法務委員会 第12号
- 発言数
- 69 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/03/12
会議録
○委員長(小野義夫君) 只今より委員会を開きます。前回に引続き東大事件に関する件について調査を行います。なお只今政府から出席されておりますかたは、法務総裁、斎藤国家地方警察本部長官、柏村同警備部長、法務府特別審査局調査部長の諸君であります。なお文部大臣は只今差支えがありますが、後刻おいでになることになつております、御質疑のおありのかたは順次……。
○伊藤修君 私は法務総裁その他のかたがたに御質問申上げたいと思います。その前に法務総裁に一言申上げておきたいと思います。先般、即ち二月の二十三日と心得ておりますが、いわゆる憲法九条に対しまして、終日私から質問を申上げまして、なお質問が残つておるので、翌日質疑を申上げたいと申上げておいたのであります。然るに、法務総裁は他の委員会若しくは衆議院に御出席になつてお出でにならなかつた。その翌日も又委員会を開きまして、私の質問を継続いたしたいとかように考えておつたのにもかかわらず、これ又御出席がない。一体法務総裁は自己の所管事項を処理するところの大切な法務委員会に出席を怠つて、他の委員会に努めて出席されるそのゆえんのものが私にはわからない。若しそうであるとするならば、法務委員会において御所管事項に対しまして審議することは到底不可能なのじやないかと思うのです。又このまま審議は遅々として進まざるその結果は、法務総裁の御責任であると私は考えるのであります。若し御所管事項についての法案審議について不満足の結果を招来した場合においては、私は法務総裁においてこれは責任をとるべきものであると思う。我々はさような意見において法務総裁の御怠慢に対しまして、強く私はここで法務総裁に御意見を申上げておきたいと思います。でありますから法務総裁といたしましては、先ずこの法務委員会に御出席を頻繁になさるべきことを、この前も私は御忠告を申上げておいたのであります。勿論他の委員会も大切でありましよう。併し殊更法務委員会に出席のことはなおさら大切じやないかと思うのです。 先ず本日の質問といたしまして、第一にお伺いいたしたいのは、御承知の通り東大事件において逮捕の状況に関して詳細なる事項は御承知のことと存じますが、被疑者を逮捕する場合におきましては、刑事訴訟法の二百一条において逮捕状を示さなくてはならんと、こういうふうになつております。同条の第二項によりまして、七十三条ですか、七十三条の三項を引用しております。その場合には逮捕状がすでに発せられておつて、たまたま被疑者に面接した場合において携行していない場合の手続規定が定められておるのです。従つて逮捕状が発せられ、而もこれを携行しておる場合は、原則たるところの二百一条において処理さるべきことは当然のことであります。この逮捕状を示して然る後逮捕なされることが、いわゆる基本人権を保障するゆえんのものでなければならないと思います。逮捕状なくして濫りに逮捕するとか、逮捕状を持つておるにもかかわらずこれを示さずしてこれを逮捕する、こういうことが許されるということになりますれば、折角憲法において基本人権を保障し且つこれに伴うところの、重要附属法規であるところの刑事訴訟法において、その手続規定を強く示唆しておるにかかわらず、これにもとるがごとき手続を以て濫りに国民を逮捕するがごときは、私はそれ自体において憲法の保障するところの基本的人権を侵害するものと言わなくちやならん。およそ捜査の場合に当りまして、又被疑者を逮捕する場合に当りましては、たとえ被疑者といえどもそのもの持つところの基本人権を努めてこれを尊重して、いやしくも侵害の事実なからしめんことを期せなくちやならんと思う。然るに本件の場合におきましては、逮捕状を携行しておるにもかかわらず、被疑者にたまたま面接いたしましたら、いきなり飛びかかつてねじ伏せ、若しくは或いは本人がそこに横臥したかも知れません、いずれにいたしましても、直ちに実力逮捕の、実力行為に出でておる。後に至つて、遠方からここに逮捕状があるというようなやり方は、私は刑事訴訟法の要求するところの手続を乱しておるものと言わなくちやならん。或いは証言中には、口頭で逮捕状が出ておる、福井逮捕状が出ているのだ、こう告げたという証言もあります。併しこれは窮余の私は言葉であろうと思いますが、仮に百歩を譲つてこれを事実と認めましても、法律は口頭を以てせられることを許しておりません。示すと明らかに明記しておる。いやしくも人の人身を拘束する場合におきましては、最小限度法規の要求するところの手続を踏んで、然る後人の人身を拘束することが当然のあり方と思う。かような手続を踏まずして逮捕をするということは法務総裁として如何にお考えになるか、先ずこれをお伺いしたいと思います。附加えて逮捕する場合において、被疑者といえども、これを被疑者が武器を以て抵抗し、正当防衛的な性質において、武器を以てこれを防ぐ、若しくはこれに抗争するというやり方は逮捕の場合において見受けられる状態であります。然るに本件の場合におきましては被疑者は武器を持つていない。素手の被疑者で、ただ自儘に横臥したというに過ぎない。これを寄つてたかつて手綻をはめ、足枷をはめ、あらゆることをして棍棒で打ちたたくというがごときは、如何に被疑者といえども逮捕のあり方としてはその権限を踰越したものと言わなくしやなりません。厳格に申しますれば、職務の執行において踰越したもので、私は刑法上の責任を負わしむべきが当然じやないかと思う。仮にそれに至らずといえども、少くともさような方法は、法律の要求するところではあり得ないと思う。仮にこれらの関係者の証言によつてですよ、指をかまれたから、これを離させるために自衛的に福井の歯にひじが当つて歯が打ちくだけた、こういう供述がありますが、これはその供述自体に矛盾がある、静かにお考えになれば、すぐわかることで、自己の指を噛みつかれて、これを離さんとしてひじを張つたという場合において、そのひじがその歯に行くという自然の法則がどこに見受けられるでしようか。他人の歯を打ちくだくならばいざ知らず、くわえたものの歯をひじで打ちくだくということは自然法則に反するものである。従つてこの供述自体は虚偽であるということは疑いないところである。いずれにいたしましても、これらの供述を総合いたしまして考えましても、少くとも逮捕に際して、その人身に異常な損害を、損傷を与えておるということは顕著な事実、而もこれを留置した場合において、これに対して本人が申出ないから、要求しないからといつても、事実その負傷を現認しておるのに、係官がこれに対して医療手当を与えないということは、これ又人権蹂躪も甚しいと言わなくちやならん。こういう捜査方法を法務総裁は容認するのかどうか、先ずこの二点についてお尋ねいたします。
○国務大臣(木村篤太郎君) 逮捕する場合にはもとより正規の規定に準じてやるのは当然のことであります。今伊藤委員の申されるように、基本的人権を侵害するような処置をとつてはならんことは申すまでもないことであります。而してこの東大事件の現実の問題についての処置については、如何ような事態をここに引き起したかということについて或る程度の報告は私は受けておるのであります。併しながら実際に行なわれた手続、処置については私は詳細に検討いたしておりません。従いましてさような事実があるかどうかということについての断定的な意見は申上げることはできないのでありますが、その間において多少或いは法規に違反したような取扱いがあるのじやないかという疑いが持たれておるような次第でありまして、この点につきましては、目下法務府の人権擁護局において詳細な事実を取調べ中であるのであります。
