厚生委員会 第23号
- 発言数
- 63 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1952/04/17
会議録
○大石委員長 これより会議を開きます。優生保護法の一部を改正する法律案及び医療法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑を順次許可いたしたいと存じます。苅田アサノ君。
○苅田委員 簡単に一、二の点につきまして、質問いたしたいと思います。最初に優生保護法の十二條の点です。これは改正された法律案についての質問ではないのでありますけれども、この際政府の方にお聞きした方がよろしいかと思いますが、十二條の「都道府県の区域を単位として設立せられた社団法人たる医師会の指定する医師」ということになつておるわけでありますが、「医師会の指定する医師」と言いますその資格等につきまして少しお伺いしたいと思うのであります。
○山口(正)政府委員 ただいまお尋ねの点についての、資格基準につきましては、日本医師会の方で基準をおつくりいただいて、そうして都道府県の医師会に流す、それで選定をしていただいております。別に私どもの方で基準をつくつて、都道府県に指示するということはいたしておりません。
○苅田委員 それはどちらからお伺いしてもいいわけですが、現在実施されておるものにつきましては、政府の方としても御存じだと思う。なぜかと思しますと、いなかなどにおきまして、近所に指定医がなくて困つておられる。そこで、もう少し簡単にして、よけいつくつていただきたいという声を耳にしておりますから、これにつきまして、どういうふうな基準があるかということをお伺いしたかつたわけであります。そういう点につきまして、参議院の提案者の方でおわかりでございましたら、どちらからでもけつこうでございますが、ちよつとお伺いしたいと思います。
○谷口参議院議員 お答え申し上げます。指定医は、ただいま公衆衛生局長かお話のような径路でやつておりますか、実際におきましては都道府県の医師会の役員と、それに各地に母性保護協会の支部というのがございまして、その支部の役員が一緒になつて、指定医を希望された医者の中から指定をしておる。その場合に、大体基準をこしらりえておりますけれども、ただいま仰せになられましたような、その地方で医者の少いところ、指定医の少いところには、やはり幾らか程度をゆるめまして指定をしておるような状況で、大体ただいまのところ全体で二千七、八百の指定医がありまするので、かなり行きわたつていると思うのであります。しかし、ひどく悪いところには、志望さえすれば審査の上に指定するここになつております。
○苅田委員 次に二十三條の点ですが「この法律による優生保護相談所でなければ、その名称中に、優生保護相談所という文字又はこれに類似する文字を用いてはならない」という、これは新たに改正される部分でございますが、「これに類似する文字」ということは、どういうことになりますでしようか。これをもう少し詳細に御説明願いたい。
○谷口参議院議員 前の場合には「優生結婚相談所」という名前にいたしておりましたのを、今度「優生保護相談所」とかえまして、以前はその名称のみの独占をしておつたのでありますが、今回類似の名称までもいかぬということにいたしました理由は、実は優生保護相談所という名前にしようか、もつとわかりやすく受胎調節相談所がよかろうとか、あるいは家庭計画相談所という名前がよかろうという話も出たのでございますが、やはり優生という面もとらなければならぬから、それで優生保護相談所という名前がよかろうということにしたのであります。しかし、かなり受胎調節とか、あるいは家庭計画とかいう面で、名前が出て来ると思いますので、そういうような類似の名前を禁止するために「類似」という言葉までも広げておるような次第であります。
○苅田委員 これはいなかなんかでは、薬局などにおきまして、そういう避妊具なんかを売つておりますところで、避妊具の使用法だとか、そういうふうなことも書きまして指導をしており、またそういうふうな類似の表示をしておるところがあるわけなんでありますが、今度の改正によりますと、そういうことも禁止されるのじやないかと思うのであります。そういたしますと、特に農村あたりでは、受胎調節は一番必要としておるわけなんで、そういうところに—もちろん保健所の指導員あたりが非常によくまわつていただければ、それに越したことはないのでありますけれども、現状ではそれほどまでは手の届きかねるところができるのじやないかと思つて、そういう点では、いなかで薬局あたりの看板を掲げておるところで、ついでにそういうふうなことまでも——もちろん実施指導というようなところまで来れば、これは行き過ぎで禁止しなければいけないのでありますけれども、やつているところを見るのですが、それができなくなるということで、今政府の方で行われておる受胎調節の促進の運動を多少阻害する向きが出て来はしないかどいう点もあるのでありますが、この点につきまして、政府当局からの御意見をお聞きしてみたいと思うのであります。
○山口(正)政府委員 ただいまお尋ねの名称の点でございますが、これはただいま谷口先生からもお話がございました。苅田委員の御質問の薬局の点でございますが、これは昨年の十月閣議了解事項として、母性保護の立場から、受胎調節を積極的に普及して行くということを政府の施策として取上げて先般御可決いただきました二十七年度予算の中に、二千二百万円余りこれに要します費用が計上してございます。それでそういう問題につきまして、民間の方々、学識経験者の方々、專門家の方々にお集まりいただきまして、いろいろ御意見を伺いましたきに、ただいまお話のように、薬局で避妊器具あるいは避妊薬品を販売するときに、ただぽつと渡すというだけでなしに、渡す際に十分説明をしてやれるようにした方がいいのではないかという意見がありましたが、私はそういう線では薬剤士の方に協力してもらいたいというように考えております。しかしながら、ともしますと、それが行き過ぎになりまして、看板をかけ、あるいは店頭に別室を設けるというようなことを考えられやすいのでございますが、それはただいま苅田委員からも行き過ぎであるというお話がございました。そういう線まで出てもらつては困るというふうに、現実の面に注意しながら今後進めて行きたいと考えておる次第であります。その際に看板をかけますと、どうしてもそこで何か特別なことをするというふうに考えられますので、私どもとしましては、薬局に看板をかけることはしないようにしてもらいたい、そういう考えで進んでおる次第であります。ただ、農村地区において、そういうことが非常に要求されておりますのに、それが現在行われておらないという点につきましては、今回御可決いたしました予算の中にも、実際優生保護相談所から出て行つて指導する費用を盛り込んで、そうして今まで足りなかつたところへ手を延ばして行くという方向で解決して行きたいと考えております。
○苅田委員 今後どしどしそういうような予算を使つて、おいおいには指導員等もふえて行くことと思うのでありますが、それがすぐ充当されることは、これはだれが考えても不可能なんです。たとえば薬局なんかに受胎調節の御相談にも応じますというような、表示といわなくても、そういうポスターのようなものをかける、これも禁止の事項に触れることになりましようかどうか、その点もお聞きしておきたいと思います。
○谷口参議院議員 ただいまの薬局に受胎調節の相談に応じますというようなものも、提案者としてはやつてもらいたくないのであります。なぜかと申しますと、御承知のように、薬局は薬品並びに器具の販売をするところでありますから、それは薬品をこういうふうに用いるとかいうように、口頭で説明する程度にやつてもらいたいので、やはり実地指導となりますと、今回は特に政府でも各保健所に優生保護相談所をつくりますし、その上に私ども参議院においては、要望事項として申し出ておるのでございますが、各指定医はやはり優生保護相談所をつくるようにということを言つておりますために、優生保護相談所は非常に数がふえますし、その上になお助産婦、保健婦、看護婦に厚生大臣が基準を定めた講習をやらせましてそうして府県の知事がそれらの方々に認可をいたしまして、そういう方が指導に当ることになつておりますから、今後はかなり徹底するだろうと思いますので、薬局の方においては、ただ口頭で説明する程度でよくはないか。これが先刻も局長からお話のように、あるいは相談室をつくつたり何かしたりすると、どうしても行き過ぎる点があつて、不十分なる学識で不十分なる経験でそれを指導すれば、かえつて効果は上らぬだろうと思いますので、やはり今回できる指導員によつて指導させた方がよいと思うてこういうふうに改正いたした次第であります。 〔委員長退席、青柳委員長代理着席〕
