通商産業委員会 第36号
- 発言数
- 14 件
- 登壇者
- 3 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1952/05/15
会議録
○中村委員長 これより会議を開きます。 本日はまずドイツ人工業所有権特別措置令の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。中村幸八君。
○中村(幸)委員 私は簡単に本法案につきまして御質問してみたいと思います。まず第一に本法案の対象となつておりますドイツ人工業所有権の数はどのくらいあるか、その点を承りたいと思うのであります。 なおまたこの法案の実施によりまして、従来ドイツ人が持つていた工業所有権の最終処分が行われることになるのでありますが、これによつてわが国の産業あるいは技術の面にいかなる効果が及ぼされるか、具体的に御説明願いたいと思います。
○岡田(秀)政府委員 お答え申し上げます。ドイツ人財産であります工業所有権の数でございますが、現在登録になつている権利といたしましては、特許権で五千七十九件、実用新案権として千百八十二件、意匠権二十九件、商標権四千七百三十一件、合計一万一千二十一件と相なつておるのであります。出願中の権利といたしましては、特許出願が七百九十九件、実用新案登録の出願が百七十件、意匠登録はございませんで、商標登録が百九十四件になつております。 このドイツ人の工業所有権等が、今度処分権を持つております英、米、仏、三国によつて最終処分が行われることに相なるわけでございますが、ドイツ人が戦後持つておりましたこれらの権利について、現在までは管理保全の措置のみが講ぜられておつたのが、いよいよ最終処分ができる、いかなる処分が行われるであろうかということは、わが国の関係業界が非常に関心を持つておつたところでございます。ところがいよいよ最終処分の方法及び手続がこの法案によつて明らかになりまして、今後三国によつて行われる個々の処分決定と相まちまして、権利の処分が明らかになりますから、わが国の産業上ドイツ人の工業所有権の活用が一層円滑に行われるようになるであろうと考えられるのであります。しかしさらに特定の特許権等につきましては、三国によつてこれが取消されることになるのでありまして、一般の自由市場に解放されるという結果を招くのであります。これは産業技術の振興上裨益するところが多いかと思うのでございます。なおドイツ人の特許権等を取消されます結果、戦後わが国民が得ております実施権が同時に取消されるという結果を招くのでありますけれども、三国の意思を内々私どもの方で伺つたところによると、かような権利は大体一般に公開するということになつておりますし、しかもその実施権を与えますときに実施料をとらない、また無条件にいつでも取消すのだということで実施権が付与されておる関係もございますので、この点からもわが国に損害を及ぼすことはほとんどないように考えられるのであります。そのようにドイツ人の工業所有権関係の処分が明らかになりますことは、わが国民の上にむしろ裨益するところが多かろう、かように考えております。
○中村(幸)委員 ただいまの御説明で実施権を持つていた者については契約によつて損害がないからかまわないということでありましたが、実施権を取消されますと、従来実施権を持つていた日本人が相当損害をこうむるおそれがあると思いますが、この実施権者の保護という点については、何かお考えになつておりますか。
○岡田(秀)政府委員 実施権に二種あると思います。従来ドイツ人財産である特許権につきましても、戦前の契約に基きましてわが国民が実施権を持つております場合においては、今度の改正法の適用はないのであります。従来の特許法の規定によりまして引続きわが国民は実施権を持つことができるわけであります。本令の十一条の規定によりまして、管理保全中の間に三国の許諾によつて設定せられました実施権につきましては、特許権等が取消されますれば、それに基くわが国民の実施権も取消されることになるのであります。しかしこの実施権は、三国の代理者としての総司令部が実施権を与える際に、実施料はなく、しかも独占権もなく、いつでも取消すことができるのだという条件で付与されておるのでありますので、実施権をもらつている者もかねて覚悟はしているところであります。なお三国側といたしましては、この種の実施権を付与しました特許権等につきましては、権利を取消して一般に公開する予定であると申しておりますから、実施権者は実施権を失いましても、引続き実施権の内容であります発明、考案は実施できるわけでありますので、わが国民といたしましては被害を受けることはまずなかろうと思います。
○中村(幸)委員 ただいまの御説明でよくわかりました。 次に本法案と平和条約二十条との関係について説明願いたいと思います。なおこの法案の内容に関しまして、後日これを修正するために英、米、仏三国との間に折衝する必要がありはしないかと思うが、この点もあわせて御説明願いたい。
