水産委員会 第4号
- 発言数
- 42 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1952/01/25
会議録
○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。 先ずポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係諸命令の廃止に関する法律案を議題に供します。先ず提案の理由について政府側の御説明をお願いいたします。
○政府委員(野原正勝君) ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係諸命令の廃止に関する法律案の提案理由を御説明申上げます。 先に調印を見ました日本国との平和條約の効力の発生に当り、昭和二十年勅令第五百四十二号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件)を廃止する必要があるため政府におきましては、この勅令に基く命令につき、所管各省においてこれが改廃等の措置を法律を以て行うことといたしたのであります。 農林省におきましては、この方針に副い、水産関係のポツダム命令につき検討を重ね、漁業法の罰則の特例に関する勅令等二命令は廃止する必要があると認められましたのでここに本法律案として提案いたした次第であります。 これら廃止すべき命令のうち、漁業法の罰則の特例に関する勅令は、母法たる、旧漁業法の失効に伴い、すでに実質的にはその機能を失つておりますので今回の措置は單なる形式的な整理に過ぎないわけであります。 漁船の操業区域の制限に関する政令につきましては、今日なおマッカーサー・ラインの根拠法規として重要な意味を持つていることは御承知の通りでありますが、占領行政の終結に伴い、これを廃止することは当然と考えられますので、今回その措置をとつたわけであります。 なおこの法律の施行期日は、日本国との平和條約の最初の効力発生の日となつておりますが、漁船の操業区域の制限につきましては、我が国漁業の現状からいたしまして、政府といたしましても一日も早くその解除を希望いたしておるのでありまして、今後平和條約の効力発生以前においても、これが撤廃又は緩和等の措置が実現されるよう特段の努力をいたす所存であります。 何とぞ愼重御審議の上、速かに御可決あらんことを切望いたします。
○委員長(木下辰雄君) この法律案の内容について水産庁のほうから一応御説明を願いたいと思います。
○説明員(永野正二君) 本日御審議願いますポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係諸命令の廃止に関する法律案でございますが、これは只今政務次官から提案理由の御説明を申上げました中に、具体的に内容についても触れておりますので、これに更に附加えましていろいろ御説明する点も余りないのでございまするが、この法律の第一の問題は、漁業法の罰則の特例に関しまして、従来法規的に当然整理をすべき点がございましたのを、この機会に整理をいたしますという点が第一点でございます。それから第二点は、よく御承知の例のマッカーサー・ラインの制限、これがやはりポツダム宣言の受諾に伴う命令というので、従来漁業者の行動を制限いたしておるわけでございますが、講和発効と同時にこのラインが効力を失うということに相成つておりますので、これに伴いまして、この制限の法規を廃止するということになるわけでございます。現在までマツカーサー・ラインの問題につきましては、我が国の漁業者にとりまして非常に大きな責任と、又いろいろな操業上の不自由をおかけいたして参つたわけでございます。これができるだけ拡張されまして、漁船の行動が自由になりまするように政府といたしましては従来もあらゆる機会を捉えまして努力いたしまして現在に至つておるわけでございます。これが講和條約の発効と共にこの制限がなくなるということにつきましては、すでに政府におきまして総司令部の係官とも十分に打合せをいたしまして確認を得ておることを申上げておきたいと思います。なお講和発効までの問題といたしましても、例えば東海、黄海方面につきましては、漁期の関係もございますので、この発効前に実効的にこの制限を成るべく緩和して参るということにつきましても、政府といたしまして吉田総理初めの努力によりまして、極力制限の緩和につきまして努力をするつもりでございます。以上簡単でございますが、補足いたしまして御説明を申上げました次第であります。
○委員長(木下辰雄君) ちよつと御紹介いたします、島根県選出の小滝彬君。
○小滝彬君 どうぞよろしく……。
