行政監察特別委員会 第28号
- 発言数
- 121 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1952/06/14
会議録
○内藤委員長 これより会議を開きます。 この際お諮りいたします。学生と警察官との紛争事件につきましては、理事諸君と御協議の上、本日、東京大学学長矢内原忠雄君、文部大臣大野貞祐君、以上二名の諸君にそれぞれ本委員会に出頭を求める手続をいたしておいたのでありまするが、以上の諸君を証人として決定するに、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○内藤委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。 それでは前会に引続いて、学生と警察官との紛争事件について調査を進めます。 ただいまお見えになつておられる方は、矢内原忠雄君ですね。
○矢内原証人 はい。
○内藤委員長 あらかじめ文書をもつて御承知の通り、本日正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたので、さよう御承知を願います。ただいまより、学生と警察官との紛争事件について証言を求めまするが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関す乙とき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事案であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。 なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。 では法律の定めるところによりまして、証人に宣誓を求めます。御起立を願います。 宣誓書の御朗読を願います。 〔証人矢内原忠雄君朗読〕 宣 誓 書 良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
○内藤委員長 それでは宣誓書に署名捺印してください。 〔証人宣誓書に署名捺印〕
○内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は証言を求められた範囲を超えなこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。 矢内原忠雄君は現在東京大学学長でおられますが、この現職におつきになるまでの閲歴を、簡単にお述べ願います。
○矢内原証人 大正十二年に東京大学教授に任ぜられまして、昭和十二年の十二月に退官いたしました。昭和二十年の十二月に再び東京大学の教授になりまして、昨年の十二月十四日に東京大学学長に就任いたしました。
○内藤委員長 御承知のように、最近の共産主義活動におきまして、学生が朝鮮人あるいは自由労務者と並んで、重要な一翼をなしていることは、治安警備の上から看過しがたい問題と思われまするが、証人はいかがでありますか。
○矢内原証人 学生が共産主義活動において、自由労働者、朝鮮人と一緒に活動しておるという事実につきましては、私は詳細に承知いたしません。ただ、いかなる主義者であろうとも、またいかなる社会階層の人であろうとも、治安を害する行為はよくない、かように考えます。
○内藤委員長 実際において、そういう活動の中心をなしておる者は尖鋭分子であつて、大部分の学生はそれに扇動されておるというのが実情であるよ方でありますが、この大部分の、最も知識の高い学生が、さような扇動に乘ぜられるという原因は、一体那辺にあるのか、御所見を伺いたいと思います。
○矢内原証人 ごく一部の少数の学生の扇動に対して、ほかの多数の学生が合流するという理由についてのお尋ねだと思いますが、合流する場合もあるし、少数者の扇動が効を奏しない場合も、たくさんございます。効を奏する場合は、題目の取上げ方が、非常に時の政治の重要な問題に触れておりまして、単に学生のみならず、社会一般において重要な関心のある問題、こういう問題が取上げられましたときには、その政治的な政党の所属等を越えまして、一般の学生も政治的意識が高まつて、行動をともにするということがあると思います。
○内藤委員長 大学の学生が特定の政党に加入し、その細胞を学校内につくることは禁止されておるはずでありますが、実情は非合法に細胞が結成され、しかも大学当局の命令に服さない実力行動が現現われて来ておるのでありまするが、大学当局はこれに対してどういう処置をとつておられますか。
○矢内原証人 仰せの通りに、大学では政党の支部もしくはこれに類似のものは、組織を認めておりません。具体的の問題として、たとえば共産党の細胞という名義でビラの出ることがあります。これは学校で認めておらない団体でありますから、責任者がだれであるかもわかりませんが、かくのごとき場合は、ただちにビラを押収するとか、それからもし実際にまいている現場であるならば、そのビラまきを禁ずるとかいたします。
○内藤委員長 東大には現在そういう共産党の細胞があると御承知でしようか。
○矢内原証人 あると承知いたしませんが、そういう名義のビラがたまに出ることがあります。
○内藤委員長 これはあなたの学内でとつて来たものでありまして、「人民の大学」という題をつけて、しかもその「主張」というところには、矢内原先生を非常に讃美をして、先生にたよるような文面もあります。かようなものがまかれておつた事実を御承知になつておられるかどうか。
○矢内原証人 そのものは今私初めて拝見いたします。
○内藤委員長 それに類似のものはどうでありましよう。
○矢内原証人 過去において、ときたままかれたことはあります。
○内藤委員長 一部さような尖鋭的な学生は、学園に警察官を入れるなというスローガンのもとに、学生と警察官の紛争を対権力闘争に利用している。学園の秩序破壊を企図しておるような事実も見られまするが、大学のみの力をもつてこれを制圧することが一体できるでありましようか。
○矢内原証人 警察官を学内に入れるなということは、ただちに権力闘争に結びついておると私は思いません。それでちよつと御質問の趣旨がよくわからないのですが、大学において、大学だけの力でとめることができるかという御質問は何をとめるかという御質問ですか。
○内藤委員長 そういう権力闘争に尖鋭分子が学生を引きずつて行こうという活動を……。
○矢内原証人 今までのところではとめて来ましたし、また現在のような状況であるならばとめ得られると私は信じております。
○内藤委員長 それではこの間の、あのメーデで死亡されたという法政大学の学生ですかの何か葬儀を、学校当局はこれを認めていなかつたにかかわらず強力にこれを実行したように聞いておりまするが、どうでしよう、その点は……。
○矢内原証人 あれは私は権力闘争と解しておりませんので、ただいまお答えいたしたのであります。
○内藤委員長 委員長の質問は、権力闘争ということに限つてはいないのでありまして、学校当局がこれをしてはならぬという運動を、当局の意思に反して強力にこれを実行するというさような活動もまた含まれておる意味であります。いかがでございましよう。
○矢内原証人 あのときの状況は、御承知かと思いますが、五月祭のときでありまして、五月祭の行事は学生諸団体の代表によつて組織されている五月祭常任委員会というものにやらせておりまして、その常任委員会の中で、約半数はあの国民葬なるものに反対をいたしまして反対の行動をとりました。それで学校が禁じたことでもそれが行われることはあります。しかし今後行われなくするにはどうすればよいか。一番正しい方法は、学生自身が自覚いたしましてそのような非合法的な行動はとらないということになるのが正道だと思つております。
○内藤委員長 学校はさような方向に導くように何か指導でもしておられますか。また自発的にさような運動の盛り上つて来るのを待つておるのですか。
○矢内原証人 指導いたしております。
