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13回国会衆議院1952/04/11

法務委員会 第30号

発言数
179
登壇者
13
会派数
4
開催日
1952/04/11

会議録

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 これより会議を開きます。  日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案を議題といたします。質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。山口好一君。

山口好一自由党

○山口(好)委員 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案に関しまして二、三質問いたしたいと思います。  まず第一條でありますが、これはまた全般に通ずる問題でもありますが、その第一條の一番問題になりますのは、「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き日本国内にあるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍の構成員又は被用者が、その職務を行うについて」こうなつております。この「職務を行うについて」という言葉は、非常に問題になるだろうと思うのでございます。まず第一に、次の質問をいたします。加害者が国連軍の一部としての英軍とか仏軍とかいうような場合は、本法の適用があるかないか、これを御質問いたします。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この法律案は、申すまでもなく、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事に関する特別法律でありまして、国連軍としての行動については、この行政協定そのものは関係ございませんので、この法案も国連軍としての行動については規定をいたしておらない次第であります。

山口好一自由党

○山口(好)委員 それでは次に伺いますが、米軍は実際の場合として、安保條約に基く駐留軍として職務を行うという場合に、国連軍の一部として職務を行う場合があると思うのでありますが、アメリカ軍として行う場合と、国連軍の一部としてその職務を行う場合と、この両者の区別はどういうふうにしていたすか、被害者の日本国民においてこれを判定する権限があるかどうかということを伺いたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この法律の第一條の適用があるかどうかは、結局日本の裁判所の判断を受けるわけでありまして、日本の裁判所において判断することになつております。

山口好一自由党

○山口(好)委員 日本の裁判所が、その独自の見解において判断ができる、こういうようにはつきり伺つてよろしいのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 さようであります。

山口好一自由党

○山口(好)委員 さらにお尋ねをいたしますが、それでは米軍が作戰のため、たとえばB二九を飛ばしまして、不幸にして墜落したというような場合に、本法による国家補償はできないと思いまするが、演習中に過失によりまして墜落をして、日本国民の民家なり人畜なりに被害を與えたというような場合には、損害補償をしなければならないと思いますが、この作戰と演習との区別及びその時期などは、どうしてこれを判定することに相なりまするか、この点を伺います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 駐留軍が日本国内において演習中に、飛行機の墜落等の事故がありました場合は、これは明らかに駐留軍としての行動として認められると思うのであります。ただいま御指摘になりましたように、朝鮮の戰線に飛んで行く途中墜落したというような場合は、これは国連軍の行動であつて、米国駐留軍としての行動ではないということになるかと思うのであります。駐留軍としての行動であるか、国連軍としての行動であるとかいうことは、結局具体的の場合につきまして、日本の裁判所において判断するほかはないかと考えております。

山口好一自由党

○山口(好)委員 何か事例などをあげますとはつきりいたすのでありますが、この問題もなかなかむずかしい問題を生ずるのではないかと思います。日本の裁判所におきましては、やはり自主性をもつて、はつきりとこの点は日本国民の権利を擁護するということに努めていただかなければならないと思つております。  さらに第三に御質問いたしますが、この法律の第五條にあります動産の強制執行の問題ですが、この動産の強制執行にあたり、この法案では、執行吏にその物を渡すべきことを求めなければならない、こう書いてあります。そこで動産の引渡しを求めました場合に、米軍がその物の引渡しを拒んだときはどうするのであるかという問題があると思います。また執行吏は米軍の施設内に立入りをすることができるかどうか、これができなければ、強制執行は役に立たないことに相なりまするが、この点を明確にいたしていただきたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 行政協定の十八條の第六項の(b)に「合衆国軍隊が使用する施設及び区域内に日本国の法律に基き強制執行を行うべき私有の動産(合衆国軍隊が使用する動産を除く。)があるときは、合衆国の当局は、日本国の裁判所の要請に基き、それらの財産を差し押えて日本国の当局に引き渡さなければならない。」という規定がございまして、この法案の第五條は、この行政協定のただいま申しました規定をそのまま民事訴訟法の特例として規定いたしたわけであります。従いまして裁判所の要請がありました場合に、合衆国側の当局が引渡しに応じないということはまずないと考えられますし、万一さようなことがありましたならば、外交手段によつてこの協定の履行を求めることになるかと思います。

山口好一自由党

○山口(好)委員 もう一つ軍事施設内に立ち入りすることができるかどうかという点について……。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この合衆国軍隊が使用する施設及び区域内に日本の公務員が立ち入れるかどうか、立ち入つて施設内において職務を執行できるかどうかということでありますが、もとより施設または区域の長の承諾があれば、入つて執行吏その他の公務員が職権を行使することができるわけであります。施設内に立ち入りませんでも、この五條の規定及びその裏づけとなつております行政協定の規定によりまして、執行裁判所の要請によりまして、合衆国側の当局において執行の目的物を差押えて日本側の執行機関に引渡すということになつておりますので、強制執行の目的は達し得るかと考えます。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 今の問題に関連して一、二お尋ねしますが、国連軍とそれから現在の占領軍、そして駐留軍というようなものは区別があるし、また区別されなければならないという趣旨の御答弁がありました。そこでお尋ねいたしますが、現在国連軍の作戰軍というような軍隊は、どういう権限に基いて日本に駐留し駐屯し、あるいは作戰行動を日本においてやることができるのか。その説明をしていただきたいと思います。

平賀健太検事(民事法務長官総務室主幹)

○平賀政府委員 これは日米間の交換公文でもつて、日本が国連軍の行動について協力をするということを約束しておることに基くものであると思いますが、詳細は外務省の政府委員からお答えした方が適当じやないかと思います。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 交換公文によるという日米間の條約並びに行政協定に基く、いわゆる駐留軍、これは今は、御意見でもありますから、他の適当な機会に適当な方に聞くことにいたしますが、それでは現在占領軍は、日本の降伏條件に基いて占領しているのであつて、それ以外に占領軍はないわけでありまするが、その占領軍が朝鮮その他において国連軍の作戰部隊として、日本を明らかに基地とし、日本において作戰行動に重大な関係のある広汎な作戰行動をやつておると思うのでありまするが、その占領軍が国連軍の作戰部隊として、今とりわけ朝鮮などに出動しているという法的根拠、権限というものは、どういうものなのか。その点を確かめておきたいと思う。

平賀健太検事(民事法務長官総務室主幹)

○平賀政府委員 その点も、外務省の政府委員からお答えした方が適当ではないかと思います。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 そうすると、山口委員から質問されたように、日本において日本国民が物的、人的に受けているいろいろな損害というものが、占領軍、あるいは国連の作戰部隊としての米軍によつてなされておるのは、きわめて明瞭なことであります。そして御答弁は、国連軍と駐留軍との区別があるのであるというようなことを言われたのですが、そうすると、先ほど区別があるとお答えになつたのは何ら根拠がない。あるいは根拠がきわめて不明確なものに相なると思うのですが、先ほどの御答弁をなすつた方の、その点についての御説明を聞きたいと思う。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動と、駐留軍としての行動、これは外形だけで抽象的に区別はできないかと思いますが、個々の具体的な場合につきまして裁判所において判定するよりほかはないと考えるのであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 それではりくつは別といたして爆彈を積んで朝鮮に運ぶか、朝鮮でその爆彈を落すという目的で日本の基地を飛び立つた飛行機が、たとえば埼玉県下の近郷においてその操縦の都合で爆彈を落したというような場合は、加害者は占領軍ということになるのですか、あるいは国連作戰部隊としての米軍だということになるのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動に該当すると考えます。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 そういう場合には、損害を受けたものは、だれに対して、いかなる理由で、損害の補償を要求することができるのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動につきまして別に協定なり立法なりができますれば格別でありますが、この法案及び日米間の安全保障條約第三條に基く行政協定は、国連軍としての行動については適用はないと考えます。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 そうなると区別がつけられなければならないが、現実においては区別がむずかしいというようなことになつて、しかも裁判所が自主権を持つて判断するというけれども、それは論理的な建前だけであつて、事実にはその判断の基礎に何らの権威もないということになります。そうなつてみると占領軍が同時に国連の作戰部隊である、あるいは占領軍自体の都合による作戰行動によつて與えられる被害、損害というものは、これは無制限に、ほとんど泣寝入りの状態でやられなければならないということに相なると思うのですが、その点はどうなのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 ただいま申し上げました通り、国連軍としての行動による損害について、別に何らかの措置を講ずべきかどうかは別問題といたしまして、この法律案は国連軍としての行動には関係がない、かように御了承を願いたいのであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 この法律にはそのことは触れられておらないから、その盲点が出て来ると困るのであつて、いかにまことしやかにとりきめましたとしても、最近目に余る日本人の被害が、日本の国内において続出しております。それに対して何ら法的な補償の裏づけがないということになつておる。しかもこの法案にはそのことは除外されておるということになれば、これはきわめて不安であり、不都合だと思うからそのことをお尋ねするのであつて、この法案に関係がないということではあなたの答弁は済まされないと思う。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この法律案はたびたび申し上げましたように、日米安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う特別法でありまして、国連軍の行動につきましては、この行政協定が触れておりませんので、従いましてこの行政協定を受けて立案いたしましたこの法律案におきましても、国連軍としての行動については触れていないということに御了承願いたいのであります。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 委員長として申し上げますが、加藤委員の質疑は、要するに本案の審議上、国連軍の日本国民に対して惹起した災害に対していかなる補償制度があるか、また将来それに対する立法措置でもあるのかという点に対する御質疑と思うのでありますが、これはかなり本案に並行して勘案すべき問題であろうと思いますから、もし政府において今日までそれがいかに処置されて来ておるか、また将来それに対してどう措置すべきかという方針なりがおありであるならば、この際御説明願つた方が、本案の審議上都合がいいのではないかと考えます。もつともただちにその点に対する御説明ができなければ、他の機会にその点を御説明願いたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍の関係につきましては、私ども詳細に存じませんので、他の機会に外務省の政府委員からお答え申し上げたいと思います。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 その点は、占領軍と国連軍の区別がないということになれば、占領軍——これは駐留軍になるのでしようが、これが国連の作戰行動を明らかにやつているのでありまして、占領軍ないし駐留軍の與えた損害ということについての補償だけがここにかけられているとするならば、きわめて不十分であると思うし、占領軍ないし駐留軍の区別があるとするならば、その区別がはつきりされなければ、今お答え願つたような御答弁では、私はまだその意味で、この規定外に実に重要な盲点が隠されているといわなければらないので、委員長が御指摘になつたように、重大な問題であり、この法案の審議と関連して、ぜひ明らかにされなければならないのだと思つて、私は質疑しているのです。  では最後にお尋ねいたしますが、そうすると先般B二九が埼玉県下、東京都下に自分の操縦の都合で爆彈を落した、あるいはまた飛行機が墜落した、これについて政府は、最高のできるだけの補償をいたしますと言つたのですが、その最高のできるだけの補償という法的基準というものはどこに求められておるのか、その点について御明答を願いたいと思いますし、もしそういう法的基準がなければ、最高のとか、できるだけのとか言つたところで、それはいいかげんな、主観的なものであつて、とうていそういうふうないいかげんなごあいさつだけでは、被害者たる日本の国民は人的にも物的にも承服しがたいと思うのですが、その点どうなのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 占領中における占領軍ないし国連軍の行動による被害につきまして、政府が法的に損害賠償の責めに任ずるという根拠はないのであります。ただいま御指摘になりましたようなお答えをいたしたとしましたならば、それはいわゆる見舞金ということではないかと考えます。こういう事故につきまして、閣議である程度の基準をつくりまして、その基準に基いて見舞金を支給する例になつておるようであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 占領中は国連軍ないし占領軍の與えた損害について、これはノー・スピーキングだ、何とも言われないのだ、また政府その他についても、その点については法的根拠はない、国連軍についても賠償などは求められない、占領軍についても求められない、こういうことになりますという御答弁ですが、そういうふうなまことに不届きな状態が、講和発効後、この安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案の中にも、依然として実体占領の継続というものが、今の損害賠償等々の問題に関連してだけでも、そのまま存続させられておつて、先ほど来質疑いたしております点について、ひとつも明確な責任の所在と補償の道筋というものが、法的に制度化されておらないのであります。これはまことにゆゆしい重大事だと思うのであります。先ほど委員長の御意見もありましたように、責任を持つた明確な答弁をぜひなされる必要があると思います。

