法務委員会 第32号
- 発言数
- 149 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/04/14
会議録
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案を議題といたします。質疑を続行いたします。質疑の通告がありますのでこれを許します。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 特別調達庁の政府委員にお伺いしたいのは、この間から問題にしておりましたが、第一に、日本の家屋を駐留軍が接收いたします際に、直接接收するということは絶対にないものか、直接接收をやらぬとすればどういう方法でやるか、これは大体わかつておりますが、質問の順序上一応お聞きしてみたいと思います。
○根道政府委員 講和條約発効後におきましては、もちろん軍において直接接收するというようなことはあり得ないことと考えます。それから今後はどうするかということでありまするが、実際問題といたしましては、軍の方において駐留のために必要とする施設があります。それの要求があります場合には、これはまず今の段取りといたしまして、将来正式に設置さるべき合同委員会において、日米双方がこれを検討の結果、これはまさに軍の方に提供する必要があるということが認められました場合、これを所有者に対して、日本政府として折衝する段取りに相なると私どもは思つております。その折衝に際しまして、所有者が応諾すれば、それが非常に円滑に行くわけでありますが、もしいろいろな点におきまして不満がある場合、なおかつ日米双方の考え方として、これはどうしても駐留のために必要だから、ぜひ出してほしいという実情がありますれば、これは何とか便法を講じまして、特別措置によつて措置する方法を講じなければならぬと考えております。
○鍛冶委員 收用については特別の法制を必要とするので、何か政府で法案を出されるということを聞いておりまするが、これに対してどのようなところまで進んでおりますか。
○長岡政府委員 お答えいたします。最近、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法案を議会に提出いたしまして、御審議を願うことに手続を完了いたしております。
○鍛冶委員 これはまことに重大なものでありますが、もうすでに出ておるでしようか。出ておるとすれば、われわれとしても関心なきを得ないのですが……
○長岡政府委員 提出済みでございます。
○鍛冶委員 その内容については法案の審議のときに讓りますが、そこで收用なり、また合意でもよろしうございますが、駐留軍が直接やらぬとすれば、日本政府がまず所有者から借りて、それから駐留軍に貸す、かように考えますが、これらは民法の賃貸借の原則に基いてやるのでありますか。それともこれに関しては、何か特別な方法で——どうせ内容は賃貸借であろうと思うが、賃貸借であるとすれば、民法の賃貸借の原則に基いてやらなければならぬ。そうなると、民法の賃貸借は御承知の通りに、所有者の同意を得ないで第三者に貸すことはできない、また所有者の同意を得なければ、原状を変更することができないという規定がありますが、それらに対して特別の取扱いになるのですか。それとも民法の原則に従つて行くつもりでありますか。
○根道政府委員 原則としては、民法の規定に従うべきものと考えます。ただいまお尋ねのような内容につきまして、必要に応じましては、その法令に従つて特別な扱いをしなければならぬと思います。
○鍛冶委員 今おつしやつた特例は、そういうところまで入つておりますかいかがですか。ただ收用だけですか。
○長岡政府委員 ただいま長官から御説明申し上げました通りに、アメリカに提供いたします施設、区域につきましては、今後のやり方といたしましては、所有者と賃貸借契約を結びまして進めたい考えでございますけれども、もし所有者においてこれに応じない、しかもアメリカ側に提供することが適当であり、合理的であるという判断がつきましたときには、ただいま提出いたしました法律案によりまして措置したい、こういうふうな考えでございます。
○鍛冶委員 それはちよつと趣旨が違つているでしよう。私の言うのは、合意で日本政府が所有者から借りて、それをさらに駐留軍へ貸すとすれば、おそらく第三者になる、そのときに民法の賃貸借の原則に従うか、そういう場合でも何か特例でもつてやられるか、こういうことなんです。これはたとえば、実例をいえば、第三者に黙つて貸すわけに行かぬということになつております。それから第三者は、所有者の承諾を得ないで原状を変更することはならぬと書いてあります。こういう場合はすべて、賃貸借の解除をすることがきる規定になつておる。駐留軍の場合は特別に扱うか。もし特別に扱うとすれば、そういう法制をやられるか、こういうことなんです。
○根道政府委員 これは原則といたしまして、現在政府が借り上げて軍に提供しておるものと同じでありますが、まず第一に借りる目的を明確にしてあります。現在の契約におきましても、連合国軍の専用に供するためにこれを借りる、こう書いております。将来の契約におきましても、所有者が自由に契約に応ずる場合、もちろんそういうことが真先に契約にうたわれなければならぬと考えております。
○鍛冶委員 それでは原状変更はどうですか。まさか前もつて承諾を得ないでしよう。どう変更するかわからぬでしよう。
○根道政府委員 その契約におきまして、ただいま考えておりますところでは、もしいろいろ收用あるいは契約によつて借り入れたものに変更を加えました場合には、適当なる補償をするというような條項も、また当然契約の中に書かれなければならない。但しこれは契約にあらずして收用の場合であります。それはまた法律の定めるところによつて補償する。いずれにしても、補償を講ずる点においては同じであると考えます。
○鍛冶委員 そうすると今のところでは、その点に対する特別の法制は用意しておられぬと考えてよろしゆうございますね。
○長岡政府委員 先ほど説明申し上げました通りに、強制的に借り上げる、あるいは收用するという場合の法律案は出しておりますが、今お話の、契約でやります際の特別の法律措置は講じておりません。
○鍛冶委員 そこで、きのうも問題になつたのですが、もしそうだといたしますれば、きのうも出た実例ですが、かつてに床の間を便所にとりかえたりするような場合、日本人としてはなはだ迷惑しごくな話ですが、所有者の承諾を得ずしてさようなことをやるとすれば、これはやつぱり違法の行為だろうと思う。違法の行為であるとするならば、今出ております民事特別法の第一條によつて、日本国家に損害の求償ができるか、こういう問題になつたのです。ところがきのう法務府の方では、最初はそれはできますということだつたが、あとで、それはどうも「職務を行う」にはまらぬかもしれぬから適用は受けぬ、こういうお話でありましたが、この点はどういうようにお考えになりますか。
○根道政府委員 私はこの点については、借主たる政府において賠償の責任があると考えます。
○鍛冶委員 その賠償の責任ですが、この民事特別法の第一條に基く賠償の責任なのか、それとも民法一般の原則に基く賠償責任なのか、それがわからなかつた。これは村上局長もおいででありますので、法務府からの御答弁でもよろしゆうございますが、これを明確にしてもらわないと、将来必ず起る問題であります。
○根道政府委員 非常にむずかしい法律問題かもしれませんが、今まで扱いました私どもの考え方といたしましては、一般の民法上の考えにおいてやつておるわけであります。誤つておりましたら法務府において御訂正をお願いいたします。
○村上(朝)政府委員 一昨日お尋ねのありました合意によつて借り上げた場合の関係でございますが、原則的には民法の規定がそのまま適用になるわけであります。契約の内容につきましては、従来の接收物件についての賃貸借の契約書には、原状を変更した場合その他につきまして特約があるようであります。その特約の内容を私詳細に存じませんが、その特約に従つて処理されるのではないかと思います。
○鍛冶委員 そうすると当然疑問が出て来ますが、ここに書いてあります「職務を行うについて」という見解ですが、駐留軍が自分の住宅に借りておつた、それでその住宅に借りたことにおいて民法上の問題が起つた場合には、「職務を行うについて」ではあるのですか、ないのですか。もしないとすれば職務を行うとはどの範囲を言うのであるか、これをひとつ明確にしておいてもらわぬと、この法律の根本にさしつかえがあると思うのです。
○村上(朝)政府委員 居住者がかつてに手を加えたというような場合には、これは職務上の行為ではないと見られる場合が普通だと思います。
○鍛冶委員 そうすると、その「職務を行う」とはどういうことですか。いわゆる軍事行動もしくは演習だけなのですか。これが明確になつておらぬと、どうもこの法律の根本がわからなくなるのですが、あなた方の方でどういうものを「職務を行う」というふうに考えられて、この法文をつくられたか、これを明らかにしておいてもらいたい。
○村上(朝)政府委員 その関係も、日本の公務員がたとえば政府の所有の住宅に住んでおりまして、かつてにそれを改造したという場合に、どういうふうに解釈すべきかということと同じであると考えます。従いまして一般の公務員が政府から借りておる住宅にかつてに手を加えたというようなときには、その公務員の職務を行うについてなされたものとは見られないのが普通ではないか、こういうふうに考えております。
