行政監察特別委員会 第29号
- 発言数
- 207 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/06/17
会議録
○内藤委員長 会議を開きます。前会に引続き、学生と警察官との紛争事件について調査を進めます。ただちに天野文部大臣より証言を求むることにいたします。あらかじめ文書をもつて御承知の通り、本委員会において正式に証人として決定いたしましたから、さよう御了承を願います。 ただいまより学生と警察官との紛争事件について証言を求むることになりまするが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十三年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。 宣誓または証言を拒むことのできるの、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりましてそれ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていた、だきたいと思います。 なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。 宣誓書の御朗読を願います。 〔証人天野貞祐君朗読〕 宣誓書 良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
○内藤委員長 それでは宣誓書に署名捺印してください。 〔証人宣誓書に署名捺印〕
○内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は証言を求められた範囲を超えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。 まず天野文部大臣にお伺いする第一の点は、近時学生と警察官との紛争が各大学に発生しておりますが、その原因は一体那辺にあるとお認めでございますか。
○天野証人 元来学生と警官というものはややもすると衝突をしやすい傾向にあると思います。なぜかと申しますと、学生はプライドを持つておりますし、そのプライドは場合によると傲慢ということにもなり、また警察官は学生に対して、自覚しないかもしれませんが、反感を持つということもありますから、両者はとかく衝突しやすいものり、今日に至るまでしばしがそういうことがあつたと思うのであります。また現在は特別の事情にあると思います。それは、今の学生のその幼少年時期は、軍国主義が非常に盛んなるときで、国家の絶対権力のもとに育つて来ておる。その絶対権力が崩壊したということから、権威に対する信頼ということをなくなしておる。そういう心理状態のときに、いろいろな宣伝とか、誘惑とかいうことがありますし、また警官としても、とかく学生の行動というものに対して疑惑の目をもつて見るというのが、今の社会情勢からして自然生れて参りますので、そういういろいろの事情がこの両者をとかく衝突させるということになるのだと考えております。
○内藤委員長 当委員会におきまして、治安関係等の各証人をお呼びしていろいろ調べておりまが、その調査の進行中に、日本共産党は、中国の革命を先例にして大学を革命の拠点に利用しようとしておるようにも考えられる節が出て参りました。この日本共産党の動向に対して、文部当局は一体いかなる処置をしようとしておられますか。
○天野証人 中国と日本とは事情の違うところがあり、中国の場合においては、一般の世論もまた教授たちも、すべてそういう学性運動を支持するというのに対して、日本においては事情は違いますが、しかし私はこれは非常に憂うべきものと考えております。従つて教授たちが直接に学生に対して親しくよく学生を指導し、また教授は自分が学問の熱意に燃えておつて、そうして学生を学問の興味に燃やさせるというふうにして行くように、学長諸君に私どもとしてはお願いをし、学長諸君を通じてそうして措置をしてもらうように計画しております。
○内藤委員長 新聞の伝えるところによりますと、本日も破防法反対の大会が、東大の中で労働者、市民、学生連合で催されておる。学校当局はこれに対しまして、もちろん許可をしていないと思いますが、かような運動に対して、文部大臣はいかなる御考えでありますか。
○天野証人 もちろんこれは非常に不当なことだと思います。当然大学でもそれを許可しないと思つております。
○内藤委員長 昭和二十三年の文部次官通牒は学問の自由を守るためにきわめて重大なものであるとわれわれは考えておりますが、現在はこの次官通達があまり徹底されてない。むしろこれを拡大解釈をしたり、あるいはこれを利用しておるような傾向すら見受けておりますが、文部大臣はこれに対していかなるお考えでありますか。
○天野証人 二十三年の通知によりまして、各大学は学則をつくるとか、さまさまの方法をもつて次官通達の趣意が徹底するように努めておられますけれども、しかしなおそれでも不備な点があるかと思いまして、私どもの方からは、絶えず学長諸君の御注意をお願いいたしております。
○内藤委員長 單に注意を促しておる程度でありまするか、何か会合でも開いてたびたびこれに対する対策でも練つたことがありますか。
○天野証人 最近にも学長の会議を開きましたし、またその前には、都下の公私立大学をも入れた会議も催した次第でありまして、またさまざまの連絡をとりまして、そういう趣意が徹底するようにいたしております。
○内藤委員長 教育基本法の第八條の「学校」というのは、個々の教授、学生を含まぬというのが文部当局の御解釈のようでありますが、この点に関してはいかがでありますか。
○天野証人 これは教授は当然含まれます。しかし法律的に言えば、学生はこの中に含まれないことになります。けれども、基本法の精神から言えば、学生も当然そこに含まれてよいものと考えております。
○内藤委員長 教授、学生は当然そこに含まれるべきだ、文部当局はかような御解釈なんですね。
○天野証人 法律的に言えば、学生は含まれないことになるけれども、その基本法の精神から言えば、含まれてよいものと思います。
○内藤委員長 一部大学におきまして、日共の細胞があつても大したことはないとか、きわめて楽観的な考えを持つておる者があるようであります。現に先般、愛知大学の学長本間喜一君の証言、あるいは東大の矢内原学長等の証言においても、甘く見ておるような感じがしてならないのでありますが、証人は、日本共産党の現状に照しまして、これでよいとお思いでありますか。いかがでありましようか。
○天野証人 私は、先ほども申しましたことでございますが、これは非常に心配なことだと思つております。私はこれはとうてい甘く考えてはいけない、どうかして今のうちに対策を考えて行かなければならないと思いまして、絶えずそういうことに苦慮いたしております。
○内藤委員長 御参考までに申しますが、愛知大学の本間学長のごときは、当委員会におきましての証言中に、球根栽培法とか、あるいは中核自衛隊とか、そういつたものは全然私は知らぬ、もしさようなものがあつて、それが指導の方針であるならば、これはたいへん危険なものであると思うが、さようなものも文部当局からも指示してくれない、また国会の方面においてもさようなことをしてもらえないので、私は全然知りませんという証言をしている。文部省としては、各大学に参考資料としてでも、こういうふうなものがあるということを通知したことがありますか。
○天野証人 文部省としては、各大学のことは学長が責任を持つてやつておられることと考えております。こちらで特別なことがわかつたときには、それをお知らせしますけれども、各大学のことをこちらで探し出して、一々学校に注意を促すというようなことはいたしておりません。
○内藤委員長 今委員長の申し上げたのは、球根栽培法なんというのは、これは天下周知のいわゆる共産党の特殊の戰術、戰略、武器の製造等を書いてある。そういうものも、学校の責任者である学長が知らないという。そうして、もしさようなものがあるならば、なぜわれわれに知らさないのかと逆襲しておるような形なんです。今大臣の御答弁を聞いておりますと、学校の自治にまかしてあるから、こうおつしやいますが、しかしながら、その学長がさようなことに興味を持たず、もしくは興味があつても、ことさらに学生をかばう立場から、さようなものがないと言つておるならば、これは重大な問題だと私は思いますが、その点いかがですか。
○天野証人 愛知大学は私立大学でございまして、私どもは直接には監督をしておらないわけでございます。ただ国立大学の学長たちは絶えず会合をいたしまして、そうしてお互いにそういうことを相談し合つておられます。けれども、東京都におきましては、私は私立大学をも合せた会合をこれからたびたびやりたいと思つております。
○内藤委員長 ただいまの文部大臣のお言葉ですが、私立大学もなお文部省の監督下にある大学という意味において、その学長が、今一番大きな問題になつておるそういうことを知らないという答弁をここでされるようでは、私はまことに無責任であり、また前途嘆かわしいものであると考えざるを得ない。ことにこの学長の証言を聞いておりますと、学生に一体どういう方針をもつて指導をしておるかという私の質問に対して、私は年に一回か二回、卒業なり、あるいは入学の際には、正義を守るための英雄でなければならぬ、しかも明治維新は二十代の青年によつてできたのだ。ちようど永井柳太郎先生の演説集にでもあるようなことをここで述べられておる。そういう英雄主義というものは、今日の民主主義において、何と申しますか、正義を愛するというような言葉に隠れてはおりますけれども、いたずらに学生の若い、また判断の足らざるものに、一種の小兒病的英雄の立場をとらすというような、非常な憂いをこの学長の答弁の中に私は感じた。しかしこれはおのおの学校等の立場もありましようから、私はあえてとがめませんが、御参考までに文部大臣に申し上げておきます。 一体今日の学生の窮乏せる経済生活等を考えますと、そこからもやはり危険な思想なり、あるいは社会に対する不平不満が現われて来ているということは、われわれも想像し得るのであります。この学生の経済生活、あるいはまた育英制度、その他補導部面の拡充を一体文部省はどのように計画になつておりますが、またどうしようという考えでありますか、文部大臣の御意見を承りたい。
○天野証人 私は今の学生の生活をよくするということは、これは非常に重要なことだと考えております。それで文部大臣に就任したときに、三つの目標を掲げました。第一は義務教育の充実、第二は育英制度の拡充、第三は学術の振興でございます。そういうふうに初めから育英制度の拡充ということを自分の目標といたしまして、十五億であつた予算を二十四億にし、今度は二十九億にいたしました。もちろん物価が高くなつて参りますから、十分ではございませんけれども、そういう目的に向つて努力いたしております。また補導機関などももつと充実をしなければならないという考えでございます。そのほか保険の制度とか、さまざまなことを考えなければならぬと思います。
○内藤委員長 文部当局は、大挙と治安関係との連絡調整をはかるために、何らかの処置を積極的に講ずる必要はお感じになりませんか。
○天野証人 それは非常に必要だと思つております。直接にそういう三者会談ということはいたしておりませんけれども、絶えず局長をして連絡をさせております。また最近にはそういう三者会談ということもいたしだいと考えております。
○内藤委員長 質疑の通告がありますから、順次これを許しますが、大臣は、重要法案が本会議に上程されるので、その間しばらく大臣席に着かねばならぬというような御希望があるのでありまして、そのお含みで質疑をお願いいたします。天野公義君。
○天野(公)委員 まず文部大臣にお伺いしたいのは、今日学生運動またいろいろな事件を通じて問題になつて来ているのは、学問の自由もしくは大学の自由の問題であろうと思います。ところが、大学の自由、学問の自由といいましても、これは人間の自由権と同様に、あけつぱなしの自由ということは許されないと思うのであります。ある程度、社会公共の福祉によつて限定を受くる自由である、このように考えるのでございますが、学問の自由または大学の自由について文部大臣の御見解を承りたい。
○天野証人 ただいまお述べになつたことに私はまつたく同感でございます。
○天野(公)委員 現在大学の自由もしくは学問の自由という名のもとにおいて、公共の福祉をいろいろ阻害するような各種の運動が行われておる、また憲法を否定するような言論も行われておる、それが大学の自由、学問の自由の陰に隠れて、そういうふうなことが行われておるように見受けられるいろいろな事例がたくさんあるのでございます。各種学生事件も、その一つの現われである、このように私は考えるのでございまするが、この点についてどういうお考えか承りたいと思います。
○天野証人 もともと大学の自由と申しますと、これは研究の自由、教授の自由、また勉学の自由、そういうような自由がもともと大学の自由といわれるものであつて、ただそれが十分保持できるために大学の自治ということが必要なんであつて、大学がすべての治安の外にあるという意味では決してない。また一般公共の福祉を阻害するというような自由というものはあり得ないという考えでございます。
○天野(公)委員 大臣の基本的な御見解はわかるのでございますが、そういたしますと、先般来各所で行われた、北海道大学事件、教育大学事件、京都大学事件、東京大学事件、愛知大学事件、また早稻田大学事件、こういう一連の学生事件を見て参りますると、そこに一連の関連性があり、それをさらにつつ込んでみれば、日本共産党の策謀というようなことも考えられる。日本共産党が学生を革命の尖兵とするような運動がここに見える。そういうような各種の事件について、基本的に文部当局はどういう御見解を持つておられるか、承ります。
