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15回国会衆議院1953/03/12

法務委員会 第28号

発言数
57
登壇者
9
会派数
2
開催日
1953/03/12

会議録

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 これより会議を開きます。  外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。長井源君。

長井源改進党

○長井委員 私わからぬので、実はお尋ねするわけなんですが、第三国人中、特に韓国人民の在留者に対する生活扶助の問題がどうなつておるか、こういうことなのでございますが。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、朝鮮人に対しまして生活保護法をいかに適用して、生活救護をしておるかという問題でございます。これは厚生省所管ではございますが、関係省としまして知り得ました範囲でお答えを申し上げたいと存じます。  現在では、朝鮮の人といたしましては、約六万人の人を救護の対象にいたしております。大体六億と少し出ます生活扶助を、生活保護法の運用によりまして支給をいたしておるようでございます。この根拠は、現在当然やらなければならぬということではなしに、どんな外国人でもやはりこの法を運用いたしまして生活保護をいたすということは、現実にやつておるようでございまして、義務として政府がやらなければならぬというわけではなく、法律の趣旨が人道に基いてやるということになつておりますので、そういう趣旨で実際の運用上生活保護を与えておるということのようであります。

長井源改進党

○長井委員 生活扶助を与えますことはけつこうでございますが、ただ一般の日本の国民とともにということになりますと、例の市町村、府県等の割当分担があるわけでございます。これは当の市町村では非常に困つておるのでございます。こういう特殊の外国人に対する扶助であるからして、これはひとつ国家で一手に持つてもらえないものか。私は三重県の松阪でございますが、ここは各種の問題がある所でございますけれども、二割ですか、市町村の負担をする分があるのです。それだけでも年に約六百万円――ああいう五万かそこらの小都市でも六百万円の支出をそのためにしなければならぬことになつている。今日地方財政の困つているとき、その負担にたえないのでございますが、これは国内の者はいたし方ないといたしましても、外国人に対する生活扶助の費用は、全額を国庫で持つてもらうような方法にはならないものかと思うのですが、この点についての御所見はいかがでしようか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 その点につきましては、私の方の所管でございませんので、専門の政府委員が参りましてから、御答弁申し上げます。

小畑虎之助改進党

○小畑委員 従来外国人登録証明書の偽造、変造がしばしば行われているようでありますが、どういうような数字になつておりますか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 ただいまの外国人登録証明書の偽造、変造というようなことにつきまして、どの程度であるかというお尋ねでございますが、たとえば写真を張つてございますが、その写真をはがしてほかの写真と張りかえる。それには浮出しプレスと申しまして、みぞをつけたプレスをやつておりますが、そういうのを偽造してわからないようにするというケースが大分ございます。その全体の数につきましては、今自分が数字的に御説明申し上げるほど材料がございませんが、偽造、変造は大体そういう種類が多いのでございます。それからもう一つ問題になりますのは、残念でございますが、市町村が登録証明書を発行します原局でございます。その原局の方とこれを受けます方とが通謀しまして、証明書を簡単に出すという例がございまして、そのために不正なものを持つておるというのがございます。昨年の十月二十八日に新しい外国人登録の切りかえをいたしましたが、その後におきまして、二箇所ばかり百部程度のものが不正に登録証明を発行されたという事例があります。

小畑虎之助改進党

○小畑委員 従来偽造、変造の件数がどれくらいに上つておるかということは、本改正案を成立さすかどうかということについて重大な影響があると思います。大したことでないとするならば、現在の国際関係等も考えまして、なお従来の施行を一箇年延期するというようなことはけつこうだと思いますが、非常にたくさんな数に上つておりまして、それがために日本全体の治安にも関係するというようなことであるとしますと、いたずらに国交上の関係から延ばすというのもどうかと思うのであります。今材料がないとおつしやいましたことは、そういう事犯がなかつたということでなくて、今お手元にその統計がないということだと思いますので、次会までに、ひとつどういうことになつておりますか、資料を御提出願います。  それから、外国人の登録につきまして、指紋を押捺させるということは、わが国の制度としましても初めてのことであつて、おそらく世界のどこにもあまりたくさん例はないのではないかと思うのでありますが、それがため、この制度を施行するためには相当の準備が必要である。これは提案理由の説明にもうたわれておるところであるので、過去一年間の準備期間において政府はいかなる準備をなさつたか、またこの制度の趣旨を外国人に徹底せしむるために、いかなる方法をおとりになつたか、伺いたい。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねでありますが、指紋制度を採用いたすことはわが国においては初めての制度でございます。この出入国管理令を出します際に、そういう規定を入れましたのは、もちろん一応それがあれば便利であるという意味で出したのでありますが、日本の習慣あるいは日本においての初めての制度であるというので、慎重を期しまして、施行後一年という猶予期間を設けたわけでございますが、今この指紋制度をやつておりますのはアメリカでございます。アメリカは御承知のように、日本から行く際にも、指紋をとつて向うに送るということで、指紋制度を採用いたしている国でございます。東洋並びにヨーロツパにおきましてはあまり指紋制度を採用しておりません。従いまして、わが国でやります際にも、一般に指紋制度というものに対する認識がございませんので、この認識を与えてからやりたい、かように存じておつたのでございますが、実は登録法ができましたのが、昨年の講和発効と同時にこれが動き出すという仕組みになつておつたのでございますが、第一に十月の二十八日にこの新しい登録法に基きまして、登録を切りかえるという措置をとる法律になつておつたのでございます。つまり、十月の二十八日に、指紋を合せて行うということが、最初からそういうつもりでやつておつたのでございますが、御承知のように、メーデー事件を契機といたしまして、大阪事件であるとか、国内治安に大きな影響を与える外国人の騒ぎがいろいろございまして、もし指紋制度を十月二十八日の登録の切りかえに合せて実施することにいたしますと、これは外国人が六十万以上おりますので、こうした人たちに無用の騒ぎを起させるという原因になる結果、今までやつておりました登録自体もできなくなるというようなおそれもございまして、この十月二十八日には指紋はやらないということで経過をいたしたわけでございます。従いまして、登録の切りかえは朝鮮人方面においては反対をしまして、全国的に運動を展開するというようなことになつておりまして、その際に指紋をとられるというのはけしからぬというようなことも、連中としては、スローガンに入れておつたのであります。そういうことがございまして、この指紋制度をとるのには、慎重に時期を考えなければならぬという結論になりまして、現在に至つたわけでございます。これの周知徹底というような点につきましては、日本人方面において、警視庁あたりでも、たとえば住民登録であるとか、その他いろいろのことをやつておりますが、指紋の普及徹底ということで、日本人側の方から率先して、犯罪捜査とか、そういう意味とは別に自分の人権を保護してもらうという意味でも必要であるというような運動をぼつぼつやり始めておるわけでありますが、そういう意味合いでこれを一年延期いたしまして、その間に周知徹底させる、順次そちらの方に向けて行くことが必要であろうと存じます。

小畑虎之助改進党

○小畑委員 今承りますと、この施行に対する準備ということは、あまりできておらぬように伺うのでありますが、ことにこの制度の趣旨を周知徹底せしめるという方策は、日本人の関係方面に対しては行われているが、外国人自体に対しては周知徹底せしめるところの方法がとつてない、こういうふうにうかがえるのであります。第一番に、これを実施するといたしますと、科学的な面におきましても多少の準備がいるのではないかと思うのであります。それから予算の面におきましても、たとい少額でもその措置が必要になつて来るのではないかと思うのでありますが、どういうことになつているのでありますか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 指紋の実施に対しましては、お話のような相当な裏づけがなければできないと存じます。本年度の予算におきましては、十分な裏づけが実はできておらないのでございますが、特にこれが市町村が主体になつてやるという場合におきましては、全国の市町村に対して十分納得の行くような予算的裏づけをしてやるということが絶対必要になると存じます。政府部内におきましては、大蔵省方面とも特にその点について折衝をいたして参つたのでございますが、現在におきましては、各市町村に指紋を押捺します機械器具というようなものを配付する予算はあるわけでございますが、これを運営いたします予算につきましては、非常な不足を感じているわけであります。

小畑虎之助改進党

○小畑委員 どうもやはり、今承つておりますと、予算及び科学的な施設等につきましても、伺うところによると、準備ができていないようであります。この十四条の施行をもう一年延ばす、これにつきましては、この十四条を施行する必要がなくなつたという場合はちよつと考えられぬのであります。必要があるけれどもその他の各種の事情によつてこの際これを施行しない方がよろしいということだろうと思うのでありますが、法務省はそういうようなお考えでもつて一年間猶予するという期間を設けられた。国会でも承認した。ところがその一年の猶予期間のうちに何らの準備もできてない。外国人をしてこの日本の真意を周知徹底せしめるところの方法も講ぜられていない。もう一年これは延ばしたらまた同じような状態で、それで何らの準備も行わずしてもう一年経過させる。そのうちに国際情勢の好転を待つて実施しよう、こういうお考えですか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 実はこれを実施いたします際に、約六十万の外国人がおりますが、その九〇%は朝鮮の人たちでございます。この朝鮮の人たちは終戦前から日本におつた人たちがほとんど大部分でございますので、朝鮮の人たちが日本で生活できるかできないかという、生活権が与えられるかどうかという問題につきましては、現在日韓会談でそれをきめようということになつておりまして、日韓会談が妥結を見ます場合には、その条約と申しますか、それに基きまして国内法をつくる。そうしてその国内法は出入国管理令の特別措置法になりまして、朝鮮人に対してはどういう在留の資格を与えるかというようなことを新たに規定いたす段取りになつておるわけであります。ところがこの登録法を昨年制定いたす際には、大体日韓会談は昨年中に妥結を見、そうして特別措置法ももう半年ぐらいでできるのごはないかという見通しで出発しておつたのでありますが、残念ながら約一年日韓会談ができないで今日に至つておるのであります。幸いにして不在はいろいろな事件もございますけれども、李承晩大統領も日本にやつて来る。そうして日韓会談についても両方でやろうという気持になつておりますので、本年はこの妥結を見ることが可能であると存じます。妥結を見ますれば、特別措置法によりまして、朝鮮の人たちに対して、日本としてはかくかくの資格を与えて、日本に在留さすことができる。それは終戦前から日本におつた朝鮮の人たちでありますが、そういう機会をとらえまして、日本にいる根拠が彼らに与えられるわけであります。その際に日本側としては、日本人の戸籍に当るような登録について万全を期するというので、指紋間度をあわせてやるのであるということで、そういう機会にこの指紋制度の周知徹底をはかるということは十分できることと考えておるわけであります。その機会を実は政府としてもねらつておるけわであります。

小畑虎之助改進党

○小畑委員 これは国内法ですから、別に国内法の制定について外交交渉はいらないようなものでありますけれども、実際に国内法をつくつてこれを適用する場合に、適用が不能に陥るか、支障を来すというような場合には、私は各国との親善関係を目標とするところの外交交渉が行われても別段日本の国辱にはならないと思つております。そういうことは法務省の方で今まで外務省と御交渉になつて、どうしても日本はこの制度を設けなければならぬ、これを実施しなければ非常な偽造、変造の犯罪がたくさんあつて困るということで御相談になつたことがありますか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 御承知と思ひますが、この登録法を制定いたしますときは、まだ出入国管理庁は外務省所管であつたのであります。従つて外務省所管でこの法律を提案して法律となつたわけでありますので、外務省もこの点をよく承知していると思ひます。