○苅田委員 私の御質問しましたのも、今谷口議員からいろいろ御説明のあつた範囲のことなんです。最初から、実地指導が行き過ぎだということは言つておるわけなんです。ただ何もそういうたよりけのない農山村なんかで、子供はどんどんできるけれども、どうしたらよいかという人たちが、政府のそういういろいろな設備を十分にやつてくださる間に、それを買いつけている手近な薬局に行つて、何かいい方法はないだろうかといつて、避妊具を渡しても、実地指導はお医者さんのところでやつてもらえということになると思うのですが、そういう手がかりをつけるような広告—結局これは器具の広告だけになると思うのでありますけれども、それを広告するような場合を言つているわけなんです。そのときにこの事項と抵触するようなことが起きはしないかと思つて、私はお聞きしているわけなんです。そうしますと、あなたの方では、そういう場合、多少とも啓蒙活動をすることは、お認めになつていらつしやるわけなんで、どの程度の表示であればかまわないかということの、その限界がややこしくなると思うから、その点をお聞きしているわけなんです。もう少し具体的な御説明が願えれば、何も私は薬局にその指導をさせろということを言つているわけではない、そういう場合のことをお尋ねしておるので、その点お答え願いたいと思います。
○谷口参議院議員 ただいまのどの程度ぐらいはよかろうかというお尋ねでございますが、やはり薬局の本質に従いまして、たとえば避妊器具がありますとかいうような程度ならば、よくはないかと思います。
○青柳委員長代理 それでは次に丸山委員。
○丸山委員 ただいま苅田委員から御質問になりましたことと、多少重複もいたしますが、なおこの点、将来問題になると悪いと考えますので、念のためにもう一ぺんお伺いします。 第十五條の「受胎調節の実地指導」という言葉の範囲は、どこまでが実地指導であるかということなんです。この範囲が非常に不明確でありますと、ただいま苅田委員の質問になつたようなことが、実は起るのであります。実地指導ということは、その本人に直接その使用器具をただ説明する、その本人にそこで説明するということも、やはり実地指導といえば言えるわけであります。ところが、もう少し厳格に言うと、実地指導という意味は、もつとずつと立ち入つたものだというふうに解釈すれば、それはできぬこともない。その点、この実地指導という言葉の持つておる意味を、もう少し明確に御説明を願いたいと思います。 それから第二点は、第二項の「講習を終了した助産婦、保健婦又は看護婦とする。」—これは、いわゆる実地指導のできるものでありますが、この実地指導をやりました場合の費用は、どういうふうに支拂われるという考えであるか。これは公的な機関の保健所等がやります場合は、もちろん無料で指導が行われると思いますが、そうでない、いわゆる町で普通に開業しておる助産婦、あるいは普通の看護婦等がこれを行つた場合においては、その料金はどんなふうに支拂われる意向であるか、どんなふうにこれを取締られる意向であるかということを、あわせてお伺いしたい。なお、その他の点もありますが、これはまた次にやります。
○谷口参議院議員 ただいまの実地指導の件でございますが、私どもの考えておりますのは、たとえばペツサリーのようなものを使用する、その使用法を、これを実地に、あるいは中に挿入をしてみて、そうしてまた本人に、そいつを抜いてまた自分が入れてみるというようなことまでも実地に指導させる。そういうような関係からいたしまして、どうしてもこれはある技術、あるいはある程度の学問をしておらなければならぬと存じまして、特に医師以外の者には、一定の助産婦、看護婦、保健婦というような点にのみ限つたような次第でございます。 それから第二に、指導料をとるかどうするかというお尋ねでございますが、これはやはり保健所のものは別でございますが、助産婦が、名前はまだきまつておらぬのでございますけれども、たとえば優生保護指導員というような名前をつけてもらえるということになりましたら、その方が実地に指導する場合には、指導料を本人からもらつてもいいということにしたいと思つております。
○丸山委員 料金を本人からとつてもよろしい、こういうふうなお考えでございますが、そうしますと、経済的な負担がかかるわけです。金を拂つてまで助産婦にひとつ指導に来てくれというようなことを希望する人が、はたしてあるかないかということが、自然そこに問題になる。どつちかというと、これはこの法律の目的から考えましても、また国家的の要請から考えてみても、積極的に、進んでそれを教えてやろう、指導してやろうというふうな意欲が働かないと、この法律は実は活用できないのじやないか。しかし、全然無料でこれをやるということも考えられませんので、何か国の予算あるいは保健所の予算等をもつて、私の考えておることは、町に普通に開業しておるような助産婦、あるいは看護婦、あるいは保健婦のような者で、市井におる人であつても、これを公の使命でひとつやらせるというふうに使う。つまり保健所の職員でないものを使う。その場合には、公の費用、つまり保健所の費用をもつて、その人に一日幾らというふうな給料を拂つて、積極的にこれをやらせるというふうな御意向があるかないか、私の聞くのはその点です。
○谷口参議院議員 ただいまのお話のように、実は参議院におきましても、これに要望事項として出しておるのでございます。できれば、指導料はむろんのこと、生活困窮者などには、無料あるいは半額ぐらいで支給するように国で補助をしてもらいたい。国で補助をしていただいて指導員にも、あるいは手数料か俸給かを出していただくとか、または薬品、器具などもやれるということにならなければ、実際に徹底はできぬだろうと思つておりますので、ぜひそうしていただきたいと思つております。ただ先刻もお話のように、今年度のこの方面に使われる予算が、わずか二千二百万円そこそこの金でございますので、ただいまのところは、まだ指導員にまではいろいろの費用が出ぬというような状況にあるのですが、ぜひひとつこの次には十分費用が出ますように、皆さん方にお力添えを願いたいと思つておるのでございます。
○丸山委員 そうしますと、十五條につきましては、実地指導というのは、器具等をその本人について、直接その局部に使うことを、実際にその人に当つてやるというふうな意味であるというように御答弁がありましたのですが、そうしますと、先ほど苅田委員が特に御心配になつておりましたような、器具の販売者が、その使用法を説明し、またはある程度そのものを販売しておることを公示するような形をとつてもさしつかえない、こういうふうに了解してよろしゆうございますか。
○谷口参議院議員 けつこうでございます。
○丸山委員 次に第十四條の四号でございますが、これは、妊娠の継続または分娩が、身体的または経済的理由により、母体の健康を著しく害するおそれのあるものは、従来は民生委員の証明書が必要であつた。それが今度は削除せられて、指定医の認定でこれが行われることになる。これは、医者が本人の経済的理由によりということを認定しますのには、相当の困難があると思います。従つて、経済的理由により母体の健康を著しく害するということの認定が誤つておるというような問題が、必ず起る危険性がある。その場合に、医者が責任を問われては困るのであります。これをどういうふうに、その程度を、医者がどんなふうな能力でこれをやるものであるか、そういう問題が起つた場合には、どういうふうに御処理なさる御意向であるか、その点を明確にしておいていただきたいと思います。
