法務委員会 第18号
- 発言数
- 38 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1952/02/28
会議録
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。 検察行政及び国内治安に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、順次これを許します。猪俣浩三君。
○猪俣委員 法務総裁にお伺いいたしたいのでありますが、先般この二十一日に澁谷の警察署に起りました事件であります。東京大学教養学部の学生が、同僚が留置されておるので釈放方を要請に参つた。その際に、何ら抵抗いたしません学生に対して、警棒でこれを殴打いたしまして、東京大学教養学部文科二類の一年生であります西川正二学生に対しまして、後頭部に長さ五センチ、相当深い打撲傷を與えました。西川正二学生はその場で昏倒いたしまして、付近の医師の手当を受け、なお三楽病院に入院して治療をいたし、同病院の診断書もあるのであります。かような問題につきまして、先般警視総監に私が質問したのでありますが、全然さような報告を受けておらぬというこれを無視した答弁でありました。かような事案に対しまして、法務総裁の所見を承りたい。 なお去る二十日東京大学の二十五番教室に行われました演劇会におきまして、私服の警察官が侵入いたしたことから、学生と衝突をいたしまして、警察手帳を取上げるという行為が行われた。その責任者としてか、経済学部の三年生の福井某が警察署に留置逮捕されておるのでありますが、その逮捕の様子が実に残酷をきわめておる。顔面を殴打いたしまして、前歯一本を折つてしまつた。口角から血のあわを吹いているものを手に手錠をはめ、足にまで足かせをはめて、トラックにほうり上げたというのであります。かような東大の学生に対します警察官のやり方というものは乱暴をきわめておる。一体その国がフアツシヨ的傾向になり、戰争の方向に国民をひつぱつて行こうとするような情勢のもとにおきまする支配階級は、えて警察を使いまして、その学生との衝突を起すのが常例であります。治安維持法の制定せられました当時の社会状態も、まず学生と警察の騒動から起つた。民主化されたと称しまする現在におきまして、かような学生と警察との衝突がまた起つて来ておりますることは、私は日本の将来に実に暗い感じを受けるのであります。とにもかくにも遺憾なことでありまするが、警察官のかような刑事訴訟法において禁止せられておりまする乱暴なる行為に対しまして、法務総裁はいかなる処置をおとりになるお考えでありますか、お伺いしたい。
○木村国務大臣 ただいま猪俣委員から澁谷事件、東大の学生事件の内容についていろいろ話がありましたが、検察庁へはまだ何らの報告はありません。御承知の通り警察官も一般事件の取扱いについては、もとより憲法に保護された基本的人権を守らなければならぬことは申すまでもないことであります。万一猪俣委員の仰せのような事件がありますと、検察庁においては愼重審議これを取調べまして、いやしくも職権濫用の事実が明白となりますれば相当な処置をとることは当然のことと考えます。しかしながらここで一言申し上げたいことは、近ごろの学生運動は、私ももとよりその実態を把握していないのでありますが、ともすれば逸脱した行為があるやに聞いておるのであります。これは学生として大いに愼まなければならなぬことかと私は考えております。これらの学生に対する処置については、おそらく学校当局においても大いに考慮しておることであろうと考えておりますが、警察官の無謀な行為が万一あるとすれば、先刻申し上げました通り、もとより検察庁は公正な態度をもつて処置することは当然のことと考えております。
○猪俣委員 ただいま申しましたような学生と警察の衝突というようなまことに寒心にたえない現象が起つております。今総裁の、かような人権蹂躪の職権濫用の警察官に対しては断固たる処置をとるということに対しましては、どうぞ公正な立場に立つてこの処置をつけていただきたい。ただ学生だけを取締る方だけに重点を置かないで、警察は自分のやつた行動については報告もせず、そして学生のことだけぎようぎようしく天下に発表しておるのであります。その目的が奈辺にあるかはまずしばらくおくといたしましても、公平な態度じやない。これを是正するのは検察庁だと思われるので、法務総裁の公正なる態度を私は要望してやまないのであります。