角田幸吉自由党

○角田委員 関連して村上政府委員にお尋ね申し上げたいのでありますが、国連軍と将来あるべき駐留軍との区別でありますが、これは外務省当局にお尋ねになつた方がよろしいのではないかということでありますが、むしろ私はこの区別は法務府ではつきりすべきではないか、これははつきりできるのではないかと思います。というのは、日本に米軍が将来駐留いたしましたときのあらゆる行動は駐留軍として見る、ところが軍でありますから、出動命令に伴つて命令服従の関係がある。従つて国連軍として出動命令であつた後は国連軍として見るべきだ、こういう法的解釈が成り立たないものかどうかお尋ねいたします。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 私の言葉が足りませんでしたが、駐留軍としての行動か、国連軍としての行動かの区別を外務省の政府委員からお答えすると申し上げたつもりではなかつたのであります。国連軍の行動に伴う損害について、どういう措置をとるかという点についてのお答えを申し上げたのであります。国連軍の行動と駐留軍の行動との区別につきましては、ただいま角田委員が仰せになりましたように、区別はできるものと考えております。

角田幸吉自由党

○角田委員 大体ただいま私が申し上げました質問の通りの法律解釈ができるという御見解であるかどうか、この際法務府の御意見を承りたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 角田委員の仰せになりましたような法律解釈はできると考えます。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 ちよつと関連して……。おそく来たので、ダブつておつては恐縮ですが、この間の横田基地における椿事は、政府見解では国連軍の椿事ですか、それとも占領軍の椿事ですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 横田基地の事故につきまして、私は事実関係を詳細に知つておりませんので、ただいまここで申し上げるわけに参りません。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 そういうことはまるで遁辞ですよ。事実を知つておるおらぬじやないのです。あれほどの問題が起きたというだけは、日本人はだれも知つております。政府が知らぬわけはない。私が聞いているのは、事実の内容がどれほどの被害であつたか、どれほどの規模であつたかということを聞いているのではないのです。あれは国連軍の椿事であるのか、それとも今占領軍がおるから、占領軍としての椿事であるか、これを聞いているわけです。これは本法案に大きな関係があるわけです。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 新聞記事等によりますと、朝鮮の戰線に飛び立つ途中であつたかのように記憶いたしますが、それであるといたしますと、国連軍としての行動になるかと考えますが、正確な事実を存じませんので、ここに明確な御答弁をいたしかねる次第であります。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 私も多分そういう御見解だろうと思うのです。そこで問題になるのは、このような法案をつくつてみましても、大規模な損害が生ずるような椿事、事故というものは、これはもうみんな国連軍の名において行われることになる。というのは平時、動員状態でないようなときに、そういう大きな被害が生ずるような事故が生ずることはめつたにない。だからこの法案はあつてもほとんど空文に帰するということになりましよう。だから加藤委員からしつこくお尋ねしたように、一体国連軍が被害を與えた場合にはどうしてくれるかという大きなものはすつかり抜かされて、ただめつたに起りもしないような部分を規定したのが、本法案だということになるのでありますが、さように受取つてよろしいですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 必ずしもそういう結果になるとは考えておりません。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 平時なれば、何か大きな火薬庫が爆発するとか、これはめつたにないことだ。飛行機が爆彈を積んで日本の上空を飛ぶということも、これもめつたにないことだ。だからもうほとんど言うに足る事故は起らない。現に過去七箇年間の占領の歴史を見てもそれほど大きな被害は起きておらぬ。やつぱり朝鮮作戰が起きて以来ああいうふうな椿事がきびすを重ねて出て来ておるわけです。だから国連軍の名に隠れて——名に隠れてと言つては言い過ぎだが、国連軍の名において被害が起きる場合が大部分であり、また規模も一番大きいと思われる。将来もそういうふうになると思います。また国連軍と将来の駐留軍との区別もはつきりしないような状態であつて見れば、これはもうはつきり国連軍の名によつて事故が起きたというふうに解釈することの方が、両政府にとつて有利でありましよう。だからほとんどこの法案は適用の余地がない。まつたくちつぽけな問題だけがこの法律にひつかかるのであつて、大きな問題はみな国連軍ということで素拔きにされるというおそれがあるのでありますが、その辺はどうなんです。これはもうわれわれ日本人として、政府も民間もありやしない。日本人としてはほんとうのことを考えなければならぬ。一体どういうお考えですか。国連軍のことについては将来何とか規定をする用意があるのですかないのですか。それをひとつお聞きしたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動による事故につきまして、この日米間の行政協定と同様な協定が必要であるかないかという点に帰着すると思うのでありますが、その点につきましては先ほど申し上げました通り、他の機会に外務省の政府委員からお答え申し上げるのが適当かと考えます。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 第一條の終りから三行目の「違法に他人に損害を加えたときは」というのですが、これはどうなんでしよう。違法にというのは、まあ読んで字のごとくなんだが、もちろん事故は入るのでございましようね。過失は……。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この違法と申しますのは、国家賠償法の一條に使つてありますのと同じ趣旨でありまして、要するに不法行為による損害の場合を指しておるわけであります。故意、過失が要件であるかないかという点につきましては、そのすぐ下にありまする、「国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合の例」によるわけであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 関連ですが、そうなると、先ほど私が引例した実例でお尋ねいたします。横田基地を飛び立つた米軍の飛行機B二九が、東京都下あるいは埼玉県下で爆彈を自分の都合で落したというようなことになると、これの違法との関連が問題になりますが、あの場合に不可抗力だというようなことになつた場合は、損害の賠償はできなくなりやしないか、これが第一段。それから不可抗力あるいは違法にというような認定は一体だれがするのか。法律的には、違法とはかくかくのこと、不可抗力とはかくかくなる場合ということは言われ得たとしても、具体的に起りました被害について、違法であるとかあるいは不可抗力であるとかいうような認定というものは、日本の裁判所等にはあり得ないことが事実上予想されますが、その点はどうなりますか。  それからついでにお尋ねしますが、一体講和発効後に、かような法律案を提案しておりまするが、この点について政府はどのくらいの予算を予想されたものとしてお組みになつておるか。その点もお尋ねしておきたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 不可抗力による事故の場合には、日本の政府機関の行為による損害の場合におきましても、日本国内法上、損害賠償の責任がないわけであります。従いましてこの法案におきましては行政協定の趣旨を受けまして、あたかも駐留軍の行為が日本国の公務員の行動から生じた場合と同様に、日本国の法令に従つて賠償するということにいたしておるのであります。で、第一條は、行為者の故意または過失による損害であります。物の瑕疵のために損害を生じた場合は、第二條に規定してございます。第二條の場合は、必ずしも故意、過失を要件としない場合があるわけであります。  それから違法であるかどうかという判断でありますが、これはもとより日本の裁判所におきまして、自主的に判断をいたすわけであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 その予算の点はどうなんですか。

平賀健太検事(民事法務長官総務室主幹)

○平賀政府委員 この行政協定並びにこの民事特別法に基きまして、国に賠償責任が生じますので、相当額の賠償金が予算として必要となつて来るわけでありますが、この賠償金の支拂いの関係の事務は現在特別調達庁と申しておりますが、講和発効後は調達庁となる予定でありますので、この調達庁が所管することになつておりまして、そちらの方で予算措置を講じておると思うのでございます。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 今の村上政府委員の説明をなお明確にさしておきたいのですが、この第一條、第二條を通じて、この賠償責任の原理は、過失主義か無過失賠償主義かという観点から、整理した説明を願いたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 その点は日本国の国家機関の行為による損害の場合、及び日本国の占有し、所有し、または管理する物の瑕疵による損害の場合に関する日本の国家賠償法並びに民法等の法令の定める通りでありまして、必ずしも過失主義、無過失主義とはつきりどちらか一方に片ずけるわけには参らない場合もありますが、御承知の通り日本の民法、国家賠償法は原則として過失主義をとつておりますので、その結果、この法案第一條、第二條を通じた考え方といたしましても、原則として過失主義ということになると考えます。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 その場合、その過失の立証責任はいずれにあるかという点も、この際明確にしておきたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 立証の責任は、これも日本の国家機関が、国家賠償法、民法等によつて責任を負う場合、国家機関の行為について責任を負う場合と同様でありまして、原告に立証責任があると考えます。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 なお権利の侵害なくして賠償責任があるかないかの点もついでに明確にしておきたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 その点も日本の国家機関の行為等による国の賠償責任に関する民法、国家賠償法等の解釈と全然同一であります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 委員長の補足的な質疑といいますか、御意見で明確になつたのですが、これでは先ほどの委員長の意見にも関連があるのであつて、立証責任ないしは認定の問題になつて来ますと、これらの條文から、日本国民が莫大な損害を受けましても何ら補償の実質を裏づけられておらないということになつて参る。またそういうことをこの法案から予想しても事実無理からぬような法案になつていることをここに指摘するのでありますが、先ほどの質問の発展で、そうするとこの損害を賠償することについての日本国政府の予算ですが、大体こんなものを日本がしりぬぐいして日本国民に補償する。日本国民は、その補償財源というものを日本国民の血税でまかなうということになれば、これはまつたくばからしくて、また何をか言わんやということになつて参ります。しかしそれはさておきまして、その予算は調達庁の中の予算に組まれておるというのですが、別個に予算の項目なりがあるけれども、主管は特調だから特調の方に聞いてもらいたいという遁辞なんですか。その点を確かめておきたい。

平賀健太検事(民事法務長官総務室主幹)