○中原参議院法制局参事 ただいま御質問がありました経済的理由による場合の判定の困難さから、従前は民生委員の意見書をつけることにしておつたのでございます。これは、もつぱら指定医師側の責任を問われないための措置として考えられておつたと存じます。今度その意見書の提出義務を法律からはずしますと、ただいま御質問がございましたような、指定医師側の不安が生じて来るわけでありますから、結果的には、経済的理由の判定が困難なような事例につきましては、従前と同じように、民生委員なり福祉事務所なり、市町村長なりの証明書を、指定医師が要求するであろう。本人が持つて来なければ、どうも手術はできませんということになろうかと考えております。それは、もつぱら医師が手術をする前提として、本人に対して要求をすれば、目的は達せられるわけであります。そうすると、法律上の義務からはずした意味がないではないかという御議論が生じて参りますが、法律からとりましたのは、もし法律上、常に意見書なり証明書なりが必要であるということにいたしておきますと、たとえば隣に生活保護を受けておる人がおる、その人が手術をしてくれと言つて来た場合に、指定医師は、はつきりとその実情がわかつておるのであります。にもかかわらず、法律の上で証明書が必要であるということになつておるから、もう一度手数をふんでもらいたいという煩瑣な手続を、その結果が同一であるということがわかつておつても、しなければならないことになるのであります。はつきりわかつておるものについては、従前より手続が簡單になります。よくわからないものについては、事実上は何らかの証明書を要求しなければ、指定医師の責任をいつか問われる危険から免れることはできないということになると考えております。
○丸山委員 さようにいたしますと、不明確な場合には、何らかの証明書を医者が要求するのであろうという予想のもとにこれがつくられておる。それは要求してもしなくても、本人の覚悟でございますからいいと思いますが、そういうような場合の、その証明書に関する料金等は、どういうふうに考えておりますか。
○中原参議院法制局参事 これは福祉事務所なんかでは、従来はおそらく料金をとつておらなかつただろうと思いますが、今後も無料でそういう証明書は出してもらえるものと考えております。
○丸山委員 その次の五号の、暴行あるいは脅迫により、抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫された場合、これは医者の責任になつて参りますが、医者ははたして暴行によつて妊娠したものか、あるいは脅迫によつて妊娠したものか、その判定はできない。医者は、ただ本人の訴えを聞いて、それを信ずるよりほか道がないので、これを立証する道が、ほかに考えられないのです。それは暴行によつたものと考えておつたのが、将来もし暴行じやなかつたということが明らかになつた場合は当然医者は法律上責任を問われる。こういうことが起ると困りますが、その場合の責任は、どういうふうにお考えになつておりますか。
○中原参議院法制局参事 ただいま御指摘になりましたような事例が生じまして、暴行、脅迫の事実なくして妊娠した者を、この五号によつて中絶することは違法になります。従つて、本人の申出が虚偽であつた場合には、堕胎罪に問われるごとになります。
○丸山委員 堕胎罪に問われては困るのです。実は医者が進んでその暴行の事実を立証する方法は、本人の言を信ずるよりほかには、法的に権限がないのです。警察官であるとか、あるいはそういう職権を持つておる者であれば、暴行であつたかないかという事実を追究する権利を—その権利を行使するかしないかは別でありますが、持つております。医者というものは、他の証人を呼んで来るとか、他の方法で立証するとかいうことに関する権限がない。権限のない一方的な義務を持つておる者が、堕胎罪に問われては困る。その辺の調査は、どうなさいますか。
○中原参議院法制局参事 その問題は、先ほど申し上げた経済的理由による人工妊娠中絶の事例と同じような説明になるのでありますが、よくわかつておる場合はやれる、よくわからない場合はやれないということになるわけであります。ところが、現行法によりますと、よくわかつておつても、民生委員の意見書がいる、審査会の審査が必要だということになるわけであります。実際に強姦された人は、私は強姦されましたという証明書を書いてください。また審査会の審査を申請をする場合にも、私は強姦されましたと、もう一ぺん言わなければ中絶をしてやらないということは、法律としては、あまりにも冷酷であるというので、今回ははずしたわけであります。このために、全部の者が必ず救われるということは言われませんが、少くとも、現行法における場合よりかは、よくなるのであろうということが、言われるわけであります。
○青柳委員長代理 次に松谷君。
○松谷委員 十四條でございますが、指定医師を医師会は指定なさることになつております。この指定の標準は、一体どこにお置きになるおつもりでございましようか。
○谷口参議院議員 お答えいたします。ただいまのところでは、この指定の標準を、大体大学または大きな病院におきまして、二年以上産科婦人科の教室で勉強した者、そうして、なお診療所におきましては、簡単な手術、特に開腹手術くらいができるような設備を持つており、それからなお第三の條件として、これは非常にむずかしいのでありますけれども、まじめに仕事をして、報告なども完全にやつていただけるような方を、希望者の中から選定いたしまして、そうして指定をして行く。大体の標準は、その程度になつております。
○松谷委員 ただいまの御説明でございますと、ことに設備などの点も、指定の一つの基準になつておるようなお話でございますが、そういたしますと、指定される方の数が少くて、指定に漏れる方が相当あるのじやないかと思います。その場合に、はたしてすべてが指定医のところに参るということは考えられないので、指定医外のところに、相当相談があるものと考えなければならないと思います。この改正法律案を拝見してみますと、一方においては指定医を指定しながら、指定医外の医師が、そういう行為をなした場合に対するその責任と申しますか、処置と申しますか、それがはつきりしておらないようでございますが、この点はいかがなものでしようか。指定医ならざる者が、その行為をなした場合に対するその責任は、どうなるのでございましようか。
○谷口参議院議員 ただいま申しましたように、指定の基準がむずかしいために、同じ産婦人科の医者であつても、指定漏れになる者があるのではないかというお尋ねでございますが、これは母性保護の立場からいたしまして、やはり実際に技術、設備がない者に指定をいたしますと、そういう方が手術をすれば、かなり失敗をいたしましたり、障害を起したり、そういうようなことがありますために、特に指定医というのを選定をしておるのであります。それから指定医外の方は、この法律で特に許されておりますところの人工妊娠中絶ということは、できぬことになつております。もしその人が医者であれば、特別の場合、非常な出血をいたしますとか、何か危険の症状があつて、どうしても人工妊娠中絶をしなければならぬという場合は、医者の医療行為としてすることはできるのですが、その他の場合には全部指定医のもとに来るようにということにいたしておるのでございます。なお、指定医の標準はこしらえておりますが、先刻も苅田委員のお尋ねがありましたときに申し上げましたように、どうしても、そういうふうな設備のないために、地方で指定医が十分できておらぬというようなところには、幾らかわくをゆるめまして、なるべく指定医をつくつておくという考えでございます。
○松谷委員 指定医の標準を、施設その他によつてはつきりさせていただくことは、これは当然なことで、ぜひそうなければ、安全な母体保護はなされないと思うのでございますが、ただその場合に、指定医でない者がなした行為に対する処置でございますね。それが、この法文の上では全然出ておりませんので、それならば指定医でない者のところにも相当そうした問題が起つて来ると思いますが、それを今谷口先生のおつしやるように、なるべく設備のある安全なところで妊娠中絶をさせなければならない。その理想をより完全に行いますために、指定医でない者はそういう行為をなすことができないところまで進めて行く。—その一つの処置というものが、何かここには欠けているような気がするのですが、その点は、具体的な場合にどういうふうになさるおつもりでございましようか。