○委員長(木下辰雄君) 何か今の御説明に対して御質問がありましたら……。
○千田正君 只今議員の御紹介もありましたが、新らしくこのたび水産庁長官が変られたのでありますから、長官、次長の御紹介も併せてお願いいたします。
○委員長(木下辰雄君) 水産庁長官の塩見君を御紹介いたします。
○政府委員(塩見友之助君) 私今御紹介を受けました塩見でございます。よろしくお願いいたします。まだ就任いたしましてから日が浅いので、ここ数年間水産関係から離れてほかの仕事をやつておりました関係もありまして、十分勉強が足りておらないわけでございますけれども、今まで大体就任後仕事をしながら感じておることはやはり基本的には沿岸漁業が非常に苦しくなつている。これは水産資源保護法等においてできるだけのそれに対する保存措置というふうなものを政府としてつも、予算的にも金融的にも極力努力すべきものだと思いますけれども、どうしてもやはりこれは過去においてとられましたところの公海遠洋漁業への進出というふうなものも併わして考えまして、沿岸の増殖とそれから新資源の開発というふうなだけでは、それの打開策はむずかしいだろうと考えております。で、幸い只今提案になりましたところのマッカーサー・ラインの撤廃というふうなことが独立後行えますれば、そこに初めてここ長い間我慢し抜いて来た日本に曙光が見られるわけでございますけれども、その曙光も具体的に一つ一つを検討して行くに従いまして相当な困難さがある。大正から昭和にかけて非常に海外に進出して行つたあの当時の状態とは非常に違うというふうなことをしみじみと感ずるわけでございまして、平和條約の第九條にも謳われておりますように、又その他総理からダレスさんその他への書簡にも明示されておりますように、公海漁業も又昔通りの公海自由の原則で自由に進出できるというふうな形ではなくて、それは非常に制限があるわけではありまするけれども、相手国と協定しながら出て行くというふうなことが大体今後の方針のように見られます。但しその点については日米加漁業協定においてはつきりとこの協定の趣旨、精神というものをこの協定国はその他の国国と類似な問題について協定を結ぶ場合に、これを適用して行くのだというふうなことが謳つてありまして、その点については私就任直後司令部にも参りまして、その点はきつちりと話はしたわけでありますけれども、司令部等も全く自分らはあの通りで、日米加協定の線で日本もこれから国際的に進んだらいい、こう考え、又そういう趣旨だ、こう思う。こういうふうなことを申しておりまするが、それによれば科学的な調査研究に基いて、それで満限資源と認められる資源についてだけ相手国側が保存措置を十分とるという條件の下において公海においては或る制限を受けるというふうな形にとられますので、そういう点で明るさは相当あるわけですけれども、何せ相手国側のほうは過去における日本の漁業の進出状況等からも見まして、ともかくできるだけ当初から公海というふうなものに対して制限的な措置をとりたい、こういうふうな考え方が濃厚なんでありまして、敗戦国として今度初めて独立するという第一歩からそういうふうな協定については、相手国のそういうふうな気組と絡み合せて非常に困難が多いように感ぜられます。ブリストル湾のかにとか或いはアリューシャンのさけ、ますとかその他以西の底曳、南のほうの或いは東のほうのかつお、まぐろ等を見ましても、経済的に開発し得ると見られるような相当有利な漁場というものがすぐ目の前にたくさんあるというわけじやなくて、今後の進出して行く方面の漁場というのは相当そういうふうな点について採算関係その他において困難性の伴うものと考えなければなりませんし、そういうふうな関係において、又これからの国際交渉というふうな関係、或いはその大陸との関係における国際関係のまだ十分に円滑に行き得ないという関係から来る拿捕その他の問題等も考慮しますれば、今まで数年間忍びに忍んで来たのではありますけれども、今後進出するにしても、非常に忍びに忍びながら我慢強く年数を重ねながら確実に進出するのでなければ進出は困難であろうかと思いますが、この際どうしてもそういう方向を沿岸の非常に資源の不足しておる漁場、枯渇しておる漁場というふうなものと関連して見ましてどうしてもそういう方向を相関連させながら日本の漁業の問題を解決して参る必要があろうと存ぜられます。終戦後において非常に物資が不足し、殊に食糧が不足し、水産物に対する需要が非常に多かつたために漁船も非常に殖えてその当時においては或る程度の水産については明るさがあつたわけですけれども、その後非常に不況になつておつて、金融であるとか、その他あらゆる面において水産業において困難さがますます倍加して来る、それで独立いたしましてもかなり忍耐を重ねながら進出しなきやならないというふうな関係にもありますので、そういうふうな現在の水産業の置かれている地位、苦しさというふうなものが、そう短時日に軽減されるとも考えられませんので、そういうふうな点については非常なその重責を担わされておるわけでございまして、私としましてはできるだけの努力を以て水産業、漁民というふうなものの御要望にできるだけ副うよう努力して参りたいとは思つておりまするが、何とぞ議会のほうにおかれましても、どうぞ御支援をお願いいたしまして職責を完遂したいとこう考えております。御挨拶に代えます。