○伊藤修君 私はそういうなまぬるい御返事を伺つておるのじやない。私の申上げた趣旨においてそういうことが許されるかどうかということを法務総裁に御意見を伺つておるのです。なお重ねてこれに対しては斎藤長官の御意見も併せてお伺いいたしたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今申上げたように、逮捕する場合には、法規の手続によつてこれは処置をしなければならん、こう申しておるのであります。法規の手続に反するようなことであれば、これは一種の人権蹂躪でありますから、もとより当然なことでありますが、その詳細なところは私において面接取調べたものでありませんから、さような事実か決定的にありということは断言できかねる。これは人権擁護局において目下調査しておるのであります。
○政府委員(斎藤昇君) 犯人を逮捕いたします場合には、逮捕状を持つておるならば、必ず示して後に逮捕しなければ違法ではないかというお尋ねが一点であつたのでありますが、お言葉の通り逮捕状を示して逮捕するのが、これは当然なことだと思います。併し状況如何によりましては逮捕状を示すいとまがないとか、或いは逮捕状を示すことによつてその逮捕状が掠奪される虞れがあるとかいう緊急の場合におきましては、逮捕状が出ておるぞと言つて逮捕をいたすより実際問題として私は方法がないであろう、かように存じております。それから被疑者を逮捕する場合には暴行をしてよろしいかどうか、基本的人権はどこまでも尊重しなければならないという点は、法務総裁からもお答えがありました通り、これは全くその通りだと思います。実際の問題といたしまして、具体問題といたしまして、如何に行われ、そのときの状況がどういう事態であつたかということは事実問題として調査をし、そうして訴追をせられる場合には、その機関によつて十分調査をいたされなければならない問題だと考えております。
○伊藤修君 只今の御両氏の御答弁によりますれば、その事実ありといたしますれば、いずれも違法性をお認めになつていらつしやるようです。ただ斎藤長官のお説では、実際問題としては止むを得んじやないかと、こういう実務家的なお答えがありましたが、或いはそうかも存じません。併し少くとも法がそう要求しておる以上は、やはり法の命ずるところに従つて職務の執行をなすことが当然であると思つております。若しそれが不自由であるというならば、先ず基本的な法の改廃を求めて、然る後実務に容易なる方法をとらるべきことが当然であると思います。法はさように基本人権の保障の全きを得んとしてかように厳格に規定している以上は、やはり法の命ずるところによつて職務執行をおやりになることが当然ではないかと思います。ただ職務執行に安易を求めて、これをみずから法を曲げて簡易に取扱われることは、私は法の忠実なる執行者としてはあなたのお言葉は私は承服しがたいです。なお今の問題に対しましては、法務府においても人権擁護局が活動されたとおつしやるのですが、遅きに失するとは思います。併しなさざるよりはよろしいですから、鋭意速かに努力されてその結論を得られることを切にこの際望んでやまない次第です。 次にお尋ねいたしたいのは、刑事訴訟法の百九十七条によるところの捜査に必要なる取調、この問題についてお尋ねいたしたいと思うのです。捜査に必要なる場合においては如何なる取調をもなし得るかどうか、又例えば本件の場合におきましては、治安の維持の目的のためにと、こういう前提をおいてその下にあらゆる調査がなされておるのでありますが、単に治安の維持のためという概念的な事実によつて、捜査の権限というものは無制限にこれが行えるかどうか。いわゆる百九十七条の解釈といたしまして、或る一定の犯罪事実、容疑事実、捜査の目標というものがあつてそのために捜査をする、そのために取調をするということは許されると思うのです。ただ概念的に、抽象的に治安の維持のためというだけで以て私は繁りに捜査をなし、取調をなすということは、百九十七条においては許されざるところと思います。これは確かに異論はあります。異論はありますけれども、今日の通説としては、犯罪若くは容疑の目的のためということが私は通説と考えておるのです。然るに本件の場合においては、東大事件につきまして単なる治安のためと、そういう概念の下に学生の行動を調査したり、或いは教授の身辺を調査したり、思想の動向を調査したり、そういうことが果して許されるだろうか。果してそういうことが治安という概念の下に許されるといたしますれば、国民のすべてが治安のためにその身辺を捜査されることを是認しなくちやならん。政党員のすべてが身許を調査せられることを是認をしなくちやならん、尾行されることを是認しなくちやならんのです。さようなことを法律が許していることはあり得ないことは、百九十七条の解釈上当然私は明らかなことと思うのです。この点に対するところの法務総裁の御見解をお伺いしたいのです。
○国務大臣(木村篤太郎君) 治安の維持のためだというだけで以て、捜査を開始するということは私もできないと考えております。もとより当然であります。捜査は或る犯罪事実を対象として捜査を行うべきである、これは当然なことであります。そこで具体的の問題については私はよく存じておりません。従いましてどういう捜査をしたかということも存じ得ませんが、或る治安を棄したという一つの具体的事象を対象としての捜査はあり得ることであつて、本件の場合はそういう事証があつて捜査をしたかどうかということについては私は存じておりません。
○伊藤修君 只今の法務総裁のお言葉は、私の考えておる解釈と同様に思われるのです。勿論本件において具体的な事実としてどういう治安撹乱の問題が、容疑事実があつたかということは明らかになつていないのでありまして、従つて私はその前提として本件の捜査は法的において違法である、こう考えられるのです。それは後の我々の結果を引出すところの一つの根拠として強く示唆しておきます。 第三にお伺いしたいことは、一体本件東大事件において明らかにされたところの各警察官の日常行動の帰結というのは、そのことごとくが教授、学生らの行動であるとか、或いは思想的な背景、思想の動向そういうもの並びに或いは会合のあり方内容というものについての調査がなされておるのであります。これは全文を御一読になれば、容易に認識し得るところの事実であるのであります。これが今日警備という名を以て行われておる、警備の職務内容として当然な職務遂行であると称せられて、下級官吏であるところの警察官はそれを自己の職責と心得て忠実にこの職務を遂行しておつたのであります。これは争えない事実であります。衆議院においてはこれは否定されておりました。その否定の下に衆議院の結論というものは出されて、いわゆる偽証の証言で結論が出されておりますから、衆議院はこの点において結論したものについては大きな誤りがあると思います。幸いにして参議院においては、これらの係官らが各委員の懇切なるところの意見に従つて事実を表明して全貌を是認した。従つて本件については、これが職務行為として行われ、而も命令を受け、上司に報告し、その報告は署長から本庁に報告され、それから先は或いは国警に報告され、或いはGHQに報告されておるか存じません。いずれにしてもそれぞれの関係方面に報告しておることと存じます。いわゆる国家地方機構として警察職務執行行為の中に今日かような旧憲法時代におけるところのいわゆる特高制度というものが容認されておるということは我々不可思議に堪えないのであります。過去におけるところの我々の国民生活のあり方の上において、如何に日本の特高警察が禍されたかは、ここで私が申上げるまでもなくよく御承知のことと思います。その弊害、それによるところの国家の前途に大きな誤りを生ぜしめたことは世界において認められておるんです。いわゆる警察国家としての大きな非難を受け、遂には占領治下において未曾有の警察機構の改廃を命ぜられておる。而もこれらの特高に関係した人はいずれも追放されておる。かような国家有害な職務行為の遂行は、我々は新憲法下においては完全に払拭されたものと考えておつた。然るに本件東大事件において、たまたまこれが明るみに出されて、我々はその意外さに驚いた次第であります。かような事実が今日公々然として行われておるということは不可思議に堪えないです。かようなことを一体アメリカさんが命じたのか、或いは日本の政府がみずからこれを遂行したのか、その点に対するところの法務総裁の御答弁をお伺いし、それから特審局長のこの点に対するところの御答弁を要求するものであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今警察手帳のことについて御質問がありましたが、私はさようなことを命じたことは断じてありません。ただその警察手帳に記載されている内容如何について、如何なることの取調べの事実をそこに記載したのであるか、その目的その他の点については私は何ら関与していないのであります。その詳細については十分ここで述べることのできないことを遺憾と思います。
