法務委員会 第63号
- 発言数
- 123 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/07/28
会議録
○委員長(小野義夫君) 只今より委員会を開きます。 本日は先ず長良川堤防工事事件を議題に供します。 なお本日政府委員として只今御出席のかたは、農林政務次官小川原君、法務府検務局長岡原君、民事訟務局長石井君の各位が御出席になつております。 本件に関しまして質疑の通告がございます。この際許可いたします。伊藤君。
○伊藤修君 長良川堤防決壊事件についての当委員会におけるところの決定に基きまして、先に調査をいたしましたのでありますが、その調査の結果につきまして、数点の箇所について政府の意見をこの際お聞きしておきたいと、かように存じまして質問を申上げる次第であります。 大体岐阜県におけるところの長良川の地位というものは、御承知の通り、木曾、長良、揖斐、この三大河川の合流点をなし、そこにでき上つたところの一つのデルタであつたのであります。従つてこれらの三大河川の氾濫によりましては、岐阜県の今日の農耕地帯と称せられますところの即ち濃尾平野のその大半というものは、この河川の温水によつて常に水底に埋没するというような状態であつたのです。遠く奈良朝以来、この現実の下に農民の辛苦というものは多年に亘つておつて、これらの農民の食生活というものは、常にその天災によつて奪われておりた次第です。従つて当時の為政者といたしましても、この三大河川の改修というものに対しましては、鋭意努力を拂われ、後年徳川時代に至りまして、幕府は薩摩に命じて、この三大河川の修築に当らしめたのであります。当時の予算において十四万両を以て、幕府は薩摩に命じ、薩摩はこれを引受けるに至つて、国力を挙げて、この三大河川の修築に当つた次第であります。然るに河川の工事は難艱を極めまして、遂にはその費用は四十万両を超すというような巨額の費用を支出するに至つた。これらについて工事奉行の渡邊靱負は、自分の責任において超過額の負担をなし、以てこの工事を完成せしめ、幕府に対するところの責任を果す。言い換えれば、国に対するところの治水工事の完或の責任を果し、他面薩摩におけるところの財政に対して一大危機を訴え、後年、明治維新に至るまでこの工事費の負担を税金によつて賄つておつたというような実情であつた。薩摩のごとき、財政を窮乏に隠れたこの責任に対しましては、工事を完成し、その工事を幕府に引渡した、即刻、その現場において、その責を負うて皆八十有余名の人が屠腹して相果てたという、有名な薩摩義士の遺跡すら残されておるのであります。今日これらの人々の魂を祭るために、三大河川の合流地点に治水神社として県民、農民すべてが、これを崇高の的としておる。かような過去の歴史においても残しておるところの、この岐阜県におけるところの治水工事というものは、私岐阜県百六十五万の県民の生死を左右するところの一大事業であるのです。故に以来明治政府及び大正、今日に至るまで、この治水工事の完成については、努力され、最近ようやくこの完成を見たのです。従つてこの治水工事のよつてもたらすところの岐阜県におけるところの食糧生産というものは、県民を賄つて余りある。その余剰を県外に供給しておるような実情にいたらしめた。かような治水工事によつて保たれるところの農村というものは、一朝山間地において雨が降る場合において、即ち昔から言い伝えるところの四時、八時、十二時、こうした時差を以て平坦地に流れ込み、この水は却つて逆流するというような現情にあるのです。即ち耕地自体は水位より下にある。又水位と殆ど差異のない地位にある。従つて水というものに対するところの防禦といいうことは、用排水と共に苦難を予想しておるのです。故に堤防の持つところの意義というものは、農村生活すべてが支配されておるものと言つて差支えないのです。故に堤防の高低ということは、おのずからその勢力によつて定まる。慣習によつて定まる。徳川時代に定められたところの慣習、即ち尾張藩の百万石に対する岐阜県の堤防は、少し低い。又その堤防よりは加納輪中、いわゆる加納藩の堤防のほうが低い。又加納藩は大垣輪中、大垣藩の勢力よりは低い。又その他各高須、本件のごとき高須輪中においては、これより又低い。こういうふうに堤防に対する認識、沿革、こういうものが錯然としてここに定まつておる。こういうような状態にあるところの治水工事というものにつきましては、政府みずからにおきましても、十分これらの事情は認識されておることと存ずる次第であります。従つてこの堤防に対しまして、ある種の工事を行うという場合におきましては、この堤防の持つところの重大性、單なる堤防においても勿論であります。然るに岐阜県におけるところの堤防、いわゆる三大河川の治水工事の全部を堤防によつて負担しておる。この堤防工事、堤防に対しまして或る種の工事をする場合においては、この重要な事実というものを認識の上でなければならないことがあるのです。 然るに建設省におきましては、この堤防に対して、このたび農林省に対しまして、用水路の取入れ口の工事を許可せしめた。その工事の過程及び結果に対しまして、未だ竣工届出も出ていない。建設省はみずから負担するところの、この堤防に対するところの責任というものをどう考えておるのか。先ずこの点からお伺いしたいと思います。建設省、いないのですか。
○委員長(小野義夫君) 建設大臣は来るはずになつておりますが、まだ……。
○伊藤修君 建設省の役人の人はいないのですか。
○委員長(小野義夫君) 只今農林政務次官と……。
○伊藤修君 それでは、只今申上げましたような事実に基きまして、このたび農林省において行われたところの工事について、何故この工事の契約を随意契約を以てなされたか。この点を先づお伺いしたいと思います。
○説明員(櫻井志郎君) 大成建設と随意契約をしておりますのは、この工事の前に用水機場を指名競争入札にいたしまして、それを大成建設が落札した。そのあと引続いて随意契約するほうが、工事の段取り等において都合がよろしい。こういう見解を現地の事業所がとりまして、随意契約をした。こういう報告であります。
○伊藤修君 この第一期工事は、予定価格が三百三十七万円である。然るに請負価格は、二百五十五万円、いわゆる技術者におきまして三百三十七万円余を使うにあらざればこの工事はできないと予定をお立てになつて、勿論請負いせしめる場合においては、これより低からしめる数字を以つて請負いのとられることは当然のことでありましよう。併しその差が百万円ほどもあるような総額の低い入札金を似て請負わしめるということは、それ自体その工事の内容の不完備であるということを予想されるではないか。さような不合理な僅少価格で以て請負いを許すということは、私は金額のみに囚われまして、工事の内容に対しまして、少くとも当初はこの基本的内容をおろそかにしておるという誇りは免れないと思うです。又これは、不合理な数字を以て請負わしめるということは、本来の工事のあり方として目的を達することができないだろう。かように考えられます。この点は如何です。
○説明員(櫻井志郎君) 只今御指摘の点でございますが、私の推定を多少加えまして申訳ないのでありますけれども、当然この価格が指名競争の場合の最低入札価格であつたというふうに私は了解いたしておるわけであります。従つて指名競争の場合にこれが最低入札でありましたならば、その価格を出した者を採用する。こういうことだと推察いたします。
○伊藤修君 いわゆる最低価格というものは三百三十七万円じやないですか、その価格を割ること甚だしい二百五十五万円を以てせしめるということは、工事それ自体の内容の欠陷をみずから是認しておると言わなくちやならんというのです。書類面においては、そう拝見できるのです。それとも二百五十五万円というものが、最低価格ということが証明されるところの証明ができますか。
○説明員(櫻井志郎君) 三百三十七万円というのは、これは設計価格でございます。設計の価格でございます。
○伊藤修君 それでは設計価格といたしまして最低価格二百五十五万円ということが、あなたのほうの記録に厳然として残つておるのですかどうですか。
○説明員(櫻井志郎君) 私のほうへの報告として大成建設が二百五十五万円で入札をし、その入札を最低として採つたという、こういう報告です。
○伊藤修君 そのことは分つているのです。三百三十七万円の予定価格、設計価格によつて現実に二百五十五万円で請けたという事実は明らかなんです。私の言うておるのは、少くとも抜術者が設計価格として三百三十七万円を以てするにあらざれば、この工事は完成しないという予定をお立てになつたにもかかわらず、現実の請負というものは二百五十五万円を以てするという、この工事担当者の申出というものは、その儘受入れてやるということそれ自体が、工事の内容の欠点というものを是認しておる形になるのじやないか。或る一軒の家を百万円でなければ建たないというものを、俺は十万円で建てるという、それを許すということは、それ自体において不合理だというのです。それを指摘しておるのです。
○説明員(櫻井志郎君) その点につきましては、確かに非常に設計価格より安い場合には、確かにそれだけでやれるかどうかという点について疑問が出ると思いますが、三百三十七万円に対して二百五十五万円、確かに相当開きがある。開きがあるから、或いは施工の点について何らかの将来まずい点が出やせんかという、疑問を持つべきかどうかという点に立ちますと、多少御指摘のような或いは意見があると思います。ただその契約につきましては、事務局長がこれで契約をいたしておりますので、これがまずかつたか、よかつたかという点につきましては、私からちよつと今はつきりした御返答を申上げることはできない。
○伊藤修君 現場がそういうことをやつた場合において、これを監督する上司というものが、常にそういうようなことがあつてはならんということを監督さるべき筈です。この問題は、すでに久しい前に起つておる問題ですから、それに対して中央官庁が適切な、当然の契約であつたかどうかということを、今日においてなお且つ分らんという馬鹿々々しい御答弁では承服できないのです。ただ安ければいいという理窟ではないと思います。少くともその工事の目的を達成するに必要欠くべからざるところの限度というものは、おのずから常識的にも、価格的にも、計数的にも出て来る筈です。それを常識を逸脱した不当な安い値段を以て請負わしてしまつた。それを是認して、以て足れりという在り方が、それ自体不正行為を容認することになるというのです。それに対して中央上司としてのあなたたちの立場が、今日なお分らないというような在り方はよくないと思います。将来の点にもあることであります。如何です。
○説明員(櫻井志郎君) なお研究してお答え申上げます。
○伊藤修君 研究じやないですよ。そんなことは今日始つた問題じやない。
○説明員(櫻井志郎君) 今おつしやいました三百三十七万円に対して、二百五十五万円が非常に不当な内容を包含しておるか、安過ぎるかどうかという問題につきまして研究……。
○伊藤修君 そういう具体的の問題を取上げてお尋ねして、而もこれは当然御研究になつて、不当であつたかどうかということは、今日国会が質問する場合において、あなたたちはこれに対して答弁の用意をなさるべき筈なんです、又そうでなくとも普通の場合においても、かような本当な安い価格を以て請負契約を容認なさるということが、国家の仕事として宣しくないと思うのです。これに対して後刻までに研究して頂きたい。後日じやないです。
○委員長(小野義夫君) ちよつと伊藤委員に申上げますが、只今建設省から河川局長目黒君、河川局管理課長宮前君が出席されております。
○伊藤修君 関連して、先ほどあなたが随意契約をなされた。それは現場において関連性を持つておるから云々という御答弁を伺つた。法的にどういう根拠を持つでおるのですか。
○説明員(櫻井志郎君) 法的の根拠といたしましては、会計法第二十九條但書、それから予算決算及び会計第九十六條、同臨時特例第五條第一項及び昭和二十二年八月五日附蔵計第四百三十五号、大蔵大臣通達、以上の法的根拠に基いて随意契約をしておる。
○伊藤修君 随意契約の場合には会計法の二十九條、予算決算及び会計の九十六條によることは当然です。その九十六條に列挙された場合の一乃至二十四、このうちのどれにはまるのです。どれに基いておやりになつておるのですか。
○説明員(小川孝君) 一番最初の條項にございます関連事項というところではないかと思います。
○伊藤修君 どこにあるのですか、一番最初の……。
○説明員(小川孝君) 一番最初の條項に、……私ちよつと條項は覚えておりませんが、関連事項というのが、三項目か、四項目くらいにあると思います。
○伊藤修君 関連事項は何の関連事項ですか。読み上げますれば、第一は契約の性質又は目的が競争を許さないとき、第二は、急迫の際競争に付する暇がないとき、これにも入らない。第三は、国の行為を秘密にする必要がある。これにも入らない。第四は、予定価格が五十万円を超えない工事若しくは製造をなさしめ又は予定代価が三十万円を超えない財産の買入をなすとき、第五は、予定賃借料の年額又は総額が五万円を超えない物件の貸付をなすとき、第六は、予定賃貸料の年額又は総額が五万円を超えない物件の貸付をなすとき、ずつと読んだつてありやしませんよ。
