法務委員会 第27号
- 発言数
- 43 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1952/03/28
会議録
○田嶋(好)委員長代理 これより会議を開きます。 委員長所用のため暫時理事である私が委員長の職務を行います。ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸法令の措置に関する法律案を議題といたします。前会に引続き質疑を行います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。押谷富三君。
○押谷委員 前会に引続いて勅令九号の関係についてお尋ねをいたしたいと思います。この勅令九号で基本的な重大な問題としてお尋ねをいたしたいと思いますことは、二十二年にこの勅令が出ましてから後に、全国各地におきまして、いわゆる赤線地域と称するものが現われて来たのでありますが、この赤線地域は勅令九号に違反をしないという建前からいろいろ当局の指導のもとに、こういう業態が生れて来ておるのでありますが、これがいわゆる三業分離という形において現われて来、そうして今日の赤線地帶、特飲街というものが不拘束、不搾取、前借はしない、こういうような原則を一面において立て、他面において下宿をする、カフエーの業務をやり、そうしてまた性的取引をする場所、これらは全然別個の関係において分離された業態でやつて行く、こういうことはこの勅令九号に違反をしないという建前をもつて指導をされておるようでありますが、この点について政府はどういう御意見をお持ちになつておるか承りたいと思います。
○岡原政府委員 全国各地にただいま御指摘のようにいわゆる三業分離を建前とする赤線地域というものが存在することは私どもも報告で存じております。ただいまお話のありました通り、女を拘束しない、あるいは、得た金の中から搾取をしない、また前借もしないという建前で、しかも完全に三業が分離する建前においては、勅令九号の関するところではございません。ただ当局の指導にかかわらずそれが中には徹底しない向きもあるやに考えられますので、つい違反がときどき検挙されておるところでございます。
○押谷委員 ただいまお話の前借をしないという関係と実際の問題について多少の疑義がある事柄がありますから、この際確めておきたいと思うのであります。たとえばカフェーに働いておる女給が着のみ着のままでいなかから出て来て、全然衣裳を持つておらない、それで衣裳を買いたいというので、一時衣裳代を立てかえるというような場合が、いわゆるカフエー業者の方においてあり得ると思います。さようなことは前借という言葉のうちに入るかどうかという一点、またこれを同じように病気をしたが、手持ちの金がない、しかし治療費がいる、手術代がいるというような場合には、人情上勢い雇つておる雇い主としてはこれらの治療費を立てかえる場合があり得ると思いますが、こういうものについても前借という観念は入らないと思うが、その点についてのお尋ねをいたしたいと思います。
○岡原政府委員 先ほど前借をせず、拘束もせず搾取もしないと申しましたのは、要するに勅令九号が生れるに至つた基本的な考え方でございますが、個々具体的の事例に当てはめてみますと、必ずしもこの通りに行われなくとも、勅令九号の適用がないという事実がたくさんあるのでございます。すなわち簡單に申し上げますと、前借それ自体が悪いのではないのでありまして、前借に伴つて無理押しに淫売をさせるというところに問題があるのでありますから、先般も御質問に対してお答え申し上げました通り、第一條関係で自由意思を抑圧して、無理に売淫をさせるという結果になりましたら、この取締りになるのであります。前借それ自体としての行為は別に問うところではないのでございます。
○押谷委員 第二條の関係でありますが、第二條の婦女に売淫をさせるということを内容とする契約をした者は云云として処罰規定ができておりますが、この第二條の法のねらいとしては、どういうものを想定して、これによつて取締りをしようとせられておるのか、その趣旨を承りたいと存じます。
○岡原政府委員 第二條のねらいといたしまするところは、簡單に申しますと、売淫をしようとする酌婦とかかえ主との間の契約を言うのであります。單純なるお客との間の契約というものは、この法の目的とするものではないのであります。 〔田嶋(好)委員長代理退席、北川委員長代理着席〕
