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13回国会参議院1952/03/04

法務・文部連合委員会 第1号

発言数
851
登壇者
20
会派数
6
開催日
1952/03/04

会議録

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 只今より法務、文部連合委員会を開会いたします。先例によりまして私が委員長をいたします。  本日は東大事件につきまして調査をいたすのでありますが、各証人の証言を聴取いたします前に、先ず学園の自由と治安のためにする捜査の権限という点から重要であると考えますので、昭和二十五年七月二十五日の文部次官通達、即ちお手許に配付いたしました集会、集団行進及び集団示威運動に関する東京都条例の学校内における解釈適用についてという文部次官通達について当局の説明を願います

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 御説明申上げます。  いわゆるこの学内における集団或いは集会の取締に関しまする次官通達と申しまするものは、昭和二十五年七月でありましたか、東京都条例が制定せられまして、こうした屋外集会或いは集団行進等に関する取締が定められました機会に、大学の学問研究の自由或いは教育の自主性という立場と、治安維持という立場と、この両者を大学という特殊性のある場所に適用する上におきまして、警視総監と文部省文部事務次官との間に協議をいたしたのであります。その協議がこの次官通達の別紙とありまする部分にその内容が掲げられておるわけでありますが、即ち第一といたしまして、都条例第一条による集会等のうちで、学校構内におけるものにつきましては、当該学校の管理者又は学校長の承認を得て許可申請をするという建前を明らかにいたしております。それから次に学校構内における集会で、或る場所を区切り、特定人のみで行われて、一般公衆が自由に参加し得ない状態にある次に掲げるようなものは集会とみなさない。従つて許可の申請手続は必要としないといたしたのであります。而してその次に掲げるものといたしまして、第一は学校当局が主催するものであります。例えば学内講演会、学芸会、映画会、展覧会、教職員懇談会、学校教育法第六十九条による公開議座或いは学会、研究会等であります。次の部類は学校当局以外のものが主催する場合でありまして、当該学校の教職員、学生、生徒その他学校長の承認した特定の人又は団体がその学校の管理者又は学校長の定める手続による許可を得て特定のものを対象として行う種類のもの、例えば学生大会、生徒会、PTAの会、父兄会、卒業生の懇談会、学会、研究集会等であります。それから第三として、この学校構内における集会、集団行進、集団示威運動等の取締については当該学校長が措置することを建前として、要請があつた場合に警察がこれに協力することとする。それから第四といたしまして、研究所等の学術研究施設におきましても、大体同様の例によるということを相談いたしました。この内容を文部次官から各国公私立の大学長、短期大学長、專門学校長及び東京都知事、東京都教育委員会に移牒いたしたわけでございます。そうして各地におきますれば、各地における自治警察乃至国家警察と学校教育に関する行政当局者との間において大体同様の趣旨によつて取りきめが行われて実施いたして参つております。文部省といたしましては、警察当局と大学当局がこの線に沿いまして、お互いに良識を以て事に当り、特に又明敏に事態を察知して、お互いに平素より緊密な連絡を以てこの線の下に行いますれば、一面学校の教育的の特色も、又取締りの目的も達成し得るという考えを持つて、今日に及んで参つておる次第でございます。  以上御説明申上げます。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 只今の御説明に対しまして、御質疑のおありのかたは、この際御発言を願います。

一松定吉改進党

○一松定吉君 ちよつと私お伺いいたしますが、この何ですか、文部次官通牒というものの法律上の根拠はどこにあるのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 国家行政組織法によりますれば、各省大臣は管下の下部機構に対しまして、訓令又は示達をなすことができる、通達をなすことができる、この法規の根拠を以て通達をいたした次第でございます。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そういう通達をなすことができるか、その通達によつて法律の解釈を左右することはできるのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) この通達の内容は、法律の適用における行政上の協定と申しますか、相談事項と申しますか、そういう性質のものに解釈いたしております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 警察官は公共の秩序を破壊するような行動については当然取締るところの職権を持つておる。その職権を文部次官の今のような訓令によつて、自分からその職権を縮小するというような権限があるのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 必ずしも職権を縮小したとは私ども考えないのであります。職権行使の方法といたしまして、特別権力関係にありまする学校当局及び学生との間につきましては、第一義的に学校が取締りの任に当るという、まあ申合せと解釈いたしております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 学校当局が取締りの任に当るということは、どういう法規に基くのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 学生は学校に入りまする場合に、学校管理者との間に、特別権力関係に置かれておると解釈されます。従いまして学校の定めまする学則その他取りきめを学生は遵守しなければならないのでありまして、それを非常に逸脱いたしまする場合には、特別権力関係の範囲から排除するというようなところまでまあ行き得る。学校におりますその間は、その取締りを受くべき性質だと思います。

一松定吉改進党

○一松定吉君 然らば学校内における取締りについては、警察官は取締りを放棄するということは何に基いてそういうことができるのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 取締りを絶対に放棄したという取りきめではないと解釈いたします。ただ取締りの手段といたしまして、警察の側から言えば、委任というほどの本質ではありませんけれども、まあ委任と見られましよう。そういう程度において学校当局の第一義取締りを警察と約束したということであります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 法律によつて認められた取締権を、一文部次官という属僚がこれを放棄するというようなことは、それは適法ですか、どうですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) お答え申上げましたように、その法律で定めました取締権限を、その協定において警察が放棄したとは私ども解釈いたしません。ただ行使の手段として、こういう順序を約束いたした。

一松定吉改進党

○一松定吉君 然らばその職権の行使については、法律上から見れば何らの制限を受けないということが建前ではないですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) お話の意味がよくわかりませんが、法律的に警察の持つ権限が除却されたとか、或いは縮小されたとは考えておりません。ただ警察権限を行使する、行使の態様において学校当局をして第一義の取締りに任ぜしめるというのが警察の立場から見たその解釈だろうと思います。

一松定吉改進党

○一松定吉君 警察官に、学校当局をして取締りの任に当らしめるという権限の附与の権利があるのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 取締りの意義、内容だと思いますが、実際問題として考えます場合に、訓育の責任を持つておりまする学校当局が、日常学生生徒に対して訓育に基く実際上の取締りをいたしております。で、それで達成せられない場合におきまして、警察が社会の治安維持等の見地において入つて来ることによつて治安の目的が達成せられるならば、それで目的は達成できるというような意図の下に両者協定が成つたと解釈いたしております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 学校当局が治安の取締りをするということをあなたは御説明になるが、学校当局が学校内における訓育上についての指揮監督を持つということは、これは当然であるが、公安維持のために持つている警察権の行使を学校に委任するだとか、委嘱するだとか、附与するということが一体できるのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) さように申したのではないのであります。学校当局がその教育における、訓育の働きをやつておりますれば、そこに治安の懸念を生じないということを前提といたしまして、第一義的に学校当局の取締りと申しますか、教育的には取締りという言葉は当りませんけれども、訓育的の責任の範囲に置く、それを若しどうしてもその力が及ばない場合におきましては、学校当局から警察に要請して、そこで警察が取締りとしての必要が生じて来る。これは実際必要という意味合いにおいての段階を考えたわけでございます。

一松定吉改進党

○一松定吉君 私のお尋ねするのはね、治安の維持を目的とするところの職権のある警察官が、自分からその職権の行使を制限するというようなことが法規上認められるかどうかということなんです。これによりますと、学校内において治安が乱れておるようなときでも学校当局から要請されなければ、それに手を出すことができない。要請されれば初めて手を出すことができるということは、警察権についての一種の制限を受けることになる。そういうようなことが合法上できるかということを聞いておるのです。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) この取りきめは先ほど来申上げておりまするように、学校という特殊性から見まして、取締りという点から見ても賢明な方法であると両当局が方法的に考えたわけであつて、法律的に警察の権限をなくすとか、縮小するという性質のものではないと考えております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 法律的にでなければ何的にやつたのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 法律適用における方法の打合せでございます。

一松定吉改進党

○一松定吉君 法律の適用ということは、法律のつまり執行でしよう。それは法律の命ずるところによつてその権限を行使しなければならん。法律に違反して、若しくは自分から放棄すべからざるものを放棄するというようなことは、属僚に与えられた法律上の根拠はないでしよう。それを伺うのです。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 先ほど来申上げておりまするように、放棄とは解釈いたしません。ただその手段、実行の上におきまする方法論として、第一に学校当局の取締りということを考えたわけでございます。で、そういう点から考えますれば、本質的に警察としては権限があるわけでありまするから、仮に事緊急にして、学校に連絡するいとまがない場合とか、或いは治安上非常に重大な問題がありました場合には、勿論警察当局として独自の権限を行使せられるということは、ここではこの協定の中においては予想してないことであります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そうするとですね。その学校の要請があるなしにかかわらず、治安の維持をする必要があるときには当然その職権の行使ができるのじやないですか。こういう取りきめによつてできないのですか。それを伺つておるのです。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 非常にこう、抽象的に法律で割り切ればお話のようだと思いますが、具体的にそこに存在いたしております学校教育の場である大学の状態及び大学の立場から見た学問研究の自由と教育の自主性ということを考えまして、こうした取りきめが賢明であると両当事者において考えた次第であります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そういたしますと、これは警察権を持つておる者は、自分から職権の行使を制限したのではなくて、双方の取りきめによつてこういう便宜な方法を考え出したに過ぎないのだ、法律上から言えば当然取締の職権は警察が持つているのだ、こういうことでいいのですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 実際の方法を打合わせたという点については、全くお言葉の通りでございます。それから又治安維持における警察の権限が警察に属するというのもお言葉の通りでございます。ただ実際それを適用する場合におきましては、学問の研究の自由というような立場から見て、警察権の行使には特別の配慮が必要であるというような意味においてこの取りきめがなされたものと考えております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 これは昭和二十五年の七月二十五日にこういうような協定をし、これが関係方面に通達されたようでありますが、大学というものの存在は、昭和二十五年度よりずつと以前からあるのですが、以前からの大学の構内に関する治安維持について、今まで警察官はどういう措置をとつておりましたか、こういうようなやはり申合せみたような方法によつて治安の維持は一応大学に任して、大学から要請のあつたときに初めて警察官が出動するというようなことをやつておつたのですか。昭和二十五年の七月に至つて初めてこういう協定をしたのですか、それをちよつと伺いたい。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 戦前及び戦時中の状況につきましては、言及することは避けたいと思います。戦後におきましては、大体この状態において実施して参りました。そこに都条例が制定せられることになつて、直接警察の許可という問題が起つて参りましたので、学校の特殊性を考えましてここに掲げましたような集会その他の行為につきましては、この内容のような善処方法を協定いたしたわけであります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 昭和二十五年七月二十五日以前のことは言いたくないというのはどういうわけですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 言いたくないというのではなくて、時間の関係で申上げるのを避けたわけでありまして、二十五年七月二十五日と申してはおりません。戦前及び戦後に至る思想警察盛んなりし時代におきましては話は別であるけれども、その後において思想警察がなくなつた以後におきましては、このような状態が通例であつたということを申したわけであります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 私が今それをお尋ねするのは、この二十五年七月二十五日のこういう申合せというものを我々が合法的であるかどうかということを判断する資料としては、この以前に大学並びに警察官についての関係を知る必要があるからお尋ねをするので、それを答えられんというのはどういうわけですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 決して答えられんと申上げているわけじやありません。それじや繰り返して申上げます。戦前及び戦時中の状態とは戦後は違つております。戦後におきましては、この内容に掲げられたような状況において学問そのものについては大学の自治に任しておつたのであります。その状態をずつと継続して参りましたところ、二十五年の夏から都条例ができて、都条例の文言そのまま適用いたしますると、あらゆるこういう集会も警察が直接許可し、取締るということになりそうでありましたので、その方法をここで打合わした次第でございます。

一松定吉改進党

○一松定吉君 私の文部次官の通牒に対する質問はこれを以て終ります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 ちよつとお伺いします。この次官通牒、これは一つのいわば協定でありますが、こういう協定を作らなければならなかつたというその原因ですね、その中にも一つのやはり憲法二十三条の「学問の自由は、これを保障する。」、こういうような規定があるのですね、そういうような点から警察法だけでこれを取締る、こういう点が、警察法の適用が非常に十分でない場合には、学園の学問の自由というものは保障されない、こういうような点からの必要によつてそういうような取りきめを作つたかどうか、こういう点はどうですか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 先ほどの御質疑にもお答えいたしましたように、学問研究の自由と教育の自主性というものを考えまして、こうした集会等の取締りはこういう形態においてなすのが適当だと考えた次第であります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 第二に、やはり学問の自由というものを保障するためには、戦争前のやはりあのような特高警察下に置かれたところの形において学問の自由というものは非常に奪われた。そういう事態から考えて、歴史的に考えても、どうしても一方で公安条例というものが作られ、こういう態勢の中においてやはり学問の自由というものを守る、こういう必要を痛感されて、こういうような措置をとられたのであるかどうか、その点伺いたい。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) その点は必らずしも戦前或いは戦時中の警察の例と申しますか、働らきの懸念があるからとは申さないわけであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 それならなぜ都公安条例を作られたときに、こういう協定を作る必要が出て来たか私にはわからない。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) もう少し申上げますと、只今のお話は、戦時中の思想取締りが継続しているという意味に聞こえたので、そう申上げたので、これは爾後において警察法が制定せられまして、その第一条でも明らかなように警察の性格になつておりまするから、思想取締りの懸念は、これはなるべきことではないと思います。併しながら学問研究の自由、教育の自治性と外部権力の発動というものにつきましては、やはり教育の自治性、学問研究の特殊性を持つておる大学の立場から考えて行かなければならんという意味合を以て、この申合せをいたしたわけであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 私は戦争中のそういう継続問題を云々したのではなく、特に公安条例というものを作られたときに、こういう措置をとらざるを得なかつたか、そういう点ですね。そういう点から公安条例というものの中に何かそういう危険というものを感じられたのですか。それがなければ必要ないはすです。その点明確にしてもらいたい。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 公安条例そのものについて危険を感じた次第ではないのであります。公安条例に示されるところの手続から見まして教育的の配慮が必要だ、こう考えたわけであります。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 文部当局に伺いますが、一般にはどうかすると、成文法というものだけが権威を持つているのであるという考えがあるのだが、併し実際は成文法の背後には慣習がなければならない。そうしてそういう意味で日本では明治以来慣習なくして成文法を作つたものが多い、私はこの文部次官通牒というものは、現在日本においてそういう意味で学問の自由と、それから治安ということとの限界に過去において確立せられた慣習というものを行政上の文章に現わしたものとしての意義を持つているのではないかと思うのですが、その点については文部当局はどうお考えになりますか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) こういう取りきめの場合におきましては、もとよりお話のように慣習或いは慣例或いは警察法規ばかりでない、その他の教育基本法乃至は憲法その他各種の法制等を勘案いたしまして、こういう性質のものにつきましては、こうあるべきだという考え方でこれはなされたのであります。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 それでは只今認められた慣習というものの中には、或いは世間で有名になつておる鳩山氏が文部大臣をしておつたときの滝川事件であるとか或いは荒木氏が文部大臣をしておられたときの東大の問題であるとか、それらはまあ現在世人が思い起しておる大きな事件ですが、それ以外にも過去の大学と、それから治安関係の行政権との間に起つて来たさまざまな問題、その一つ一つについて、たとえ戦前といえども、いわゆる憲法の保障する基本的権利、又それとの関係において治安の関係の非常な努力、そういう努力の結果、即ち今日我々が理想としておるような民主主義のさまざまな機会におけるさまざまの方面からの、そうして日常の努力の結果、築き上げられた、従つて現在確立しておる慣習であるというようにお認めになつておるかどうか、その点をお伺いしたい。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) お挙げになりました戦時中の事例等につきましては、これは思想取締りの色濃き事件であつたと考えております。戦後の警察がそうした権限を行使しない実態は勿論考えておりまするけれども、学生、生徒の教育的な、心理的問題或いは教育の自主性、学問研究の自由といつたような問題から考えまして、かくあるべきものだと考えるわけであります。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 大体日本の近代の教育及び学問研究の制度に伴つて確立された慣習に基くものであるという第一点を文部省はお認めになつたと思いますが、第二点として伺つておきたいのは、こうした慣習は我が国においてのみならず、世界の各国においてもやはり教育及び学術研究ということに関して確立された慣習となり、そうして又法となつているという点はどういうふうにお考えになつておりますか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 大学の自治がヨーロツパに淵源いたしましたそれ自体の形体が爾後の各国大学にとられているとは考えておりませんけれども、学問研究の自由が文明を発達せしめたというその跡に見て、今日各国といえども大学の自由というものを尊重しておる状態だと我々は考えております。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) ちよつと皆さんにお諮りしますが、本問題はどつちかというと、ただ一つの基準たるに過ぎないのでありまして、問題はこの通牒のみに限つた問題ではないのでありますから、一つこの問題に関する質問はこの辺のところにおきまして如何でありましようか。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 委員長簡單に一つ聞きたいのですが。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 簡單に願います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 証人の御意見を承わる前にお伺いしたい点は、先ほどから質疑応答並びに御説明で、次官通達の趣旨なり、内容というものは私十分わかつたのでございますが、ただお伺いしておきたい点は、この都道府県の教育委員会、都道府県知事まで七月二十五日の通達を出されておるのでございますが、この次官通達がこういうような問題を起したのは初めてであるかどうかですね、又この通達にあるところの大学或いは学校当局の要請によつて警察権が学園内に行使されたというような場合はどの程度あるのか、若しわかつていらつしやつたら伺つておきたいんであります。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) すべての事例に通じているわけではございませんけれども、私の今まで聞いておりまする範囲から申しますれば、各学校当局と警察と緊密な連絡と打合せと事態に対する適当な認識を以て、この通達は円満に守られておるのが全体だと思つております。ただ昨年の京大事件、これもこの通達は守られたのでありますが、その守られた点についての批判はあつたわけであります。今度のように大学当局においては事前に連絡のなかつたのが遺憾であるというふうに言われておりますのは、この東大事件が初めてであります。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 その要請の程度はわかつていますか。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) この要請の……。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 いやお伺いしたいのは、警察権を学園内に行使する場合は学校当局の要請によつて云々というこの申合せがありますがね、この要請によつて学園内に警察権が及んだというふうな事例ですね、どの程度あるか、若しおわかりでしたら参考に承わつておきたい。

稻田清助文部省大学学術局長

○政府委員(稻田清助君) 先ほど申上げました京大事件につきましては、事態が起りましたので、学校当局から京都市警に要請をいたしまして警官の多数出動になつた。更に一昨年の早大における事件におきましても、学校当局の要請によつて警官が入つたという事例があるわけであります。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) これで質疑は一応打切りまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 御異議ないと認めます。  証人各位に御証言を願うに先立ちまして、各位に対しまして私から御挨拶を申上げます。今日は御多用の際わざわざ御出席を頂きまして誠に有難く存じます。委員一同に代つて御礼申上げます。  さて次に当委員会におきまして今回の事件を取上げました経緯、調査の目的について申上げます。先に京都大学におきまして、天皇陛下行幸の際におきます事件が発生いたしましたその際の学生諸君の行動及び警官諸君の行動につきましては、世間の物議を醸し、国民一同は甚だしく苦々しきことの限りとして考えております。本院におきましても議論の目標となつた次第でありまして、論議が相当に重ねられたことは委員各位の御承知の通りであります。然るに去る二月二十日、今度は東京大学におきまして、学生の諸君と警官の諸君が衝突をしたという事件が起つたのでありますが、新聞その他の報ずるところによりますると、これは学園の自治を大学の側では主張して、これが起されたと言つている。又治安確保の任を持つているところの警察のほうは当然警察権が及んでいいのである、必要によりましては……。こういうような論議が対立いたしておつて、国民はその間に公平なる判断をしなければならん立場におるのであります。最近一部の学生諸君が、その当然の使命でありますところの学問の習得、人格の修養等の本筋を外れて、学生たる身分を忘れ、学問及び大学の自由などという美名の下に過激思想の実践運動にまで乗出すという事実もしばしば(「それはおかしい」と呼ぶ者あり)耳にするのであります。又他方(「主観的判断だ」と呼ぶ者あり)警察当局におきましても、社会情勢の変化、治安維持の責任とにその必要の程度を逸脱し、紊りにその職権を濫用し、人権の蹂躪をあえてするという非難も聞いておるのであります。そのよつて来たる原因につきましては、誠に広汎にして深刻なる社会事情によるものでありましようが、又その責任の一部はこれが監督、指導の任に当るところの政府当局者にもこれなしと断じがたいと思うのでありますけれども、その直接の責任は今日証言に当らるる皆さんの側にあるものとして深く国民の遺憾とするところであります。  先ず第一に学校当局者は、学生に対する教育、指導の方針が頗るその当を得ておるのであるかどうか、又監督、取締等が真実によく実行されておるのかどうか、又思想、人格の真に師表たるべきの実践を教員みずから、教授みずからが行なつておるのであるかどうか、こういう点について国民は疑惑を持つておるのであります。又学生諸君につきましても、将来日本の真の復興、又世界の文明国に伍するところのこの国の指導者となるべき紳士の教養を身につけるために、道義と尊法の第一線に立つて、国民、殊に全国青年の模範たるべき行動を常時されておるのであるかどうか。(「おかしいな」と呼ぶ者あり)又最後に警察当局は人権を尊重し、(「主観的判断だ」と呼ぶ者あり)真に民主国家の警察として同情と親切とを以て社会の秩序を維持しようと考えておるのであるかどうか。或いは昔日の特高警察や秘密警察に逆転するの危険を包蔵しておらんかどうか。かかる諸点は最近一般国民の深く憂慮しておるところであります。当委員会におきましては、今回の東京大学における事件を調査の対象と取上げましたゆえんのものは、本件は我が国学問の最高の府でありまする東京大学において発生いたし、特に国民の注目を浴びました事件であることに鑑みまして、本件の真相を当委員会を通じまして国民の前に明瞭にいたし、国民の公正なる批判に委ねようと思うのであります。即ち本件を通じまして、学問の自由と治安のための維持と、その限界線を明確にいたし、よつて以てこの種の事件に対する私どもの今後の態度を明確にしようとするものであります。  なお本件につきましては、すでに衆議院の法務委員会におきましても、その調査に着手いたしておりますようでありまするが、本件のような重要問題につきましては、これをひとり衆議院の法務委員会のみの調査に委ぬべきではなく、私どもが独自の立場に立ちまして調査いたす必要を認めましたのであります。当法務委員会が第一回国会以来とつて参りました伝統的とも申しまする不偏不党の態度は、すでにこれまで幾多の事件の調査によりまして十分に国民の間に認められておるのであります。国民諸君が私どもに期待されるところが少くないということをお察し下さいまして、この国民諸君の期待に応え得るものであるように、是非とも本委員会におきまして、その限界についての明確なる判断をお願いしたいと思うのであります。又文部委員会のかたがたにおかれましても、全く同様な見地から本件の調査に合同せられ、ここに法務、文部の連合委員会を開会する次第であります。(「誰が作つたか」と呼ぶ者あり)  それでは質問はあとにいたしまして……。(「委員長に質問だ」と呼ぶ者あり)

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 先ず第一にお伺いしますが、只今の委員長の読み上げられました案文につきまして、文部委員長にこれを事前に諮られましたか、又それを了承しておりますか、その点お伺いしたい。(「文部委員長答弁」と呼ぶ者あり)

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 法務委員長の権限として私は独自の見解を述べたのであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 これは委員長に伺いますけれども、連合委員会であります。連合委員会の運営はよろしくこれは両者の意見の協議の上に立つてそのようなことがなさるべきである。只今……。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) お答えします……。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 まだ発言中。只今読まれました案文につきましては、我々の了承しかねる点があるのであります。一つのそういう立場で何かものを判断した上に立つて調査するのはまずいと思います。もう少し無色透明で我々は事件の真相を究明する態度をとつて参りたいと思います。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 岩間君の御意見は尤もと思いますが、文部委員の諸君が御異議がなければ、ここに委員長もおられるから、文部委員長としても一つこの際御所見を述べられることは、私はあえて拒みません。(「その通り」と呼ぶ者あり)  それでは議事を進行させて頂きます。証人のかたがたから証言を頂きまするのでありますが、先ず宣誓に入ります前に、ちよつと御注意申上げます。証言されます場合、若し虚偽の陳述をなされますと、議院に於ける証人の宣誓及び証言等に関する法律により罰則を受けることがございます。又正当の理由がなくして宣誓若しくは証言を拒まれた場合も同様であります。但し民事訴訟法第二百八十条第一号、第二号によりまして、証人が御自身か、又は証人の配偶者四親等内の血族、三親等内の姻族及びこれらの人々と親族関係にあつたもの、又更に証人の証言又は証人の後見を受けるものの刑事上の訴追或いは処罰を招く虞れのある事項に関するとき、又証言がこれらのものの恥辱となるべき事項に関するときは、証言を拒むことができます。  これより宣誓を願いますから、全員御起立を願います。    〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 矢内原忠雄    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 尾高 朝雄    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 吉川 勇一    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 中村 隆治    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 大野 康雅

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 御着席願います。  証言は各証人一人ずつお願いいたしますから、先ず矢内原証人以外のかたは暫時別室でお待ちを願います。  それでは矢内原証人に申上げますが、先ず最初にこれから私が申上げますことにつきまして、大体三十分ぐらいの御証言を願いたいと思います。本件発生の原因、動機、経過及び結果、事件後学校当局のとりたる処置、本件に対する学校当局の見解、学校当局の今後の処置又は対策、学園の自由と学問の自由との関係、学園の自治の主体、組織、構成、自治会運営の方法、学園の自治の範囲、その具体的な限界、学園の有する自治の範囲と警察官憲の有する警察権の行使との間に明確なる限界があるか。あるとすればその具体的な限界、三名の警察官の行動が如何なる点において学園の自治を侵したか。右の警察官等の行動が学園の自治を侵したものとすれば、これに対して学生らのとりたる処置は妥当か。右の警察官等の行動を若し事前に発見していたならば学校当局は如何なる処置をとつたか。以上のごとき問題につきまして御証言を願います。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 約三十分というお申渡しでございますが、時間が短うございますので極く簡潔に申上げます。このお尋ねの順序に従つてお答えいたします。  本件の発生の原因、動機、経過及び結果。去る二月の二十日に東大の学内公認団体の一つであるポポロ劇団という劇団の主催で劇の研究発表会がありました。これは大学できめておりまする成規の手続に従つて教室の使用を許し、その集会を認めたものであります。成規の手続ということは、念のため申しますと、その主催者から教室を管理する学部長に対して教室使用の許可願を出します。その際には教授が紹介者となりまして、紹介教授がありまして、その会の性質、その集会の性質や、やることやなぞについて問い質し、更に人事院規則第十四条七号にいわゆる政治的目的を有しないものであるという約束をさせまして集会を認めたわけであります。この集会は何ら政治的意図を持ち、政治的目的を以て企てられたものではありません。後のことに関係いたしますが、便宜上この際申しておきますが、東京大学と所轄の本富士警察署との間には随分前から了解事項がございまして、警察官は学校の中の催しには無断で入らない。学内における秩序の維持は大学が管理する、第一次的に大学が管理するという了解事項がございまして、これは長年の慣行としてよく行われて来たのであります。それでこの大学における研究と教育の自由が大体守られて来たのでありまして、昭和二十五年の七月に文部次官通牒が出まして、都条例の公布に際しまして都条例の規定と大学の自治との関係をば次官通牒によつて明らかにせられました。この次官通牒は従来行われていた一般的な慣行、大学の自治についての慣行が文字を以て示されたものでありまして、大学の自治は次官通牒を以て始まつたものではありません。その次官通牒以後も大体において事なく、事の起つたときは大学自身の管理権によつて処置して参つたのであります。こういうことは東京大学の教職員も学生も知つており、又所轄の警察署も知つておるはずであります。然るに昨年本富士の署長が変りまして以来、とかく私服警官の学内に出入することが多くなつたのであります。それで学生は警官の顔を覚え、警官も学生の顔を覚えて参りました。例えば教室の周囲とか、或いは掲示板の附近とかに私服の姿を見受けることが多くなりました。相当に学生の神経を刺戟していたのであります。で、ここでなおこれからの陳述の準備として申上げますが、学生運動或いは学生生活は、終戦直後の虚脱的な学生の気持が次第に落着いて参りまして、最近はだんだんと如何にも大学らしい、即ち研究と教育の場としてふさわしい秩序と静謐が保たれて来ておるのであります。学生は申すまでもなく学問の勉強をしておる、学問に従事しておる者であり、又年の若い者であります。たくさんの学生の中には少数の学校の規律に服しない者もありましたけれども、大部分の学生は善良であつて、静粛であつて、落着いて勉強をするようになつておりました。そこでこの警察官の出入りが多くなつたように見られることが、かなりの刺戟的な空気を醸成していたと思われるのであります。  然るときに、二月二十日のそのポポロ座の公演が午後五時半に開けるはずであつたところが、準備の都合で五時五十分に開かれました。この集会は東京大学の学生職員約三百名ということが使用願に記されておりました。これは学校において確かめ、そのときの了解事項として学生職員の家族などは同伴することは大目に見るという了解事項が付いておりました。そしてこのプログラムが進行いたしまして、第一幕、第一幕というか、劇が二つございましたが、最初の劇の終りましたときにあかりがつきました。そのときに一人の本富士署の警官が、顔見知り、顔を、学生たちが覚えておる警官がそこにおることを発見したのであります。それで学生は警察がおるというので、明るいところへ出てもらおうというふうなことで、明るみに、舞台の前まで来てもらつた。そのときに現場におりました厚生部、厚生部と申しますのは東京大学において学生を管轄する中央の部局でございますが、厚生部所属、厚生部から派遣せられておりました巡視が、この事の起りましたのを見まして、連絡のために外に出ました。そのときに三名の、つまり発見せられた警官のほかに五名の警官が巡視のあとを追つて外に出ました。で、その場におりました観衆がこれに気が附きまして、あとを追いました。それでまあ泥棒と言つておつたそうであります。そうしてこの表に出る前にこれを引きとめて、泥棒かと言つたところが、泥棒ではなくて警官であるということを言われた。学生はそれではなお更惡いじやないかというので、その押えた二人の警官にも明るいところに出てもらつて、で、一人の警官は外に逃げ出しまして走り去つたのであります。巡視は警備室に帰りまして、上司である班長に報告いたしました。班長は直ちに部下を更に二名連れまして現場に参りました。そのうちにポポロ座のほうでは、劇団のほうでは、次の劇を始めなければなりませんので、皆外に行つてくれと言つて、警官も巡視もそれから取り囲んでおる観衆、学生たちも外に出てもらつた。教室は二十五番教室という教室でございますが、その部屋の外の階段の上に踊り場がありまして、その踊り場で学生が警官を取り囲んでおりました。巡視の班長の連絡によつて厚生部長が現場に馳けつけました。そうして話を納めるために厚生部長室に皆来てくれ、そこで話をしようということを申したのであります。そのときは警官が始末書を書いて……、二人の警官はすでに始末書を書き、一人の警官は始末書を書くことを拒んでおつたのでありまして、そのときの問答によつて、警察手帳が取上げられておることを厚生部長は知りました。そこで学生に諭して、警察手帳は返しなさい、返すべきだということを諭しました。学生はこれに対して、返します、返すには返すけれども、再びこのような私服の警官が学内集会に入つて来てもらつては困る、それで今後こういうことのないように約束してもらわなければならない、更に本富士署長に対しても、今後かくのごときことなきように約束をしてもらわなければならない、それまで手帳は預かつておくということでありました。そのうちにこの一名、本冨士署に走り帰つた警官の報告によると思われますが、武装警官二十名が正門前に到着したということを、正門におる巡視から現場の厚生部長に報告がありました。それで騒ぎが大きくなつて、不祥事件が起れば大変なことになると厚生部長は思いましたので、手帳の返ることを努力する、学生たちは手帳を返すと申しておりますので、この場は始末書を書いて出してはどうですかということを言いまして、あと一名の巡査も始末書をお書きになつた。それで警官は迎えに来た警官と共に正門からお帰りになつたのであります。その夜十一時、斯波厚生部長は本富士署からの依頼によりまして、署に参りました。署長はおりませんでした。次席からこの手帳の返ることを要求されたのであります。それで翌日、二十一日の正午までに警察手帳を戻せということを次席から求められまして、厚生部長は誠意を以て努力するが、併し果して戻るかどうかは約束できないと言つて分れました。翌朝から学生を呼び出しまして手帳を返すべきことを諭しております。午前十時半に厚生部長は本富士署に電話連絡をして今努力をしているということを申したのであります。それでありますが、この学生数十名が、正午頃漸く学生が集まりまして厚生部長室で会見をいたしておつたのであります。そうして午後三時半に厚生部長と学生の会見は終りました。その間に本冨士署の私服の警官が二、五名厚生部長室の外に来まして、学生は来ているか、どういう学生が来ているかということを給仕に聞いたという事実があるのであります。四時十分に本富士署の私服警官約三十名が東京大学の本部の正面玄関入口と厚生部の入口裏側にありまする両方を半数ぐらいずつで固めまして、次第に中に入つて廊下を進んでその幅を狭めて参りました。或る警部補ほか二名だか、三名だけの警官が厚生部長に面会を求めまして、学生の某を出してもらいたいということを厚生部長に要求しました。厚生部長はその学生はおりません、実際誰も一人も学生はいなかつたのであります。学生に御用があるならば学生の所属しておる学部長にお話し下さい、こう言つているうちに一人の私服がそこに飛んで来まして警部補に耳打ちをいたしました。さつと全体の警官はそこを引揚げて走り出たのであります。厚生部長は驚いて本富士署に電話をかけまして、何事ですかと聞いたところが、学生に対して逮捕状を出した、出ておるということでありました。厚生部長はこれは大変なことだ、大学の学生を監督する責任者である厚生部長の室で本学の学生を捕まえようとしたということは、従来東京大学においては曾つて見なかつた、考えもしなかつた事柄であります。それ故に驚いて外に出ましたところが、警官は数個のグループに分れまして、あちらこちらと探し廻つておりました一隊が、講堂前の建物、講堂から見ると向つて左側の建物でございますが、そこには地下室に学生食堂がございます。そこの階段を上つて来たところの辺で探しておりました。学生はその辺にいたわけでありますが、この群がら、若干遅れて一人の私服が歩いておるのを後から数名の学生が、あなたは警察でしよう、私服でしよういうことを言つて、呼びかけられた警官が振返つて見たところが、その学生の中に逮捕状の出ました福井駿平という経済学部の学生がいたのであります。こいつだというのでその場で捕まえた、捕縛に際して福井君は前歯を折りまして、顔面血に染んだのであります。この前歯を折つたということは、昨日衆議院の法務委員会において本富士署長が証言したところであります。前歯が折れておる、本富士署長は、福井は噛みついたから、噛みついたはずみに前歯が折れたのだ(笑声)と、こう申しておりますが、とにかく前歯の折れたということは署長も認めておるのであります。そうして手かせと足かせを嵌めた、足かせを嵌めたということは私も話は聞いておりましたが、まさかと思つておりましたが、これも昨日本富士署長の言明によりまし、手かせと足かせを嵌めたということであります。そうして外から四、五名の武装警官が入りまして、福井駿平を抱えて足のほうを持つてこれを正門の外に運び去ろうとしたのであります。時は二月の二十一日の午後四時半から五時頃でありまして、たくさんの本学の教官と職員と学生がその現場を目撃しております。そうして逮捕せられた福井駿平に対しては、逮捕の際に令状は示されておりません。駆けつけた東京大学の学生課長が警官に対して、何ですか、何事ですか、と言いましたところが、紙切れを振つて令状が出ておるということであります。それでは見せて下さいというので、示された暴力行為等処罰に関する法律ですか、私ちよつと不正確でありますが、そういう違反の容疑で以て逮捕する、これは福井を逮捕して正門外に到着しておる約一個小隊の武装警官に引渡すその途中で令状は学生課長に示されたのであります。この逮捕の状況は東京大学の目撃者、教官、職員、学生の一同も憤激しておる事実であります。正門は学生が閉ざしました。そこにあとで証人にお立ちになる尾高教授、尾高教授は東京大学全体の学生委員会の委員長でございます。尾高学生委員長が出向きまして、警察側と応待をして門内に入ることをやめて帰つてもらつた。又この逮捕の状況に対して抗議をせられたのであります。これが二十一日のでき事であります。二十二日には東京大学側から私を代表して尾高学生委員長と福井駿平の所属の学部の学部長である脇村経済学部長と斯波厚生部長と三人が本富士署に参りまして、署長に面会して、警官が学校側に無断で教室に入つたという事実と、その捕捕の状況について抗議を申入れたのであります。その後学校はこの警察手帳を取戻してこれを警察に返還しなければならないと考えられておりますので、学生に諭し、どの学生がとつたか、果して誰がとつたかということもわかりませんが、とにかく学生にさとしまして手帳は返すように、学生も返します等等の苦労を重ねまして、遂に二十五日に私は更に一般学生の注意を促すために大学の告示をいたしまして手帳のその日中に返還されることを要求したのであります。若干時間は遅れましたがその翌日と思います。午前十一時四十分頃に手帳は私の手に返りまして、早速警視総監の代理である刑事部長に使いを以て返還したのであります。そのときの使いに行つてくれましたのは、尾高学生委員長と脇村経済学部長と斯波厚生部長の三人であります。  本件に対する学校当局の見解は、後のことはまとめて申しますが、この事件といわゆる京大事件との間には大きな差があります。この事件は従来大学と警察側において了解されておりますきわめてよき慣行、更に次官通牒によつて明らかにせられていたところのその線を警察当局が越えて学生の集会に入つた。東京大学が責任を以て許可した学内集会にお入りになつたということに端を発しておるのであります。それで或る新聞には、その夜五名の警官に暴行を学生が加えた、それによつて全治一週間乃至十日の負傷を負つたというふうに出ました。併しながらその負傷はどの程度のものであつたかといいますことは、その翌日の福井駿平逮捕の現場において、問題の五名の警官は最前線において活躍していたのであります。これは皆さんが認めておるのであります。それ故に全治一週間とか十日とかいう程度の負傷は絶対に負つておりません。又当夜の集会が政治目的を以て行われたものであつて、何か不穏な形勢があつたかという問題になりますと、その夜五時五十分に幕が開きまして最初の芝居をやつていたのでありますが、六時五十分に一名の警官が部屋の外に出て、本富士署に電話で連絡をして、集まつておる人数は二百五十人乃至三百人、きわめて静穏無事であるという報告をしておるのであります。これは証人がおります。これを以てみましても当夜の集会がきわめて平穏無事に行われていてそれまで何事もなかつた。そのプログラムに従つて行われておることについて、警察が至急に警察官の出動を要請するとか、或いは大学に対して注意を喚起するとか、そういう事態ではなかつたということはこれによつて明らかであります。  なおいろいろほかのところで御質問もありましたので、皆さんの御参考のために申しますが、当夜の集会は学生と職員のみの集会であつて、若干の同伴者、家族などが認められたということであります。その建物のある場所は、正門と大学の講堂との途中の、正門から来まして左側の建物、法学部所属の二十五番教室でありまして、一般公衆の通行するために公開せられている場所ではありません。事実上においては学外の人が通行することはありますけれども、両側は教室であり教育をする現場でありまして、外の道路のように或いは公園のように自由通行する場所ではありません。  それから三名の警官は切符を買つて入つたと申しますが、その切符を売つていた場所は二十五番教室の下でありまして、これ又学生、職員以外のものは、そこで、例えば外の交叉点であるとか、プレー・ガイドであるとか、そういう所で自由に買う切符とは性質が全然違うのであります。そこでこの三名の警官は、ほかの者も切符を買つていたから自分も買つて入つた。これは誰にでも売つている切符を買つて、公けの場所で行われている集会に公けの場所で切符を買つて入つたのだと、こういう弁明が一時なされたのでありますが、場所といい、その集会の性質といい決してそういうものではありません。学生も職員も切符を買つて入るのであります。そうしてその警官の入つたのが、單に演劇が好きでこれを見に入つたというのではなくて、職務上の目的を以てお入りになつたということは、本富士署長の証言するところであります。尤も本富士署長は切符を買つて一般市民と一緒に入つたのだともおつしやり、又自分の指図によつて入つたのであるともおつしやり矛盾しておる点がありますが、かようなことについては東京大学側は証人を出す用意がございます。三名の警察官は單なる演劇の愛好者としてお入りになつたのではなくて、警察官としての職務を執行するために入られたということは明らかであります。  そこでこのときに学生がとつた行動、例えば警察官に明るい所に出てもらつて顔を見たとか、或いは手帳を取上げたとか、そういう行動は妥当か、学生らのとりたる処置は妥当かという御質問がございます。これは妥当かという御質問に対しては、抽象的に考えれば妥当でありません。ただ前後の事情とか、その場の空気とか、或いは次官通牒云々とか、そういうことを背景としてみれば、学生が興奮したことも察せられると思います。けれどもそれにしても、警察官に対して学生が、今申したような明るい所に引出して顔を見たとか、或いは泥坊といつて追つかけたときに若干こずき廻したかも知れません。或いは手帳を取上げたとか、少くとも全治一週間とか、全治一週間どころか、全治一日の、一晩の行動を害するほどの傷をも与えなかつたという程度に、何か学生が警官に対して失礼なことをしたかも知れません。併しそれにしてもそのような行動と手帳を取上げたということは妥当でありません。これは私が事件の翌日、逮捕のありました翌日、学生の集会に出ましてすでに言明し、学生にさとしておるところであります。  併し、もう一つここに右の警察官等の行動を若し事前に発見していたならば、学校当局は如何なる措置をとつたかといえば、それは入つてもらつちや困るということを申上げるのであります。そこで原則的の問題となりまして、第五でございますが、学園の自治と学問の自由との関係とございます。これは申述べれば時間を随分とることでありますから申述べませんけれども、日本の国として学問の研究、発達に努力しなければならない、殊にこの戦争中に遅れました日本の学問を世界の水準に届くまでに取戻して、更に世界の水準と競争してそれ以上の学問を研究しなければならない。これは文化国家といわれました戦後の日本のきわめて重要な問題であります。その如何に重要であるかということは皆さんも十分御承認下さることと思います。その学問を研究するためには自由でなければならない、真理の研究は政治的権力の圧迫や阻害とによつてゆがめられてはいけない。正しい真理を真理として研究するという自由は学問の命であります。これは日本だけでなく世界の学問の歴史が闘いとつた成果であります。この学問を研究する場としての大学は自由を持たなければなりません。そうしてその学園の自由即ち大学の自由ということが研究の場としての大学の自由であると共に、教育の場としての大学の自由が必要なのであります。何となれば教育ということは單なる知識の切売ではなくて真理探求の精神を学生にたたき込む、教え込むということごそ大学教育の使命であるのです。それ故に学園は自由である、教育が自由であるということは、即ち研究者たる教授と学ぶところの学生が自由であるということは、これは学問、教育即ち大学の使命として最も大事に思つておる点であります。のみならず学生を教育するためには、命令によつて縛るよりも学生の自治的な実際訓練、これは時を要します、手数がかかります、けれども自治をもつて学生を指導するということは、進歩した教育の理念であります。更に戦後の学生の立場は戦争以前のいわゆる非常時といわれた時代、或いは戦争の暗黒時代を経て、一般の日本憲法の保障する、或いは指導精神である民主主義の空気を吸つております。そこでこの学生を單なる命令を聞く服従者としてのみ扱うということは、学問という点からいつても教育という点からいつても、又戦後のこの重要な日本の民主化という点からいつても、我々は避けなければならないと信じておるのであります。学問の自由と学園の自治との関係はそうであります。  更にお尋ねがございますので申しますが、学園の自治の主体、組織、構成これは二つありまして、大学自体が自治の団体でありまして、大学の組織の中において総長の持つ管理権によつて学園の自治、大学の自治を行なつて行きます。  このついでに申しますが、大学の自治を擁護する具体的な方法は、一つは大学の人事権という問題であります。大学の教授並びに学長は、学問に理解のある者、即ち大学教授の選挙による、選考による、形式的には文部大臣が任命しますけれども、この人事のやり方は大学自治の生み出した制度であり、又大学自治を擁護する最も有効的な制度であります。伝えられたように学長を官が任命するというふうなことは全く私どもは賛成しない。大学の自治の擁護の上からいつて極力排斥する考えであります。  更にこの学内活動に対して警察官が立入るというのは、順序手続について慎重を期する、警察官のこのほしいままなる大学への干渉というものを拒否するということが、大学の自治を守る実際上の方法であります。学生は学生の自治組織を持ちます。併しこれは教育の場として、教育の必要上学校の認めるものでありまして、学校は学園内の秩序を律するために規則を作つております。無制限無秩序に学生を放任するわけでは決してありません。その学園、大学のきめたルールに従つて活動する学生の自治運動を認めておるわけであります。  更に御参考のために申しますけれども、学生を管轄する当面の責任者は学部長でありまして、学部長は教授会を持ち、又教授会によつて選任せられる各学部の教官による学生委員会がありまして学生を指導しております。で総長の下には学生所管の厚生部長がおりまして、事務組織としては厚生部長があり、更に各学部の教官からなつている、各学部から選出させられる教官によつて中央の学生委員会というものがございます。こういうわけでございまして、大学の自治、大学の自由は日本の学問のために絶対的必要な条件でありまして、皆さんが如何に日本のこの学問の発達が大切であるかということを御認識下さるならば、学園の自治、大学の自治、大学の自由を尊重して下さるだろうと信じますし、大学の自由を尊重する方法は何であるかといえば、先ほど申した通りに人事権の問題と、それから学内活動に対する警察権の不法なる侵入をしないということであります。  そこで何が不法であるかという問題になります。これにつきましては、一般的に申して大学といえども国法の外にあるものではありません、国法の中に存在しております。で或る新聞なぞに出ましたことですが、大学は治外法権を持つなどということは東京大学もどこの大学もそういう考えは毛頭持つておりません。大学は国法のワクの中にあり国法の下において存在しております。そうしてそれ故に学園内の秩序、治安におきましても、最終的の責任と権限はそれは国にあります。併しその最終的な権限が具体的に大学の中に及んで来るその手続の順序というか、これは文教政策の問題、即ち政治の問題であります。そこで大学の自治を重んずる建前から、先ほど申したように、大学内の秩序は大学の学長が第一次的に責任を持つ。責任を持つて管轄し、処置をする。若しもこの大学の力で及ばないことがあれば当然警察権の、警察の出動を要請するのであります。又大学がこの要請をしなくても緊急やむを得ない緊急事態の発生した場合には、警察みずから出動して来られるということも当然であります。併しながら何が緊急状態であるか、如何なる場合が緊急状態であるかという認定は警察官の一方的な認定では困る。例えばこのポポロ座の演劇が、学校に断わりなしに警官が派遣せられ、或いは警官がそこにおられるほどの緊急状態であつたか、私どもはそうは認めない。何故にと申しますことは、あのポポロ座の公演の行われる二十日のあの昼過ぎ、警察は厚生部長を訪れましてポポロ座のことについて聞きました。これは職務上の連絡があれば大学の窓口である厚生部長のところに来られるのは当然でありますが、厚生部長がそれに対して説明して、これは政治的目的を持つたものではないということを言いました。にもかかわらず默つてその場をお立ち去りになつた警官が、その教室にお入りになつた。若し入らなければならないほどの緊急事態があるならば、そのときどうして厚生部長に言つてくれなかつたか。大学として警戒を要するじやないか、こうおつしやつて下さつたならばそれに従つて処置したでありましようが、何気なくお去りになつてそのままお入りになつたということは、緊急事態の発生とはどうしても認められません。福井駿平を逮捕した場合はどうか。これは或いは本人が逃亡するからとか何とかいうことはあつたかも知れませんが、併しこれも学校の中で、教官、学生職員の多数おる所で逮捕令状も見せないで一人の学生を逮捕するということは、学園の風紀、秩序を根底からゆさぶるものでありまして、そのときに現場におりまして混乱の起ることを阻止しておりました一人の教授も、又教授と知らなかつたのでありましようけれども、胸をこずき廻されているのであります。緊急事態の発生の場合において、例えば校内で騒擾事件が起つたとか、殺人が起つたとか、そういうときには警察官はそれは進んでお入りにならなければならないのでありましようが、そういう場合でも一応の、できれば事前に、できなくても事後に了解、了解というか大学にその旨をおつしやつて頂きたいと思うのであります。  それでこの大学の自治と警察権の限界は、次官通牒の線で明らかに示されておりますし、更に次官通牒の前からきまつているところの大学と警察官の間の取極めで慣行となつておりました。大学内の自治は学長が第一次的に責任を持つて管理する、警察の出動は大学に連絡してその了解の下に行なつて頂きたい。必要の場合には、大学から警察の出動をお願いすることをお願いします。又緊急事態の場合には今申したことでありまして、改めて学園の有する自治と警察権の間に限界を引く必要はない。従来の慣行において十分足りておるのであります。  私といたしましてお尋ねの点についてはこれだけ申しましたが、最後に一言、これはお伺いすべき……、証人でありますから質問はできないのかも知れませんが、先ほど委員長がおさとし下さいました心得の中に、国民は東京大学の学長、その他教官、教育者としての人格に対して疑惑を持つているというふうな意味の言葉がございましたが、その国民とは誰か、これは私ども東京大学を預かつておる者の責任として、又義務として、任務として十分承わりたい。我々は我々の全力を尽して東京大学を運営しております。そうしてそのことは單に一東京大学の問題だけではなくて、日本の大学、官立、国立、公立、私立、すべてを含めての大学のために私どもは努力しておるのであります。(「それは国民の世論だ」、「黙れ、何を言つているのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  以上で私の陳述を終ります。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 速記を始めて下さい。それでは一応これで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩    —————・—————    午後一時四十八分開会