○平賀政府委員 この請求権の処理に関する事項は、調達庁が処理することとなる予定でございます。従いまして予算を編成いたします際には、調達庁の所管の予算として編成されることになります。ただいま調達庁と大蔵省との間で折衝をしていると私考えます。相当額の賠償金が予算の中に組まれるのではないかと思つております。ただ問題は将来のことでありますために、どの程度事故が起るか、被害額なんかも個々の具体的な事件なんかできまつて来るわけであります。詳細のことは調達庁の方でお答えした方が適当であると思うのであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 先ほど来質疑になつて、駐留軍が国連の作戰軍と区別があるのかないのか、どこで区別するのかという問題、それで国連の作戰軍ということになつたりしておれば、それは占領軍でもなく、ましてや駐留軍でもない。大体駐留軍なり占領軍が、よその作戰行動の基地に日本をしておくということの根拠が明らかになつていないのに、吉田首相の方針とやらで、国連協力とか申して、このような無権利の状態に日本人を引落しておいて、こういうことをさせておくというのが、大体けしからぬのです。そういうふうなことを受くべき義務はない。日本は敗戰諸條件に従つて、敗戰国民としていたし方ない義務は履行しなければならないのですが、義務でないものを引受ける義務は絶対にない。しかも與えられた損害には泣寝入りであつて、どこへもしりの持つて行きどころがないというようなばかげたことにされるわけはないのだが、吉田政府がそれをしたということはまことにけしからぬと思う。これはいたし方ないから私は次の質問をいたしますが、こういう状態になりますと、これは駐留軍ではないのだ、駐留軍の行為じやない。ましてや「違法に」というようなことになつて、挙証責任あるいは事実の認定になつて参りますと、日本人は受けた損害に対してほとんど実質的な補償がないのである。私は政府がこういうようなことをかねがね計画しながら、それは将来のことだから、予算の点についてもいまだ折衝中だというようなことは、これはあまり大したことはないというようなことを予想して、日本国民をばかにした心がけが予算の編成の上に端的に現われておると思う。まことに潰憾きわまるし、不当きわまると思う。  最後に、特調も出て来ないし、大蔵省も出て来ない。法務の独特の所管事項について、この問題に関連があるからお尋ねいたします。こまごました前提は省略して、要点だけお尋ねいたしますが、国連軍の作戰に有害なる言動と、それから占領軍の占領目的に有害なる行為というものは、論理上、制度上、嚴密に区別され得るものであり、またされなければならないものだと思うのであります。しかるにその区別たるや、まつたくでたらめであり、区別なき取扱いをして、三百十一号ないし三百二十五号の占領目的違反行為として幾多の人間が処罰されておる。ここではこまかい事例を一々あげる煩を省略いたしますが、こういう取扱いの中に日本国民が嚴重な処罰をされておるということについて、法務府はどういうお考えを持つておるか、そうしてまたそれに対して法的な人権の保障は日本国民にいかなる制度として與えられておるのか。あなたが言われた国連軍と占領軍との区別、あるいは国連軍と駐留軍との区別は、現にあるし、なければならないといつたことと関連してお尋ねしておきたいと思います。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 加藤君に申し上げますが、さような点についてかなり問題があると思いますので、これは他の政府委員から別の機会に聞くことにしまして、さしあたつては本案に対する事務当局の答弁のできる範囲内について質疑を続行願いたいと思います。ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 速記を始めてください。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 占領目的阻害行為をして処罰を受けた事実があるといたしますならば、もとより占領軍としての行動に関連があるものと私は考えております。

角田幸吉自由党

○角田委員 今この法案を上げるについて最も重大な点だと思いますので一点だけ伺います。今の駐留軍の日本国民に與えた損害賠償の問題は、それが過失なりやいなやの認定は実際上むつかしいと思う。ことに駐留軍であつたものが国連軍として侵してしまつたというようなものはまつたく不可能に近いのではないか。そこで法務府におきましては、この問題について全般的に無過失損害賠償にすべきだということをお考えにならなかつたかどうか、もし無過失損害賠償にするとどういう不都合があるとお考えになるか、そういうことについて御審議をされたことの内容をお漏らしを願いたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 角田委員の御指摘になります通りに、日本の国民に與えた損害賠償の問題は、その行為が過失であるかどうか諸般の立証が困難であることは考えられるのであります。これを無過失賠償責任を負うということにいたしますと、行政協定第十八條に規定しております範囲外のことになるわけでございます。行政協定の十八條は「日本国の被用者の行動から生ずる請求に関する日本国の法令に従つて審査し、且つ、解釈し、又は裁判する。」こう規定しておりますので、日本国の国家機関の行為の場合に無過失責任を認めておりませんから、行政協定十八條の趣旨よりも広くなるわけでございます。従いまして十八條の中で日本政府が賠償いたしますと一定の割合で合衆国が負担をするわけでありますが、その負担金等もアメリカ合衆国に対して請求できないことになりはしないかという点もあるわけであります。  なお一般の不法行為の場合と比較いたしましての権衡の問題も考えなければならぬと考えまして、無過失賠償責任の規定をとらなかつたわけであります。

角田幸吉自由党

○角田委員 そのことは私も了承しておるので御審議の内容をお尋ね申し上げたいと思つておつたのでありますが、今度出しております法律の中に無過失損害賠償ということを特に規定してはいけないものであるかどうか、そういうことについて御審議があつたかどうか、それをお尋ねしたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この法案を立案いたします経過についてのお尋ねでありますが、行政協定の十八條を受けまして「日本国の被用者の行動から生ずる請求に関する日本国の法令」と同じ内容のものにしたい、かように考えまして最初から無過失賠償責任ということは研究いたさなかつたのであります。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 ちよつと関連して。さつき私途中でとられたので、もう少し聞いておきたいのですが、「違法に他人に損害を加えた場合」という第一條ですが、これは不何抗力の場合には責任はないというのであるし、過失は含むということである。国内法と同様の建前で運用するということですが、してみると原告の方で加害者の方に過失があつたということを立証しなければならない関係上、どうしても駐留軍に対していろいろと捜査や捜索をやらなければならぬということになる。そういうことは日本の裁判所はやるのでありますか、どういうふうな手続でそれをやりますか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 民事事件につきまして日本の裁判所が証拠を調べる際におきまして、合衆国側の協力を得なければならぬ場合があると考えるのであります。そこでこの行政協定の十八條の六のCに「合衆国の当局は、日本国の裁判所における民事訴訟のため証人及び証拠を提供することについて、日本国の当局と協力しなければならない。」という規定が設けられておるわけでございますが、この協定の具体的内容といたしましては、あるいは裁判所が駐留軍の使用する施設または区域の調査、その他の関係機関に対して民事訴訟法の規定によつて必要な調査を嘱託し、あるいは証拠となるべき書類や検証物の送付を嘱託する、あるいはまた駐留軍の要員を証人あるいは鑑定人として取調べる必要がある場合には、証人または鑑定人として出頭させることについて、駐留軍当局が協力するということ等を含むと考えるのであります。この協力義務が円滑に行われまするならば、証拠の收集にはさほどの困難はないものと考えます。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 協力義務が行政協定にはなるほど規定されておりますが、それなればこそ日本側がこういうふうな国内法規を設けると同様に、アメリカにおいてもやはり協力義務を規定した立法をしなければならぬはずでありますが、そうでないとすると、ただ行政協定に抽象的に協力義務ありと規定してみたところで、具体的には何某を日本の裁判所に出頭して証言を求めるといつてひつぱるわけには行かないと思う。アメリカはそういう立法をして、いるのか、あるいは準備をしているのか、それとも全然やつておらぬのでありますか。そういうような点を伺いたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、合衆国軍の内部の紀律等によりまして日本の裁判所に出頭さす、あるいはその他証拠提供の協力義務の具体的内容を実現するについて必要な規定を設けられることと考えております。なおこの点につきましては、継続して日本側とアメリカ側とで具体的な内容につきまして、今後折衝を続けて行くことになつております。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 法務総裁が見えておりますので、先ほどの問題をもう一ぺんお聞きしたいと思う。日本とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案、これでありますが、今政府委員、他の方からお伺いしたところでは、どうも将来駐留軍とそれから国連軍というものの区別がはつきりつきそうにもないわけである。もう現に過去の実績を見ても三百二十五号違反として、これは占領目的違反を処罰するという規定でありながら、実際は朝鮮作戰以後のごときは特に純然たる国連軍の行動に関する罪でありながら、どんどんと三百二十五号、すなわち占領目的違反罪でひつかけられるような規模であります。そういうふうにどつちでもそのときどきの都合のいい建前をとつて、あるときは国連軍として名乗り、あるときは駐留軍として名乗るということは、これは将来も大体見通しがつくわけである。そこでこの民事特別法案を見ますと、駐留軍及びその施設が日本人に損害を加えた場合に国家補償をすると規定されているのでありますが、実は單なる駐留軍の状態においてはそれほどの大きな民事上の被害は起り得まいと思われる。やはり一たび非常事態が発生して国連軍として出動というような場合に、この間の横田基地における椿事のように大きな被害が起きて来る、こう考えられる。そこでお尋ねいたしたいのは、駐留軍がごくまれに、しかも小規模の損害を加えることは、これは本法案によつて救済できるかもしれないが、大幅なるしかも頻発するであろうところの大きな損害が予想される国連軍については、何ら規定が設けられておらない。そこで政府は国連軍の問題についてはどのような考えを持つておられるのか、何か立法措置でも講ずる用意があるのかどうか、その点をお伺いしたいのです。

木村篤太郎法務総裁

○木村国務大臣 私は今の田中君の御質問と逆に考えております。駐留軍こそ日本にある期間駐留して、そうして日本の外敵の防衛に当るものであります。そこで今後の問題でありますが、国連軍と駐留軍とは全然別個の関係であります。国連軍がいよいよ日本に駐留するというような場合には、また別に国連軍との間に立法処置を講ずるということになつているのであります。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 法務総裁は最初かおいでにならぬので、われわれの心理が十分に了解できておらぬように思いまするが、手こういうことをお尋ねしているのであります。駐留軍は、平時においてはそれほどの大椿事を起すおそれはない。それは過去の七箇年間の占領実績に徴すれば明らかなことであります。めつたに火薬庫が爆発するとか、実彈を積んだ飛行機が落ちる、たまを落して行くとかいうことはないわけです。これはやはり朝鮮作戰というような非常事態が発生してからそういうような大きな事件が起きるわけです。そこで駐留軍が日本に将来いる。これが非常事態が発生して出動しなければならぬという場合には、單に米国と日本とが協力してどつかと戰争するということではありません。これは国際戰争になるにきまつている。そうなれば当然国連軍ということになるわけです。そのことを私は聞いているのです。あるいはその一歩前、国際的な戰争になる前でも、朝鮮事変というような小さい事件でも片や国連軍ということになつているのでありまして、国連軍として実体はアメリカ軍である。それが日本に駐在している。しかも国連軍の名において戰争に参加をし、日本の人民に被害を加えたら、その賠償の問題はどうするかということをお尋ねしているわけです。どうせもうこれは非常事態にならなければ大きな損害はないわけです。平生の訓練やそこらで大きな損害はない。その大きな損害こそ規定されなければならぬのに、それが全然この法案では問題にされない。それではどうも不都合じやないかということを聞いているわけです。

木村篤太郎法務総裁

○木村国務大臣 本案は行政協定に基いて駐留軍との間の関係をきめた法案であります。国連軍が日本に駐留するという場合においては、また国連軍との間にあらためて別個の法案を作成する政府は用意を持つております。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 それではこれで打切りますが、要するに政府の態度、お考えでは、今のところでは駐留軍が国連軍に早がわりをして、そうして大きな損害を日本人に與えるかもしれぬが、しかしそういうことについてはまだ今全然考えておらぬ、そのとき考えるということでありますか。

木村篤太郎法務総裁

○木村国務大臣 国連軍がいよいよ日本に駐留するということになれば、そのときにあらためて法案を作成する用意を持つております。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 それでは今日日本にいるアメリカ軍は、国連軍でありますか占領軍でありますか。またついでに最後ですからもう一つ重ねてお尋ねしますが、このまま講和が発効し、一応形式上の独立日本になつてみますると、その瞬間におけるアメリカ軍なるものはこれは国連軍でありますか、それとも駐留軍でありますか。

木村篤太郎法務総裁

○木村国務大臣 それは駐留軍になるか国連軍になるか今のところわかりませんが、私はそれは駐留軍になると考えているのであります。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 本案の審議はなお後に続行することにします。     —————————————

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 この際刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。

