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15回国会衆議院1953/02/14

外務委員会 第17号

発言数
158
登壇者
13
会派数
5
開催日
1953/02/14

会議録

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 ただいまから委員会を開きます。  国際情勢等に関する件につき質疑を行います。並木芳雄君。

並木芳雄改進党

○並木委員 私は、きようはたくさん質問があるのですが、まず条約局長にお尋ねをいたします。  この前岡崎外務大臣に質問をしておいて答弁が保留になつておるものがあります。条約局長は御存じかと思いますが、わかつていたらお答えを願いたい。それはアイゼンハウアー大統領の一般教書の中の秘密協定にはどういうものがあるか。ヤルタ協定廃棄の場合の米国内における手続。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 アイゼンハウアーの一般教書にいう、秘密の了解という言葉を使つておりますが、秘密の了解とか、秘密の協定、これは秘密でありますから、外国からむろん窺知し得ることはできないものであります。しかしながらアメリカの国柄といたしまして、ドイツやイタリヤと違いまして秘密協定などは、あまり結ばない国であります。それでヤルタ協定がアメリカ内で非難されたのも、まさに国民の不知の間にそういうやみ取引が行われたから非難されておるのであつて、従つてこれ以外にアメリカが秘密協定をたくさん結んでおるというような想像をなすことも不適当ではないかと思うのであります。いずれにしましても、今日まで締結されたときは秘密であつて、後に至つて公表されたものはヤルタ協定以外に私どもは何も存じません。  それから秘密協定の廃棄の手続はどうかという点でございますが、アメリカ内での手続はアメリカ憲法によりますと、条約の締結の権限は大統領にあるけれども、上院の承認を得なくちやならない。しかしながら廃棄については米国憲法は何ら触れておりません。従いまして廃棄はアメリカ大統領の権限内で、政府限りの責任でできるのではないかと存じております。

並木芳雄改進党

○並木委員 今の説明ですと、条約の締結の場合には、上院の承認を得る必要があるということになつておるのですが、ヤルタ協定は、その手続を経ておりませんから、これは廃棄しなくても当然無効じやないですか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 御承知のように米国は一切の国際の約束は、すべて上院に提出して、承認を経るという制度をとつておりません。いわゆるエグゼキユテイヴ・アグリーメントの範囲が非常に広汎に認められておる憲法慣習がすでに成立しております。従いましてこのヤルタ協定のようなごく政策的な荒筋をきめる了解は、上院にかけなくともいいという判断が成り立つておるのではないかと思いますが、これはしかし他国憲法の解釈の問題でございますから、私どもがかれこれ批評することは差控えた方がいいと存じます。

並木芳雄改進党

○並木委員 廃棄の場合の手続については、特別の規定がないとの答弁でございますが、そうすると先般のアイゼンハウアー大統領のあの一般教書によつて、ただちに廃棄の効力が生じたというふうな解釈も成り立ちますが、いかがでしよう。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 そうではございませんで、あの教書の文言をよく読みますと、米国の議会が他国民の奴隷化を許容したような過去の秘密の了解であるならば、このいかなるものも、廃棄するという字を使つておりましたか、廃棄することに賛同する、そういう決議を政府の方から提案した場合に、アメリカの議会は賛成してもらいたいということを言つているのであります。でありますから、あの教書自体が廃棄の行為でないことはもちろんでございます。従いまして廃棄するならば、具体的に将来その手続がとられることと思います。

並木芳雄改進党

○並木委員 その点わかりました。  ところで秘密協定なのですが、私どもに前からわからない一つの大きな問題があるのです。それは朝鮮の三十八度線というものが、いつどういうふうにできて来たのか、政治的のとりきめなのか、軍事的のとりきめなのか、いまだにわからないのです。あるいはこういうものが秘密協定の中に含まれているのではないかという疑問が出て来るのはあたりまえだと思います。三十八度線はどういうふうにしてできたものか、法的根拠を御説明願いたい。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 朝鮮の三十八度線をきめましたとりきめは、軍事協定でございまして、日本が降伏します年の何月でございましたかよく覚えておりませんが、いよいよ日本の降伏しそうな形勢が明らかとなりました際に、連合軍内部でもつて、万一日本が降伏した場合には、一体どこの国がどの部分を占領しようかという、占領区域の配分について軍のとりきめを行つたのであります。朝鮮の三十八度線をわけたのもその一部であります。歯舞、色丹までソ連の占領区域に配分してしまつたのも、やはり連合軍の軍事的のとりきめであります。

並木芳雄改進党

○並木委員 そうするとその規模においては、ヤルタ協定の内容よりもはるかに小さい規模なのですが、従つてヤルタ協定をすら廃棄しようという大統領の意思であるならば、当然その軍事協定というものも廃棄されるべきものである、こういう解釈が成り立つか、成り立たないか。私は成り立つようにも思うのですが、大統領のいわゆる秘密外交と軍事協定との関係、ただいま申し上げました点などについて局長の御所見を伺いたい。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 軍事とりきめでございますから、政府を拘束しないととは明らかであります。軍事とりきめが基礎になつて一定の既成事実はできますけれども、それを国家間で正式に確認するためには、政府間の正式な協定があらためているということであります。従つて三十八度線は、その意味においては国際法的には、軍事状態の一つの処理のごく軽い度合いのとりきめでありまして、何ら永久的にまた確定的に事態をきめたものではないことにお考え願いたいと思います。

並木芳雄改進党

○並木委員 それで私が聞こうと思つた観点がややはつきりして来たわけです。非常に今までぼけておつて、三十八度線というものは、その協定にどのくらいの価値を持つているかということに対する判断がつきかねておつたのですけれども、ただいまの答弁で、非常に軽いという点がわかつて参りましたから、今後われわれはこういう問題をめぐつての考察に役立つと思うのです。  次に中共の海上封鎖の問題なのです。今伝えられておる中国の海岸の封鎖という問題は、朝鮮動乱解決の一環であるかどうか、つまり国際連合で——総会でございましたか、議決したあの中に、当然中国の海上封鎖という問題が含まれて来てもいいものかどうか、その範囲を逸脱するものはでないか、まずその点でございます。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 一九五〇年の六月末の国連の決議で、一般的に侵略者側に援助を与えるようないかなる行為も慎む、それから加盟国は侵略解除の方の国連側に、あらゆる援助を与えるという非常に抽象的、一般的な決議がございます。従いまして、中共地域内に物資を自由に輸入することを阻止すべきかどうか、という点の前提になる大原則は掲げておるわけでありますが、しかしながら海上封鎖をするかということになりますと、あらためて何らかの国連の決議がいるのではないかと思います。またそのような決議が国連で成り立つかどうかという点も、これも今のところ見当がつかぬように思います。

並木芳雄改進党

○並木委員 割にはつきりしたわけなのです。どうも問題があるので、この点はあらためて国連の議決を経ずしてやれるものかどうかという点だつたのですが、今の局長の答弁で、朝鮮動乱解決策の一環としても、あらためて国連でこれを取上げて、議決をしなければいけないということになるということがはつきりしたわけです。国連で取上げれば安全保障理事会でございましようが、拒否権もあるし、従つて中共封鎖の問題というのはアメリカで言いはやされておるよりも、はるかにその可能性、実現性が少いというふうに解釈できますが、その点いかがでございましようか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 先ほどの答弁で、あまりにはつきりものを言い過ぎたようにおとりくださいましたが、前の決議を解釈するのは、その決議に賛同した国連側の国々の問題であります。従いまして前の決議で包括されておるところの問題は、包括されておるからあらためて安保理事会なり何なりの決議を要しないという解釈を、決議賛同の当事国がいたしまして、そうしてそれらの国々で相談して、意見が一致すれば、これはやはりそれらの国々の意見一致したところに従つて、法律的にはなし得ると思います。従いまして私は、全部大原則をやつた安保理事会——そのときはソ連は参加しておりませんでしたが、再び振出しへもどつて、あらためて原則的な決議を必要とするというようには私はとつておりません。これは要するにその決議に参加した当事国の意思できまるものでありまして、日本側がどう解釈しても、問題は決議参加国だけの意思によるものだ、かようにおとりください。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 並木君、ちよつとお待ちください。大臣が御出席でございますので、通告順に従つて質問を続行させていただきます。松本瀧藏君。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 外務大臣に三、四点簡単に質問いたしたいのであります。  まず一番最初にお尋ねしたいことは、先般水曜日の外務委員会におきまして、同僚高岡君からも質問があつたのでありますが、中共引揚交渉団のその後の経過の問題であります。世に騒がれ、国民に非常に期待を持たれて行つた交渉団は、その後消息を断つたきらいもあります。またわれわれの了解では、二月二日会議を開きまして、十五日、すなわち明日向うを引揚げて二十日に日本に帰ることになつておつた、もうすでに期日が切迫しておるにもかかわらず、その後の経過はまつたくわからないのでありますが、外務大臣の方におきまして何かこれに対する情報でもあれば、ひとつ国民に明示されたいと思うのであります。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 私の方にも別段特にかわつた情報はありません。しかし消息不明だとあの当時思われたのは何かの誤解であつて、ずつと交渉はいたしておるようであります。  それから十五日ごろに帰るという予定であつたのは、向う側と相談したというよりも、むしろこちら側が一方的に考えた予定でありまして、そのくらいで十分話がつくだろうと思つておつたのでありますが、初めに先方の代表が旅行中であつたか、病気であつたか、とにかくしばらく出て来られなかつたものでありますから、一週間ばかり話が進まずにいたように思われます。それからもう一つは、初めの考えは広東から飛行機で北京に行くだろうと思つて計算しておりましたが、汽車で出かけたものですから、ここでも数日の差ができたわけであります。従つて予定よりもどうしても遅延することになりますが、これはやむを得ないと思つております。費用の方は飛行機で行くかわりに汽車で行きましたためにその差額が出て、今のところしばらく遅延しても、滞在の費用には別段さしつかえない、こう考えております。ただいませつかく話合を進めつつあるように私は了解しております。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 ただいまの御説明では、交渉しておるように思うかということであつたのでありますが、別に確報はないわけでありますから、これはただ単に外務省における臆測でそう御答弁なすつたのでございましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これは赤十字社等に参りました電報に基いて申しておるのであります。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 その電報というのは、最後に参りましたのはいつごろであつたのでありましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 私の知りましたのは幾日でしたか、二、三日前だと思います。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 それではこの問題はまずこの程度にいたしまして、なお将来詳しいことがわかりましたら、一応御報告願いたいと思うのであります。  次にお尋ねしたいのは賠償の問題であります。先般の本会議において質問いたしましたことに対し、満足に値する答弁がなかつたことは、時間の関係もあつたろうと思うのでありますが、ただ一点だけここで重ねてお尋ねしておきたいのです。賠償問題、これはやはり東南アジアの開発の問題、あるいは講和条約批准の問題その他に大きく影響しておる一つの糸口である、こう考えておるのであります。そこで何かの形でどうしてもこれは解決して行かなければならぬ、しかもこの解決というのは額ではなくて、やはり日本側の示す誠意の問題である。特にフイリピン、インドネシア等の国民性と申しましようか、感情、こういつたことに若干理解を持つておると自負しておる私どもは、やはりこれは誠意の問題である、こう考えるのであります。フイリピンはもちろんのこと、インドネシアにおきましても、朝野こぞつてこの問題を真剣に研究し、また取組んでおるのでありますが、日本の場合におきましては、ただ一局長級の者にこれを託しておるというので、その誠意をいろいろと批判されております。これにつきまして、政府におきましてもつとこれを前進しまして、たとえば議員等あたりを加えたところの賠償諮問会みたいなものをつくり、もつと誠意をもつてわれわれはこれに取組んでいるのだというようなゼスチユアを示す御意向があるかどうか、ひとつ大臣の御所見を伺いたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 フイリピン側においては、日本に誠意があることは私は十分認めておると思います。局長級の者が行つて話をしたというのは、その一部でありまして、政府の訓令をもつて在外事務所長が外務大臣等に話をいたしております。また外務大臣が就任直前に日本側に寄りましたとき、私からもよく話をいたしました。また外務大臣とは私も電話でも話をいたしております。電話連絡もたびたびあるのであります。そのほか、たとえば先方から来たからでありますが、オシアス議員があるとか、その他有力者としばしば話をいたしております。十分誠意のあるところは認められておると思いますが、最近のフイリピンの新聞論などをごらんになればおわかりの通り、たとえば役務賠償といいましても、日本で物を作ることはともかくとしてたとえば農業の開発であるとか、鉱山の開発であるとかいうことに対して、うつかり日本の技術者を入れると、とんだことになるというような論調もかなりあるのであります。つまり何となく日本のためになるような賠償を考えていやしないかという疑いも——政府筋ではありませんけれども、一般にあるようでありまして、これはよほど慎重にやらなければいけない。つまり相手方の利益のみを考えて賠償というものは考慮すべき問題である、こう思つております。しかし日本側でも、よく新聞雑誌等に現われておりますのを見ますと、ある種の役務をやれば、これはちようど日本に都合がよいのだから、大いにやれというような議論もたまには見えまして、そういうようなことはよほど気をつけなければならぬと考えております。私の結論を申せば、ゼスチユアを示す必要はないと思つております。ただゼスチユアではなくして、実際に日本の国内の考え方をまとめる上においては、国会議員の意見を十分尊重して聞く、あるいは民間の方々の意見を聞く、こういう方面によく理解を深める、また知恵を借りてうまくやるということは、これは非常にけつこうだと思つております。将来必要がありましたら、そういう点も十分考慮してみたいと考えております。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 ただいまの外務大臣の答弁におきます、たとえばフイリピンだけの利益の賠償であつてはいかん、それはその通りであります。ですから、本会議におきまして、もつと総合性を持つた、計画性を持つた東南アジアの開発に関連性のある賠償の支払いの形でなくちやいかぬ、将来日本の経済がこれによつてプラスになるような総合性を持つてやらなくちやいかぬということは、申し上げた通りなのであります。ところが、大体一般には行き当りばつたり、あるいは額を値切るとかいうような印象を与えておる。ですから、もつとわれわれがみんなの意見を徴して、そして国家的事業としてこの問題を解決すべきではないか、こう考えるのであります。私は先ほどゼスチユアの問題を申しましたが、事の始まりはゼスチユアでなきやいかぬと思うのです。外務大臣とオシアス議員が会つたときに、非常にオシアスは印象をよくした。その一つの原因は、確かに岡崎大臣がかつてスポーツマンであつたということにあるということを私は教えられたのでありまして、こういつたスポーツの問題等に関しましても、ニユーデリー派遣の問題にしても、その他にしても、政府あたり大体冷淡であつたと思うのですが、こういつた点あたり誠意が足りないから、結局私ども言つておるのです。先ほどのゼスチユアの問題にしましても、総理大臣に会つたときには悲観して帰るというような事柄がやはり耳に入つておるのであります。従つて、この問題に関しましては、もつと誠意を持つてまずりつぱなゼスチユアから入るべきである、こう考えるのであります。

