法務委員会 第23号
- 発言数
- 21 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1952/04/15
会議録
○委員長(小野義夫君) これより委員会を開きます。 先ず住民登録法施行法案を議題に供します。本案に対しまして提案者より更に詳細なる説明を願います。
○衆議院議員(鍛冶良作君) 住民登録法施行法案の逐条説明をさして頂きます。 先ず第一条でございまするが、本条はこの法律の目的を明らかにした規定でありまして、住民登録法は昭和二十六年六月八日法律第二百十八号を以て公布され、本年の七月一日までの間において政令で定める日から施行されることになつておりまするが、同法にはその施行の際現に市町村の住民である者についてなされる最初の登録に関しては規定が設けられていないのであります。これは同法施行の際の最初の登録は制度の基礎となるものでありまして、その成果の如何はその後における制度の運用に極めて重大な影響を与えまするので、別に施行法を制定してその中で最初の登録に関する規定を設ける趣旨であつたからであります。この住民登録法施行法は右の施行法に相当するものでありまして、住民登録法施行の際現に市町村の区域内に住所を有する者についてすべき最初の登録に関して必要な規定をし、最初の登録の完全な実施を図ろうとするものであることを明らかにしたものであります。 第二条は住民登録法施行の際現に市町村の区域内に住所を有する者について遅滞なく住民票を作製すべきことを明らかにしたものであります。住民票の記載を法施行の日の午前零時現在の事実に基いて施行することといたしましたのは、登録の重複や脱漏を防止し、登録の正確を期するためであります。又住民登録法第四条第八号の事項、即ち従前の住所の記載を要しないとしましたのは、この事項は住民登録法施行後住所地が移動した場合を予定したものであるからであります。 第三条、住民票の作製は届出に基いてするのが最も便宜であり、且つ正確を期するゆえんでありますから、本条は住民登録法施行の際現に市町村の区域内に住所を有する者について最初の住民票の記載事項となつている事実を届け出させることとしたのであります。届出義務者、届出地及び届書の一般的記載事項については本条第二項で住民登録法第十九条から第二十一条までの規定が準用されております。なお最初の住民票はその後生ずべき住所その他の異動を直ちに登録することができるように、でき得る限り速かに作製する必要があるので届出期間を五日といたした次第であります。 第四条、最初の登録は住民登録制度の基礎となるものでありまして、その成果の如何はその後におけるこの制度の運命を左右するものでありますが、この登録を専ら前条の届出だけに基いてするときは届出が怠られ或いは不正確な届出がなされる慮れがありますので、本条は市町村が住民登録法施行の当初、積極的に各世帯について住民票の記載事項となつております事実を調査することを定めたものであります。市町村は本条の規定によりまして、調査の際に住民に対し届出を奨励すると共に、届書の記載を調査の結果と照し合せてその正確を図り、又届出をしない者があるときはこの調査に基いて市町村が職権で住民票を作製することとなるわけであります。 第五条、本条は住民登録法第十六条と同趣旨の規定でありまして住所地と本籍地とを異にする者について戸籍の附票の作製を可能とすると共に、住民票の記載の正確を図るため住所地の市町村と本籍地の市町村との間に住民票の記載事項に関し相互に通知をすることを定めたものであります。即ち市町村は第二条の規定によりその住民について住民票を作製するのでありますが、この場合に住所地と本籍地とが異なる者については、住所地の市町村は本籍地の市町村に住民票の記載事項、住民登録法第四条第四号に掲げる事項は附票の記載事項とはなつていないので、この事項を除いたものを通知し、本籍地の市町村ではこの通知に基いてその者の戸籍の附票を作製することとなるのであります。右の場合において本籍地の市町村は通知を受けた事項と戸籍の記載とを照合し、両者が一致する場合にはその旨を、又一致しない場合にはその旨及び一致しない事項に関する戸籍の記載、本人が戸籍に記載されていないときはその旨を折返し住所地の市町村に通知する。本条は住民登録法第十六条と異なり、照合の結果通知を受けた事項が戸籍の記載と合わない場合ばかりでなく、通知を受けた事項と戸籍の記載とが一致する場合であつても住所地の市町村に通知すべきこととしました。これは法施行の当初に作製される住民票及び附票の記載の正確性を特に保障する必要があるからであります。 第六条は、本条は住民登録法施行の際現に市町村の区域内に本籍を有する者について、市町村は法施行後遅滞なく本籍人全部について附票を作製すべきことを明らかにしたものでありまして、本籍地に住所を有する者については第三条の届出及び第四条の調査により直ちに附票を作製することができますが、本籍地と現住地とが異なる者については、前条第一項の通知に基いて附票を作製することとなるのであります。 