○鍛冶委員 議題になつております存続法律の第二條、いわゆる勅令九号に関する問題でありますが、先日来いろいろの角度から政府の所見をただしてみまするが、なかなか納得の行くような御答辯に当らないのでありますが、まずこの法律をどうしても置かなければならぬ理由を承りましよう。
○岡原政府委員 この点につきましては、数回似たような御答辯を申し上げたのでございますが、この勅令が制定されました当時の事情が、特に今に至つてもかわつておりませんで、やはり婦女子の弱い身をかような勅令で保護してやる必要があるだろう。これがもし廃止になりますると、いわゆる公娼制度の復活というような世間の批評もさることながら、実際上いわゆる拘束いたしまして、搾取して苦しめて行くという形の行為が、非常にふえて来る可能性があるのであります。そこで現在の法律の建前といたしましては、單にこの勅令九号のみならず、たとえば刑法あるいは各地の取締り條例あるいは労働基準法、職業安定法、性病予防法、あるいは児童福祉法、そういつた法律あるいは條例等で、かような婦女子の身を保護しておるのでございますが、何分にも賣淫行為を直接しかも眞正面から取上げたこの勅令が廃止されるということになりますと、ちよつと響きが大きく響き過ぎる傾きもあると思いますので、先ほど申したような諸般の法令とともに、この勅令九号をもつていわゆる公娼酌婦制度の復活を防ぎ、また国際的な日本の信用もこれによつて失墜させないというのが、主としてこの法案の趣旨でございます。従いましてこの勅令そのものが、さような形で今後存続するということになりますと、いろいろ取締り面その他で、問題の生ずることも、従来の質疑応答で展開いたしました通りでございますが、それらの取締りの実際面につきましては、また十分われわれの方でも研究いたし、過誤なきを期するとともに、また後日諸般の情勢上、もつと形のすつきりした法令ができるようでありますれば、その方も研究いたしてみたい、かように存じておる次第でございます。
○鍛冶委員 御趣旨は十分わかるのであります。この法律のあつていいことは、われわれは百も二百も承知しておりますが、一面俗に言う特殊飲食街というものは、廃止することのできない実情にあります。従いましてこれが廃止できないということになると法律と両立しない、こういうことの現実をわれわれが一番憂えるのでありまして、この点について両立し得るのだという解決さえあれば、われわれは双手をあげて賛成せざるを得ないものなんです。そこでいろいろ問題は出まするが、そのうちで一番問題は取締りの問題でありまするが、今後考えるということは、これはもちろん法律を出されました以上はお考えになるのは当然でありまするが、現在の取締り当局とあなた方とで、これに対する調和方針というようなものを御研究にならなかつたか。なつたとすればどういうことをもつて最も緩和する方法とお考えになつておるかを承りたいと思います。
○岡原政府委員 実はこの勅令九号と申します勅令は、先ほど御質問にもありました通り、実際のいわゆる特殊飲食店街との調和というものは簡單にとれないために、これを運用するに嚴に失しまするといろいろ社会問題が発生いたし、またこれを取締ることを寛に失しましても、やはり反対の方面から問題が指摘されるというふうなむずかしい勅令でございます。またこの勅令は單にこれに一つのみで動いておるのではないのでありまして、先ほども申し上げました通りこれに直接、間接の関係を持つ人身賣買あるいは婦女賣買を防止するための諸般の法令と共同して動いておるのでございまして、従いまして勅令九号のみについての運用を、法務府として特殊な打合せ会議というものは持つたことはございませんけれども、人身賣買全般の問題といたしましては、いろいろな角度から研究もいたし、資料も整え、また各地方ごとに打合せ会議もいたしております。ただ実際の各地からの報告に徴しますると、各地方ごとにそれぞれ雑多な形を持つた條例が施行されておるところがありまして、その條例の適用についてまたこれ以上に複雑な問題があるようでございます。従いましてこれを中央において全国的に統一した形において、一つの方針を指示するというふうなことはなかなか困難だろう意いますので、大体実情においては各地の検察庁において研究をさせて、その報告をこちらで見ておるというふうな実情でございます。しかしこれは先ほども申した通り、目下人身賣買全体の問題として一つの機運が動いて来ておりますので、さようなことのみでは足りないと思いまして、引続きこちらの方で眞劍にこの報告を検討して、何かの対策を立てなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