○説明員(吉橋敏雄君) 東大事件につきまして、その内偵捜査を特審局から警察に命じたことはありません。
○伊藤修君 それでは斎藤長官に一つ御答弁をお願いいたします。
○政府委員(斎藤昇君) 私のほうにおきましても、具体的の問題をとらえまして、この東大事件に関連いたした事項に関しまして調査を事前に要求しておつたということはございません。ただ先ほどいろいろ御意見の中にありました警察活動の中には、犯罪の予防、或いは鎮圧、こういつた広い意味のいわゆる治安維持の活動があるわけでありまして、只今特高警察の再現をやつているというお言葉でありましたが、警察活動といたしまして特定の思想自体を犯罪対象として活動をする、或いは特定の思想を統制をするという目的で警察活動をするというようなことは、まさしく只今おつしやる特高警察であろうと考えまするが、只今警視庁におきましても私はさような目的で警察活動をしておるとは全然考えておりません。この点は私は明瞭にいたしておきたいと考えます。
○伊藤修君 そうすると、只今法務総裁及び斎藤長官並びに特審関係のかたがたにおいて、いずれもさような指示をしたことはないと、又さようなことはやつていないというお説であるといたしますれば、まさしく本件の場合においては警視庁が単独において、自己の責任において自ままにこういうことをやつているという結論になりますか、その点はどうですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 自ままかどうかは存じませんが、少くとも我々はさようなことを指示した事実はありません。警視総監がみずからの責任において或いはやつておるかもわかりません。我々のところにおいては関知いたしません。
○伊藤修君 然らばさような地方自治体警察の職務のあり方に対しましては、政府としてこれに対して阻止するとか、これを絶滅するとかというお考え方はどうですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 御承知の通り今の警察法におきましては、自治警察に対しては国警も関与することはできないのであります。従つてこれらの問題を、今伊藤委員の仰せになるように根本的に解決するということになれば、或いは警察法の機構の改革も考えられるわけであります。我々といたしましては何ら自治警察について関与することはできないのであります。
○伊藤修君 勿論法的において指導監督するという権限は持たないことは了承しております。併しおよそ国家のすべての責任を預るところの政府といたしましては、国民生活のあり方について、又憲法の、忠実なる公僕としての憲法を守る立場からいたしましても、政府はこういう事項が若しあつたといたしますれば、これに対しまして勧告なり示唆なり、そういうあり方に対して指導をとるべき私は政治的な責任というものはやはりあり得るものと考えますが、その点はどうですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 政府としては、さような点について適宜私は勧告なり或いは示唆なりを与えて行きたいとは考えております。
○伊藤修君 然らば本件の問題に対しまして、政府は若しありといたしますれば……あるかないか、政府みずから御調査もなさらなくちやならんと思うのです、そうしてあつた場合におきましては、どういうふうな御措置をおとりになるおつもりですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今申上げました通り、人権擁護局においてこれを調査しております。その結果を以ちまして警視総監なり何なりに勧告なり指導なりを与えるべきであろうと、こう考えております。
○伊藤修君 次に一体警察……これは斎藤長官にお伺いします。が、警備と称せられる職務行為の範囲、これをお伺いしたいのです。
○政府委員(斎藤昇君) 大まかに申上げまするならば、犯罪行為を警察の実力行使によつて鎮圧をする、又できるならばそういつた実力行使を使わないで未然に防止をする、これをなすために必要な事前のいろいろな情勢の動き、犯罪を、実力行使をしないで事前に防止する方法、及び実力行使を以て鎮圧する各種の具体的な活動、そういうようなものにあると考えます。
○伊藤修君 然らば今お述べになつた警備の内容の下において成る特定な人、例えばそれが教授であるとか或いは学生であるとかいうものを尾行したり、或いはこれを思想の調査をしたり、これらの行動に対するところの常に監視を怠らない、こういうことがその職務行為の内容として取行うことが適法でしようか、どうでしようか。
○政府委員(斎藤昇君) 身元調査も場合によつては必要なことがあるであろうと思います。具体的にあの手帳の中に書かれておりました身元調査は、そのためにやられたものであるかどうかは私は存じません。むしろそうでないであろうと考えております。身元調査は、今まで慣例といたしまして関係各省からいろいろ照会があつて、人を採用するとか、或いはいろんな場合に本人の職業、或いは住所、或いは前科があるかないかというような照会をよく受けるのであります。その目的が妥当であるならば警察は人権を侵害しない方法で身元調査をいたしておるのであります。殊に営業、警察の許可なんかの場合なんかも身元調査をいたしておるのでありますから身元調査は非常に広い範囲で常識的に行われておるのであります。尾行、張込の点は、私は先ほど申しました意味合いにおきまして、治安の状況がどういう状況であるか、近く何らかの治安を紊すような、いわゆる警察が実力行使をしなければならんような、そういつた犯罪が起りはしないかどうか、特定の、特殊の犯罪が起りそうな社会状況にあるかどうか。そういうような場合に必要に応じましてやる場合があるのであります。例えば米騒動が起りそうだというような社会の情勢の下におきましては、米騒動の中心になりそうな人たちは、どういう動きをしておるであろうかということは、やはり十分調査をしなければ責任が果せないのであります。ただそのやり方の、或いは聞込み、或いは尾行、或いは張込みという、この手段につきましては、どこまでも個人の自由を奪つたり、或いは人権を傷つけたり、さような方法でやるならば、これは職務の、職権の濫用になる。人権擁護局の調査の対象になり得ると思いますが、併しそうでない許された普通の方法におきまして尾行、張込み、或いは聞込みが行われますることは、こういつた面における警察活動におきまして、私は必要なことだと考えるのであります。
○伊藤修君 私はお説を承わつておりますと、何らか東大の中には、いわゆる例として話したように米騒動が起ると同様に、東大の中には思想的な険悪な情勢があつて、或いは共産党のいわゆる地下活動の一端、表面に現われた一つの事実として、そういう意味において治安の、捜査の対象になるというふうに伺われるのですが、然らば東大にさような一体事実が瀰漫しておるのかどうか、或いは一部学生の蠢動が少くないのか、それが国家治安に対してどういう方向に進みつつあるかという、その容疑の事実についてお尋ねしたいと思います。
