法務委員会新刑事訴訟法の運用に関する小委員・民事訴訟法改正に関する小委員連合小委員会 第2号
- 発言数
- 37 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1952/05/17
会議録
○委員長(伊藤修君) ではこれより法務委員会の新刑事訴訟法の運用に関する小委員、民事訴訟法改正に関する小委員会との連合小委員会を開きます。 先ず最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。本案につきましては、先に提案理由の御説明はあつたことと思いますが、なおその後、小委員会におきましては、東京地方裁判所、高裁並びに最高裁判所等の実情について、現地において親しく事情をお聞きいたしたのでありますが、本日は小委員会において、現在におけるところの最高裁判所の実情を先ずお述べ願いたいと思います。
○説明員(鈴木忠一君) 上告事件の特例に関する法律の実施の期間の延長の法律が只今上程されておりますが、それに関して、最高裁判所における民事の上告事件の現在と、それからこの特例法が施行されて以後、現在に至るまでの実施の状況について、それからこの特例法が更に二年法案通り延長されるとしたらどうなるかという将来の見通しについて、大体の輪廓を申上げます。 最高裁判所における民事上告事件の処理は、上告特例法が施行された後にかなり促進されております。その年間の既済件数は次の通り逐次増加しております。即ち昭和二十四年には百五十五件、昭和二十五年には二百十八件、昭和二十六年には四百六十件、以上が年間の既済件数であります。併し年間の新受件数も更に増加をいたしております。それは昭和二十四年には三百六十件、昭和二十五年には四百五十二件、二十六年には九百四十八件と、これも年次増加しておるわけであります。従つて未済件数も結局逐次増加の傾向を辿つております。上告特例法は御承知のように二十五年六月から施行されましたけれども、当時最高裁判所には約四百五十件程度の民事の未済件数がありましたけれども、この四百五十件は尤も上告特例法を適用し得ない事件でありましたし、その後数ヵ月間に受理した事件の中にも上告特例法の附則第三条の関係から言つて同法を適用し得ないものが少くなかつたわけであります。そこで過去二ヵ年間の間においては、最高裁判所は大雑把に言えば、その勢力の殆んど半ばは上告特例法を適用し得ない事件、これを仮に旧件と申上げますが、その旧件に殆んど半ばは、勢力の半ばは費さなければならなかつたわけであります。その数字を申上げますと、昭和二十三年分六月以降と言いますと、この上告特例法が施行されたときからなんですか、六月以降同年度内においては最高裁判所が判決を言い渡した、民事判決を言い渡した事件のうち、上告特例法を適用し得る事件は僅かに四件に過ぎなかつたわけであります。而も実際において適用した事件は僅かに一件なんです。ですから特例法ができた年には、約七カ月間でありますけれども、その間に僅か一件しか適用しておらない、昭和二十六年度においては、言渡した判決は、新件といいますと上告特例法を適用し得る時期でございます。その新件が二百二十九件、残りの百七十二件は適用することができない旧件であつたわけです。最近では未済件数のうち旧件の数は、かなり減少をいたしましたけれども、それでも本年の四月末における旧件、つまり特例法を適用し得ない事件は二百三件でございます。その二百三件を昨年度における、昭和二十六年度における旧件の処理の実績に比較して見ますと、新件の処理と並行してこの二百三件の旧件を処理する場合に、二百三件の旧件がなくなつてしまうには、なお約一年を要するとほぼ推定されるわけです。言い換えますと約一年後に初めて最高裁判所は旧件の処理に煩わされないで新件、つまり上告特例法を適用し得る事件に専念することができる、こういうことになるわけです。そうして一方、只今申上げましたのは民事のほうの事件ですが、刑事のほうの事件はどうかと申しますと、刑事事件の処理状況については本年の二月以後は毎月約八百件の事件を刑事事件として処理しております。そしてそのために未済件数は毎月二百件ずつ減少しておるわけであります、そして四月末における刑事未済件数は約六千二百件のうち五千九百六十一件が上告事件でその以外は雑事件であります。その五千九百六十一件のうち約二百件が旧刑事訴訟法の事件であります、従つてこの旧刑事訴訟法の事件を処理するにはどのくらいの期間が必要かと考えますと、大体三ヵ月あれば処理できると推定されるわけです。で四ヵ月以後はすべて新刑事訴訟法に基く事件となつて、従つて刑事のほうの審理のスピードは四ヵ月目からは大体今よりもスピードが増すんではないかと思われます。