法務委員会 第67号
- 発言数
- 129 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1952/06/13
会議録
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を行います。質疑の通告がありますので、これを許します。北川定務君。
○北川委員 刑事訴訟法の改正にあたりまして、私はこの改正案並びにこれと関連いたしまして政府委員に質疑を行いたいと思います。 昨日の委員会で吉島委員からも質疑がなされましたが、刑事訴訟法の三百四十三条、三百四十四条の規定によりますと、保釈によつて出ておる被告人が禁錮以上の刑の言い渡しを受けますと、ただちに無条件で拘束されることに相なつておるのであります。そこで再び保釈を得ようとすると、さらに保釈の手続をせねばならぬことになりまして、この場合の保釈金の問題ということにつきましても、被告は非常な不利益をこうむるのであります。すなわち第一審で保釈を受けるときに納めておつた保証金のほかに、さらに二審における保証金を出さなければならないということにもなるわけであります。また判決言い渡し後に勾留された場合には、なかなか保釈の手続がむずかしいことも古島委員が昨日申しておられる通りでありますが、さらに被告が困りますることは、せつかく控訴の申立てをいたしましても、保釈にならない場合にはやむを得ず服罪せねばならぬ。ことに短期の自由刑を言い渡された場合にことにかような場合が多いの でありますが、そうなりますと、せつかく上訴権を認められておりながら、勾留せられておりますために、またその勾留が長引くために、ついには上訴権を放棄するという結果に相なるのであります。政府委員におかせられましては、かような点につきましていかようなお考えを持つておられまするか、いま一応お答えを願いたいと思います。
○岡原政府委員 御指摘の点は実務上起り得るのでありまして、いろいろ実際問題として御不便をかけ、あるいは国民感情にも合致しない点が出る場合があるかと存じます。そこで私どもの一応の考えといたしましては、昨日も古島さんのお尋ねに対してちよつとお答えいたしました通り、一応この三百四十三条あるいは四条等の考え方は、従来無罪の推定をされておつた被告人が、一審判決において、一応確定判決ではないけれども、有罪ということになりましたので、身柄の拘束をまた始めるということになるのでございますが、具体的な案件によりましては、ただいま御質問のように、本人に非常に気の毒な場合も出て来るかと存じます。さような場合に、あるいはその場合の事情によりまして、再保釈をやる場合もございましようし、あるいはその保釈の保証金につきましても、前と比較をして特に高くなく、つまり別に差額をもう一度出さなくてもいい程度の保証金を定めるというのが多いだろうと存じますが、数ある事件の中でございますから、御指摘のようなことは、確かに起り得るのであります。そこでこれらの点について、実際問題としていかように、これをいかに妥当に解決すべきかということは、実は私どもの悩みでございまして、裁判所とちよいちよいこの問題について話し合うこともございますが、全般的にこれを法律の面で改正するということになりますと、やはり影響が相当大きいのでございますので、なお御趣旨の点は十分参酌いたしまして、後日を期して研究いたしたい、かように存ずる次第でございます。
○北川委員 ただいま伺いました点は、ひとり私の考えだけではなくして、おそらく実務に当つている弁護士の大多数の人、及び裁判の言い渡しを受ける多くの人々が、さように感ずることと思うのであります。私はむしろ一審において有罪の判決を言い渡す場合には、特に裁判官において勾留の保釈を取消すという裁判をしていただく。もしその裁判がない場合には、やはり保釈を続けておくというのがいいのではないかと思うのであります。有罪の判決を受けた者が拘束されるというのは、おそらく立法理由は、裁判の執行を確保するためになさるのであろうと思うのでありますが、ことに軽い刑罰などの言い渡しを受けておる人につきましては、裁判の執行につきましても、特に勾留しなければその執行の目的を達することができないというのではないのでありまして、特にさように取扱うことがよいのではないかと思うのでありますが、いま一応この点につきまして、政府委員のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○岡原政府委員 ただいま問題になりました点は、法制審議会におきましても、当初問題にすべき点の一つとして、研究の議題に掲げたのでございます。昨年、たしか九月の末であつたと思いますが、問題を選びました際に、大きくわけて三十項目ほど、小さくわけますと五十数項目にわけました中の一つに入つておつたのでございますが、いろいろ皆さんと議論を闘かわせておる間に、一応今回の改正の際には、この点には触れないで、後日また研究をし直そうということで、次の研究にゆだねてあるわけでございます。昨日もちよつと申し上げました通り、賛否両論ございまして、裁判所側としては、いろいろの立場もございましようが、この制度は廃止すべからず、つまり現行の通り行くべしという議論が多いのでございますが、お話の通り、弁護士会からは、相当それについての異論もございました。私どもとしてはそれらの両方の立場を十分にしんしやくいたしまして、さらに研究いたしたい、かように存ずる次第でございます。
○北川委員 いま一点、このことについて伺いたいのでありますが、有罪の判決を受けて勾留せられておる被告人が控訴を申し立てた場合に、なかなか控訴審の裁判が開かれない。そのためにたとえば二箇月とか三箇月の重刑を言い渡されておる被告人は、むしろ勾留期間が長くなつて、刑罰よりも長くなるというので、上訴権を放棄して服罪するという場合が多々あると思うのであります。かくてはせつかく認められておる上訴権が、勾留のために行使ができないという結果に相なると思うのでありますが、この点について、政府委員のお考えを伺いたいと思います。
○岡原政府委員 きわめて短かい、今お話のような二月とか三月というふうな懲役刑等の言い渡しがありました場合には、御指摘のように控訴審における審理が長引く、あるいはなかなか始まらぬために、実際問題として権衡がとれないというふうになる結果も考えられるのでございますが、それは非常にこまかい事件だと思いますが、さような際には、原審におきまして、つまり記録が原審にある間において保釈できる規定が、刑事訴訟法九十七条にございますので、これの活用によりまして、ある程度実際上の不便は取除かれるのだろうと思いますが、具体的な案件では、またいろいろ御指摘のような点もあると思いますので、それらの点は裁判所の方とも十分連絡をとりまして、保釈の実施、並びに控訴審の裁判の促進等については、さらに協議を重ねたいと思います。
○北川委員 次に検事勾留の期間の延長の点について伺いたいと思います。従来検事は起訴前に十日間の勾留期間が認められておりますが、私らの知つておる範囲では、これがさらにやむを得ざる場合に、十日間を延長することができるという、あの規定によりまして、二十日に延長されているのが非常に多いと思うのであります。検事総長のお話では、ほとんど十日間で処理されているというようなお話がありましたが、これは私は勾留する事件が非常に多いために、軽微な事件についても勾留をしておるために、十日で済んでおるのであつて、勾留されておる事件のパーセンテージが八〇%と言つておられましたが、八〇%のうちの二〇%が延長しており、八〇%は十日間で処理されているというように話しておられましたが、これは事件が軽微な事件について勾留されるから、かような結果になるのではないかと思うのであります。もしお手元に起訴された事件のうちに、どれだけが勾留されておるか、どれだけが不拘束で起訴されているかという率がおわかりでしたらお知らせを願いたいと思います。
○佐瀬委員長 その点はさつそく調査の上、後刻報告願うことにして、他の問題の質疑をお願いいたします。
○北川委員 私の知つております事件で、これは公職選挙法違反の事件でありますが、十日の間に一回の取調べもしない。そしてさらに十日間延長して、ちようど勾留の満期になる日に被告人を調べて釈放し、略式命令を請求したという事件がございますが、かようなやり方は形式的に刑事訴訟法上認めておる範囲の行為ではありますが、明らかに人権を蹂躙するものではないかと思うのであります。かような場合に、その取扱いました検事に対して、いかような御処置をとられるか、この点について伺いたいと思います。
○岡原政府委員 ただいま御質問のような、十日間において一つも調べがないというのは、もつてのほかでございまして、大体勾留をいたしますのは、事件の取調べの必要上、身柄を拘束するのでありますから、いろいろな事情がたといありましても、それはまこと好ましからざるととだと考えております。そこで具体的な案件が、選挙違反のいかような事件でございますか、今私つまびらかにいたしませんけれども、もしもその案件が、たとえば勾留する必要がないような事件でございましたら、もちろん問題でございますが、ただ場合によつては、共犯等の関係におきまして、ほんの最初の勾留尋問の際の、いろいろな調べの模様その他でなかなか傍証が固まらない、そうしておるうちについ日がたつてしまつたというふうな案件も中にはあるかと思いますので、具体的にまた私どもの方で資料をいただきますれば、調査いたしました上で、しかるべき処置をとりたいと存ずる次第でございます。
○北川委員 検事勾留に関しまして、聞取書の効力について伺いたいと思います。今まで取調べを受けたことのないような人が勾留をせられますと、非常に衝撃を受けまして、そのために一日も早く出たいというようなことから、取調官に迎合しまして、いろいろな陳述をする場合があり得るのであります。そうして事実が次々と歪曲されて、その聞取書は事実とはまつたく違つているものができ上る場合が多いと思うのであります。刑事訴訟法上、聞取書は被告人や弁護人が、その事実の内容を単に否定いたしましても、暴行、脅迫等によらない限り、その証拠力は認められているのであります。しかしながら、その調書が暴行、脅迫によつてでき上つているということを立証することは非常に困難でありまして、不可能な場合が多いのであります。証人として、取調べをした人を喚問いたしましても、なかなか暴行を加えたとか、脅迫を加えたとかいうことは申さないのであります。結局裁判の終るまでに被告がその調書の効力を争いましても、弁護人がその証拠力を争いましても、これは証拠としてちやんと記録に添付されるのであります。さようにいたしますと、二審、三審と相なりますと、結局歪曲されたままの事実が裁判の資料と相なると思うのでありますが、この聞取書の効力について、私は争いのある場合には証拠として採用することができないというふうにする方が、一番正しい裁判ができるのではないかと考えておるのであります。この点に関しまして、政府委員の御意見を伺いたいと思います。
○岡原政府委員 いろいろ事件の内容によりまして、ただいま御指摘のように、法律的に見まして、形式的な証拠能力があるかのような聞取書でありましても、実際問題として、三百十九条によつて争われ得るような記録は確かにあるだろうと存じます。そこで事実問題として、さような被告人の側から、自分は暴行、脅迫を受けたから、かような陳述をしたのである、十分にお調べ願いたいということの申出がありました際に、裁判所において、その供述をしさいに点検し、また記録に書いてある内容またはその当時の関係人等の調べによりまして、これが立証されませんでも、その疑いが出た場合におきましては、証拠能力はないというふうになりますので、結局厳密に言つて、どちらから見ても間違いない程度に暴行、脅迫の事実が証明されたということは必要がないのでありまして、御指摘のような点につきましては、具体的にその点の疑いが生ずる程度の心証を裁判官に与えることができれば、その調書は証拠にならない、かような結果になると思います。 なお先ほど御質問のありました身柄付の起訴、不拘束起訴の割合、これは昭和二十六年一月、二月中に起訴せられました公判請求でございますが、一万七千三百九十七名のうち、勾留のまま起訴いたしましたのが一万一千五百九十六名、それから起訴のときに令状請求をいたしましたのは、四百九十一名でございます。身柄不拘束のまま起訴いたしましたのが残り五千三百十名でございます。ほぼこんな数字でございますが、パーセンテージにいたしまして、身柄不拘束のまま起訴いたしましたのが二七%ほどになつております。
