法務委員会 第28号
- 発言数
- 3 件
- 登壇者
- 2 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1952/03/29
会議録
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。 最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案、平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案、平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案及び平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案を一括議題といたし、各案について政府より提案の趣旨説明を聽取いたします。
○木村国務大臣 ただいま議題になりました最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案の提案の理由を御説明申し上げます。 新憲法下における最高裁判所の職責の重大性にかんがみ、民事事件に関する最高裁判所の裁判権を調整することが必要であるというところから第七回国会において、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律が制定されたのであります。この法律は、御承知の通り有効期間を施行の日から二年間と限られており、来る六月一日からその効力を失うこととなつております。政府におきましては、この法律が臨時特例法として制定された趣旨にかんがみ、民事上訴制度の全般につき、さらに検討をする必要があるものと認め、最高裁判所事務総局の協力を得て研究を重ねて参つたのでありますが、上訴制度を改革するについては、下級審における手続その他民事訴訟手続の全般にわたり根本的に再検討をする必要があるとの結論に達したのであります。そこで昨年五月法制審議会にこの点につき諮問し、目下同審議会において鋭意検討審議中であります。しかし何分問題が重大でありまして、遺憾ながら、いまだ成案を得るに至つていないのであります。しかるに最高裁判所に対する民事及び刑事の上告事件は、その後も年々増加の一途をたどつており、民事事件に関する最高裁判所の裁判権を調整する必要は、右法律施行当時と少しもかわつておりません。 以上の事情にかんがみ、この際、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の有効期間をさらに二年間延長し、その間に、民事訴訟法の改正につき成案を得るよう努力したいと存ずる次第であります。 これがこの法律案を提出した理由であります。何とぞよろしくお願いいたします。 次に、ただいま上程になりました平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を提案することとなりました理由及びその内容の概略につきまして、簡單に御説明いたします。 平和條約第十一條は、わが国が、同條約の発効後において、いわゆる戰犯者に対する刑を執行すべき旨を定め、かつこれらの者に対する赦免、刑の軽減及び仮出所については、これに関する日本国一の勧告と関係連合国側の決定とを待つて行うべき旨を規定いたしておりますので、この規定の趣旨にのつとり、戰犯者に対する刑の執行並びに赦免、刑の軽減及び仮出所を適正に行うための法律を制定し、平和條約の発効と同時にこれを施行しなければならぬわけであります。これがこの法律案提案の根本的な理由であります。 次に、その内容のあらましにつきまして順を追つて御説明申し上げることといたします。 第一に、この法律案に規定された事項を実施する行政機関といたしまして、行政組織法上の権限の分配を考慮し、刑の執行に関する事項につきましては法務総裁とし、赦免、刑の軽減、仮出所及び一時仮出所に関する事項につきましては、法務府の外局である中央更生保護委員会が管理するものといたしておるのであります。 第二、刑の執行につきましては、巣鴨刑務所においてこれを行うものとし、その準拠法例として、この法律案に規定するもののほか、監獄法中の受刑者に関する規定を準用することとし、あわせて国際刑法及び刑務委員会による被拘禁者の処遇に関する最低基準その他の国際慣行を遵守するものといたしておるのであります。この国際慣行を尊重するという趣旨から、従来行われておりました未決日数の算入、在所者の病院移送、有期の刑の在所者及び仮出所中の者について善行を保持していると認められる場合の善行特典制度の適用等に関する規定を設けておるのであります。