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13回国会衆議院1952/05/19

法務委員会 第53号

発言数
55
登壇者
4
会派数
2
開催日
1952/05/19

会議録

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入る前にお諮りいたします。今会期中におきまして、今後最高裁判所長官またはその指定する代理者より、本委員会に出席説明したいとの要求があります場合には、国会法第七十二條第二項の規定により、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。   これより裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案を議題といたします。本案につきまして、裁判所当局より説明したいとの申出がありますのでこれを許します。鈴木説明員。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  この法律案においては、裁判所の職員を合計して八十四名を増員しようとするものでございますが、その内訳を申し上げますと、裁判所事務官及び雇い合計七十人、それから裁判所技官及び看護婦合計十四人、以上合計八十四名を増員の予定でございます。  まず裁判所技官及び看護婦合計十四名の方から御説明申し上げます。そのうちの四名は裁判所技官でございます。裁判所技官及び看護婦の増員ということは、これはおもに家庭裁判所の事件を担当する面から必要なので増員をお願いしておるわけでございます。御承知のように、家庭裁判所においては少年並びに家事事件を取扱つておるのですが、少年事件については、少年の犯罪等の審理、調査等にあたりまして、その精神医学的な知識が非常に必要でございます。そのために裁判所技官として予定しておるのは、専門の医師を技官として採用して、少年事件における精神医学方面等についての調査に当らせて、少年事件の適切な処理をいたしたいと思つたのであります。その以外に家事事件につきましても、離婚事件であるとかその他家事の紛争事件につきましては、精神的のみならず肉体的ないろいろ原因離婚事件等の原因になつております。当事者が気づかずして離婚の事由になつておる面が相当多数あるのでございますから、その方面のこともこの裁判所技官をして担任させ、ある場合には裁判官の足らない知識をこれら技官によつて補う目的であります。それと関連いたしまして、少年を取扱う場合、婦女子等を家事事件について取扱う場合、そういう医学上の知識その他の必要がある場合に備えて看護婦を十名ということで、合計十四名ということになるわけでございます。  それから裁判所事務官及び雇い合計七十名の方は、これは主として裁判所の警備職員に充てるための人員でございます。御承知のように、特に最近におきまして、裁判所の法廷の内外の警備が必要な事態が次から次へと頻発しておりますので、それに備えるためにはやはり相当機敏に働き得るような、同時に肉体的にも従来のようなあまり年寄らない職員を必要とするので、事務官として採用する。そうして実際は兼廷吏として実際の職務を行わせるというために、七十人の増員をお願いしておるわけでございます。現在裁判所の法廷の内外における警備は、具体的な事件についての開廷の際に、あらかじめ手配のできる場合には、警察等に連絡をして警備いたしておりますけれども、一般の場合は、おもに裁判所の廷吏をもつて法廷の内外を警備いたしておるわけでございます。そういう廷吏が現在どのくらい現在員としてあるかを申しますと、四月一日の現在において千六百七十名ございます。欠員が百名足らずございますが、これは先般行われました裁判所職員の整理に際しまして、欠員の補充を全面的にとどめている関係上、百名足らずの欠員があるのでありまして、これは急速に補充をする必要に追られており、なお、その上七十名の警備要員として、事務官、雇いを要求しておるわけでございます。この七十名の事務官あるいは雇いとしての警備要員は、大体要所々々に配属をいたして置きまして、必要の際には移動ができるように、配属を重点的にいたす方針で、この七十名を全国の裁判所に一名とか、二名とかいうように、ばらばらに酒属する方針ではございません。法廷内の秩序維持は裁判官の臨機応変な措置にまつことはもちろんでございますけれども、やはりそれとともに、その措置を受けてすぐに気転をきかして、しかも機敏に、時を失せず適当な措置をとる職員が必要なので、従来そういう点から申しますと、裁判所の廷吏というのは割合に年がとり過ぎておつたり、給与の面からして必ずしも機敏に、敏活に働き得る職員が多いとは申されなかつたのでありまするが、この七十人の増員を機会に、そういう点についても十分考慮を払つて、頭のきく、そうしてからだのきくような職員を採用する方針でおります。  大体、以上申し上げた通りであります。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 この際伺つておきたいのは、増加された人員の配置を場所的に御説明願つておきたいと思います。警備現況についてもただいま若干御説明があつたようでありますが、なお最近、各裁判所における法廷秩序の維持の面から、若干遺憾に思われる点もありますので、なおその具体的な事例について調査がされておれば、この機会にあわせて御説明を願つておきたいと思います。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 ただいま申し上げました七十名を重点的に配置をする計画だと申しましたが、それをさらに具体的に申し上げますと、東京地方裁判所に事務官一名、雇いを十六名、大阪地方裁判所に事務官を一名、雇いを十名、名古屋地方裁判所に事務官を一名、雇いを七名、広島地方裁判所に事務官を一名、雇いを七名、福岡地方裁判所に事務官を一名、雇いを七名、仙台地方裁判所に事務官を一名、雇いを七名、札幌地方裁判所に事務官を一名、雇いを五名、高松地方裁判所に雇いを四名というような割合で配置をいたす計画でございます。  それから法廷の秩序維持のために、現在どういうような警備状況をいたしておるかという御質問でございますが、これは一々の裁判所について具体的に申し上げるだけの資料を正直のところ所持いたしておりません。ただ最近の事例を申し上げますと、最高裁判所で、先日社会党の委員長の鈴木氏から提訴された行政事件がございますが、その事件の裁判のときは、事は民事事件でございますけれども、万一法廷において傍聴人が騒ぐというようなことも、絶対に予想がされないというわけではないので、最高裁判所としては、その場合にも備えて警備要員等の用意もいたしたのでありますが、その際などには、最高裁判所の要員だけでは不足いたしましたので、高等、地方等の要員をも借り出して、あらかじめ配置につかせて、いざ事があつたらという用意までしておつたような状況でございます。  大体各地において人数のいる場合には、地方裁判所でいる場合には高等裁判所の要員をして充てるというようにやつておるようでございます。  東京地方裁判所における法廷秩序維持のためにどの程度のことをしておるか、どういう状況であるかということをかいつまんで申し上げますと、今年の一月における開廷度数十回、事件数が十、それに対して、派遣を受けた警察官吏の延人員は四百四十七名、それから実際に派遣を受けないで、出動を待機せしめた警察官吏の延人員というのが六百二十名ございます。それから警備をなした裁判所の職員の延人員は百十二名でございます。それから二月について申し上げますと、開廷度数が六回、事件数は六、これについて派遣を受けた警察官吏の延人員が百九十五名、出動を待機せしめた警察官吏の延人員が三百四十名、警備をなした裁判所職員の延人員が百七十五名、三月について申し上げますと、開廷度数が十三回、事件数が八、派遣を受けた警察官吏の延人員が六百七十五名、出動を待機せしめた警察官吏の延人員が七百九十名、警備をなした裁判所職員の延人員が百四十六名、四月について申し上げますと、開廷度数が八回、事件数が八、派遣を受けた警察官吏の延人員が八十名、それから出動を待機せしめた警察官吏の延人員が三百八十名、警備をなした裁判所職員の延人員が八十名、以上の、一月から四月までの総計を申し上げますと、開廷度数三十七について、派遣を受けた警察官吏の延べ人員は千三百九十七、出動を待機せしめた警察官吏の延人員が二千百三十、警備をなした裁判所職員の延人員の総数が四百十三というようなぐあいになつております。  