建設委員会法務委員会連合審査会 第1号
- 発言数
- 104 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1952/04/21
会議録
○松本委員長 これより建設委員会、法務委員会連合審査会を開会いたします。 私が議案の付託を受けました建設委員会の委員長でございますので、本連合審査会の委員長の職務を行います。 ただいまより日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法案を議題として審査を行います。まず政府側より提案理由の説明を求めます。
○根道政府委員 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基きまして締結されました行政協定によりまして、日本国はアメリカ合衆国に対し、安全保障条約第一条に掲げる目的の遂行に必要な施設及び区域を提供することに相なりました。この義務を履行するためアメリカ合衆国軍隊の必要とする土地等の使用または収用手続について必要な規定をし、もつて条約の遵守と私有の財産権との調整をはかることが、この法律案の目的でございます。 アメリカ合衆国軍隊の必要とする土地等が民有のものであります場合は、日本政府はこれらの所有者または権利者と相互の自由意思に基く賃貸借もしくは売買等の契約に基きまして土地等の使用権または所有権を取得いたしまして、これをアメリカ合衆国軍隊に提供するのが本来の建前でございまして、このため日本政府としては所有者または権利者との自由意思に基く契約の締結のためあらゆる努力をいたす所存でございますが、これらの努力にもかかわりませず相互の合意に基く契約の締結が不可能である場合には、やむを得ずこの法律によりまして目的物を使用または収用し得ることといたしまして、条約上の義務を履行いたしたいと存ずるのであります。 この法律を適用いたしまして、やむを得ず土地等の使用、または収用手続を進める必要がある場合におきましては、その使用または収用の手続の過程におきまして、所有者等に不安を与えまたは財産上の損失を与える等のことがないよう十分留意することといたしまして、このためこれらの点について詳細な規定をしております土地収用法の内容を原則として取入れることにいたしたのであります。 しかしながら若干の特例を規定することが必要かつ適切であると思われますので、これらの点を特に規定することといたしました。その主要な点を申し述べますと、 土地収用法の規定する事業の認定手続につきましては、他の多くの特別法におきましても例外手続が規定されておるのでありますが、駐留軍の必要とする土地等の使用または収用の認定手続についても特例を規定することといたしました。 次に駐留軍の引揚げ、移転等に伴う土地等の使用廃止等の結果、従来使用中の土地等を、これらの所有者または権利者に返還する場合におきまして、使用中形質を変更したような場合には、これを原状に復して相手方に返還するのを建前といたしますが、原状に復することが著しく困難であるとかまたは客観的に見て原状に復することが適正かつ合理的でないと認められます場合には、原状に復さないで返還することができることといたしまして、その原状に復さないことによつて所有者等に損害を与えました場合は、これを補償することといたしたのであります。 また建物の返還に際しまして、建物の使用中その改良のため有益費が費されたことによりまして、その建物の所有者等に利得が生じておりますときは、利得の存する限度におきまして、利得金を国に納得させることができることといたしました。 なお以上の点につきまして、政府の決定に不服がある場合には内閣総理大臣に不服の申立をすることができる道をひらいております。 その他引渡調書の作成について特例を規定いたしましたが、その趣旨は、建物等を所有者または権利者に返還するに際しまして、返還時の建物の状態について双方立会いの上、引渡調書を作成しておきまして、原状回復等について後日紛争が起ることを防止しようとするものであります。 最後に附則といたしまして、従来連合国軍の調達要求に基いて使用中の土地等を平和条約の発効後九十日を経過した後なお駐留軍が継続して使用する必要のあるものにつきましては、六箇月を限度として一時使用をなし得ることといたしましたのは、この法律の本則の規定によりまして、土地等の使用、収用をなすためには相当期間にわたる準備が必要でありますので、その経過的措置として必要な規定をするとともに、損失補償等については、土地収用法による旨規定いたした次第であります。 以上概略の説明でございますが、何とぞよろしく御審議の上御可決あらんことをお願いいたします。
○松本委員長 これより本法案について質疑に入ります。通告順に基きこれを許します。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 私旅行をしておつて、まだ法案をこまかく調べておりませんので、提案理由で疑問を起した点二、三を質問いたしまして、あとは他の方に譲りたいと思います。 この理由を見ますると、日本政府が権利者と自由意思に基いて、その使用及び収用を強制的にせないで、契約に基いてやることを原則とするとなつておりますが、これはまことにけつこうなことだと存じます。ところで、それが行かぬ場合には、使用または収用を強制的にやる。ところがこの点について見ても、駐留軍の使用が一時的のものと見るから、収用を建前とせないで、できるだけ使用を建前とすると、こうなつておりますが、そういたしますと要するに使用権をとるということになるのでありましようが、それにしてもそのとつた使用権は、一時的にとつたものであつて、永久にとらないものだという建前じやないかと思いまするが、この点将来に重大な問題がありますので、まずこれを明瞭にしてもらいたいと思います。
○根道政府委員 その点につきましては、鍛冶委員の御説のごとく、一時的に使うのであります。政府といたしましては、必要なくなりますれば、できるだけすみやかに返すという考え方を持つておる次第であります。
○鍛冶委員 所有者と使用権者と同一人である場合は、元へもどるのだから問題はありません。ところが所有者と使用権者と異なつた場合に、一時的のものであるとすれば、原状回復ということは、元の使用者に返す考えなのか、それとも使用権をなくしてやられるという考えなのか、これは重大なことだと思いますので、どういう建前をもつてやられるか承りたいと思います。
○根道政府委員 政府といたしましては、使用権を抹殺して軍に提供するというような考え方はいたしておりません。
○鍛冶委員 そうしますると、ではどういうことでやられるかを承りたいのです。
○長岡政府委員 ただいま長官から申し上げました通り、使用権者があります場合に、手続といたしましては、所有者なり使用権者と、契約によりますときには十分今後は話をつけまして、解除になりましたときに、依然として使用権者が使う場合もありましようし、あるいは場合によりましては使用権者がそういうことを欲しない場合もあるかと思います。期間が臨時と申しましても、今日までの経過から見ますると見当がつかぬ、そういうことに相なりまするならば、十分話合いをつけまして、そのときにはまた返すということにいたしますか、あるいはこの際ほかのものを借りなければならぬというようなことがありまして、その使用権を消滅させるという場合も出て来るかと思いますけれども、このときには十分三者協議の上で、後日問題の起らないように措置いたしたい、かように考えておる次第であります。
○鍛冶委員 それではひとつ便宜上、収用というか、強制的でない場合の任意のときから開きましよう。そうすれば一番よくわかると思いますが、賃借権者があり所有権者があります。そのときに、あなた方が任意でその家を使用することをきめられるときには、所有者と話し合われるのですか、使用権者と話し合われるのですか。もつと具体的に申しますると、所有者とどういう話をせられ、使用権者とどういう話をしてやられるか、この具体例からいえば一番よくわかつて参るものと思います。
○長岡政府委員 使用権者のあります場合に、具体的の問題といたしましては全然わからない場合もあるかと思いますけれども、これは民法の規定の適用の問題、登記がしていないといつたような問題が起るかと思います。しかしわかつております限りは、使用権者にも話し、所有権者とも話合いをつけて、満足な借り方をいたしたい、かように考えておる次第であります。
○鍛冶委員 そんなことじやないのです。私の聞かんとするのは、もつと法律的に聞くのだが、それではこう聞きましよう。使用権者から又借りせられるのですか、それとも使用権者の権利をなくして、所有権者から借りられるのですか、これはどうです。
○長岡政府委員 賃借権者があります場合には、これは賃借権者と話しまして、又借りをするということになる方が多いと思うのであります。その際に、ただいま申し上げました通り、一応の所有者といたしましても、話をいたしておきませんと、後日問題が起ることがあるかもしれませんので、所有者に話すことは十分いたしますけれども、賃借権者がはつきりした権利を持つておりますなら、これから又借りをするという措置をとりたいと考えておる次第でございます。
○鍛冶委員 そうすると、これは今までも大体そういうやり方をやつておられますか。
○長岡政府委員 従来は御承知の通り、終戦直後いわばどさくさの間に軍がここを接収するという措置をとりまして、それを各都道府県なりが引継ぎまして、特調がその事務を引継ぎまして、所有者と賃貸契約をいたしております。おそらく私の記憶では、対抗要件を備えております賃借権者と契約をいたしたのがあるかもしれませんけれども、はつきり私はその点記憶いたしておりません。大体所有者と契約して、所有者に地代なりを払つておる次第であります。
