行政監察特別委員会 第12号
- 発言数
- 404 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1952/03/03
会議録
○内藤委員長 会議を開きます。 この際御報告いたします。過日、本委員会に証人として証言を求めました関東財務局長井上義海君より証言の一部訂正願が出ております。前例によりまして、これを朗読の上速記録にとどめることといたしますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○内藤委員長 御異議なければさよう決しました。 次にその内容を申し上げます。 昭和二十七年二月二十六日 関東財務局長 井上義海 衆議院行政監察委員会 委員長 内藤 隆殿 去る二月十五日聖十字学園事件に関する小官の証言中、左記の点、小官の思い違いにて若干適正を欠いた と思料しますので、然るべく御配慮 の程御願い致します。 記 一、四月二十五日三百五十万円を聖十字学園より受取り十一月十五日これを即納金として国庫に納入するまで、一時これを銀行に預入していたような事例につき、高木委員より斯様な事は「常々やつている方法ですか。」との質問に対し、小官より「これは本件よりないと思います。」と答弁致しましたが、調査の結果納期前に代金を一時保管した事例は過去において五十数件あることが判明致しました。 二、田淵委員より不注意或いは過失によつて国に損害を与えた場合に貴方に責任がありませんか、との質問に対し、小官より「国家に損害を与えたとなればあります。」と答弁致しましたが、若し質問の趣旨が売買契約の適、不適によつて局長が金銭賠償を国家に負うかという意味であれば、その責任はないと思います。これがその内容であります。以上 —————————————
○内藤委員長 ただいまお見えになつておられる証人は菊池清君ですね。
○菊池証人 そうです。
○内藤委員長 これより女子年少者の人身売買に関する件について証言を求めることになりますが、本委員会が人身売買に関する件につきまして調査を行うゆえんのものは、最近女子及び年少者の人身売買事件が全国的に激増の傾向にあり、これが取締り並びに保護の救済機関運用に対する総合的監察は、わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要することと思料するためでありますので、証人の方でも、率直なる証言により、本委員会の調査に御協力くださらんことを期待する次第であります。 それではただいまより証言を求めることといたします。証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことに相なつております。 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者、またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつておるのであります。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または、一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。 なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨申出を願いたいのであります。 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。 宣誓書を朗読してください。 〔証人菊池清君朗読〕 宣誓書 良心に従つて、真実を述べ何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
○内藤委員長 それでは宣誓書に署名捺印してください。 〔証人宣誓書に署名捺印〕
○内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるよう願つておきます。なお、こちらから質問をしておるときはそのままでよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。証人菊池清君は神奈川県高座地区警察署防犯統計係巡査部長ですね。
○菊池証人 そうです。
○内藤委員長 現在の防犯統計係巡査部長になるまでの簡単な経歴を言つてください。
○菊池証人 私は昭和十七年五月三日神奈川県巡査を拝命しまして、その後昭和二十三年の二月十日、国家地方警察と自治体警察の分離に従つて、私は国家地方警察、国警神奈川県本部防犯統計課勤務を命ぜられまして、昭和二十六年二月三十一日付をもつて巡査部長に任命され、高座地区勤務を命ぜられまして現在に至つております。
○内藤委員長 最近高座地区で大がかりで、そして組織的な人身売買事件が発覚したというが、その事件の発覚した端緒、事件の概略を述べてください。
○菊池証人 私が高座地区勤務を命ぜられましたのは昭和二十六年四月一日でありまして、その後私は防犯統計係、主として青少年係の方を受持つておつたのであります。ところが昭和二十六年の六月になりまして、第四回青少年保護育成の運動が展開されたのであります。この育成運動に従つて、私たち防犯係は問題少年に対する保護及び街頭補導に乗り出したのでありますが、六月の三日に、私の方の管内の河原口派出所の橋詰巡査から、山形県の方から少年が農家へ来ているというような話をちよいと聞いたこともあつたのであります。私もそのことについてはそう深く考えなかつたのでありますが、六月二十三日ごろになりまして、私が管内の御所見村付近を通行した際に、十四歳くらいの少年が夕方とぼとぼと歩いて来たのであります。それでその子供を呼びとめまして事情を聞いてみたところが、これから兄さんのところへ行くという話なので、兄さんはどこにいるかという話をしたところ、長後にいるというので、私は、一体君たちはこちらへ何しに来たといつて聞きましたところ、私は山形県の方から農家の方へ働きに来ているのだというのであります。では君たちばかりではないだろうと聞いたところが、私と一緒に来たのが五、六人一緒にいる。どうしてこちらへ働きに来たのか、まだ学校へ行つているのではないかといつて聞いたところが、まだ学校へ行つているけれども、うちが貧乏だから私は働きに来たというのであります。それから少年をまず一旦帰宅させまして、それから、これはこの前の山形県の方から来た子供がいるのではないかという話と私の方の捜査と一面相通ずるところがあるのであります。これは少し変だというので、私の方では本格的にこの問題について捜査を開始したのであります。それで少年と一緒に来た子供たちを全部調べてみたところ、その子供は山形県の方からおばあさんに連れて来られたというので、じやそのおばあさんは何というおばあさんかと聞いたところ、松田さんというおばあさんだという。じや、君と一緒にこちらまでどこへも寄らずに来たのかと言つて聞きましたところ、横浜市の戸塚区上飯田町の鈴野さんという娘さんの家へ寄つて、それからこつちへ来たというのであります。それでこの鈴野きくという四十二歳の女をまず呼び出しまして事情を聞きましたところ、農家の雇主からの求めに応じて私がおばあさんに言つて、おばあさんと一緒に山形県の方から連れて来たということがここにはつきりとわかつたのであります。それで鈴野きくの供述に基いて松田フミを呼んで調べましたところ、大体昭和二十五年五月から昭和二十六年八月ごろまでにまたがりまして、約八十名近くの子供が来ているということがわかつたのであります。それに引続きまして、やつぱり山形県の方の佐藤安治という保険外交員、これが最初は一緒にやつていたのでありますが、最後は別個になりまして、二十五名を連れて来たのであります。 大体概要はそんなところであります。
○内藤委員長 その約八十名ばかりの少年に農村ではどういう仕事をさしておつたのですか。
○菊池証人 おもに子守もしくは農耕に従事さしたのであります。
○内藤委員長 そうして松田あるいは鈴野というものは、中へ入つて仲人として相当にもうけておるのですね。
○菊池証人 一人について旅費と称して千円ないし千五百円、手数料として千円ばかり、両方まぜて二千五百円をもらつておるわけであります。
○内藤委員長 八十人連れて来ると相当な金額になるな。
○菊池証人 はい。
○内藤委員長 それが松田フミに関する人身売買事件というものなんですね。
○菊池証人 はい。
○内藤委員長 それから保険金欺取未遂事件というのがありますが、それはどういう内容でした。
○菊池証人 これはただいま申し上げました山形県の南村山郡上山町に住んでおります保険外交員の佐藤安治、これが年少者の子供を世話して、過労のために相当からだが悪くなつている子供に特に目をつけて、その中から親と相談して子供に保険をかけたのであります。手続は全部佐藤がやり、また第一回の払込金も佐藤自身が全部これをやつたのであります。親の方からはただ印鑑とその承諾書をとつただけなのでありまして、それによつて、もしその子が死亡した場合には、保険金の八割は佐藤安治がとり、あとの二割は被害者である親の方へ渡すという誓約書までとつて、これを実行に移したのであります。
○内藤委員長 その保険金額はどのくらいですか。
○菊池証人 これは一つの欠陷なんでありますが、各保険会社というものは、三十万以上の保険金をかけた場合には、精密検査をさせるわけであります。保険会社専属の医者にかけるわけであります。ところが三十万円以下のときは、保険金をかける場合にも専属の医者にはかけないで、ただ契約者及び第一回の払込みで契約が成立するのであります。それを保険会社の外交員をやつておる佐藤安治が知つておりまして、その子供に対して十万円ないし二十万円の保険金をかけるのであります。私が扱つたときには、子供に十万円ずつ二回かけまして、五月にかけまして八月にその子供は死亡したのであります。そしてその保険金をとろうとしたのでありますが、今度のこの事件が起きたので、新聞発表のために未遂に終つてしまつたのであります。もしこれが新聞に発表されなかつた場合には、あるいはとつたかもしれません。あるいはほかにもあつたかもしれません。
○内藤委員長 当委員会が人身売買事件を調べたということが新聞に出た、それで保険会社は支払いを躊躇したわけなんだね。
○菊池証人 保険会社は全然知りません。これは佐藤安治自身の一人の工作であります。
○内藤委員長 保険会社は何という会社ですか。
○菊池証人 東邦生命保険相互会社です。
○内藤委員長 他にこれに類似のような、そういう仲介人がおつて、このような人身売買事件がほかでもあると思いますか。これだけだと思いますか。
○菊池証人 私の管内における限りにおいては、こういう問題はとても絶えないと思います。
○内藤委員長 こういう事件の捜査にあたりまして、管内の職業安定所あるいは労働基準監督署等はどういう協力をしますか。
○菊池証人 藤沢市の労働基準監督署の野口課長は、私の方のこの捜査と別個に、子供がたくさん来ているんじやないか、また無届の子供がいるんじやないかというので内偵はしておりました。その内偵をしている基準監督署の方と私の方の捜査とが、上飯田町を中心にやつたときに偶然ぶつかつたのであります。それで監督署の方へ、私の方でこれは全部やつているから、片がつくまで、あるいは見通しがつくまで、捜査の方は、あるいはあなたの方の業務に関しては一応中止してもらいたいということは、私の方から申し入れました。そのほかのものについては、全然協力というものはありません。
○内藤委員長 協力を求めるよりも、あなたの方で単独にこれをやるつもりで、手を引け、こう言つたのですな。
○菊池証人 野口課長がやつたのは六月の末でありまして、私の方の内偵期間に入つておつたのです。これは調べると意外に奥が深い、今これをやられてはちよつと困る、また新聞発表等や何かで表面に出たときには、私の方の捜査に相当の支障を来すから、私の方で一段落したらば共同でやろうということで、一応手を引いてもらつたのであります。
○内藤委員長 証人はこの事件の捜査のため山形県に出張しましたね——そこで山形県の関係機関との交渉、あるいは先方の協力態度等はどうでした。
○菊池証人 私が最初山形県の国警本部の防犯統計課へ参りまして、この事実を一切お話いたしました。そして私の方からも協力を求めたわけです。国警本部の方では、こういう事件があつたということを新聞紙上で知りまして、全面的な協力をしてくれました。それから職業安定所へ行つて、こういう事実がある、あなたの方ではこの被害者の親元に対する処置はどういうふうにやつてもらつたかと聞いたのでありますが、何分具体的なことがわからないというので、安定所の方では捜査は別にしていなかつたようであります。
○内藤委員長 あなたの高座地区における児童福祉機関の活動状況はどういうものですか。
○菊池証人 私の方でこの事件を扱うまでは、全然そういう児童福祉機関というものは動いていませんでした。
○内藤委員長 では民生委員とか、児童委員とか、社会福祉主事とか、あるいは児童福祉司というようなものがあつても大した活動をしていなかつたということですね。
○菊池証人 活動していません。極端な話をすれば、児童福祉司自身の家にも山形から来ておつた子供がいたのであります。ですから私の方としては、こういうものが低劣であるということは言い切れるのであります。
○内藤委員長 そうすると、あなたの方の管内の児童福祉司などの活動状況は、まことに低劣なんですね。
○菊池証人 低劣です。
○内藤委員長 あなたは高座地区の農民が、職業安定所の存在を知つておるにかかわらず、周旋人を介してまでなぜ人身売買をしなければならないのか、考えたことがありますか。
○菊池証人 あります。これは私自身もよく考えましたが、雇主自身からもその話はありました。一口にいえば、職業安定所の動きは、消極的であるということです。今度のこの問題も、職業安定所自身が熱心に子供の供給を円滑にしていたならば、こういう事実は起きなかつたと思います。具体的な例としましては御所見村の人身売買があります。この御所見村では、子供がずいぶん行つておるのですが、何人ほしいということを農家自身から村長に申し出て、村長の手を経て職業安定所の方へ申し込んであるのです。ところが二回、三回と申し込んであるにかかわらず、それに対する子供の供給が全然なかつたのであります。そこで安定所へ頼んでも子供は来ないというので、それではしかたがないから、そういう子供を世話してくれるものがあるならばそこへ頼もうじやないかということでそこへ頼んだ、これが事実なんです。