ただいま申し上げました開廷度数というのは、警備を要する事件のみの数であることは申し上げるまでもないことであります。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 以上をもつて一応本案に対する説明員の御説明は終了いたしました。これに対する質疑を通告の順に従つて許したいと思います。梨木作次郎君。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 私はただいま説明されました裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案に関連しまして、どうしても田中最高裁判所長官の出頭を求めて、最近における裁判の秩序維持に関する長官の考え方を聞いておきたいと思うのであります。この点についてまず田中最高裁判所長官の出頭を求める件の動議を提出いたしたいと思います。その理由を説明いたします。  田中最高裁判所長官は、従来しばしばまことに不穏当な長官としての政治的な見解、裁判に対する押しつけがましい訓示を公表しております。彼はこういう政治的な意見や見解に基いて現在の裁判の秩序の維持をはかろうとしておることが明らかであります。その一環といたしまして、本日出されましたような裁判所の警備員をふやすことによつて裁判の秩序を維持しようとしている。かような考え方がこの法案の提出の大きな理由になつておると私は考えます。特に彼が一九五二年の新年の言葉といたしまして、裁判所時報に発表しておるところの彼の見解を見ますと、まつたくこれはわれわれといたしまして、放置できないような、きわめて乱暴な意見を発表しておるのであります。一例を申しますと、こういうことを言つておるのであります。「国内社会の状態はどうであろうか。いかに戦争による物質的窮乏の結果であるとはいえ、道徳の頽廃、社会秩序の紊乱、悪質犯罪の増加は、警察力や裁判所の充実強化をますます要求しつつある実情ではないか。目を国際社会に転ずるときに、同じ現象が見受けられるのである。ヒトラー、ムソリーニ、東條の軍国主義的、極端な国家主義的禍害は取除かれたが、似面非哲学、偽科学によつて粉飾されたところの権力主義と独裁主義と、その結果である人間の奴隷化において、フアシズムやフアシズムにまさるとも劣らない赤色インペリアリズムは、その発祥の領域を越えて世界制覇の野望を露骨に現わし始めた。世界人類社会の危機がこれより重大深刻であつた時代は過去において存在しなかつたのである。」こう言つて、さらに中略いたしまして、「これらの諸国は国際連合の正統的な理念である平和主義と民主主義の忠実な使徒として、恐るべき国際的ギヤングの侵略を食いとめるために、一致結束しつつある。朝鮮の戰乱はこれらの諸国がいかなる程度に国連の理念に忠実であるかを実証したのである。」中略、「もし現在の二つの世界の対立に直面してなお中立の可能性を信じる者があるとするならば、その現実の情勢の認識の欠如に驚くほかはない。さらにわれわれはその道徳的信念と勇気の欠如を批判せざるを得ない。」こう言つて来まして、さらに「もし彼らが真に真理と平和に忠実ならば、共産主義者でない限り、平和條約や安全保障條約に批判を加える前に、それ以上の熱意をもつて、まず共産主義の理念及びこれを奉ずる国々の現実に批判を向けなければならぬはずである。」こう説いて来ておるのであります。さらに「講和と裁判官」と題しまして、これは法曹第三十一号、昭和二十六年十月十五日付の発行でありますが、これにはこういうことを言つております。「従つてこれらをイデオロギー的に否認する政党がもし存在するとするならば、それは現実の政治の合目的性の考慮は別論として、理論的には当然に非合法と認められなければならない。同一のことは裁判官にも適用される。新憲法の精神を否定する世界観や理論を抱懐する裁判官は、いかに法律技術にすぐれていても、裁判官として不適格である。またこれに対し信念を欠き、または懐疑的な者は裁判官として適当であるとは言えない。それらの者は少くとも高度に良心的であることが要求される裁判官として、安んじてその地位にとどまり得ないわけである。」こういうようにして彼は明らかに最高裁判所長官といたしまして、世界に二つの対立がある、日本はこの一方の自由主義諸国に加担したのである、だからこの相手の共産主義諸国家に対して、これは絶対中立的な立場をとるべきではなくして、これは力をもつて対抗すべきである。要するに早く言えば戦争すべきであるという戦争の挑発を行つておる。しかも彼のこういう考え方に同調しない裁判官というものは、これは裁判官としての地位にとどまり得ないのであると極言しておる。しかもこれは単に彼の思想ではなくして、裁判所時報や法曹というような雑誌を通じて公表しておるのであります。しかも彼のこの意見通りのことを国民がやつたといたしますならば、これは明らかに刑法で禁止しておる外患罪やその他の犯罪に該当することであります。こういうような考え方の上に立つて裁判を行うことを部下の裁判官に指示しておるのであります。こういう考え方に立つて、彼は最高裁判所の長官といたしまして裁判の運営をはかろうとしておる。だからこそ、今政治的な事件で検挙された被疑者や被告諸君は、現在の裁判に対して信頼が持てないのは当然ではありませんか。共産主義的な思想の立場の上に立つてあらゆる行動をとる人に対しては容赦なくやれと言つておるのであります。これは少くとも行政権から独立して、最も日本の国民の基本的な人権を擁護し、戦争を放棄し、平和を守ることを世界に誓約したこの憲法下における日本の裁判官といたしましては、まことに憲法を否定するような裁判官であるといわなければならない。これが長官の地位にある。だからこそこの裁判官に対して、日本の大衆は信頼が持てない。そこにもろもろの法廷におけるところの、これを強行しようとする裁判官と被疑者との間に、あるいは被告人との間に、政治的な見解を異にしての、裁判運営についての根本的な相違から来るところの紛糾が起つて来ることは当然であります。このことを無視して、いかに警備員をふやし、裁判所やその他を強化しようといたしましても、国民の側から申しますならば、これは階級裁判、人民を弾圧する機構の強化として映ることは当然ではありませんか。でありますから、私はこの法案を審議するにあたりましては、どうしても田中最高裁判所長官の出頭を求めて、彼のこういう考え方が適切であるかどうかということを、国会といたしまして十分われわれの考え方をまとめておいて、そうして今後の裁判の運営というものに対する、国家最高の機関としての国会の態度というものをきめなければならぬと思うのであります。私はこの観点からいたしまして、田中最高裁判所長官の本法務委員会への出頭を求めて、彼がしばしば発表しておるところの、かような裁判の運営についての考え方というものを明らかにしなければならぬ。私はその観点から以上の動議を提出する次第であります。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 では速記を始めてください。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 それでは、私は田中最高裁判所長官の出席を求める動議を提出いたしましたが、委員長において、動議だとどうも国会法からいつてぐあいが悪いという話でありますから、——私は従来もこの問題については、どうしても一回はここへ呼ばなければならぬということは考えておつたのでありますが、それならばこの動議は、法律に従つた形において本委員会に出席してもらいたいという意見を述べたことに訂正いたします。委員長において適当にはからつてもらうように、意見を述べたということにしておきます。  では続いて質疑に入ります。鈴木さんに聞きたいのでありますが、講和が発効いたしましてから、最高裁判所において、アメリカ人を法律顧問として雇い入れるというようなことが実際進行しておるという情報を受けておりますが、この点についての経過を詳細に説明してもらいたい。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 ただいま御質問になつたアメリカ人を法律顧問として最高裁判所で雇い入れる事実があるというお話ですが、これは、法律顧問というのが妙に歪曲された表現ではないかと思われます。