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) それでは委員会を再開いたします。  堅頭に私から一言釈明をいたしたいと思いますが、先ほど開会の劈頭に私が御挨拶を申上げた件、並びにお手許に配付した質問要領等に関して、多少問題があるやに二、三の委員諸君から申出がありますが、若し議事録を調べまして本委員会の趣旨を逸脱したような言辞がありましたならばこれは適当に取消しますから、どうぞその点御了承を願いたいと思います。  休憩中の両委員会の委員長及び理事打合会におきまして協議の結果、午後の議事順序といたしましてはこれより一時間半で残りの証人の証言を一応聴取いたします。その後質問に入りますが、質問は全部で質疑応答を入れて四時間といたしまして、両委員会で切半いたすことにいたしました。質問者及びその時間の点につきましては逐次事務当局において御連絡申上げますから、只今申上げましたように進行いたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 御異議がないと認めます。さよう決定いたします。  次に尾高証人より証言を聴取いたします。尾高教授にお尋ねいたしますが、事件後学校当局のとりました処置について、第一がそれであります。第二は、本件に対する学校当局の見解。第三としまして、学校の自治の運営と警察権行使の関係についてであります。時間がたくさんないので約二十分くらいな限度においてお答えを願いたいと思います。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) ここにあります質問書の、そうすると二、三、六というようなところですか、或いは四……。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) それは違うようでありますから、今こちらで申上げました、もう一辺繰返しましようか。一の質問は事件後学校当局がとられた処置。それから二が本件に対する学校当局の見解であります。三は学校の自治の運営と警察権行使との関係についであります。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) わかりました。この事件が起つてから学校のとつた処置ということでございますけれども、私自身の立場は、学生委員会というのがございましてこれが一昨年の四月から設けられまして、各学部の教授が一名ずつ、特に法文系三学部は二名ずつの教授若しくは助教授で構成されている学生対策の委員会であります。その委員長としての立場、並びに個人の見解というふうなものも入るかもしれませんが、特にその学生委員会の委員長としてでございますので、学校当局のとつた処置ということに関しても、その学生委員会の代表者としての立場から証言することになると思いますのでお含みおき頂きたいと思います。  二月二十日の午後の五時半頃から、ポポロという劇団でありますが、これは学校の公認している文化団体、それが成規の手続を経て法文系二十五番教室で演劇会をやりまして、そこに三人の警官が入つていたというのであの事件が起つたことは御承知の通りであります。そのときの模様から申上げましようか、その必要はありますか。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) あなたの任意の順序で結構です。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) そのときに事件が起つて、学生が警官を発見して、そうしていろいろ訪問をしたり、手帳を取上げたりしたというその辺になりまして、通報を受けて校内に住んでいる斯波という厚生部長が現場に駈付けまして、そうして以後こういうふうに校内に立入らないという証文のようなものを学生が書かせていたところへ参りまして、そうしてまあそこの事態を収束するために、一方学生に対しては警察手帳は返すべきであるということを申し、それから警官に対しては、一人書こうとしない者があつたのですけれども、この場は書かれたほうがよかろうというので署名するように勧めて、そうしてその場は収束したわけであります。それから翌日の二十一日の朝から昼過ぎまで、誰が手帳を持つておるかわからないものですから、いろいろ学生を呼んだり、探したりいたしまして奔走しておつたのでありますけれども、だんだん時間が経過いたしまして、そうして四時半頃に恐らく警察は厚生部長の部屋に逮捕令状の発せられている二名の学生がいると思つて来たのだろうと思いますが、つまり大学当局に対する何らの事前の通告もなしに令状を執行するために入つて来まして、併し厚生部長の部屋には学生がいなかつたものですから、そうしてほかを探して一名を逮捕するということになつてしまつたわけであります。そこで勿論その前の目のポポロ劇団の、学校が公認している演劇会に警察官が入つているということも、何ら事前の通告若しくは了解はなく、むしろ厚生部に、刑事の一人が午前中だつたと思いますけれども、今日の催し物はどんなものかというようなことを聞きに来たときに、これは全く何でもない、劇をやるだけのことだから何でもないのだということを言つているにもかかわらず、何の連絡もなしに入つていた。これが学生の憤激を買つたのが始まりであります。翌日の逮捕の場合も何のそうした通告もなかつたわけであります。一人が逮捕されましてそうしてそれが表に担ぎ出された。その物音を聞いて私は実はそれまでその事件について何ら報告を受けておりません、それは厚生部が非常に忙しくて私に報告するひまがなかつたためであります——物音を聞いて外に出てみますと、大勢の学生と相当多数の武装警官隊とが閉された正門を挾んで対峙している。そうして警官隊は正門のあの鉄門を越えて中に入ろうとする形勢があつたものですから、自分はこういう者であるということを名刺を出して示し、そうして直接の指揮者と話をしたいということを申しましたら、逮捕状を二枚、内容を見るほどの余裕はありませんでしたが、私の目の前にちらつかせながら職権をもつて入るということを言つておりましたから、私も門の外に出て、学生に静かに引下がるように申して、そうして本富士署長と談判をやり、あなたは職権と言われるが、この非常に微妙な事態において今ここでこれだけの大勢の警官隊が正門を突破して中へ入るこいうことは、これは由々しき大事であるからそれはやめてもらいたいということを申しまして、なかなか聞入れる様子もなかつたんでありますが、再三申しているうちに思い返したとみえて逮捕状は二名出ていたものと思われますが、一名の逮捕状だけにして一旦署に戻りまして、それからまあ学生は非常に憤激しておりますので、私は臨機の措置として普通でしたらば学生の集会を催すときには原則として一週間前というふうな期限をつけて届出る手続をふまなければならないのであります、今その措置といたしまして私の特別講義という名目で二十二番教室に大勢の学生を入らせまして、そうしないと屋外で集会してしまう虞れがあつたのでありますから、そこでいろいろ学生に報告を聞いたり学生自身で善後策を討議しております。総長にも早速連絡いたしまして打合せをしたのであります。学生が集団的に、例えば逮捕された学友を取りもどすために警察署に押しかけるとか、直接に警察と交渉をするというふうなことは稔かでないからそれは大学当局に任せておくということで何かこの際冷静に行動をするという総長の意向でありましたので、それを学生に伝えました、併しつまり平静に代表者を出して警察署と交渉をすると申して、まあこれは実際に代表が行つて一回か二回か三回か主張し談判をしているはずであります。  それから翌日と申しますとこれは二十二日になりますが、総長の命を受けまして私とそれから学生に直接の関係している脇村経済学部長、それから厚生部長三名で本冨士署に参り、更に警視庁に参りまして警視総監は留守でありましたが、刑事部長そのほか課長が二名会いましていろいろ大学の立場も説明し、又申入れるべきことも申入れたのでありますが、警察としてはこの手帳は非常に大事なものであるからこれがまあ取上げられているという状態では話にならない、それがもどるということがすべての問題解決の先決要件であるというようなことを申します。私どもも学生がどう見ているか、私として学生があの場合に警察手帳を取上げたということはこれは行過ぎであると、こういうふうに考えますのでできるだけこれを取りもとして警察のほうに返すべきものは返し、又大学として主張すべきところは主張したいとこう考えましたので、そのためにできるだけ努力するということを申して大学に参りまして、それからあとは専ら警察手帳が大学の思慮として先ず第一段階としては学生の自主的な努力によつて戻ることに全力を挙げたわけであります。学生諸君も非常に大学の立場をよく了解してくれまして二十三日の午前中十時過ぎでありましたか、まあ中央委員会と申すものがあるのでありますが、それについていろいろのことがございますが省略いたしまして、拡大中央委員会、つまり学生自治会中央委員会のメンバー、クラス有志という形で会議をいたしまして、そこでほかにいろいろ主張すべきこと、要求すべきこと、抗議すべきことはあるけれども、それとは一応切り離して手帳は即刻返還すべきものであるという決定をしております。これは全員一致で決定をしたそうであります。学生自身そういう方針をきめておりますし、大学もそれを即刻と言つても、事実できるだけ早く返すことが必要であるということをいろいろ説きまして、まあ今日同じ証人として来ております吉川君なども大変に努力をいたしました。何分にもどこへ行つているのかわからないものでありますので、而も大学はこれを捜査する機関も何もありません。全く話合と納得ずくで学生に行動してもらわなければならない。それでありますから日もかかりましたけれども、その翌日二十四日日曜日、二十五日月曜日、その辺で出て来るということも一方において期待しておりましたが二十五日も出ません。二十六日一日まあ更に手帳の行方を探したわけなのであります。二十六日になりまして、当局としてもこれはただ学生の自治活動だけに委せているわけに行かないというので、手帳は即刻返還されなければならない、そういうことを要求するという告示を出しまして、でその晩から翌朝にかけては徹夜の状況でございましたが、二十七日の朝方になつてようやく手帳が戻つて来るということがほぼ見当がつきまして、実際に正式に総長の手許に三冊の警察手帳が戻りましたのが二十七日の午前十一時四十五分頃でございます。  それから再び私とそれから脇村経済学部長、斯波厚生部長の三人及び警視庁の刑事部長を訪ねまして、そうして手帳が出たことを報告して、それをそこで返還をいたしました。それから本富士署にはそのことを報告して戻つたのであります。直接この事件について当局のとつた処置というものは、まあそれは広く申せばいろいろなことがあるわけでございますが、そんなものである、一応証言いたします。  それからこの事件に関する第二番目の学校当局の見解ということについて申上げます。東京大学といたしましては文部次官通牒にありますような、この大学が先ず学内のいろいろな集会とか、それからいろいろな行事に関する処置は大学当局がやるのが建前だ、大学の要請を受けて初めて警察がこれに協力するということは飽くまでも堅持しなければならんと考えております。それからそうした集会等に関してはこれまでも、これはいわばそういう次官通牒の出ます前からの一つの慣習、長い慣習法的な了解によつて学校当局の承認もしくは了解なしに警察が捜査したり、特に屋内の集会等に入るということは警察はしない、こういうことになつていたはずなのであります。それにもかかわらず少くとも三名以上の私服の警察官が当夜の二十日の劇の、集会に何の挨拶もなく入つていたということは、大学の自治に対する一つの警察当局の行過ぎであつたものと考えております。これが又学生を非常に憤激させて事態をこういうふうに重大化せしめた根本であつたということができると思うのであります。  警察にはいろいろな言い分があるわけなんでありますが、一つの言い分としては、あの劇の会はこれは一般公開である、従つて当夜の警察官はやはり三十円の入場券を持つてそうして入つていたのである、いわば一般市民のような資格で入つていたものと考えます、従つてそれが目ざわりであるというならば穏かに話して、そうして、退去してもらうというふうなことをすればいいものを、大勢で取囲んで、いわゆる吊し上げというようなことをやつて、警察側の言い分には毆つたとかいろいろなことを申しますが、その辺のところは学校は今事実の調査中でございます。  いずれにせよそこで警察手帳を取上げるというようなことをやつたということは、これは暴力行為等処罰に関する法律違反容疑だというようなことを申されますが、当夜の一般にそういう学生の自治活動の映画会であるとか演劇会とか、演奏会とかその他いろいろあろうと思います。が併しそれらのものはすべてと申しましても、毎年五月にいたします五月祭という三日間ほど大学が全部公開する機会があるのであります。こういうときは方々の全都のいろいろな人が来ますが、そうでない字内行事は、これは学生職員並びにその家族、せいぜいそういう意味での同伴者ぐらいに限られておりますので、入場券を出しますけれどもこれもいろいろ出費ががかりますのでそれをカバーするための費用というわけであつて、一般公開だから誰でも入る権利があるということは私は成り立たないと考えるのであります。  それから公務上の必要で捜査若しくは材料収集のために入つたということであれば、これは又次官通牒の趣旨に副わない警察の行動であつたと、こういうふうに考えておりますので、あのときの立入りしたということは非常に遺憾なことだと思うのであります。これに対して学生が憤激をした、そうして手帳を取上げたというふうなことは、先ほど申したように、学校当局としては学生側に行過ぎがあつたと認めているのであります。併しながらそれに対して逮捕令状を発して、そうして事前の通告なしに学校構内で学生を逮捕したということ、これは又甚だ遺憾なことであつたと考えております。で而もその場合に実際には実行いたしませんでしたけれども、もう一つの令状を執行するためと推定されますが、相当の警察力を以て、武装警官が隊をなして正門を押し開いても中へ入つて捜査若しくは逮捕を実施しようとしたああいう大げさなことをされる必要は毛頭ないのではないかと考えております。但し手帳を取つたことは行過ぎだと考えましたので、学生諸君の自発的な努力と、我々もそれに協力をし、のちには当局が告示を出しまして、手帳の返還に関しましてはできるだけの誠意を尽したつもりでございます。特に最近学生運動が、まあ東大のことを主として申上げますが、だんだんと平静になつて来たと私どもは考えております。特に終戦後二十一年、二年頃から始まりまして一昨年の十月五日に起つた東大の事件というのがございますが、その頃をピークとして非常に激越な調子を帯びて来て、学校当局の制止にもかかわらず集会やデモを盛んに行うというようなことが行われておつたのが、だんだん平静に戻つて、そうして学生運動の本来のあり方に近付いて来た、軌道に乗つて来たと私どもは思つているのであります。そういう漸く軌道に乗つて来たと考えておるときに、平地に波乱を捲き起すようなことをやられましたことは、如何なる理由があるにせよ不穏当な措置であつたと考えております。大学内のことについて、勿論大学の内部に犯罪等が起ることもございますから、こちらから頼んで警察に捜査してもらうということも、これはあり得ることでありますけれども、特に研究並びに教育の場としての大学のことに関しては、これは飽くまでも大学の自治と責任とにおいて処理さるべきものでありまして、挨拶、了解若しくは協定なしに直接に警察権を行使するということは、大学の本来の使命達成の上に根本的な障害になる。強くこの点は私どもは抗議しなければならないと考えているのであります。  そこでまあおのずからに第三番目の学校の自主的な運営と警察権との関係というお尋ねに移つて参つたわけでありますが、まあいろいろ具体的には細かい面倒な問題といいますか、その解釈に困るようなところもあるかと思いますけれども、只今申しましたように、一般犯罪が仮りに起つたというふうな場合に、この捜査をする必要があるというようなことでありますれば、これはまあそれを大学はそれでも入つちや困るということを申すことはできない。そういう意味で大学といえども治外法権ではございません、そう考えております。併しながらそういう一般犯罪に関する警察権の介入ということも最小限度にとどめらるべきでありますし、又事前の了解ということが、これは緊急の殺人、強盗ということが起ればそんなことは言つていられないかも知れませんけれども、事前に了解を求めてやつてもらうということを以て建前とすることが飽くまでも望ましいと考えます。特に学問の研究並びに教育という大学本来の使命達成の場におきましては、大学の講義、演習等はもとよりのこと、大学が認めてやらしている学生の自治活動、文化行事等についても権限と責任を以てその秩序を維持し、その目的を成るべく十分に達成するように大学内部のことを運営して行く者は、飽くまでも大学当局でなければならないと考えているのであります。その点のことを将来に向つてはつきりさせて、そうして再びこうした紛争の起らないように処理することが目下大切であると考えているのであります。殊に講義のこともちよつと触れましたが、大学の教授、教官或いは学生にしても、思想動向というふうなものを含めて身許調査をするというふうなことは、これは曾つての特高的な警察権の現われ方に非常に類似して参りますので、これは非常にまずいことである、そういうことは飽くまでもしないようにしてもらわなければならないと考えておるのであります。  一言、非常にまあ政府或いは警察、特審局等で心配をしておられます共産党細胞と申しますか、そういう共産主義的な政治活動に対するどうも取締が大学じや手ぬるいじやないかというふうなことも言われておるようでありますが、これについてはこれは全く私一個人の所見を申上げます。大学にはそれは共産主義の学生もおりますし、それに対する同調者もこれはごく僅かでございますけれどもおることはたしかでございます。そういう者に対してどう大学として処置して行つたらいいかということについては、これは飽くまで学問、理論の世界なのでありますから、学問の立場において学生を指導し、或いは学生相互の討議を重ねさせることによつて、どういうものが真の民主主義のあり方であるかということを自分で発見して行かなければだめである。ほかのそうした政治活動に対する取締はこれは別問題といたしまして、大学の中でのそうした一方的な政治思想若しくは政治行動、行動と申しましてもこれはなかなかむずかしいところでありますが、少くともそういう理論的な活動に関しましては、飽くまでも理論に対しては理論、思想に対しては思想でというのでなければならぬ。特に資本主義の社会というものはだんだんと高度化して帝国主義的な段階に達してそうしてフアツシヨ化する、或いは侵略戦争をやるというようなことが、これは共産主義の一つの理論だと私は心得ております。そういう動向が現われて来るのは、先ず共産主義に対するいろいろな弾圧、続いて自由主義思想に対しても同じような弾圧、圧迫が加えられるようになつて来る、必ずそうなつて来るというのがそういう思想の持主の主張するところでございます。ところでこれに対して私どもは、そういう傾向が一方においてあつても、正しい議会民主主義の運営によつてそういうことは防ぎ得る、そうならないで行くのだということをまあ主張しているわけなんでありますけれども、ところが私どもがいくら主張いたしましても、だんだんと共産主義の細胞があつて何々は不当な活動であるとか不穏なことをやつておるとかいうことで、大学当局はそれを取締ることができないじやないかというような理由を付けて、挨拶なく警察が大学の中に介入する、いわゆる自治を干犯するというようなことになつて参る。続いては全然そういう共産主義的な傾向もないような自由主義的な教授の思想動向をも調査するというようなことになつて参りますと、それみたことか自分たちの言う通りじやないかというようなことになる虞れが多分にございます。これは私一個人として最も恐れるわけでありまして、まさにそうなつて来れば共産主義者の言う理論が正しいのだ、本当だつたというので、一般の自由主義者も半信半疑であつた者がそういう考え方に傾いて行く。これは飽くまでも大学としては困ることだと私は考えております。  大体そんなようなことで、つまり大学のとつた措置と私の私見と、これは証言の範囲をこえたかも知れませんがそういうふうに考えております。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 証人に対しましては後刻又委員から御質問があると思いますので、暫く御別席でお待ちを願いたいと思います。   —————————————

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 次に吉川証人。吉川君にお尋ね申上げますが、第一は学生自治会の組織、目的、指導者の構成員等について。それから又二として本件に対する学生側の見解を伺いとうございます。約二十分の予定でお願い申上げます。

吉川勇一東京大学学生自治会中央委員会議長

○証人(吉川勇一君) 学生自治会の組織、目的と構成員の組織、種別ですか。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 構成員の、どういう構成になつているかということですね、構成員のかたがた。

吉川勇一東京大学学生自治会中央委員会議長

○証人(吉川勇一君) 東大には教養学部を入れまして九つの学部があるわけです。文科系が法、文、経、教育、理科系が理、工、農、医、それからそれに教養学部で九つの学部があるわけです。その九つの学部にそれぞれの学部自治会というのがありまして、その九つの学部の自治会の規約は全部違うわけです。それぞれ自治委員というものが出されまして、或いはその中から常任委員というのが出されて自治会を構成している学部もあります。そういつた学部自治会の中から中央常任委員が一名、中央委員が二名、計三名の中央委員というのが選ばれまして、全学の自治会中央委員会というものが構成されます。ですから中央委員会というものは、九つの学部から三名ずつ出て計二十七名の中央委員によつて構成されます。その中から各学部一名ずつ九名の中央常任委員によつて中央常任委員会というのが構成されるわけです。中央委員会には議長というのがありまして、それは各学部の中央常任委員が交代でこれに当る、そういうわけになつております。その中央委員会の性格ですけれども、これは一応そこで決定された事項に対しては各学部の自治会は原則として従わなければいけません、原則として。ですから各学部の自治会が否決した場合には従わなくてもよろしい、そういうことになつております。それからその中央委員会というのは協議機関でありまして、従つてそこの責任者は議長であつて、中央委員会の委員長ではないわけです。中央委員会の目的というのは規約のたしか第二条にありますけれども、それは学生の自治による学問の自由、学生生活の向上、その他学生の創意による事項をなすなど、字句は違つているかも知れませんが、大体これが学生の自治会の規約に謳つてある目的であります。各学部の自治会もそれぞれ大体それと同趣旨のことがきまつているはずです。これが大体簡單に申した組織と目的です。  構成員の種類といいますと、すべて本学の学生は全部この各学部の自治会に入らなくてはいけないということになつております。学生以外には自治会の役員にもなれなければ、自治会の会員にもなれません。ただ規約の上では中央委員会のそとに評議委員会というのがありまして、評議委員会には自治会が委嘱したところの教授、助教授、そういうものが入りまして、それに学生の自治会、中央委員というものとが評議会を構成して、そこで一種の諮問機関みたいな形がとられることになつております。これは規約の上です。これが大体自治会の組織、目的、構成員の種類です。若し御質問の点があれば後ほどお答えします。  それから学生側から見ました本事件の見解ですけれども、今回のいわゆる東大事件というものは、私たちが考えますれば決して偶発的に起つたものではないということなのです。その偶発的に起つたのではないということは、決して学生が初め計画的に起したのだという意味では決してなくて、文部次官の通達及び文部次官と警視総監との約束を破つて警官がたびたび学内に侵入して来ていた。それでたまたまその三人が、劇団ポポロの公演が二十五番教室で二十日にあるということでありましたが、学生に顔がわかつてしまつた、即ち学生に顔がわかるほど警官がたびたび学内に侵入して来たという事実が示しておるわけです。それで今度のポポロの事件に私服が三名ほど入つたということは、ポポロのあれが一般に公開されていたという警察側の言分、それによつて言いのがれもできるかも知れないのですけれども、併し單にポポロの劇だとか或いは映画会ばかりではなくて、その他の教室だの座談会に出入りしていたという証拠が非常にたくさんあるわけです。例えば去年のたしか十月だつたと思いますが、文学部の学生大会が行われた、この文学部の学生大会は文学部の自治会の委員及び文学部学生、文学部の教授、助教授、助研生、これは傍聴人ですが、それ以外には絶対に入れないことになつています。ところがそこでも私服の警官が学生にまぎれて入つて来たということが判明して、学生が追出した事件が起つております。これは私もその場におりましたからはつきりと見ております。  そのほか今度明らかになりました手帳の内容によつて、非常に多くのそういつた集会に警官が出入りしていたという事実が判明したわけです。ここに警察手帳の写真がございますので後ほど委員のかたがたにお廻しして見て頂ければなおはつきりすると思いますけれども、例えばこれは警察手帳のほんの一部をプリントしたものですが、文学部の学生大会、法学部の学生大会、教育学部の学生大会、東大経済学部職員組合大会、都学連大会、中央委員会、緑会大会、それから南原総長送別会、矢内原総長講演会、こういつた学校及び学生の催し物にすべて入つているという事実が警察手帳に記されておりますし、そのほか自治会の定例委員会、毎週一回なり、一月一回なり行われる自治会定例委員会にも警官が入り込んで様子を調べて来ている事実が警察手帳によつて明らかになつております。そのほか警察手帳の中にありますけれども、学内各部屋の出入りの際の変装についてというような記事さえ見られるわけです。つまり意識的に学内の各部屋に変装して入つていた、それがはつきりとわかつたわけです。今まで学生はたびたび私服の警官が校内ばかりでなく、教室内にまで入つていたという事実を感付いていたわけですけれども、それが今回の東大事件という事件をきつかけにはつきりその全貌が我々の前に示されたということを意味するわけです。そのほか警察手帳によりますと、仏教青年会とか、東大キリスト者平和の会、東大音感合唱研究会、東大セツルメントというような一般団体にまで調査が及んでいる。驚くべきことには東大の教授、例えば一月十三日柴巡査の手帳には、身許調査、大塚署よりソ研の山之内一郎教授、東洋文化研究所の仁井田陞教授、東洋文化研究所の小口偉一教授そのほか飯塚教授、渡辺一夫教授というような教授の身許調査までやられておる。その身許調査はどういうことが調べられておるかと申しますと、例えば経歴、思想動向、背後関係、交友状況その他というような点にまで亘つて調べられておる。そのほか学生の尾行だとか、自治会の部屋の張込みや、そういつたものがすべて手帳の内容を占められておるわけです。  我々は学園の自治であるとか、或いは学問の自由であるとかということを一般的に申します。成るほど自治会に出席しようが、或いは学生大会に私服警官が出席しようが、教授の身許を調べようが、それはちよつと見たところ学問或いは研究に一向に差支えないように見えるかも知れません。併しながらこういつたようなことがなされておる雰囲気の中で果して自由に学問或いは研究というものがなされるかどうか。成るほど本富士署長が治安のためにはどうしても学園の中に警察官を入れなければならないというようなことを言つております。学内にいろいろな犯罪が起きている、例えば本富士署管内の犯罪の中で学校内で起る犯罪が三割若しくは四割起きている、そのためにはどうしても警官を入れなければいけないというようなことを言つております。併しながらそれらの警官は犯罪の予防に入つている、つまり犯罪、一般的な強盗であるとか窃盗であるとか殺人であるとかそういつた犯罪の予防に入つて来るのではなくて、むしろこういつた学生の動向であるとか、教授の思想傾向であるとかそういうことを調べに入つて来るわけです。昨日衆議院の法務委員会で阿部眞之助氏が警官を嫌うのは泥棒と大学だけであるというような証言をされた、参考人として言つておられましたけれども、併し大学が警官を嫌うといつた場合には警察官個人を大学が嫌うのではなくて、彼らが治安の維持という名目の下に大学の中でやつておる行動それ自体を非常に嫌つているわけです。大学は自由を要求しております、併しその意味を妙に曲解されては困るわけです。例えば大学が治外法権を要求しているとか云々といつたようなことですが、そういつたことではないのですが、併しながら学問とか教育の府である以上大学は政治とか或いは警察権力とか、そういうものからできる限り干渉を排除しなければいけないわけです。治安の責任は最終的には警察が負うというような結論が出されるかも知れませんが、それは論理的にはそういうことになるかも知れませんが、併し学内におけるいろいろな責任は、第一義的には大学自体が持つということを我々学生も又大学当局も要望したいところであろうと思います。最終的に警察が負うという名目の下において、この言葉の裏で警察が大学に対してなしていたこと、それがこの警察手帳によつて明らかになつたのですし、又そういつたことがなされて行つて後にたどる大学の運命及び国家の運命というものがどういうものであるか、それは第二次大戦中の東京大学その他の大学のたどつた行き方を見れば明らかだろうと思います。ましていわんやこういうふうに警察側の学園侵入といつたことによつて起された今回の事件を契機にして、大学の学長官選論とか、或いは法文系の学部の廃止論に至つては全く我々論外であるというから考えます。学内には非常に不十分な点があるかも知れません。又大学当局と学生との意見が必ずしもすべての点において一致しておるとは言えない場合があるかと思います。併しながらそれは全く学内において解決さるべき問題でないか、大学当局と学生との間で以て解決さるべき問題でないか、国家権力によつて解決さるべき問題じやないということを申上げたいわけです。大体私の言うことはこれで終りでございます。  ここに警察手帳の内容がありますが、これを見て非常に明らかになることが、ちよつと読み上げますと、(「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり)中央委員会室張込み、中島牛丸が出たので尾行したところ正門前のそば屋に入り、再び帰つたというようなことまで調べられておる。或いは東大キリスト者平和の会顧問教官堀豊彦は東大内におけるキリスト者の平和問題に関する研究協議連絡場所はどこそこというような事実がわかつております。その他中央委員会室での会話「伝」ああいう問題もいいんだ。併し明大の学生課に問題でもあるな、というようなその中の発言を全部聴取しておるという事実があります。  又ちよつとさつき言い忘れましたが、学生が暴行をはたらいたということは非常に宣伝されているわけです。ポポロの詳しい事件の内容とか、翌日一人の学生が逮捕されたときの詳しい点についてはあとから出る大野君、中村君のほうが詳しく知つているのでそちらに任したいと思いますけれども、併し一人の学生が逮捕された際非常に警官が暴行をはたらいたという事実がわかつておるわけです。ここに一人の学生の診断書がございます。これは学生が逮捕されたときにあまりひどいやりかたにおこつて、そんなひどいことをするな、ともかく様子を話してくれと言つた学生に対して、一人の警官がこん棒をふるつて眼鏡を叩き割つた、それによつて起つたけがです。こういうように学生を逮捕する際に職権の濫用をやつているということを申上げたいわけです。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 吉川君にあとで又御質問申上げますから暫らく別室でお待ちを願います。   —————————————

