大蔵委員会公聴会 第1号
- 発言数
- 53 件
- 登壇者
- 19 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1953/02/18
会議録
○川野委員長代理 これより大蔵委員会公聴会を開会いたします。本日の問題は、今回の税制改正案中、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、富裕税法を廃止する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の四つの法律案についてでありまして、公述人の方々におかせられましては、この四つの法律案について忌憚のない御意見を述べていただきたいと存じます。 本日御意見を述べていただく方々のお名前は、お手元に配付してあります印刷物の通りでありまして、発言の順位等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。 なお本日の公述人の方々は数が多いようでございますから、発言の時間は御一人大体十五分くらいでお願いすることといたしたいと存じます。 それではまず佐久間長吉郎君に御意見を述べていただきたいと思います。
○佐久間公述人 私ただいま委員長から御指名のございました東京法人会連合会会長の佐久間でございます。 東京法人会連合会と申しますのは、これに併立いたしまして個人におきましては青色申告会というのがございますが、法人の青色申告を促進いたしまして納税を円滑にするという目的を持つておる会で、各地区の税務署に法人会というものがございまして、この連合会が私の会長をやつております東京法人会連合会、こういうような性質のものでございます。この法人会連合会の会員の大多数は中小法人で占めておりますので、今日私の陳述いたしますことは、大体法人会の会員のうちの大多数の中小法人の意見を代表して申し上げてみたいと思うのでございます。 まず第一に、現行税法並びに改正税法のもとにおきまして、中小法人の青色申告が可能なりやいなやという点について申し上げてみたいと思います。青色申告制度は申告納税制度の中核といわれておりますが、現状におきましてはわずかに法人の約半数が青色申告をしておるのにすぎないのでございます。東京都内に例をとりますと、昭和二十七年六月末の東京国税局管内の法人数は六万六千四百一社、そのうち青色申告法人は三万五千二百五十二社でありまして、全体の五三%という状況でございます。その原因は何であるかということにつきまして、私は二つの点が考えられると存ずるのであります。その一つは、国税地方税を通じまして税の負担が過重であつて、資本蓄積を阻害し、企業意欲をも失わせておるという点であります。 〔川野委員長代理退席、委員長着席〕 ことに昭和二十六年末に法人税率が三五%から四二%に引上げられましたことは、この傾向に拍車を加える結果となつたのであります。当時これを引上げた理由は、法人と個人との負担の均衡をはかるために、朝鮮動乱の好況を受けている法人には多少の税率を引上げても十分担税能力があるということであつたように聞いております。しかしながらこの朝鮮動乱の好況を受けたのはきわめて一部の法人でありまして、中小法人のほとんどは何らこの恩恵に浴しておらなかつたのであります。従つて逆に四二%になつた法人税率の引上げによる被害のみを中小法人は真正面から受取つたということになつたのであります。元来青色申告制度の普及には、納めやすい税金ということがまず第一の条件であるといわれておりますが、経済再建途上にあるわが国の法人におきましては、単に納められるだけでなく、そのほかに資本の蓄積が可能であるということが必要であると存ずるのであります。そういう意味から申しまして、この四二%の税率引上げは、何と申しましても青色申告制度の最大の障害となつていると考えるのでございます。とは申しますが、政府は資本蓄積並びに青色申告制度につきまして十分考慮を払つて、青色申告法人については価格の変動準備金制度、退職給与引当金制度、重要機械の特別償却等、資本蓄積につきましては多くの特典を与えていると言つておるのであります。しかしながらこれらの特典は中小法人にとりましてはきわめて利用度が低いのであります。言いかえて申しますと、中小法人にとりましては青色申告は大した特典がないといつても過言でないと思うのであります。この点が青色申告の普及を阻害しております第二の原因ではないかと思うのであります。 これをわれわれ法人会会員三万のうちからサンプル調査によりました結果を御報告いたしますと、調査総数は千二百五十八社、うち資本金百万円以下は八百十一社で、そのうち青色申告をしているものは五百八十七社でありますが、さらにそのうち三百三十九社、約六〇%が何ら青色申告の特典を受けていないという回答をしております。しかも特典を受けているというものの中でも、更正または決定の理由の付記だとか、繰越損金の控除だとか、欠損金の繰もどし等の特典の利用者が大部分でありまして、いわゆる資本蓄積のための青色申告の特典はほとんど受けていないといつていいのでございます。 そういう現状にかんがみまして、私ども法人会は個人の青色申告会と連合いたしまして、昨年秋の会員大会におきましては十四箇条の決議をしております。一、法人税率を三五%に引きもどすこと、二、青色申告法人に所得の一割を特別に控除すること、三、同族会社に対する積立金課税を廃止すること、四、たなおろし資産の一割評価滅を認めること、五、減価償却の耐用年数を短縮すること、六、退職給与引当金制度の適用範囲を拡大すること、七、契約破棄準備金制度を創設すること、八、法人税の申告期限を事業年度終了後三箇月以内とするとともに、徴収猶予制度を拡大すること、九、更正決定の場合の利子税は更正決定のあつた日より起算すること、十、給与所得については勤労控除を引上げること、十一、退職所得に対する課税は、その所得から三十万円を控除した残額につき課税すること、十二、事業税及び法人都民税を法人税の附加税とすること、十三、償却資産に対する固定資産税を廃止すること、十四、市町村民税の源泉徴収制度を廃止すること、こういうような十四箇条の決議をいたしまして、関係方面にそれぞれこの実現方を要望したのでございます。 そこで今回の税法改正案を見ますと、特別償却の範囲の拡大、貸倒れ準備金及び価格変動準備金制度の拡張改善、輸出契約取消し準備金制度の創設等、私どもの要望の一部分につきましては、これが実現を見ておるのでありますが、これを全体として見ますと、私どもとしましてはまことに不満な点が多いのであります。というのは、私どもの税制改正の要望は、青色申告制度の普及、そのための中小法人に対する税法上の諸改善でありまして、要望十四箇条のうちで多少の取捨選択がありましても、一貫してその本旨を採用願いたかつたわけでありますが、今回の税制改正については、その片鱗すら認め得られないと言つてよいことは、まことに残念でございます。私どもは今こそ真剣にこの青色申告制度の再検討をすべきときであると信じておるのであります。立法関係各位の十分な御配慮をお願いしたいのであります。 それにつきましても繰返すようでございますが、第一に中小法人の一般的な資本蓄積を促すために、法人税率を従前の三五%にまで引きもとしていただくこと、同族会社に対する積立金課税を廃止すること、さらに第二に、中小法人の青色申告を普及するために、青色申告法人の所得の一割を特別控除すること、こういう二つの点につきましては特に要望いたす次第であります。 かようなことを申し上げますと、個人と法人の均衡はどうするかという反間がただちに出ると思うのでありますが、これは重税に悩む個人に対しまして所得税を軽減することが適当であり、法人に重い税金をかけることによつて両者の均衡をはかるということは、逆に法人自体がこれに耐えられない状態にあるということで、これはすでに御説明申した通りであります。 なおこれに関連しまして、このたび所得税法改正法案に、第三条の二、第六十七条第二項、第六十七条の二という新しい規定が挿入されるようになつておるわけであります。この第三条の二の条文自体は、実質課税を宣言したという点におきましては当然のことと存じます。しかしこの規定の運用におきましては、善良なる小法人を否定するがごときことのないように、さらに明確にしていただきたいと思うのであります。それは最近個人から法人になる者の数が多いようでありますが、これは税負担の軽減というばかりではなく、金融受入れのために信用度を高める手段として、またあるいは次男、三男対策として、兄弟商会のごとき姿にして経営をするため、あるいはまた昔のようなのれんをわけることができないので、従業員の経営参加の目的のために法人組織になるものも相当多いのであります。これを要するに、この第三条の二のために中小企業者の経営合理化まで阻害されることのないように、格別の御留意を願いたいと思うのでございます。 次に法人税法改正法案中の機密費、交際費の制限について申し上げます。この立法趣旨につきましては、一応うなずかれる点もございますが、この第九条の十という条文だけをもつては十分な議論はできないと思うのであります。この交際費、機密費につきましては、業種によりまして相当の相違がございます。特に中小企業にありましては、近来の販売競争がはげしくなるにつれまして、濫費というよりも出血的な交際費、機密費を必要とする場合が従前より多くなつたと思います。従つて限度をいかにきめるかによりましては、この改正に反対せざるを得ない場合もあるかと存ずるのであります。その規定によりましては二分の一ということはきまつておりますが、二分の一のもとになるこまかい点につきまして法律にきめていないので、ただちに賛否を申し上げかねるのであります。とかく立法上におきましては、直接に作用する部面が政令等に譲られる場合が多いのでございます。私ども納税者にとりましては、法案を具体的に検討する資料と時間を与えられることを、国会並びに政府各位に要望してやまないのであります。と申しますのは、政府は信頼される税務行政ということを、私ども納税者に常に声を大にして言つておられますが、納得の行く税制の上に立つて初めて達成せられるものと思うのであります。従いまして少くとも政府提案の立法は、法案並びに政令案が一応発表されまして、民間団体において意見をとりまとめる時間的余裕を置いて国会に提出されるようにお願いしたいと思います。 次に国税に関連いたしまして地方税について簡単に申し上げたいと思うのであります。附加価値税が無用の混乱を避けるために延期されましたことは当然のことと存じます。なお一歩を進めて、ぜひともこの際事業税、法人に対する市町村民税を国税である法人税の附加税として徴税を簡素化していただきたいのであります。 最後にいまさら喋々論ずるまでもないことでございますが、例を東京国税局管内にとつてみますと、昭和二十七年十二月三十一日現在の法人数は九万六千五百十五社、そのうち資本金五十万円以下の法人は六万六千七百社で、全体の六九%でございます。これによつて見ましても、中小法人のための税法、あるいは青色申告制度の確立が、今日の税制に急務であることは疑いないことであります。税制改正の御審議に対しましても、特にこの点を御留意くださいまして、慎重な御審議をいただきたいと思うのであります。大体私の申し上げたい点はこれをもつて終りといたします。
○奧村委員長 ただいまの佐久間君の御意見に対して御質疑があればこれを許します。
○川野委員 ただいまの御公述中青色申告をした人のうち六〇%が特典を受けてないというお話があつたと存じますが、そういたしますと、そういう方々の青色申告をしたくないという意見は出て参りませんか。
○佐久間公述人 それがときどき起りやすいと思います。それで東京国税局並びにわれわれ法人会といたしましては、表から東京国税局あるいは各税務署、それから裏と申しますか、側面からわれわれの法人会あるいは個人の青色申告会から、しきりに青色申告の必要性を説くのでありますが、これに対してただいま申し上げたような、何ら利益がついて来ない場合においては、いたずらにめんどうな青色申告をしても何にもならないという空気が多いので、この点につきましてわれわれの会は非常に腐心しております。ただいま申し上げました通り、会員が法人数の半数に満たないということもその影響が相当にあるのであります。青色申告をしても何にもならない。それでは法人会なり青色申告会に入つても何ら益するところがないじやないかという空気が多いのであります。これはやはり申告納税制度に非常な障害になると思うのでありまして、極力こういう点を排除したいと思つて努力しております。
○奧村委員長 次に東京青色申告会会長の広瀬大次郎君の御意見を聴取いたします。
○広瀬公述人 私東京青色申告会の広瀬であります。本日は個人の事業所得者、特に青色申告者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。 まず第一に青色申告制度の現状とその改善について申し上げたいと存じますが、今年は皆様御承知のように青色申告制度を実施いたしましてからちようど四年に相なるのであります。実施当初よりの推移を見まするに、個人営業者についてはきわめて不振な状態にあるのでありまして、全体の一割にも達していないわけであります。もちろん青色申告申請者の質は非常に向上して参つております。なぜこのように青色申告者が増加しないばかりか、むしろ減少をさえ危惧されるのでありましようか。その原因はどこにあるのでありましようか。これを分析いたしますに、一つは税法上の問題であり、一つは税務行政上の欠陥にあると存じます。 まず税法上の問題より見まして、青色申告制度不振の根本的理由は、零細な個人事業者にとつて、青色申告はとうていできがたいということであります。すなわち課税最低限が、今次税法改正においては、五人家族の場合事業所得者は十五万円となつておるのでありますが、これはあまりにも低いと存じます。基礎控除、扶養控除の引上げがまだ不十分であります。不急不要の歳出を節減することによつて、さらに一段と減税されることが望ましいのであります。せめてにも正確な記帳を前提とする青色申告者に対しては、勤労者と同等に取扱われるべきであると存じます。 次いで青色申告制度の特典について考えまするに、当局が宣伝されている特典が、はたして青色申告者にとつて特典であるかどうかということであります。現在特典としてあげられているものは十数種に上るのであります。しかし帳簿を見ずして更生決定ができないなどというのは当然のことであります。しかも何ら実質的に税負担の軽減を見ないのであります。また、純損失の繰越しまたは繰りもどしは、事業主に対する給与を経費と見られない個人営業者にとつては、きわめて利用度が少いのであります。その他、価格変動準備金、貸倒れ準備金、特別修繕引当金、減価償却の特例等は、零細企業者にとつて利用度が少いのであります。また家事関連費のうちの一部を事業経費に算入するがごときことも、特典というよりは会計処理上当然に認めるべきものであります。 今次改正案において、青色申告の特典のうち、家族専従者控除の範囲を十八才以上から十五才以上に拡大し、その金額を年五万円から六万円に引上げたことは適切な措置と思われますが、従前通り配偶者が除かれていることは、まことに不満に存ずる次第であります。夫婦共かせぎ的な零細企業においては、配偶者を専従者控除に認めないことは酷であります。ぜひとも専従者控除に配偶者を含ませていただきたいと存じます。さらに基本的に考えますれば、青色申告者は、店と奥を区分し、経理を明確にしておるのでありますから、法人と同等に扱い、事業主給与、家族給与を認めることが適当であると考えます。事業主や専従者の給与に対して毎月源泉課税をすれば、滞納者もなくなるでありましよう。勤労所得と事業所得を分離課税することにより、税金のために個人より法人に転向する者もなくなると思います。 なお既存の特典のほかに、新たに具体的特典として要望いたしたいのは、青色申告特別控除の制度であります。この点につきましては、シヤウプ第二次勧告は、正直はあたりまえである、金銭的特典を与える勧奨策は採用しない、と述べて反対されましたが、これは民主政治が徹底し、申告納税の精神をわきまえたアメリカ的な考え方であつて、わが国の現状から遊離しておるものであります。私どもが主張しておりますのは、青色申告者に対して所得の一五%を特別に控除することであります。その理由の第一は、誠実控除というものであります。いまだ青色申告は損だという先入感があることは、税務当局の実額調査が不徹底であり、白色と青色との不均衡があるからであります。これを調整する意味における特別控除が必要であります。理由の第二は、記帳費控除であります。青色申告者は白色の者に比し、記帳に涙ぐましい努力をしておるのでありますから、記帳奨励の意味において特別控除が適当であります。理由の第三は、税務協力に対する報償の意味においてであります。第三者通報に対しては所得税法第五十四条の規定により、税額の百分の十以下の報償金が与えられるのであります。現在税務当局は青色申告者の資料を活用しておるのでありますから、具体的個別的でないにいたしましても、一般的な青色申告者の税務協力に対しても報いることは当然と思うのであります。理由の第四は、零細な個人営業者の保護であります。低額所得者が正確な申告をした場合に、生活すら維持できないことになる現状であります。低額所得者は企業というよりも生業的なものであります。資本による所得よりも労力による所得が大であります。また法律が厳正に執行せられている点からみても、青色申告者を給与所得者と同様にみなしていただきたいのであります。以上のような理由によつて青色申告者に対する特別控除を主張いたしたいと存じますが、これに対応いたしまして、勤労所得者に対する控除も改正案以上にさらに引上げる必要があろうかと存じます。 なお今回の所得税法改正案中の生命保険料控除の限度額の引上げ、医療費控除の拡大には賛意を表するものであります。また社会保険料を所得金額から控除することも適当でありますが、これに関しては、都市における中小企業者には、悲しいかなこれを利用することができないのであります。税法に直接関連したことではありませんが、中小企業者に対する社会保障制度の必要を痛感するものであります。 次に、青色申告の普及をはばむものに、記帳の困難さがあげられます。現在税務当局においては、青色申告の要件として複式簿記を原則とし、個人に対しては当分の間、簡易簿記を認めておるのであります。しかし、いかなる場合においても、決算書として損益計算書と貸借対照表を要求しておりますので、簡易化には限界があるのであります。所得税法施行細則によれば、農業については、当分の間決算書は損益計算書のみでいいことになつております。零細な個人営業者の中にも、農業者と同じレベルのものがあるのでありますから、税務署長の承認を得たものは貸借対照表を不要なものとし、仕入れ、売上げ、必要経費、現金出納の記録のごときにとどめ、業種、業態、規模に即したものであることが望ましいのであります。 また新たに青色申告をしようとする場合、所得税法第三十六条の三の規定によつて、前年末までに税務署に届出しなければならないのでありますが、年末は営業の最繁忙期でありますから、これを確定申告の時期と同一に改正することが青色申告を普及する上に適当かと存じます。 次に税務行政上の問題といたしましては、前年実績や所得標準率にとらわれず、誠実な記帳に対しては当局は信頼して、調査に名をかりて法規にない書類を提出させられることはあくまでも避けていただきたいのでございます。 次に青色申告を阻害しているものに、地方税特に事業税があるのでございます。一般に見て、零細個人営業者にとつては附加価値税が有利であり、個人、法人の均衡上、これが実現を待望していたのでありますが、これが延期になつたことは遺憾でありましてこの際国税、地方税を一体として再検討すべきであると存じます。事業税率を引下げ、これを国税である所得税の附加税にしていただきたいと存じます。また地方税務行政において、青色申告者は記帳があるために、課税標準が国税決定のままであることは当然でありますが、白色申告者に対しては記帳がないため、泣きついた者、あるいは口先の上手な者には国税の課税標準額よりも下つたという例はしばしば聞かされるのであります。正直者がばかを見るというのは、最近においては国税よりも地方税に多く聞かされるのであります。都税事務所のごときは、国の税務署に統合一元化すれば、徴税費用の節約、調査の充実を期し得られ、納税者も応待の煩を避け得られるのであります。 なお最後に、青色申告は、税金対策だけではなく、経営の合理化のためにも、資金借入れにも役立つているのであります。特に国民金融公庫よりの借入れに有利なようであります。しかし一面やみ金利が青色申告を阻害している事実がありますので、青色申告者がやみ金融、知人縁故から名前の出せない借入りをしなくともよいように、政府の中小企業の金融対策を一層推進する必要があろうと思います。 以上要するに、納税者の大多数が青色申告になるときは、青色申告の特典が不要であるばかりでなく、青色申告制度そのものも不要であります。そのときに初めて申告納税制度が確立されるのであります。また誠実さを尊重することは青色申告制度の根本でございますから、かような誠実さがわが国の道義確立に役立つものであることを、国会並びに政府におかれましても十分御理解の上、御審議くださるようお願い申し上げまして、私の公述を終る次第であります。