○中原参議院法制局参事 人工妊娠中絶につきましては、刑法におきまして、堕胎の罪というのがございます。その二百十四條には「醫師、産婆、薬剤師又ハ薬種商婦女ノ嘱託ヲ受ケ又ハ其承諾ヲ得テ堕胎セシメタルトキハ三月以上五年以下ノ懲役ニ虚ス因テ婦女ヲ死傷二致シタルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス」という條文がございまして、人工妊娠中絶はできないことになつておるのであります。ただ、先ほど谷口議員から申されましたように、緊急避難行為としてだけはできる。刑法によりまして、一応人工妊娠中絶につきましては、大きなせきが設けてあるわけであります。この優生保護法は、そのうちで母性保護の立場から必要な部分だけ、そのせきをはずしたわけであります。そうしてそのせきをはずして通れる人は、指定医だけであるということにいたしたのであります。従いまして、指定医師以外の者がいたしますと、緊急避難行為でない限りは、この刑法の二百十四條によつて、業務上堕胎罪に問われるということになりますので、この優生保護法自体に、指定医師以外の者の行為についての処罰規定を置く必要はない、置かなくても、刑法によつてすでに取締りがなされておるということになるのでございます。
○松谷委員 刑法の法の併用ということで、法律的には、もちろん、当然今のお説のように、医師側の方の意識は、それで十分できると思うのでございますけれども、しかし、それを受けようとする者の場合、すべての女性がそこまで法律的にはつきりと詳しく知るということは、相当困難なことだと思います。ことに、今度の法律の改正などが、新聞でいろいろ報道されますような場合に、この法案の改正の要点だけが出まして、そういう問題が取扱われていないのでございます。この改正を実施するにあたつて、やはり一つの啓蒙的な面を、法案にないだけに、厚生省その他のあるいは優生保護相談所でございますか、これを相当活溌にしなければならないのではないかと思うのでございますが、そういう点について、特に優生保護相談所などの一つの項目として、そういうことをして行こうというお考えを持つておられるかどうか。持つていなければ、それはぜひ持つていただきたいと希望をいたしておきます。 〔青柳委員長代理退席、委員長着席〕 それから今度の改正で、大分世間では、堕胎をしてもいいのだというふうな、むしろ誤認された空気も相当にあると思うのでございます。そういうものに対して、先ほども苅田委員から出ておつたようでありますが、受胎調節についての指導—堕胎ができるのだから、受胎調節に対する意識がだんだん薄れて来るのではないかという心配さえ、一部にはあるようでございます。先ほどの厚生省の方の御説明でも、受胎調節は、やはり従来通り徹底的になさるということでございますが、今度は優生保護相談所がこれを扱うようになると思いますが、その場合に、優生保護相談所が、伺うところによりますと、受胎調節の徹底した訓練も受けてないというような場合もございますときに、より一層の徹底した指導がなければならないと思います。これに対して厚生省として何か特別な腹案なり、あるいは今おやりになりつつあるようなものがございましようか。
○谷口参議院議員 ただいまのお尋ねなり御希望の第一点でございますが、先ほども申し上げましたように、昨年受胎調節の問題が大きく取上げられるようになりました際に、優生保護法によりまして、母性保護の立場から人工妊娠中絶を認めておるのでございますが、しかし、人工妊娠中絶をいたしますと、ある程度の障害が母体に起る場合がございますので、私どもとしましては、人工妊娠中絶をしなければならないような人たちは、妊娠する前に受胎調節をやるのがいいということと、人工妊娠中絶に伴う障害などを強調しまして、受胎調節を強く指導して行きたい、そういうふうに考えておるのでありますが、そういう場合に受胎調節をどういうところで相談を受けたらいいかというふうなこと、それから万一人工妊娠中絶をしなければならぬ場合には、指定医のところでなくては安全にできないのだというふうなことを、今度の受胎調節の仕事にひつかけまして、優生保護相談所などで、それを一般の人たちに教育して、あるいは保健婦とか、あるいは医療社会事業というようないわゆるケース・ワーカーの人たちにそういうことを強く普及してもらう、そういうふうに考えております。
○松谷委員 質問が前後して恐れ入りますが、指定医の問題について、いま一つお伺いいたします。指定医であるかないかということの表示でございますが、それはどういうふうにしてなさるのでございましようか。
○谷口参議院議員 ただいま、指定医は一定の門標を與えております。小さい門標でありまして、幅が三十五ミリくらい、長さが百五ミリくらいの小さい札でございますが、これを門の入口のところに、みなつけておるようでございます。
○松谷委員 標識がそういうように三十五ミリと百五ミリというようなものでは、一々お医者の門を探して歩かなければわかりません。あそこは指定医だということが伝わりますれば、それは早いかもしれませんが、やはり指定医だということを、何々博士というふうな肩書きを書かれるのと同じように、これは指定医か指定医でないかということをはつきりさせる必要があるのではないかと思うのでございますが、これはお医者さんの立場から、いかがでございますか。
○谷口参議院議員 あまり門札の大きいのもどうかと思いまして、できるだけ品よく小さくしてできておるようなわけでございますが、しかし保健所その他におきまして、指定医はどこそこというふうなことを全部知らせておりますし、先刻公衆衛生局長からお話があつたように、いろいろな会合などにおきましても、どこそこに指定医がある—話がもどりますけれども、人工妊娠中絶というのはあとの話であつて、まず受胎調節をやれ、受胎調節をやつても失敗した場合には人工妊娠中絶をやる。それにはどういうところに指定医があるというふうなことを、いつも言つて知らせてはおるのであります。
○大石委員長 他に両案に対する御質疑はございませんか。—なければお諮りいたします。両案についての質疑はいずれも終了したものと認めるに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大石委員長 御異議ないようでありますので、両案に対する質疑はいずれも終了したものと認めます。 次に、優生保護法の一部を改正する法律案及び医療法の一部を改正する法律案を一括して討論に付します。松谷天光光君。
○松谷委員 私は、優生保護法の一部を改正する法律案について、一応の討論を試みたいと思うのでございます。 この改正案は、私どもがかねてから理想としておりましたところの、日本の文化国家としての将来を築いて行かなければならない場合の、重大な問題である人口問題の根源をなすものでございまして、それが理想に一歩近づきつつあるという点につきましては、非常に賛意を表するものでございますが、また一面、この改正案が通過するということによりましてまだ人口問題その他すべての点について一歩々々と前進しつつある過渡期にある日本の現状といたしまして、この法案の真の趣旨がはき違えられ、誤認されて、これが大きな弊害を来すというような点もなきにしもあらずだと思うのでございます。ことに、問題になるかと思います指定医や、あるいは指定医でない者の医師としての立場の責任、また誤認いたしました女性自身のその浮薄な行動から、母体を守らなければならないためにできようとするこの法案が、かえつて逆に母体を傷つけるようなことがあつてはならないと考えますので、実施いたします上においては、この点を特に厚生当局は十二分の考慮を拂つて、常に親切な指導をはかつていただかなければならないと思うのでございます。ことに、先ほど来各位から問題になつておりました受胎調節に対する当局のより一層熱心な指導と計画というものが伴つて、初めてこの法律が実を結ぶことのできるものではないかと思いまするので、そうした点につきましてひとつ十分な御熱意の上に、本法案の実施をはかつて行かなければならない。厚生省においては、特にその点を御考慮願いたいという希望をいたしたいのでございます。この法案に対しまして賛成の意を表するものでございます。 なお医療法の一部改正につきましても、これはなお部門が広まることでございまして、私ども賛成の意を表するものでございます。
○大石委員長 岡良一君。
