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13回国会参議院1952/02/21

外務委員会 第4号

発言数
22
登壇者
7
会派数
5
開催日
1952/02/21

会議録

有馬英二民主クラブ

○委員長(有馬英二君) 只今から外務委員会を開会いたします。  本日は国際情勢等に関する調査のうちフイリピン国との賠償問題を議題といたします。先ず本問題について直接交渉の衝に当られました外務省顧問津島壽二君からその交渉の経過について説明を求めます。

津島壽一外務省顧問

○説明員(津島壽一君) 只今御紹介頂きました津島壽一でございます。今日この外務委員会においてフイリピンとの賠償交渉についての経過を報告せよ、こういうことでございます。誠に光栄に存じます。私は昨年十二月一日外務省の顧問を拝命いたしまして賠償問題を担当することに相成りました。自然今後委員長初め委員各位の御指導を仰ぐことが多いと思いますので、甚だ僣越でございますがこの機会を利用いたしまして今後何分の御指導をお願いいたしたいと存じます。  さてフイリピンとの賠償交渉の経過でありまするが、すでに御承知であらせられまするように、インドネシア共和国の賠償交渉使節団が昨年十二月十四日に東京に参りまして、爾来日本側代表との間に年末年始に亘りまして最も友好裡にこの問題についての交渉が行われたことは御承知の通りであります。その結果本年一月十四日中間協定案なるものに合致いたしまして両国代表においてこの文書に署名いたし、以て今日に及んでおるのでございます。フイリピン共和国といたしましては、特に本問題に対する交渉を進めたいという要望が日本政府のほうに参つておりましたのでありまするが、只今申しましたインドネシア国との交渉のためその時期を得ませんで、この交渉の終結いたしました直後即ち一月二十五日東京を出発いたしたわけでございます。交渉団は不肖津島が全権といたしまして団長を仰せつかりました。なお団員といたしましては今日ここに出席いたしております柿坪外務省参事官、又酒井大蔵省理財局次長、斎藤通産省企業局次長、藤野運輸省造船課長、並びに枡田外務事務官この六名でございました。一月二十六日にマニラに早朝到着いたしまして爾来去る十五日東京帰着まで三週間に互つて本問題についての交渉が同国全権団と行われて参つた次第でございます。  ここで一言附言いたしますことは、フイリピン国内におけるキリノ大統領初め、エリサルデ外務大臣その他政府関係当局は非常に我々を好意を持つて接待され予想以上の歓待を受けたということでございます。誠に私はこの点について非常に感銘を受けたものであります。なお一般国民といたしましてもこの問題が非常に重大であるということで最も大なる関心を寄せ、この交渉の経過を見守り又その意のあるところは新聞その他の機関を通じて表明されたということでありまして、三週間の交渉を通じまして文字通り友好なる雰囲気の下にこの会談が一応の終結を告げたということは、私どもといたしましては皆様に御報告することが欣快至極に存ずるものであります。  この会議の経過でありますが、一月二十六日着後直ちに私どもは外務省に参りまして、エリサルデ外務大臣その他この問題に関係のある諸官と非公式の会談を行い、交渉の段どり等について打合せをいたしたのでございます。会議は一月二十八日午前中から第一回の公式会談なるものが開かれました。先方の全権代表団と申しますか、公式会議に出られた代表のかたがたは外務大臣のエリサルデ、フイリピン中央銀行総裁のカデルノ、法律の專門家シンコ教授、外務次官ネル氏、なお駐日フイリピン代表部メレンシオ大使が特に会議に全権団の一員として全権の資格を以て参加され、都合五名のかたがたでありました。なお幾多の專門家その他のかたも同時に公式会議に参列される、こういう状況なのであります。日本側は先ほど申しました六名全部であります。  もう一つこの場合附言するのを適当と思いますることは、フイリピンの今日までの状況に照しまして日本人の入国が非常に制約されて参つたのでありますが、今回のこの重要な会談のためには特に日本から報道陣、即ち新聞通信或いは放送等の特派員の入国を認められまして、途中から参加した者を加えまして合計七名の報道員のかたがたも同時に会議に列席するというようなことであります。これらの報道陣のかたがたが非常に活躍され、我々一行のためのみならず国内に対してあらゆる情報を送られたということは、今回の会談において最も有効なる貢献であつたと私は感じておる次第でございます。  