○政府委員(斎藤昇君) この具体的の点は、先般の法務、文部共同の委員会におきまして恐らく警視総監が詳細に述べられたことであろうと考えます。私は東大の学生は、警視総監の言いますのと同じように、殆んど大部分は善良なる学生であると考えます。ただその中に一部非合法の共産党フラクが結成をせられているという虞れは濃厚であるということは事実であると思います。
○伊藤修君 私は今日の日本の法制下におきましては、共産党の一つの細胞があり或いは結成されておるということだけでは犯罪容疑の対象とならんと思います。これらがいわゆる直接行動に出でる、暴力に出でる、これに対しましては断乎として取締る必要があると思う。ただこれらのものが思想的に蠢動をし、いろいろな国家の……現在の日本の政治情勢から考えまして、これが否なりとする共産主義、これに対する研究とか、これに対するところの集いとかということに対しまして、私はそれが即治安に関係あるとは考えられないのですが、それとも東大においてさような暴力行為に出でて、国家治安を撹乱をするところの一つの温床となる恐れがあつたのかどうか。この点に対する国警に対して報告があつたかどうかお伺いいたしたい。
○政府委員(斎藤昇君) 東大の中の何らかの拠点が日本の国を今にも顛覆するようなそういつた温床にあるとは考えませんし、さような報告も受けておりません。警視総監はどういう答弁をいたしましたか、又どういう考えでやつておられるか、私はここで私の口から申述べるわけには参らないと思いますが、併し目前に火がついておりませんでも、最近のいろいろな情勢から、そういつたような事柄について成るべく耳と目を働かして、実情はそんなに心配する必要があるのかないのかということをはつきり認識しておるということは、私は警視総監の責任として当然であろうと思います。心配があるのかないのかわからない、どういう状況であるのかわからないという状態ではおられませんので、さような意味合いから軽い気持で内部の状況がどういう状況であるか知つておくということにつきましては、私はあながち非難をするわけにはいかない。むしろ当然のことであろうと考えます。ただ学園は学問の研究の場であると同時に、生徒の教養の場でありまするから、さような活動をいたしますにつきましても、できるだけそういつた点を尊重しながら、警察の責任を果して行くというようにいたさなければならないものであろうということは、警視総監同様に私も考えておるのであります。
○伊藤修君 勿論国家の治安を預るところの大任ある皆様としては、あらかじめいろいろな情勢を知つておくということはこれは当然のことであつて、まさになすべきことだと私は考えます。これは斎藤長官とは同意見です。併し知るのにはおのずから限度がある、方法において限度がある。許さるべき限度がある。これは方法において無制限であるとは言えないのです。やはり日本の定めておるところの法規の枠内において、これが許さるべきことであろうと思う。国家の将来を慮つてこれを知らんとするに汲々として、知らず知らずに基本人権を侵すがごとき行動に出でることは、これは私は容認できないと思う。本件の場合においては、職務に忠実ならんとして、あなたの仰せになるように、東大の治安のあり方について、あらかじめその知識を知つておくという、この職務の忠実に急にして、法律の許さざるところのいわゆる尾行であるとか、張込みであるとか、思想の動向の調査であるとかいう行為に出ることは、まさに私は許さるべきことではないと思います。聞くところによると、或る政党のかたがたが、尾行のことは本人が知つていないのだから基本人権の侵害にはならんと、誠に迂遠の議論を述べていられるらしいのですが、本人の知ると知らざるとにかかわらず、尾行されるということは、この客観事実がやはり基本人権の侵害になる。法務総裁にしたつて、あなたにしたつて、尾行がついておるとして、いい気持がしますかどうか。精神的意味においても、対外的意味においても……。若しかようなあり方が是認ざれるとするならば、我々は旧憲法治下におけるところの生活を再び復元されたと認めなくちやならんのです。だから私はそういう限度を優越したあり方において、今あなたが仰せになるような将来の知識を得るという方法はとるべきでないと思います。これは厳にして戒めて頂きたいと思います。私はなおお尋したいことがありますが、他に御質問のかたもありますので、この程度で一応私の質問を打切つておきます。 〔羽仁五郎君発言の許可を求む〕
○委員長(小野義夫君) ちよつとその前に申上げますが、法務総裁は三時から止むを得ざる用件がありますので、どうかそれまでの御質問を法務総裁に……、それから文部大臣も成るべく早くということでありますが、若干の時間を延ばして頂いて、あと文部大臣に、或いは関連しておれば御両者一緒に御質問なさることもいいと思います。
○羽仁五郎君 警視総監は今日どうして見えないのですか。
○委員長(小野義夫君) 今日は警視総監は来て頂くことになつておりません。
○羽仁五郎君 最初に法務総裁の御所見を伺いたいのですが、法務総裁は去る五日に、新聞に書いてあるところだと公安係検事というのがあるらしくて、それにしても公安係検事というのはそもそも如何なるものであるか伺つておかなければならんと思うのでありますが、それは別問題としまして、その会議に臨まれて大変立派な訓示をなさつたのじやないかと思つておるのですが、新聞の伝えるところが事実であるのかどうか、それを先ず伺つておきたい。新聞に載つておりました文章を読みますと、法務総裁はこういうことをおつしやつたように読むのですが、「検察の運営は飽くまで法律家の立場を守り、その範囲をのりこえぬように注意せねばならぬ。思想そのものの取締りに陥つたり、いやしくも憲法の保障する基本的人権を侵害するようなことがあつてはならない。」こういうことをおつしやつたというふうに新聞で読んだのですが、その後に本部のほうにその訓示の写しを頂戴するようにお願いしておつたのですが、まだ頂けないので、こういうことをおつしやつたのかどうか、それを先ず伺つておきたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) その通りのことを訓示いたしました。
○羽仁五郎君 私はこれを拝読して実は非常に感動したのであります。最近法務総裁がこういうような訓示をされたことは殆んどない。専ら共産党なり或いはその他の取締を激励する、場合によつてはハツパをかけるような訓示はたびたび新聞その他で伺つたのですが、こうした非常に高通な訓示を伺つたことは近来稀れであるので、国民もそれに対してどれほど意を安んずることができたかわからないと思うのであります。深く感謝をして置きます。つきましてはこの訓示は勿論一片の訓示に終るべきものじやない。従つて思想そのものの取締に陥つたり、いやしくも憲法の保障する基本的人権を侵害するようなことが検察官或いは警察官において行われた事実がある場合には法務総裁はどうなさるか、それを伺いたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) 十分にそれを是正するように更に訓示なり指令なり出したいと、こう考えております。