○岡(良)委員 私は日本社会党の立場から、ただいま御提出の医療法の一部を改正する法律案並びに優生保護法の一部を改正する法律案には、次のような希望を付して賛意を表したいと思います。 医療法の一部を改正する法律案でありまするが、これは当初内外科十科であつた診療科名に最近神経科等五科名が追加され、いままたさらに気管食道科に関する新科名が附加されるのであります。しかしながら、今日の医療のあり方から見まして、常に專門科名が解剖学に準拠しておる。であるから、当初内科外科であつたものが、神経科となり、あるいは肛門病科までできて来るというように、解剖学に準拠しているというような專門科名にとどまるということでは、近代医学の水準に対しては、マツチしがたい面がすでに出て来ておるのではないかと思うのであります。そういう観点からいたしましてたとえば骨の結核も神経の結核も、あるいは軟部の結核も含めた総合的な結核に対するところの機関なり、あるいは癌腫のようなものに対しましても同様でありまするが、そういう生物学的なあるいは病理学的な專門科名と申しますか、総合的な診療機関というものが当然設置されねばならない。もちろん、多少はできておりますが、まだ研究所というふうな段階にとどまつておることは、診療そのものの内容の向上においても大きな抵抗を示しておるのみならず、医学そのものの進歩発達にも、やはりこれはマイナスになつておるというふうな感じがいたします。こういう点につきましては、今後厚生省といたしましても—これは專門科名の問題というよりも、機関の問題でありますが、少くとも国の責任において総合的に、しかもその立脚点は、生物学なりあるいは病理学の立場における総合的な診療機関という方向に大きく一歩を前進せしめることが、今後の医学の発展向上のためにも、国民医療内容の進歩のためにも必要であろうと思いまするので、そういう点について、十分なる御留意と、また実施方を要望いたしたいと思います。 それから、優生保護法の一部を改正する法律案でありますが、優生保護法の一部を改正する法律案は、今や人口問題は、繰返し私どもが委員会で申し述べまするごとく、法律を改正するという程度の段階ではないと思うのであります。むしろ国がもつと思い切つた予算措置を講じ、国の持つておるあらゆる機能を動員し、また民間におけるこうした団体をも動員し、タイアツプいたしまして強力に具体的に実践的に問題を解決するという段階に来ておるということについて、この法律の改正は、われわれは賛意を表しまするが、さらに一段と厚生省当局の御奮発を願いたいと思うのであります。 御存じのように、戦後における人口増加というものが、復員等を含む特殊なる事情を抜きといたしましても、年々歳々百五十万なり百八十万の人口増を来しており、その結果として、十年もたてば一億万人を越える。この狭い極東の四つの島に、一億万人の人間が押し合い、へし合いしなければならない。同様な自然的なあるいは立地的な條件を持つておるニユージーランドが、一平方キロメートルに六人しかいない、スエーデンが十六人である、日本は二百四十人を越えておる、こういうことでは、とうてい日本の独立後における自立というものは、あらゆる面において困難であろうと思います。現に昭和初年に、十年間に人口が一千万ふえた。その結果として、当時すでに日本の指導者が、この人口の増加から来るところの圧迫感を明言しつつ日本を侵略戦争に誘い込んだことは、これまた皆様御存じの通りでありまして、日本が平和国家としての立場を守るという大きな観点からも、国際的に注目を浴びている日本の人口問題に対しては、もつと積極的な思い切つた手を打つ必要があろうと思います。あるいは国民生活の水準という点から申しましても、すでに経済安定本部が一昨年の五月に発表しているあの経済白書によりましても、日本の生活水準は、生産の増加とともに回復しつつあるが、しかし、その回復のテンポが非常におそい。なぜおそいかといえば、それは日本における人口の盲目的な増加による圧迫であるということを、政府当局がはつきりと指摘しておるのであります。してみれば、国民生活の安定あるいは社会保障の推進という観点からいたしましても、人口問題はゆるがせにし得ない問題であろうと思います。特にまた、独立後日本が経済の自立をしなければならないところへ、今日のような日本の人口増加の趨勢をこのままに放置いたしておきますると、昭和二十五年には大体三千九百万石の主要食糧の輸入をしなければならない。その費用は、おそらく推定し得るその当時の輸入総額の三割五分である。日本が多くの優良な生産資材を輸入し、それを加工し、その売掛け代金をもつてまた原料資源を購入しなければならないという、貿易の振興が日本の経済自立の最も大きな前提になつているときに、かくも大きなものが消費財の輸入に充てられなければならないということも、実にこの人口の盲目的な重圧ということが大きな原因になつていることを、われわれは考えなければならないのであります。 あるいはそのほかにも、年々子供が生れるということによつて、それに費されるところの労苦というものが、家庭婦人の文化的な水準を、ひいては家庭生活そのものの文化的水準を引きとどめおるということは、われわれ日常の体験に徴しても、これは当然言い得ることであつて、日本の婦人の文化的な解放という観点からも、人口問題は、もつと思い切つた手が必要であろうと思います。特に最近オーストラリアの労働党が指摘しておりまするが、日本の貿易がソーシヤル・ダンピングの形態を持つておるということについて、強い批判を浴びせております。これは一昨年のイギリス労働党大会においても、その決議がなされ、コロンボ大会においてもその決議がなされておりますが、これも、要はやはり人口の増加、しかもその農村における停滞、こうした産業予備軍が、日本における低賃金、長時間労働の源泉となつて、これがソーシヤル・ダンピングの大きな基盤をなしておることも、申し上げるまでもないのであります。 こういうふうな事情を考えまするときに、日本の人口問題に対する適切にして果敢な、かつ迅速なる解決というものは、日本が平和国家としての建前を維持する上においても、国民生活の安定をはかる上においても、また日本が貿易の上において外国の不信を呼ぶことなく、かくのごとき産業予備軍の発生を押しとどめる上においても、国民の文化的解放の上においても、その他日本の経済自立を促進する立場においても、あらゆる角度から、独立後においてわれわれ解決しなければならない最も重大な問題であろうと思うのでありまして、この点から申しまするときに、単に法律の上の技術的な部分的な修正をもつてすることは、群盲の象をなでるがごときそしりをも免れないと思うのであります。こういう観点において、問題は、先ほども申しましたように、決してこれは單に法律をいじくることでなく、政府がもつとこの問題の本質をはつきり把握して、積極的に勇断をもつて予算措置を講じ、日本の一切の保健所あるいは民間諸団体を動員いたしまして、資金資材等につきましても、やはりできるだけその需要者に対しては無償で交付する、あるいは国際的な連繋のもとに——国際的な団体もありますので、これらにも加盟いたしまして、国際的な協力をも求めながら、この人工妊娠中絶ではなく、受胎調整というものに今後の大きな目的を置いたところの人口抑制策というものを徹底的にとるということが、この問題の解決の大きな基本であろうと思います。 こういうような諸点について、十分なる御研究並びに——御研究は十分しておられるはずであるからしてもつと思い切つて厚生省当局としても、特に事務当局も発憤をせられて、大きく政府部内を動かして、この問題の実質的な解決をされんことを、この機会に心から希望いたしまして、本二案に対して賛意を表する次第であります。
○大石委員長 苅田アサノ君。