第七条は、最初の登録は法施行の際の市町村の住民全部について漏れなく且つ正確になされなければならないこと、及びそのために市町村は住民登録法施行の当初積極的に各世帯について住民票の記載事項を調査すべきことは前に述べた通りでありますが、市町村の職員だけでこの事務を完全に遂行することは困難であるので、その補助をさせるため市町村は政令で定めるところにより調査員を置くべきこととしたのである。この政令において調査員は国勢調査の際設定された調査区を基準とし、原則として一調査区に一人即ち全国で約三十六万八千人を置くものとすることが予定されています。調査員は市町村長の指揮を受けて第四条の調査及び住民票の記載、第五条の通知書の記入その他最初の登録事務の全般に亘り市町村の当該吏員を補助することとなるのであります。 第八条、本条は第三条の届出を怠つた者に対する過料の制裁を定めたものであつて、住民登録法第三十一条と同じ趣旨であります。 第九条、本条は最初事務の処理に関し、全国的に取扱の統一を要する事項について政令で必要な規定を設ける趣旨でありますが、この政令で規定すべき主な事項は第三条の届出の方式等であります。 附則第一項、この法律の施行を定めたものであります。この法律の施行準備のために必要な事項とは調査員の委嘱、住民登録法施行後に行う調査の準備としてあらかじめ世帯の配置、世帯員の数等を調査すること等でありますがこれについてはその性質上施行期日前に行うことができることとしたのであります。附則第二項から第四項までは住民登録法は寄留法に代るものであるから寄留法を廃止し、その経過措置を定めたものであります。政令で定める経過措置の主なるものは、寄留手続令(大正三年勅令第二百二十六号)の廃止並びに寄留簿の保存及び保存期間等であります。附則第五項は法務府措置法の一部を改正し、住民登録に関する事項について法務総裁、民事局、法務局及び地方法務局の権限及び所管事項を明らかにしたものであります。附則第六項、寄留法の廃止に伴う戸籍法の規定の整理を行うと共に、戸籍の届出書に届出人、届出事件の本人及び届出事件によつて戸籍の変動を生ずる者の住所を記載せしめることとし、これにより住民登録法第九条の通知を可能ならしめる趣旨であります。 附則第七項、寄留法の廃止に伴いまして寄留地の特別裁判籍は不要となります。住所地の普通裁判籍だけで十分となるので民事訴訟法の規定の整理を行なつたものであります。附則第八項、沖縄関係事務整理に伴う戸籍、恩給等の特別措置に関する政令について寄留法の廃止に伴う規定の整理を行うと共に、南西諸島等の地域に本籍を有する者の住民登録事務で本籍地の市町村長が管理すべきもの、即ち戸籍の附票に関する事務及びこれに附帯する事務をこの政令第一条の法務府事務官、即ち法務府令で定める法務局に勤務する法務府事務官で、法務総裁の指定する者が管理すべきこととしたのであります。附則第九項、住民登録事務に要する市町村の経費を戸籍事務費と共に経費の種類として規定し、その測定単位として世帯数を加えたものであります。この第九項がこの施行法の施行に伴う最も重要な点でございますが、参考は行つておりますと思いますが、平衡交付金の欄にこれだけを変更して附加えて、毎年の計上費は平衡交付金からこれだけもらう方法をとつた次第であります。 以上を以て説明を終ります。なお、この施行が誠に遅れましたのでできるだけ早くやつて頂きませんと予算が実施されませんので早くもらつて準備にかかりたいと思います。
○委員長(小野義夫君) 経費その他に関連しての説明を願います。
○政府委員(平賀健太君) 法務府の事務当局からこの住民登録法の施行に要しまする経費の極く概略について御説明申上げます。 お手許にございます住民登録法施行法案に関する資料の四十七頁を御覧願いたいと思うのであります。住民登録法の施行に関しましては、最初の登録に要しまする経費とその後におきまする計上費とを分けまして、最初の登録に要する経費は国の補助金で賄う。それからその後における計上費は市町村の負担といたしまして、不足がございましたら平衡交付金で賄つてもらう。こういう構想でおるのでございます。この資料の四十七頁に挙げてございますのはこれは最初の登録に要しまするところの経費で、国の補助金で賄われるものでございます。本年度の予算に計上されております三億六千万円、これが創設と申しますか、最初の登録に必要な経費になつて来るわけでございます。 内訳はここに記載してある通りでございますが、極く概略を申上げますと、法務本府に七千八百万円、約七千九百万円入つておるのでございます。これは法務府におきまして住民登録法の実施の指導に必要な経費が七五二千円、それから最初の登録に必要になりますところの住民票の用紙、戸籍の附票の用紙、或いは届書の用紙、そういう諸用紙の紙代及び印刷費、それからこれを全国の市町村に運搬いたします運搬費、こういうものを合せましてこれが七千八百九十二万五千円となつております。 それから次は市町村に対する補助金でございます。