○内藤委員長 そうすると職業安定所は、その使命は全うしていないということなんですね。
○菊池証人 農家から言わせればそうです。
○内藤委員長 安定所にはどれほどの所員がおりますか。
○菊池証人 私ははつきりわかりません。
○内藤委員長 この被害児童は事件の後どういう保護を受けたか知つておりますか。
○菊池証人 大体私の方も聞きました。それは県の児童課並びに職業安定所、それから労働基準監督署の方からも各係官がその子供に対して精密な調査を遂げ、未成年の場合には、その子供に対して受託制度を設けて、里親制度に従つて、それによつてみな正当な手続をとらせたという話を聞きました。
○内藤委員長 里親制度を活用して……。それからその被害児童の就学状況はどうですか。
○菊池証人 就学の状況は、今のところ一人であります。
○内藤委員長 あなた、実際にこの人身売買の事件を取締つて最も困難を感じたような事情について、ひとつ述べてください。
○菊池証人 こういう人身売買に限らず、こういうものに対してはだんだん相当巧妙になりつつあるということです。それからいまひとつは、雇い主の方の協力というものが少いということです。それから新聞発表があまりにも早過ぎるということです。これでどのくらい捜査が行き詰まりになるかということは、はかり知れないものがあります。
○内藤委員長 新聞に事件の概要が早く出過ぎるので、捜査上非常にじやまになる、こういうことですね。
○菊池証人 じやまになりました。
○内藤委員長 他に御質問はございませんか。
○志田委員 この人身売買の事件の発端となつている対象が私の郷里である山形県でありますので、特に感慨深くお伺いしたのでありますが、ところでこういう人身売買事件が諸種の事情によつて証人の勤務されている地方、つまり高座地区署方面では今後も行われるだろうということが考えられる、そういうことを陳述なさつております。そこで被害児童の発見以後における保護がいかに適正に行われているかどうか。それをどういうふうにやつたならばさらによい方向に導くことができるか。 お話を聞いておりましても、單に里親制度の活用というような程度のことよりお話がないのでありますが、そのお話の裏には、さらに人身売買事件は今後巧妙をきわめるであろうということも言われております。取締りは困難であるということも述べておるようでありますが、里親制度の活用ということは、これこそが巧妙な人身売買の法をくぐる方法になるようなおそれがあるのではないか、その点をひとつお尋ねしたい。
○菊池証人 ただいまのお説の通りです。これはまかり間違つてやつた場合には、里親制度というもの自身があるいはそういうふうなものに陥らないとも限りません。これは関係機関が、捜査機関以外の保護機関がいま少し熱心に子供に対して熱情というものを持つて、児童保護ということを実際に当つて把握しなかつたならば、どういう問題が起るか私はわかりません。
○志田委員 そこでこの事件発生以後における被害学童の就学状況について証人は述べておられまするが、それによりますると、少くとも百名近い被害少年があつたようでありますが、その中から就学しておる者は一人というお話であります。どういうわけで一人だけ就学して、他はそのままになつておるか。その点をもう少し詳しくお話を願いたい。
○菊池証人 ただいまお話の学校へ行つている者は、御所見村におられます伊藤金吾という十四になる子供であります。これがただいま御所見の中学校に通つております。これはその雇い主の方の家庭の状況もよろしいのであります。それで松田に周旋を頼んだ子供というのは、十七か十八の子供を実はこの雇い主は頼んだのであります。ところが松田が連れて来た子供は、依頼に反して十四歳の子供を連れて来た。しかもそのときにカバンを背負つて来た。その状況を見たときにその雇い主は、約束が違う、こんな小さい子供を私のところへ連れて来てもしようがない、いま少し大きいのをほしいと言つたのですが、ほかに子供はいない、もしこれでだめならばいま少し先へ行つて世話をするから、一応これを預かつてもらいたいというので預かつたのでありますが、そのうちはちようど子供がないので、見るとかわいい子供なので、これを働かしてはかわいそうだという一つの気持を持ちまして、ちようど在学証明書もあるし、転学証明書も持つて来たし、それではこれをこの学校に入れて、その余暇だけを働かしてやろうじやないかというので、この子供を学校へ入れたのであります。そのほかの子供に対しては、学校へ入れるという熱意というものは、みな証明書を持つて来るのでありますが、雇い主自身がこれに対して何らの処置をしていないという結果になつております。
○志田委員 それでは、こういう事件発生後における管内の児童福祉機関である、たとえば民生委員の人たち、あるいは社会福祉関係の人、こういう人たちがこの問題で関係機関と協力するという建前で集まつているとか、そうしてあなた方も何か調べの内容、その後の処置等についての御報告をいただくなり、そういう問題を解決しようという考えで協議を進めた事実があるかどうか、それをあなたは聞き知つておられるかどうか。
○菊池証人 そういう協議をしたということは私は聞きました。二回か三回やつたということも聞きましたし、また調査に来たことも聞きました。そのときに私に面会を申し込んで来たことがあつたそうですが、ちようど私は捜査のために外に出ていたので、児童課の方の方が見えられたということは私聞きました。それから監督署の方からもその後参りました。それから厚木職業安定所の方からそのことについて、厚木職業安定所の方の中にもいはしないかというので、参りますという話は聞きましたが、私のところには見えません。具体的にどういうふうなことをやつたかということは私の方はわかりません。
○内藤委員長 それは証人、こうでしよう。その事件が新聞等に発表されたからそういう行動があつたのでしよう。
○菊池証人 そうです。
○内藤委員長 その前は何もない……。
○菊池証人 何もありません。
○志田委員 この児童福祉機関の活動がきわめて不活発であるということはよくわかりますが、あなたも少くともこういう事件を取扱いなされて、しかも今承れば、あなたの職責は少年の保護育成あるいは取締りのことに相当関係深い職責のように聞いたのでありますが、單にこういう事件を調査する、取調べるという意味にとどまらずに、こういう事件を今後なくするためのあなたの方法、たとえば未然にそういう事件がなくなるためにはどういう処置をしなければならぬか、そういうようなことにつきまして、何か関係機関に要望したり、あるいはそういう関係機関に要望するような公のことをなさつたことがあるかどうか、それをひとつ……。
○菊池証人 私としましては、たといこの問題を私の方で強力な捜査取締りを嚴重にやつたところで、これはどうにもならない。なぜならないか。これは山形県の方の親の考えそのものが全然私どもの想像外の考えを持つておるということと、それから親の方の実家の生計が、われわれの想像以上に低い。自分の子供でありながら自分の家族を養つて行けない実情がこういう問題に追い込むのではないか。でありますから、この人身売買という問題を根本的に解決するには、この親の方の実家の生活をもう少し上げる……。
○志田委員 私のお尋ね申し上げておるのは、その原因であるとかあるいは将来のことを聞いておるのではない。少くともあなたの調査をなすつて取調べた八十名近い人身売買の事件の子供たちをどういう処置をすることによつて協力したか、あるいはどういう調査をなすつたか、それをひとつ聞きたい、こういうことです。
○菊池証人 子供に対する……。
○志田委員 そうです。そういう点で警察としては管内の児童福祉機関とどういう連絡をとつたか、それをひとつお尋ねしたい。
○菊池証人 私はこの子供に対して、県の児童課の方に連絡をいたしました。それから職業安定所の方にこれを連絡いたしました。それから監督署の方にもこの連絡をいたしました。そしてこれに対する措置を、私の方は一応は児童課の方に全部おまかせをしたわけであります。
○志田委員 ただ連絡しただけで終つておるのか。それともその子供たちはその後一体どうなつたのか。それは親元に返したのか、あるいは里親制度を活用して里親を設定してその中から小学校その他に通せるようなものを出したかどうか。あるいは今まで通りそういう労働に年少の子供たちが従事しておるのかどうか。その点をひとつ……。
○菊池証人 子供は私もいろいろ聞きました。また全部私の方に呼びまして、帰れるものは全部帰してやつた方がいいではないかということで、一人一人私は当つたわけです。ところが子供の方は、うちに帰るのがいやだと言う。なぜいやだ。生活がこちらより低いからだ。できることならばこちらで働きたいという気持をみな持つているわけです。私は雇い主に対してそういうことを言うのではないかと思いまして、雇い主とその子供を別々に違つた部屋に連れて行つて、そのほんとうの気持というものを私はお尋ねしたわけです。やはり子供はうちに帰りたがらない。できることならばこちらで働かしてもらいたいと言うので、ではこれはそのうちに全部一応正式の手続をとつて働けるようにしようというので、雇い主の方に話をして、一応職業安定所の方に届けさして、これをそのうちに従前通り働かせるように私は処置もしましたし、また関係機関の方でも、年少者の保護に対しては、里親制度を活用して、そこで働く、または学校に行きたいものは学校にやらせるというふうに指導しました。
○志田委員 そうするとこれは里親制度というものに隠れて、実態においては従来課せられた労働と同じことをそれらの子供は現在なおやつておるということでございますか。
○菊池証人 現在子供はやつております。
○志田委員 そうすれば、人身売買事件はあなたによつて内偵され、それが表面化した。それぞれ関係機関に申達しても、実態においては同じ結果になつておる、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
○菊池証人 私としましても、これがもつと幸福になつてくれれば一番いいんだ、また私はこの子供に対して、相当つらいことがあつたならば申し出よというように言つているわけです。そのほかの詳しいことは、各関係機関の方で全部やつておるわけです。私の方はそれに対する指導をやつているだけであります。
○志田委員 私はあなたの主観を聞いているのではない、実感を聞いているのですが、大体言外のこともわかるような気がする。一体どうです、十四歳未満の少年をそういう労働に使うということは、形式をふみさえすれば使い得るとお考えですか、それとも使えないというお考えですか、その点いかがです。
○菊池証人 私は使えないと思います。
○志田委員 使えない場合は違法であるとお考えになりますか。
○菊池証人 違法であると思います。
○志田委員 違法であつたならば、その違法に対する処置はあなたの方はとつておられますか。
○菊池証人 とつております。
○志田委員 どういうふうに……。
○菊池証人 それは児童福祉法違反であろうと思います。
○志田委員 それを少し詳しくお話ください、とつている事実を……。
○菊池証人 私は今のところこの子供に対して、その子供の幸福、それから子供の親の方の処置、もしここでその子供をいなかの山形に帰した場合、またそれはこちらに帰つて来ると思います。私どもの目の届くところにその者を置いてやつて行つた方が一番いいんじやないか、私はそう思います。
○志田委員 あなたの気持はよくわかるのですが、現にあなたの方では、これは人身売買で、法に対していけないことをしておるのだというので、一応それぞれ関係機関の方と協力して何とかしなければならぬ、しかし今聞いてみると、それらの子供たちは本人の好むと好まざるは別といたしましても、好んでいるから悪いことを許して置いていいというものではないのですね。本人が好んでいるから強盗させてもどろぼうさせてもいいというものではない。少年保護という立場で法律によつて禁止せられておることがやはり同じ形において行われておるということに対しまして、あなたの方では、これは予防警察の建前からはもちろんのことでありますが、もう事実が発生しておる状況において予防でない、もうすでにその子供たちは、売買事件当時と同じような状態のもとにやはりそういう労働をしておる。労働をしておるということは、児童福祉法に違反しておることは明らかなことであります。それをあなたの方ではどういう処置をなすつたか、それを聞いておるわけです。
○菊池証人 私の方で扱つたものの中で、満十四歳以下というものは現在のところない。でありますから、私は違反として全部あげましたが、その後の処置というものは関係機関の方へ全部まかしたわけであります。
○志田委員 十四歳以下は一人もいないのですか。
○菊池証人 おりません。
○志田委員 先ほど申したお話とちよつと違うのですが、ほんとうにいないのですか。十四歳でカバンを背負つて来たというのはうそですか。
○菊池証人 それは今学校へ行つております。現在中学二年生であります。
○内藤委員長 ちよつと証人に言うが、志田委員の御質問の趣旨は、雇い主が処罰されておるかどうかという点、あるいはさような人身売買のブローカーはどうなつているかというような点に重点があるのじやないかと思うのですが、それはどうですか。児童福祉法に違反して雇い主がかかえておる、これに対して雇い主をどういう処分をしましたか。
○菊池証人 ブローカーは全部処分しました。
○内藤委員長 ブローカーはやつたが、雇い主はやらない……。
○菊池証人 今のところやつておりません。
○内藤委員長 しかしこれは雇い主も児童福祉法の違反をやつているんでしよう。
○菊池証人 一、二件やつております。
○内藤委員長 一、二件やつた……。なぜそういう雇い主の方をやらない。
○菊池証人 これは私の方の考えが悪いのかもしれませんが、私は子供の幸福を先に考えたのです。これはうちの方が普通の生活をしているのだということでありますれば、またその子供がうちへ帰つても……。
○内藤委員長 わかつた。要するに法律には違反しておるけれども、実際その子供を国元に帰せばかえつて不幸になる。そういう建前から、これは違反であるけれども雇い主を罰しないのだ、こういうことなんでしよう。
○菊池証人 そうです。