○苅田委員 優生保護法の一部改正につきまして、日本共産党といたしましては、根本的に申しますならば、人口問題の取扱い方に関しましては、私どもは政府の見解とは意見を異にしております。現在政府が再軍備予算の若干を削りましても、産兒制限または受胎調節に乗り出さなければならなくなつたということは、これは單に悪質の遺伝を残さない、あるいは暴行等の不幸な災害から婦人の妊娠を拒絶する権利を守るということだけではありませんで、これは明らかに経済的な理由に基いておるものであります。終戦後七年間にわたる占領下の自主性のない政治のもとで、重税、低賃金、高物価、こういうものが国民生活を非常に窮乏化しておることは、疑いない事実でありまして、ことに再軍備計画が公然化してからの平和産業の没落等によりまして、失業者が激増いたしまして、これによりまして相対的過剰人口が非常にふえておるわけであります。そこで、どうしても子供を育てる資力を持たない親たちに、出産制限をやらせなければならなくなつて来ておるのであります。日本の国民の多くは、子供を生み育てる権利さえ、だんだんと奪われて来ておる。私どもは、こういう人口問題の解決には、根本的には反対いたします。貧乏者の子だくさんということは、貧乏者に子供を生せないように、できた子供は育てないということではなくてもう少し生活水準を上げ、文化的、娯楽的な施設をするような方面でこそ、これは解決されなければならないと思います。しかしながら、こうした社会的な環境をつくることが、根本な問題ではありますけれども、しかし今日の現状では、こういうふうな日本の植民地化や、再軍備を肯定するような平和両條約を取結ぶ政府のもとでは、これはとうてい不可能なことであつて、根本的にいえば、まず第一番にこういう政府を倒して、自主的に平和産業を拡大し、積極的に人口問題を解決するような政府をつくることにあるのであります。しかし、それまでの過渡的な方法といたしまして、私たちは優生保護法によるこういう産兒制限とか受胎調節に対しましては、やむを得ないこととしてこれを承認するわけであります。そうした見解に立ちまして、今回の改正は、その手続の煩瑣を取除いたり、あるいは合理的に調整をはかるという趣旨が多少とも見られますので、目下の大衆の利益という点から、以上の意見を付しまして、私は今回の改正に賛同をいたすのでございます。 それから、医療法の一部改正に関しましては、これは取扱い上のことでございまして、そのまま賛成いたします。 それからこの際委員長にお願いしますが、この優生保護法の一部改正を機といたしまして私は、現在社会的な大きな問題になつております中学生、高等学生に頻発いたしますところの妊娠中絶の問題、あるいは混血の問題等に対しまして、厚生大臣に対する質問をいたしたいと要求いたしたのでありますが、大臣の御出席がございませんので、この後の機会におきまして大臣の出席を求めました上で、この問題について質問をしたいと思いますから、このことを委員長においておとりはからい願いたいと思います。この点をつけ加えておきます。
○大石委員長 福田昌子君。
○福田(昌)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、医療法の一部を敗走する法律案及び優生保護法の一部を改正する法律案について、両方とも全面的に賛意を表明いたします。ただ医療法の一部を改正する法律案につきまして、少しばかり希望を述べておきたいと存ずる次第でございます。 私がここに申し上げますことは、昨年四月、終戦後第三回の医学大会が東大で開かれましたときに述べられましたところの南原総長の祝辞の一部でございます。そのとき、当時の南原総長は、日本の医学が、敗戦後の今日、なお世界の医学の水準に負けない発展をもつて、医学大会が今日持たれることは非常に喜ばしい、しかし、日本のこの高い医学を持つている技術でありながら、国民大衆の生活に立つて日本の医学との関係を見れば、高い水準を持ちながら、他の文明諸国に比べて国民の壽命が短かいのは、何としたことであろう。また伝染病が減少したとはいえ、相かわらず多いということは、これまた何としたことであろう。また高い医学を持ちながら、この医学の恩恵を受け得ずして技術のらち外において壽命を縮めている国民が相当多数いるということは、これはどうしたことだろうというような質問を投げかけられた祝辞であつたことでございます。私どもは、確かに日本の高い医学ということにおきまして、諸外国に比べ一つの誇りを持つておりますが、しかしその高い医学を持ちながら、南原総長が言われたように、国民大衆に対する奉仕という点におきまして疑問を持ち、また欠けた点を持つておるということは、大いに反省しなければならないと思うのでございます。医療法の一部を改正されまして、新たに気管食道科が設けられましたことは、まつたく同慶にたえないことでございますが、それとともに、この南原総長の祝辞の精神を生かすような意味合いからいたしまして、日本の国民大衆にもつと普及するところの医学、また日本国民大衆の壽命を長くするところの医学、またいかなる貧困者に対しましても、日本の医学がすみずみまで恩恵を及ぼすような医療のあり方というようなものに対しまして、厚生当局は、これを機に大きな反省をお持ち願いたいと存ずる次第でございます。及ばずながら、私どももそういう方面に努力しなければなりませんが、厚生当局といたされましても、特にそういつた点に対して深い御配慮を賜わりたく、あわせてお願い申し上げる次第であります。 次に、優生保護法の一部を改正する法律案につきましては、まつたく私どもは全面的な賛意を表しておるわけでございますが、これについても、思い出しますのは、私どもが優生保護法というものを当初考えまして、そして国会のこの委員会の議題となりました昭和二十三年当時の空気でございます。私どもは、優生保護法を考えました当初におきまして、すでに今日この一部改正案として盛られております内容の全部を、当初の優生保護法の中に盛り上げたいということを考えておつたのでございますが、その当時におきましては、厚生委員会の委員の方々の優生保護法に対しまする御理解と、また日本に対する国際情勢、さらに日本の国内的な立場から、そういつた私どもが考えておりました優生保護法のこの改正案に盛つた意見というものが、皆さんの御賛同を得られなくて、通り得なかつた。そうして今この改正案を出されなければいけないような現段階の優生保護法として誕生を見たということを考えましてその当時の委員会の空気を反省して思い出してみる次第でございます。私どもはそういう意味合いにおきまして、こういうような改正案に盛られましたいろいろな條項というものは、当初からそうしなければならない、またそれが当然のことであるから賛意を表しておりましたことでございますから、いまさらこれに対しまして、その條文の内容につきまして一々意見を申し上げる何ものもありません、全面的に賛意を表するものであります。 ただこの優生保護法を国民大衆の中に誤りなく実施いたしますにつきまして、これまた二、三の希望を持つており、また私の希望いたしておりますことを、厚生当局におきましては第一に率先してやつていただきたいのでございます。と申しますのは、この優生保護法の改正案によりますと、先ほども委員の一、二の方から御指摘がありましたが、受胎調節に対しまして、大衆は、指導を受けることも受けるであろうが、それよりももつと人工妊娠中絶の方に走る気配が非常に多いことがあり得るのではないかという御質問でございました。確かに、今の国民大衆の考え方におきましては、そういう懸念も起り得るかと考えられるのでございます。従いまして、厚生当局におきましては、どうか人工妊娠中絶なるものが、いかに母体を障害するものであるか、また人工妊娠中絶後においては、いかにすぐまた妊娠するものであるかといつたような方面の御指導を、今後は大いに拍車をかけて御宣伝願いたいと思うのであります。先ほどの山口局長の御答弁によりまして、その御趣旨、御熱意のあることに対しまして、非常に敬意を表し、喜んでおる次第でございますが、その御趣旨を一層熱心に、また広く強く宣伝普及していただくようお願い申し上げたいのであります。 それと同時に、何と申しましても、この優生保護法の一部改正案として生れました條文の精神等を実施いたしますためには、これは一にかかつて予算的な問題にあるのでございます。どうか二十七年度のような二千二、三百万円というささいな費用でなく、今後は非常な英断をもつて飛躍的な予算をこの方面に御勘案願いまして、またこの大幅の予算を獲得できるように御盡力をいただきまして、この法案が国民大衆の中において、完全に間違いなく実施され、そして日本国民の素質的な優秀性の上から、また母性の保護の上から行けるように御配慮願いたいと思う次第でございます。 その次に第三点に、またあわせてお願い申し上げておきたいことは、大衆のやみ行為—受胎調節について、相当やみが行われておるという事実があります。このやみ行為というものは、まつたくのやみ行為であつて、これは堕胎罪に当然ひつかかるものである。堕胎罪を構成するものであるというところまでうがつたところの御指導と啓蒙を、厚生省当局にお願いしたいのであります。 そういつたことをあわせお願いいたしまして、私は本法案に全面的な賛成の意を表する次第であります。
○大石委員長 以上で討論は終局いたしました。 これより両案を一括して表決に付します。両案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔総員起立〕
○大石委員長 起立総員。よつて両案は原案の通り可決いたされました。 なお両案の委員会報告書に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者ふり〕
