法務委員会 第52号
- 発言数
- 17 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1952/05/17
会議録
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。 本日の日程に入る前に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。すなわち理事でありました田万廣文君は、去る四月二十二日一旦委員を辞任せられておりますので、理事が一名欠員となつておるのであります。従いまして理事の補欠選任を行わなければなりませんが、先例に従つて委員長において御指名するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐瀬委員長 御異議なしと認めます。理事には従前通り田万廣文君を御指名いたします。 —————————————
○佐瀬委員長 次に本日の日程に関しまして、最高裁判所長官の指定する代理者より説明したいとの要求がありました場合には、国会法第七十二条第二項の規定によりまして、これを承認するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐瀬委員長 御異議なしと認め、さようにとりはからうことにいたします。 それでは本日の日程に入ります。最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。山口好一君。
○山口(好)委員 ただいま上程されました法案につきまして一、二お伺いをいたしたいと思います。この法律を昭和二十五年の六月一日施行いたしたのでありますが、その施行後民事訴訟の審判状況はいかがであるか。その状況、すなわち受理した事件数、処理の済みました事件数、及び未済事件などにつきまして、数学的に御説明を願いたいと思います。
○鈴木最高裁判所説明員 ただいまの御質問に対して大略御説明申し上げます。最高裁判所におきましては、民事上告事件の処理は、上告特例法施行後かなり促進されております。その年間の既済件数は次の通り逐次増加しております。すなわち昭和二十四年には既済件数が百五十五件、二十五年には二百十八件、二十六年には四百六十件になつております。ただいま申し上げたのは既済の件数でございますが、未済の件数はどうなつておるかと申しますと、昭和二十四年に三百二十四件、二十五年には五百五十八件、昭和二十六年には千四十六件、現在においては千百十四件、こうなつております。それから右の年間における新受件数、すなわち新たに受付けた事件数を申し上げますと、昭和二十四年には三百六十件、二十五年には四百五十二件、二十六年には九百四十八件、こういうように既済の件数もふえておりますけれども、未済の件数、新受件数もそれぞれふえておる傾向をたどつております。二十五年の六月からこの特例法が施行されたのでありますが、その施行後の状況を申し上げますと、施行された当時、最高裁判所には民事約四百五十件の未済件数がございました。しかしながらこれらの四百五十件と、その後数箇月間に新たに受理した事件は、いずれも上告特例法の対象にならない、同法を適用し得ないものであります。従つて過去の二年間においては、最高裁判所はいわばその精力のほとんど半ばは上告特例法を適用し得ない旧事件に費さなければならなかつたわけでございます。すなわち昭和二十五年六月以降から同年の末までの間に、最高裁判所が判決を言い渡した事件のうち、上告特例法を適用し得る事件はわずかに四件にすぎなかつたわけでございます。その四件のうち、実際に上告特例法を適用したのが一件であつたわけです。それからその後、昭和二十六年度において、最高裁判所が民事について判決をした事件のうち、二百二十九件は新件でございます。新件と申しますのは、上告特例法が適用になり得る事件、それから残りの百七十二件は旧件であつたわけです。それも二百二十九件全部について上告特例法を適用したのではないわけでございます。それで最近は民事の未済件数のうち、上告特例法の対象にならない旧事件はかなり減少しております。その数は四月末において二百三件になつております。この二百三件を全部処理するのには、どのくらいの日数がかかるかと申しますと、今までの実績から申し上げますと、大体一年の間にはこの二百三件というものが解決済みになるだろうと思われます。