○奧村委員長 ただいまの広瀬君の御意見に対しまして、何か御質疑があればこれを許します。——御質疑ないようですから、次に租税研究協会副会長、地方財政審議会委員松隈秀雄君の御意見を聴取いたします。
○松隈公述人 松は日本租税研究協会の副会長をいたしており、また東京商工会議所の税制委員長をいたしておりまするので、民間の租税に対しまする意見を聞く機会がきわめて多いのであります。従いましてそれらの意見を総合いたしまして、ここに今回の税制改正案に対しまする意見を開陳したいと存ずる次第であります。 今回の税制改正案は、約千億円の減税を内容とするものでありまするが、その中核をなしまするものは所得税法の改正であります。所得税法の一部を改正する法律案におきましては、さきに昭和二十八年分所得税の臨時特別例等に関する法律によりまして、本年の一月から三月までの臨時措置といたしまして減税を実施いたしておりましたのを、平年度化したことが中心になつております。すなわち基礎控除の引上げ、扶養控除の引下げ、下級税率の引下げ、社会保険料の控除等が平年度化されて行われることになつたわけであります。この結果、国民負担の軽減を見ましたことは事実でありまして、一例を給与所得者で夫婦、子供三人の家庭にとつてみますると、現行法では月収一万五千円の場合におきましては、所得税が四百六十六円かかることになつておるのでありますが、改正法においては所得税はゼロということになつております。月収二万円の場合におきましては、先ほど申し上げましたように、夫婦と子供三人、つまり五人暮しの家庭でありますると、現行法においては所得税を千四百三十七円払うのでありますが、改正法によりましては減りまして、七百三十一円ということになりまするから、約五割所得税が軽くなる。こういうことは事実であります。 なお課税最低限、すなわち所得税のかからなくなるその限界線について申し上げますと、この場合も夫婦と子供三人、すなわち五人家族というような標準家庭とも思われるようなものをとり、給与所得者の場合について申し上げますと、現行法では年額十四万七千五十九円のところが境になつておるのであります。それを越せば所得税がかかり始めるのでありまするが、今回の改正によりますれば、十八万三千五百九十九円というところが境になつておつて、年所得十八万三千五百九十九円を越えなければ、ただいま申し上げましたような五人家族の給与所得者の場合には所得税がかからぬ、こういうことになつておるのでありまするから、ここに負担の軽減を見ておるということは明らかであります。 それならば、この程度をもつて国民は満足しておるかと言いますると、必ずしも満足していない、いなむしろもう一段と所得税の軽減を希望するという声が高いのであります。一人月四千円で暮すということはなかなか困難だと思うのでありまするが、五人家族といたしますれば、一人四千円とすると二万円になるわけであります。月二万円としますと、年所得二十四万円になる。まず年所得二十四万円までくらいのところは所得税がかからないようにならないものだろうか。戦争以前の所得税の免税点は千二百円だつた。物価を二百倍といたしますると、ちようど二十四万円になる。その戦争以前の千二百円という免税点は独身者でもそうであつた。ただいまの場合は夫婦に子供三人ですから、五人家庭ではありますけれども、それがせめて年所得二十四万円までくらいのところは所得税がかからない程度にしてほしいという希望は、そう無理ではないと思うのであります。先ほど申し上げましたように、今回の改正で十八万三千五百九十九円のところまでは来たのでありますから、もう一歩というところであります。これについては、どうしても予算面においても考慮いたしまして、予算の膨脹を押えまして、極力財源を浮かせて、減税の方に向けてほしいのであります。ただ心配なのは、むしろ今回の減税が最後であつて、来年度は自然増収に多くを望み得ないし、また予算膨脹の趨勢がはたして押えられるかどうかという疑問がありまするので、来年度において所得税をもう一段と減税するということは、あるいは困難ではないか、こういうふうな懸念を持つわけであります。 なお国民の租税負担をよく国民所得と比較して論ぜられるのでありまするが、昭和二十七年度におきまする国民所得は五兆三千八百五十億円ということになつておりまするが、それに対しまして国税、地方税を合せますると一兆一千九十二億八千六百万円ということになりまして、その国民所得に対する割合は二〇・六%ということになつております。二十八年度におきましては、国民所得が五兆六千七百四十億円と計算されておりまして、国税、地方税との合計は一兆一千六百一億三百万円ということになりまするから、その割合は二〇・四%であります。従いまして二十七年度と二十八年度を比べますると、大体国民の国税、地方税の合計というものは、国民所得に対して同じような割合を示しておるのであります。ところが国民所得に対します国税、地方税の割合は、英米においては日本よりもその比率が高いのであります。アメリカは二十七年度において三〇%になつておる、英国のごときは二十七年度において四〇%になつておるのであります。この点がとかく誤解を生むおそれがあるのであります。コーリン・クラークという学者は、税の限界というものは国民所得の二五%程度を適当とするというようなことを言つておりますが、その説からいえば、日本はまだ国民所得に対して五〇%税をよけいに負担する余力があるように見える、それからアメリカや英国は二五%という限界線に対して米国が三〇%、英国が四〇%というのだから、はるかに限界を越えて重過ぎやしないか、こういうことで減税はむしろアメリカ、英国においてよけい必要であつて、日本においてはそれほど必要がない、こういうふうにもとられまするが、また表面税率の点からいつても、日本の税率が低いから減税の必要がない、こういうふうにとられるおそれもありまするので、表面税率のことを一言お話いたしますると、御承知の通り今回の改正によりまして、日本の所得税の最高税率は五百万円を越える金額に対して六五%であります。これに対しましてアメリカの所得税の最高税率は、普通税と附加税とを合せまして九二%というような高い税率になつております。イギリスの所得税の最高税率は、普通税と附加税と合せると九七・五というような高い税率になつておるのであります。この点から見ましても、日本は所得税の最高税率も低いじやないか、従つて所得税をそう減税しないでいい、こういうような論が出ないでもないのであります。 しかしこれは表面税率と実際上の担税力との間には差異がある。それから国民所得の総額を見るということはとやかく誤りがちであつて、国民所得についてはやはり一人頭を見なくちやいかぬ。そうしてその所得がどういうふうに使われているか、こういうことを見る必要があるのではないかと思うのであります。日本は少額所得者が非常に多い、貧乏人が多いのであります。しかし人口が多いから、その貧乏人のわずかの所得でありまするけれども、これを人口にかけて集めて来て、国民所得の総額にしてみると、相当の金額になる。しかし個々の人は必ずしも相当の所得を上げておらぬ。そこで今度は一例を個々の人について、英、米、日本を比較いたしてみますると、たとえば勤労者の場合でありまして、アメリカで年に二千四百ドルをとる人は、日本に換算すると、年に八十六万四千円になり、英国では年に八百五十七ポンドになるわけであります。日本で年に八十六万四千円の所得を上げる勤労者は、夫婦子供二人の場合でも所得税を年に二十四万一千八百五十五円を納めなければならぬから、二八%という負担をすることになります。ところが米国では年に二千四百ドルの収入者で夫婦子供二人では非課税、所得税を納める必要がない。夫婦だけの場合に初めて三百十三ドルという所得税を納めまして、その割合は八・九%にすぎない。イギリスでは年に八百五十七ポンド所得のある者は、夫婦と子供二人の場合でも七十ポンドの所得税を納めますから、八・二%という負担割合になつております。従いまして一人々々についてみると、日本の所得税がアメリカに比べてもイギリスに比べてもはるかに重いということがわかると思うのであります。 なおそのほかに所得の内容その使い方ということについても見る必要があるのでありまして、これを見るためにはエンゲル票数を見ることがいいと思うのであります。エンゲル系数というのは申し上げるまでもなく食うだけに所得のどのくらいを使うかというのであります。全体の年のエンゲル系数というのを見てみますと、昭和二十二年十二月においては六四という指数を示しております。その後改善されましたけれども、昨年の十一月において五一という数字を示しております。すなわち最近よくなつて来たけれども、なお所得の半分というものを食うだけに使つてしまうのであります。従つて残りの半分で着物も着なくちやならぬ、住まなくちやならぬ。そのほか衛生費、教育費、交通費というものを払わなくちやならぬ。この中に税金が入つて来るのであります。エンゲル系数は三五程度でないと、すなわち食うためにやむを得ず支出する分が約三分の一程度でないと人間らしい生活はできない、こう言われているのであります。アメリカあたりでいうと、大体三五、六になつていると思うのであります。ところが日本ではよくなつてもなおエンゲル系数が五一である。そうすると食うために半分以上を使つてしまうから、その他に使う部分が少い。その中から税を払わなければならぬということになれば、いかに表面税率は安かろうと、また国民所得全体に対する割合が少かろうと、納める個人のつらさはアメリカ、イギリスの比較にならぬということがわかるのでありますが、さらにまた日本人の多くの場合には戦災にあい、資本を喪失しておる。この資本の補充というものを年々の所得の中からして行かなければなりません。ここに所得全部を使い切つてしまうということが許されない、そのつらさがあるということであります。こういうことでありますから、私はぜひ今後におきましてもできるだけ減税の財源を生み出して、そうして所得税の軽減に充てられることを希望する次第であります。 次に、富裕税を廃止して、所得税の最高税率を引上げたことに対しては賛成いたします。シヤウプ税制勧告によりまして富裕税ができたのでありますが、これは所得を重く課税する、そうして働く意欲の方は刺激する、一方富の集中を排除するために財産に重く課する、こういうことをねらつたのであります。ねらいとしては確かに一つのねらい方でありまするけれども、実際問題といたしますると、財産の調査ということのためには、官民ともに相当煩雑な手数がいるのでありますが、その割合にあまりにも税収が少い。昭和二十七年度においてはわずか十一億円の税収を計上しておるのでありまして、税収の総額に対しては〇・一六%というような比率にすぎませんから、この税を廃止して、そのかわり所得税の最高税率を六五%程度まで上げることは、やむを得ないことだろうと思うのであります。 この富裕税の廃止に関連して考えますことは、やはりシヤウプ税制の改正が、徐々ではあるが行われておるということであります。今回の改正によりましても、富裕税がやめられておりまするし、また有価証券の譲渡所得税が廃止され、それと表裏一体をなす法人の清算所得税の復活を見ております。またシヤウプ税制勧告によつて廃止された有価証券移転税も復活しておる。それからシヤウプ税制改正以前においては、不動産等の譲渡所得は半額を他の所得と合算課税することになつておつたのでありますが、それが今度またシヤウプ税制の改正以前に逆もどりしておる。これらの点を考えますと、シヤウプ税制勧告に基いた昭和二十五年度の改正が、徐々に元にもどりつつある、こういうことが観察されるわけであります。 次に、法人税に関しまする改正は、資本蓄積促進を企図したもので、適切であると思うのであります。いろいろの準備金制度につきましては、従来からある退職給与引当金制度はそのままでありますけれども、貸倒れ準備金制度、価格変動準備金制度につきましては拡張改善をはかつております。なお新たに貿易商社等について、五年間を限つて輸出契約取消し準備金制度及び海外支店設置費の特別償却を認めておることはけつこうなことだと思うのであります。 そのほか民間における要求といたしましては、鉱害補償準備金制度であるとか、船舶瑕疵担保準備金制度であるとか、あるいは化学工業における爆発補償準備金制度を設けてくれ、こういうような要望があるのであります。しかしまたいろいろな名義であまり多くの準備金を損金で積み立てさせるということになると、税法が複雑化しますので、そういうことをやるくらいならば、むしろ一般は社内保留金について減免税を行う方が、税法が簡単明瞭化するのではないかと思うのであります。 次に、今回新しく法人の支出した交際費、機密費等の金額が一定の限度を越えるときは、超過額の二分の一を損金に算入しないことにする案が提案されております。これは理論的には首肯できるのでありまするが、実際問題としては相当問題があるようでございます。つまり、旧税は良税なり、新税は悪税なりということがよくいわれますが、新しく税をとる制度を設けるということになると、新制度は悪制度なり、旧制度は良制度なりという結果になるのではないかと思うのでありますが、とかく新しいことは摩擦抵抗が多いようであります。反対論者は、交際費、機密費等一定金額を越えるものを否認することに関して、経営者の自粛自戒にまつべきことを法令で強行するのは、経営に対する官憲の干渉であるから好ましくない、これはあくまで自粛自戒で行くべきものである。それから、交際費等を要する程度は業種によつて相当大幅に違うので、これを各企業別に細別すると規定がこまか過ぎる、さればといつて大幅に大別して規定することになると、業種間に負担の不均衡を生ずる。それから先ほども述べられたのでありますが、交際費等は、利益が多いからといつて支出するのではない、不景気の場合、あるいは競争が激化して利益の少いような場合には、かえつて多く使うというコスト的性質のあるものであるから、所得を標準として制限をするという場合には無理がある、こういうことであります。それから、交際費等に対する否認が行われることになると、事業費の中にとかくこれを隠したりすることになるものですから、税務の調査が一層めんどうになり、今回の改正によりまして、また企業会計と税務会計との間の食い違いが一つできる。企業会計の方からいえば、出て行つた交際費は、支出であり、経費なんです。ところがその中の一部を徴税の観点から否認されるということになると、また企業会計と税務会計の食い違いが一つできる、その上調査がめんどうになるということで、これは好ましくないという意見があるのでありまして、これを実行することになると、理論上はよいけれども実際には適しない。ちようど富裕税の場合と似たような結果を来すのじやないかと思われるわけであります。 それから法人税につきましては、四二%の改正を見なかつたのでありますが、これを三五%にもどすか、あるいは留保所得に対する分についての税率を軽減してほしいという声はかなり強いようであります。さきに三五%を四二%に上げた際は、朝鮮事変による好景気であつて、業界がよかつたものですから反対論が少かつたのでありますが、今日は景気が逆転してしまつたものですから、前には賛成したけれども、条件がかわつたからどうか前にもどつてくれ、こういう論が多いのであります。それから、先ほども申し述べましたが、中小企業は、その当時といえどもあまりもうけておらなかつた、大企業のもうかつておるものに対して上げられたのだから、これはまつたく巻添えだ、だから中小企業においてはぜひ四二%を三五%程度に下げてほしい。それから資本金一定額以下の同族会社には、中小企業保護の見地から積立金に対する課税を免除してほしい、こういう希望が強いのであります。 法人税の税率の四二%も、英米等に比べると表面的には必ずしも高くない。アメリカの法人税は、普通所得税が三〇%、そのほか附加税が二二%でありますから五二%、このほか超過利得税が三〇%あります。イギリスにおいては、法人税が四七・五%であり、そのほかに利潤税として、配当した分に一七・五%、未配当分に対して二・五%の課税があります。さらに超過利得税として三〇%の税がありますから、これも個人所得税の場合と同様に、表面税率だけを比べると日本の四二%は必ずしも高くないのでありますが、法人においても個人の場合と同様に、日本の法人は戦災等で資本を喪失しておる、従つてもうけの中から資本を補充して行かなければならぬ。それから戦災を受けないような企業にいたしましても、機械等は十五年も二十年も前の古い機械をそのまま酷使している。これは新しい機械に置きかえなければ今日国際競争に耐えられない。こういう状態にあるときに、四二%の法人税を納め、さらにこれに住民税の法人税割、その他の負担をするということになれば、英米と競争ができない。だからこの点も、表面税率だけの比較において日本は安いから四二%を下げる必要がないというような見解をとらず、むしろ法人の負担力の実体に即して税率の軽減をしてほしい、こういうことを希望しておる次第であります。 最後に、今回の減税は直接税を中心に減税が行われました。従いまして直接税、間接税、その他の割合は、間接税の比率が少しく上つて参ります。昭和二十七年度においては、直接税が五六・六%、間接税が四一・五%、その他が一・九%でありましたが、二十八年度は、直接税が五二・一%、間接税が四五・三%、その他が二・六%ということになりまして、直接税が少し下り、間接税が少し上つた、こういうことになつております。わが国の租税制度として、直接税、間接税の比率をいかにするかということは大きな問題であります。戦前におきましては、直接税は三分の一程度であつて、間接税中心主義の税制であつたのでありますが、戦時中、それからことにシヤウプ税制改正後は直接税中心主義でありました。これを元のように間接税中心主義にもどすことはむずかしいと思うのでありますが、直接税があまり重過ぎるということは摩擦が多いのでありますから、機会を求めて、軽減するなら直接税を軽減する、こういうことによつて比率を幾分直接税を低目に、間接税が上るようにして行くというのが、将来の改正の方向ではないかと思うのであります。 時間の関係で私の公述はこの程度にいたします。
