法務委員会 第41号
- 発言数
- 131 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/05/21
会議録
○委員長(小野義夫君) 只今より委員会を開きます。 先ず連合委員会開会に関する件についてお諮りいたします。昨日運輸委員会に道路交通事業抵当法案が付託になりましたので、本案につきまして運輸委員会と連合委員会を開きたいと思いますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(小野義夫君) 御異議がないと認めましてさよう決定いたします。 —————————————
○委員長(小野義夫君) 次に小委員追加選定に関する件についてお諮りいたします。集団暴力に関する調査小委員に宮城タマヨ君より加わりたい旨の申出がございました。宮城タマヨ君を小委員に追加選定いたすことに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(小野義夫君) 御異議がないと認めます。さよう取計らいます。 —————————————
○委員長(小野義夫君) これより前回に引続き破壊活動防止法案ほか二案について質疑を行います。先ず伊藤君に発言を許します。
○伊藤修君 昨日に引続きまして質疑を継続いたします。本日は長谷山さんの御好意によりまして、持時間を拜借いたしまして残る部分だけの質疑を終了いたしたいと思います。 第二十四條につきましては、一昨日法務総裁に質疑をいたしておるのでありますが、第三十四條の趣旨からいたしまして、殊に第三項の規定がある以上本條においていわゆる行政事件訴訟特例法第十條第二項、この総理大臣の権限を排除するという立て方のほうが正しいのではないかと思うのです。殊にこの第三項を本法において特に明記した以上、ここに百日の審理期間ということを裁判所に枠付けておるのでありますから、この趣旨から申しましても、問題となる事案は速かに裁判所において決定さるべきことを法律自体が企図しておるのです。して見ますれば、この間においてのすでになされた行政処分の実施というものに対しましては、当然この停止を認めるというあり方のほうが正しいと思うのです。然るに本法の立て方からいたしますれば、いわゆる行政事件訴訟特例法第十條第二項というものが発動し得る余地が残され、且つそれに基いて総理大臣が異議の申立をいたしますれば、この処分の停止ということが行われないという、こういう矛盾した不合理な結果を招来することも考えられる。この意味から申しましても、本條における特に行政事件訴訟特例法の第十條第二項を排除する旨を明記する必要があるのではないかと思うのです。政府のこれに対する御意見を伺います。
○政府委員(佐藤達夫君) 只今のお尋ねの点はこれは非常に重大な問題であると私ども考えておるわけでございまして、御承知の通りに行政事件特例法ができます前に、例の平野事件というのがございまして、そのときに裁判所で行われた仮処分についてまあ当時の政府は行政機関の纂奪であるというようなことで見解を発表しておつたわけでございますが、その考え方が、これは私が一つの正しい考え方であると思う。纂奪ということが正しいとか何とか申すのではございませんけれども、この行政処分というものの執行、或いはその執行の停止ということは、事柄の性質から言うと、やつぱり本質は行政処分であるとこれは申すべきであろうと思います。そこでこの訴訟の手続を、成規の手続を盡して、そうして最後的な裁判所の判決によつて覆えされることは、これはもう止むを得ないことである。これは本来の司法作用の部面であるから止むを得ない。併しこの仮処分的な手続によつて行政処分というものが停止されるということになると、そこに行政権との分界について大きな問題があるわけであります。行政権が一応責任を持つてやつたことを停止されるについては、そこによほど強い根拠がなければならないという問題があるわけなんです。その点の調整を、これは御承知の通りに、行政事件特例法は平野事件のあとにできた法律でございますが、この但書はそういうふうな趣旨を、この司法権と行政権との間における調整の一つの方法として設けられた但書であるのでありまして、これを動かすということは根本に触れた重大問題であり、私どもといたしましてはそれをはずさなければならんという踏み切る勇気を持つておらないわけであります。
○伊藤修君 勇気をお持ちにならんか存じませんが、この際勇気を持つべきであるとこう思うのです。殊に行政訴訟特例法第十條第二項というものは憲法違反の疑いがあるということは、佐藤さんにおいても十分御承知のことと思います。今憲法違反であるかどうかということについて論議を進めたいとは思いませんが、一般の行政措置の場合においては。その行政官庁の所管するところの事項についてなされた行政処分でありますから、その場合においてはその特殊な行政機関のなされた行為を一応是認するというあり方は、これは一つの考え方です。併し本法の場合にはそうでなくて、所管事項ではなくして、普遍的にあらゆる国民に対するところのすべての事項について包括的にその行政措置を行おうとするのです。でありますから、行政訴訟特例法の企図するところのものと本法にいうところのものとは、その対象において格段の相違があるのです。範囲において大小の差があるのです。これを同様に考えるということは、立法的な考え方としては私は正しくないと思うのです。佐藤さんにおいてもそのくらいのことは十分御承知のことと存じます。殊に本法の場合においては、速かに裁判の結果を待つという立て方を第三項においてとつている以上は、速かに裁判の結果の現われるまで待つことも当然考えられるのじやないでしようか。若しそういう考え方ならば、第三項なんというものは要らないことになつて来るのです。第三項において締めておる、枠をはめておるという以上は、その間が待てないということはあり得ないと思うのです。その間においてなされたところの行政措置によつて蒙むるところの国民の被害というものは甚大であるのです。後において判決において勝訴の判決を得ても、その結果は回復すべからざるところの損害をもたらすことは火を見るよりも明らかです。こういう点を勘案するならば、この場合においては個々の行政官庁の処分行為に対するところの異議の申立によつて中止させることができないというあり方とは趣きを異にすると思うのです。本法の場合においては、特段にこの場合においては考うべき筋合のものではないかと存ずるのです。重ねて御意見を伺いたい。
○政府委員(佐藤達夫君) 先ほど勇気がないと申しましたのは、私はこの但書、第十條の異議申立権を削ることについて、恐らく削つたならばこれは憲法違反であるという、むしろその御非難があろうと、又あり得るということを確信しておりますからこそ、勇気がないと申上げたのであります。おつしやる御趣旨はよくわかりますけれども、先ほど触れましたように、あらゆる行政作用を通じてのこれは根本的な重大問題であろうと私は思います。従いまして例えばこの総理大臣の異議申立権というものについても、これは総理大臣が行政権の担任者としてその背任において申立をなすべきものは申立をなしますし、申立をなすべからざるものと考えたならば、それは自分の責任において申立をしないで裁判所の処分に服するという、そこに判定の責任を持つておるわけであります。この判定そのものがやはりこれは行政作用として国会の監視の下に行われ、国会に対する責任の下に行われることでありますから、その結果として適正なる総理大臣の責任を遂行されるということになりますれば、結果は穏当な結果になると、そこがこの法律の狙いであろうと存ずるわけであります。
○伊藤修君 それは総理大臣の責任においてとおつしやいますけれども、総理大臣の異議の申立は、いわゆる異議の申立をするところの意思表示さえあればよいのです。その理由の開陳を必要としないのです。裁判所は、その事実に対して停止することがよいか、或いは停止せざることがよいかという判断権を與えられていないのです。その本質は、総理大臣の異議の申立の本質というものは、恐らく裁判所の判断を拘束することになり、その点において司法権の独立を侵すきらいがあるという学者間の非難は御承知の通りです。さような重大なものをこの場合においてやはり適用しようというあり方は、私は結果において不合理なものを生じ得ると思うのです。殊に本法の重大性から考えましても、本法に限つてはこれを排除するというあり方が一番正しいのではないかと思うのです。御意見どうですか。
○政府委員(佐藤達夫君) どうも私は本法や限つてと申しますか、先ほど触れましたように、そうではないので、全面的の一種の行数権と司法権との交渉関係に触れたこれは重大問題であるわけであります。従いまして、私の気持から申しまするというと、今の十條但書というものはむしろ憲法に合致せしめるためにできておるものと考えますからして、軽々にこれを動かすということについては全然勇気を欠除しておるというのが私の見解でございます。
○伊藤修君 然らば、その結果いわゆる行政処分というものの正しいあり方というものが万全であるということは保障しがたいのです。従つて裁判の途が開かれておることは、法の予想するところであります。してみますれば、その裁判の結果を久しきに互つて待つということになりますれば、その間におけるところの行政措置の効果というものが稀薄になるという虞れも生ずるのです。故に本法においては三項において百日という制限を設けておるのですから、その百日間が待てないという私は理窟はないと思うのです。それによつてなされたところの被害が、国民に與える被害が大きいか、国家に與える被害が大きいかということを考えなくちやならんと思うのです。こういうところは、立法者として私は相当の考慮を要すべき点ではないかと思うのです。本法の最後的危險というものはここに存在すると私は考えるのです。そういうお考えはお持ちになりませんですか。
○政府委員(佐藤達夫君) 今の百日のお言葉は、私どもをして申さしめられるならば、今のようなことでございますから、正式の裁判が成るべく早く終了する必要があるので、百日という目途を設けたという趣旨であるわけであります。この点は申すまでもないところであろうと存じます。ただ根本問題は、伊藤委員のおつしやることは、私はお気持はよくわかりますけれども、つきつめて行きますというと、一体人の権利を制限したり、或いは強制処分をするというようなことを行政権が扱うのがそもそもおかしいじやないかと、そういうことは一切裁判所にやつて頂いて、行政権としては、生活保護であるとか、遺家族の援護であるとか、そういうことにむしろ本来の本質を置くべきじやないかというような考え方、これは極端な言い現わし方でございますけれども、そういうことに私は繋つておるのではないかと思います。従いましてこれはたまたまここに御指摘の問題が出ておりますけれども、本法案全体に関連して来ることであり、又一般の行政関係の措置についての諸法律関係にも繋ることであつて、従つて全然勇気を持つておらないと申上げるほかはないのであります。
○伊藤修君 いや私の考え方は御指摘のような考えに繋つておるという判断は当つていると思うのです。併しあなたの考え方の、いわゆる行政官庁は国民に対して何事もなし得ると、いわゆる斬捨て御免という思想に繋つておると言い得るのです。すべて日本の官吏のあり方というものが、官吏万能という観念がまだ拂拭されていないのです。これは私は今日の官吏の考え方として改めて頂きたいと思うのです。官吏は国権を背景にして、国民に対しましては絶対権を持つというような考え方がたまたま本法に現われておると言わなくちやならんと思う。だからそういう考え方は私は拂拭して頂きたい。恐らく佐藤さんはそういうお考え方じやないと思うのですが、佐藤さんのお考え方がそういう点に繋つておるということになれば由々しい問題だと思うのです。如何です。
○政府委員(佐藤達夫君) 私の考えはそんなことに繋つておりませんことは、もう伊藤委員十分御承知のことと存じます。これは御推測に任していいと思いますが、結局そういうことを離れて大所高所から申しまして、治安維持といいますか、素朴な言葉で言つて国内の治安を守るという責任は一体司法権の責任であるのか、行政府の責任であるのか。これは行政府の責任であることは私は間違いないと存じます。その治安を維持する手段としてどういう方法があるか、場合によつては強制力を用いなければならんこともあるのじやないか、その強制力を用いることが、公共の福祉との関連においてここに調和が認められる、許されるということであるのならば、それは一向法律でお認めになつても差支えないと思うのです。一概に強権的な発動というものがいけないというふうには私は言つておらないので、今のような彼此勘案の結果、合理的な線、或いは限度というものがそこにある、こういう考え方でおるわけであります。
○伊藤修君 まあ本問題にこだわつておると時間がなくなりますから次に進むことにいたします。では第四章についてお伺いいたします。第四章の公安調査官を設けられた趣旨が私にはわからないのです。一体公安調査官というものは何をするのですか。いわゆる司法警察官、或いは検察官、こういうような仕事と類似、若しくは同一の仕事をなさると思うのです。今日の警察制度のあり方から申しましても、重ねてこうした制度を設けて、同様な仕事をなさしむるという必要はないと思うのです。国家財政の点から申しましても、非常な大きな負担となることは言うまでもないのです。この点如何ですか。
○政府委員(吉河光貞君) 公安調査官を設けました理由は、公安調査官をして規制処分の原因となる事実に関して必要な調査をなさしめる。砕いて申上げますと、暴力主義的破壊活動が団体によつて行われた事実、並びにこれを継続、又は反復して将来その団体が暴力主義的破壊活動を行う明らかな危險性があるかないかと云う事実につきまして、調査をするということを任務としておるのであります。
○伊藤修君 私のお尋ねしているのは任務を聞いているのじやないのです。司法警察官、検察官において十分賄い得るのではないかというのです。特にこういう公安調査官というような、過去におけるところの特高的制度を設ける必要がどこにあるかとこう考えているのです。国家財政の緊迫しておる折柄、無要な機関を改めてここに作る必要はないのじやないか。特にこれを置かなくちやならんという理由は私には認めがたい、こういう点をお尋ねしておるのです。
