地方行政委員会 第77号
- 発言数
- 31 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1952/07/30
会議録
○野村委員長代理 これより会議を開きます。 委員長が所用のため、理事の私が委員長の職務を行います。 本日はまず請願について審査をいたします。 まず請願日程第一、農業協同組合連合会医療施設に対する固定資産税免除に関する請願の要旨を申し上げますと、各都道府県厚生農業協同組合連合会は、農業協同組合法による非営利団体として、全国に百五十有余の病院および三百余の診療所を有し、官公立病院に次ぐ施設を持つ全国農村の公共福祉施設として多大の役割を果しているにもかかわらず、同連合会のこれら施設が課税の対象となり、同じく公的医療機関である地方公共団体組合、普通国民健康保険組合等が非課税となつていることは、はなはだ不合理である。ついては同連合会医療施設に対する固定資産税を免除されたいというのであります。 日程第二、第三の医業に対する特別所得税撤廃の請願の趣旨は、医業を特別所得税の対象とすることは、特別所得税は事業税の変形であること、社会保険の正しい普及を阻害する、医業には農業以上の統制が加えられている、医業は営業ではない等の理由のごとく、同税の性格、経過等より見て、はなはだ不当であるから、法を改正し、医業に対する同税を撤廃されたいというのであります。 日程第四地方財政平衡交付金法の一部改正に関する請願の趣旨は、定時制高等学校は、教育の性格上分枚数を多く持ち、その分校は校舎、教育施設が貧弱なため、多額の費用を必要としており、生徒数のみで一率に教育費測定單位を決定されては分校の運営はとうてい不可能であり、現在各府県は基準額以上多額の経費を負担している状態で、もし現行法規のまま放置するにおいては、分校教育の維持は困難である。ついては地方財政平衡交付金法第十二條の測定單位を、生徒数のみならず、学校数、学級数を含めた算定基礎とされるよう改正されたいというのであります。 日程第五、高等学校定時制分校建築費の起債認可に関する請願の趣旨は、高等学校分校建築はもつぱら地元町村の負担で行われているが、分校所在の町村はおおむね山間僻地に位置し、経済的能力微弱な上に、新制中学新設のため多大の経費に悩まされ、各町村の定時制分校教育制度の必要性は十分認めながらも建設不可能の状態にあり、三箇年を経た今日、依然として仮校舎をもつて糊塗している状態であるので、高等学校分校建築費の起債を認可されたいというのであります。 最後に日程第六、地方負担道路費の起債認可に関する請願は、最近における自動車の激増と道路輸送の進展により、道路、橋梁の整備は一日もゆるがせにできない公共事業であつて、財政の窮乏を口実として傍観することを得ない情勢下にある。ついては道路、橋梁の整備に要する経費の地方負担額に対しては、全面的に地方起債を認可されたいという趣旨であります。 これら六件の請願はいずれもその趣旨妥当と認め、採択の上内閣に送付することにいたしたいと思いますが御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野村委員長代理 御異議なしと認め、さよう決します。なお報告書の作成その他に関しましては、委員長に御一任を願います。 —————————————
○野村委員長代理 次に陳情書について審査をいたします。 陳情書日程第一、町村に対する平衡交付金増額等に関する陳情書より日程第三〇、衆議院議員の職務に関する陳情書に至る各陳情書の趣旨につきましては、すでに文書表によつて御承知のことと存じますので、これら各陳情書は、いずれも委員会において了承することにいたしたいと思いますが御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野村委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○野村委員長代理 これより派遣委員より報告を聴取することといたします。 すなわち去る八日の委員会において呉市における治安状況調査のため委員を現地に派遣することに決定し、議長の承認を得て河原伊三郎君、鈴木幹雄君及び大石ヨシエ君が現地を調査されましたので、これよりその報告を聴取することといたします。河原伊三郎君。
○河原委員 駐留軍の関係によつて呉市の治安状況が非常に異変を来しているということに関しまして鈴木幹雄君。大石ヨシエ君と私の三名が委員派遣を受けまして、調査におもむいたのでございますけれども、まず関係当局、すなわち市の警察、市の公安委員会及び間接ではありまするが、治安の上に大きな責任を持つておりますところの市長並びに国警広島管区本部長、広島国家地方警察、それらの方面と、それから他面個々の被害者につきまして、その実情の調査並びに市の議会、新聞人、それから一般市民等につきまして、輿論の状況また実地に夜出歩きまして、一般の市民が安定で直ない状態にある、または不安的な気分があるかというふうことを実地に調査するなど、相当広範囲にわたりまして、綿密に調査いたして参つた次第でございますが、その報告書はかなり長文でございまして、ようやくでき上りましたが、いまだ印刷に付して皆様のお手元に配付するまでに至つておりません。従いましてこれを速記録に載せることによつて皆様の御了承を得たい、かように存じている次第でございます。右御了承をお願い申し上げます。
○野村委員長代理 ただいま派遣委員よりの報告を概要お聞きとりいただきましたが、これに対して御質疑がありましたら……。