小畑虎之助改進党

○小畑委員 結局日韓会談の妥結を待ち、それまでは暫定的な措置であるというような趣旨のようでありますが、日韓会談の妥結ができますれば、もちろん基本的な問題が定まつて楽になると思います。それまでここ一年その施行を延期いたしまして、それで従来の一年間と同じような情勢で何らの手段も講ぜず、ただ日韓会談の妥結を待つて、そうして国際情勢が変化するのを待とうということでありますか。それともその間に趣旨を周知徹底せしめて一部外国人の誤解を解くことに対して日本政府は努力する、その努力をする期間と、それから実際の準備の期間にもう一年を要するということでありますか。そういうことはしないし準備も必要でないのだけれども、とにかく日韓会談の妥結はいずれできることであろうから、もう一年延ばしておこうということでありますか。どちらの趣旨でありますか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 この指紋制度を周知徹底させますのには、この必要性を十分外国人に対してわかるように言わなければならぬ。これについて納得の行くように説明してやらなければならぬ。それには日韓会談の妥結ということの機会をとらえて周知徹底させることが一番早い道である。それ以前にやりますと、現在でもこの法案が出るのではないかというようなことですでに連中は騒いでいる面もあるわけでありますので、無用に必要以上に刺激するというようなこともございます。従つてわれわれとしては、それまでは積極的な周知徹底ということは事実上困難かと思ひます。

小畑虎之助改進党

○小畑委員 それではこれからの一年という期間は、結局何か一年ということに特別の根拠があるのですか。あるいは当分の間というような意味でもよろしゆうございますか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 現実といたしましては、当分の間という書き方でもけつこうなのでありますが、最初にこの法律が出ますときに、特に一年という期限を切つてこの施行をお約束をしておりますので、ただ当分の間ということであれば、かえつて無責任になるのではないかという見地から、今回はさらにそれを一年延期していただくという書き方にいたしたのであります。

大川光三改進党

○大川委員 関連して。先ほど小畑委員からの御質問のお答えとして、偽造、変造がどの程度にあるかということが今当局ではつきりわからぬ、こういうことでありますが、本来指紋押捺制度を設けたのは、偽造、変造の事例がたいへん発生して、これを防止するためにということが前提になつておる。そうすると、この指紋押捺制度を設ける以前において、確実な偽造、変造の数というものが政府でわかつていなければならぬ、私はそう思う。そのいわゆる確定した分と、その後における偽造、変造の数はどうなつておるのか、この両面の御説明を私はいただきたいと思いますが、その点はただいまおわかりでございましようか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 大体の数がどのくらいであるかということでございますが、これは資料にいたしまして後ほど差上げたいと存じます。

大川光三改進党

○大川委員 それから一体この指紋押捺制度を設けたという根本の目的は、外国人登録証明書の偽造、変造を防止するという表面上の理由以外に、犯罪の防止、捜査ということを主眼に置いておるのかどうかということをお伺いしておきたい。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、入国管理局といたしましては、外国人登録証明書の偽造、変造を防ぐということを主にしております。

大川光三改進党

○大川委員 そうしますとこの一年または当分の間この実施を延期するというその延期の間、偽造、変造防止に対してはどういう対策をおとりになるのか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 新しい法律によりまして、従来ごく簡単で、一枚の紙でございました外国人登録証明書を少しく複雑にいたしまして、現在ではパス・ポート型にいたしまして、そうして簡単には偽造のできないように、特に紙を薄くいたしまして、写真を張りますので、写真をはがせばその紙自体が破れてしまうというようなところまで、注意をいたしまして、新しい様式に改め、実は十月二十八日から新しいやり方をやつておるのでございます。これによりましても、従来の偽造変造は大分やりにくくなると思いますが、最近では写真の一番上のつるつるしたところだけをすつとはぐというような巧妙な偽造変造が現われて来ております。これはよほど従来よりは巧妙になりましたのですが、それに対しましては現在どうしたらいいかということを研究をいたしておる次第でございます。

大川光三改進党

○大川委員 偽造、変造を防止する技術的な方法として、ただいま政府委員の御説明になつたことは一応了承いたしますが、何がゆえに偽造、変造が行われるかという根本の問題について伺つておきたい。おそらく従前から日本に在留しておる外国人というのは、その数は決してふえないのがほんとうであります。従つて偽造、変造は徐々に減らなければならぬ。それが依然としてふえて来るということは、結局密入国者がふえておるということに帰着すると思うのであります。その密入国を防止するということについて政府はどういう対策を持つておられるか、これが私は根本問題かと考えるのでありますが、伺つておきたい。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 ただいまの御質問はまことにその通りでございまして、出入国管理庁というものが二十五年の十月にできまして、初めは貧弱な機構で出発いたしましたが、順次定員もふやしていただき、予算もふえておりますが、いわゆる取締りの方の機構を整備いたしますと同時に、この密入国の防止に関係いたします役所といたしましては、海上保安庁、国警、自治警、そして最後には入国管理局という三段階と申しますか、三種類の役所がこれに当つておるわけでございますが、これらの緊密な連絡ということが一番大事でございまして、理想論を申しますれば、この役所が一つの目的に対しまして、一つの機能を営むような一本の機構になるということが一番必要なのでございます。これはわれわれ主張はして参つておりますが、遺憾ながら現在まで実現を見ておりません。従いましてこの三つの機関が互いに横の連絡をして協力をしておりますが、この協力の仕方につきましても、いういろいろくふうがあるので、その点につきましては、毎年幾分か協力の方面においても進歩をいたしておるわけでございます。ただ御承知のようにわが国が朝鮮半島と非常に近接な距離にあり、しかも日本の海岸線は非常に長い。そこへ夜陰に乗じまして、十トンあるいは五トンくらいの船でこつそり入つて来るので、なかなかこれを取押さえますことはむずかしいのでございます。たとえば対馬でございますが、対馬には海上保安庁の方の警備艇と申しますか、巡邏艇と申しますか、そういうものを倍くらいにふやしていただいた、そのために昨年は一昨年に比べまして、対馬に上つて来るという例が大分減つて来ておるわけでございます。そのようにわれわれの方の海上警備力をふやすということ。それからもう一つは陸上に上ります際に監視網を設けておるのでありますが、これもなかなかむずかしいのでございまして、海岸ですぐつかまえればまことに効果的でありますが、その点について非常に各府県でも苦心はしておられますが、これを急速に完備するということは困難な情勢にございます。上りましてからもぐり込むということにつきまして、これはわれわれの方が主になりまして、国警、自治警方面と連絡をとつてやつておりますが、いろいろの制度を設けまして、そういう人たちが入つて来たのがわかるような方法を研究し、またたとえばパトロールをいたしますとかいうようなことで、順次密入国を防ぐということを少しずつ成績を上げておる次第であります。

大川光三改進党

○大川委員 最後に伺つておきますが、御承知の通り、最近日本人が李承晩ラインを侵したという場合におきましては、あるいは漁船を拿捕するとか、あるいは日本人を逮捕し、処罰するということについて、韓国の方では相当厳重に日本人に対する制裁を加えておるのであります。それと相対比いたしまして、韓国人が日本に上陸する、密入国をするというこのはつきりした事実に対して、日本が韓国人に対してなすその処罰とか対策というものが、たいへん手ぬるい、いわば日本人は韓国のために李承晩ラインという線で相当厳格に取締られておりながら、日本はどちらかといえば、韓国人がどんどん密入国して来ることについての取締りが手ぬるい、そういう感じがいたすのでありまして、それに対して李承晩ラインを侵した日本人に対する相手国の処罰、それに対して韓国人が日本に入国したときの処分というものについて、どういうお考えを持つておられるか、伺つておきたい。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 韓国側で、日本人が向う側の法律を犯して入つた場合に、どういう処罰をされるかという点につきましては、私といたしましては十分詳しく存じておりませんが、朝鮮の方から日本に入つて参りました際には、これは出入国管理令違反ということによりまして、密入国者については、まず検察庁の方に身柄を渡しまして、検察庁において十分密入国であるかどうか、あるいはそのほかに密貿易というようなことの疑念があるかどうかというようなことの調べを経まして、出入国管理令違反ということで処罰をいたすわけであります。裁判所の決定した判決を得まして、その上で入国管理局の方に身柄を渡してもらう。われわれの方は司法処分が済みましたあとでございますから、単なる行政処置といたしまして、密入国者を必ず本国に送り帰すという法の精神から取扱つておるわけでございますが、この原則をあくまでも堅持しております。ただ密入国をして参りますいろいろな理由があるわけでありますが、その理由の特別な者につきましては、大臣の特別許可という制度がございますので、それにつきましてごくわずかなものが在留を許可されるということがあると思うのであります。原則はどこまでも密入国者は送り帰す。しかし入国管理局に所管が移りました際には、これは司法処分ではない、行政処置であるということで、大村収容所に収容しまして、現在では毎月一回船を出しておりますが、船に乗せて送り帰すということをいたしております。普通密入国者は単に船に乗つてやつて来るということでありますと、罰金であるとかあるいは一、二箇月の拘留であるとか、執行猶予というような程度の処置が行われておるわけであります。

大川光三改進党

○大川委員 先ほど小畑委員の御質問のときに、結局日韓会談の妥結という機会に適当な処置を講じたい、こういう御趣旨の御答弁でございましたが、一体日韓会談というものはいつごろ開始され、少くともこの一年以内に妥結するという見通しをお持ちになつておるかどうか。

鈴木一法務事務官(入国管理局長)

○鈴木(一)政府委員 ただいまの御質問は外務当局からお答えをいたす筋合いのものと存じますが、私の知り得ました範囲におきましては、ある新聞では非常に悲観的に論じておられますが、必ずしも悲観的な材料ばかりではないのでありまして、日韓会談については交渉が進められておるというふうに承知をいたしております。従いまして、いつそれが開始されて、いつ妥結するかということははつきり申し上げられないと思うのであります。私は少くとも本年には十分会談が成果を見るのではないかという期待を持つておるわけでございます。

長井源改進党

○長井委員 厚生省のお役人にお尋ねするのですが、これは厚生委員会でお尋ねした方が適当かもしれないのですけれども、外国人登録の関係でお尋ねするわけです。第三国人のうち特に朝鮮人の援護家庭、生活扶助の実情はどうなつておるか、こういうことなんでございます。私は在留者と、援護家庭あるいは生活扶助のパーセンテージのプリントしたものでも資料としてもらいたい。特に各府県別についてそれを見せてもらいたいと思います。私は実はこんなことを元あまり知らずにおりましたのですが、先般郷里に帰りましたところが、――私の町は三重県の松阪でございます。あそこはいろいろ問題のあるところでございますが、在留朝鮮人の八〇%が援護家庭なんです。それで先ほども法務省の方に伺つたのですが、人道上の見地から生活扶助にすることもけつこうですけれども、一般の日本人と同様の取扱いにいたしますと、何割かの市町村の負担があるわけなんです。これが莫大な数字に上りまして、あの小さな町であつても大体約六百万円を越えるような数字になつておる。これはほかのことならともかく、第三国人として援助をするなら、国家で全額持つてもらうべきものではないかと考えるのでありますが、これについて御所見を伺つておきたい。