○委員長(木下辰雄君) それじや、その次におられるのが水産庁次長心得の永野さん、それからその後におられるのが漁政部長の伊東さんです。お願いいたします。 只今の御説明いたしました法律案について何か御質問がありましたらお願いいたします。
○秋山俊一郎君 法律案を出して御説明になりましたマッカーサー・ラインの問題でありますが、この問題はもう数年間これが設定されましてからの問題でありまして、これが緩和乃至は撤廃を業者は絶えず叫び猛烈に運動をいたしましたが、今日まで多少の緩和はありましたけれども、ここ三、四年間何らの変化がないのであります。そこで講和の時期も批准も迫りまして、講和発効の時期も間近になつた今日におきまして、業者といたしましては当然講和発効後においては消滅するのでありましようけれども、それ以前においてこれが撤廃を是非とも実現してもらいたいという切なる要望が昨年の夏頃より起つておつたのでありますが、それにつきまして、こういう具体的に御当局が総司令部に御交渉になつておるということも伺つておつたのでございましてところが最近新聞で見ますというと、この講和発効前の撤廃は殆んど希望ができない、むしろ実現の可能性がないというふうな記事を新聞で拝見いたしまして、当局は若しそれで撤廃ができないならば緩和の方法でもというような交渉をなすつておるやに見たのでありますが、果してさようでありましようか、その辺の経過並びに御消息を承われば仕合せでございます。長官又は政務次官どちらでもよろしうございますが……。
○政府委員(塩見友之助君) 漁業者の前からの熱烈なマッカーサー・ライン撤廃に対する御要望ができるだけ貫徹するためにこれは我々事務当局だけではなくて、農林省だけでもなくて、外務省及び総理においても相当その苦心をなすつて、殊に総理がもう直接その問題については御折衝も願つておるような状態で、その結果としては先ず撤廃というのは占領期間中はむずかしいというふうな大体見通しの下で、それで総理からの御下命で先般新聞に載りましたような、できないというようなことについて今事務手続を進めております。恐らく一両日ぐらいに総理から総司令官宛の形になるか、まだその形式ははつきりいたしませんけれども、その交渉が行われることと存じます。
○秋山俊一郎君 若しお差支えがあるようだつたら速記をとめてもう少し詳しく伺いたいと思います。私からもう一つ質問を申上げる理由を申上げます。ちよつと速記をとめて下さい。
○委員長(木下辰雄君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(木下辰雄君) 速記を始めて下さい。
○千田正君 只今いろいろ水産当局からの御説明を承わりましたが、マッカーサー・ラインの撤去というのは、我々何も水産に関係する人たちばかりではなく、実際日本の現在の食糧確保の面から言いましても、敗戦後におけるところのいわゆる日本の領土の縮小、北海道を本州と四国と九州、この四つの島に八千三百万になんなんとするところの我々の民族を抱えて、そうして漸くこれから生きて行かなければならない。この際幸いにも日本が独立国家として、自主的な立場に立つて漸く国際国家群の中へ入つて行けるというこの状況の下に立つて、このマッカーサー・ラインの当然なる撤廃という問題が起きて来ますが、同時にこれは私が言うまでもなく国際公法上における公海の自由の原則の権利の復活である、この原則は飽くまで世界のいわゆる保障の上に立たなければならないという理論から言いまするというと、成るほどいろいろ国際間に参加する意味においては具体的な問題が起きて来るかも知れない、併しながら日本の現在の国の、狭い領土、海以外に日本の今後の自主権を活用するところがないという立場に立つて考えた場合には、この問題は非常に重大な問題であると私は思うのであります。でありまするから、問題は必ずしも水産問題に関係するばかりではなく、日本の国民の食糧の政策の上から、且つ又日本の国民の活動するあらゆる範囲のいわゆる権利の復活という点からも、相当政府においてはこの問題を愼重に考えて頂きたいと思うのであります。