法務委員会 第19号
- 発言数
- 566 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1952/03/03
会議録
○佐瀬委員長 ただいまより会議を開きます。 検察行政及び国内治安に関する件について調査を進めます。本件調査のために参考人より意見の聴取をいたしたいと思いますので、この件についてお諮りいたします。 いわゆる東大事件について、東大学長矢内原忠雄君、早大総長島田考一君、評論家阿部眞之助君、東大学生吉川勇一君、同中村隆治君、警視総監田中榮一君、本富士署長野口議君、以上を参考人とし、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○佐瀬委員長 異議なければ、さようにとりはからいいたします。 この際、委員長として一言ごあいさつ申し上げます。 大学は一国文化の中枢であり、国家は巨額の費用を投じて、多くの国立大学を経営し、同時に社会も学問の研究及び学生の教育のために、大学の自治の学問の自由を是認しておるのであります。しかるにこの平和な文化の中心であるべき地帯に、最近は京大事件、また今回は東大事件が発生いたしまして、かえつてここから社会の秩序が撹乱されるのではないかという印象が惹起しておるのであります。衆議院法務委員会においては、さきに京大事件を取扱い、大学の自治と治安について一応調査を遂げたのでありますが、今回はさらに東大事件の真相を国民の前に明らかにし、よつて大学の自治と国内の治安に関する対策の樹立について参考に供したいと考えるのであります。 なお参考人の方に申し上げますが、御発言は大体一人十五分以内において一般的な説明を願いたいと存じます。また各委員よりは後ほど御発言について御質疑いたすことになつておりますが、参考人より委員に対しては質疑できないことになつておりますので、この点念のために申し上げておきます。 ではこれよります東大学生の吉川勇一君の陳述を願います。吉川君には東大自治会中央委員長として、二月二十日の学内集会についての一般的な経過についてお述べ願いたいのであります。
○吉川参考人 では申し上げます。今回いわゆる東大事件として起つている事件は、軍に偶発的なものばかりではないわけです。偶発的でないというのは、決して今回の事件が計画的に起されたということを意味しているのではありません。つまり警察官が学校の中で催されているところのこういう催しものに入つて摘発されるくらい、すなわちそのくらいたびたび入つて来て、学生に顔を覚えられているということを意味しているわけです。二月二十日にありましたポポロの演劇研究発表会は、対象としては本学の学生及び教職員、その家族ということを建前としております、その席において警察官が私服で入り込んでいるというのが学生の中で発見されまして、それが摘発され、警察手帳を一時預かるというのがこの事件の発端であります。その際警察側及び三警官の証言によりますと、全治二週間及び全治一週間の傷を受けて、暴行罪でもつて、一人の学生が逮捕されているという事実があります。はたして学生が警官に暴行を加えたのでしようか。その翌日一人の学生が東大の構内において逮捕されたわけですけれども、その際に驚くべきことには、全治二週間及び全治一週間の傷を受けたその私服警官自身が、私服警官二十名、武装警官三十名の先頭に立つてそれを指揮して学内に侵入して来たわけです。こういつた警察官がはたして全治二週間の傷を受けているものかどうかは、常識に照してみれば明らかだ、そういうふうに考えます。むしろ暴行を働いたのは学生ではなくて、翌日一人の学生を逮捕しに入つて来た警官隊であるわけです。その際は私は初めから終りまで見ておりましたけれども、一人の学生を手取り足取り手錠をはめ足かせをはめ、そうして左手でその学生をつかまえ、右手でこん棒でその学生をなぐりながら、どろの上を引きずつて行く。彼は前歯を一本折られまして、口から血をだらだら流し、手にも足にも傷を受けて、そうして自動車で運ばれて行つたわけです。このことは弁護士が後ほど面会したときにも証言している通りであります。またその際あまりひどいありさまに、それをとめようとした学生及び注意しようとした学生に対して、武装警官は同じくおどりかかりまして、一人の学生がこん棒でめがねを割られて、ここに診断書がございますけれども、けがをしております。その他投げ飛ばされたり突き飛ばされたりした学生は多数おります。それからまた、そういつたけがをしている学生に対して、われわれはすぐ翌日本富士署長に面会して医者をつけるように要求したのです。後ほど弁護士が会つたときの話によりますと、その学生は本富士署長に対して、すぐ医者をつけるようにと中から要求したそうです。ところが本富士署長がそれに対して答えますのには、当人は一向にけがなどしておらぬ、また当人は医者など要求しておらぬから、つける必要はないといつて拒否しております。このような人権蹂躙及び職権濫用と申しますか、こういつた行為が警察官によつてなされているということは、はたして許されているのかどうか、そういう疑問われわれの方から提出したいくらいであります。また当日のポポロ演劇研究発表会は、中に入つた三警官の言によりますと、一般に公開されたものである、従つて一警官が私人として入ることは一向にさしつかえないというふうに内部で述べております。ところがまつたく反対の事実が明らかになつたわけです。ちようど二十五番教室というのは東大法文経の二階にあるわけですが、その事件が二階で起つているときに、下の受付へ二人の私服警官がまた入つて来た、なぜ来たかという学生の問いに対してその私服警官二名が答えているわけです。自分の部下が二階の演劇研究会を見に入つているはずだ、あまり帰りが遅いので様子を見に来たということを後ほどそとからおつかけて来た警官が言つておりました。同時に二階の警官は、私は警察署から家へ帰りがけに、この演劇が見たいから入つたのだということを言つております。このような食い違いから明らかなように、彼らは單に私人として演劇を見に来たのではなくて、何らかの意図を持つて、つまり警察署からの命令を持つて入つて来たのであるということは明らかなわけです。またわれわれが一般に警察官が学内に入つていることをきらうというようなことが言われております。それは一体どういう意味か。われわれはわれわれの生命、身体、財産、そういつたものを保護してくれる人々に対して嫌悪の念を抱くはずはありません。われわれがなぜ嫌悪の念を抱くかといいますと、それは警察官個人に対してではなくて、彼らのやつている行為にあるわけです。彼らが学内に入つて来て何をやつているか、本富士署長は警察官が学内に入るのに対して、本冨士署管内に起つているいろいろな犯罪の非常に多くの部分が、東大の構内でなされている、こういう事実がなされている以上、当然治安を預かつている警察として、学内に警官が入るのは当然だというふうに答えています。ところが彼らが東大の構内に入つてやつて来た事実というものは、警察手帳の内容によつてまつたく暴露されたわけです。先ほどおまわしした警察手帳の写真及び「警察手帳の全貌」という文章によつてもおわかりなように彼らが東大の中に入つて来て、強盗だの殺人だの窃盗だの、そういつたことを調べたのではなくて、たとえば文学部学生大会、法定部学生大会、教育学部学生大会、東大経済学部職員組合大会、都学連大会、中央委員会、緑会大会、南原総長送別会、矢内原総長講演会、こういつた集会にも入り込んでいるわけです。これはすべて警察手帳の内容に明らかにしるされています。また同時に寄席――春風亭柳橋なんとかいうような寄席まで手帳に全部書き込まれている。それから治安とは何の関係もないと見られるところの東大キリスト者平和の会、東大仏教青年会、こういつた団体の理事から理事長から、責任者の学生から創立年月日、こういうものまで全部警察手帳の中にしるされています。それから身元調査と称しまして、学生及び卒業生を含めて三十数名の者が警察手帳にしるされている。それからまた教授七、八名が身元調査でやられている。これは先ほどおまわししました写真の中にございますけれども、たとえば「一月の十八日、金曜日、晴、取扱事項、一、身元調査1文京区菊坂町八二の一七、飯塚浩二、2文京区真砂町二四渡邊一夫」こういつたように、東洋文化研究所の飯塚浩二教授、仏文学の渡邊一夫教授も調査されております。それから同じく明治大学及び早稻田大学の講師の野間宏氏、あるいは東大キリスト者平和の会の顧問教官である堀豐彦氏、それから東大文学部助教授森有正氏、こういつてまじめな教授先生方の身元調査までやられている。身元調査といいまして何をやつているかといいますと、たとえば本籍、生地、住所、職業、氏名、年令、経歴の概要、思想動向及び背後関係、政治、思想、労働等各団体加入の有無及びこれらに関する活動状況、交友状況、こういつたものまで教授の個人にわたつて調べているわけです。それからまた学生の自治会の委員といつたような者の情勢まで調査しまして、それでそのあとを尾行しておる。あるいはまた中央委員会の部屋とか、学友会の部屋とか、そういうところに張り込みしている事実が明らかになつたわけです。一例を申し上げますれば、たとえば一人の学生を尾行しまして、本郷三丁目かど公衆電話において十分間会話し、後徒歩お茶の水駅まで行き、省線三鷹行きに乗り、三鷹下車、不明。PM二時より東大張込み。PM三時二十分ごろ安藤仁兵衛君ほか二名が帰つた。PM四時三十分ごろ傳委員長ほか帰つた。PM五時安仁は二食で食事をして、徒歩にてお茶の水より帰る。中央委員室での会話、傳云々と会話の内容が書かれております。こういつたように、警察官がやるべき治安と申しますか、刑事上の犯罪といつたものは一向に警察手帳の内容に書かれておらず、むしろ個人の思想内容とか動向といつたようなものを全部調査しているわけです。ですから、本富士署長の言うところの、東大校内において犯罪が非常に頻発しておるから入れなければならないという理由にはならないわけです。ついおとといも東大の協同組合の中において約二、三万円の窃盗事件があつたわけです。これに関して東大の厚生課が本富士署に調査を依頼したところが、そんなものはやらぬといつて、全然調べに来なかつたという事実さえわかつております。われわれ学生が、警察官が学内に侵入して来ることを拒否しますのは、こういつたことを調べに来るそういう行動に対して拒否するわけです。このような事実が許されておりますならば、はたして大学の学問研究というものは自由になされ得るでしようか。こういうふうに、教授が何をしやべつたか、何をしたか、学生が何をしているかということが調べられている以上、大学の学問の自由はほとんど成り立たないわけです。これには、はつきりと具体的な形では警察手帳に書いてありませんけれども、教室内に入つて教授の授業をメモしている、こういつた警察官があるということを某教授がはつきりと証言しております。また職員組合の遠山茂樹委員長も、レスター女史を囲む座談会を山上会議所でやつたわけですが、このときにも来たということを証言しております。私も文学部の学生大会に出席したときに、この学生大会に侵入して来た私服警官を発見しております。それから前にも一度発見されて、始末書をとられたという例もあります。このように、本富士警察署の私服が学内の治安に名をかりて学内に入り、こういつた何の関係もない、学生だの、教授だの、自治会などのこういうものを調査しているわけです。われわれが要求しておりますのは、殺人事件なり窃盗事件なりを取締るために学内に入つて来られては困るということを言つておるのではなく、こういつた治安と何ら関係のない事実を調べに入つて来ることは、昔の特高警察の復活であるといつて反対しているわけです。大学の研究及び自由というものがこういう形で侵害されて行つたあとに、はたして日本の大学及び日本の国家がどのような運命をたどつて行くかということは、第二次大戰の前において東大に起つたいろいろな事件によつても明らかであると思います。こういつた事件を契機にして、むしろ大学の学長官選論とか、あるいは法文学部の廃止論というものまで飛び出すに至つては、われわれ学生はまつたく論外であるというふうに考えざるを得ません。
○佐瀬委員長 吉川君に注意いたしますが、大体時間が盡きておりますから、なおあとで各委員から質疑が出た際に供述を願いたいと思います。 引続いて東大学生の中村隆治君にお願いいたします。中村君にはただいま吉川君が述べた点に対する補足的説明と、特にポポロ劇団について供述を、時間の都合上なるべく十分以内で願いたいと思います。
○中村参考人 ただいま吉川中央委員会議長が一般的な点について述べましたので、私は二日のポポロ劇団の演劇会場において起つた事件について主として補足いたしたいと思います。 ただいま吉川君が述べましたごとく、ポポロ演劇研究会において起つて事件は、決して偶発的に起つたのではありません。今まで系統的に学内にいろいろな思想動向、それから教授の身元調査、こういうようなあらゆるスパイ活動をやつていた警官が、学生に顔を覚えられて、その場において摘発されたという事件に端を発しておるわけであります。当日大体五時半からこの演劇が行われることになつておりましたが、準備の都合上非常に遅れて六時過ぎに演劇が始まつたわけであります。その演劇の始まる前におきまして、東大学生新聞の松川事件調査団に新聞記者として参加した徳島君の松川事件に関する報告がありまして、そのあとでこの演劇が開かれたわけであります。まず初めに「いつの日にか」というテーマの演劇が発表されまして、それが終つたのは大体七時から七時半の間であつたと思います。そのとき舞台が明るくなると、突然うしろの方において、私服だくだく、私服が入つておるという声が騒然と起つて、満場憤激して総立ちになつたわけであります。そこでうしろを見ますと、五、六人の学生に一人の私服が囲まれて演壇の前の方へひつぱられて来たわけであります。そこで総立ちになつた学生がその警官を囲みまして、どうしてこんな会場へ入つておるのだ。この警官はわれわれが今まで講義とか、あらゆる集会へ入つておるのを見たことがある。いつも東大の中に入つて、系統的にスパイ活動をやつておるではないか。そういうような抗議の声があちらこちらから騒然と起つたわけであります。そうしてその警官をはつきり確認するために、警察手帳を見せてもらい、ある学生が警察手帳に載つておる私服警官の名前や、職務の場所を記入したわけであります。その一番初めに前にひつぱり出された警官の名前は柴という本冨士署捜査課の私服であつたわけであります。そこで、ちようどそのときにポポロ演劇を写していたポポロ劇団のカメラを持つた人がその警官の写真をとりまして、その場で学生はいろいろな形で詰問をしたわけであります。そのときちようどポポロ劇団の幕合いの時間が終りまして、次の「朝やけの詩」という劇が始まるので、ポポロ劇団側の人が、どうかこの場は引下つて、会場の外へ出てほしいと言つたわけであります。そうすると、突然また私服がいたというので、舞台の方から向つて右手の方から数人の学生に囲まれた二人の私服警官が出て来たわけです。そしてその私服警官たちは、私は本日は職務で来たのではありません。個人の資格で来たのであります。また非番であつたけれども、演劇が見たいので入りました。きようは警察手帳は忘れて参りました。こういうふうに言つているわけです。しかし学生は、三人も系統的に入つており、そして今までたびたび学内にいるのを見たことのある警官であり、それがこの会場に演劇を見るために入つているのではない、そう確信いたしまして、いろいろ学生が問い詰めたのであります。そうすると、遂に警察手帳を出しまして、そこにいた学生がその警察手帳の名前を写し取つたわけです。その警察官二の人の名前は里村という巡査と茅根という本冨士署の捜査課の警官であつたわけです。そしてその三人の警官をはつきり確認するために、ちようどカメラを持つていた人が三人の警官が前に並んだところをとりまして、そしてポポロ劇団の主催者側の指示に従いまして、五、六人の会場にいた人たちがその警官を囲んで、二十五番教室の外側の板の並んでいるところへ出たわけであります。そこで警官が前に立ちまして、それを学生が取囲んで、としてこんなところへ入つて来たのだ。小使室にいたり、事務室にいたり、あるいは講義の場所にいたり、あらゆる集会にいるのをわれわれは見たことがあるというふうに、そこにいた学生が口々に問い詰めたわけであります。そこでおそらくその警官は、きようはこういうふうに摘発されたけれども、本冨士署に帰れば、もしわれわれが私服警察官が入つてもらつては困ると本冨士署に抗議に行つた場合に、本冨士署の署長は、そのような事実はない、こういうふうに強弁するかもしれない。従つて警察手帳を預かつたらどうか。またこのポポロ劇団においてどんなことを警察手帳に書き込んでいたかわからない。そのようなことで、われわれの自由と名誉が侵害されるようなことがあつては、われわれにとつて非常に重大なことである。こういうふうに学生が口々に叫びまして、そこにいた学生が三人の警察手帳を預かつたわけであります。そこで学生側は今まで厚生部長の方、あるいは学生課、その他学校当局に対して、今まで私服がたびたび入つておるのを見かけたことがある、しかしながら学校側はそれに対して何ら処置をとつていない、そういうふうにたびたび学校側に申し入れたわけであります。そのときに学校側は、そのようなことはないであろう、こういうふうに今まで言われていたのが、現実にその場に至つて摘発されたわけであります。そこで厚生部長をそこへ呼んで、その厚生部長の目の前で、はつきりと警官が系統的に入つておる事実を示す必要がある、こういうふうに考えて、ある学生が厚生部長に電話をかけて、厚生部長をお呼びしたわけであります。そこで東大の斯波厚生部長が来られまして、非常に憤激されまして、学校側と本富士署との協定によつて建物内に一切の私服警官、制服警官は入ることを禁止されておる、それにもかかわらずここに入つたのは非常に遺憾である、従つて私はあくる日二十一日にぜひとも本富士署に対して抗議をして、私どもは今後このようなことのないように絶対に確約をとつて来る、こういうふうに厚生部長は言われたわけです。ところがその間九時ごろになつたと思いますが、ポポロの演創が終りまして、中におりました二、三百名の人が出て来たわけです。そこでそのうちの百名くらいの人がうしろに立ちまして、警官の顔が見えないというので、皆がそこに座り日まして、そうして、警官を囲んで、それから厚生部長を前にして、どういうふうに今度の事件を解決するか、その場にいた人がいろいろ話し合つたわけです。そこにおいて、その場にいた人たちは、現在のようにはつきり摘発されたことで明らかなように、系統的に学内に警官が入つておる、このことについては本富士署長に対して嚴重なる抗議をする必要がある、そうして断固責任を追及する必要がある、そうして今後このようなことの絶対にないようにはつきり確約させる必要がある。そこでその場にいた人が意見を出しまして、東大病院前の公衆電話裏から本冨士署に通ずる警察電話がある、そのほか二、三箇所にあるということが出されて、厚生部長に対して詰問したわけです。そこで厚生部長はそのような事実があれば断固警察電話を撤去させる、こういうふうに言つたわけであります。これを参考までに加えまして、そこでこの三つの要求をぜひあくる日本富士署に抗議し、そうして確約を得よう、そういうふうに言つたわけであります。そのとき学生の中から、警官がきようこのように入つて、はつきり悪いということは、今までいろいろ話をしてわかつた、ここへきよう入つたことは非常に悪かつたという始末書を書いたらどうか、こういうふうに中にいた学生が提議しまして、そしてその三警官に始末書を書いてくれ、私は本日貴二十五番教室に不当にも侵入したことをおわびいたします、そういうふうな文面でもつて、これに署名するように、そこにいた学生が警察官に言つたわけであります。そうしたら警察官は最初はがえんじなかつたわけであります。そこで私は――そこにいた学生が斯波厚生部長に、ここにいる学生はこのような意見である、従つて厚生部長からもその私服に対して、本日入つた二とは非常に遺憾であつた、そういう意味の始末書を書くように勧められたらと言いまして、厚生部長も二、三度にわたつて、学生がこう言うのであるから、ぜひ始末書を書かれたらよかろう、そういうふうに言われまして、その三警官は始末書に署名をしたわけであります。そのときちようど二十五番教室は二階にありまして、その下の一階の建物の入口の方で非常に騒がしい音がしまして、また私服が二名入つて来ておるという声がしたわけです。そこで二階の方にいた学生たちは三警官から離れまして、下に降りて行つたわけであります。そうしたらそこに本富士署の捜査課のたしか次席だつたと思いますが、その人と、翌月逮捕に来たときに二十数名の先頭に立つて来た私服と二人の人が学生二、三十名に囲まれて建物の入口にいたわけであります。そこで学生はどうして入つて来たのです、と聞いたわけです。そうしたら、いや、厚生部長の許可を得て入つて来ました、こういうふうに言つたわけであります。ちようどそのとき厚生部長は二十五番の入口から降りて来ましたので、うそをいえ、厚生部長は二階におられる、あなた方は許可を得るひまはないじやないか、と言いましたら、いや部下の帰りがあまりにもおそいのでと、こういうふうに言われたわけであります。そこで三私服が、決して自分で演劇を鑑賞したいからそこへ入つたものではなくて、上官の命令を受け、系統的に入つて来たものであるということが、その場で明らかになつたわけであります。そこで学生はさらに、そこにいる二人の、捜査課の次席の人ともう一人の人だと思いますが、その人に対しているいる問い詰めようとしたわけであります。そのとき外にいた学生が、武装警官が百名くらい学校の前でかがり火をたいて待機している、こういう情報をもたらした人がありまして、そこにいた学生は無用の紛争を避けるために解散したのであります。それがちようど十時少し過ぎだつたと思いますが、それが大体二十日の事件であります。 それから翌日、四時ちよつと過ぎに、私は用がありまして、学校の前から本郷三丁目の方に歩いて行きましたとき、ちようど大型のジープに武装警官が約三十名ほど乗りまして、本郷郵便局の中に入つて、そこに待機していたのです。そこで私はそのまま帰りまして、学校の中へ入つて来たわけです。そうしたら二十日に入つた一人の私服が先頭に、そのほかの私服もまじつて二十名くらいの私服が学校の建物内をぐるぐるまわつて、何ものかを捜索している、そういう状態が見られたわけです。そこで学生はあなた方は何です、こういうふうに問い詰めたわけです。そうしたらいや私は通行人だ、こういうふうに答えたのです。そこで私服であることが明らかであつたので、そこにいた四、五十名の学生が学校側の許可を得て来ましたか、こういうふうに問い詰めたら、そんなことは知らぬということでありまして、問い詰めた学生をなぐつたり、けつ飛ばして追つぱらうわけです。そこで学生はさつそく学校前に飛んできまして、厚生部長、学生委員長、教授諸先生、その他の方をお呼びしまして、学校側と話合いをつけていただきたい、こういうふうに言つたわけです。ちようどそのとき一人が、そこにいた一学生に対してこいつだと言つて、その私服は飛びかかると同時に、正門の前に待機していたところの三十名くらいの武装警官が、一斉に学内に乱入して来まして、安田護堂の前でその学生をひつとらえて、正門の方へ引きずつて行こうとするのです。そのとき教授、助教授諸先生、そのほか学校側の管理者の方々、そういう方々が一斉に出て、またちようど講義を受けていた学生が一斉に建物の外へ飛び出して、その警官に対して、ひどいことをするな、まず学校側と了解をつけて、話合いをつけてからにしていただきたい、こういうふうに申しましたが、警官はこん棒で――現にさつき吉川君が診断書を見せれらたように、その学生はめがねを割られ、目の近くに擦過傷を負つているわけです。そういうような乱暴狼藉を働きまして、その逮捕した学生に対して、片方で学生をつかまえ、片方でこん棒でその学生をなぐりながら、正門の前まで拉致し去つたわけであります。その学生は歯を一本折られまして、くちびるから血を流し、顔面にあぶら汗と血で一杯になり、手錠足かせをはめられて、正門のまでひつぱつて行かれたわけであります。そこへ尾高学生委員長を呼んで来まして、そこですぐ話合いをつけにもらつたのであります。そうしたらちようどそのときに予備隊が約二箇小隊だつた思いますが、鉄かぶとをかぶつて正門の前にずつと並んで、今にも正門の方から入りそうになつたわけであります。そして学生はすく正門をみんなの力で閉じまして、尾高教授に学生の前に出ていただいて、予備隊の指揮者、警官の指揮者に話し合つていただいたわけであります。そして尾高学生部長が、本日のように学校側と何らの話合いがなくて、不当に学内に侵入したことは、大学始まつて以来の不祥事である、これは教育上にも思想上にもあらゆる観点からいつてきわめて遺憾な事態である、そういうふうに抗議されたわけであります。それに対して警察署長は、今ここでは何も言えない、文句があるなら警察署に来て言つてほしいと言われたわけであります。そうしてすぐ引揚げてしまつたので、学生側はその後二十二番教室に集まりまして、今後どういうふうにしてわれわれはこの警察側の不当な態度を追究し、どういうふうにわれわれはこれと闘つて行くかについていろいろ討論したわけであります。 そこでこの二日の事件を通じて明らかにわかることは、さつき吉川君が内容について詳細に述べましたごとく、今度の事件は、その発端はわれわれの学問の自由、思想の自由、憲法に保障されているあらゆる基本的人権が系統的に蹂躪されている、その一つの事件として学生側がこれを摘発したことに始まつたわけであります。
○佐瀬委員長 中村君に御注意いたしますが、時間がないので、あとは各委員の質疑にお答え願うことといたします。 以上吉川、中村両君に対する質疑の通告がありますので、これを順次許します。押谷富三君。
○押谷委員 中村君、吉川君にお尋ねいたしたいと思います。先月二十日本郷の東六二十五番教室内において起りました警察官と学生の紛議並びに翌々二十二日駒場東大の校内においてなされました二名の警官に対する二百名の学生によつてなされたつるし上げの事件、かようなことは、その非がいずれにあろうとを問わずまことに遺憾千万なできごとでありますが、これをめぐつて重大な問題が提供されまして、解決をしなければならぬと思うことは、私どもが常にこれを認めて尊重しなければならぬと考えております大学における、学園内における学問の研究、真理の探究の自由と、大学の自治というこの限界と、治安の関係における調節をどうするかという一点でありますが、この問題を解決するためには、今御両君から述べられましたこの事実の真相を、いま少しく掘り下げてお二人から承りたいと思うのであります。 まず中村君から聞きたいと思いますが、このポポロ劇団の性格でありますが、これはどういう組織で、いかなる性格をもつているかをまず第一に承りたいと思います。
○中村参考人 お答えいたします。東京大学には学内の公認の各文化団体が百数十、むしろ数百といつていいほどあると思われます。この各文化団体は毎年一名の顧問教官の推薦を得て学校、に対して公認の届出をすることになつております。このポポロ劇団も東大内の一文化団体といたしまして学校側に顧問教授の判を得て正式に届け出てある団体であります。
○押谷委員 この劇団の催しでありました二十日の演劇会でありますが、これに入りましたのは、学生、職員、教員、あるいはその家族だけでありましたか、その他の人も入ることを許されておつたのでありますか、伺いたい。
○中村参考人 ここに当日の演劇の発表会に関して学校側への届出書を正式に持つておりますが、これによりますと、この会の名前は、東大劇団ポポロ、研究発表会、会合の性質は演劇研究発表会、会員入場者の種類別及び員数は、本学学生職員三百名程度、借り受けの部屋の名前は、法文経二十五番教室、この届けに対しまして、紹介者は法学部の辻清明教授、ポポロ劇団の代表者は城倉宗一郎君となつております。これによりますと、この会の会場入場者の種類別及び員数は本学学生及び職員三百名程度となつておりまして、本学の学生、教職員、それから了解事項となつておりますが、それの家族、こういうふうに限られた会合であるということが明らかであると思います。
○押谷委員 入場料を三十円ずつとつたということを聞いておりますが、入場料をおとりになつたかどうか。また当日、そういうきまりはあつたでありましようが、実際入つた者は、学生、職員、教員、その家族でないその他の人もやはり入つておつたのではありませんか。
○中村参考人 御質問をもう一度おつしやつてください。
○押谷委員 この入場料の関係と、それから実際に入つた人は、第三者――今あなたが言われた制限外の人が入つたかどうかという実際問題を聞いておるのです。
○中村参考人 一般の映画館とかその他の興行におきましては、税金は入場料の五割ということになつておると思いますが、この場合東大におきましては、税務署の協定において、五割という金額は拂つていないわけであります。これは入場料といいますよりも、むしろプログラム代として三十円納めることが、学内の各文化団体の主催の興行――映画会、演劇発表会その他の研究発表会におきまして、三十円というのは大体協定値段になつております。それはプログラム代として徴収するということになつております。 それからその場において、ほかの人がいたかどうかということは、私はつぶさに一人々々検討したわけではありませんから存じませんが、その場に入つていた人は、やはり本字の学生並びに教職員及びその家族、それから私服が三名以上、そういうことが明らかであると思います。(笑声、発言する者あり)
○押谷委員 当日の演劇の内容であります。これは「いつの日にか」という題のものだと思いますが、それは松川事件か何かを取扱つたものではありませんか。
○中村参考人 お答えいたします。当日この届出の会合の主題題名、及び氏名は、演劇及びあいさつと一つはいつの日にか、一幕二場、朝やけの詩、それからあいさつは作者菊池史郎、それからあとはちよつと読めませんけれども、学生新聞の松川事件調査団に参加した記者の徳島康史君、この二人があいさつされるように届出になつております。そこであの「いつの日にか」という演題の劇でありますが、これは松川事件を戯曲に直したものを初めて上演したと私は聞いております。
○押谷委員 今お話の中に、松川事件の報告が、演劇に入る前になされたと言われたですが、その通りであると思いますが、演劇研究という目的の会合に、松川事件の報告をするということはこれはいかなる意図をもつて、どういう目的でなされたかを承りたい。
○中村参考人 この「いつの日にか」が松川事件に取材したものであるということは私はそう聞いております。そこでこの場合、東大学生新聞の、経済学部の学生でありますが、新聞記者徳島康史君がちようど松川事件調査団に新聞記者として参加したわけであります。そこでこの「いつの日にか」という演劇がこの事件は取材したものである以上、それについて一応観客の中で知らない方があれば説明するという、演劇のシナリオの説明という程度でやられたのだと思います。
○押谷委員 演劇の内容についての説明はもちろんうなづけるのでありますが、松川事件の調査報告をこの場合になされたということになれば、その催し自体の性格も相当かわつて来ると考えるのでありますが、いかなる内容の報告をしたか、あなたはお聞きになつたかと思うが、もしお知りであつたらこの際お聞かせ願いたい。
○中村参考人 その場合の報告はあまり弁士がうまくなかつたので、ぼくも非常にあきあきとして、あまり聞かなかつたわけで、内容はしかとわかりませんが、大体このシナリオの主材となつておるところの松川事件の内容ですね。それからそれを調査に行きましてどこでどういうふうな過程で調査をしたか、そういうようなことについて述べられたと記憶しております。
○押谷委員 この二十五番教室を借り受けてなされたのでありますが、かような催しで二十五番教室その他の場所を借り受ける場合においては、その手続は、今言われた届出でいいのでありますか、あるいは特に許可という形が必要であるかを伺いたいと思います。
○中村参考人 ただいまのポポロ劇団の会合もそうでありますし、その他の学内の公認文化団体、それから学内の公認自治会、こういうものがいろいろな催しをする場合には、教室借用料免除願というものを出すことになつております。それからもう一つは、この研究発表会は人事院規則十四條第七号にいう政治的目的を有するものでないことを保証します、こういうふうのあれと、それから教室借用願、この三通を出すことになつております。そしてこの宛名人は、二十五番教室の管理者であるところの東京大学の法学部長になつております。それからそれが学生課長、厚生部長の手を経て、総長のもとに出されるわけでありますが、それがその内容に関して今まで禁止ということになつた場合もございまして、これは原則として届出制でありますが、学校側の認めない場合も往々にしてあつたということをお伝えしたいと思います。
○押谷委員 吉川君にお尋ねをいたしたいと思います。東大内に日本共産党の細胞があるように聞いておりますが、これについて御承知であれば承りたい。
○吉川参考人 届出団体としては共産党細胞は解散したことになつております。しかし実際はあろうかとも思います。はつきりとは存じません。
○押谷委員 続いて吉川君にお尋ねします。東大あるいはその他の学校の連合体として全学連であるとかあるいは都学連であるとかいうものを承知いたしておりますが、それの本部が東大にあるかないか、その組織、活動内容について御承知であれば承りたい。
○吉川参考人 東大の校内に本部はございません。それから組織に関しては、全学連というのは全国の学生自治会の連合体であります。参加校はよくは覚えておりませんが、百数校あつたかと思います。詳しい組織ははつきりとは覚えておりません。それは規約を見ていただけばよくわかると思います。それから活動内容でありますが、大体学生の自治によつて、及びその連合によつて学問の自由、それから学生生活の向上その他一般に学生の総意に基いた事業をしているというふうに理解しております。それから都学連と申しますのは、東京都内の学生自治会の連合体であります。全学連の中の一地方組織といつたような形になつております。大体都学連の組織も全学連にならつておりますし、活動状況も同じであります。
○押谷委員 学生運動、学生行動でありますが、大学の自治であるとかあるいは学園の自由ということは私どもも認めて尊重いたしたいと念願をしているのでありますが、おのずからそれには限界があると思います。今日の大学内におけるいろいろな研究に名をかりてなされている内容に、必ずしも不穏当ではないとは考えられないものがあると思う。そういう場合においてもなお大学はまつたく別の天地であり、学生は学生という特権があつて、すべての警察権を排斥できるというような考え方を持つているのではないかとさえ疑われるのでありますが、この大学の自治と治安という関係について、あなたは議長としてどういう考えを持つているか一応伺いたい。
○吉川参考人 先ほども私の発言のときに若干その問題についてお話したと思います。繰返して申しますれば、いわゆる治安の問題とそれから学校の自治の問題だと思います。たとえば非常に卑近な例ですが、一軒のうちの中で兄弟げんかなり親子げんかなりをやつていた場合に、それが暴行、傷害に及ばない限り、はたして警察官がとめに入るかどうか、そういう問題をたとえに引いたらちよつとわかりやすいのではないかというふうに考えます。学内においていろいろ問題がございますけれども、それがはたして社会の治安を乱すかどうかといつたようなことの限界ははつきりわかりません。しかし現在までに東大の中において起りました問題もたくさんございますが、それが警察権力によつて取締りを受けなければはたして社会の治安を乱すことになるかどうかといつたことに関しては、私はいなというふうに答えるわけであります。ですから学生のそういつた、たとえば不穏な動向というものがあり、そして学校側の手によつてそういうものを取締りできないという場合には、それは警察権力を発動するように学校側が要請するということになつております。
○押谷委員 それはあなたの意見として承ることにします。この東大の構内は、これは本郷の場合も駒場の場合も一緒でありますが、そこは一般人が通る通路にわたつており、本郷の場合は病院がある、また駒場の場合は飯場があり物が置いてあるというような状況であつて、自動車さえ堂々と通つておるような場所なので犯罪も行われますから、警察は勢いそこをパトロールすることはあり得ることであり、また必要だと思うのであります。そういうような場合においてなおかつ警察官は大学内に入つてはならないというかきをあなた方は守らなければならぬと考えておるのでありますか伺いたい。
○吉川参考人 先ほども申し上げましたように、学内をもちろん一般人も通行いたします。そういつた関係から起るいろいろな犯罪もあるかと思います。そういうものを取締りに入る警官、これに対してわれわれは拒否しようということは言つておりません。むしろそういう名目で警官が学内に入つて来て一体何をしているかということから、いろいろ問題が起つてく来るわけであります。
○押谷委員 制服で堂々とパトロールする場合においてはさしつかえないという意見ですか。
○吉川参考人 そうではありません。制服で堂々とパトロールする場合でも、その目的なんです。たとえば制服警官が学内に入つて参ります。ところが彼らはどろぼうをつかまえるのじやなくて、掲示板を見て手帳を開いてその掲示の内容を写して行く。そういうことをやつておる以上、われわれはそういつた警官が入つて来ては困るという意味であります。