○奧村委員長 ただいまの松隈君の御意見に対しまして、何か御質疑があればこれを許します。
○坊委員 ただいま松隈さんのお話によりますれば、内外の租税を比較いたしまして、所得税を初め、その他の税負担をこの際大いに軽減せられたいという御要望でございますが、私もまつたく同感でございます。ただ松隈さんのお話によりますれば、この税負担を軽減するために経費を節減する、それから適当なる財源を求めるというような二点がおありになつたように思うのであります。もちろん租税負担を軽減するためには、経費の節減をしなければならないことは当然のことでございます。何か適当なる財源を求めるというお話でございますが、この財源を求めるということが非常にむずかしい問題でございます。二十八年度の予算におきましては、長年の予算編成の方針を打破りまして、公債財源が少し頭を出して来ております。松隈さんの言われまする新しい財源ということの中には、こういうふうに公債財源というようなものもお含みになつておりますかどうか。これにつきまして私は私見を持つているのでございますが、松隈さんからお教えを願いたいと思うのでございます。 公債発行ということは、それによつて必ずその分だけは通貨の増発に結局においてなるんじやないか。今度の公債は交付公債であつて、通貨を吸収ずるというような意図を持つておりますが、これが必ずしもさようにうまく行かなくて、結局通貨の増発ということがおそれられるのでございます。実はインフレの恐るべきは、われわれ国民は身をもつて体験して参つたのでございますが、終戦直後におけるあのインフレと、それから今後における多少の通貨の増発ということは、私は相当意義が違うものでなかろうかと思うのであります。すなわち終戦直後におけるインフレというものは、日本が敗戦のきずまだいえやらず、まつたく生産力が地に落ちてしまつている。そのときに通貨を増発するということは、大体これは悪性インフレというか、通貨と物とのバランスがとれないために非常につらいインフレになつたかと思うのでありますが、その時代に比べまして、今日は日本は非常に生産力が挽回して参つております。物によつてはむしろオーバー・プロダクシヨンといつたような状態も現われておりまして、こういう場合に若干の通貨が増発されるというようなことは、終戦直後とは大分そのインフレの悪影響が違うじやないか、かように私は存ずる次第でございますが、松隈さんの新しい財源を求めてとおつしやるお言葉の中に、この公債財源といつたようなものもお含みになつておられるかどうか、このことについてお伺いいたします。
○松隈公述人 私は所得税の軽減並びに法人税の負担の軽減を申したのであります。その際それには経費の節約ということがなければ、予算のつじつまが合わないからして、そういうことの可能性が少い、こういうことでありますから、経費の節約を強く希望することはもちろんであります。それから自然増収があればそれに越したことはないわけであります。新しい財源として公債まで増発して減税をするということは、私個人としては考えておりません。しかし何か財源を求めるといいますが、これは遺憾ながら相当の税収入を上げる財源は今日ないようであります。奢侈的消費に対する税率を上げるというようなことにしましても、その税収は知れたものであります。今日もし多額の税収を上げるとすれば、やはりかつての取引高税というようなものでも考えなければ、多額の税収は得られないのでありますが、これはまた相当摩擦抵抗の多い税でありますので、新税として比較的摩擦が少く相当税収を上げ得るものは少い。わずかな増収しか得られない程度にしか、税の面からの財源は考えられないように思います。
○淺香委員 ただいま公述されました中で、交際費の問題について交際費は前提として賛成もあれば反対もあるという御意見でしたが、反対の御意見はずいぶん聞いたのですが、賛成の御意見はあまりなかつたようでございます。その点でその御意見がおありであれば、ひとつお述べいただきたい。
○松隈公述人 賛成論もあるわけでありまして、それは交際費、機密費等はできるだけ節約して資本の蓄積をはからなければならぬという見地からであります。ことに本社、支社とわかれておりますような会社におきましては、本社から支社に向つて、今度は交際費、機密費等は一定金額以上は否認されるんだから、支社、工場等において交際費等をあまり使つちやいかぬというような、支出監督というようなことの上には、従来から本社としては支社、工場等の監督のために、そういう訓令みたいなものを発して監督をしておつたと思うのですけれども、一層それが言いやすく、行われやすくなるんじやないか、つまりこれを口実といつては悪いのですが、これを機会に引締めやすくなりますから、一つの看板が掲げられたことでけつこうだという向きもあります。それから理論としてこれは決して悪くないのであります。ただ実行の面において相当混雑が起りはしないかということであります。その点もしかし限度のきめ方等がまだはつきりしておりませんが、きめ方いかんによつてある程度避けられるのではないか、かように存じます。
○佐藤(觀)委員 松隈さんにちよつとお尋ねしたいのです。実は富裕税の廃止に賛成されたようでありますが、富裕税の問題については、これが廃止に伴つて高額所得者のために所得税をとるからということで、今までは最高五五%の税率がきまつておつたのが、先ほどお話があつたように今度六五%という最高税率にした。これば月に二万円、三万円の実収のある人に比べると非常に楽過ぎはしないか。少くもアメリカなどの高額所得者に比べまして日本の高額所得者は非常に楽過ぎやしないかという考えをわれわれは持つているわけでございます。そういう点についての御感想を少し話していただきたいと思います。
○松隈公述人 今回富裕税の廃止に伴つて、所得税の最高税率が引上りまして、従来の五五%の上に六〇%と六五%という二段階が置かれたのでありまするが、英米等の最高税率は先ほど申し上げた通りでありまして、これがそれに比べて少し低過ぎるのではないかという御意見であります。見方によりましては低いということも言えると思うのでありまするが、先ほども申し上げました通り、表面税率からのみ比較するのは無理でありまして、国民の実生活から見ますると、低額所得階級、所得が月二万円とかその前後の者も苦しいのでありまするが、最高税率のかかるようなところ、五百万円の階級と申しましても、貨幣価値の下落を考えますと、五百万円といえども必ずしも戦前のような富裕階級と言うわけには参りません。従いましてあまり高い税率にするのはいかがかと思われるのであります。ことに財閥解体その他によりまして大所得者が減つておりまするので、いたずらに最高税率を上げてみても、それはいわゆる鬼面人を驚かすものであつて、実際はそういうところにかかつて来る連中はきわめて少いということであれば、六五ぐらいにしておけばいい。これを表面的な体裁をつくろうというならば一億円以上とか二億円以上とかいう階段を設けて、八十とか九十とかいう率をつくればいいのでありますけれども、実際においては、現在の所得の課税状況を見れば、一億円以上なんというものはほとんどないと言つてもいいくらいの状態でありまするので、実際上の所得ともにらみ合せつつ、所得課税の実態ともにらみ合せ、また所得者の生活状況から考えますれば六五ぐらいは適当ではないか、かように思うのでございます。
○島村委員 法人税の問題で伺いたいと思うのであります。先ほどのお話によりますると、日本では四二である。英国ではそれに上まわつておる。ですから必ずしも日本の四二が高いのではないというお話であつたようでありますが、これを比較いたします場合には、やはり資産の内容等についても考察が必要であろうかと存じますが……。
○松隈公述人 お話の通りでありまして、表面税率だけで比較して負担が軽いとか重いとか、あるいは担税力があるとかないとかいうことを言うのは危険でありまして、課税所得の実態がどうなつておるかということが大いに影響するのであります。たとえば税率は低いけれども、資本的支出と経費との区分なんかが非常に厳重でありまして、ある程度資本的経費と思われるものを否認して資本的支出とされるということになれば、税率が低くつたつて実際上の負担は決して軽くないと思います。聞くところによりますると、アメリカの税率が高いのでありまするが、アメリカを視察した人の話によると、日本では資本的支出として否認されそうなものを、相当寛大に経費に認めておる、こういうようなことも考えまするので、そうであれば、やはり表面税率だけの判断はますますもつて危険ではないかと考えます。それから先ほど申し上げましたように、会社の資本構成がどうなつておるか、そういうふうな固定資産の新陳代謝が行われておるかどうかということが、会社の競争力上非常に重要なことでありまして、そういう内容とにらみ合つた税率を比較する必要があるのであります。
○平岡委員 二、三お尋ねいたします。所得税あるいは法人税、そういつたものが確かに担税能力を越えて、相当ドツジ・ラインの超均衡予算のしわ寄せを食つておる。それを緩和して行くために今度の所得税の改正は一歩を踏み出したという意味で歓迎された、そういう点は異議のないことだと思うのであります。そこで法人税につきまして、同じ法人のうちでも大法人と中小法人とがあります。従いまして朝鮮特需の問題をめぐつて四二%に一率に上げた点が、中小法人に対しまして不当に圧迫しておる、これはもう事実であろうと思うのであります。それからこれに対する多少の基礎的なものは、大体法人税の増収が千八百億ほどと記憶しておりますが、今の価格変動準備金の損金算入、あるいは退職給与引当金の損金算入、貸倒れ準備金の損金算入限度引上げ、あるいは租税特別措置法による法定償却額の五割増償却、そういうふうな問題で、どつちかと言うと恩典が大法人に行く。その額を計算しますと大体二百億ぐらいになると思う。そうしますと、大法人においては四二%というふうに計算されながらも、実質的にはそういう恩典がありますので、そういう恩典なかりせば、今の二百億というふうな金額を問題にして来る場合、大法人において、実質的には大体三七%ぐらいに計算されるように思うのです。そうすると、数字的にも明瞭に中小法人というものは三五%まで税率をやはり引下ぐべし、大法人と中小法人を区別して、中小法人に関する限りは、財政の苦しい折ですけれども、少くとも三五%まで引下ぐべしという持論を私自身持つておるのですが、そうした点につきまして松隈さんの御意見をお聞きしたい。 それからもう一点、富裕税に関して伺いますが、富裕税の徴税が非常に煩瑣だという点、去年は十一億ほどしか上つておらない、そういうようないわゆる事務的ないろいろな煩瑣、それから捕捉しがたいこと、そういうふうな点が富裕税を撤廃すべしという賛成論の根拠になつておると思うのです。それからもう一つには、今言つた所得累進を五十五から六十五に引上げたという点においてカバーできるだろう。——私は富裕税自身はやはり経営財産税的な意味において奢侈を禁止するというような意味におきまして、やはり存置すべしというふうに考えるのであります。しかも人の所得税においても法人税におきましても、大衆が非常に呻吟しているときに、やはり相対的にこうした高額所得者あるいは富裕階級の所得捕捉というものに対して、唯一の補完税である富裕税というものは、やはり社会人心に影響するという点で存置すべしという見解を持つものですが、この点につきまして一層のお教えをいただきたいと思います。
○松隈公述人 中小法人については、大法人と違つて、いろいろの準備金制度等の利用が、実際問題として行われていないから、表面税率の四二%をそのまま適用を受ける。大法人の場合には、諸準備金を損金で積み立てる機会が多いから、従つて実質税率が四二%より下つておるということは、大体の傾向としてはお説の通りであります。そういう見地もありますので、中小企業を代表しまする法人会とか、あるいは青色申告会のようなところから、強く中小法人の税率を引下げてくれ、それから商工会議所等におきましても、中小法人の税率を大法人の税率と区別して引下げてくれという要望の強いことは、先ほど申し上げた通りであります。ただ、どの程度から中小法人と認めるかというその段階が、理論的にはつけがたいので、結局やるとすれば、腰だめで一定の限度を引くしかないと思います。 それから富裕税につきましては、存置した方がよろしいという御意見でありまするが、富裕税があるために利益の点もあるのでありまして、富裕税の調査によつて、所得税を免れておつたという点が、財産の形でつかまつて補完される、そういう利益は確かにあるのでありまするが、一面また富裕税があるために所得がつかまるということで、財産を隠すという方の弊害もあるのであります。これがために財産の名儀を分割するとか、あるいは株式を買つても自分の名前にせずに、証券業者にそのまま預けておくとかいうような、各種の通脱行為が行われて、それがために徴税官庁もその逋脱を防ぐために苦労するというようなことで、手数が容易ではないのであります。これが経営財産税ということになりまして、もう少し課税最低限も下げて、相当の税収入が上るということになれば、税としての意義があると思うのでありますが、独立税として存置するのには、財政学でも言つておりますが、収入十分の原則といたしまして、ある程度の税収入がなければ、どうも独立税の体裁をなさぬ、価値がないのではないか。それから言つて、富裕税はあまりに税収入が少な過ぎる。従つて補完税として経営財産税を起すのだ、こういうことであつて、もつと課税最低限を下げて来て、そうして軽税率で財産税を起して、ある程度の収入を上げて財政に寄与する、こういうことであれば別問題ですけれども、今までの富裕税というものは、理論に過ぎて実効がほとんどない、こういうものであれば、やめた方がいいというのが私の意見であります。
○奧村委員長 次に全国指導農業協同組合連合会専務理事武正総一郎君の御意見を聴取いたします。
○武正公述人 全国指導連の武正でございます。ただいまより今次税法改正法律案に対し、農民的な意見を述べさしていただきます。 まず国税のうちの所得税について申し上げます。今次の所得税法の改正は、さきに臨時特例法により実施されました控除及び税率の改正を平常化するのだ、そういうことでありまして、国民の租税負担の合理的軽減が期待されるとのことであります。その御趣旨はまことにけつこうであるのであります。しかし国民の租税負担の合理的な軽減を心から実現しようとするならば、国内産業に従事する約三千六百万人のうち、四五%以上を占めております農業従業者の租税負担の合理的軽減を特に考慮する必要があるのではないか。特に農業従業者の総数のうち、六〇%を女子が占めておるのであります。こういう点からも、農業に対しましては特別に考慮し、あるいは農業者の負担軽減を基礎といたしまして、税法改正を考慮すべきでありましよう。従つてこの考え方からいたしまして、基礎控除、扶養控除額をさらに引上げていただきたいのであります。引上げの要望額は、基礎控除八万円、扶養控除額を第三扶養家族まで一律に一人三万五千円とすることであります。 今申し上げました要望引上額の算出理由を次に申し上げたいと思うのであります。それは農業者の最低生活を保障するためには、多数の農家の最低生活費に食い込まぬように控除額を算出することが必要であります。そういたしますと、今申し上げました要望額になるのであります。昭和二十七年十一月、農林省の農業経済局統計調査部で、二十六年度の農家経済調査を集計されております。その調査対象農家の一戸平均は、田が六反三畝、畑が四反六畝、合計一町九畝であります。その他宅地が百八十坪、林野その他雑地をまぜて一町二反二畝、これに田畑を合計いたしますと、二町三反七畝の農家であるのであります。この経営面積は、五反未満が総農家戸数の四〇%を占めております零細経営の日本においては、これは上級農家あるいは上級経営に属するのでありますが、こういう上級農業経営におきましても、大体扶養家族三人を持つ、一戸当り六人の家族構成を占めておるのであります。この家族構成はわが国農家におしなべて該当するのであります。このきわめて条件のいい上級農家の農家所得が、やみ収入とか賃労働とか一切を合しましても、年に二十六、七万円にしかならないのであります。そうしてその租税公課、諸負担等を差引きますと、税引所得が二十四万円となつておるのであります。これは農林省で調査されました、偽りのない、非常に科学的な調査の結果がこうであります。ちなみに、その年の家計支出が、この上級農家においては二十一万六千円でありますから、月にいたしますと、一家六人の家族が一万八千円で生活しておるのであります、先ほど松隈さんから月に二万円の収入によつて生活する問題が出されておりますが、農家においては、上級農家においてすらはるかにそれよりも低い生活をしておるということが、今日の実情であります。妻子共かせぎの農家生活において、その労働の再生産のための最低生活費をこれ以下にすることは、現下食糧自給度向上が絶対必要な見地から見ましても、断じて避けるべきであります。しかも現在のわが国農家の大多数は、これ以下の経営規模でありますことは、先ほど申し上げた通りでありますので、実際は農民の大部分はさらに低い生活費で農業生産に従事しておることになるのであります。この点は食糧増産が掛声だけでなかなかその実をあげることができないことを如実に物語つておると思うのであります。下級農家の生活水準を上げることを考える点から申しましても、農家所得の課税限界を引上げることが必要であります。要望額を実現すること、すなわち基礎控除額を八万円、扶養控除三人の全扶養控除額が十万五千円、その他三万円、合計いたしまして二十一万五千円は控除して、最低生活費を確保したいというのであります。 次に、青色申告によります申告納税をすれば、現在におきましてもいわゆる家族専従者控除として五万円、改正案によりますと六万円が認められておりますが、農家経営の実情にかんがみて、青色申告をせずともこの種の控除を十分考慮していただきたいのであります。 次に寒冷地の農業地帯に対して寒冷地控除を認めてほしいのであります。理由は、寒冷地に居住する公務員は石炭手当とかあるいは寒冷地手当とかが支給されておるのであります。一般企業の従業者においても、それに準じた手当が支給されておりますが、農業におきましては米は価格が統制され、生産は意のままに上らず、逆に燃料なり衣服等の費用はかさみまして、生活費は他地方よりも多くかかるのでありますから、寒冷地控除として一万円程度の控除をぜひ要望したいのであります。わが国農業地帯の相当部分を占めております寒冷地農業の開発こそ、日本の農業生産の向上をはかるための今後の大きな問題の一つだと思うのであります。 母上は所得税関係の要望でありますが、次に富裕税について申し上げたいと思うのであります。