文部委員会 第43号
- 発言数
- 29 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1952/07/30
会議録
○竹尾委員長 開会いたします。 これより理事の補欠選挙を行います。委員松本七郎君が委員を辞任せられ、去る八日再び委員に選任せられましたので、その手続を省略いたしまして、先例により同君を理事に指名いたしたいと存じまするが御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○竹尾委員長 御異議なしと認め、松本七郎君を理事に指名いたします。 —————————————
○竹尾委員長 次に閉会中審査に関する件を議題といたします。当委員会は、重要な教育問題につきまして、閉会中もなお審査をいたしたいと存じまするので、閉会中の審査に関する申出書を議長に提出いたしたいと存じます。ただいまその案文を朗読いたします。 閉会中審査申出書 一、閉会中審査すべき事件 教育委員会制度に関する件 義務教育及び社会教育に関する件 大学に関する件 宗教一般に関する件 一、閉会中審査の目的 現状の検討と将来における教育、学術、宗教の振興に資するため 右により閉会中もなお審査をいたしたいから、しかるべく取計い願いたい。 昭和二十七年七月三十日 文部委員長竹尾弌衆議院議長林讓治殿 ただいま朗読いたしました申出書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼応者あり〕
○竹尾委員長 御異議なしと認め、さように決しました。 なお承認を得まして、委員を派遣して調査の必要が生じましたならば、その手続、人選、期日等に関しましては委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○竹尾委員長 御異議なしと認めさようにとりはからうことに決しました。 ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○竹尾委員長 速記を始めてください。 次に、進合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案を議題とし、審査を進めます。 本案に対しまする質疑は、大体終了いたしておりまするので、この際本案の質疑を終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○竹尾委員長 御異議なしと認めます。これにて質疑は終了いたしました。 これより討論に入ります。若林義孝君。
○若林委員 連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案につきまして、自由党を代表いたしまして、賛成の意見を述べようとするのでありますが、提案理由の説明にありますように、この法案は、日本国との平和條約第十五條(〇)の規定に基くものであり、同條約に規定せられておる事項と同一事項を規定するところのものでありますが、これよりなお法律案を提出するに至つた理由というものは、対日平和條約の規定だけでは、一般国民の理解に不十分な点もあり、また実施上の細目について欠けるところもあり、そこで條約上の義務を日本国及び日本国民が誠実に履行するために、また将来において起り得べき問題をできるだけ避けるために、この法案を提出したといわれるのであります。この立案をせられました趣旨においては、われわれ首肯するところが十分あるのであります。しかし、この趣旨に基いてお出しになつたこの法案に対して、私たち無條件にこれに賛成はしがたいのであります。この法案のよつて来るところきわめて重大なる影響のあります社団法人日本著作権協議会の代表者をやはり当委員会においでを願つて意見を承つたのでありますが、著作権協議会におきましても、非常に慎重なる態度をとられまして、この法案に対する検討を続けられたのでありまして、われわれもこの真摯なる態度に対して敬虔なる気持を持ち、その意見を十分聞取りたいという気持で聞いたのであります。一応権威あるところの著作権協議会のこの法案に対する意見あるいは疑問とする点、批評するような点をひとつここに取上げて、政府が将来この法案を運用する上に資していただきたいと思うために、紹介をいたしたいと思うのであります。 大体著作権協議会におきましては、こういう御意見を持つております。全然無修正でこのどたんばに一挙に通すのは不可、継続審議に付して十分検討すべきである。論旨を要約すれば四條二項のように條約違反の解釈を行い、その上「発生」を「取得」と転換したり、時に関する効力をごちやごちや定して解釈法としては収拾のとれぬ混乱に陥つている。その論旨を要約してみますと、四條二項の戰時加算期間控除の規定は條約違反であり、原文に「発生」とあるのを「取得」と改め、原文に規定のない承継取得を加えたのは不可である。