元GHQにおりましたミスター・マコーミツクというのが、GHQの勤務をやめた後に、日本に残るのを機会に、最高裁判所の図書館、それから研修所における講師という方面の仕事をするために、私法上の契約をした事実はございます。しかしそれはあくまでも図書館の図書の整備についての事務、それから司法研修所に出て、英米法についての講義をするという意味だけの仕事の内容でありまして、最高裁判所自体が、それを法律顧問として裁判上に役立てるという意味合いの雇い入れではないわけです。法律顧問といいますと、何か裁判官がすぐそれに直結をして、顧問的なあるいは調査官的な役割をさせるように聞えて、物議をかもしやすいかもしれませんけれども、実際行われておるところは、ただいま申し上げましたような図書館の図書の整備、それから研修所における講義ということを対象として契約をいたした事実はございます。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 このマコーミツク氏を、今説明されたようなことで雇い入れるという契約が成立したのはいつであつて、給料その他の報酬、待遇関係はどうなんですか。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 契約の成立したのは五月一日であります。給料は図書館と研修所の方を合計して、多分四万五千円ではなかつたかと思います。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 マコーミツク氏は、GHQではどういう仕事をしておつた人でありますか。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 GHQでは立法司法課のメンバーとして仕事をしておつた人であります。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 このマコーミツク氏を雇い入れるにつきまして、これは日本側から頼んで雇い入れたのか、それとも向うから申し出て雇うことになつたのか、どつちでありますか。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 御承知のようにGHQが講和の発効と同時に解散をいたしまして、同氏が日本に残る希望があつて、最高裁判所の方面で何か自分がアメリカの弁護士として法律家として役に立ち得るようなポストはないかどうか、最高裁判所になければ、そのほかの官署、民間でもいいが、そういうポストはないだろうかというようなことを、事務局の方に話がありまして、事務局では、研修所等において英米法等の講義なども従来日本の教師を雇つてやつておる関係もあり、時にはGHQの人たちを呼んで講義をしてもらつておつたような関係もあるものですから、かたがた最高裁判所の図書館の整備、ことに英米法関係の図書の整備ということもございますので、それでは最高裁判所で雇おうかということになつたわけで、最高裁判所の方から最初から積極的に先方に話をかけて、雇つたわけではないのです。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 雇入れにつきましては、今の手続はどういうことになつておるのでありますか。最高裁判所の裁判官会議を開いて、これを決定するということに私はなると思うのでありますがそういう手続を踏んでおりますか。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 もちろん最高裁判所の司法行政事務は裁判官会議の議を経るのが原則でございまして、ただいま申し上げたマコーミツクも従来GHQとの連絡の関係上、最高裁判所の裁判官各位においても同人の人となり実力等を知つておるわけです。それでマコーミツクからこういうような依頼があつた。それについては事務局としてこういうように考えておるが、実行いたしていいかどうかということは、裁判官会議にかけて、そうして裁判官会議の承認を経て契約いたしております。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 私たちの情報によりますと、シーボルド氏が日本の大使を非常に希望しておつた。ところがアメリカ側におきまして、シーボルド氏が日本の大使になることについて反対があつた。その反対の一つの理由といたしまして、アメリカにおいてもまた日本においてもそうであるが、それは彼がやはり占領中に日本において外交上のいろいろな責任者としての仕事をやつて来ておる。ところが占領終了後においてもシーボルド氏がさらに大使として日本に赴任することは、占領が依然として継続されておるという印象を国民に与えるから、それはぐあいが悪いというので、非常にシーボルド氏が日本大使になることを要望しておつたにもかかわらず、この人事がさような理由の反対によつてできなかつたということをわれわれ聞いておるのであります。同じことは、なるほどマコーミツク氏は最高裁判所の法律顧問ではないかもしれません。しかし占領中にGHQの立法部の非常に有力な一人といたしまして、日本の立法あるいは裁判制度の運営に意見を出し、それが具体化されて来ておつたものと私は考える。そうなりまするならば、今あなたが説明されるように、図書館の仕事だとか、あるいは研修所の仕事をなさるといいますが、実際はアメリカが、日本の独立、講和発効後においても、——政府は盛んに独立だと言つておる、われわれ独立だなどと一つも考えませんが、講和発効後においても、占領中に日本に指揮命令をしておつたその法律家が最高裁判所に入り込んで来るということにつきましては、私どもはこれを單にさような私法上の契約として、單に図書館の仕事や、研修所の仕事だけに終始するものとは実際的には受取ることができません。事実はやはり最高裁判所にアメリカ政府のいろいろな権力的な圧迫が加わることなきにしもあらずということを非常に心配するのであります。この点について、私は、漏れ聞くところによると、最高裁判所においても、いまさら何もアメリカ人をこの四万五千円の金を払つて雇い入れなければ、日本の最高裁判所が成り立つていかぬというようなものでもあるまいといつて、この人事に対しては非常な不満、反対があつたと聞いておるのでありますが、その辺のところを私は率直にひとつ承りたいと思うのです。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 一般の問題といたしまして、占領軍の要員であつた者が、引続き講和発効後においても、日本の官庁の要員ないしは雇用関係に立つて、日本の官庁の内部において活動するということの好ましくないことは、梨木委員の御意見の通りだと思います。ことに行政面においては、何と申しましても、占領当時においていろいろな面で有形、無形の圧迫をこうむつておつたと申して過言でないと存じますから、行政面においては、そういうことは一般論としては梨木委員のおつしやる通りかと私も思います。しかし裁判所は御承知の通り、いろいろな法律によつて裁判官の自由裁量を許されておる面もございますけれども、何といつても憲法並びに法令を唯一の基準として、理論で解決か大体できるものなんです。GHQと裁判所方面との交渉においても、結局は理論で大体のことは解決をいたしておるのであります。従来GHQとの交渉は、いろいろな交渉がありましたけれども、こちらの言うべきことは理論上こうなるのだということで、理論を闘わしつつ彼らと大体において交渉をして来た関係だというように御了解を願つて私はさしつかえないと思います。でありますから、これはまあ行政部門においても同じかもしれませんけれども、少くとも司法部門においては、むしろあらわに、お前の言うことが間違つておるのだ、日本の法律からいつても、法律論一般からいつても、そういうことは言えないのだということを、彼らとはつきり議論を闘わして来ておつた関係にあります。でありますから、そういう連中でありますから、私は裁判所がひどく彼らによつて圧迫を受けていた関係にあり、しかも引続いてマコーミツクを雇用することがその延長であるというように考えられるのは、少くとも司法に関しては、行政面とは若干異なるものがあるのじやないかということを御考慮願いたいわけであります。