法務委員会 第56号
- 発言数
- 131 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1952/06/14
会議録
○委員長(小野義夫君) 只今より委員会を開きます。 昨日に引続き破壞活動防止法案及び関係二法案を便宜一括して議題に供します。本日は羽仁君に質疑を許します。
○羽仁五郎君 本法案が次第に審議が進み、終りに近ずいて来ますので、この際審議の今までの過程において政府側の御答弁で我々、又国民が不安を感じている点について特に法務総裁の見解を伺つておきたいと思うのであります。 その第一は、法務総裁もう最近多分よく御承知のように、この本法案について勿論賛成しておられるかたもありますけれども、併しながら東大の矢内原学長を初めとしまして、或いは法政大学の大内総長、京都の同志社大学の田畑総長或いはそのほか末川教授、又大阪の恒藤学長、こういうような現在日本の知識階級の最高の水準を代表せられるかたがたが、それぞれ決して単にこの本法案に対する反対宣伝というふうなものに踊らされているかたがたではない。現在の日本の良識を代表せられるかたがたがこの法案に対して深刻な憂慮を感ぜられ、わざわざ京都、大阪方面から上京までせられまして、先日小野委員長初め我々法務委員と議長公邸において会見せられまして、縷々本法案に対する国民の不安を代弁せられたことはよく御承知の通りでございます。当日の会談の模様などは恐らくお聞き及びになつていることと思います。 ここに第一に伺つておきたいと思いますことは、すでにこの法律案は参議院の本委員会、又参議院本会議によつて如何に処置せられるかという意味におきましては、政府の手を離れておるということは申上げるまでもないことであります。法務総裁として現在その後のそうした一般の世論、朝日新聞などにも殆んど連日本法案に対する批判を掲げて倦むところを知らないというふうにまで闘つている。こうした世論というものを尊重しないで、これらをふみにじつて、本法案の原案のまま通過ということを政府或いは与党が図られるということで若しありますと、これは先ず第一にこの点が国民に非常な不安を与えるのではあるまいか、勿論反対論に対して直ちに服するということがあり得るわけでもございませんで、それに対して、反対論に対してその賛成すべき理由を説くということも勿論自由であります。併しながら今日日本の先ず良識を代表しておる人々の本法案に対する批判というものに対しては十分に耳を傾けられまして、従つてこれが参議院において如何に取扱われるかということに対しては、こうした世論が十分に尊重せられることを御希望になるということが、私は法務総裁の御本心であろうというふうに拝察をしておるのであります。で、審議の過程において起つております問題は、大体二つあるかと思うのですが、一つは、政府はこの法律案は何らそうした言論、集会、結社などの基本的権利を制限するものじやないそれをそういうふうに心配している人たちは誤解に過ぎないというお答えが特審局長などからしばしば繰り返されております。これは私は早い言葉で申せば、失礼であるけれども、官僚独善という印象を社会に与えるのじやないか、自分たちの考えていることだけが正しくて、相手の考えていることには理由はないという、そういう考え方を世間はそこから感じて、不安を感ずるのではないか。 それから第二の点は、この法律案の狙つているところが、これは法務総裁或いは法務総裁の下において、法務府において恐らくはその良心を尽されて、基本的人権が制限されないようないろいろな法的な措置を尽されたのでありましようけれども、併し一般にそうした政府の側から見れば誤解になるというふうに御覧になれるような意味の不安があるということは、そこに何らかの理由があるのでなければならん。これも単に若い人たちが、或いは過激な人たちとかが反対するのではありません。そういう意味で世間が、今日本の良識を代表する人が不安を感じているということは、この法律案が作り出すところの空気、一般的状況というものにあるのだということを法務総裁は恐らくすでに御賢察になつていることと思うのであります。で、最近私どもにしましても、平和な東京都内において、これは勿論両方に責任があることでありますけれども、併しものものしい風景を連日目にしている。これは心ある人が心を痛めていないことはないと思うのであります。それから連日の新聞紙にも或いはこの騒擾事件というものが大きく報道されている、他面連日のように警察官による人権の蹂躪ということについての訴えが載つております。で、法務総裁は勿論警察に対して直接の指示、監督をお持ちになつていないことは、私もよく承知しております。そういう意味で御質問申上げているのじやない。一般的な状況について申上げている。で、一口で言いますと、いわゆる逆コースというふうにも世間で見られており、又国際的にもそのように見られております。で、これは例えば今朝の毎日新聞を見ましても、その投書に、「泣寝入りか」という題で、会社員の吉川豊というかたが、十日の夜八時頃渋谷駅に下車してそこを通りかかつているときに、忽ち後から警官に襲われて、乱暴に或いは殴打され或いは罵倒された。で、どういうことなのか全く自分にわからない。で、こういう投書が、これは法務総裁も恐らく心を痛めておいでになると思うのですが、毎日のように新聞に載つております。それからこれも法務総裁は恐らくお聞きになつたと思いますが、福岡の九州大学の法学部に、特審局員であると自称する人が、或いは特審局員ではないかも知れない、こういう特審局員であることを偽つて大学の中に入つて、大学関係者の承諾もなくそこを徘徊して、学生や教授に不安を与えておるという事件などもございます。これらは今ここに枚挙することは差控えますが、毎日のようにこうした事件が起つております。 こういう状況の下にこの破防法というものが成立して行くことに対する一般社会の良識者の不安というものも法務総裁は御覧になつているのじやないかと思うのであります。で私はこういう点についてのこの法務総裁の政治家としての高い識見というものをこの際この破防法の審議を行なつておる我々に向つと是非示しておいて頂きたいと思うのとあります。で繰返すようになつては恐れ入りますけれども、先日各大学の教授諸君と会見した際にもそういう意見が出ましたが、この破防法を流れておる精神は、ナチスの立法と共通するものがあるというように言つておられます。でこれは勿論これについては十分議論ができるものでありまして、そうであるという主張も成立てば、そうでないというような主張も成立ちます。私は今ここで法務総裁と議論をしようというふうに思つておりません。併しながらそれについてのそういう議論もある。従つてこれはナチの立法というふうにも見られる。併しそうでないとも勿論言える。でそれがナチの立法になつて行くか行かないかということは、現在こういう問題についての最高の責任を負うておられる法務総裁の態度というものに私はあるのじやないか。でこれらと併行して又どういう法律案が出されているかということも考えてみなければならない。又この破防法というものが仮に現在国会を通過しまして、そうしてその後にその法がどう運用されるかだけではなく、その後に……、或いは政府の一部の中にはしばしば新聞に伝えられましたように、その御本人に対しては気の毒でありますが、前法務総裁が、これは橋頭堡である、現在の形ではまだ生ぬるいものであるけれども、一旦これを通したならばあとでこれをどういうふうにでも拡大して行くことができるというふうな言葉を漏らしておられる。これは御本人がどういう意味で漏らされたのか、質してみたわけではありませんけれども、こういうような一般的状況、これに対して法務総裁がどういうふうに御覧になつておられるのでございましようか。で第一にはこの世論というものをふみにじるという印象をお与えになるおつもりはないと信じますが、この点につきまして、第二には、単にこの法案が誤解されているというだけでなく、この法・案をめぐる様々の一般的状況というものには考うべき点があるのではないかという点。それから最後に、この第一の問題に関係しましては、もう一つ政府が再度おつしやつておりますことは、現下の状況というものは容易ならない状況であつて、従つて法務総裁としてもこのような法律案を喜んで出しているわけでもない。これは法務総裁だけが今までおつしやつて下すつておるお言葉ですが、どうかすると政府委員の中には、本法案を喜んで出しておられるのではないかと思われる節がなきにしもあらずです。さずがに法務総裁自身としては喜んで出しておるわけではない。併しながら現下の世情の不安、民主主義を暴力によつて破壞しようという動きがあるのではないか、それに対してこれを放置しておくわけには行かないという御説明がございました。私はこういう点についても、自分の絶えず接触する学者や文化人や学生諸君に、そういう点も考えて見て、そうして決して単に一片の反対のための反対をするわけではなく、現在の状況というものに対して或いはその責任者も十分みずから反省し、今日の世情を一層不安にすることは、破防法をますます以て政府が強力に要求することにもなるのだし、十分自重してほしいということも話しておるのでございます。 次に第三の点について法務総裁に伺いたいと思つておりますことは、或いは民主主義を暴力によつて破壞しようという憎むべき動きというものに対して、そうした法律と権力だけによつて防いで行くということは、私は極めて危険なことであろうと思う。法務総裁もこの点については、決してこの法案だけによつて治安の維持を図ろうとしておるのではないとおつしやいます。この頃は政府委員も大体この法務総裁のおつしやる言葉をまねして、この法案だけによつて治安の維持をしようという気持ではないとおつしやいますけれども、そこには積極的な意味がなければならない。その積極的な意味というのは、私は二つあると思うのです。その一つは言うまでもなく、どうか他の方面においてはそうした社会的な不満を持つておる人が、そうした破壞的な扇動に乗らないように、そうした社会的な不満を少しでも解決できるような社会政策の面の努力を現実に示して頂いて、単に口先だけで、この法案だけで治安を維持しようと思つておるのではないということでありますと、実際においてはこの法案だけでやろう、昨日もこの点について政府委員と質疑応答を繰返したのですが、一松委員から綿々と事を分けて、扇動ということがなければ現在の治安維持ができないかどうかということについての御質問がございました。政府のほうは極めて簡単に、扇動だけで問題にしないというふうになつて行くと、この扇動の結果血を見るようなことになる。血を見てしまつてからでは遅いので、そこで血を見る前に、扇動から抑えて行かなければならないというふうに御答弁になりました。私それを伺つておりますと今申上げましたような、この法律のほかに何ら頼むところのない行政府の官吏としては、或いは止むを得ないことかも知れないのでありますが、いやしくも政治家として、この扇動が行われて、そうして血が流れるまでに、決して法律だけではなく、さまざまな手段があるのであります。反対の扇動をすることも十分できるわけでありますし、又その間に政府が反省をせられるということもあります。よほど立至つた状態に入つて、国民の側で手段が尽きたというように思う場合には、実際には内乱を計画するのではなくて、政府に向つて根本的な反省を求めるために、我々は場合によつては最後には内乱に訴えざるを得ないかも知れない。これは政治的な宣言であつて、如何なる政治党派や組合といえども心中内乱を欲しておる政党はないと思うのであります。従つて決して内乱を引起そうとしておる人間がその辺にうろうろしておるらしいから、それを取締るのだというレベルの低いお考えでなく、内乱の手段に訴えんとしても、政治家たちも決して内乱を喜んでおるのではないから、従つて彼らがそういう宣言を発し、扇動を行なつた後においても、こちらの政治的立場を以てこれを説得し、これを防ぐという政治的な手段も十分にあり得ることではないか。こういう点を考えますれば、必ずしも追つかけ追つかけて内乱の教唆ばかりではない、扇動もというようにばかり、法の技術によつてだけ治安を維持しようという考え方になつて行くことは、私はこれは誠に恐るべき点がありはしないか。或る人が申しておりますように、ピストルによつて治安を維持しようということになると、ピストルを恐れない反抗的な力というものが出て来る虞れがある。これは我々としては法務総裁と全く御同感であつて、どうか平和に、或いは合法的な民主的な手段を尽して行きたい。そういう意味から以上三点について先ず法務総裁から、この破防法についての社会の一般的不安というものを一掃せられるような高い見識を示して頂きたいと思うのであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今誠に適切な御意見を承わりました。そこでこの法案に対する世論でありますが、私もこの法案については世論の動向ということについて十分注意をいたしております。この法案の提出前におきましても、新聞社の論説委員の人たち、ここでは名を申上げることを控えますが、各社の論説委員のかたにも親しくお目にかかつております。又最近におきましても文化人と非公式の会合において私はその御意見を承わつております。ただ不幸にして、先ほど羽仁委員のお挙げになりました東大の矢内原そのほかの諸氏とは会つておりません。そこで私はいろいろこの法案について自分の意見を述べる際に率直に申しますると、かような法案が必要であるということはお認めになるのです。現下の情勢においてかような法案は止むを得ないという根本の趣旨はお認めになる。ただこの法案が濫用されて、昔の治安維持法当時のようなああいう状態を繰返してもらつちや困る、その点について心配される点が殆んど多数であります。そこで私はこの法案作成に当りましても、これは尤もの御議論でありまするから、さような不安は一掃しなければならんという考えを以ちまして、あらゆる点から工夫をいたしまして、かような法案が一応できた次第であります。私ども併しでき上つて見て、いろいろな高からの文化人からの濫用の点についての意見を聞くのでありますが、私は率直にこれに対していろいろ自分の考えおること、又この法律の実施に関しての心がまえ、その他のことをお話すると納得されるのであります。併し新聞紙上なんかに現われるところは、これは逆になつておる。誠に不思議な現象でありまするが、私は率直に申しまして、反対のかたであれば私は喜んで議論を闘わすということになると大袈裟でありますが、私の意見も率直に申述べて見たい、こう考えておるのであります。要はこの法案の濫用という点にあるのじやなかろうかと、私はこう考えております。根本的に現下の時局にかような法案は必要なしというような極論は、私の耳にはさように響かないのであります。従いましてこの濫用防止につきましての世論については私は十分耳を傾けたいと思つております。いやしくも一つの法案に基きまして国民に迷惑をかけるということであつては相済まないのであります。繰返して私は申すのでありますが、この法案は現下の情勢において誠に止むを得ざるものであります。その極限においてこれは活用すべきであつて、いやしくもその極限を超えて濫用があつて、国民の基本的人権を侵害するようなことがあつては相成らんという気持は、私は、十分持つておるのであります。 そこでこの法案濫用の防止でありますが、これは私は繰返して申しておるのでありますが、一番注意すべきは、調査の任に当るべき者であります。昔の治安維持法におきまして一番問題になつたのは、いわゆる予防拘禁、保護検束、これが濫用されたのであります。さようなことがありましては、これは我々の考えている意図と逆行いたすものでありますから、是非ともこの法案においては、強制調査権を持たしてはいかん、任意調査権、これであれば私は昔のような状態は恐らく繰返さんのじやないかという考えを持つたのが第一点であります。 第二点におきましては、これ又しばしば申上げたのでありますが、とにかく団体を規制するに当りましては民主的にやらなければいかん、いやしくも既成の団体を如何なる理由あるにいたしても解散を命ずるということになりますると致命的でありまするから、十分にこれは慎重な態度をとらなきやならんというので、公安審査委員会、これを作ることを私は起案いたしたのであります。この委員に対しては、十分に学識経験その他世間から十分認識された立派な人を御迷惑でありましようがなつて頂いて、そうしてここで最終的の判断をしてもらう、而してこれに対して不服があれば、これは法律問題になるのでありますから、裁判所の公正な判断に任せる、この建前が一番よかろうかと、こう考えてこの法案を立案した次第であります。併しながらさような建前をとるにいたしましても、なお世上においてこの法案の濫用を危惧されておるかたがあります。それに対しましては、今後発足いたしますれば公安調査庁ができるのであります。その組織、その人員の構成、それらにつきまして十分の考慮を払いまして、万違算のないように私はして行きたい、こう考えておる次第であります。 それから非常に適切な御意見でありました、扇動に乗ぜられないようにする、如何に法律を以てこれを抑えようとしても、その裏付となるべき国民の考え方、これに対しては誠に私は同感であります。扇動を封ずること、即ちその扇動に乗ぜられないようにして行くということであります。如何に扇動がありましても、乗ぜられない人が多数でありますると、その扇動は効力がないのであります。元をただせば国民をしてさような悪質な宣伝に乗ぜられないようにすることが根本義であろう、誠に同感であります。政府の施策におきましても今後さような方向に持つて行かなければ、国民の安定というものは期して待つことはできないと考えております。我々は微力でありまするが、今後の政策といたしまして十分に民心を安定して、不法な行為の扇動に乗ぜられないように極力図つて行かなくちやならん、こう考えておるのでります。ただただ私は一番憂うるところは、この民心の不安定ということは勿論のことでありまするが、或る種の信念を持つて日本の社会秩序を破壞せんとする意図の下に行われる行動であります。これはもとより国民の不安定に乗ずるのでありまするが、それらの人々が故意に扇動するということになりますると、これは国家治安の面から見まして一日も放つて置くことはできない。これは私は二通りの政策をとつて行かなくちやならん、今お話の国民をして不法な扇動に乗ぜられないようにする施策が一つ、それと、今申しまするイデオロギーの下に日本の基本秩序を破壞せんとするそういうような扇動をなす者、この二方面の政策をとつて行かなくてはならんと考えております。前のはもとより根本問題でちります。差当りの問題といたしまして、さような不法な扇動を封ずるということが一番必要であろうと、こう考えております。 そこでこの法案におきまして日本の憲法に定められました社会の基本秩序を破壞するとか、刑法所定の兇悪な犯罪を扇動するというような者はどこまでもこれは封じて行かなくちやならんという建前をとつた次第であります。さようなわけでありまして、我々の考えといたしましては、いわゆる昔のナチスの立法、あの全体主義の行われました権力集中の法律を我々は企図したわけでも全くないのであります。私は率直に申しますると、日本の治安は或いは紊れはしないか、そういうことがありますると、折角日本は独立国家として発足するにかかわらず、誠に国民に向つて相済まん次第である。何としても内地の治安だけは日本人の手によつて確保して行かなければならん。それには止むを得ざる一つの方法としてこれは立案した次第であります。繰返して申しまするが、この法案の濫用、その御意見に対しましては、我々は全力を挙げてさようなことのないように将来万般の処置をいたしたいと考えております。警察官の問題につきましていろいろお話がございました。多数の警察官のうちには職権を不法に濫用する者あることは私は率直に認めざるを得ないと思うのであります。併しいずれの社会におきましてもさような行為に出る者はこれはあとを絶たないのであります。ただただそれを如何して立派な愛される日本の警官にすべきかということについては我々責任があるのであります。その点につきましては十分に今後そういう方面において施策を尽したいと考えております。ただ一言私は申上げたい。一昨日も人権擁護委員の代表者の大会がありまして、私も参りまして挨拶いたしたのでありますが、この人権擁護の問題でも私は最近に非常に考えさせられて、そのことを話したのです。ただ取上げられる問題は最近におきますと役人に対する民間からの抗議であります。これはどんどんおやりになつて結構であろうと思います。やらなくちやいかんと思います。併しながら一面におきまして、民間人が民間人の人権を侵害することであります。これは何としても私は考えさせられる。最近に例を持ちますると、東大の柿沼博士であります。有名な柿沼博士、あの人が何によつて死んだか、直接の原因ではありません。併しながら自分の愛する教え子によつて間接に死んだのであります。而も先生は非常に疲労して帰りがけに自分の教え子の十数名の者に取巻かれて吊し上げになつたのであります。そうして先生は倒れておる。倒れたのをその学生たちは介抱せずに蜘蛛の子を散らすがごとく逃げて帰つた。私は日本の師道地に墜ちたり、そう叫びたいのであります。全くの私は人権の侵害であると考えております。こういうふうな問題でもなぜ取上げないのか、そうして立派な学生になぜしないのか、私は矢内原総長にもこの間言つたのであります。そういうところにも幾多の日本には欠陥があるのであります。我々は協力して将来かようなことのないようにして行きたいと考えております。人権の蹂躪はあらゆる方面に存在しておるのであります。皆さんの御協力によりまして一歩一歩さようなことのないようにして、立派な平和な日本の国家を将来作り上げるということについて全力を注がなければならん、私はこう考えております。及ばずながら我々は身を挺して子孫に立派な平和な国家を残したいと考えております。その一事であります。先ほど仰せになりましたが、私はこういう法案を出したくはありません。できる限り早くかような法案の消え去ることを欲するのであります。ただ如何せん、現下の段階におきましてはかような法案を出さざるを得ないということを私は悲しむのであります。ただただこの法案の濫用については御懸念がありますから、その点については極力努めまして、その虞れのないように将来私は措置をして行きたい、こう考えます。
○羽仁五郎君 法務総裁の御良心に対しましては深く敬意を表します。そして政府委員特にこの法案に関係されるかたがたが、法務総裁の意思を正しく絶えず守られるようにお願いしておきます。それから又、若しもこの法案が成立しました際には、どうか法務総裁が責任を以てこのあなたの御方針通り、又我々が代表しております社会の良識者の不安というものに応えるような措置を是非必ずとつて頂きたいと思います。 第二に伺つておきたいのは、今お話も出ましたが、特に私自身もそういう状態にありますので、この教育者が法案に対して不安を持つているということについて例を申上げますと、この数日前に議会に全学連の学生諸君が法務委員各位にお目にかかつて破防法に反対という意思を伝えたいというふうに言つて来たことがございます。この際文字通り、私は前には学生諸君、後には鉄兜の警官というふうな間に狭まれて結局一人の負傷者も出とたくないというふうに思う私一つの心から、学生には十分に叩かれ、そして学生の言うことには賛成すべき点は十分に賛成し、そして帰つて来ても議院の事務局と交渉した。そうしてその結果、遂に議院の警備の責任者は、その学生を門内に入れればどういう不詳な事態が発生するかもわからんから、私どもが如何に責任を負つてもこれはできない、全部入れることはできない、その代表しか入れることはできない。併し学生は、どうか折角各学校、数十校の代表者が来ておりましたから、三百人ぐらいのものだから全部入れてくれということで、私は学生のほうに行けばさんざんに罵倒されまして、帰つて来てみれば警備の責任者に入れることはできないと言われて、そして努力した結果遂に、この点をよくよく聞いて頂きたいのでありますが、学生諸君は静かに諦めて帰つたのであります。帰つて行く学生諸君を裏門のところで装甲車二台、それから消防車一台、それに鉄兜数百人の威力を以てこれを永田町方面に押して行つたのです。私は帰るその姿を眺めながら、この学生の一人でも今短気をして、警官に対して石を投げるような人がないことを心で祈りながら、この学生が立ち去つて行くのを見送つたのでありますが、私その際に、法務総裁も多分御賢察下すつたことと思いますが、学生の心中はどういう気持であるか、明らかにこの人々は集団的な力を以て国会に彼らの意思を伝えたいと思つて来たのです。併し見ようによつては非常に表面から御覧になれば、こちらの威力が多かつたから、何もせないで静かに帰つたのだというふうに御覧になるかたも私はあり得ると思います。併し日常青年に接している我々としては、青年の気持というものはその際帰つて行くときに、心中泣いて帰つて行くか、そうでなければ深く含むところがあつて帰つて行くか、いずれしかあり得ないということになつて、私はこれ又甚だ同情せざるを得ない点があるのではないかと思うのであります。 こういう例を申上げたのは、簡単に申上げますと、ただ一点で、教育者が、青年の学生を教育して行くためには、青年の当然の持つております進歩的な思想というものに或る程度まで応じなければ決してこれは指導できるものではございません。青年に対して頭からマルクスを読む必要はない、共産主義なんかを研究するやつは私の家に来てはいかんというように、頭から青年のあらゆる方面を探求したい、又進歩的に、どこまでも制限せられることなく、研究して行きたいという気持に我々が一応応ずることによるのでなければ、決してこれを、私は導くなんということは使いたくありませんが、彼らの友達となつて、彼らと一緒に正しい道を進んで勉強して行くということはできません。ですから教授はどうしても今日の状態においては或る程度進歩的な立場をとるほかないのです。これはどうか法務総裁が十分御同情下すつて、決して学生に阿ねてマルキシズムを唱えておるのではありません。大内先生のように齢六十歳を越えられて、連日のごとく国会に来られて、どうか共産党に対してもう少し合法的な措置をとつてもらいたい。そうしたことが学生、青年や共産党に対して最も正しい措置をとつて行く唯一の方法だ、これを非合法に追いやるということほど恐るべきこともなく、又悲しいものはないと、あの老教授が青年のごとく顔面蒼白となつて、手もふるえて、声もふるえて述べられることには、どうか法務総裁も青年、特に優秀な大学生のみを教育する立場に立つている人が、如何に日常そういう意味において苦心をしているかということを十分に知つて頂きたいのです。ところが、その人々が不安を感じますのは、そうしてその人々が、この共産主義というものでも、決して共産主義というものは法務総裁もよく御承知のように、ただ一遂に内乱をなし、社会秩序を破壞しようというものではございません。共産主義は、いわゆる日本の場合でも平和革命と言つておつた時代もあるでしよう。根本的にはこれは又学問上の問題になりますが、例えばロシアのように、共産主義にするか、或いはイギリスや何かにおけるような社会主義にするかということは、そのとき政権を持つております政府の責任も半ばあるものではないかと思うのであります。ロシアのごとき警察主義或いは秘密警察主義とか、恐らく本法律案がいろいろな点においてよく似ておるところの、そうした政治警察主義というものでやつて行くか、それともイギリスのごとくできるだけ寛大にして行くか、これも英国の国民の教育の水準が高いからあれでもいいんだというような、この間法務総裁がおつしやつておりましたが、それでは英国の教育水準がなぜ高くなつたのであるか、それは勿論民衆のほうも自重しなければならないが、政府のほうもよほど辛抱をせられて、それで国民が少しぐらい暴れても直ちに警察力を用いないという方向をとられることがよほど必要ではないか。或る人の言葉に、自由が侵されなければ決して騒擾というものは起るものではないということを言つておられます。これは私は考うべき言葉であろうと思う。自由が侵されない場合には決して騒擾というものは起るものではない。この点を特に青年、大学生、その教育に当つておる学者諸君の苦衷というものについて法務総裁お考え下すつて、本法律案が、いやしくも学者が教育の立場において、或いは学問研究の立場において学生を指導する、或いはみずから研究を深めて行くということに少しの不安も与えないということを確言せられることがおできになりますかどうか、その点を伺つておきたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私は共産主義と、いわゆる共産党の政策と申しましようか、一種の目標を立てて進むところの行動とは区別して考えなければならない。共産主義につきましては失礼ながら私らも随分本を読みました。最初読みましたのは河上肇さんの資本論入門であります。今でも愛読しております。共産主義に対して相当理論として教えられるところがあるのであります。唯物論、唯物史観につきましては我々は或る種の敬意を払うところがあります。ただ考えさせられることは、いわゆるマルキシスムの共産主義論と、レーニニズム或いはスターリニズムと申しますか、これらと相当距離が離れているということ、勿論マルキシズムの流れを汲んで、レーニニズム、スターリニズムが来ておるのでありましようが、併し根本の行き方は私は相当相違を来たしておると考えております。そこで哲学論或いは経済論としてマルキシズムを御研究になるのはこれは自由であります。我々も失礼ながら書斎にもたくさん持つております。学者がそれを生徒に教えるということは、これは自由であります。この法案と何らの関係を持つておりません、又あつてはならんことであります。いわゆる真理の発見におきまして如何なる過程におきましても学問は自由なんであります。学問として御研究になるのは私は自由であると思います。ただこの法案の目途といたしておりますものは、そういう理論とか何とかを離れて、ただ日本の憲法に定めた国家の基本秩序を暴力によつて破壞せんとする、それを抑えようとするのであります。従いましてその思想の右たると左たるとを私は全然問わないと繰返して申上げておる次第であります。学者が教壇におきましてマルキシズムを生徒にお教えになるということにつきましては、これは御自由であります。決して本法案の関係するところではないということを繰返して申上げます。