○鍛冶委員 そこがたいへん重大なんでして、どさくさだつたと言われればやむを得ませんが、使用権者があるにもかかわらず、その使用権者を無視して、所有権者と直接契約せられるということになると、使用権を消滅さしたことになる。今ないと言われるならよろしゆうございますが、使用させるなら、それを消滅させるについていかなる補償をし、またいかなる手続をやつておられたか、これが重大な問題になつて来る。今までそれをおやりになつておらないのですか。
○根道政府委員 ただいま一つの例を思い出したのでありますが、ある建物がございまして、その建物が一時たまたま政府所有の建物かのごときかつこうに見えたことがあつたのであります。そのために、御承知のごとく政府所有の建物等を提供いたします場合には、家賃の支払いはもちろんございません。ところがこのとき賃借権があるのだという主張をして現われた者がございました。結局その賃借権が現存するかどうかということは、裁判の結果でないとわからぬ問題でございます。これが裁判の結果、政府の所有だけでなしに、実は賃借権が確立されておつたものだということがわかりましたために、その賃借権者にその家賃を払うというようなことに相なつた事例がきめて最近にあつたのであります。
○鍛冶委員 現在の権利を——これは一時的のものですから、われわれとしては、やはり現在の権利をなくさないで、その間だけ一時停止をしておいてやる、もしくは又借りする、こういうことになれば一番問題ないと思われるので、そういう方針だということなら、またその前のも聞きますが、今後そういう方針でやられると承つておいてよろしゆうございますか。
○長岡政府委員 先ほど申し上げました通り、そういう方針で行きたいと考えております。過去のものにつきましては、鍛冶委員も御承知の通り、これは非常な問題が残されておりますので……。
○上林山委員 できるだけ法務委員の方々に発言の機会が多い方がいいかと思うのでございまするが、ただいま鍛冶委員と政府委員との質疑応答を聞いていて、少し重大な問題が漠然として来たので、一言だけ関連質問をいたしますが、第一所有権が主であるという答弁をするかと思うと、今度は賃借権が主であるから、対抗要件さえ備わつておれば、それを主として今後もやるのだ、こういう御意見のようでありますが、そこに私は非常に矛盾を感ずるわけであります。なるほど対抗要件を備えた賃借権であれば、一応賃借権の範囲内においては、御説の通りそれを対象としてやることもいいと思いますが、使用の目的が所有権の範囲を侵す場合に、それでも賃借権を主として対象とするか。たとえば所有権の基本的な要素である使用、収益、処分の問題について、ほとんどそれに近いような被害を与える場合においても、純理論的に考えて、法の解釈としては、政府は相かわらず賃借権を主体としてやつて行くのであるかどうか。この点は非常に重大な問題でありますので、私はこの点を伺つておきたいと思います。
○長岡政府委員 御指摘のような場合におきましては、先ほど申し上げました通り、賃借権者の権利を無視することはできませんけれども、しかし場合によりましてはその際には所有者の権利を無視して、たとえばその土地の形質を変更するとか、従来の目的と非常に違つた目的に使われるというような場合が起きまして、所有権者の権利を非常に侵害するというようなことに相なりますときには、これは所有者に十分の了解を得ません限りは、実行できません。そのときには、具体的の場合につきまして善処いたすのでありますけれども、あるいはそういうときには、やむなく賃借権者には権利を補償いたしまして、これを消滅させるという措置がとられる場合もあることはやむを得ない、かように考えておる次第であります。
○上林山委員 当然の賃借権の範囲内、もしくは賃借権を実際的に縮小して考える場合というか、そういう場合においては、私は使用の目的がその範囲内であれば、おつしやるように第一次的には賃借権者を対象として交渉され、妥結を得るということがよいと思いますが、何といつてもその基本である所有権に対して侵害を受けるような場合は、これは双方の了解を得た上で政府は契約を結んで行くべきものである、あるいはまた処分等を考えて行くべきものであると考えるのでありますが、これに違いはないかどうか。今までの御答弁では、あいまいな点が非常にあつたように思いますので、この際念を押しておきたいと思います。
○長岡政府委員 先ほど申し上げましたことが説明不十分であつたかもしれませんが、この点につきましては、ただいま御指摘の通りの気持で先ほども申し上げた次第でございます。
○鍛冶委員 今私は任意契約の場合を申し述べましたが、今度は進んで強制的の場合を申します。賃借権者と所有権者がありまして、両方ともがえんじなかつたら、そのときは両方に対してこの規定を適用して収用せられるものと思いますが、一方ががえんじて、一方ががえんじなかつた場合はどうなさいますか。これは所有者の場合と賃借権者の場合と違いますから、どういう方法でおやりになりますか。
○長岡政府委員 その場合には、どうしても承諾を得られないものにつきましては、本法を適用いたしまして、強制使用なり収用するもやむを得ません。承諾を得られますものにつきましては、任意契約で進みたい、かようになるべく強制をすることは避けたいという考えでおる次第であります。
○鍛冶委員 どうもあなたの答えがぴんと来ない。それじやこまかく割つて申しましよう。賃借権者は、よろしゆうございます、又借りにしていただきたい、こう言う。ところが所有者は、困ります、こう言つた場合に、賃借権を消滅して所有者から借りることにせられるのか、所有者に対して又借りを承諾させるという強制手段をとられるのか、そういうふうに答えてもらわないと、なるべくいいようにしますというのでは、そういうことはきまつたことで、もつと具体的な法律論で答えてもらいたい。
○長岡政府委員 ただいま私が、なるべく強制力を用いないようにしたいと申し上げましたことは、賃借権者にいたしましても、所有者にいたしましても、同意を得られた相手方に対しては強制力を用いたくない、こういう意味を申し上げた次第であります。御指摘のような場合におきましては、所有者に又借り権を要求いたしまして、そのまま賃借権者が承諾いたします場合には、そういう場合も起るかと思いますが、こういうこまかい適用の問題になりますと、この法律を適用いたします際に、率直に申し上げますれば、これは法務府とも十分打合せまして、最も妥当な解釈によりたいと思うのでありますが、その個々の場合につきまして、ただいま申し上げましたような一律に使用権を消滅させるとか、あるいは所有権を消滅させるとかいう方法をとらずに、各使用権者なり土地所有者の意思を尊重して措置をいたしたい、かように考えております。
○鍛冶委員 もちろん当つてみればそれぞれの場合が出て来ましようが、私らの言うことは、でき得るものなら現状の権利を変更させないで、でき得るだけ現状の権利をそのままにしておいて一時駐留軍に使つてもらう、そのかわり駐留軍が行つたらまた元へもどすんだ、こういう建前でやるようにすべての点でやつてもらうのが最もいいんじやないかと思いますから、そこで私は聞くのですが、これはおそらく御異議はなかろうと思います。ところがそうなると、どうも今まであなた方——というと語弊があるかもしれぬが、取扱つている人の事実を聞いてみますと、先ほどもお話があつたように、終戦直後のごたごたであつたから、どさくさであつたと言われるが、そのどさくさでやられることをわれわれ一番恐れるというか、憂えるわけなんだ。今私が質問するようなことで一つ一つにやられればおそらくそういうことは少かつたろうと思うが、現在いわゆるどさくさでやつたがために、たいへんな問題が多々起つておろうと思いますが、その点はどうでございますか。
○長岡政府委員 実は特調がこの事務を引継ぎましてから土地なり家を接収いたしました場合に、強制的と申しますか、無理やりにそういう権利者の権利を消滅させたというような場合は私の記憶ではございません。二十二年に引継ぎましてから、いろいろな点を考えまして相当話合いをつけておりますが、一番問題になつておりますのは、先ほど申し上げました通り、これは口実を設けて逃げる意味では毛頭ございませんが、進駐軍が上つて参りまして土地なり家を使う。その当時は御承知の通りにまあどうなることかわからぬ、ただとられてもしかたがないといつたような状態のときに、軍と都道府県のものが一緒に参りましてここを収用するということになりました関係で、もちろんその際にすぐ御指摘のような事件を解決しておくべきであつた、使用権者、権利者を眠らせるのか、消滅させてしまうのかという措置が実はそのときにとらるべきものであつたとわれわれも考えるのです。残念ながらそのときにとらないものだから、これが先般当建設委員会におきましても御質問がありました通り、この問題をどうするかという問題が残つている。従いましてこの問題につきましては本法律案を提出いたします際に、われわれも非常にどうしたら一番これが妥当であるか、この点について立案をいたしてみたのでございます。ところが過去予想外に長く接収いたされまして、法律秩序がすでに現状において保たれておるということもございますので、なかなか本法に付属してその規定を設けるという運びに至らなかつた。この問題につきましては、方法といたしますれば、前の権利をもう一度生かすという方法をとるか、あるいはこれによつて損害を受けたものに対して金銭的な補償をするか、この問題が残つておる。講和条約発効後の問題を取扱います本法におきましては、一応この問題は引離して考慮した方が妥当であろうということで、この法律案にはその点を規定いたさなかつた次第であります。実情率直に申し上げまして、かような経緯から本法を提出いたしました次第でございます。