○北川委員 ただいま勾留して起訴した場合、不拘束の起訴の場合のパーセンテージをお示し願つたのでありますか、さらにこのパーセンテージと戦前のパーセンテージを比較することが、一番妥当ではないかと思うのであります。他の機会でけつこうでありますから、戦前と戦後を比較してお示し願いたいと思うのであります。 それから勾留期間の七日間の延長でありますが、現在二十日間検事勾留ができる上に、さらに七日間を延長しようというのであります。私は複雑な事件や共犯関係の多い事件で勾留期間の必要なことは認めるのでありまするが、もし勾留期間が七日間延長されると、改正法には幾多の条件が付してありまするけれども、それらの条件は検事の認定による場合が多いのでありまして、ほとんどすべての事件にこの二十七日間の勾留期間を適用されるおそれがあると思うのであります。そこで私は勾留期間を延長する場合には、犯罪の種類等を特に限定しておく必要があると思うのでありまするが、この点につきましていかようなお考えを持つておられますか。
○岡原政府委員 昨日申し上げました通り、この七日の延長につきましては、事いやしくも人身の拘束にわたりまする関係上、その要件をお話の通りたいへんしぼつてございます。そこでこれらの要件が全部充足されておるかどうか。検察官が一応請求の際に理由をつけて裁判所にまわすのであります。裁判官がさらにそれを審査いたしまして、さような事実が認められるという場合に限つて、この延長が認められることになるのでございます。裁判所は検察官の請求がございましても、要件が全部ないというふうな場合には却下ができるのでありまして、現に現在でも二百八条の二項に基く延長を裁判所に請求いたしまして、はねられた案件も相当あるのでございます。 なお特殊な犯罪についてのみこれを限定するのはどうかというお話でございまするが、大体私どもの予定しておりますのは、内乱、騒擾あるいは集団強盗等、相当多数の者が一度に犯罪を犯すということでございまするから、ある程度の予想はできるのでございまするが、ただ具体的にそれを罪名で限つておきますると、事実相当多数の者が一度に犯罪を犯したというふうな別の罪名の案件ができましたときに、この適用がない。結局非常に訴訟上困るという場合もあろうかと存じまして、一応条件を非常にしぼりましたけれども、死刑、無期もしくは三年以上という比較的重い罰に法定刑の範囲で限つたような次第でございます。
○北川委員 次に、控訴審において被告に争いの機会を与えていただく立法がなされることはまことにけつこうだと思うのでありまするが、この法案によりますると、一審の判決の言い渡しまでの事実に限られているようであります。被告人に防禦の方法を二審においても許すならば、二審の裁判のあるまでの事情についても許してやるのが妥当ではないかと考えるのであります。この点に関しまする政府委員の御意見を伺いたいと思います。
○岡原政府委員 御質疑の点は最初申し上げました通り、控訴審の訴訟法上に関する大きな問題でございまして、考え方もてはいろいろございます。建前といたしましても、いわゆる覆審的な、少くとも続審的なうことにした方がよかろうという御議論も相当ございます。ただ現在の裁判所法並びに訴訟法が全体的に一応控訴審を事後審としての建前で貫いてございまするので、これを一箇所いじりますと、またその影響が相当大きいところまで及んで来るのでございます。さような関係で今回の改正につきましては、一審判決以後に生じました事実についてはしばらく遠慮していただきまして、ただ情状の点につきましてはこれを参酌できる。たとえば一審判決後において弁償をいたしたというふうな場合においては、これは十分しんしやくすることがまつ正面からできるというふうなことにいたしまとて、事実のみに関してはこれをとらなかつたような次第であります。 なお実際問題として事実そのものについて一審判決後に動くというのは、たとえば傷害致死といつたような事件でございまして、一審判決当時までにはまだ死ななかつた。単純傷害として打たれた。その後において死んだから事実は傷害致死になつたという場合が事実上考えられるのでございますが、これはむしろ被告人に不利益な場合でありまするし、全般的にいろいろ起り得る、いわゆる結果的加重犯、少くとも結果犯のあるものについていろいろ考えてみたのでございますが、結局被告人に不利になるような場合のみが多いのでありまして、この際これを取入れるのもいかがかと思いまして、この点については事後審の精神に徹した、かようなことであります。
○北川委員 最後に伺いたい点は、犯情については一審の判決の言い渡し後の事情も控訴の理由とすることができるというお説でございまするが、さような明文がございましようか。
○岡原政府委員 そういう言葉を使いましたら私ちよつと言い違いでございますが、この条文の「三百九十三条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。」この中に「控訴裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状につき取調をすることができる。」という条文を置きまして、事実上裁判所に対しまして、弁償した事実がございます、これを調べていただきますということを申し出ますと、裁判所は職権ではございますが、それを随時取調べて情状の参酌をすることができる、そうしてそれに基きまして原判決を破棄する程度のものがございますと、三百九十七条の次に次の一項が入るという規定がございまして「第三百九十三条第二項の規定による取調の結果、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる」この条文にのつとつて参りますので、十分情状の点がしんしやくできる、かような趣旨でございます。
○北川委員 ただいまのお説は、いずれも裁判所側の権限でありまして、被告人側の控訴権の範囲ではないのであります。せつかく控訴審においても被告人の権利を拡張されるのであれば、私は一審の判決以後の事情についても被告人の権利として控訴趣意書に掲げられるような条文を改正されることが適当ではないかと思うのでありまして、私はこの点の希望を述べまして、質問を終ります。
○岡原政府委員 ただいまの御質問ごもつともでございます。ただ私どもといたしましては、控訴趣意書にその点を掲げるということになると、控訴趣意書を提出するまでの間にその弁償ということが起らぬと書けないというふうな実体もあろうかと存じまして、控訴趣意書を出したあとにおいても、弁償があつたらやはりこれを取調べることができる、というふうに広く認めたいという趣旨も入つておるのであります。
○佐瀬委員長 古島義英君。
○古島委員 私は出席するのがおそくなつたものですから、昨日の質疑のうちで保釈の分は北川君が質問してくれましたので、もし重複をしておれば、その分は北川君に答えたとおつしやつていただければよろしゆうございます。 私の承りたいのは、多衆共同して犯した罪は、権利保釈の範囲外になる、こういうことになつておるのですが、この多衆共同してやるという犯罪のうちには、ずいぶん多くのものが想定できると思う。われわれがまず考えるのは、選挙違反のごときものはただちに多衆共同したことに相なると思うのであります。わずかな選挙違反をいたして、これが権利保釈の対象外になるということは、実に人権の尊重をしないにもほどがあると思う。この点に向つて何かお考えになることがあるか。またわれわれは暴力団とか、もしくは集団強盗だとか、集団暴行だとか、こういうものが常に弊害のあることは承知いたしておる。これは何でもないとは思いません。しかしながらそういうものを対象にして権利保釈の外に置きましても、多衆共同したということにすると、いよいよ法律がしかれますと、その方に持つて行つてしまうおそれがある。法律をこさえるときの精神と、法律を実際執行するときの精神とはかわつて参りますから、そういうふうなものを別に包含しないような意味合いのことを取入れることができなかつたかどうか、これを承りたいのであります。
○岡原政府委員 ただいま御質疑のような、たとえば選挙違反のごとき、大勢が一度にあがるというような点は、実は多衆のいわゆる共同には入らぬというふうに考えております。従いまして御心配のような事態は起らぬと思うのでございます。またかような法律の規定を新たに置きましたについて、それが後日運用上いろいろれ疑義を生ずる向きもあろうかという御質問ごもつともでございまするので、この点につきましては、もちろんさようなものは入らぬという趣旨は十分周知徹底させるつもりでございます。
○古島委員 御説明はよくわかります。ところがわれわれの心配いたしますのは、選挙違反等でも、そういうものは共同して犯したのではないということに入れ得られるかどうか問題だと思う。今回選挙法の改正において、連呼をすることを廃するのだが、自動車に三十人も五十人も乗つて、これが連呼したということになれば、共同になる、わずかに連呼しただけをもつて共同である。そこで今度は保釈の対象にならぬということになれば、これはあなた方のような心持ちでおればよろしいが、後日ずいぶん共同と見られる場合が多いと思う。こういうものは含まぬのだということを、何か明確にする必要があるのではないかと思うのですが……。
○岡原政府委員 ごもつともな御質問でございます。ただ実際問題といたしまして、連呼行為のごときは、選挙違反のうちでもいわゆる割合軽い方の違反でございまして、事実上さようなものについて、一度に相当多衆という程度の多くの者が身柄を拘束されて、いつまでもおるというふうなことはあるまいと思いますから、事実上さような実害と申しまするか、不都合な事案は起らないと存ずるのでありますが、この点につきましては、私ども先ほど言つたように、十分この共同という語義も周知徹底させるために努力をいたすつもりでございますので、御了承願いたいと存ずるのであります。
○古島委員 次にお伺いいたしますのは、審理のためにその事件についての知識のある者、こういう者に向つてお礼参りをする、このお礼参りをするというような弊害がなかなか多い、われわれもこの点に向つては何とかせねばならぬと思うのでありますが、この権利保釈には、特に罪証の隠滅の疑いが十分にある場合には、これを除くということになつておりますから、暴力団のような人が今のお礼参りをするというのは、後日証人にでもなつたら、有利に言つてもらおうというような心組みでやる、つまりいえば罪証隠滅という方に入るのじやないか、罪証隠滅が厳然としてこの法律に書いてある以上は、このような特にお礼参りをするような連中まで、これを別にするということは重複するような傾きがあるのですが、その点はいかがですか。
○岡原政府委員 たしかにこのいわゆるお礼参りというものにつきましては、罪証隠滅という考え方に基いたのではございまするが、実際上の問題といたしまして、罪証を隠滅する疑いがあるという確固たる証拠がない場合がございます。土地の親分等で、保釈で出たならばあいさつに行つてやろうというふうなことを公言しておる。ただあいさつに行くことそれ自身は実は何でもないことなんでございまするが、聞いた方の弱い被害者等は、これはたいへんなことに相なる。もしも自分が公判に呼ばれたら、まあひとつ当りさわりのないことを言つておこうというような気を起す場合が多かろう、それで実際問題としては、結びつきが起る場合が多いのでございまするが、それが客観的に証拠で明らかにし得ない場合がまた多いのでございます。そこで土地の親分等でさようなことをやるおそれが十分認められるようなものにつきましては、罪証隠滅の証明が具体的につきませんでも、これを権利保釈の除外例にする、かようなことを考えたのでございます。
○古島委員 そうしますると、あまり書き方が漠然としておるように思うのです。「身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる充分な理由がある」これはあまりにどうも空漠な書き方で、ちよつと捕捉しにくいのですが、もしそういうふうな、お答えのようなことであれば、一方畏怖させるようなふうに言う、害を加えた方は議論がありませんが、——この場合は別に脅迫罪が成立する、もしくはその他のことで十分取締れるのではなかろうか。こういうようなただ保釈にしないというのが、その人の性格が暴力団的の人だ、親分的の者だ、そこらのボスがやるというような場合には、大体それと想像がつきますが、そうでない人々をまたやられる心配が起つて参る。つまりどうもこれは体が大きいとか、もしくは不遜な行動らしく見られる、いばつている、こういう連中は保釈が許されると、またお礼参りにでも行くのではなかろうかという疑いを受けて、それで保釈が許されぬということになれば、これはたいへんなことになる。そこで、罪証隠滅の方はりつぱにほかに書いてある、それから今度は畏怖させる、おどかし文句を言うという場合には、刑法で別に処罰ができるということになるのですから、これを保釈の対象外に置くということは少し行き過ぎではなかろうかと思うのですが、どうでございましよう。