それからもう一つは、具体的な問題として、かりに私が今申し上げたように、行政面その他の実際の面と司法関係の接触のぐあいは違うにしても、当のマコーミツクという人間、人柄が悪ければ、これは最高裁判所としてまた若干の非難をこうむるべき筋合いもあろうかと思いますが、これは私は別にマコーミツクのちようちん持ちをするわけではないのですけれども、私も人事局長としてこの問題を相談を受けてぶつかつたときに、すぐマコーミツクの人間ということをまず第一に考えたわけであります。まあGHQ一般にアメリカの占領要員と申しましても、もちろんピンからキリまでありましようし、人柄の上でも、われわれとして賛成できない、感心の行かない人柄の人間もあるわけです。しかしマコーミツクは、われわれが従来つき合つて来た実際の人となりを見ますと、きわめて正直な紳士で、そうして——多分出身はオハイオ州だと思いますが、オハイオ州の弁護士であり、大学などにも一とき関係をしておつたことのあるような人らしいのであります。人間としてきわめて誠実で、われわれが率直にものを言つて話合い、向うも率直に裁判所に対していた人で、権力ずくで相対していたような人柄でないわけです。そういう点で私もマコーミツクならまあいいじやないかというような考えで賛成をしたのであります。  もう一つ、そういう人がおるということが、裁判所が何かアメリカから指令でも受けるおそれがあるのじやないかというような懸念もあられるように承りましたけれども、今申しましたように、元来裁判官というものはりくつ、道理——広く大きくいいますれば、法律も道理の中に入りますが、道理に従つて事をするのが裁判官の生命だと私は存じます。その裁判官の性質から言つて、そしてもう一つはマコーミツクに与えた仕事の上から言つて、今さら最高裁判所がアメリカの何かのサゼスチヨンをマコーミツクを通じて受けるというおそれは、私は毛頭ないと存じます。このことを裁判官会議に議題として出した際にも、裁判官のだれも、マコーミツクを雇用することは反対だという声は一人もなく、あれなら大丈夫だろうというのが全員の結論であつたことを申し添えます。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 公開の席上ではそういうことだろうと思います。しかし私の得た情報によりますと、実は講和発効以前におきまして、講和発効後における日本の裁判についての運営——これには最高裁判所長官も非常に自信がなかつた。どうしてもアメリカのつつかい棒を必要とした。そこで彼は極秘裡にアメリカに対して、講和発効後においても適当な——今あなたが言われたような、助言を与えてもらえるような人をひとつ日本にとどめてもらいたいという手紙を出しているじやありませんか。この手紙は私信でありますから、あなたは知らないかもしれない。しかし田中最高裁判所長官はこういう手紙を極秘裡に出している事実があるのであります。これはいかがですか。これに基いてこの人事が具体化しているのだと私たちはにらんでおるのですが、どうですか。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 結論から申し上げますと、さようなことは大デマだと私は信じます。私も人事に関係しておつて、若干その間の消息は知つておるつもりですけれども、少くともマコーミツクの関係において、田中長官から手紙を書いたというようなことは絶対にないと私は信じます。ただ今おつしやることは、ほかの要員、つまりやはりGHQの同じところにおる要員が日本に残りたいということで、最高裁判所長官から多分向うのシーボルドか何かでしよう、それに対して何か依頼状でも推薦状でも出してくれないかといわれたということは私も聞いております。しかしそれはマコーミツクではないはずです。それに対して、長官がはたしてその当の人物の推薦状というようなものを書いてやつたかどうかということは知りませんけれども、そういう事実を依頼されたということは、私何かの機会に聞いたことがあります。けれどもそれは絶対にマコーミツクの件ではないはずです。その人がはたして日本に現在残つておるかどうかちよつとわかりませんけれども、そういうある人物について、残りたいが何か推薦をしてくれないかといわれたということを、長官直接でなくて、私は第三者から聞いたことがあります。しかしそれはマコーミツクではないはずです。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 大分はつきりして来ました。それは私の方の情報でありますからあるいはあなたのおつしやる通りかもしれませんが、そうすると、あなたの今の説明によつても、GHQのある要員が講和発効後においても残りたい、それについてはひとつ田中最高裁判所長官の推薦状をシーボルド氏に依頼したという事実は、間接にはあなたは聞いておられる、しかしながらこれはマコーミツク氏の人事とは関係がないと、こうおつしやるのでありますか、そこのところをもう少しはつきり。……

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 先方に推薦してくれといつたのは、最高裁判所に残るように推薦をしてくれといつている意味じやないのです。日本に本人が残りたいといつているから残してあげてくれ、推薦をしてくれというように私は聞いておるのです。最高裁判所にとる、とらないという推薦ではないのです。日本に残るように推薦してやつてくれないかといわれたということを間接的に私は聞いたのです。それはしかし今申し上げたように、全然マコーミツクではないのですよ。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 そうすると、このマコーミツク氏の契約の期限というものはどういうことになつていますか。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 五月一日から向う一箇年ということになつております。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 そこでこの増員の問題でありますが、警備員を大体ふやそうということに関連しておりますが、四万五千円の高給を払つてアメリカ人を雇う、そういうことをするよりも、これだけの人件費を払うとなれば、少くとも地方裁判所の部長級は二人、それからそれ以下ならば三人くらいの裁判官をさらに勤務させることができる費用であります。私はこの点につきましては、やはりあなたの説明では納得ができません。というのは、現在もう一つの法案が出ておりますが——最高裁判所では非常に事件が輻湊しておる、そこで事件を簡単にやりたい、そのために特別法をもう二年延ばしてほしいというのが出ております。これらの問題と関連いたします場合に、最高裁判所は裁判の促進についてもつと裁判官をふやさなければならぬ、それには裁判官でないようなこういう人を雇つて、これだけの給料を払うということは、裁判の促進という問題から見るならば、これは少し邪道じやないか。こういう必要が一体どこにあるのか。もつと裁判を促進させ、迅速にやらせるためには、裁判官をもつと充実させて行くということの中に問題がありはしないか。もつとも充実させるというのは、あなたの御説明では研修所でひとつ勉強さしてもらうのだとこういわれますが、何もこれはアメリカ人の講師を雇つて来なければ、日本では研修所の講師に事を欠くというほどのことでもありますまい。あなたの説明ではマコーミツク氏は非常に人物としてもいい人だと言われますが、この中には非常に問題があると思うのです。もう一点裁判の促進の問題に関連しましてあなたの見解を承りたいと思います。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 梨木委員はただいまマコーミツクの俸給をもつてすれば、部長級二、三人を雇えるとおつしやいましたが、これは部長級としてもせいぜい一人であります、二、三人というのは判事補級なんです。ですから二、三人どころじやない。やつと私ぐらいの判事が一人というところなんであります。(笑声)決して二、三人というような大勢にはならぬのであります。しかしそういう説明は別といたしまして、一人でもよけい実際面に裁判官をふやす方が審理の促進になるではないか、こういうようにおつしやられれば、当面の問題としては確かにおつしやられる通りかと存じます。けれどもこれは最高裁判所のみじやなくて在野の法曹も、力を合せてお互いに将来の裁判官、将来の弁護士のレベルの向上ということは考えなければならない。そういう面に有能な人を働かせるということも、最高裁判所としてはやはり考えざるを得ない立場にあるわけであります。