○岡田(秀)政府委員 この法律案は平和条約第二十条を実施するために提案を申し上げておる次第でございます。すなわち一九四五年のベルリン会議の議事の議定書に基きまして、英、米、仏三国は日本にあるドイツ財産を処分する権能を持つておるのでありますが、第二十条によりますれば、この三国の処分を確実ならしめるために必要な措置をとり、これらの財産の最終的処分が行われるまで、これを保存管理しなければならない義務をわが国が負担しております。右の必要な措置は、占領期間中におきましても、前記英、米、仏三国の受託者としての連合軍最高司令官の指示に基きまして、ドイツ財産管理令及びドイツ人工業所有権特別措置令によりまして一部を行つて来たのでありますが、今回平和条約が発効いたしましたあとは、この二つの政令は効力を失つたことになるのであります。もつともこの管理令は法律にかえられて来ておるのでございますが、今度これを改正することになりましたのは、いよいよこの三国が最終処分を本式にやることになりますので、その具体的な措置を詳細に規定して行こうという目的に基くものでございます。 なお本法案の内容は三国の受託者であるところの連合国最高司令官から参りました覚書の趣旨に基いて成文化いたしたものでございますが、三国からも重ねて、右の連合国最高司令官の覚書は、自分らの希望するところであつて、その通りにやつていただくことが望ましいのであるということを確認して参つておりますので、この法案は三国の意思に合致しておるのでございます。さような関係で、平和条約二十条を実施するに必要な事柄を今回の法案で措置して参りたい、かような関係になつておるわけであります。 なお、この法律案の内容につきまして、三国と交渉してこれを修正する余地があるかないかという点でございますが、先ほども申し上げましたように、この法律案は、直接には占領中においての三国の受託者としての連合国最高司令官の覚書の趣旨に基いたものでございますけれども、同時に三国の意思と合致しておるという旨の確認があつたわけでございますから、日本政府といたしましては、平和条約二十条が存在する以上、この三国の要求に従つてドイツ人の財産である工業所有権の最終処分に必要な措置を法律できめる必要があるわけであります。ところが、ドイツ財産でありまするところの工業所有権の最終処分それ自体は、日本政府に何ら関係ないことでございまして、まつたく三国の権限に属する問題でございます。日本といたしまして、三国に対し、ドイツ人の工業所有権をいかように処分してくれということについて、かれこれ申す余地のないことは当然でございます。また、それに伴いまして、それを確実にさすために必要な措置も、平和条約で義務を負つておるのでございますから、この法案の内容の趣旨につきまして、三国と交渉して修正することはまずむずかしかろうと存ずるのであります。
○中村(幸)委員 そういたしますと、この法案は平和条約第二十条に基いて提案した。しかも三国の覚書の趣旨に基いて最終決定をする。こういうことでありますので、わが国といたしましては何らこれに容喙する余地はないと思うのでありますが、そういたしますると、この法案を実施することによりまして、わが国がドイツから損害賠償の請求を受けることはないのでありますか、そう考えてよろしゆうございますか。
○岡田(秀)政府委員 英、米、仏の三国は、一九四五年のベルリン会議の議事の議定書に基きまして、日本にあるドイツ財産を処分する権利を持つておることになつておるのであります。この三国の決定に従いまして、日本は平和条約第二十条に基いて三国の処分を確実にするため必要な措置をとるという立場にあるわけでございますから、日本がドイツ人に対して責を負うということはないと考えておる次第でございます。
○中村(幸)委員 この法案は、日本におけるドイツ人の工業所有権に関する措置でありますが、逆に、ドイツにおいて日本人が持つておるところの工業所有権はどういう取扱いを受けておるのか、また今後継続して行くか、その点をお答え願います。
○岡田(秀)政府委員 平和条約の第十六条の規定によりますると、ドイツにある日本国及び日本国民の資産またはこれらの資産と価値のひとしいものを赤十字国際委員会に引渡すことになつておるのでありまして、この資産という中に工業所有権が含まれるかどうかということは、目下検討中でございます。もし工業所有権が、この十六条にいう資産の中に含まれるものと、かりにいたしましても、この条文の中には、ある一定のものを除外するという規定がございますので、それによりますと、日本人が一九四五年の九月二日以後に貿易、金融関係再開の結果といたしまして、ドイツにおいて取得した工業所有権は除外されるのであります。根本的に資産の中に入るか入らぬかということにつきましては、今後なお折衝検討を加えたいと存じております。
○中村(幸)委員 私の質問はこれで終ります。
○中村委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ、本案に対する質疑はこれにて終了いたすことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なければ、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。 本日はこの程度にいたし、明日午後一時より委員会、委員会終了後、地下資源開発及び合理化に関する小委員会を開会いたします。本日はこれにて散会いたします。 午後二時三十七分散会