P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
12回国会参議院1951/11/09

本会議 第15号

発言数
60
登壇者
19
会派数
4
開催日
1951/11/09

会議録

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。一昨日小串清一君から大蔵委員長を辞任いたしたいとの申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。      —————・—————

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) つきましては、この際、日程に追加して、常任委員長の補欠選挙を行いたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。

木村守江自由党

○木村守江君 只今の常任委員長の補欠選挙は、成規の手続きを省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。

菊川孝夫日本社会党

○菊川孝夫君 私は只今の木村君の動議に賛成いたします。

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 木村君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長は大蔵委員長に平沼彌太郎君を指名いたします。(拍手)      —————・—————

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国会の審議権尊重に関する決議案(飯島連次郎君ほか二十六名発議、委員会審査省略要求事件)を議題といたします。  本決議につきましては、飯島連次郎君ほか二十六名より委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明の発言を許します。飯島連次郎君。     —————————————    〔飯島連次郎君登壇、拍手〕

飯島連次郎緑風会

○飯島連次郎君 只今議題となりました国会の審議権尊重に関する決議案の提案理由を発議者を代表して御説明申上げます。  決議案の趣旨は、米麦の統制の改廃について、政府に対し、国会における審議権の尊重に関し遺憾なきを期せしめんとするものでありまして、発議者といたしましては、去る六日に提出の準備を整え、七日の本会議に上程を願うことを期待いたしておつたのでありますが、七日の新聞の報道によりますと、その間、情勢が急変し、時間的にいささかズレを生じたような感じもないではありませんが、(「その通り」と呼ぶ者あり)併し今回のような不見識をあえて行わんとした政府のことでありますから、今後に備えて本案のような決議の必要いよいよ痛感しておるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)  先ず決議案を朗読いたします。    国会の審議権尊重に関する決議案   政府は今回米麦の管理統制の廃止を決定し、麦類については明年一月一日を期し、米については四月一日から実行せんとする意図のようである。   麦類の管理統制の廃止については、現政府は第十回国会に食糧管理法の一部を改正する法律案を提出したのであるが、その成立を見ることができなかつたため、管理統制の廃止を中止し、従前に引続いて統制を行つて今日に至つているのであつて、民主政治の下においてはまさにかくあるべきである。   そもそも、現在行われている米麦の管理統制は食糧管理法に基いて行われ、この法律は、制定以来、数次の改正にもかかわらず、なお重要な事項が大幅に命令に任せられており、いも類及び雑穀等の管理統制はこの委任命令によつて廃止せられたのであるが、事苟しくも米麦のような重要食糧の管理統制の改廃については、国会の審議権を尊重して法律の制定改廃の方法によつて実行すべきである。   しかも今回政府が企図している米麦の統制廃止は、食糧事情が安定したとの見解を前提としているが、前提條件そのものに大いに議論が存するところであつて、これは政府がこの方針を発表するや世論のごうごうたるに徴しても明らかである。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)かかる事実こそ、国会の愼重なる審議を経てその判断に従つて事を決することを愈々必要とする所以である。