もつとも、このうち未決日数の算入及び善行特典制度は、刑の執行の段階に関するものではありますが、一面恩典的な色彩を持つものであることにかんがみまして、関係国の同意を得て、適用することといたしておるのであります。また将来万一在所者が逃亡したときは、国内犯ではありませんので、逃走罪は成立しないことといたし、收監状に相当する收容状が刑務所の長から発せられ、連れもどすことになつております。 第三に、仮出所につきましては、刑期の三分の一または刑期四十五年以上及び終身刑のものについては十五年を経過し、かつ刑務所の規則を遵守している在所者はその適格性を有するものとし、本人の申請または親族、知人その他の関係者の願出により、委員会がまず仮出所の適格性の有無を判別した後審理し、審理の結果勧告を相当とするときは、政令の定むるところにより、平和條約第十一條による勧告の手続をとり、これに対する関係国の決定を待つてその処分を実施するのであります。仮出所中のものは、犯罪者予防更生法中の関係規定の準用による保護監督に付し、その者の逃亡または遵守事項の違反があつたときは、委員会の決定をもつて仮出所を取消し、または取消すことができるものとし、その決定をするために仮出所をかりに取消して仮收容状を発することができるものとしているのであります。 第四に、一時出所と申しますのは、従来の国際慣行において行われていたところでありまして、委員会が在所者またはその親族、知友その他の関係者の願出により、在所者の父母、配偶者または子の死亡、危篤等の特別の事由があるとき、期間を定め、かつ、同伴者をつけて一時帰すことが許されることにしているのであります。 第五に、赦免及び刑の軽減につきましては、在所者及び仮出所中の者の申請、その親族、知人その他の関係者の願出、刑務所の長の申出又は委員会の職権により、おおむね仮出所と同様の手続で委員会が審理を行い、勧告を相当とするときは勧告の手続をとり、これに対する関係国の決定を待つて処分を実施するのであります。 第六に、この法律の施行に必要な事項は、政令、法務府令または委員会の規則で定めるものといたしておるのであります。これは、この法律には、基本的な事項を規定し、それに伴う手続その他の細目は、これを政令以下にゆずることといたしたわけであります。 なお、冒頭にも申し述べましたように、この法律は、平和條約の発効と同時に施行する必要がありますので、附則においてその旨を明らかにするとともに、施行に関連して必要とされる法務府設置法の一部改正等についての所要の規定を設けておるのであります。 以上が提案の理由及び内容の概略であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。 ただいま議題となりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして提案の理由を説明いたします。 改正の要点は、次の三点であります。第一点は、土地の状況及び交通の便否等にかんがみまして、簡易裁判所の管轄区域を変更することであります。すなわち市川簡易裁判所管内の千葉県東葛飾郡鎌ケ谷村を松戸簡易裁判所の管轄に、市川簡易裁判所内の千葉県千葉郡津田沼町、大和田町、豊富村、睦村及び二宮町を千葉簡易裁判所の管轄に、大月簡易裁判所管内の山梨県北都留郡大目村を上野原簡易裁判所の管轄に、屋代簡易裁判所管内の長野県埴科郡松代町、西條村、豊栄村及び寺尾村を長野簡易裁判所の管轄に、小千谷簡易裁判所管内の新潟県三島郡片貝町、来迎寺村、岩塚村及び塚山村を長岡簡易裁判所の管轄に、神戸簡易裁判所管内の神戸市兵庫区道場町、八多町及び大沢町を三田簡易裁判所の管轄に、石川飯田簡易裁判所管内の石川県鳳至郡町野町を輪島簡易裁判所の管轄に呼子簡易裁判所管内の佐賀県東松浦郡湊村を唐津簡易裁判所の管轄に、六角簡易裁判所管内の佐賀県杵島郡大町町を武雄簡易裁判所の管轄に、志津川簡易裁判所管内の宮城県本吉郡十三浜村を石巻簡易裁判所の管轄に、二戸簡易裁判所管内の岩手県二戸郡田山村及び荒沢村を盛岡簡易裁判所の管轄にそれぞれ変更しようとするものであります。 第二点は、簡易裁判所の所在地またはその名称の変更による庁名の改称であります。すなわち、高松地方裁判所管内の土庄簡易裁判所を庁舎の都合により、同郡の淵崎村に移転し、これを淵崎簡易裁判所と改称し、また、簡易裁判所の所在地の名称の変更により、吉田簡易裁判所を富士吉田簡易裁判所に、岐阜中津簡易裁判所を中津川簡易裁判所に、柳河簡易裁判所を柳川簡易裁判所に、富島簡易裁判所を日向簡易裁判所に改称しようとするものであります。 