○説明員(小川孝君) この條項は、後ほどお目にかけます。
○伊藤修君 一つ一つでなく、全部それは御答弁できなければ困るですね。 いま一点は、仮に百歩讓つて、これが随意契約ができると仮定いたしましても、最初の請負契約は二百五十五万円です。全体の工事が千五百万円、してみますると、第二、第三の随意契約の工事が一千百五十万円ほどが随意契約されておる。主体をなす本来の契約は一小部分にして、大部分が随意契約を以てなさしむるということは、会計法の本質から考えたところを逸脱するものである。脱法行為であるということは容易に窺えるわけです。かくては会計法を何のために定めるかわからないことになるのです。本末顛倒のあり方だと思うのですよ。こうしたあり方というものは是認でき難いと思うのです。これらの点に対しましては、我々としてこの間に何らかの事実があるということを我々は臆測せざるを得ないのです。この点に対して如何ですか。
○説明員(櫻井志郎君) 公共事業費が、その当時毎四半期ごとに認証されまして、年間契約を結ぶことができないという問題が、やはりこの随意契約が次々出て来る一つの原因でもあるわけです。
○伊藤修君 それは随意契約が次々出て来ると、そう仰せになりますと、およそ国の仕事はですよ、すべて四半期ごとに出て来るのですから、その場合において、最初の契約は一つ小さなものをやつておいて、あとは随意に国家はすべてなし得るという結論も出て来るのですよ。さようなことはあなた自身だつてお考えにならんと思うのです。この場合に限つてのみ次々と出された。だから止むを得なかつたという御答弁では、満足しかねると思うのです。若しその原則を是認するといたしますれば、全日本の会計というものは、その趣旨でもつて皆賄つても差支えないという議論になつて来るのです。さような不合理なことは容易に承認できないことはあなた自身でもおわかりでしよう。だからこの間におけるところの処置というものが適正でなかつたということは、私は断言して憚からないと思うのです。それをも今日なお且つあなたたちは正しいものであるとここに断言できるならして御覧なさい。過ちがあつたとおつしやるなら、私はあえてそれ以上追及しようとも思いません。それをお伺いしましよう。
○説明員(櫻井志郎君) ただ四半期別に出た場合にも、年度当初に見積りをとりまして、そうしてその当時許される範囲の契約はやりますけれども、あとは随意契約をやることがある。こういう意味で私さつき申上げたのでありますが、その点は、言葉が足りなかつた点は又追加しておきますけれども、この問題につきまして今の御指摘の点は、少くとも今日まで私どもが調べております範囲では、不正があつたという事実をまだ確認はいたしておりませんのでございます。
○伊藤修君 不正があつたかないかということは、検察庁において目下捜査中でありますから、あなたちの手を煩わす必要はないです。併し議論的に、かような工事を国家の仕事としてなされる場合において、あなたたちがなされた最初からの取扱いというものにおいて疎漏があるんじやないか、欠陷があるんじやないかということを指摘しているのです。それを今日御反省願うと共に、将来この種の事業をなさる場合におけるところの一つの注意を喚起する意味においても、これは明らかにしておかなくちやならんということです。で、この工事全体が随次に出て来た問題じやないことは御承知の通りです。あらかじめこれだけの工事を、千五百万円近いところの工事をなすということは、確定事実である。ただ会計年度の支出が四半期ごとに出るという意味において、区切つて随意契約をなされた。これは事実である。私のお尋ねすることは、そうした一貫した総額の工事というものがすでにあらかじめわかつておるにもかかわらず、それを予想しておるにもかかわらず、第一の契約は、法規に基いて契約し、その後の第二次、第三次の契約を、而もそれは多額の契約である。それを随意契約の名を以てなさしめたということにおいては、その間において我々は納得し難いものがある。その点をあなたたちに御反省を促すと共に明瞭にしておきたいと思うのです。如何ですか。 〔委員長退席、理事岡部常君委員長席に着く〕
○説明員(櫻井志郎君) まあ非常にむずかしい問題でありますが、実は私個人この問題を調べましたときに、なぜそのあとを随意契約に移したかということを反問した事実はあります。併し事務当局の説明といたしましては、先ほどから申上げました事由によつて随意契約をなしたと、この事実を申上げておる次第でありまして、確かにこれだけの問題を、なぜ区切つて競争入札にしなかつたかという問題は、私どもとしても当然研究の余地が残つておる問題でございます。
○伊藤修君 研究の余地の残つておることは言うを待たない。だから私のお尋ねしておることは、もう全趣旨は、さような請負契約自体において、すでに不合理なものがある。納得のでき難いものがある。従つてこれを契約に基きなされたところの工事全体というものに対して、こうした基本的な欠点を先ず包蔵しておるということを私は申上げるのです。而も会計法上において、今あなたが御答弁ができないことく、会計法のどこにも根拠がない。随意契約を許すところの根拠というものは毫末も発見できないと思うのですよ。これはこの質問の終るまでに、あなたのほうではつきり法的根拠をお示し願いたい。 次にこの工事の内容でおりますが、一体工事のヒユーム管をお使いになる。百三十六本お使いになる。それが現実に二本というものは破損をいたして使用に堪えないものである。それを補充せずして工事が完成されておる。元来の設計が百三十六本を要するという設計であつて、而も現実の工事というものが百三十四本を以て完成せしめたということになりますれば、これ自体においても、工事の内容において欠点があると言わなくてはならんと思う。この点如何ですか。
○説明員(小川孝君) 私のほうで調査いたしましたところによりますと、ヒユーム管を一本二メーター四十三の長さがございますものを二メーター四十と計算をいたしまして百三十六本でございますかの数が出まして、それを設計の数量にいたしたわけでありまするが、現実にそれを現地にセットいたしましたときに、今の一本ごとの長さが少し長いということと、継手の間に若干の余裕ができて来たことによつて、当初計画いたしました延長だけを設計いたしました本数が二本余つた。こういうことになつておるわけでございます。
○伊藤修君 それは我々の工事なら、私がやる工事ならそういうことも言えるでしよう。あなたがたはそれで以てめしを食つているんです。月給をもらつているんです。工事の寸法を誤つたとか、コンクリートの継手を厚くしたとか薄くしたとかいうことによつて、ヒユームが二本も狂いが出るほど、僅かの工事ぐらいにそれだけの狂いが出るような粗雑な設計自体に、それで役目が勤まりますか。やつて見たらこれだけ余つた。やつて見たらこれだけ足らなかつたということで国家の事業というものは成し遂げられるものなんですか。軍艦を作る場合において、鉄板の長さによつてこれだけの狂いができた。全体の調和が狂つてしまつては軍艦は沈没してしまいますよ。およそ科学者というものは、技術者というものは、寸分をも相違のない設計をなされることが当然要求されておるはずです。然るにそれを易々として、あなたは狂いができたから現実には百三十四本しか使わなくて、それで目的を達成したという御答弁では、余りにも国家の仕事というものが杜撰極まるものだということが言えるんではないかと思いますが、その点如何ですか。
○説明員(小川孝君) 私が途中で言葉が足りなかつたところがあるかと思いますが、当初申しましたようなことで設計をいたしますと、半本入れなければならない部分ができるので、半分ずつ入れるということで二本余計に設計をしたのだそうでありますが、実際にでき上りましたのは半本分をそこに入れなくても、総延長に到達してでき上つた。こういう実情になつているようであります。
○伊藤修君 それはどうも今日それを言訳をなさるつもりでお考え下さつた御答弁でしようと思いますけれども、これは微々たることです。微々たることでありますけれども、国家のお金というものは、国民全体から絞り上げたところの血と汗の集結です。そのお金を使う場合において、我々はかりそめはもこれをゆるがせにしてはならんと思うのです。たとえ半本の資材においても無駄にしないように考えるべきです。我々が一事業を行う場合においても、そういう考慮を以て事業が経営されるのです。みずからの財産をみずから管理する場合と同様な注意義務を持つべきことは、公務員に課せられたところの最大義務であろうと思うのです。にもかかわらず、そうしたロスの出る設計というものは、それ自体に私は欠如をしておるものがあるのではないか。善良なる管理者の注意義務を怠つておると言わねばならないと思うのです。私はこういう点は、のちの工事にもある点でございますから、十分御注意を願つておきたいと思います。 次に、この工事の主要部分をなすセメントでありますが、これを何のために各会社から買入れたか。これは勿論、当時のセメント不足から来るところの一つの現象でありましよう。これは是認できるといたしましても、当時の輸送状態の惡い場合におきまして、何のために工事現場の直前に近い所にある大須駅にこれを全部集荷せずして、東海道線の穂積駅に集荷し、或いは大須駅に集荷し、殊更に穗積駅から何トンも運んだということの不明朗な状態に置かしめた。こういう点に疑惑が持たれる。果して所要の一千七百袋というセメントが、この工事に完全に使用されたかどうかということは、今日一般県民の疑惑の的となつておるのです。で、我々が率直に考えましても、当然大須駅に集荷され、そうして工事現場に運ばれてこの工事のために使用されることが容易に想像できる。にもかかわらず、遠く不便極まる穂積駅にこれを集荷し、そうしてこれをトラツクで運んだ。而もどこのトラツクによつて運んだか、さつぱり不明瞭である。果してこの所要のセメント数量をこの工事に全面的に使用したかどうかということは、私はどうしても考えられない。何のために穂積駅にこれを集荷したか。それをお伺いしましよう。
○説明員(小川孝君) 各駅に分散いたしました理由につきましては、私ども今わかつておりません。
○伊藤修君 わかつていない点が、これで三点あるのですが、それじや全部わからんことになつてしまうのです。一体あなたたちは、この事案が発生して多数な国民が迷惑しておるのです。今日に至るまで、なお且つその実情がわからんということで、その職責が果せますか。そういう点は十分、今日に至るまでそちらでお調べになつておくべきはずです。又疑惑を当然差挟むべきことです。何のためにそんな遠い所に持つて行つたか。静岡で要るものを北海道に荷を下ろしたと同じことです。静岡で使うのならば、清水港に荷を下ろすということが一番常織的なんです。北海道に下ろして、そうして汽車や船で静岡まで持つて来なくちやならんというあり方を、どうして我々は、ああそうですかと言つて、是認できるのですか。又あなたたちとしてもこの工事に対するところの原因を究明する場合において、こうした点において注意を拂わなくちやならんのじやないですか。従つてそれから現場におけるところの、現実にその数量が引渡されておるかどうかという点も調べなくちやならんのじやないですか。だからこのセメントは横流しされておると言われるのです。今に至るもわからんでは、私はあなたたちは職責を果していないと思うのです。お調べになつておるのですか、いないのですか、一体……。
○説明員(櫻井志郎君) 事件発生間もなく、実は名古屋農地事務局の、名古屋建設部のほうから書類を全部警察に押収された関係がありまして、つい調査が手遅れになつたような次第であります。
○伊藤修君 書類は押收されましても、事実というものは残つておるのです。関係者は皆生きておるのです。お調べになろうという熱意があれば、十分お調べできる。我々さえできるのだから。あなたたちにその熱意がないのか、又これをあいまい模糊のうちに葬り去ろうとなさるのですか。それを私はお伺いしておるのです。
○説明員(櫻井志郎君) あいまいのうちに葬り去ろうなんていう気持は微塵もございません。ただ御指摘の点につきまして、私どもは気が付かなかつた点とか、調査が不十分である点、いろいろございます。併し気持の上では、勿論原因をはつきりし、責任は責任、それから対策は対策、それぞれ手を盡しておるつもりでございます。
○伊藤修君 まあそれもよくお調べ願わなくちやいかんと思うのです。 次に工事のあり方ですね。一体我々素人からいたしましてもそう思うのでありますけれども、専門家の意見を聞いても、この堤防の近くに管を設置すると、こうした場合においては、その堤防近くの護岸工事というものは十分になさるべき筋合であると思う。然るに本工事の場合においてはこうした工事過程が経られていない。この点はどうですか。
○説明員(櫻井志郎君) 通常の場合、樋管の周囲に護岸工事をやるのであります。
○伊藤修君 この場合においてしたのですか、どうですか、通常の場合やるべきだと私は質問しているのに、やるべきだという答弁は、何もあなたから聞くまでもない。この場合しておつたかどうかということを聞いておるのです。
○説明員(櫻井志郎君) やつておりません。