黒木利克厚生事務官(社会局保護課長)

○黒木説明員 ただいまの御質問の在日朝鮮人の保護の問題でございますが、これは御案内のように、講和条約の発効後は生活保護法の適用はない建前になるのであります。つまり国籍を喪失いたしましたので、生活保護の対象が日本国民を対象にいたしておりますから、自然そうなるわけであります。日韓会談で根本の方針がきまり、条約がきまり、それに基いて国内法が制定されるまでは、従来の例によりまして生活保護の適用はしないのでありますが、しかし人道上の問題とか治安上の問題とかがありまして、その取扱いに準じて保護をいたしているのであります。現在の保護の状況は、在日朝鮮人のうち全国平均で一割二分が生活保護に準じた取扱いを受けております。最近少しずつその率が上昇はいたしておりますが、大体一割二、三分見当でございます。そこで生活保護の建前にいたしますと、国が八割持ちまして実施機関である県と市が二割を負担することになつているので、やはり在日朝鮮人の保護もこれに準じて取扱いをいたしておるのであります。従つて生活保護法の建前でこれに準じた取扱いをいたします限りは、やはりその率を変更をするわけには参らないのでありますが、しかしこの問題は生活保護法から切り離した在日外国人の保護ということで、おそらく単行法をもつて解決をすべき問題であると存じますので、そういう際にはお説のようなことも当然考えなければなるまいと思つておりますが、とりあえずのところは日韓会談が妥結いたしますまでは、生活保護の取扱いに準じてやつておりますので、現在の負担の率をかえるわけには参りかねる、こういう現状でございます。

長井源改進党

○長井委員 それではどうも困りますね。生活保護の認定は、民生保護委員という人々がしてくれるらしい。そうしますと、地方によつてそれが比較的ゆるやかに行われることになると、そこへまた集まつて来るわけでございます。集まると今度は集団的な威力が用いられまして、どうしても実際問題としては当局の方で折れなければならぬことになる。こういう実情になるのです。そうしますと、ある地方では朝鮮人の生活扶助のために非常な地方費を負担しなければならぬことになり、ある地方では厳重な民生委員がそれをしぼりますればよそに散つてしまいますから、それがために減つて来るということになれば、地方費の負担は非常な不公平なものになつて来る。ですから、日韓会談の問題もありますけれども、これは相当数に上つており、国家として相当の金額になる問題ですから、厚生省の方で特に急いで単行法なり何なりで、これらの特殊の地域の人々がそのための特別な負担をしておるということを排除してもらわなければならぬと考えております。その単行法なり何なりを早く出してもらうような用意ができますか。

黒木利克厚生事務官(社会局保護課長)

○黒木説明員 御意見のように、各地域におきまして在日朝鮮人の保護に薄い厚いがありましたことは、過去において事実であります。当時は民間の篤志家であります民生委員さんに収支の認定、保護の決定をやつてもらつていたのでありますが、最近におきましては福祉事務所というものができまして、公務員たる福祉主事というものが収支の認定なり保護の決定をやつておりまして、全国的に見ますと、大体そういう保護の薄い厚いが平均化して参つておるのであります。それからもう一つ、集団的な保護の要請等が在日朝鮮人側からなされまして困つたことも過去にはあつたのでありますが、最近においてはそういうことがだんだんなくなりまして、ことしに入りましてからは一件もありませんが、政府といたしましてもたびたび通牒を出し、治安当局にも連絡いたしまして、こういう集団要請には一切応じないという厳たる態度をとつておるのであります。この問題は治安の整備がだんだんできますと同時に解決する、また現に解決しつつあるのでありまして、そういう意味から、最近は在日朝鮮人の勢力の強いところは保護がいいかげんになるということはだんだんなくなつておりまして、今後もこういうことがないように政府としてはせつかく努力をいたしております。それから保護の負担の問題は、これは在日朝鮮人問題のみならず、貧弱な財政の市当局におきましては、やはり保護法の二割の負担は非常に無理であるという御要請もありますし、現に全国の市長会議等の要望書なり陳情書も参つておるのであります。政府としても、生活保護はできるだけ国の負担でやるという建前になつておるのでありますから、国の責任の割合を多くして参りたいと考えておりますが、いろいろな関係でまだ解決を見ていないのであります。しかしこの負担の問題は、実は昨年の五月に生活保護法の改正がありまして、それまでは実施機関の市当局は一割を負担し、県が一割を負担し、国が八割を負担するというかつこうでやつていたものを、実施機関が二割負担すると改めたばかりでありまして、最近におきましてはいろいろその利害得失が明らかにされつつありますが、その結果を見まして、保護法の根本問題としてこの方面で解決を考えてみたいと思つております。しかしやはり在日外国人の問題は単行法によらざるを得ないと思つておりますが、単行法が日韓会談の先に出ますと、日韓会談の交渉上にいろいろ思わざる影響を及ぼす等のこともありまして、やはり日韓会談の妥結を見て解決せざるを得ないような情勢でありますので、日韓会談の様子を見て順次研究をいたしたいと考えております。

長井源改進党

○長井委員 おいおい改善しつつあるというお話でありますが、一旦与えました生活扶助というようなものは、簡単に取上げたり停止したりすることは実際問題としてできない。私の町は八〇%が援護家庭になつている。それで今度事務所ができたりしておいおい改められるとしましても、平均一割二分の負担でも容易なことではない。なお私の方で詳しく調査をして申し上げることができなかつたのですが、今お話を伺いますと特別ひどいようでありますので、実情を調査いたしましてもう一度伺うことにいたしまして、本日はこれで留保しておきます。     ―――――――――――――

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 刑事訴訟法の一部改正法律案を議題といたします。この際本案の内容について政府より説明を聴取することにいたします。岡原政府委員。

岡原昌男検事(刑事局長)

