の条文からあり得ないというふうに思つております。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 外務大臣の答弁と法制局長官の答弁は同じなのです。そういうことはあり得ないだろうというのですが、私はそうではないのです。私の聞いておりますのは、法律の専門家として条約と憲法とどちらが優先するか、これは学界でも問題になつておりますが、政府としてはどちらの解釈をおとりになつておるか。先般の委員会で法制局長官は、条約というものは憲法のわく内で締結さるべきであるというような御発言があつたと思います。これはやはり憲法が条約に優先するのだ、こういう前提のもとに御答弁になつたものと私たちは聞いておりましたが、どちらが優先するか、この問題ははつきりと法律専門家の立場として政府の意見を述べていただきたい。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 小出しに申し上げまして恐縮でありますけれども、ただいま述べましたことは、条約は憲法に優先することはないということを頭に置いて、申し上げたわけであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 大事な問題ですから念を押しておきますが、条約が憲法に優先することはないということは、反対解釈をいたしましたならば、憲法が条約に優先するのだ、こう解釈してよろしいわけですね。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 その通りにお考え願つてけつこうであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 次に総理に国内治安の問題についてお尋ねしたいと思います。総理の施政方針演説で在日朝鮮人問題に触れられまして、日本に居住する限りわが国の法秩序を尊重すべきは当然である、日本の治安を乱す一部不法分子に対しては厳重取締りを行う方針である、こう言つておられます。日本の治安を乱す者を取締ることはこれはもう当然である、従つて一部朝鮮人の中に、日本の治安を乱す者があれば、これを法に照して厳重処置されることは当然であります。しかし問題は、私は朝鮮人問題と同時に考えなければいけないことは、いたずらに朝鮮人の問題だけを取上げることは片手落ちである。たとえば最近国警本部の報告を見ましても、講和条約発効後九月末までに、アメリカその他の外国の軍人が、日本で犯した犯罪というものが千九件ある。約五箇月のうちに千九件ある。考えようによつては、朝鮮人以上に外国軍人が日本の治安を乱しておるのです。殺人、強盗、強姦、窃盗を行つておる。またいわゆる赤線区域で日本の風紀が乱されている。こういうわけで、朝鮮人の問題を考えると同時に、外国の軍人が、いかに日本の治安を乱しているかということを考えなければいけない。同時に、最近国会で問題になりました鹿地亘氏の件でありますが、今までの犯罪は外国人が個人としてやつた犯罪なのです。しかし、今回の鹿地亘氏の事件というものは、アメリカの政府機関が鹿地氏を不法に監禁しておる。日本人の生命財産に重大な脅威を与えておる。こういう観点から見ましたならば、外国軍人の治安を乱す者を厳重に取締る。そのために政府は今までどのような処置をとられたか。軍紀の確立について外国軍隊当局に申入れをされたことがあるかどうか。さらに鹿地亘氏の事件は非常に重大な問題です。一外国人のやつたことではなしに、アメリカの政府機関がやつた問題です。これについて政府はどのような考えをお持ちになり、今後どういう処置をとられようとしているか、承りたいのです。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 朝鮮人の問題につきましては、これは何と申しましても、過去ずつと朝鮮人の犯罪ということが非常に大きく取扱われておりまして、国内でも非常にこれは問題なのであります。国連軍についての犯罪、あるいは米軍についての犯罪、これももちろんあります。ありますが、これについてはまた別の方法をとつております。ただいまもおつしやるように、軍紀の粛正といいますか、これについても何回となく先方に申し入れておりまして、また先方の司令官はそれに基きましてであるか、あるいは自発的であるか、とにかく部下に非常に厳重な訓令を出しておる。その結果、たとえば呉地区などにおきましても非常に著しい改善が行われておると私は了解しております。また鹿地氏の事件につきましては、占領中に軍の安全を乱すというような場合に逮捕、拘禁するということは、政治的にこれが正しいかどうかということは別として、法律的にはなし得ることである。但し独立後に日本国民を監禁したり迫害したという事実があれば、これはもう明らかに不当なことであります。ただ、ただいまのところは、非常に正確に真相が把握できない状況でありまして、国警当局におきましても、今、いろいろの方法で真相を確かめるべく努力をしております。アメリカ側にも真相がわかり次第、早くこちらに報告するように要求いたしております。昨日もアメリカ大使館側から、もし当該の人間が、さようなことを行つたとすれば、十分なる処置をとるということも発表いたしております。もし、講和後にそういうことがありますれば、必要なる、十分なる措置をとらなければなりませんが、ただいまは真相がはつきりするのを待つているというところであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 必要なる措置をとるというのですが、必要なる措置のうちには、責任者の処断ということが含まれておるだろうと思うのですが、さらに鹿地氏からするところの民事上の損害賠償の問題、これは当然その損害賠償に応ずるだけの義務があると思うのですが、外務大臣の御見解はいかがですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 普通そういう場合には、たとえば責任者の処罰、再発の防止あるいは損害の賠償とか謝罪とか、いろいろのことが考えられるのであります。昨日も問題になりましたように片方では某国に対するスパイの容疑があるというようなことが出ております。また鹿地氏のこれに対する反駁の言葉もありましたので、われわれとしては一にこれは警察なり検察当局なりの真相の決定を待つ以外にないのでありまして、目下それを待つておる状態であります。その結果に基づきまして、今申しましたいろいろのものの中のどれを要求すべきものであるかということもきまるわけであります。真相がきまらないうちは、どうも何とも申しようがないわけであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 もちろん真相を究明しての問題だろうと思いますが、私たちが新聞紙上で承知しておる事実があつたとすれば、単に責任者の処罰だけでなく、損害賠償の要求も当然発生し得ると思いますが、外務大臣はどうお考えになりますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 ただいま申しました通り、真相がわかりますれば、そういう問題も当然起るべき場合もありますし、また起らない場合もある。これは一に真相がわかつてからのことであります。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 最後に、法務大臣に朝鮮人問題についてお尋ねしたいのですが、先ほど申しましたように、国内の秩序を乱す朝鮮人を、法に照して処断することはけつこうだと思うのですが、と同時に今、日本におります在日朝鮮人の大部分は、古くから日本にいて、この日本の風土に根をおろした人が多いのであります。また戦争中に強制的に朝鮮から連れて来られて工場、鉱山で強制労働に服さしめられた人が非常に多いのでありますが、朝鮮と日本とは地理的に見ましても、歴史的に見ましても、今後相提携して行かなければならない両民族だと思います。他の民族を抑圧するような民族は、決してそれ自身自由でないという言葉がありますが、やはり日本政府としては、日本における少数民族である朝鮮人問題はよほど慎重にお考えになり、方策をお立てにならなければならぬと思うのであります。今までのような弾圧一点張りでなく、取締り一点張りでなしに、朝鮮人の生活を安定さすとか融和をはかるとか、こういう具体的な政策を打出すべきときだと思うのですが、法務大臣はいかがお考えでありますか。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 まことに御趣旨御同感でございますが、いろいろ国内の治安を乱す朝鮮人に対しては、断固とした処置をとりますが、それだけに朝鮮民族としての誤解も起りやすいことでありますので、三十年、長い人は五十年近く日本に住んでおつて、ほんとうに日本の風俗習慣に融和しておる、この人たちに対しては、永遠に朝鮮は隣の国でありますから、その観点から善隣友好の気持でもつてできるだけ協力をする。生活に困つておる朝鮮の人たちに対しては、十分な積極的な手を打つて行きたいと考えております。朝鮮人問題は、ほかのアジア人に対しても一つの参考材料となるのでありましてこの意味でわが国の朝鮮人に対する対策というものは、きわめて重要な意味を持つておると私は考えております。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 具体的に何か方策を考えておられませんか。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 さしあたつてやつておりますことは、生活補助であります。これには相当の金が出ております。数字はまたいずれ申し上げたいと思います。そのほか強制送還のわくに入つておる人も、規則の上では一括されておりますけれども、気の毒な事情、たとえば国内に家族の大部分が長く住んでいる、その人が何か故郷が心配で帰つてから、また心配のあまりに今度こちらに密入国して——密入国を政府が真正面から奨励するわけには行きませんし、同意するわけには行きませんが、しかしそういう場合は特に法務大臣がもつともと認めるケースをつくりたい、また努力をいたしております。それから気の毒な人の場合には、特に現地に長距離電話をかけたり電報を打つたりして、その人の始末の決定が早まらないような処置をいたしております。

成田知巳日本社会党(左)

○成田委員 今強制送還のお話が出ましたが、現在政府として朝鮮人の強制送還を予定しているのは、どのくらいの数に達しておりますか。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 ただいまそらで覚えておりませんが、さつそく調べまして御報告いたします。

太田正孝自由党

○太田委員長 中曽根君。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 総理大臣はたいへんお疲れのようでありますから、簡明に御質問をいたします。簡明に御答弁をお願いいたします。総理大臣にお尋ねいたしますから、ほかの大臣の御答弁はいりません。  吉田内閣の国務大臣の発言に関して、先般来保安庁違憲問題があるが、この問題に関する発言に関して総理大臣にお尋ねいたします。吉田内閣の木村国務大臣は、外務委員会と予算委員会においてまつたく異なる発言をしております。外務大臣もまたしかりであります。証拠をここで申し上げます。十二月六日土曜日の外務委員会において並木委員の質問に対して木村国務大臣は次のように答えております。簡単にその場所だけ申し上げます。「御承知の通り、人命安全に関する国際条約は申すまでもなく「国際航海に従事する船舶」と書いてある。従いまして本件で問題になつております米国から譲り受けます船舶は、国際航海に従事するものではないのでありますから、この条約の適用は受けないとわれわれは考えている次第であります。」下田条約局長も同じように答えておる。ところが翌八日の予算委員会におきまして木村国務大臣は「従いましてこれらの条約は、当然警備隊の使用する船舶には適用があるわけでありまして、」と答えている。すると、外務委員会における答えと予算委員会における答えがまつたく食い違つております。これが第一です。外務大臣はその際、私が、木村国務大臣と同じ意思であるかと聞きましたら、相談してやつたことでありますから同じであります、こう答えて外務省の条約局長の言葉と外務大臣の言葉がまつたく食い違つておる。しかも八日においては、この委員会における外務大臣の発言、木村国務大臣の発言と、外務委員会における外務省の政府委員の発言がまつたく相齟齬しておるのであります。  第二に問題とすべき問題は、同じくその委員会におきまして、佐藤政府委員は、私の質問に対しまして「今の場合は、条約はある、しかしそれに対応する国内法はないという場面になるわけであります。そういうことは、今御指摘の憲法の第十八条の条文にもございますように、条約はそのままの形において国内法的な力を持つということは、今までの法律一般の常識として考えられておるところで、ございまして、」云々と述べまして、その言うところは、要するに、国内法の法律で、条約を受けた法律の条項を排除した場合には当然条約がそこへ占領して来て、従つて条約が有効であるから何も立法措置は必要でない、こういう答弁をしております。現にその証拠として最後のところで「当然にこの執行については保安庁の中で内部の規則をつくるなり、あるいは実質上の訓令においてこれは果し得ることでありますから、法律上の心配はないということになります。」と言われておる。われわれの見解においては、条約を受けた法律の条項を積極的に法律で排除している場合には、条約の義務条項も適用されない、従つて当然そこには立法措置を必要とする、権利義務の関係であるから立法措置を必要とする、こういう見解を持つておつて法律を必要とすると考えておる。しかるに木村国務大臣ないしは法制局長官の答弁は、法律は必要でない、事実上の訓令その他でよろしいと明言しておる。ところが憲法第十三条によれば、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」つまり、権利義務に関することは法律でやらなくちやならぬというふうに書いてある。のみならず該条約の第二条に次のような言葉があります。第一条の第二項であります。「締約政府は、人命の安全の見地から船舶がその目的とする用途に適合することを確保するように、この条約を充分且つ完全に実施するのに必要なすべての法律、政令、命令及び規則を公布し並びにその他のすべての措置を執ることを約束する。」「並びにその他のすべての措置を執る」ということは、法律政令等の法的手続は同時に並行してやれという意味であります。従つて、この条約違反ということもここに構成している。のみならず、国内法の手続を見ても、内閣法第十一条に「政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。」とある。政令においてすらしかりであります。つまり、国民の権利義務に関係することは法律の委任がなければできない、訓令ではできない。ところがあの条約に要求している義務は、国民の権利義務、生命、財産に関することです。財産を捨てることもあります。そういうことであつて、当然この内閣法を見ても——あるいはさらに、国家行政組織法第十二条に「各大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基いて、それぞれその機関の命令(総理府令又は省令)を発することができる。」とある。つまり、総理府令あるいは省令を発する、あるいはそれ以下の訓令を発する場合には、必ず法律もしくは政令を施行するための手続規定である、こういうことが明瞭であります。従つて、政府が訓令その他でこれを代用しようとしたことは国内法違反であり、かつ条約に対する重大な違反であります。これは歴然たる事実であります。こういうような誤りを国務大臣たる木村氏、あるいは岡崎氏、あるいは政府の主要なる政府委員である佐藤法制局長官は現実に犯しておるのでありますが、これに対して総理大臣はいかなる責任をおとりになるか承りたいのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 一応関係大臣その他から御説明をお聞き願います。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 総理大臣の御答弁の意味がわかりませんでしたけれども、私が冒頭に申し上げましたように、ここに現実にある速記録を読んで申し上げたのでありまして、この事実はもうお聞きの通りであります。あなたは、内閣の主宰者としていかなる責任をおとりになるかということをお答え願えればいいのです。国務大臣そのほかの政府委員の答弁は必要でありません。総理大臣の責任はいかにしてこれをとるか、国務大臣にいかなる責任をとらせるかということをお聞きしたいのです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 一応関係大臣の説明をお聞きください。しかる後に私の意見を述べます。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 御説明を申し上げます。御指摘の第一点は、外務委員会と当予算委員会との関係における発言についてで、ございましたが、これは、当時中曽根委員の御指摘によつて、木村国務大臣からこの予算委員会においてお答えしたものが正確であるということを申し上げておるわけであります。その点において十分御了承を願えることと存じます。  それから私の答弁に関する部分は、これまた速記録をごらんいただければ十分おわかり願えることと存じますけれども、御指摘の基本の問題は、要するに、条約というものは国内法の中継ぎがなければ一切適用にならないものかどうかということが根本でございます。その点については、これも速記録に出ております通り、当時申し上げておりますから繰返すことはいたしませんが、ただいま御指摘になりましたこの条約の第一条の(b)との関係、これも繰返しになりますけれども、一応申し上げておきたいと存じます。結局この条約に対応する国内法がない場合に、その条約は国内に対してどういう関係を持つかという根本原理にまた基くことにはなるのでありますけれども、その根本原理については別といたしまして、第一条の(b)にあげておる条約実施のためにどういう方法をとるかという、この(b)の趣旨とするところで尽きるわけであります。「法律、政令、命令及び規則を公布し並びにその他のすべての措置を執ることを約束する。」といつておりますのは、必ずここにあげているもののすべてをやらなければならぬという趣旨でないことは、事柄の性質上当然でありまして、それに締約国はおのおのその国内法令の建前を異にしておるわけでありますから、ある国におきましては法律を出さなければならぬ国もありましよう、あるいは政令によつて足る国もございましよう、場合によつては内部規則、あるいは規則にまで至らぬその他の訓令等の措置によつてなし得る国もあることは、これはもう国際関係から申しまして当然のことであります。決してこの条約がここにあげておる法律、政令すべての措置を機械的にとれということを命じておるものでないことは、事柄の性質上当然だと思うわけであります。そこでわが国の場合におきましてどうかと申しますと、国際条約というものの内容としては、国民に拘束力を及ぼすという問題になる面と、それからそれを結んだ国そのものに拘束力を及ぼすという面と、これは考えれば私は二元的に考えることができると思います。それでかりに国民に拘束力を及ぼす面についてこれをとらえますと、あるいは別に国内法をつくつてその条約の実施を遺憾なからしめる、あるいは条約には罰則はございませんけれども、その国民に対する関係では罰則のついた法律をつくつて、そうして励行を担保しようということは、これは立法政策の問題として当然考えられることでございます。ところが今回の場合は、その関連から見ましても、これは保安庁、警備隊という国の船でございます。どこから見ても当然国が条約締結者である以上は、拘束を受けることは問題にならないことなんです。そこでこの場合から言いますれば、たとえば訓令をもつて足ることは、訓令をもつてすれば十分励行できるという判断の問題になるわけであります。あるいは政令の方がいい、法律の方がいい——それはもちろん法律を出してはいけないとは、私は決して申し上げませんけれども、理論上の問題としては、訓令をもつて足る場合には訓令でもつてよろしいということになるのは事理の当然であろうと思うわけであります。訓令の権限につきましては、御承知の通りに行政組織法に根拠のあることでありますから、その点はそういう御心配はいらないのじやないかというふうに考えておるわけであります。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 外務委員会で並木君に対する答弁、多少言葉の足りぬところがあつて誤解があつたのでありますが、要するに保安庁が使うところの船舶は、国際航行に従事する船でないから、大部分条約の規定の適用は受けないということを言うべきはずのものを、条約の適用を受けないと言つてそれで誤解を招いたのでありますから、それはこの予算委員会において、中曽根君の質疑に対してお答えしたものが正しいものであると御了解を願いたいといつて、前の外務委員会の発言を私は取消したような次第であります。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 今の木村保安大臣の答弁がまた詭弁であることは、先ほど申し上げた通りであります。もう一回読みます。大部分であるとか小部分であるとかいうことは問題じやない。ここに書いてあることは「この条約の適用は受けないとわれわれは考えている次第であります。」これが十二月八日になると、「当然警備隊の使用する船舶には適用があるわけでありまして、」適用があるなしがここではつきり出ておる。それからただいまの法制局長官の答えが、いかに詭弁であるかということは第一、国際条約の第一条第二項に違反していることは、先ほど読み上げた通りでありますが、国内法については憲法十三条、権利義務に関することは法律でやれ。ところがあの条約の中で要求していることは財産を否認するとか、そのほか国民の権利義務に関係することがある、あるいはさらに考えれば、認可許可等についてもあります。しかも内閣法の第十一条、あるいは国家行政組織法、先ほど読んだ通りです。訓令や政令というものは法律を受けてやるものである。そうして権利義務に関することはすべて法律でやらなくてはならない。これは内閣法や行政組織法の趣旨であります。従つて条約の内容に権利義務を要求するところがあれば当然これは法律でやらなくてはならぬ。現に政府はわれわれの方に屈服して、では保安庁法を改正して法律をつくりますから、何とかかんべんしてくださいと言つて来たのは何であるか。自分が間違つておるから言つて来たのではないか、そういうことを見ても、法制局長官や国務大臣が申した答弁は明らかな詭弁であります。厳然たる事実であります。吉田総理大臣はこの事実に対していかなる責任をとらせるか、またおとりになるか、重ねて伺いたいと思います。——総理大臣の御答弁を求めます。