当面一人ふやす、二人ふやすということもおろそかにできないことでありますけれども、それと同時に遠い将来を考えて、そのための施設も一方においては怠らないということが必要ではないか。一外国人の雇入れでありますけれども、そういう考えからこの問題を取上げていただきたいのでありまして、何か最高裁判所がマコーミツクに対して特殊な関係があるような言説をされるのは、事務当局としてはなはだどうも合点が行かない。不満なんです。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 それではもう少し掘り下げて伺いますが、新聞の報道によりますと、アメリカでは日本に情報センターというものを二十三箇所設置する、そうしてアメリカの予算では、日本の金にいたしまして十九億八百万円を計上しておるということであります。この情報センターは日本の国内のいろいろな情報、これは主として共産党その他のこれに同調する政治活動の情報をとること、それからさらにアメリカの反共宣伝を日本に拡大して行く、そのために図書館というものを非常に利用しようとしている。私はこういうアメリカの反共宣伝の情報センターの一環として最高裁判所の図書館へこの人を送り込んで来ているのではないかということを心配するのであります。そうして反共的な思想に裁判官の頭脳をかえて行こう、裁判の運営もそういう観点からやつて行こう、最高裁判所長官の就任以来の言動、特に最近ますます狂暴化して来た最高裁判所長官の言動とこれら一連の事実とを結びつけるところに、具体的にこれらのことが現われて来るように私には思えて、心配でならないのでありますが、こういう点についてあなたの御見解をお聞きしたいと思います。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 アメリカの情報センターのことは、ただいま初めて伺つたので、何とも申し上げられませんけれども、私の観測ではマコーミツクが図書館の仕事をし、研修所の仕事をすることによつて、特に裁判官の思想が右にかわり左にかわるというようなことはまずないのではないかと考えております。アメリカ人が日本の裁判官となつて、日本の裁判官の数を凌駕するほどになつて、日本の裁判所において活躍するときにでもなつたら、あるいは彼らによつて左右されるおそれなしといたしませんけれども、廖たるマコーミツク一人をもつてしては、とてもそういうことは望めないと楽観いたしております。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 そこで裁判の秩序維持の問題の根本的な考え方について、最高裁判所のあり方——最近の最高裁判所長官のあり方について、これは長官に聞かなければわからないことで、あなたに聞くのは少し無理かもしれませんが、答弁ができたら答えてもらいたいと思うのであります。と申しますのは、最高裁判所長官はしばしば裁判所時報その他のもので、こういうことを発表しておるのであります。世界が二つにわかれておる、日本は自由主義国家の方にくつついたのだ、共産主義国家は国際ギヤングだ、これには中立はない。共産主義思想を持つ裁判官は、はつきりいえば新憲法の精神を否定するのだから、裁判官の地位にとどめ得ないのだ、彼が頭の中でそんなことを考えておるのならまだいいが、これを公然と裁判官に訓示し、裁判所時報に発表することは、明らかに最高裁判所長官が思想の自由を裁判官に対して否定しようとするやり方である。裁判官といえども憲法によつてどのような思想を持とうと自由であります。しかるに憲法を否定するような思想を持つておる者は、裁判官の地位にとどまり得ないのだ、しかも世の中には正と不正、善と悪、自由と隷従、寛容と暴力、この二つの中に中間はないのだ、黒か白か、どつちかの色でなければならないと言つておる。これは明らかにナチスの全体主義の考えである。こういう乱暴な議論は、吉田ワン・マン首相といえどもあまり言わない。しかるに最高裁判所長官ともあろうものが、こういうことを平気で言つておる。一体こういうことについてあなたは最高裁判所の中におられる一人といたしましてどういう感想を持つておられるか、長官にたてつくような答弁をあなたに求めることは残酷かもしれませんが、田中長官のやり方は明らかに便乗的であり、まつたく卑屈な態度である。これは全最高裁判所裁判官の考え方に合致したものでないのでありまして、中にはこういうやり方に対して大きな不満を持つておる人のあることを私は知つております。この点について、裁判の運営について長官と同じような考え方が最高裁判所の裁判官の全部を支配しておる考え方かどうか、少し無理かもしれませんが、あなたの答えられる範囲において答えてください。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 非常に無理な御質問でございまして、私が最高裁判所の長官でないことは御承知の通りでありますから、最高裁判所長官になつたつもりで答えるわけには参りませんし、そんたくしてお答えをいたすわけにも参らないわけでありますけれども、ただ、たれでも公に発育をする際においても、私人として発言をする際においても、人間でございますから、その人の思想、考え、世界観というものがおのずから出るということは、やむを得ないことかと思います。俗に言えば、何を申してもおのずからその人の地金が出るわけでございます。梨木委員が御発言になつておる際にも、やはり梨木委員の世界観、梨木委員の思想、その人となりが出ると同じく、最高裁判所の長官といえどもおのずからその人間の考えておるところ人柄が出るということは、これはある程度やむを得ないと思います。ただ梨木委員の御心配になつてくださるのは、最高裁判所の長官というのは、新制度になつても、とにかく裁判官のうちでも最も枢要な地位にある人である、そういう人の一挙手一投足、一言一句は、ただちに下級裁判所の裁判官あるいは同僚たる最高裁判所の裁判官の態度、考えというようなものに影響するではないか、そういう地位にある人が軽々しく自分の考え、自分の世界観というものをむき出しにしてはいけないのじやないかという点をおそらくおそれて、ただいまのような御質問になつただろうと思うのであります。私は最高裁判所の事務局におりまして、最高裁判所の長官の言説について、ここで是であり非であるということは申されない立場かと存じますので、その点については、私はお答えを差控えたいと思いますが、ただ抽象的に申し上げまして、要するに最高裁判所長官としての地位にある人の言説として、個人的な考えが、それが一体許される程度の言説であるかどうかというようなことについて、御批判を願えればいいのであつて、その御批判の結果が最高裁判所の長官を非とすることになるか是とすることになるか、これはやはり批判する者の若干のニュアンスが出て来るのじやないか、こういうように考えております。ただ裁判官は、御承知のように、本来中立的なものであります。そうしていわばわれわれの同僚、われわれの先輩を見ましても、ある特定のイズムのために鉄火も辞さないというような傾向の人たちではなくして、常に中正をとつて進むというような性質の人たちのように存じます。それでありますから、かりに梨木委員の立場から見て非常に行き過ぎだというようにお思いになるような言説を最高裁判所の長官がはいたと仮定いたしましても、そうそれに右へならえを常にするというようなことまで御心配になる必要はないのではないだろうかというように、下級裁判所の裁判官の一人として私はそういうようにも考えておるわけであります。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 そこを私は聞きたいのです。こういう一方に偏して自分の思想のわくに全裁判官をはめ込もうとするようなことを裁判所時報というこういう出版物を通して、しかも最高裁判所長官の名義においてなしておる。これは明らかに個人的な言動では絶対にありません。これはもう議論の余地はありません。ところでこういう最高裁判所長官の言説に対しまして、これが下級裁判官に与えておる影響、これもあなたは今ちよつと触れられましたが、その点を私はもう少し詳しく聞きたいのであります。こういうようなものがしばしば出ておりますが、これに対しまして下級裁判官は、田中は何を言つているんだとこれを無視しているか、それともやはり相当な動揺を与えておるか、この点が私は問題だと思うので、これは人事の問題として、あなたの職掌の管轄の範囲内に入ると思うのでありますが、この影響を私はひとつ聞きたいと思うのです。