○志田委員 福祉法に違反しているにもかかわらず、雇い主はちつとも罰しないということに何か私はよくわからぬ点がありますが、それはあなたは、子供がいなかに帰るよりはその雇い主のそばにいた方がいいということから、子供の幸福を考えてその方がいいというようにお考えのようですが、それはあなたの主観も大分あると思つて、その点については今後も証人がまた各方面から出ると思いますからその方でわかりますが、ところで本件は労働基準法にも違反するのじやないかと私は思いますが、この点については労働基準法はどうでしようか。労働基準監督署と御連絡がなければならないと思いますが、連絡をしたことがあるかどうか。もししたとすればその結果はどうなつておるか。労働基準監督署ではどういうことをしたか、それをひとつお尋ねしたいと思います。
○菊池証人 この事件についてですか。
○志田委員 この事件について……。たとえば今まで保険の外交員であるとか、いろいろ関係した鈴木きくとか、そういう人々の名前が出ておりますが、これはどういうふうになつておりますか。
○菊池証人 今のは全部職業安定法違反です。
○志田委員 職業安定法違反……。それから雇い主の方は労働基準法違反になりませんか。抵触しておりませんか。
○菊池証人 これは労働基準法で見ますと、農村の農耕をやつている場合は除外されているわけであります。
○志田委員 工場法の適用を受ける以外の職業については、基準法はあたらないのですか。
○菊池証人 あたらないのです。
○高木(松)委員 里親制度というのは養子にするということですね、法律的に言うと。籍を入れるということでしよう。
○菊池証人 そうです。
○高木(松)委員 それで法的なことは大体聞かれたようだが、私は三つ聞きたい。山形県の親元の状態がどういうふうな実相か。それから神奈川県の受入れ方がどういうふうな事情か。それから子供の心理状態がどういうような心理状態になつているか。この三つの点を詳しく説明していただきたい。
○菊池証人 親の方……。
○高木(松)委員 具体的に聞きましよう。先ほどの証人の証言によると、親の方が経済的に子供を育てる能力がないので、喜んで神奈川県によこしておるという供述があつたわけです。そこで私が聞きたいことは、どういうような経済実情にあるかということと、親が子供に対してどういう考え方を持つているかということを聞きたい。あなたの取調べの範囲内で知り得たことを……。
○菊池証人 山形県の特に私南村山郡に行つたのでありますが、ここの状況というものは、一日の労賃が日雇い人夫で働いても二百円、最高二百五十円というのが職業安定所で聞いた話なんです。ところがそういううちは、大体向うは六反ないし五反ぐらいしかたんぼを持つていない。そのたんぼも一毛作しかできない。米をとつたあとの期間は何かといえば、これはほとんど労働者になつて働かなくちやならぬ。一日二百円ぐらいの労賃で、月二十日出ればいい方だが、これではとても生活が成り立たないというほどの最低の生活をやつているのであります。それから子供に対する親の気持というものは、家族はこれだけ多い、とても生活は成り立たぬ、その実情を見た子供というものは、子供そのものもまたそういう考えを持つているかもしれませんが、親はその子供をいなかの自分のうちへ置くよりも、外へ出して働かせた方が仕合せじやないかという気持で、外へ出しています。
○高木(松)委員 昔から慣習があつて、元来ならば親が子を人の手元へ売つてやるというようなことは、人情としてすべきじやないが、長い間の慣習からその良心を磨滅して、結局今のような問題が起きる。言いかえれば長い慣習の結果、親が子を売つてもさしつかえないというような思想が今日なお残つているのか、いないのか。その思想が原因して、ここに経済上の圧迫等と相合わされて、子供を離してよこすというような実情になつているのかどうかということを聞きたい。
○菊池証人 そういう気持はあります。親の方もその気持はあります。また子供の方も、そうすることが親孝行であるという気持は持つているのです。
○高木(松)委員 そうするとあなたの目に映つた、またあなたの調査によつたところからは、地元の親及びその社会に対して、新しい憲法に基く今日の新しい民主的生活理念を啓蒙しないというところに一つの原因があるように思われるが、その点はどうですか。
○菊池証人 私もそう思います。
○高木(松)委員 そこで先ほど一人について二千五百円ということを言つていましたが、その二千五百円というのは汽車賃、周旋料のみに限られて、雇われている者に直接金は行つているのじやないですか。——子供の親なり、雇われている方の側に、金が行つているようなことはありますか。
○菊池証人 と申しますと、旅費とか何とかいうような名目で、親の方からとつているかということですか。
○高木(松)委員 そうじやなくて、雇い主の方から金が出ますね。その出た金は雇われている側の方に行つているか行つてないかということです。たとえば何年間幾らというようなことで来てるのか、ただ食うだけ、育つて行くだけのために来ているのか、この点について……。
○菊池証人 それはいろいろあります。
○高木(松)委員 その内容をはつきりさせてください。
○菊池証人 大体三分の一くらい——約十七歳から十六歳くらいの中で、たとえば月に千五百円というふうにきめておいた中から差引くのもあります。またその二千五百円という金は、雇い主自身が松田フミに全部払つているわけです。それで二十六年ごろにかかつたものの中には、子供の方の給料の中から差引いたのもあるわけです。これは三通りあるわけです。最初はただお小づかい程度という気持で持つて来た。それからそれが高じて商売になつた。それから今度は、それがだんだんなれて来て、雇い主だけでなく、子供の給料の中から差引くもの、こういうふうに三つになつて来たわけであります。
○高木(松)委員 そうすると受入れ側の方の考え方は、労働力が足らぬから、これらの少年を雇い入れるなり引取つて労働力を補充しようという目的なんですか。
○菊池証人 そうです。
○高木(松)委員 そうすると先ほど言つた里親制度というものは、結局労働力の供給をいわゆる脱法的になす形が、すなわち里親制度になるわけですね。——結局養子にもらうという里親制度は、子供がないから、自分の子供として親の愛をかけて育てて行きたいという気持で里親というものはできるわけでしよう。
○菊池証人 そうです。
○高木(松)委員 しかるに本件に現われたのは、元来労働力の不足を補充しようとする目的で、それを今のあなたが調査したような方法をもつてすると違法であるから、そこで養子制度を利用して、そして法律上の網をくぐつてやろうとするのが里親制度ではございませんか。
○内藤委員長 ちよつと証人に聞きますが、最初高木委員の質問で、里親制度は養子縁組と同じことかと言つたら、あなたはここで同じだと説明をしたが、それは違うのじやないですか。
○菊池証人 違います。どうも少し考え違いしておりました。
○内藤委員長 その根本が違うから説明ができなくなるんだ。
○高木(松)委員 そうすれば、里親制度というものはどういう法律上の内容を持つものを指すのですか。
○菊池証人 これは児童福祉法に従つてこの子供を預けて養育させておいて、その子供が幸福になれるかどうか、またこの親のところに置いたならばかえつていけなくなるのではないかというような二つの場合に、児童相談所の方で里親制度というものを設けておつて、その制度の中に含まれておるものにその子供の養育を委託するわけであります。
○高木(松)委員 そうすると、養育を委託するという制度が里親制度ですね。
○菊池証人 そうです。
○高木(松)委員 そうすると、戸籍面で親子の関係を設定するということはないわけですね。
○菊池証人 ないんです。
○高木(松)委員 そうするとそれでも疑問になるんですが、労働力が不足だから、労働力を補充するために山形から連れて来ておるというものを、急に里親制度でもつて養育を委託するというようなことに切りかえて、はたしてその目的は達せられるものですか。
○菊池証人 私の方もそのことについてはいろいろ考えました。それで私の方も山形へ行つたときに、向うの親に聞いてみたわけです。これはここに置いてはぐあいが悪いんじやないか、またあなたの方でもつてこれを引取つた方が子供のために幸福じやないかと言つたときに、向うの親は、またその子供も、私はいなかへ帰りたくない、またいなかの方の親も、できることならば今の雇われている方で今後めんどうを見てもらえないだろうかというので、私の方では児童課に連絡をとつて、これに対する適切な処置をお願いしたわけです。
○高木(松)委員 あなたの心の中のあたたかい気持はよくわかるのです。あなたの調べておる八十名の子供に対しては、あなたが常に目を離さずにおるから、里親制度である程度目的を達せられるかもしれない。ところがそういう制度を一般に許すということになれば、子供を保護するために設けた幾多の法律は意味をなさなくなつてしまうところができるのではないか。言いかえれば、一つ、二つの主観的に見てあなたが保護できると思うところも、これを許さずに大乗的に決定してこそ、初めてあらゆる子供が法のもとに保護せられることになるというようにはお考えになりませんか。
○菊池証人 私もそのことについてはずいぶん悩みました。できることなら今度のこの被害者の子供を全部親元へ返すのがほんとうだろうと私は思いました。しかしその子供自身のほんとうの幸福は、これがいなかへ返した場合に幸福になれるかなれないか、また子供が絶対に帰らぬという場合に、はたしてどつちが幸福かということを私どもは考えざるを得ないのであります。でありますから、私の方ではこの捜査は続けてやりました。その方面のことについて関係機関とよく打合せたのでありますが、もしその子供がそういうふうならばこちらで適切な処置をとつた方がいいのじやないか、向うへ行つたところで不幸になるばかりだというのでこういうふうにしたわけであります。
○高木(松)委員 よくわかりました。あなたの考えていること、またあなたの心から子供を愛することもよくわかりました。しかし国家全般の見地から見た場合に、普遍的に子供を保護しようとすれば、現在の国家機関の陰においてはそういう脱法的の里親制度を認めてやる方がよろしいと考えられるか、全部の保護をするためには、嚴格なる方法で今のような形における里親制度はこれは容認しないと結論づけた方がいいか、この点に対してのあなたの考え方はどうです。
○菊池証人 そうですね、今のような状態で関係機関の消極的な動きだつたらば、私は里親制度そのものもある程度考えなければならぬじやないかと思います。この子供の保護育成というものは私の方のおもな仕事でなくて、これは関係機関の児童課や、その保護施設の関係機関が積極的に働くべきがほんとうだと思います。現在のように消極的な動きだつたらば、私は里親制度というものはいい面もあるかもしれないけれども、悪い面もあると認めます。
○林(百)委員 私は突然委員会に入つて来て失礼ですが、もう明らかになつたことかと思いますが、ひとつお聞きしたいと思うのです。 この人身売買の子供を出す親元の方の職業ですね、職業がどんなで、先ほどちよつと言われましたがどんな経済状態か、それがこちらの方へ来てどういうところに売られているか。それから一人二千円とか二千五、六百円とか、親元からどのくらいの金で売られて来ているのか、その辺のところを……。
○菊池証人 大体子供の親元は農家が大部分です。
○林(百)委員 農家の小作ですか。
○菊池証人 小作です。——自作ですね。それから子供が来ている先の大部分、七割近くが農家です。そのほかの三割が商店、それから普通の医者、その他の会社員の女中です。
○林(百)委員 一人どのくらいですか。
○菊池証人 子供のとる金ですか。
○林(百)委員 子供の実家へ送られておる金は、どのくらいで周旋されておりますか。
○菊池証人 大体子供の周旋されるのは、一年一万から一万五千円というところです。
○林(百)委員 全部前金、即金で払うのですか。
○菊池証人 そうです。
○林(百)委員 前金、即金で実家の方へすぱつとやるのですか。
○菊池証人 前金もありますし、分割のもある。
○佐竹(新)委員 今の小作は、きわめて貧乏な小作ということを言われましたが、この子供のいわゆる両親はそろつているのですか。兄弟が何人くらいおるのです。
○菊池証人 兄弟は六人ないし八人です。
○佐竹(新)委員 兄弟は多いようですね。両親はみなおりますか。
○菊池証人 おります。
○浦口委員 簡單にお尋ねしておきます。神奈川県の高座地区というのは、聞くところによりますと進駐軍相手の特殊女性が多いということでありますが、そうした面で人身売買の事実がありましたらちよつとお聞きしておきたい。
○菊池証人 現在のところありません。
○浦口委員 全然ない。
○菊池証人 ありません。
○浦口委員 この問題はこの間からいろいろお聞きしておりまして、非常にむずかしい問題だと思つておりますが、ただ私ひとつお聞きしておきたいことは、神奈川県の方の雇い主は自分の子供は工場とかその他の賃金の高いところへ出して、福島県から安く使える少年を入れておると聞いておりますが、大体においてそういう事実を承認してよろしいですか。
○菊池証人 お説の通りです。今お尋ねのあつた通り、私の方はそれに対しては否定はできません。大体いなかの農家の子供は農業をするのがきらいです。それで近所の横浜、川崎、鶴見あたりに大工場があるのです。そちらへ全部行つてしまうので、農耕の不足を東北の方面から仰ぐ、こういうことです。
○内藤委員長 他に御発言がなければ、菊池証人に対する尋問はこれで終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでした。 午後は一時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。 午後零時二十八分休憩 ————◇————— 午後一時五十二分開議
