外務委員会 第42号
- 発言数
- 208 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/06/18
会議録
○委員長(有馬英二君) それでは外務委員会を開会いたします。 議事の都合によりまして、北太平洋の公海漁業に関する国際条約及び北太平洋の公海漁業に関する国際条約附属議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。前日に引続きまして質疑を行います。御意見のおありのかたは御発言を願います。
○兼岩傳一君 ちよつと議事の進行についてお尋ねしたいんですが、これは政府の説明だけで、各委員の質疑は初めてですか、二度目ですか。
○委員長(有馬英二君) 三度目だと思います。
○兼岩傳一君 三度目ですか。
○委員長(有馬英二君) ええ。それから御承知のように外務、水産連合委員会が開かれました。それは済んでおります。
○兼岩傳一君 ああそうですか。
○曾祢益君 議事進行について伺いますが、今日は外務大臣の出席はあるのですか。
○委員長(有馬英二君) 今衆議院の本会議に入つておられるそうです。もう約十五分ばかりたてば出席されるそうです。
○杉原荒太君 この漁業条約についてちよつとお尋ねしておきたいのですけれども、いわゆる自発的抑止ですね、これの実施のことなんですが、これは条約上、国としてはいわゆる自発的に抑止するという建前になつておるようだが、又一方それが条約できめられておるので、実際は必ずしも貫徹されていないようですが、各業者が出て行く場合については、各業者の自発的の抑止に待つのですか、それとも一定の法律を作つて禁止、制限又罰則なども附するんですか。
○説明員(永野正二君) 勿論この条約が効力を発生いたしますと、これに伴つて必要な国内の法規を整えまして、それによつて国内の業者が拘束をされると、こういうことに私どもは考えておりますが、差当つて問題となります魚種について申上げますと、ハリバット及びおひよう及びにしんにつきましては、これは我が国の漁業者のほうで差当つてここに商業的漁獲に出かけるという気配は全然ございません。尤もおひようにつきましては、若しべーリング海方面にトロールの漁船が出漁いたしますれば、中には非常に少い割合でございますけれども、混つて取れるかもわかりません。併しながらその場合にはこれを全然その製品として持帰らないで、その場で捨てて帰るということでございますれば、これを目的とした漁獲ということには相成りませんので、私どもといたしましてはにしん及びおひようについてはそういう実態であれば、特に国内的な法規を作る必要があるかどうかという点について若干疑問を持つております。この点はもう少し研究さして頂きたいと、こう思つております。 それからさけにつきましては、これはあの方面のさけの漁業ということになりますと、当然母船を使い古した母船式のさけ、ます漁業ということに相成るわけでございます。これにつきましては現在国内法ができておりまして、国内法の許可の際にその操業区域を一々きめると、こういようような考え方にいたしておりますので、この国内法に基く許可の際に、あの区域は操業区域から除外をするということで以てやつて参りたいと、こういうふうに考えております。
○委員長(有馬英二君) 私から若干質問をいたしたいと思いますが、この条約の前文で「これらの考慮にかんがみて、(1)締約国にとつて共同の利害関係がある漁業の最大の持続的生産性を確保するために必要とされる保存措置の確定に必要な科学的研究を推進し、」と書いてあるのですが、科学的研究とはどういうことをここで意味しているのですか。
○説明員(永野正二君) 取りあえず私から御説明を申上げて、あと質問がございますれば又説明を申上げますが、この締約国において共同の利害関係がある漁業、これは説明を別に必要としないと思いますが、つまり各国の漁業者が漁業の対象にしようとする希望を持つと、或いはその可能性があるというような漁業資源、その資源が最大の持続的生産性を確保すると申しますのは、つまりその資源を全体の量を減さないで毎年々々最大の漁獲を挙げる、つまり最もその資源を最高度に利用すると、こういう意味でございますが、その最高度の利用という点から、その最高度の利用を確保いたしますために、その魚族の保護の措置というものが、例えば最も端的に申上げますならば、年々の漁獲の限度というものをきめるというような方法もございましようし、或いはその魚の取り方について制限をする、その魚の取り方についての制限と申しますのは、例えば一定の大きさに達しない、小さな魚を取らないとか、或いは一定の漁具は使用しないとか、或いは一定の場所では漁業をしないとか、或いは一定の時期には漁業宅ないとかいうふうないろいろな種類の保存措置の方法があるわけでございますが、そういう最大の持続的生産性を挙げるためにどういう保存措置が必要かと、又最も効果的であるかという点につきましては、これはやはり対象となる魚族の生物学的ないろいろな材料というものをとりまして、その生物学的な材料に基いて判断をし、措置をするということが必要でございますので、そのために必要な科学的研究を共同して推進して行くために委員会を作ると、こういうことを書いたわけでございます。この必要な科学的な研究と申しますのは、具体的に申しまするならば、取れました魚のうち一定の標式を附けまして標式放流をするとか、或いはその取れました魚の年令別の割合がどうなつておるかというような問題、或いは年々の体長なり体の重さなり等がどういうふうな変化になつておるかというような問題、或いはさけなどについて申しまするならば、そのさけの卵を生みます川、母の川、母川と申しておりますが、その生まれました川によりまして多少鱗の形であるとか、その他特徴がある場合がございます。そういことからして、このさけはどこの川のさけであるかというようなことが判断される場合もございますので、そういう体の鱗の研究とかいうように、生物学的なデータを揃えまして、その上に基いて必要な保存措置をきめて行く、こういう意味を表現したものと考えております。
○委員長(有馬英二君) それからやはりその前文のあとのほうにありますが、「各締約国が前記の保存措置に関する勧告を実施し、並びに自国の国民及び漁船に対して所要の抑制を設けることがきわめて望ましいことを認め、」と書いてある、所要の抑制というのは、今お話になつたような数量或いはその期間とか、或いは漁船に対しては何船とかいうような、そういうことを言うのでありましようか、その点を一つ、所要の抑制という……。
○説明員(永野正二君) 所要の抑制と申しますのは、今お話がございました保存措置或いは体長の制限であるとか、或いは一定の期間の漁獲の禁止或いは一定の場所における漁獲の禁止というような保存措置、それから附属書に規定してございますような、一定の魚種を一定の水域では漁獲を自発的に抑止をするという、この抑止も含んでおる意味でございます。
○委員長(有馬英二君) そこに「並びに自国の国民及び漁船」と書いてあるのですが、なぜこれを漁民と書かないで国民と書いたのでしようか、国民全般にこういうことを、抑制を設けることを要求するのでありましようか。
○説明員(永野正二君) 結局こういう国際間の取極によりまして、各締約国がこういうことを約束をいたしたわけでございますが、その締約国の約束というものは、結局最後の締括りのところになりますと、この各国の国民及び漁船に対してこういうことを約束をするというような、約束の内容になるものが多いわけでございます。この保存措置に関するこの条約の規定の内容は、結局各国の国民及び漁船を拘束をするということに相成るわけでございます。漁民と書きますと、成るほど非常によく感じは出るわけでございますが、これは大きな会社が、自分の会社の計画としていろいろな漁業を自分の名前でやると、こういうような場合もございますのでむしろ国民という表現のほうが広く全部が当てはまることになるのではないかと、こういうふうに考えます。
○委員長(有馬英二君) 条約前文を読んで見まして感じることは勿論二月七日の吉田総理からの書簡、それから次に海洋漁業問題に関する政府説明等を読んで見ましても、魚族の保存ということが非常に大切である。枯渇を防止するためにこういう条約を作るんだということがはつきりしておるのですが日本にだけ抑止をさせて、他のアメリカとカナダは抑止をしないで、ただ保存だけのほうに廻つておるというような一方的な感じがするのでありますが、その点はどうでしようか。濫獲をするのは日本であるということを、何遍もするからこういう条約で縛つてやるんだという感じを受けるのでありますが、そうではないのでしようか。
○政府委員(石原幹市郎君) こらちが今回その抑止しておりまする地域は、従来日本側としては実績がないといいまするか、全然殆んど出漁していなかつた、或いは又商業的漁獲をやつてなかつた所でございます。で一方然らば日本側のほうでそういう区域を設ければ、これはそういうことができるのでありまするけれども、この問題について更にもう少し科学的技術的検討をしてからという考えでおりまするので、取りあえずはこちらばかりの抑止の形になつております。
○委員長(有馬英二君) 第五条を見ますると、第五条の二には「該当する一又は二の締約国が」と書いて、一つと書いてない、一又は二と書いてある。それからそのあとに「魚種の漁獲に参加する一又は二の締約国が」と、ここにも一又は二と書いてあるのですが、この一、二が、一のほうに日本が当てられて、二のほうにアメリカとカナダが当てはまつて、そうして保存をカナダとアメリカが引受けると、日本の抑止のほうに廻るんだというようにあとには書いてあるのですが、この五条は二項の書き方とあとの書き方とがどうもこれで一致するというのでありましようか。或いはそういう工合にこれは条約は書かなければならんからそういう工合に書くのでしようか。
○政府委員(石原幹市郎君) 先ほど日本側だけが抑止の形になつているという工合に申上げたのでありますが、少しく足らなかつた点もございます。べーリング海におきましては日本とカナダが自発的抑止をやる、こういうことになつておるのであります。
○委員長(有馬英二君) それからこの条約適用上この区域ですね。区域を設定したこの第一条が、この条約が適用する区域としてこの区域の設定は、三国の委員が協議の上で設定したのでありますか。この設定の際に日本から特別の委員がそれに参加をした上でこの領域を決定したものでありますか。
○政府委員(土屋隼君) この適用区域に関しましては、本条約の適用を将来受け又は現実に受け得るだろうと想定されます所は、赤道以北の北太平洋の全域に関するということを当時各国委員の間で同意を見まして、従つてこの条約の適用区域はというので第一条に挙げたわけであります。各国の了解が大体そこにあつたわけであります。
○委員長(有馬英二君) いや、日本の委員がどういう人があそこに参加したのですか。ただ外務省がそういうことを向うの役人と協定しただけであるか、或いは日本の漁業家がそこに参加しているのか。
○政府委員(土屋隼君) 日本側からの委員といたしましては、外務省、農林省関係以外に、実は海洋漁業に、若しくは遠海洋漁業に関係のあるかたが本会議には初めから日本側の代理若しくはオブザーバという形で出席をされております。一、二の例を挙げますと、日本海洋漁業協会の会長平塚さん、その遠海漁業につきましては全国漁村経済協会会長の横田さん、こういうからが御出席を頂きましたので、業者のかたもこの点は御了解のはずであります。
○委員長(有馬英二君) それから第二条の二項の「この条約のいかなる規定も、領水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する締約国の主張に不利な脚響を与えるものとみなしてはならないというのがあります。具体的にはどういうことを意味しておるのでありましようか。どうも私ども素人だかはつきりわからないのでありますが、具体的にこれを例を挙げて説明をして頂きたい。
○説明員(永野正二君) 私からちよつと説明さして頂きたいと思つております。この表現は、北大西洋の漁業条約の表現をそのままとつておりますのでこの表現は如何にも非常に呑み込みにくい表現になつておりますので、これを砕いて見ますと若干わかるのでありますが、これは結局こういう文章の繋り方になるわけでございます。「解水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する主張」ということを一つに読むわけであります。つまり領水の範囲については三マイルという主張もあり或いは十二マイルという主張もあり、いろんな主張がある。それから十二マイルを否認するという主張もある。領海の範囲に関する主張、それから沿岸の国の漁業管轄権に関する主張、これもいろいろな国が一方的に自分の国の領水に接続する公海について漁業の管轄権を持つておるという主張をいたしておるのが事実でございます。そういう主張もございますし、又主張を認めないという側の主張があることも事実でございます。そういういろんな主張があるということを前提におきまして、それらに関する一切の締約国の主張、つまり締約国のうちにはそういうことを積極的に主張する国もあり消極的に否認する国もあるが、それらの主張に一切ノータツチであるという意味でございます。と申しますのは、こういう領水の範囲に関する論争或いは沿岸の国の漁業管轄権に関する論争、この主義上の論争をこの条約の面で解決をいたそうといたしますと、これは非常にむずかしいことになりますので、そういう主義上の問題は迂回いたしまして、実質的に漁業上必要なものを全部括りまして、これによつて締約国間の漁業に関しては問題がないというふうな条約を作りまして、而もこの領水の範囲及び漁業管轄権に関する論争のある、国際法上論争のある、法律的な論争には、この論争を迂回して事を解決する。こういうことが実際問題としてこういう漁業上の交渉をまとめますに非常に便宜でございますので、その意味でこれは北大西洋のああいう加盟国の非常に多い漁業条約でこの文章が作られまして、この先例がこの条約につきましても、同じように将来は北太平洋の公海漁業条約といたしまして、数多くの国が加入するという可能性がございますので、同じような規定をこの条約に移した、こういうことに相成つておるわけでございます。
○委員長(有馬英二君) そうしますと、これは日本が例えば日本の権利を非常に出張するというような場合には、それを認めないというのですか、それは各国々の主張は勝手であるという意味であるか
○説明員(永野正二君) その各国の主張は主張としてそのまま一応触れないということでございますから、それを肯定するものでもない、それを又否定するものでもない。それはそのまま各国が一方的に主張することはそのままにしておく、こういう趣旨でございます
○委員長(有馬英二君) 今回のこの領域の問題が随分漁業家の間に異論もあり、又不満を持つておる人もあるやに聞いておるのでありますが、そういう際に日本の権利を主張するという場合には、この条約にはそうすると無関係であるというわけですか。
○説明員(永野正二君) 日本のほうの領水は三海里であるという主張及び沿岸国が公海に漁業管轄権を持たない、公海は自由であるという日本の主張、これはここに書いてございます領水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する締約国の主張でございますから、これは一応ここで害さたない、消極的でございますが、害されないということが確認されておるわけでございます。
○委員長(有馬英二君) それから第三条の(a)の但書に、「附属書に最初から明記される魚種については、この条約の効力発生後五年間は、当該魚種が自発的抑止のための条件を引き続き備えているかどうかについての決定又は勧告をしないものとする。」、こう書いてあるのですが、これは抑止をするいうのですから、日本に限られたことであるとみなしていいと考えますが、そうするとこの条約が発効してから五ヵ年間は、この定められた魚種については自発的抑止について発言できないということになるのでしようか。