○政府委員(關之君) お尋ねの点はこの団体規制という行政処分を国家として行うという、その基本のことに渕源する問題であるのであります。でこれは申すまでもなく本法に規定しておるがごとき、破壊的団体を規制する、そのために必要なるところの調査をなし、証拠資料を収集するというような、かようなことが当然に必要と相成つて来るのであります。この権限を、これを警察に扱わしめるということになりますると、私どもはその点は警察に対して権限が過大に集中する虞れがあると、かように考えたのであります。従いましてこの行政権は、今日行われておるところの警察に扱わせることは、権限集中ということ、従つて民主主義の原則から見て危險である。これはやはり現下の事態で、官庁の、或いは新らしい官吏の増設はもとより慎しむべきでありますが、そういう民主主義的な国家機構のあり方という点から見まして、特別に公安調査庁というものを設けまして、そこにかような公安調査官というような、これだけのものを扱うという職員を置きまして、それに特に専門的なる教養、訓練を施して、かような法案の運用について遺憾なきを期したい、かような気持からこの公安調査官なるものを設けた次第であります。
○伊藤修君 民主主義を維持しようとするならば、なお更今日民主主義的に組織されたところの警察制度の上に、このものを打ち立てるということのほうが、却つて民主主義に徹するのじやないでしようか。特段に現在の民主主義的に組立てられたところの警察制度が外に出て、別個の機関が、いわゆる思想を根本とするところの犯罪事案のみを取扱うというあり方は、まさに過去におけるところの特高警察の復活に過ぎないと思うのですが、名は変りましても、実質においては特高警察と何らの相違をつけがたいのです。これのみに専念せしむる、特にその面に対するところの教育を施すというに至りましては、殊にそういう感を深くいたしますが、過去におけるところの特高警察の弊害というものは、我々は身を以て体験しておるのです。それを再びここに復活するというあり方は、時代に逆行するそしりを免れないと思うのですが……。
○政府委員(關之君) お尋ねの点につきましては、私どもも特高警察、特高制度に対しましては、種々の欠点と申しましようか、非難と申しましようか、反省を加えなければならないものと考えているわけであります。その中で特に注意すべき一つの権能といたしまして、特高が一方において司法警察の権限を持つていると同時に、他方において特定の治安立法に基く行政的な権限を持つている。その左右の行政上の治安的な権限と、そして司法警察の権限の両刀を使つている。従つて非常に権限がツウ・マツチにそこに集中して来たというような点なども、特に制度として私ども反省すべきであろうと存じていたのであります。そこでさような過去の苦がいと申しましようか、制度的に見て一つの苦がい経験をここに私ども反省いたしまして、これはやはり一つの警察以外の、独立な、それのみを扱う官庁を設けるのが事柄の性格上妥当である。国家行政機関の適正に行われる権限ツウ・マツチにそこに集中しないというこの観点から見て、かような公安調査庁を設け、そこに特にかような調査官なるものを設けるのが最も妥当であると考えまして、置いた次第であります。
○伊藤修君 あなたの御説明じや納得できかねるのです。殊にこの法律を提案する以前におけるところの原案においては、この調査官に対しまして、あたかも司法警官察と同様な権限を與えておつたのです。それが提案する場合において、世の非難を受けて削除せられていることは、この沿革に徴して明らかであります。従いまして本法を提案するところの考え方というものは、あくまでも司法警察官と同様の権限、内容を持つところの調査官を設けるという考え方であつたことは、疑いのないところの事実である。ただ捜査権限を外したというその、残存のこの調査官というものは、やはりあなたたちのお考え方としては、当然特高警察の残存物としてのあり方が残つていると思われるのです。これは後に又重ねて御質問することにしまて、この程度にしておきますが、先に御説明の場合において、この調査官が千二百名現在あるが、これをなお五百名増員して云々という御説明があつたように伺つていますが、この調査官の一体資格というものはどの程度のものですか。いわゆる司法警察官程度のものか、又は検事の程度のものか。
○政府委員(關之君) 資格につきましては一般公務員に準じて各級を設けまして、これを採用いたしたいと考えているのであります。裁判官であるとか、或いは検事であるというような特定の資格の制限は設けられないのであります。
○伊藤修君 どの程度かということを聞いているのですよ。
○政府委員(關之君) その公安調査官の構成でありまするが、これはやはりいろいろの階級があるわけでございまして、一番上のものにおきましては、十一級とか十二級とかいうような官吏の階級に相成ると思うのであります。下はもつと四級とか五級とかいうような、これは一般の巡査部長程度のかたがたになつて頂きたい、そうして特に嚴重なるところの教育と訓練を施して行きたい、かように考えている次條であります。
○伊藤修君 すると、今度の増員されまして千七百名の人は大体三級、四級程度のものですか、巡査部長程度のものですか。
○政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。現在特別審査局には約千二百名に近い職員がございます。
○伊藤修君 私のお尋ねしていることだけ言つて下さい、数字はわかつているんだから。
○政府委員(吉河光貞君) 現在の一般公務員と同様でございまして、上級者もあれば下級者もありますが、大体は七級以上くらいの程度のものが大半を占めております。
○伊藤修君 そういうような程度の低い、素養の少い人を以てしてかような重大問題を調査せしめて、それを基幹にいたしまして規制し処分するというあり方は非常な危險なもんですよ。まさに特高警察の復活に過ぎないのです。そういう点は十分心して頂きたいと思います。又政府としても反省すべき点だと思う。(「その通りだ」と呼ぶ者あり) 次に公安調査官が第二十七條の規定によつて書類及び証拠物を閲覧し、二十九條の規定によつて押收に立ち会つた場合ですね。こうした場合に調書を作るのですか作らないのですか。
○政府委員(關之君) 作らないのでありまするが、調査に立会いましたものはその上官に報告書を実際として作ることに相成ると思います。
○伊藤修君 作らないというのでありますが、作らないという法文の解釈か、作ることもできるという解釈かどつちですか。
○政府委員(關之君) この法文の建前といたしましては、それを作らなければならないというふうに書いてはないのであります。併し公安調査官はほかの一般の公務員法その他のあれによりまして、上官の命令に従い又その職務に従わなければならないのであります。従つて報告書を上官が出せと言えば報告書を出さなければならないということになると思います。
○伊藤修君 その報告書は調書ですかそれとも単なる意見書ですか。要するに調書を作ることができるかどうかということを聞いているんですが。
○政府委員(關之君) それはいわゆる調書ではなく報告書であります。
○伊藤修君 そういたしますと、その作成されたところの報告書というのは法文上の根拠はどこにあるのです。
○政府委員(關之君) それは公務員法及びこの公安調査庁設置法等におきまして、公安調査官が上官の指揮、命令に服してその職務を行うと、従いまして上官におきまして報告書を出せとこういう命令がありますれば、そこの根拠に基きましてさような報告書を作成することに相成ると思うのであります。
○伊藤修君 そういたしますると本法に言うところの調書と同一の性格を持たないということに解釈していいんですか。
○政府委員(關之君) お尋ねの通りであります。
○伊藤修君 してみますればこの十九條第二項の「請求の原因たる事実を証すべき証拠、」これにその報告書を援用することにあり得ないのですね。
○政府委員(關之君) この勿論第二十一條におきまする調書の中には入るわけではございません。併しながら更にそれが一つの官吏が作成いたしました公文書といたしまして、証拠能力はあると思うのであります。
○伊藤修君 そういたしますれば、結局調書と同一の効果を持つことになるのじやないですか。それだから聞いたのです、さつきから……。調書と同一の効果をもたらすのか、調書として書くことができるのか、これは結局事案を断定するところの重要な基礎をなすんですよ。これあつてこそ初めて公安審査委員会において、その姿というものは認定し得る結果を招来するのです。こうした下級官吏の報告書というものが、いわゆる昔の巡査の報告書が断罪の資料と同様の結果を招来するのです。現在の訴訟手続法においてはそういうものはいずれも否定しているのです。然るに本法律においてそういう末端機関の報告書、調書というものがすべて断罪の資料として要求されるということは非常な危険をもたらすものです。基本人権は一方において保護し、本法においてはすべて毀損して行くというあり方は、この点においてもすでに片鱗を現しているのじやないですか。そういう末端のことでも注意しまして、起案すべきものだと私は思うのです。そういうことは考慮されておつたか、なかつたか、しないか。
○政府委員(關之君) お尋ねの点につきましては、一人の公務員が法律上の規定に基きまして立会つて現場に乗込んで視察した、その結果をそのままに報告書を作成いたした、かようなものは、やはり権限ある国家公務員が作成したものでありまして、この規制の一般的な証拠能力は十分に私はあるものであると思つているのであります。
○伊藤修君 そうすると、第二十九條もこの立会いについて、司法警察官は押収等の日時、場所等を公安調査庁に提示しなくちやならない。これはこの義務があるのですか。
○政府委員(吉河光貞君) 義務はございません。
○伊藤修君 義務がなければ知らないうちにそういうことがなされる場合が想像できるのですから、その場合においては何ら差支えないのですね。
○政府委員(吉河光貞君) さようであります。公安調査官と警察との協力関係において、できるだけ任意の通報を得たいと考えております。
○伊藤修君 この二十九條の立会いですが、ここには本法においては、ただ司法警察官のなす強制処分についてのみ規定されているのですが、検察官の強制処分については含まないのですか。
○政府委員(關之君) この点につきましては、検察官の場合も考えてみたのでありまするが、現行の刑事訴訟法の建前が司法警察官が第一線の捜査機関でありまして、広く独立に捜査権を行使して行くわけであります。そこで公安調査官が立会い得るのは、この司法警察員がなすその場合のみで、一応足りるものと、又その程度にとどむべきものであると、かように考えまして、検察官の場合は規定いたさなかつたのであります。
○伊藤修君 この本章の立て方を見ますと、いわゆる証拠物閲覧、強制処分の立会い、認定、提出物件の領置等の規定があつて、これらの証拠が公安調査庁又は調査官が捜査機関によつて借入れるとか、又は捜査機関の手を経て強制処分をするとか、そういうような規定がないのですか。これは差支えないのですか。
○政府委員(關之君) その点につきまして、お尋ねのような向うに強制処分の請求をするというようなことは、この法案では考えておりません。
○伊藤修君 この十九條二項の例えば証拠というのは、その原本を指すのですか、或いは謄本、副本をも指すわけですか。いずれも含むのですか、含まないのですか。
○政府委員(關之君) これは勿論原本を指すものと考えていいわけであります。併し場合によりましては、或いは作成者が明示されたる謄本、その他のものも又含まなければならないものと思つているのであります。
○伊藤修君 原本を指すというなら、本法の規定だけでいいと思う。いわゆる謄本、副本、写本というものも含むという趣旨ならば、これはその旨は法文に明らかにしないと、証拠に援用される虞れがあるのですから、これはあなたの御説明では行過ぎになるのですね。
○政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。私人が作りました原本の謄本、副本というようなものは、大体含まれない。やはり法律で謄本のようなものを作成し得る権限がある者が成規に作成したようなものは、やはり含まれるのではなかろうかと考えております。
○伊藤修君 今のお答えならば、それは官庁が作つたところの謄本は、それはそれ自体が公文書であるのですから、それは証拠品として提出することが可能でありますけれども、そうでない場合において、副本も謄本も入るなどという考え方は、法文の解釈上行過ぎるのです。立案者はもう少し考えなければならないのです。この調査官の規定の立て方から行くというと、いわゆる公安調査官というものは、身許調査又は尾行、張り込みというようなこともなし得るように考えられるのですね。それは嚴に禁ずるという意味か、なし得るという考え方か、いずれですか。
○政府委員(吉河光貞君) 政府といたしましては、公安調査官の調査は、飽くまで任意でなければならない。で違反事実の調査につきまして、必要止むを得ないような場合には、尾行なり張込が許されるのではなかろうか。併しその場合におきましても、相手がたの名誉を傷つけたり或いは自由を制限するようなことがないように行なわれなければならないと考えておるわけであります。
○伊藤修君 どうもその点私は懸念したんですが、その通りやはりこの法律によつて尾行、張り込み、特高的な行動が全部許される、こういう考え方は非常に危険なんですよ。それは言うに落ちずして、語るに落ちたということですね。(「その通りだ」と呼ぶ者あり) それでは次にこの調査官が、若し職権濫用をした場合においては、刑法の何條によつて処罰するのですか。
○政府委員(關之君) 刑法百九十三條の職権濫用罪によつて、処罰することに相成ります。
○伊藤修君 一般公務員に対する職権濫用罪をもつて処断するというあり方は、あなたたちはこの調査官の本質から考えて、司法警察官、検察官と同様な職務権限を以て、行なつておるのではないのですか。それは刑法百九十三條の一般公務員に対する職権濫用罪を以て処断するという考え方は、刑法の理念から申しましても、刑法の建前から申しましても、不合理ですよ。それは少なくとも刑法の百九十四條、五條をもつて特別公務員に対するところの職権濫用罪を適用すべきが当然じやないのですか。その旨をなぜ本法において明らかにしないのですか、職務内容は同様じやないのですか。
○政府委員(關之君) お尋ねのごとく警察官などについては、百九十四條以下の特別公務員の職権濫用罪で規定してあるわけであります。その規定の罰則の主体は警察官であるとか、検察の事務に従事するものであるとか、或いは刑務官のごとく、身柄に対して拘束し得る権限を持つておるもののように窺われるのであります。そこで本法におきましては、公安調査官は御覧の通り、すべて調査は任意でありまして、何らの強制的権限は持つていないのであります。かような点を比較考慮をいたしまして、公安調査官の職権濫用の罪に対しましては、百九十三條の一般的な公務員の職権濫用罪の適用のみにとどめるのが相当ではないかと考えまして、このような規定にとどめた次第でございます。