○羽仁五郎君 じや次に伺いますが、この思想そのものの取締に陥つたり、いやしくも憲法の保障する基本的人権を侵害するようなこと、それに並びまして、我が憲法が保障しております基本的人権、こういうものが、憲法第九十九条の命じておるところの、これらの憲法の条項に忠実であることを命じておる公務員によつて犯された場合には、これは法務総裁は重大なる犯罪というふうにお考えになつておいでになるのかどうか。世間では、今までの日本では、殊に敗戦前までは国民が犯したところの罪は、比較的に重大でない法律乃至その他のものの違反でありましても、実に厳重に追及せられた。併し新憲法の下においては、公務員がみずから憲法の命令に違反するということは重大な犯罪じやないか、そういうふうに考えるべきではないのか。公務員みずから、これは総理大臣初め閣僚その他我々国会議員又裁判官その他の公務員がみずから法を犯して、而も最高法規である憲法に忠実たる義務を失つて、どうして国民の法律、或いはその他の社会の秩序を維持し、忠実にこれに従うということを責めることができるかというふうに怪むのでありますが、念のため法務府の人権擁護局その他から、いろいろ資料を頂戴しておりますが、この公務員による人権蹂躙或いはこの憲法の保障しておるところの基本的人権の侵害、或いは思想そのものの取締りというような点で、それが立派に告発せられ、そうして立派に処分を受けておられるという例が誠に少いのじやないかと思うのであります。私は法務総裁がその要職におられる、その最大の使命は、日本国憲法というものの趣旨の徹底にあるだろうと思うのであります。区々たる取締りのことではない。最高の地位におられる法務総裁としては、日本国憲法の徹底とそうして日本国民が真に民主主義というものの確信を抱く、これは先ほど引用しました法務総裁の前段の御趣旨にもあつたようであります。公務員が特に民主主義の確信を持つていなければならない。その民主主義の確信とは、具体的には日本国憲法を忠実に守り、そうしてこれによつて国家と国民の幸福が実現できるのだという、その信念だろうと思う。従つてそれに背くことは、国家と国民の幸福を破壊するものである。いわんやそれが公務員によつてそういう行為がなされた場合には、必ずこれに対して法務総裁として、絶えず注意を怠らず、厳重に監視せられ、そうしてこれが告発せられ、そうして立派な処置が受けられることに対しては重大な関心をお持ちになつておると思うのでありますが、如何でございましようか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 御承知の通り我が国民は、公務員たると国民たるとを問わず憲法を守つて行くのが当然の義務であります。そこで憲法に即して各種の基本人権を守るべき法案が出ておるのであります。刑事訴訟法然り、刑法然り、いろいろなものの上においてこの基本的人権を守るべき一連の法律というものは出ておるのであります。それを犯した場合には、その法規に基いて処置すべきは当然であります。それで公務員が各法規に違反した場合には、又その公務員を処罰すべき法律に基いてこれを処置して行くということに相成るものと、こう考えておるのであります。
○羽仁五郎君 法務総裁が就任せられてまだ間もないことでありますから、或いは御就任以来はまだそういう事実がないのかもわかりませんが、思想そのものの取締りに陥つたり、憲法の保障する基本的人権を侵害したりする検察官なり或いは警察官なりは、今まで多々あるのではないかということを私は非常に虞れるのであります。併しそれらのかたがたに対して適当な措置がとられることが又殆んど絶無ではないかと思うのであります。先日来特にこの東大事件に関して、我々が証人に来て頂いて証言をして頂きます際の印象といたしましても、公務員が基本的人権を尊重し、いやしくも思想の取締りに陥ることがあつては大変だということを強く念頭に置かれているようには見受けないのであります。そしてむしろそれよりもずつと程度の低い眼前の区々たる取締りというものに置いて、その目的を果すためには、この最も高い憲法の命じておる義務に違反するということも殆んどみずから意識していないのじやないかと思えるようなのが現状じやないかというふうに考えるのでありますが、どうか御在任中において、そうした旧弊、而もこれは明治、大正、昭和と長い旧弊でありますから、急に直ちに、一朝にして解決をして頂くということを勿論期待するわけではありませんけれども、どうか一刻も早くそういう点について、この去る五日になされましたる尊敬すべき訓辞の趣旨が実現せられまして、単に一片の紙片に終らないことをお願いするのであります。 次に伺いたいのは、これは法務総裁と文部大臣とお二方の所見を伺いたいと思うのでありますが、先ほど伊藤委員も言及せられましたように、現在衆議院の法務委員長がどういう手続でなさつたのかわかりませんが、新聞の伝えるところによりますれば、最近の東大事件について調査せられた結果、次官通牒を改めるというふうな勧告をされたというようなことが伝えられております。併し先ほど伊藤委員が指摘せられましたように、我々は参議院においてこの調査を行つておりました過程において、衆議院において参考人が述べられました供述書というものには多多虚偽がある。我々はそれらについて偽証というようなことを目的とするのではなく、真相を明らかにするために参議院で慎重に事実を追及したのでありますが、そこで法務総裁並びに文部大臣に伺いたいのは、このように現在問題になつております東大事件というものが、一つはそれに関係する公務員、国民も勿論でありますけれども併し公務員が特に憲法及び法律を尊重しなければならない、それらの人々は虚偽を述べ、それに基いて何びとかが何らかの結論を出すというようなことは、却つてこの大学の自治、或いは学問の自由、或いはそれらに関連したさまざまの点において非常な不安を招く虞れがあるのではないか。この点について法務総裁は現在次官通牒というものに対してどういうお考えをお持ちになつておられるか。又文部大臣がどういうふうにお考えになつておられるか、その一点をお二方から伺いたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) 御質問の点は誠に私は結構だと思います。ここではつきり申上げておきます。そこで先ず私はいささか時間を取るかもわかりませんがお許しを願いたい。東大事件のそもそもの発展から私は追及しなければいかんと思います。もとより私は学問の自由は尊重しなければならん。いわゆる何らの勢力の影響を受けずして真理を探求し、事実を蒐集する自由を、これは尊重しなければならん。而して学校というものは学問の自由の場であり、教育の場であります。而して学校はどこまでも中立性と自主性を保つて行かなければならんと私は考えています。教育基本法第八条を見ましても、学校は何らの政党を支持してはいけない、又支持せざることの教育を施したり、政治活動をしてはならん。これは教育の根本を規定しているものと私は考えます。どこまでも学校は中立性と自主性を保つて、そうして学問を自由にし、そして教育をして行く場であらなければならない。若しも、万一にも校内において或る政党を支持し、又別の政党を支持し、又別の団体を支持するというようなことがあつては、これは学校は混乱を引起すのみであつて、本当の教育というものはこれは施すことができないのであります。そこで学校の管理者たる者はこの点に思いを及ぼしまして、ただただ学問の自由と教育の場を守つて行かなければならん、一党一派に偏しては相ならん、さような教育をしてもならなければ、又そういう活動の場であらしめてはいけないのであります。私は学校の自治をどこまでも尊重したいと考えます。併しながら自治は放恣ではありません、責任を持たなければならん。この教育法第八条の基本精神を学校の管理者はどこまでも守つて行くだけの責任がなければ、学校の自治というものはこれはみずから破壊するのであります。然るに不幸にしてこれまでの東大の学内を見ますると、共産党の細胞組織があつたのであります。これは解散をされました。併しながら秘密細胞というものは今あるやに聞いております。かようなことであつては大学の自治というものはみずから破壊されるのであります。若しもかようなことがありますると、又々これに反対する或いは極右の団体の細胞組織がそこに営まれる。いろいろな政治団体が分派行動をその学校の学内に行われるということであつては学校の中立性も破壊され、自治も破壊されるのでありますから、そこに十分に学校管理者たるものは責任を以て、かような場を持つて行かなければならんと私はこう考えておる。その熱意と責任が、私は学校当局者に望みたいのであります。而して私は学生諸君にも期待いたします。私も長年の間学生生活を送つて来たのであります。学生の心理はよくわかつております。学生はとかくレジスタントになる、反抗心を持つております。