○鍛冶委員 もちろん今の私の質問は本法と切り離して考うべきものでありまするが、しかしわれわれの一番ここで心配するのは、切り離すべき今の法律でも前と同じような考え方でやられてはたいへんだと思うから言うのだ。そういう考えでないということは明白になりましたから、よろしゆうございます。しからばそういう考えでなくて現状の権利をなるべくしばらく押えておいて、そうして駐留軍に使わせるという考え方であるとせられるならば、前においても進駐軍であつたというものの、同様の考え方をもつてやるのが至当であるとお思いになりませんか。全然今と考えが違うとお思いになりますか。
○長岡政府委員 ただいま申し上げます通り、その当時に現在と同じ考えをもつて進むべきものであつた。これは私も率直にそう思うのであります。その際にいろいろな事情がありましたにいたしましても、この措置がとられておらなかつたということは非常に残念な問題だと考えている次第であります。
○鍛冶委員 しからば今あなた方は過去のことではありまするが、現在携わつておられるのであるからその考え方であれば、できるだけあなた方の力でやはり元のものは進駐軍といえども押えておつたのだから元へもどれば返してやろうというやり方をしたいとお思いになりますか、これはどうしますか。
○長岡政府委員 先ほども申し上げます通り、率直に申し上げますならばわれわれはそういうふうな考えを持ちまして話を進めました。ただここで十分考慮いたさなければなりません問題は、数年間そのままで法律秩序が一応保たれているという問題がございますし、所有者がその間に転売をする、そうすると第三者にその権利が渡つている、これがまた混淆して来る。そこで軽率にこの権利を復活させるという措置をとりますならば、またまた法律秩序が乱れるという問題もありますので、いろいろ議論の問題があると思います。従いましてこれはそういう生かすという措置はとるべきでない、むしろ別途の方法によつて補償すべきだという議論も出て来るのであります。従いまして本法にその規定を設けなかつたのでありますが、先般の委員会でも申し上げました通り、この問題の解決方につきましては各方面とも十分協議いたしまして最善の努力をいたしたい、かように考えている次第でございます。
○鍛冶委員 一時法律秩序が保たれたというが、そこに重大なる問題がある。決して保たれておりません。泣寝入りしているのです。そこでもどつて来たから、泣寝入りしておつた者は元へもとしてくれというのはあたりまえです。その点に対して困難のあることは十分察せられますが、でき得るならばそうしてやろうと考えられるのが当然だと思う。そこでこれはあなた方だけではできぬことでありましようから、関係各庁と御協議の上で、できるだけの善処をお願いしたいのですが、幸い所管国務大臣がおいでになつておりますから、これは国務大臣としてこの点について政府部内でよく御協議の上で何とか方針を立てられるお考えはございませんですか。
○岡野国務大臣 お答え申し上げますが、先刻来よりよりそういうことを心配いたしまして話合いが出ておりますが、まだ結論を得ませんような次第であります。
○鍛冶委員 今私はとつさにそういうことをどこまでもつつ込んでみたところでしようがありませんから、早いうち所管大臣なり、所管庁の間で御協議の上で当委員会に御返答を願いたいと思つて、それに対する質問はきようはこの程度にします。 次に法案を見ましたが、ここでは土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であるかいなやという認定に対して、特例を規定いたしたと書いてあります。この法案をまだ全部読んでいませんが、読んだところでは、ただ内閣総理大臣に申請書を出す、内閣総理大臣は学識経験者の意見を求めてやる、こういうことが書いてありますが、まさか内閣総理大臣みずからそういうことができるはずはないので、これに対する具体的の機関はどういうものがあるのかちよつとわからぬのです。どういうもので認定されるのですか。
○長岡政府委員 具体的の機関といたしましては、現在あります不動産審議会、これは中央不動産審議会と、各局別に不動産審議会というものが設けてございます。この機関は、今日までも協議して参つたのでありますが、十分活用いたしたいと考えておる次第でございます。
○鍛冶委員 不服の申立てのときには中央不動産審議会の意見を聞く、これも意見を聞くとなつておりますが、認定の場合にはそういう規定がないのです。ただ単に内閣総理大臣がこれをやるようになつておるのですが、その点の規定がなくてもよろしいのですか。
○長岡政府委員 第六条で、関係行政機関の長及び学識経験を有する者の意見を求めることになつておりますが、もちろんこの場合においては六条に表われておりませんけれども、中央審議会の意見も聴取することにいたしたいと考えております。
○鍛冶委員 土地収用法なら収用審査会というものがあるのですから、やはりそれと同じようなものを設けらるべきものと思いますが、設けられないつもりなんですか。
○長岡政府委員 認定の場合には、ただいま申し上げました通りに、各関係庁なり、学識経験のある者などから意見を聞くことになつておりますが、これは土地収用の委員会の通りにはやりませんので、認定の問題につきましては非常に急ぐ関係もございますし、合同委員会その他でも議論のあるものでございますから、この場合におきましては、土地収用委員会そのものによらずに、特例を設けて措置した次第でございます。
○鍛冶委員 内閣総理大臣みずからがやれるわけではないから、総理府に何かそういう機関ができるでしよう。その内容をお聞きしたい。
○沼尻説明員 土地収用法の場合には、建設大臣が学識経験ある者の意見を聞いて事業の認定を行うということになつておりますが、この法律ではやはり土地収用法二十二条に該当するものとして、内閣総理大臣が学識経験を有する者の意見を聞くということに規定いたした次第であります。
○鍛冶委員 私の聞くのは、内閣総理大臣が直接意見を聞いたりそんなことをやれるものではないでしよう。何か事務局とか、どういう構想を持つているかということです。
○長岡政府委員 この場合、意見を聞くのはもちろん中央審議会でありますが、構想といたしましては、お説の通り総理大臣がみずからやるというのではなく、特調長官が委任を受けるということで実際の事務を持つて行きたい、かように考えておる次第であります。
○鍛冶委員 もつと意見を固めておいてもらわなければ、何かやるでしようでははなはだ困る。もう少し具体的に聞かしてもらいたい。
○根道政府委員 ただいまの説明があまりこまかくなつたのでかえつてまごついただろうと私は思いますけれども、現在も調達庁におきましては、中央不動産審議会という法律上設置された諮問機関がございます。これが現在調達庁長官の諮問機関と相なつております。その委員会は、民間の学識経験者多数を網羅して構成してもらつておるのでありますが、この新しい法律案におきましての構想は、その委員会にこの事務を扱いまする最高の総理大臣の諮問機関たる性格もあわせて与えることにいたしておるわけであります。
○鍛冶委員 私の聞いておりますのは中央調達不動産審議会の意見を聞かなければならないと十二条の場合には書いてある。ところが六条から八条までにはそういうものがないのです。そこで私はふしぎに思つた。これは何かなくてはできぬはずだがと思つた。
○長岡政府委員 第六条の場合の学識経験者云々という意味は、ただいま長官が申し上げました通りに、不動産審議会をもちろん活用するのでありますが、こればかりでなく広く意見を徴する道を開いた次第でございます。
○鍛冶委員 もう少し具体的に意見をまとめてもう一ぺん聞かしていただきましよう。十二条のときにはやると書いておいて、ここにはそういうものに問わぬでもいいことに思わざるを得ないのですが、これはもう少しあなたの方で今後の構想がまとまつたら聞かしてもらうことにいたしましよう。 その次は、これは前から法務委員会でやかましく言つておつたわけですが、返還の場合の原状回復の点であります。なるほど原状回復をすることを原則とするが、原状に復することがはなはだ困難な場合もしくは不可能の場合には補償するよりほかないということになつておる。これは当然のこととは存じまするけれども、例の行政協定の四条でしたか、あれとの関係ですが、あれは日本政府と駐留軍との間だけであつて、日本政府と国民との間においては原状回復をする義務があるということを原則としてやられるものである、かように承つておいてよろしゆうございましようね。
○長岡政府委員 御指摘の通りでございます。
○鍛冶委員 そこで原状回復の点でありますが、ここにこう書いてある、建物の返還に際し、建物使用中その改良のため有益費が費されたことにより、その建物の所有者等に利得を生じているときは利得の存する限度において利得金を国に納付させる。この考え方からいいますると、この間もあなた方の説明を聞くと、利得金があればそれを差引いて原状回復をやると言われるのですが、これは納付させるということと違うのですか。やはりあなた方も利得金があれば差引く。かりに十万円の損害があつたとする、利得金が五万円あつたとすれば五万円だけ返すというお考えでございますか。
○長岡政府委員 御指摘の通りでございます。損失が起つておるか、利得が起つておるかということを算定いたしまして、もしもらい分がたくさんであるならばという意味でございます。
○鍛冶委員 そこで問題が起る。かりにシャンデリアのようなものがくつついておつたとする、なるほど考え方によつては利得でしよう。それでこれは利得だから差引いてやるという場合、私はかようなものはいらないのだ、持つて行つてもらいたいと言つたらどうしますか。