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 長官の訓示がどういうような影響を下級裁判所の裁判官に与えるかということは、これはやはり具体的には正直に申し上げましてわからないのでございます。印刷物となつて現われた場合には、第三者から申しますと、裁判所以外の人たちから見ますと、行き過ぎであるとか行き過ぎではないとかいうようないろいろな印象を与えるかもしれませんが、部内においての訓示ということは、いわば一面において儀式的な意味がありますものですから、そうひどく具体的な事件に当る際に、その訓示に基いてどういう行動をとり、どういう裁判をするということは、おそらく私はないのじやないか。長官の訓示というようなことも会同の際にはもうやめたらいいじやないかというような声まで、内幕を申し上げますと、あるくらいであります。それはもちろん内容が悪いとかいいとかいう意味ではなくして、もうそういう従来のしきたりにこだわることはやめようじやないかというようなことで、長官の訓示ということもやめて、すぐに事務の討議に入つたらいいじやないかというような声さえ事務局内部にあるくらいでありますから、具体的に長官の訓示がどう影響するかということは、実際においても言えませんし、それからそう御心配になるほどのことはないのじやなかろうか、こう考えております。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 裁判所の秩序維持の問題に関連しまして、一昨日長野の地裁の支部でありますが、わが党の林百郎議員が、警察の弾圧の刑事事件に関して、勾留理由開示法廷に弁護人として出廷しようとしたのであります。ところで私の得た情報では、当日裁判所側は傍聴人を四十名に限定し、外には鉄條網を張り、武装警官たしか三百名と聞いておるのでありますが、これを配置いたしまして、厳戒裡に法廷を開いた、しかも林君が少し時間が遅れるからということをあらかじめ通告し、しかし必ず出廷するというように通告してあつたにもかかわらず、林君の出廷を待たずして法廷を開いた、このために被疑者の方から林弁護人の出廷のない点を抗議し、ここで紛糾が起り、そのために裁判が進行できなくて閉廷となつてしまつた。そのころに林君がかけつけて、裁判所の裁判官のこういう不当なやり方について抗議をしようとしたところが、そこで警察官が阻止した。ところがそのときに何か警察官との間に衝突があつたらしいのであります。故障といいますか、もみ合い程度のものがあつたのでありますが、林君は全然その問題に関係していないのでありますが、何か大衆と警察官とのもみ合いの結果、ガラスが二枚とか割れたというのであります。それをただちに林君のせいにいたしまして、林君を現場で逮捕したというような事件が起つておるのであります。もちろんこういう問題は林君が関係ないことでありますから、すぐに釈放したそうでありますが、私はこの事件に関連いたしまして、裁判所は裁判の——何と申しますか、権威、あるいは裁判所の秩序の維持ということに非常に関心を持つておることは、それはそれといたしまして、それを実際具体化する場合には、——国民の裁判に対する信頼性、支持、そしてそれから来るところの権威というものは、これは国民の意思、感情、生活に合致したところの裁判を行うことによつて、初めて裁判の権威というものの信頼性が出て来るのであります。ところが今の裁判のやり方というものは、一番頭にこういう反共的な田中長官をいただいておるせいでありましようか、初めから被疑者を罪人扱いし、あるいは大衆というものを犯罪人扱いいたしまして、そして公判廷というものと大衆とを切り離そうとしている。ほんとうに自分の裁判に信頼を持つなら、自信を持つなら、自分の裁判が大衆に信頼されている、国民から支持されているという、さような自信がありますならば、なぜより多くの大衆を傍聴人として法廷に入れることをやらないのか、それを限定する。それならば形式上は公開かもしれませんが、実質上は非公開でありませんか、暗黒裁判でありませんか。私はそういう神経を使うところに、すでにもう裁判が国民によつて信頼されておらないという。そういうことを反省しなければならぬ、こう私は考えるのであります。私の情報では、林君の問題はそうなつておる。ここで一番問題になりますのは、傍聴人を四十人に制限し、しかも法廷の周囲に鉄条網を張つて、武装警官二百名を動員したという、こういう裁判のやり方、これによつて裁判の秩序を維持しようとしていると、そういうふうに情報で聞いておるのでありますが、それはほんとうかどうか、これをまず最初に聞いておきたい。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 ただいま御質問になりました事件については、実はまだ詳細のことを報告がございませんので、何とも申し上げられないのであります。ただ法廷の警備の必要はこれは第三者がごらんになつた場合と、当該の裁判に関与する裁判官その他の職員が必要性を感じる場合と、やはり私は異なるものがあるのではないかと思うのであります。ただいまの御質問のように、まわりに鉄条網を張つて、そして裁判をするというようなことが、常にいかなる事件についても行われるなら、これは私は確かに行き過ぎであり、暗黒裁判であるというような非難を受けるべき筋合いかとも思いますけれども、はたして鉄条網を張りめぐらしたかどうか、本件の場合にはわかりませんけれども、かりに張りめぐらしたといたしましても、裁判所としては私は従来からの考え方、実行のしぶりから見ますと、やむを得ないでそういうことをやつた、きわめて例外中の例外の事件ではないかと思うのであります。一般的にそういうようなことをして裁判をするというならば、私はこれは非難に値すると思いますけれども、本件の場合は、やはりそういうようなことをしなければやむを得ない事情があつたのではないか、そういう事情がなければ、われわれの実際の今までの例として、そういう態度に出るということは絶対に私はないと申し上げていいかと思います。ただ具体的な事情が必ずあると思いますので、その辺の事情も、私の方でも調べてみますけれども、梨木さんにおいても十分お取調べの上、はたして行き過ぎであるかどうかという点について、お調べを願いたいと思います。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 法廷の秩序の維持の問題に関連しましては、これはどうも裁判所側は自分のやつている裁判について非常に自信を持つておらないということです。自信がないからそういう警官やさようなものによつて権威を維持しようとする、ここが一番問題であると私は思うのであります。だから警官なんかのものものしい警戒裡に裁判を行うようなことをやればやるほど、被疑者を、あるいは被告人あるいは傍聴者を刺激する。これはこの間のメーデーの人民広場の事件を見てもわかる。東京だけでありませんか。ほかには全然ああいう問題が起つてない。なぜかといえば、警官がああいうように阻止したり、警官が挑発しておるところに、また政府自身が——もう公園であります、だれでも自由に入ることができるような広場を、裁判所側もその禁止は不当であるといつているにかかわらず、その決定にも従わないで、無理やりにあそこを使わせなかつたという、こういうところに端が発しておるのであります。だから問題は、裁判官が自分のやつていることに自信を失い、自分のやつていることが大衆に信頼され、支持されるような裁判をやらない、ここに一番問題がある。そうして法廷内におけるところのいろいろな進行ぶりにいたしましても、頭から押えつけるような、こういうやり方をやつて来れば、当然反撃することはあたりまえであります。しかも今の政治的な事件につきまして、これは普通の破廉恥罪と違うのでありますから、政治的な信念、思想、主張に基いて行つたその行動が、検察庁によつてこれが犯罪視されているのでありますから、当然そういう自分を圧迫しよう、弾圧しようとするものに対する反対、反抗というものが起つて来ることは当然であります。だからこれはもう普通の事件とは違うわけでありますから、ここに田中長官の言うような、反共に対しては宣戦を布告するような、挑戦するような、こんな者はみんなひつくくつてしまえという、そういうやり方で裁判官が臨めば、これは幾ら警官を動員いたしましても、これではとうてい維持ができるものではありません。最後には国民が審判するのでありますから。