法務委員会 第33号
- 発言数
- 13 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1952/04/15
会議録
○佐瀬委員 これより会議を開きます。 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う民事特別法案を議題といたします。本案を討論に付します。討論の通告がありますので、これを許します。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 私は自由党を代表しまして、原案に賛成の意を表するものであります。 本法の根本は、国家賠償法と同様のことを、駐留軍において行われたる際もやろう、かような規定でありますから、国民の側から見まするならば、当然のことであります。ただ日本国の公務員が個人に害を與えたときと違いまして、外国の駐留軍が損害を與えたる事項に対して、日本国が責任を負うというところに相当議論はあるのでありますが、安全保障条約を締結して、それに基いてかような規定ができましたる以上、また今日日本の国の立場上から考えましても、この条約に従う以外にないのでありますから、これに対していまさら議論をしてみてもしようのないものと考えるわけであります。それゆえにわれわれは、その根本趣旨においてこれに賛成せざるを得ないわけでございまして、あまり議論をせないで、これはのむべきものと、かように感じております。
○佐瀬委員長 大西正男君。
○大西(正)委員 私は改進党を代表いたしまして、本法律案に反対の意を表明するものでございます。 本法律案は独立後の日本並びに日本国民の権威とそうして権利を守るについて不十分な法案といわなければなりません。そもそもこの法律の基本となりますいわゆる行政協定なるものは、先般衆議院におきまして、その審議をすべしとの決議案を野党が提出いたしまして、これは自由党の多数のために否決されたのであります。なるほど行政協定に関する審議を求むる決議案は、否決をされましたけれども、行政協定そのものに対して国会の承認は経ておりません。従いまして政府並びに與党の主張のごとく、行政協定が有効だという議論に対しましては、きわめてまた強力な疑問と反対論があるのでありまして、われわれは行政協定の効力については、これを国会において審議する。その審議を求める決議案が否決されたとされないにかかわらず、この行政協定はわれわれの立場から申しますると、いまだ効力を発生しておらないものであると言わざるを得ないのであります。この行政協定はなるほど国会の承認を経ました安保条約に関連をする協定でありまするけれども、いわゆる安保条約が承認されたからといつて、その第三条に関連をするこの行政協定の有効、無効ということは、別個の問題として考えなければならぬ問題であると思うのであります。何となれば安保条約第三条は、合衆国兵力の配備を規律する条件は、両国政府間の行政協定によつて定めるというきわめて漠然たる規定にすぎないのでありまして、これに国会が承認を與えたからといつてかくのごとき漠然たる規定によつて、わが国が今日現に現われておる行政協定の内容をなしておるような、重大なる国の主権を制限し、あるいは国民の権利、義務に重大なる影響を與えるような、この行政協定に基いていわゆるアメリカに対して利益を與えるということがはたして有効であるかどうか、われわれは決してこの行政協定をするということについて、政府に対してフリー・ハンドを與えたものではないと思うのであります。かような意味合いから申しますと、かくのごとく国の主権を制限し、また国民の権利義務に対して重大な影響を與えておる行政協定そのものが、国会の承認を経ない間は有効に成立しておるものとは決して考え得られないのであります。従いましでこの行政協定というものは、その行政協定を締結いたしました吉田政府という限定された政府の責任はいざ知りませんが、永久に続くところの日本国並びに日本国民が、この行政協定に従わなければならないかどうかということは、これは大いなる疑問と重大なる問題を含んでおるものと考えるのであります。かような重大な問題を含んでおればこそ、われわれはただ單に政府の協定に依存せしめるだけではなくて、日本国民の認容と了解の上に依存せしめなければ、今後の日本独立後におきますところの両国間のほんとうの協調を期することはできないと思うのであります。かような意味合いから申しまして、この法律の基本となつておる行政協定は、効力を発生しておらない、かようにわれわれは考えるがゆえに、この行政協定を基礎としておるところのこの法律もまた、こんな法律をつくつてもむだであるということが、まず根本的に言われ得る問題であると思うのであります。 