○岡原政府委員 このお礼参りにつきましては、なるほど保釈で出て参りましてから、具体的に犯罪行為、たとえば脅迫とか傷害暴行といつたような事実がございますれば、お話の通り処罰ができるわけでございます。ただまだ出ないけれども、出たならきつとそういうことをするに違いないというふうな疑いをいれるについて十分な理由があるときというふうに法文がなつておりまするが、何らか平素の行動によつてその証明がつくといつたような場合に限つて、この権利保釈の除外事由になるわけでございます。もしもこれが保釈で出た上で、具体的に現実に暴行あるいは脅迫等の行為がございますれば、一方刑事法的な制裁を科せられると同時に、新たに設けられました九十六条の第四号の規定によりまして、保釈の取消しもできるというふうに、趣旨を一貫さしたつもりでございます。具体的な事案によりまして、たとえばお話のように、こわい顔をしてからだが非常に大きい、顔を出しただけで相手方はこわがるといつたような場合も中にはあるかと思うのでございますが、ただそれだけの事情で権利保釈から除外するというふうな趣旨ではないのであります。
○古島委員 あえてあげ足をとるのではありません。実際からいいますと、まず商売的に見られる場合がはなはだ多い。たとえばテキ屋とか、今は博徒はそうありませんが、博徒の親分であるとか、土方の親分であるとか、こういうふうな組は、商売的に見てどうもお礼参りもしそうなやつだ、こう思われる。ところが被告というものはそういうものではありません。土方の親分あるいはテキ屋といつたような者につきましても、今までは入つたことがないからいばつておつた。一ぺん入つて来たが最後、まことに青菜に塩でへこたれてしまつたというのもなかなか多い。そういうのが、実際は謹慎をしておるのだが、どうもテキ屋なるがゆえに、ばくち打ちの親分であつたがゆえに、なわ張りのことでけんかをしたがゆえに、検挙をされますと、商売的に見て、法にこの条文が入れば許されぬことになる。そういう場合には、どうもその人が謹慎をしても、従来のその人の素行等を調べて、いかにもいかぬやつだということになりますから、許されないことになる。実際は謹慎をしておる。こういうときには条文に置かずにおいて、罪証隠滅だ、もしほんとうにやれば、この法で罰するということにしておいた方が、かえつて融通性があつていいのじやなかろうかと思いますが、いかがでしよう。
○岡原政府委員 私どもがこの法文をつくりました際の気持といたしましては、ただ前歴が、たとえば今お話のテキ屋の親分あるいはおも立つた子分で、当然そういうことをやりそうだというだけのことではないのでございまして、それが依然としてその気持を捨てない、そしてこの法文にございますように、さような行為をすると疑うに足りる——具体的にそういうようなことをしそうな者であるということは、前歴からしてすぐにそういう結論が出るのじやないのでございまして、そういう前歴がある、並びに依然として何か被害者を恨みに思つて、よし、出て行つたら何かひとつというようなことをつぶやいたりするようなことがしよつちゆうあるといつたようなことが重なりまして、「畏怖させる行為をすると疑うに足りる充分な理由があるとき。」かようになろうかと存じますので、ただテキ屋の身内の者であつたというだけのことでこれを働かすわけではないのであります。
○古島委員 実際は私はその点をお疑いいたしたい。しかしそういう行動をとるかどうかということは、判事さんが判断をする。ところが判事さんは、そう申してはおかしいが、実際は自分が善良なものでありますから、その自分の身に引比べて、今までの商売、今までのやり方等を考えて、どうもあぶないやつだと思うのが多いと思う。これは十分な理由があるというようなことになりますか、十分か十分でないかということは、判事自身が判断するところと条文に書いておけば、どうしてもそうなつて来るのです。だからこれはほかの表示方法を用いて、こういうふうなことでなくやつたらいかがかと存じます。 〔委員長退席、北川委員長代理着席〕
○岡原政府委員 具体的にこれを権利保釈にするかしないか、今の十分な理由があるかないかという判断は、お話の通り判事さんがやるわけでございます。ただその資料といたしまして、判事さんは手元に何もそういうふうなことを判断する材料を持ち合せておらないという場合も相当多かろうと存じますので、何も材料がない場合には、もちろん十分な理由があるという判断はつけがたいのだろうと思います。さような場合におきましては、具体的に、たとえば検察庁において被疑者が取調べ中に、被害者に対してすごい目つきでにらみ返したとか、あるいは監房にいる間に、よし、今に出て行つたらただじや置かぬとかいうふうなことを繰返して言つておるというようなことが、報告書あるいは記録に出て来るということがありまして、初めてそれが働いて来る、かような運用になろうかと思います。
○古島委員 こういう行動をとる疑いの十分な理由があるというのは、検事をして疎明させるということですか、疎明なくともよろしいか、一応の疎明が立たなければ、この疑いが十分だということは言えないと思います。
○岡原政府委員 この運用の実情といたしましては、結局さようなことにならざるを得ません。裁判所としては、別に何らの手持ちの資料もないわけでございますから、たとえば記録の中に、被害者に対しておどかしてやつたような事情が明瞭に出ておりますれば、これは格別であります。さような場合以外については、もちろん検察庁側で疎明して事をはつきりさせる、かようなことになろうかと存じます。
○古島委員 勾留期間の問題は、北川君が丁寧に聞いていましたから大体了承しました。ところが頂戴いたしました統計で見ますと、二十六年度に十日以内でやつた分が一万六千何ぼです。それから十五日以内でやつた分が一万五千三百四十四、それから二十日以内でやつた分が二方四千九百八十二、こういう数字になつておる。ところが十日以内でやつたというものの中には、北川君も指摘されてくれたのですが、窃盗とか食糧管理法違反という軽微なものがあるから、十日以内にこれが処置ができた。そうでない分はみな十五日なり二十日なりの方に入りまして、だれが見ても非常に軽微なものだという部分だけが十日以内で片づいたと私は思う。しかもこの十日以内で片づいたというのは、このとき釈放したというように考えるとたいへんな間違いである。この十日以内に起訴ができた、もしくは十五日以内に起訴ができた、あるいは二十日以内で起訴ができたのである。いずれもこれはからだの拘束は受けておるのです。そういたしますと、まず十日以内でやつた分は法的の勾留期間であるからよろしいのでございましようが、十一日以上ということになると、これはむし返した方の側に入る。そうすると、むし返した分が十五日以内が一万五千三百四十四であり、二十日以内が二万四千九百八十二であるということになれば、両方合せますと四万を超過するのであります。四万を超過することになると、十日以内に片づいたものが十六万人ある、しかも十日以内で片づかないものが四万あるということになると、四分の一というものはむし返されたことになる。四分の一がむし返されるということは、軽微でないものはことごとくがむし返されたという結果になるのでありまして、これはいずれも釈放されていないのであります。そうすると、今度は別の方面から考えると、これは十日間のむし返しができるからというので、必ずどれもむし返すということをやる。その後今度さらに七日の再延長ができるということになれば、二十七日の期間を持つておるのですから、二十七日という分がずつとふえて参ると私は思うのであります。これは検事がもう少し勉強をすれば、十分に起訴し得られる、もしくは釈放し得られる分であるが、検事がなまけておる、つまりいわば北川君が先ほど指摘したように、十日間ちつとも調べぬで、十日間のむし返しをして、二十日の期間が切れるときになつてこれを起訴するということが起つて来る。なるほど事件も忙しいからそういうことになるのでありましようが、二十日なら二十日ということにしておけば、二十日以内にはどうしてもそれを起訴することにはいたすのである。二十七日にいたしましても、三十日にいたしましても、五十日にいたしましても、いわゆる法律的にそれだけ抑留する権限を持つておりますので、これはどうしてもそのように持つて行かれる。そこでわれわれの心配いたしますのは、いやしくも憲法で保障した人権の尊重ということがやればやれるにかかわらず、いわば尊重し得られるにかかわらず、これを蹂躙するということに相なるから、期限の延長ということはきわめて危険だと思いますが、二十日以内にこれをやれ、一ぺんのむし返しだけでやれという特別の指令をあなた方からするなり、もしくはそういう訓示をするなり、何かの方法を講じて、それでもどうしてもいかんともすることができないということの疎明でもしなくんば、この法律を通すことはなかなか困難だ思う。そこで、いかにして二十日以内に片づけるということを要求したが、それでもできないということの資料が何かありますか。
○岡原政府委員 昭和二十六年の統計によりまして、ただいま御指摘のように被疑者の勾留が全体で約二十万人ございました。そのうち、十日以内が十六万人、十五日以内が一万五千三百人、二十日以内が二万五千人というふうに相なつております。そこで軽微な事件についても勾留する場合があるのではないかというお尋ねでありますが、大体二十六年度の受理人員が年間約二百万でございますから、そのうちの二十万、約一割というものが勾留されたということになるのでございます。一方起訴率等から見ますると、約三割幾らというものが起訴されておりますが、事件全体から見ますると、勾留されました人間は割合に少い比率になるわけでございます。なお食糧関係その他につきましては、たとえば食糧管理法違反の軽微な案件等は、大体身柄不拘束のまま調べておりまするので、軽微な犯罪等について勾留されるというのは、たとえば現行犯等でつかまえられて、身元を調べたり、事実の被害者をあたつたりするその期間だけ入るというふうな、やむを得ざる事件のみにとどまるということになるのではないかと存ずるのであります。なお、もしもこれを二十日から二十七日に延長した場合においては、いろいろとなまけ癖がつくのではないかというおしかりで、この点私どもといたしましても十分戒慎しなければいかぬことと存じます。そこで具体的にこれをいかに扱うかということにつきましては、最高検察庁とも打合せいたしまして、もしこの法案が通りましたならば、具体的にこの運用につきまして詳細なる通牒を出し、一件々々上司の決裁を仰いで勾留の延長の請求をするという建前にしたいと寄り寄り協議中の次第であります。
○古島委員 あなた方のお考えのように、どうしてもこれを延長せねばならぬというならば、一方にその勾留された人を保護するという道も講じてするならば、これはまあいいと思う。たとえば、こういう分はりつぱに疏明が立つならば保釈もできるのだ、もしくは刑事補償もできるのだということにすればいいのでありますが、起訴前の勾留は御承知の通り切捨てごめんで、まつたくやりつぱなしです。これが刑事補償でもとれるということになれば、まあ気の毒だから刑事補償でこれだけの補償もしたというので期間を延ばされましても、これは忍ぶことができましよう。ところが何日延ばされましてもこれでは切捨てごめんですから、刑事補償をするということを前提としてこういう改正案を出してはいかがですか。
○岡原政府委員 事件が不起訴になりました際に、その勾留期間について刑事補償をしたらどうかというお説はごもつともでございまするが、この点につきましてはいろいろ問題を研究いたしてみますると、なかなか簡単ではないようでございます。問題の所在は事件の不起訴の理由がどういうところにあるかということでありまして、たとえば、実際に犯罪はやつたけれども、事案が軽微だから起訴しないという案件もございまするし、あるいはこれは法律的に無罪であるからもう間違いなく起訴はできないという案件もございます。中にはまた証拠関係がどうもはつきりしない。かんじんな証人が二、三人足りないために事件の真相がわからないで、結局起訴ができないという場合もございます。そのそれぞれの事件によりまして、刑事補償をすべきかどうかという点がまたおのずからかわつて来なければならぬと思います。すなわち現在の刑事補償法の建前から申しましても、免訴の判決がありました場合に、刑事補償法の第二十五条に、「刑事訴訟法の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴又は公判棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して、抑留若しくは拘禁による補償又は刑の執行若しくは拘置による補償を請求することができる」という規定がございまして、実質的に内容が無罪であるという事件については補償をする建前はすこぶる当を得たものと存じます。ただ具体的に不起訴の案件につきまして、これは起訴猶予だから補償はできない、これは嫌疑なしだからさらにもう一度証拠関係を明らかにしなければならぬという点について、さて具体的に補償する際にどこが判断するかということになりますと、これは建前からいつて裁判所ということになろうかと存じます。さようなことになりますると、相当多数の案件が刑事補償のためにまた裁判所にもう一度かかる。結局不起訴の事件についても、当初から裁判所にかかつたと似たような手続をもつて、この刑事補償法の二十五条に準ずるような手続を規定しなければならぬということに相なるのでありまして、これはたいへんな手続になるのでございます。従いまして、その点がなかなか問題がございまするので、さしあたりは現行法のまま御了承願いたいと存ずる次第でございます。