○鍛冶委員 これはこの法律が行われましてからもう五年になるのでありまするが、その間におけるいろいろの弊害を、中央のあなた方にはあまりよくわかつておらないからじやないかと思うのです。今日研究するというような問題ではなくて、もう十分研究しておられなければならぬ。またこれをさらにあらためてここで審議して今後継続させようというならば、十分これに対する対策が立てておられなければならぬ問題じやないかと思うのでありまするが、相当困難な問題だからまだ立たぬとおつしやればやむを得ませんが、今後はひとつ眞劍になつてお立てを願うと同時に、また立て得るという見通しがございますか。
○岡原政府委員 力の限り研究をいたしまして、ぜひしかるべき結論を得たいと存じております。
○北川委員長代理 田中堯平君。
○田中(堯)委員 今の鍛冶委員の質問の件についてまずお尋ねしたいのですが、これは結局こういうふうに解釈してよろしいのでしようか。極端に言えば対外的に国際的な面子もあるので、こういう條文を掲げておかなければならない。けれども実際の取締りに当つては大いに考慮をするという意味に解釈してよろしいのですか。
○岡原政府委員 先ほどお答えいたしましたのは、要するにこの勅令がま正面から廃止されるということの結果に相なりますれば、いわゆる公娼制度の復活というふうな印象を与えるので、これは單に対外的のみならず対内的にも業者の不当なるかごの鳥式の扱い方が復活するのではないかというふうな懸念もございますると、さようなことには反対でございまするので、ぜひ当初この勅令の制定された当時の趣旨を存続して行きたい、かようなのがこの存続の理由である、かように申し上げたのでございます。なお取締りにつきましては、これとはまた別個にこの勅令の持つ意味を十分に徹底いたさせまして、その寛嚴よろしきを得なければいかぬと、かようなことを申し上げた次第でございます。
○田中(堯)委員 どうも答辯がはつきりせぬのですが、私の考えでは、もし公娼制度だけはどうしてもやめてもらいたいというならば、一応この第一條の二号なるものは、これはもう存続じやなしに廃止して、別個の單行法をつくればいいわけなんですが、元来占領治下に入つてからこういうふうな政令が出て、公娼廃止ということになつたというのは、これは多分に占領軍に対する関係があつた。言いかえれば占領治下なるがゆえにという特殊事情から考慮されてこういう規定が設けられたわけであるから、占領治下を脱却した形式上でも独立日本ともなれば、やはり日本の旧来の実態というものに即応する單行立法というものが必要になる。そうすることの方が合理的であると思いまするが、どういうお考えですか。
○岡原政府委員 なるほどこの勅令が制定されましたのは占領治下の時代でありまして、ただその趣旨とするところは、必ずしも占領軍が入つて来たからかようなことになつたのではなくて、従来わが国において相当強く、長く主張されたところなのでございます。現にこの勅令が制定される前におきましても、各府県におきまして公娼制度を命令をもつてとめておいた県が相当あるのでございます。従いまして、これは必ずしも占領軍が入つて来たという事実とは関係がないと私は思つておるのでございます。ただ事態が新たになりまして、占領軍の影響というものがなくなるというふうなことになりますると、またその観点からもう一度事を考えるのはごもつともでございますので、先ほども申し上げました通り研究を重ねて、その点はあらためてまた成案を得たい、かように考えておる次第でございます。