○伊藤修君 それは直接その人が、公安調査官が直接強制力を用い逮捕するということはあり得ないのです。併しその職務の遂行の結果は、それらの人々に対するところの基本人権を制約することは、司法警察官以上の権限を持つておる、そう言つても過言ではないと思います。又職務の内容の本質のあり方から考えましても、これを特別公務員執行妨害罪で、処断すべきことは当然のことだと思います。これは百九十四條以下を適用するように改めるべきであると思います。この人のみに限つて、一般公務員というような軽い責任を負わしめるということはないと思います。国民に対しても相当に大きな義務を本法は求めておるのです。してみればこれを扱うものに対しましても、責任を持たすべきでしよう。こういう点において非常に私は片手落の感が深いのです。あなたたちの御都合のいいようなふうに種々書かれておる、国民のほうは少しも考えられていない、こういう点は考慮すべきであると思います。 次に第三十六條のこの施行細則は、法律でこれは定めるべきものだと私は思うのです。本法において條文を簡略いたしまして、抽象的な條文の表現を用いておる疑義が多々あるんです。こうした法律の内容を定めるところのもの、運用を定めるもの、この施行法というものは非常に重大な関係にあると言わなくてはならないのです。その施行細則を府令に譲るということは、私は好ましくないと思う。これは法律によるべきではないかと思うのです。
○政府委員(關之君) かような法案を作成いたしまして、如何なる事項を法律といたし、その如何なる事項を必要な細則に譲るかという点につきましては、種々他の立法例なども比較勘案いたしまして、本法に記載するがごとき事項を法律事項とし、その他の事項は三十六條、或いは委員会におきましては、委員会の規則というようなものに讓るのが相当であると考えて、かかる立法形式をとつた次第であります。
○伊藤修君 私はその点に対しては、絶対賛成しがたいのです。 次に第六章の罰則ですが、三十七條から四十三條までを拜見いたしますと、いわゆる現行刑法の改正規定である、かような特別法を以て、日本の刑事法体系というものをたやすく改正するというあり方は、佐藤さんとしては、私はどうしてこれを是認されたのですか、これは由々しい問題だと思うのです。若しかような必要があるとするならば、なぜ刑法典を改正しないのですか、立法の神様とおつしやるあなたが、かような取扱いをなさるということは意を得ないと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 御指摘の点は御尤もだと拜承いたします。ただこの法律自身の性格論もございます。この刑法というものは刑罰法規の大本山といいますか、基本的のものとして、これは恒久法である。この法律自身はどちらかといえば、むしろ当面の事態を切抜ける意味において、それに対する対処の方面からできておる法律である。そういうようなことから、私は必ずしもこれが刑法のなかに踏みこんでしまうというまでの、必要はないのだ、と考えておるわけであります。御承知のように、暴力行為の処罰に関する法律、その他実質上刑法典に入るべきような事柄でも、別の立法でなされておるような事例もございますので、これはどちらかといえば理論の問題というよりも、便宜の問題でこれを御覧になるかたのお気持によつて、判定して頂くほかはない、こうでなければならんとか、ああでなければならんという筋合の理論の問題ではないと私は考えておるわけであります。
○伊藤修君 どうも佐藤さんのお言葉とも思われないんですが、特別なこの刑罰規定をここに想定する場合においては、或いはあなたのお説の通りかも知れませんが、併し本法におきましては、いわゆる刑法典に列挙せられたところの各重要犯罪を、特別にここに擴大しようというあり方なんです。そうでしよう。基本的において刑法典にすでに列挙されておる犯罪事実のみで、それに対しまして、刑罰を擴大して行くというあり方です。とりもなおさず刑法の改正ではないですか。例えばここに刑法に予想せられざるところのものの行為が、今日の社会秩序を維持するために必要であるというので、特別法を制定する必要がある場合においては、成るほど特別法規を制定する場合は多く見る例であります。そういう場合は是認されます。併し本法の企図するところのものは、刑法典にあるところの犯罪事実に対しまして、なお加重刑をもつてしようというのです。然らば刑法典の改正を企図せずして、本法によつてこれを賄なうというあり方は正しくないと思う。これは便宜なという考え方は、あなたの多年の法律生活をなさつておる上から考えましても、便宜で日本の法律がかたつぱしから改正されたらたまつたものではないですよ。そんなあり方はあなたとしても、ちよつと私は言い過ぎだと思う。便宜主義で以て日本の法律が片つぱしから改正されたのでは国民生活は混乱に陷りますよ。法治国ではないですよ。
○政府委員(佐藤達夫君) 便宜という言葉は不穏当かも存じませんが、私自身といたしましては、多年伊藤委員の御薫陶によりまして、法律を成るべく親切でわかりやすくしなければならないというようなことをたびたび教えられていることを承知いたしておるわけでございます。実は便宜という言葉は悪いかも存じませんが、わかりやすく親切にと、仮に言葉を換えましてこの法律を立案するとすれば、私の気持から申しますならば、この三條に上つておりますようないろいろな刑法の條文がございます。若しもこれを刑法を丸写しにこちらの法律のほうに書いて、これを見れば、破壊活動関係の刑罰法規として何があるか、行政的な規制処分として何があるかということを、この一冊によつてすべてを表わすということは、私の本当の気持から申せば一番親切な立法であろう。むしろそういつた方向に考えるわけであります。併しこれは言うべくして、法律家の御批判にさらされた場合においては、刑法と同じ條文をこつちに置いてどうするか。必ずお叱りを受けるわけでありますから、それまでは踏み得なかつた。併し御覧になりますように、この三條におきまして特に刑法の條文を引いて、その下に騒擾の罪とか、何とかの罪とか一々括弧書きを付けて、そのことをわかりやすくしておるのであります。私の本来の気持からいたしますれば、まあこの辺で我慢しようという形になつておるわけでございます。
○伊藤修君 この種の法律を作るには非常に苦心のほどを察せられるのであります。実にむずかしい法律であると思います。でありますから、苦心のほどは察せられますけれども、でき上つた法律は如何にも、不出来と言わざるを得ない。あなたの手にかつたものだからもう少し立派なものができると私は思つておつたが、遺憾ながらできた法律は非常にまずい、わかりにくい法律であいまいもことしておる。この法律で、国民はそれによつて基本的人権を制約されるということは非常に心配でならない、かような意味からお尋ねしておるわけです。殊に、この法律によつて、この日本の刑法理念の上に扇動、教唆というものを独立罪として認めるという、そういう一つの新らしい考え方を導入したという点については、非常に大きな問題があると思うのです。あなたとしても法律家として非常な問題だと思うのです。これを独立罪とせざるを得なかつたあなたの一つ法律の見解を伺つておきたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) この問題は結局、私どもの教わりました範囲から申しますれば、刑法の主観説とか客観説というような対立した考え方があるわけでありますが、主観説の考え方をとれば割合に簡単に容認できる事柄じやないかと思うのです。そんなことは触れる必要はございませんが、およそ何故に独立罪にしたかと申しますと、結局それは、行為自体の持つ危険性というものの判定の問題になろうと思うのであります。従いまして我々といたしましては、行為自体の危険性ということから判定をいたしまして、必要な限度においてここに列挙した、大体の原則はさようなところでございます。
○伊藤修君 かような刑法理念の一大革命を行なつた場合において、これが一つのポイントとなつて、橋頭堡となつて、将来の日本の刑法の法典の理念の上に大変革を来たす虞れがあると思う。(「大橋はそう言つている」と呼ぶ者あり)如何ですか。
○政府委員(佐藤達夫君) 私といたしましては、この際、これが突如たる大変革になつておるとは考えておりませんので、古くからの立法例、刑法それものについてはこれはないけれども、別の単独立法においては昔からあつた一つの仕組みでございまして、法局その突如としての問題を別にして、要するに客観的にこれを御覧になつて、これは止むを得ない限度であるかどうかという御判定を願うほかない。我々としましては、必要なる限度でかような立法をしたと申上げるほかないと思つております。
○伊藤修君 昔からあつたということは、昔の官僚の時代からの悪法の残骸に過ぎない。而しその昔にあつた独立罪というものは、刑法と離れたところの別個の目的の下に作られておる。本法の場合においては刑法の各條章を本法に引用しておる。それが破壊活動の定義として掲げられておるのでありまして、本法においては刑法典の大部分というものは変革されておる、その中にこれを導入して来たということは取りも直さず刑法の基本理念というものが、ここにおいて一大革命を行うということになる。従来の飛び離れた單独法によつて行われた場合とは大いに趣きが違う。ですから、私はこの法律によつて一つに確定付けることは刑法理念の一大革命じやないか、こういうことをお尋ねしておるわけです。
○政府委員(佐藤達夫君) 繰返しになりますが、これは一大革命であるとは毛頭存じておりません。最近の事実でも御承知の通りあるわけであります。これはこれ自体として御判断を願うよりほかないと思います。
○伊藤修君 三十七條第二項において「刑法第七十八條若しくは第七十九條の罪の教唆若しくはせん動をなした者」を罰することになつているのですが、刑法の七十八條、いわゆる内乱の予備陰謀等の罪の教唆扇動とは具体的にどういうようなことを考えられているのですか。
○政府委員(岡原昌男君) 只今御質問の点は、刑法七十八條又は七十九條の罪は、その形におきまして、第七十七條の罪の前提のようなことに相成つております。七十七條の内乱の既遂に至るまでの実現の段階におきまして、いろいろな形を抑えるというのがこの規定でございます。そこで実際問題として終局の目的としてはこの七十七條の実現のためにはなりましようけれども、それをやる段階としていろいろ事前の準備工作などもあろう。さような準備工作を教唆扇動するといふうなことを予定しているのでございます。
○伊藤修君 今の御説明の趣旨から申しますれば、その準備行為の中には当然教唆扇動というものは入るのじやないですか。包含されても差支えない。又含されることが多いのじやないか。予備、陰謀という中に扇動ということは包含されてしまうのではないですか。
○政府委員(岡原昌男君) これはさようなことにならないのでございまして、その形が例えば予備陰謀ということになりますと、そのために或る特定の準備をする或いは当事者間で相談をするというふうな行為の体形になりますが、この教唆又は扇動ということになりますと、それに対する一つの決意を生ぜしめる行為或いはそれに対して扇動的なやはり行為があるというふうな二段の段階になつておりまして、観念的には別個のものでございます。
○伊藤修君 観念的には別個に区分できますけれども、事実問題といたしましては、予備、陰謀という中に当然そういうものが多く含まれるのですよ。だから予備、陰謀を罰しますれば、いわゆるあえて扇動罪として罰しなくてもあなたたちの目的は十分達し得られるものと思う。政府の考え方も十分その目的を達し得られると思う。こういうあいまいな扇動という言葉を使つて広くみそもくそもかき集めて処罰しなければならんというやり方をとらなくても法律の企図するところのものは予備陰謀の程度において十分教唆の程度においても十分私は達成し得られると思う。
○政府委員(岡原昌男君) 現在の刑法の建前がまさしく伊藤さんのおつしやる通りでございます。そこで私たちが現在の段階におけるいろいろな社会の現象に目を見はりますときに、さような予備、陰謀の段階にもう事態が発展して、もうすでに危いという段階まで手を拱いて見ているということは到底忍び得ないところである。社会公共の福祉の安全を保持し、増進するためには、その事前の段階に、特にそれが非常に重い犯罪であるだけにその事前の段階においてこれをチエツクすることは絶対に必要である。これは即ちこの條章の立法の趣旨でございます。
○伊藤修君 刑法の企図したところのものは従来の刑法法典に書かれた程度において賄え得るものと考えた。然るに現在の社会秩序というものはそれのみによつては賄えないから、かように擴大しようとしたのであるということであります。擴大するにも限度がある。いわゆる扇動まで擴大しないでも、十分法の企図するところの目的は達し得られると考える。然らば扇動というものの法律上の意味を伺つておきましよう。
○政府委員(岡原昌男君) 扇動の解釈といいますか、定義といいますかにつきましては、諸説ございますが、大体判例等で確定いたしましたところは、他人に対しまして中正の判断を失わしめるような手段方法を以て、或る決意を、犯罪に対する決意を抱かせる、或いはすでに決意を持つておる者に対してこれを助長させるというふうなことに相成つておるようでございます。
○伊藤修君 然らば判例は、あなたのおつしやつた通り決意というところまで、判例が示すごとく決意まで扇動の内容であるということになりますれば、教唆とどこに違いがあるのです。いわゆる扇動罪は、判例はそうあつても、扇動罪の概念といたしましては、決意まで要しないものと解釈せざるを得ないのです。若し判例が示すがごとく、決意までも当然含むべきものと法律的の意義を確定付けるならば、ここに教唆との何らの区別があり得ないのです。判例等によつてあなたたちは考えておられるのですか、それとも新らしい概念で以て分析されますか、どうですか。
○政府委員(岡原昌男君) 先ほど答弁の後段において申上げました通り、決意を生ぜしめるという場合と、それからすでに決意を生じておる者に対してこれを助長せしめるという両方のものが入つておるわけでございます。なお、これは單に決意を生ぜしめるという点についての議論でございますが、なおそのほかに先ほど申上げました通り、扇動の行為そのものが、その手段方法において中正の判断を失わしめて他人にさような影響力を與えるという点に違いがあるのでございます。