木村篤太郎法務総裁

○木村国務大臣 ただいま議題に上りました刑事訴訟法の一部を改正する法律案の提案理由について御説明申し上げます。  現行刑事訴訟法は、旧刑事訴訟法に対し根本的な改正を加えたものであることは周知のところでありますが、当時の情勢上比較的短時日の間に企画立案し施行するのやむない次第でありましたため、実施後三年有余を経た今日修正を要する点もかなり多く見られるのであります。  そこで、昨年一月法制審議会に対し、刑事訴訟法運用の実情にかんがみ早急に同法に改正を加えるべき点の有無につき諮問いたしましたところ、同審議会におきましては、昨秋以来、総会二回、刑事法部会十回、小委員会十三回を重ねまして、その間裁判所、検察庁、弁護士会、学界その他各方面の有識者から選ばれました委員及び幹事の間において愼重審議の上、本年三月二十日に至り、とりあえずその一部、二十二項目をあげて答申を寄せられましたので、この答申に基き、法務府におきまして鋭意立案に努め、ここに刑事訴訟法の一部を改正する法律案として御審議を願うこととなつた次第であります。なお今後も法制審議会を継続し、その答申をまつて逐次所要の改正を施して参る所存であります。  そこで本案の内容について御説明申し上げることにいたします。本案は次の四に大別することができますので、これにつき順次おもな改正点を御説明申し上げることにいたしたいと思います。  まず第一は、被疑者及び被告人に対する身体の拘束に関する規定の改正であります。現行法は起訴前の勾留期間を一応十日以内とし、やむを得ない事由のある場合に限りさらに最大限十日の延長を許しているのでありますが、終戰以来現在までの犯罪の動向について考えますると、事件の規模はいよいよ大きく、かつ複雑となつて参り、捜査機関がいかに努力いたしましても現行法の認める最大限二十日の期間をもつてしてはとうてい起訴不起訴を決定するに至らない場合が少くないのであります。そこでこれに対処するため、きわめて特殊の事情のある場合に限つて、嚴重な要件の制約のもとに最大限七日だけ延長し得ることといたしたいのであります。この期間の延長につきましては、法制審議会における審議の経過をしさいに検討し、かつ現下の捜査の実情を愼重に考慮した結果七日の延長を相当と考えたのであります。  起訴後の勾留期間につきましても、現行法はその更新を原則として一回に限つておりますため、起訴から判決の確定までの勾留期間は、三箇月となり、審判及び刑の執行に著しい支障を来しているのであります。かかる実情を考慮し、本案においては、禁錮以上の実刑の宣告があつた後の勾留期間の更新につき、これを形式的に制限せず、裁判所の裁量にゆだねることといたしました。  次に、いわゆる権利保釈につきましては、その除外事由が狭きに失し、事案の性質上当然拘束の継続を要する場合にも保釈が許され、訴訟の進行に著しい支障を来しておりますばかりでなく世の一部に非難の声すらあるのであります。よつて今回この除外事由を一部拡張することといたしたのであります。その一は、従来除外事由の一となつていた被告人が死刑または無期の懲役もしくは禁錮にあたる罪を犯した場合を短期一年以上の刑に当るいわゆる重罪を犯した場合にまで拡張したこと、その二は、戰後における犯罪の新しい傾向にかんがみ、被告人が多衆共同して罪を犯した場合及び保釈されるといわゆるお礼まわり等をして脅迫がましい態度をとる危險が多分にある場合を加えたことであります。しこうしてこのお礼まわりにつきましては、これを保釈の取消し事由にも加えることといたしました。  以上の諸点は、事人身の自由に直接関係いたしますので、政府におきましては、今後の運用に特に愼重を期する所存であります。  第二は、被告人が公判廷において有罪である旨を自認した場合には、簡易な裁判手続による審理を進めることができることとした点であります。  公判において審判を受ける被告事件の八割までが、犯罪事実について争わない場合であるという現在の刑事手続の実情にかんがみ、この簡易公判手続の採用によつて、審理の促進と事件の重点的処理を期することができると思うのであります。被告人が公判廷において有罪の答弁をした場合に、英米法ではそれのみでただちに被告人を有罪とすることができることとなつておりますが、かかる制度をそのまま採用することには憲法上疑義のある向きもありますので、本案では従来通り補強証拠を要することとしつつ、その証拠能力に関する制限を多少緩和し、かつ、証拠調べについても裁判所の適当と認める方法によることができることといたしたのであります。なお漸進的に実施する意味におきまして、この簡易裁判手続はさしあたり死刑、無期または短期一年以上の懲役もしくは禁錮に当る事件以外の比較的軽い罪の事件につき、当事者の意見を聞いて行うこととするとともに、裁判所は一旦簡易裁判手続による旨の決定をいたしました後でも、この手続によることを相当でないものと認めるときは、いつでもその決定を取消し、通常の手続により審判することができることといたしました。  第三は、控訴審における事実の取調べの範囲を拡張いたした点であります。  御承知のごとく現行法は、旧法のような覆審の制度を廃し、控訴審をもつばら第一審の判決の当否を批判するいわゆる事後審とし、第一審判決後に生じた新たな事実は、控訴審においてはこれを考慮することができない建前をとつているのであります。しかしながら運用の実際は必ずしもこの建前通りでなく、裁判所によつてその取扱いが区々になつているのみならず、少くとも刑の量定に関する事実については、この建前を緩和すべきであるという意見が各方面に強いのであります。よつてこの要望にこたえるべく、第一審判決後の被害の弁償その他の情状に関する事実については、控訴審においてもこれを考慮することができることとするとともに、第一審の当時から存在しながら、やむを得ない事由によつて公判審理の過程において法廷に顯出されなかつた事実も、控訴趣意書に記載して控訴申立の理由を裏づける資料とすることを認め、裁判所の調査義務の範囲を拡張することといたしたのであります。  第四は、その他のこまかい諸点に関する改正であります。  これには現行法の技術的な不備を補正いたすのが多いのでありますが、その中でも捜査機関のいわゆる供述拒否権告知について、運用の実情にかんがみ、その内容に修正を施したこと、訴訟促進の要請にこたえるため、死刑以外の判決に対しては書面によつて上訴権の放棄をすることができるものとしたこと、起訴状謄本の送達不能の場合には、その法律関係を明確にするため、公訴棄却の裁判によつて訴訟を終結すべきものとしたこと、さらに略式手続に関する規定に改正を加えて、その適正迅速な進行をはかつたことなどは注目すべきものと存じます。  以上をもちまして簡單ながら刑事訴訟法の一部を改正する法律案の概略を御説明申し上げた次第であります。何とぞ愼重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 これにて提案理由の説明は終りました。  なお本案に対する質疑は後日に讓ることといたしますからさよう御了承願います。  午前中の審議はこの程度にとどめ、午後は二時より再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後一時四分休憩      ————◇—————     午後三時十二分開議

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  民事特別法案に対する質疑を続行いたします。田嶋好文君。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 お許しを得まして、午前中に引続き民事特別法案の各條項につきまして、質疑をいたしたいと思います。私は特にここで與党の立場から、重大だと思いますので、政府委員に申し上げますが、日本の独立に際しまして、相当世間で騒々しくいろんなことが行われ、言われ、言われておるのでありますが、この点独立すべき日本の国民の義務として、別にこれらの事柄に対して忌まわしい気持を持つて考え臨む必要はない。むしろこの点独立を控えた国民として、言うべきことを十分言わせ、また政府としても、納得さすべき事柄に対しましては、十分なる納得をさして進んで行くのが、今の時期における最も適切な行動だ、こういうふうに考えておるのであります。従いまして本法案等は非常に重大な法案でございますので、やはり政府におかせられましても、十分な研究と十分な抱負と十分な自信を持つてお答えを願つて、そうして納得した上で法案を通したい、こういうふうに考えております。どうかよろしくその意味においてお答えを願いたいと思います。  まずこの民事特別法案の第一條でございますが、第一條で一番問題になりますのは「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き日本国内にあるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍(以下「合衆国軍隊」という。)の構成員又は被用者が、」その次でありますが、「その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたとき」——この「職務を行う」ということが問題になると思うのでありますが、この「職務を行う」の「職務」、これはどういうふうなものをさしておるのか、行政協定との関係をにらみ合せてお答え願いたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 合衆国軍隊の構成員または被用者として、合衆国軍隊に対して負うておるところの職務を言うわけでありまして、軍人、軍属でありますれば、それぞれその軍における任務を持つておるわけであります。その他の一般被用者でありますと、雇用関係、その他の法律に基いて與えられた職務を持つておるわけでありまして、その職務を言うわけであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 安全保障條約の第三條に基く行政協定の第十八條、その三によりますと、結局「契約による請求を除く外、公務執行中の合衆国軍隊の構成員若しくは被用者の作為若しくは不作為又は合衆国軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為若しくは事故で、非戰鬪行為に伴つて生じ、且つ、日本国において第三者に負傷、死亡又は財産上の損害を與えたものから生ずる請求は、日本国が次の規定に従つて処理する」と、こういう規定になつておる。この中に特に重大な非戰鬪的行為に伴つて生じなければならないという制限を受けておるわけでありますが、この第一條の「職務を行うについて」の「職務」の中には、戰鬪行為は含まれるのか、含まれないのか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この「職務」という言葉だけを取上げて考えますと、一切の職務を言うわけでありまして、非戰鬪行為に属する職務だけをさすという言葉ではないわけでありますが、午前中も申し上げました通り、この條文はわが国の国家機関が、あるいは被用者が、他人に損害を加えた場合の例によつて損害賠償をいたすわけであります。民法の不法行為の規定あるいは国家賠償法の規定によりまして、かりに日本の国家機関として、軍隊があつたと仮定いたしまして、その戰鬪行為によつて損害を生じたという場合には、これは違法性がないということで、損害賠償の責任が生じないと考えるのであります。その意味におきまして、特に非戰鬪的行為に属する職務と断らなくとも、結果においてそういう解釈になるというつもりで、單に「職務」という文字を使つたわけであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 どうでしようか、日本のこの今の憲法の趣旨から言いますと、日本の法律というものは、軍隊がないことを前提にした法律になるのでございますから、その軍隊のないことを前提にした法律を解釈するにあたつて、軍隊があることを前提にした解釈をとつて法律を規定するということは、どんなものでございましようか。この点はまあ質問というよりも相談的になると思うのですが、ここらあたりちよつと不明確な点がある、こう考えるのです。どうですか、お答え願います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 田嶋委員の仰せられます通り、日本に軍隊はないのでありまして、あるいはただいまの説明は不十分であつたかとも存じますが、戰鬪行為による損害につきましては、一般的に違法性がない。第一條にあげてありますように、「違法に他人に損害を加えたとき」という要件で縛つてありますから、除かれることになるのではないか、こう解釈いたすのであります。かりに外国の飛行機が日本の上空に空襲して参りまして、それを駐留軍の高射砲が砲撃して、その高射砲彈によつて被害を受けたというような場合を仮定して考えてみますれば、これは違法に損害を加えたということには該当しないわけです。その意味におきまして、この職務という言葉を必ずしも指定して表わさなくても同じ結果になるのではないか、かように考えております。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 それで了承いたしました。  そういたしますと、今度は戰鬪行為、非戰鬪行為ということが一つの問題になつて来ると思うのですが、現在のアメリカの軍隊を考慮の対象にしてそれを聞きたいのですが、これを対象にした場合の戰鬪行為というものは、どういうような場合をさしておるのでありましようか。今詳しく説明しなくてもおわかりでございましようが、盛んに共産党からの質問がありましたのに関連するかもしれませんが、今朝鮮で戰鬪が行われておつて、日本の基地から爆彈を積んでB二九が飛び立つた、あるいはその他の飛行機が飛び立つた。こういうような場合に、どこを一体戰行為とするのか。飛び立つたときが戰鬪行為になるのか。爆彈を積んだときが戰鬪行為の着手と見るのか。戰鬪という言葉は、常識的に判断しますと、撃ち合いということになるのですが、アメリカが朝鮮の上空に行つて戰いを始めたときに戰鬪になるのですか、それを伺いたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 行政協定十八條に言つております戰鬪行為という言葉は、敵国の軍隊と交戰し、あるいはわが国内に内乱が生じた場合に暴徒と交戰するというように、武力をもつて攻撃し、または防禦する活動を言うわけであります。いわゆる直接の戰鬪行為をさすものと私ども解釈いたしておるわけであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 そういたしますと、今のアメリカの軍隊が朝鮮爆撃に日本から立つという場合、これは講和條約が締結したあとでないとわからないのでありますが、結局現在のような状態が今後しばらく続くものとわれわれは想像するのでありますが、その場合に、現実の戰鬪は日本で現在のように行われて参るということになりますと、今の状態はすべてこの法律によつて違法がある限り請求できる、こういうことになりますか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 午前中にも問題になりましたように、具体的に内地の基地を飛び立つて朝鮮の戰鬪に参加するという場合は、国連軍の行動と見るべきではないかと考えますので、行政協定並びにこの法案の適用範囲外だと考えます。ただ一般的に申しまして、朝鮮の戰場におもむくために日本の上空を飛ぶということが、ただちに戰鬪行為という言葉に該当するかどうかは、はなはだ疑問であろうと考えます。