富裕税廃止に伴う意見を申し上げますと、富裕税の廃止につきましては、先ほど松隈さんからお話がありましたように、その成績はきわめて悪かつたという点からも、この廃止は妥当だと考えるのであります。しかしこれとともに、他方高額所得者に対しましては、その税率を累進的にさらに強化する必要があると私は考えるのであります。少くとも五百万円以上の所得に対しては、シヤウプ勧告による税制改革以前行われましたように、現在の所得税の最高所得五百万円以上に対する百分の六十五の最高税率を百分の七十五程度に累進強化することが望ましいと考えるのであります。一方わが国農民のように低額所得層の税率に対しましては、十万円以下の課税所得に対しましては百分の十五以下の税率とすべきであるということを主張いたしたいのであります。十万円を計算基準といたしましたのは、農家総戸数の七〇%を占めております零細農業が平均して七、八反の農家でありまして、その収入は十万円前後であるからであります。 次に予定申告納税制度について意見を述べさせていただきます。予定申告納税制度を予定納税制度といたしたいのであります。農業所得税は現在三期、単作地帯は二期にわかれて申告納税を行つております。一期の予定申告納税は慣例上その年の所得の推定が十分つかないので前年の実績所得額を申告しておるわけであります。そこで予定申告の意義が失われておりますから、むしろ実際に適応するように、第一期は前年の決定税額の当該納期分を納入して、あとで修正あるいは確定申告で所得を申告し、調整することにしてはどうかという意見であります。前年に課税所得がなくて今年初めてある者についてのみ、予定申告納税をするという方法であるのであります。これは研究をお願いしたいのであります。 次に土地改良、開墾、干拓、砂丘地開発あるいは山林造成による所得及び普及奨励する新農業技術による増収所得につきましては、食糧増産促進のため課税の特例減免措置等を講じていただきたいのであります。理由は申し上げるまでもなく、供出すればするほど多く税がかかる、増産すれば増産するほど多く税がかかるようなことでは増産意欲を阻害するからであります。 次に農協の組合員の預金に対しましては利子所得税を課さないでいただきたいのであります。この理由は、農協の組合員の預金は零細であり、しかも価格統制されております米代金等多分に国策に順応している性質を持つておりますから、ぜひこの際利子所得税を課さないでいただきたい。しかも農協は公益的性格を持つ農村唯一の経済組織体でありますから、郵便貯金と同様に所得税を課さないでいただきたいというのであります。 次に日米行政協定に基く国連軍の接地農地また保安隊その他に対する損害補償金に対しましては所得税を課さないように特別措置を講じていただきたいのであります。一昨日でありましたか、朝私が村から出る前に、国策にもてあそばれた私たちという「私たちの言葉」が放送されているのを、自宅の縁側で聞いたのであります。皆様もお聞きになつたかしれませんが、これは静岡県のある開拓農民の言葉でありまして、戦争によつて中小企業整備がありまして、外地に開拓者として送り出された、そこで営々として開拓に従事しておりましたが、敗戦の結果内地に帰され、しかも不毛未開の土地に入り、困苦欠乏の生活に耐えながら開墾者として懸命に働いて来た、そこを今度は保安隊の演習地としてまたまた追われるという問題が話されておつたわけであります。私はこの言葉を聞いて、まつたく胸を圧迫されたのであります。このような犠牲的な農民には特例を開いていただきたいのであります。特に現在一方においては軍人恩給の予算が組まれておるようなことでありますから、こういう犠牲的な農民に対しましては、この問題は別としても、十分御考慮をいただきたいのであります。そして善政をしいていただきたい。 次に地震、風水害等の罹災農家の再起を促進するために、青色申告農家以外にも復旧の完成を見るまで損失金額を繰越し控除を認めるようにお願いいたしたいのであります。現在は罹災年だけは認めておりますが、これを回復するまで認めていただきたいのであります。 次に申し上げたいのは、農業所得審議会のようなものをつくつて、農民が自己の所得の基準について有権的に発言できるような措置を講じていただきたいのであります。この農業所得審議会は農民代表を入れたものであることはいうまでもありません。理由は、シヤウプ勧告によつて所得税自主申告納税を建前とすることとなり、従前ありました所得調査委員会が廃止せられ、税務官吏による協議団制度が設置されたのでありますが、現実を直視するときに、現行所得税法による農業所得の自主申告は農民にとり複雑難解でありますので、大部分は標準課税によつているわけであります。従つて所得税率の決定にあたつては、地方では大体指導農業組合連合会等が代表して税務当局に当つておるのであります。しかしながらこれは法的な裏づけがないのできわめて不利でありますから、所得税の自主申告納税制度をより実情に即応させるためには、農協のような農業者代表を入れた農業所得審議会を設置していただいたらどうかというのであります。 次に法人税について意見を述べさせていただきたいと思います。協同組合に対しまして法人税を免除していただきたいのであります。現在協同組合は全国で八百四十万の組合員を擁しております。一万三千の出資の農業協同組合を持つております。この協同組合は戦前は法人税が課せられておりませんでした。お話するまでもなく、農協は現在のように零細農業者のための公益的な経済団体でありますから、昔からわが国では組合には法人税をかけておらなかつたのであります。ところがシヤウプ勧告によりまして、協同組合もアメリカの巨大な近代的組合と同じに取扱われ、日本の組合もそのために高率の法人税を課せられておるのであります。しかしながらアメリカの協同組合においてさえ、収益税であるとか、資本税であるとか、あるいは超過利得税など、連邦あるいは州等においては一定のそういう租税を免除しておるのでありますから、日本の農協においては、特に農協が防貧のための防波堤の役目を果しておるのでありますから、農協の法人税をぜひ免除していただきたいのであります。特に最近のように県によりましては米の自由販売に移行しておるところがあります。その県においては農協のように正規の手続で米の販売をしておるところは、さつぱり業績が上らないようであります。というのは個人商人が米と肥料を交換いたしまして、どんな小さな農道でもトラツクでとことことやつて参りまして、現物交換をしておるからであります。しかも最近、東京の近くの電車の中にお乗りになればわかりますように、やみの米はどんどんとこれが東京に向つて運ばれておるのであります。そういう状況におきまして、いかに農協があくせくいたしましても、なかなか経済運動が正常化しないということは、はつきりおわかりになると思うのであります。そういう農協における特にこういう公益的な事業の性格を御認識くださいまして、法人税の免除を早急に実現していただきたいのであります。 次に第三次再評価について申し上げますが、再評価税を廃止していただきたいのであります。理由は農民、農協のごときは経済的地位が劣弱であります。資産再評価を行つても、それに見合う自己資本の充実ができない状態でありますから、結果といたしましては再評価税だけ徴収されるということになりますから反対いたしたいと思うのであります。 次に相続税の問題につきましては、改正案について賛意を表します。理由は、農民の相続税は現実に即応して相当軽減されると考えるからであります。但し相続税の財産評価にあたりましては、現行富裕税による評価方法と、地方税による固定資産の評価方法が異なるために、たとえば田一反取上げました場合に、富裕税による場合は三万五千円と評価されましても、一方地方税では反二万五千円というがごとくに、相当の開きを生じておるところもあるのであります。従つて評価方法を統一整備していただきたいというのであります。まだいろいろありますが、時間が経過いたしましたので、この辺で公述を終らせていただきます。
○奧村委員長 ただいまの武正総一郎君の御意見に対して、何か御質疑があればこれを許します。
○小川(豊)委員 青色申告は、あなたの方でたいへんお骨折りになつて徹底的な普及をやつていると思いますが、その状況はどんなふうになつておりますか。それからまたそれにかわり農協等でそれぞれ税務署と折衝しているというお話でしたが、そういうことが行われておるのかどうか。
○武正公述人 青色申告につきましては、県の指導連あるいは全国の指導連が非常に積極的に運動いたしたのでありますが、成績が非常に悪いのであります。非常に煩雑であるということ、それから青色申告をいたしますと、むしろ逆に税が重くなるというような考え方がまだありますので、あまり普及しておりません。しかしわれわれといたしましては、そういう課税の問題よりも、農業経営の合理化という点から、たとえば記帳運動、これは実際にやらなければなりませんので、そういう面について現在においても指導をいたしております。
○淺香委員 今お述べいただきました中で、税務調査員のことにちよつとお触れになつたと思いますが、所得税の調査員のお話ではないかと思います。御承知の通り、かつて所得税調査員制度がありまして、税務署ばかりでなく民間人も入りまして調査員制度を設けておりましたが、ああいう制度の復活について御意見があれば承りたいと思います。
○武正公述人 ああいう制度もけつこうでありますので復活させていただきたい、こういうことであります。
○島村委員 私は、今の公述人にちよつとお願いをしておきたいと思います。組合の專務理事であられますので、青色申告をすれば税が重くなるという観念そのものは間違いであるということを、ぜひ組合の方から御指導いただきたい。もし青色申告をした場合、無理な税金の取立てやあるいは増税でもして参りました場合には、私どもも、あなた方の味方になつて当局にぶつかることもできるのではないかと思いますので、どうかそういうふうに組合員を御指導いただきたいと思います。
○武正公述人 よくわかりました。大いにやります。
○奧村委員長 次に、日本中小企業連盟理事山田正作君の御意見を伺います。
○山田公述人 私は、日本中小企業連盟を代表いたしまして意見を述べさせていただきます。 中小企業の振興は、組織力により企業を合理化し、設備の近代化によらなければならぬということは、商工省時代より一貫した政府の中小企業対策であつたのであります。しかるに中小企業金融公庫法案、保険協同組合法案、独禁法改正法案等、およそこの方針と正反対な組織化を破壊するような法案が次々と提出せられて唖然たるものがありましたが、今回さらに所得税法の一部改正法律案が提出せられたことは、中小企業者の組織を阻害するのみならず、中小企業者そのものを壊滅せんとする悪法であるといわなければなりません。当路者がかかる悪法を次々と提出いたしましたことは、中小企業がわが国の産業上にいかに大切なものであるかということを、十分に理解していないためであろうと考えますので、一応本論に移る前に、抽象的でなく具体的にその説明をいたしたいと存じます。 税金の面から見ますと、わが国の税金の中枢体系である所得税は、全額四千五百億円であります。そのうち農林関係約三百億円、大法人が大体七百億円と推定されます。それから源泉課税のうち、その半分は大体中小法人の勤労所得の源泉課税であるということが考えられますので、この一千三百億円の源泉課税の半分である七百億円が大体中小法人に関係ある源泉課税だと考えられます。これを合計いたしますと、一千七百億円になります。四千五百億円から一千七百億円を引きました二千八百億円というものは、中小企業者の負担であるということが一応考えられるのであります。つまり税の面から言つても中小企業者はきわめて重大なる位置にあるということを認識していただきたいのであります。 次に資本の蓄積の方から考えますと、二十六年の二月から二十七年の二月に至る一箇年における銀行の残高の増加は八千億円に達しております。このうち農林中金、農協、農信連、農業関係のこの三つの金融機関の預金四百七十二億、大法人の資本の蓄積は大体五百億円と見ましてその差引七千億円の資本の蓄積というものは、どの方面でやられたかということも皆さんに大いに探求していただきたいのであります。これは決して全部が中小企業者だとは申しませんが、御承知の通り農民はただいまお話の通りなかなか資本を蓄積するような余裕はございません。一反歩以下の農家が七〇%を占めておるような状態でありますから、金融機関以外にはとうてい資本の蓄積などはできません。また勤労者も今おそらく資本を蓄積するだけの給与は受けていないはずであります。こういう点からいたしまして、この重点が中小企業者にあるということは一応考えられるのであります。この通り中小企業者は税金により政府の財政をまかない、基礎産業の資金源をなしている重要な働きをなしているのであります。中小企業者なくしては政府の財政も、重要産業の傾斜生産も絶対にできないことを断言することができます。 しからばこの大切なる中小企業者をいかにして育成するかと申しますならば、金融面からならば組織化により信用を拡大し、資金受入れ態勢を確立し、企業の合理化と設備の近代化を行わしめ、税金の面からは税率の引下げにより納税の円滑化を促進することが必要であります。しかるに大蔵当局は、中小企業金融公庫の新設により、組合金融の中枢である商工中金を虐待し、一方においてはこのたび提案されました所得税法一部改正のうち第三条の二あるいは六十七条の二によりまして、税金の面からもこれを捕捉して、両方面から中小企業者をはさみ撃ちするというような態勢を整えているようにしか考えられないのであります。今この中小企業の金融のことを考えますと、中小企業者は少くとも十人あるいは数十人の結合体でありますからして、一件当り四、五百万円の資金がいります。御承知の通り中央銀行は全国の平均が大体一件当り、七十五万円、それから地方銀行が大体五十万円、信用金庫や相互銀行が十五万円か、二十万円というのが一口当りの貸付であります。これらの貸付ではとうていわれわれ協同組合の金融の源とはならないのでありまして、商工中金が現在一件当り四百五十万円ないし五百万円の貸付をなしておりますが、こういう金融機関は協同組合を対象とするほかにないということを一応御了承願いたいと存じます。また今度の第三条の二はその対象が企業組合にあるように考えられます。私は実はこの法律の今度の改正法案が出ましたときに、例によつて物価の値上りによる税制の改正であつて、これは決して減税ではないというように考えておりました。ところがそのうちに第三条の二とかあるいは六十七条の二というような、われわれが想像もしない税法の改正が突如としてあげられまして、私は協同組合の関係上あまりその方面に関係がなかつたのでありますが、全国企業組合連合会の会合に呼ばれまして、そうしてその説明を聞きましたところ、これは企業組合だけではない、われわれ中小企業者の法人でも、すべてがこの法律に触れるということが明らかになつたのであります。これはもうとてもわれわれは黙視することができない大問題であるということを考えた次第であります。大体企業組合というものは、あたかも脱税組合のように大蔵省当局は考えられているようであります。しかしながらなぜわれわれが企業組合をこしらえなければならなかつたかということをひとつ考えていただきたい。第一は金融の問題であります。何業にかかわらず金融の裏づけなくしては事業を成り立ちません。しかるに中小企業は御承知の通り銀行が相手にしてくれませんので、やむなく数人、数十人が組合をつくり、弱い信用力を結集して信用力を強化することによりまして金融の道を開いているのであります。この組織体である企業組合を税金の対象として認めないということになりますと、税金の面から個人であり、商法の面から法人であるという畸型児となりまして、品物を納めるのにも、役所でも、またいいお得意では相手にしてくれません。また金融機関からも、税金を納めないような法人には金を貸してくれません。今までよりも一層困難なことになるということは明らかな事実であります。それから企業組合をこしらえました第二の原因は、生活の安定を追求するためであります。御承知の通り昭和二十二、三年の税金旋風によりまして、戦禍の廃墟より立ち上りましたわれわれ中小企業者が、やつとバラツクを建て、家具、家財をととのえて仕事を始めますと、家は差押えられ、家具家財は持つて行かれてしまう。これでは安心して商売ができない。やむなく企業組合をこしらえて、たとい報酬は少くとも、給料をとつて源泉課税を払つていたならば、まさか家まで持つて行かれるというような心配はない。やむを得ず中小企業者はこういう企業組合をこしらえたのです。決して税金のためにこしらえていないということは、大蔵省の方々はよく認識していただきたいのであります。もちろんこの企業組合の中には、はなはだ思わしくないものもあるかもしれません。しかし一部の悪いところがあるからといつて、全体のしかも法人、普通の株式会社、合資会社にまでその累を及ぼすということは、はなはだ間違つた考えではないかということが考えられるであります。 そのほか帳簿の不備あるいは帳簿をつけるようなことは、めんどうくさいというようなこともあります。なお片手にハンマーを打ち、出歯包丁を持つて商売をしなくてはならぬ中小企業者はとうてい帳簿づけなどということはできません。そういう意味でもどうしても企業組合をこしらえて、そういう税務署交渉関係は一切組合にまかして、自分は安心して商売ができるというような立場をとつている者が多いのであります。 私は先ほど申し上げました通り、この法律案が出たことを知らずに、十三日の説明会を聞きまして、十五日の日曜日に髪床に行きました。そうするとその髪床に有限会社と書いてあります。一体君のところはどういう組織でやつているんだと聞きますと、実は税務署がうるさくてしようがない、また帳簿を書けといつても、バリカンを握りながら帳簿を書くことはできない。やむを得ず数人でもつて有限会社をこしらえて、そうして毎月五日に自分のところでこしらえたものをそこに持つて行つて税務署に届ける。これは税務署ならば、はなはだ失礼な言分でありますが、ごまかすことはできるが、仲間はごまかせないというのです。仲間同士はお互いに信頼し合つて税金を納めて行くんだ、一つの店が税金をごまかして少く報告するというようなことは、税務署にはできるかもしれないが、仲間にはできない。私はこれが政治ではないかと思います。こういうところに目をつけて、大蔵省あたりももう少し親切に中小企業者を指導していただきたいということを私は念願する次第であります。 次に中小法人税の税率引下げにつきまして、先ほどからいろいろ御議論があつたようでありますが、大体中小企業者というものをどの程度に押えるかということが問題であります。ところが御承知の通り最近はだんだんと政府でいろいろな中小企業対策の恩典をこしらえ、また施設をやるものですから、五百万円から千万円になり、千万円から二千万円になろうと、だんだん中小企業の範囲が大きくなつています。それで下の方がみな上の方にとられてしまう。だから私は限度をあまり大きくすることには反対であります。今度の中小企業金融公庫でも一千万円ということになつておりますが、これは大き過ぎる。大きいところにみな流れてしまいますから、どうしてもこれをやりますならば限度を低くしてもらいたい。ほんとうに困る中小法人に流すということを考えていただきたい。 それから今の税率引下げの問題でありますが大体私の調べたところによりますと、二百万円以下の法人の税金は、昨年度までは税務署で扱つておりました。