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 次に大野証人。大野証人に伺いますが第一は緑会の組織、目的指導者の構成について。二は事件当日の真相について。大体補足的の御証言を願いたいので十分以内にお願い申上げます。

大野康雅東京大学法学部緑会委員長

○証人(大野康雅君) 緑会委員会と申しますのは普通の学生自治会とは少しその性格を異にしております。法学部学生並びに教授全体を含めた一つの団体であります。その目的と申しますのは、学生自治によりまして学問の自由、学生生活の改善、それから教授学生相互間、それの親睦を図るのが目的であります。大体戦前から親睦団体として発達しているものは戦後の学生自治会などの確立によりまして、いわば学生自治会とそれから一つの親睦会の両面の性格を持つておるものであります。その構成と申しますのは会長は学部長がなります。緑会の執行部といたしまして緑会委員会というのがあります。これは全学生の中から選挙されます。教授と学生との間の関係は教授のほうから評議員、これが若干名ありまして、この人たちと緑会委員会、学生側の委員会との協議によりまして学部対学生との間の問題と解決しております。以上です。  第二の御質問と申しますとちよつとどのように申上げたら……。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 事件当日の真相でございますから、事件が発生する前後の関係をお話願いたいのです。

大野康雅東京大学法学部緑会委員長

○証人(大野康雅君) 事件の発生いたしましたのは二月の二十日であるわけです。二十日には劇団ポポロの「いつの日にか」、それから「朝焼けの詩」こういう演劇が二十五番教室で、五時ぐらいからの予定で、実際に始まつたのは六時五十分ぐらいだつたかと思います。私は途中から入りまして演劇を見ておつたわけでありますけれども、その際に劇の途中に、第一幕が終えた際に二十五番教室のうしろのほうで私服だという声がしたわけです。それでふり返つて見ました。大体三百人ぐらいの学生、職員並びに家族たちが見ておつたわけでありますけれども、この人たちもその声に総立ちとなりまして後ののほうを見たわけであります。そうしましたら五、六人の学生に囲まれて一人の私服が前のほうに押しやられて出て来たわけであります。それで見ている人たちは非常に憤激いたしまして、教室の中が非常にその怒り、憤激の声でそうぞうしくなつたわけであります。で丁度そこにカメラを持つた人もおりまして、フラツシユを一、二回たいて私服の写真をとりました。ポポロの主催者側のほうから、劇の進行上差支えがあるから外のほうへ出て行つてやつて頂きたいという申入があつて、出て行こうとたしかしておつた頃だと思いますけれども、又ここにもおるぞとこういうような声がいたしまして、又私服二名が前のほうへ学生二、三名に附添われて出て来たわけであります。このあとから来た人たちも同じく写具をとられました。それでみんなの憤激の声に送られて教室の外へ出たわけであります。二十五番教室というのは、教室の出た所におどり場、腰かけで腰をかける設備などがありまして、たばこなども吸われるようになつております。そこに三人の私服が一団の学生に囲まれて出て来たわけであります。そこでその私服たちの名前とか、それからどこに勤めているか、どこから派遣されて来たのかというようなことが聞かれて、それで私は大体その辺におつたけれどもはつきりといつどのような状態で行われたかはわかりませんけれども、とにかくこのような、今まで学校当局と本富士署長との間に、建造物の中に制服、私服を問わず一切警官は立入りさせないという、こういう協約があつたにかかわらず実際入つて来ておる。このような違反を犯した責任を追及するし、今後このようなことのないためにこの手帳は、單にこの警官だけの責任ではなく、署長がこのことについて今後このようなことをさせないという確約をするまでは預かる。このようなことが言われて手帳が学生によつて学生の手に預けられたわけであります。それでいろいろ学生たちが私服を難詰しておりますうちに、そのうちに劇も終りまして、劇を終つた人たちが教室を出てその私服たちの顔を見たいというし、又いろいろその憤激の情を浴びせかけるわけです。そのうちに守衛の知らせででしようか、或いは学生のほうから厚生へ連絡したのでありましようか、厚生部長がやつて来られました。それで厚生部長がそこにやつて来られまして、厚生部長もおいでのうちに学生がそのことをいろいろ説明いたしまして、又そのときに劇を終つた人たちの中から非常に憤激が強く、この人たちが又署に帰つたならばとんでもないでたらめを言うに違いない、はつきりとした詫証文を取つておいたほうがよろしいと、こういうような声が非常に強くて、それで品々に詫証文を取れ、こういうふうに言いまして、私服たちはなかなか書ませんでしたけれどもとうとう書いたわけであります。大体それが終つたのがはつきりと時間は覚えておりませんけれども九時過ぎぐらいではなかつたかと思います。その頃丁度下のほうに又二人私服が来たと、こういうふうなことを聞きました。それで行つてみると本冨士署から二人の私服が参つているのであります。そのうちの背の低いほうの人は今厚生部長のところへ行つてそれから来たのだけれども、こういうようなことを言つておりました。ところが厚生部長はそのときは二十五番教室の上のほうにおりまして会うべくもなかつたのでありますけれども。それで何しに来たかというのに対して部下の帰りが通いので心配になつて来た、こういうふうなことを言つております。三人の私服たちが学生たちに摘発されましたときに何と言つたかといいますと、警察手帳は持つていない、署の帰りにただ寄つただけだ、こういうふうなことを言つているのであります。然るに本富士署から来たという背の低いほうの刑事は、部下の帰りが遅いので心配になつて来た、こういうふうなことを言つております。もう一人背の高い刑事がおりました。この私服の人は翌日学生一人を学内において逮捕した際のその私服、僕の見たところでは二十数名だと思いましたがその先頭に立つてやつて来た人であります。それでその三人の私服たちはその二人の本冨士署の刑事と一緒に帰つたわけであります。翌日四時半ぐらいから私服二十数名がやつて参りまして学生一名を非常な暴行傷害の末に引張つて行つたわけであります。学生はそれを非常に教授も含めまして憤慨して学校に断わりなく入つて来たのをなじり、それをとめようといたしましたが、正門前には予備隊の二個小隊ぐらいが鉄かぶとで押しかけてとうとう学生を引張つて行つたわけであります。  この事件がどのようにして起つたかと考えますと、結局單に偶然に起つたというのではなくして、今まで本富士署が東大のうちに入れたこともないし、入れさしたこともない、こういうふうに言つておりながら、実際は私服を常に学生の集会であるとか学生大会とか、そういつたところにまで潜入さしておつた、これを学生が知つて顔を覚えるまでに至つておつた、このような事態の末の結果として起つたものと私は考えます。文部次官通達によつて明らかのように、又本富士署と東大との協約によつても保障されておつたような大学の自由がこのような形で白昼公然と蹂躙されたことについては、私たちは非常な憤激を感ずる次第であります。私たちといたしましては、緑会委員会でも何回もこの問題について協議したわけであります。今後このように私服、制服を問わず警官が学内に一切入らないように要求する。それから今まで入れていないと言いながら実際に入れておつた、これは手帳の内容を見ても明らかであります。このようなことをやつた警察当局の責任を追及したいと考えます。それから單に今度の事件が学内に警官が協約或いは慣習に違反して入つた、これだけではなくして国民の基本的な人権、憲法に保障された人権というものが無慚に蹂躙されている、このような事態について私たちは非常に憤りを覚える次第であります。大体以上です。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) じや大野君に申しますが、あとで御質問申上げますから別室で一つお休み願います。   —————————————

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 中村君にお尋ね申上げますが、学生大会の組織、目的、構成員についてが一つであります。二月二十一日の警官の出入りがあつたときの真相について、この二つの問題について御証言が願いたいのですが、補充的証言でありますから、十分以内の予定でお願い申し上げます。

中村隆治東京大学法学部学生大会議長

○証人(中村隆治君) 学生大会は法学部におきましては、法学部緑会というのが学部長を含めた全学部的な組織になつているわけであります。そこは一つの学生の最高決議機関としての学生大会であります。その学生は法学部の学生で以て構成されて学生大会は成立するわけでありますが、その定足数は五百名となつております。そこで五百名以上の学生が出席した場合に本決議になりますが、それが出席できない場合は、五百名に満たない場合においては仮決議となり、二回仮決議を重ねた場合、それを本決議に直すことができます。それで法学部は議長、副議長、学生大会は二名の人を選ぶということになつておりますが、これは毎年二回、大体六月と十二月と二回改選されることになつております。それで議長、副議長はその学生の候補者の中から多数によつて一名ずつ選出されることになつております。これでその法学部学生大会の仕組に関しましては終ります。  二十一日の件に関してでありますが、二十一日の大体四時ちよつと過ぎだつたと思いますが、私が少し所用がありまして、正門前から本郷三町目のほうに歩いて行つたときに、警官が大型ジープに一台約三十名ほど乗りまして本郷郵便局の前で停り、本郷郵便局の中に三十名が待機していたわけであります。そこで私は直ちに学校内に引返しましたところ、同時に学校内においては約三十名ほどの私服警官が入つておりまして、それは私があとから聞いたところによりますと、一番初めに中央委員会室へ入り、その後その横の部屋二部屋を通つて、それから経友会、それから学友会、委員室、ここに入りまして出て来たところに丁度私がぶつかつたわけであります。そこで法文系学部の第二号館の片隅におきまして、そこにいた数十名の学生がその私服警官に対して、今日は何しに来たのです。あなたがたはどなたです。こういうふうに聞いたわけであります。そのときに私服警官のあとのほうにいた人たちは、私たちは通行人です、こう言つたわけです。それに対して学生が憤激しまして……それが私服警官であるということは学生が顔を覚えていて明らかであつたので、私服警官が黙つて学内に乱入するということは今まで曾つてなかつたことである。従つて学校側の許可を得て入つたのであるか、こういうふうに聞いたわけであります。それに対して私服警官は全然答えない、そこで或る学生は厚生部に走つて行きまして、厚生部長並びに学生課長に対しまして、私服警官が入つて来ることを許可されたのか、こういうふうに聞いたわけです。そうしたら折から厚生部長は本富士署に対して、どうして私服警官が来ているのか、こういう意味の電話をかけておつた途中であつたのでありますが、厚生部長は許可した覚えはない、こう言つて直ぐ出て来られました。折から学内におられました教授、助教授、助研生、それから学生その他の人々がわつと出て参りまして、どうしたのか、そう言つて私服警官に詰め寄つたわけであります。そうするとそこにいた一人の経済学部の学生に対して、私服警官がこいつだと言つて襲いかかつたわけであります。そうして引摺り倒しまして、寄つてたかつて手とか足とかを片手でつかんでいるわけです。そのときに丁度正門前に待機しておりました武装警官が約三十名ほど正門から学内に乱入して来まして、それが一緒になつてその一人の学友をつかまえたわけであります。そうして学生がもつと穏やかに話してほしい、今まで警官が入るときには学校側の許可を得ずして入つたことは一度もない。無断で学内に乱入するということは現在まであり得なかつたことである。従つて是非とも学校側ともう一度話して欲しい、そういうふうに頼んだわけであります。ところがそれに対して遠くのほうから一人の私服が、ここに逮捕状があるのだと、こう振りながら内容も見せずに、逮捕状があるから妨害する者は公務執行妨害罪であるとどなりちらしたわけです。そこで学生は憤激した。で、学生課の人も来るし、厚生課の人も、教授のかたも来ているわけですから、一度話してくれ、それから学生課長や厚生部長と警官側と話合つて頂きたい、こういうふうにお願いしたわけです。そうしたら学生課長も、これほど暴力で以て拉致されようとするときには私は止めることができない、私の手には負えない、学生課長も茫然と立つておられたわけであります。そこで学生は建物の中にいたけれども、教授、助教授、助研生の人が一軒に外に飛び出しまして、逮捕されて行こうとする学生を救おう、こう言つて皆が群がり寄つて是非放してもらいたいととり付いた、そのときに逮捕された学生は手やら足やら約三十名の武装警官、それから私服警官が二、三十名、それが手に手にこうつかみまして、横倒しにしまして、手錠と足枷を嵌めまして、片手で持ちながら片手の梶棒で学友をぽんぽん殴りながら正門のほうに……、約正門までそこから百五十メートルほどあつたと思います。引摺つて行くわけです。学生は憤激してこの警官を止めようとしてスクラムを組んだが梶棒によつて突破されたのであります。そこでその頃になりますと、約二十名ぐらいの学生が集つて来て、正門を閉めようと、こういうことになつたわけです。折柄正門の前に鉄兜を被つた武装警官が五、六十名大型ジープ二台に乗つて来たわけです。その警官も正門から学内に乱入する気配を示したので、その間の正門を遮断して、曾つて学園内に乱入したことがないのに、この機会に入れてはいけない、そういうふうに学生は考えて、その正門を閉めたわけであります。併しその警官はその正門を閉める学生に対して梶棒で殴る、蹴る、そういうことをやりながらとうとう通用門からその学生を拉致し去つて、大型ジープに乗せて警察のほうに連れて行つたわけですが、その学生も……、私も当時目撃しておりましたが、そこにいた多数の学生も目撃しておりましたが、丁度左の目の下から唇にかけてみみず腫れになつて、脂汗と血でジツトリと顔が滲んでおつたわけであります。翌日かその翌々日であつたかはつきり覚えておりませんが、これは聞いた話ですけれども、弁護士が逮捕された学生に面会したときに、手錠と足枷の部分が大きく紫色に腫れ上つており、顔から血が出、唇が裂けて血が流れ、歯か一本折れておつたと、そういうことをはつきり言つておつた。それを見た学生もたくさんいる。私はそのことを聞いたわけであります。そこで正門の前で、警官隊に対して学生はずつと正門の前に出て行つたわけです。尾高学生委員長と斯波厚生部長、それから学生課長、それから中央委員会議長、この人たちが、本富士警察署長がそのとき指揮をせられておつたので、尾高学生委員長が、このようなことは未だ曾つて大学になかつたことである。これは教育上も社会上もあらゆる点から見て誠に遺憾である。こういうことで抗議されたわけです。それに対して本富士署長は、ここで答弁することはできない。私は職務を執行したまでである。こう言つてすぐ帰られたわけであります。そこで学生は引揚げたわけです。  そのあと引揚げまして二十二番室において、どういうふうにこの問題を処理するかについていろいろ討議したわけであります。それが終つて、数十名の学生が本富士署に対して、学友を是非釈放して頂きたい。こういう抗議に出かけたわけであります。そこで学生代表の数名が本富士署長に会つて、是非釈放して頂きたいが、取りあえず差入れを許して頂きたい。こういうことを言つたそうです。そのときに本冨士署長が、差入れは本人が黙祕権を使つている以上許可することができない。こういうふうに言われたわけです。そこで学生たちは非常に憤激したわけですが、刑事訴訟法にはつきりと規定されており、又憲法に保障されておる黙祕権というものが、このように黙祕権を使つている以上は差入れを許可しないというふうな理由になつているというようなこと、これを聞いて学生は非常に憤激しておるわけです。それから弁護士の言つたことは先ほど申しましたが、このように非常に怪我をしておるわけです。そこで目撃していた人が大分代表団を通じて、是非医者を付けて頂きたい、そうして治療をして頂きたいと、こういうふうに言つたわけです。そこで、併しそのとき本冨士署長がこれに対して、本人が医者を要求しておらない以上付けるわけには行かない、こういうふうに言われたわけです。併しながら弁護士の話によりますと、本人は医者を付けることを要求したそうでありますが、全然それは受付けられず、そうして又消毒すらも許されなかつたという、こういう非常な人権蹂躙の事実が指摘されています。これに対して学生が非常に憤激しているわけです。大体当日の事情に関してはそのようなことであります。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 中村君に申上げますが、後刻又委員諸君から質問があると思いますから、御別席でお待ちを願います。   —————————————

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 次に証人として警視総監田中榮一君、本富士警察署長野口議君の御証言を願います。御着席を願います。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 ちよつとお尋ねをいたしますが、今まで学校側は一人ずつお聞きになつたのですが……。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) お答え申します。宣誓をして頂きまして、それから一人々々にいたします。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 了承いたしました。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 御両君に申上げます。本日は御多用中御出席を願いまして有難く存じます。委員諸君に代りまして御礼申上げます。今回私どもが取上げました東大事件につきましては、すでに十分御承知のことと存じまするので、改めてここに申上げませんが、証言をお聞きいたします前に申上げます。証人には偽証その他罰則がございますが、これもよく御承知のことと思います。これより宣誓をお願いいたしますから、全員御起立を願います。宣誓書の朗読を願います。    〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人田中 榮一    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人野口 議

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 御着席を願います。それでは最初に田中証人から証言を願いますから、その間野口君は御別席でお待ちを願います。  先ず田中証人にお願いを申上げますのは、今回の東大事件に鑑みまして警察官の活動と大学の自治の限界につきまして、おおむね三十分以内の御証言を願いたいと思います。二十分ぐらいにできればお願いいたします。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) それでは私から今回できました東大事件に関する警察官が如何なる行動をとつたかということにつきまして御説明いたしたいと思います。  今回東大事件におきまして、学生の暴行事件並びに警察手帳の奪取事件等が起りまして、私どもも誠に遺憾に存じておる次第であります。本件の発端は去る二十日の日でありましたか、全国に二月二十一日に行われるべき反植民地闘争デーの一環として行われたものではないかと考えておりまするが、東大構内二十五番教室におきまして、ポポロ劇というものが開催される予定になつておつたのであります。本劇に対しましては、或いは学校側の見解といたしましては、純劇の研究であるというような見解をおとりになつておるようでありまするが、警察側の意見としては必ずしもそうではないのではないかというようなことも一応事前には考えておつたのであります。そのために前に警察官が東大の学生部長の所へ参りまして、本劇の開催については学校としては如何なる御見解をお持ちなのであろうかということをお聞きいたしたのでありまするが、大学側としましては、勿論單なる劇の、文化事業のいわゆる校内活動の一つとして許可したものであるからというような御見解でありまして、私どももまさにそうであろうと、そうでなくてはならんと、かように考えておつたのであります。ところが二十日の日でありましたか、たまたま本富士署の警察官が私服でその劇の前を通りましたところが、ちようど二十五番教室の前の銀杏の木の下でありましたか、そこで切符を売つておつたそうであります。そこで切符を買つて大勢入つておるのを見たものですから、これは入場券を買つて入つたらば差支えないのじやなかろうかというので、それぞれ入場券を求めまして、何らとがめられることもなく、そのまま入場いたしておつたのであります。ところが一応その前に、劇の始まる前に何か演説等があつたように聞いておるのでありまするが、その演説は、第一はこの労働者風の男が「沖縄より帰りて」という題で、沖縄の事情についていろいろ説明をしておりまして、それが終りますると、今度は松川事件の真相報告というものが行われたのであります。これはその趣旨は、松川事件なるものは全く警察、検察のでつち上げた事件であるのだと、かようなことを現地を視察してその結果を報告するような演説会があつたのであります。それから更に引続きまして、渋谷駅頭におきまする東大の街頭演説についての経緯の報告がございました。それが終つてからいよいよ劇が始まつたらしいのであります。それが終つてから丁度一人の学生が私服がいるという声と共に、そのそばにおつた学生がそれを取り囲んで引つ立てた。それから又私服警察官が学生の手によつてそれぞれ引つ立てられまして、演壇の所で写真を撮られ、そして手を捻じ上げられまして殴打されておるのであります。それから更にここでは演劇の続行に支障があるからというので別室に連れて行かれまして、そこでいろいろ手を捻じられて詰問を受け、或いは手帳もその際かその前に奪取されておるのであります。その奪取された状況は任意提出ではないのでありまして、手帳はいつも制服に紐によつて密着することになつておるのでありますが、手帳だけは奪われて、その紐の管が制服に残つておつたり、或いは紐をつけてないものは紐と一緒に手帳を盗まれたのであります。それから警察官としましては、この手帳というものは極めて貴重なものでありまして、いろいろ重要な事柄も書き入れる場合もありますし、職務執行において必要なものでありますので、学生諸君に是非手帳は返して欲しいということを要求いたしたのでありますが、なかなか返してもらえなかつたのであります。そのうちに斯波厚生部長がいろいろ学生と警察官の間を御斡旋願つたのでありますが、結局斯波厚生部長が、とにかく一応詫び、始末書でありますが、これは学生諸君が作られたものでありまして、不法に入場したことは誠に申訳なかつたという学生諸君の書かれた始末書に署名捺印するならば返そうということで、斯波厚生部長がまあとにかく署名捺印をしてもらいたい。そうすればできるだけ手帳を返すことに努力しようというようなお話で、一切を斯波厚生部長を信頼いたしまして、そこで署名捺印をしたらしいのであります。それからまあいろいろごたごたがありまして、大体九時過ぎくらいに終つたそうであります。それから翌日は学生諸君が署のほうへいろいろの点につきまして、大学の先生もお出でになつたようであります。警察側といたしましては、午後一時頃までには手帳を持つて来られるというようなお話であつたのでありますが、遂に午後一時頃までにも手帳は返つて来ません。そこで本署は多数威力を以て警察手帳を強取、強奪したものであると、いわゆる暴力行為に該当するものでありますので、暴力行為等処罰令に基きまして、直ちに顔を知つております、はつきり確認のできる二人、即ち福井君とそれから千田君の二人の令状を取りまして、翌日二十一日の午後四時何分でありましたか、同人が安田講堂から出るところを逮捕いたしたのであります。或いは逮捕令状を大学当局に見せなかつたのは了解なくしてやつたのでけしからんじやないかという大学側の話もあるのでありますが、逮捕令状というものは、これは大学に見せる要はないのでありまして、その犯人、容疑者がおつた場合においては、如何なる場所におきましてもその令状を執行いたしまして、直ちにその場において逮捕できるというのがこの令状の取扱方であります。そこで丁度福井君が食堂から出るところでありましたが、そこでたまたま私服の警察官と遭遇いたしましたので、これを逮捕しようといたしましたところが非常に抵抗いたしました。止むを得ず抵抗できないような状態にいたしましてこれを本署に同行いたしたのであります。そこでその後福井君を本署に同行いたしましてから、学生諸君が同人を返してもらいたいというようなことで本署に来たことがあつたのでありますが、よく事情を話してこれは帰しまして、大体七時頃にはもう全部帰つたのであります。残り千田君は只今これも令状が出ておりまして、全国の警察に手配をいたしまして同人の行方を只今捜査中であります。  それから次に大学自治の限界でございますが、私はこの大学というものは真理を探究するいわゆる殿堂でありまして、学校が真理を探究するについては、当然これは憲法によつて保障されたものであると私は信じております。従つて学内において如何なる教育が施され、如何なる講義が行われようが、これはいわゆる真理探究の自由でありまして、これに対しましては、私は如何なるものもこれを干渉することはできなかろう。これは憲法に認めるところであろうと考えるのであります。同時に又学生をいろいろ指導する意味から言いまして、大学の運営といいまするか、管理のその一部を大学の学生に任せて、学生の自治にこれを委任するということも、これも又大学の教育の方針の一環として、これは当然私は学生の自治に任せることが結構なことではないかと考えております。ただこの従来唱えられまする大学の自治といわゆる学生の活動といいまするか、校内活動といいまするか、その校内活動は、これは学校が生徒にいわゆる自治の精神から任してあるといたしまして、これに対しまして、その方針に対しまして私どもは何ら干渉する必要はないのであります。併しながら現在の状況を見ておりますと、私はこの学生の大部分、殆んど大部分というものは極めて真劍にこの学生の身分を十分に体得して、その学生たるの身分を忘れず真劍に真理の研究、学問の追究を熱心にやつておられるものと私は信じております。併しながらその一部の学生の中には、学生の本部を忘れ、又学生の現在の地位というものを忘れて、ややもするとそれが曲つた方面に走り、而もそれがときに法に触れたような行動をするということもあつたことは、誠に私どもは遺憾に堪えないのであります。而もその行動が、現在の治安維持という立場から考えまして極めて重大なことであり、又これをそのままに放任をいたしておいたならば、到底全体としての治安を保持することが非常に困難であるというような場合も起り得るのであります。一例を申上げますると、大学の構内では御承知のように現在自由に何人といえども如何なる時間におきましても通行往来が自由であります。その場所におきまして、或いは政令三百二十五号違反のビラが撒かれたり、或いは又政令三百二十五号違反の言動等が常に繰返されるということは、これは治安保持という大きな立場から、これをそのまま看過することのできない由々しい問題であろうと考えておるのであります。而もこれらがすでに、いわゆる東大細胞なものはすでに法的には解消しておるにもかかわりませず、現在東大再建細胞、或いは東大細胞、或いは又東大教養学部細胞というような名前において、かかる不穏なビラ、貼紙等が常に大学構内においてばら撒かれ、それが通行人によつて読まれ、又それが一般に宣伝されるということにつきましては、治安当局といたしましてこれをそのまま放任することのできない状態なのであります。併しながら我々としましては、この大学、学園の秩序並びに平和ということにつきましては、細心の注意を払い、又最大の尊敬を払つておるのでありまするが、かかる違法行為、違法状態がそのまま放任されるということは到底忍びがたいことでありまするので、止むを得ず警察官としての職務執行をこの校内においてときに行うことが往々にしてあるのであります。併しながらすべて大学の当局の了解を得てやらなくてはならんということは、必ずしも私はさように考えていないのであります。大学の了解を得ることによつて、警察権を行使することの不可能の場合も中にないことはないのであります。而して大学側におきましては、昭和二十五年七月に大学当局と文部次官当局と警視庁との間において、公安条令適用につきまして、いろいろ打合せをいたしまして、その調停されました結果を即ち次官通達として全国の大学にこれを流されておるのであります。それと同時に警察側といたしましては、警視庁はこれを直ちに管下の署長にこれを通達し、又国警は国警として、この次官通達の内容を全国の国警に流し、又全国の自治体警察も同様な内容を持つた趣旨において、それぞれその地における学校当局と警察側とにおきまして協定を作つておるのであります。併しながらこの条例適用に関する協定は、飽くまで協定でございまして、公安条例そのものの執行を曲げるものではないのであります。で、私どもとしましては、この大学の自由、大学の自治というものを尊重する意味におきまして、現在この次官通達を尊重いたしたいと考えておるのでありまするが、最近の情勢からして、このままの状態では非常に治安維持の意味において支障を来たすというので、この次官通達の内容につきまして、今後更にこれを具体化して、将来再びかかる問題の起らないようにこれを是正しなくてはならんではないかというようなことも実は考えておるわけであります。併しながら私どもとしましては、でき得る限りこの現在の次官通達を厳粛にこれを守りたいという熱意は持つておるのであります。ただここで一つ特に警察の立場を申上げておきたいと存じますのは、この次官通達はこれは飽くまで、まあいわば行政協定というべきものでありまして、その元はやはり公安条例によつてすべての集会その他に対して取締りしなければならないのであります。而うして私どもがこれを制定した当時におきまして、一番問題になりまするのは、すべて学校構内におきまする集会、集団行進並びに集団示威運動は、これは学校長が阻止するを建前とする、而して若し学校側におきまして、警察の出動の要請のあつた場合においては、これに対して協力するという建前になつております。この制定した当時の我々の考え方は、例えば学校構内において無許可の集会が行われる、その場合において学校においてこれを解散の命令を出してもどうしても解散できない。止むを得ず警察官の出動を求めて、実力を以てこれを解散させるというときには、警察側としても部隊行動によつて多数警察官を繰出して、そしてこれを解散させざるを得ない。それから又学校構内において無許可の集会或いは集団行進、集団示威運動等が行われました場合に、学校当局がこれをやめろと制止する、警告する。何回警告してもどうしてもこれをやめないというときには、学校自体にはこうした実力行使の力を持つておりませんので、その際には警察に応援を、出動を要求する。それによつて警察が出動する、かようなことに我々は実は解釈いたしておるのであります。従つてこの学校構内においてビラがまかれる、その防犯的措置として、警備の必要上警察がそこに視察に行くということにつきましては、これはこの公安条例適用の範囲内である、かように私は解釈いたしておるのであります。併しながら学校当局としましては、こうしたこともやはりこの次官通達の中に含まれておるものという解釈から、すべて大学の了解なくしては一歩たりとも学園の中に入つてはならんというようなふうにお考えになつておるのじやないか、そこに双方の食い違いが若干あるのじやないか、かように考えております。それからなお防犯的措置として、パトロール巡査が構内に入つたり、そうしたことにつきましては、学校当局としては警察側とも十分にお互いに事務的な了解ができまして、大学側においては、この点についてはあえて問題にはされてないようであります。ただ問題になりますのは、今私が申上げましたビラの取締であるとか、或いは集会に対する視察であるとか、そうしたものが問題になるのじやないか、まあかように考えております。一切を学校長に御一任申上げておるのでありますからして、その集会が実際行われておるかどうかを特に視察する程度の権限は、当然これは警察側において留保されなければならないものと考えるわけであります。現に大学側におきましてもいろいろ苦心をされて、集会の取締等においては相当御苦心をなさつておるのでありますが、これだけ苦心をしてもときに秘密の集会が行われ、或いは学校当局の意思に反した集会がときに行われておるような状況でありまして、かような意味において警察側としましては、警備上の必要から大学構内といえども当然警察権を行使できる、かような見解を持つておる次第であります。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 田中証人に申上げますが、後刻各委員より御質問申上げたいと存じますので、別席で暫くお待ちを願います。   —————————————