○古島委員 いかに手続がごめんどうでありましても、拘禁された人の身になつてみれば、手続の煩瑣くらいなことは何でもないわけであります。とにかく警察で二日間、検察庁で二十七日、大体二十九日はとめられることになつて、お前はまだ証拠がよく集まらぬからこのままで解放する、こう言われても訴える場所がないのです。そうしてその間に新聞等では、だれだれが検挙されてどうなつたということでたいへんなことを書かれる。そうなりますと、それに刑事補償を与えるということでもせねば、これは均衡を失すると思うのです。そこで検察事務の方では、どうしても期間を延ばしてもらわねばならぬというような場合には、それだけのことをわれわれも了承することにして、しかしながら一方においてはそういう場合に刑事補償をするということならば、これは人民全部が納得するでありましよう。ところが日が延びた、切捨てごめんだということではなかなか納得しないと思うのです。そこで、どうしても日を延ばさねばならぬということの確信があるならば、まずもつて刑事補償法を改正いたして、こういう場合でも補償すべきものだということにしてからかからねばならぬと思いますが、そういうお考えはありますか。
○岡原政府委員 ごもつともの御質問でございます。私どもといたしましても、この点につきましては実は前からいろいろ研究を重ねておつたのでございます。そこで先ほどは端的にむずかしい点だけを申し上げたのでございますが、一方に権利の侵害があれば、これに対する保護が考えられるということは、これは当然のことでございますので、事実、技術的にはたいへん困難な問題ではございまするが、なお引続き研究いたしたいと存ずる次第でございます。
○古島委員 何ほど押問答いたしましても、これは誠意を披瀝してもらう以外にはないのでありますから、今度は簡易公判手続について承りたいと思います。私が申し上げるまでもなく、訴訟法の二百五十六条でございますが、訴因の記載のことが書いてある。 〔北川委員長代理退席、委員長着席〕 あの訴因の記載には、「数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。」となつております。この数個の訴因及び罰条は予備的にもしくは択一的に書くことができるのであるが、私の考えでは、起訴状を一たび裁判所に出す以上は、その事件は、法律的の意味においても事実的の意味においても権利拘束を生ずる。これは民事訴訟も同様であつて、その権利拘束を生じたものは、ほかの追訴がありましても追起訴とは別のものである。つまり、これを言葉をかえて申しますと、第一回の起訴はこれを本起訴と名前をつけますが、そうして追起訴があると、本起訴と追起訴とは別の権利拘束を生じておるのだが、その順序として、調べの都合上、便宜上いわゆる本起訴された裁判所が併合して調べるのがあの追起訴の目的なのだと思う。そうしますと今度は、本起訴が起つて、一年ないし半年かかつて、審理進んでまさに終了するような場面に行つて今度は追起訴が出た。その場合、追起訴の訴因と本起訴の訴因とこれを択一することができるかどうか、この点の御解釈はどうか。
○岡原政府委員 この本起訴と追起訴は、普通、事実が全然別の場合に限られておるのでございまして、もしその間に同一性あるいは牽連性その他がございますれば、これは追起訴としては不適当なものとなろうかと存じます。従いまして、今のお尋ねの点は、本起訴として最初に起訴された事実と何ら関係のない、全然別の事実について公訴の提起があつた場合、かように存ずるのでございますが、かような場合には、この二百五十六条の第五項による予備的の訴因というふうにはならないものと解釈しております。
○古島委員 多くの場合に事実が違うわけであります。そこで、本起訴は一月一日に何々の名で、追起訴は一月二日に何々の名でということになつて来るのでありますが、それでももうほとんど議論はないわけであります。ただ、数個の訴因とありますから、そこに一行為であつていろいろな罰条に触れる場合があることはもちろんであります。そこで一個の罰条をもつてやつたのであるが、それは立証ができない。やむを得ず今度は別の罰条を考えて追起訴をするという場合、この追起訴と初めの本起訴と択一的に訴因をきめることができるかどうか、この点が疑問なんです。事実が違えばむろんできないと思うが、事実が違わない……。
○岡原政府委員 お尋ねによりますると、一月一日に起訴した案件と一月二日に起訴した案件との間の一所為数法の関係の場合のように承つたのでありますが、最初に起訴した場合にその事実が証明が不十分になりかけたという場合には、普通の場合、いわゆる訴因の追加といたしまして、三百十二条による手続をなすべきものでございまして、もしこれが二つの起訴になります。れば、一個の事実について二個の起訴があつたというふうにならざるを得ないのではないかと思います。
○古島委員 まだ私の言うことがよくのみ込めずにお答えになつていると思うのでありますが、やや具体的にこれを申し上げれば、ここに何人かが他人に要求をして金をとつたという場合があるとします。金をとつたということがいかにも恐喝らしいから、これを恐喝でかりに起訴する。恐喝で起訴して、事件が進行した。ところが、その人間が恐喝したのでもない、金をとつたのだが、正当にとつたのだということの立証ができ、すべてが無罪になるべき立場になると、検事は、これが無罪になつては一大事だからここに非常手段を講ずるわけであります。そういう場合に、弁護士でなくて訴訟事務に関係したということでやればやり得られる。人から金を請求してとつた、とつたこと自体は恐喝にはならないが、しろうとであうて訴訟事務に関係したという——これは金銭を得ることが目的だ。業務にしたということは別問題として、とにかくその法律事務に携つたということ自体は弁護士法違反になるわけである。そこで、恐喝はどうしても立証ができない、かえつて無罪の立証ができたというような場合に、やむを得ず弁護士法違反をもつてこれを追起訴する。その追起訴の弁護士法違反という訴因と、初めの本起訴の恐喝の訴因と、これを択一するというようなことができ得られるかどうか、この点を承つておきたい。
○岡原政府委員 恐喝と弁護士法違反の事実につきましては、同じ行為がもとになつておりますので、一所為数法ということになろうかと思います。従いまして、ただいまの場合には、択一的というよりは、予備的訴因になるんじやないか、かように考えます。
○古島委員 わかりました。ただ、それを追起訴として択一するということが、法理的に可能だということだけは、言い得られると思つております。 次に承りますが、簡易手続の方面でどうしても関係があるのですが、国選弁護のことが、きのうもちよつと出ました。国選弁護にあたつて、訴訟法にこれがありますがために、これを濫用するおそれがあるように思う。これは弁護士の諸君におしかりを受けるかも、しれぬのでありますが、ごく横着な者があります。金は相当に持つておるが、自分で弁護士を頼まぬで、国選でやつてもらう。また弁護士を進んで私選でやると金をよけいとられるから、国選でやつて安くあげようという横着な者もないではない。ただ私選の弁護士を頼むことができないというだけの理由で、国選を頼むということにすれば、おそらく国家の負担というものは莫大であろう。この統計表で見ましても、大部分の者が免除を請求しておる。こういうことになれば、国家の財政を乱すことになるのであるから、むしろ一歩を進めて、国選弁護人を選任してもらうという場合には、無財産証明を出す、あるいは弁護士を頼むことができないという疎明書類をつけなければ、国選弁護は頼めないのだというようなことに、制約をつける必要があるように思いますが、その点はいかがですか。
○岡原政府委員 お尋ねのごとく、国選弁護の濫用と申しまするか、非常にその事例が多いのでございます。昨日御質問がございましたので調べて参りましたが、昭和二十四年から二十六年までの統計が出ておりますが、国選弁護人に支給した報酬額が、二十四年度が九千九百十二万七千円、二十五年が一億二千五百八十一万円、二十六年が一億二千九百七十五万九千円、かように相つております。なおこれは報酬だけの額でございまして、このほかに旅費日当が別にあるわけでございます。旅費日当の調査が資料不足のためにできませんでしたので、報酬額のみにとどめたのでございます。なお国選弁護人をつけました件数は、昭和二十四年度の簡易裁判所事件において、合計二万五千七十七件、地方裁判所におきまして、合計三万二千六件、かように相なつております。なお二十五年度におきましては、この数字が、簡易裁判所におきまして、合計三万九千九百二十七件、地方裁判所におきまして、四万五千五十件、かような数字が出ております。なお実際国選弁護を請求する際の手続といたしましては、刑事訴訟法第三十六条に基きまして、刑事訴訟規則の第二十八条が出ておりますが、具体的に、貧困その他の事由を書面をもつて明らかにしなければならない、かようになつておりますので、さような手続になつておるものと存じます。
○古島委員 私の申し上げるのは、なるほど訴訟法にはそう書いてあることは承知いたしております。ただ何ら疎明をとらずにやつております。この疎明をつけないものですから、相当な金持でありましても、国選を頼むということになります。中に最も悪質なものは、国選でやつてもらうんだが、保釈には自分で保釈の願いをする、何万円の保釈金でも、身代金だからというので、それは出すけれども、弁護料の方は出さない。こういう横着な者がある。そこで無財産証明であるとか、とうてい弁護士を頼めないという何かの疎明でもある、こういうことにしなければ、無制限にだんだんふえて参る。今、二十四年に簡易裁判所で二万五千、地方裁判所で三万二千というが、今度はだんだんふえまして、二十五年になると、これが五万件を越す、こういうふうになりまして、今後これがだんだんふえて参るということになると、これは国家の財政を乱すことになる。その意味においても、何かの制約をする必要がある。それとともに、国選の弁護料は幾ら払つているか私は知りませんが、何でも千円か千五百円払つておる。こんなことでは、とうていまじめな弁護はできない。これは簡易手続に相当はまることになるんですから申し上げますが、国選弁護をやつたら、一件について五千円なり七千円の金を支払つて、国選弁護に十分な審査をしてもらい、十分な弁護をしてもらうということにすれば、一番いいと思う。ところが国選弁護は、人情のしからしむるところが、報酬が少いせいか、ほんとうにこれこそ簡易手続を法律できめませんでも、はなはだ簡易にやつております。十五分で一件くらい片づけるというのはいくらもある。こんなことでは、弁護権があるといつても、しかるべくということで弁論を抜くのではどうにもなりません。あるいは立証し得られることも立証せずに、もしくは証拠書類のごときも、これを拒否し得られるような理由があるにかかわらず同意する、異議なしということで進めてしまう。これこそほんとうに、法律に書いてありませんでも、簡易公判手続を国選弁護人がみずからやつておる。これは報酬が少いせいか何かわかりませんが、報酬もどつさりやつて、責任をもつて事件をやつてもらうということの方が、国家のためにもなり、また被告自身のためにもなると思うのですが、値上げをいたして、片方国選を選任する場合には、何かの疎明書をつけさせるというところの制約をする必要があるように思いますが、その点いかがでございますか。