○説明員(永野正二君) この書きました趣旨は、この条約締結当時一応第四条の条件を具備しておる。従つて自発的抑止という問題が生じた魚種につきまして、勿論発効後直ちに科学的な調査、つまりその資源に対して漁獲が過ぎておるか、或いは丁度満限に達しておるか、或いはまだ余裕があるかという点につきましての科学的な調査を勿論開始いたさなければなりませんし、それはできるわけでございますが、結局資源の満限ではない、まだ余裕があるというような結論を出しますためには、或る程度長い間の資料というものが必要なわけでございます。例えばさけについて申しますと、大体川で卵がかえりましてからもう一ぺん川へ上る、その産卵のため川へ上るときに漁業の対象になるわけでございますが、それまで大体四カ年かかるのでございます。同様ににしんにつきましてもこれは四年乃至七、八年というようなときに産卵の回遊があるのでございます。その間の年々の資料というものを完全にとりませんと、やはりこの資源に対して漁獲がどの程度まで行つておるかというようなことは、科学的な立証がむずかしいのでございます。そこでこの条約効力発生後五カ年間の間にこの条約締結当時一応証明された満限であるということを覆すだけの時日が、時間が必要でございますので、一応五カ年間はその満限であるという条件はなかなか覆せないというふうに各国が了解をいたしまして、この規定を設けた、こういうふうに了解いたします。
○委員長(有馬英二君) この点はこの抑止をする日本にとつては非常に不利益になるのではないかというような感じを与えるのですが、そうは解釈できませんか。
○説明員(永野正二君) 抑止の点につきましては、勿論日本も抑止をいたしておりますし、さけにつきましてはカナダも抑止の問題があるわけでございますが、私ども冷静に考えまして、こういう非常に枯渇しやすい資源の保護のために、更に現在満限に達しておる、漁獲満限に達しておると思われておる漁獲をもう少し殖してもよろしいという決定をするためには、先ほど申上げましたように魚の生物学的な産卵回遊の年齢の関係から申しまして、五年間ぐらいの科学的なデータの積重ねというものが必要であろう、こういうふうに私ども考えております。
○委員長(有馬英二君) それからもう一つ伺いたいのですが、第十条の(c)、ここには違反についての刑について書いてありますが、この刑については、刑の分量であるとか、或いは国内法でこれが制定されておるようなものがありますか、それについて……。
○政府委員(土屋隼君) 母船式漁業につきましては、只今水産庁のかたに伺いますと国内法があるようでありますが、ほかの漁船につきまして、或いは漁獲につきましてはまだ国内法はないわけであります。従つて今後この条約が批准になりますと、その後に各国間照合の結果、国内法を各自が作ることになつておるということになつております。
○委員長(有馬英二君) それでは今のところは刑がはつきりしないわけですか。例えば今年さけの漁にも行つているわけですが、それなどについての違反があるかどうかということがこれから問題になろうと思いますが、国内法がまだきまつていないということであるというと、それでは甚だ不備であろうと考えられますが……。
○説明員(永野正二君) 本年の北洋へ出かけておりますさけ、ます漁業につきましても、先ほどお話もございましたように国内法で母船式さけ、ます漁業取締規則の罰則は適用できるわけでございますが、本年はこの条約の発効がいつになりますか問題でございますが、只今のところ七月の中旬頃或いは下旬には現地の漁は切上げになる模様でございますので、その発効の時日等の関係ははつきりいたしませんけれども、現在までの違反は、この条約発効前の違反ということで、国内法の処罰ができるものと考えております。
○委員長(有馬英二君) ほかに御質疑……。
○兼岩傳一君 今日はあれですか、農林省のほうは出ておられないのですか。
○委員長(有馬英二君) 水産庁の次長が……。
○兼岩傳一君 水産庁ですか、それじやまあ二、三お尋ねしたいと思います。 根本君がまだ農林大臣をしておられた当時にこの漁業協定の交渉が始められましたので、その当時私はこの外務委員会でお尋ねしたのでありますが、それに対して根本農林大臣は、当時対等の立場で交渉するのだと、そして国際的な信義と友愛の精神でやるのだから、日本の漁業は前途有望だというふうに非常に大見栄を切られたのでありますが、私はその当時すでにこれは態のよい閉め出しで、これは非常なまずいものになるに違いないと、現にダレス、吉田書簡、吉田さんがダレス氏に送つて一札入れておるので、ちつとも対等でないということを証明しているんだということを指摘したのでありますが、その当時大臣は、ただ友愛であるとか国際公海漁業の自由であるとかいう抽象的な言葉を羅列したのみでありますが、果して出て参りましたものは、私どものむしろ指摘したことのほうが正しかつた。非常に遺憾な点であつたことは、この衆議院の自由党といえども、自由党の諸君といえども非常に不満足の意を表したということでもはつきりしておりますし、我が参議院の水産委員会におきましても決して満足していない、むしろ不満足であるということではつきりするのでありますが、このことと関連してもそういう点については相当論議されておりますから、私はこの不平等な点について最も鮮かな点として、このアメリカ及びカナダ側は広大な地域に亙つて制限されるけれども、日本の漁場についてはどうなのか、こちら側はどうなつておりますか、どうして一方的にだけ制限を、太平洋の向う側だけ広大な区域、さけ、ますに至つては実に広大極まりない区域であり、その他の区域に至つても量的規定が随意に変更できるというような全く一方的な措置を講ぜられておりますが、こちらの日本側の漁場はこれと同じような保護が加えられておりましようか。
○政府委員(石原幹市郎君) これは先方の漁場はすでに長い間いろいろの統計なり科学的資料を以ちまして資源満限であり、又従来魚族の保護について十分の措置をとつておる、こういうことが三国のそれぞれの科学的専門家の委員会においても認められたわけであります。我がほうにおいても当然こういう問題をこれは議題にすることは勿論できるのでありますが、日本においても従来鮭鱒その他について孵化その他で魚族の保護はやつておりまするが、まだこの十分なる科学的統計資料といいますか、そういうものがいま少しく整備した上でやるのならばこれはやつたほうがよかろう、こういうことでこの条約に規定されたような現状になつておるわけであります。
○兼岩傳一君 科学的と言われますけれども、向うだつて現に頂いておりますこの図面で見ましても、至るところ海岸から何海里であるという量的規定がはつきりしないので、今後これを科学的に研究するのだというようなあいまいなことで、広大な長い幾千キロメーターの沿岸に亙つて制限されておるじやありませんか。あなたの言われる科学的という意味はどういう意味ですか、量的に確定し得るという意味ですか、あなたの料学的とは何んですか。
○説明員(永野正二君) この漁業に関する資源保護のために、平等な立場に立つて米国及びカナダの沿岸の資源と日本の沿岸の資源とを比べて見ました場合に、勿論同じような考え方でこの保存措置を考えるということは当然のことでございます。ただこの保存措置の必要性と申しますか、その保存措置が現実の漁業の実態とどのくらい深い関係を持つておるかということが、又もう一つの要素としてあるわけでございます。これは、もつと平たく申しまするならば、日本の沿岸の資源に対してアメリカ及びカナダの漁船がどの程度の漁業の可能性を持つておるかということと、それからアメリカ及びカナダの沿岸に対する資源に対して日本の漁船がどの程度の漁業をする可能性なり力なりを持つておるかという現実の関係がございます。従いまして抽象的に、理論的にこの条約を作るといたしまするならば、米加の沿岸のさけ、ます、おひよう、にしんという資源について必要な科学的なデータ、科学的なと申しますのは、生物学に基礎を置いたという意味だと私考えますが、そういう資料に基いてこういう漁業の抑止という問題が起りますれば、それと理論的に申しまするならば同じ立場で、日本の沿岸の漁業資源に対する米加の抑止という問題があるわけでございます。ただ先ほど申しました現実のそういう可能性の問題と絡み合せて考え、又日本の漁業の立場から申しまするならば、こういう漁業の抑止と公海における権利を抑制するということは相当厳しい条件がなければならん。従いましてこういう抑止をするというものは最小限度に限りたいという日本の立場がございます。これはむしろ今後米加以外のアジア諸国との間の漁業の話合いの際に問題となつて来るわけでございます。こういう日本の立場を総合して考えますならば、そういう日本沿岸の漁業資源について今直ぐこの協定にそういう抑止の規定を盛り込む必要はないというふうに私どもは判断をいたしたわけでございます。
○兼岩傳一君 今の説明ではちよつとわかりにくいですね。だつてあなたの言われるのは、ほかの国があるからアメリカやカナダに対しては一方的に譲歩しておくのだ。それはその他の東南アジアの国々の関係があるのだと言われますと、そういうやり方だと利益するのはアメリカ及びカナダであり、不利益をこうむるのは日本及び東南アジアだということになつて、そんな片務的な条約を科学という名において合理化するということは許されないことだと考えるですね。科学的というのを生物学的という程度にとつて見たつてですよ、それは無論アメリカやカナダのほうが、私も科学者の一員としてわかるのですよ。その遥かに基礎のある科学的な方法・自然科学的な基礎に基いて漁業をやつておるということはわかりますよ。それだからといつて日本が無条件に、向うは広大な区域に亙つて保護をする権利を持ち、日本側はそれに対して何ら制限を受けない、制限することができんということは、少しも合理化する理由にならないでしよう。
○説明員(永野正二君) もう少し説明を具体的に補足さして頂きたいと思うのでありますが、この条約で問題になりました抑止の魚種であります。魚種につきましては、非常に古い保存措置の国際的な沿革があるのでございます。というのは、北太平洋のハリバツトの保存条約という国際的な保存の実績が大正の末期からある。それからさけにつきましても、昭和の初めから同じような国際的な保存措置の認められた実績がある。この保存措置そのものが科学的根拠に基くものであることは勿論のこと、それ以外に国際的にもそういうことが承認されておつたという歴史的な沿革があるのでございます。これに対しまして日本沿岸の資源につきましては、我々日本の水産を扱つておる者といたしましても、勿論いろいろな資源について或いは満限に達しておる、或いは満限に達しておるんじやないかというような資料、これはいろいろ主観的には十分主張はできるかと思つたのでございますが、こういう点について国際的に主張のできるようなそういう歴史的な科学のデータが実はこの条約起章のときに揃つておりません。こういう関係もございますし、又先ほど申上げましたように実際問題として、現実の問題として、この条約に日本沿岸の資源についての相手国の抑止ということを主張するだけの必要性を私どもとしては認めなかつたということでございます。
○兼岩傳一君 日本の沿岸のほうへどのくらいアメリカとかカナダの漁船その他、アメリカ、カナダですね、この際当面の、来ているんですか、全然来てないんですか。
○説明員(永野正二君) 幕末から明治の初めにかけて沿岸の捕鯨に対してアメリカの漁船が参つたのでございますが、その後我が国でも沿岸捕鯨業が起りまして、現在ではアメリカ、カナダの漁船が日本近海の資源に対して操業しておるということはないと私どもは考えております。
○兼岩傳一君 どのくらいまでですか、沿岸どのくらいまでは来るが、どのくらいまでは来てないかということはどうですか、全然来てないのですか。つまり太平洋どの位までしか来てないのかということをもうちよつとはつきりして頂きたいですね。
○説明員(永野正二君) 沿岸の資源が満限であるというような問題になつておる魚につきましては、全然と申してよろしいと思います。日本側の資源で満限に達しておると或いは達しておるんではないかという疑いのあるような資源については全然アメリカの漁船は来ておらないと申してもよいと思います。
○兼岩傳一君 あなたは技術者か、ちよつとお尋ねしますが、あなたは専門家ですか。そういう答弁は専門家でなければ、専門家に代つて答弁して下さい。そんな抽象的な……、今議題になつておるのは、明らかにさけ、ますについては東経何度から何度、それからハリバツトについては何度という、極めて条約は具体的な内容を持つておるのに、日本のことを尋ねると、あなたは俄然そういう抽象的なことを言うのですが、一体あなたは日本の官吏じやないのですか、あなたはどうして日本のことをもつと具体的に説明できないのですか。
○説明員(永野正二君) 具体的に御説明申上げなくて申訳ございませんが、大体日本の沿岸で資源が一ぱいになつておりはしないかと私どもが考えております資源は、例えば底曳網の対象になる魚でございます。これは日本沿岸、内地沿岸のものもそうでございますし、或いは東支那海方面のそこの資源もこういう問題があるのであります。こういうものにつきまして私申上げたのでございますが、アメリカの漁船が最も日本の沿岸に近くまで来ております漁業の種類は恐らくまぐろ漁業であると思います。まぐろ漁業につきましてはハワイの周り、ハワイから日本側へ大体二百海里見当と存じますが、その見当はアメリカの漁船が出漁いたしております。併しながらこれは日本の沿岸から遥かに遠くであることは勿論のことでありますし、まぐろにつきましてはこういうこの条約で考えておりますような、資源に対して漁獲がもう相当限度一ぱいに参つておるというふうには考えておりません。これは我々も考えておらないのみならず、この条約に出て来たアメリカ、カナダ側も同様に考えております。つまり満限という問題はまぐろにはないわけでございます。
○兼岩傳一君 その他はどうですか。つまりですね、僕が尋ねておるのは一方的に太平洋の向うだけ制限して日本の沿岸については何ら制限しなくてもいいという論拠を明確にして欲しいというわけです。具体的に今あなたはまぐろについてだけ言われたのですね、ハワイから二百海里程度までに出ておる、これは日本から言うと何海里になるのですか、日本を元にして言つて下さい。あなたも日本の官吏ならもう少し日本のことを答えろ、説明員を取代えなさい。よその国のことばかり説明できて、日本のことは説明できない説明員は……。
○説明員(永野正二君) 日本沿岸から約三千海里弱だと思います。
○兼岩傳一君 その他はどうですか。そういうまぐろだけ、偶然的にまぐろだけ言わないで、向うが全面的に規定しておるのだから、日本の沿岸についても全面的に且つ具体的に且つ量的に答弁しなさいよ。それでなければ説明員を取代えて下さいよ、説明できる人と……。
○説明員(永野正二君) まぐろ漁業が最も日本の側に近く来ているアメリカ側の漁業でございまして、ここに問題になつております、例えばさけの漁業を申しまするならば、これは殆んどアメリカ側の領海の中の漁業でございます。それからハリバツトの漁業は、距岸から三、四十海里の限界内の大陸棚の中で行われております。それからアメリカの沿岸にございますにしん、いわし、かつを等の施網の漁業でございますが、これは南アメリカのほうへは相当遠くまでアメリカの漁船が参つておるようでございます。ペルー、コロンビヤのあたりまでアメリカの漁船は参つておりますが、今ペルー、コロンビヤまで参つておると申しましたのはまぐろの漁業でございます。その他のにしん、いわし等の施綱の漁業は、大体アメリカ側から申しまして距岸百海里以内こちらから計算いたしますと、四千海里前後ということに相成るかと思います。
○兼岩傳一君 そうすると以上の説明を総括してですね、アメリカの漁船は日本の沿岸二百海里なり三百海里なりの近くへは来るのは絶無であるというふうに考えていいんですか。そういうふうに了解していいんですか。
○説明員(永野正二君) さように私は了解いたします。
○兼岩傳一君 従つてこの日本側はですね、先方はこういう制限を受けても、日本側は制限をしなくても日本の漁民の保護は完全であるということになりますか。
