両院法規委員会 第10号
- 発言数
- 19 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/06/13
会議録
○会長(九鬼紋十郎君) それでは、ただいまから会議を開きます。 本日は参議院側が会長を勤めることになつておりますので、私が会長になります。 前会、衆議院の解散制度に関する勧告案を議題といたしたのでありますが、本日は続いてこの議題につきまして、御審議を願いたいと思います。勧告案はお手元に配付してございますが、この勧告案について一応御意見を承りたいと存じます。それでは勧告案の原文を読んでいただきましよか。
○衆議院法制局参事(三浦義男君) それでは、私から勧告案の内容を申し上げます。衆議院の解散制度に関する勧告でありますが、これは国会法の第九十九條の規定によつて勧告するということになつております。国会法第九十九條は、次のようになつております。 第九十九條 両院法規委員会は左 の各号の事項を処理する。 一 国政に関し問題となるべき事 案を指摘して、両議院に勧告す る。 二 新立法の提案又は現行の法律 及び政令に関して、両議院に勧 告する。 三 国会関係法規を調査研究し て、その改正につき両議院に勧 告する。 こういう規定がございます。これは国会法第九十九條の第一号の「国政に関し問題となるべき事案を指摘して両議院に勧告する。」ということに当ろうかと思つております。 なお、将来憲法改正の機会があれば、それらの点をも考慮されたいという事項を含んでおりますので、新立法の提案というようなこともその裏に含んでおると考えております。さような国会法の規定に基きまして勧告をいたすのでありますが、その文案を読み上げますと、次の通りであります。 要旨 衆議院の解散については、その決定権の所在及び事由の範囲に関し、種々の論議が行われているが、憲法の解釈としては同法第六十九條の場合以外にも、民主政治の運営上、あらたに国民の総意を問う必要ありと客観的に判断され得る充分な理由がある場合には解散が行われ得るものと解することが妥当である。しかし、解散はいやしくも、内閣の專恣的判断によつてなされることのないようにせねばならない。たとえば衆議院が、解散に関する決議を成立せしめた場合には、内閣はこれを尊重し、憲法第七條により解散の助言と承認を行うというごとき慣例を樹立することが望ましく、また将来憲法改正の機会があれば、解散制度に関するこれら基本的の事項につき明文を置き、民主的な解散の制度を確立するとともに憲法上の疑義を一掃すべきである。 両議院は、右に関し充分の考慮を払われたい。 理 由 衆議院の解散については、昭和二十三年十一月、第二次吉田内閣成立直後、現実的政治問題として提起せられ、以来広く各方面において重大な憲法解釈問題として論議されて来た。 この問題の争点は衆議院の解散は憲法第七條により天皇の国事行為として規定されており、内閣に実質的な解散決定権を付与した明文がないのであるから、憲法の明文上解散の行われ得べきことが予定されている場合、すなわち、第六十九條に定める内閣不信任決議案が衆議院において可決され又は内閣信任決議案が同院において否決された場合に限つて、衆議院の解散は行われ得ると解すべきか、あるいは、憲法解釈上前述の場合以外の事由によつても同院の解散は行われ得ると解すべきかにある。 学界及び一般よ論は、大体においてイギリス的議院内閣制の下における権力分立の原理に立脚して、第六十九條に定める場合の外にも、民主政治の運営上あらたに国民の総意を問う必要があると客観的に判断され得る充分の理由ある場合には、内閣は憲法第七條により解散の助言と承認をなし得るという見解を探るもののようであるが、一部には、わが国の憲法運用につきイギリス的議院内閣制の理念を前提とすることに批判的見解をとり、憲法解釈上衆議院解散制度を最小限に止めることが適当であるとしてその解散は憲法第六十九條の場合以外の事由では行われ得ないと解する向もある。 本委員会は、愼重調査の結果、憲法第六十九條は衆議院解散の行われる原則的な通常の場合を示したものではあるが、これのみが唯一の場合ではなく、現実の国政の運営の面から見て、この場合以外にも、民主政治の要請により、あらたに国民の総意を問う必要ありと、客観的に判断され得る充分の理由ある場合には解散を行い得ると解することが、憲法の解釈上妥当であるとの見解に到達した。しかし、その解散を行い得る場合の判断を專ら内閣の自由な裁量に委ねることは、場合により、内閣の專恣的判断におちいるおそれなしとしないので、その判断が適正なるものであるような保障あることが望ましく、現行憲法の運用としては、たとえば衆議院が解散に関する決議を成立せしめた場合においては、内閣はこれを尊重し、憲法第七條により解散の助言と承認を行うというがごとき慣例を樹立することが望ましく、また、将来憲法改正の機会があれば、その場合には、解散決定権の所在及び解散事由の範囲を明文をもつて規定し、解散の制度を民主的ならしめるとともにいやしくも憲法上疑義の発生することなきを確保すべきである。 以上に関し、両議院は、充分の考慮を払うことが適当であると思料せられる。以上であります。
○会長(九鬼紋十郎君) 以上の勧告案の要旨並びに理由につきまして意見がありましたら、お述べ願いたいと思います。