我々も学生時代大いに反抗心を持つていた。この反抗心は青年の心理であつて、一応私は認めてやりたい。この反抗心がなければ向上も何もしないのです、併しながらその反抗心がややともすれば或る種の者に利用される危険があるのであります。ここが私は十分に警戒しなければ相成らんと思います。私は、これは余談でありまするが、我々大学の校内にあつたときにはみずからの手によつて本郷を守つたのであります。大学の校内ではない、三丁目四丁目までの地廻りや不良青年は一切あそこでは絶滅したのであります。我々の手によつて絶滅したのであります。私はそれだけの、学生に気慨を持つてもらいたい。而して私は特に学生諸君に望むのは、この自分の手によつて民主平和社会を建設して行くのには、どこまでも暴力というものを振つてはいかん。暴力は絶対に振つてはいかん。そこで仮に警察官がこの取締の任に当つて行き過ぎた行為があるとするならば、堂々と警察署長なり警視総監なりに私は抗議を申込んでよろしい。それを学生が多数を頼んで巡査を吊し上げにして暴力を振うに至つては言語道断である、かようなことは民主主義、平和主義の立場において絶対に許すべからず。私は学生は卑怯だと思います。そこは慎まれたい。かようにして私は初めて学校の自治も許され、中立も許され、学内の諸君も世間からの尊重を受けるのであります。そこで私はどこまでも学校当局者と学生はみずからの手によつてこれを、学問の自由、学内の秩序保持ということを私は護ることが責任であると、こう考えております。そこで矢内原学長のごとき、私は尊敬しておる一人であります。立派な学者であります。恐らくこの人の手によつて今後の東大の様子も変るであろうかと考えております。そういうことを期待しております。ただ不幸にして今度の東大事件ができたのでありまするが、これは私は「雨降つて地固まる」ということになれば極めて幸いなことであろうと、ありたいと、こう私は考えております。そこで根本の御質問の、この二十三年の十月八日文部次官からの通牒であります。これは実に私はよくできておると思つております。これはこのままあつてよかろうと私は考えております。どうかこのままであつて……、ありたいとこう考えております。それで我々といたしましては、十分に今後学校当局者においても学生諸君においても、みずからの手によつて学問の自由を護り、教育の場を護つて頂きたい。個々のことは警察に対しても今後十分に慎重に学生諸君を取扱うように望む一人であります。どうかこの次官通牒をそのままでこれは尊重されて、これを守り抜かれるように共々努力いたしたいと、私はこう考えております。
○国務大臣(天野貞祐君) 次官通牒はそのまま私は維持したいと考えております。併し概念規定等が不明瞭で、いろいろこれははつきりしない点があるというような警察のほうのお考えならば、いつでも相談に応じますが、併しその線はそのまま維持する考えであります。
○羽仁五郎君 只今文部大臣並びに法務総裁から、この際次官通牒をいじるというふうなことはしないという御答弁を頂いて、この無用な不安を一掃し得たことを非常に仕合せに思うものであります。 なおその点について念のため法務総裁にも伺つておかなければならないと思うのでありますが、私は念のため諸外国の大学の実際の実情を至急に、又改めて調査をしてみまして、アメリカの大学については、日本の現在の司令部の法務局にもそういう専門家もおいでになるので、そのかたの御意見をも伺つてみました。それらの中にこういう一節がございました。これは例えでございますが、大学の中で学生が赤旗を立ててそしてデモ行進をやつた場合に警察はどうするかという問題について、それらの事実について真実を出す能力とそしてその資格があると考えられるかたの御意見に、そういう際にも警察は何にもしない、それがアメリカの大学の実情であるというふうに言われております。これは一つの例でありまするが、なお、法務総裁も勿論お読み下すつたことだと思いますが、この三月三日の朝日新聞が社説で大学の問題について論じておられます。その中に「命令や強制でどうにもならぬ、学問の研究であり、教育である。」……。で、学問の自由、思想及び良心の自由は「法律をもつてしても、みだりに制限はできないのであるから、都条例でこれらの自由を侵していいはずはなく、文部官僚でも、警察公務員でも、これを侵す権能をもつはずがない。」……大学生の思想運動については「学問もあり、教育の経験も深い、大学教授」や、その選出する学長に任せることが最もよろしい。「学長や教授は信頼できないで、文部大臣や警視総監のほうが信頼するに足るとするのは何故であるか。」「かつて配属将校を置いたように、大学高等学校に配属警官でも置かなければ安心できないのであるか。」というように切言をしておられる。同時に又日本タイムスも同日社説を以ちましてこの問題を取扱つて、そしてその結語として、我々は思想警察又特高警察の復活を決して許さないというように痛論しておられる。これらの点も法務総裁は十分考慮しておられることだろうと思うのであります。 なお文部大臣にこの際一言伺つておきたいのは、次官通牒につきまして、我々が衆議院の法務委員会における参考人の意見を聞いておられるこの会議の模様を傍聴しておりました際に、国会議員の中にも、この次官通牒というものは法律でもなければ条例でもない、これは何でもないんだというようなことを言つておられるかたがございました。併しながらこれは法務総裁からも或いは所見を伺つておいたほうがいいかと思うのでありまするが、日本ではとかく成文法というものだけを尊重し……、これは戦前からの悪風で、日本にはいわゆるコンモン・ローというものがない。成文法しかない。このことが如何に日本の法生活というもののレベルを低くしておつたか……。で、成文法と並んで慣習法というものがあるのであり、又社会の慣習というものが法と並んでその権威を示し、それを尊重せらるべきものがある。これらの点が日本では十分考えられないで、法律にないからやつてもいいんだ、或いは法律のどこにあるか、これは法律でもなければ条例でもない、何でもないんだというようなお考えがあることをこの際一掃せられる意味におきまして、法務総裁及び文部大臣に伺つておきたいのでありますが、次官通牒は、日本及び国際社会の長期に亘る大学の自由のための闘争、闘い、その間にはさまざまの事件があり、それらの事件が或るときは不当に導かれ、或るときは正当に解決され、その一つ一つの記録を今日我々が読むだけでも、その当事者の並々ならぬ苦心と努力、それこそ汗と血と涙とを以て築いて来たところの慣習、大学の自由についての慣習、その一部分がその次官通牒に現われているのだというように私は了解するのでございますが、文部大臣並びに法務総裁はこの点についてそういうふうにお考えになるのでありますか、或いは違つたまうにお考えになるのでありましようか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 羽仁議員の仰せのごとく、とかく日本人は法律でなければ遵守しなくてもいいんだというような傾向の気持のあることは誠に遺憾であります。たとえ法律でなくても立派にできた慣習なり、慣習法なりというものは尊重して行かなければならん、私はそう考えます。そうしてこの次官通牒、これも羽仁委員の仰せになつたように、これは並々ならぬ苦心でできたものと私はこう考えております。かような次官通牒が出た上は、それは学校当局も文部省も責任を以てこの方針を遵守して行く、これだけの責任と熱意はあつて然るべきであろうと、私はこう考えております。 甚だ失礼ですがちよつとほかに行かなくてはならないので……。
○羽仁五郎君 先ほどの伊藤委員の御発言の趣旨もそういうふうに御考慮を賜わつて……。でないと……。
○一松定吉君 まだ法務総裁に聞きたいことがあるので……。
○委員長(小野義夫君) ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて。