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)   かような事情にかんがみ、政府は米麦の管理統制の改廃を行わんとするときは、如何なる場合においても、必ず食糧管理法の改廃その他これに関連する法律案を国会に提出して審議を求め、その決するところに従つて措置することとなし、苟しくも独善に事を処し、新憲法下民主政治に背反することなきを期すべきである。  右決議する。    〔「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手〕  以上、提出の趣旨は極めて簡単明瞭でありまして、決議案によつて十分おわかりのことと存じますが、いささか蛇足を加えたいと思います。  戦争戦後に亘つて長い間主食の統制が行われて来ているのでありまして、この統制に対し、今や各方面からいろいろな批判が加えられておりますことは御承知の通りであります。併し、事、主食に関する限りその取扱は一刻もゆるがせにすることができないのでありまして、従つて主食の統制の改廃につきましては、愼重の上にも愼重を期し、いやしくも遺漏があつてはならないと考えられます。  かような見地から、過般政府において麦類の統制廃止を計画して、これがために必要な法律案を第十回国会に提出したとき、当院におきましては愼重審議の結果、大勢は未だその時機にあらずとの結論を以て、提出法律案は成立するに至らず、麦の統制廃止を中止したことは記憶に新らしいところであります。ところが過般政府は突如として、近い機会に米の統制を廃止することを決定し、これを発表いたしましたところ、果せるかな世論は騒然として大きな波瀾を起しているのであります。これに関し伝えられるところによりますと、政府は本年産米の供出後の自由販売を企て、すでにその意図の下に工作を進め、事実を先行せしめんとする下心もあり、更に又、場合によつては食糧管理法を自己に便利に解釈して、行政措置によつて統制を有名無実化し、実質上統制が廃止せられた状態になさんとする意図もあつたようであります。尤もこれらの計画はジヨセフ・ドツジ氏の来朝によつて大揺れに揺れ、問題を一応白紙に還したとは言え、未熟な計画を担ぎ出して、全国民を不安と混乱に陷れた政府の責任は重大であります。(拍手、「その通りだ」と呼ぶ者あり)併し、米麦の統制改廃のような重大な事柄が、單に政府の一方的な見解によつて行政的に措置されることになれば、これはまさに一大事でありまして、(「不都合だ」と呼ぶ者あり)新憲法とか、或いは民主政治などと言つても、これは一片の空念仏に終ることになるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)かような点を心配せられたのでありましよう。去る十月二十六日、社会党の小林孝平君は本議場において緊急質問によつて、政府は米麦の統制廃止を命令を以てしてでもこれを断行する意思ありや否やを吉田首相に確かめられたのであります。然るにこの質問に対して吉田首相は明答を避けられ、又根本農林大臣の答弁からは遺憾ながら要領を得ることができなかつたのであります。かくいたしまして、政府の態度方針は極めてあいまいでありまして、或いは自己解釈によるワンマン振りが発揮されるのではないかと、国民はひとしく懸念しておるところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)果してかようなことがありといたしまするならば、法律の誠実な執行者たるべき政府の責任は無視せられ、民主政治は全く蹂躪され、新憲法下、我が国憲政上、拭うことのできない汚点を残すこととなりますので、ここに鑑みまして、我々は政府において米麦の統制を改廃せんとするときは、如何なる場合においても、食糧管理法の改廃、その他これに関連する法律案を国会に提出してその審議を求め、これが決するところに従い、いやしくも独断的な間違いを起すことのないよう、転ばぬ先の杖として、政府に対して厳重な警告を発しておく必要を認め、本決議案を提出することといたした次第であります。(拍手)かかる提案に対しては、国会議員としては、恐らく與党、野党を問わず、全員の御賛成を頂けるものと信じております。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)新憲法下、国会は儼として存在しているのでありまして、この事実を確認せられ、更に全国民から国会に寄せられた期待を裏切ることのないよう、全会一致の御賛成を切望いたします。(拍手)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 本決議案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。山本米治君。    〔山本米治君登壇〕    〔「男を下げるなよ」「賛成しろ」「にこにこ笑つている場合じやないぞ」と呼ぶ者あり〕