太田正孝自由党

○太田委員長 総理大臣、御答弁なさいますか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 政府委員から…。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 総理大臣から答弁を願います。ほかの大臣ではだめです。内閣の首班者の責任をわれわれは聞いておる。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 国務大臣、政府委員の説明をもつて私は満足いたします。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 総理大臣は憲法違反や条約違反をそのまま放置するというのである。恐るべき総理大臣であります。国務大臣の木村氏は、さらに重大なる国会に対する欺瞞行為をやつている。それは清原通達の問題であります。先般清原通達に対して国会に公表した文書は偽文であつて、原文はさらに追加されているものが原文なのである。それはどういうところであるかというと、清原通達は法務府検務局検務第二〇二六九号というので、六月二十三日に各検事長あてに出したものであります。ところがこの中で次の言葉を削除して国会へ公表した。その第一は「この基準は特に外交上の理もあるので、極秘扱とし、国連側に対してもこれを内示しないこと、但し実際に事件を取扱う地方検察庁及所轄警察の責任者に対しては、極秘の旨を念達して、この基準の写を交付するよう取計われたい。」第二は「この基準と、本年五月十七日附検務第一五九三八号「外国軍の将兵に係る違反事件の処理について」の当職の通牒とが抵触する場合においては、この基準が優先するものであること」この通達は検務長官、刑政長官が極秘扱いをして、ナンバリングを打つて各検事長に配付した、そうして絶対国連軍に見せてはならぬといつて訓令を出した。なぜこういうような重大なことを国会に対して隠して出して来たのか。これがイギリスのスパイに盗まれて、英連邦の手に渡つて、その結果英連邦は香港貿易をとめて、日本の貿易はそのためにストップしたというような、重大な経済的事態まで起きている。なぜこのような不信行為を国会においてやつたか、もう一回ここで木村大臣の責任を問う次第であります。     〔「新しい問題はいかぬ」その他発言する者あり〕

太田正孝自由党

○太田委員長 中曽根君に申し上げますが、先ほど申し上げました通り、紳士協約と申しますか、残されたる問題について……。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 責任問題です。

太田正孝自由党

○太田委員長 責任問題にしても、それは信義の問題であります。われわれの約束がそこにある限り、この点は一つだけということですから許しますけれども、(「反対」と呼ぶ者あり)もうこれであなたの問題は残されたる問題はない、この問題一つだけ……。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 まだあります。

太田正孝自由党

○太田委員長 それならばなぜ残されたる問題を先にしておやりにならないか。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 重大な問題です。

太田正孝自由党

○太田委員長 重大不重大ではございません。委員会の……。     〔「理事会できめた範囲を逸脱しているじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 答えられないからそんなことを言うんじやないか。これは委員会の発言と同じことです。これと関連しているじやないですか。答えてください。     〔「答弁する必要はない」と呼び、その他発言する者多し〕

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 ちよつと中座をいたしておりましたが、御質問は清原通達を法務委員会で発表したのがにせである、こういうことでございましたか。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 そうです。何ゆえここを削除したかということです。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。本文ではございませんが、前文をいかにも削除いたしました。それは事外交上に関係がございますので、もし発表をいたすとすれば、秘密会を要求しなければならないと思いました。しかし当時英濠兵事件で非常に輿論が沸騰しておりますときに、かりに秘密会で清原通達を配るということは、外交上もまことにいかがかと思いましたので、前文を削除し、本文を全部提出いたしましたわけでございます。     〔「それで終りだ」と呼ぶ者あり〕     〔中曽根委員発言を求む〕

太田正孝自由党

○太田委員長 今、一問だけでいいとうことでしたから、私も寛大な取扱いをいたしました。中曽根君の質問はこれで終りでございますか。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 さきの問題にもどります。条約の問題にもどります。     〔「許可する必要なし」と呼び、その他発言する者多し〕     〔中曽根委員発言を求む〕

太田正孝自由党

○太田委員長 ちよつとお待ちください。——中曽根君に一時一分まで発言を許します。

中曽根康弘改進党

○中曽根委員 私が清原通達のことを言つたのは、木村保安庁長官がいかに不信行為をやつているか——外務委員会と予算委員会との齟齬もその一つである。その例証をあげて言つただけであつて、木村国務大臣の責任をあくまで追究するものだということを言つたのです。犬養法務大臣が御答弁になりましたが、こういう重大な削除をするについては、政党の党首なりあるいは委員会の理事なりに話してやるべきではないか。これはエチケツトである。外国においても、当然そういうエチケツトがあつて、秘密会をやつておる。アメリカにおいては、原子爆弾に関する事項ですら、野党に話して秘密会でやつておる。それをこういうふうにやつているというのが、独善、秘密的なやり方であつて、われわれのあくまでも責任を追究しようとするところである。  次に総理大臣に質問をいたしますが、総理大臣は国務大臣や政府委員の答弁をそのまま了承されておるようでありますが、しかし私はこの問題に関連して、責任というものについてあなたに特にお尋ねいたしたいと思うのであります。大臣が委員会で言う言葉がまつたく食い違つておる。これは吉田内閣の通有性であります。特に日本が占領されてから、言葉の責任というものが非常に稀薄になりました。総理大臣の今までの答弁を聞いておると、あらゆる場合に遁辞で逃げておる。民主主義の根本は言葉に責任を持つことであります。国会の発言に責任を持つことであります。その責任がなければ民主主義というものは成り立たない。現にこの木村氏の発言もそうであり、外務大臣の発言もそうであり、政府委員の発言もそうであるが、吉田総理大臣に至つては、たとえば先般この場所において解散問題を片山氏が聞かれたときに、いや国民の多数が支持しておるから間違いではないのだ、こう言われておる。しかし憲法の解釈問題と、多数が支持するか支持しないかという問題とは別個であります。それを混同して、多数があればいつでも善である、多数をもつて臨めば真理である、こういう重大な間違いを総理大臣は犯しておられる。あるいはさらに秘密外交の問題について、この憲法のもとでは秘密外交はできませんと言つておる。しかし法律があつてもどろぼうがあるじやありませんか。法律のあるところにどろぼうなしというのがあなたの論理である。しかし現に憲法があつても、こういう重大な憲法違反をやつておる吉田さんはそれと同じことだ。こういうことは外務委員会とこの予算委員会の間でも行われておる。こういう風潮が続く限り、政治に対する信頼感はわきません。  ただいま総理大臣は立太子の賀詞についても言われた。しかし私はあの賀詞は総理大臣、老宰相が青年皇太子に対してお祝いの御祝儀を申し上げておるのだ、こういう意味で私は善意をもつて聞いておつた。しかし先ほどのお答えを聞きますと、これは重大な問題です。あの賀詞の中には、たとえば皇太子に対して「天序ノ統ヲ承ケ」という言葉がある。天の秩序の伝統を承け、——これは明らかに君主神権説のような印象の言葉である。あるいは「皇基愈々泰ク」という言葉がある。そういう言葉はすべて飾りであろうと思つて、セレモニーの御祝儀として善意をもつて聞いておつた。しかし今の総理大臣が臣という言葉を敷衍したことは、ますます誤解を呼びます。私は吉田老宰相が、青年皇太子に対して、国民を代表してお祝いの御祝儀を述べたのだと思います。しかしこの点は重大な問題でありますから、総理大臣の真意をもう少し敷衍して述べていただいて、間違いのないようにしていただきたい。これが一つ、第二はただいまのような言葉の飾り、あるいは詭弁を弄して、責任を回避してはならぬ、これが民主主義の基本である。この点について総理大臣はいかなるお考えを持つておるか、明確にここで聞きたいのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 第一の点は私の説明でもつて私は満足いたします。あなたの満足するしないは別であります。また第二の点につきましては、これは先ほども申した通り政府委員の説明をもつて政府の説明と御承知を願います。

太田正孝自由党

○太田委員長 午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議

太田正孝自由党

○太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  井出一太郎君。——井出君に申し上げますが、総理大臣はよんどころなき用事がありまして、四時ごろ退席しなければなりません。そういう事情でございますから、質問の御都合もありましようが、三人の方々とも総理大臣に対する質問を先にやつていただきたい、さようお含みを願いたいと思います。

井出一太郎改進党

○井出委員 総理は御不快で、それを押しておいでになつておるように伺いますので、私の質問は、大蔵大臣その他との相関的関連もございますが、委員長から、特に総理に集中して切り上げてやつてほしい、こういう御要請がございました。大体その趣旨に沿つて、以下お尋ねをして参りたいと思います。  ただいま補正予算案は最終段階に入つて参りました。おそらく両三日を出ずして本会議に上程をせられる段階のように思うのであります。しかして一方野党の側においては、修正案の協議をいたしつつあるので、ございましてこれもあとわずかの時間で意見の調整ができる、こういう段階にあるように聞いておるのでございます。私どもは、この予算がもとより補正であるということを前提にして論議はいたして参りましたが、なおまだ幾多不満の点があるのでありまして、近く修正案の内容を各位に提示して、御賛成を得たいと考えております。そこで総理におかれましては、こういう段階において、弾力性をもつてものをお考えいただきたい、こういう気持から、そういう際には何らかの考慮の余地があろうかどうかこれをまずお伺いいたすのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 御趣意は、予算を変更する用意ありや、こういうことですか。——そうすると、ちよつと具体的のお話でありませんからして、何ともお答えができませんが、むろん政府としてはでき得るだけの譲歩もし、また予算の成立を希望するわけでありますから、修正案としても、妥当な修正案を出していただけば、勘案いたす余地も自然生ずるだろうと思います。