そうしますと約一ヵ年、今後一ヵ年の間には刑事未済件数が殖えるか、減るかということを考えてみますとこれは大体減るという予想でございます。従つて少くとも第二年目以降は刑事事件を処理しておつたその精力の相当部分を民事事件に振向けることができるんではないか。そうしますと最初に申上げましたように民事事件の処理に関しては、本法が仮に延長されるとすると、その第一年目においてはほぼ現状を維持して行くほかはないわけですけれども、その間に旧件が片付きます。そしてその旧件の片付いて、民事については専念することができるというのに加えて刑事のほうの只今申上げた余力が民事のほうに加えることができる。そういうように考えますと大体本法が二年延長されたとして第一年目の末には、つまり昭和二十八年の五月の末には民事未済件数は約二千件ぐらいになるのではないかと推定することができます。これはまあ毎年上告件数が殖えますからそれを見込んで考えてみますと、延長された一年目の末には二千件ぐらいになるのではないか、併し二年目においては今申上げましたように、刑事事件の処理に注いだ精力と民事事件が新件のみになるということで旧作のむずかしい困難さを免かれる点から言いまして、二年目後には現在の約三倍くらいの能力は挙げ得るのじやないか。そうすると一ヵ月に既済件数約三百件くらいは挙げ得るのではないか、そういうような見方が可能だと思います。又別の見方から申上げますと、最近の一月の間における処理件数は民刑を合して約一千件でありますが、刑事の一ヵ月における新受件数が約七百件でありますから、前述したように刑事の未済件数を一応一掃した二年目においては刑事事件を一ヵ月約七百件を処理すれば足りるわけでありますから、民刑事件の処理と同じ程度の精力を要するものとすれば、現在旧刑事事件があるだけは民事事件の新件より大いに精力を要しておるものと言えるわけですから、民事件数を月間約三百件を処理し得るということは大体確実ではないか。そうしますと第二年目における年間の新受件数を仮に二千五百件と推定しましても、と申しますのは過去における年間の新受件数は昭和二十五年度が約六百五十件、二十六年度が約千二百件でありますから、この傾向を持続するものと仮定をすれば、二十七年度には約千八百件、昭和二十八年度には約二千五百件となります。そうすると上述の未済の二千件を合した年間総受埋件数は約四千五百件であり、毎月三百件を処理する場合における年間既済件数は三千六百件でありますから、二年目の末には未済件数は約九百件となりますが、これは月間の処理三百件の場合を想定しますと、三ヵ月分に当ります。そうするとこの九百件となるということは、結局おおむね常に九百件くらいの未済件数が存在するだろうというわけであります。と申しますのは、最高裁判所において事件の処理が理想的に行われた場合でも受理後約三ヵ月はかかるだろうというわけであります。ですから大体二年の若し延長が許されるならば、その二年を過経したときにおいては大体三ヵ月分に当る事件を残す、九百件ぐらいが残る。九百件ぐらいは今の計算からいうと大体常に最高裁判所に残つておるのではないかというふうに想定されるわけであります。 以上の数字は極めて大ざつぱでありまして、そうして若干楽観的な計算にも正直なところなつておると思いますけれども、これは数学と違いましていろいろな事情も加味されて、事件の進行、事件の数等が実際の想定とは多数の凸凹のあることは申上げるまでもありませんけれども、大体私どもの今までの計算からはじき出すと、今申上げたような計算を想定していいのではないかと思われるわけであります。ですからまあ少くとも特例法を二年延長して頂けば、今申上げたような想定の数字にまで民事事件が減少するのではないか。その二年の間に又十分本来の恒久的な対策も講じて頂けると思われますので、二年延長案というものを最高のほうとしては切望するわけでございます。
○委員長(伊藤修君) 只今の御説明の中で新受と既済について、既済のほうが、例えば刑事の場合において二百件ほど多いという御説明があつたのですが、従来の資料としてお出しになつた二十五年一月から二十七年の二月までの表を拝見しますと、既済のほうが新受より少いですね、その点どうです。今の御説明では既済のほうが二百件ほど多いという御説明でしたが、この表を拝見しますと多い場合は一回もないんですね。
○説明員(鈴木忠一君) 二十五年からずつと二十六年は一杯、それから二十七年の一月、二月までは確かに既済のほうが少いわけです。少いですけれども、二十七年の一月には新受が五百五十三件に対して既済が三百八十一件、それから二十七年の二月には新受が九百三十六件に対して既済が八百十七件、それから三月に新受の六百八十六件に対して既済が八百八十六件です。それから四月は新受の七百十一件に対して既済が百九件、こういうことになつております。ですから新受件数を既済・件数がオーバーをすると一いう現象は大体本年に入つてからという傾向になるように存じます。