○田中(堯)委員 申すまでもなく百も御承知のことでしようけれども、とにかく賣淫制度のごときはなきにまさつたことはないけれども、今のような矛盾の多い社会ではどうにもしようがない。こいつをある程度許しておきませんと、強姦はふえるし、その他の犯罪が起るし、どうにもならないことは、私が説教するまでもないので、これはせめても取締りの面で十分なる考慮を払われないと、角をためて牛を殺すような結果になると思つておりますが、希望として、十分なるこれの運用についての処置を考慮されたいということを述べておきます。 次に第二條の三号、財閥商号の使用の禁止等に関する政令、これを廃止することになつております。ところが占領軍が日本に来て、日本の過去の戰争の原因は、日本の軍閥並びに財閥なる存在に大きな理由があつた。それでポツダム宣言にも、再び戰争が起らない保障を厳格に規定しておるのみならず、これに基いての憲法においても、事態を一新して、民主的な国家にしよう。少数の財閥なりあるいは軍閥官僚なりが除かれて、非民主的な独裁専制的な国家をやめて、民主的な国家にしようという希望があつたわけであります。それに従つて財閥商号の使用の禁止というような政令も出たわけなのであります。してみると、これは占領治下だけの問題ではないのであります。今後永劫にわたつて少数の実力者が独裁専制をたくましくする時代にならないようにということで、こういう政令が生れておるのでありますから、これを今度占領制度がやむからといつて、同時にこれを廃止するというのは、どうも私どもは納得が行かぬ。どういうわけでこれを廃止されるか説明されたい。
○佐藤(達)政府委員 私からお答え申し上げます。まことに今お話の通りに、この財閥解体ということは、終戰後の重大なる一つの政策として行われて来たわけであります。その解体の措置は、御承知の通りに非常に進捗いたしまして、現在においては一応解体は終つたという認定が可能であろうと思います。ところでその財閥解体の関係では、実は今まであつた財閥を一刻も早く解体して、勢力をなくしてしまおうというねらいだけでは、そういう措置だけでは不十分なので、新しく財閥が興ることをチェツクしなければならないという手当が必要なことは申すまでもありません。そこでご承知の独占禁止法でありますとか、あるいは事業者団体法というものが、それと並行して制定されて、新たなる財閥の成育とというものをそこでチェツクしておるというのが現在の法制の実情でございます。従いまして今の原則から申しますと、過去の財閥の解体は終つた、その悪いインフルエンスというものはないというような事実が一つあつた。従いまして、その事実の面からこの政令は必要がなくなつて来た。ただ將来の心配をどうしてチェツクするかというと、今申しました独占禁止法、事業者団体法というものが現在ございます。これは今後も存続いたしますから、その方で十分チェツクできるということでございます。
○田中(堯)委員 今の御説明によると、日本の財閥はもう占領目的の通りに大体解体を完了した、旧財閥なるものは解体したという御説明ですが、事案をごらんになると、そうじやないことが一目瞭然です。たとえば五大銀行をとつてみましても、みんな三井、三菱等々の旧財閥が、ただ姿をかえて現われておるのみならず、旧時代のような親分子分的な、あるいは一家同族的なそういうふうな小規模な、いわば封建的なやり方でなしに、その上に近代性を持つた猛威をたくましゆうした財閥として立ち直つておることは説明するまでもない。多くの材料や資料も持つておりますが、これは私が説明する必要はないと思います。問題は旧財閥であろうが新財閥であろうが、少数の特権的な力を持つた君たちが、日本の金融界なり財界なりを縦横無晝に支配して行くという傾向が、やがてまた戰争政策を生み出す根源になるので、新旧を問わず、そのような現象は一掃しようというのが占領目的の基本であつたわけであります。してみると、旧財閥がなくなつたからと申しまして、新財閥が旧財閥以上の猛威をたくましゆうするような現状において、これにどろぼうに追銭的に三井、三菱のような旧商号までも復活して使用せしめるというにおいては、私どもは理解が行かないのでありますが、その辺どうです。財閥が解体したということは、政府はあくまでそのように信じておられるのであるか、それとも新しい形において、新製をこらして財閥の威力を発揮されつつあるということは認められるのであるかどうか、まずその点を伺いたい。
○佐藤(達)政府委員 経済関係のことを私から権威をもつて申し上げることは差控えたいと思いますけれども、旧財閥が解体されたということは事実であろう思います。しこうして今御心配の、將来それに似たものが出やしないかという点については、今触れましたように、現行の他の法律がございますから、その方で十分チェツクできるというふうに考えております。