それで仮に現在日本と共に批准をするところの国は、恐らく日本の立場を十分に了解してくれるでありましようが、問題は、日本の国を認めない、現在の独立を認めないというソヴェトロシア、或いは中共、不幸にしてこの国との間には日本海或いは支那海という我々にとつては重大なる、日本民族のいわゆる発達と共に我々のフィールドとして持つて来たところの海があります。これに対しては未だ以てマッカーサー・ラインが、仮にアメリカとの間においては、或いは占領軍との間においては占領ということがなくなれば撤廃されるかも知れないけれども、この日本の独立を認めない国との間の関係というものは、相変らず戦時状態に置かれてある。この問題は我々にとつても重大なる問題だと思うのでありまして、マツカーサー・ラインの撤廃に対するところの法規の改正ということが起きて来ますが、この日本の独立を認めない国との間におけるところの、少くも戦時体制の下に置かれるところの日本の今後のいわゆる漁業というものの、或いは水産業の本当の運営の裏付として、一体水産当局はどういうふうにこれを持つて行くか。この点においても政府の御所信を承わつておきたいと思うのでありまして、この点若しお差支えなければお願いしたいと思うのであります。 それからもう一つ、ここに新らしい政務次官がお見えになつておりまするから、今日は実は農林大臣が御出席になれば、廣川農林大臣に対して一度政府の所信を質しておきたいと思いましたのは、吉田内閣が内閣をとられてから水産の行政において長となる人たちが今度で四回変つております。我々は今度四度目の塩見長官を迎えて、そうして新らしい態勢に向つて着々進んで行くことと期待し又希望もするのでありますが、過去僅か四年の間に水産業の行政の長が四人も変つておる。日本の基礎産業であるところの農業と水産の行政面におけるところの監督官庁の長官が四回も変るということは、水産行政に対して十分なる認識がないのじやないか。この点につきまして私は若し廣川農相がおいでになつておられるならば十分に政府側の所信を質したいと思つたのでありますが、御出席がありませんので、ここに新らしい野原政務次官にお願いしたいのは今後の独立を控えて新らしい塩見長官が就任された、先ほども就任の御挨拶がありましたが、どうか折角今度新らしい長官を迎えられたならば、水産庁のほうは十分に、又マッカーサー・ラインの撤廃後における日本の水産業の発達というような問題に対して懸命に努力される御意向のようでありまするので何回も僅かの間に長官を変えるようなことなくして、真剣に日本の水産業というものを考えて頂きたい。この点を特に野原政務次官から政府のお考えを承わりたいと思うのであります。 最初のいわゆるマッカーサー・ラインが撤廃されるに際しまして、現在日本の独立を認容しないところの国との間の関係における水産業のいわゆる操業ができるのかできないのか、これが現実の問題でありますから、若しできない場合にどういうように我々がやつて行くのか、そういうような点につきまして、新長官の御所信を承わつておきたいと思います。
○政府委員(塩見友之助君) 只今の御質問は非常に重大な問題でございますが、水産当局だけでその問題を勿論解決できる問題でもございませんし、関係する向きと十分な打合せをした上でなければ、外務省とか、海上保安庁であるとか、その他いろいろなところとの十分なる打合せの下でなければ、お答えはできないわけなんでございまするが、我々といたしましては、国際法上の解釈であるとかどうとかは別といたしまして、事実問題として、只今御質問のございましたような危惧は十分にあるわけでございまして、その点については何らかの対策というふうなものを立てる必要はあると存じております。ちよつと速記をとめて頂きたいのですが……。
○委員長(木下辰雄君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(木下辰雄君) 速記を始めて……。
○政府委員(野原正勝君) 先ほど千田委員から水産庁の問題に関して御意見がございましたが、十分御意見を尊重いたしまして、今後はみだりに人事等をいじくるようなことは愼しみたいと思います。
○委員長(木下辰雄君) この法案に対する質疑はまだ大分あると思いますけれども、本日はこれにて打切りたいと思います。 —————————————
○委員長(木下辰雄君) 次に真珠養殖事業法案の審議に資するために現地に委員のかたが四名行かれました。その報告を求めたいと思います。