○伊藤修君 然らば本件においては、通常なさるべき当然な工事過程というものを経ていないという誹りは免れないと思う。この点においては工事に欠点があると言わなくちやならんのですがさようですかどうですか。あなたの答弁から見れば、そういうことじやないのですか。通常なすべき工事を、本件の場合においてはなしていない。今の速記録ではつきりしております。そうしますれば、三段論法から言つても、結果は本工事はその点において欠点があつたと、そういうことになるのじやないですか、首をひねつていらつしやらなくても、はつきりすることじやないですか。
○説明員(櫻井志郎君) この設計の内容につきましては、県のほうと打合せてやつたわけであります。
○伊藤修君 打合せた、打合せなかつたは別問題として、工事そのもののあり方について、我々は第三者として批判を加えるべきです。又あなたたちもそれを分析して考えるべきじやないですか。然るに今の抽象論としては、そうした場合においては護岸工事をなすべきである、こうあなたがはつきり御答弁になつておる。然るに本件の場合にはそれが施していない。して見ますれば、その結果は、本工事は完全なる工事とは言い得ないという結論が出るのじやないですかと、こういうのです。それをお尋ねしているのです。
○説明員(櫻井志郎君) 護岸工事がベターでないかとは言えます。
○伊藤修君 本工事の場合において、工事過程においてこれが四工程か五工程か区分されてなされたらしいのですが、その一工程ごとに工程を終り、次の工程に入る場合に、その次の工程によつて生じたところの士を前工程に振戻す。埋め戻すと。こういう工事過程を経られたらしいのですが、その場合におけるところの、この埋め戻しの方法がですよ。御承知の通り我々素人から考えましても、或る十坪掘つた土を以て他の十坪のところへ充填する場合に、そのままでは充填できがたいことが、これは普通の常識からでも判断できると思います。然るに本工事の場合においては、それを安易になされた。別に他から士を持つて来て補充充填したような形跡もないように窺えるのですが、この点は如何ですか。
○説明員(小川孝君) 別にほかから持つて来なかつたじやないかというお話でございますが、従前は、堤防の中に何もなかつたところへ新しく工作物が入りましたのですから、土の量からいたしますと、堤防の埋め戻しのほうの土の量からいたしますと、その分だけが算術的に申しますと多くなる勘定になるわけであります。従つて今御指摘のような、特にほかから土を持つて来なくとも現地が補足できたと、こういうことになります。
○伊藤修君 それは一応、素人風にはそういうことは言えるのですが、或る工事をいたしまして、掘つてそこに何か埋没すると、埋没しただけの容積だけは土が余る。理窟では。数字的には。……併し実際問題としては、そうあるべきものじやないのです。土が不足することが、これが普通なんです。又その土のみを以てして元の土のみを以てして埋め戻した場合におけるところの、その補強工事というものは軟弱であることは容易にこれは窺い知れるところです。例えば水道工事をやつた場合に、その水道の鉄管を埋めて、そしてその掘返した土をそのままそこに埋め戻すと、埋戻した当座は山になつております。暫くすると陷没してしまう。これが現実じやないですか。一貫目の石炭を割つて、細かに割つて、これを元に戻して、全部集積して目方を計つて御覧なさい。一貫目出るのですか。出ないのですか。絶対出ませんですよ。科学上これはどう説明するか。私は素人だからわかりませんが、併し現実はそうだ。一貫目の石炭を割れば、それを紛にして又全部集めれば、一貫目なくちやならんはずです。ところが目方をかければ一貫目に足りない。これは明らかです。やつて御覧なさい。そういうものなんですよ。それをあなたは、そんなことを安易におつしやるということは、それは工事に対するところの監督義務を十分盡されていないのです。それ自体が……。お考えになりませんか。御答弁できないですか。
○一松定吉君 黙つちやいかんよ。調査するとか何とか言わなければ。
○説明員(小川孝君) 今のお話の減ぜるという問題は、これは私は確かにお説の通りでございますが、その限度がどうなるかという。こういうことで、この場合には余りましたと言いますか、新らしく入りました工作物で、排除されます量で十分であつたために、特別にほかから土を持つて来ずに処理ができたのだと、こう考えております。
○伊藤修君 その十分であつたということは、原状の形に、いわめる形式的形、堤塘、堤の形に復元するということだけで事足つておるかということを私は言つておるのです。掘り戻した土だけを以て充填したのだから、成るほど形はできはずです。例えば水道工事をやつた場合に却つて盛り上るということはあり得るけれども、それは堤塘としての堅実さ、堅固さというものは保てない。掘り返した脆弱な土の盛り上げに過ぎないという形において、これが完了しているというところにこの堤防の脆弱さを残しておるのだということを指摘したのです。だからこれを補充して地突きで固めて、なお且つその上に盛り上げて又これを地固めしたという形跡は毫末も認められない。あなたは掘り返した土を入れて、それで一ぱいであつたからとおつしやる。だからいけないのだ。こういうのです。なぜ補充して地固めして、堤防としての堅壘さを築きあげなかつたが、形式的な復元に過ぎない。原状回復に過ぎないのじやないかという点を指摘しておるのでが、その点についても、工事の欠点を指摘できるのじやないか。こう申上げておる次第です。だからあなたの御答弁全体を総合しますと、空いたから補填して、これを、地固めしたというのは御答弁になつていない。その御答弁自体が即この堤防の完成に、いわゆる復旧に、元に戻すに不完備なものであつたということが、容易に窺われると思うのです。それ自体は、まあそれでよくわかるのです。速記録をあとでお調べ願えればわかるのですが、その程度にして置きます。 次にこの工事の基底をなすところの土質というものに対する調査が私は行届いていないと思う。成るほど堤塘の底部をなす、底のほうをなすところに粘土が少しあつた。併しその粘土層を掘り返して切り割つて、そうして今度コンクリート樋管を入れる。土台をなすところは微粒な砂地であつたことはこれは明らかなんです。これはあなたは土質学をやつていらつしるかどうか存じませんが、微粒な砂というものは、縦の圧力というものには強いものです。併しこれに一度水を加えますと、容易にこれが移動し易いものです。一切抜けてしまう。然るに本工事の場合においては、この粘土岩を切り割つて、そうして砂層の上に杭を打込んで、その上にコンクリートの基盤を置いて、そうしてその上に樋管を置いた。ヒユーム管を置いたという、こういう工事施行に見える。従つて、今度の場合において、河川の水位の圧力によつて、それが容易に砂地のほうを滲透して、堤外に、田圃のほうへ吹上げて来る。これは容易に素人でも考えられる。まさにその通り今日まで行われた。従つて、今日あの水を排水して御覧なさい。土台工事をそのまま置いて、その下に杭で以てこれを支えておる。その下の砂が全部抜けておるということが現実です。これは潜水夫の語るとこによつてもはつきりしておる。何故こういうような地層に対するところの手当、砂層というものが持つところの工事の基盤としてふさわしからざる基盤であるということに対する認識を欠いておつたか。これに対する適当な手当を何故しなかつたか。その点をお伺いします。
○説明員(小川孝君) 今御指摘の微粒の砂が底にありまして、それに対するどうして手当をしなかつたか。こういう御指摘でございますが、私共も今度の決壊を起した原因が、その点にあるのではないかというように考えておるわけでございます。
○伊藤修君 その点にあるということは、勿論あなたのみならず、一切の人がこれを認めておる。これはもう揺ぎのない事実であると思う。私のお尋ねしておるのは、何故そういうものの手当をなさらなかつたか。私は何故この点において知つておるかということは、私は自分でたまたまそうした鉱山の事業を自から経営しておる。その場合に砂層が出る。これに対する手当というものは、非常な困難を来す。専門家でもこれを如何にして堰き止めるか。そうして水にこれを対坑できるような施設の下に保全できるかということには並々ならん苦心が要る。然るに本工事の場合には、それがしていない。漫然それを放置して、河川の洗うままに任して置く。従つてそれが洗い去られれば、順次日を経るに従つて浸飾されて行つて、遂にこれが貫通してしまう。こういう結果を齎すことは、これは凡そ土工をやられる人ならば、技術的に十分わかるところの現実です。これも何らの注意を拂わずして、漫然この工事を成し遂げたということに大きな欠点があるじやないかというのです。今度の原因がそこにあるというならど、何故基本的にこれに対する手当をなされなかつたか。あなたたちにも技術官が相当おいでになるはずです。それをお尋ねしておる。それを知つておつてやらなかつたか。気がつかなくてやられないというのですか。その点は如何ですか。
○説明員(櫻井志郎君) 工事を設計し、現場の監督をやつておる者は、これは申すまでもなく、知つておつたことは言うまでもありません。併しそういうことが工事をやつた者の範囲の中で止まつておつたというところに問題が残つておると思います。
○伊藤修君 凡そ工事の現場の責任者、即ち監督者というものは、国家から任命して派遣しておるはずです。だからそうした事項に対して、自分の知識を以て判断つかん場合においては、上司の技術官にそれを伺いを立てて、適当な措置を構ずべき筋合いのものである。又その能力がないというならば、そうした者をこうした重大な工事の責任者として任命することそれ自体が誤まつておる。若しそんことが容易に行われて、国民がそれを甘受しなくちやならん。泣寢入りしなくちやならんと言つたら、国家の凡そなされる工事に対しては、安心を持つて我々は生活できない。そういう結果に至る。少くとも私たちは、国家の技術者に対しましては全幅の信頼を持つて、国家工事というものをお任せしておるはずです。然るに本工事の場合の如く、そうした容易に知り得る状態の地層にもかかわらず、それに対する特別な手当を考えずして、漫然工事の形式だけを完成せしめたということに大きな欠点があると言わなくちやならん。而もその砂の中で、砂はあれを密著して圧力をかけてやれば、砂としての一つの強固な層をなしておる。その砂の中へ杭をやたらに打込んでしまつて、而もそれは砂の下に入つていないということも言える。これは今度掘り返してみればわかると思う。この杭を打つならば、杭をたくさん打つか。或いは手当をするか。こういうような施設も必要だ。まあ聞くところによると、この杭自体も本数は足らんじやないかという説もある。この点にも私は大きな本工事の欠点があるじやないかと思う。 それから今一つは、こういう山になつた堤防、こういう堤防、この施設、水平面でなく、盛り上つた隆起面のこの施設の中には、先ほども申したことく、十分堤塘としての堅壘さを我我は確かめて置かなければならん。然るにこの工事の場合においては、この堤防の中で工事に使用した松材を林立せしめておつた。林のごとく、これを中に埋め込んでしまつた。思うに、矢板の支え木をそのまま放置したというように私たちは看取できたけれども、少くとも写真を見ますると、この堤防の中に林立さしておる。これだけの幅の堤防の中にそうしたものを残存せしめて、堤防自体の完備ということが完うできるかどうか。今日河川法から申しましても、堤防に杭一本打てないじやないですか。杭一本打とうとしても、河川法の処罰の適用を受けて、重罰に処せられるじやないですか。然るに本件の場合におきましては、そうした河川法によつて固く禁ぜられておる、そうした杭をそのまま堤塘の中に残存せしめて、そうして工事を終つてしまう。これは監督者がおるにもかかわらず、それを見過した過失があるじやないか。故意にやろうというならば、それ自体がその工事に対するところの大きな私は疑念を持たなければならんと思う。この点如何ですか。
○説明員(櫻井志郎君) 御指摘の通りです。
○伊藤修君 御指摘の通りで済めば……。非常に惡いことだということは、御自信になることだと存じます。又この工事に、コンクリート工事に使用したところの押板を、そのまま土工工事の中に埋め込んでしまつたということに至つては、私は論外だと思うのですよ。かような不誠実極まる、又土建工事としてあり得べからざるところの乱雑な工事請負人に対しまして、先に申したことく、随意契約をなさしめたということは、私は以ててのほかだと思うのですよ。その間において随意契約をなさしめたということと、工事の、こうした普通常識で考えられないような工事施工方法を容認した、黙認したという、この結果とを睨み合せまして、何らかの因果の関係があるのじやないかという疑いを持つことは、これは当然ですよ。こういう点に対して、当局はどういうふうにお考えになつていらつしやるか。或いは調査中であるのか。若し調査中であるなら、い つまでにそれが終るのか。お答え願いたいと思います。
○説明員(櫻井志郎君) 先ほど私申上げたんでありますが、その点について、今日までの調査では、いわゆる因果関係と言いましようか。不正と言いましようか。私どもは、まだ発見いたしておりません。併しそれを以て打切つたわけではございません。