○内藤委員長 一般に学生は警察官に対しまして異常な敵対心を持つておるようでありまして、大学と警察は対立しておるような感が最近に至つてますます強く現われておるようでありますが、その原因はどこにありますか。またどのような処置によつてこれを調整されるお考えか、大学と警察のあり方等について矢内原先生の見解をお述べ願いたい。
○矢内原証人 学生が警察を信用しないというきらいがあることは私は認めます。同時に警察も学生を信用しないという傾向のあることを見ておるのでありますが、このお互いに信用し合わない、それである一つの行動があれば、これに対して報復的な気持の行動が現われることが現状だと思うのであります。それでこれをいかにして処置して行くかといえば、学校としては学生によくさとして、それで学生としてとるべき行動を指示するとともに、警察側におかれましても警察官の教養を高めるとか、あるいは大学というものの特殊な事情、学生というものの特別な性格などを十分のみ込んで大学に対していただきたい。警察官も未熟な方がときどきありますし、学生も粗暴な者もありまして、両者の衝突がときに不幸な事件を起すものと考えます。
○内藤委員長 最近あなたの学校で何か新人会とかいうものが組織されまして、いわゆる尖鋭分子に対抗するような活動を始めたと新聞等で見るのですが、そういう事実はありますか。
○矢内原証人 新人会というのは最近できた団体でありませんで、私の記憶しているところによると、大正八年ごろにできたものかと思います。非常に古いのであります。それが続いておるのでありまして、戰争中どうしておつたのか私ちよつと知りませんが、最近また元気をとりもどして活動しておるという状況であります。主として法学部の学生が組織しております。
○内藤委員長 非合法の共産主義活動、さようなものが学園の内部に勢力を持つということに対して、真の学問の自由とかあるいは大学の自治のために、かような尖鋭分子を駆逐することが考えられまするが、このために何か立法処置をしようとすると、これに対して非常な反対の声が学生の運動として起つて来る。それで現在の学生運動の当面の目標というものはさようなところにもあるようでありますが、これに対してはどういうお考えをお持ちになつておりますか。
○矢内原証人 立法措置とおつしやつたが……。
○内藤委員長 そうです。立法処置、たとえば破防法のようなものをつくろうとすると、それに対して反対の学生運動がそれを当面の目標として起つて来る。
○矢内原証人 破防法の問題に対しては、一部尖鋭分子といわれる学生のみならず、自由主義的と言いますか、民主的と言いますか、一般の学生も反対の気持を持つておると私は見ておるのでありますが、そのことと、学内運動の処置、取締りもしくは指導ということとは、二つ問題があるように思うのです。 それで学園の規律を立てる、たとえばいろいろの学内の規則をつくりあるいは学生を指導いたしまして、非合法的な活動、暴力的な行動などに出てはいけない、そういうことをすれば処罰するというような指導と規律を立てるということに対しては、一般の学生は決して反対いたしません。そのことと破防法という問題は別であります。破防法になぜ学生が反対するかと言いますと、破防法の規定している範囲が少し漠然としていて、言論、思想、学問の自由を侵害せられるおそれがありはしないか、学生が何か参考書を持つているとか、書物を持つているとかしても破防法に牴触するようになるのではないだろうか、そういうことを心配していると思うのであります。
○内藤委員長 昭和二十三年文部次官から「学生の政治運動について」と題し、参考見解として出されておるいわゆる次官通達は、きわめて妥当なものであると思われますが、大学においてはこれをどのように学生に徹底普及さしておられますか。
○矢内原証人 次官通達に盛られておりまする内容は、この次官通達をもつて初めてできた原則ではなくて、通達のできる前から大学自治の條理としてわれわれは守つて来た事柄であります。それがこの年に次官通達という形で文書に現われたものであると存じております。この趣旨をどういうぐあいに学生に徹底させておるかということにつきましては、いろいろ学生に学内の組織がございますので、その組織を通じて平生学生の指導をしたり、あるいは告示をしたり、また学生自身もこれをガリ版に刷りまして、自分たちの間で回覧したりしております。
○内藤委員長 最近ひんぴんとして起る学生対警官の問題は、この次官通達をあまりに広義に学生が解釈して、いかにも学校が何か治外法権的な特権でも持つているような解釈をしておるところに原因はないでしようか。
○矢内原証人 治外法権と学生は考えておるとは私は思いません。われわれ学校当局者はもちろんのことですが、学生も次官通達に書かれていないことで、これも條理の当然として考えられていることがありまして、東京大学の学生は、次官通達をはき違えて行動したことはそう多くないと私は思つておるのであります。しかしその間違いの起つたもとは制服警官のパトロールという問題があります。それでなかなかこれはむずかしい問題でして、一体学校の構内というものは囲われた構内であるか、たとえば工場の中のような囲われた場所であるか、あるいは日比谷公園のような公開せられた場所であるか、なかなかむずかしい。実情に応じて解釈しなければならない問題でありますが、東京大学においては一般公衆に開放せられておる場所、たとえば病院への通路などは公開の場所と考えて警官のパトロールを承認しておるのであります。それは学生にも告示で示してあります。大体の学生は了承しておるわけであります。
○内藤委員長 最後にお尋ねしたいのは、矢内原先生は学生指導対策というようなものを御心配になつておられると思いまするが、ここでひとつ学生の指導対策並びにその実現について、文部当局に対する要望等がございましたらお述べを願いたい。
○矢内原証人 初めにちよつと学生指導対策を私はどう考えておるかということを、ごく簡単に申し上げます。 学校は学生を教育する場所でありますから、すべての事柄を教育という見地から処置いたします。それでこの学園の秩序をよくする方法は何によるか、いかなる力、いかなる方法によるかと言えば、結局教育という道が最も有効でもあり適切である。迂遠のように見えても教育によらなければならない。教育には二つの面があつて、一つはいわゆる一般学生と申しますか、ごく少数の煽動者を除いての一般学生に対して、学園の自治を自分たちで守つて行かなければならない、学園の秩序を自分たちで維持して行かなければならない、こういう自覚、一つの道徳的な勇気をもつて行動するようにということであります。これが先ほど委員長のお話になりました新人会の活動等として現われておるのであります。ごく最近のことでありますが、東京大学の理学部の学生の中にもごく少数でありますが、いわゆる尖鋭分子がおりまして、理学部の学生の会合でこれらの人々が従来のつもりで煽動を始めたところが、従来無関心であつたいわゆる一般学生の中から批判の声が起つて、その煽動した学生が非常に困つてしまつた、そういうことがあちらこちらに現われております。それでこれはつまり学園の秩序というのは、学生自身がみずから奮発して規律を立てて行かなければならないという自覚の現われでありまして、私自分のことを申すものもどうかと思いますけれども、私があるとき学生の会合に出まして、学園の自治を守るものは学生自身だということを述べて、道徳的な勇気を持たなければならないということを申したことがありますが、ある学生の言うことによりますと、そういうぐあいな指導というか、お話はたいへん自分たちの身にしみたと申しております。 もう一つは規律に反した学生に対する懲戒処分ということでありまして、これもまたやむを得ないことであります。明白に規律に違反した場合で、事件が重大であつて責任者が明らかな場合には処罰いたしますが、処罰そのものも教育という見地からなすのであつて、その学生が反省して常識のある学生に立ちもどるということを念願しつつ処置しておるわけであります。 文部当局に対する要望というものは格別ございませんが、ごく一般的に申して、大学の自治という建前、また青年学生が理想主義を持つておりまして、その理想主義的な良識を持つて行動する青年学生、場合によつては逸脱するのでありますけれども、とにかくこの青年学生の気持をくじかないように、しかもそれが暴力的でない、健全な政治的訓練を受けて行くことができるように、私どもは努力しておるのでありまして、文部省もその点を十分了解していただきたい。なお予算の点などを申せば限りのないことであります。学生厚生補導に関する予算の増額とかございます。文部省でありませんが、法務府、警察当局、その他政府あるいは国会の方々に対してもお願いしたいと思うことは、文部省に対してお願いしたいと思うことと同じであります。大学は決して社会から切り離されておりませんで、社会の一部でございますので、たとえば国会の御審議とか、政府の政策とかいうことが非常に敏感に学生に影響を及ぼしております。そういう点もあわせて申し上げておきたいと思います。