○長岡政府委員 その点につきましては、先般も御説明申し上げたのですが、有益費と申しますか、価値増と申しましても、事実上価値増と見られぬものがあります。よく話の出ます床の間が洋服ダンスになつたり、はなはだしきに至りましては便所になつたり、これがいかにも金をかけて有益費のごとく、見られるのでありまするけれども、有益費であるかどうかという場合には、実情を見て十分考慮いたしませんと、金をかけてかえつて事実上は価値減になつているものがある。従来とてもこの点につきましては十分留意いたしまして、価値増に見ない処置をとつておるのであります。ここにかような規定を設けましたということは、著しい場合があるからであります。たとえば焼けビルを非常に手をかけて住めるようにいたしまして、これを原状回復で返せばいいのだと申しましたところで、焼けビルにもどすことは意味がございませんから、かような場合には金を徴収する。しかも自分がすき好んでやつてもらつたのでもないのに一ぺんに徴収されるということは困るから分納させることにする。こういうことでございます。この価値増の点につきましては、これは手かげんを加えるという意味でもございませんので、従来とも十分心して処置をいたしておりますが、今後ともその点は同じ心構えで進んで行きたいと考えております。
○鍛冶委員 なるほどそれは今言われる通りです。焼けビルを直せば、それを元にもどせと言われても非常識な請求だからやらないが、こういう場合が問題になつて来る。たとえばそこにシヤンデリアがつけてある。お前のところにはこれはなかつたが、こんなりつぱなものがついているじやないかと言うと、一方では、私のところはこんなものはいらないのだ、持つて行つてもらいたいと言う、そういうような場合にはこれはどうしますか。
○長岡政府委員 取除かなければならぬ場合があると思います。価値増として請求できぬ場合があります。
○鍛冶委員 私の申し上げたいのは、これは常識上当然あつた方がいいというものを、無理に持つて行けということは無理な話ですが、そうでなく、本人がこんなものはあつてもなくてもいいという場合に、あるじやないかということで要求せられることははなはだ問題が起りますから言うので、それらの点は今後十分気をつけてやつていただくようにお願いしたいと思います。 そこで今度は、これらの点について話ができなかつたならば、これも内閣総理大臣に不服の申立てをすることができるということになつておりますが、内閣総理大臣の決定に対して不服があつた場合はどういう方法をとることになりますか。
○長岡政府委員 話合いがつかぬという場合は、結局訴訟にまで話が進展する場合があろうと思います。
○鍛冶委員 これは十二条の問題だと思いますが、これによりますと、内閣総理大臣は中央調達不動産審議会の意見を聞いて裁決をするとある。こうなつておりますと、その裁決に不服があれば訴訟をやるということは、これは書いてなくても当然できるというお考えでありますね。
○長岡政府委員 御指摘の通りでございます。
○松本委員長 加藤充君。
○加藤(充)委員 まず岡野さんに確かめておきたい。これは行政協定第三条との関連についてでありますが、直接調達の場合はどうなるのか。それはそれなりに当然だから規定がないということに相なるのでは、行政協定第三条に基いて権利、権力、権能を与えられた米軍の直接調達、この場合に対しては本法案の内容とする保護的なせめてもの規定は全部無意味になつてしまうと思うのですが、その点はどういう関係にあるのか、お尋ねしたい。
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。直接調達というものはわれわれは予想しておりません。大体これで全部日本政府がタッチしてやるということに考えております。
○加藤(充)委員 権利、権力、権能を全面的に掌握した米軍のことでありまするから、大臣の予想するといなとにかかわらず、そのオールマイテイ的な権能の実行は協定上当然に考えられるわけであります。従いまして今の大臣のようなお話であるならば、行政協定の第三条の執行の方法について米軍との間にそういうことを予想しなくてもいいだけのとりきめがあつたのかどうか。もしないとして、ただ予想しないというのであるならば不見識きわまる、こういうことになりますが、どうですか。
○岡野国務大臣 オールマイテイという仰せでございますが、これは占領軍として敗戦国が応対したときのことがお互いに頭に残つておるわけでございます。しかし御承知の通りに独立した国家でありまして、その独立した国家に駐留しておる米軍、それに対しては日本の国が相対等の立場においてやることになつておるわけでございますから、むろん占領軍が徴発的のことをやる、こういうことは絶対に許されない次第でございます。今後はそういうことはない。予想と申しましたが、そういうことはないはずでございます。
○加藤(充)委員 行政協定の具体的な内容、とりわけ特調関係におきましては、第三条などが前面に出て参る。その第三条を見まして、対等の独立国になつたのだからどさくさまぎれの占領下のような事態はない、行政協定によつてもそういうことはあり得ないのだというような考え方は、この行政協定の内容を厳粛に読み、かつ検討したものにとつては、おめでたすぎるか、さもなければ対等の条約である、あるいは講和発効後においては独立が回復されるのだと宣伝をかねがねして来た手前の牽強附会のごまかしであるということにならざるを得ない。大臣のお話のようなおめでたいことは、一つもこの行政協定には書いてないと何どもは理解し、だからこれは重大なことである。このような行政協定というようなものを具体的な内容にした日米間の諸条約というものは、日本に独立を回復したことでも、保障したことでもないとわれわれが主張しているゆえんであります。論争になりますから、それ以上のことはここでは預かりますが、第二点に、行政協定第三条に基きますと、米軍の施設区域においてはもちろん、隣接する土地、領水、空間においてもまた同様であり、さらに私どもがここでお尋ねしたいと思うのは、それらの区域施設の近傍においても、先ほど来質問している諸点について権利、権力、権能を持つた米軍の直接調達というようなことが考えられるのであります。ここでお尋ねしますのは、近傍ということはどういうところが近傍というのか、これの解釈がはつきりいたしませんと、かつてなところにかつてな物件、こういうようなものを調達の対象にされる、使用もしくは収用の対象にされる危険が出て来るわけであります。まつたく不安この上なしという状態になりまするが、ここで区域もしくは施設の近傍というのは大体どういうことを具体的に言うのか、その点を承りたい。なぜかならば、横田の基地がある、そこに米軍の軍人、軍属並びにその家族等が手前の都合のいいようなところに住居を構え、一例を申し上げますならば、箱根の山の上の温泉地近くに居宅を構えるというようなことになつて、その居宅の接収というようなことが起り得るのでありまして、横田の近傍とはいかなるものを言うのか。また横田の近傍という概念の中には、箱根は当然に入らないというような解釈が成り立つのか、その点を確かめておきたいと思います。
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。近傍がどのくらいの範囲になるかということはいろいろ問題もありましようが、これはひとつ所管大臣からはつきりした御答弁を申し上げた方がよかろうと思います。私はただいま仰せのように接収するというような御言葉もありましたけれども、今後は昔のような接収の観念で行くのではなくて、やはり向うと対等に交渉して提供する、こういうことでございますから、私は近傍であろうが全国であろうが、この不動産の収用という問題については、かわりがないと考えております。
○加藤(充)委員 私は岡野さんが所管大臣だと思つておりましたけれども、少くともこの行協政定の具体的な実現を担当されるのは岡野さんだと思います。岡野さんがこの具体的な内容の規定において、近傍というのはどういうものであるかということがおわかりにならなくて、また岡崎大臣とやらに所管大臣の説明の職責をたらいまわしに移されるのは、不見識もはなはだしいものだと思うのですが、その点もう一回だめ押しに近傍とはいかなるものか承りたい。
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。近傍とは読んで字のごとく近傍でございます。しかしこの特別調達庁のやりますところの土地とか建物に対して借りるとかこれを提供するとかいうことは近傍であろうが全国であろうが同じことでありますから、近傍の定義をここではつきりしなければこの法律はわからぬというものじやなかろうと思います。
○加藤(充)委員 第三条には、先ほど来指摘しましたように、施設及び区域の内部あるいは隣接する土地、領水、空間、またはその区域施設の近傍という三つの場合が書いてあるのであります。だからわれわれはこの区域施設というのは日本国中にかつてにつくれるのか、逆に言うならば、日本国中が区域施設として米軍の基地にされてもしかたがないのか、こういうことになれば、その隣接するとか、または近傍とかいうものの規定の仕方というものが無意義になつてしまうのであつて、こまかく規定していても、それは規定のしがいがないのであつて、結局日本国中区域並びに施設としてやれると同じだ。近傍というものが別に区別がないということになると、ゆゆしき大事だと思うのです。その点が、このたびの収用、使用の法案の検討について、あるいは法案が法律になりまして、具体的に発動します場合についての、国民の関心事の重大なるところだと私は思うのでありまして、今の大臣のような解釈と答弁では、これはせめてもの、講和あるいは講和の発効ということに淡い期待を持たせて来た政府としては、無責任きわまる、こう思うのですか……。