以上第一点及び第二点につきましては、いずれも地元町村、関係官公署、地元弁護士会等の意向を十分しんしやくして、最高裁判所とも協議して決定したものであります。 第三点は、市、町、村その他の行政区画に変更のあつたことに伴うこの法律の別表の改正であります。すなわち、従前の市、町、村が合併または分離して、新たに市、町、村ができ、また、市町村の一部が他の市町村に編入される等裁判所の管轄区域の基準となつた行政区画に変更のあつたもの等につきまして、この法律の別表を改正しようとするものであります。 以上簡單ではありますが、この法律案の要点について御説明申し上げました。何とぞよろしくお願いいたします。 ただいま議題となりました裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。 まず裁判所職員定員法に関する改正について申し上げます。今回の改正は、裁判官以外の裁判所職員の定員を八十四人増員しようとするものでありまして、その内訳は裁判所事務官および雇合計七十人、裁判所技官および看護婦合計十四人となつておりますが、このうち、裁判所事務官及び雇の増員は、最近の実情にかんがみまして、事件の審理の際における法廷内外の静穏を保持するための方法として、裁判所事務官及び雇をして、特に必要を認めた場合、裁判所の長の監督のもとに、裁判所構内における警備に当らせ、あるいは裁判長の指揮を受けて法廷における秩序維持に必要な命令の実施等を担当させるためのものであり、また技官および看護婦の増員は、家事審判事件、少年事件その他の家庭裁判所の事件の処理におきましては、医師としての技官及び看護婦の医学的見地からの調査がきわめて重要でありまして、この種の職員の充実は、この際特に必要な事と考えられますので、いまだその配置のない家庭裁判所にこれを新たに配置するためのものであります。 次に、前回の国会におきまして、成立を見ました裁判所職員定員法等の一部を改正する法律に関する改正でありますが、この法律の附則第三項におきましては、同法律により裁判所職員の定員が縮減されたことにより不利益な取扱いを受ける裁判所職員につきましては、国家公務員法に定める審査請求に関する規定を準用しないこととなつておるのであります。この点は、御承知の通り、行政機関職員定員法の一部を改正する法律におきましても、当初の法案では、同様の内容の規定がありましたところ、国会における御審議の後その部分が削除されたのでありまして、その結果といたしまして、裁判所の職員と一般公務員との間に取扱いの不均衡を生ずることとなりますので、この際右の附則第三項を削除いたすことにいたしたのであります。 最終に、検察審査会法に関する改正について申しあげます。検察審査会事務官は、裁判所事務官の中から命ぜられることになつておるのでありますが、ただ今申し上げました通り、前国会におきまして、裁判所職員定員法の一部が改正され、裁判官以外の裁判所職員の定員が縮減されましたので、これに伴いまして今回検察審査会法の関係規定についてこれが調整をいたすこととした次第であります。 以上、この法律案の内容につきまして概略御説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。 ただいま議題となりました平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案の提案理由を御説明申し上げます。 この法律案は、平和條約第十七條(b)項の裁判の再審査に関する規定のうち、民事判決に関する部分及び議定書C2項の規定の実施に必要な措置を講ずることを目的とするものであります。 まず民事判決の再審査でありますが、御承知の通り、平和條約第十七條(b)項によりますと、日本国政府は、連合国人を原告または被告として日本国の裁判所が行つた裁判について、当該連合国人が、訴訟手続において十分な陳述をすることができなかつた場合には、その裁判を再審査するための措置をとり、当該連合国人が右の裁判の結果損害を受けた場合には、その者を裁判前の地位に回復するかまたはそれぞれの事情のもとにおいて公正かつ衡平な救済が與えられるようにしなければならないことになつているのであります。この法律案におきましては、この再審査をわが民事訴訟法の再審の方法によつて行うこととするとともに、再審の結果による地位の回復または救済についての原則的規定を設けることといたしました。