二百万円以上は御承知の通り国税局で扱つております。その二百万円以下の、税務署に納める法人の数が二十七万五千人、全法人の九三%であります。九三%は二百万円以下の零細な法人であります。そうしてその税金は幾ら納めるかというと、昨年の五月、二十六年度の決算によると三百十一億円で、非常に徴税率が悪く七〇%です。これは個人の申告所得税よりもさらに悪い。このように悪いというのは結局税率が高く、負担が重過ぎるのです。二十億、三十億の大法人も、三万、五万の小法人も同じ税率である。これは繰返すにも及ばないことでありますが、たびたび皆さんのおつしやつた通りであります。これが同じ税率であるというところに無理がある。四二%の法人税に地方税を加えますと六〇%になります。そうすると今までの個人の最高の二百万円以上五五%をさらに上まわつておるということになります。今三百十一億円を二十七万五千人で割りますと一人の税金が十一万円か十二万円になります。これが四二%でありますから大体二十二、三万円の収益と考えるわけです。二十二、三万円の収益でありますから月給にしますと二万円の人が六〇%の税金を払うから月に一万四千円の税金を払わなければならぬ。そこに非常な無理があります。この無理があるために税金の徴税率が非常に悪い。ですからこれを緩和いたしまして昔通り三五%といたしましたならば、今の七〇%がおそらく九〇%以上のよい成績になりはしないかと思う。この予算が御承知の通り大体五百億円でありますから、九〇%になりますと百億違う。ですから三百十一億円でもつて苦しむよりも、この税率を引下げて徴税率がよくなつた方が税収が多いということになる。そういう点もひとつ皆さんお考えくださいまして——決して税収に関係がありませんから税収に関係のない減税ならば、名目的の減税だけでなくて、ほんとうの減税をたつた一つだけでもあた方の腕によつてやつてもらいたい。今三五%に引下げてもらつたならば、これは必ず国民大多数が喜びます。一つだけくらいは名目だけでなく、ほんとうの減税をしてもらいたいと思いますが、法人税のことはこれくらいにいたします。 次に税源のことにつきまして、税源を言つてよいか悪いかわかりませんけれども、御承知の通り戦後農地改革によつて、大農家の土地は取上げられてしまいました。しかし都会の土地はそのままになつております。これは片手落ちではないか。都会にはまだまだ大地主がありまして、これはあき地ばかりであります。しかも借地権を持つておりますから、このために家も建てられません。そのために住宅建設に非常な障害を来しておることは皆さん御承知の通りであります。それでとにかくやむを得ず北多摩、南多摩というような遠いところに都営住宅を建てておる。そのために勤労者はほとんど税金と同じような交通費を払わなければならない。これをこのまま放つておきましたならば、いつまでも建たない、ある人に聞きますと昨年売つたが売らなければよかつたと言う、三年前に売つた人はみな後悔しておる。売らないであけておいた人の方が得なんです。これらに対しては住宅政策からいつても閑地税、空地税をとつていただきたいということを私は提案いたします。申し上げたいことはまだありますが、あまり長くなりますからこの辺で終りたいと思います。
○奧村委員長 ただいまの山田君の御意見に対して、何か御質疑があればこれを許します。——それでは時間も大分経過いたしましたので午前中はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。 午後零時三十七分休憩 ————◇————— 午後二時開議
○奧村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。 午前中と同様、所得税法の一部を改正する法律案ほか三つの税制改正案について公述人の方々の御意見を聴取いたします。 この際、公述人の代理発言についてお諮りいたします。本委員会において公述人に選定いたしました頴川徳助君及び太田薫君の両君より、都合によりそれぞれ馬岡隆清君及び高島喜久男君を代理として公述させてほしい旨の申出がありましたが、これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奧村委員長 御異議なしと認め、頴川徳助君の代理人として馬岡隆清君、太田薫君の代理人として高島喜久男君の両君の公述を許可することにいたします。
○大泉委員 今回はそれでよろしいが、今後はそういうことがないように委員長において善処してもらいたいと私は思う。今回は賛意を表しておきますが……。
○奧村委員長 今後御趣旨に沿うように善処いたしたいと思います。 まず日本輿論調査研究所常務理事石田百寿君より御意見を拝聴いたします。
○石田公述人 私は、有識堪能なる委員諸君われわれのごとき民間人の卑見を申し上げる機会を得ましたことを、まことに光栄に存じます。過般の総選挙でわれわれ国民は、国会議員諸君に対して白紙委任状をお願いしておるはずでありますから、国会においていかなる法律、いかなる税法、いかなる予算が決定せられましても、国民はこれに無条件賛意を表し、その可決せられたる予算の執行、公布せられたる法律を遵法するだけの責任と義務を持つておるものと信じておりますが、最近この院内の委員会において、民間人の意見をよくお聞き取りくださいまして慎重を期せられる点において、深く敬意を表する次第であります。 私は輿論調査研究の事業をやつておりますが、この輿論調査研究所と申しますのは、公益法人でありまして、無税で、税金は給与所得のほかはとられません。そうして利害関係も何もなく、いわゆる第三者と公平な立場から自由な討論ができます。もとより私は税の関係の問題についてはずぶのしろうとでありまして、諸君のごとき練達堪能な知識を持つておりません。しかし社会通念、常識上から判断して、この点がいいとか悪いとか、取過ぎるとか足りないとかいう問題について気のついた点をただいまより申し述べたいと思うのであります。 まず第一に所得税の改正法案でありますが、先刻来しばしば述べられたので大体尽きておるようであります。今度の改正案は、扶養控除額を一万五千円増額し、基礎控除を五万円から六万円に引上げ、最低税率を二〇%から一五%に引下げる、こういうのでありますが、これによつて多少の税の軽減、ある一部の人の負担の軽減をされることは間違いない事実であります。しかしこれは税全体から見ますれば、二階から目薬をさしたようなものであつて、これは問題にならない少額なものであります。しかしこれはなさざるよりは減じた方がよいのでありますから、この所得税法の一部改正案はきわめて妥当なものであると思います。 この課税の最も大事な事柄は、課税の公平を期するということ、負担の均衡を国民に与えるということであこるとはもちろんであります。所得税中の源泉課税と申告所得との二つの体系の上において、源泉の方は千七百四十九億余入る見込みでありまして、申告所得の方はその半分にも満たない七百五十九億幾らというのでありますが、源泉課税と申告所得とはたして公平均衡を得ておるかどうか。給与所得の方は一厘一毛もごまかすことができない。特に国家公務員のごときは辞令で出ておりますから、一厘一毛ごまかすことができないで、毎月会計課で差引いてとられてしまう。ごまかすことができないのは特に給与所得であります。ところが民間の申告所得というものは、百万円の所得のある者で完全に百万円の申告をする人が世の中にありましようか。法人、会社についてもその通り、個人の営業についても、百万円の所得、五十万円の所得をそのままありのまま申告するような人は少いのです。いくら税務署が徴税技術を振りまわし、徴税に努力いたしましても、適正妥当な所得の届出をするまでに隠匿所得を摘発することはとうてい困難である。一人の人に一人の税務職員がついておつてもできないことである。そうするとこの申告所得は大体三割ないし五割くらいの隠匿所得を隠蔽しておるという事実の推定は決して架空のものではないのであります。ところが片方の源泉所得の方は、一厘一毛ごまかしができず、ありのままとられてしまつて、毎月税金を納めて滞納もできない。片一方は滞納がある、今申告して今から払う。ところが給与所得の方は毎月月給から差引かれて納めておるのだから滞納も少く、従つてごまかしもできない。片一方はそういうあやがある。それで負担の均衡という点から見れば、申告所得というものはいま少し所得があつてよいはずである。私はこれは見積り課税だという見方をしておるのであります。半分にも満たず、しかも滞納が多い。これは負担の均衡の上からいま少し何とかする必要があると私は思います。 それからこの所得税の累進課税は十一段階にわかれておりまして、最低百分の十五から最高百分の六十五までの累進課税になつております。これがためにどれだけ納税意識を阻害しておるかということをこれから申し上げるのであります。 〔委員長退席、川野委員長代理着席〕 なるほど高率の累進課税にあてはまらないように、民間の会社とか銀行とかは、二万円とか二万五千円という一定の限度に達すると、それ以上は上げないで給料をストップしてしまう。そうしておいて、今度は交通費とか物価手当あるいは昼食費を会社で持つ、あるいは税金を負担するというような意味で、五万円とか四万円とかに該当する金をほかから出す。給料は二万五千円もしくは三万円でストップしてしまう。そうして高率累進課税にひつかからないようにどこの会社でもやる。りつぱな会社、銀行その他文化的な事業をやつておる一流の大きなところが、局長以上とか重役以上のものになつて、ある程度の限度に達すると、それ以上俸給を上げない。それは法律に定める累進課税にひつかからないようにするために、そういう作為的の行動をやつておるのであります。 この最低一五%から六五%の累進課税のためにどういう不公平な税率がかかつているかという二、三の例を示しますと、十三級俸から十四級俸をとつている国家公務員、次官、局長級の古い人が四万円くらいの本俸をもらつている。それでこの人たちは四割五分の税金を引かれる。そうすると二万五千円しか手取りが入らぬ。ところが課長さんの八級の三号俸をとつている人が本給が二万二千六百円でその他の手当があつて約三万円であります。税金は四千円引かれて二万六千円の手取りになる。課長の方が二万六千円で、局長、次官が二万五千円という、これは扶養家族も同じく三人ぐらいと見て計算したのでありますが、そういうことになつていて局長、次官の方が少い。課長級の方が二万六千円の手取りになつている。累進課税ではこうなつている。それから東京都知事が月俸十二万円で、これは税金を五割引かれてしまうために六万円しかもらえない。十二万円の俸給が毎月半分引かれます。総理大臣の月給はやはり十一万幾らだけれど、これも半分引かれる、代議士諸侯の歳費も七万円だが、これは国民から見ると七万円もとつてたいへんとるようだけれども、これは半分税金で引かれてしまう。こういう状況であります。これは累進課税というものがあるために、なるべく高率な累進課税を免かれるために、作為弥縫、隠匿とかいろいろなことをするために、一般国民の風潮を害し、納税観念というものを非常に阻害する。税金というものは納むべからざるものである、いかなる手段、方法を講じても、この安い税金にして納めようかというように、国民の一般気風を害しておつて、納税意欲を減殺するようなはなはだしい弊害に陥つている。この弊害を打開するためには、いま少し累進課税というものの段階、十二階段を半分くらいに減らして、この累進課税のでこぼこをいま少し平らにするように、これは大蔵委員諸君にお願いする。 これは戦争後アメリカの占領統治下であつたために、この七年間に二度税制改革をやりました。それは日本の自主的考えではなくして、アメリカの司令部の係りの人の要求によつてこういう法律ができたのであろうと思いますが、アメリカでは連隊長の中佐と准尉、特務曹長の月収入が同じなのです。日本で申しますと特務曹長というものは毎月三百ドルの月給をもらつている。連隊長の中佐、大佐は六百ドルもとるけれども、三百ドルは税金に引かれて、三百ドルしか手取りがない。つまり下士官の親方である准尉と連隊長の中佐と同じだということです。これでアメリカではどうして暮しができるのかわかりませんけれども、アメリカの税法はこういうふうになつている。それがために日本ではこの税法を押しつけられて、かくのごとき累進課税率の所得税法をきめたのでありましようけれども、独立国になつた以上は適正な程度にこの累進課税率を是正することが必要であると私は信ずるものであります。 それから負担の公平を期し、課税の公平を期するためには、先刻申し上げました国家公務員、地方公務員のようなごまかせない人と、民間の申告所得が多少ごまかせるというか、適正なる申告をせざる者との負担の公平を期するために、国家公務員、地方公務員のような人に対しては、基本控除として、現在徴収せられている月給の半分くらいに相当する額を控除してやることが正当だと思います。これは先般の人事委員会の給与問題の公聴会にも私が出席して意見を述べましたが、公務員の月給というものは昭和十九年当時において百円の月給をとつていた人は、今は三百倍になるので、だから三万円にしなければつり合いがとれない。平田国税庁長官はこの間ラジオでただいまの総合物価は三百倍に上つているということを申された。三百倍に上つているならば百円の月給を十九年度においてとつた人は今日においては三万円の手取り月給がなければ暮して行けない。しかるに七十倍しかもらつていない。二百三十倍の不足を生じている。だから食えるとか食えないとかいうことは問題にならない。非常に公務員諸君は生活に脅威を感じている。こういう人たちに対しては相当の相愛の基礎控除をして引いてやるということが負担の公平を期する上において、課税の公平を期する上においてきわめて妥当のことと信じてこれを提唱する次第であります。 それからいま一つ納税観念を阻害している原因は、納税手続が非常に煩雑で、青色申告やいろいろの申告書がありますが、確かにむずかしい。こういうものを家庭にもらつても頭が痛くなつちやつて、過年度所得とか、超過所得とか、総合所得とかいうものはどういうことであるか、家庭の主婦や普通の専門家でない人が読んでもわかりません。申告書が来ると頭が痛くなつてわからないという人が多い。いま少し納税手続を簡素化して、だれにもわかりやすく協力ができるようにするためには、納税手続を簡素にわかりやすくする。総合所得というものは何だかわからぬ人が多いのです。総合所得と書かないで、一定の収入以外の臨時の収入のあつた人はここに書き入れなさいと書けばだれでもわかりますが、超過所得とかあるいはこういうむずかしい専門語を使つております。こういうものは税務署の人が見ればわかるが、一般の国民が見たらわからない。だからこれに協力しない。税務署では毎日三百人も四百人も呼んで申告のことについて了解を求め、納得させる方策をやつておりますが、大体手続が煩雑です。青色申告でも何でも、こんなむずかしい書き方をするのは専門家の税務官吏でないと書けない。だから納税手続をいま少し簡素化することは納税実績をあげるために必要であります。昔は多額納税制度というものがあつて、御承知の通り、ない所得をどんどん、これもありました、これもありましたと言つて、税金を国民の方から進んで届け出て、そうして私は何々県の多額納税者でありましたということを名誉として、進んで税金を出した人がありましたが、終戦後はなるべく所得を隠匿して、いかにして税金を安くしようかということにこれ日も足らざる状態である。会社の少し大きいところに行くと、税務署の役人を三倍も月給を払つて頼んで、そうして毎日々々合法的な脱税行為をやつているような会社がたくさんある。こういうことで国家の行政運用の原動力となる税金を、国民の有識階級の大会社、何億という会社の重役あたりまでが、いかにして税金をごまかそうかというよな考えを持つていたのでは、国家の行政運営の原動力となる税金というものははなはだ前途悲観せざるを得ない。それがために制度の上からも、累進課税をいま少しく十二階段を六階段に直すということも必要でありましよう。納税手続はいま少しわかりやすく簡素にしてもらう。税務署の人たちは専門家でわかるかもしれないけれども、普通の人にわからぬ。社会の人が見るのだから社会の人がわかるように平易なものにしてもらいたい。 ちよつとおかしな話をするようですが、山岡鉄舟という維新のえらい人がありました。あの人は清水の次郎長と非常に懇意にしておりましたが、清水の次郎長と懇意になつた原因は、維新の当時勤王の人と佐幕党の人が斬り合いをしてあの清水港あたりにずいぶん死骸があつたのです。それをきれいにして、名前がわかつているものは碑を立てて葬つてやつた。山岡さんがそこを通つて、これは一体だれがこういうことをやつたのか、実に感心な人だということで、これは次郎長がやつたということがわかつて、それから清水の次郎長と懇意になつた。明治維新後になつてからもずつと交際をして、次郎長は晩年はばくち打ちの商売をやめて、若い者をつれて国家に協力しようというので、冨士の裾野で開墾をやつていた。始終山岡さんの屋敷に来まして、たいや何かみやげものを持つて来て、山岡先生と飲むのを晩年楽しみにしていたようですが、会つてこういうことを言つた、あなたは剣法もできるし、禅もやつて、明治大帝と相撲をとつて負かすくらいの気骨のある偉い人であるが、一つ偉くない点がある。それを忠告するが聞くかと言つたら、おれも神様でないから何か欠点があつたら言つてくれ。それじや聞くなら言いましよう。あなたは私のところに手紙を始終よこすが、草書でよこすから何が何だかわからない、せつかく静岡まで手紙をよこしてくれるがわからない、町を歩いて住職とかあるいは寺子屋の先生に見てもらつてもよくわからない、一体あなたはだれに読ませるためにおれのところに手紙をくれるのか。それはどうもおれが一本参つた、これからわかるようにかなで書いてやる。おれのような無学な者に手紙をよこすのにこんなものではわからない、坊さんのお経みたいな字で書いてあつてはわからない。お釈迦様は人によつて法を説いた、愚夫にはわかりやすい他力を説いた、知識階級には自力の力を説いて聞かせた、人を見て法を説かなければならない。税務署の職員も一般大衆に対してわかるようにするのには、もう少し簡易な、わかる納税手続に改めてもらいたい。こういう書類を見ると頭が痛くなつてしまう。この申告書は実際むずかしい専門語でわからないのです。 それからいま一つ、納税観念を養うためには、納税に関する手続を簡素化すると同時に、いま一つは納税のPR運動——アメリカでよく言われるがパブリック・リレーシヨン、税務行政のことを理解せしめるためにいま少しく宣伝を強化し、そしてほんとうに租税の何たるかを理解せしめ、税法の何たるかをよく理解せしめて、ほんとうに心から国民が納税に協力して、国の源動力となる税金を納めなくちやならぬという観念を養成するために、いわゆる税のPR運動をいま少し猛烈にやつて、周知徹底せしむるということも一つの方法である。 それからいま一つは正直に申告する、青色申告とかその他納税申告も正確にし、税金もちやんちやんと納めるというような人に対しては国家が何らかの特典、表彰する方法を講ずるということもその一つの方法と存じます。 それからいま一つは、私はこの場合新しい独立立法を制定してもらいたいということを提唱いたします。