かような雰囲気のときに先般二十五日の東京新聞を見ますと、最高検察庁の見解といたしまして、警察官の拳銃の取扱いについて、われわれといたしまして、はなはなだ聞捨てならぬ言明をなされたやに新聞には報道せられておるのであります。これが眞実なりやいなやにつきましてお尋ねをしたいと思う。この新聞に報道せられたところによりますれば、警察官の拳銃取扱い方はこれから改め、集団暴行事件、あるいは警察手帳や警官の帽子、記章などをとるような者があつたならば、遠慮なくこれを射殺してよろしいという見解であるというふうに新聞に報道せられたのであります。 そこで法務総裁にお尋ねいたします。かような新聞に報道せられました最高検察庁の警察官の拳銃取扱いに対する態度につきましては、法務総裁は御了解の上であるかないか、それをまずお尋ねいたします。
○木村国務大臣 お答えいたします。今猪俣委員のお述べになりました新聞記事につきましては、さつそく検事総長にかような発表の事実があつたかないかを確かめたのであります。検事総長は断じてさような事実なし、これはまつたく新聞の誤報である。もちろんそれがし新聞記者に面会の事実はある。但しその新聞記者の質問に対して自分の答えたことが曲げて記載されてある。というのは、近ごろの警察官はあまりにもいくじがなさ過ぎるじやないか。自分の身を守るについても拳銃の操作を少しもやらないじやないかというような質問があつたそうであります。これに対しまして検事総長は、もとより警察官といえども自分の身体が危急に瀕した場合には、正当防衛を逸脱しない限りにおいて拳銃を操作することは当然のことである。これは刑法においても認められているところである。決して拳銃をみだりに撃つてはいかぬけれども、自分の身体に危急の迫つたときには、それはもとより正当防衛として拳銃を操作してもあえてさしつかえないというような意味のことを言つたそうであります。しかるにもかかわらず、猪俣委員が今仰せの通りの新聞記事になつておつて、検事総長は愕然として驚いたそうであります。そこでその新聞記者を呼んで、検事総長はみずから新聞記者を面責したということが明瞭になつているのであります。新聞の記事はまつたく誤報といつてさしつかえないと私は信じております。
○猪俣委員 これが誤報でありまするならば、私は法務府といたしましては何らかの処置をとつて、誤報であることを明らかにしていただきたい。検事総長の、現在の警察官がいくじがないような御意見に対しましては、私どもはそれに対して意見を異にする点があるのであります。今私が総裁に質問いたしました事例を見ましても、相当弱い者に対してはなかなか活発にやつておる。なぐるけるなど朝飯前の話であります。そんなに警察官の志気が沮喪しているという点は見受けられません。実際の警察官の実情を、ただ自分に都合のいい報告だけで机の上で考えておられるから、さような認識になられたと思うのでありまして、これはいま少し検察庁がこの警察官の活動に対しまして、いいにつけ悪いにつけもつと実態を把握される必要があると考えるのであります。米人の——アメリカの兵隊だと思われる人間のギャング事件などに対しては、どうも少しいくじがなさ過ぎるように考えますけれどもそうではない場合におきましては、刑事訴訟法の原則を相当逸脱したような行動までやつておる。それにこういう新聞記事が出ますと、私は相当危險だと思うのであります。今まででも、警察官の誤殺事件が相当起つておりました。つい先年でありましたか、やはりこれは民事訴訟事件にまで発展いたしまして、誤殺した警察官に対しまして都が八十数万円の損実賠償を命ぜられたという判決さえ出ている際であります。拳銃の発射に対しましては、相当事件がひんぴんとして起つておる。こういう際に、かような新聞記事が報道せられつぱなしになつておりますと、これは下部の警察官がどういうふうな誤解を生じて、それこそ発砲せぬとも限らぬのでありまして、これはゆゆしい問題だと思う。もしこれが政府の最高検察庁の意見でないといたしまするならば、適当な方法をもつてこれを是正していただきたい。新聞に報道せられたままにしておきますと、時あたかも日本全体をおおうておりまするものは、どうも反動的な空気であり、さような際にかような報道をそのままにしておきますことは、私はゆゆしい問題だと思う。適当なる処置をとつていただきたい、これは法務総裁に要望しておきます。 