第二に、この法律それ自体を検討いたしますると、いろいろ重大な点においてわれわれは不明確な点、また不備な点が多々存在すると思うのであります。第一点は、この法律によりますと、第一条に、「安全保障条約に基き日本国内にあるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍の構成員」、こういうふうになつておるのでありますが、安全保障条約並びに行政協定の前文によりますと、「日本国内及びその附近における配備を規律する」ということになつております。そういたしますと、この法律は日本国内に安保条約に基いて駐留する軍隊については適用があるということは明確でありますが、安保条約に基いて日本国内ではなくして、その附近に駐留するところの軍隊が日本の領域内に入つて参りまして、その軍隊の構成員が、この第一条に規定されておるような他の要件を備えて国民に損害を與えた場合に、その損害の賠償ということがこの法律によつて規定されるかどうかということはきわめて不明瞭であり不明確である。むしろこの法律の正面からいたしまするならば、さような場合は適用されないというふうに解釈せざるを得ないがごとき観を呈するのでありまして、私はこの点におきましても、きわめて不明確であつて、国民の権利義務を擁護する点において、きわめて欠ける点があると存ずるのであります。 また第三には、もし日本の国内におるところの日米両国間の当事国民ではなくして、他の第三国人に対しまして、アメリカのこの陸海空軍の構成員が損害を與えました際に、その第三国人に対しましても日本の国が賠償の義務を負うということに相なると思うのであります。この法案によりますると、アメリカ合衆国の駐留軍隊の構成員が違法に他人に損害を加えた場合、日本以外の国の軍隊の構成員が違法に他人に損害を加えた場合においてすら、日本の政府がその他の外国人に対して責任を負わなければならないという規定に相なつておるのでありまして、これらの点におきましても、われわれとしては解しがたい点があるといわなければなりません。また日本の国がこの法律によりまして日本国民並びにいわゆる第三国人に対して賠償の責任を負つた場合に、その賠償いたしました賠償金につきまして、アメリカとの間にいかなる分担を行うのか、この点につきましては行政協定において何ら定められておりません。いかなる割合においてその分担をせねばならないかということがきめられないうちに、かような法案を審議するということ自体が、われわれにとつてはまことに遺憾にたえないところであります。まずそれをきめてもらいたいのであります。 さらにこの法案によりまして、われわれ野党といたしましては、無過失責任、無過失の場合におきましても、国民に対してその損害を賠償してやるという規定がほしかつた。ほしかつたけれども、この法案においてはそれが認められておりません。そういう点も違憾な点であるといわなければならないのであります。またもう一点申しますならば、今後日本に安保条約によつて駐留いたしますアメリカ軍が、国連軍の軍隊としての使命を二重に負つて行動すする場合においては、本法律案によつては全然適用なしという政府のお答えであります。この点についてはきわめてわれわれは疑問があると思うのでありまするが、もしそういう場合に適用なしとすれば、その行動によつて起された損害に対しましては、日本国民はきわめて不利益な立場に立たざるを得ないのであります。そういう場合において、日本の国民がどのように権利を擁護されるものであるか、また国連軍としての性格を持つたがゆえに、アメリカ軍としての性格を喪失するものであるかどうか、そういう点が明確にされておらないかような法案に対しても、われわれは反対の意思を表明ざるを得ないのであります。 以上列挙いたしました諸理由によりまして、わが党はこの法案に対して反対の意思を表明する次第でございます。(拍手)
○佐瀬委員長 田万廣文君。
○田万委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま論議せられておりまする法案に対して断然反対の意思を表明するものでございます。大体その要旨につきましては、ただいま改進党を代表されて反対討論に立たれました大西君の発言の中に、その言わんとするところは盡きておるように考えるのでありますが、私どもは御承知の通り、安全保障条約に対しても、実質的に安全保障条約という名前のごとき内容が盛られておらないきわめて不安定な内容を多分に持つた条約であるということに対して、徹底的に反対いたしており、かつまた行政協定に対してもその実質的な面から見て必ずしも満足すべきものではないというので反対の態度をとつて今日に至つておるのであります。