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 次に、野口証人。野口君に申上げますが、警察側の見たる事件の発生原因、動機、経過並びに結果と、本件に対する警察側の見解につきまして、おおむね二十分くらいな予定で御証言願います。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 第一に東大の状況を委員のかたがたは御存じと思いますけれども、一応概略申上げますと、東大は御承知のようにあすこへ公衆が自由に交通しておるのでありまして、この状況は昭和二十二年十一月八日の法律第百三十号の道路交通取締法の第二条に当るものと思うのでございます。バスが上野駅とお茶の水から東大内へ通つておりまして、学校の中の病院前と安田講堂前の二カ所に停留所がございます。これには学生、職員のかたがた並びに一般の人も乗つて往来をいたしておるような状況でございます。普通の自動車も、自家用車も、タクシーも自由に交通しておるような状況でございまして、最近交通事故が赤門内に発生いたしまして轢殺した事件も発生しておりますし、又ひき逃げ事件等もあるようなわけでありまして、私ども交通関係にも取締その他いたさなければならんという責任があると思うのでございます。一般犯罪関係は昭和二十六年中で三百十件、これは大体窃盗が主なものでありますけれども、本富士署全管内の約三割弱に当る一般犯罪が発生しております。又東大病院には変死検証の司法警察員といたしまして、変死検証をするものが一カ年に六十件から七十件くらい発生しておりまして、これは私ども署員が行つて変死検証をいたしておるような次第でございます。そのために東大内では学校当局と話合いの上にパトロールを入れておりまして、パトロールは二つの区域に分けまして、平素はそのビートに一人ずつ二人おります。午後二時から十時まで犯罪が発生する時期にはそれに複数配置といたしまして、四名を入れて犯罪の予防警戒をいたしておるような次第でございます。  学校の門は東大正門、赤門、それから農学部正門は午後十時以後は閉鎖されますようでありますけれども、そのほかの裏の門、弥生門、池の端の門、それから私の警察の横から入りました龍岡門は四六時中開け放しであります。それで絶えず人が交通するというような状況でありまして、そのためにいろいろな犯罪も発生いたしますので、私どもといたしましては、犯罪の予防警戒に相当重点的に力を入れなければならんと私は考えておるのでございますけれども、約三割弱という犯罪の態勢から見ますと、もう少し警戒力を入れなければならんとも考えますけれども、学校の構内でありますから、成るべく目立たないような方法で警戒の万全を期したいということで、先ほど申上げました数を以て警戒警備をいたしておるような次第でございます。勿論これには私服の刑事或いは警備係、それぞれの主務の仕事につきましては中に入つて仕事をしておる、校庭に入つて仕事をしておるような次第でございます。  二十日の晩のポポロ劇のことについて申上げますと、茅根、柴、里村の三巡査が午後の六時頃ポポロ劇を見に行つたのであります。切符を買いました場所は、二十五番教室は二階でありまして、その下の校庭の入口の所でポポロ劇の関係の女の人が一人机を持出しまして、そうしてそこで切符を売つておつた。学生の諸君もそこに一人か二人おられた。一般の者がそこへ入つているということを確認いたしまして三人の巡査は中に入つたのであります。と申しまするのは、従来映画とか演劇とかいうようなものがたくさん催されておりますが、それにはいつも附近の人が、学生、職員でない部外の人が入つておつたという事実を確認いたしておりまして、その日もやはりその以前のような状態で一般の人も入つておるということを確認いたしまして、そうして三人の巡査が中に演劇を見る、芝居を見るという気持で入つたのであります。中で労働者風の男の人が、「沖繩より帰りて」という演説をされた、十分ぐらいやつたということでありますが、その内容についてはまだよくわかりませんけれども、これについては捜査をいたしております。その次に東京大学新聞編集委員という人が松川事件の実態報告という演説をされたそうであります。その内容は大体、松川事件というものはでつち上げであるというような趣旨の演説があつたそうであります。そうしてこの被告のために、救援のためにはカンパをしなくちやならんというような話もあつたそうであります。それからその次に渋谷事件について渋谷署員の不当検挙のことなどの話もあつた、それから「いつの日にか」という題名で松川事件を諷刺しました芝居があつたのであります。それが終りまして電気がぱつとついて、と同時に一人の学生の人が私服がいる、吊し上げろ、それを合図に多数の学生の人がこの三人の巡査をとつつかまえて殴る蹴るの暴行をしたのでございます。そうして舞台に引出されて三人とも写真を撮られた、そうして始末書を書け、始末書はその学生側で書いたものに、その内容は、巡査の報告では、不当に入つて申訳ない、今後入らないというような趣旨の始末書を書いたそうでありますが、学生側が書いたものに署名をさせろということで、これも三人の自由を拘束して、そうしてそれに無理に署名をさせたということであります。そのとき斯波厚生部長が来られまして、手帳は返せということに斡旋せられたらしいのでありまするけれども、きかない、どうしてもその場ではきかないということで、それでは明日の朝までに必ず出すから、この場は仕方がないから帰りなさい、私が必ず学生から取上げてお返ししますということで、三人の巡査は手帳を奪取されたまま帰つて来たのであります。  で、私はここでちよつと意見を申上げますと、ここでは大学当局の職員のかたから厚生部長はこういう責任者であられるということを聞いて私どもも折衝いたしておりまするが、こういう人が警察官が持つておるところの手帳を取上げたというこの暴行に対して、手帳をそこで返すことができなかつた。そこには巡視が七、八人、巡視と言いますのは、警備員でございます。学校側の警備員のかたが七、八人おられたらしいのでありまするけれども、全然そこでは先生の言うことを学生はきかなかつた、一口に申しますれば押えがきかなかつたというところにこの事件の根の深いものがあるではないかと私は考えるのでございます。柴巡査は打撲傷で、診断書によりますと、全治十日、茅根巡査は七日でございます。で柴と茅根巡査はワイシヤツのボタンがちぎられる、それから手帳は紐を付けておりますが、紐が切れて半分はここに残つております。それからオーバーのボタンをちぎられた、そういう事態を巡査は帰つて報告いたしましたので、その宿直の私どものほうの主任が斯波厚生部長にすぐ来てもらいたいということで連絡いたしましたところが、斯波厚生部長は警察のほうから来てくれんかというお話であつたそうでありますけれども、それはどうも筋が違うじやないかということで、結局来てもらいまして、いろいろ話をいたしましたけれども、学生のほうでは返さない、明日の、明日と申しますのは二十一日でありますが、二十一日の午後一時まで待つてくれ、学生は朝早く来ないのもおるからして、午後一時になれば必ず学生から取上げて返すから待つてくれということでありましたので、一応その晩は深更にも至りますし、学生諸君は帰つてしまうということでその日はそのまま強奪されたまま、そのまま終つたのでございます。そうして私はその報告を受けまして、これは極めて重大な問題である、学内で暴力行為等取締に関する法律違反があるという確信を私は得まして、東京地検で容疑者の福井駿平君、経済部の二年で二十二歳を容疑者として、逮捕状の請求をして逮捕状を取つたのであります。そうして逮捕状を取りましたけれども、一時まで待つてくれという話でありまして、待つておりましたけれども、まあ何回も催促いたしましたけれども、一向に埓があかない、そうして時間は過ぎるので、三時半頃制服警官二十五名、私服十名を以て逮捕に向つたのであります。逮捕するにつきましても、成るべくトラブルを避けたいと考えておりましたけれども、この被疑者は住所がわからないということで、止むなく学内から逮捕することを私が命じました。そうして文学部の学友会の前の校庭で逮捕をして、手に手錠をかけてそうして同行を求めましたところが、なかなか暴れて同行に応じない、最後にもう寝て動かない、野田巡査と高橋巡査に噛みついたというような状況でありまして、非常に私たちは困つたのであります。そうして一方二、三百名と思われる学生がこれを奪回しようということで表門を閉めるという騒ぎができまして、それで予備隊の一個小隊を正門に向けまして、そうして表門を明けて被疑者を同行したのであります。そうして現在福井君は地検で取調べて拘留が付きまして、只今小菅へ送つております。一方日本共産党党内細胞というものは二十五年五月十日に解散をいたしておりますが、解散をいたしまして、その後届けはございませんけれども、学内で再建細胞、或いは東大細胞というビラがたくさん撒かれますので、これは団規法違反があるのではないかという私は容疑を非常に深めたのでありまして、その捜査をいたしておりますけれども、非常になかなか中が広いのでこの捜査は非常に困難でありまして、どこでやつておるのか、又どういう人がそれにタツチしておるのか、なかなかわからんで、今以て非常に苦心をしておるような状況でございます。集会の状況は昨年は四十六件でございます。許可になつたのが三十件、無許可十一件、不許可挙行というのが三件、政令違反が二件、こういうような状況で、今年は十件ございまして、許可になつたのが六件で、無届で四件やつてしまつたというのでございます。それで三百二十五号違反のビラも相当あつたのでありまするけれども、学校側から警察に出てくれということの要求をされたことはただの一回もないのでございます。  今後の処置について先ほど御質問の点を簡單に申上げます。私といたしましては、やはり現実に基く警察活動をして、そうして制服は先ほど申上げましたようなパトロールを入れて、そうして一般犯罪の予防検挙をする警備係も学校当局と協力をして警備の目的を達するために仕事をさしてもらう、そこで東大学生と言いましても、この違反行為をした者はほんの一部であると私は思うのでございまして、その者の取締を学校当局も厳重にすることを私は望みたいのであります。  検挙後尾高教授とそのほかのかたが私の所へおいでになつた状況をちよつと附加えて終りといたしますが、二十一日の夕方に尾高教授と松本事務官、学生代表と言いますけれども、これは学生代表の性格は実際あるかどうかわかりませんが、文科の安島君、工科の大野君が見えられまして、これは尾高教授は何も学生に来いということは言わなかつたけれども、学生がついて来たということを尾高教授は言つておられました。そうして一方約百名の学生が警察の廻りに押しかけまして、そうして学生の代表は釈放を要求した、けれども押しかけましたその形は都条令のいわゆるCに当るということを私は確認いたしまして解散を命じました。それから尾高、脇村、斯波三教授が二十二日の午前九時頃おいでになりまして、やはり抗議やら、穏便にしてくれというような御趣旨も私にありました。それからやはりその日の午後五時頃学生代表といつて文科の吉川君、農学部の田村君、経済学部の山口君が見えまして、そうしてこれも逮捕の学生を釈放せよという抗議がございました。そのときやはり二百名くらいの東大生が署の前に押しかけまして、これも都条令に違反すると私は確認いたしまして、実力を以て解散させました。二十三日の午後四時頃約百名のり学生が、福井君が東京地検から護送されて帰るのを待つておる形が見えましたので、この百名も解散を命じましたけれども、間もなく護送自動車が署に帰つて来ました。そのとき解散はいたしましたけれども、三々五々福井頑張れ、不当弾圧というような言葉で学生は叫ばれたのであります。二十七日の午後一時に尾高、脇村、斯波各教授が私の留守中においでになりまして、警察手帳は警察庁のほうへ返して来たという御挨拶があつたそうであります。私はそのときには会いませんでしたが、そうして手帳は警視庁で私は受取つて帰りました。受取りましたけれども、この手帳は強奪された臓品の性格を持つものであるし、これはどういう経路を以てこの手帳が返つたかということについての追及は私はいたさなくてはならんと思つておりますけれども、この経過を私は東京地検に報告いたしまして、その報告書によつて東京地検ではこの三つの手帳は臓物として領置してあります。以上であります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 足りないところをちよつと伺いたいのでありますが……。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) あとでお願いいたします。これで休憩いたしまして、約十五分ほどいたしまして、各証人のかたの全部の御出席を願いまして、それから質疑の通告の順位によりまして、文部側、次に法務委員のかたから、その次に文部委員のかたからというように順次御質疑を願いたいんですが、一人の持時間は二十四分に当るようであります。でありますから、これは関連の質問をも加えて大体それくらいのところに落着くようにお願いしたいと思います。  それでは休憩いたします。    午後三時五十六分休憩    —————・—————    午後四時十七分開会

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 只今より開会をいたします。通告順序に従いまして発言を許します。先ず伊藤君。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 先ず野口君にお尋ねいたしますが、逮捕状を請求された根拠はどこにあるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 被害者の供述調書、ポポロ劇の入場券、被害者の報告書等でございます。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 報告書によつて逮捕する被疑事実をどこで確認したのでしよう、その者の被疑事実は、容疑者として認定し得るところのものはどこで確定したのでしよう。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 被害者が確定しております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 被害者といつて、この被害者が福井ということがどうしてわかるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) わかる者が福井ということを確認しております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 誰が確認されたのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 被害者が確認しております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 福井に暴行を受けたときですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 暴行を受けたという事実も確認しております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 暴行を受けたと言うのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) はい。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 それから今一人の何とかという人、千田ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そうでございます。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 千田からも暴行を受けたというのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そうでございます。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 どういう暴行を受けたのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 千田につきましては、やはり被害者の現認はやはり暴行をしたということを確認しているわけであります。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 被害者の供述だけですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そうであります。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 多数そういう集合して、数百人いるところの場所において、その人が暴行したという認定がつきますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) つきます。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) お坐りになつてお答えして結構です。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 次に、逮捕状は執行する場合にどういう手続で執行するのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 逮捕状は被疑者に示して逮捕いたします。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 あなたの先ほどの供述を拝聴しますと、被疑者に示していないようですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 示しております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 いつ示したのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 逮捕当時示しました。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 逮捕当時……そういう漠然とした話では困る。逮捕当時示したという事実を先ほどからの供述では言つておらないじやないか。逮捕状は群衆の後で以てここにあると言つて振り上げているという話です。それで以て示したということになつておりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 本人に示したという報告を受けております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 先ほど来のあなたの供述によつても、現実に本人に示していないことは明らかじやないですか。そういう執行方法があるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 示しております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 ただ示しているというだけじやいけませんよ。あなたの先ほどの供述と違う。あなたの供述自体が示していないことを物語つているじやないですか。多数群衆の後で以て示しただけで、それを示したとは申せません。又話の筋をお伺いしておりますれば、場所は違つておりましよう。講堂の中という建物の中で面会したとか、遭遇したという話もありますし、あなたの供述によりますれば、校庭において遭遇したというのですから、突如遭遇してこの者だと言つて指摘したからすぐ逮捕に移つたのじやないのですか。あなたの供述はそうではないですか。そのときに逮捕状を示して直ちに逮捕したということを言つていない。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いやそれは、逮捕状のことは時間の関係で申上げなかつた……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 いやそれは時間の問題じやない。(「それが最も重要な問題だ」と呼ぶ者あり)

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは示して……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 示していらつしやらないことは先ほどからあなたがおつしやつている。どうして示したのですか。誰が逮捕状を持つて行つたのですか。持つて行つたのは誰ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 上野警部補であります。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 尾高さんの証言では、上野警部補は後のほうにおつたと言つていますよ。そうしたらここに逮捕状があると言つて振り上げただけじやないですか。本人に示していないことは事実じやありませんか。いい惡いは別問題として、事実をあなたははつきりおつしやつたほうがいい。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや私は示したと確認しております。そういうふうに報告を受けております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 尾高さんどうですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 私は福井君の逮捕の現状にはおりません。私は逮捕状の内容は見ませんけれども、二通正門の閉ざされた扉を隔てて見えたのですけれども、ただもう一名千田というのに対する逮捕状を見せたわけではないと思いますが、それはすぐ執行しなかつた……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 学生はどうですか。

吉川勇一東京大学学生自治会中央委員会議長

○証人(吉川勇一君) 私はその現場におりましたけれども、いきなり一人の警官がこいつだと言つて福井君を指さした。そうするとその途端に十名くらいの私服が躍りかかつて倒した。その時周りにいた学生が憤激しましてなぜそういうことをするのだと言つたら、一人の警官が、逮捕状が出ていると言つて、妨害する者は公務執行妨害で逮捕するということを言つただけで、決して当人には示しておりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 全部を我々が想像いたしましても、そういう緊急の場合において、目前に本人と称する人を発見して直ちに逮捕に移つた場合において、あなたがたの行動の上において逮捕状を示すだけの余裕があり得るとは考えていない。だから今吉川君が言われたように、又私の伝聞証拠によつても、後のほうで示したということが本当じやないですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 細かいことは知りません。後かどうかわかりませんけれども、とにかく示したということを私は報告を受けております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 いや、どつちですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 被疑者に示したということを……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 いや、わからないという証言か、示したというのか。示したとあなたここで断言すればそれは私どもには証拠があるから、はつきりして欲しい。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 示したという報告を受けております。私は現場には行つていないので……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 現場には行つていないから報告だけで事実は知らない、こう解釈してよろしいかどうですか。(笑声、議場騒然、「委員長注意々々」と呼ぶ者あり)示したということになれば、あなたは偽証罪になりますよ。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 質問者以外の人間は静粛に願います。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 訴訟法の二百十一条によつてはつきり執行規定がいたしてありますから、殊に今日の憲法下におきましては、身柄を拘束するということは不当であります。憲法に基本人権について三十条も費しているということは、そこに原因しているから、そこは執行官としていま少し謹しんで頂きたいと思います。緊急の場合止むを得ぬという事情は了察しますけれども、あなたがたのやり方はちよつと穏かでないと思います。  それから次にそれでは伺いますが、今の学生が暴れたから、抵抗したから足枷手枷をしたとおつしやるのですが、これはあり得ることでしよう。併し学生はそのときに梶棒とかその他の武器類似のものは持つていなかつたでしよう。持つていましたか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 持つていません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 そうすると学生に傷ができて血が出ており、歯を一本折つたというのはどういう経過から生じましたか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私が報告を受けましたのは、暴れてどうにも仕方がない。足で蹴つてどうにも仕方がない。最初手錠を嵌めまして同行を求めたけれども、自分で寝てしまつてそうしてもう動かない。寄りつけば足で蹴るというので嵌めたのです。そうして……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 いや、私のお聞きするのは、手枷足枷を嵌めたことは事実だからよろしい。肯定する意味じやない。事実だからそのことを聞いているのじやない。どうしてそういう傷を作つたかということ、逮捕する必要以上の行動に出ているのじやないかということです。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは二人の巡査が……野口という巡査が噛みつかれております。左の人差指と記憶しますが、それに噛みついたときにぽろつと歯が折れた……。(笑声)

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 併し指は肉体ですよ。鉄の極じやないのですから、歯が折れるほどの固い指というのは日本人は持つていないはずですよ。青年の歯は丈夫なものです。年寄りの歯と違いますから。我々の歯ならそうかも知れないが……あなたそういうむちやなことを言つてはいかんよ。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや、歯はもう何かゆらゆらしておつた。そういうことを私聞いております。(笑声)

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 それでは顔の傷はどうしたか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 顔の傷は私知りません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 顔の傷は結局警官がつけたのじやないか、自分が顔を引掻く道理はないから。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そのことは知りません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 格闘しているうちか何かにとにかく暴れたものだから梶棒で殴つたかどうかしているのじやないか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そういう事実は全然知りません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 現実に被疑者をあなた手がけていたのでしよう。被疑者を留置場に入れているから、それに対して、あなたの署員の暴行に対して捜査するほどの熱意があれば、被疑者の基本人権に対してもやはり捜査するだけの熱意を持つてやるべきが当然じやないか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 知りません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 一方だけを調べて一方の傷を調べないということはちよつと手落ちじやないですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 怪我をしていたということは知りません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 知らんということはいけませんよ。あなた自分で手がけている。殊にあなたに面会に行つた弁護士が傷の手当をしてやつてくれと言つたら、本人から申出がないから知らんと言つた。そういう事実から言つてもあなたは知つているはずだ。いやしくもこれだけの事件について被疑者を調べないということはない。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 本人が黙秘権を行使して……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 黙秘権のことはあとで聞きますから、傷の問題を。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 傷をしているということは私は知らない。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 知らないというそんなむちやなことはない。何でも知らんじや困るよ。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 これは本当の警察の署長かね。本人かね。(笑声)

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 御存じないというはずはないでしよう、それは。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 知りません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 部下からも報告は受けませんか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 報告を受けません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 そうすると被疑者に会つておりませんか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 被疑者を見ました。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 見たら一見して顔に傷があれば、体内じやないからすぐわかるはずでしよう。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは気が付きません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 気が付かないというのは職務に不忠実ですね、あなたは。顔の傷くらいはわかりそうなものじやないですか。それは弁護士が治療をしてやつてもらいたいと言つて、本人からそれは申出がないからすることはできないということはおありになるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は、担当の弁護士の人が治療をしてくれということを私に申出られたことは私記憶ございません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 本人がそれじや申出たことはどうですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) ございません、私には。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 署長の所には何も報告しないのですか、そういうことは。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは私は聞いておりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 又あなた、留置する場合において身柄の負傷ありや否やという二とはお調べになることは常識ですね。その場合に本人が怪我をしておりますれば、それに対して相当手当をすることはこれも取扱上当然の行為だと思う。なぜなさらなかつたのですか。あなたは知らんにしても係官が数十名いるはずですから、それらが当然の職務行為としてなぜ行わなかつたのですか。(「黙秘権か」と呼ぶ者あり)

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 怪我しているということを知らない……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 あなたは知らなくても、仮にあなたが知らなくても多数の署員がいるはずなんだから、その署員が留置する場合には……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 署員もそれは知らなかつたのでしよう。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 知らないはずはない。それは身柄を留置所に入れる場合においては、裸にして股の下まで調べるはずなんです。して見ればどこに傷があるとか、どういう病気を持つているとか、一応は外見において、見えるだけの程度のものは調べるはずだ。專門家でなくてもわかる程度のものはあなたたちが知らなくちやならんはずだ。それに対して当然の手当をなすべきはずじやないですか。その報告を受けられないということは、それは、あなたとしての職務の怠慢と言わなくちやならない。受けていないですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 受けておりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 あなたのほうは留置する場合においては、何も身体を調べずに放り込んでしまうのですね。昔のいわゆる行政手続があつた時分のように、めちやめちやに放り込んでしまうのですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いいえ、それは係が調べて……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 係が調べれば当然それくらいのことは、歯が欠けているとか顔に傷があるというくらいのことはわかるわけじやありませんか。而も手枷足枷して連れて行つたというのだから、そうすれば本人の手枷足枷を外すときにおいても知り得る状態にあつたはずです。それを知らんということは、あなたは事更に事実を隠蔽していると思われる。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 隠蔽いたしておりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 隠蔽していなくても署員はそれを知つていなくちやならん。お答えにならん……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) お答えしますが、署員も気の付かなかつたことと思います。若し怪我しているとすれば、署員もそれに気が付かなかつたことと思います。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 私のほうはそれは問題を提起した以上は、それは追及しますよ、最後まで。そんなあいまいなことでは私のほうは承服しがたい。もう少し御答弁のなされようがあるじやありませんか。(「議事進行について」と呼ぶ者あり)

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 質問中の発言は許しません。(「議事進行だつたら取上げればいい」と呼ぶ者あり)

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) よく事情を調べまして、そのとき留置しました状況を調べまして……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 じや、その点はよく調べて改めてあなたを喚問してお聞きします。  それからあなたは、本人が黙秘権を行使しているそうですが、黙秘権を行使していると、これは医者にもかけない、差入れもさせないとあなたおつしやつたそうですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いいえ、それは私言いません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 尾高さんどうですか、それは。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 私は直接には聞きません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 間接にどなたから。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) ただ野口署長から聞いたのかはつきり記憶しませんけれども、とにかく黙秘権を行使していると、これは理窟だけれども、こういうものをここへ差入れたいと言われても、本人がそうかどうかわからんから困るのだということは警視庁の人から聞きました。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 黙秘権を行使している場合においては差入れをさせないというあなたのほうに内規があるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはございません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 なぜ差入れを許さない。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 差入れはその日からしております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 じや本人から申出があれば差入れをする、弁護士もかける、医者にもかけるのは当然のことでしよう。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 当日も差入れはいたしております。毛布も入れております。学生の諸君が持込まれたのはその晩から全部入れております。鉛筆とかそういうものはいけない、それでお断りしましたけれども、私の記憶では毛布、食事、ちり紙、歯磨関係、そういうものはその日から入れております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 それほど細かく報告を受けておつて、重要な、なぜ傷のことがわからないのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 傷のことは私知りません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 ちり紙に至るまで至れり尽せりの御存じで、傷のことが御存じないということはちよつと私ども了解しかねるですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはあとでよく調べて見ます。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 あなたはそれでは署長勤まりませんよ。人の基本人権を保障するところの任務に携わるところの、直接の遂行の完璧を期せられるとは思われませんよ。本富士署に捕まつたら何されるかわからんということになつてしまう。時間がありませんのでいつまでもやつているわけに行かんですが、それでは次にお尋ねしますが、問題の警察手帳に、これは取つた取らんのことはこれは裁判の問題だから今ここでタツチしませんが、内容を、ああいう昔の特高的な調査というものは誰の命令で出されるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 本人が警備上必要なことを書いたのでありまして、それは私は一々警備係がどういうことを書いているか、又書いたことをやつたかどうか、それはまだ一々私にはわからない。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 警察手帳というものは、これほど問題になつているのですから、その内容の真偽のほどについては少くとも事後においても、今日の状態においては御存じのはずです。私から考えますれば、一々報告があつたことと想像せられますけれども、少くとも最小限度において今日この内容はどうだということはお尋ねしているはずですが、そんなあいまいなお答ではどうも了承いたしかねる。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 一々報告は、書いていることについて一々報告は受けておりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 警備上というとどういう警備の必要ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはいろいろな警備上に必要なことがありまして……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 人の思想を調べたり、人の身分を調べたり、尾行したり、非公開の所へ立入つて傍聴するというようないろいろなことを、警備上どういう警備のために必要ですか。警察法のどういうところにそれは根拠を求めていらつしやるのですか。私はその法律上の根拠を伺いたい

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警察の仕事はいろいろあるのでございます。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 警察の仕事を聞いているわけじやない。今の問題を聞いている。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警備と言いますと、いわゆる警戒警備でございます。(笑声)

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 そんなことは、あなたに講義を聞くわけじやないから、私の聞いていることにお答え下さい。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警戒警備……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 いや、警戒警備の中に入りませんよ。そんなことは、もつと他に目的がある、いわゆる高等警察的な目的があるということを言わなくちやならないと思う。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そういう考えはありません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 だからそれはあなたの命令かどうかということをお尋ねしておる。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は命令いたしておりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 あなたの署員が勝手にこういうことをやつておるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警備上必要なことをやはり調査しておると思います。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 それでは警察官が職務行動をとる場合においては、法規に基かざる、基かずして勝手にこういうことを、警察法にも何にもないことを、今日この法制の下においては何ら根拠を持つていないことをやつているのを黙認しておるのですか。それを警察は放つて置くのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警戒警備をすることは警察の……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 どうしてこういうことが警戒警備に入るのですか。入る理由を伺つておるのです。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 調査するということは……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 何のために、警戒のために調査するのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警察予備隊の身許調査があります。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 学校の先生は予備隊に入るはずがない。大学教授が予備隊に入るはずがない。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そのほかにも……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 在学している者が警察予備隊を志願しておるはずはありません。この名前が書いてある人は全部警察予備隊に志願したのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警察予備隊を志願したのが相当に私はあると……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 そういうことはあると言つても、ここに皆名前がわかつておる人は予備隊の志願者ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 全部かどうかわかりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 だから私はここに警察手帳に挙げられておるところの各事項についての調べと、法律上の根拠を伺つておるのです。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 今申しました警察予備隊の調査が来ております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 特審からの要求があつたのじやないのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) はあ……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 特審からの要求が……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いやそうじやございません。これは国警を通じて私のほうへ文書が来て、それによつて……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 はあ、そうですが。そうすると国警のほうからあなたのほうへ要求があつて、文書が来てそれでお調べになつたのですか。それじやわかつておりますね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは予備隊のほうであります。(笑声)

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 予備隊のことを聞いておるのじやない。警察手帳に書かれておる事項について、いわゆる特高的な素質を持つていることは、これを一覧して調べるとわかるのです。これをどういう法律上の根拠に基いてやつておるか。又誰がこれを命令しておるかということを聞いておるのです。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 命令はしておりません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 そうすると警察官が勝手にこういうことを、職務行為をやつておるわけですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警備上必要なことをやつておるのであります。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 あなたの御答弁は誠実を欠いていますよ。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや私は……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 もう少しあなたも法律で飯を食つているのだから、もう少し筋の通つた御答弁を願いたいですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は誠実にお答えしています。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 いや答えていない。私の質問に答えていない。特高から来たのであるか、それから関係方面からの命令か、どうですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そういうのはありません。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 命令も何もない。併し法律上の根拠もないことを仮に調べ上げるということは、結局職務以外の行為を勝手にやつているということになる、現在の警視庁の、警察のあり方はそれでいいんですか。田中総監どうですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私からお答えいたします。今の本富士署の署長からのお答えが御不満だつたと思いますが、警察といたしましては、いろいろ必要なことにつきましては勿論調べております。調べるというより参考にいろいろしたわけであります。本件につきましても、やはりただ警察上の問題とか、今伊藤委員のおつしやる昔の特高的な目的とか、そういう意味でこれは調査したのじやないのであります。全然警察上以外の目的によつて調査したわけであります。私はそういう解釈をしております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 だから警察の特高的なものでない、その他の目的があつて調べたとおつしやるのですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 多分そうだと私は思つております。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 その他の目的とはどんなものですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) まあいろいろ教授がどういうような平素著書があるか、或いはその御本人の経歴とか、この程度を、まあ著書なんかにしたところが、市場にある、そういうことを一応調べたんじやないかと、こう私は思います。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 それが、そういう思想上の動向とか、日常行動をお調べになる必要はどこにあるのか、又その法律上の根拠、又命令関係、それをお尋ねしておるのです。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 調べることについて命令とか何とかいうものでなく、いろいろな点について必要があるから或いは調査したのじやないか、実際にああいうことが書いてありましても、果して巡査が調査したものかどうか私どもは……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 事実の真偽は別です。私の言うのは、ああいうことが現れていることを、全体を通覧いたしますと、いわゆる戦前におけるところの特高警察そのままです。我々は意外に思つたのですね。我々は特に民主主義国家再建の上においては、いわゆる世界から非難を受けたところの従来の警察国家というものを払拭したいと、こういう考え方です。警察法の理念から申しましても情報交換はあり得るけれども、そういうことはあり得ないはずです。それがどうして職務に携わる警察官がああいう重大事項についてタツチされているかということは不思議に堪えない。それが公々然として行われている。或いは警察全体にそういう指令があればこれは断乎我々は国会の名において究明しなくちやならん、これは国会として默つておれない。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 我々としましては、警察におきまして、現在の民主警察におきましては、昔の特高警察的なそのやり方というようなものは殆んど全部払拭しているものと私は信じております。そうして又現在もさような方針でやつております。ただ警察として、いろいろ情報なり、警察情報を取る、必要によつてそれを警察上の目的に使用するとか、そういうようなことは毛頭ないと思います。ただそういうものを、著書を一応調査したということはありましたかと思いますが、併しこういうことは恐らく本人についてどうとか、そういうことではないと思います。一応これはどなたでも、その人の著書とか或いはそうしたものによつてすぐわかることでありますから、仮に調べたとしても、こうした憲法に許されている範囲内においてやつている問題だから……。

伊藤修日本社会党(第二控室・右)

○伊藤修君 憲法において許されている範囲ということを逸脱しているということが手帳から表現されているところによつて十分あなたも把握できると思う。これはあなたもしまつたと思つていらつしやるのではないかと思います。これは恐らくあなたとしても十分認識できると思う。常識あるあなたがこれは私は考えなくちやならんと思う。この点は私はもつと追及したいと思うのですが、私の持ち時間もすでに経過しちやつたのですが、私はもう二、三時間聞きたいのですから、明日か明後日聞きたいと思います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 私は質問の最後に文部大臣或いは法務総裁にお伺いいたしたい点もあるのですが、それを保留しまして一応質問いたします。  先ずお伺いいたしたい点は、田中証人でございますが、憲法第十九条の思想の自由、それから憲法第二十三条の学問の自由、これはお認めになられるか、ならないか、念のために伺います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 勿論この憲法の 条章によつて規定された内容でありますから、如何なるものといえどもこれを侵害することはできないものと私は確信しております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 もうちよつと大きい声で。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 憲法の条章によつて規定された内容でありますから、これは如何なるものといえども侵害できないものと考えております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 念のためにお伺いしますが、一昨日私はNHKの「時の動き」という放送を聴取したのでございますが、その放送のときに、田中総監の言葉の中に、過激なる思想の持主が云々ということがありましたが、この過激なる思想とは如何なるものでございますか。

田中榮一警視総監

○一証人(田中榮一君) これは一般社会人心を不安に陥入れたり、それから又……。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 いや具体的に。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 国内の秩序を破壊するような、さような思想であろうと思つております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 例えばどういう思想ですか、具体的に。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) ちよつと今ここで申上げることは差控えたいと思います。さような思想は如何なる思想であろうとも、私は国家的に見て危険な思想ではないか、かように考えている次第であります。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 その思想が行動に移らない場合に思想として認められるのですか、認められないのですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 思想としては十分認めて差支えないと思います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 それではそういう研究をする人とか、或いはその研究をする会というものを特に弾圧するとかいう考えはあるのですか、ないのですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) さような思想を研究し、それを懐くということは、又その思想を発表するということはこれは憲法によつて認められた基本的人権であると考えております。併しながらその思想を具体的にこれを行動の上に移して、よつて以て社会の人心を不安に陥れるということは、これは法律秩序に違反し、又法規に違反するようなものであれば、これは当然不法行為として法律の命ずるところに従つてそれを取締りせねばならないと考えております。さような意味で私は言つたと考えております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 それでは次に承わりたい点は、二十五年七月出されたところの次官通達というものは守りたい熱意を持つておられるというさつき証言がございましたが、あの次官通達はあれを尊重してあなたさまは職務に従うというように了承して差支えございませんね。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 勿論現在の次官通達は、昭和二十五年に警視総監並びに次官等におきまして十分に協議した通達でありまするので、現在の社会情勢化におきまして、又現在いろいろ具体的な問題が発生した場合に、この通達を更に再検討いたしますると、ちよつと通達そのものがやや不十分な点があるのじやないかという点を非常に憂慮いたしております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 不十分な点というのはどういう点ですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 例えば学校構内における警察権行使の点でありますが、これらにつきましては、通達そのものが極めて簡單にできておりますので、いま少しく両者が将来かかる問題が起らぬような何らか具体的な明文と言いますか、形の上にそうしたことを具体的にもう少しはつきりましたほうが、今後の大学並びに学校当局においてもいろいろの点についてこうごたごたが将来起らないかということを心配して実は申したわけであります。勿論我々といたしましては現在の通達そのものが、折角できた通達でありますから、できるだけこれを尊重して行きたいという気持は十分持つております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 あなたさまはその通達は尊重するところの熱意を持つておる、私も誠に同感でございますが、立派な御意見を吐かれておるのでありますけれども、直ちにあとで、時には視察する権限は留保さるべきである、前言とその後言とは矛盾しませんですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 先ほども私が申述べましたごとくに、この次官通達は条例の適用について、ちよつと全文を読み上げますが、当時の文部事務次官、劔木次官から警視総官宛に、このたび改正になつた右記条例の学校内における解釈適用については別記のように取扱つて差支えないか伺います。これにつきまして警視総監名を以て支障なしという回答を与えておるのでありまして、それがいわゆる今日の次官通達の内容になつておるのであります。従つてこの目頭にあります通り、右記条例の学校内における解釈適用についてという条例解釈の適用について、両者が次官通達で一致しておるということでありまして、若し学校構内におきまして不穏なビラ、取締をせねばならないような状態にあるビラが、これを撒かれておつたという場合におきましてはやはりこれは警察当然の職務執行としてこれを取締らなければならない、かような権限がある……。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 ビラはビラとして、私は具体的な問題をお伺いして言つておるのでありますが、二月二十日のポポロ劇団の行事というものが、大学の学長さんが言われておるように、これは合法的手続に基いたものであるし、これは次官通達の別紙(A)の第2の(1)に該当するものに相違ないと虫害のですが、それに対して如何お考えですか。学校当局が主催者として許可した会合、それにはいろいろ学芸会とか、弁論大会とか、いろいろ書いてありますが、それらの取締は学校に委せると同時に、不慮なことがあつた場合は学校当局から要請があつた場合に警察がこれに協力する、この条項に私は該当すると考えるのでございますが、警視総監の所見は如何ですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) これは勿論学校当局が正式に御認可になつてやつた集会でありますから、私は次官通達の線に従つた集会であろうと考えております心

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 次にお伺いいたしたい点は、先ほどのお言葉でございますが、ときに視察する権限は留保さるべきであるという御見解の下に、あなたの部下は折々東大内に制服或いは私服にて入つて、あなたの言うところの職務を遂行しておつたということを認められますね。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) それはありました。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 その調査の中に、先ほど警察手帳の具体的な問題が出たわけでございますが、教室まで入り、それから教授の書籍、著書、それから講義内容の調査から身許調査、それから学生のそば屋に入つたまでも調査しておる、こういうことは、果してこの次官通達の精神から逸脱していないのですかどうですか、その御見解と、あなたさまはそういう角度から若干の調査が必要であるという御言葉でございますが、あなたの直属部下であるところの野口証人は、警察予備隊の調査で大学内に入り、教授、助教授も入つているのでありますが、身許調査もやられたというような御発言があつて、どうも私不統一の点を感ずるのでございますが如何でございましようか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 今の不穏と認められるようなビラが撒かれておるのではないかというような意味において、大学構内を警備上視察するということと、公安条例の規定とは、これは私は別個なものであろうと思うのであります。これは警備上必要な措置としてかような視察を行なつたものと考えております。これは公安条例のいわゆる警察官が構内に入るということは別個な問題であろうと考えております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 ではお伺いいたしますが、あなたさまは私の冒頭の質問に対しまして、憲法二十三条の学問の自由をお認めになる、これ誠に結構と思うのでありますが、民主主義というものに学問の自由を否定したら学問の自由にならなくなると思うのです。それだけに恐るべき事態の招来が心配されるのであえてお伺いいたしておるわけでございますが、学問の自由をお認めになられたあなたさまが、今言われるような御見解で大学とか或いは学校に警察官がしよつちゆうお入りになつて、そうして教室まで入つてそれを聴講じ、それをメモして本日の会合は静穏で異常なしというようなことを警察に報告する、こういうような状況は警察の監督下において教育をされておるという御見解をお持ちになりませんか。更に教育基本法についてあなたさまも御承知と思いますが、第十条に如何なる不当な支配にも屈しないということが、我々国民が作つた教育基本法に明記されておるわけでありますが、大学初め高等学校、中学校、小学校、そういう教育の場にある先生はそれぞれ訓育、知育、体育の面を以て専念されておるのに、それらと殆んど無関係に、何ら交渉することなく、警察官が学校に入つた場合に果して教育の自主性、学問の自由が維持されるとお考えになるか。それをお伺いするわけは、あなたさまは二月二十日の問題の時にあなたの部下は東大に行かれまして、東大の担当のかたに意見を承わつております。その東大の担当のかたは、本日のは政治的目的はないし、学校が認めたものだと、こういうふうにお話になつておるわけであります。その席上であなたさまの部下はそれを了承してお帰りになつたかと思うのでありますが、そのあとで何ら連絡することなく学園内にお入りになつたという点は、私はこの次官通牒の精神を蹂躙するものではないか。これに対して大学並びに学生諸君を刺激し、激昂するのは当然であると私は考えるのでございますが如何でございますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 只今のお尋ねは、警察官が教室まで入つて一々その先生の講義の内容をメモするというお話でありますが、警察はさような必要ないのであります。我々としましては、大学構内におきまして如何なる真理が追究せられ、如何なる講義が行われる、そうしたことは警察には全然関係ないことであります。従つて警察はそういうものは関知する必要は全然ございません。ただ今申しましたポポロ劇というのは、大学の当局としましては純然たる劇であるという御見解でありますが、警察側としましては、必ずしもどうも純然たる劇ではないのじやないか、かような趣旨で学校当局に実はお尋ねしたわけであります。ところが学校当局としては、当然これは純然たる劇であるというお答えだつたので、その通り了承して参つたのであります。ところがたまたま入場料を支払つて入れる事実を目撃したものでありますから、警察官としては、私はまあその劇も見たいし、或いは内容がどうであるかという意味で或いは見たのじやないかと思うのでありますが、とにかく何人も入場料を払えば入り得る状態にあつたのを目撃したものでありますから、それで入つたわけであります。それで今のお話のポポロ劇なるものは、学校当局としては純然たる劇のように承わつておるのでありまするが、私どもの見解では必ずしも純然たる劇ではないように今でも考えておるのであります。それは先ほど私がちよつと一、二申上げましたような事実から観察して、純然たる劇ではないのではないかというような実はまだ疑いがあるのでありますから、これは多少見解の相違であると思うのであります。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 はい、よろしい。私がお伺いしている点は、あとの結果とか、或いは歯が折れたとか、或いはいつ手帳を書いたのだというようなことをお伺いしておるのではなくて、この次官通牒があるのに、これを尊重されるあなたの部下がこれを蹂躙するがごとき行動をとつたそのことが問題であつてあとは私は売り言葉に買い言葉になつて来ると思う。あなたさまの部下がお伺いして、大学当局と話合いをして、更に御心配になるのならば大学当局に対して、私はこう思うからこういう行動をとるがよろしいでしようかという話合でもしてならともかくでありますが、そうしないで行動をとられたということは、先ほどから証言を承わつているというと、大学の教授とか、高等学校、中学校、小学校、一般の教員の不信任というのを前提として、あなたがたは警察行政に当られているという感じがするのでありますが、一体大学教授以下教育当事者というものに尊敬と信頼を持たれているのですか、どうですか。その点どうもはつきりしないのでお伺いしたい。これは署長さんにもお伺いしたい。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私どもは学問を追究される、真理を探求される学者その他大学の教授というかたがたに対しては深甚なる敬意を払つておるつもりであります。又学園の自由を尊重すればこそ次官通牒のような、学校御当局に一切をお任せするというような次官通牒まで作つておるわけなのであります。併しこれなんかも法理的に言えば、或いは若干疑義があるのじやないかと思いますが、私どもは学校を御信頼するからこそこういう通牒を出して頂いておるわけであります。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 その通牒が十分履行されたとお考えになりますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 今日まで私は円滑に履行されておつたと私は信じております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 二月二十日の事件は如何です。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 二月二十日の事件につきましては、これは何も集会を監視するということでなくて、これはたまたまその入場料を払えば入れたということで入つたわけであります。決してその警察官は頭からこれを監督するという意味で入つたのではないと思うのであります。若しあの場合に入れないのだと言つたならば、警察官は恐らく入らないで済んだかも知れない。たまたま入り得る状態にあつたから入つたのじやないかと、かように想像しております。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 私のお伺いしているのは、あなたは同じことを言われるのですが、大学当局と話合つて了解し合つて、更に無断で入つたということが、私は大学不信任と、それから協約無視という性格がそこに出ているように伺えるのでありますが、あなたはぐるぐる廻つて同じことを言われるから、その点は一応保留いたしまして、次に野口証人にお伺いいたしますが、あなたの部下には東大係という警察官は何名任命してありますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 東大係というのは別にございません。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 併しこの我々に資料として出されたところの警察手帳を見るというと、東大專門にやられるのでなければ、あれだけ知ることはなかなかできないと思うのですが、如何ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 東大ばかりではございません。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 じや次にお伺いしますが、あなたの言われるところの警察業務を遂行するために、学内の教授或いは学生の思想動向の情報をあなたさまは職務上キヤツチするために警官以外に何人かをあなたの諜報網として使つておられるのか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そういう事実はございません。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 警官だけをお使いになつているのですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) さようでございます。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 次にお伺いいたしたい点は、証人と前署長との事務引継の場合に、東大の問題についてはどういう事務の引継がございましたか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 東大はやはり警備上非常に重要である、又犯罪も中に非常に多いから十分気を付けてもらいたいという趣旨の引継でありました。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 犯罪とはどういう犯罪ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 犯罪は刑法犯罪で、中にいる学生のかたがたとか、又先生がた等のカバンを取られたり、或いは自転車を、これは外部の者でございましようが、取られたり、又学校の研究室から顕微鏡を盗み出したり、そういう刑法犯に当る窃盗が大部分でございます。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 そういうのは、警察手帳に余り載つてないようですね、どういうわけですか。警察手帳に載つておるのは、そういうものは一切載らないで、教授とか学生の思想的なものばかり載つておると思うのですが、それはどういうわけでしようか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはパトロールは、先ほど私が申上げました通り制服警察官が二ビートで入つております。そういうものは、やはり一般犯罪のことなのであつて、そうして警備係はやはり警備上必要なことを調査いたしますので、自然そういうのが多いと思います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 数は何人くらいですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警備係は四名、部長を加えて五名でございます。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 主として東大の警備をやつているわけですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや東大ばかりではございません。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 それではお伺いしますが、証人が署長になられる前の署長さんの当時は、非常に大学と連絡が十分ついて問題がなかつたように承わつているのでございますが、あなたが署長になられると同時に、何らかの指示が関係方面からあつたのでございますか、如何ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そういうことは指示も何もございません。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 本当ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) はあ、ございません。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 先ほどあなたは伊藤委員の質問に対しまして、あの警察手帳の内容というものは、警察官が全く自主的にやつたのだ、こういうふうに証言されましたが、間違いございませんか。そうだとすると、これは余りにも優秀な警察官だと思うのですが、あなたの指示がなくてあれだけのことをやられたならば、ほかの仕事がおろそかになると思うのですが、念のために伺つておきます。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 本人もやはり警備上必要なことを書いた。警備上必要な参考になることを書いたのだと思います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 ではあなたにお伺いしますが、あなたは目立たない方法で私服の刑事を入れているとさつき証言されているのですが、これは大学内に警官を入れるときには大学当局と協力してその上で入れるという、この二十五年の七月の次官通達というものはすでに破棄されているものだと、こういうふうに了承しますが間違いございませんね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは一般犯罪の捜査には、被害も先ほど申上げましたように、非常に刑法犯の窃盗も多いということで、そのほうり担当の刑事はこれは入つておるのであります。被害届が学校当局から頂いておるのが先ほど申上げましたように三百十件くらいもあるし、又犯人を学校構内から検挙いたしたのも相当に……、今数字を持つておりませんけれどもございます。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 結構です。そういう講義時間中に教室まで入らなくてもいいでしよう。授業時間中に泥棒なんかする東大生があるんですか。それから教授とか助教授の姓名であるとか住所を全部書いておりますけれども、教授、助教授でそういう刑法上の犯罪をするような人が東大にございましようか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはないと思います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 それじやどういうわけでそういうことをやるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 先ほど申上げましたように、警備係でございますね、警備係は警備の必要上やはり書いておると思います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 時間が切れますから最後にお伺いしますが、大学から私は自治と自由というものを取つたならば、これは民主主義というものは空つぽになると思うんですが、そうして次官通達によつて、今日午前中大学学術局長の言明によりますというと、未だ曾つて問題が起らなくて非常に円満に来た、こういうわけなんです。その状況下に本富士署の証人の所だけ、先ほど承わりますというと、昨年度は実に集会は四十六件あつた、その中の許可は何件で、無許可は何件で、何々は何件と、微に入り細に入つて調査されていますが、これは大学当局と連絡することなく、あなたの部下が勝手に大学内にお入りになつて調査されたわけですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや、これは私のほうの警備係は厚生部の学生課とはもう常に行つたり来たりしておるのであります。先生方は顔見知りでございます。それでその先生方と連絡をとつてこの数字は挙げたものと私は思います。