○伊藤修君 まあこの点については、又一日ぐらいかかつて議論しなくてはとても済まないから、いま十分しかないからとてもやつておられませんから……。 この三十八條の列挙の罪ですね、私はこの三十八條の列挙の罪がどうも殺人を目的としておる場合においてこそ、初めてこうした加重刑を科する必要があると思うのです。で本罪に対するところの犯罪構成要件とかいうものに対して、その事物に対するところの認識程度であれば、勿論刑法に定めるところの犯罪のみしか成立しない。併し多くの場合この犯罪を行おうとする者は殺人を仮に企図しておりますという認定ができれば、その場合は未遂の行為としてこれを処分できると思うのです。だから特段にここにおいて加重刑を科するという必要は認められないと思うのですが、その他に何か理由があるのですか。
○政府委員(岡原昌男君) 御議論は恐らく殺人予備罪との法定刑の比照の問題であろうと存じまするが、第三十八條におきましてはほかの各内容たる犯罪構成要件と同様に刑法上特に重きもののみを掲げまして、それが特定の政治上の主義を推進、支持するために、或いはこれに反対するためにいわゆる政治上の目的を以てなさる場合を加重した趣旨でございます。その趣旨とするところは、要するにさような犯罪は多くの場合、計画的、組織的或いは集団的にやられるのでありまして、その政治的な主張を一般民主主義の原則に従い、言論の自由にまでかれこれするのであつたならば、これは当然やるべきものであるが、暴力を以て相手方の主張を屈服させようというような考え方は如何にもあるまじきものであるというのがこの加重理由でございます。
○伊藤修君 この本條によるところの犯罪捜査については勿論司法警察官、調査官も結局これに携わつて来ますが、こういうような捜査についての調査官の行き過ぎというものは規制されていないのですね。いわゆる遡りまして第二條においては調査については規制しております。然るに捜査については少しもそういう事項については規制していない。表面から見ますれば、調査官は犯罪捜査はしない。だからそれは必要なかつたのだ。こういう御説明になるかも知れませんが、併しその事実をとらえて以て本法に言うところの行政処置をしようというのでありますから、必ずや捜査方面に対しましてもあらゆる行為が加わつて来ると思う。そういう面に対するところの第二條の規制をなぜしなかつたか、第二條に同様の規制をしなかつたか。いわゆる第二條の中に調査及び捜査というふうになぜ表現しなかつたかと、こう言うのです。
○政府委員(岡原昌男君) 御質疑誠に御尤もでございます。ただ一般の犯罪捜査の点についても又さようであるごとく司法検察官、警察官その他犯罪の捜査に従事する者にありましては、勿論その職権を濫用する等或いは本法第二條に違反するようなことがあるべからざることであることは又当然であります。そこでこれをここだけに取り上げて他の一般犯罪の捜査と、何と言いますか、区別を設けるというほどの実益も認めませんでしたので、この点につきましては單に公安調査官の規制の点に関連して第二條の準則を設けた、かような趣旨でございます。
○伊藤修君 その答弁では納得できませんが、その点はそれではあとで又お尋ねいたします。 第三十七條第一項及び三項との権衡上、第三十八條及び第三十九條の教唆、扇動について実行に至らなかつたならば、やはり刑の減軽、若しくは免除をするというこの建て方を等しくとらなければならんじやないですか。均衡上どうもおかしいと思う。前の場合は減軽、免除を規定し、あとの場合は減軽、免除を規定しないというこの均衡はどういうような建て方をなさつたか。
○政府委員(岡原昌男君) これは一般の内乱、或いは騒擾等についても似たような建前をとりますので、これについてもかような前例を踏襲しまして、未だ暴動に至らずして自首した者は減軽、免除するというような形にしたのであります。なおこれに附加えまして申上げますと、この三十八條の関係におきましては予備、陰謀、教唆、扇動という事前段階においての罪が割合に軽く、而もそれが何といいますか法定刑が非常に軽く、先の先まで一応考慮したという形になつておりますので、これに対しては一般の刑法の自首の規定は勿論かぶりますので、その程度でよかろうかという考え方もあつたわけであります。
○伊藤修君 その程度でよかろうでは、軽く考えられては困る。前の内乱罪の場合とあとの三十八條、三十九條の場合はやはりあなたたちが好ましからざるところの事実だと、こういつておるのです。その事実に対して従来の刑法典に定めてある以上に教唆、扇動というものまで処罰しようというような、独立罪として処罰しようと言つておる。その者がみずから反省して自首したという場合においては内乱罪において減軽、免除するならば、いわんやこの場合においてはなお軽いのだから減軽、免除するというのは三段論法の当然の帰結じやないですか。これは本罪が軽いからこれは仕方がない、実刑を科してやれ、どんなものでも縛つてしまおう、放り込んでしまおうという考え方はもう少し温味を持つて考えたらどうですか。
○政府委員(岡原昌男君) 御質問誠に御尤もでございますが、ただ刑法の第八十條に「前二條ノ罪ヲ犯スト雖モ未タ暴動ニ至ラサル前自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス」ということになつておりまして、比較権衡からいいましても特に著しい差異は認めないというようなことから、かような建前にした次第であります。
○伊藤修君 以上私は八十一点に亘りまして本法についての質疑をいたした次第であります。勿論質疑の内容については十分に結果を見ていないのでありますが、この点につきましては又来月一日あたりにその機会を得て御質疑申上げたいと思います。政府におかれましても私が質疑申上げました点は決して私が思想的に、或いは政策的に御質疑申上げているわけではありません。いわゆる中正な考え方、刑法を忠実に私たちは国民の一つの基本として守りたい、又基本人権の擁護と、又国民がかような不安に対しまして……、法律の施行によりまして、思想的において、或いは言論において、集会その他の、憲法に保障されたところのいろいろな重要な権利を制約される虞れが多分にある、法律自身にあいまい模糊としたところの表現方法が存在すると、こういう点が今まで指摘した点において十分御了承願えたことと存じます。従つて政府においても虚心担懐、或る一つの考え方にとらわれずして、この政府の企図するところの目的を達成されるに最小限の程度において反省せられるように、私はこの際お願いしておきたいと思います。我々も研究いたしますが、政府においても十分研究して頂きたいと思います。
○委員長(小野義夫君) 次に羽仁君に発言を許します。
○羽仁五郎君 委員長議事進行について……。お許しを頂いて、議事進行上……。只今伊藤委員から実に声涙共に下る御質問があつたのですが、これを伺つて各委員恐らく同感だろうと思います。この法律案は実に恐るべき法律案です。治安維持法と比較せられることもその理由がないと言えない。で私どもは治安維持法を制定した旧帝国議会の罪をここで再び犯すべきではないと思う。こういう重大な法律案の審議について、議事進行上法務総裁からお答えを伺つておかなければ議事進行は私はできないと思うので、二点について伺います。 第一に、我が国会法は、政府委員を国会が証人として証言を求めるという制度をとつておりません。政府委員はいわゆる説明をなさる。併しながら法務総裁はどうお考えになりますか。若しも政府委員が国会を侮辱し、或いは国会において実質上の偽証をなすというようなことがあつたならば、これはこういう特に重要な法律案の審議において、果して許されることでありましようか。先日来の伊藤委員の御質疑に対する政府委員の御答弁の中に、或いはそういうことと関係がないとは言えないのじやないかという事実を私は見て、この点を御質問申上げるのですが、先日新聞も書いておりましたが、衆議院で本法律案を審議せられた部屋は、曾つて佐藤賢了というかたが、議員に向つて黙れと言われた部屋だそうです。この部屋はどういう部屋であるか、私は若いから知りせん。吉河特審局長は、或いはそのお声や、お顔付は、これは生れ付だから非難することはできない。(笑声)併しながらその声を荒らげて我々に説明されるのを伺つておりますと、私のようなどつちかと言えば臆病な人間は、(笑声、「どういたしまして」と呼ぶ者あり」佐藤賢了君が国会において黙れと一喝されたときのことを思い出さざるを得ないのです。(「被害妄想だよ、それは」と呼ぶ者あり)
○委員長(小野義夫君) 羽仁君に御注意申します。あなたの持時間の中に計算しますから……。
○羽仁五郎君 議事進行上ですから……。
○委員長(小野義夫君) 議事進行といえども同じことです。
○羽仁五郎君 それでは簡単に……。議事進行上の発言でありますから、簡単にとどめますが、例えば要点といたしましてはですね、この法律が濫用される虞れはないかという点について、議員から御質疑があつた場合に、政府委員はやはり本質的には証人として証言をなさるお気持においてですね、この濫用の虞れは絶対にないというように確信する、その根拠がおありになる場合は、これは当然でしようが、併しそうでない場合は、虚心坦懐にその点について更に研究せられるという態度をとられるのが当然だと思う。これは我々が伺つておる際に、政府委員がこの法律案原案を通すということに、もうその点だけから、どういうふうな質疑があつてもくぐり抜けて行けばいいのだということでありますと、どうしても国会の審議というものは本格的にならない。私は国会侮辱とか、或いは国会における偽証とかいう罪を以つてその人を責めたいという気持は毛頭ないのです。私のお伺いするのは、どうか我々が伺うことについて政府委員がただその質疑をくぐるというお考えでなく、我々の心配している点について、やはりそれに根拠があるとお考えになるときには、どうかそういうふうに正直にお答えを願いたい。又そうでない態度をおとりになつた場合には、国会の審議に対してそれは正当なる態度ではない、許されることではないという態度を法務総裁はおとり下さることが必要ではないか。私の質問の意味はおわかり下さることと思います。 第二の点は、かような非常に重大な法律案であります。国民の殊に政治上の自由に関して来る。法務総裁も政治家であられるから、いわゆる昔の言葉で言う国事犯というようなことに関係して来る法案ですから、これについての最大の目的は、やはりこれに国民が納得するということでなければならん。納得しない法律案を急いでここを通して、そうして法律としてできましても、それに対して国民は敬意を抱きません。従つて敬意を抱かない法律に対してその違反が起つて来る。で、破壊活動を防止することを目的とした法律案が、却つて破壊活動を誘発するというようになる虞れもございます。そういう意味で法務総裁は、この法律案が国会において必要な審議を十分に盡して国民もこれを見て、如何にも国会における審議は十分に盡された、政府も與党も野党も言うべきことを盡した、そうしてできた法律案であるという感じを與えることが必要であるというふうにお考えになつておられますか。それとも一定の期間内にこれを両院を通過して、そうして一刻も早く法律をしてこれをお使いになりたいというお気持をお持ちになつておられますか、いずれでございましようか。私は今申上げた第一点、第二点、……この法律案が特に重大でありまして、又国会における審議に対する輿論の期待というものが重大であるという点から、私の質問の真意を法務総裁が御了解下すつてお答えを頂きたいと思うのであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。我々政府委員といたしましては、十分誠意を以てお答えいたしておるつもりであります。勿論御質疑に対しては、我々は十分納得の行かれるようにという努力はしておりますが、それ以上のことは我々として如何ともいたし方ありません。ですから委員各位におかれましてはどうか信ずるままに御質疑をなされまして、そうして十分の御審議を私はお願いいたしたい。我々も誠意を以て御答弁申上げるつもりであります。只今吉河君のお話が出ましたが、吉河君も決してあなたがたらを威圧してやろうという考えは毛頭ないと私は思います。それは或いは態度の上、言葉の上において、多少御不満の点もありましようが、これは恐らく誠意溢るるところであろうと私は思います。どうぞ御了承願いたいと思います。 第二点でありまするが、この法案は現下の情勢に鑑みて必要欠くべからざるものと考えております。速かに御審議を願つて成立することを私は期待いたしておるのであります。併しながら御審議の点におきましては、十分に私は審査して頂くつもりであります。決して時間的に急ぐからと言つて、我々は御審議をこれを何とか短縮させようというような気持は毛頭も持つておりません。私もほかの委員会においてよりも、この委員会において少くも勉強しておるつもりであります。昨日、一昨日からの伊藤委員の御質疑に対しては、私誠に敬意を表しております。我々も誠意を以てこれに答弁しておるのであります。どうか十分の御質疑を下さつてよかろうと思います。併しながら前申上げました通りこの法案は現下の情勢に鑑みまして一日も早く成立することを私は期待いたしております。その意味において短時間でありましようが、委員各位のかたにおかれましてもどうかそのおつもりで十分の御審議をお願いいたしたい、こう考えております。
○羽仁五郎君 法務総裁の只今のお答えは、必ずしも私がこれから質疑を行うのに非常な悦びを感じ得ないのでありますけれども、議事進行上の発言でありますから、今の問題はそれにとめまして質疑に入ります。 第一は伺いたいと思うのでありますが、この法律は、伊藤委員から個々の問題について詳しく質疑をせられましたそれらの点を基礎といたしまして、全体的にこれは或る意味において憲法以上の権力というものがここから発生して来る虞れはないだろうか。或いはもう少し詳しく申上げれば、いわゆる行政権というものに余りに過大な権力を與える結果になりはしないだろうか。特に政党というものまでも官吏の監督の下に置くということになりはしないだろうか。それから言論とか集会とか結社とか、なかんずくその中でも新聞です。そういうものを政府の官吏の監督の下に置くことになりはしないか。その点について法務総裁は先に御質問申上げました点に基いて、法務総裁の良心に基いて、私が今申上げましたような虞れは毛頭ないとお考えになりますか。それともそれらの点について、考えるべき点があるとお考えになりますか、お答えを頂きたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) この法律において毛頭も憲法以上の権力を行政に持たせようということは、私はないと考えております。いわゆる国内の治安の任に当るべき政府が、治安の維持の関係上止むを得ざるところから出たるものであつて、決して憲法以上の権力を行使しようという意図は毛頭ないということを申上げてよいと思います。又この法案によつて殊に新聞、出版の点についての御懸念があると申されたのでありますが、この法案の立て方は、どこまでも破壊的暴力活動を行い又これから行わんとする団体を規制し、それに基いての刑罰規定の補整を企てたものでありまして、言論、出版を抑圧しようという意図に出たものではないのでありまして、又この法案の実施に当りましては、さようの懸念のないように十分の処置をとつて行きたいと、こう考えておるのであります。