山本米治自由党

○山本米治君 只今上程されました決議案に対し、私は自由党を代表いたしまして反対の意向を表明せんとするものであります。  お断わりするまでもなく、本決議案の看板たる国会審議権尊重という事柄、その事柄自体は当然至極なことでありまして、これに対しましては全員賛成であることは勿論でありますが、(「それじやいいじやないか」「あとは要らない」と呼ぶ者あり)ただ、いま米麦の統制撤廃問題と関連させてかかる決議案を通過させんとすることに対して反対であるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)  先ず第一に、本決議案の冒頭には、麦類については明年一月一日を期し、又米については四月一日から統制の廃止を実行するということが前提されておるのでありますが、本問題につきましては、今日までいろいろないきさつはありましたにせよ、(「いきさつは要らない」と呼ぶ者あり)この前提そのものは今や実際と違うのであります。(「何が違うのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)一昨日の政府声明にもありましたように、(「尊重々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)政府は各般の條件が整い次第、米の統制撤廃を実施する方針ではありますが、その方法及び時期につきましては、統制撤廃の影響、供出の進行状況及び米の輸入状況等を十分に勘案いたしまして、今後検討の上決定するというのであります。(「おかしいぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)又、大麦、小麦の統制廃止は主食の配給総量をも勘案いたしまして、別途成案を目下準備中と言つておるのであります。(「米屋の番頭か」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、笑声)なお、米の供出量は例年通りの規格により二千五百五十万石とし、配給は供出が完了して統制撤廃の機が熟するまでこれを継続するというのでありまして、どこにも特定の時期を指定しておりません。(「その通り」「総理大臣はこの席で何と言つた、忘れたか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)然るに統制撤廃の時期を勝手に予断し、(「誰が勝手に予断したか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)今ここで本決議案を議決せんとするがごときは、国会の審議権尊重に名をかりて、実は何らか他の目的を追求せんとするものではないかと疑わざるを得ないのであります。(「名をかりたとは何だ」「取消し」「取消せ」「懲罰」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)  次に、本決議案の背後には(「懲罰だぞ」と呼ぶ者あり)明らかに提案者自身の統制廃止反対の意向が隠されており、而もこれを国民の大部分が統制撤廃に反対しているかの口吻を以て弁護しているのであります、(「ノーノー」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)この点につきましては、我々は異見を有しておるのであります。(「国会議員をやめろ、君は」と呼ぶ者あり)もとより国民の一部には、或いは心の底から、或いは又誤解若しくは煽動に基きまして、統制廃止に絶対反対している向きもありますけれども、国民の大部分は、少くとも原則的には、最近食糧の需給はほぼ安定し、嘘と弊害の多い従来の食糧(「撤廃賛成」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)統制はもはや撤廃すべき時期に到達しているものと認めており、ただその時期について多少見解の相違があるというのが実情であります。(「議員をやめ給え、議員をやめ給え」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)実際、主食を運ぶ闇商人が白晝公然と横行し、闇米を買う各家庭の違法行為が純真なる子供らの目の前で平然と行われているという、こういう状態は一日も早くこれを解消しない限り、国民の遵法精神は遂に永久に(「そうだぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)麻痺してしまうことを惧れるのであります。(拍手)併しながら、何分にも久しく行われて来た重要統制でありますから、これを撤廃するに当りましては、よほどそのやり方を愼重に考慮する必要のあることは申すまでもないのであります。(「国会の審議権を尊重」「誰が慎重にやらなかつたか」「政府じやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)そこで、政府も主食の統制撤廃を原則的には決定しながらも、その時期と方法とについては未だ最後の断を下しておらないのであります。かかる際、国会の審議権尊重というがごとき当然の事理に隠れて、間接に(「何が当然だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)統制撤廃反対の意向を、而も国会の名において議決せんとするがごときは、誠に国民の気持を昏迷に陥れ、又不必要な摩擦を誘発するものと言わざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  なお最後に、御承知のごとく現行の食糧管理法によりますれば、食糧の統制撤廃は委任命令で以てこれを行い得るのであります。現に「いも」類及び雑穀の統制廃止は命令によつて行われたのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)故に米麦の統制撤廃も命令によつてこれを行うことは、法律上何ら違法ではありませんけれども、(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)事、重要食糧に関する問題なるが故に、特に法律の制定改廃の手続をとるべしというのが本決議案の趣旨であります。(「議員じやない」と呼ぶ者あり)これは一応尤もなことでありまして、たとえ法律が命令に委任しておる事項でありましても、できれば法律的手続をとることが原則的にはより民主的であり、より望ましいと言えるでありましよう。この点は政府も了解しておるところでありまして(「帰つて相談しろ」と呼ぶ者あり)現在政府は、米麦の統制廃止を命令で行おうということを決定したわけではありませず、今後といえどもこの態度に変りはないものと確信しております。然るに米麦の統制撤廃はこれを命令でやるものときめてかかつて、今からこれに対する決議をするがごときは甚だ軽卒であります。(「その通り」「おかしい」「それに違いない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)更に一歩を讓つて、仮に政府が命令でやつたといたしましても、これを以て直ちに国会審議権の軽視であるとか、非立憲的な態度とか言うことはできないはずであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)なんとなれば……(笑声)元来法律が一部の事項を命令に委任しているのは、事と場合によりましては、そのほうが却つて便利乃至妥当であると、ほかならぬ国会の審議権がこれを認めた結果だからであります。然るに、国会の審議権の決定通りに実行することを以て審議権の軽視であり、非民主的なりと言うならば、それは甚だしき自己矛盾であり、これこそ国会審議権に対する侮辱であります。(「やめろやめろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  そこで私は、本決議案の提案者に対して御注意を申上げ、(「その通り」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)且つ一つの提案をいたしたいと思います。(「提案者そつちだ」と呼ぶ者あり)即ち御承知のごとく、この極り決議案は仮に通過いたしましても、(「向うを向いてやれ」と呼ぶ者あり)それは十分尊重さるべきではありましようけれども、法律的拘束力はないのであります。(「提案者そつち」「左のほうを向いてやれ」「向うを向いてやれ」と呼ぶ者あり)従つて……(笑声)従つて……(笑声、拍手)従つて……(笑声)主食の統制撤廃を是非とも法律で以てやろうというならば、このような姑息な決議案を撤回いたして、そうして統制撤廃を命令に委任してはいけないという趣旨の法律の改正案、又は新法律案を提案して、堂々とこれを通過さすべきであると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  以上述べましたような理由によりまして、私は本決議案に反対するものであります。(「つまらないことを言うな、笑われるぞ」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 三輪貞治君。    〔三輪貞治君登壇、拍手〕