○委員長(伊藤修君) そうすると今の御説明で多少既済がオーバーするというのは本年の三月以降だというわけですね。
○説明員(鈴木忠一君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 以前は先ほどの御説明とは違うわけですね。
○説明員(鈴木忠一君) そうです。
○委員長(伊藤修君) それから年間二千件とおつしやつたのですが、従来はこれから見ますと年間二千件以上じやないでしようか。今の御説明の中に年間五千件ぐらいの新受とおつしやつたんですが、表から拝見いたしますと、年間を通じますともつとたくさんになるんじやないですか。
○説明員(鈴木忠一君) 私が一番最初二千五百件と申しました。それは民事だけの年間二千五百件であります。
○委員長(伊藤修君) 今度の恩赦によつて刑事事件の、いわゆる既済の中に入る部分はどのくらいになるんですか、要するに今度の恩赦によつてどれだけ……。
○説明員(鈴木忠一君) あれは正確なところは申上げられませんが、大体千件ということです。
○委員長(伊藤修君) そうすると千件というと四月末日の未済刑事の六千二百九件から千件引けるということですか。
○説明員(鈴木忠一君) それはまだ今度の大赦によつて減少する数を計算に加えておらないのであります。
○委員長(伊藤修君) おらないから未済として四月末日で六千二百九件となつておりますから、恩赦によつて減じ得る数は約千件と予想されますれば、これから引けるということになりますね。
○説明員(鈴木忠一君) そういうことになります。
○委員長(伊藤修君) 只今数字的な御説明によつては、恐らく二ヵ年の延長によつても最高裁判所の負担というものは到底現在以下になり得ないと思われるんですが、やはり根本的な改革が必要じやないでしようかね。
○説明員(鈴木忠一君) 只今数字を申上げまとたが、これは最前に申上げました通りに私どもの多少楽観的な気分が盛られておるということは私どもも思います。併し裁判官、それから調査官あたりの意見を聞いて見ますと、二年間経てば相当数現在の負担量を減少することがそれはできることは確実らしいのであります。ただ一方においてそれと相待つてやはり上告制度ということを根本的に考えて頂かなければならない。それと相待つてむしろ最高裁判所の実際の負担軽減ということが実現されるのではないかと、こう考えております。
○委員長(伊藤修君) 佐藤さんにお伺いいたしますが、いわゆる民事訴訟法の今国会提案を先にこの国会の劈頭においてお話がありましたが、その後どうう経過になつておりますか。
○政府委員(佐藤達夫君) 今お言葉にありました通りに、たしか昨年でございましたか、この委員会におきまして民事訴訟法の検討についての中間の御報告を申上げたわけであります。その後も引続きまして、殊にこの特例法の関係におきましては期限が限られておるような点もございましてこれを又重要の問題として取上げまして他の問題と共に研究を進めて参つておるわけであります。他のこの特例法以外の関係においては、割合に問題の重要性という点から申しますと多少の蓬庭がございまして、殊に最近におきましてはむしろ特例法の始末をどうするかということについて全力を挙げておるという形になつて研究をしておつたわけであります。特に小委員会、それから部会、両方で審議をしてもらつたのでありますが、この特例法関係におきましては、やはり以前から出ております問題として、上告部というようなものを裁判所に設けたらどうかというような問題が依然として出て参りました。その他の点におきましても、例えば二審の裁判所に上告の許可を与えるという制度はどうかとか、或いは又上告事件の審査のために特別の機関を設けたらどうであるかとか、或いは又この事件の審査をやらせますのに最高裁判所の二人の裁判官で審査さしてはねるものははねるということにしたらどうだろうかというような又いろいろ新らしい意見も出まして、極めて熱心な検討が行われたのでありますが、事柄自身が何分重大なことでございますし、又これらの意見について必ず反対論が又出たりいたしまして、一長一短というようなところで賛否がまとまらないというようなことで、今日の段階におきましては甚だ残念でございますけれども、自信のある最終の結論が出ておらないというような次第でございます。私は今のお話にも出ましたように速記録も調べて見ましたが、確かに私は何らかの形で次の国会には法律案を提出したいということを申しておるのであります。