中山マサ自由党

○中山(マ)委員 ちよつと関連して。私はこの一月八日にオシアス夫人にお目にかかつたのでございますが、そのときに、私はいつも自分の心の中にありますところの戦犯の問題に対してしみじみと夫人にお願いをいたしましたところ、この戦犯の問題を、まだ政府として一度も率直に言つて来たことはない、それをもつと率直に言うべきであるということをオシアス夫人に言われまして、私もいささか驚いたのでございますが、それは事実でございましようか。  第二点といたしましては、オシアス夫人は戦犯の問題については、今の同僚議員のお話の通りに、誠意を示してもらわなきやいかぬ、こういうことをおつしやつたのでございまして、日本の軍隊が向うに来たときには、向うの持金をすべて無効にしてしまつた。アメリカ軍が来たときには、また日本が発行した軍票を無効にしてしまつた。フイリピンの状態は実にさんたんたるものであると、しみじみ私は話を聞かされまして、非常に同情を新たにいたしたのでございます。今日の新聞を見てみますと、法務省関係等で三十億のお金を濫費したとか、横領したとかいうような記事がございます。そういうふうに国内において三十億の金が浪費されておるようでございましたならば、その辺をしつかり取締つていただいて、そういうものをむしろ賠償の方に向けてもらいましたならば、戦犯も一日も早く帰つて来られるのではないかと思いますが、この二点についてお伺いしたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 初めの点につきましては、この前戸叶さんでしたかどなたかから、オシアス夫人から、政府は一度も正式に申入れをしなかつたということを聞いたが、ほんとうかという同じ御質問がありましてお答えしておりまが、政府は、たびたび正式に、しかも非常に委曲を尽して向うに申し入れておりまして、それはオシアス夫人が知らないだけであります。正式に何べんか申し入れたことは間違いありません。  それから軍票等の問題は、これは単にフイリピンばかりではなくして、タイにもありますし、ビルマにもあります。その他南方諸国、中国にもあるのであります。これは額にすると非常に大きなものであります。三十億とか四十億とかいう額ではないのであります。法務省の話は知りませんけれども、これはまた総合的に各方面を見て、日本の対外支払いの能力とか、その間のいきさつとか、いろいろ見て決定しなければならない問題でありまして、それをすぐ支払うとか、支払わないとかいうところまでは、今のところ決定しにくい関係もあります。しかし戦犯問題につきましては、だんだん双方の空気がよくなるにつれまして話はかなりいい方に進んでおりまして、昨日でしたか、法務省から国会の委員会で答弁したと伝えられておりますが、私は早晩これは解決ができるようになると考えております。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 時間の関係でもう一問だけ御質問いたしまして、あと割愛したいと思うのであります。  国連加盟の問題でありますが、先般の本会議の答弁にいたしましてもあまりはつきりしたものがなかつたのであります。外務大臣は施政方針演説のときに、国連加盟の問題に関しましては非常に安易なる考えを持つていられた。しかし私は簡単にこれは行かないであろうという意見を述べました。もし日本が加盟を許されるといたしましたならば、どういう形でありましようか。伊關局長はこのことを専門に向うに派遣されたというふうにも聞いておりますが、一応御意見を承りたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これは昨年の十二月の二十一日でしたか、日本の加盟資格承認の決議案が出ております。日本は国連に加盟する資格がある、つまり国連憲章を守る意思も能力もあるということを五十箇国で決定しておりますから、安保理事会の関係は別として、加盟がかりに将来できる場合には、今のままで加盟ができるもの、つまりほかに条件等はないもの、今の状態で日本は加盟の資格ありと認められたのでありますから、ほかに条件等はないものと私は考えております。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 それは資格のあることは認められても、実際加盟の手続の技術問題に関しましては、ソ連の拒否権があつてこれはどうにもならぬだろう。この間五十箇国は賛成しましたが、衛星国は一つも賛成していないというようなありさまであります。憲章をかえて入る道を開くというようなぐあいに考えているのですか、それはどうですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 憲章をかえるかかえないかは、これは国連の問題でありますが、かえるにしても、それは安保理事会の決定がなければ、これに関する問題はできないと考えております。そうするとやはり拒否権の問題が出て参りますから、なかなかこれはかえることもむずかしい。従つてあなたのおつしやるように国連加盟は私は決して楽観はいたしてございません。むずかしいものと考えております。考えておりますが、加盟できたと仮定しての議論でありますが、その場合には別に条件は必要がないであろう、こう考えております。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 そうしますと、憲章の改正もむずかしいであろうということになりますと、何かときどき新聞あたりに出ておりますような準加盟国のような形ででも、入つていいというお考えを政府はお持ちなのですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 準加盟国と称するものは一般的な名前でありまして、国連憲章にはそういう規定はないのでありまして、もしやるとすれば、新しく総会の決議かなんかでそういうものが認められた場合のことでありますが、まだそういうものはありませんから、準加盟国というものが何であるかははつきりいたしません。しかしいずれにしても正式の加盟国よりも、権限の少いものであることは間違いないものと思います。そこで日本のごとき国柄として、普通の一般の加盟国よりも劣る条件で加盟を甘んずるということが、はたして適当なものであるかどうか、これはよほど考えなければならないと思つております。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 そうしますと、総会でこの制度が改正できるというようなお言葉のように今伺つたのですが、これは安保理事会にかけないでも、準加盟というような制度は、総会のみによつて決定できるのでしようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これもまだそういうものはないのですし、これから議論してきめればきめるわけでありますから、正確なことは申し上げられませんが、総会の決定でできるようになるのじやないか、こう想像しておるわけであります。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 これはたいへん大事なポイントで、やはり国民の最も知りたいと思う点ですが、もしそういう道が開かれる可能性があるのであつたならば、これをひとつ詳しく説明願いたいと思うのです。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 ただいま外務大臣の言われましたように準加盟という制度につきましては、まだ何らきまつたものはないのでございまして、まつたく白紙の状態でございます。外務大臣の言われましたように、もし憲章を改正して準加盟の制度を取入れるということになりますと、安全保障理事会の常任理事国を含む連合加盟国の三分二以上の賛成がなければ成立いたさないわけであります。これに反しまして、これもその可能性は見通しが全然つきません問題でありますが、つまり憲章自体には手を触れないで、総会の決議で準加盟というようなものをやつて行こうという考え方も考えられるわけであります。その場合にヴイトーの拘束を受ける危険はないわけでありまして理論的には憲章改正にかわつて、総会の決議でそういうものを考えてみようということが考えられるわけであります。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 これはきわめて大事なポイントでありまして、先ほど外務大臣は、準加盟国みたいなことで入つても、別段に資格にかわりはないであろうということを言われたのでありますが、ちよつと私ども解せないのです。従つてこの間伊關局長が向うに参りまて、いろいろとそういつた問題を検討し研究して帰つて来たのであろうと思うのでありますが、今の説明ですと、総会の決議によつてのみ入れる準加盟国に対しては、権利義務の問題について、レギユラー・メンバーとは相当異なつたものがあるというように解するのであります。そういうようなものでもやはり入る意思があるかどうかということは、仮定の問題ではなくして、やはり見通しの問題であると思うのでありますが、これについて外務大臣の御所見をひとつ承りたいと思うのであります。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 今申し上げた通り、準加盟というものはまだ何もないのですから、これの権利がどういうものであり、義務がどういうものであるということは、まだきめられておらないわけであります。またそういうことについて大体こうしようという意見さえないので、そうして今条約局長も申したように、安保理事会を含めた憲章の改正で行くのか、それとも総会の決議で行くのかこれもわからないわけであります。従つてわれわれとしては判断の下しようが正確に言えばないのでありますが、いずれにしても、準加盟というのは、正式の加盟国よりは、権限等が少いことは当然予想される。そこで日本とかイタリアとかいうような国柄のものが、そういうほかの国よりも権限の少いような準加盟に甘んずるかどうかということは、内容がわからないからまだ正確には言えませんが、これはよほど考えなければきめられないものである。ただ準加盟けつこうだからぜひやりたいと、そう簡単には言えないであろうと私は考えます。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 そうしますと、レギユラー・メンバーとしては絶対に入る道は開かれていない。総会の決議によつて、場合によつたら準加盟国として入れるかもしれぬ。そういうことを前提としての加盟、そういう印象をわれわれは与えられている。もしも準加盟国に入ることは簡単に今は決定できないのだ、そういつたことは今意思表示できないのだということになりますと、やはりこれは外務省の研究が怠慢である。こういつたことは重大な問題ですから、見通しをつけて——向うだつて意見が全然ないということは私は解せないのです。従つてこういつたことから行き当りばつたり外交だという非難を受けることに私はなると思うのであります。  最後にもう一点だけ承つておきたいことは、仮定だからこれは答えられないのだというならば、やはり国民も行き当りばつたり外交だという印象を与えられるのでありますが、もしどうしても国連に加盟できない、あるいは準加盟国としても、資格の問題に関して、はたしてこれは受けられるかどうかわからぬという事態になつた場合には、巷間伝うるところの太平洋集団安全保障の機構の中に日本が入る意思があるかどうか。これも仮定だといえばそれでおしまいであるかもしれませんが、こうしたことは日本の運命を決する上において、国民はきわめて重大な関心を持つている問題であり、独立国の外務大臣としても多少これに対するところの見通し、見解があつてもいいと思うのでありますが、重ねてこの点をお伺いしておきたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 われわれの方の研究はずつとやつておりまして、むしろ松本君が今まで御存じなかつたじやないかと思う。そうして常に同じことを言つているのでありますが、昨年の国会でも同じことを言つておる。要するに国連に絶対に入れないとあなたはおつしやいますが、そうではないのであつていろいろ妥協案も考られているのだし、ソ連側もどういうふうに考えを直して来るかわからないのであります。一括加盟というような提案もあるようなわけでありますから、私どもはまずさしあたりのところは堂々と正会員としての国連加盟を考えるべきだと思つて、その方にいろいろ努力いたしているようなわけであります。行き当りでも何でもないのです。太平洋同盟というようなものはまた非常に飛躍しておりまして、たとえばその内容がどうであるか、日本の兵力というようなものを予期してのものであるかどうか、またこれが政治的のものであるか、あるいは欧洲の鉄鋼や石炭のような経済的の部面を含むか、そういうことについては何も意見がない。反共的な太平洋同盟というような、何か漠然たる意見の発表は新聞等にありますけれども、具体的の内容を持つたものは、私は一つもないと思う。要するに研究の足らない、ただかけ声だけのものと思いますから、今のところこれに対しては批評をいたしておらないのであります。まだまだつまり早く言えばものになつたものになつておらない、こう思うのであります。