○羽仁五郎君 それで、先ほども伊藤委員からも御質問がございましたが、今回の東大事件に関係しまして警察側がとつていることに憲法の趣旨から見まして、許すべからざることがあるのではないか。若しこれがあるとすると非常に重大な問題である。これに対しましては法務総裁も衆議院で猪俣浩三議員からの質問をお受けになりまして、当時の御答弁を私も傍聽しておりましたが、各教授並びに大学の学生に対して人権を蹂躪するがごとき尾行をしたり或いは身元調査をしたり、或いは大学の教室に不法に立入つて講義を聞いておるというようなことがあるならば、自分は許してはおかないという非常に立派な答弁を猪俣議員に対してされておるのでありますが、それ以来かなり日が経つております。今日まで……それでいやしくも基本的人権というものが蹂躙されるということは、そこに火事が起つたとか或いは殺人があつたということと私は同じに、或いはそれ以上に重大なことだと考えるのであります。基本的人権が徐々に蹂躙され、それが大した問題でないようになつて来ると、その結果は実に驚くべき侵略戦争も起ろうし、或いはファッシズムも起つて来る。これは実に重大な問題でありますが、法務総裁はその職責から決してこれは等閑に付しておられるべきではないと思います。本日も又それについての御調査の結果に基いての御発言を伺えなかつたことは私は非常に遺憾に考えております。人権擁護局でも調査を開始せられたということを本日新聞で読みまして、私は非常に感謝したのでありますが、先ほど伊藤委員も言われたように甚だ遅いという感じは国民として隠すことはできませんが、どうかこういうような重要な問題につきまして、一刻も早く結論に到達なされまして、そうしてその処置をおとり下さり、又我々に御説明をして下さることをお願いしておきます。
○委員長(小野義夫君) 文部大臣が御出席でありますからどうぞ……。
○羽仁五郎君 先ほど国務大臣に御意見を伺うように申上げておきました。
○国務大臣(天野貞祐君) 次官通牒は決して法律ではございませんけれども、法規を施行するための協約と言いましようがそういうものだと存じております。併しこの協約は突然できたものではなくて、長い歴史、慣習を背景としてできたもので、どこまでも尊重されなければならん。かように考えております。
○羽仁五郎君 その点につきまして、実は先日文部、法務連合委員会におきましても、大学局長の御答弁を伺つたのですが、文部省の御答弁としてもどうも少し弱いのではないか、この日本並びに世界の大学が個々の事件について争いを経て、そして築き上げて来たところの慣行というものの一部分がこの次官通牒に出ているのだという点が、なかなか先に法務総裁がお認めになつたように、日本の今までの弊風で、成文法の背後に慣習法があり、その慣習法の背後に事実がなければならん。そういう点についての認識が一般に足りないことを私は恐れるので、なかんずく文部省がこの点について只今私の申上げましたような点において若し御同感であるならば、そういう点を十分に強く明確に常に示されたいということを希望するのでありますが如何でございましようか。
○国務大臣(天野貞祐君) 御説の通りだと思います。
○羽仁五郎君 その通りというのは……、私は文部大臣ではないので……、あなたが文部大臣なんでありますから、(笑声)私一議員がそういう点で述べましても一議員の意見というものにとどまります。どうかこの席におきまして、文部大臣から只今の点について、私が、我々が、又国民が以つて大いに足れりとするような識見を示されたいのであります。
○国務大臣(天野貞祐君) 私は先ほども申しましたように、この次官通牒というものは長い歴史を持つている。そういう慣習の上にできたものだということにおいて、羽仁委員のお考えと私は一致していると思います。従つてこれはどこまでも守つて行くべきものである。こう考えるのでございます。
○羽仁五郎君 これは文部大臣に伺いたいのでありますが、この大学の自由、或いは思想の自由、今お述べになりましたように歴史的に確立せられたる……、而もその一つ一つがあらゆる意味において忘れることのできない苦心の結果確立せられたる慣行である。そういう点から特に伺いたいのでありますが、先ほども法務総裁の御意見の中にも或いはそういう誤解を招くのじやないかと思う点がありますので、この際文部大臣の御所見を伺つておきたいのでありますが、この最近の、これはいわゆる治安立法と言われているものでありますが、最近の大体の形が発表せられましたことに対しまして、本月の六日の日本タイムスが社説でこういうことを述べております。「少数の人々の非合法的な活動に対する取締りというものが、大多数の一般国民の基本的権利に対する圧迫となる危険が多分にある。」こういうことを最近発表せられた形の治安立法に対して言つておられるのであります。「法は常に明白にして的確であることを要件とする、広い解釈を許すべきではなく、官吏の判断によつて人民の自由を制限する武器となるような法律を作つてはならない、治安に名を藉りていやしくも基本的人権を侵し、政治活動の自由、又言論の自由などを圧迫することは許されない」ということを日本タイムスが言つているのであります。御承知のように日本タイムスという新聞は我々がふだん読んでおりまして頗る保守的な新聞でございますが、頗る保守的な新聞がこういうふうに述べている。先ほどからも今回の東大事件の場合にも、東大の中に共産党の細胞が或いは再建されているのじやないか、それが団体等規正令に必ずしもよつていないのじやないかというようなことを理由にいたしまして、我々が証言を得ましたところでは、それらのことに関係して警視庁なり或いはそういう方面から、そういうことがあるからして、そこに絶えず或いは張り込んだり、或いは会合に出席をしたり、その他身元調査、それらのこともやつているんじやないか。いわゆる治安に名をかりてそういうことをやつているのじやないか。ところが他面において警視総監も、又先ほど斎藤国家地方警察本部長官も大学生の大多数は善良であると。そうするとまさにこの日本タイムスが言つているように、少数の非合法分子に対する取締りということをして、事実上において大多数の一般的国民の権利に対する圧迫をなす。極く少数の学生諸君のそういう不穏な活動があるかないかは、私はここで断定するものではありませんが、仮にそういうものがあるといつて、それのために大学生が公認の団体で以て、そうして大学の許可を得て開催するところの学生大会であるとか、或いはその他の会合、こういうものに警察官が大学当局に連絡することなくしてそれに入つて行く。それから受ける感じは即ち大多数の学生が絶えず大学というものは警察の監視の下にあるのだ、朝日新聞が言つておりましたように、配属警官でも置くつもりなのであろうかというように敏感な学生が非常に不愉快な感じを受けた。学園の自由を侵害された感じを受ける。これは一般にそうでございまするけれども、特に大学において仮に少数の人々の必ずしも喜ぶべきでない活動があるとして、それを取締るために、或いは治安であるとか、或いは警備であるとか、そういう必要上から身元調査をしたり、或いは会合に入つたり、張り込んだり、尾行したりすることは許されないのではないか、少数の者に対する……、少数の人々に対する取締りを以て多数の人々の基本的人権というものを侵す、まさにこのことになるのじやないか。この点について文部大臣はどういうふうにお考えになつておられるか、高邁なる識見を伺いたいと思うのであります。
○国務大臣(天野貞祐君) 私は日本タイムスの説は原理的にはその通りだと思つております。ただ個々の適用ということになれば、その事柄が非常に複雑しておりますから非常にむずかしくなりますが、思想を探索するとかそういうことはよくないと思います。又大学の会合に入るときには、あらかじめ大学当局と相談をされるべきものだと思つております。併し一般に大学当局も警察の職員もみんな国のためを思つてやつておられることだから、互いによく了解し合つて私はやつて行きたいと自分は思つております。