そうしますと、今後約一年を過ぎれば、最高裁判所の民事上告事件は新件、すなわちこの上告特例法の対象になり得る事件のみとなつて、従つて事件のはけぐあいはただいまよりはずつと能率的になるだろう、こう思われるわけでございます。 一方刑事の方はどうかと申しますと、刑事事件の処理については、本年の二月以降毎月八百件を越える事件が片づけられております。既済となつております。そのために未済件数は、この調子で行けば今年の二月以降は月々二百件ずつ減少して行く計算になります。それで刑事未済事件のうち、約五千九百件が上告事件でございますが、そのうち約二百件が旧刑事訴訟法の事件でございます。御承知の通り、旧刑事訴訟法の事件の方が新刑事訴訟法の事件より審理に手間がかかるわけでございますから、その二百件の旧事件はどのくらいの日数で片づくかと申しますと、今後約三箇月あれば大体片づくのではないかと予想されます。そうすると四箇月後には新刑事訴訟法に基く事件のみとなつて、従つて刑事の方の審理もやはりその速度が増すのではないか、その点を考慮に入れますと、今後一箇年間には刑事未済件数というものが相当減る。そうすれば、少くとも第二年目以降においては、それまで刑事事件の処理について費した精力を民事の方に相当量振り向けることができるのではないかと予想せられるわけでございます。 以上申し上げましたところによつて考えますと、民事事件の処理については、たといこの法律が案の通り二年延長せられたといたしましても、第一年目においては大体現状を維持して行くほかはない。従つて新受件数の一層の増加を見越せば、未済件数はさらに約八百件増加するものと予想されるわけでございます。そうしますと、この法律が延長されてから約一年たつたそのときにおいては、民事の未済件数はどのくらいあるかというと、約二千件あるだろうということが予想されるわけでございます。しかし第二年目においては、さいぜん申し上げましたように民事の旧件がなくなります。それから刑事の方では、刑事の方に費していた余力を民事の方に振り向けることができます。従つて数学的に的確なことは申し上げられませんけれども、大体現在よりも三倍くらいの能力をあげ得るのではないか、そうしますと月に三百件くらいは民事を片づけることができようか、こういうように予想されます。しかし第二年目におきましても新受件数があるわけでありますから、新受件数と従来の新受件数の増加率を頭に入れて考えますと、第二年目における年間の新受件数が二千五百件くらいと推定されます。あるいはこれは若干多いかもわかりませんが……。そうしますと、ただいま申し上げました未済件数の二千件と新たに第二年目に受ける新受件数の二千五百件、これを加えますと四千五百件という数になります。四千五百件に対して毎月三百件ずつ処理して行くというように考えますと、年間の既済件数が三千六百件でございますから、第二年目の終りには未済件数はほぼ九百件になるだろうと予想されます。この九百件というのは結局その率で申しますと、三箇月分の処理件数に当るわけでございます。この九百件くらいは最高裁判所において常に未済件数として残つておる数ではないかと予想されるわけでございます。と申しますのは、最高裁判所に事件が出ましてから判決になるまで、それが理想的に行われるならば、大体三箇月くらいの期間が置かれるわけでありますから、三箇月に相当する処理件数というものは常にストツクになつておる、こういうような考え方でございます。そうすると、この特例法が施行されて二年延長されて、その末に経過したときにおける最高裁判所の手持件数は大体九百件くらいになるのじやないか、こういうように想像いたしておるわけであります。従いまして事務局の方の見通しといたしましては、少くとも期間が大体二箇年あれば通常の状態にもどり得るのではないか、従つてこの延長の二箇年というのは最小限度ぜひとも必要ではないか、こういうように考えておるわけであります。 ただいま申し上げました数字は、これはもちろん算術的に非常に正確なものではありません。御承知のように事件のはけぐあい、事件の増加ぐあい、減少ぐあいというようないろいろな要素が加わつて、いろいろな数字になるものですから、数字的に正確には申し上げられません。あるいは見方によつては若干楽観的な見方かも存じませんが、大体この特例法の施行後、それから現在に至るまで、さらにこの法案がかりに通過いたしたとして、その経過がどうなるかということを概略申し上げますと、ただいまのようなぐあいになるかと思われます。