○羽仁五郎君 時間の御都合もおありになると思いますので、あと一点だけ伺つておきたいと思います。 それはこのいわゆる人道主義との関係なんであります。昨日も質疑応答の際に、たとえ破壞活動のような種類の活動をされておる人でありましても、それが傷ついて倒れている、これに対して直ちに看護の手を差伸べ、医療の手を差伸べるということは、これは人道的な活動でありまして、これに対しては如何なる法律を以てすることもできない。人道主義的な活動、医療行為というものはあらゆる法の上に立つ尊い行為であります。然るにこれが例えば、今繃帯してやるから、又飛出して行つて大いにやれというような意味であるならば、これを取締るというようなお答えをなすつておりましたので、私はこの点について非常に憂うるのでありますが、これは過去においてもこういうことがございまして、共産主義のかたであれば、結核になられてもなかなか医師の治療を受けることがおできにならないという事実があつたのであります。又最近もどうかしますと、騒擾の際に、警官隊のほうの負傷者は直ちに救急車に救われるけれども……たとえ暴徒でありましようとも、その人が傷ついて地面に倒れている者に対して救急の手が差伸べられない、こういうことから延いて……、私の伺いたいのは次の点でありますが、延いて看護或いは医療に従事せられるかたが、単に医療なり看護なりをなす場合にも、これが非常に法に触れる虞れがあるような虞れを抱いて、看護の手を差伸べ、救急の手を差伸べるという人道一の義務を遂行する上に不安を感ぜられるようなことがあると、私は社会の公共のために、又社会の高いレベルの維持のために非常に重大な問題であると思うのであります。 で、これらを含めましてさつきから申上げました第一の点、第二の点、それから今申上げておる人道主義というものに恐怖を感じさせることがあつてはならないという意味を含めまして、法務総裁に最後に一点伺つておきたいのは、今この法案を提出せられました法務総裁としては、最初の御答弁にもありましたように実に苦しいお立場におありになるということを我々も十分了解しております。それでどうかこの法案によつて、今社会の良識者が憂えておるような不安のような方向に行くことを絶対に防いで頂きたい、これだけを願いいたします。これはなかなか法務総裁の直接の管轄の下にあられる特審局長あたりにしてもむずかしいことである。いわんやこれが末端に行きまして、調査官に行きますと、今お話のような、共産主義と共産党とはそこに或る距離があるというような、法務総裁においては立派な御認識がおありになつても、調査官においてはそれが必ずしもむずかしい。それでどうかすれば本を持つているというだけでもその人をうるさく……、いわゆる任意調査でありましようけれども、悩ます。そのためにこの間ここで宮城先生も縷々流涕せられながら申されたように、若い青年の生活というものは破壞されて来ます。そのために家庭も破壞されて来る。その点においていわゆる濫用という、或いは共産主義と共産党を間違え、又共産党員の平和な活動と破壞的な活動を誤り、或いは強いてそれを破壞活動と結び附ける、でつち上げをやるというようなことが起つて参りますと、これは到底収拾できないことになつてしまう。私どももそういうことを考えると実際暗然として涙を呑むよりほかないのでありますから、どうか今日良識者によつて指摘されておるような改悪というものが起らないように法務総裁が法務総裁の政治家としての又個人としての御良心にも基いて厳重な態度をとつて頂きたいと思いますが、如何でございましよう。
○国務大臣(木村篤太郎君) 我々はさような御心配が一日も早く解消するようにいたしたいと思いまして、この法案の実施につきましては最善の努力をいたすつもりであります。
○委員長(小野義夫君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて。
○羽仁五郎君 意見長官に伺つておきたいと思うのでありますが、法務総裁がお答えになりましたように、本法律案というものは最小限度にとどめらるべきものであるという原則は、これは政府の根本方針だと思うのであります。然るに先般来の審議の過程において政府委員の答弁を伺つておりますと、常にこの法案の最大限度を活用しようとしておる疑いが非常に濃いのであります。で、これが私は本法案についての先ず第一に非常に重大な点だと思う。で政府がその態度を、法務総裁がこの最小限度……法務総裁が念頭に置いておられるのは、いわゆる実際の社会秩序を根本的に破壞する内乱の活動というようなものを何とかして抑えて行きたいというふうに考えている。ところが政府、一般の政府委員の御答弁の場合には、人に依頼を受けて、或いは繃帯をして又出て来いと言えば、その看護婦も縛るのだというようなところへまで行く、ここに私は少くとも法務総裁を助けて、これを助けるこの地位におられるあなたが、立派な態度をとつて行かなければならない理由があるのじやないか。それで又特審局長や次長に対するあなたの法律上ということになつておるか知らないが、法務総裁との関係だね、この特審局長や次長のこの本委員会における答弁というものについては、みずから撤回されるべき答弁であると私は思う。でそれについてこれから伺つておきたいと思うのです。第一は飽くまで明らかにしておかなけりやならないのは、一片の法律によつて社会の治安は維持できるものではないということです。これが特審局長や次長にはどうしてもおわかりになつていません。で甚だ失礼だけれども、何遍繰返してもわかつていない。そのためにこの法の解釈というものについて絶えずこれに厳格に解釈して行こうという態度をとつておりますが、併し法は或る意味においては威嚇ですよ。そういう意味でこの法は容易に実行するものじやない、適用するものじやない。でまあ伝家の宝刀のごときものであつて、一旦緩急あればそれはこれを抜くけれども、併し日常茶飯事にこれを適用するものじやないということが私は当然の態度だと思う。そうでなければ、これを日常茶飯に適用されて、いわゆる任意調査をやられては、これはさつきも私言いましたように、一般知識階級は不安に堪えませんよ。頭ばかりのようになつていて、ただ飯ばかり食つてうろうろして生活しているという人は調査されることもない。夏目漱石も言つていて、ものを考えるということは憂いの始まりだ。ものを考える人間は調査官の調査の御厄介になるということになつてしまわないか。ただ私はそこにあるのだと思う。先日この秘密会をわざわざ開かれて、そして提出せられた書類というものを見るに、その書類たるや、果してこれが本法案の御審議に必要欠くべからざるような重要書類であるかということには疑いなきを得ない。それからこの共産党の活動というものについても、しばしば共産党が武力蜂起をして社会の根本秩序を破壞しようとしている、こういうことを若し法務総裁が考えておられるとすれば、これは特審局長の報告によるものだろうと思う。併上ながら私は、我々が頂戴したこれらの書類、これを虚心坦懐に読んでみれば、共産党が現在主張しておるところのものは、手段尽きた場合に我々はま服しないということを言つておる。手段ある間はあらゆる手段によつて活動するということを言つておる。言つておるのみならず、その人々を現在国会に合法的に議員を送つて、その議員をして最大限の活動をさせているのです。そうしてみれば、先ずこの点からも政府の認識は誤つているのじやないかと思いますが、どうですか、意見長官に伺つておきます。
○政府委員(佐藤達夫君) 今のお尋ねの主たる内容は実体のことが重点になつております。
○伊藤修君 いや、この法律の最小限のものを目的としているという法務総裁のお考えですね、それが出ていないのじやないか。
○政府委員(佐藤達夫君) その一点は、先ほどのお言葉にも日常茶飯事に適用されるというようなお言葉がございましたけれども、これは少くともこの法律そのものから当然に出て来る帰結として、日常茶飯事に適用されることは私の目を以て見ましてもこれはないと思います。先ほど来お話しになつておりまするその濫用の問題というようなことで、非常にこれを極端な濫用の場合を考えれば、これはそのほうの問題でありまして、この法律そのものから出て来る問題ではないと考えております。
○羽仁五郎君 そういうことをおつしやれるかどうかは疑問だと思うのです。毎日の新聞を御覧になつておると思うのです。法務総裁はお年寄だし、時間もありませんでしたので申上げなかつたのでありますが、全部これを読み上げましようか、毎日の新聞に特審局、警察官による人権蹂躪が行われておる。先ず伺つておきたいのは、九州大学に入つた特審局員は果して特審局員でないのかどうか。
○政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。そうでありません。
○羽仁五郎君 ではこれは佐藤さんに伺いますが、この特審局員を詐称した人間が現われたということは相当重大な問題だとお考えになりませんか。
○政府委員(佐藤達夫君) それ自身は決して軽易なやさしい問題ではないと思います。
○羽仁五郎君 私は戦争中神戸で発行されていた、最も日本の本当の民主主義に対して同情を持つていた英国人の新聞のジヤパン・クロニクルという新聞を今思い出すのです。これは戦争が激しくなつて遂に発行停止を命ぜられる直前に書いた社説はさようならという社説です。そうしてその中にどういうことを書いているかというと、ボーガス・デイテイクテイブ、偽刑事の問題を挙げている。偽刑事が頻々として現われるということは実に歎くべきことだ、これは国民が刑事の前に手も足も出ないということになつておることだ、これは現在の九州の特審局員がこうして大学の中を徘徊しておるということは、特審局員に対しては国民は手も足も出すことができない、これに手足を触れようものなら何をせられるかわからない。実に恐るべき秘密警察がここにどんどんできつつあるということの端緒だと思うのです。どうかこれはあなたが十分こういうことを考えになつて、この警察官に対しては我々は恐れるところがなくてこそいわゆる警察法の精神は全うせられる。警察官を見たらば偽ものかどうか聞くこともできない。手帳を見せてくれと言つたら何をやるかわからない従つてそういう風潮から特審局員として九州大学の中を平然として横行することができる。これはあなたが今おつしやられるように実際かるがるしい事件ではない。どうして特審局員を詐称する人間が現われることができたろうかということについて特審局長はどういうふうに反省しておられるかどうか、この点を伺つておきたい。
○政府委員(吉河光貞君) 御質問の九州事件については極めて遺憾な次第であると考えております。詳しい報告はまだ手許に受けておりませんが、第一報は全然特審の局員ではないという報告が私の手許に参りました。私ども本局といたしましてもこれを調査しております。特審局員ではないという事実はほぼ明らかになりました。私どもの局員の名前を騙つていろいろなしておる者が現われるという事態に対しましては、私どもといたしましても極めて遺憾な事態であると考えておる次第でございまして、こういう事態をつかみまするときには、必ずそれを調査して明らかにしているような次第であります。先般も北海道であつたかと思うのでありますが、特審局員を詐称いたしまして何か詐欺行為をやつたというような事態がありまして、これも調査いたしまして、犯人は検挙されておるというふうに聞き及んでおるのでありますが、今後といえども厳重にこういう点は調査して行きたいと考えております。
○伊藤修君 今の問題につきましてお伺いしておきたいのですが、特審局員ではないかも知れんけれども、いわゆる調査団ではないのですが、若しくは情報提供者というようなものではないのですが、我々が新聞を通じて感ずるところのものは、それによつて金銭を騙取するとか、特段に何らかの利益を目的としておるとしか考えられないのです。然るにそういうことをあえてするというのは、何らかそこに根拠がなければならんと思うのですが、普通の人がそんなことをやつたところが何らの利益がないのですから、その人が特にそういう行動に出たということは、それによつて何らかの情報を得て、それをあなたのほうに提供して金銭的に恩恵をこうむろうと、こういう考え方か、又従来そういう関連の人ではないのですか、その点どうですか。
○政府委員(吉河光貞君) 的確な報告はまだ聞いておりませんが、現地でさようなトラブルが起きましたときに九州支局の調査課長ですが、連絡を受けましてすぐに出かけてみたところが、全然人違いで、特審局の者ではないし、見たこともないというので、何か御当人がすぐにその場で兜を脱いだというようなことが伝えられておるのでありまして、なお詳細調査中でありますが、これは全然関係のない者であるというように考えております。
○羽仁五郎君 これは意見長官にお願いしておきますが、この事件については法務総裁に慎重に報告して頂きたいと思うのです。 それで端的に申しますれば、引続き特審局員を詐称する人が現われるようであれば責任をとつて頂きたい。これはどういう意味で申上げるかと申しますと、これは特審局の人間でも何でもない外部の人間が特審局員だということを詐称することに特にパーマネント・オフイシヤルズは責任を感ずると思う。併し政治家はそんなことを感じることはできません。この特審局の実際の運用の上に根本的な誤りがあればこそこれを詐称する人間が出て来る。世間に、例えばどうして朝日新聞社社員を詐称する人が、たまには現われても、少いかと言えば、これは説明しなくともおわかりになるだろうと思います。抵抗することのできるものなんです。本物かどうかということを聞いて仮面を引つ剥ぐこともできる、おかしなことを言うならば。併し秘密警察、併してその背後には恐らく人権蹂躪すらもあえてするという、そういう秘密警察に対しては国民が手を出せないということは、これは当り前です。ですから今北海道にも現れた。こういうように各地に特審局員を詐称する人間が現れて来るということは、即ちその人は局の人間ではないから知らないという答弁で済まされる問題ではない。これはあなたがたにも、法務総裁にもおわかりになると思う。これは特審局のやり方に国民がその前に戦慄するようなやり方があるに違いない。直ちにそれが偽物かということが国民が明らかにすることができない。なぜ偽物だか本物だかわからないか……併し特審局員たというものが発生する虞れがある。ですから、今九州に起り北海道に起つたのは直ちにそれがそうだとは私は言うのではない。併しジヤパン・クロニクルが指摘をしていたように、続続として特番局員を詐称する人が現われるような場合には責任をとつて頂きたい。如何なる責任をとるかというと、それは公安調査庁の運営が秘密警察に化しておるという点があるということです。この害たるや実に重大でありまして、この国民に与える不安、これは政治的に責任をとるべき問題です。私は内乱が起りそうになつたら政府が責任をとるべきだと思う。政府の交替によつて内乱を防ぐことが一等いい方法なんです。そのために選挙もあれば又政党政治ということもあるんです。その点とも関連して来ることで、余りに無理なことが行われて行く場合には、政府みずから責任をとらなければならない場合があるということを考えますが、この点については意見長官どうお考えになりますか。
○政府委員(佐藤達夫君) 主として法務総裁にお伝えすべき事柄であると存じますので、十分お伝えしておきたいと思います。
○羽仁五郎君 これは例えば我々の場合には絶えずそういう責任をとります。自分のやつたことじやないからと言つて責任を免れて情として恥じないということは、紳士として恥ずべきことです。特審局長として、特審局員を詐称する人間があつたということは、僕は恐らく飯が食えない、夜も眠れないくらいの問題だと思います。その点について十分、単に形式的な御答弁でなく、そういうものは何も、日本は八千三百万の人口がある、だからたまには特審局員を詐称する者もあるでしよう、朝日新聞社員を詐称する者もあるでしようというふうにお答え願いたくない。而も今この問題について言つているのではない。今後万一そういう者が頻々として現われるということになつた場合には覚悟がおありになるのかどうかということを伺つておきたい。それをお伝え願いたいと思うのであります。 それから第二に、やはりさつきの法務総裁の御答弁の御趣旨から伺つて、おきたいと思うのは、この法律だけで治安を維持するのではないということをもう少しはつきりあなたから答えて頂きたい。これは今自由党なり現政府に社会政策を言う能力があるのかないのか、これは別の問題ですから、今やつて見せろというふうに無理なことは私は申上げておるのではない。できないのかも知れない。併しできない場合には他の、例えば一つは社会政策ですが、この社会政策が不十分である場合には、それとのバランスにおいて本法の適用というものがよほど緩和されなければならないということが、私は法務総裁が若し本気で本法だけによつて治安を維持するのではないと言われる場合には、そこから出て来る当然の帰結だろうと思う。 第二には、この本法が目的としているところの破壞活動をなすところの政治的な主義主張、政治的な主義主張の中に破壞活動をなすといういろいろの主義、そういう主張です。それに対してこれはやはりその何分の一かは、そういう主義主張に対しては他の主義主張を以て闘わなければならないということを含んでいると思うのです。第一は社会政策、第二はアイデアに対してアイデアで闘つて行くということがなければならない。それからいわゆる言論、特にここで問題になつて来る機関紙などに対する処分と関連して来ますが、この機関紙に対しては、新聞に対しては新聞を以て闘うということが、先ず本道であるのです。それをなせと言つても、それは今なかなか政府では機関紙を発行することはできないし、一般の社会の、朝日なり毎日なり有力な新聞があるのです。例えばアカハタが現在百万の発行部数を以て日刊されましようとも、それに対して朝日、毎日、読売というのが三百万なり、或いは合計すれば一千万内外の日刊の部数を以て発行されているのです。そういうことを無視して、アカハタが発行されるということにだけ不安を感じ本法を適用するということは、若し法務総裁がおつしやることが、本気でおつしやつていられるならば、私は成り立たないと思つているのです。この先ず二点について伺つておきたい。 本法だけで治安が維持できると思わないということを本気でおつしやつていらつしやるとすれば、即ち社会政策上甚だ不完全だ。昨日の新聞などを見ますならば、本年の租税の滞納ということは実に驚くべき額に上つております。そういう状況というものに向つて本法を遠慮会釈なく適用して行けば、税金はますます滞納になり、私は税金を出して公安調査庁の役人を雇つて、しよつちゆう叩けばほこりが出ない者はないというやり方でやられると、税金など出す気もなくなつてしまう。第二に機関紙、特に機関紙の問題で、破壞活動をなす機関紙が発行されて、それに対して第一には、他の新聞によつて十分にそれが是正するところの作用がなされているということを認めましてそれによつて本法を適用するという最小限界というものをお考えになつているかどうかという、この二点を先ず伺つておきたい。
○政府委員(佐藤達夫君) 先だつて羽仁委員いらつしやいましたかどうか覚えておりませんが、丁度片岡委員からそういうお尋ねが私にございまして私はどうもその法律関係を扱つておるいわゆるキヤリア、サービスとして、身に余るお尋ねだという前置きはしましたけれども、併し結局今羽仁さんのおつしやるようなことはこの間お答えしたわけであります。これは結局先ほどの法務総裁の答えにも又繋がることなので、このお言葉のはしはしにはそれは考えなければならんことはあると思いますけれども、重点においてはおつしやる通りであつて、勿論この法案は避け得ない現実の危険を排除するだけであつて、その原因をこれでとめようということは、到底この狙いでもありませんし、これでできることでもない。やはりその下にはお言葉にありましたように、衣食足つて礼節を知るということになれば、泥棒もなくなるだろうというような考え方から来る、素朴な言葉で言えばそういう意味での社会政策的な措置が裏付けになつていなければならん。又言論に対するに言論を以つてというような点から言えば、批判力の養成というような形で、或いは教育の面に繋がるかも知れないといつたようなことをお答えしておつたわけでございます。
○羽仁五郎君 そこで伺つておきたいのは、吉田総理や法務総裁はときどき共産主義のイデオロギーに対してはイデオロギーを以て闘つたらどうかという我々の質問に対して、或いはこれは幾分ユーモアを含んでお答えになるのかも知れないから、或いは余りまじめにとつてはどうかと思いますが、共産主義のイデオロギーに対して闘い得るだけの自信がないと、吉田総理は平和条約の討議のときお答えになりました。社会党の吉川末次郎議員が、そんなことでどうして総理大臣がやれるのかというお叱りがあつたことがありますが、私は総理なり法務総裁なりは本気でそういうことをお考えになつているのではないと思う。本気でそういうことをお考えになつているならば、現在のような世界の四分の一ぐらいが共産主義になつて来た今日の時局を担当する能力がないということを自認せられることになる。 そこで伺つておきたいのは、従つてこの公安調査庁長官の資格ですね、このかたがいやしくも、これは宮城委員からもこの間御質問がありましたが、今まで昔の特高の経験がある、或いは今まで警察の署長をやつていた、或いは今まで特番局において活動しておられたというかたが私は適当であると思えない。なぜそうであるかというと、今の二つの点が関係して来るであろう。勿論この二つの点は、特に政府のこの法案の立て方からいいますと、必ず審査委員会において今のような政治的な政策の面も考え、或いは他の新聞がそれらの機関紙と相対してもつと優越的な力を以て発行されているというような一般情勢ですね、一言で申上げれば、本当に政治的な判断を以てこれが規制の対象となるべきかどうかということをお考えになるのは、先ずこの政府の法案の建前から言えば委員会でしよう。併しながらこの公傷調査庁の長官がその点において認識の欠ける人たちであると、本法というものは実際これは濫用じやなくて、この法の運営そのものが誤つて来る。これは私は一般に今日本の良識を代表する人々が感じておる第一の不安だと思います。そこでその点について公安調査庁の長官たる人は如何なる能力を持つていなければならないか、これはいわゆる思想警察の経験を持つておるというようなことは欠格の条件となり得るかどうか、そしてこの公安調査庁長官たる人は、十分に社会的な識見を持つており、従つて新聞というようなものの実際の活動についても十分識見を持つている。一言で言えば、そうした政治的な識見のある人を必要とするのじやないか、これは法律によつて聞いているのじやないから、そういう法律を御覧にならなくてもよろしいが、あなたが常識に訴えて、この間宮城委員の御質問に対しては、特高の上りとか警察署長の上りとか、そういう者を調査官に任命する気持はないというふうなことを申されておりましたが、今日特に伺つておきたいのは、公安調査庁の長官についてどういうふうなかたが適当であるというふうにお考えになつているか、その点をどうか一つあなたの良心に基いてお答えして頂きたい。
○政府委員(佐藤達夫君) これは只今私が政府委員としてお答えすべき御質問かどうか知りませんけれども、いずれにしましても、実は今公務員法をくつておつたわけでありますが、公務員法の原則から申しましてもその仕事が厳正公平に行なわれるような人をそのポストに当てるということが一貫した根本原則、即ちその人のその職務についての適格性を判定する根本原則であるのです。従いまして抽象的で大変申訳ございませんけれども、そういうよその人が、第三者が見てもその点に信頼のおかれるような人がその場所にすえらるべきものであるというふうに考えます。