○根道政府委員 ただいま岡野大臣が御答弁になりましたのは、近傍という言葉と、現在提案されております法案とは、直接の関係がないということを申したのだと思います。私どもも同様に考えております。今言われました行政協定の中における文言は、事務的に考えましても、この法案には直接の関係は一応ないように考えております。 それからもう一つ申し上げたいのは、この日本全国が接収の対象になるという点が御懸念のように思われるのでありますが、これは政府が駐留軍の必要にこたえまして、土地等を提供いたします場合、これはまず第一次的に将来の合同委員会においていろいろ話合いが進められて、軍が駐留のために必要であるという意見を、日本側においてもこれをもつともとして、これは応じなければなるまいというような事実上の具体的な話合いが出た上で、話が進みます。近傍であるかないかの問題は、私はまるきり考えが違うのじやないかと思つて、ちよつと理解が届かぬのであります。
○加藤(充)委員 それじやあなたは本法案の名前に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法案という名前をつけられているが、こういうこと自体がべらぼうなんで、それじや米軍のためにする土地等の使用等に関する特別措置法案でいいと思う。この土地等の使用等に関する特別措置法案というのは、あと私は具体的に各箇条について、憲法の保障する日本人の財産権というものとの関連について、質疑を続けたいと思います。それでこの質疑の結果明らかになることだと思うのですが、こういうような財産権の侵害あるいは蹂躙になるような、土地等の使用あるいは収用等に関する手続なども、行政協定に根源を発するから、問題があつて、特別の立法の措置も政府は必要だと考えておるわけであります。もし「安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う」という限定がないならば、何ら特別な土地等の使用などに関する特別立法を必要としないわけであります。政府の答弁のようなことであるならば、われわれはまた考えを新たにして、別個の条件と角度を附加して、この検討をしなければならないと思うが、それでいいのですか。
○長岡政府委員 問題は、行政協定の三条に基きまして直接アメリカがどこでもかつてに使う、こういうことが起るのではないかという御懸念から、問題が出発しておると思うのでありますが、もちろん第三条にいろいろな権利、権力、権能ということが規定いたしてございますが、われわれといたしましては、これに基きましてアメリカが直接その土地なり家を取上げてしまうということではないのであります。この権能の結果、土地とか家がいるということに相なりまするならば、これは第二条に規定いたしております合同委員会にかけて、これを提供する話合いがつくものと思うのであります。従いましてこのときに、土地なり家なりを提供することが適正かつ合理的だという判断がつきますならば、ただいま提出いたしております法律によつて措置する、こういう意味にわれわれ解釈いたしておる次第でございます。
○加藤(充)委員 その権利、権力、権能ということの内容について私は言いませんが、権利、権力、権能を持つた米軍のこの力というものは、区域及び施設の内部、あるいはそれに隣接する土地、領水、空間、こういうところと同時に、その施設及び区域の近傍ということの範囲内にその力が振われるのである。逆に言うならば、それ以外のところにおいては権利、権力、権能というものを米軍といえども持つていない。こういうのが行政協定第三条の建前である。しかるに今のお話のようなことになりますと、隣接する土地であるとか、あるいは近傍における云々とかいうような、行政協定第三条のまことしやかなこまかな規定は、全部ないにひとしいものであつて、日本国中全部必要とあつたらお使い遊ばされてもいたし方ありませんという、まるで負け犬が尾つぽをまたの間にはさんでしまつたような、ふがいないことになつてしまつて、行政協定第三条の規定は無意味になり、国民を瞞着したことになる。こういうことを私は考えるのであります。ですからこの行政協定第三条に一番はつきりしない近傍というものは何だ、アメリカのこの権利、権力、権能を制約する地域的な条件というものは、一にかかつてこの近傍ということになつて来る。近傍というものが意味がなしということになるならば、日本国中かつてに使つてもいいという権利、権力、権能になるから、近傍とは何だ、具体的に言つてみろ、こういう質問をするのであります。
○長岡政府委員 ただいま私の申し上げましたのは、第三条では、近傍でいろいろな権利を持つておりますが、しからば具体的の場合に近傍がどこまでであるかということは、これは問題が起きましたときに具体的に決定されるものと思うのでありますが、本法との関係におきましては、ただいま申し上げました通り、たとえば一つの地域をすでに駐留軍が使つております場合に、その施設の利用のために、さらにその地方の土地なり建物が必要になつて来る、こういうことになりましたならば、別に本法に規定いたしておりますような手続をとつて、合同委員会にもかけました上で、それが合理的なものだという判断に立ちました場合に、先ほど来申し上げております随意契約なり、本法を適用して収用するという問題が、新たに起つて来る問題でありまして、われわれといたしましては、第三条に基いて直接土地をかつてに取上げるということはないものと、かような——直接日本国中どこでもかつてに使つてさしつかえないのだということに相なりますならば、これは、安全保障条約なり行政協定を結んだ根本の趣旨が没却されることになります。さような意味ではなくて、三条に基きます権能に基いて、さらに土地なり建物を要求する場合があるかもしれない、この場合には、もちろん日本側がこれを提供することになるのでありますから、合同委員会にかけるなりそれぞれの措置をとつて決定されるべきものだと、かように考えておる次第であります。
○加藤(充)委員 三条々々で、三条がすきで、問題の中心になりましたから、本法案の三条についてさつそくお尋ねいたします。「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、その土地等を駐留軍の用に供することが適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる。」ということで、そこでお尋ねいたしますが、適正かつ合理的というのは、一体どういうことを具体的に言うのか、近傍でないものを、あそこもほしいというようなことになつたときに、それは近傍でござんせぬというような場合も、適正かつ合理的でない場合になるのではないかと思うのであります。この第三条の規定は、第七条の三項にも関係がありまして、こういうような適正かつ合理的でないような場合には、拒否ができる。そしてまた要望があつても、使用または収用することはできないのだということが言われなければならないと思うのであります。また第三条等々は、そういう余地があたかもあるような体裁を巧みにとつておると思うのであります。それでお尋ねするのですが、適正かつ合理的というようなことが、今言つたような御答弁の趣旨によれば、何が何だかさつぱりわからなければ、一切合財が適正かつ合理的である、向うの必要だという、最高司令官あるいは軍当局の意思表示があるならば、一切合財が適正かつ合理的なものとなつて、結局日本国民の粒々辛苦の財産というようなものは、米軍の意思いかんによつて、これは収用または使用されなければならなくなると思うのです。適正かつ合理的という本法案の第三条の具体的な内容を承りたい。承らなければ、日本国民としては安心ができない、こう思います。
○長岡政府委員 この点につきましては、先日池田さんの御質問にもお答えいたしたのであります。どの土地を、どの建物を使うということは、実は現に予備作業班で作業いたしております。引続きまして、合同委員会で決定されるのであります。合同委員会の話がつきます場合には、そのときには、日本側から十分その土地を軍で使わざるを得ないことが適当であるかどうかということはきめられるのでありますが、規定の建前といたしては、かような合同委員会が一応これを使うということをきめましても、これは強制力を用いてやるか、あるいは随契でやるかということまで、きめるのではございませんから、特調の局長がそれを扱いますときに、強制力まで用いてやるということになりましたときには、ここに書きました適正かつ合理的、これは砕いて申しますならば、だれが見ても一応納得の行く、日本防衛という意味から、駐留軍がそこに駐留いたしまして、そのためにはその土地なり建物がいるであろうということが納得の行く場合に提供する。こういう建前にいたしたのでありまして、そのときに強制力まで用いてやるということは穏やかでないというようなことが起りますならば、さらにまたこれは合同委員会にもかけて、協議を進めて行かなければならぬ場合がある、かように考えておる次第であります。
○田中(堯)委員 関連です。先ほど加藤委員からの質問に対して、大臣並びに他の政府委員からの御答弁を聞いておりますと、近傍ということは本法案には関係はないということのようです。そこでこういうふうに解釈をしてよろしいことになりますか。近傍であろうがあるまいが、全面的にどこにでも駐留軍が必要とする場合には、本法によつて使用や収用をしなければならない、もちろん手続によつて拒否もできましようけれども、ともかくも一応本法案の問題になる、地域的には問題ではないというふうに解釈してよろしいかということ、それが一つ。 それから行政協定の第三条に近傍、隣接区域ということが書いてあるが、そういうことに関連なしにこの法案が出されたということであるならば、これは行政協定なりあるいは安保条約なりのどういう箇条に根拠を置いてこの法案が立案されたのであるかということ、この二つをお尋ねしておきたい。