○大石委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
○大石委員長 次に新結核治療剤の件について、岡委員より発言を求められておりますので、これを許します。岡良一君。
○岡(良)委員 御出席の薬務局長並びに公衆衛生局長にも、あわせてお伺いいたしたいと思いますが、それは最近新聞紙をにぎわしております結核新薬、いわゆるイソニコチン酸ヒドラジツドについてであります。これは一部の新聞紙等においては、いろいろ厚生省の考え方というふうなものも伝えられておるようではありますが、私どもは責任ある、信憑性ある言明をまだ得ておりませんので、この機会に伺いたいと思うのであります。 御存じのように、わらをもつかみたいという立場におる患者でもありまするし、聞くところによれば、日本の有力製薬会社においても、相当競合があるということも聞きまするし、またひいては、そういう事態からして、やみブローカーの横行などということも懸念されるのでございますが、こういう事態におきまして、このイソニコチン酸ヒドラジツドについて、厚生省当局としては、どういうふうな取扱いを今日までいたされたか、また今後なされるかという点について、明確に責任のある御答弁を承りたいと思います。 要するに、具体的に申し上げますと、どういう根拠において新薬の規格基準を置かれることに決定されるのかという点、あるいはこの薬剤は、相当肝臓の脂肪変性等を惹起するという危険も伝えられておるのでありますが、毒性の検査あるいはその純度についての検索等について、何らか具体的な御用意があるのか、あるとすればどういうふうな機関、どういう方法においてその検査をなされるのか。特にまた、これを人体に応用いたします場合における臨床実験については、どういう構想で臨まれようとするのであるか。特にそういうようなわけで相当の日時を要します間に、製薬会社の競合あるいはやみブローカーの横行等によつて、せつかくのこの新薬が、また不祥なる出来事の原因とでもなろうものなら、たいへんでありますが、そういうことのないような何らか具体的な措置を講ぜられる御意思があるかどうか。あるとすれば、どういう方法でなされるのか。大体以上の四点について、厚生省当局の責任のある言明をいただきたいと思います。
○慶松政府委員 この新薬が新聞紙等に出ましたのは、二月の末でごく一部の新聞紙に出たのでありますが、それがさらに各日刊紙等に麗々しく報道されましたのは、三月の七日、八日ごろであつたと存じます。そこで、私どもといたしましては、この点を相当重要視いたしまして三月の十一日に、厚生省として新聞発表をいたしたのであります、その意味は、この新薬につきましては、いまだ何ら学問的な発表がないのであつて、ただ單に新聞のスクープによるものである。従つてこのものに対しての過信、あるいはその入手に狂奔されることについては、どうか愼重であつてほしいというような意味の新聞発表をいたしたのでございます。と同時に、これを厚生省としていかに取扱うかということにつきまして、関係局長間において、次官を中心といたしまして協議いたしました結果、三月二十七日に、このものに対しましての第一回の協議会をやつたのであります。すなわち、この品質に関しまして造詣の深い薬学者、あるいは結核に対しまする細菌学的基礎的な単音及び結核の臨床の大家、これらの人々に参集を求めまして、そうしてこの薬の化学的な基準あるいはこの薬を細菌学的にいかに取上げるか、あるいは毒性をいかにして見るか、さらにこれを臨床的に実験いたしますには、いかなる方法をもつて行うかということ等を検討いたしたのであります。すでに、その以前におきまして、厚生省国立衛生試験所におきまして、この薬の大体の基準をつくつたのでございます。と申しますわけは、この薬は、すでに御承知の通り、相当昔つくられたものでありまして、そのものの化学的な性質というものは、過去の文献その他によつてわかつておるものでありまするし、またその製法から申しましても、大体二つの製法しかありません。一つの方法、すなわち簡単に申しますと—多少学問的になりますが、石炭タールの分溜してありますところのピリヂンというものを原料といたしますときは比較的純粋なものがとれるということが字間的にわかつておりますので、その原料の点につきましても、検討の結果、大体の基準をつくつて、これたその機会に学者たちの検討にまかせたのであります。その際に、このものの毒性試験あるいは細菌学的な試験、あるいは臨床試験をいかなる方法でやるかということは、厚生省にすでに設置されておりますところの結核療法研究協議会なるものにこれをまかせるということになつたのでございます。なお、化学的ないしは薬学的な点につきましては、それらの学者の協力を別途求めるということにいたしたのであります。次いで四月四日に大阪におきまして開かれました結核学会を機会といたしまして、その際に、ただいま申しました結核療法研究協議会が開催されまして、そこで、いかなる病院においてこの実験を行うか、あるいはいかなる方法によつて毒性試験あるいは細菌単的な試験を行うか、さらにいかなる人々にこれを担当してもらうかということ等が検討されまして、それが新聞に発表された次第でございます。さらに一方この製造に関しましては、いまだ厚生省に対しましてこの結核の新薬の製造に関して出願しておりますのは一社しかございませんが、しかしながら、すでに十数社がこの計画を立てておる。また事実、試験的にその製造をやつておるのでございます。そこで、一方私どもといたしましては、これらの製造会社に対しまして、一つの警告を発したのでございます。それが私の記憶では四月の十日過ぎだつたと思つておりますが、それは、この結核に対する効果について、まだ十分にわかつていない、従つて、その点についても十分愼重なる態度をもつてその製造を企画しなければならないということ、かつその原料に関しましては、先ほど申しました原料は、国産のたとえば製鉄会社等で産出されます原料で十分間に合うがゆえに、この原料の買いあさりによつてその価格をつり上げることを、極度に警戒すべきであるということ、あるいはさらに、このものは外国においてもつくられておるがゆえに、将来外国においてこのものが認められた際には、輸入ということも考えられる、従つて、その生産についても十分考慮すべきであるということ、また一方、もしもこの薬が結核に十分使い得るということがはつきりしたといたしましても、その需要量というものは、全体から見まして大体私どもの考えでは六千キロないし七千キロぐらいであると思つております。そこで非常にたくさんの会社がこれをつくるということは、結局費用の点においてもむだになるということ等の警告を発したのであります。なお一方、試験のために薬をつくりますことは、これはひとり結核の薬のみならず、いろいろな薬につきまして、試験のために研究の結果できました薬を試験的につくることは、各製薬会社で、これは世界的に申しまして、行つておる次第でございますが、しかし、それはいまだ薬として認められる以前のものであります。そこでこれをどう取扱うかということにつきましては、すでに私どもの方で検討いたしまして、通牒が出してあるのであります。それは結核新薬に限らず、一般的に出してあるのでございますが、それには、試験的に薬を製造いたしまして、そうしてその試験例を求めるために医者あるいは病院等にそれを送る際には、記録をはつきりしておいて、そうしてまた、われわれの方からその記録の提出を求められた際には、十分はつきりしておくことと、それから原則といたしまして、金をとることはいけないというようなことが通牒してあるのでございますが、重ねてその涌牒の喚起を求めまして、ことにこの新薬に関しましては、先ほど申しました結核療法研究協議会において選ばれた機関において、これの試験が行われるようにということを申しまして、かつ、それらにおいて行われますところのものに関しましては、あらかじめ国立衛生試験所におきまして検査をいたしましてそうしてその国立衛生試験所の検査結果をつけた品をもつて研究してもらう。すなわちその検査結果には、いかなる不純物が入つておるか、またいかなる程度の純度であるかということ等が、化学的にはつきりしたものをもつて試験をしてもらうということになつておるのでございます。なおこの薬の輸入に関しましても、すでに輸入の申請がございます。