さて第一回の会合におきまして主催国側といたしましてエリサルデ外務大臣が主席代表の資格におきまして挨拶、陳述を行なつたのであります。でこの陳述の内容は全文新聞に発表されましたからここに繰返すことをいたしません。今後日比両国の関係がこの問題の解決によつて両国に利益であり、又アジア、世界の中和に貢献するごとく全力を挙げて満足なる解決に達したいこういう趣旨を強調したものであります。これに対しまして私は日本政府の代表といたしまして、我々はフイリピンに賠償問題の交渉に来たのである、過去においてフイリピン国に対し幾多の御迷惑をかけたことは甚だ遺憾である。賠償問題については日本は固い決意を持つて誠実に履行する。サンフランシスコにおいて約束されたことは誠意を以て実行するの決意を持つておるのである。この賠償問題を解決することによつて日比両国間が平常の関係に回復するのみならず、政治、文化、経済各方面においてお互いに利益ある関係をもたらすことができるだろうというような趣旨の陳述をいたしました。この陳述ののちに直ちに会議の実体に入つたのでございます。これは着後の打合せによりまして先方から提案をするということでありまして、そういつた予定の下に行われたものであります。それが先方のいわゆる要求事項なるものであります。この要求事項は全文新聞に当日発表されまして、もうすでに各委員御承知のことと思いますが、やはり重大でありますから重ねてここで一言御披露申上げたほうが便宜かと思います。  第一は、日本政府はフイリピン政府が公式に記録した損害に基いて百六十一億五千九百二十四万七千九百五十九ペソの金額をフイリピン政府の要求として承認すること、英語で言つては失礼でありますがリコグナイズすること。要すれば先方の公式に記録したところのその損害額百六十一億五千九百余万余ペソの金額をフイリピン政府の要償額としてこれを認めること、これが第一点であります。  第二は、日本政府はこのフイリピン政府の要償額(クレイムズ)を長くとも十五年以内の期間において決済すること、支拂うことと同様であります。  第三は、日本政府は賠償協定の締結前といえども又フイリピン政府が平和條約を批准する以前といえども一部又は中間賠償を速かに支拂うこと。  こういう三点でございます。これを要約すれば、要償金額、支拂期限、そうしてその批准前といえども一部の支拂を日本政府はすべきものである、こういう要求であります。この問題について順次討議に入りました。而してフイリピン代表団の最も重きをおいて当日の議論になつた点は第三項目であります。先方の説明するところによりますれば、これは全体の問題に先立つて日本の賠償履行の誠意をためす問題として講和條約調印批准前といえども或る程度の一部の賠償をすべきものであるから、これを先ず決定してもらいたい、こういうような要求でありました。  なお全体の問題についても種々の論議が交されましたが、特に第三項については当方の回答を求めるものでありまして、この要求はこの会議の終つたと同時に発表された。こういう次第でございます。日本全権団といたしましては先方の意向或いは説明ということについて十分に敬意を拂い、これに愼重なる検討を加えるという用意があることを会議の当初から申述べてあるところでありまして、又同時に私は今回の会談は予備的会談から最終協定に達すべき会談ではないという趣旨を十分に明かにいたしまして、先方代表の了承を得ておる次第でありまして、これはのちに述べますことと関連いたしますからこの前に附言しておく次第であります。  さてこの提案に対して日本代表団といたしましては慎重に考慮を遂げ、又一方政府にもこの提案並びに会議の経過を報告いたしまして、政府の訓令を仰いだ次第であります。その結果につきまして第二回の正式会議を開きました。勿論この期間において先方使節代表と私とは常に私的の会談を催したことは申上げるまでもございません。  第二回の会談は二月四日月曜日に開会されたのであります。この正式会談において日本代表団は第三項、即ち賠償協定の締結前又は平和條約の批准前といえども一部中間の賠償支拂をなすべきことという先方要求に対しましては、甚だ遺憾であるが、これは代表団としては受諾できないという意思を明確にいたしました。これは極めて法理的に見まして明らかであると私は確信いたしておつたのでありまして、即ち講和條約に基く賠償義務はその條約自体が有効になつて初めてそこに義務が確定するものである。