○田中(堯)委員 それでは第三番目に、第二條の六号、占領目的阻害行為処罰令、これは廃止の方に入つております。たいへんけつこうな話であります。これこそは、占領制度があるからこそ、その占領目的を阻害するような行為は処罰に値するというので、占領が終ると同時に廃止するのは、表面上のりくつとしてはまことに当然でありますが、しかし今度は新立法によつて、いろいろと占領的阻害行為を従前通り処罰する結果に相なるように、新聞紙上などで伝え聞いておりますが、占領目的阻害行為の内容なるものは、今度はどういう立法になつて現われて来るのでありましようか。
○岡原政府委員 新聞等でどのように伝えられたか、私存じておりませんけれども、それはおそらく何かの誤解じやないだろうか、かように考えるほかないのでございます。あるいはこの法案の第三條のこの「法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」という、このことを言つておるのじやないかというふうにも想像されますが、これは要するに、この法律が施行になりますれば、実際こういうことはなくなる、但し施行前に、ある違反行為があつた場合には、その処罰はあとまでやることができる、これだけの意味でございまして、引続きどんな行為でも、これに触れる限りはやるという意味ではないのでございます。なおこれにかわる何かあるのじやないかというお話でございますが、それは全然ございません。
○田中(堯)委員 行政協定の二十三條に基く軍機保護法と申しましようか、そういうふうなアメリカ駐留軍の軍機を保護し、あるいはその安全を保障するために立法義務が行政協定によつて日本国に与えられておるわけであります。それに基いていろいろな立法をなさるのでしようが、お尋ねしたいのは、この行政協定の二十三條に基く軍機保護法等々になり、あるいは今朝新聞あたりにも出ておるところの破壞行為の防止のための法律というようなもの、そういうものの中においては、アメリカの対日政策あるいはアメリカの世界政策等について存分なる批判を加えたというような場合は、やはり処罰することになつておる仕組みでありますか、どうですか。
○岡原政府委員 破壞活動防止法あるいは行政協定二十三條に基く立法といつたようなものは、いずれもこの占領目的阻害行為処罰令とは関係がないのでございます。別個の観点から立案しておるのであります。その点につきましては、ごく最近の機会におきまして、法案を国会に御審議を仰ぐ予定でおります。
○田中(堯)委員 行政協定二十三條に基く立法や、あるいは破壞行為防止法等は、この占領目的阻害行為処罰令には関係がないという御答辯でありますが、それは、形式上はそうかもしれません。しかしたとえば、もう戰争は反対だ、再軍備反対だ、全面講和でなければならぬというような主張をする場合、おそらくこれはその法律のいずれかに触れる結果になるかと思いますが、従来は、もちろんそういうことを言えば、占領目的阻害行為ということで処罰された例はたくさんあります。すると形式上は縁もゆかりもないとおつしやつても、実質上はちやんと同じものが承継されることになつて、結論としては占領制度がそのまま継続されるということになるのですが、その点はどうなんでしようか。
○岡原政府委員 さような点につきましては、いずれこの法案の御審議を仰ぐ際に、詳細に御説明いたしたいと存じます。
○田中(堯)委員 それでは第三條について、これはこの前も一度お尋ねしたと思いますが、「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」この「なお従前の例による」という用語が、この場合至つてあいまいで、われわれ法律屋なんですが、どうもわからぬのです。どういうことになるのでしよう。それをひとつ具体的に説明していただきたい。
○岡原政府委員 「なお従前の例による」という立法例は六法全書の至るところにございまして、この場合もまつたく同じであります。要するに施行前にこの法令に違反の行為があつた場合には、施行後においてもなおこれを処罰し得る、かような意味でございます。
○田中(堯)委員 そうしますと、たとえば政令三百二十五号違反で現有懲役五年なら五年を受けておる者で、その刑期があるうちは一応残つている、それはそのまま刑を執行するということはもちろんでしようが、起訴をされていない事犯、そういつたものは今からでも起訴をするということになるわけですね。
○岡原政府委員 その行為が施行前であれば、さようなことに相なるわけでございます。