井出一太郎改進党

○井出委員 まず前提として総理からそういう御返事をいただいたのでありますが、私どもが今回の予算案を検討いたした場合に、相当大幅の修正も可能であろう、こう考えておるのであります。おそらく大蔵大臣におかれましては、何か陰の財源というようなものをポケツトにお持ちになつていらつしやるのではなかろうかと思います。あなたは先ごろの予算作成の際に、あれやこれやと各省からせびられた結果、まるでこれでは道楽おやじが金を使い果して朝帰りをしたかつこうだというようなユーモラスな述懐を漏らしておられまするが、しかし私どもの察するところによると、何か財源というものがありはしないかと思う。たとえば、前年度の剰余金というようなものが四百数十億あるはずであります。財政法の示すところによれば、その二分の一はたしか使えるはずでありまするが、こういうような財源はお使いになるお気持があるのかないのか、これはひとつ大蔵大臣にお伺いいたします。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 財源はただいまは使う考えを持つておりません。

井出一太郎改進党

○井出委員 お使いになる考えがない。そうすると、これは他に何らかの意図を持つていらつしやる。あるいは昭和二十八年度の予算を勘案いたしましたときに、何か財源がなければならぬ、そういうような場合の予備的財源としてそれは繰越されるのでありましようか。この点をお伺いいたします。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 二十八年度の予算のときには、そういう残りましたものは使わなければならないと存じます。初めにおつしやいました、何かポケツトに持つてやしないかということにつきましては、私はこの前の補正予算のときに起りましたような、道楽おやじが帰つて子供にしかられるというふうなわけには参らない。今度はよけいに出しましたから、隠れたものは出て来ないと思います。

井出一太郎改進党

○井出委員 総理大臣の先ほどの御答弁は、合理的なる修正案というふうなものが提示されれば、何らかの考慮を払われるやに私は伺つたのでありまするが、大蔵大臣はさようなものはもう財源としてポケツトにない、こうおつしやいますけれども、もう一ぺん総理大臣、その点をお漏らしいただきたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私の申しますのは、一銭一厘とも負からないという、そういうごくかた苦しい話ではなくて、御相談には応じますが、しかしこれも大蔵大臣のふところにお金がないというのではまたいたし方がありません。けれども、考慮はいたします。また何とかして、御希望が適当な御希望であれば、それは御尽力いたしますと、こういうわけであります。

井出一太郎改進党

○井出委員 総理の御発言は、ただいまの政治段階を考慮されたきわめて意味の深いお考えだ、このようにとりあえず伺つておきまして爾余の問題に入りたいと思います。

太田正孝自由党

○太田委員長 井出君に申しますが、他のお二方も大体御了解くださいまして、約三十分ずつでお願い申し上げたい、こういうことでございますから、そのお含みでお進めを願いたいと思います。

井出一太郎改進党

○井出委員 総理に経済の問題をお伺いするということは、あるいはいかがかと思いますけれども、とりあえず一点だけ…。従来吉田内閣が過去三年、四年やつて来られた経済政策、これを一言におおうならば、ドツジラインと呼ばれるものであつたかと思うのであります。これは占領下という特殊な事情もございまして、あるいはその方面からの強制というようなものもあつたでございましよう。なるほどドツジ氏によるところの日本のインフレ安定、これは確かにその効を収めた、こういうことは、言えるでありましようが、しかし日本の実情をあまりにも無視したところのもろもろの政策がとられたことも、これは間違いございません。国家財政を中心といたしまして、財政だけは健全化する、国家財政の均衡だけは何をおいてもはかろう、これがために地方の財政というものは年々非常な赤字に追いやられたことも間違いございませんし、あるいは財政のしわが金融へ寄せられて、今日のオーバーローンの現象も出て参つておる。あるいは大企業を中心として、大企業のペイイング・ベーシスを考えるということからして、これが中小企業や農業へ犠牲がしいられおる。こういうもろもろの事象が行き詰まりを来しましたのは、昭和二十五年の春ごろであつたと思うのでございます。貿易は不振を来し、滞貨は増大をし、金詰まりが世をおおつておる。しかし幸か不幸か朝鮮動乱という現象がこの事態を救つたのだ、こういうふうにわれわれは見ておるのでございます。吉田さんがここに第四次の内閣をとられるにあたつて、従来のこういつたドツジ経済から一段と飛躍をした新しい経済——池田前蔵相を通産大臣にまわして、ここに向井さんを迎えられたということも、そういつた意図の現われではなかろうか、こうも私どもは考えているのでございます。これは簡単でよろしゆうございます。総理の意のあるところを伺つておきたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 ドツジライン、ドツジラインといわれますが、結局は健全財政ということでありまして、健全財政の線を守るということは、当時において最も肝要なこととわれわれは考えて、ドツジ氏の助言も聞き、そして池田大蔵大臣が当時の予算を提出したのであります。  何がゆえにかえたかという御質問でありますが、これは池田前大臣自身の希望もありますし、またときに違つた方面から財政を考えるということも適当であろうというような考えからしてかえたのであります。

井出一太郎改進党

○井出委員 財政経済の問題は、主として大蔵大臣に関連いたしますので、先ほどのお約束もありますから、これはあとにまわしまして、主として総理にお伺いいたすべき問題だけを先にまとめたいと思うのであります。  先ごろ、これは新聞紙上で情報としてわれわれは承知をしただけにとどまつておりますが、米軍の駐留軍の一部が撤退するのであろうが、こういうことが伝えられました。はたしてこれが事実であろうかどうか。われわれはここに完全独立を回復いたしますためには、外国軍隊の国内駐留は一人でも少い方がいいと思つております。しかしそれは同時に、国内の治安確保という問題ともあるいは関連して来るかとも思うのでございますが、もしそういう事態が起りました場合に、総理は国内治安確保に確信をお持ちになつておられるかどうか、この点を伺いたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 駐留軍の一部撤退という報があるが、ということでございますが、現在政府としては、いまだそういう報告あるいは要請を受けておりません。けだし思うに、アメリカ駐留軍としてはなるべく早く撤退したい、少くとも漸減したいという希望を持つておることは承知しております。しかしながら今ただちに撤退するとか、あるいは減兵をしたいとかいうような要請はいまだ受けておりません。

井出一太郎改進党

○井出委員 このことにつきましては、総理は自衛力の漸増をだんだんにやつていらつしやる。従つてある時期に至つて、国内治安確保のめどがついたという段階が出て参りますならば、米軍に対してもできればひとつ撤退をしてもらいたいというようなお申入れをなさる御意思があるかどうか、これも関連して伺つておきます。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 ただいまお話のような考えはいたしておりません。

井出一太郎改進党

○井出委員 先ごろアメリカの次期大統領になるべきアイゼンハウアー氏が朝鮮戦線へ飛んで来られました。これは大統領選挙における選挙民への公約もあつたろうと思いますが、今後の朝鮮問題ないしは世界情勢にこのことは相当大きな影響をもたらすであろうことは予知されるところであります。この場合、朝鮮に三日間滞在したといわれる。朝鮮に行かれる以上は、日本にも何らかの形で立ち寄られることがあつてもしかるべきであつたという感じが、私のみならず国民一様にあるのではないかと思うのであります。ことに吉田総理は、アメリカとの関係においては和解と信頼に基くといわれる講和条約を受諾され、対米信頼感を強く持つていらつしやる、こういうお立場からするならば、どうも何か少し当てがはずれたのではないかというような感じがいたすのでございます。これは何か総理あるいは外務省方面には、それについてあらかじめ、日本に立ち寄ることあるべしとか、あるいは立ち寄らないとすれば、どうも今回は立ち寄れなくてどうとか、そういつたようないきさつがもしあるならば、お漏らしをいただきたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私も、元帥が日本に立ち寄つて日本の現状を見られたならば、たいへん日米両国の関係からいつてもいいと考えておりましたが、しかしいつ出発せられるということも世間に発表されおらず、またわれわれの得た話では、情報というような四角ばつたものではありませんが、元帥は多分日本に立ち寄られずに、朝鮮へ直行せられて、すぐ帰られるであろうという話はありました。でありますから、何がゆえに日本に立ち寄られなかつたかとか、あるいはただちに帰国されたかという事情は知りませんが、多分これは予定の行動であつたろうと私は想像いたします。

井出一太郎改進党

○井出委員 この間本委員会において、特に現下頻発しておりまする炭労、電産あるいはその他のストライキについて、特別に取上げて論議をいたしたことがございます。今日われわれがこうして審議を続けておりまする間にも、屋外においては旗を掲げたデモが行進をしておる。あるいは日本の動脈ともいわれるべき鉄道が、その運転キロ敷を削減しようとさえもいたしておる。石炭とか電力とかいうような、日本の基幹産業に重大な影響を持ちまするこれらのストライキを、このままで放置をしておつたならば、これはゆゆしい問題だと思うのでございます。すでに年末も迫つておつて、年の瀬を控えた庶民の悩みといいますか困難といいますか、これはけだし想像に絶するものがあるのでございます。先ほどどなたかの質問の中にこの問題が出ましたときに、総理の御答弁は、何かストライキというものはけしからぬものである、この重要なる時期にさようなことをするとはもつてのほかである、と言いかねまじき総理の感覚が、われわれにはうかがえたのでございます。これは、総理はまあ今御不快ではいらつしやるでしようけれども、総理みずから一つの熱意といいますか、愛情といいますか、そういうものを注がれることによつて、この大問題を解決をなさる、これは方法としてはいろいろございましようが、ともかく総理御自体が、この憂慮すべき段階にあたつて何らかの手を打たれることを考えていらつしやるかどうか、これをまず伺いたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 これは私が先ほど申しました通り、日本としては、日本の今日は産業の復興、国力の復興の大事なときに、電産があるいは発電、送電の停止とか、そのために各種の工業に影響を及ぼすということは、お話の通りゆゆしき事態であり、そしてまたまことに憂うべきことであつて、もし関係者が日本の事態を直視したならば、電産のストライキとか、あるいは炭鉱のストライキに出るはずはないと私は思い、これははなはだ遺憾のことと思います。私は遺憾であるのみならず、これは国家を思わざる不届きな話と思います。率直に申せば……。けれども、労働組合その他において相当の理由もあるでありましようから、その理由はあくまで研究はいたしますが、なるべくこれを早く停止するなり、やむような事態にいたしたい。当局大臣もしきりに考えて、また考慮をめぐらし、あるいはその他関係方面との間にいろいろ努力なり協議はいたしております。いかに協議したか、あるいはどういうふうな考えを持つたかということは、労働大臣からお話しいたしますが、政府としては、しばしば申し上げる通り、うつちやつておいたわけではないのであります。しかしながら同時に、私が熱意をもつて云々と言われますけれども、私一人の力では幾ら熱意を示してもこの労働争議を一朝にしてやめさせるということはむずかしい話で、互いに労使双方の間の協議を尽し、でき得べくんば協議のまとまつたところでもつて、合意の上に停止することができれば、これが一番最上の策であり、またその方に持つて行きたいと政府は考えておつたわけであります。

井出一太郎改進党

○井出委員 さつきの総理の御発言は、何か労働者のスト権を否認をされてもするような、非常に高踏的な立場に御自分をお置きになつて、勤労者というものが何かやつかいなものだというような感じを私は受けたものでありまするから、お尋ねをしたのであります。政府は中労委にこれをまかせて、そのあつせんとか調停とかいうようなものにのみ期待をされておるようでありまして、この間まつたく無策に終始をしていらつしやる。たとえば労調法によるならば、緊急調整というような道もありましよう。この緊急調整なるものは、もちろんみだりに抜き放つべからざる伝家の宝刀であることも間違いございませんが、総理はそういうような問題でひとつこれを解決しよう、こういうようなことに思い当られていらつしやいますかどうか、この際承つておきたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 いわゆる緊急調整をするがいいか悪いかということは、政府としてしばしば論議もし、考えたことでありますが、現在とつておる方法が一番妥当なりと考えておる次第であります。

井出一太郎改進党

○井出委員 ただいま白洲次郎氏がアメリカに行つておられるようであります。白洲という人の名前が出まするときには、そこに何らかの妖気がただようような感じがするのでありますが、(笑声、発言する者あり)この人は一体どういう資格で渡米をされておるのでありましようか、これを承りたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 御承知の通り、今日日米の関係は最も緊密な関係におるのであつて新大統領ができ、新政府ができて、そうしていかなる政策をとるか、あるいはまた日本の現状がどうであるかということは、米国政府——前後の政府に対して十分了解をつけておく方がいいと考えて、私の個人代表の意味合いで、財界、政界、その他私の知つておるところ、また白洲君自身が知つておる方面、有力な方面に日本の事情を述べ、また米国の事情を知るために派遣いたしたのであります。

井出一太郎改進党

○井出委員 白洲氏を特に総理が重用されることをとかく申すというのではありませんが、アメリカには新木大使とか有能なるそれぞれの政府諸機関が設置されております。そういう際に、何か屋上屋を架するという感じがいたしますが、総理のプライヴエートな特使ということであつてみれば、公な資格というものはこの人には与えられておるのか。ないしは、たとえばこの人が行くためには国費が使われておるのかどうか。世上いろいろいわれた外資導入というような問題、これらに対しての何らかの使命をも帯びておられるのかどうか。これらの点はいかがでありますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 特命全権大使という域外に、外国に派遣するときに、津島大使のように外務省限りの任命の制度がございます。この大使の前に参与になつておりますが、大使という資格で行つております。但し旅費等は、規定によつて出しましたけれども、一切辞退して受けておりません。