○押谷委員 その目的はいろいろな意図もありましよう。また不穏な活動をするのを未然に防ごうという計画もあるであろう、そのために取材をする必要もあろう、またどろぼうを捕える必要もあろう、治安を守るという大きな立場からは、いろいろな行動が自由で許されなければならぬのが、われわれは建前だと思う。そうするとこういうような一般人が入つて来るような場所、自動車が通つておるような場所、そこへ警察官がパトロールに来ることも、何かの意図があつて来たんだ、入れちやならないというような態度は、これは学生としては行き過ぎである。大学がそういう考えを持つておるならば、その大学の自由、自治というものははき違えたものだと私どもは考える。その点についてあなたはどう思う、重ねて伺いたい。
○吉川参考人 ちよつと質問の意味がよくわからなかつたのですが、要するに一般人がたくさん入つて来ておるときに……。
○押谷委員 いや、一般人の入り得る場所、通行する場所、あるいは病院がある、本富士署の署長の話を聞けば、本富士管内における犯罪の半分くらいは大学の構内だと言われておる。そういうような大きな犯罪が行われておる場所に、警察がパトロールする、あるいは治安のために捜査するとか調査するとかいうことはこれは当然なさなければならぬ行動の範囲だと私は考えておる。しかるにそれもいけないんだというような考え方は、これは学生としてあるいは大学として自由、自治という言葉をはき違えた行き過ぎの考え方ではないか、こうお尋ねをするのです。
○吉川参考人 治安は先ほど強盗とか窃盗ばかりではないというふうにそちらの方がおつしやつておられましたが、戰前の治安維持法のような意味での治安と解釈するならばそうであるかもしれない。しかしながらわれわれはそうは解さないわけであります。 それからさつきのお答えと同じお答えになると思うのですが、たとえば一般人が通行しておる、そういうところへパトロールの入るのを拒否する、そういうふうにとられては少し困るわけです。そういう名目で入つて来た警察官が一体何をしたかということから起つて来ておるわけです。それは今度の警察官の手帳を見れば、自動車も入る、市民も入つておる、病院もある、そういうところで窃盗を調査したとか強盗犯人をつかまえようとしたということはほとんど手帳の内容に書かれていないわけです。むしろ全然別個の内容が手帳に書かれておる。彼らはそう言つて入つて来るわけです。入つて来たときにそう言つて入つて来ながら、全然別個のことをやつておる。そういうことで学生が抗議しておるわけです。
○押谷委員 大分意見が違つておりますが、意見の相違としてこの程度にしておきます。 いま一つ聞きたいのは、当日の問題で学生が警察官からあやまり証文をとつているとうことであります。学生が、入つて来た警察官からあやまり証文を大勢の力でとつている、このことはどう考えられますか、良識に照していいことであるか、行き過ぎであるかどちらであるか、あなたのお考えを伺いたい。
○吉川参考人 私個人の考えになりますが、大勢の力で無理やりにとつたというふうにおつしやいますけれども、しかしながら警察官がそこへ入つたことがはたして妥当であるかいなかということが、そういう行為をしたことが常識に照していいことかどうかという一つの基準になると思うのです。まず警察官がはつきりとそういつた悪いことをしたわけですね。これは文部次官と警視総監の了解事項にも反しております。それから東大の厚生部と本富士署の了解事項にも反してそういう行為をやつたわけです。そういう行為をやつた以上、今後の保証として絶対に入りませんということを書式に認めて出すこと、及び今回不法にも入つたことが悪かつたと言つて書式にも出すこと、これは当然ではないかというふうに考えます。
○押谷委員 これはきわめてけしからぬ答だと思つております。大勢の力であやまり証文をとるということは、刑法上にも犯罪としてはつきりしております。別に犯罪だからといつてあなた方をたしなめるわけじやないが、学生の身分で(笑声)さようなことを大勢の力でやるというようなことは、これは行き過ぎです。私はさように考えているが、さらに伺いたいのは、警察手帳を奪取したという事実です。これはおそらく警察官が任意に提供したのではなくしれ、これは大勢の力で奪いとつたという言葉が当ると思いますが、この警察手帳をとつたという事実について、あなたはこれは良識に照してよいことか悪いことか、行き過ぎかどうかということを判断をして、あなたの意見を聞かしてもらいたい。
○吉川参考人 警察手帳を預かつたことに関しての御質問でございますが、その際にとつた及び返さないというようなことは絶対約束していないわけなんです。私はその場におりませんで、あとから報告を聞いたわけですけれども、その際本富士署長及び当の私服警察官が今後絶対に入りません。それからまた今まで入つたことに対する責任というものをはつきりするならば、ただちに警察手帳はお返しする。そのために学生の代表が翌日本富士署長に署長と交渉に出かけますからという約束でお預かりしたわけです。ところが、翌日に触れて参りますが、約束の時間までにどうも学内の方のいろいろな仕事がございまして、行けそうもなくなつた。そのために、私は四時ちよつと過ぎだつたと思うのですが、本富士署へ電話をかけて、本日警察手帳の返還及びその他の約束について本富士署へお伺いに行く約束であつた。ところがどうも忙しくて行けそうにもなくなつた、一応これは了解しておいてもらいたいというふうに話したわけなんです。そうしたら電話口に出ました人が、今署長がいなくてよくわからないが、もし君らの学生の方に用事があるならば、君らいつがいいかというふうに電話で質問したわけです。それで私は五時まで中央委員会の部屋にいるから、もしどうしても手帳のことあるいはその他のことに関して用事があつたらば、五時までに中央委員会の部屋に電話をするなり、あるいはだれかが来るなりしていただけば待つておる、そういうふうに約束したわけです。だからぼくは五時まで待つたわけです。
○押谷委員 私が尋ねたのは返したという問題ではなくて――返してくれとか返そうという経過ではなくて、そういうことをやつた警察官の手帳をとつたというこの事実は、学生としては不穏当な行き過ぎであると考えるか、あるいはそれでよいと考えておられるかということを聞いております。
○佐瀬委員長 その手帳をとつたという事実をそのまま知つているだけ説明されればけつこうであります。
○吉川参考人 いい悪いをお答えいたしますればいいんですか、ちよつと若干説明をしたいんです。手帳に書かれていることを見ますれば、これは刑法の第何條に違反するか知りませんが、今のところ人権蹂躙だとかあるいは名誉毀損とかいうことが成り立つと思うのです。そういつた行為がポポロにおいてもされていたかもしれないのです。つまりそのとき手帳を預かるということは、そういつた行為がなされているかもしれず、また行為がなされるかもしれないというときに、それを預かるということは、規定してある正当防衛にも当るのではないかと考えます。
○押谷委員 ゆゆしき言葉ですが、あなたは警察官の手帳をとつたのは正当防衛に当るから妥当であるという判断をしたと承つていいですか。警察官の手帳を奪いとつたことは――預かつたでもよろしい、預かつたことは正当防衛であるから妥当である、正しいのである、こう判断していると承つてよろしいか。
○吉川参考人 正当防衛であるから正しいというばかりではないわけです。それも一つの理由になるかもしれませんけれども、しかしその際警察官がはつきりと承諾したわけです。これは翌日こういう約束をすればただちに返すからというふうに約束をして、そういう了解のもとに預かつたわけですから、決して強奪したわけではないというふうに考えます。
○押谷委員 警察官の手帳を預かつたと言われますが、これを預かるか何か、とにかく提供をさす当時においては大勢の学生によつて警察官をこづきまわすとかあるいはその他の暴力、圧力を加えたという事実は、これはあるいは中村君の方が知つておると思いますが、中村君どうですか。
○中村参考人 ただいまの御質問のようなことはなかつたと考えます。そしてただその場においてあの警官が不当に侵入していたので、そこにいた学生が非常に憤激していたということこれは明らかにあつたと思われます。
○押谷委員 いま一点吉川君にお伺いをしますが、お預りをしたといわれる警察官の持つていた手帳の内容が世間に発表されております。これは相当ゆゆしい問題でありまして、警察官が職務上重要な事実あるいは職務の行動の内容を警察手帳に書いておるということは、これは一つの職務の内容になつているのです。それにはあるいは共産党の諸君が痛がるような秘密があるかもわからぬし、またその他の内容が書いてあるかもわからぬ、それをことごとく発表して――発表の内容によつては迷惑をこうむる人があるかもわからぬが、そういう内容を発表したことがはたしてさしつかえないものであるとお考えになつているか、これが行き過ぎと考えておられるかを聞きたい。
○吉川参考人 警察手帳の内容の発表に関しての問題ですが、文学部の学生大会に何名くらい出ていたか、またそこにおいて何とか教授の思想傾向がどうであるということがはたして警察官の職務であるかどうかということはあべこべにこちらで御質問したいと思います。であるからそれを公表したことが決して職務の妨害にもならないし、ゆゆしい問題でもないと私は思います。
○押谷委員 大学の研究の自由あるいは真理探求の自由と自治ということをあなたらの考えによつてこわす結果になるかもしれません。 最後に一点聞きたいことは、あなたが守らんとする大学の自由、自治ということ、それを守らすために文部次官の通達というのがあるのですが、その通達をあなたらはどれくらいの力のあるものだと考えているか、認識として一応聞いておきたいが、どうですか。
○吉川参考人 どれくらいの力があるかという質問の意味は……。
○押谷委員 この文部次官の通達は大学の自由を守らせたい、あるいは大学の自治を尊重したいという趣旨から行政的に協定されたものなのです。それをもつてあたかも法律のごとく、それに違反したものは人権を侵害するものであるとか、われわれの権利を侵すものであるというような考えがあなた方に根本的にあるのじやないかと思う。あれは法律でもなければ、規則でもなければ、命令でもありません。單なる一つの協定なんです、協定程度のものによつてあなたらがそこまで行くのは私は行き過ぎではないかと考えるから、そこで文部次官の通達はいかなる性格を持つているという認識があなたらにあるかということをお導ねしたのです。
○吉川参考人 文部次官の通達を警察側が破つたから人権蹂躙というふうに申しておるのではないわけです。文部次官の通達を破つて入つて来て、その上人権蹂躪をするような調査をしていることに対してわれわれは抗議しているわけなんです。それからまた文部次官の通達にどのような認識があるとおつしやつても、お答えがむずかしいのですが、通達は通達だというふうに考えております。
○押谷委員 ずいぶん意見はありますが、しかし基本事実を調査するのが今の目的でありますから、この程度で私の質問を終ります。
○佐瀬委員長 花村四郎君。
○花村委員 ただいま押谷委員の質問に対する学生御両人の答弁をお聞きいたしておつたのでありますが、支離滅裂、しかも浅薄なる常識のもとに立つてこういう重大なる問題を判断されたから、この問題が大きく浮び上つて来ておるものであるということをわれわれは見のがすわけには参りません。そこで先ほどから学問の自由、学園の自由というようなことを盛んに言われておるのでありますが、この学問の自由という事柄がまだ学生諸君にはつきりいたしておらぬようですから、この点をはつきりさせる意味でお聞きをいたしたいと思うのであります。 この学園の自由というのは、要するに憲法二十三條が保障している学問の自由を意味するのであるか、それをまず第一にお聞きしたいと思います。吉川君にお聞きします。
○吉川参考人 憲法に規定してある通りが学園の自由であるというかどうかという御質問ですね。
○花村委員 君らの言う学園の自由もしくは学問の自由と言われるその観念は、憲法二十三條にいわゆる「学問の自由は、これを保障する。」という規定から流れて出て来ておる観念なりやいなやお聞きするわけです。
○吉川参考人 その通りです。
○花村委員 そうしますと、この解釈は、要するに学問の研究と、その研究によつて得た結果を発表するところの自由であるということが学者の一致せる理論であり、しかも憲法制定当時における理由と相なつておるが、この点はどうか、これをお尋ねします。
○吉川参考人 大学は教授も学生も一緒になつて学問の研究もやつております。それの発表もやつておりますが、そればかりが大学及び学園の機能ではないわけです。そのほか一般的にいろいろ教育関係における機能を大学は果しております。そういつた面すべてにおいて自由が保障されない限り、研究においても、それからまたその発表においても、学問研究の自由自体が非常に侵されて来るというふうに考えます。
○花村委員 私の質問に答えてくれればいいのです。憲法には言うまでもなく――君は法律学者で研究しておるかどうか知りませんが、あるいは憲法を知らぬかもしれぬ。どうもこのごろの学生はとかくこういう示威運動のみに熱中して、研究的観念を没却しておるので、そういう見地からあるいはわからぬかもしれぬが、わからなければわからぬでよろしい。それで自由については、憲法で集会、結社、言論の自由もあるし、いろいろあるけれども、ぼくの参考人に尋ねんとする條項は、よく学園の自由といい、あるいは学問の自由といい、それは要するに憲法の十三條から流れた自由を意味するのである、こういう参考人の答弁であつたから、しからばこの自由は、学者の説を見ても、また憲法制定当時の説明によつても、学問の研究と、学問の研究を発表する自由である。要するに、真理を探求するという意味において、学生としてあるいは教授として、学校内部においては自由自在、何人の掣肘も受くることがないと保障いたしておる意味に解釈せられるのであるか、そういう意味を言うのであるかどうか、こう聞いておるのです。
○佐瀬委員長 時間の都合があるから質疑応答はなるべく簡潔にお願いいたします。
○吉川参考人 中村に答えてもらつてもよろしゆうございますか。
○花村委員 知らなければ知らないでよい。
○吉川参考人 そういう意味における自由ももちろん含まれます。たとえば学問において自由なる研究ができることを保障されているというふうに言われておりますけれども、しかし現在、東大の中におきましてはたして自由なる研究ができるかどうかという問題なんです。たとえば研究費の不足ということはいなみがたい事実であります。また軍事研究をしなければ自分の研究費が出ないというような教授もたくさんいるわけです。
○花村委員 そうすると、今私がお尋ねするような意味の自由でない、と否定されるのであるか、あるいは肯定されるのであるか、その結論だけお聞きすればよい。
○吉川参考人 今花村四郎が言われたような自由ですね。それはもちろん含まれます。
○花村委員 含まれるというと、その他にもあるというのですか。その他にもあるというならば、その他の自由はいかなるものであり、その自由は憲法のどこから流れて来ておるか、それをはつきり明示してもらいたいと思う。知らなければ知らないでよろしい。
○吉川参考人 今の質問に関連してこちらからちよつとお伺いしたいのです、答える必要上。今花村さんがおつしやつた学問の自由、学問の研究というのはどういうことを具体的にさすのか。それによつてまたぼくの言つた含まれるということが全部その通りはつきりと合致するかもしれませんし、それ以外にもあるかもしれないわけです。
○花村委員 それは学問の自由という意味を聞くのですか。学問をやつているあなた方がその学問の意味を知らぬ、とこういうのか。それで教えてくれ、とこういうのか。そういうことであればそれでもいいんだが、学問を最高学府におつてやつておるその学生が、学問の何ものであるか知らぬというようなことはこれは情ない話である。要するに学問というものは真理を探究することなんだ。真理を探究する自由が憲法上保障されておるということなんです。
○吉川参考人 ほんとうの意味で学問の研究の自由、その学問の研究とは真理の探究であるというふうに規定するならば、私は花村先生の言われたことに対してしかりというふうに答えてよいだろうと思います。
○花村委員 それでわかりました。 次に憲法の二十一條ですか「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」。こう集会、結社、言論、通信の自由が憲法上與えられておるわけです。そこでこれは幾らかぼくが註を加えておく方が君の参考になろうと思うので一言言うわけですが、要するにこの規定は、旧憲法にもあつたのです。しこうして旧憲法においては、法律によつてこの種自由を制限することができるということに相なつておつたのでありますけれども、新憲法においては、法律においてもみだりにこの自由を制限してはならぬという建前になつておるわけです。がしかし、注意せぬければならぬことは、いくら集会、結社、言論の自由であつても、この権利の濫用の場合、もしくはその自由が公の秩序、善良の風俗に反する場合に限り法律によつてこの自由を制限することができるという建前になつておるので、制限の範囲はきわめて狭いと申さなければならない。であるから新憲法においては広い意味におけるこの種自由を與えられておるのであります。そこでここが大事なところなのです。こういうぐあいに広い意味の自由を與えられており、しかもその制限は特に一部の場合に限つてのみできるという、でありまするから、従つてこの自由を制限することは学校の当事者でもできない。学校の学長もできない。学校の管理者もできない。ただ制限のできるものは法律において規定された――簡單に申しまするならば、取締りの職にある者だ。刑事訴訟法上、あるいは警察法等によつてこれが取締りの権限を與えられた者に限つてのみできるのです。自由を大幅に認められて、しかもその一部の制限をせられたというこの趣旨から言うても、これは当然過ぎるほど当然であると申していい。従つてこの種自由に関する治安の問題が起きた場合においては、いかに学校当局といえどもこの自由の取締りに対して一指も添えることはできない。この見地から次官通牒なるものは大いに憲法違反であると私は考えておる。従つて警察官が、與えられた権限に基いて治安の維持のために学園内に入つて行くということが正当であると見るべきことは、これは当然過ぎるほど当然のことで、しかも何ら疑念をさしはさむ余地のないことなのです。これをしも諸君は不当であるというのであるか。今私が申した解釈が間違つておるというのであるか。これをまずお聞きしたいと思います。わからなければわからないでよろしい、はつきり言つてください。
○吉川参考人 お答えいたします。今花村さんのおつしやつたことがほんとうにぼくの理解している通りであるならば、それはもつともであると考えます。警察のみが秩序を守るためにいろいろなことをやることができるというふうにおつしやいましたけれども、その警察の判断がはたして国民一般にともに納得できるようなものであるならば、ぼくはさしつかえないと思うのです。しかしそれを濫用しまして、われわれがまつたく理解できないようなことまでそれをやつて来た場合には不当であると考えます。
○花村委員 その権限を濫用することが不当なことは言うをまたないことでありまするが、濫用をせざる限りにおいてはやはり私の議論が正当であるということを肯定されたものであると認めて私は論議を進めます。そこで参考人になられた吉川君と中村君は共産党員ですか、どうですか、二人にお聞きします。
○吉川参考人 そのようなことはお答えする必要がないと思います。
○中村参考人 私たちがいかなる政治的信條を持ち、いかなる良心を持ち、いかなる思想を持とうともそれは憲法によつて保障されたものである。それがこの国会においてそのような質問をされるということははなはだ遺憾であると思います。
○花村委員 そんなことを聞いているのではないのだ。そんなことをあなた方は卑下せぬでもいいじやないか。共産党員ならば共産党員、しからざれば同調者であるとか、あるいは共鳴者であるとかいう気持をここではつきりされる方が、かえつて諸君が誤解を招かれるおそれがなくなる、そういう意味において、ぼくはむしろ君らの味方としてその点を明瞭にしておきたいと思うのだが、言えなければ言えないでよろしい。
○吉川参考人 先ほどお答えしました通りお答えする必要はないというふうに考えますけれども、しかしながら私はここで共産党員として、あるいは自由党員として証言に立つているのではないのであります。私は中央委員会の議長でありますけれども、全東大生に選挙されて中央委員会の議長になつているわけであります。私は決して共産党員としての発言をするのでもなく、また自由党員としての発言をするのでもなくて、東大の学生の自治会の代表として来て発言をしているわけであります。でありますから、それはここで述べる必要はないというふうに考えます。
○花村委員 それは言えないようですからあえて聞きますまい。しかし共産党員であることは私の調査によつては大体はつきりしている。(「それならばそれでいいじやないか」と呼ぶ者あり)しかし本人の意思を聞いてみる必要があるから聞いてみたのだ。言わなければ言わないでわれわれの方できめてかかかるからよろしい。 そこでひとつ吉川君にお聞きしたいと思うのですが、――ここに共産党の諸君もおるのだが、最近の共産党の動向というものは、あらゆる面においてすこぶる兇暴性を持つた行動を行つておるのであります。まさに暴力革命に移行せんとする前夜であるとまで私はここで断言してはばからない。しかもこの共産党がすでに武器を集める準備もし、そうして軍隊に関する暴力革命の訓練までしているというところまで進んでいるのだ。こういう共産党の今日の姿を諸君は知つておるかどうか、全然知らぬかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
○吉川参考人 共産党が武力革命の準備をしているかどうかということを私が答えることが、今回の東大事件に関する調査に一体何の関係があるのですか。さつぱりわかりません。
○花村委員 要するに、わかつて言えないのかわからないで言えないのかそこはわかりませんが、とにかくいずれにしても今私が申し上げましたような共産党に対する認識を持つておらぬとするならば、諸君の行動はますますもつて軽率のきわみであると論断をしなければならない。そこで、今の問題はしいて言えと言うても言わないのでありまするからやめますが、さらに進んでお尋ねしますが、この東大内に東大細胞並びに東大教養学部細胞、さらまた東大第二学部細胞といつたような細胞がかつてあつたということを知つておるかどうか、そうしてそれは現在どうなつているか、それをお聞きします。
○吉川参考人 かつてあつたということは聞いております。 それから現在に関しては、先ほど押谷先生ですかの質問に対してお答えいたしました。
○花村委員 それから先ほどの押谷君の質問であまりはつきりしなかつたから、もう一度これをはつきりさせておきたいと思うのですが、最近ただいま申し上げた細胞が解散になつて、東大再建細胞、東大細胞、東大教養学部細胞という団体があつて、ビラや機関紙を持つており、これは共産党に属するものであるということであるが、この事実は知つておるか、知らないか。
○吉川参考人 細胞があるということをはつきりと認識したことはありません。 それからもう一つビラがまかれたことがあるかという御質問でしたが、私はまいている現場を見たことはありません。それから細胞の署名入りのビラを見たことがあります。(「毎日配られておるよ」と呼ぶ者あり)毎日配られておるとは考えません。
○花村委員 それで大体わかりました。諸君の行動がはたして是なりや非なりは、これによつてきわめて明瞭なんです。要するに警察官は東大内部に入つて行つた。明らかにあらゆる面において調査を進めておる、これは当然のことです。今日は暴力革令が起きて、初めてそれに気がついて、それに対処する政策を講ずるようなことでは、愚の骨頂なんです。そんなばかげたことをやつておつたんじや、国家の治安は一日も保つて行けない。その治安撹乱、治安が乱される事態が起きない前に、それを予防するということが最も必要なんです。犯罪が起きてからひつくくつて来て、そうして監獄へぶち込むというようなことは、当を得たものではないのだ。その起きる前に予防する。すなわち犯罪予防という面にわれわれがどれだけの努力と犠牲を拂わなければならぬかということは、これはきわめて明瞭なんだ。おそらく各国を通じてこの問題に対する異論はないでありましよう。そこで先ほど私が申し上げたような共産党の今日のあのまことに恐るべき姿、あのまことに何と申しますか、狂暴な行動、あの恐るべき秘密結社、それらのいろいろを考え合せ、しかも東大内部におけるこの共産党員の先ほど申し上げましたような細胞が、この共産党と一脈相通じて、自由なる学園において、しかも崇高であらなければならないこの教育の学園において、恐るべき行動をやつておるというこの事実に直面して、警察が、あるいは警視庁が、これが取締りのために学園へ入つて行くことは、これは当然である。当然過ぎるほど当然である。これをこの共産党のいかなるものであるかもわきまえず、学内における細胞がいかなることをやつておるかも知らず、この学内における治安状況がいかなる状態に置かれておるかもわきまえずに、ただ警察官が入つて行くことが不当であると考える諸君の考え方が誤りであることはきわめて明瞭じやないか、これほど明瞭な事柄を今日なおかつ諸君が反省しないとするならば、これはまことに驚くべきものであると申さなければならぬのであります。
○佐瀬委員長 花村君に御注意しますが、時間の都合でなるべく事実について簡潔に質疑を願いたいと思います。
○花村委員 それでとにかくこういう問題は、ほかの学園には御承知のようにないのだ。京都でこのごろあつたんだが、ほかの学園ではないのだ。東大のみがこういう問題が起きておるということは、東大の内部に共産党が巣食うというか、食い込んでおる、陰険なる陰謀をたくましゆうしておる。これが証左の現われである、こう言うていいのだ。それを諸君は諸君のために、われわれのために、全学生のために、この治安の確保の万全を期さんとするこの意図のもとに東大の学校内部に警官が入つて行つておるのに、どうして諸君はこれを忌み嫌うのか、排斥するのか、この点をひとつ諸君の考えをはつきりと聞いておきたい。
○佐瀬委員長 花村君はなお質疑は相当時間がかかりますか。
○花村委員 まだあるが、もう簡單に済ませます。
○吉川参考人 先ほどからお答えしているので、私の答えはわかつてもらえると思うのですけれども、先ほど花村さんがおつしやつた明瞭であるということは、私には非常に不明瞭であるというふうに考えられます。警官隊が共産党の取締りに入つて来るというのはどう思うかというのですが、私は警察が、共産党の取締りに入つて来ているのではなくて、教授の思想動向や、学生の自治活動を取締りに入つて来ているからけしからぬというふうに言つているわけです。
○花村委員 どうも吉川君は事実関係がよくわからないようであるが、これはやはり教授であろうが、学園内におけるだれであろうが、学生であろうが、職員であろうが、少くとも治安を乱すがごとき危険なるところの思想を持ち、しかもその行動に移行せんとするものに対し、これを調査することが何が悪いか。そういうものに対する調査が悪いというのであるか。そういう危険なるものを調査するのが適当であると、こういうのであるか、どつちなんです。
○吉川参考人 私は前提が違うわけなんです。たとえば東大セツツルメント、あるいは東大仏教青年会、東大キリスト者平和の会、あるいは飯塚浩二教授、こういつたものが、はたして治安を乱すものであるかどうか。そのためになぜ彼らが調査されなければならないのかということがまつたくわからない、こういうふうに申し上げます。
○花村委員 わからないのに、警察官が入つて行くのを拒むというのはおかしいじやないですか。わかつているから、そういう治安を乱すようなおそれは少くとも東大内部においてはない、そういうきざしもないというのにもかかわらず、警察官が入つて来たというので、これを不当だというて叫ぶのであるなら、これはだれが考えてもわかるんだ。あなたが共産党の恐るべき陰謀があるかないかわからなんでおきながら、警察官が入つて行つたのがただ悪いというのは、これはやはり暴であるといわざるを得ないが、その点に対する反省を諸君は持たないかどうか。
○吉川参考人 反省すべき事柄とは思いません。
○花村委員 そういう軽率な考えのもとに、こういう治安維持に関する重大な問題を判断するから、いろいろ問題が起きて来る。それだから、諸君はまず第一に、治安のことなどは考えずに、自分の勉強をしておればいい。学問の研究はそつちのけにしておいて、そうして共産党のお先棒をかついでおるから、ろくなことがない。最近ぼくのところへ二十人余りの東大の学生が参りまして、無理に面会したところが、平和條約と安保條約に反対をしてくれ、こういう陳情に来た。それだから、それはよろしい、わかつた。それで君は共産党なりやいなやと言うて聞いたところが、共産党じやないと否認するのだ。(発言する者あり)それじや共産党のお先棒をかついで、そうして共産党の口車に乗つてやつておるのか、こう言うたのでありますが、私が調べてみたら、ほとんど全部共産党員なんだ。それだから私は、学生は共産党の手先になつて働くよりも、まず自分の與えられたる学問の研究をする方がいいというので、私は訓辞を與えてやつた。そういう次第でありまして、諸君ももう少し学生の分限というものを十分に考えてもらいたいと同時に、学校当局においにも、日本における最高の学府として、国家財政の乏しいうちから莫大なる金を投じておるにもかかわりませず、こういう学生の養成するがごとき学問をやつておるという点において、私どもはまことに遺憾の意を表せざるを得ないのであります。 そこで最後にもう一点お尋ねをいたしておくのでありまするが、さつき逮捕者が傷害を與えられ、暴行されたという説明をいたしておつたようでありまするが、これはもちろん逮捕状に基いたものであろうと思う。もちろん逮捕状がなければ、刑事訴訟法の上からひつぱつて行けないのでありまするから、逮捕状を示して逮捕をしたものであると信ずるのであります。その場合に逮捕状を見て、そうしてそう逮捕状に従わなければならないものであると考えた場合において、逮捕をせられて行く場合に、けがや傷害などをしようはずがないと思う。それだから、その傷害をしたというのは、ただいま言うたように、その逮捕者みずからが法律を否認して、つまりその命令に応じなかつたという違法に基く態度が原因になつておるとわれわれは考えるが、その事実はどうであるか。
○吉川参考人 お答えいたします。今のお答えをする前に、ちよつと発言したいのです。それは先ほど花村さんのところへ学生が平和條約と安保條約の反対に行つた、それは共産党員であるというふうにおつしやつたのですが、今の東大の学生のほとんどは両條約には反対しておりますし、再軍備にも反対しております。單に共産党ばかりではないということを申し上げます。 その次に……。 〔発言する者多く、議場騒然〕
○佐瀬委員長 静粛に願います。吉川君、答弁を続けてください。
○吉川参考人 では続けてお答えいたします。 その次に先ほど、逮捕状を示して逮捕されたにもかかわらず、けがをしたのは、当人が抵抗したからであるというふうな質問でした。私は最初からその現場におりましたけれども、最初逮捕状は全然示されませんでした。いきなり一人の私服が、まわりにたかつている学生の一人を目ざして、こいつだと指さした。とたんに大勢の私服がわつとその学生を押し倒し、ねじ伏せた。それで大勢の学生が憤激しまして、なぜそのようなひどいことをするのだといつてとめようとしたときに、一人の私服がポケットから紙きれを出した。全然内容はわかりません。わかりませんが、逮捕状があるのだ、妨害した者は公務執行妨害だと叫んだ。しかしだれもその逮捕状を確かめた者もありませんし、ましてや当人はそれが逮捕状であるかどうか見ておりませす。いきなり襲いかかつて逮捕してしまつたのであります。
○花村委員 時間がないので今の問題をもう少し尋ねたいのだが、やめておきます。 それではもう一点。ポポロの劇をやるので入場料を三十円とつて、学生並びに学生の家族その他教授、職員等は入れたのであるが、それ以外に入場しておるかどうかはわからなかつた、こういうあなたの説明であつたのですが、ほかの入つておつた人に聞けば、それ以外の人が相当に入つておつた、こういうのです。それだから、それ以外の人が相当入つておるにかもかかわらず、入つておらないものと誤認したわけでしよう。そうして警察官が私服で三人入つたのをとがめたというのは、これは君の方に落度があつたということは認めておるでしようね。それ以外の人も多数入つておる場合において、警察官もそれ以外の人の一人として入場料を拂つたという場合には、さしつかえないわけでしよう。
○吉川参考人 お答えいたします。それ以外の人が入つてもよろしいと言つているわけではないのです。ただ入口で教員の身分証明書や学生証を見ているわけではないのです。ですから入つているかもしれぬのですが、たまたま教職員及び学生、その家族以外の者が入つていたのが三人以上見つかつたから、私服警官が出されたということを申し上げたのであります。
○花村委員 結局それ以外の人も入つておつたことは認めるわけでしようね。
○吉川参考人 入つておるかもしれませんし、入つておらなかつたかもしれません。
○花村委員 そういうことでは困ります。そういうことでは、警察官が入つていいか悪いかという判断ができないじやないか。もしもそれ以外の人が入つておるという場合においては、治安の取締り上、警察官が入つていいという規則がりつぱにできておる。それだから入つた。それを君らが、入つておるかおらないかも知らないで、ただ警察官の入つたのが悪いといつてとがめるのは、これは君らの方に落度があるのじやないか。東大の学生だから、そのくらいのことははつきりわかるだろう。
○吉川参考人 警官が治安のために入つたのじやなく、中にいる三人は、私は見たいから帰りがけに寄つたのだということを言つておるのです。だから彼らの言うことはまつたく矛盾しておつて、何のために入つて来たのかわからないのです。
○花村委員 何のために入ろうが、入つてもさしつかえないじやないか。公衆の入る場所へ警察官も公衆の一人として入つて行つてさしつかえないじやないか、どうしてそれを悪いというのですか。
○吉川参考人 公衆の入る場所ではない建前になつております。許可状、教室借用届には、本学の教職員、学生及びその家族となつておつて、公衆が入つてよいとは書いてないわけです。
○花村委員 もうこれでやめます、やめますが、それでは入つていかぬというあれもなし、いいというあれもなかつたではありましようけれども、しかし学校関係者以外の人も相当入つておつたことだけは間違いない。そういうことになれば、治安維持に関する取締りの対象の場所となることは、これは法令のきわめて明瞭なところなのです。この法規に根拠して警察官が入つた、その警察官に対して暴行を加えたという意味において、諸君の方に落度のあることは、これはきわめて明瞭で、これ以上追究する必要はございません。それは法令によつてその是非は明らかに判断されようと思う。以上をもつて私は質問を終りまするが、ただいまの私の質問に対する応答を聞いてみまするのに、その前提において、その言うところが支離滅裂であつたという私の言葉は、今の私の質問応答によつて、さらに明らかに証明せられたものであると信じます。こいねがわくは、諸君は重大なるこういう学校内部における自治と治安問題を扱う場合においては、もう少し研究をして、そうして確実なる基礎のもとに行動をしてもらわなければ困ると私は思う。ことに学生の分限を越えていろいろのことをやられることは、真理を探求して大いにその人格を養成せなければならない学生の時代に、まことに私は悲しむべきことであろうと存じまするので、この事件を契機として大いに反省せられ、そうしてもう少し正しく強く進まれるように諸君にお願いをいたしておく次第であります。
○佐瀬委員長 学生君君に対する質疑の通告はまだございますが、これは後刻に延ばして、時間の都合上、島田早大総長にお願いいたします。 島田総長には大学の自治と治安に対する御所見、及び文部次官通牒についての御意見、この二つに関する供述をお願いいたします。時間があまりありませんので、各委員も二十分以内で、もし御質疑があれば、簡單にまとめていただきたいと思います。 ではこれより島田総長の参考意見をお伺いすることにいたします。