○説明員(永野正二君) さようでございます。
○兼岩傳一君 そうするとあなたの科学的云々ということは要らんじやありませんか。あなたは初め科学的云々という言葉で説明されましれけれども、現実がそういう理由がないならば、何もその科学的も何もないんで、もう事実に即して日本側は制限の要なしと、アメリカ及びカナダが一方的に制限をされても、日本の漁業については何らの問題ないと、こういうふうに理解していいんですね。これはあとで変るとですね、この説明は今後の法案の審議の基礎になるんですよ。
○政府委員(石原幹市郎君) これは只今ずつと話しのありました我がほうの地域にはアメリカ、カナダ等が漁業繰業の大体事例がないということと、いまいつは、こういう抑制区域を作つたり或いは暫定線にしろ、線を引くというようなことにつきましては、この十分な科学的、技術的の調査並びに資料に基いたものでなければ、将来又他国との間でこういう問題が起りました際に、漁業資源保護という立場からは結構でありまするが、むやみやたらにそこらに線を引かれたのではこれは困るのでありまして、そういう十分な、何人が見ても尤もであるという資料並びに調査に基いたものでなければならぬ。こういう二つの見地から今回の交渉、協定が行われたのであります。
○兼岩傳一君 ところが説明員の説明によれば、いずれも数千海里の沖合であつて、日本の漁民が何ら影響をこうむらないということが明瞭なら、科学的だの何人からどうだのと、いうような説明は一切要らんじやありませんか。
○政府委員(石原幹市郎君) 私が最初申上げましたのは科学的、技術的調査資料に基いてやるんだということと、それから一つこれは私の説明で言落しておつたのでありますが、先方の繰業の事例がない、こういう二つのところから、日本のほうにおいては今回は抑制区域を設けなかつた。併しこれは将来互いの研究によりまして、或いは事情の変化等によつて、必要があり、いろいろの材料、資料、調査が整えば日本においても当然堂々と抑制区域を設けていいのであります。
○兼岩傳一君 私は政府は日本国の漁民の立場に立つて物を考え、且つ答弁してもらいたいし、我々もそういう角度から質問をして行くのが日本の国会議員として当然だと考えますから、この問題について一応僕の第一の論点としては、最後的にもう一遍確認しておきたいということは、この際技術的、科学的云々ということは何です。日本の漁民は何ら……。アメリカ及びカナダの漁船について日本の近海において日本の近海ですよ、日本の数百海里の範囲の近海には来ていないんだと、こういうことをはつきり確認してよろしいですか。従つて日本側には制限が何ら今回与えられなかつたんだと、こういうふうにあなたの説明をはつきりしておいてもらわんと……。
○政府委員(石原幹市郎君) これは私が先ほどからずつつと言つておりまするように、漁業操業の事実が例がないので、差当りその必要も感じなかつたということと、いま一つは、こういう抑制区域等を設けるに際しては、これは十分なる調査或いは科学的、技術的研究資料の結果でなければ互いに線を引き合つて、いろいろな主張を仕合うということになつた場合にはこれは非常に困るのであります。そういう二つの観点から、日本としては只今のところ抑制区域を直ちに設けるようなことをしなかつた、こういうことでいいと思います。
○兼岩傳一君 あとの説明は要らんじやありませんですか。でなければ原因がないんだから結果はないんだという説明で済むんじやありませんですか。なぜそういうことを何か思わせぶりなことを附加えられるのですか。
○政府委員(石原幹市郎君) これはやはり公海自由の原則の確立と、それから漁業資源の保護、延いては公正なる社会的に漁業の発達を期するという意味の上からいたしまして、公正なる十分なる調査資料等に基いていろんなことをやらねばならぬと思います。私はやはりあとの説明も、考え方も必要であろうと思います。
○兼岩傳一君 現に来ていなければいいじやありませんか。来てないものに制限を設けないのは当然ですから、だから来てないという事実を確認をこの際はされるかどうかということですよ。
○政府委員(石原幹市郎君) 来てないからというので、むやみやたらにそこいらに線を引き廻されたんじや、私はこれはいかんと思います。私は先ほど来から申上げておる答弁以外に答弁で私の言うことはないのであります。
○兼岩傳一君 来てないのですね。来てないわけでしよう。
○政府委員(石原幹市郎君) 来てないことは事実です。
○兼岩傳一君 よろしい、それじや次に移りましよう。それでは第二の質問に移りたいと思います。 それではやはり日本の沿岸漁業保護という立場からの第二問なんですが、これは私が条約委員会のときに、主管は農林大臣かと思つて尋ねましたら、大蔵大臣だそうで、飽くまでもその資料を要求いたしましたところ、言を左右に託して今日に至るも私の要求の資料を出していない。今回この資料を提出しない以前にこの議案を審議することは私できぬという強い要求、根拠を以て資料を要求した。それはアメリカやカナダ側にはこんな広大な制限がある。で日本側にはないと、ところがそれは船が来ない。ところが幾百方の沿岸の日本の漁民は、この演習地や実弾射撃のために十数個所の演習地で非常な迷惑を終戦以来しておるのです。戦争中はひどい迷惑をしましたが、それに続いて今度はアメリカの艦船及び飛行機の演習等々のために非常な迷惑を受けておる。九十九里浜を初め伊豆の伊東の沖合等々、これに対して私は一つ外務省で農林省と相談されて、昨年の暮の両条約の審議のときに私が要求して、未だに強引に提出してないところの資料をこの際御提出願いたい。それは日本のこの沿岸漁業の制限が何個所であり、終戦以来その補償費をどういう面積に対してどういう単価で以てお支払になつておるか。この際日米加の漁業協定が、大臣の言われる言葉によれば、友愛と対等の立場で結ばれたとするならば、この終戦以来六年、七年に亙る沿岸幾百万の漁民の損害に対してどういう解決をしておられるか。アメリカに対してですよ。問題はアメリカですよ……。これをこの際明らかにされることは、この条約の審議について私ども当然権利を持つて要求し得る、又国民に対して義務だと考えますので、今回はもうそれから半年以上もたつているのですし、すでに行政協定で合同委員会で進めておられるのですから、何個所どれだけの面積で、終戦以来漁民に対して漁区の損失に対して如何ほど払われたか。この資料を私は要求したいと思いますが、これに対して関係政府委員の答弁を求めます。
○政府委員(石原幹市郎君) 只今合同委員会等におきましても関係各省から専門家が出まして、それぞれ区域の決定等をやつておるわけでありますが、これはまあ原則的に、何回も申しておりまするように、この安全保障といいますか、駐留軍の駐留目的とそれから日本の経済、産業、国民に及ぼす影響等、十分比較勘案しまして、できるだけそういうことに害の及ばないような範囲においてこれを決定して行きたい。場合によりましては時を限る、時間を限るというようなことまでやつ研究しておるわけであります。いろいろ只今折衝中でありまするので、きまつたもの等につきましては、これは資料としてその関係当局から出してもらうように、出すようにいたします。
○兼岩傳一君 私の要求は、そういうむずかしい政策に関することでなくて、事実の報告を願いたいと言つているだけなんです。過去の事実、終戦以来今日までにどれだけの面積に亙つて日本の漁区の沿岸漁民諸君に迷惑をかけられ、それに対して如何ほどの補償費を支払つておられるか、その補償費がどういう面積に対してどういうことを根拠にして幾らをお支払になつておるのかということを、終戦以来の六カ年に亙つて御提出が願いたい。日本国政府は日本国の漁民にかくのごとく誠実であつたということの事実を証明してから審議を……、証明を願いたい。これは私が半年前に両条約の時にきつくあれしましたが、若しかすると大蔵省の所管であるかも知れんと思いますが、私は農林省の水産庁の実質上日本漁民に対する行政を司つている以上、私はその責任を持たれるべきだと思うので、それは恐らくおわかりになつておるのじやないかと思うのですが、この際その資料を御提出願いたい。これを要求するわけです。事実を報告して下さればいいのです。
○政府委員(石原幹市郎君) これは農林省、それから大蔵省、特別調達庁等にやはり関係すると思いまするので、後刻そういうところをよくお打合せを願いまして、可能な範囲において資料を出すことに申入れたいと思います。
○兼岩傳一君 それでは第三の問題をお尋ねしたいのでありますが、私どもの最も実は憂うるのは、今経済的な問題の質問を大体いたしたのでありますが、私はこの政治的な問題について非常なそれに対して憂慮を持つものなのであります。それは恐らくこの憂慮がただ一片の憂慮で終ればいいんだが、やはり今後の事実が幾らかそれが出て来るんじやないか、それはこの吉田総理がダレス氏に宛てた書簡において、一九四〇年に操業していなかつた漁場では自発的措置で、そして日本の居住国民及び船舶に漁業の操業を禁止すると言つておられる、この一九四〇年が問題なのであります。この一九四〇年は一九四一年の第二次世界大戦勃発の前年でありまして、このときに明らかにこの日本の漁業、この遠洋漁業の向きをこの北洋漁業の方向へ向けると、つまりソヴイエトに対する漁区の攻撃の形態をとるというような政治的な配慮が、アメリカの外交として日本の帝国主義者に対して行われた、こういう事実が確認されるのであります。それで今回一九四〇年と同じ措置がとられるということは、これは我々政治的に見て、再び北洋漁業を円満に解決しないで、こういう形において表面的、裏面的な外交措置の下に北洋漁業に対して侵略的な、場合によるとアメリカの駆逐艦、日本の海上保安艇の保護という形で出漁させるということが暗黙のうちに予知されるのですね。これは非常に日本の漁民にとつて不幸なことであり、平和を希う者にとつて非常に不幸なことだと思うのですが、この一九四〇年が問題になつた、その政治的事情について一つ次官から、若し次官で説明できなければあとで大臣に聞きますが、如何ですか、そういう点の明確な一つ……。
○政府委員(石原幹市郎君) 一九四〇年をとつたということについて特別の政治的意図というものはございません。ただ一九四〇年というのは、日本が水産業において最も正常なる発達を遂げておつた時でありまして、日本の一番水産業として伸び切つておつた時、これを採用したようでございます。
○兼岩傳一君 ところがあなたが口の先でそういうことを言われても、現実において日米加の漁業協定を行われる。ところが北洋漁業に対しては何らの手が打たれないどころか、ソヴイエトの代表部は帰つて行つてくれとか、さまざまな乱暴、将来これは喜劇的或いは悲劇的というふうに見られるでしようが、そういう驚くべき暴挙を盲蛇に怖じずに吉田内閣の外務当局がやつておられるのですが、一方においてはそういう盲蛇の傲慢な、国際協定を無視する帝国主義者の尻馬に乗り、一方においてはかくのごとく屈辱的な、科学の名において屈辱的な協定をしておる。而もその基礎が四十年の、この吉田氏からダレス氏に対する書簡が明瞭にしておるように、これは書簡というより、これは一札の詫状のようなものなんですが、恥ずべき文書なんですが、この恥ずべき文書によれば、この四十年の漁業操業が基礎になつておるということは、明らかに第二次大戦の前夜の四十年が再じ第三次大戦の準備のために、この漁業問題がその一環として使われているということを具眼の士なら、それほど具眼の士でなくつてもこれはわかるはずだ。わからないのは日本の外務当局だけですね。この点は一つ次官ではちよつと工合が悪いですか。
○政府委員(石原幹市郎君) 悪くない。
○兼岩傳一君 悪くないなら一つ明快にお願いしたい。だから、僕のは抽象的な質問じやないですよ。日米加にはこのような形態をとりながら、日本の漁民及び漁業経営者の真に希望するところの、真に魚の宝庫というべき北洋漁業の問題には喧嘩をして、傲慢無礼な、そんな国際協定を無視する形態に出ておる、一方は屈辱的な形態に出ておる。それが一九四〇年が標準になつておる、第二次大戦の前夜が標準になつておる。これは明らかに第三次大戦の再び繰返しの形態をとりつつあると言われて、それをそれは間違つておるということを一つ御教示願いたいんです。
○政府委員(石原幹市郎君) この一九四〇年の関係は前申上げた通りでありまして、日本の一番実積の多いと言ふか、一番いいところをとつたということであつて、それ以外に何ら政治的意図、目的、何もございません。 それから今回の日米加のこの漁業協定は、これは見方というか、考え方によつていろいろ批判し、或いは理窟は附けられるのでありまするが、これを締結しました政府当局としては、決して屈辱的なものと考えておりません。むしろ今後のいろいろ漁場折衝が起る際には却つていろいろの主張を貫く上においてむしろいい材料になる面もたくさん含まれておるものと考えております。それから対ソ関係のことをいろいろ言われておりまするが、これは何も水産関係の問題だけで只今のような関係に相成つておるのではないので、対ソの関係についてはもう私はここで言うまでもなく、何回もいろいろ議論されておるので、附加えるところはございませんが、むしろ北洋、北方関係においては、我がほうの船舶が非常に不法に拿捕されましたり、極めて非合法にその操業区域が抑制されたりしておるという、むしろそういう現実になつておるのではないかと私は考えております。
○兼岩傳一君 あの答弁……あなたは一九四〇年が魚が一番よく取れたと言う、あなたはそういう物理的な説明をされただけで、何一つ政治的な説明をしておられんじやないか。私の聞きたいのはそれです。そういう状態と全く瓜二つの状態が、再び吉田政府の外交政策によつて魚の問題の形において再現されつつあるのじやないか、これを言つておるんです。だからそのような政治的状態、第二次大戦の前夜とまさに瓜二つの状態を出現しておられることについては、どういう政治的説明があるかということを聞いておるのですよ。
○政府委員(石原幹市郎君) 政治的意図は何もないということをたびたび申上げておるのでありまして、ないから政治的意図について何も説明してない、できないのでありまして、政治的意図は何もありません。
○兼岩傳一君 あなたはないけれども、あなたの御主人公はお持ちになつておるのですよ、明確に。ペンタゴンは明らかに持つておるということは、これは瘋癲白痴でないならば、例えば日台条約であの第七艦隊が台湾をとぐろ廻つてることだつて、朝鮮にアメリカの軍隊が現に侵略しておるということだつてわかるじやありませんか。だからそういうことはほかのときに論じますが、今漁業協定において本当に日本の漁民を愛し、日本の漁業経営者のためを図るならば、まさに北洋漁業の問題こそ問題の本質じやありませんか。ところがそれは全く白紙の状態にしておいて、そうしてこの日米加の漁業をれいれいしく取上げて、而も広大な区域で而も区域というのを明確にしたのは、非常に広大な区域を明確にして、沿岸は幾千キロメーターに亙る部分は随時に変更できるようなことをしておいて、而もあなたは先ほど不法ということを言われたが、ついでにその不法という意味を説明して下さい。私は先般或る党の議員とこの漁船問題については代表部の政治顧問に会つて、この漁船拿捕の問題について聞いたのですが、私の考えていた以上にはつきりわかつたのですが、一体あなたは今不法と言われましたが、不法という意味を一つ正確にして下さい。責任ある次官として、どういう意味ですか、不法というのは。
○政府委員(石原幹市郎君) 不法と言つたか不当と言つたかよくわかりませんが、つまりマツカーサー・ラインならマツカーサー・ラインがありました際に、司令部がつかまえるとか、或いは日本の監視船というか、監視の立場にある者がつかまえるとかいうことならばいいと思うのでありまするが、領海侵犯という事実があれば格別でありますが、その他の場合にいろいろ拿捕されたり或いは向うへ連れて行かれておるというようなことはまあ不法というか、或いは不当というか、これは一つの行過ぎではないかと思います。