角田幸吉自由党

○角田委員 関連して……。ここの非戰鬪行為ということについて、まだ法務府の考え方がはつきりわからない、あいまいな点があるのではないかと思うので、念を押して伺うのでありますが、この行政協定の戰鬪行為というのは、戰時国際法の適用を受けるものをいうのであるか、それとももつと広いものであるかということが問題になります。この点を明確にしておきませんと、これは法律審議の上に、重大な影響がありますので、この点をはつきりと伺いたい。戰時国際法の適用がある場合を戰鬪行為ということになるのか、それとももつと広いのであるか、広いならば、どういう範囲のものを戰鬪行為とするかということを、これは午前中に私は明確に伺いたいと思つたのでありますが、これをはつきりしていただきたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 戰鬪行為の意味につきましては、先ほど申し上げましたように、敵国の軍隊と交戰する場合の行動、及び国内に内乱が生じました場合に暴徒と交戰する場合の行動の両者を含むと考えます。その意味におきまして、国際法上の戰争状態がなくても、この戰鬪行為という観念はあり得るのじやないか、かように考えております。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 そこでやはり国連軍と、アメリカの日本駐留軍をいかに区別するかということが、だれしも問題になつて来る。これはなかなか微妙な点でございますが、微妙な点であること自体が、重大問題であるし、また聞きたいことであるし、答えてもらいたいから、無理にでもこれは研究してお答え願わなくちやならぬ問題だと思いますが、国連軍とアメリカの駐留軍との差というものは、現在では一体どこで区別されているのか。指揮系統で区別されているのか、日本におる軍隊自体は全部が国連軍だと概念的にきめられているのか、そこらをお聞きしたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動と、駐留軍としての行動は、それぞれ当該行動の目的によつて区別すべきものと考えております。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 そうすると、これも仮定論になりますが、駐留軍が占領終了後も残つて、結局現在の朝鮮動乱がこのまま続いて駐留軍が行動をとるとした場合に、国連軍と駐留軍の差別は、今のように目的によつてきめられることになろうと思うのですが、その場合に、駐留軍が朝鮮爆撃に向つたときはこれは国連軍、朝鮮戰鬪以外の目的に向つたときは駐留軍、こういうことになるのでしようか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 駐留軍に属する飛行機が朝鮮戰線に参加するための行動をとりました場合には、これは国連軍としての行動、かように解すべきものだと思います。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 その場合違法性によつて縛つてありますから、問題は起らないかもしれませんが、その場合は国連軍の行動として見るといたしまして、これはどういうような縛り方が今後行われるでしようか、政府のお考え、それからこれに対する対策を何かお持ちかどうか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動によつて生じました損害につきましてどういう措置をとるかという点につきましては、ただいま外務省において検討中のように聞いておりますので、具体的内容につきましてはお答えいたしかねるのであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 それでは所管事項が違うようでございますから、後に聞くことにいたしまして、これは非常に重大な問題だと思いますし、だんだん午前中の質問よりも具体化して来たので満足に思いますが、この点につきましていま少しく法務府におきましても、外務省とともに御研究くださいますか、ひとつはつきりしたお考えを聞かしていただきたいと思います。  次にこの違法に基くところの損害賠償は国が負担するということになつておりますが、違法をやるのはアメリカの駐留軍である。無過失の場合には——これは現在の平和條約の姿、それから行政協定の姿から参りますと、これは無過失の場合でございますから——日本から求めて駐留してもらうという形になりますので、日本の国家が費用を賠償するのは当然だと思うのです。ですが無過失でない、特に本條の場合は違法ということをうたつてある建前から申しますと、法を犯してやる場合、その法を犯した場合の責任を日本国がとる、これはちよつと行き過ぎのように考えるのですが、法を犯してやつた損害賠償まで全部国が負担するのでございましようか。行政協定のように内部的に費用の分担的な協定でもいたすつもりでございましようか。全部日本の予算で負担するという方針を御堅持でございましようか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この法案は、行政協定第十八條の第三項の規定を具体化したものでありまして、この法案第一條にあります国の賠償は、すなわち行政協定十八條による支拂いに該当するわけでございます。従いまして、第十八條第三項の(d)の規定によりまして、別に両国政府が合意する條件で日本政府の負担いたしました損害賠償額を、アメリカ合衆国が分担することになつております。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 わかりました。そうであるべきだと思います。これは私ちよつと勉強が足らなかつたことをあやまります。そういたしますと、その分担についての協定をいたすわけでございますが、これは半分々々でございましようか。いろいろきめ方があろうと思いますが、今のところどういうふうになつておりますか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 行政協定十八條第三項(a)によりまする合意する條件の内容につきましてはまだ私ども承知いたしておりません。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 これは責任当局からでけつこうでございますから、行政協定の費用負担のように半分ずつにわけてやるのか、また四分六で行くのか、七分、三分で行くのか、ここらあたりを後日適当な機会にお答えを願いたい。  次に第二條に入りますが、第二條に「合衆国軍隊の占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他」云々となつておりますが、合衆国軍隊が占有する、これはわかるのですが、所有という言葉が入つております。現在連合国の占領軍が日本におる。この軍隊が所有しておるものと言いますと、どんなものがございましようか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 合衆国軍隊の施設として、合衆国の費用によつて直接に建設する建物その他の物件が将来生ずると考えられますが、現在どういうものがあるかということにつきましては、私詳細に存じませんのでお答えいたしかねます。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 これは相当研究の課題になるし、また駐留軍が撤退した場合問題が起つて来るわけです。当然国民としても国家としても考えなければならない問題と思います。今まで所有されたものは、どんなものがどういうような形で所有されているかということをお取調べ願いまして、後日でけつこうでありますからお答えを願いたいと思います。そうしますと、今後所有されるべきものとして現在予想されておるものがございましようかどうでしようか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 土地の工作物その他の物件とありますので、駐留軍の施設等で直接合衆国の費用をもつて合衆国が建設するものも考えられますし、その他工作物以外の物件につきましては、アメリカ本国から持ち込むものも考えられるわけであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 私たちが非常に問題にしなければならないのは、そうした小さなものではなくて、たとえば行政協定に基きましてアメリカの軍隊が横須賀に駐留する、こういうような場合に、横須賀の大きな軍隊使用の建物、港湾設備等が一体所有的なものとして建設せられるかどうか、これが非常に考えられる点なのです。しかし行政協定によりますと、軍隊の使用する金は日本とアメリカが半分ずつ支出する。その建設せられることが建前になつておると思うのであります。普通においてはそれは建てられないということは一応想像されるのでありますが、所有という言葉が入つておりますので、その点を明確にしたいのでありますが、使用する土地におきましてそうしたものの所有物が予想されるかされないのか、この問題であります。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 特に具体的な工作物の合衆国軍隊の所有ということを予想してこの規定を考えたわけではございませんで、民法によりますと、土地の工作物の占有者として責任を負う場合の規定と、所有者として責任を負う場合の規定とがございますので、合衆国軍隊が占有者ではないが所有者である、所有者としてその責に任ずべき場合もあり得るだろうという趣旨で、この規定を置いたわけであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 行政協定に基きまして双方から出した金で建物が建てられる、あるいはいろいろな工作物ができる。この場合の所有権は一体どちらに属するのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 その点は後ほどお答えいたします。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 これも一応大きな問題になることだと思いますので、あとでよく御研究してお答え願えればけつこうだと思います。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 先ほどは主として第一條の点について質疑をしましたが、今第二條の質疑を田嶋君がやつておりますので、それに関連して一、二点お尋ねしておきたい。  第二條の「合衆国軍隊の占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があつたために」云々ということになりますと、これは問題のとり方によると、米国軍隊は全然責任をとらないで米軍の進駐軍並びに基地のあり方、あるいは物件の使い方、行動によつて出て来る損害は、一切合財日本政府が、悪い言葉でいえばぶつかぶされることになると思うのです。そういう疑問がありますのでお尋ねしますが、瑕疵があつたために損害を生じたというようなときに、瑕疵があつたかなかつたかというのは、だれがどういう手続で、どこがどうしてきめるのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 第二條の規定による損害賠償の請求も、被害者が日本の裁判所に請求するわけであります。瑕疵があつたかなかつたかという点につきましても、日本の裁判所が判断をいたすわけであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 私は占有、所有、管理という言葉と関連してお尋ねするのですが、この管理にいけないところがあつてという場合は、一体どういう場合なのかお尋ねしたいと思うのです。「占有し、所有し、」という言葉があります場合に、所有者ないし占有者は、それぞれの責任の主体として占有し、所有しているのであります。それから管理という問題になつて来ますと、占有、所有に基いて、それが同時に実際上の支配をすることになりましようが、管理ということについて責任があつた場合にだけ損害を補償する義務が出て来るのでしようか。私はこのためにできて来る損害を、日本国政府が持とうということ自体ばかげたことで、道理に合わないことだと思うのですが、それが第一点。  それからもう一つは、占有、所有という言葉と管理という言葉が出て来ますが、占有、所有ということ自体からでもいろいろな損害発生の原因になると思うのですが、管理だけについてその責任が問われるのか、それを第二点にお尋ねしておきます。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 土地の工作物その他の設置、保存、管理等に瑕疵があるために損害を受けました場合には、民法及び国家賠償法によつても賠償を受けるわけであります。その責任者が合衆国軍隊であります場合にも、被害者のためにその損害を賠償する必要のあることは当然であります。その意味におきまして、日本国が賠償の責めに任ずる。なお先ほど田嶋委員にお答えいたしましたように、行政協定第十八條第三項の(d)におきまして、その費用は一定の割合によつて合衆国が分担することになるわけであります。  それから管理という言葉がありますが、これは占有ということと大部分重複するかと思うのであります。国家賠償法の第二條にも管理という言葉が使つてあります。なお民法の不法行為の規定の中にも、管理者の責任を規定したものがありますので、占有者、所有者のほかに管理という言葉を使つてあります。どういう場合に責任を負うかということは、すべて民法及び国家賠償法によつて責任を負うわけであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 この設置の問題でありますが、向うが直接調達の方法で向うの責任で設置する場合は、これは設置についての瑕疵があつたかどうかは向うの責任です。それから日本がいろいろ必要な目的のために、特調などの手を通じて設置いたした場合でも、相手方がそれを受取つたということになれば、嚴重な検査あるいは査定というようなものを通過しなければ、相手方に引渡すことができないものだとわれわれは考えますが、そういうような設置に責任があるとかないとかいう問題は、これはアメリカ軍の責任を日本の政府がかわつて、そういう手続で設置されたものについても損害を賠償する、責めが出て来る、こういうわけですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 設置に瑕疵があつた場合と申しますのは、民法の七百十七條、国家賠償法の第二條にもありますように、土地の工作物等に初めから瑕疵があつた場合をいうのであります。その設置者がたれであろうと、当初からある瑕疵に基きまして他人に損害を加えた場合におきましては、占有者、所有者あるいは管理者が責任を負う、こういう民法及び国家賠償法の規定をそのままここへ規定いたしたわけであります。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 先ほどお尋ねしたように、設置をいたして向うが使つておる。占有し、あるいは所有し、または管理する工作物その他の物件、これが先ほど申し上げましたような手続で向うに差出されて、向うが使つておるということになつて、それに損害が出て来たということになれば、私は向うが受取り方において嚴重な受取り方をするのであるならば、アメリカ軍の責任で当然賠償しなければならないのを、日本政府がかわつて賠償するということになるのか、あるいはまたそういう設置して提供する、結局設置する責任のあつた日本政府がその設置のもともとにおいて瑕疵があつたということであるならば、別にアメリカ軍の責任を通じなくても、日本の政府の責任が、当然国民の損害を受けた者に対して出て来ると思うのであります。そこらのけじめかどうもこれになるとぼやかされて来て、一切合財そのけじめはなしにして、出て来たものは日本政府が拂うのだということになる。しかも実際上の問題としては、受取り方は同じであつても、その立証責任あるいはまた事実の認定にあたつて、大分デリケートな重大な差異を来すことがあると思いますので、その点をお尋ねしておきたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 日本の政府機関に手落ちがありましたならば、この法律をまつまでもなく、不法行為に関する民法その他の規定によりまして、日本政府が賠償の責めに任ずるわけであります。この法律が第二條で規定しておりますのは、だれが設置に当つたかを問わず、いやしくも合衆国軍隊の所有し、占有し、または管理にかかる土地の工作物につきまして、当初から瑕疵がある、あるいは途中から瑕疵を生じたという場合には、すべて占有者あるいは所有者あるいは管理者としての責任を、日本の政府がかわつて賠償の責めに任ずる、こういう規定なんであります。行政協定の十八條の三項にも、合衆国軍隊が法律上責任を有する作為その他の事故という言葉が使つてございますが、なるほど加藤委員のおつしやいますように、合衆国軍隊の責めに帰すべき事故でありましても、この行政協定の十八條第三項の趣旨によりまして、日本国政府が賠償する、そういう規定なんであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 もう一つだけ……。私の質問の途中で関連質問していただいたもんですから最後に一つだけ。第二條の所有の次の「管理する土地」という言葉はわかりますが、行政協定に基きまして行われるこの法律でございますので、「管理する土地」とは行政協定の一体何をさしてここに管理する土地ときめたのか、それを具体的にひとつ……。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 行政協定の何條の場合ということを考えておるわけではないのでありまして、国家賠償法の第二條にも設置または管理に瑕疵があつた場合という字句は使つてございますが、それと同じ趣旨におきまして、合衆国軍隊が管理する工作物等の瑕疵による損害についての規定を置いたわけであります。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 そうすると、管理する土地とは具体的な目標を定めずに條文の形の上においてということを重大視してきめたというようにとられるのでございますが、行政協定には当然に射撃場とか飛行場とか演習場とか物資集積場とか波止場とか、こういうようなものを向うが占有、管理することになる、これは想像されるのでありますが、政府の答弁によりますと、結局基地はない、こういうことが前提になつているわけです。基地ということになりますと地域的な範囲をさすのでありますが、地域的な範囲をささないで要するにアメリカの軍隊のおるところ、これがすなわち駐留軍の駐屯地だ、こういうように解釈いたしているようでございますが、それと管理する土地の問題、これは相当重要な問題になつて来ると思う、管理と申しますのは、今すぐお答えを願わなくてもけつこうでございますが、管理する土地とは今のお答えでも結論がつくのでございますが、そういう趣旨でございますと、一旦ここに法律として現われて来ました以上、管理する土地がどういうものが含まれるかということは、占有という言葉がありますから問題になつて参ります。今ここでお答えがむずかしかつたら後日でもけつこうでございますが、お答えができますれば、具体的に場合はこういうものが入るということをひとつお示しを願いたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 「管理する土地」とありますが、この「管理する」は土地だけにかかるのではありませんで、「管理する土地の工作物その他の物件」の中にはただいまお示しのような射撃場等も入る場合が考えられる。そのほか何と何が入るか、具体的に列挙して申し上げるのはちよつとただちに困難でありますが、いずれまた機会を見て……。