○羽仁五郎君 それでは大変恐縮でありますが、さつきの点と併せてどうか法務総裁に私の質問の趣旨をお伝え下さいまして、願えます機会において答えて頂きたい。繰返して申しますが、第一は特審局員を詐称する人が引続き現われた場合です。これはもうすでに現われていますから、今後継続又は反覆して現われるというようなことがあるならば、その際にその責任をおとりになるお考えがあるか、それとも無責任にお考えになるか。それから第二は、公安調査庁長官という人はどういう人でなければならないとお考えになつているか。要点はいわゆる特高警察なり特審なりという経歴の人が適格であるというふうにお考えになつているか。それともそうでなく相当の政治的識見というものを持つている。従つて言論、学問、思想、そういうものについての理解の高いかたということが必要であるというふうにお考えになつているか。これは先ずこの点の問題もよほど私は実際の問題として今後本法を運用される際に、本法に対する社会の良識を代表しているかたがたの不安の大きな原因であると思いますので、その点についてどうか十分形式的でなしにお答えしておいて頂きたい。そのお伝え方は、意見長官にどうか誠意を以て伝えて頂きたいと思います。それからこれは御承諾願つたことだというふうに考えますが、その際に特に附加えて伝えて頂きたいのは、共産党に対して、イデオロギーに対してイデオロギーを以て闘う自信がないというようなかたでは困るということです。やはり共産党に対して、共産主義に対して、或る確固たる政治上の確信を持つている人でなければならない。併しそれは八紘一宇とか日本主義とか日本何とかいう過去の古いイデオロギーじや困る、やはり近代的なイデオロギーを持つているかたでなければならない。一言でいえば私はそう思う。従つて共産主義に対しても相当同情的な、さつき法務総裁がおつしやつた程度にでも結構です。共産主義と共産党というのは違う、その共産党そのものもいろいろな場合に違う。もう共産という字がつけば絶対いかん、社会主義もいかんというようなものじやならない。社会主義、一般社会民主主義に対する理解があるということが私は必要だと思う。そうでないとこの法案の濫用じやなくして、運用そのものが危険だと思うので、その点をお願いしておきます。 それから続けて伺つて行きたいのは、やはりこれはそういう事実があるから伺うのですが、挑発された場合です。いわゆる特審乃至今度の公安調査庁の調査官或いはそれらと関連のあるような人、大体そこへ限定してもいいのですが、そういうふうなかたがたが挑発して事件を起したのではないかと疑われる事件が我々の心をいためております。これはまだその事実について詳しく申上げませんけれども、例えば今問題になつております岩ノ坂上交番事件というものについては二通りの報道があります。一つはあそこの労働組合員が岩ノ坂上交番の前を、交番はこの頃狂暴性を帯びているからこわいからというので、道路の反対側を静々と行進して行くときに、その行列が半ば進んだときにその交番からいきなり発砲した。そこで驚いてその交番と対抗の姿勢をとつた。そうしてそこで射殺した人の死体を交番の前まで運んで行つて、これを交番を襲撃したから射殺したというふうにしたのだ、実にけしからんという報道が、これは相当に信頼し得る新聞紙によつて私は読んだのでありますが、今の特審局などが危険視しているような新聞ではまだないだろう、後日は知らんこと……。現在においては一般に買えて読める新聞にそう書いてありました。而もこれは法律関係のかたがたです。ですから満更でたらめに書いておるというわけでもなかろうかと思う。そうすると翌日の新聞には、今度は恐らく政府側の発表であろうと思うが、行列は交番の前を進行して行つて、行過ぎて、それからユー・ターンをして、ユー・ターンとか何とかいうことは最近警察でやたらに使う用語ですが、ユー・ターンをして、そうして三万から交番を襲撃をしたと書いておる。そうすると少くとも事実は一つは明らかになつたわけです。交番の前を通つたときはかなり離れて通つた、そのときには何ら交番に対して襲撃的な活動をしていない、冷静にしたというこうした二つの報道がある。 それからこれも新聞で御覧になつたかどうか知りませんが、去る二十九日の神田の共立講堂において行なつたアジア不戦の夕という会があつて、その会が終つたあとにどこの人だかわからない人が一人入つて来てビラ等を配つておつた。すると会場で誰か品物を盗まれたという事件が起きて、そこでその会を主催していたかたがたがそれを調べた。調べたところが突然その人は人殺しと大声を発した。それを合図に数十名の警官がそこに乱入してそこにいた人を、坐つていた人を除いてそこに居た人をひつくくつて行つた、ひつくくつて行つて拷問を加えた、こういうのです。それを私は社会タイムズにはつて見まして……、前のほうは人権民報、あとのは社会タイムズですが、この拷問は実にひどいと感じたのです。而もこの拷問は全く治安維持法時代の拷問と同じような拷問になつておる、我々が受けた同じ拷問を始めておる。これはこの記事だけを以て真実なりや否やということは断言できないが、こうした事実が最近至る所に起つている。警官がややもすれば民衆を叩くということが頻々として最近起つている。こういうことも果して真実なりや否やはまだ調べてみなければわかりませんが……。 そこで伺いたいのは、それらについてすべて答えて頂くというのではなくて、本法を適用する政府の側からいやしくも挑発に類する行為、又は挑発があつた場合には、そこから起つたところの破壞活動というものに対して本法を適用することができないと私は思うのですが、どうですか。
○政府委員(吉河光貞君) 挑発のごとき行為は絶対に許されないことは申すまでもないことであります。でいろいろと挑発なりや否やにつきまして各種の報道もあることと思いますが、真実は十分なる捜査又は調査によつて判明さるべき問題であると考えるのでございます。挑発した事件を取上げるということは許されないと考えております。
○委員長(小野義夫君) どうですか、この辺で午後に譲りましようか。
○羽仁五郎君 はあ、ちよつと……。特審局長から大変立派なお答えを頂戴したので、私もこれに対する認識を新たにしなければならんというふうに考えておるわけですが、(笑声)これはどうかその趣旨を守つて頂きたい。いやしくも挑発した、その結果起つた事件に対して本法を適用するということは許されない。これはいろいろやかましく言えばいろいろ法律上の議論もありましようが、こういう挑発されたんであろうと何であろうと、そこで実害が起つたという場合もありましようが、本法は法務総裁がさつき言われたように、最小限度の措置であるという立法の精神から言えば、私はもうくどくどした二義的な議論はすべて消え去つて、いやしくも挑発によつて起きた事件を本法適用の対象にするということはしない、許されないという方針を厳守して頂きたい。何故そういうことを申上げますかというと、学者の中に、例えば戒能通孝氏は述べておりましたが、本法を適用して或る政党や組合をつぶそうと思えば、警察官の生命一つを犠牲にすればできるということを言つている。こういう深い不安が相当の学者の中にもあるということはそこから来るのですから、これを一掃せられるために、今の特審局長の御答弁は私の伺つた通りで間違いないとすればそれを是非厳守して頂きたい。
○委員長(小野義夫君) ではこれで休憩いたしまして、午後は一時から始めます。 午後零時一分休憩 —————・————— 午後一時三十二分開会
○理事(伊藤修君) それでは午前に引続きまして法務委員会を開会いたします。
○羽仁五郎君 午前の最後に政府のお答えを頂戴しておいたことなんですが、時間がなかつたのでそれに関連した問題を午前には述べることができなかつたので今それを述べさして頂きたいと思います。 それは法務総裁にも伺いまして、本法はナチス、ナチズムというものと同じラインの上に立つものでないという法務総裁はお考えなんです。そこで今度伺つておきたいのは、御承知のようにナチスは共産党を非合法化し、続いて社会民主主義政党を非合法化し、続いてあらゆる民主主義政党を非合法化しました。その最初の方法は一体どういうことをやつたのかと言いますと、一番最初に国家公務員の争議権を奪うということをやつたのであります。これはまだナチスの時代ではないので、ドイツが第一次大戦によつて敗れて、そうしてその敗戦の経験の中かちワイマール憲法という模範的な憲法を作つた。その憲法を作つてまさに三年ほどたつた、一九二二年から三年にかけて日本と丁度同じように、ドイツも国営事業が非常に多いですから、従つてその国営事業の従業者の大ストライキが起つた。これに対して当時の大統領の命令に基いていわゆる公務員のゼネストを禁止し、続いて公務員の争議権というものを奪う立法をやつた。日本も同じようなことをやつております。それからその次に政府の意見を質しておかなきやならんと思うのは、大きな事件として起つたのはヒツトラーが政権をとつたその直後のいわゆるドイツ帝国議会の放火事件ということです。今となつて見ますれば、このドイツ議会の放火事件というものは、ナチスが共産党内に、恐らくは党員であつたか或いは一時党員であつたような人を誘惑して、そうしてこの人に議会に火を付けさせて、そうしてこれを以てドイツの国家組織の基本秩序を破壞する陰謀を共産党がやつているという理由から共産党員すべてを逮捕し、続いてこれとの関連において社会党員を逮捕するということをやつたのです。これは政府もよく御承知の事実です。 そこで今現在日本の知識人、或いは良識あるかたがたが非常に心配している一つの問題がここにある。つまり破防法というものはどういうふうにして使うものだろうかということについての問題があるのです。それで午前にこの挑発によつて起つて来た事件というものを本法の取締の対象とはしないという立派な答弁があつたのですが、なかんずく今も申上げましたような、或る一個の政党というものを非合法化するという目的を以てその党員に対して働きかけ、或いはこれを誘惑し或いはその判断を誤らしむる、そうして例えばこれは口にするだに忌わしいことでありますが、日本の国政最高の機関というものに対する破壞活動というふうなものを挑発する。そうしてその破壞活動というものに結び付けてその政党を非合法化しよう、解散しよう、その準備としてこの法律案を出しているのじやないかというようなふうに憂えられているゆえんは、決して私はその理由なしと言うことはできないと思う。それで本来ならばこれは総理大臣なり法務総裁からお答えを願うべきはずでありますけれども、その点について現在の法案について政府の責任をとつておられる政府委員から伺つておきたいのは、そういう意図は勿論ないこと忙伺うまでもありません、伺つておきたいのは、そういう類似の事件の発生というものは絶対に許されないものであるかということをこの際はつきりしておいて頂きたい。もつと質問を一般的な質問にしますと、本法案は或る政党、或いは或る組合というもののその活動を制限するために、その組合その政党と或る刑法上の犯罪或いは内乱、列車転覆というものを結び付けるようなことは絶対許すものでない。いわゆるそういう疑いがあつた場合には、本法案の示威行進に対する規制、機関紙に対する規制、又その団体に対する解散の規制というふうなものはかけらるべきものではないというふうに私は確信しますが、その点について政府がはつきりお答えになることが私はできると思う。今の現在御出席になつた政府委員からお答え頂いて、不十分であればこれは次の機会に法務総裁からでも是非その点をはつきりしておいて頂きたい。即ち本法案は何故に団体を規制すると言つて、その団体の目的或いはその団体の本来の性質とは関係のない刑法上の犯罪と団体とを結び付けようとしているのであるか、そこに問題がある。これは非常に重大な問題でありまして、個人の場合で言えば、例えば吉田茂さんという首相を倒そうとしてこの人に、総理大臣としての主義、主張の上で争うのが堂々たる行き方ですりところがその主張を何かほかのほうに結び付ける、或いは刑法上の犯罪に結び付ける、或いは私交上の非行に結び付けてこのかたを倒すということは、私は民主主義の上で殊にこれは避くべきことだと思います。それでそういうことがときどき行われていることを私も見ておりますが、私自身はできるだけそういうことをしたくない。前法務総裁の大橋君にしてもそういうような問題が随分ある。併しながら政治上の問題は飽くまで主義、主張で争つて行くべきです。従つてこの法案が何故に政治上の主義、主張を持つている政党や組合というものを、この第三条第一項の二の政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、左に掲げる刑法上のそれぞれの罪というものを結付けてやるか、ここに大きな問題があると思う。先ず第一に伺つておきたいのは、いやしくも政治上の主義、主張を持つた一つの政党或いは組合、これを今申上げたような刑法上の罪とか或いは本法に掲げておるところの破壞活動というような罪と結び付けて、その政党なり組合なりを解散するというような意図が疑われるような事件というものに対しては、本法は絶対に適用されることはできないということがお答え願えるかどうか、この点を先ず伺つておきたい。
○政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。ドイツの過去の歴史につきましては、非常に私どもとしても参考になる御指摘がございました。この破壞活動防止法案の運用につきまして、或る特定の政党又は組合を目標といたしまして、これに規制をかけるというような意図を以てここに列挙されておりまするような暴力主義的破壞活動がこれらの政党や組合によつてなされたというような意識的工作をするということは、絶対に許さるべきものでないと考えております。
○羽仁五郎君 只今の御答弁は、政府の正式のそして唯一の御答弁であるというふうに伺つておきます。なおこの点については政府委員から法務総裁によくお話を願つて、次の機会に或いはその点について改めて又伺つておく必要を生ずるようなことがないようにして頂きたいと思うのです。 これは実に重大な問題なんです。でありますから、政府は恐らくこの点を考慮されて、本法案に対する説明の過程において共産党という言葉をできるだけ避けるように努力をしておられるのは、そこにあつたろうと思う。ところがここに今の問に引続いて十分に伺つておかなければならんと思いますのは、これが一般の調査官なり、或いは本法の運用の上において、共産党がこういうふうな活動をなすというチヤンスを捉えてこれに規制をかけ、或いはこれに解散、即ちこの規制の中に解散をも含むのですが、そういう規制をかけるというような活動を行われる虞れが多分にあると私は思う。或いは特審局というか、現在の政府委員の中にもそういうふうなお考えを持つているかたも或いはあるのじやないか、これは実に危険なことであります。勿論私は、如何なる政党であれ、本法に掲げるような破壞活動をやつた場合に、それが本法の規制の対象となることは、それは本法によつて規定されていることで、それを私が賛成するか反対するかは別として、この法律の性質上そういうふうになつているということは、この法律を読めばわかるのです。問題は、この法律を使つてそういうことをやるということは絶対に許されないと思う。そういうことをなすつたならば、この法律は無効ですよ。私はこの法律は他の点からもいろいろな点で無効ではないかということを恐れるのですが、併しながら今申上げたような意図を以てこの法律を用いられたならば、その瞬間からこの法は無効になる。従つて今の点はどうか、仮に本法が成立してこれが運用される場合に、基本的な方針として末端に至るまで徹底せられて、いやしくも本法を利用して一つの政党或いは一つの組合というものを解散する目的を以て、その政党或いは組合等を何らかの刑法上の犯罪と、或いは本法に言う犯罪と結び付けるような計画をなし、又はそれを実現するということは絶対に許されない。それは本法を根底から覆えすものであるということを明らかにせられる意思があるかどうかを伺つておきたい。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に私どもとして重々反省しなければならんような点について御質問がございました。謀略的な意図を以ちまして本法が運用せられてはならんということは、誠に御質問の通り本法運用の鉄則であろうと考えております。こういう趣旨は飽くまで末端におきましても徹底するような努力をしなければならないと確信しております。
○羽仁五郎君 非常に立派な御答弁を頂戴しておりますが、それが今申上げたような意味において、法務総裁もその点において十分認識を新たにせられ、又仮に本法が成立した場合の運用の際には、第一にそれらの点が末端の調査員に至るまで徹底せられるという努力をなさるというように伺つておきます。 それから先を今度は伺つておきたいのです。それにもかかわらず、そういう事件が起つた場合に、これはどういうふうな責任をおとりになりますか。
○政府委員(吉河光貞君) 勿論長官初めその衝に当る幹部はその責任をとらなければならないと考えております。
○羽仁五郎君 そこで、今まで殆んど一月間に亙る本法についての審議の過程において政府も非常な努力をなさつたが、各議員も非常な努力をなさつて、その質疑応答の際に政府の見解としてお述べになつておることで、今政府がお述べになつておる御趣旨と相反するものは全部これは無効であろうというふうに思いますが、これはどうでしようか。
○政府委員(吉河光貞君) 私どもとしては、本法案の公正な運用を期する上におきまして、いろいろと御質問にお答えいたしておるわけであります。併し今羽仁先生から御指摘がありましたが、十分そういうような点につきましては、末節に至るまで反省したいと考えております。
○羽仁五郎君 今申上げましたのは、少し言葉が足りませんでしたが、真正面から対立するような御答弁というような意味じやないのです。いろいろ細かい点におきまして、そういう点まで追及して行くということになると、今のような御答弁と相反する結果になるというような点があつたというふうに私は思いますので、この点は一々ここで挙げるということは大変な時間ですから、趣旨の上において、今お答えになつた、つまり本法を利用して或る政党或る組合を解散し、又はその機関紙の発行或いは集団的行動というものを制限するというようなことは許されない、その場合にはそうした誤つた行動をとつた人々が責任をとるという御趣旨において今までの御答弁を伺つておくという意味です。 そこで次に今度伺つておきたいのですが、これは本法案の政府のお考えを伺つておる間に非常にはつきりして来ましたことは、政府の考えが絶えず動揺しておるということです。その第一は、この法案は共産党を非合法化しようとしておるのか、それともどういう団体であろうとも、破壞活動をなそうとするものを取締ろうとするものかというこの二つの点です。政府が絶えすその点において動揺しておられるという事実を私は一々指摘しませんが、そこで伺つておきたいことが一つあるのです。それは、どういうわけでこの法律案というものが共産党を非合法化するという法律案として立案されていないかという点ですね。これは先日文化人、学者のかたがたとの懇談会の場合にも、関君からそういうふうな点について御答弁がありましたが、御答弁がいつも動揺しております。それでこれはよほどはつきりなさらないと私はこの法律案を通すわけには行かないと思う。これは国民が、我々がこの点をあいまいにしてしまうということは許さない。そこでこの際この点をはつきりしておかなければならないのですが、その点はどうですか。
○政府委員(吉河光貞君) この法案は共産党の非合法化を目的とするものではございません。この法案は、如何なる政党その他の政治団体又はその他の団体にいたしましても、この法案に規定されておる暴力主義的な破壞活動をなす、又は将来なす危険がある団体を対象とするものであります。
○羽仁五郎君 これは動かない御答弁として伺つておきます。これは今日の午後の最初の質問に密接に関係して来るからです。若し政府がこの法律案を以て暗々裡に共産党を非合法化することを目的としておるということがあるならば、私は堂々とそういうふうに態度を明らかにして議会の審議を受けられるのが当然だと思います。本当にそうじやないと、今特審局長がお答えになりましたのが、政府の公式の唯一の見解であるというように伺うとするならばいいですが、その点は常に一貫していなければいけません。いやしくもその点において動揺して揺り動くような御答弁をなさることはこれは非常に危険です。なぜかというと、今日の午後の最初に伺つたような問題かそこから発生して来るような虞れが多分にある。私は今日の午後の最初の問題は、組合を解散するような目的に本法を利用するようなことは絶対に許せん。又そうした責任者はその責任をとるというふうに伺つているのは、それとすでにここで関係して来る事柄なんです。で、この法律案の立案の趣旨というものは、共産党の非合法化ということを考えているのじやないというのが政府の唯一の見解か、それとも共産党の非合法化ということを考えているのだと言おうというのが政府の意見なのか、これはそれをごまかすことはできますよ。共産党であろうと何であろうと、破壞活動をするものを規制の対象とするのだというふうに答えればいいのだというふうに政府委員はお考えにならないで頂きたい。そういう小さな問題ではありません。この法律が一体、それこそ本当にこの議会に火を付けて、それを共産党員が付けたのだと言つて共産党を非合法化する。即ちナチスの方向に一目散に行く。国民はとぼとぼとそのあとを憐れについて破滅の淵に導かれるということは、これは吉河君でも関君でも絶対に願うことではないと思うのです。そういうことは絶対に願うことでないというふうにお考えになるならば、今のお答え、即ちとの法律案は決して共産党を非合法化せんとするものではないという点が徹底していなければいけない。これはやつぱりこの法運用の際に私ははつきりとされておらなければならないと思います。とかくそうした状況の下で、第一線なり何なりで非常に苦労をされる調査官なり或いはそれぞれのかたがたが、その点について若しも中央の最高の責任者が動揺しておられるようですと、そこで必ず間違いが起る。そこで間違いが起つてしまつてから、私どもはこれを防ぐという自信は本当にありません。残念ながらないと言わざるを得ない。そういう間違いが二つ三つというふうに起つて来てしまえば、もはやその態勢を防ぐということはどうしてもできない。一路にナチスに向つて日本が陥つて行く。フアシズムに落ちて行くということになるので、その点も今お答えになつただけじやなく、仮に本法が成立した場合、その運用の根本的な精神の上にそれを明らかに現わして頂かなければならないと思いまするが、如何でしよう。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に御質問の通りであります。この法案が成立いたしました場合におきましては、事務運営の基本原則としまして、只今のような御質問の趣旨に副いたいと考えております。
○羽仁五郎君 この政府が、本法について絶えず動揺しておるという一番重要な問題は今の問題です。それで私はこれは多少意見にわたりますけれども、例えば大内先生のようなかたが、共産党にできるだけ合法的な活動を認めるという方向に行つてもらいたいというように、それこそ誠心を吐露して言われるゆえんというものもそこにあると思う。それでこの法律案を成立した暁に、急いで共産党の非合法化をやるというようなことは、飽くまで我々も阻止しますが、政府もこれを阻止する責任がある。これだけ共産党が合法的に活動すること、それに向つて我々の努力をすることが民主主義を守る方法である。これは私は決して共産党を弁護しているのじやありません。日本国憲法を弁護しなければならない責任があるからです。この点は今のお答えのように是非して頂きたいと思います。 次に政府が絶えずこの法律案によつて動揺しております問題は、今の問題と関係しまして、この法律が仮に成立した場合に、それが言論、集会、結社などの基本的人権を制限するものになるかならないかという別れ途です。どういう場合にそれがなり、どういう場合にならないかということは、それは今伺いましたけれども、この第二の、今日の午後の第二の点ですが、つまり本法案が共産党を非合法化するというものでないということがはつきりしていることが先ず前提として必要なんです。その次に政府が絶えず動揺されるのは、この法案と、それからこの法案のみによつて治安を維持するという考えはないという考え方と、それからこの法案によつて治安の維持というものを全うして行きたいというところの考え方とのこの二つの間の動揺であります。これはこの問題の動揺自体が私はなかなか恐るべきものだと思いますけれども、それは今申上げた、その前の共産党の非合法化ということを目的としているのか、それとも本当にいわゆる破壞活動というものを目的としているのかということと関係して来た場合に、少しでもこの点が動揺がありますと、本法律は必ず人権を抑圧するものになつて来ます。ですからこの点においてもこれは是非、仮にこの法案が成立した場合には、はつきりとこれは、この法律というものは、それと並んで社会における社会政策の忠実なる実行、そうして又社会における言論、集会、結社、その他の民主主義的な権利の適正な運用というものと相待つてでなければ、決してこの法律というものはその効果を挙げるものでないということが明らかにされている必要があると思う。で、そうでありませんと、これは先日学者、文化人のかたがたからの御意見の中に、丸山真男東大助教授の御意見の中にあつて、政府委員もお聞き下さつたと思うのですが、この法律があたかも政府は国民を信頼していない、或いは大学を信頼していない、言論、新聞などを信頼していない、ただ自分の手一つで治安を維持するのだという誤解を与えている。勿論政府はそんなことを考えていないが、そういう誤解を与えるというのは、そこにあるのです。即ちこの法律案というものが、その他のさまざまな民主的な方法とバランスをとつて相待つて施行せられるならば、必ずしも言論、集会、結社などの基本的権利を抑圧するものだというふうに、私どもといえども断言することはできないのです。或いは断言すべきではありません。併しながらこの法律が並んで効果を、発生すべきそれらの手段というものを、十分の効果を発生させないときには、即ちこの法律は言論、集会、結社、学問、思想の自由を抑圧するものになつて行く。ですからこれは必ずこの法が実際に運用されて行くときには、基本原則として明らかに掲げられて行かなければならないものであります。本法律案は社会政策の良心的な実行、それから社会における言論、集会、結社、なかんづくその新聞、或いまこの集団的な行動という民主主義的な近代的な方法が健全に十分行われて行くということを前提として初めてこの本法というものはその所期の目的を達するものだ。そつちを少しでも制限して行つたならば、本法というものは適正な効果を挙げることができない。その認識が上から現場のかたに至るまで徹底して行く必要がある。その手段をおとりになるつもりであるかどうか、それを伺つておきたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に御質問の趣旨一々反省すべき点であろうと考えております。特に私どもが法律万能と申しますか、取締万能の気持を以てこの法案を運用してはならないという点の御指摘は、この法案運用のやはり基本原則になるものと考えている次第であります。