○立花委員 報告がなかつたわけなんですが、報告は追つて報告書をつくつてそれを速記録に載せるということなんですが、それについても私非常な疑問があるわけです。具体的な報告がここにされまして、それに対して質疑をかわしてその上で速記に載るというのならわかるのですが、どういう報告量感かできているのか、あるいはできつつあるのか、それがわからないで、そのまま速記録に載せるということは私ども了承いたすわけには参らないと思う。その点が第一に私疑問なんです。なぜそういう取扱いをされるのか承りたいと思います。調査に行かれてからもう相当日がたちます。十日以上もたちますし、事は重大な問題なので、やろうと思えばやれなかつたことはないはずだ。国会の最終日に当ります本日、ただいまのような非常な漠然たる、まつたく何のために行つたかわからないような報告をされまして、それで、具体的なものはあとでつくつて速記録に載せる、これは私納得行かない。その点をひとつ御説明願いたいと思います。
○野村委員長代理 ちよつと立花委員さんに御了承いただきますが、今大体派遣委員の方からの詳細にわたる報告書は現地の状況をすつかり収録しまして大体の報告が出ているのです。ただ時間と事務上の関係で、まだこれを印刷してお手元に配付する時間がないのでありますが、でき次第配付することにいたします。幸いほかの派遣委員の鈴木さんも見えておりますので、ただきよう御報告の前に印刷物を配布できなかつたことは事務上遺憾ですが、どうか御了承願つて、御審議がしにくいかもしれませんが、もしお尋ねがありましたらば、この際お願いします。さらにまた後刻報告書をお手元に配付いたしまして未了の分は十分にやつていただいてもけつこうと思いますから、どうぞ御了承類います。
○立花委員 審議がしにくいかもしれませんと言うが、何も審議する材料が全然出ていない。審議のしようがないわけなんです。口頭ででもいいから調査の具体的な條項に関する報告があり、あるいはそれに対する調査に行かれた方の意見なり処置なりに対するお考えを述べられて、初めて審議の材料が得られる。審議の材料は何も出ていないじやないですか。そういうことでこの重大な問題がやみからやみに葬られることは私ども納得できない。そういうことでなしに、かつてにでつち上げたかもしれないようなものを速記録に残すことは、私ども了承できない。なぜそういう不明朗なはつきりしない態度をおとりになるのか。ああいう緊急に、正式の議運にもかけずに、しかも国会の慣例を破つておやりになつたものを——あれだけ急速におやりになるなら、それだけ重要に緊急に解決しなければならない原因があつたから、そういう措置をおとりになつたのだろうと思うのです。しかるに今になつてまつたく報告にも何にもならないような報告をして、あとは国会が終つてから速記録を見てくれというようなことで処理されて行く問題ではないと思う。そういう措置をとられるくらいなら、何でああいう緊急に異例の措置をとつて調査団を出したのか。少くとも開会中に結論を出し、はつきりした措置がとれるというふうなことをするために、私はあの措置をとつたのだろうと思う。しかも現在では国連軍との協定が問題になつておりまして、現在外務委員会で岡崎外務大臣が、その問題を発言している最中なんです。この問題と重大な関係がある。国連軍が犯している犯罪、国連軍の日本国民に与えている被害、こういうことも調査して、その結論を間に合わすということが重大であるにかかわらず、もう十日もたつているのに、何ら具体的な報告をしない。従つて結論も出せない、討論もできないというようなことは、まつたく国会議員として、特に調査に行かれた方として責任を果していないと思う。これは調査に行かれたんじやなしに、問題を葬るために明らかにしないために行かれたと言つても過言ではないと思う。だから人選にあたりましても社会党左右両派、あるいは共産党を全然除いている。自由党二人と改進党一人、それだけで行つている。しかもそれを便宜的に大石さんに切りかえただけなんです。そういうことで行つて、しかも結果はこういうような結果になつている。うやむやに葬ろうとしている。こういうやり方は明らかに国民を愚弄するものと言わざるを得ない。この責任をどうおとりになるか。
○野村委員長代理 立花委員さんの御質問ごもつともであります。しかしその意味でさつき概要について御説明申し上げたのですが、さらにここに派遣委員の方から詳細に調査の結果はいただいております。これによつて河原委員からさらに御説明いただいて、その上に……。
○立花委員 その前にもう一つ……。あれくらいのものだつたらやろうと思えば徹夜すればプリントは私はできないはずはないと思う。それをしなかつたことの責任がありますし、それから政府委員室には外務省関係一人も来ていない。外務省の連中にこれを聞かさなければだめなんです。なぜ外務省を呼ぶ措置をおとりにならなかつたか、これをひとつ聞きたい。
○野村委員長代理 さようの委員会においては、とりあえず派遣委員の方から実相報告をしたり、その状況によつて外務省関係を招致する。今外務委員会に出席をいただいているそうでありますが、とりあえず派遣委員から実情を御報告いたそうというので日程に上せたわけです。
○立花委員 外務委員会に出ているのは、外務大臣が今出て国連軍との協定の問題を話しているので、そのほかに外務次官もいるだろうし、ほかの者もいるわけです。それを呼んでいただけないはずはないと私は思う。 それからさつき私は報告書の問題を言いましたが、河原委員に尋ねますとあとで速記録を読んでくれということでしたが、御承知の通りきよう以後は国会はないわけです。審議ができないわけです。しかも外務省を呼ぶにしても、今委員長からここでとりあえず報告をして、あとで外務省をというお話がありましたが、国会が終つてから外務省を呼ぶということはたいので、しかも適当の措置をとれるはずはないので、やはりこの際呼んでいただく必要は私はあると思う。だから外務大臣が説明しておれば次官でもだれでもいいから、やはり外務省の連中を呼んで聞いておく。しかも報告に対する質疑応答なり、意見の開陳の中には当然政府が聞いておらなければならないものが出て来るのはあたりまえなんです。当然私はそういう措置をとるべきだと思う。委員長のお考えをひとつ承りたい。