○内藤委員長 質問の通告がありますから、順次これを許しますが、一応委員の皆様に申し上げておきたいことは、学長は本日は他にまだ会合が一つあるそうで、時間をあまりとつてもらいたくないという御希望があるようですから、質問は簡潔にひとつお願いいたします。それでは福田喜東君。
○福田(喜)委員 本日証人として御出頭願いました矢内原先生は、昔の私の先生でございまして、はなはだ先生に失礼な質問のほこ先を向けるのは非礼と存じますが、国民を代表する一員として思うところをお伺いしてみたいと思います。 端的に先ず問題の核心をさらけ出しまして御質問申し上げまするが、学園内の治安維持の責任者は、先生はだれだとお思いになりまするか、この点につきまして御見解をいただきたいと思います。
○矢内原証人 一応は大学の学長が学内の秩序を管理いたしますが、法律的な意味において治安の最高責任といえば、もちろん当局でございます。
○福田(喜)委員 この点につきましては、まことに御明快なる御回答をいただいて恐縮でございますが、これは警察法第一條の規定によつて明らかなように、他人の人命、財産の保護、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び治安の確保に当るのは、これは一般の警察の任務でございますので、これは学園内といえども治安の責任者は警察であると思うわけでありますが、この点についていかがでありましようか、先生は御異議ございませんか。
○矢内原証人 先ほど申しましたように、最終的意味においては警察当局の責任であると思いますが、学内の秩序の維持については、学長の管理に委任せられておると思う点があるのであります。
○福田(喜)委員 先ほど先生も御証言になりましたが、警察官の立入りの件でございます。東大の構内におきましては、昔も今もかわらないと思いますが、病院もございますし、それからバスも交通しており、一般通路に公開されておるところでもございますので、警察官がいわゆるパトロールして来るということはたびたびあるだろうと思いますが、警察官が大学の構内に立入るからといつて、私はただちに学問の自由、大学の自治が侵犯されておるとは考えないのでございますが、この点について先生の御見解を承りたけと思います。
○矢内原証人 抽象的に申せばお話の通りでありまして、ことに公衆に公開した、あるいはそれに近いところを制服警官が巡羅されることは当然のことで、警察官の職責だと思うのです。ただそのついでに学生の集会に顔を出されるとか、あるいは学生の多数集合しておる教室の前を通るとかいうようなことは、非常に学生を刺激いたしますので、これはなるべくそうしてくれないように了解を求めているわけであります。
○福田(喜)委員 次に先生にお伺いいたしたいのは、今日学生事件につきまして、新聞紙とか、一部学校側の意見といたしまして、大学の自治とか学問の自由がいかにも危機にさらされている、侵犯されているというがごとき叫びが非常に強いのでございますが、今度の学生事件につまして、先生はこの点はいかにお考えになるか、私はこの学生事件の核心は、大学の自治と学問の自由ということとはまつたく別個の問題であつて、大学の自治も学問の自由もいささかも侵犯されておらないと考えるのでございます。この二つの問題は危機にさらされていない、問題はまつたく別であると考えますが、先生の御見解はいかがでありますか。
○矢内原証人 多分学問の研究及び教育の自由が害されてはたいへんだという危惧からと思います。いわゆる第一東大事件——これはおもしろくない名前でありますが、二月二十日の事件によつて明らかにされましたことで、警察官が、私服警官が教授の身元調査をしているということを、参議院の法務、文部連合委員会におきまして警察署長が証言をいたしました。それで、そのようなことが、教授に対しても学生に対してもはなはだ刺激を与えたのでありまして、その身元調査が、どういうことを調査されて何の目的によつて調査せられ、どういうことに利用されたかということは私も追究いたしません。知りませんけれども、そのようなことが警察官によつて公然と証言されて、今後も実行することとなれば、どこまでそれが行くかわからないというので、危惧いたしておるのであります。
○福田(喜)委員 私たちの学生時代を顧みまして、大学の自治と学問の自由ということが叫ばれたことはたびたびあるわけでございますが、私たちは学生時代におきまして、これは少し前でございましたが、森戸事件というのがございました。それからその後におきまして京都事件というのが起つたことがございますが、これは確かにある意味におきまして、大学の自治と申しますか、学問の自由が危殆に瀕した事件だつたろうと、私たちは当時を追想して考えるのでございます。その場合におきましては、確かに大学の自治、学問の自由が危殆に瀕しましたがために、このたてをよりどころといたしまして、その防禦の手段のために純真なる学徒は一丸となつてこれに当つて来たおけであります。その当時におけるものと、今度のいわゆる学問の自由、大学の自治が叫ばれるのとは、まつたく様相を異にしておるものと私は思うのでございます。終戰後におきまして、大学の自由という問題が最初に論議されたのは、私が顧みますのに、レツド・パージの事件が一番最初だろうと思うのでありますが、このレツド・パージにつきましては、法的根拠も不明確であつて、いささか疑義に属する点もないでもなかろうと私は思います。しかし今回の事件につきましては、昭和二十六年十一月十二日でございましたか、京都大学でのいわゆる天皇事件を初めといたしまして、今年に入りましてから、二月二十日の第一東大事件、四月二十日のいわゆる第二東大事件、それから東大構内での家宅捜索事件、閉鎖を命ぜられました全学連委員室のこじあけ事件、それから北海道大学の事件、教育大学事件、京都大学事件、それから東大教養学部の事件、最後に愛大から最近の早稲田大学の事件というものは、これは新聞紙上で叫ばれておりまするような、学園の自治も学問の自由も全然関係のないところの問題であつて、今度はいわゆる暴力行為擁護の手段として、これをただスローガンに使つておる。これを積極的に濫用しておる。私はこういうふうに見えて仕方がないのでございますが、先生はこの点をいかようにお考えでございますか。
○矢内原証人 ただいま御引用になりました事例の中で、ほかの大学の事件は私直接承知いたしませんので、何も言えませんが、東大内において起つた事件は、確かに大学の自治に関係のない、むしろ大学の自治にとつて非常に有害な暴力的な行為がありました。これはわれわれは容認しないところでありまして、適当な処置をいたしました。しかし森戸事件とか瀧川事件等のことについて、大学の自治が現在それほどの程度に脅かされてはいないけれども、脅かされてはたいへんだという危惧があります。私記憶しておるのでありますけれども、戰争前及び戰争中の特高警察的活動が、スパイを学内に放つて、教授の演習にスパイがいて、どういう演習をしているか、どういうテキストを使つているかというようなことが警察に報告されておる。それでまた、もう昔の話でありますが、文部省においても教学局という役所がありまして、教授の図書を取寄せてみな調べたり何かいたしまして、たいへん大学の自由、研究の自由を阻害したことがあります。そういうことになつてはたいへんではないか。現在そこまでは至つていないけれども、身元調査をするとか——スパイが東大に入つているとは思いませんけれども、そういうような目で探索ですか、見ておられては心配だというのが、今の状態だと思います。