○伊藤修君 発見されていないということは、誠に遺憾でありますが、私が今指摘しますがごとく、通常人ならばなさないという工事のあり方、常識で判断のできない、そうした不正な形の、違法な形、工事規定から申しますれば、常識から申しますれば違法です。そういう予想できないような乱雑な工事のあり方を容認するという結果がここにあるのです、明らかに。これは誰も否定できないです。現実に証拠が残つているんです。だから、こういう結果と、而もそうした法規上許されない。私から申しますれば、法規上何ら根拠がないですよ。あなたはあるとおつしやるけれども、あるというところを御指摘にならん以上は、あなたのあるということは架空です。随意契約として法規上許されない方法を以て、随意契約をして、この本工事をなさしめたとするならば、その間において何らかの疑義を挿む余地が十分あり得ると思うのです。それからあなたたちとしても、その点に対するところの、ただ今日においてはそういうふうに考えていないという安易な考え方でなくて、のちのち、今後あなたたちが国家の仕事を日常おやりになる以上は、こうした点は十分研究しておかなくちやならんと思うのですよ。又注意も、よくこの点について喚起しておかなくちやならん。そういうお考え方はないのですか。
○説明員(櫻井志郎君) おつしやる通りであります。私どもはこの問題について、今伊藤先生は、安易とおつしやいましたけれども、安易という気持は微塵もございません。非常に心を苦しめて、この問題の解決も当然でございますが、二度と再びこういうことを繰返さないという意味での努力を続けておるわけであります。
○伊藤修君 あなたのお気持もよくわかるし、又我々国民といたしましても、このことを二度と再び繰返されてはたまつたものじやない。生活の根抵を一朝にして壊滅せしめ、而もそれが国民の何ら與り知らざるところの原因、官吏のたまたまなされた怠慢、不正、過失、どれに当るか知れませんが、こうした一つの原因によつて、夢にも思わない災難をこうむるというあり方を今後繰返されてはたまつたものじやない。だから私は、この際苦言を呈するゆえんです。あなたちにおいても、今後国家の仕事を日常繰返される以上は、この点を十分注意されるべきであるということを指摘し、且つ本件に対するところの原因について、あくまで究明すべきであるということを申上げておく次第です。 この工事が、今まで指摘した、いわゆる端的に指摘した重要な部分だけによつても、十分窺い知れるごとく、即ち工事の欠陷によつて、この決壊が行なわれたということは、私はもう論議の余地がないと、かように存ずる次第です。当時の水位から考えましても、いわゆる警戒水位から考えましても、遥かに下廻つている。俗に河川堤外と称せられるところの河川の敷地にある桑畑が当時の水のすれすれのところに、その先を見せておつたというこの現実から見ましても、当時の水位というものが堤防を決壊せしめるほどのものでなかつたことは容易に窺い知れる。滑らかな水の流れの場合において、殊更にこの部分が決壊し、忽ちにして数千町歩の田畑が水中に没し、多数の人民がそれによつて被害を受けたということは、まさにこの工事の欠陷によるものと考えられるのです。この点に対して、卒直に農林省としてはその事実をお認めになりますか、如何ですか。
○説明員(櫻井志郎君) 決壊したときの水位が、今お話のように警戒水位の一メートル五〇センチも低い水位であつたにもかかわらず決壊したというこの現実に対しては、何らか施工上欠陥があつた。まずい点があつたであろうということは、これは常識として当然推定できるわけであります。ただその問題を究明するために、建設省のほうへ共同調査をやるということで打合せをいたしているわけでありますが、仮に締切が、七月十二、三日頃決壊箇処の排水が可能になるであらう。そうすると、直ちに調査をしようという打合せをいたしておりましたけれども、降雨が連続した関係上、今日までまだ遅延しているわけでありまして、従つて原因の究明を今後もつとやらなければ、はつきりしたことは申上げ兼ねますけれども、今は常識として、以上のことが申上げられると思います。
○伊藤修君 常識的において、そういうような結論は認めざるを得ないと思うのです。又私が今指摘した事実に基きましても、そうした結論に至ることは自明の理である。ただこの上は、それをはつきり確認するという事後処置に過ぎないと私は思うのです。 然らばこうした前提の下に立つて、これによつて生じたところの各被害に対しましては、農林省はどういうふうにその対策をお考えになつていらつしやいますか。
○説明員(櫻井志郎君) 農林省としては、あらゆる注意を傾倒いたしまして、被害を元に戻すことに最善の努力をするという決心で目下運んでいるわけであります。
○伊藤修君 抽象的にはそういうお言葉でしよう。具体的には土木関係、耕地関係、農林関係、民生関係、衛生関係、治安関係、税の減免関係、こうしたものに対するところの処置をおとりになるつもりか、とらんつもりか、この点を明確にしてもらいたい。
○説明員(櫻井志郎君) 私からお答えできる範囲だけに一つ限定させて頂きたいと思います。
○伊藤修君 責任ある人が答えて頂きたい。あなたができなければ、責任ある人が出て来て答えるべきです。責任を以て答えてもらいたい。そのために責任者も、事務官僚も出て来てもらいたいと申してあるのですから、答弁ができなければ、できる人を……。
○政府委員(小川原政信君) 御尤もの御意見でございまして、これは十分調査の上、いよいよ確定いたしましたならば、それは適法によつて処置をいたしたい。かように考える次第であります。どうぞ惡しからずその点御了承賜わりたいと思います。かように考えております。どうぞ惡しからず御了承願います。
○伊藤修君 別に、惡しからずでなくてよろしいのです。ただ急速に復旧して下さればいいわけです。国家がそうしたことに対して国民に迷惑をかけた以上は、国家みずからがこれを償うということは、これは当然のあり方だと思います。償う方法としては、勿論土木関係については土木費を以てやることでしよう。これは農林省において鋭意その面について御努力なさるべきは当然のことです。又農林関係、耕作関係、そういう面については、みずからの手によつてこれに対して復旧的なあり方をおとりになることは当然のことです、又その農民の失われた農作物の損失、これは金銭に代え難いものであることは、責任の衝にあるあなたたちとして十分おわかりのことであると思います。古来我が日本の農民は、農民によつて生産されるところのものを金銭価値を以てこれを購うという考え方は持つておりません。それが全生命であると心得ておる。天然と闘つて一意専心、秋の稔りを期待して、この耕作に勤んでおるのです。その耕作物が、一朝たまたま官吏の疎漏によつて、これらのものが壊滅するに至つた。この現状に対しまして、物質のみを以て購い切れないのです。この農民の気持というものを十分取入れるべきである。何を以てこれを償うかと、これは国家として相当な考慮が当然拂わるべきである。端的に申しましても、この全收獲を仮りに六俵と見る場合において、それをどうして償うのか。又畑の耕作物が御調査になつても御存じの通り、すべて長い日にちの水没によつて腐れ果てて、今日何ら見るものもない。殆んどこれを取り返すということは不可能な現状にあるのす。即ち農業の本質から考えてもそうであります。だから或る物品の毀損によつて、これを他の手によつて作り返ということが不可能な事業であるのです。それが農業であるのです。こうしたもに対する償いというもを、農林省はどういうにお考えになつておるか。善処するだけですか。現実にどうするのかということをお伺いしたい。
○政府委員(小川原政信君) 只今申上げました通り、まだ十分調査が完了いたしておりません。調査を進めておる間でありますから、結論といたしまして断定的のことは申上げ兼ねますと思いますので、調査を十分にいたしまして、そうしてこれは適法によつて、そうしなければならんということになりましたらば、それはいたしますので、調査の完了するまでは、何とも申上げることはできんと。かように思つておるのでございます。
○伊藤修君 役人のほうはそういうことで通るが、あなたが現実にその立場に立つて御覧なさい。あなたが農民の立場に立つたならば、よくわかります。一年の、光を求めてやまない。その光を失つた。秋の收獲というものが期待できない。一面の野原になつた赤土の田圃を見ておる農民の気持というものを考えたならば、あなたみたいに、そんな悠長なことを言つておられるが、先ほどの答弁の応答をあなたお聞きになつてもわかるように、一応概念的に今日の常識において、少くとも欠陷があつたということは認められた。ただこの上は、役所の仕事としてそれを窮極的にはつきりさせるということだけである。して見ますると、これに対する手当処置ということを、今にして考えるべきである。農民は明日食う米もない。供出どころか、自己の飯米すら期待できない現状に置かれて泣き叫んでおる。この農民の実状を考えたならば、一日も早くこれらに対して光を與え、安心感を與えるのが、政府の当然なすべき処置である。それを調査ができないから待つておれというのでは、彼らは暗澹たる気持で、これからの幾月かを送らざるを得ない。それかあらんか。最近共産党がこれらの被害地に入つて来て、盛んにアジつておる。破防法において扇動はいけないと言つておるのに彼らにまさに扇動の事実を與えておる。私はそれを言つておる。破防法の場合でも、扇動を取締るより扇動をさせない政治的措置のほうをなぜとらんのか。こう言つておる。まさにこの場合そうした共産党のいい資料を與えておる。政府はお前たちのこうした田地田畑を壊滅に瀕せしめて、恬として恥じないのではないかとアジつておる。農民はこれに附いておる。政府はちつともやらない。今直ぐやれとは言わないけれども、必らず将来これに対しては、近きときにおいて必らずそれを明らかにして、これに対して国家はその償いをするということを明らかにして頂かなければ、安心して今日を過すことができない。あなたの責任ある答弁を承わつておきたい。その意味で今日お呼びしたわけですから……。
○政府委員(小川原政信君) 只今申上げた通りであります。
○伊藤修君 善処という言葉の中には、その趣旨は含まれておりますけれども、こうした損害に対して国家は償いをするという、それも至急にやるということを明言して頂きたいと思います。
○政府委員(小川原政信君) これは、我々が何もこれを顧みないで投げておくのではございません。できるだけ大急ぎにやつておるのであります。自分も又現状を見せて頂きまして、御同情に堪えません。あなたのおつしやる通り十分処置をいたしております。でありますけれども、事公けに関係いたすことでありますので、調査のまだ完了いたさないものを、とやかくここで申上げるわけにも参らんのでありまして、その調査も、そう長くはかかるまい。かように考えるのであります。暫くの間調査を進めまして、完了いたしましたならば、それぞれ結論を得なければならんのであります。あなたのお考えになつておる我々は気持を以て結論を得たいと、自分は考えております。まだ調査というものができませんから、何とも申上げることができません。私の真意のあるところをお汲み取り願えれば結構かと思います。
○伊藤修君 あなたは官僚の一人として、結局結論をはつきりするまでは、責任ある言葉を述べられんようでありますけれども、少くともこうした事実が明らかになつた場合においては、若しありとすれば、政府は責任を負うのかどうか。こういうふうに伺いましよう。そんなら御答弁できましよう。あつても責任を負わないとおつしやるかどうか。
○政府委員(小川原政信君) それはもう、負わんとは申上げません。あなたの御承知のように、適法によつてこうせねばならんというものは、それをいけないということにはならんと思います。
○伊藤修君 その場合においては、個々の損害に対しましても考慮されるでしようね。当然考慮されるものと思いますが、如何ですか。
○政府委員(小川原政信君) 政府がさように認めました以上は、政府は成るべくそういうふうにしたいものと考えるのであります。
○伊藤修君 そこで岡原検務局長、これまでお聞きになつたような事情なのですが、そこで国家が工事の上において過失があつた、若しくは瑕瑾があつたという場合、それによつて生じたところの損害に対して、国家は賠償法によつて責任を正に負わなければならん。訴訟になるまでもなく、農林省に対して、国家賠償の責任を負うべく示唆すべきであると思うのですが如何ですか。
○政府委員(岡原昌男君) 只今問題になりました長良川の事件は、目下検察庁も手を入れまして、嚴重に捜査をいたしております。成るべく早く結論を出したいと思います。現地のほうからも、その意味でいろいろ事件の全貌について調査をしておるというふうな報告が参つております。その上で事案が明瞭となり、過失の点も明らかとなりますれば、私どもの関係する検察庁のほうとしては、勿論刑事責任の問題でございますので、それぞれ嚴重に処置いたしたいと思います。又この過失の認定は、同時に民事賠償に対する一つの大きな根拠と言いますか、認定の一つの本にもなるだろうと存じますので、民事訟務局のほうにおきましても、この問題は考えておられるところでございます。従いまして、私のほうとも十分連絡をとりまして善処いたしたいと思つております。