次に警察の反動化ということに対しまして、私は今そういう際にかような新聞報道がそのまま放置されると危險であると申しましたが、その一つの実例といたしましても、これは先ほど東大事件に関するのでありますが、伝うるところによりますと、東大の進歩的学者と思われるような人たちの講義を私服の警察官が教室まで出かけて聞いておる。なおまたそういう教授の身元調査をやつておるということが、警察手帳から出たものなりとして宣伝せられております。さような警察官が大学の教室の中まで入つて特定の教授の講義を聞いたり、あるいはその教授の身元調査をやつたり、一体さようなことをやつてよろしいかどうか、これはまさに終戰前の特高警察であります。新しい憲法におきまして良心の自由と思想の自由を保障いたされております今日、この日本を誤りましたる最も中心的勢力が特高だとされておることはマツカーサ元帥の書簡にも明らかにされておる。さような特高がいつとはなしにまた復活しておるような印象をわれわれは受けるのでありますが、一体かようなことに対しまして法務総裁はいかなる所見をお持ちでありますか、承りたいと存じます。
○木村国務大臣 ただいま猪俣委員の御質問になりました東大に対する警官の教室講義聴取の問題、これは何ら私の手元に報告は参つておりません。しかしながら警官がひそかに教室に入り込んで教授の講義を聞くということは、もとより許すことのできないことと私は考えます。教室に入つて講義を聞くのは学生に限るのであります。もしもさような事実がありといたしますれば、将来私はさようなことのないように十分の注意を喚起したいと考えております。警察官が教授の身元調べ、どういう理由で身元調べをしたか、それも関知しておりません。(「大切なことはみな関知していないじやないか」と呼ぶ者あり)さようなことは私のあずかり知るところではないのであります。もしも違法なことが現実に行われた事実が発覚いたしまして、これが検察庁の問題となりますれば、もとより公正な態度をとりまして、十分に処置をいたしたいと考えておる次第であります。
○猪俣委員 この問題は私は実に重大な問題と考えるのであります。但しわれわれも、さような事実が今度学生から取上げました警察手帳に書いてあつたことなりとして宣伝せられておりますが、はたしてさようなことが警察手帳に書いてあつたかどうかはまだ最後の断定を下すことはできませんけれども、ただこれがほぼ正確なことじやないかと考えられることは、おもなる学生にはこの警察官たちの顔がすつかり覚えられちやつた、それほど頻繁に校内を徘徊し、教室の中に出入りをしておつたのであります。それでありますから、これは、二十日の日にも、その演劇の集会が、学生と職員及び職員の家族だけの催しでありましたところにも、その警察官が入り込んで、それがただちに学生に顔を看破せられたということが雄弁に物語つておると思うのであります。法務総裁は内閣におきまする法律顧問であらせられるし、治安その他につきましての最高の責任者でもあらせられるので、私は特に法務総裁の処置を要望するものであります。一体かようなことが事実であるかいなや、警察にまかしておきましても、警察は手前のかつてな都合のいいことしか報告しないので、これは法務府におきまして調査していただきたい。法務府は特審局というものを持つておる。一体この特審局というものは、そもそもの初めは右翼の反動分子を調査するのが、この特審局の誕生した原因であつた。それがいつか知らず、まるでその性格がかわりまして、いわゆる左の思想、左の団体だけを監督しているやに見える。それが証拠には、先般の法務委員会におきまして、私が澁谷の駅頭で実に矯激なる再軍備論を吐いておりまする清水何がしについて質問いたしましても、特審局長は全然知らぬと言う。これは有名なその道の男らしいのであります。そうしてみずからピストルで打たれたような狂言までやつて問題を起しているという事実がありまするが、特審局長は何も知らぬ、かような答弁をやつておる。目のつけどころが全然方向が違つて来てしまつた。そこで私は要望したいのでありますが、特審局なるものは、ただ左の取締りだけに存在するものではない。元来が右のフアツシヨ的な、軍国主義的な、侵略主義的な団体や個人を取締り、調査するのがほんとうの本来の目的であつた。しかしそれのみに限るというのでありませんが……。この特審局をして、一体かような学校の構内にまで侵入し、そして教授の講義をメモし、なおその身辺まで調査するというような、昔の特高警察——マッカーサー元帥が昭和二十二年九月十六日片山内閣総理大臣にあてましたる警察に関する書簡におきまして、徹底的に特高警察を攻撃し、日本を今日の非運に陥れた最大の原因はここにあつたのだというてこれを攻撃しておる。