○島田参考人 ただいま委員長から御指摘になつた二点につきまして、簡單にお答えを申し上げたいと思います。 大学の自治あるいは学問の自由ということがしばしば唱えられておるのでありますが、私自身といたしましては、この点はあくまで純粋の学問上の研究の自由ということだけが、本来の大学が持つております自由であると私は考えておるのでございます。学園内におきましての自治という問題は、もしこれが社会に悪い影響でも及ぼすという程度にまで参りますならば、私はいかなる力をもつてこれを押えるということも、これまたやむを得ないと思うのでございますが、しかしながら私はかかる程度に参りませんうちに、大学自体が反省をいたしまして、あくまで自分の力でもつて大学内の平和の維持と秩序の維持ということに全力をあげて当らなければならないと思つておるのでございます。 ことにただいま第二点として御指摘でございましたところの、次官通牒をわれわれはどう考えておるかという問題でございますが、私自身は、早稲田大学が関係いたします限りにおきましても、これはやはり大学に対して当然認めていただきたい、従来と少しもかわらざる程度においてこれを維持してもらいたいということを衷心から希望しておるのでございます。私どもはあえて大学が社会に悪い影響を與え、治安の撹乱を行うということは、まつたくなすべからざることであると信じております。そのために大学自身、教員、職員あるいは学生諸君も含めまして、いかにしたならば大学が真の大学であり得るかというために、私どもは全力をあげて盡すべき責任を持つておるということを、私はこの際はつきり申し上げておきたいと思う次第でございます。
○佐瀬委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。世耕弘一君。
○世耕委員 時間制限があるそうですから、一問か二問に限つて簡單にお尋ねいたします。今島田総長から、大学の自治、学問の自由という御説明がございましたが、私も同感であります。同感でありますが、ただもう一つお尋ねしておきたいことは、学問の自由ということは世界的なものです。同時に学問の中に秘密はないはずなんです。ところが外部から入つて来た者をば排斥するということは、むしろそれは学問の自由を阻害するのではないか。教育基本法読んでみますると、あらゆる機会において大学はむしろ教育の機会均等、その研磨をすべきことが條文の中に現われておる。そういう点から見て、現在の官立、国立大学のあり方は、はたしてこの思想に合致するかどうかという点に、ちよつと疑問が出て来るのであるが、この見解はいかがでございますか。
○島田参考人 ただいま世耕委員からの御質問でございますが、まさしく御指摘のごとく、私自身といえども、学問に秘密があつてならないということは当然必得ております。何人がいかなる形式において大学の講義を聞かれることも、場合によつてはこれはさしつかえなかるべきはずであると私は思うのであります。ただ今回の東大の問題が起つて参りました直接のありさまを私ども見ておりますと、これは先ほども触れました次官通牒に、遺憾ながら多少相反しておるところがあるように、私には見受けられるのでありまして、しかもそのことが、やがてはひいて大学全体の上に許されておりますところの研究の自由、学問を学問としてあくまで真理を探求して行くという方面へ、ある暗い影を與えるのではないかという懸念から、この問題が起つておるのではないかと私は心得るのでありまして、全体の問題といたしましては、世耕委員のおつしやる通り、学問に何らの秘密があるべきわけでないということは、まつたく私といたしましても同感を禁じ得ない次第でございます。
○世耕委員 学問が自由であるとするならば、大学の中で研究することも自由でなくてはならぬ。またその研究の発表を聞きに行くことも自由でなくてはならぬ。ところがそれが限られた人にのみ自由を與えて、それ以外のものに対しては拒否するということは、私立大学は別といたしまして、少くとも国立大学ではあり得ないと思う。この点を本問題の中心点として考えなくてはならぬ。 もう一つは、学生の自治という問題ですが、学内で大きな問題がかりに起つたとするならば、学生が直接警察と交渉すべき性質のものではございません。むしろ学校当局責任者を通じて当局と交渉してしかるべきだ、私はかように考えますが、この点に関して島田総長はどういうふうにお考えになつておられますか。
○島田参考人 たしかに御指摘のごとく、問題が起りました場合において、正当な道を私どもが選びますといたしますならば、大学当局のしかるべき責任者が警察当局と交渉をいたしまして、この問題を片づけるという筋道が、私は当然あつてしかるべきではないかということを感ずるのでございます。現に私どもの大学におきまして、一昨年の秋に多少の動揺がございましたことは御存じであろうと思いますが、かかる場合におきましても、私どもの大学の内部においては、主として学生厚生部長、並びに学生生活課長という、学生の運動に対しまして直接の責任を持つております者が、第一線に立ちましてこの問題を処理するというのが基本の線であつれことは、まさしく事実でございます。ただいかにも多数の学生諸君が大学内には席を置いておるわけでございますので、場合によりましては、その多数の集団がときに今申し上げました正道からややはずれまして、直接の交渉、直接の関連を他の者どもと持ちますことが、これは遺憾ながら私自身の大学においてもなかつたわけではないのでございます。しかしこれはいずれが正しい行き方であるかと私自身に御質問があるといたしますならば、私はやはりしかるべき機関を通じまして、正々堂々と交渉は行うべきが本筋であるということを信じて疑わないのでございます。
○世耕委員 なお学生自治の限界について御所見を承りたいと思います。 それから時間を節約する意味において、もう一点お尋ねいたしますが、たとえば早稲田大学で劇団を組織するとか、あるいは劇研究会をするとか、こういうような場合、あるいは他の集会結社をするときには、どういう手続で学生に認可をされておりますか、またその認可をすると同時に、認可しつぱなしであるか、その劇やあるいは集会等が円満に学生らしく進行しておるかどうかということに対しての監督等に対して、どういう手続をおとりになつておられるかということも承つておきたいと思います。
○島田参考人 学生自治の限界と申しますことは、私自身はこういうふうに解釈しております。学園の平和並びに秩序を乱さざる限りにおいて、学生諸君には自治というものが認められておるのであります。しかしいやしくも学園の内部におきまして、秩序が乱れ、平和が撹乱をせられるという段階に達しましたならば、もはやそれ以上の活動を学生自治の名をかりて許すことはできない。かように私は思つておるのでございます。 第二の点として御指摘になりましたところは、早稲田大学の内部において、いかなる機関を通じて学生の集会あるいは結社というようなものを認めるかというふうに伺つたのでございますが、これは大学内におきましては大体二つの流れを見ることができると、早稲田の例を引けば申し上げることができると思うのであります。一つは体育関係の方のあらゆる活動でございまして、これは現在の早稲田大学におきましては、二十八の部を持つておりまして、それが一つの体育会というものにまとまつておるのでございます。これに相対するものが、いわゆる文化団体という総称を持つておりますものが、ただいま数を私はつきりここに資料を持つておりませんので、申し上げるわけに行かないのでございますが、約百前後の文化団体に所属いたしました学生諸君の会合が、大学として認めておるところのものが学園内にあるのでございます。これがどういう手続を経て公認の団体になるかということでございますが、まず最初学生諸君が、こういう目的でこういう研究をする、あるいはこういう目標のもとにかかる活動をしたいということが――おそらく会員数の最低が二十名であつたかと記憶いたしますが、これが先ほど私があげましたところの学生厚生部長に、一応毎学年度の初めにおいて提出をされて来るのでございます。その数はおそらく非常なたくさんなものであると申し上げることができるのでございまして、中には重複をいたしましたようなものが、ときには三種類、四種類というような同一系統のものすらも現われて来るのでございますが、無数にふえますことを大学としてもやはり避ける方針から、大体一つの会合を一つの目的について認めるという根本方針を、根底においては持つているのでございます。しかし場合によりましては、同じような目的を持ちましたものが、ときに二つあるいは三つ程度まで認められることがあるのでございますが、大体今申し上げたような整理方針をとりまして、数の制限もいたすのでございます。しかしさらに学生厚生部に集まりましたこれらの出願というものは、全部これを各学部の学部長がメンバーとなつて構成をされております学部長会なるものに、春秋二期にかけるのでございます。春の場合に大体五月、秋の場合は大体十月と申し上げることができると思うのでありますが、この二回開かれます学部長会におきまして、多数出ております。出願について、その目的なり、使命なり、あるいはその会員数なり、あらゆる條件を学部長諸君が検討を加えられまして、許してしかるべきものでありますならば、これを公認の団体の一つとして認めるのであります。もしその目的に大学として持つべからざるような趣旨のものが含まれております際には、学部長会はこれを否定をいたしまして、公認団体としてはこれを認めない、こういう手続を私どもは毎年春秋二回繰返しつつ、今日に及んでおる。これが私ども早稲田大学における学生の文化団体が構成されまするところの経過でございます。
○佐瀬委員長 なお団体なりあるいは集会なりが、具体的に許可された場合に、その許可條件がいかに履行されておるか、実行されているかという点に対する大学の監視なり、あるいは監督なりについての具体的方策はいかように早稲田ではおとりになつているか、この点もあわせて御説明を願いたいと思います。
○島田参考人 ただいま委員長からの御質問でありますが、私先ほど世耕委員にお答えをする際に触れなかつた一点がございますので、あわせてこれも申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げましたような手続でもつて、実は学生の団体というものは公認をされるわけでございますが、同時に各団体には必ず教授の方が一人ずつその最高の責任者として、すなわち会長たる資格を持たれて、すべての責任を負つておられるわけでございます。ただいま委員長からのお話のいかなる者がこの会の活動について責任をとるかという点につきましては、まず会自体がいただいておりますところの会長が全責任を負つて、学園内においてこの会の運営の衝に当つておるわけでございます。 なおそれ以外に先ほど私これも触れたわけでございますが、学生厚生部というものが私どもの大学にはございまして、あらゆる学生の活動についての問題は、一応この部が責任者となつて監督をするわけでございます。あるいは監督並びに助成と申してよろしいかと思うのでありますが、監督をいたす方面もございますと同時に、また学生活動を助成をして行く、育成をして行くという他の面も同時にこの中に含まれておるのでありますが、ここには教授の中から一名の部長が常に出ておるのでございます。その下にまた幾つかの課がございまして、その課の中の一つが学生生活課と名づけておるところでございまして、これがさらにまた何名かの課員を持ちまして、間断なく学生諸君の学園内におけるところのこれまた会合を通じての活動というものについて、一応指導と援助を加えて行く、これがただいまわれわれの大学において現実に行われておるところのありさまでございます。
○世耕委員 もう二点ばかりお尋ねいたしますが、今私の手元にあります東京大学学生新聞というのがて出おるのですが、こういう新聞は各大学で発行されると思いますが、早稲田大学でもこういう新聞を発行なさつておられるだろうと思います。それでこういう新聞を発行する場合に、最後的検閲はどういう手続で検閲しておられるか。それを全然学生にまかせきりであるかどうか、その点をちよつと御説明願いたいと思います。
○島田参考人 学生新聞の件でございますが、早稲田大学が持つております学生新聞はただいま二つでございます。一つが早稲田大学新聞と称しますもの、他の一つが稲門新聞と称しますもので、いずれも学生諸君の編集によつて発行されておるのでございます。前者の早稲田大学新聞と申しますものは、先ほど申し上げましたやはり学生団体の一つでございます早稲田大学新聞学会と称しますものが発行しておるのでございまして、これはやはり文化団体に属する一つの会でございますので、先ほど申し上げましたような手続をとりまして、大学が公認をしております会の一つでございます。これには先ほど申し上げましたように、やはり会長がございまして、編集の責任はむろんこの会長の肩にかかつているわけでございまして、あらゆる記事が集まりました際に、会長が見てこれを是といたしました場合においてのみ掲載される。これが早稲田大学新聞についての実際でございます。他にもう一つ申し上げました稲門新聞と申しますのは、これはまた少しく趣が異なつておりまして、あるいは世耕委員も御承知であろうかと存じますけれども、私どもの大学の第一政治経済学部の中に四科ございますうちのその一つが新聞学科と名前をつけておりまして、これは将来ジャーナリズムの方に活躍をいたします学生の養成しておる学科でございますが、これが毎年わずかにただいまのところでは一回にすぎないのでございますが、新聞学科の実習という意味をもちまして、稲門新聞という早稲田大学新聞とは別なものを発行いたすわけでございます。これは学会ではございませんので、いわばある学部の一学科の実習的の意味における新聞でございますので、これは学科主任の久保田明光教授がその責任者といたしまして、あらゆる記事の掲載について全責任を負つておられる、これが今日の早稲田大学における現状でございます。
○世耕委員 御説朗よく了承いたしました。なお二点ばかり伺つておきたいと思いますことは、おそらく早稲田大学がそれほどの厳重な御指導なり手続をなさつているから、新聞記事が社会問題を引起すようなことは万々ないと思いますが、たとえばこういうような社会問題を起した記事がたまたまそれが早稲田大学の新聞であつたというような場合には、どういう御処置をおとりになりますか。これははなはだ適当な例ではないかもわかりませんが、教育上重大なことでありますから、この間の責任の限界を明らかにしておく必要があろうと思いますから、おさしつかえなかつたら御説明を願いたい。 なお御質問申し上げる時間を省略する意味において要約してお尋ねいたしますが、この新聞記事によりますると、警察手帳をとり上げる、並びに警察に始末書を書かす場合において、東京大学の厚生部長が学生とともに立ち会つているというような状況がこの新聞で見られるのであります。これはまことにわれわれ教育に携わる者は異様な感じがするのでありますが、早稲田大学では万一かような場合にはどういう御処置をおとりになるであろうかということも、あわせてお聞かせを願えれば非常にけつこうだと思います。
○島田参考人 ただいまの御質問の前半でございますが、私どもの方の早稲田大学新聞はいまだかつて世耕委員が御指摘になつたような事例を知つておらないのでございまして、あるいは今後そういうことが起るかどうかということは、これは将来のことでございます。幸いにいたしまして従来の実例といたしましては、ただいま御指摘があつたような実情はいささかもございませんでした。もしかりに将来こういうことが起つたらばどうするかということを考えますならば、私どもはやはり新聞関係の学生諸君ばかりでなしに、その責任者たる会長の方にも御懇談を申し上げ、あるいはまた編集の衝に当つておられる学生諸君にも連絡をはかりまして、再びかかることのないような指導をするつもりでございます。しかしながらこれがはたしてそれだけで済めばけつこうなんでありますが、しからざる場合におきましては、最後の手段といたしましては、一時その新聞の発行を停止するなり、あるいはまた個々に別な陣容を新しく構成させ直しまして、もつと健全なまつたく危険のない大学の新聞としてこれを発行させるというような指導も、時には必要であるのではないかと思うのでございますが、幸いにいたしまして、今までのところではそういう例がないのでございます。 それからただいまの御質問の後段の方でございますが、これは早稲田大学だつたならばどうであろうかという御質問でございますが、これは私は非常にお答えがむずかしいと思うのでございます。少くとも東京大学における実際のありさまというものは、今朝来私はここで学生諸君その他の方々のいろいろなお説を拜聽しておつたのでありますが、まだ私は全貌をほんとうの意味において、はつきりつかむという段階に達しておらないように思うのでございます。この点につきましては、幸いここに今日矢内原東大総長がおいでになるのでございますから、後にこれはお答えしていただくことの方がむしろけつこうではないかと思うのでございます。ただ私どもこれまた想像でございますが、将来早稲田大学においてかかることがあつたならばどうであろうかというような御質問であつたように記憶いたすのでございますが、そういう場合におきましては、やはり大学が大学として少しもおかしくない、世間一般からごらんになつても、さすがに大学らしい態度でもつてこの問題を処理したというふうに私どもは極力努めて、問題を解決したいと思うだけでございます。私どもは抽象的にそういうことを考えるのでございまして、実際の問題が起りました際に私は臨機応変の措置を講せざるを得ないというような感じを持つ次第でございます。
○鍛冶委員 なるべく質問を略そうと思いましたが、一点重大な発言がありましたので、これだけを承つておきます。このたびの東大における問題で次官通牒に反した点があつたとあなたはおつしやいましたが、それはどの点であるか、指摘していただきたいと思います。
○島田参考人 学園内に大学の要請なくして警官が入りますことは、一応次官通牒におきましては、おそらくこれはそうでないようにきまつておると私は記憶しておつたのであります。このたびのことも、私も先ほどから申し上げましたごとく、私自身の大学のことでございませんので、あるいはまだすべてのディテールにわたりましてつまびらかにしておらないことが多々あると私は思うのでありますが、全体論といたしまして、やはり大学内に警官が入るということは、まず大学の要請を基礎に置いてしかる後に行われるのが、現状においてはまさしく望ましいところであると私は思つておりますために、かかる発言をしたわけでございます。
○鍛冶委員 次官通牒には、なるほど要請があつた場合警察はこれに協力すること、こうおります。これは一般原則でありますが、それでは要請がなかつたら、いかなる場合でも入つていかぬという御解釈でしようか。
○島田参考人 やはり現状においては、要請を根拠といたしまして、その後において警官は学園内に入つてほしいと私自身も思つておるのでございます。これは一般論で私はそう申し上げるのでありますが、ただ問題は、やはりこれは時と場合のことも考えなければならないと思うのでありまして、かりに大学が要請をするのに多少時間をとつて遅れたりなどするような場合もないとは言えないと思います。しかも学園内において秩序が乱れたり、平和が撹乱されたりするようなおそれが時にないわけでもないと存じます。かかる場合におきまして、やはり形式を重んじて行くということがはたして妥当であるかどうかというのは、私といたしましても、多少疑問を持つわけでございます。原則的には、やはり大学の自治を皆様がお考えくだおる場合においては、次官通牒の線に沿つてあくまで進んでいただきたいということを私は希望しておると申し上げたのでございます。
○鍛冶委員 原則としましてはわれわれもさように希望いたしますが、ただ一点承りたいのは、学内における治安の責任で、もし学内において治安が乱れたときにその責任は、治安を守る官憲にあるものであるか、それとも大学の、ここには学長とありますが、総長ですか、その人に最後の責任があると思つておられるか。この点を承つておきたいと思います。
○島田参考人 私は現在の場合において、まず第一段階においては大学の総長であり、学長であるものが学園内の秩序の維持ということについては金責任を負うべきものだと思つているのであります。私どもの大学におきましても、一年ばかり前のことでありますが、多少の混乱が出て来たことはあるいは御記憶であると思いますが、私はやはり私自身の責任であるということを痛感いたしておつたのでございます。現在におきましても私はそう思つております。ただ問題は一学園だけでなしに、さらにこれが対社会の問題を引起すような場合になつて参りますならば、学園だけの力でもつてどうするかということは非常にむずかしくなるのではないか。かかる場合におきまして、ある一つの大学の純粋の学園内における治安の問題は非常にむずかしいのでございますが、でき得る限りの力を使いまして、私どもは全責任を負う覚悟を持つておるのでございます。しかしそれがその程度にとどまらない、より擴大された場合におきましては、これに大学が別に警察力を持つておるわけでも何でもないので、場合によりましては、やはり警察当局との関連においてこの問題を処理すべき必要が当然出て来るのではないかと私は感ずるのでございます。
○鍛冶委員 私のお聞きしたいのは、法律上の責任であります。治安が乱れた場合に、大学総長は学内の取締りの上で責任がありましようが、これを法律的に最後に負うものは、治安を守る責任のある警察その他でないか、それとも総長で負えば、警察はそんなことは総長が負つたんだから、関係はないと言つておられるものかどうか、この点はどうですか。
○島田参考人 これは確かにお説の通りであると私も同感でございます。最後の責任はやはり警察当局が全体の治安の維持ということに全責任を持つておられるわけでありますから、この点を私は疑うことはできないと思うのであります。
○鍛冶委員 さようにお考えになりますと、学校当局において要請がなかつた、もしくは拒絶した、そういう場合でも最後の責任者である警察において、これは乱れる必配がある、かように思つたら、要請を待つておれないのじやないか。そういう場合があり得ると考えますが、その点はいかがですか。
○島田参考人 確かにお説のごとくそういう場合もないとは言えないだろうと思います。しかしかかる場合において、やはり一方的に警察側から大学に進出をなさることは、一応考えていただきたいと私は思うのでございまして、私どもに御連結くださるならば、警察当局の考えておられるところがどの程度であるか、また実情を見て私どもがどうであるか、両者会議の上において、その出動が是認されるか、あるいは拒否されるか、かかる行き方をあくまでとりたいと私自身は希望しておるのであります。
○鍛冶委員 一般的にさようなことでありたい、またそれが妥当であろうと思いますが、そうでない場合もあり得ます。たとえば京大の事件のごときはそうである。警察において不安だ、こう言うものにかかわらず、学校当局は大丈夫だからよろしい、こう言つたが、結果においてああいう不祥事が起つた。大学総長としては責任をとると言われが、大学総長が責任をとるからといつて、警察は責任がなくなるものじやありません。だからわれわれから言わせれば、今から見れば結果論でありますが、それほどだつたら、学校がそう言つても警察はしかるべく手段を講ずべきであつた。かようにわれわれは考えますが、その点に対する御見解を承りたいと思いますが、大体今の御見解でわかりましたので、その点の御答弁はいりません。
○佐瀬委員長 島田早稲田総長に一言お伺いしておきますが、大学の自治と警察の調整上現在の次官通牒で十分とお考えになられるか、あるいはその運営上疑点があり、これを改正する必要があるとお考えになるか、その点に対する御意見を簡單にお述べ願いたいと思います。
○島田参考人 ただいま委員長からの御質問でございますが、私個人といたしましては、現在の次官通牒は必ずしもこれを改正する必要ありとは考えておりません。この線で行つてしかるべきであると私は思うし、大学は先ほど来お話がございますように、やはり純粋の学問の研究の自由ではございましようが、こはは私は角をためて牛を殺すような結果になりませんように、大学は大学としての活動を十分になし得る程度に保つて行きたいということを、私は衷心から希望するわけでございます。ただ、先ほどから私申し上げておりますように、場合によりましては、大学自体として反省をし改めなければならないところもありといたしますならば、私どもはこの努力を傾注いたしますことにいささかもやぶさかでないつもりでございます。しかし御質問の最初の点でございます次官通牒そのものにつきましては、私個人としてはやはりこの線はあくまで守つて行きたいということを深く考えておる次第でございます。
○佐瀬委員長 御意見はよくわかりました。 なお質問の通告がありますが、島田早稲田総長はやむを得ない用でこれから他に外出されるそうでありますから、ここで暫時休憩いたしまして、約三十分間休憩後に再開いたします。 午後二時二分休憩 ――――◇――――― 午後二時五十三分開議
○押谷委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。 委員長がお見えになるまで理事である私が委員長の職務を行います。いわゆる東大事件につき、野口参考人より意見の開陳を願います。野口君。
○野口参考人 東大の一般の状況につきまして、御存じの委員の方もあると思いますけれども、一応私から簡單に御説明申し上げます。 東大内に通じます道路は、昭和二十二年十一月八日と記憶しますが、道路取締法第二條の、公衆の自由に交通し得る場所というふうに私どもは解しておるのでありますが、この構内に、上野駅並びにお茶の水駅から都営のハスが自由に入つておりまして、東大病院前並びに安田講堂前に二箇所の停留所があります。そうして朝晩このバスは通つておりまして、学生諸君の方々並びに一般の人も常に自由に交通しておるような次第であります。また一般の流し自動車も、絶えず往来をいたしておるのであります。門は、正門並びに赤門――農大の正門は道路がありますから別でありますけれども、弥生門並びに竜岡門、池端門は四六時中開放のままの様子であります。ただし正門と赤門は午後の十時からは閉鎖されるということを伺つております。中の状況は、先ほどお話にもあつたようでありますが、一般構内で起ります犯罪は昨年二十六年度中におきまして一般刑法犯その他で三百十件、これは東大当局からの被害届を私の方で受理しておるものの分でありまして、管内は定住者がないために被害事実はこれに倍加するのではないかと私は考えておるのでございます。先ほど交通のことで申し落しましたが、最近赤門の中におきまして轢殺事件が発生しております。また東大病院の中では変死変傷が――ちよつと記録がありませんが、五、六十件私の方で検視をいたしておるような次第であります。こういう中の状況からいたしまして、私は治安の第一線の責任者といたしまして、ここにパトロールを一一二ビートにわけて入れております。そうして先ほど申し上げました犯罪の予防検挙というのをやつておるのでありますが、犯罪の内容は、学校の中で顕微鏡をとられた、あるいは学生や職員の方がオーバー、カバンをとられた、あるいは光りものをとられたというようなものであります。そうしてこれに対する私服も適当に入れておりますが、犯罪の実態から見ますると、大体本富士管内の約三割弱――これは届出だけであります。三割弱の被害があることから見まするならば、私の責任といたしまして、ただいまよりもよけいに配置をして犯罪の予防検挙に努めなければならぬと考えておるのでありますけれども、やはり学校の構内でありまして、従来の慣習もございますから、現在ではパトロールを二名、午後の二時から晩の十時までいろいろ事故の多い時間を見はからいましてこれを四名にいたしておるのでありますけれども、これは十分ではないと私は考えておるような次第であります。 〔押谷委員長代理退席、委員長着席〕 今回起りました事件はこの構内の警備係所管の一つの事故でありまして、全体の犯罪の予防検挙という面からいたしますると、今回の警備係の問題は一部の事故であるというふうに私は考えておるのでございます。入りましたのは今回の問題でありますポポロ劇に、私の方の署員が三名切符を買つて、一般の人も入つておるということを確認いたしまして入つたのであります。というのは、以前にもこういう演劇はたくさん行われておりまして、その際やはり今回の二十日のように切符が売られ、部外の人が実際入つておつたということを確認しておるのでありまして、報告を聞きますると、今回もおそらく約四割は部外の人であつたであろうということを言つておるのであります。そうして中に芝居を見るつもりで入つたのでありますが、演劇の前に、先ほど話があつたようでありまするが、松川事件についての演説がなされた。その演説の趣旨を簡單に言いますると、松川事件はでつち上げであるというような趣旨の演説で、東大新聞の編集のそれがしという人であるということを言つておるのであります。その以前にもまだ一人演説をしておつた人があるということが私どもの捜査線上に現われて来たのであります。これは労働者風の男の人で、沖繩より帰りてという題で話があつたようであります。これから先のことは、委員長、速記をやめていただきたい。非常に重大であります。
○佐瀬委員長 速記をとめて。 〔速記中止〕
○佐瀬委員長 それでは速記を始めて。
○野口参考人 そうして第一幕が終りまして電気がつけられて、この中にスパイがいるということで、大勢の学生諸君の前に三人の私の部下が引出されて詰問され、打つ、なぐるの暴行を受けたのであります。茅根巡査と柴巡査は打撲傷を受けておるのでありまして、これにつきましては診断書を提出いたしております。そうしてそれが終つて手帳を強奪されたのであります。強奪されたというその証拠は、はと目からひもがついておりますが、そのひものついているはと目が強奪された巡査のポケツトのとめに残つておつて、これは強奪された証拠として十分なものであるというふうに私は考えております。そうしてその後に三人は例の始末書をとられておるのでありますが、この始末書は、その暴行をした学生諸君がしたためたその書類に無理やりに署名させられておるのであります。これは多衆の威力をかつた義務なき行為をなさせておるのでありまして、これはやはり犯罪行為を構成するものであるというふうに私は考えております。そういたしまして斯波厚生部長がお見えになりまして、翌日の午後一時までに手帳は返すようにするからこの場合は帰つてくれということで引上げて帰つたのであります。翌日私はその報告を受け、これはきわめて重大であると本部にも報告し、私も証拠の収集をいたし捜査を進めたのであります。その捜査の過程で、二十一日に逮捕いたしました福井俊平君の証拠がはつきりいたしましたので、東京地検に逮捕状を請求して逮捕状をもらいました。そうしてその住居を突きとめるべく努めたのでありますけれども、住所がはつきりいたしません。住所不定であります。それがために学校内でこれを逮捕するということは、むろんトラブルは避けたいと考えておりましたけれども、住所がはつきりしないのでやむを得ないということで学内逮捕を私が命じたのであります。学内に向いました人員もはつきりいたしておるのでありまして、私服が十名、制服が二十三人であります。そうして逮捕状を提示して逮捕いたしますというと、非常なあばれ方でありまして足でける、口では食いつくというわけで、これに食いつかれた巡査が私どもの方にあります。食いついたときに歯がかけて落ちたのを見た、こういう現状にあつたのが二名であります。一人かまれたのは一週間の咬傷を受けておる、それからもう一人の方はちようど手袋をはめておりましたから傷はついておりませんが、二名がかまれたという事実ははつきりしております。それでどうしてもあばれて寝て動かない。そうしてまたこの犯人を逮捕して校外に運ぶのに妨害が入りました。いわゆる犯人隠避の容疑が出て来たのであります。正門を締める学生が出て来たのであります。そのとき、正門を閉め妨害をして犯人隠避の挙に出ておる、こういう情報を私は聞きましたので、奪還されるとまた大事になりますから、私はただちに正門のところへかけつけました。そうして予備隊の到着と同時に門をあけまして、被疑者を自動車に乗せて私の署に運んだわけであります。そうして私の方で取調べますと黙秘権を行使しておりますが、東京地検、裁判所の勾留状によりまして現在勾留に付され小菅の方に移管になつておるような次第であります。逮捕の経過は以上のようでございますが、中で東大再建細胞並びに東大細胞というビラが昨年から本年にかけて毎日のごとく校内で散布されるのであります。私はその一部をここに持つて来たのでありますが、この中にはビラの内容が三百二十五号に該当するようなものもあるのであります。そうして東大細胞というものの届出が文京区役所になされておるやいなやという点を調べましたところが、この届出はないのでありまして、日本共産党東大細胞が結成されたのが昭和二十三年一月十五日、届出が昭和二十四年十月十五日、構成員が八十五名となつておりまして、変更届出、昭和二十四年十月二十四日となつておりましたが、これは昭和二十五年五月十日に解散、届出は同年の五月二十五日となつて、現在東大細胞というものはないことになつておりまして、こういうビラが出るということは、いわゆる団体等規正令違反があるという容疑を私は持つたのであります。そこでこのビラをよく検討いたしてみますと、職員版というのがずいぶんあるのでありまして、この団体等規正令違反が学内のどこかで行われておるということは想像いたしますけれども、その実体がなかなかつかめない。そこでこれは職員、学生どちらであるかわかりませんけれども、こういうビラが配付される実態からすると、この方面もやはり捜査しなければならぬ責任があるのだということを私は感じたのであります。そこでこういう方面からこの捜査の過程におきまして、わずかな係員で相当苦労をしておるのでありますが、この実体というものは現在までなかなかつかめないというようなことで、私どもの部下も非常に苦労をしておるような次第でございます。集会の関係について申し上げますと、昭和二十六年分をちよつと調べて参りましたのが、学校当局で御許可になりましたのが三十件、無届でやつてしまつたのが十一件、不許可で強行したのが三件であります。それから政令三百十五号違反で、ビラを配布されたのが二件、その他一件、こういう状況でございます。先ほどから伺いますと今回ポポロ劇に入つたということが論議されていますが、この問題につきましては、以前にも名称は劇ではない平和祭というのが、文献はございませんが昨年八月に行われたのであります。文京平和祭と記憶いたします。これはやはり学生、職員の会だという趣旨の会であつたのでありますが、そのビラを部外に配布した状況から見ますと、私の管内にある職安にまかれた平和祭に集まれというようなビラがございましたので、そのビラから容疑いたしまして、その様子を見てみますと、職安の幹部の諸君が相当中に入つて来た事実がありまして、学校当局の斯波厚生部長と記憶いたしますが、その人に私の方から話し出ましてその集会は解散させたことがあるのであります。こういう演劇その他で一般から入つておつた。その以前にもやはりだれでも入れるということで切符を買つて入つた人を私どもは大分知つております。これは調べてありますが煩瑣になりますからここではやめますが、そういうような状況で、私の部下三名が二十日に入つたということは、以前にもそういう状態で一般が入れるという状態の中に入つたのでありまして、私はここに入つたことについては何ら違法ではないと確信しておる一人であります。ただ私は団体等規正令違反のビラが多数に配布されておるということにつきまして、また学内集会が先ほど読み上げたような数字のことがありますので、これは警察といたしましても、なかなか学校の先生だけの手には負えないというふうにも私どもは考えるのであります。やはり私どもと一体になつてやらなければならぬと考えておつた矢先でもありますし、こう申し上げては先生方に失礼でありますが、なかなか先生方の押えがきかないようにも私は考えておるのであります。私はここで非難を受けても、私の責任としてどうしても出てこれを取締らなければならぬと確信いたしておる次第でございます。 ビラは委員の方がごらんくださいますならばお目にかけてもよいと思います。
○佐瀬委員長 以上をもつて一応公述を終ります。これに対する質疑を許します。時間の関係がありますので、質問も答弁もなるべく簡潔にお願いいたします。田嶋好文君
○田嶋(好)委員 御注意もございましたし、あとの質問者もございますから、限られた時間で簡潔に御質問を申し上げたいと思います。 ただいまの本富士署長のお話によりまして、ほぼその状況を知ることができたのでございますが、私は自由党に属するものでございますが、あながち共産党を目のかたきにするものではございません。また学内の自由、学園の自由、そうして大学の自治ということは最も大切であるのでございますし、国家百年の大計の上におきまして、われわれが最も尊重しなければならぬ点だ、こういうように考えて進んでおる一人であります。従いましてできることなら警察の干渉が学内に及ぶことは避けてもらいたいという気持でおる一人であります。今回の事件がいかなる事情のもとに、いかにしてこの状態に発展したか、これはまだ委員会が結論を出しておりませんので、私ここに結論を申し上げることはできないのでございますが、私たちが本日糾明したいと思います点は、警察の横暴でもない、また学校の横暴でもない。国家治安維持の立場から、学内の自由がよりよく維持され、大学の自治がよりよく保たれるとともに、また国家の治安の維持も保つて行きたい、こういうところに出発いたしております関係上、直接その治安維持の衝に当つておる警察署長としては、学内の自由を守り、学校の自治を尊重しながら、治安の維持を守つて行くために、あなたの管内の東京大学に対していかようなる方法によつて、またいかようなる御方針をお立てになつてお進みになつておりますか、その点をお答え願いたい。