○鍛冶委員 そうすると職務を行うについては、いわゆる軍の行動ということに限るのですか。明確にしておかなければならないのはその点なんです。
○村上(朝)政府委員 軍としての行動の場合だけには限らないかと思います。つまり公の権力行為に該当する場合のほかに、たとえば娯楽施設の管理をしておる者があるといたします。その娯楽施設につきましては、これは非権力的な職務と見られる場合が普通ではないか、かような場合には国家賠償法の例によらないで、民法七百十五條の例によつて国が責任を負うわけであります。
○鍛冶委員 これはこの間から質問もあつたのだろうと思いますが、もつとこれは明確にしておいてもらいたいと思います。 その次に考えますのは、今そういうふうで原状を変更された場合の回復の義務ですが、これは行政協定第四條によりますと、駐留軍には回復の義務はないと書いてあります。そこで日本政府は所有者に対して回復の義務があるものと心得ますが、この点はいかがですか。
○長岡政府委員 一昨日も問題になつたように聞いておりますので、従来のやり方を御説明申し上げますならば、あるいは御納得が行くのではないかと考えております。実は従来建物を使いまして相当中の模様がかわつておりましたり、いたんでおる、これを返しますときには元の通りにして返すということは原則として行つておりません。但し価値が減つておりますれば、その価値減を補償することにいたしております。ところが現状のままでは、どうしても手を加えなければ元の、たとえば日本家屋として使うのに不便である、どうしても手を加えなければならぬというときに、価値減の金額と、これを元に返すために手を入れます金額と比較いたしてみまして、これまでは多い方を補償いたしております。今度の法律でも原状回復要求がありますならば、原状回復することにいたしてございますが、ただ原状に回復いたしますためには、非常に困難を伴う場合がございます。それから非常な金がかかる場合がございます。その際には原状回復せずして返すことができる、但しこれによりまして非常に損害を受けておりますものにつきましては、これを政府が補償する、こういう建前で進んでおる次第であります。
○鍛冶委員 そうなくちやならぬと思いますが、ただその価値判断の場合、第三者が見てお前のところはこういうものをつけてもらつたからたいへん得がいつているじやないかと言つても、本人はこんなものはいらぬ、あなた方は得だと言われるかもしれないが、わしは困るからとつてくれ、もしくは損害に見積る、こういつた場合に価値判断だと言つて価値があると言われるのか、原状回復が根本だからそう言うなら原状回復にするということで損害を算定するとか、また回復するようにするとか、こういうお考えであるかどうか、原状回復が根本であるからどうしてもそこへ行かなければならぬと思うが、この点はいかがです。
○長岡政府委員 従来とてもすでに解除になりまして、かような家を返しますときに、いろいろ問題が起きておるのでございますが、今日までは話合いをいたしまして、大体みな所有者の同意を得まして解決いたしております。ただ一件家屋が焼けました場合の、補償の問題が訴訟になつておりましたが、これも政府の示しました基準により和解して解決いたしております。今後とても価値増であるとか、価値減であるとかいう金額の問題につきましては、いろいろ問題が起きると思いますが、そのときには十分手を盡しまして、納得の行つた上でその金額を補償いたしたいと考えております。もしどうしてもそれが話がつかぬということになりますならば、自然訴訟問題になるのだ、かように考えております。
○鍛冶委員 われわれは原状回復が根本でありますから、第三者が見て価値があるということの固執はできぬものと心得ております。話がつけばこれは問題はありません。その点を明確にしておいてもらいたい。ところがこの原状回復が根本原則であるにもかかわらず、行政協定の第四條を見ますと、原状回復が必要でないという規定のように思われる。駐留軍は原状回復の義務はないのだが、日本政府にあるということが明確になつたのだが、これを読んだときに、これはどえらいことが起つて來たと思つた。この点に関して私この前も質問したと思いますが、これは日本国民に対してこうやつておるけれども、これは駐留軍と日本政府との関係だ。日本政府はどこまでも所有者に対してその義務を民法の原則によつて履行するのである、かようなことを明確にぜられる必要がありはせぬかと思いまして、何か特別の法制を考えておられぬか、私はこう聞いたのですが、この点は別にお考えになつておりませんか。
○長岡政府委員 先ほど申し上げました法案では、請求がありますならば原状回復をいたすことにいたしたいと思います。従いまして、法律を適用せずに、実際に契約でやります場合にも、この法律の趣旨に順応いたしました措置をとるよりほかはない。原状回復を、請求がありますならばいたすことにいたしたい、かように考えております。
○鍛冶委員 それから今までの例をお引きになりましたが、もちろんこれは参考になりますけれども、われわれは第四條を見て驚きまするのは、今までは占領治下にあつたのですから、これはもう国民全体がある程度あきらめております。このたびは平和が回復して独立自由になつたのだから、今までとはたいへん国民の考え方も違う、こう思いまするから、その点は今後取扱われる上において、根本的な考えを直してかからなければならぬものだと私は考えまするが、その衝に当るあなた方としてはどうお考えでございましようか。
○根道政府委員 ただいま行政協定第四條のお話がありました。あの点は、私といたしましては、日本国と米国との約束である。国民と日本国政府との関係におきましては、民法その他の法令に基いて国内的に処理される、これが原則であろうと考えております。
○鍛冶委員 それからもう一つ、今ちよつとお話しになりましたが、そうすると、今の場合は原状変更の場合ばかり申しましたが、賃借りしたもので、駐留軍の瑕疵もしくは過失等によつてそのものを毀損した場合も同様損害賠償の義務はなくなるということじやないかと思いますが、これはどうです。たとえば焼けた場合とか、失火した場合とか……。
○長岡政府委員 従来とても、向うの要求に基きまして特調が調達して出しましたものにつきまして、軍の責任によつて焼けました場合もございます。これは補償いたしております。今後もなおさら補償しなければならぬ問題だと考えております。
○鍛冶委員 かように考えてみますると、これはどれだけの数がふえるかわかりませんが、こういう問題は非常に多いと思いまするが、これについての予算上の措置はどういうことになつておりますか。
○長岡政府委員 実は予算は、今年度は特調予算ということに相なつておりません。大蔵省予算についております。今お話の補償の問題につきましては善後処理費から出されるものかと存じております。これは大蔵省といたしましても相当の予定があるものと考えております。
○根道政府委員 ただいま失火等の場合のことについてちよつとお尋ねがありましたから申し上げます。 現在の予算におきまして御承知のごとく防衛支出金のうちから九十二億、いろいろなものを政府が借り上げるための経費として予算をとつてございます。その予算は借料ではありますが、その借料の中には、その借りた不動産等の火災保険料も含めてあるわけであります。この火災保険料はその建物の価値のほとんど全額、とにかくそれに匹敵するだけの保険料を含んでおるのでありまして、その方面から十分に金額的に補償は出て来るものと思うのであります。もし政府が正当に払つております保険料が実際より少い、そのために保険を多くかけられなかつた、ところがその建物は実際はその倍もしたというようなことがありますれば、その差額を別の補償費から払わなければならぬという問題も起るわけであります。現在の保険料を考えますと、ほとんど全額カバーできるというふうに私は考えております。但しもしその保険料を政府が払つておるにかかわりまぜず、その受けましたものが、保険に付さないでおつたための損害というものがありますれば、これはどうもその方面の責任に帰するというような場合があり得るかと考えております。ちよつと念のためにつけ加えさせていただきます。
○鍛冶委員 それは実際はどれだけいるか知らぬ。今までの例から九十二億で十分足りるという御確信がありますか。それからもう一つは、善後処理費で足らなんだら、いはゆる安全保障費のうちからもさようなものに使い得るものですか。いかがなものですか。
○長岡政府委員 九十二億の方は今後提供いたします区域、施設の借上料が主たるものだと了解いたしておりますが、今話の出ました解除になりましたときの損害の補償の問題につきましては、従来とても別途支出されておりますので、この詳細の点につきましては、大蔵省にお聞きを願う方が適当かと思いますが、われわれといたしましては、今補償いたしますだけのものは大蔵省に対して要求するつもりでおります。
○鍛冶委員 私の聞かんとするのは予算が出ておらなければ要求してもとれないのですから、どの費目からあなた方は要求なさるのか。それをお聞きしておるのです。
○長岡政府委員 善後処理費等から請求いたすつもりでおります。
○鍛冶委員 そのとき善後処理費は、今言われるところを聞けば主として借賃及び保険料なんですから、いわゆる焼けた場合、原状回復の場合、そういうときには足らぬことはないかということを私は言うのですが、善後処理費が九十二億あるのだというならば何ですが、大蔵省と折衝すると言われるから、足らなければ大蔵省のどの費目からとることをあなた方は要求なさるのか、こういうのです。