○羽仁五郎君 この法律案が直ちに憲法の上に立つところの恐るべき権力、或いはこの法律案によつて直ちに現在の日本の官吏が我々のコントロールすることのできないような力を持つ、或いはこの法律案によつて直ちに政党が官吏の監督の下に置かれる、或いはこの法律案によつて直ちに新聞や一般の言論、集会、結社の自由が官吏の下に置かれるというように私は伺つているのではないのです。法務総裁に伺つて置きたいのは、こういうものが或いは憲法以上の力、或いは官吏が恐るべき、国会も監督することのできないような力、或いは政党も監督するような権力、新聞を監督するような権力、そういう恐るべき権力ができる第一歩になる虞れがないかということを伺つているのであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) この法案の実施によりまして政党をコントロールし、新聞をコントロールするような懸念は私はないと確信しております。
○羽仁五郎君 これはこの問題に関して法務総裁に特にこの際伺つておきたいのは、法務総裁は国会に対して政治的責任を持つておられますので、その意味において私は安心して御質問を申上げるのでありますが、併しいわゆるパーマネント・ビユーロークラツトと言いますか、何と訳すのか、常雇いの公務員と言いますか、常勤の公務員、これらのかたがたは政治上の責任というものは持ち得ない立場におられます。これは国家公務員法によつてもそうでありますし、又本来の性質上政治的責任というものは持ち得ない。この点においてこのような政治的な法律案というものが、今も申上げたような点で、私は法務総裁としてもこれはよほどお考えになるべき点があるのじやないかと思う。で勿論社会における紛擾、その他我々がそういうものを見るに忍びないものはこれは幾つもあります。ありますが、併しそれらよりももつと恐ろしいのは、政治的責任を負うことはできない、又従つて或る意味において無責任である。その無責任の権力が発生して来ることはもつと恐ろしいです。これは法務総裁も政治家として私の申上げることはおわかり下さるだろうと思います。その意味において、今或る意味においては政治上の責任をみずからとらずして、そして政治上においての行動をなすところの官僚群というものがこの法律案によつて発生しようとしている。 そこで法務総裁に伺いたいのですが、法務総裁は一体日本の官僚というものをどういうふうに御覧になつていますか。過去の日本の官僚については法務総裁もその如何に恐るべきものであつたかということは御承知だろうと思います。この日本の過去の官僚が如何に恐るべきものであつたかということを衷心から憂えておられたのは、私は絶えず思い出しますが、福澤諭吉先生です。日本の官僚国を亡ぼす、隠密国を亡ぼす、スパイ政治というものは国を亡ぼすものです。スパイ政治によつて破壊活動が防止できるのじやありません。スパイ政治などによつて、破壊活動は防止できないのです。実効はない。スパイ政治によつて起るところの実効は国を亡ぼすということであります。その又福澤先生が言われたことは、不幸にしてその後十数年を経て法務総裁のその目で御覧になつた通りです。こういう恐るべき官僚、こういう恐るべき隠密政治、いわゆるスパイ政治、祕密政治というものは、今日の日本の官僚の現状において復活する虞れは絶対にないというふうにお考えでおられるかどうか。これらは全く一掃されたと法務総裁は私に向つて証言をなさることがおできになりますか、この点を伺つておきたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 官僚のお話が出ましたが、私は過去のいわゆる官僚政治の行過ぎがあつたことは卒直に認めます。併しながらいやしくも国家統治の上において官僚一日もなかるべからずと私は考えております。官僚と政党人が相共に手を握つて、そうして国政の運用に当るのが今の政治のあり方であります。その官僚の行過ぎをチエツクするのは私は政党人であろうと考えております。併しながら官僚が行過ぎたからと言つて、これをなくするというようなことは絶対にできんことであります。どこまでも官僚と党人とが手を握つて国政の運用に当るべきであろうと、私はこう考えております。官僚の行過ぎがあれば堂々とこれをチエツクすべきです。 私も昔の官僚政治の行過ぎについて忿懣の念を感じておる一人でありまして、我々も在野の一人としてこれに対して相当な戦いをした記憶はあるのであります。然りといつて官僚はことごとくこれは悪いものであるという、こういう前提の下に議論を進めて行くということは、私はこれは行過ぎじやなかろうかと考えております。官僚は大いに用うべし、官僚のよさはこれを認めなくちやならん、こう考えております。而してこういう法案の実施に当つていわゆるスパイ政治というお話が出ましたが、私はこの法案における調査官につきましては、いわゆる強制調査権は持たせないのであります。行過ぎを十分にチエツクしておるのでありまして、無論このスパイ政治ということはよくないということは或々も昔から考えております。同感であります。その点においていやしくも行過ぎがあつて国民に迷惑をかけるようなことでは相済まないという気持は今でも持つておるのであります。法案の実施に当りましては御同様十分に注意をいたします。これは我々も注意いたしますから、又国会の議員諸公におかせられましても十二分の御注意をお願いいたしまして、この法案実施に万全を期したいと思つております。ただ我々の念願とするところは、日本の治安の維持はどうしても守つて行かなくちやならんと私は常に考えております。日本の治安が維持でき得ないで日本の独立があり得るか、政治も経済も、すべてこの治安の維持ということの基盤の上において確立さるべきものと確信して疑いません。この治安の維持のために必要最小限度においてこの法案を我々は作成したのであります。ただこの実施に当つていろいろな御疑念が出て参りましよう。その御疑念の点については我々は十分に考慮に入れまして、そうして行過ぎのないように万全の処置を講じたい、これが我々の精神であります。
○羽仁五郎君 伺いました点について答えが頂かれなかつたのでありますが、これは法務総裁も併し恐らくは御同感であろうと思うのです。今日まだ日本の旧弊、甚だしい官僚主義というものは残念ながら一掃されておりません。そして今法務総裁のおつしやるように、政党のかたがた乃至我々国会議員の非常な責任です。私どももその努力を毎日行い、本日の質疑もその意味において行なつているのでありますが、我々の努力が足らないで、その官僚独裁、恐るべき権力の発生の余地がまだ残つているのではないかという慮れを持たざるを得ないのであります。その点で法務総裁が十分この法律案について更にお考えを下さることをお願いしておきたいと思います。さつきお引きになりましたように、特審局長から伊藤委員にお答えがございましたが、尾行、張込みなどが行われるということをお聞きになつて、法務総裁のお心も必ずしも明るいお気持じやないだろうと思う。私どもと同じお心持でしようから、暗いようなお気持をお持ちになるだろうと思うのです。これは勿論治安の維持は私たちも願うところであります。平和に我々は生活したいのです。併しながらそのために他面それによつて我々が犠牲にするところが又如何に大きいかということもお考え置きを頂きたいと思います。この点については如何でしようか。
○国務大臣(木村篤太郎君) お説私は同感であります。憲法に保障された基本的人権はどうしても我々は国民として守つて行かなければならんと思います。その意味におきましてこの法案の実施におきましても、基本的人権をいやしくも侵さないように十分の注意をすべきであるのは当然だろうと考えております。どうかこの法案の建前が如何にその点において苦心しておるかということを十分御了承を願いたい。私の考えといたしましては、あらゆる点からいつてその行過ぎのないようにということに細心の注意を拂つたつもりであります。いろいろ伊藤委員から詳細な御指摘も承わりました。併し我々の意のあるところは、お説の通りこの法案によつていやしくも基本的人権を害することのないようにする。いろいろ御議論がありましようが、特に私は今後幸いにしてこの法案が実施される曉におきましては、その点についての細心の注意と処置とを講じたいと、こう考えております。
○羽仁五郎君 只今のお答えは、この法律そのものの上にそういう保障というものを明確に打ち出されることを考えておられるということに伺つておかなければならないと思います。過去のことについて述べるのは私の実際好むところではないのです。私自身が不幸にして罪なくして昭和八年、昭和二十年二度治安維持法で逮捕されました。そうして久しい間獄窓の下に置かれたものであります。法務総裁は無事の民を一人でも苦しめ、それが裁判に行くまでもありません、それを逮捕しそうしてこの自由を奪うということがあつて、そうしてそういうことが又あるのではないかという虞れがあつて、本当の意味においての治安が維持できるとお考えになりましようか。無辜の民の一人をも苦しめないという政府の態度があつて、私は初めて治安が維持できるのじやないかと思います。これは私だけでない。例えば当時昭和九年か十年頃であつたと思いますが、一高の教師をしておられたイギリス人のマツクス・ビツカートンというかたがあります。このかたが当時自分のところへ来る学生を親切に、或いは食事を與え、或いは生活に窮しておるかたには金を與える。その中に共産党員がいたというので、日本の官憲はこのマツクス・ビツカートン教授を逮捕して、そうして警察に留置をした。英国の政府から抗議がありまして、マツクス・ビツカートン君は釈放されました。そうして帰つて、国際的な新聞でありますマンチエスター・ガーデイアンに公開状を書かれた、日本の政府に向つて。表題はザ・サアド・デイグリー・イン・ジヤパン、日本における拷問という題であります。そうしてこれに対してマンチエスター・ガーデイアンがその社説で以て何と書いておつたかと言いますと、この共産党員の学生に対して、たとえ自分は共産党員でなかろうとも、又共産党に同調している者でなくても、その人に対して親切な態度をとるということは、これはハイ・キヤラクター、高い人格を持つた紳士の当然なすべきことであるが、これがどうしてクリミナル、犯罪的な事実として咎められるようなことがあり得るのであろうかというような社説を以て日本の政府に答えを要求しておりました。勿論その当時の日本政府はそれに対して一片の答えもしませんでした。私はそれを読んだときのことを、この法律案の各條項を伊藤委員からの質疑に対する政府委員のお答えを伺つておる間に、私思い起さざるを得ないのです。私個人のことに関係しましても、無罪の、無事の私に対する逮捕ということにおいて行われる家宅捜索、これは私の家には小さい子供が三人しかおりませんでした。日常私が何よりも大切にしておりますところの学問上の図書です。これを大量にトラツクに載せて積んで帰つた。そうしてこれをストーブで焼いてしまうのです。寒い時で、殊に昭和二十年には燃料もない時です。併しこれは佐藤君も御了解になるだろうと思いますが、我々が一生学者として集めるところの書物には二度と手に入らないものがございます。私どもの子供はそれらの書物を実に大切な書物だと思つて守つているのです。それをさつき話に出ましたような、私何級とかいう官吏の事情には通じませんが、或いは警部補とか、恐らくは学問上の理解を要求するのは無理でしよう。優雅な性格を期待することは無理でしよう。併しそれは法律によつて我々の家宅を捜索し、我々の学問上貴重な書籍を理由なくして持ち去つて、そしてこれを薪木がないからと言つてストーブで燃してしまうのです。私はこの法律案の中に、この法律が両院を通過することによつて直ちにそういうことが起るとは勿論思いません。併しながら法務総裁はこの法律案によつてそういう方向へ……、官僚の恐るべき独裁を阻止する方向へこの法律案は一歩を踏出すものなんですか、それとも或いはそういう方向へ一歩を踏出す虞れがあるのではないか、この点をお答えを願いたいと思うのであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) 一人の無辜の民なきことは政治の要諦であると私は考えております。無事の民があつては立派な政治は行い得ないのです。今申上げました通り、本当の無辜の民なからしめることが政治の要諦である。(「無辜の民ばかり製造しているじやないか」と呼ぶ者あり)そこでこの法案の実施におきまして無事の民が一人でも出るようなことがあつては、私も責任者として非常な責任を感ずるのであります。従いましてこの法案の立て方において十分のその点について我々は考慮を拂つたつもりであります。再三申上げます通りに、決して濫用の虞れのないように、これがために無辜の人を出さないように、これが念願であります。 そこでこの法案の実施に当りましてもさような憂いのないように、これから取計らつて行きたいと思います。勿論この調査官におきましても、前から申上げましたように十分な修養をさせなければならない。いわゆる人間的の修養をさせて、この取調について遺憾のないようにというのが我々の念願で、研修所を設けて十分なこの修養の機会を與える、こういうような建前も努力したのであります。我々当局者といたしましてはこの法案の立て方並びに実施についてはできるだけの考慮を拂つたつもりであります。どうかその点についての十分な御理解を私はお願いいたしたいと思います。