又そのつもりで今申上げましたように誠意を盡して研究を続けたのでありますけれども、結果は只今申述べた通りであるわけであります。又現在この特例法というものは二年間一応経験を積んだわけでありますが、最高裁判所の民事局長からお話が出ましたように、旧刑事事件というものがたくさんありますために、この特例法の成績自身も、フルの成績というものが確実につかまれておらないというような点もあるわけでございます。法制審議会の小委員会におきまして一応この法案をどうするかという点についての中間の態度をきめてもらつたのでありますが、その小委員会におきましてもこの際としてはこの特例法を一応延長して頂くほかはないんじやないかというのが殆んど全部の小委員の一致した意見であつたかと思います。従いまして政府としては今回かような形の法案によつて取りあえず更に二年延ばして頂くということにせざるを得ないという結論に相成つたわけでございます。
○委員長(伊藤修君) そうすると民事訴訟法の根本的改正に対するところの政府のお考え方として、最近にこれを改革するという御意思があるのかどうか、又二ヵ年の間というようなお考えですか。
○政府委員(佐藤達夫君) 今のところ研究は現に続けておるわけでございますからして、一日も早く自信のある結論が出ますれば、それによつて恒久的の方法を講じたいという考えでございます。
○長谷山行毅君 御配付になつておりますこの資料の第一表の民事裁判官というところに、一三・三とか、一二・五というのはどういうようなことですか。
○説明員(鈴木忠一君) この最高裁判所裁判官の一人当りの民刑事件新受既済件数累年比較とありますその表の中に、民事裁判官一二・三、一三・五、一三・一、一二・五、こういうようにありますのは、これは御承知の通り最高裁判所の裁判官全員で十五名ございます。ところがその十五名のうちに、或る場合には欠けた人の任命が遅れたりすることもございますし、それから裁判官が年間に事務視察のために出張することもございます。それから最高裁判所長官は大法廷の裁判長をいたしますけれども、小法廷の事件については若干負担分が少いようなことになつております。そういうのを計算いたしまして、まあ十五名というところがフルなんですけれどもそういう働かない場合がある、欠員がある場合もあるというようなことを計算上考慮に入れまして、一三・三とか一三・五とかいうような数になるのでございます。
○長谷山行毅君 これは民刑両方とも全部の裁判官がやられておるわけですか。
○説明員(鈴木忠一君) 最高裁判所では只今通常の下級裁判所のように民事部、刑事部というように分けておりませんので、各小法廷、第一小法廷から第三小法廷までございますが、各小法廷全部を通じて民事、刑事それぞれみんなやるわけであります。従つてどの裁判官も、民事の裁判もするし、同時に刑事の裁判をもするということであります。
○長谷山行毅君 それは能率的に見れば、民事専門、刑事専門といつたほうが能率的なようにも考えられますが、どういう根拠でそういうふうな担当をきめておられるのか。
○説明員(鈴木忠一君) 御承知のように最高裁判所の裁判官は広く人材をあらゆる方面から求めておりますので、必ずしもずつと法律家としての生活をして来た人ではないわけです。従つて民事部、刑事部というように分けるとなりますと、いきおいこの部の構成というものから見て、十五人をどういうように組合せるかということについて、若干困難が生ずる虞れがあると思います。 それからもう一つは、最高裁判所は下級裁判所に裁判官としての範を示す意味もありまして、従来裁判官が専門化されておるという点については、利益な点もありますけれども、若干裁判官としては片輪になつてしまう。民事はやれても刑事はやれない、刑事はやれても民事はやれない、少年事件はやれても普通の民事事件はやれない。そういうこともありまして、それに新らしい行政法に関する事件なども分野が開けて参つたのでありますから、裁判官ができるだけ一部の裁判官に局限されないで、事務をできるだけ平等に皆に扱わせるというようなことをも下級裁判所に対して要望しておる向きもあるようなわけです。そういう面から申しましても、従来のように裁判官を各民刑に分けてするということよりも、皆が衆智を集めてあらゆる事件を処理し得るようにしたほうがいいのじやないかというので、現在のような形になつておると思われます。
○長谷山行毅君 現在の最高裁の調査官というのは何名おりますか。そうしてその調査官はどれほどの事件を担当し、その処理の能率の点等においてはどうであるかお伺いしたい。