○野村委員長代理 一応本日をもつて国会も終了されるようですが、しかし治安関係についてはさらに休会中といえども委員会を開会し、これを続行することができます。そういうことも先般委員会において委員長が一任を受けております。そういう点でとりあえず重要なことでありますから、派遣委員から実相の報告を聴取するという措置をとつたわけです。どうぞ御了承願います。
○立花委員 だから外務省を呼び出すのは、單に治安関係だけでなしに——もちろん治安関係もありますから、国警その他も呼んでいただいてけつこうだと思いますが、外務省を特に呼びたいと思いますのは、この呉におります国連軍との協定が今でき上りつつありまして、しかもこれが今日国会が終るのですから、国会が終つてからその協定が成立するというような過程にあります。これも非常に私遺憾なことだと思う。現在の国連軍の日本における状態がどうであるかということをはつきり知つてから、これを結んでいただかないと、国民に危害を与えるような、損害を与えるような国連軍がおつてもらつては困る。そういう協定には国民は反対なはずだ。その点に対する外務省の明確な見解なり、あるいは実態の認識をやはりはつきりしておかないと、国会が終つてから、もう国会に諮ることなしに、国連と協定を結んだのでは何にもなりませんので、單に治安関係だけでなしに、そういう重要な問題がありますので、外務省をお呼びいただきたい。
○野村委員長代理 今外務省関係は連絡をとつております。外務大臣でなくとも答弁できる者を今出席するよう、連絡をとつております。御了承願います。
○立花委員 だからその出席があるまで、やはり報告は待つていただきたい。
○野村委員長代理 報告をやつてから……。
○立花委員 報告を聞かせなければぼくはだめだと思う。報告を聞かすために呼ぶのだから、報告を聞かせて、報告に対する意見を求める、あるいは報告に対して、その出張した連中との質疑応答の中から、外務省がどういう意見をまとめて来るか、それを聞きたいので、報告が終つてから外務省を来さしても何にもならない。それなら何のために調査に行つて報告書をまとめるのか、報告を聞かすために、私は外務省を呼んでいただきたい。だから外務省が来てから報告さしていただきたい。それからもう一つは、これは單に外務省だけの問題ではありませんので、私あとで調査に行かれた方にも質問したいのですが、調査の結果どういう意見なり考えをお持ちになつておられるか。これは結論というような形式ばつた意見でなくてもいいのですが、とにかく調査された後において、調査された方はどういう意見をお持ちになつておるか、これをはつきり伺いたい。それからもう一つは、委員会として、そういう調査に基いた後の委員会の態度、これをどういうふうにされようとしておるか。さつきから何回も言つておりますように、今日で国会が終りますので、これはきよう一日かかつてもいいから、委員会としては明確な結論なり意見なりを出しておく必要があるのですが、委員長はそういう処置をおとりになるお考えがあつて、この報告をお聞きになるか、あるいは聞きつぱなしで、あるいは速記に載せておけばいいというような態度で、この問題を済まされるか、委員会の運営の面について、委員長のお考えを伺いたい。
○野村委員長代理 これは委員各位に派遣委員の人たちが宰相を報告されるので、日程に今上げているのですから、これはお考え方が違うかもしれません。従つてその結果、その報告によつて委員各位から、政府委員に質疑されることは当然ですが、それでよろしいじやないですか。それから委員長のこれに対する態度といたしましては、ます派遣委員からこの状況をつぶさに御報告をいただいて、そうしてその状況いかんによりましては、適当な処置に出なければならぬ。とりあえずその報告をお聞取りいただいて、その上で、それを速記に載せて、それで足りますかどうか、その報告の後に、委員各位が結論を出していただけばいいので、決してわれわれは、委員会としても問題の重要性に考えて現地派遣をやつたものでありますから、そういう点から具体的に御報告をいただいて、しかる後に、必要があれば理事会等に諮つて善処するのが当然であろうと、こう思つております。
○立花委員 私、普通の場合であれば、まだ開会の途中であり、きようあすに閉会が迫つているという時期でなければ、そういう扱いもいいかと思いますが、第十三国会はあと十数時間しか残つていないわけです。その場合に、報告を聞いてからゆつくりというようなことでは、実際の問題といたしましては、この問題がうやむやに葬られる危険がある、だからこそ、私は特に本日ただいま外務省の責任者を呼んで報告を聞かす必要があるし、それから委員会としても、具体的な意見なり、態度なりをはつきりまとめておくり必要があるということを申し上げているので、問題はきようという日に特に関連いたしております。問題の重要性もありますが、特にきようで終りますので、早急に態度をきめておく必要があると思います。その点について特に配慮願いたいと思うのですが、委員長としては、きようおやりになる意思があるのかどうか、それから、きようどうしてもできなければ、休会中といえども、早急に、あすにでも、あさつてにでも、まとめられる意思があるのかどうか、とにかく聞きつぱなしで、速記に載せつぱなしでほうつておくわけには参らない問題だと思いますので、この点をひとつ明白にしていただきたい。
○野村委員長代理 先ほど御答弁申し上げた通りでございます。現地報告の結果いかんによりましては、理事会等に諮つて適当な処置をとる。本日をもつてこれが対処できない場合は、休会中でもやり得られるのでありますから、まず河原委員から現地の報告をさらに詳細に承ることに御了承を願いたいと思います。河原伊三郎君。