○天野証人 大学の学生が、研究批判というようなことを離れて、直接の行動におもむくというようなことは、欧米大学の学風にはないことだと私は思つて、それと比較して非常に残念なことだと思つて、もつと学生に研究批判という風を盛んにするとともに、先ほども言いましたように、生活をも安定にさせるように努めることによつて、よく導きたいという考えでございます。
○天野(公)委員 いろいろな事件が起つたことについて、文部当局が遺憾の意を表せられておりますが、これはずつと前から何度も遺憾の意が表せられておると思うのでございます。それがますますいろいろな事件を起す、まあ学内のいろいろな事件が起きた場合は別といたしまして、今度お伺いいたしたいことは、学外で起つた事件もしくは学校内で学生が集団的に行う事件、たとえば早稻田大学の学生が学内で起す事件と、早稻田大学の学生が集団で学校外で起す事件、そういうような場合があつたと仮定いたしますならば、学校外で学生が集団的に起す事件について、その責任は一体どこにあるか、これを伺いたいと思います。
○天野証人 学校外の事件といえば、直接にこれが学長の責任だ、こういつては私はやはり過ぎるかという気持がございますが、しかし責任ということをいえば、本人の責任はもちろんでございますが、やはり間接には学長、ひいては文部当局の責任ということになるのではないかと思つております。
○天野(公)委員 今の問題は、私は非常に重大な問題だと考えるのでございます。現段階においては、おそらく学校の構内で起つたいろいろな学生の事件については、学校側は学問の自由なり、大学の自由というようなことを主張して、そして学生に味方をする。ところが一歩学外へ出て学生が集団的な行動をする、たとえばメーデーの騒擾事件のように、学生が集団的行動をなして騒擾事件に参加をする、そういうような場合には、学校当局はおれの方は知らないのだ、間接的には責任があるんだけれども、学校当局には責任はない、文部当局も同様そういう問題については責任はない、そいことになれば、これは非常に事態が重大であると考えられるのでございますが、もう一ぺんこの点についての御見解を承りたいと思います。
○天野証人 私は大学当局が、学校内においてもただ学生をかばうとかいうことばかりじやないと思つております。大学当局もこのことについては非常に心配をいたしておりますが、しかし学生の指導ということは、こういう場合にも警察力とか権力だけではとうていできない、これはやはり教育的に忍耐強くやるよりほかはないという考えをもつて大学当局は苦慮されておられるのであつて、決して大学内だから何でも学生をかばうというわけのものではないということをまず私は申したいと思います。 それから学外におけることでございますが、学外においても、何でも起つたことはみな学生が悪いんだ、何でも起つたことはみな大学の責任だとは私は言えないというふうに思つております。そのときどきにおいて責任の帰属というようなこともおのずから考えられて来るのではないかという考えでございます。
○天野(公)委員 大学の中における教育の効果について、大臣は非常に自信をお持ちになり、またこれに期待をかけておられるようでございますが、最近の大学の教育の方法についてはよく知りませんけれども、私ども大学で学んだときの体験からいたしますと、学問に対する教育の効果ということは非常に期待はできるかもしれません、しかしながら一般の社会的な行動であるとか、また社会的な批判だとか、また道徳的な教育、そういう面について、大学の教育においてその効果を期待するということは、どうも少し期待の行き過ぎではないかと考えるのでございます。逆に言えば、そういうような方面に文部当局が今後大いに努力をされて、そうして健全な考え方を持つというか、批判力を持つたりつぱな人間をつくるような方向に向けて行く必要があると思いますが、この点について大臣の御見解を承りたい。
○天野証人 大学と一概に申しましても、学部によつて非常に性質が違つております。法科、経済を除く他の学部などでは、教授が少数の者を、自分の教室の者として指導いたしますから、指導がやさしいのでございますけれども、しかし法科、経済のような多数の学生を持つておるところは非常にむずかしい。けれどもそういうところも、できるだけゼミナールの制度とか、あるいは指導の教官を特にきめるとかいうようなことでもつて指導をいたしたいと思つております。けれども大学の教育は、人間の育成といえどもすべて学問に媒介されたところの教育でなければならない、そういう趣意をもつて今言われましたような趣意に沿いたいと思つております。
○天野(公)委員 もう一つお伺いしたいことは、大学の自由に関連した問題でございますが、たとえば学問の範囲において憲法を否定し、また自由を否定するような学問が、学問として教えられる場合、受取る方の学生としては、それはいわば一つの実践的な綱領として受取るというようなことも考えられる。これは昔から非常に問題になつた点だと思いまするが、そういうような学問の自由と実践への一つの力を與えるようなものとなつて行く、そういう場合、大臣は一体どういうふうにお考えになりますか、大学の自由との関連につきまして……。
○天野証人 大学ではあくまでも学問という立場からしなければならぬと私は思つておりますが、しかしそれが直接社会の秩序を乱すとか、そういうようなことに学生をかり立てるということになつたのでは、これは非常に不適当なことでありますから、その際にも、教授はただの研究者ではなくして、同時に教育者なのですから、十分な注意をもつてなさるべきものだと思つております。無制限な自由というものはないことは、先ほど質問者も仰せになつたことであります。
○天野(公)委員 もう一つお伺いしたいことは、たとえば警察のパトロールが学校内に入つて行く——一般の通行人の通つてもいいところをパトロールすることは、当然許されるべきものだと思うのでございますが、先般本院においての警察側の証言で、教授の身元を調査したというようなことがあつたように聞いておりますが、警察側でそのような教授の身元を調査するとか、また学生のいろいろな行動を探るとか、そういうことが何の連絡もなく行われたという例がありますが、そういうことの起らないように、文部当局といたしましては、十分両方に誤解のないように了解を求める必要があると思うわけであります。また捜査当局に対しては、いたずらに学生を刺激するようなことのないような方策を、文部当局として要望する必要があると思いますが、この点について大臣の御見解を承りたいと思います。
○天野証人 次官通達というものは、集会、集団行進というようなものに関係しているものであつて、大学は決して治安の責任を持つている警察の外にあるわけでないということを、よく学長から学生に徹底さしてもらうように、最近に通達を出しております。また警察の方に対しては、大学というものの特殊性をよく理解してもらい、また学生の心理に対してよく理解を持つてもらいたいということを私どもは申し入れて、両方に誤解のないように努めておるのでございます。
○山口(武)委員 それほど天野証人は、学生と警官の紛争の原因について、学生はプライドを持つているから傲岸になる、警官は自覚をしていないかもしれないが、ねたみがあるのだ、そこで学生と警官の紛争が生ずるのだ、このように説明しておられましたが、文部当局の説明として、このような浅薄なものであつてよろしいのですか。特にこの学生と警官の紛争が今の時期に行われている。ここに重大な原因があるのであつて、文部当局としてもつと根本的な原因究明、これに対する考え方がなければならないはずだと思うのですが、先ほど言われただけの話なんですか。
○天野証人 私は若い者の心理ということをいうと、決してプライドが悪いというのではないのですけれども、そういうことが若い者にはあるから、そこにおのずから起るという地盤がある。それに持つて来て現在は非常に偉つた時代である。そして今の若い挙止の成長の過程、また今の時代のさまざまな條件、そういうものがこういうものを引越すのだと説明いたしたわけでございます。
○山口(武)委員 今の時代が違つた時代であり、種々の條件があるということを言われましたが、この違つた時代であり種々の條件というものが、おそらく決定的に学生と警官の紛争の根拠であるはずだと思うのですが、違つた時代であり、種々の條件がある、このことについての御説明を願いたい。
○天野証人 違つた時代というのは日本がこういう敗戰をして、かつてない一つの敗戰の苦難を味わつているということでございます。それからさまざまな條件というのは、たとえば学生の生活が非常に悪い、また過激な思想をもつて学生に働きかける人もいる、そういう事情でございます。
○山口(武)委員 学生と警官の紛争はもとからあつたことかもしれない。しかしながら本日ここで取上げておりますのは、最近特に紛争がはげしくなつたという事実であります。敗戰から七箇年たつておりますが、近来特にはげしくなつて参つたわけであります。單に敗戰という一般的なことだけでは説明し得ない事情があるわけですが、これについて説明願いたい。
○天野証人 私は今の時代が世界的に二大勢力の対立であるとか、その中にあつて日本が敗戰国として非常にむずかしい事態にあるとか、社会が非常に窮乏しておるとか、そういうことが原因だと思うのです。けれども私は青年の心理を分析することが、こういうことを考えて行くのにやはり必要だと思つておりますから、初めに青年の心理を分析して、そういうことの起る地盤を申しておいたわけであります。
○山口(武)委員 それでは学生と警官との紛争は、どのような名目で問題が起つておるのでしようか。つ
○天野証人 学生と警官の紛争というのは、思想の自由とか学問の自由とかいうものが侵されたというふうに学生が考えておるところから起つておると思います。
○山口(武)委員 学問の自由、思想の自由が侵されるような印象を学生が持つて来た、ここに問題があるのではないでしようか。それを持たせるようにした政治自体に問題があるのではないでしようか。この根本問題を考えなくて問題が解決できるのでしようか。
○天野証人 学生がそういう考えを持つというのは、今世界全体の一つの傾向であつて、ことに日本の置かれておる歴史的現実というものが、学生にそういう考えを抱かせるようになつておるのだと思うのです。
○山口(武)委員 世界全体の傾向と申しますが、こういう傾向が起つておりますのは、アメリカの支配が行われておる国において特に強い。あるいはアメリカ以外の国によつて植民地的支配を受けておる国においてこれが多いはずなんです。軍にあなたは世界一般だというようなことでごまかさないでもらいたい。日本自体アメリカによつて軍事的な占領をせられ、軍事的な支配が続けられ、日本の主権が脅かされておる。しかもなおアメリカのために青年がアメリカの雇い兵として徴兵されるような機運すら進んでおる。さらに直接的には、そうした日本の置かれておる状態に対して正当に議論を発表し、正当に反抗をすることを押えるために幾多の反動的な措置がとられておる、弾圧的な措置がとられておる。ここから問題が生じておるのではないでしようか。
○天野証人 反動的とか弾圧的とかいう処置と言われますけれども、私はそういう点については、いろいろな誤解が学生の間にあるものだと思つております。
○山口(武)委員 前のことはどうですか。
○天野証人 私、どうも問いがはつきりいたしませんでしたから、もう一度ちよつと……。
○山口(武)委員 弾圧処置がとられないということを言われましたが、先ほど委員長の、本日学生が破防法反対の大会を開く計画をしているようである、これに対して学校当局はどうするのだろうという質問に対して、学校当局はこれを許可しないだろう、こういうことを言われておる。少くとも破防法というものは、世間の常識に従えば、悪法ということは言えるはずなんです。内容についてはここで申しませんが、これが常識になつている。これに賛成しているのは自由党の諸君だけである。これは純理論というよりも、むしろ政治的な力というものが関係しているのだとは思いますが、ともかくそういうような悪法である。これに対して学生が反対運動をやり、反対の大会を開く。これをあなたはきわめて当然のことのように、これほ許可されないだろうと思うと言われる。これが彈圧でなくて何ですか。一例をあげればこれがあげられる。
○天野証人 政府は破防法を決して悪法だとは考えておりません。今これがぜひとも必要だと思つております。そういう法に対して、その法のいかんにかかわらず、学生が直接的にそういういろいろな政治活動をするということは、教育基本法の精神に反するといへ考えなんです。
○山口(武)委員 政府がこの破防法を必要だということを言われておりまたが、政府の必要のためには、破防法反対の大会ということは許可されないことになるのですか。政府の必要というものは、あらゆる意見の発表の自由ということ、これを押えることになろのですか。
○天野証人 大学の方針としては、教育の政治的中立性ということを守るために、大学の構内において破防法反対というような、そういう集会をするということは、大学が許さないのであります。
○山口(武)委員 それは学校の中立の立場じやないでしよう。学校を自由党あるいは吉田政府の立場に無理やりに押し込むことではないのですか。なぜ反対して悪いのです。いつからそういうことになつたのです。学生はそういう破防法が出るという場合に、これに反対する意思の表示すら許されないことになるのですか。