○説明員(鈴木忠一君) 現在最高裁判所の調査官は全部で二十三名おります。そして二十三名が民事と刑事の調査官に分れておるわけであります。民事の調査官の中には勿論行政事件の調査等も含まれておるわけなんです。そして事件は最高裁判所に受理されますと、事件が起りますと、それは番号順で各小法廷に順境をして分ける。そしてその分けた事件について調査官に調査を命ずるわけなんですけれども、これは民事のほうは原則として専属の調査官、或る小法廷に専属の調査官というような形をとつておらないわけです。ただ刑事のほうは多分三ヵ月交代かで専属的になつております。ですから一般的に申上げれば、或る小法廷に専属した調査官ということでなくて、その事件の調査官ということになつておるわけです。そして調査官の手で記録を調査し、或いは上告趣意書を作らせて意見を付け、疑問の点を調べて、更にわからない点は疑問を付して裁判官のほうに調査の結果を報告をするわけです。裁判官はそれを見てなお足らない分があれば調査を命じ、それで十分な場合にはそれに基いて結論を出すわけなんですが、調査官は御承知の通り裁判機関でなくて、ただ裁判官のいわば手足となつて調査をするだけでございますから、調査報告をすれば、その調査報告について不足の点があり、質問の点があれば、更に裁判官に呼ばれて質問をされ、調査はさせられますけれども、結論を出す際には調査官というものは無関係で、同席をして意見を述べたりするということはしておらないわけでございます。
○長谷山行毅君 この調査官の人員が不足である、手不足であるということが事務能率を上げるために支障になつておるようなことはないですか。
○説明員(鈴木忠一君) 今申上げましたように、調査官の調査に基いてそれを鵜呑みにして裁判官がどんどん事件を片付けるというような仕組みでありますれば、調査官の人数を増せば事件を裁く率が上るわけでございますけれども、調査官を幾ら殖やしましても、調査官からの調査の結果、報告が裁判官の手許に参りましたのを、裁判官が更にそれを審査をし、そして結論を出すわけですから、仮に調査官を非常に現在の一倍半、或いは二倍にしても、調査のほうは進んでも、調査の結果が裁判官に渡されたときに、そのスピードを現在以上に増すということは、やはり困難じやないかと思われるのです。従つて従来も調査官の数が少いんじやないかというようなことを事務局のほうで言われたこともございます。多分一年くらい前は二十一名だつたと思います。で、調査官の数が若干少いじやないかと言われたので、現在二十三名になつておりますけれども、或いは若干増すということも考えられるかも知れませんけれども、今申上げたように、判決になる過程が今申上げましたような実情にありますから、調査官を殖やしても裁判官の処理能力というものに制限されるのでありますから、そこのかね合いで大体今の程度、或いは若干三、四角くらいは増してもどうかというようなことは、事務局のほうでもよりより考えておりますけれども、調査官の数が特に少いために遅れている、事件の処理能力が不足しているのじやないかということはまあ考えなくてもいいんじやないかと思つております。
○羽仁五郎君 この法律案についての最高裁判所のほうの御意見で我々が十分納得し得ないのは、この二年間延長するということが、二ヵ年の延長で解決するのかどうかという点ですが、これはさつき小委員長からもこの点についてのお尋ねがあり、あなたのほうからはいささか楽観的に過ぎるかも知れませんという御答弁があつたので一層不安に感ずるのですが、ただこの法律案についてもう少し最高裁判所のほうとしては、二ヵ年で以て解決するというふうにお考えになるのか、それとも若し解決しないとすれば再び延長を希望されるというのか、それともやはり小委員長からお尋ねにもあつたように、もつと根本的な点についての考慮をなしつつあるというのか。それらについてのお答えがどうも政府のほうもあいまいのようで、御苦心をお述べにはなつたのですが、どういうお考えでいるのかということがはつきりしないのですが、これらの点についてもう少しはつきり伺つたほうがいいじやないかと思うのですがどうなのですか。その問題は、何故にそういうことを伺うがと言いますと、我々としては最高裁判所がその本来の使命というものを発揮されることに非常に大きな期待をかけております。それで新らしい制度ではあるが、併し同時に新らしい制度でありますし、そして又最高裁判所の最高の使命というのは、そうしばしば発揮されるということはあり得ないだろうと思うのですね。併し必要があればその最高の使命を発揮ざれる、現に最近輿論などの指摘するところなどを見ても、いわゆる憲法の禁止しておる軍備と、それから現在政府のなしつつあるところの行為というものについての問題は、単に或る政党が主張しているばかりではありません。