○河原委員 報告書を朗読することによつて御報告いたします。 〔野村委員長代理退席、吉田(吉)委員長代理着席〕 報告書 呉市の治安問題について去る七月十五日東京発、翌十六日以降現地において調査したところ、その結果の概要は別紙の通りにつき、この段報告に及びます。 昭和二十七年七月二十五日 衆議院地方行政委員会 委 員 河原伊三郎 委 員 鈴木 幹雄 委 員 大石ヨシエ 調査員 丸山 稻 衆議院地方行政委員長 金光 義邦殿 報告書 目 次 緒 言 第一節 最近の国連軍関係治安状況 第二節 関係当局の処置及び態度 第三節 犯罪の発生原因及び予防策 第四節 市民の態度、人心の動向 第五節 現地の要望と将来の対策 以上 緒 言 さきに呉市の治安問題に関して、その実情を調査するため、地方行政委員会の決議により、議長の承認を経て現地に派遣せられることになつた調査団は、河原、鈴木、大石各委員に丸山調査員を加え、去る七月十五日東京発、翌十六日以降、広島、呉両市の現地において、関係各官公衙、新聞報道関係、国連軍関係労働組合等について調査するほか、不法暴行行為による被害者、さらに一般市民の声を聞くなど実情把握に努め、また夜間呉市内広地区の盛り場等を視察して認識の徹底を期した。 資料を徴し、あるいは往訪調査した関係官公衙のおもなるものは、国家地方警察広島管区本部、同県警察隊、広島地方検察庁、同臭支所、呉市役所、同市警察本部等であるが、市役所における調査には、呉市長以下幹部はもとより、市議会議長、市公安委員長も列席した。 なお広島県第二区選出、衆議院議員宮原幸三郎君、前田榮之助君の二君は、呉市出身代議士として調査の一部に参加された。 今回の調査の目的は、言うまでもなく、呉市における国連軍関係の犯罪や暴行事件に基く同市の治安状況の実態の把握にあつた。従つて調査の目標としては、伝えられる同市の治安事情について、その実際の程度、事案の真相を知るために、関係当局に資料を求め、その説明を聴取するとともに、一般輿論や市民の人心の動向を察知するに努めたのである。 しこうして何ゆえ呉市においてはかかる犯罪や暴行事件が頻発するのか、またその具体的事例の真相や類別、これらの事案に対して当局のとつた処置はどのようなものであるか、関係各官公衙では本問題についてどのような見解を持ち、どのような要望をしているか、一般市民の関心いかん、さらに呉市におけるかかる犯罪的事象を絶滅し、平和な地方都市として存立させるための当面の対策及び本問題の根本的解決をはかるための将来の対策はどのように考えるべきであるか。これら一連の項目について、調査団が各個の調査や視察によつて認識し、感得したところを総合的に概説すれば、大よそ次のごときものである。 以下項をわけて概説するが、統計的数字及び各個の犯罪事実の内容等の詳細は、当局の提出した資料に譲り、ここには掲げない。 第一節 最近の国連軍関係治安状況 呉市は現在人口十九万三千五百の旧軍港都市であり、終戦後は占領軍の一部が駐屯していたのであるが、この軍は英濠軍であり、朝鮮事変以来は国連軍が移動の際、戦線と母国との中継地として軍兵の出入がはげしく、呉市に駐在する国連軍人の数は不明である。すなわち現在呉市には旧占領軍の延長として、市の西部に濠洲兵が駐留しており、市の東部にはカナダ部隊が在泊しているが、その数およそ二、三千人、両者を合して今年初め約七千人と推定されるが、もとより常に移動しているので一定しない。 これに対し呉市の警察力は、警察吏員三百九十二人、その他を合して全員四百五十人である。自動車十五台、サイド・カー二台、三輪車三台であるが、現下の状況において機動力に十分でない。 かかる條件のもとにおいて、最近における同市の国連軍関係の犯罪状況を見るに次の通りである。 すなわち呉市警察本部の提出した資料及び桐原同本部長の説明によれば、本年四月二十八日から七月六日に至る講和條約発効後七十日間の事件の発生総数百七件、検挙総数八十四件で、検挙率は七八%となつている。罪種から見れば、最も多いのは窃盗の三十件で、次に器物毀棄二十四件、暴行十五件、傷害十二件、詐欺十一件、その他十五件で、凶悪犯としては強盗五件、強姦四件、放火未遂二件の発生を見ている。 これらの犯行の被疑者の国籍別を見ると、総数百七件のうち、カナダ兵によるもの六十一件、イギリス兵によるもの二十八件、濠洲兵によるもの十二件、ニュージーランド兵によるもの五件、不明のもの一件となつており、大部分はカナダ兵によつて行われている実情であるが、カナダ部隊は通過部隊で移動が頻繁なことが、犯罪多発の主原因となつていると認められるが、カナダ以外の他の部隊でも、時折艦船入港の際は、その乗組員の犯罪が起ることが多いとのことである。 右の数字ははたして何を語るか。これを一年前の同期すなわち昭和二十六年四月二十八日から七月六日まで七十日間における占領軍被疑事件に比較して見ると、発生件数九十八件、同人員百八十七人、検挙件数二十四件、未検挙件数七十四件となつている。この数字は日本警察と国連軍当局と協力して検挙し取扱つたものの数であるが、国連軍側だけの事件取扱数は、呉憲兵隊調査による資料によれば、右とまつたく同期において、事件発生件数は百五十二件、検挙八十五件、未検挙六十七件で、検挙率五六%となつている。 さらに角度をかえてこれを呉市における日本人犯罪との比較を見るに、本年同期において犯罪発生件数は日本人千六百三十二件に対し、国連軍将兵百七件、検挙件数は日本人千三百五十三件、八二%に対し、国連軍将兵は八十四件、七八%となつている。 さらにまた昭和二十三年以降、呉市における一般犯罪と、占領軍ないし国連軍将兵犯罪との発生及び検挙の推移を比較するに、一般犯罪は昭和二十三年より本年まで順を追うて、検挙率五七%、八六%、八〇%、八〇%、八二%となつているのに対し、軍関係犯罪は同じく昭和二十三年から順を追うて、二百三十九件、百七十一件、九十件、七百三十六件、最後の本年度一月から六月までは二百五十九件、検挙百三十二件、五一%となつている。 