従いまして一貫しに態度からいつて当然本法案に対しては反対の態度を表明せざるを得ないのみならず、第一条によりましても、私どものきわめて納得の行かない点は、「アメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍の構成員又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、」という文言がございます。違法に損害を加えたという場合であるならば、向うさんで当然責任を持つて損害賠償——向う側で負担してもらうべきが当然でなければならない。無過失責任の場合はともかくとして、違法な行為によつてアメリカ軍の構成員あるいは被用者が日本人に対して與えた、日本国に対して與えた損害というものは当然向うが負担すべきものだ、違法においてなされたというその場合にあつてすらも、日本においてその損害を賠償——国が負担しなければならないという理由はどこにあるのか。私はこの一点からだけでも実質的な内容からいつて反対をするというのが、日本人的な感情に合うと思う。これを唯々諾々として賛成討論に立つという自由党の諸君の、私はその日本人的感覚の有無を疑わざるを得ない。このような意味におきまして、私どもはこの法案に対して徹底的に反対の意思を表明する次第であります。
○佐瀬委員長 田中堯平君。
○田中(堯)委員 私は日本共産党を代表しまして、この法案に反対の意思を表明いたします。 第一に、この法案はアメリカの軍隊が日本国民に損害を與えた場合に、日本政府がこれを負担するなんということは、これはまつたくいわゆる売国的なる態度が露骨に現われておると言わざるを得ない。とうていこういうことはわれわれは承服することはできないのであります。 第二の点は、ここにこのように損害については国が補償するという規定にはなつておりまするが、しかしつぶさに検討いたしますると、結局これは結論として賠償の場合はほとんどないということになるのであります。いわば空文に帰することになる。 そこでずつとしさいに検討して参りたいのでありまするが、第一にこれは駐留軍が損害を加えたときの規定であつて、国連軍というものが損害を加えたような場合は、これは全然除外されておるのであります。しかも駐留軍なりや国連軍なりやは、朝鮮事変以来の実績に徴してもはつきりしない。だから政府の答弁によればその軍行動の目的によつて駐留軍なりや国連軍なりやが判別できるということであるけれども、それはまつたくただ文字の上の判断であつて、実際にはそのなす行動は、この行政協定や安保条約等の精神に徴するならば、いずれが国連軍の目的であり、いずれが駐留軍の目的であるかは必ずしもはつきりしない。従つて場合によつては駐留軍なりという看板で出て来る、場合によつては国連軍なりという看板で出て来る、その資格の選択は彼らの自由ということになるのであります。これはわれわれは今まで苦い経験を持つておるのでありまするが、今駐留軍ではないところの占領軍のことを誹謗すれば占領目的阻害罪として処罰を受ける。ところがわれわれが苦い経験というのは、占領軍ではなしに国連軍の批判をしたことだけでやはり占領軍の誹謗ということにすりかえて、占領目的阻害罪に問われているような次第で、だから都合のいいときには国連軍、また都合の悪いときには駐留軍とかつてに名前を選択することができるのであつて、結局は一番大きな被害が予想される国連軍の行動については、一切合財損害の無賠償ということになつておりますので、もう第一にここに本法案は実効の大半を現わし得ないということが言い得るのであります。 第二点は、たとい駐留軍の場合でありましても、その駐留軍が演習等の軍行動をやる場合には、本法案には全然関係がない演習場によつて莫大の被害を日本国民に加えるでありましようが、そういうものについては一向おかまいなしということになつているのであります。(「ノーノー」)ノーノーじやない、知りもせぬこと黙つておれ。今日までの実績に徴しましても、たとえば近海で演習をやる。もうすでに十四地区が演習場に指定されておつて、新たに十一箇所というものが指定されつつあるのでありますが、これらによる漁業場の損害というものも、過去五箇年にざつと十八億というふうに見積られているが、こういうふうな損害については将来もますます損害が大きくなるに違いない。これは従来はわずかのものを涙金として終戰処理費の一部から出しておつた模様でありますが、今後はおそらく涙金も何も出さないでもいいという結果になるでありましよう。この法案が通過いたしますならば、もう涙金などということも法律上は出さないでもよろしい、義務は何もないということになつて来るわけであります。