○内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。 ただいまお見えになつておられる証人は木城以末男君ですね。——これより女子及び年少者の人身売買に関する件について証言を求むることになりまするが、本委員会が人身売買に関する件につきまして調査を行つておるゆえんのものは、最近女子及び年少者の人身売買事件が全国的に激増の傾向にありまして、これが取締り、並びに保護、救済機関運用に関する総合的監察は、わが国民主化の促進あるいは民生対策上緊急を要することと思惟するがためでありまして、証人においても率直なる証言により、本委員会の調査に御協力されんことを期待いたす次第であります。 それではただいまより証言を求むることになりまするが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四等親内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。 なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨を申出願いたいと存じます。 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。 宣誓書の御朗読を願います。 〔証人木城以末男君朗読〕 宣誓書 良心に従つて、真実を述べ何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
○内藤委員長 それでは宣誓書に署名捺印してください。 〔証人宣誓書に署名捺印〕
○内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。 証人木城以末男さんは現在神奈川の職安の課長なんですな。
○木城証人 さようでございます。
○内藤委員長 現在の課長になるまでの経歴をちよつと述べてください。
○木城証人 申し上げます。昭和十三年十二月厚生属、当時厚生省に職業部、失業対策部がございまして、職業部に所属しておりました。昭和十七年八月陸軍司政官に任ぜられまして外地勤務。昭和十九年二月原職復帰を命ぜられ内地帰還。昭和十九年八月地方事務官に任ぜられまして静岡県勤務。爾来職業安定行政につきまして勤務。昭和二十年十一月滋賀県勤務、勤労課長拝命。二十一年十月厚生事務官に任ぜられまして、厚生省勤労局企画課勤務。昭和二十三年十月中央監察官拝命。昭和二十四年十月地方事務官に任ぜられ、神奈川県職業安定課長寿命、現在に至つております。
○内藤委員長 木城君が神奈川県の職業安定課で取扱つた人身売買に関する事件がありますか。
○木城証人 ただいまお尋ねの点につきまして申し上げます。私神奈川県職業安定課長を拝命以来この問題につきましては昨年、昭和二十六年一月にいわゆる高座地方に起きました人身売買事件をもちまして初めてであるわけでございます。
○内藤委員長 それ以外になかつたようですな。
○木城証人 それ以外に若干、人身売買と名がつくかどうかわかりませんが、職業安定法違反というものが二件ございます。以上であります。
○内藤委員長 そのただいま証言になられた高座地区では、作男、子もりのような労働の実態で、山形県との間に従前から慣行的な人身売買が行われておつたといいますが、この慣行の是正に対する処置ですね。こういうことを考慮するところがなかつたのですか。
○木城証人 お答えいたします。ただいまお尋ねの人身売買的な慣行があつたかどうか、私は遺憾ながらいわゆる高座事件発生まではかようなことがあることは存じませんでした。
○内藤委員長 高座地区の農民から労力の不足を訴えられておつたようなことはなかつたですか。
○木城証人 お答えいたします。労力の不足につきましては、これが公共職業安定所の窓口に現われました状況から考えまして、特に不足を求人者から受けたということはございませんが、求人の状況から考えましては、労力の必要性はあつたように考えます。
○内藤委員長 窓口を通じてはさようなことは直接にはなかつたけれども、全般を見て労力の必要を感じているように思われる、さようですね。
○木城証人 さようでございます。
○内藤委員長 その場合、東北地方の関係機関とあなたの方で交渉したことがありますか。
○木城証人 お答えいたします。昭和二十五年、一昨年、月ははつきり記憶はございませんが、十月か十一月かのころに、厚木公共職業安定所の管内におきまして従来農業労働力の要求がございました関係上、当所の所長が山形県の方に直接出向きました。求人連絡かたがた、懇請等の使命を帯びまして山形県に出張したことがございます。
○内藤委員長 特に山形県を選んだのはどういう意味なんです。
○木城証人 これは求人者の希望が山形県にあつたからでございます。
○内藤委員長 人を求める方で、山形県人の性格か何かがいいのでそういうことになるのですか。
○木城証人 今から勘案して見まするのに、求人者の気持といたしましては、山形県がいわゆる農業方面におきまして、あるいはその他の方にも関係があるかと思いますけれども、過剰人口あるいはまた貧困等の事由によるかと思われますが、かようなところからいたしまして、従来山形県は他地方に出かせぎに行くという慣習がやはり考えられるわけであります。かたがた東北地方の東北人の非常な美点もありまして、よく労働にたえる。特に農業労働につきましては適当ではないか、かようなことが推察されておるわけであります。従つてかような点からいたしまして、神奈川県下の農業者は山形県の農業労働力を要求しておる、かように私は考えております。
○内藤委員長 それは何ですか。昔から連続的に山形から人が来ておるので、そういう習慣とか伝統というか、そういう建前から山形の方へ求人側がよけい要求するのじやないですか。
○木城証人 古い昔は存じませんけれども、大体東北地方が、農業といわずその他の産業方面における労働力の給源地といたしまして、非常に多いわけでございます。
○内藤委員長 そこでこの高座地区の人身売買事件ですね、これについて証人は、警察の捜査が始まる前にすでにこの事実を知つておつたのですか。
○木城証人 ただいまお尋ねの実は高座地方のこの事件につきましては、警察の発動は、公共職業安定所の違法な事実の発見よりは数箇月遅れておるわけであります。すなわち戸塚の公共職業安定所におきまして、昭和二十六年一月上旬某求職者の口から、周旋屋の手を経て山形県から紹介を受けたという事実をつかんだのが昭和二十六年一月でございますので、警察の発動はそれより遅れること五箇月くらいになつておるのじやないかと、かように考えております。
○内藤委員長 そうすると、あなたの方が警察の捜査開始以前に知つておつたのだな。
○木城証人 はあ、警察の開始より私の方が早いのです。
○内藤委員長 早く事実を知つておつたのだな。
○木城証人 さようであります。
○内藤委員長 そういう場合に、何らか事前の措置を講じましたか、あなたの方で。
○木城証人 われわれといたしましては、与えられた権限によりまして、職業安定法違反の事実がありますれば、安定所独自の権限によりましてこれを摘発し、しかして検察庁に告発するだけの権限を持つておるわけであります。でありますので、告発に至るまでの措置あるいはまたその後におきましては、警察の方へは連絡いたしておるはずでございます。
○内藤委員長 はずであつた。あなた自身はどうでした。やりましたか、あなた自身課長として。はずであつたというのだが……。
○木城証人 警察の方にも所轄の安定所から連絡申し上げてあります。
○内藤委員長 そこでその事件について、警察及び労働基準監督署との連絡状況はどうでした。
○木城証人 私の聞く範囲におきましては、安定所はもちろん、所轄の警察署には連絡いたしております。また基準監督署にも連絡はしておりますが、その後本件に関しましては私聞いておりません。
○内藤委員長 聞いていない。
○木城証人 はあ。
○内藤委員長 いわゆる事後の処置というものを、そうするとあなたの方では別に講じてはいないわけですな。
○木城証人 事後の処置と申しますとどういう意味で……。
○内藤委員長 たとえば違反に対して、被害児童に対して別にあなたの方では何らの措置を講じないというわけですな。
○木城証人 さよでございます。
○内藤委員長 あなたの県内の労働需給の調整を完全に行うならば、ある程度人身売買を防止することができるのじやないですか。たとえばこういうことなんです。高座地区では自分の子供はその付近にある工場に出して、多くの賃金をとらす。そして他から人身売買のような形を持つて来た子供にその不足の労働力をやらしておるというような証言がさいぜんの証人の口から出ておる。そうするとその労働力の需給の関係を調整することにおいて、人身売買というようなものを防止し得ると私たちには思われる節もあるのだが、その点どうですか。
○木城証人 ただいまお尋ねの点ですが、一般的な問題といたしましては、神奈川県下における農業労働力、特に高座地方におきまする農業労働力は、農家の次男、三男というものが東京あるいはまた横浜に近い関係上、自分のうちの農業に携わることが少いように考えられますことと、もう一つは農業労働力の絶対数が少い。この二つの理由からいたしまして、この労働力の不足をいかなる方面から補うかということがもつぱら考えさせられる問題だと考えるわけであります。そこでこの労働力の不足を、先ほど申し上げましたごとく、東北方面に依存しなければならない、こういう必要性に相なつておると考えるわけであります。公共職業安定機関といたしましては、もちろんこの農業労働力の需給調整につきましては、他のいかなるものにゆだねることなくして、安定機関みずからが調整に当ることが最も必要であります。また当然の責務と私は考えております。この調整をいかにするかという具体的な問題につきましては、もちろん安定所の能力を高度に発揮し、しかして府県間の連絡を円滑に行うというふうに持つて行けば調整はできる、かように考えております。
○内藤委員長 それはわかつた。いわゆる職安の課長としてのあなたの一つの抱負、理想はよくわかつた。しかしさいぜんの証人がここで述べて行つたことによると、職業安定所なんかというもの、あるいはまたあなたの職安課というものが実際に働いていない。だからそういう安定所というものがあるということを知つておりながら、求人側では、そういう働かぬものに頼むよりも、むしろ周旋人に頼んだ方が実績が上る、こういう意味でいわゆる人身売買というものが起るのだ。かような証言をしておるが、その点実相はどうです。
○木城証人 お答えいたします。私が聞いた範囲におきましては、まさにただいまお話がありましたごとく、いかにも安定所がその能力がなくて、かような周旋屋の手によりまして紹介を受けなくてはならぬというふうには聞いておるわけであります。安定所が当然行うべき紹介業務が、事実においてできない、あるいはまたできても完全に求人を充足する、あるいはまた求職者に対しては就職せしめるということが行われないということは、私あえてこれを否定するわけではありません。しかし絶対できないかどうかということは、私は決してできないのではなくして、できるような方向に今後持つて行くことによりまして、俗にいう周旋屋の根絶を期することができるのじやないか。しかしながら安定所それ自体を考えましたときに、安定所はそれだけの能力を現在持つておるとは私は考えておりません。従つて関係方面の協力なくしては、この問題は解決がつかぬのではないかど考えておるわけであります。もちろん安定所自体も、旺盛なる活動をせしめる方向に持つて行かなくてはならぬかと思います。
○内藤委員長 神奈川県自体としては、もつと具体的に当面の対策を持つておられますかどうです。
○木城証人 お答え申し上げます。ただいまの御質問に対しまして神奈川県といたしましては、この問題につきましては先ほど私が申し上げましたごとく、安定所が当然行うべき責務を持つておるということからいたしまして私は私自身に与えられました責務を完遂するということが公務員たる者といたしまして当然の仕事だと思います。従いまして、今後安定機関におきましてすみやかに農業労働力の充足の合法的なる方法を確立し、そうして人身売買の問題を解決して行きたいと思います。
○内藤委員長 あなたの証言では、要するにあなたは自分に与えられた権限において力一ぱいやりたいというだけで、どういう方法をとろうというような具体的なものはないわけですね。 他に御質疑はありませんか。
○高木(松)委員 こまかく聞きたいのですが、職安課で取扱つている事務の内容と範囲を述べていただきたい。
○木城証人 お答えいたします。職業安定課の担当いたしております事務は、職業安定法これが大部分を占めております。そのほかに失業保険法並びに緊急失業対策、この三つの法律を施行する責任を持つておるわけであります。もう少し具体的に申し上げますならば、まず第一番に人事管理の問題、それから業務面におきましては、基本業務でありますところの職業紹介、あるいはまた許可を要しますところの職業紹介、労働者の募集、労務供給事業、これらの監督、職業補導事業、失業対策事業等が含まれるわけでございます。
○高木(松)委員 神奈川県でそれらの職務を遂行するのに、人員それから設備、あらゆる面においてどういう状況になつているか、ひとつ詳細にお話しください。
○木城証人 お答え申し上げます。機構につきましては、県の主務課といたしまして職業安定課、これの定員が二十五名、ほかに県費の職員が十名、失業保険徴収課、定員が五十名、また出先の機関といたしましては公共職業安定所十一箇所、ほかに出張所が二箇所、これの定員が五百四十九名でございます。さらに公共職業補導所といたしまして八箇所、定員七十三名、それに県営の共同作業所一箇所、定員八名、総計定員におきましては、国費関係におきまして六百二十四名、県費関係におきまして九十一名、組織の点につきましては以上でございます。予算につきましては、これは昭和二十六年度の公共職業安定所の運営に要する経費といたしまして、労働省から配付を受けましたものは、職員の基本給といたしまして五千三百八十一万九千九百四十一円、超過勤務手当といたしまして七百六十一万四千九百七十一円、旅費百六十一万二千四百五十五円、物品費百四十一万二千三百九十九円、役務費一千二百四万千八百六十七円、かように相なつております。総計はまことに申訳ありませんが出してありません。
○高木(松)委員 あなたの方の所管事務と児童福祉法との関係はどういうふうになつていますか。
○木城証人 お答え申し上げます。児童福祉法の関係は御承知の通り県の民生部がこれを担当いたしております。従いまして、必要の場合におきましては連絡いたしておりますけれども、その業務につきましては別に……。
○高木(松)委員 農業に労働を提供する児童のいわゆる求人とか雇入れとかいう関係について、あなた方はどういう権限を持たれるのですか。
○木城証人 お答えいたします。これは一般的な問題になりますが、農業労働力の充足につきましては、先ほど申し上げましたごとく、年齢のいかんを問わず、但し法令に規定されておることは別問題といたしまして、それが労働力である限り、安定所に求職の申込みある場合におきましては受理をいたします。そうして職業紹介活動を行うわけであります。