○羽仁五郎君 次に伺つておかなければならないのは、特に問題が今度はだんだん具体的になりますが、団体に対する取扱いです。団体に対する取扱いを伺つておりますと、この点については多々いろんな問題がありますが、今の問題と関連して来る、つまり政府が絶えず動揺している、動揺していると非常に危険だ。これは他の委員会との連合委員会の席上において或いは労働委員の原虎一委員、或いは中村正雄委員、和田博雄委員、菊川孝夫委員、それから本委員会においては内村委員、又片岡委員、それらのかたがたから実に詳細に御質問があつた点です。即ち労働組合がその中に……、まあ先に申上げた連合委員会の場合には、そのいわゆる役員ですね、中央委員会なら中央委員会の中で少数派であつて、その決定に反対したけれども、併しながら多数によつてその決定がなされる、そしてその決定によつて破壞活動がなされたという場合に、この少数の役員という者は役職員たることを停止せられるかどうかという問題であります。これについてのお答えは、この今の条項の原則として、この規制は最小限度にとどめらるべきだというふうに書いてあるから、従つてこの少数派の反対の役職員に対しては役職員を排除という規制は行えないものというふうに思うという御答弁でしたが、現在でもその通りですか。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に御質問の通りであります。
○羽仁五郎君 それから片岡委員の質問に対するお答え、これは片岡委員の御質問は、そうした組合、或いは組合に限りません、政党の場合もそういうことはありますが、そこのフラクシヨンの活動がある、そのフラクシヨンの活動が、事実最近の進歩したフラクシヨン活動というものはなかなか本法で以て挙げているようないろんな条項を充たしていないのです。どこから来るか、誰が誰と連絡して来るとかということもわからない、そういうものだが、併し同時に極めて活発である。それでその政党なり或いはその組合なりの大勢を動かして行くだけの力がある、そうしてそのフラクシヨンの活動によつて組合なり何なりが破壞活動をなした場合に……、いいですか、それから先が問題ですが、どういうふうになるかということについて、片岡委員は今日御出席ありませんが、政府のほうの御答弁は納得しておられませんし、私も脇で伺つて納得できないのです。併し簡単に私は伺つておきますると、その際に一番問題になるのは言うまでもない。そういう破壞活動の責任をその組合に負わせることはできませんね、これは御答弁ではつきりしている。それからその近代的な極めて進歩したところのフラクシヨンというものは、これは捕えることはできないのです、事実ね、わからないのですから。で、仮に捕える努力を十分なさるとして、それでも捕えることができないという場合の、或いは捕える努力をなさろうとする場合、いいですか、その際に今伺つておかなければならないことは、それが捕えられないからといつて、その合法的な組合に対する調査活動をやるということを許されるかどうかということなんです。これは非常に重大な問題と関係して来ます。それで詳しく申上げなければならない点がありますが、それは後に団体に対する規制というもの全体を含んでこの際に申上げて行かなければならないので、今申上げているのは、問題を簡単に整理して申上げているので、その点を十分お考え下さつて……、いや、或る程度必要があればその組合のほうにも調査をしなければならないというふうなお答えをなさると、あとから非常にこれは困ることになると私は思うのです。又それを組合のかたは懸念している。又片岡委員もそれを御心配になつて、ああしてひつくり返しとつくり返し殆んど一日そのことをお聞きになつている。それで政府の御答弁でなかなか満足されない。委員長が間に入つて整理をなさつてもなかなか片岡委員の御質問は綿々として尽きないということはそこにあるのだと、私も脇から伺つて了解している。若しそういうことが行われますとフラクシヨンというのが活動して、その組合が破壞活動をやつた場合、そのフラクシヨンはどうしても捕らない。捕まらない結果、その組合員とフラクは誰がどういうふうな関係があるのだろうというので、組合のほうを洗い出すということをなざいますと、この組合が破壞されちやいます、しまいには……。ですから本法がいやしくも正常な組合の活動というものを阻害するものじやない。又本法の規制は必要にして最小限度にとどめられべきだ、基本的権利として憲法に保障されているものを決して侵さないという趣旨からいいますれば、まあ特審局長がお答えになつたように、わからないからといつて途中で放つておくことはできないでしよう。それはさぞ無念残念にお考えになるでしよう。そのフラクが捕まらない、捕まらないと言つているわけにはいかない、何とかして捕えよう。併し風のごとく来り風のごとく去るものだ。そうするとそつちは洗えないから組合のほうを洗つてみようということが若しあるならば、そこにそういう動揺、揺れ動く動きが、お考えがおありになるならば、これは組合が非常に危険を感ぜられるのは誠に無理ないと言わなければならんから、この不安というものは一掃することはできません。そこではつきり伺つておきたいのだが、その際には前に伺いますと、本法によつて治安の維持ができるものじやないのですから、他にさまざまの方法があるのですから、ですからこの本法だけによつてその風のごとく来り風のごとく去るフラクシヨンというものを捕えることができなかつた場合には、本法でその破壞活動を防止することはできないけれども、併し他にいろいろな方法によつて防止することができることも考えられて、いやしくもその合法的な組合そのものに向つて、その破壞活動に責任のない組合の側に向つてすでに調査の活動をなすということも、これは許されないことだ。それをなすならば、組合は不安に怯えて、却つて本法所期の目的を覆えしてしまう。いわんや基本的権利を侵害するものになる。即ち本法はナチス立法である。組合、政党の集団、結社の自由を抑圧するものだ。こういうことになつて行きますから、これが抑圧的なものになるかならないかということの具体的な、今後の場合として、今の点についてはつきり答えておいて頂きたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 御質問の御趣旨はよくわかりました。労働組合内におけるフラクシヨンが破壞活動をやつた疑いがある、これを調査しても調査力も未報いなためにつかめない。そこですり替えて、労働組合を破壞活動をやつた疑いをかけて調べる、こういうことは絶対にすべきではないと思います。
○羽仁五郎君 今の御答弁で私満足しますが、ただその間のお言葉ですね、これは政府の側の調査活動の未熟のためにというお言葉がありました。これは私は間違つていると思います。未熟のためではない、これは一言で申上げますれば、現在我々が立法上又行政上に許されているところの法の立て方、或いは行政権の発動の仕方というものは、学問上で言えばいわゆるブルジヨア的な方法しか許されていないのです。つまり個人の自由を飽くまで尊重して、そうしてこの自由主義の方向に向つて進んで行く方法しか許されない。ところが今のフラクの活動というものは、これはアカデミツクな意味においていわゆるブルジヨア的な組織じやないのです。プロレタリア的な組織なんです。このブルジヨア的な組織、プロレタリア的な組織というものは全く異質のものです。ホモゲーンのものではない、ヘトロゲーンのものである。これは人体に例えて言えばそれはそういうふうにたとえることは少し失礼なんだけれども、仮に我々が立法上、行政上原則としてやつて行かなければならないということは、我々の肉体にたとえれば胃袋なんです。胃袋の正常な活動なんです。私は今あ政府のやつていることは正常で、共産党のやつていることが病気だというわけじやないのですがね。ところが比喩をとつて言えば、そこに癌のようなものができて来る、胃なら胃に癌のようなものができて来る。ところが現在の医学の方法ではこの癌の組織の性質というものにぴつたり合つた治療方法がなかなかできない場合に、これはさつきのプロレタリア的な場合とブルジヨア的な場合にはこれは全く違うものだから、癌の場合には程度の問題ですけれども、その癌を治療しようというふうにいろいろといじくる結果、胃袋のほうを、健全な肉体のほうを破壞してしまつたというのが多い。これは先日の文化人の会合でも、どなたかお医者さんが手術は成功した、併し患者は死んでしまつたという言葉で言い現わしておられる。これらの場合と似ておりまして、而もこれらの場合よりももつと重大な問題です。でそこにこの治安立法が最近アメリカにおいても或いはオーストラリアなどにおいても、南アフリカにおいても、どこにおいても生じている非常な大きな問題がある。これは吉河君は別の意味で自由主義諸国における深い悩みということを言つておられる。これは私の言つているのは、その吉河君の言つておられる深い悩みというものと同じではありません。併しそれと関係がある問題なんです。それでそういう意味から今のお答えは、そういうふうに努力をすると、或いは当然そうあるべきだという程度のことではないのでして、つまりプロレタリア的な組織というものをブルジヨア的な方法で規制しようということに一定の限界がある。全然できないとは私は言いません。併し一定の限界がある。その限界を超えてそのブルジヨア的な行政上の措置が行われると、ブルジヨア的な組織そのものを破壞してしまうのです、自分のほうの組織そのものを。ですからこれは絶対に許されないことなんだ。これをおやりになりますと、例えばこれは議会において最もよくわかります。この議会の共産党を非合法化するということは、さつきおつしやつたようにその意思がない、又そうすべきでない。ところがそれをやるとどういうことになるかというと、議会そのものの民主主義的な機構が破壞されて来るのです。こういうような問題を含んでいますので、今の御答弁はどうか飽くまで守つて頂きたい。そうして又その趣旨は本法運用の際に常に明らかにして頂きたい。これはなかなか末端の調査官まで徹底するということは、私はずいぶんむずかしいと思うのだが、せめてその中央なり……或いは一般的な原則として書かれておる、明記せられる文書において明らかにして頂きたい。現行警察法の前文にもちやんと民主主義の原則が書いてあるのだが、併し警察官はそれを忘れちまつている場合が多いのです。少くともなかなか末端まで私は徹底したかしないかということまでを、責任を追及しようとは思いませんが、いやしくも本法適用の際明らかに文書を以て明記してそういう点についてして行かれるという必要があると思うのです。これはどうですか。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に御尤もな御質問であります。破壞的なフラクシヨンを取締るためにそれを内包する組合までつぶしてしまうようなことをしてはならん、これは御質問の通りであると考えております。
○羽仁五郎君 従つてそうしたその秘密フラクシヨンというものを捕えることができなかつた場合に、直接の証拠がないのにその合法組合の調査をなすということは許されないというふうに明記されるというふうに伺つていいですか。
○政府委員(吉河光貞君) これはやはり前と同じように我々の事務運営の基本的な方針として解決して行きたいと思います。
○羽仁五郎君 それは是非明記しておいて頂きたいですね。それで組合を破壞するということがあつたらば大変ですから、ですからこれはまあそういうことを一々明記するのじや煩に堪えないなんというふうにお考えにならないで、私は何もそう小さいところまで、横町で子供を蹴とばしてはいかんというようなことまで書いてくれというのじやないのです。これは組合の問題ですから、大問題ですから、これはさつき午前中に法務総裁に向つてこの教育の場において本法を適用するということは極めて慎重に考える必要があるというふうに申上げたのと同じようなレベルにおいて、ここに本法が適用される場合、秘密フラクシヨンを捕えることができなかつたからと言つて、直接の関連がないのに組合に対して捜査活動をやつてはならないということは明らかにしておいて頂きたい。明記しておいて頂きたい。
○政府委員(吉河光貞君) 了承いたしました。
○羽仁五郎君 それから今度は続けて、それでこれは扇動の問題とも関連をして来るのですが、今のように明記するという際に政府が動揺して躊躇されるのは、如何にも建前から言えばそうあるべきだ、併しながらそこに引続きその秘密フラクシヨンが風のごとく来たり風のごとく去つて、そうしてその組合を実にアクテイブに動かして破壞活動をやるというのは黙つて見ておれないじやないか、そうなれば手段が尽きれば、一体誰が外部からそういう連絡をとつて内部にいて組合活動の問題でフラクシヨンとの連絡をとるのか、それくらいを洗わなきやならんじやないかというふうにお考えになることが危険なんです。そこでこの次に伺つておかなきやならないのは、さつきの御答弁の御趣旨は、本法だけで治安が維持できるのじやない、さまざまの他の社会活動と相待つて本法は適正に動かされるのだ。他の社会活動を無視すれば本法は有害なものになつちまう。その趣旨を政府はさつきからはつきりお答えになつていますが、もう動揺しないというふうにして今度の問題を伺つて行きたいのですが、この組合の内部或いは政党の内部に破壞活動が起つて来る、そこでそれが今のように秘密のフラクシヨンによつて、又而も極めて巧妙な近代的な方法でこれがなされたら、これは実際上捕えることができないのです。この極めて明白な例を一つ挙げて考えて頂きたいと思うのですが、このいわゆる幾何学上の軌跡というのですか、例えば一番簡単な場合ですと、この二つの点を定め、そうしてその二つの点を列ねる直線というものを底辺として、そうして他の二辺が常に同一の長さをなすところの三角形を描くと、そうするとその頂点は楕円形をなすのです。こんなことはわざわざ申上げるのは少し恐縮ですが、ところでですよ、この楕円の線ですね、この楕円の線を捉えようとしてこの下の二点を捉え、或いはその直線を捉え、或いは他の二辺がなすところの長さを捉えても、楕円は捉えることはできないのです。いいですか、この楕円の線はどういう場合に捉えることができるかと言いますと、これはその運動の際にのみ捉えることができるのです。つまり二つの点に釘で糸を釘付けにして、そうして糸を一定の長さにしてその先に鉛筆を附けて、これをぐるりとやると楕円ができます。この楕円を捉えようとしてそれで静かにとまつているものを捉えようとすると、下の二点と直線と、それからその糸の長さしか捉えられない。この楕円を捉えるのは楕円が動いているときにだけ捉えられるのです。フラクシヨンの活動というものは動いているときじやなければ捉えられないのです。その動いているときには本法はタツチすることができないのです。ですからこれは決して政府の捜査能力が無能なんでも何でもありませんよ。だから特審局長もその点は決して無用に謙遜せられたり、良心の呵責を感じられる必要はない。むしろそこに一定の限界があるということをはつきりしないと却つて、危険です。その楕円を捉えようとして下の二点をこわしてしまう、或いは底辺をこわしてしまう、それをこわしたつて捉えられるものじやないのです。それらが一定の運動に入つたときに、その楕円の線というものは出て来る。こういう関係があるのですから、これを本法によつて捉え得なかつた場合に、さつきから伺つておる他の方法に十分信頼せられて、決してよくよく止むを得ないというふうに感じても組合にタツチすべきじやない。その他の方法として最も重要なものとして次のものをお認めになるかどうかという問題です。これは団体の内部活動による自己是正といいますか、セルフアジヤストメント、団体はその中に破壞的な分子もある、併し破壞的でない分子もある、その双方が団体の中で活動することによつて、その団体が最も健全な方向に行くのが一番いい方法なんである。それでこれがバランスが破れて、その中の破壞的分子と健全分子とのバランスが破れて、破壞的な分子が活動したときにはこれは必ず明白な証拠を残します。ですからこれはその破壞的フラクシヨンを規制することができるのです。併しこの健全分子と破壞的な分子とが今申上げている団体の自己是正の活動において動いている限りにおいては、このフラクシヨンというものは捕えることができない。その場合には、その団体内部の自己活動によつてその団体が是正されるという活動を認めるべきです。又それを以て必ず実害は起りません。又それよりほかに方法はないのであります。これはもつと具体的な事例を申上げますと……我々は抽象的なことを言つているのではない。例えば私自身の関係するところであるならば、学校なら学校の教授会、或いは学生なら学生、その中で破壞的な活動をなさんとする分子が現われた場合に、どういうふうにしてこれを防ぎ得るかと言えば、その人が、その破壞分子が学問上尊敬している、そのかたが学者であり学生であるならば、学問上尊敬している同志、その言葉によつて初めてその破壞活動を阻止できる。組合ならば組合員の同志であつて初めてそれを阻止できる。政党なら政党の同じ党員が初めてそれができる。それでつまり具体的に言えば、君が今武器をとつて起とうというふうな決意というものは実に自分にはよくわかる、自分は全く同感だ。併しながらここで武器をとつて起つということは、却つて組合を破壞し、政党を破壞するに過ぎないじやないか。又例を引くと恐縮ですが、この間うち都内で見られていたサルトルの映画に「賭けはなされた」という映画があります。これは御覧になつたかどうか知りませんが、この組合の指導者が、組合が武装蜂起をしようとしているところに飛び込んで、自分の命を犠牲にして賭けて、その組合を説いて、武装蜂起を思いとどまらせるのです。それでいわゆる中止ですね、それも故障があつての中止じやない、一時延期の中止をしたのであります。その途端に、その外から機関銃を持つた治安隊が入つて来て、これらを全部皆殺しに撃つてしまう。サルトルがこういう場合を非常に克明に書いているということは、これは現在非常に多い例なのであります。そのために却つて逆にその組合の同志なり政党の同志なり、学者同士なりが、内部の自己是正の活動として破壞活動を防止することは非常に困難になつてしまう。あなたの言うことを聞いて破壞活動を思いとどまつて一時延期したけれども、一網打尽に機関銃で撃ち殺されてしまつたじやないかということになつて行く。これはもうこれ以上詳しく申上げませんが、おわかりになつたろうと思う。そういう意味の団体がその中で自己是正をやる活動というものは飽くまで尊重すべきなんです。これはこの法にそういう尊重せいということを書けというふうに申し上げるのではないので、伺つているのは、従つて今のような組合にせよ或いは政党にせよ、或いは大学にせよ、学生の団体、全学連にしても、或いは教授の学者の組織にせよです、その中で非合法的な秘密フラクが活動として破壞活動をなした場合に、その秘密フラクを捕えられた場合は、そのお捕えになつてそれに規制をおかけになるのならいいでしよう。併し捕え得ない場合、而もそこで何とかしてしなければならないというふうにあせられて、その健全な団体なり組合なり、政党なりの組織のほうに手をかけるということは絶対にしないということの理由の一つとして、今のような団体の内部の自己是正の活動をお認めになるかどうかという点を……。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に御質問の通りであります。団体がその内部における害悪を解消する自己是正の作用があるということは誠に御尤もな点でありまして、規制並びに調査につきまして参照すべき重要な事項であろうと考えております。
○羽仁五郎君 そこで今度は法案の条文に入つて来るのですが、今のような点をお認めになつて来ますと、このいわゆる団体に対する規制の規定というものは或いは反省せらるべき点があるのじやないかと私は思うのです。それで先ず第一に、この第四条の一項の三です。特定の役職員を排除する場合……私は今これを修正に応ずるかどうか、撤回するかということはもう伺いません。ただ伺つておきたいのは、よく聞いて下さい。この団体の中の内部是正活動というものを認める以上はですよ、その中の、今申上げていた秘密のフラクシヨンというようなものでない、明かに現れている、例えば中央委員会におけるその中の破壞的な分子、即ち本法の第四条の第一項の三というものが適用せらるべき場合について今度は伺つておきたい。これは適用されますね。……そうしますと、先日菊川孝夫議員と原虎一議員に対してお答えになりました、そこにいわゆる破壞的な中央委員だけが排除される、そうですね、これは間違いない。そこで二つの問題ができて来るのです。一つは残つた役職員が第二の、その最初のままの機関紙を発行することができるかできないかという問題、これに対するお答えは、先ずこれは特審局長のお答えで、その機関紙において破壞活動が行われて、一回行い且つ又繰返される虞れがあるというふうになつて、機関紙のほうはそのほうの規制を受けてなくなつてしまう。そういう機関紙はない、それで従つて残つた役職員がその機関紙を発行するということは先ずできないのではないかというお答えであつたように思いますが、如何でしようか。
○政府委員(吉河光貞君) 実質的な同一性について前回はお答えいたしました。残つた破壞分子でない、正常なかたが再び機関紙を作りたい、それで機関紙活動をやりたいという場合に、そのかたがたが発行される機関紙は、その編集方針につきましても実質的にはおのずから異なるものがあると考える次第です。従いましてさような場合におきましては、これは機関紙を発行して差支ないと考えております。
○羽仁五郎君 それはそういうふうに御答弁になると、第一の問題は半ば解決して来るのです。これはどうしてこんなことを申上げるかと言いますと、いわゆる破壞的でない中央委員を残しても無益になつてしまう場合があるのです。これはおわかりになりますね。破壞的でない、仮に十人の中央委員のうち六人は破壞的分子で、四人は飽くまで反対しておつたが、多数決によつて決定された。従つてそれに従わざるを得なかつた。併しながらそれが六人が排除された、排除されて四人の人が残りまして、それで同志を集めて十人の委員を作つて、中央委員を置いて活動するときに、機関紙は名を変えなければならない。今までは例えば金属労働者という機関紙を出しておつた。今度は出せない。それで新金属労働者という機関紙を発行することは無意味である。ところで第一にこの点を十分に考えて頂きたい。今の御答弁では私はちよつと不十分だと思いますから、その点はもう少し研究をして頂きたいというふうに思うのですが、時間の関係もあるから第二の点に移ります。更に遡つてもつと根本的な問題は、そういうふうにして十人の中の四人の中央委員が破壞的でないからと言つて残してそれで六人を補充してできた中央委員会が、その労働組合に所属しているところの組合員を引張つて行けるかという問題、それはよくお考えになつて頂くとすぐわかると思うのですが、組合員はそれじや引張つて行けるだろうか、これは行けない。これはさつき伺つた団体内部の自己是正活動というものがあつて初めて一つの組合は成立し、組合員は中央幹部の指導に完全に服する。つまりあつさり申上げれば、左の者もおり右の者もおるという組合であれば多くの人はくつついて来る。併し左の指導員という者はいなくなつちやつた、右の指導員だけになつてしまつたという組合になりますと、その組合に不満がなければ結構です。賃金その他十分の生活ができているならばそれはいいのですが、不満がある限りはその組合を頼ることができない。従つてその組合員は他の一層戦闘的な組合のほうに移つてしまう。この例は政府委員もしよつちゆう目の前に御覧になつてるところです。従つて、だから僕はこの条項というものを、仮に成立した場合に、この適用を極めて慎重になさなければならないということはおわかりになるだろうと思う。それでこの点について今までの政府の御答弁はかなり簡単です。併しそれほど簡単なものじやない。又菊川さんなり原さんなりは途中で連合委員会だつたせいもありますので、質疑を打切られましたが、私はそのあとを受けて今の点を伺つておかなければならないという責任を感ずる。ですからこの「六月をこえない期間を定めて、当該暴力主義的破壞活動に関与した特定の役職員(代表者、主幹者その他名称のいかんを問わず当該団体の事務に従事する者をいう。以下同じ。)又は構成員に当該団体のためにする行為をさせることを禁止すること。」というこの規定は、私は容易に発動せらるべきものでない。それでなぜそうであるかという理由は、今申上げたように左の分子もおり右の分子もおる。或るときは左に引張られ、或るときは右に引張られる。それを多くの組合員がその組合によつて組織せられて、民主主義的に活動することができるんである。そうでないとこの法、この条項をかるがるしく運用しますと、要するに政府が組合を分裂させる、そうして分裂した組合は労働組合としての機能を失つてしまう。その結果は個人的にまあいわゆる上役におもねて、しよつちゆう夜になると上役を訪ねて、自分一人だけの生活を卑怯未練の方法で保障するか、そうでなければ今度は一層暴力的なものに行つてしまうかいずれかであつて、その中間の民主主義的な労働組合の機能というものは破壞されてしまう。その意味からこの第三項というものは決してかるがるしく適用さるべきでないことは言うまでもないんだが、容易には私は適用せられるべきものではないというふうに思うが、どうでしよう。
○政府委員(吉河光貞君) 大衆団体、特に労働組合のごとき大衆団体に対しまして規制をかけまする場合に、その結果として重大な作用が各種の部面に起きて来るということについては、規制をかける上に愼重に考慮してやらなければならないということは御尤もなことだと考えております。
○羽仁五郎君 そうすると政府は今私の質疑した趣旨を認めるというふうに伺つていいのですか。
○政府委員(吉河光貞君) この、羽仁先生の非常に社会学的な深いいろいろな団体作用に関する御発言でありますが、団体につきましては只今申上げましたような自己是正の作用もあり、又自己再現の作用もあり、更に又分裂するような離合集散の作用も持つ、これらのことにつきまして慎重に考慮して、その影響するところを考慮してやるべきであるという基本的な問題として了承いたします。