三輪貞治日本社会党

○三輪貞治君 私は日本社会党を代表いたしまして、「どつちのどつちの」と呼ぶ者あり、笑声)只今議題になりました「どつちだどつちだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)国会審議権尊重に関する決議案に対し賛成の意を表明するものであります。(「どつちだどつちだ」と呼ぶ者あり、拍手)主食の……(「どつちだよ」と呼ぶ者あり)統制撤廃の問題は、(「右か左か、どつちか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)今国会当初の総理大臣の施政方針演説においても明らかでありまするように、内政問題中の重要施策として取上げられておつたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)然るに政府において十分な準備と確信に欠け、而も閣内における重大な意見の対立等がありまして、遂にドツジ氏をして納得をせしめるに至らず、徒らに国民を不安動揺の渦中に省き込み、(「その通り」と呼ぶ者あり)蔽うべくもない失政の醜態を内外にさらす結果となり終つたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)黙つて聞きなさい。併し七日の政府の声明を見まするに、「情勢が整い次第、統制を撤廃する」とあるのであります。なお又記者団会見におきましても、根本農林大臣は、麦は既定の方針通り一月からこれを撤廃する。又大蔵大臣は米は四月から撤廃できるであろうと言つており、なお又岡崎官房長官は、多少これと食い違つた新聞記者団会見の記事が昨日出ておるのであります。かように考えて見ますると、決してこれは我々(「吉田内閣退陣」と呼ぶ者あり)七日の声明を以て安心できないのであつて、窮鼠却つて猫を噛むという諺もありまするからして、この一旦手負い獅子になつた政府が、如何なる方法でこれを断行するかということは、我々の予断を許さないところであるわけであります。(「内閣総辞職」と呼ぶ者あり)更に我々の不安でありますことは、政府はドツジ氏の一喝に対しましては、実に従順猫のごとくであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)併しながら国民の囂々たる反対輿論、(「勝負あつた」と呼ぶ者あり)国会の意思等に対しては実にいわゆる内弁慶の強引さを発揮されることしばしばであります。(拍手)そこで我々は決して油断ができないのであります。野党が決議案を上程するに至りましたゆえんもここにあるのでありまするし、なお又山本君が言われたごとく、当然過ぎるほど当然なこの問題を特に決議しなければならないところのゆえんがそこにあるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)なお又最近政府によつて、或いはその袖の下に隠れた勢力によりまして、非常に国内に独裁フアツシヨの傾向が萠芽しつつあるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)先に政府は麦の統制撤廃を企図されまして、過ぐる第十国会に食管法の一部改正案として提案をされました。併しながらこれは飯島君から御指摘のございましたように、本院におきましては、圧倒的な多数を以て葬むり去られましたとは諸君の記憶に新たなるところであります。  然るにその後政府は諸般の事情が何ら当時と変つていないにかかわりませず、この統制撤廃の措置を、本院の反対を予測し、或いは囂々たる世論を察知いたしまして、場合によつてはこれを行政的手段によつて行わんとするがごとき傾向のありますることは甚だ遺憾に堪えないのであります。ちなみに、これをば食管法において見まするに、いわゆる該法の第三條におきまして、米穀、大麦、裸麦、小麦、甘藷、馬鈴薯、又は雑穀の生産者は「命令ノ定ムル所二依リ其ノ生産シタル米麦等ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」云々とあるのであります。恐らく政府はこの法律に基きまする授権命令として、或る場合には政令で事実上の統制撤廃を行わんとする意図もあるであろうと思うのでありますが、かかる措置は憲法に規定するところの法律を誠実に執行すべき内閣の断じてとらざるところでなければならんのであります、先に飯島君も言われましたように、先日この議場におきまして我が党の小林孝平君がこの問題に触れて質問したのに対して、根本農林大臣は次のような答弁をされておるのであります。