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の考えといたしましては、まずどんなところを駐留軍に使わせるかという問題と、そういうことがきまりました場合に、調達庁としまして、これをどう取扱うかということ、この二つの問題だと思います。そこでお説のようにどこでも駐留軍に使わせていいかというようなことが出て来るかどうかというようなお話でございましたが、これはやはりほんとうにアメリカ軍が日本に駐留するのには、どのくらいのところにどのくらいのものを置いたらいいかということが両国で合致しまして、合同委員会でその辺に置く、置かしてもらいたい、こういうことを話合いがつきまして、初めて今度はこれを調達庁が調達して提供するということになりますから、事実の問題としまして、われわれといたしましては、あまり多くあちらこちらに駐留軍が散在するということはおもしろくない、こう考えておりますから、できるだけ集約しておつてもらいたい、できるだけ範囲を狭くしておつてもらいたい、こういう希望で合同委員会に臨んでおるはずでございます。でございますから、そう広汎には、どこへでも日本の土地建物を提供するということにはならぬはずでございます。 それから第二の御質問の点は、仰せの通りとわれわれ考えております。
○田中(堯)委員 行政協定の第三条ですか。
○岡野国務大臣 第三条です。
○田中(堯)委員 そうなりますと、たいへんおかしいことになるのですよ。というのは、駐留軍の必要とする施設、区域はこれは合同委員会によつてあちこちできめられましよう。これも全国的にきめられるかもしれません。ところが今大臣の御答弁の中に、第二番目の問題として、合同委員会がきめた区域や施設の外に、これに関連してやはり必要な収用がなされなければならぬことになるだろう、これも全国的に広がるようなことにならないように希望するという……。第二番目の問題の近傍、隣接区域ということは当然問題になつて来ると思う。そこで加藤委員は一体近傍と言うけれども、どの範囲のことを言うのであるか、横田基地に名を借りて箱根の山をどんどんいろいろな名目で収用、使用を要求されたのじや困るじやないか、という国民の切実な気持を代表してお尋ねしておるわけです。そのときに大臣の答弁は、近傍という問題は本法案には関係ありません、こう来た。そこで私は再質問しているわけです。
○岡野国務大臣 詳しくは事務当局から答弁いたさせます。
○長岡政府委員 どの規定に基いてこの法律案を提出したか、こういう御質問でございますが、主たるものは、行政協定の二条に「安全保障条約第一条に掲げる目的の遂行に必要な施設及び区域の使用を許すことに同意する。」これによりまして施設、区域を提供する義務が政府にございますので、これを実行いたしますために、この法律案を提出いたしたのでございます。先ほど申し上げましたのは、これに基きまして使用いたしております土地建物の附近におきまして、あるいは第三条の関係でさらに土地とか、建物が必要だという問題が起きるかもしれぬ、そのときには依然として問題は二条に返りまして、これをさらに提供しなければならぬかどうかということは、検討した上で提供するつもりでございます。かような意味をもつて申し上げた次第でございます。
○田中(堯)委員 そうしますと、これが近傍なりやいなや、行政協定第三条にいうところの隣接区域なりやいなやという判断、これも合同委員会でやるというお考えですか。もつと具体的に申します。今の設例をそのまま持つて来ますが、横田基地に勤める上級将校から、どうしても箱根に邸宅がほしいという要求が出たとします。そこで強羅ホテルなら強羅ホテルを接収する。接収という言葉がいやなら、一時使用したいということになりますね。その場合に強羅ホテルをそういうふうにするか、せぬか、それを許すべきかどうかということを判定するのは、やはり合同委員会がやつて、それに基いて調達事務だけをこの規定でお宅の方でなさるのかということです。
○長岡政府委員 ただいまお示しくださいました例のごとく、横田基地に通う軍人が箱根の山に住宅を持つ、こういうことは本法に規定いたしております適正かつ合理的だということはできないと思いますので、かような場合には、これは使用なり収用はできないのでございますが……。
○田中(堯)委員 だれが判断するかというのですよ、合同委員会ですか。
○長岡政府委員 それは先ほど申し上げましたように、おそらく適正で合理的だということは合同委員会の判断と政府の判断というものは一致すると思いますけれども、本法に規定しておりますのは、先ほど申し上げました通り、さらに翻つてもう一度検討いたしまして、本法によつて強制力まで用いてやるかどうかということは、内閣総理大臣において認定を受ける。その場合にかりにただいまの設例のごとく、横田基地に勤める人間の住所を箱根の山に設けるということが出ましても、これは政府といたしまして適正、合理的でないという判断に立ちますならば、これは合同委員会に対して是正方を申入れる措置をとらなければならぬ、かように考えておるのでございます。
○加藤(充)委員 第三条の規定を正面から解釈しますと、駐留軍の意思表示であつても、適正かつ合理的でない場合があるということを前提にしなければ意味のない規定だと思います。そこでお尋ねするのですが、今は地域的な点が、その範囲が、近傍とは何ぞやという質疑の形で出されたのであります。私はこの次には適正かつ合理的という判断の内容の中に次のようなものが取入れられなければならないと思いまするが、その点でお確かめをいたしたい。すなわちその防空や防衛のためであるならば、日本国人は野宿しても、あるいは生活の基礎を失つても、そうしてそのために流浪民的な形になり果てても、そういう場合に、適正かつ合理的であるという、日本人らしい、日本人の利益というものを前面に押出した判断の余地が自主的に許されていなければ、これはまさしく東条時代に、軍のためには国民一般に対してすべての奉仕を要請し、あるいはあの当時中国に侵略して行つた旧日本軍が、中国の人々に対して仕向けた強請と何らかわりがなくなるではないか、対等というのであるならば、その点について自主的なものが容認されなければならないと思うが、その点はどういうことになるか。 第二点としましてはそういう場合においてもいきなり強制的な内容を持つた本法案の手続に訴えるのではなしに、まあまあの話合いでやるのだから心配はいらないというようなお話ですが、強制的な権限の行使、発動をこの法案できめます。そういたしますと、まあまあの話合いは結局強制権力の執行で、事実上は許諾されますから、まあまあの話合いは存立並びに成立の余地が全然なくなつたにひとしいと思うのであります。こういう点でひとついま少し明確なお確かめをしておきたいと思うのです。
○根道政府委員 ただいま軍が駐留のために必要とする要求が度を越えておる場合はどうであるかという第一点の御質問でございましたが、もちろん日本政府といたしましては、日本国の利益を先に考えるのが当然でございます。もちろん国民の利益を考える点は当然でございます。そのためにこそ合同委員会においても日本が完全な独立自主の国として対等に対応する必要があるのだと考えております。その際にたとえば日本全国民を流浪の民にするような、あるいはそこに至らぬでも、そういうような印象を与えるような日本の不動産の提供というものは、私は決して行わるべきものではないと思うのであります。そのときには私は日本国民というものは存在せぬも同様であると思うのであります。そういうような場合は、現実問題といたしましても、事務を扱う私どもの目からも存在し得ないことだと予想しております。また強制云々という問題がございましたけれども、強制はできるだけ避けたいのであります。不動産の提供、その提供に対する価格の補償というような問題につきましても、できるだけ納得ずくで行くという建前をとることはもちろんであります。アメリカ側の要求があつたから、ただちに日本政府側においてこれを強制してまでやつてのけるということではございませんで、この場合には日本内部の事情をまず第一に取入れまして、合同委員会において日本政府の考えを十分に述べなければならないのであります。しかしながら軍の駐留の必要上どうしても必要であるということを、その委員会において日本側としても納得しなければならぬような客観的な事態がありますならば、それは同調しなければならぬだろうと思います。しかしながら、いずれの場合におきましても、今言われましたように、非常に広い範囲のものが行われるということは、私どもといたしまして現在のところとうてい想像いたし得ないような状態であります。
○松本委員長 加藤君にお願いしますが、時間がたいへん遅れて参りましたから、なるべく重複を避けて御簡潔にお願いいたします。