井出一太郎改進党

○井出委員 白洲氏がどういうような使命を果して来られますか、これはしばらく別といたしまして、この人の出て来る幕というものは、常に何かしら不明朗なものをわれわれとしては感ずるのでございまして、これは総理の一つの趣味、嗜好であるかもしれませんが、こういうことがいわゆる秘密外交だとあなたが攻撃をせらせるゆえんにもなるのだろうと思います。  委員長からの時間の督促がございますので、こういう制約を受けておりますと、つつ込むにもつつ込まれず、たいへん不本意でありますが、最後に私はただいまの政局の問題に関連して承つておきたいと思います。  総選挙の結果、なるほど自由党が多数を占め、国民審判の結果は、政権担当者としての自由党の立場が確保されたことは、間違いございません。けれども十月一ぱいというものは、吉田、鳩山両者の抗争によつて、党内はまつたくコツプの中のあらしにはとどまらなかつたようでございます。私はあえて自由党の党内問題を云々するのではなくて、今政局を担当されておる吉田さんのお立場として、このことをあえて申し上げたいのでございますが、十月一ぱいは党内抗争でもつてほとんど明け暮れしてしまつた。さて内閣ができてみてどうかといえば、これまたまことに難航の状態でございまして、総理が股肱の臣と考えておられる池田通産大臣は、すでに閣外へ脱落をして行つてしまつております。吉田さんは非常に個性の強い方であつて、自由党というものの党の意思が、常に吉田さんの個性によつてどのような方向へも導かれて行く。これは言うてみれば、一つの独裁政治へ通ずる道でございまして、この総理の強烈な個性がかえつて逆に今日の政局不安の原動力をなしておる、こういうふうに考えておるのであります。これは今の政局に非常に重大なる関係があるのでございまして、最近新聞紙上に伝えられますように、外は師走を前にいたして、さつき申し上げたようなストの問題、その他庶民の生活は非常に困窮を来しておる。また現内閣はこれに対して適切な手を打たないばかりでなく、内閣自体が非常な動揺をしておるという状況でございます。こういう際に、総理はどういう方向へ政局の安定を求めて行かれようとするのか。私は改進党という立場において、総理からひとつ政局収拾の道を伺つておきたいと思うのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 党内においていろいろ議論があることは、民主政党として当然のことであります。議論百出しても、遂に収まるところに収まるのが民主政党であります。自由党についても、御心配なく願いたいと思います。

太田正孝自由党

○太田委員長 西村君。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私は総理大臣の片言隻句をとらえてあげ足をとろうとは考えておらないのでありますが、しかしながら、先ほどの皇太子の立太子礼に際しまして、「臣茂」という言葉は国民の名によつて奉呈したのであるということは、これは少くとも旧欽定憲法の感覚でありまして、現在の主権在民の憲法下にあつては、われわれ政治家は国民の公僕であつて、天皇の家来ではございません。私はその意味において総理大臣の感覚の是正をお願いしたいのでありますが、時間がございませんから、私はその問題は取消さないという総理大臣のお言葉——これは何と申しますか、人間七十を過ぎますると、精神的にも肉体的にも動脈硬化を来しまして、老いの一徹として一応は承つておきましよう。しかしながら、私はここにどうしても日本国総理大臣の名誉のためにお取消しを願つておかなければならぬことは、先ほど言葉のはずみではあつたかもしれませんが、ストライキはぜいたくであるというお言葉であります。ストライキは決してぜいたくではありません。ストライキをするのは労働者の生活上の問題である。あるいはある一部の人々がストライキを悪用いたしまして、日本の産業組織と社会組織を破壊しようとする政治的ストライキがあるのでありまして、ストライキを起すには経済的、政治的な背景があるのであります。従つてこのストライキを、対立する労使の間における調整をどうするか。ストライキを悪用しようとする方々があるならば、その政治的な背景をどう切断して国家の秩序と産業の平和を守るかということが、私は現下の国家職能の最大なものだと思うのであります。この意味合いにおいて、吉田総理大臣が自分のかわいい犬をつれて箱根にドライヴをされているような、ぜいたくな品物ではストライキはございません。従つて、ストライキはぜいたくであるというお言葉は、先ほど申しましたように日本国総理大臣の名誉のために私はお取消しを願いたいと思うのでありますが、いかがでございましよう。あつさりお取消しを願いたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 ストライキは富んだ国のぜいたくであるということは、これは私が申したのではないのであります。経済学者がそう申しておるのであります。ゆえに取消しません。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 経済学者は経済学者として、それは独自の御見解であります。私はそのことを言うておるのではありません。総理大臣が少くとも議会において、ストライキはぜいたくであるという御発言は、これはゆゆしき問題であるし、総理大臣のこの問題に対する感覚、近代世界思想に対する感覚の程度を疑われるのでありますから、私は外国に対してもこれをはなはだはずかしいと思うので、取消しを願つたらどうか。これは経済学者の言葉ではない、私は総理大臣の言葉としてお取消し願つた方がいいと思うのです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私のぜいたくだという意味は、この前にも質問者に対して答えております。これ以上私は説明する余地はないと思います。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 時間がございませんから、いずれあとまわしにしましよう。今日のストライキの頻発に対して、アメリカは大統領みずから出て重要な争議に対しては解決の衝に当つておられるのであります。日本は今ガスがとまり、電気がとまり、汽車がまさにとまろうとしておる。この社会不安の中に一体政府はいかなる対策をお持ちであるのか、私はこれを率直に承つておきたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 この前も、先ほどの質問に対しても答えておきました。それを御参考に願いたい。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私は、今の労働不安の原因の中に二つあると思うのです。一つは賃金と物価の均衡ということについて政治的な方針を示していない。西ドイツにおいては、たとえて申しますと、重要産業に対しましては、従業員組合側から半数の経営者を出して、労使うまくやつておるのでありまして、この傾向がうまく行つておるというので、重要産業のみならず、一般の産業に浸透いたしまして、遂に本年の十月、労働者側から三分の一を重役会に参加せしめるという法律ができたのでありますが、日本もこの例にならつて現下の労働不安を解消し、同時に将来の経済再建のために、企業家と労働者が協力してやれるような態勢を法制の上におとりになる御意思はないかどうか承つておきたい。

福田一自由党労働政務次官

○福田政府委員 お答えをいたします。西ドイツの例はわれわれも承知をしておりますが、政治というものは、時と所によつて相違しておることは西村さんも御承知の通りであろうと思うのであります。そういう意味において、われわれとしては慎重な態度をもつて臨みたいと思つております。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 総理大臣が答えませんから、私は時間の関係上次に移ります。  先ほど井出君からも御尋ねございましたが、現在は、率直に申しましてまことに政局が不安であります。そこで問題になるのは、今の予算委員会並びに本会議において、政府の提出された予算案に対しまして重要なる修正を受けるか、あるいはまた船舶貸借協定その他について政府の原案が否決された場合においては、これは政府の職責上欠けるところが生ずるのでありますが、その場合においては、吉田総理大臣はいかなる対策をおとりになるか。解散をなさるのか、総辞職をなさるのか、いかなる方法において政治的責任をおとりになろうとするのであるか、それを承りたいと思うのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 その場合において考えます。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 多分そういうお答えがあるだろうと思つたのであります。そこで私は総理大臣に対して、本議会において勢頭から問題になりました解散権の所在についてお尋ねいたしたいのであります。一体現内閣は、重大なる政治的責任が遂行せられない段階に立ち至つたときに、それは総辞職するのか、議会を解散するのか、二つのうち一つしかありません。その場合において解散をせられるとするならば、それは憲法第七条において解散せられるのであるか、あるいは国会の議決において解散せられるのであるか、この点を今まで論ぜられておつたのでありますが、今あらためてもう一度私はお尋ねしておきたい。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 法制上の問題でございますから、私から一応お答え申し上げます。憲法の解散権につきましては、第六十九条に一箇条ございますほかは、第七条に国事行為としてあがつておるだけであります。その場合第六十九条における、すなわち不信任の決議あるいは信任の決議が否決されたという場合のみに解散権が行使さるべきや、あるいはその他の場合にも行使され得るものであるかということについては、御承知の通りに学説上の問題がございますけれども、前回片山委員からのお話でございましたかありましたように、両院法規委員会におきましては、解散権は広い、第六十九条の場合のみに限られない、すなわち第七条のみを根拠として行い得るという結論が出ております。政府におきましてもそれを尊重して、まさにその通りの解釈に立つておるわけでございます。従いまして、その解散権が今度行使される場合はどういう場合かということになると、それは不信任の決議があつた場合もありましようし、あるいは衆議院において解散要求の決議というものが行われた場合もございましようし、その他いろいろな場合があるわけであります。要するに、国民の意思を問う必要があると認められる場合に行われるということに相なろうかと存ずるわけでございます。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 総理大臣にお尋ねしておきますが、閣僚並びに政府委員の答弁につきまして、総理大臣は責任をおとりになりますね。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 その通りであります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 広川国務大臣にお尋ねします。あなたがかつて発表された中に、現在の憲法上から見て、解散は第七条と第六十九条によつて行われるのであるが、しかしこの場合といえども、政府はかつてに解散をすることはできない、こうお述べになつておるのであります。同時に時の法務総裁殖田俊吉君は、憲法法第七条を根拠として内閣が衆議院を解散するというがごときは、専制政治のもとにおける古い考え方から抜け切らぬものであつて、憲法第六十九条によつて議会は解散されねばならぬということを、時の法務総裁がお述べになつておるのであります。総理大臣のこれに対する御見解はいかがでしよう。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私は、その見解については聞いておりませんから、取調べた上でお答えします。但し、法務総裁はかわつております。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 時の法務総裁は吉田内閣の法務総裁です。廣川弘禪君は時の農林大臣であります。これは閣僚の議会における答弁であるのでありまするから、総理大臣は当然これに対して責任をお持ちにならなければならぬのであります。今私はこのことについて食い下つて行こうとは思いませんが、しかしながら私がここに申し上げておきたいことは、今日の政局の不安の原因というものは、決してこれは野党側に存在するのではありません。率直に申 しまするならば、自由党内部における内紛が政局不安の原因になつておるのであります。自由党の諸君がこれは違うとおつしやるならば、過ぐる池田通産大臣の不信任案のときに、自由党の諸君が結束するならば閣僚の首はつながつたのであります。しかも政局不安の原因がそこにあるといたしまするならば、解散権の問題が憲法六十九条によるのであるか、七条によるのであるかという議論は別といたしまして、現下の政局不安の根本原因が自由党の内部事情に存在するといたしまするならば、自由党の総裁にして総理大臣は、みずからの政党を統禦する力なく、その手腕力量に欠除した結果がここに政局不安の原因をなしておるのであります。しかりといたしまするならば、ここに議会を解散するよりも、むしろ自由党内部をまとめるために、吉田総理大臣は政局不安の責任を負うて総辞職をなさることが当然だと思うのでありますが、御見解はいかがですか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 御希望としては伺つておきますが、私はそれに同意できません。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 よけいなことでありますが、かりに議会を解散するということでありまするならば、憲法上の解釈はとにかくといたしまして、憲法七条で解散するといたしましても、それは国民のために議会を解散するということになつておるのでありまして、憲法第七条は自由党のために解散するとはどこにも書いておりません。従つて国民のために解散をなすべきである、自由党のために解散をなすべきでない。従つて、政局が行き詰まれば当然総辞職をすべきであつて、これをなさずして万一解散するといたしまするならば、私は、チャールズ一世のことく、二度にわたる議会の抜打ち解散によつて遂に暗殺された悲劇を思い出さざるを得ないのであります。  私は、議会解散につきましてもう少しお尋ねしたいのでありますが、時間の問題がございまするから省略いたしまして、次に総理大臣にお尋ねいたしておきます。本来ならば、来年度の通常予算というものはもはや編成されておらなければならない。そこで問題になるのは、日米防衛協定によつてわが国が分担すべき二十八年度分の防衛分担金は一体幾らくらいになるのであるか、これをお尋ねしておきたいと思います。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 その点につきましては、まだ少しも研究に至る緒についておりません。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私は具体的にお尋ねいたしますが、今井出君からも言われたように、おとといの新聞に、アメリカは在日地上軍を縮減するという記事が出ておるのであります。そうすると、将来かりに現在のアメリカ防衛軍が半減され三分の一に減らされれば、防衛分担金というものはどういう計算になるのでしようか。やはりその率に従つて減少されて行くのでしようか。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 この点につきましては、ただいまお話を伺つただけで、何も構想が、ございません。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 本年度は六百五十億円出したのです。従つて、来年度兵力が減少するならば、これは減少されて行くものだと、財政を切盛りする者の常識として判断したいのですが、そう判断してよろしいですか。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 御判断はいかがでございましようとも、私の返答はただいま申し上げた通りでございます。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 これは財政の問題でありますから、いずれあとから大蔵大臣にお尋ねいたします。  そこで総理大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、防衛分担金は、当初策定されるときに、アメリカが幾らの兵力を日本に置いてどういう施設をするから、どれだけの金がいつてそれは日本の分担金が半分でアメリカの分担金が半分であるというような計算はなかつたように思うのであります。そこで問題になるのは、アメリカの地上軍が撤退するというこの記事は、単なる臆測の記事ではないと思うのであります。そこで私は総理大臣に、外務大臣並びに財政当局に対する質問をあとまわしにしてお尋ねしておきたいことは、日米安全保障条約により、アメリカが日本を防衛するという義務条項が今日もなお堅持されて、今後もそれで行くものであるかどうかということ、この点をお尋ねしておきたいと思うのであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お尋ねの趣意は、日本の安全を保障する義務がアメリカになお存在するかどうかということですか。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 そうです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 存在いたします。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 間違いありませんね。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 間違いない。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 すわつたままで間違いがないと言う言葉については、総理大臣といえども慎まれた方がいいと思う。私は国民を代表してお尋ねしているのだ。無礼千万だ。しからばあなたにお尋ねする。平和条約批准に際してアメリカ上院議員で外交委員長のコナリー氏がどういうふうな発言をしているかと申しますと、安全保障条約では、アメリカは何ら日本の防衛の義務を負うものではありません、これは日本に対する駐兵権の権利の確保であつて、日本防衛の義務は決して伴わないのであるということをアメリカの上院で証言しているじやありませんか。どこに日本を防衛する義務条項がありますか。もう一ぺんお尋ねしたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 日米安全保障条約自体が証明しております。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 総理大臣から伺いましよう。