で補助金は内訳をここに書いてございますように、先ず全国の市町村に約五十世帯乃至七十世帯を単位といたしまして調査区というのを設けまして、その調査区について原則として一人の調査員を委嘱いたしまして、この調査員が調査に当ると、で全国に三十六万八千の調査区ができる予定でございますので、三十六万八千人分の調査員の手当といたしまして一億八千七百六十八万円、これは一人の調査員の一日当りが百七十円、それの三日分合計五百十円、一人当り五百十円の計算になつておるのでございます。それから次は市町村におきましてこの最初の登録を実施いたします際には、法務局或いは地方法務局等に連絡いたしましたわ、或いは調査員を集めまして指導したり、訓練したりする必要がございますので、そういう雑費に充てますために六百十六万四千円。それから次は同じく市町村におきまして最初の登録の際に筆墨代、紙代、そういう雑費が要りますので、それに充てますために二百九万七千三百円。それから次は通信運搬費でございますが、これは先ほど逐条説明の際に説明がございましたが、最初の登録の際には住民票に登録いたしますというと、それが戸籍と合つているかどうか調査しなくちやなりませんし、更に本籍地におきましては、戸籍の附票を作る必要がある関係で、住所地と本籍地との間に通信連絡の必要が生じて来るわけでございます。その通信連絡の必要な経費、その他市町村と法務府或いは法務局地方法務局等に通信連絡をする、そういう経費といたしまして七千七百五十三万八千七百円が計上されておるのでございます。 以上が市町村に対する補助金でございまして合計が二億七千三百四十八万円になつておるのでございます。 それからこの法務府の出先でございますが、法務局、地方法務局が実際にこの最初の登録の指導をいたします関係におきまして、法務局の予算といたしまして法務局、地方法務局の経費に充てますために、住民登録実施の際百五十五万六千円。それから市町村との間の通信連絡、運搬、これは諸用紙なんかの運搬でございますが、これが五百九十六万七千円、合計七百五十二万三千円となつております。で、これが国の予算に入つておる経費の三億六千万円の内訳でございます。この三億六千万円、これはもとより必ずしも潤沢というわけにはこれは決して参りませんけれども、これだけありましたならば、とにかく最初の登録に必要な最小限度はこれで賄えるというふうに考えておるのでございます。 以上は最初の登録に、臨時に必要な経費でございますが、最初の登録が終りまして、その後の住民登録事務を処理して行きますための経営費、これは事務の性質から見まして市町村が負担するのが適当であろうと考えられますので、平衡交付金制度で以て賄つて行こうという考え方なのでございます。で、本年の七月一日にこの制度を実施いたしますので、七月一日以後来年の三月末日までの経費を市町村においてこの経営費としてどのくらい必要であるかということを法務府でも調査いたしますし、更に地方財政委員会の事務当局とも打合せて、いろいろ検討をいたしておるのでありますが、只今のところ、法務府の事務当局といたしまして検討した結果では、本年の七月一日以後本年度内に必要な市町村の経費というのは、大体十四億円ぐらいになる計算でございます。一世帯当りにいたしますと約八十円になるのでございます。内訳はどういうふうになつているかと申しますと、市町村の住民登録従事職員の人件費、それから旅費、それから最初に住民票を作りますためには、かなり厖大な数量の住民票でありまするので、臨時雇を使いましてその住民票の作製の補助をさせなければならない。その臨時雇の賃金であるとか、それからその他の諸雑費などを合せまして、それが約十四億円になるという計算なのでございます。従いましてこの平衡交付金を算定いたしまする際にも、この約十四億円という数字が市町村の需要額ということになりますので、これを基礎として平衡交付金が算定されて行くということになると思うのでございます。 以上経費の点の概略を御説明いたしました。
○委員長(小野義夫君) それでは平衡交付金に関して地方自治庁財政課長奧野誠亮君。
○政府委員(奧野誠亮君) 住民登録法が施行されました暁に必要といたしまする経費の見積りにつきましては、只今平賀さんからお話になりました通り、法務府と地方財政委員会との間で打合せを了しております。従いまして又地方財政平衡交付金の算定に当りましても、只今お話の中にありましたような算定の仕方をしたいというふうに考えております。なお私が戸籍住民登録費の関係で今まで十億円内外のものを追加することになるのだと申上げているのでありますが、只今住民登録の関係だけで十四億円内外のものが追加になるというような御説明がありましたが、その食い違いは従来戸籍事務費で算定されておりましたものが十二億八千万円程度であります。ところが、住民登録法が施行になりますと寄留関係の仕事がなくなつて参りまするので、それも含めて十二億八千万円と測定しておつたわけでありますので、この部分が九億円内外に下つて来るわけであります。これに住民登録関係の十四億円内外のものを合せますと、戸籍住民登録費の総計が二十三億内外になるわけであります。これと十二億八千万円との差額が十億円余りでありまして、それだけのものが基準財政需要額として市町村分に追加されるのであります。こういうような計算になるわけであります。 〔委員長退席、理事伊藤修君委員長席に着く〕