○千田正君 今般本委員会に予備付託になりましたところの真珠養殖事業法案に必要な真珠養殖事業調査のために、院議によりまして三重県に派遣されましたことにつきまして、御報告申上げます。 派遣されました委員は、理事の松浦清一君、委員秋山俊一郎君、兼岩傳一君並びに私の四名でありました。一行は十二月の二十日に出発いたしまして、二十一日字治山田市に参り、大安旅館に開催されておりましたところの真珠交換会の状況を視察いたしまして、更に賢島に参り、英虞湾一帯の主として真珠母貝を養殖いたしておりますところの漁業協同組合の代表者数十名と意見の交換を行いまして、翌二十二日には母貝の生産地でありますところの志摩郡浜島町の漁業協同組合を訪ねまして、組合員と懇談を行いました。又御木本真珠養殖場加工場を初めといたしまして、英虞湾内の真珠養殖場及び避寒漁場等詳細に現地を視察して参つたのであります。更に二見町に参りまして、三重県はもとより東京、神戸等から参集いたしましたところの真珠養殖業者、加工業者並びに県当局者等約五十名のかたがたにお集まりを願いまして、詳細に意見を聴取いたしたのであります。かくしまして、三重県当局者、三重県漁業協同組合連合会、県下漁業協同組合、真珠養殖業協同組合等団体代表者並びに真珠養殖業者、加工業者、輸出業者等についてその要望意見を詳細調査を行つたのでありまするが、その内容の概略を結論的に申上げます。 真珠養殖事業法案の趣旨に賛同して速かに可決成立せしめられたいと希望する者と、これに対し、本法案は真珠養殖事業の実態に即せず、且つ真珠の価格維持に悪影響を與える悪法であるとして反対し、本法案の不成立を要望する者が対立して論争いたしておりまして、二者相反する意見の陳情が行われたのであります。 賛成の理由といたしましては、我が日本は戦後世界第一の真珠の生産国であり、現在十五億円の外資を獲得して国家的産業として我が国財政に寄與しているが、今後更に海外の需要に応じて優秀なる真珠を多量に生産し、輸出するときは、百億円内外の外貨を獲得することは容易である。然るにともすれば粗悪品を放出して価格の下落を来たさんとする状況であるから、今後は真珠母貝の生産、真珠養殖及び加工に関し計画的生産及び販売をなさしめることにより、価格の維持と輸出の販路の拡張を図る必要がある、そのためには国家財政による助成並びに必要な金融の途を講じなければならない、又輸出に当つて嚴重なる検査を行う輸出検査制度のほかに、真珠に関する十分な研究を行うために国立の真珠研究所が必要である、本法案は内容的にはなお不徹底ではあるが、現在の段階においては最もこの目的に副うているのであるから、大乗的見地に立つて是非速かに本法案を成立せしめられるようにお願いしたい、業者としてもこの制度確立のため国家に対して一億円の寄附を申出るという熱意と誠意を示している、この実情を理解されたいというのが賛成側の意見なのであります。 一方反対側の理由といたしましては、現在養殖業者は一千人に達せんとするほどに急激に増加して来ており、未経験者の濫立、漁場の争奪等混乱状態にある、かかる際に助成並びに国家による金融の途を講ずるときは、真珠母貝並びに粗悪真珠の増産氾濫となりまして、価格の下落を当然来たして来る、又計画生産は事実上不可能であり、且つ又贅沢品としての真珠の性質から見て、国家による価格安定維持方策は、徒らに多額の財政資金を要するのみにして不可能のことである、価格維持については、生産制限のほかはない、本法の立案に当つては多数の養殖業者の意見を十分聞かず、一方的になされたものである、又日本真珠株式会社株の一億円の寄附のごときも、一部業者に強制的になされ、現在寄附金を取消している者もある状態である、従つて今後一、二年真珠業者の帰趨を見て、その結果により完全な真珠安定法を制定されたいというのが反対側の趣旨であります。 なお要望意見の詳細につきましては、同行されておりますところの秋山委員から詳しく御報告申上げて頂きたいと思うのでありまするが、以上の賛成と反対の両方ありまして、我々としましても十分に隔意のないところの意見を聴取したと思いまするが、問題はこう対立して来ると、なかなか簡単ではない。そこで我々派遣されました一行の考えから見ますると、この法案は只今衆議院のほうの先議になつておりますけれども、十分に愼重に或いは公聴会のようなものでも開きましてそうして御検討願わなければならない問題ではないだろうか、かように考える次第であります。 以上簡単でありまするが、御報告申上げまして、なお詳細の点につきましては秋山委員から更に御報告願えることと思います。