○山口(好)委員 ただいまの御説明で、本法律案をもう二年間延長すれば、大体最高裁判所におきましての全部の民事訴訟事件は二年後におきましては常態に復するであろう、こういう見通しがよくわかりました。その点を十分伺いたいと思いましたが、詳細なる説明がありましたので、これで私の質疑は終りたいと思います。
○佐瀬委員長 説明員にお伺いしておきたいのでありますが、一般に訴訟が日本においては非常に遅延しておる。裁判が遅れておるというような批評も一部にあるようでありますが、そのおもなる理由と、またこれに対して平素最高裁判所その他において、いかなる訴訟促進の対策をお持ちになり、またこれを実施しておられるかの点について、簡単に御説明を願いたいのであります。
○鈴木最高裁判所説明員 一般に、わが国におきまして訴訟が遅延しておる、訴訟が長引いて困るという声は確かにございます。私どもも訴訟の長過ぎるということはこれを認めざるを得ない状態であると存じます。しかし訴訟が長引いて困るというのはひとり日本だけの現象ではございませんので、世界各国の共通の現象で、裁判所なり立法者なりは、どうして訴訟を早く片づけるか、促進をするかということについて常に問題にし、そして立法の対象にもなつておるわけでございます。ですから訴訟の長引くことは、われわれ裁判所に関係のある者として、決して誇りとしているわけではありませんけれども、日本だけの現象でないということも考えていただきたいわけでございます。 なぜ訴訟が長引くかと申しますと、事柄の性質としてやはり長引かざるを得ない要素を相当訴訟というものは持つていること、これはあらためて申し上げるまでもございませんが、たとえば刑事でありますれば、人の生命財産にきわめて関係の深いことでございますから、起訴がありましても、被告人が争えば、その争いに沿つてできるだけ愼重な審理をして、裁判の間違いを起さないようにということをはかるのが自然の勢いでございます。また民事におきましても、判決を間違えば、権利のない者がありとされ、ある者がないとされるというようにこれも金銭その他の財産について非常に密接な関係を持つておりますから、勢い裁判官は十分な確信を持つて裁判をし得なければならない。そのためには裁判官というものは、訴訟手続において、裁判所の面前において行われた証拠調べによつて、その事実の真偽を知る以外に方法がないわけでありますから、裁判官の良心、訴訟手続の構造からして遅れるということが非常に大きな原因になつております。普通の事務を片づけるように、右から左においそれといつて片づけられては、片づけられる方が非常に迷惑をするわけでございます。ですから訴訟の本質からいつて、遅れやすいものであるということを私は言えると思います。 それと同時に、日本においてはなぜ遅れるかといいますと、これはいろいろな理由がございますが、第一に、最高裁判所のような上告審になりますと、現在特例というようなものが設けられておりまして、いわば一種の上告の制限を実質上においてされておりますけれども、それ以外には上告の制限というものは少しもない。三審の制度をとつておれば、勢い当事者としては最後の段階まで争うという状態になります。裁判所の実際を見ると、そう争わなくてもいいものを争うという面は、確かに国民の感情といいますか、性格といいますか、その面が若干強いのではないか。裁判を信頼をして結末をつけるということをしないで、争う方法があればとことんまでやつてみるという習慣といいますか、感情といいますか、その点が強いために、やはり訴訟が多くなつておるのではないかということが考えられます。それに対応しまして、事件が多過ぎるから、裁判官の数がそれに比例し得ないほど少いということも、私は一つの訴訟の遅延の原因ではないかと思います。しかしそれならば裁判官をたくさん増加すればいいではないかと考えられるでしようけれども、裁判官の数をふやすということは言いやすくしてなかなか行い得ないところです。