しかも四條二項を入れるために関連規定として三條と七條を入れたのもこじつけである。條約原文によると戰時中に発生した著作権の控除は認められていない。つまり戰時加算期間全部を加えなければならないことになるから條約違反となる。ゆえに控除をGHQと交渉して国内立法化し、連合国人に適用しようというのであるが、はたして連合国人に適用できるであろうか。適用できないとすれば四條二項を国内立法化する意味はなく、また同時に著作権法の二十八條を改正しなければならない問題を生ずる。およそ條約違反である著作権法の特例法は著作権法二十八條によつて外国人に適用できないことは明らかである。何となれば二十八條においては、特に著作権法自身が直接條約の適用があることを認め、外国人の著作権に関しては條約が国内法に優先することを規定している。ゆえに国内立法によつて條約違反または條約と異なる拡張解釈をしても国内法をもつて條約に対抗または優先することはできないから無意味である。ゆえに連合国人にとつては、日本人に有利で連合国人に不利な特例法があれば著作権法二十八條に援用し特例法を捨てて條約をとり、これを日本の裁判所で主張することになろう。要するに外交交渉によつて定めるべき事柄を国内法の第二條約化という形で具体化するのは不可である。なおGHQのオーケーというのも正式のものであるかどうか、独立国となつた今日ではどうかと思う。そうすると本法ではかんじんの連合国人は適用を免れ、日本人だけが、三條、四條二項、六條、七條で押しつけられて、ただ混乱に陥るだけである。ともかく著作権法の特例法であるから著作権法二十八條と四條二項の関係をよく検討願いたいのである。 原文には「発生」とあつて承継取得を含んでいない。この場合承継取得の規定を入れると日本人に不利となる。原文にない不利な規定を入れる必要を認めない。なぜ取得としたかというと、これも戰時加算期間値引の趣旨から出ている。すなわち第二條の国籍規定と関連して、国籍が連合国人から非連合国人に移つた場合など、非連合国人の間だけ控除しようというのである。しかし国籍の移動と取得日の証明をどうしてつけるか、七條では登録が絶対必要要件となつていないから、この規定の事実上の適用はおそらくできないであろうし、また登録を強制すれば條約違反となる。要するに原文の通り、「発生」にだけとどむべきでこのような拡張解釈は許されず、特に條約の効力が発生のとき連合国の有する著作権を全都保護しないと、やはり條約違反を侵すことになる。 第三といたしまして、第六條の時に関する効力の規定は、括孤の中で「前二條」とあるのは第四條の誤りではないか。第五條を加えると、開戰時よりも六箇月前へ出ることになる。今度は第四條の規定の期間を加えると四條第一項と二項の取扱いがごちやごちやになつてしまう。原文の規定のような仕方に修正すべきである。 英語の原文の方がわかりやすい。翻訳を少しかえてみればなおさらよくわかる。たとえばハヴ・コンテイニュード・イン・フオース・スインス・ザアツト・デートは、開戰前日以後効力を強制的に延長するという意味であり、サツチ・ライツは前項の延長された諸権利であり、エクスクルードは含まれないという意味である。よつて英文そのままの方がわかりやすく一点疑問の余地がない。ことさらに三條、四條二項、六條、七條のような規定を入れてまわりくどく解釈を行い混乱さす必要はない。 次に中心規定四條二項とこれに関連しているニ條、六條、七條を條約違反ということで削除すると、この法律は骨抜きになつてしまう。 四條二項は今後少くとも二十年後でなければ事実上適用の問題を生じないと思われるが、二條、六條、七條の規定は、ただちに効力を生じ、前述のように日本人だけが混乱を来し迷惑する。その他はさきの意見書に述べた通りである。要するに、英文の原文だけで正しく、ことさらにこのようなまわりくどい解釈は必要としないのである。と、大体の疑問の点と意見を述べられておるのでありまして、私は権威ある日本著作権協議会のこの法案に対するところの批判というものを、全幅的に認める一人なのであります。しかしながら、政府といたしましては、必要やむを得ずという見解のもとにお出しになつておるのでありまして、この提案理由の説明、これをも私たち了承することもできるのでありますので、政府といたしましては、この法案に対する権威ある批判に十分耳を傾けられまして、この法案の運用というものに対して、心して行くべきではないかと思うのであります。大体この法案に対して著作権協議会——いわゆるこの法案に直接利害関係を持ちます関係団体の要望というものをいれるべく、ここに附帯條件を付して賛成をいたしてみたいと思うのであります。この著作権協議会のわれわれに提出せられましたところの意見を尊重いたしまして、なおこれに対する希望その他があるものでありますから、附帯希望というものを別に取扱うことにいたしまして、政府といたしまして、この法案の持つておりますところのいろいろな欠陥があると思うのでありますが、これも至急に運用面において注意をし、将来非常に利害関係の大きい重大なる意味を持ちます著作権のこの特例法を重要視し、慎重を期してこれを実施して行くということを希望いたしまして、賛成をいたしたいと思うのであります。