○野口参考人 ただいまの御質問の点につきましては、先ほど私ちよつと申し上げたと同様の趣旨もございますが、校内でも非常に犯罪が多いということにつきまして、私も学内でありますから、ほんとうにこの犯罪の実態からいたしまするならば、私の手持ちの三分の一を入れなければならぬ形にはございますけれども、やはり円満に事をして行きたいというために、最小限度の数と入れまして、治安確保に努めるように、各人が苦労をいたしましても、やはりあまり目につかないようにして、犯罪を減らす。そうして犯罪がありましたら、検挙をいたしたい、そういう方針で大体やつているのであります。
○田嶋(好)委員 私の今聞かんといたしましたことに対しましては、多少御答弁がそれておるようでございますが、私は公開された道路、交通を自由に許されておる地帯というのではなしに、学校自体の管理に属する学内の自治の立場から、次官通牒によつて尊重しなければならない範囲においてのあなたたちの活動、これは、どういうような方法でおやりになつておりましようか。具体的に申しますと、学校当局と、警察を入れる場合には、一を連絡してお入れになつておるのか。それとも秘密で入れる場合もあるのか。全然そうした場合はないのか。そこらあたりをお聞かせ願いたい。
○野口参考人 私は昨年から赴任いたしましたけれども、以前の慣習からいたしまして、やはり学校と協議の上、最も有効な方法で治安維持をいたして行こうということの方針のもとに、いわゆる学校の自治も尊重し、その範囲内において事故も発生しないように、十分学校当局と連絡をとつてやつておるのでありまするけれども、現在の実態はなかなかそれが間に合わない。先ほどもちよつと述べましたように、一一学校と協議しては間に合わない。外部団体がもう入つてしまつておるというような事態からいたしますと、そういう場合に一々協議もできないのでありますけれども、私の係員は、やはり学校の厚生部の職員課でありますか、そこへ伺つて、円滑にやるようにいたしておるのであります。
○田嶋(好)委員 実は先ほど、学内で不穏なビラがまかれる。これに対して相当われわれとしては警戒をしなければならないというお言葉がありましたが、この学内におきまするところのフラク活動と申しますか、こうした活動面から、そういうようなお気持が生れるのではないかと思いますが、東京大学におけるフラク活動は、どの程度行われておりましようか。それに対しては、どうしても私服の警官を入れたり、学校の同意を得ないでも入れなければならぬというような緊迫した事情が見られるのでございましようか。お答えのできる範囲で、ここらあたりをつつ込んでお話を願いたいと思います。
○野口参考人 ただいま提出いたしました一部のビラのように、非常に短時間で、何と言いますか、風で来つて風で消えるというようなほんとうに瞬間的なことでありまして、そのときは、やはり警察は先にその実体を押えるためには、行かなくてはならぬような現在の状況であります。
○田嶋(好)委員 そうしますと、今度の問題になりました三警察官の学内における活動というものも、今署長が申しておりますような事情のもとでの活動でしようか、フラク活動で緊急事態上、やむを得ず学内の同意を得ないで入れなくてはならなかつた、こういうような状況にあつたのでありますか。
○野口参考人 今回二十日の場合はそうではないと思います。二十日の場合は、先ほど申しましたように、一般公開、だれでも入れるという認識のもとに入つたのであります。
○田嶋(好)委員 そうした場合に、やはり次官通牒が出ておりますから、私服の警官が入るのだということを言つてもいいような気がいたしますが、やはり言わずに入つたということにはそこに重大な問題があるんじやないでしようか。
○野口参考人 一般公開のものに対しては、これは学校に連絡なくて入つても、私はさしつかえないと考えるのであります。
○田嶋(好)委員 もう二、三点。そこで今回の事件につきまして、私の知り得た具体的な事情といたしましては、私服の警官が入つて来るんだから、きようこそはこれをとらまえて、そうして警察手帳を取上げて、かれらに一あわ吹かしてやろうというような計画が学内にあつたかに伺われるのでございますが、この点はいかように見ておりましようか。
○野口参考人 それはまだ私の方といたしましては、確証を握つていないのであります。
○田嶋(好)委員 その点私の知つたところをお話申し上げますと、学生が、劇場の中ばかりでなしに、外部のいちようの木の下に隠れておる。そうしてまた校外に待機して、警察官が逃げようといたしますと、それらの人間が逃がすなと言つて押しかけて参りまして、その警察官を押えて、しかも單に押えたんでなしに、手をねじ上げまして、無理やりに引きずつて行つて、そうして逃げようとした警察官に対しましては、どろぼうどろぼうと大きな声で叫んで、まじめな学生までほんとうのどろぼうかと思つて走つて来て、そうしてこれを捕えて、しかも非常な暴行を加えた。最後には警察手帳を出せ、一警官は出さないと申しますと、それじや身体検査をするぞ、身体検査には身体検査をするような令状がいるのじやないですかと言われて、初めて学生も手を引いた。だが、それを聞いた学生は、今度は喫茶室に三人の警官を連れて行つて、暴行を加えた結果、警察官の手を押えて、自由の行動を奪つて、警察官の自由がきかないようにして警察手帳を取上げた、こういう状況を私は知り得ておるのでありますが、そうした事情はお聞きになつているでしようか。
○野口参考人 ただいまの御質問のことは、私も大体聞いております。
○田嶋(好)委員 次にこの警察手帳を取上げてから、これを写真にとりまして一般に公開したことは御存じの通りでありますが、きようの新聞によりますと、現在大学では大学の全教員を動員して法的な根拠を研究中である、こういうことが新聞に書かれてある。法的根拠を研究中であるということは、結局あなたたちに対して抗議をするための法的な根拠だと思うのですが、あなたたちはこの学校当局の態度に対していかようなお考えを持つておりましようか。また私が先ほど聞きました点を知つておるといたしますならば、知つておるだけでほつて、傍観しておるものでございましようか。あなたたちとしても何らかの処置に出る御対策でもあるのでしようか、ひとつお伺いしたい。
○野口参考人 ただいま御質問の公開した、あるいは全学で協議なさつておるというようなことにつきまして、今私はこれに対する対策など考えておらぬのであります。ただ事実のみを考えておるのであります。と申しますのは、手帳は個人の警察官がこれを所持いたしまして、職務に関すること、その他を日記式にメモするわけであります。これは警察官個人の、いわゆる何といいますか、個人の私有であります。これは個人に私が貸與しておりますけれども、これはどういう意味になるかわかりませんが、個人が持つておる手帳、貸與しておつても、自分が占有しておるところの品物を強奪いたして、この内容を写真にとつて、しかもそれを公開されたというようなことは、私といたしましては今研究中であります。
○田嶋(好)委員 その写真にとつて公開したということは、今研究中ということですが、今私が申し上げました具体的な暴行の点があなたの方へわかつておる。しかも警察官は三名で、それに対しては確実な証拠もあるわけだ。これに対して態度をとろうとすればとれるはずなんだ。これはどういうようにとるつもりであるか、ただ学校内で起つたことなんだからほつておくつもりですか。ほつておくというと――法的措置をとらないというと、何だかあなたの方も大学の自治を侵したことに対して一抹の不安があるのではないか。おれたちの方も行き過ぎじやないかというような反省があるようにも見られる。あなたの方にも行き過ぎがあつたから、なぐられてもやむを得ないから、警察手帳がとられて、しかも傷害も加えられておる。暴行も加えられておる。警察官としてゆゆしき恥辱を受けながら眠つている、こういうようなことになつて、まことにわれわれはそこのところが解しかねるところがあるのですが、率直にひとつあなたたちのところにも手落ちがあるからというなら、そのようなお答えを願いたい。そうでなくして断固として自分たちは自信を持つてやつた行為だから、これに対してやる意思があるということなら、それもお答え願いたい。もよと態度をはつきりしてもらいたい。
○野口参考人 私はそういうことがあつたから警察が感情的にこれに対立してやるというような考えは持ちません。ただ法的に――法治国であるわが日本におきましては、私は合法的に犯罪捜査を進め、しかも現在は被害者一名を逮捕いたしております。今後も捜査線上に現われれば、今後またそれに対していわゆる暴力行為等処罰に関する法律違反の追及は徹底的にいたすつもりであります。
○田嶋(好)委員 学生が傷害を受けた、要するにあなたたちが検挙をする場合に、学生が傷害を受けた、これが相当問題になつておるのでありますが、今あなたの御説明によりまして、この傷害の点はある程度はつきりいたしましたが、学生の傷害を受けるときの検挙の模様、これを写真に納めたようなことがございませんか。そんな証拠はございませんか。
○野口参考人 何か二、三あると思いますが、きようは非常に急いでのお呼出しで携行いたしておりません。
○田嶋(好)委員 それではあなたたちが傷害を加えたのではなくして、やむを得ず傷害になつたんだということがわかるでしようから、その写真を後日また委員会に出してもらいたい。私の質問はこの程度にしておきます。
○佐瀬委員長 押谷富三君。
○押谷委員 二、三の点を明らかにいたしたいと思います。 まず二十日の二十五番教室における問題について、先ほど学生の供述と野口署長のお言葉の間に多少の食い違いがありますから、その点を明らかにいたしたいと思います。 まず第一点は、当日集まつた人は学生、それから教員、職員、その家族、この以外の人が四割くらいを占めておつたという話でありますが、そうすると、この催しは一般に公開されたという性格を持つておるのであるが、公開の場所の催しであつたかどうか、その点をまず聞いてみたいと思います。
○野口参考人 御質問の通りでありまして、私どもの入りました署員の言つておりますことによりますと、大体四割くらいは入つておつたのです。結局部外者が約四割くらいである。そこでやはり私の見解といたしましは、これは公開であるというふうに私は解釈いたしております。
○押谷委員 そういう会合へ切符を求めて入つたというのですが、あたの部下が切符を求めて入つた。その切符の入手径路を教えてもらいたい。
○野口参考人 ちようど二十五番教室は二階だそうでございまして、その下の一階のところで、何でも学生の方々が切符をテーブルを置いて売つておつたということでありますから、多分その階下の入口のところで買つたものと私は思います。
○押谷委員 そういう切符売場で切符を買つて入つたという経過は明らかになりましたが、その演劇の研究会の初めに二つの報告があつた。その一つは、松川事件の報告であり、一つは労働者風の男が、沖繩より帰りてという題で、何かの話をした、この内容ははつきりいたしませんでしたが、これらの内容はいずれも学生の運動であるとか、劇の研究であるとかいう限界を越えて、そのらちを越したものであるという考えができますかどうか、当時おつた警察官の考えはどうであつたかを伺いたいと思います。
○野口参考人 入つてみて、ただいま御質問のような模様であるからして、これは一般の劇と性格が違うのだ、これは警察が当然対象としなければならぬものだというふうに認識をしたということを私に報告いたしております。
○押谷委員 それでは当日の二十五番教室における問題は、その劇の筋書きといい、その前後の報告の模様といい、それらを介して学問の研究とか芸術の研究という範囲を超越した一つの共産党の左翼活動の一環として、そういう現われがそこに出て来たものであるというような解釈を、警察の方では下されているのでありますか、この点を……。
○野口参考人 御質問の通りでございます。
○押谷委員 重要な一点は、警察手帳をとられたという点でありますが、警官における警察手帳は相当大切なものであつて、これは命がけで守らなければならぬものだと考えておりますが、これを学生の方からいうたら預かつたというております。預かつたというのは、預けたという言葉の裏でありますが、預けたならば、これは任意に提供をして受渡しがされているはずだ。ところがあなたのお話では強奪をされた、こう言つておる。当時実際に強奪をされた模様か、預けられた模様かについで、詳細なお取調べがあつたことと思いますが、調査の結果をここで御報告を願いたいと思います。
○野口参考人 被害者三名の報告によりますと、約二、三十名が寄つてたかつて、ぶつ、ける、なぐる、手帳は、手をねじ上げてそうしてポケットに手をつつ込んで引き出してとつた、いわゆる三名は、多数の暴力のもとに自由を抑制せられまして、そうしてとられたわけであります。強取せられたわけであります。
○押谷委員 その手帳の内容が最近公表されたという、この関係でありますが、警察官でもその他の公務員でも、公務執行上知り得た内容については、これを秘密にしなければならぬ、秘密を守らなければならぬ責任があると思うのでありますが、自分らが守ろうと思つても、第三者の手によつて奪われて、その公務執行の上において知つた秘密が外に暴露されてしまう、こういうようなことは相当重要な問題であつて、このことは後日にもいろいろな影響があると思いますが、この点について秘密厳守の義務と、第三者によつてこれを暴露されるという関係について、どういうお考えをお持ちになつておりますか。
○野口参考人 手帳は警官がこれを自分ではだ身につけて持つておりまして、そうして知り得た事実をメモいたしまして、そうしてこれは部外にはその手帳の内容というものはだれにも見せない、祕密を嚴守さしておりまして、また今回の三名もこれを部外に出したという事実は今までないのであります。先ほどちよつと申し上げましたが、これが部外の第三者に公開せられたという責任は、公開した者にあると私は考えております。
○押谷委員 本郷の大学が、先ほど承りましたように、一般社会人の交通出入りの自由な場所であり、そこには一年に三百件以上の犯罪が行われている、こういう場所であるから、犯罪防止の上からも、またその他の関係からも、当然パトロールをすべきものである、してもさしつかえないものであると思いますが、今現に本郷の大学構内はパトロールをやつておりますか。
○野口参考人 パトロールをやつております。二つの区域にわけてやつております。
○押谷委員 そのパトロールの関係については、大学と話合いがあつたのですか。
○野口参考人 パトロールを入れることについては大学当局と話があつて、その程度に入れるという約束のもとに話合いの上になつております。ちようどそのためには病院前に街頭電話を設置してあります。
○押谷委員 これは駒場の大学構内でありますが、二十日に二人の警察官が制服でパトロールしたときに、二百名の学生がこれを取囲んで謝罪文をとつている、あやまり証文をとつているという事実があるのですが、こういうことは、これは駒場のことであるが、あるいは本郷でも将来そういうことが起つて来るかもわかりません。従つてパトロールについては、これは特にさらに重ねて大学との交渉もせられる必要があると思いますから、特にこの点について将来十分な対策を望んでやみません。ここに問題になりますのは学生運動であるとかあるいは学問の自由というこの言葉に隠れまして、いろいろな問題が大学で行われている。それがために学問の自由である、学生運動であるというので警察の手が入らないとすれば、これは大学の構内は治安の盲点になります。赤の温床になります。左翼の温床になる。治安の盲点がそこにできるといううことは、許しがたいことだと私どもは考えている。この点を考えまして、そうして次官通達とのこのにらみ合せというものは、たいへん大切なものだと考えますが、署長といたされて、大学をかかえておられるあなたが、この治安の盲点と、そうして赤の温床という関係と、次官の通達ということについて、どういうような関連性があるとお考えになつているかを伺いたいと思います。
○野口参考人 学生代表は、パトロールは今後一切やつてくれるなと交渉のときは私に申し出られました。街頭電話ははずして遺失物としてお前のところに返す、こういう学生の代表からお話がありましたけれども、パトロールの問題につきましては、学生代表と私と話すというのは筋合いでない、これは大学当局と私が協議をしてきめることでありまするから、そのことについては答えの限りではないと言つたのであります。しかし私は最初に述べましたような犯罪の態様、中の実態から考えまして、学生の皆さんがこういう事態であるということをよく認識を願いまして、そうして今後のパトロール、最小限のパトロールの運営についても御理解があつてしかるべきと、かように考えております。非常に御理解をしていただいて、ともに自治がりつぱに完成に進みますならば、あるいは私どもは刺激するような、そういう今回のような事件がなからんことをこいねがつておる次第でございます。
○押谷委員 これは全体の趣旨からよくわかることでありますが、言葉の上ではつきりさしておきたいと思いますることは、あなたが大学の構内を所管しておられる署長として、学問の自由、大学の自治ということは、あくまでも尊重をせなければならぬことを建前に、警察行政を行われておるか、この点を伺いたいと思います。
○野口参考人 御質問の趣旨の通りであります。
○押谷委員 学問の自由、大学の自治を尊重しながら、かつこの治安の盲点を除去せなければならぬというむずかしい立場におられるのでありますが、結局先ほど早大総長が言われたように、東大の構内における治安問題についての最高、最後の責任者はあなたであるという自覚を持つて、十分努力をせられたいと念願して、私の質問を打切ります。
○佐瀬委員長 猪俣浩三君。
○猪俣委員 最初に警察手帳の問題について、次に警察官の職権濫用についてお尋ねいたします。文部次官と警察との間に、大学自治と警察権の問題について申合せがあつたことは、署長も御存じだと思うのでありますが、そのほかに本富士警察署と大学との間に何か申合せがあつたやに聞くのでありますが、あつたといたしますれば、どういうふうな申合せでありますか、お尋ねいたします。
○野口参考人 大学の関係につきましては、私は昨年の三月より本富士署長をいたしておりますが、その以前から、学校とのとりきめはなされておるのでありますが、それに対して何か文書その他をとりかわしてやつておるというようなことは私ちよつと聞いていないので、協力してやるということは、私も前署長から引続いてその趣旨でやつております。
○猪俣委員 そうすると文部次官のいわゆる通牒と称しまする申合せ事項以外に本富士警察署と大学の間に、特段なる申合せはないという御趣旨でありますか、あつたけれども文書にはしたためてないという御趣旨でありますか、どちらですか。
○野口参考人 別段ほかにはないと思いますが……。
○猪俣委員 警察手帳というものは、警察官個人が持つておつて、いろいろなことを記載するのでありましよう。この警察手帳にいろいろ調査事項が書いてありますが、かようなことは警察署長であるあなたが命令をされて調査をさせたものであるか、あるいは各警察官個人がかつてにやつておるものであるか、それを伺いたい。
○野口参考人 署長は警察現象に応じて、一丸どういうことをせよと、現場現場に臨んで具体的の指示はできませんので、いわゆる警備対象の警察現象は各警察官が自分の良心に従つて記載しておるものと私は解します。私が一丸具体的に指示したのじやありません。
○猪俣委員 たとえば柴巡査の警察手帳に、十月二十四日、文学部学生大会へ入つて、七、八十名の学生の集会があつたということを記載されておりますが、これはあなたがかような会合に入れという指示をされたのであるか、これは柴巡査がかつてにこの会合に出て行つたのであるか、それをお聞かせください。
○野口参考人 私はそれに行けという具体的なことは記憶ありません。ありませんが、先ほど申し上げたように、警備係というその任務の範囲内において行つたものと思います。
○猪俣委員 そうすると、あなたは具体的に言わぬでも東大の中のいろいろの学生の集会に対しては、入つて調査せよという一般的抽象的な指令を出しておられますかどうか。
○野口参考人 一般的な指令とか何とか、そういうことは、ちよつとどういうふうな……。そこに入れとかそこに入るなというそういう指令を私いたしていないのであります。
○猪俣委員 しつかり答弁してもらわなければ困る。東大の構内で、教室の中やその他に集会があつた場合に、自由にそこに入つて調査してよいという一般的の権限をあなたはこの警察官に與えておるはずでしよう。そうでないと警察官がかつてにそんなところに入る道理はないと思うがどうか。あなたはどうなんですか。
○野口参考人 警備の上からまた職務の上から必要によつて行つておるのであります。
○猪俣委員 そうすると、結局柴巡査なり、その他の巡査がこういう大学の構内に入つて学生の集会などに顔を出してそれを調査するという一般的のことは、署長はこれを了解しておるのみならず、それは許してあるものであるというふうに理解してよろしゆうございますか。
○野口参考人 その通りでございます。
○猪俣委員 それからこの警察手帳なるものは、署長がときどき検閲と申しますか、内容を見たり調べるようなことはありますか。
○野口参考人 それが用済みになつて、新たに交付するときに署長が見る。もう全部書いてしまつて用済みになつたときに持つて来るのであります。
○猪俣委員 そうすると、書いてしまつて余白がなくなつたときに、署長がそれを取上げて見る、こういうわけですか。それまでの間はこれを調べないのですか。
○野口参考人 そうです。
○猪俣委員 なおまたかような調査をして来たことを警察署長に巡査は報告しますか。毎日か、一日おきか、あるいは一週間一、二回か……。
○野口参考人 それは一々覚えませんけれども、重大の事項は報告することもありますけれども、そう重大でないことは主任を通じてまとめて報告するようなことになつております。
○猪俣委員 この柴巡査の警察手帳には一月十三日ですか、身元調査といたしまして山之内一郎教授、仁井田陞教授、こういうふうなものの身元調査というのが書いてあります。十四日にはやはり身元調査といたしまして渡辺一夫教授、飯塚浩二教授、こういうのが書いてあるのでありますが、これは署長がかような調査をせよと命ぜられたのであるか、あるいはこの巡査がかつてに調査をやつたのでありますか。
○野口参考人 それはどういうふうに書いたのか、私まだ手帳の事実は見ませんけれども、警備上必要があつて書いたと思います。
○猪俣委員 なお十二月一日の警察手帳を見ると、京大事件真相報告会の動向、註として学内各部屋の出入りについて、服装等の変装について、各大学の情報調査、こういうふうに書いてありますが、こういう変装というようなことに対して、あなたは何か特別なる指示を與えたことがありますか。
○野口参考人 そういうふうな特別な指示を與えたことはございません。
○猪俣委員 なおこの警察手帳の内容なりとして発表せられたのを見ますると、文学部の学生大会、あるいは教育学部の学生大会、あるいは南原総長の大会、そういうところへ全部出入りしているようでありますが、これは一体大学と了解の上で出入りなさつたのであるか、あるいは巡査がひそかにこういうところに入つたのであるか、どちらでありますか。
○野口参考人 まあ書いてあれば書いてあると思いますけれども、そこに入つたかどうかは私はわかりません。
○猪俣委員 そうすれば学校の了解の上に入つたかどうかはあなたはわからぬというのか、また入つたかどうかも全然わからぬというのか、どちらなんです。こういう各教育学部とか、あるいは法学部とか、文学部とか、学生だけの大会を持たれた際に、そこへ一々入るような、あなたは指示をしてあるのかないのか、あるいは入ることについて学校当局の了解の上で出入りしておつたのかどうか、その点いかがです。
○野口参考人 警備上必要があれば入ることもあると思いますが、その記載されてある事実で、入つたかどうかは、ただ記載されてあることだけであつて、入つたかどうか、人から聞いて手帳に書いたかどうかはわかりません。
○猪俣委員 そこであなたにお尋ねいたしますが、あなたの配下の巡査が、こういう学生の集会に学校に無断で出入りするということが、これは今後もさしつかえないことだというふうにあなたはお考えになつておりますか。あるいは大学の十分なる了解の上でやるようにお考えになつておりますか。どういうふうに今お考えになつておりますか。
○野口参考人 なるべく大学と話合いの上にしたいと思つておりますけれども、先ほどからお話申し上げましたように、緊急の場合間に合わない、また警備上急を要するというような場合は、やはり学校と話合いせずにも入らなくちやならないような現在の情勢でありますから、入ることもあり得ると思います。
○猪俣委員 一体あなたは大学の治安治安と称するけれども、この手帳のあれを見ると、十月の二十日ごろからしよつちゆう何かの会に巡査が入り込んでいるようであるが、これは一体――たとえば十月の十九日の法学部学生大会とある、そうしてその模様がみな書いてあるが、これは一体どういう治安関係なんです。法学部の学生大会はどういう治安関係です。
○野口参考人 それは特別に十九日、十日ごろからそういうものが多いとかいうようなことは、私は記憶がありませんが、またその具体的な事実の例をお引きになりましたけれども、それがどういう実態であつたかということは私はちよつとわかりません。
○猪俣委員 さようなけしからぬことがあるはずがないじやないか、こういう天下の大問題になるような、こういう重大な事項をあなたの部下がやつておるのに、あなたは全然知らぬとはどういうわけです。十月二十四日文学部大会に入つている。それからそれ以後毎日のように入つている。そうして十二月十九日法学部大会へ入つている。それから身元調査をやつている。これは二、三日前から新聞にも報道され、ラジオにも報道され、そうして写真までとつて見たりしておる。あなたは一体これを全然知らぬというのはどういうわけです。そんな一人の巡査が一体憲法の原則を蹂躪してもよいようなことをやる権限を持つておりますか。まつたく憲法の蹂躪だ、そんな権限をおまわりさんは個人に持つているんですか。あなたが全然知らぬひまに大学の構内にどんどん入るような権限を持つているのですか。このあなたの言うのは……(「愚問を言うな」と呼び、その他発言する者あり)黙つておれ、よけいなことを言うな、ぼくも黙つて聞いていたじやないか、うるさい、しやくにさわるつらだ、ゼントルマン・シップを持て――。
○佐瀬委員長 静粛に願います。続行願います。
○猪俣委員 とにかくかような学生のみの集会にも出て、それから今度は教授の身元調査をやつている。それを具体的に聞けば、あなたは先ほど言うたように、次官通牒の精神は尊重するが、しかしそれをやつておれない緊急の何か治安を乱す場合にはしかたがない、こういうことを言う、それだからそういう特殊な治安を乱すようなことが十月三十四日文学部学生大会にあつたかと聞いておる、それは何かわからぬ、そんな矛盾した話はないじやないか。それほど次官通牒を無視してまで強行しなければならぬような、憲法に保障せられたる自由を圧迫してまでやらなけばならないくらいの重大な何か特殊な事情があるとするならば、あなたが十分に考えておらなければならぬはずだ。十月二十四日、これは一体文学部大会に何かあつたか、この次官通牒を無視してまでもこういうおまわりさんをひそかに入れなければならぬどういう事態があつたか、それをあなたは知らぬとは一体どういうわけだ。十二月十九日法学部学生大会、ここも入つている。これは一体どういう治安を乱すようなことが起つたか、緊急やむを得ないどういう治安を乱すようなことが起つたか、それも知らぬ。それじや話にならぬじやないか、しからばこの山之内教授あるいは仁井田教授あるいは渡辺一夫、飯塚浩二、こういう人たちの身元調査をいかなる緊急事態があつてされて来たのか、それを説明してください。あなたの頭はまつたく警察法を忘れ切つているような気がするんだが、警察法をあなたは知つておりますか。警察法の第一條に何と書いてある。それをあなたはよく読んでみなければいけないと思う。「警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。警察の活動は、嚴格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。」ということが第一條にちやんと書いてある。そこでこの警察法の第一條にあてはまるようなことがどこに起つたか。次官通牒があつて、ちやんと申合せしているそのうちを越えてなおやらなければならぬことが一体起つたのか、それを聞いている。それをわからぬというようなことは不都合千万じやないか。十月十三日、十四日、十九日あるいは二十四日にみな入り込んでいる。これはどういう緊急な治安を乱すようなことが起つたか、具体的に説明してください。
○野口参考人 ただいま非常におしかりをこうむりましたが、私もいろいろ仕事を持つておりまして、一々覚えていないのです。やはり十月二十四日と思いますけれども、何しろ私も非常に忙しいものでございますから、これは私が無理に申し上げないのではなくて、やはり一々記憶はないのです。
○猪俣委員 それでは実際のところ何も文部次官の通牒まで乗り越えてやらなければならぬような治安上重大な問題があつたのじやないでしよう。あなたの記憶にないようなものなら、そんな問題があつたはずはない。だからあなたの説明はでたらめの説明と申さなければならない。文部次官の通牒を乗り越えてまでやらなければならぬような治安上緊急やむを得ない警察権の発動があつたのなら、あなたが責任者として知らぬ道理はないじやないか。それを一つも答えられないということは、何もそんなことはなくて平穏裡のところにこういう警察官が乗り込んで行つたということは明らかである。あなたが答弁できないというようなそんな無責任なことはないじやないか。これだけ天下の大問題になつている。新聞はどういうふうに論調しておりますか。 そこでなおあなたにお聞きしたい。警察法の第一條もあなたはよく知らぬようだ。これをもう少しよく勉強しなければだめだ。それから警察官の職務執行、これはこの次の職権濫用のときにお尋ねすることにしてやめておきますが、あなたになおお尋ねする。警察は思想の取締りをする権限があるかないか。これは終戰以前はあつたかもしれません。あなた方の好きな治安維持法というのがあつたのだから、それに関連していわゆる思想の動向、傾向まで調べることがこの中には全部書いてある。終戰後は治安維持法は廃止せられたのだが、あなたは警察というものは人の良心の自由、思想の自由までも取締りの対象になると一体お考えになつておるのかどうか、それをお尋ねしたい。
○野口参考人 思想ということのお尋ねでありますけれども、そういうことは私は考えておらぬのです。いわゆる警備上そういう現象が現われて取締るので思想というようなことは私は考えておりません。
○猪俣委員 だから私はあなたに聞いておる。どういう一体警備上そういう次官通牒を乗り越えてまで発動しなければならぬようなことがあつたか聞いておる、あなたは何もわからない。何もないのだ。そうなるとこれは思想の取締りに堕しておるのではないか。そこで一体あなたは終戰以前何をなさつておつたか知らぬが、特高警察の頭が抜けないのではないか。今あなたのやつておるような、こういう学生のみの会合に警察官が乗り出して行くということは、これは特高警察とどこが違うのか。終戰前の特高警察と、あなたが今やつておられることとどこが違うか、ちよつと説明してください。 〔「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり〕
○佐瀬委員長 猪俣君に御注意しますが、時間がありませんから事実に関する問題に限つて質問を続行せられんことを希望します。御意見の発表は他の機会にお譲り願いたい。
○猪俣委員 あなたもどうも言論の自由を束縛するような気がするのだが、今までの質問者と私はあまり態度はかわつていないと思うのだ。学生と大分議論した質問者もあつたくらいだ。いわんやあなたは警察署長さんだ。さきの警察署長の答弁ぶりを見ておると、大学なんというものに管理をまかしておつたつて、ぐずぐずして間に合わない、警察官が乗り込んで管理しなければならぬというような意気込みを見せていらつしやる。そこであなたの理想を聞くが、あなたは大学の治安の管理なんというものは、大学は一切容喙しないで、全部警察署長にまかした方がよろしいということを理想とせられておるかどうか、それをひとつ聞きましよう。
○野口参考人 そういう考えは持ちません。
○猪俣委員 もう一点確かめておきますが、東大の構内へ入つて、こういう集会におまわりさんが入り込んで行くようなことは、警視総監からそういうことをやつてもよろしいという指令が出ておるのかどうか、あなたのかつてでやらしおるのかどうかということをお伺いしたい。
○野口参考人 私が管内の治安維持の責任者でありますから、やはり私がやつておるわけであります。
○猪俣委員 ポポロ劇団の事件があつた翌日一人検挙せられておる。この検挙に際して、福井駿平君ですか、手かせ足かせをはめて、そしてトラツクの所まで引きずつて行つて警察へ連れ込んだ。手錠をはめたというのはわかるが、足錠まで一体どうしてはめたのか、そういうことは刑事訴訟法あるいは警察官等職務執行法の第何條に規定されておるか説明してください。
○野口参考人 先ほどもお答えいたしましたように、足でけ飛ばし、食いつきもしましたが、どうにもあばれてしかたがない、動かない、寢てしまう、足をばたばたやつて寄りつくことができないというので、かけたと承知しております。
○猪俣委員 そうすると手錠をかけ、足錠をかけたことをお認めになるのですな。
○野口参考人 そういうふうに私は報告を受けております。
○猪俣委員 それからさつきの説明によると、食らいついてそのために歯が一本かけた、こういう説明ですが、歯がかけるくらい食らいついたのだから、さぞかし肉をぐつすり食いとつておると思うが、そのけがをしたのはだれですか。
○野口参考人 本富士署の勤務の野内巡査がかみつかれたのです。
○猪俣委員 どんなけがをしましたか。
○野口参考人 医師の診断書によりますと、左四肢の咬傷。
○猪俣委員 どのくらいの傷なんです。肉を食い取つてあるのですか。
○野口参考人 読んで見ます。「腫脹疼痛を覚え、一週間の薬用を要す」と書いてあります。
○猪俣委員 痛みを覚えたのですか、痛みくらいあるかもしれぬが……。
○佐瀬委員長 申合せの時刻が過ぎておりますから、簡潔に願います。
○猪俣委員 もう一点。それから福井駿平が歯をけがをして留置されたについて、弁護士が面会に行つて、治療させてくれと言つたについて、あなたは拒絶されたというが、どういうわけだ。
○野口参考人 被疑者は黙秘権を使つて何も言わないということで、私は弁護士に、治療をさせてくれということを断つたことはないのでございます。そういう記憶はあります。けれども本人が黙秘権で、どこがけがしておるかどうかということはわからないのです。
○猪俣委員 前歯が欠けておるものが、わからないというのはどういうわけか。前歯が欠けておるとあなたは今言われたのだが、どこがけがしておつたかわからぬと、いいかげんな答弁をしている。黙秘権と治療させてくれということは違うことだ。黙秘権ということは、犯罪の事実について黙つておることだ。とにかくあなたは、治療を拒絶したということは知らぬのですか。かんじんのことはみな知らぬのだね。時間が来たそうでありますが、実は前の署長の時分には、大学と警察署が非常にスムーズに行つておつた。あなたが昨年の三月から来られたそうだが、おめがねに合つた警察署長と見えて、非常に勇猛果敢にやられる。はなはだもつて大学生は大恐慌を来してお るそうだが、こういうことは国家の将来について、いいことではない。警察署長と学生がいがみ合うことはいいことでもないから、あなたもあまり一生懸命になり過ぎて、この憲法の大精神を疑われるような行動をなさらぬように、警察法の第一條、警察官等職務執行法をよくお読みになつて、その精神を体してやつていただきたい。私の質問を終ります。
○佐瀬委員長 鍛冶良作君。
○鍛冶委員 私はいろいろお聞きしたいと思つておつたのでありますが、時間がないと言いまするし、ここで、ただいまあなたがお持ちになりましたビラを見まして、まことに驚いたのであります。今猪俣君の言われることと私は全然考えが違うと思うので、その点だけの質問であります。 第一、このビラを見ますると、先ほどあなたの証言にあつた通り政令三百二十五号違反の疑いのものもあれば、またここに明瞭に、日本共産党東大再建細胞、その次は日本共産党東大細胞、しかも再建細胞は統一せられたから今後東大細胞と改める、こういうことまで書いてあります。しかるにこれが届出がないということになれば、先ほどあなたの言われた通り団体等規正令違反の疑いあるものと思う。この点はあなた方では非常に重大に見ておられると思うが、いかがですか。
○野口参考人 御質問の通りでありまして、毎日のごとく――それは一部でございますけれども、毎日のごとく方々でちよつとの間に配布されるというので、責任上私ども、これにつきましては非常に苦心をしておるわけであります。
○鍛冶委員 單に苦心だけでない。さような政令違反その他の犯罪になるという疑いのある以上は、必然これに対する捜査を開始せられなければならぬものと思うのですが、その手段をとつておられましたか。
○野口参考人 その実体をつかむべく努力をしておりますけれども、遺憾ながらどこでこれが発行されておるかという証拠がはつきり握れないものでございますから、まだそれに対する責任者の逮捕までには至つていないのでございます。