即ちその一部をここに御披露申上げますると、「現在の食管法の建前からいたしまして政令に委ねている点が多いのであります。従つて政令でなし得るという解釈は是認できると思います。」云々と、現に根本農林大臣はここで答弁をされておるのであります。勿論この法律は昭和十七年二月二十一日の法律第四十号を以て公布されたものでありまするから、いわゆる戦時立法であります。従つて極めて重要な部分を大幅に命令に委任しておることは勿論であります。(「法律を改正しろ」と呼ぶ者あり)旧憲法下においては、先に申上げました根本農林大臣の見解は或いは成り立つかも知れませんが、新憲法下においてかような見解は通用しないのでありまするし、又到底許さるべきものではないのであります。米麦等の主食の統制撤廃のごとき問題は、当然これは法律の制定或いは改廃等の手段によつて国会の議決を経て執行すべきものであることは賢明なる諸君のよく御承知のところであります。(「その通りやれよ」と呼ぶ者あり)然るに我々がこの問題に関しまして、一しおの憂慮を禁じ得ないところのものは、吉田内閣が過去においてとつて参りました国会無視の数々の実例を余りに多く(「前科何犯だ」と呼ぶ者あり)知つておるからであります。又この異常に水膨れいたしました吉田内閣を支柱にいたしまして、いわゆる旧支配勢力が古い昔の彼らの支配体制を確立せんとする動きが今日明暗さまざまの形で非常に活溌に行われておるからであります。(「社会党はどうした」と呼ぶ者あり)国会無視の実例を念のために、忘れておられる諸君のために更に挙げて見まするならば、食確法の改正、警察予備隊の設置、又昨年八月の自作農創設臨時措置法の一部改正、農地調整法の一部改正、人事院勧告、或いは国鉄、專売裁定を実施しないあの横暴さ、又七月の国会開会要求を無視しておるあの態度、或いは電気事業再編成令「公共事業令等々、挙げますれば誠に恐るべき国会無視の連続であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)吉田内閣こそは実に国会無視の常習犯なのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  そもそも新憲法はその第四十一條におきまして「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」旨を高く宣言をいたしておるのであります。その意味するところは、第一に、国会は直接に人民の意思を反映する最高の会議体でありまして、三権分立の制度の下にもかかわらず、なお行政権及び司法権に優越することをば明らかに物語つておるのであります。又第二番目には、国会のみが立法権を持つておるのであつて、国会以外に立法行為をなし得るものは存在しないということであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これを言葉を換えますれば、法律を以て定むべき事項はすべてこれは国会の專権に属しまして、政府の命令その他によつてはこれを定めることができないという意味であります。国会の審議権は実に憲法のこの重要なる條項に根拠を有するものでありまして、国会の審議権を擁護しようとする我々の考え方は、即ち憲法を擁護することであり、或いは国会の審議権を無視、蹂躪することは、即ち取りも直さず憲法を無視、蹂躪するということになるのであります。(「誰も無視しやしないよ」と呼ぶ者あり)若し政府が仮に法律に代るべき命令等を濫発いたしまして、これに対して国会が、與党たる自由党の諸君のように、いわゆるワンマンの命ずるところ無條件無批判にこれに拍手を送り、そうして恥じないというならば、日本は再び東條軍閥内閣とこれに拍手を送つた翼賛議会の出現を許すものでありまして、我々の断じて容認し得ないところであるのであります。  かかる憲法蹂躪、国会無視をあえてして、なお且つ米麦統制撤廃を強行しようとするゆえんのものは、内外の情勢を無視して、国民生活の実態から遊離した諸君が、過去の塵の積つた公約を楯にして絶対多数を占める面目を貫かんがためのものであると断ぜざるを得ないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)最近さなきだに民主主義の危機がひしひしと感じられますとき、この問題に関連しまして、政府が国会を無視して国会の審議権を奪い、延いては議会政治を破壞するがごとき暴挙に出でるならば、我々は将来における議案の審議に当りまして、重大なる決意を持たざるを得ないということをば、ここにはつきり明言をいたす次第であります。