まだ講和條約が実施されない前に賠償という形における義務を日本は履行する地位にない、こういう主として法律的の見解であります。その論議は同時に又日本の誠意をテストするという趣旨ということも十分察せられるものでありまするから、日本代表団といたしましては、たとえ批准前にこういつた債務を履行すべき地位にないという法律上の立場とは別といたしまして、講和條約に基く沈船引揚げ(サルベージ)こういつた問題についてはその必要のある行政的予備行為はなんどきにおいても執行するの用意があるということを明確にいたしてその誠意のあるところを陳述したわけでございます。尤もこの沈船の引揚げ準備行為の発足ということについては先方はこれを直ちに受入れる表示を受けるに至りません。むしろ重大なる問題を先決すべきである、こういう立場であつたのであります。この第二回公式会談、即ち二月四日の当方の意見に対しまして先方は当方の態度を明確であるということに鑑みまして、更にフイリピン側の提案の再検討を加え、爾来二月十日に至るまで先方は新提案の検討に最も慎重を期したようなわけでございます。その間私並びにここにおりまする柿坪外務省参事官は極めて非公式且つ秘密裡に先方代表と会談する機会を常にとられたのでございます。その結果先方の新提案なるものが二月十日に私どもの私的会談において交付されたのでございます。これに対して種々の意見を交換いたしましたが、その当夜この新提案は本会議の上程を待たずして、新聞その他の報道機関に先方において発表されました。これは又第一回の提案と同様委員長及び委員各位は十分御了承のことと存じますが念のために報告さして頂きます。  第一点は、新提案は大体四項目からなつております。第一は原則的なことでありまして、日本は戰争中日本軍隊によつて占領し、そうしてフイリピンに加えた損害並びに苦痛(サフアリング)に対して賠償支拂の義務あることを承認(リコグイズ)する。  第二は日本人がフイリピンに対して供與する役務(サービス)はフイリピンの復興再建に関係のある生産、沈船引揚げ並びにその他の役務というものであるべきこと、これが第二項であります。  第三は、日本は一九四一年十二月八日より一九四五年九月二日に至る期間、日本軍隊によつてフイリピンに與えた生命財産に対する莫大なる損害を承認すること、且つフイリピンがこのために受けた損害の範囲を百六十一億五千九百余万ペソと計算したことを公式に記録(テーク・ノート)する。この損害はこういつた趣旨のものである。そういつた損害の種類が書いてありますが、各別の金額はありません。  更に第三項に続いてあとの提案を詳しく述べているのでありますが、日本は賠償義務を履行する意思あるところの表示として、フイリピンが平和條約の批准後、これは重大な問題でありまして前は批准前でありましたが、批准後両国間の同意するところによつて前記第二項にあるような役務を実行することを約束すること。その場合條約の批准後締結せられる協定に基いて提供する役務のヴアリユーは暫定的(プロヴイジヨナル)に、要償額の百六十一億五千九百余力ペソの一割というその金額について交渉の対象とする。而してこの金額なるものは今後その支拂の期間、或いは方法、形式等と共に、日本政府との間の協定によつて調整さるべきものとする。必ずしもその金額による趣旨でないだろうと思われるのですが、その金額を調整して行こうというのが具体的の要求であります。更に前記一割の要償額を引いたのちの九割の要償額、残額、その支拂の期間というものについては、平和條約が有効となつて一年以内になお且つ日本が他の要償国間の要償額を決定したのちに、日比両国間で協定をすることにしたい。即ち九割は取つておいて他の要償国からの要償額が集つたときにこれと一括して協議するということにしたい。俗にいう一応棚上げしておきたいという趣旨であります。それが第三項、非常に長うございましたが。  第四項はこの以上の協定項目に含まれていないところの賠償(コンペンセイシヨン)に関する事項については、平和條約の当該條項によつて処置されるものとすること、こういうことであります。即ち以上言つた以外のことについては平和條約の條項によつて処置して行こうと、こういうことが先方の新提案なるものであります。これを概括的に申しますと第一回の三項目に比べて相当大きなる変化、推移をみておるということが感じられるのであります。  