○理事(伊藤修君) 何か御質疑がおありになりますか。
○羽仁五郎君 この住民登録法施行法案については、この元になつた住民登録法案が本委員会で審議されましたときに、私としては幾つかの論拠を挙げて、こういう住民登録というようなことが行われる場合に、政府として或いはその立法者として重大な関心を払わなければならない点を列挙しておいたことは、今議題になつております新らしい法案の提出者におかれても十分御記憶のことであろうと思うのであります。従つてそれらの点について今繰返すことを避けますが、私はその当時のこの速記録を調べても恐らくあると思うのでありますが、住民登録法の法案の提出者であるかたがたが、即ち共通しておるこの立法に当られるかたがたは、この住民登録法について私が述べたような点は重大な意義を持つておるということは御承認になつて、そうしてそれらは施行法において必ず十分にこれを尊重するということを述べておられたのであります。で、これは速記によつて証明するまでもなく当然のことでありまして、その整わざわざ施行法という、法案というものを以て、単に施行細則というふうな法令的な手続をやらないで、法律を以てこの施行に関する規定をなされるということに私はなつているだろうと思うのです。ところが、この提案された施行法案のほうを拝見いたしますと、それらの点に関する考慮が一つもないのです。それで、これは先ずその点を、伺つておきたいと思うのでありますが、住民登録法それ自体がすでにそういう問題を含んでいるのでありますけれども、併し当時としてはいろいろな事情があつて、そうして最小限度の修正で以て私どもは満足をせざるを得なかつた、満足したわけではないのですけれども、実際上において最小限度の修正しか行われなかつた。併しその際私は決してこの住民登録法について、結果において現われた修正を以て満足しているものではないということは当時も申上げたのであります。で、それらの点は必ずこの施行法において、施行法案において現わされるというふうに期待していたのです。で何故にそういう点の考慮を全く忘却されたような形で、この施行法案をお出しになつているのか。即ち前回に申上げましたような趣旨が全く御了解がないのでしようかどうか。で甚だ恐縮ですが、前回にこの住民登録法の際に申上げた要点だけを今繰返さざるを得ないのです。あらゆる法律がそうでありますけれども、併し特にこの住民の登録、つまり国民の一人々々の或いは人権、或いはその個人の秘密というものに関係をする立法をなす場合に、厳格に守らなければならないことは、いわゆる行政上の便宜というものに便乗して、そうして個への人権、或いは個人の秘密というものに立ち入つてはならない。これはもうすでに数千年来の歴史の証明するところであつて、その最初のものとしては有名な旧約聖書に述べられておるように、ダヴイデがイスライルの民の数を数えようとした。ところがパレスチナに激動が起つたということは旧約聖書に書いてある。これはもう古くからある問題で、民の数を数えるということは決して軽々しくやることはできない。ダヴィデのような賢明なる王が全く行政上の便宜ということからなされる場合であつても、それが当時は言論の自由も何にもないかも知れないが、疫病というものになつて現われるというくらい恐るべき問題がそこにあるのであります。それから第二の例として住民登録のときに申上げたのは、イギリスがいわゆる国勢調査というものをやつておる場合にも必ず大体その要点として第一に、そこの国勢調査によつて調査するところのものは、統計以外の目的に用いることを許さない。若しこれを統計以外の目的に政府、公務員なりが用いた場合には、それに対して厳重な刑罰、二年以下の懲役、或いは何ポンドの罰金とかいう刑罰を以てそれを規定してある。そうして且つその国勢調査をなす場合にその調査表を作る人はその家の戸主であり、決して公務員がそれを作らない。従つてその戸主の判断において守るべき秘密だと思えるものはこれを守るという建前をとつておる。これも前に申上げた通りであります。こういうふうなふうに長い歴史の上で守られて来ておるもの、そうしてその個人の秘密を守るということは如何に保障せらるべきかということの最も与えやすい例としてこの前の場合に癩療養所に入つておられるかたがたの例を引いたのであります。個人の秘密と言いますと、とかくいわゆる官僚主義的な人々は民衆の秘密というものをあばいてもかまわない、或いはむしろそれを立ち入ることを興味を感じておるのではないかと思われるくらいの疑わざるを得ない理由がある。併しながら、如何なる官僚主義者といえども癩療養所に入所しておる人々の秘密を侵せげ癩療養所に収容するという目的は果せなくなつてしまう。それで民間に自益の家で治療をしている患者が殖えてそれで癩の蔓延を防ぐことができない。こういうように癩に罹つておられるかたがたのその秘密というものが現わしておるような問題は、決してこれは癩ばかりの問題ではないのです。人間に個人の秘密がなくなつてしまうということは、同時に個人の秘密が侵されてしまうということは、人間に深い生活がなくなつてしまうということなんです。何でも人にわかつてしまうような簡単な生活しかできない。