○竹尾委員長 次に浦口鉄男君。
○浦口委員 私は第三倶楽部として反対の意見を述べます。片に私この法律案を多く取扱つたような気持を持つておりますので、私の立場において、反対の意見を一応逐條的に簡単にはつきりしておきたい、こう思います。 第一に、この條約は戰時中発生した権利にも、全戰時期間を加算するという旨が規定されてはおりますが、この法案はその期間を短縮しようとしております。すなわち柴田課長の説明によれば、有利にする、日本人に非常に有利な法律である、こういう答弁をされておりますが、これは対外信義の問題にもからんで参りますし、また條約違反の疑いが非常に濃いということは、日本が独立して間もない現在においてこういう拡大解釈をするということは、われわれとして非常に大きな疑問を持つものであります。なお、憲法九十八條にあります「日本国が締結した條約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」というこの條項にも違反する疑いが濃厚でありますので、われわれはこの点非常に遺憾だと思うのであります。 第二には、條約には「生じ」すなわち原語ではアライズンとあるのを、この法案では「取得」と改めたために発生し参りましたいろいろの日本人に対する不利であります。すなわち「生じ」とあるのを「取得」と改めたために、概念が非常に広くなりまして、承継取得、譲渡取得を含む、こういうことになつたのであります。そこで、発生した承継取得以外に、相続、譲渡まで含めることになる結果は、條約に規定しないものまで保護することとなりまして、日本人の負担を増して、非常に不利になるという結果を来すのであります。 第三には、相続、譲渡、質入れ等について、法案は登録税を規定しておることは、著作権協議会その他からも論議の的になつておるところであります。申すまでもなく平和條約には権利者による申請を必要とすることなく、またいかなる手数料の支払いまたは他のいかなる手続の履行も要しないで云云という條項と照し合せましても、それは非常に論議の的となることは申すまでもないと思うのであります。これも結局はアライズンを取得と改めた結果でありまして、発生をそのままとしておけばこれらは不要となつり、問題も起らなかつたと思うのであります。政府の説明員は、登録税はとれるだけとるのが得だというような答弁もされておるのでありますが、これもこの対外的の立法といたしましては、私は非常に軽率なようにも考えて遺憾に思う次第であります。 第四番には、六條の括弧内に「前二條」とありますために、翻訳権については、不当に外国人の権利を保護することとなるのであります。技術的にも戰争開始前六箇月にさかのぼることになるということは、これは非常に大きな矛盾であると思うのであります。 第五番目には、この法案の中心であるところの四條二項が一番早く適用される場合を考えましても、二十年後に起る問題であります。しかもその起算点がトラブルの原因となつて、文部省がいう有利とは、実際になるのでありますか。むしろトラブルを多くして、有利な点が生きて来ないというふうな結果が生ずるのであります。そういう疑問を押して、また業界の混乱をあえてしてまでこの法案の成立を強行することは、まつたく不合理であり、われわれとしては奇怪しごくだとも言えるのであります。もちろん立案者の誠意そのものを、われわれは全面的に否定するわけではありませんが、われわれは議員の立場において、文部省の顔を立てるだけでこの法律を通過させることによつての著作権協議会加盟の諸団体あるいはその他の諸団体がこうむる損害を、われわれが共同分担する、こういうわけには行かないのであります。 第六番目には、日本著作権法第二十八條と四條二項の関係においても、この立法の意義、目的はまつたく矛盾をするのであります。著作権法第二十八條は、「外国人ノ著作権付テハ條約二別段ノ規定アルモノヲ除ク外本法ノ規定ヲ適用ス」。すなわち簡単に申しますと、條約優先を規定しておるのであります。そこで連合国及び連合国人は、條約優先、国内法には従わない、こういう結果が出て参りますので、この法律の実際に適用を予想されるのは日本人ばかりでありまして、すなわち日本人だけが不利な点から免れないで、連合国人はその不利な点については国際法優先の建前に立つて、必ずしもそれに従う必要がないという非常に矛盾が出て来るのであります。 