○羽仁五郎君 法務総裁は政治家の苦衷というものはおわかりになつていると思うのです。昔の国事犯の例を引くまでもありません。勿論政治家がその自己の政治上の主義或いは施策の推進ということについて、放火、殺人、それらの罪をあえて犯そうとする政治家がないということは、法務総裁はよく御承知だろうと思います。併しながら同時に政治家がその政治上の確信、それによつて自己の生命をかけ、それによつて国家と国民とを救おう、これは戦争中法務総裁もお苦しみになつたからよくおわかりのことだと思いますが、最後に手段が盡きて、併し手段が盡きたといつて国民の塗炭の苦しみを傍観することができないというように政治家が考えられて、そしてその手段を誤つて、或いはいわゆる罪に触れるような行為に陷られることが過去にもございましたし、又将来にもそういうことが絶無であり得ないだろうということは、法務総裁の人間としての、又政治家としてのお気持からお考えになることができはしないかと思うのです。勿論これは極めて稀有の例です。併しこれは政治的責任をおとりになることのできる資格のある法務総裁にはおわかりになることですが、政治的責任をとることのできない官吏にこの気持の了解を求めるということはできないことです。でありますから法律として、この法律のどこをどういうふうに修正なさつても、この法律を官僚の手に渡すときには、その点において政治家のその苦心、飽くまで法に触れるような行動というものは絶対に避ける、そして努力を続けて行く、而も手段盡きて屈服することはできない、誤つてその刑に触れたという場合に、政治上の責任をとることのできる政治家は、それに対する一片の同情というものは当然あろうと思うのです。併しながら官吏がこれに対して同情をするということは期待することは無理です。むしろこれを憎むべき者として、一般の刑法に触れた人よりも更に憎むべき者として扱うという、この法律は官吏の要求する法律です。法務総裁はこの点において、このような法律が果していわゆる立法者、政治家の欲する法律であるか、或いは官吏の欲する法律であるか、これは私は法務総裁が十分に考えて頂かなければならない点だと思うのであります。勿論そうして起つて来る問題というものが、現在の法体系の下で何とも処置することのできないというものであるならば、これは勿論話は別です。併し現在ある、現在民主的に成立しておるところの法体系を以て、そうした場合でも勿論これを或いは防ぎ、或いはこれを罰し、或いはそういうことが繰返されないようにすることが全くできないのではないことは、法務総裁もよく御承知になつているところです。然るにここにこうした法律案というものを持つて出て来るということは、私はこれは真実の意味における立法者の立法とは考えられないのです。言葉はいささか非礼に亘りましたけれども、本会議において、これは人を縛つて飯を食つて来た人間の作つた法案だと私が申上げた意味はそこにあるのです。法務総裁に向つて私が逆に説教を申上げるまでもなく、過去の第一級の政治家はいずれもその高邁な理想というものを実現するために、場合によつては手段を選ぶことのできなかつた人であるということは、法務総裁もよく御承知の通りです。 アメリカにしてみたところが、アメリカの国は革命によつてできた国です。法を守り、刑法に触れることに汲々とし、破壊活動防止法に触れることに汲々としているような政治家に、どうして国を救つたり或いは国民に幸福を與えたりすることができますか。いわんや政治上の問題は、普通の言葉で言う確信犯というものでしよう、恐らくは。私は法律上のことはよく知りませんが、確信に基くものでしよう。従つてこの法律によつて或る政党なり政治団体なり、労働組合なりが破壊活動を行なつた、解散を命じても、これは私は恐らくこの団体にその罪の確信を與えることはできまいと思う。つまりこれに服しないと思う。又服することができるはずがありません。その政治上なり或いはその主義というものを貫徹するために、誤つてそうした刑に触れたときに、それが普通の刑罰でなくして、こうした特別法によつて刑罰を與えられても、恐らくこれは罪に服すまい。服すまいということは、立案者がみずから認めておる。さればこそそれに向つてそういう活動を継続して行なう場合を予想しておる、これほど残酷な法律がありますか。人を殺し或いは家を燒き、その他の罪を犯した場合には人間として服罪しますよ。二度とそういうことを繰返したくないと思いますよ。そうしてそれを取締る法が尊敬され、法の権威が立つて、治安が維持されるのです。然らばこの法律によつて解散させられたような政治団体なり或いは何なりが、果してそれに服するでしようか。服しない、続けてその活動を行う。さればこの団体を禁止する、この点について法務総裁に伺つておきたいのは、法務総裁は、この法がその点において無理を持つていはしないか。即ち確信を與えることのできない法というものを作るべきであろうかどうか。我々はこれは官僚諸君の気持はどうあろうが、我々立法者としては、この法律によつて処分される人々が誠に悪いことをしたというように納得する法律以外は作るべきじやないと思う。納得しないことが明らかである法律が国会を通過するということは、これは非常に重大な問題であろうと思う。その点について法務総裁はどんなふうにお考えになつておられましようか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 先ず第一の点についてお答えしておきます。この法律は決して官吏が自分の悪意をほしいままにする意図の下に作つた法律ではないということを申上げておきます。しばしば申上げました通り、或が国現下の治安情勢上是非ともこの法案の作成をせざるを得ない状態にあつた。止むを得ざるに出たものであるということを申上げたいのであります。我々は官吏の意見のままに法案を作成するというようなことは毛頭もないのであります。責任を以て我々はその立案にかかつたのであります。勿論細部の法律の作成に至つては専門家がこれを起草するのは勿論のことであります。大体の線においてかくのごとき法律を作らざるの止むを得ない情勢があつて作成したものであるということを申上げたいのであります。 次に確信犯の問題が出ました。勿論この法律によつて規制された団体の構成員が、自分の確信に基いてさようなことを行なつた以上、その人たちのいわゆる確信を変更させられるというようなことは私は考えておりません。恐らく確固たる信念の下にさような行為に出たるものである以上は、この法律によつてその人たちの確信を変えるということは、これは思いもよらんと考えておるのであります。併しながら、いやしくも民主的文化国家を建設して行こうという以上においては、我々はどこまでも憲法の建前をとつて行かなきやならん。憲法、その下における法律を無視して自分の目的を達せんというがごときは、これはみずから民主国家を破壊するものと私は考えております。政治上の目的を以てその下に自分の意図を達成せんとするに当つては、いわゆる政治上の手段を以てこれを遂行すべきであるのでありまして、暴力を以て政治上の目的を達成するということは、これは民主国家においてあり得べからざることである。我々はどこまでもさような行為に対しては断固として戰わなきやならんと思う。これは民主国家の国民として当然なすべき義務であります。又我々は政府当路者としてなさざるを得ざる行為であろうと考えております。勿論政府の施策に対していろいろ批判をしたり攻撃したりすることはあり得ることであります。これは憲法及びその下における法律の下において堂々とやるべきである。いわゆる議会政治を通じてやるべきである。いやしくも暴力を以て自己の目的を達せんとするがごときは、私は法治国家においては断じて許すことのできないものであると確信しております。而して現下の情勢におきましては、遺憾ながら暴力的破壊活動を将来行わんとする団体があり得るのであります。さような団体が将来跋扈したときにおいては、日本の治安の紊れるということは火を見るよりも明らかであります。その意味において我々は日本の治安の維持をする必要上この法案を作成したわけでありまして、決して官僚がみずからの恣意をほしいままにするがために、我々はその下にかような法律を作成したというような関係は毛頭もないということを私はこの際申上げたいと思います。
○羽仁五郎君 法務総裁は現在の日本の状況にとつてこの法律案がなければ、一刻も治安の維持ができないほどに現在の日本の治安は紊乱しておるというように判断しておられるのでしようか。私は勿論そうではないと思います。このような法律案は、伊藤委員からの御質疑の過程においても法務総裁もお感じになつたろうと思いますが、濫用の危険が恐るべきものがある。法務総裁は、そのためにこそこの法律案をさまざまに絞り、又さまざまに枠をおはめになつたのでしよう。それでもまだ濫用の恐るべき虞れがあるというようにお感じになつていると思います。この法律案は、第一には恐るべき濫用の虞れがあるのです。そして第二には、この法律案がなくても日本の現在の治安の維持というものは決して不可能ではないのです。恐らく法務総裁もこれがなければ、日本の社会は一時も不安だというふうにお考えになることはできないと思う。そうして第三に、この法律案が必ず導き出すものは、国民の自由に対する恐るべき脅威です。脅しです。この三点。第一にこの法律案は恐るべき濫用の虞れがある。第二にこの法律案はなくても日本の治安が一刻も維持できないというものじやない。第三にこの法律案が確かに持ち来たらすものは国民の自由に対する恐るべき脅しである。こういう法律案であるのではないかと私は思いますが、法務総裁はその練達の識見において、良心において、そういうことはないというふうにお考えになりますか。
○国務大臣(木村篤太郎君) しばしば申上げました通り、この法案の建前において、いやしくも濫用の虞れなきようにした建前をとつておるのであります。第二は、この法律案がなくても日本の治安は維持できるのではないかということでありますが、私はこの法律案自体で以て、すべてで日本の治安を維持しようとは考えておりません。すべての面から見てこの法律案が日本の治安を維持する一部として重要欠くべからざるものであるということだけは申上げたいのであります。第三は、国民がこの法律案によつて非常な危惧の念を懐くのじやないか、こういうことでありますが、我々はこの法律案によつて国民の基本的人権が毛頭も侵害されるものではない、又この実施に当つて十分なその点についての考慮を拂うということについて国民の理解を私は求めたいと、こう考えております。
○羽仁五郎君 法務総裁もよく御承知のことでありますが、普通法務府において政府が法律案をお考えになるときには、殊にこのような重要な法律案に関係しては、それぞれその方面の専門家の意見をお聞きになるために審議会その他の機関を通じて十分の専門家の意見をお聞きになつて、そうして原案を作成されることが慣例であるように私は見ております。この法律案の作成においてそういうことが行われたことがおありになるでしようか。私どもの聞いているところでは、この法律案は法務府部内においてさえも全く特審局だけでこれを実質的に秘密に作成して来たのではないか。そうして法務府のそれぞれの他の部局の意見というものを聞かなかつたのじやないか。少くともこうした重大な治安維持法の復活だと言われておるような法律案を作るときに、その立案に先立つて然るべき専門家の意見を聞いてそうしてなさつたのか。そうではないというふうに私は了承しております。而も大橋君が法務総裁でありましたときから今日までの形を変えて来る間に、或いは私は大橋君といえども何らかの力の下に屈服しつつああした最初の原案を作つていたのじやないか。又現在法務総裁や意見長官も何らかの力に押されつつこの原案を提出しているのではないか。現に労働大臣が、扇動、それらの條項はどうしても労働組合その他に不必要な不安を與える、労働行政の上に困難がある、従つてこれらを除きたいという考えを閣僚の一人で持たれても、それに恐らく私は法務総裁は良心的には御同感であつたのじやないかと思う。而もそれが削れない。この法律案ができて来る間においてさえすでに一体誰が支配しているのか。国会に政治上の責任を持つところの閣僚が現在政治上の責任を持つておるのか、それとも政治上において無責任である官僚が支配してこの法律案を作つているのではないか。これは輿論のひとしく不安としているところであります。私はこの法律案上程に先立つて、この法律案ができれば直ちにこの法律の全権を委ねなければならない公安調査庁というものは、現在のいわゆる特審局というものがやつて行くんだから、一体特審局というのはどういう仕事をするんだ。果してこの公安調査庁というものは破壊活動というものを防止することができるだろうか、どうだろうか、又その公安調査庁というものは特殊の権限を與えられてどういうことをするんだろう。我々の聞くところによれば、公安調査庁は巨額の機密費用を持つているという。日本は、敗戦の痛烈な体験の下に起ち上つた日本は、機密費、秘密の費用、議会において明らかにすることのできない費用というものは使うべきでない。その弊害には恐るべきものがある。その秘密の費用というものは一体どういうふうに使つているのであろうか。これらについて報告書を委員会が委員長を通じて特審に要求したのでありますが、與えられたるものは片々たる数片の紙片に過ぎません。これをごらんになつても、特審局は今度この法律案によつてできるであろうところの公安調査庁というものについて、将来も恐らくはこの程度の報告しかしないものであろう。一体どれだけの仕事ができるのか、又その仕事をどういうふうにしているのか、その機密費というものに対する輿論の不安というものに対して、我々は説明しなければならない。その機密費というものは適正に使われておるのか、いやしくも不正な使用というようなものはそこにないのか、これらの点について国民に責任をとり得るのは国会議員並びに閣僚です。この法律ができるならば、そういう公安調査庁が果して破壊活動を防止することができるのか、破壊活動なんというものは全然防止できやしない。今までと同様にそういう実際確信に基いて行われる行為というものは、これは法務総裁はいつか衆議院で、あちらは命がけ、こちらは月給取りとおつしやつた。これは実に名言です。これは決して法務総裁は官僚に向つて命がけでやれというふうに激励されたのじやないと思う。法律によつてやり得ることは、刑罰によつてやり得ることは、つまり確信によつてやり得ることとは違うのですよ。だから法務総裁のそのお言葉は、本当に法務総裁がおつしやつたのかどうか知りませんが、若しおつしやつたとすれば、実に名言である。千古の名言である。(笑声)それが一方は命がけ一方は月給取り、その月給取りが命がけの人をどうすることができるはずがありませんよ。吉河君と徳田球一君を比較して御覧なさい。吉河君が徳田球一君をどうにかすることができるとは、私は国会議員としてその責任にかけてできないと思う。そうすると、こういう法律を作つたからといつて破壊活動なんというものは絶対に……徳田球一君が破壊活動をやると私はきめておるわけでは勿論ないが、仮に破壊活動を政治上の主義主張に基いてやろうとする人があるならば、政治上の主義主張なんというものは持つことができない、国家公務員法によつて縛られておる、自由党の秘密会に出て余りいろいろなことをしやべることもできないというふうに縛られておる官吏が、政治上の主義主張を推進するために行う活動、それに或いは誤つて破壊活動が伴うかも知れない、それを根絶することができるなんということは、私は法務総裁はお考えになつてはいないと思う、本心においては。