○伊藤修君 勿論国家賠償は、国民が請求があつた場合において、国家がそれに応じて争つて拂うということでなくて、国家賠償の基本的な観念というものは、いやしくも国民に対しまして国家の責任において、損害をこうむらしめたという場合においては、みずから進んで私は賠償することが当然のあり方だと思います。従つて訟務局におきましては、これらの点を十分明らかにして農林当局に対し、大蔵省当局に対して、これらの賠償の実を挙げしめるべく示唆さるべきことを私は要求してやまないのです。おやりになれますか。
○政府委員(岡原昌男君) 法務府全体といたしましても、この問題は大きな問題と考えておりますので、先ほども実は私は訟務局のかたとも話合いをいたしましたけれども、事案は近く必ず明瞭になると思いますので、その上で現地において満足するような方式において解決したいというふうな話合いを、非公式ではございますがやつておるような次第でございます。
○伊藤修君 法務総裁は見えておりませんね。あなたから法務総裁によく伝えて、その責任においておやり願うことを私は要求しておきます。 それから次に、建設のほうのかたに対しましてお尋ねしておきますが、先ほどお見えにならん前に質問したのですが、結局本件工事に対する、かくのごとき農林当局の工事の欠缺に対しまして、河川を守るところの建設省が、なぜこの監督をしなかつたか。その責任を果していないのじやないかという点をお尋ねしたい。
○政府委員(目黒清雄君) 勿論建設省の河川管理の点から申しますと、十分なる監督をやるべきだと思います。そこで書類上の手続といたしましては、河川管理の責任者であるところの知事、岐阜県知事に農林省から協議があつたわけであります。ところが先ほどのお話うような、いろいろの工事上の條件がついております。例えば先ほどお話が出ましたが、砂地のところの問題としては、矢板を打つてくれとか。それから法面の方法をしてもらいたいとか。いろいろ條件がついております。ただこれを知事である、或いは知事といつても土木部長でありますが、土木部長が、農林省の国営に対して果して監督が徹底できるかどうかということが問題なのであります。片方は今までの思想から申しますると、上段の地位にある国の事業であります。片方は地方庁の配下にある土木部長でありますので、そのへんに條件は付けましたが、国がやつておりますものは、この條件通りにやつてくれるものというふうに国を信頼しておつた結果ではないか。こう思うのであります。併しながらこういう事件が起きますると、我々としても相当考えなくてはならぬので、今後国営工事でありましても、遠慮なく我々は監督を嚴重にしなければならないのじやないかというふうに考えておりますが、御承知の通りに国でも各省関係の問題は、やはり各省の独立性をお互いに主張し合いまするので、なかなかこの協議というものがまとまりません。いろいろいい方法もありまするが、その協議がまとまらない現状であります。例えば今年度の我々のほうで河川法の改正という問題がありまして、この問題を国会に提出しようという段階まで至りましたが、これもいろいろな関係で到頭お流れになつたという現状から推しましても、なかなか各省間の協調というものがむづかしいものであるということを考えておるのであります。ただ一つ河川法という法律を楯にとつて、ほかの省を抑えて行くということのむづかしさはあると思うのであります。更にもう一つお考え願いたいのは、農林省にも農林省のやはり立派な抜術者があるというふうに考えなければなりませんし、我々の技術が、農林省よりも優秀であるということは、そういう烏滸がましいことは考えられない現状であります。やはり対等にこれは考えて行かなければならんので、一応我々としては農林省を信頼して、我々の付けた條件がそのまま履行されるということで行つておる次第であります。
○伊藤修君 いや勿論今日の法則の下におきましては今のお説の通りです。各省において錯綜する部面があつて、現実としてはそういうやり方も当然思考できるのです。これは少くとも法律が企図するところのものは、河川に関する限りは、建設省にその責任をお任せしており、建設省は飽くまで河川の重要性というものを認織して、これを守るということについては、たとえそれが上司であろうが、平等の官庁であろうが、河川に関する限りは、その責任においてその意のあるところを十分守らしめるという行き方にあつて欲しいと思うのです。若しそうでなかつたならば、これは折角あなたたちに河川に対する全責任をお任せしておるにかかわらず、他の官庁がたまたまこれに対して……、勿論技術において劣るとは考えません。併しそれは人間がやることですから、どこかに欠点がなきにしもあらず、これは建設省において十分監督してその護岸、提防を守るということは、飽くまで盡すべきじやないかと思う。この工事の場合におきまして、事実上昨年六月十日竣工しているにかかわらず、竣工届出が出ていない。こういう点に鑑みましても、私はあなたのほうの監督権の発動、いわゆる工事完成に対する調査とか、そういうことが形式的にもなさるべき筋合いのものが、未だなされていないように窺えるのです。こういう点についての私は河川に対するところの監督権の十分な発動がなされていないのじやないか。こう考える。勿論法的な不備もありましよう。併しそれを克服して、飽くまで民生のために、安んじて国民が生活できるように河川を守るべきである。それでなくても、日本の天災というものは、年々歳々河川によつてこうむるところは甚大なものである。それに搗てて加えて人為に基いて、さような損害をも我々は堪え忍ばなければならないというあり方は、到底国民として容認できない。この意味においても、河川の責任者たる建設省においては、十分今後における各河川に対するところの他官庁の工事に対しましても、嚴にこれを監督して頂きたい。かように思うのですが。
○政府委員(目黒清雄君) お説の通り、我々もその責務を感じておりまするが、この事件が起きましてから、出先でありまする知事及び我々の事件の局長に対しては、河川の管理の嚴重なることを通知いたしております。我々は今後はそのつもりでやつて参りたいと思います。
○伊藤修君 私が現場に参りましたときには、まだ、今月の十日でしたが、その当時たまたままだ天候が回復していない。この臨時の護岸工事のあり方を見ておるというと、一向進まないように思われる。いつまでにできるかというと、機械能力から言つて、少くとも七月十五日までには完成する。こういう現場の御説明であつた。そうするとそれは、雨量というものを計算に入れているかというと、勿論雨量は五十ミリ程度を計算に入れていると。それは測候所に尋ねた。測候所に調査して、ちやんとしております。そういう計算の下にやつております。その後十七日に至りましても、その護岸工事というものは遅々として進んでいない。これは一体机上の空論であつてはならんです。こうした工事自体の臨時の処置というものは、非常なもんです。住民は現在の決壊箇所が再び水が流れ出て、全部皆水没してしまうという危險の下に生活しなくちやならんですよ。雨さえ降つて来れば、不安な生活をしなければならん。こういう状態に十数日置かれたということは、私は政府の当局としてよろしくないと思う。昔、人工を以てやる場合においても、容易にこういうものは早急に成し遂げてしまう。いわんや今日、機械力を持つている場合においては、何をおいても費用の如何を問わず、この危險を除去することに晝夜兼行でなすべきものだ。それを三交替でできるものを二交替に縮め、予算を切詰めておるというような姑息な手段、現実に合わないやり方というものは納得できないのです。いつ何時雨が降るかわからないのですから、測候所といえども……。幸いに五十ミリ程度しか降らない。その後百ミリ以上の豪雨の降つたことは、御承知の通りです。非常な危機に瀕しておる状態、まあ今日天候は回復しまして、もう差支えないと思われるかも存じませんが、いつ何時雨が降るかわからんのです。これは一日も早くあの臨時の護岸工事というものは完成させるべきものだと思う。いつまでになさるつもりであるか。この点予算の手当も十分付いておるかどうか。そういう点も伺つておきたい。
○政府委員(目黒清雄君) 今お叱りを蒙むつたのでありますが、却つて我々のほうでは、お褒めを預くつもりでやつておつたのであります。全力を盡しましてやつて、而もその後何回か豪雨がありまして、場合によりましては二百ミリ近い豪雨が降つたのでありまして、それを持ちこえつつ仮工事をやつて参りました。そこで現在では、もうすでに普通の洪水に十分耐え得るような姿になりまして、今日では本工事にかかりたいと考えておる段階まで来ております。而も機械力も相当集中いたしまして、ポンプ船も農林省から借りて、これをやるという段階になつて来ておりますので、今後は、見違えるような仕事の段階になつておる。又現在の姿におきましても、もう水を入れるような心配は絶対ありません。ただ最初におきまして非常に残念なことは、土地が要するに話合いができなかつた。土地の土をとるときに、いろいろ話合いができなかつたのであります。そのために二日ばかり遅れたということが、丁度降雨が続いたという関係で、非常にピンチに襲われたのであります。併しながら幸いにして断らさんで、あの通りでき上りましたから、まあまあ今後は地元に対しては、安全な姿になつたということを御報告申上げられると思います。
○伊藤修君 それでは、大体質問は終りますが、私は関係各官庁に最後に要求しておきます。この問題に対しましては、一日も早く結論を得て国民に安堵を與えるというあり方に善処されんことを要望してやまない次第であります。これで質問は打切ります。
○理事(岡部常君) 午後二時まで休憩いたします。 午後一時五分休憩 —————・————— 午後三時十七分開会
○委員長(小野義夫君) それでは委員会を再開いたします。 今期国会におきまして行いました議員派遣のうち、本年一月に行いました島根県安来町における自治体警察存廃問題の調査、五月に行いました名古屋地方裁判所判事汚職容疑事件の調査、以上の二件について、派遣議員の報告を願います。
○伊藤修君 只今議題になりました事案に対するところの御報告を申上げます。先ず第一に、島根県安来町におけるところの自治体警察の存廃問題に関する件について御報告申上げます。 第一に調査の経過について申上げます。 島根県安来町における自治警察存廃問題に関する調査報告書 一、調査の経過 島根県安来町における自治警察存廃問題に関して、当委員会は、本年一月伊藤、羽仁両委員を現地に派遣してその調査に当らせることを決定した。両委員は先ず一月八日松江地方検察庁において、立石検事正、中村国警県本部隊長、龍河同刑事部長等より、検察庁、国警側の立場について事件の詳細なる説明を聞き、翌九日安来町公民館において高橋安来町長、並河同町議会議長、田部元同町公安委員長、池田元同町署長、奥村元同署次席等、関係者十五名より資料の提供を受けたのである。右両委員の帰京後、委員会においては、理事会を開き、両委員の報告に基いて、本件取扱方につき委員長及び各理事が協議した結果、委員会としての調査はこれを以て一応打切ることに決定し、ただ派遣両委員の調査においてなお未了の分については、專門員、調査員等をしてその調査に当らせることとしたのであつた。 右の決定により、法務委員会專門員長谷川宏、同調査員及川泰吉、法制局参事木内茂の三名を更に現地に出張せしめたのであるが、三名は、二月六日松江地方検察庁において翌七日安来町日立厚生クラブにおいて、合計二十八名の関係人、参考人について調査を行い、本件について一応の調査を終えたのである。 二、調査の結果 本件の概要については、すでに昨年九月二十一日附読売新聞の三面トツプ記事によつて全国的に報道せられ、当委員会においても、昨年十一月十五日の委員会において、大橋前法務総裁より一応の説明を聞いておるので、ここに再述する必要はないものと思われるが、簡単にその要点のみを述べるならば、昭和二十六年法律第二百三十三号警察法の一部を改正する法律によつて、町村の自治警察については、当該町村民の住民投票によつて、その存廃を決することができることになつたのであるが、安来町においては、自治警察の存置を主張する自治警当局と、その廃止を要望する国警側の対立が尖鋭化し、両者夫々の有形無形の運動が激化したるところ、自治警当局は、同じく自治警存置運動を展開したる日本共産党員と連携してその運動を進め、他方国警側は、松江検察庁の介入によつて、安来町自治警当局及びその存置派とみらるる町民に対し、種々圧力を加えたというのである。 以上が新聞その他によつて、世間一般に報道せられたる事件の概略である。 本件の調査に当りては、第一に、安来町署当局と日本共産党との連携の事実の有無、第二に、本件について国警側のとりたる措置、第三に、本件について、検察庁のとりたる措置、第四に、本件と松喰虫事件の関係、第五に、安来町及び町民全般の本件に対する動向に重点をおいて、これを究明せんとしたのであつた。 調査は、時間的、地域的制約を受け、必ずしも満足すべき程度まで遂行することができなかつたのではあるが、ここにその一応の結論を得ることができたのである。 (一)安来町署当局と日本共産党との連携の事実の有無について 松江地検立石検事正は、連携を証する事実として七項目に及ぶ事実を挙げている。国警も大体これらの事実を根拠として疑惑を抱いたもののごとくであるが、これらの事実は、いずれも立証せられておらず、殊に池田元署長の米原衆議院議員(日共所属)訪問の事実のごときは、当委員会の調査によつて全く事実無根なることが判明した。併しながらこのうちただ一点、奥村元警部補の資金カンパに関する自供については、同人の派遣委員等に対する陳述も極めて曖昧で、その自供に至る心理過程が充分に納得し得るのもではない。結局安来町署と日共との間に連携の事実ありという積極的な確証はないのであるが、町署幹部の一部の者の言動において、他人に疑惑を抱かせる点があつたということは認めざるを得ない。 (二)本件について国警側のとりたる措置について 国警島根県本部龍河刑事部長の奥村元警部補に対する再度に亘る注意は、その弁明するように、知己としての親切からでたものであるとしても、当時の状況下において、その地位等を考慮するならば、いささか慎重を欠く態度であつたと認められる。又山根元能義地区署長は、安来町署の廃止を希求するのあまり、その言動において陰に陽に廃止を助長するがごとき態度をとつた事実があつたことは遺憾に堪えないところである。 なお国警島根県本部は、自治警引継ぎに際して、安来町署の元刑事村井重雄及び櫻内松次郎の両名を不採用としているが、これは国家地方警察本部の指示に基くものと認めらるるも、警法察改正の趣旨は、自治警廃止の際は、その職員を全面的に引継ぐことを原則とし、廃止によつてその職員に不安を與えないことにあるのであるが、本件の場合、右の両名に対し、同様の立場にある者と異る取扱をし、これを不採用としたことは妥当を欠くものと言わなければならない。 (三)本件について検察庁のとりたる措置について 松江地方検察庁立石検事正の説明によれば、安来町における自治警察存廃に関する住民投票の後、安来町において同地検が直接捜査したのは、池田元署長及び奥村元警部補の業務上横領等被疑事件外 一件に付、昭和二十六年十月中に、関係人合計約六十余人を取調べたのみであり、このほかは九月二十三日特審局員が政令第三百二十五号違反事件で安来町において五、六カ所調査したのに協力したことがあるだけであるというのである。他方、高橋安来町長は、約二百名の町民が取調を受けたと言い、他の者は、三百名ぐらい調べられたとか、三年間に安来町署が捜査した全事件について、関係人全部が取調をうけたとか言つている。併しいずれにしても、地検が犯罪ありと認めた場合に、これを捜査するのは当然のことであつて、それが町署職員の不正行為であろうと、又はその他の犯罪であろうと、その間に何等の相違はないのであつて、その職権の発動に対しては、是非を論ずるべきではないのである。又捜査の範囲についても同様であつて、検察庁は捜査のため必要と認める限り、幾人でも取調べることができるのである。ただ本件については、たまたま安来町においては、町署存廃問題に関し町民の関心が高まり、町全体の空気が相当鋭敏になつていた時期において、町署幹部の不正行為についての捜査が行われたために地検当局についてのあらぬ噂や疑惑を招くこととなつたものである。 地検当局としては、捜査の時期を選ぶに更に慎重を期し、町署存廃問題についての町民全般の興奮が收まつた後において、おもむろにこれを行うべきであつたものと認められる。この捜査が、安来町民全般に不安を與えたことは、争われない事実である。 (四)本件と松喰虫事件との関係について 松喰虫事件に関して国警能義地区署が捜査したのは、昭和二十四年度の国庫補助金に関する件、安来町署のそれは、昭和二十五年度分であり、両者の捜査には関連性なく、又安来町署が松喰虫事件の捜査に着手したために、それをもみ消すために、町署廃止運動が開始されたのであるということに関しては、何の証拠もなく、関係者の陳述に徴しても、松喰虫事件が本件に関係ないことは明らかである。 (五)安来町及町民一般の民主化について 本件を通じて特に痛感せられるのは、安来町全体を包む封建性の残滓である。安来町が地理的に比較的僻遠に位置することも、その一つの理由とみられないこともないが、その現状は、未だ民主主義に通なお違き段階にあることを思わせるものである。 二、三の例を示すならば、町当局の幹部は、自治警を自己のために利用せんがために、その存置を図ろうとしたような傾向があり、他面町のいわゆる有力者でさえも、官憲の権力を過大評価して、これに追従する過去の惡弊を未だに脱しきれず、みずからの権利をみずからの手で擁護しようとする民主主義の精神に欠けているのである。地検当局の捜査について、徒らに不安の念を抱き、根拠なき風評を蔓延せしめたるがごときも、その一つの現れとみられている。 安来町は、町当局及び町民全般が、主権在民の思想と基本的人権の尊重を自覚することによつて、その封建的遺風の一切を拂拭するよう努力することを要望してやまない。以上簡単でありますが、安来町事件に対する報告を終ります。 次に名古屋地裁荒木元判事の汚職容疑事件について、第一に、その調査の経過を御報告申上げます。 本年四月十九日付中部日本新声紙上に、名古屋地方裁判所荒木辰生判事の汚職容疑に関する記事が大きく掲載せられ、世人の注目を惹いたとところであるが、当委員会においても、問題の重大性に鑑み、これを重視し、五月九日の委員会において伊藤委員より最高裁判所事務総局鈴本人事局長に対し、本件について質疑が行われた。 委員会においては、本件について更に詳細にこれを調査し、その真相を究明するために、現地に委員を派遣することを決定した。 かくて五月十四日伊藤、中山の両委員は名古屋に赴き、名古屋高等裁判所、同地方裁判所において、それぞれ長官並に所長より、名古屋高等検察庁、同地方検察庁において検事長及び検事正より詳細に事情を聽取した。 当時本件は名古屋地方検察庁において捜査中で同庁では、荒木元判事の汚職容疑について、すでに相当程度の確証を挙げてはいたのであるが、なおまだこれを起訴すべきや否やについては決定を見ていなかつた。よつてこの処分が決定するまでは、本件についての報告を留保するのが妥当なりと認め、これを留保してきたのであるが、法務府よりの通知によれば、名古屋地方検察庁は去る七月十六日、荒木辰生を收賄被疑によつて起訴したことが明らかとなつた。よつてここに本件について報告に及ぶものである。 二、事件の概要 名古屋地方裁判所元判事荒木辰生は、昭和四年高文司法科試験に合格、同五年千葉弁護士会に登録、弁護士を開業、同十年判事に任ぜられ、以来、東京、金沢、安濃津、名古屋各地方裁判所に勤務し、昭和十九年に至り陸軍司政官としてスマトラに赴き、以来昭和二十一年十月帰国するまで南方各地に在勤し、同月帰国と同時に判事に任ぜられ、名古屋地方裁判所岡崎支部に勤務、昭和二十二年十一月名古屋地方裁判所に転勤、昭和二十七年四月二日依願退官するまで、同庁刑事単独部において判事として勤務したものである。 荒木は別添名古屋高等検察庁検事長藤原末作より木村法務総裁宛の昭和二十七年七月十日付日記秘第一八四号写記載の通り (一)昭和二十五年十一月十七日名古屋地方裁判所刑事単独部に係属中の林製鋲株式会社名古屋工場の工場長林忠雄に対する労働基準法違反被告事件審理に関し、同事件の当初担当判事が、同二十六年三月十五日同裁判所刑事会議部に転出したるため、同事件の配填替えを受け、その審理を担当するに至るとともに、同事件の被告人林忠雄が自己に対する裁判について、有利寛大なる判決を受けたいという趣旨のもとに行うものであることを知り乍ら、同年三月以降六月頃までの間に、名古屋市所在の旅館美乃屋において、二十一回に亘り酒食の饗応を受け、同年六月二十五日言渡したる判決においては、右林忠雄に無罪を言渡し、更に判決言渡当日たる六月二十五日及び同月二十九日頃の二回に亘つて、同じく美乃屋において、林より酒食の饗応を受け (二)昭和二十六年十二月から翌二十七年一月にかけて、名古屋市において検挙された椙江正昭、西畑龍男及び成瀬由松の集団強盗被告事件について、これらの者の検挙が別々であつたために、先づ椙江は、昭和二十七年一月八日名古屋地方裁判所に起訴され、事件は刑事単独部澁谷判事のもとに配填せられ、次いで同月十七日起訴された西畑及び成瀬に関する被告事件は、同一強盗事件に関する共犯関係であるから、さきに起訴された椙江の事件に併合審理されるべきことが明かにされたため、澁谷刑事のもとに併合せらるべきに拘わらす、その起訴に先だち一月十四日西畑龍男の実兄及び養父の両名が、荒木の居宅に赴き右強盗事件が起訴された場合には、荒木判事のもとにおいて同事件を担当し、西畑のため有利寛大な審判をせられたい旨、荒木に対し請託したところ、荒木は、この請託を容れて、西畑のために有利な執行猶予を付したる判決をなすべきことを約束して、右両人が持参した菓子折一箱と現金二千円を受領し、その後、前記各被告人の事件を一括して自己の担任に移し、西畑に対しては同年二月六日に懲役三年、五年間執行猶予の判決を言渡し (三)昭和二十六年十二月三十日、名古屋地方裁判所に係属したる周惠生に対する関税法違反被告事件が、荒木に配填せられたところ、被告人の義弟羅志雄等より名古屋市所在富久屋において、一月十五日酒食の饗応を受け、その請託に応じて二月二十日右周惠生に対し寛大なる判決を言渡し、更に三月三日頃周の知人易東生より富久屋外一カ所において、酒食の饗応を受けたものである。 以上の事実によつて、荒木は去る七月十六日、名古屋地方検察庁によつて名古屋地方裁判所に起訴せられたのである。これらの事実がすべて真実なりや否やは、勿論裁判によつて、確定せらるべきことであつて、今これについて深く言及することは避けることとする。併し、右のごとき事実によつて起訴されたということ及び検察当局がこれについて相当の確信を持つていることは特に注意すべきことである。 次に、検察当局の捜査の端緒及び荒木判事退官までの経緯を略述すれば次の通りである。 昭和二十七年二月二十七日、前記福江、西畑、成瀬の強盗被害事件の主任平田判事の許に椙江の雇主山本磯治が来訪し、同事件について先般判決があつたが、椙江は懲役五年の実刑を科されたが、他の二人は執行猶予となつて、これには不服である。執行猶予となつた西畑の親族が荒木判事を訪れ、菓子折と金一封を贈つたということなので、私も訪ねて行つたが、私のほうは駄目で返されたという趣旨のことを同検事に語つた。 同検事の報告に基き、名古屋地方検察庁安井検事正は、検事長の指揮を受け捜査を開始したところ、贈賄者二名が詳細に自白するに至り、検察庁は更に荒木判事の素行行動などについて追求するに至つたのである。その結果として同判事の担当刑事事件について、特に検事控訴となる事件が多いこと、同検察庁の調べによれば、昭和二十六年四月一日から同二十七年三月二日までの間において同庁で検事控訴した事件九十一件のうち、二十九件が荒木判事の担当した事件である。麻雀が好きで、料亭等に頻々と出入していること等が判明するに至つた。 三月二十日頃に至り、安井検事正は、名古屋地方裁判所村田所長及び同高等裁判所下飯坂長官に右荒木判事の事件について話したのであるが、一方、荒木本人も検察庁の捜査を察知したもののごとく、三月二十六日に至り、村田所長に辞意を洩らし、翌二十七日遂に辞表を提出した。そこで村田所長は、下飯坂長官と相談の上、裁判官会議に附することなしに、最高裁判所に伝達したのである。なおこの際荒木判事について、前記のごとき汚職容疑事件が発覚している事実については、最高裁判所に通知しなかつたのである。故に、最高裁判所は、右の事実について何等知るところなく、四月二日附を以て荒木に対し、依願免官の発令をなしたのであつた。 なお、この間の事情について、下飯坂長官及び村田所長は、彈劾裁判ということについても十分心得てはいたのであるが、自分等としては、本件をそこまでもつて行くことには耐えられなかつたし、又、荒木判事が現職のまま拘束された場合における世間に及ぼす影響及び裁判官全体のための名誉保持の点等を考慮し、自分等両名の責任において最善の方法と認められる措置をとつたものと考えると言明している。 この間検察庁側は着々として荒木についての捜査を継続し、犯罪の確証を握るに及んで、遂に同人を起訴するに至つたものである。 以上が事件の概要であり、その詳細は別添参考資料聴取書等によつてこれを参照せられたい。 三、結論 先ず本件において、荒木元判事本人の行為については、それが目下刑事事件として裁判所に係属中であるため、ここにこれを批判することは、暫らく差し控えることとする。 次に本件において問題となるのは、裁判官の弾劾裁判制度との関連において、荒木元判事の辞職について、裁判所側、殊に名古屋高等裁判所長官及び名古屋地方裁判所長のとりたる措置並びに最高裁判所の人事行政全般に関する問題である。すでに、事件の概要中において述べた通り、荒木元判事は、自己の身辺に検察庁の捜査の手が伸びたことを察知するや、三月二十七日附その辞表を提出したのであつた。名古屋高等裁判所下飯坂長官及び名古屋地方裁判所村田所長は、これに先だち、三月二十日前後に、名古屋地方検察庁安井検事正より、荒木元判事の汚職容疑について、報告を聽いているのである。