○長岡政府委員 従来も事業費と補償費というものは別になつておりますので、今申し上げました九十二億以外に大蔵省はこれの手当があるはずでございますから、この方から請求いたしまして、補償はいたしたいと考えております。
○佐瀬委員長 田中堯平君。
○田中(堯)委員 関連して二、三問お尋ねします。今鍛冶委員から家の問題を主として聞いておられたのですが、実はこの民事特別法で被害を受けるであろうと予想されるのは家だけではないわけでありまして、ことにこの行政協定の十二條等によりますと、物資や役務というものにつきましても、アメリカ軍が調達することができる。現にこれまでの占領治下における経験からしましても、どんどんと直接に調達をしておる模様であります。それも日本の商法や慣習法は全然無視されて、向うさんの商法や慣習法によるかどうかは知らぬが、どうも見受けたところ、何かアメリカ軍の調達規定があるのじやないかと思われる。そういうふうな何か規定に従つてやられると思われるが、どんどんと、いわばかつて気ままなことがされるわけであります。どうもこちらはそれにたてつく力もなく、国民は非常に迷惑をこうむつて、泣き寝入りという実態にあるわけであります。将来も、これは占領治下と違うけれども、似たような状態が行政協定第十二條その他によつて行われるのではないか。そういう場合には、やはり本法案の第一條による国家の賠償がなされるのであるかどうか、まずこれをお尋ねしたいと思います。
○村上(朝)政府委員 当事者間の契約によりまして、経済的に不利益な契約を結んだというような場合には、これはいわゆる不法行為に該当しないと考えますので、第一條の適用はないものと考えます。
○田中(堯)委員 先ほど家や土地を接收する場合には、民法に従う契約が原則であつて、日本政府が介在をし、直接折衝ということはないという御説明でした。そうすると家や土地というようなもの以外の物資や役務の調達については、これは直接にやるわけでありますか。これをひとつはつきりしておきたいと思います。
○根道政府委員 ただいま米国側で欲しておりますのは、そういうものについては直接に調達したいということを言つておるわけであります。もちろん相手は日本人であります。あるいはその他の者でありますが、これはその呼びかけに応じて契約を自由に結ぶ相手方であります。自分の住んでいる家、所有している土地を出す出さぬの問題とは、非常に性質が違います。その点は法律上は自由でよかろうと思うのであります。但し米国側においてこれを扱う者が、いろいろ日本の事情になれませんために、また人がときどきかわりますために、従来はスムーズに行つておつた。ところがまたぐあいが悪くなつて、日本人との間に契約の履行の問題において、いろいろ紛議を生ずるというようなことがあるかもわからぬと存じます。この点については、私どもといたしましても、できるだけそういう問題が起らぬように処置いたしたいと考えておるようなわけであります。
○田中(堯)委員 今の点についてですが、これは家や土地等の接收は政府が介在する、間接の措置によるということならば、それはしばらくおきます。それは被害が少いかもしれませんが、直接調達を許された部分では、まつたく彼我の力関係からして、実際上は非常に不当なる取引、取引というよりも、強制をされるという形になると思うのです。そこで今十分に考慮しなければならぬということでありましたが、何か政府としてこれを後見するような制度なり立法を考えておられるかどうか。この点については、まだ全然考えておらないか。これをお伺いしたい。
○根道政府委員 政府としてはというお尋ねでございますが、私から特にそういう資格において御返事はいたしかねるのでありますけれども、私特別調達庁をあずかつて仕事をやつて参りました関係で、実務のことは割合に知つておるのであります。その経験によりますと、直接調達にはいろいろ問題があるということも承知いたしております。従いまして、でき得るならば日本政府が中に立つて、場合によつては間接的な調達をする方法を講じたいというふうな考え方を持つているわけであります。しかし現在の事態におきましては、軍の方において直接調達をするという要求が非常に強いのでありますし、大体行政協定そのものにおいて、直接調達がほぼ原則かのように見られております関係上、米国側においても直接調達を非常に強く主張しておるわけであります。従いまして、現在の見通しといたしましては、直接調達が相当広汎に行われるのではないかと思つております。従いまして、その場合におきましても、米国側に対して、できるだけ日本の法律、慣習等を尊重し、これを十分に取入れる契約方式をとつていただきたい、いかなる場合においてもそうしていただきたいということを、現在の予備作業班等におきまして、私の代表として行つております人をして、何べんも言わせておるような次第であります。しかし現状は、とにかく直接調達をやるという形に、ほぼ確定的に進んでおると考えております。
○田中(堯)委員 それではその点はこのくらいにしておきます。この法案を見ますと、「合衆国軍隊の構成員又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、」とありますが、合衆国軍隊が集団として職務を行うについて違法にということは、これはあり得ないことであつて、従つてここに構成員または被用者ということになつておりますが、構成員や被用者が職務を行うにあたつて、違法に損害を加えるということが、どんな場合が考え得るでありましようか。ほとんどこれは考え得る余地がないように思いますが、たとえばどういう場合ですか。
○村上(朝)政府委員 合衆国軍隊の構成員または被用者が、その職務上行動しております場合でも、たとえば交通事故等を起しました場合に、違法に損害を加えたものとして、不法行為になる場合があるわけであります。たとえば日本の国家機関にいたしましても、公務執行中、他人に損害を加えた場合には、国家賠償法によつて国が賠償の責めに任ずることになつております。公務員が職務執行中の行動であれば、違法に他人に損害を加えたということにならぬということも、一概に断定できないのではないかと考えるのであります。
○田中(堯)委員 なるほど交通規則を無規してスピードを出し過ぎた、あるいは交通巡査の指示を無視してクロスを突破したために、人に危害を加えたというようなことが考えられましよう。その他ごく微小なる例外的な場合が考えられるでありましようが、しかしアメリカ軍が日本に駐留することによつて、日本人に加えるであろう全損害額から言うならば、そのようなごく微小なる例外的な職務執行中の違法によつて加えた損害などというものは、九牛の一毛にも当らないと思うのでありますが、日本の政府では——政府というとまた答弁に苦しむかもしれませんが、調達庁の方にお尋ねしますが、この全損害額に比べて今の第一條に該当するような損害額というものは、そんなに出て来るという予測でありますか、どうですか。私はほとんどこういうものはないと思いますが、どうですか。
○長岡政府委員 こういう損害額の問題でございますが、実は従来はこういつた問題が起きました場合には、アメリカ側は全然責任を持つておりませんので、現在は厚生省が所管しております見舞金を支払つておつただけであります。本法によりますと自然かわつて参りますので、相当額ふえるであろうという予想はいたしておるのでございますが、ちようどどのくらいになるという見込みはまだ立ちかねておる次第であります。
○鍛冶委員 さつきの田中君の質問に対するお答えですが、物資と労務と判然と区別して、物資についてはどうですか、労務については第十二條四項がありますが、これは特別な考え方をしておられる。もつと具体的に申しますと、「日本国の当局の援助を得て充足される。」この援助という意味です。これはただ單に必要なときに援助を得るのか、原則として日本政府に頼んでやられるのか、ここら辺もはつきり言つておかないとたいへん違うと思います。ことに重大なことと思いますから……。
○根道政府委員 労務の提供につきましては、物資あるいは役務の調達と違いまして、人の問題であります。労働組合などの方におきましても、軍の直接の雇用に属することを欲しないという意見の申立てがございます。また私どもといたしましても、実際労務者の保護のためには、日本政府が間に立つてみずからが雇用者となつて軍のために使つてもらおうという形をとつた方がいいのではないかと考えております。また軍自体におきましても、もちろん労働関係諸法規を十分に尊重するということは行政協定にもうたつてある通りであります。またそう言つておるのでありますが、一々この労務関係の問題について労務者と折衝するということはとうてい不可能でありますので、日本政府にやつてもらいたいというような意向を表明しておるのであります。従いまして現在のところ労務につきましては間接調達という線になつておるわけであります。行政協定の関係はこれはいかが相なるかということは、この場合定まつておりません。右にも左にも、全般が円満に行き得るような余裕のある文句を使用した次第であります。
○鍛冶委員 従いまして物と違つて、先ほどの特別收用法などで、労務の收用ということはあり得ないと思いますか、これはいかがですか。
○根道政府委員 これはなおさらにないと考えます。