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 お伺いいたしましたが、私は御両人の証人から承わつたところ、どうも了解できません。又あとで時間があつたら学生諸君に聞きたいと思いますが、余りにも私は今の学生の気分とか、それから教育基本法、それらに基いたところの大学の、あなたが認められるところの学問の自由とか思想の自由というものを尊重されると申されておるあなたさまの行動、並びに先ほどからの御答弁はどうしても了解できませんが、又機会がありましたらお伺いいたします。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 矢内原学長にお伺いしますが、文化国家として大学の自治と自由とが要求されることは当然であり、又憲法の保障するところでございますが、その権利には必然に義務が伴う、これは今協定で以て秩序の第一次的責任を大学が率先してお引受けになつておる、特に知識人としてその権利に対して十分の義務をお尽しになるべきだと思うのでありますが、そういう点におきまして只今二人の証人からお話がありました大学の中で無届、或いは強行せられた集会が相当あつたということをお認めになりますか、如何でございますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 無届の集会は時にありました。併し本富士署長の御報告のような数字は私は確認することはできません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 無届が確認ができないといたしまして、それでは許可しなかつたものが強行せられた事例はお認めになりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 強行されようとしたことはありますけれども、発見して直ちに解散をいたさせました。いずれも極く少数であります。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 それでは野口証人にお尋ねしますが、東大の当局と十分連絡をとつて調査をしたとおつしやつたんですが、強行をしようとしてそれがし得なかつたとおつしやいますが、強行してやつた例を先ほどおつしやつたんですが、その点如何ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 強行したのが二十六年度に三件あります。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 本年度は……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 本年度は強行したのはございません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 それは大学当局が許可をしない、或いは解散を命じておるにもかかわらず、最後まで目的を遂行したのが三件あるんですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 二十六年度三件であります。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 只今の点について学長の御見解は如何ですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 最後まで強行されたことは私は聞いておりません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 これは非常に重要な点だと思うのでありますが、こういう問題については、学長は一々報告をお受けになつておるんですか。只今聞いておられんとおつしやつたことは、なかつたということでありますか。或いはあるかも知れないが、自分は聞いてい、たいということですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私はないと信じておりますが、本冨士の署長はどういう証拠によつてそのことを確認されたのか、私は却つて伺いたいと思つております。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 署長のほうの御意見を伺いたいと思います。署長如何ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) ここに調べたのがございますが、二十六年の二月の一日午前十二時から約十分アーケードで無許可でダレス請願集会、集合人員六百、主催者と思われる人が戸塚秀雄君、中森蒔人君、檜山久夫君、松本明君、ダレス氏に請願文を手交する集会を不許可のまま強行した、こういう私は報告を受けております。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 ほか二件ですね。これはあなたが確認をせられるが、学長としてはさような事実はなかつた、かようにおつしやるんですね。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私にお尋ねですか。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 はい。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 只今本富士署長の言明で非常にはつきりいたしました。お話のその集会というものは、これは非合法であるとか不法であるとかいうお話でありますが、午前十二時からと言えば真昼間でございます。これは問題はダレス氏が来られましたときにダレス氏に請願文を持つて行くという事件でございます。然るにこのアーケードにおける集会は大学当局としては原則として禁止しております。集会は教室内においてなすべしということが一般の原則でございます。然るに学生がアーケードで学校の制止に反して集会をいたしました。時間は僅か十分でございます。今本富士署長の言われたように、昼間でありますから、大学当局が知らないはずがないのです。そうして、参りまして解散をさせたのであります。これは当然のことでありまして、特に治安の問題或いは警備の問題について重大な支障のあつた事件ではございません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 それは届出が事前にありましたのですか、大学に対して……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 大学に対して申出がありましたから、大学は許可しなかつたのであります。許可しなかつたにかかわらず開きまして、それ故に直ちに解散をさせた、その間が十分、最後まで強行されたとおつしやいますことは、どういう証拠に基いておつしやるのか、最後というのは何を意味するのか……。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 他の意見につきましてもお伺いしたいのですが、時間の制約がございますから先に移りますが、集会の届出は、誰が受付けられて、どういうふうにしてこれを許可せられるのですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 集会の届出は学部長に対していたします。それは学部長が教室を主管しておるからであります。それでその手続は、集会の主催者が、届出の様式がございまして、それに必要事項を記入いたしまして、必ず学部の教授若しくは助教授の紹介を必要といたします。紹介教授がよく問い質しましてはんこをつくのですが、そうしてその集会が人事院規則第十四条第七号にいわゆる政治的目的を有しないものであるということを約束させまして、学部長に提出いたさせます。学部長は書類を審査し、更に必要があれば主催者を呼出しまして問い質しまして許可をする、こういう手続をいたします。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 続いてお尋ねをいたしますが、かようにして許可いたしましたものが、その通り人事院規則に従つておるかどうかということを確認するために、各会合にはどなたか責任者が必ず御臨場になつておるか否か。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 教室を管理する学部の誰か、それから厚生部というのがございまして、これは本部直属の部局でございますが、厚生部の職員若くは巡視、これがその場にいるのが原則でございます。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 さよういたしますと、この問題になりましたポポロ劇団の会合には、かような重要な政治目的を持つていないということを確認するという重要な任務を持つて誰が責任者として臨んでおられましたか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) その教室は法学部所管でございましたから、法学部の事務官と厚生部の巡視が出席しております。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 さよういたしますと、そういう監督官がおられます当夜の会合は、只今警視総監の意見が大分食い違いがあつたようですが、政治的目的というものは全然最後まで加わつていなかつたと、かように御確信になりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) さようであります。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 「沖繩より帰りて」という演説があり、或いは松川事件の……、劇の先に、劇がそれを諷刺した劇である、その劇の始まる前に松川事件についての報告があつた、かようなことも会合の届出のときにあらかじめ予定されておつたのでありますか、如何でありますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) その劇は松川事件に取材したものでありますが、学生の劇団でありますから、單なる興味本位の劇ではなくて、すべての催しがそうでありますが、研究の発表ということが加味されているのでございます。それ故に当日の集会において、主催者の挨拶、それからその劇の素材を研究する或いは発表する、これがその当日の集会届出を見ましても、私の記憶によりますと、劇の発表会となつておるのであります。その素材を説明するということは学生研究の一部分である。で挨拶とその素材の説明とは最初からプログラムの中に入つております。沖繩会々ということは、これは「帰りて」と題して演説をしたということではありませんで、劇の始まります前に、その場の見物人と言いますか、その中から二人立ち上つて、極く短い時間沖繩の学生の状況、又沖繩の学生が日本に留学することの困難などについて話をしたが、皆から邪魔になるからやめろやめろと言つて、直ちにやめた、そういう報告でございます。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 現在の非常に、何と言いますか、緊迫した社会情勢で、大学当局よほど注意なさいませんと、政治的目的でないとお思いになつておるそういう集会が或る特定の政治的な目的に利用される虞れはないとお考えになりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは注意しないというとそういうことはあるかも知れませんが、問題の劇団ポポロの公演においてはそういうことはございませんでした。それは私前に申しましたように、当夜密かに入つておられた警官の本富士署に対する中間報告でもわかるのであります。静穏無事であるという報告でございます。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 この点については田中総監と所見が違うようですが、これも時間がありませんからもう少しあとで又機会を持ちますが、最近東大の構内で毎日のようにビラが撒かれると、而もそのビラの内容が政令三百二十五号違反の疑いのあるものが頻々として学生及び一般の通行人にも撒かれておると、かようなことについては学長はお認めになりますか、如何ですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 毎日のように撒かれておることは、私は確認いたしません。ただときに何者かがビラを撒くということはありました。併しそれは誰が撒いたのか、どこで作つたのか、はつきり申しますと、東大の学生であるか、或いは外部の者であるか、わかりません。又警察がそれを発見せられたというのは、如何なる方法によつて、如何なる場所において発見せられたとおつしやるのか、それも私としては確認できないのであります。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 毎日のようではございませんでも、しばしばさようなビラが撒かれることは御承知になつておる。而もそれは秩序の第一次的責任を自負なさる学校当局としては、捨てておおきになつたか、或いは何らかの処置をそれに対しておとりになつたかどうか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは捨てておきませんです。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 どういうような処置をおとりになりましたか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 発見すれば、勿論直ちに押収いたします。そうして、ビラを撒いておる者が現場におりますれば、これを呼んでやめさせるとか、取調べるとかいうことはいたしております。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 その取調べた結果、如何なる者がさようなことをしておつたか、その取調の結果を一つ、大学で何回そういうものを発見せられ、どういう処置をせられたか。残念ながら時間がございませんから、後刻一つ書類で私どもの委員会のほうに御提出願いたいのであります。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 何枚とおつしやるのですか。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 何回くらいそういうのを発見なさつて、どういうような処置をなすつたか、取調の結果如何なるものであつたか……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私は一つお願いしたいのですが、本冨士署長から、どこでそのビラを発見して、何枚発見なさつたかということを確認しておいて頂きたいと思うのです。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 署長如何ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは係のほうで調査いたしておりますので、いつどこで発見して、どれがどこにあつたということは、調査すればわかります。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 そのビラの内容等について何らか、どういうようなビラであるか大学のほうからも伺いたいのですが、処置された結果のものを大学のほうからは、今恐らく学長さんお持ちにならんと思いますが、警察のほうは何か材料があるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) ございます。ここに……。これはほんの一部でありますけれども、最近学内で撒かれたビラの一部でございます。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 それではたくさんの時間がありませんから、その中で特に政令違反だと思われるようなものがありましたら一つお示し頂きたい。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 昨年の十一月六日の日附でございまして、このビラ表題は「若き歌声」日本民主青年団東大班機関紙ナンバー・ワンであります。この中に……。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 時間がありませんから要点だけ……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) はあ、「千葉県庁からの情報によれば、同地域は米陸軍の習志野演習場となるといわれ、もう川鉄始め京浜の軍需工場も続々移つて来、軍事道路の建設が進み、一帯に警官が入り込んで警戒している」、こういうのがございます。    〔岩間正男君「何が惡い、どこが政令違反だ、その通りじやないか、違うか」と述ぶ〕

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 それでおしまいですか。(「それが政令違反か」と呼ぶ者あり)

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 重要なものだけ挙げて頂きたい。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 二十六年十二月十三日に押収しましたので「労働者はドスをとぎはじめた日日本の解放と民主的変革を平和な手段によつて達成しようと考えるのは間違いである、日本の軍事化は殆んど完成している。戦争行商人ダレスは、血まみれた手をもつて、二百数十の基地と百万の肉弾を狙つて、吉田と取引にやつて来た。すでに軍都三多摩の予備隊は、基地防衛の訓練をやらされている。東京都の北部東部においては、都を穀倉地帯から切りはなすために、練馬に八千の優秀な予備隊をおき、直接労働者弾圧の猛訓練をやらされている。これらの予備隊の八、九割は、農村ことに東北大県の出身者である……。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 もうよろしい、時間がありませんからあとでゆつくり伺いますが、こういうような種類のビラが相当東大構内で撒かれたことは、学長はすでに学校当局としてこれをお調べになり、そういうような結果をお持ちになつておりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) どす云々のビラは私は全然聞いておりません。警察はどこで発見なさつたか、誰から入手したかはつきり伺いたいと思います。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 警察の入つたことのいい惡いは別にいたしまして、警察の手に入れたものは学校当局としては手に入れていない。かようなことが東大の中で行われたとすれば、折角大学自治の責任をお持ちになりながら、当を得ていなかつたということをお認めになりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 東大と言いましても厚生部長がおりますから、その手に入つておるかも知れません。私は見ておらない。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 時間がありませんからあとでゆつくり質問しますが、先ほどの警察側の証言の中に、東大内の共産党の細胞はすでに解散を命ぜられておる、而もそれが再建細胞云々によつて活躍しておる傾向がある、さようなことは学長はお認めになりますか。全然ないと、絶対さようなことはないと確言されますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 細胞名によつてビラが出ていることは知つております。併しながら東大内に細胞の組織があつて活動しておるという、そういうことについては確証はありません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 これは団体等規正令に違反する非常に重大なることでありますが、これに対して大学は責任を持つて調査及び捜査をしておりますか、どうですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) できるだけの努力をして取調べて常に注意はしております。そういうもの、そういうものと言いますと、東大当局において許可しない団体の活動は学内においては許しませんから、これはできるだけの努力を払つて注意し、警戒はいたしております。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 警戒はしておられますが、まださような発見はせられないというふうに了承いたしますが、先ほど事件の当時に厚生部長がその場において、手帳を返せということを学生に言つても聞かなかつた、又部長が翌朝返すということを約束されたが、それも果すことができなかつた、これほど自治を許されたその責任者が学生に対して睨みがきかないと申しますか、その訓育指導は徹底していないということをお認めになりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私の考えは全然反対でありまして、学生を指導するということはよほどの思慮と忍耐を要します。これは申すまでもないことであります。それでこの警察がするように手荒なことをし云々ということは教育の方法としてはできません。それ故にこの学生の理性に愬えて、取つた手帳を返すようにと諭して、それに時間を要した。これは大学の当局者が怠慢であるわけでもなく、睨みがきかないと申しますか、それでもなく、忍耐を持つて学生を指導するという方法であります。そして学生諸君も協力してくれまして、問題の警察手帳が若干時間は遅れましたけれども、返つて来た、これは東京大学の当局者としては十分な誠意と努力を以てなしたことでありまして、決して教育者として怠慢であるということではございません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 先ほどの御証言の中に学生のやつたこと、特に手帳を取上げたり、始末書を書かせたことは行き過ぎだということは、これはあなたの部下である厚生部長の面前においてなされた、これはただ行き過ぎだと考えられますか。或いは暴力行為、或いは強盗とお考えになりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 暴力行為とか強盗とかいう法律的な定義は私は知りませんが、常識的に考えまして、この大きな傷を負わせたとか、或いは強盗とか、そういうふうな常識で考えて我我がこいつは強盗だ、こいつは暴力だということの範疇に入れることは間違いの一歩手前じやないか。併しながらそれは解釈の問題ですから、或いは法律的にいえばそれは強盗である、強盗罪が成立する、或いは暴力行為が成立する、これは裁判を待たなければわからないのであります。行き過ぎと申しましたことは、それは行き過ぎを一歩進めて、よくない行為である、こう申してもよろしいのじやないか。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 その解釈については、むしろ学者であります学長に伺いたいのですが、時間がございませんからたださような行為が学校当局の目の前で、而も学校当局がいろいろ斡旋されたにもかかわらず行われた、それは如何なる……例えば団体等規正令による違反のことが起つても貸すに時を以てして教育的に、一般のものとは違つて、それが学生であるために、時を貸してゆつくりこれを処置をするというふうに、学生に特別の、法律の特別扱いをお求めになるお気持でありますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 手帳を取りましたのは、取上げたのは厚生部長の面前においてではありません。それは厚生部長が現場に到着する以前であります。それで学校当局者の面前において不法なことが行われるならば、勿論これは禁止いたします。併しそのときの問題は、場合が場合でありますから、警察官がその集会に入つておつたということについて学生が昂奮する、昂奮しておる、これは我々理解できる心理状態であります。(「そうだよ」と呼ぶ者あり)それはこの次官通牒の線ということも、学生もよく知つております。それから最近警官が教室の附近とか、掲示板の周囲とかに出入しておられる。それも目に立つほどであるということも学生は知つておりますので、そのまま空気として昂奮して、この手帳は返すけれども、再びこういうことのないようにしてもらいたい、警察に約束してもらいたい、そういう一つの約束を得る担保として手帳を預かつておく、こういう学生の心理状態も理解できないではありません。併しながらそういうことと切り離して、行為そのものを見れば、それはよくないことであるというので、厚生部長はそれを諭したのです。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 吉川君ですか、先ほど写真をお示し下さつたが、あの写真は誰の持つていた警察手帳から、誰があの写真を撮つたのでありますか。

吉川勇一東京大学学生自治会中央委員会議長

○証人(吉川勇一君) 自治会の中央委員会は、学校の命令及び自治会中央委員会自身の決議としまして、手帳は直ちに返還さるべきであるという結論を出したわけです。これを全学に掲示したりして、手帳の返還に関しては、中央委員会の机の上井置くなり、或いは厚生部長の机の上に置くなり、何者とも知れず返されていたという方法でもよろしいということを発表したわけです。そうして警察手帳は何者とも知れず中央委員会の手許に戻つたわけです。それからその際この手帳が果して奪われたという三人の巡査の手帳であるか否かということを確認するために、全中央常任委員が集まりまして、手帳の内容を検討した。その際この手帳の内容が、これは以前に返るわけですが、その前の中央常任委員会で、若し警察手帳の内容が全くひどいものであるならば、告訴するという決議をしております。告訴のための証拠資料として写真を撮つておく必要がある、そのために全中央常任委員会の目の前で、先ほど示しました警察手帳は写真に撮られたわけです。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 学長に伺いますが、少し遅れて部長が行かれたと申しますが、部長が手帳を返せということを言われても聞かなかつたという先ほど御証言があつたのですが、そうしますとそのときには誰が手帳を取つておつたかということは学校当局に確認されておりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) しておりません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 おりませんか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 誰が取つたかということは確認しておりません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 そうすると、さような不法行為をいたしましたものを、而もそれがあとには中央委員会の手に返つているのですが、返りさえすればそれでいいので、又誰がこういうことをしたかということを大学は責任を持つて調査をしようという御意思はございませんか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それはあります。調査中であります。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 これだけたくさんの面前であつたことでありますので、大学自治の責任をお持ちになつている大学当局としては、この手帳を強奪した者の、必ずその当事者を調査して明らかになさる御自信がおありになるか、御決意がおありになるか、承わりたいと思います。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは努力はいたしますけれども、普通の犯人と……この市中における例えば強盗の容疑者、これは権力を持つている警察でさへも捕えることはいつもできることじやありません。いわんや大学はそのような意味の警察力を持つておりませんので、これは常に説得と理性を以て指導するのでありますから、必ず誰が取つたということを突止めることを自信があるかと申しますと、私は確たる約束ができません。努力はいたしますけれども、お約束はできません。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 警察のお世話にならなくても、秩序維持については責任を持ち得るとおつしやつたのですが、只今の責任というのは、その程度の説得を以て、できるかできんかわかりませんが、して見ると、掲示をしてわからなければ……いたして見るという程度の秩序維持の責任しかお持ちになれない、さような解釈をしてよろしうございますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは学生を呼び出しましていろいろ聞くのですけれども、併し犯罪の容疑者として逮捕する、で、留置場に入れてどうするという、そういう権力は大学は持ちません。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 時間ですから……。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 じやなお他の機会に保留いたします。

木村守江自由党

○木村守江君 証人矢内原忠雄にお伺いいたしますが、証人は陳述の冒頭において、委員長が大体三十分くらいに申述べるようにと言つたのに対して、自分は三十分などはかからない、極めて短くその要点を申述べると言われましたが、実際においては三十分を超すこと数分でありまして、あなたの陳述と実際は全く相反しております。(「速記録を見ろ、時間が足りないと言つたのだよ、速記を見ろ」と呼ぶ者あり)どうですか、それに対して……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 三十分かかるまいとは決して申しません。(「そうそう」「時間がないと言つたのだよ」と呼ぶ者あり)速記録を御覧下さればわかります。(「時間が勿体ないぞ」と呼ぶ者あり)

木村守江自由党

○木村守江君 お伺いしますが、学長はポポロ主催の演劇は政治的目的を有さぬからこれを許したと申しましたが、その後実際においてかように信じておりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) さようであります。

木村守江自由党

○木村守江君 学長は演劇の始めに行われました演説の内容を御承知でありますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 内容を一から十まで知つておりません。ただ先ほどどなたでございますか、左藤さんでございますか、お尋ねに対して答えましたと同じことを繰返すだけでございます。

木村守江自由党

○木村守江君 それではその演説の内容を知らなくて、これは政治的目的で行われなかつたというような証拠はどこにありますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) いや、内容を全然知らないわけじやありません。一から十まで、文字通りには知らないということを申したのであります。

木村守江自由党

○木村守江君 内容がわからないでその結果の判定ができますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) つまり松川事件に取材した劇でございますので、その素材の説明をしたという……。

木村守江自由党

○木村守江君 その松川事件ですが……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それから沖繩問題については、沖繩における学生の状況と、日本留学の困難について話があつた。

木村守江自由党

○木村守江君 ではお伺いしますが、松川事件について、この事件は警察のでつち上げたものだということが言われたということでありまするか、その実情を知つておりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) どこでですか、そこでですか。

木村守江自由党

○木村守江君 はあ。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは私聞いておりません。

木村守江自由党

○木村守江君 こういう実際の重要なことを聞かないで、政治犯罪ではないということを言われますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 誰がそういう報告をしたのですか。(笑声、「しつかりせい、しつかり」と呼ぶ者あり)

木村守江自由党

○木村守江君 これは先ほど警察当局、警視総監でしたかがはつきり申上げております。それでは警視総監にちよつと伺いますが、この内容において、松川事件は警察の一方的でつち上げであつたということを申されたと思いますが、これは異議ありませんか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 異議ありません。(「きまつているよ」と呼ぶ者あり)

木村守江自由党

○木村守江君 矢内原学長、(「でつち上げだ」と呼ぶ者あり)こういう一方的な考え方を演説されまして、それでも政治的意図がないということを判断できますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは一つの……私は知りませんよ、そういう……。

木村守江自由党

○木村守江君 知りませんで済みますか、あなたは……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) その言われた確証はありません。

木村守江自由党

○木村守江君 知りませんで済みますか、それで……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 総監はそう言われましたけれども、証拠がどこにあるか……。

木村守江自由党

○木村守江君 知らんで……聞いたのですよ。聞いたからそう言うのですよ。あなたは聞かないでしよう。聞いたのですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私は間接に聞きました。

木村守江自由党

○木村守江君 少くとも大学の学長が聞きもしないで聞いたというのは……(「委員長、いやしくも大学の学長である証人に聞いているのだ、委員長注意しろ」「礼儀を尽せよ」「文化国家じやないか」「穏かにやりなさいよ」「そういきりたつなよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 御静粛に願います。

木村守江自由党

○木村守江君 次にお伺いしますが、非常に学長は、(「そうむきになるなよ」と呼ぶ者あり)例えば大学の校庭が道路と同じようで、そして政令違反のような文書が撒布してある、それは毎日ではない、たまたま、あるのは……、而ももう当り前のようだというような答弁をしておりますが、そういうようなことで、あなたはその文書を押収すればそれでよいと思つておりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ちよつと聞えなかつたのですが、ちよつと聞えませんでしたからお伺いするのですけれども、大学の構内は何ですか。

木村守江自由党

○木村守江君 もう一遍言います、立つて言いますから……。大学の内部は殆んど道路と同じように、いろいろの人が通つておる。そうして政令違反のような文書が撒布されておるのは毎日ではない、たまにはあるということをあなたは認めましたね、さつき……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) いや違います。一般の道路と同じようなということは私は申した覚えはありません。

木村守江自由党

○木村守江君 それではお伺いしますが、学校内に政令違反のような文書の撒布されておるということをあなたは認めましたね。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ビラがときには……。

木村守江自由党

○木村守江君 はつきり言いなさい。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ビラがときには撒かれるということは申しております。

木村守江自由党

○木村守江君 あなたは政令違反のような文書が撒かれておるということを、さつきそう言つたのじやないのですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 言いません。(「速記を御覧なさい」「冷静に」「落着いてやれ」と呼ぶ者あり)

木村守江自由党

○木村守江君 それでは速記を見てなお質問します。そういうようなものをあなたは押収すると言いましたね、そういう文書を押収すると言いましたね。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) そうです。

木村守江自由党

○木村守江君 どういうような理由で以て、そういうものをあなたは押収しますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) そういうものとおつしやるのがはつきりしないのですけれども、学校のり認めないビラ、つまりビラの撒布ということについては、学校の規則がございます。その学校の認めない手続によつて撮かれるビラは押収いたします。

木村守江自由党

○木村守江君 そういうような押収すべき文書を撒いた人に対しては、まだその撒いた人がわからないというが、これについてはこれから捜査するというような話を聞きましたが、それは本当ですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは常に調査しております。

木村守江自由党

○木村守江君 そうして、わかりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) わかることもあるし、わからないこともあるでしよう。

木村守江自由党

○木村守江君 わかつたときはどうしますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) わかつたことは……或いは事件が、ちよつと念のために私正確に申しますけれども、学内において撒布されるビラはいろいろありまして、政令津反容疑のビラが非常に多く撒かれるわけではありません。

木村守江自由党

○木村守江君 これは非常に多くあつたらそれこそ大変ですよ。一遍でも二回でもあつたらあつたとはつきりとおつしやい。あなたは……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) そういう疑いのある……。

木村守江自由党

○木村守江君 あつたことはあつたのですね。そういう政令違反のような文書を撒かれたことがありますか。(「証人の発言中だよ」「あわてるな」と呼ぶ者あり)はつきり言いなさい。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 今のお尋ねの、署長の読まれたようなビラの撒布されたことについては私は確認いたしません。

木村守江自由党

○木村守江君 いや、そういうことを聞いておるのではありません。あなたは政令津反のような文書を撒かれたことがあるということを言われたけれども、いわゆるそういうようなものをあなたは押収する。押収するのだが、その犯人をつかんだことがあるかないか。つかんだことがあるというから、その人をどうしたかというのです。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ですから、そのような政令津反容疑のビラは、私の記憶しておるところによりますと、私の学長として就任以来はありません。

木村守江自由党

○木村守江君 どうもあなたの答弁は、非常に前後錯誤しておるようで、これは速記録を読みまして、なお改めて質問したいと思つております。(「そのほうがよい」「頭を冷やせ」と呼ぶ者あり)  それからここに学生、職員、家族を認める、而も入場券を売つて行われたのであるということ、これに対して、入場券、入場料をとつてやつたものであるからして、これは都条例によらなければいけないものではありませんか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 入場料と言いましても、一般公開の場所で一般人に売つたものではありません。その場所は教室の前で学内、学校の構内、教室の前でございます。

木村守江自由党

○木村守江君 それは如何なる場合であつても、入場料をとつて催し物をする場合には、これは都条例によらなければいけないと私は考えますが、そう考えませんか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) その問題がつまり次官通牒によつてきめられておるのでありまして、入場料というものは、一般の映画館の入場料と意味が違います。

木村守江自由党

○木村守江君 それではちよつとこのことにつきまして警視総監に聞きますが、どういう御見解でございますか。(「整理費たよ」「会場整理費だ」と呼ぶ者あり)

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私は入場料の問題は、とにかく三十円を出して、当日入りました警察官の切符を、現物を見たのでありまするが、その切符の表にも、学生並びに職員に限るというのは書いておりませんでした。これは私は現認いたしました。又巡査の語るところを聞きますると、二十五番教室にポポロ劇云々というものが書いてあつたそうでありまするが、それにも学生並びに職員に限るということは何ら明記されてなかつたそうであります。

木村守江自由党

○木村守江君 学長にこの御見解を聞きますが、どうでございますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは当り前のことで、学内集会は、学内において催すものは断わらなければ学生と職員に限るのは当然のことであります。

木村守江自由党

○木村守江君 それではお伺いしますが、当り前だと申しますが、これは学生、職員並びに家族を入れております。そういう点で差支えありませんか。入場料を取つて差支えありませんか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ちよつと聞えませんでした。学生、職員と……。

木村守江自由党

○木村守江君 学生、職員並びに家族ですね。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 届出には学生及び職員約三百名という届出でございます。そのときの与えた了解事項として、家族は、少数ならば家族は連れて来てもよろしい、これは黙認でございます。

木村守江自由党

○木村守江君 これは私は非常に疑問があるのですが、学内の者を入れて、そうして入場料を取つてこういう催しをした場合、私は都条例によらなければいけないと考えますが、どうですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 都条例適用の例外措置として次官通牒というのが出ておるのでありまして……。

木村守江自由党

○木村守江君 それはあなたの作つた例外ですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 次官通牒を御覧頂けばいいと思います。

木村守江自由党

○木村守江君 それはそういう点から考えて、これはそのままにしておきまして、こういう点から考えてこれは入場料を払つて警察官が入つても何ら差支えないのじやありませんか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 繰返して申しますけれども、この入場料というのは営利会社が営利のために挙げる収入ではございません。

木村守江自由党

○木村守江君 学長に聞きますが、これはPTAとか或いは同窓会とか或いは学校等でいろいろな営利事業以外に入場料を取つて催し物をしております。而もこれに対して税金の免税もできないというのが現在の状態です。それに営利事業でないから差支えないということはどういうことでありますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) そういう場合の教室使用の許可願には、入場料三十円を取るについては、これこれの経費が要るということの明細書を書き添えて出しておるのでありまして、学校当局は十分監督いたしておるのであります。切符を買つたら誰でも入れるとおつしやいますけれども、その場所が先ほど申したように校内で、教室の前でありまして、一般市民が自由に手に入れることのできるような、例えば街の四つ角であるとか、プレイガイドであるとか、そういう場所とは全然違うのでございます。

木村守江自由党

○木村守江君 それではちよつとお伺いしますが、そういうふうに、これは切符を買つて入つた者が警察官だからなぜ惡いということになりますか。先ほど言われたのは、労働者風でしたということを言われますが、どこであなたは家族とか或いはそういう家族でないというものが……切符を売つて、売る人がみんなに売つておるのですよ。どこで区別しますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) その問題については、我々は学生諸君を信用するほかないのです。問題の労働者風の男というのが、どうして労働者と確認せられておるかという……。

木村守江自由党

○木村守江君 あなたはね、あなたの生徒ですからあなたは信用するのが当り前です。あなたが生徒を信用しなかつたら大変です。信用したからそうなんでしようが、信用した生徒が一体入場券を、入場料を払つて入つた人を、その警官に対してやつた処置に対してあなたは正しいと思つておりますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ちよつと申上げます。何度も申上げたことでございますが、これは市中で行われておるような劇場とは全然性質が違います。それで学生も職員も切符を買うのです。ただで入るわけではございません。そうして、そこにお入りになつた警官のかたが、仮に譲りまして單なる劇の愛好者としてお入りになつたというのであるならば、これは問題は比較的簡單でございます。併しながらそういう意国を以てお入りになつたのではなく、情報収集のために職務上お入りになつたということは確証がございます。

木村守江自由党

○木村守江君 学長に聞きますが、非常にあなたは、さつきからいろいろ言葉を左右にして我々の納得しないことを言つております。これはこの切符を買つて演劇を見に行く人は必ずしも演劇が好きだから行くのではない、これは嫌いでも誘われて行く人もあります。(「それは新学説だ」と呼ぶ者あり)或いは研究せんがために、或いは職業的に行く人もあります。そういうようなことを、これは愛好するが故に、愛好する人だけが集まるんだというような判断を下すことは大きな間違いだと私は考えます。これについて御意見を……。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 前にも申上げました通りに、幕が明きまして約一時間たつたときに、そこにおられた警官の一人が外にお出になつて、本富士署に対して状況の報告をなさつておる。これは職務を以てお入りになつたものと私どもは考える一つの理由でございます。もう一つの理由は先ほどの陳述では申上げませんでしたけれども、二月の二十二日に、名前を申上げてもよろしうございますが、学部長の一人が私の代理として本富士署に参りまして署長に会見いたしました。そのときに警官がどういう目的で、又何人の意思によつてお入りになつたかということを伺いましたところが、署長は自分の、つまり署長の指示によつて入場したんだということを申されました。これはこの学部長が、若し必要ならば証言いたします。