○加藤(充)委員 広い地域に全面的に土地等の収用または使用が行われることは避けなければならない、そういう希望である。こう言われたのですが、私は現在演習地あるいはその他の必要のために、その地域で土地を生活の基礎にし、あるいは海面を漁場として生活の基礎にしている相当多数の人たちに対して、陸地の接収ないしは海面の接収が一方的に行われている事実をここに指摘しなければならないと思います。こういう点が出て来るのであるならば、第三条に適正かつ合理的なときに限るというようなことがあつても、この法案が全面的に通過いたしまする場合においては、先ほど指摘したように、国民としては量的にも質的にもまことに不安にならざるを得ない。またこの法案は、国民の不安を押し切つても米軍の防衛の利益のために土地その他の物件の使用収益を供出しなければならない、こういうような趣旨である。そういう趣旨以外には解釈ができないと思われたので、その質問をしたわけであります。 そこでお尋ねいたしますが、なるべく話合いということですが、この法案の条文を見ますと、そういうような米軍の意思表示があつた場合においては、調達局長も、また内閣総理大臣も、それぞれ遅滞なく認定の通知を出さなければならないということなのであります。その間に自主的の話合いの余地は、いわゆるノー・スピーキング的にないのではないか。その点が一点と、もう一つは、収用等の認定の効力は、その通知が所有者その他の利害関係人に到達したときに発生するものだと思います。そこでお尋ねいたしますが、日本人としては生活の基礎を失うというたいへんな問題が出て来る。それも権力で天くだりで押しつけて、得心が行かない。りくつばかりの得心ではなしに、それ自体から見て、これはどうも承諾しにくいというような場合が多々予想されると思うのであります。その場合に刑事特別法の不法侵入罪あるいは不退去罪が働く時期はいつか。そうすれば権力で土地財産を取上げるばかりでなしに、そのすぐあとには今度日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法案が通過の見込みで出されておりますけれども、こういうようなことになるとまつたく踏んだりけつたりになつてしまう。私はその点で今の点をお尋ねしたいのですが、遅滞なく通達しなければならない、その通達が出たときに、到達と同時に刑事特別法等の罰則、制裁が働くことになる。そうすれば先ほど来質疑の間で確かめられたような事柄が、実際上はへのつつぱりにもならないのではないか、こういうことをお尋ねしたい。
○根道政府委員 先刻来申し上げました通りに、米軍側において直接不動産等を調達するという場合はないわけであります。この法案の趣旨は、日本政府が条約上の義務に基いて、またその結果の話合いによりまして、駐留軍のために必要として提供するものは日本政府がみずから調達してこれを提供するのである。日本政府が明白に正当の手続をふんで調達する以前におきまして、駐留軍が気ままなことをするということは私は想像いたしておりません。
○加藤(充)委員 どうも私が聞いたことについての答弁になつたようなならないようなことなんですが、表からは本法案は強制権力で収用する。そうしてその手続は、少くとも国内法的に法が規定しておる面からいうと、きわめて迅速かつ容赦なしに行われる。同時にその一片の通達で効力が発効する。発効すれば、先ほど指摘しました刑事特別法で、そのときからもう不退去罪あるいは不法侵入罪というものがあつて、国内の刑罰に比べて一段と苛酷な刑罰が規定されておるということになれば、あなたの御説明や希望では、得心しろといつたつて得心できないのはあたりまえではないか。こういうことを私は指摘したいし、また今の答弁ではそのことが何ら解決されておらないと思うのであります。時間の関係もありますから質疑を進めますが、大体所有権者などの、原状回復義務と、それからまた原状回復をしてもとうてい原状回復の利益が上らないというような場合においては、その損害の穴埋めを賠償請求権ということでいたすのであります。そうして同時に原状回復義務と損害賠償請求権とは、やはりその権利主体の選択的な行使によつて私は確保されていると思うのでありますが、この法案の中身を見ますと、もう原状回復ということが全面的にはずされてしまつて、損害賠償で泣寝入りしろというような体裁になつています。これは所有権の著しい侵害であり、蹂躙である、憲法に保障された財産権というものをこの法案は蹂躙しておると私は思うのであります。しかも損害賠償の具体的な場合におきましては、何らかおつかぶせ的にこの規定があります。有効かつ合理的に使用することができる場合は原状回復の義務がないということをいつておる。裏からいうと原状回復請求権がないことになる。それから有効かつ合理的に使用することができると認めるときは、だれが認めるのかが問題であります。しかもこの物件の価値、権利の価値というものは、主観的な価値、客観的な価値、もつと基本的に言うならば使用価値、交換価値というような問題が出て来ます。そのほかにその物件自体の判断だけじやなしに、その周辺の環境的な、社会的な、この総合的な判断から見まして、価値の増減というものが具体的には問題になるのであります。こういうような万般の各条件を前提にいたしまして、損害賠償の額あるいは損害賠償請求権の成立ということが考えられるのであります。有効かつ合理的に使用ができる場合には原状回復の義務がない、損害賠償だけが残される、損害賠償というようなものは今申し上げましたような形で、結局現実の場合においては何にもならない。床の間が便所になつたからといつたつて、この辺にりつぱな道路ができたじやないかというようなことになつて、その土地が上つた、利用価値一般が社会的に増加した、総合的な判断においては床の間が便所になつたというだけでは具体的な損害とは言えないじやないかということになつてみれば、何のことはない、使つただけで返してしまつて、それであとは泣寝入りということになつてしまうのではないかと思われる余地がこの法案の中に多分に組み入れられておりますので、その点いま少し具体的に御説明を承りたいと思います。
○長岡政府委員 ただいまの点は先ほどもちよつと触れたのでございますが、便宜のために現在までやつております実情を御説明申し上げますが、家なり土地が解除になりまして、その補償の問題につきましては、従来どういうことをやつておるかと申しますと、価値減を見ております。どういう損害が起きて、その建物の価値がどのくらい下つておるかということを見まして、しかもそれだけではとうていいかない、日本人が住むとすれば、どうしても手を入れなければいかぬ。価値減だけを見たのではいかぬという場合には、その手を入れます費用を見積りまして、価値減とその金額とを比較して多い方を補償いたしておるのであります。本法におきましては原状回復をいたすのでありますが、たとえば応接の座板が張つてあるけれども、前の座板と違う、それも目的に使われぬというようなことなら別でございますけれども、まずまずその家に相応したものであつて、元のほどではないけれども、使われるという場合には、わざわざそのものをこわして、元と同様なことをしなくてもいいじやないか、そのときに価値が減つておるならば金銭で補償する、こういう意味を規定いたしたのでありまして、先ほども申し上げました通り、ただいま御指摘の通り、なるべく払うまい、文句をつけて補償はしないという趣旨を盛つておるわけでは毛頭ございません。むしろかような規定を設けましたことは、かくかくしなければならぬということで事務を行います者が縛られる部面が多いのであります。かような場合になるべく損失を補償し、迷惑をかけないようにしたいというのが根本の趣旨でございます。
○加藤(充)委員 収用の場合は所有権そのもの、権利そのものが他に移る場合でありますから、私はここで質問は省略いたしますが、この使用の場合は所有権そのものの移転を必ずしも実質的に含むものではない、こう思いますので、この点についてだけ質問をいたします。大体使用の場合はちようどあの戦争時代の強制借上げというような場合の実体を持つものだと思うのですが、あれでも結局においては形式は強権の発動でなしに、任意的な自主的な契約意思に基いた借上げということになつておつたようであります。しかし買上げの場合においては、同時に本件の使用の場合においては、所有者の意思を離れて、返してもらつてもしかたがないほど原状を量的に質的に徹底的に変更をしてしまう。これは今の民法のあるいは国内財産法の関係から言うと、私は否認されておることだと思います。第九条に建物の形状を変更して従来用いた目的に供することが著しく困難になつてしまつたような場合においては、建物の所有者はその建物の収用を請求することができるという規定があります。しかしながら先ほど申し上げましたように、建物の所有者の意思を離れて借上げたもの、あるいは一時使用する権限を強制力によつて与えられたものが、かつてに、無制限にやるということになりますれば、この第九条の「建物の収用を請求することができる。」というような規定は実際上あつてないようなものであつて、結局建物の収用と使用との実質が何ら異ならない。逆にいいますと、使用という形で収用と同じ実体を行い、しかもその補償などについては、収用ですから賃料の具体的な支払いという形で分割払いになりましよう。期限に払うことになりましよう。さすれば、こういうような権限の中身を第九条できめておりますれば、一思いに殺すなら殺してもらつた方がいいので、殺すか生かすか、なま殺しにしておくというような規定は国民にむしろ重大なる不安と、被害を与えるものではないか。第九条の規定はこの意味において所有者をこばかにした規定の趣旨に解釈されると思うのですが、その点はどうなりますか。
○長岡政府委員 御指摘のような場合に、初めから建物を非常にちやちやむちやにしてしまうというようなことが予定されておりますならば、それはもちろんそのときから収用すべきものでありますが、現実にそうでなくて、形状が変更された、こういう事実が起りました場合に、この規定を設けましたのは、むしろ所有者の権利を擁護いたしますために、当然買取りを請求される前の使用、今御指摘になりました通りに使用といいながら、これは買取らなければいかぬということを権利として主張はできる。そのときには買わなければならぬということで、権利者の権利を擁護するつもりで規定いたしたものでございます。