松本瀧藏改進党

○松本(瀧)委員 ただいま外務大臣は君の方の研究が足りないのだということをおつしやつたのですが、実際に折衝しているのは政府なのです。われわれじやないのです。外務省におきましては、研究はしているということを言つている。われわれは今国民が知りたいと思つていることを質問しているのであつて、政府がひた隠しにしていることがわれわれにわかるわけはない。われわれが直接折衝しているのじやないのです。ですから国民がほんとうに納得し、安心してついて行けるような指導方針が足りないということを何回も繰返しているのであつて、絶対に国連に入れないと言う権限を私は持つていない。むしろ入れるか入れないかという見通しをつけるのは、直接折衝している日本政府であると思います。従つて今後は行き当りばつたりの答弁でなくて、もう少し丁重に、国民の納得するような御答弁が承りたいと思います。  時間を超過しましたから、残余の質問は後日譲ることにいたします。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 加藤勘十君。

加藤勘十日本社会党(右)

○加藤(勘)委員 私の質問に入る前に、今の松本君の質問に関連して伺いたい。国連加盟の問題ですが、この問題については国民のすべての人々が朝野を問わず関心を持つていることは事実であります。また現在の進行状況がどういう状況であるかということも大体はわかつておりますけれども、なお先般来の本会議あるいは委員会等における御答弁からは、どうもまだもう一歩つつ込んだ研究が足らないのではないか、あるいは情報のキャツチが足らないのではないかという印象を受けるのであります。それは私が昨年アメリカに行きまして、直接国連事務当局の関係者から聞いた点でありますが、一体国連加盟の問題は、安保理事会においては、これは勧告案である、勧告案にはたして拒否権が適用できるかどうかという法理上の疑義が一つある、従来はほとんど決議案と同様に、拒否権というものが当然の法理上の根拠あるものとして扱われて来たが、研究に研究を重ねてみると、勧告案であるから、はたして拒否権というものが適法であるかどうか、そういう法理上の疑義が一つある、また勧告案であるから、かりに拒否権が合法性を持つたものであるとしても、その拒否権付の勧告案を総会に移すということの権限が、安保理事会にあるかないかということに対する法理上の疑義も一つある、それからあるいはそういう勧告案に対する拒否権のついた議案を議決する権能が総会にあるかないか、こういうことに対する疑義もまたある、総会であるから憲章の定めるところによつて一切の最高の権限はあるとしても、なおそういうような拒否権そのものに対する法理上の疑義があるから、こういう疑義を一挙に解決するために、どこかの国から法理上の疑義を解決する案を総会に出そうという話が、一部に進みつつあるということを聞いたのでありますが、はたして外務省はそういうことについての情報をとつておられるかどうか、また法理上の解釈については、各人かつてな議論ができますから何とも言われませんが、外務省としてはそういうような点について、もし国連の事務当局と話があり、研究が進められておるとするならば、これに対して法理的にどういう見解をお持ちになりますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これは今始まつた議論ではありませんで、数年前から行われておるのであります。しかしながら、これは私の見るところでは、むしろ政治的の考慮にまたなければならない。つまりある国がそういう案を出して、かりに多数でそれが可決されるとしましても、それが実行される段階になつた場合に、ソ連その他の共産系の国たが脱退を賭してまでこれに反対するおそれはないか。つまり国連がほかの共産国家を脱退せしめるようなところまで、追い込みはしないかという点が問題なのであつて、それはいろいろなりくつはつきましようし、またあるりくつについては多数の国も賛成するかもしれないのでありますが、それはただ法理論だけでは解決ができない。要するに政治的の考慮も非常にあるものですから、そういう問題がシヨウダンまでに行かないのである、こう私は考えております。

加藤勘十日本社会党(右)

○加藤(勘)委員 もちろん問題が一片の法律のりくつで解決するなら、こんな簡単なことはありません。結果はいろいろな国際情勢等が総合されて現われて来るものであることはよくわかつておりますが、しかしながら法理上根拠があるとするならば、われわれがこの問題を、たといソ連もしくはその衛星国であろうとその他の国であろうと、すべてに向つて堂々と、こういう法理上の根拠があるではないかということで訴えることができる。法理上の疑義すらみずからはつきりさせないようなことでは、訴える迫力が違う。こういう点からわれわれ日本国民としては、少くともそういう法理上の妥当性があるということをはつきりつかむならば、これをもつて世界のすべての国に訴えることができる。そういう点において私はそのことが外交上非常に大きな力をなすと思う。ただいたずらに客観情勢の変化ばかりを待つ、ちようどだなからぼたもち、果報は寝て待てというような、ただ成行きにまかせておくということではいかぬと思う。われわれがそういう確信を持つか持たぬかによつて、国際的に動く上においても能動性が生れて来るわけでありますから、そういう点について、外務省はただ数年来の問題であると言うだけでなく、それについて自分たちはどういう見解を持つか、それが間違つておるなら間違つておる、正しいなら正しいということを、はつきり表明される必要があるではないかと思いますが、この点についての御所見を伺いたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 法理論としては法律家の意見をまたなければなりませんが、両方の意見があつて、はつきりどちらと断定は下せないと思います。われわれはもちろんそういうよう意見が通ることを希望するし、またそれに向つて大いに声援もしたいと思いますが、これは法理論であつて、学者の意見はどうも賛否両論があるようであります。

加藤勘十日本社会党(右)

○加藤(勘)委員 その点は水かけ論になりますから、われわれも今日の国際情勢における外交方針の根本をどこに置くべきかということについて、後日私は所信を明らかにすると同時に、政府の所信を尋ねる機会を持ちたいと思いますから、きようはその点については触れませんが、さしあたつてお伺いいたしたいと思いますことは、最近の新聞紙によると、政府は東南アジア諸国に対して、経済使節をお出しになるということでありますが、これはもう確定しておりましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これはいろいろ考慮いたしております。経済使節というような銘を打つたものにするか、それともただ普通の視察で行くか、経済使節などといいますと、とかく肩が凝るようなことになつて、公式な話しか——話しかということはありませんが、おもに公式な話になる場合もあります。私人の形で行けば、もつとつつ込んで一部門について専門のことを詳しく話すということができる場合もありますので、考慮をいたしておりますが、いずれにしても有力な人を出して研究してもらおう、こういう考えでおります。

加藤勘十日本社会党(右)

○加藤(勘)委員 視察と使節とはまつたく性格が違うですね。私は視察ということならば、何もわれわれがくちばしを入れる必要はひとつもないので、政府は御自由にお出しになるといいと思います。そうではなくて、使節ということであるならば、私も大いに意見があるわけです。従つてその点をまずひとつはつきり聞かしていただきたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これは今申した通り、使節にするか、視察というかその個人的なものにするかはきまつておりません。しかし使節の場合の御意見があれば喜んで伺います。

加藤勘十日本社会党(右)