木村守江自由党

○木村守江君 そのことはそれまでにいたしまして、学長は、(「そこをもう少しやつてくれ」と呼ぶ者あり)全治一週間というような負傷は、そういう負傷はしないということを言つておりましたが、実際は逮捕に来た場合に前列に並んでおつて決して全治三週間の負傷は負つていないということを言われましたが、これは、あなたは、そういうようなことで全治三週間でないということを言われましたが、どうしてそういうことを言われますか。これは人間というものは必要に迫られればこれは死ぬまで、死の直前まで、これは非常に苦労の立場に立つて働かなければならんこともあります。それにもかかわらずこれを三週間の、(「一週間だ」と呼ぶ者あり)一週間の負傷を負つておるということは嘘だと、而も前列に三人で並んでおつたというのを目撃したというような、あなたの、あなた一個の独断的な考えから、こういうことを律するところに今度の問題のような大きな間違いがあると私は考える、どうですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私の申しましたのは間接証言でございまして、私はそのとき現場にいて見ておつたわけではありません。併しながらこの全治三週間というのは、そういうことを聞いたことはございません。

木村守江自由党

○木村守江君 いや、一週間です。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 一週間乃至十日、こう新聞に伝えられました。併しそれはどのぐらいの傷であるかということは、私は見たわけではありませんから知りませんけれども、翌日の逮捕の現場における活動状況というものは私の部下が見ておりますので、必要があればその証人を出しましよう。

木村守江自由党

○木村守江君 ちよつとお伺いしますが、あなたは見ていないんですね。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 勿論……。

木村守江自由党

○木村守江君 見ていなくて、而も医者がこの医学的見地から一週間の治療を受けるという診断を書く、その診断を大学の学長という人が見ずにそういうようなことはないと否定ることができますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私ちよつと伺いますが、その三名の受けた傷について医者が診断書を書きましたのですか。署長にお伺いしたいのです。

木村守江自由党

○木村守江君 いや、その時間がありませんから、(「委員長裁いて下さい、重要です」と呼ぶ者あり)署長に……、署長に聞きましよう、署長、ちよつと……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 診断書は……(「何という医者が書いたんだ、警察医か」と呼ぶ者あり)診断書は先ほど申しましたように……。

木村守江自由党

○木村守江君 書いたら書いたでいいや。(「書いてないんだろう」と呼ぶ者あり)

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 茅根巡査と柴巡査の診断書があります。

木村守江自由党

○木村守江君 それでは次にお伺いしますが、あなたはこれは全治一週間のあれですよ、負傷というのは、例えば一例を申しますと頭に一週間の傷を負つておつても、その人は警察官であつたらこれは自分が行かなければ駄目な場合は、どんなところへでも行つて働かなければなりませんよ。そういうことはあなたはわかりますか。(「そんなことを言つて自由党軽蔑されるぞ」と呼ぶ者あり)

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それはわかります。

木村守江自由党

○木村守江君 そういうわかり切つたことを、而も断定的に一週間の負傷とは認められないということを言われますが、偽証ですね。(笑声)

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 一週間という負傷は出たか知れませんけれども、程度の問題を申上げているので、そのことは若し御必要ならば当人なり或いは診断した医者なりについてお調べ下さいますれば、その負傷の程度ははつきりすると思います。

木村守江自由党

○木村守江君 それからお伺いしますが、厚生部長が手帳を返せと言つても返さなかつたそうです。これは少くとも最高学府の学生であつて、警察官から警察手帳を取つて、そうして返せと言つても返さないというふうな状態であつて、本当にあなたがたがいい教育をしていると考えておられますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 先ほど申したようなわけで、当日の状況が昂奮しております。そうしてすでに正門前には武装警官二十名到着したという報告がございまして、芝居がはねて学生が外に出ますと大きな事故が起るかも知れない、厚生部長はかく判断いたしまして手帳は返すという了解の下に、その場をまるく収めたのです。私は適宜な処置であると思うのであります。

木村守江自由党

○木村守江君 それから先ほどあなたは、学生は警官に対して失礼なことをしたかも知れないという話をしましたがね、実際どんなことがあつたか知れませんが、警察官から警察手帳を取つた、そうして負傷を負わしたということで以て、失礼なことをしたかも知れないというような考えで、あなたは良心的にそれで差支えありませんか。(「その前に警官が何をやつたか」「もつと本質的なことを聞きなさい、時間がないんだ」と呼ぶ者あり)

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 先ほどからその点は何度も繰返して申しましたように、その場の学生の昂奮ということを考慮に入れて考えれば、その学生が警官にしたことも了解できる。併しながらそれと切離してなした行動そのものはよくないと、私は申したのであります。

木村守江自由党

○木村守江君 それから伺いますが、最近の学生は民主的になつて来たと言われますが、こういうような警察官に対する態度を以て、本当にいい民主的だとあなたは考えますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 民主的と申しますることは、その場合の警察官のお入りになつたということ、その行動も余り民主的ではなかつた。それで……。(「その通り」と呼ぶ者あり)

木村守江自由党

○木村守江君 私最後にお伺いしますが、結局今日の話は、あなたがたの全部の証言を聞いておりますと、あなたは学長としてこれは生徒たちを庇うという気持はよくわかると思うのです。少くとも本当にあなたは庇つている気持はよくわかります。併し私は、自分たちのやつたことに反省の念を抱くというところに、両方で反省の念を抱くというところに私は教育の向上があると思うのです。あなたの言うことは、これは学問の自由と、それは真理の探求と言いますか、あなたの言つていることは、これは学生を可愛いと、学生愛というもののために、あなたの真理の探求……本当のことをいうことがちよつと曲げられているのじやないかと考える。そういう点にもつとあなたは率直にみずから反省すべきところは反省して、そうして教育者として進んで行かなければいけないと考えるのであります。如何でございましようか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) お話の通り私もその考えでございまして、先ほど来何度も繰返してそのことを申しております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 最初に矢内原証人に御証言をお願いいたします。昨日は衆議院において、本日は参議院において学長としての任務の御多端の中を非常な長時間、場合によつては学長に対する御質問としては極めて不適当な御質問も或いはあつたかと思うのでありますが、(「その通り」「羽仁委員長」と呼ぶ者あり)第一に伺いたいことは只今衆参両院で以て調査をしておりますこの事件でありますが、この事件において、この事件を重要な事件というふうに証人はお考えになつておいでになりましようか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 非常な重要な事件と私は考えております。それは大学の自治が或いは根本から害されるのじやないかという危惧の念を持つているからであります。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 次にお伺いしたいのは、大学の自治が根本から覆されるかも知れないというその点が本件の最も重要な点であるという御意見でございますね。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) さようでございます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 先ほどから又本委員会におきましても、その他の点についてもいろいろ各委員会からの御質問がございますが、その他の点は全然本件について重要な意義を持たない。或いは今おつしやいました学問の自由が危うくされるという最も重要な意義に対して、どういう関係を持つというふうにお考えになつているのでありますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ちよつとお尋ねの意味を私正確に、正しく把握しているかどうか知りませんけれども、申上げますと、根本問題は大学の自治の擁護、これが日本の学問の発達のために絶対必要だと信じておるわけであります。ひとり東京大学の問題だけでなくて、日本全体の国立、公立、私立全大学の問題であると、大げさにいうと死活問題である、そう考えているから、これを重要に考えるのでありますが、そのほかの諸般の問題、個々具体的な問題については時世の移り変りに処して、我々が最も正しく又懸命に、賢く判断し、行動しなければならないいろいろの問題がその中にあると思うのでございます。お答えになつているか知りませんが……。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 次にお伺いいたしますが、次官通牒というものは單に一個の次官の通牒というだけのものではなくして、世界及び日本の大学が、その学問研究及び教育の使命を果すために久しい間に亘つて確立せられた慣行の一部を現わしているものだというように了解をいたしますが、その通りでございましようか。誤つておりましようか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) さようでござ います。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 そうしますと、次に伺いますのは現在の次官通牒に現われている部分、それからその他の世界及び日本の大学の学問研究及び教育に不可欠の大学の自由として確立せられておる慣行、これらのもののうちの一つとして、この次官通牒が出ていると思うのでありますが、これが現在の線よりも学問の自由にとつて下る場合には、学長としての大学の学問研究及び教育を果すことができないというふうにお考えになつておられますか、どうでしようか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 若し次官通牒の線が後退すると言うか、後退させられるというか、即ちこの警察権の自由なる介入ということが若しも行われるならば大学は大学として存在することはできないと、こう信じております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 次に伺いますのは、今回起りましたような事件、即ち学校が公認団体の学内における催し物として許可した集会に、学校当局と連絡なくして警察官が出席するというような事実が発生するならば、今後もそういうことが続けられるならば大学の学問研究及び教育の目的は完全に遂行されることができないというふうにお考えになつておいででしようか、如何でしようか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) さようでございます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 そういたしますと、今後、今回のようなことが再び起らないために現在の次官通牒というものの線が、そこで守られればよろしいというふうにお考えになつておられますか、或いは更に進んで学問研究及び教育、即ち大学自由の保障の措置が必要であるというふうにお考えになつておられましようが、如何でしようか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 憲法で認められております学問の自由、これを確保するための或いは立法措置があつて、このことが明確になればなお更結構のことと思いますけれども、最小限度次官通牒の線は維持せられなければならないと思つております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 どうも有難うございました。  次に田中証人にお伺いいたしますが、田中証人は警視総監としての任務の上からその所轄の地区の中に本富士警察というものを持つておられる、その本富士警察の所轄の地域内には東京大学という大学があることは十分に認識しておられるわけでありましようが、従つて本富士警察の署長については特にそこに大学の自由、或いはそこに大学が存在していることに伴うそうした事情について、十分の認識を持ち、そうして又、所轄の中にある大学というものについて円滑にして有効な……そうして無用にして有害な結果を起すことのないような、そういうかたを人選しておられる点に常に留意していると思いますが、如何でしようか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 仰せの通りでありまして、殊にこの本富士警察は東大というような非常に重要な施設もありますので、私といたしましては十分にこの点を留意してやつておるつもりでございます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 それでは伺いますが、先ほど野口証人は御自身の本富士署長としての任務の説明に当つて、大学を説明されるときに、大学が学問研究の府であり、又その教育の府であるということは言及されない、で、これは自明のことであるとして言及されないというふうには受取れないと思うのであります。主として道路取締の見地から説明をされたように、大学というような非常にデリケートな、或る意味において全国的な問題をも直ちに引き起すような、そういう国家の機関を管轄の中に持つておられる署長が、常に念頭に置かるべきことは、道路の取締でありましようか。大学の自由でありましようか。如何でありましよう。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 勿論これは私は、この学問の自由、研究の自由、そういうものは憲法に保障されておりますので、これを研究、教授する学園というものにつきましては、これは私は、当然署長といたしましても念頭に、学園の自由を尊重するということは常に持つておるだろうと考えます。ただそれと同時に、現在の実情が、道路取締を言つているという点は、或いは前者を忘れてか、或いは前者については羽仁委員仰せのごとくに自明の理と考えて、道路だけについて御説明申上げたのではないかと、私は考えておりまするが、これは署長の意を私は尊重いたします。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 私が申上げたのは、野口証人はその責任の下にある、責任と重要な関係にある大学を説明せられる場合に、学問の自由については一言も言及せられないで、主として道路取締についての説明をされたのでありますが、そして又これは昨日の衆議院の参考人としての陳述をあなたも脇でお聞きになられたと思いますが、大学について、私の伺うのは、あなたの御意見として伺いたいのは、本富士署長が大学の自由ということではなくして、道路取締その他のいわゆる防犯関係というものを常に第一に念頭に置いているほうが適当であるとお考えになるのでしようか、どうですか。あなたの御意見を伺います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私はその野口署長が大学の自由というものを全然無視し、道路についてのみ語つたと私は考えておりません。ただ私は、学園の自由ということは、当然念頭に常にあることと私は信じております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 それでは続いて伺いますが、野口証人が、本富士署長としての職務の監督の下にある警察官が、大学教授の身元調査をやつておる、そのことについて野口証人は、本富士署長としての資格において何らの報告を受けていないという証言をされましたが、自身の警察署長としての管轄の関係において、そこに大学があり、そこには大学教授がおられる、その大学教授に対して身元調査というようなことを警察官がなすということについて、何らの報告を受けていないということは、あなたは適当なことだとお考えになりますか。不適当なことだとお考えになりますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答えをいたします。恐らくその報告は受けたこともあるかも存じません。或いは一々そういうことについて署長が一巡査の報告を受けるのは、従来の警察、今までの何としましてはないことになつております。特に特別に何か必要な場合におきましては報告を受けることになつておりまするが、普通順序といたしまして、巡査からその直属上司、更に直属上司という経路を伝わつて報告をすることになつております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 私があなたに伺うのは、繰返すまでもなく宣誓の下にあなたの御意見を伺つておるわけですが、署長が、その任務と重要な関係において大学がそこにある、そこに大学教授が活動しておられる。一般の場合ではございませんよ。その大学教授の身元調査ということを軽々しくやる、軽々しくという言葉をなぜ使うかと言いますと、そういうことを巡査が自己の判断においてやつていいか惡いかということについての、署長としての適法にして十分な、必要にして十分な連絡なしに、そういうことをさせておる。そして又、それについて絶えず報告を求め、この監督をなし、学者の学問研究及び教育の自由ということを、いやしくも阻害するような、憲法に相反するような、そういう行為を警察官みずからが絶対に犯してはならないということは、重大な問題だろうと思うのです。その警察署の地域のうちに大学がない場合ではございません。そこに大学があるのです。而もそれは長年の慣行を持つている。そういう点について監督が十分である。それに今申上げたようなふうで、それは警官が自分の考えでそういうことをやつているのだろう程度の御証言しかなかつたのであります。その御証言に基いてそれは適当だとお考えになるか、不適当だとお考えになりますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 若し報告がないとするならば、私はやはりそういうことについてはその直属の上司から、巡査の直属上司から、又その次の直属上司から署長に報告があつたほうがいいと思つておりますけれども、私は……。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 署長は報告を求めるべきだとお考えになりますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 求める必要があれば求めたほうがいいと思いますが、強いて求める必要はない場合もあろうと思いますね。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 警視総監に伺つておきますが、警察権というものを警官に国家がお委せしているということについては、そこに重大な責任があると思います。警察権は個人の基本的人権というものと深刻な関係に置かれる場合がある。それは一般にそうです。一般にそうで、大学教授だからというのではありません。一般にそうである。従つてその警察権が行使される場合に、或いは捜査権にしてもそうですが、そういうものが行使される場合に、いやしくもそれが憲法に規定している基本的人権を侵害することがないということについて、あなたはそれが警察官の第一に重要な認識でなければならないとお考えになつておられるか、或いはそうでないか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 仰せのごとく職務執行の場合におきましては、憲法に規定するところの基本的人権というものは、犯すことのできない人権でありますので、これを侵害することは、これは適当なる職務執行ではないと考えます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 なお、これらの点については時間が本日はございませんので、後日又伺いたいのでありますが、これは実に重大なる問題である。中にも今申上げたような大学、なかんずく東京大学というものが、そのいわゆる所轄の地域のうちに存在している。その署長としての任務は誠に困難なことであり、同情もすべき点もあると思うのでありますが、併しその点についての認識が欠けるようなかたが、その署長をしておられると、今後大学としても甚だお困りになるだろうと思います。そのことは国家としても特に東京大学がその伝統を持ち、その規模を持ち、又国際的な名誉を持つておられるという点から見て、深刻に考えるべき問題だというふうに私は考えるが、あなたはそうではないというふうにお考えになりますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) いつも本富士署長を任命いたしますときには、管内に東大という非常に重要な施設があるので、これが管内に対象としてある以上、非常にこれはいろいろの点についてむずかしい点があるからして、十分その点は考慮してやつて欲しいということは、私若しくは私の代理者から必ずそういうことは言つて任命いたしております。又このことは、言われなくとも本富士署長に任命された者は当然そのことは頭の中に従来みな持つているのであります。従つて野口君もさような点につきましては十分、十二分に私は持つているのじやないか、かように考えます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 私のお尋ねするのは、持つていないということが明らかになつた場合、これが適当であるかないか、なかんずく東大の持つている日本の最高学府としての伝統と、又現在それが国際的に負うておられるところの責任というものに対して、この東大の存在している地域の警察の最高の責任者である署長が、それらの点について認識が不十分であるという場合には、そのかたは適当であるというふうには考えられないと思うのだが、その点を認識しておられるかと伺うのです。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私はたまたま今回かような問題が発生いたしましたから、本富士署長の件につきましていろいろ御意見があるところであると思うのでありますが、従来、就任以来さようなものにつきましては、大学側も先ほど矢内原先生が仰せのごとく、とにかく一応円満に実施されておつたのであります。たまたまこういうような事件が発生したためにかような問題が表に現われたのでありますが、たまたまこの事件だけ取上げて、署長の識見がどうであるとかということは、私は少し羽仁委員と意見を異にするのではないかと、かように考えるのであります。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 先ほどあなたはお引きになつておられたと思うのでありますが、矢内原証人は、今回の事件が学問自由について重大な事件であると証言されておる。これも宣誓の下になされた証言であります。あなたはそれに対して今回の事件はそれほど重大な事件ではないとお考えですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) いや、そうではありません。私は又警備上の点から極めて重大ではないかと考えております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 その警備上というふうにおつしやるのは、警視総監は特に東大の所在しておる地域について、警備上だけの考えでよろしいというお考えですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 先ほど私が申上げましたごとくに、勿論大学の学園の自由、学問の自由ということにつきましては、私が冒頭に申上げましたように、当初から当然これは尊重すべきものである。従つてそれはそれとして、私の立場から申しますれば、やはり警備上の点から重要である。矢内原総長の点から申しますれば、これは大学の学園の自由という点から大事な問題である。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 それではあなたに伺いますが、これは宣誓の下になされる証言として伺いたいと思うのですが、今回の事件は、大学の存在しておる地区について警備の責任を危くするような意義を持つた事件なんですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) この事件の成行き如何によつては、さようなことになる虞れがあるのではないかと、かように考えております。ただこの問題そのものが、直接それによつて警備上非常な支障があるということを私は必ずしも考えておりません。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 どうも有難うございました。  では野口証人に伺います。野口証人が先ほど述べられました、朗読されましたビラ、「労働者はドスをといでおる」、このビラはどこであなたの部下の手に入つたものでありますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 大学構内法学部の前と、法学部教室にて、と、かようになつております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 どこの教室ですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 法学部となつておりますが、これは報告書は別にとつておりまして、ビラだけを持つて来ておりますから、その報告書とこれと合わせて見るとわかるのです。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 では先ほどこのビラが実に重大であるということを証言されましたね。これも繰返して念を押すのは大変失礼でありますが、宣誓の下になされておる証言である。その証言として伺いたいのですが、そのあなたの御意見によれば、極めて重大であるとお考えになるビラが、どこで入手されたかということについて、はつきりお答えができないでよろしいとお考えですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) こういうビラはこればかりではありません。ほかにもまだたくさんあるのでありまして、一年間にはたくさんのビラがあるのであります。それは、そのビラはいつ、どこで、どういう経路をとつて入つたかという報告書というものをつけまして、そうして置いてあるのであります。その中の一部を私はここに持つて来たのでありまして、これを領得したことにつきましては、今申上げましたように、東大構内でこれを入手したということを私は確認して持つて来たのであります。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 証人に伺いますが、このビラを、その他多くある、大したビうじやないという御意見なんですか、重大なビラだという御意見なんですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) この内容からいたしますると、重大だと私は考えます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 そうすると、あなたの御意見に従うと重大なビラ、そのビラが東大構内で撒かれたか否かということを国会の委員会の、そうして宣誓の下に行われる証言においてあなたが断言せられる以上は、これは東大の名讐に関係することですから確たる根拠に基いて証言をせらるべきではありませんか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) これは巡査の報告書がついております。それで私はくのビラというものは、大学構内で領得したと私は確信いたしております。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 それは即ちあなたの今の御答弁はあなたの御責任ではない。その巡査の責任だとおつしやるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 入手して巡査が報告したものを、私はそれは信用してそして持つて来たものでありますかるら、巡査が出したことを私は信用して報告書がついておる、次に部長、主任を通じて報告があつたのでありまするからその報告は真なりと、本当のものであると信じて出したわけでございます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 この点に関連して警視総監としての田中証人の御証言を願いたいと思いますが、大学の構内でかようなビラが撒かれている。そのビラの内容は甚だ不穏であり、重大であるということを、その大学の存在する地域の署長が国会において宣誓の下に証言をする場合に、只今のお聞きになりましたような程度の根拠で、宣誓の下に証言を行われることは適当でありましようか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 若干、私は率直に申しますが、調査の点に若干疎漏の点があつたと思います。この点は私からお詫び申上げます。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 いや、お詫びを伺う所存はございません。いやしくも先ほどから申上げますように、日本にとつても、又世界にとつてもその責任と、そうして又その使命とは最も高いその東京大学の名誉に関係するような証言を宣誓の下になす場合に、今お認めになりましたような調査の上に、不十分な調査の上に基いて、証言をされることか適当であるかないか、あなたの御判断を伺つておるのです。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答えしますが、調査の疎漏、もう少し調査してはつきりこの委員会で根拠を申上げたほうが私はよかつたと思います。この点は遺憾に堪えないと思います。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 遺憾に堪えないというお考え。それでは元に戻りまして、野口証人に伺いますが、あなたの手許にあるところの先ほど朗読されたようなビラ乃至類似のビラについては、一つ一つそれを入手した警官の報告書はついておりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 全部これが編綴したものをここに対照して見ないというとわかりませんが、これにはいつこれが撒かれたかということはついておると思います。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 羽仁君……。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 それじやもう一遍だけ伺いますが、今の問題のビラですが、あなたが重要とお考えになるビラについては、それは先ほど警察官の報告書がついておると思うというようにおつしやいましたが、それはございますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはありますと思います。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 ありますと思うのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはあります。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 有難うございました。終り。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 私は質問しますときに立つのが癖でございますから、どうぞ証人のかたはお坐りになつて御答弁願いたいと思います。先ずお聞きしたいのですが、野口証人にお伺いいたします。先ほどの証言によりますと、今度のこの私服警官がああいうような行動をとつたこと、これは署長の命令じやない、こういうお話なんでありますけれども、そうすると、これは警察官の勝手な行動だということになりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警察官は平素自分の仕事につきましては、現実の場所における警察事象につきましては一々署長の許可を受けるいとまもないのでありまして、その職務の範囲内、警備係としての任務のためにやつたのであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 それは一々受けないにしても、これは非常に、基本的には警察官の任務というものはどういうもんだかというようなことは、これは署長が常に督励し、或いは訓示し、そうしてその結果について検討するということは当然上司の責任だと思う。ところがそういうようなことが、あなたのさつきの御証言ではなされていない。そうして今度のような大問題をこれは起しておるのですな。この三人の警官のやり方というものは、あなたのつまり指揮監督から跳び出したところの、これは私の行為というふうに認定されざるを得ないのでございますが、こういうものに対しましてあなたは責任者としてどういう一体処置をとるおつもりでありますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 三人の者が、自分の先ほど述べましたように娯楽、いわゆる勤務時間後に娯楽に行つてあの被害にかかつたのでございます。警察官といえどもやはり被害にかかることもあるのであります。(笑声)この責任につきましては、この警察官は自分の力でその集団的な暴力を排除しようと努めたけれども、被害にかかつたという事実からいたしまして、三人の警察官の責任は私はないと思うのであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 私はそのあとで起つた問題について聞いておるのじやない。今お話になりました、とにかく勝手に入つたのだ。劇を愛好して大変結構でありますが、劇を愛好してこれは入つた。こういうことはこれは何ですか、署長の監督の以外に抜けて、こういう私的な行為というものはこれは許されておるのでありますか。現在の警察官の服務についてこれはどうなんですか、これは許されておるのでありますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 自分の娯楽に入ることはこれは差支えない。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 それではこれは公務でなかつたのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 公務でありません。入るときは公務じやないのであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 それじや、お伺いしますが、あなたは昨日衆議院の委員会において公務であるというような御証言をなさつたように聞いておりますが、事実は違いますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 何ですか。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 今度のポポロ劇団の劇を見たのは、あれは一つの公務だというように証言なさつたように聞いておりますが……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや、私は公務だとは証言いたしません。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 そうですが。それではこれは私の聞き違いか知れません。それじやお伺いしますが、それでは何のためにあの観劇のために、私の用で劇を見ていた警官が帰つて来るのが遅いので、あとで迎えに来たか。この点が一つと、それから先ほど矢内原総長の御証言によりますと、これは署長の命令である、こういうようなことも証人が必要なら挙げることができるという御証言があつたと思う。あなたは全然そういうことは命令したこともないし、それから全然そういうような行動については、これは警官の自分の解釈、任意解釈で以てやつておるのだと、こういうことを言われておりますけれども、これは事実に非常に反すると思う。而も今度のこの手帳によりますというと、手帳の中にこういうことがありますな。一月十三日川島部長に報告とある。こういうようなことについてはこれは警官皆報告をしておるのですね。全然報告がない、そして任意にやつておるんだというお話でありますけれども、手帳を見ますとこういうことがあります。それから手帳については、これは時々検閲するのではありませんか。一週間目とか、十日目とか……。従いましてこれは公務と関係がないので、全然警官の任意な行動であつたということを、私はそうでないだろうという証拠を四つほど挙げたのでありますけれども、これについてあなたは飽くまでこれはその警官の任意な行動であつたという根拠を聞かしてもらいたい。この四つの点に反駁して下さい。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 何か見に行つた、帰らないから見に行つたということは私は聞いていないのであります。それからその次のポポロ劇を見に行つたということが手帳に書かれておるから……。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 署長の命令だつたということですな。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや、その点について私はどういうことから総長がおつしやつたのか、誠に不可解でありまして、どなたか私のところに面会にいらつしやつたときに、あれは私が命令したんだということを、どなたかに私が言つたということを、先ほど総長がおつしやいましたが、誠に不可解なことでありまして、私も会いますときは、次席、三席、それから警備主任なり、大体おいでになつたと同数の私の部下を入れて立会いの下に話をいたしております。私は、只今お話のような私の命令によつて劇に入れたということを言つた覚えは毛頭ございません。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 それから、部長に報告すると手帳にありますが、こういうことはないということですか、これは証拠じやないですか、こういうような連絡があるということは……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 手帳の内容に書かれておりますのは、先ほど報告申上げました通り領置しております。実際に書かれておるかどうかということは私見ておりませんけれども、書かれていることが又そういうふうに実際にやつてしまつているか、やつているかということについても私まだ確信がございませんので、それについては……。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 検閲はどうです。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 検閲は、私は最後に検閲をするのであります。いわゆる手帳が消耗品……中味でございますね、表は違いますけれども、中味は終れば、又新らしいのと取替えるのであります。それで一番最後に私のところに持つて来まして、私が認印いたしまして、そうして本人に保管を命じます。こういうことでありまして、一々手帳は私は見ないのであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 これは手帳は、或いは全部見ないかも知れんけれども、上司に報告するとかそういう仕組にはなつていないのですか。それから一週間とか十日とか期限を切つて、その手帳の検閲をするとかということは、私は手帳をさつき写真を見たのでありますけれども、これは私物じやないですな。官が貸与しているものですな。第九十二号、本富士警察署勤務警視庁巡査柴義輝、昭和二十六年十月二十八日貸与と判を押している、野口という判を押している。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そうであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 こういうものは、例えば勝手に学内で起つたところのいろいろな身元調査や尾行したとか、それからお菓子代まで出ている。百五十円払つたとか、こういうようなことを記入していいのですか、公務手帳に。これはどうなんですか。あなた、検閲されているのですか、こういうことを許しておられるのですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それがよく私は中味は見ておりませんけれども、若しその私用のことを或いはメモ式にちよつと書いたということが或いはあるかも知れません。メモ式に自分の私行為を、私生活のことを或いはメモしたかも知れませんけれども、そういうことはよくないことで、若しありとするな‘らば、私は訓戒を与えております。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 それほど重要な問題を、これを個人の判断で任意解釈でやつておるなどということは、これはあなたが先ほど挙げられた私に対する反駁は何らこれは理由になつていない。時間がないから私は精細を尽す余裕はありませんけれども、非常に前後が矛盾しておると思うのです。全然あなたはお知りにならない、こういうことではこれは監督も、それから実際上これは治安の立場から、こういうような問題は重要だと思うが、田中警視総監に伺いますが、こういうような放縦なやり方で、これで国民の治安を守る機構ができるのですか、どうですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) ちよつとお答えいたしますが、警察手帳というものは、これはお説のように官給品であります。従つてこの警察手帳の内容を記載するということにつきましては、これは一々監督者が指示をいたしておりません。これは職務に直接又は間接に何かメモしておかなければならんというような場合に、この警察手帳が利用されるわけでありまして、その内容が、それが必ず全部公務に直接関係があるものでもないと思うのであります。何といいますか、間接に関係があるとか、とにかく一応メモとしてこれを控えておく、こういうのであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 おかしいですな、大した手帳ではない、こんなもの……そのくらいのお菓子を食つたとか、それから何かちよつと自分の私用だつたら何でしよう、シヤツを買つたとか、そういうものを付けたつていいのでしよう。それをなぜ一体こんな大騒ぎして警察官を三十人も出動させて、そうして学生の、純真な学生の前歯まで折つてやらなければならん、それほど必要なものですか、警察手帳というものは……。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答えいたします。私はさような意味で言つたわけではありません。さような職務に直接又は間接に必要な事項についてメモをしておくものであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 田中総監にお伺いしますが、あれをあれほど前歯を折つたり、手錠それから足枷をかけて、そうしてあれほど大騒ぎをして取返さなければならないほど重要なものなんですか。どうなんですか、警察手帳は……。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私は重要なものだと思つております。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 重要なものだと思う……。それにどうです、個人的なものとか、ちよくちよくものを書く、そういうことはいいのですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) これは書いてはならんことになつております。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 これはどういうことです、今度の問題は、そうするとこれは皆個人的だと言うのですか、警察手帳は……。今度のやつは、これはあなたがたのさつきの証言から推せば、当然警察手帳に記載されておることは全然上司の係わり知らないことだと言つた。従いまして、全部この手帳に書かれたことは個人的なことですか。野口証人に伺いたい。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私ちよつとお答えいたしますが……。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 先ず野口証人に……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはですね、私は先ほど申上げたと思いますが、警備上必要な自分の参考に、書いてあれば書いたのじやないかと思つております。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 警備上必要だという理由でありますが、これは内容の問題にちよつと入りますが、時間がないので詳しくやりませんが、大体どういう警備なんですか。これは警察法は我々も素人で詳しくわからないのですけれども、どうなんですか。あなたがたは警察法を御存じなんですか。第条の第二項にどういうことを書いてあるか、警備上というのはどういう警備なんですか。先ほどから問題になつておるが、どういうことの警備ですか。これは飽くまで念のために、あなたたちには釈迦に説法かも知れんが、第二項には「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。」こう書いておるのでありますが、そうしてその前項のことというのは、これは治安の問題とか、そういうことを明記しておるわけですが、それ以外のこういう個人の基本的人権に関することについて、これはどうなんですか。こういうことが警備の中に入つておりますか。基本的人権に関するこの事項ですね、こういうようなものの審判をやる、そうしてこの警察手帳はまさしくその証拠だ、生きた証拠であるべきものである。こういうことをやることがちやんと警備の中に入つておるのですか、入つておらないのですか。御答弁願います。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私はやはりこの警戒警備の必要なことを、参考のことを書いたのであつて、警察法に私は違反はしないと思う。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 田中証人に伺います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 更に私は附加えますが、警察手帳には先ほど私が申述べましたときに、直接又は間接に職務執行に関係ある事項を、これを一応メモとして書きとめて置く。従つて今警備上の問題も中にはあるでありましようし、そのほか或いは又必要と認められる、警備上には直接関係なくとも、何らかの関係がありと認められるような事項につきましても、必要があるならば、そのメモの中に、或いはメモとして警察手帳の中に記入されることもあるだろうと思います。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 そういうのは自己判断ですね。今の基本的な警察官の、これは戦後における性格というものを決定する。こういう特高警察をありありと偲ばせるこういうようなものが、一体その必要の範囲内とお考えになりますか、どうですか。これは警察官の任務の範囲内と思いますか、範單に率直にお答え下さい。時間がありませんから……。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答えしますが、特高警察のやり方はやつていないつもりであります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 これは何です。これは何です。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) それは警察上の目的もありましようし、そうでない目的で書いたものもあります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 これは全部逸脱しておると思いませんか。考えて下さい、警察官の任務を逸脱しておるとは思いませんか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 警備上又は取締上必要ありと認めた場合においては、書く場合があります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 そうでない、具体的に示しておる、これはどうなんですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 同じような答えでありますが、警備上又は取締上必要があると認められる場合においては、必要のある事項を書かなければならん。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 私は、これを具体的に挙げておる。それにあなたは抽象的な答弁でお茶を濁そうとしても、これははつきり輿論が判断するでありましよう。こういう馬鹿げたことは、あなたはこういうこれを庇うような形になつて来る。それで大体私は伺いたいのだが、一体特別警察隊というものが警視庁の組織にあつたはずだと聞いておりますが、これはどういう組織になつておりますか、これは私服ですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 特別警察隊どいうものはありませんが、警視庁には予備隊というものがありまして、機動的に警察活動をするためのいわゆる警視庁予備隊というものがあります。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 そうすると、予備隊の任務はこういうことをやるのでありますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 予備隊は、何か大きな問題が起つたとき、或いは混雑の整理であるとか、そういうような多数集団の取締の場合において、この制服に対して予備隊が入る。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 予備隊とこれはどういう関係ですか。今度の私服ですな、これはどういう関係ですか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 全然関係ございません。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 そうすると、予備隊のほかにそういう機構があるわけですね。新聞で書いておる特別整備係、こういうものがこれは設けてありますな。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) それは警備係というものがありますが……。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 どういう任務ですか。こういうことをされる任務ですか、

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) これは一般の治安保持のために特別の任に当る。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 保持じやない、治安を破壊しておる、東大へ行つて……。私はそこでお聞きしますけれども、一体今度の場合にあの三人が入らなければこの事件が起りましたか、どう考えますか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私はいま少しあの場合において、学生側におかれてももう少し民主的な方法でお話になつたらば、かかる問題もなく無事に解決したと思うのです。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 私の聞いておるのはそういうことじやありません。これが入らなかつたらどうか、起つたか、起らなかつたか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 入らなかつたら起らなかつたでしよう。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 そうでしよう。私はそこでお聞きしたいのだが、問題は、これは立入つた、而もこれは次官通牒の協定線をはずれて立入つた、ここに原因がある、先ほどから非常にいろいろな珍妙な説が行われているのでありますが、元をたださない、一つも元をたださないで、外から入つた警官に暴行した、それから、或いは打つ、蹴るというふうなことをしましたなんという、そういうようなことをやつたということを言つていますけれども、その大きな原因というものは何です、この大きな原因というのは、立入つたことでしよう、これは認められましたね、田中警視総監は……(「入つてもいい所だ」と呼ぶ者あり)こういうようなふうに、問題は警察が起しているのじやないか。警察官が立入らなければ、而もさつぱりあなたは公然とここで説明できないような、そういう何だか秘密警察みたいな、少しも人民には何ら知らされていないところの組織で立入ることによつて起つた今度の事件のこの責任は、はつきり田中警視総監、並びにこれは本冨士署長は考えておるか、この点はどうです。種を蒔いたものから我我は糾弾しなければならん、究明しなければなりません、種を蒔いて起つた問題である。この起つた問題を、先ほどから何か外らされた質問もあるのでありますが、我々は、根源を衝かなければならん、その根源はすべてここにあるのじやないですか。それから、従つてこういうようなやり方そのものが問題になつて来る。これに対してどういう責任をあなたたちはお考えになりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私からお答え申上げます。私は先ほどからいろいろ御説明しました通り、切符を買つて、そうして一般の公開のものとして入つたのであります。これはそういうかかわりは私はありませんけれども、それにかかわりはありませんけれども、これは、一歩を譲つて、一歩私が譲りまして、そうして入つたとしても、これを暴力を以て、暴力行為等処罰に関する容疑を起した学生が責任がある、これが私は原因だと思います。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 こういうことは、これは笑われますよ、いいですか。自分から勝手に、少しも国民の前に明らかにされない組織で入り込んで。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) ちよつとお待ち下さい。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 自分が侵入しておる。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) ちよつとお待ち下さい。さつきのお答えがあるてお答えします。そこでそれに原因があると私は思いますが、法治国である我が国におきまして、若し不法に、一歩私が譲りまして、不法に入つたという者を暴力でこれで排除していいものであろうか。(「その通り」と呼ぶ者あり)