○岡原政府委員 お尋ねの点は、具体的にいろいろの案件がございまして、なかなか形式的な弁護にとどまつて、実際の国選弁護の趣旨に合わないということも事実あろうかと存じます。そこでこれをいかに都合よく運用するかということは、相当問題でございまして、報酬の額を上げるということも、一つの方法であろうかと思います。それから一方において、その場合を制限するという考え方も成り立つのでございまするが、他方憲法において、いかなる刑事被告人といえども弁護人を依頼する権利がある。それで、自分で依頼することができない場合には、国でこれを付するというような三十七条の三項の規定の建前もありまするので、なかなかこの点が簡単に調和ができないのでございます。しかし実際問題としては、なるべく被告人の資産状態その他を調査いたしまして、理由なしに国選弁護の恩典を与えるというようなことなしに、実質的な運用を裁判所にお願いするというのが一つの解決方法じやないかと存じますので、この点をなお裁判所とも十分協議いたしまして、なるべく御期待に沿いたいと存ずる次第でございます。
○古島委員 この簡易手続では、まことに妙なふうに私は考えておりますが、被告が有罪なる旨陳述した場合には、簡易手続にこれを付すということになります。ところが有罪なる旨を陳述したということは、起訴状を朗読されまして、起訴状に間違いがないかということを判事が聞きます。多くの場合そうです。判事が聞いた場合に、事実はその通りですと言うと、それは有罪になる旨を陳述したということになります。もしくはその事実については、別に私は言うことはありません、こう言つた場合、いわゆる不抗争の場合も、事実はその通りだという場合も、いずれも有罪なる旨を陳述したということになるか、その点を伺いたい。
○岡原政府委員 有罪の陳述と申しますのは、ただいまお話の通り、その事実はその通りでありますというふうた場合、あるいはこの事件は一切お話の通りでありますから、争いません、いろいろ言葉は違う場合もあるかと存じますが、さような場合に、有罪の陳述があつたものと認めるわけでございまするが、さような際に、裁判所がすぐこれを簡易公判手続によつて審判をする旨の決定をするということになりますると、いろいろ問題が起る場合もございまするので、その点につきましては、十分裁判所において、その有罪の陳述について、なるほど本人の言つているのは間違いがな、うわの空で言つているのではない、心底から出たもので、間違いないことであろうというふうな心証を得た場合に初めてこれをなし得るのでございます。なおその際に裁判官において、たとえば二、三の重要点に触れて、この点は、あの点はと聞いて、それがつぼにはまつて返事があつた場合に、初めて一応の心証がとれるから、決定をするというふうな取扱いが実際においては好ましいかと存ずるのでございます。
○古島委員 そこで今の不抗争の有罪の陳述をしたとき、事実を認めただけをもつて有罪の陳述をしたということになる、こうなるときわめて危険なのであります。御承知の通り、被告自身は、事実は知つておりましても、法律的知識がないのであります。そこで犯意阻却する場合がある。あるいはまたその事実はその事実であるが、起訴のような犯罪は成立しない、起訴外の、つまり甲の犯罪が成立するのでなくて、むしろ乙の犯罪が成立するのだ、こういう場合には、法理的な争いが残るわけです。有罪なる旨を陳述いたしたという事実を認めて、起訴状の通りの事実かと言われて、知りませんから、はい、その通りですと、こう言う。しかもそれは法律でいうならば、起訴したる訴因は、その起訴したる罰条には触れないわけです。そういう事案に向つても、なおこれはそのまま簡易手続によつて、その罰条に触れざる罪をもつて、その罰条に触れたとして処罰しなければならぬということになると、たいへんな間違いが起ると考えるのですが、これはいかがですか。
○岡原政府委員 その点はごもつともな御質問でございまして、私どもといたしましては、この有罪である旨の陳述というのは、後の訴因にかかりまするので、単なる事実の告発と言いまするよりは、起訴状に記載されてあります一つの訴因について、有罪であることを自分から進んで陳述する。すなわち単に事実というよりは、それに基く罰条の点まで認めるというふうなことに理解しておるのでございます。従いまして、またたとえば、正当防衛とかあるいは犯罪無能力といつたような点についての争いがあるというふうな場合につきましては、これは訴因について有罪である旨の陳述ということには相なりませんので、さような問題の提起がございますれば、もちろんこの場合には、簡易公判手続の決定はできないわけでございます。その点につきまして、被告人はおおむねしろうとの場合もございましようから、弁護人及び検察官等の意見を聞くということに、法文上明らかならしめまして、さような点について意見がございますれば、それは簡易公判による決定をせずに、普通の公判手続に乗せて行く。もし万が一その点がその際に陳述されないために、たとえば事実は認めるけれども、正当防衛であつたという主張が後ほど提起されたという場合もあり得るわけであります。さような場合におきましては、二百九十一条の三の規定によりまして、この決定のあつた事件についても、もしそれが後日さような事情が出ために、簡易公判手続によることができない、あるいは相当でないと裁判官が認めた場合には、その決定を取消して、普通の手続に乗せて行く、かような建前でございます。
○古島委員 いつでもそれは抜け穴で、いわば法律の抜け穴でありまして、そうして間違つたときには取消しができる、こういうことになつておりますが、感情に訴えてお考えを願いたい。簡易手続でびしびしとその事件のけりをつけようというので決定をした。そこで多少の間違いがあつて、それをまじめに受けて、それじや取消して普通の手続で行こうというような良心的な判事はまつたくありません。これは簡易手続で始まつたんだからそれでやつてしまおうという感情になる。そこでそういうふうな事実は認めるけれども、法律上それが罪にならぬ、もしくは法理的に別の犯罪が成立するという場合においては有罪を認めたということにならぬのじやないですか、有罪ではない、むしろ争わぬと言つたところで、それは争わなければならぬ事案だ、また必ずそういうふうなことになつて参る。そういう場合に弁護人も気がつかずにおる、被告ももちろんしろうとであるから気がつかずにおる。今の御答弁ではしろうとの場合もあり得る、こういうふうなお話であつたが、しろうとの場合が多いのです。だからそう言われると何か法律に携つておる人は侮辱されたように思う。犯罪人はしろうとの場合もあるなどと言われると、実際しろうとの方が多い、わからない。ところが判事はそういう感情をもつてやる、こうなればこれは簡易手続に一たびかけるとしまいまでやられてしまう。そこでこの簡易手続の場合には必ず取消さねばならぬという、取消すことができるというようなやわらかいのではなくて、取消さねばならぬというようなことにやつておかぬとあぶないと思う。そこで私申し上げるのは、簡易手続に振りかえるというが、そのときには厳格に有罪たる旨を陳述した、それから有罪たることを認めるというふうに厳格にして、事実を認めたとか不抗争の場合というものはこれは除外しなければいかぬ、ほんとうに狭い範囲の分だけをやつて、あいまいな分、起訴状にあるような事実ですといつた場合には、有罪を認めたのではない。その通り相違ないかと言われて、はいと言つたならば認めたのではない。こういうことにしなくんば、どれもこれも簡易手続に持つて行かれるという心配がある。そこを私はおそれて申し上げるのですが、その点を何かぴしつとゆるみのないようにする分別はありませんか。
○岡原政府委員 ここに有罪である旨の陳述とございますのは、もちろん単に何も言わない、あるいはただ頭を下げただけだというふうな場合でなく、積極的に事実の内容を陳述したというふうな場合を申すのでございます。従いまして、たとえばただいまの違法性あるいは責任阻却の事由について陳述がございますれば、これはもちろん有罪の陳述でございませんし、さような場合におきましては、ただいまちよつと触れました、たとい一旦簡易公判手続による旨の決定をいたしましても、二百九十条の三によつてその決定を取消さねばならないということに相なるわけでございます。従いまして単純なる不抗争といつたような形の場合には有罪である旨の陳述ということにはならぬと存ずるのでございます。
○古島委員 最後にこういうことを承りたい。今の逮捕状の請求をする場合の疏明書類、この逮捕状を請求するときにはどのような疏明書類をつけることを原則といたすか。現在はどういう疏明書類をつけることが要求されておりますか。その点を承りたい。
○岡原政府委員 ただいまお尋ねの逮捕状の請求に関する必要な記載要件は、裁判所の刑事訴訟規則の第百四十二条に次のようになつております。「逮捕状の請求書には、次に掲げる事項その他逮捕状に記載することを要する事項及び逮捕状発付の要件たる事項を記載しなければならない。」こうありまして、一、二、三、四、五、六とございます。「一、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居」、さらにもし氏名などが分明でない場合の規定といたしまして、第二項に、「被疑者の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被疑者を特定するに足りる事項でこれを指定しなければならない。」なお第三項に「被疑者の年齢、職業又は住居が明らかでないときは、その旨を記載すれば足りる。」ということになつておりまして、その際に百四十三条で、「逮捕状を請求するには、逮捕状発付の要件が存在することを認めるべき資料を提供しなければならない。」ということになつておりますので、実際の扱いといたしましては、たとえば被害届であるとか、捜査報告書であるとか、あるいは参考人の調べがありますれば、その供述書であるとか、あるいは証拠物があるときはこれに添付する、さような取扱いになつておるようでございます。
○古島委員 ところが、その規則の百四十三条の資料、その資料を明確にすればよろしいのでありますが、その資料の多くは警察官がみずから聞いた、そういうふうな書類もしくは検事がでつち上げた書類、そういうもの、自分の聞取書をつけて出す場合が彼らは多いのです。そういたしますと、逮捕を請求する人自身がこしらえた書類、これが資料の唯一のものになつて参る。いかなる場合でも巧妙にやればどんな人でも逮捕ができるのであります。おそらくはこれは猪俣さんなり、加藤さんなりが後に御質問なさるであろうと思いますが、その資料があまりにずさんなるためにとんでもない間違いをやつたような場合もある。われわれは人権擁護委員会として相当、これは触れたこともあるのですが、その資料を完全にするということを法律で特に書かねば、逮捕請求者の書いた聞取りであるとか、あるいはそういうものの請求者の出すものは疎明書類にならぬということにしなければ、かつてにでつち上げられる心配がありますので、刑事訴訟法を改正するついでに、そんなところも改正するお気持はありませんか。
○岡原政府委員 逮捕状を請求する際に、一方的な資料でやるためによく間違いが起るのではないかということはごもつともでございまして、さような逮捕状のないようにと申しますか、あつてはいけないというので、われわれといたしましては各検察庁並びに検察庁を通して警察等に注意を促しておるのでございますが、実際問題といたしまして、裁判所でまとめました統計によりますると、昨年十二月に全国の裁判所に逮捕状の要求がありましたのが合計約三万あるのでございます。そのうちいわゆる不許可になりましたのが、わずかでございますが二百三十件ございます。これは資料が不完全であるために裁判所が認定いたしまして、これは逮捕状を出すにあたらないというふうなことで却下したのであろうと存じまするが、実際問題といたしましては裁判所がその書類を受付けましたときに、一応添付した資料を検討いたしまして、何だ、これでは不十分じやないかといつて受付けをせずに、事実上つつ返すというような場合もあるのでございます。従いましてさような場合は、この統計に入つておりませんので、結局その資料の追加をまつて初めて逮捕状が出るというような場合も相当多いように聞いておるのでございます。
○古島委員 そこできのう私が触れた問題が出て来る。逮捕状の請求をいたして、その逮捕状の請求にはほとんどもう逮捕をする必要どころではない、それ自体が罪になるかならぬかわからぬようなものを持つてやつて来た。これは戦後警察官の素質が落ちまして、ほとんど逮捕状の請求の書ける者が少くなつた。まことに情ないことであるが、実際である。疎明書類どころではない。顔をきかして書いてもらう。これは判事と常に往復しておりますから、どうぞよろしくお願いしますというので、三拝九拝して逮捕状をもらつてやる。ところがあにはからんや、実際は罪にならぬことまでやつてしまうということもある。そこで判事は気をきかして、こういうことでは逮捕状は出せぬから、もう一度書いて来いと言つたり、もしくはもう少し研究してみようというので自分の方へ預かつておこうといつて預かつておる、その間に緊急逮捕してしまう。そして緊急逮捕して、逮捕状の請求をした書類はこれを撤回して、今度は緊急逮捕したからこれを承認してくれといつて承認の請求をする。そうなりますと、常に顔見知りの間でありますから、警察が来て、ぜひひとつせつかく逮捕をしてしまつたんだから、これを認めてくれというと、判事もしようがない、認めようということで、その緊急逮捕を認めてしまう。これは非常な人権蹂躙の著しいものなんです。こういうことが常に起るものでありますから、そこで私はその添付書類、いわゆる疎明書類を明瞭にせなければならぬということで質問いたしたわけであります。家宅捜査令状も同様なことでやつておりますかどうか、この点を伺つておきます。