○羽仁五郎君 この今申上げた点ですね、この団体の自己是正の作用があるということは忘れてはならない。従つて団体の自己是正の作用を待たずして本法の適用を急ぐということを防ぐという努力をして頂きたいと思います。で、その努力をして下さるものだと思う。それから伺つておきますが、今度は一つ遡つて第二の点です。一項の二です。機関紙、これは今お話がありましたように、この中央委員会なり何なりの役職員が破壞活動を行なつた責任を以て、その破壞的な役職員を排除せられて、そうして破壞的でない役職員だけが残つて中央委員会なり何なりが再現せられた場合に、新らしい編集方針を以てその機関紙を発行して行く場合には、その機関紙はこの一項の二の規制を受けないことが望ましいという御答弁があつた。ございましたね、それでいいんですね、そういうふうに伺つて……。それでよろしい。で、その意味は、その機関紙というものは如何に尊重されなければならないかという趣旨から来ておるわけです。それでこれは朝日新聞、中央公論という例を引くまでもないことです。一つの機関紙の題号というものは、これは長年の努力によつて打ち立てられて来たもので、で最近、戦後暫らく混乱状態に陥つて、必ずしもそういう趣旨がはつきりしない点がありますけれども、一つの機関紙の名前というものは深い伝統と歴史とを持つておる。それに対する信頼というものが組合員の中にある。或いはその読者の中にある。従つてその名前を変える、つまり同じ機関誌でなくてもいいじやないか、別のものを出しなさいというように簡単にすることはできないのです。これは私は自身の例を申上げて非常に恐縮ですが、戦争中我々の関係しておる自由学園の自由という字を改めろ、自由主義は許されないんだ。米英撃滅の戦いがこんな状況に立至つているのに、末だに自由主義を是認するがごとき自由学園という名前を学校に冠して、そうしてそこで一千に及ぶ学生を教育しておるということは許されないということを軍の側からも文部省の側からも、東京都の側からもたび重ねて我々に対しては圧迫がありました。併しながら御覧になつたように、我々は今日に至るまでこの自由学園の自由という名を降したことはない。 〔理事伊藤修君退席、委員長着席〕
○羽仁五郎君 そのために私は牢獄に入ることをも意としなかつた。そのような単なる名前というふうにお考えになるかも知れませんが、例えばアカハタという名前、これも私は決して共産党の機関紙を擁護しようとするものでも何でもない。そうじやなくて、このアカハタという名前によつて発行されている機関紙は並々ならない伝統があり、そうしてそれには本当に血と涙とが繰返されて、そうして次第に合法的に発行されるようになつた新聞の名前である。こういうことも十分にお考えにならんと私はいかんと思います。でこれが尊重されませんと、あらゆる新聞の、又機関紙の題号というものも尊重せられない。ですから御承知のように他の例を挙げれば、いわゆる商標登録というのですか、そういうほうでは雑誌や新聞の名前というものよりも厚く保護されています。これは場合が違いますが、併しそうした伝統を尊重せらるべきゆえんというものはそこにもなされておる。ですからこの第三条の場合について伺つたと同じ意味で、この機関紙に対する規制の方法というものは、さつきお答えになりました、いわゆる破壞的でない役職員が残つて機関誌を発行する場合には、その機関紙に対して第四条一項の二の規制というものを適用するということはよほど慎重に考えなければならない。よほどやわらかく伺つてもそういうふうにお答えになりましたが、それと同じ趣旨が一般にこの二の適用において十分に考えられる必要があると思うのであります。でこれはこの二つの理由からそうで、今申上げましたのはその機関紙の名前というものは深い伝統を持つておる。伝統をかるがるしくふみにじつてしまうということの害、それからもう一つは機関紙というものはそのまま破壞活動をなすものでないということも関係して来るわけです。機関紙を読んでその結果破壞活動が起るということになると、これも関君などもしばしば、破壞活動が起り、血を見るまで待つておられない、だから機関紙を規制するのだという御答弁はよくわかりました。たびたび伺いましたけれども、私が今伺いたいと思つているのは、さつきから申上げている、この法だけによつて治安が維持できるものじやない、それから又社会のさまざまな活動というものと相待つて行かなければならない、こういうことをも含めて、如何にも行政府としてはこうした破壞活動を扇動、教唆するような機関紙が続いて発行されることには多大の危険を感ずるでしようけれども、併しそのこと自体が、新聞自体が破壞活動をなすのじやないということと、それからさつき申上げた、その新聞が破壞的になるまでに、つまり平和的な時代に築いて来たところの信頼というものもあり、その作用もあり、そうして又一旦破壞的になつても又編集方針がさつきの内部是正の作用によつて引戻されて平和的になるということもあり得るので、そうした伝統と歴史とを持つている機関紙が長く多数の労働者なり或いはその組合員なり、機関紙の読者の信頼を得て、そうして言論による民主主義の遂行という機能を果して行くことが望ましいという意味からここで最後に伺つておきたいのは、この第四条の第一項の二、機関紙に対する規制の必要というものも、私はこれは極めて厳格に守られなければならない。いやしくもかるがるしく、こういうものが考えられてはならないという点が政府として是非明らかにしておいて頂きたいと思うのであります。これは大体第三と同じ趣旨ですから、お答え頂くまでもなく、私の今申上げた趣旨に御同感だろうと思うんですが、如何ですか。
○政府委員(吉河光貞君) 誠にお答え申上げるまでもないことだと考えております。新聞におきましても、又実際の通信、報道の面におきましても、機関紙その他一般紙の題号が如何に重要なものであるかということは、只今御指摘の通りであります。従いまして規制処分をなす場合における機関紙の実質的編集方針の内容につきまして簡単にお答えいたしたいと思うのであります。 前回は機関紙の実質的編集方針の同一性ということにつきまして一般的にお答え申上げました。然らば規制を受ける場合のこういう機関紙の実質的な編集方針の点につきまして簡単にお答えしたいと思うのであります。 機関紙によつて暴力主義的な破壞活動が行われた場合におきましては、これはその機関紙の結局実質的な編集方針に基いてかような暴力主義的な破壞活動が行われたものと見なければならない。これに継続又は反覆して機関誌紙によつて暴力主義的破壞活動が行われるという危険性があることも、やはりその実質的な編集方針に基くものと考えられる。従いましてかような次第で、かような実質的な編集方針は暴力主義的な破壞活動をなす危険性が客観的に認められるようなものであると考える。従いまして従来の題名を維持して、貴重な価値のある題名を維持しましても、その実質的な編集方針を新しい責任者のかたが変えられまして打ち出される場合におきましては、これは同一性のないものと考えなければならないと、かように考えておるわけであります。なお機関紙の規制、その他につきましても、只今御指摘の諸般の重要な事情を斟酌して慎重にやるべきものであることは申すまでもありません。
○羽仁五郎君 今の点に私続いて触れたいと思つたのですが、それについて先にお答えがありましたのですが、先日来のお答えを訂正なさつたことは誠に御立派なことだというふうに思います。それでなおまだそこに先日来のお考えが残つておるようですから、その点を伺つておきたいのですが、機関紙の名前は尊重しなければならん。それは今お認めになつた。それからその次に編集方針というふうに言われるのですが、編集方針というふうに言われるから、この間のような紙面の体裁はどうだとか、組み方がどうだとか、囲い記事がどこにあるとか、社説をどこに載せてあるという、御自分で恥かしくお考えになつているのじやないかと思うから、これ以上悪口は言いませんけれども、伺つておつても、こつちが冷汗が出るような質疑応答になつた。それで問題は、その機関紙において破壞活動が行われるか行われないかということにある。編集方針なんかにタツチなさる権限はございません。そういうことをおつしやると、検閲と同じだというふうになる。今のお答えで私はよほど検閲の問題について追及しなければならないという御答弁の半分はなくなつたことを私自身も喜びます。こういうことを一々くどいことを申上げたくない。特審局長はその点にお気付きになつて、破壞活動というほうに重点があるというふうに今お答え頂いたことによつて、私はこの検閲の問題が半ばなくなつて来たと思うのだというふうに考える。つまり編集方針によつて同一性ということを考えるのじやない。そういうことは一切自由です。どういう編集方針をされようとも、それには検閲を禁止しておる憲法の下に自由である。本法の問うところは、その機関紙が破壞活動をなすかなさないかということだけなんです。ですから同じ名前であろうと他の名前であろうと、破壞活動をなすか、なさないか、それ以上に出てはならん。その編集方針がどうだということは決して問うてはならないことで、又お問いになるべきでない。お問いになるというお気持があるならば、検閲の問題をここに持つて来なければならないというふうに思いますから、もうお疲れのことでもありましようから、検閲論をここで省くということができるならば、私は非常に仕合せだと思う。勿論検閲論は私はここで省くことを願いません。要求があれば、答弁があるならばしなければならんと思いますが、今のようなふうにお答え願えるならば検閲論をする必要がない。即ちその機関紙の同一性ということについては題名は同じであれば、或いは編集方針がどうであるかということは一切自由である。又一切飽くまでも憲法の趣旨に従つて尊重せらるる。ただ問題はその機関紙が破壞活動をなすかなさないかということに本法の目的があるのだというようにお答え頂けるのだと思いますが、如何でしようか。従つて今後どうか機関紙の編集方針というふうなことはおつしやつて頂かないで、それをおつしやいますと、又検閲の問題を申上げなければならんと思いますが、如何ですか。
○政府委員(吉河光貞君) 只今お答え申上げました通り、実質は暴力主義的な破壞活動をなす危険性にある。
○羽仁五郎君 そこでこれと関連をして来るのですが、第三条の一項二号のリに、凶器を携えて多衆共同してなすところの刑法第九十五条に規定する行為、この場合に問題になつて来たのが、旗の先についている槍の問題、これについてのどういう御答弁をなさつたかはもう申述べません。簡単に私の質疑だけを申上げますが、何故に多くの旗の先に槍が附いているのかこれは決して偶然に附いているものではございません。私どもの自由学園の校旗の先にも槍が附いております。そうしてこれは深い伝統があることなんです。即ち一定の主義、主張というものを現わすのが即ちその旗である。そうしてその主義主張はいわばその団体の節繰です。従つてその節操を守るためにその旗の先に槍が附いておるということは、詳しくこの旗の歴史を申上げるまでもなく、御了解願えることだろうと思う。旗の竿の先に槍が附いていないというのは、節操のない団体ということです。これは目的の違う場合で、私はあらゆる旗に槍を附けろというのじやない、例えば国旗の場合に、附いていないということは、これは特に或る一定の主義主張を持つて掲げられる旗じやない。併しながら学校であるとか或いは組合であるとかというように、一定の主義主張というものを持ち、それを守つて行く、そのために戦うという旗が、古巣歴史あつて以来、その先に槍を附けておるということで、決して偶然のことじやない、一片の破壞活動防止法の適用などの際にこの伝統を破壞するということのできるものじやない。ですからここで更めて伺つておきたいのですが、この旗の先にその旗の伝統に従つて附いておる槍というものは絶対に凶器として見なされるものではないというようにお答えが願える思うのだが、どうですか。
○政府委員(関之君) この旗の先の槍との関連におきまして、さようなものがこの三条一項二号のりの凶器に当るかどうかという点でありまするが、この点に対しましては、従来しばしばお尋ねがありまして、お答えいたした点であるわけであります。ここで又先のお答えを繰返すことに相成るわけでありまするが、この凶器と申しますのは、すでに判例によつても一応概念がきまつておる点でありまして、一見して人に或る危険性の感じを与えるというようなことが要件になるわけであります。従いましてこの旗の竿の問題でありまするが、それも要するに俗な言葉でありまするが、物によりけりというようなふうに考えられるわけであります。すべてのものが凶器になるというふうにも考えられないのであります。要するにその旗の先に槍が附いて、その大小とか或いはその構造とかというようなものから見まして、一見して人に危害感が与えられるというようなものでありまするならば、やはり従来の判例の趣旨その他からいいまして凶器というものになる。これはすでに過去において幾多の立法例の中において用いられた凶器というその言葉の解釈から見てさようなことに相成るというように考えざるを得ないのであります。
○羽仁五郎君 今の答弁は全然私は満足しません。従つて法務総裁の答弁を頂きたいと思います。刑政長官からお伝えを願いたい。旗の先に附いている槍の歴史は仇やおろそかの歴史ではございません。自由学園の旗の先にも附いておる。若し今のような御答弁ですと、我々は自由学園の旗の先の槍も誤解を招いては困るから取らなければならんようになります。それでこれを御覧になつておると思いますが、国会でも最近は連日大衆的な行動がなされて、そうしてあの裏門から入つて来ます。そのときに一々旗竿を検査する。その先に槍が附いているか附いていないかということで、旗竿を持つて入つていいとか入つちやいかんという、そこで必ず紛擾を起している。一面においてこれは相当弊害がある。他面においてこの旗の先に槍が附いているのは節操のある団体だ。その掲げるところのスタンダードである。従つてその旗を持つている人はスタンダード・ベアラー、又はゴンフアロニエリ、即ち旗手だ。その命令を団体が聞くのです。それを低く解釈して、槍が附いているかどうか、ものによりけりだという答弁をなさつたのでは、この旗の効果はなくなつてしまう。従つてそんな旗を持つてその旗手がどういう命令をしてもその団体は従いません。そういう団体と団体交渉することは非常に困難です。ですから我々は団体交渉の平和的な作用というものは飽くまで尊重して行きたい。従つてその旗の下でその責任者と話合つたことは双方で守るということがあつて、初めて近代的な大衆的な生活が平和的に民主的にできるのです。その中心をなすところの意味を持つている旗について、今のような二義的な使いようによる、恰好による、ものによりけりだというような程度にしか御理解がないとすれば、なかなか本法の運用というものはむずかしくなると思うのです。従つてその点をお伝え下さつて、或いはあなたからでも若しお答えが頂ければはつきり頂きたいと思いますが、この伝統を持つた旗の先に槍が附いているという事実、このものを、この槍を目して凶器とみなすことは本法に関する限りは許されない。これは団体規制ということと関係して来る重要な点である。従つてその旗がそうした節操を持つた団体である。もつと烈しい言葉を使えば、睾丸を持つた男であるというくらいの意味を持つている。それをいわゆるその小さなけちくさい根性で、旗の先の槍でも突けば凶器になるじやないかということと、バランスにかけてどちらをおとりになるつもりであるか。その使い方によつて凶器になるということをおとりになるか、今後その旗が尊重され、それが団体交渉の目標となるという作用は諦められるのだというふうに伺わなければならないか、どうでしようか。
○政府委員(清原邦一君) 只今の校旗或いは組合旗について、旗の先に槍が附いている。その槍が如何なる性格を持つているかという点に対する羽仁さんの御意見はとくと承わりました、ただ只今関次長が述べられましたのは、刑法上の観念におきましては、人を殺傷し得る物はすべて凶器と申上げているわけではございません。若しそういう極端な表現をすれば、手拭い一つでもこれは場合によれば絞殺できますから、手拭い又凶器なりと言わなければならないのでありまするが、さようなことは関次長も私どもも考えていないのであります。ただ或る場合においてその用法或いはその性質上凶器と見なし得る場合がある。一般的に見まして、社会通念に照らして或る種の不安感を与えるようなもの、これについては当然凶器と見なければならん場合がございます。従いまして羽仁さんのお気には入らないことになるだろうかと思いますが、たとえ校旗に附いている槍でありましても、その槍が非常に鋭利である、或いは特殊目的で集団デモの場合に、場合によつては警官等と騒擾その他の問題が起つたときにそれを利用しようというような意図の下に極めて鋭利なものを附けている。それがたまたま校旗である、或いは組合旗であるから絶対に凶器にならない。かよなことは言い得ないのであります。刑法上の解釈といたしましては、只今の羽仁さんのおつしやつたことはよくわかるのでございまするが、法律的の解釈としてその場合に……。
○羽仁五郎君 お説よくわかりました。それではあなたから一つ法務総裁にお伝え下すつて、是非これは法務総裁から答えて頂きたい。今日午前から法務総裁に答えて頂きたいことはずつと……、二、三ございますが、これも加えて頂きたい。私の申上げるのは、今のような御心配もよくわかりますよ、併しながらそういう場合が非常に多いのか、又そういう場合を主として考えたほうがいいのか、それとも団体の活動というものが現在の社会において平和的に、そして秩序を以て行われる上からして団旗或いは校旗というものの形式は、これは絶対的に尊重して行く。でそれを私は大体健全なる組合なり学校なり、或いは団体なりというものは大切なものであるから、あれはそれこそ塵もつけない。いわんやこれを人の血で汚すということを絶対にやらないということでそつちは努力をするでしよう。又従つて政府もそつちにはそういう努力をして頂く。従つてこつちには旗の先に附いている槍は凶器とみなさないというくらいな堂々たる態度を以て本法を運用せられたらどうだと、こうゆうふうに言つておつたというふうにお伝え願いたいと思う。
○政府委員(清原邦一君) 只今の点も総裁にお伝えいたします。なお羽仁さんの校旗或いは組合旗に対する御質問の点はとくと総裁にお伝えいたします。結論の点は私自身として只今申上げただけであります。
○羽仁五郎君 よくわかりました。あなたのお立場からそういう御説明下さることは尤もですが、併し政治的に見てどうであろうかと言うのです。しよつちう御覧になるように旗を検査して、そのために実際突く気もなかつた人がそれじや突いてやれというふうになる。槍が附いていなくても突ける。竹の中に鉄棒が入つていなくても竹で突ける。却て残虐な突き方になる。ですからそれをどつちにお導きになるおつもりであるか、導くということは語弊があるが、どつちへ動かして行くか、こういう点について是非伺つて置きたい。その趣旨はあなたが途中でお曲げにならないで、私の趣旨をそのまま伝えて頂きたい。 それから次の問題で、さつきの第四条の一項の一について御意見を伺います。これは今度集団的な行動です。集団示威行進、或いは公開の集会、これもおよそさつきから四条の一項の二について申上げておつたと同じ趣旨で、結論だけを申上げますが、近代における集団的な行動というものの積極的な意味というものは今更申上げるまでもなく重大なことだと思う。それでよくこういう問題について認識の浅いかたは、デモをやつて赤旗を振つておるというと、何かそれだけで忌わしいような、犯罪的にお考えになるお考えが残つている。これは数百年に亘つて徐々に打破されて来た観念で、詳しく申上げるまでもなく、イギリスにおいてさえも現在から百年くらい前にはこの集団行動というものに対して直ちに謀反罪、又共同謀議というような嫌疑をかけられた時代があつたのです。併し現在においてはこの集団行動というものが現代のさまざまな困難な問題を最も平和的に解決する一等進んだ方法なんです。で、これが否認されますと、さつきの秘密フラクシヨンのようなふうになつてしまう。ですから秘密フラクシヨンに行かないような、それで現在における最高の機能を果すところのこの集団行動というものは、やはり飽くまで尊重せられて行くべきだ。これはもう同じ趣旨ですから恐らく御同感下さると思う。即ち今の規制は容易にかけられるものではないということはもうお答えを頂かなくてもわかる。 それからこれから伺いたいのは、これらを引つくるめて、中でもこの一と二を引つくるめて六カ月を越えない範囲というこの問題なんです。もうこの理由は、それこそ朝から申上げておりますから略さして頂きたいと思います。それで簡単に申上げますが、この六カ月ということはどういうところから計算なすつたかということが第一なんです。それから第二には、その点についてはそう詳しく伺わなくてもいいのですが、第二にはこの「六月をこえない期間」というものは実際に適用せられる場合にはミニマムなものでなければならないというふうに思います。従つて第三には、この規制は一般的には、原則としては、これが立法措置として濫用の虞れなく、又一般に不安を与えることなく、従つて基本的な人権を制限せられることなく、この一と二を適用しようとする原則は、その破壞活動の虞れのある集団行進そのものです。それから一のほうはその破壞活動をなすところのその機関紙の頒布、こういうものに対する制限というもので私は行くのが至当である。即ちその先にあらかじめ将来というものに対してまで規制をかけるということは、これには様々な問題があることであつて、でき得るならば、そうして又法的にいわゆる立法権と司法権なり行政権、なかんずくその中でも、行政措置としてなし得るというふうな点で一般に不安を与えないのは、例えば今晩集団行動が行われる。その今晩行われる集団行動に対する規制というものは、これは行政権に属するというように述べられましても、それが納得せられる場合があり得ると思う。それから機関紙にしましても、今発行された機関紙が破壞活動の虞れがあるということによつて、その頒布が制限せられるということは、行政権が必要と思つてなすという理由があるというふうに了解される場合が、第三者によつて客観的に納得される場合があると私は思う。併しこれが将来に亙つて規制されるということが主でありますならば、ここで憲法に保障しているところの集団の権利又は言論、集会、結社の自由というものに著しく触れて来て、本法は違憲であるとという見解は又有力になつて来ると思う。そこで今それらの問題について伺おうとしているのではないので、伺いたいのは現在政府はこの一と二というものを大体においてどういうふうに運用しようと思つているか。で私の申上げるように、これは原則的にはその集団行動或いはその機関紙というものに対する規制を原則として考えているのであつて、六カ月を越えない範囲内というふうに述べてあるのは、いわゆるその立法上の問題であつて、常に六カ月間停止するとか或いは三カ月間くらいやるとか、或いは一カ月くらい常にやるつもりだとか、或いは一週間ぐらいはもうすぐやるつもりですとか、こういうお気持か。それとも本来本法の運用は第一にはその集団行動、その機関紙というものに対する立法上の措置に限られることがミニマムな措置として妥当であるというふうに考えられるか。併しそれで目的が達せられない場合のことを考えて、本法にはこういうように書いてあるのだが、併し運用の原則はそれで飽くまで眼前のものだけに対する規制のみで行くべきだというようにお考えになつているかどうか。これも今お答えがむずかしければやはりさつきの答弁と引つくるめて、法務総裁からでもお答えを頂きたいと思います。これはもうそれについて議論をするということになると大変ですから今ここで詳しく申上げません。それで六カ月を越えない範囲内というふうに書いてあるから、六カ月を越えない範囲までやれるということはそれは私も文章を読めばわかりますから伺わなくても結構です。六カ月を越えない範囲としてあるから、一週間ぐらいをやるつもりだというお答えでは私の議論がこれから紛糾して質問の趣旨を継々説明しなければならんことになる。それはもう朝からの質問でおわかりになつていると思う。これは違憲の方向に行くのか、それとも合憲的な方向に行くのか。そこで運用の上ではこれは当然その集団行動、その機関紙というものに規制をかけるのが主体だ、それで目的は達し得るというふうに考える。又相手方もそれによつて反省してもらいたい。それによつて方針を改めてもらいたい。その間に社会にはさまざまないろんな別の作用も行われるのだ。従つて、その将来に対してまでも規制をかけるということは望ましいことではない、望ましいことじやないということはお答えになれると思うのだが、どうでしよう。
○政府委員(吉河光貞君) 御質問の御趣旨よくわかりました。六カ月は立法上の最大限度を示したに過ぎません。而も実際の運用につきましては、必要且つ相当な限度ということを具体的に検討いたしまして、最小限度にとどめるというふうに考えております。なお、いろいろの政治的な立場や、いろいろな思想的な立場を包括して多数の構成員を持つている大衆団体の規制につきましては、更にそういう点は厳重に考えて運用されなければならんというふうに考えております。
○羽仁五郎君 大変立派な御答弁を伺つたのですが、その点なお今僕に議論されるのはうるさいからというのではなくして、本当に本法が適正に運用されるには、そうした方針が明示されておりませんと、軽々しくお前のところはもう集団行動は一月やつてはいけない、それで相手がおとなしく誠に悪うございましたと、一月も集団行進もしないで家で本でも読んでいるということになればよいが、そういうことにならないことは想像にかたくないでしよう。集団行進がやれない、何をするかということになるにきまつている。ですからこれはいわゆる合法的な、セルフ・アジヤストメントが法によつて非合法に追込んで行かないように……、非合法の問題は次に伺つて行かなければならないが、できるだけ合法的な限度を認めて行くという方針で行けば、或いは本法は政府の言われるごとく基本的人権を侵害しないで運用されるということも一方理窟としては成立つかと思いますので、今の点についてはどうか慎重に考えて頂きたい。 それで趣旨としては私としてはこれはつまり完全明白に危険のあるその一つの集団行動、その機関紙のその号というものによつて規制が行われるということが本体であろう、又あるべきだ。それ以上のことは今度は行政権と立法権なり司法権なりとの問題になつて来て、或いはそれ以上のことが今考えられているようですと、これは憲法違反の問題とも関係して来るし、従つて法務総裁が今日午前にお答えになつた趣旨に則つて、最小限度、又この第四条の最初の本文に述べられている趣旨から言つても、必要且つ相当な限度を越えてはならないということは、今政府として考えていることは、その集団行進、機関紙のその号、危険なるそのものだけを先ず差止める、それによつて相手が反省し或いは他の方法が用いうれ、それから先のものを規制する必要がなくなるというふうに十分に考えて頂きたいというふうに思います。 続いて次の問題に移りますが、今の問題と関連しまして、本法は審法違反であるのではないかという疑いが起されている。これについては今の問題の場合にも現われて来ましたように、本法の立案の精神がそのいずれにあるかによつて決せられるものであると思うのです。憲法違反になるや否やということはこれは難解な疑問であつて、帰着するところは、要するに今一例として挙げたようなふうに規制されるかされないかで明らかになる。ですから抽象的にこれが違憲であるとか、違憲でないとか、合憲であるとか、今まで絶えず政府当局は合憲的な最大限の注意を払つたとお答えになつておる。ですからこのお答えはして頂く必要はない。今まで十分なさつておりますから……。私が今ここで伺つておきたいのは、この本法運用の上において、この本法そのものを違憲なりという判断を受けるような運用は絶対に許されないということですね。第一段としては、本法には違憲の問題があるということをお認めになるかどうか。これをお認めにならんということならば、その質問の理由をこれから述べます。 第二は、本法の運用において本法が違憲であるというような……、運用が違憲であるというのではないですよ。本法が違憲であるというような結果をもたらすような運用は絶対に避けなければならないというこの二つの点について伺いたい。