即ち第一点は、第一回提案においては百六十一億余力ペソを十年、十五年に全額支拂うべしという端的なる提案でございましたが、このうちを二つにわけて、一割は先ず第一回の賠償の対象にしよう、九割は他国の要請と相待つて暫らくこれを棚上げにしようというような、いわゆる実行的の案になつたということが感知されるのであります。而して又同時に一割の新提案、これについてもその支拂方法は講和條約に示したところの生産、沈船引揚げ、並びにその他の役務ということで、講和條約第十四條の規定に即応した調整が加えられるということは又見逃すべからざる点でございます。なおこれらの項目について触れておらないものは、講和條約の規定によつて今後規正準拠さるべきものだということが四項に掲げられておる、こういう点でございます。そういつたのが先方の二月十日の提案であります。  この提案に対して我がほうといたしましては、先方の相当長きに亘つて慎重審議されたこの提案に対して、当方といたしましても更に愼重なる検討を加えたのであります。が結論といたしましては遺憾ながら今日の状態におきまして、或いは段階におきましてこの新提案に対して代表団としてこれを引受ける意思を表明するということはできなかつたのであります。この事情を公式会談において十分に披瀝いたしまして、その結果といたしまして、この新提案は非常に重要なる各種の項目を含んでいるのであるから、この項目は更に時日をかけて愼重に検討を加えたい。又これを日本政府に委細報告をしてその決定を待つことにしたい、今日の場合全権団はこの提案に対して確定的な約束をする地位にないものである。甚だ遺憾であるという不動の態度を持しました結果といたしまして、十日提案後一両日において先方主席代表もこの予備的会談を更に長く継続することは所期の効果を得るものでないという結論に至つたのだと思います。即ちフイリピン賠償会談はこの段階において予備的会談の目的効果は十分果し、お互いにその意見を率直坦懐に交換し、おのおのの地位を明らかにしたものである。従つてこれ以上はこの次の会談において交渉を続けて行こうということに両者の意見が合致したわけでございます。  これによりまして、私は十四日午後四時当方のこの新提案に対する回答を書きまして、正式会談を開くことなく外相エリザルデに当方の回答を交付いたしまして、先方もこれを心よく、この我がほうの回答に対し予備的会談に非常なる進展を遂げた、非常に有益なものであつたという趣旨の声明を同時に発表、二十日に亘る会談は十四日の夕方を以て結了、我々は十四日の夜十時半に飛行機に乗りまして、十五日午前八時半羽田飛行場に帰還した次第でございます。  以上が大体の経過でありまして、この重大問題がともかくもこの交渉の口火を切られ、お互いに友好裡にこういつた程度の話合いの終結をみたということでありまして、何とか或る種の暫定協定に入りたいと思いまして非常に努力いたしました。率直に申しますとインドネシアと日本との暫定協定、これは会議進行中、即ち一月三十一日に両国政府において発表され、私はフイリピン政府代表にも公文を交換公文と共に交付して、私といたしましてはこういつたものであればいつでも調印する用意を持つているということを申上げた。先方はこの案文程度ではまだ調印する時期でないということでありました。大体そういつた経過でありまして、甚だ不肖微力でありまして十分の御期待に副うことができなかつたことは遺憾でありまするが、今この会談は現に続行されておるのでありまして、今後の会談がまだ具体的の打合せが済んでおりません。併し先方外務大臣の私に語つたところによりますと、賠償は支拂能力、履行能力というものが大事であるということは日本側の言うところに一致する、従つて日本へ調査団を派遣して、経済、特に賠償支拂履行能力ということについて実地に検討調査をしたい、こういう表明をされました。今後はこの調査団を迎えるに当つて如何なる時期、如何なる方法にするかということについて両国政府において外交機関を通じて取極め打合せをしよう、こういうことでありました。  甚だ簡單でありまするが、ここで一言おことわりをしなければならんのは、今申上げた通り本交渉は現に進行中でありますというようなわけで、又フイリピンにおいても平和條約の批准問題というものが国会にかかつておるわけでございまして、この機微の間におきまして十分意を盡す報告ができなかつたことは、これは内外の情勢上誠に止むを得ないことでありまして、甚だ勝手でありまするがこの程度を以て私の報告を終ります。長時間に亘つて御清聽を煩わしたことについて感謝いたす次第でございます。