田嶋好文自由党

○田嶋(好)委員 よろしゆうございます。

加藤充日本共産党

○加藤(充)委員 それでお尋ねしますが、これではどうも日本政府は実際人がよ過ぎると思うのですが、法律をつくらなければならないという契約が行政協定に発端し、あるいはそれが基本的なサンフランシスコ條約にあつたということになれば、今ここでこのようなばかげた人のよいことをやらなければならないのは、やはりサンフランシスコの二條約あるいは行政協定に問題がある、私はこう思うのです。ここでお尋ねしますが、日本がそれに基いて国連に参加するというような事態がもしかりにあり、あるいは国連と緊密な提携なり一切の協力合力をしなければならないという義務づけが発生いたしますると、先ほどから問題になつておりました実際の損害は、戰鬪行為、作戰行動に基いて起る場合が多いのであつて、示されましたいろいろな事例、B二九の墜落、あるいはB二九からの爆彈の投下、落下の問題、こういうふうなものは一切が国連軍としての行動に基くということになり、国連に協力し、国連に加盟したということは日本国ということになりますが、その場合になりますと実際上賠償費を補償してもらわなければならない問題が出ても、そこまで段階が進みますと日本国家の責任、あるいは義務分担行為の中から出て来た損害ということになりますから、国連軍との関係が別に締結され、同時にそれに基く立法措置が出て来るということになれば、損害賠償、補償ということの実体的な規定が不必要ということに相なるのではないか。このことがきわめて強く懸念されますので、その関係をお尋ねしておきたい。今米英、これは駐留軍になるのでしようが、駐留軍の行為に規定されたような場合に、損害の補償の問題が問題になつている。現実においては駐留軍としての行動に基く損害よりも、実際は占領軍にあらざる、論理的には少くとも区別ができるが、事実的には非常にまぎらわしい朝鮮における国連軍としての米軍の作戰行動から幾多の損害が出ている。しかもこの損害というものが非常に危險きわまるものであり、同時にその範囲が広い。結局この法律は、その国連軍の作戰行動として起る米軍による損害賠償の点について規定がなければ、法律としての実効力がないのじやないか。国民が求めている点を解決していないのじやないかということが先般来言われた。それで国連軍との問題が片づいて、そうしてまたそれに基く同様な損害賠償の問題が出るのか出ないのかという問題が出ましたが、国連に参加するという日本の状態が出て参り、そうしてまた国連に参加しなくとも、條約に基いて国連にすべての協力をしなければならない義務がアメリカとの間にとりかわされておるのでありますから、そうすると国連軍の行動によつて日本国民の受ける損害というものは、すでにそれは違法も不当も不法もなくなつてしまつて、当然の義務履行の間に行われた形になりますから、国連軍の損害賠償をすべき義務づけなりあるいはそれに基く立法措置というものは、そういう段階になるとなくなつてしまうのではないか、これは身から出たさびということになりますが、日本がそういう立場になつて、日本の義務として、日本政府の義務としてやつたのであるから、それに基く損害は国連車からはとれないということになる。とれないとなれば日本政府がかわりに拂うという構想もなくなりますから、結局これは国内の問題として政府が涙金を出すというようなこと、出す意思がなかつたら出さないでもしかたがない。それは日本国民の義務であるという形になつて行つてしまうのではないか、これをお尋ねしておきたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 国連軍としての行動による損害の問題につきましては、午前中からいろいろ御質疑があつたと思いますが、法務総裁からお答えになりましたことをもつて御了承願いたいと思います。

角田幸吉自由党

○角田委員 関連して……。なるべく根本のものを先にやつて、各論的なものをあとからやつて行きたいと思つて私はお尋ねするのですが、行政協定の第三條によりますと、領水というのが使つてある、これは領海の意味かどうかという点と、それから第二項についても日本の領域の航海のことが書いてある。結局これによりますと領海上における損害というものについて、この臨時特例法で規定しなくともよろしいのかどうか、これが根本だろうと思うのです。このことがこの法案に出て参らないのですが、どうして出て来ないのか、また陸上の行動でありましても、それが領海において損害を起すということもあり得るのです。こういうことについてどういうわけでこの法律で規定しておらないのか、そのいきさつを承りたいと思います。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この法案にあります「日本国内において」ということは、陸上のみでなく、領海その他の領水をも当然含むものと解釈して「日本国内において違法に他人に損害を加えたとき」としたわけであります。

角田幸吉自由党

○角田委員 第二條で特にこのことは規定しなくとも明瞭だ、こういう意味で領海内における損害も賠償する、こう解して間違いないのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 さようであります。

大西正男改進党

○大西(正)委員 私午前中からの各委員の質問に関連しまして一点だけお伺いしたいと思います。なお総括的ないろいろな問題はあとに留保したいと思いますが、それは第一條の「その職務を行うについて」というこの言葉でありますが、この職務を行うということは一体たれが認定をするのでありましようか、この点について伺いたい。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 この法案の第一條による損害賠償の争いがあれば、日本の裁判所が裁判をするわけであります。職務を行うについて生じた損害であるかどうかということは、日本の裁判所が判断するわけであります。

大西正男改進党

○大西(正)委員 今の御説明は日本の裁判所が行う、こういうのでありまして、あとの違法に関する他の委員の質問に対する御答弁と同じでありますが、この職務を執行するという点につきましては、行政協定の第十八條の四項に当該国がこれを認定する第一次の権利があるということになつておるのでありますが、この点はどうなるのでありましようか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 御指摘の通り、行政協定第十八條第四項には、各当事者はその人員が公務の執行に従事していたかどうかを決定する第一次の権利を有するということになつておるのでありますが、この決定について相手国が同意しない場合には合同委員会に付託するということになつておるのであります。しかしながら日本の裁判所で裁判をいたします際には、事柄の性質上裁判所が独自の立場において判断すべきものと考えるのであります。それは憲法並びに日本の国内法制から申しまして当然そうあるべであります。行政協定十八條四項の規定は裁判所を拘束する趣旨ではない、かように解釈いたす次第であります。その結果として協定の十八條四項により駐留軍の当該要員が公務執行に従事しておるものでないと決定された場合に、裁判所が反対の認定をいたしまして日本国政府に賠償責任があると判断した場合には、日本政府としてはこれに従わなければならない、かようになると思います。ただその場合におきましては、合衆国に対する関係では、協定第十八條第三項の(d)による分担金の請求はできないことになるかと思います。その逆に駐留軍のある要員が公務の執行に従事していたと決定された場合に、裁判所が反対の認定をいたしまして、日本国に損害賠償の責任がないという裁判をした場合には、被害者は日本国政府から賠償の安拂いを受けることはできないわけであります。この決定と裁判所の認定とがかように矛盾するということは理論上考え得るということでありまして、実際問題としてはあまり起らないのではないかと考えております。

大西正男改進党

○大西(正)委員 そうしますと、お答えによりますると行政協定に定められておるところと、それから行政協定に伴う民事特別法に基く法律、それに基く裁判とは、結果において相反する場合が出て来る場合が予想される、また相反しても民事特別法の方が優先するということに相なるのでありましようか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 民事特別法が優先するという意味ではないのでありまして、日本の裁判所に事件が係属いたしました場合に、裁判官が良心に従つて独立して職権を行うという憲法の規定からいたしまして、この行政協定十八條第四項の決定は、裁判官の事実認定を拘束するものではない、かような趣旨でお答えをいたしたのであります。

大西正男改進党

○大西(正)委員 御説明はわかりまするが、そうしますと、行政協定というものは国内法としての効力があるものでありましようか、ないものでしようか、それをお伺いしておきたいと思います。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 国内法としての効力と申しますか、国内法的にも効力を持つておるというふうに一応御了解願います。

大西正男改進党

○大西(正)委員 国内的に効力を持つておるというのは、どういう根拠に基いてそういうふうになつておるのでありましようか。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 それは、條約一般の理論を当てはめての結論でございます。