○政府委員(吉河光貞君) 日本国憲法に適合するや否やという問題は、一般的な問題と具体的な問題があると考えております。つまりこの法律自体が、この法案自体が日本国憲法に合致しないという問題も問題としては一応考えられる。更にこの法案を法律として運用した個々の具体的な事件につきましてこれは合憲のラインを超えているというような問題も当然起り得ると思うのであります。御質問の趣旨は、この本法運用の点に重点が置かれていると考えられるのでありますが、いやしくも只今私が羽仁先生の御質問に答えてお答えしたようなラインを超えまして運用された場合には違憲の問題が起るというふうに考えているわけであります。
○羽仁五郎君 非常に良心的にお答えになつておられますが、ただその場合一言もう一つ伺わなければならないのは、その個々の場合の違憲の問題が遡つて本法の違憲の問題にまで行くというようなことをしてはならないということも含んでおられるのだと思うんです。なぜそういうことを申上げるかということは詳しく申上げませんが、さつきの集団示威行進に対して規制、機関紙に対して規制が、これは今私はここで字句を争いません。併しそれがかなり長期に亙つてやることが建前だということになると、違憲の問題は非常に強くなつて来ます。併しそうでなくて眼前明白の危険を防ぎ、最小限度の、模範的に考えられる、その模範的というのは私が言うのじやない。あなたのほうでお考えになるとして、その一つの集団行進、機関紙のその号一つの作用を規制するということにとどめられるということになると、違憲の問題は非常に薄くなるということがありますね。従つてこれは単に運用の個々の場合だけじやなく、本当に運用の場合に本法が何であつたと、そういうことが現われて来ますから運用において本法そのものが違憲であるというような問題が起ることは絶対に避けなければならない。そういう運用というものは、運用の場合たけじやなく、本法そのもののほうから言つて厳重にそうした運用を禁止しなければならないという御趣旨でお答え下すつたものだというふうに伺います。 それで次の問題に移つて行きますが、そこでこの今の問題、つまり違憲の問題と関係してもう一つ出て来る大きな問題は、もう一つというのは、一つは集団、団体に対する規制の問題なんです。それからもう一つ大きな問題は、いわゆるあらかじめ或る行為を禁止するということですね。普通にテクニカルにはプライア・レストレイントというふうに言われている。つまりまだ起つていない行為に対してこれを禁止するということは、近代法の観念から言つて許されていることではない。今本法のそれらに関係することについてここで議論しようとは思わない。伺つておきたいのは、この本法の中にはその解釈によつてはプライア・レストレイントという近代の憲法主義或いは民主主義というものに反するのではないかという議論が起つている、考えがあるということをお認めになるかどうかということが第一、一つです。従つて第二に、第一のお答えがどうであつてもこの本法のそれらのつまりあらかじめ先立つてまだ現われていない行為というものに対して規制を行なうということは、この本法制定の精神からミニマムな、例えば第四条に関する限りは「必要且つ相当な限度をこえてはならない。」ということは、具体的に言つて、あらかじめ現われていない行為に対する規制なら、刑罰なりというものは、本法直接の問題である破壞活動が実際に起るという危険が極めて明白の場合だけに限られるというお答えが頂けると思うのでございますが、この二つの点について伺つておきたい。
○政府委員(関之君) お尋ねの点は、本法の破壞的団体の規制という法律の構成の私どもとして最も重要な問題であると考えている点でありまして、お言葉のごとく、この第四条におきましても過去においていつか暴力主義的破壞活動をなしたという、そういうような団体がありまして、それが継続又は反覆して将来活動をなす。同様な破壞活動をなす。而もその活動を十分に行う可能性があるということが十分に立証ができる、かような条件で固く絞つているわけであります。お言葉の趣旨を十分にここに、私どもは個々の点を書き上げて、そうしてお言葉のごとくに近代法の原則であります事前の制限ということは本当に危険があつて、どうもそれをそのまま放任すれば、取返しのつかないことになり、その場合だけに限定したのです。四条、六条の趣旨は実はそういうふうなところにあるのでありまして、現にそういうようなふうにして四条、六条の運用をして行きたい、かように考えている次第であります。
○羽仁五郎君 今の御趣旨を一層明確にされてそうして本法運用の際には、それを明らかに文書の上に明示されたいというようにお願いします。これは非常に大事な点でして、一般のこの本法に携わるかた、本法を読んだときの印象で、第一に相当そういうことがやれるような印象を受ける虞れが多分にあります。今それを一々字句を挙げて議論しません。が本法はそういうふうにも解釈されるようにできています。これは私はそこを今修正しろとか、どうとかいうことは申さない。併し実際そういう事実が起ることを恐れるという意味において政府も御同感だろうと思う。或いは本法にその原因があるか、或いは誤解に基くか、濫用に基くか、いずれにせよ、今そういう事実が起ればこれは近代生活というものは破壞されてしまう。いわゆる決してこの団体に対する規制ばかりじやありませんよ。さつきの扇動の問題とも関係しているからその点も含んでさつきの御答弁というふうに伺つておきます。それでこれは要するに結論として申上げれば、国民が非常に元気がなくなつちやうんです。先のことまでいろいろ言われるものですからね。それでこの本法が育て上げようとするところの民主的な社会生活というものは本法によつて全く破滅されてしまうという恐るべき傾向がありますから、今の点は厳格に厳密にお考え下すつて、そうしてそれを明示せられることをお願いしておきます。 それから次の問題に移ります。そういうような場合に一つ問題になつて来ることは、眼前の危険の問題なんです。この問題についても今ずつと答弁をされて来たことを振返つて見ますと、これは一々速記録によつて立証しませんが、一言にして言えば現在本法が制定される必要があると断定されるような眼前の明白の危険があるというように考えられる疑いが極めて強い。併しその確証というものはまだできていない、検討中である、こういうお答えであつたというふうにまとめて申上げますが、それでよろしいですね。若しそうでないということであるならば、そうであるということを私は立証しなければなりませんが、多分そうだろうと思うんです。どうでしよう。
○政府委員(吉河光貞君) 本法案に該当する団体の具体性につきましては、御質問の通りであります。
○羽仁五郎君 そういうふうに伺つておりますし、私の伺い違いでなかつたようです。そこで伺つておきたいのですが、そういう場合にそのもの自体の問題ですけれども今ここでそれを問題にしません。併しここで問題にして行きたいのは、そういう情況判断ですね。その情況判断に基いてどういう態度をとつて行くかということなんです。これで学者その他のかたがたの不安の一つの大きなものにそれがあるのですが、政府が若しも自己の心中に恐怖心を抱いて現代の情勢というものを判断しているとすれば、本法は極めて危険であるという御意見がある。そういうふうに考えられる節があるんです。例えば一つの例を挙げますと、法務総裁がこれらの眼前明白の危険について、本法を必要とする眼前明白の危険ありや否やの各議員からの御質問に対してお答えになつております例として、メーデーの宮城前広場というのか、人民広場というのか、そこで行われた騒擾について御説明になりましてあれをあのまま放置して行つたならば、どんなことになるかわからないというお言葉をお使いになりました、繰返し繰返し……。私はそのたびに心が痛むのでよく憶えております。そういうことを言つた憶えばないと言うならば、速記録を出して来ますが、そういうことをおつしやつております。この言葉が私は非常に問題だと思う。そこで今政府に伺つておきたいのは、本法が、本法それ自体について今問題にしません、本法が運用されて行くときに、その運用に当る人は情況判断においていやしくも恐怖心におかされて本法を運用するということがあつてはならないということです。現にこの間の場合でもあれを放つておいたらどうなるか、二重橋を渡つてその先まで行つたろうということを考えればそれはきりがないですよ。そうでしよう。それは恐怖心におかされて考えるということになつたならば……。法務総裁もあれは一場のお言葉だつたろうと思う、高邁なる政治的識見を持たれるかたがああいうふうに本気にお考えになつているのじやないと思います。ですからこの際政府から伺つておきたいのは、本法運用の際に情勢判断においていやしくもみずから恐怖心に怯えて、そうして本法を運用するということがあつてはならないということ、これも法律に書くということはできない。併しどうか運用せられる場合にそのことを明示せられる御意思がおありになるかどうかということを伺つておきたい。これを放つておいたらどうなるかということばかり考えるような人は実に困りますよ。なかなかそうなるものじやないんですよ。これは男女の仲だつてそうでして、あれを放つておいたらどうなるか、旧式のお父さんなんか考えると身の毛のよだつようなことまで想像する。そこでおいおいなんて声をかけてみる。その結果は却つてよくない。それはそれらの人に任せておけば……。一旦暴徒になつた人でも中には良識を持つておる人もあるのだし、又或るところまで行けば自己のエネルギーが発散してそれで満足するということもあるのです。これは学生運動、組合運動に関連して我々が絶えず経験するところなんです。これで放つておいたらどうなるかというその瞬間に満足してしまうことがある。そういうさまざまなことがあるのですから、これを放つておいたらどうなるかという恐怖心におかされて本法を運用してはいかん。そういうことがあると本法は即ち違憲であるという疑いを招くという意味でそのことを伺つておきたいのですがどうでしようか。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に御尤もな御質問であります。御質問の点はひとり本法の運用にとどまらず、いやしくも治安維持というような立場に立つ者が冷静な判断を以て事に処する、恐怖心など一切あつてはならん。おつ取り刀で飛び出すような態度ではいかんというような御指摘につきましては、本法の運用につきましてもやはり同様である。そこで御質問の趣旨は体して運用いたします。
○羽仁五郎君 明示せられる御意思がありますか。
○政府委員(吉河光貞君) あります。
○羽仁五郎君 それから今のことですね、恐怖心に動かされ、そうしてあらかじめまだ起つていない行為を制限するというような今伺つて来たものが総合されて来ますと、本法は思想を圧迫することになつてしまふ。ですから本法そのものが思想を圧迫するものでないということは法務総裁の言われることを私は信じます。併しながら今のような運用の面においての原則がはつきりしておりませんと、例えばこの扇動の場合にもよく出て来ますように、思想だけじや罰しない。それから犯意ということなんだが、犯意ということになつて来るとその犯行があるかどうかということになつて来る。そこで従来の刑法において飽くまで犯行、行為ということに基準を置いて考えて来るというのが健全な考え方なんです。それを今本法ではもう少しあらかじめその犯行が起つてからでは大変だというので、つまりこの扇動というところに持つて来られる。そのものが直ちに思想圧迫になるというふうには私は強いて言わないのですが、併しそういうふうなものが今の或いは恐怖心におかされて本法を適用するというふうになつて来ると、調査活動において明らかに本法は思想の自由というものを侵害するということになりますから、それらとの関連も含めて今の原則をはつきり明示しておいて頂きたいと思います。 それからその次の問題は団体の規制、第三条の二項です。この場合にも今まで申上げて来たことと同じ理由なんですが、さつき私は本法は、これは当然我々が現在ブルジヨア民主主義の憲法の下に立つてなすところの立法にしても、行政にしても、司法にしてもこれらがブルジヨア的な原則、その方法を守らなきやならないということなんです。ところがこれの取締の対象としているものはプロレタリア的なものなんです。そこで本法で言う団体というものについて、厳格に今の我々に許されているところの立法の限度を守るならば、この団体に関する問題は法的保護を得るか得ないかという問題に限定せられることが一番合憲的なんです。これには御異存がないだろうと思います。併しそうせよと私は今必ずしも言うのじやない。けれどもそれを越えて行かなければならないと思つて、ここにあらゆる団体というふうにやつておられる。そこで私は本案に対して根本的な問題の態度を今伺おうとしているのじやないが、今の点をお認めになるかどうかということです。即ち我々に許されている立法としては、団体に対してはその法的保護の問題に関係するだけなのである。併しながらこれらの目的におきましては、それを少し先へ行かなければならん理由がある。僕はそれを認めるのじやないけれども、政府がそういうふうにお考えになつている。併しそれは第一の論拠からしましてやはり農小限度にして行かなければならない。そこで問題になるのは第三に、第三というのは、第一には我々の立法で団体を問題にして行くには法的保護の問題に限定せらるべきだ。併しそれを乗り越えて、すぐ団体そのものに入つて行く場合にはミニマムでなければならない。従つて第三に、そのあらゆる団体をとらえるということに目的を置くということになると、本法は違憲の疑いが極めて濃くなつて来る。そこでその三点についてはつきりしたお答えを頂いてそうしてこの第三条第二項の運用についての、その点について明らかにせられて行くという御意思があるかないかということを伺つておきたい。
○政府委員(吉河光貞君) この法案に関する御批判の中にも、第一に団体の規制というものは団体に対する法的保護を剥奪するというラインでとどめよ、そういうような規制をやることが一番法的にも何と申しますか、わかりやすくスムースに行くのではないかいうよう御批判もありました。併し只今羽仁委員からも御指摘の通り、ここで問題にしている団体は、暴力主義柄破壞活動をやるという団体自然的な事実に着目した団体でございまして、その一定の団体に法的保護を与えてこれを監督し、違反があつた場合にはこれを剥奪するという建前になつておりませんので、かような第三条第二項のような定義を掲げた次第でありますが、併しこういう団体に規制をかける、自然的結合と申しますか、そういう団体の形体に規制をかける、たとえそれが暴力主義的な破壞活動を行なつたということを原因として、将来更に破壞活動を行う危険性を条件といたしましても、そういう団体に規制をかけるということは最小限度のものでなければならないという御趣旨は、私どもとして異存のないところでございます。
○羽仁五郎君 今のお答えで、大体私の質問の趣旨の一般的な場合はお答えになつているのですが、なぜそういうことをはつきりとしなければならないかという二つの場合についても十分考えて頂きたいというふうに思うのです。一つはこのいわゆる一般的な場合でして、共産主義と闘うとか、或いはフアシズムと闘うとかいう場合に、この自由主義的な、或いは民主主義的な法律なり或いは国家なりが、いわゆるこの闘いの途中においては向きが非常に似て来てしまうという自然的な事実がある、これはお認めになりますね、両方でやつているものですから……。だからだんだん似て来ちやうのです。だからアメリカの場合もその通りです。それでなかなかそういうふうに行かないのが、イギリスなどが慎重で行かないのです。アメリカで最近やつていることは殆んどソ連でやつているのと同じようなことをやつてしまう。ソ連と戦う結果、ソ連と同じような方向をとる、それは戦争をやつておる、戦つておると、最初は性質が違つておるのに、二つの敵は戦いが長延けば長延くにつれて同じような性質を帯びて来るということは、これは科学的な真理と思う。そこでこのいわゆる破壞的な団体というものを取締ろうとしてやつて行く間にだんだんその手段が破壞的になつてしまう、これが恐しい点なんです。ですからこの第三条の二項での「団体」というのを今根本的に私は批評しようとしていません。けれどもこれを運用する際に、即ち一番問題がないのは、法的保護を受けておる団体の法的保護というものを奪うというだけだつたらば、一番問題はないのです。併し政府のほうで、この法的保護も何も受けていない団体でも規制したいというふうに考えておられる。これは私認めるのじやないが、そういう意思を持つておられる場合でも、そういう法的保護を何にも持つていない団体からは法的保護を奪うこともできやしない、そこでそういう団体に対してはどういうふうにして行くかというところに一定の限度がある。その限度を超えて、而も法的保護も何も受けておらないところの何らかの団体が破壞活動を続けて行こうというのを追究しようということは、本法の限界以外です。ここに本法が適用されようとすると、今申しましたような恐るべき副作用が起つて来る。その点を含めて今の点を明示せられることが必要じやないかと思うのですがどうでしよう。
○政府委員(吉河光貞君) これは羽仁委員がこの質問の冒頭において御指摘になりましたところに帰着するのではなかろうか。一つの破壞的団体を捕捉しようとして捕捉し切れないと、その母体の団体もひつくるめて規制しようというような逸脱した行き方を絶対にしてはならないという点に帰結するのではなかろうかと考えております。そういう点は厳重に戒心するつもりであります。
○羽仁五郎君 ですからこの第三条の第二項は、これを解釈される場合に、これはその建前としては法的保護を受けておるところの団体の法的保護というものを取消すということが建前なんだと、併しそれだけではその破壞的活動を防止するということに不十分な点があるので、必ずしもこの法的保護を持つておるところの団体というものでない団体に対しても、その規制をかけるという必要がある場合には、そうした措置をとるのであるけれども、併しそこにはいろいろな問題があるということも十分考えて、そしてそれが行き過ぎがないようにして行かれることが非常に重要だと思うので、その点十分明らかに明示して置いて頂きたいと思うのであります。 それからその次に問題になつて来ますのは、やはり各議員に対するお答えの中に、本法を外国人の団体に対しても適用するというお答えがあつたのです。これはそのときは非常に軽々しくお答えになりましたが、併しこれは刑政長官から法務総裁にでもお伝え願つておかなければならん。本当は総理大臣に伺いたいのですが、これは外交的な問題ともよほど関係して来ますよ。ですからそういう点において、簡単に本法を外国人の団体にも適用するのだというふうに言うことが、私はどうだろうかというふうに思うのです。それでまあこれ以上この理由は申上げませんが、外国人の団体にも適用したいと思つておる政府の気持は、私は是認するのじやないが、おありになることは見ます。認めるのじやない、見る。けれどもそれが今朝から申上げているように、本法だけで以てやれるものじやないのだし、それから又副作用として国際関係を非常に悪くするということもありますから、ですからどうですか、これは今ここで改めて、本法は直接には外国人の団体というものは対象に考えていないというようにお答えになることができれば、そういうふうに答えて頂きたいと思うのです。どうでしよう。
○政府委員(吉河光貞君) お言葉の御趣旨はよくわかるのであります。で抽象的一般的にお答えすると、国内における行政権の作用としては、飽くまでも属地主義をとらざるを得ない。併しそこに治外法権が、法的には治外法権、その他の問題もございます。実際の運用につきましては及ぼす渉外的な影響の重且つ大であることも十分考慮しなければなりません。そういう点はくれぐれも十分に考慮して、間違いのないようにいたしたい。こういう点で御了承願いたいと思うのであります。
○羽仁五郎君 委員長の非常な忍耐に甘えて大変長く質疑しているのですが、それで今の問題に関連して来るのですが、なぜそういうことを申上げるかと言いますと、殊に本法はその非常に大きな問題が出て来るのです。私も最後に近付いていますが、本法は効果ありや否やということなんです。それでその点もありますから、又外国の団体の、何というか、外国人の団体に適用するのだと言つても効果はないのだし、効果は外交上の悪影響だけだし、従つて外国人の団体というものを考えていない、まあ適用しようと思えば適用もできるかも知れないが、併し主たる対象として考えていないというふうに政府は今お答えになつたものと伺うのですが、そこで次にちよつと本法の効果ありや、これは各委員からすでにしばしば質疑をやつておりますから、私は詳しいことは申上げませんが、この問題で私が伺いたいのは、繰返しじやない、その先なんです。或る効果のなかつた場合についてなんです。これは甚だ残念ながら効果がないですよ。つまり破壞活動はすべて潜つちやうというだけです。でその際のこれから先の問題なんですが、その際に本法で規制しようとするこの公安調査庁というものは、秘密活動を開始せられる意思があるのかないのかということなんです。でここに私は非常に大きな問題が最後に起つて来る。私は効果があるかないかということをここで以て議論はしません。併しながら効果が甚だむずかしかろうということは政府もお認めになつている。皆潜つちまうだろう。で潜つたのはなかなかつかまえがたいのだということ、これはいいですね。そのときです。本法の規制の対象にした破壞団体が皆潜つてしまつたというときに、この公安調査庁は、本法を運用する政府機関は、秘密活動を開始せられる意思があるのかないのか。これが一般の世論が最も不安に感じてるところの大きな問題です。私は今朝来いわゆる学者、言論会、新聞などが感じているのは決して誤解じやない。法案の文句を誤解しているような問題じやないのだ。もつと大きな問題だと申上げていますが、そのうちの一つにこれがあります。そこでこれは今お答えが願えるかどうか問題だと思いますが、一つ十分に御研究下さつてお答えを願いたい。今までの政府の御答弁ではやはりこれも動揺をなすつています。法務総裁は、或るときには、いわゆるあれはどなたに対するお答えでありましたか、密告というようなことは絶対に許さないつもりだ、匿名の投書などによつて調査活動をするということは、これは実に社会を暗くするものであるし、絶対に許さないつもりだというふうにおつしやつていますね。併しながら他面において政府委員はいよいよ必要があれば尾行やら、張込みをやるというふうなお答えをなすつておられた。これはなかなか重大な問題でありますから、どうか一つ今ここでお答えになれればそれは結構ですが、喜んで承わりますけれども、本朝来の私の質問の趣旨をとつくりとお考え下さいまして、この問題についてはもう少し考えてから答えるということならば、それで結構でありますが、極めて質問は明白であります。つまり本法が適用され、破壞団体が秘密活動、破壞活動、地下活動をなして行つた場合に、本法を運用する政府機関は、秘密活動を開始するかどうかという問題です。
○委員長(小野義夫君) ちよつと速記をとめて……。 〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記をつけて。
○羽仁五郎君 秘密警察であるとか警察なりの或いは行政上の必要に基くところの活動であるとかいうことは、今更私が申上げるまでもなく、はつきりしたそこに一線があると思う。特審局長ともあろうかたにそういうことについて認識がないはずはないのです。この尾行、張込の問題についても、これは我々は東大事件以来しばしば取上げている問題であります。これは行政権の適正なる運用について許される部面とそれから絶対に許されないところの部面との間にははつきりした一線があるのじやありませんか。それを伺つておるのです。私はその行政権の適正な運用に伴うところの行動までとやかく言おうと思つておるのじやない。それについては問題がありますけれども、併しこの際は申しません。この際伺つておきたいのは、それを超えた秘密活動をおやりになるかどうかということなんです。
○政府委員(吉河光貞君) 原則として只今御質問のような秘密活動はなすべきではないと考えております。なおこの問題につきましては更に検討を加えまして、機会がありましたら、後日又申上げたいと思います。