○高木(松)委員 児童の農業労働提供に関しては、どういう内容と範囲とにおいて制約されておるのですか。
○木城証人 お答えいたします。児童の農業労働従事につきましては、基本法の示されるところでありますいわゆる満十五歳未満は、就職という問題につきましては、たしか除外されているように考えております。
○高木(松)委員 除外ということは禁止されておることですか、除外されているということの内容をはつきりと説明してください。
○木城証人 私の記憶に誤りがございませんならば、禁止されていると思います。
○高木(松)委員 十五歳未満の児童が農業労働その他農業に付随の労働に労働を提供するという事実があれば、どこでそれを取締るのですか。
○木城証人 十五歳未満の就業者に対しまする取締りにつきましては、遺憾ながら私の権限外でございます。
○高木(松)委員 そこで十五歳以上であつて求職をせられて、そうしてあなたの方の紹介によつて就労した者に対してはいかなる監督権をお持ちになつていますか。
○木城証人 お答えいたします。適法なる年齢に置かれておりまする者に対する就職上の監督の権限も、私の権限外にあるのであります。
○高木(松)委員 そうすると就職のあつせんをしてしまえば、十五歳以上でまだ完全にからだの発達していない者に対しても、あなたの方の側として何ら保護をする方法はないのですか。
○木城証人 十五歳以上の就労者につきまして、それが安定所の紹介によつて就労しておるという者に対しましては、われわれといたしましては就職後の補導につきましては指導は加えておりますけれども、それ以上のことにつきましては、労務管理といたしまして私の権限外に属しております。
○高木(松)委員 満十五歳以上でもまだ体力の完全でない者に対しては、そのからだの能力に応じて保護を与えなくてはならぬと思うが、そういう保護を与える方法はあなたの権限の中にない、こうおつしやるのですか。
○木城証人 お答えいたします。たとい十五歳以上の適法であるところの求職者といえども、求職の際におきましてその者が農業労働者として不適格である、すなわち心身ともに虚弱であるというふうな状態に置かれておるとなれば、これは農業労働者としての適格性を欠いておるという見地からいたしまして、遺憾ながら求人者の希望するようなものではないわけであります。従つて安定所といたしましては、紹介することは差控えているのが一般的な問題であります。ただ、ただいまお話のありましたごとく、紹介時におきましては、りつぱな農業労働者として紹介しておるわけであります。求職後のその者の身体の異常等につきましては、われわれといたしましてはそれに対しまして適切なる方法を講ずるという権限はございませんし、ただ就職上の問題につきまして、先ほど申し上げましたごとく、就職後におきましての補導だけは加えるだけの権限は与えられているわけでございます。
○高木(松)委員 そうしますと、あなたは現在まであなたの立場においていろいろの事柄に接しておられるんですが、この十五歳以上のまだ完全にからだの発達しない者を保護する制度がない、こうおつしやいましたが、それなら法律でもつくつて保護する必要があるかないか、実際問題を取扱うあなたの考え方をひとつ聞いておきたい。
○木城証人 ただいまの御質問の要旨は、私が安定課長としてお答えするにはきわめて不適当と思います。個人としてならお答えもできようかと思いますが、安定課長といたしましては、職業紹介の面においてのみ権限を与えられておりますので、ここで私見を申し上げることができるかどうかということにつきましては、いささか私は疑問を持つております。
○内藤委員長 そうかたく考えずに、そんなにこうちよんきまりにこわばつて考えずに、あなたが実際職安課長としての体験から割出した何かお考えがあれば、述べた方がいいでしよう。
○木城証人 職業安定機関におきましては、職業紹介をすることを本旨といたしておりますので、私の考えといたしましては、労働基準局なりその他の適当なる機関におきましてこの問題を取上げていただいた方が適当ではないか、かように考えております。
○高木(松)委員 先ほど神奈川県のあなたの所管の組織、人員、予算等を明らかにされたが、この範囲において、現在のあなたの職務を行うに遺憾なきを期するだけの予算と人員と組織とを持つているとお考えになつておりますか。
○木城証人 お答えいたします。現在の職業安定機関、特に府県職業安定機関並びに公共職業安定所の機能を発揮いたします上におきましては、私現在の人員あるいはまた予算によりまして十二分であろうとは考えておりません。ことに現下の失業情勢から考えまして、職業紹介の業務が、いかに第一線の安定所が多忙をきわめているかということから考えましても、決して現在の人員並びに予算では十分とは考えておりません。
○高木(松)委員 ここに当委員会に現われた高座地区における人身売買事件というものは、あなたの本来の職務を完全に盡さない欠陷から生れて来た事件であるとはお考えにはなりませんか。
○木城証人 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げたいと思いますが、結果から見ますれば、確かに職務遂行の上におきまして十二分でなかつたことは私十分承知いたしております。但し意識的に怠つておるということは決してないと思います。
○高木(松)委員 意識的に怠つているというよりか、あなたの所管の事項を完全に行つておつたならば、このような事件が起きないであつたであろうということを考えられないかどうか。怠るとか怠らないとかいうより、どの原因によろうとも、完全に行われて、いわゆる農業労働者を完全にあつせんし得ておつたならば、この問題は起きないのじやないか。こういうふうに私は質問しているのだから、責任問題ではないことを頭に置いて、責任問題を追求しているのでないということで、客観的にそれをお話し願いたい。
○木城証人 お答え申し上げます。職業安定機関におきまして農業労働力の完全な充足を見れば、私はかような人身売買のような行為が払拭し得ると確信しております。
○高木(松)委員 そこでお尋ねいたしますが、高座郡御所見村の農民が村長を通じて藤沢の職業安定所へ農業労働児童の求人を申し込んだが、職安からは何らの回答がなかつたといつて訴えているが、そういう事実がありますか。
○木城証人 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。農業労働力の要求、すなわち農家からの求人につきましては、過去におきましては確かに安定所にございました。これに対しましては遺憾ながら完全なる充足ということは行えなかつたということを申し上げます。 なお求人者が安定所に申し込んでも、これに対しまして何らの措置も講ぜられていないということにつきましては、多少聞いておりますけれども、全部がかようであるということは聞いておりません。
○高木(松)委員 最後に一つお尋ねします。先ほどの証人のお話によると、完全にあなた方の職務を執行しておつたならば、かような人身売買のごとき問題は起きないであろうと断定された。さすればどの点において欠陷があつてあなた方の職務の完全なる執行ができないのか、その完全でないところを全部ここにあげて、はつきりさせていただきます。
○木城証人 お答えいたします。先ほど来申し上げておりますごとく、本県の農業労働力の給源地は東北地方、特に山形県に依存しておるのでありますが、府県間のことでありますから、われわれといたしましてはできるだけ十二分の連絡を保持し、両県の安定機関が同じ方針のもとに、同じ歩調のもとに、同じ措置によりましてそれぞれ活動するならば、私は農業労働力を山形からきわめて円滑に受け入れることができると確信いたしております。従いましてひとり需要県あるいはまた供給県、どちらかが積極的に動きましても、この農業労働力を安定機関のルートに乗せるということはむずかしいと考えております。
○浦口委員 ただいまの高木委員の御質問に対する答弁で大体結論が得られたようではありますが、具体的に二、三お尋ねしておきます。 先ほど証人は、昨年の一月にこの人身売買の事件が発生するまでは、こうした事件がその管下でなかつた、またあつたかどうか知らなかつた、こういう御答弁があつたのでありますが、これは事実なかつたのか、あるいはあつてもお知りになつていなかつたか、それをまずお聞きしたい。
○木城証人 私といたしましては、かような人身売買的な事柄があつたとは承知いたしておりませんでした。
○浦口委員 それはたいへん重大な問題だと思います。こうした事実が神奈川県と山形県の間に継続的に行われていた、こういうふうにわれわれは考えるのでありますが、昨年の一月以前には全然なかつたか、なかつたということを断言されますか。
○木城証人 私の承知いたしております範囲におきましては、なかつたと申し上げたいと思います。
○浦口委員 承知している範囲ではなかつたということでお聞きしておきましよう。 その次に、先ほど職業安定所がもし活発にあらゆる機関と完全な連繋を持つて活動していれば、こういう事件が起きなかつたであろうという、一つの反省的の御答弁があつたわけでありますが、先ほど委員長の問いに対しまして、東北地方、山形県に職安自身がお出かけになつていろいろ求人したということをおつしやいましたが、その結果どういう結果が出たか、御答弁をお願いいたします。
○木城証人 お答えいたします。昨年この問題が発生いたしまして、われわれといたしましては、何らかの方法をもつて合法的に職業紹介のできるようにという前提のもとに、山形県に書面上の連絡をいたしましたほかに、管下の安定所の所長並びに係長、課長を前後三回にわたりまして出張させまして、じきじき山形県下の安定所並びにそのほか多少の府県も関連いたしますが、出向きまして懇請かたがた連絡に参つたような次第でございます。爾来当時の求人は六十一名ございます。直接あちらに係官が出張いたしましていろいろ打ち合せました結果、第一回におきまして山形県から十五名、そのほかの県から九名、二十数名の者が本県の方に参つております。これが最近の統計でございますが、今後連絡した求人につきましては、ぜひとも当該県から求職者の来るのを待つておるわけであります。
○浦口委員 先ほどから予算とか、人員とか、あるいはそのほかの機関との連絡がうまくないとかいろいろ御事情の陳述があつたわけではありますが、職安自体、現状においても努力をされれば実績は上る、そうしてもぐり周旋屋によつて年少者が悲惨な事態に陷ることを救うことができる。こういうことが言えると思うのであります。その点過去にそうしたことが積極的になされなかつたということは私たいへん遺憾だと思いますが、今後におきましては、積極的におやりになればできるとわれわれは考えるのでありますが、その点課長としての信念をお聞きしておきたい。
○木城証人 私といたしましてはもちろん当然の責任でございますので、安定所におきましても、農業労働力の充足をはからなくちやならぬというふうに考えております。但しこの問題につきましては、神奈川県だけで問題が片づくわけではございません。相手の県もあることでございますので、両者歩調を一つにいたしまして、この問題をともどもに解決いたすことが最も必要だと考えます。
○浦口委員 最後に一点お聞きしておきます。ただいまのお話のように、これは神奈川県だけで解決することとは思つておりません。日本国家全体の置かれた現状あるいは従来から長い間の封建的な慣習と申しますか、非常に多くの問題を含んでおることはわれわれも承知いたしております。そこでそれは教育とか全体の経済力を高めるとかいろいろ間接な努力がなされなければならぬことは当然でありますが、ただ一つお聞きいたしたいことは、先ほど職安といたしましては就職後も補導をする。こういうお話でございました。なお就職後の問題については、労働基準局、あるいは児童福祉司あるいは社会福祉主事、民生委員、児童委員、こうしたものが陰になりあるいはひなたになつてこれを善導して行く、あるいは監督して行く、こういうことになると思うのでありますが、さつきこの席に見えました高座地区警察署の巡査部長菊池清君の証言によりますと、児童福祉司であつてこうしたもぐり周旋屋が伴つて来た少年を二人使つているのがある、そういう一例を見てもこうした補導機関が連絡を緊密にして積極的に働くということの以前に、いかに低劣であるかという陳述があつたのであります。もちろんこれは全部ということではないと思いますが、そうしたことについて各機関の連絡、協議、協力という面で課長の体験をされた、あるいは遺憾な点があるならばそれを承つておきたいと思うのです。
○木城証人 公共職業安定所の旺盛なる活動を見るならば——旺盛なる活動はそれ自体が当然考えなくちやならぬ問題でありますけれども、やはり職業紹介を効果あらしめるためには、われわれといたしましては、ひとり安定所だけでは十二分ではない、従いましてただいま御質問のございましたように、社会福祉主事、福祉事務所、あるいはまた町村その他関係いたしておりまする団体等との密接な関係が最も必要であろう、かように考えております。われわれといたしましては、今後もかような関係方面との緊密な連絡を保持いたすつもりでおりますが、特に労働基準監督署とは、従来とも労働者の供給事業なり、あるいは募集なりという方面につきまして緊密な連絡を保持しておるような実情でございます。
○浦口委員 先ほどの兒童福祉司にからんでの問題、こういう遺憾な事実がもしありましたらお教え願いたい。
○木城証人 お答え申し上げます。ただいま御質問になりました兒童福祉司みずからが二人の者を雇つておるという事実につきましては、私承知いたしておりません。
○山口(武)委員 神奈川県は、アメリカが日本に進駐して来まして、第一番目に神奈川県ヘアメリカ軍の進駐が行われたわけでありますが、そのときに、あるいはその後において、アメリカ軍から、日本の婦女子を慰安婦としてアメリカ軍に提供しろ、こういうような事実があつたではないかと思われるのですが、この点課長はどのように御承知になつておりましようか。
○木城証人 お答え申し上げます。ただいまのアメリカ軍から慰安婦の要求があつたかどうかという御質問でございまするが、私自身かようなことは聞いておりませんし、またさような要求を受けたことはございません。少くとも職業安定機関はかような職業の紹介は排除いたしておるのでございますし、かようなことから考えましても、安定機関としては何ら関知していないことであります。