○委員(大野幸一君) 私はこの要旨と理由については、その精神においては大体賛成であります。しかし前会にも申し上げましたように、要旨の中にも「将来憲法改正の機会があれば」云々とありますが、この「憲法改正」という文字を「適当の」というふうに改めてもらいたいと思います。なぜかと申しますと、憲法改正の場合をとらえることになりますと、憲法は両院議員の三分の二で議決したもののイエス、ノーだけを国民投票に問うということになる。従つて、憲法改正というのは、いろいろ多くの項目をあげて国民に問うので、それのイエス、ノーの判断だけを与えることになると、国民として一つの項については賛成であるけれども、他の項については反対であるというように、迷う場合があると思う。憲法改正というのは、逐次事案を追うてやればよろしいので、簡単明瞭に、イエス、ノーを国民に問われる場合においては、あまり多くの項目を憲法改正の項目にしないというのが精神だと私は思う。たとえば戰争放棄というようなものと関連してこれを国民に問うということは、私は憲法改正の機会があつた場合でも、一括して国民投票に問うことは不適当だと思う。適当に順を追うてやるべきだと思われる。それを、ことさらに今から憲法改正の機会があれば、そのチヤンスをとらまえて、というようなことにするのは、憲法改正の手続及び国民投票の意義からいつて適当でないと思いますので、私はこの字句を「適当の機会」と改めてもらいたいと思う。理由の方についても、最後の方に「将来憲法改正の機会があれば」というのがある。これも「将来適当の機会に」というように直していただいて、そのおしまいの「確保すべきである。」というところも、「確保すべきであろう。」というように、やわらげていただくならば、本勧告案に対しては、あえて反対するものではありません。
○会長(九鬼紋十郎君) ただいまの大野君の御意見のように文句をかえることについて、いかがですか。
○委員(中村又一君) ただいま「将来適当の機会があれば」と修正される御意見のように私は承りましたが、この問題の、法律的根拠となすための改正というのは、本質的には憲法の改正以外にはないわけですから、「適当の機会」という意味は、結局「憲法改正の機会があれば」ということに通ずるわけです。ほかの普通の法律の改正で、こういう議会制度の根本の問題である解散の規定を、どういう場合に解散するというように、自由に制定さるべきではありませんから、「将来憲法改正の機会があれば」という意味は、決して不穏当な、あるいは不適当な文言じやないと私は思う。「将来憲法改正の機会があれば」だから、その機会には、こういう重大問題は考慮すべきでないかという希望の文言になつておりますので、そういう字句の修正は必要ないじやないか。むしろこの通りに、はつきりした文句がいいのではないかと私は考えます。 それよりも、この解散制度は、憲法第六十九條にのみ持たしてあるという感じをこれで持つのであるが、憲法の正面から條文を取上げた場合、第七條でも私は解散をなし得るという解釈を持つておるわけであります。なぜかと申しますと、旧憲法時代には、内閣の輔弼によつて解散が行われておつたのでありますが、今日の民主憲法の上から考えますると、もちろん天皇に解散権が本質的にあるわけではありません。しかし助言制度によりまして解散権を私は留保されておると考えます。三権分立でありますから、時の政府が、衆議院に対して命令をするということは許されないが、解散を必要として、時の政府の信任を国民に問うてみたいという内閣の立場から考えたときでも、直接内閣が国民に対して信任を問うという方法は考え得られないのであります。そこで三権分立の建前と申しましようか、とにもかくにも内閣の政策を国民のために行おうとしても、衆議院との衝突その他によつて十分に政策が行い得ないという場合、あるいはその他いろいろありましようが、国会の解散を必要とするような立場に立つた場合に、時の政府は——もちろん切捨てごめんで解散などをする政府はありません。吉田内閣といえども、今日絶対多数を持つて四年間やつて来ておりますが、切捨てごめん的に解散をやる内閣であるとは考えておりません。将来もそういう政府ができるとは考えられません。しかし多数の与党を持ちながら、なおさら国民に信任を問うてみたいということもあり得るわけであります。そこで第七條というものは、内閣の助言によつて天皇が解散をなし得る原則的な規定ではなかろうかと私は見ておると同時に、第六十九條というものは、むしろ解散に対しては間接規定であつて、国会が——衆議院が時の政府を信任せぬという場合、政府はみずから辞職するか、あるいは国会を解散するかという規定だと思います。その作用が第七條に接続して、委託されておるかのごとき解釈を聞くのでありますけれども、それももちろん解散手続としての第七條に行かなければならぬことは当然と思います。第七條で普通の解散というものがを考えてみたいというのが、私の長い間の法律的見解であつたのであります。こういう建前から、「内閣の專恣的判断におちいるおそれなしとしない」などという文句は、よけいなことじやないかと思います。
○委員(大野幸一君) 御議論は、ずいぶんここへ参考人に来ていただいて、聞いたこともあるのですが、前会にこういうことにまとまつて、正式に勧告案を本日の会議でつくるかつくらないかということを御相談し、正式の勧告文を作成しようじやないかということになつて、前会から本日にかけて、その要旨の字句については、どういうふうにしようかということが問題になつておるのであつてこれはすでに新聞でも発表されてしまつたことであります。従つて、あまり前の議論にもどらないように御進行願いたいと思います。もしそういう話ならば、初めからやり直すことになります。