○秋山俊一郎君 本調査に参りました一員といたしまして、只今千田理事から御報告がございましたが、そのうちなお補足をいたして御報告をいたしたいと存じます。大体において只今お話の通り概要は盡きておるのでありますが、この法案に盛られております内容につきまして、母貝の生産を増強すべしとする意見と、又反対者の意見としては母貝の養殖増産はあえて必要でない、むしろ阻止すべきであるといつたような意見がありましたことは、只今御報告の通りでありますが、現在三重県で真珠を形成する養殖をやつております母貝が十五万貫ほどある。然るにその母貝生産をやつております点から見ますと四万貫しか年々上つておらん。曾つては三十何万貫も上つたときがありましたが、現在では終戦後非常に落ちておりまして、四万貫程度のものしかないのに、十五万貫という養殖をやつておる。これは成るほど母貝の生産だけやつておる面はそうであるが、実際に母貝を使つているものは十五万貫であるいうことは、養殖業者自体が母貝の生産をやつているのでありまして、それでこの養殖業者が漸増の傾向にあるのに、更に母貝をどんどん増産せしめるということになると、これは過剰になつて来て、従つて真珠の価格も落ちて来ることになる、又母貝の価格も落ちて来る。こういつた反対意見もありますが、一方では十五万貫要るところにおいて四万貫しか生産がないのであるから、今後これを増産せしめるためには、真珠というものを多く作るためには、もつともつと母貝を養殖して、そうしてその母貝の価格をもつと引下げる、いわゆる真珠の生産コストを下げて行つて貿易を盛んにする必要がある、こういつたような意見になるわけであります。でここで問題になりますのは、特にこの三重県で私は感じたのでありますが、真珠の養殖業者、即ち珠を作るところの養殖業者と、それから母貝を生産するところの協同組合と申しますか、漁業組合との意見が非常に微妙になつております。今度の漁業制度改革において、従来漁業組合がやつていたところの捕獲権というものは養殖業者に與えられた。そうして地元の協同組合は母貝生産のみを許された。ところで今申しましたように、真珠を養殖する業者が母貝の生産までやる。四万貫しかないところに十五万貫使つているということはみずからこれを生産しているということになる。そうすると漁業組合というものはその生業を養殖業者に奪われる形になるので、この点が非常に微妙な問題になつているようであります。そうして養殖業者といたしましては、御承知のようにあそこに筏を俘ベまして、そうしてそれに籠を吊るして、そうしてその金網籠の中に貝を入れて養殖をしているわけでありますが、その繩や籠に稚貝が引つつきまして、そうしてだんだんそれが形をなして来ると、それを集めて養殖して行くということを現に行なつている。これが十五万貫に達しているゆえんであるが、そこにこの貝の養殖と、母貝の何と言いますか、育成と言いますか、その面に葛藤があるようであります。これが始終両者の間の紛争になつているようでありますが、聞くところによりますと、この問題は曾つての会合において大体意見がまとまつているという組合等の理事者のお話でありましたが、この間の会合においてはまとまつていないというような論争がございました。この問題は結局地元の県の裁量により県がこれを解決すべき問題であつて、真珠養殖事業法とは別に大した関係はないじやないかというような感じで、漁業調整委員との間においてこれをうまく検討して、漁業調整委員との間においてこれを解決したらいいだろうというお話合いをいたしたわけであります。それからこれに関連いたしまして、浜島という町は殆んど真珠の生産によつて町の道路、或いは学校の修築、補修、その他町内のあらゆる面にこの漁業協同組合が協力いたしまして、むしろ町の運営については非常に大きな役割を持つているというほどこの母貝の生産に重点を置いてやつている所でありますが、こういう面を今申上げましたような点から非常に憂慮いたしているのでありまして、この点は私どもといたしましても特に三重県の特異性ではないかと考えているのでありますが、少くとも日本全国の大半の真珠を生産しております所としては軽視できない問題であろうと存じます。 大体真珠養殖事業法案に盛られております精神は、過般来の提案者の説明によりましても、世界で追随のできない唯一の真珠養殖国であつて、而も今日非常に外国から多量の注文があるのにかかわらず、これに応じ切れないということは資金の面である。資金が豊富でないためにとかく粗悪品を出すことになり、又その輸出の大部分は例のネックレスである、これは中の中心になる珠、大きい珠がどうしても必要である。ところがその大きい珠を作るためには相当の年月も要りますし、又貝の選択等もありまして非常に金融の面からして、早く金の廻る小さい珠を多く生産するために、一つのネックレスを作るために非常に苦労をしている。大きな珠がないためにできない。小さい珠は幾らでもあるが大きな珠がないからできない。そこで計画的に大きな珠を作るために助成しようというのであるが、かくして優秀なネックレスを出すということになる。 反対業者は必ずしもそうは考えていないので、今日先ほども申しますように、母貝もどんどんできている。