大西正男改進党

○大西(正)委員 しからば行政協定は條約でありましようか。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 これはたびたび衆参両院においていろいろ御議論がございました際にお答え申し上げました通り、かりに安全保障條約がなかつたというふうに考えますならば、当然憲法七十三條によつて国会の承認を得べき性質のものであるということで御了解を願えることと存じます。

大西正男改進党

○大西(正)委員 ちつとも了解するわけに行かぬのですが、安全保障條約に基く行政協定なるものが、国の主権を非常に制限しておるところがございます。たとえば司法権も非常に制限しておるし、また国民の権利義務に非常な制限を與えておるところがあるのであります。従つて言葉は行政協定といいますけれども、従来われわれ野党が主張しておりますように、これ自体が條約である。しかも安全保障條約の細目を定めるなんという、そんなちつぽけなものではなくて、実質的にこれは重大な條約であつて、しかも国会の承認を当然経なければならないものだとわれわれは考えるのでありますが、意見長官もそういうふうにお考えでないか、というのは、今言葉じりをつかまえるわけではありませんが、條約という言葉を出されたこと自体から考えても、私は意見長官のお心の内部にこれは実質上條約だというお気持があるのだと思うのであります。しかしながら従来政府が御説明になつておるように、これは條約でないのだということになるならば、一体憲法九十八條に定められておりますところの第二項の條約——憲法の條約というのはいわゆる形式的な條約のみか、あるいはその他の名目はいかなるものにいたしましても、国際間のとりきめ、約束、そういうものを含むものであるかどうか、もし政府が言われるようにこの行政協定が條約でなくして、しかもそれは憲法に定められておる條約でないとするならば、九十八條によつて、行政協定なるものは、吉田政府はいざ知らず、日本国並びに日本国民としては別に尊重する義務があるのかないのか、これをお聞きしたいと思います。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 先ほど裏からお答え申しましたけれども、要するにこの行政協定をとり出して裸にしてその実体をながめますならば、これは実質上の條約でございましよう。従つて先ほど申しましたように、安全保障條約第三條というものがかりになかつた——全然そういう手がかりがなかつたということでありますれば、これは別個の国会の承認を必要とすべきもので浸る。これは名前がかりに行政協定となつておりましようが、交換公文であろうが、これは実体について論ずべきものだと思います。しかるに、繰返しますが、安全保障條約第三條に、配備の條件は別に両国政府間の行政協定で定めるとはつきりうたわれて、そうして安全保障條約が国会の御承認を得たわけでありますからして、これについてさらに別の御承認を得る必要はない、というのが政府の申し上げておる点であります。従いましてこの九十八條の問題になりましても、当然九十八條は実質的の條約を言つておるのでありますからして、この行政協定ももちろん安保條約とともにこの九十八條にいう條約の中に入つておる。そのことは軽微な事柄を例にあげれば当然おわかりと思いますけれども、御承知の郵便関係の條約などには、当該官憲がその協定をきめるということを書いております。その当該官憲が数百條に上るような協定をきめております。それについてはもちろん国会の御承認はいらないという点においては今の行政協定の関係と同様であり、しかも憲法九十八條の建前としてはどうなるかというと、今の郵便條約に基く当該官憲の結んだ協定、われわれとして遵守する義務はないと言い切れるかどうか、これは言えない。そういう趣旨で申し上げておるわけであります。

大西正男改進党

○大西(正)委員 私は意見長官の御答弁は徹底しないと思うのであります。しかし條約は、旧憲法においては国会の承認とか何とかいうことの問題はなかつたのでありますが、新憲法によつて国会の事前または事後の承認を要するということは、それが国と国との約束であると同時に、その約束なるものが国の主権をお互いに制限し合うことが出て来たり、また当該国民の権利義務に対していろいろの制限を加えたりすることが生ずるからこそ、主権者であるところの国民の承認を経ろというのが、憲法の大精神ではないかと思うのであります。はたしてそうだとしますならば、安全保障條約というものはなるほど国会の承認を経たのでありましよう。しかしながらその三條というものは、まことに漠然たるものであつて、たとえば司法権に対してどれだけの制限をする、あるいは国民の権利義務に対して、駐留軍がおるためにどういう制限をするのだということは具体的にちつともとりきめはしておりません。そういうものは、この行政協定によつて初めて出て来た制限であつて、従つてこの行政協定というものは、それ自身が一個の独立した條約とも考えられる。そういう意味におきまして国民の承認を経ずして、憲法の初めの方の條文においては條約でないといい、九十八條においては條約であるから遵守しなければならない、こう言うのは憲法の解釈論としても一貫しないのではないかと私は思うのであります。この点についてなお御研究を願いたいと思います。この議論は何も民事特別法に関するだけではなくして、行政協定に伴い今度国会に提出され、またされんとしておりますところのすべての法案について一貫して問題になり得る問題であつて、この民事特別法だけで論ずべき問題ではありません。従つてこれからそういう議論がまだ闘わされるものであり、また私も政府の御意見を承りたいと思つておるのでありますが、その点はまた後日に讓りまして、本論に立ち返りまして言いますならば、今の行政協定十八條の第四項に掲げられておるものは、これは民事特別法において特にそういうものを国内法としての民事特別法に規定を掲げる必要はないでしようか。ないとお考えになつているから書いてないと思うのでありますが、違法の認定に関する事柄については何ら問題がありません。この行政協定に関する限りにおいてはありませんから別論といたしまして、少くとも公務執行の点については、そういう行政協定があるにもかかわらず、しかもその行政協定と齟齬することが出て来るかもしれないにもかかわらず、これに反するようなことを民事特別法に規定をせずに、しかも條約を遵守する——長官の御説明によればこれも憲法九十八條の條約に当るのだから遵守しなければならない。こういうことになつているとすれば、その遵守をするために、政府としてはこの法案の中にそういうものを掲げる必要がありはしないか、こういうことを考えるのであります。政府の立場に立つて考えると私そうなると思うのであります。その点についてどういう御見解でしようか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 行政協定十八條第四項の決定が裁判所を拘束するあるいはこの規定が実体法上の権利義務に影響があるということでありますならば、この法案の中に規定を置くべきであるのであります。先ほど御説明申し上げました通り、特別の規定を設けなくても実際上支障なく実施できるものと考えて規定を置かなかつたわけであります。

大西正男改進党

○大西(正)委員 そうすると行政協定十八條第四項に基づくいろいろの措置というものは、いかなる法律によつて定められ、またその法律によつて定められて合同委員会なり各当事国がきめること、そういうものは裁判所としては法律上一顧だも與える必要はないわけになりますか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 十八條第四項の実施について特別の立法措置を必要とするとは考えておりません。

大西正男改進党

○大西(正)委員 従つて裁判所は一顧だも與える必要はない、こういうことになるのですか。

村上朝一検事(民事局長)

○村上(朝)政府委員 裁判所の判断を拘束しないという点につきましては、先ほどお答えいたしました通りであります。

角田幸吉自由党

○角田委員 この民事特別法が領海にも適用があるということを発見いたしましたので、この際意見長官にお尋ねを申し上げたいのでありますが、現に領海におきましてアメリカが演習をしておりますそれに対しまして、国家は賠償をしております。これは無過失損害賠償のりくつであるか何かにおいて、現に漁業者に賠償をしております。そういうふうに賠償をしておりますのが数年間やつておりますが、あれは慣習法となりましようか、ならないものでありましようか。その辺をお尋ねしておきます。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 制度上の問題とは存じませんので、今お話のような賠償が実際に行われているかいないかは私確言いたすことはできませんけれども、しかしそういう被害者に対する一種の善後措置と申しますか、そういう角度からの問題につきましては、私の聞いております範囲では、今おつしやるようなことも含めまして、農林省で慎重に研究しているというふうに了解いたしております。

角田幸吉自由党

○角田委員 この問題ですが、この法律によりますと、無過失損害賠償をとつた方がいい。これは無過失損害賠償をとりませんと、現に政府で保障していることが縮小されたり法律が改悪される、こう私は考えるので伺つたのです。午前中において、なぜこの法律について無過失損害賠償をとらなかつたか。その第一の根拠といたしましては、将来あるべき駐留軍が、はたして過失ありやいなやということが、認定上きわめて困難であります。でありますから、その被害程度、国民の迷惑というものを考えますと、またそれについて保険制度というもので行くほかはないだろう。そういうものが火災保険になるか何保険になりますか、そういう保険制度を国家としてやるのはなかなか容易じやなかろう。そうするとこれは本質的には無過失損害賠償で行くべきでないか。ことに現在領海において演習をしておりますものについては、寡少でありますけれども賠償をやつているのであります。そういうものを含めますと、それは本質的には無過失損害賠償で、現に国家がやつている。それが本法によりまして縮小されて行くと、国民の側から見ると、この法律は改悪ということに見られるので、無過失賠償になぜしないのか、またする御意向はないのかどうか、お尋ね申し上げます。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 私先ほど制度上の問題ではございませんからと申し上げましたのは、今御指摘のような措置を漁業等の関係においてやつておりますとしますれば、それは一種の見舞金と申しますか、法律を離れての措置であろうという趣旨で申し上げたのでございまして、そういう前提をとりますと、この法案なり何なりが、かえつて制限になり縮まつたということには、まあこれはならないということに、りくつでございますけれども、思います。

角田幸吉自由党

○角田委員 こういう法律が出ることによつて見舞金も出さなくなる。賠償の義務はなくなつた。この法律が出たために見舞金も出す必要がなくなる、こういうことにかえつて進展して参ります。これは現にもらつているのです。これは制度上の問題でないとおつしやいますけれども、国家は予算の支出をいたしますれば、これは予算上制度と言わなければならない。あなたのいわゆる制度というのは法律制度のことでありましようけれども、予算の支出といたしますと、これは制度でございます。そういう制度を縮小するのでありますから改悪ということになろう。その点について法務府におかれましては、御研究なさらなかつたのかどうか。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 なおその点に関連して、行政協定第十八條第二項(a)項で、この賠償請求は「日本国の法令に従つて審査し、且つ、解決し、又は裁判する。」こうとりきめられておりますが、この日本国の法令というものは現在ある法令だけでなく、将来立法される法令をも含むのであるかどうか。従つて従来の法令にいう責任原理と違つた責任原理を採用した新しい法令をも含むかどうかということが問題になろうと思いますが、この点を含めて政府委員の御答弁を願いたいと思います。

佐藤達夫法制意見長官

○佐藤(達)政府委員 一応私から申し上げます。角田委員のお尋ねの点につきましては考慮に値する問題でありますから、先ほども申し上げましたように、農林省関係において研究しておることを私は承知しております。その事実だけを申し上げておきます。それから今委員長からお尋ねの点はもとより現在においては国家賠償法等の現行法の措置によることになりますが、それらの法制を将来改正いたしますれば、それがそのときどきの国内法として個々に働くというふうに考えております。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 他に御質疑はございませんか。

猪俣浩三日本社会党(第二十三控室)

○猪俣委員 質問は明日したいと思いますが、当委員会に私が今お尋ねするようなことが報告されたかどうか、ちよつと記憶がないのでありますが、今まで、たとえばB二九などが落ちて生じた被害及びその被害の救済方法はどういうふうになつておるか、具体的の事実がありましたらお知らせ願いたいと思います。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 猪俣委員に申し上げますが、その点は先ほどの質疑にも出まして、適当な機会に政府委員から説明することになつております。

猪俣浩三日本社会党(第二十三控室)

○猪俣委員 そうですか、それでは……。     —————————————

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 本案に対する審議はこの程度にとどめ、次に平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。質疑の通告がありますので、順次これを許します。山口好一君。