現在、大学を出て司法試験を通過して、その後二年の修習を終えた者が裁判官になれるわけですけれども、そういう裁判官は必ずしもまだ経験がゆたかでないわけでありますから、経験のゆたかな裁判官を多数にそろえるというためには、結局は在野におりますところの弁護士界からその人材を求めなければならないわけでございますが、それならば弁護士の方面からたくさん優秀な裁判官を迎え得るかというと、これはやはり俸給の関係で、優秀な弁護士が安い俸給の裁判官として裁判所に入つて来るということは、言うべくしてなかなか行われにくいところであります。現在裁判官の俸給は一般の行政職員よりも厚遇されておりますけれども、それでもなお在野の弁護士の收入に比べれば微々たるものではないかと想像されるわけでございます。ですから訴訟の遅延ということは、いろいろ原因がございますけれども、本来訴訟の手続というものはそう手取り早く行かないものだということと、国民が訴訟の形態というものにあまりたより過ぎて、いわばよけいな訴訟を多くしておるという面が若干あるのではないか。従つてそれに対して裁判官の数がまかないきれない。しかし裁判官の数は急に増加することができないという面があると思います。 それからもう一つは、日本のみではないと思いますけれども、戦争というものは多くの場合は犯罪を増加させるものです。戦争中はむしろ増加しないわけですけれども、戦争がやむと、ことに敗戦国においては犯罪の数が増加しておる。日本においても犯罪数が戦後非常に増加しております。その増加がやはり各審級を通じて最高裁判所に集まつて来る。ですからもうしばらくすれば、おそらく刑事事件が減少して、むしろ民事がふえるのではないかと思います。従つて犯罪の減少、つまり敗戦に基く事件の増加ということも、現在訴訟の遅延ということに相当影響しているかと思います。 最高裁判所としては、訴訟の遅延ということは決して喜ぶべき現象ではございません。従つて第一線に優秀な裁判官を配置して、できるだけ上訴を少くし得るようないい裁判をさせる。それから現在刑事の方において行われておりました旧刑事訴訟法の事件は、できるだけ早く処理して、全力を新しい事件に振り向けるようにということで、昨年の六月から旧刑事訴訟法の事件を全力をあげて処理をすることを実行したのでありまして、これはほぼその成果を得たわけでございますが、人員の配置ということと、事件をできるだけ早く処理をするということに、全力をそそいで現在やつております。
○世耕委員 二点ばかり簡単にお伺いいたします。前回の議会であつたと思いますが、やはり裁判の遅延を促進する方法ということが本委員会で問題になつております。その節に私はなぜ録音機を使わないかということを注意しておいたはすでありますが、最近録音機並びに速記をどの程度まで利用しておるか、あるいはまた将来どこまで普及する考えか、この点を伺つておきます。
○鈴木最高裁判所説明員 原則といたしまして録音機は、特殊な事件、と申しますのは、いろいろ治安の上から見て大きな事件、従つてその審理の際に騒動が起りやすいという事件については録音をしております。しかし通常の事件については録音ということはやつておりません。ただ最高裁判所の方針といたしましては将来速記をつけて、つまり書記官をできるだけ速記官にかえて、そうしてその速記によつて正確な口頭弁論の詳述を録取しようということで、目下書記官研修所においてその速記の方をやつております。多分今年の三月末に約二十名近くの者が卒業をいたしました。これを助手にしてあるいは全国にまいて速記を普及させると同時に、できるだけ多人数を募集して速記を修得させるようにやつております。その一方刑事訴訟の記録をできるだけ簡易化して訴訟の進行に資するという方針をとつております。
○世耕委員 裁判の促進並びに簡潔に処理するということが常に問題になつていると思うのであります。そういう意味から文明の利器である録音、速記ということは当然なことだ。一年前に私どもの方はこの委員会で発言して要求しておいたのでありますが、今の御説明だとなかなかのんびりしている。御承知の通り今日の時代は、昔の百年今の十年、あるいは昔の百年現在では二年くらいの割合に世界が急変しているのです。その機会にどうも最高裁判所は依然として旧式然たる考えが深いのであります。これはすみやかに予算をとつて、こういう方面から事件の処理をすみやかにするということは考えておくべきだと思いますから重ねてお願いします。 なお同時にガソリンも自由に使えるようになりましたから、裁判並びにその関係者はもう少し自動車の活用が私は必要だと思う。郊外に住む人がてくてく電車に乗つて足を踏まれながら中央へ出て来る。