○兼岩傳一君 そうするとあなたは不法という根拠は、マツカーサー・ラインを越して拿捕されておるという、こういう御見解ですか。問題は、つまりマツカーサー・ラインを標準にして不法とか不法でないとか言われているのですか。
○政府委員(石原幹市郎君) まあ越したといいますか、越したか越さないかわからないような場合にもいろいろ拿捕されたというような事例もあるようでございまして、まあそういうことをひつくるめて不法と言いましたか、不当と言つたかわかりませんが、とにかく……。
○兼岩傳一君 きめなさい、きめて下さい。あなたは不法と言いましたよ。その部分を再生してもいいです。ほかのかたに聞いて御覧なさい。いいじやありませんか、不法でも不当でも、不当に直して上げてもいいですよ、明確にしなさい。不法とか不当とかいう根拠を。
○政府委員(石原幹市郎君) まあ不法でもあり不当でもあると思います。
○兼岩傳一君 だからそれをなぜ不法である、不当であると言うか。
○政府委員(石原幹市郎君) 先ほどからずつと申上げておることで御了承願いたいと思います。
○兼岩傳一君 余り了承できませんね。マツカーサー・ラインの問題であなたは不当、不法と言われるのですか。それとも領海十二海里の問題について言われるのですか。それとも領海が十二海里、近い所で、その中間の線から中に入つたとか出たとかいう点で言われるのですか。いいですよ、専門家の意見で……。次官でなくて結構ですから、一つ専門的に補足をして下さい。
○政府委員(石原幹市郎君) 四月二十八日といいまするか、講和発効のあのときまでは大体マツカーサー・ラインが基準になると思います。その後は我がほうといたしましてはつまり領海の線がそのラインになると思います。
○兼岩傳一君 領海といいますとどういうふうに理解しておられますか。ソヴイエト側の領海をそれは日本できめるのですか、ソヴイエト側の領海を……。
○政府委員(石原幹市郎君) まあ国際法の概念から言えば三海里というのが、普通の領海をきめる一応の原則になつておると私解釈しております。
○兼岩傳一君 だからあなたはその三海里までは行けるんだと、それでカナダのほうは数百海里に亙る厖大な禁止があつて、ソヴイエトのほうは国際法の概念とやらに従つて、これを一緒に論ずれば長いことですが、あなたの説によると、概念とかいう言葉によつて三海里まで日本の漁船は行け得る権限がある。ところが三海里までに近付かないうちに、十海里ぐらいの所で拿捕されたと、だから不当だと、こういう意味ですか。
○政府委員(石原幹市郎君) 今回のアメリカ、カナダとの関係、この取極によりまして、特定魚種についてその資源満限の場合に、魚族、漁業資源保持のためにこういう特別取極をしたのでありまして、取極のない国々との間におきましては国際法の一般の原則、慣例に従つて公海の間においては操業し得るものと我々は解釈いたします。
○兼岩傳一君 そうするとカナダは沿岸数百海里に亙つてさけ、ますの広大な魚族保護をしてもよろしいが、ソヴイエトは日本の漁船のために国際法の概念とやらいうものによつて、三海里以外は全く日本の漁船は出漁自由である、これについて拿捕すれば不法拿捕であるという、こういう御見解ですね。
○政府委員(石原幹市郎君) そこで私は先ほど申しましたように抑止区域を作るとか、線を引くとかいう場合には十分な研究資料、調査に基いた結果によつてこれはやらなければならぬ。アメリカ、カナダとの間にもただむやみやたらに線を引いたとか、自発的に抑止をしたとかいうのではないことは、もうこの漁業条約を数日に亙つていろいろ審議されたところで十分おわかりと思うのであります。そういう特別の取極もない国との関係におきましては、一応国際法の慣例、原則に従つて公海の間においてはこれは当然互いに操業し得るものと思います。
○兼岩傳一君 相手国が承知しなくても、戦争で敗戦国であつて、その勝利国と何らの条約を結ばないで、平和克服の条約を結ばないで、それに従う通商航海の条約も結ばないで、国際法のどつか大学教授か何かの教科書に書いてある三海里というものを金科玉条にして、何らの相手方の関係を顧みないで、権利があると、それを何かするのは不法であると、こういう御見解ですか。
○政府委員(石原幹市郎君) 先ほどから私の考えておることはもう大体言い尽したように私は思います。
○兼岩傳一君 一つも言い尽しておりませんよ。
○委員長(有馬英二君) 兼岩君に御注意申上げますが、他の御質問がありましたら更に御質問進行をお願いいたします。
○兼岩傳一君 委員長、あなた外務委員長でしようが、一方の国に対して正当であり他国に対して不当であると、私は何も公平な論理、整然たる議論、科学的な議論ならいいですよ。一方に対しては、この図面をあなた拡げて御覧なさい。この広大な区域に亙つてカナダに対しては制限する、そうしておいて、片一方には制限がない、不法であるということが、責任のある外務次官が言つて、その不当であるという根拠を明らかにすることに対して、あなたは委員長として聞いていて、どちらが不正義であるか、僕の質問の趣旨が間違つていたら議事進行上僕の質問の悪い点を改めます。同時に政府は自分の言つたことが不法である、不当であると言つたからというなら、論拠をこの際明確にずる。ここは国際関係を扱う外務委員会でしよう。国際的に不法である、不当であると政府は宣伝しておりますよ。これは石原君がひとり発言されたことでもなく、むしろ控え目に石原次官は言つておられる。やつぱりここは明快にしてもらわんと、この審議が進めないじやありませんか。まだ僕聞きたいことたくさんありますよ。ありますけれども、これは問題の核心ですよ。日本の漁業問題の三分の一を占める重要な問題ですよ。北洋漁業の問題は……、明確にしておきなさいよ。不法の拿捕の概念をきちつと規定しておきなさいよ。
○政府委員(三宅喜二郎君) ソ連との関係について申上げますが、御承知のように休戦状態にある次第でございます。休戦中におきましては、例えば司令部の指令によるマツカーサー・ラインといつたような制限がありません限り、そうしてその制限を破らない限りは、公海において漁業に従事しているような船舶を拿捕することは休戦国としてできないことになつております。
○兼岩傳一君 それはどこでもですか、あなたも三海里説ですか。
○政府委員(三宅喜二郎君) まあ国際法におきまして各国間に一般的に認めておる最小限度の領海というものは三海里でございます。ですから三海里が一般に認められた領海であります。
○兼岩傳一君 それはソヴイエトは承知しておるのですか、その条文を一つここに提出して下さい。僕はこれを聞くためにここでちよつと明らかにしておきます。ちよつと言いかけて途中であれでございましたが、或る党の議員の希望を容れまして、先般代表部の責任のあるパウルイチエフ政府顧問にこの問題についてお尋ねしたいと言われるので、私も一緒に行つたのでありますが、そのときに聞いてみましたところ、氏は我々はマツカーサー・ラインというものはもともと認めないんだし、あれがあつたときにもあんなものは問題にしてないし、あつたんだのなくなつたんだのは全然問題にしていないんだ。併し十二海里という、ソヴイエトの建国以来の十二海里という主張に対しては何らこれを譲るべき理由はない。従つて日本の漁船が拿捕されたのは、この十二海里の線を突破したものであると、こういうふうに成る党の議員に対して答えられたのであります。それで僕はその点は多少従来マツカーサー・ラインと領海の関係について不明確な考えを持つていたけれども、その点非常に明快になつたのであります。ところがその議員は非常に狭い海峡などで十二海里以内の場合にはどうなるかという質問がありましたときに、それはその陸と陸との中点をとるんだということ、だからその場合には十二海里よりもずつと狭まつて来るということ。それから第三に、拿捕した漁船が故意でなくて、最近はずつと船が行くと自動的にその深さが出るんだそうでありますが、そういうところは、写真とか軍事上のスパイの目的を持たない、善良な意思の漁船が、たまたま誤つて流されて来たという者に対しては侵入とは認めない。これは調査して返すんだというふうな点をその議員に対して答えられたのでありますが、これに対してあなたは三マイルであると、それから三マイルを越した部分についてはこの魚族の保護も何も認められない。何故ならば休戦状態にあるからという説明ですが、この三マイル、休戦状態だということには議論がありますが、それは触れないとしてこの三マイルということはソヴイエトが承認しておると、こういうふうな根拠はどこにあるのですか。
○政府委員(三宅喜二郎君) ソ連が従来領海の範囲として十二マイルを主張しておることは私どもも承知しておりまするが、それはソ連の一方的主張でございまして、国際間に領海に関する国際法上の原則として一般に認められておりません。日本も認めておらないのでございます。ですからソ連が国際法上の権利として主張するという根拠はないのであります。従いまして日本といたしましては、それを尊重する国際法上の義務はないと、こう考えるのでございます。 それから第二の点、細かい点でございますが、狭い所は陸と陸との中間というのは、それはそのように私どもきまつておると思うのでございます。国際法上そういうふうに当然の原則としてきまつております。
○兼岩傳一君 それは学説としてのあなたは三マイルを言つておられるのですか。拘束力のある国際協定として言つておられるのですか。国際協定でないものにソヴイエトが従わなければならん根拠はどこにあるのですか。
○政府委員(三宅喜二郎君) それは単なる学説ではございませんで、国際法上そうなつておるのでございます。
○兼岩傳一君 いや、国際協定であるかどうか、つまりそれにソヴイエトが服従しなければならん義務を、何年にどういう条件で負つているかということ。
○政府委員(三宅喜二郎君) 国際法の原則は必ずしも条約できまつてはおらないのでございまして、一般に認められました国際慣習法というものがございます。領海に関しましては国際慣習法できまつております。
○兼岩傳一君 そんなものは、そうするとあなたは一国の独立性というものは、あなたの議論によつて認められないのですか、領海について世界のおきめを願うのですか。日本国が承知できない領海を日本国は盲従しなければいけないという論旨になるのですかね。
○政府委員(三宅喜二郎君) 領海のごとき国際的な利害関係と申しますか、関係のあります事項は、一国だけできめるんではございませんで、これはいわゆる単なる国内事項じやないのでございます。他国に対して認めしめるという権利のあるものが領海なんです。ですから一国がただ主張したからと言つて、従来の国際慣習法に反したことを主張したからといつて他国がそれに従う義務はない。それをただ一方的にこうだと主張しましようけれども、他国が、それ以外の国がそれを義務として認めるということはないのでございます。
○兼岩傳一君 そうすると日本の領海については日本が承知しなくても押付けられるのですか。
○政府委員(三宅喜二郎君) 日本はまあ従来から三マイルを……。
○兼岩傳一君 いや、仮に問題を明快にするためにその国が承知しなくても従わなければならないという根拠はどこにあるのですか。おのおのの国がおのおのの立場を持つていると、領海についてもその原則がどうして押付けられるのですか。
○政府委員(三宅喜二郎君) 領海の範囲ということは国際法上の問題でございますから、一国だけがそれに反対したつて、他国が、文明国の大多数の国かそれを承認しなければ国際法の原則にはなつていない。だから一国の主張は一方的な主張に終るわけです。
○兼岩傳一君 それは義務を負うと、そういう権利と義務が併行してなければ負うわけでないのでありまして、私はそういう三マイルというものが強制的に一つの国に押付けられるという根拠については、あなたの説明では全然納得できないのです。具体的な説明がなければ、何年の、例えばちやんとその調印しなければですね、そういう義務を負うという……一国の領海問題でしよう、領土の問題でしよう、だから無論一国だけできめられる、これはソヴイエトの問題としてではなくていいですよ。日本の問題としてでもいいですよ。一国が何海里ということを明確にするためには、国際的な関係とその国の関係と両方が一致しなければ成り立たんじやないか。あなたの説によると、その国が承知しなくても押付けられるとすれば、そのような国際的な機関の中に加盟して、そのような制裁を受けるということを承知してなければ成り立たんじやありませんか。
○政府委員(三宅喜二郎君) その点は私先ほど申上げましたのですが、国際間におきましても、条約で領海の範囲を明定しようじやないかという試みもあつたのですが、各国の主張が異りまして、例えばソ連のように十三海里を主張するのもあり、六海里を主張する少数の国があつたのであります。併しみんなが同時にそこでは条約にすることには同意が成立いたしませんでしたから、条約としてはありませんが、国際慣習法として、全世界の国とまではそれは行きません、文明国の大多数の国が認めた、破るべからざる法であるとして認めたものは、やはり国際慣習法として成立しておると、こう見なければならないのでございます。
○兼岩傳一君 それでソヴイエトは承認したのですか、若し承認したとすれば何年に承認したのですか。多数決でそれが採決されて、それは服従の義務があるのですか。あとでよう研究しておいて下さい。
○平林太一君 この漁業条約に対しましては、すでに回を重ねることしばしばに及びまして、只今兼岩君からは誠に剴切なる御意見の御発表がありましたことを私どもは了といたしますが、同君の御意見に対しましては、大体結論に達せられて、政府に対しまする警告に只今進まれておるようであります。でありますから、兼岩君はここ数回御欠席に相成つておるのでありますが、それらを勘案いたされまして、この兼岩君の極めて識見高邁なる御警告は、本委員会の討論の場合或いは本会議の討論におきまして十分に展開せられるようにやられることが妥当であろうと私は信ずるのでありますが、委員長におかれましては本漁業条約に対しましては、もはや質疑も大体終了に近きものと私は考えるのでありますが、これが討論の段階にまでお進みに相成るようこの際お取計いを願つて然るべきではないかと、かように思うのであります。一応申上げたいと思います。
○兼岩傳一君 大分終りに近づいて来たことは僕ももう認めるのですが、審議はやはり尽す必要があると思うのですが、私の今問題にしておるような問題はすでに明らかにされて、私が今質問しておるのはすでに明確にされてしまつたことを、私がたまたま又出席……最近ちよつと一両日、一、二回欠席したためになつておるというならば、僕も考え直したいと思うのですが、その点如何ですか。今のその問題は果して明らかになつているのですか。仮にこれとの関連において明らかにならなくとも、すでに過去において明らかになつているとか、近い将来にこれによつて明らかになるとかいうふうの考えでも委員長がお持ちになるならば、僕も議事進行上考えてみたい。
○曾祢益君 私自身としてもまだ外務大臣に申上げたいものがありますので、いずれにしても質疑打切りというような動議をお取上げになるならそれは反対であります。兼岩委員においても成るべくを簡潔に質問を続行して頂きたいと思います。
○兼岩傳一君 大臣が来られたから、その点大臣の所見を質したほうが私はいいじやないかと思いますが、次官及び他の説明員との間においては、大体考えの程度がはつきりいたしましたから、大臣が御答弁願つたらどうかと思います
○委員長(有馬英二君) 兼岩君に伺いますが、大分時間が進んでおりますが、およそどれくらい兼岩君の時間はかかりましようか。
○兼岩傳一君 若し他の委員があれば、僕はここで中止してもいいですよ。大臣も来ておられるし……。
○委員長(有馬英二君) ほかの委員の諸君は……今曾祢君がまだ発言を要求されておりますから。
○兼岩傳一君 私は大臣の都合を勘案して、私はこの程度で、曾祢議員その他の議員のあとにして頂いても結構です。問題が他の角度から闡明されれば……。
○委員長(有馬英二君) いや、別にそういう意味で申上げたのではないわけです。(「何か質問があるのじやないか」と呼ぶ者あり)大体の時間を勘案して……。
○兼岩傳一君 それは委員長やつてみにやわからんと思いますから、相手次第ですから、相手が明快に、質問なんですからね、私どもは質問しているので、それを明快に答えてさえ下されば……。