有馬英二民主クラブ

○委員長(有馬英二君) それでは只今お聞きの通り大変有効な今までの経過であつたように存ずるのでありまするが、これにつきまして各位から何か質問がおありになりましたら。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 ちよつとお尋ねいたします。エリサルデとかネリという人から損害の調査ということにつきまして共同でこれを調査するというようなお話はなかつたんでございましようか。これは百六十一億余ペソのいわゆる賠償の要求があつたということは、一方的に損害を算定しておるんじやないかというここに私は疑いを持つのであります。御承知の通りにヴイエトナムのチヤンバンフー総理大臣とか或いはパキスタンのフセイン外務大臣代理というような人は、非常に日本に好意を持つて、專門家が損害を調査するとか、或いはフイリピン、インドネンアという国が日本と交捗する場合においては、その支拂の能力の限度においてこれをなさなければいかんという、極めて何人が考えても妥当、適切な言辞を使つておるのでございますが、そういう日本に親切というような気持を持つた言葉はなかつたんでございましようか。その点一つお尋ねしておきます。

津島壽一外務省顧問

○説明員(津島壽一君) 只今のフイリピン側の損害額について、日本代表団は対して共同調査をしたらどうかという提案がエリサルデ外相並びにネリ次官から我々にあつたかという、こういう質問でございますが、そういう提案は今回の会談では出なかつたのであります。これはインドネシアの場合においてもそういう提案がございませんで、我々も研究はいたしておりますが、今そういつた時期にまだ至つてないと思つておりまして、向うもそういう提案をしなかつたのですが、そういう必要が将来生ずるかどうかということはとくと研究いたしたいと存じます。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 実は打明けて申上げますと、ちよつと速記をとめて頂きたいのですが。

有馬英二民主クラブ

○委員長(有馬英二君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕

有馬英二民主クラブ

○委員長(有馬英二君) 速記を始めて下さい。

平林太一自由党

○平林太一君 只今外務省顧問として、特にこのたびはフイリピンの賠償問題に対しまして重大なる御使命を担われてかの地に参られまして、その結果を本日全権としての津島君から詳細に御報告を受けたのでありまして、私はこれを了承いたすものであります。定めし極めて複雑、困難なこの問題に当られました一行の御心労のほどを深く拝察をいたしまして、この機会にその御労苦に対しまして深い敬意を先ず以て表しておく次第であります。何とぞ今後、本交渉が今後のことに属されておることをも只今承わりましたにつけましても、十分御自重御加餐下されまして、この交渉に対しまする最終結論に成果を得られることを相互のために希つておく次第であります。  お尋ねいたしたいと存じますことは、この只今のお話の中にありました我がほうが賠償に対しまして負担をいたす勿論至誠を以てこれに当りますことにつきましては国民あらかじめ覚悟はいたしておると思うのでありますが、併しながら今後の我がほうの能力に対してそれを調査していたすというのでありますが、およそその能力なるものに対しまして私の深く心痛おく能わざることと感じておりまするのは、いわゆるサンフランシスコにおきまして第十四條に示されておりまするところのその條項を我が国民といたしましては了承いたすということにつきましては、当時総理が欣然これを受諾いたしたる以上、その建前におきまして少しも変つておりません。でありますからどうぞその範囲を逸脱しないようにこの行為の履行が我がほうにおいて容易の間に行われて行くことを望んでやまないものであります。御承知の通り能力と申しましても最後のこの搾れば血の一滴も出るであろうというような観点の下に、この能力の問題を算定いたされて行くことに相成りますると、我がほうといたしましては、今後十年、或いは只今のお話によりましても十五年という長きに亘りましてこれを継続いたしますことは堪え得られないことだろうと思うのであります。従いまして今回の講和に我がほうが受諾いたしましたその責務を自由国家群の一員といたしまして果す上におきましても、いささか障害があるということを思わざるを得ないのであります。この点に対しまして極めてこれが具体的な問題と相成りますると、約百六十一億と申しまするか、世上伝えられておりまする八十億と申しまするか、なかなかこれを聞き及びまして我々の受けた感じは、非常にこの正式な今回の会議におきまして実は驚愕おく能わざるものを禁じ得ないのであります。要はどうかこれが誠意ということを事実の上に行われるような可能な範囲における処理を要望してやまない次第でありますが、我々といたしまして全権津島君としてのお考えがありまするところを御説明頂きたいと思います。