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 不法に入つたのは……。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私はまだ続きます。(笑声)答弁を続けます。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 時間がないから。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 答弁を続けますよ、ちよつとです。それで、それなら、合法的手段を以て、法規に定める、刑事訴訟法にもあります。告訴、告発、いろいろな方法を以て、私どもが不法に入つたとするならば、その不法行為を糾弾するのが法治国の提であろうと私は考えます。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 あなたたちは大変法律に詳しくていらつしやるから、そういう珍無類な御答弁ができる。自分自身が一体合法的じやないじやありませんか。自分自身言つておる。さつきの説明で。警察官が認められない、指令もされないで、そういう勝手な行動によつて起つたものだ、大体合法的と考えられておるかどうか。非合法をやつておるじやないですか。そういうことをやつておいて、その結果起つたその点について、今度はこれは何です。暴力をやつたと言いますが、これはすでに総長からの説明がありました。次の日の逮捕のときには、これは自分から進んで先頭に立つて、第一線に立つておる。これは診断書はあとでもらえましよう。何月何日、どこの医者がどこで書いたのか、これはもらえます。証拠として委員長から要求してもらいたいと思うのですが、そういう恰好で一週間乃至十日、こういう非常に大きな何が起つておる。そうして学生のほうの傷はどうなんです。これはあなたは御存じなかつた、学生の傷については……。前歯を折つたり、この辺に血が出たりした問題、それから足や手が紫膨れになつておる。こういうことは御存じない。これは何です、一体。誰のための警官です。誰のための警官だ。ええ。これは国民の税金で、血税で賄つておる警官ですよ。あなたたち警官の傷よりももつと問題なのは、国民のそういう問題が先じやないですか。若しも本当の公務員であるならば、何です。それ。警官の何をまるで次の日にです、逮捕の先頭に立つことのできるところの警官、そういう者を一週間とかこういう言語道断のことをやつておいて、そうして一方では学生が前歯を折られる。非常な重傷を負つておる。こういうようなところまで強行をやつておいて、それであなたたちは合法だとか非合法だとかつて、これはおつしやるわけですな。誰の一体警察なのです。田中警視総監、念のために伺つておきます。誰の警官です。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 岩間君時間が参りました。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私は警察は、現在の警察は民主警察でありますから、やはり国民の生命、身体、財産を守るための警官である、私はこう信じております。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 もう一言だけ許して頂きたい。おかしいですね。成るほど我我公平に見ておると、三越のストのときに女の手をねじ上げることは常非にうまいようだ。併し富士銀行のギヤング事件のときはなんだ。あれが警察の正体じやないですか。あなたたちはそれで民主的な……、国民の何を守る、守つていないじやないか。現に前歯を折つておるじやないか。国民の足に手錠をかけ……、そうして不当だと言いますけれども、それは不当だというのは警察が勝手に自分で判断しておるのだ。これはこれから批判される点だ。この問題について私はあなたにいろいろ質問するのは、他日にたくさん私は保留しますが、最後に矢内原総長に二点だけお伺いしたい。第一点の問題は……。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 岩間君簡單にして下さい。

岩間正男日本共産党

○岩間正男君 すぐにやめます。天野文相の発言の問題でございますが、二十二日の参議院の本会議におきまして、天野文相にこの東大問題について私は質問したのでございます。渋谷問題についても質問したのでございますが、その席上におきまして、はつきりとこれは東大の問題に警官が立ち入るのは止むを得ない、こういうことを証言……、言つているのであります。これは速記録を取り調べるとはつきりする。ところが二十三日でありましたか、矢内原総長とお会いになるというと、そういうことを言つた覚えはない、そうしてこれは渋谷の問題について話したのであつて、東大の問題については触れなかつたと言つている。尤も天野先生、そのとき御病気のようでありましたから、私は少しどうかされているのではないかと思うのでありますけれども、これは速記録で明確な事実であります。そうして頂きました東大の大学学生新聞を見ますというと、二十二日に文相が国会の文部委員会で答えたのは、これは駒場の問題であることがわかつて、私たちは実は愕然としておるのであります。国会における一国の文相の証言が、このように院内におけるところの証言と、それから院外におけるところの話ではまるで食い違つておる。まるで浮草のように変転極まりのないところに一つ私は非常に大きな問題がある。日本の文教政策の上に、こういう点でこれは矢内原先生にお伺いしたいのでありますが、そういう事実は一体どうですか。天野文相はどういうお話をされたのか。それからもう一つこれは教育の基本問題でありますが、今まで先生がたが、日本の平和憲法について学生諸君をお教えになつたと思う。(「時間」と呼ぶ者あり)そうしてその中で日本の憲法というものは重要だ、平和に徹する、これは非常に日本の今置かれておる立場で非常に重要だ、こういうことをお教えになつたと思うのでありますが、今日大勢が変つて参りまして、そうしてなぜか今度はこの平和憲法を守れないような情勢になつて来た。これは私たちは学生諸君が非常に動揺しておる最大原因であると思うのですが、こういう中におられて、非常に御苦心をなされておられると思う。今度の東大の問題も根源するところそういうところにあると思うのでありますが、こういう点どういうふうに飽くまで最高学府としましてこういうような憲法を守り抜くか、こういうような点について御苦心の点がありましたら、お伺いしたい。  右二点をお伺いいたします。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 私は天野文相が病気で引き籠り中のところをお訪ねいたしまして、病気のお見舞かたがた、いわゆる現下の問題になつておりまする東大事件について報告をいたしまして、若干意見の交換をして参りました。その際の文相の言われたことを私は正確に再現することができない、即ち記憶がはつきりしておりませんが、文相と私との間には、これはちよつと御質問に対する答えになりませんけれども、次官通牒の線を守るということについては意見が一致いたしまして、国会における文相の御答弁については私はお尋ねもしなかつたし、又御説明も聞かなかつた。それでこの国会における御答弁が渋谷事件に関することであつたか、或いは東大事件をも含めたかということについては、文部大臣と話合いをいたしておりません。  それから第二の平和問題、これは本件と若干間接の関係があるかも知れませんからお答えいたしますが、憲法改正の問題は国会の責任であり、又権限でございます。それ故に東京大学としてこの政治問題に大学としての見解を持つことはないと思います。ただ持つものは私個人的の意見でございます。で個人的の意見を述べる必要があるならば述べますけれども、この際は御遠慮いたしておきます。

一松定吉改進党

○一松定吉君 私は御質問する前に私の態度を明らかにして置きたいのであります。私はこの事件は双方に失態がある、こういう私は考えを持つております。大学側にも失態があれば、警察側にも失態がある。お互いがここで自分らの失態を失態と認めずに、有利にこれを弁解しようとするところに無理がある。こう私はこの事件を皆さま方の質問応答を通じて冷静に考えてさような結論に到達しております。故にそれらのお互いの行過ぎや、しくじり等については、将来おのおのが反省をして、そうして私どもは立派に我が国の再建のために御努力にならなければならん、かように私は考えておる。でありまするから、私のお尋ねすることについて一つ率直に答えてもらいたい。私は決して追及とか困らせるということはいたしませんから、そのつもりで一つやつてもらいたい。  先ず私は警察側に無理があるという点を一つ指摘して見たいのであります。この手帳に記されておる内容を見ますると、今いろいろな諸君から御質問のありましたように、学生や東大の先生方の思想の調査をやつておる。こういうことはこれは憲法で禁じておることなんです。これをやるが故に特高警察の再現だとか何とかいう非難が起るわけです。併しながらここにこういうことをやつたことについて、私をして言わしめれば警察を又一概に責めることはできない。いわゆる治安の維持をどこまでも維持しなければならない警察官の立場として、教育基本法に反するような政治活動をして見たり、或る一党に偏するような学生が行動をして見たりするようなときに、これは教育基本法の第一条、第八条において禁じられておることです。又そういうことが非合法な行為であるときには、警察官はこれる取締ることは当然の職権なんです。なぜお前は思想の調査をするのか、なぜお前はそういうことをするのかと言うて叱るのは、叱るほうが間違いだ。憲法には学問の自由を認めておる、思想の自由を認めておる。併しながらそれは憲法の第十三条、第十四条によつていわゆる公共の安全を保持する必要のある場合には、それらの自由は制限されるということは私が申上げるまでもなく諸君の知つておることなんです。であるから警察官が東京大学のその内部の学生の行動について、いわゆる秩序を乱し、そうして国内の治安を乱して我が国を変革するような陰謀が行われておるというような疑いのあるときには、これを内偵することは当然ではありませんか。それは憲法のいわゆる命ずるところである。公共の福祉に反する行動は、憲法においてその自由を保障しておつても、その自由はこの憲法の十三条、十四条においてすでに制限される。だからしてこういうことについて、大学側がおれのほうに入つて来ることは文部次官の通牒に反するからいけんという大学側の主張も間違つております。又警察側がこれらの点について質問を受けたときに答弁のできないようなことではいけない。憲法の第十三条には、公共の福祉に反するような行動があるときには、憲法の自由の行動は制限するのですから、そういうことをするのは平素から注意して、そういう予備的捜査をするということは当然の職権なんです。でありまするから私はそういう意味においていわゆ警察側が思想の調査をしただとか、或るいは少し通牒に反してみだりに学校に入つたとかいうようなことについては、その問題がそこまで一体しなればならない実情にあつたがどうかということにおいて、これは判断しなければならんものだと私は思う。故にこういう意味において学校側でも学問は自由であると言うて自由を振回して、そうして尾高教授の言われたように治外法権は持たないのですから、いわゆる秩序を乱すようなことが学内において行われるときには、警察官が当然飛び込んで行つてそれらの者に向つてこれを調査し、これを逮捕することは職権の行使である。それが文部次官の通牒があるが故にその通牒を楯にして、そうして学内の治安が乱れても、これが国家の治安を害するようなことがあつても、学校はいわゆる自由であり、学校はその自由を犯すことはできないのだというようなことを抗弁して、これに反抗することは間違つています、私をして言わしむれば……。そこで問題はいわゆる私は先刻文部次官の通牒について質問いたしましたが、一体こういうことをやるということは、全く学校のいわゆる学問の自由を尊重するために双方が協定してこれはできた申合せなんです。故に法律でもなければ規則でもない、これは全く徳義上遵守しなければならんという申合せに過ぎない。然らばその申合せをやるについては、大学内においても我々の自由を尊重してくれるというこの警察側の態度に対しては、自分らから自分らの行いを慎しみ、自分らから自分らの行動を、いわゆる警察官がこの学校に入ることないようなふうに自重して取締りをしなければならん、それを怠たつておるような場合には、いわゆる警視庁が中に手を入れなければならんという実情になれば手を入れられても仕方がないのです。それを次官通牒があるのだから、我々は学内は自由であるというて、如何にも治外法権のごとき考えを持つてこれに対処することが、この事件においての間違いの起りである、又生徒諸君もそうである。我々は次官通牒があるから警察官は学校内に入ることはできないというようなことは、それは一つの申合せ、一つの徳義なんです。だからして諸君が行いを正しくして、学校は生徒たるものは生徒の本分を守り、教育基本法の趣旨に基いて学問をして行けばこういう問題は起らない。然るに団体を組んで警察官に向つて暴行を加えてみたり、警察官に向つて詫状を書かせてみたり、警察官に向つていわゆる明るみにひつぱり出しておいて大勢の者が取囲んでそうしてその文句を自分らが書いて署名捺印させるということは、これは何と言つても行過ぎです。又そういうようなことの原因を警察署のほうで起したことについては、警察官にも責任がある。そこで問題は……(「本論に入れ」と呼ぶ者あり)これが本論です。だから私は、双方がお互いにいわゆる自重自粛し合つてやれば問題は起らない。これでも問題が起るならば、この通牒に対してこれを改正する方法をとればよろしい、或いはもう少し欠点を補正するか、或いは法文化してそういうことのないようにするということをすればよいのであつて、これは矢内原学長も田中警視総監も望んでおるようでありまするから、これはこの問題を契機として双方考えて将来こういう問題の起らないように一つするということに御留意を賜りたい。又我々もそういう意味において及ばずながら御協力を申上げたいということを先ず前提として、私は双方とも決してあなたがたのやつたことをよいと思いません。又双方がどちらがよいのであつてどちらが惡いのだというような考えでなく、本当に公平な立場から私の考えを申述べてみたいのであります。そこで学問の自由ということは、私が言うまでもありますまい。いわゆる学問の研究の自由並びに研究の結果の発表の自由、これが学問の自由なんです。然るにそういう以外のポポロ劇団というような、松川事件を主題として一体劇を大学の中でやらなければならんということは、学問の自由にどういう影響があるのか、これを一つ聞いてみたい。これは一つ矢内原学長から承わりたい。これは申上げますが、この松川事件というのは、これは福島に起つたいわゆる鈴木信ほか十九名が謀議の上鉄道を顛覆して人を殺害し、そうして治安を乱して政府のいろいろな施策について反抗しようという謀議をしてやつた事件である。これは殆んど百回に近き開廷をして、そうして弁護人などが非常に法廷内において、騒いだと言えば語弊があるかも知れんが、裁判官を忌避し、裁判官はこれによつて何回も何回も公判を開廷して、そうしてこれは我々法律家の間では由々しき事件なりとして考えておる。こういう事件を一体法学生がこれを主題として学校内においてこの演劇をしなければならない、これをすることによつて学問の自由にどういう影響があるのか、これを一つ承わりたい。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 初めにも申上げましたように、大学は研究と教育の場であります。で大学の自由というものは、その両方を含んでおるのであります。それ故に研究の対象、研究の題材は、広く自由に取材せられなければなりません。こういうことは研究してもよろしいとか、こういうことは研究してよくないとか、研究の対象によつて区別されるべきものではないと信じます。研究の態度がまじめであつて、即ち研究的であることが必要なのであります。そこでこの研究の自由は、教授諸君の自由は勿論のことですが、学生も大学生でありますから、これを教育する見地から考えて、学生が自主的に自発的に自由に題材を選んでこれを研究するこの自由、これは大学における教育の自由でありますが、広い意味の教育の中には、体育もあります。それから音楽とか演劇とかそういうものもございます。これはまあ遊びという面もありますけれども、学内団体において認めました活動は、如何なるたとえスポーツといえども教育的見地からこれをなされなければならない。演劇、音楽すべてそうであります。それでありますから、たとえ題材は松川事件であろうとも、私松川事件というのはまだ結審になつたのかどうか知りませんけれども、たとえ題材は松川事件であろうとも、それを学生が研究的に或いは文学として、或いは芸術として取上げるということは学校は認めておるのであります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 あなたはそうすると松川事件というものの内容は御存じなんですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 新聞記事でほぼ知つておりますが、その事件は目下係争中であるように聞いております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 係争中であることはわかつておるが、その内容を御存じなんですか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 新聞で報道せられておることを知つております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 新聞で報道されておることは今私から申上げたような、いわゆるいろいろな職務を追放されたような連中や、政府の施策に不満のあるような連中が寄り集まつて、そうして汽車を顛覆さして人を殺して、そうして政府をして自分の主張を通すように反省させようというような謀略に出たいわゆる殺人事件なんです。そうして現に福島の一審において死刑の宣告を受けた者が五人、無期の宣告を受けた者が五人、懲役十五年が一人、懲役十二年が三人、懲役十年が二人、懲役七年が三人、懲役三年六月が一人、こういう事件なんです。これが今あなたの学問の自由についてどういうところを研究しなければならんか。あなたがたがお許しになつたのですからそれを許した理由を一つ説明して下さい。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 只今申上げましたように学問には研究対象の制限はありません。ただそれを実行するごとによつて不法な思想を煽動するとか、或いは強制するとか、そういうことはいけません。

一松定吉改進党

○一松定吉君 これは今私が大要を申上げたのだが、人を殺すための謀議をして汽車を顛覆さして人を殺した事件なんですよ。それが教育基本法の第一条の、あなたがたのやり方は教育基本法に支配されなければならんが、いわゆる「平和的な国家及び社会の形成者」を養育するというのが目的なんだ。人を殺すような謀議をしてそうしてこういうようなことをやつて死刑の言渡しを受けておるような芝居を大学の中でやる、これがどういう学問の自由、研究の自由になりますか。(「三鷹事件の焼直しだ」と呼ぶ者あり)それを一つ答えてもらいたい。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 人を殺すことがよろしいと、そういう教育をするとか、或いはそういう思想を普及するとか、それはよくありません。それは許しておりません。

一松定吉改進党

○一松定吉君 それならそれに当てはまるじやありませんか。人を殺すことを謀議してそうして現に汽車を顛覆さして殺した事件、それを大学の学生が研究をして、どこに大学の学問の自由、研究の自由がありますか。あなたの言う音楽とか演劇とかいうものは学問の自由ではありません。憲法の学問の自由というものは憲法の規定に限られて、今あなたのおつしやるようなことは、それはいわゆる憲法の第二十一条における「通信の秘密」、それから「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」には入る。併し大学の学問の自由のうちじやないですよ。ですからそこを区別して答えてもらわんと困る。あなたのように表現の自由と学問の自由とを混同してはいけない。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) ちよつと話がずれますが、学問の自由と思想、言論或いは表現の自由とは別なものではありません。これは密接に結合しておるものでありまして、広い意味で申せば学問の自由は言論、思想、或いは思想の発表の自由の中に含まれております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 それはそう解釈してもよろしい、そう解釈しましよう。そこで問題は、こういうような不穏当な松川事件を取材として……、大学で学問の自由の研究の取材としてやるということをお許しになつたのですが、どういうような貢献がありますか。(「法学部の法の研究」「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 繰返して申しますように「それによつて人を殺すことを奨励するとか、或いは国家を顛覆することを煽動するとか、それはよくありませんが、たびたび申しますように、例えば結核菌の研究をすれば、対象は結核菌でございます。結核菌は非常に有害なものであります。けれどもこれを研究することによつて(「常識がない」と呼ぶ者あり、笑声)学問は進歩するのです。研究対象が犯罪事実であろうとも……。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そうすると何ですか、結核菌の撲滅に向つて研究を進めることは、人体の生命に重大な影響があるから非常に結構なことですよ。汽車を顛覆するために……、いろいろのことを謀つて汽車を顛覆するということが学問の進歩にどこに利益があるか、どこを認めてお許しになつたか、そういうことを伺つているんですよ。そういうことは許しちやならんというお話なら、それならいいんですが、あなたはこれを許したのがいいようにおつしやるから、先に私が冒頭に言つたように、惡いところは惡いとお互いに反省して、将来の培えとすればいいんですす(笑声)それをあなたが無理に理窟付けようとするからこういう議論が起るのです。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) それは理窟ではありません。ここに尾高法学部の教授がおられますから、必要があれば法学的根拠をお尋ね下さればよろしいと思いますが、例えば犯罪という事実がございます。刑法学者はこれを刑法学の見地から研究いたします。併しこれは犯罪を奨励するものであつてはいけない。芸術もそうであります。芸術の取材とするものはいろいろのものがございます。例えば犯罪が一つの芸術の対象になります。それを犯罪を奨励する意図を以てなせば誤りでありましようが……。

一松定吉改進党

○一松定吉君 奨励するというのじやない。私の言うのはこれを劇の取材としたということが、この法学の学生諸君が平和国家を建設するについてどういうように必要な取材ですか。殊に先刻これは警察がでつち上げたのだというような演説をしているときに、こういうものを許しておいて、顛覆の相談をするようなことが芝居の一つに取込まれているかどうかは知らんが、相談をして、而も顛覆したことについて、アリバイをこしらえて、そして我々はそういうことをしなかつたのだという打合せをしておいて法廷に臨んだ事件です。どこに研究の価値があり、どこに取材にしなければならない価値があるかということを申上げるのですが、あなたはもう私の質問に対してすぐお答えができんようですから、これ以上追及しません、答えができますか。できるなら一つして下さい。こういうものは学生に犯罪を……、人を殺すことについては謀議したというようなことが、どういうところにこれが学問の自由の尊重になりますか。これはどういうところで平和国家の建設について役に立ちますか。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 問題を極端な形で考えますと、そういうことはよくないという……。

一松定吉改進党

○一松定吉君 それでいいんだよ。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) よくないという主張をなすということもあり得るわけです。

一松定吉改進党

○一松定吉君 よくない……、ということでいいんです。あなたはそれを初めから言わんからよくない……。よくない、ところが許された、許されたのがよくない、よくないことはわかつております。  そこで私は尾高教授にお伺いします。学生の中にいわゆる共産主義の学生もいるということをあなたは仰せになつたが、共産主義の学生がいるばかりでなく、それらの学生がこの問題になつている警察手帳の内容によると、いろいろの政治活動をしていることになつておりますね。これは警官も間違いないことを認めておりまりすから、この手帳によると政治活動をしておりますね。これは教育基本法の第十条によつて禁止されているのですが……。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 共産主義の学生がおることは少数ではありますけれども先ほどの証言で申上げた通りであります。ところでその政治活動でありますけれども、これはまあ学問の中でも社会科学と広く申します学問の分野というものは、研究とそれから実際行動との間が非常に微妙に結び付いております。そうでないという立場をとる学者もありますけれども、非常にむずかしい問題であります。従つてどこまでが研究の範囲であるか、どこまでが教育基本法に反するところの政治活動になるかという限界点は、これは非常に検討してきめなければならないことであります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そうすると限界点をきめてそれから指導監督をしておりましたか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) しております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 それならばこの手帳によつて見ると、三越のストについて協力をし、バスの値上げに反対をし、或いは行政整理について生徒が反対をするというようなことがたくさん記載されておりますね。そういうことは政治活動でありませんか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) お答えいたします。三越のストにまで出かけて行つたかどうか知りませんけれども、そういうことがあつたといたしましても、大学の学生はすでに成年に達している者も非常に多いのでありまして、そうして学外においてそれが政治活動をすることが国法に触れるかどうかは別問題として、これは教育の名における大学の採入れる問題ではないと考えております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そうすると、大学は教育基本法によつて教育はしないのですか、するのですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) しております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 然らば基本法の第十条に政治活動をしてはならんということはどう解釈しておりますか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 大学の中において、大学の認めぬ団体や何かがそういうことをするということはよくない。

一松定吉改進党

○一松定吉君 大学の門を出てやれば、門の外のところでやることは……。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 一松さんに伺いますけれども、例えば選挙権を持つているところの学生が総選挙のときに、例えば改進党に投票するというのは、あなたのお考えは……。(笑声)

一松定吉改進党

○一松定吉君 なお、そうすると教育基本法に規定されておつても、大学の学生である以上は、基本法の支配を受けないのだと、そういうことなんですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) それは基本法のいう政治活動ではないというふうに考えます。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そうすると基本法にいう政治活動というのは、学校内における政治活動だけですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 原則としてはそうです。但し……。

一松定吉改進党

○一松定吉君 学校の中でいろいろ政治活動をするというのは、どういうことですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 学校の中でいろいろ政治活動という……。

一松定吉改進党

○一松定吉君 いろいろと言いまとどういうことをやる……。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) それはいろいろ宣伝をすることもあるでしようし、或いは集会も政治的な目的に当る場合がありますれば、それはよろしくない。だからしてその生徒を取締りますし、これに対して禁止をすることがございます。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そういうようなあなたがた考えを持つておるからですね、そこで生徒などがいわゆる共産主義を研究することは結構ですが、共産党に加担していろいろな学校外に向つて政治活動をやる。そういうことはやはり今度のこの警察のこの問題に対して、一体警察官の中に入つているものを、それを引つ張り出して詫状を書かして、無理に署名捺印させるということは、これはどうなんですか、学校教育として……

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 先ほど申上げましたように、警察手帳を取上げたというようなことの、あの一連の学生の行動は行過ぎであると考えております。

一松定吉改進党

○一松定吉君 行き過ぎなら結構です。然らば彼らがストをやるために、集団で何百人か列をなして政府のやり方に対して反対行動をやるということは、学生の本分としてどうなんですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) どこですか。

一松定吉改進党

○一松定吉君 今言う通り、行政整理に対して反対するというようなものは、生徒が寄つてたかつて集団になつて、例えばストの行動をやるというようなことで行進をやるというようなことについての態度はいいのですか、惡いのですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) ストというのは授業のストライキですか。

一松定吉改進党

○一松定吉君 ストというと誤解があるが、集団的に行動を起して、行政整理に反対だとか、或いは再軍備に反対だというようなことで団体を組んで市中を行進するというような行動は……

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 例えば再軍備の問題について反対であるということを有志の学生が考えまして、そうして国会に請願をするというようなことは憲法の、又法律の許しておることである。

一松定吉改進党

○一松定吉君 請願ならよいのですが、スト……。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) ストライキですか。

一松定吉改進党

○一松定吉君 学業を休んでそういうことをやる。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) デモンストレーシヨンですか、これは学校は認めておりません。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そういうようなことをやるというようなことは、あなたがたの教育基本法にもとる行動であつて、それはよくないということはお認めになるのでしよう。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) そういうことは禁じてあります。

一松定吉改進党

○一松定吉君 それなら今度の問題について詫状を書かして無理に印を捺さしたということ、あなたのおつしやる通り惡いことである。手帳を奪取してこれを返さなかつた、非常に甚しいのは、この手帳の内容を外部に漏らしたというようなことはどうなんですか。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 手帳を取上げたということは行き過ぎである。

一松定吉改進党

○一松定吉君 然らばその手帳の内容を外部に発表したということは……。

尾高朝雄東京大学教授

○証人(尾高朝雄君) 行過ぎの行為に連関してやはり行過ぎと……。

一松定吉改進党

○一松定吉君 やはり行過ぎ……。(「時間々々」と呼ぶ者あり)そういうようなことはやはりすなおに答えてすなおに僕もお尋ねするようにしないと、それはあなたがたの一言一句が信用がおけないことになる。お互いにすなおに答えてすなおに改めるようにしないと、そういうことから今度自分がいじめられて、学長官選どか、いや法学部の廃止だというような問題が起る。私は学長官選とか、法学部の廃止ということは絶対反対である。どこまでもやはり学長は矢内原さんのおつしやるように、いわゆるあなたがたの部内における選挙、それから法学部というものはますます立派な法学を研究して、国家のために役立つようにするということがよいのであつて、これを廃止したり、或いは官選にしたりするようなことは反対です。それで私はもう余り妙なことは言わないが、(笑声)警察署長に、さつき伊藤君の質問に対して逮捕状を執行するに当つて見せろというので見せたというようなことはいけない。逮捕状など必ずしも見せんでもいい。それは刑事訴訟法にちやんと規定してある。急速を要する場合においては逮捕に来たということを告げればいいと刑訴第七十二条にある。それをやはり示さなければ惡いように伊藤君から追及されてやるものだから答弁があいまいになる。そういうことをもつと研究してから答えなければいかんよ。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 一松委員、時間が来ました。

一松定吉改進党

○一松定吉君 そこで私は将来これが禍根を残すことであれば、こういう政令というような、こういう通牒というようものはお互いが相談して、そうして適法にこれを疑問の起らないように法文化するということについてあなたがたが御尽力なさり、我々もこれに協力する。そうして双方とももつとよくこの法規を守つて、学問の自由を尊重して優秀な人材を作つて、そうして立派に我が国の再建に努力せられたいということを希望して私の質問を終ります。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 高田君に発言を許しますが、高田君の持時間二十四分の中に荒木君が入ることになつておりますから御了承を願います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 時間が短くありますから御答弁を、私も簡單にいたしますから、簡單に要点だけお願いいたします。  先ず本富士署の野口証人に御質問申上げます。先ほど岩間委員の御発言で警察が立入つたことによつてこの問題が起つたということ、これはお認めになられたと思うのでありますが、そこで今度の学生が、福井という学生の負傷の原因も又ここにあるのではないだろうかと、又あると私は考えております。この負傷した福井君に対しまして何にも警察ではお調べにもならない。その後何にもお手当もされておらないようでありますが、これは警官のほうはシヤツのボダンが三つ切れたとか、オーバーのボタンが切れたとか、そういう下らないことまで一々詳細取調べて報告がされておるのに、なぜこういう一方的なやり方に対して、あなたは署長として基本的人権を守る、法の守り手としてなぜこういう点について深い遺憾の意を表されないのでしようか。先ほどからあなたは言を左右にして署員が気がつかなかつた、歯はひとりでに噛んだから欠けたというような誠に納得の行かない御答弁をされておりますが、あなたはこの問題はこれで妥当であると考えられるのかどうか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 先ほどお答えいたしましたように、よくその留置するときの状況、それからそれにタツチいたしました係りの、監視係り等の詳細を調べましてそうして御報告申上げます。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 私のお伺いしておるのは、現在なまの歯が欠けたということは、非常に苦痛のあるものだということはあなたも御存じであると思う。出血がひどい、非常に痛む、そういう苦痛のある一体福井さんに対して、警察はそれをかまわないで放つておいていいものかどうか。そういう場合に、あなたが基本的人権の憲法の示すその法の守りとしておられるならば、なぜそれに対して応急の処置をなさらなかつたか、それでいいと思うのか、こういう御質問でありまして、取調べのことを伺つているのではない。そのことを放つておくことがいいか惡いか、妥当かどうかという問題です。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 苦痛を訴えましてそれを申出るならば、やはりこれに適当な処置を加えなくちやならん。又それがわからなかつた場合に、わからない……、或いは本人がそういう事実がありますか……、先ほど申上げましたように、その必要がなければしなかつた、必要がなければしなかつたということで私はいいと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 そうすると、必要がないからしなかつた、即ちこの措置はあなたとしては妥当であるとお考えになつておられるのかどうか、その一点だけ。妥当かどうか、要求がなければ、血が流れていようが、歯が欠けていようが、それで放つておいて妥当であるとあなたは考えておられるようですが、それでいいかどうかという問題です。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや警察官がその状態が基本的人権に関係するようなものであれば、これは適当な措置を加えることが適当であると思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 歯が欠けたということ、それからみみずばれになつたということは、あなた警官として基本的人権を蹂躙していることである。苦痛を訴えている者をそのままに放置しておくことが基本的人権を蹂躙していることである、こういうお考えの上に然らば立つておられたのかおられないの、か、どうぞお答え下さい。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 先ほどと同じでありまして、苦痛を訴えている、又私どものほうから係官が見まして適当な応急処置をしなくぢやならんということをしなかつたならば、私のほうが惡いと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 応急処置はどういうふうにされましたか。負傷に対する応急処置はどういうふうに具体的になさいましたか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 応急処置をしたということは私は聞いておりません。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 そうすると放つておいたことが、警察側は妥当であるというふうに考えておられると思うのですが、誠にこれはとんでもない人権躁欄をあなた方はおやりになつていると断定せざるを得ない。  次に、こういう警察官側の負傷とか或いは損害というようなことについては、誠に懇切丁寧な調査をしておられるようだ。そうして一方にはどんなことがあつてもかまわん、法律できめられている基本的人権を蹂躙しておつても、なお且つそれが妥当であるという考えようです。少し言葉が極端かも知れませんけれども、そういう岡つ引根情ですね。あなたは当局は学生に対して抑えがきかないということを先ほどから発言せられている。一体抑えがきかないというのは、どういう意味なんです。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それは先ほど申上げました手帳を奪取されました直後でございますね、そのとき斯波厚生部長さんがお見え下さつて、そうして手帳は返せん。その後深更に至るまで交渉して、頂いたのでありますけれども、それにもその関係の学生は応じなかつた。応じない、それをやはり学校当局の責任ある人はそれを出させるだけのことが私ども欲しかつたのであります。それがなされない、それを言うてもきかないということがやはり抑えがきかんという意味になると思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 それは大変な私は教育に対する冒涜的な考えだと思います。結果においては警察手帳が返つている。学生の自主的な行動によつて警察手帳は返つて来ている。学長の抑えは完全にきいている。そこに警察の指導性というか、学生に対する指導性というものがさつぱり考えられておらないということを非常に遺憾に思います。  時間がありませんからその次に進みます。そこで私先ほど警察手帳の問題に触れましたが、この中にあなたが先ほどおつしやつたように、学園の中において不穏当と認められるようなビラが非常に撒布されておつた。そうしてそれはたくさんあなたの手許に拾つてあるようであります。そういうことはですね、さつぱり警察手帳の内容には書かれておらないのでありますが、そうすると今警察手帳に書かれてあるようなことよりも、あなたが重大であるというこのビラの撒布事件ですね、そういうものに対しては、これは重大でないと考えておるのかどうか。つまり警察手帳の内容から判断して私はこういう質問をしておるのです。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は先ほど申上げましたが、警察手帳の内容はまだ見るいとまが、仔細に見るいとまがないのでありますが、それに書かれておるから、いないからということでなく、やはりこのビラが中に撒布されておるということは非常に重大に思つておりますが、重大なことを手帳に書いてないというようなことにつきましては、私はちよつとその手帳に書いた巡査に聞かなければわかりませんけれども……。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 警備の責任を果すために警官の職務の内容はあると思うのです。そうだとしたらあなたがそんなに重大だ、重大だと目の色を変えて集めておるようなものを、そういうことを一言一句も警察手帳には書かれておらない。こういうことはほかの手帳に書くのじやないかと思いますけれども、ちよつとこれはおかしいと思う。非常に一方的な、思想的な学内のこの自治に介入するようなことのみが記されてある。本来の警察の使命を果すというあなたが言われることがさつぱり書いてない。誠にこれはおかしな話でありますが、これに対してあなたはどういう考え方を持つておられますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は先ほどお答えしました通り、警戒、警備の何らかの必要で書いたものであろうと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 続いてお尋ねいたしますが、いろいろと不穏なビラを集めておられるようでありますが、あなたは、吉田首相は再軍備しないとはつきり本会議で言つておられます。即ちこれに対しまして再軍備促進運動なり、いわゆる政府の考え方と違う運動も行われておる。こういうものに対してはどういつたような調査をされ、どういつたような資料を集めるおつもりでありますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そういうものを集めるというような考えは私はありません。(「はつきりしたよ」と呼ぶ者あり)

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 随分これはおかしい話です。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) ちよつと待つて下さい。まだ話を続けます。(笑声)私はどちらも思想は持つていないのですよ。どちらも思想は持つていない……、いわゆる過激なものであれば、過激なものならば、言葉で言えば、右翼、左翼とこう言つておりますが、右翼というものがどういうものか、左翼というものがどういう意味かというようなそういう私は観念は持たないのですよ。ただ不穏なものは集めるのですよ。(「憲法を破壊するものだ」と呼ぶ者あり)

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 憲法がはつきりあらゆる武力の放棄を謳つてあるのです。再軍備なんかしてはならないということが書いてある。そういう憲法の精神を守るものこそ、本当のあなたが法の守り手としての重役を果しておるのじやないかと思う。然らば再軍備促進運動なんというものは明らかに現在の憲法に違反しておる。なぜこういうものを取締らないのか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は先ほど申上げたと同じでありまして……。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 これこそ不穏じやないですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 不穏なものは取締ります。(笑声)

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 そうすると再軍備促進運動というのは不穏でないとあなたはお考えになるのですか。憲法違反ではないとお考えになるのか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は不穏のものを取締ります。(「馬鹿の一つ覚えだ」と呼ぶ者あり、笑声)

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 どうもあなたは余り頭がいいのか惡いのかわからない。(笑声)余りごまかすようなことを言わないで下さい。もうあと時間がありませんから……。  次にお尋ねいたしたいことは、田中証人もあなたも学園の自由はやはり尊重しなければならないということを先ほどから言つでおられるのであります。併しこの言葉の中にいささか矛盾を私は発見するわけであります。その矛盾というのは、先頃新聞紙上で拝見いたしますと、新聞紙上の言葉の中に田中さんの言葉が出ておるのですが、こういう言葉が出ておりますが、大学側の非常識な解釈によつて云々というふうに大学側の抗議、それからその他の問題に対して特に抗議の問題に対してでありますけれども、大学側の非常識だというその非常識だという解釈はどの点が非常識なのか。つまり抗議の内容は、大学側の抗議の内容は、次官通牒の尊重をしてもらいたいという抗議の内容、稲田局長も学校に断りなく入つた点は、やはり行過ぎであるというふうに認めておるのですが、こういう抗議をあなたは非常識と解釈されているかどうか。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答えいたします。私はその当時学校側は一歩たりとも学園の責任者の了解なくして入つてはならんというふうにお聞きしておるのであります。私はこの解釈は少し妥当を欠くんじやないかと思います。なんとなれば、この学園の自由と先ほどつからしばしば皆さんの口からいろいろ御意見の発表もございましたが、私自身は学園の自由は尊重せなければならんということを申上げておるのであります。但し学園の自由というものは、これは私は絶対的のものではないと思うのであります。なんとなれば、学園の中における警備上の責任の最後の責任は、私は依然として警察にありと考えております。従つてその警察上、警備上必要なる場合におきましては、時によつては学園の責任者の了解なくしても入らつなくては、治安維持が保てんのであります。かような意味で申上げたのであります。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 そこで最後にお伺いしておきたいことは、学園内で起つたその不穏な問題に対しては、警察が優先的にこれを取締るというお話でありますが、然らばその判定はどこで誰がどういう責任においてやるのか、而もその権限は一体学園の自治よりも優先するものかどうか、その点……。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答えします。これはその学園の地を所轄する署長が先ず認定するだろうと思います。その署長の認定がわからざる場合には、責任者である私が認定するものと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 非常にそれは先ほどの文部通達と矛盾をしておりますから、この点は又あとでお伺いします。  最後に学生さんの代表のかたにお願いしますが、大学側も又警察側も大多数善良な学生であるということを言つておられます。ここにおいでのかたはすべて私はそのように了承しておりますが、この問題の糾明の過程において、あなたがたは何を見、何を考え、そうして今後どういうふうに処置して行こうというようにお考えになつておるか、率直に吉川さんで結構ですからお答え下さい。

吉川勇一東京大学学生自治会中央委員会議長

○証人(吉川勇一君) 何を見ということを全部お話すると非常に長くなると思いますが、私の考えておることは、先ほどの陳述において大体述べたつもりです。今後の処置につきましてはこれは私の考えと全く同様でありますけれども、中央常任委員会がすでに決議しておるわけです。それは今逮捕されている学生の即時無罪釈放、それからもう一名逮捕状が出ておりますが、その逮捕状の撤回、それから今まで警察官が不法にも学内に侵入したことに対する責任の追及、それから今後絶対に不法に侵入しないという保証を取ること、そういうようなことを具体的な今後の事件の措置として考えております。そのほかまだいろいろありますけれども、略します。

荒木正三郎日本社会党(第四控室・左)