○岡原政府委員 今回刑事訴訟法の一部改正法律案を御審議願うことに相なつたのでございますが、これは提案理由の説明の際にも述べました通り、前前国会におきまして一部提出いたしましたのに、今回さらに法制審議会で答申のありました三点をつけ加えて整理して提出したものでございます。この改正は全文五十数箇条に触れてございますけれども、その相当部分はいわゆる法律条文の整理、整備でございまして、問題のある諸点だけをきよう特に取上げて申し上げ、その他は御審議の便宜と思いまして御配付いたしておきましたこの法律案の逐条説明書によつて詳細を御承知願いたいと存ずるのであります。なおこの逐条説明をいたしますのに際しまして、この説明書を基準にいたすのが最も便宜と存じますので、さよういたしたいと存じます。  それぞれページ数と条文を申し上げまして進めて参ります。  最初は第一ページの六十条第二項関係でございますが、これは現行法六十条第二項の但書におきまして、勾留期間更新制限の除外事由が掲げられてございますが、後に述べます八十九条が改正になりましたので、それに合せてこれも直したというだけのことでございます。  次は第二ページの七十一条関係、第三ページの七十二条関係、これはいずれも従来の条文上若干疑義があり、あるいは法律作成上のミスではなかつたかというふうな議論もあつたくらいなのでありまして、これらを「勾引状」と「勾留状」との取扱いを同じくするという点と、それから「司法警察員」とあるのを「司法警察職員」に改めるというだけのことでございます。  第四ページの七十三条第三項、これも字句の修正、整理だけでございまして、特に深い意味はございません。  次に特に申し上げたいのは、第四ページの終りから二行目の第八十九条中の改正でございます。ちよつと読みます。「第八十九条第一号中「無期の懲役」を「無期若しくは短期一年以上の懲役」に改め、同条第五号中「氏名及び住居」を「氏名又は住居」に改め、同号を同条第七号とし、同条第四号を第五号とし、同条第三号の次に次の一号を加える。四、被告人が多衆共同して罪を犯したものであるとき。第八十九条第五号の次に次の一号を加える。六、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者の身体又は財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる充分な理由があるとき。」これはいわゆる権利保釈の除外事由であります現行法第八十九条第一号及び第五号に修正を加えまして、同時にさらに新たに権利保釈の除外事由といたしまして四号、六号の二つを加えようというのでございます。すなわち同条第一号につきましては、従来「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮にあたる罪」という事件に限られておりましたのを、一短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」の事件にまでこれを拡張しようとするのでございます。さらに四号、六号の改正理由は六ページの(二)のところに出ております。その(イ)に第一号の改正の趣旨がございますが、従来刑法犯中で申しますと強姦とか営利誘拐とか人身売買、強盗といつたような比較的重大なる事犯につきまして、これが権利保釈の除外事由に当らないため非常に保釈が多かつたのでございます。そこでいろいろ不都合がございまして、新聞紙上等に保釈中の強盗の再犯といつたようなことがよく出たのでございます。これらの不都合を救済する趣旨でございます。新たに加えました第四号は、いわゆる集団犯罪の事件を権利保釈の除外事由とするものでございます。この場合集団犯罪とは、犯罪自体がその性質上集団的である場合、たとえば騒擾、内乱といつたようなもののほか、集団強盗などのように集団的に行われた犯罪を申します。かような犯罪は従来の経験に徴しまするに、一般に通謀もしくは証拠隠滅の危険がきわめて高いのでありまして、これに保釈され得る権利を与えるというのは適当でないと考えまして、この権利保釈の除外事由に加えようというのでございます。  他に新たに加えました第六号は、たとえば恐喝等の事件の被告人が保釈によつて釈放されますと、被害者その他の関係人を歴訪いたしまして、いわゆるお礼まわりなどと称して一種のいやがらせをするということがきわめて頻繁にある事例でございます。従つて被害者たちは後日公判に呼ばれますと、後難を恐れて証人として十分に自分の思つたことをありのままに言えないというふうなことがございます。従つて証拠の収取、ひいては審判の目的を確保するのに困難を来す場合がはなはだしく多いのでございまして、これを防止する趣旨に出でたものでございます。第七号は現行法の第五号でありますが、「及び」というのを「又は」というのに改めた趣旨は、従来氏名が一応明らかであつても、住居のわからない者について、公判期日における出頭確保が困難であるということが非常に裁判所側からも訴えられ、検察庁もその意見でございますので、これらの不都合を改正しようとする趣旨でございます。もとよりこれらの権利保釈の除外事由といたしましても、裁量の保釈を許し得ることはもちろんでございます。従いまして一応権利保釈にはならぬけれども、第九十条で裁量的に保釈をされることがあるのでございまして、現に保釈人員のうち簡易裁判所では二二%前後、地方裁判所では三一%前後が裁量保釈になつておるような実情でございます。  次は七ページの九十二条関係でございます。これは従来保釈の許否の決定について、裁判所は検察官の意見を聴取するということが書いてございますが、勾留の取消しについての規定がございませんので、整備いたした次第でございます。  次に第八ページのしまいの方に九十六条の改正がございます。ちよつと読んでみます。  第九十六条第一項を次のように改める。「裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。一、被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。二、被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。三、被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。四、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。五、被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。」これは現行法第九十六条では、一、二、三とわけずに書いてあつて、非常に読みにくい点を訂正して改めると同時に、先ほどのいわゆる権利保釈の除外事由と裏表になりまして、いやがらせのお礼まわりといつたような行為をした場合には、保釈取消しの事由にもなるということを明らかにした趣旨でございます。もう一つ「検察官の請求により、又は職権で、」ということを書きまして、取消しの請求権を検察官に与えましたのは、捜査機関としての職能上、被告人の動静を最もよく知るのが検察官でございますので、さようなことも入れたわけでございます。  次は、第十ページの第九十八条関係でございますが、これはいわゆる緊急収監の手続でございまして、現行法上の不備を他の条文とのつり合い上、この程度までは当然よかろうというので、法制審議会の答申に基いて入れたものでございます。  次は、第十一ページの第百五十三条の関係でございますが、これは勾引状の執行を受けた証人を護送する場合に、もよりの場所に留置する規定が従来ございませんために、いろいろ不便が生じましたので、加えたものでございます。  第十二ページの百六十四条関係は、旅費、日当、宿泊料の支給をする際に、これがいわゆる前払いができるかどうかという点について、従来疑義がございましたのを改めると同時に、もしその証人が出て来ない、あるいは宣誓もしくは証言を拒んだ場合には、前払いを受けた費用を返納させるという根拠規定を明らかにしたものでございます。これはそれぞれの関係法規と裏表のものを出したわけでございます。  次は、第十三ページの百六十七条第二項、続きまして第十四ページ百六十七条第六項、第十五ページ百六十七条の二、この条文は、いずれも現在精神鑑定のための留置をする際の手続につきましての規定が、百六十七条等におきましてきわめて簡単にできておりますために、従来いろいろ疑義が生じておつたのであります。そこでこれらをはつきりすると同時に、「留置状」とございますこの名前を、「鑑定留置状」というふうに、特殊の留置状であるということを明らかにいたしまして、そうしてそれらの疑義をこの際はつきりさせたのでございます。すなわち百六十七条の第二項の関係におきましてはその名称の変更、それから病院に入れた場合に、逃走、自殺等を防止するために必要な看守の規定、それからその次の項に、留置の期間の延長または短縮の規定を入れたことでございます。さらに第六項として次に、未決勾留日数の算入についての疑義がございましたので、これを勾留と見なすということで、はつきりいたさせたのでございます。なお十五ページから十六ページの初めにかけましての百六十七条の二につきましては、勾留せられておつた被告人が、さらにそれに加えて鑑定留置に付せられた場合の、両方の調和の規定でございまして、その鑑定留置の期間は、勾留はその執行を停止されたものとすることにいたす。従つて、その処分の取消し、または留置の期間の満了したときには、第九十八条の規定――収監手続の規定でございますが、それを準用するということを明らかにした次第でございます。  次は十六ページの最後の末行にございます百八十一条関係でございますが、これは貧困のために訴訟費用を納付することができないことが、判決当時にはつきりしておる際の訴訟費用免除の規定でございます。従来刑事訴訟法第五百条で、訴訟費用免除の手続というものがございますが、これはあとで確定した後の手続でございます。当初からそれがもうどうせ払えぬということがわかつておる際には、最初からこれを免除していいじやないかというのがこの改正の趣旨でございます。  次は第十七ページの末行にございます百八十四条の関係でございますが、これは「上訴又は再審の請求」とありますのを「上訴又は再審若しくは正式裁判の請求」従つてあとの「上訴又は再審に関する費用」を「上訴、再審又は正式裁判に関する費用」に改めまして、これは現行法の百八十四条におきまして、検察官以外の者が略式命令に対して正式裁判の請求をして、取下げた場合の訴訟費用に関する規定が全然欠けておりますので、これを不備と思つて、補整した次第でございます。  次は、百九十三条第一項後段の規定で、第十八ページのまん中でございます。ちよつと読みます。「第百九十三条第一項後段を次のように改める。この場合における一般的指示は、捜査を適正にし、公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する準則を定めることによつて行うものとする。」という規定でございます。現行法の百九十三条におきましては、「検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。」この後段は、「この場合における一般的指示は、公訴を実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則を定めるものに限られる。」ということになつておるのでございますが、この現行法の条文をたてにとりまして、捜査と公訴を概念的に峻別いたしまして、捜査そのもののあり方、特に捜査の実行方法については、一般的指示はなし得ないのではないかというふうな疑問を持たれる向きがあるのでございます。しかしながらもとより公訴というものは、捜査がもつて初めてあるものであり、形式的にはともかく、内容的にはこれは密接不可分の関係にあるものでございます。逆から申しますと、捜査が適正に行われて、初めて公訴もまた適正に行われる。捜査の段階に間違いがあつては、公訴というものも、従つて間違いが乗り移つて来るわけであります。公訴の提起と裁判というものとの関係は全然別でございまして、捜査の結果に基いてそれによつて公訴が行われるというこの密接不可分の関係にあるわけでございます。そこでこれらの点につきまして、本条の改正によつてこの一般的指示権の及ぶ範囲を明確ならしめる。そうして捜査の適正をはかり、ひいては公訴の適正を期そうというのが、この趣旨でございます。今回の法制審議会の答申の第一にのつとるものであります。  次は第十九ページの百九十八条第二項、いわゆる供述拒否権の告知の制度に関する改正であります。ちよつと読みます。「第百九十八条第二項中「供述を拒むことができる旨」を「自己に不利益な供述を強要されることがない旨」に改める。」、現行法百九十八条第二項におきまましては、検察官、検察事務官または司法警察職員は、被疑者の「取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ供述を拒むことができる旨を告げなければならない。」というふうに規定がございます。ところがこの制度の運用の実績を見まするに、被告人が犯罪事実の内容そのものについての供述をしないのはともかくといたしまして、捜査機関の取調べに対して一言も発しない。これが自分たちの独立した権利というふうに考える風潮がかなり広まつておるようでございます。この考え方は決して正しいものではないと考えます。それで今これを真正面から供述の義務があるというふうに書くことはこれまた不穏当の面もございますけれども、かような風潮が出て来た根拠がやはりこの百九十八条のいわゆる供述拒否権といつたようなところにもあるのではないか。ことに捜査機関におきましては、お前らはしやべらなくてもいいのだぞと言つたすぐあとから、ときにちよつと聞くがというふうに言い出すのは、いかにも心理的な矛盾を感ずるという強い希望もございますので、この際この告知の内容は憲法第三十八条第一項の規定と同じような文面に書き改めようというのがこの趣旨でございます。すなわち第三十八条の第一項には「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とございますので、憲法にはこう書いてあるという趣旨のことを告知すればよろしい、かような改正の趣旨であります。逆に言いますと、無理に言わせるものではないということをはつきりさせればいいという趣旨でございます。従来この権利を非常に濫用するといいますか、行き過ぎて行使したために、一言もしやべらずに結局関係人の供述だけで起訴された。従つてかえつて本人には不利益な結果が出たという事例が現に報告されて来ております。従いまして、さような一方においてこの権利を濫用することのないようにこの際この規定を改正しようという趣旨でございます。なお参考までに申し上げますと、公判における被告人に対する刑訴二百九十一条の黙否権告知については改正を加えません。  次は二十一ページの百九十九条の改正でございます。「第百九十九条第二項の次に次の二項を加える。司法警察員は、第一項の逮捕状を請求するには、検察官(検察官の事務を取り扱う検察事務官を除く。以下本項において同じ。)の同意を得なければならない。但し、検案官があらかじめ一般的に同意を与えた事件については、この限りでない。裁判官は、逮捕状の請求が検察官の同意を要する場合において、その同意を得ていないことが明らかなときは、逮捕状を発付しないことができる。」これはいわゆる通常の逮捕状の請求につきまして検察官の同意を要するという規定でございます。現行法では、司法警察員は法文上直接裁判官に対して逮捕状の請求をすることができるこにとになつております。実際の運用を見ますと、逮捕状の請求についてあらかじめ検察官に連絡をしてその了解を得ている地方もございますし、そうでない地方もございます。取扱いが区区にわかれております。しかるに一方におきまして逮捕状濫発濫用の声がかなり高くなつておりまして、ことに在野法曹の方から実例をあげてわれわれの方にこの規定の是正方を求めて来たのでございます。そこで今回法制審議会の審議を経まして、その答申に基いてかような措置に出たものでございます。なお緊急逮捕についてはこれによらないということ、それから検察官事務取扱検察事務官制度、これのいわゆる検察事務官で検察官の仕事をする者についてはこの同意の点から除外したというふうな配慮がいたしてございます。  二十二ページの四、検察官があらかじめ一般的に同意を与えた事件を除くことといたしましたのは、すべての事件について必ずしも検察官の同意を要する必要はないのでありまして、逮捕状濫用の非難がなくなり、警察の素質が全般的に向上いたしますれば、順次この同意を要件とする事件を少くして行くことができるわけでございます。たとえばありきたりの窃盗とか賭博とかいうような通常の刑法違反については、初めからこれを除外してよろしいと思います。但し選挙法の違反事件、贈収賄あるいは破防法事件等のように相当いろいろ問題のあるような事件につきましては、個々に同意を与えるというふうなものにしなければ逮捕状発付の適正を期し得ないのではないかというのがこの趣旨であります。手続といたしましては、検察官が一般的に同意を与えた事件はただちに裁判所に通知いたします。裁判所はそれによつて検察官はこの事件については同意を必要とするとかいらぬとかいうことの区別ができます。そこで実際に警察からその逮捕状の請求がありました際には、その基準によつてこれを取捨判断するわけでございます。この条文の中におきまして「裁判官は、逮捕状の請求が検察官の同意を要する場合において、その同意を得ていないことが明らかなときは、逮捕状を発付しないことができる。」とありまして、ちよつと考えますと、発付してはならないというふうに書くべきではないかという疑問が出るわけでありますが、この「できる」と書きましたのは、それらの審査につきまして裁判官の責任をどこまでも追究するというのは適当ではないという配慮からこの点に余裕を持たせたわけであります。  次は、二十三ページの「第二百八条の次に次の一条を加える。」という規定であります。「第二百八条の次に次の一条を加える。第二百八条の二 裁判官は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件につき、犯罪の証明に欠くことのできない共犯その他の関係人又は証拠物が多数であるため検察官が前条の期間内にその取調を終ることができないと認めるときは、その取調が被疑者の釈放後では甚しく困難になると認められる場合に限り、検察官の請求により、同条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。」これはいわゆる起訴前の勾留期間の延長の問題でございます。御承知の通り現在の勾留期間は最初十日、次に十日、合計二十日が最大限でありますが、かような条件のある特殊な事件につきましては、さらに五日だけ延長を認めよう。たとえば集団暴力事犯、大規模な詐欺事件、もしくは偽造事件等の捜査についてこれが予定されているのであります。第二十四ページ、第二十五ページにおきましてこれらの要件が非常にこまかく厳重にされておるということを御承知願いたいのでございます。すなわち三におきまして事件の種類によつて限つて、重い事件でなければならないとしてあります。四におきましてその場合がさらに具体的に限定されまして、共犯その他の関係人または証拠物が多数であり、そのために前の二十日では足りない。