それは非常に隠匿した所得を摘発するために、土地、家屋、貸事務所、アパート等の賃貸借等に関する登録法というような独立立法をつくつていただいて、土地、家屋、貸事務所などを賃貸借する者は一定の登録をする、登録せざる者は罰金、科料に処するというようにして、これもむずかしい登記所でなくて、市町村役場の土地代帳係へ簡単に登録する、一定の登記料を払つて納める、そして権利として売買される金が非常に大きい、銀座の土地は一坪二十万円ぐらいになつておるが、賃貸借の価格というものはその六倍以上になつている、日本橋一流の通りはそうであります。それから新橋、赤坂、柳橋、葭町という花柳界地帯の許可地帯、この土地も非常に権利が高い。そして待合や芸者屋が許されないために賃貸借の料金が非常に高い、それで隠れたる所得をたくさんとつている人がある。しかれどもとつちやいけないということになつておりますから、だれもこれを帳面へ記入しない、その所得の税金を払わないでやみからやみへ葬られてしまう。これは全国の重要都市並びに花柳界地帯あるいはビルデイング、貸アパート、こういうものの権利の所得に対して税金をとるためには、どうしてもこれは土地、家屋等の賃貸借に関する登録法とでもいう独立立法をつくつて、そして民法の一部を改正して、登録せざる者は法律上の第三者に対抗することを得ずという一項を民法に加えれば、この法律はきわめて有効になると思う。そうしてこの隠れたる所得からどんどん税金をとることができる。つまり銀座の附近の貸ビルディングは一坪十万円とられる。部屋代は四千円か五千円でありますが、権利が十万円、三十坪あれば三百万円の収入が入る。その大きな所得に対して一文の税金もかかつていない。だからこれは独立立法をつくつて、こういうふうにして隠れたる大所得、やすみ所得をとるということは、これは所得税の一大欠陥を補うものと私は思つている。しかし大蔵省の当局者に言わせれば、権利というものはとつてはいけないことにしてあるから、それからとることにすると権利を認めることになるという議論もあつた。大蔵省のある局長にこの税をとれということを勧めたのですが、これは権利を認めることになるからちよつとまずい。それならば株式会社の株式のプレミアム付販売広告、これは増資する場合に堂々ととつているじやないか。それと同様に、需要供給の調節を補うものは部屋代のほかに権利を払つて借りる、そういうものは承諾の上で払うからいいじやないか。その多額の権利に対して新たに税金をとるのではなく、所得税としてとるのなら一向さしつかえないということを主張しているのでありますが、これを全国の重要都市の特殊地帯、もしくは一流の銀座のような目抜きの場所の賃貸借の権利料というものを、税金としてこれを取入れたとするならば、これは厖大な財源であります。この点について大蔵委員各位におかれましては適当なる御研究と御考慮を願つておきたいと思う。こういう財源を得ればただいま非常に市内でやかましいことを言つて悪税だといつて電柱にも張つてありますが、物品税の撤廃、二百九十六億のわずかの物品税というようなものなども、こういう財源の隠匿した所得の厖大なるものが財政に入つて来たならば、全廃してもさしつえないと私は思う。 物品税というものはいかなるものかと、これに関連してちよつと申し上げたいが、一体戦争中に重要なる物資を生産し、奢侈品を抑制するために、三割の重税を課した。ある物には一割の税もありますが、とにかく八十種、百種類のものが物品税としてとられている。しかしそれがために物品税をとられている納税義務者は中小企業者でありまして、これらの人たちがずつと非常な窮状を訴えておりましたが、その税金をとるために、物品税をとられ、物によつては材料を買うのに材料にとられる、そのこしらえた製品を問屋へ持つて行くために持出しの税の三割の税金をとられる。また商品として売つた場合には、その営業所得というように、三重課税になつているものもある。こういう悪税はぜいたく品と申しましても錦紗の着物や御召の着物などは織物税を撤廃されて今じやとらない。だからおしろい、ポマードというものは、今日文化人の使う重要な必需品でありまして、特に舞台に出る芸能家には欠くベからざる営業必需品、役者、芸者として舞台へ出る芸能家などは商売道具である。そういうものでありますから、物品税というこまかい税金をやめて、そうしてこういう隠れたる厖大なる隠匿所得をとることがいいと思う。この物品税というものは財政論の原則としても非常特別税として課したものでありますから、今日の独立した平和時代において全廃してこれをきれいになくしてしまうということが当然で、また中小企業者の救済策としてもこれが適当であると存じます。 それから海外輸出のために——おとといの新聞にありましたが、京都への観光団のお客さんが名古屋の七宝焼きを買いたがる、象牙でつくつた彫刻のあるおもちやを買いたがる、相当売れるそうです。しかしこれには物品税がかかつて来たので非常に売りづらいということで、三百人が押しかけて行うて税務監督局に向つて陳情したということであります。おとといの新聞に去りましたが、そういう事情であります。ですからこういう悪税は廃止して、隠れたる隠匿所得を摘発するために、独立立法をつくつて、隠れたる財源を出してもらいたい、そういうことを希望いたします。 それから最後に私は酒税のことについて一言申し上げたい。酒の税金を二級酒と三級酒については二割から三割下げるということはまことにけつこうであります。しかし一級酒と特級酒を下げないのはどういうわけか、これ片同時に下げるのがけつこうだと思います。税を下げたら財源が減るというわけのものではないと思う。これはたばこの実例において、専売局で、ビーズとひかりへ輸入の葉を入れ、いい香料を使つて値段を安くしたら、たばこが非常に売れて専売益金は増収になつた。酒も二級酒、三級酒あるいは合成酒というものはいくら安くても、二、三ばい飲むとあきてしまつて飲めない。ですから実際問題として一級酒、特級酒を安くしてもらいたい。酒というものはぜいたく品のように見えますけれども、一日勤労して帰つて来た人が、湯に入つて一ぱい酒を飲むことは、いわゆる明日の勤労意欲を増すための薬であります。ですからこういうものに対しては一級酒、特級酒もこの際同時にお下げになつていただきたい。そうして百四十六億二千二百万円という税収は、酒税を下げても私はこれだけ入ると思つております。それから労働者の飲みますしようちゆうのごときは、三割以上、五割ぐらい下げてもらう方がいいのではないか、こう思つております。 それから相続税のことについてたつた一言だけ申し上げたいが、相続税の最高が、これも累進課税になつておりまして、三千万円になると百分の七十ということで、大部分の財産をとられてしまう。 今東京で土地のいいところは一万円しておりますから、三千坪持つておれば三千万円に相当するので、この高率課税にひつかかつて財産の大部分、七割をとられてしまう。ソビエト社会主義連邦共和国でやつておるような、個人の財産を没収するようなあの税金というものは、わが国ではあまりかんばしくない。高くても半分ぐらいの税率にしてもらいたい。最高七〇%を相続税においてとるというような法律は、はなはだどうもよろしくないと思つております。これもいま少しく税率を下げてもらいたい。 以上の点について申し上げたのでありますが、要するに課税の均衡、負担の均衡を得るために、ただいま申し上げましたやみ所得を摘発する独立立法をつくつていただいて、この隠れたる所得を税金にとるということが一つと、それから納税手続を簡素化して、国民にほんとうに協力せしめるということが一つ。それからいま一つは、累進課税の段階をいま少しく少くして国民全体が納税に協力するように仕向けてもらいたいということを申し述べて、私の公述を終ります。
○奧村委員長 ただいまの石田君の御意見に対して御質疑があればこれを許します。——なければ、次に林業発展対策協議会理事馬岡隆清君の御意見を拝聴いたします。
○馬岡公述人 今御紹介いただきました林業発展対策協議会の馬岡でございます。お呼び出しいただきましたのは、今度の税制の改革において、林業ではどうなつておるか、どういうふうに考えておるかという意見をお求めいただいたのだと考えまして、主として林業の問題についてお話を申し上げたいと思います。 第一に所得税でありますが、林業に対する山林所得の面には、非常に御苦心いただいてあることはよくわかるのでありますが、林業のような遅れた産業では、まず租税政策という面から山林所得を考える前に、山林経営という立場から山林所得を考えてみる必要があると思うのでございます。林業は投資から収穫まで、苗木を植えてからそれが伐採できるまで、五十年ないし七十年という長い期間を要します。投資してから収穫するまでそういつたように長くかかる産業は、ほかにはないだろうと思います。五十年と申しますと半世紀でございます。半世紀先をめがけて今投資しておる、こういうような特殊な事業だということをまず考えていただきたいと思います。しかもその林業の利回りはどうか。収益率はどうかと申しますと、今お手元にお配りしております表、これは急いでつくりましたので、どうもへたな表をつくつて参つたのでございますが、これは全部自己資金でまかなつた場合に、その要した経費を、ほかの産業に使えば少くとも一年一割にはまわる。これをかりに五十年で切るとして、五十年間一割にまわすとしますと、表に数字が出ておりますように、千十一万八千八十七円という金になるわけでございます。それが林業の場合にはどうかと申しますと、一番下に註がしてございますが、五十年間育てまして上る金を、現在より少し高く見積つても買価は百万円にはなりませんが、計算を簡単にいたしますために百万円程度上るとしますと、使いました経費を勘定に入れまして、その経費に対してどれくらいの利にまわつておるかといいますと、四分五厘にまわつておる。この四分五厘にまわつておると申しますのは、五十年経つての売上げ代金百万円そのままで、地代も保険料も所得税とか諸税は入つておりません。年々納めております固定資産税だけは勘定してありますが、売り上げたときに納めるような性質の税は勘定に入れずにおいても、四分五厘で、そういうものを勘定に入れるとまず二分くらいになつてしまうのじやないか、こういつたような非常に利回りの悪い、一口に申しますと劣勢な産業でございます。 そういう劣勢な産業を、立場をかえて国土の保安という点から見ましても、山野を緑化するということは非常に大切なことでございまして、それによつて木材資源が捕捉できるというようなことだとか、あるいはまた国土を保安するというような点を考えあわせまして、その造林の必要なことはもうだれもが認めるところでございます。その必要を認める林業に対して、造林の状態はどうなつておるかと申しますと、戦時戦後を通じて非常に木材の必要に迫られて伐採をいたしました。しかし造林は一向行われませんで、非常に日本の森林は荒廃したわけです。これはいけないというので、あの緑の羽運動というのが起つて、緑化をしようじやないかという呼び声で盛んに呼びかけております。森林法が改正されましたのも、そういう点からに違いないのでございます。その森林法が実際どういうやり方で緑化をはかるかといいますと、まず伐採を制限して、一方造林を強制して、そうして所有者に強い強制を加えて緑化を実現しよう、こういうふうなやり方をとられたものですから、もともとそういう非常に劣勢な産業が、そういうふうに自由を縛られましたので、産業としては非常に林業経営に対して、行く先の不安を感ずるようになりました。そのために造林がまた興らなくなつた。こういうような関係で、昨年の調べによりますと、伐採したあとへ植えなればならぬところを植えてない部分が、民有林だけで百四万町歩になつている。そうしてせつかく造林をしたが、手入れをしないので荒れておる。そのままでは成林の見込みがない、こういう山が全国で八十六万三千町歩に及ぶ、こういつたような数字が出ておるのでございます。 こういうふうに、わが国のような資源の乏しい国で、そうしてその資源の乏しい国の七割までが山林だ、こういうような国におきましては、この山林を活用するということが、一番手取り早い大切な仕事じやないかと私どもは考えるのでございます。植林面積の拡大をはかりまして、そうして木材資源を充足する、電源の維持増強をやる、あるいは治山、治水に役に立てる、そうして一面過剰人口を山林に吸収して失業対策に貢献する、こういうふうな立場に立つて林業政策を樹立したら、日本の様相がかわるんじやないか、こういうふうに考えられる次第であります。 そういつたような林業政策に直結する税制をつくつていただきたい、そうして森林所有者の造林意欲がぐんぐん増して来る、大いに沸き立つて来る、こういつたような税制にしていただきたい。端的に申しますと、造林する者には税はとらないとか、あるいはどうせ植えれば三代かからなければ切れかい、そういつたような特殊な長期の神格のものには、相続税について非常に考慮する、こういつたような根本的な対策を立てていただきたいと思うのであります。 しかしながら今の状態で、今の国家財政の多端な折に、そういうことを林業者の立場から申し上げることは少し無理だと存じますので、現在の税制に合うような点で改正していただけるといつたようなところ、そして課税を軽減して林業を保護していただくというような行き方にしていただけましたらと存じまして、今度の改正について、ぜひこういう点だけは直していただきたいというところを数え上げてみますと、第一に、山林所得税の関係では、山林所得を他の所得と総合せずに分別して、そして売上げ代金からその六割を控除して残りの四割に税をかける、その四割は五分五乗して税をかける、こういうふうにやつてもらいたいと思うのであります。その理由は、第一に分別は、大正五年以来この戦争が始まるまで、ずつと分別の制度をとつていただいておつたわけであります。戦争の終りのどさくさのときに、他の譲渡所得と一緒に合算されて、他の普通所得に合されるという形にかわつたのであります。これはどうしても元へもどして分別していただきたい。そういう利回りの悪い特殊なものだから、しかもそれが毎年収入があるものでなくて、十年目に一ぺん、二十年目に一ぺんしか収入のない所有者が多い、こういう関係から考えても、これは変動所得として分別することを認めていただきたい。それから六割控除していただきたいといいますのは、現在の制度では取得価格をつくるために再評価額を差引くという形になつております。その再評価額と実際直接の必要経費とを合せますと、今度の改正の税法でもほぼ六割の線へ来ておると思うのであります。それでその六割を引いていただきまして、残りの四割に課税される。その四割は五分五乗して課税される。五分五乗という制度は大正十五年以来続けていただいておつた制度でございまして、そういうふうに連年収獲のある性格ではなくて、一ぺん植えれば五十年目でないと収獲がない、こういつたような特殊な性質を考えて、そして五十分の一の収入が毎年あるのだという考え方にすればいいじやないか。それを計算上簡略にして、五分の一収入が五回あるのだというふうに考えて、累進税率をのがれるような形式をつくつていただいてあつたわけであります。ぜひこれを復活して今度の税にも盛り込んでいただく。これはある意味では盛り込んでいただいております。五分割の制度ができるようになつておりますが、他の所得と分別されておりませんので、その計算が非常に複雑で、とても山の奥の森林所有者にはあの計算はできかねる、こう思いますので、やはり分別して五分五乗の昔の制度にしていただきたいと思うのであります。 その次は、法人が林業を経営しておるという場合についてでございますが、法人の場合にも、山林経営という意味からいうと、利回りの点なり、そしてやはり五十年目に一度しか切れないということは、個人と同じことなんでございますから、そういう点を考慮していただいて、普通の法人税じやない特殊な山林経営に対する法人税を考えていただきたい。たとえば再評価を行うといたしましても、その再評価による税を納税するのは伐採するときまで待つてやる、こういつたような制度にしてやる。あるいはまた造林は毎年の収入は望めないのでございますから、また望めても、木材価格も非常に変動しますし、毎年同じだけ増林をして行くということが実際の経理の面でめんどうになりますので、それに備える意味の積立金の制度を認めていただきたい。増林経営継続並びに災害補填の積立金、こういつた制度を認めていただいて、そして山林収入の四割くらいを非課税の扱いにしていただきたい、こういうふうにお願いしたいのでございます。 次には相続税の問題ですが、相続税は、先ほどもちよつと申し上げましたように、親子三代かからないと成果を上げることができない。こういう宿命を持つた林業でございますから、特殊な相続を考えていただかないと、今の相続税のままでは、親が子供のために植えておくということがとてもできない。経済上そういうばかなことができないというような形になつてしまいますので、これは特殊なことを考えていただきたい。その特殊なことと申しますのは、利用のできない十五年から二十年までくらいの若い山を子供に相続する場合には、それは評価をしない、無税にする、こういつたようなこと、あるいは相続税を納めるのに十年の延納を認めていただいておりますが、これはとても利子を納めることができませんから、その利子を免除していただきたい。それから山林の評価を適正に——伐採される年齢になりますと、実際市場価格が出て来まして、これは明らかに価格が出るのでございますが、一年生、二年生から十年生、二十年生といつたような若い山で、実際伐採しても利用価格がないといつたような山についての評価が高過ぎる。もつと安くしていただかなければならない、こういうようなことが相続税では考えられるわけです。 それからいま一つお願いしたいことは、将来の山林経営を考えてみますと、これは個人の経営が許されなくなる、どうしても法人経営にしなければならないというふうな傾向にあると思うのでございます。相続税だけを考えてもそういうことが言えると思います。それで経営を法人に切りかえるといつた場合に、譲渡所得だとかあるいは登録税という点で、その譲渡所得や登録税が妨げとなつて、その切りかえができない、こういうことのないように、税法上の措置をとつていただきたい。こういうようなことが森林の税制について特に御考慮をいただきたいおもなる点でございます。私の申し上げたいことは、以上でございます。
○奧村委員長 だたいまの馬岡君の御意見に対して何か御質疑があれば、これを許します。——それでは次に日本労働組合総評議会調査委員高島喜久男君の御意見を拝聴いたします。