即ち下飯坂長官及び村田所長は、荒木元判事について、かかる事情が存することを知りながら、なお且つその辞表を受理し、而もこれを裁判官会議に諮ることなく、長官及び所長の意思と責任において、最高裁判所にその伝達をなすと共に、これを至急決裁あらんことを具申したのであつた。なをこの際最高裁判所に対しては、荒木元判事について前述のごとき汚職容疑事件が発生したことについては、何等報告しなかつのである。 このような取扱いをした理由として、下飯坂長官及び村田所長は、荒木元判事が現職のまま、身柄拘束されるようなことがあつた場合においては、それが国民一般の裁判官全体に対する不信の念を招来するがごとき結果を生ずることを虞れて、荒木を一刻も早く辞職せしむることが、裁判所及び裁判官全体の名誉を守るゆえんであると考えたというのである。 名古屋高等裁判所裁判官会議規程及び名古屋地方裁判所裁判官会議規程を見るに、裁判官の身分に関する意見、具申等については、いづれも裁判官会議若しくはその常置又は常任委員会に諮り、その決議によつて処理することになつているのであつて、長官又は所長の独断的専行は許されないところである。 のみならず、荒木元判事の行為は、明らかに裁判官弾劾法第二條の規程に該当する罷免の事由たり得る非行であつて、下飯坂長官及び村田所長は、同法第十五條によつて、当然荒木元判事について弾劾による罷免事由を最高裁判所長官に通知すべきであつたのである。 然るに下飯坂長官及び村田所長は、右の処置をとることなく、むしろ反対に荒木元判事の非行については何等報告することなく、又その辞表については、至急決裁せらるべく具申して、これを伝達したことは前述の通りである。 下飯坂長官及び村田所長が、本件の世間に及ぼす影響と、裁判官全体の名誉と威信を保持するために苦慮を重ねたであろうことは、本件の調査に当り、長官等が委員に対し、その心境を吐露したる言葉の節々によつても、十分にこれを推察することができるのである。 長官及び所長が右のごとき措置をとるに至つたその心境は同情に値するものであり、その措置は気持の上では諒とせられるものではあるが、併し、法の維持を任務とする裁判官としては、飽くまでも法令の命ずるところに従つて事に処することが正しい態度と言うべく、かかる態度を堅持することこそが、裁判官全体のための名誉と、威信を保持するゆえんであると思料されるのである。 本件の場合において、下飯坂長官及び村田所長が、荒木元判事の辞表を裁判官会議に附することなく、最高裁判所に伝達して、その結果において荒木元判事の彈劾裁判を免れしめるような処置をとつたことは妥当を欠くものと言うべく、遺憾に堪えないところである。そもそも裁判官彈劾裁判制度は、裁判官の身分保障を前提として、裁判官が濫りに罷免されることのないように、これを保障するために設けられた制度であつて、それ故にこそ、特に刑事訴訟手続にも似た嚴格なる手続によつて行われるのである。裁判官が法に触れる非行をなした場合において、 一般の刑事裁判に付されるほかに、更に弾劾裁判にも付されるということは、一見二重にその責を問われるもののごとくみられないこともないが、これはその身分を強く保障するための制度よりまする当然の結果であつて、かかる制度が裁判官のために、ひとり裁判官のみのために設けられている事実こそ、まさに裁判官の職務遂行を独立不覊のものたらしめるものであると同時に、その名誉と威信とを示すものである。故に裁判官の弾劾裁判制度は裁判官の名誉と威信とを保持するためにも、これを守らなければならないし、又それが憲法の精神にも副うものである。 本件については荒木元判事の依願退官の手続はすでに完了し、その弾劾のための訴追については最早とるべき手段はない。併しながら、将来においてはひとり下飯坂長官及び村田所長のみに限らず、裁判官全体の問題として、かかることを再び繰返すことのなきよう嚴に自戒すべきことを要望して止 まない。然らざる限り、裁判官の弾劾裁判制度は全く有名無実の制度と化するであろうとことを虞れるのである。次に最高裁判所は荒木元判事の辞表の伝達を受けたときに、同人の非行については何の報告も受けておらなかつたために、これを知ることなくして、その免官を発令したのであつて、その手続において欠くるところはなかつた。併しながら本件のごとき問題が、将来において再び発生することがないとは言えないのであるから、将来の問題として、裁判官の辞任の申出があつた場合においては、少くともその理由について万遺漏なきような措置を講ずることが必要であると思料するのである。最高裁判所においては、終戰後住宅その他主として経済上の理由により、裁判官を適材適所に配置することができなかつたことは誠に止むを得ないところであつたが、我が国が独立を回復したる今日は、当時と社会一般の情勢も異り、経済事情も相当好転しているのであるから、裁判官についも適材適所主義をとり、慎重なら人事行政を行うことによつて再び本件のごとき事件が発生することのなきよう十分なる対策を講ずべきである。 以上簡單でありますが、両件の報告を終ります。
○委員長(小野義夫君) 只今の伊藤委員の報告に対しまして、御質疑のおありのかたは御発言を願います。
○一松定吉君 今の荒木判事のやり方は、私も聞いて驚いたのだが、その後荒木判事に対する刑事事件はどうなつたでしようか。誰か政府委員で知つておるかたは。
○政府委員(岡原昌男君) 丁度起訴したばかりでございまして、まだ公判の開廷を見ないようでありまして、従いましてここ一、ニカ月中に一番の結論が終るのじやないかと思いますが、今のところはそういう関係でございます。
○一松定吉君 本人は全部罪状を自白しましたか。能白しませんか。
○伊藤修君 本人は最初は否認しておりましたが、或る人の勧告に基きまして、その否認のよろしくないことを指摘いたしまして、反省を促して、その後反省するに至つて、事実を全部自白するに至つた。然るに最初は否認いたレまして顯著な証拠、即ち金一封の包みが現物とはすでに変つておるにもかかわらず、それが現物であると、こう言つて強硬に主張したり、或いは関係人に黙秘権を行使せしめて、却つて事件の捜査を困難ならしめて、不当に関係者の勾留を長びかしめたというような事態を惹き起しておつた。いささか判事としての態度としては好ましからざるところの態度をとられたことは遺憾に堪えません。
○一松定吉君 一体、今の伊藤委員の報告を聞いておると、全く非常識の判事だと私は思うのである。これには何か深い動機、原因があると思うのです。どういう性格の人で、どういうことが遂にそんなに深嵌まりをすることなつたか。その動機、原因はわかつておるのですか。
○伊藤修君 動機、原因は、大体調べてありますが、ここで述べると事件にそれが影響するのじやないかと思いますから、余り惡く言うことは避けたいと思いますが、如何がですか。
○一松定吉君 極くあらましでいいので、例えば酒が好きなのか、女が好きなのかというようなことだけ。
○伊藤修君 その点は、遊ぶごとが先ず前提に好きである。女の好きなことも、これは事実としてその関係、いわゆる先ほど摘記いたしました二人の依頼者が、たまたま料亭を経営しており、その料亭の女中を自己の二号に掌握して、そしてしばしば通つておる。その者をして黙秘権を行使せしめた。酒も相当好むらしい。少くとも現われた事実は、五十数回というものが、ほかの判事を伴つたり、弁護士を伴つたり、訴訟関係人を伴つて遊興しておる。これらの費用を総合いたしますと十数万円、公定価格に見積つて……。こういう事実から算定しても、少くとも遊ぶことが好きらしい。
○一松定吉君 よくわかりましたが、そういうような裁判官のことであるということは、本当に司法界のためになげかわしいことなんですね。これらのことについては、余ほどいわゆる監督の地位にある人が平素そういう人の素行に十分の注意を拂つて、今伊藤委員の言われたように、再び我が司法界から、そういう者の出ないように一つ余ほど注意しなければならんと私は思う。尤もこの司法制度が布かれてから、今御報告になつたような事件も相当ありましたが、今のは、特にひどいように私は思うのだが、一層一つ、そういう点について、この司法の関係当局は、裁判官と言わず、検察官と言わず、一層御注意なさつて、そういうことのないように措置してもらいたい。どうも近頃官吏の汚職事件が非常に行われておることは御承知の通りであるが、司法界、検察方面については、余りなかつたかも知れん。然るにそういうようなことが出て来るということになつて、大分この司法官等についての法規の粛正ということが大分弛緩しておるのじやないかと私は思うのですからして、一層そういう点に重きを置いて頂くように御注意を申上げたい。それと同時に、裁判官とか検察官というものは極く公平無私の態度を持しなければならんということで、民間と接触することを避けて、いわゆる司法官は自分から化石になるというようなことも行われやすいと思う。そういう点について一層注意をして民間と交際をしないのだということになると、世間の常識に疎くなつて、余り実際に適合しないような裁判が行われたり検察が行われたりするから、その点についてそこらを御注意願わなければならんと思う。一層の御注意あらんことを、特に私から御注文申上げておきます。
○説明員(五鬼上堅磐君) 只今伊藤委員からの御報告のありました荒木判事の事件については、事起訴になりまして裁判に係属しております。その事実につきましては今ここで申上げることは避けますが、かような事実があるとすれば誠に遺憾なことでありまして、実はこの退官後からしまして、私どもといたしましては、非常に実は最初は信ずることができないような有様でありました。只今伊藤委員の報告によりましても、我々といたしまして司法部全体といたしまして考慮しなければならない問題が多々あると思います。なおこの件に関連していろいろな点を一層我々は自粛自戒いたしまして、再びかようなお手数を煩わすような御調査を願うようないまわしい事件が起らないようにいたしたいと存じております。
○岡部常君 その点に関しまして、元判事荒木氏のことは今刑事事件にかかつておりまするから、暫く論議することを避けるといたしましても、監督の責任にあるところの地方裁判所所長並びに高等裁判所の長官に対する最高裁判所のお考え方、お取扱い方はどういうふうになつておりますか。この点を伺いたいと思います。
○説明員(五鬼上堅磐君) この事件に関連いたしまして、司法行政上の監督の問題について、例えば事件の解決方法が必ずしも正しくなかつたのじやないかというような点、その他監督の任にある人々の責任等について目下最高裁判所としては調査中でありまして、いずれ調査の結果、或いは裁判官分限等の、或いはその他いろいろな適用をしなければならないようになるのじやないかと考えております。まだ事実上の報告が全部参つておりませんので、只今この程度のことを考えております。
○岡部常君 その点に関しましては、先ほど派遣委員の報告にもありました通りに、村田所長並びに下飯坂長官の考え方として、このことを弾劾裁判にかけると、いうようなことによつて何か司法官の、裁判官の威信を非常に損することがあつてはいけないというようなふうになつております。私はむしろそういうふうな考えが若しありといたしますならば、それこそ裁判官の地位の問題、特に新憲法において尊重せられておりまする身分関係というようなこと、又それを或る方面から裏付けるような弾劾裁判の制度、先ほど伊藤委員の報告にもありました通りに、むしろ裁判官を非常に尊きものにしようという立法の趣旨がむしろその点において更に危いところに持つて行かれるような気持がするのであります。その点につきましては、これから調査するのでなく、もうすでに或る程度において御調査になり、これは相当所長なり長官なりについて調査せられて、何らかの本人たちのお考え並びに最高裁判所側としての態度もお示しになつておることと私は想像しておるのであります。その点について先程の御答弁では、これからおやりになるような、やや悠長なように考えられるのであります。その点に関して御答弁を願いたいと思います。
○説明員(五鬼上堅磐君) 実は本件の判明しましたのは、先ほど伊藤委員の報告の通りでありますが、本件がその後間もなく刑事事件として捜査されておつたという関係もありまして、裁判所に起訴になりましたのは七月十六日に起訴になりました。最高裁判所側としては無論それまでに資料等をいろいろ集めつつありましたが、まあ事は捜査に属することであり、却つていろいろ誤解を招く虞れがあつたので、今まで起訴、不起訴の決定を待つておつたのであります。起訴になりました以上、我々としてはいろいろの点、殊にその他事件の解決方法について調査する必要があるとして目下原裁判所でできるものは原裁判所に依頼し、又最高裁でやれるものは直接起訴をして、調査をして、その後において適当な措置をしたい。かような考えております。
○委員長(小野義夫君) 他に御発言もなければ、本件に関してはこの程度にいたしまして、午前中に引続きまして長良川堤防事件を議題に供します。午前中の伊藤委員の質問に対して、答弁を留保されております点につきまして、先ず当局の答弁を願います。