以上の数字を大観して考えられることは、條約発効時までは正確な数字を得ることができないので、前後の比較は確実にはわからないということである。そして昭和二十五年度に軍関係事件の少いのは、朝鮮動乱によつて在呉部隊の大半が現地に派遣されたためであり、二十六年に発生件数の多いのは、朝鮮動乱による交代兵が多いためである。 最も問題となるのは本年になつてから、特に講和條約発効のときから、はたして世上伝えられるように、かえつて軍関係犯罪が増したかいなかということであるが、これはにわかに断定しがたい事情がある。條約発効前は占領軍の処理にまかされていたので、日本側としては正確なことは知りがたいばかりでなく、被害者も泣寝入りする者が多かつたが、発効後はたとい少額の被害でも訴え出る者が多いので、数字的には多くなる。ともあれ日本独立後は、日本警察が市民の面前で暴行被疑者を逮捕し取調べるので、市民としても安心感と警察信頼感を増しつつあると、市警察当局は言つている。 第二節 関係当局の処置及び態度 さて、以上の犯罪事件に対して関係当局はいかなる見解のもとに、どのような処置をなしつつあるか。 検察庁も警察も、日本独立後の今日においては、軍関係の犯罪もそれが、軍管轄の区域外における公務以外の、しかも対日本人関係の事件である限り、日本側に管轄権があるとの見解のもとに被疑者の逮捕、捜査、取調べをなし、警察としては一定の事件は検察庁に送致している。 前節に述べた国連軍被疑事件の検挙件数八十四件の処理状況を見ると、検察庁送致四十三件、憲兵隊引致十三件、事件軽微による微罪処分十件、親告罪で告訴なきもの十三件、取調べ中のもの五件となつており、さらにこのうち、検察庁に送致した四十三件の処分の結果は、起訴猶予三十二件、告訴坂下げ二件、嫌疑なし二件、少年事件につき不処理二件、身柄交渉中一件、未処理四件となつている。 検察庁が事件を処理しているのは、もとより、司法管轄権が日本側にあるとの見解のもとに行つているのであるが、別に軍当局と公文の交換等明確な根拠があるわけではないから、この点について当局は中央における外交交渉によつて、法的に明確化されることを希望しているわけである。 しこうして検察庁の処分においては、いまだ起訴されたものは一件もないが、これは犯罪の性質が裁判まで持つて行くほどのものでないと考えられるからであつて、検察庁としては国連軍人と日本人との間に、取扱いを違えてはいないとのことであつた。従つて警察としては検挙して検察庁に送致しているのであるが、これまでは実質的には不起訴に終つているのである。ただ右の検挙事件中、條約発効後なお憲兵隊に引致したものが、十三件あるが、これは日本独立後一週間以内の事件で、逮捕別は憲兵逮捕五件、日本警察逮捕五件、憲兵と警察の共同検挙三件であり、従前通り憲兵隊に引渡したという。 なお強盗事件二件を警察が検挙し憲兵隊に引渡しているが、本件は五月四日夜、カナダ水兵三名が共謀して、特殊飲食店におもむき、女将の首を締めた上、現金三千円を強取した事件、及び五月五日夜カナダ水兵一名がビヤホールにてビール二本を飲み、代金を支払わず退去しようとしたので、請求したところ、暴行の上十日間の傷害を与え逃走したが、いずれも警察吏員が届出受理後間もなく逮捕したもので、身柄の措置について、地方検察庁呉支部の指示回答によつて憲兵隊に引渡したのであるが、本件については外務省において犯人の身柄引渡し方について折衝中のものであるという。 強姦四件は警察が検挙したもので、うち二件は講和條約発効直後で事案は未遂であり、しかも軽微なため告訴もないので、憲兵隊に引渡したものであり、他の二件のうち一件は十四歳の少女を強姦したとの告訴があり、捜査したところ、現金をもらつた上の和姦であることがわかり、後日告訴の取下げがあつたもので、残りの一件は捜査の上犯人が判明し、被害者から告訴があつたので、目下身柄の引渡方を交渉中のものであると市警察当局は言つている。 右のような凶悪犯のほか、他の種類の犯罪を一括略述すれば、放火未遂の一件は飲食店において飲酒酩酊した兵士が、飲食店の柱にかけてあつたカレンダーに、持つていたライターで点火したがただちに消しとめたものであり、他の一件は特殊飲食店に遊びに来た兵士が接客婦のことで立腹し、ライターで玄関の障子に火をつけたが、家人がただちに消しとめ、犯人は騒ぐすきに逃走したものである。 窃盗事件は特殊飲食店または接客婦を対象としたものが十七件で、総発生件数の半ばを占め、その他は自転車盗み、みやげもの店その他かつさらい等で被害品目は現金、時計、雑品等である。 詐欺事件はハイヤーの無賃乗車、カフエー等においての無銭飲食などで被害額は少額である。 暴行傷害事件はいずれも特殊飲食店または接客婦を対象としたものが大部分であり、恐喝事件は特殊飲食店で遊興し、一応支払つた金を返せ、返さねば衣類を持ち帰るぞと脅迫して遊興費を取返したもの、器物毀棄はほとんど飲食店において窓ガラス、障子、等を毀棄したものや、ハイヤーの窓ガラスを破壊したもので、ほとんど被害を弁償しているため、被害者の告訴がないので事件を送致していないというのが警察当局の説明である。 第三節 犯罪の発生原因及び予防策 呉市における国連軍関係の犯罪事件は何ゆえにかくのごとく発生するか。またその予防策いかんについて考察するに、すでに述べたようにその犯罪統計、発生の時期及び罪質を見ればおのずから明らかなように、旧軍港の呉市が、国連軍の朝鮮動乱における母国と戦線との中継地として役立ち移動の激しい戦線への部隊の仮泊地としておちつかない軍隊の出入りを送迎していることが、犯罪多発の最大の原因である。 この点は講和後の米国駐留軍の比較的安定した軍部隊とは趣を異にするし、また在呉国連軍である英連邦軍は、米兵に比し給与も低いとのことである。 