○福田(喜)委員 先生の御心配はまことにごもつともと思いまするが、憲法第二十三條によりましても、教育基本法第一條以下第八條等におきましても、これは完全に先生方の御心配はない、杞憂は一掃されておることと思いまするが、この法律で保障されておることにつきまして、いわゆる杞憂とわれわれが思われますることについて、こういうふうな御措置をなさろうというのはいささか行き過ぎであろうかと思いますが、いかがでございましようか。
○矢内原証人 これはなかなかデリケートな問題でありますが、たとえば先ほど申しました東大事件の副産物として現われました警察の行動の中に、キリスト者平和の会というキリスト信者の平和運動の会がございますが、キリスト者平和運動の会の組織、それから顔ぶれなどが探索されておる。何の必要があつて警察はそういうことについて注意をなさるのか、それを探索せられて、どこに持つて行つて、何に利用されるのかというふうなことについて、われわれは危惧の念を持つわけなんです。それは心配のし過ぎだとおつしやれば、そうであれば非常にけつこうなんでありますけれども、いかに憲法に保障されておりましても、実際の警察の末端における行動が、実際問題として危惧の念を抱かせる。そして先ほど申しました国会の委員会における証言において、その警官は上司の命令によつて行動したのだということを証言されておるのであります。
○福田(喜)委員 御心配の点よくわかりましたが、もう一つお伺いいたしまするが、そういうふうな身元調査と申しますか、特高的な調査というものは、先生のお考えでは、身分関係あるいは職分関係まで影響を及ぼすものとお考えになつておるから、つまり地位も危殆に瀕するような圧迫を受けるおそれがあるとお考えになるから、いわゆる警察当局の介入を心配されるということになるのではないでしようか。
○矢内原証人 それも一つあると思いますが、単にだれそれ個人が地位を失う、職を失うということだけではなくて、一般的にこのような状況のもとにおいては、学問の研究も自由に行われない、つまり大学というものは学問の研究、教育をするという職責を国民に対して負つておるわけであります。その職責が十分果せないということであります。
○福田(喜)委員 よくおかりました。それから次に私は非常に疑いに思うのは、学生事件に関しましては、昭和二十三年十月八日でございますか、文部次官の通達の「学生の政治運動について」というものが閑却されておりまして、二十五年の文部次官通達、つまり大学の構内における集会を許可する権限をだれに与えるかというふうな問題が非常に論議されておりますが、今回の学生事件というものは、一部外部の勢力におどらされておるところの証拠であつて、二十三年十月八日の文部次官通達こそは先ほど証人たる先生が仰せられたように、学園の自由と大学の自治を擁護するためのものである、二十五年の文部次官通達のごときは、これは片々たるただ取締りに関する一個の規定にすぎない、その第三項につきましても、私は小さいことでございますが、非常に疑いを持つものでございまして、第三項は公安委員会の権限を一部協定によりまして学校長に付与するというのでございますが、これは法律的にもはなはだおかしいものではなかろうかと思いますが、この点第三項の規定について先生はいかなるお考えでございましようか、お伺いいたしたいと思います。 〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕
○矢内原証人 法律論は私は不得手でございますので、お答えができませんが、教育という見地から考えますと、先ほどからくどく申しますように、大学の特殊の任務職責ということから考えまして、学内秩序の維持は第一次的に学長におまかせ願うということが、最も賢明な適切な処置だと信じております。
○福田(喜)委員 最後に先生にお尋ねいたしますが、私は現在の学生問題というものは、大学の自治、自由というふうな問題でなくて、これはまつたく別個のものであると思うのでございます。私の見解は、これはつまり世界情勢を反映する共産勢力の暴力的攻勢と思つておるのでございます。これは自由と人権を脅威するというふうなスローガンを表面に掲げまして、そうして現段階的には国内におきましては破壊活動防止法に反対を叫ぶ、これは叫ぼうが叫ぶまいが、この点の批判は自由でございますが、その批判をいたして、しこうして該法案にいかにも反対するというふうな仮面をかぶりまして、しかも実体が何であるかと申しますと、学生の運動の中には、平気で放火をする、殺人をする、暴行するなどの暴力的破壊活動を行つて、直接に自由と人権を蹂躪している、これが実態ではないかと思うのであります。平和を守れ、あるいは再軍備に反対せよという口の下で、武装内乱の軍事方針を説いておるのであります。私は、学問や思想や集会、結社などの、一切の自由を抹殺する共産勢力というものが、学問の自由だの、学園の自治だのをスローガンにして、学園の秩序を積極的に破壊すると見ておりますが、先生はこの点いかなる御見解でありましよか。
○矢内原証人 殺人、放火、暴行、器物の破棄、騒擾等々は、だれがやろうとも犯罪であつて、これは学生運動ということはできないと思います。それで学生運動といいますと、あるごく少数の学生が音頭をとりまして、あるいは煽動し、あるいは企画して何かやつて、それが少数者で終つてしまえば問題にならない。つまり大多数の学生がついて行かなければ……。それで、どうして一部の少数学生の画策するところに、中立的な立場をとつている一般学生というものがついて行くかということが問題で、先ほど委員長からその点についてお尋ねがあつたのであります。これはお話のように、今日の大学というものが、象牙の塔ではあり得なくて、一般社会に結びついており、一般社会というものは国際情勢に連結しておる。私の見ているところによると、東京大学の学生の大部分は、おとなしく勉強したいという意欲に燃えております。そのために、政治問題について無関心の態度をとつておりました。学内政治の問題についてもそうでありましたが、しかし先ほど申したように、これらの人々が学内政治の問題、学園の規律の問題について、自分たちは傍観するのはいけないという立場を持つて来たと同じく、一般の政治問題についての政治的感覚、政治的自覚というもの、これは無視できない事実でありまして、私は学生はただ勉強だけしておればいい、学生というものは修業中だから、勉強して、世の中へ出てから政治活動でも何でもするがよろしい、学校にいる間は、貴重な時間だから勉強しておつたらよろしいということをさとしているのですけれども、しかし若い人々の意識においては、外部の政治的情勢の刺激を受けている。そこへ持つて来て戰後の民主主義というほうはいたる時勢の潮流が刺激いたしまして、それで平和の問題でも、あるいは学問の自由の問題でも、何か学生としてじつとしておれないような衝動にかられているらしいのです。われわれは、そうあせらないで、学生は腰を落ちつけて勉強しなさいと言つて導いておりますけれども、何かじつとしておられぬような衝動にかられる。これは戰後の日本の情勢、また講和独立後の日本の政治情勢などが、若い学生の政治的意識を刺激していることで、一面においては、これはよく導いて行けばいい面もあると思うのです。御質問に対してお答えになつたかどうかわかりませんが、そう私は考えております。
○福田(喜)委員 先生の御証言によつて、かかる過激な、矯激なる行動に出る者は、きわめて一部分であつて、大多数の者はそうでなく、学問に専心しているということは、まことにかくあるべきことと私は思うのでありますが、最後に先生にお尋ねいたしたいのは、学生の学内活動というものは、教育の一つとしてお認めになるであろうかどうか。もしお認めになるとしたならば、学生の、これは一部の学生であるかもしれませんが、学生の学内活動は、これは共産主義の細胞活動というものが、学内活動の仮面をかぶつて漸次食い入つているのではないか。こういう点についてお尋ねすると同時に、全学連を中心とするところの動きというものは、これはあるいは一部であるかもしれませんが、五月一日のメーデー前後からいたして、まことに暴力化している。そして大学の自由とか自治とかいうことを仮面にして、大学をちようど前進陣地のごとくにして、学の内外の暴力活動の拠点たらしめようと、ちようど昔の叡山の荒法師が、お寺の中に構えまして、そして機に乘じて洛中、洛外を荒しまわつたというがごとき姿を呈しているのではないかと私たちは思います。その数においては少くとも、その行動、そのやり方というものは、まことにこれはゆゆしき一大事でありまして、往年の信長が手をやいた叡山の荒法師の姿に、まことに似ておると思います。この点について先生は、これは大多数の学生はしからずというふうにお考えのようでございますが、この行動の行き過ぎというものをいかにお考えでございましようか。先生の御証言によりまして、将来に心配ないというふうにわれわれはとつてよろしいものでございましようか。