○羽仁五郎君 文部大臣に伺うのはその個々の瑣末な点についてまでの御説明を我々は文部大臣に期待するのじやないので、その根本原則について伺つているのであります。なおその点について我々が先日来調査いたしましたところでは、現在東大という日本においても、又世界においても名声を有し、又その名声に伴う責任を持つておる大学が、その地域の中にある本富士警察の署長並びに先日問題を起しました三人の警官というものの学歴或いは今までの閲歴というものを我々が調べて見ますと、いずれも必ずしも私は学歴のみが人間を決定するものとは考えませんけれども、併しすべてこれらのかたがたが高い教育を受けておられるというふうな確信を我々には与えていなかつたのであります。特にそういうかたを本富士署の署長或いは本富士署から大学の中に派遣する警官に小学校乃至中等程度の学歴というものをいずれも選んでおられるということに対して、文部大臣はこれは誠に喜ぶべきことだというふうにお考えになつておりますか。そういう点についてはもう少しこれは別個の考え方の上に立つて欲しい。日本では古来そういう悪習があります。人間の弱点というものを利用して、そうして例えば戦前には徴兵官というものにはわざわざ文化とか、或いは学問とか、或いは社会的な問題とかいうものは理解しない人を任命して、そうしてこの乱暴極まる動員なり或いは徴集なりということをわざとやらせる。或いは大学へは曾つて小学校か中学校しか行かない人を入れて、そうしてそういう人々の人間としての弱点というものを利用して取締りを行うというような悪習が戦前にはあつたように私は思う。現在本富士署においてそういうことを行なつておるということを私は断言するものではございませんけれども、併しながら我々も数年の間本郷に暮し、当時においてはそういう点では却つて逆の、本富士署長、或いは本富士署から高等学校なり大学なりと連絡をとる人々は、大学の教育を受けた経験がある、或いはそういう学問についての理解があるという人々に接した経験を私は持つておるので、そのほうが望ましいのではないかと思うのでありますが、文部大臣はどんなふうに御覧になつておいでですか。
○国務大臣(天野貞祐君) 私は一国において最も大切なものは小学校の先生とこの警察官、こういう人たちが教養を持つということは非常に重要なことだ。国家も又それだけに優遇しなければならないという考えを以て羽仁さんの述べられたようなことが望ましいことは、これは申すまでもないことと思います。
○委員長(小野義夫君) ちよつと御注意申上げますが、文部大臣は先ほどから他の止むを得ざる出席にて再々の催促があるのですが……。
○羽仁五郎君 もう一言だけ……。続いてこれは特に大学教授に対する身元調査の件なんでありますが、これは我我の調査の結果では不幸にしてそういうことが行われておるのじやないか。先ほども国家地方警察本部長官のお述べになりましたところにも、又先日警視総監のお述べになりましたところも、必要があれば、又方々から依頼されたり何かして、私はいつそういう結婚媒介所とか、職業紹介所とかの任務を委託されたか知らないのでありますが、いろいろ委託を受けて身元調査をやる。それも人権を蹂躙しない程度にやつておるのだから差支えないということを言つておられますが、文部大臣はよく御承知の渡辺一夫君であるとかそういうような学者に対して身元調査を行うということは如何なる意味においても私は許されないことだと思つております。文部大臣もよく御承知のように学者はその神経においても繊細であり、従つて不安を感ずることも常人よりも著しい学者に対して身元調査をする。渡辺君が今更結婚されたり、警察予備隊に志願するはずがありません。それを警察予備隊に対する志願について身元調査をしたことがあるというように言を左右に託して、国警長官、或いは警視総監として私の平素尊敬しているのに対して甚だ裏切られる感じがするのでありますが、なかんずく、これは誰でもそうでありますが、特にそうした意味において神経の繊細な、そうして感じやすい、従つて不安を感じ、従つて学問の研究の自由に拘束を感ずる。こういう大学教授の諸君に対して如何なる意味においても身元調査をしたり、或いは尾行をしたりすることは許されないというふうに私は考えるのでありますが、そうして又これに類するような或いは講義を傍聴するとか、ノートをとるとか、戦前に特高警察がやつていたと同じようなことを依然としてやつておる警察と、その疑いを持たざるを得ない事実があるのでありますが、文部大臣はこれらの点についてこういうことを許されるとお考えになりますか、許されないとお考えになりますか。
○国務大臣(天野貞祐君) 思想に関する限りそういうふうなことは許されないと思つております。
○羽仁五郎君 そのことに関連しまして最近文部省が五月三日を期してでありますか、或いはその他の関係において平和運動というものに積極的に活動をされるということを新聞で読みました。これに対して或る新聞は文部省は特審局と打合せの上でこういうことをなすつておるんだろう、こういうような皮肉を言つております。現在一般にこの平和運動というものが公然と許されないというような感じを与えておるのでございますが、この点に対して文部大臣はどういうふうにお考えになつておられましようか。
○国務大臣(天野貞祐君) 純粋に平和を求める運動ならば私は当然許されると思つております。
○羽仁五郎君 純粋に平和を求める、不純に平和を求めるということはないと思うのでありますが、私の伺つておるのは、純粋とか不純とかいうことじやない。この平和運動というものに対して平和運動というものを不純であるように理由を付けてこれを取締るというような場合について伺つておるのであります。勿論特審局なり警察なりが平和運動を取締る際に純粋の平和運動を取締るはずはないのです。だからその平和運動は或いはこういうような疑いがある、或いはああいうような疑いがある、こういうことでこれを取り締る、このことについて伺つておるのであります。念のために申上げておきますが、いわゆる疑いがあるという程度で以て板締をやつてよろしいかどうかということは憲法からも来る重大な問題であります。これも先ほどの日本タイムスもそのことを言つておりますが、今度最近の形をとつて現われた治安立法がなおいわゆる企てたり、何かの行為を企てるということを以て取締の対象としておる。こういうことは民主主義的な法の観念からは許されることじやない。企てるというような漠然たることを言うなら、或いは犯罪の予防というようなことを許すならば、これはさつき言つた官吏の判断によつて人民の自由を束縛し得る。ですからいわゆる眼光紙背に徹するということであれば、純粋な平和運動でもそれをいろいろな色眼鏡を以て見れば、或いは赤く見えたり、或いは青く見えたり、或いは真黒く見えたりいろいろする。ですからそれらのことはいろいろ疑いがある、或いはその純粋な平和運動がほかの目的に利用される虞れがあるということで憲法の保障する集会の自由、基本的権利、何ものによつても制限されることができないというように言つておるそれらの集会の自由や、或いは言論の自由というものを許されることはできないというふうに考えるのでありますが、文部大臣の高邁な識見を伺つておきたいのであります。
○国務大臣(天野貞祐君) 私が申したのは、平和運動というのを何かほかの目的のために利用するというようなことがあると、それは治安の責任を持つておる警察が取締るということもあり得るのではないか、けれどもそれはどの程度かということはそれは当事者が考えることで、若し併しそれが間違つておれば、世間の批判を受けるべきことであると思います。
○委員長(小野義夫君) 本日は文部大臣に対する質問はこれで終りたいと思います。それからまだ関係の御当局が御出席でありますが、この委員会は継続いたしますか。今日はこれで……。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(小野義夫君) では今日はこの程度で閉会いたします。 午後三時二十一分散会