防ぐことはできないものでしよう。従つてこの巨額の費用を要し、人員を増大し、全国に向つて五十だか八十だかの網を張りめぐらしてやるところの公安調査庁なるものの機構は、破壊活動一つも防止することはできない。そうして何をするかと言えば、要するに国民を威圧するだけです。法務総裁も法務総で裁あられる間はそういうことはないでしようが、野に下られるならば直ちに彼らの調査によつて脅かされなければならないというくらいでなければ、恐らく政治価値はないでしよう。そういうもの、その機密費という一点だけからいつても社会は不安を持つておる。それに対して我々が報告を要求しても、片々たる報告しか出さない。将来はますます出さないでしよう。これは機密を要しますよ、破壊活動を防止するにはね。機密を要して秘密にスパイ政治をやつて、それで破壊活動は防止できないで、ただそのスパイ政治の下に国家は置かれる。こういう点について法務総裁は恐らくそういうことが起り得ないとお考えになつてはいないだろうと思う。どうですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 先ずこの法案の作成について多方面の意見を徴したか。勿論正式のいわゆる審査委員会のようなものは作りませんでした。これは明らかであります。併しながら非公式に各方面の意見を徴したことは事実であります。私もこの法案は特審局の人たちがやつたものをそのまま鵜呑みにしたわけではありません。十分にこれを検討して、手を入れるべきは手を入れたのであります。 次にこの法案作成に当つて第三者のいわゆる示唆勧告その他によつてこれはできたんじやないかという御質問のように承わつたのでありますが、断じて然らずと申上げますことははつきり申上げます。私の関する限りにおいてさような事実は毛頭ありません。私も一個の日本男子であります。さような示唆に基いて私はやりません。これは断言いたします。或いは大橋君のときには私はいざ知らず、少くとも私の時代において、私はさようなことは絶対にないということを申上げて置きます。これだけははつきり申上げて置きます。 その他いろいろ議論がありましたが、この破壊活動防止法案によつて全部の破壊活動を防止しようなんということは、それは御議論のように到底私はできんと考えております。併し少くとも危険な破壊活動団体に対しては規制をしなければ、日本の治安の維持上最大の差支えがありということは申上げるのであります。我々のこの法律案の作成の意図は、どこまでもさような暴力的破壊活動をでき得る限り規制して行きたい、而して日本の治安を守り抜きたい、こういう微意にほかならないのであります。これを以てすべての確信判罪を処置し、或いはさような団体をことごとく規制して行くなんというようなことは恐らくできかねるかと、こう考えております。
○羽仁五郎君 然るべきかたがたの意見を非公式にお聞きになつたというお言葉でありましたが、どういう然るべきかたがたの御意見をお聞きになつたのか、この点をお差支えなければ伺つておきたいと思います。併しそれよりも、何よりも両院の公聴会において然るべきかたがた、これは而も両院の法規委員会において、これは日本のこういう問題についての最高の権威に属するというふうにお考えになつてお呼びになるかたがた、それらのかたがたがどういう意見をお述べになつておるか、これらを法務総裁は尊重なさる、勿論尊重なさることだろうと思います。又それ以上のことは余りタツチしますから申上げませんが、公聴会において、最近然るべきかたがたが、公聴会に出席しても無駄だと、我々は折角忙しい中を出て行つて意見を述べても、政府の通す法律はいずれも反対だ、だから公聴会には出ないということをおつしやるかたさえあります。これが折角公聴会制度を作り、民主的な制度を作り、これを育てて行くという上には非常に恐るべき点じやないかと思います。従つて法務総裁は公聴会において、参議院にも間もなく公聴会が行われますが、それらにおいて然るべきかたがた、牧野英一、瀧川幸辰、それらのかたがたの御意見も開陳されることだろう。これらのかたがたの意見を鎧袖一触しようとまさかなさるお気持はないでしようが、これはわざわざお答えを頂くまでもありませんが、そうだろうと思います。で念のために申上げます。 私今思い出すのでありますが、戦争中に私が牧野伸顯伯と申しますか、昔の伯爵にお招きを受けたことがありますが、その際に、すぐ直後に幣原さんにお目にかかるということがあつた。そのときに、勿論牧野さんや幣原さんの家にも電話があります。ところが牧野さんは電話をお使いにならない。そして電話をかけることはできない、私から使いを出すから、その使いが向うに着く頃を見計つて幣原さんの所に行つてくれというお話があつた。私はそれを聞いたとき涙が出ました。法務総裁もそれは御同感だと思います。涙が出ました。一体誰がこれらの尊敬すべき老齢の政治家をこのような監視の下に置いているんだろう。私は日本の国を亡ぼすものは官僚だ。日本の国を亡ぼすものは隠密だということは、法務総裁も虚心坦懷にお認めになつているだろうと思います。でこの法律案は、或る意味において過去の治安維持法なり或いは軍機保護法、国防保安法なるものよりも近代的にできているだけ或いは恐るべきものであるかも知れない。これは伊藤委員からの質疑の過程においても我々も特にこのことを痛感しました。併しこれらの点について要点は、要するに我々が、国民が税金を出して、そして雇つて置くところの官吏に、我々自身が破壊的であるか、破壊的でないかということを判断してもらうという必要がどこにあるのですか。勿論破壊活動は憎むべきです。併し破壊活動に向つて最も有効なる手段は、この破壊活動をなすところの政党なり組合に向つて、他の政党或いは他の組合が、堂々と政党の活動を以て、組合の活動を以て対抗する以外に方法はありません。法務総裁はそれくらいのことはおわかりだろうと思う。福澤諭吉がこういうことを言つておる。銭を出して官吏を雇つて、その官吏に我々が如何に生くべきかを教えてもらわなければならない、そんな国民かと、日本国民は……。この公安調査庁長官に、あなたは一体どういう人を任命するつもりですか。例えば吉河君のような人を任命なさるつもりですか。堂々たる天下の政治家や労働組合の指導者をその管轄の下に置こうというお考えですか。あなたはこの公安審査委員会というものに節操あり性格のある立派な紳士が一人でも入つておいでになるとお考えになりますか。伊藤委員からの御質問の間にもよくおわかりのように、この審査委員会というものはフエイクですよ、偽善ですよ。何らの識見もない、事実上においていわゆる公安調査庁というものから與えられた資料だけで以て判断する。これに一人でも紳士らしい紳士が就任を承諾するとあなたはお考えになつているか。例えば衆議院の公聴会において阿部眞之助君がややこの法案の必要を認めたと言つて、鬼の首を取つたように自由党のかたがたも言つておられるが、併し阿部眞之助君に対しこの委員会の委員になつてくれと言つて、彼が承知すると思いますか。勿論断わりますよ。特審の手先になつて、まあ甚だ失礼であつて、或いは取消すべきであるかも知れませんが、岡つ引の手先になるのだ、いやしくも紳士が、節操あり信念のある人がこの委員会に一人でも入るとお考えになつたら、これはできてからのお手並みではつきりわかることです。私は一人も入る人はあるまいと思う。そういうことで本当にこの法律を国会を通過させたいとお考えになつているかどうか。 大統領トルーマンはアメリカの国内安全保障法に署名を拒絶しているではありませんか。あなたも立派な御人格、政治家であられるのなら、堂々と自分はこんな法律を国会に出すことはできない、法務総裁をおやめになるということのほうがどれくらい私は本当の意味における真実の尊敬をかち得られるゆえんであるかわからない。トルーマンが国内安全保障法に署名を拒絶したのは、決してトルーマンがアメリカにおいて起るところの暴力活動というものを容認しようというのじやないのですよ。これはおわかりになるだろうと思います。破壊活動というものは一片の法律によつて防止できるものではない。それよりも政党に対しては政党、堂々たる政党はその政策というものを以て誤まてる政党というものと戰い、国民の支持のない政党や国民の支持のない労働組合が汽車をひつくり返えそうと人を殺そうとしたつて、そんなものを国民は支持しますか。又そういうことができるはずはありませんよ。又いやしくも政党なり労働組合なりが、今日の民主主義社会において世論の支持を得ていなければ何事もできないということはよく知つている。それが好んで人を殺したり火つけたというようなことをやることがあり得ますか。私は今の点についてどうか法務総裁が、そう申上げては失礼かも知れませんが、私どもから拝見すれば、高齢のその節を汚されることがないということを希望申上げても決して失礼ではないと思いますが、如何ですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 羽仁委員の切々たるお言葉は、羽仁委員の過去の御経験、苦衷お察しいたします。私も自分では経験はないのでありますが、私の父も曾つてはお国拂いということをやられたことがあるということを知らされております。その時の苦い経験は私が子供の時分察しておるのであります。さようなことについて、私はこの法案の実施については前々から申上げます通り、いやしくも国民の基本的人権を害さないようにという十分な考慮を拂つております。今後もその方針で行きたいと考えております。而してこの法案は、私の気持としてこれはどうであるかという御質問でございます。私は確信を持つて申上げます。私は如何に非難されようとどうあろうとも、日本の現下の情勢上この法案は絶対に必要であるということを申上げる。私はどこまでもこの通過を求めたいと考えております。私は何人が私を非難しようとも、私の気持といたしましては、この法案の通過に極力努力いたしたいと考えております。
○羽仁五郎君 今の法務総裁のお言葉は、特に御嚴父のことまで御言及になつての前段は深く拜承いたしましたが後段はどうか、重ねてお考えを頂きたいのです。トルーマンが安全保障法に署名を拒否したということは、トルーマンの名誉です。 第二に伺いたいのは、法務総裁は、今の点に附加えてですが、この法律は申すまでもなく、その法律の上ではアメリカの国内安全保障法或いはスミス法に或いは範をとつておられる。勿論完全に同一ではありません、併し類似であります。従つてその法律が施行される上において起つて来るであろうところの事実は、これは類推しなければならない。従つて我々立法者としては、類似の立法が出れば類似の事実が発生すると見なければならないと思う。その意味で法務総裁の注意を喚起したい。 その一つは、極く最近でありますが、御承知のイギリスの哲学者で国際的な名声を博しているバートランド・ラツセルは、勿論反共のかたです。ソ連と反対である。共産主義と反対のかたです。そのバートランド・ラツセルが最近のアメリカの事情について黙つていることはできないとお考えになつて公開状を書いておられる。その公開状の中に、アメリカの現在、即ちスミス法やマツカーラン法、この破壊活動防止法がまさか手本にされたとは思いませんが、スミス法と、類似の法律が行われようというアメリカにおいてはどういうことが起つているかというと、御承知のようにアメリカの憲法の一部となつておるところの独立宣言の中には、法務総裁よく御承知のように、明瞭に国民がその政府によつて生活を守れなくなつた場合には、これを合法的に政府の更迭を求めることができるのみならず、そこにはこれを革命的に転覆することができる。これは独立宣言に対してリンカーンがその独立宣言の趣旨を更に附加えて言つている。そしてそれは権利ばかりでなく義務だ。政府が誤つてそして国民を導いて行く場合に、それを合法的に覆すことができないからといつて、これに黙つて従つていることは国民の義務を怠るものだ。これは私は戦争中の我々の態度を反省しなければならないと思うのです。我々は戦争中国民の義務を怠つたのではないか。政府があのような無謀な犯罪戦争をやり、そうして日本をこのような状態に導いて行くのを合法的に阻止することができなかつたからといつて、我々が手を拱いて、あの当時どなたも同じように、異口同音に東條やつていることは実にけしからん、併しどうすることもできない。伊澤多喜男のようなかたまで私にそうおつしやつた。東條は壁に馬を乗り上げている、併し今を変えることができない、代つてやる人間もいない、自分もどうすることもできない、そんなことはないじやありませんか。やめさせることはできるはずなんです。このアメリカの独立宣言、又それに対するリンカーンの言葉、それからいま一つは世界の民主主義の父親であると言われているトーマス・ジエフアーソン、トーマス・ジエフアーソンが当時起つたシエイの反乱、これは明瞭な反乱です。反乱そのものです効反乱そのものずばりだ、扇動とか陰謀とか、そういうけちなことじやない、反乱そのものです。それに対して民主主義の不朽の父親と仰がれるトーマス・ジエフアーソンが何と言つたかというと、神に感謝する、政府は二十年に一度くらいはこうした反乱によつて反省を求められる必要があるのだ。そうでないと政府は専制独裁になるのだ。自由は血によつて培われなければ成長するものじやない、こういうことを言つておられる。バートランド・ラツセルはこれらの言葉を引いて、今日のアメリカ、即ち国内安全保障法及びスミス法、即ちこの破壊活動防止法が法として成立した曉においては、アメリカ国民はこれらのアメリカ独立宣言、リンカーン、ジエフアーソンに同意を表し、これと同じ意見を述べ、それを主張するということはすでにできなくなつている。これはアメリカがもはや自由国ではなくなつているという事実である。ソ連と戦うためにみずから自由をなくする、ソ連に自由がないからといつて、それと戦うためにみずから自由をなくするということに賛成することはできない。こういう公開状を書いておられる。そうしてこれに対するアメリカ側からの答えに対して高齢のバートランド・ラツセルは度重ねて書簡を執筆されて、この点を主張しておられます。これは同じような法律でありますから、それから起つて来るところの状態というものは同じような状態に行くという判断をするのが、私は立法者として妥当であると考えますので、特に法務総裁並びに委員各位にこれらの点も十分に考えて頂きたいと思うのであります。 第二の質問はこれに関係するのでありますが、即ちこの法律案というものは国民の抵抗権というものについてその合法的な抵抗権というものを著しく制限する。併しながら抵抗権そのものはこれは何へも否認することのできるものじやないのです。