さようなことがまた現在行われておるやに考えるのであるが、これは一体連合軍司令官の同意の上でやつておるのかどうかおそらくはさようなことではないと思う。いかなる機関がさしずをしてかような行動がとられたのであるか。奇怪千万だと考えるのであります。これにつきまして、どうぞ法務総裁が嚴たる態度を持続せられまして、特審局をひとつ活動せしめて、一体警察が教授の身辺を調査したり、教室へ出入りしたり、さようなことがあるのかないのか、徹底的に調査していただきたい。そして調査の結果を当法務委員会に報告していただきたい。さような調査をしていただけるかどうか。その点について総裁の御答弁をお願いいたします。
○木村国務大臣 まず猪俣委員から今お話のあつた、近ごろ特審局は右翼の方を無視しておるのじやないかという御議論であります。私就任以来いろいろ特審局の内部の事情を聴取しておるのでありますが、もとより右翼といえども、法規に反する行動に出たものは進んで規正しておるのであります。御承知の通り某一家とか某団体とかいつて、昔のままのいわゆる暴力的行為に出る団体に対しては、すみやかにこれを規正しておる事実があるのであります。もうすでに新聞紙上にもしばしば報道されておるようであります。最近には右翼の動きもあるやに考えておりますので、その点についてはぬかりなくやつておるつもりであります。ただ單に極左ばかりを対象にしていないという事実を私はここで言明いたします。 それから警察官の東大に対してのいろいろな事件につきましては、もとより特審局においてやつた仕事ではないことを断言いたします。これは私の知る限りにおいては、本富士警察署の警察官が東大の構内を警邏しておるときに起つた事実であるということを聞き及んでおります。特審局のものがさような行動に出たものでないということを私は申し上げておきます。なおその警官の、今猪俣君の仰せになりました事件につきましては、これは警視庁の方から私は報告を求めたい、こう考えております。ここで一言申しておきたいのは、御承知の通りこれは東京都の自治警察が管轄しておるのでありまして、国警は何らこれに関與しておりません。また検察庁は事案が起つた事件について、これに公正な見地から万般の処置をとるのでありまして、この事案そのものは東京都内の警視庁管内で起り、これは警視庁のいわゆる運営管理に属する事案であるということだけをここで申し上げておきたいと思います。
○猪俣委員 今の法務総裁の最後の問題でありますが、警視庁なるものは自治体警察であることは私どもも知つておるのであります。一体自治体警察であつても、国家警察であつても、こういう警察官が憲法に違背したような行動をとることにつきまして、たとえば自治体警察の公安委員会なりあるいは警察署長なりが、部下に命じてさような行動をやらしておる場合におきまして、政府といたしまして、これに反対の場合において、これに対していかなる監督もできないのであるかどうか。東京自治体警察の公安委員会、あるいは本富士の警察署長、かようなものの方針によりまして、大学なんかにどんどん私服を入れて、特定の教授の講義をメモし、あるいはその身辺を探偵のように調査する、さようなことは、憲法の良心の自由、思想の自由とは両立せぬと思う。特高警察的活動である。これは警察法の精神にまつたく違反しておるところの行動だと考えるのでありますが、さような行動をやつておつても、自治体警察なるがゆえに、何人もこれに対して監督あるいはこれを廃させるような指揮ができないものであろうか。この点について法務総裁の御見解を承りたい。
○木村国務大臣 事案が確定して、これが刑事問題となりましたときには、検察庁においてこれを処理いたします。しかも猪俣君も御承知の通り、現警察法におきましては、法務総裁といえども、自治体警察に対しては、何ら運営管理の権利は持つていないのであります。これを命令するというような権限はいささかもないのであります。
○猪俣委員 しからばもし学校側が、建造物侵入罪というようなことで告訴をいたしましたときに、初めて検察庁としては考える、こういうようなことになりましようか。
○木村国務大臣 もとより、そういうときには検察方において事案を処理いたします。
○猪俣委員 この問題につきましては一応これで打切りまして、二、三他の問題についてお尋ねしたいと思うのであります。 今回の行政協定の内容なりとして発表せられたものを見ますると、アメリカ駐留軍の軍機を保護するために何か特別な立法をするような協定があるように見受けられるのでありますが、さような立法措置を一体政府はお考えになつておるのであるかどうか、承りたいと思います。