○山口(武)委員 あなたは面接関係なかつた、このような答弁ですが、職安課長の立場にありますれば、そのような問題については当然関心が払われるべきであると考えまするが、あなたの方を通じないで、よその方を通じてこのような要求があり、その要求に対して慰安婦の供出がなされたというようなことは、よその問題としても聞いておりませんでしようか。
○木城証人 聞いておりません。
○山口(武)委員 きわめて残念な話です。これは私が残念なのではなく、あなたの方が残念なんです。先日ここでの証言が行われた際に、新潟県の次席検事ですら、このような事実が行われるのを知つているのです。検事の証言によりますると、提供を要求されているという、少くともそういう問題については、これはあなたよりも関心が薄くてよろしい立場の人であります。あなたほどにこの問題に縁が深くない人であります。この人が知つておるのであります。このことをあなたが知つていないということは、あなたの現在行つている職務から考えても、あなたのために私は遺憾に思う。もつともそのような民族的な屈辱の問題にあなたは目を隠している、耳をふさいでいるというなら問題は別なんです。お答えがなかつたならばそれでよろしいのですが、神奈川県の職安課としてきわめて遺憾だという私の意見だけ表明しておきます。
○内藤委員長 他に御発言がなければ、木城証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さんでした。 —————————————
○内藤委員長 引続き梅津証人から証言を求むることにいたします。 ただいまお見えになつておられる証人は梅津龍夫君ですね。
○梅津証人 そうでございます。
○内藤委員長 これより女子及び年少者の人身売買に関する件について証言を求むることになりまするが、本委員会が人身売買に関する件につきまして調査を行つているゆえんのものは、最近女子及び年少者の人身売買事件が全国的に激増の傾向にありまして、これが取締り並びに保護救済機関運用に対する総合的監察は、わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要することと思料いたすためでありますので、証人においても率直なる証言により、本委員会の調査に御協力されんことを期待する次第であります。 それではただいまより証言を求むることにいたしますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。 なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨申出願いたいと存じます。 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。 宣誓書を朗読してください。 〔証人梅津龍夫君朗読〕 宣誓書 良心に従つて、真実を述べ何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
○内藤委員長 では宣誓書に署名捺印してください。 〔証人宣誓書に署名捺印〕
○内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いしておきます。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は起立してお答えを願います。 梅津龍夫君は現在山形県民生兼経済部長ですね。
○梅津証人 その通りでございます。
○内藤委員長 現在の職務につくまでのあなたの簡單な経歴を述べてください。
○梅津証人 昭和二十二年三月、山形県経済部長に任ぜられました。昭和二十三年一月、部制の改革によりまして農林部長に就任いたしました。昭和二十六年五月、農林部長を解かれまして民生部長に就任いたしました。同じく六月経済部長の兼務を命ぜられまして、現在に至つております。
○内藤委員長 民生部と経済部というと相当仕事が違つておるようだが、人がいない関係でそうなつておるのか、また何かあなたはそういう方面に特別の関係があるのですか。
○梅津証人 私の方の経済部はちよつと他の県と違いまして、内容は商工行政と労働行政になつております。昨年の五月ないし六月にわたりまして部長の更迭を見たのでありますが、その当時私の方の知事は中央の行政機構改革を大体予定されまして、農地部長兼農林部長と、民生部長兼経済部長と、兼務の部長を二人つくりまして現在に至つたものであります。
○内藤委員長 あなたの県における人身売買の実態についてひとつ述べてください。
○梅津証人 山形県は御承知のように積雪の多い寒冷な地帯で、しかも農業が主体になつております県でありまして、そのために県民の経済力も弱小であるという状況になつております。県としましても現在の村山知事が特に力を入れておるのでありますが、現在のような農業県で進む場合には、終戰後の狭い国土に押し込められた日本としまして、農村の次三男の対策、農業経営自体の対策、こういうものが非常に重要になつて参るわけであります。従つて県の重点方策としまして、産業開発につきまして特に力を入れておるのであります。その方向を大別いたしますと、一つは農業経営を多角的にいたしまして農家の收入を増加する。さらにまた農家の次三男等の労力も有効に使えるように考える。また一方におきましては商工業等を盛んならしめまして、余剰労力の吸收に努めるというふうな大体の方向に進んで参つたのであります。終戰後のこれまでの状況を申し上げますと、終戰直後、御承知のようにいわば農村のインフレ時代がちよつとあつたのであります。昭和二十一年、二年、三年当時まででありますが、その当時までは、農村におきましても比較的やみ收入と申し上げますと語弊がありますが、やはり食糧等を生産いたしております関係からいたしまして、若干のやみ收入等もあつたわけでありまして、そういう関係と思いますが、比較的身売りの問題というふうなものも表面化いたさなかつたのでありますが、昭和二十三年の暮れ当時から農村に相当に生活困難な面が現われて参りまして、それ以後逐次身売りというふうな現象も増加して参つているような状況になつておるわけであります。これまでの記録等につきましても、あまり正確なものはないのでありますが、大体安定所を通じまして調べた統計によりますと、いわゆる安定法違反が、昭和二十四年は二十件あります。昭和二十五年は十七件になつておりますが、昭和二十六年になりまして四十九件というふうに急増いたしておる状況であります。
○内藤委員長 それはやはり農家経済の不振から来ておると思われますか。
○梅津証人 それのみの原因とは考えられないのでありますが、そういう原因も多分に含まれておりますことと考えております。
○内藤委員長 あなたの県は昔から、人身売買と言うと、どうかしりませんが、ともかく他県に出かせぎをしなければならぬ経済状態にあつたように聞いております。それがこの人身売買のような不祥な事件が起きて来る一つの原因じやないかと思われるが、その点どうですか。
○梅津証人 お話の通り、山形県は農業県であります関係からいたしまして、どうしても農家の次三男、あるいは農家以外の子弟におきましても、県内で職を求めることが非常に困難だつたわけであります。従つて特に農家の次三男対策としましては満洲開拓の移民が非常に多かつたのでありまして、長野県と山形県は全国のトツプを切つておつたかと考えます。
○内藤委員長 これは実際問題としてですが、神奈川県と山形県の間に行われたある人身売買事件について、山形県の関係機関があまり協力をしてくれなかつたというような事実は聞いておりますか。そういう事実はありましたか。
○梅津証人 県側の関係機関としましては十分に努力をしたと思いますが、神奈川県側からいたしますと、山形県の協力態勢がやや不満であつたように聞いております。これは私の私見でありますが、当初神奈川県で問題の少年が発見されまして、高座事件と称せられる人身売買事件が起つたのでありますが、その際に、新聞等に数百名というふうな記事がたびたび出ておりましたので、県側としましてやや以外に感じました点から、そういうふうな感想を持たれたのではないかと私は考えるのであります。
○内藤委員長 あまり協力をしてくれなかつた熱意が足りなかつたという理由はそういうところにあると思われますね。この人身売買事件について、一体各府県はどの機関が一番中心になつてその処置をしなければならぬと思われますか。
○梅津証人 私は幸い民生部長も兼ねておりますので、その間の大体の機構はわかるのでありますが、やはり人身売買事件の関係する組織並びに場面が広いのであります。私の方でやつております大体の動き方を申し上げますと、県に青少年問題協議会というのがありますが、これがあらゆる関係機関の関係者、有識者を網羅いたしました組織でありますので、この協議会をおきまして青少年に関する問題をいろいろ取上げるのであります。たとえば問題の起つた場合等にはその問題につきまして青少年問題協議会がまずこれを取上げまして、必要の場合には実地調査なり実態調査なりを実施いたします。その結果によりまして、いかなる機関において、いかなる方法でこれを処置するかというような大体の方針をきめまして、それによつて職業安定機関、あるいは労働基準局関係、あるいは婦人少年局の地方分室、あるいは警察、あるいは教育委員会、あるいは民生部の兒童関係の部課というふうに仕事をわけまして、それぞれ実施いたしておるのであります。
○内藤委員長 この青少年問題協議会はいつできたのですか。
○梅津証人 中央の青少年問題協議会というのが内閣にできておりますが、これが昭和二十五年の四月三十日、政令第百号になつております。これができましてから、その後通牒によりまして各府県にできたのであります。
○内藤委員長 山形県はいつでしたか。
○梅津証人 確たる記憶はございません。
○内藤委員長 ただいまの証言中の、各方面の権威者を集めたというのは大体どんな人でしようか。
○梅津証人 山形県の場合を申し上げますと、教育関係としまして学校教育課長、同じく社会教育課長、山形県小学校長会長、山形県中学校長会長、それから山形県高等学校長会長。それから労働省関係は、労働基準局が山形労働基準局長、婦人少年局山形職員室主任、法務府関係は山形地方検察庁検事正、山形少年保護観察所長、山形少年保護鑑別所長、家庭裁判所長、兒童福祉審議会長、兒童相談所長、それから兒童福祉司が入つております。それから兒童委員代表。警察関係、これは国警の山形県本部防犯統計課長がなつております。
○内藤委員長 中央の出先関係からも相当出ているのですね。
○梅津証人 まだまだおります。
○内藤委員長 どれほどおりますか。
○梅津証人 四十四、五名おります。
○内藤委員長 あなたの県内の労働力ですが、需給調査等をやられたことはありますか。
○梅津証人 これは私の方に調査課というのがありまして、その方面で労力関係の需給調整等の統計もとつております。
○内藤委員長 その調査課はどこに属しているのですか。
○梅津証人 知事室です。
○内藤委員長 知事室に属した調査課というものがあるのですか。
○梅津証人 はあ。
○内藤委員長 そこで綿密な調査に基いて職業安定対策等は立てられているのですか。
○梅津証人 職業安定対策は、そこまで統計的な資料を持つしつかりした計画はできていないのでありますが、県のいろいろの産業開発の面におきまして、そういうふうな統計を基礎にして総合開発計画をつくつているのであります。
○内藤委員長 大体総合開発計画というものが着々と実現されるという場合にも、県外へ出す余剰労働力というようなものはある見込みですか。
○梅津証人 全部吸收するということは非常に困難であると思いますが、産業開発計画の一応の目標としましては、山形県の県民所得が、昭和五—九年の平均が全国の五五%ということになつておりまして、非常に低い率でありますので、これを一応昭和二十八年度を目標にいたしまして八〇%まで引上げる、こういう構想のもとにいろいろな計画ができておるのであります。労働力等は、今後の人口増加の見通しもありますので、これを全部県内で吸收するということはとうてい不可能だと考えます。
○内藤委員長 そうすると、やはり依然として県外へ働きに出なければならぬ実情にあるわけですな。総合開発というものができてもね。
○梅津証人 はあ。
○内藤委員長 そこで、これも実際問題になりまするが、山形県の職業安定機関が神奈川県の職業安定機関と対策を協議したことがありますか。
○梅津証人 この高座の事件についてでありましようか。
○内藤委員長 いや、山形県から労働力を吸收しようという関係から、神奈川県が出張してあなたの方に来て、何か対策を協議したような事実はありませんか。
○梅津証人 神奈川県から来ていただきましたことも、それからまた県としまして、神奈川県は非常に有力なる求人地でありますので、たびたび参上いたしまして、求人等についてお打合せなりお願いをしております。
○内藤委員長 そうするとその場合には、あなたの方が神奈川県へ出張してやるのですか。神奈川県からあなたの方に出張してやるのですか。
○梅津証人 私の方からおじやまする場合が、これまでの例ですと多くなつております。
○内藤委員長 そうすると、いわゆる労働力を神奈川県の方へ吸收してもらうようにお願いに行くことが多いわけだね。
○梅津証人 はあ。
○内藤委員長 全国で一番多いのは神奈川県ですか。
○梅津証人 やはり繊維工業等が一番求人数が多いものですから、愛知県あたりが一番多いかと思います。それから静岡県、作男の問題は神奈川県が非常に多いのでありまして、これもこれまで職業安定所を通じまして、特に相模原地帯に三十数名ごやつかいをお願いした事例もあります。
○内藤委員長 高座地区に起つた人身売買の問題ですね。これについて県としては善後措置をとられましたか。
○梅津証人 県としましては非常に遺憾な事件でありますので、先ほど申し上げました青少年問題協議会におきましてさつそくその問題を取上げまして、全部にわたりまして事態を調査することは不可能でありましたが、特に逸出の多い上山地帯を実態調査いたしまして、三十数名につきまして調査いたしたのであります。
○内藤委員長 被害兒童等の実情をその際調査されましたね。
○梅津証人 いたしました。
○内藤委員長 さいぜんからいろいろ、神奈川県——受入れの県の証人から証言をとつておるのですが、神奈川県へ人身売買によつて来た兒童は、山形県の親元にあまり帰りたくないと言つておるそうですな。それはどういうことに原因しておるのでしようか。