ですから合法的な抵抗権というものを制限すれば、必ず非合法的な抵抗権の行使が行われざるを得ない。それが今申上げたアメリカの独立宣言なり或いはトーマス・ジエフアーソンなり、リンカーンの言葉なりにもそれが現われていると思うのです。そうして日本国の憲法が言論、集会、結社の自由ということを保障しているということの意味は、言論、集会、結社はいずれも抵抗権です。これらが合法的な抵抗権として最大限に活用されることが非合法的な抵抗権の危険を防ぐ最大の方法なんです。それあればこそ合法的な抵抗権というものを認めている。そこで法務総裁に伺わなければならないのは、この法律案によつてそうした合法的な抵抗権としての言論、集会、結社の自由が制限されることになりますが、従つてその結果として非合法的な抵抗権というものが発生することは防ぎ得ません、論理上。それは法務総裁は止むを得ないというふうにお考えになつているのでありますか。先ずこの点を伺つておきたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) 羽仁委員はアメリカの独立宣言を御引用になつておりますが、アメリカの独立宣言におきましても決して暴力を以て国民の意に反する政府を転覆してよろしいとは言つていないのであります。いわゆる合法的にさような国民の意思による政府を回避、変更し得る権利を持つておるのだというに過ぎないのであります。そうして国家において暴力を以て政府を転覆するというようなことは許すべからざることであろうと私どもはかく信じて疑いません。ソヴイエトの反革命法を見ても明瞭であります。いわゆる反革命的な行動をとるような者に対しては嚴重な処罰規定を設けておる。中国の反革命條令を見ましてもその通りであります。現政府に対していやしくも暴力で以てこれを転覆させようというような罪に対しては重罪を科しておる。いずれの国家におきましても暴力行為は許すべからざるものとしてその処置を施しておる次第であります。日本におきましても今後民主的文化国家として発足して行かなくちやならんこの状況に当りまして、いやしくも暴力的破壊活動を行うような団体はこれは規制して行くのが当然の事実であろうと、私はこう考えております。 次に抵抗権の問題が出ました。近頃学者が言ういわゆるレジスタンス、いろいろ議論もありましよう。ありましようが、このレジスタンスも合法的にやらなくちやいかん、いわゆる憲法及びその憲法下における法律に準拠して抵抗権は行使すべきである。この法案におきましてもさような合法的のいわゆる抵抗権と申しましようか、羽仁委員の言われる抵抗権であります。集会、結社、出版の自由の権利、これらを毛頭も私は否定するものではないと考えております。併しながらいわゆる集会、結社、出版の自由でありましても、これは大きな公共の福祉というものに制限されることは、これは当然の事実であろうと思います。無制限なものじやありません、権利を行使するに当つては責任をとらなければならない。その責任はいわゆる国家治安の維持に対する責任であります。いやしくも国家の治安を紊し、公共の福祉に反するような言論の自由、出版の自由ということは、これは私は制限されなければならない、私はこう考えております。すべての自由というものは公共の福祉の下に或る制約を受けるのであります。これは憲法第十二條に嚴としてその規定が設けられているのであります。暴力破壊活動をこれを扇動したりするような行動は、これは日本国家の公共福祉治安維持上、これは許すことのできない行為であると、私はこう確信しておるのであります。正常なる言論、出版の自由というものは、この法案によつて毛頭も規制する意図はないということを申上げておきます。
○羽仁五郎君 私の質問に対するお答え、法務総裁のお考えには敬意を表しますが、私が申上げたのは……じやもつとはつきり例を申上げますが、この法律案が規制しようとしておるものは、大体共産党及びその党活動、その機関紙というものである。現にそういうことを特審局長などは新聞に向つて談話しておられるらしい。アカハタというものが合法的に出版発行されてもどうすることもできないから、これをやめたいというのでしよう。官吏としてのお考えとしてはよくわかりますよ。併し政治的に考えて、そういう共産党の合法的な活動というものを制限をすることにこれはなるわけですね。まあ例えて申せば共産党、それか又は左翼の戰闘的な労働組合、或いは極めて良心的な新聞紙、言論機関、こういうものを或いは解散し或いは禁止する、まあ例に引いては失礼ですけれども、一番共産党の場合がわかりいいかも知れない。共産党を解散するなり或いは禁止するとどうなるのですか。共産党のかたが、ああこれは悪いことをした、もうよそうと、それで特審局にでも勤めよう、(笑声)こういうようにお考えになればこれは誠にいいのですけれども、そんなことはないです。衆議院でも風早君からそういうことを現に国会において言つておられる。こんな法律案で共産党がくくれるかと、腹を抱えて笑つたでしよう。できやしませんよ。これをどうするのだ。非合法活動でしよう。これは法務総裁それをお認めになるでしよう。そうするとその非合法に対してはどうなさるのです、政府は。秘密活動に対しては秘密活動を以て活動するよりほかないじやありませんか。そうでしよう。そうすれば法務総裁がさつき御嚴父のこともお引合にお出しになりましたように、その政府がスパイ政治をやり隠密政治をやる。国を亡すような隠密政治をやるよりほか……。相手も潜るのですからこつちも潜らなくちやならん。潜らなければどこにいるのかわからないから、どこでも歩きますよ。大学の中も歩くかもわからないでしよう。或いは我々の書斎の中にも入つて来るでしよう。我々が収集している貴重な学術書類でも何でも持つて行くでしよう。決してこれはあり得ないとお笑いになつているかも知れないけれども、そういうことがあつたのですよ。あつたのですから……。そして我々は、一回誤りを犯すことは我々の許し得ることですが、二回誤りを犯すということは許されないことですよ。現にこの法律案によつて共産党を非合法化なさる、そうすると今のお答えでは、まあ共産党を非合法化するということはしないと言うでしようが、さつき伊藤さんは佐藤さんを、法律の神様がもう少し神様でなくなつたと言つたのですが、神様でなくなつたのではない、佐藤さんはもうすでに法律の悪魔になりつつありますよ。(笑声、「その通りだよ」と呼ぶ者あり)本当にこの法律で何ができるのですか。法務総裁、よくお考えになつて下さい。この法律で目的としていることはできやしませんよ。誰よりも何よりも吉河君に聞いてごらんなさい。できませんよ。吉河君に良心があるならば、実はできませんと答えるでしよう。共産党がやめられるものじやない。ですから私は共産党になつたことはないが、恐らくやめやしない、やめないだろう、やめやしませんよ。やめなければ非合法活動になる。この点を伺つておるのです。合法的な抵抗権を制限すれば非合法的な抵抗権が擴大する。それを御承知で法務総裁はこういう法律案をお出しになつているのかと、そういうことを伺つておるのです。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私は共産党の諸君がそのイデオロギーを捨てて特審局に勤められることは極めて歓迎するのですが、そういうことはあり得ないと考えております。 そこでこの法案の狙いといたしましては、いわゆる組織的破壊活動を行うものを先ず以て規制して行きたいと考えております。共産党の連中は、或いは地下に潜つて非合法化運動をするかもわかりませんが、そうすれば組織による破壊力だけはこれは防止できるのであります、少くとも……。この組織による破壊力を防止するということが、国家の治安において非常に大きな問題を引き起すと思うのであります。あなたのおつしやるようにこれがすべて組織を解いて、個々的に地下に潜つてしまえば、この組織による大きな破壊活動はこれはなくなるという点が、私は非常に国家のために喜ぶべき現象であろうと思います。而して非合法的な活動を個々にやつた場合において、それは又法規の命ずるところによつてこれを処置して行けば、私はそれでこの法案の目的は或る程度達し得るものと、こう確信するものであります。
○羽仁五郎君 法務総裁は私の質問の意味を御了解下さらないので、重ねてお伺いしますが、これは極く簡単な問題です。佐藤さんはよくおわかりになるだろうと思います。例えばアカハタですね。
○委員長(小野義夫君) 羽仁さんに御注意申しますが、法務総裁は万止むを得ない用があつて、もう十分くらいここにおられてお帰りになられますから、成るべく簡単に法務総裁に御質問を……。
○羽仁五郎君 一番最初に議事進行上について法務総裁の御意見を伺つておきましたが、委員長の御意見も伺わなければならないのかも知れませんが……。
○委員長(小野義夫君) いや、それはあとで私のは時間外で十分申上げるつもりです。
○羽仁五郎君 それじやお急ぎのようですから、法務総裁のおいでになる間質疑を続けます。 今の点ですが、極く簡単な問題なのです。つまりアカハタを出しておくということも、或いは吉田首相なり或いはどなたなりか気持がお悪いのかも知れない。これはよくお察しできますよ。ああいうものが出て来ることは誠に困ることはよくわかります。併しそれを出すなというふうになさるのでしよう。よく聞いて頂きたい。それで出なければいいのですけれども、それが併し出ますよ、今度は非合法で。そうしますとその非合法の新聞を追つかけて至る所に入つて行くのです。そうして法務総裁もよくおわかりだと思いますが、今日の社会においてですよ、世界の五分の一とか四分の一とかは共産主義になつている社会において、日本の共産党の活動については我々が何も知らないで、政治上の責任を持つことはできませんよ。ですから我々としても、共産党は何をしているか、国民も又何をしているのかというふうに知りたいのです。ですからその共産党の合法的なアカハタが買えればそれを見るのです。そうでなければその非合法の出版物というものを見たいと思う人があつても、それを咎めることができないで、又現にそういう秘密出版物になれば、それを追つかけて祕密の活動をやつて、大学の中でそういうビラが撤かれるということになれば、本富士署で走つて行つてそのビラを拾つて来る。そうするとそこに学生が、又警官が入つて来たと言つて騒ぐ。これは法務総裁も政治家であるならばそういう気持も全然御了解になれないこともなかろうと思う。で、国民にとつてはそういうように共産党が合法的にある、又新聞が合法的に存在するということは、或る人々にとつては好しくないかも知れない。併しながらそれが非合法になつて来ると全国民の迷惑になる、これはおわかりになるだろうと思います。それでつまりこれははつきり申上げますれば三段になるわけです。最初の或る大きさの危険というものがありますね。併しながらこれは第二段で防ごうとする、ところがこの危険は防げない。第三段にその危険がもつと悪質な危険になつて行くということが発生する、これは何へも防ぐということはできない。この点について法務総裁はそういうことが好しいとお考えになつているのか。或いは共産党を合法的に活動させ機関紙を合法的に発行させ、そうして自由党なり改進党なり、社会党なりが堂々たる政党としてこれと戦われ、又教育というものを通じて、そうして合法的に存在する共産党なりアカハタなりというもののために誤つた影響に陷るというような人々に対しては、教育を以てそれを防ぐということが十分にできる。それよりもそれを非合法的に追いやり、そうして秘密活動をそこに発生させ、従つて政府のほうも秘密活動を盛んにやる。そうすればどこにあるのだかわからないのですから、或いは僕の家に徳田球一氏がおるかも知れないし、法務総裁の家に野坂參三氏がおるかも知れないということは、捜査官というのか何というのか、その疑う根拠があると考えれば、結局そういう所にも出入する。又なかんずく大学などに出入する。これはやはりマツカーラン法、スミス法が発効して以来、最近のこれは統計ですが、アメリカの大学の入学率といものは一〇%減つて来たと言う。これはニユーヨーク・タイムズが社説を以て警告していますが、アメリカの大学のスタツフ、教授に今日有能なそうして尊敬されるような教授の数が減つて来たということも一つの大きな原因だと指摘しています。これは全国民がこうむるところの迷惑であり伊藤委員もそれらの点を個々の條文についておつしやつていますが、そういうことをすべきだというふうに法務総裁はお考えになつているのですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) いろいろ御意見なり聞きましたが、このアカハタが誰の迷惑だからそれを取締るというような個々的の問題じやないのです。アカハタが共産党の内部の事情を十分に国民に了知せしめ、そうしてどういう活動をしておるかということを明らかにする目的で発刊されるならば、これは何おか言わんや、取締りの対象になりませんが、一たびこれが内乱を扇動したりするようなことになりますると、これがこの法案の対象になるのであります。決してアカハタそれ自体を問題にするのじやなく、その内容自体が問題になるのであります。そこで一つのそういう危険なアカハタを取締つておいて、又続々と非合法的に出版されたらどうするかという御質問でありますが、これはその場合の情勢において適宜の措置を政府はとつて行かなければならん、こう考えております。
○羽仁五郎君 法務総裁は私の質問はよく御了解になつているのだろうと思います。三度に亘つて同じ質問をいたしましたから、法務総裁はまさか私の質問は御了解にならないのじやないと思う。ただそれに対する御答弁の御用意がないのだろうと思う。従つて今の問題につきまして、他をお答えになりましたから、私の申上げた点はよく法務総裁は御了解下さつたことだと思いますから、次の機会においてこの点について……。こういう法律案を通すことによつて合法的な抵抗権というものはどうしても制限される。そうして非合法的な抵抗権がそこに発生して来る。それによつて国民全体が受ける暗い感じ、それがあるということを、この法律全体がその無理があるということをお考え下さつて、次の機会に更にお答えして頂きたいと思います。 第三の問題に移るべきでありますけれども、法務総裁も御退席になり、法務総裁をお助けになる意見長官もおいでにならない。政治上の責任をおとりになるかたがおいでにならなくなると思いますので、私の本日の質疑はこれで打切らして頂きたいと思います。
○一松定吉君 委員長、この程度で今日はどうですか。
○委員長(小野義夫君) 速記をやめて。 〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて下さい。では今日はこの程度にいたしておきます。 午後四時十八分散会