○田中(堯)委員 実はさつき問い漏らしたのですが、現在でもPD工場等では、これは契約関係はアメリカ軍と日本の経営主との契約になつております。ところがその経営、ことに労務関係については、軍命令と称してどんどん首切りをやつたり、好ましからざる人物という名のもとに馘首が行われておる。政府にその不当を質問すると労働大臣等は、いや十分日本の労働法その他による保護は行われておるはずだというような答弁ですが、実際においては日本の労働法規などの保護は一切無視されて、かつて気ままに首が切られておるというような状態であります。そうするともう明らかに不法行為による大きな損害額が生じておるわけであります。占領治下ではない将来といえども、やはり現在においてすでにそのような違法が白晝公然と行われておる。これではやはり力関係で将来も行われると思う。そういう場合に、かりに行われるということを前提としますと、一体国家はこれについて補償するのですか、しないのですか。
○根道政府委員 軍の直接管理下にある工場等における問題だと思いますが、軍がある工場主に対して契約を結んでおる、その工場における労働関係の問題に軍が干渉したというような実例を聞いておるのでありますが、この問題は、あくまで日本の労務者の関係におきましては日本の会社と雇用関係にある労務者との関係であります。たといこれが軍のさしずによる不当の解雇であるといたしましても、その不当解雇の責任等は、その会社が法規に照して負われなければならぬものと考えております。現実に解雇が行われたというような実例は、防ぐことができなかつたかもしれませんが、その後の問題といたしましては会社と被用者たる労務者との間で労働関係法その他によつて当然に是正さるべきものだ、こういうふうに考えております。また今後におきましては、現在はまだ占領軍でありますので、事実上干渉の手が強い点があるかもしれませんが、講和條約発効後におきましてはそういうことまで干渉するということは、日本政府としては当然に排除しなければならぬ問題だと考えております。
○大西(正)委員 法務府当局にお尋ねいたしますが、前会にも質問をいたしました第一條の「その職務を行うについて」に関連してでありますが、前会の御答弁によりますと、アメリカ当局の職務にあらずと第一次的に決定いたしましたときに、これに反して日本の裁判所が公務執行中であるという判定をいたしたときには、その日本の裁判通りになつて、そうして日本政府がその損害を受けた個人に対して賠償する義務を負う、こういうことでございます。次に、これに反してアメリカの方で公務執行中であると決定したにかかわらず、日本の裁判所がこれは公務執行中でないという判断を下した場合についてはどうなるか、これを詳細に承りたいと思います。
○村上(朝)政府委員 前会大西委員から、行政協定第十八條第四項の決定が日本の裁判所を拘束するものならば、この決定と裁判と食い違つた場合はどうなるかというような御質問がありまして、一応お答えしたのでありますが、その点さらに補充して御説明申し上げますと、この十八條第四項の決定は、各当事国が第一次の権利を有するとありますけれども、相手国政府が同意しない場合には、合同委員会にかけられるわけであります。合同委員会でもきまらない場合には、二十六條の三項にありますように、その問題はそれぞれの政府にさらに移されるということになるわけでありまして、この十八條の四の規定による決定が唯一の終局的な決定となるのではないと考えられるのであります。これはもし合同委員会が決定する前に裁判がありました場合には、その裁判所は独自の判断をもつて裁判ができるわけでありまして、日本政府の関係機関が、この十八條第四項の規定による相手方の決定に同意するかしないか、あるいは合同委員会において協議する際におきましては、日本側の機関としては、日本国の裁判所の判断を尊重して決定することになると思うのであります。裁判がある前にこの十八條四項の決定のあつた場合の問題でありますが、これをもし裁判所を法的に拘束するものと仮定いたしますと、本来裁判所の独自の判断ですべき事項を日本側の行政機関の意思によつて拘束するということになり、わが国の法制上認められておりますところの裁判所の独立と相いれないことになりますので、この十八條第四項の解釈は、先ほど申し上げましたように、これが終局的な決定となり得ない場合があることとあわせまして、裁判所を法的に拘束するものではない、かように解釈いたすのであります。 なお御参考までに、これに相当いたします北大西洋條約当事国間の協定におきましては、同様な場合におきまして調停者に付託するわけでありますが、その調停者は、駐留を受ける方の国の司法関係の上級の地位にある国民の中から選定されるということになつておりまして、この調停者の裁定につきましては、最終的で、かつ決定的なものとするということが特にうたつてあり、これと対照いたしましても、行政協定の十八條第四項は裁判所を拘束する趣旨でないというのが正しい読み方であろうと考えるのであります。実際問題といたしまして、十八條第四項によりまして、たとえば合同委員会が公務執行中の行為と判断したものにつきまして、裁判所が公務執行中になされたものでないと考えました場合には、食い違いが生ずるわけでありますけれども、この合同委員会に持ち込みますのは、政府部内の一定の機関が処理をするわけでありますが、十分事実関係を調査いたしました上でアメリカ側と折衝するわけでありまして、事実関係について裁判所の判断と食い違うというようなことは、理論的には考え得るわけでありますけれども、実際上はほとんどないものと考えるのであります。合同委員会の方で公務執行中であると判断しました場合に、政府からこれを賠償するわけであります。当事者がこれはあくまでも公務執行中の行為でないと主張して、行為者個人から取立てなければならぬということはないのであります。実際上はさして不都合なく処理されるものと考えております。
○大西(正)委員 十八條四項に基く決定等と、それから裁判所の事実認定権に基く決定とが齟齬する場合は、理論的には考えられるけれども、実際上はあり得ない、こういうのでありますが、しかし日本の裁判で、事実上原告と被告の主張で事実認定が互いに違い、また上訴審に行つて違つて来る場合があるのでありますが、そういう場合があり得ると思うからこそお尋ねしているのであります。そこで今の十八條四項に基く決定においては、公務執行中であると認定された場合に、これに反して裁判所が、公務執行中でないという判断をした場合においては、どういう処置がなされるのでありますか。たとえば、それならば政府にはそれを賠償する義務がないということになるのでありましようが、それによつてその裁判を受けた被害者個人が救済され得る道は、十八條六項に基いて加害者個人に対して一般の民事裁判権に基いて裁判を起すことができるのでありましようか。
○村上(朝)政府委員 合同委員会におきまして、公務執行中の行為であると判断いたしました場合に、被害者が国を相手として訴訟して参りました場合、国としては、それは公務執行中の行為でないといつて争うことはできないのでありまして、その点につきましては、日本側の行政機関としては、合同委員会の判断に従いまして事実関係を主張するわけでありますが、原告と被告の主張が食い違うということは起り得ないんじやないか、かように考えております。
○大西(正)委員 ちよつとわかりませんが、しかし裁判所が公務執行中でないという判定をしたのだから、原告の請求は棄却しなければならないということになるのでしよう。
○村上(朝)政府委員 大西委員の仰せになりました通り、公務執行中であるかないかということは、法律問題でありまして、ある事実関係に対して裁判所が法律的な価値判断をする。その基礎になる事実関係につきまして、原告の方は国を被告として、これは公務執行中に行われた行為であるから、国に賠償の責任があるといつて訴訟を起して参ります。従つて国の方といたしましては、合同委員会で公務執行中の行為であると決定されております場合に、その基礎となる事実関係につきましては反対の主張をすることはあり得ないわけであります。判断の基礎となりますところの事実関係について争いがなければ、裁判所の判決も、公務執行中という判断になるかと思います。
○大西(正)委員 そうしますと、その争いがない場合、十八條の四項に基いて公務執行中であるという決定のなされ得る場合には、これに齟齬する裁判というものはあり得ないことになるのですか。
○村上(朝)政府委員 理論的にはある事実関係に対する法律的な価値判断が、国の行政機関と裁判所によつて違うことは考え得るのでありますけれども、実際問題として申しますと、職務執行中であるかどうかの判断の基礎になる事実関係について争いがなければ、おのずから法律的な価値判断も同一に帰着することになるのではないか、かように考えます。
○大西(正)委員 つまり原告たる損害を受けた個人が、これは公務執行中の事案であるとしてこの法律に基いて訴えを起した。そうした場合に十八條四項に基いて公務執行中だという認定になれば、別に争いがないから、裁判所でその点は事実関係について特に問題は起らない、こういうことなんですね。そうするとこの前お答えになりました——私も深く考えなかつたのですが、十八條四項に基いて公務執行中であるという認定をされた場合には、これと齟齬する裁判ということは予想されないということになりますね。
○村上(朝)政府委員 理論的には考え得るのでありますが、実際上はないだろうということであります。
○大西(正)委員 その反対に、十八條四項に基いて公務執行中でない、こういう認定があつた。しかし原告は公務執行中だという主張のあつた場合には、先ほど申しましたように、裁判所がそう認定すれば原告勝訴として政府が支払いの義務を負う。但しアメリカ側に対してこれの分担金を請求することはできない。こういうことになるわけですね。