第七番目には、戰争期間及び占領期間に起つた著作権問題の解決についての経過措置こそ必要だつたのでありますが、これがないことは、非常に業界としての大きな損失をそのままにしておくという文部省の大きな占領期間中における五十年フィクシヨンの責任がごうも解決されていないということで、非常に遺憾だと思うのであります。 なおこの法律案は、参議院が通過したいうことによつて、いろいろ論議もありますが、参議院の論議をわれわれがしさいに検討いたしますと、必ずしも本法律案の本質をついていない。むしろ的はずれの論議が多いということも考えられるのであります。たとえば、日本人の著作権を外国において有利に扱うというふうなことを、参議院では論議をしておりますが、これは法律案とは全然関係のない的はずれの論議だということが、われわれとしては考えられるのであります。はなはだしいのは、ある議員でありますが、複雑難解でこの法律はわからないから、まあ賛成できないから反対するというようなことを記録に残していることは、これは国会の権威にも関すると思うのです。なお政府当局並びにこの法律案の立案に努力されたという勝本参考人は、この法律案は講和発効前に立案し、連合国司令官のオーケーをとつてあるので、というふうなことを言つておられますが、これは自主独立の今日において、私は不謹慎な発言ではないか、また占領ぼけ的な考えであるということを、非常に遺憾に思うのであります。時期的にも非常に、ずれがありまして、現在この法律案を無理に通すべき理由が、非常に薄弱であります。前局長の某氏は、あつても害はないだろうということを言つていますが、そういうよう根拠でわれわれが法律案を通すということは、国会の責任においてとうていできないことであります。 以上いろいろ申し上げましたが、この法律案は、私最初から意見を持つております通り、政治的立場とか、あるいは選挙とか、そうしたいわゆる党利党略とか、利害というものに関係のない法律案で、われわれはこの文化立法については、何とかすつきりした論議をして、あくまで文化人に笑われないような——国会は、ともすれば文化性を非常に云々せられております現在において、りつぱなものをつくりたい、こういうようなことでやつて来たのでありますが、その意図が達せられなかつたことは、われわれとしては非常に遺憾に思うわけであります。しかもこれは国内立法と違いまして——国内立法でありますならば、われわれ現在の経済情勢あるいは政治的含み、いい意味の妥協その他によりまして、ナッシングよりベターな法律を通すというようなことも、われわれ経験して来たわけでありますが、これは対外的な法律でありますので、国際信義の問題、また国内法が外人に優先的に効力を持たないというふうな根本的な問題において、この法律はもう少し厳重に検討されるべきであつたと思うのであります。 文部省の今国会に提案された法律案が、いろいろ与党である自由党の事情その他によつて、あるいは否決され、あるいは大修正をされて骨抜きになり、非常に黒星続きであつた。そのために大臣初め政務次官あるいは委員長が、非常に御苦労になつたことはわれわれもよくわかるのでありますが、そういうことをもつて附帯決議をつけるというふうな、非常に変則的な形をもつてこの法律案を通すということは、立法府としても、私この法律案そのものについてでなしに、根本的に大きな問題が今後に残ると思うのであります。そうした意味合いから、われわれはこの法律案はもう一度慎重審議するために、継続審議を主張いたしまして、八月の末に開かれるであろう通常国会において、文部省もよき案をつくり、なおその間において著作権協議会その他の関係団体とよく連絡をして、国際的にもりつぱな法律であり、なお国内にあつても、国民の利益をより守り得る法律としたいということを主張したのでありますが、与党自由党並びに政府の政治的なる立場によつて、この法律が通過せざるを得なかつたことは、まことにわれわれとして遺憾に思う次第であります。 以上、反対の理由を述べる次第であります。
○竹尾委員長 次に受田新吉君。
○受田委員 私は討論の通告を取消します。
○竹尾委員長 次に渡部義通君。
○渡部委員 共産党は、この特例法が成立することには、絶対に反対であります。この特例法は、いわゆる対日平和條約の十五條(C)項に基いて、連合国人著作権に関する特例を設け、戰時加算期間を設けようとするものであります。共産党としましては、しばしば強調しております通り、平和條約そのものに根本的に反対であるという点からいつて、その平和條約の條項を、いわば具体化するものとしてのこの法案に賛成するということは、原則的にも絶対にできないわけであります、しかし、問題はそれだけにあるのではありません。問題は、本特例法というものが、その適用上非常にあいまいな部分が多いのと同時に、これは日本の著作権にとつて、非常な不利益を来すものであるという二点から、反対せざるを得ないわけであります。