○天野証人 個人的な意思の表示は自由であつても、団体的にいろいろな行動をするということは、大学が、それは教育基本法の精神に反しておると言つて、認めないのであります。
○山口(武)委員 この破防法は学問の自由、学園の自由ということと直接関係があるから、学生が問題にしている。しかも学生であろうと、これは日本国民であることにはごうもかわりはないはずです。その諸君が集団的にいろいろ反対意思を表明してはいけないということは、いつからそうなつたのですか。何によつてこれはなされるわけですか。教育基本法といいますが、教育基本法のどういう点から出て来るのですか。
○天野証人 大学は大学の考え方でもつて教育をやるわけであります。その大学の考え方によれば、学生がそういう集団的な政治行動をすることは好ましくないという考えから、これを許さないと思います。
○山口(武)委員 そのことは、学問の自由、学園の自由が阻害され、学校の中にもフアシズムが浸透して来たというふうに、世間の常識では言えると思う。吉田政府の常識ではわかりません。あるいは自由党の常識では何と言うか知りません。しかしながら世間の常識はそういうふうに断定してはばからないと思う。 なお次にお尋ねいたしますが、先般当委員会におきまして、愛知大学の学長並びに特審局の調査部長の証言によりますれば、愛知大学の学生が特審から機密費をもらいまして、学校内のスパイとなつていた。教授あるいは学生の問題について内偵して、これを特審に内通したという事件があつた。これに対して天野文部大臣のお考えはどうなんですか。おそらくこの問題は御承知になつているだろうと思いますので、どのような考えを持つておられるかを聞きたいのです。
○天野証人 私はその実をつまびらかにいたしておりませんから、ここでは何とも申し上げることができません。
○山口(武)委員 事はきわめて重大なのであります。学校の中にスパイがいたという事実は、文部大臣が知らないでいたということで済ませることではないと思う。容易ならざる問、題だと思う。しかも先ほどの証言によりましても、現在の学生は経済的にきわめて困難な立場に立つている。こうした場合、学生が多くアルバイトをやつているわけでありますが、これにつけ込みまして、今後において特審局が機密費を使つて、学生自体をスパイにつくり上げて、特審の活動をやらせるというようなことも容易に考えられるわけでありますが、これに対して文部当局はお考えになつたことがないのかどうか、あるいは現在どういう考えを持たれておるのか、この点をお尋ねしたいと思います。
○天野証人 私は愛知大学に起つた事件は、これをつまびらかにしていないと申しました。けれどもこれを一般論として言うならば、好ましくないことだと思います。
○山口(武)委員 好ましくないということは、このような行動が起らないということに対して、積極的に文部当局も動くということであるのか、それとも好ましくないが、そのようなことがあるならば、それをそのままにして認めておこう、こういうような意味なのでしようか、どちらなのでしよう。
○天野証人 よく事情を聞いてみたいと思つております。
○山口(武)委員 あなたは問題を一般論として出された。事情を聞いてみたいというのは何なんです。一般論として出された以上、個々の事情を聞かれる必要はないのです。私は一般論として問題を出したのですから、一般的にお答えを願いたいのです。
○天野証人 一般論としては、好ましくないと言つたのです。どういう処置をとるかというのは、私は愛知大学のことと考えております。どういう処置をとるという一般論はないわけです。愛知大学のことと考えたから、よくそれを聞いて調べさせようと思つております。
○山口(武)委員 私は事は愛知大学だけでなくて、全国の大学におきまして、現在の学生の窮乏という事態につけ込みまして、特審が全国の各大学において同じような活動をするのではないだろうか、これが容易に想像される。従つてこのような事態が想像される場合に、一般論としてあなたはどのようにお考えになつているか、こうお尋ねしているのです。
○天野証人 一般論としては、そのことは好ましくないと申しました。
○内藤委員長 山口君に申しますが、他にまだ五名の質問の申込みがあるのでありまして、ひとつ簡潔にお願いいたします。
○山口(武)委員 好ましくないじやわかりません。好ましくないというふうなあやふやな答弁をするから、私は何回か聞くのです。そういうことは許しておけないというふうに言われるのか、それとも好ましくないが、やるならしかたがないというふうに考えておられるのかどちらかということをお聞きしたわけです。
○天野証人 私は自分の所管でないことをここで断定的に言うことをはばかつたから、それで好ましくないという言葉を使つたわけでございます。私の所管内のことでないことでありますから……。
○山口(武)委員 所管内でないということはないでしよう。私は官立大学一般において問題が起つたらどうかということまで含めて言つたのです。單に所管内の問題だけに限つて言つたのではないのです。
○天野証人 今私が申しましたのは、特審局というのは私の所管ではないから、特審局のされることを、私がここで断定的にかれこれ申すことは、遠慮したいと思つたから、それで好ましくないという言葉を使つたわけであります。
○山口(武)委員 学生の間にスパイになるという、きわめて卑劣な嘆かわしい事件が起るというような問題に対して、これは特審がやるのであるから、私は明確な答えはできない。文部当局というものは、教育というものに対してそれほど見識のない態度を持つて臨んでおられるのですか。特審がやろうが警察がやろうがだれがやろうが、事文部当局の所管にある問題である限り、文部当局はそのような卑劣なことはさせない、このような答えを私は期待したわけですが、吉田政府の文部当局というものは、それほど情ないものなんですか。
○天野証人 それは御意見ですから、私はお答えいたしません。
○山口(武)委員 ほんとうはもつと聞きたいのですが、他の委員の質問があるということですからがまんしておきます。 最後にちよつとお伺いしたいと思いますのは、あなたも吉田政府の閣僚の一人ですから、文部当局の所管事項以外にも責任を持つておられるはずです。しかしながら、私は特別な、まるきり関係のない問題を聞こうというのではない。それは早大の紛争事件の処理についてお尋ねをいたしたい。御承知のように早大におきまして、警視庁の警官が学生をなぐつてなぐつてなぐり飛ばしたという事件があつた。学生のみならず教授もなぐられた。見物に行つた一般の市民もなぐられた。あるいは新聞記者もなぐられた、このような事件があつた。この問題について早稻田当局と警視庁の間で対立が起つた。そのときに自由党、改進党、社会党の三代議士の諸君が仲に立つて、問題のいわゆる円満解決をはかり、事を処理したのです。私はこれについてお尋ねしたい。この事件を聞いたときに、私は二、三人で聞いたのですが、私のみならずきわめて奇妙な感じがした。早稲田大学の立場というものは一まずおきまして、一体警視庁というものはどういう立場に立つておるのであろうか。紛争が起つて対立を来し、人が仲に立つて手打ちをやつた。これは博徒のけんかとどこに違いがあるのだろうか。私は警察というものは法によつてそのあり方が明示されている。法によつてその立場がきめられている。法によつてその進退を決するのだ。それを仲介者があつて、博徒のけんかの手打式に似た方法をとつて、事の処理をはかるというのはどういうわけですか。この早大問題において、警視庁の態度、警察のあり方というものは、あれはあれでよろしかつたのでしようか。
○天野証人 警視庁には警視庁のお考えがあることと思います。
○山口(武)委員 なるほどそれは東京都公安委員会があるかもしれません。しかしながら警視庁は、いわゆる日本の首都の治安の任に当つているわけです。これが法規的に見ましても、政府にまつたく関係なしの立場ではないはずです。しかもあの問題において示した警視庁の進退というものは、政府におきましても、單にこれは東京都公安委員会の下にあるものであるというようなことで、見のがしはできなかつたはずだと思います。文部大臣の見解をさらにお尋ねします。
○天野証人 ただいま申しましたように、この具体的な事実というのは、なかなか簡単にわきから批判できないようなものがありますし、警視庁は警視庁のお考えがあることと思つてみだりに私がそれを批判することを欲しないのでございます。
○山口(武)委員 わかりました。そういたしますと、警視庁がばくち打ちのけんかの仲介の手打ちのようなことをやつても、吉田政府としては、みだりにわきから口を入れて批判すべきではないのだ、このようなことがはつきりわかりましたから、やめておきましよう。
○天野証人 今のは私の言うことと違つておりますから……。 〔「何が違う」と呼ぶ者あり〕
○内藤委員長 柳澤義男君にお許ししますが、関連性を持つておられます
○柳澤委員 持つております。
○内藤委員長 それでは簡單に……。
○柳澤委員 文部大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、教育基本法第八條によりますと、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」かように定めておりますが、近時たいていの大学と申し上げてよかろうと思いますが、多くの大学の学生の中に、いわゆる日共細胞と称するものがある。なるほど学校が政治活動をしてはならないというこの規定ではありますけれども、学校そのものが活動するのではないかもしれませんが、学校内に細胞の存在するということに対しては、文部当局は一体学校に対していかなる指導監督をなされておるか。この方針及び実際の指導、監督についての行き方を、お尋ねしてみたいと思います。
○天野証人 教育基本法の解釈については、先ほど申した通りでございますが、大学としてそういう共産党の細胞が中にあるということは、よくないこととしてみなとめておられますが、文部省では、大学には干渉はできるだけしないのです。ただ必要やむを得ないときだけいろいろなアドヴアイスをしますし、相談もしますが、こうこうせよということは言いませんけれども、大学で自発的にみななさつております。
○柳澤委員 そういたしますと、各大学によく見受ける、いわゆる学生の中の日共細胞というもの、いわば日本人としての正しい、まじめな学問ということでない、政治活動を明らかにやつておるようなものが存在することを、文部当局は認めておりながら、これに対してはすべて学校の自治的な措置にまかせる、何らの指導監督をしていないという結論になるのでしようか。
○天野証人 原則的には大学にまかせておるけれども、必要の場合には、いつでもそれに対して助言をいたしております。また相談も話合いもいたしております。
○柳澤委員 ただいま、その必要の場合には例外的に指導、相談、助言をしておるということでありますが、現在各大学によく聞くところのこうした政治活動、しかもそれが実際に行われておることは、東大事件、北大事件その他すべての学生事件に関して現われておるように、これらの組織が強力な指導をして、しかも学問の研究とはおよそ隔たりのあるとんでもない政治活動、ないしは暴力的な破壊活動までも仕組まれて、これが指導に当つておる組織があるのに、きわめて原則的な相談だとおつしやられますが、最近のこうした大きい実例のある学校に対して、積極的な指導監督をされたことはないのでございましようか。
○天野証人 ただいま申しておりますように、原則的には大学の自治、自由ということをどこまでも尊重して行きたいと思います。そういうできごとについては、その都度学長とよく話合いをやり、また最近にも学長会議を開いて、そういう点について相談もするし、こちらからいろいろ申し上げてもおります。
○柳澤委員 ただいまのお話を承ると、もつぱら事後の措置についての相談のように聞えますが、これだけいろいろな事件が次々と起つておる今日におきましては、あらかじめそうした問題の起らないような、まじめな学問の研究を主とする大学の使命にかんがみた、何といいますか、予防的措置というようなものはとられておらないのでしようか。
○天野証人 ただいま私が大学の学長を集めて相談をし、またいろいろなことによつて学長間の連絡をとるとか、いろいろなことをしおるのは、そういういろいろな不当なことの起らない予防のためでございます。
○柳澤委員 予防のためというお話でございますから、さようにお聞きいたしますが、そういたしますと、すでに今年の二月にも東大事件が起り、三月には北大事件が起り、その後相次いで起つておりますが、ようやく今日大学の学長を集めて、そうしたことについての予防的な御研究をしておる程度であつて、今まではまつたく大学の自治にというだけで、文部省は積極的な指導についてはお考えなさらなかつたのでありましようか。具体的に措置をとられなかつたのでありましようか。
○天野証人 今までといえどもやつて参りました。けれども、このことがそう簡単に片づくことではないのであります。確かに大学当局もわれわれも、できるだけのことはやつて来ておるのですが、これは権力的あるいは警察的に一時に解決することのできることではなくして、やはり思想的に学生を満足させ納得させるようにして行くことは、簡単にできることではないのであります。でありますから、今初めてそういう予防的なことをやつておるということではなくて、前からやつておるのですけれども最近はまた特に一段そういうことについていろいろ相談をいたしておるような次第であります。