それでは到底社会の進歩或いは将来の発展ということを期するということはできない。且つ又、その個人の秘密を侵す官僚主義が許される場合には、これはやがては基本的人権が侵害されるという警察国家にも優る恐るべき危険がそこに包蔵されて行く。故にこの住民登録法案が立法されるときに、これらの点を十分お考えになつておるはずだというふうに思つて質問したのでありますが、当時の速記録を見れば明らかにそれがわかるように、住民登録法の立案者におかれてはこれらの重大な点について慎重な考慮を欠いておられたのではないかというように恐れざるを得ないような印象を私は受けたのであります。併し当時として若しそうであつたとするならば、今度それを施行する上に特に法律を以て規定する住民登録法施行法におきましてはこれらの趣旨が明らかに掲げらるべきであつたというように私は了解しておつたのであります。従つてこの目的、或いはこの前文というものにおいてこの住民登録ということは行政上の便宜からこれをなすべきものであるけれども、併しながら行政の便宜ということによつて基本的人権、或いは個人の秘密というようなそういう近代社会の原則というものを侵すものではない。又これを侵した場合には、それを侵した公務員はその責任を問われなければならない。それからこの登録法を施行する場合に、その施行……それらの基本的人権や個人の秘密に亘るものまで守られるような措置がとられているということを明らかにする必要が私は絶対にあると思うのであります。どうしてそういうような規定をお作りにならなかつたのでしようか。この前の住民登録法のときの質疑応答或いは討論というものに、参議院の本委員会における質疑応答並びに討論というものの趣旨を全然無視されるという立場をとられたのでありましようか。その点を先ず伺つておきたい。
○衆議院議員(鍛冶良作君) 前回本法の際の御議論は十分記憶もしておりますし、又述べましたことも覚えておるつもりでありますが、御指摘の例は非常に稀な事項でありますので、勿論立法の際に考え及ばなかつたことは当然であります。そこでこの前も申上げましたが、法律は、いわゆる社会通念を元にして作りますものでございまするから、特殊の例があるからといつてこの法律を変えるというわけには参りません。但しこれを適用する場合に、その適用において十分その点を尊重し、その御趣旨に従つてやるべきものである。かように考えて、私は答弁したつもりであります。なおそれでも足らんというならば、特別の立法を作るよりほかないのではないか。かように考えまして、特別の立法の点にまでは考え及んでおりませんが、施行の際には十分適用においてその点を尊重してやるようにしたいと、かように考えております。然らばこの施行法に何故載せなかつたか。この施行法は最初の登録のことだけ規定しておりまするので、又それに載せるほどの実際のタッチするほどの細かいことまでやつておりませんから、その意味で施行法には載せてございません。なおこの目的は、特別の目的を持つておるものではないのでありまして、何もその個への秘密を特にあばいて出すとか、匿したがるものを分けに示すためにやるものではございません。専らいわゆる人口の統計の正確を期するためでありまするから、その目的さえ達せられるならば、個人の秘密は十分尊重すべきことはこの職に当る地方公務員におきましても十分察知してやるものと思います。又地方公務員法におきましても個人の秘密を漏らしてはいかんという規定もございますので、その点に対してはでき得る限り施行当局には注意はいたしまするが、御指摘のような御心配はそうなくて済むのではないかとかように考えております
○羽仁五郎君 只今提案者からの御説明でありますが、特殊な例であつたからそのことは考慮されてなかつたとおつしやるのですがそれは少し男らしくないと思う。特殊な例を引いてわかりやすくしたのであつて、私はその特殊な例だけが目的でないのです。で、癩療養所におられるかたの秘密さえ保持すればほかには保持される秘密はないという気持では全くないのでありまして、一般に個人の秘密を尊重されなければならない、その点についての考慮が、或いは我々をして十分だというふうに思わしめることができなかつたのではないかということを申上げたのでありまして、その証拠には現に住民登録法にそういう点についての何らの明示したところの規定というものがございません。それで私は当時そのことを指摘したのでありますが、前のことを余り申上げることは好ましくありませんが、今度最初にこれが行われるときに一つの法律がなされるのでありますから、ですからこれは最初に行われるときのことだけだというように一応軽くお考えになつておるようでありますが、堂々たる法律案を持つて国会にお臨みになる提案者のそのお立場からしましても、その識見を示される意味においてここにそれを掲げられることが当然ではなかつたか。いわんや只今の御答弁の中にもございましたように、それらの施行の際に十分気をつけるというようにおつしやつた。これは提案者が立派な立法者でおられることからして、気をつけるということは、即ち法律上においてそれを現わすことであるというように私は了解しておつたのであります。