太田正孝自由党

○太田委員長 総理大臣、御答弁なさいますか。——総理大臣は御答弁がありません。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 御答弁がなければ——これはアメリカ上院における外交委員長の平和条約批准に際する提案理由の説明であります。アメリカは日本防衛の義務を感じていない、日米安全保障条約は、日本に対する駐留の権利確保の条約であると、ちやんとここに書いてある。これと同時に、アメリカの防衛軍の引揚げというものと対照して見まするならば、一体どこにアメリカが日本を防衛するという義務条項がございますか。私はないからお尋ねしておる、あなたはあるとおつしやつた。どこにあるか承りたい。条文に従つて承りたい。総理大臣から……。

太田正孝自由党

○太田委員長 西村君に申しますが、外務大臣の所管としてお話になつたことを、総理大臣がそれで承認すればよろしゆうございますか。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 総理大臣の御答弁があつたから、それで私はお尋ねしているのでありまして、外務大臣にお尋ねしておるのではありません。(「何もはかる必要はない、ほうつておけばいい」と呼び、その他発言する者あり)私がお尋ねしておるのは、単なる外交辞令や修辞じやなくて、日本の国防上に関する重要なことでございます。日米安全保障条約の中に、今総理大臣が、アメリカが日本を防衛する義務がある、こう二度におつしやつたのでありますから、その義務は一体どこに、条文の上にあるかということをお尋ねしておる。(「条文の返事ぐらいはだれでもいい」と呼ぶ者あり)総理大臣にお尋ねしておる。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 このことは、当時日米安全保障条約審議中に、もう繰返し繰返し述べておるところでありまして、そのときの記録に明らかになつております。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 問題は政府の答弁並びにアメリカ外交官のゼスチユアではないのでありまして、問題になるのは、私はこれを、条文の上に明確にしておきたいと思うのであります。アメリカの外交政策並びにアメリカの国策も時々刻々国際情勢の変化に応じて変化しおります。従つてわれわれはここによりどころが——日米安全保障条約の条文の中に、どこに日本を防衛するという義務条項が存在するかということを、条約の条文に従つて承つておきたいのでありまして、そのことは先ほど申しましたように、アメリカ軍が撤退する、こういう記事と同時に、アメリカ上院の外交委員長たる責任のある人が提案理由の説明の中に、駐兵権の権利の確保であつて、日本を防衛する義務は本条約の中にどこにもないと、ここに書いてある。彼我対照いたしまして不安を感ずるがゆえに、私は条文に従つてその解釈を承つておるのであります。従つてその解釈いかんによつては、日本国民は重大なる決意をせねばならぬのでありまして、今日風雲急を告げる国際情勢の下において、一体日本をどうしたらいいかということは、国民が重大なる決意をしなければならぬのでありますから、私は条文に従つてそのことをお尋ねしておる。条文に従つてお答えを願いたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 安全保障条約の審議は、各条につきまして、また全体につきまして、当時詳しくいたしましたことは御承知の通りであります。そのときの記録を、ごらんになれば、十分なる答弁をいたしてあります。なおただいまの新聞記事でありますか、雑誌の記事でありますか、その点は私はもちろん知りませんが、そういうことがあり得るわけはないことは、ここではつきり申し上げます。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私のお尋ねしておるのは、そういう政治的な、あなたの希望的解釈ではないのであります。日米安全保障条約に、日本の要請に従つてアメリカ合衆国はこの国に軍をとどめると書いてある。しかしながら、日本を防衛するという義務条項はどこにもない。東洋の平和と安寧のために、合衆国軍隊は日本並びに日本周辺に兵をとどめる、こう書いてある。私のおそれるところは、万一国際情勢が険悪を告げて、日本を防衛する能力はとうていアメリカ兵力の中にない——私がアメリカの作戦家でございまするならば、北海道から九州までの細長いこの日本列島を少数のアメリカ兵力で守るよりも、むしろさつさと沖繩列島に引揚げ、あれを太平洋の前進拠点として万一の場合に備えるのでありましよう。しかしながら私は日本の政治家として、国民の生命財産とその安寧秩序を負託されております責任上、この条文の上において明確にしておきたいと思うことは、万一さようなとき、この条文から見るならば、アメリカ軍がその作戦をとることもこれは可能な段階であります。従つて私は、日米安全保障条約という銘を打つて、その防衛のために日本がその支出金を負担しておる上からは、アメリカの日本防衛に対する明確なる条文上の義務づけを、私は要求しておるのであります。あなたの政治的解釈を要求してはいない。従つて先ほど総理大臣が、日本を防衛する義務がアメリカにあるのだと、二度にわたつてだめを押したのに御答弁なさつた。しからば、総理大臣が二度にわたつて答弁されたのであるから、その答弁の根拠は一体条文の上にどこにどうあるのであるかということをお尋ねしておる。明確に答弁してください。     〔「総理大臣答弁々々」と呼び、その他発言する者多し〕

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 本日は先ほどのお話のごとくで、総理の出席の時間が制限されておりますが、この条文は前文から各条にわたつての意味を御説明しなければならぬので、時間がとれます。従つてただいま申しましたように、当時の記録にはつきりしておるのでありますから、この際は——別の機会なら、いくらでも御説明いたします。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私は与えられた時間の範囲内において総理大臣の答弁を求めておる。だから二度にわたつて私はだめを押しておる。従つて総理大臣が二度にわたつて、しかも二度目にはそうだというような、国民代表に向つて傲慢無礼なあの態度の答弁の仕方、一体二度にわたる答弁の根拠はどこにあるかということを聞いておる。総理大臣から明確に御答弁願いたい。総理大臣に対する質問の時間をそんたくして、与えられた範囲内において発言しておるのだから、総理大臣から明確に条文に従つてお答え願いたい。あるいは条文になかつたら、交換公文か、条文に付属する文書か、どこにあるかということをお尋ねしておきたいと思うのであります。総理大臣からお答えください。     〔「総理大臣から答弁を聞くまではだめだ」「退場しろ」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 ただいま申した通りの御説明でありまするが、たとえば前文にも、日本にそういう防衛力がないから、そこでアメリカは日本の要求に基いて日本に駐留すると書いてあります。また日本を保全し、かつ極東の平和を保持するということも書いてありまして、条文上明らかであります。     〔「これでは審議できない」「退場退場」と呼び、その他発言する者、臨席する者多く、議場騒然〕

太田正孝自由党

○太田委員長 暫時休憩いたします。     午後三時五十八分休憩      ————◇—————     午後五時二十七分開議

太田正孝自由党

○太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  再開にあたり一言申し添えます。委員各位の御質問に対する内閣総理大臣の御答弁にきわめて遺憾の意を表されておりますが、政府の御答弁はでき得る限り礼を失わぬよう誠意をもつて懇切にせられんことをお願いいたします。この際内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お答えをします。安保条約は、元来日本の安全を保障するために結ばれた相互条約であります。米国が日本の安全を守るために軍隊を駐留させるものであります。これは義務にしてまたわが権利であります。条約の前文でも、第一条の規定によりましても、米国が日本の安全を守る義務を引受けたのは明らかであります。なお詳しくは外務大臣から答弁させます。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 ただいま総理大臣が述べられましたように、たとえば条約の前文をごらんになりますと、あるいは条約の第一条をごらんになりますと、日本が要請し、アメリカが日本の安全を保障するために軍隊を置くということを承諾いたしたわけであります。また日本の安全もしくは極東の平和維持というためにこの軍隊は使用するということが書いてあります。義務という字はこの中にはありませんけれども、これは条約の御審議の当時非常に詳細に各点にわたつて述べた通りでありまして、今総理の申されたように、日本の安全を引受けるという義務をアメリカが負つたことは当然であります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 先ほどとの違いは総理大臣が見解を述べられたというだけの相違なのであつて、問題の解決にはどこにもなりません。私が御答弁を要求したのは、条約のどこにアメリカの日本を防衛する義務条項があるかということを、条約の条文に従つて説明を求めたのであります。この日米安全保障条約というものは、これはアメリカが日本を防衛する義務を感じたときにのみその義務を行うのであつて、日本国はアメリカに対する権利としてその安全を保障させる権利は、条約の中にはどこにも存在いたしておりません。かかるがゆえにこの条約におけるすべては、行政協定にまかされておるのでありますが、この行政協定の中に、日本の防衛のためにどれだけの兵力を置いて、それがためにどれだけの経費がいつてどれだけの特権をアメリカの駐留軍に与えるかという、兵力量、作戦上、防衛上の幾多の問題については、どこにも明文がないのであります。従つてこの日米安全保障条約は、外交的テクニツクとして最も巧妙をきわめておる。日本国から防衛を懇請して、アメリカが一応それを承諾したということに前文は書いておるのでありますが、その義務づけとする条文はどこにも存在いたしておらないのであります。私は総理大臣に、条約の各条にわたつて、どこにあるかということを今日求めたのでございます。従つてただいまの総理大臣の御答弁によつても、あるいは外務大臣の答弁によつても、前文を見ればいいということでありますが、それはニユアンスの問題でありまして、条文にはどこにもございません、日本国民は昨年来の政府の答弁によつて、アメリカが日本の安全を保障してくれるであろうということで安心して参つたのでありますが、これは私が今指摘するまでもなく、あてにすべからざるものをあてにする最も危険な態度であると思うのであります。従つてアメリカが、今後日本の地上兵力を漸減するというのであるならば、その義務条項が存在するならば、それは当然日本国政府と協議の上でなされなければならぬのでありますが、行政協定において、アメリカがどこに兵力を配備し、どういうふうな兵力を持つか、引揚げるのか置いておくのかということは、アメリカ一存で決定できる条文になつておるのでありまして、義務的にはどこにも存在いたしません。しかもこのあてにできない安全保障条約によつて、日本国民は何を負わなければならないか。アメリカに対して占領中と同様なる特権を与えました。これはアメリカ上院において、外交委員長の、駐留権利だけをとつておるのであつて、義務は何もないという証言において、まず第一に明らかであります。第二点においては、窮乏せる国民の今日において、莫大な財政負担をいたしておりますけれども、その財政負担に対して反対給付は何ら保証されていない。これはアメリカの作戦計画によつて、独自的見解によつて事を処することになつている。同時に本条約によつて日本が戦争の渦中に巻き込まれるところの危険が生じて来ておるのである。第四点に重要なことは、それがために中ソ軍事同盟の継続の口実を与えておるのであります。私はこれらの諸点を具体的に考えてみますならば、単にアメリカの外交的ゼスチユアに満足することなく、事の真相を究明いたしまして、日本は日本の独自的な立場において、日本の独立主権と日本の防衛をどうするかを国民が考えなければならぬということが、現下の急務なる問題だと信じますがゆえに、私は総理大臣に重ねて答弁を促したのであります。しかしながら総理大臣は、その点について今明確な御答弁がありません。  私はその問題は時間の関係上これ以上のことは次の機会に譲りまして、お互いの見解の相違と申しますか、これだけは別といたしまして、私が最後に総理大臣に聞いておきたいことは、日米安全保障条約の骨格をなす日米行政協定についてであります。当時この日米行政協定は片務的条約であつて、不平等条約であるという立場から、ごうごうたる国民の非難が起りまして、それに対しまして政府当局は、一箇年後にこれは改訂し得るのである、一箇年後北大西洋同盟条約の批准が済まなくても、それによつて、そのモデルに従つて改訂し得るのであるという御説明がございました。そこで問題になるのは、一箇年と申しますと来年四月であります。これは外交官であるあなたはよく御存じの通り、来年の四月に改訂するということになれば、当然今から予備交渉をなして置かなければならぬのでありまして、すでに半年以上経過し、北大西洋同盟条約に対する各国の批准が不可能であるという見通しのついたときに、この行政協定の改訂について何か予備交渉でもなすつたかどうか。同時にアメリカがその改訂に応じ得る条件が整つておるのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 この行政協定につきましてはよりより話をいたしおります。しかしながら先方もただいま政府のかわりぎわでありまして今の政府が責任を持つてこうということはなかなか言いかねる状態でもあろうと思います。従いましてまだ具体的にこれこれだと申し上げる時期になつておりません。しかしながら時を移さずこの話はいたすつもりでおります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 それでは私はその問題は深く問いません。しかしながら政治に携わる者の常識といたしまして、アメリカの大統領の更迭により、あるいはアメリカの政局の変化により、同時に国際情勢の変化によつて、ある種の要求を日本が受入れなければ、行政協定の改訂にはアメリカが応じないのではないかという一抹の不安があるのでありますが、今の現内閣の方針で行政協定の改訂というものがはたして可能であるかどうか、その見通しの問題について総理大臣からお伺いしたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 私はただいま申したような状況でありますから、具体的にはまだ申し上げる段階になつておりませんが、見通しということでありますならば、相当に見通しはあると申し上げていいと思います。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私は総理大臣に質問しておるのでありまして、岡崎外務大臣とは詳細にわたつて他日問答したいと思いますから、総理大臣からお答え願いたい。私のいただいている時間も乏しいものでありますから、私は結論だけ申します。  総理大臣にお伺いしたいと思うことは、国連軍との協定がなぜ今日締結できないのであるか。これがために幾多の国際上の紛争が起きておるのであります。私はその国連軍との協定のできない理由について総理大臣から御説明を承りたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 外務大臣からお答えいたします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 国連軍との協定は、この委員会でもすでにたびたび申しました通り、裁判管轄権に関しまして、先方は日本側のNATO協定にできるだけ近いものという案に対して賛成をいたしておりません。それがために今までかかつておりますが、まだ話がついておらないような状況であります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 総理大臣は本年の五月に本委員会においてかような答弁をなさつたのであります。講和条約発効後九十日経過すれば、アメリカ以外の軍隊は当然日本から去るべきである。講和条約発効後九十日の間における国連軍は、残務整理並びに船待ちとして駐留を認めるのであつて、それは同時に占領軍としての特権は一部縮小されるものであるという御説明を、五月十六日になすつたのでありますが、私はそこで総理大臣にお伺いしたいと思います。今国連軍との協定が裁判管轄権の問題で不幸にして締結できておりません。従つて五月に本予算委員会において総理大臣が説明されたように、その後における国連軍の駐留というものは残務整理ないし船待ちとして認める、こういうことになつておるのでありますが、今日もその答弁を御承認なさるかどうか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 今御質問になつたところは少し違うと思います。占領軍としては九十日の間は船待ち残務整理等でとどまることはあり得るのでありますが、国連軍が九十日の間残務整理とか船待ちでとどまるということはないと思います。もしそうあれば、それは速記の間違いか印刷の間違いか、何かそういうものだろうと思います。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私の言い誤りでありまして、当時の総理大臣の言明は、それは占領軍としての残務整理並びに船待ちとして駐留するのである、こういうことでありまして国連軍と私が言つたことは取消します。当時の御説明は、占領軍として条約効力発効後九十日間は残務整理、船待ちとして駐留するのであるから、それは占領軍として日本駐在の特権はせばまるということであつたのでありますが、今日もそういう御見解をとつておられますか。