出て来る時分にはもうふらふらになつている。こういうような点が事務の能率を非常にそぐのではないか。あるいは判決の上にも明朗性を欠きはせぬかということは、心理的現象から実は観測できるのであります。こういうところになお私は裁判促進の開拓の余地が十分残されているのではないかと考えるのでありますが、この点は特に考慮を拂つていただきたい。人員をふやすこと必ずしも私は反対いたしませんが、できたら文明の利器を活用して能率を上げるということが現代人の考えるべき事柄じやないか、かように考えるのであります。 それからもう一つは、裁判官に人が得られないということを言つておられますが、女子の裁判官を選ぶということはどういう傾向になつておりますか。弁護士には女子が大分進出いたしているようでありますが、将来私は女性に対する犯罪の審判等に対してやつぱり女子の裁判官ということを考えてやらなくちやならぬ問題だろうと思うのですが、こういう点について最高裁はどういうお考えを持つておられるか。 それから説明を省略する意味においてもう一つ申し上げたいのは、この間も出ておりました警備という問題であります。公判場の警備であります。往往にして公判廷で騒擾をするがために妨害されて審理が進行しない場合が多い。そうするとどうしても警備という問題がよほど合理的にされて行かなくちやならぬのではないか。今後裁判の進行を阻害するいろいろな新たな作戦が私は現われて来るものだと思う。さような場合の対策も裁判審理進行の上に重大な関係がある、私はかように思うのでありますが、最近の新聞を見ると、広島でありましたか、犯人を強奪して行つたという報道すらしている。よほど手薄であつたというか、あるいはその事件の内容に対して、どういう結果を生み出すかということについての観測力がはなはだ鈍かつたのではないかと私は考える。この点もあわせて私はお答えを願いたい。
○鈴木最高裁判所説明員 裁判の能率を上げるにつきましていろいろ機械化をせよという御意見、それから裁判官にも裁判所に出頭をする前に疲れるようなことのないように自動車等を與えろというような御意見、これは一々ごもつともでございまして、行き届いた御意見でその通りであろうと思います。ただ何と申しましても予算がすぐに伴うものでありますから、裁判所は御承知の通りな予算でございますので、なかなかそういうことは早急に実現できないことでありますけれども、考え方としてはできるだけ実行しなくてはならないことは今おつしやつた通りであると思います。 それから女子の裁判官を増せということでございますが、これは別に現在においても女性と男性の裁判官はちつとも区別しておらないのであります。女性の裁判官として採用のできる者はできるだけ採用しているのであります。現在全国で五名の女子の裁判官がございます。今年は一名採用されました。そして成績も相当いいのです。これは別に差別待遇はしておりませんけれども、御承知のように資格がいるものですから、その資格をとつて試験をパスした者は、従来は原則として採用しております。今年は女子の中で裁判官を志望して二名ばかり採用ができなかつたのでありますけれども、これは率直に申し上げますれば、志望者の中の順位で採用しておりますからそういう結果になつたわけでございます。 それから法廷における警備についての御質問でございますが、御承知のように審理が開始されている場合には、その法廷の中における秩序、それからそれに密接した周囲の警備、たとえばここで例をとりますればその廊下くらいまでに及ぶそれに密接したところ、法廷内と法廷に接続して法廷の審理を妨げ得るような距離にある場合の秩序維持、これは当該の裁判官または裁判長が法廷指揮権によつて指揮するわけでございます。それからそれ以外の周囲の建物の警備とかまわりにおいての警備というのは、その建物の本来の管理者であるところの裁判所長であるとか、あるいは高等裁判所の長官であるとか、その長に管理者として警備の責任があるわけでございます。そこでただいまの御質問によれば、広島における法廷で被疑者が暴民のために奪回されてしまつたというようなことは新聞で承知しておりますが、すぐ最高裁判所の刑事局から事実の取調べのために参つたのでございます。まだ詳細のことは判明いたしません。しかし大体聞いてみますと、広島の裁判所というのは焼けたあとのほとんどバラツク式の建物であつて、きわめて脆弱なものらしいのです。