○村上(朝)政府委員 合同委員会におきまして、公務執行中の行為でないと決定いたしました場合には、被害者は通常個人の責任を問うわけであります。個人の責任になりますと、十八條の五項の規定によりまして、やはり日米両国政府が中間に立ちまして、米国政府からその個人の支払うべき賠償金を支払つてくれることになります。この十八條五項の規定によりまして解決できない場合には、訴訟を起すことになるのでありますが、被害者の方であくまでも個人の責任は追究しない、国の賠償責任をこの法律の第一條によつて追究するという場合におきまして、裁判所の判断が、これは公務執行中なされた行為であつて、第一條の適用があるということになりますと、これは日本政府といたしましては、裁判を尊重しなければなりませんから、賠償を支払うことになるのでありますが、これも理論上そういうことになり得るというだけで、実際問題といたしましては十八條の第五項なり、あるいは個人に対する訴えによつて解決されるものと考えております。
○大西(正)委員 その問題はその程度にしまして、なお一点お伺いします。第一條に限りませんが、従来本法の適用の問題について、アメリカ軍が国連軍としての性格をもつて行動する場合につきまして、今までの御答弁によると、外務当局は国連軍との協定をしつつある、またその案を作成中である、その協定ができるまではこの法律によつて処理し得るのだという解釈のようにもうかがえるのであります。これに対して法務府当局は、それはできないのだ、国連軍としての行動に基く場合においては、この法律は全然適用がないというふうに伺つたのでありますが、そうしますと外務当局と法務府当局との間に多少意見の食い違いがあるのではないかと思われるのでありますが、そういうふうに理解してよろしゆうございますか。
○村上(朝)政府委員 行政協定並びにこの法案は、駐留軍としての行動に起因する場合だけでありまして、国連軍としての行動による場合には適用がないということは、すでに申し上げた通りであります。前会外務省の重光課長から御説明申し上げましたのは、駐留軍としての行動の範囲でございます。安全保障條約第一條におきまして駐留軍の任務が規定されるのでありますが、その中には「極東における国際の平和と安全の維持に寄与」するということがうたわれておるわけであります。そこで、それでは朝鮮における戰争に参加するために日本を飛び立つ飛行機についてはどうかというような御質問もあつたのでありますが、朝鮮において現在起つております事態は、国連の決議に基きまして、国連軍として行動しておるわけでありまして、安全保障條約第一條の規定による駐留軍としての任務ではないわけでございます。その趣旨におきまして従来御答弁いたして来たのでありまして、その点につきまして外務当局の答弁と食い違いはない、かように考えております。
○大西(正)委員 その点についてあともう少しお聞きしたいのですが、法務総裁がお急ぎのようでございますから、この点はこの程度にしておきます。
○佐瀬委員長 それでは本民事特別法案の審議はこの程度にとどめます。 —————————————
○佐瀬委員長 次に平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案の審議をいたします。質疑の通告がありますのでこれを許します。大西正男君。
○大西(正)委員 前会保留いたしました問題について法務総裁にお尋ねをいたしたいと思います。 まず第一点は、前の法務総裁でありました大橋国務大臣の時代でありまして、昨年の暮れであつたと思うのでありますが、当時戰犯問題について他の委員から質問のありました際に、この問題について——この法律は当時もちろん提案もされておりませんでしたが、将来こういう法律ができ上るまでに、現在の連合軍最高司令官との間に折衝をして、そうしてこの法律ができ上るまでに、現在占領治下における態勢において、戰犯者に対して大量の釈放といいますか、恩典にあずかるべく努力中である。そしてこの問題については政府を信頼してもらいたい、相当の成功をもたらす予想であるというふうな意味のお話があつたのでありますが、その後どうなつておりますか、この点をまずお伺いしたいと思います。これはもし速記に載せることがさしつかえがありますならば、委員長において適当におとりはからいを願いたい、かように存じます。
○佐瀬委員長 それでは速記をとめてください。 〔速記中止〕
○佐瀬委員長 速記を始めてください。
○大西(正)委員 第二にお伺いいたしたいことは、この法律が通過いたしますならば、講和の発効によつて効力を生ずるわけでありますが、この講和の発効ということにつきましては国内のいろいろの犯罪者、刑余者、刑を受けております人々に対しましても恩赦の恩典が発せられる、さように承つておるのであります。しからばこの講和の発効によるところの恩典、この講和の発効の喜びを戰犯者にもわかつてやろうという御意思が政府にありやなしや、この点をお伺いしたいと思います。
○木村国務大臣 先刻の外国に拘禁されておる人々、これはおそらくその目的を達成することはできるんじやないかと考えております。ただ残るのはフィリピンであります。これも最近非常に好意を向けられておりますから、おそらく内地送還の手続はできるんじやないか、こう私は希望的観測をしております。 それから最後の講和條約発効後において、これらの人に対する恩赦の取扱いはどうかということであります。御承知の通り刑の執行は日本政府においてこれを引継いでやるのでありますから、この赦免、刑減につきましては、日本政府の勧告によつて相手国が決定することになつておるのでありまして日本政府だけでもつて、この人たちは非常に気の毒でありますが、いかんともいたし方がないのであります。できるだけすみやかに勧告をいたしまして赦免その他減刑の手続を効果あらしめるように処置いたしたい、こう考えております。
○大西(正)委員 そこでそれに関連しましてもう一点だけ、講和発効いたしましたときに、この法律にもきめられておりますが、勧告という制度でございます。それにはいろいろ手続がめんどうのようでありますが、講和の発効にあたつていわゆる一般勧告ということができないのでありましようか、法律にはいろいろこまかくきめられておりますが、平和條約第十一條そのものの勧告というものは、この法律とは別個に何らか考えられ得るものかどうか、考えられるとすればそれによつて一般勧告なるものをする御意思ありや、こういう点をお伺いいたします。
○佐瀬委員長 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○佐瀬委員長 それでは速記を始めてください。
○大西(正)委員 その格段の御努力を今後お願いいたしたいと思います。それから法務総裁に特にお尋ねいたしますのは以上でございますが、この法案に関連いたしまして一点だけお尋ねしたいと思います。それは中国の裁判法廷において刑を科せられましたところの戰犯者に対する関係でありますが、中国の法廷において科せられた戰犯者に対しても、平和條約第十一條によつて連合国の法廷であるからやはりこの法律の適用があるのだ、従つて日本国がこれに対する刑の執行をすべき権利と義務があるのだという前会の御答弁でございました。ところが私まだそれには疑問があるのでございます。と申しまするのは平和條約十一條を読みますと、なるほど「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戰争犯罪法廷の裁判を受諾し、」云々とあります。そこで卒然と読めば、連合国というのは旧いわゆる連合国を含んでおるやに見えるのでありますが、しかしながら平和條約の第二十五條によりますと、「この條約の適用上、連合国とは、日本国と戰争していた国又は以前に第二十三條に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの條約に署名し且つこれを批准したことを條件とする。」こういうふうに書かれております。その次には「第二十一條の規定を留保して、この條約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益を与えるものではない。」こうなつております。そこで二十一條というものをくつてみますと、第二十一條には「この條約の第二十五條の規定にかかわらず、中国は、第十條及び第十四條(a)2の利益を受ける権利を有し、」云々となつております。そこで第十一條に関しては何らの規定がないのでありまして、第十一條のいわゆる連合国法廷には入らないやに思われるのでありますが、この点を明確にしていただきたい、かように考えます。
○清原政府委員 便宜私よりお答え申し上げたいと存じます。平和條約第十一條に、いわゆる連合国戰争犯罪法廷として正当な資格を与えられ、その法廷において審判せられたものにつきましては、その刑の執行はわが国において引受けることになつておるのであります。従いまして韓国、中国等のごとく、同條約の第二十五條による連合国のうちに含まれているかいなかということは問うところでない、かように解釈いたしております。
○大西(正)委員 それは問うところでないとおつしやいますけれども、それが問題じやないでしようか。
○清原政府委員 平和條約第十一條によりまして、刑の執行をわが国が受諾しておりますのは、平和條約に署名しておるといなとを問わず、結局その責任は、たとえばわが国が韓国、中国に対してその義務を負うというのではなくして、その義務はあくまでも平和條約が効力を生じた国、言いかえますれば、平和條約に署名し、かつこれに批准した国に対する責任としてこれを負うものでございます。