○加藤(勘)委員 それではまだその点はおきまりになつておらぬそうでありますから、使節をお出しになるということであれば、私はむしろ今日の段階は、使節というものは必要でないのではないか、ある意味から言うと、かえつて相手方を刺激するような逆効果を来すのではないかということを憂うるものです。もちろんそれについてはいろいろな情勢分析をやらなければ御得心が行かないかも存じませんが、もうわれわれが申上げるまでもなく、外務省においては各地出先機関からそれぞれの情報をとつておいでになると思いますから、ことに経済使節というような形式で行きますと、過去に政府から派遣された使節の実績が一体どうなつておるか。たびたび多くの人が行つておられるが、われわれはその結果は何も聞いておりません。ただ新聞を通じて知るだけだ。しかもこの間きわめてわずかな時間でありますが、向うに行つて、各地で多くの人に会つていろいろな意見を聞いてみますと、われわれ日本としては将来これらの国々に対する対策を樹立する上からいつて日本人側からも相手の側からも、非常に大きな示唆を受けておるのであります。それはどういう点であるかといえば、もちろん経済的利害についての深いつながりを将来持たなければならぬ。日本も原料を供給してもらわなければならぬし、日本製品の市場としても、将来深い関係を結ばなければならぬという点は言うまでもありません。また向う側でも、おそらく将来そういうことを望んでおるであろうとは思われますけれども、しかし何といつても、まだ独立して数年しかたつていない。民族感情というものが非常に大きく政治経済の上に作用しておると見なければならぬと思います。その民族感情を無視した政治経済の動きというものは、ほとんど考えられぬと思う。その民族感情の点から行きまして、たとえばインドネシアのごときは相当強い反米感情を持つておる。その反米感情の根処はどこにあるかということを聞いてみれば、蘭領ニユーギニアの主権の回復をインドネシアが要求することに対して、アメリカがオランダ側の意見を支持しておる。そういうことでは、どういう名目でアメリカの経済援助の手が差延べられても、結局は過去のアランダが支配したと同様に、やはりまた経済的な力で自分の国を支配しようとするのでないか。そういう強い一つのひがみ、民族的な後進国としてのひがみであろうとは思われますけれども、そういう民族感情があるということは動かすべからざる事実だと思うのです。従つて日本が、おれの方が先進国であるから、おれの方が手を差延べて、お前の方を誘導してやる、こういうような僣越な考え方を持つて行けば、どういう美しい言葉をもつて、またどういう実質上の利益をもつて行こうとも、相手方はまたしても日本がかつての大東亜共栄圏当時の優越感を持つた考え方で、自分たちの国を支配するのではないか、ことに今日の日本は、武力的には無力であるが、経済的にはアメリカの手先になつて、自分たちの国を支配するのではないか。これは猜疑心と思いますが、そういう感情が強く動いておるということは争われない事実だと思うのです。従つてそういう民族感情の動きを考えますときに、今この際日本から何々使節というようなことで、あたかも日本が——もちろん表面の形式は親善であるとかあるいは相互協力であるとか、そういう美しい言葉をもつて行くにしても、向から見れば遅れた国のひがみとしてそういう考え方が強く動くと思います。従つてわれわれは使節に対しては、向うを刺激するようなことのない注意が必要だと思います。過去の、たとえば津島さんが賠償の話合いで行つたとか、やれ緒方さんが何々で行つたとか、いろいろ聞かされておりますけれども、その結果は具体的には何も現われて来ておらぬではないか。たとえば今度の高崎氏なんかの目印による製鉄事業の問題のごときも破談になつた。その破談になつたことは単に経済的な理由だけであろうかどうか。もちろん経済的、財政的な理由が大きな部分を占めておるであろうけれども、またインド人の独立国家としての権威を保持しようという民族感情が、相当動いておりはせぬであろうかどうか。こういうことを考えますときに、私どもは使節というような形式で、何かしらこちらから向うに押しつける——もちろん押しつける気持はありませんが、向うがそういうふうに受入れるような形において人が行くべきではないのではないか。自由な視察という形においてどなたか多くの人が行つたり来たり、文化の交流等はきわめて必要なことでありますけれども、使節というようなかたばつた形において行くことは、かえつて民族感情を刺激すると私は思います。従つてこういうことに対して、政府が今後使節を派遣しようという決定をなさる場合に、そういう点についてどういう考慮を払つておられますか、また払われようとするか、ひとつ具体的にお伺いしたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 私は使節であつても必ずしも今加藤君のおつしやつたようにとられる場合のみではないと思いますけれども、今どちらかにきめかねておるのは、主としておつしやるような懸念が実はあるからであります。いろいろそういう懸念が見えますので、はたしてどうしたものであろうか。ところが個人的に行くということは、とかく政府が頼みましても、いずれその道の造詣の深い人に行つてもらうわけであります。今度はある特定の自分の事業に関係して仕事をするようにとられる場合もありますので、使節というようなことにして一般的な問題を取扱うのだ、そういう懸念もありませんけれども、他方、使節とすると、今おつしやつたようなとられ方をする場合もなきにしもあらず、また相当あるだろうと心配しておりますので実は決しかねておりますが、これも相手方がどうとるかということは、あらかじめ話をしてみる方法はたくさんあるのでありますから、それらによつてどちらかに決定しようと考えております。

加藤勘十日本社会党(右)

○加藤(勘)委員 まだ政府が決定されておらぬのであるから、それに対してかれこれとわれわれから意見を言う必要もないと思いますけれども、いずれにしても視察ということで行けば、その道の堪能な人が行かれるについては、ややもすれば個人的な仕事と結びつけてという疑惑を持たれるし、他の方の使節とすれば、相手方の民族感情に触れて、かえつて逆効果を来すようなことが考えられる点もあるというようなことでありますから、まだ決しかねておるということも無理からぬことと思いますが、私は人を選んで世間がなるほどこれならばどういう立場から見ても、公正な、ほんとうに国の立場に立つものであると考えられるような使節であることが必要であり、また視察であつても必要だと思いますが、今日の段階においては、そういう人でもなおかつ使節という形式においては行かない方がよいではないか。こんなことを言つてははなはだ僣越ですが、ほんとうに日本が謙虚な気持で進んで行くならば、東南アジア諸国は、日本が自分たちよりも一日先に近代国家として成長しているということは認めておるのですから、私は必ず向うの方から手を差延べて、ほんとうに伸よくしようという気持を持つて来るであろうと思う。でありますから、この際われわれ日本人側としては、向うの感情を無視して急いで行うということのないように、最善の注意を外務省においては払つていただきたいということを希望して、私の質問をやめます。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 今の御意見は、私どもの考えとほとんど一致しておりますかり、十分考慮いたします。

並木芳雄改進党

○並木委員 条約局長に先ほどの続きをお尋ねしておきます。中共封鎖の問題でありますが、大連、旅順、香港、厦門、ああいうふうに中国に属さない港があるのです。そういうものに対して、今伝えられているような封鎖が法理的にできるかどうか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 最初に明らかにいたす必要があると存じますのは、現在の朝鮮事変が、国際法的に一体何であるかということであります。これは国際法上の戦争状態ではございません。従いまして、国際法上の戦時封鎖の意味においての封鎖ということは、考えられないわけあでります。しからば朝鮮事変は何であるかということになりますが、これは国際連合の決議に基く、侵略者を排除するための国際警察行動であります。この国際警察行動に対しまして、国際連合は、侵略者にいかなる援助も与えてはならない、また侵略者を排除する国連軍側には、あらゆる援助をしなければならないという決議を、先ほど申しましたようにいたしました。また一九五〇年の十二月には、この決議に国際連合非加盟国も協力してもらいたいという決議をいたしておるのであります。従いまして、新聞で封鎖々々という言葉を使つておりますが、これは先ほどの決議に示されました大原則に協力するかどうかという政治的考慮から決すべき問題でありまして、法律上の封鎖とお考えになりますと、非常な混迷を来するおそれがあると存じますので、まずその点を明らかに申し上げたいと存じます。従いまして、どういう形で動きが起るか存じませんが、それは国際法上の戦時封鎖ではなくて、関係国が政治的の見地から決定してとるべき措置である、そうお考え願いたいのであります。

並木芳雄改進党

○並木委員 蒋介石政府の中国本土反攻という場合は、どうでありますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 蒋介石政権対中共政権は、法律上から申しますと、一国の内乱であります。ですから、正統政府と思つている蒋介石の国民政府と、その統正政府から見れば反乱軍であるという中共政権、この二つの政権が、片一方は台湾に、片一方は本土におるわかであります。国際法上、一国に内乱が起つた場合に、それに対して中立的立場をとるということは、これは俗語でありますが、正統政府に対しても反乱政府に対しても、どちらにも加担しないというのが、一国の内乱に際しての第三国の中立的立場である、そういうように考えていいと存ずるのであります。従いまして、新聞で台湾の中立化の解除々々と言つておりますが、これは非常な事態を現わすものでありまして、第三国からいたしますれば、台湾にも本土にもどちらにも味方しないというのが、ほんとうの中立であります。従いまして、もし台湾と本土の間に人為的の障壁をつくるとすれば、これは実はその方が作為的な行為であつたのでありまして、アメリカがもしこの作為的な壁を取去り、そうして自然のままにまかすといえば、その方がかえつて国際法的にいうと、中立と申しますか、自然な状態に返す、そう観念していいのではないかと存じます。

並木芳雄改進党

○並木委員 もし蒋介石政府が反攻に出た場合に、これを援助するようなことは、どういう手続を経なければできないかという点なんです。国際連合で決議をするのか、またただいまのお話ですと、内乱には干与しないということが建前ならば、これに援助する方法というものは出て来ないのか、いかなる場合に国際連合出動の場合があるか。それをお聞きするのは、私はこういう場合に、日本が国連協力の線で援助をしていられる場合が出て来るのではないかという懸念がありますので、お聞きするのであります。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 先ほど申しましたように、現在の朝鮮事変は国際警察行動であります。そうして国連側から見ますならば、中共は、この国際警察行動の対象となつておる侵略を援助というよりも、むしろ侵略自体に加担しておる国であります。従いまして、この侵略に加担する勢力に対してある措置をとるということは、あらためて国連の決議で行われることもありましようし、また新たに決議をしませんで、先ほど申しましたように、関係国の話合いで行う、そういうことになると思います。これは日本の立場はまだ具体的な話が持ち上つて来ておりません今日、何も申し上げる限りでないと思います。

並木芳雄改進党

○並木委員 ちよつと条約局長は私の質問を取違えたかと思います。蒋介石政府の中国本土反攻の場合なんです。それと朝鮮の動乱と比較しておるわけですから……。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 台湾の国民政府から申しますと、二つの立場があると思います。一つは、国連の傘下に行われるただいまの国際警察行動、この行動に当然参加するという立場、もう一つは、国民政府から見れば、反乱軍であるところの中共に対して、正統政府としての圧力を加えるという立場、つまり内乱としての立場と、現在世界に行われておる国際警察行動の参加者としての立場と、二つの立場から措置がとられるのだろうと思います。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 並木君、佐藤法制局長官が見えております。

並木芳雄改進党

○並木委員 警察行動という立場から出て参りますと、日本も国際連合協力の線でやはり援助の義務が生じて来ることになりますが、その通りでありますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 日本が法律的に約束しております限度は、ただいままでのところ、吉田書簡によりまして、日本内及び日本の近傍において、朝鮮の作戦に従事するための国連軍を支持することを許し、かつ容易にするということが、今日まで日本の法律的に基礎として参りましたコミツトメントの限度でありまして、それ以上の問題につきましてはまつたく白紙であります。

並木芳雄改進党

○並木委員 国府が反乱軍鎮圧のためと称して出動した場合には、われわれは全然援助の義務を負うものでない、こう了解いたしますが、その通りでありますか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 法律的には仰せの通りであります。しかしこれは政策問題でありまして、私は政策を申し述べる立場にございません。

並木芳雄改進党

○並木委員 それでは、外務大臣にその点お尋ねをしておかないとたいへんなことになりますから、岡崎外務大臣お答えを願います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 これは今申した通り、政治的の考慮によるものでありますから、その時のその情勢によつて考えなければならぬ問題であります。しかし今のところ、別段どういう援助をしなければならぬというふうには考えておりません。

並木芳雄改進党

○並木委員 私が心配しておりますのは、朝鮮動乱鎮圧並びに国府の反攻という線によつてだんだんと範囲が広がつて行くのじやないか。局長の答弁でも、中共の海岸封鎖はもつぱら政治上の問題であるということになりますと、政治的に力が強ければ、あるいは大連とか旅順とか、香港、厦門なんかの封鎖が行われるということもあり得るわけです。それはそれでいいのですか。もしそうだとすれば、どこかで線を引かなければ、これは自衛権の発動の限度を越しておるのではないか。国連憲章、集団安全保障の自衛権の発動の線を越すおそれがあるので、その線を引く制限がどこかになければわれわれは困るのであります。それはありますかどうか。もしあるとすればどういうところでチエツクされますか、お尋ねいたします、