朝日や毎日や読売やその他の新聞を見ましても、最高裁判所が形式的にこれをイヴユイドというか、逃れるというような態度をとられると、これは最高裁判所に対する国民の信頼というものに重大な影響があると私は考えるのです。これは事務局を通じて甚だ恐縮でありますが、今私の考えておるような考えが参議院の法務委員会にもあるということは是非伝えておいて頂きたいと思うのですが、最近起つておるいわゆる最高裁判所ではない一般の裁判所においての事件というものを御覧になつても、要するに唯一の目的は、我々が今努力しなければならないことは、裁判に対する国民の信頼というものを得るか得ないかということにあると思うのです。この際若しそれが得られなければ、民主主義的な裁判の制度のみならず、民主主義そのものさえ危なくなつて行つてしまう。国民が最後の救いの場所として裁判所を考えることができるのかできないのかということは非常に重大な問題を含んでいます。それでそういう問題との関連においてこの法律案についてもやはり私どもとして最高裁判所のほうのお考え、それから政府委員のかたの御説明を伺つておる間に、何だか最高裁判所についでの取扱が私個人とは、一人とは限らない、国民が持つておる最高裁判所に対する新らしい、そして最高の義務というものに十分副つておられないのじやないかという感じがするのです。若し不幸にしてそういうことが現在行われつつあります警察予備隊違憲訴訟というようなものについても、最高裁判所が単に昔の日本の、三権分立明らかでなかつた、又国民主権も明らかでなかつた時代の裁判所のような立場を続けて持たれ、或いはそうでないまでも、現在一般裁判所と同様のお考え方をとられ、或いはそうでないまでも、最後に最も重要な点は、形式主義に陥られるようなことがあると、これは国民の最高裁判所に対する期待というものは、一挙にして失われてしまうだろうと私は思うのです。これは必ずしも私一人の意見じやないだろうと思うのです。新聞に現われておるものは、或る意味において輿論の或る部分を代表していると思います。折角新憲法によつてできたところの最高裁判所の制度、そうしてその最高裁判所が憲法を守るという最高の使命を持つておられる。そうして又我々が代表しておるところの国民というものも、政府がどんなひどいことをしようと、そうして又いろいろなところでどんなことがあろうとも、最後に最高裁判所が公平にして正しい判断をして我々を救つてくれるのだという期待を持つことができるのかできないのかという私は最初の大きなケースに最高裁判所は臨まれておるように思うのです。このケースを軽々しく、勿論軽々しくされるお気持はないでしようが、併しこの今議題になつている法律案に対する御説明などを伺つても、ややその点について或いは私の杞憂であれば甚だ仕合せでありますが、最高裁判所がみずから持つておられる、そうして最高の使命、それに対して国民の期待が満されるか或いは裏切られるかということは実に重大な問題を含んでおる。この点について十分お考えになつておるということを私は信じますけれども、強い希望としてお伝え願いたいと思うのです。どうか昔からの考え方を脱却せられて、そうして又形式的な解決方法というものをお考えにならないで、何よりも現在国民がさまざまな問題、そして又さまざまな紛擾をも伴つているこうした現在の社会情勢の中で、軍備の問題について重大な関心を持ち、そしてそれについて合法的に国民の問題を解決する最後の場所が最高裁判所である。その最高裁判所がそれを或いは形式的に処理し、或いはこれを避ける、回避するというような如何なる口実によるにせよ、その国民が最高裁判所に持つている期待というものが報いられないという感じが起つたらば、これは実に一大事だろうと私は思う。で、その点をこの法律案との関連においても感ぜざるを得ないので、どうかその点を御認識願いたいというふうに思うのです。この際この法律案についても今少しくそういうような関連におきましても、何故こういうしばしば、仏の顔も三度と言います。けれども、繰返して延期なされるかということですね。そこには何か根本的に原因があるのじやないか。さればこそ先ほど小委員長からももう少し根本的な点についての改革というものについての必要があるかないか。又あるとしたらばどうすればいいのかということについてのお考えを願つたほうがいいのじやないかと思うのですが、最高裁判所はみずから事務に追われているというふうなことがあるのじやないですか。それともそうではなく、悠々として大所高所から最高裁判所の使命を果すというような余裕を特つておられるのかどうか。そういう関連において最高裁判所のお考えと、それから政府のほうのお考えと両方伺つておきたいと思うのです。いわんや政府が現在再軍備の問題について政府の苦衷は我々も了承します。