太田正孝自由党

○太田委員長 総理大臣、ただいまの外務大臣のお答えでよろしゆうございますか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 外務大臣の説明の通りであります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 しからば、占領軍としての特権はもはやどこにもないということに解釈してよろしゆうございますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 その通りであります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 それならば総理大臣にお尋ねいたしますが、外国軍隊が日本に駐屯しておるが、何がゆえに占領軍同様なる特権を持つておるのであるか、またその特権を要求しておるのであるか、総理大臣から御答弁を承りたい。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 外務大臣から説明をいたします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これは講和条約発効当時、吉田・アチソン交換公文というものを、政府としては条約と同様の効力のあるものとして国会に提出してその承認を得ております。その吉田・アチソン交換公文によれば、国連軍の一部として朝鮮の戦線において行動する軍隊の日本及び日本周辺における支持を認めるということになつております。従いまして、国会の承認を得て、国連軍の日本国内及び日本周辺の駐在を認めておるのであります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 外務大臣の記憶は少し違いはしませんか。吉田・アチソン交換公文は、国会で承認したのは国連に対する義務条項であります。私が今問わんとしているところは、占領軍の特権があるかどうか、同時に九十日後において占領軍と同様なる特権を国連軍が持ち得るのであるかどうか。国連に協力の義務を発生したのは、これは吉田・アチソン交換公文にもよります。けれども、その発生する具体的な事実は朝鮮戦争によつてできたのであります。朝鮮戦争というものはいつ起きましたか、今から二年前の六月二十五日に起きた。総理大臣の説明は本年の五月十六日、本予算委員会において、日本においてはアメリカ軍以外の軍隊は当然去るべきであるということになつておるのでありまして、この点においてあなたの記憶違いではないか、すなわち、日本が国連に協力の義務を生じたのは朝鮮戦争からであつて、しかも吉田・アチソン書簡というものは、占領軍の継続を承認する文書ではありません。総理大臣から明確なる御答弁を承りたい。     〔「総理大臣から、総理大臣から」と呼ぶ者あり〕

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 私の答弁に対する御質問でありまするからお答えをいたします。第一に、朝鮮戦争の発生後において政府が協力をいたすというのは、これは政府の独自の立場から協力をいたすのであつて、それは国連軍が日本の国内に駐在することを認めるかどうかということは別問題であります。当時は占領下でありましたから占領軍がおりまして、これが国連軍の一部として出ておつたわけであります。講和条約発生後は、吉田・アチソン交換公文によりまして占領軍の性格は消滅いたしまして、新たに国連協力の趣旨から、日本政府が認めた国連軍の駐留を許しておるのであります。従いまして占領軍は、たとえば、例は悪いかもしれませんが、日本国民を逮捕し、そうして裁判をすることもできたのでありますが、国連駐留軍というものはそういうことはもちろんできない。のみならず、ただいま議論になつておりますように、軍の所属員の裁判管轄権についても日本側にありとわれわれは主張しておるような次第でありまして占領軍と国連軍とは全然性格を異にいたします。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 その点は、総理が声明されたのは五月の十六日、吉田・アチソン書簡はそれ以前、これは国連協力に限定されて、同時に占領軍における特権がなくなつておるということは前後の事情から言つて疑う余地はないのであります。私は、時間がありませんし、委員長の御注意もございまするから結論に入ります。  しからば、九十日経過して、占領軍と同様なる特権を持つて現実に外国軍隊がわが国に駐屯している事実、これを総理大臣は一体いかにごらんになるか。次に、九十日経過して、占領軍のままに日本の重要なる地点を押え、重要なる特権を持つている外国軍隊に対しまして、九十日経過したならば、その講和条約に基いて、日本国政府はアメリカ軍以外の占領軍に対して当然その撤去を公式に要求すべきであつたが、一体現内閣はその要求をなさつたかどうか、この点を総理大臣から承りたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 ……。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 総理大臣に聞いておるのだ。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 占領軍は、講和条約発効後九十日以内は一部従来の特権を持つこともできたのでありますが、事実におきましては、講和条約発効後は占領軍としての特権を享有いたしておりません。そうして、吉田・アチソン交換公文に基きまして、国連軍としての限られたる範囲の駐留を認められておるのでありまして、この特権は、国の中に他国の軍隊が駐留することを認められました場合は、軍隊に伴う一定の特権は認められるべきことは国際法上間違いないことであります。それと付属して、どの程度の便宜供与や特権を認めるべきかということが、今の国連協定の趣旨でありますが、その点はまだ話合いがついておりません。従つて事件が起るにあたりましては、日本側の考えによつて処理いたしますけれども、少くとも軍隊が他国に駐屯することを認められた以上は、一定の特権があることは、これはもう国際法の認めるところであります。従いまして、占領軍の特権とは全然違いますけれども、軍隊に付属するある種の特権は認められております。

太田正孝自由党

○太田委員長 総理大臣、ただいまの外務大臣の答弁でよろしゆうございますか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 外務大臣の答弁の通りであります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 しからば私は総理大臣にお尋ねいたしますが、一体、アメリカ軍以外の軍隊が日本に駐留することをどの機関でだれがおきめになつたか。今、岡崎外務大臣は、外国軍隊が駐留する上からは当然それは特権を与えるべきだと言うのでありますが、アメリカ軍以外の外国軍隊の駐留に対し、一体どの機関でだれが承認いたしましたか、その点を明確にお答え願いたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 それは先ほど申しましたように、吉田・アチソン交換公文によつて認められたのでありまして、これはその意味で特に国会に提出してその承認を求めたのであります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 これは水かけ論になりますが、吉田・アチソン交換公文というものは国連に対する協力であつて駐留権の承認ではありません。しかしながらこれは時間がないから……。そこで吉田総理大臣に対しまして最後にお尋ねしておきたいことは、今日において無条約のままに外国軍隊が中立国に駐屯するということは許されません。これは国際条約にはどこにもありません。無条約のままに外国軍隊が駐留するということは独立国家にはありません。従つて私は当然九十日経過したならば、その撤退を公式に要求すべきであつたと思いますが、今日でもおそくはない。今日ただちに外国軍隊の撤去を要求される御意思はあるかどうかお尋ねしたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 当時吉田・アチソン交換公文を国会に提出するにあたりましては、これは条約と同じものであります、交換公文でありますが、条約と同じものであるからそこで国会に提出してその承認を求めるということを説明して、承認を得ております。その吉田・アチソン交換公文には、日本の国内及び周辺において国連軍を支持することを認めるという文句が入つております。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 最後に……。     〔「何べんが最後だ」「申合せをなぜ守らぬか」と呼び、その他発言する者多し〕

太田正孝自由党

○太田委員長 静かにしてください。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 答弁がないから質問している。答弁をしないから質問しているのだ。

太田正孝自由党

○太田委員長 西村君発言を許しておりますからどうぞ。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 私はせつかくの委員長のごあつせんでありますから、最後にお尋ねしておきます。今外務大臣は一年後には行政協定が改訂せられるであろうということを自信を持つてお述べになりました。総理大臣も同意されました。しからば当然一年後に、アメリカが行政協定を改訂する意思であります。ならば——今日国連軍が日本国に対してどういう要求をしておりますか。国連軍は行政協定に基いてアメリカ軍と同様なる待遇を、裁判管轄権の問題において、駐留権の問題において、軍事基地の問題において、要求しておるのであります。しかるにアメリカ大使はこの国連軍の要求を支持しておるのであります。あなたが今お述べになつた、一年後には行政協定は——かつてあなた方がここで声明されたごとく改訂せられるであろうという声明を、真にアメリカがこれを守り、同時にそれが実行されるのであるといたしますならば、その改訂しなければならない条約と同様なる条約を国連軍との間に結びましたならば、今度は日米行政協定の改訂に支障を来すのであります。この矛盾を外交官としてあなたはお感じになりませんか。はつきりこのことをおつしやい。(「それでおしまいか」と呼ぶ者あり)まだやる。

太田正孝自由党

○太田委員長 西村君今の質問で終りですか。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 総理大臣から答弁してください。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 それができましたときの結果を……(発言する者多し)ごらんになればわかると思いますが、今考えましても別に矛盾は生じないと信じております。

太田正孝自由党

○太田委員長 今の外務大臣の答弁でよろしゆうございますか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 外務大臣の答弁の通りであります。

西村榮一日本社会党(右)

○西村(榮)委員 答弁ははなはだ不満足でありますが、委員長のお顔を立てまして、この程度で終ります。

太田正孝自由党

○太田委員長 伊藤好道君。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 私は総理大臣に御質問申し上げます。率直に申し上げまして、今日政局は極度に不安定でございます。しかもその原因は、私は単に自由党の中だけではないと存じます。これは政府と自由党との関係にあるわけでございまして、この重大な政局の不安定が、年末を控え、また大きなストライキなど、あるいは農村から非常にいろいろな陳情のある中で盛り上がつておるわけでございますが、これに対して、総理は率直に、どういう打開の方針なり所信を持つておられるか、これを最初にお伺いしたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 それは、先ほどもお答えいたしましたが、自由党は絶対多数を持つております。自由党内における議論はいろいろありますが、これは政党として当然な話であります。当然な帰結、自然な帰結に達すると思いますから、しばらくごらんを願います。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 総理はこの問題について四へん御答弁になつているようであります。二度は党内のことであるから、民主的にそのうちにまとまるであろうという御意見で、ございました。一回はそういう問題は結局出たとこ勝負でそのときに何とか手配をする、こういうような御答弁でもございました。従つて、そういういろいろかわつた答弁を同じ委員会の中でなさるようでは、やはり国民としても非常な不安を感ずるわけでございますが、ただいま総理の御発言の通りであると考えていいのでありますか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私は同じ意見を始終述べておりますから、かわつておるはずはないと思います。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 それは後刻速記を調べまして申し上げますが、答弁は違つております。なおその点についてもう一つ申し上げますが、これは自由党の内部もしくは自由党と政府との関係において起きて来た政局の不安でございますが、これについて総理は、党内とりまとめないしは内閣と与党との関係を円滑にするについて責任を感じて、総辞職されるというお考えはありませんか。     〔発言する者多し〕

太田正孝自由党

○太田委員長 静粛に……。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 そういう考えはありません。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 それでは私はもう少し別の問題に移りますが、ただいま西村君から駐留軍の国際法関係についていろいろ御質問がございました。私は、今日本のほとんど大部分の社会不安の原因をなしておるものは、駐留軍関係から起きておりますいろいろな刑事事件、こういうものが著しく増大しているからであると思うのでございます。従つて私がお伺いいたしたいのは、これらの件数は一体どれくらいに上つておるのか、そうしてこういう国民が感じている駐留軍関係から起る社会不安に対して、どういう態度でこれを打開されようとするかということであります。いま一つは、やはり同じ問題で、これはこの間政府でも大分お困りになつたと思うのでございますが、土地の取上げあるいは漁場の取上げ問題、その他いろいろな問題が、やはり基地とか演習場とか、あるいは試砲場などをめぐつて起つておるわけであります。これらに対する陳情は政府もよく御存じのはずでございますが、こういう問題についても、どの程度の問題が起きていて、これに対してどういう取扱い、要するにどういう打開の道をとろうとしておられるか、これは大ざつぱでもやむを得ませんから、ひとつ総理からお答え願いたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 岡崎外務大臣から答弁いたします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 駐留軍の所属員のいろいろの犯罪等につきましては、件数はただいま資料を持合しておりませんので、ちよつと申し上げかねますが、しかしかなりの数に上つておることは事実であります。そこでわれわれはこれを始終駐留軍側に話しまして、軍紀の難その他いろいろの注意を求めております。また駐留軍側もこれはしばしば命令を出しますのみならず、これらの事件を犯したものについては、われわれの考えるよりもかえつて重い罰を科しております。お互いにこういうことのできるだけ少くなるように協力いたすことにいたしております。なお土地、農地その他海面等の使用につきましては、いずれもこれは農民及び漁民等から困難を訴えられておることは当然であります。従いましてわれわれとしても、できるだけ地元の農民等の苦痛のないように努力をいたしております。そのため合同委員会にも、補助員としては農林省、水産庁その他関係省の者を出しておりまして、一々その意見を聞きましてそうして話をまとめる前には現地に参りまして、現地と話をしまして、補償等にもできるだけ十分なる措置を講じようといたしておるのでありますが、いずれにしてもある土地を使うということになりますれば、多少の困難は起るのであります。しかしながら駐留軍が日本の安全を守るために、常時訓練をいたさなければなりません、演習もいたさなければなりません。これをしなければ、やはり駐留軍の機能は保たれないのでありますから、その間にできるだけ地元民の不平の少いようにいたして調整を心がけております。