たとえば、適用上あいまいであるという点を申しますと、国際條約としての著作権法は、言うまでもなくベルヌ條約に根本を発しておるわけでありますが、本特例法で適用されるのは、ベルヌ條約の加盟国であると同時に、連合国であるという国に適用されるのである。しかしこのベルヌ條約に加盟している国は四十二箇国あるが、連合国は十六箇国であつて、他の二十六箇国は、つまりこの適用を受けないことになる。しかも連合国中、ソビエトとかアメリカとか、こういう大国がベルヌ條約に参別しておらない。従つて、べルヌ條約の非加盟国であるアメリカ人あるいはソビエト人の著作権の場合、本法案との関係がどうなるかということも、まつたく明瞭を欠いておるわけであります。しかも対日平和條約といわれるものが、アメリカのえてかつてな不法な仕方によつて処置された結果として、ソビエトとかインドとかいうような国々が、まず本條約を承認しておらないし、また中華人民共和国——日本の文化にとつて非常に深い関係を持ち、今後もますます深い関係を持つて来る必然の傾向にある、必然の情勢にあるそういう国が、この著作権に関する特例法の対象とはならないことになる。こういう問題を解決しなければならぬのに、こうした重大な日本との文化的な交渉のある大国の著作権問題が、全然これによつては解決される道が見出されないという点を、われわれは深く考慮しなければならぬと思うわけです。 また日本人の著作権者、ことに日本の場合に最も大きい関係を持つのは、飜訳権でありますけれども、この日本人の飜訳権者にとつては、きわめて重大な被害が現実の問題として出て来ておるのであります。たとえば、政令二百七十二号によつて飜訳著作権というものは、原著作権者あるいは仲介者の手に帰してしまつておるのでありまして、実際上その時から日本側の飜訳権者は、原著作者並びに出版社側に対する義務を履行して来ておる。つまり印税を払つて来ておる。原著者側または著作権者はそれによつてすでに実益を得ておるのであります。とこるが、ここに非常に大きな問題が実際のケースとして起きております。これは皆さんにぜひとも聞いてもらわなければならぬ事柄であります。それはシートンの有名な「動物記」の飜訳権問題であります。この「動物記」の日本語の飜訳者として内山賢次氏がシートン夫人に交渉しまして、シートン夫人がイギリスのクリスチャン・モーア社に動物記の著作権を管理されておるからというので、このクリスチャン・モーア会社に照会しまして、その承諾を得て印税を七・五%という形で支払つておつたのであります。とこるがアメリカのトーマス・フォルスターという人が交渉権を持ちまして、強引に交渉権を独占しまして、九%に印税をかつてに上げて、この結果、飜訳者である内山賢次氏及び出版業者が非常に大きな打撃を受けておるわけであります。こういうふう実際上戰時中いろいろなこういうケースが起きておるわけでありますけれども、こういうヶスを救済すべき方法が何らこの著作権特例法の中には見出されないことによつて、今後とも——この種の日本人の飜訳者というのは、御存じの通り非常に多い、この飜訳者が非常な不利益を現実上にこうむらなければならないという結果を来すわけであります。こうした点からいつて、日本人にとつては日本の著作権者が外国に対して権利を持つというようなことよりも、むしろ非常に多く外国の著作権者が日本において権利を持つ、しかもその権利が、日本人の場合には飜訳権者に対するものとして出て来るのであつて、その翻訳権者が非常に大きな不利益を日本の出版者と同時に受けなければならぬ。これを救済する何らの道もない。われわれはこの点を最も現実的な問題として考えてみなければならぬし、もしこのような法案ができて、日本の著作権者及び出版社が今申し上げたような一つのケースのような場合が今後も続々と出て来るようなことがあるとしますならば——これは現実にありますが、そうしますと、日本の文化的な興隆というようなものが非常に妨げられざるを得ない。こういう現実的な点からも、私たちはこの法案を成立せしめてはならないというふうに考えておるわけであります。 だからいろいろ法律的な解釈としては著作権協会の方からも意見書が出ておりま考に、法律にはいろいろな不備な点が多いし、また現実の利害関係の問題として、われわれは日本の著作権者、ことに翻訳著作権者の利益を守らなければならぬという立場から反対せざるを得ないわけであります。しかもこれは、ごらんの通り著作権協議会には、日本のあらゆる文化的な団体が全部参加している。このあらゆる文化的な諸団体が非常に反対しているのに、日本の著作権を守るために、日本の翻訳著作権者の利益を守るために、従つて日本の文化的な興隆というものを十分に日本の利益のために高めて行こうとするその立場から反対をしている。この反対を押し切つてまで、なぜ今このような法案を緊急に通さなければならぬのか。このことについては、何らの理由もないはずだ。