また釈放したのではあとの調べができないというような要件が重なつております。要するに人権の最も大きな身柄の拘束に関する規定でありますので、念には念を入れてこの要件をきめてあるわけであります。  次は第二十六ページの第二百十九条、これは押収差押えをする場合に、その場所にものがなかつたけれども、隣りの家にあるということがはつきりした場合の応急というか、臨時の措置を規定したものであります。  次に二十八ページの第二百二十四条の第二項は条文の整理であります。  二十九ページ「第二百五十四条第一項但書を削る。」これはあとで申し上げます四十八ページのまん中辺に三百三十九条の改正がございますが、これと対応するものでありまして、現在の二百五十四条の第一項は「時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。但し、第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたときは、この限りでない」ということになつておりまして、つまり起訴状の謄本の送達ができなかつた場合の手続が規定してあります。それでこの点についての疑義がありますために、四十八ページに書いてあります三百三十九条の公訴棄却の事由の中に「第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。」というものを入れました。これとうらはらをなす関係上二百五十四条第一項但書はいらなくなります。なおこれはあとで申し上げます略式命令の手続にも若干の影響を持つて来るわけであります。  次は三十ページ二百五十五条の改正でございますが、これは略式命令の手続についての規定を今度若干整備いたしまして、従来疑義のある点を直しましたので、これとの関係において略式命令の幾つかの場合の規定を明らかにしたわけであります。非常にこまかい技術的な改正になつております。  次は三十一ページの「第二百八十六条の次に次の一条を加える。第二百八十六条の二被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、監獄官吏による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。」これも今回の法制審議会の答申に基くものであります。最近特殊な集団事件等におきましては裁判所の定めた審理方式に反対する被告人等が、公判期日に出頭することを拒否いたしまして、監獄官吏がしいて出頭せしめようとすると多数の被告人が一斉にわめきたてる。あるいは手足を振りまわす。けり上げる。ある  いは裸になつて監房の便所にしがみつくというようなことをいたします。結局その日の公判期日に本人を引致することが著しく困難になる。あるいは不可能になるという事態が随所に起つたわけであります。かようなことでは裁判所というものによつて法の適正な適用をしようとする国家の基本的な意思にも反するわけでありますので、これに対しては何とか手配をしなければいかぬというのがこの改正の趣旨でございます。被告人の出頭が開廷の要件となつておる場合は、現行第二百八十五条、第二百八十六条に規定してあります。なおその期日の公判手続を行うことができるというのは、その日の手続はそのまま進行することができる。また次の公判期日におきましては、さような事由がない限りは普通の手続に基かなければならぬ。かような趣旨であります。  次は三十三ページ以下につきまして簡易公判手続の規定があります。前回の法制審議会におきましても、有罪陳述に基く簡易公判手続について、さような手続を置くようにというような要望がありました。かように公判手続を簡易化することによりまして、審理の促進をはかると同時に、この結果多少とも生ずる裁判所の余力を複雑、困難な事件の審理に向ける。従つて刑事裁判全体としてより以上の迅速化と適正化をはかろうとするのがこの趣旨であります。御承知の通り英米法におきましてはいわゆるアレインメントという制度があり、審理の促進に寄与していると言われております。しかし英米法のアレインメントの制度のように被告人の有罪答弁があればそれだけで有罪と認めるというのは、わが憲法の解釈上疑義がございます。また実際問題といたしましても被告人の虚偽の有罪答弁がありました際に、いわゆる無実の罪を認めるおそれが絶無とは言えないわけでございます。そこで本案におきましては、被告人が有罪の陳述をした場合にも、必ず公判廷で他の証拠も調べる。その結果裁判所が有罪の陳述すなわち自白と補強証拠とを総合して間違いないという心証を得た場合に初めて有罪判決をなすことができる。かような建前をとつたわけであります。  三十四ページの二に行きまして、本案における簡易公判手続が一般の簡易公判手続とどのような点で違つておるか申し上げますと、第一に伝聞証拠に関する証拠能力の制限が緩和されている点であります。すなわち刑事訴訟法三百二十条のいわゆる伝聞法則の適用がないことといたしたのであります。これは有罪の陳述をした被告人は一応その犯罪事実について異存がない。内容的には被害届、参考人の供述調書、その他証拠の取調べ全般に同意しているというふうに認められますので、かようなふうにいたしたのであります。  第二に証拠調べの手続を簡略にしたことであります。すなわち証拠調べの方法、順序等についてのいろいろな規定の適用の排除をいたしております。三十五ページの(三)に、この有罪陳述簡易公判手続の裏打ちの説明がございます。  次に、有罪の陳述があつた事件について比較的簡易な公判手続をとるといたしまして、もし万が一身がわり裁判なんかがあり、無実の者が処罰されるようなことになつてはたいへんでございますので、十分の配慮を加えてございます。第一は、被告人が有罪である旨を陳述しても、ただちに簡易公判手続に移るのではなくて、あらかじめ検察官及び被告人または弁護人の意見を聞き、その陳述が被告人の真意に出たものであり、かつ虚偽の陳述でないということを十分検討した上で初めてこの手続に移るのでございます。なお被告人または検察官が簡易公判手続によつて審判することに異議を申し述べた場合には、通常の手続によつて審判することになるわけでございます。第二には、かように慎重な手続によつて一旦その手続によることを決定いたしました後に、傍証取調べの結果、裁判所が事実の真相について疑いを抱くようになつたり、被告人から有罪の陳述が真意でなかつた旨の申出があつたというような場合におきましては、簡易公判決定の手続を取消しまして、普通の手続に乗りかえるわけであります。第三に、いわゆる重罪事件については、簡易公判手続により得ないものといたしました。被告人の有罪陳述がありましても、必ず通常手続による。なお被告人に対してあらかじめ起訴状謄本が送達されることとなつておるばかりでなく、公判期日には検察官が起訴状を朗読する、裁判長が黙秘権を告げるというような手続もいたした後に、この有罪陳述の手続に入るのでありまして、さような点について誤解等も生じないものと存ずるのであります。  最後に、簡易公判手続によつて審判する事件においても、一般の公判手続による場合と同様、公判廷で刑の量定に属する証拠調べを行うことは当然であります。簡易公判手続によつて審判を受けた者も、公訴の申立てについてはこれまた普通の手続とまつたく同様でございます。そのこまかい規定が三十六ページの第二百九十一条の二、四十一ページの第二百九十一条の三、四十三ページの第三百七条の二、四十五ページの第三百十五条の二、四十七ページの第三百二十条の一項追加等でございますが、それはいずれもただいま申し上げたのをこまかく規定した趣旨でございまして、その内容等はこの説明書に詳細申し述べてございますし、また御質問に応じてお答えいたしたいと存じます。  次は、四十八ページの第三百三十九条の一部改正でございますが、これは先ほど御説明申し上げた通りでございます。  次に、四十九ページの第三百四十四条中の第八十九条とありますのを第六十条第二項但書及び第八十九条に改める。これは禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつた場合の勾留期間の更新の制限規定について、この際第八十九条の改正がありましたのと、それからこの際第六十条第二項但書を入れまして、勾留期間の更新の制限の除外をいたしたわけでございます。すなわち、すでに一審判決におきまして有罪の判決の宣告がありました以上は、いわゆる無罪の推定というふうなものはくつがえるわけでございますから、その後の勾留期間の更新の制限についてこれを特別の扱いにしたわけでございます。  次は五十ページの第三百四十五条中の改正、「公訴棄却、管轄違」とありますが、「公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く。)」という改正が一点、「判決の宣告」を「裁判の告知」というふうに改めるのが他の一点でございます。すなわち第三百四十五条によりますと、無罪、免訴、刑の免除、刑の執行猶予、公訴棄却、管轄違、罰金、または科料の判決の宣告があつたときは、勾留状はその効力を失うというふうにいたしまして、釈放しなければならぬことになるわけでございます。ところが公訴棄却のうち公訴の手違が間違つておりましたために、再起訴すべきような場合がございます。管轄違い等の場合にもまた再起訴が当然予想されておるわけでございます。さような場合に、いざ起訴しようと思つたらかんじんの身柄が釈放されておるということではたいへん不便でございますので、この際この点を明らかに区別しようというのがこの趣旨でございますし、判決の宣告を裁判の告知と改めましたのは、判決の宣告といたしますと、公訴棄却は入つて来ないのではないかという疑問ができますので、この際これを合せる趣旨で裁判の告知という文字にいたしたわけでございます。  次は、第五十二ページに第三百五十九条、第三百六十条の二、第三百六十条の三、第三百六十一条、第三百六十七条、この一連の改正規定がございますが、これはいわゆる上訴の放棄の規定でございます。上訴放棄の制度は、旧法のもとには認められておつたのでありますが、新法においては、これを廃止したのでございます。廃止した理由は、軽々しく上訴を放棄するようなことがあつてはいけないという配慮に出たものと存じます。しかし実際の運用を見ますと、判決に全然不服のない者が、やはり十四日の期間を待つていなければならぬ、上訴期間の経過を待たなければならぬというのは、一面において審理の促進を阻害し、他面において被告人の本意に反するわけでございます。そこで今回この制度の復活を考えまして、ただ軽々しく放棄しないように、放棄は必ず書面によるべきことといたしました。また慎重を期しまして、死刑の犯決の場合はこれを除外することといたしたのでございます。さらに被告人の法定代理人あるいは保佐人は、上訴の取下げの場合と同様被告人の同意を得て上訴の放棄ができることとしたのでありますが、この場合の被告人の同意も必ず書面でしなければならぬという慎重な手続によつたわけでございます。  第五十三ページの第三百八十二条の二、第五十五ページの第三百九十三条一項但書の改正、第五十六ページの第三百九十二条二項、五十七ページの第三百九十三条に一項追加、同じく五十七ページの三百九十七条の一項追加、これらはいずれも控訴審における審理の手続についての改正でございます。五十四ページの(一)というところをごらん願います。前回の法制審議会の答申におきまして、相当重要な点としてあげられたものでございまして、改正は二点にわかれております。その第一点は、第一審裁判所の審判の過程に現われなかつた資料でも、一定の条件のもとに控訴趣意書にこれを援用することができることにした点でございます。これが三百八十二条の二の改正でございます。第二点は、控訴審が第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状を考慮して、原判決の量刑の当否を判断することができることにした点でございます。これは第三百九十三条第二項、第三百九十七条第二項でございます。現行法では量刑の不当または事実誤認を理由として控訴を申し立てる場合には、訴訟記録または原裁判所で取調べた証拠に現われていない事実を控訴趣意書に援用することができないことになつておるのは三百八十一条、三百八十二条に明定してある通りでございます。ところが一方控訴審は第一審の弁論終結前に取調べの請求をすることができなかつた証拠で、その事由が疎明されたものについては、刑の量定の不当または判決に影響を及ぼすべき事実の誤認を証明するため欠くことのできない場合に限りといふ制限を付してこれを取調べなければならないという二百九十三条一項の但書の規定を置いておるわけでございます。この三百八十一条、二条と三百九十三条一項但書との関係は必ずしも明確でないのでございますが、第一審裁判所の審判の過程に現われなかつた事実は、控訴趣意書に援用はできない、これは三百八十一条、二条、ただ事実の取調べの段階ではかかる事実を証明する証拠の取調べが一定の制限のもとに許されるというふうなことになるわけでございます。すなわち控訴趣意書には書けないけれども、あとで取調べの際にそれを広げて調べることもできるということになるわけでございます。しかし事実の取調べの段階で取調べをすることができるということであれば、控訴趣意書において初めからこの事実を援用するというふうにした方がむしろいいのではないか、さような趣旨からいたしまして控訴趣意書に援用し得る事実の範囲を拡張しようとするものであります。その結果三百九十二条により控訴審の調査義務の範囲が広くなります。さらにこれに応じて三百九十三条一項の取調べの範囲も広くなる、かような結果になつて来るわけでございます。字句のこまかい点の御説明は省略いたしまして、筋は大体さようなところにあるのでございます。  次は五十九ページの略式手続の改正規定について御説明申し上げます。これは五十九ページの四百六十一条第二項の削除、六十ページの――ここにミスプリントがございますので恐縮ですが御訂正願いたいのですが、「第四百六十一条の次に次の一条を加える。」その次に「第四百六十二条の二」とありますが、これは四百六十一条の二でございます。それから六十一ページの四百六十二条の一項追加、六十二ページの四百六十三条の三項追加、六十四ページの四百六十三条の二、それから六十六ページの初行の四百六十四条及び四百六十五条関係、これらの略式手続の改正についての規定でございます。略式命令によつて処罰される者は全有罪人員の七割に達しております。従つて略式手続を合理化して事件の迅速な処理をはかることは、全体の刑事事件の審理の促進にきわめて寄与するところが大きいのでございます。そこで現行法の欠陥とされる点は、第一には検察官が被疑者に対し略式命令の請求をすることを告げた後、被疑者に異議がない場合にも一週間の猶予を置かなければならないという規定でございます。その第二点は、被告人の所在が不明なために略式命令の告知ができない場合の事件の処理に関する規定が不備であつて、どうもわからぬ点が出て来ておるのでございます。これらの点の改正をはかろうというのが中心でございます。すなわち主要な条文だけを一応申し上げますと、四百六十一条の第二項を削りますのは、現在の欠陥とされる第一点でございました略式命令に異議がない場合でも一週間たたなければ略式命令が請求できない、ところが今までの運用の実績を見まするに、この期間中に異議の申出をした者は全然ございません。そこでこれはまつたく不要な手続だろうというので、事件の処理促進のためにこの改正をいたした次第でございます。それから六十ページの四百六十一条の二は、略式命令が被告人にその趣旨が徹底するように配慮した規定でございます。それから六十四ページの四百六十三条の二、これが先ほど申した現在不便を感じておる欠陥の第二点の匡正でございまして、ちよつと読んでみますと、「第四百六十三条の次に次の一条を加える。第四百六十三条の二前条の場合を除いて、略式命令の請求があつた日から四箇月以内に略式命令が被告人に告知されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。前項の場合には、裁判所は、決定で、公訴を棄却しなければならない。略式命令がすでに検察官に告知されているときは、略式命令を取り消した上、その決定をしなければならない。前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。」という規定でございます。すなわち略式命令が被告人に告知されずにそのままになつた場合の手続につきましてこの際いかにこれを取扱うかということを明らかにした次第でございます。すなわち四箇月以内に告知がされないときには公訴の提起はさかのぼつてその効力を失う、その場合には裁判所は決定で公訴を棄却する、これが先ほど申し上げました二百七十一条、三百三十九条の改正と関連をもちまして、同じ思想で統一してあるわけでございます。  次は六十六ページの「第四百七十四条但書を次のように改める。」これは刑の執行順序の変更についての現在のきゆうくつな規定を改正しようというだけのものでございます。  ちよつと略式命令の点で追加して申し上げますが、六十六ページの初行、「第四百六十四条及び第四百六十五条第一項中の「七日以内」を「十四日以内」に改める。」これは先ほど申し上げました通り、略式命令に対する正式裁判の申立期間を、現在七日とありますのを十四日に延長する趣旨でございますが、それは先ほどの四百六十一条第二項を削除することによりまして事前の異議申立期間を削りましたので、その七日をこちらの方にくつつけた。要するに、略式命令があつた後に不服を申し立てる考慮の期間を延長して、慎重に事を構えたという趣旨でございます。  それから六十七ページの四百九十九条第一項の改正、いわゆる押収物の還付不能の場合の官報公告についての手続の改正でございます。現在の四百九十九条によりますと、押収物を還付する際に、その還付を受ける者の所在がわからないために不能であるというような場合には、すべて官報に公告すること応なつております。ところが実際の問題として、官報はごらんになりますとおわかりの通り、きわめてこまかいもの、こわれたこうもりがさあるいは歯のちびたげた、穴の明いたふろしきといつたようなものも、一々公告してございます。実費五円か十円のものでも、大体一回の公告が百円以上に上つておるということで、しかもこの公告を見て、自分がある物件の還付を受くべきものであると言つて申し出たという例もほとんどないのでございます。そこでこの際年間一千万円も要するこれらの官報公告費を節約するためにも、これらのつまらないものは、適当に、簡易な手続で公告ができるようにというのがこの趣旨でございます。重要なものはもちろん官報に公告するという、その区分をはつきりいたしたい、かような趣旨でございます。  六十八ページの第五百条中の改正は、公判訴訟費用の負担を命ずる裁判の免除の規定でございますが、現在の規定によりますと、その訴訟費用の言渡した裁判所に申し出ることになりまして、たとえば一、二、三審とも訴訟費用の言い渡しがありますれば、それぞれの裁判所に申請をしなければならない。これはたいへん手続がめんどうでございますので、さような場合にはどこか一箇所にまとめてやれるように改めようという趣旨でございます。  なお附則は、第一項におきまして、公布の日から九十日を経過して施行する、その他の必要なる経過規定を設けた次第でございます。  以上簡単でございますが、一応の説明を終ります。