○鍛冶委員 刷つた場所であるとか、だれが刷つたかはわからぬかもしれぬが、いやしくも東大細胞と書いてあります以上は、東大内でかようなことが行われたとわれわれの常識から考えるのであります。あなた方もさように考えておられると思うが、これはいかがですか。
○野口参考人 御質問の通りでございます。
○鍛冶委員 それではかようなことを調べなければならぬのは、私はこれは警察の当然の義務だと思う。やらなければならぬ義務だと思う。それについて、この取調べに対して東大当局と何か打合せをし、またはこれらに関する捜査についての協力を得るようなことをなされたかどうか。またもし、せられぬとするならば、なぜそういうことをせられないのか、この点を伺いたい。
○野口参考人 これはビラにもありますように微妙な関係があると思うのでありまして、学生職員班とこういうふうに記載してありまして、これは協力を得てやるべきものか、ないしはこれがまた対象になりはしないかと考えられる節もあるのでございます。これから先は学校の当局と、こういう実態であるということをよくお話申し上げて、御協力のもとにこういうものの剔抉をいたしたい、かように考えております。
○鍛冶委員 そうすればこれらの捜査に当つては、学校当局と相談することは今のところ適当にあらずと思つて、あなた方の方で特にやられた、かように考えてよろしゆうございますね。
○野口参考人 御質問の通りでございます。
○鍛冶委員 さらに驚くべきことは、ここにこういうビラがあります。「労働者はドスをとぎ始めた。日本の解放と民主的変革を平和な手段によつて達成しようと考えるのは間違いである。」これはまつたく暴力革命である。テロ実行の準備である。このビラは一体大学のどこから出ましたか。何月何日どこから出たのですか。
○野口参考人 それはビラだけ持つて来ましたから……。それが出た記録はございますから、あとでここへ記録をお送りいたします。
○鍛冶委員 これに赤い鉛筆で二十六年十二月十三日法学部教室にて二十番、これは二十番講堂だろうと思いますが、これに書いてあるところを見ると、法学部の二十番教室でこういうものが押収された、手に入つた、かように見てよろしいと思うのですが、その通りですか。
○野口参考人 はい。
○鍛冶委員 かようなことが行われておるにもかかわらず、もしこれがあなた方の手に入らなかつたとすれば、重大なことになつて、もう無理に入つたどころではない。かようなことを調べてもらわなくては国家の治安はまことに乱れること明々白々である。猪俣君の言われたごとく無用に入つたものではない。われわれはむしろかようなことがわかつてくれてけつこうだと思う。つきましては、かようなことを取調べる上において、今も言われたように、一々学校当局の許可を得、もしくは相談の上でやつておつては捜査不能とわれわれは考えまするが、この点はいかがですか。
○野口参考人 現在の段階では、やはり御説の通りと私どもは考えております。
○鍛冶委員 次いで私聞きたいのは、先ほどからも出たのですが、いわゆる次官通牒なるものは、学内に入つて取締りをするときには、学校当局の承認を得て入るのだ、要請があつた場合と、こう書いてあります。そこで先ほどからも問題になつたのですが、治安の絶対の責任は警察側にあるものと心得ます。その治安上必要であるならば、要請があつて入るのが建前であるけれども、要請をしてはおもしろくない、もしくは先ほどあなたの言われたように、要請を得るいとまのなかつた場合には、次官通牒ありといえども、警察官としての責任上黙つて入つてよろしいものと思うが、あなたはその点どう思うか。
○野口参考人 御質問の通りと解釈いたします。
○佐瀬委員長 なお御注意申し上げますが、警視総監が見えておりまして、警視総監から答弁した方が適当な問題もあるように見受けますので、なるべく質問は簡潔にお願いいたします。
○鍛冶委員 それでは私はこの程度にして、警視総監に対する質問をあとに保留させてもらいます。
○佐瀬委員長 加藤充君。
○加藤(充)委員 今時間の制限も受けましたし、それから本問題は、結局サンフランシスコ両條約、行政協定、それに従つた再軍備、それから特別保安法等の治安立法、その立場とその方針が、ここに学問の自由というものすらも抹消しようとするものである。こういうふうな意味合いで、この事件はちようど第二次世界大戰の前夜の昭和八年の京大の滝川事件の再現である、われわれはそのように考えるのでありますが、時間の制限もありますので、簡單に本冨士署長に聞きたいことだけに質疑を要約します。 警察は治安の維持のためだ、こう言われるが、秘密警察、特高思想警察、これは嚴に廃止し、その復帰は許されてはならないという大原理、大前提というものが憲法の上に貫かれていると思うのであります。従つて警察というものも、この前提とこの原理に貫かれたものでなければならない、こう考えるのです。すなわち警察は基本的人権を守るための仕事でなければならない。猪俣委員が警察法の第一條を読み上げて、御紹介に及んだと思いますから、その條文そのものをここに引用して繰返しはいたしません。この原理、この原則というものがはずされるならば、それはいやしくも公僕としての警察ではなくなる、私どもはこう考えまするが、この点をひとつはつきりと承りたいと思います。
○野口参考人 特高的な昔の考えでは私どもやつておらぬのであります。思想とか、そういうふうな考えは全然持ちません。
○加藤(充)委員 憲法を事新しく條文を読み上げるまでもなく、御認識の通りだと思うのですが、思想、良心、宗教、言論、集会、出版の自由がおおらかに保障されておりまして、検閲は、これをしてはならないと一文うたわれておるのでありまするが、この点についてあなたは御存じあるのかどうか、念のために確かめておきたい。
○野口参考人 ちよつと伺いますけれども、何の検閲でございますか。
○加藤(充)委員 検閲は、これはしてはならないということです。(「なぜ手帳をやつた。」と呼ぶ者あり)手帳のことは憲法には書いてないのだ。あわてるな。
○佐瀬委員長 静粛に願います。御答弁を願います。
○野口参考人 法規に基かないことは私どもはやりません。
○加藤(充)委員 先ほど来の御陳述を聞いておりますと、一般の刑事犯罪の捜査というものと、私が大前提に尋ねました、今言われた秘密警察、特高警察の廃止、復元は許されてはならないという点との関連において、あなたのやつた事柄を以下質疑いたしたいと思うのであります。 手帳の内容を今日写真を見て承知いたしましたが、そのところに書いてあること、たとえてみれば尾行、張込み、密行、身元調査、思想関係等調査、こういう言葉が書かれておりまするが、これはあなた方警察官の術語としてはどうういうふうに理解すべきものなのか、そして、時間の関係上急ぎますが、これは今大前提に質問いたしました思想警察、秘密特高警察とはたして無関係であり得るやいなやという点をお尋ねしたいと思う。
○野口参考人 関係とは、特高警察というような関係は全然ないと私は思います。
○加藤(充)委員 ないと思うでは済まされないのであつて、今読んだ尾行、張込み、密行、それから身元調査、思想関係調査というようなことは、思想警察関係がないとあなたが言つただけでは、われわれはこれは了解しがたいのであります。昔の特高警察、治安維持法のときには、こういうやり方で廃止され復元を許されてはならない秘密警察や思想特高警察が強行されておつたのは、だれしもがいなめない事実であります。確答を願います。
○野口参考人 警備の必要上やることであつて、それ以上のことはやつておらないのであります。
○加藤(充)委員 そこでお尋ねしますが、警備の必要であつても、秘密警察、思想警察、特高警察等のやり方、手口は嚴重に禁圧されているということ、これは復元してはならないのだという原則、原理があるということ、経済犯罪の、あるいはその他の治安対策の上からいつても、そういうやり方をやつてはならないのだ、これが民主主義の一応の原則だという、その点をあなたはお忘れになつては困ると思うが、その点はどうか。
○野口参考人 そういう特高とかあるいは思想警察というような、観念的なイデオロギーは全然私どもは持つておりません。
○加藤(充)委員 イデオロギーが問題じやなくて、あなた方がやつている――繰返して言うが、尾行、張込み、密行、身元調査、思想関係調査というこの手口が、そもそも憲法で禁圧され、ポツダム宣言で問題になつておる、廃止されておるその犯罪的な思想警察、秘密警察の再現ではないか、こういうことを言うのであつて、あなたがイデオロギーを持つておるとか持つておらぬとかいう問題じやない。あなたがやつている手口、その行動自体こそが、法で禁圧され、憲法で許されてはおらないところの犯罪的な違法的な手口ではないか、あなたのやつていることと私の質問は関連するのであつて、あなたの考え方だけを聞いているのではない。
○野口参考人 繰返しますけれども、警備上必要なことをやつておるだけであります。
○佐瀬委員長 加藤君、時間がありませんが……。
○加藤(充)委員 警備上必要があつたということでも、思想警察、特高警察、秘密的な警察をやつてはいけないということが原理原則だと思うのであります。しかしこれは続けて質問をいたしませんが、最後に一つ、あなたがやつた事柄をあくまで正当な公務の執行だとお考えであるか、多分四七年の夏ごろだと思うが、大阪の公会堂で行われました集会においても、これと同じ問題が起きたのであります。これはまぎれ込んでおつた私服の警察官、スパイが発見されまして、逃げ出したのでありますけれども、逃げおおせなくて逮捕されました。そうして身分を明かせと言われたが、身分を終始明かさなかつた、黙秘権を行使したのかもしれません。しかし結局において包み隠すことができなくて、そこで始未書をとられ、こういうことは再び繰返しませんという、いわゆるわび状をとられたのであります。ところがこの事件がありまして直後に、その大会の議長をやつておりました男が強要罪、公務執行妨害等の被疑を受けまして、起訴されまして、そうして裁判の結果は遂に無罪であるという判決を受けたのであります。それで五十一年の十月三日には福岡高裁の正当なる公務による執行ということについて、警察官といえども公務の執行であり得ない行為があり得るのだということが明らかにされておりまするし、また昨年の十月二十六日には京都の地方裁判所の判決例でありますけれども、全面的に徹底的にこの基本人権、言論、集会あるいは出版の自由というようなものを禁圧し盡してしまうような公安條例は、憲法に違反するがゆえに拘束力がない、無効であるというような趣旨の判決があつたと思うが、あなたはこのことを御存じですか。そうしてなおあなたがやつた事柄は、公務の正当な執行である、こういうふうにお考えであるかどうか、最後にひとつ念を押しておく。
○野口参考人 大阪のことは私は存じませんですが、大阪の公安條例がどうであるということもよく私わかりません。そういうこともわかりませんし、私が今度東大にとつた行為は、絶対間違つてないという確信を私は持つております。
○佐瀬委員長 では次に……。
○加藤(充)委員 もう一点だけ……。
○佐瀬委員長 では簡單に願います。
○加藤(充)委員 私はほかにあつた事柄は知らないというようなことでは、あなたは本冨士署の署長ともいうような職責を行うことのできない人間であると判定しなければならないと思うのです。あなたはてめえの都合のいいことだけは合法的であり、あくまで信じておるというようなことを言うが、こういうようないろいろな過去の警察官の失敗、出過ぎこういうようなことをちやんと知らなければならないと思う、現にこの裏手で行われた同僚の大石ヨシエという議員に対して、白晝公然ではないが、薄暮公然と集団の暴行を受けたのであるが、いまだにその下手人をあげておらない。こういうものをはつきりしないでおつて、そうして一方だけのものでやるということは、まさに公僕に値しない警察のやり方であると思うが、その点についての感想だけでも伺つておきたい。
○野口参考人 別に私は感想はございませんです。
○佐瀬委員長 世耕弘一君。
○世耕委員 時間がありませんから私も簡單に要点だけお尋ねします。 まず第一に先ほどから問題になつておりますいわゆる警察手帳の問題ですが、その性格をお尋ねしたいのです。あの手帳、取上げられたとか掠奪されたとかいう手帳は、あれは公用のものですか、私用のものでございますか。
○野口参考人 これはやはり公用であります。
○世耕委員 その劇団の開演の前に報告が二つあつたと、こういうようにあなたはおつしやつておりましたですね、この点は間違いございませんか。
○野口参考人 御質問の通りに私聞いております。
○世耕委員 これは重大な問題がこの間に含まれておると思いますが、ただ單純な報告ですか。相当の確信のある報告を握つておりますか。
○野口参考人 あのポポロ劇団の責任者でございますね。責任者は今回のポポロ劇については法学部長が責任者であつたらしいのです。でその中にだれか責任者の方がお入りになつておつたかどうかということで、調べてみましたけれども、斯波厚生部長は、もう問題が起きてからおいでになつた。それから法学部の、ここへ記録を持つて来ておりませんが、教務主任の菊池さんと記憶いたしますが、その人が中途からおいでになりまして、松川事件を説明、演説しておるときから聞いたということは、調書に出ております。やはり菊地教務主任ともう一人お入りになつたその人も、大体松川事件のことをお聞きになつております。中途からお入りになつたようなことを聞いておりますが……。
○世耕委員 松川事件の方は了解いたしましたが、松川事件の報告前のもう一つの報告を、あなた、先ほど労働者風の男が演壇に立つて報告をしたと言われた。この点です。そのときに学校当局者が立ち会つておつたかどうか。あるいは立ち合つていなかつたかどうかという、この観点を承つておきたい。
○野口参考人 学校の責任者でございますか。
○世耕委員 そうです。
○野口参考人 そこのところがまだはつきりいたしません。これは最初に演説を労働者風の人がしておつたということは、私どもの三名の巡査が確認いたしております。
○世耕委員 非常に重大な問題だと私も思うております。それについて、あなたは調査中だという御報告があつたようでありますから、重ねてお尋ねしようとは思いませんが、調査は進行しておりますか、停頓しておりますか。それとも熱意をもつて、この問題を究極的に解決しようという熱意がおありになりますか、どうですか。
○野口参考人 捜査は続けております。
○世耕委員 あなたは東大にエロ映画事件というのが起つたことを御承知でございますか。東大構内でエロ映画上映事件、昭和二十五年五月十三日、午後七時三十分より九時三十分まで、場所は法文経二号館二階消費生活協同組合本部事務室、上映フイルム十六ミリ五巻、外国物四巻、日本物一巻、上映者法学部学生、名前は言わずにおきます。外七名、観覧者が十四、五名、料金は四百円から千二百円まで徴収、そのフイルムを提供した者もここに出ておりますが、あなたはさような報告を受けたことがございますか。
○野口参考人 その話は聞いておりますけれども、私が赴任前のことでございまして、そういうことがあつたということはあとで聞きました。
○世耕委員 二十四年六月十五日地検に送致されて、二十六年に起訴猶予になつております。御調査願いたいと思う。 次に、参加した、いわゆる観覧しておつたあなたの方の部下の警察官が、三百名近くの来会者の面前の舞台に順次に引出されて、その大衆の面前でいろいろな尋問等をされたということに東大のこの新聞が書いておるから、そこは間違いなかろうと思うが、そういう事実がございましたかどうか、それ事実であるとするならば、さようなことは人権蹂躙に該当するとはあなたはお思いなさらないかどうか。
○野口参考人 質問の御趣旨通りでありまして、人権蹂躙にも当ると思います。多衆の面前においてそのようなはずかしめを受けたことは、人権蹂躙にも該当すると思います。
○世耕委員 もし人権蹂躙ということをあなたがお考えになつたら、これについての対策が自然講ぜられなければならぬと思う。ことに部下を愛するという建前から見ても、この理非曲直を明らかにしなければ、あなたは今後の指揮命令に影響すると思うが、この点はいかがか。なお私の調べたところによりますると、舞台へ引出されて、その後手帳を強奪されて、始末書を書かれるまでに二時間半を要しております。その間において、うしろ手に、多数の学生から腕をとられて、ねじ上げられて、そうして自分の身体検査をして手帳をとられたということを聞いておりますが、それは事実であるかどうか、あるいは事実でないかどうか、この点についてのあなたの御調査の報告を承りたい。
○野口参考人 ただいま御質問の通りに私は報告を受けております。
○世耕委員 始末書並びに手帳をば、さきの学生の説明では、預かつたという話であります。あるいはあなたの方から見たら、掠奪されたというので、食い違いが一つある。これはやがてわかることと思いますが、その手帳を相手にとられた場合、あるいは渡す場合、あるいは始末書を書く場合に、厚生部長が立ち会つたというふうにここの新聞には出ておりますが、あなたのさきの話では、立ち会つておらなかつたようにも聞いているのですが、この間の事情が明らかでない。あらためてもう一ぺん御説明を願いたいと思います。
○野口参考人 斯波厚生部長は、その事件が起きてから来場されたと聞いておりまして、手帳を奪取されてからも、三巡査はこれが返還を要求したらしいのですけれども、どうしても返さない。それで斯波厚生部長は、まあこのところはもうしかたがない、翌日の一時までには必ず学生と話して返すから、この場合はこれで引揚げてくれというようなことで、引揚げて来たという報告を私は受けております。
○世耕委員 ちよつと私の聞いているのと違つた答弁がおありになるようですが、斯波厚生部長は始末書を書かせるときに立ち会つているという記事がここに出ている、そこに食い違いがありませんか。
○野口参考人 始末書を書かせるときに、厚生部長がその場におられて、そこを現認せられておつたかどうかは、私もまだはつきりわかりませんが、その始末書は、向うで学生の諸君が書かれて、それに署名だけをしたということで、そのとき厚生部長がそれを現認されておつたかどうかは、私もまだそういうこまかい点はちよつと確答できないのであります。
○世耕委員 これは学生の指導の上に重大な責任があるのです。私がなぜかようなことをば重ねてお尋ねするかというと、学生はえてして血気にはやり熱情的に走りやすいのです。そこに指導者というものは冷静な立場に立つべきものであります。厚生部長がさような場合に指導よろしきを得たならば、こういう事件は起らなかつたということも想像できる。そこに学校当局の責任がある。私が言うのは、学生ばかりを責めるべきではない、指導者はどうしておつたか、こういうことを聞きたいのです。ここはぜひあなたの方でこの調査を明瞭にしていただきたい。しからざれば、学生にのみ責任を転嫁する、ややもするとこういうきらいがある。 それからもう一つお尋ねいたしますが、この問題について、その後東大の当局とあなたは何回御会見になつたか、その会見なさつた回数、その会見になつた人の地位、職名、あるいは学生と同行されたか、單独に来られたか、あるいは学生だけであなたの方と会見されたか、その間の状況を詳細にわかれば、ここにお話願いたいと思います。
○野口参考人 二十一日の夕方尾高教授がおいでになりました。それに学生の代表が――尾高先生は、無理について来たのだとおつしやつておりましたが、二人の学生がついて来ました。ちよつと名前を失念いたしましたが、一人は文学部の学生、それから法学部の大屋君ですが、名前はちよつと私記憶いたしませんが、それがおいでになりました。それからその翌日に尾高教授、それから脇村とかいう経済学部長、それから厚生部長がおいでになりました。そのそのほかに二十一日でしたか二十二日でしたか、その日にちがちよつと記憶がはつきりいたしませんが、学生四名、文学部の吉川君と思いましたが、以下四名見えました。それから……。
○世耕委員 時間を食いますから、私から注文しておきます。今私がお尋ねしたのは、東大当局であなたの方へ折衝に来た人の氏名、並びに何回来られたか、どういう地位職務の人が来られたか、あるいは学生が單独で来たか、あるいは当局が單独で来たか。その日時またはその要求事項等について記録が必ずあるはずだから、どうか委員会にお出しを願いたい。 それと最後にお尋ねいたしますが、演劇場に入るときに自由に入れましたか、入口で断つて入りましたか。もぐつて入りましたか。
○野口参考人 自由に入りました。
○世耕委員 そのときに入口にだれか責任者がおられましたか。
○野口参考人 責任者というと学校側ですか――だれでも入つております。拒否されていない……。
○世耕委員 集会の会場の入口には、もし他人が入つて悪いのならば、だれか会を主催する者がそこにおるはずです。そういう者がおつたか、いなかつたか。
○野口参考人 おりません。
○世耕委員 私のお尋ねするのは、開放であつたか、それとも嚴重な入口をもぐつて入つたかということで、それによつて観点が違つて来る。そのときにオープンだつたのですか。
○野口参考人 そうです。開放でありました。
○佐瀬委員長 平川篤雄君。
○平川委員 私は簡單に二つほどお伺いしておきまして、これは材料にしたいと思うのであります。逮捕令状を持つて来ますときに、私の調査では、斯波厚生部長の部屋まで行つたそうでありますが、そのときに何も逮捕令状のことは言わないで、学生二名の在否だけ尋ねて、そうして去つたということであります。つまり学校側に何らの了解を得ずにやつたということであります。これはその見解をあなたにお聞きしておきたいのでありますが、次官通牒の精神から考えますと、なるほどこれは法的には逮捕の場合には了解も何もいらないかもしれませんが、やはりその精神から考えて行きますれば、これは一応の考慮があつてしかるべきであると思うのでありますが、そういうことについてあなたはどういうふうに考えておいでになるか。これを聞きたい。
○野口参考人 そういう逮捕状を学校当局に見せなかつたかというお話でありますけれども、逮捕状を執行するのは、いわゆる捜査の径路でありまして、ですからこれは隠密を要し、いわゆる捜査の技術でありますから、私は見せなくてもいいと思つております。
○平川委員 先ほどから署長の御答弁を総合して聞いておると、いろいろな複雑な問題がごたごたにこの問題について、何というか、一つに集まつて来たような気がするのであります。そこでお伺いしてみるのですが、東京大学の構内というものは、あなたの所管管内で面積的にいつてもかなり大きな地面を占めておると思う。またそこへは小さい都市と同じくらいの人間が出たり入つたりしておる。当然これは先ほど署長はパトロールくらいを今後もやるように了解を受けたいというような気の弱いことを言つておりましたが、学校当局も、たくさん入つて来る部外者の起すいろいろな犯罪まで、とても責任を持つことはできないことはわかつております。そこであなたは、一年三百件以上の事件がこの構内から起つておると言われますが、学校の教育のいわゆる仕事をしておる関係のある人聞が起した犯罪、それと別個の犯罪、つまりかりに他の人間がこの地域内でやつた犯罪、それとわけておるのかどうか。それがわかりましたら統計上の数字をお示し願いたい。
○野口参考人 こまかい数字、中の犯罪の忍び込みとかあるいはかつぱらいとかあるいは屋内に入つて持つて行つたとかいうような点は、これは私の方で詳細に調査いたしますとわかりますが、今その資料は持つて来ておりませんけれども、結局あそこに定住者としておる人たちはほんのわずかでありまして、やはりこれは外部からいろいろな者が入り込んで来る。上野の浮浪者あたりも相当入り込んで来ます。また病院関係、学校関係等で種々雑多の人が出入りしておるわけであります。これは年中であります。ですからその形からいたしますと、普通の市街と同じような形と私は考えるのであります。これは学校という観念と別です。そういう犯罪が起る形は、ちようど町みたいなような形の犯罪が多いように考えておりますが、具体的なこまかい手口とかそういうことは……。
○平川委員 そうなれば一年三百件以上の犯罪、本富士署管内の三割弱の犯罪がここで行われておるということは、あなたは故意におつしやつたかどうか知りませんが、非常にこの問題を妙な方向へ持つて行くような意図があつたと考える。あなたの今おつしやつておるようなことになれば、これは本問題とは関係がない。三百件以上の犯罪があるとか、三割弱になるとかいうことは、これは切離して考えてよい問題であると思います。その点明らかにしてもらつたわけです。 それから東大再建細胞であるとか、いろいろな東大細胞とかいう団体があつて、団体等規正令その他の政令違反になるおそれがある、これはそういう事件でございましたでしよう。そのことについて、あなたは就任以来何ら学校側とは申合せもしておらないと言われるのであるが、こういう大事な問題について、お話しておいでになる事実はないと私は認めるのであります。ところがその理由に、職員というものも入つておるから、協力を得なければならないのか、得なくてもいいのか、はつきりしていないからほうつておると言われますが、これは非常に怠慢であると思います。学校側は、あとで総長にお尋ねしてみたいと思いますが、かような政治的な問題については、決して何というか、いいかげんに放置していないであろうと思います。当然そうだろうと思います。そうなればこれはあなたの方の問題であつて、ただそこに次官通牒というものは、根本は何というか、教育上あるいは学問の自由を守るという必要上特に考えられておる問題であるから、そこらの点はお話合いになる責任が、当然所管の署長として私はあると思います。これはあなたの怠慢であると思う。そういうことをしないで、こつそりと警官か三名入つておるようなことがあるから、この問題がめんどうくさくなつたのである。原因はあなたの怠慢によつて起きておるというふうに考えなければならぬと思いますが、その点あなたの御所見はどうですか。
○野口参考人 私は先ほどから申し上げました通り、怠慢ではなく、積極的にやつておるつもりでございます。
○佐瀬委員長 田中堯平君。
○田中(堯)委員 警察手帳というものについて聞きます。これは聞けば警官の生命にひとしいほどの重大なる文書であるというふうに私も聞いておりますが、警察署長として部下には始終やはり警察手帳の重大なるゆえんを訓示しておるのじやありませんか、どうですか。
○野口参考人 紛失したり遺失したりしないように十分訓示をいたしております。
○田中(堯)委員 そこでこの二月の二十日、東大の二十五番教室で約二時間前後の時間がたつて、その間に警察側の主張では、とうとう警察手帳を掠奪されたという。学生側の言い分では、いや預かつたと言うが、私が思うに、その非常に重要な、生命にもかわるほどの重要なるこの文書を守るために、なぜ一生懸命闘わなかつたかということです。(「闘つておるよ」と呼ぶ者あり)いやそんなことはない。もしも闘つて、刀折れ矢盡きてそれでもつてやられたのであるならば、おそらく服は裂け、大けがをしておるに違いない。そういうことは何もないじやありませんか。どうです。
○野口参考人 傷害を受ける程度の暴行を受けておりまして、できるだけの、満身の抵抗はいたして、そして奪取されたのであります。
○田中(堯)委員 服は破れておりましたか。
○野口参考人 破れておりました。ワイシャツその他外部が破れておりました。
○田中(堯)委員 その次にお伺いしますが、警察側の方の説明では、この二十五番教室のポポロ劇団がやつたのは、これは公開だつたということであります。その証拠には、三割弱というものは一般人であつたというのでありますが、私がお尋ねしたのは、このポポロ劇団の劇には学生と職員並びにそれらの家族、家族は了解事項になつておる。してみると三割弱がおつたおらぬかということを――おつたならおつたでよろしいが、これが実族であつたということは十分調べてありますかどうですか。
○野口参考人 今調べつつあります。
○田中(堯)委員 それでは、これが公開であるので、自分が一般人の資格として入場券と称するものを三十円拂つて入つたということであるが、一体それならばどうやつて三人がそこへごそつと入り、まつたく計画的にしか見えないが三人入り、おのおの警察手帳を持つておつたということは、どう考えても計画的公務として入つたとしかえないが、どうですか。
○野口参考人 手帳の使用規程には、職務の内外を問わず手帳はやはり携帯するようになつているのであります。
○田中(堯)委員 活動写真に行くときでも……。
○野口参考人 ええ、どこに行くときでも、放課後五時以後でも歩くときは持つて行くようになつています。
○田中(堯)委員 一定の時刻に三人そこへ集まつたということは……。
○野口参考人 それは私はわかりません。
○田中(堯)委員 偶然の一致ですか。
○佐瀬委員長 一問一答に願います。
○田中(堯)委員 それではいま一つお尋ねしますが、警備係というのは、どういう職務を行うものでありますか。
○野口参考人 警備係は、やはり警備に必要なことを調査するというのが……
○田中(堯)委員 何の警備のためでありますか。
○野口参考人 警備と言いますのは、いわゆる警察の目的であるところの治安維持の警備のためのものであります。
○田中(堯)委員 そこで私の初めてわかることは、きよう刷りものにして私どもが拝見をしたあの三巡査の警察手帳の内容は、何ら防犯的な方面、強力犯とかその他のものについては書いてない。全部往年の特高的な思想警察の記事で一ぱい塗りつぶされておる。そうしてあなたの説明によると、警備係とは治安維持のための警備をする任務がある。二つを結び合せてみると、何のことはない、往年の特高がやるように、だれそれはどういう思想を持つておるとか、だれとつき合つている、どこそこでどういう発言をしたか、それを裏にまわつて調べている役目じやありませんか。そうじやありませんか、どうですか。
○野口参考人 そうではありません。
○田中(堯)委員 そういうふうな任務が警備課の任務であるとするならば、あなたの見解としては、日本の憲法なりその他の法律が許しておると思いますか、おらぬと思いますか。もしそうであつたら、あなたのお考えはどうですか。
○野口参考人 もう一ぺんお願いします。
○田中(堯)委員 もし警備課の任務なるものが、人の思想傾向や人の行動やあるいはだれとどこで話をしたかというようなことを忍びやかに調べることが任務であるならば、それは今日の憲法もポツダム宣言もその他の法令も、これを許しておらぬと思うが、あなたは許しておると思いますか。
○野口参考人 警備上必要なことを調査することは憲法も許してあると私は解します。
○田中(堯)委員 そこで私は時間がないから最後にお聞きしますが、あなたは本富士署長として、そういうふうないろいろな警察事務の票に、特に重要なる任務が一つある。それはあの第六学という大きな存在があなたの管轄内にあるので、その大学の自治、学問の自由ということについて最後に見解を伺いたいのでありますが、あなたはこれを尊重するという発言をさつきなさつた。ところで学問の自由ということ、学園の自治ということは何のために必要なのであるか。たとえばそこで日本共産党東大細胞なる銘を打つたビラがまかれた。その中には暴力的な言辞があつた。労働者はどすをみがいている云々というようなものがある。そうなればやはり警備係としてそこに行つて、あらかじめずつと調べておかなければならぬというふうなあなたの口吻でありましたね。そこで文書に書かれたものは暴力的な内容がありましようとも、これは意見ですよ、学問ですよ。現実にそこに何か武器ができておるとか、あすにも爆発するという問題があるならば、これは別です。そうではなしに、今日のように、あの吉田内閣その他が徹底的な弾圧をやつて、いやがる若い者を徴兵にもかり出そうとしておる。自分たちはあのわだつみの声を二度とやりたくないと言つておる。そこで自由を主張しようとする。当然のことである。これが自由ですよ。それをはげしい弾圧をすることを任務としておる。それであなたはまだ大学の自治、学問の自由を尊重するといら最初の発言はそのままですか。
○野口参考人 御質問の通りであります。
○田中(堯)委員 御質問の通りじやないですよ。それなら学問の自由というのは何です。大学の自治というのは何のために必要であるか。本富士警察署長としてのあなたはよく理解しておりますか。
○佐瀬委員長 田中君、時間がありませんから簡潔に……。
○野口参考人 学問の自由ですか。
○田中(堯)委員 学問の自由や大学の自治は何がゆえに必要であるか、尊重しなければならぬかということです。 〔発言する者多し〕
○佐瀬委員長 静粛に願います。
○田中(堯)委員 あなただから私は聞くのです。よその警察署長なら聞かない。これは人類の社会がどんどんと発展して行くそのやさきに立つておる真理を追求する。この真理が把握できなければ人類の進歩は停滞あるいは後退する。そのためにこそ、ちようど政治の中で三権分立があるように、学問なるものに対して大きな自由が與えられなければならないのですよ。わかつておりますかそれは……。(「そんなことは文部大臣に聞け」と呼ぶ者あり)よろしい。
○佐瀬委員長 次は阿部眞之助氏にお願いいたします。 阿部眞之助氏には、市民の立場から大学の自治と治安について、一般的な御意見をお伺いしたいと思います。なおこの際は委員より質疑はございませんから、比較的詳しく御発表を願いたいと思います。阿部眞之助君。