○岡原政府委員 家宅捜索につきましては、刑事訴訟規則第百五十五条、百五十六条等に書いてございまするが、やはりただいま読みましたと似たような、相当こまかい要件があるわけでございます。
○古島委員 だからその要件だけではないのです。いかにもあげ足をとるようにおぼしめすかわからぬが、そうではない。疎明書類のことを言つておるのです。これはほかの方からもちろん問題が出ると思うのですが、実際はひどいことがあるのです。甲の被告に向つてこれを逮捕いたして、そうして家宅捜査令状をとつて来たところが、実際何ら関係のない人の家宅捜査をしたという例もある。これは乱暴で、おそらくは常識のある方では想像ができぬのであるが、実際そういうことが起つて参る。もしくはまた家宅捜査令状に、たとえば古島義英と被告の欄に書いてある。これが小島と呼ぶ人がある。小さいという字を書いて小島という……。これは字が違うといつたところが、ああそれじやこれは小島は古という字の方だというので、書き直して、もしくは名前まで書き直して、そうしてお前のところに相違ないというので、持つて行つた人がことさらにその窓口で書き直して、そこで家宅捜査をしたという例も実際起つておる。そういう場合は、ほかの問題も起るでありましようが、捜査されてしまつた者、もしくは踏み込まれた者は、新聞にも書かれ、世間体も悪いということになつて、もう救済しあたわざる損害を受けるのです。そこでその根本はどこにあるかというと、逮捕状の請求のいわゆる疎明書類が完備していなかつた、家宅捜査令状請求の疎明書類が完備していなかつたがために、そういうことが起るのであるから、この疎明を確然たるものをつけるようなことに改正する必要があるのではないか、その点を申し上げるのです。ただ羅列してある、こういう、氏名を書けとか、年齡を書けとか、年齡も氏名もわからないときは人相を書けとか、そんなことではない。もうちよつと、これは何の某に相違ないということの疎明書類をつける、もしくはかくかくの犯罪をしたということの疎明書類をつけるということが重大なことだと思う。その疎明書類に基いてこれは逮捕状を出すわけに行かない、家宅捜査令状を出すわけに行かぬということになれば、判事が判事の常識をもつて十分判断がつく。しかるに顔をきかせて、まつたく虚無のものをやるというような場合が起つて来る。また起つたのです。これは現に起つたのです。これを心配いたして聞くのですが、もう少し規則を改正するなり何なりして、この疎明を的確にしろということを固く命ずる必要があるのではないかと思います。
○岡原政府委員 いろいろと具体的に、濫用された案件を伺いまして、私ども最もこれは重大なる問題であるということに驚異いたすのでございまするが、この点実は私どもの指導といたしましては、お話のような事態は絶対にこれをしないようにというふうに、あらゆる機会を通じて、裁判所、あるいは検察庁、警察等、関係機関と協議を重ねておる次第でございます。そこでたとえば先ほどのお話の令状の名前をかつてに書き直すなんというのはもつてのほかでございまして、もし番地、氏名その他にさような間違いがありました場合には、一旦とつて返して、裁判所に行つて、判事さんの判をもらつてから、あらためて執行するようにということに厳重に警察を指導しておるのでございまするが、何分数多いので、さような具体的な事案が起りましたということにつきましては、たいへん遺憾に存ずる次第でございまして、今後さようなことがございましたら、私どもといたしましても十分調べまして、しかるべき処置をとりたいと思います。なお疎明資料を明確にするという点も、ごもつともでございまするが、ただ具体的の事件に応じまして、この事件についてはこうこうこういうふうな疎明資料、あるいは他の事件については、形はまつたく違うけれども、やはり同様な疎明の効果があるというふうに、形等ではこれを限定することが、一つ一つの事件の様相が違います関係上、なかなかむずかしいのでございます。従いまして、この刑事訴訟規則におきましては、非常に抽象的な表現になつておりまするが、この点は裁判所におきましても、具体的に逮捕状を出す際に、十分それらの点を考慮するようにということは、下級裁判所の方に伝えてあるはずでございます。なお今後とも、私どもはさような点につきまして、裁判所と連絡を十分に遂げたい、かように存じておるのでございます。
○古島委員 どうしてそういうことが起つて参るかというその根本にさかのぼつて、御考慮を願わぬといかぬのであります。わがままのことをして、名前をかつてに書きかえてやるということは、これは官権の濫用だけではなく、文書の偽造になる。文書偽造になるのであるが、これを処罰したという例を承らない。どういうものか知らぬが、官吏は官吏でお仲間同士ということがあるかもわからぬのですが、どうも官権の濫用ということではあまり処罰をしないのです。これは人民の犯罪よりは実に危険なのであります。令状は、甲の令状をもらつておいて、これを乙のうちへ名前を書きかえて執行する。そんなばかなことが世の中にあつてはたいへんです。ところが事実起つたのであるが、しかもしばらく前に起つたのであるが、それに向つてはまだ検挙したということを聞かない。また甲の人を検挙して、甲だと思つておつたところが、その逮捕された人は、あにはからんや甲ではない。甲は厳然として表におる。ところが表におることがわかつておるにかかわらず、その人のうちへ行つて、その犯人の名において家宅捜査をしたというような例もあります。これは後に猪俣さんなり加藤さんから聞いてくれると思いますが、そういう例が起つて参るということはどこにあるかという根本を突きとめねばいかぬ。それは官吏にあまりに寛大である。いわゆる検察同士であれば、警察は自分のうちのものだ、自分の部下だというようなことで、これに寛大な措置をとつて、一々これを取上げて処罰するというようなことをしない。そこにわがままが出て参る。たががゆるんで来る。それを戒めるためには、いやしくも官吏がさようなことをするという場合には断じて承知ならぬ。いわゆる公務員は公務員として、普通人民以上の注意をせねばならぬということにして、また事件も普通人民以上に丁重に取扱い、そうして罪責も重大だということにせねばならぬと思う。その覚悟がなくんば、幾ら法律の裏を改正いたしましても、これは直るわけのものではありません。どうかその点は十分御注意を願いたいということを申し上げまして、私の質問を終ります。
○佐瀬委員長 ただいまの逮捕状濫発の非難があるようでありますが、その原因の一つは、制度的に警察官が直接逮捕状を裁判所に向つて請求できるという点にもあるように思われるのですが、先ほどお示しの逮捕状請求の三万というケースの中には、検事の請求分と警察官の請求分との区別から見てどういう割合になるか、その点をこの機会に御発表願いたいと思います。 なお今制度の問題について、これを改正する必要があるかどうか、また現在の運用の上において警察官の逮捕状の要求に対して検事の立場からコントロールをする措置が何らかの形で行われておるかどうかもあわせて御説明を願つておきたいと思います。
○岡原政府委員 先ほどお示しいたしました逮捕状の要求数並びにこれに対する不許可の数等はいずれも警察及び検察庁からの合計の数字でございまして、その内訳は今ちよつと数字上明らかになつておりません。 なおこの点につきまして警察官が自由に逮捕状を請求できるために、ともすればルーズな手続をしがちではないかという御質疑でございまするが、これは幾分そういう点はあろうかと存じます。ただこの点は制度的にいかように直したらいいかということにつきまして、先般法制審議会におきましても一日問題が取上げられたのでございます。その際の意見といたしましては、逮捕状の請求にあたつては必ず検察官を経由しなければならぬというふうにしたらどうかという意見と、これに絶対反対だという意見が対立いたしましたまま結論に至りませんで、今回の改正には全然触れてないのでございます。問題の要点は警察官から逮捕状を裁判所に要求する際に必ず検察庁を経由するということにいたしますと、絶えず宿直等のある大検察庁等においてはまかない得るのでございますが、地方の区検察庁でありますとかあるいは支部でありますとかいうふうな小さなところにおきましては、検察官が二十四時間勤務にならざるを得ないことになつて、なかなか実行期しがたい。もしこれをどうしてもやらなければいかぬということになりますると、場合によつてはかえつて検察官が盲判といいますか素通しといいますか、そういうふうなことになる心配もある、さようなことになりますと、かえつて検察官が責任を持つて逮捕状の要求事由を振りわけすることが形式に流れるという心配もございましたので、この点については裁判所と検察庁となお実情をよく知つておられる弁護士会側と、それから警察側と十分協議を重ねて後日を期そうということになつたような次第でございます。具体的にたとえば東京等におきましては、この逮捕状の要求についていろいろ検察庁で絶えず指導をいたしております。何か個々の事件が起りまして逮捕状を請求する際にも、事件によりましては検察官の事実上の経由をしておるというふうな案件もあるようでございますが、まだこれが全国的に推し広まるというには至つていないようであります。
○佐瀬委員長 いずれ他日警察官と検事との逮捕状の要求の内訳とあわせて緊急逮捕状の件数がわかつたならば、この委員会において御発表を願いたいと思います。
○岡原政府委員 承知いたしました。
○猪俣委員 今の古島委員から申し上げた件につきまして、これはひとつ法務総裁に報告してお調べ願つてその原因をお示し願いたいと思いますが、それは大森警察署管内に起りました事件であります。その年月日がちよつと私本年度起つたじやないかと思いますが、今はつきりしておりません。大田区大森九丁目、そこに富士川製作所というものがある、その社長ですか所長ですか水川政雄という人、これがある日突然令状によつて家宅捜索を受けたのであります。富士川製作所がひつくり返されて調べられた。ところがその令状には大田区大森九丁目藤野製作所とこうなつている。ところが令状を持つて来たおまわりさんがこの藤野製作所は九丁目には見当らない、富士川があつたからこれに違いないというので藤野というのを鉛筆で消しまして、鉛筆で富士川製作所と直して、そこの捜索をやつたという具体的事実があります。これをひとつお調べ願いたい、でたらめもはなはだしいと思うのであります。そういうふうにかつてに鉛筆で令状を書きかえては捜索せられましては、似た名前を持つている者は戦々きようきようとしてこれはなかなか安心できない。そういう具体的の事案がありまするからちよつとお調べいただきたいと思います。
○岡原政府委員 承知いたしました、詳細調査の上に御返事いたしたいと思います。
○佐瀬委員長 刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する審議は本日この程度にとめておきます。 —————————————
○佐瀬委員長 次に法務行政に関する件について調査を行います。接収解除に伴う不動産権利について発言の通告があります。これを許します。北川定務君。
○北川委員 終戦直後土地や家屋その他の物件が接収せられまして、講和発効とともにこれらの物件が解除せられ、もしくは解除せられんとしているのであります。ところがその解除にあたりまして一体その物件の所有者がこれを受取るべきものであるか、それとも接収を受けた当時占有しておつた人々がこれを受くべきであるかについて大きな問題が起つたのであります。芝浦の海岸に何千万という土地が今解除せられんとしており、また新宿のモータープールの数千坪の土地も解除せられんとしている。これらの土地にかつて接収当時に住んでおつた人々には与えられないで、これらの土地の所有者に与えられんとしておるというような話も聞いておるのであります。これらの点につきまして特別調達局の方にお伺いいたしたいと存じます。 まず本年五月二十六日の毎日新聞の広告欄に「接収不動産関係人へのお知らせ」と題しまして「占領期間中に接収された不動産の所有者以外の関係人で接収解除の通知を希望される方は来る六月十日までにその不動産の種類、名称及び所在地番を具しその不動産の所在地を管轄する左記調達局の管財部長にお申出下さい。」という公告が出ておるのであります。この公告はどういう意味で出されたのか、その点について伺いたいと思います。