○矢内原証人 学内の学生活動は、教育の見地からこれを認めておるのであります。それから全学連が大学を拠点とする云々ということは、そういう全学連からの指令なるものが、各大学に来まして、たとえばストを煽動するとか等々のことはあるのでございます。最近東大に起りました一つの事実を御参考に申し上げると、法学部学生の自治会に緑会というのがございます。この法学部の学生自治会の委員の改選が、五月の末にありました。その結果は、いわゆる一部少数学生といわれる全学連系統の委員が選挙に破れまして、それでこれに反対する、学校の規律を守つて行かなければならないという派の者が、圧倒的多数で当選したのであります。そのときの学内の自治会の委員選挙というものが、とかく従来は投票率が低かつたのであります。投票率が低いものですから、われわれは職業的な学生運動者と言つておりますが、そういう者が当選することが多かつたのでありますけれども、今度の緑会の選挙は、投票数が非常に多くて、この投票の結果は、今申した通りになりまして縁会の議長も、副議長も、先ほど名の出ました新人会系統の者が占めたのであります。こういうふうになつて行けばいかに全学連が策動しても抵抗できない。こういう方法で行くのが、学園の秩序を守るために最善の方法だと思います。われわれはそういう方面の努力を続けて行きたい盛り上げて行きたいと考えておりますが、全学連というのは、全国的の組織でありまして、一大学の問題ではありませんので、全学連をいかに処置するか、いかに指導するかということは、各大学も自分の大学に関連する限りにおいては、全学連の拠点にならないように努力しますけれども、全学連そのものを研究するとか、指導するとかいうことは、もう少し広い場面で、たとえば政府とか、国会とか、そういうところにおいて御考究を願いたいと思います。
○福田(喜)委員 まことにありがとうございました。それで大要私の質問は終りますが、最後に新人会というのは、昔の新人会とは大分姿がかわりまして、全学連に対抗する新人会というふうな集まりは、大分様相がかおつておるようでございますが、さようなものと承知してよろしいですか。
○矢内原証人 私は新人会員でなかつたし、よく知りませんけれども、新人会はその創立の際は、吉野作造先生が指導してできた会であります。それで民主主義の研究をする会でありました。大正八年のころと記憶しておるのでありますが、当時は民主主義といえば危険思想であつたのであります。今日のデモクラシーといわれておるのは私どもが吉野作造先生から教えを受けた民主主義でありますが、吉野先生は御承知のように民本主義と言つておられまして、その言葉さえ民主主義という言葉を避けたわけであります。今の新人会は、大体私はその正流を受け継いでおると考えております。
○鍛冶委員長代理 大泉委員。
○大泉委員 私は証人の意見を承つてたいへん安心した一人であります。何といつても、東大は全国の大学中においても代表的な、指導的な立場にあるものと私どもは見ておる。その大学がこうした問題を次から次へと起されると、日本の国を背負つて立たれる将来の人々に、まつたく不安の念を抱かざるを得なかつた。ところが話の内容は、きわめて少数の分子のために大学の多数の学生がみな引きずられておるというのが、各大学の実相だと私は思うのです。しかし学校当局が一般社会から見られるときに、少数の者のために引きずられるその行動というもの、また社会に与える影響というものは、やはり全体に見られる。そこで一般社会あるいは第三者から、学校全体が赤化しておる、こういうふうに見られることについては、その少数分子のために全体がまた迷惑をこうむつておる、それは、学校内部の一つの問題であろうと私は思う。これに対して学校が、一般社会から迷惑をこうむつておる、あるいは社会に不安を与えておるというようなことを考えるならば、この少数分子に対して何らかの対処をしなければならないと思うのです。今までの証言の中にいろいろと含まれてはおりますけれども、簡単になおそれを重ねて承つておきたい。
○矢内原証人 私の答えは繰返しでありますが、一部少数の学生が動いてそのために多数の学生が行動を起すというところに問題があるのであります。それはいろいろ学生団体の運営がまずいということもありましよう、それからその事実をよく知らないでついて行くということもありましようが、そのいわゆる一般学生の気持の中には、多分に理想主義的な政治意欲があると思うのであります。これは国際情勢とか国内の政治問題、社会問題などについてのかれらの判断、感覚でありますので、何か学生が事を起せばただちに赤化である、そう簡単に言えない点もあるのであります。そこはのみ込んでやりませんと、一般学生というものはとりつく島がないということになります。それで明白な政治目的を持つて、たとえば政府転覆とかいうような政治目的を持つて、それだけで行動する学生は、これは学生運動から除外しなければならない。その学生運動から除外する方法はどうすればよろしいかというと、それらの者の実体が明らかになるということと、それから一般学生が健全だという、その健全といわれるところの政治意識を認めて、これをよく指導してやるということが必要だと思うのであります。それで規律に反した場合には、先ほど申し上げるように、徴戒処分に付するということにいたした方がよろしいと思います。
○大泉委員 今日の学生は、一般社会でも制度でもまつたく全般があるいは学問の対象でありましようけれども、とかくわれわれから見ると、学校はやはり深く学問を研究するという立場に根本を置いておられると思うのであります。私の三男もあなたのところにごやつかいになつておりますけれども、学生が、つまり将来政治、行政あるいは産業上において中心人物を自負して立たれる者が、将来に不安を与えるようなことでは、もちろん社会に対しても不幸である。また自身にとつても相当不利益を免れないと思うのでありますが、学校当局としては、こうした青年の将来に対して何らかの考慮を払つておられるか。やはり学校を卒業した後には、必ず官公庁に奉職するとか、あるいは一般会社に奉職する、また実業界とか、現在の社会機構の中において活動しなければならないとするならば、共産主義あるいは破壊暴力行為のような研究に沒頭したのでは、将来相当みずから不利益を招くということははつきりわかつておるのに、それをただ学問の府であるというような立場からこれを自由にまかせるということは、学校としてもないと思いますが、そうした学生の将来のことについては何らか対策をとつておられるか、また心配しておられるかどうかということを簡単にお伺いしたいつ
○矢内原証人 それは非常に心配しておるし、努力もいたしておるのであるし、何よりも学生自身がそのことはよく知つておると思うのであります。私の考えは、学校におるとき、比較的責任の軽い、無責任なといいますか、社会的責任の軽いときだけは政治的意識が旺盛で、社会に出てしまえば、ごく平凡なサラリーマンになつてしまうというのが普通であります。願うところはそうではなくて、社会に出てからも、正義のために闘い、不義は許ざない、多数のものに附和雷同しないで、自分の信ずるところを主張し、実行するという意味の、高度の政治意識というか政治力を養つて社会に出てもらいたいと考えておるわけであります。
○鍛冶委員長代理 渡部義通君。