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 まだ関係国においていわゆる封鎖の措置をとることに決定したわけでもございませんし、いわんやその封鎖なるものの措置の内容について何らわかつていないのでありますから、日本として態度のとりようがない段階でございます。

並木芳雄改進党

○並木委員 しかし解釈は成り立つと思います。大連、旅順、香港、厦門の点はいかがですか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 大連、旅順、厦門とおつしやいますが、いかなる地域範囲についていわゆる封鎖の措置をとるのかもわかりません。それからまた先ほども御説明いたしましたように、戦時封鎖ではないのでありますから、封鎖なるものを実施しようとする国は、どういう権限を行使するのかもわかりません。従つてまつたく日本側との関係において何らの意見を申し上げる段階にないのであります。

並木芳雄改進党

○並木委員 佐藤法制局長官にお尋ねいたします。最近、戦犯者を巣鴨その他に拘束しておくことは、憲法に違反をするのではないかという説が出て参つております。私まだ十分専門的に研究しておりませんので、これはやり合うのではございません。しかしもし憲法に違反するということであるならば、一日も早く釈放してほしいという、これは国民感情として当然でありますから、この際当局としては当然これに耳を傾け、研究されておると思いますから、その状況をお尋ねしたいと思います。関係の条文は憲法第三十一条とか、憲法第三十三条あるいは憲法第十八条、そういうものがありますが、それは長官の方が専門家ですからよくわかつていると思います。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 その点は御承知の通りに平和条約の第十一条に明文があるわけであります。従いましてわれわれといたしましては、平和条約を研究いたします際の問題として十分に研究済みのことであります。また平和条約第十一条に基くそういう人々の拘禁についての法律が御承知の通りございます。その法律の際にも研究したことでございすすが、お尋ねでございますから、はつきり御説明をしておく方が適当であろうと存ずるわけであります。  とにかく事情はいろいろ御承知のようなことではありますけれども、日本人が日本人の戦犯者を引続いて拘禁するということは、これは一つの不幸なこととは存じます。けれども今のお尋ねは憲法論でございますから、憲法上の理論として申し上げますならば、この平和条約第十一条の問題として、かりにこの条約が発効した後、講和になつた後も引続いてそういう裁判が行われることをあそこで認めたということになれば、これはゆゆしき憲法上の問題であろうと存じます。しかしながらこの第十一条は、過去における、いわば敗戦の結果と申しますか、超憲法的な一つの法秩序のもとにおいてすでに成立、確定した判決というものをつかまえまして、その効果を後も引続いて認めるということにとどまるのでございますから、その限度内におきましては、法理論としては憲法には違反しないというふうに、ずつと考えて来ているわけでございます。

並木芳雄改進党

○並木委員 もし平和条約なかりせば、今やつておることは憲法に抵触いたしませんか。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 平和条約なかりせばそういう義務がないわけでありますから、初めから問題にならないわけでございます。

並木芳雄改進党

○並木委員 そうでなくてもしこういうことが行われておるとすれば、これは憲法違反になりますか、なるでしようと聞いているのです。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 条約その他の法的根拠なしにそういうことが行われるならば、これはおつしやる通りと思います。

並木芳雄改進党

○並木委員 そうしますと、ここで疑問が出て参るのです。ごくざつくばらんに申しますと、憲法違反の疑いのあることが行われている。しかしこれは条約から来ておるから憲法違反にならないのだ、こういうふうな三段論法にとれるのですが、もしそうだとすれば、条約と憲法との解釈において政府は、従来憲法違反を行うような条約は取結ばないということを答弁しております。この場合には、憲法に違反する条約を結んでありますということになりますか、いかがですか。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 そのお尋ねは当然出て来なければならぬお尋ねなので、非常に敬意を表します。私が条約第十一条について憲法に違反しないと申しましたのは、今おつしやつたような憲法に優越するものであるという前提から申しておるのではないのであります。条約は、私どもかねがね御説明しております通りに、憲法に違反する条約というものは考えておらないのであります、こういう立場に立つての御説明とお聞き取りを願いたいと思います。それにいたしましても、先ほど触れましたように、かりに条約をもつてしても今後なお引続いてああいう新たなる裁判がどんどん行われるということであれば、憲法に違反する条約でございますよということをちよつと触れたわけであります。ところが第十一条そのものはそうではなくて、過去に成立、確定した判決は、敗戦のやむを得ざる事情とはいえ、わが国の法秩序としては認めざるを得なかつたものだ、そういうものとして一旦成立したものの効果を、引続いて講和後までも持ち込むということは憲法に違反しないと考えます。そういう趣旨でございます。

並木芳雄改進党

○並木委員 少しわかりにくいのですが、もし憲法にこういう条文があつたとすればぼくはわかりやすいのです。罪刑法定主義があつて、裁判によるにあらずんば拘束することができない建前に、日本の憲法はなつております。しかしながら条約で別途に何か締結された場合にはこの限りにあらず、こういうことがありとすれば、今巣鴨に拘禁されているような状態というものも憲法上はわかるわけです。それがないからお尋ねしておりますが、それに対してもう少しわかりやすく明快にお答え願いたいと思います。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 これは変則な事態を前提としてのことでありますから、なかなか明快に説明できるような事柄の性質のものではありません。しかしながらかりに裏づけといいますか、似たような例を考えますと、この第十一条というものによつて拘禁されている人たちの拘禁の原因とか、あるいは手続というものを振り返つてみると、いわゆる戦犯裁判というものであつて、日本の憲法の条文にのつとつての裁判ではございません。いわゆるその裁判そのものは、冷やかに日本国憲法に当てはめてみれば、憲法の裁判手続には合つていない、その裁判手続によつて行われているということが、この戦犯裁判の一つの特徴であろうと存じます。今言いかけました近い例をかりに考えるといたしますと、旧憲法時代に、御承知のように軍法会議というものがありました。これは日本軍のための軍法会議ですが、この軍法会議は、旧憲法においては特別裁判所としらて認めれておつて、その意味では合憲であります。ところが新しい憲法から見ますと、特別裁判所は設置することができない。憲法の明文にございますからして、新しい憲法の上から見ますれば、そういう裁判所は認められぬはずなのです。ところが旧憲法下における正当なる手続を経て、その軍法会議の判決がありまして、そうしてすでに拘禁されているという人たちのその拘禁の成果が新憲法下において持ち込まれている。事柄はきわめて違いますけれども、考え方の元をただして行きますと、それと共通する面があるのではないかと思います。そういうたとえまでも持ち出して御説明しないと、これは正面からではむずかしくて、わかりやすく簡単にというわけには行かない問題だと思いますが、いずれにせよ、そういう意味で憲法の条文に反するというものではないというふうに考えております。

並木芳雄改進党

○並木委員 今の御説明を聞いても相当むずかしい問題ですが、岡崎外務大臣いかがでしようか。そういうふうなむずかしい問題だから、この際一日も早く巣鴨の戦犯者は外に出してもらいたい、また海外に抑留されている、たとえばフイリピンのモンテンルパにおられる戦犯者もこちらへ返してもらいたい。そういうような懇請をしていただけませんでしようか。それについては向うへ懇請の派遣員ですか、それができなければ、あるいは慰問というような形においてでもけつこうだと思います。政府の方もいらつしやるし、われわれ国会議員も行くし、民間の人も行く、そういうようなこともぜひ考えてほしいのです。国会議員の派遣などについては、われわれがみずから考える問題ではありますが、政府としてはこの点についても何か所見があるはずでございます。この際お尋ねをしてみたいと思う。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 懇請等は御承知のようなわけで、従来からずつとやつておりまして、だんだん私はぐあいがよくなりつつあると考えますが、どうもこれは時日を要する問題で、てきぱきと行かないのははなはだ残念であります。そこで慰問団であるとか、あるいは懇請の使節であるとかは別としまして、先ほど加藤勘十君のおつしやるように、とかく団体をなして、そういうところへ行くということがいい効果ばかりは私はないと思つております。行く人たちはむろんまじめで一生懸命にやつて来ようと思つても、結果が逆であるような場合もなきにしもあらずと思います。前にもそういう話がありまして、先方の意見をそれとなく聞いてみたこともありますが、どうもあまり、向うの受取り方はよろしくなかつたように思います。拘禁者のためにならないような結果になるのは意味がないことでありますから、これはよほど慎重に考えなければならぬと思つております。

中山マサ自由党

○中山(マ)委員 関連して。今のお話を聞いておりまして、私よけいわからなくなるのは、今巣鴨におりますところの二十九名の朝鮮人の受刑者でございます。日本の人に対してすらもほとんど憲法違反になりそうな感覚がございますのに、今度独立国という名目になりまして、敗戦後、朝鮮の人はもはや日本人でございませんのに、なぜこの人たちまでも、いわゆる法は既往にさかのぼるという原則によつて、この人たちは今でも終身懲役ということでつながれておらなければならないのでございましようか。その点をひとつ御説明願います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 御指摘の点につきましては、日本で裁判が提起されまして、最高裁判所におきまして、講和発効後、それらの二十九名の者は日本国籍を喪失することになりましたけれども、裁判当時において日本人であつたものであるから、これは平和条約第十一条に基いて、引続き日本に拘禁しておかなければならない。そういう趣旨の判決がございました。また日本政府からこの裁判に関係いたしました関係の解釈を求めましたところ、関係国すべて一致して、ただいま申上げました最高裁判所の判決と同じ趣旨の回答をして参りました。まことにお気の毒な次第でございますが、何ともいたし方のないことになつております。

並木芳雄改進党

○並木委員 大臣にお願いとお尋ねがあるのですが、平和条約発効一周年が間もなくやつて参ります。それまでにぜひ戦犯者の釈放だけは実現したいと思います。これは大臣も異存はないと思う。その見通し、それからもう一つ英国でエリザベス女王の戴冠式が行われます。そのときには英国関係の戦犯者は全部釈放されるという恩赦が期待できますかどうか。私どもは期待しておるのですが、お尋ねいたします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 われわれ努力はいたしておりますし、また希望は非常に強く持つておりますが、そういうことについて、こういう正式の委員会で期待をしておるなどと言うことが、これがすでにイギリス側に何かおおいかぶせるような印象を与えがちなのであります。またそうでなくても、巣鴨におる人たちあるいはその家族たちに非常な希望を抱かせまして、かえつてその希望の実現しない場合にはお気の毒なことになりますので、こういう点については言明に差控えたいと思います。しかしできるだけの努力はいたすつもりでおります。

並木芳雄改進党

○並木委員 英国の戴冠式に今までの例においてはやはり恩赦が行われていると思いますが、最近の例でけつこうです、どういう範囲の恩赦が行われているか、この際お尋ねしておきたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 手元に資料がございませんが、大体多くの国において、元首の即位あるいは戴冠式の際に、国内の犯罪人に対して、一定の範囲の恩赦が行われていることは、普通に行われるところでございますので、英国内の普通犯罪者に対しては、そういうようなことは考慮されているかもしれないと存じます。しかしながら戦犯はまつたく特別な例でございますので、それにつきましての先例というものはちよつと調べてもないと思います。