○柳澤委員 前からいろいろ御苦労されておるというお言葉でありまして、まことにそうでなければならぬと思いますが、それにしてはあまりにも相次いでだんだんと拡大されて来つつある。このときにあたりまして、文部省はもつと積極的にこれが防止の対策を、かりに学長を通じてでも、そういうような組織を学内に置かせないとか、もう少し何か学問の研究なり——ともかくこういうようないわゆる今日見られるような暴力主義的学生運動等に対しては、今費までに相談とか助言とかいうような何ら効果の上らないようなことではなしに、もつと積極的な措置をとる必要があるのじやないかと思いますが、この点に対しては文部大臣はいかなる御措置をされておるでしようか。
○天野証人 何らの効果も上らないとおつしやいましたけれども、一例をあげれば、東北大学などは一昨年いわゆるイールズ事件というものを起しましたけれども、その後は事件が大体なくなつております。あるいは東京大学でも、最近あつたところの細胞を締め出して、部屋から出してしまつたというように、いろいろなことが行われて、よほど改善されて来ていると私は思つております。
○柳澤委員 これらの点について文部大臣が鋭意改善に努力されておる点は了といたしますが、なお本年に入つてからでも、学生運動は旧来見られた学生運動の形からは非常に変化をして来ておる。たとえば今年の一月、二月ごろに行われております学生運動のおもなるものは、いわば再軍備反対、徴兵拒否とかいつたような具体的な運動、いわゆる政治活動と目すべきものにかわつて来ておりますし、ごく最近三月、五月等に現われておりまする学生運動は、労働三法の反対や、破防法反対とかいつたようなものが中心になつておるようであります。こういうような学生運動の実態は、旧来私どもが考え(おりました、あるいは実際に見られました学生運動とは、その性質が非常に異なつて来ておりはせぬかと思うのでありますが、この学生運動の性格というか方向というか、非常にかわつて来ている点についての文部大臣の御認識はいかがでありましようか。
○天野証人 それはお説の通り非常にかわつてしまつております。今までにおいては、理論的な研究とか、理論闘争というものが非常にありましたけれども、最近はそういうことがなくてすべて直接的なことになつて来ておるという点において非常にかわつて来ておると思います。それをどうして一体学生をよく指導できるかということに、なお一層積極的に努力を傾けております。
○柳澤委員 ただいまのお話では、学生運動の性質が最近非常にかわつて来ておる。しかも政治活動に向いて来ておる。理論研究といつたようなところから、たいへん変化して来ておるという点をお認めのようであり、これに対していろいろ御苦労ををされておるようでありますが、私どもが考えますると、ことに左翼団体と共同して、幅の広い組織化された運動に変化して来ておる。中には、今までには、まつたく歴史にも考えられないという学校もある。たとえば女子の大学の学生たちが、ある法律の制定に反対をする理由のもとに、他の、学生でない、政治活動をもつばらやる団体と同一歩調をとつてストライキをやるといつたような、まことに今までに日本の大学ではおそらく世界のどこでもそうでありましよう、考えられない、学問の研究とまつたくかけ離れておるようなやり方をしておる。この急速に変化しつつある、しかもまことに嘆かわしい、特に暴力化されて来ておるこの学生運動に対しまして、文部省は先ほど御苦労されておるというお話でありますが、これに対する指導方針というようなものを私ははつきりお尋ねいたしたいのであります。
○天野証人 一方においては、大学の教授たちが、ただの研究者ではなくて教育者だということをよく自覚してもらつて、多数の学生のいるところは、先ほども申しましたようにゼミナールであるとか、指導教官をきめるとかいうようなことによつて、直接に学生を指導して間違いないようにしてもらう。そうして学問研究の興味が起るように、学生を学問に導いてもらうということが必要であると同時に、他方においては育英制度とか保険の制度とか、その他そういう学生の生活に関した施設を十分して、そうしてやつて行きたい。しかし何を言うにも学長の考えが非常に重大な意味を持つておりますので、しばしば学長諸君の会同をもして、よく学長諸君にそういう指導をしてもらいたいという方針でございます。
○内藤委員長 鍛冶良作君。
○鍛冶委員 先ほどから質問が出たかもしれませんが、特に御意見を伺いたいのは、この委員会で最も重視いたします点は、近来学生と警察とが非常に衝突する、かようなことをいつまでも繰返しておつてはたいへんだというので、この点の原因を糾明し、かつこれに対する対策をやろうということが主たる目的なのであります。そこでまずその前提として、大臣は、各学校において学生と警察とあのような衝突が起りまするが、その根本原因はどこにあるというお考えをお持ちになつておるか、これを承りたい。
○天野証人 これは先ほども申したことでございますが、今の学生というものが、幼少年のころは、日本の国家が絶対的な時代でございました。ところがそういう自分が絶対信頼したものがくずれ落ちたということによつて、権威に対する信頼をなくなしているということが、心の底にあると思います。それへもつて来て自由というものが、日本人は、自分から獲得した自由ではなくして、人からもらつた自由なので、自由というものがほんとうに身についていないと思う。それから自由というものが、ややもすればわがままになる、そういうことになつていると思うのです。それにもつ来ていろいろ複雑した社会の事情は、若い者を刺激する、ましてそういう者を扇動する勢力もありますし、そういうことから学生自身が、いわば非常に神経質になつて来ておる。それに警官の方もまた、学生のすることは何か一種の不穏のことをするのではないかというふうな、やはり理解の足らない点も幾らかありはしないか。そういうことから衝突するというようなことが起つて来ていると思うのです。
○鍛冶委員 今文部大臣の言われるのも、遠因としてはそういうこともあろうかと思う。しかし私はもつと身近な問題が原因をなしておるように思います。第一今日学生は警察官が学校の構内へ入ることはすべて学校の自由、学問の自由、大学の自治を汚すものである、この考えをもつて充満しておると思います。これは、そうでないと言うならまことにけつこうですが、われわれは幾つかの例をずつと聞いて参りますと、その点を十分に認める。また学校当局といわれる学生指導の任に当る者も、さようなことをちよいちよい口に出すのであります。そこで警官が入ることは、大学の自治及び学問の自由を汚すということの根本は、おそらく今あなたのおつしやつたようなところもあるし、またがつての治安警察法の行われておるときの特高警察そのままのものが、今日行われるという間違つた考えからも出ておるかもしれませんが、それよりも一番原因になつておるのは、いつも問題になります例の次官通達であります。あの次官通達は、集会の問題から出まして、学校内における集会を特別な扱いをしようというだけのものなのです。それにもかかわらず、あれが学問の自由及び大学の自治を守る根本だから、すべて学校当局の許可のない警察官の入つて来ることは、これは自由の侵害である、自治の侵害である、不法である、この頭から出ておるように考えられます。ところが警察の方では、集会のときに対してはああいうとりきめはあるけれども、それ以外、取締り上必要であるという正当なる職務行為であるならば、あれに反しないのだ、入らなければならないのだという考えを持つていてその考えでもつて行く。片一方は一切入れないのだと考える。これだから始終これで衝突しておるものと私は考えますが、大臣はこの点に対してどういうお考えでありますか。
○天野証人 御意見は私も一々ごもつともかと思います。この次官通達というものは、学内における集会、集団行進に関係しているものであり、またどういう場合にも、学生が直接に行動するということはいけないのである、いつでも学校当局を経て行動するということですが、そういうことを多く人は誤解をしておるのです。ある者は知つておつても、故意にそれを濫用しておるのではないかというおそれから、私の記憶が間違わなければ、五月二十二日と思いましたが、次官通牒をもつてさらにそういうことを学生に徹底してほしいということを申し込んでおるような次第なのであります。また今鍛冶さんのおつしやつたことも、私はそうだと思うのですが、昔の特高警察のように思つているのです。現在はよほどかわつて来ているのですけれども、それを理解しないという点も非常にあると思います。けれども警察の方にも、やはり大学というものが、いろいろな事情から特別なことになつておるのですから、そこに入るときには注意深くいろいろしてもらうということが必要だということで、両方によく了解をしてもらうように、文部省は努めておるわけです。
○鍛冶委員 そこで特に深くひとつ御指導を願いたいと思いますることは、治安維持法がしかれておると同じような考え方で、警察を特高と学生は心得ておりましようが、これは学生は無知なるがゆえに心得ておるのか、ことごとく警察というものはそういうことをやるものだと使嗾し扇動する者がおるために、かようなことが起るのか、この点がよほど重大だと考えるのであります。学生は何も知らずにそういうことを考えるわけはありません。従いまして、あなた方の方で、だれがそういうことを教えるか、この点を疫除せられぬ限りにおいては、警察との衝突は絶対免れないと私は心得ます。 それから警察に対しても、もちろん注意すべき点がありまするが、警察ではいかなる職務行為といえども入つていかぬと言われることは耐えられない。職務行為であるならば入つていいものだとの原則を打立てなければならぬというところに、衝突の根本があるのだと思いますから、もちろん学校へ入る場合は、でき得る限り学校当局と連絡をとつて入ることを、われわれも切望いたします。けれども学校当局と連絡をとれない場合、もしくはとらぬでもいいような所へ入る場合、その場合にでも入つたからといつて、ただちにこれを特高と同様に取扱うことの間違いであるということを、あなた方の方から学生に指導しておられるかどうか。もしそれが徹底しないとすれば、今後どういう徹底をされるつもりであるか、この点を承りたい。
○天野証人 私がただいま申しました最近の次官通達は、そのことを学長に言つて、よくそれを学生に伝え、徹底するようにしてくれということで出したわけであります。そうして大学当局はそういうようなことは十分了解しておる。大学と警視庁とか、そういうところには誤解も何も今ないと私は思つております。ただ一部の学生が、一方からは扇動されることもあるでしようし、あるいはまた場合によつたら誤解もあるでしよう、いろいろなことをいたしますが、そういうことがないように、私どもは学長によく伝えておるわけです。
○鍛冶委員 先日、早稻田の厚生部長だと思いますが、法務委員会へ出て来ましたときに、なるほど次官通牒では警察官の職務執行は入つておらぬかもしれぬけれども、広義の意味においてその精神は、入つていかぬというのだから、わび状を書きなさい、こう言つている。この点はわれわれは広義にも狭義にも集団のこと以外にはないものだと思いますが、これはどうお思いになりますか。またそういうことを言う者がおれば、これらに対する十分なる教育を文部当局としては——これは学校の指導者なんですから、生徒の指導の任に当るものなのですから、これに対して具体的にどういうふうにおやりになつておるか。
○天野証人 それは間違つておると思うのです。ただあの次官通牒なるものも、あれでは不十分な点もありはしないか。だから私どもは警視庁の方ともよく話し合い、大学とも話し合つて、もう少し精密に規定したものをつくろうと今思つております。 〔委員長退席、高木(松)委員長代 理着席〕
○鍛冶委員 その点は十分お考えを割くようにお願いいたしたいと思います。 次に承りたいのは、過日愛知大学の学長が見えて、共産党というものは合法的に認められたる政党であるから、これに対して入ることを禁止したり、また共産党の思想をとやかく言うわけに行かぬ、こういう御議論でありました。この点まではわれわれも賛成でありまするが、現に日本共産党は昨年来「球根栽培法」その他の、いわゆる「アカハタ」後継紙といわれるものをもつて暴力革命の実行を使嗾し、しこうしてこれが実行の方法を教授しております。その一番大きなものは、中核自衛隊を結成し、これに武器を持たせることを教えて、そうして暴力革命の尖鋭隊になることをやつておることは、文部大臣も御承知だろうと思うのでありますが、御承知であるかどうか。もし御承知であるとすれば、かような実行行為に学生が移るということは許すべきことであるか。学校当局はこれを放任していいかどうか。文部当局として黙つておいていいものだとお考えになりますか、この点をひとつ……。
○天野証人 私は非常に申訳ないのですが、その名前を聞いたことはあるのですが、それがどういう手続でどういうふうにやられるかということは研究したこともございません。ただ今学生がそういうふうに指導されて行くことに対しては、これは断然あつてはならないことと思います。
○鍛冶委員 文部大臣として御承知ないとすれば、これを責めるわけには行かぬかもしれませんが、近ごろの青年指導の任に当られる、また学生指導の任に当られる文部当局としては、私ははなはだ遺憾だと思います。今日あなたはそれを知らぬとおつしやるが、新聞にも載つておりまするし、それから法務委員会などで現物が出ておつたと思いまするが、御承知ないならばひとつさつそく調べてよく御認識願うように……。 そこで、私の今申し上げますることは間違いないのでありまするが、かようなことを学生に実行せしめるということになつたら、それは合法政党のやることであるからやむを得ないといつて放任せられまするか。それともこれは危険であるから何とかせねばならぬ、かようにお思いになりますかどうですか。