○渡部委員 最近の学生運動は一部学生の煽動によるのだということを前提として今まで述べられて来たのであります。その点に関して、以下総長にお尋ねしたいのでありますが、たとえば破防法に対する反対運動が非常に強くなつてこの破防法というものがはたして学生運動の対象としてふさわしくないものであるかどうかという問題になつて来るわけでありますが、御存じのように、破防法の全体的な性質はともかくとしまして、その中には、内乱等に関する正当性あるいは必然性を主張する者をも処罰するという項目があるわけであります。ところが、科学は事象の中に起きておる必然性を把握することによつてのみ科学であるのであります。従つてこの法案が出るということは、科学に対する侵害であり、学問、思想の自由に対する侵害である。また先日京都に行われた大学及び学生の総蹶起大会という集会において、ある学長が述べたところによれば、これは個人の良心に対する侵害でさえもあるのだ。そういう性質のものが破防法の中に含まれておるわけであります。そうしますと、これは科学及び教育に対する重大な問題になるのでありまして、科学者として教育に携わり、同時に科学を学ぶ者にとつて、致命的な障害となり、致命的な弾圧ともなる性質の法案であるわけであります。さればこそ、全国の学生諸君の中に、あるいは京都地方におきましては、先日五日に反対の大会が開かれましたけれども、この場合には、同志社においては学長及び全教授、学生を含め、あるいは立命館大学においても、学長、全教授及び学生を含め、その他四校の大学からここに動員されまして、破防法に対する徹底的な抗議の大会、単なる抗議にとどめず、これを実際的に粉砕しなければならないという決意を持つての大会が開かれたわけなんです。その際、ある総長は、これに対する闘いにおいては、これを粉砕するまで、あくまでこれが続けられなければならない、もしこれを放棄するならば、これは科学及び学問、思想の自由を放棄するものである。自分はこの闘いにおいて、たとえば投獄されるようなことがあるかもしれない。しかしそういう場合には、そのこと自体によつて自分が真実の教育者であつたということを諸君に示すのだということをメツセージされたわけであります。私も当日その会場に……。
○鍛冶委員長代理 渡部君に注意申し上げますが、証人に証言を求むることは、証人の経験したる事実を聞くべきであつて、証人の思想、見解を聞くべきものでありませんから……。
○渡部委員 矢内原総長は、こういう事柄についての全国的な見通しを持つているということを私は確信しております。
○鍛冶委員長代理 思想や意見を求めるべきでないことだけは注意しておきます。 〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕
○渡部委員 第二に、その学生達は、同時に再軍備反対あるいは徴兵制度反対の活動をやつております。この問題は、学生諸君にとつては、学問、思想の自由に対する侵害以上に深刻であり、かつ真剣であり、当面の課題となつているわけであります。だからこそ学生諸君は、この問題については、戰場で死ぬ覚悟をもつてこの戰争を防止する闘いを進めなければならぬという決意を新たにして、今立つているわけであります。この動きもまた全国の学生の中に広まつておるのでありまして、もし共産主義者が学生の中におるとするならば、共産主義者は、もちろんこのような学生の切実な問題、科学及び学生生活にとつての最も深刻な重大な問題、しかもこれを推し進めて行けば、結局は日本の独立かどうか、世界の平和かどうかというような根本問題に対する先頭にこそ立て、その学生運動の大きな潮流をなしておるものは、今申し上げたような対象を生み出す政治そのものにかかわつて来るのであつて、ここに学生運動の今日全大衆運動化する根本の條件があると私どもは把握しなければならないのではないかと考えるわけであります。 以上のことから私は幾つかの問題が出て来ると思います。第一には、はたしてこういう活動を一部の学生の活動として考え、あるいはそのような立場から処理されるということが、現実の日本の学生運動の本質というものをつかんだやり方であるかどうか。従つてそういう処理が正しいかどうかという問題になつて来るわけであります。第二には、こういう破防法とか、あるいは徴兵制度なりに反対して起つているこの学生運動に対して、中立的な立場あるいは無関心な立場をとつている、そういう層の動きが、学長としては正しいというふうに考えられるのかどうか、あるいはそれが拡大さるべきであるというふうに考えて学校行政の方針をとつておられるのかどうか。この二点についてお尋ねいたします。
○内藤委員長 ちよつと委員諸君に一言申し上げますが、先刻も申し上げた通り、学長は次の会合もあるそうで、相当に時間がいるのでありまして、どうか御質問は簡潔に、なるべく要点をのみ申し述べていただきたい。
○矢内原証人 今の問題でありますが、一般の学生が政治的意識が高くなつておるということは、私先ほど申した通りであります。しかしながら一部の学生がこれを利用して、ある特殊の政治的目的を達しようとしておると認められる節もありますので、その点はよく見わけをして指導しなければならないと考えております。
○渡部委員 それでは端的にお聞きしますが、たとえば破防法反対とか、あるいは徴兵制反対とか、そういつた学生の当面の最も重大な闘いの目標というもの、またそれを粉砕しようという動きというものを、是認せられる立場に立つておられるのかどうか、これは今日の学生運動を解決する上に最も大きい問題だと思います。
○矢内原証人 私どもは学生が学内において政治的活動をすることを認めないという建前に立つております。研究討論はよろしいが、政治的活動は学内においては認めない。
○渡部委員 それでは京都大学のように、学長初め全学あげてこの運動を構内において行うというような立場は、大学当局の学長の立場からいえば、間違つた立場であるというふうにお考えになつておるのですか。
○矢内原証人 よその大学の批評は申し上げません。よく事情を知りませんから……。しかしながら大学は学問の研究と教育をするところであつて、研究と教育を通じて政治に影響するというべきものだと考えております。
○渡部委員 学生と警官との問題でありますが、警官が何のために学内に立ち寄つておるかという一部のあり方については、東大で経験された通り、これは学内における、たとえば教職員及び学生に対する思想その他の思想動き等に関するスパイをやつているんだ、このことは愛知大学事件等において、学校当局も認め、あるいは特審局次長も認めざるを得なかつたというような性質のものでありますが、こういう形を一方ではとつており、一方では早稲田大学事件でことにはつきり現われたように、無抵抗の学生に対する暴力的な迫害を加えておる、こういう形が出ておるわけであります。先ほど申しましたように、破防法反対とか徴兵制反対とかいう闘争は、学生にとつては自由という立場からいいましても、また自分たちの生命という根本問題からいいましても、あとには引けない問題でありますので、学生はどうしてもこれに対して反対を強調して行かなければならぬ、このためには大衆運動よりほかに道はないのでありますが、この種の大衆運動に対しては、常に警官隊の暴力が、学内を問わず、また学生たるといなとを問わず加えられておるのであります。従つて学生の大衆運動としましては、その暴力を避けるために、学内への警官の侵入を避けるために、一歩々差しりぞいて無抵抗の状態であつたとしても、そのような目にあうとすれば、早稲田大学の学生、あの次の日にけがをした学生が表現したように、もうわれわれは一体どうすればいいのだ、われわれは無抵抗では闘えなくなつたという表現をしているわけであります。すなわち学生は実力抵抗をしなければ、もはやこの自由も守れなければ、生命の保障さえもできないような状態に追い込まれて来るんじやないかということに対して自覚し始めて、またその自覚が大衆行動になつて来ているわけでありますが、こういうときにいつも警官隊と学生との問題という形で、政治的な問題として取上げられておるわけであります。こういう関係について学長の見解をお伺いしたいと思います。
○矢内原証人 そういう問題はむしろ国会及び政府において対策をおとりなさることを私としてはお願い申したいのであります。大学というところは学問の研究、教育をするという、その建前を私は死守じたいと考えております。
○内藤委員長 渡部君、大分ありますか。
○渡部委員 しかし一般的のことを知るためにはやはり問題が多いわけでありまして……。