と申しますわけは、これはお聞き及びかと存じますが、最近日本においてわかりましたのは、アメリカにおいて研究され、アメリカにおいて発表されたかのごとく言われておりますが、一面すでに欧州におきましては、これが三隻則からも研究されておるということも、欧州からの通信でわかつておるのであります。従いまして、ヨーロツパのスイスあるいはイギリス等の製薬会社においては、すでにこれをつくりまして日本への輸入を試みておるものがございます。なおアメリカの製薬会社におきましても、試験品をつくりまして、日本に見本品等を輸入せんと試みておるものもございますから、従いましてそれらのものにつきましても、これを十分—もちろんこれを輸入しますには、たとい見本品でも、厚生省の承認を求めなければなりませんので、承認いたすといたしましても、その配付先については、嚴重なる私どもの監督下ないしは目の届くようなふうにいたすべく、連絡いたしておるのでございます。しかし、一面ただいま岡委員から御指摘がございましたように、すでにこういうものが出ますと、どうしてもやみにおいてこれを入手せんとする人々ないしは当然人情といたしまして、結核に悩むような人々は、わらをもつかみたい気持で、やみでも何でもいいから手に入れたいというようなことも、当然起つて来るのであります。すでに一部におきましては、その現象が出ておらないとは言い切れない点がございます。それに関しましては、私どもは、少くとも国産メーカーに関しましては、ことに私どもの方にわかつておりまする限りのメーカーにつきましては、その配付に関して、十分厚生省に連絡するように、厳重に申しております。また輸入品に関しましては、ただいま申しましたような措置をとりつつある次第でございます。 以上、大体今日までの経緯と、私どもが考えております点を申し上げたのでございますが、なおこのものの効果その他に関しましては、むしろ山口局長がお答えすることが正しいか存じます。
○山口(正)政府委員 イソニコチン酸ヒドラジツドの効果につきましては、ただいま慶松局長からも答弁がございましたように、私どもの手に入つておりますものは、一部を除きまして、まだいわゆる学問的なデータを得ておりません。これは、どうしてもわが国でそれぞれの專門家に、專門的な立場から検討してもらう必要がある、しかる後に、これを一般に用いるようにしなければならないという建前をとりまして先ほど慶松局長からも御説明がございましたように、厚生科学研究費によつて、厚生省結核療法研究協議会というものがあります。協議会の会長は熊谷岱蔵先生、化学療法の方は慶応の大森憲太先生が、委員長になつてやつていただいておりますが、これを試験管内、あるいは動物実験、臨床実験という段階を経て、愼重に実験をやつていただきまして、しかる後にそのデータに基いて、今後それをどういうふうに取上げて行くか、そういうことをやりたいというふうに考えております。その実験をやつていただく人たちの人選、あるいは細部につきましての薬の使用量、あるいはその後の経過の観察というような、具体的なこまかい問題につきましては、結核療法研究協議会の方々におまかせして、大体の案を私どもの方にいただくことにしておりまして、專門家の先生方に十分愼重に研究していただく、そういうふうに考えております。
○岡(良)委員 ただいまの慶松さんのお話ですが、巷間伝えるところによると、外国製のものの方が、現在日本でつくられているものよりも、効果があるということを、一部の新聞が伝えております。結核の問題が、公衆衛生上からも、また国民医療の上からも重大な問題であり、保健財政にも重要な影響を及ぼす問題であることは、申し上げるまでもないので、そういう有効なものであるとするならば、日本がそうした先進国の、あるいはすでにいち早く研究を始め、ある程度までの完成点に達している国の技術を導入するなり、何らかの措置を講じて、早くいい製品をつくるというようなことについて、政府として具体的に、積極的な手を打つべきではないかということを考えます。が、その点と、それから各社がそれぞれつくり出して来て、臨床家に実験例を求めるということになつて参りますと、勢い無統制な競合ということになつて来るのですが、こういう点については、公衆衛生局や薬務局として、あるいは薬事審議会の問題にもなるので、具体的な構想があるのかどうか。それからその薬が、はたしてほんとうにこの程度きくのだというようなことについての責任ある言明が、その都度政府から出されると、それを患者も医師も、また衛生担当官もが十分知るということが、必要であろうと思いますが、そういうことについての具体的な構想があるかどうか。それから臨床実験の成果について、一応の結論が得られるのは、一体いつごろになるかという見通しがあつたら、その点についてお伺いしたいと思います。
○慶松政府委員 この薬の製造に関しまして、ただいまもお話がございましたように、はたして外国品が日本品よりすぐれておるかどうかということにつきましては、まつたくこれは基礎を私は持つておりません。しかしなんら、少くとも現在伝えられておりますような化学構造の薬であるといたしますれば、このものをわが国においてつくることは、さして困難ではありませんし、またすでにこのものは、先ほども私がちよつと触れましたように、非常に古くつくられておりますので、従つて特許の関係も何もございません。その意味において、特にこのものに関しましては、外国からの技術を入れたくても、私は間に合うと考えております。 なお、次のお話の、非常に多くの社がこれをつくりまして、そしてその試製品等を出すという点に関しましては、これは法的に申しますれば、各製薬会社が新しい薬に手がけるということを、拒絶すべき何ものもございません。しかしながら、今回の薬に関しましては、先ほども申したように、その臨床例を求めるについては、厚生省に各会社からサンプルを出してもらいまして、それを先ほど申した結核療法研究協議会に配付して—配付いたします際には、衛生試験所の試験を経たものを配付いたしまして、それによつて各社の製品の適格、不適格もはつきりいたすことかと存じます。そういうような手段によつて、この社の品はつくらせ得る、あるいはこの社の品に関しては、いささか疑問があるというようなこともできるかと存じております。 なお、御案内の通り、医薬品の製造の許可に際しては、ことに新しい薬の許可に際しては、その品が確かに規格その他に合つておるかどうかということを十分検討の末、そしてそういうことができる能力があるかどうかということを検討の末、許可を與えておるのであります。従つて、そういう規格に合う品をつくり、またその規格に合う品をつくり得る能力があると認められますならば、これはたとい何社でも許可せざるを得ないのであります。しかし、すでに終戦以来ペニシリンあるいはその他の薬に関して、製薬会社といたしましても、また政府側といたしましても、苦い経験をなめておりますので、今回のこの薬については、その点あらかじめ私どもの方で、いわゆる行政指導といたしまして、しばしばむだな競争のないようにということの警告を発しておる次第でございます。
○山口(正)政府委員 臨床成績、あるいはその他の実験の成績につきましては、非常にこの新薬につきまして、世人の関心が高いときでございますので、厚生省としましては、できるだけ結果がわかる範囲内で中間報告をして行きたい、そういうふうに考えております。 それから、臨床成績は何箇月ぐらいたてば大体見通しがつくかというお尋ねでありますが、これは結核という疾病の性質から考えまして、それに対しますいろいろな療法の成績を判断いたしますのには、相当の長年月を要することと存じます。ことに沿革成績を得ますのには、相当かかると思いますが、現在始められんとしております臨床実験の成績を得ますのにつきましても、大体数箇月は要するものというふうに考えております。
○松谷委員 関連してお尋ねしたいのですが、先ほど薬務局長の御説明で、これは相当古くつくられたものだというお話でございますが、いつごろつくられたものでございましようか、古いと申しまして……。
○慶松政府委員 これは結核の薬としてつくられたわけではございませんけれども、いわゆる化学物質としてつくられましたのは、一九一二年でございます。但し、それが結核に有効であろうと考えられましたのは、せいぜい私はここ二年ぐらいの間だと承知しております。
○大石委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後一時十二分散会