團伊能自由党

○團伊能君 只今御説明を承わりまして非常にあれですが、その中におきまして一、二点こういう考え方ではないかという、私質問をさして頂きたいと思うのであります。  このフイリピンが最初にフイリピン政府の提案にあります協定前といえども、又は批准以前といえども、一割に該当するものを日本が賠償を支拂う誠意の表現としてあらかじめ支拂うという條項でございますが、これはまあ後には変つておりますが、やはり一割ということが出ております。これはフイリピン側においてこの賠償を拂うことが、即ち批准をする前提傑作であるというような工合に考えているのではないかという、私ちよつと疑いを持ちますが、その辺の御説明を頂きたいと思います。  次はなお講和條約第十四條の問題でございますが、十四條には非常に明瞭に役務賠償ということを謳つてございまして、その中になお沈船引揚げというような具体的な例も挙げて出ておりまして、相当明瞭な文句と思いますが、それにかかわらずこの第一回の提案はどうも金銭賠償であるかのごとくも聞えますが、その辺のところを御説明願いたいと思います。

津島壽一外務省顧問

○説明員(津島壽一君) 只今の團委員の御質問でありますが、第一点のこの批准前又は賠償協定の締結前に拂うというのが、或いは一割と仰せになつたかと思いますが、あれは一分でありまして、この第二次新提案において一割だけは批准後となつております。第一回の提案においては批准前又は賠償協定締結前一分の支拂をせい、これが一つの誠意のまあ表現のテストであります。そういう内容でございます。第一次の提案はこれがこの誠意を示す方法として、という趣旨は、先方の平和條約批准に関連あつての要求であるが、と、こういう趣旨でございました。先方の会議におけるような説明のうちにはそういう言葉が随分入りますが、それだけであるという趣旨ではないと思います。とにかく向うの国家の財政、その他全般から見て、早く一分の支拂いをしてもらいたいと、こういう意味なのであります。ときどきそういつた言葉も洩れたことはございます。併しそれなら批准するからと、こういう関連性はないので、広い音意味からだつたと思います。  それからもう一つあとは何でございますか。

團伊能自由党

○團伊能君 十四條の関係。

津島壽一外務省顧問

○説明員(津島壽一君) 十四條の関係の金銭の賠償はどうかという問題、これについては先方において、文書においても又会談中においても、いわゆる金銭賠償(キヤツシユ・ペイ)を支拂方法の一つとして主張したこともございます。これは一般の世論と申しますか、先方の国民の中にはそういつた主張が相当あるということは認めます。併し会議において、又は文書の上においてそういう問題を提起して論議したことはございません。だんだんこの順序によつて賠償條項十四條の規定に即応するがごとき提案になりつつあるということは、どの辺にあるかということを私どもは推測し得られるのであります。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 今津島全権からいろいろお話を伺いましたのでございますが、この将来フイリピンから今度は日本のほうに来られて、更に又いろいろ御交渉がおありになるということでございますが、私も実はサンフランシスコの講和会議を傍聴いたしましたときに、フイリピンの全権がまあ非常な熱弁をおふるいになつて縷々と御自分の国の疲弊状態、そうして日本が侵略国である、フイリピンに対しては非常に迷惑をかけた国であるにもかかわらず、日本の生産回復、国民の総所得、それから街を見ると立派なビルデイングが回復したり、或いは飲食店その他相当な贅沢な面も見られる。街行く人の衣服その他も相当整つている。こういうような状態と、それから迷惑をかけられた自分の国の疲弊困憊の有様と比べて、日本が当然十分な賠償を拂える余地があるはずだというような御演説をなさつていらつしやつたのを私も伺つたのでございます。それで今度向うから全権がおいでになつて、まあ日本の都下地その他をいろいろ観察をなさつたときに、特に日本の支拂能力というようなものを、外面から見た日本人の生活水準の回復程度というようなところからもいろいろ又見られるのではないかというように考えます。それで全権があちらへおいでになつて個人の目で御覧になつてフイリピンが戰争前と今日とでどの程度回復しており、日本の戰前と今日との回復の程度、それから両方の現在の生活水準の比較というような点で、どのようにあちらが生活程度が高いとか、或いはこちらのほうがより高いとかいうような、これははつきりした数字で示すことはむずかしいと思いますけれども、まあ目で御覧になつたときにどういうような印象をお受けになりましたか、その点を一つ聞かして頂きたいと思います。