もしもほんとうに日本の著作権をわれわれ国会が守らなければならぬという責任を感ずるならば、これは当然延期して継続審議に付して、著作権協議会を代表するとこるの、現実に日本の文化活動に参加している各方面の意見を十分に取入れて、日本の文化を守るための法案をこそつくらなければならぬわけでありまして、今急いでこのような法案をつくつてしまつて、ことに問題は対外関係の問題であるだけに、日本にとつて長い聞の不利益を残すようなことを、国会は断じてすべきではないと私は考えるわけであります。こういう考えから、私は日本の文化をほんとうに国会が守るうとするならば、今日ただちにこれを採決に付するというようなことをせずに、継続審議に付して、あらゆる文化団体の、また利害関係者の発言を十分に国会は取入れて、新しい特例法をつくるべきである、こういうふうに考えるわけであります。
○竹尾委員長 次に坂本泰良君。
○坂本(泰)委員 私は社会党二十三控室を代表しまして、反対の意見を申し述べたいと思います。 本法律案に対する反対の見解は、浦口委員から詳細に申されましたから、すべてこれを援用しまして、二、三の点を申し上げて反対の立場を明らかにしたいと思います。 第一は、條約と国内法の問題でありす。もちろんわれわれは、この條約には反対の立場をとつたのであります。しかしながら、民主的にここにに成立しました以上は、悪法も法なりで、これを国民の名において改正するか廃棄するまでは、これにやはり従わなければならぬ、かような立場をとりまして、條約十五條(〇)の規定を考えまするに、この條約の内容にはいろいろありまするが——文化的な條約は、従来いろいろとり行われておるのでありまするが、国際的におきまして、文化的な問題は、双方対等の内容並びに権利義務の関係で條約が規定されておるのであります。従つて、この條約について日本国内だけの理解に不十分な点を明らかにする、この点はいいのでありますが、その條約の規定の解釈を法律で定める必要ができた、この点についてはどうしても承服できないのであります。従つて、急いで国内法的に解釈の法律をきめる場合においては、やはりこういう相互的の條約におきましては、国際的、海外的の問題も十分考慮して国内法を立案すべきか、最も妥当な方式だろうと思うのであります。しかるに、本法律案は、いまだ海外の文化的の関係の見通しがつかないのに、国内的の日本人のみを拘束し、あるいは適用する法律をつくりましても、そこに非常な困難な問題が生ずるのであります。第一にあげられますのは、三條、七條、六條の問題にいたしましても、これがいかに国内法的に充実いたしておりましても、條約違反という問題になりましたならば、何ら効力がないものでありまして、しかして三條、七條、六條、こういう規定を除外いたしますると、ほとんどこの法律案は骨抜きになる、こういうことになるのであります。従つて、骨抜きになる部分だけをつかまえて、しかもまた日本人にだけ義務を負わせて、そうして連合国人には條約違反として及ばないような法律をここに規定しましても、その効果からいたしまして、非常に日本人に不利な立場になる、こういう結果になると思うのであります。ことにこの著作権の問題は、権利義務の関係が、外国人との間に非常に密接いたしまして、もしもこの條約により日本人が国内法を履行しましても、條約違反として連合国人との間に権利義務の関係が生じまして、莫大なる損害賠償の要求でも受けるというようなことにでもなりますと、日本人においては法律を遵奉して、しかして対外的の関係でその賠償の義務を負わなければならぬこういうような結果が発生いたしますと、せつかく日本人のためにできた法律が、それを遵奉したために非常な不利益を来す、こういう結果が来るのではないかと思うのであります。 かような点からいたしまして、この法律案はもつと内容をしさいに検討いたしまして、しかもまた、この著作権につきましては、戰前のいろいろ関係もありましたし、ここにあらためて條約を締結するにいたしましても、やはり従来の慣例その他が十分そこに考慮されなければならない。従つて参考人を呼びました際にも、勝本氏一人が賛成でありまして、出版社その他の実際家の方はこういう法律がない方がいい。現在実際上行われておる、これで少しもさしつかえないから、この法律の必要はない。他の三省の参考人の意見はそうであつたと記憶いたすのでありまするが、そういうような関係で、この法律案に対しては、何をもつて急いでここにつくらなければならないか、われわれといたしましては、と内容をしさいに検討し、いろいろこれからこういう文化的な国際的なとりきめなんかもできるのでありますから、そういう見通しをつけましてやる。そうするためには、やはり継続審議をして、次の国会でさらに慎重に審議をして、そうしてこれをきめなければならない、かような立場をとつていたのであります。ところが、本日になつて急に、自由党の方針かどうか知りませんが、ここに決定をしなければならない。