○阿部参考人 私はこういうところへ出るのはたいへん不適任だと思つたのです。というのは、この事件については新聞で発表された以外には、私は何も知らない。その新聞の発表について私の意見を二、三の新聞に書いたこともありまするが、きよう私はこの席へ出てみて、実はどうも意外な大論争になつたのに驚き入つておるわけなんです。私自体の心持で言えば、従来大学の自治が守られて来たと同じように、現在も、将来も大学の自治というものは厳重に守られたいということが、私の心からなる念願なんです。しかしながら、なぜこういうふうな問題がしばしば起つて来るかということについて、私はどつちがいいとか悪いとかいうことではなしに、これは大学の当事者も、警察の当事者も、真剣に、まじめに考えていただきたいと思うのであります。 ただいまどなた様か、なぜ大学の学問の自由が大切かというようなことを、警察の署長さんにお尋ねになつていたようですが、そんなことはもうすでにわかり切つた話です。むろん学問の研究の自由というものがなければ、学問の進歩はとどまり、それとともに世の中の進歩というものはとどまるのであります。われわれは、世の中の進歩はどこまでも進んで行きたい、そのためには大学の自治がなければならない。つまり、言えば大学の自治があるのは、大学のためにあるのじやなしに私どものためにある。何か近ごろ大学の自治ということが、妙に特権的に一般の民衆には響くようなことがしばしば起つて来ておるのであります。これは私どもにとつては、非常に嘆かわしいことなんです。ただの特権じやないのですわれわれが與えた特権なんです。その特権は、大学によつて厳重に守らなければならぬものだろうと思う。そうですから特権があればあるほど、私は大学のこの世の中に対すの責任と義務というものは非常に大きいと思う。(「その通り」)私は今度の事件がはたして大学側にあやまちがあつたか、警察側に行き過ぎがあつたかということは、これから皆さんが御審議くださつて御決定くださることだろうと思うのでありまするが、しばしば大学にこういう事件が起つて、しばしば世間を騒がすという、こういう事態については、私は大学と警察の当局と両方に対して深甚なる反省を促さざるを得ないのであります。これはどつちがいいとか悪いとかいうそんな問題ではない。日本の国の学問が進むか、日本の国の進歩が進むかとどまるかという大切な問題だろうと思うのです。それをつまらない――つまらない問題といつては、皆さんにおしかりを受けるかもしれないけなども、(「共産党が悪用しているからいけない」と呼ぶ者あり)どつちが悪用するか私は知りませんが、いずれにしてもこれはお互いごつこのように、私どもが聞いていると聞える。警察が悪いからおれたちは暴力を振つてあばれまわつてもかまわないというのでは、それも困るけれども、警察側から見ますると、大学側が何か非常に危険なる政治運動の温床であるから、大学が危険なる政治運動に巣を提供しておるからというふうに言つて、お互いに言い合つておる。どつちが先かどつちが後か、これはちようど鳥と卵の問題だろうと思う。私ども第三者にはこれはわからないことなんです。もしもこの警察当局者が言うがごとく、大学が自治というものを濫用して、その自治の陰に隠れて不穏なる何らかの政治的活動を見のがしておるというようなことがあるかないか、これは私は知りません。もしもあつたとしたら、これはたいへんな問題だろうと思う。これは私は大学当事者みずからが自治を破るものだろうというように考えざるを得ないのです。まあ世の中の人の大体の考え方はほんとうのことの真相がよくわかつていない。ただ空漠として感情的に、何か大学の中には近ごろ変なもやもやしたものがある。そこから変なもやもやしたものが湧き上つて来るというふうに感ずる。これは根もない、まつたく火もないところの煙かもしれませんね。(「ノーノー一)いよいよもつて事実あつたらこれは大問題だが、かりに火もないところの煙だつたとしても、そういう疑いをいつまでもこの世の中に大学当事者が持たせるということは、何だかどうも一般われわれとしては釈然たるものがないのであります。この点について、私は大学の当事者側に、こういう事件が今後二度も三度も起らないように、ほんとうの自治をやつてもらいたいと思うのです。従来こういう問題が起るたびに大学のとつた処置を見ておりますると、一、二の学生を停学にするとかあるいは退学にすることでおしまいになつておる。みな学生に責任を転嫁してしまう。(「同感」)これで大学の当事者としていいものか悪いものか。これは私は事実を知らないから批評の限りではないが、今後はそういう学生にのみ責任をとらせるような仕組みでなしに、大学当事者みずからがそういう不祥なる事件がかりに起つた場合には、責任をとる。自分たちは断じてそういう悪いことは学生にはやらせぬ、そのかわり外界からの変な干渉は一切排除するという建前でなければ、こんなことをいつまでもどつちがいいとか悪いとかと言い合つたところが、私は子供の水かけ論のようなものだろうと思う。結局ここでどつちがいいか悪いかということは判決が下つても、両方が――世間も、警察当事者も、大学もほんとうに一緒になつて、ひとつ自治をもり立てて行こうじやないかという心持がなければ、自治は起きやしない。私の信ずるところでは、大学の自治、これを守る道は二通りあるだろうと思う。みずからの自治を自治すること、これがまあ一番大切なことだと思う。しかる後に外界から干渉があつた場合には、身をもつてこれを拒否することであると思う。それをみずからすることをしないで、どうも従来のわれわれの一般感情からいうと、はなはだ失礼かもしれないけれども、非常に粗雑な点があつたように思う。昨晩私はラジオを聞いておりまして、尾高法学部長のお話があつた。それを聞きますると、ようやく大学の秩序も軌道に乗りかかつたところを、こういうことが起つて非常に遺憾だと言つておる。すると従来は大学の秩序というものは一つも軌道に乗つていなかつたかということになる。乗りかかつたという――(「まだ乗つておら」ぬと呼ぶ者あり)これはつまり今まではいろいろ敗戰の結果、世の中がごたごたして、世の中自体も秩序がなかつたのだから、大学の内部にそんなにがつちりした秩序が立ち得るはずはなかろうと思うが、しかし大学のようなところは、まつ先に秩序が立たなければならぬところだろうと思う。ここでひとつしつかりした秩序を立てていただいて――乗りかかつたんじやなしに、いやでも応でも軌道に乗せてもらわなければならぬことだろうと思う、乗りかかつたんじや困る。そうしておいて、何か逃げ込んで来て、ちようど北鮮が満州に逃げ込むと、どうにも攻め口がなくなるというような感じを世間に與えるということでは、大学の自治を将来にほんとうにしつかり保つて行くことはできないと思う。(「俗悪な評論だ」「お気に召さぬか」と呼び、その他発言する者あり)それはどなたさんがお気に召さぬか知らぬが、私どもはそういうように空漠として感ずる。私どもの空漠たる感情を無視して行つたら、民衆の感情というものを無視することになりはしないか。私個人の意見ですが、私はそう思う。つきましては、私の念願といたしますれば、大学もひとつしつかり自治をみずから守つてもらう。同時に警察の方々も、あまり大学の自治に対しては変な目で見るということはやめてもらいたいと思う。これは両方から秩序をもり立てるということ――どうも新聞なんかの記事を見ますと、何か大学の内に警察官吏が入るということが、ただちに学問の自由の圧迫のように感ずる。実に警察官というものに対して大学の神経過敏なことは、驚き入つたものである。およそ警察官を一番恐れるのはどろぼう、その次は大学と言いたいくらいである。何だつて大学は警察官吏をかくのごとく忌みきらうか、わからぬ。みずから守つて、天下に対して何にも恥ずるところがなかつたならば、警察官が百人入つて来てもへいちやらじやないか。何の理由によつて警察官をさように恐れ、忌みきらうかというと、従来の特高警察というものにはわれわれでもずいぶんひどい目にああつて、それが身にしみてわかつています。(「それが再現しつつあるじやないか」と呼ぶ者あり)それが再現するかしないかは別問題です。そういうことを少くとも再現させないためにも、私は大学の自治がほしい、こういうので、もしも大学の自治が厳重に行われていたならば、元の特高制度というような、そんな忌まわしいものが再び復活するはずはない。とにかく、今度の事件については、私はどつちがいいか悪いか、何とも申し上げる資格がないのですが、一般論として、空漠とこんなようなことを考えております。どうぞ大学の皆さんも、警察の皆さんも気分を静め、頭を冷やして、日本の国のために大学のほんとうの自治を立てるようにお願いしたい、これだけを申し上げておきたいと思います。たいへん簡單でございますが……。(拍手)
○佐瀬委員長 次は東京大学総長矢内原忠雄君にお願いいたします。東京大学当局として、東大事件の一般的報告を望みます。特に大学の自治と治安に中心点を置いて御意見の発表を願いたいと思います。
○矢内原参考人 委員長並びに委員諸君、私は初めて国会のこういう御審議に出席いたしたのでありますが、国政を審議なさる皆さんの御熱心に対しまして敬意を表しますとともに、日本の重大なる時期に際して、政治を御審議なさいます皆さんは、いかに日本の学問と教育が重要であるかということについては、十分御認識くだされておることと思います。私は私の陳述をいたしますに当つて、まず二、三の、ほとんど自明といつてもいい原則を申し上げておきたいと思います。 第一は、学問は、世界人類の共通の財産である。長い間の学問の発達の歴史、それが日本に伝わりましてからも、明治以来すでに七、八十年の長い伝統を持ております。この学問の研究が、日本においてどの程度に発達しておるか、あるいは発達しなければならないか、これが私ども大学人として最も考えておるところの一つの問題であります。日本は近代学問に努力いたしまして、あるものはほぼ世界の水準に達しており、水準以上のものも若干ありますが、概して言えば、いまだ世界の最高水準に達していないのであります。ことに過ぐる太平洋戰争の数年の間のギャップというものは、まだ容易に埋められておりません。日本が文化国家として再び国際政治の舞台に出ますについては、学問の発達ということは実に重要な問題であります。 第二の点は、学問の自由、思想、言論の自由は、日本の憲法においても保障されているという事実であります。これはるる申す必要はありません。 第三には、大学といえども国法のわくの中にあることは、もちろんでありまして、何か新聞にあつたようでありますが、大学の治外法権などというものを大学人は考えているのではありません。大学は国法のわくの中にあり、国法に従つて運営されておるのでありまして、これは当然のことであります。 この三つのことを前提といたしまして、私は自分の見解をもう少し述べます。 どうして大学は自由を要求するかといえば、大学は学問研究並びに教育の府であるからです。学問というものは真理の探究でありまして、ある特殊の政治的権力とか、宗教的権力によて阻害される、あるいは一つの方向を強要されるというのでありましては、学問は発達しないのであります。政治的権力と宗教的権力から学問を守るということが、世界における大学自由の歴史である。それが日本に伝わりましてすでに数十年の歴史を経ておるのでありまして、研究の自由は、学問発達の致命的な條件であります。社会が一般に自由となる、そのいわゆる民主主義の発達の中にあて、大学が自由を守つて来たということは、大きな役割を果たして来たのであります。従つて社会が自由になればなるほど、大学も自由になて来たのであります。 第二は、大学は教育の場であります。教育、ことに大学教育には、單なる学問上の専門的な知識を伝達する場であるだけでありません。さらに学問的精神を伝達する場であります。学問に従事する者には学問の精神がある。この学問的精神は自由の精神である。これを日本で申せば、日本の将来の国民のリーダーたる地位につくべき学生に伝達しておく、真理のためにはあくまで闘うというこの真理のための精神を学生に吹き込んでおくということは、教育の重要な任務であると考えます。それゆえに大学における教育の自由ということは、研究の自由に付随して成立する原則であると信ずるのであります。 第二には、学生を教育することが、命令によらないで学生の自発的な訓練、いわゆる学生の自治にまつということが近代教育の理念であります。これは大学教育だけではありません。一般的に申しましても、たとえば奴隷制度、そういうものではなくて、自由労働者というものが近代的な労働の形態であると同じように、学生、ことに大学の学生については、自治をもつて教育する、自治的訓練を與えるということが教育の重要な任務であります。 第三には、特にこの太平洋戰争以後から今日に至る数年間の状態をわれわれは考えます。日本に精神的な大きな変革があたのであります。学者も学生も学問に関係しておる生きた人間であります。すべておのおの職業にあるいは生活についての特別な気質というものがあり、特別の愛着というものがあることは申すまでもないのでありますが、ことに戰後の学生の心理状態、精神状態というものを私どもが見ておりますと、戰後直後はすべての国民みなそうでありましたが、青年たちもいわゆる精神的虚脱状態にありました。あるいはアプレ・ゲールと一口にそう言われるような虚無的な、享楽的な、デカダン的な気分も見えました。また一部には自由主義あるいは民主主義をはき違えて、合法的な線を越える逸脱の面もありました。しかし概して考えてみますと、戰争の終つたときに国民一般が、この戰争にはだまされたと感じたことは当時の一般的な感情であります。だまされたと最も敏感に感じた者は青年であります。それは青年はその感情が比較的純粹でありますから、戰争のときには多くの青年が国のためというので戰場に参りました。そして働いたのでありますが、戰争が終つたときの青年の気持は、私どもは察してやらなければならないのであります。先ほどからたびたびお話のありましたように、再び自由の圧迫、特高警察的な統制復活等々はごめんだ、こういう感じを持つておる。そうして日本の政治も、また政治の一部として文教政策も、民主主義の精神の鼓吹ということがその心棒でありました。民主主義的な人間をつくろう、民主主義的な政治をしようということは、すべての人がそういう声を大にし、努力をしたのであります。そういう中で教育せられた学生であります。この学生諸君を大学は預かつて、りつぱな人間、りつぱな新日本のリーダーを養成するということをわれわれは念願しておるわけであります。こういう三点から申しまして、大学は教育の場である、その立場において自由を必要とするのです。大学は研究においても教育においても自由を必要とすることは、魚が水を必要とすると同じであります。 第三に、かかる大学自由の原則に従つていかなる制度を必要とするか、すなわち研究及び教育の場として適当な條件を設定するということであります。その一つは大学の教官並びに学長の人事についてであります。この教官及び学長の人事の選考は大学の教官自身の手において行う。何となれば、学問についての理解のある者が、教授もしくは学長を選考することが最も適当である。学問について理解のない人、何らかの政治的な権力あるいは宗教的な権力に基いて大学の人事を決定するということは、大学の自由を危險に陥れるものである。こういう了解のもとに、人事についての大学の自由を保障する制度ができておるのでありまして、これは日本においてたびたび経験を経、問題を経まして確立せられて来て今日まで維持せられておる原理であります。このことは戰争前からもうすでに日本においては確立されておるのでありまして、昭和十三年に荒木陸軍大将が文部大臣でありましたが、国立大学――当時は帝国大学と申しましたが、帝国大学の総長を文部大臣が任命するという案を出して、すべての当時の大学の連合した反対によつてその案が挫折したことがあるのであります。そのときからもうすでにこれは大学が守つてきた原則でありまして、戰後の民主主義的な今日においてはなおさら必要なことであります。 第二は、学内における教授並びに学生の活動であります。これはいわゆる学内活動と申します。この学内活動に対して、警察権その他の行政権がいかなる程度に、あるいはいかなる形態において関係するかということが、きようの御審議の一つの大きな問題のように伺つたのでありますが、これについては先ほど申した通りに、大学も国法の外にあるものではありません。当然国法の中にあります。大学は決して活外法権を必要とするものではありません。しかしながら研究及び教育の場としての條件、大学の存立の致命的條件である自由、これを尊重する、これを守つて行くということは、学問の発達、学問の研究並びに大学の学生の教育という上から言つて、非常に重要な致命的條件であると信じ、そしてそれは日本のみならず世界の大学の歴史において蓄積せられて来た制度であります。大学内の学内活動の秩序の維持は第一次的に大学が管理するという原則であります。この原則は従来日本においても認められて来たところでありまして、具体的にいろいろ後に申し述べるかもしれませんけれども、警察権が大学の中にすべての場合に絶対に入らない、そういうことを主張するのではありません。ただこの警察権の介入は大学の了解のもとにおいて行われることが大学自治の建前から必要であると信ずるのであります。学内の秩序維持は第一次的には大学自身が持つ、すなわち大学の学長の責任において学内活動の秩序を維持するというのであります。これがいかに研究と教育の上に重要なことであるかということは、何度繰返してもよろしいのでありますが、昭和二十五年七月のいわゆる文部次官通牒というものは、その年に出ました東京都條例に対する特例という形で了解事項ができまして、通牒があつたのでありますが、その次官通牒に述べられているとりきめは、実際のところは二十五年七月以前からすでに久しい慣行として行われて来ておるのであります。次官通牒は、それまでの慣行を確認したのであります。私は今度の事件が起りまして、特に私の前任者に従来の取扱いを聞きました。そうしたところが、警察と大学との間に文書によるとりきめの交換文書はない。しかしながら大学内における学内活動の秩序の維持は、大学がこれを行う。警察権は大学の了解のもとにおいて活動するということは、前々からのとりきめとして慣行になつておる。ときどき警察との間にトラブルが起るけれども、その都度その原則は確認せられて来たのであるということを聞きました。すなわち次官通牒以前から、それと同じ精神が実行せられておつた。その後もそうであります。そこで最近における、つまり戰争終了後すでに六年半たちまして、その間の学生運動の推移を考えてみますと、終戰当時の混乱状態が次第におちついて参りました。これは日本の社会一般と同様であります。大学内においても学生の気持ちもおちついて来た。そうして学生の生活もややおちついて参りました。それでこの民主主義のはき違えということが方々でありましたが、自由を主張するあまりに、大学できめた秩序維持の線を越えるということも何度かございました。学校は学内秩序を維持するために、学生運動に対してあるルールをつくつております。集会をすること等々の場合には、嚴重な手続を定めております。そうして最初の民主主義のはき違え云々という時代においては、大学における学内秩序に対しても反抗する気勢がありました。けれども大学は大学としての特殊な研究と教育の場であるがゆえに、自由であるとともに責任がある。たとえば具体的にはこういう問題があります。学生の集会をするのにある條件を課する。それに対して集会の自由は憲法において保障されている。それゆえに大学の子の取締りは憲法違反である。こういう議論が何度か何度か繰返されて来たものであります。しかし大学は一面においては教育の府として学生に対して、憲法の保障する自由というものはそういうぐあいに解釈すべきではないということをさとし、そうして大学は自治を守ると同時に責任があるのだから、大学のルールは守らなければならないということをさとしまして、何度も何度も折衝がありました。そうしてこういう事件に関して少からざる学生の処分をしなければならなかつたということは、皆さんも御承知の通りであります。しかるに社会が鎮静するとともに、大学の学内活動の秩序もやや板について来た感じがする。それで一昨年まではかなりはげしい激突がありましたが、昨年からはやや常軌に復して軌道に乘つて来た。一体大学の学内が騒がしいということは、学問の研究と教育に非常に有害であります。それゆえにわれわれは外に向かつても、中に向かつても、学問の教育研究にふさわしい、静かな状態を設定するようにということを努力して参りまして、ややその成績が見られるようになりました。大学には、あとで申してもよろしいのでありますが、学内問題のためにどういうことをしておるかということをついでに申しますと、学生は各学部長が管理しております。各学部長はおのおのの学部においておおむね教授、助教授からなる学生委員会というものをつくつております。この学生委員会が学部長を助けて学生の指導に当つております。たとえば集会に対して逸脱がないように、集会が合法的に行われるようにということを努力しております。さらに中央には総長のもとに全学的な学生委員会がありまして、各学部から一名ないし二名の教授、助教授が委員として出ておられます。そうして総長のもとにある事務的組織としては厚生部長がおりまして、部下を持つております。こういう体制で学生活動を指導しておるのでありますが、先ほど申したように、次第にその緒について、学生委員会が手持ちぶさたになりつつあるというのが最近の状況でございます。しかるときに今回の事件については詳細なる報告書を作成になりましたので、それを目標として詳細な作成中であります。しかし本日急に御招致になりましたので、その最後的な周密な報告書を今日提出することはできませんが、事件の概要は中間報告として、あるいは暫定的報告として私承知しております。そもそも問題の二月二十日、劇団ポポロというものの劇の発表会がございました。この劇団のポポロというのは、学内団体の一つ、すなわち大学で公認している団体の一つであります。これは大学の学生運動のまあ、右翼とか左翼とかいう言葉を申しますれば、左翼的な民文協という団体がありまして、民文教は最左翼ではございませんが、その民文教の最右翼的位置に位する劇団であります。たまたま二月二十一日が反植民地闘争デーということにうわさされておりましたその前夜でございますので、注意をしたのでありますが、ポポロ座の性格がそのような性格でありまして、学校できめました成規の合法的な手続きを経て紹介教授が紹介いたしまして、法学部長が審査して会場を貸すことにいたしました。教室その他を集会に貸すときには嚴重な條件をつけます。そうして紹介教授がありまして、紹介教授の責任において学部長に申し出て、学部長が審査の上で許可する手続きになつております。このポポロ劇団の劇の発表会は、何ら政治的な目的を持つものでないということを認めまして、許可したのであります。私の受けた報告によりますと、当日お晝過ぎでありましたかお晝ごろでありましたか、本富士署の刑事が厚生部長のところに参りまして――これは職務上の連絡があるときにはお見えになるのが当然であります。それでお見えになりまして、本日劇団ポポロの公演があるが、あれは大丈夫か、すなわち不穏なことはないかということを聞きました。あれは成規の手続きを経て合法的に許可したものであつて、学生並びに職員三百名というのが参加人員の予定として知らされております。そうして若干の学生、職員の家族などの同伴者は大目に見るということでありました。それで刑事は了承してお帰りになつたそうであります。その日の五時半から劇が開くはずでありました。実は誤字の予定であつたそうでありますが、職員は五時まで勤務がありますので、職員が参加するために三十分遅らせて五時半といたした。それで実際に舞台装置その他に手間どて、五時五十分に幕をあけたそうであります。大学からは、厚生部長の部下である巡査一名、その教室を管理する責任者である法学部の事務官一名――この事務官はやや遅れて会場に入たそうでありますが、おりました。そうして六時五十分に一人の本富士署の刑事が学内から署に電話をかけて、会衆約二百五十ないし三百、至て静穏無事であるという報告を署にいたしたのであります。これは証人がおります。それでわれわれの方も格別の報告を受けないのでおりました。それが六時五十分でありますが、七時十分に第一幕が終りまして、電燈がともりました。そのときに不幸にして一人の刑事が学生に見つけられました。と申しますのは、刑事諸君はしばしば学校の中に出入りなさいますので、学生は顔をよく覚えてしまつております。それで私服がいるということで、学生がその人を引立てて、前に出て来いとか何とか言て、ひつぱつて行たそうであります。その席に臨席しておりました厚生部長の部下である巡査は、騒ぎが自分一人の手で治まらないと思いまして、急いで外に、上司に連絡するために出ました。そのときに、ほかの刑事が巡視とともに外に出たそうであります。それで大学で確認いたしておりますることは、私服は三名でなくて四名であります。そしてその巡視が先に出まして、三名の方が一緒に出て行たときに学生が発見して、おつかけた。どろぼうどろぼうと言たというのでありますが、この巡視もつかまつて、お前はだれだと言われた。わしは巡視である。巡視なら、おじさん協力して、どろぼうをつかまえてくれ。巡視が機転をきかせまして、どろぼうをおつかけるふりをして厚生部に入りまして、上司に報告をいたしました。班長――巡視の班長でありますが、班長は部下を二名つれて現場に参りました。そのときにはもう幕合いが終りまして、第二幕といいますか、二つ目の芝居が始まていたそうであります。それで班長及び三名の巡視が状況を判断いたしまして、自分たちの処置ではできないと思て、厚生部長に連絡をいたしました。厚生部長が現場に到着したのは八時ごろであつたということであります。厚生部長が到着したときには、教室の外の階段のおどり場で、数名の学生が刑事をとり囲んで何かがやがや言ておる。始末書を書けというようなことを言ておつたそうであります。それで厚生部長はそのとき始末書を書けとか書かないとかいうことの騒ぎを聞きまして、それで穏やかにその場を治めようと思いまして話をしておるうちに厚生部長に来て話をしようということを申し出ました。学生とその刑事の方と厚生部長と厚生部長室に行こうということを提案いたしまして、一時はそういうふうになりそうであつたそうでありますが、話のうちに警察手帳を取上げておるということを厚生部長は知りましたので、学生を難詰してそれはいかぬ、そいうことをしたらたいヘんなことになるから、ぜひとも早く返せ、返しなさいということを要求した、あるいは命令した。しかるに学生たちも興奮しておりまして、近ごろ学校に私服の来ることが目立て多い、この次官通牒の線を逸脱してこういう所に灰て来られるのは実に困るから、今後こういうことのないように約束をしてもらわなれればならない、そして本富士の署長にもよく話をして、今後こういうことのないように約束してもらう必要がある、それまで手帳は預かておくということを申したそうであります。厚生部長は、とにかく手帳は返すべきだということを強く言いましたけれども、騒ぎが大きくなることをおそれまして、それでは君たち、手帳を確かに返すか、返します、しかし警察に今後を約束してもらつて返すということで、そこでその翌日のお晝までに手帳を返すということに話がなりまして、三名の警官は始末書を書かれた。始末書というのは、私はそれを見ませんが、今後入て来ないという、そういうことだろうと思います。二人の警官がすぐにお書きになつたが、一人の警官が容易に始末書をお書きにならない。そのときに厚生部長に連絡がありまして、正門前に二十名の武装警官が到着しておるという報告がありました。これは一名本富士署に走てお帰りになつた刑事からの連絡だろうと思うのであります。厚生部長は事がむずかしくなることをおそれまして、残た一人の刑事の方に、まあこの場は始末書をお書きになつてはどうですかということを勧めて、それではというのでお書きになつた。そのうち芝居もはねまして、九時過ぎ警察の方は出迎えの方とともに、正門からお帰りになつたということであります。これが私の報告を受けておる事情であります。 その当夜午後十一時斯波厚生部長は、本富士署からの要求によりまして警察に参りました。そうして署長は不在でありまして次席と懇談をいたしました。それで手帳を返すことを努力するように次席から言われまして、もちろん手帳を返すことは大学とせて十分努力する、ついては翌日の十二時までに返せという話でありましたが、厚生部長は努力するけれどもどこに手帳が行ておるかわからないから、約束することはできないと言て帰りました。その翌日厚生部長は学生諸君を呼び出して、手帳を返すべきことをさとしました。警察に対して抗議することは抗議すること、手帳を返すことは返すこと、それは別のことだから返すべしということを要求しておりました。十時半に厚生部長は本富士署に電話をかけて中間報告をいたしました。今せつかく努力中だから、もう少し待てもらいたいということを申し入れたのであります。そして十二時ごろから学生約十数名厚生部長室に呼びまして、この事件の処理を学生と相談するというか、学生にさとしました。学生側の言うことは、その次官通牒が再び破られないようにということを、警察にこの際、強く要求することを主張して譲りません。それから厚生部長は、それはそうだが、手帳を返すべしということをさとしておりまして、三時半に一度解散いたしました。その間に私服の方が三名厚生部を訪れて、給仕に対して、学生はだれが来ておるかということを聞いた事実があるのであります。それから三時半に学生が帰りまして、四時十分に元富士署から私服の警官約三十名、これが厚生部の入り口と大学の正面玄関とに二手にわかれまして、次第に廊下にお入りになつて、幅を縮めて来られます。そして某警部補外二人、三人の警官が厚生部長室にお入りになつて、自分は名刺は持つてないが警察の者だ、千田という経済学部の学生と、福井という経済学部の学生を出してもらいたいということを要求いたしました。厚生部長は、その学生はここにはおらない、学生を管理するのは学部長であるから学部のところに行きなさい、こう申したのであります。そのうちに一人の私服が来て、警部補に耳打ちをいたしました。それであとはあいさつもしないで、全員さつと引上げて外に走り出た。そこで厚生部長は何事かと驚きまして、本富士署に電話をかけて、今警官が来たが何ですかと聞いたところ、逮捕状を出したのだという返事であります。それで厚生部の者も外に出ました。ところが警官は二手にわかれて、一手は運動場の方に走りまして、一手は経済学部の方に走ります。そして第一食堂のあります建物の東南の隅において福井俊平という経済学部の学生を逮捕したのであります。そのときの状況は、福井と千田を探して刑事があちらに走りこちらに走り、数個所にわかれて探しておりましたときに、うしろから数名の学生が一人ちよつと遅れていた私服の方にあんたは私服でしようということを言つて、それが振りかえつてみたところがそこに福井俊平が立つていた。こいつだというのでその場でつかまえた。福井俊平は自分が捕えられる何らの予感も予想もないのであります。私は福井という学生を見たことはありませんが、背の高い目立つ学生だそうであります。こいつだというのでつかまつて、何のことだかわからないうちにに引倒された。午後四時十分から、その捜査が始まりましたから福井の逮捕されたのは何分か後でありましよう。時刻が時刻でありますから、そして場所が場所でありますから、本東京大学の教授、助教授、学生、職員、非常にたくさんのものが見ておりました。目撃者はたくさんおるのであります。手錠、足錠という話がありましたが、足かせのことは私は信じておりませんでしたが、先ほど本富士署長の言明によつて足かせをはめたということであります。顔から血が流れております。それで数名の私服がかかえておりましたときに、何名かの武装警官が入つて来られまして、足の方をだれか持つて正門の方に運んで行かれました。運ぶ途中でこん棒をもつて捕らえておる福井の足をたたいたという目撃者の話であります。これを見ておりました教官学生は非常に憤激したのであります。それで正門前まで運びまして、そのときに武装警官約一箇小隊がトラツク二台でもつて正門附近に到着しておりましたが、これに引渡したのであります。そのときに、尾高教授は先ほど申しました東京大学全体の中央の学生委員長であります。尾高学生委員長がその場におりまして、警察署長と正門の外において談判をいたしました。こういうことをしてもらつては困る。大学の自治、大学の性質の建前から困るということを抗議いたしました。署長は職権をもつて逮捕する、こう言われたそうでありますが、やがて署長はお帰りになつて、あとの残つた次席の方と交渉をいたしましたが、警察はお引上げになり、尾高君も門の中に入つてきたのであります。これが逮捕の状況であります。いろいろの者に聞いて調べ、また教授も厚生部長も学生課長もみな現場にあつて目撃しておりました。その翌日私の代理として尾高学生委員長、脇村経済学部長、これは捕えられた学生の所属の学部長であります。それから斯波厚生部長三名を本富士署に派遣いたしまして、この点につい抗議をいたしました。さらに文部大臣に報告し、警視総監にも報告をさせたのであります。こういうことが今度の事件でありまして、そのことから一般的に大学の自治と警察権との関係云々というところまで皆さんの御検討が広がつたわけでありますが、事件そのものは、そういう状況のもとに行われた事件でありまして、これは大学の建前から申しますと、実に遺憾な事柄であります。 以上の見解と事実の報告を申し上げました。
○佐瀬委員長 大学として事件に対する処理方針はいかように相なつておりますか、この機会にあわせて御説明願つておいた方が便宜かと思います。
○矢内原参考人 第一は警察当局に対して抗議をするということであります。この次官通牒その他認められて来たところの大学自治の原則を破られたということ、これは先ほど申し落しましたけれども、ようやく学内の秩序が鎮静して来て軌道に乗りかけて来た、そのときにこういう事件が起きたということ、これは私率直に申しまして、本富士署長の前任者でありましたときには、大学との間によく話合いがついたのであります。ところが最近そのことが十分に円滑に行われなくて、私服のお入りになる回数が多くなつて学生もうるさかつておつた、顔もよく覚えたということでありますから、今後こういうことのないように次官通牒の線は守つていただきたい。さらに大学の自治の擁護という建前から、学内集会もしくは学校の掲示板のところとか、そういうところに出入りなさることはやめてもらいたい。それから学生逮捕のようなことも、緊急状態における緊急逮捕であれば別だけれども、そのような事件における逮捕は学校を通じてよく了解を得た上にしていただきたい。刺激を擴大しないように大学の研究と教育の自由と静粛を守るように警察も御努力願いたい、こう存じます。 それから警察手帳を取上げたことは、いかにそのときの状況が学生を刺激したのであり、またそれがそのときのことだけでなくて、近ごろの警察官の学校構内における立入りが目立つた、そういうことの刺激のもとであるとはいいながら、つるし上げ的状態において警察手帳をとつたことは私はよくないと思います。それで警察手帳を返すべきことは当然でありまして、大学当局も十分努力し、学生諸君も協力しまして、幸いに手帳は返りまして警視総監にお渡しいたしました。事件処理の第一の問題と第二の問題はそれであります。 第三の問題は、今後このような不祥事の起らないようにするには、大学自身も十分管理の責任を持つておるのでありますから、なお一層努力、注意いたしまして、かかることのないようにしたいと思う。われわれの今までとつて来た行動はそういうことであります。
○佐瀬委員長 以上をもつて一応参考人の供述は終りました。これより順次質疑を許します。時間がありませんので、なるべく簡潔に五分間以内でそれぞれ要領よく質疑を願いたいと思います。花村四郎君。
○花村委員 本件の発生遠因を尋ねてみまするのに、学校当局の方面においても相当な手抜かりがありと認められまするので、従つて大学の権威のため、この真相を明らかにする意味において簡單に質問を申し上げまするので、簡單にお答えを願いたいと存じます。 まず第一に、学内における学生の団体が学内集会をする場合、たとえばポポロ劇団のごとき、その団体に対する学校の営造物使用に関しまする許可方針はどういう手続でなされておりますか。
○矢内原参考人 集会の代表者がありまして、これが教室を管理する学部長に対して教室使用の許可願を出すのであります。その場合には紹介教授が必要であります。紹介教授はその主催者である学生に対してどういうことをやるのかということを確かめます。そうしてよろしいということで、この場合は法学部長でありますが、学部長に許可願を出すのであります。それには誓約書というのですか何ですか、この集会は人事院規則第十四條第七号によるところの政治目的を有する集会ではないということを約束いたします。そうしてそこには念のために第十四條第七号とはこれこれのことだということを列挙してあります。学生の主催者はそれを見まして、守りますということを約束いたします。
○花村委員 先ほど本富士署長の報告によると、相当集会も行われたようでありまするが、ただいま申されましたような使用許可條件にのつとつてその集会が行われておつたかということは常にお調べになつておりましたかどうですか。
○矢内原参考人 常に調べておりました。
○花村委員 それでこのポポロ劇団についてもお調べになりましたか。
○矢内原参考人 調べました。
○花村委員 それで先ほど本冨士警察署長の報告によると、許可を得ずして独断でなされた集会もあるやに承つたのですが、そういう場合にはいかなる御処置をなさいましたか。
○矢内原参考人 本富士署長の集会三十件というのはどういう御調査であるか私はわからない。三十件どころの騒ぎじやございません。非常にたくさんの集会が行われております。あれは何を意味されておるのか、私は解さない。但し不法集会というものは行われないように極力警戒しておりますが、万一行われておることが発見されれば、ただちに係員か参りまして解散を命じます。
○花村委員 そうしますると、その許可を経ずして行つた集会はないとおつしやるのですか、そうでもないようですが、もしありとするならば何回くらいあるか、あるいは許可を得て行つた集会が署長の報告よりも多いと言われるのですか、さだめて学校内を管理せられておる総長のことでありますから、本富士署長以上にその真相は知らなければならないはずであるが、その回数いかん。それをはつきりお聞きします。
○矢内原参考人 回数は私知りません。御必要ならば御報告を差上げます。
○花村委員 回数を知らずして今のようなお答えをせられますることは、ま ことに私は無責任きわまるものであると考えまするので、あらかじめ御注意を申し上げておきます。 次にこの許可を得て行つたポポロ劇団の出演において、その当初に松川事件並びに沖縄より帰りてという表題のもとに、二人の者がこういう表題に名をかりて共産党の宣伝をやつたということは御報告を受けておりまするか、いかがですか。
○矢内原参考人 先ほど本富士署長はあいまいなことを言われましたが、私の聞いているだけの報告を申します。
○花村委員 簡單に願います。
○矢内原参考人 プログラムには芝居が松川事件に取材した劇でございますので、それで劇の構成要素として学生が松川事件の説明をした。それは單なる劇場の劇と違いまして学内集会でありまするから学生団体の試みでありますから研究的な劇であり、研究的な発表であるのです。それゆえその面からいつてこの劇の素材を説明したということはあります。 それから……。
○花村委員 それでその許可をした條件にかなつている集会をしておるかどうかお調べになつておるという話でしたが、今のあなたのお言葉によるというと事実と相違しておる。これはいわばその調査が粗漏である、こう私は申し上げていいと思うのだが、共産党の宣伝を陰にやつている。そういうことをあなたはどこまでもやはり否認されるわけですか。そういうことはないと断言されるのですか。あるいはわからぬとおつしやるのですか。
○矢内原参考人 共産党の宣伝をしたことはありません。あなたたはどこでお調べになつたか知りませんが……。
○花村委員 今、ただいまあなたもお聞きでしようが、警察の方でも調べておる、もつばらその点においてはほとんど疑いがないように考える。まあそれならばそれでよろしゆうございます。 次に問題の起きた法文経の一号館、その一号館の前は、一般人が自由に交通している場所であつて、しかもその 一号館で行われた映画会、演劇等においては、自由に観覧をさしておるという、今までそういう慣例があると聞き及んでおりますが、それはどうでしようか。
○矢内原参考人 あの場所は校外の場所でありません。自由に通行を許可しておりません。何となればそれは教室であります。教室の所を一般人が自由にぞろぞろ通行されては非常な妨害です。
○花村委員 教室のことを言うておるのじやありません。少し冷静によく私の質問をお聞き願いたいと思います。一号館の建物の前ですよ。前には道路があつて、その道路はもちろんこの学園の周囲の中にはさまれてはおりましよう。おるが、その道路は自由にやはり一般人の交通しておる場所だというんじやないですか。そんなことはあなたが率直に認めたからというてどうこうあるわけじやないから、あるならあるとおつしやつたらどうですか
○矢内原参考人 お話の場所は教室と教室の間であります両側とも教室でありまして、教室がずつと立ち並んでおります。その間の道ですから、一般の本郷通りのような通路ではありません。