○内藤委員長 相当重複しておるような点も……。
○渡部委員 自由党の質問とは重複しておらないと思います。
○内藤委員長 簡潔にやつてください。
○渡部委員 学校内においても合法的な活動はこれを承認するというような立場をとられていると思いますけれども、合法、非合法の問題でありますが、合法と非合法というようなものは一定のわくがあつてそこできまつているものではなく、今日合法のわくというものは、支配階級の政策によつて毎日毎日破壊されて行きまして、自由あるいは合法というような面は一かけらもなくなる危険性があるわけであります。もし合法性を守り、合法の線に沿うて活動するということを教育され、あるいはその方向に持つて行かれようとするならば、ここに守ろうとしておつたものが守りおおせたと思つたときは、もはや何ものもなくなつたというような状態が必ず来ることは、戰時中において学長自身も御体験せられたことであると存じます。そういう点に関して、学生が合法、非合法といつて政府から与えられ、あるいは政府からますます縮められ、わくに閉じ込められ、その中に活動せざるを得ないはめになつて来るわけでありまして、学校当局のこれに対してとられる場合も、合法的にやれといわれたのでは、私はこれは学生は承認できないことになつて来るのじやないか。また学校当局が校規という形で何かを定められた場合に、その規定が学生の対象とする運動への力強い動き、すなわち運動目的の達成し得るような、そういう動きを制圧することになりはしないか。この点について学生諸君も非常に危惧を持つております。これに対する見解を伺いたい。
○矢内原証人 私どもは何が合法であるか非合法であるかということを、学生自身が判断して、国も非合法と認め、大学当局も非合法と認めていることを、学生がみずから合法であるとして判断するということは容認できない。
○内藤委員長 渡部委員に申しまするが、あなたの質問を聞いておりますと、御意見の方が時間が長いようですが、学長は……。
○渡部委員 私の意見は質問の趣旨を徹底させるために不可分の、ごく簡単のものだけを加えている。
○内藤委員長 学長はちよつと聞けば質問の要点はわかりますよ。だから簡単にやつてください。
○渡部委員 自由党だけが自由党の説を述べるのはおかしい。学長が急いでおられるので、私もいろいろ聞きたいこともありますが、十分お聞きすることのできないのは非常に遺憾に思います。 それでもう一つお聞きしたいことは、学生の運動者に対する処分の問題でありますが、これも学生運動全体として重大のことであります。学生諸君が自由と生命のためには一歩も引けない、運動のために立ち上つている。しかしてこの運動が全学生の問題になり、また学生に擁護され、学生とともに立つている全科学者、全教育者の問題になり、学生運動のこの高まりこそが、教育者及び科学者の自由と地位とを擁護する闘いと現実になつているのでありますが、こういう大きな学生の目標に対する大衆的な運動の先頭に立つて闘つたということによつて処分するというのは、一体どういうことになるだろうか、もし処分しなければならぬとするならば、今後運動の発展、事態の進展とともに、ほとんど大部分の学生がその処分の対象とならざるを得ないような條件に遺憾ながら押し込まれてしまうんじやないか、その際同志社大学の学長が学生諸君に対して言明しましたけれども、自分は、諸君がその運動のために闘つたそのことについて、どのように闘おうとも、自分は諸君とともに立つて闘うんだ、それだけでなくて、諸君に対する処分は教育者としてはわれわれは絶対にしない、というのは、そういう事柄について処分をすることは、これは教育者としての立場を放棄するものだ、教育という見地をむして放棄するものだということを言明しておつたわけでありますが、この学生運動における運動者、しかも、教員をも含めての全大衆の自治と自由とを守つて行くこの運動の先頭に立つて闘つた人々に対して、どういうふうにして教育の目的を達せられようとするのか、あるいは処分ではなくて、この運動の正しい形での発展を全学をあげて支持するという形において、ほんとうに教育の目的を達せられるかという根本的な問題がここにあるわけだと思うわけであります。この点についての総長の御見解をお伺いいたします。
○矢内原証人 われわれは思想とか主張を罰したことはありません、また罰する考えもありません。ただ行動が規律に反した場合であつて、責任者が明白な場合には、処罰することが学校全体のためにも、また当人のためにも正しいと信じて処罰するわけであります。われわれはそういう教育的な見地に立つておるわけであります。
○内藤委員長 浦口君。
○浦口委員 学長はたいへんお急ぎのようでありますから、意見を述べないで簡単に一項目ずつ御質問申します。まず第一に教育基本法第八條についての御解釈を承りたいと思います。申すまでもなくこの第八條は「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」こうなつておりますが、この場合の「学校」というものの解釈でございます。われわれは「学校」とは教育の物的施設と教授、学生、この三つの要素で成立する、こういうふうに考えておりますが、この点学長の御意見を承りたい。
○矢内原証人 教育基本法第八條第二項の解釈、私は法律專門家でありませんが、法律專門家の意見を聞いてみますと、あそこにある「学校」には学生は含まないということが法律的な解釈だということを聞いております。但し大学は学長の管理権並びに学生に対する監督権に基いて、学生の政治的活動に対しては制限を加えておるわけであります。
○浦口委員 教授あるいは講師は含む、こういうふうに解釈していいと思うのでありますが、そこで教授の学内における政治活動について、東大に何か特殊な実事があるかどうか、そのことをお尋ねするわけであります。実は私は北海道の札幌でありますが、北海道大学においては、教授が研究室にとじこもつて特定の政党を支持するための外部的な運動を計画し、立案しておるという事実がたくさんあるのでありますが、東大にはそういう事実があるか、その点をお尋ねいたします。
○矢内原証人 東大にはありません。
○浦口委員 次には、先ほど規律違反の学生は懲戒処分にする、こういうお話がありまして、事実処分になつたことも承知しておりますが、現在東大におけるいわゆる共産党細胞といわれるものは、合法的存在ではないと思いますが、そうした尖鋭的な分子が現在どのくらい残存しているか、その点についての御答弁をお願いします。
○矢内原証人 数はもちろんはつきり申し上げることはできませんが、学内で許されない集会を強行いたしまする場合に集まる学生の数は、たいてい百人くらいであります。これは本郷がおもであります。
○浦口委員 学問の自由を守るためには、前提として大学の自治が確立していることが重大なる要件である、こういうふうに私は考えます。そこでその大学の自治を確立するためには、いわゆる教授も含むと思うのでありますが、学生の学内活動というものが問題になると思うのであります。そこで学内活動の範囲の問題でございますが、第一次東大事件のときの、いわゆるポポロ劇団による公演でございますか、これは当局としては単なる劇の試演会であり、あるいは文化団体の行事である、こういうふうな見解でお許しになつたと思うのでありますが、これは御承知のように、反植民地デー前夜祭のプログラムとして行われたという事実をわれわれが考えますと、これがはたして学校でお認めの学内活動の範囲に入るものあるいはそれを逸脱している疑いがないかということを考えるのでありますが、その点当時これをお許しになつた御事情と、あの事件が起きてからの、その許可についての御感想がありますれば承つておきたいと思います。
○矢内原証人 あれを主催したポポロ劇団というのは、東大の学生のつくつておる劇の研究会であります。ポポロ劇団からの届出には、反植民地闘争デーの一部だということは申してありませんし、責任者をあとで呼び出して聞きましても、そのことは知らなかつたと申しております。そうしてしろうと芝居をやつたわけでありまして、一種の研究の発表という趣旨で許したのであります。