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 この際お諮りいたします。本案の審査中最高裁判所長官またはその指定する代理者より出席説明したいとの要求があつた場合には、国会法第七十二条第二項の規定によりこれを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なおこの際御報告をしておきます。さきに提出しておきました刑事訴訟法の一部を改正する法律案の公聴会開会承認要求が、本日議長において承認されました。公聴会は、来る十九日午前十時より開会することにいたしますから、さよう御承知おき願います。  午前の会議はこの程度にとどめます。午後は刑事訴訟法の一部を改正する法律案の質疑に入ることといたします。暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ――――◇―――――     午後三時十九分開議

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。松岡松平君。

松岡松平自由党

○松岡(松)委員 まずお尋ね申し上げたいのは、勾留期間の更新の点であります。起訴前の勾留期間五日を延長するということでありますが、これは現在では十日になつておつて、さらにそれがもう十日間延長できる。そうすると、それに加えて五日の意味でありますか。それとも十日を十五日に延ばすのでありますか。この点を明らかにしてもらいたい。

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 松岡さんに御注意申し上げますが、逐条の方は逐条の方で追つてやりたいと思いますので、特に大臣の御出席を願つて――警察法の関係、参議院の関係等で忙しいのですが、総括的な質問をきようはやつていただきたいと思いますから、その御趣旨でひとつ御質問願いたいと思います。

岡原昌男検事(刑事局長)

○岡原政府委員 ただいま御質問の点は、今度の延長は十日々々のもう一回の五日、こういう趣旨でございます。つまり十日その次に十五日ではないのでございます。従来の延長した十日の上にさらに新たに特別の要件を加えたものが五日、こういうような趣旨でございます。

松岡松平自由党

○松岡(松)委員 この有罪答弁簡易公判手続という新しい制度を今度御採用になるのですが、有罪答弁という陳述を具体的に一体どういふうにお考えになつているのか。被告人がみずから自分は罪があると、罪を自覚して答える場合と、起訴事実をそのまま承認する場合と、どういうふうにお考えになつているのか、この点がかなり重大なところだと思います。ただ自分が罪がある、罪に服するという意味の供述したことを言うのか、事実に対する供述をさすのか、この制度の運用上はなはだ重大な点だと思われるのであります。この点に対する御説明を承りたい。  さらに検察官の同意の点でありますが、逮捕状請求に対する検察官の同意、これは個々の逮捕状の請求について同意せられる趣旨であるか、あるいは一括の同意を含むものであるか、具体的に相当大量な犯罪捜査のような場合に、個々のケースについての同意をさすものであるか、この点を明確にしていただきたい。

岡原昌男検事(刑事局長)

○岡原政府委員 今回いわゆる有罪答弁簡易公判手続を創設いたしましたゆえんのものは、先ほどもちよつと触れました通り、英米流のアレインメント制度の欠陥を除去しまして、日本式に、しかも念には念を入れた簡易公判手続にする、こういうようなことでございますので、ただいま御質問の、事実の自白のみでやるか、あるいは罪責の承認というところまで含むのかどうかというで点ございますが、これはその両者を含めて、事実を十分に認め、それについて自分は服するのだというようなことを含む趣旨でございます。  次に百九十九条の逮捕状の請求についての同意でございますが、これは個個の事件について、一つ一つ逮捕状についての同意が必要である、かような趣旨でございます。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 専門的なことは政府委員からお答えをいたしたいと思うのでありますが、松岡委員の御質問で二点申し上げたいと存じます。最初の起訴前の勾留二十日にかてて加えて五日が問題でありますが、これは御承知のように、従来法制審議会で非常な議論のかわされたところであります。検察当局としては、二十日のほかにさらに十日を要する、現在のような多衆犯罪が行われる時代に、どうもあと十日ないと、かえつて取調べがそまつになつて、その意味でかえつて大衆に迷惑をかける、これはかえつて民衆のために無実の起訴なきを保障する手段なんだというような趣旨なんで、一応もつともだと思つたのでありますが、御承知のように一方在野法曹界としては、人権に関する大きな問題として、最小限度五日を主張した。結局これは認定の問題でありますが、検察当局の非常な労苦の方から考えますと、多い方がいいということではありますけれども、い一方から考えて、今の時代に人権擁護という問題が非常に大切である、検察当局には短い日数で、夜なべでもして勉強してもらうということにしてもらいまして、議題となつている一番少い日数の五日を選んだわけでございます。  もう一つの逮捕状の請求について検事の手を通るという点は、実は当委員会においても、松岡委員から親しくいろいろ御心配の点を指摘せられまして、真剣に考えたのでありますが、一括して逮捕状を請求するということでは、松岡委員らの指摘されました心配が全部解消するともいわれません。これは個々の場合に一々請求するということにしたわけでございます。