太田正孝自由党

○太田委員長 伊藤君に申しますが、午前中にまつたく同じような問題が成田さんから出られたように思います。時間も過ぎておることだし、総理もたいへん疲労いたしておりますから、なるべく重複しないようにお願いします。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 きようこの委員会で総理は冒頭に、もし予算の修正のお話が出れば、それについて考えてもいいと、こういうような意味の御発言があつたと思うのでございますが、これはまだ予算の審議の過程において政府がそういうような御発言をなさるということは、自分の御提出になつた補正予算についての信念といいますか、所信の点で非常にどうかという考えを持つわけでございますが、これについて総理は今でもそういうお考えでございますか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私の申したのは、出した予算は一銭一厘といえども増減せしめないというような、そんなかた苦しい話ではない。もし適当な修正であれば考えてもいいが、これもまた財政全般から考えなければならぬことであつて、一概にいかなる修正にも耳を傾けないということではないということを申したのであります。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 大蔵大臣は、予算の補正については厳重な態度で、かえない、こういう御発言でございましたが、やはり総理の今の御発言と大体同じでございますか。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 先ほども御返事を申し上げましたが、私のつくりました補正予算は、動かす考えはないのでございます。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 そうしますと、政府の内部で補正予算に対する考え方、建前について、私はどうも意見が食い違つておるように思いますが、その点大蔵大臣は少しこまかくお考えだろうと思いますが、どうですか、それで総理の御発言と違つておりませんか。

太田正孝自由党

○太田委員長 伊藤君、私が口出しをするのはいかがかと思いますが、総理はすべてのそういう問題について耳を傾けるというのは、うつちやらかしにするというのではない、聞くことは聞くと、こういうので、それが決定的にどういうふうに処理するというふうな意味でないように私は聞きました。差出口のようですが、決して両方の意見の食い違いとは思いません。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 実は、それは今の委員長のお言葉の通りにとれないこともないのであります。しかし御発言になつた時期が最後の予算の質問の終るような大体日程になつておつて、これをどういうふうに修正するか、あるいはまたこれをどうするかということが、一番政治上の大きな問題になつている際に御発言になつたから、私は特に御質問したわけであります。その点で大蔵大臣のお考えはおかわりないのですか。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 私の考えは初めと少しもかわつておりません。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 大蔵大臣と総理の間に補正予算の修正について、私は意見の食い違があると信じますが、この問題はこの程度にとどめておきます。  そこで私は実は日本の国防に関する前提になりますが、これは総理が過般の本会議におきましても、今日本は決してつんぼさじきにいるわけではない、こういうふうに御説明にありまして、常にアメリカ側からも他国と同じような情報をいろいろ得ているような御発言がありましたので、特にお伺いいたしますが、まず最初にお伺いいたしたいのは、政府は現在の戦争の脅威についてどう考えておられるか。私は最初に申し上げておきますが、一般的には、総理の言われますように、大体戦争の脅威はいくらかでも軽減しつつある、こういう考え方に私も同感でございます。ただ日本は朝鮮の動乱を間近に控えておりますので、朝鮮の動乱がどうなるかということについては、これは国民全体が非常に関心を持つていることは当然であります。そういう点から考えまして、今総理は日本の国を守るという意味で、外からの侵入、あるいは日本が戦争に巻き込まれるというような問題について、これから起るかもしれない、いわゆる共産主義の諸国からの侵入ということを考えておられるのか、それとも朝鮮の動乱の今後の成行きいかんではどうなるか、そこに現実に戦争の危険があるのではなかろうか、われわれは巻き込まれるおそれを考えるわけですが、そういう点についての総理のお考えを承りたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 朝鮮の戦線において一進一退ということはあるでありましようが、今ただちに日本が朝鮮動乱の影響を受け、もしくは戦争にまき込まれるという危険に迫つておるとは考えておりません。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 そこで私も今すぐたとえば十日か二十日のうちにどうこうという意味ではもちろんありませんが、私どもが心配するのは——これは私どもだけでなく、おそらくヨーロツパその他の諸国も全部同様だと思うのでありますが、アメリカに新しい大統領としてアイゼンハウアー元帥が出られたことについて、たとえばごく普通の新聞の報道などによりましても、先週イギリスにおきましては、英連邦の首相会議があつて、その席上でこの問題についていろいろ意見が出て、イギリスの態度についていろいろ打合せをしております。こういう話があるのであります。最近の情勢は、御存じのように、限定攻勢と申しますか、アメリカが朝鮮の国境以外に対しては攻めて行かないが、国境内では、もう少し武力を充実して、要するに、戦争を激しくやろう、こういうところへおちつくのではないかという心配が現実にあるのであります。ヨーロツパその他でも非常にその点を注目しておるのでございますが、この点について総理は何らかアメリカの方から情報をお取寄せになつておるかどうか、あるいはそういうことについてどういうお考えを持つておられるか、この点をお伺いいたします。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 お答えをいたしますが、今日アメリカあるいは国連軍としては、朝鮮の事態をなるべく早く収拾したいという希望を持つておるということは明らかなことであります。しかしながらいかに収拾するかということで、今アイゼンハウアー元帥その他がわざわざ朝鮮に研究のために見えたものと思います。さてそれで今後どういうふうになるだろうか、あるいは米国としては、あるいは国連としては、どういう措置をとらんとするか、これはかりに私が承知いたしておつても、あるいは国連側からして話があるとしたところが、ここで公開する理由を持つておりませんから、お答えはいたしません。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 そこで私がお伺いいたしたいのは、総理もいろいろ情報を持つておつて、日本政府としてはつんぼさじきにおわるわけではない、こういうことをたびたびお話でございますから、もしそういうことがございましたら、そういう点で、たとえば秘密会でもけつこうでございますが、われわれに一応の、最近の情勢について、お話をいただける機会をつくつてもらいたい。

太田正孝自由党

○太田委員長 伊藤君に申し上げますが、秘密会の問題はこの前もありましたが、議会の本道からいいまして、なるべくやめたいと思いますので、皆さん方の要求のある場合は、とくと皆さんと相談した上で、この会を開くことにしなければならぬと思います。ただ念のため私の意見を申し上げておきます。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 私は総理のそういうようなお心持でもないかと思つて、こういうことをお尋ねしただけであります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 必要がある場合には、政府は進んで説明をするなり、また諸君の了解を求めることについては、決して躊躇いたしませんが、ただいまはたとい知つておつても、これをここで公開する理由がないということを申し上げます。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 それでは日米合同委員会ではこういうような問題に関しまして、何か協議なり相談がございますか。これは外務大臣でけつこうでございます。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 合同委員会につきましては、当時国会でよく御説明しましたように、そういうような種類の問題を取扱う権限はないのでありまして、これはいわば一切事務的の権能だけを与えられておる、それだけのことであります。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 それでは総理は、今まで得られました、ここで御発表にならないいろいろな情報や情勢判断に基いて、私ども日本がこの問題に関連して不安を感じております戦争関係の問題について、十分善処するという自信をここで表明していただけるか、平和のうちに善処する、日本は絶対にそういうことのないようにやつて行けるんだ、こういうことについて承りたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 善処いたします。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 いま一つこの問題に関連してお尋ねしたいのでございますが、最近日本では、一部に日本の国防の第一線が日本の国内ではなくて、よその国、たとえば朝鮮がそうではないか、こういうような説を私はこの委員会でも実は承つたわけであります。しかしよその国に、日本の国防の第一線を求めるというような考え方は、これは私どもからいえば、古い日本の侵略主義といいますか、古い軍国主義の思想でありまして、そういう考え方はあつてはならないと思うのでございますが、これについて総理はいかがお考えでございましようか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 政府はそういう考えを持つておりません。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 そこで私はいわゆる再軍備の問題でございますが、これはもういろいろ御議論のあつたところでございますから、私は結論だけひとつ承つておきたいと思うのであります。私どもの承つておりますところでは、総理の意見は、ただいまのところ国力が回復しておらぬ、不十分であるから再軍備をしない、こういう御意見の場合と、もう少し詳しく説明される際には、国民精神というものが、もう少しその問題について盛り上つて来ればというような条件がついて、二つ条件がある場合もあるのであります。いずれにいたしましても、この二つの条件がないから今日は再軍備しない、憲法改正もしない、こういうお話でございます。そこで別に政府のあげ足とりとかいうことでなくして、それならば国力が回復し、国民精神がそうなれば、あるいは国力だけが回復すれば再軍備するのだ、こういうことになることは、これは常識上当然のことでございますし、また事実政府のやつておられます施策を見ましても、たとえば防衛関係その他の費用は後ほど詳しく承りたいのでございますが、非常にたくさんとつておられて、たくさん使い残しがある厳たる事実があるにかかわらず、これを削減するとかあるいは来年度について、そういうことについての見通しをわれわれに与えておられないのでございますから、これが自衛力であるにしろあるいはまたこれが戦力であるにしろ、いずれにしても準備は具体的には進めておられるわけである。そこで私は国力が回復すれば再軍備をするのだということは、単にロジツクの遊戯じやなくて、現実の日本が進んで行く過程であると思うのでございますが、そこで総理はそういう条件が整えばやります、こういうふうに御言明になるかどうか、これをひとつ承ります。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 それは私が今軍備をいたすべきときでないと説明を申したのであつて、たとえば国力が充実したら軍備をやるかとか、あるいは愛国心が盛り上るようになつたらやるかということを申しておるのではないのであります。私は軍備を持つべき時期でないという説明の方法として申したのであつて、条件が満つれば軍備をやるということは一言も申しておりません。要するに軍備はいまだその時期にあらず、ゆえに軍備しない、こういうことであります。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 そこで私は今度は情報機関のことで、これもいろいろ議論が出たところでありますから、私は最後の点だけを承つておきたいと思うのであります。実は情報機関はたしか補正予算で五、六百万円の、ごく小さな問題のようでございますが、私どもはこれをたいへん重要視しておるわけであります。そこで総理の本会議やあるいはまた委員会における御発言もそうであつたと思いますが、かなり広報機関といいますか、宣伝機関の色彩を持つた、そういう御構想を持つておられるようにわれわれは承つておるのであります。ところがこれに対して副総理の緒方官房長官は、そうではない、これはあらゆるニユースを収集するのだということを主眼にして、そうしてこれをもつて政府の施策のいろいろな参考にするのだ、但し、スポークスマンの発言などには当然現われるであろうということでございますが、ここまでは私はあたりまえのことだと思うのであります。その次に白書という問題があります。しかし白書も今各省から出しておりますもので、これは専門家をむしろ相手としたものでございますから、これについて政府が一定の自分の所管の事項について、いろいろな記録を出し、あるいは資料を出されることについては、私は問題ないと思う。但し、外務省あたりから出されるあの白書は、これは相当問題となることは世間周知の事実でございますが、しかしそれ以上に一般の大衆を相手にした何らかの出版物を、政府が公然と出されるということになれば、すなわち総理が簡単に御発言になりました宣伝機関、広報機関ということになりますというと、これは私どもが非常に心配しております昔の情報局の復活だとか、そういう問題が出て参るのでございますが、この点についてきよう最後的にはつきり私はどういうものであるか、こういう点をひとつ御説明願いたいと思います。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私の構想の大体はすでに申し述べた通りでありますが、しかしこれは、この問題を具体化するためには、今官房長官が主としてやつておることでありますから、官房長官からお答えいたします。

緒方竹虎自由党内閣総理大臣臨時代理・国務大臣・内閣官房長官

○緒方国務大臣 最初に、少し誤解がおありになるようでございますから一言申し上げておきたいのは、今内閣官房の調査室の費用として計上しております六百五十万円というのは、これは世間で伝えられております、いわゆる情報機関の費目ではございません。全然別個のものでございます。  それからお尋ねの、政府があらゆる情報を集めて、それを整理分析した後にどういう形で出すかというお話でありますが、いわゆる通信社の通信のような形では絶対に出しません。政府といたしましては、かりに白書のような形で出しますにしましても、できるだけ主観の入らない純粋の資料、しかも政府が特別の便宜を持つて、集めやすい資料を生のまま出して、そして民間の資料を豊富にするというようなことは、いいことじやないかと考えておりますが、そういうことにつきましても、まだ私は考慮中でありまして、はつきりこういう機関を設ける、こういう計画であるということは、今のところまだ申し上げかねます。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 ちよつと簡単なことですから聞きますが、それでは一般のごく広い範囲の国民を相手とした、週報にしろ月刊にしろ、そういう、何といいますか、政府の宣伝機関であると客観的にいえるわけですが、政府としては正しい資料なり、正しい態度を宣伝するわけですが、そういうものをお出しになる意向はございませんか。

緒方竹虎自由党内閣総理大臣臨時代理・国務大臣・内閣官房長官

○緒方国務大臣 私の考えるのは、主たるものは、あらゆる入手し得るすべての情報を集めまして、それを整理分析しまして、政府施策の参考にしたいというのが主でございます。それから資料をある場合外に出すというような場合がもしありといたしますならば、ちようどイギリスのステーシヨナリ・オフイスやアメリカのプリンテイングオフイスというようなところで純粋な資料を出しておりますが、そういうものに役に立ちはしないか、そういうような考えであります。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 それでは、一般的な宣伝機関に類するものはお出しにならないという御構想であると私は承つておきます。この機関についての予算の見通しというものはどんなものですか、予算をどういうふうに組むか。