並木芳雄改進党

○並木委員 佐藤長官にお尋ねしておきます。私が先ほど聞いた質問に関連するのですが、もし政府が条約によつて憲法に抵触するようなことまで持ち込むということになると——いわゆる再軍備を、今憲法に禁止しておつてもやつつつけてしまうおそれが出て来る、そこに関連して来るのです。しかし今の答弁では従来の解釈をかえておらない、憲法にも抵触するような条約は結ばないと断言したから、やや安堵したのであります。しかしだんだん追い詰められて来つつあると思います。これは私の主観にもなりますが、そこで政府に何とか助け船を出してやりたいと思います。現に木村保安庁長官なんかは憲法を改正しなくてはいけないということまで考えておられますから、いろいろ憲法を見ているのですが、その場合に一つ思い当つたのは、例の文民という言葉なのです。「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければなければならない。」これは明らかに武官というものを対象としての言葉であつて、連合国がかりに押しつけた憲法であるにせよ、日本に軍隊があり得ないことを前提としたものではない、自衛軍ならばいいのだ、憲法第八条は、芦田さんや佐々木博士も主張するように、自衛軍なら持てるのだという解釈が立つのではないかと思う。これは私が賛成していることは違います。この際これを法制局長官に聞いてみたいと思います。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 おつしやる通りの考え方があるわけでありまして、今御指摘の芦田法学博士、佐々木法学博士というような方々の御意見から申しますと、その点はぴたつとして非常に合うわけなのです。しかしわれわれ疑問を持ちますのは、これらの諸先生の学説には大いに傾聴はいたしますけれども、それで行きますと、憲法第九条の第二項というものが、何のためにあるのだろうという疑問が出て来て、一貫した説明がどうしてもつかない。憲法第九条第二項というものがあれどもなきがごとしという形になりますと、これは話がつきますけれども、そこまで踏み切る勇気がございません。従いましてかねがね木村長官などが申しておりましたような筋で御説明しているわけであります。その説明の筋はわれわれ自信を持つているわけであります。決して間違いではないと思います。  そこで今お話の文民という言葉になるのですが、これは御承知の通りに、憲法そのものができましたときから、今御指摘のような疑問が関係の人々の間にあつたわけであります。そのときの説明は、憲法自身で軍備というものを廃棄している以上は、武官というものがないということは、これははつきりしている。今後武官というものはあり得ない。たとえば文民とはどういう意味か、シヴリアンという言葉があつてのことなのですが、要するに金森さんの答弁あたりはこういうことを言つております。過去において職業軍人であつた人を排除いたします場合に、そういう文字が今度は憲法上の論議となつて資格があるかないかという問題にもなりましよう。非常に遠まわしのことを言つておつたわけでありますが、私の考えを表から申しますと、この文字そのものは、やはり職業軍人という言葉がよいか悪いかは、これは別でありますが、軍国主義というものに深く染まつた、そういう経歴の人、そういう意味だと今までずつと考えて来ております。またこれを今日かえるつもりはございません。従いまして先ほどお触れになりました佐々木さんや芦田さんのお説の裏づけとしてのお考えは、一応傾聴すべきであるとは思いますけれども、そういう意味で私どもはこの文民という言葉を理解はしておらないわけであります。

並木芳雄改進党

○並木委員 かなり苦しい解釈になると思うのです。元の職業軍人とかなんとかいうことになりますと、われわれには受取れないのですが、現状に沿うようにこれを解釈して来る余地はありませんか。つまり当時はそうであつても、現実の問題と照し合せつつ憲法第九条第二項が、それだけ疑問があるならば、それと同じような疑問はやはり文民というものをことさらにあげたところに、われわれの疑問も出て来るのですから、全然だめなものか、また現実の問題としてはそういう考慮の余地もあるか。ことに最近憲法改正の国民投票法案ですか、それを政府はまた提出を見合せたというふうに聞いておりますが、そんなことも関連して考えますと、どうしても確かめておきたいのですが、いかがですか。

佐藤達夫法制局長官

○佐藤(達)政府委員 お気持はよくわかります。ただ私が元の職業軍人と簡単に申したようにお聞取りでございましたけれども、私はそう簡単ではないのでありまして、職業軍人として深く軍国主義に染まつたような人というところを条件にして、私は今日まで考えて来ておるという趣旨でございますからして、ただ職業軍人という簡単なことではないという趣旨におとりを願つておきたいと思います。ただ今日においてその考えをかえる気持はないかというお話でございますけれども、何しろ憲法上この文民という言葉が特に使われておるのでありますから、その意味というものはナンセンスであるはずはないわけであります。かつ私がとつておりますような前提、すなわち第九条についての考え方についての前提を持つて参りますと、ただいまのところは先ほど来由しましたように読まなければ、この説明のしようがないというふうに考えておるわけであります。

並木芳雄改進党

○並木委員 大臣にお尋ねいたします。閣僚の間でそういう問題が当然出て来ておると思いますが、憲法第九条の解釈論はいかがですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 むろん憲法等については十分な研究をするのはあたりまえでありますから、いろいろ意見も出ました。疑問も出ましたけれども、結論は今法制局長官の言つたようなところであります。

並木芳雄改進党

○並木委員 あと倭島局長に賠償問題で伺いたいのですが、大臣が見えておりますから大臣へ質問の方を先に願います。     —————————————

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 この際お諮りをいたします。国際連合加盟に関しましては、国民的要望もあり、政府当局も非常に調査研究されておるようであります。先ほど栗本委員会において皆様の熱心な御論議がありました。これにかんがみ国際連合加盟に関する件を、当委員会の国政調査事項に追加して、それに対する調査を進めて行きたいと存じます。この件を衆議院規則第九十四条により、議長に対し承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 御異議なければさようにとりはからいます。     —————————————

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 私この前の委員会で、政府がかつてヤルタ協定が秘密協定でないということを言われたことを申し上げましたが、そのときに岡崎大臣は、自分はそう思つていないからというお話で、私も速記を持つて来ておりませんでしたので、それ以上のことを申し上げることができませんでした。ところが速記を調べてみますと、私が二十四年の十二月に、講和条約が締結される前に講和条約の論議の中でヤルタ協定の秘密協定であることを指摘いたしましたときに、当時の条約局長の西村氏が、ヤルタ協定につきましては締結後しばらくは公表されてはおりませんでしたが、その後公表されて秘密協定でなくなつているということを御了承願いたいと思います。とはつきりおつしやつておられます。これは非常に大きな問題であろうと思います。私がこれを申しますのは、こういう条約局長の見解をもつて講和条約に臨んだために、当然日本の領土であるべき領土のごときも、放棄しなければならぬような講和条約の結果になつたということを、私ども非常に遺憾に思うものでありまして、秘密協定であつても、これが発表されると秘密ではないというようなこういう根本的な考え方は、将来においても国の外交方針を非常に誤るものであると思います。西村さんがこういう発言をされた当時、岡崎大臣は当時の外務委員長でありましたけれども、このことを一言も訂正しておりません。なるほど昨年の速記を見ますと、岡崎大臣ははつきりヤルタ協定は秘密協定としておられますけれども、その当時局長のその言を取消さないというのは、当時は西村条約局長と同じ考え方を持つておられたかどうかということをお伺いしたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 秘密協定というのは、発表しないで内緒でつくるから秘密協定でありまして、それが発表してしまえば秘密ではないのであります。ポツダム宣言受諾のときに発表されていないから、ヤルタ協定はわれわれ頭に入れないでポツダム宣言を受諾したのだ、こういうことを主張しておるのであります。しかしいずれにしましても、かりにヤルタ協定が全然存在しなくても、ポツダム宣言を受諾した以上、本州四国、九州、北海道は論議の余地なく日本の領土であり、その他の諸小島は連合国の定めるところによるということを約束しておるのでありますから、ヤルタ協定があろうとなかろうと、これは関係が直接にはないのであります。そういうものが連合国の方の頭の中にあるから、それをもつて千島や樺太を日本の領土からはずした。こういう想像はむろんされますけれども、しかしそういう条約や協定がなくても、それらの島嶼をはずそうと思えばはずせるのでありまして、その点はヤルタ協定があつたから日本がそれを承認したのではないことを御了承願いたいと思います。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 発表されてしまうと秘密協定ではないということになりますと、そこに非常に大きな問題が起きて来ると思うのです。ここで考えられますことは、締結されたその当時に秘密的な内容を持つているものであるならば、これは当然秘密協定であり、この際に秘密協定であるということを認めないとするならば、あとから今回のアイク教書の発表の中にもこれが含まないということにもなりますし、ロンドト協定が結ばれたけれども、ヴエルサイユ講和条約のときに秘密協定なりとして、こういうものは将来の平和の妨げになるものであるとして、アメリカの大統領ウイルソンがこれを破棄している。この問題とも非常に関係して来るものでありますから、ヤルタ協定は、あくまでもその締結した当時にさかのぼれば秘密協定であるということは、言えるのではないかと私は思いますが、もう一度この点をただしておきたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 それはお話の通りであります。従つて私は秘密協定であるとこう言つておりますが、それは締結のときのいきさつから秘密協定であるというのであつて、これは他の条約でも同じでありますが、かりに将来必ず発表するという約束をしておつても、ある一定の時期は、いろいろの関係で隠しておこうというのもあります。発表してしまえば秘密協定ではないのでありますが、発表するまでは秘密協定だというのはちよつとりくつに合わないのでありまして、ただ発表するまでが秘密協定である。あとは政治的な議論であります。秘密協定なら、われわれは知らぬから、そんなものは関係がないとか、あるとか、破棄すべきであるとか、それは政治的な議論でありまして、秘密協定といえども、発表されてしまえば秘密協定でない。これは常識の見るところであります。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 それでは今の問題ですが、ルーズヴエルト大統領がなくなつてから、ソ連はこれを発表した。そうすると発表してしまつてからは、もう秘密協定ではないわけなのでしようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 ソ連が発表しただけではわかりません。それはつまり協定の内容がはたしてその通りであるかどうか、正確でありませんから……。しかし関係国でちやんと発表して、内容がちやんとわかつて、これ以外にないということになれば、それは秘密協定ではないと思います。