○委員(中村又一君) 私はせつかくできたこの案文を、ここで私の意見によつて、さらにつくり直すという強い意見を持つておるわけではありません。しかし決定するにあたつては、いわゆる法律を知る自分の立場として、自分の法律的基礎における見解を、かりにむし返しになつても——私は初めてここに出席したので、前にそういう議論のあつたことはもちろんあつたはずだと思うのですが、それを私が言うのは、学問的良識だと思うのです。そこで、そういう御議論があつたついでに申し上げておきますが、将来少数党が内閣をつくつた場合、これはただちに起つて来る問題だと思います。時の政府も、何もすき好んで解散するものではありません。しかしながら国民の信任を問わなければならぬ場合もある。たとえば、何票かの違いで選挙が行われて、第一党と第二党ができた。ところが第三党が第二党に協力して、総理大臣が第二党から出たという場合も、ただちに総選挙を考えなければならぬ。そういう場合でも、今度は逆に衆議院が不信任の決議をすれば、ただちに総辞職か解散か、どつちか選ばなければならぬということになるのであります。それが成り立つとしますれば、政府の側から見ましても、国会が決議によつて甲と乙を選ばなければならぬということを掣肘する必要はないじやないか。政党のおのおの立場において、解散という大きな問題を取扱う余地を残しておくのが、第七條と第六十九條とが二つ独立し、また相作用しながら、これで解散という問題を結論しておるのじやないかと私は見ておるわけであります。あえて反対ではありません。
○会長(九鬼紋十郎君) ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○会長(九鬼紋十郎君) それでは速記を始めてください。
○委員(門田定藏君) ただいま「憲法改正の機会があれば」ということに関連して、大野委員から「適当の機会に」という修正の御意見があつた。しかし憲法において、衆参両院の三分の二の決議のあつた場合に憲法の改正を国民に問う、国民の過半数がこれに賛成した場合、これが決定されるということになつておるのに、ことさらに「将来憲法改正の機会があれば」というようなことをここにあげられたのは、一体どういうわけでそうなつたのか、お尋ねしたいと思います。
○衆議院法制局参事(三浦義男君) この問題につきましては、前々からいろいろの意見もありますし、法律上、憲法の解釈として、いろいろの意見がありまして、はつきりしないところもありますので、そういう疑義を残さない意味からいたしますれば、第六十九條の解釈に多少の異見があるといたしましても、一応解散なり総辞職の規定がありますと同じように、それ以外で解散をなし得るということが必要であると考えられる事項につきましては、やはり憲法なり何なりの明文の上にはつきり載せておくことが、将来疑義を残さないでいいじやないか、こういう観点から、そういうことをここに敷衍して述べたのであります。
○委員(門田定藏君) 第六十九條の規定以外に解散がなし得るということがはつきりわかつたのですか。憲法第六十九條に、「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」という規定があります。詳細は私どもよく研究しておりませんが、これ以外に解散ができるという議論がはつきりしたのですか。
○衆議院法制局参事(三浦義男君) それは先ほど理由のところにも書いてございますように、多少の異見はあるといたしましても、国会及び一般の輿論は、大体においてさような意見が多いわけであります。その前提に立ちまして、この勧告案も一応できておるわけであります。憲法上の解釈あるいは法律上の解釈といたしましては、そういう観点に立ちませんと、ただほんとうの、何といいますか、法律上の解釈ということにならないで、ただそういう希望的なことを述べるというだけになりますから、実際解散ができるかどうかということも、憲法上の根拠に基かなければなりませんので、そういう意味から、大体の意見を参酌いたしまして、そういう関連に立ちまして、この勧告案はできておるわけであります。
○委員(門田定藏君) それでは、ただいまできておる勧告案が衆参両院に送付されまして、もし衆参両院が、これを適応せなんだ場合には、どういう結果になるのですか。
○衆議院法制局参事(三浦義男君) 勧告は、国会法上両院議長に対してやるということに現在なつております。どこまでも勧告でありますから、それをどういうふうにお取上げになるかということは、その院自身の問題であろうかと考えます。
○委員(門田定藏君) わかりました。ただ私の意見としましては、憲法改正は、機会があればとか、適当の機会にとか、そういうことは両方とも省いてもらいたいと思います。これによつて変な問題が起つては困りますので、憲法政正に関する問題は重大問題でありますから、さつき言われたように、もつと愼重に研究していただきたいと思います。
○会長(九鬼紋十郎君) ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○会長(九鬼紋十郎君) それでは速記一を始めてください。 なお これについては相当御意見があるように考えますので、この問題につきましては、次会にさらに継続して御審議を願いたいと存じます。 それでは、本日はこれをもつて散会いたします。 午後二時二十八分散会