○花村委員 私の言うのは、本郷通りのような道路であるとかないとかいうのじやないみです。あなたの頭の置きどころが違うのです。私は学校の中に一般人の通道路があるかないかというようなことを聞く心要もなし、聞いてもおらぬ。そんなことははつきりしておるじやないですか。そうじやなくそこの前は、これは一般の人が通るといつてはあるいは大げさであるかもしれませんが、学生や教職員以外の人もその前を通つているじやないですか。そういう事実があるじやないのですか、それはどうです。
○矢内原参考人 ときには通る人もあるかもしれませんが、非常に少数であります。
○花村委員 少数とか多いとかいうことを聞いておるのじやないのですよ。それでいいです。それでこのポポロ劇団のあつた日にはいつものように――いつものようにとはつきり言いますよ。いつものように、もちろん趣旨は学校の関係者、あるいは学生、その他家族という表看板ではあつたんではあるけれども、実際においてはほかのそれ以外の人も入れておつたという事実があるか、それはどうですか。あなたは御承知ありませんか。
○矢内原参考人 私の受けた報告によりますと、学生及び職員でないものはごく少数あつた。本富士署長の言われたように四割とか三割ということは絶対にありません。
○花村委員 あつたことをお認めになつてはつきりしましたが、そうしまするとこの特殊の関係の人でない、一般の人もやはりその数は少いでしようが、何人かあなたは入つておつたといわれるが、数もおわかりになるでしよう。警察署長の数が多過ぎるというから、はなしてしからばあなたの言われる数は何人であつたかそれをお聞きしたいのですが、とにかくそういう一般人の入つている場合においてはですね、都條例の上から言うて、この公安に関する取締りの対象になるものであるということをあなたは御承知ですか、御承知ありませんか。
○矢内原参考人 東大の職員の認めたとろによると十数人であつたと申します。 それから公安條例云々のお尋ねは、それこそ、その問題にこそ次官通牒というものがあるのであります。
○花村委員 そんなこと、次官通牒を聞いておるのではないですよ。そういう場合に取締りの対象になることをあなたは御承知か御承知でないかということ。次官通牒のことは後にお聞きさします。公安條例に当てはまつて取締りの対象になるのじやないか、こういうことを聞くのです。知らなければ知らないでいいです。
○矢内原参考人 今申したように、一つには当夜の催しは学生及び職員に限る、了解事項として……。(「もう五分の時間が十五分過ぎたじやないか」と呼ぶ者あり)
○花村委員 じやこつちの聞いたことだけ言つてください。よけいなことを言うから遅れるのだ、私の言うことに対して答えてください。
○佐瀬委員長 今の質問の趣旨は、今の場合次官通牒によつてのみまかなうべき場合であるか、あるいは公安條例の適用を受くべき対象になるのであるかどうか、その点をただしたいという趣旨のようであります。
○矢内原参考人 次官通牒並びに先ほど申し上げました大学と警察間の長い間の了解事項、すなわち慣行となつておる大学自治の原則に従つておるのであると思うのであります。
○佐瀬委員長 花村君時間がありませんから、なるべ簡潔にまとめて願います。
○花村委員 なるべく簡單にやつているじやないか。今次官通牒といわれたのですが、かりに公安條例の問題から離れて考えましよう。離れて考えた場合に、あなたの言われるところによれば、十数人の一般の人が入つておつたということだ、そうすると一般の人が入場券を買つて入る場合にはよろしいという結論になることは明瞭であろうと思う。しからばその警察官が一般の人としての資格において入場料を拂つて十数名の中に入つて、その劇団の中へ入つて行つたという場合、この事実の上に立つて考える場合には何らの不穏もありませんね。これは正当であるとあなたはお認めになるでしよう。いかがですか。
○矢内原参考人 繰返して申すように、当日は学生、職員のための会合でありまして、切符は学生、職員に売つたわけです。(「だれにでも売つた」と呼ぶ者あり)それで学生、職員の家族とかには売つかもしれません。だれにでも売つたと申されますけれども、その場所は二十五番教室の入口でございまして、一般市民の通行するところではありません。そこで三十円出して買う人は、大部分と私は信じますが、教職員と学生であります。警察官が三十円出して切符を買つてお入りになつた、しかも四人お入りになつたということは……。
○花村委員 わかつたよ、それは。
○矢内原参考人 ちよつとお待ちください。一般の劇愛好者としてお入りになつたのか、警察官としての職務を執行するためにお入りになつたのか、われわれは警察官としての職務を執行するためにお入りになつたと信じておるのです。その証拠はたくさんございます。
○花村委員 事実を率直にお考えにならずに、何か学生を弁護するがごとき意図のあるやにわれわれには考えられて遺憾に思うのですが、もちろん札を売るときには学校の職員、学生、その家族にあらざる者として札は売つたわけでしよう。一般人の仲間に入れて売つたから(「そういうのをスパイというんだ」と呼ぶ者あり)従つてその資格において入つて行つたというのでしよう、そういう場合においてどうですか、不当のないことは明瞭ですが、あなたの御意見を少しはつきり聞きたい。
○矢内原参考人 それが警官であるということを、切符を売つた学生か何か知りませんけれども、知つたらばもちろん売らないでしよう。たくさんの、五千何百人も職員がおりまして、一万何千人も学生がおります。一々顔を覚えておるのじやないから職員と思つて売つた……。
○花村委員 一般の人を入れるのに警察官だけ入れないだろうというような、その考えを持つこと自体がまことにわれわれには遺憾である。(笑声)国家で月給を拂つておるわれわれ国民の奉仕者じやありませんか。一般の人には売るけれども、その奉仕者にだけは売らぬだろうというような考えを持つこと自体が間違いだ。ほかの人に売らぬでも、警察の人の労をねぎらう意味において売つてやろうという気持こそ持つてほしい。(笑声)そういうことをあなた方はお考えにならぬかということを私は申し上げたい。そういうことであるならば、それはそれでいい。(笑声)」 それでは次に進んでお伺いしますが、今の問題はあなたは認識不足であるから、(笑声)もう少し真相を調べて、そうして公平なる判断をしてもらいたいことを、私は学園の権威のために強く要望しておく。 その次にお尋ねしたいことは、学問の自由、これはもう当然なことであります。憲法で保障されておる、ところが学園内において共産党の連中が非常に活躍しておる。東大再建細胞、東大細胞、東大教養学部細胞、こういつたものが盛んにフラクシヨン活動をしておるということは、これは何人も認めてもつて疑わざるところである。証拠もある。これについてあなたは御承知ですかどうですか。御承知ならばその全貌をこの場合にはつきりしてもらいたい。
○矢内原参考人 細胞名によつてビラが出たことは知つております。東大細胞は解散を命じて禁止してその後…。
○佐瀬委員長 花村君、要点だけを願います。
○花村委員 解散されたことを聞いておるのじやありません。そんなことはさつき何度も聞いてわかつておる。現在そういう活動をしておるが、知つておるか。まああなたは知つておつて知らぬようなふりをするかしらぬが、ここに証拠がある。現に矢内原総長支持に関するビラを、おくめんもなく東大再建細胞という名において、これを学園にばらまいておる。それからなおはなはだしいのは、先ほどもちよつと委員から質問もあつたのでありますが、実に驚くべき――平和なる手段によつてはいかない、もうここまで来たならば暴力をもつてやれ、やるべきであるというようなビラもまいておる。これをあなたはごらんになつたでしよう。今なつたと言われたのは要するにこのビラでしよう。まだこのほかにもまかれておる。こういうまことに危険きわまるビラをあなたはごらんになつて何をお考えになり、いかなる処置をなされたか。それをはつきり御答弁願いたい。
○矢内原参考人 今申した通りに、東大細胞は存在しておるとすれば、非合法的な存在です。ビラは私も認めております。けれどもその組織とかが学内にあるかどうかということは私は確認しておりません。そのような非合法的な活動は大学として禁止しておりまして、取締ります。その内容につきましては、あるいは法令に反するものはもちろんいけません。そうでなくても学内秩序に反するものはいけません。あるいは内容は穏当でありましても、その散布そのものが東大の規律としては非合法なものでありますから、これは許しません。
○花村委員 あなたは人の相撲をはたから見るようなことを言われておる。これは学園内で現にまかれて学園内から拾つて来たビラの一部です。それですからこのビラの中にはあなたも御承知のように、またさつき署長が説明されたように、これは法律違反のビラもある。政令違反のビラもある。犯罪を犯しておる面もある。こういう面に対してあなたが今まで文部次官の通牒をたてにとつて、何でもかんでも文部次官の通牒によるとこう言われる。それはかりに百歩を讓つてよいとしても、それならばあなたはなぜこういうものを学校で取締らないのか。これは学生に責任があるよりも、むしろ学校でこういうことをやらしておるとまで言つてよいと思う。私はここであなたをどうこうしようという意味ではない。愛する学園のために黙視するに忍びない。これをあなたは何と考える。じようだんじやありませんよ。
○矢内原参考人 簡單にお答えいたしますが、繰返して申すように、非合法的な活動……。(「非合法じやないか」と呼ぶ者あり)だから言つておるのです。非合法的な活動は大学としては許可をしない。だからビラは発見すればただちに取締ります。 〔「ほかの問題じやない」と呼び、その他発言する者多し〕
○佐瀬委員長 静粛に願います。
○花村委員 よく私の言うところを冷静に聞いてください。犯罪になるあれもありまするし、共産党の宣伝をしておることもある。現にこのうちでぼくが先ほど…。(「だれが出したんだ」と呼び、その他発言する者多し)花村四郎が持つておるんだ。
○佐瀬委員長 花村君、こちらに向いて質疑を願います。
○花村委員 それですから、これは犯罪になる行為である。こういう行為を、大学で、次官通牒で警察のやつかいにならずに自治的に解決して行くと いうあんたのお話だつたでしよう。次官通牒はそういう趣旨でしよう。それにのつとつてあんたはやつておりますか。さつきから次官通牒、次官通牒と言つて次官通牒を振りまわしたつて、次官通牒の通りにちりともやつていないじやありませんか。
○矢内原参考人 先ほど私、非合法についてこちらの方から御発言がございましたのが耳に入りましたが、あれは若干訂正いたします。国の法律として合法的な活動でも東京大学の規律として認めないものがございます。これを、私は非合法と言つておる。それでそれを取締るかという――もちろん取締ります。大学の全管理能力をあげて取締りますが、力及ばない点がありますれば警察に協力を求める、これは当然のことであります。
○花村委員 時間がありませんから、それじや最後にもう一問お尋ねしておきます。学園の自由と言われるのですが、学園の自由すなわち学問の自由を意味すると思うのですが、学問の自由は、わが国の新憲法二十三條において、「学問の自由は、これを保障する。」というので、これははつきり認めておる。それでこの学問の自由というのは、これは私が申し上ぐるまももなく、あんたも御承知であろうと思いますが、学問の研究並びにその研究の結果を発表するという自由なんです。先ほどあんたが言われたように、真実を探求することは、これは自由であらなきやならぬ。たとい時の政府の政策に反したようなことでも、これが真に真理の探求である以上、これはもう自由かつてにやられてよろしい。これについては異存はありませんが、多分この学問の自由というものは、こういう意味にあんたも承認されると思います。そこでお尋ねしたいのは、よく学園の自治ということを言われる。現にあんたもこの自治について説明されたが、この学問の自由と、そうして学園の自治とどこがどう違いますか、その御説明をお願いいたします。
○矢内原参考人 その問題については、私冒頭に陳述いたしました。学問をする場所が学園、すなわち大学であります。
○花村委員 そうすると学問の自由も学園の自由も大体同じものである、こういう意味にお聞きしていいですか。
○矢内原参考人 学問を研究し教育する場所として大学というものがあります。だから大学の自由というのは、そういう意味に御解釈くださつていいと思います。
○佐瀬委員長 花村君に御相談しますが、時間がありませんから、一問だけならけつこうですが、それでなければあとでまた時間の余裕があればお願いすることにいたします。
○花村委員 その一問だが、今継続しておるので最後までやらぬと、中途でぶつた切られてしまうと……。
○佐瀬委員長 他の委員の質問時間がなくなるので……。
○花村委員 時間があつてもなくても……。
○佐瀬委員長 大体関連事項は他の委員からも質問すると思いますので――それじや一問だけに限つてお許しいたします。
○花村委員 それで憲法第二十一條には、集会、結社、言論、出版等に関する自由が保障せられておるのでありまするが、この憲法の規定から申しまして、やはり学校当局がみだりにこれを制限することは憲法違反であると私も考えておる。さつき憲法違反の議論が今日まで何度も出たというお話であるが、その議論は私は正しいと思う。少くともこの自由を束縛する限りにおいては、法律において認められ、しかもその法律を執行する責任のある者によつてそれが制約されなきやならない。これは当然のことであります。従いましてこの種問題に対する治安維持対策として学校当局が乗り出すことは、これは憲法違反になるから私はいかぬと、こういう議論である。が、しかしこういう治安維持という問題を起す前に、学校がこの問題の起きないように予防防遏をするという面に働きかけて行くということは、これはまことにけつこうなことであります。この面をあなた方が担当しなければいけない。この面をあなた方が担当するところに正しい大学の自治というものが考えられる。その権限を越えて、法律できめ、しかもその執行は刑法なりまた警察法等によつてそれぞれの役人がやらなければならぬ責任を持つておる領域まで入つて行くということであるならば、これはまさに憲法違反の議論が立つ。そこでこの問題に対してもそうであります。あるいは京都の問題に対してもそうである。学校は次官通牒を盛んに叫ぶけれども、あの次官通牒そのものがおかしい。あれは法律を知つてか知らないでか知りませんけれども、まああの文字も漠然といたしておりまするがゆえに、はたしてあの次官通牒が、学校当局においてそういう進んだ面までの権限領域に入つて行動をなし得るものなりやいなやは、きわめてあの文字の上では不明である。なし得るがごとく見え、またよく見ればなし得ざるがごとくも見える。そこでここではつきりしておかなければならないのは、この一線を画してそして治安の面に関する犯罪となるべき問題に対しては、これは警察に讓らなければならぬこれについては警察の方は一歩も学校に対して讓る必要なしと断言する。そして学校の方においてはこれを予防防遏する面において学園の自由を尊重してきめて行く、そういうことのないようにして行くという面においてこそ働くことが、これが学園の自由であり学校当局のなすべきことであろう、こう思います。
○佐瀬委員長 花村君、御意見より結論をお急ぎを願います。
○花村委員 いや、ちよつと待つてください、もうこれだけですから……。そういうわけですから、ひとつこの限界点をはつきりせられるならば、次官通牒がはたして是なりや否なりやは明らかになると思いますし、また学校が今日までとつた態度というものがいいか悪いかもはつきりすると思う。こういう点に対して、学園の自由は治外法権的なものでないことは、あなたは認められておるがただいま私の言つたような議論は承認なさいますか。これを最後にお尋ねいたします。
○矢内原参考人 私は今まで自分の述べたことを繰返すほかはないのであります。治安維持の最終的責任は国家の権力がお持ちになることは当然であります。しかしながら、学問ということ、日本における学問の発達、また学生の教育ということの重要であることを考えればこそ、学問の自由これもまた憲法で保障しておるところでありますが、その日本における学問の発達と大学の発達の重要であることを考えればこそ、この最終的な国家権力の発動について政治的な考慮が望ましい。これが大学自治の問題です。
○花村委員 私の質問に当てはまらない。私の言うことを聞いてください。最終の責任は大体警察にまかせるというお話であるのですが、その前に治安に関する問題があつて、その前者の方は学校で担当する、こういう意味に解釈できるのですが…。
○矢内原参考人 最終的ということを、事実的でなくて論理的に考えていただきたい。論理的に考えていただけばおわかりいただけると思います。
○佐瀬委員長 上林山榮吉君。
○上林山委員 矢内原総長に対しまして、二、三要点だけをお尋ねいたしたいと思います。 まず第一にお尋ねいたしたいことは、最近東大学部内におきまして、公認した集会が約三十件、無届でやつたものが十一件、不許可をされたにもかかわらずやつたものが三件、さらに政令違反となる集会が二件あつたということでありまするが、これを御承知であるかどうか。その点をまず伺いたいのであります。
○矢内原参考人 私は本冨士署長の言われた数字については責任が持てません。そういうことは知りません。
○上林山委員 数字については責任が持てないということは一応了といたしまするが、こういう事実があつたことはお認めになりますか。
○矢内原参考人 事実についても責任が持てませんが、しかし一般的に考えまして、学校の認めない集会がありかけたことはあるのです。それは知りまして、ただちに係員が出向きまして、中止を命じたことはございます。
○上林山委員 さらにお尋ねいたしますが、東大自治会中央委員会、あるいは全学連、都学連という団体は公認の団体として東大学部内で扱つておられるかどうか。この点をお伺いいたします。
○矢内原参考人 全学連、都学連は学内団体でありませんから公認しておりません。中央自治会については少し事情がございまして、今中央自治会の規約の暫定案というのができておるのですが、その暫定案を大学当局としてはいまだ完全に承認しておらないで、交渉中であるのです。しかしながらその暫定案が確定すれば公認団体になるわけです。
○上林山委員 東大の自治会中央委員会は、ただいま暫定の団体として認め、さらに交渉の結果正式にこれを正式の団体として認めようとしておる。言いかえると、正式の団体ではないということを御承認になるわけですね。
○矢内原参考人 現在その過渡的段階にありまして、非公認団体であるかといえば、事実上には中央委員会としての機能を務めている点もあります。といつて暫定案が確定するまでは、完全無欠な公認団体であるとはいえない。その中間的な過渡的な段階にあります。
○上林山委員 まことにあいまいな御答弁であつて、われわれは判断に苦しむのでありますが、しからば公認でないこの団体のやつておる行動を秩序ある行動として認め、大学がこれを学内のあらゆる問題について常に折衝の対象としておるというふうに了解してさしつかえございませんか。
○矢内原参考人 それは実際世間にもいろいろあることと思いますが、ある場合には事実上の交渉相手とすることがあります。国際法においても、事実上の政府とか法律上の政府とかあるようでありますが、あいまいといいますことは、事実関係がまだ未確定の点があることなのであります。
○上林山委員 この問題は、私は学内の秩序維持という点から、まことに遺憾にたえませんが、時間の関係でこれ以上追究を申し上げません。次にお尋ねいたしたいことは、ポポロ劇団が松川事件を扱つたということでありますが、松川事件が共産党関係の事件であるということは総長も御承知の通りであります。しかもこういう性格の劇団を許したばかりでなく、沖繩より帰りてといふことで労働者風の男がここで演説をしておる。はたしてこれがあた方の言われるところの公認団体の單なる劇研究、学問の研究ということになるのかどうか。ことに單なる劇の説明ではなしに、松川事件を調査した報告をこの会場においてやつておる。こういうことは、最初は自分は知らなかつたがという先ほどの御答弁がありましたが、この問題についてその後あなたは、この集会は政治色のある集会と認めになつたのかどうか。この点について明確な答弁を求めたいと思います。
○矢内原参考人 政治的な色彩のあつた集会とわれわれは認めておりません。
○上林山委員 申し上げますが、松川事件の調査の報告、これが劇研究とどういう関係があるか、これが第一点。第二点は、繩より帰りてという報告が劇とどういう関係があるか。こういう具体的な事実をもつてしてもあなたはこの事実をば公平に認定できないのかどうか。この点をはつきり伺いたいのであります。
○矢内原参考人 松川事件は社会的事件でありまして、日本の人々はそれがどういう事件であるか、社会的に何を意味するかということについてある人人は興味を持つております。それゆえにあるいは法律的立場から、あるいは文学的立場からこの事件を取扱うということは当然許されることなんであります。 〔発言する者あり〕
○佐瀬委員長 静粛に願います。以下要点的に願います。
○上林山委員 沖縄より帰りてという問題については、何ら言及されなかつたのでありますが、これをどういうふうにお考えになつているか。これでも何ら政治的の色彩はないと、こういうふうにお考えになつているのか、この点をお伺いいたします。
○矢内原参考人 沖縄問題がしばしば出ましたから、私の受けている報告を申します。沖縄より帰りてと題して、舞台の上に上つて演説したとかあいさつをしたとかいう事実はありません。ただ劇の始まる前に、すべてのプログラムの始まる前に、観衆席から一人立つて、沖繩における学生の状況、沖縄から日本留学への困難、こういうことについて若干発言した者があつて、みんなが制止し、黙れとか静かにとか言つて沈黙させた、こういう事実はございました。
○上林山委員 その人は一般の人でありますか。それとも学校職員、学生あるいはその家族でありますか。
○矢内原参考人 職員か学生かその家族かのいずれかです。
○佐瀬委員長 時間がありませんから簡單に願います。
○上林山委員 この問題は大事な問題で、もう少し私は聞きたいのでありますが、さらに論を進めたいと思います。先ほどからあなたがその席においでにならないときに、ほかの委員からも発言されたのでありますが、認識を新たにする上においてさらに申し上げたいと思います。これは昭和二十六年十二月十三日、東大法学部の教室で発見したビラと言われておりますが、その内容を見ますと、労働者はどすをとぎ始めた、日本の解放と民主的変革を平和な手段によつて達成しようと考えるのは間違いである。以下具体的に革命前夜を思わしめるがごとき、しかも暴力革命を思わしめるごとき文章が書かれて、これが学内にまかれている。この事実を知つておられるのかどうか。これに類した問題はたくさんあるのでありまするが、毎日ほどまかれていりるのでありまするが、この事実ないし毎日の東大の動きを総長としてしつかりと認識しておられるかどうか、この点を伺います。
○矢内原参考人 どすのビラは私見ません。ただ東大細胞名によるビラがときどき流布されているということは知つております。
○上林山委員 そこでこういう重大なビラがまかれていることを知らないということは、私は総長としての責任を十分に果しているとは思わないのでありますが、さらに先ほどもある委員からお尋ねがありました通り、またそれに総長がお答えになつたことは、こういう不穏なビラがまかれていることは自分も知つている、ここまでの御答弁でありましたが、これに対する学内での具体的な処置あるいは調査あるいは具体的な対策、これをどういうふうにやつているか。第二点は大学の自治、持に純学問の自由ということに対しては、尊重する立場をわれわれはとつているのでありますが、そういうような立場から考えてみても、こういうような革命前夜を思わせるようなことが大学自治の名に隠れて行われている場合、しかもあなたの今までの発言を聞いていると、自分では責任の負えないところもあるとみずから告白されているのでありますが、その見地からして、こういう事件があることを本富士署なりあるいは警視総監なりに謙虚な気持であなたは御連絡になつたかどうか、この点を伺いたいのであります。
○矢内原参考人 先ほど申しましたように、東京大学においては学生を直接管理するのは学部長、本部としては厚生部長です。それでそのビラの件については、一々総長に報告しないこともあり、厚生部長において処置していることがあります。大学の方針として申し上げますが、そのような学校で認めない団体の活動とか、あるいは学校で認めないビラの散布については、これを発見すればただちに押收する。そうしてその散布している学生がその場におれば、それを取調べるということはいたしております。そして重要な事項については、あるいは警察から情報を聞くこともありますし、警察に連絡をとることもあります。けれども、繰返して申しますけれども、そういう事柄は大学が教室を管理しておりますから管理の責任を持つているのですけれども、管理に反して、大学の方式に反してなされる個々の行動がございます。これは発見せられれば今申したようにこれを取調べる、あるいは押収するということをいたし、またそういうことのないようにあらかじめよく注意は與えておりますが、しかしながらそのような個々のことが起ることはあるのです。あつたときの処置はただいま申したような処置をするのです。大学内の教室その他の建物は大学が管理しますけれども、窃盗事件も起りますようにいろいろの問題が起つて来るですだから大学だけの力で取締ることのできないこともありますが、そういう場合にでも大学の研究と教育の場であるという点を考えて、第一次的に大学の管理権、大学の管理の責任と権限と申しますか、これにまかせていただきたい。そうして力の及ばない点は警察権の発動を要求する。それは当然のことであると考えます。
○佐瀬委員長 最後の質問に願いたいと思います。
○上林山委員 どうも不徹底な御答弁であります。先ほど、一昨年までは大学の秩序も世の中と同様に乱れておつた。しかし最近はやや軌道に乗つて来たようであると、まことに自信のない御答弁でありましたが、こういうところに私は警察の立ち入らなければならぬ、大局的な治安の立場から、目的遂行のために立ち入らなければならぬ必要が相当にあるのじやないか、こういうふうに考えるのでありますが、ここで端的に私が総長に伺いたいことは、大局的見地から考えて、治安が優先すべきものか、それとも純学問の自由が優先すべきものであるかどうか、この点はきわめて微妙な問題であると考えますので、あなたに今後学内の秩序を立てて行くだけの能力があるかどうか。大学にそれだけの能力がはたしてあるかどうかという判断のキー・ポイントになると思うので、私はこの点を第一に伺いたい。 第二に伺いたいことは、総長もたびたびお答えになつておりますが、最終的責任者は警察であるかそれとも大学自体なのか。明白なことではありまするが、往々世間に誤まり伝えられておりますので、この点は感情を離れて謙虚な気持で私はお答え願いたい。 第三点は、時間の関係がありますので申し上げますが、今の大学当局をして純学問の自由を守らしめ、大学の自治をとつてもらうとして、はたして十分に能力ありやいなや。私どもはこの点を心配しているのでありますが、これに対して謙虚な気持でお答え願いたいと思います。
○矢内原参考人 大学だけの問題ではありません。日本の国全体を考えまして、犯罪はたくさんあるのであります。そして不法のビラも流れ、これをしどれだけ取締られているか。実際に取締りをしなければならないし、予防もしなければならないけれども、しかしながら犯罪事実が社会に起つているということ、その起つたものを犯人と容疑者も逮捕できない、そういうことをわれわれは見おるのです。ひとり大学において、あるいは個々の盗難事件が起るとか、あるいは個々のビラが流れるとか、そのことをもつてただちに大学の管理能力を云々せられるということは、日本の国に犯罪が行われており、犯人の逮捕もできない。下山事件という事件がございまして、その犯人さえもなお逮捕できないということは、日本の国の、たとえば総理大臣とか政府とかの能力をそれで疑うというようなことにはならぬと私は思う。それで……。
○上林山委員 総長のただいまの御答弁は、世間が不十分であるから大学も不十分でよいのだ、同時に、大学も秩序を十分にやらないことを率直に認める、こういうようなふうに聞き取れる。まず私は、大学が純学問その他の意味で、先ほどあなたの御答弁のように、社会のリーダーとなる者を養成する府であるという権威と誇りがあるならば、何がゆえに、社会がどうあろうと、率先してその範をたらすだけの努力をされないのであるか。ただいまのあなたの御答弁を聞いていると、詭弁にすぎない、私はこういうような感想を持つてこの質問を終りたいと思います。
○佐瀬委員長 有田二郎君。
○有田(二)委員 総長にお尋ねしたいのでありますが、ただいま野口本富士署長が、自分のやつた行為は妥当である、かような答弁をしておられますが、それが妥当であるか、妥当でないかは、本委員会において最後に批判が出るので、その問題は別といたしまして、私は先刻島田早大総長が、大学当局とが話合つていろいろなことをすべきである、学生が單独で交渉したり、直接警察官をなぐつたり、けつたり、手をねじ上げたり、手帳を取つたり、始末書を書かせたりするようなリンチ的な行動は妥当ではない。特に東京大学学生新聞の中で、警官のつるし上げをやつたことは、いささか行き過ぎているように思われる、というようにあなたもおつしやつておられますけれども、私は、やはり先刻島田早大総長が言われたように、学生が直接警察と交渉すべきものでなくして、警察当局にもしもそういう不当な点があれば、やはり学校当局を通じて、学校当局が警察当局と話合いして措置すべきものである、かように考えるのでありますが、総長の御見解をお伺いしたい。
○矢内原参考人 その点は私同感でありまして、今度の事件についても、大学としてはその方針で処置いたしました。
○有田(二)委員 私もあなたの学校を卒業した一人でありますけれども、今度のこの学生諸君のおやりになつた行為というものは、総長みずからがお認めになつた通りに、また遺憾であるということを表明せられました通りに、私は非常に遺憾だ、特に私は、学校当局が力があるとかないという議論がありましたけれども、私は、こういうことはあくまでも学校当局と警察当局とが直接に話し合うべきものであつて、学生が乗り出してやるという筋合いのものではないと考えるので、将来こういう問題が起つた場合には、学校当局において責任を持つて、そういう学生に直接当らせない、学校当局が直接責任を持つておやりになる、かような御見解を持つておられるかどうか承りたいと思います。
○矢内原参考人 大学当局が警察と交渉をすることが本筋でありますが、ただ学生が自分の友達が逮捕された、そして警察に検束されておる、これを救援するというか、そういうことの陳情に行くということは認めることはいいと私は思つておる。しかし公の交渉は大学当局がなすべきであると思つております。
○有田(二)委員 さらにお尋ねしたいことは、あなたは東京大学学生新聞の中で「教養学部の学生が澁谷駅で警察と問題を生じた、これは学生が再軍備反対の署名運動を願出したのが認められなかつた結果発生した紛争である、」かように説明しておられます。これは妥当だと思うのでありますが、これに対する学生の処分はいかようになされたか承りたいと思うのであります。
○矢内原参考人 ちよつと承りますが、どの学生でございますか。
○有田(二)委員 教養学部の学生が澁谷の駅で警察と問題を起した。これは学生が再軍備反対の署名運動を願い出したのを認められなかつた結果発生した紛争である、かようにおつしやつておられますが、学校ではこういう者に対する処分はお考えになつておられないのかどうか。
○矢内原参考人 澁谷駅頭の事件については、私も事件そのものについては若干の報告を受けておりますけれども、それについての御質問じやないようでございますので……。その学生というのは署名運動をした学生のことでございましようか、どういう学生ですか。
○有田(二)委員 この東大新聞の「矢内原総長は二十一日、二十五番教室において、学生側の要望に応えて左の通り学校側の態度を表明した。」という中に、あなたがそういうことをおつしやつておられるのです。教養学部の学生が澁谷駅で警察と問題を生じた、これは学生が再軍備反対の署名運動を願い出したのが認められなかつたから発生した紛争である、こうあなたが説明しておられるわけです。こういうような問題が学校外に行われても、法律に違反した行為を犯しても、学校ではそれに対して独自の処分をなされないのかどうか、この点を承りたい。
○矢内原参考人 それは学生を呼び出して調査いたしまして、処罰に値するほどの非常な逸脱があれば処罰するし、それほどの程度でなければ訓戒を與えるということにいたしました。
○有田(二)委員 さらにビラの問題でありますが、総長もビラの点については遺憾な点をお認めになつておられる。ところがこのビラをばらまく現場なり、どこから出て来たかということを調べることは、今総長もおつしやつた通りに、学内の力だけでは不十分な点が考えられる。このビラが再々にわたつて、しかも二十五年の五月に東大細胞が全部解散しておるのにかかわらず、その以後においていろいろとこういうビラがばらまかれている。ばらまかれている都度、これだけたくさんばらまかれているのですから、このビラの問題について警察当局とどの程度交渉を続け、どの程度このビラの出所、またばらまいた学生を御調査になつたか、この点を承りたいと思います。
○矢内原参考人 それは厚生部長なり各学部長から本富士署に話を通じておることと思いますが、私はそういうことは知りません。
○有田(二)委員 最後に私は希望を申し上げたいのであります。総長としても、また大学当局としても、こういう治安の問題については十分警察当局と連絡をとつていろいろおやり願つておれば、今度のような問題も起らなかつ、たのではないかと考えるのであつて、十分総長も率直な気持になられて、そしてこの問題の解決に当られんことを希望いたしまして質疑を打切る次第であります。
○佐瀬委員長 鍛冶良作君。
○鍛冶委員 いろいろお聞きしたいのですが、時間がありませんから一点だけに集中して承りますが、あなたは先ほど、警察当局のやり方は、はなはだ遺憾である、ゆえに大学の建前から警察に対して抗議をする、かようにおつしやいましたが、これはまことに重大なことだと思う。いやしくも国立大学の総長ともあろうものが警察へ抗議をせられましたる以上は、あなた自身も十分責任を持つて、まさしく警察に非あり、この確信を持つておやりになつたことと心得ますが、この点はいかがでしようか。
○矢内原参考人 この今回の問題は、ひとり東京大学だけの問題ではなく、日本の全体の大学の問題であり、さらにそれが世界的な問題であるということを私は最初申しました。もちろん私は自分の責任をもつて先ほど申したのであります。
○鍛冶委員 あなたがそれだけの確信を持つておやりになつたとすれば、警察においてもよほどの大きな考えをお待ちにならなければならぬと思います。総長から抗議を申し込まれて、それでうやむやに済まされる問題でないと思います。この点を明瞭にしてもらいたいと思います。ここでぜひともそれはやらなければならぬと思う。そこで私は、はたしていずれに非あるかを明瞭にするために、あなたのおつしやつた言葉を引用して質問いたしますが、警察側の遺憾の点は、まず先ほど承つたところから言うと、次官通牒を警察が破つた。その次はいろいろありましたが、学生を逮捕するときには学校を通じてやつてもらいたい。さらにようやく回復しかかつた学内の秩序をこれによつて破壊された。これらの点が重要な点であつたと思いますが、これは間違いございませんか。
○矢内原参考人 根本的な問題は、るる繰返しましたように学問研究と教育の自由、これを脅かされては学問も研究もできません。これは大学を預かるものとして最も重要に考えておる問題であります。その研究並びに教育の自由に対して、これを束縛するような、あるいは干渉するような、たとえば身元調査とか思想調査とか、あるいは教室その他への自由なる警察官の出入り、そういう状況のもとにおいては、学問の自由は危険に瀕すると私は信じておるのであります。それでありますから、個々の行為のあれこれということもありますけれども、その背後にある一般的な問題、これに基いて私は警察の御反省を促したい。警察と事を構えることは私どもの希望するところではありません。同じ日本の国内の治安の面と教育の面でございますから、話をし合つて、しかるべきところで運営をして行く、これは従来行われていたことです。それがくずされるということに対して、私どもは遺憾の意を表するというわけであります。
○鍛冶委員 これはまことに奇異なことを承るものだと思う。あなたに私が先ほど聞きましたら、このたびのポポロ劇団のこの事件に対して警察に抗議すると言われた。私はそのことを聞いておる。そこであなたが先ほど言われた中で、理由は幾つもあつたが、最も主要なのは今言つた点だと思つたが、今あなたは違つたことを言つた。このポポロ劇団に起つた事件に対して、理由はどこどこまでも警察に抗議すると先ほど言われた。そうしてその理由は、次官通牒を破つたこと、それからもう一つ、前任者のときは円満であつたが、今の署長になつてからはなはだ円満に行かぬ、それよりもかような逮捕をするときには学校を通じてやるべきものだ、それを学校を通じないでやつたということはけしからぬ、――けしからぬとは私が言うんだが、そういうことでしよう。その次は、最も重大なのは、回復しかかつたる秩序を乱された、かように言われた。この点は間違いない。間違いないどころじやない、先ほど聞いて速記録に載つているのだが、あとの質問をするために私は確認をしておくのだから、ほかのことを言わないで、このことに対する答弁をしてください。