○長岡政府委員 お答えいたします。実はこの問題につきましては、土地等の使用等に関する特別措置法案を御審議の際に、当法務委員会から鍛冶委員が建設委員会の方にわざわざ御出席になりまして論議を重ねられた問題でございます。関連しておりますので……。現在御承知の通りに、今御指摘のような、権利者からこの権利の存続をはかれという御要求があるのであります。つきましては解除になりましたときに、その賃借権なり地上権といつつたものが今なお存続しておりますか、あるいは消滅しておりますかは別といたしまして、現在調達庁で所有者と契約をいたしてりおりまして、これが一解除になりまして、所有者に返しつぱりなしということになりまして、いわゆる権利者の方々がこの事情を御存じないということになりましたときに、権利の主張の機会を失せられてもなりませんし、場合によりましては特調といたしましてそういう問題の解決のごあつせんもいたさなければなりません。はたしてどなたがそういう権利を主張なさるものかが容易にわからぬことがございますので、これを承知いたしまして解除になりました際には、さような御主張をなさる方には、とりあえず解除になつたということを御通知申し上げなければなりませんので、かような公告をいたした次第でございます。
○北川委員 ただいまのお話によりますと、接取を解除した場合には所有者にお返しになるような口吻でございますが、さようなお気持でございましようか。
○長岡政府委員 多少の例外はあるかと思います。と申しますのは、賃借権その他接収当時に対抗要件を備えた権利者ということがはつきりいたしまして、この方々と契約したものもあるかと思いますが、現在の契約は所有者からこれを拝借いたした形になつておりますので、貸主である所有者に返す措置をとらなければならぬと考えております。
○北川委員 現在接取せられた物件で、解除せられて所有者に返還された分もありましようか、またありましたらその件数、今後いつまでに返還されるか、その御予定を向いたいと思います。
○長岡政府委員 実は解除の問題は、講和条約発効前からも解除になつたものも多少あるかと思います。それから条約が発効いたしましてから相当多数のものが現在解除になりつつあります。それは接収の対象によりまして異なつております。ただいま御質問になりました点は、個人住宅その他私有の倉庫等の問題かと思います。個人住宅につきましてはこれを続けて駐留軍に提供をいたしますか、あるいはここで解除になりますかということは、これは合同委員会で話合いになる問題でございますが、アメリカ側といたしましては、個人住宅につきましては少くとも来年の三月末日までには多少の例外はあるかもしらぬけれども、ほとんど全部を解除いたしたい、こういう意思表示をいたしております。その前に、あるいは七月、九月に相当な数が解除になるのではないか、従来の交渉の経過から見ましてそういうことを察しておる次第でございます。
○北川委員 接収物件を所有者に返還される場合に、原状に回復してお返しになるということを聞いておるのでありますが、その原状回復の程度、その方法等について伺いたいと思います。
○長岡政府委員 御承知の通りに、本国会を通過いたしました土地等の使用等に関する特別措置法によりますれば、原状回復が原則でございますが、形質が非常に変更いたしておる場合、たとえば家につきまして模様がえをいたしておる、そのときにそのままでも使われぬことはない、公平な考えから見ましてそのままで十分使える、但し前の状態とはいろいろかわつておる、その際にはそのまま返すことができることになつております。しかしこれがために所有者に損害を及ぼすことがあります。具体的に例を申し上げますならば、応接間の座板が前のものとかわつております。相当りつぱなものが張つてございましても、前のものとは違つておる、しかしこれをはがして元の通りにするにも及ばぬじやないか、しかし前の座板から見れば多少形質が落ちる、損害が発生しておるというような場合には、その損害を補償してそのまま返すことになつております。従来のやり方も解除になりましだ場合に、その現状を確認いたしまして、接収当時の状態に比較してどれだけの損害が起きておるか、これを引比べましてその損害額を補償いたしておる次第でございます。役所がみずから職人を使つて原状回復するということは従来もやつておらぬことでございます。
○北川委員 そうすると金銭によつて賠償せられると伺つてさしつかえはないわけでございますか。
○長岡政府委員 おつしやる通りでございます。
○北川委員 その損害の額を算定するものは特別調達局の職員がなされるのでありましようか、それとも鑑定人を付してその鑑定人によつて決定せられるのでありよしまうか。
○長岡政府委員 特調の職員がこれを計算いたしまして、その金額によりましでは調達庁本庁にその内容を報告いたします。本庁でこれを精査いたしまして、しかる上に各局に不動産審議会というものを設けて、この不動産審議会には関係各庁並びに民間の学識経験のある方にも入つていただきまして、この不動産審議会にかけまして補償金額を定めます。この意見を聞いて、これを所有者の方とさらに相談いたしまして——これを押しつけるわけではございません、御納得が行くものならばそこで補償いたしておる。どうしてもそれが少いといつた御不満のあります場合は、結局裁判になるといつたような場合もある次第でございます。現り在までこの補償問題につきましては、いろいろ御相談申し上まて、大体において御不満もございましようけれども御納得をしていただいて補償いたしておる、こういう現状でございます。
○北川委員 接収物件を返還せられる際に、原状を回復するというのは、民法の賃貸借の規定に性質上よるべきものではないかと思うのであります。特別調達局の職員などが査定せられても、適当な損害の額を査定することはなかなか困難であると思うのであります。かような場合には、被害者、つまり解除物件を受取る人の気持を十分考慮してやつて、これらの人々が受けました損害はある程度満足の行くまでに補償をしてもらいたいと希望するものであります。この点について特に鑑定人でも入れて査定されるというお考えはございませんでしようか。
○長岡政府委員 契約によりまして話合いで進めておりまするので、特調の役人が積算したのでは不十分だというお話でございますが、実は特調といたしましても、この方面にはそれぞれ専門の技術屋を充てておりまして、そうしてこれが大体先ほど申し上げました通りに公正妥当と思う金額を出しまして、これを所有者の方に御相談申し上げる。裁判になりました場合はあるいは裁判所の方で鑑定人をお呼びになつて、当時のどのくらいな価格のものであるかという御鑑定をしていただく場合もあるかと思います。私の記憶いたしておりますのでは、家屋が焼けまして、その補償の際にそういつた関係が起つたことを記憶いたしております。先ほど来申し上げました通りに、所有者の方と話をいたしまして、一方的に独断できめるわけではございませんので、それまでは鑑定人を使うという処置はとつておらぬ次第でございます。
○北川委員 現在解除になつておらない物件については、従来は賃借料を支払つておられたのでありまするが、現在は賃借料も支払わない、また解除もしない、いつも解除するということも通知もしないというような、そのものの所有者にとりましてはまつたく不安な状態に置かれているようでありまするが、その点はいかがでございましようか。
○長岡政府委員 多数の接収家屋でございますので、ただいま御指摘の家賃を払つていない、何かの都合で家賃が払えていない場合があるかも存じませんが、家賃はお支払いすることに相なつております。それから講和条約が発効いたしまして九十日間は、先ほども申し上げました土地等の使用等に関する法律でも、九十日間は使えることになつております。と申しますのは、大体三月末日をもつて前の契約が切れるのでありますが、本年は行政協定その他の関係でその後の状態が見込みがつかなかつた関係もございまして、契約条項に基きまして二箇月間契約を延ばしております。それでその後の問題につきましては、合同委員会で続けて使うことに相なりましたならば、所有者にこれの賃借方につきまして交渉をいたすはずでございますが、全然家賃を払わずに使うということはないはずであります。何かの事情で払えなかつたものがあれば格別でございますが、家り賃は支払うことにいたしております。
○北川委員 接収せられる当時は、地方庁が主となつて接収せられて、その後特別調達庁が設けられて調達庁が引受けられたようでありまするが、この接収の当初においてそのものの所有者と直接に賃貸借の契約をなされ、もしくは土地工作物使用令によつて収用せられたものがあると思うのでありまするが、この比率がおわかりでしたらお示しを願いたいと存じます。
○長岡政府委員 接収土地家屋につきつましては、ただいまお話の通りに、当初軍の要求と申しますか、命令によりまして、どの建物、どの土地ということを指定して参りましたので、これに都道府県が携わつておつたのでございます。特調ができましてからこれを引継いだ形でございます。当時終戦直後土地工作物使用令が制定されましたけれども、これは実は一回も適用したことはございません。今日まで拝借いたしておりますのはみな随契の形をとつております。
○北川委員 そういたしますと、現在接収せられておりますのは、所有者もしくはそのものの管理者と政府との間の契約になつておると思うのでありまするが、その通りでございましよう。
○長岡政府委員 御指摘の通りでございます。
○北川委員 ところが、その契約の相手方は、一律にそのものの所有者と契約せられているようでありまするが、その通りでございますか。
○長岡政府委員 先ほども申し上げました通り、中には対抗要件等を備えておりまして、はつきりいたしております賃借権者その他と結んでおる者があるかもしれませんが、大部分は所有者と契約を結んでおると考えております。
○北川委員 対抗要件を具備しておる賃借人も契約の中に入つておりましようか。もし対抗要件を具備しないところの賃借入、登記をしておらなかつた賃借人などの権利は、当時どのように取扱つておられたかという御説明を願いたいと出思います。
○長岡政府委員 ただいま御指摘の問題が、私が今日当初申し上げました、賃借権その他の権利の保護ということが講ぜられていない、これが建設委員会でも御論議になりました問題だと思うと申し上げましたのはその意味でございます。はつきり幾ばくの数が賃借権者と結んでおるものということは、私現在資料を持ち合せませんが、これはごく例外であろうと思います。所有者と契約を結んだものが大多数であつて、ほとんど全部だと申し上げてもよかろうと思います。御承知の通りに、当初進駐軍が上つて参りまして、そうしてその当時は、これを出せというので非常に急速に接収が行われましたので、その当時において都道府県で扱いました場合に、その土地の所有者、家屋の所有者と話はいたしておりますけれども、賃借権その他の問題について十分納得の行くまで話がついていないということが実情だと思います。
○北川委員 家屋などを接収しまする場合に、ピストルを持つたアメリカ軍人を連れて来て、いやおうなしに占有者に立ちのきを命じてごく少額の立ちのき料を与えて追い出したような形をとつておるということも聞いておりまするが、政府委員はこれをお認めになりりましようか。
○長岡政府委員 都道府県が扱います場合に、軍に話しまして、いわゆるとらの威をかるきつねのごとく、都道府県の吏員が、うしろにピストルを持つた者がおるぞと言つて、所有者をおどかしつけるというようなことは、おらそくなかつたと私は想像いたしております。ただ先ほど来申します通りに、軍が、これがいるのだ、ついて来いということで、その接収の事務は、いわば軍が必要とする土地を指定して、それを取上げて、その跡始末を日本政府がいたしたという関係でありますので、あるいは軍が参りましたときには、ピストルを持つておつたことも事実でございましよう。当時の事情、個々のケースについて見ませんとわかりませんけれども、都道府県の者がいわば軍に頼んでおどかしつけるということはおそらくなかつたと思う。但し今も申し上げます通り、進駐当時のどさくさでございますので、軍が三十四時間以内にここを明けろと言つた場合もあるやに聞いております。それがただちに都道府県の吏員が脅迫したというふうに伝えられるのではないかと思つておる次第であります。