○羽仁五郎君 これはどうか一つ十分にお考え下さいまして、そうして今眼前のことばかりに目をくれないで、それからさつき申上げましたように恐怖心に動かされないで、そうして今朝からの質問を全部を含んでお考え下さいまして、はつきりした態度をとつて頂きたい。これはこの国会ではつきりした態度がおとりになれないようなら、あとはもうめちやくちやです。それは本法はナチ立法だということを事実かこれを証明するようになつてしまう。ですから今の点について政府が動揺されることは私も同情します。併し一体民主主義を守つて行くのか、それとも民主主義を守るための闘いにおいて非民主的な方法を用いるのかという問題に関係して来るし、そうして社会一般人心が本法に対して戦慄しておるところの主な原因がここにあるので、先日宮城委員がここで涙を以て青年の将来を破壞するようなことはやめてもらいたいというように縷々と言われるのもそういうところにあるのです。ですから、どうかこの点をはつきりして頂きたい。言うまでもなく眼前に明白なる危険というものの解釈に関係して来ます。それであらかじめ申上げておきますが、これが一番問題がないのは、そこに殺人というような行為が行われて、そうしてその犯人を逮捕しようとしておる場合に政府がとるところの行動というものについては、これは行政上の責任から、これを果す上から、場合によつては秘密の活動をしなければならないということ、そこまでは問題に私はここではならないと思うのです。併しその眼前の明白な危険というものの解釈が困難になつて来ますと、これはいわゆる特高警察というものになつてしまうのです。で、特高警察特高警察と言うと、治安維持法とこの法律と違うというふうにいつもおつしやいますが、そういう御答弁じや誰も納得しません。そうじやなくて特別高等警察というものです。普通の警察じやない、それが特別警察だ、そういうものは我々は欲しません。断じて欲しません。併し警察に高等のものはない。高等という名の付いているのは下等ということです。ですから特別下等警察というものができるのです。ですから、そういう趣旨で今の点をどうか一つ法務総裁にも、これは刑政長官からも羽仁の言つておることはまんざらでたらめでもないようだ、この点についてこの際はつきり答えておいたらどうだろうというようにおつしやつて頂きたいと思います。そうして無用な不安を一掃し、又本法が青年諸君の将来を破壞するように運用されることを飽くまで防ぎたいという趣旨をどうかお伝え願いたいと思います。 それから今の問題に関連して本法における調査官、それから検察庁と或いは司法警察官とが協力する意味で、と言うと弁解なさるかも知れませんが、いわゆる一緒に仕事をなさる場合が多いのです。又連絡をする場合が多い。この問題についてこれも政府は絶えず動揺しておるわけなんです。法務総裁に伺つて、なぜ本法を裁判所の手に委ねないのかというふうに伺うと、こういうことを警察官や検事にやらしたくないとおつしやる。ここには二つの意味があるというふうに判断されます。一つは検察官や警察官にこういう怪しげな仕事をさせたくない。余りはつきり言つて感情を害されないように冷静に聞いて頂きたいのですが、そういう御気持が一方にあるのですね。これは検察庁でもそういうふうな御意見をお述べになつているようであります。先日検事総長に対してどうですか、これを特別公安調査庁というような機構に委ねないで、直接本法によつて検察庁がこうした破壞活動を防止するというふうにしたらどうだという意見に対して検察庁を代表せられるかたが、検事としてはこういうホツトな問題に触れたくない。もう少し冷静なところで仕事をして行きたいというふうに答えられた。これは或いは怪しげな仕事といい、或いはホツトな仕事といい、いずれにしてもいささか問題のある仕事です。その意味で法務総裁は検事なり、司法警察官にそれをさせたくないという気持が一方にある。それから他方にあるお気持というのは、これはこの本法におけるこうした規制乃至規制のための調査活動というものができるだけ強制権を持たないでやつて行きたい、国民の権利を侵害しないで破壞活動を防止できるようにして行きたいというお気持ですね、この二つのお気持はよくわかる。それこそ涙の出るほどよくわかります。そこでこれは本法が運用されて行くときに起つて来る問題なんです。これは運用を誤まると両方の悪いところだけが現われて来る。つまり本法の怪しげなところが調査官によつて行われる。つまり最悪の強制的な調査活動が最悪の官吏によつて行われるという場合が出て来てしまう。法脇総裁がお考えになつておるようであれば、最善の自由なる任意調査が最善の官吏によつて行われる。このどつちに行くかということが大きな問題なんです。これはやはり一般の懸念に堪えないところであります。又本院において各党各派において或いはこれは司法処分に委ねるべきではないかという御意見があり、いや司法処分に委ねるよりもこのほうがいいのじやないか。我々も或る意味において毎日のようにこの問題で悩んでおります。これは検事と司法警察官にこれをやらしたらいいじやないか、このほうがしよつちゆういろいろと調査されるという不安から免れるのじやないか、或るときはそう思つておる。併し他のときは、いやいややはりそういうふうにやられてはいけない、いきなり引張られるのだ、いきなり引張られるよりも、うろうろ調査されることを辛抱したほうがいいということを考える。率直に私の感じを申上げますが、私はその場合はこの法案を読むたびごとにその感情の中をさまよう。法務総裁も恐らくそういうお気持だろうと思う。その結果こういうことが出て来ておる。そこで伺つておきたいのは、本法における調査官がいわゆる司法警察官や検察庁に対して指導的にこれを指揮するような立場に立つてはならないということを明記せられるということが私は必要だと思う。これは答弁の中に、そういうことはあり得ない、絶対にないというふうにたびたびお答えになつておる。その御趣旨も今のような趣旨だろうと思う。併しながら実際において運用されて行くときには、こつちのほうの事件が重大な事件が多い。司法警察のほうはちよつと自転車を人道に乗上げたとか、なんとかいうことをやつておる。こつちは公安調査官というものが、吉田内閣どころではない、日本国憲法を覆えそうという活動がここにあるのじやないかというので、二種の官吏が立ちあつておる。従つてたびたび伊藤委員からもお話があるように、眼は品以上にものを言うということが起つて来る。これはまま起つて来るという偶発的な問題ではない。本法の持つておる特別法としての性質からそうした危険があるのです。ですからこの法律の上にお書きになれば、一層いいのですが、併しそれがおできにならないというならば、この運用の際に明記せられる必要がある。この点について必ずそれを明記する。いやしくも本法を運用する調査官その他が、検察庁は勿論のこと、司法警察官その他などに対してこれに影響を与える、いわんやこれを指揮する、或いは指導的な影響を与えることを絶対にしちやいかんということを明記せられるということを了承していいと思いますが、如何でしようか。
○政府委員(吉河光貞君) 治安機関がかように検察庁、国警、自警となつている現状は、これは国法によつて定められたところであります。この法案におきまして、公安調査官は飽くまで協力の態度を以てこれに接する、指揮命令すべきものでないということは当然でございます。又かような状態をとりますると、無用なトラブルが起きることも予想される次第でございまして、そういう点につきましては、これを職務紀律その他につきまして明記するつもりであります。
○羽仁五郎君 この問題は、我々が法務委員として地方に調査に派遣せられました場合に……、これは今までの特審局の問題ですから、将来の問題の判断として有力な材料としなければならないのですが、この検察の人権蹂躙ということを調べて行つた場合に、そこにどうしてもわからないことが出て来るのです。それが特審の関係の活動じやないかということになつて来てしまう。又特番の関係の活動で以て司法警察官が動いていたのだと言われる場合もあつて、これは今詳しく申上げませんが、これは甚だ調査に苦労します。それで止むを得ないでなされたところの、行政上喜ぶべきことではない、喜ぶべきことでは勿論ないのだが、喜べないことなのか、それとも許すべからざる弾劾すべきことなのかということがわかりにくい場合があつて実に閉口いたすのです。閉口いたすのはまだいいので、その土地のかたがたに、市民に与える影響は実に悪いのです。警察だからと言つて感服していないわけでありまして、特審がくつついて来て恐らく引張つているのではないかと……。とにかく出て来いというので出て行つて、一々驚かされて帰つて来る。そして翌日は軒並みやられて、安来の町は軒並四百軒のかたが喚出された。一体何のために喚び出されたのだかわからない。わからないのだが、いやな思いをして帰つて来た。どういうことだかわからない。安来の町は明るい町だつたが暗い町になつてしまつた。河井貫一郎さんのような陶器の名工が出た安来町だといつて誇つていた町だが、最近は暗い町になつてしまつた。どういうことに関係しているのかちつともわからないが、農業組合の不正事件に関係しているのか、自治警にだか、共産党に問題があるのだか何だかわからないで引張り出されている例が全国に多々あります。建つて今後にもそういうことがあるということになると、これは特審局自体とは別な意味において、その弊害は実に恐ろしいという意味から、どうぞ今の点について今お答え下すつたように、できるだけはつきりと明記をして頂きまして、いやしくも調査官が司法警察官や検事に対して影響を与えるようなことはない、それをした場合には責任をとるように、はつきりしておいて頂きたいと思います。 それからこれらの問題について、本法は本委員会でお願いしたいと思うのですけれども、日もなくなつてしまつたし、たびたびお願いはしたけれども結局なされないのか、なされるおつもりはないのか、できなかつたので、従つて今日となつては政府にお願いするよりほかないのです。そんなに古いことを伺うのでありませんが、最近一カ年間に特審が関係して、そうして世間の非難を招いたような事件が全国にどつさりありますね。これは是非ちやんと調査研究をして頂きたいと思います。我々が本法案に附随するところの公安調査庁設置法というものの審査のときに、このことを伺わなければならないのですけれども、併しなかなかその時間があるまい、あればそれは大変結構で、若し会期でも延長するということになつたならば、そういう点について伺わして頂きたいと思うのですが、不幸にしてそういうことにならないという場合のことを考えて、これはまあ泣き泣きお願いをするのですが、どうか本法案が成立しましたらば、公安調査庁において、過去において特審局関係でなされた仕事で、それで世間の非難を受け、又はその関係者を泣かせたようなことじやないかと思える事件については、十分調査をして頂きたい。或る意味において公安調査庁は、先ず発足に当つて本法適用の対象を探し歩くよりも、過去において特審局がなして来たその問題の調査、あつさり言えば罪の償い、もつとはつきり言うならば、再びそれを繰返さないために、どうしてそういうことが起つたのかという根本を突きとめて、それを繰返さない決意をして頂きたいというふうに思いますが、如何ですか。
○政府委員(吉河光貞君) 誠に御指摘の通りでございます。御質問の要点は生れ変れ……、いろいろな誤謬もあつたのを本当に反省して立派なものに生れ変れという御趣旨だと思うのであります。私どもといたしましても、事件の起きるたびにいろいろと調査し反省しておりますが、更に御質問によりましてこの点を十分に検討して行きたいと考えております。
○羽仁五郎君 生れ変ればなんというふうには申上げませんよ。そんなことはなかなか容易にできることじやない。私だつて生れ変りはできない。頭の切替なんて簡単にできるものではないのです。だからそんなにおつしやらないで、どうか私のお願いしているのは、そんなにされるということが大事なんじやない。お願いしているのは、過去において起つたいろいろな問題がある。その場合にどうかというふうに世間が言つた。自分のほうじやどうかというようなことはないと思つたと言うんですけれども、大抵まああなたがたのところじやそんな問題じやない。適法の行為だ、正当防衛だ。過剰防衛じやないなんというふうなことはないとお考えにならないで、……余談に亙つて恐れ入りますが、静岡近在において、警察官が過剰防衛で罪なき人を殺した疑いがあるというものを、我々が出張を命ぜられて調査したことがありました。極めて若い警察官です。それで全くただ夜中の二時頃に怪げな人間が立つていたというので、それに対してこつちは二人で、両ほうとも二十台。相手は四十台……五十に近い、背も低い。だから追つかけて捕えることはできるのです。それを後から撃つて殺してしまつた。この人は前科も何もない。まあ野荒しくらいはやつているかも知れませんが、併し警察の取締規定に該当するようなことはしていない、併し殺してしまつた。そのかたに我々が来て頂いて、いろいろ事情を伺つて、最後に、私はこういう質問をしたのです。あなたは、あなたの拳銃によつて殺された人を気の毒だと思つていますかと言つたら、黙つていて、気の毒だとも気の毒でないとも言わん。そこで、大変立入つて失礼だが、署長はその遺族に対して幾分のお慰さめのお金などをお出しになつたようでありますが、あなたはあなたの弾九によつて無実にして殺された人のお墓にでもちよつと行つてお詣りになつたことがありましたか、若しいやでしたらお答え下さらなくても結構ですと言つたら、いえ、墓に行つたことはありませんというように、大変簡単にお答えになつておりました。私はこれは特審がそういうことやつてるというのじやないのですよ。併しこういうふうなことは実に悲しいことだと思う。我々の報告書は別に出ていますけれども、併し願えば、先ず御自身で過去において問題があつた、問題は先ず済んだ問題だ、我々は生れ変ればいいのだということでなく、どうか一つ少くとも過去一カ年でも結構ですから、一カ年に現れて、そうして多少これは気の毒だつたんじやないかと思う問題がありましたら、研究して下すつて、その原因がどこにあつたかということを説明して頂きたいと思うのですが、そういう調査を本気でおやりになる御意思があるかないか、伺つておきたい。
○政府委員(吉河光貞君) 勿論必要なことであろうと考えます。
○羽仁五郎君 そこで、これは私のほうから要求することじやないのです。若しその誠意がおありになるとすれば、そうしてまあ局長のお言葉によれば、生れ変るというような意味も含めましてここでお願いしておきたいというふに思いますのは、私がこの本委員会における質疑に繰返し申上げましたように、非常に問題なのは、いわゆる政治上の責任をとることもできない公務員が、政治上の処置をとるということに伴うさまざまの恐るべき害悪、この中で今ここで私は名前を申上げますまいと思います。で併しながら最も重要なのは、その民主々義を守つて行くためには、議会制度を守り、そのためにはどんなに腹が立とうと、不満であろうと、選挙の際の一票というものに自分の全希望というものをこめろということが本当であるならば、そういう投票を受けて出られたかたに対する処置というものについて、私はどうかはつきりとした態度をとつて頂きたいと思う。これはマツカーサーの命令であるとか、或いはマツカーサーの命令にそのかたの名前が入つているとうようなことで私は満足できません、残念ながら。それでこれについては、同僚の松原一彦議員の本会議における質疑もございます。総理大臣のお答えは、不幸にして甚だレベルが低いものでありました。問題は果して政府は議会主義によつて国民がその希望を満たすということに誠意を持つのか持たないのかということに関係します。でありまするから、いやしくも国民が公けの国の選挙において、而も多数の投票をもつて国会議事堂に送つた人を、これも十分な理由があるとか何とかいう場合は、それだつて問題はなくはないと思いますが、併しその理由を明らかでないと考えられるような方法で、その議席を失われて行くということについては、決して世上今日納得しておりません。絶えず我々のところに向つてこの問題についての苦情が参りますし聞けば尤もだと思う分もございます。従つてこれはどうかもう済んだ問題だ、マツカーサーの責任だということでやつて頂きたくないというふうにお願いをいたすのですが、自主的な行動をおとり下さることだというふうに思いますが、如何です。
○政府委員(吉河光貞君) 御質問の点につきましては、更に法務総裁にもお伝えをいたしまして、反省したいと考えております。
○羽仁五郎君 これは誠に私としても申上げにくいことなんですが、どうか私も、実際この本当に自分の名前をただ一枚の紙に書くという行動だけによつて、自分達の生活を改善し、そして又自分達の幸福を守るという確信を国民が持つことよりほかに、今日の時局を乗切る方法はないんだ、その確信を国民に与えて行くという、その一念から今のことを伺つておるんです。どうかそれを将来において傷けないのみならず、過去において傷けたことについて、一片の誠意を示されることを惜まれるというのであつて欲しくないというような、これは希望であります。私の申上げる意味は、よく御了解下すつたことだと思います。 それからその次の問題は、やはりこれも実は先日わざわざ秘密会を開いて頂いたのでありますが、結局解決をしない問題なんです。いわゆる今日憲法上許されていないところの秘密の予算の使用というものが復活することになつては、これは実に大変なことです。これにつきましても、もう今更これからの特審の予算を調べたいというふうに委員長にお願いし、委員会にお願いしましても、これはかなえて頂くということも御無理であろうというふうに思うのですが、併し委員長の高邁なる御判断によつてその機会を得れば非常に仕合せでありますが、併し本日伺つておきたいのは、この特審局の活動以来の予算につきまして世上とかくの批判がございます。一々これを申上げません。その中には随分最高のレベルにおられたかたについての風評もございます。私この風評を信ずるものではありません。併しながら問題はどういうところにあるかというと、過去の内務省の復活を恐れておるかたが世間の有識階級の中に多いんです。で、例えば大内兵衛教授のごときもこの点についてどうか議会で明らかにしてくれといわれますが、過去の内務省の特高警察なんかの最も恐るべき一つの理由は機密費の問題にあります。これはやがてこの特高なり内務省から移つて軍部に行つた、で決して最初から軍部が機密費を用いて国を不幸に導いたということにはならないんです。そこまで行つてからではもう間に合わないんです。事実私はそれは木村さんでも誰でも同感であろうと思うんです。そこまで行つたら高橋是清さんといえどもそれを防ぐことはできないのです。高橋是清さんがそれで殉職せられてその屍の上に我々が今立つて、そういうことにもう一遍持つて行くということはこれは絶対に許されない、その第一歩を我々が今日築いてはならない、法務総裁においてもその点については御同感だろうと思うんです。従つて私はこの公安調査庁設置法案について、特審局の予算について審議をしたいと今でも思つておりますけれども、それが万一できなかつた場合にお願いしておきたいのですが、この新らしく設置されるかも知れない公安調査庁においては特審自体の会計を厳密に検査して頂きたいと思う。そうしてそれについて世上の批判が多少なんらかの根拠があつた場合には責任のある処置をとつて頂きたい、今後公安調査庁の予算は国会において十分の審議をつねに受けて頂きたい、勿論行政上の十分なる必要に基くところのこの機密に関するものまで私は否定しようと思つておりません。原則的には私はそれも否定したいと思いますけれども、日本の現状においてここまで行くことにはなかなか無理があろうし、現在捜査中であるというようなことに関しては最小限度においてとめられて、それ以外はすべて国民の代表たる国会の審議を明白に受けられ且つ報告せられるということをやつて頂きたい。でこれは勿論今でもおやりになつておるとおつしやるかも知れませんが、併し世間の風評というものに我々は耳をおおうことができないので、今お願いしておきたいことは、万一我々が特審局の予算について審議を十分することができなかつた場合には、どうか公安調査庁が特審局自体の予算についてはつきりした調査をして頂きたい。目的は私は誰かをやめさせるかどうかということではない。目的はそれによつていやしくも何人かが政治的にひそかに使用し得るところの巨額の資金というものを、こういうややもすれば秘密警察に陷り易い機関内に作つてはならないということ、これはそういうことを作つてはならないということは法務総裁は勿論御同感だろうと思うんです。併しそれを口で言うだけでなく、それを実を示すために過去においてそういう疑いを受けたものが事実あるかも知れない。それならばそれについて十分調べて場合によつては警告でもいいし、更に進んでそれについての処置なりおとりになれば非常に尊敬いたしますが、併しいずれにしても今申上げた程度のことはやつて頂けるかどうかということをお伺いしたい。
○政府委員(清原邦一君) 只今羽仁委員より切々たる御意見を拝聴いたしました。従来の特審局におきましても極力機密費という言葉に該当する金はないのでございますが、いわゆる機密費に当る褒賞費その他についても十分監視いたしておるつもりでございます。私自身も特審局を所管しておる一人としてその都度報告を受けて検討いたしておるつもりでございまするが、なおお言葉通り今後十分この点につきましてもできる限り愼重に調査をし、又誤ちなきを期したいとかように考えております。
○羽仁五郎君 現在までのところではまあ総予算から見ましてもたいした金額でないのです、ないでしよう、ないと断定して申すことは許されませんが二百万とか三百万という金を使つたことによつて、それによつて内務省を復活させるというふうに私は言うのではないのです。併し小さいところからそういう習慣ができて行きますと、それで一般の行政機関でもそうでありますけれども、特にさつき申上げたように、この法案によつて規制を受けるべき相手の対象は潜つてしまう。そうすると、この法案を適用する政府機関は、さつき私が申上げたような意味において秘密活動に移らない、許されないということにはなつておりますけれども、併しその行政上の必要に基いて若干の秘密的な活動が起つて来る。そうすると、その秘密的な活動というものに必ず政治的陰謀の金というものがくつついて来るのです。これは初めは小さなものです。併し後には大きなものになつて行く。そしてそれがそれぞれ別の省に持つて行かれます。或いは次には保安庁に持つて行かれるかも知れない。次にはそれが軍部に持つて行かれるかも知れない。そして最後に戦争というような大きな問題になつて来ると巨大な金がそこに動いて国会議員の全部がそれによつて動かされてしまうというような状態にもなつて行くのです。恐るべき機密費の作用というものを十分お考え下すつて、それを双葉のうちから、双葉の間には処分もしいいです、事実。ですから、私は決して政治家をそういう私的な非行によつて陷れようという意図じやない。だからそういう意味で取上げようと言つておるのじやない。そうではなくて、恐るべき秘密主義が再び日本に生れて来るその第一歩を防ぐために只今申上げた調査を必ず行なつて頂きたいと思います。 最後にこの今の問題から来まして本法の中で濫用に対する規制というか、刑罰ですか、責任をとるという問題についての問題が出て来るのです。それでこれはさつき公安調査庁長官の資格、資格というのは何も法律用語じやない、そのクオリフイケーシヨン、必要なる性格について十分に考えて頂きたいということを申上げたのですが、同時にこのかたの責任という問題ですね。私はこの法でそういうことまで明らかにせらるべきだと思いますけれどもなかなかそうも行かないでしよう、事実上。併しその結果は恐るべきものがあるのですから、これはできるならばそういうふうな措置をとつて頂きたいというふうに思うのです。問題は本法適用によつて起つた問題について重大なる基本的人権の侵害が起つた場合、これは私は特に、重大というところまで譲歩してもいいと思うのです、本当はそこまで譲歩したくないのですが、ところがたびたび委員会で繰返された問題です、即ち本法による団体規制によつて或いは解散され、或いは機関誌紙が六カ月以内停止され、或いは集団行動が六カ月以内停止される。併しながらそれがあとの裁判によつて無罪となつた、破壞活動はなかつたということが明らかにされた、そのときにその団体になされた規制の責任はどうなるか、この問題です。これは意見長官の御答弁でも最後までこの点ははつきりしないのです。それで現在本法に限らず、あらゆる行政法体系に伴つて来るところの問題であるというふうに最後は逃げておられる。これはそうして逃げられる問題じやないのです。この現在の行政法体系において何故にそういう問題が起つて来るかということを考えて頂きたい。又どういう法体系においてそういうものが現在盛んに出て来るかということを考えて頂きたい。これは結論して言いますと、いわゆる政治的に交替しない人たちが政治的なものを規制しているというのは、これ即ちデイクテイターなんです、独裁者、わかりますね、ここに恐るべき点があるのです。我々はこの政党政治家が、つまり政党政治というものを資本主義に基く民主主義の上では原則として飽くまでそれを守つて行く、而してその政府がなしたる過ちで回復できないものがあつても、その過ちはその政府が倒されることによつて、交替することによつて、責任をとることによつて、そうしてその反対党が政府をとつて行くことによつて、それは救われているのです。これで初めてデイクテイターというものはできないのです。ところが、その政治上の問題について無責任であるというこの行政官がその政治上の責任をとるということになつて来ると、常に変化しない一つの権力があらゆる政治的な問題に対して厳重な規制を加えて行くということができるようになつて来る。これは本法案が独裁者を作る虞れが多分にあるという大きな問題です。ですから意見長官は、最近行政法体系の中にこうした問題が至るところに起つて来ているということだけで安心しておられることはできないと思う。なぜそういうことが至るところに出て来るのかというと、行政が次第に司法に入つて行つている。これは最近の社会情勢がいろいろ困難になつて来ているということから来まして、なかんずく現在国際的な緊張というかテンシヨン、そういうものが高まつて来るとか、或いは本法案による立法の一つの原因であるかも知れないという問題も含めて今の問題を十分考えて下すつて、この法律が不適正に適用された場合の最後の最高の責任は一体誰かとるかということをはつきりしておいて頂きたい。なかんずく具体的な問題としては、この団体規制が行われた事件について後に裁判によつてそれが無罪であることが明らかにせられたときは、誰が責任をとるかということを明らかにしておいて頂きたいと思いますが、如何でしようか。
○政府委員(吉河光貞君) 規制処分の請求をいたします者は公安調査庁の長官であります。長官がその請求につきまして後にその請求した事件が裁判所において争われて無罪になつて取消しされたというような場合につきましては、公安調査庁長官はその事務の取扱の最高責任者として請求については相当の責任をとるものと考えておまりす。
○羽仁五郎君 只今の御答弁で私は半ば満足いたしますが、併しこれは明示することはできないのですか。これは重大な問題だと思いますから、特に今のような根本論まで申上げませんけれども、団体つまり言論、集会、結社の自由、憲法に保障されている基本的人権ですね、そして私はこれは制限できないものだという考えの上にいます。併し仮に譲りまして、佐藤君が述べておられるように制限しにくいものであるというように譲つてもいいです。けれども制限しにくい基本的人権というものに対して不当な制限が加えられた場合には、私は本法を運用する最高の責任者は必ず責任をとらなければならん。そうしないと本法のようなものは運用できないのです、事実。ですからどういうふうな形でお答え下さるかということはお任せしますけれども、今の点は十分お考え下さいまして、この間までの政府の御答弁でなくもう一歩進んだお答えを頂いておきたい。これは裁判で無罪になつた、併し解散されてしまつた団体、或いは六カ月以内発行を停止された機関紙、或いは行われなかつたところの集団示威行進というものについてはどうすることもできはしない。まあ国家賠償ができる場合があるかも知れないし、できないかも知れないというような御答弁でなしに、そうでしよう、私の申上げておるのは無理じやないと思う。これは憲法によつて、見ようによつては制限できないという権利、或いは百歩譲つて極めて制限しにくいという、容易に制限されないという権利を制限することですからね。だからそれが理由なくして行われたということは重大な問題です。私は当然これは政府が責任をとるべきだと思います。これは必要なんです。なぜなら内乱を防ぐには政府の後退によつて内乱を防ぐことができる。できないのではないのです。関君でも誰でもこの法案が本当に何を意味しているかということをお考えになれば、今の私の言つたことは決して愚論ではないということがおわかりになるだろうと思う。内乱を防ぐ最後の途は政府がみずから退くことにある。私は原則的には本法案によつて、団体に対して団結権又言論、集会、結社の自由等基本的人権が制限されて後に、その事件が裁判で無罪になつた場合には内閣は総辞職するということは当然だと思います。そういうような責任を持つたこれは法律案です。それで総理大臣がおいでにならんということは総理大臣の政治的識見を疑わざるを得ない、それほどの重大な法律案です。というふうに思いますがそこまではなかなか御了解を願えまいと思うのですが、どの程度までの御了解をなさるか、それをどういう形でお話になるか、今の点をどうか法務総裁にお伝えを願います。 最後にもう一つ。内乱は政府みずからが後退することによつて防ぐことができるという場合がある。そういう意味から、本法案において制限されがたい基本的人権を制限して後に裁判で無罪になつた場合には、最高の責任をとるべきだということを明示せよというのだが、どうだろうかということを一つお答えを頂きたいと思います。