○矢内原参考人 それらの問題についての私の見解と立場を、大きな背景を視野において御理解願いたいと思うから申したのです。先ほど今の議員の方が御質問になつた点は、これは言葉通りかは速記録をごらんいただくとしまして――私の申した言葉通りでもないように思いますけれども、しかしながら大学自由の原則の一般的な立場から今度の具体的な事件を考えてみますと、それは次官通牒による了解事項というものに反しておるということを言つているのです。それから大学内における逮捕は、大学の手を通じてと言いますけれども、大学自身は逮捕権はありません。けれども、大学内において現行犯でもなく、緊急状態――緊急事態と警察ではお認めになつたかもしれませんけれども、今度の場合の逮捕の状況、それについては大学にあらかじめお話くださつて、そうしてもしも逮捕の必要があるならば逮捕なさる。大学に対して逮捕令状もお示しにならないで、校内において学生を逮捕なさるということは、大学としては学園の秩序と静粛を乱すということであると思う。
○鍛冶委員 大体その事実を確認いたしまして、これから御質問します。次官通牒は、われわれもなるべく守るべきものであるし、あの通りに行くものならあれでやつてもらいたいと希望いたしております。けれども、先ほどあなたが言われたように、学校自体で責任はとるとは言うが、治安に関する最終的責任は警察そのものにある。そこで学校当局において、治安を守ることができない、秩序を維持することができないという場合にも、なおかつ次官通牒に縛られて警察は手を出してはいかぬ、こう言つておられるのか。この点をまず承りたい。
○矢内原参考人 大学自身が全力を盡して学園の秩序を維持し、力及ばないときにはもちろん警察の援助を求めます。また非常に緊急な事件が発生して、大学に対してあらかじめ了解を求める時間的余裕がないとき、たとえば学内において殺人事件が起つたとか、何とか騒擾が起つたとか、そういうときには、警察がみずからおいでくださることは当然と思いますけれども、原則として、そういう緊急状態とか特別の場合を除いて、大学内の秩序は第一次的に大学が責任を持つて管理するが、力の足りない場合は、大学の方から警察にお願いするなり、あるいは警察の方から大学に御連結くださつておいでくださる、これが望ましいものであると思います。
○鍛冶委員 最終の責任は警察にあるということをお認めになつた以上は、あなたの方から要求があつてやるのはよろしいが、要求がなくても、現状においては治安は保たれないと警察がみずから認めた場合には、あなた方の方で要求がないからといつて手を引いておくわけには行かぬと思う。そういう場合でも、これが出たならば、次官通牒を破つたものとしてあなた方は考えておられるのか、この点をひとつ承りましよう。
○矢内原参考人 たとえば殺人の現行犯とかあるいは騒擾、そういう場合は、客観的に見てだれが見ても緊急状態でありますけれども、そうでない一般の場合は、大学内の事柄は第一次的に大学にまかせていただく、そうして警察の出動が必要なときには先ほど申したような手続によつてやつていただくが、そうでなくてこれこれの治安維持の必要があるという警察側の一方的認識定でもつて大学にどしどしお入りになるということは、大学の自治の建前からいつて、大学の自由の建前から申して非常に遺憾な次第であります。それで最終的に、論理的の最終という意味においては、国内の治安は国が持つわけでありますけれども、その論理的最終の権限を具体的などういう場合に発動させるか、どういうぐあいに適用させるかということは政治の問題であります。そうして大学に関する限りは、先ほどからるる申しますように、大学の特殊性、すなわち研究と教育の場であるという特殊性にかんがみて、その権力の具体的な発動については大学と連絡していただく、これが研究、教育のために必要だと申すのであります。もしそうでなくして警察の一方的認定によつて治安維持の必要上警察権が学校にお入りになるということならば、大学の研究も教育もできません。ビラという問題でも、大学当局は全力を盡してビラの散布をとめるとか、調べをするとかいたしますが、かりに警察権が、大学当局の断りなしに入つて来られて教室にお入りになり、このビラまきをお調べになるとすれば、どれだけの効果が上るか、国全体で見ましても、先ほど申した通りにいろいろな実効が上らないことがあります。ビラの犯人を捕えるということ自体についても、必ずしも効果が上らないとわれわれは思うし、さらにマイナスの点は、それによつて学者、研究者、学生の研究の精神をどれだけ害するかわからないのですあなた方は、治安維持の重要なことは御主張なさる。もちろん私も重要であると思います。同感であります。けれども学問と研究の重要であるということ、それをお認めくださつておるとすれば、その警察権の発動の形式とか手続とかいうものについては政治的考慮を必要とする、これが私の見解であります。
○佐瀬委員長 時間がないので要点的に結論を願います。
○鍛冶委員 もちろんわれわれも学問の自由は認めぬことはありません。憲法上において認めてあるものをわれわれが認めないで質問するわけはない。また警察官といえどもこれを蹂躙せんがために入るというようなことがあつては、これは許可すべからざることである。けれどもわれわれの聞かんとするところは、治安を保てないということを警察だけで認定せられることは困ると言う反面において、大学自身がおれは大丈夫だということに安心しておられるかということ、あなた方が安心だと言われても安心できない場合があつた場合に、それでも次官通牒にしばられて何も手出ししてはいかぬとあなた方は答えられるか、この点なんです。それを明確にお答え願います。
○矢内原参考人 何度も同じことを繰返しますが、個々の場合について、大学が秩序の維持について自己の力の足りないことを知る、そういうときには警察と連絡して話をし合つて協力してやる、こう申しておるのであります。
○鍛冶委員 力が足りないにもかかわらず、警察と連絡もせられなかつたら、警察は指をくわえて見ておるわけに行かない、この点が主要点であります。 それでは進んで承りますが、東大の秩序は回復に向つた、回復しておつた、それをこわしたと言われるが、どのような点がりつぱに秩序が確立したと言われるのですか。抽象的でよろしいからまずそれを承りたい。
○矢内原参考人 先ほど申したのでありますが、学内活動については学校のきめた秩序がございます。それに対する違反件数は非常に少くなつております。
○鍛冶委員 先ほどから学内でまかれたビラが非常に問題になりました。の中に書いてある日本共産党東大再建細胞、それから日本共産党東大細胞、その他まだ何かありましたが、これらのものは届出がない。ないにもかかわらずかような細胞があるということになれば、これは団体等規正令違反である、かように考えますが、学長はさように考えられぬかどうか、まずこれを承りたい。
○矢内原参考人 東大細胞というものが、そういう組織が事実あるとすればお話の通りでございます。
○鍛冶委員 さらにこの中にはまことに不穏当きわまる文言がありまして、これは明らかにいわゆる政令三百二十五号違反になると思われるのがありますが、あなたもさようにお認めになつたことはありませんか、いかがです。
○矢内原参考人 私は先ほど申したように、学内に散布されるビラの全部を見るわけではありません。
○鍛冶委員 かような重大なことをあなたは知らぬで総長としての責任が持てると思つておりますか、まずこの点を伺いたい。 もう一つ承りますが、先ほどから問題になつておりますこのビラ、労働者はどすをとぎ始めた、日本の解放と民主的変革を平和な手段によつて達成しようと考えるのは間違いである、そしてどこまでも実力に訴えるというビラが出ております。これも御承知ないのか。また今私はこれだけのことを読み上げますと、かようなことを、宣伝というかおだてておるとでも申しますか、いわゆる指令と心得るが、かようなものがあつても不法なものにあらずと思つておいでになりますか、これを承ります。
○矢内原参考人 前の議員の方にお答えした通りであります。それは不法であります。しかし私は知つておりません。
○鍛冶委員 そこで承りたいのは、あなたは先ほどなるほど学校の定めた秩序に従つておるから秩序を回復したと言われたが、かような政令違反の行為をあえてやり、さらに不法な計画を企てておるという事実がわかつた場合に、これでも東大の秩序は回復されておる、確立されておると世間にどこまでもこれを言つていばるだけの確信はございますか。
○矢内原参考人 そのような不法なビラが散布された、だれが散布したのか私は知りません。あるいは学生であるかあるいは東大細胞の名を用いて外部の者がしたのか、私はそれは知りません。けれどもそれがもしも東大校内においてまかれたとすれば、それは私非常に遺憾に思います。けれども国の秩序たとえば日本の秩序と申しましてもだんだんと秩序が――、終戰直後に比べて犯罪の件数が多くなつたが少くなつたか知りませんが、そういうことから考えまして、そういうようなビラがまかれましても、全体として考えて東大の秩序は回復したと私は信じております。
○鍛冶委員 これはまことに驚き入つたものだ。もう一ぺん読みましようか。労働者はどすをとぎ始めた、日本の解放と民主的変革を平和な手段によつて達成しようと考えるのは間違いだ、これは明らかに暴力革命を主張し、テロ行為を教唆しておるものであることは明瞭だと思うが、かようなことを東大の中でやられておつてもそれでやつぱり相かわらず、秩序を保つておるとかように言われますか。これは暴力革命の主張であります。テロ行為の慫慂であります。かようなことがあつても、どこまでも東大の秩序が立つておる、こんなことがあつても秩序が立つておるのだとあなたは世間に言われますか。もう一へんお答え願います。
○矢内原参考人 秩序の維持の問題でありますが、先ほども申した通り、東大細胞というものは大学内にはありません。認めておりません。それでそのビラをだれがつくつたかということは私どもは責任持てません。学内に散されたということについては、私は遺憾であるから、発見次第取上げるとか取調べをするとかいうことをいたします。もしも大学校内においてどすがみがかれたり、そのような武器が隠匿されておるとか、あるいは騒擾が起るとか、そうすれば大学の秩序は乱れたと私は言わなければなりません。けれどもビラがまかれたというそのことだけをもつて大学の秩序を維持する能力がないというふうに私どもは思いません。
○鍛冶委員 これはまことに驚き入つたることをおつしやるものだ。かようなテロ行為を煽動する者がおつても、それほど危険でないと言われるのですか。われわれにとつてはこれほど危險なことはない。またかようなものがまかれた以上は、治安を守る警察として、その根本を取調べなくてはならない重大なる義務があるとわれわれは心得ます。そこで聞くのは、あなた方はこれに対して、これは危險であるから、われわれの手でこれこれやつておるが、なお手に及ばぬから、警察でひとつ調べてくれということを言われたことがあるのか。それともどれだけのことを調べて、これに対するどういう防遏手段を盡されたか、これを明瞭にしてもらいたい。
○矢内原参考人 伺いますが、これはいつの日付でございますか。
○鍛冶委員 これは警察で調べたのでは二十六年の十二月十三日、法学部教室にて……。
○矢内原参考人 私はそのことについて、大学当局すなわち厚生部長は警察と連絡があると思います。報告してあると思います。しかし私自身は知りません。
○鍛冶委員 こういう重大なことは、部長かやつておるであろうから、わしは知らぬと言つて、あなたは責任をのがれられると思つていらつしやいますか。 それから警察自身としても、学校当局がこれを取締つてくれないということになれば、警察力を発動して、これに対する防遏手段を講ずるのは当然だ、と私は考える。あなた方は一体警察へ行かれたこともないのですか。それのみならず、先ほどの、あなたも聞いておいでになつたと思うが、本富士署長の報告によると、この中には細胞職員班というものがある。大学の職員もこの秘密細胞の中に入つておるという疑いのある以上は、大学そのものに相談してやつたら、この事実を捜査できません、かように言つておる。このような危険なことがあつても、あなた方は相かわらず、次官通牒を振りまわして、かようなことはしてはいかぬということを言い切れますか。この点が一番大事である。このような事実があるにもかかわらず、なお次官通牒があるのに警察が入つたのは不法である。大学の自由を侵害したものであるとあなた方は言われますか。
○矢内原参考人 もし警察において取調べる必要を認めるならば、大学の方へお知らせくださつて協力して調べる。これが私の申す点であります。
○鍛冶委員 細胞の中に職員が入つておる。ゆえにこういうことを調べようとしたら、大学で行つたら、調べられぬ。捜査かできぬというのだ。そういうような事実があるがゆえに、警察は大学へ言わずにやつた、それにもかかわらずなおかつ次官通牒に反しておると言つて、警察のやり方は不法である。大学総長の名において相もかわらず警察へ抗議ができますか。その点を明瞭にしてください。
○矢内原参考人 私は本冨士署長の言を認めません。大学の教職員に対する信頼がないということになります。
○鍛冶委員 最後に聞くが、あなたは総長におなりになるときに、たいへん学内でいろいろの運動があつたようでありまするが、共産党員から推されておつたという事実はございますか。御答弁願います。
○矢内原参考人 そういう事実はございません。
○鍛冶委員 ここにはビラに日本共産党東大細胞として「單独講和と亡国條約に反対する総長を全学の平和への意思を統一して矢内原忠雄氏を」推せ。東大細胞からかような推薦状が出ております。あなたはこれに対して御承知あつたのかないのか。かようなことまでも知らぬでは通らぬと思いまするが、いかがですか。これだけ言えば、あなたの性格もわかると思う。こういうビラまで出してもらつて、たいへん御名誉であろうと思うが、明瞭にお答え願いたい。
○矢内原参考人 そういう御推薦は知りません。もし知つていたとすれば、たいへんだと思います。
○佐瀬委員長 世耕弘一君。
○世耕委員 時間が短縮されておりますから、簡單に数点お尋ねいたします。 かなりこの間の事件が社会問題を引起しておりますが、その間において警察官はけがをし、あるいは学生もけがした。かなり事件としては大きな問題となつて現われて来ておるのでありますが、もちろん、大学の自治、国内の自治ということが重大な問題となるのでありますが、あなたは警視総監とじかにお目にかかつて、この点について何か御協議なさいましたか。
○矢内原参考人 事件後お会いいたしました。お話いたしました。
○世耕委員 どういう御協議をなさいましたか。かなりつつ込んだお話になりましたか。それとも部分的のお話がございましたか。これはなぜこういうことをお尋ねするかと申しますると、往々にしてこういう事件は、一大学の総長は部下にまかせ切りのきらいがある。それで手違いができる。こういうような重大な問題は、むしろ警視総監なり、文部大臣なり、場合によつては総理大臣にじかに会つて、この対策を御協議なさることが、むしろ非常に適当だと思う。この点について私は、あなたは慎重な態度をおとりになられたかどうかということをまず承つておきます。
○矢内原参考人 私は文部大臣にも会見し、警視総監にも会見いたしました。この件については個々の小さな問題は別として、根本的な問題については、つまり大学の自治と治安の関係については懇談をいたしました。その話の内容については申し上げられません。
○世耕委員 結局大学の自治と治安という問題で御相談がなされなくてはならぬと思いますが、別に機密事項でないから、御発表になつたら、いかがですか。もしあなたが御発表にならなければ、警視総監があすこに来ておるようだから、警視総監から私は報告を聞いてもいいと思います。いかがですか。
○矢内原参考人 その会談の内容は個人的な、つまり公の場所でない会談でございますので、私からは申し上げません。
○世耕委員 公の会談がなさるべきはずでありませんか。それを私的に御会見になるということは、会見しないということになるじやありませんか。それは怠慢零はありませんか。こういう大きな事態を引起されながら、私的会見、私はその点からあなたがこの事件の処理に対して不熱心だと言いたい。これ以上は今お尋ねいたしません。 先ほど来から東大に毎日かなり過激なビラが散布されておるということを、委員からそれぞれ追究がありましたが、よその大学ではあまり近ごろそういうビラが散布されないのです。散布しても、読み手がない、興味がわかぬのです。東京大学に毎日まくということは、興味をもつて読む人があるということなのです。そうするとあなたは、この事実から見て学内の秩序はどうなつているかくらいのことは感覚があるはずなのです。私はこの意味から見て学生を少し甘やかし過ぎはしませんかということを言いたい。はたしてこの時代に際してあなたの学生指導が完璧を期しておるかどうか、その点に対して少し疑いが出て来る。しかしながらそれを全部あなたの責任というのではありませんそれはなぜかというと、曲学阿世という前任者がいてとかくのうわさを立てられた。そのあとを受継いだあなたの立場だから、半年や一年に急にあなたの理想が学内に実現されるとは私は想像しておりません。けれども、あなたの熱意が少し足りないのじやないか、こういうことを申し上げたい。この点についてはしいてあなたの御見解を承ろうとは思いませんが、どうもその点についてなお手落ちの筋がある。それから先ほど阿部さんからもお話がありましたが、警察をきらうのは大学とどろぼうだけだというような批評を言つておつた。私も大学に関係しておる者でありますが、私の方の学校の学生は、別に警察が入つて来たからといつてそんなに神経をとがらしませんね。どうして東大の学生はそんなに神経をとがらして騒ぎまわるのでしよう、これがおかしいじやないですか。ことにかようなビラをまかれるということになれば、求めて協力してもらえばいいじやないですか。この点についてあなたの見解に少し誤りがあるのじやないかということを私は申し上げたい。もう一つは、由来学者というものは常識的に欠けている点が多い。学者は必ずしも教育者ではございません。それでこういう点に往々にして教育の根本を誤ることがある。もちろん自由をあなたがたつとばれるのはけつこうなことです。学問の自由またもつともな話です。これに異議をはさむことはありません。私から言わすれば、次官通牒なんということをなぜ拒否しなかつたかと言いたい。次官通牒などもらうこと自体がすでに大学の自治を破壊しているものではありませんか。そこまでなぜ主張しないかと私は言いたい。それを文書で受入れなければならぬような事態が、すでに学園の自治が破壊されているということになる。これを確立しないでどうしますか。私はこの際申し上げたいが、まず外形の服装から見てごらんなさい、日本の学生が一番時代から遅れております。警察官でも駅夫でもみな詰えりじやなくて折えりになつているのに、学生だけ詰えりを着ているじやないか、服装から見たら一番時代遅れな形をなしているということ、これがすなわち精神的にどのくらい作用しているかということは、大よそ世間の批判も受けられるだろうと思う、学生もそれと同様であります。これは外形的な一つの比喩にすぎないかもわかりませんけれども、世間の批評の一考を煩わすべきことじやないかと私は思う。そこでお尋ねいたしますが、今度のできた事件に対してあなたは、学校当局として十分手を盡したのだが万やむを得なかつたとお考えになるか、それともはなはだ遺憾千万であつたとお考えになつておられるか、この点いかがですか。
○矢内原参考人 ちよつと伺いますが、今度の事件についてとおつしやいますことは、事件後の処置でございますか、事件前の処置でございますか。
○世耕委員 今度の事件発生についてです。
○矢内原参考人 事件発生といいますとどういうことですか。
○世耕委員 警察官のつるし上げ並びに劇鶴前に有るところのいろいろのいきさつです。それから始末書等を厚生部長が立合いの上で書いているようでありますが、もしこれがほんとうの教育者であるならば――もし私がそういう立場にあつたならば、警察からも始末書をとりますが、同時に学生からも始末書をとります。これがほんとうの教育者でありますよ。ところが警察からだけ始末書をとつて学生からとらないということが学生を甘やかしているという証拠である。それで教育が成り立ちますか。あなたの部下が、生徒指導についてかくのごとき点に落度がなかつたかということを私は申し上げたい。この点であります。こればかりではありません。あらゆる集会について嚴重なるところの手配が行き届いていなかつたということが、あらゆる方面の資料を通じて考えられるのであるが、あなたは、あれはやむを得なかつたのだ、指導の万全を期したのだけれども、ああいう事態が発生したのだとお思いになるかということ、この点であります。
○矢内原参考人 事件の経過については私は先ほど相当詳細にお話をいたしました。それで盡きていると思うのです。
○世耕委員 私は結論を聞いているのです。これは遺憾千万であつたのか、それともこれはいたし方がなかつたのか、あなたはどうお考えになるのか、その結論だけです。
○矢内原参考人 事件と申しますのは、警官が四名お入りになつて、そのうち五名が……。
○世耕委員 ちよつと待つてください。私は結論を聞いておるのですから、その説明はあなたが先ほどされたから聞く必要はないのです。これは遺憾であつたのか、しかたがなかつたのか、それとも手落ちであつたというのか、その結論だけ言うてください。
○矢内原参考人 警察官が入つて来られたことは遺憾であると申します。学生がつるし上げ的行動をしたということも遺憾であると申します。
○世耕委員 わかりました。さような事態を発生せしめた指導者、責任者が当然なければならぬはずですが、それに対してどういう御処置をなさいますか。あなたは警察に抗議を申し込もうとおつしやつたが、もちろんけつこうであります。警察の行き過ぎに対して抗議をなさることは適当だと思いますが、同時に、怠慢な――指導の任に当つた人間がこういう遺憾な事件を起した、その責任者に対してあなたは適当な処置を当然とらるべきだと思うが、この点はいかがですか。
○矢内原参考人 当夜の状況はもう繰返しません。厚生部長がいかなる努力をしたかということも先ほど申しました。その翌日に、当夜居合せた学生を十数名呼びまして調査いたしております。警察官が目して当夜の事件の容疑者と認めている学生は、一名は逮捕されておりますし、一名は令状も出ているわけでありますが、その調べがあればさらに事態ははつきりするかと思います。大学といたしましても、もしも近日にそういう暴行をした学生がわかりますればこれを処置いたします。ただ念のために申しますが、先ほどからいろいろ情報を持つておられるとおつしやるのでございますけれども、当夜の三名の警官が受けたというところの暴行は――暴行があつたとしてもきわめて軽微なもので、逆に申しますと、全治一週間とかいう大きな負傷を與えたのではありません。(「保証できるかね」と呼ぶ者あり)それはその翌日、逮捕の現場において、その問題の三名の警官が第一線で活躍しておつたということを目撃者がございます。
○世耕委員 この事件の発生当夜は学長はどこにおいでになりましたか。どういう処置をなさいましたか。どういうように部下に指導なさいましたか。二十日でございましたか、あの事件の発生した当夜、あなたはどういう命令とどういう処置をなさいましたか。それとも後日報告をお受けになりましたか。
○矢内原参考人 劇団ポポロの公演のありました夜十一時に、厚生部長は本富士に参つております。私は事件の報告を翌朝受けました。それから逮捕せられたときは、私は大学構内の別の所で別の会議をいたしておりました。
○佐瀬委員長 時間がありませんから、結論的な質疑にとめておいてください。
○世耕委員 なおお尋ねいたしますが、東京大学の学生新聞が手元にありますが、こういう新聞の記事の検閲は、あなたの部下のどなたがなさいますか。
○矢内原参考人 新聞には顧問の教授がおりまして、その顧問の教授が見ておるはずであります。
○佐瀬委員長 世耕委員に申し上げますが、まだ質疑がありますか。
○世耕委員 もう簡單に片づけます。
○佐瀬委員長 他の委員の質疑の時間にもさしつかえがあるので、簡單に願います。
○世耕委員 では最後に一点。結局この新聞記事というのは、このまま外部に出たとすれば、これは犯罪事件に該当する記事がかなりあると思う。もしこれが大学の新聞というものであるとするなれば、あなた方が指導してやるものとすれば、はなはだ不穏当な記事がたくさん載せられておると思う。この新聞一つ見ても、あなた方、学生指導に完璧を期していないということがはつきり言える。この点について今後大いに考えなくちやならぬと思うことと、もう一つは、東大の職員組合が同様に文書を出しておりますが、この文書は学長はごらんになりませんか、あるいは御存じございませんか――それでは結論として申し上げますが、先ほど来から他の委員との質疑応答を承つておりますと、学長の御説明は、私らはまことに御同感申し上げていいことばかりです。けれども残念ながら筋金が入つていない。その理想をいかに実現するかということについて、私は努力が足りないと思う。まだお尋ねしたいことがたくさんありますが、他の委員の関係もありますから、この程度にとどめておきます。お互いに教育に従事している者は、ただ單に問題を糊塗していいかげんに処理して行くということは、今日の日本の時代においては愼まなければならぬことと思う。ことにあなたは、先ほど申しましたが、前任者のあとを受けてなお日浅く、あなたの理想はおそらくまだ思う通り実現されていないだろうということを私はよく承知いたしております。ただわれわれはいかにして日本の教育を確立するかという建前で、なお一段の御努力を願いたいということを、私はお願いしておきます。
○佐瀬委員長 平川篤雄君。
○平川委員 時間がおそくなつてはなはだ相済まない次第でありますが、今までの総長に対する質疑を聞いておると、私は非常に総長に対してお気の毒だと思う。まことに不公平なる答弁をさせられておるようで、何だか結論を急いでやつておるように私も感ずるのであります。大体私は、三百件の本富士署の管内における犯罪がどうだ、内訳がどうだというような質問をしたにすぎないのであるが、その私に対しても共産党へ行けというようなやじが出る。かような雰囲気の中で総長がお答えになつているのは、私ははなはだ気の毒だと思う。けれども、率直に言いますと、この問題はあるいは小さな問題かもしれないが、しかし先ほだ総長もおつしやるように、世界の学問の自由というものに通ずるというような、そのようなお考えを持つておられるにしては、総長のお話も、先ほど世耕さんが言うように、はなはだ筋金が入つていないということを私も感ずる。先ほど来しきりにビラの問題が出ておるのでありますが、そういうものはほんのわずかな一部の学生であつて、大多数のまじめな学生は、静かに黙々と秩序を守つて勉強しておる。その者のために、あそこにおられる警視総監は、これは次官通牒を白紙に返すということまで考えておるという話であります。あるいは法学部の廃止論が出ましたり、あるいは何と申しますか学長の官選を唱えたりするような問題が起つておる。そういうときに、真理に対する探究の自由を守られる一番有力な立場として総長は出ておられるのでありますから、その方面について、もう少し積極的に御発言がなければならぬと私は思う。 そこでお伺いいたしますが、ただいま問題になつておりますビラをまいたりなんかするような学生は、総長のお考えでは、一体学生のどの部分でありますか。これは質的にも量的にもおつしやつていただきたいと思います。
○矢内原参考人 先ほど来申しますように、このビラの署名者である細胞は学校で認めておりませんので、そういう細胞の組織が学内にあるかどうか、あるいは名を用いてビラを散布しておるのであるか、私は確認することができないのであります。それでもしその細胞なるものの組織が学内にあるならば、その統制委員もわかります。人数もわかります。しかしながら、ビラの署名者の細胞そのものについては、私はその人数とかは言うことができないのです。そういうものがあるかどうかということもわからないのであります。あるいは学外にそういうものがあつて、東大細胞の名をもつてやつておるのかもしれません。ただ今お話のありました点に多少関連すると思いますけれども、まあ一口に言いまして、左翼的学生と申しますか、こういう部類の学生諸君がおることは確かです。そうしてこれも学園の秩序、大学の自由の範囲内においては、学生をしての研究なり教育なりの活動が認められております。しかしその人数ははつきりわかりませんが、たとえば何か学内に集会の問題、学生大会の問題などについて事件が起りまして、そういう際に学校が見まして、これは左翼的学生であろうというものが、大体百人か二百人程度だろうという話であります。これは推測であります。その百名、二百名がことごとく非合法的な学生であると私は思いません。けれども左翼運動といわれるものに類するものは、そのくらいの人数かと思います。
○平川委員 ただいまいろいろな委員の質問によつて、私は何だか次官通牒を白紙にもどすような徴候がだんだん見えて来るような気がする。これは総長と同じように、私も絶対に排撃をしなければならない問題だと思う。大学が本富士署の管内にありながら一つの盲点だとみんなが申したのでありますが、私はこれは盲点ではないと思う。先ほどの新聞紙上にもありますように、新潟の地検の検事ですか、これが東京都内に十七箇所の赤線区域があるというようなことを言つておる、こういうものこそ盲点だ。ここでは堂々と犯罪が認められておる。しかしながら学園には犯罪は認められておるのではない。その中で秩序が守られるとすれば、また守られる可能性があると思えばこそ、次官通牒というものが出ておる。警視総監も、そういう教育の力と申しますか、相互信頼的に教育的な考えを持つてやつて行くことが根本義でなければいかぬ。そういうふうに考えますと、この盲点というものは可能性を持つた盲点であつて、今のような赤線区域のごときものでは絶対にない。そういう点について学園の秩序を教育の力で絶対に守り得る――時間はかかるでしようけれども、絶対に守り得るという総長の御確信を示していただきたい。
○矢内原参考人 その問題も何度も申したことでありまして、私の言明に筋金が入つていないという御批評でありますが、私は十分筋金を入れてお話しておるつもりなんであります。それで治安の盲点という点、これは今までお話いたしました点を別の方面から申しますと、東京大学の全学生生徒は一万五千人を越えております。そのうちで左翼の学生、左翼すなわち非合法と私は言いませんけれども、左翼の学生が一、二百名だ、ほかの大部分の学生は戰後の虚脱状態と焦躁状態を脱しておちついて勉強しておる。だからビラがまかれました、それは事実でありますが、まかれましてもそれによつて驚くということはない。その意味において大学の自治はよくなつて来ておるということを私申したのであります。治安の盲点という、そういう何か陰謀の策源地であるとか作戰地であるとかいうことはありません。それで今お話のように、大学の秩序は完全に守れるか、一枚の非合法のビラもまかれないようになるか、こういえば、日本の国家において一つの犯罪もなくなるかという御質問と同じであつて、そういう意味の完全さはできないと思う。けれども努力とか覚悟とか決意とかを申しますれば、大学当局は学内の秩序について責任を持つており、また努力は一生懸命やつておると先ほどかや申しており、またこれからもやる考えでおります。
○平川委員 私も今総長が言われるような、そういうばかな質問をしたのではありません。大体学内の集会が、プラカードを立ててデモンストレーシヨンをやるとか、あるいは決議をするということは、絶対に御許可になつていない。それにもかかわらずなおかつやる者がおるとすれば、これは総長や教授の言うことを聞くのではない、外部の団体の指令によつて忠実に動いておるものである。その者に対して何らの教育的な訓戒なしに一度に処分をするということは、教育の建前から当然できないでありましようが、しかしさような外部の指令に基いて動いて、学校内の秩序を守るところの総長の言うことを聞かない分子は、あなたの教え子ではない。それこそよそのまわしものであります。こういうものを断固排除せられる御決意があればけつこうだと思う。ビラがまかれないような状態が来るとは私も思わない、そういうことは大学の外をとりまく世界では、何でもないことのようにやられておる。先ほどからのいろいろな質問を聞いておりますと、外で何でもなくやられておるような問題を学校の中ではいけない、そこでめちやくちやに総長をたたいておるような傾向が見えるのでありますが、私はそんなことには同調しないのであります。今申しましたような、そういう外部の指令で動いて、総長の秩序維持の方針に反する者を処分することについて、断固たる方針をお持ちかどうかということを重ねてお聞きしておきたいと思います。
○矢内原参考人 繰返して申すように、学校で認めない活動は許しておりません。今後も許しません。もしも実行しておる者がわかれば処置いたします。
○佐瀬委員長 もう時間がありませんから、結論的に簡單に願います。
○平川委員 野党の方ばかり制限する、そういうような態度でこの委員会でおやりになるから、この問題が明らかにもならないし、不当に学問の自由をつぶしてしまうあなた方の考えだといわれるようになる。私は自由党はそんなことを考えておるとは思つていない……。
○佐瀬委員長 申合せで質疑を続行願います。
○平川委員 あなたは、與党のときには二十分も三十分もたつて、初めてそんなことを言うじやないか。私はひがむのではないけれども……。
○佐瀬委員長 大体問題が重複しておるから、特に注意をいたすのです。
○平川委員 ちつとも重複していない。――そこでお聞きしたいのでありますが、学園の秩序を守つておる大部分の学生のために、総長はこの一部分のわずか百名か二百名ぐらいの者を御処分なさるという気持があつたら、私は次官通牒というものはそのままやつていいものだと思う。次官通牒を白紙にもどしてなくしてしまうという考えは、それとは全然別個の問題だ。それがあるからというので関連を持つとは思いませんが、学長自身は、私のこの考えをどういうふうに御批判になりますか、ひとつ話していただきたいと思います。
○矢内原参考人 繰返して申しますように、学内の秩序にひどく反した者は学校で処罰いたします。
○佐瀬委員長 大分問題が重複しておるようですから、簡單に願います。
○平川委員 総長も大分お疲れになつておるように思います。大体、学生運動がだんだん盛んになつて来るということは、由来支那や何かの例にもありますように、どちらかといえば文化水準の低い国で起るのであります。日本の学校の中にこのような学生運動が根を断たないということは、まだ日本の文化水準が低いからだと思う。国会でかような問題がこういう雰囲気の中で取扱われるということ自体の中に、かような結果が出て来る原因があると思う。そこで総長にお伺いしたいのでありますが、さような学生運動というものをほんとうに健全なものにいたしまして、ないしは学生運動というものをなくして、日々の勉学に沈潜して行く学校の気風というものをつくるためには、やはりこの際ほんとうの自由というものを確立いたしまして、あるいは右翼の思想もあつてもよろしい、あるいは共産主義の思想もあつてもよろしい、学内において活発に闘わされるような素地をつくる以外には方法がないと私は考えるのですが、あなたはどういうふうにお考えでございますか。
○矢内原参考人 自由なる意見の交換、研究の発表というようなことは、大学の生命でありますから―一ただそれが学校のきめた秩序のわくの中で行われなければなりません。
○平川委員 ただいまおつしやつたことをこの際に一番強く考えておかなければならぬと思のです。大体警察的な権力で、学園の秩序なんかというものを守れるものではない。絶対にこれは守れないと私は思う。だからこれは白紙に返したりなんかいたしましてもだめなんで、むしろ次官通牒の精神というものを生かして、真に学園の自由を確立することが学校の秩序を高めることであると私は考えておりますので、ひとつ総長は先ほども申しますように、わずかな学校の秩序を乱す分子にとらわれないで、大部分の静かに学問しようという学生のために、どこまでも学園の自由を守るために闘つていただきたいと思います。こういう希望を申し上げて私の質問を終ります。
○佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめます。なお警視総監よりの意見聴取は後日に譲ることにいたしますから、さよう御了承願います。 参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。各位におかれましては、御多忙中にもかかわらず、御出席をいただき、かつ長時間にわたつて多々有益なる御意見を熱心に御開陳くださいましたことは、まことに感謝にたえません。今後本件に関する本委員会の調査を進めまする上に、十分各位の御意見を参考とし、反映せしめて行きたいと存じます。まことにありがとうございました。 なお次の会議は六日午前十一時より開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後八時四十三分散会