○大西(正)委員 なるほどそうでございましよう。批准し効力を発生した国に対して義務を負うのでありましようが、その義務を負うのは、連合国の定義の確定に従つて解釈をしなければならないのでありますから、十一條の連合国の定義を私伺つておることに関連するわけであります。そこの十一條の連合国というものには、二十五條によつて含まれないということになれば、含まれないということになりはしないかということを伺つておるわけであります。
○古橋政府委員 二十五條で連合国と申しまするのは、英文にはアライド・パワーズというぐあいになつておるのでございますが、十一條で連合国と申しまするのは、英文にはアライド・ウオー・クライムズ・コーツというぐあいになつておりまするので、これをアライド・ウオー・クライムズ・コーツと続けて読みまする意味で連合国と区別して解釈しているのでございます。
○大西(正)委員 なるほどそういう使いわけをしてありますが、アライド・ウオー・クライムズ・コーツにいたしましても、アライド・パワーズにしても、但書によつて、「各場合に当該国がこの條約に署名し且つこれを批准したことを條件とする。」その当該国というのはステーツでありますから、従つてそのステーツから連合国の構成員として一部軍隊が入つておるのであるし、そうしてまた戰犯法廷は、その国の主権に基いて裁判をしておる。元は国家がそれをきめておる根底でありますから、従つてこれに署名をしておらない各国については、その国の根源から出て来るそういつた軍隊や、それからまた法廷、そういうものは言葉の上で使いわけが出て来るのは当然であると同時に、それが出て来ても、私が申し上げましたこの二十五條の解釈には何ら関係ないのじやないですか。
○佐瀬委員長 午前の審議をこの程度にとどめ、午後二時より再開いたします。 暫時休憩いたします。 午後一時二十二分休憩 ————◇————— 午後二時三十四分開議
○佐瀬委員長 休憩前に引続いて、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案の審議をいたします。 質疑の通告がありますので、これを許します。大西正男君。
○大西(正)委員 午前中に残つておりました点でありますが、日本にこれから駐留する行政協定に基くアメリカ軍というものが、国連軍としての行動を起した場合に、その行動によつて起つた損害について、法務府御当局は、この法律が適用される限りでない、こういう御意見でありますが、それはどういう根拠に基くのでありましようか。
○村上(朝)政府委員 この法案は、安全保障條約第三條に基く行政協定に定められました民事に関する国内法を規定したものでありまして、行政協定は安全保障條約第三條に基くものでありますから、この適用される範囲は、もつぱら安全保障條約に基く駐留軍としての行動にのみ関するものである、これが根拠でございます。
○大西(正)委員 そうしますと、国連軍としての行動中に起つた損害については、どういうことになるのでしようか、前に質問されたかわかりませんが、もう一ぺん……。
○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動につきましては、前にもお答えいたしました通り、別途に国連との間に外務省当局によつて折衝中なのであります。その結果協定なり、もし心要なれば別に法律案がつくられるわけであります。
○大西(正)委員 そういう場合には国内に何らの法律がありませんから、日本のあらゆる主権が完全に発動をして、そうしてそれが日本国民に与えた損害に対しては、日本の国内法によつて処断するわけでありますか。国連軍としてやつた行為に対して、日本にはこういう法律が全然ありません、特別な法律がありませんから、その他の国内の法律によつて、その損害に対する賠償を、直接この損害を与えた軍人に対して請求するわけに行きませんですか。
○村上(朝)政府委員 その点はいずれ講和発効までには別途に国連との間に協定されるように聞いておりますが、かりにそういう協定がないといたしますと、これは国際法の問題になるわけであります。
○大西(正)委員 国際法に基いてその許される範囲において請求ができる、こういうことになるわけですか。
○村上(朝)政府委員 さようでございます。
○大西(正)委員 そこでもう一ぺん逆もどりいたしますが、駐留軍として安全保障條約によつて日本に駐留する軍隊が、国連軍としての性格を帶びた場合においても、駐留軍としての性格を失わないのではないでしようか、失うのでしようか。
○村上(朝)政府委員 駐留軍が、同時に国連軍としての任務をするということは考えられるのでありますが、その場合に、特定の行動が駐留軍としての行動であるか、国連軍としての行動であるかという区別は、つけて考えなければなりません。かように考えます。
○大西(正)委員 安全保障條約第一條によりますと、「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」、それから「並びに、」云々となつておりまして、この極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために使用することができるということと、それから日本国内における内乱とか騒擾を鎮圧するために、日本政府の要請のあつた場合を含めて、外部からの日本に対する武力攻撃に対してその安全を保持するためにも使用することができる、この二つあると思うのであります。そこで日本に駐留しておる軍隊というものは、わけて言えば、今申しました二つの使命を帶びて駐留する。そのことが安全保障條約によつて規定されておる。そこで極東の国際の平和と安全の維持のために寄与する場合において、おそらく考えられることは、国連軍としての行動というものが考えられるのではないか、そうするとこの安全保障條約第一條にそういう行動の場合も——かりに私の解釈が正しいとすればそういう行動の場合においても、安全保障條約に規定されておる日本駐留軍としての使命から逸脱するわけでもないし、同時にそれは安全保障條約に規定されておる行動の中に含まれるのではないか。従つてそれが国連軍としての行動であつても、その国連軍たることが、——アメリカ政府によつて日本の駐留軍が国連軍に協力して働くのであつて、日本にこの安全保障條約によつて駐留する軍隊のその性格というものは、国連軍になつたからといつて、決してネグレクトされるものではない。従つて民事特別法はこの安全保障條約を受けて今の場合にも適用してしかるべきと思うのですが、いかがです。
○村上(朝)政府委員 安全保障條約の第一條に規定いたしております極東における国際の平和と安全の維持に寄与することは、駐留軍としての使命の一つでありますので、そのために将来あるいは駐留軍が海外に出動することもあり得ると考えるのであります。少くとも現在までの朝鮮動乱の問題に関連して、いろいろ御質問がありましたので、お答えいたしました趣旨は、朝鮮動乱に関する限り、あれは国連軍の行動でありまして、駐留軍としての極東における国際の平和と安全の維持に寄与するという駐留軍本来の使命として行動するものではない、かようにお答えした次第であります。
○大西(正)委員 ですからそういう場合、今までは安全保障條約の効力が発生しておりませんが、将来そういう同じような事態が生じたとした場合に、この安全保障條約に基く駐留軍の性格を失うのだ、また国連軍としての行動中の行為は、同時にこの安全保障條約に基いて、駐留軍が国連軍としての二重の性格を持つて行動中に——事実は一つでありますけれども、その行動中に起きた行為について、一方においては国連軍としての行動中であるけれども、それは同時にこの一條に基く駐留軍としての行為を含んでおるのである、当然に含まれるのである、不可分である、その性格は失われるものではないということは言えないのでしようか。
○佐藤(達)政府委員 結局村上政府委員からお答えした結論になるのでありますが、安全保障條約なり、それに基きます行政協定というものは、あくまでも裸のアメリカというものとの関係における規律でありまして、国連関係の面におけるアメリカというものは法律的にはこの表面には出ておらないわけであります。従いましてここに規律されておる事柄は、あくまでも国連関係とは離れた関係のみを取上げておる。もとより実際上の問題におきましては、お話のように国連としての行動もいたすわけでありましようが、その面は今申しましたようなことから言つて、法律的には、これははつきりして区別しておきませんと、いろいろな混乱が実際上も生ずるわけであります。また理論上からもこれははつきり区別すべきものである。従いましてこの安保條約及び行政協定はあくまでも国連軍という関係を離れた純粋の駐留軍の面からのみのことを規律しておる。従いましてそれではその反面の国連軍としての関係をどうするかということは、当然問題として残ります。従いまして私どもといたしましては外務省にも十分督励して、これを早く條約発効前に国連との関係を規律するようなひとつのとりきめを結んでもらいたいということを申しましたら、外務省においてもそのつもりでやりますということで、現にやつておるのであります。従いまして現実の問題としては、今いろいろあれこれと御疑問のありますような点は、はつきりと解決されるものと考えております。