よく了承しますが、併しながら眼前の政治的な問題の解決というものに眼がくれて、そして民主主義の根本である最高裁判所の最高の使命というものに対する国民の期待を裏切られるということがあると、これは根本的な問題になつてしまう。そういう点についても政府としてはフェアーで、そして慎重な態度を勿論とつておられるというふうに今までのところは見ておりますし、又そう信じておるのですが、その点について若しお答えが願えればお答えをして頂きたい、そういうふうに思います。まとめて申上げれば、第一にこの法律案について、この延期によつて解決するというふうには窺えない。従つてもつと根本的な解決について、少くとも最近の機会において或る程度のまとまつた結論が出されるようなことがあるのかどうか。国会の権威に関する問題です。法律をきめておいて何度も延期をやるというのは、やはり国民に対する影響は甚だ面白くないのです。ですからその点について今少しくはつきりしたお考えを最高裁判所のほうからも、政府のほうからも伺つておきたい。第二には、この法律案との関連において、最高裁判所の最高の使命、そして現在特に今日の穏かでないところの社会情勢において起つておるところの軍備、憲法の禁じておるところの軍備というものについて起つておるところの問題について、最高裁判所がいやしくもこれを形式的にこれを呑まれるというようなことがあるならば、国民の民主主義に対する最高の期待というものが地に墜ちるというふうに思うけれども、その点についてはどういうふうにお考えになつておるか、以上二点について最高裁判所と政府と両方から考えを伺つておきたい。
○政府委員(佐藤達夫君) この延期によつて問題が解決するかどうかという点を中心にしてのお尋ねに対しましては、先ほども少し触れましたのでありますが、我々といたしましては、これは空論としては或いは二年過ぎたならば件数が非常に減るかも知れん。そういうときには特例の御厄介にならんでも済むかも知れんと、これは理論上言えるかも知れませんが、今の現在の状態から言えば到底そういうことは考えられないことでありますからして、一応これは暫定的なものと申上げなければならんと思うのであります。それで先ほど申上げましたように、昨年来ずつと引続いて今の根本問題、根本的の解決方法というものを実は我々としては誠意を尽して審議をして来たと思うのでありますが、そういうことで研究を続けておるわけであります。それでその研究の結果が我々の自信のある結論として出て参りますならば、恒久的な法律としてこれをこの二年の期間満了前に成べく早くはつきりした法律の形で決定的なものにしたいという気持でやつておるわけであります。 ただ今のお話にも出て参りますように、なかなかこの裁判所全体というものに対する国民の期待というものをどういうふうにして満足させるかという大きな高い所から見て行きますと、第一今の最高裁判所が負担の過重で苦しんでおるということが今の高い眼から見れば、実は国民の裁判所に対する期待に相反しておるということになるわけであります。従いましてその負担の過重を合理的に調整して裁判所の全体の機能というものをひつくるめて国民の最高の期待に合致させるにはどうしたらいいかということになつて参りますと、これは先ほども触れましたように、いろいろな案が出て参りますけれども、これには必ず反対論が出て来るのであります。そういうものも我々としては目下苦労を重ねて研究をしておるということでありますからして、その点は十分御了承願いまして、一刻も早く或いは又国会の御援助を願わなければならんかと思いますけれども、立派な法制を確立したいと考えておる次第であります。 後の問題につきましては、まあこれはもつと深い問題でありまして、又抽象的なお言葉のようでございましたから、よく承わつておきますということで御了承願いたいと思います。
○説明員(鈴木忠一君) この特例法をニヵ年延長することによつて最高裁判所が現在の負担の重圧から免れることができるか、これによつて最高裁判所の負担の軽減が解決ができるか、確実にできるかという御質問でございますが、これに対しては最前も申上げましたように、確実にできるというようなことも私としてもやはり申上げられないわけなんです。ただ最前も説明を申上げましたが、いろいろなまあ事件を処理をするに、非常にその速度を増加させる材料は二、三あるわけでありますから、それから推しますと、少くとも現在のような重圧さはないのじやないか、こう考えるわけでございます。これは確実な科学的な結論としては事の性質からも申上げられないわけでございますけれども、少くとも二年経てば現在のような状態からは脱却し得るということは、これだけは確実に申上げられると思います。