津島壽一外務省顧問

○説明員(津島壽一君) ちよつと速記を。

有馬英二民主クラブ

○委員長(有馬英二君) では速記をとめて下さい。    午後三時九分速記中止    —————・—————    午後三時二十八分速記開始

有馬英二民主クラブ

○委員長(有馬英二君) 速記を始めて下さい。

兼岩傳一日本共産党

○兼岩傳一君 私は賠償の使いは非常に御苦労だつたと思うのですが、私は平和條約十四條そのものが含んでおるところの解決すべからざる矛盾はあなたの御努力によつてはなかなか解けないにもかかわらず使いされて御報告をされたわけでありますが、私はその御報告の中で予備会談が目的を果した、非常に有益であつたというふうの意味を公式な声明としてあなたがお出しになられたように拜聽いたしましたが、一つわかり易くて結構でございますが、どういう予備会談が如何なる政治的、外交的目的を以て行われ、又どういう点においてその会談が目的を果し、どういう意味において有益であつたかという点、一つお尋ねいたしたいと思います。

津島壽一外務省顧問

○説明員(津島壽一君) その点は先ほどの報告を一つ速記を読んで頂けばわかると私は思うのですが、先方の考えは今日までわからなかつた。サンフランシスコの会議における演説のこともいろいろありまして、今度行きまして十数回に亙つて話合いをした結果十分先方の地位、意見、国民感情こういうことがわかつて来た。又こちらの意見も今まで一回も言う機会がありませんでしたが、日本側はこの問題についてそれを十分述べたつもりです。その結果としてだんだん意見の立場にお互いに入つて来たという事実を認めました。そういう意味において有益であつたと、こういうのです。もとよりこれはエキスプロラトリし、こういうことを言つておりまするが、そんな程度で何も有益でないとおつしやれば、それはもう意見の相違でありますが、そういう意味であります。

兼岩傳一日本共産党

○兼岩傳一君 これは或いは御答弁しにくければ御答弁頂かなくても止むを得んと思いますが、私の一番憂慮する点は、つまり使命が非常に過去の予備会談及び今後の展開を含んでの問題なんですが、予想外に私どもが憂慮している平和條約十四條の解決すべからざる矛盾がうまく解決されて、両国が或るよい結果に到達をしたというような場合には、と見えたときには、そういう提案を締結したところのキリノの政府が崩壊するのじやないかという私は心配を持つわけなんです。又キリノ政権が崩壊することなくして国民大衆の戰争被害に対する憤激を解決するとなると、これは又非常に困難だと、こういうような点が私はあなたの過失の御使命及び今後の御使命についての中心的問題で、この点はあなたに質すべき問題ではなくて、外務大臣並びに総理大臣、吉田政府に対して私は質すべきものだと考えますので、この点は御答弁を強いては求めませんが、そういう非常な憂慮を我々は持つておるということに対して、何か御意見がございましたら承わつておきたいと思います。

津島壽一外務省顧問

○説明員(津島壽一君) 御意見として拝承いたしておきます。

有馬英二民主クラブ

○委員長(有馬英二君) それでは外務委員会をこれで閉じます。    午後三時三十二分散会

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