山口好一自由党

○山口(好)委員 時間も大分たちましたので、簡單にただいま提案になりましたこの法案につきまして一、二質疑を申し上げたいと思います。  平和條約第十一條において、日本国が戰争犯罪人の刑の執行権を持つに至つたことは御承知の通りであります。しこうして刑の執行のうち、連合国政府の決定を要するのは、本案によりますと赦免、減刑及び仮出獄でありまして、連合国側の政府決定を要りしないで、日本政府だけで刑の執行権を持ちますのは、一時出所であります。従いまして、今後の戰犯者の刑の執行に当りましての妙味は、一時出所に集中されるものと考えるのであります。これは現在巣鴨刑務所におりまする戰犯者A級、B級、C級というような人々にとりまして、少くともあの自由を束縛されました生活から一ときでも自由の天地に出たい、こう希望することは、われわれ、同胞としてこれまた深く思いを及ぼさなければならぬことと思います。この一時出所の制度に関しましては、日本政府だけでできる、こういう面から大いにこれは活用されてしかるべきものと思うのであります。なお今回平和條約発効に伴いまして、恩赦の制度も実現せらるるわけであります。これとにらみ合せまして、この制度につきまして、本員の希望としましては、できるだけ広範囲に、一時という名前がついてありますが、相なるべくは相当長い出所を許し得ますように解釈をいたしてもらいたいと思つております。そこで第一に、この一時出所の定義を伺いたいのであります。それは仮出所との区別とも相まちまして、相当長い一時出所と仮出所とはどう違うか、一時出所はどの程度期間を見ることができるのであるか、こういうような点から一時出所の宗義をまずもつて伺いたいと思います。

齋藤三郎中央更生保護委員会事務局長

○斎藤(三)政府委員 ただいまお尋ねの一時出所でございますが、これは平和條約第十一條には規定がないのでございます。しかしながら、現在一昨年から巣鴨刑務所において行われております仮出所の状況を見ておりますと、連合国最高司令官の一九五〇年二月七日の回章第五号によりまして仮出所がなされ、またその仮出所の委員会ができておるのでございます。その回章にはやはり一時出所に相当する規定はないのでございますが、これは刑の執行ということの途中において不慮の事態が起きたという場合に、その者を一時出所させることは当然人道上認めなければならないというような趣旨で、現在回章にはない一時出所がなされておるのでございます。この制度をとることが相当であると考えて、この法律案に規定をいたしたわけでございまして、仮出所は、日本の仮出獄というものに相当いたすのでございまするが、條約の英文にありますごとく、パロールというものと日本の仮出獄と大分違う点があるのであります。日本の仮出獄の今日までやられて来た状況を見ますると、例外的に、きわめて恩恵的に数十年なされて参つたのでありまするが、パロールというのはそうではなくして、刑務所へ入つた人はいずれは社会にもどるのであるから、いきなり極端に自由を拘束された生活から完全なる自由に一足飛びに行くことは、その人の完全な社会復帰をはかるのにふさわしくない、危險が多いという意味で、改善の程度のあがつた人についてはできるだけ原則的に中間的な仮出所を認めて、それから完全な社会にもどすのがよろしい。従いまして、日本の執行停止のうちにありますような場合には、むしろ仮出所で行つた方がよいという場合もあるのでございます。さような関係で、仮出所が出れば特に取消しのない限りは残りの刑期に相当する期間社会において一定の指導、監督、補導、援護に服しておれば、取消しがなければ完全に刑期が終つたことになりるのでございます。この一時出所はそれとは若干違いまして、執行の途中において自分の尊属あるいは自分の子供なり世話になつている人が重態にあるとか、あるいはなくなつたというような場合、あるいは震災であるとか火災であるとか、そういうことのために住宅が焼かれて、残つている家族が困つているような場合に、ある期間を限つて出すのが一時出所の制度でございます。さような状況で一時出所の制度がこの法律案に規定されておるのでございます。しかしながら、日本の執行停止と違いまして、この一時出所期間は刑期に算入される。しかも日本側だけでの決定によつてなされ得るということでございまするので、かような在所者が窮迫な状態である場合に、最も敏速にこの制度を活用できることは、在所者にとつて有利な点であると存じます。従いまして、この法律案によりまして、できるだけ活発にこの運用をはかるべきである、かように存じておる次第でございます。

山口好一自由党

○山口(好)委員 次に一時出所の原因につきまして総括的に御質問します。この一時出所の原因につきましては、本法案によりますと、本人の親族の病気あるいは家庭付近の天災地変というような場合を規定しておるのでありますが、こういう場合のみならず、本人が長きにわたりまする病気で静養を必要とする場合、しかもその本人が戰犯責任の自覚を明確に持つて、他に逃亡するというようなおそれがないとき、こういうものもぜひ入れてよいのではないかと思います。ただいまもお答えがあつたように、この一時出所は人道の基礎であります。世界で慣行されておるヒューマニズムである。自然犯についてもこれが行われておりまする以上、国事犯の性格を持つておりまする戰犯者この戰犯者——の行為がはたして日本の憲法にいう犯罪であるかどうかというような根本のむずかしい問題もありますが、それは抜きにしましても、こうした国事犯の性格を持つ戰犯者に対しましては、ここにあげてありまする特別事由をもつとふやし、その原因を広げてもよいのではないかと思いまするが、政府の御所見を伺いたい。

齋藤三郎中央更生保護委員会事務局長

○斎藤(三)政府委員 先ほど申し上げましたように、一時出所は、その認められまする事由がさような事由でございますので、病気の場合に出すということはでき得ませんが、しかしながら在所者が疾病にかかりまして、そして所内にとどめておくことが治療上相当でないという場合は、これは同じく適切なる特例措置をとることが当然と考えまして、刑務所の長が自己の判断において、期間及び條件等、適当な條件を定めて、適当な病院に移す。しかもその病院に入つておる期間中も、同じく刑期に算入される、こういうふうにこの法律案では考慮いたしておる次第でございます。

山口好一自由党

○山口(好)委員 なお本案の二十四條の事由の前書きとしまして、「但し、第一号又は第二号に掲げる者の危篤に際し、一時出所を許された者の、その後六月以内における同一人の死亡又は危篤を事由とする一時出所は、この限りでない。」こういうような規定もありますが、これなどはどういうふうに御解釈になりまするか。もとよりその前文は「決定をもつて、期間を定め、在所者の一時出所を許すことができる。」と、こうなつておりますから、一度出た者が、その後六箇月以内に危篤者が死亡してまた出たいという場合に、これを許さないということは必ずしもないと存じまするが、こういう場合はこのヒューマニズムの見地から、政府としましてはどういうふうに御解釈しようといたしておられますか、それを伺いたい。

齋藤三郎中央更生保護委員会事務局長

○斎藤(三)政府委員 一時出所の制度の認められまする理由が、先ほど申し上げましたような理由でございますので、相当長期にわたるというのは、むしろ仮出所を許すべきかどうかという点で考慮すべきであるという考慮から、同一の、たとえば父なら父が危篤であるということで出た。その後も危篤状態が続いておる、あるいはなくなつたという場合に、このなくなるまで何年でも出所ができるということは考えられませんで、やはり六箇月以内には同一人の死亡または危篤を理由とする一時出所はできない。但し父が危篤であつたが、その後母が危篤になつたという場合にまた出るといつうことは法律上可能であると存じます。またさらにその未成年の子を預つておる親戚に不幸があつたという場合に、あるいはその後また震災があつたという場合に、これは別個の理由でございますので、さようなときには制限なしに出ることができる、こういうふうに解釈いたしております。

山口好一自由党

○山口(好)委員 なおお尋ねしますが、一時出所の期間はこの法案によりますれば「目的地までの往復の日数を除き、五日をこえてはならない。」こう書いてあります。これは実際問題としましていろいろな考え方もあるかと思いまするが、この五日というのはどんな標準からおきめになりましたか。当委員といたしましては、一月というのも一時出所の期間としましては少し長いかとも思いますので、二十日くらいが妥当ではないかと思うのでありますが、この「往復の日数を除き、五日」といたしました根拠をお示し願いたい。

齋藤三郎中央更生保護委員会事務局長

○斎藤(三)政府委員 今日まで巣鴨プリズンにおきまして約二年近くなされて参りました実績を見ますと、きわめてわずかの人で、そう大した数ではございません。そしてその日数等も短かきは数時間、最長ので四日間ということでございますので、それらの実績等も考慮しまして「往復の日数を除き、五日をこえてはならない。」かように案をつくつた次第であります。

山口好一自由党

○山口(好)委員 最後にもう一点だけ伺います。この目的地の往復という中には、往復します地理的関係で、本人としまして途中で静養をしたり、あるいは親戚に寄るとか、また家に帰りまして家の跡始末をしたい、こういう事由も含まれて許されるものでありますか。当委員といたしましては、当然それくらいのことは考慮されて許されてしかるべきものと考えますが、かようなその途中におきまする静養あるいは家事の跡始末、あるいは親戚との面接というような点も、できるだけ寛大に見ていただきましたならば、この五日という期間も相当調節をされるのではないかと思います。真に戰犯者が長きにわたりまする囹圄の苦痛の中から一時的にも解放されて、その最も擁護せらるべき人命が、それだけ健康に復帰するというようなことに相なりまするので、この点の解釈を伺いたいと思います。

齋藤三郎中央更生保護委員会事務局長

○斎藤(三)政府委員 お気持のほどは十分了解いたしたのでございます。ただ往復の日数ということになつておりますので、往復以外の、ただ自分の静養というようなことではこの日数ということにはならないと存じます。具体的な事案におきましては、その事案に相当するような妥当な日数が定められるであろうと存じておる次第でございます。

山口好一自由党

○山口(好)委員 政府の答弁了承をいたしましたが、当委員会の他の諸君も私と同意見だろうと思います。戰犯者としてあの巣鴨の刑務所におられる人々も、なるほど責任は十分あるかもしれません。しかしあの際の戰争の責任というものは、やはりわれわれ国民の全部が負わなければならない責任でありまして、このわれわれ大多数の国民の責任をあの人々が今刑務所で果しつつある、(「反対だ反対だ」と呼ぶ者あり)そういうふうにも私は考えます。あるいは反対意見を持つ人があるかもしれませんが、ほんとうに正直に考えたならばそうだと私は思いますので、その点を政府におかれましても十分御考慮くださいまして——ただいまの答弁には這般の事情も十分御酌量になつておるようでありますが、今後ともこの点についての一層の御努力を御願いいたしまして私の質問を終ります。

田中堯平日本共産党

○田中(堯)委員 この平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案についての資料がまだ出ておらぬようですが、今在所者は何名おるか。その名前は全部はわからなくてもよろしいですが、その元の官等とかあるいは階級とか。それから一般民間人である場合には、その人がどういう出身の人であるとか、そういうことを表示した資料がほしいのですが、それを至急提出していただきたいと思います。今わかつておれば口頭で大体のことを御説明なさつてもけつこうでありますが、ひとつ資料をいただきたいと思います。

齋藤三郎中央更生保護委員会事務局長

○斎藤(三)政府委員 資料を至急に提出いたしますが、ただいまわかつておりまするものだけ申し上げます。現在巣鴨プリズンに在所している人の数は千七名でございますが、近くその中から数十名の方が出所される予定でございます。それから三百二十一名が外地に戰争犯罪者として拘禁を受けております。それから階級の点と、階層といいますか社会層といいますか、その点はまだ全書類の引継ぎが終つておりませんので十分にはわかりかねますが、大部分の人は憲兵軍曹であるとか軍属であるとかいう人で、われわれと同じような一般大衆の方であります。特殊のA級の人、市ヶ谷で裁判を受けた人はわずか十三名でございます。その他は一般の軍人あるいは軍属という人であります。なお階級等はわかつておりまするから、これも資料で差上げます。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、明十二日午前十一時より会議を開きます。本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十八分散会

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