○梅津証人 上山地区の問題少年の実態調査の結果によりますと、やはり問題青少年は非常に貧しい家庭の子供であつて、しかも非常に家族の多い家庭の子弟であるのが大部分であります。そういうふうな関係からいたしまして、この実態調査にも現れておりますが、子供の手紙等も全部集録いたしておりますけれども、まず食糧等が自分の家よりはいいというふうなことが非常に多いようであります。それから雇い主が比較的温情的に取扱つてくれておるような通信がかなりあります。それから衣服等につきましても、大体盆暮れ等に作業衣等は世話してもらつておるようでありまして、そのほかに月一千円前後、多い者は千五百円以上をもらつておるような状況でありますので、こういう問題少年の困窮の家庭から見まして、必ずしも生活状況が悪くないという点から、帰りたくないというような考え方ではないかと思います。
○内藤委員長 しかしおとなでもそうですが、子供の場合には特に故郷あるいは両親、兄弟というものに対する愛着がなければならぬ。その愛着を振り捨てて故郷に帰りたくないという程度に山形県の農村の事情は困窮をきわめておるのですかな。それはそうでなく、何か別な伝統的な考え方から帰りたくないといつているのじやないですか、どうお思いですか。
○梅津証人 帰りたくないといつておりますのも——やはりときどき休みをもらつてうちに帰りたいという気持は、いずれの子供にもあるようでありますが、やはりうちの生活を見かねておりますので、幾らかでも自分が働いてそれでうちの手助けになれば、自分が家に帰りたい気持をがまんしても忍ぶという気持じやないかと考えます。
○内藤委員長 それは兒童の立場から見ると、おそらくいろいろ涙ぐましい実情もあるのだとは想像できますが、人権尊重の建前から申しますと、どうでしようか、学校教育あるいは社会教育等を通じて人権尊重の啓蒙運動なんかをやつて、そうしてその母なり父なり兄弟なりが民主憲法の人権尊重にほんとうに徹底するような方策を何か考えることによつて、人身売買というようなことも漸次防止されると思いませんか。
○梅津証人 そう考えます。
○内藤委員長 そんなような運動でも何か具体的に展開しておりますか。
○梅津証人 これは結局兒童福祉の問題になるわけでありまして、この実態によりまして、現在兒童福祉施設としてとられておりますいろいろな対策になつて来るわけでありますが、原則は、やはり親元に帰すということがどこまでも原則になるかと思います。もしそのために家庭生活がどうしても困るというふうな場合等につきましては、生活保護の問題もありまするし、あるいはまた自宅から通勤できるような保護受託制度もできておりますし、何とかそういう方面に当てはめまして、未成年の子供はやはり自宅で育成されるという根本方針を堅持するように、私どもとしては今後指導して参りたいと考えております。
○内藤委員長 他に御質問はありませんか。——志田君。
○志田委員 ただいま証人は人身売買問題の善後処置問題その他について、抽出的に上山地区の実態調査をした、こういうお話がございましたが、その実態調査をしたときに、家庭は非常に貧困である、家族数が非常に多く、食糧も満足に食べてない、さらに雇われ先の雇い主が温情的で、家庭のためならばそういうところで働いてもいいというふうな自発的な考えもあるのではないかというお話がありました。そこでお尋ね申し上げますが、雇い主が温情的であるという実態調査は、どういうところでお知りになつたのですか。
○梅津証人 これは実態調査におきまして問題兒童の家庭並びに問題兒童、あるいは問題兒童を雇つております雇い主の手紙等を通じまして、大体の判断を申し上げたのであります。
○志田委員 さような場合には、あなたは当該関係部長としまして、十分各般の事態を調査されなければならぬと思うのです。たとえば高座郡における人身売買事件では、未遂ではございましたけれども、保險詐欺の目的をもつて、過労の兒童に対して保險をつけておる。過労から幼い生命が縮められておるというようなことを御承知であるか、それを実態調査の上において把握しておられるかどうか、それをお尋ねします。
○梅津証人 その問題は実態調査で出ておりません。把握しておりません。
○志田委員 あなたはそういうことを知つておられるかどうか、それをお尋ねします。
○梅津証人 話としまして一応聞いております。
○志田委員 話で聞いておるというようなことでは非常に遺憾だと思う。きわめて重大な問題をあなたは今ここで証言されて、雇い主が温情的に取扱つておるということを兒童の手紙及び雇い主からの手紙によつて察知しておると言つた。しかるに、こういう生命を縮めるような過労があるということを調べないで、あなたは年少者が遠く離れた所で喜んで働いておるという結論を出したということになれば、その間違つた結論のもとに対策が講ぜられておることになりはせぬか、その点をお尋ねします。
○梅津証人 その点は委員長さんから、問題兒童のうちには家庭に帰りたくないという者があるが、それをどう解釈するかというお話がありましたので、そういうふうな事情で帰りたくない兒童もあるということを私申し上げましたので、このような状況下に向うに行つております子供たちとしましては、全部について帰りたくない、そういうことは毛頭考えておりません。
○志田委員 それはもう当然なことでありまするが、あなたは温情的に取扱つておるということを一方的な手紙によつて知つただけであつて、それは実態調査にならぬと思う。実態調査ということは、現地によつて、高座郡なら高座郡に行つてその実情を調査した結果でなければ、單に上山においてあなたが往復文書やその他を見ただけでは実態調査ではないと思う。その程度のことをもつて、これら重大な人身売買に関する事後処置が考えられるかどうか、兒童の実情を調査したと言えるかどうか。
○梅津証人 私はただいま申し上げましたように、一応青少年問題協議会としまして実態調査した結果に基きまして、そういうものもあるということを私判断いたしたのであります。これはごく一部の事例について申し上げましたので、その点御了承願いたいと思います。
○志田委員 あなたは先ほど貧困の家庭であつて、食糧等が自分の家よりも高座郡の方で使用されておる宅の方が十分であるということを証言なさつておるのですが、これは何か根拠がございますか、根拠があればその内容をお尋ねしたい。
○梅津証人 実態調査の際に、子供の手紙あるいはその家庭の話等を総合しあして、そういうふうな気持でおる兒童もあつたということを申し上げた次第であります。
○志田委員 証人は手紙にばかり限局しておつて、大局的な調査を欠いておるのではないかと思う。手紙だけでは反証になりません。私がお尋ねしたいと思いますのは、この問題が発覚した高座郡における現象を証人は知つておるかどうか。たとえば相原久三万の使用人、山形県の南村山郡上山町荒町伊藤文七四男伊藤金吾が、日々の過労と肉身恋しさから出かせぎに来ておる他の二人の兄を慕つてはだしで戸塚方面に歩いておる途中で、行動不審と思われてその方面の担当警察官に注意されて、それからこの問題が発生しておる、そういうことをあなた知つておられるかどうか。
○梅津証人 知つております。
○志田委員 それを知つておられて、その実態調査をなさいましたか。
○梅津証人 実態調査は、まだ私の方といたしましては上山現地におきます調査だけでございます。
○志田委員 上山現地における実態調査は、上山と県庁とはどのくらいの距離にあるかということは、部長のよく知られるところであります。そんなところの実態調査はいつでもできるのであつて、問題は山形県を離れた兒童がよそにおいてどういう條件のもとに日日を過しておるかということを、兒童福祉の立場からなり、労働基準法の立場からなり、その他人権擁護の立場から、実態の調査をしなければ何にもならないのではないか。その実態を調査した事実がありますか、それをお尋ねいたします。
○梅津証人 この問題の全般的な処理の問題としましては、先ほど委員長に申し上げました通り、兒童福祉対策の問題としましては、私ども十分な責任をもつてやらなければならない問題でありまして、現在の調査の段階としましては、先ほど申しましたように、山形県におきます現地の調査しかまだやつていないのであります。
○志田委員 あなたは先ほど県内労働力の需給調査を綿密に行つておるかどうかという委員長の質問に対して、県庁の調査課で統計をとつておるということを言つております。県庁の調査課の統計は、われわれの手元にも毎月参つておりますが、十四歳未満の少年の統計があれには載つておつたかどうか、その点をお尋ね申し上げます。
○梅津証人 十四歳未満は載つておりません。
○志田委員 十八歳未満のものが載つておつたかどうか、それをお尋ねします。
○梅津証人 統計の調査としましては、そういう年齢別の詳細な調査はなかつたかと記憶いたしております。ただ安定行政関係におきまして、職業あつせん資料といたしまして、学校の新卒業生等につきましては、その調査ができておるわけであります。
○志田委員 そうするとあなたの先ほどからここでお話申しておる証言というものは、空をつかむようなことを統計に籍口して申しておるといわなければならない。われわれが今問題にしておるのは、十八歳未満及び十四歳未満のいずれも人権擁護の必要な、他からの目的によつて侵されてはならない人たちを対象としてこの人身売買の問題をやつておる。しかるにあなたは、先ほど来聞いておりますと、調査課の統計書類で県内の労働力の需給調査を綿密にやつておると言われておる。しかも今私がさらにそれを聞きますれば、新卒の学生だけを対象にしてやつておるのであつて、それ以外の者はやつていないと言う。われわれの今対象にしておるのは、小学校に通うべくして通えない少年のことを問題にしておる。あなたは一体この問題に対して、ほんとうに調査研究を十分盡して、この証人台に立たれたというお考えをもつて御発言しておるかどうか、あらためてお伺い申し上げたい。
○梅津証人 私は自分の能力のできる範囲で調査したものと考えております。ただ先ほど申し上げました労力の需給調整というお話は、県全体の労力の需給調整の問題、また将来ともに産業開発計画の目的が到達しても、さらにまた人手が余るかどうかというふうなお話がありましたので、その際に申し上げたわけです。
○志田委員 あなたは今お尋ね申し上げましたことによつて、その程度の実情調査で、ほんとうに兒童の売買に対する事後処置が、公明にして正大に、しかも見落すところなく完全な施策ができると思つて、そう申しておるのかどうか、それをお尋ねしたい。
○梅津証人 できる限りの努力を払いまして、今後処理いたします。
○志田委員 そんなことを聞いておるのではない。もう少し質問を把握することにまじめになつて答弁していただきたい。あなたの調査なされておる被害兒童の実情調査によつて、正しい事後処置ができると思つて、それだけの調査にとどめたかどうかということを聞いておる。顧みて他を言うようなことは許されない。
○梅津証人 まだまだ不充分だと痛感しております。
○志田委員 私は今朝来、私の県のことでありまするから、非常に肩身の狭い思いをして聞いておる。私は心中に泣いておる。しかも神奈川県下の人身売買事件について、山形県の諸機関に協力の熱意が足りなかつたということを言われることは、山形県の県民の一人といたしまして、まことに遺憾しごくであります。今後当該部長としてあなたが、この事件に対して協力に熱意がなかつたというような誤解を受けられたとすれば、この誤解は解かなければならない。あなたはひとつこの機会に、熱意がなかつたというような取扱い方をした事実があるかどうか、それを明らかにしていただきたい。
○梅津証人 御質問の御趣旨がはつきりのみ込めないのですが……。
○志田委員 神奈川県との間に行われた人身売買事件が、一たび公になりまするや、神奈川県のそれぞれの機関からあなたの方に調査に行つたはずであります。その調査におもむいた場合に、山形県の関係機関がこれに協力することにおいてすこぶる熱意がなかつた、こういうことが言われておる。もしそうだとすれば、山形県民としてまことにはずかしい。当該部長たるあなたはこれを是認するかしないか、その点を明らかにしていただきたい。
○梅津証人 問題の重大性にかんがみまして、確かに不十分な点があつたことを認めます。
○志田委員 協力することに十分でなかつたということをお認めになるのでありますか、その点をお尋ねいたします。
○梅津証人 そうであります。
○志田委員 どうして十分な協力をしなかつたか、それをお尋ね申し上げます。
○梅津証人 意識的に協力しなかつたということはないのでありますが、きようもいろいろ不備な点が指摘されたわけでありまして、結果的に見まして、はなはだ私として不十分であつた、こういうふうに申し上げます。
○志田委員 先ほどあなたは、昭和五——九年の東北地方特に山形県の県民の生活状態について、五五%という数字を出しておられる。それと少年の人身売買ということとはどういう関係になりますか、どういう関係があると思つてこういう数字を出されたのか、それを承りたい。
○梅津証人 結局県内といたしましても、できる限り今後県内の労力を吸收いたす方向について努力する必要を県としても認めておりまして、そのために産業開発計画が進められております。その発端としましてそれを申し上げたのであります。直接の関係はありませんです。
○志田委員 山形県は一般に生活水準が低い。富の程度において関西、関東に比べては低い。それはよくわかつておるのでありますが、富が低いということと、人身売買という事件との間には、單に富の問題だけでは解決できない問題があろうかと私は思うのであります。富の問題だけで解決するということになれば、山形県より富の少い県民は、日本国中にたくさんある。東北だけで調べても、山形県の富は最下位ではありません。それはあなたもよく知つておられるところであります。にもかかわらず、山形県から多数の人身売買事件が起つたということ、しかも今後なお起るであろうというように予想せられるようであります。こういうことに対して、ただ富の問題だけで、県民の貧富の問題だけで考えておれば、私は事後処置において欠くるところがありやしないかと思うが、これに対する証人のお考えをひとつ述べていただきたい。