單に漁場だけではございません。広い演習場があつちにもこつちにもある。それらによつてこうむる被害は実に甚大であろうと想像されるが、しかしそういうものについては何らの賠償がないということに本法案ではなるわけであります。 三番目には、この土地や建物というものについては、これが一体駐留軍の設営上必要となつて收用する場合はどうするかということを政府に尋ねたところが、政府はこれについては原則としては民事上の政府と民間人との契約によつて、まず政府がこれを引取つて駐留軍に提供するということである。ところか実際はそのような折合いはなかなかつかない。どうするかと聞いたところが、そのために強制收用法を今提案しているということであります。強制收用法を提案いたしておりまするならば、多くはみな土地や建物等の收用はこの強制收用の手続によることになるでありましよう。そうなつた場合にはもちろん損害、不服というものは一般的には満足せしめることはできないという結果になるのでありますが、土地や建物はそれでも一応原則として民事上の契約によるということならまあそれでいいとしても、それ以外の物資あるいは労務というものの調達はどうするか。これは行政協定十二条や七条によつて駐留軍が直接に調達に当ることになつておりますので、何とも施すすべがない。もちろん形式上は実際軍と民間との自由契約という形ではありまするけれども、彼我の力関係からしてもうすでに現われている。たとえばPD工場の経営についてごらんになればすぐわかる。そこでは資本家も困らされている。たとえば池貝自動車等の例によりますると、ひどくコストを引下げられて、最初の契約のコストさえも、でき上つたときにはうんと引下げて、純生産費に利潤としてはわずかに八%プラスして認めるだけであつて、日本の慣習上いろいろと必要とする、たとえば交際費とかいうようなものは一切認めないということで、資本家側も非常に困つておるのであります。また労働者に対しても、これは労働者は完全にその経営主と労働協約が結ばれておるにもかかわらず、軍命令だと称して、どんどん違法なる、すなわち日本の労働諸法を無視した首切りや彈圧が行われておる。このようにもうすでに実績が示しておるのでありますが、たとい形式上は自由契約ということであつても、彼我の力関係によつて資本家も労働者もめちやくちやにいためつけられ、どえらい損害をこうむるということになると、そういう点については、本法案は何らの補償を示しておらぬというふうに、どの点をつかまえてみましても結局は補償するぞという国家補償の規定が掲げてあるけれども、実際はこれは実効を伴わないところの空文にすぎない。これは行政協定を結び、そうして日本に安全が保障されるというようなことを政府その他が言いふらしておるので、国民に対しても何とかそのようにごまかしをしなければならぬというので、本法案を出したのでありましようが、これ以外にもたくさん行政協定に基く法案が今上程され、これからもまたどんどん上程されて来まするが、これらを一貫して見ると、結局は平和にあらざる、戰争準備をするところの平和条約、それからまた、日本の安全を保障することでも何でもありはしない、戰争を日本に導入する危險しごくなる安全保障条約、さらにまたそれらに基いて国民の生活がよくなる、今度は独立になるということ裝うためにいろいろとこういうふうな具体的な国内立法が行われますが、いかんせん、具体的に国内立法が行われるたびに最初の抽象的なごまかし規定のメツキがはげて来る。平和条約、安全保障条約の美辞麗句によつてかけられたメツキがはげて、こういうふうな具体的な規定になるとのつぴきならぬごまかしが暴露されて来るわけであります。本法案もその一つの顯著なる例であるわけです。かような国民をだまかし、まつたく国民の生活を破滅に導いて行くようなこういう法案にわが党は断固反対するのであります。
○佐瀬委員長 佐竹晴記君。
○佐竹(晴)委員 本法案は、安全保障条約の範囲を逸脱する内容を有すると同時に、不平等、不合理にして日本国民としてとうてい認容することのできない条項を含んでおりますので賛成いたしがたい、よつて反対いたします。
○佐瀬委員長 これにて討論は終局いたしました。本案を表決に付します。本案に賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○佐瀬委員長 起立多数。よつて本案は可決すべきものと決しました。 この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐瀬委員長 御異議なければさようにとりはからいます。 本日はこの程度にとどめ、次会は明十六日午前十時より開会いたします。 これにて散会いたします。 午後零時四十五分散会