○委員長(有馬英二君) それではどうぞ続行をお願いいたします。
○兼岩傳一君 私は前からずつと関連してないので、外務大臣にこの話が唐突になるようですが、この日米加の漁業協定が一方においてかくのごとく、私の理解によれば一方的な形態において行われており、これが一九四〇年の、吉田総理のダレス宛の手紙で、四十年の状態の再現であり、これは日本が好んで米ソの対立の中に火中の栗を拾う、漁業問題を通して火中の栗を拾うという態勢がまさに着々として漁業問題においてもできておると考えなきやならん。この点私は説明を繰返す必要はないと思うのです。現に五大水産会社の出漁というものが北洋漁業に対しては問題になりまして、我々はそれが行われるかどうか非常な注目を払つていて、或る社のごときはその準備をすつかりしたけれども、或る事情のため中止になつて、そうして非常な大きな損失をしておる。それで大臣にこのソヴイエトとの北洋漁業の問題とこの日米加の漁業問題の関連をお尋ねをする前に、この点について或いは大臣でなくして水産庁のほうがいいかとも思いますが、北洋漁業のほうにああいうような重大な事柄を行われたということについては、もうすでに説明どなたか他の委員から聞いておりますか、まだでしたら簡潔に……。
○政府委員(土屋隼君) 只今お答えを申上げますのにちよつと御質問の趣旨をもう一回伺いたいのですが、何か北洋漁業につきまして大会社がやめるとかやめないとかいう事情が、非常に抽象的でありましたので、実はわからんのでありますが、そういう問題について論議が仮にかに工船の問題であるといたしますと、すでに一度出ました、そうでなければ出ません。
○兼岩傳一君 これはかに工船の問題ですが、北洋漁業のほうに条約がないために、私の質問の要点は、このまあ条約そのものに僕らは賛成しておりません。こういう屈辱的な一方的なものに賛成しておりませんが、一方ソヴイエトとの間に漁業協定を結ばれないためにかような困難が経営者や漁民の間に起つているじやないか、こういうふうにあの問題を僕らは見ているんです。そうじやありませんか。例の不法拿捕の問題もその一つですが、もう一つ現にかにの場合でしたが、もうすでに出漁の状態まで整えて、中止したりいろんな経緯があつたじやありませんか。
○政府委員(土屋隼君) その問題は私どもの承知します限り、対ソ連関係の沿岸ということよりかは、米加の海岸に対しましてかに工船を出すか出さないかという問題が二月頃ございまして、その節講和条約の発効の時期もはつきりいたしませんでしたから、事前に整えて、時期を外しますと却つて損失になりますので、諸般の情勢を考慮いたしまして、講和条約発効前であり準備が整わないからという理由でかに工船は、プリストル湾に対するかに工船は取りやめたいきさつがありますが、今兼岩議員の言われるのはその問題じやありませんか。
○兼岩傳一君 それで大臣にお尋ねしたいのでありますが、この日米加の漁業協定が一方においては行われる、ソヴイエトの方面はブランクであつて、あなたの最も得意としておられる三十七万の捕虜問題と、最近又十八万の高良電報の偽電報が大分新聞で賑わしておるようですが、大分そのときお得意の模様だつたが、大体偽電報だということもはつきりしたようですが、その次に不法拿捕ということで、必要とすれば実力を以てでも出漁というような態勢のかまえなんですが、そういうことを今後一体続けられると、この条約の締結を契機として一層対立が激化して参りますが、一体あなたは、外務大臣は、この北洋漁業の問題についてどういう考えを持つておられるか、この日米加漁業協定の提案との関連において一つその点を明らかにして頂きたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) この日米加の漁業協定は日米加の間だけの漁業の条約でありまして、ほかのほうには何も関係がありません。これだけのものとして御研究を願いたいのであります。
○兼岩傳一君 大臣の御教示によつて研究の方針を我々はきめるのではなくして、政党の方針に基いて審議するのでありますから、そういう政府の御訓示はお断りしたいと思うのです。僕はこういう日米加の漁業協定を結ぶ以上は、これと関連してこれよりも遥かに重要性を、日本の漁業政策からいつて遥かに比較にならぬ重要な関係を持つておるこの北洋漁業との関係をどう解決し、どう調整し、解決するかということを私は当然質したいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) それはそれで別の問題であります。
○兼岩傳一君 大臣が別の問題であるとしたつて、僕は別の問題でないと考えて質問するのですから、日本の漁業問題の立場から問題を質問するのに、別の問題とは何ですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 質問があつたからお答えしただけであります。私も答えるのは自分の考えを答えるのは自由勝手です。
○兼岩傳一君 僕はこういう米加と一方的な屈辱的な漁業協定を結ぶと同時に、よりこれよりも近い、あなた方の言葉で言えばより善隣、隣国であるところの、善隣友好の、いわゆる隣国であるところの、而もこれより遙かに重要な意味を持つている漁業協定に対して何らの方針をこれと関連して明らかにしないというならば、僕はその答弁のあるまで待つています。
○平林太一君 只今兼岩君、私の議事進行に対する発言に対しまして欠席をいたしておつたから考えてもいいというようなお漏らしがありましたが、それに対しまして曾祢君からはなお質疑の用意があるとの御発言がありましたのでありますが、この際只今の状況は、兼岩君と外務大臣との間に質疑応答をいたしており、大臣におきましては今のような御発言がありましたので、これにより停頓をいたしたのでありますが、兼岩君もお待ちになつておるというのでありますが、これをこのまま空間にいたしておるということは議事の運営上然るべき措置でないと思います。でありますから、私はこの際できれば曾祢君から御用意のあるという御質疑をお進めになつて頂きまして本条約及び運営に対しまする順次今日までの径路に鑑みまして、質疑の展開を終結に導いて行くような方向で取り進めるようにいたすべきが妥当ではないかと思うのでありますが、私の議事進行といたしまして、委員長にこの点申上げて然るべくお計らいをお進め願いたいと思います。
○委員長(有馬英二君) 了承いたしました。兼岩君続いて御発言を願います。
○兼岩傳一君 発言できんですよ、大臣答えないから……。
○委員長(有馬英二君) それではほかに御発言があるようでありますから、あなたのは一時保留にいたしておきましようか……、それじや御質疑を願います。
○曾祢益君 この条約につきまして大分もはや事務当局の諸君に伺つた点で明らかになつた点もあるのでありますが、極く一、二の点について外務大臣の御所見を伺いたいと思うのです。 第一に、この条約は一つの雛型として、北大西洋の漁業のための国際条約、これが雛型になつていると思うのですが、この条約、この北大西洋条約のほうは元来が多数国間の条約であつて、それは北大西洋の漁業に関係のある主なる国によつて作られ、而もそれに加わつておらない国でも加入ができることになつておると思うのであります。一方日本のほうは講和条約の第九条によつて「日本国は、公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定を締結するために、希望する連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。」、かような条約上の義務があるのでありますので、このような条約ができたと思うのでありますが、政府の考えでは、北大西洋に関する条約と本条約とはどういうふうに違つておるか、と申しまするのは、この条約に他の北太平洋に関する漁業に関連を持つておる諸国を加入して行くという、加入を認めて行くというような構想で作られておるのか、それともそうでなくて、この条約は日米加三国だけの条約にとどめて、ほかの関係国とは個別的に別個の条約を作る、こういう初めから構想で、おやりになつておるのかどうか、この点を方針として伺いたいのであります。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは主としてこの方面の水域に特に関係の深い漁業国といいますか、及びその保存措置等を講じておる国としての問題でありまして、勿論観念的に言えば、このほかの国でも加入をしても差支えない、又できるわけでありますけれども、実益から言えば、この三国が今のところでは最も利害関係の深い国ですから、差当りこの三国でやつたわけであります。ほかの国々とは、私も専門家でないのでよくわかりませんが、例えばメキシコというような国もありましようし、その他の国もありましようが、これはおのおのその漁獲の対象となる魚の種類も違うでありましようし、今のところ将来この方面、こういう漁業が盛んになつて、競争の相手と考えられれば、これは又別問題でありますが、今のところでは恐らくこの三国でやれば、この条約に関する限りは目的を達するのじやないかと思います。併し別に加入を拒むという意味でもないのでありますが、同時にほかの国々に対しては、又特殊の魚種について必要があれば別の協定を結ぶということは無論あり得ようと思います。差当りはこの三国を考えておるわけであります。
○曾祢益君 条約の恰好からいいますと加入の規定なんかないようでありまするから、まあ実際問題としては三国間だけの条約になると思われるのです。そこでその点はさようなわけで、この条約と北大西洋漁業条約とは非常に違う、一つの条約の形式として違う点だと思うんですが、そこで問題になりまするのは、本条約の第一条の第二項でありまするが、「この条約のいかなる規定も、領水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する締約国の主張に不利な影響を与える(主張を害する)ものとみなしてはならない。」、この規定は、説明員の説明にもあつたように、これは北大西洋に関する漁業条約の規定をそのまま引いて来ておるものであるのでありますが、そこで先般外務省側の御説明によると、この規定は何といいますか、ほかの国の主張を、領水の範囲又は漁業管轄権に関するほかの国の主張を何らここで制限したり或いは害したりするものでない、そういうような御説明があつたと思うんでありますが、それは北大西洋に関する漁業条約のような、まだほかにも加入する国があるかも知れない、そういうような場合には或いはこういう条項を残して置くことも意味があると思うのであります。併しこの条約においては、実は日米加三国間だけの条約なんですから、いやしくも条約を作る以上は、この領水の範囲或いは沿岸国の公海を含めた漁業管轄権、保護地域といつたような主張に関して少くとも日米加間においては締約国の意思が明確にきまつておつてお互いに勝手に主張をし合わないという意思の合致があつてこの条約が作られるということが順序でなければならないと思うのであります。ただ今私の申上げた外務省の説明は大分前のことでありまして、或いはそういう意味でなかつたと、土屋君からだつたと思いますが、そういう意味じやないんだという御説明ならそれでも結構でありまするが、私の言わんとするところは、少くとも北大西洋漁業条約のときにはこういう規定が、ほかの加入国の加入を妨げるようなことがあつてはならないという考慮があつたでしようし、かようなあいまいな規定があることも理由はあると思うんですが、本条約においてはかような規定は非常にマイナスの結果はあるけれども、一つもそういうような存在の理由がないじやないか、かように思われる。今日又水産庁側の説明を聞きましたところが、これは相互に自分たちの主張に何ら影響ないという規定である。これはまあ勿論締約国だけの問題のように伺つたんですが、従つて日本側が、例えば今三海里説が問題になつておりますが、日本側が三海里ということの主張を持つておる、この場合は相手が米加両国でありますから、領水の範囲については実質的には意思の不一致はないと思いまするが、併し沿岸国の漁業管轄権に関する主張については、日本はそういつたような保護地域とは認めないという主張を持つておる、その主張がこの第二項の書き方によつて、日本の主張としては今後とも主張ができるのである、何らその主張を害しないというふうに御説明あつた、それはその通りであろうけれども、裏返して言うならば、アメリカ等が曾つてこの保護地域に関する主張を持つておる、今日も或いは持つておるかも知れないのでありまするが、そのアメリカが、そういう日本の公海漁猟自由の原則と言いますか、これに全然反するところの主張を持つておつたとするならば、その主張も害しない、こういう説明であつて、これでは何ら我がほうとして最も明確にしなければならないところの沿岸国のいわゆる公海における一般的な漁業管轄権、この条約の中で委員会等を作つて科学的な研究で魚族保護のためにやるというような特定な場合でなくて、一般的に包括的に公海に対する沿岸国の漁業管轄権ということについても一向その主張を引込めさせたということにならない、こういうふうな結果になるわけです。従つてこの第一条の第二項がこのままであることは、日本が他の、例えば李承晩ライン等を主張している国との交渉において、この第二項のこの書き方により日本の主張というものが非常な害を及ぼすというふうになるのではないか。 非常に長くなりましたが、第二項の規定が、果してどういうふうに解釈すべきであるか。その解釈が、私の言つたような解釈、これは私だけの解釈でなくて、政府の説明員の説明もそうでありまするが、かような条約を作つたために、実はほかに如何に立派なことを書いても、この第一条の第二項だけで非常に沿岸国の不当な要求に対して、日本がみずからの利益を守つて行かなければならない場合に障害になるのではないか、かように考えるのですが、外務大臣の御意見を伺いたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは前にも御説明があつたように、どちらの主張にも不利を与えないということでありまして、そのために北大西洋の漁業に関する条約のこの文章そのままをとつたわけでありまして、この条項が要るか要らないかという議論については、又別の御意見もあろうかと考えますが、この条項を入れたからといつて、別段この日本にとつて将来不利になるということは私はないと思います。というのは、これは雛型があつてやつたことでありまして、その雛型の解釈についてもはつきりした解釈がすでにとられておるのでありまするから、これを引用して勝手な主張をするということはこれはないはずだと私は考えております。
○曾祢益君 これは若し御研究があるならば教えて頂きたいのですが、この北大西洋ですか、このほうが正確らしいのですが、北大西洋漁業のための国際条約のこり条項は、フランスなんかはこれを留保して条約に加入しているようですが、それはどういう事情であつたか、若しおわかりだつたら教えて頂きたいのですが、いずれにしてもこの点は、勿論この点だけで日本が他国と漁業交渉をやる場合に、この点だけから不利が来るとは私も思つておりません。これは多くの意見が出ましたように、この条項ばかりでなくつて、附属書を作り、五カ年間日本側のいわゆる自発的抑制措置を約束してしまつておること、それから特にさけ、ます等についての特殊の出漁禁止区域を作つたこと等と勿論絡み合つて来るわけですが、その点附属書及び附属議定書等の問題を一応別といたしましても、この第二項を入れていることが一向邪魔にならないということは少し理窟が通らないのではないか、私たちが見るところによれば、一番いいことは領水の範囲と沿岸国の漁業管轄権に関する従来の不当な主張はしないということがはつきり謳われることであるわけですが、まあそれもできないならば、せめて第二項みたいな書き方を入れないほうが、規定がなくてそうしてすべて漁猟の制限をやる場合には、飽くまで特定の漁業管轄権地域というようなものの観念のないところの第三条以下でやつて行くのだというほうが、まあ日本のほかの国との交渉において有利だということは殆んど疑いがないのじやないかと思うのです。その点はどうなのですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと今の初めの御質問について欧米局長から……。