○浦口委員 これは学長がいつぞや衆議院の法務委員会においでになりましての御証言を承つておりますので、いろいろお尋ねしたいのでありますが、時間がありませんから御答弁だけでやめております。 次に第一次、第二次東大事件、その他の事件を見まして、事件後の警察との交渉において、学生が集団をもつて交渉に当るということは、われわれとしていろいろ疑義を持つておりますが、その点教授なり講師が代理をして交渉されることが、物事がスムーズに進むようにも考えられますが、その点学長はどういうふうにお考えですか。
○矢内原証人 東大では厚生部長と称しておりますが、学生部長であります、これが責任をもつて警警と応対しておりまして、その後に起りました事件は、学生が構内で私服警官を発見しましても、厚生部長のところに連れて来まして、厚生部長が処置をしております。
○浦口委員 先ほど他の委員からの御質問によりましても、なお一昨日の本委員会における特審局次長に対する質問におきましても、大学は、いわゆる日本共産党の暴力革命の拠点になるような危険があるのではないかという意見が出ておるわけであります。学長はもちろんこれを否定されておりますが、そこで私がお尋ねしたいのは、教授の採用にあたつて、学長はどういう方針をおとりになつていられるか。具体的に申しますと、教授の採用にあたつて、自分は共産主義を信奉するものであるというふうな表明があつた教授に対しては、どういう態度をおとりになるか、その点を伺つておきます。
○矢内原証人 教授の選考は、各学部の教授会でいたすのでありまして、学長の任務ではないのであります。それでありますが、その教授採用にあたりましては、学問とか人物とか健康とかについて十分調査をすることはもちろんでありますが、なんじは共産主義者なりやというような質問は多分しないと思います。
○浦口委員 大学が学問思想研究は自由であるという建前で、それまではお尋ねにならないというふうに承つておくわけであります。 次に、学内の秩序維持の限界の問題でありますが、結局大学自体がこれを保持すべきだということはわれわれも了解をいたしておりますが、大学自体で保持し得ない限界に来たときに、警察の協力なり出動を頼むということになると思います。その認定の認定権と申しますか、あるいは認定の当事者は、大学にあるのかあるいは警察にあるのか、その点についての学長の御見解を承りたいと思います。
○矢内原証人 第一次的には大学の学長にあるというか、認めていただきまして、その判定をするわけでありますが、実際上の東京大学の扱いは、所轄の警察署長からあらかじめ話がありまして、何か予想せられた騒擾——騒擾でもありませんが、非合法な会が開かれそうな場合には、たとえば他の大学の学生が多数押しかけて来るというような形勢の場合には、大学にまかせる、必要があれば呼んでください、そういう話合で進んでおります。
○浦口委員 そういたしますと、そうした認定に基いて、起きた事態——たまたまそれが不慮の事態を招致したという場合には、一体どちらに責任があるかということは、非常にむずかしいと思うのでありますが、その点についていずれに責任があるかということで御答弁をお願いいたします。
○矢内原証人 たとえば、万やむを得ない場合に大学が警察の出動を要請しなかつた、要請したにしても時期が遅れた。そういうことがあるならば学長に責任があると思います。
○浦口委員 最近の学生運動を見ますと、昔と大分様相がかわつているとわれわれは考えるのであります。もちろんそれは一部の分子であろうということは想像ができますが、そこで伺いたいことは、こうした学生の思想動向をいかにして健全な方に導くかということ。これは先ほども御証言がありましたように、世界情勢あるいは国内の経済情勢、あるいは戰争後の混乱、またひいては学生の生活そのものも影響すると思うのであります。これは私の考えになるかもしれませんが、いま一つそこには、そういう周囲の現実を超越をいたしました大学というものが学問の奥義をきわめるという立場において、人間としてもまた最高の人格を持つべきであるという建前において、人間をつくると申しますか、人間性を深く探求して行くというような教育がどこかに欠けているのではないか、こういうふうなことを考えるわけでありますが、その点学長の御意見を承りたいと思うのであります。なぜかなれば、われわれはもちろん人間でありますので、いろいろ周囲の事情に大いに影響されて行動せざるを得ない場合が多いということは、われわれも考えるわけでありますが、そういうものを今申し上げましたように超越をいたして、もつと深い人間性とか学問の奥義を研究するということは、現在の苦しい世界の情勢であり、世界が悩み、日本が悩んでおるこの状態においてこそ必要である。そしてこれに対する研究の苦労とともに、大きな喜びを持たなければならぬというふうなことも、学問としては考えらるべきことと思うのでありますが、その点について学長の御意見を承つて私の質問を終ります。
○矢内原証人 仰せの通りでありまして、東京大学の教授諸君がいかにおちついてみずからも勉強し、学生を指導しておるかということは御洞察くださると思うのであります。努力はもちろんいたします。
○内藤委員長 志田君、なるべく簡単に願います。
○志田委員 きわめて簡単に証人にお尋ね申し上げます。一点だけお尋ね申し上げますから、お答え願いたいと思います。 大学の自由のために必要であり、あるいは妥当なりと思われる学園の自治と、職務上行われる治安維持のための警察の活動等を、大学としてはどの程度にまで調和せしめることが一番よいと思われるか。それからもう一つ。警察官が学園に入るときの方法と限度と手続で、何か名案がないかどうか。それからもう一つは、先ほども証人は、多数の教授、学生にとつては、今回のような事件は迷惑しごくな事件であると言つておるのでありますが、これは大学自治の限界を越えた事件であるかどうか、大学の取締り能力を越えた問題であると思つていいかどうか、その点をお尋ね申し上げて私の質問を終ります。
○矢内原証人 警察が大学へ入つて来ることについての名案云々ということでありましたが、治安の維持の終局的責任は警察にあつて、第一次的責任は学長に委任されておる。それで、警察官がその点をよくのみ込んでくれておれば、事に当つてトラブルは起らない。私の方の学校のことで言いますと、本富士の署長が更迭されまして新しい署長が来た。これは東京大学出の署長でありまして、年は若いけれども大学の性格をなかなかよくわかつておりまして、非常に円滑に入つております。 それから、大学自身で取締る能力があるかというお尋ねでありますが、これはあると私は申し上げたい。そうして非常に苦労をし、また忍耐をしておりますが、次第に改善せられておる。さらに、学内秩序の改善ということは、大学の努力によつてその効果をあげ得る。逆に言いますと、警察が入つて来て、警察力で秩序を立てようとすると、かえつて逆になつて非常な混乱に陥ると考えております。 それから、警察が学園に入つて来るときの方法と限度と手続というものについて、何か具体的にこういうふうにしてもらいたいということはないかということですが、それは、警察が入つて来て犯罪の捜索をする、犯人の逮捕をするというような場合には、あらかじめ断つていただいて、なるべく大学自身で処置をして警察に協力するようにする。緊急やむを得ない場合で警察が直接おいでになる場合には、なるべく早い機会に事後連絡をしていただきたい。無断でなさることが一番刺激が強く、悪いと思います。
○内藤委員長 他に御発言がなければ、矢内原証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間ありがとうございました。 引き続き天野文部大臣より証言を求めることになつておるのでありまするが、ただいま文部大臣より委員長に、実は重要なる閣議を開いているので相当時間がかかると予想されるから、本日ではなく他の機会に召喚していただきたいというような希望的な申込みがあつたのですが、どうでございましようか、お諮りいたします。 〔「延期」と呼ぶ者あり〕
○内藤委員長 それでは文部大臣は重要な閣議でありますので、きようはだめだと思われますから、次会はそれでは公報をもつて御案内いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十一分散会