植原悦二郎自由党

○植原委員 関連質問ですが、ヤルタ協定の性質は、秘密協定であるということは、発表のいかんにかかわらず秘密協定だと思います。その点を西村前条約局長は、政府の答弁にはしばしばその場をのがれればよろしい、将来国民が納得しても、納得しないでも、その場の売り言葉に買い言葉で、答弁すればいいという——今西村君がおらないから議論になりませんけれども、その弊だと私は思う。発表すれば、世間には知られた協定だけれども、ヤルタ協定がなぜ秘密協定かといえば、アメリカのすべての協定は、アメリカ上院の批准を経なければならぬものだ、これは経ておらぬ。そこでこの協定はアメリカからいえば、今日でも秘密協定だ、こう解すべきだと思う。しかしヤルタ協定は、今日は世間にはつきりしておる。そういうふうに言えば、今の戸叶さんの質問も私はなくなると思う。ヤルタ協定は秘密協定だ。しかし今日はすべてのものが発表されておるから、秘密のことは何にもない、ちようどそれと関連して私が思うのは、日本が国連に入つた場合において、日本はあのオブリゲーシヨンとして軍隊を持たなければならないかといえば、それはアイスランドでも持たないでいるではないか、こういう議論ですね。なるほどそれはそうだけれども、世間はりそういうことでは納得しない。アイスランドがそうだからといつて、日本がそれと同格にされるということは、その場は答弁になりましようけれども、これは世間が納得しないことであります。  それから立つたついでにもう一言申し上げますが、今の文民ということですね。あれも実はシヴイリアンという言葉を訳すに——もちろん原文は英文でできたものです。あの憲法を訳すときに、私もそれに携わつた一員だから、よく知つておりますけれども、訳す言葉がなかつたのですよ。それのみならず、そのときの議論は、やはりこういうことも出ました。日本は憲法第九条があつたつて、独立国である以上は、やがては軍備を持つときがありはしないか。その場合に、その言葉を上手にしなければ、結局元のような統帥権の問題が当然起つて来る。そこで日本にもし海陸軍ができた場合に、だれがこれを統帥するか、結局それは将来日本が軍国主義になるかもしれないという疑問を世界に持たせることを避けるためにも、また日本の国家の実体、運命からいつても、もとのように軍人が帷幄上奏の権を持つたり、あるいは統帥権を持つたりすることはいけない、また海陸空軍の大臣に軍人がなるようなことがあつたならば、また再び日本がそういうことを繰返すようなことが起るであろう、そういうことがあつてはいけないというので、はつきりしたいために、文民という言葉を使つたのであります。日本はなぜ文民という言葉を使つたかといえば、将来日本の海陸軍を統帥するもの、主幹となるもの、そういうものはやはりアメリカのようにシヴイリアン、文民でなければならない。そういう意味であれは非常に心配してつくつた言葉です。たとい憲法の第九条があつても、将来永久に日本が軍備を持たないということのありようはずもなし、そういう将来の日本の行くべき道をはつきりさせておきたいというので、シヴイリアンという言葉を文民と心配してつくつたのです。今の第九条の問題でも、日本で最後に憲法を解釈するのは、今日は最高裁判所でなければならない。法制局長官といえども最後の決定はできない。芦田君の自衛軍ならいいという解釈は近ごろやめたですよ。私は芦田君とちやんと話した。それから日本の軍隊を国際紛争を解決するためにということを考える場合に、前提を見ても、また第二項を見ても、自衛軍でも軍というものを持つ場合には、憲法を改正するよりしかたがないというのが正当解釈になると思うのです。これは私でも法制局長官でも解釈のできないことだ。この問題を議論すれば最後には最高裁判所に行くと思います。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 秘密協定に関し、政府当局の答弁を求めます。この際漏洩が発表と同じ効果を持つた場合をも含めて御答弁願います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 秘密協定と申しますのは、締結の際に協定の当事者以外に全然発表しない、そういうものが秘密協定であります。それから将来発表するかどうかということですが、これは協定自体に何年後に発表すると書いたものもあります。あるいはこういう規定がございませんでも、当事者でこれは発表した方がいいということに意見が一致しまして発表する場合もございます。しかし秘密協定締結当時秘密であつたならば、秘密協定であつたということも言えますし、またもうすでに発表された以上は、それは秘密協定でなくなつたということもむろん言い得ると思います。  また漏洩の点でございますが、漏洩ということは法律的には効果のないものであります。漏洩されたからといつて、漏洩された部分を援用することもできましよう。ただ漏洩の実際的効果は、漏洩しました場合に、不正確な内容が世間に洩れることは当事者の不利益とする場合が多いので、漏洩の問題が起りました場合には、当事者が協議いたしまして、思い切つて全文を発表するという措置に出ました例がたくさんございます。問題のヤルタの協定のごときも、これも実は漏洩のことがありました。またソ連側が意識的に一部を漏洩するというような措置に出たこともございました。それでアメリカ側が国務省から正式にテキストを発表するという措置に出たのではないかと思われる経緯もございます。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 今の御説明によりますと、発表されてしまうと秘密協定でないという場合も、またそういうときにも秘密協定であることもあり得るというお話です。そうすると西村前条約局長のおつしやつたことは、発表されてしまつたら秘密協定でないとおつしやつた方に属しますが岡崎外務大臣はその後秘密協定であるということを言つていらつしやる。そうすると結局日本政府は、それが秘密協定であるのかないのか、ヤルタ協定の場合、一体どつちとおつしやるのですか。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 秘密協定なる言葉の定義の下し方いかんによるわけであります。西村条約局長の定義の下し方と、岡崎大臣の定義の下し方はお違いになつておるわけであります。しかしこれはどちらの定義を下すかということは、ただいま植原議員のおつしやいましたように、大したことではないのであります。問題は、秘密であつたから、その節を将来援用するかどうかというような政治的、実質的の問題が重要なのでありまして、その点は先ほど大臣のおつしやつたように政治的の問題になる、そういうふうに、おとり願いたいと思います。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 それで解釈の点はわかりましたけれども、西村条約局長のような解釈をもつて発表せられておりますと、一般の国民としては、これは秘密協定ではないとすると、このアイクの教書の中にある「秘密条項を廃止するという中にはヤルタ協定は入らないのではないかというような解釈が出て来ると思うのです。その点についての御見解を承りたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 アイゼンハウアーは一般教書の中で、「秘密の了解」という言葉を使つておられますが、その「秘密」というのは、現在アメリカ国民も、世界の他の国民も知つていないという意味で「秘密」と言われたのではなくて、締結された当時に秘密で、あつたから秘密だ、そういう意味で言つておるのだと解釈いたします。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 それではもう少し根本的なことを伺つてみますが、戦争中に結ばれたいわゆる国際間の秘密協定というものは、講和条約の際に破棄されるものであるかどうか、その御見解を伺いたいと思います。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 戦争中に結ばれた協定でございましても、永久と申しますか、戦後も引続き効力の続くものもございます。またその内容、性質によりまして、戦争終了とともに効力が当然なくなるものもございます。従いまして両方あるわけでございます。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 それでは私が先ほど言及いたしましたところのイギリス、フランス、当時の帝政ロシヤ、イタリアの間に結ばれたロンドン秘密協定が、ヴエルサイユの講和条約でウイルソンの駁撃で破棄されましたが、それとヤルタ協定とは同じ性質のものであると見てさしつかえないかどうかをお伺いいたします。

下田武三外務事務官(条約局長)

○下田政府委員 その点はアメリカが当事者でございまして、日本はその協定の当事国でも何でもないのでございますから、断定することを差控えたいと存じます。その点はアメリカ政府自身も相当デリケートな問題だろうと思いますので、将来協定の廃棄という措置に出ますときに、どういう口実で、どういう理由で破棄するかというような説明をアメリカの国会に対してされるだろうと思います。そういうこともまだわかつておりません現在、私の方で推測したことを申し上げるのは差控えた方がいいと存じますので、差控えさせていただきます。

戸叶里子日本社会党(右)

○戸叶委員 先ほどの秘密協定の解釈の問題ですが、私は別に条約局長を非難しようとするのではないのですけれども、同じ政府の中で、いわゆる外交問題の他の問題で、よく二枚舌を使うような場合がございますので、そういう点に対しての警告を発しておきたいと思います。こういうふうな重大な協定などに対しまして、ある人は秘密協定と言い、そしてある人は秘密協定でないと言う、こういう一貫性のないことのないように、今後は十分連絡をとつていただかないと困るということを一言苦言を呈しておきます。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 並木芳雄君、留保しておられました倭島局長が見えておられます。

並木芳雄改進党

○並木委員 フイリピンの賠償でございますが、平和条約批准の方はどうなつているのですか。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 まだ平和条約の批准という問題は具体的になつておりません。

並木芳雄改進党

○並木委員 賠償に関する協定は、平和条約の批准が行われなくとも、先行する可能性があるのですか。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 賠償に関する協定もまだ具体的にはなつておりません。先行するかどうか、その点もまだ具体的になつておりません。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 岡崎外務大臣は渉外事項のため退席をいたしますが——田中稔男君。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 その前に大臣にお尋ねしたいのですが、去る一月二十一日に、朝鮮の巨済島の俘虜収容所を脱出した——たしか中国人民義勇軍の捕虜だと思いますが、これが対馬に上陸して、対馬にあります日本側の官憲がこれを米軍に引渡したという事件、これは一九〇七年へーグで調印されました陸戦の場合における中立国及び中立人の権利義務に関する条約第十三条によりますと、逃走したる俘虜が中立国に入りたるときは、該中立国はこれを自由にまかすべしという条文があるのでありますが、私はこれに抵触するのじやないかと考えるのであります。このことに関連して大臣の御意見を伺いたいと思いますが、こういう質問をしますと、それは日本が国連に協力しているのだ、そうして朝鮮における事態は戦争でなくして、国連の警察行動である、こういうふうに必ず御答弁になるだろうと思います。しかしながら岡崎外務大臣がそうおつしやり、また吉田首相がその書簡においてそういう見解を持つておられるにしても、一般の国民は、やはり国民感情、国民認識として私は別に考えていると思う。もちろん今日の日本国民が北鮮の軍隊に協力したり、中国人民義勇軍に援助を与えたりすることを毛頭考えない、そういうことを希望していないということは明らかである。しかしながら戦争ではないといつても、事実上史上未曽有の激戦が現に朝鮮において行われておる。その死傷者の数や、その戦争に投下された物量というようなものを考えますと、非常な激戦である。それから国連による国際警察行動と申しますが、今日の現実の事態としましては国連はもう一つの国連でなく、二つの国連にわかれたような現状であります。アメリカを指導国とするところの国連加盟の諸国が、一方的に警察行動と称して戦争をやつているのじやないかといようような感じでありましてその警察行動に協力すると称して、そうして北鮮や中華人民共和国を敵とするということは、やがて日本の国土を危険にさらすのじやないか。これは率直な国民感情であり、国民認識であると思うのであります。これは単に法律上の議論でなく、ほんとうに日本のとるべき外交政策、として真剣に考えなければならぬのでありますが、岡崎外務大臣は、この間本会議でありましたか、義を見てせざるは勇なきなりというようなことを言われた。非常に割切つておられますけれども、私はそう簡単に考えられない問題だと思う。私どもは中ソ友好同盟相互援助条約というものがあることを知つている。一方現に日本においては、この間私どもも視察いたしました立川の空軍基地においても、朝鮮戦線に対する補給活動が行われている。あるいはまた朝鮮の戦線で傷ついた飛行機などがあそこへ運ばれて来て、修理の作業が行われている。さらにまた横田の基地から発進したB二九が、満州の安東ですか、あの付近を爆撃したというようなことが北京放送によつて発表されている。その上さらに、やつと対馬に逃げて来て、いよいよ自由になつたという感じを抱いた人民義勇軍の捕虜をつかまえて米軍に引渡すというようなこと、こういうことがだんだん重なつて参りますと、ますます日本は北朝鮮民主人民共和国なり中華人民共和国というようなものとの敵対関係を深刻にして行く。そして先ほど申しましたような中ソ友好同盟相互援助条約もあるのであります。こういうことになりますと、やはり日本がだんだん戦争の渦中に巻き込まれる、これは決して国民の希望しないところであります。国民の真剣に憂慮する問題でありますが、単に形式論でなく、外交上のりくつでなく、一体この方針を日本政府が国策としてとつて将来の日本の運命にとつてあやまちがないか、これについて外務大臣としての御所見をはつきり承りたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 私ははつきり申します。ただいま民主主義国家の結束を強くすることだけが、世界平和の維持に役に立つと確信をいたしております。その際に右顧左眄して、あちらへつくでもない、こちらへつくでもないという国が一つでも多くなれば、それだけ共産主義陣営の侵略の力を強めることになりますから、戦争の危険がそれだけ多くなる。従つてはつきりと民主主義陣営の結束を強くする方法のみが戦争を防ぐ考えである、こう確信いたしております。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 中山マサ君。