○高島公述人 きようこちらへは総評の副議長の太田が参つて意見を申し上げるはずでありましたが、突然の事故で、かわつて参りました。私ここで申し上げますことは、この税制改革に関する私どもの要望ではありません。税制改革案に関します私どもの認識を申し上げたいと考えます。 税、ことに所得税に関します問題は、われわれの所得、国民所得と国民の生活の実態をどう見るかということから出発するはずであります。それで私どもといたしましては、この税制改革が、われわれ日本の国民所得と生活の実態をどのように認識しているか、それに対してわれわれはどのように認識するかということから問題を考えなければならないと思つております。 問題の手がかりを、こちらへ参りますにあたつていただきました資料、大蔵省主税局の「租税及び印紙収入予算の説明」という資料にあげられている数字に手がかりを得て申し上げます。ここでは、たとえば四ページをお開きになりますと、昭和二十六年の給与支給人員の実績が千二百十二万九千人、給与の支給金額の実績が一兆五千八百三十六億五千二百万円となつております。これから計算いたしますと、一人の一箇月の給与は一万八百円となります。これがその下を見ますと、二十八年度では三%増加することになつております。従つて二十八年度では給与の一人当り金額は一箇月一万四千二百五十六円となるはずでございます。一万四千円をやや越える金額になるはずでございます。ところでこの資料の一番最後、四十一ページの表をごらんになりますと、ここに全産業の現金給与額という労働省の調査がございます。この調査は今日組織されております労働者の平均給与を示すものとしてわれわれも使い、また中央労働委員会や政府もそのように使つている数字であります。この数字によりますと、二十六年の平均給与は、現金給与で一万二千百九十二円となつております。従つてここには当然全給与支給人員の一人当り支給金額よりも、組織労働者あるいは労働省が調査いたしますところの労働者、鉱工業労働者の給与は若干高目になるわけであります。この比率で計算いたしますと、昭和二十八年度のわれわれ鉱工業労働者の給与は一箇月一万六千円を越えなければなりません。一万六千九十三円になるはずでございます。各産業、各企業によつて給与が違うことは当然でございます。従つて各産業における給与の格差を前提といたしますと、大体鉱工業の平均給与に対しまして、電気労働者の給与は三割くらい上まわるのが今までの事事でございます。少くとも二割以上上まわつている。大体三割前後上まわるのが今までの実績でございます。そうしますと電気労働者の二十八年度の給与は二万円に達しなければならないのでございます。ところで、申し上げるまでもなく、先ほど中労委の裁定によつて決定した電気労働者の給与は一万五千四百円なのでございます。 私はここに一例をもつて申し上げたのでございますが、また給与の計算は実にめんどうなので、労働者自身でさえも計算できない、つまり何とか給、何とか給、それから毎月きまつてもらえるかもらえないかわからないようないろいろの給与があるので必ずしも正確に一銭も間違えずに計算することはできませんけれども、大体この数字から見ますと、二十八年度の電気労働者の給与は、一万五千四百円ではあり得ないということだけは明確であると思います。 このことは私どもに二つのことを示すことになります。一つはここに示されております給与所得はあるいは過大ではないかということでありますが、私は今その点について触れようとは思いません。なぜそのような事実が起つておるかということについて、注意を喚起したいと考えております。御承知のように、今日生産の最も増加しておりますのは、これもまたこの四十ページにあります表でごらんになればわかりますように、投資財の生産指数が一六九、一七〇ぐらいになつております。ところが生活資財の生産指数は一一二にとどまつておるのであります。投資財の一六九、これはたとえば鉄であれば一七〇、あるいは機械類であれば一八〇、化学であれば一四〇、鉱山であれば一二〇というふうに若干の開きがありますが、平均しまして投資財であれば一六九というときに、生活資財は一一二であります。さらにこの内容を見て行きますと、たとえば繊維、衣料品の生産のごときは一〇〇にはもちろん達していない。出版であるとか、印刷であるとか、われわれの生活の水準を最もよく示すものの指数になりますと、これは戦前の五〇にも達していない、四〇前後であるというような事実があるのであります。このことは当然こういう投資財生産財に対する需要の増加、それからこういう生産財の価格の高騰、それから生活資財に対する需要の減少、あるいは需要の相対的な減少、そういう生活資財の価格の低下、相対的な低下を示すものであつて、これは次の表の物価指数の生産財と消費財の内訳をごらんになつていただけばわかるものだと思います。今日日本の国民総生産に対しまして、資本蓄積のために使われます分は二〇%を越えております。これは戦前の数字をとりますと、戦前最高に達したときで、国民総生産のうち資本蓄積に使われますものは一六%にとどまつておりました。戦争中にはそれが一二%になり、六%となつたのでありますが、今日国民総生産のうち資本蓄積に使われますものは、実に二〇%を越えておるのであります。そうして国民総生産のうち、われわれの生活のために使われますものは六〇%以下であります。この六〇%以下という数字は、昭和十七年、つまり太平洋戦争がすでに起り、そして日本のわれわれの生活が配給統制その他の厳重な規制を受けていた時期に相当するのであります。そのように現在われわれの生活のための消費と、資本蓄積のための投資との間に重大なアンバランスがある。このことは、たとえば二十六年ごろに池田元大蔵大臣が過剰投資という言葉をもつて表現せられた通りであります。そしてその過剰投資が解消しているという事実をわれわれは知らないのであります。このようなアンバランスの中で、さらに資本蓄積の中でのアンバランスがさらに増大しておるということを私どもは見のがせない。たとえば昭和二十七年度産業設備に投下せられました金額の実に五四%は、わずか四つの業種に投ぜられておるのであります。つまり電力と海運と石炭と鉄、この四つの業種に総設備投資額の五四%が使われておるのであります。そしてさらに二〇%以上のものが、おもにストックを累積するとか、ビルデイングを建てるということに使われております。そして三〇%弱というものがその他の全産業の設備投資額となつております。このような少い蓄積、少い投資にかかわらず、今日われわれの生活のために使うものの一切の産業が、過剰生産に悩んでおるという事実をわれわれは注意しなければならないのであります。そこで次に、われわれの所得と生活がそのような情勢のもとで非常なアンバランスになつておる。そしてそのアンバランスがさらに拡大しておるということを申し上げなければならないのであります。この統計の数字が示しておりますように、われわれは今日一万三千円から四千円弱の金額の給与を受取つております。ところが政府の統計によりますと、われわれの家計は一万六千円なければ赤字になるということが示されております。そしてさらにその一万六千円の生活はどのような生活であるかということを、わかりをよくするために、物をもつて示しますと、肉類はどれだけのものを食つておるかと申しますと、一箇月に一人が卵を四つと肉を三十匁と切り身を一切れとあじを一匹といわしを五、六匹、これだけ食つておるのであります。そうして床屋へは一人が四十日に一回しか行けない。映画へは場末の映画館へ一家中で一人だけが一箇月に一回行く。図書は子供の絵本が一冊買えるにとどまる、こういう生活であります。その生活をするさえもわれわれ赤字になつておるという状態です。しかもわれわれの中で低い給与の者、低い所得の者の数が実に多いということを注意しなければならないのです。われわれの計算によりますと——われわれの計算といいますよりも、これは労働省の調査によりますと、日本には八千円以下の所得の雇用労働者が七百十五万人おります。本日私のいただいた資料の中にはございませんが、前回の二十七年度の補正予算のときに、参議院で何かおしやべりせよと言われたときにいただいた資料によりますと、日本の給与所得者の中の五七%以上が大体一箇月八千円以下の所得よりないのであります。そしてこの八千円以下の所得の者の生活はどんなふうなものであるかといいますと、これも同じく政府の統計によりますと、年々日に日に悪化しておるのであります。たとえば二十六年の五月から二十七年の五月までの一箇年間において、主食費の値上り、主食の消費額の値上り、交通費の値上り、住宅費の値上り、光熱費の値上り、こういうことのためにタバコその他の消費額が三一%減少しておる。肉と卵の消費額が一九%減少しておる。このような事実が起つておるのであります。その反面に、たとえば二万八千円以上というううな給与の者の生活は非常に向上して来ておるという事実が指摘せられるのであります。これは政府の統計によつても明らかなように、今日所得の上下の差が非常に開いておる。そのために貯蓄性向が増加しておる。そして投資が増加しておるというようなことを経済審議庁あたりでも指摘しておるのであります。一方において投資が増加し、一方において投資信託の申込者がふえ、一方において株式ブームが生じておる。その中において八千円以下の者が五〇%以上、七百十万人もおる。そしてその生活が、先ほど申し上げましたように、タバコの消費額を一箇年間に三一%も減少しなければならないというふうに、年々悪化しておるという事実を注意することが、われわれは必要だと思います。 たとえば国家公務員の給与の上下差をとりますと、二十三年の末には九・八倍であつたものが、二十六年の一月には十二倍になり、十月には十四倍になり、現在は十七倍を越えておるという実情であります。先ほどある一人の公述人の方が、公務員の八級の課長で二万六千円の手取りがあると申されましたけれども、公務員の方はここに何人かいらつしやいますから、おわかりと思いますが、八級の課長は日本の公務員にはおらないのであります。のみならず八級で二万六千円の所得のある者は、これはあつたとしてもきわめてわずかな例外であると私どもは考えます。それでアメリカと日本の給与の差がどれくらいかということを労働省の資料によつて申しますと、十倍であります。日本の労働者の賃金よりもアメリカの労働者は十倍受取つておる、しかしながら同じ労働省の調査によりますと、アメリカの最高の賃金と日本の最高の賃金の開きはわずか五倍にすぎない、そうしてアメリカの最低の賃金と日本の最低の賃金の開きは実に十五倍になつておるということであります。これら今まで申し上げました数字はすべて私が申し上げるのではありません。記憶で申すのでありますので、記憶違いはあるかもしれませんが、大体において間違いはない。これは政府の統計、政府の調査によつて申し上げておるのであります。このような日本のわれわれの生活が上下に隔り過ぎておる、このことを私どもは注意しなければならないのであります。 私は今までに二つの点を指摘したわけです。つまり日本の産業が投資財と消費財、投資財の中でも特定の産業とその他の産業との間に大きなアン・バランスが生じておる、そうしてこのアン・バランスは拡大して来ているということです。それから第二に、それが原因となつて、またそのためにでございますが、われわれの生活の上下の開きが非常に拡大して来ている、われわれの給与所得の上下の開きが非常に拡大して来ている。そうして一方において株式ブームが生じ、一方において過剰投資ということがいわれます、一方においてビルディングが建ち並ぶにかかわらず、一方において生産を消費することができず、過剰生産の実態が現われているということであります。このような事実の認識の上に立つて、今回の税制改正案を見ますと、私どもはこの中に非常に奇異な感じに打たれるものがあるのであります。その点を五点だけ申し上げたいと考えます。 第一点は免税点の低さであります。先ほど申しましたように、八千円以下の所得の者が七百万人を越え、給与所得者の五十何パーセントに達しておるという状態、しかもその者の生活が年年悪化しておるという状態の中で、免税点が六千円であるということは、われわれにとつては納得しがたい点であります。さらに先ほど申しましたように、賃金の上下の差が非常に拡大している、また年々拡大しつつある時期において、給与所得の最高限が十一万円で押えられているということ、そうしてそれ以上の所得に対しては同一率の課税であるということ、それから累進率がいまだ低きに過ぎるのではないかということを指摘しなければならないと思います。第三に、このような所得の実態——私が今申し上げたのは、全部政府の数字で申し上げておりますのですが、これらの政府の数字の間の相互関係が私どもにどうも明確にならない。これは御説明を聞けばわかることかもしれませんが、そういう説明が与えられていない。たとえて申しますと、勤労所得は二十六年に比べて二十八年は一〇%上るのだと言われておるが、給与所得は三二%上ることになる。そうしてたとえば物品税は、物価は上らないと前提せられているにかかわらず、一〇%収入がふえることになつておる。このような数字と数字との間の関係を、私どもは国会において説明していただきたいと考えるわけです。第四としましては、過剰投資といわれておりますときに、資本の蓄積のための減税が大幅に行われている。従つてたとえば、三井鉱山の利益金をあげれば、経営利益の面では、二十五年朝鮮事変が起りましたあと四倍くらいの上昇にとどまるときに、実に償却全利益を見ますと、二十倍の利益の増加を見ておる。このような厖大な資本蓄積が一方において行われておるということ、そして今日のこの法人税の改正案を見ますと、資本蓄積ができるようになる。法人税改正による減税の恩典に浴するものが実に全企業の一〇%前後と想像せられる、特定の企業のみになるという事実であります。われわれはその他の企業、ことにわれわれの生活のために必要なものを生産する、あるいは中小企業、あるいは個人経営において資本蓄積の必要が認められないのかどうかということを質問しなければならないと思います。第五点として、今日過剰投資が行われておる、貯蓄性向が高過ぎるといわれておる、そうして株式ブームといわれて株式市場の崩壊が予想されておる、このような時期において、有価証券譲渡税の引下げ、撤廃がなぜ行われなければならなかつたかということについても、疑問を感ずるものです。 大体以上の五点についてただ思いついたことを申し上げただけですが、私は今日ここではそういう具体的なものについて申し上げるよりも、この税制改正の基礎となつておる現在の日本の経済、日本の国民生活、所得の実態についての認識がいかようなものであるかということの、私の疑問を申し上げた次第であります。
○奧村委員長 ただいまの高島君の御意見に対して何か御質疑があれば、これを許します。それでは次に作家をしておられる舟橋聖一君より御意見を拝聴いたします。
○舟橋公述人 ただいま御指名にあずかりました舟橋であります。作家と税金のことをしやベれということで参りましたが、要するに作家生活というものは皆様に御理解が非常に願いにくいということから、作家と税金の問題がいつもごたごたいたします。ただいま高島さんのお話を聞いておりますと、高島さんの言われている問題は非常に広い範囲でございますが、私のは非常に狭いのでございまして、非常にコントラストをなすと思うのでございますが、作家の数は家々たるものでございまして、国民の全体の数字から見ますと、ほんの小さな分野にすぎないのでございます。ですから、そういうごく小部分にありますものは、どうしても皆様の御関心を引くに足らないのでございます。従つて作家については、これという名案がなかなかないということで、いつも国税局との間に摩擦が起る次第でございます。私がお目にかかりました方でも、以前の大蔵大臣の渋沢敬三氏とか、また池田勇人氏とか、あるいは平田前主税局長とか、あるいは舟山大蔵次官とか、あるいは今度主税局長になられた渡辺喜久造氏とか、みな一応お目にかかつて、相当個人的な懇談をいたしまして、渋沢敬三氏などは三時間も四時間もお会いくださつたのですが、みなほんとうに会うことは喜んで会つてくださる、ぜひ来いと言つて呼んでくださるのですが、会つた結果はひとつもよいことはないのです。とにかくわれわれの顔でも見ようということがもつぱらの目的であつて、われわれの言葉をを聞くことはふんふんと言つて聞いてくださるし、ごもつともだと言つてくれるのですが、いざとなると全然だめです。それでしかたがないので、とうとう私はビツカリーとかいう人にも会いましたし、戦争中はモスとかシヤペルとかいう学識者にも会つていろいろお話したのですが、その方がむしろ早かつた。ビツカリーに会つた方がスムーズに行きました。ビツカリーに話したことがシヤペルの方へまわつて、シヤペルに舟橋プランはやや成功したということを聞いたのです。そういうふうにはつきりきめられたことは日本の役人の場合はない。もう少しやつてくれそうなものだと思つても、またやりそうな顔をしているけれども一向やつてくれない。シヤウプのおかげで変動所得というものをわれわれはかち得たわけですが、われわれのインカムはごく短時間にしかたらない、つまりわれわれの文筆生活の場合、文学青年ということで一枚の原稿が売れないという状態で長く過します。中には四十くらいになつて初めて新進作家として芥川賞をもらつたりするわけであります。また四十くらいでもうだめになつて何も書けなくなつてしまう作家もございます。実際にインカムがあるのはほんの数年しかない。一番働きざかりといいますか、当つたときにしかないのであります。ですから持続的な職業でないから変動所得という、山林を売つた場合とよく似ているということで、ああいう特別措置をいただきまして、おかげで大分軽くなつたわけでありますが、それでもまだ税金が軽いとは申せないのであります。ことに基礎控除、扶養控除あるいは税率というようなものは皆様の御審議で国会を通りますが、例の必要経費というものは全然税務当局の手中に握られておりまして、これには国会の方も何もないのであります。一税務官が作家と相対でかつてにきめる一のであります。そこでその資料について申し上げるのですが、われわれの係はサービス業係という係に属しております。これは実にユーモラスで、むしろ何も言うところはないと思うくらいでありますが、サービス業係といいますのは——私どもはむろん天下国家のためにサービスしている、あるいは人類のためにサービスしているわけですから、ある意味においてサービス業係というのはわかるのですが、いわゆる大蔵省の言うサービス業係というのは、おもに待合、女郎屋のごときサービスと混同していますが、その係と一緒なんであります。従つて去年女郎屋を査定したものがことしは文士の査定をするのであります。その文士を査定したものが来年は床屋だとかあんま、はりのようなサービス業の査定をするわけであります。そういうふうに女郎屋に行つたり作家に行つたりするということはちよつとおもしろいですけれども、これでは作家というものに必要なものはなかなかわかるはずはない、出たとこ勝負の査定をして行くわけであります。たとえば作中人物が心中をする、その場合にどこにしようか、野尻湖でするというようなことにきまりますまで、まず磐梯山へも行つてみたり、箱根へ行つてみたりして、どこが一番心中に適しているかということまで調べているわけであります。つまりそういうNGが出るわけです。小説の面だけを見ると野尻湖へ行つている。その野尻湖のホテルの宿泊代は必要経費と見ても、その野尻湖へ行く前に磐梯山へ行き猪苗代湖へ行つて、夜三時ころになつてその環境を知るべく寒くても船で出たりして小説を書いている人もあるわけです。そういう場合のNG、こんなことまではとうていわからないわけでありまして、要するに費用、経費が幾らかかつたかということは大ざつぱで、それでも昔よりはよくなつたので、昔は紙とインクだけ出したのであります。要するにわれわれの書いているものが一回こつきりで終つてしまう。それが二度、三度というふうに続かない。たとえば有名な京都の樽げんという手桶の製造所ではきれいな樽をつくる、美麗な手桶をつくる。これをアメリカに輸出したりしてもうけているようですが、そういう名人芸というものは一つ物を一生涯つくつているわけであります。ところがわれわれには一つ当りましてもそれでもつて永久に同じようなことを書いていればすぐだめになる。一回前に書いたものでまたそれの焼直しをしますと、読者はすぐ知つておりまして、投書が山のように参りまして、けしからぬということになりますので、われわれはそういうことは一度もしたことはないので、必ずそのときどきの事実を書く。