○大西(正)委員 この法律の面から見れば、国連軍として行動する場合はもちろん関係ないでありましようが、日本に駐留するものとして与えられた軍隊が、国連軍として行動するのだが、同時にそれが日本に駐留する軍隊の性格を帶びてその性格をあくまで持つてやつている場合、その面だけこの法律で取上げて国連の問題を問題にする必要はないのじやないでしようか、その面は全然なくなりますか。国連軍として行動すれば、この安全保障條約によつて日本に配備された軍隊としての性格は全然なくなるのでしようか。
○佐藤(達)政府委員 性格がなくなるかどうかということはちよつと私考え違いしておるかもしれませんが、要するに安保條約及びそれに基く行政協定のとらえておる面は、單純なる駐留軍という性格の面をとらえておる、また駐留軍としての行動の面をとらえておる。その駐留軍なるものが、反面においてそれでは国連軍たる性格を持つかどうかということは、実は條約あるいはこの協定の本文では明らかになりませんけれども、しかしたしか吉田・アチソン交換公文でありましたか、それらについて国連関係のことも将来あることはこれは予想されております。予想されておりますけれども、ここにできておる行政協定自身は、駐留軍の配備を規律する條件、その駐留軍とは何かというと、国連軍云々の性格をのけた純粋の形のものを安保條約で予想しておるというふうに考えております。
○大西(正)委員 ですから実際はこういう国連軍として行動する場合などということは考える必要がないのであつて、日本に駐留する軍隊が行動する場合、それは日本に駐留する軍隊の行動であつて、この法律の面から見て、すべてこれに適用されるということになるのでしようか。どうも言葉の表現が悪いかもしれませんが……。
○佐瀬委員長 ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○佐瀬委員長 それでは速記を始めて。
○大西(正)委員 次に前に質問があつたと思いますが、私ちよつと明確にしておりませんので、一点お伺いいたします。それは日本の国が裁判の結果賠償いたしましたときに、その賠償金はアメリカと日本とが、今後つくられるとりきめによつて賠償金そのものを分担するのでありますか。
○村上(朝)政府委員 行政協定の第十八條第三項の(d)にございますが、「前諾号に従い請求を満足させるために要した費用は、両国政府が合意する條件で分担するとあります。この費用は單なる手続の費用のみでなく、賠償金額そのものも含む趣旨に解釈いたします。
○大西(正)委員 この費用というのは、裁判費用ではないわけですね。そういつた賠償金そのものを含めた費用、こういつたわけですか。
○村上(朝)政府委員 賠償金そのものを含めたものであります。 —————————————
○佐瀬委員長 次に平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案に関する質疑を続行いたします。先ほど大西委員の質疑に対する政府の留保答弁をこの機会に求めます。佐藤法制意見長官。
○佐藤(達)政府委員 平和條約第十一條の解釈に関連していろいろお尋ねがあつたそうでありますが、この問題の要点は、非署名国と申しますか、平和條約に署名しておらない国の戰争犯罪法廷と十一條との関係というように了解しておつたのであります。それについてお答えを申し上げますが、この非署名国との関係においては、実際問題としては、これは中国だけの関係になると了解しておるのであります。この中国との関係におきましては、これまた御承知の通りに目下交渉が進められておりますので、その関係で現実的には問題が消滅するものと確信いたしておるわけであります。ただこの観念上の問題としてどうなるかというお尋ねがありますれば、一応それについてのお答えも申し上げなければならぬと存じますが、この関係から出て来る問題は、要するに第十一條にありまする「他の連合国戰争犯罪法廷」という、この「連合国戰争犯罪法廷」という文字の中にある「連合国」という字について、この條約自身の二十五條に定義があがつているではないか、その定義とのかみ合せはどうなるかという問題が、文理解釈の問題として出て来ると思います。この平和條約全体を通覧いたしますと、ほとんど全部「連合国」という文字は裸で出ております。せいぜい各連合国という各の字ぐらいがついて出ておりますが、不幸にしてこの十一條は「連合国戰争犯罪法廷」とつながつて出ておりますために、問題が起るわけでございます。私どもはこの文字としては、これは「連合国戰争犯罪法廷」と、こうつながつて單一の表現と読まざるを得ないのではないか。これは午前中にも御説明申し上げたと思いますが、英文の方から申しますと、二十五條の英文の書き方等からかみ合せてみると、どうもそうならざるを得ないのじやないかということで、一応これには入るだろうということを考えております。考えておりますが、先ほど申しましたように、現実問題はもう目睫の間に解決されると思つておりますから、そうむずかしいことにはならないだろうというのが、お答えの要点であります。
○鍛冶委員 一昨日も質問したのですが、この十一條によつて、日本に預かりまする戰犯者といいますか、その性質ですが、これは日本の犯罪者でないことはもちろんであります。日本の犯罪者にあらざる者を日本国が留置するのは、これは十一條に基くのですが、日本の法律上の地位はどういうことになりますか、日本の犯罪者にあらざる留置人、拘置人でしようが、一番問題になるのは、もしこの人々が新たなる犯罪を犯した場合には、いわゆる前科となるか、そういうことを具体的に……。
○佐藤(達)政府委員 あとのお尋ねで非常にはつきりいたしましたが、これはもとより普通の国内犯罪とは性格の違うものでありますから、前科あるいはその他の裁判等の場合とは全然別のものであります。すなわち前科等の扱いにならないというふうに考えております。
○鍛冶委員 そういたしますと、拘置中に別個の犯罪をかりに犯したといたしますと、これは日本の法律によつて罰することができますが、そのときにこの拘置所からひつぱつて来て、日本で裁判なり、捜査なりができますか、その関係はどうなるのですか。
○古橋政府委員 その問題につきましては、日本の裁判権の行使ができるものと考えております。つまり日本の刑法に触れた者につきましては、刑事訴訟法によつてそれに対する措置ができると考えております。
○鍛冶委員 そうすると、今度は日本の刑務所へひつぱつて来れるのですか。それがわからないのです。
○古橋政府委員 その問題につきましては、現実の問題といたしまして、軽微な犯罪につきましては、在宅のままで、ただ法廷につれて来ることによりまして、裁判をすることも可能だと思います。また必要がある場合には、それを一時日本の刑務所に移すということもできないことではないと思うのでございます。
○佐瀬委員長 刑の執行についてはどうですか。
○古橋政府委員 刑の執行につきましては、これは両立し得ると考えるのでございますが、その刑の執行をいずれを先にするかという問題になりますれば、條約によりまして、その刑の執行を日本で確約しておりますので、まず戰犯の刑の執行をした後に、日本の刑の執行をするのが当然かと思います。
○佐瀬委員長 他に御質疑がありませんか。
○田万委員 先日ちよつとお尋ねをいたしましたが、私だけの気持ではなくして他の委員も同じようなことを考えておられるのではないかと思うのですが、現に戰犯で入つている人のうちで再審を求めたいというような希望を持つておる人が相当おられるのではないかと思うのです。今度かつて戰時中に裁判をしたことに対しての再審ができるというような法律案をこの委員会に持つて来ておりますが、それと同様な立場で、やはり負けた国ではあるけれども、無実の罪に泣いておるというような人間がもしあるとすれば、それを向うさんの方でも再審してもらつて、一日も早く釈放してもらうということが、人道上の問題でもあり、正義の公平の観念にも合うと思いますが、実際問題として、現に拘留を受けて、刑務所に入つておる戰犯の方で、無実の罪に泣いておるというような事実を確認されたようなことはございませんか。ないと断言できるかどうか。これをちよつと御答弁願います。
○古橋政府委員 現実の問題といたしまして、全然無実の罪であるという訴えを聞いていることにつきましては、私まだ承知していないのでございます。引渡しを受けました者の書類その他は全部まだ参つているわけでありません。引渡しの途中でございまするし、現に向うの監督のもとにやつているわけであります。 再審という問題につきましては、前会刑政長官からお答え申し上げましたような次第でございまして、その個々の裁判につきましては、あるいはいろいろ問題があろうかと思いますので、そういうようなものにつきましては、本人から刑の執行について疑義の申立等の條文がございます。それらを十分活用いたしまして、その事情は十分聞きまして、それによりまして、赦免、減刑等の條文の活用によりまして、実効を得て行きたい、かように考えているのでございます。
○田万委員 この法案が通過したあかつきにおいては、われわれの方で監督なり、囚人に対していろいろな取扱いをせなければならぬと思いますが、その際に、その衝に当られる方において具体的にそういう無実なようなものがあるかないかという実態調査をせられる御意思が、あるいはないかもしれませんが、私はあると思うのです。もしそういう事実があつた場合には、いかなる措置をなされるお考えであるか、これもあわせて承つておきたいと思います。