緒方竹虎自由党内閣総理大臣臨時代理・国務大臣・内閣官房長官

○緒方国務大臣 それは私こういう公式のところで申し上げるだけの数字の頭の準備ができておりません。

太田正孝自由党

○太田委員長 伊藤君に申し上げますが、六百五十万円というのはこのことと関係ないということを御承知願いたいと思います。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 よくわかりました。実は希望を申し述べて、ちよつとほかの問題に入りたいのでございますが、この官製情報機関、そういうものについては、これは天下の輿論があげて反対しておるわけであります。かつての市町村教育委員会の問題と同様でございまして、政府としては現在のこの強い輿論の批判に気持よく応ぜられて、ここでおとりやめになつた方がいいと思いますが、そういう御意思はございませんか。

緒方竹虎自由党内閣総理大臣臨時代理・国務大臣・内閣官房長官

○緒方国務大臣 私は政府が施策の上に参考とすべき情報をできるだけ集める、そうしてそれを整理し分析して正しい判断を下すということは、私は非常に必要なことであつて、むしろそういうものが十分にできていないことがふしぎであるくらいに思つておるのであります。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 私はいま一つ最後にお伺いしたいのでありますが、これもいろいろ出ておりますから、私は最後に結論だけ申し上げるわけであります。それは人事院の勧告とか国鉄、専売、電通の裁定の問題でございます。これはおそらく政府は財源がないということによつてこれを勧告通り、あるいは裁定通りに計上されておらないと思うのでございますが、それはそう見てよろしゆうございますか。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 私からお答えいたします。国家公務員の給与改訂につきましては、さきの人事院勧告を国家財政の許します限り尊重した上で補正予算及び関係法律案をつくつております。また国鉄裁定、専売裁定につきましても、でき得る限り尊重している次第であります。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 これは、大蔵大臣は尊重していると言われるわけですが、現実にその勧告なり裁定通りにやらないということが事実だから、問題になるわけであります。そこで私がお尋ねしたいのは、私どもは財源はあると思つております。従つてその点は見解の相違でございますが、簡単にお尋ねしたいのは、人事院はまさしく政府の機関だと思うわけでございますが、政府機関同士の間に、片方は三千円、片方は二千円という食い違いがあるが、そういう食い違いがあるということは、政府内部で意見の統一ができておらないということになるのではないかという点と、いずれにいたしましても、政府は法律的に、最後の財政の権限は政府にあるわけでございますから、そこに法律的な根拠を求めて、自分の態度を合理化しておられると思うのでありますが、しかし最近の国民生活の窮迫、そうして労働争議が大きく盛り上つている現状から見まして、やはり人事院関係の規則の無視とか、あるいは公労法その他の労働関係の法律を少くとも軽視していることだけは、私は疑いないと思うのでありますが、そういうようにお考えにならないか、私はさらに言えば、そういう法律論を離れても、あまりに不親切じやないか、この点について総理はどういうふうに考えておりますか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 大蔵大臣から御説明申し上げます。

向井忠晴大蔵大臣

○向井国務大臣 お答えいたします。人事院と大蔵省の考えました点とが齟齬しておるような仰せでありますが、人事院は財政の問題は考えずに、いろいろな点から考えて給与をどうするという意見を立てられるわけであります。大蔵省では物価の上り方とかあるいは民間の給与の上り方というものを考えまして、財政の許す限りのことをいたしておる次第でございます。決して人事院の勧告を軽視しているということはないと思います。

伊藤好道日本社会党(左)

○伊藤(好)委員 総理大臣は大蔵大臣の説明をおそらく承認されるから、私はその手続は省きますが、現実に勧告通りやつておらない。それを下まわつた措置をしておる限りにおいては、そうしておそらく熱意をもつて財源を探せばないことはないはずでありますから、私は依然として大蔵大臣の答弁に満足することはできません。  最後に私はいま一つ伺いたいことは、ただいま行政協定の改訂の問題が出ておりました。西村委員に対して外務大臣から御答弁がございました。それは大体見通しを持つておるというような結論的なお話のようでございます。但し具体的に改訂交渉をやつておられるかどうかという点では、御答弁ははつきりいたしません。私が承知している点では、実は行政協定の条文それ自体を見ますと、アメリカにおいては、日本の要請に応じてあの行政協定を改訂しなければならない義務はない、こういうふうに思うわけでございますが、それにもかかわらず、アメリカが好意をもつて日本の要求に応じて改訂する相当の見通しがあると、こういう御答弁は、これはどういう根拠に基いてされておるのでございますか、この点ちよつとお聞きします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 もし日本の改訂の要求を必ずアメリカがのむという義務がありますれば、これは見通しなんということは必要ないわけであります。要するに改訂の交渉に応ずるという約束でありますから、そこでうまく話ができるかどうかというところに見通しが出て来る。今のところは私はある程度話合いも、これは予備的な話でありますが、やつておりまして、ある程度見通しがある、こう申し上げた次第であります。

太田正孝自由党

○太田委員長 この際清瀬一郎君より特に艦艇問題等に限定し二十分の時間をもつて質疑を許すことに理事会において決定いたしております。これを許します。清瀬一郎君。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 われわれは最後に政府の予算に対する態度をきめなければなりませんから、過日以来議に上つたことも二、三ありますが、ごくわずかな点について首相の御信念を確かめておきたいのであります。事柄は二つか三つであります。議論はいたしません。  本年の五月三十一日に、吉田首相は、かの吉田書簡なるものをお出しになつております。国会では公表されておりませんけれども、世間ではわかつております。間違つてはいけませんから、その第三項だけを読みまして、その通り相違ないかを直接総理より拝承いたしたいと思います。三項には、「日本国の当局は、罪を犯したこれらの軍隊の構成員及び軍属並びにそれら家族を」これが大切なんです。「逮捕したときは、次の4に掲げる場合を除いて犯人をその所属国の軍当局に、原則として、引き渡すように取り計らう」——これ、原文でいいのでありましようか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 吉田書簡なるものは国際法の先例、慣例もしくは原則にのつとつてつくつた、普通の話を普通に書いただけの話であります。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 そんなことを聞いておるのじやないのです。私がお伺いいたしましたこのテキストでいいのでありましようか。私は議論をしませんから安心して答えてください。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 安心をしてお答えをいたしますが、その通りであります。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 そうすると、この書簡では構成員、軍属並びに家族を逮捕したときも同様、原則としてお引渡しになる、こういう意味ですね。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 そうであります。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 総理はこの書簡の実行方法として、法務省から刑政長官の名前で六月二十三日に一つの依命通牒が発せられていることは御承知でしようか。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 ……。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 いや、総理から聞きたいのです。総理のお出しになつた吉田書簡が実行されておるかどうか、総理が御承知かどうかを聞きたい。あなたが御承知のことは知つておるのです。法務委員会で承りましたから……。総理は御承知なんでしようか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 私は承知いたしております。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 その通牒の備考第二というのがあるのです。これを私は読んでみますと、「国連軍将兵の家族については」、ですよ、「国際法及び国際慣行から見ても当然日本側の裁判権がこれに及び、身柄の拘束についても国連軍将兵と同様の取扱いを行う理由は少いと解するから、一般の在留外国人として取扱うべきものである。もし具体的事件の処理にあたり国連軍当局との間にこれに関して紛議を生じたときは、直に、前同様中央に報告されたい。」この条項もむろん御承知ですね。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 これは法務大臣からお答えいたします。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 いや、あなたは御承知か。吉田書簡の実行をあなたがされる責任をとつておられるかいなかを聞きたい。——法務大臣は御承知です。法務委員会で聞いたのです。あなたは……。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 それは法務大臣からお聞きを願う。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 法務大臣から聞きません。法務大臣に質問しておるのじやない。あなたの外国に出された吉田書簡というものをあなたが誠意をもつてかように実行せしめているかいなかが問題なんです。一体あなたは御承知なんですか、御承知ないのですか。こんな簡単な問いなんです。イエスか、ノーかです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 先ほど申した通り承知しております。その実行方法等についての詳細は法務大臣からお答えいたします。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 清原通達をあなた御承知ですね。依命通牒ですから内閣の連帯責任です。念のために聞いたのです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 確かにお答えいたしますが、その書簡は承知いたしております。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 そうすると、あなたは外国に対しては家族をも原則として引渡すと約束せられ、法務の職員が家族は引渡すべきでないという訓令をしておるのを承知しておられる。私はあなたの人格を疑わざるを得ぬ。これは二枚舌ですね。国家の体面を汚すじやありませんか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 二枚舌とおつしやれば二枚舌——御自由でありますが、しかしながらその通牒の末に書いてある通り、中央に伺いを立てろということが書いてございます。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 きようは私は議論をせぬという約束ですから議論はいたしません。あなたのその態度に従つてわれわれの態度も決定いたします。ただ申し上げますが、独立後の日本は武力もなし、国力も弱り、わが外交で一番大切なことは信義です。外国にこうすると言えば日本はするのだ。戦前の軍国日本と違う。約束は守るということを天下に示さなければならぬ時代ですよ。それにあなたみすみす家族を渡すということをあなたが署名されて書いておいて、一月たつてあとで下僚が家族は渡さぬでもよい、そのときは伺いを立てろ、そうしてこれがばれてはならぬ、これは秘密だから進駐軍に見せるなという前書きがしてあるのです。これはけさ中曽根君より確かめた通りです。秘密にうそをつこうという、これは国際のことじやなくても、国内のことでも教育にも害がありますよ。まつたくのこれはうそです。実に私ども憤慨にたえません。  もう一つ伺います。あなたは日本政府が平和条約の条項によつて国際的の人命安全の条約に加入したことは御承知ですね。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 その通りであります。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 この条約の実行に対しても適切な措置を政府からおとりになりましたか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 これは外務大臣からお答えします。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 いや、あなたから聞いておる。私はね、何もあげ足とりじやありませんよ。ただあなたのお出しになつた予算をわが改進党でどう審議するかをきめるために事実を聞いておるのです。あなたの信念を聞いておるのです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 外務大臣から信念も事実もお話いたします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 ……。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 外務大臣のお答えは聞きません。私はいかなる信念を持つてあなたはこの大切な独立後の日本の国家をあずかつて——国民は今非常に窮乏しておりますよ。非常に大切なこの議会において、一体いかなる愛国の信念で進んでおられるかを確かめて、そうしてあなたのお出しになつた案を検討しようというのです。首相の信念を聞いているのです。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 条約の精神にのつとつて政府は処置をいたしております。いかに処置しているかは外務大臣からお話を聞かないとおわかりにならないでしよう。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 総理大臣それは言い過ぎですよ。私ども夙夜国家を憂えておる。私が知るか知らぬか、あなたはどうして御断定なさる。この処置について私が知らぬとおつしやるのですか、知らないのですか、もう一ぺん言うてください。ちよつと無礼じやないか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 先ほど申しました通り、その処置については、あなたが知らぬとは申さないのであります。いかなることをしたかとおつしやるから、外務大臣から説明をいたさせる…。     〔発言する者多し〕

太田正孝自由党

○太田委員長 静かにしてください。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 総理大臣は今議員提出で保安庁法の改正を提案しつつあることを御承知ですか。御承知ですね。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 はい。(笑声)

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 これは本来あなた方が責任を持つて、安全条約の履行のために、政府が出さなければならなかつたものなんです。これを出さなければ国際の義務は尽されないのです。あなたがお出しにならないから、自由党の諸君もわれわれも寄つてこれを出しつつあるのですよ。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 ……。     〔「法制局長官に聞いているのではない」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕

太田正孝自由党

○太田委員長 静かに。静かに。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 きようまでこれがなかつたことによつて、国際義務に違反しておりませんか。総理大臣の信念を問う。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 ……。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 君の答えは聞かない。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 政府委員から説明いたさせます。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 私からお答えいたします。     〔「聞く必要はない」と呼び、その他発言する者多し〕、

太田正孝自由党

○太田委員長 静かにしてくだざい。清瀬君に発言を許しております。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 今回どういう信念で政府がお出しになつているかをはかつて、そうしてわれわれのこの予算に対する信念をきめようと思います。ほかの大臣やあるいは法制局長官には私は聞きません。聞かぬでも知つておるのです。知つておるけれども、あなたが御承知かどうかを聞いておる。知つておりますよ。そんなことは私も法律家でよく知つております。ただしかし一体あなたが御承知の上で今回の予算をお出しになつたかだけが問題です。  ではもう一つ、次に行きます。この国会で炭鉱労働者の住宅に対して利息を減ずる処置をとつたことが出ております。(「そんなことは質問済みだ」と呼ぶ者あり)まあ聞きなさい。その減じた金額の中に、未払いの利息ではなくして、すでに払うて収納をしておる利息を返還したことは御承知ですか。現金で開発銀行に入つたものを出した処置を御承知ですか。

吉田茂自由党内閣総理大臣

○吉田国務大臣 総理大臣は知りませんから、政府委員から説明いたさせます。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 それを御承知がなければ聞きません。     〔発言する者多し〕

太田正孝自由党

○太田委員長 静かにしてください。

清瀬一郎改進党

○清瀬委員 これは会計法の適用は形式上ないのですよ。けれどもいやしくも他人の利益をはかるために法人に不利益を及ぼす行為は、刑法の背任罪というものなのです。それを指示した人は背任罪の共犯です。これは質問じやないけれども、念のためにあなたにお教え申し上げておきます。すでに受取つたものを——たとい小さい銀行でも利息を負けることはあるが、受取つた利息を返すことは、これは法律問題です。それをせいとあなたが御命じになつたら、あなたも連帯の責任であります。これで終ります。

太田正孝自由党

○太田委員長 以上をもちまして、通告の質疑は全部終了いたしました。  これにて予算三案に対する質疑は終局いたしました。本日の議事日程はこれにて終ることとし、次会は討論採決を行うことになりますが、その開会の日時は公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後六時四十六分散会

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