これを若し助成するということなら母貝もたくさんできて来るし、そうして真珠が非常に多くできて来ると、この真珠は宝石というものの、他の宝石に比較するとそれほどのものではない。これが余計できれば宝石といつたような位置から落ちまして非常に価格が下る。一遍下るとそれを持ち直すことは非常に困難なので、むしろ金融をするならば、加工業者若しくは輸出業者に金融をして、生産業者に生産を増加するような行動はやめてもらいたい。そうしなければ真珠の価格を維持することができないし、同時にお互いが非常に経営上困つて来る、殊に金融と申しましても、有力な人は金融を得られるだろうが、小規模の者は金融の恩典にあずかれないことになるので、そうするとますます小さい者は粗悪品をどんどん市場に出すということになつて、市価を壊すことになる。これでは却つて法律は逆行するのであるからやめてもらいたい、かような意見が出ておりました。 それから特に私の感じましたことは、今申上げたような反対の理由はありましたが、この法律を立案して提案したかたがたが一向業者に徹底せしめておらん、法律の内容を徹底せしめておらんで、一部の人だけで相談して作つたのであつて、我々としてはどうしても内容についてしつくり肚に入つておらんというような意見でありまして、ややもすれば感情的に走つているような感を多分に受けたのであります。私どもはそういうふうな反対の御意見があるならばこの際遠慮なく述べて頂きたい、我々はそれがために調査に来ているのだから、その意見を十分に述べてもらいたいということを申しまして、今申しましたような意見を伺つたのでありますが、先ほど御報告がありましたように、賛成、反対両意見がありまして、相当に愼重なる研究を遂げなければならないのじやないかというふうな感じを受けました。大体反対者の意見としましては、まあ当分自由競争に任しておけば技術の面も向上して来る。現在はまあ技術の面においても殆んど研究が進んでおらんが、これを自由に任すならば、この点も漸次向上して来るだろうし、どうも今この法律を作るということは、増産によつて価値を落すということと、一部業者のためにのみ資するといつたようなことが主な反対の理由のように伺いました。なお細かい点等につきましては、法律審議の際に又お答えいたしたいと思います。
○委員長(木下辰雄君) ちよつと私から伺いますが、お二人に……ダブるかも知れませんれども、浜島に行かれた場合に、母貝を生産している協同組合の意向は、この法案を成立せしめるという意見ですか、或いは不要であるという意見ですか、そこをちよつとお尋ねしたいのです。
○秋山俊一郎君 そこではこの法案に反対する意見は私は聞きませんでした。ただ先ほども申しましたような養殖業者が母貝を生産して行くということは、これは困るという意見が多分にあつたように思います。それでこの母貝の生産については飽くまでも漁業協同組合にやらしてもらいたい、それで真珠形成の養殖と母貝生産とは区別してもらいたいという意見であります。
○委員長(木下辰雄君) そうすると、今の反対と賛成というのは、皆真珠養殖業者内にあつた……。
○秋山俊一郎君 内に多かつたのです。
○委員長(木下辰雄君) 漁業協同組合のほうはない、こういうわけですか。
○秋山俊一郎君 それは強い反対はございませんでした。ただ先ほど申上げましたように、地元組合としては母貝の生産で以て立つて行くのだから、その母貝の生産だけは地元の組合にやらしてもらつて、そうして真珠養殖業者はその養殖だけやつて、母貝は我々が養殖して行こう、こういうふうな意見であつたように思います。
○青山正一君 お二人……まあその他随行者もおられましたですが、ただあちらに行つての空気で、立法の精神とか立法の目的は僕は非常にいいと思いますけれども、ただこの法案を出す上について、何か暗い点が、法案を出すまでの間において何か暗いとか、向うから何か報告になつていましたですか。
○千田正君 我々といたしましては暗いか何か、行つた場合にそれがわからなかつたのですけれども、相当深刻になつているのじやないだろうか。例えば二見におきまして我々を囲んでこの法案についての座談会を開いたときにも座談会に出席されたが、それに猛烈なデイスカツシヨン、我々を御先導下さつた衆議院の石原氏、この人は立案者でもございますので、特に向う出身の代議士ですから一応皆さんの前で御説明なんかやりましたけれども、興奮してしまつて両方反対質問の議論が起つてきてどうもスムースに行きそうもなかつたのでありますから、私から反対の諸君はただ反対するばかりではなく建設的意見を言つてもらいたい、この法案はどこが足りないか、どういうわけで反対するのか、そういう意向を十分に聞いたつもりではおりますが、なかなかしつくり行かないようです。