松岡松平自由党

○松岡(松)委員 ただいま大臣から勾留期間の延長に対する具体的な御説明を伺いました。さらに岡原政府委員からも御説明がありましたが、元来勾留期間の二十日間で、はたして合理的な取調べができるかどうか、こういう点はなかなか問題でありまして、ほんとうに厳密にするならば、期限を定めない方がいいかもしれないのです。しかしながら、この五日を加えることによつて、ここに一つ考えなければならない点は、被告人を調べるについて、必ず身体の拘束を加えなければならぬという考え方は、私は非常に古い考え方であると思う。私は勾留期間の延長をするよりは、むしろもつと自由な範囲で、自宅において取調べることもできるというように、範囲を広げることが必要であると思うのでありまして、ここに現われて来た五日の延長というのは、ここに盛られている考え方は、被告人を取調べるには、何でもかんでも身体を拘束しなければならぬという考え方から出ているのではなかろうかと思うのであります。従つて、法務大臣におかれては、あくまでも犯罪捜査には、被告人の身体を拘束しなければならないという考え方を基礎に置いておられるのかどうか、もつと範囲を自由にして取調べるくふうをいたされたらどうか、こういう点についてお尋ねしたいと思つておるのであります。  それから今の有罪答弁に基く簡易公判手続でありますが、この有罪答弁というのは、文化の著しく進んでいる国民には非常に理解せられるでありましようが、文化が立ち遅れた社会におきましては、非常に危険性が伴うのであります。取調べを受けることがめんどうだから罪に服してしまえといつて、簡単に罪に服してしまう。しかも体刑もなお辞さないという結果に陥る場合があるので、この制度は民度の高いところには、非常に活用よろしきを得る制度であるとは思いまするが、ときによつて、その社会の民度の非常に遅れたところにおいては、それは非常に危険を伴うのであります。そして無実の罪に泣くよりは、もうめんどうだから、判決を受けてしまつた方がよろしいというような考え方になる弊がありますので、この点に対する当局のお考えをさらにお伺いしたいと思います。私の質問は大体そのくらいで終ります。

岡原昌男検事(刑事局長)

○岡原政府委員 被疑者を取調べる際に、何もかにも身柄を拘束して調べるというのは、行き過ぎではないかというお話、ごもつともでございます。私どもといたしましても、事件の取調べというものは、いわゆる任意捜査、被疑者の身柄についてこれを言いますれば、在宅で調べるのが原則と心得るようにという法律精神を、そのまま検察庁にも十分伝えてある次第でございます。この二百八条の今回の改正は、その例外として相当重い事件について、しかもこの条文に出ております、たとえば犯罪の証明に欠くことのできない共犯その他の関係人または証拠物が多数である、そういうふうな条件、あるいはそのために検察官が前条の期間内にその取調べを終ることができないというふうに認められること、それからまたその取調べが被疑者を釈放した後では非常に困難になるというふうな、いろいろな条件を加えまして、極端に制限される場合に、五日だけこの延長を認める。犯罪の種類としては、先ほども申しました通り、悪質の多衆犯罪ということを大体前提としておるわけでございまして、この身柄の拘束問題につきましては、私どもとしても先ほど大臣からのお話もございました通り、人権に一番深刻に響いて来る面でありますので、慎重の上にも慎重な法文の体裁にいたし、また事実この運用につきましても、十分戒心して行きたい、かように存じておる次第でございます。  次に、いわゆる簡易公判手続につきましてのただいまの御説、まことにごもつともでございます。いわゆる民度の低い、あるいは裁判事務等になれない、めんどうくさいから刑に服してしまうといつたようなものの考え方のあるうちは、かような制度は、実際の運用として相当慎重でなければならぬということを基本におきまして、今回の二百九十一条の二以下の新しい制度におきましても、種々その点の配慮が加えてあるわけでございます。たとえば、二百九十一条の二の中に、「有罪である旨の陳述のあつた訴因に限り、」というふうに、まずたとえば三つの事実のうち、一、二の事実については争いがない、自分もそれについてはもう間違いがない、しかし三の事実には異議があるという場合には、その一、二の事実だけの簡易公判手続に移るわけでございまして、いわゆる訴因の面からそれが制限と規定されるわけでございます。それからこの手続に移るにつきましては、当事者に異議がないということを条件といたしております。つまり、検察官は被告人または弁護人の意見を聞き、いずれもこれは簡易公判手続に移つて異議がないという場合に限り、その手続に移るわけでございまして、当事者間でだれか一人でも、それはどうも本人はそう言つておるけれども、自分にはぴんと来ないから、これは通常の手続でやつていただきたいという申出でがございますと、普通の通常手続でやることになるわけでございます。また一旦この決定に移り、簡易公判手続が進行しましても、その途中において、もしも本人がどうも先ほどはそう申し上げたけれども、実はこういうこともあるのですと、それが最初の供述と違うような場合、この場合にはこの決定を取消しまして、通常の手続に何時なりとも移ることになるわけでございます。また証拠調べはいずれにいたしましても、簡易な手続ではございますが、ほかの証拠調べも全部するわけでございます。つまり本人が自白したからという事実一つだけで裁判をするわけではないのでありまして、証拠調べを、ほかの傍証と申しますか、さようなものも十分取調べまして、それで本人の自白と符合するというところで、初めて裁断が下される。かような関係でございますので、いろいろさような点から、御懸念のようなところは、結局どの点かにひつかかりまして、無実の罪によつて事が処理される、裁判されるというふうなことは、避け得られるのではないか、かように存ずる次第でございます。

松岡松平自由党

○松岡(松)委員 最後にこれに関連しまして、今まで刑事訴訟法の改正によりまして、警察官の捜査権の濫用の問題を防ぐために、検察官の同意という問題が提起されて、これによつて必然起つて来る問題は、現在の検察官の数をもつてはたして現状に適応したところの合理的な運営ができるかどうか。さらに現在検察事務官を非常に活用しておいでになります。この活用のために、非常な弊害が生れておる。つまりそれだけの責任能力なき者が、検察官と同様な事務を取扱つておる。時によつて裁判に列席し、検察官と同様な起訴を行い、求刑をし、論告をしておる。こういうことになりますと、非常に弊害が起るのみならず、涜職の統計などによりますと、検察事務官の犯罪数が相当多いと聞いております。こういうことから考えてみまして、一段と検察陣を増員する意図はないかどうか。検察事務官のやつておる仕事を、本来の検察官に置きかえる意図はあるのかどうか。このことは、現在の状態のように検察事務官をもつて非常に大切な検察官の仕事を行わしめるということは、危険と弊害が多くて、実益がないことである。これを本来の検事に置きかえることが私は必要でなかろうかと思う。この点に対する大臣の御所見を承つておきたい。  それから勾留日数の延長にいたしましても、結局検察官の数が現実に不足しておるために、こういうことが起るのではなかろうか。その不足を被告人の上に転嫁するというようなきらいもなきにしもあらずであります。この意味におきまして、検察陣というものをもう少しふやし、さらにこれを強化する必要があるのではなかろうか。同時に、今までの検察官に対する教育ということについて、特に大臣は心がけていただきたい。今までの検察官のものの見方というものは、観念的であります。事実を科学的に批判的に、分析的に把握するということより、観念的に事実を規定する傾向があります。これを改めるには考え方に対する根本的な一つの訓練を要すると思う。こういう方面に対する大臣の御所見を承りたい。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 まず検察官の数が少いということについてお答えをいたします。これはいかにも手不足といえば手不足なのでありまして、検察官の人数については大蔵当局ともかけ合つております。御承知のように一方行政整理の問題がありまして、その問題とからみまして、今のところはかろうじて検察官の数については行政整理の対象にならないというようなところで食いとめているのが関の山と申し上げることが、ごく率直なお答えになるかと思います。但しこのたびの予算におきましては、五十名ほど増員を認めてもらつております。それに加えまして松岡さんも御同感のように承つております副検事というものを再検討して、副検事の数を減じて、これを検察官の数の方に融通をしまして、四月の上旬にはそういう者を加えて七十名ばかり定員がふえることになると思つております。  検察事務官のお話はよくほかからも伺います。検察事務官に対しては、なるべくそういうことをさせないような方針で今向いつつあるのでございます。御心配の点は十分当局はのみ込みながらやつておるということを御了承願いたいと思います。  検事の教育ということは、研修所で相当一生懸命やつているつもりであります。私もこの問題は特に就任以来気をつけておりまして検事が治安の確保の責任のほかに、社会人としての知性と良識を持つようにということで、全力をあげてその修養ができるように努めているつもりでございます。私ごく率直に申し上げまして、就任以来いろいろな事案がありまして、その扱いを見ておりますが、私が外部で思つていたよりは多分に社会人としての広い目をもつて一々の事案を扱うようになつているという感想を実は持つているのであります。事案の具体的な名前を申し上げるのははばかりますが、ある大きな商売でストライキがありまして、その事件は相当世間の注目を浴びたのであります。もちろんストライキの違法行為について、当局はこれを看過しないのでありますが、同時に経営者の態度というものがいかにも旧式な資本主義的な態度である、その方にも責任があるというような判定をして、ストライキそのものを起訴留保にした事件があります。また最近ある地方で社会主義陣営の人をある選挙制度に基いて立候補しようとしたやさきに逮捕したことがあります。これは別に検察当局に悪意があつたのではなく、十分に理由があつたのでありますが、本省においてはいかに理由があつても、選挙に立候補する場合にはさらに細心の注意を払わなければならない、それでなければ公平という問題について世間の批判を浴びるということで厳正な判断を下したのであります。そういうふうに私の欲目かもしれませんが、どうも外部から思つていたよりは広い知性と良識というものも持たなければならないという努力が内部の空気としてある、それがまた育ちつつあるということを申し上げてよいかと思いますが、しかし小成に甘んずるということは間違いのもとでございますから、この上とも今お話のあつたような精神で行きたいと思います。またその精神で検察官の教育をして行きたいと思つております。

松岡松平自由党

○松岡(松)委員 今の大臣のお言葉を聞いて、さらに一言ある一つの事実を申し上げて御参考に供しておきたいと思います。  最近私の知つた者で詐欺に問われまして、無罪の判決を受けました。その中に被告人の心境は如来のごときという言葉がある。仏教で言う如来のごとき精神であるということを判決の中に書いてあるのを友人のところを歴訪して持つて歩きまして、涙を流して喜んでおつた。裁判所によつて自分を見出してもらつた、無罪になつて罪が晴れたというばかりでなく、さらに裁判所によつて自分を見出してもらつたというので、判決文を毎日ふところに入れて持つて歩いておつた。これは単に被告人が喜んだという事実として見るべきではなくて、裁判官であろうと検察官であろうと、一個の人間をさばく場合に人間を丁重に取扱うということが大切であります。たとい死刑の宣告をいたしますにしても、また無罪の判決をいたしますにしても、罰金刑を言い渡しますにしても、人間をさばいているという点を特に大臣は大臣の任期の間に強調せられんことを希望してやみません。