○古橋政府委員 その点につきましては、ただいま申し上げましたような方法によりまして、十分本人たちの言うことも調査いたしたいと思つております。
○佐瀬委員長 委員長としてお伺いしておきたいのであります。再審制度の問題については、今の政府委員の説明でわかりましたが、刑事訴訟法上いわゆる当然無効という場合が認められるわけでありますが、ただいま田万委員が質問したような無罪の場合において、しかもそれが人違いであるというふうな明白な証拠が後日收集されて、従つてその判決は刑事訴訟法上いわゆる当然無効であるという場合には、政府としていかなる措置をとられるか、あるいはその場合の措置について、本法案の立案過程において、進駐軍関係との折衝があつたかどうか、その点を明らかにしておきたいと思います。
○古橋政府委員 その点につきましては、ただいま申し上げましたような大幅な赦免、減刑等の活用によりまして目的は達せられると考えたのであります。もちろん裁判のそういう調査等につきましていろいろの問題がございますので、この條文をつくりますまでには十分先方といろいろな打合せ、討議を重ねたのでございます。
○佐瀬委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ、両案に対する質疑はこれをもつて終局いたします。 これより平和條約第十一條による刑の執行、及び赦免等に関する法律案を討論に付します。討論の通告がありますので、これを許します。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 私は自由党を代表いたしまして、原案に賛成いたすものであります。 この法案の内容個々につきましては、われわれ国民として深く考えさせられるものが多々ございます。ございますが、こまかい議論をするよりも、まず外地につながれておりますいわゆる戰犯といわれる人々を、一日も早く国内に呼びもどすということが何よりのことと考えますので、それにはこの條文をつくることが先決問題でありますから、これをつくつて早く呼びもとしてもらうことを考えたいと思います。さらにそのほかには、この法律が施行せられましたならば、この施行に対して、ともに深く考えるところがありまして、これを生かすべきものは生かし、また盡すべき手段があればあらゆる手段を盡しまして、一日も早く、一人でも多く自由の身にしてあげることをとりはからいたい、かように考えますので、一応この原案に賛成いたします。
○佐瀬委員長 大西正男君。
○大西(正)委員 改進党を代表いたしまして、原案に賛成いたします。 改進党といたしましても、ただいま自由党の鍛冶委員が申されましたように、また本員も質疑の際に申し上げましたように、海外において服役をされておる方々をすみやかに内地へお引取りを願うように希望いたしますとともに、それをするにはこの法律が前提だということ手痛感するのであります。またこの法案の中には、たとえばいわゆる刑の性質に関連をいたしまして、いろいろの問題が含まれておると思うのでございます。たとえば戰犯人の方方を收容する場所の名称の問題、あるいはまたその執行に関しまして国内法における執行停止に相当する、またこれに類するような方法が、法の正面から言いますと取上げておらないというような遺憾な点がなきにしもあらずでございます。しかしながらこの法案がいち早く成立するということが、現在の状況におきまして先決問題であると考えますので、これらの問題につきましては、逐次是正をされることを期待いたしまして、この法案に賛成をする次第でございます。
○佐瀬委員長 田万廣文君。
○田万委員 私は日本社会党を代表いたしまして原案に賛成するものでございます。但しここで一つ申し上げたいことは、二回にわたりまして私が質問いたしました点でございますが、戰犯と一律に言われておりますが、戰犯に値せざる者が戰犯として間違つてこういうところにつながれておる人がないとも保証しがたいようなことを、私どもはほのかに聞知しておるのであります。この委員会に、御承知の通り戰時中に連合国人に対して誤つた裁判がなされたかもわからない、またそういう事実があるということを前提として再審をする法律案が出ておるような実体から考えまして、私は人道上の問題から言つても、また法律の公平正義の観念から申し上げても、負けたわれわれの国ではありますけれども、ただいま申し上げた点から、連合国においても戰犯に値しない無実の、罪なき人間を釈放するということは、これは当然の義務だと考えておるのでありまして、この法案が通過したあかつきにおいて、政府においてはすみやかにその公正妥当なる、しかも強力にして卑屈でない態度をもつてこの問題の解決に当られんことを希望しつつ、本案に賛成する次第であります。
○佐瀬委員長 田中堯平君。
○田中(堯)委員 共産党を代表いたしまして本案に反対意見を表示いたします。 前の方々は皆御賛成であり、また戰犯の親類縁者、縁故の方々としてみれば、実にこれは情において私どももまた反対しがたい感じがするのでありますが、以下述ぶるような理由によりまして、どうしてもこれはまるのみができないわけであります。 戰犯を処罰するということは、申すまでもなく第二次世界大戰前には、戰時法規、国際法規に違反をして残虐、非人道行為をやつた者を処罰するということだけであつて、侵略戰争を計画し、これを遂行することに重要な力となつたというような者までをも戰犯として処罰するという例を開いたのは、第二次大戰後であります。ところでこの最初に申しました非人道行為、残虐行為というものは、これは第二次世界大戰において実に大幅なものが、まつたく目を驚かせるものが生じたのでありますが、ことに日本、中国の戰争におきまして、中国では前後八年間に驚くなかれ一千万の犠牲者を出しておるということを郭沫若氏が報告しております。あの南京の残虐事件のごときは、ヒトラーがやつたマインネツクにおける集団虐殺事件と相並んで、世界人類史上まれだと言われておるような、そういうことも日本がやつておるわけであります。その他比島においても目をおおうような残虐行為が行われておる。われわれはやはり人類の一部分として、将来このような残虐行為、ことに戰闘員ではなしに、老若男女をわかたず、その戰列のうしろにおるあるいは周囲におる者まで被害を受けた。無差別の殺戮を受けた。そういう残虐が人類の上に見舞つて来ないように、これを保証する意味におきましても非人道及び残虐行為に対しては、やはり苦しかろうとも相当の責任を負わなければならぬということを私どもは考えるのであります。 それからあとで申しました第二次世界大戰後における侵略戰争の首謀者をA級として処罰するというこの思想につきましては、これは全く私ども賛成であつて、多くの日本人、ことに政府の方々は、思うにこのあとの方の戰犯ということについては十分なる理解がないのではないかと私は疑わざるを得ない。よく聞くことは、日本が戰争で負けたから処罰を受けるのである、勝てば官軍負ければ賊軍としてやられるのであつて、もし勝つたならばこれは反対に相手方の戰争首謀者をやつつけたに違いないというような、こういう相対的な観念で戰犯観念を律しておられる。ところがたいへんな間違いでありまして、第二次世界大戰後に戰犯問題を取上げたという思想は、これは人類史上もはや侵略戰争なるものをなくしよう、侵略戰争を計画すれば、かくのごとく厳罰に処するぞという一つの大きな制裁として、人類史上から侵略戰争そのものをなくしようとする大理想から、このような刑罰観念が生れて来ておるのであります。従つて負けたからやられておるというような、相対的なものではないのでありまして、今や第三次世界大戰、第三次侵略大戰が顔をのぞかせておるというような今日といたしましては、これはやはりこのような者がどんどん赦免をされて、そうしてまたぞろ第三次世界大戰を計画する、あるいはその中心人物になるというようなことがあつては、まことにこれは危險千万なことでありまして、(「そんなことがあるか」と呼ぶ者あり)そういうことがあるかということを、今どなたか言われたけれども、実際私どもは情報としては数々持つております。すでにいろいろ実施交渉が進められておるというような情報も握つておる。そういうふうなことになりましようならば、これはわずかに千何人の戰犯を救うということのために、今度はまたぞろ何百万、何千万という人が犠牲にならなければならないような、大きな惨事の導火線ともなりかねないのであります。そういうようなわけでありまして、私は日本人同胞としましては、情において忍びない点もありますけれども、これはやはり本法案の目的が、十分に戰犯の理念をわきまえておらないところと、それからまた積極的には、来るべき大戰の準備にも関連をして立案されたものである。かように解釈しまして、私はとうていこれに賛成することができないのであります。
○佐瀬委員長 これにて討論は終りました。本案を表決に付します。本案に賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○佐瀬委員長 起立多数、よつて本案は可決すべきものと決しました。 なおお諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐瀬委員長 御異議なければさようにとりはからいます。 本日はこの程度にとどめ、明十五日は午前十一時より会議を開き、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案を討論に付し、採決することといたします。 これにて本日は散会いたします。 午後三時二十三分散会 ————◇—————