○木村国務大臣 私の手元ではまだそういう立案はいたしておりません。
○猪俣委員 なお法務総裁にお尋ねいたしたいことは、これは一般の労働組合あるいは新聞社関係、その他文化人の団体等で大いに長い間問題にいたしておりますところの治安立法でありますが、団体等規正法なる名称はやめて、暴力行動取締法とか何とかいう法案にして提出されるやに法務総裁の説明もあつたかと存ずるのでありますが、この法案は現在原案がおできでありますかどうか、そうしてこれは国会へいつごろ提案されるお考えでありますか、承りたいと思います。
○木村国務大臣 現在作成中でありまして、大体成案を得つつあります。二、三箇所の問題がまだ懸案になつておりますので、ごく最近において成案がまとまろうかと考えております。ただいろいろの事情がありますので、これを国会に御審議をお願いするのはいつかということは、はつきりここで申し上げることはできないのでありますが、なるべく至急に御審議をお願いいたしたいと考えております。
○猪俣委員 その御提案の法律の名称は、どういう名称になりますか。その中に、先ほど私が質問しましたように、米軍の軍機を保持することのできるような条項が、一体あるのかないのか、それをもう一度お答え願いたい。
○木村国務大臣 今の構想では、さような条項は入れないつもりでおります。名称は昔の——といつては語弊がありますが、現行の団体等規正というような文字を使わないつもりであります。もつと簡單明瞭に、暴力的団体を規正するという意味のことを明らかにするつもりであります。
○猪俣委員 それからこの前も私はお尋ね申したのでありますが、いわゆる労働三法の改正もあると思うのであります。これは法務総裁の所管でないかも存じませんが、それと関連いたしましてゼネスト禁止法、これは労働組合にとりましては、非常な関心の的になつておるのでありますが、一旦さようなものは出さないような御意思であるやに、新聞が報道いたしておりましたが、最近またどうも出す予定であるやにも報道せられますので、労働組合側といたしましては、その真偽のほどに対して多大の関心を払つておるのでありますが、このゼネスト禁止法というような單行法をお出しになる意思が現在おありでありますかあるいはまたそれについてもすでに用意がされているのであるかどうか、その模様についてお話願いたいと思います。
○木村国務大臣 もとより、われわれは正常な組合活動を規正して行くような考えは毛頭もないのであります。ただ、ただいま労働法制審議会において、せつかく労働法規の改正について案を練つているようであります。われわれといたしましては、この結果を見た上で考慮いたしたいと考えておるのでありまして、今すぐ出すというようなことを申し上げる段階には至つておりません。また必ずこれを出さないということも言明いたすことはできないのでありますが、労働法制審議会の答申をまちまして労働省でせつかくりつぱな法案ができまして、ゼネスト禁止法なんというようなものを出さないで済むような段階におちつくことを私は希望しておるのであります。
○猪俣委員 もう一つ、巷間に伝えられておりますし、前の大橋法務総裁の答弁もあつたのでありますが、今各自治体でもつて条例として出ておりますあの保安条例のようなものを一本化してこれを法律といたし、示威運動取締法というようなものにして出すというような意向を前の法務総裁はお持ちであつたようでありますが、木村法務総裁はさような法案を出すお考えでありますか、どうでありますか。
○木村国務大臣 ただいまのところでは、各地のいわゆる情勢を検討中であります。せつかく各地における事情を聴取いたしまして、その上で出すものなら出す、出さないものなら出さないということをきめたいと考えております。