○田中(堯)委員 そうであつてみると、これは非常におかしいと思う。もちろん政令の性質によつては、占領治下なるがゆえの特別な制度でふるということと、それから占領治下であろうがなかろうが当然の規定である、あるいはその両者を折衷したものと、三つにも四つにもわけられるものが、たくさん雑然と並べられておるわけである。そこで占領治下であるがゆえ、特別にこういう制度が設けられたけれども、占領治下をのがれると同時に、もはやこういう規定は必要ないという、純然たる占領目的上の制度で、しかもそれに違反をして処罰をされ、または今からでもされるというような性質の場合には、これは独立後になれば、当然処罰すべきではないというのが、刑法の大原則である。ところがそれをもひつくるめて、何でもかんでも違反行為で、処罰の適用については十ぱ一からげで、従前の例によつて処罰するのでは、どうもりくつが通らぬと思いますが、その辺は立法の際に十分考慮されたのでありますかどうか。
○岡原政府委員 もちろんさような点が問題になるであろうということは十分予測しておりましたので、研究に研究を重ねた上で、このような結論が出たわけであります。ただいま、かような場合には罰しないのが刑法の大原則だというふうなお話がございましたけれども、刑法につきましては不遡及というものがございますが、かような場合になお従前の例によるというふうなことは、原則からはずれるということはないだろうと私は存じております。
○田中(堯)委員 これは限時法理論として、大いにここで闘つてみたところで、しようがないから、議論はよしますけれども、どう考えてみても、アメリカさんが日本を支配している間、アメリカの悪口を言つては占領目的に沿わぬということで、悪口を言つただけで懲役三年、五年になるというのが、御承知の通りあるわけです。それが今アメリカに対する大ぴらな批判も許されるという時期になつて、五年も三年も前のアメリカの悪口が依然として処罰されるというのでは、これは何も刑法の大原則を持ち出さないでも、だれが考えたつておかしいですよ、今ごろになつてこれを処罰しようなどということは……。どうです、これは……。
○岡原政府委員 この政令が廃止になりましてのその後の行為は、もちろん処罰ができないのでございますが、この政令が生きておる最後まで、やはりその政令としての生命があるのでござ いまして、最後まで一応の形で生かしておかなければならぬというふうに考えております。これは少し平易な言葉で説明いたしましたけれども、先ほどお話の通り、限時法の理論から申しましても、さようなことになるのでありますが、なお御懸念の、さような法律廃止後あるいは政令の廃止後にさかのぼつてある行為を処罰するというふうなことは、いかがなものであろうという国民感情も、ごもつともなことであると思います。そこで実際問題といたしましては、この事件の大きい小さい、あるいはその悪性の程度の大きい小さい等にかんがみまして、具体的な事件の処理については、やはり別個の考慮が拂われるものと私は考えております。
○田中(堯)委員 最後にもう一つお尋ねしておきます。これは今ちよつと含みのあることを言われたので、関連してお聞きしたいのですが、恩赦の実施については、占領目的阻害行為も含まれるやに新聞に出ておりますが、その辺はどうなつておりますか。
○岡原政府委員 事恩赦に関する限り、私の所管でもありませんし、あまり詳しいことも知りませんので、ただ原則的に申し上げますれば、今回の恩赦はなるべく広くやりたいという趣旨のもとに、政令三百二十五号の、あるものについても、大赦にかけようというふうな議論があるようでございます。
○北川委員長代理 他に御質疑はございませんか。——他に御質疑がなければ、本案に対する質疑はこれをもつて終局いたします。 引続き本案を討論に付します。討論の通告がありますからこれを許します。田中堯平君