だからそういうことを反省しない限りは、私はそれを抜きにいたしまして、全国で七十名ぐらいの警備員をふやしてみて、それで裁判の秩序を維持しようということは、これはまことにナンセンスであります。それよりも田中長官のこういう反共的な片寄つた考え方をまず直して行くという、ここに裁判の秩序維持の根本問題が私は横たわつておる、かように考えるのでありますが、これはもう私の意見にわたりますから、私の質問はこの程度にします。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 先刻の梨木委員の発言中、田中最高裁判所長官に対する質疑の動議は、梨木委員において国会法に基いて撤回されましたから、それにかわる御要望に対して委員長として後日理事会に諮つて適当な処理を行いたいと思います。  裁判所職員定員法等の一部改正に関する審議は本日はこの程度にとどめます。  次に、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案について審議を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許可いたします。梨木作次郎君。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 この特例につきましては、この特例ができたときの審議に当りまして、私は最高裁判所と一つの約束をしたつもりでおるのであります。それはこういう最高裁判所に事件が非常に輻湊しておる、そのために簡略な扱いをしなければならぬという事情から、この特例法を出して来たのだということであります。これに関連しまして、それでは今の最高裁判所の陣容では事件が輻湊し従つて遅延するのはあたりまえであります。なぜならば従来大審院当時におきましてはたしか三十名以上の裁判官によつて上告事件が扱われておつたわけであります。ところがこれを現在十五名に減らしておるのであります。そのときにすでにこういうことが予想されたわけであります。でありますから、問題は憲法裁判所と上告裁判所、この制度的な問題をどう処理するかということ、この根本問題を解決しなければならぬ。これをしないでおいてこういう特例というものをやたらに出して来まして、そうして基本的な人権に対する脅威を与えるようなことに対しては、われわれは賛成できない、こういうことを申しまして、それではひとつ一年ということにして、その間に研究しよう、こういうことであつたと私は記憶しておるのであります。そこで私は一体最高裁判所はこの機会に、憲法裁判所としての最高裁判所と、それから上告事件の取扱いについての裁判制度、これをどういうように研究され、それがどこまで進んで来て、どういう方針をとつておるのか、これを聞いておきたいのであります。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 政府側として一応お答え申し上げます。まさに今お話に出ましたように、この特例法制定の際に、期限を二年と切られておつて、その際におけるこちらのお話もあり、また政府当局者としても、その間にできるだけ本格的な制度をつくり上げるべく努力をしたいという態度で出発したわけでございます。われわれの方では法制審議会という諮問機関がございまして、非常に有力な諮問機関でございますが、それらに諮問し、また部外の関係者の協力を得まして、今日まであらゆる知能を動員して研究しておつたのであります。結局事柄自身はやはりいろいろむずかしい問題あるということであります。今憲法裁判所というお言葉もございましたけれども、純粋の憲法裁判所にこの最高裁判所を徹する、純粋の憲法裁判所にしてしまうということは、これは御承知のように憲法上の疑義もございますから、そう割切るわけにはいかない。なお上告部をどこかに置いたらどうかという議論、これも昔からあつた議論でございます。その他あらゆる角度からの議論が出、またそれらに対する反駁があり、まさに賛否相半ばするということで熱心なる検討にもかかわらず、これならば大丈夫という自信のある案がいまだできなかつたわけであります。もとより事柄はお話のようにきわめて重要な事柄でありますから、軽率にきめるべきことでないわけでありますので、われわれとしては今の態度をそのまま存続いたして、りつぱな結論が出るようになお努力を続けて行きたい。そのためにはとにかくこの特例法というものは今までも若干役に立つておるのでありますし、またこれ自身は御承知のように刑事訴訟法にもあるものであつて、そう不当なものであるとも思われませんから、あとしばらく、二年間の御猶予を願いたいというのが、この案の趣旨でございます。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 その研究の確定的な結論でなくてもよろしいと思いますが、その研究を進められた中で出て来ている代表的な考え方、それもどの程度の人がそれを支持しておるかというようなことを少し聞かしていただきたい。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 これは現行のこの特例法を起案するときからいろいろ議論があつたのですが、一番比較的多くの人が主張したのは、先ほど触れました上告部というものをどこかに置いたらどうか。東京の最高裁判所か高等裁判所に上告部を置いて、そこに一段階を加えたらどうかというのが、やはり依然として一応の主流をなした議論であります。これは前からやはり有力なそれに対する反対論があつたのでありますが、今回われわれがこの二年間にやりました勉強の過程におきましても、学会方面からは有力な反対説があり、一口にいえば、この裁判官の数であるとかあるいはその他の施設とか、それらのわくが、今までのわくのままで上告部を置いたところで、ちようど同じ限られた材料で二階建の建物を三階建にするようなもので、ことに第一審の強化というようなことが叫ばれておる今日、そういうことになると、その方とまた矛盾する結果になりやしないかというような議論、その他またお尋ねに応じて答えますが、そういう有力な反対説ありまして、なかなかこれが最後的にいい案であるというところまでの確信を得ておらないのであります。そういうようなことで今回の措置に出たわけでございます。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 この上告裁判所を別にこしらえるということになりますれば、今の最高裁判所を憲法問題の裁判に限定するというような考え方、これが実現するといたしまするならば、どうしても私は現在の最高裁判所の裁判官というものは、上告事件も扱うということを考慮に入れて、裁判官の経験のある者ということが一つの條件になつておつたと思うのでございます。でありますから、そういうように憲法裁判所とそれから上告裁判所的なものをわけるということになりますならば、現在の最高裁判所の裁判官の人事についても、これは検討しなければならないと私は考えるのでありますが、これについてはどういうように、研究の過程で論議が出ておつたかということを聞きたい。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 先ほども触れましたように、この最高裁判所を純粋の憲法裁判所に限定してしまうということが、憲法の解釈上できるかどうかというところわれわれは疑いを持つておるわけでありますから、ある種の上告事件は、憲法事件以外にもやはり持つてもらわねばならぬだろうということになるので、今お尋ねになりましたような人事の問題等については、そう必然的な関連はなかつたわけであります。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 そういたしますと、今最高裁判所の持つておる民事事件、この民事事件はこの前もこれが出たのでありますが、大体私は一年と記憶しておつたのですが、二年でありましたか、その間に全部解決できる、処理できる、だからこれをつくつてもらえば大丈夫なんだ、こういう言明があつたと私は記憶しております。ところが二年たつてもやはりまた延ばしてくれ、これはこの種の暫定法については、提案者の方では、一年でも二年でもいいからひとつ期限を切つて、それを承認さえ得ておけばあとはまた何とかなるということで出して来るのが非常に多いのであります。案の定そういう調子で、また二年延ばすということで出て来ておりますが、これを期限を切つた二年間に処理できなかつたのはどういうわけですか。