○梅津証人 その点は、先ほども申し上げました通り、私は経済事情だけとは考えておりません。従つて現在の私どもといたしまして、関係機関を網羅しました青少年問題協議会、これがどこまでも中心になりますが、ここにおきましていろいろ実態調査なり問題の中心の把握に努めまして、これをそれぞれの機関において防止対策を実施するという考え方で進んでおるのでありまして、これまでの事例といたしましても、長期欠席兒童等を調査いたしまして、予防的措置につきましていろいろ具体的に啓蒙運動等もやつたことがあるのでありまして、今後とも予防措置につきまして、第一に力をいたしたいというふうに考えております。
○志田委員 先ほど来承つておりますと、私は非常に残念に思うことが多い。たとえば学校教員の関係者を集めた、社会教育の関係者を集めた、小学校の代表者を集めた、あるいは基準局の役人を集めたとかいつて、あなたは山形の県庁でそういう会合をしたり、あるいは上山に実態調査に行つたということは言うけれども、一度も、その子供たちがほんとうに過労のために死んだという、その現地に行つたという報告をここでなさらない。行つたことがあるのかないのか、あるいはあなたが忙がしくて行けないとすれば、部下を出したことがあるかどうか。神奈川県の高座郡は、東京からそう遠い所ではない。東京には多数の県庁職員も来ておる東京事務所もある。もしあなたが忙がしくて直接行けなければ、東京事務所長をして調べさせてもできることである。電車で行つて一時間とかからぬ所である。あなたはそういうことをなさつた事実がございますか。それをお尋ね申し上げます。
○梅津証人 まだありません。
○志田委員 しなくてもいいと思つておるのか、それともしなかつたことを遺憾だと思つておるのか、今後しようと思うのか、その点をお尋ねします。
○梅津証人 しなかつたことは遺憾だと考えております。現地の神奈川県当局ともよく連絡いたしまして、何とかこの問題につきましてできる限り早く解決いたしたいと考えております。
○志田委員 私はできるだけ早くという表現だけでは満足しない。早急に神奈川県にあなたはおもむいて、その家庭の状況にも当つてみて、実情をほんとうに把握するということをこの委員会で述べられることができるかどうか、それをひとつお尋ね申し上げたい。そうでなければあなたの職責が勤まらない。
○梅津証人 できる限り私は参りたいと思いますが、いろいろの事情で行けない場合がありましたら、関係課長にまず最初調査してもらうようにいたしたいと思います。
○志田委員 少くとも三月中にそれをなさる御意思があるかどうか、それを承りたい。
○梅津証人 三月中にやります。
○志田委員 たいへん満足に思います。私は山形県民は決してそういう場合に非協力な態度をとるものでないということを、当該部長であるあなたを通じて、これを社会に当委員会を通じて報道したことは、山形県民にとりましても、非常に喜びとしなければならない。あなたは当然このことはしておらなければならなかつた。それをしないで、書類だけを携えてあなたが証人台に立つということは、たといトラツク一ぱい書類を持つて来ても、私たちは信頼できない。書類などは一枚もなくてもいい。小田急沿線で新宿からわずか三、四十分で行けるところ、私は現に昨日行つて来ておる。山形県選出の代議士として、まことに残念だと思いながら行つて来ておる。しかるにあなたは今日この証人台に来るまで行つておらない。そういうことはすみやかにひとつやつていただかなければ、百千の会議を県庁で催しても何にもならない。爾後における人身売買を防止する方策を立てたとは言えない。国に報ずるゆえんではありません。公務員としてのあなたの良心があるならば、一日も早く実地にその事実を調査して、しかる後にこの証人台に来るべきものと私は思う。しかし過ぎ去つたことをあえて追究もいたしませんが、三月中にすみやかにこの事実を山形県側においても調査して、公明正大な善後措置をとられるように御希望申し上げます。その結果は当委員会に、書類によつてでもけつこうでありまするから、後日その内容を御報告いただけるかどうか、特にお尋ね申し上げます。
○梅津証人 御報告いたします。
○志田委員 よろしゆうございます。
○田渕委員 この青少年問題協議会について、先ほど四十五名の学識経験者、あるいはあらゆる権威者というような御発表があつたのでありますが、たとえばこの四十五名のうちに、こういう貧困な家庭の奥さんなり、あるいは主人なりをどの程度入れておるか、ひとつ承つておきたい。
○梅津証人 ちよつとお話の内容がはつきり理解できなかつたのですが……。
○田渕委員 この山形県青少年問題協議会のメンバーであります。メンバーの中に、貧困なる家庭の、たとえば部落を單位とすれば、部落の代表者とか、あるいはその家庭の主人なり奥さんというものが、代表的に何名ぐらい入つておるか、あるいはそういう家庭の者は一人も入つておらぬか、こういう点を伺いたいのです。と申しますのは実情を把握する意味において、発表された方々はいずれも生活の困窮者でありません。それがゆえに、たとえば自分の家ではほんとうにせんべいぶとんに入つている、あるいはろくろく食糧もやれないけれども、よそに行つてちよつとでもよければよいというようなことで、温情主義とか、あるいは食糧がよいというようなことになつて来やせぬかと思いますので、こういう点を伺いたいために、メンバーを伺いたい。
○梅津証人 委員にはお話のような困窮家庭の代表者は全然入つておりません。
○田渕委員 これではもう——おそらくまつたく実相はこれだと私は思つた。少くとも実態を把握するのについては、えらいであろうけれども、野良着のままで来てもらいたい。そして実際どういうふうにあなたの家庭が苦しいのかというようなことを聞く。いわゆる要保護者、県なら県から保護を受ける家庭というものは貧困者である。はずかしいだろうけれども、こういう人たちを呼んで来て、個々の実態を把握して、つまり貧困者に対する要保護の費用が、たとえば一箇月千円やつておるとすれば、これではいかぬ、これに対しては何とか方法をしてやらなければならぬというようなことを考えさすべきじやないかと思う。先ほどの神奈川県の安定所の証言によりますと、少くとも七百十五名で七千五百万円の国の費用を使つている。平均八千円以上のべースです。大体十万円として七千五百万円、こういうような机にすわつて何ら用をなさない者を国家が雇つて、実際に困つておる者に対して、生活もろくにできないようなわずかな保護しか与えないというようなところにも、われわれは政治の貧困がありやせぬかと思うのです。そこで私は伺いたいのは、なぜこれにそういつた人を入れないか。入れるというと、封建的な思想が現われて来て、私の方では苦しいのですから、もう早く奉公に出して家庭を楽にしたい。また子供にそういうふうに日々見せておるから、父や母、あるいは、きようだいの苦しさを見ているから、早く出て行つて成功したいとか、あるいは親に心配をかけまいとか、ほんとうにいたいけない子供が ——なんと今日民主政治の、憲法において人権保護の叫ばれるときに、いかに貧県であろうと、富県であろうと、富県といつたつて、大阪や東京にも相当なルンペンもあるのであります。ここらに対するところの施策をとつていただかなければならないのじやないか。それにはただ現われて来たものだけを、県庁で書類において会議をしたつて、先ほど発表された四十五名というような人は、これは決して貧困者じやない。熱心な苦労をした人で、すいも甘いも知つている人なら、そこまでずつと掘り下げて行くだろうけれども、うん、そんなことがあつたかいな、というような会合に終るとしか私には思えない。一体立志伝中の、貧困からたたき上げた人がこの中にどのくらいあるか。こういう人がおれば、こんな問題は起らないと思う。将来地方の機構において、人的構成になくとも、山形県としてはただちにこういうようなものを追加して、実態を把握するというような御意思があるかどうか。ここらにおいて実態を把握しなければわかるものではありません。この点はいかがでございますか。
○梅津証人 ただいま御指摘のように、どうしても役所の仕事は、今までは問題が現われてからこれをつかみまして対策を講ずるというふうな、非常に欠陷があつたかと思います。これを事前に予防的に察知しましたり、予防的に措置するということが、私は最も重要に考えるのでありまして、今後私どもはその面に何とか努力を傾けて参りたいと思います。青少年問題協議会等も、先ほどいろいろ偉い人だけのあれを申し上げましたが、幹事等には実際に各方面で仕事に携わつております人たちが多数おりますので、こういう人たちを動員いたしましてやりたいと思いますし、来年度も相当程度予算を県費としましておもらいするようになつております。非常に問題が広汎でありまして、なかなか私どもといたしましては困難をきわめておりますので、各方面の御意見をお伺いいたして参りたいと考えております。
○田渕委員 よくわかりました。ぜひそういうぐあいにして、まず恵まれない家庭の実態を把握するということについて大いに御熱意を発揮されまして、そういうふうなぐあいに進んでいただくことが私は必要だと思う。たとえばわれわれが旅行いたしましても、東京を去りまして、栃木県宇都宮あるいは白河を過ぎ、福島を過ぎて、山形県へ入つて、あの家の建ちぐあいを見ておりますと、米沢にしろ、山形にしろ、数回の火災その他いろいろあるのでありましようが、同僚志田議員からいろいろ山形県のためにはずかしいというお話もあつたが、私はそうではないと思う。昔は山形県には上杉公というりつぱな人がおられて、上杉教育ということをされたのがあんなになつて来たのだと思う。ことにあの当時華美に流れないようにというので、もんぺを創始したと私は伺つている。これは戰時中ほとんど全国民がしたのでありますが、最も物資の少いときに、この貧しい雪国で生活を向上するのにはこういうものがいいのだということで、上杉公が編み出されたもんぺだと伺つておる。われわれが行きまして宿屋に入りましても、あの女中のしとやかさ、あるいはまたまじめさをくんでおつたのであります。こういうようなところからどうしてこんなことができて来るかというようなことを考えるときに、当時の上杉公の政治とは違つて、今日依然として県庁政治というものは机の上でやつている。先ほど同僚議員志田君も言つているように、まつたくメンバーはこの通りのメンバーで、実態を把握していない、机上の空論にすぎないものしかやつていない。こういうような点において、上杉政治というものは、夜陰ひそかに家庭を見舞われて、油をたいておる人、お燈明で働いておる人たちの家庭の何を聞いてまわつて、夫婦げんかは起きていはせぬか、あるいはどういう生活かということを聞いて歩いた。こういう実情を把握する政治があつたからこれだけできたのだ。あれだけ上杉さんという人の名前が残つたのだと私は思うのです。今日われわれは山形県だけ指摘するのではありませんが、実際官庁側の取扱い、官庁側の政治というものは、机の前に腰をかけて、細い指先がタバコで茶色に焦げたようなのが往々にして政治をしている。よけいなことさえしなければいいというわけだ。こんな政治を直すようなぐあいにわれわれ政治家としても指導して行かなければならないと思うのですが、ただ政治が形式に流れ、書類によつてやつている結果こういう問題が起きて来た。いわゆる声なき声を聞くことができなかつた。こういうようなことも御参考に申し上げまして、なるべくかかる不祥事が独立後の日本に一件でも少くなるように、ことに最も多いと指摘された山形県において、かつての上杉政治というものなどを大いに研究されていることと思いますけれども、実質政治、生活と直結するような政治、あるいはこういう困つたことが起らないように、事前に声なき声を聞くような点に施策を研究されんことを私は要望しておきます。
○高木(松)委員 先ほどから証人の御証言で、私どもが考えておつたことが全部明らかになると思つて期待しておつたところが、比較的重要な問題が残されておるのでお尋ねしたい。証人は山形県の出身ですか。
○梅津証人 山形県の出身であります。
○高木(松)委員 山形県の出身であれば、民生部長も勤め、経済部長も勤めておるのですから、当然わからなければならぬ一つの問題が落ちておると私は思う。私は人身売買の一番多い県は、承るところによると山形県だということを承知しております。むろん山形県以下の経済力しか持たない県は方方にありますけれども、他の県と比較して山形県が人身売買の行われておる率が多いということは、昔から山形県は人身を売買する風習があつて、今日でもなおかつその風習が残つておる。その点に着眼して施策を行わなければ、とうてい人身売買の禍根を断つことはできないと私は考えておるが、証人はどうお思いになりますか。
○梅津証人 ただいま御指摘のような考え方も、一つの原因として存在しておることを私も認めております。
○高木(松)委員 私自身は、今証人が一つの原因と言われるが、それよりか私は重大なる原因として取上げられて、これに対する啓蒙運動、これに対する施策を望みたい。同じ貧困者であつても、子供を売るというようなことは容易にできない。ところが長い間の習慣で、あえて子供を売ることを罪であると深く考えない人たちの思想が、山形県に特に厚く流れておるのじやないかと考えておるのだが、もしそういう実情がありとすれば、その禍根を断つ施策をしなければならぬのでありますから、今私が申し上げたことは重大なる原因と考える。ゆえにこれに向つて禍根を断つ方法をとるという証言をせられることによつてのみ、あなたに山形県の民生事務をまかしておくことができるということになるのだが、この点についてどうお考えですか。
○梅津証人 一つの原因と申し上げましたが、私山形県人なるがゆえに、そういう点をあるいは他県の方より指摘されるほど痛切に感じていなかつたように思うのです。しかしながらこの問題は、もつぱら啓蒙教育、あるいは青少年教育の部に入ると思いますが、これらの機関と提携いたしまして、一つの大きな運動としてやつて参りたいと思つております。
○高木(松)委員 証人はこの委員会においても大いに自己批判をされたでしよう。できるだけこういう新憲法下で人権を尊重しなければならぬときに、幼い子供たちの売買等は根絶せしめるように、あらゆる角度から努力されんことを特に希望して私の質問を終ります。
○内藤委員長 他に御発言がなければ、梅津証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労でありました。 次回は明四日午前十時より開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時九分散会