いわゆる世間で言う常識的にそういうことは気をつけるからというような意味には私は承わつてはおらない。これは立法上において、そうした考慮を明らかに現わすという御意思であろうというふうに思つて、そうして又、最後にこの住民登録法施行法に、さつき申上げましたような点を明らかにしるすということは、何ら法律の体裁から言つてもおかしいことはない。本来から言えば、住民登録法に示されることが最も望ましかつたのでありますけれども、併し次善の策として、住民登録法そのものに示されなかつたけれども、住民登録法施行法の、これを施行する最初の場合に、これが明示されるということは又極めて望ましいことではないか。御承知のように、統計委員会が、その管理しておられるその統計を、統計委員会自身が、これを統計上使用されるということと少しでも他の関係においてこれが使用される場合には、統計委員長が一一それについて明らかにそれを認めるということの態度をとつておられるのであります。そういうふうに一般に統計或いは個人の私生活に或いは亘るのではないかと思えるような調査については、近代の法は飽くまで厳格にして綿密に、そうして鄭重な態度をとつておるというのが私は一般の原則、不幸にして住民登録法にはそういう態度が現われていない。住民登録施行法の場合には、これを是非現わされることが必要であろうというふうに考えられるのでありますが、これらの点について重ねて而もそれが必要でないというようにお考えになつておるとすれば、それらの論拠を伺つておきたいと思うのであります。 なお先ほどのお答えの中に、地方公務員がこれらの点について十分基本的人権或いは個人の秘密というものを尊重することを知つておるというお答えがございましたが、これは残念ながらそうでないという事実のほうが多いのであります。これはいわゆる基本的人権の侵犯に関する事件の大多数は公務員になつておるということは統計の示すところであります。遺憾ながら日本の公務員、なかんずく警察公務員、併し警察公務員ばかりじやありません、一般の公務員が国民の人権を尊重する点において、日本は列国に冠たる歴史を持つておるのじやない、その反対の悲しむべき歴史を持つておる。そういう点から言いましても、ただこうしたそういう点について言の言及もない法律を以て臨まれるということは、果してそれらの問題を引き起さないであろうか、それらの問題は引き起されてしまつてからでは実際救済の余地がない。そういう意味から重ねてそういうような前文なり、或いは何なりを、単にこの委員会における御説明、或いは御答弁だけでなく、その施行法なり、何なりにおいて明らかにお示しになるというお考えがないでありましようか。若しないとすればなくても大丈夫なのだという、我々の納得するような御説明を何つておきたい。
○衆議院議員(鍛冶良作君) 私は前回からの御議論でありました癩のことだと思つたのですが、一般的に各個人の秘密及び人権を尊重せよという御意思でありますならば今さら申上げるまでもございません。それを尊重しないような法律ならばこれは法律として認めるべきものではないのでありますから、これはさようなことを根本には憲法を十分悟つて法律を作つておりまするし、又この施行に当る人もさような考えを持つてやるものだと、かように考えているのであります。そこで第一の御議論は、施行法の話ですが、施行法は最初の登録をどういう方法でやるか、これだけをきめておりますのです。これから登録に当つてそういうやることをそのあとで出ます施行令できめますので、その意味でこの施行法にはそれらの点は実際に亘る点は載せておりません。ただ登録をどうしてやるかということ……。ここでやりますのは一番問題になりますのは、一斎調査をやるか一或いは個々調査をやるかということが一番問題でありまして、一斎調査でやる、その費用をどうするか、こういうことが施行法の根本なので、出るといたしますならば施行令で出べき問題でございます。ところが御承知のようにこの法律を御覧願えればおわかりになりますように、 〔理事伊藤修君退席、委員長着席〕 我々はこの記載事項に関しましては、人の秘密をあばいてこれを出すことにおいてその人に困るというものは全体的に見ましてないのじやないか。ただ御指摘のような癩その他のそういう人は、これは癩予防法においてそういうことに対しての秘密を守るように規定されております。そこでその予防法に基いた秘密は、これは地方公務員法に地方公務員としての秘密の義務というものがありますから、ただそれを守る奴がおらん、こう言われたのではこれは実際論でありまして法律といたしましては秘密を守る義務を地方公務員法第三十四条において明らかに規定している。更に罰則においてこれを侵害した場合には罰する、こういうことになつておりますので、法の建前上はそれらの点も守られるものと思うのであります。ただ衆議院でもいろいろ議論がありましたが、これを特別の目的に使うのじやないか、これは何かこれでほかのことをやる考えがあるのじやないか、こう言われますと、そこまで臆測せられちや何とも言えんが、我々はこの法律ではさようなことは一つも考えておりません。この資料にも最後につけてありますが、これらの諸点に便宜を与えるためにこの法律を作つた、専らそのつもりである。さように考えておりますので、御指摘のような御心配はないのじやないかと思います。なお施行の際に際しましては、施行令でも若し必要があればやりますし、又施行の際に際しては、施行当局として十分お説のようなことを注意させるものと心得ております。又我々もできるだけその点は注意いたすつもりでおります。