○委員長(小野義夫君) なおこの問題は、委員長からもそういう請求をしておきます。速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて下さい。
○羽仁五郎君 最後の問題に入つて行く前に、前回政府に向かつて伺いましたが、外国の立法例、それからそれらはその後どうなつたかという問題について、政府の御覧になつているところの御説明をこの際頂いておきたいと思います。
○政府委員(関之君) 今の羽仁先生の御要求のような広範な知識を要する調査はできかねるのでありまして、ただ今までのこの法案の立案に当りまして、私どもが大体の目途として参照にいたした点等を申上げてみたいと思います。なおこの点につきましては、前回二回ほど他の委員のかたのお求めによりましてお話したのでありますが、それを重複を避けて御説明いたしたいと思います。
○羽仁五郎君 第一に本法とどこが似ているか、どうか違うかということをお話願いたい。
○委員長(小野義夫君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて下さい。
○政府委員(関之君) 私どもは問題のスタートとしては、今申しましたように、現下における国内の騒がしい状況はかくのごとき段階である、それに対しまして国内の法としてはどういうものがあるか、これが一つのスタートになる。次の段階としては、然らば我々として自主的に考えなければならん問題であるけれども、外国のやり方は一体どんなことをやつているか、外国では或いは民主主義その他の主義に立脚している国においてはどういう施策をしているか、これは他山の石としまして先ず考えなければならない点だと思います。そこでこれは広い意味におきまして、この法案が一つの治安的な立法である、これは言うまでもないところであります。そこで外国においてのいわゆる治安立法というものはどうなつているかという点どの点まで抑えているか、どの程度まで出ているかということが私どもの最も注意しなければならない点であつたのであります。そこで私どもとしては、イギリスとフランスとドイツとアメリカとソ連でございます、これらの国々の治安的な立法がどこまで行つているかという点を調べてみたわけであります。そこでそれらを一応治安立法というものは整備されているか、いないかという点から見て順序をつけてみますと、これは一番やはり少いのは英国とフランスであります。その次に整備されているのはドイツ、次に最近になつて非常に整備しているのがアメリカでありまして、それと同じくらいのものに運用上なり得るのがソ連であります。そこで一番少いと思われるフランスと英国でありますが、これは考えようによつてはフランスのほうが少いのではないかと私は思つているのであります。この問題につきましてはどうも各種の語学の制約もありまして或る友人の協力その他を得まして短い期間にできるだけの調査はいたしましたが、勿論刑法等の基本法律のほかに個々の単行法、殊に英国のごときはすべてコモンロー、何百年前の法律がそのまま生きているというので、なかなか手が届きかねておりますが、大筋のところを調べてみたのであります。そこで今のような私は大体の段階ずけをいたしまして、そうして英国ではどこまで行つているか、一番少いと思われている英国とフランスはどこまで行つているかということが私どもの一応踏み出す根拠になつたわけであります。英国の実情を申上げまして、あとはそれに準じて御説明いたしますれば、大体御理解が願えると思うのであります。 英国におきましては、これは今まで申上げたように、大体日本の刑法にも規定するがごとき各種の反逆罪、重罪、軽罪の三に分けまして、コモンローによつて大体この程度の実害行為が犯罪と規定されているわけであります。そのほかにこれは今まで御説明いたしたごとくに、かような行為はプロキユア・ツー・コミツト・ア・クライムと書いてあるのですが、そういう犯罪を起させるような各種の言葉、言動こういうものはそのこと自体が犯罪となつているわけであります。これは今の日本の言葉で申しますと教唆或いは扇動が独立罪になつているわけであります。だからこれは今までの日本人の考え方から申しますと、実害行為が起きなければ、さようなことは処罰しないほうがいいんじやないかという今までの我々の考え方が、英米法におきましてはそういうこと自体が社会的に不安をひき起すのだ、そのこと自体はすでに犯罪なんだと、それは英米法から申しますと、犯した者と同じような主犯者という言葉を使つているわけであります。言葉で以て犯罪を犯させるようにするのは行なつたと同じように主犯者であつてすでに主犯者としての刑を受ける、こういう考え方が英米法の考えであります。これはですから大陸系の知識を持つた我々の考え方からいうと、なんというか非常に驚くべき考え方でありますが、少くとも英国、米国のコモンローを中心にした国においては、そういう重罪というような反逆者というような罪を起させるように仕向ける言葉、その言葉はアージ、アベツト或いはエンカレツジとかそういう一切の言葉で、全部相手方の犯意を起したり、犯意を強めるというようなその一切の言葉、その言葉自体が悪いのだ、それが一つの犯罪なんだというふうに見ているわけであります。そこで英国は今の実害行為を中心としてそういう言葉が全部犯罪だというふうに規定されているわけであります。そのほかに我々として注意しなければならん点は、英国では御承知のコンスピラシーの議論があるわけであります。これは共謀の議論でありますが、日本の言葉でいえば隠謀であるとか共謀であるとかいう言葉に訳されるべき問題だと思います。犯罪を一人でやつても何でもないが二人以上で犯罪を協議する、そのこと自体が犯罪である。これは使いようによつては英米法の学者或いは大陸系の学者が非常に濫用されるものであるというふうに非難をしているのでありますが、少くとも判例法によつて古い伝統によりまして、一人では罪でないけれども二人以上で犯罪を共謀する、企画するというそのこと自体が犯罪であるというコンスピラシーの議論があるわけであります。これは今日におきましては反逆罪、重罪についてのコンスピラシーは当然犯罪である。更に或る意味においては軽罪についてもさようなものは犯罪であるというふうなこのような考え方が英国から生まれて、更に今の米国に移入されて英米法は大体さような考え方になつているわけであります。 そこで治安的なこの種の破壞的な犯罪に対しまして英国ではどういうことができるかと申しますと、大体日本の例にならつてみますと、日本の各種の実害行為が刑法に書いてあるわけであります、刑法に書いてある外側のかような行為の教唆、扇動という行為は、そのこと自体がすべて犯罪になる。そうして同時にその犯罪の中において、そういうことを二人以上で共謀するということが、そのことがすでに罪とされるわけであります。その犯罪というものを犯罪としてキヤツチできるということになりまして、これを日本の刑法に当てはめてみますと、刑法のすべての犯罪に対しで扇動、教唆をして、そうしてすべての犯罪に対して隠謀を或いは予備を企てたというところが英国の実はコンモンローにおけるクリミナルに関する規定に相成るわけであります。これを日本流に考えてみますと非常に広範なものになるわけであります。とにかく英国はそこまでやつているというふうに私は考えまして、成るほど英国人というものの考え方は、我我からみると自由人権と云つておつて非常に民主主義の祖国といわれるような国だが、なかなかやはり法律的体制にはえらいものがあるというふうに実は驚いたのであります。 第二といたしましてフランスであります。フランスにおきましては大体刑法の立て方は日本流であります。そうして言論の処罰は即も教唆する相手方が本犯を実行しなければ犯罪にしないというのも日本流であります。ところがそういうことではいけないということになりまして、一九二二年頃に単行法によりまして、重罪について例えばこの法案の三条に規定してあるようなああいう重い罪については、そういう場合の扇動行為それ自体犯罪として処分するというように相成つているのであります。そのほかにその後における刑法の内乱規定の一部の修正というようなものによりまして、やはりそういう重罪を犯すようなことをそそのかしたり、あおつたりする各種の言動行為がやはり犯罪になるということに相成つているわけであります。この両国のあれは、危険な言動が起つた場合に押えるという点から見るならば、英国のほうが私は遙かに便宜であり、法律が整備されていると思うのであります。 なおこのほかに英国におきましては、一九二二年に過激な思想の宣伝行為を取締る法律、それから十六歳未満の子供に対して、過激思想を教授することを取締るという法律が出たといと文献がありまするが、私は調べて見ましたら現行法の法典にはなつておりませんが、出たという文献が日本にあるのであります。そこで英国は廃止同様なわけですから、そういうようなこと。なおそのほかに細かい法律としましては、例えばこの国会の周囲において、これは人数は忘れましたが例えば五十人以上で議会の開会中にデモをしてはいけない、或いは国会に入つて来たらばその国会のルールに従つて若し違反したら処罰する、或いは特定の服装をして集団的なデモンストレーシヨンをしてはいけない、これはナチの服装でナチが盛んにやつたので似たようなナチ的な行為をしてはいかんというようなことであろうと思うのであります。大体ナチの勃興時代にできた法律であります。そうして今までの刑法の規定で、非常にとにかく仮に日本の現状におきまして見ますならば、相当危険な言動というものは一切抑えられるということになるわけであります。フランスはどうも比較して見ますとフランスのほうがやはり実質的には少いのじやないかと、今申上げましたようなわけで、これらの点が特にこの法案を作るに当りまして、先進のというかとにかく民主諸国においては、一体どこまで行つているかという一つのふん切りを考えるべき問題であつたのであります。 そうして次はドイツでありますが、ドイツは今度の昨年の八月の刑法改正によりまして、これは非常に広範なものでありまして、国内に対する破壞的活動に対する各種の立法を整備したのであります。 更にアメリカに参りますと、御承知のごとくこの数十年来ナチの勃興以来、アメリカの破壞活動とかかような言論活動というものに対する立法というものは実に驚くべきものがあるのでありまして、これは一つのクリミナルとして処罰するほかに、或いは公職や重要産業に対する就職禁止であるとか、或いは公務員の忠誠令であるとう、或いはイミグレーシヨンに対する各種の措置であるとかいろいろな措置をとつているのであります。そういうような段階になつております。 ソ連に至りましては更にそれを徹底化した一切の反抗する言論まで全部抑えられることができるというようなことになつているのであります。 そういうようなふうに外国の立法例を見まして、日本の現行法をこの外国のこの系列に並べて見たら一体我が国はどうなるかという点が私の次の考察であつたのであります。そこでみますと、御承知のごとく、日本においては、刑法がすべてそうしてまあ治安的な法律として暴力行為等処罰に関する法律、爆発物取締罰則、そうしてその他……
○羽仁五郎君 いやそれは扇動についての御説明ですね。
○政府委員(関之君) それを並べて見ますと、日本は近代法の箇条の規定の内容から見て、それらの法律に対しますと、米国とかフランスを遙かに引離した日本は治安的な取締立法が少い国ということになるわけであります。これで若し行くならば日本ほど言論その他について自由な国はない、誠に仕合せな国であると思うのでありますが。 さて顧みて次の問題につきましては、国内の破壞的な活動の実態というものは、一体どういうふうなものになつているかという点であります。これはいろいろ羽仁先生なども各種の外国の文献を御覧になつて、外国の破壞活動がどうなつているかということについて十分な御認識があると思うのでありますが、ただ外国の破壞的な活動はどうかという次の問題になるわけでありますが、そこで私どもとしましては、先ずフランスはこれは相当とにかく破壞的な分子の数とか或いはいろんなもので危険が違うのでありまして、ドイツもこれに次いで、それに次いでは日本が特に最近の破壞的な活動というものは、ちよつとドイツあたりにも例のないほどのものになつていると、こういうようなことで、英国とアメリカに至つては遥かにずつと引離して安定性があるのであります。それは日本から申しましても英国の共産党というものより暴力的なものだというふうに一応の判定をしてみたわけであります。そこで結局この法案におきましては、刑法の既遂行為を中心として、予備、陰謀、教唆、扇動というように一応考えているわけでありまして、この教唆、扇動というものは、英国、米国の例から見ると刑法上当然の犯罪として従来から処罰されていたのであります。そうしてこの陰謀はアメリカ或いは英国におきましてもコンスピラシイとして当然に処罰されている。この程度のことは現下の日本の破壞活動の実情から見てもうやむを得ない最小限度のものではないか。更に又外国特に英国などの例で見てもこの程度のことは認められる線である。こういうようなふうに考えまして、この立法の第一の骨組をいたしまして、そうしてスタートを切つたような次第でありまして、それらの点で今申上げたように、この法案が仮に成立いたしましたとしても、英国とかフランスに比べますれば法律の整備から申しますれば、日本のほうが少いのではないかというふうに私は申上げることができるかと思うのであります。そんなわけでありまして、大体さような考察比較の下にこの作業を進めたのでありまして、御了承を頂きたいと思うのであります。
○羽仁五郎君 それでは伺いますが、先ず第一に今英米法と言いますけれども、米法は英法の継承の部分が多いですから第一にイギリスについて伺いたい。イギリスで叛逆罪、重罪の扇動を罰している理由、どういう理由だとお考えになりますか。
○政府委員(関之君) これは叛逆罪というふうに限定せず、叛逆罪とか重罪とかそういう犯罪に関するインサイトとか、アベツトとか、エンカレツジとか、そういう言葉自体がすべて処罰されます。ここで英米的なものの考え方におきましては……
○羽仁五郎君 その理由だよ。説明じやなくてなぜそういうふうになつているか。
○政府委員(関之君) そういうふうなことは社会の不安を来たすものだからそのこと自体犯罪であるというふうに解せざるを得ないのであります。
○羽仁五郎君 第一の理由は、イギリスにおいては国王が人民の裁判によつて処刑されたという理由がある。これは忘れてはならない大きな理由なんです。チヤールズ一世が断頭台に立たされて人民の手によつて首を落されたということが大きな理由なんです。これが第一の理由。それから第二の理由はイギリスにおいてはあらゆる民主的な手段方法というものが保障されている。従つて民主的な手段方法によつて訴えないでこうした破壞的な行為に出るということは極めて稀な或いは極めて誤つた少数の人々の場合である。これが第二の理由。これは日本において想像せられますれば直ちにわかることなんでありますが、日本では未だ曾つて人民の裁判によつて君主が断頭台上において処刑されたということはありません。恐らく将来もないことを私は望みます。併し英国においては、英国の歴史を理解するときに常に忘れてならないことはチヤールズ一世の処刑の問題です。今日英国の王座のうしろにはチヤールズ一世の亡霊が絶えず立つているということは有名なことわざなんです。英国法の背後には常にチヤールズ一世の亡霊が立つていると言つても過言ではない。こういうことをお考えにならないで英米法の解釈をされるということは根本的に我々不十分だと思う。 第二の点は、英米法においてはさまざまな民主主義的なそれぞれ裁判の上におきましても又立法の上におきましても、又行政上におきましても、これは一つの例を挙げつるだけでも結構ですが、いろいろなイギリスの映画があるでしよう。例えば「レベツカ」という映画があるでしよう、あれを御覧になると法廷が開かれますね、その法廷において裁判官と告発者とそれからその被告とは全く友達のように話合つてそうして事件が解決されて行く、こういう民主主義的な方法が十分に保障されている。それで新聞その他の自由ということも申上げるまでもありません。これも勿論言うまでもなく初めから与えられたものじやない、さまざまな鬪いを経て英国における新聞の自由というものは国際的に今日に至るまで輝いている。それで新聞が害をなすということは英国人は認めない、こういうようになつております。それから議会政党としての共産党の活動というものに対しても、日本のごとくに過去において治安維持法その他で非合法化し地下に追込んだという経験はない。何よりも大事なのは第一にチヤールズ一世の亡霊があらゆる法案のうしろに立つている。第二は英国はあらゆる民主的な手段を保障している。従つて第三に出て来るのは、よほど強い有害な分子でなければ破壞活動に出ない。そういう人に対する措置であるとして今のような点に扇動までをも罰するということになつている。従つてこれが社会的に不安を与えるという原因がよほどないのです。全くないとは言わないけれども極めて少い。 それから更に第三。今申上げた第一はチヤールズ一世の亡霊、第二にあらゆる民主主義的手段が保障されているということ。それから第三に考えるべきことは、これらの法令が最近において、或いはイギリス或いはフランス或いはドイツにおいて今のような問題が出て来ているのは、今申上げた二つの関係を含んだ主としてナチスに対するものなんです。反動的なそうして暴力的な団体、狂信的な団体に対してであつて、いわゆる進歩的な団体に対してこれらの規制が加えられるという虞れは全くない。で反動的な団体に対してこれらの規制を行うという臨時の必要によつてそういうものが出ている。 最後に第四に、アメリカの立法は若干以上の立法と例を異にしております。それはさつきからたびたびあなたのおつしやるマツカラン法でテイーチとか、アドヴオケイトとか、アベツトとかいろいろ言つているのはアメリカの場合は、これは今申上げたイギリス或いはフランスなどの場合、ヨーロツパの場合と違つて来て、最近進歩的な運動に対してこうした立法というものがなされている。そうしますとこれは納得しないのです、そういう法律の適用を受ける人が。従つてアドヴオケイトと言えばそうではない、テイーチだ、テイーチだと言えばアドヴオケイトだというように言う。ですからいろいろな言葉を使つて広範に取締つているのじやなくして、取締れないものを取締ろうとしているから、ここに非常に広義の解釈がついて来ているようになつている。で今申上げた四つの点というものを十分にお考えにならないと、この米英乃至フランス、ドイツなどにおける立法というものを直ちに日本において同一の状況の下に適用され得るかどうかということに多大の問題が起るということはお認めになるだろうと思うのですがどうでしようか。
○政府委員(関之君) 先生の歴史的な御見解に対しましては、私どもそういう知識はさつぱり持ち合せないので非常にありがたく拝聴した次第であります。併し立法的な問題といたしまして、英国が御承知のような社会的な事情、而もあの歴史的なマグナカルタ以来の伝統でそういうものができた、それもよくわかるわけであります。まあまあ時代といたしましては似ていると言えばドイツ、西独にも増してよく日本に似ているというふうに言われております。そこらの立法も一つのまあ参考にしてみた次第でありますが、いろいろ考慮いたしまして現下における活動の実態と、そうして今申上げたような現行刑法の各種のあれというものを見まして、このような三条に掲げるような暴力行為はこれはもう危険なものでありまして、どなたが見てもこれはもう悪いことであり、そうして公共の安全を確保するという意味に比べましては最小限度の防止すべきラインではないか、この程度のものはやはり日本の現下の国内の治安の上に、治安を確保して健全なる民主主義の発達を図るという上から見ますれば最小限度やはりこの程度のものは持たなければならないのではないか、かように私どもは考えて立案した次第であります。
○委員長(小野義夫君) どうですか、もう大体このぐらいに。
○羽仁五郎君 それでは簡単にしますが、今申上げたように、国王が断頭台上で人民裁判を受けて処刑せられたという国の法律を日本に適用するということに大きな問題があるのですよ。ですからそれだけ申し上げてもこれは事実ですから、これは非常に大きな問題ですからこれははつきり承わつておかなければならん。もう時間もないから私どものほうの意見を先に申上げますが、扇動の問題につきましては今言う通りです。 それから次に団体に対する規制の問題はこれはあなたの先刻の御説明では、アメリカも安全保障法というもので団体の規制をやつているというのですが、細かい議論はもうしませんが、併し主たる点において、日本のこの破壞活動防止法案というものは団体を解散させるというところまで行つていますね。併しアメリカのマツカラン法では団体を登録するということにしか行つていないのです。この点をはつきり御説明にならないとその誤解を生ずる虞れが多分にあります。アメリカにおいては共産党乃至外郭団体といえどもそれを法務総裁のところに登録する、そして登録しなかつた場合にはいろいうことが起つて来ますけれども、その法そのものの目的は登録する、そしてこれを国民の民衆の前に、これは共産党である、或いは共産党の外郭団体であるということを国民の前に明らかにして、そして国民が知らずしてそれらの団体に指導せられることがないようにするというのが国内の安全保障法の主眼です。これは本法と性質が著しく異なつています。ですから似たような外国の立法例だというふうにばかりおつしやらないで、その規制の方法が日本の場合には解散まで行く、アメリカの場合には登録ということが主体になるということは絶えずこれは念頭に置かれて、又この法が正しく了解される上にそういう点は是非考えて行かなければならないと思います。この点を省略するということは故意に省略せられるのであると、そこに或いは悪意を想像しなければならないようにもなりますから、多くのかたがたも、議員のかたがたも、アメリカにもあるそうだというふうにおつしやるのですが、マツカラン法の大体の目的は登録するということである。登録にもいろいろな問題がありますが併しもう時間もあれですから議論はしませんから、この点については御異存がないというふうに思いますのでその点誤解がないようにして頂きたい。ですからマツカラン法の登録でさえあれだけの問題があるのですから、これは解散まで行くということになるといろいろな問題があるということをよく考えて頂きたい。 それから第三に伺つておきたいことは、これらの法案が実際に立法された諸外国においてその後どういうふうになつているかということなんです。これはもう簡単にしますが、一つアメリカの場合ですが、アメリカはマツカラン法とスミス法が施行せられてから非常に不安が起つている。それの最大の事実は、バートランド、ラツセルがアメリカにわざわざ書簡を送つて、マツカラン法及びスミス法が国民の自由を脅かしていると言つたバートランド・ラツセルは御自身が学者ですから、ほかのことはおつしやらない、ただ学問の自由が著しく脅かされているということを指摘されているという例を挙げるだけにとどめますが、バートランド・ラツセルは反共的な哲学者で、共産主義には飽くまでも反対の哲学者ですよ。そういうかたがアメリカの最近の思想が著しくファツシズムに近付きつつある、学問の自由は殆んど地に落ちつつあるという。それから事実としては前に一遍申上げましたが、昨年度のアメリカの入学受験者の数は、一昨年に比べて一〇%に落ちている。これは大学教授の中に優秀な人が減つたということが大きな原因である。こういうことがあるのです。ですからスミス法やマツカラン法を真似して、そういうナツハ・ヴイルクウング、あとの効果というものが日本に起つて来ては大変なんですから、その点は十分に考えなければならない。で、本日質問いたしましたのも、そういう趣旨なんです。 それからこの第三のその法が行われたあとがどうなつたのかということの最も恐るべきは南アフリカです。南アフリカは共産党解散法というものをやりましてからその後どうなつたかというと、極く最近その政府は遂に最高裁判所に関する法令を改めて、最高裁判所が議会、行政府と並んで最高の即位にあることを廃止してしまつて、最高裁判所は立法府の下に直属させるということをやつている。これは明瞭にフアシズムに移りつつある。ですから日本も南アフリカの立法などによつてこの法律を作ると、やがてはそのときには最高裁判所をやめてそれであれを政府の下にくつつくものにしろというような動きが起つて来ては大変なことです。ですからそういうふうな一つの立法についても、その後にどういうふうな作用を持つて来たか。これは必ずその法そのものは今のような事態を直接に惹き起したのじやないですけれども、併しそういう面も考えてみなきやならない。それから最近の朝鮮の事情について先日の懇談会で神近市子女史がお話になりましたことは、あなたがたも耳の底にちやんと残つているだろうと思うのです。で、こういうような法律で、朝鮮の鳩合ば結局極左、極右だけが現れてばんばんやりまして、我々のような中くらいのリベラリストとかデモクラートというものは潜つてしまわなければならない。その次には国会議員の逮捕とかそれで国際的にまで問題になる。で、ああいう独裁政権、非民主主義形態を助けておるつもりはないと、これは昨夜の「国際新聞」に英国側の意見として出ているということもあるのですからこれらの点も十分に考えられて、諸外国に類似の立法があるから日本でもあの程度のことはやつてもいいというお考えは、よほど反省せられなければならないというふうに思います。
○委員長(小野義夫君) どうですか。それでまあ御意見ということにして、御答弁は、それじやそこで……、この程度で散会いたします。 午後四時五十六分散会