○田中(堯)委員 私は日本共産党を代表して、本法案に反対の意思を表示いたします。 反対の理由は、占領制度が終結するのでありますから、占領制度に基いて発せられた政令は、これは一応ことごとく水に流すべきが理の当然であります。その上でどうしてもなければならぬというな制度があるならば、新たに国会に訴えて單行立法をやるべきである、かようにわれわれは確信をするものであります。しかるにこの法案によれば、一部のものは存続をする、他のものは廃止をするという建前になつておりますが、しかししさいにその廃止と存続との各政令の内容を検討してみますと、廃止すべきものが存続されており、存続すべきものが廃止をされておるというような矛盾が多々あるのであります。しかも表面は廃止といいながら、その実質は継承する、言いかえるならば、占領制度が実質的に存続されたと同じ結果になるような規定になつておるのであります。たとえば第二條の第六号占領目的阻害行為処罰令のごときは廃止の部に入つておるが、これは單行立法によりまして、その目的を実質的には続けて行くという仕組みになつている。あるいは問題になつておりました賣淫の問題にいたしましても、これなどは当然一応廃止すべきものである。しかるにこれは存続ということになつておりますが、これなどは一応廃止して、日本の実態、ことに旧来からのいろいろな行きがかりもあるので、その実態に適合すべく單行立法をすべきである。ところがそういうことはやらないで、占領軍がやつて来て、文明国としては公娼はいけないからという要請に基いて、頭をぺこりと下げてこの制度を設けた。しかるに頭の下げつぱなしで、占領制度終了後も、依然これは継承するというような矛盾が行われておるのであります。さらにまた第三條を見ますると、政令の全体では、占領治下なるがゆえに、必然的にこれに随伴すべき政令と、あるいは占領治下であろうがあるまいが、永久に日本の法制として持続すべきもの、あるいはその中間のもの、いろいろなものがあるにもかかわらず、十ぱ一からげに違反行為に対する罰則の通用については従前の例によるという規定になつております。これなども非常に大きな矛盾を犯しておる。ことにこの中のわれわれにとつて重大なる問題は、占領目的阻害行為、これは件数にしても莫大な件数が全国ではあるのであります。わずかばかりアメリカの悪口を言つたということで、三年、五年の懲役にぶち込まれている者もいる。そういうのも一向に刑の解除がされた い。従前通りである。あるいは起訴を免れておる者も、後になつてわかつた者は従前通りに処罰をするというに至つては、占領目的阻害行為は占領目前に随伴したものであるから、占領制度が終れば当然消滅すべきものを、なお従前の例によつて処罰する。一体どこまでアメリカに氣がねしなければならぬのか、われわれはそのほどが知れない。それほど卑屈になることはないのであります。 これを通じて結論として言えることは、結局アメリカの日本における駐留軍の制度、これは名前こそ占領から駐留という名前にかわつておるけれども、依然として占領制度を継続する実質を持つておるのでありまするが、この目的に適合するように、また日本の再軍備に適合するように、従つてまた近く第三次世界大戰が起る危險が世界随所に爆発しつつあるのでありますが、第三次世界大戰ともなれば、日本はアメリカの前線基地となり、またこれに随伴をして戰争に導入される、そういうふうな危險があるのでありますが、そういうふうなアメリカの一連の方策に従つて、占領制度を形をかえて従前通りに継続して行こうということが、この法案の眞の目的であるわけであります。この諸法令の基く緊急勅令五百四十二号なるものは一応廃止をされる。従つてそれに基くものは一応全部廃止されなければならぬ立場にあるのに、実際は占領制度を依然継続するという実質を備えておるのであります。わが党のみならず、全日本の国民感情からいたしましても、占領制度から離れて一本立ちの独立日本になるという喜びを国民はみな間近に感じておる。何とか独立したいという気持がある。しかるにかかわらず、独立はただ名のみであつて、依然として占領制度の実体を継続するとあつては、国民感情が許さぬ。わが党だけの反対ではありません。 以上の理由によりまして、本法案に対しては私どもは絶対に反対をするもであります。
○北川委員長代理 これにて討論は終りました。 本案を表決に付します、本案に賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○北川委員長代理 起立多数。よつて本案は可決すべきものと決しました。 なおただいま議決いたしました議案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○北川委員長代理 御異議なしと認め、さようとりはからいます。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四分散会 ————◇—————