○伊藤修君 今の点は羽仁さんがこの前からたびたび述べられたのですが一勿論今鍛冶委員のお話でも御同意のようですから、無論どうせ訓令とかその他で賄つても差支えないのですが、当然施行令が出ることは予想されるのでありますから、施行令でその程度は書くということを御説明願つたらどうですか。
○政府委員(平賀健太君) 只今の点、非常に御尤もな御議論と思いますので、住民登録法施行令の中におきまして、その点十分考慮いたしまして必要な規定を盛りたいと考えております。
○羽仁五郎君 只今伊藤委員の御質問に対する御答弁というものは、それに対して絶対的に私としては信頼を寄せたいと思うのでありますが、何故にそういう人権を保障し、個人の秘密を尊重するという規定を置くことにさように躊躇されるか、ますます疑わざるを得ないのです。それで先ほど提案者の御説明にもありましたが、地方公務員法にも書いてある、だからよろしいというふうにおつしやいますけれども、それじや例えば英国が英国において国勢調査をなすときに、その国勢調査を規定する法律の中に、何故に特段に最初にこの国勢調査においてなされるところの調査は他の目的にこれを用いてはならない、公務員がこの規定に違反した場合には、これに対して厳重なる刑罰を科する、というような規定を特に書いてあるがということも考えて頂いたほうがいいのじやないか。で、どこかにそういう規定があるから、だからこの法律には書いて置かなくてもいいほどに日本の公務員が英国の公務員よりも遥かに進歩した公務員であるというお考えであるかも知れない、私もそう信ずることができれば甚だ幸福なんでございますけれども、併し遺憾ながらそれは恐らく客観的には認められないのではないか。それでこの資料を拝見いたしましても、例えばこの住民登録事務吏員の証というのを拝見しても、事務吏員たるや、第一に念頭に置かなければならないのは基本的人権、或いは個人の秘密を侵すことをしてはならない、これは第一に注意せられるべきであるのに、注意書のほうに、ここへ住民登録法を抜萃してありますが、そのほうを見ると、国民のほうが虚偽の記載をした場合には直ちにこれに対して調査を行い、或いはこれに対して罰することができるというほうばかりが書いてある、その反対のほうは全然書いてない。そういたしますと、これは立法者たる鍛冶衆議院議員においては先ほどの御答弁のように、人権は飽くまで尊重するという、高邁なる識見を持つておられる、これは少くも疑いません、疑いませんが、先ほどの御説明のように、最初の調査をなす場合には臨時雇のかたがたも入れてそうして調査をなされる場合、尤もその臨時雇のかたは必ずしも重大な責任を持つ仕事をなされるのではないかも知れない、そういうかたがたは地方公務員として個人の秘密を侵した場合に罰則を受ける、こういう点についても十分の認識、或いは十分の関係がないかも知れない、そして又仮に地方公務員のかたがたが住民登録事務吏員となられた場合にもその証として持たれておる者に主として国民が嘘を言えないように、又嘘を言つたならば調査して罰するのだということのほうが重く明らかに示されておる。そうしてこの国民の、個人の私生活というものに押入つた場合にその公務員の責任を問われるというほうが明らかに意識に上らない虞れがあります。これは事実です。これは鍛冶衆議院議員のようなかたがたがそういう処でお仕事をなさることを期待しますけれども、そういうわけには事実は参らない。ですから今政府を代表して御答弁がありましたことは、必ずこれを他に考慮するというにとどまらず、進んでむしろこういう際に基本的人権乃至個人の秘密というものを侵してはならないという態度をおとりになるというように今の御答弁を了解してよろしうございましようか。相当考慮するつもりだけれども、そのときになるとどうなるかわからないというように、疑うわけでは全然ないのでございますけれども、併しこの前のときに相当申上げて、それでこの施行法案のときにそれが出て来るものと思つて私は堅く期待しておつて、今日拝見して見ると……、これは私の勝手な印象かも知れませんが、頗る裏切られた感情を抱くものであつて、従つて今度は只今伊藤委員から大変有難い御質疑があつたんでありますが、而して今、それに対する政府の答弁も本来ならば直ちに了承すべきはずでございますけれども、又こういうようなことが繰返されるということであるといけないと思いまして、或いはあつものにこりてなますを吹くのかも知れませんが、施行令の際に必ずその点について明らかに示すというふうに了承してよろしうございましようか。その点を伺つておきたいと思います。
○政府委員(平賀健太君) 仰せの通りにいたしたいと存じます。なお施行令のみでありませず、これを実際に実施運用いたします際には、市町村に対しましていろいろの指導が必要な関係で、通牒式のものが出るわけであります。その中におきましても、十分に職権の濫用に亘るようなことがないように、個人の秘密を侵すことがないように十分趣旨をはつきりいたしたいと存じます。