これは確かに国会に対して提案者側から説明した説明と食い違つておるのでありますが、このことについて説明を願いたいと思います。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 私の承知しておりますところでは、先ほど私が正直に申し上げましたように、この二年の間にむしろ本格的な解決方法を考えようじやないかということで、出発したような気がしております。また現に私どもはそのつもりでやつておるのであります。ただ今の実績の問題は、この間、梨木委員のお留守のときであつたか、鈴木説明員から詳しくお話がありまして、この二年の間は旧件の事件、すなわちこの特例法の適用になり得ない事件が相当あつたために、それほど実績はあがつておらなかつたかもしれないが、今後の二年間には非常な促進になるというようなことで、非常に楽観的に考えれば、今後二年でもうこの特例法そのものはいらなくなるというようなことも、あるいは想像できるかもしれぬようなお口ぶりであつたのであります。それならばそれで話はきわめて簡単でありますけれども、われわれの態度は、それはそれとして、何か根本的な解決方法があればということで、研究を続けて行きたい、そういうのが現在の態度であります。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 その点について、もう少し鈴木さんの説明を願いたいのです。二年間で未済は全部やれますか。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 事件の数の増減、新受件数——新たに受ける件数の増減ということ、それから既済の件数の増減というようなことも、これは数学的には正確にはもとより申し上げられないわけでございます。しかしこの前の委員会にも申し上げましたように、大体この特例法が二年間延長されるとして、第二年目における新受件数を、従来の新件のふえる数から推定をいたしますと、第二年目における年間の新受件数を大体二千五百件と推定すればいいのではないか。そうしてその二年目の最初における未済事件が大体二千件くらいになるではないか。そうしますと、その特例法が二年延長された場合は、第二年目には約四千五百件の民事事件があるということになり、それは刑事事件の少くなることによつて生れるところの力を民事に振り向け、民事の方の事件で旧件がなくなつて、第二年目においては新件のみになるということの予想をとれば、民事自体のスピードも早くなるし、従つて第二年目には大体月に三百件ぐらいの民事事件を最高裁判所で片づけられるということに想定いたしますと、第二年目の末においては、四千五百件のうち三千六百件を片づけ、従つて約九百件を残す。そしてその九百件は、大体一月の処理件数を三百件とすると、三箇月分になるので、大体常にこの三箇月分くらいの事件を手持ちにしておるということが、最高裁判所の事件処理からいつて理想的な状態だと思われるわけであります。三箇月分の手持ち事件を持つておるということは、結局最高裁判所で新たに受理した事件が、理想的に進行された場合に、三箇月後には審理が終り判決になるという点からいつて、そう申し上げるわけでございます。九百件がつまり通常の状態における手持ち件数だ、そういう意味で、二年の末においては大体平常の状態に民事事件が復するのではないか、こういうように想像して、この前の委員会で、その詳細を申し上げたわけでございます。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 月に三百件と申しますと、これは一日十件、ところが毎日開廷しておるわけではないので、物理的にいつても、私はこれは耐えられないことであろうし、さらに現在の最高裁判所の機能からいつても、これでは裁判ではないと思うのであります。こういうところにこそやはり現在の最高裁判所の機能について十分な検討をしない限りは、責任のある人権の保護という建前を貫徹することが、今の説明からではまつたく不可能に陷つておるということに帰着すると私は思います。なぜならば一日に十件も扱うということは、とてもできるわけではありません。しかも事件によつては非常に厖大なものもありますか——もつとも簡単なものも幾らかあるかもしれませんが、それにいたしましても、これは私はできないことだと思うのでありますが、現在最高裁判所は、民事事件を一日に幾ら処理しておるか、これを聞きたいと思います。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 最近の統計に現われた民事事件の既済件数を一箇月を単位として申し上げますと、昭和二十七年一月には六十四件片づけております。これは御承知のように、一月は若干祝祭日等がありまして、裁判官等がフルに働けないというのが、若干少い理由でございます。二月が百二十一件、三月が百十二件、四月が百十二件、こういうようになつております。それで大体百件と見積りまして、まあさいぜんちよつと申し上げましたが、刑事事件が減少する余力を民事へまわすということと、それから特例法の適用のない事件が大体一箇年すれば片づくだろう、そうすれば特例法の適用のある新件のみになるということ、従つて現在よりも若干スピードが加わるのではないかというような観点から、二年目の年には現在のほぼ三倍くらいは処理能力が出て来るのではないかというように考えたわけですが、これはあるいは若干楽観に過ぎる数かもわからないわけであります。しかし梨木委員から御指摘のあつたように、全部が全部みな裁判官が衆智を集めなければ判決ができないというような難件ばかりでもありませんし、現在の民事の事件——刑事事件についてもでありますけれども、上告のために上告をしておるというような事件もかなりあるように見受けられますから、その全部が通常のようにむずかしい事件とばかりは考えられないのが、現在の状態であるということを申し上げておきます。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 刑事事件が減少するその余力を向けるというお話でありますので、これに関連して私は聞きたいのでありますが、現在の最高裁判所へ受付けになつてから一年、二年を経ていまだ判決のないものが——私の知つておるものについても、たとえば政令二百一号の事件はまだ判決はないと思うのでありますが、こういう状態である。そこで刑事事件につきまして、受理されてから一年以上たつてまだ判決されないものはどれくらいあるか、二年たつて判決にならないものはどういうことになつておるか、これを伺いたいのであります。

鈴木忠一判事(最高裁判所事務総局人事局長兼民事局長事務代理)

○鈴木最高裁判所説明員 ただいまの御質問に対しては、資料を持つておりませんが、私の承知しておるところを申し上げますと、大体今二十三年、二十四年の事件というようなものは片づいていると思います。大体二十五年以後の事件だろうと思います。

梨木作次郎日本共産党

○梨木委員 この資料をひとつぜひ出していただきたいと思うのであります。これにつきまして、もちろん被告人の立場からいえば裁判が延びることを希望するものもあるかもしれません。しかしまた、その事件のためにいろいろ社会的な活動を非常に阻害されている多くの人があると思うのであります。特に政令二百一号の事件につきましては、これは最高裁判所は卑怯にも非常に延ばしておる。このだめに下級裁判所がこの事件を扱えないというのではなくて、どうせ最高裁判所が判決すればそれに従わなければならぬ。急いでもしかたがないという気分が率直に言つてあると思うのです。従いまして、特に憲法に関連しての重要な裁判事件についてはもちろん愼重を要します。しかしまた一方、迅速に最高裁判所が態度を明らかにすることが国民の権利を保護する上から非常に必要なことであると思いまして、私はそういう観点から最高裁判所の扱い方についての検討の資料にこれをぜひ出していただきたいと思います。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 他に御質問はございませんか。——それでは本日はこの程度にとどめ、明二十日午後一時より会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十三分散会

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