○説明員(河井大治郎君) 河井大治郎でございます。休憩の前に伊藤委員から御質問がございましたので、私からお答えを申上げます。 第一点は、御質問の御趣意は、実質的なる問題だつたと思いますけれども、競争入札におきます請負金額の決定でございます。この点につきましては、実質的のお尋ねであつたように思いますが、一応法令上の関係を御説明申上げますと、予算決算及び会計令によりますると、入札に付しまする場合には、一定の基準に従いまして、予定価格を定めまして開札の際に開札場所にこれを置くことといたしまして、開札の場合に各人の入札のうち、この予定した価格の制限に達したものがないときには、直ちに再度の入札をすることができるというふうになつておるのでございまして、最低の価格をきめるというふうな手順に相成つておらないので、実は予定価格も、この基準によりますと、統制の価格のあるものはそれによるとか、標準がいろいろございますので、それによつて予定の価格を出しますが、競争入札の場合には、それに達しない場合には再度入札をするということで、それでない場合には、最低の価格を以て入札をする。かような手順に相成つておりまするので、法令上の手続といたしましては、さような措置をいたしたわけであります。極めてお答えが、この点は形式的な面をお答えするわけでございまして、恐縮でございますが、手続といたしましては、さような関係があることをお答え申上げておきたいと思います。 それから次には、随意契約をいたしまする法令上の根拠でございまするが、これにつきましては、会計法の二十九條におきまして、各省各庁におきまして契約をいたします場合には、すべて公告をする。そうして「但し、各省各庁の長は、競争に付することを不利と認める場合その他政令で定める揚名においては、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約にすることができる。」こういう規定がございまして、更に予算決算及び会計令臨時特例と称しまする政令がございまして、この政令の第五條におきましては「各省各庁の長は、当分の間、法第二十九條但書の規定により、他の法令に定めるものの外、左に掲げる場合においては、随意契約によることができる。」その一つといたしまして、「土木建築その他の工事を請け負はしめるとき」こういう規定があるわけであります。根拠といたしましては、この規定によつたわけでございまするが、この会計法の第二十九條は本年の三月に一部改正になつておりまして、只今申上げましたのは、改正後の條文を申述べたのでございますが、改正前におきましては「その他政令で定める場合においては、大蔵大臣に協議して、指名競争に付し又は随意契約にすることができる。」と、こういうことになつておりまして、この契約をいたしました当時は、さような規定に基いたわけであります。従つて又この予算決算及び会計令臨時特例と申しまする政令は当時からありまして、先ほど読上げました第五條はあつたわけでございます。なおそれに関連をいたしまして、当時は指名競争及び随意契約による場合大蔵大臣との協議についてという大蔵大臣の通達が発せられておりまして、これは只今申上げました大蔵大臣と協議をするということに関するのでございまするが、その中に指名競争に付し又は随意契約によつて売買、貸借、請負その他の契約をなす場合には、会計法第二十九條但書の規定により、あらかじめ大蔵大臣に協議を要することに相成つたのであるが、事務簡捷の趣旨により、別紙記載の事項については、各省各庁との間に協議が整つたものとみなして、その範囲内において昭和二十二年四月以降各省各庁限り処理し得ることといたしたいから御了知相成りたい、右通知する、かようにございまして、その別紙に三といたしまして、一般の競争に付することを不利と認める場合で左の各号に該当する場合とございまして、そのBという事項に、随意契約によることができる場合といたしまして、一、現に契約履行中の工事、製造又は物品の供給に関連するものであつて、これを他のものをして分割履行させることを不利とするときというのがございます。これによりまして随意契約をいたしたわけでありまして、午前中答弁がありましたるごとく、すでに用排水軌條のほうを請負に付しておりましたので、これに関連をするものであつて、それを他のものをして分割履行させることを不利とするときというふうに認めまして処置をいたしたものというふうに法令的には解しておるわけでございますので、恐縮でございますが、形式的ではございますが、お答えいたします。
○伊藤修君 先づ第一点のほうです。成るほど法令上におけるところの手続といたましてはお説の通りです、若しその原則をそのまま鵜呑みにしてこれを運用する場合におきましては、午前中にも説明いたしましたごとく、例えば百万円は絶対に要する工事だという場合において、それが本人が他の意図を似て一万円でこの契約を引受けるという入札をした場合において、それをも容認してその契約が成り立つかどうか。そうした場合においてそういう契約をなすかどうか、仮に法規上から申しますれば、それをも可能である、今の御説明から申してもそれも正しい、併しその実質を探究いたしますればですよ。少くとも百万円要するという工事、全工事の過程である。而もそれを一万円でやろうというそのこと自体において、この工事が完成できない。少くともその工事は不備なものができるというようなことは、容易に予想されるんです。そういう実質的になし得るべからざるところの請負金額を以て、ただ安いからそれに請負わしめたというあり方は、官庁の工事運営のあり方として正しくない。こういうことを指摘している。形式的においてはお説の通りでありまするが、併しおよそ政府が法律を運用する場合において、会計法の下において收支をなさる場合において、契約をなさる場合において、そうした実質を顧みずしてただ法規がそういうふうになつておるから、それは自分の勝手次第だというお考え方でおやりになつておるのかどうか。又さような不合理な請負をなさしむる結果、かくのごとき結果を招来するのではなか。初めからできない相談です。できない相談をできない金額で請負わしめるということは、工事の前提においてすでに誤りであるということを私は指摘しているんです。従つてこの場合が一つと、将来もそういうようなことをやるのかどうか。それでは国が企図するところの工事というものは、完全なものが完成できないということがあらかじめ我々は察知できることになる。さような不合理なことはあり得ないと思う。その点に対して御意見をお伺いいたしたい。
○説明員(河井大治郎君) 極めて形式的な面をお答えいたしましたのでありまして、実質的に完全なる工事を施行せしむる措置について考慮を要するということの御指摘でございます、この点はよくわかりましたので、なお十分法令の運用上の関係もございまするし、会計検査院等の関係もございまするので、それらの点につきましても十分に打合せいたしまして、今後遺憾のないように処置をいたしたいと思います。御了承を頂きたいと思うのであります。本件に関しましては、ただ指名競争入札をいたしまたのは用排水軌條のほうでございましたので、そういう経過がありましたことを申添えて御了承を頂きます。今後は十分注意いたします。
○伊藤修君 その点は私がたびたび指摘しまするごとく、ただ安いだけではいけないんです。やはりその工事にふさわしい金額を以て請負わしむることが一番必要であると思うんです。不当に安い値段を以て請負わしめるということは結局そこに不合理な結果を招来することは必然です。こういう点は、今後とも十分に注意されることが必要です。本件の場合においてこれが第一歩の出発の誤りです。 次に先ほど説明になりました随意契約の問題ですが、これは会計法の二十九條によつて、予算決算及び会計令、この九十六條が先ず適用されると思うんです、原則的に。ただあなたが今御指摘、御引用になりましたこの臨時法を以てしたというならば、それも一応の理窟でしよう。併しこの臨時法は、これは法律を運用する場合においては、一番大切なことは、法律の原則はどこにあるか。法律の精神はどこにあるかということを基本に考えなければいかんです。臨時は飽くまで臨時です。例外規定は飽くまで例外です。これを弁えないというと、どつかに例外規定があるかと、臨時規定があるかと、そうしたものを惡用するということはとるべからざることです。あなたの今のお考え方は、この工事について何か便宜な法律はないかしらんといつて探して、こういつた法律を運用された。然るにこの法律は、どういう原因でできておるかということは御存じでしよう。これは当時占領治下において進駐軍のいろいろな要求工事、売買、そうしたものの調達を容易ならしむるために、火のつくような請求があるから、非常に従来の日本の会計法だけでは、この要求を満たすことができないというので、ここに便宜的な臨時措置法を作つたのです。この法律の立法精神というものは、飽くまでそうしたことに適用されるんです。それを常時の国政の運営、国家の事業遂行のために使うということは、いわゆる本末を顛倒したお考え方です。これは飽まで占領治下において彼らの要求を満たすために、この法律が賄われたんです。だから法律全体を御覧になつて頂きたい。連合軍が、進駐軍がと、皆表現されておる。そうしたものに対して、こうした土木工事を受けたときには云々とあるんです。法律はあなたは、自分の得手ている面だけを引いて、前段をおつしやらんということはいかんです。この法律全体の運用精神というのは、そこにあんです。だから、そうした占領治下における残骸法律があるから、それを利用して、そうして常時におけるところの国の工事にこれを運用するということは、本末を顛倒した議論です。正しい会計のあり方というのは、ここにある二十九條及びこれに引用するところの九十六條、これによつてなされることが正当な行為である。然るにそういう場合においては、随意契約を許していません。こういう場合においては。それをたまたま臨時法規の第一項にあるから云々と、若しあなたのお説の考え方は、国全体の工事にこれを押し擴げて随意契約ができるということになれば、日本の会計全部がめちやくちやになります。そんな不合理なことはあり得ないです。それは根本的にお考え方は間違つています。 それから今一つは、一つの契約があつて、それと関連を持つておる場合においては、先ほど大蔵大臣の令達によつてこれをなさしめるというのであります。勿論それはできるでありましよう。併しこの場合ですよ。本件の場合におきましては、第一の契約というものが三百三十七万円という予定価格を二百五十五万円という僅少な額でやつておる。そうすると、これを請負契約の実際においては、請負人の考え方というものは第二、第三の契約を随意契約によつて取込むということをすでに計算の中に入れて、不当の価格で契約しているんです。そんなことは現場の当事者が馴合いでやつていることは明らかである。勿論検察庁においてそこは指摘します。あなたがどんな答弁をしたつて、必らずそこのところは突込んで行かれます。不合理な第一契約、何人も業者としてはなし得べからざるところの僅少な金額で第一契約をして、そうして随伴するところの第二、第三の契約をこれによつて獲得する。いわゆる餌をあてがつて、あとのやつで利益を占める。これが請負人の常套手段です。それを故意か過失か。それに引つかかつておる。そういうあり方は私はよろしくないと言うんです。而もあとの契約は一千百何十万円というもんです。随意契約のほうが多いんですから、主客を顛倒しているんではないかと思うのです。一千何百万円を契約して、それに随伴する百万円とか二百万円の契約を随意契約でやつたというならまだ納得が行く。こういう会計のあり方はよくないと言うんです。そういうことを是認するならば、国家財政というものは根本的に乱れて参りますよ。一農林当局が、これを容認するならば自然各省各庁が全部こんなことをやる。そんなことをやれば、国は全滅です。そういうようなことをこういう死んだ法律を楯にして、それが正当であるというお考え方はよろしくない。少くとも法律の精神はそういうものではないんだから、やはり今後は本則に戻つて、常時のあり方として原則的に正しい運用をなさらなくちやいけない。こういうことを指摘しているんです。如何です。
○説明員(河井大治郎君) 御指摘の点はよくわかりました。会計法の二十九條に、大蔵大臣との協議によつてとありましたことは、政令で定められるという法律改正が行われたことも御指摘のような主張が入つておるようにも考えられます。今後の扱い方につきましては、十分その点を留意いたしまして、再び遺憾の事故の起らないように注意をいたしたいと思います。
○伊藤修君 午前中に質問は申上げてありますから、これを繰返したくありません。本件は少くとも契約の当初から、すでにこうしたところの矛盾撞着及び実質的な違法というものを包蔵しておるんです。従つてこの農林省のたまたまなされたこの工事の人為によるところの欠陷、それによつて生じたところの県民、国民の損害というものに対しましては、少くとも速やかにその事柄を明らかにして、その結果に対する責任をあなたがたは果すということをここでお誓い願つておかなくちやならんと思うんです。そういうふうに行動されたい。又而もそれは来年、再来年というようなことではいかん。国民は今日の生活に困つておるんですから、速やかにこれを行うというふうにして頂きたいと思います。
○委員長(小野義夫君) それでは本問題に対する御意見はこの程度にいたしまして、本日はこれで散会をいたします。 午後四時十七分散会