○天野証人 それは当然危険なこととして、そういうことがあつてはならないと思います。ですから私はただいま鍛冶さんには相済みませんがと言つたのですが、球根というのは名前は聞いておりますけれども、それがどういうようにしてどうだということを私はつまびらかにしておりません。
○鍛冶委員 大臣自身は知らなくても、指導の任に当る者は知つておると思う。知つておつたらかような重大なことは大臣に御進言申し上げなければならない。私はあなたを責めるよりか、その任に当る局の者に遺憾の意を表します。そこでこの間からだんだん調べて、まだ確定ではありませんが、愛知大学の中でいわゆる中核自衛隊が出ておるという証拠があがつておるのであります。かようなことがあるにもかかわらず、愛知大学の学長は、合法政党でありまするから政党に入ることはできる、また政党の活動に対しては私は考えておりません、かようなことを言つておる。これが危険と思わぬか、こう言つたら、さようなことなら危険でございます、けれども、私にそういうものを教えた者もありませんし、文部当局からも何らの指導もありませんから、私はその点に対して一つも関心を持つておりません、かような証言をせられたのであります。これはわれわれとして非常に重大なことでありますので、あなた方としてもこれらのことを指導せられるにあらざれば、いくら学生に、今の警察は特高じやないのだ、今破防法がかりに出るとしても治安維持法と違うのだと言うても、それは治安維持法と同じだ、同じどころか、もつと悪いものだ、こういうことを使嗾して、これはぶちこわさなければならぬ、それにはお前ら青年の力でなければならぬ、中核自衛隊となつて暴力をもつてやれ、武器を持つてやれかようなことを教えておつたのでは、これはどれだけたつても警察との衝突は免れません。ただに警察との衝突だけでありません。国家の前途に対してまことに暗澹たるものを予想できるのでありますが、この点に対して文部大臣の確固たる御確信をお聞きしたいと思うのであります。
○天野証人 そういうことは事務当局はよく知つていると思いますが、一々私にそういうことを事務当局が話すことがなかなか——私は国会が始まるとしよつ中国会に来て、おりませんので、おちついて相談も何もできません。だから事務当局では知つているでしようが、事務当局が私に話さないということを、事務当局の手落ちというようには誤解なさらないように、彼らは彼らとしての職場を守つているのだと私は信じております。局長以下みなそういうことは心得てやつていることと思います。ただ、今のようなことは非常に重大なことなので、私は鍛冶さんのおつしやつたことに同感です。警察と学生の問題というのは、それ自体は何も大した問題じやない。そうじやなくして、そういう破壊的な一つの思想にかぶれてしまう、そこに焦点があつて、これを一体どうしたらいいか。以前のように理論闘争なら理論をもつてやるべきですが、今はまつたく実践的になつている。といつてこれを警察力で一気にやつてしまうわけに行かぬ。そこに私どもが非常に悩んでいるところがあるので、今日ここで御質問を受けるほかにも、あるいはこういう方法があるではないかということがあつたら、私どもに教えていただきたいと思います。私どもは全力をあげてやろうと思つているわけであります。
○高木(松)委員長代理 鍛冶君にちよつと申し上げますが、文部大臣は三時半に本会議の席上に出なければなりませんので、簡潔に願いたいと思います。
○鍛冶委員 これ以上文部大臣に申し上げることはありません。事務当局がやつておるということですが、今言うた愛知大学の学長は、何も聞いたことがない、さようなことと聞けば、私も知つておればやるのですが、そういうことは知りませんし、これに対する指示もありませんと言つておる。かようなことでは、今日のこの重大な時局に——破防法などはわれわれもすきじやありませんが、やむを得ない現状であるがゆえにやらなければならぬ、これくらいに考えておるときに、大学に対する文部当局としての指導は足らぬと思います。さつそく当局に対して、大臣からしかるべき手段をとられることをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
○高木(松)委員長代理 大泉寛三君。
○大泉委員 時間もありませんからごく簡単に……。大臣も閣僚の一人として、相当学校の問題に対しては腐心されていると思いますが、大臣の期待された通り、大学または学長あるいは教授においては、どうもその方向に進んで行かない、むしろ学生に対しては対立的な、逆な方向に進めさしているような点がある。私ども国民としては、学校の教員、学者というものに対しては一般の人よりも信頼の比重が高い。こういう信頼の高いところにこうした不祥事が起つて、信頼を裏切るということはまことにどうも遺憾しごくに思うのでありますが、大臣も国政のために非常に忙しい、しかも今日の御証言によると、どうもわれわれの考えているよりも研究が遅れておられるというようなことでは、ここで申し上げる以外にはないと思いますから申し上げますが、こういう学校の進み方が大臣の期待に反する、あるいは信頼にこたえないとするならば、これは何らかの方法をとらなければならぬ。それには学校当局が再々繰返しているように、どうも政治活動において合法政党として今日の共産党を認めている以上は、学校はもちろん学問の自由として、これを大いに研究しなければならないというところに私は間隙があると思う。そこで大臣はこの合法政党を非合法として解決する方法を考えていないかどうか。いわゆる合法政党として認めないという果断な考えを持つているかどうか、お聞きしたい。
○天野証人 これは非常に複雑した諸般の関係がありますから、私はここでもつてはつきりとそれを断定的な答えをいたすことができないことをお許し願つておきます。
○大泉委員 そこに政府はあくまでも国民の期待に沿うて、あるいはまた国民に対して責任を負つているけれども、占領中に合法政党として認められた禍根を——われわれが独立後において独立国家としてどうしても歩まなければならない道であつたならば、われわれの生きる道として、私は政府において考えなくちやならないじやないかと思う。しかも今国民の大きな関心を集めているところの学校は、むしろ国民から今日、悪い言葉で言うならば、しまいには共産党の練兵場になるんじやないかというような感情さえ持たれている。それはごく少数な尖鋭分子であるけれども、しかし少数な者が多数を引きずつて行くのがこの世の中である。あの戰争ですら少数な人が引きずつて八千万国民をみな戰争の一辺に向わした。こういうように危険が伴うのですから、少数な分子だとしてここで軽く取扱つちやならぬと思う。こういうところをわれわれ非常に心配するのでありますが、特に私は文部大臣に対しては果断な処置を一つ望みたい。 そこで警察は、今日国民の警察である。昔のように権力者のための警察でないということを大臣はどう考えておられるか。あるいは学校当局が、昔ながらの権力者の手足のように考えておられるとすれば、こうしたことを徹底せしめることが一つの方法ではなかろうか。われわれ国民の警察である。この国民の警察と学生を衝突させるということは、とうていわれわれは忍びないと思う。ましてや学生一人当りの学費を負担するのに二千五百円の補助を與えている。しかも学生一人に対しては五万六千円の国費を計上している。こういうような国家のやつかいになつておりながら——また国家のために盡されるところもありましようけれども、今日の情勢ではたいへんな負担になつている。それで国民の警察と衝突するばかりでなく——各公営企業体と同じようなことには行かないでしようけれども、各私立学校と同じような立場において、独立採算制をとる意思がないかどうか。こういう二つの御意見を承つて私の質問を終ります。
○天野証人 警察について今日の警察が以前の警察とは違うということは、大学といえどもよく理解していると思つております。それからまた独立採算制ということは、国立の学校では私は考えておりません。
○高木(松)委員長代理 浦口君。
○浦口委員 大分質問があるのですが、なるべく意見をさしはさまないように簡単にやります。 第一にお尋ねをいたしたいのは、教育基本法第八條の解釈につきまして、昭和二十四年六月十一日東京教育長あてに文部大臣官房総務課長が回答を出しております、この中で学問の自由と教授の自由とは概念上別個のもである、こういう解釈がなされておりますが、これに対して大臣の具体的な御見解を承りたいと思います。
○天野証人 学問の自由ということは、これは研究の自由と言つていいんだと思う。その研究の自由ということと教授の自由ということとは、研究はどういうことをしてもいいけれども、教授は何でも教授していいということではないと理解いたします。
○浦口委員 そうすると、教授の自由とは何であつてもいいということではないということは、具体的にはどうした制約がそこにあるということを意味するのか、その点を重ねてお尋ねいたします。
○天野証人 理論的にどういうことを研究しようとも、それをまだ若い者に教えるとよくないという場合もあり得ると思うのです。そういう配慮を、教授はただの研究者ではなくして教育者だから、いたすべきだ、こういう考えであります。
○浦口委員 その点が私は非常に問題のわかれ目だと思うのであります。今学者と教育者は違う、こういう意味でおつしやつたと思うのですが、私はこれは違うと思います。しかしやはり教育者である前提は学者であるのでありますから、その学問の内容というものによつて、そこに自由が許されるか許せないか、いわゆる教育上の自由を意味するわけでありますが、そういうわかれ目ができると思うのでありますが、その点いま一度明確にしておいていただきたい。
○天野証人 もちろん教育者の前提としては研究者ということが大学では当然でございます。私は学者というよりむしろ研究者と言いたい。純粋な研究者というのではなくて、それが同時に教育者であるから、教育上これがどういう効果を持つかということは、そのときどきに教育者としては考えて行くべきものだと思うのです。
○浦口委員 教育者となりますと、その結果が具体的に学生に現われて来るわけであります。私は今の抽象的な御答弁ではちよつと納得が行きません。しかしこれは非常にむずかしい問題でありますから、あとに関連してまたお尋ねをいたすことにいたします。 そこで大臣にお尋ねしたいことは、昭和二十五年七月二十五日付の文部次官通達によりますと、学生が学校当局を介さないで直接警察側などと交渉することがないように嚴に戒められたい。具体的に申しますと、かりに警官に限界を逸脱する行為があつた場合でも、学生が警察官をつるし上げるとか、不法拘禁するとか、警察手帳を奪取するとか、多数の暴力をもつてわび状を書かせるとか、そうした具体的な解決行動があつてはいけない、こういうことであろうと思いますが、現在これが守られているかどうか、その点をお尋ねいたします。
○天野証人 それが守られない傾向が非常に強いから、警察官を学内に認めさえすれば、すぐ警察官をつかまえるというようなことがあつて困るから、そういう通達をいたしたので、その後は私は大体それが行われていると思つております。 〔高木(松)委員長代理退席、委員長着席〕
○浦口委員 事実この次官通牒は守られていない。非常に多くの場合に守られていないということを、われわれはこの委員会の行政監察の過程においても見ざるを得ないのであります。そこで私は重ねてお尋ねをいたしたいと思いますが、この二十五年の次官通牒と二十三年十月八日の文部次官の通達は、当然これは関連を持つて来ると思うのでありますが、この第四項において、学校の性格、学則、その他いろいろな條件をにらめ合せて、学校内の政治活動をどの程度認めるかという限界は、教育行政上の問題である、言葉をかえると、これは学長の責任であり、教授の自発的な意思によつて決定するものである、こう解釈していいと思うのでありますが、事実学生の警察側との直接交渉というような事態が多く出ることを見ますと、私はこの二十三年、二十五年の二回の次官通牒を、もう一度検討をして、ここに完全なものをつくらなければならない段階に来ているのではないかと思うのであります。その点について、文部当局の御意見と、腹案があればあるように、またそうしたものをつくらなければならぬとお考えになつておられるかどうか、その点をお尋ねしたい。
○天野証人 それはつくらなければならないと思つて、今警視庁の方にも話をし、学長の方とも相談をいたしております。
○浦口委員 立案中ということで、了承をいたしておきます。 その次に、法務府の草鹿刑政長官の意見でありますが、正当な大学や学生間の自由はあくまでも守らるべきであるが、これと治安との限界をどこで調整するかが問題である、教授の身辺、素行を調査することそれ自体がすぐ憲法違反とはいえない、学問の自由を侵害する目的の調査ならもちろん許さるべきではないが、他の国家目的で調査するものなら、これは当然許さるべきである。こういうことが述べられているのであります。他の国家目的ということがはたして何を意味するかということは、複雑なものを含んでいると思いますが、ここに私はやはり学問の自由の侵害、あるいは侵害にまで至らないでも、干渉というふうな問題が出て来ると思うのであります、これに対して大臣はどういうふうにお考えになつておいでになりますか、その点を伺います。
○天野証人 他の事柄というのは、どういうことでありましようか。場合によれば、よんどころないこともあるかと思いますけれども、一般的にいうと、それはやはり思想の自由を束縛するおそれがあると私は考えております。
○浦口委員 それはそうした調査をする調査の仕方によつては許されるか。直接学問の自由を束縛し、おるいは阻害するものでなければいわゆる間接的であつて、わからない方法であるならば、これはしかたがない、こういうふうにお考えになつておられるかどうか、そのことをお伺いしたい。