そんならば二年経つてからのことはどうすると言われますと、これはやはり政府委員からも御説明のあつたように、その間に恒久的な上訴、上告制度について考えて頂いて立法をして頂く以外にないのではないか。特例法によつて最高裁判所の負担を軽減するということも窮極は憲法が予定しておるところの最高裁判所の機能を十分に、フルに発揮させるための措置なのであつて、単に最高裁判所の裁判官十五名の負担の軽減をする、させるということが直接の目的ではないと私は思うのであります。その点から言えば只今おつしやられたように、国民の納得の行くような、憲法が予定しておるような最高裁判所の機能を十分に発揮させるためそれを目的としてこの負担軽減を措置法で図つておるのだというように了解をしております。それから最高裁判所のみならず裁判が国民の感情、国民の生活、そういうものと遊離をしてならないことは、これは御承知の通りでございます。ただ現に再軍備に関係して或る事件が最高裁判所に繋属して審理中でございますが、これは具体的な事件でございますから、仮に最高裁判所の判事がここへ出ましても、その事件についてどうしようこうしようというような意見がましいことはあらかじめ申上げられないことだと思いますし、まして私ども裁判官でない事務局のものでございますから、最高裁判所の裁判官があの事件についてどう判決をすべきか、どういう態度をとるべきかというようなことは、第三者として申上げられないことは言うまでもないわけですけれども、最高裁判所の裁判官におきましても、十分事案については審理をし、そうしてこの憲法及び法律の命ずるところに従つて裁判をするだろうということは疑いもないところだと存じます。御趣旨は、私のほうからもそういう御発言があつたことは裁判官に伝えるつもりでございます。
○羽仁五郎君 私がさつき申上げましたことについて、要点は要するにこの特例法の延期ということの必要が起つて来るのは、現在の法制が不完全であるということから来るのか、それとも旧法制から現法制に移行する際に過渡的に起つておる現象なのかという点についての御説明が十分伺い得なかつたように思うのです。それで後者であるならば大した問題がないと思う。併し前者であるならばそこに大きな問題があるのではないかという点。それから第二の問題について、今最高裁判所の事務局のほうからのお答えの中にありましたが、私が申上げておることは決して言うまでもない、我々が立法者として裁判に対して干渉がましいことを申上げたり、或いはそれに対して不当に影響を与えようとして申上げておることでは全くない、そうじやなくして且つ又そういうふうな意見を申上げたことについての根拠がないわけでもない、根拠は二つあると思いますが、一つは歴史的な最近の占領期間中に、占領という形式において日本の裁判のフルに機能が発揮できなかつたことは国民に非常な失望を与えております。それから第二は、最近の新聞を通じて輿論が最高裁判所が決して形式的に処理されるというお気持がないだろうと思うけれどもという心配を現わしておる。この二つの根拠に基いて最高裁判所の使命と、殊にそれが憲法が命じておるところの使命、それからそれに対する国民の期待というものですね、又その期待が裏切られた場合の恐るべき影響というものについての注意を喚起しようとしたのでありまして、でその点についてはどうか只今のお言葉にありましたが、勿論誤解してそういうことをおつしやつたのではないというふうにも私は思いますが、誤解があつてはならない、同時に併し我我が立法の関係から現在の民主主義的な立法というものが、国民をして合法的な手段を尽して争う、そうしてそれには合法的な手段というものにすべての信頼をかけるということを期待することにおいて、最高裁判所が同じ考えであろうという確信を持つておる、又期待を持つておるということを強く表明する必要はこの際あるように思うのであります。でどんなにひどい目にあつても、最後に裁判で以て救われるという気持があるかないかということは、非常に大きな問題ですから、その点を考えて頂きたいと言うのであつて、現在進行中の裁判に対して具体的にこれに不当なる影響を与えようという所存は私どもにおいて毛頭ない。併しそういう誤解を恐れて今申上げておるような、どういうひどい目にあつても、最後に裁判所が救つてくれるのだという気持が国民に揺らいでしまつたら大変なことになる。要するに手段を選ばず最後の生命と幸福を護るというそういう態度に国民が出ても、我々としてこれを咎めるようなことができない、又そういう立法を考えることもできないということを申上げておかなければならないと思う。
○委員長(伊藤修君) では本案につきましては衆議院においてまだ本審査をいたしまして、参議院においては予備審査でありますから、この程度において本日は散会いたします。 午後零時十七分散会