それから構内の柵というようなものも土べいか何かがあるらしくて、それはもうかつてに乗り越え得る程度のものらしいのです。それから敷地が非常に広汎で一万坪くらいの敷地らしいのです。それの中に燒けた跡にぽつつと建つているので、そういう点から言つて警備の点があるいは不注意ではなかつたか。それから新聞で見ますと、傍聴人の数が非常に多過ぎると思いますけれども、それがはたして傍聴券を発行して入つたのか、それとも無制限に入つたのか、あるいは制限をしたのにその制限を突破して入つて来たのか、そういう点が若干まだ不明でございますが、調査をしに参つた者が帰つて来れば、そのあたりの実情がはつきりするのではないか、こう考えております。
○世耕委員 結局、広島の問題について詳細な御報告がないそうだから、重ねてお尋ねすることは差控えますが、御説明のような場所であれば、しかも事件が事件であるから、大よそそういう事件が発生することを予知しなくちやならないと私は思う。その間において手落ちがあると思われるのであります。これは今後御注意を願うことにいたしまして、小さい問題でありますが、裁判所で、書記が日本紙に筆で書くというようなやり方、これはまことに古風なやり方であつて、現代的でないと私は思う。いつか、アメリカでありましたか、英国でありましたか、有名な事業家が、保険会社の書記の仕事を能率的にするために、ずつと見まわつているときに、一々ペンでインクをつけて書く状況を見て、これでは能率が全国的に上らぬというので、万年筆を買うて皆に與えたというふうに、事務というものは非常に能率を大切にしなければならないと思う。こういう意味において、ただ書類保存の意味かあるいはどういうわけであの墨をすつて筆で書くような旧式な形式をなお依然としてとつておられるのか、こういうささいな点であるが、やはり能率の点に大きな関係があると思うのでありますが、この点はいかがでしようか。私はむしろこれをペンにかえるあるいはボールペンにかえてやられれば、よほど能率がまだ上るのではないかと思うのですが、御見解いかがでしようか。
○鈴木最高裁判所説明員 裁判所では、御承知の通り確かに、純然たる日本紙ではございませんけれども、日本紙まがいのものを現在でも使つておつて、いれゆる普通ペン書きをする西洋紙は用紙として使つておらないわけであります、しかし現在筆を使つておるという書記官は、むしろ年とつた方の古参の書記官の方で、多くはペンあるいは今おつしやいましたボールペン等を使つておるのであります。なぜ裁判所がそういう西洋紙を使わないで日本紙まがいのものを使つておるかというと、これは確かにはつきりした理由があるわけでなく、従来のしきたり上、それから大体持運びがきわめて軽いというような点もあり、それから一つには、やはり筆を使うということが行われておるからだと思うのです。それで最高裁判所の事務局の方でも、今おつしやつたような線に沿つて、できるだけ事務を簡素化するとともに、能率を上げなければならない、筆というようなものを使わずにペン書でいい、縦書きでなくても、もう横書きにしたらいいのではないかということまで議論になつておりますので、おそらく将来は、筆というようなものがなくなる——なくなるのではなくて、実際上使えといつてももう使えなくなる時代が遠からず来るのではないかと思つておりますが、そういう意味で西洋紙にかえ、ぺンで書くということがおそらく遠くないうちに行われるんじやないか、こう考えております。
○世耕委員 なお、最後に一点つけ加えて申し上げます。日本紙に筆で書くということは旧式だからおやめにしていただきたいというお願いと、もう一つは、ペン書きにするということも理想であるが、私はむしろタイプライターにしてほしい。三通ぐらいすぐ打つてる。だから私の申し上げる機械化を要求するのはそこなんです。タイプにすれば、これは最小限度五枚はとれるはずだ。こういう点をお考えくださつたならば、あまり人をふやさなくても、機械をふやしさえすれば、人をふやした以上の能率が上るのではないか、かように考えておりますから、予算を上手にお使いくださるようにお願いしておきます。
○佐瀬委員長 他に御質疑はありませんか——なければ本日はこの程度にとどめ、次会は明後十九日午後一時より会議を開きます。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時四十五分散会