中山マサ自由党

○中山(マ)委員 外務大臣にお尋ねをいたしますが、この前並木委員の緊急質問に対して、今度皇太子殿下が英国にお越しになるのは、皇室の私事という言葉を使つていいかどうかわかりませんけれども、国事ではないというような御答弁があつたように私は考えております。むしろ私としてはこれは国事にしてほしい、いわゆる国家の象徴で、おありになる皇室と、英国の皇室との御交際と見るよりも、むしろ独立した日本といたしましては、大いに国事としてお祝い申し上げたいという気持で聞いておりましたところが、きようの新聞を見ますと、皇太子様が御渡英なさることについて、向うの松本駐英大使が飛行機で帰つてみえた、それは打合せのためであつたというような記事がございまして、これを見ますと、どうも私は御答弁とはぴつたり来ないものを感ずるのでございます。もし皇室の御私事であれば、日本国が派遣したいわゆる大使出先機関を呼びもどすということは、どうも私は納得が行かないのでございますが、こういうこともございますので、この際いつそはつきりこれは国事であると言つていただいた方が、割切れるのではないかと考えております。やはり外務大臣は、このように大使が来ても、これは皇室の一つの行事であるとお考えになるかどうか、私は伺いたいのであります。それならばどういう権限でもつて皇室が大使を呼びもどしたりして交渉をさせるのか、もしこれが国事であるということになりますれば、こういうことで打合せに帰つて来られるのは、私は当然であろうと思うのでございますが、どうもこの二つが錯綜しまして私には判然といたしませんので、もう一度この点で外務大臣の御答弁をお願いいたします。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 私も気持としては中山さんと同じように国事として扱いたいような気持でおりますが、法律上いろいろむずかしい規則があるようでありまして、これは皇室の仕事ということになつておるようであります。しかしイギリスにおきましては国事でありまして、国としての儀式がたくさんあるわけであります。また儀式のほかにいろいろの行事もありますし、これらの英国の事情から考えまして、宮内府当局あるいは政府とも打合せをなすべき事項がたくさんあります。また同時にいかなる形においても、皇太子殿下が渡英されるということになれば、日英関係の改善とか相互の理解を深める上にも、これは当然いい影響を及ぼしますから、その面からいつてもわれわれは十分なる配意を行わなければならぬわけです。さらに先般ヨーロツパの大公使会議が開催されまして、当局からも人を出しましたが、欧州の今の状況、ことに欧州軍とかあるいはNATOとか、イギリスとの関係等も、われわれはよく知つておく必要がありますし、そういう政務関係の必要もありますので、この際松本大使に帰朝を命じ、短期間いろいろの点について事情を聴取して参考にいたしたい、こういう考えがあつて呼びもどしたのであります。

中山マサ自由党

○中山(マ)委員 参考のために伺つておきたいと思います。これを国事にするためにはどういうむずかしいことが存在するのでありましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○岡崎国務大臣 法制局長官がおりませんが、これは私には法律上のことで間違えるといけませんから、後刻法制局長官にでもひとつお願いいたします。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 今まで出ました質問に関連して黒田寿男君。——黒田君、まことに恐縮ですが、岡崎外務大臣はあと二、三分でほかに用事があるそうでありますので、二、三分で簡単にお願いいたします。もしそれが困難でございましたらば、失礼ですけれども次の水曜日にお願いいたします。

黒田寿男労働者農民党

○黒田委員 それでは後刻にいたします。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 あと倭島さんのが残つております。並木芳雄君。

並木芳雄改進党

○並木委員 フイリピンの批准はどうして遅れているのですか、さつぱりわからないのですが、たとえば戦犯者を抑留して、それが賠償とひつからんでいるのだとか、また賠償問題を有利にするために批准を遅らしておるのだとか、いろいろの説が出て来るわけです。倭島さんは現地に行つてよくわかつて来たはずなのですが、その点どうですか。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 一口に申し上げますと、批准が遅れているのはフイリピンの国内事情であると申し上げるよりほかないと思いますが、その国内の事情なるものも、実は私ごく短期間しか滞在しませんでしたので、いろいろ具体的に説明申し上げる材料を持つておりません。ただ結局はフイリピンの国内にもいろいろな意見があるようでございます。そういうことで現在まで批准に至らないということだろうと存じます。

並木芳雄改進党

○並木委員 フイリピン側の情報によりますと、日本政府は役務賠償のほかに、現物賠償をも認めた。その点で譲歩したから、フイリピン側に非常にいい影響を与えたというふうになつていますが、事実現物賠償をやる約束でもしたのですか。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 昨年津島全権が向うに行かれましたあと、正式な交渉をまだいたしておりませんので、先般私がちよつとあそこを通りました際に、ごく非公式な話を多少したわけでありますけれども、これは単なる非公式な話でありまして、何ら約束したとか、きまつたとかいうことではございません。従つて新聞にはいろいろ出たかもしれませんけれども、そういうようなことをきめたとか、あるいは了解ができたとかいうことはないと存じております。

並木芳雄改進党

○並木委員 そうすると、従来通り役務賠償だけである、こういうわけですか。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 現在問題になつておりますのは、サンフラシスコ条約に基く賠償の考え方ということのように承知しております。

並木芳雄改進党

○並木委員 ですから、あの解釈は役務賠償に限定されたということが、今までのわれわれの了解なのですが、それには変更はございませんかと尋ねているのです。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 今申し上げますように、フイリピン側においてもいろいろな希望なり意見はあるようであります。それから先般私が参りましたときにも、ごく非公式に聞いた意見ですが、第十四条の解釈問題であるとか、先ほど言及されたような現物賠償だとか、いろいろな意見を言つた人はありますけれども、その意見についての結論だとかあるいはきまつたとかあるいはこう変更したとか、そういうようなことは私の承知する限りございません。

並木芳雄改進党

○並木委員 問題は総額なのですけれども、賠償の総額について、何か線が出ておるのじやありませんか。大体の総額がわからないのに、ただどういうふうな賠償をやつて行くということだと、本末転倒、からまわりをするきらいがありますので、何かこの辺でそろそろ総額はどのくらいになるという見当がついて来たはずだと思いますが、その点お尋ねしたい。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 先ほど来何回も申し上げておるように、何らきまつてもいないし、何かそろそろ出て来たというようなこともございません。

並木芳雄改進党

○並木委員 オシアス氏は病院を建ててもらうように日本政府に交渉してその点何か了解を得たというように発表しておりますが、実際病院あるいは医術、薬品、そういうものは向うへ行つて賠償の役に立つ可能性が多いですか、少いですか。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 いろいろな意見や希望が述べられておることは、御承知の通りでありますが……。

並木芳雄改進党

○並木委員 それを少し話してください。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 それはつまり賠償の方式というようなものは、われわれはやはり桑港平和条約の第十四条の関係を考えております。もしも材料を提供するということであれば、諸般の役務を提供することによつてある物品ができるというような関係ができると思いま。しかしなら最近いろいろ希望なりあるいは意見として述べられております中には、賠償のみならず、ほかの関係をも含めて、さらに関係国の経済関係なり外交関係を改善する、あるいは増進するという見地から、いろいろな問題が一緒くたになつて話をせられておる場合が多いのではないかと存じます。従つてこれはどういう機会にオシアスさんから話が出ましたか知りませんけれども、賠償としましては、やはりわれわれは平和条約第十四条という関係で考えております。

並木芳雄改進党

○並木委員 ここに私一つ思い当るところがあるのですが、かつて現地に従軍したお医者さんで、今癩の治療に当つている人ですが、フイリピンとか、ああいう方面にはかなり癩患者が多いので、もしこの治療の問題が賠償の対象になるならば、喜んで現地へ行つてそれに携わりたい、こういうお医者さんがございます。フイリピンでは、医術なんかはかなり発達しておると思いますので、日本の役務賠償はその点ではあまり必要がないのではないかと思われる中に、なるほどこれは相当の効果を現わすのではないか、こういうふうに私感じておるのです。それで東南アジアの、賠償の問題が起つている国国におけるこの状態について、答弁願いたいと思います。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 私の承知しておりますところでは、フイリピンについては、特にお医者さんを派遣してくれ、医術という関係で日本のサービスを提供してくれという具体的な要望なり希望は、まだ聞いておりません。しかしながらインドネシア、ビルマ等においては、医術についてのサービスをしてもらいたいという希望が、従来も相当表明せられております。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 並木さん恐縮ですが、もう一問だけに願います。

並木芳雄改進党

○並木委員 答弁の様子を聞いておりますと、まだ進行中のようで、局長苦心しておられるようですから、これはまたの機会にいたしまして、もしそういう希望者があつたら、政府はどしどし奨励して行くという線で了承しておきます。  それでは最後に一点だけ伺います。それは釜山に日本の婦女子が八百名くらいおるというのですが、事実なのですか。引揚げを待つておる婦女子が八百名くらいおるのであるけれども、なかなか引揚げられないで困つておる。それに対して政府はどういうふうに処置しておるか。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 ごく最近の数字は、現在ちよつと資料を持つて参りませんでしたので、はつきり申しかねますが、一時ある時期は、今から三箇月くらい前には、かつて日本の国籍を持つておつた婦人、それからそれが伴つておる韓国籍の子供を合して、せいぜい三十数名であつたわけでありますが、その後奧の方からだんだんと出て来る人もありまして、それよりは数がふえておるようであります。この次の機会に最近の数字を申し上げたいと思いますが、八百名というのはたいへん多い数字でありまして、そうではなしにせいぜい百名程度ではないかと想像しております。

並木芳雄改進党

○並木委員 どう処置しておるかを……。

倭島英二外務事務官(アジア局長)

○倭島政府委員 それは従来と同じことでありまして、従来も籍の関係がはつきりする、つまり現在日本籍である、あるいはかつて日本籍であつたという戸籍をはつきりすることが一つ、それからそれをはつきりしましたあとで、現在日本籍である人が帰つて来るのはもちろん問題ありません。それからかつて日本籍で、つまり日本の婦人であつた人が朝鮮の人と結婚したということで、向うの国籍を取得した関係の人でありましても、かつて日本人であり、どこに戸籍があつたということをさえはつきりし、それからさらにこちらへ帰つて来まして、その親元があるとかあるいは友人が世話をするとか、何とか生活がやつて行けそうだということがはつきりしますれば、——大体従来みなはつきりしております。その関係においては日本に帰つて来れるわけでありまして、なおその際大体子供を数名連れておる場合が多いのであります。その子供はもちろん向うで生れた韓国籍のものでありますので、これはちよつと日本に入れるというのについては諸般の手続がありますけれどもも、その点を今のようなほんとうの子供であるということがはつきりいたしましたあとは、お母さんと一緒に、あるいはお父さんと一緒に帰つて来れる。従来全部引揚げというかつこうで返しております。従来その中で私の承知しておるのでも、一、二の全然縁のない、戸籍もない、従来からほんとうの朝鮮人である人が、こちらにその夫がおつて、女房を呼び寄せたいために、いろいろな工作をしたというような例もありますので、多少その調査をやつておるわけでありますが、といつて詳しくやつておるわけではありません。

栗山長次郎自由党

○栗山委員長 これで散会いたします。     午後零時四十二分散会

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