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 ただいま松岡さんから質問がありましたが、きようは野党の質問もないようでございますので、私からも特に重大な三、三の点をお確かめいたしておきたいと思います。今度の刑事訴訟法の一部改正というのは、考えようによつては非常に重大だと私は考えておるのであります。大臣も御承知くださいますように、この改正案が議題になりましたのは第十二国会以来のことでありまして、第十三国会におきましては刑事訴訟法の一部改正案が審議され、公聴会まで開かれました。しかるにこの法案は、遂に当委員会において審議未了という形において今日まで改正を見なかつたのであります。それが新しく本国会に改正案として出されたのでございますが、第十三国会において審議未了になつたというのは、これは重大な法案であるがために、大いに審議を尽そうじやないかという面があると同時に、これが改正されることは、敗戦後日本につくられた民主主義に逆行するのではないか、また人権擁護という立場から非常に危険性が増すのではないかというのが、第十三国会における審議未了の大きな一つの原因をなしておつたように私は考えるのであります、敗戦後日本がなぜこうした刑事訴訟法をつくらなければならなかつたかというところに思いをいたしますと、やはり敗戦前の日本人は人権の点において恵まれていなかつた。その恵まれていない日本国民に、より恵まれた人権擁護の立場からの法律をつくつてやろうというのが当時の国会における真剣な審議であり、真剣な考えであつた、こう考えるのであります。それが今日に至つてこうした改正を見ることになろうといたしておるのでありますが、はたして法務当局は本改正案を出すについて、どのような人権擁護に対する考慮をめぐらして本法案を提出したものであるかどうか。それと同時に本法案は人権侵害のおそれは絶対ないものと考えるのであるかどうか。それからなお本日までこの刑事訴訟法を具体的に運用したことによつていかなる不便を感じておつたか。これらの点について御説明を願いたいと思います。

犬養健自由党法務大臣

○犬養国務大臣 こまかいことは政府委員に御答弁をいたさせますが、私も率直に委員長の御質問にお答えいたしたいと思います。私は実は正月の休みに、この前の刑事訴訟法改正を議題とした委員会の速記録を読みました。いろいろりつぱな意見、学者の考えで、裨益するところは大きかつたのでありますが、一番胸を打たれましたのは案外素朴な質問でありまして、提出している改正の諸条項を見ると、人権を束縛しようしようとしてばかりいるじやないかという花村委員からの質問には非常に胸を打たれたのでありまして、私はこの質問にこたえるつもりで改正案というものを練り直そう、こういう気持でいたわけであります。この前は不幸にして破防法の審議その他でいろいろ混雑しまして、本改正案は審議未了になつたのでありますが、私はそういう心持であらためて臨んでみたのでありまして、検察庁の都合ということを考えるほかに、そのために日本の国民がどのくらい人権を束縛されることが同時に起るであろうかということを絶えず考えまして、その点だけを一番気をつけたつもりであります。起訴前の勾留期間をさらに五日延長いたすという問題も、田嶋委員長非常にお詳しく経過を御承知のようで、検察当局は十日、在野法曹界は五日、その中をとるということであつたでありましよう、七日ということで、この前改正案が提出せられたのでありますが、どうもいろいろ考えまして、検察庁には気の毒だけれども夜なべをしてでもやつてもらうならば、この方の不便を忍んでも人権の擁護ということに重点を置いてなお考え直してみようということで、起訴前の勾留期間延長を五日ということで御審議をお願いしたわけであります。これは先ほど申し上げましたような特殊な事情に基くもので、真にやむを得ないという判断を下した結果でございます。  もう一つは、私しろうとでよくわかりませんが、英米流の事後審というものに、どうもいくら説明を受けましても私納得ができませんので、事後審の欠陥を補つて、そうしてある程度過去の覆審的なよさをくみ入れるということも、私はいいことであると思つて賛成した次第であります。当局も人間のことですから至らない点があると思いますが、すべて今度の改正の精神は、できるだけ人権にわくをはめない、最小限度のことにしたいということに最も熱情を注いだ次第でございます。さように御了承をお願いいたします。なおこまかいことは政府委員から御答弁いたさせます。

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 こまかいことをつけ加える前に、なおもう一つ私からお尋ねしておきますが、今度の改正案を見ると、特に人権擁護の立場から見ると、改正しなくても今日の規定で十分補えるのではないかという感じがするのであります。それはただいま大臣からもお答えがありましように、人間百パーセントの努力を励むならば、あえてこうした人権侵害のおそれがあり、国民がふるえ上るような気持のする法案を出さなくても済むのではないかという感じがするのであります。たとえば保釈の規定についてもその通りであります。先ほど権利保釈をゆるめなければならないということでありますが、本質の取扱いとしては権利保釈をしてやりたくても保釈金が高くて保釈ができないという被告人が多かつた。公務員の給料が最高八万円だと考えられますときに、保釈金を十万、二十万と積むのが普通になつている。そうしてみると権利保釈を制限しなくても任意保釈で十分目的を達している、こういうように私は考えるのであります。なお勾留期間の延長にしましても、あえて延長しなくても百パーセントの精力を用いますれば私たちは人力をもつて不可能なことではない、かように考えられるのであります。特に人権に重大なる影響があり、しかも人権を侵害して来たと疑われているかつての日本の恥であつたことを、この刑事訴訟法の改正によつて名誉回復し、世界国民も、なるほど日本国民はこうした刑事訴訟法をつくつた以上は人権を尊重する国民の列に入つたということを考えるであろうことを想像できます今日、特に改正しなければならぬ理由を聞かせていただきたいと思います。

岡原昌男検事(刑事局長)

○岡原政府委員 ただいまの御質問ごもつともでありますが、私どもこの法案を用意いたしました際に考えた立法の基本精神というものは、ただいま大臣からもお話のありました通り、人権の尊重という面はどこまでも貫いて行きたい。ただ現在の刑事訴訟法が相当忙しく早急の間につくられております関係上、実際にこれを運用してみた三年有余の実績から見ますと、種々不便な点が出て来ておる。その不便の生ずる点、いわゆる審判上あるいは捜査上に不都合の生じておる点と人権の保障との調和をどの程度まで直すことが必要であろうかという面から、十分慎重に取扱つたものでございます。一面におきましては、なるほどただいまお話のように人権の制約面が出ておりますが、また他面におきましては訴訟費用の免除とか、控訴審における審理の丁重さというような種々の点で人権を伸張するという面についても、十分あわせて配慮した次第でございます。具体的にただいま権利保釈の問題がございましたが、この権利保釈の問題につきましても、私どもといたしましては一応保釈を権利として認めるということになる以上は、これを保釈保証金という面からチエツクするという考え方はいかがなものであろうか、つまり保釈が当然権利として認められるということ自体に若干無理のある面はこれを匡正して行かなければならぬのではないか、たとえば強盗、強姦等は比較的重い犯罪でありますが、これも従来は権利保釈の中に入つておりました。従つて保釈の申請がございますと、保証金の問題は別にしましてとにかく保釈しなければならない。ところが保釈中にまた同じような犯罪を犯すというような事例が非常にたくさんございまして、その当時新聞紙上等にも載つておつたのでございますが、さやうな点はやはり訴訟法としての一つの欠陥と申しますか、行き過ぎではないだろうかというような点から、一つには第八十九条第一号の権利保釈の許されぬ範囲を若干チエツクしたわけでございます。また多衆共同犯罪の場合、これは御承知のような情勢でございまして、この種の事件が一昨年、昨年にかけて種々発生したわけでございますが、これらの実績にかんがみますれば、かような大衆犯罪におきましては、逃亡または証拠隠滅の事例がきわめて多くなり、またさような犯罪自体に徴して、あるいは犯罪の行われた態様自体に徴して、さような逃亡または証拠隠滅ということが多く行われ得るという可能性が推察されるわけでございます。どうしてもかようなものについては、権利保釈としては除外することにしなければいかぬのではないかというのが、この立案の趣旨でございます。  またつけ加えましたいわゆるお礼まわりという点でございますが、これまた今までの事例を見まするに、たとえば暴力団の事件等におきましても、しよつちゆう問題になるわけでありますが、親分が起訴される、そうするとすぐ権利保釈で出て来る。そして子分と一緒に被害者の宅を歴訪して、長々刑務所に入れてもらいましてありがとうございました、いずれまたごあいさつにあがります、というようなことでやるような事例がきわめてたくさんございます。かようなことになりますと、被害者の方が今度証人に呼ばれました際には、とうてい真実を吐露して自分が被害にかかつたという状況を述べることができなくなる、心理的な圧迫を受けるわけでございます。かようなものを権利として保釈するという考え方はどうであろうか。ただ先ほども申しましたように、権利保釈の除外事由があつても、裁量保釈はもちろんやり得る。でありますから、当然権利として出て来ることにはならないけれども、その状況々々によりまして、これは保釈すべきものであるという判断が下されれば、九十条の規定に基きまして保釈の決定はできるわけでございます。従いましてこれを保釈保証金の面からだけ――保釈は許すけれども、保証金の面でとうてい本人が払えないというような金額でこれをチェツクするというようなことは、行き過ぎでございますので、その両方の面を調和して、このような立案にいたした次第でございます。  勾留期間の問題につきましても二百八条の二に詳細条件を並べてございますけれども、ただいまも御質問がございました通り、私どもの方ではなるべくさような事件は二十日以内に取調べしたいのはやまやまでございます。従来とても検察庁におきましては、さような方向に持つて行くというふうにもちろん努力はして参つたわけでございます。ところが実際問題として起りました、たとえば昨年五月の東京のメーデー事件、六月二十五日の大阪の吹田、枚方の事件あるいは七月七日の名古屋の大須騒擾事件といつたような大衆の犯罪になりますると、もちろん近県の検事を動員応援しましてこの事件の処理に当るのでございますが、それでもなおかつ一度に二百名あるいは五百名といつたような人間があがつて参るのでございまして、とうていこれを短期間に処理することは不可能になつて来るのが実情でございます。そこでかような際に、検察庁といたしましてはあと十日ほしいというような強い希望があつたりでございますが、この点は先ほど大臣からもお話のありました通り、在野法曹の人権尊重の面について十分配慮するようにというお話もございましたし、五日ということで延長をお願いするというような立案にいたした次第でございます。かような五日の延長をするにつきましても、二百八条の二に書いてございます通り、条件をきわめてこまかく、厳格にわくをはめてございまして、濫用等のおそれはなきものと私たちは考えております。今後ともこの法律の運用につきましては、従来以上この勾留の期間のなるべく短縮するようにという点についての特別の配意をいたし、また通牒等も流したい、かように存じておる次第でございます。

田嶋好文自由党

○田嶋委員長 きようは時間もございませんし、また委員長でございますから、つつ込んで聞くこともはばかつておりますが、実は私が聞きましたところが、この法案の総括的な重点になろうと思うのであります。この法案の作成にあたつて人権侵害、それから民主主義に逆行するのじやないかということに対して、もう一度お尋ねいたしておきます。いかなる考慮を払つたか、この点に対しても明確なお答えが大臣並びに刑事局長から承れなかつたのでお伺いいたします。それから人権侵害のおそれはないのかどうか、この点に対しても明確な答弁のようには聞きとれません。第三に、実例に対しては相当こまかく言つていただいたのですが、実例上どういう不便を感じたか、これをこの改正案の中で具体的にお答えを願いたい。いずれ野党からも与党からも出ると思いますが、それらの点に対して十分はつきりした方法をお示し願いたいと思います。そうでないと、この法案の審議はとても進んで行かないのじやないかと思います。私はこれは警察法の改正よりももつと大事だとまで考えております。どうかよろしくお願いいたします。  本日はこれにて散会し、明日は午前十時より開会いたします。     午後四時九分散会

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