年齢の若いいわば犯罪適齢期の兵隊で、戦線への移動往復で安定しない、しかも給与の低い軍人が、中継地で慰安や休養のため仮泊するのであるから、それらが深夜飲酒する以上、暴行や犯罪が多発するのは当然の現象であるといえよう。 犯罪が多く発生するのは軍移動の特に激しいとき、また時間的にはほとんど夜間であり、午後八時以後で、十時から午前零時にかけて大部分が行われている事実、またさらに被害者の種別を見ても、特殊飲食店、カフエー、自動車業等が大部分であることは統計の示すところであるから、おおよそ犯罪の起る根本的原因は明らかである。もとより被害者の中には、十九件の一般人もあり、個々の犯罪の直接の動機には種々あり、中には被害者側に不用意ないし多少犯罪誘発の原因をなしたものもあるかもしれないが、総体的に見て犯罪発生の原因は、右の点に要約されるであろう。 しからば犯罪の予防対策はいかように講ぜられているか。市警察当局のいうところによれば、講和條約発効に伴い、憲兵司令官並びにSIB隊長に対して、憲兵パトロールの強化、部隊将兵への警告方を申し入れるとともに、飲食業者、みやげもの商、旅客自動車業者の懇談会を開催して、その自粛を促す等の方法により、犯罪の未然防止に努めつつあり、国連軍においても全面的に協力されているとのことである。 また軍との連絡は容易に随時行つており、特に定例的に会談日を設けるようなことはないが、気軽く電話でも話し合つており、別に支障はないとのことである。最近には国連軍がさらに軍紀を引締めるよう、たとえば帰営門限も午後十一時を励行するよう申入れをしたこともあるという。 国連軍側の自粛については、地方検察庁呉支部においても両三回警告を発したことがあり、岡邊同文部長は桐原市警察本部長等とともに、カナダ軍のアレン大佐と会談して、防犯対策を相談したところ、カナダから四人の法務官を招致して、予防の万全を期することになつたとは支部長の言うところである。 呉市警察自体の陣容は前述の通り、全員で四百五十人、英語を解するもの三名、派出所は三十箇所、駐在所八箇所であつて、パトロールは派出とかねて四人ないし五人でこれに当つている。市警察予算は八千五百万円であつて、これでは予防の万全を期するには不足とのことである。 日本側当局者の言うところは右のようであるが、国連軍当局はいかように考えているか。たまたま七月十七日付中国新聞の記事によれば、「英連邦軍司令部総務将校R・H・バツテン代将(ブリッジ・フォード司令官が不在中の代理責任者)は十六日午後呉市の元鎮守府の建物にある司令部内で外務省記者団と会見、国連軍協定など当面の問題に関して呉、岩国地区に駐留する現地軍当局の見解を次のように明かにした。」といい、その中に次のような点をあげている。すなわち「一、裁判権が将来どうなるかについては協定締結交渉が行われている際だから何とも言えない。現在のところ施設区域外における軍人の犯罪は、日本警察官が逮捕し、日本側検察当局がこれを日本側で裁判すべきかいなかを判断している。これまでのところ犯罪の程度が比較的軽微なので、すべて日本側から移管を受け英連邦軍側が裁判して来た。程度の重いものについては、日本政府と英国大使館との話合いによつてきめられることになつている。 一、呉地区の治安について暴行恐怖の町などと新聞雑誌に報道されたが、これは事実を誇張し過ぎているし、自分としては納得できない。しかし最近の報道はかなり事実に近くなつているようだ。治安保持のためには将来とも日本側警察と緊密に協力して行くが、同時にまた朝鮮から呉地区に引揚げて来た将兵に対して厳重な注意を与え、事故の起らないよう配慮している。 一、呉地区にはカナダ、英本国、オーストラリヤ、ニュージーランドの各国兵約六千から七千名がいる。英連邦軍の犯罪件数は一日一・六件であるが、日本関係は十六件だから犯罪件数が多いとはいえないと思う。もつとも呉市民は十九万人だけれど。」 また同日付の毎日新聞は、同一の事実について大同小異の報道を行つているが、ただ、「給与も決して低くなくカナダ軍は米兵とほぼ同率であり、支払いも希望によつて全額円貨で渡しているから犯罪理由にはならない。」といい、「犯罪の原因は元気一ぱいの兵隊が前線から帰つたばかりで、突発的に起るわけで、この防止については、呉地区に到着すれば上級者から厳重注意するとともに警察に協力して犯罪防止につとめている。」といつたと報じている。 第四節 市民の態度、人心の動向 犯罪の予防には、警察当局の警備力の充実と、万全の努力を要することはいうまでもないが、軍関係の犯罪の様相にかんがみ関係業者の自粛と警戒が必要であり、さらに一般市民の認識の徹底と慎重な用心が望ましいのである。 呉市民ははたしてどのような実感を持ち、どの程度の認識を得ているのであろうか。調査団の感得したところによれば、おおよそ二つの面があるようである。その一つは、案外平静で無関心とも見える面である。これはほとんど大部分を占める主流かとも思われるが、「恐怖の町」「暴行の町」などと新聞雑誌に報道され、中央が多大の関心を示し、全国的問題の対象となつたことに不審の感情を抱く人々である。 警察当局はみずから万全の努力をして警備に当つており、決して無警察の状態ではなく、検挙率も七八%の成績をあげているのであるから、呉の治安は、世上伝えられるように夜間婦女子の外出は、絶対できないようなものではない旨を市民に説いているようであるが、これは市民に安心感を与え、警察の努力やこれに対する信頼感を増すには役立つであろうが、当局の努力にもかかわらず、なお相当に犯罪が頻発している現状においては、はたしていかがであろうか、警察当局が努力していることは了解されることであり、この点市議会議長も認められているのである。特に第一線にあつて、深夜警備に当つている当局者の身になつて見れば、これほど努力しているのに無警察状態と言われることに不満を感じ、かような印象を是正しようということはもつともなことではあるが、またそれに行き過ぎがあつて、市民に誤解を与えるべきではないということは、宮原代議士の指摘されたところであつて、さなくてさえ、かような環境や治安状態になれつつあるかのごとき市民の警戒心を、さらに鈍らぜることになつては遺憾である。 