それでこれはいわゆる国際市場における真珠というものと日本の市場における真珠というものと日本の貿易というもの並びにその貿易圏を作る養殖業者、更に養殖業者の母貝を供給するところの漁業協同組合が非常にデリケートな問題が四つも五つも錯綜しておりまして、それで又一億円の寄附金と閉鎖機関の整理に伴い、各業者に入つて来る金の中から一部を醵金してそれによつて将来の真珠のための研究所その他を設立したいというのに対する寄附金、こういうものをめぐつて相当どうも我々としましては余りすつきりとしたずばりとこう行くような感じを受けないで、私として先ほどもお話申上げました通りやはり法律というのは一般大衆が納得行くようなものでなければ実際効果は少い。こういう意味で反対の人も単なる感情的反対ではなく、建設的意見を言え、この法案を立案した人も十分に不足な分を本当のこれを了とする人たちが納得の行く点まで推し進めて行つて立法、法案として通過させるなら通過さしたい。これは参議院として当然に愼重に審議をやつて頂きたいと特に各委員の方にお願いしたいと思います。
○青山正一君 ちよつとその件について水産庁長官に……、予算のことについて、前国会において衆議院の松田さんあたりがこの真珠法について今年度の予算に何か予算の中に盛られておるというようなことが出ておりまするが、それは事実ですか。
○説明員(伊東正義君) 補正予算に一億円入つております。これは真珠研究所の設立の金であります。
○青山正一君 そのときに松田さんのお話ではまだ立法をしない先に、つまり法律をはつきりきめない先に予算を組んだのは非常に不都合だと、こういうふうな御意見だつたように僕は聞いておるのであります。それで私がいろいろお聞きしたいというのは、法律が通つてから予算化することが本当なんでしようか、それとも法律が通つてない先に先ず……大蔵省あたりの行き方というものはやつぱり予算の裏付のない法律は意義ないのだということを頻りに言うておるわけなんです。法律を立てない先にこの法律が立法が可能だというような建前で予算化すべきが本当なんでしようか、その点についてお聞きしたいと思います。
○説明員(伊東正義君) 今のお話は私も会計課長を大分やつておりましてよく問題になつたのでありますが、予算が全然なくて法律だけ通すということになるとあと必ず法律と予算の食い違いというふうな問題が出て来るのであります。新らしい法律を作ります際に並行的にそれと予算とマッチする内容の予算を組んでおります。今の場合はその補正予算は真珠研究所設立の金を一億取つておるのでありますが、その法律ではその真珠研究所を作るということはそういうことは法律が通りませんとこの予算は一応補正予算としては立てておりますが、法律の関係から行けば使えないと思います。
○青山正一君 ほかの関係には絶対に使えないということが……。
○説明員(伊東正義君) 法律の関係から行けば、普通の解釈から行けば……。
○青山正一君 立法の建前から衆議院の松田さんのおつしやつたことは一種の間違いの言葉であるというふうな御解釈で結構なんですね。
○説明員(伊東正義君) 間違いであるといいますか、いろいろなケースがあるので今まではまだできていない法律ですから、並行的に今まで法律が通つたからというので予算を組んだこともあるし、予算なしにいろいろな法律が出たということもあるし、間違いではないので、いろいろな例は過去にあると思います。
○委員長(木下辰雄君) 大体項目に対する質問はいずれ法案審議の際又あるかと思いますけれども、本日はこの問題はこれで打切りたいと思います。 私から一言水産庁長官に御希望を申しておきます。やがて日本が主権をとるが、マッカーサー・ラインが撤廃された場合にいろいろと現在策動しておる業者があるようであります、例えば南のほうではアラフラ海の白蝶貝の採取であるとか、北のほうで言えば蟹工船、或いはトロール工船或いはさけ、ますの流し網漁業、こういうものに対していろいろ策動しておるようであります。もとより先に塩見長官の御挨拶の中にもありましたが、広く沿岸業者もこれに参加させるような法をとりたい。又それと、一方ではこういう事業に対して無経験の人はこれはいけない、これはもとより私ども同意でありますが、さけ、ます、流し網のごときは東北方面にも経験者があり、北海道方面の協同組合関係にも相当経験者がおるように感じております。そういう点も十分一つ加味されて行政措置をとつて頂きたい。なおマッカーサー・ラインが撤廃された場合において、それから外洋に行くものはこれは当然全部許可漁業にして、そうして現在のかつお、まぐろ或いは以西底曳網みたいにその限度をきめて共倒れのないように、又資源を枯渇しないように十分の一つ措置をとるように特にお願いいたしたい、かように思います。 本日はこれを以て委員会を閉会いたします。 午後二時五十二分散会