(拍手)  以上を以ちまして、簡単でありまするけれども、国会審議権尊重に関する決議案に対する賛成の意見とする次第であります。(拍手)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本決議案の採決をいたします。本決議案の表決は記名投票を以て行います。本決議案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れないと認めます。これより開票をいたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕    〔「見えたか」「喜ばしてやるよ」「自由党、米と電気は手をつけるなよ」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百五十九票、白色票、即ち本決議案を可とするもの百十票、  (拍手)   青色票、即ち本決議案を否とするもの四十九票、  よつて本決議案は可決せられました。(「国民の輿論だ」と呼ぶ者あり)      —————・—————    〔参照〕 賛成者(白色票)氏名  百十名   結城 安次君  山内 卓郎君   宮城タマヨ君  溝口 三郎君   前田  穰君  藤野 繁雄君   中山 福藏君  早川 愼一君   野田 俊作君  常岡 一郎君   伊達源一郎君  竹下 豐次君   高橋 道男君  高木 正夫君   鈴木 直人君  杉山 昌作君   西郷吉之助君  高良 とみ君   小林 政夫君  小宮山常吉君   楠見 義男君  木下 辰雄君   河井 彌八君  片柳 眞吉君   柏木 庫治君  岡部  常君   飯島連次郎君  伊藤 保平君   赤澤 與仁君  山崎  恒君   深川タマヱ君  木内キヤウ君   竹中 七郎君  谷口弥三郎君   油井賢太郎君  櫻内 義雄君   三好  始君  櫻内 辰郎君   一松 定吉君  鬼丸 義齊君   中田 吉雄君  村尾 重雄君   小泉 秀吉君  門田 定藏君   清澤 俊英君  赤松 常子君   加藤シヅエ君  若木 勝藏君   三橋八次郎君  原  虎一君   齋  武雄君  上條 愛一君   片岡 文重君  吉川末次郎君   小林 孝平君  山花 秀雄君   松浦 清一君  田中  一君   松永 義雄君 深川榮左エ門君   菊田 七平君  内村 清次君   佐多 忠隆君  小林 亦治君   荒木正三郎君  岩男 仁藏君   伊藤  修君  波多野 鼎君   高田なほ子君  吉田 法晴君   駒井 藤平君  境野 清雄君   木内 四郎君  稻垣平太郎君   森崎  隆君  三輪 貞治君   菊川 孝夫君 小笠原二三男君   須藤 五郎君  岩間 正男君   兼岩 傳一君  千葉  信君   堀  眞琴君  水橋 藤作君   堂森 芳夫君  成瀬 幡治君   重盛 壽治君  東   隆君   森 八三一君  梅津 錦一君   江田 三郎君  小酒井義男君   栗山 良夫君  千田  正君   三浦 辰雄君  松浦 定義君   中村 正雄君  河崎 ナツ君   堀木 鎌三君  松原 一彦君   和田 博雄君  カニエ邦彦君   山下 義信君  矢嶋 三義君   佐々木良作君  木下 源吾君   大野 幸一君  金子 洋文君   岡田 宗司君  下條 恭兵君     ————————————— 反対者(青色票)氏名   四十九名   玉柳  實君  青山 正一君   長島 銀藏君  木村 守江君   宮本 邦彦君  高橋進太郎君   仁田 竹一君  宮田 重文君   石川 榮一君  大谷 瑩潤君   九鬼紋十郎君  深水 六郎君   加納 金助君  平沼彌太郎君   大矢半次郎君  城  義臣君   小野 義夫君  岩沢 忠恭君   中川 幸平君  黒川 武雄君   横尾  龍君  徳川 頼貞君   中山 壽彦君  中川 以良君   松本  昇君  野田 卯一君  大野木秀次郎君  松平 勇雄君   平井 太郎君  山縣 勝見君   安井  謙君  山本 米治君   岡田 信次君  愛知 揆一君   平林 太一君  溝淵 春次君   鈴木 恭一君  入交 太藏君   島津 忠彦君  石原幹市郎君  池田宇右衞門君  大島 定吉君   川村 松助君  山田 佐一君   西山 龜七君  團  伊能君   大屋 晋三君  泉山 三六君   小林 英三君     —————————————