○天野証人 私はその事柄の内容によると思うのです。事柄の内容によつては余儀ない場合があるけれども、やり方によると、ややともすると思想の束縛ということになるおそれがある、こういう答えでございます。
○内藤委員長 浦口君に申しますが、さいぜん申し上げた通り、文部大臣は重要法案が上程される本会議に出席をする時間が追つております。簡潔に、もしくはなお長いようならば、お諮りして一時間休憩をしてあらためて文部大臣に御質疑を継続願つてもいいと存じますが……。ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○内藤委員長 それでは暫時休憩いたします。 午後三時二十五分休憩 ————◇————— 午後五時四十分開議上
○内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。 引続き天野文部大臣より証言を求むることにいたします。浦口鉄男君。
○浦口委員 引続いて質問を申し上げたいと思います。学生問題はもちろん大学当局並びに文部大臣の御責任であることが非常に多いわけでありますが、われわれ国会のおいても大きな責任を感ずることは当然と思います。そこで私は必ずしも文部大臣だけを責める、そういうふうな気持は持つておりません。この問題に対してはわれわれも大臣とともに愼重に検討して行きたい、こういう観点から、以下なるべく簡潔に質問をしたいと思うのであります。 先ほど教授の思想動向についての法務府の見解について御質問申し上げましたが、それに引続いてお尋ねをいたしたいことは、教師の学外における政治活動について見解を伺いたいと思うのであります。今度のメーデー事件その他にも、大学生はもちろん高等学校の生徒も相当関連しているわけでありますが、こうした学生に対する指導は、必ずしも学校の内部ばかりでなしに、外部において、校外学習と申しますか、あるいは生徒や父兄を交えたいろいろな会合においての教師の指導というものが、相当大きな結果を招来している、こういうふうに考えるのであります。そうした学外の、教師なり教授がある一つの思想を支持する動機、あるいはひいては政治活動と申しますか、そうしたものに対して、教育委員会並びに文部省でも、必ずしも見解が一致していないと思うわけであります。そこでそうした動きに対して、他の労働組合、他の思想団体、特定の政党等がこれを大いに利用するというふうな面が出て来ると思いますが、そうした学外における政治活動並びに特殊な思想運動に対しての文部省の見解を承りたいと思うのであります。
○天野証人 教育は決して教室だけでやるべきではなくして、教室外といえども、また大学の校外といえども、やはり教授は教育者として適当な指導をして行かなければならないという考えでございます。
○浦口委員 私は文部委員といたしまして、文部委員会において大臣とはいつもお話を申し上げているわけでありまして、いまさら質問でもないと考えますが、この委員会はまたこの委員会といたしまして、相次いで起りました大学事件に対する結論を出さなければなりませんので、次にお伺いするわけであります。 それは、大学生はなるほど最高学府の学生である。そして最高の学問を修めるということもわれわれは承知しておりますが、最高の学問を修めるということは、また最高の人格をここに築き上げるものでなくてはならぬ、こういうふうに考えるわけであります。しかも、いかに大学生といえども、やはりその年齢において、社会的経験において、学問において、未熟であるということが当然考えられるわけであります。そこで学生問題に対して学生を処分する以前に、その教授に対して一体文部省はどういう態度に出るべきであるかということの基本的なお考えをお尋ねしたいと思います。
○天野証人 教授が不適当な行動を行つた場合に、教育基本法の精神に反するとか、国家公務員としての地位にももとるとかということがあれば、それに準じた責任を問うわけであります。
○浦口委員 この問題に対しては矢内原東大学長は、教授あるいは講師の採用にあたつては、その思想あるいは主義というものに対しては積極的に尋ねない、こういうことを言つております。また愛大の本間学長は、そうした思想の表明が本人からあつた場合でも、これは自分の一存では行かないので、教授会その他によつて決定すると言われております。かつては教授の資格については資格審査委員会があつたわけでありますが、今はそうしたものがない。結局学長の意思あるいは教授会の決定によると思うのでありますが、こうした具体的な教授の採用という面について、文部省としては現状のままでよしとするか、あるいは何か不備の点があるならば、具体的な構想をお考えになつているかどうか、その点をお伺いいたします。
○天野証人 大学では教授を採用いたしますときには、まず学部でもつて推薦の選考の委員会ができまして、その委員たちが選考してきめて学部の教授会を経る、教授会を経たものが大学の評議員会に出て、そうしてきまることになりますから、私は今の通りでよいと思います。
○浦口委員 先ほど私は、学問の研究の自由と教授の自由は違うという文部当局の見解に対して御質問申し上げたのでありますが、なお私は大臣の答弁には釈然としないものがあるのであります。それは、学問の自由はいわゆる研究の自由であるということを御答弁いただいたのであります。しかし私は、いわゆる教授の教授ということは何を意味するかといえば、結局研究をしたことのその内容を教授するのであつて、研究以外のものを教授するということがはたしてあり得るか。またそうしたことがあるならば、これは学生としても非常に迷惑な話でありますので、私はやはり研究の自由が即教授の事実となつて現われて、そこに自由がなければならぬ、こういうふうに考えるわけでありますが、そうなりますと、先ほど大臣は教授の自由にはおのずから一つのわくがあるというふうに言われたと思いますが、その点もう一度はつきりとお尋ねしておきたいと思います。
○天野証人 浦口委員のお考えは私は少し理解できない点があるのです。私は、研究の自由と教授の自由ということでは、研究の自由の方が概念が広いということを申し上げたのであります。それを浦口さんは、研究の自由と教授の自由とではその範囲に幾らかの違いがある、教授は研究以外のことを教授する、こういうようにとられるのは論理が合わないように私は思います。私の申したことは研究と教授は元来は一致すベきものであるが、学生が若いとかいろいろの場合においては、研究の自由の範囲の方が広いということを言つたのです。
○浦口委員 なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、大学は学問の自由を守るためには、その学問の内容がいわゆる中立性を保ち、時の政治勢力とか、そうしたあるいは現実とかいうものに左右されずに、あくまでも真理の探求にある。その真理の探求に専念しつつあることによつて、初めて大学は、私はその大学の中立性を保ち得て、そこに自由があり、自治が完成して行く、こう思うからであります。そうなつて参りますと、一体真理の探求ということが問題になつて来るわけでありますが、まず大学は真理を探求するという、その場合に、真理に幾つも種類があるとは私は考えません。従つて大臣はこの真理の探求ということについてどういうふうなお考えをお持ちになつていられるか、その点を伺いたい。
○天野証人 たとえば私などが一つの問題について研究をいたしたといたしますと、非常に立入つた研究をしているときには、大学の学生というような、まだ十分学問の素養のない者には、その全部を講義しないで、やはりその一部を講義するということだつてあり得るわけです。研究したことは全部教授授業せにやいかぬということになりますと、学生の学力とか理解力とかいうことと無関係に、何でも研究したことはみんな教授せねばならぬということは、私はどうかと思います。それは自分の考え方によつてどうにでも授業できるというところに、かえつて教授の自由というものもあるんじやないか。研究したことはみんな教授せにやならぬことは私はないと思います。
○浦口委員 そこで私は共産主義の問題に触れて行きたいと思うのでありますが、もちろんこれは研究することが自由であり、われわれは共産主義即それを全面的に否定するかどうかということは、これは非常に問題になつて来るわけでありますが、一つ具体的な例を申し上げて御見解を聞きたいのであります。北海道の学芸大学の函館分校におきまして、最近上級学生に対して輿論調査をいたしました結果が、八〇%までが共産主義が一番いいという結論が出ておるということを、最近私はある教育者から聞いたのです。これはどういう方法によつてこういう数字が出たかということは、私はまだ照会中でありますので、事実を知つておりません。それからまた、それではこの八〇%が共産主義を最上のものと回答したことによつて、すぐ私はこうした学生がいわゆる先ほど問題になりました共産党のいわゆる中核自衛隊とか、軍事委員会等と結んで、暴力行動を起すとか、そういう結論に私は持つて行くつもりはありませんが、少くとも学芸大学の学生は、今後教師なりあるいは教授になつて行くこれは卵であります。そうした人がこういう考えを持つということの原因が、一体那辺にあるか。これは私は単なる社会情勢あるいは敗戰後の日本の当然たどるべき道だというふうな現実問題だけでは、解決のつかないものがあると思うのであります。その点文部省は実態を調査にあるいはなつていないかととは思いますが、こうした事態があるということに対して、まず大臣はどういうふうにお考えになつておられますか、それを伺いたい。
○天野証人 それは私、その事実を調べたこともございませんから、どうしてそうなつているかはわかりませんが、おそらく共産主義の理想というような、すべての人が何といいましようか、よい生活水準を保つというような、そういう理想をおそらく述べたから、若い者はそれがいいと考えたんではなかろうか。しかし問題はその理想を実現するのに、どうして実現するかということが問題なんです。それを現に行われているような暴力によつて実現するということが、はたしていいとみんな考えるかといつたら、私は考えないんじやないかと思います。
○浦口委員 そうすると、要は実現の方法ということにかかつて来るようでありますが、しかし今この委員会で問題になつておりますことは、結局大学が共産革命の重要なる拠点となりつつあるのではないかということが、この今度の大学の事件をめぐる一つの大きな問題となつているということを考えますと、主義と行動は別であるという、単なる理論的な割切つた考え方だけでこの問題を解決できるかどうか。 そこで伺いたいことは、共産主義を謳歌するということが、すぐ実現の方法として実力行動あるいは暴力主義に行く可能性を、他のいかなる主義よりも非常に多く持つている。こういう結論になるかならないか、その点を大臣にお尋ねをいたしたい。
○天野証人 私は、今の学生が共産主義といつても、共産主義を十分研究してないと思うのです。昨今の非常な著しい傾向は、少しも研究をしないのです。そうしてすぐ実力的な行動に移るということが、昨今の現象なんです。どうか私は学生がもつとほんとうに研究をしてもらいたいと思うのです。マルクスということでも、簡単に言いますけれども、マルクスを勉強するということは、これは大したことです。大学四年かかつたつでなかなか勉強できないくらいだと思うのです。そういう意味で、ほんとうに勉強しないでもつて、人の言うことを信じたり、およそのことを聞いたりしておるのだと思います。
○浦口委員 学内の共産細胞などというものは、今合法的には認められていないわけでありますが、実体があることは大臣も御承知だと思います。しかしその数から行きますと、非常に少いということも聞いております。矢内原東大学長のお話によりますと、大学の許さない非合法集会に集まる者は、大体百名内外ということを言われたわけです。しかし私はそうした数に対してこの大多数の学生がおそらく沈黙を守つている、無関心であるということか言われているのでありますが、それも一つの考え方であります。しかし少数の者によつて事件が次々起きて行くという事実に対して学生がただ無関心でいていいかどうか。こういうことは非常に私は問題だろうと思うのです。といつて、もちろん力には力とか、外面的なものを意味するのではないのでありまするが、その無関心ということは、またいつでもそうした方向に巻き込まれやすい要素を持つておるのじやないか。そこで東大においても新人会というふうなものができて何か一つの動きがあるようにも聞いたのでありますが、いわゆる健全なる学生運動というものは、とりわけ大学において、どうした形で起るべきか。もちろん文部省がこれを指導するとか、政府がどうということは考えるべきではありませんが、そうした無関心であるということがはたしていいかどうか。それにかわると申しますが、新しいほんとうに学生らしい運動が当然起るべきだと思うのですが、その点について大臣の御見解を知つておきた、と思います。
○天野証人 そういうことに無関心というのは、ひとり学生だけでなくして日本の社会がすべてそうだと私は思うのです。いろいろな場合に、この自分の考えを率直に発言するという、発言の勇気なんというのは、われわれの社会では非常に乏しいと思うのです。これは近世西洋文明というものが、十分日本において消化されないで、個人の自覚というものが十分発達しない一つの現象だと私は思つている。教員諸君の中だつてある一部の教員の言うようなことには絶対反対なんです、大多数は……。だけれども彼等は発言しないのです。そういうことはわれわれ社会の全体の傾向であつて、私たち自分みずからも大いに反省して、正しい者が勇気を持つということにならなければならないのですが、学生もどうかそういうようなふうに、ほんとうの意味の民主的な考え方に教授諸君によつて指導されるというよりいたし方ないと思うのです。私は人為的にそういう一派の者を文部省が助けるとか、そういうことはいけないと思つております。