○猪俣委員 いろいろの質問申し上げて恐縮ですが、実は法務総裁と顔を合せる機会が少いので、たまつてしまつておりますからいろいろな問題が出て来るのでありますが、今度また問題をかえまして、憲法問題といたしまして、憲法の九条の戰力の問題につきましては、相当他の委員会におきましても、また当委員会におきましても、政府の見解を明らかにせられておるのでありますが、そこで私は疑問に思いますることは、同じ吉田内閣だといたしまするならば、たとへ法務総裁の地位に当る人がかわりましても、その憲法解釈なんというものは変更せらるべきものではないと考えておるのでありますが、どうもそれが私どもにはつきりしない点がある。この戰力ということにつきましては、木村総裁の答弁と、およそ憲法学者の戰力に対する説明及びこの憲法の制定当時の議会におきまする質疑応答から見ましても、木村総裁——現に政府の見解というものははなはだ異常であります。戰力についての説明というものは、学者の理論及び常識、国会の憲法審議の際の政府委員との一問一答、あらゆる点から考察いたしまして、これは政府の見解は特殊異常な見解だと申さねばならぬと思う。ところが政府におかれましても、私は殖田俊吉氏が法務総裁当時に、憲法九条二項に関連いたしまして、日本の国内において兵器を製造すること、兵器製造の施設を行うことは、戰力の保持にならないかという質問に対しまして、殖田さんは、それは戰力保持になる。それでは日本人じやなくて、外国の会社がやつたらどうだと言つた、日本人であろうと外国の会社であろうと、それは同じことであつて、憲法の九条二項に違反するのだという御答弁があつたのであります。ところがただいまの法務総裁のお考えだと、そんなものはほとんど問題にならない、バズーカ砲や戰車や何か持つておつてもこれは戰力の保持にならないという解釈のようでありますから、およそ殖田法務総裁の当時の解釈と非常にかわつた。そこで法務総裁は内閣の法律顧問であらせられるのであるが、一体この解釈については閣議でこういうふうにかえるようにといつて相談になつたのであるかどうか、ただ法務総裁がかわつたので答弁がそのときどきにねこの目のようにかわられるのであるかどうか。軍需工場まで戰力保持だという答弁と、戰車やバズーカ砲を持つている組織され、訓練された集団でも戰力の保持じやないという答弁とは、非常に違い過ぎるほど違うと思うのでありますが、一体どういうふうにしてそういうふうな違いが生じたのであるか、戰力に対する閣議の解釈がそういうふうに変更されたのであるかどうか、承りたい。
○木村国務大臣 閣議で変更も何もいたしておりません。ただ殖田前法務総裁が述べられたことは、おそらくポツダム勅令でありまする「兵器、航空機等ノ生産制限ニ関スル件」ということから述べられたのであつて、これは憲法第九条第二項の解釈について述べたものでないと私は了承しておるのであります。私の憲法第九条第二項に関する解釈というものは、私はその信念にいささかもかわりはないのであります。
○猪俣委員 昭和二十五年二月十四日法務委員会におきまして私が質問いたしましたのに対しまして、殖田法務総裁は「自衛権があるには相違ないのでありますが、憲法第九条の規定によりまして、わが国は武力行使を放棄しまして、一切の戰力を保持し得ないのであります。従つて自衛権と申しましても武力による自衛権の行使はできないものと考えております。」こういう答弁をなさつておる。そこで私は武力によらぬ自衛権というのは一体どんなものであるかと聞きましたのに対しまして、殖田国務大臣は「いわゆる武力を用いないのでありますから、自衛権の行使は非常に狭いものとなりましようけれども、それはやむを得ないことでありまして、武力以外のあらゆる方法を用いて自衛いたすのでありますから、それはそのときになりまして、いろいろな知惠がわいて来ることと思います。ただいまから予定はできないことと考えます。」こういう答弁をやつておられる。なお「九条二項のやはり問題でありますが、日本の国内において、飛行機あるいは毒ガスその他の兵器を製造することができないことは申すまでもないと思うのでありますが、外国会社が日本においてかような兵器製造をすることは、これは、憲法九条二項の解釈上許されることであるやいなや。」という私の質問に対しまして、殖田国務大臣は「国内におきまして、ただいまお話のごとく兵器を製造することは許されておりません。従つてこれは何人であろうとも、その適用は公平に受けなければならないと思うのであります。」憲法九条二項の解釈上これは許されるかどうかという質問に対しましては、内外問わずこれは許されない、こういうふうな答弁をされておるのでありまして、どうもこの答弁の全趣旨から考えますと、政府の憲法解釈がかわつて来たとこう考えられるのであります。閣議においてかわつたのじやないのだということになつておりますと、これはどう調和してよいかわからぬと思う。