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 只今の決議案に対し、農林大臣から発言を求められました。根本農林大臣。    〔「愼重にやれよ」と呼ぶ者あり〕    〔国務大臣根本龍太郎君登壇、拍手〕

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 政府は常に国会の審議権を尊重して参つたしとは御承知の通りでございます。(「嘘だ」「その通り」と呼ぶ者あり)政府は国会によつて成立しましたところの法律に基く権限りを執行することは、これ即ち国会の審議権を尊重しているものと解釈いたしております。    〔「そうだ」「ざまを見ろ」「議長、議事進行」「議事進行の発言を求めます」「賛成々々」と呼ぶ者あり〕

佐々木良作第一クラブ

○佐々木良作君 只今の農林大臣の発言に対して議事進行の発言を求めます。(「賛成」「反対」と呼ぶ者あり)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 佐々木良作者の発言を許します。    〔佐々木良作君登壇、拍手〕

佐々木良作第一クラブ

○佐々木良作君 只今ここで議決されました決議文は今農林大臣の発言された内容とは全然違つております。(「その通り」と呼ぶ者あり)今の決議文をもう一遍はつきりと農林大臣に読んで頂きまして、そうしてそれに対する所感をもう一遍お願いいたします。形式的な、(「必要なし」と呼ぶ者あり)形式的なこの議会の尊重を言つているのでないこと、あの全文を読んで頂けばはつきりわかることだと思います。もう一遍はつきり読んで頂きまして農林大臣の所見を伺いたいと思います。(拍手、「必要なし」「やれやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 議事進行でありまするので、政府としては発言はございません。    〔「審議権無視だ」と呼ぶ者あり〕      —————・—————    〔小林亦治君発言の許可を求む〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 小林亦治君。

小林亦治日本社会党

○小林亦治君 私は、この際、食糧増産に関する緊急質問の動議を提出いたします。

原虎一日本社会党

○原虎一君 只今の小林君の動議に賛成をいたします。

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 小林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。小林亦治君。    〔小林亦治君登壇、拍手〕