○政府委員(土屋隼君) 只今質問の北大西洋条約に関するフランス並びにスペインの留保の問題ですが、これは当時の会議の記録を調べてみますと、フランス並びにスペインの主張しましたのは、この条約の中に領海の範囲を設定する定義を置くべきだという議論を先に出したわけでありますが、これに対して会議の全体は、北大西洋条約の漁業条約の目的は、漁業についての協定をすることにあつて、国際法上の原則を確立することにない。従つて多少とも論議のあるこういう問題について条約自身が定義を下しても、それは条約の目的を達するゆえんにならないから、それでスペイン並びにフランスの反対意見は採択できなかつたという事情がありまして、これに対してスペイン並びにフランスは、依然として従来の主張を一応主張しましたので、留保附の批准になつたということに了解しております。
○国務大臣(岡崎勝男君) この二条もやはりそういう趣旨でありまして、ここの条約では関係国の間においては三海里という原則を前提としていろいろ協定したわけであります。併しながらやはりこの条約自体で沿岸国の漁業管轄権の主張等を左右するものでないという建前だけは明らかにして置いたほうが、将来例えばアメリカとカナダの間に何かそういう点で問題が起らないとも限らない。過去において起つたこともあつたそうであります。従つてそういう点でこの条約に関する限りは問題はないけれども、ほかの考慮もあり得るからそこで明確にする意味で領水の範囲とかそういうものはこの条約の目的ではないんだという点を明らかにしておきたいというのが趣旨であります。
○曾祢益君 これにまあ結局は見方の分れるところになると思うのですが、併し少くとも御説明ではちよつと了解できないと思うのです。領水の範囲についてはこれは勿論この条約がどれほど仮に将来日露間に北洋漁業についての何らかの話合いがきまるというような嬉しい場合を予想した場合に、依然としてこの領水の範囲の問題だけは到底解決し得るとは思わないのですが、併し日本が現に当面しておる日韓協定等の場合を考慮いたしましても、或いは李承晩ラインというものは領水とは言つておらないかも知れませんが、どうも非常にむちやくちやな主張をしておりますし、そんな関係から言つて、実は領水の範囲についてもこの条約がモデルとなるということを仮定するならば、やはり明確なものは明確にしておいたほうがいいんじやないかという気がします。併しそれはそれとして、少くとも沿岸国の漁業管轄権に関する沿岸国側の主張というものについてはこういう書き方こそ非常に日本にとつて不利なんじやないか。何らきまつておらないということをはつきりしておる。逆に言うならば、沿岸国が如何なる漁業管轄権をどんなに広範囲に主張しようが、その主張はできるんだ、日本はその主張を認めない。併しその国に対して、はつきり言えば李承晩ラインをこれによつて主張する積極的な根拠を第一条第二項の規定を挿入したがために与える結果にはならないのかとこういうふうにこれは技術上考えるわけなんです。併し外務大臣はそれはそうでない、技術的にもそうでない政治的にはもうそうでないし、技術的にもこの第二項の規定はそういう不利な影響を実質的に日本に対して不利な影響を与えないという御解釈であるか、もう一遍伺いたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) おつしやる通りであります。で、この点は当時もいろいろ研究されまして、決してこれは将来に亙つて日本に対して不利な影響を及ぼさないという結論に達しましたので、この条項を入れたわけです。で、なお例えばこの問題になつておりまする百七十五度の線というようなものがありますが、これなどを作りますと、例えばその中は漁業管轄権、或る種の魚種については漁業管轄権があるのじやないかとか、或いは沿岸の三浬という説が崩れたのじやないかというような仮に疑惑がある場合にもこの条項がありますと、そうじやないんだという反対の解釈も当然できますので我々としてはむしろ積極的に利益の面もあると考えて入れたわけなんです。
○曾祢益君 物は見方ですが、これは利益の面だけを強調されるのは正確じやないと思うのです。日本側の主張も留保しておるし、相手国の主張も留保し得るという不一致の原則というようなものをこの第二項は規定しておるというふうに私は考えざるを得ないのですが、これ以上質問をしてもこれは押問答になりまするから、これを以て私の質問を終りたいと思います。
○委員長(有馬英二君) それではこの問題は本日はこれだけにいたしまして、次に日華条約について大臣に質問を継続して頂きましよう。
○平林太一君 只今委員長がお進めになりました内容は、漁業条約はこの程度にして日華条約にということで誠に私は妥当だと思います。殊に日華、日印両条約は極めて審議の対象として重大性を持つておりますので、それに進んで行かなければならないと思うのでありますが、それにつきましても只今曾祢君におかれましての質疑はこの程度というお話でありましたが、でき得ればこの際、兼岩君も先刻のままでありまするが、いずれ兼岩君といたしましてはその御趣意を十分にこれを御発表になられます機会が本条約に対しましてまだ今後に残されておりますのでありますので、質疑は大体尽きたものと認めて私は差支えないと思うのでありまして、そういう点におきまして委員長は取りあえず本条約に対しまする進捗につきまして、この際お取計いを願えれば仕合せ至極だと思うのであります。又私は大体質疑は尽きたという動議を一つ提出いたしたいと思います。
○委員長(有馬英二君) まだ兼岩君が尽きたというようなことをはつきりと言われないのですが、本日又この条約について兼岩君から御発言がありましても、又非常に長引くかも知れませんし、定数も足りないことでありますから、この点この辺であれを本日はとどめまして、日華条約に入りたいと思つておるような次第であります。
○平林太一君 外務大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、その一八九五年我が国の明治二十八年の下関条約を私は回顧いたしまして、この際本条約に関連をいたしまする一項につきまして政府の所信を承わりたいと思います。御承知のように今回の条約の前提となつておりまする一九四三年のカイロ宣言のこの条項のなかにこういうふうに書いてあるのであります。台湾及び澎湖島は日本が清国から盗取したのである。盗み取つたものである。こう言うのでありますが、これにつきましてポツダム宣言はこれを継承いたしておることと私は承知をいたすのでありますが、そういたしますというとこの盗取したということがこのようにそのままに相成つておりますれば、今回の条約におきましてはいわゆる盗取したものがその臓物たる台湾及び澎湖島を改めて先方に返したと、こういうことになるのでありますが、これは我が国民の非常に正しい観念からいたしまして、又平和になりました今日におきまして、非常に遺憾に堪えないところでありまするが、この点に対しましては本条約の会議中にこれに対しまする訂正というものが当然取扱われられたことと思うのでありますが、その辺の経路につきましてこの際、事柄は字句の問題のようでありまするが、この及ぼす影響は誠に我が国といたしまして重大であると思いますので、大臣の御見解を承わつておきたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはポツダム宣言受諾のときにもいろいろ議論があつたのであります。ありましたが当時御承知の通り原子爆弾は落下する、満州においてはソ連が官戦を布告して軍を進めて来ておるという非常な事態でありました。従つてこういう言葉の上のことよりもむしろこの趣旨は満州、台湾、膨湖島等を中華民国に返還するというのが実質的の内容でありまして、盗取であるか盗取でないかという議論はありますけれども、そういう問題にこだわつておつて終戦を遅らせるということは、これは将来何万、何十万の人の危害にも関係する状況でありましたので、その当時これは呑んでポツダム宣言を受諾したわけであります。従つて将来若しこういう条約ができたものを盗取であるということにされるということは、これは問題でありましようけれども、この点はすでにポツダム宣言を受諾した日本としてはその当時の解釈で、つまり実質的にこれらの島等を中華民国に返還するという措置であるということにして、他日この問題は又日本の立場を明らかにするときがあろうと思うので、そのままにいたしておるのであります。中華民国政府との間の交渉につきましては、勿論この盗取とか、そういうような言葉にこだわつては先方もおりません。平和条約におきましても、ただ権利を放棄するということに規定しておりまするから、平和条約の規定によりまして、これらの地域に対する権利、権原等を放棄するということで、今回の交渉は終始いたしております。従つて盗取とか盗取でないとかいう議論はもはや今となつては必要のない議論であると考えております。
○平林太一君 只今ポツダム宣言に対しまする、この盗取に対しまする取扱い方に対しましては、私も大臣と同様の意見でやぶさかでないものであります。当時の事情といたしまして……。併し今回のこの日華条約の締結に当りましては、私はその当該者でありまするいわゆる中華民国、いわゆる国民政府とのこの条約であり、又話合いであり取極めであるのでありますから、当然今回の条約におきましては私は日本が破れたといえども、我が日本のこの精神、いわゆる我が日本の持つておりまするその善良なる性格というものを傷付けては相ならんと思うのであります。それでありますから当然この会議録なり、或いは交換公文のようなものにでもこれは現わして、そうしてこれを訂正をいたしておくことが、今回の条約に対しましては私は政府のとるべき態度ではないかというように思うのでありますが、只今のお話によりますと、そういうことは観念的なことであるから、これをそれほど重大視しなくていいというのでありますが、これは我が国の将来のやはり青年子弟の教育、風教、道義の上におきまして私は大きなこういうところに一つの癌を残すものではないかとかように思います。併し只今のお話によりますと、今回の条約によりましてすでに公式なものとしてこれは取扱われてなかつたと言うのでありますが、この点誠に遺憾に堪えないのであります。これに対しましてもう一応大臣の今回の条約におきまして何らかこれに出先のいわゆる大使等におきましてこれらが先方との間に取扱いをせられたかどうか。その結果そういうことはそうむづかしく言わなくてもということで済んだのでありますならば格別でありますが、何らこれに触れなかつたか、若干を触れて先方とこれは話の対象になつたものであるかどうか。この点をもう一度伺つておきたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは前にも御説明いたしました通り、サン・フランシスコ平和条約に調印し、批准をした国に対しては、降伏文書は消滅して降伏文書の代りに平和条約が降伏文書を置き換えることになるわけであります。降伏文書等におきましてはカイロ宣言が含まれておりまするから、降伏文書では盗取した島々を返えすということになつておりますけれども、サン・フランシスコ条約でこれを置き換えた場合には、単にこれらの地域に対する日本の権利、権原を放棄するということに置き換えられたわけであります。又中華民国政府との条約におきましてもこれが批准を了しますれば、中華民国政府に関する限りは降伏文書に代つてこの日本と中華民国との間の平和条約というものができ上るのであります。それにつきましても権利、権原を放棄するという言葉に代つておりまするから、この条約のできるに従いまして盗取という言葉はなくなると、こう御了解になつて然るべきだと思います。
○平林太一君 只今のお話は外務大臣としての立場であり、又政府の立場として私もその点をお聞き取りをいたしておきります。併し私といたしましてはこの際申上げたいと思いますことは、いわゆる下関条約におきまして、これは条約の上におきましていわゆる両国の間に締結、取極めをいたされました極めて公明正大なるものであります。然るにもかかわらず、カイロ宣言におきましてかような盗取というような字句をこれらの関係国が使用した、或いは奪取というような言葉も書かれております。又それをポツダム宣言におきましてもそのままにいたした。そうして今日なおそのまま放置されておるということは、むしろこれは相手国でありまするところのカイロ宣言及びポツダム宣言作成の国々に対しまして非常に高い理想を掲げて、国連憲章の大精神等を見るにつけましても非常な高いものを掲げておりまするが、その中にやはり依然として自国にのみ拘泥いたしまして、弱者に対しましては汚名を着せることを何ら考えない、こういうことは私は国際的に我が国が今後国際社会の大きな一員となつてとり進むにいたしましても、これらの関係国に対しまして私は非常な干渉を求むべき事柄であるということをこの際申上げまして、この問題に対しまする、私の大臣に対する質疑は終りにいたしたいと思います。
○曾祢益君 昨日の委員会におきまして杉原委員の御質問に関連いたしまして、この条約第一条の日本国と中華民国との間の戦争状態がどれほどの効力をどの地域に対して持つておるかというような議論が出たのであります。それでいろいろ法律的の解釈について外務省事務当局の見解が述べられたのでありまするが、最後に下田条約局長の説明によりまして、第一条の戦争状態の終了は日本国と中華民国というよりも広い意味の中国との、という国の間の全面的な戦争状態終了を意味するものである。法律的にはそうである。従つてこのこれの付属交換公文第一号にありまする本条約の条項が中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある、こういつたような地域的な制限は法律論としては第一条に適用しないんだと、大体こういうような御趣旨の御答弁であつたと思うのでありまして、その点について私から外務大臣の御意向を改めて伺つたのに対して、外務大臣は発言はされませんでしたけれども、下田条約局長の説明でいいんだというようにうなずいておられたと、こういうところで一応打切りになつたわけであります。ところがこの問題が本日の新聞に非常に大きく報道されておりまして、而もその内容、或いは取扱いについていろいろな解釈が行われておると思うのであります。殊に昨日の外務省側の説明によりまして、中華民国政府というものがいわゆる中国の正統政府である。こういつたような外務省側の見解であるかに伝えておる報道もあるのでありまして、これらの点について私自身も昨日の説明によると、法律的にそうで仮にあるといたしても、政治的にこの問題については、更に外務大臣或いは総理大臣の意見を伺たいということを言つておつたのですが、この伺う前に昨日のこの条項に対する説明に対して、改めて外務大臣から御発言願つて、そしてもう一遍明らかにして頂くことが、今後の審議を進める上に効果があると思いますので、もう一ぺん外務大臣から直接に御説明を願つたらいいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 昨日のはいろいろ新聞に大きく出まして、いろいろ誤解を招いたようにも考えます。が条約局長なり、三宅参事官なりのあの昨日の質問に対する答弁は、第一条についてはまあほかの条文についてもそうでありますが、この中華民国政府と日本との関係を規定しておるものでありまして、この条約自体については、これは一般の条約と同じことであつて、その条約の内部で、条約自体何らかの地域的の制限をしておるのではないんだという説明であります。要するに例えば一つのまあ言葉は悪いかも知れませんが、地方政権と条約を結ぶ場合には、その条約の内容はすべて限定されたものになるだろうと思います。併しこの度の条約は、日本と中華民国との間の条約であつて、条約自体におていは、何にも制限のない普通の条約と同じことであるというのが、第一条に対する昨日の御説明であります。ただ、そういうふうに広い意味の条約ではありまするけれども、今度は現実の事態を考えると、中華民国政府の支配しておる所は事実上いわゆる中国全部でないのでありまするから、この条約が効力を発生しても、支配していない地域については平和関係の回復の効力は事実上発揮されない。併しそれは事実の問題であつて第一条自体は何もこれこれの地域だけについて平和関係が発生しているのだという趣旨ではない。第一条だけで何にもなければほかに、これは一般な中華民国と日本との間の戦争状態の終了、平和関係の回復、こういうことを一般的に規定しておる。併しそれの効力の及ぶ所はおのずから限度がある。それは支配しておる地域だけに結論としてはなつてしまう、こういう御説明をしたと了解しております。