しかし殖田さんの答弁につきましてあなたにいくら質問してもしようがないのでありますが、どうも私どもはこの憲法の解釈につきましては、憲法制定当時の政府委員、今の吉田総理大臣を含めました政府委員の答弁、及びその後国会においての数回にわたります質疑に対しまする内閣の法律顧問としての法務総裁の答弁、それから今日におきましての、行政協定を締結するようになりまして、平和条約や安保条約を調印するようになりましての、吉田総理大臣を含めました政府当局の答弁というものは、非常に違つて参つておる。そこで憲法などというものも、そのときどきの行政府の御都合次第で、いいかげんな解釈をされるという印象を私どもは受けるのであります。法務総裁は憲法制定当時にも御関係あると考えますが、あなたはそういうふうな感想をお持ちになりませんか。はなはだ手前がつてな解釈が行われて来ておる。もちろん根本であるアメリカがかわつて来たのであるから、無理もないかもしれませんが、日本国の憲法九条の解釈につきましては、憲法制定当時の政府の考え方と、また第七、第八国会あたりの政府の考え方と、この条約成立前後における政府の考え方はまつたく違つて来ておる。かように憲法の解釈がそのときどきにおいて、同じ吉田総理大臣のもとにおける内閣のもとにおいて、かようにかわるということは、一体よいことであるかどうか。法務総裁は憲法の解釈がかわつたとお思いになるかならぬか、そういうふうにかわることがよいことだとお考えになるかならぬか、これをお尋ねいたしたい。
○木村国務大臣 私は憲法制定当時にも内閣の一員に列しておつたのでありますが、その当時の考え方と、今日の考え方とは、私においてはかわりはございません。憲法第九条というのは御承知の通り、太平洋戰争のような戰争の愚を再び繰返したくないといういわゆる戰争放棄の規定であります。従来の日本の軍閥が積極的に武力をもつて他国に干渉し、他国に進出したので、あの愚なる結果をもたらしたのである。その愚なる結果をもたらさしめないという意味から、でき上つたものでありまして、少くとも憲法第九条は、さような戰争をするような能力を持たせないということでありますから、私はどこまでもこの戰力というのは戰争遂行の可能な力と解しておるのでありまして、憲法制定当時の考え方と今の考え方とは、私においてはかわりがないということを申し上げておきます。
○佐瀬委員長 ただいま法務総裁から、自治警察に対して運営管理権がないという御意見の発表がありましたが、最近各地に続出する集団暴行事件を契機としまして、自治警察、国家警察の調整、協力が問題となり、さらに首都の治安対策としまして、首都警察の構想があるやに聞き及んでおりますが、この際、さしつかえない範囲内において、法務総裁からこの点に対する御意見の発表をお願いしたいと思います。
○木村国務大臣 この警察の問題はきわめて重大だと私は考えております。御承知の通り、終戰直後になりまして、警察の力の分散ということになりました。これが国家警察と自治体警察にわかれたゆえんであります。この建前を民主国家としてどうしても保持しなければならないという考え方が、一つの有力な考え方でありましよう。私もその点については決してその考えを放棄するものではないのでありますが、しかしながら東京都におきます限りにおいては、東京都は日本の政治の中心であり、文化の中心であり、経済の中心であります。この首都におきまして自治警察のみにこれをまかしておくことは、はたして実際の運営上いいのであるかどうかという問題であります。ここに首都警察法というものをこしらえて、これを完全に国家の警察力の手に攻めたらどうかという議論があるのであります。これはもつともな議論かと考えております。しかしながらこの取扱い方につきましても、なかなか慎重に考えざるを得ない幾多の点があるのであります。私は、常に、警察力というものは十分にその機能を発揮させなくてはならぬが、この警察力があまりにも集中に過ぎるということは、国家百年の計からいつても考えざるを得ないのであるという点から考慮いたしまして、これらの自治警と国警との関連調整をいかにとつて行くべきかということについて、実は苦慮しておるのであります。この両機構を十分に生かしながら、しかも能率的にこれを運用して行く方法をぜひともつくり上げたいというのが、私の今の考え方であります。そこで現在の段階といたしましては、あらゆる面からの意見を聴取いたしまして、この連絡調整をいかに緊密にとつて、警察の機能を能率的に上げて行くかということについてせつかく考慮中であるということを、御了承願いたいと思うのでありまして、ただいまのところ、一つのまとまつたこれでよろしいという結論には、残念ながら到達いたしておりませんが、早急に各方面の意見を徴しまして、一本に考え方をまとめたいと考えておる次第であります。