○荒木正三郎君 今度の東大の問題は、先ほどからありましたように、学問の自由、或いは学園の自治という問題に非常に深い関係がある問題であると思います。その意味において私も重大な関心を持つておるものでありますが、先ほど学校当局のほうから御説明がありましたが、学内における秩序の維持、これは漸次改善をされて、非常に良好な状態に来ておる、こういうお話がございました。私もこの学校側の見解を十分理解することができますし、さようになつて来ておると思うのです。これに対しまして、警視総監はどういうふうな認識を持つておられるか、それをお伺いしたいと思います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答えいたします。総長は、又尾高先生も、最近においては非常に学園の中も平静になり、治まつておるという御見解でありまするが、警察側の見方からいたしますると、必ずしもそうでありません。その事実を申上げますると、先ほど野口署長から説明がありましたごとくに、いろいろ政令三百二十五号違反の疑いがあるようなビラがしばしば撒かれ、それから又、先ほど御意見があつたように、たとえポポ劇は、劇そのものはどうか知りませんが、それに関連いたしまして、学校当局の御存じのない、いわゆる無届の政治的な集会、それから又学校当局の御存じのない集会の中におきまして、いろいろ選挙対策等が行われた、そのほかいろいろデモの計画が行われた、又同時に、先般教育大学から出発しましたあの無届の集団デモの中には、東大の学生が相当数入つておつたことを我々は確認いたしておるのであります。かような事実から見ますると、或いは学校当局におきましては、非常に平静になつておるというような言葉でありまするが、私どもとしましては、必ずしも学校当局の御意見をそのまま受入れることのできないような状態であります。殊に細胞はすでに解散届をされておるというにかかわりませず、いろいろこのビラの中には、東大再建細胞、東大教養学部細胞といつたようなビラが撒かれる、これは果して細胞のビラであるかどうかは、これは十分に確認しておりませんが、とにかくさようなビラが撒かれるということには、何かそこにやはりそうした動きがあるじやないか、かように考えまして、私どもは必ずしも大学当局の御見解のように平静になつたとは言えない。殊にかような状況からすると、相当私はいろいろな問題がそこに包蔵されておるじやないか、かように一応考えております。

荒木正三郎日本社会党(第四控室・左)

○荒木正三郎君 この問題は非常に重要な問題になると思うのですが、やはりそれを裏付ける証拠というものが必要になつて来ると思うのですが、併し、先ほど学校のほうから御説明になつたことによつても明らかなように、矢内原総長が就任以来無届集会というものは行われておらない、こういうこともありました。これは戦争直後の状態から比べて、私は非常に平穏になつて学校の秩序が守られて来ておるという証拠として考えるわけなのです。それから又今挙げられたビラの問題でございますが、それは学問の一般人の通行というふうなこともありますし、このビラが学内に落ちておつたというふうなことから学校の秩序がうまく行つていない、こう判断するのは、私は非常に早計であると、こういうふうに思うのです。私は非常に時間が短いので、御質問したいことが多々あるわけなんですが、その時間がありませんので、これはそういう認識、これは私は非常に重要なことになると思うのです。少くとも私どもは、私は非常によくなつて来ておると、こう考えておるのです。従つてもつと分なる証拠が出されない限り、これは納得することが私はできないわけなのです。それから私はまあそういう点から今日学内に警官を入り込ませていろいろ身許調査をしたり、その他思想調査をしたりするような、そういう条件はないと思うのです。これが国家の治安を乱し、或いは治安に影融するような事態は、先ほどの証言から鑑みても全然そういうことは考えられない。で、十分学内の秩序というのは学校当局の努力によつて守られておる、むしろ外部から警官が入り込むことによつて、むしろ乱されているのだ。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)こういうふうな強い印象を受けておるわけです。今度の問題でも先ほどお話になつたように、警官の立入ということがなければこういう問題は起つておらない。一体に私どもは学問の自由を守る、そうして学園の自治を守つて行くということは、非常に重要な問題であると考えます。過去において、治安維持という名において学園の自治、延いては学問の自由が圧迫された私どもは経験を持つているわけなんです。そういうことから非常な危惧を抱いております。従つて私はいろいろ具体的に質問をしたいことがあるのですが、これは次回に譲らざるを得ない、かように思いますのて、一応ここで質問を打切ります。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 遅くなりまして大変恐縮なんでありますが、成るべく重複を避けて明らかにして頂きたいと思つております。なお質疑に入ります前に、二つ委員長を通じてお願いをしたい。先ほど来、警察署長の野口証人のほうから、ビラに関するいろいろなお話がございました。お手許にあるようでございますが、それをちよつと拝見したのでありますけれども、先ほど来、労働者はドスをといでおる、こういうビラが政令三百二十五号違反の疑いがあるものとして重大だというお話がありましたが、ちよつと拝見したところではそのビラには署名がございません。それからその文句の中に、学生に呼びかけて、君たちは、と呼びかけておるようであります。そういたしますと、これは言われるような学生細胞或いは再建細胞という名前も出ましたけれども、そういうものであるかどうかということは、これは断定しがたいと思います。そこでこのビラに関します資料を、警察の報告を加えて云々ということでありますが、御提出を願いたいと思います。その点を一つ、第一にお願いしておきます。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 田中総監よろしゆうございますか、資料の御提出……。それじや資料の提出を願いまして、各委員に配付いたします。

羽仁五郎第一クラブ

○羽仁五郎君 さつき私が野口証人に伺つた、今のビラをどこで取得されたかということについての報告書があるということをお認めになりましたが、その報告書を付けてお出しを願いたいのです。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 要望いたしましたのはビラそのものにそういう報告を付けてということにお願いいたします。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 承知いたしました。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 それからもう一つ、私ども手許に「警察手帳の全貌」というものを頂いておりますが、これを警察のほうで、と申しますのは野口証人なり或いは田中証人お認めになりますのかどうか、その点先ずお尋ねしたいと思います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 警察手帳の内容は、これは外部に絶対に公開すべきものではないのであります。それを不法にも非合法的な手段によつて、これを何らの警察に了解なくして勝手に公表したものでありまして、私どもはそれに対して責任を負うということは非常にむずかしいというように非常に感じておるわけであります。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 双方、これは警察のほうでは自分のほうで入手せられたビラその他を基礎にして政令三百二十五号違反の疑いがあり、或いは警備上、或いは別の言葉も使われましたが、調査をする必要がある云々と、こういうことを言われましたが、その議論の基礎にせられましたこれは一つの例でありますけれども、ビラ一つとつて見ても論拠が薄弱であるという気がいたすのであります。それからもう一つ警察手帳の中身について、これは不法にその中身を見たんだから云々ということを言われますけれども、先ほど来一松委員の発言その他を聞いておりましても、こういう活動が実際にあるということを前提にして御質問になつておるんです。そこでこの手帳の内容はとにかくでありますが、ここに書かれてありますような活動が警察でなされたかどうか、これが問題の大前提だと思います。今までの議論の中にお二人、田中、野口両証人においても認められて私は議論がなされたと思います。事実そのものは……。併しそれについてそれではそういう行動を確認せられますかと言うと、今のような形式的に不法に入手したものであるから云々と、こういうことを言われます。それではここでそれぞれ質問いたしますけれども、これは論拠がないと思うのであります。従いまして先ず先ほど来いろいろ問題になりますけれども、そういう活動があるかどうかということを、これはこの手帳の内容はともかくでありますけれども、そういう活動があるかどうかということについては御確認を頂きたいと思うのであります。若しおわかりにくければ、その手帳の内容に書いてありますような、東大の構内に入つて或いは教授、学生等の動静、これは言葉は何と使いましようとも、思想的な動向或いは活動について調査をせられておつた、或いは捜査と申しますか、或いは警備上必要な事項の調査云々ということでありますが、そういうことがなされたかという質問であります。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 学校構内におきまするいわゆる学生のフラク活動というようなものにつきましては、これはそれが若し非常に、何と申しますか、非合法的な方法で行われ、又それが具体的に外部にそのまま具現されるという場合におきましては、これは警察といたしましても警備上の観点から当然捨てておく問題ではなかろうと考えております。従いましてそうした面につきましては、私はその手帳の内容について言つておるのではないのでありまするが、そうしたことについては或いは手帳の内容にその点を責務上或いは警備上必要から直接、間接の事項として記入したことがあつたかも存じません。併しながらそのほかのことにつきましては私は今ここで具体的にその事実が果してあつたかどうかということもちよつとお答えすることは、非常に確認することもむずかしいんじやないかと、かように考えております。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 それじや野口証人にその点は如何でございましようか。書いてあるなしということはともかくといたしまして、あなたの部下でありますこの警察官吏について、東大の中に入つて中に書かれたような活動があつたと認められますかどうか、その点はつきりと一つ御証言を頂きたいと思います。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) そこに書いてあるのはまだよく見ませんけれども、その書いてあることを実際の行動に移したかどうかは私もまだわかりませんが、そういうことは恐らくなかつたろうと私は思います。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 先ほど来これはどなたかほかの委員からも御質問がございましたけれども、これは双方のそういう具体的な行動の一応の認定がなければ議論にこれは入り得ないわけです。そういう意味でこの点の確認はあとから御覧になつてもいいし、或いはお調べになつてもかまいませんが、是非頂きたいと思います。それからなお私どもがちよつと拝見したところでも検印がしてございます。藤原という人の、これは恐らく部長であるか知りませんけれども検印してある。或いは行動について、警察手帳そのものが定期的な検閲を受けることをお認めになつたのでありますから、そういう警察の中で署長が直接御覧にならなくても、或いは部長なり、或いはその上のかたなりが見られた行動は実際にあつただろうということは、これは当然誰しも考え得ることなんですが、それをしも知らん、或いはそういう事実はなかつたろうという工合に言われるのですか。宣誓をした上での御証言としてはつきりして頂きたいと思います。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) お答え申上げます。藤原というのはこれは主任でございまして、担当の主任でございますが、認印が捺してあればこれを認めた、或いはその書いてあることについてその事情を具体的に受けたかということは考えられますけれども、それが実際に判を捺してあつても、それの詳細を知つているかどうかということは、私が判こを捺していないのでありますから確認はできません。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 宣誓に、良心に従つて何事もかくさず何事も附加しないという宣誓の下にせられる証言に、主任である藤原氏が検印を捺された、それから警察手帳の一番最初の交付のときと、それから最後の交換のときにも署長自身で判を捺すというふうに警察手帳に書いてあるものが、書いてあることは書いてあつたろうけれども、そう  いうことがあつたかなかつたかわからん、こういうような御証言は私は宣誓に対しても或いはこの委員会に対しても、国会に対しても私は甚だ侮辱であると感じますので、判を捺されました手帳の中に書いてあります事項があつたかなかつたかという点について署長のはつきりした確言を得たいと思います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 私からお答えいたしましてよろしうございますか。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 今までの御証言もございますから、引続き一つ願いたいと思います。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は何回も申上げますけれども、先ほど申上げましたように、非常に侮辱したというお叱りでございますが、メモ式に書いたものを、そういうふうにやつたか、やつたんであろうということは、私としても言えないのであります。その点は先ほどと同じであります。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 時間がございませんから、甚だどうも私そういう証言で満足しない、宣誓なり或いはこの委員会なり国会の権威が保たれておると考えんのであります。議論を続けても仕方がございませんから、あとの点をお尋ねして参りたいと思うのですが、先ほど来のずつと質疑或いは証言を聞いておりまして、常識として、二月二十日の教場の中に入つて劇を見られたということは、従来の運営その他から考えまして、これは警察署長が直接御命令になつたかどうかということはともかくといたしまして、私に、私事においでになつたのではなくて、一応警察の仕事としてお入りになつたと認めざるを得ないのでありますが、その点について一つ重ねて伺いたいと思います。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 先ほどお答え申上げましたと同様でありまして、三人の警察官はやはり自由に入れるものと、又そういう周囲の状況を確認して切符を買つて入りましたので、それでこれは單に娯楽という意味でありましても、時間外でありましても、警察官にはやはり公務員としての国家に奉仕する義務がありまするから、それから更に警察が活動する現実の事実で、取調べるべきところのものが時間外であつても、やはりこれは警察活動に移らなければならんということはあると……。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 そうしますと、公務員として、或いは時間外であるということは今おつしやいましたけれども、警察活動であるという点はお認めになつたわけですね。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 警察活動にまだ至らないうちに暴行を受けたという形になつているのです。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 いや、入られたことを私はお聞きしておるわけです。それを警察活動というふうにお認めになつたのではありませんか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや、それはまだ警察活動ではありません。入つたことは自由ないわゆる観劇、一般の観覧と同じ気持で入つたのであります。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 それは状況報告をやつておつても、途中で警察に電話を掛けておつても、それは警察活動でないというのですか。その辺は先ほど来ほかの委員からもあれいたしましたから、時間が勿体ないから、白を黒に言われるのだ、良心に従つて述べておられるのではないと考えますから、その辺は通します、時間がないから……。  それからその当日でありますが、これはお二人さんとも、田中さんも或いは野口さんも警備上そういうことがあるようにお話でありますが、そういう東大の中に入つて活動をせられます行動の法的な根拠、これを伺いたいと思うのでありますけれども、それは先ほどの野口証人から言われるようなパトロールとして入るという問題ではございません。問題は、端的に言いますならば、特高的な活動をせられるのではないかと考えられる本富士署の警察官吏の動向について……。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) これはその根拠につきましては、勿論警察官として職務を執行する場合における法規でありまして、その根拠に基いて警察官は常に治安維持のために必要と認むるならば防犯的措置も講じまするし、又その犯罪が行われた場合におきましては直ちにこれは犯人を逮捕するという常に責任を持つておるのであります。従いまして、現在東大構内におきまして、かようにいろいろなビラが撒かれております、。このビラの中には或いは政令三百二十五号違反の疑いのあるビラ等も中には撒かれるのじやないか、かように考えております。若しかような場合におきましては、そのビラを撒いておつたその者を若し現場において見つけた場合におきましては、それを現行犯として逮捕する責任を持つておるのあでります。従いまして、警察官として当然学校の構内とはいえ一般に誰もが出入をする場所におきまして、かような犯行が行われる虞れがあるようなことを考えまして、構内において視察をするというのは私は当然警察官として必要な職務ではないかとかように考えております。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 今お尋ねいたしましたのは、具体的な法的根拠をお願いをしたいのであります。その辺の問題につきましてお尋ねをいたしておると時間をとりますので、残念ですが私に与えられた時間が僅かでありますので、あと一、二点お尋ねしたい。これは先ほど隣りの刑仁委員からも御尋ねがありましたが、私ども伺つておつて、非常に警察側も感情的であるように考えるのであります、警察手帳の問題から……。そして例えば署長の行動については全面的にこれを肯定した上で御証言をしておられるのでありますが、併し例えば先ほど来承わつておりましても、私ども素人が聞いても、先ほどからの「労働者はドスをとぎはじめた」というビラ一つをとつて見ても署長の認定に手落ちがある。例えば署名がないとか、或いはそれがはつきり学生がやつた行動であるかどうかということがはつきりしない、或いは、挙げるときりがありませんけれども、そういう点について率直に警視庁の総監として妥当と考えられますのか、或いは警察署長の選任について十分であると考えておられますのか、その点重ねて伺いたいと思います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 先ほど羽仁委員にお答えしたように私としましては最良と信じてやつたのであります。  なお先ほどのお答えの中に落しましたのでついでに答えさして頂きます。警察官の職務執行の法的根拠でありますが、それは場合々々によつていろいろあると思います。警察官等職務執行法の規定に基いてやる場合もあります。それから政令三百二十五号の規定、或いは又一般の刑法、その他暴力行為等処罰令等いろいろの根拠に基いて、一般的にこの規定に津反した状態が発生した場合についてはこれを直ちに矯正するという一般的な責任を持つております。かような趣旨から警察官としては職務を執行する。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 時間がございませんので急ぐのですが、問題は学問の自由についてはこれは警察側も認めておられる、その結局限界というところで双方の言い分が比較的問題が起つて来ると思うのですが、先ほど来田中警視総監は学問研究の自由といえども絶対のものではない、一歩も入つてはいけないというものではない。断らなくても入つていいことがあると、こういうお話でございましたが、その辺文部次官通牒の精神の解釈に食い違いがあるように思います。矢内原学長にその点をお答えを頂戴したいと思います。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 大学といえども国法の下に、国法の範囲内において存在し、管理せられることは当然であります。それ故に大学自身が必要を感じて警察権の出動をお願いする場合も起り得ます。又場合によつては緊急事態の発生の際に、警察みずからが大学内に自発的にお入りになることもあり得ることを認めます。ただその緊急事態の認定が、警察の側の一方的認定でないことを希望します。何となれば、例えばこの問題の起つたその当夜の集会が何か緊急事態である、或いは緊急事態の防止のためであるということを警察がお考えになつて、大学に断りなしにお入りになるとすれば、そういうことは無限に拡張せられて参りまして、大学の自治の根底をゆるがすものであります。それでありますから、一般的に申しまして、大学の自由という建前から、警察権の発動は大学とよく連絡をおとりになつて、然る上においでを願いたい、こう考えております。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 今の御発言に関連してでありますが、例えば当日の、入られる当日なりその他ですが、いきなり入られることについて連絡してもらうほうがいいと、こういう御意見でありますが、個々の問題についてもそうであります。それから一応今度の問題について警察側として暴力行為等の取締法に違反と、こういうことで起訴或いは処分せられたと思うのでありますが、結局問題は、これは今全国的に問題になつておるところでありますが、例えば労働問題について、ゼネストならゼネストを禁止する、ところが禁止してもその後の問題は労働問題として残り、労働関係調整という問題が残つて来るわけです。学生をそういう強制措置を講じ、或いは法律的な手続をとつて見ても、後に結局教育の問題或いは学問の問題として帰つて来るわけです。そうしますと、これは個々の学内に立入る場合でもそうですが、後のことを考えますというと、これは学問なり、或いは学生の教育というものは何といつてもそれは学園だと思います。或いは教授、先生方です。そうすると、最初に遡つて、この文部次官通牒というものは一方的に解釈し得るとしてあなたたちがこれを自由にせられる。その結果はどうなるかということに考え至りますならば、警察手帳の問題で感情的にならないで、もつと冷静にこの文部次官の通牒の一線をはつきりと、それから学園との関係を円滑に、言い換えるならば協議の上で断らなくても入つていいと、こういうことで行くのでなくて、協議をしてやつて行く、こういうことで行かれる御意思はないか。先ほど来文部次官通牒の具体化ということでありましたが、あなたの先ほど来の御解釈を聞いておりますというと、自分の考えで断らなくても入つてもいい、こういう考え方からする通牒の具体化、言い換えれば学園の自由、学問の自由というものが蹂躪される虞れを私どもは心配をするわけです。その点について最後に一点伺いたい。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 警察は決してその警察手帳を奪われたとか、或いはその警察官が暴行されたからと言いまして、これによつて直ちに感情的にいろいろな学校に対して取締をするとかそういうようなことは毛頭私は考えておりません。ただかかることによつて将来治安維持の上において非常に面白くないことが起つたり、それがために由々しき問題に発展するような虞れがあつては、これは国家の今後の運営の上に非常に私は恐るべきことになるのじやないか、かような点からやつているわけであります。従いまして今の警備上のいろいろな取締、その他査察と申しますか、そういう場合においても事ごとに全部学校の御了解なくしては校内に入れぬということでは私どもといたしましては実際治安維持の責任を完うすることはできないのであります。勿論現在の次官通達の線に沿いましては、今までそれは学校の了解を得てやつております。この次官通達の学校長に措置を任してそうして若し学校内において集会が非常に混乱に陥つたり、或いは総長のところへ学生が下法に侵入して総長を罐詰にしてしまつた、これは一度早大に起つたわけであります。そういうときには学校側から直ちに警察に出動の要請がありまして、私どもからは気持よく部隊出動いたしまして(笑声)これを直ちに鎮圧いたしております。(「それでよろしい」と呼ぶ者あり)かようなところは少くとも学校の要請があつたというときには多数の警察官が行つて、或る程度の集団的な暴行を解決するために行くんだ、かように解釈しておるわけであります。又個々の活動の場合におきましても、例えばパトロールの活動におきましてもこれは学校当局と十分に協議の上で現在円満に行つておるわけであります。ただ問題は極く一部分の、私は先ほど申しましたごとくに、学生の全部は、殆んど全部は善良なものであります。その中に極く一部分のフラク活動と申しますか、非常にそうしたフラク活動のような疑いのある行動をする、それが直ちに大きな又治安上にかかわつて来る、かような点を必要によつて警備をするということであります。勿論これにつきましては、場合によつては学校当局の了解も得る場合もありましようし、又得られない場合もあると思います。事柄によつて得られない場合もある。この点だけは警察のこの職責を学校当局も御了解を願いたいと思います。と同時に、私どもは学問の自由をこれによつて侵害するとか、学園の自由を侵害するということは毛頭考えておりません。又警察としては当然職務上その必要は毛頭ないと考えております。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 時間が参りましたから、相馬君の発言を許します。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 ちよつと一点だけ。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 一分間。笑声

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 今の御証言で矛盾があるので重ねてお尋ねするのですが、過去のことについて特高警察的なことはなかつたと、こういう御証言と、それから断らなくとも入るか入らんか、そこのところは重大な点なんですが、今のお話では協議をするという点を強調せられたわけです。そこで相談をした上で云々ということはあるかも知れませんが、原則的に協議をする、そうして協議した後に考えるというか、その辺の点について重ねてもう一度頂きたいのですが、私どもは次官通牒その他から考えると、それから又私の、精神と申しましたけれども、協議をすると、こういう原則を確立願うことは私は今までの精神だと思うのですが、その点についてもう一遍重ねて……。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) 同じようなことを申上げて甚だ恐縮でありまするが、我々としましては成るべく学校当局と協議の上、又学校の御協力を待たなければならない場合も相当あると思います。従つて警備上の職責を果すためには勿論学校御当局の御協力も待ち、御了解も得、又御協議も申上げてやる場合があると思うのであります。ただこうした突発的に行われるようなビラの撒布等においては、一々その場合において学校の御了解を得てやつた場合においては目的を達成することのできん場合もある。そういうときには止むを得ない最小の必要ある場合においては、その程度の警備上の職責を果すためには学校の了解なくして警察権を行使する。そのあとで学校のほうへこういうこともあつたからということを御報告するようにせなければ実際問題として時期が間に合わん場合もある。そういう点は一つ学校側も單に警察権の行使が学園の自由を侵害するのだ、或いは学問の自由を侵害するのだというようなことでなくして、本当に我々も学校内の治安のためには学校当局と御協力の上でやりたい、こういう気持を持つておりまするから、かような真に止むを得ざるような場合においては一つ御了承を得たいと、かように考えておるわけです。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 納得いたしませんが、時間がございませんから次に……。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 相馬君に発言を許します。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 最終的には基本的人権の擁護ということが、本委員会が時間的に見ますと基本的人権を無視したようなことになつて証人に非常に恐縮に存じますが、二、三の点を伺いたいと思います。  岩間委員の言われた言葉に、現象は問題じやない、原因が問題なのだ、こういうことでございまして、私も同感です。従いましてこの点に関しましては後に野口証人に一点伺うだけで、あとは私はこういうふうに世論に大きくうつつておりまするこの段階では止むを得ませんから、承知の上で現象の面で伺つておきたいと存じます。  第一に、先ず矢内原学長にお尋ねしたいのですが、先般本院の地方行政委員会で文部大臣以下文部省側、それから田中警視総監並びに特審局長、国警長官等をお呼びして委員会でこの問題が出ましたときに私ども非常に脇に落ちなかつたことは、警察側の証言は精細で、而も又はつきりしておつて、そうして我々の質問に対して警視総監、国警長官も堂々として答えられておるのです。それに反しまして文部大臣の答弁は誠によたよたとして肝心なところに参りますると調査中である、こういうことで私ども非常に遺憾としたのです。従いまして私はその委員会における最終的な考え方と本委員会における最終的な考え方では丸切り違つてしまつた。そこで学長にお尋ねしますが、本問題が起きてから文部省は係官を派してこれを積極的に調査された事実ありやなしや。学校は本問題に関して先ほど学長が病気見舞がてら云々という話は聞きましたが、文書その他を以て文部省に積極的に報告したる事実ありやなしや、この二点を先ず伺います。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 事件の発生しました翌日、逮捕のありました日と記憶いたしますが、文部省から係官が来られまして状況の調査があり、学校側から説明をいたしました。そしてその翌日、逮捕のありました翌日ここにおられまする尾高教授と脇村経済学部長と斯波厚生部長三人が私の代理として文部省に参りまして事件の報告をいたしました。それから後に私が文相私邸を訪問いたしまして事件の報告をいたしました。併し文書による報告書は大学におきましても関係するところが広汎でありますので調査を鋭意進めております。近日中に調査書を完成いたしまして文部大臣に提出することに相成つております。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 大学の自治と学問の自由は飽くまで守られなくちやならないと私は思つております。そしてこの警察手帳の内容というものを我々も見せられて非常に驚きの念を新たにし、又憂慮の念を加えております。それは別といたしまして私は大学側としてこの警察手帳を発表されたということ、具体的事実に対して学長としては如何なる見解を持たれるか。即ちこのことは先ほど来吉川君の証言で写真をとらなければならなかつた必然的理由というものは私も了解しております。ただこれを発表する場合におきまして総長としては大学の自治を守るためにこの事件そのものは悲しい、こういう警察手帳の内容がわかつたということ、この資料はこれを利用して大学の自治を守るこれは絶好のチヤンスであるからして、手続その他の不備は止むを得ないという御見解に立つておるか、それともこのこと自身はやはり総長としては非常に問題であると、こういう御見解であるかどうか、この点だけ承わつておきたい。

矢内原忠雄東京大学学長

○証人(矢内原忠雄君) 手帳の内容を発表したのは学生諸君でありますが、そのことについて私の一番心配しましたことは、内容の発表が犯罪を構成するか否かという点でありますが、若し犯罪を構成するならばこれはそのこと自体が不法でありますし、又学生諸君が更に訴追を受けまして怪我人を出したのでありますから、私としてはこれは極力止めなければならない、禁示しなければならないと思いました。それで私は法律專門家である同僚の教授の意見を聞きました。ところが内容の発表は犯罪を構成しないということを聞きましたので、それでその点は私がこれを違法として禁止するという一つの根拠を失つたんであります。併しながら若しも今一人の学生が逮捕せられておりましてやがて公判に付せられるかどうか私は知りませんけれども、訴訟になりました場合にはその際の証拠として或いは必要かも知れないと考えます。それで学生がその目的を以てこの手帳を写真にとる、こういうことはこれも私又禁ずることはできませんでした。併し私の当時の感想を申し、又今でも思つておることを申しますと、手帳というものは單なる私有物でなくしてやはり公のものであると考えましてその内容を発表するということは法律的の問題でないけれども、私の気持としては謹んだほうがよくないかと考えておるのであります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 次に証人の野口署長にお尋ねします。これはその原因のほうなんですが、重複しておりますが、私はどうもこれがわからないのでお聞きするのです。先ず三人の巡査は特に東大内のいろいろな問題を取扱うために選ばれたものですか、特別な訓練課程を経たものでございますか、それとも偶然その勤務にあつたというべき性質のものでございますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) お答え申上げます。特別に訓練されたものでも何でもないのでありまして、警備係として四名、部長を加えて五名おりますが、これは大学ばかりでなく、本富士管内の警備対象物に対する視察をいたしておるのであります。特にそういうものではないのであります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 その巡査は演劇を愛好していた、それから又勤務時間中ではなかつた、こういうことを前の証言で承知いたしました。そうして又当然公務員として何か必要な事項があらば、本署に連絡すべき性質のものであるというあなたの証言も聞きました。ところが私が腑に落ちないのは、その証言が学校側の証言を信ずると仮定いたしますならば、一応ないと報告しておるという問題です。仮に一応ありとする報告ならば、私服で勤務外にいてでも、今こういう劇が行われている、どうもその言動並びに雰囲気は極めてこれは憂慮すべき段階が予想される、従つて報告するというならわかるが、一応ないと報告したということは、そうしますと、非常にこう皮肉を言うようですが、映画館に行つて、家族を連れて、奥さんを連れてお巡りさんが映画を見て、非常に感激して面白いと思つて、只今見ている映画は面白いということを報告することがあろうかと言えば、それはないということは常識的にわかる。(笑声)そこで私は署長自身はお知りにならなかつたかと思うが、どなた様かが、とにかくこの劇というものは臭いぞ、或いはその取上げる問題に問題があるぞということで、御命令されたと推定される筋はございませんか。それとも絶対にないと言い切れますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私はございません。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 私が聞いておるのは、あなたはないという証言を私は信じておるのです。あなたはないというのはわかつておるのです。ただ警察内部の状況を私は知りませんから、署長の意思にかかわらずどなたか、主任か何かがそういうことを命令したと推定される、或いはそういう今では懸念という言葉を使うことのほうが妥当と思いますが、そういう懸念があると、こういうことの含みのある答弁をあなたはされますか。それとも断じて本警察に関する限りは不肖の責任においてありませんと、こう断言されますか、どちらですか。(笑声)

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 私は誰が指揮したかということは、このポポロ劇のこの問題についてはわかりません。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 時間がないので簡單に言つて下さい。(「良識的に」と呼ぶ者あり)良識的に、私が聞いておるのはあなたが知らないということはわかつておるのです。誰かがやつたと推定されますか。さようなことが絶対ないかどうか。どちらですか。私は答えの二つを言つておるのです。二つ以外にないと思う。どちらですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 見に行つたことについては、誰もそれを指示したということは私はないと思います。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 ないと推定されますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) はあ。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 それはわかりました。  そこで地方行政委員会における警視総監の証言の警察手帳に関する点を要約いたしますと、警察手帳というものは非常に大切なものである。で筋合としてはこれは職務上死守すべきものである、死んでも守るのですね、(笑声)死守すべきもの、すべき性質を持つておる、すべきものだと警視総監は、断定したのであります。そういうような筋合を持つている。従つて警察としては、これは非常に大切なものでございますと、こう言つておる。それで私はお聞きしたいことは、そういう警察手帳を取られてしまつたということは、警官としてはこれは不始末であるということはやはり言い得ると思う。こういう点が一つ。それから学生側の強要であるか脅迫であるか知りませんが、始末書を出しておると言いまするが、その始末書の文章に、これは勿論始末書ですから詫証文です。こういうものを出している。この二つの点から見て、即ち手帳を取られておるという現実、それから始末書を書いたということ、部下のこういう行動に対してあなたはどう考えておるか。具体的に申しますれば、さような警官は当然月給を払うに値しないから首を切るというこういう御意思があるかどうか、お聞きしたいと思います。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) その点は先ほどちよつとお答え申上げたかと思いますが、あの場合はいわゆる暴力によつて奪取されたものであり、力の及ぶ限り、警察官が手帳を取られるということは極めて警察官の威信を失墜するものであるということからいたしましてこれには抵抗いたしましたけれども、力及ばずして奪取されたものでありまして、その点についてのこの警察官の威信を失墜したんだということで私は責めることは適当ではないと思います。それから始末書の問題でございます。始末書もその通りでありまして、これは始末書はそこにおつた学生のかたがたが書いたものに無理に署名をさせられた、それですからやはり暴力によつて意思なき行為をなされたということに私はなると思います。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 私も曾つて書いたものに無理に署名させられたことがありますが、まあそれはそれとしまして、本人は自発的に署長に対して進退伺いでも出しておりますか、それとも署の中でこの三人の巡査は英雄的な立場を今日持つておりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) 進退伺いも何も出しておりません。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 わかりました。あなたの証言の中で沖繩演説については現在調査中であると、こういう御発言がありましたが、これは署長あなた自身の必要において調査中なのでございますか、それとも他からの命令によるのですか。他からの命令という場合にはどこからそれが参つておりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) お答え申上げます。どこからの命令もごごいません。ただその内容が犯罪になりはしないかという容疑があるので捜査を続けておるわけであります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 これは答えなくてもいい。答えられたら答えて下さい。どういう方法で調べておりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) いや、捜査の内容についてはちよつと……。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 それじやいい。その次もう一点です。東大を今までパトロールして、或いはそういう演劇に私服を入れた、こういう今までの警備と言いますか、何と言いますか、それらの点について、パトロールの問題は前と同じくやつておるということはわかりましたが、その他の問題、今度は三人の顔はわかつちやつたでしよう。新手を入れ変えて又前の通りやつておりますか。それともまあこういう世間には抗し切れないから、ここのところはこういうものはやめようというので、やめておりますか、どちらですか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) それはやはり事件が起る前と同じ状態でやつております。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 どんどんやつておりますか。

野口議本富士警察署長

○証人(野口議君) どんどんということは私は申上げません。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 わかりました。あなたに対する質問は終りました。  田中警視総監にお尋ねしますが、これは警察側として臓品の性格を持つて、いわゆる強奪したものであるという、こういう見解に立つております。この警察手帳の内容を発表したことに対しては総長も苦衷を述べられていますが、これがいいか惡いかというのは、ただ法的に決定するだけでなくて世論がこれに対して或る結論を出すとは私は思つておりまするが、総監自身としてこの問題についてはこういう場合等を考慮されているかどうか、即ち学生側においては本事件に関係のある点だけを抜萃して、警察手帳の全貌とは言つているが、抜萃して結局発表したような形になると思う。その手帳の中にはひよつとすると個人のスキヤンダル乃至はそういうことを発表されては困るような情事等の問題にからむようなことが、現実に氏名を挙げて書いてないと何人も保証し得ない、こういうものがあつた場合に、これが又学校側において生徒側において全部これは筆写しているかも知れない、そういう意味で警察手帳の内容を全部警視総監はどなたかをして調べさせ、そうして他に累を及ぼす、いわゆる本事件が契機となつて、警察手帳が発表されたということが契機となつて、他に累を及ぼすようなことなしとしない、こういう意味での何か手を打つているかどうか。これが第一点です。  第二点は、次官通牒については、差当りどういう手続、作業等をやつて解決せんとするか、即ち今般の事件を教訓として、あなた自身も、これを何とかしたいという意思があることを先ほど来おつしやつておりまするが、これについて、どういう手続をやらんとするか、又現にどういう作業をしているか、どういう関係と、どういう相談が始まつているか、まだ、未だそういうことは一つも手を着けないか。これらの点について御証言を得たいと思います。

田中榮一警視総監

○証人(田中榮一君) お答え申上げます。警察手帳をみだりに、無断で発表せられたということにつきましては私どもも非常に遺憾に考えております。従いまして、この結果から見まして、将来こうした問題が再び繰返される虞れのあつた場合において、如何にこれを防ぐかということにつきましては、只今検察庁当局と、法的にこれが犯罪になるかどうかということにつきまして、慎重に今協議中でございます。若しこれが犯罪になるといたしましたならば、当然これは警察としてとるべき手段をとらざるを得ないだろうと、かように考えております。併し、これはまだ犯罪になるかどうかということは、慎重にこれは今検討中でありますから、この点御了承願いたいと思います。  それから、次官通牒の内容につきましての御質問でありまするが、そこが私は将来の解決の重要点ではないかと考えております。殊に、今回の次官通牒の解釈の点につきまして、甚だ遺憾でありまするが、大学側の御解釈と、警察当局のとつておりまする解釈とに相当な食い違いがあるやにも見受けられるのであります。従つて、この食い違いを解決するためには、或いはこのままの規定では非常に大ざつぱであつて、又再びかような問題の起る虞れがあるのではないか、かようなことを心配いたしておりまするので、若し必要があれば、これを或る程度もう少し具体化するとか、明文化する、そうした措置を講ずる必要があるのではないかと考えております。但しなお本件、この次官通牒というものをこのままにして置くというのならば、更に何か両者の間にいま少し話合を進めて、お互いに理解すべき点は理解し、又大学の立場を警察は十分これを考慮いたさなければいけません。同時に又警察の職責も又大学側が一つ御了承願つて、両者何らかそこに話合の上で、若し解決できるとするならば、それでも結構であろうと考えております。但し、将来このままでおつたならば、再びかような問題が起るじやないかということを非常に私は憂慮しておるのであります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 私の質問は終りました。最後に委員長にお願いしておきますことは、本委員会の証人の御答弁だけではにわかに判断でき得ない、それからにわかに信頼でき得ない、それから私たち自身が結論を生み出すべく材料が余りにも少い点、いろいろあります。従つて、本委員会の本日の速記は特に委員長において少しも早くとつて、この両委員会の委員に配付されみことを(「賛成」と呼ぶ者あり)特に要求して私は終ります。

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 了承いたしました。以上を以ちまして、本日の通告による質問は終了いたしました。この際におきまして、(「岩間正男君「資料の要求があるのですが、さつきの診断書のことですな、これを確認頂きたいと思います。診断書を、いつ、誰が出したか、警官の診断書」と述ぶ)これは追加の要求でありますが、診断書のことは……。  この際におきまして証人のかたに対しまして委員を代表して御挨拶を申上げます。本日は、誠に公務多端の際に、かくも長時間に亘りまして御証言を頂きましたことは、本委員会の委員各位の深く感謝感激いたしておる次第であります。甚だ長時間に亘つていろいろとお気持に副わないような質問もあつたかと思いますけれども、どうかこれは国家を思うところの委員各位の熱誠に出た次第でありますから、この点惡しからず御了承の上御了解を得たいと存じ上げる次第であります。これを以て連合委員会は閉じたいと思いますが、皆さん御異議はありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野義夫自由党

○委員長(小野義夫君) 御異議がないと認めまして、本日はこれにて散会をいたします。    午後九時六分散会

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