この点について、まことにわれわれ遺憾に感ずるのであります。 なおこの文部省関係の法律案が、ほとんど本国会が四回も延期になつて長期間にわたつておるにかかわらず、通過しなかつた。そういう体面上でも、この法律を通過しなければならないという政治的意図がここに含まれているということでありましたならば、それこそ国民の権利義務の擁護者であり、その秩序の維持者でなければならない国会において、その内容においても、また時期的に考えましても、そう急ぐ必要のないものを、ここに閉会幕切れに際してこれを通過させて、政治的にこれを利用する、体面を保つ、こういう点は、私は逆に国民の不信を買い、かえつて文部省に対するところの——単なる通過という名目にとらわれて、実質的の不信を買うということになりましたならば、やはり国民の文教の府であるところの文部省としては、この点は誤つた行き方ではないか、かようにも考えられるのであります。 以上申し上げました理由によつて、本案に対しては反対をいたすものであります。
○竹尾委員長 これにて討論は終局いたしました。 これより採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○竹尾委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。 この際若林義孝君より、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案に対しまして、附帯決議を付する動議が提出せられております。本動議の趣旨の弁明を求めます。若林義孝君。
○若林委員 先ほど連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案に対する討論中、大体の趣旨の弁明をいたしたのであります。それゆえにその趣旨弁明は省略をいたしまして、附帯決議案の本文の朗読をいたしたいと思います。 連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案に対する附帯決議案 本委員会は連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案に対し、次の附帯決議を附する。 一、條約施行のための法律案の作成に当つては、政府は先ずその條約文の條理に基く正解に立脚し、その真義を明示するに努めるべく、苟くも條約文と異る内容を含むが如き観を呈する法案は、極力これをさけるべきであることは、今更多言を要しない筈である。 本案件は、外国人の著作権に関する條約についてのものであり、現行著作権法には既に、條約が法律に優先するという原則も存在するがために若干考究の余地なきを保し難い。 政府はこれらの諸点に留意し、近く適宜の措置を講ずるべきである。 何とぞ御賛成あらんことをお願いいたします。
○竹尾委員長 ただいまの附帯決議案に対して討論の通告はありませんか。
○受田委員 今朗読された原案の中に、條約の規定と反するような字句または内容を含むような法律ということが、事実あるとするならば、これは政府自身が非常に不用意であつたのであるし、またそういうものを、国会がまだ疑義が抱かれたままで通すということは、これは非常に国会の権威にも関することであるから、そういう最初の條約と法律との関係についての文句を、国会の権威を尊重する立場から、何とか直す方法はありませんか。
○若林委員 これはそう明確には言うておらぬのです。一応そういう意味だが「内容を含むがごとき」というのです。どうぞひとつ御了承願いたいと思います。
○竹尾委員長 ほかに討論の通告はございませんか。
○受田委員 討論の通告をします。
○竹尾委員長 受田新吉君。
○受田委員 今のその字句に対して疑義があることは、どうもこの決議案に賛成しようと用意した私の決意をいささか鈍らしたのであります。とにかくこの際ひとつ勇敢に国会の権威を保持し、また政府を指導督励する意味の文句にいささか修正をくださるならば、賛意を表することを表明いたします。
○竹尾委員長 他に討論の通告はございませんか。 なければ、これよりただいまの動議につきまして採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○竹尾委員長 起立多数。よつて動議のごとく附帯決議を付することに決しました。 なお報告及び報告書の提出につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、さように決定いたしまして御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○竹尾委員長 さように決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後六時十一分散会