○曾祢益君 まあ昨日の説明員の説明ぶりと今の外務大臣の御説明と必ずしも正確に一致しているとは思わないのでありますが、それは別でありまして、外務大臣の只今の御答弁がこれは正当な外務省の御意向だと伺うわけでありますが、そういう説明だと、事第一条に限つたことはないのであつて、本条約の全体の建前がやはり中華民国という国と日本国との間の平和条約という恰好になつておりまするから、当然これは第一条だけでなくてこの条約全部がそうなんだと、建前は国を相手にして作つておるのだと、併し、事実においては中華民国と日本との、或いは私の言葉で言えば、中国と日本との条約という建前はとりつつも、事実はいま一つの考え方、即ちこの条約はむしろ吉田、ダレス書簡の趣旨、私はそういう趣旨だと解釈するのでありますが、従つていわば地方政権である中華民国国民政府というものとの間の戦争の終了、修好等に関する必要な事項だけを規定して行こうと、この第二の要請から実際問題として附属交換公文というものができたのじやないか、かように考えられるわけです。非常に政府の二つの問題に当面してやりにくいことはよくわかるのでありますが、そうしてみると、政府としてはやはりどつちがまあ結局主なんだ、ダレス氏宛の書簡の趣旨から言えばこれはやはり本来の考え方というものは、言葉は外交的言葉でございませんけれども、やはり今回やろうとしたのは地方政権との修好条約的なもので元来あつたのではないか。従つて中国との全面的な政治的、経済的の解決というものは将来これを活かし得るようなものを作るというのが吉田書簡のむしろ基本精神であつたと思うのですが、そつちを必ずしも貫いておらないのじやないか、而も他面においてはその点も注そうとして作つたのが交換公文である。いわば二つの矛盾した目的を追及しているがために、この条約全体の非常に説明しがたいようなことが起つておるのだと、私はまあかように解釈するのですが、そういう点から言えば、再び繰返して恐縮ですが、今の御説明は勿論第一条だけでなくて、条約全体に対する各条項について同じことが言えるのではないか。而もただ事実上この中華民国政府というものが現実に支配する領域というものは少いのだということの事実ならば、その事実は条約と一体をなすべき交換公文等に書く必要はない。やはり政府の狙いは一方において国と国との条約であつて、建前を結局とらされちやつて最後に交換公文ということでそれを又更に絞つたと、こういう非常に複雑な作り方になつたのではないか。而もそのことは吉田総理のダレス氏宛ての書簡のオリジナルなスタートにおける精神から見ると、これは確かに逸脱してしまつたということははつきり言えるのではないか、かように考えるのですが、外務大臣のもう一遍の御説明を伺いたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) 我々はこれは決してその地方政権と条約を結んでおるとは考えないのであります。ただ、中華民国政府の支配する地域が不幸にして限定されておる、こういう現実の事実は認めざるを得ないのであります。吉田総理からダレスに宛てた手紙の趣旨を逸脱していやせんかというお話でありますが、御承知のように、この手紙の第三項、つまり日本は窮極においては中国との間に全面的政治的に平和等をやりたいという希望を書いた。そのあとに国際連合において中国の議席発言及び投票権において、議席発言権投票権を持つて国際連合加盟国の大部分と外交関係を維持している中華民国政府とこの種の関係を発展させて行くことが現在可能であると考えます。ということになつておりまして、この趣旨でこの条約を結ばれたのであつて、決してダレス宛ての書簡を逸脱しておるものではないのであります。 そこでこの条約全体を御覧になりますと、これは条約は必ずしも中国全般に関する事項を規定していないのではないのであります。規定しておる部分がたくさんあります。その中で実行ができるのは、或る特別の問題は別として、例えばその条約の効力がなくなつたというようなことはこれは日本がそれを認めるのでありますから、可能でありましようけれども、その他は適用範囲で一応の限界がきまつておる。こうなつておりますが、インドの条約でも御覧の通りあれはもつと簡潔な条約でありますが、特にインドと日本とのことが、特別の関係に特別の事情から起るものが主に規定されておるのであつて、この条約もやはり同じように直接関係のない事項はかなり省かれております。省かれておりまするが、それは必ずしもその条約自体が違う性質のものであるというわけではないのであります。条約自体はほかの条約と同じことであります。ただ適用範囲でもつて一つの定めがある、こうお考え願いたいと思います。
○曾祢益君 念のため伺いますが、もうほぼ明らかになつたと思うのですが、即ち昨日の御答弁で与えたと思われる誤解を払拭する意味でこういう意味が、はつきり言われたと思いますが、これは中華民国国民政府を第一条によつて或いは本条約の全体を通じていわゆる正統政府なりと認めたことが、日本の意思として、向うの主張は別としてそういうことはないのだ、又そういう説明は若しあつたとすれば、そういう誤解される説明があつたとすれば、本日の外務大臣の説明によつて否定したのだ。それから第一条についてもやはり適用区域の問題の交換公文が活きて来るんだ、こういうふうに解釈してよろしうございますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 第一点については、私はこういうふうに申上げたいのです。この条約は条約として御覧願いたいので、この条約を御覧になれば、中華民国政府の地位はおのずから明瞭なんでありますが、これをどういう政府として認めたのか、認めたんじやないんだということは私の口からは差控えたいと思うのであります。それから第二の点につきましては、これは条約の附属文書におきまして中華民国についてはこれこれとなつておりますから、この条約の本文については一般的な規定であるけれども、それに対する適用の範囲はいずれにしてもこの条約全般にかかる、こう御了解願いたいのであります。
○杉原荒太君 ちよつと関連してお聞きしたいのですが、昨日の説明とですね、外務大臣が先ほど一番初めにおつしやつたけれども、私が注意して聞いておつたけれども一つも矛盾していないように私は聞いた。ところが今最後にです、曾祢君が念を押された点に対する答えでは、私は又非常に疑問を深くするのですが、殊にですね、戦争状態の終結というのに対しても、この適用範囲についての交換公文で絞られるというふうなことは非常に私はおかしいと思うのです。そもそもが戦争状態というのが私が講釈するまでもなく国家と国家との関係であつて、而もそれは統一的な観念なんですね。それが適用地域なんというのは初からそこに入つて来る余地はないのです。まだ戦争行為の終止とかいえばそれはあり得る。それは適用地域ということです。併し戦争状態というものはそういうものじやない。それについてですね、適用地域とかなんとかいうことはおかしい。ただですよ、こういう意味でならばこれはわかります。ただこれは法律的に両国間の戦争状態は全面的に終止するんだと。併しそれに伴う個々の事実上の事というものは、現実の事態によつて事実上これは影響を受けて来るのだというなら、これはわかります。それならば併しそれは何も交換公文の問題とも違う。交換公文のほうはですね、これは飽くまでも現在の国民政府の支配の下にある地域に限るというふうに、こうなつておつて、併しそれは又一つの法律的な関係なんですね。それだからほかの、例えばこの条約の中の通商的な事項とかそういうものは、現在現実に支配しておる地域に適用されるというのが、これは事実上の問題だけでなく法律的の問題です。条約上の権利義務の関係です。それだからそれはですね、ほかの条項と今の第一条と一諸くたにすることは私は間違つておると思うのです。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは私はこの解釈の問題だと思いますが、この交換公文を御覧になれば、先ず条約の条項が中華民国に関してはその支配下にあるところに適用されると、こう書いてあつて、どの条項とどの条項だけがこの支配下にある地域に適用されるんだというふうになつておらんわけであります。ですから一応いずれの条項にもこの適用というものが出て来るのでありますが、その中で当然適用範囲が必要のないものがあるわけであります。適用をこの交換公文は全般の条項にかかりますけれども、その中で実際上適用され得るものとされないものとあると、例えばこの第四条のごときは適用を、やはりお説のように適用の範囲をきめるということはできないんだと思う。併し実際上の問題はこれは別です。従つてこの交換公文の趣旨から言いましても、一応この適用範囲というものは全般にかかるけれども、その中でこの適用の範囲が実際上法律的な効果を持つて適用され得るものと得ないものとある。そこで得ないものについては実際上の効果はこれは事実問題ですから別問題、こうなると私は考えております。
○杉原荒太君 今おつしやつた中でわかる部分もあるが、交換公文で言つているのは、適用地域のことを言つているのは、言うまでもなく適用地域が問題になる条項について言つておることであつて、それは当然のことである。そうでないこの第一条のごときは、両国家間の戦争状態を終結、適用地域は問題になりはしない。その点条約局長どうです。
○政府委員(下田武三君) 交換公文の字句の形式的解釈といたしましては、只今外務大臣がおつしやいましたように、この条約の条項がと言つておりますので、特定の条項だけを挙げてその条項だけに適用があると言つておりませんので、字句の形式的解釈といたしましては、やはり全般に解すると解釈して差支えないと思うのであります。又一方杉原委員のおつしやいますように、勿論解釈でこの交換公文は適用地域が問題となる条項だけに関係があるのだという勿論解釈をなさる余地も十分おありだと思います。
○杉原荒太君 第一に両国の関係で、或る地域については戦争関係があつて他の地域には戦争関係がない、そういうことを我々は観念し得ないのであります。ただそれの事実上の関係がどう確立されるか、これは別個の問題ですよ。
○政府委員(下田武三君) 杉原委員の今おつしやつた通りであります。昨日申上げましたのは、法律解釈論でありまして、事実問題と法律問題と一緒にしますから混乱いたします。
○曾祢益君 どうも余りに専門家揃いなもので却つてわかりにくくなつた点もあるし、非常に教えられた点もあるのでありますが、私も素人ながら少くともこの昨日私の質問の中で両国間の戦争状態の終了というようなことがこれが当然に附属交換公文に言つておるような中華民国に関する限り現に支配下にある地域にのみ限られて適用されるというようなことはおかしいのじやないか。第一条はやはりその点は特殊な問題じやないかということをまあ申上げたのに対して条約局長から答弁があつたわけなんですが、結局そういたしますると、第一条の解釈においては、やはりこれは戦争状態の終了の法律的効果は、日本国と中華民国、私の言葉で中国との間に全面的に発生するのだ、その点で第一条とほかの条項と必ずしも同じでない。而して現実問題としては、中華民国、国民政府の支配する領域というものに限りがありまするが、それは事実問題でありますけれども、別に又法律的効果を生ずる附属交換公文があつて、その附属交換公文の法律的効果によつてこの戦争状態がまあ終了したんだけれども、それに伴う両国間の事実上のいろいろな戦争終了に関する、戦争終結に関する措置等については、現に適用されるものと適用されないものとあるから、そういう現にそういう状態については中国に対して全般的に効果があるのだけれども、現実に個々の戦争終結に関する条項については、やはり交換公文によつて規制されるのである、これは事実上できないというのでなくて、やはり法律的効果を生ずる附属交換公文があるのですから、やはり交換公文によつて処理される場合がある、こんなふうな恰好になるのですか。もう一遍全部を包括したはつきりした説明をして頂きたいと思うのです。
○政府委員(倭島英二君) これについては、いろいろ御質問なり御意見なり御説明があつたようでございますが、当時これの交渉に関連を持ちました関係もありますし、私もこの点についてちよつと見解を申述べようかと思いますが、適用範囲といたしましては、この交換公文に書いてありますように、中国政府については、この中で例えば第四条、第五条というような実際事実がすでに発生しな問題を、そういう事実を認めるということには適用範囲ということは直接意味がないと思います。併しながら今問題の第一条その他の条文については適用範囲というものが効いて来るというのが、少くとも私自身が交渉に関連しておつたときの考え方であつたのでありますが、例えばこの戦争状態の問題を法律的な見解からは、「日本国と中華民国との間の戦争状態は、この条約が効力を生ずる日に終了する。」ということでありますけれども、実際問題として、而も中華民国の領土は私自身が了解するところでは、中国大陸も、中国大陸並びにその附属島嶼というものを中華民国政府は自分の領土であるということを主張しておりますし、一応それは我々のほうでも向うがそういう主張を持つておるということを承知しておるし、了承してこの条約の話を進めて行つた。その了承の仕方は向うが日本の領土に対して日本の領土はどこかという問題について、我々が持つておる観念を了承したと同じような意味になると思いますが、要するにそういうふうな気持でこの話をやつた。従つて戦争状態は法律的には終了ということは私らのほうに及ぶというような関係になると思いますけれども、ただ実際そういうことを言い放しでは、甚だ現実の状態と離れてしまう。殊にこの第一条は適用条項というものがないというと、中華民国政府は例えばこの戦争状態を終了して平和な恰好になつて来た。ところが日本と中華民国政府の支配下にない地方との関係において行われたこと、或いは起つた事件ということについて中華民国政府が責任をとらなきやならんというようなことが生ずるかも知れない。それは実際支配下にないところについては酷だという気持がするわけであります。従つてその支配下にない地域で起つたこと、それは戦争状態を終了してしまつたということであつてもそれについては責任がとれない。やはりそういう問題について中華民国の関係においては現実の事態に引戻しておかなければいけないということでありまして、で適用範囲のところに、交換公文にありますように中華民国に関する限りそれは現実の事態というものに即応する意味において現にその支配下にあり、又将来その支配下にあるべき地方ということに限定されたというようなふうに解釈をしております。