「恐怖の町」「無警察状態」という言を文字通りに解釈する限り、呉市はこれに該当しないであろう。ただその言の与えた印象を打消すための努力が過ぎて本質を失つてはならない。警察の努力にもかかわらず犯罪があり、同じような軍関係都市のうち、呉だけが特にこのような事故の多いことを見れば、呉に駐留する軍に問題があり、独立後の日本人としてはかかる外国人の不法行為によつて侵されるのは見るに忍びないのであつて、呉市を犯罪絶滅の都市にしようとの念願からすれば、警察当局の認識はなお足らないと宮原代議士は強調されたのである。 市民の他の一面は、さらに慎重な態度を以て警戒する人々である。奥原市議会議長は、呉市民は本問題に対しては重大な関心を持つており、講和條約の発効後はさらに関心を増大した。しこうして心ある市民としては夜間十時以後は場所にもよるが、子女を外出させられぬのが現状であろう。問題は警察当局がこれだけ努力しているにかかわらずなお犯罪が発生するという事実であると言つている。 しこうして呉市のごときかかる特異な地位にある警察に対しては、国としては考慮を払つてしかるべきであり、かような事態は敗戦の結果として国家の受くべき苦難であるから、呉市ひとりにしわ寄せされては耐えがたく、何らかの方法をもつて国が援助すべきであるとの要望が、宮原代議士や奥原市議会議長両氏からこもごも述べられたのである。 平静と不安、この二つの面は、新聞や報道関係者との対談においても、夜間市中探訪においても、また放送局の街頭録音においても感じ得られるところであつた。 第五節 現地の要望と将来の対策 国連軍関係犯罪の発生を未然に防止し、事案処理の便をはかり、問題解決の当面の対策として、現地の当局の要望しているところは次のごときものである。まず検察及び警察当局の要望は大体同様であるが、市警察は将来の対策として次のようなものを列挙している。 一、政府に対する要望 條約の発効後は日本警察が取締りに当つているので、以前よりは相当犯罪は減少し、しかも軽微な事件も容易に届け出られ、その被害も弁償されてはいるが、国連軍兵士の犯罪取扱いについて、具体的方法のとりきめを早急に希望する。二、国連軍に対する要望 (1)軍の移動及び艦船の出入等 の連絡 これらは犯罪の発生に大きな影響があるので、部隊の移動や艦船の出入等の期日、滞在期間及び員数等を事前に警察に連絡してもらい、警察はこれに対処して必要な警備態勢を整え防犯の徹底を期したい。 (2) 軍紀の粛正 厳格な軍紀の励行粛正を求め、特に犯罪は深夜に多く発生することにかんがみ、外出時限は午後十一時五十九分となつているが、現在はそれ以後も相当数外出しているので、これを午後十一時までとし、それ以後の外出を厳重に取締つてほしい。 (3) 日本警察に対する協力 国連軍関係あるいはこれらの国の入国者に対する犯罪事件捜査に関し、軍及び、捜査機関が協力することを義務づけてもらいたい。 (4) 憲兵の増員 軍人の不法行為の取締り警戒のため、現在の憲兵の倍数程度の優秀な憲兵の増員をして防犯の徹底をはかつてほしい。 (5) 一般民家に宿泊の禁止 相当数の兵士が、いわゆる二号と称する日本人女のところに宿泊し、あるいは特飲街に宿泊する者があるので、これら兵士の午後十一時以後出入や宿泊を禁止して防犯に資したい。 三、警察自体の強化の要望 (1) 機動力の充実 超短波無電施設をして無線装置の自動車による市中の常時巡回を行い、不法行為の予防警戒に当り、一面犯罪の早期検挙を容易ならしめたい。 (2) 一齊指令通信施設の装置 犯罪発生に対処して急速に派出所へ駐在所に手配を行い、早期検挙をはかるとともに、凶悪犯罪あるいは多数の暴動に対して警察力の集結を迅速容易ならしめたい。 (3) 語学に通じた捜査員の設置 外国人の取調べに当つては通 訳を通じて行つているが、真相把握が困難である。この不便かつ時間的非能率を救うため、語学のできる専任警察官を二十名くらい増員配置したい。 (4) 留置場の設備の改善 日本人を対象として設備した留置場は、生活様式の異なつた外国人に対しては不便が多いので寝台、食事、用便等改善の必要がある。 検察当局もまた警察機動力の充実を最も当面の必要として希望するとともに、右の第一項に述べた国連軍関係犯罪処理に関する基地的な法的根拠の確立を期待している。 市長、市議会議長等市の幹部あるいは地元代議士等の要望するところは前節で述べたように、もつぱら呉市の置かれた地位について政府並びに中央諸機関が認識を深め、財政、産業、渉外関係等各般の問題において国家的な考慮のもとに格別な援助が得られるよう希望しているのである。 一般市民としてははたして何を望んでいるか。七月十八日NHK広島放送局が呉市で行つた街頭録音等によれば、軍関係犯罪絶滅の見地からは、でき得れば駐留軍の早期引上げを要望するのであるが、現在の状況ではそれもにわかには望みがたい。一面においては警察に対してさらに努力を要望するとともに若干非難の声も聞いたのである。 しかしながら呉市としては駐留軍に直接労務を提供して生活の資料を得ている市民が、相当数あるほか、旧軍港時代から引続き軍の施設や部隊の出入及び駐留によつて、直接間接生業を営んでいるのが呉市の生態であるから、その面からは一概に早急な軍の撤退や、これに対する強硬な反対的態度に出られない事情があるであろう。ここにおいてか、市民の実感と態度において割り切れないものが感ぜられるのである。外国軍兵士の暴行事件等には反感と不安を感じつつも、一面においてこれになれ、これに忍従する空気が生れて来ることが看取されるのである。