すなわち、連合国人が日本国と当該連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までに終局判決の言い渡しを受け、その判決が昭和十六年十二月八日以後に確定した場合であつて、当該連合国人が、同日以後日本と当該連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までの訴訟手続において、原告または被告として申立て、主張、立証等事件について十分な陳述ができなかつたときは、その連合国人は日本と当該連合国との間に平和條約の効力が生じた日から一年内に限り、その判決に対し民事訴訟法に定める再審の訴をもつて不服を申し立てることができることといたし、また、この再審の訴えにおいて再審の事由が認められ、かつ、連合国人が原判決の結果損害を受けているときは、国はその者を原判決前の地位に回復するかまたはその者に対しそれぞれの事情を考慮して公正衡平な救済を與える責めに任ずることを明らかにいたしたのであります。なお、地位の回復または救済の手続につきましては、連合国人を当事者とする訴訟事件の事実等をも考慮して、別に法律で定めることにいたしております。 次に議定書のC2項によりますと、手形、小切手等の流通証券の引受または支払いのための呈示期間、拒絶証書作成期間等の期間が戰争中に経過し、かつ、当事者が戰争中に呈示等をしなかつた場合には、平和回復後呈示等の行為ができるようにするため、平和條約の効力発生の日から三箇月以上の期間が與えられなければならないことになつておりますので、この法律案は、ヴエルサイユ條約実施の際におけるわが国の先例等をも参酌の上、この期間を六月と定めました。 以上この法律案の内容につきまして概略御説明いたしました次第であります。 次に平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案の提案理由を御説明申し上げます。 この法律案は、民事判決の再審査等に関する法律案と同様平和條約第十七條(a)項に基くものでありまして、刑事判決の再審査等について必要な措置を講ずることを目的とするものであります。すなわち、連合国人が日本国の裁判所で有罪の言い渡しを受け、その判決が昭和十六年十二月八日から日本国とその連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までの間に確定した場合において、その連合国人がその間の訴訟手続において被告人として事件について十分な陳述ができなかつたときは、日本国とその連合国との間に平和條約が効力を生じた日から一年内にその判決に対して、その連合国人の利益のために、再審の請求をすることができることといたすのであります。 この法律に基いて救済を與えるための手続としては、刑事訴訟法に定められております再審の手続を利用するのでありますが、正式な再審の審判に入ります前に十分な陳述をしなかつたことが原判決に及ぼす影響の有無について審査する段階を設けて、原判決に影響を及ぼすと認めるべき相当な理由のある場合に限つて再審の開始決定をして審判することとしております。 次に、この法律による審判につきましては、一般の場合とは異なる特則を設けております。この法律に規定してあります事件について審理して判決を言い渡しますのは、以前の裁判におきまして十分な陳述のできなかつたことが判決にどの程度の影響を及ぼしたかを明らかにすることが目的でありますが、もし、現在の事実と法令に基いて審判しますと、刑の廃止、大赦または時効完成によりまして免訴の判決を言い渡さなければならない場合が大部分となるおそれがあります。それではこの裁判をする目的を達することができませんので、原判決当時の事実及び刑罰法令に基いて審判することといたしております。 このようにして審判しました結果、連合国人が原判決によつて損害を受けたことが明らかになつたときは、国は、その者を原判決前の地位に回復するかまたはその者に対してそれぞれの事情のもとにおいて公正かつ衡平な救済を與えるのでありまして、その地位の回復または救済の手続について別に法律で定めることといたしております。 以上この法律案の内容につきまして概略御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上御可決あらんことを切にお願いいたす次第であります。
○佐瀬委員長 以上をもつて各案に対する政府の提出の趣旨説明を終ります。 なおこれらの各案に対する質疑は次会に讓ることにいたします。本日はこの程度にとどめ、次の会議は追つて公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。 午後二時二十八分散会