○浦口委員 次にお尋ねをしたいことは、二十三年の十月八日の文部次官通達の第六番目に「学生と労働者とは社会的地位及び責任を異にするものである。学生運動が労働運動に範をとり又これに協同することは適当でない。」こういう一項目があるわけであります。もちろんこれは学内においてこうした実際行動が行われることはいけないという意味とは考えますが、外部においてはこれはさしつかえない、こういう見解で出されたかどうか、この点を伺います。
○天野証人 私は外部においても学生というあり方からいつて、好ましくないと思うのです。
○浦口委員 私はこれで終ります。
○内藤委員長 井上良二君。
○井上(良)委員 今まで文部大臣が証言をされました点で、納得の行かない点が数点ございますから、この際明らかにしておきたいと思います。 その一つは、文部大臣は学生と警官が衝突しやすいという証言をされておりますが、何ゆえに一体学校でまじめに学ぼうとしておる者に、警官と衝突する條件が備わりますか。これを伺いたい。
○天野証人 学生はなるほど勉強しているのですけれども、従来の特高警察のような考えが今も学生には非常にあるのです。それだからして警官に対しては、ややもすると自分たちの自由を束縛するものとか、そういうような考えを非常に持ちやすい。そういう傾向がある。ことに今のような時代においてはあると思うのです。それがよいというのではないのです。そういう傾向があるからその点を教育者は十分に注意をしてくれというのです。
○井上(良)委員 警察官が学生の運動にあるいは行動にタッチするところから、問題は起つているわけです。従つて治安を取締つておりまする治安上の責任者である警察側が、何か故意に学生を扇動したり、あるいは治安を乱すようなことを誘発する行為がありますならば別であります。そうでなしに、治安当局者として、学生の行動が行き過ぎであるというところから問題が起つておるのじやないですか。あなたのさいぜんの証言を静かに批判的に聞いておると、どうも両方が悪いような考え方が、非常にあなたの頭に強く映つておりはせんかと思われる節があるのです。何も問題のないところに、警察が行くはずはない。その点どうですか。
○天野証人 東大の初めの事件などは、やはり学生のそういう集会の中に、届出というか連絡なしに入つたということは、学生ももちろんよくない。私は初めから学生をいいと言つたことはない。けれどもやはり警官の方にも手落ちがあつた。そういう場合があると思うのです。何でも学生をみないいと言つたことは私はない。初めから私は学生のそういう行動がよくないという考えでございます。
○井上(良)委員 次に教育基本法の第八條にあります学校に関する解釈でありますが、学校は、建物と先生と学生がなければ成り立たぬと考えますが、こんなことは聞くまでもないことと思います。ところがさいぜん大臣はこの第八條に規定してある学校の教育の内容について教授の行動というものと、それから学生の行動というものとを別々に考えて、教授は教育基本法の取締りを受けるというか、この規定によつて動かなければならぬ。学生は法的には何らそういうものには抵触しない。ただこの法をつくつた精神から言うと、多少道義的責任があるこういうような御証言のように聞いておりますが、そうなりますと、学校は学生を対象にしてあるわけです。学生を除いて学校は成り立たぬと私は考えますが、支部大臣はどうお考えになりますか。その点伺いたい。
○天野証人 私は法律的な解釈を初めに申したのです。学校と言つたときは主体を指しておる。学生はその客体であります。だから学校はと言つたときには主体を指すのがこの法律解釈では妥当ではないかという解釈でございますけれども、教育基本法の精神からいえば——私は多少という言葉は決して言いません。精神から言えば学生の政治運動というものは好ましくない事柄でおる、こう思います。
○井上(良)委員 教育基本法はそういう大臣のような解釈の上に立つてこれを使つて一向さしつかえないとお考えですか。私は法律というものは、実在をする行動があつてその実在する行動を適正に扱おうとしてでき上つておると思うのです。学校というものは主体、客体という二つの考え方に立つて——主体とはすなわち建物であり、教えようとする学校があるからそこへ学生が習いに行くのだ。だから学生は別個のわれわれのような見方——学校というものは少くとも先生があつただけでは学校は成り立たぬ、少くともそれは先生と生徒と建物というものが一体を成しているものだ、それが主体だと私は考えておるのです。あなたの解釈には、学校は先生と建物で、学生はその客体だというような考え方がありはせぬかと思う。しかし現実にこの教育基本法に書いてあります「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」そういう点から考えれば、当然それは学生も含まれると解釈すべきじやないですか。
○天野証人 これは法律解釈でございますが、学校は学生がいなければ成り立たないことは、これは当然のことでございます。学校と言つたときに、学校の活動する面という、そういう主体的な面からこれは規定しているものと私は思うのです。井上さんは、基本法をさらにお読みくださつたら——もし井上さんのような御解釈だと、すぐ次の九條において非常に困る現象を起す。だからして全体を解釈して行くためには、学校と言つたときには、これは主体的な方面から考えて、その教育を受ける学生というものを直接にささないというようにしませんと、次の九條において私は行き詰まると思います。
○井上(良)委員 そうしますと、もつと具体的な例をもつて話をします。本日の夕刊によりますと、二十八大学が破防法反対のためにゼネストをやつております。もしこういうことが学校と何ら了解もなしに、つまりあなたの言う学校と了解もなしにゼネストが行われます場合、学校は成り立つて行きますか。どうお考えですか。
○天野証人 そういうことは学校として、学校を成り立たせなくなることであるから、どうかしてそういうことを防止するようにわれわれも苦労をいたしておるわけでございます。
○井上(良)委員 あなたの教育行政に対する熱意ほどは、われわれもかねがね伺つておりますけれども、しかし実際現われた教育行政の効果といものは、反対の現象になつておりますね。これは何もあなた一人の力でどうするということもできますまいが、根本的に問題があるじやないかと私は思うております。そこで、われわれが考えます学生の運動というものは、たとえば学校の教育方針が、どうも習おうとする者の考えと違つた方針がとられておることに対する反対、あるいはまた学校の経営の内容についていろいろ学生として意見のある場合、あるいはまた直接教育を受ける学生としていおいろ教育を受けるに必要な要求をする、こういう立場の学生運動ならば、これは私は当然あるべきことだろうと思うております。ところが、そういう学校の教育の方針であるとか、経営のやり方であるとか、あるいはまた学生として教育を受けるいろいろな環境を改めて行ごうとする行き方であるとか、そういう学問を学ぼうとする立場に立つておることから、さらに一歩踏み越えて事態は進んでおるではないか、私はこう見ておるのです。 そこでその基本をなすものは、やはり社会のお互いの生活に必要な学問をを研究します場合に、その学問の対象となつて来るあらゆる社会現象、自然現象というものがいろいろ問題になつて参ります。特に社会現象の関係において、物の見方が二つ出て来ると思います。一つは現在の時代を維持しようという考え方と、一つはこれを改革して行こうという考え方とが起つて来る。この考え方が人生観の相違となり、世界観の相違となつて現われて参ります。この人生観なり世界観の対立が今日の学生運動を動かしているじやないかと私は見ている。そうしますと、問題は一つの政治性を持つて来ているのであります。純真なる教育的な立場ではない。そうお考えになりませんか。
○天野証人 政治的なことが今問題になつているけれども、教育はそういう政治上の正しい判断ができるような人間をつくろうというのです。ところが、まだそういう準備のできない、自分が正しい判断をする準備をしている者が判断をして出るところに、今の学生運動というものの困つた点があると私は思つております。
○井上(良)委員 そこであなたみずからが、ほんとうに学問の真相を検討されて、ほんとうに自分の身となり、あるいはまた社会の利益となる学問を身につけて、自分の考え方が社会のためにこれは取捨てなければならぬという取捨選択が十分できるだけの思想的な考え方が固まらないときに、一方的な考え方に固まつて運動を行つている、そこに問題がある、こうあなたみずからがお考えになつているわけです。そういうことが現実に日本のあらゆる大学に行われておりますときに、教育の最高の責任者としてのあなたが、單なる大学の自治的な指導にこれをまかしてしまつて、そのうちに何とかなろうというようなのんきなことでいいとお考えになりますか。その点どうです。
○天野証人 決してのんきなことには考えておりません。日々このために苦慮いたしております。
○井上(良)委員 日々に苦慮いたしておりますというけれども、現実に私が今も申しました通りに、破防法という学校教育には直接利害関係のまつたくない問題、しかもこれは国権の最高機関である国会で審議の過程にあるものだ、そのときにゼネストをもつて——この法案のよしあしは別ですよ、そういう行動をとるものが全国の大学に二十八もあるというようなことは、あなたの努力というものが一向報われておらないじやありませんか。
○天野証人 今の日本の現実が、一人の文部大臣の力ですぐその大学にあれをやめてしまえというようなことはとうていできないような、それが今の日本の悩みだと私は思つております。もちろん私は自分の微力なことは感じておりますけれども、一個人の力をもつてして、この日本のとうとうたる学生運動というようなものを一挙にしずめるとかいうようなことはとうていできない。ただ自分は大学の学長諸君とともにいういろいろくふうをして、これをしずめようとして来ているわけです。
○井上(良)委員 さきに浦口さんからも質問がございました通り、現実に共産主義の理論を信奉する学生は非常にふえておるのです。減つておりません。そうしますと、共産主義理論に対応する新しい社会科学をもつて臨まなければとうてい対抗でき得ないのです。いわゆる現状維持の理論をもつて、社会を改革しようとする熱意に燃える若き学徒の純情さをどう食いとめることができますか。この運動に参加した学生は、あなたも御指摘のように、まだ世間をよく知つておらない。勉強もまだ十分じやございません。しかしながら社会悪に対して、政治の腐敗墜落に対して、いろいろな点を考えますときに、純真な正義感に燃える青年は、この社会悪なり政治の腐敗堕落を、何とかひとつなくして、もつと明るいよい社会をつくりたい、そういう一つの科学的理論が学生の前に述べられますときに、これに共鳴するのは当然であります。これに共鳴するなという方が無理であります。だから共産主義理論なり、マルクス主義理論に対応する、新しい一つの民主主義理論を確立して、それによつて民主的な手段と方法で、社会悪なり政治の腐敗堕落を粛正して行くところの政治芦力をつくつて行くことが必要である。そういう点に対する何らの対策を講ぜずに、ただいろいろな通達を出してみて、いろいろなこうやくばりの対策だけに終つておるのじやないのですか。基本的に共産主義理論に対応し、その共産理論は結局暴力的な破壊活動をやつて行こうとする理論になつておりますから、それがいかぬとするなつば、それに対応する新しい民主的な理論を打立てなければいけません。その理論なしに、ただ現状の古くさい資本主義的な物の考え方でこれに対応しようとしても、現状悪に反感を持ち、現状悪を何とか直して住みよい世の中にしようとやつておることです。若き時代はみなそうであります。だからそれに対応するところの新しい科学というものが與えられなければ、あなたの言う破壊活動へ進もうとする学生を、民主的な手段と方法によつて、導くことは困難じやないかと私は思いますが、その点に対してどうお考えですか。
○天野証人 私は先ほどから申しておりますように、学生がそういう理論的な追究をするなら、私は指導しやすいと思います。そうじやないのです。現在は理論的なことは大してやらないのです。ただ直接行動的なことに進んでおる学生が多い。大学は非常に研究をいたしておりまして、学生の学問的な指導というようなことは、今の日本の大学では十分できるのですけれども、そういうことは十分やつていない。やつているなら、とうていこんな活動などはできないのです。
○井上(良)委員 それですと、これは非常の問題です。つまりわれわれは少くとも今日の、いわゆる共産主義運動に同情を持ち、あるいはこれを正しい理論として信奉して、それらの者が中心になつて、ひとつのいわゆる破壊的な暴力的な運動に発展しておると私は見ておる。そうでなくて、あなたの理論で行きますならば、まつたく市井の無頼漢と一緒です。少くとも私は、日本の最高学府の学生が、何らの理論も持たずに、何らの研究もせずに、市井の無頼漢があばれるような、そういう立場であばれておるのじやないと思います。あなたの理論で行くならば、まつたく市井の無頼漢と一緒だ。理論も何も持つていない。ただあばれたから、どうもやつかいだというのがあなたの結論です。そういうことをもしあなたがお認めになりますならば、そういうことを大学の学長の責任にこれをまかして、文部省は何らこれに対して積極的な対策を立てずにおるということは——あなたが積極対策を立てておるのは一片の通牒にすぎない。一つの事件の起つた跡始末の対策を講じているにすぎない。そうお考えになりませんか。