年数がたちますとどんどんすたつてしまいますから、昭和二十八年は昭和二十八年の現実を書かなければなりません。ちよつとしたことが間違いましても一大事でありますから、やはり毎年々々新しいものを書いて行く。その意味においてあんまや床屋と同じように、同じ商売をして、同じバリカンでおれの頭を刈つているというように、同じように必要経費を考えられてはたまらない。われわれは一生懸命必要経費を申し上げているのですが、それにはやはりまだまだ御理解がないと思われるようなことがございまして、作家の立場から申しますと、不満がたくさん出て参るのであります。 それから富裕税のことでございますが、これは廃止になることでたいへんけつこうなのであります。ということは、こういう複雑な申告が少しでもなくなることはけつこうなのでありますが、これにつきましてはちよつと余談になりますが、他日私も——と申しましてもきわめておはずかしいのですが、五百万円程度のすれすれのところで富裕税の申告をしました。そのほかに百万円ばかりのものが家内のものになつていたのですが、二十五年度は家内と享主のは合算であるということだつたのでございまして、家内の名前になつている百万円ばかりの預金は私のものでありという御認定があつたと思うのでありますが、ところが二十六年度に至りまして、この百万円の財産は家内のものであるということから問題が起つた。これはどこから起つたかというと会計検査院から起つた。私は青色申告というものをやつております。これは文士では私と山本有三氏と二人だけです。代表的な意味でやつた。私も当時理事長をやつておつたが、作家の代表の意味で、模範的にやりました。山本先生は参議院議員だからやはり模範的な意味でやられたのだろうと思う。私たち二人でやつた。相当私どもとしては煩わしい一々受取りをとつた、サイダー、ビールまでの受取りをとつた、それを一々見せて、こういうふうに作家生活はある。そこで青色申告が出ておりまして、富裕税が出ておりまして、これを合せて見た、会計検査院が合せたらしい。そうしますと、私の家内の預金の利息が三万円落ちておつたという。私は大体査定が五百万円越すくらいの査定を受けておりまして、毎年やはり三百万円くらいで、一日一万円くらいの税金を納めておるわけでありますが、それは一万五千円くらいになつておることもあります。しかも完納しておりますから、相当これでいばつておれるわけなのですが、突然会計検査院が、わずか三万円の利息が落ちていたということで、私どもを呼び出したわけであります。会計検査院が呼び出したのではなく、淀橋税務署が呼び出したのであります。このことは淀橋税務署は会計検査院からやつて来られたので、非常に高びしやに猛烈に言つて来ました。私も驚いて、何がいけないのだろうと思つたらそういうことだつた。青色申告につきましては、むろん商売人ではなし、あきんどでもないのでありますから、そうそうたなおろしとかなんとかいうことはわからない。そこでただ大福帳のようなものをつけていたわけでありますが、しかし念のために国税庁の優秀なベテランの税務官に頼んで、これでいいんですね、いいなら判を押そうと言うと、いいと言うから判を押して出した。しかもそこの席に五、六人いたわけであります。それだけやつて、交通整理でいえば青が出たから歩いたわけです。そうするとまただれか出て来てストップと言うんじや、実際われわれはどうしていいのかわからなくなつてしまう。会計検査院が突如どこからか出て来て、わずか三万円そこそこの、それも課税対象なんですから、それの税金ですからごくわずかです。それが足りないということで、ばかばかしくてしようがないから、今年から青色申告をやめようという気になつてしまつた。かえつてあまりこまかくやると、ちようどいいというのでよけい見られる。それよりずぼらにやつておいた方がわからないのじやないか。ことに私の家内の名前は、ふしぎなことにきようの公述人の一番先に石田百寿とあるのですが、実は百寿というので、私の家内は百寿という名前は男だか女だかよくわからないから百子と子をつけた方が女らしいというので、その通帳があつたわけです。そこへ私の少し残つたものを入れたのですが、それがそれだけの金になつていたわけです。ですから私のものなんです。そこでいよいよはつきりしまして、百子というのは架空の人物である、それでは課税対象にならないじやないかというので笑い話になつたんです。しかし初めは実に驚いてしまつた。それはお前の女房、お前の娘にやらない財産を隠匿したのであるという問題になつて来るわけです。それでいつの間にか女房の名前になつていた。私の娘からいえばけしからぬことであるという家庭問題にまでなる危険性がある。そういう話だということは、私として会計検査院がそこまでやるべきかどうかというので、会計検査院に行きました。第一局長の池田さんに会いまして一時間ばかりしやベりましたが、池田さんもそれはとんでもなかつたと言うけれども、やはり直してもらえないのです。これは池田勇人さんなども同じで、よろしいわかつた、ごもつともと言うけれども、直してくれない。取消してくれない。それで私は腹立てているわけなんです。ですから会計検査院の問題はどこに申し上げたらいいかわかりませんけれども、会計検査院というものはそういうような個人の微々たる税金、そんな三万円ぐらいの女房がどうこうというような、そういうことについてぐしやぐしややる必要があるかどうか、そんことをすれば大きなところはのがれはしないかと思うのです。そんな時間は惜しいのではないか。つまりわれわれがとんでもないつまらない雑誌に書くよりは、やはりいいものに書こうというのと同じで、役人も重い軽いぐらいの感覚があつてもいいんじやないか。それがわからないで、そんな小さな、三万円ぐらいのことで私はまたわざわざのこのこ出かけるものもおかしいですけれども、しかし向うもそれに乗つて目くじら立てているというようなことはこつけいであつて、会計検査院などというものは、もう少し大きなところへ目をつけていただくように、これは大蔵委員会にお願いしていいのかどうかわりませんけれども、会計検査院が個人の納税のごたごたにあまりタッチすることはどうだろう、それは国税庁にまかせたらどうだろう。われわれも二つも三つも税務署を持つているのはかなわない。淀橋税務署があつた上に東京国税局があつて、国税庁があつて、その上に会計検査院がある。四つのものにばらばら言われたんでは個人として安き思いがない。白楽天が税金をとるのに冬夏なしと言つておりますけれども、冬も夏もないそうです。事実このごろの日本の税金は毎月々々何かあるわけです。固定資産税とか、毎月何かありますから、冬夏なし、まことにその通りです。白楽天は今から千何年前の詩人ですが、この人でもそのころから税金には悩んでいたらしいから、われわれが悩むのももつともと思います。 それから、これは時間がないようですから、ごく事務的に申し上げますと、われわれは今言いましたようにどうにか富裕税を出していますから、そう貧乏でもないわけですが、貧乏な作家がうんといますから、私のことだけ考えて、みなそうだと思わないでいただきたいのです。実に貧乏な作家がたくさんある。その人たちは源泉課税がみな過納になつている。源泉課税をとられますと、それだけ払う必要のないものをとられる。それだけ損しているわけです。できるならば源泉徴収を一〇%くらいにしてもらいたいということが前からの希望なのであります。初めは一五%でございまして、それがいつの間にか知らないうちに、おそらくこれは官庁の方からの提案で、議員さんたちの知らないうちに二〇%になつた。これは金子洋文氏にずいぶん言つたが、金子氏もその目まで知らなかつた。そういうわけで二〇%になつたが、これを一五%に下げるのに骨を折つてやつと下りましたが、まだ過納がございまして、しかもその過納分は本人が請求しなければ還付してくれない。ことしからやつと過納分を払うことになりましたけれども、さらに税務署の方からの自動的な還付というところにまで進みますれば、これは行き届いた税務行政ということに相なるのではないかというふうに考えます。 それから著作権相続税に関しましては特に御考慮を煩わしたいのであります。著作権は、なるべく芸術に関する権利は早く放棄する方がいいというような建前から、死後三十年ということになつております。今相続税について皆さんからお話がありましたが、皆さんのお話に比べまして、作家の著作権というものはわずか三十年で、子孫のものになりません。尾崎紅葉氏などもこの間未亡人がなくなりましたが、未亡人生存中に著作権はもちろん切れまして、実に落魄な生活を送られたのであります。これを五十年ということにしようというので、著作権協議会がしきりに努力しておりますが、五十年になつたにしましても、著作権の相続というものが実に微々たるものだということでございます。これはたまたま夏目漱石という作家が死後に本が売れまして、そのために皆さんだれでも文士は夏目漱石同様だと思つていらつしやるのではないかと思う。しかるにそれはたまたま一例でございまして、ほかの作家は絶対そんなには売れないのであります。そんなどころじやない。本屋が出さなければ売れない。ですから権利と申しましても、実際にそれが発動する権利ではないのであります。本屋が出すときに初めて権利が出るのでありますから、その点を間違えていただくと、死にますとすぐ、大体だれが幾らという相続税が大ぴらにかかつて来る。しかも菊池寛がこのくらいだから林芙美子はこのくらいだろうという非常にずさんな推定で相続税がかかるのであります。これはひとつ特に念を入れて、われわれの相続税の場合は実際に収入がない者からおとりになることは間違いですから、そういうことのないように、本が売れたものについてのみ、課税対象にしていただくというふうなおとりきめに願いたい。つくつぐこれは今思わせている問題でございます。しかしこれは国税庁でおとりきめがありましても、国税局ではなかなか承知されないのでありまして、国税局は国税局、庁は庁だといつてなかなか言うことをお聞きにならない方もあるように思うのであります。この点もぜひ国税庁の御命令が行き届くよう願いたい。この間も青色申告の場合においてずるいことをしている納税者があるかもしれない、それが大体二〇%ぐらいありやなしや、従つて注意しろというおふれが出ましたところが、それでは二〇%だけやめようというようなしやくし定規をなさる出先の担当税務官が頭の悪い限りを尽されるので、自然青色申告なんというものも、今日ではどうやら宙に浮いているような形になつて来ているのであります。そういう点から見ましても、上でおきめになつたことをここでおしやべりいたしましてもそれがどの程度に波及するものか、疑わしいような感じもさせられているわけであります。 最後に文学賞の課税問題ですが、これは仲間うちのようなことでありますが、朝日文化賞、学術奨励金あるいは毎日出版文化賞、読売文化賞などがございます。ところがこれに制限がございまして、特に学術に限るとなつておるのであります。小説類は課税の対象となることを免れない、ほかの賞金は課税が免除されるという差別待遇がございますのは、ちよつと不可解な現象を呈しておると思います。これは占領軍のサノーさんなども、やはり小説家の方は課税した方がよいという御意見だつたそうです。私は知りませんが、そういうふうに聞いております。研究なさる方にも特別の庇護がございまして、われわれが書いたものには何ら庇護がないということは、むろん前に原稿料をたくさんとつておるのだろうという御推測なんだろうと思いますが、そういうことはあまりこまか過ぎるように感じます。やはり小説、詩、創作は評論並、学術並に、ひとつ同じように免除していただいて、せつかく御褒美をいただくのですから、気持よくいただきたいという向きの御意見が、文壇にも多いようであります。 以上はなはだ大ざつぱに申し上げたのでありますが、そういう事情でございまして作品によると、ときに百万、二百万も読者を持つておりますから、どうかわれわれに対して十分なる御認識をいただいて、気持よく仕事のできるように——毎年二月くらいになりますと、税金のことで何となく仕事が手につかなくなるわけでございますので、そういうことのないようによろしく御援助願いたいと考えるのであります。
○奧村委員長 ただいまの舟橋君の御意見に対して、何か御質疑があればこれを許します。
○佐藤(觀)委員 舟橋さんは前に文芸家協会の理事長をやつておられたので、作家の生活は相当御存じでしようが、文士というのは非常に片寄つた職業でありまして、ほとんど理解されてない。そこで、今問題になりました必要経費をどのくらいに見たら、作家が税金を不公平だと言わないでやつて行けるかということについて、何か御意見があつたらひとつ伺いたい。
○舟橋公述人 われわれといたしましては、今大体五〇%の必要経費を認めてほしいということを申し上げておりますが、現状は四十何パーセントというところで納まつておるわけであります。青野季吉氏が、たしか五〇%という率で控除されたので、それは非常にめでたいことだと喜んでおるわけであります。里見〓氏などの意見によりますと、生命経費論ということで、すべて作家の活動は経費的であるというような意見もありまして、それをときどき述べますが、これは国税局の方々から言えば一笑に付する性質のものであるらしいのであります。その生命経費論も少し極端かもしれませんが、今の書いたもののはずれがあるということ、つまり百枚書いて破るものがあるということが、今までは全然考えられていないということであります。その作品の必要経費としてはこれこれでけつこうだと思いましても、書いたら全然だめで、たとえば唐人お吉を書きましても、どうしても気に入らないで、遂に発表しないというような場合の経費は、今までむとんちやくにされておるわけであります。これは少し見ていただいて、せめて五〇%という線まで参れば、われわれとしては非常にありがたいと思いますが、この先そこまで行くのはなかなかたいへんじやないか。四〇%まで行きましたことは皆様の御認識を得た結果でありますが、なおもう少しやつていただきたいというところでございます。
○佐藤(觀)委員 文芸家協会に所属して、実際に現在税金の対象になつておる人が、あらかたでけつこうですが、どのくらいかということと、それから現在出版社へ行くと、大体二万円の原稿を書くと、一割五分で三千円、そういうようなことで、あとでまた余分にもらえといつたつて、作家はみなルーズだからそういうことはしない、そういうことは手続上できないから、結局うやむやになつて作家が損をするということでありますが、そういうのがどのくらいあるか、ちよつとお話願いたい。
○舟橋公述人 どうもこまかい数字はよくわからないのですが、今の割もどし——過納につきましては、流行作家はせいぜい三十人くらい、あるいは非常に多く見て五十人くらいでございますから、その他の作家はほとんど過納になるわけでございます。つまり、本屋なんかでよく見ますが、何とか小説五十人集などとなりますと、相当困つている作家も入れておるのであります。川崎長太郎君みたいに、清貧で、小田原の小さな、そう言つては悪いけれどもそれこそ漁師の小屋のようなところへ住んで一生を送つているわけですが、こういう人たちでも五十人集になると入りますから、まず五十人というところがどうやら作家として食つて行ける、あとはほとんどだめなんです。ですから相撲取りでいえば大体幕内力士のところで、あとは食えないと見てよいと思います。その人たちは一五%税金をとられますと、実際はあつぷあつぷである。しかも変動所得税さえうつかりすると忘れて、普通の申告をしてしまうくらいに作家はうとい。今の佐藤さんのお話のように、そこはまことにおはずかしいことかもしれませんけれども、数字の計算にうといから、税務署へ行つて一度怒られると、いやになつて投げて帰つて来てしまいますから、還付ということについては、ほとんど全部泣寝入りといつてよいと思います。
○佐藤(觀)委員 もう一点お伺いしますが、この二、三年出版界が非常に景気が悪いので、相当の小説を書いたけれども原稿料を払つてくれぬという問題がたくさんある。そういう問題についてどういう処置をされておるか、あるいはどういう希望があるか。
○舟橋公述人 それについては、たとえば改造社なども相当有名な日本の文化のために尽した社でございますが、山本氏がなくなられます前後から非常に衰微いたしまして、原稿料は全然入りません。ことに横光君の「旅愁」などもずいぶん売れたのですが、これが原稿料は一銭も入らないという状態です。横光さんと、「裸者と死者」の翻訳者の方とを別としましても、それでなお相当額の借金ができまして、作家側にはほとんど支払いがなかつたのであります。これにつきましては、協会がたびたび折衝しまして、現在山本未亡人から少しずつ入れていただいておるような状態でございますが、その他、売れない原稿、持つて行つても突き返される原稿が非常に多いのでございます。ことに若い作家などではほとんどが持込み原稿でございますが、持ち込んだものが金にかわることは微々たるものである。普通今まで流行作家の行状記などは紙面にちらほら出ますけれども、そういつた持ち込んだ原稿がくずになつているということ、それが相当大量なものであるなどということは、割合に世間の方も御理解がないんじやないかというふうに感じられるのであります。
○小川(半)委員 先ほどの佐藤君のお尋ねの件に関連するのですが、私は作家の必要経費について、うかつにもその算定はどういうふうになつているかは知らなかつたのですが、今承りますと、大体四〇%のように伺つたのですが、これはしかしあくまでも単なる推定だろうと思うのです。税務署は、その算定の基礎あるいは科学的にそれをどう調査するか、これはむずかしい問題なんですが、たとえば取材のために北海道あるいは九州方面に旅行される、その旅費、宿泊費、こういうものがその必要経費の算定に加えられておるものなんですかどうなんですか、この点をちよつとお聞かせ願いたいと思います。
○舟橋公述人 そういうものにつきまして、やはり受取りをとつておかないとなかなか証拠になりませんので、まず大多数の作家は——私の場合は青色申告でございまして、受取りをできるだけ、少し狂的に集めている形がございましたので、税務署側も驚かれたらしいのでございますが、それはあくまでも私個人の場合でありまして、大多数の作家などは旅行などをしましても、一々受取りはとらない主義でございますから、これらの算定は非常に困難でありまして、たとい幾らかかつても一人幾ら、一日幾らという税務署側の方の数字からしまして、一人この人は二千円なら二千円という宿賃であるとか、あるいは千円であるとかいうふうに税務署の方で大体きめまして、幾日とまつたというようなこともあまり詳しく調べませんので、大体大びらにこのくらいだろうというふうに作家側から宿泊料の受取りを出せば、あるいは通るかもしれませんけれども、そういうことがないために、大体今のお話の通り向う側の推定にまかしているような感じでございます。
○奧村委員長 日本労働組合総同盟主事の古賀専君は、本日欠席でありますので、これをもつて公述人の方々の御意見拝聴を終ることといたします。 この際委員長よりちよつとごあいさつを申し上げます。公述人の方々におかれましては、御多用中にもかかわらずわざわざ御主席を願いまして、今回の税制改正案について有益な御意見を開陳せられ、本委員会の税法審議の上に多大の参考となりましたことを、心から感謝申し上げる次第でございます。 以上をもつて本日の公聴会をとずることといたします。次会は明日午前十時から開会いたします。 午後三時五十三分散会