○加藤(充)委員 初めからちやちやむちやにぶちこわす意思で借上げる場合は別だ、こう言いましたが、初めからやつても途中からやつても、権限に基いた使用の期間において、所有者の意思を離れて、返してもらつてもしようがないというような状態にまで徹底的に原状の変更を量質的にやつてしまうというような権限が、借上げた者、使用権を持つた者に与えられるということになれば、私のただした不安はあなたの説明や答弁では解決されません。初めにやつても、途中でやつても、返す前日にやつても、とにかく適法な使用権のある間に、所有者の意思と離れて、先ほど来繰返すように、返してもらつてもしかたがないほどの変更を使用者の権限としてやれることになつてしまうならば、私の不安は解消されないと思います。今までお尋ねした点について、民法の四百八十三条の精神なり原則は、著しく蹂躙されてしまつておるのであります。しかしこの質疑は一応これで打切りまして、次の点に移ります。 第十二条は、収用や使用の認定そのものについての不服の申立てができるのかできなしのか、できそうにもないような規定になつておりますが、それでは不当ではないか。財産権の明らかな侵害になるのではないか。ただ損害などについてごちやごちや申し上げることができるというような不服の申立ての道を開いたのでは、不服の申立ての開き方が不十分きわまる。しかたがないからここらへ憲法違反になる問題を巧みに解決する形で一条入れておこうではないかというずるい考え方しか持たないと思うが、その点はいかがですか。
○長岡政府委員 十二条はさような図太い考え方で入れた規定では毛頭ないのでありまして、実は収用いたしますときには、収用委員会にかけましていろいろ決定を見るのであります。この十案は、返しますときにわれわれ事務を取扱います者が、これでたくさんだ、これだけ補償すればよいのだといつて押しつけがましいことをやるのではない。話合いがつかないときには総理大臣まで訴えて、さらに考慮されるという意味で書いた規定でございます。
○加藤(充)委員 先ほど尋ねるのを漏らしましたが、必ずしも重要なことではありません。条文の規定の上から言うと明らかなようにもなつておるのであります。がしかし、反面明らかにしておく必要があるのでお尋ねいたしますが、そういうような使用または収用の地域、あるいは物件の表示というようなことが現実にされるのかどうか。よく役場などの前に何番地土地何坪というような表示があり、あるいは何番地の地上物件何々というような表示があつても、さて現実に参りますと、その地境がはつきりいたしません。土地の地境というものは往々にして不明確なものであります。山林などに至りますとなおさらであります。さる場合に、出先の軍人がかつてにここまでだというような地域の表示を、あるいは物件の表示を拡大して立てたり、あるいは表示というものが法的に文書によつてなされる場合、現地に表示をすることが善意でされ、しかも間違いのない場合はいいが、善意でも間違いがあつた場合、あるいは文書では明らかでない場合、事実に反するようなことを逆に悪意でやられているような場合が必ずしもないと断言できないのであります。そういうような表示のやり方、あるいはその表示の形式、手続というようなものについて承つておきたいと思います。 それからもう一つ、時間がありませんので急ぎますから、まとめてこの際お尋ねしてしまいますが、附則の第二です。従来連合軍最高司令官の要求に基いて使用し、現に使用している土地等で、法律の施行の日から九十日を経過した後、なお引続いて使用する必要があるというものについては、さらに六箇月を越えない期間において一時的に使用することができるということが書かれております。それでこの際、この規定は民法の原則から言うと、やはり主権のきわめて重大な侵害になつておる。普通の取扱いだつたらば、大体施行の日から九十日もたてばもう返してもらわなければならないのに、なおそのほかに六箇月使わさなければならないというような規定をこの法律で押しつけるということは、民法の原則、私有財産の保障の点から見ていかがかと思われるのであります。その点が一点。 それから六箇月を越えない期間において一時使用することができるという規定の性質は、これでその間にさらに必要だというようなことで、そうしてこの収用または使用の認定が下されて、結局元のもくあみというようなことになつてしまうのであるならば、一時的に使用することができるという規定の意味は実際上はなくなつてしまうかと思うのでありまして、法律の建前から、一時的に使用することができるという規定は、あくまでその規定の持つ字義とその規定を入れた意図というものが貫かれなければならないが、結局言うと、九十日たち、さらに六箇月たつた場合においては、そのときには返してもらうという実体裏づけがなければ、附則第二は、これもほとんど有用の場合が考えられない、無用の規定ではないか。何のことはない、結局還付されるという実体はこれでつぶされて行つてしまうのではないかと思う。 それから附則の第六で「政令で定めるところにより、収用委員会に対し、裁決を申請をすることができる。」という規定がありまするが、ここでお尋ねしたいのは、「政令で定めるところにより、」というのは、その収用委員会に対して裁決を申請する手続だけについてのことなのか。あるいはよく行われておりまするように、この種の損害については大体どのくらいとか何ぼ何ぼ越える場合においてはその何割とかいうようなことまで、すなわち補償の内容あるいは項目あるいは数額というようなものまで政令できめるのか、この点を明らかにしていただきたい。それでさらに意見を附加するならば、手続だけのことについても問題が残りますが、これはまあまあでありましようが、あとに述べましたような補償の内容や条件や数額というようなものまでも政令できめるということになりますと、これは政令にゆだねるべからざるところのもの、すなわち意見の白紙的な委任状を政令に与えたということになります。そういう点で確かめておきたいと思います。
○長岡政府委員 お答え申し上げます。第一点の、どこからどこまで使うのだとか、役場の告示板にいいかげんな告示をしてそれで済ますのではないかというような御懸念の点でありますが、第七条にも規定いたしておりますが、さようなずさんな手続をいたすつもりは毛頭ございません。従来とても、軍が接収地域を指定して参りましたときに、現地の市町村なり関係方面との御協力も得まして十分に調査いたしまして、関係の向きにお知らせして措置いたすことにいたしておつたのであります。今後ともその手続を粗略にいたす考えは毛頭ございません。 それから附則第二項の、六箇月一時使用を許すということがいかぬじやないかという御質問でございますが、これは現状におきまして、予備作業班等で、解除になりますものの手続を実態についていろいろ打合せております。講和条約が発効いたしまして九十日たつて、なお、出るに出るところがない。軍の方においてもなるべく早く解除したいという気持を多分に持つておることはわかるのでありますが、これがためには引越す場所その他の準備がいりまするので、早くあけて引揚げるということが事実上非常にむずかしい場合がございますから、この間の契約をいたして参ります手続に要する日数と、かつ、六箇月間ありますならばそういう問題も大部分解消するであろう、こういう意味からこの規定を設けた次第でございます。理論といたしましては、話がつかない、しかしどうしてもいるということになりますれば、あらためて本法に規定いたしております手続をとらなければならぬのでありますが、この意味は、契約が穴があきましてもかえつて所有者にも迷惑をかけることになりますから、この契約につきましては、権利者の権利を擁護することに十分努めるのでありますが、ただいま申し上げましたように、六箇月間で大体話もつき引揚げの見込みもつくであろうという意味で、この規定を設けた次第であります。 それから六項の政令の定めるところ云々につきましては、これは御指摘の通り手続だけの問題でありまして、ここでごまかして内容のひどいものをきめるというようなことは毛頭考えておらぬ次第でございます。
○加藤(充)委員 私は、本法案と関連した意味合いにおいて、アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律案の第二条、第三条、それから第四条あたり質問をしたいのでありますが、これはどこの委員会にまわつておりまするのか、あまりさしでがましくなりますからきようはやめておきます。しかし私どもがいろいろ検討いたしましても、これはずいぶんひど過ぎると思うのです。大臣がおらないから、事務当局に質疑してもいたし方ないと思うのですが、こういうひどいことは結局行政協定というような重要な国民の権利義務に関する問題——単に米軍の駐留やその所在等についてきめるという安全保障条約の第三条に基く規定以外のものが行政協定にきめられておる。しかもその行政協定という形式が、アメリカの慣例に基いて、アメリカでは国会の承認を要しないというようなことを不届きにも日本に押しつけ、また自由党の吉田政府がこれを甘んじて受入れました結果、国内法との関連にまつたくつぎはぎだらけの、憲法に抵触してしまうようなことを無理してこじつけて行かなければならない。すなわち国内立法体系といたしますれば、木に竹を継いだようなひどいものが随所に出て来ておる。日米間の安全保障条約に基く行政協定の実施に伴うという題目つきで幾多の諸立法がなされておる。これは大きな汚点であります。この法案についてもそういう点が簡単に見ましただけでも明らかに表に出て来ておるのでありまするが、私どもはこのように憲法に違反し、とりわけ国民の憲法で保障された私有財産権というものを蹂躙するような立法には、国民の権威としても賛成するわけに行かない。法律上はこういう立法は不法かつ不当なものであるという結論を今の答弁によつてますます明確に持つたわけであります。詳細の点についてさらに具体的な質疑を重ねなければならないと思いますけれども、今、法務委員会が始まつておりまして、発言の順番になつておりますから、私の今日の質疑はこれで打切ります。
○松本委員長 本法案の連合審査会はこれをもつて終了いたしました。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時二十三分散会