○天野証人 そうなると私は御意見になると思います。
○井上(良)委員 それは多少意見も述、べてもらわなければなりません。 次に伺いたいのは、学内におけるいろいろな集会について、学長あるいは学校当局から、集会の性質によつて許可していないのに、無理に集会を実行しておるのが最近の傾向です。多分本日もいずれの大学も学内集会は禁止しておりましよう。しかるに今晩の夕刊を見ましても、東大の安田講堂前に集まれという指令のビラが出されて、おそらく集まつておりましよう。あなたは学校当局に学内の一切のことの責任を持たせて、教授の任免からあるいはまた学生の処分から、一切を学校当局にまかせて知らぬ顔をしておる。とろで学校当局は、この集会はいろいろ世間の誤解を招き、公安を害するおそれがあるというところから禁止する。それを冒して、しかも学園内で行われるのです。それが一向に積極的な処分対策というものが立てられていない。やられてもほんの申訳にすぎぬ。そういうことで一体こういう事件が根絶できるとお考えになりますか。それは何か特別な社会へ持つて行つて、いわゆる資本主義社会と隔離しまして、特別なところで長い教育をいたしますならば、それは理想に達せられるかもしれませんけれども、いかにせん現実は、今申したような事件がひんぴんと起つているのです。それをそのままで、依然として学校のことは学校当局にまかせて、そういうことをやつた者に対して、何らこれに干渉すべきではない。法的やあるいは天くだり的に、いろいろ注意すべきではない。そういうお考えで、国全体の健全な教育行政というものが維持できるとお考えになりますか。 はなはだ出過きた言い方でありますけれども、最近東大の卒業生に対して、世の批判がいかに強いかということを御存じですか。東大の卒業者に対しては、就職さえも遠慮する者がたくさん出て来ておるじやありませんか。かくのごとき事態を最高の教育の責任者が、大学のやることだから、そんなことを上かち干渉したり、法的制限を加えることはどうもおもしろくない。そういうことで、一体事が済まされるとお考えになりますか。われわれは、さきにもだれかが申しましたように、この困難な財政の下に、教育の重大性を考えて、莫大な教育費を負担しておるのです。そのことから考えても、もう少しここで根本的な教育行政の確立について、必要な対策が立てらるべきじやないかと私どもは考えますが、どうも大臣の御意見を聞いておると、いろいろ対策は講じておる、講じておると言いながら、もう一つかんじんなところでぼけてしまつて、はなはだどうも私どもは困るのでありまして、この点が国民の最も聞かんとするところでありますから、はつきりした責任のある明確な御証言を願いたいと思います。
○天野証人 私は決して東大のようなことを知らぬ顔をしておるわけではなく、今朝からも、幾度も局長が東大に電話で連絡をしておることをまず御了承いただきたい。決してこういうことに対して、どうでもいいと思つておるのではなく、どうかして日本の大学をりつぱにさせようと思う。けれども大学に対して文部省が干渉をするということは、適当なこともあるでしよう。けれどもそれが過ぎると、大学の本質を阻害するおそれがあるから、自分たちはそういう点では注意深くしておる。しかし矢内原学長などとは絶えず連絡をとつて、自分たちはやつておるのです。けれども福沢先生のような偉大な教育者でも、学校に子供を入れて、自分の好きになると思うなら非常な間違いである、学校というものは、社会の影響が非常に大きいものだということを言つておるのであります。現にこの日本の非常に険しい現実の中にあつて、学生をどう指導するかということは、非常にむずかしいことだということはお考えいただきたい。けれど今おつしやられましたことは、一々私どもが反省するに足ることでございますから、よく自分たちも考慮をいたしたいと思います。
○井上(良)委員 最後に、大臣の苦心される点について、われわれも自分の子供を学校へやつております親として、十分感じておるわけです。ただここで大臣の今までのいろいろな御意見を伺いまして、つまり大臣の力でも、文部当局のいかなる手腕家がおりましても、今日の時代の学生運動は、單に文教当局の行政的手腕の問題ではないように私どもは考えます。従つてこの際文部当局としては、学生運動の最近の動向にかんがみまして、もう少く広く、いろいろな輿論の力をかりまして、対策を立てる必要がありはせぬかと思います。たとえば言論機関なら言論機関、あるいはまた全然問題を起していない学校もたくさんございますし、そういう方面の学者なり教育者なり、あるいはまた世のいろいろな批判家なり、そういう人々の協力を願います一つの新しい検討機関をつくられて、一つの輿論の力といいますか、そういうものによつて学生を善導するというか、学生本来の道に立たすように持つて行くべきではないかと考えますが、そういうことはお考えになつたことはありませんか。
○天野証人 最近国会で御承認を得ました中央教育審議会というものは、まさにそういう意味のものでございます。
○内藤委員長 福井君に一言申し上げますが、大臣は先日来から非常にお疲れのようでありますので、簡単にひとつお願いいたします。
○福井委員 御注意の通り、きわめて簡単に大臣にお尋ねしたいと思います。本日の委員会の名目は、学生と警察官との紛争事件となつておりまして、ちよつとそれるかもしれませんが、愛大の事件に関連が若干ございますので、その点についてお尋ね申したいと思います。 せんだつて私の質問に対する本間学長の御証言の中で、福井委員は愛大は非常に赤いという認定をされておるが、自分はそうは思わない、桃色になつておるくらいだとも思わないが、これを東京に持つて来たならば、愛大は桃色にもならぬであろう、という説明をこの席でされたのであります。私学でありますけれども、文部大臣の管轄下においてどういうふうにこの点を見ていらつしやいますか、その点をひとつ……。
○天野証人 私は愛知大学がどれだけそういう思想的な傾向になつておるかということを、まことに済みませんけれども、まだ十分調査した結果を聞いておりません。ですから、ここではつきりと赤いとか桃色とかいうことを断定できないということを御了解願いたいと思います。
○福井委員 次に、文部省の方においては、愛知県に直轄の大学、專門学校をずつと配置されておる。その実情を見ますと、名古屋、岡崎というのが中心になつていまして、東海道線として最も私たちの方から見れば主要な神奈川、静岡、愛知、岐阜というこの線のうちで、豊橋は最も重要なる都会であり、へたな引例かもしれませんが、昔の十五師団司令部もあつたところで、相当の人口も擁しておるところであります。神奈川県では、横浜、それからずつと行つて静岡、浜松、いずれも直轄の大学がございます。それから岡崎に学芸大学がありますし、名古屋にはすつかり文部省の直轄学校を集めてしまつて、そこに今私学の愛大が置かれてこの地方の市町村に対して相当の寄付を愛大から希望されておりますけれども、現在においてはこれに応ずる気配がございません。若干あるかもしれませんが、大体において気配がないと認定しております。そういう現状でありますので、せめてこれに対抗する——という言葉はどうかとも思いますが、あまり特殊な思想を持つておる、その温床のような大学は、私はどうかと思いますので、この際文部大臣は、豊橋に直轄の大学か專門学校を近く置く意思を持つておられるかどうか、この点を伺いたい思います。 〔「そんなことは文部委員会でやれ。」と呼ぶ者あり〕
○天野証人 今そういう考えをさしあたつては持つておりません。
○福井委員 教育の点について、あの地域を重要に認識していただきたいということを再言して、私の質問を終ります。
○内藤委員長 福田君。
○福田(喜)委員 天野先生お疲れのようでありますから、きわめて簡單にお尋ね申し上げたいと思います。先ほどから井上委員、浦口さんあたりの質問によりまして天野先生の御意見はほぼわかりましたが、私はこれを要約いたしまするに、今回の学生事件は、結局角帽をかぶつた職業革命家が、外部の指導勢力に踊らされて、学園の自治といい、学問の自由ということを看板に用いまして、内外の擾乱をやつている。従つて学問の自由も大学の自治もいささか侵犯されておらない、かように解してよろしうございますか。
○天野証人 少数の学生に対してはそういう表現も当てはまるかとも思います。
○福田(喜)委員 いわゆる職業革命家というのは、きわめて少数の、今現実にやつておる学生に対してそう言うのでります。そうしますと、私が次にひとつお尋ねいたしたいのは、こういう角帽をかぶつたいわゆる研究というよりも実行、その実行たるやはなはだ疑うべき実行でございまして、破壊活動的な実行のみに専念しておりまするこの学生が、その自治と自由ということをいわゆるスローガンに使いまして、このスローガンはあたかも、私は先日の委員会で申し上げましたが、叡山の荒法師が山門を自分の暴行のたてに使つておるとちつとも違わない状況である。しかも自治も侵犯されず、自由も侵されない、この現状におきまして、天野先生は先ほどこういうことを申されました。われわれは大学の自治に対して言うことはあるけれども、それは教育上いろいろのさしつかえのことがあるからして、学長なり総長を信任してその自治というものを大学という特殊な立場から、なるべく擁護するようにしておる、御趣旨まことにけつこうでございますが、しからばその自治を使つておるところの大学の学長さんなり総長さんなりが、この自治というものをいかに内部に使つておるかということを、私ははなはだ疑問にたえないのであります。というのは、第一に、これは私立大学でございましようけれども、法政大学の大内兵衛学長は、いわゆる学生葬というものを禁止しておる。禁止しておる学生葬、五月一日のあのメーデーで倒れた学生の学生葬というものを法政大学の部屋でやることを禁止しておるのに、学生が禁を破つて強行して学園の自治というものは内部からこれを乱しておる。これに対して何らの措置というものを講じておらない。そうしてそれに対して詰問されると、物理的にそういうことは不可能であると言つておる。東大の場合におきましても、同じような例が日々散見されるわけでございますが、こういう事態が各大学に起りつつあるのに対して、天野先生は干渉しては悪いという御意見でございましようか。どうでございましようか。
○天野証人 干渉というのではございませんけれども、この間も都下の大学の学長にみな集まつてもらつてどうしてこれに対処するかという相談をいたしたわけでございますが、そういうように干渉とは言わない、むしろ相談と言いたい、そういう方法をもつて随時学長諸君と相談をしてここに対処して行きたいと思つております。
○福田(喜)委員 相談けつこうでございましよう。それから善処するのもけつこうでございましようが、その自治を守る自治の責任者というものは、いささかも、自治統率の能力がない場合におきまして、その行為たるや社会に害悪を及ぼす、公の秩序と申しますか、善良なる風俗と申しましようか、これははなはだ古い言葉かもしれませんが、その言葉の中に盛られている内容というものは、私は今日の民主主義にも十分妥当するものと思いますが、その自治というものが侵犯されておりながら、しかもその影響は、社会に非常な害悪を流しておる場合におきましても、文部大臣として、これに対してそんななまぬるいことでよろしいのであろうかと思いますが、いかがでございましようか。
○天野証人 私はしばしばなまぬるいといわれるのですが、それではなまぬるくない方法というのはどうしたらよろしいか。私にはなまぬるくない方法といえば、警察力を用いるとか、権力を用いるとか、あるいは学長を罷免することかと思えますが、学長を罷免する権利は文部大臣にございません。そういうようなやり方ではたして学生問題が解決できるか、そこに私も強く自分でも反省して、自分が反省したばかりでなく、次官などとも、はたして自分らのやることがこれでよいのかということは深く反省もしてみておることなんですが、これをすぐ一気にという方法がどうも自分にはないのでございます。これはやはり教育的に見て行くよりほかはない。それには学長諸君とよく協力してやつて行くのが妥当である。私はそういう考えに立つておるものでございます。
○福田(喜)委員 天野先生のおつしやることはよくわかりますけれども、たとえば家庭において道楽むすこがいろいろ社会的に害悪を流すことを、直接本人に対していろいろな処置を講ずるのはまずいから、親を呼んで注意をする、そうしてまず親に対して責任を持たして、こういう訓戒をして、教育的の効果を期待する、これはけつこうでございましよう。しかしそのことは比較考量の問題だろうと思う。いわゆる自治の名におきましてそういう措置がなまぬるいと申しますか、いささかも改俊の情は上らずして、しかも彼らは依然として暴力革命行為というものを角帽に隠れまして社会に害悪を流しておる。教育というものはなるほど緩慢で直接的な効果は期待できないけれども、社会に対する害悪が多いときに、比較考量いたしまして害悪が大きい場合においても、天野先生は依然としてかかる態度をもつて対処されるのでございましようか。
○天野証人 その場合によると思うわけです。場合によれば、大学は警察の力を借りて何でも処置をいたします。場合によるということを御了承願いたいと思います。
○内藤委員長 他に御発言がなければ、天野文部大臣に対する尋問はこれにて終了いたしました。 証人には長時間御苦労様でございました。 次会は公報をもつてお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。午後六時四十分散会