○曾祢益君 どうもいろいろなかたが言われるので非常にむずかしいのですが、倭島局長の御説明によればこれはやはり第一条の適用を交換公文で絞つておる、現実に例えばあなたはそうおつしやらなかつたけれども、例えば中華民国政府の国民政府の実権を及ぼしていない地域に、例えば日本国民が現に捕虜その他抑留者がある。そういう事態についてまで戦争状態の終了ということの効果の責任を負わすことができないというようなことも考えて責任の限界をここで絞つてやつた、従つてやはり第一条は一応向うの主張をするところによれば、中華民国即も中国全体の趣意だと言つているけれども、その点は別として日本国と中国との戦争状態の終了をこれできめたと言つておるけれども、やはり現実の効果においては附属交換公文第一号によつて制限されると、そつちが強くこう浮かんで来るような御説明だつたんですが、それで最終的の外務省の説明はそれでいいのですか。外務大臣、どうなんですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはつまり非常にごたごたいろんな意見が出たもんだから……。ですが言うことはみな同じことなんで、ただ自分の言つていることを少し強調するものだから、ニユアンスが違つて来るんだと思いますが、要するにこの第一条につきましては、この一条から言えば全般的な関係を規定しておるのである、又この交換公文の適用範囲というものは、一条については原則的には不必要な規定というか、要するにその交換公文の規定は適用範囲を必要とする条項については無論適用がありますけれども、若しこれが適用範囲がこの問題については必要なしということなら、無論これは入らないわけです。そこで実際上これは適用範囲が必要であるかないかという問題になつて来る。そこで我々のほうから言えば、実際上の問題はこれは別でありますが、第一条というものは全般的な規定をしておるのであつて、必ずしもこの適用範囲というもので絞られなくつてもいいことと考えまするけれども、併し事実上はどうしたつてこれはこの効果を及ぼすこちらのほうでもその権利を主張することもできますまいし、先方でもその義務を果すことができない事態が起るわけでありまして、そういう事態が起る場合には、これは当然この交換公文の趣旨が適用されるわけであります。
○曾祢益君 大体それで解釈が統一されたと思うのですが、まあ現実にはそうおつしやるけれども、法律的効果と言つても、事実上は適用の除外ということが多くの重要な問題について起るということも、これは実際の事態であろうと私は考えるのであります。その点は余り申上げませんが、最後にこの点に関して先ほどの御答弁にあつたとも思われるのですが、吉田ダレス書簡というものを私は何も金科玉条にしておるわけじやないのですが、これがスタートになつておつたということから重要性を認めているのですが、この第一条の今の解釈等から見て、やはり吉田書簡にあるような一つの基本的方針、最も基本方針じやないかとすら思うのですが、中国との全面的な政治的及び経済的な解決というものはこれは別途にやるんだ、これに害しない程度において中華民国政府との間の関係をここで平和条約の趣旨にそつてやつて行くんだ、こういう基本方針があると思うのです。その精神から言つてこの第一条の今の規定解釈それから条約全体がそういつたような中国との全面的なセトルメントに害しない、何ら阻害しない。こういうふうなお考えであるかどうか、それをもう一遍明らかにして頂きたいのです。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは交換公文のほうでも御承知のようにポリテイカル・ピース・アンド・コマーシヤル・インターコース・ウイズ・チヤイナ・ホイツチ・イス・ジヤパンス・クローズ・ネヴアとこう書いてあるのでありますが、それからそのあとの点では常にガヴアンメント・オブ・リパブリツク・オブ・チヤイナを対象にしているわけなんであります。ただガヴアメント・オブ・リパブリツク・チヤイナがユナイテツド・ネーシヨンにおいてチヤイナのヴオートを持つておる、チヤイナのヴオイスを持つておるということでありますが、今回の条約におきましては、相手国はリパブリツク・オブ・チヤイナという交換公文の第二段にあるのはチヤイナである。こういう違いは我々も認めております。これがどういうふうに発展して行くかは、これは一つの政治情勢によると思いますけれども、要するにこの吉田書簡の趣旨によりまして、チヤイナとの間には窮極においては全面的な関係を打立てたい。そこで現在可能なのはリパブリツク・オブ・チヤイナとかかる関係に入ることである。その趣旨によりまして、リパブリツク・オブ・チヤイナとこういう条約を結んでおる。こういう趣旨と御了解願いたいのであります。
○曾祢益君 それはよくわかるのですが、そこでチヤイナと最終的な、全面的なセトルメントをやる場合にこの条約、即ちリパブリツク・オブ・チヤイナの政府と作つた条約が何らその最終的な解決を阻害しないこういうようなお考えかどうか。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは無論人によつて見るところは違うと思います。違うだろうと思いますが、我々はそういう趣旨の気持を以もましてできるだけその趣旨に合致するようなつもりで作つたのでありますから、我々に質問されれば、無論差支えないんだと答えざるを得ないのですが、まあ私どもも人間ですから、そう完全なものと威張るわけではないのですけれども、できるだけの努力はいたしたつもりであります。
○兼岩傳一君 今のずつと問題にされている、同意された議事録というものの二頁の五行目ですね。中国における日本国政府の外交上又は領事上の機関であると称せられたものが使用した不動産、家具及び備品とこの中国という範囲はどこを指されるのでしようか。
○国務大臣(岡崎勝男君) この条約等で中国と言つておりますると、これは何遍も申したように非常に正確な範囲ではありませんけれども満州、中国大陸その他一般にいわゆる中国と言われている地域全般……。
○兼岩傳一君 全中国ということですね。
○国務大臣(岡崎勝男君) そういうことです。
○兼岩傳一君 それからその同じ頁の最後の行にあります日本国の在外資産ということがありますね。この在外資産、日本国の在外資産というのはどこを指すのですか。どこのものを大体指しておられるのですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) これもいわゆる中国全般であります。
○兼岩傳一君 つまり台湾、膨湖島のものじやなくて、大陸のものを指すという御趣旨ですか、意味ですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。
○兼岩傳一君 もうちよつと聞いてもいいのですか、それともこの辺であれいたしましようか。まだ僕、たくさんあるのです。あるのだけれども、今のあなたの関連した問題についてもうちよつと聞いてもいいですか。大分遅くなつたようだがいいですか。じやもうちよつと聞かして下さい。今の曾祢君との質疑で大分明らかになつてきたんだが、建前として中国全部と戦争状態の終結をするんだと効果は区域が限られておるという説明と了解したのですが、成るほど今この議事録を見ましても、全中国におけるこの機関についての取極めをしておられる。それから在外資産、上海の在外資産、漢口の在外資産のことまで蒋介石と吉田内閣で取極めておられる。これは驚くべきことだと私は思うのですが、併し外務大臣は一向驚いておられないようだから、非常に健全なんですが、私どもの考えとしてはどういう根拠で中国全土に亙る問題が蒋介石政権と吉田政権との間に締結されることがあえてできたかということはちよつと了解できんのですがね。そこをもうちよつとわかりやすくわかるように一つ御説明願つておきたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはちよつと先ずその前に誤解があつたようですから……。上海の領事館とか漢口の領事館の財産等はこの交換公文とは別問題であります。でこの交換公文の趣旨はここにありますように中華民国の同意なしに設置された外交上、領事上の機関、上海とか漢口とかいうのは、これはもう中華民国の同意を得て作つた領事館でありますから、これは別であります。そこでこれは一括して申上げますが、要するにこの規定はサン・フランシスコ条約によれば、外交機関、領事機関の財産は在外財産であつても日本政府に返還する、こういうことになつておる。ところが中華民国の同意なしに設立されたものはこれは返還しないで中国側で取つてしまう、こういうものであります。それから第四の最後のほうは要するに日本の在外資産を取つたから、中華民国政府に関する限りは、賠償の、役務賠償は自発的に放棄する、こういう規定であります。そこでこの在外資産はその後どういう形で、どういう者の手に入つたかは別として、要するに日本の在外資産は今のところ日本には返つて来ておらない、中国にあるわけであります。その現在の所有者なり管理者は誰であるかは別として、中華民国政府に関する限りはこの在外資産を以て役務賠償はもう放棄する、こういう約束をいたしておるわけであります。
○兼岩傳一君 私のお尋ねしているのは、まあ何歩か譲つて台湾と澎湖島、その他にその附近に関して、現在蒋政権が支配権を維持しておる。而もこれは外国のアメリカの第七艦隊と、大部分アメリカの軍事費で維持されておる、そういう政権であるけれども、百歩を譲つてその範囲内において暫定的に何か取結ばれるというなら、まあ常識だけで判断できるのですが、この政権と全中国に亙るこの戦争状態の中止、それからもろもろの賠償の問題、それからその他いろいろな問題を当時条約を締結されるに至つたその根拠はどこにあるか。我々の理解によれば中国の真の政府が何びとであるかを決定するものは、中国の全人民大衆が決定すべきもので、日本の吉田政府が決定すべきものだというふうには考えられないのですがね。併しあえて今曾祢君の質問で……、非常に曾祢、杉原両氏の質問で非常に明らかにされたことは、もう全中国との関係を蒋介石政権と締結したんだ、その効果は現に支配してる区域に限られるんだと、で交換公文の適用は適用範囲を必要とする問題があるから、そういうふうにしたんだ、従つて原則としては全中国の五億の人民を含むべき全中国の問題についての戦争状態の停止であり、今後の国交の回復問題を決定せられたものという点が非常にはつきりしたわけなんですが、これは従来の説明から遙かにはつきりされたわけなんでこれについては総理その他でもつとこれに関連してあらゆることをお尋ねしなければならんと思いますが、取りあえずそういう点をはつきりされた機会にその根拠を承わつておきたいと思うのです。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは中里民国政府は多数の国から中国の代表政府だとして認められており、国際連合にも議席を持つて発言権もあれば投票権も持つておる。従つて中国全般に対する事項についても、中華民国政府は当然条約を結び得る立場にあるわけであります。併しながらこれは中華民国政府に関する限りの規定でありまして、若し他に反対の要求があり、それが実力を持つておる政府であつて、将来何かそういう要求がある場合にそのそちらまで拘束するというわけじやない。併し中華民国政府に関する限りは役務賠償は放棄した。その代り我々のほうは中華民国政府に対してその同意を得ずして設立された領事館、大使館、公使館等についての財産はこれは失つても我々は異議がない、こういう約束をいたしたわけであります。
○兼岩傳一君 私は今そういつた同意された議事録を出さしたのは、あなたの説明を一層はつきりさせるために、ただ念のために質問したので、曾祢委員から今明らかにされたこの平和条約の締結が全中国を代表するものとしての中華民国を相手に行なわれたんだという点をあなたは明快にされたわけなんです。従つてそれは甚しい間違つたやり方じやないか。なぜならば成るほどあなたが言われた国連の認めておる唯一の政権だというのがどうやら根拠のようですが、併し国連がどんなにさかさまになつて認めたつて、一国の主権を決定するものは終局的に決定するものは、あくまで国連でなくてその国民であり、その人民大衆であるのですからね。これを離れてもうその点については、もう大体事柄は明快になつておるにもかかわらず、あえてこの際そういう大膽な取極をされたその根拠並びに今やはり曾祢委員が聞かれた中国との今後全面的な政治的経済的関係の調整についてこれが障害、根本的に大きな障害になるかならんかこの問題なんですが、その後者の問題をこの際保留して、次にまだあとにいろんな質問がありますから、残しますけれども、私はどうしてそういうことをされたかという、その政治的なお立場の一つ説明を受けておきたいと思います。我々の考えでは、それは了解に若しむところなんですね、そういうやり方は……。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはもう先ほどからばかりでなく、何回と御説明したので、もう御説明の種も尽きておりますが、そのために我々はむしろ細心の注意を払つて、交換公文で適用範囲というものを決定しておる。現実の事態を決して無視しておるわけじやない。
○兼岩傳一君 じやもう一つだけお尋ねしておきます。ここに私は本年の二月の二十六日のU・Pのこの通信で、英国の労働党のモリソン前外相が、この二月二十七日の国会でですね、下院において非難を行なつておる。それの内容を読むと、こういうことを言つておる。私はダレス氏と昨年日本が平和条約発効後米国の支持する国府と、英国の承認する中共のいずれを承認するかについては、自由に選択できるとの了解に達した。私は友好関係にある大国の重要な政府代表について行過ぎた批判は使いたくないが、併しそれ以後日本で何が起つたかをこの機会に報告しなければならない。吉田、ダレスの書簡に論及してそうしてこういうことを言つておる、モリソン氏は……。スパークマン米上院議員の言葉を借りて言えば、日本ができるだけ速やかに国府と平和条約を調印するとの積極的保証になるものであつた。私は米国の圧力によつて日本政府が前以て蒋政府承認を公約するようになつたものだと思う。こう言つてます。つまり二つのことをモリソン議員は言つております。一つは、このダレス国務長官とこのモリソンが外相当時にはどちらを選択するかは日本国民の自由であるという約束、話合いをしたにもかかわらずその後チヤーチル首相がアメリカへ行つて、そして妥協してアメリカの圧力によつて日本政府が前以てこの蒋政権を全面的に中国の全面的な正統なる政府として承認するというようなふうに変化したのだということを言つておりますが、この事実について一つ御説明願いたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) これも何回となく御説明をして速記録にも残つております。圧力等はない。我々は前々か、国民政府に対して特別のシンパシイを持つており、国民政府も当時中国全般の実力的支配を行なつておる際、日本の降伏による俘虜に対して怨みに報ゆるに暴を以てする勿れという立派な言明をして、そして日本人を無事に帰還さしてくれた。こういうような関係もあり、特に中里民国政府に対しては深い感情を持つておつて、その気持を表わしたのがこの吉田書簡、吉田書簡は新らしくこういう方針を決定したのではなくして、前々から持つている考え方をこの書簡に直しただけの話です。決してこれはどこの国の圧力というようなものでやつたものでないということは再々御説明して速記録に残つております。
○兼岩傳一君 最後にもう一つだけです。あの今の問題です。話の続きです。そうすると今あなたがこの蒋介石政権と全面的に決定されるのは、国連の認めておるというのが根拠であり、併しながら将来この蒋介石が真の中国の継承者、支配者であるかどうかを決定するものは、中国の国民であるということが承認の上で、了承の上でそれは今後の問題が決定する、現在は国連が認めておる唯一の政権だからこれとするのだとこういう立場ですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) それ吉田書簡の第二項、先ほどから曾祢君の引用されておりまする窮極において日本の盟邦、隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります、こう言つておるのであります。差当り現在可能であると考えるのは、中華民国政府との間にこの種の関係を発展さして行くことであると、こう吉田書簡にはつきり書いてあります。
○委員長(有馬英二君) それでは本日の外務委員会はこれでもつて散会いたします。 午後六時八分散会 —————・—————