現在の市民としては外国軍の無害駐留と、これによる市の繁栄を期待するほかなしとする気持であろうが、しかし独立後の日本としては、やむを得ない外国軍の駐留についても、その基本的な法的規正については政府の努力により、日本側の自主的な立場が司法権その他において確立されることを熱望していることは言うまでもないところであろう。 結 語 現下の呉市の治安事情は、今回の調査によれば、もとより文字通りの意味において「恐怖の町」とか、「無警察の状態」ということは誤りであることは確認された。警察も努力し、検挙率も上つていることは認められるし、市民一般も市上層部その他各機関も、そのような誤解がありとせば是正されたいと望んでいる。 しかしながら呉市の国連軍関係の治安が、きわめて平静で市民に何ら不安のない状態とは言い得ない。むしろ駐留ないし出入部隊の性質上、大いに警戒用心すべき状態であることは前述の通りであり、現に調査団の調査していた七月十六日の深夜半に強姦一件が発生しているのである。なお深夜と言えぬころ市中を一巡しても、盛り場に店頭に、彼我の交歓風景が見られるとともに、やや人影の少い暗がりには至るところに兵と接客婦らしい者とのささやきを聞くのである。犯罪多発の可能性のあることは容易に看取されるところであつて、関係当局の一段の努力を要するゆえんであり、市民の認識もさらに深められるべきものと思われる。 当面の防犯対策についてはすでに述べたところであるが、真に呉市の治安問題を解決し、犯罪を防圧するとともに、呉市の自主的存立を確保するための将来の根本的対策を立てることが、永遠の策として最も肝要なことと思われる。しかしながらこれは呉市の置かれたる地位や、その性格のゆえに多大の困難が予想されるのであるが、この点については市民の自覚や市当局の努力が必要であることは言うまでもないことであり、さらに、国なり中央諸機関も呉市の置かれた地位に考慮を払い、でき得る限りの後援と努力をなすべき必要があろう。これが最も根本的な呉市の治安問題解決の永久的な対策であると思われるのである。
○吉田委員長代理 ただいまの現地報告に対しまする御質疑やら、またさつき立花委員さんからも御要望の、外務省政府関係に対する質疑は、午後の委員会に送りたいと思います。
○立花委員 委員長のお言葉もありますので午後に十分やりたいと思いますが、一点だけ聞きのがすことのできないことがありましたので申し上げますが、犯罪事実をお述べになつて、これは当然の現象であると言われた。これはまさかこれがあたりまえだという意味ではないと思うのですが、そういう言葉があつたので、当然の現象とはどういうことをきして言つておられるのか伺いたい。 それから問題になりますのはその次の言葉に、当然の現象である云々、従つて根本的原因は明らかであると言われている。そうなりますと対策と申しますものも、必然ここから出て参りますので、適正な対策は私は出て来ないと思う。ああいう事態は当然の現象であり、当然の現象であるから根本的原因が明白であるというような認識からいたしますと、対策も私は明白なものが出て来ないと思うのですが、何をもつて当然の現象と言われるのか。この一点だけを午前中にひとつ承りたい。
○河原委員 前段に述べておりまする通り、血気盛んな戦地から帰つた移動部隊が、深夜多量の酒を飲んで特飲街をさまようている。こういうふうな血気な者がたくさんな酒を飲んで、女のところをうろつくというような状態であるから、そういう事件が多く発生するというのは当然、こういうふうに言うている次第でございまして、酒を飲まずに火炎ビンを投げるような者がたくさんいるのよりは、よほど事情がいいという意味であります。 〔「いらぬことを言うな」「ばかなことを言うな」と呼ぶ者あり〕
○立花委員 河原君の答弁の中に、非常に不必要な言葉があつたと思います。呉地区で全然起つてないことが、非常に不必要なことが言われておりますので、いたずらなことはお述べにならないように、ひとつ委員長から御注意いただきたいと思います。河原君の説明では酒を飲んで婦女子にたわむれるから、そういう現象が起るのは当然であると言われるのですが、そういう場合には日本語ではそういう言葉は使いませんので、これは非常に遺憾なことであり、そういうことがあつてはならないものであり、遺憾なことであつて、あつてはならないということを、当然の現象であるとは日本語では申しませんので、その点を一体どうお考えになつているか。当然の現象と言えば、それが起るべくして起り、しかも起るのがあたりまえである、起るのが当然であるのが起つているのだというように、私どもは理解するのですが、権威ある委員会の報告書といたしまして、ああいう呉市の事態が当然であるというような言葉は、委員会としても迷惑しごくだと思う。この点改められる意思があるかないか、ひとつ承つておきます。
○河原委員 酒を飲んであやまちの起ることがよいことであると報告しているのではありません。酒は気違い水と申しまして、多量飲めば間違いが起る。これは日本でも当然のことでありまして、そういうような状況のもとにおいては間違いの多いのが当然だ。こういうふうに申しているのであります。 —————————————
○吉田委員長代理 この際閉会中審査の件についてお諮りいたします。閉会中審査の件につきましては、去る六月二十八日の委員会において委員長に御一任を願つておりましたが、閉会中もなお審査をいたしたい事件といたしまして、一地方財政法の一部を改正する法律案(鈴木仙八君外十一名提出、衆法第七一号)、二地方自治に関する件、三地方財政に関する件、四警察に関する件、五消防に関する件の五件を議長に申し出たいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○吉田委員長代理 御異議なければさようとりはからいます。 なお審査事件につき多少の異動がありました際には、委員長に御一任を願います。 午前中の委員会はこの程度にいたしまして、午後再開いたします。その間休憩いたします。 午後一時休憩 ————◇—————