○北川委員 そういたしますると、接収以来今日まで、そのものの占有をしておつた人々は、賃借権なりあるいは地上権が侵害せられておることは間違いないと思うのであります。そこで接収解除せられる場合に、これを所有者に返還しますることは、これらの占有権を持つておつた方々には非常な打撃であると思うのでありますが、その点はいかようにお考えでございましようか。
○長岡政府委員 利害関係の方から、さような賃借権等を立法措置によつてはつきり出せという御要求があつた次第でございますが、ただ政府といたしまては、いろいろ考究いたしまたけれども、政府案として今議会に提出する運びに至らなかつた次第であります。従いまして、いろいろ御不満のあること、利害関係の存することを承知いたしておりますので、先ほど御指摘になりましたように、権利の主張をされる機会の失われないようにいたしたいというような考えから、新聞公告をいたした次第であります。
○北川委員 接収された物件の所有者の名前はおそらくはつきりしておると思いますが、占有者の名前は現在の段階でははつきりしておらないということに相なるのでございましようか。
○長岡政府委員 はつきりしないものが多数あると思考いたします。
○北川委員 現在大蔵委員会で審議せられておりまする接収貴金属等の数量等の報告に関する法律案というものがありますが、これによりますると、接収の定義をはつきり掲げております。そうして貴金属の接収せられたものの名前を報告するように、そうして間違つて報告した場合には処罰をするような法律案が今審議せられておるのでございますが、あなた方もかような法律をつくつて、接収の何たるやを明らかにして、当時の占有者に正確なる届出をさせようという立法措置を講ずるお考えはございませんか。
○長岡政府委員 御質問は、接収貴金属等の数量等の報告に関する法律案と同じようなものを、接収土地家屋についても提案する意思ありやという御質問かと思います。これは先ほど申し上げました通り、土地収用等の特別措置法の制定の際に、この賃借権等を措置する法案を提出いたしたい、そういう規定も盛りたいということも考えて研究いたしましたが、政府といたしましては提案に至らなかつた次第であります。従いまして、ただいま御指摘になりました報告義務といつたような法律案を提出する準備は、ただいま一切ございません。
○北川委員 特別調達庁自身が占有者の権利を踏みにじつたというのではないのでありまするけれども、ひとしく日本の国家機関が占有者の権限を踏みにじつた形に相なつておると思うのであります。かような場合に、政府といたされましては、これらの権利者を擁護してやるということは、当然の義務ではないかと考えております。さようにお考えに相なれば、立法措置も政府から考えられてもしかるべきではないかと思うのでありますが、いま一度この点に対する御見解を伺いたいと思います。
○長岡政府委員 関係の各位から事情を承りまして、まことにお気の毒なものがあることは私も承知しております。つきましては、何とかこれがはつきりと救えないものか。いわば接収ということによりまして、権利が眠つておるものか、あるいは死んでしまつたものかといつたことをはつきりさせまして、関係者の希望にこたえる道があるかと考えまして関係庁とも協議していた次第でございまして、今日まで政府としてこれに関する法律案を出す運びに相ならなかつた次第でございます。
○北川委員 昨年の八月に東京地方裁判所で接収措置に関する裁判がなされているのでありまするが、その裁判によりますると接収は至上命令によつて取上げられたものであるから占有者の権利というものはあたかも冬眠をしているような形であつて、接収が解除せられると当然かつて占有をしておつた人にもどるべきだという趣旨の裁判がなされているようでありまするが、政府委員はこの裁判をいかようにお考えでございましようか。妥当である裁判だとお考えでございましようか。
○長岡政府委員 この席上におきまして裁判の当否を私の口から批判することは差控えたいと思います。
○北川委員 法務府の方にお願いいたしたいと思います。接収の法律上の性質でございますが、民法上の性質について伺いたいと思います。
○平賀政府委員 接収という言葉を普通使つておりますが、この接収という言葉は占領軍の用に充てますために、政府あるいは場合によりましては占領軍が、直接所有者あるいは占有者から目的物の引渡しを受けまして占領軍の用に供する、そういうことを接収と言つているのであります。法律的にどうなるかということになりますと、やはり各場合の具体的な事情によつて法律関係がどうなるかということをきめなくちやならぬのではないかと思います。
○北川委員 それでは先ほど政府委員は土地工作物使用令によつて接収した物件は一件もないとおつしやつておられました。国と所有者との契約によつてなされたものであると申しておりましたが、この国と所有者との契約関係をいかように見ておられましようか。
○平賀政府委員 先ほど調達庁の政府委員からお話になりました事実をもとにいたしますと、国と土地なり建物なりの使用者との間において賃貸借契約が成立していると見るべきであります。
○北川委員 賃貸借契約であるといたしまするならば、占領軍が実力をもつて占有者、賃借人の賃借権を踏みにじつて、これを追い出して住んでいるというような場合には、かような場合の賃貸借の法律関係はいかように相なりまするか。この点に対する御見解を承りたいと思います。
○平賀政府委員 もし占領軍自体が直接実力でもつて賃借人なりその他土地建物の占有者を追い出したという事実がありますと、これはやはり占領軍がその土地を不法占有しているということになるだろうと思います。
○北川委員 そういたしますると、接収解除によりますると結局国と所有者との賃貸借契約が消滅することになると思うのでありまするが、その場合にその物件はかつての占有者であつたところの賃借人に移転するというようにはお考えになりませんか。
○平賀政府委員 今不法占有と申しましたのは、占領軍が直接実力でもつて取上げまして、ずつと今日までその状態のままでいるという状態を仮定しているわけでありますが、最初はかりに占領軍が実力でもつて取上げたというような土地建物につきましても、後日もし政府とその所有者との間に賃貸借契約が成立するというふうになりますと、不法占有の状態はやんだと見るべきじやないかと思うのであります。でありますから、その場合はやはり国と所有者の間の賃貸借ということに相なると思うのであります。もしこの賃貸借契約が終了いたしますと、別にその賃貸借契約において特約がない限りは、賃借人であります国といたしましては法律上は賃貸人であるところの所有者に返すべきものであると考えております。
○北川委員 契約の当初にあたりまして、先ほども申しましたように当事者間の任意の契約、完全な合意による契約ということは非常に少なかつたのではないかと思う。そうして賃貸借契約の相手方を所有者にしてあるという点もけしからぬ場合があると思う。すなわち土地の占有者もしくは家屋の賃借人などは理由なくその権利を踏みにじられていると思うのであります。さような場合の国と国民との賃貸借契約は正常な契約であり、法律上有効な契約であるとお考えでございますか。
○平賀政府委員 一般的な法律論といたしましては、所有者が強制力によりましてあたかも意思無能力のような状態に置かれているという場合におきまして、形式上はあたかも賃貸借契約が成立しているようでありましても、その場合の賃貸借契約は無効であるといわざるを得ないと思います。それから民法上の脅迫によるというような場合でありましたならば取消しができる、こういうようなことになつていると思います。しかし現実の問題といたしまして、いわゆる接収土地あるいは建物を政府が借り上げます際に、そういう強制力が用いられたかどうか、あるいは民法上の脅迫というような法律上の実体が認定できるような状態のもとになされたものかどうかということは、やはり具体的な場合について検討しなければ一概に言えないのではないかと考えております。
○北川委員 いずれにいたしましても接収当時に所有者と占有者が同一の場合であつたらこれは問題ないと思います。しかし所有者以外に占有者があつて、その権利を認める限り、その権利を国が踏みにじつて所有者と直接に賃貸借契約をするのは適当でないと私は思うのでありますが、政府委員はいかようにお考えでございましようか。
○平賀政府委員 もしその際に借地人、借家人、その他の利害関係に対して全然一顧だにも払われていない、何らの措置も講ぜられていないということでありますと、これは妥当でないと考えます。
○北川委員 現在接収物件が解除せられようとしておるのでありますが、これに関連しまして、かつての占有者間に非常に大きな問題が起つておるのであります。そこでこれを放置しておきますならば、おそらく権利関係を取扱う裁判所の仕事もたいへんでありましよう。また国といたしまして占有者を無視するような契約をしておるという点も見られるのでありまりして、この際政府におかせられましては、かつての占有者を保護する便法措置を講ぜられるのが適当ではないかと思うのでありますが、さようなお考えがございましようか、伺いたいと思います。
○平賀政府委員 接収当時の借地権者あるいは借家人の借地権及び借家権は、接収によつて当然消滅するものではないと私ども解釈すべきであると思つております。従いまして、今日なお借地権なり、あるいは借家権があるというような場合におきましては、先ほど申しましたように、国といたしましては所有者に対して返還すべきものでありますけれども、こういう場合には便宜所有者とも話しまして、当時の借地人あるいは借家人にその物件を引渡すということも可能であると思つております。しかしながら、当時の借地権なりあるいは借家権は、やはり借地法なり借家法なりの規定に従いまして、一般原則に従つて処理さるべきものでありまして、接収解除によつてこの物件を返還いたします際に、その借地権なり借家権が移転している場合におきましては、国としては当時の借地人、借家人に返還するわけにいかないのでありまして、当時の借地権者あるいは借家権者を保護するためには、すでに消滅しておる当時の借地権なり借家権なりを復活させるというような措置を講ずるほかないと思うのであります。そういうことになりますと、講和条約発効前からすでに返還されている物件もございますし、そういう物権につきましては、所有権移転が生じておるものもございますでしようし、あるいは所有者が返還を受けました物件をさらに他に賃貸しておる、あるいは地上権を設定しておるというような事例なんかも考えられるのでございまして、当時の借地権なりあるいは借家権を復活させるということにいたしますと、これらの新しい所有者なり、借地権者、借家権者というようなものの利益を害する。要するに取引の面を非常に害するというような結果になりますので、新しい立法ということは妥当でないように考えられるのでございます。
○北川委員 接収当時の国の落度を認めながら、たくさんの占有者の権利を、紛淆を来すからという理由で擁護する措置を講じないのは妥当ではないではないかと私は思つているのであります。またその接収期間に所有権を取得した人もあると思うのであります。これらの人々は、おそらくかつての占有者などの異議を述べられることを承知しながら譲り受けているものであろうと思うのでありまして、いわゆる善意の取得をしておらないと思うのであります。さような点などからいたしましても、これらのかつての占有者の権利を擁護してやるのが国としてとるべき方法ではないかと考えておるのでありまして、さような措置をとられんことを切望いたしまして、私は質問を終ります。
○佐瀬委員長 大蔵省の側からも簡単に御説明を求めておきたいのであります。今の問題を国家の補償によつて解決しようというような政府の意向のもとに、補償額等について特に理財局が中心に予算的に考慮をされたことがあつたかどうか、あつたとするならばその内容を簡単に御説明願いたいと思います。
○横山説明員 補償の問題につきましては、私の担当でないので詳しくは存じておりませんが、ときどき会合して聞いているところでは、いわゆる戦争による被害者、あるいは海外引揚者もありましようし、国内における戦災者もありましよう。こういつた戦争による被害者に対する補償という問題は、件数から数えまして大体三十件近くあると思つております。どれを先に取上げるか、どれを無視するかという問題につきましても、非常に問題があると同時に、そのすべてを考慮する、あるいはその一部を何とが考慮するという場合において、国の財政の現状から見まして、目下のところ大蔵省としては決定しかねる、こういうふうに間接的に聞いております。詳しいことは先ほど申しましたように、私担当でありませんので、はつきり申し上げられません。
○佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、これをもつて散会いたします。 午後四時五十九分散会