○佐瀬委員長 田嶋好文君。
○田嶋(好)委員 私は簡單に法務総裁に要点だけをお尋ねいたしたいと思います。ただいま委員長からもお尋ねがありまして、治安機構に対して、特に首都の治安に関する考え方に対してお答えをいただいたのでありますが、私たちといたしましては、今後日本が独立をいたして行きます状態を考えますときに、外国の使節等も参ります、また外国の高貴な方等も参ります。また時には外国の首班等も参ります。そうした場合には、首都に対しまする考え方も、今までの占領下における考え方とはおのずから違いますし、また取扱い上も重大な関心を持たなければならぬのに、今回東京で発生いたしましたような集団暴行事件を見ますとき、これはどうしてもこのままの状態にして置いていいとは考えることができない法務総裁におかれましては、せつかく意見を調整してというようなことを承つたのでありますが、せつかく意見の調整ということでなくして、むしろ積極的に、首都に関する限りは自治体警察というものにまかせておかぬ、政府直属のといいますか、そういうような機構に改めていただきますことを私たち希望するものでございます。幸いにいたしまして、毎日新聞の発表によりますと法務総裁、大橋国務相の間におきまして、警視庁の改組を検討しているということでありますので、意を強うしているものでございます。せつかく意見の調整、これはまことにけつこうでありますが、私の考えに対していかようなお考えをお持ちでございましようか。
○木村国務大臣 御意見は十分尊重いたしまして、なるべく十分に首都の治安を守つて行くことに努力いたしたいと考えております。
○田嶋(好)委員 次に、簡單でございますから、質問の要旨が徹底しないかもしれませんが、ただいま猪俣委員から、拳銃の取扱いに対しまして最高検の談話として新聞で発表されたのが真実かどうかという質問がありまして、法務総裁からねんごろな御説明がありました。まことにけつこうな取扱いだと思うのであります。しかしわれわれの考え方は、拳銃の取扱いまことにけつこうでございますが、あの今度起りました首都の集団暴行事件を注視しますときに、はたしてあのような武器的なものを持つて来ておりますところの集團暴行に対して、警察官がただ拱手傍観しているというような形では安心できない。拳銃の取扱いに関しましてもやはり明確な規定を設けてやり、集団暴行に対しては政府が積極的に指導して、間違いを起さないように、誤殺を起さないようにしてやることが治安上大切ではないかと思うのであります。ただ拳銃を撃たないのだ、発射しないのだというような言葉でなしに、使用方法についていま少しく積極的に御検討を願い、考えてやる必要があるのではないか、それが一番治安の元になるのではないかということを考えておる一人でございます。あの御答弁はまことに満足するものでございますが、立場をかえまして、治安の立場から、この集団暴行に対しての拳銃の取扱い方の点をいかにお考えになつておるかを承りたいと思います。
○木村国務大臣 御意見ごもつともであります。この集団暴行に対して一人よくその身を守り得ないことは当然でございますから、そういう場合には正当防衛としての言い訳もりつぱに立つことであろうと考えております。その時機々々によつていかにこれを操作すべきかということについての警察官の訓練をもう少し十分にやらしたいと考えております。
○田嶋(好)委員 時間が参りましたので簡單にもう一つ伺います。最近自由党の総務会におきまして、法務総裁が、共産党の動きというものをいろいろ説明されたことに感謝をいたしてるのでございますが、最近の共産党の動きから見ますと、暴力団体的なものであるとの認定が下せるのではないかと思う。してみると、共産党というものはもはや合法政党ではなくして、非合法政党とすべき段階に来ているのではないか、率直に言つてこういうふうに考えるものでございますが、共産党の非合法化に対して法務総裁はいかような御所見をお持ちでございましようか。
○木村国務大臣 今のところ、その点について意見を申し上げることはちよつと控えさせていただきたいと思つております。
○田嶋(好)委員 時間もありませんからきようはこの程度にして、次の機会にまた質問いたしたいと思います。
○佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、次の会議日は公報をもつてお知らせいたします。 本日はこれをもつて散会いたします。 午後一時四分散会