○羽仁五郎君 然らばその施行令等においてどういう点において明らかにお示しになるつもりか。今日直ちに伺うということは或いは適当でないかも知れませんが、次の機会にそれらの点について列挙してお示しを願えれば大変有難いと思うのであります。それから又この住民票の使用につきまして、丁度統計委員会におきましてとられておるような態度が当然とられることと思うのでありますが、直接これを管理するのは市町村において管理をしておるわけであります。その例えばこの施行法を見ましても、施行法じやない、本法、登録法でありましたが、何人もこれを自由に閲覧することができるというところがありますけれども、それだけでよろしいのか、それとも市町村において管理しておる住民票というものをそれ以外のかたが見る場合の注意ということも私は必要じやないかと思うので、それらの点について次の機会にお示し頂けましようかその点を伺つておきたいのです。
○衆議院議員(鍛冶良作君) これをなおこのあとで施行令を作る当局に今の趣旨は十分わかつてもらいますが、私といたしましても、今のお説に従つてこの際当局に要望しておきたいことは、本法に記載したる以外のことを強制的に調べてはいかんと、これはまあ原則だと思う。更にそのこれを調べる際に、個人の秘密を仮に知つたとしても、これは厳重に保持すべきものである。これらの点が一番重要な点じやないかと思います。それからこの縦覧につきましては、これは随分議論があつたのですが、初めは利害関係あるものということになつておつたのですが、ところが衆議院ではそんな区別を何のためにするのだ、今あなたの議論と正反対の議論で、到頭それを取り除かれたのでありますが、これは仮に癩のお話でありますが、癩予防法ならばそれは当然示さんということが出ておりますから、そういうものは当然そういうことで制限されると思いますので、そのほかなお制限すべきものがあるならば、又研究してもらいますが、大体そういうことでいいのじやないかと思いますが、これは一つ今言われた何より大事なのは、この登録事務の講習みたいなことを先にやりますから、さような際に訓令要綱として掲げることと、それから施行令では今言うように特別のこと、これ以外のことを調べてはならん、仮に調べる際に秘密なことがわかつても、それはまあ秘密事務として厳重に保持すべきものである。かようなことは注意することが原則じやないか、かように考えておる。これは当局へも私から又申上げることにいたしましよう。
○羽仁五郎君 くどいようでありますけれども、その施行令、或いはその講習、その他頗る丁重になされることと思うのでありますが、残念ながら我々国会議員、或いは立法者はまだそこまで手が及ばない。そこに至りましてどういうふうになるかということを、只今我々が立法者として非常な危惧の念を持つということは、十分提案者も、又政府当局も御了解下さることだと思うのでありますが、で、我々の手の届かないところに問題を譲つてしまうのでありまして、私としては非常にその点、或いは国会議員の職責を完うしないものではないかというふうにさえ思うのでありますから、その点十分御諒察下さいまして、第一にはこの行政上の便宜ということによつて、基本的人権や、個人の秘密を侵すということがあつてはならない。この原則。それから第二にこの調査が、主としてその調査を受ける側の立場の人の自由なる記載ということが原則とならなければならない。で、虚偽のことを述べる、或いはその他のこと、いわゆる虚偽の事実を述べてはならないということによつて、自由なる記載の原則というものを侵してはならない。これが第二のことだと思うのであります。それから第三はこの住民登録法の使用が、これの用い方、又は閲覧が、そういう点において基本的人権や個人の秘密ということに立ち至つてはならない。これは私は三つの主なる点であろうというふうに思います。そうしてこれは決して癩ばかりの問題ではないので、現在の日本の社会状態とか、或いは又今後そういう点も考えなければならないというようないろいろな点もあろうかと思います。結婚の問題にせよ豪族の関係にせよ、その他の点で決してそれらの点で個人の秘密として侵すことの許されんものが私はあろうと思うのであります。で、そういう問題は一般にありますし、且つそれらは近代社会が成立し、発展して行く上の根本的な点に存すると思いますので、どうかその点について、只今政府委員並びに提案者の側から御答弁がございましたが、それらの御答弁は今私が述べましたような点について満足することのできるものであるというように了解をしてよろしいかどうか、もう一応伺つておきます。
○衆議院議員(鍛冶良作君) 御趣旨は十分尊重して善処するつもりでおります。
○委員長(小野義夫君) それではこの問題はこの程度で……。ちよつと速記をとめて……。 〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて……。今日はこれにて散会いたします。 午後零時二分散会