小林亦治日本社会党

○小林亦治君 私は日本社会党を代表いたしまして、食糧増産対策としての開拓行政に関しまして、要望を加えまして政府に御質問を申上げたいと存じます。  政府が最近までに躍起となつて唱えたところの米麦の統制撤廃案に関しては、朝野の間に極めて非難の声があつたのでありますが、国民の声などにはすでに耳の遠くなつた政府が、ドツジさんの意見が政府と対立的であつたためか、この撤廃案について漸くあわて出しているやに見受けるのであります。統制撤廃を恐れる国民の間には、ドツジさんの発言力に期待を持ちまして漸くほつと安堵しているかに見受けられるのであります。私は先ずドツジさんに感謝する前に、かような政府を持つていることにつきましては国民の一人として誠に慨歎に堪えない次第であります。(拍手、「日本人をやめろよ」と呼ぶ者あり)絶対量が不足であり、統制を外した後の操作については何ら確たる行政上の見通しを持たないままに撤廃を断行すると言うに至つては、その政治的に無責任であることは勿論、無謀も参甚だしいと申さなければならんのであります。年間に二千万石に近いところの食糧の不足を補う手段には、貿易増産、つまり輸入にこれを頼るか、国内増産、別して開拓開墾にこれを求めるかのいずれかでありますが、輸入となれば食糧の最も緊要とする非常事態には間に合わず、これを望むべくもないことは勿論、これでは日本農業の発展的可能性を顧みないことになるのでございまして、延いては真の独立を阻害することになりまするので、何と言つても国内増産にこれを期待するのほかはございません。敗戦によつて日本の領土は戦前の約六割に圧縮せられましたが、農耕地の領土全体に対する割合は僅かに一五%でございまして、市街地、道路等の一五%をも差引きまして、なお七〇%近いところの山林と原野があります。この山林原野のうちに約二百万町歩に亘る開墾適地がなお開放せられずにあります。この二百万町歩のうち、その半分の百万町歩を開墾したならば、現在の人口八千四百万が近き将来に一億を超過するようなことがあつたといたしましても、なお食糧の自給が可能であります。これ不可能とするもの若しありとするならば、それは開拓開墾を無條件に否定するか、治山治水の名に隠れて山林地主を擁護せんとするものであるとしか受け取られないのであります。  終戦後における日本の国内改革に若し見るべきものがありとするならば、先ず農地改革を第一に挙げなければなりません。併しながら、そのお手並の結果はどうであつたかということになると、遺憾ながら中途半端のままで、あたかも蛇の生殺しであります。諸外国の農政評論家は、いずれも品を揃えてそのまずさと不手際を笑つている現状であります。その一、二の例を申上げますれば、米英系論者のラデジンスキー氏然り、コーヘン氏、マクマホンホール氏、いずれも口を揃えて同じことを言つているのであります。殊にラデジンスキー氏のごときは、日本の農地改革は日本封建主義に対しては確かに攻撃の一つの手段であつたが、地主勢力は行政力を未だに支配しているほどに侮りがたいものがあるので、占領政策終了の後には又もとのもくあみに逆戻りするのではないかと、かように喝破しているのでございます。これは米英系論者ばかりではありません。ソ連系論者、殊にウイツトホーゲル氏も日本の政府の地主に対する無力を嘲笑つているので、この点ひとり政府の面目などに拘泥せずに、今後における政治家全体として強く反省しなければならないところであります。政府の開拓行政を見まするに、昭和二十二年度は入植開拓が三万戸であつたので、年々増加すべきがこれが当然なんだ。然るにあべこべにだんだんとこれは減らして参つて、今年度は六千五百戸、更に来年の昭和二十七年度には僅かに三千五百戸という予定計画を立てておるに過ぎません。而も補助金の面になりますと、もつとお話にならない。大体農民が一反歩を開墾するに平均一万一千円程度でありまするが、実際に與えられるところの補助金というものは、たかだかその三分の一に満たない。而も開墾の八〇%以上を超えますると、その超えた部分に対しては、補助金はゼロ、更に既成農家の増反開拓に至りましては、昭和二十四年度からは一銭の補助金も出さなくなつたのである。これでは開墾はやつてもやらなくてもいいといつた、全くの投げやりな態度である。  食糧の自給は、單に農家の單位経済ではありません。今や国家的公共事業でありまして、民族再興の上からも、非常事態に備えるためには、如何なる公共事業にも優るものがあるのでありまして、開拓、開墾に対しては、他の如何なる公共事業費にも優先されて国家財政支出が與えられて然るべきであります。食糧の輸入となると躍起となつて、米麦の統制撤廃となると、むきになつたほどの政府の諸君が、これをわからんはずはないと思うのであります。而も開墾適地については、よく大臣が答弁なさるるかたがある、ない袖は振れぬという言葉がそうなんである。この開墾適地については、ない袖は振れぬとは言わせられないことは、これは前言の通りである。  このわかり切つたことをなぜやらんかと言えば、先ず第一に国有の山林原野を惜んでおることにも原因がありましようが、何と申しても地主勢力が未だに強い。地方の官公庁は、殆んどこれが行政を掌る者は無力である。地主勢力が強いこういうことが癌になつておることは、一度農民の側に立てば、これは今日では子供でも知つておる。つまり農地改革の食い残しの結果、山林の開放から免れて、今なお農村に君臨するところの山林地主の勢力の侮りがたいことは、諸外国の評論を待つまでもありません。恐るべきものがあるので、農民はこれを山林将軍と呼んでおります。この山林将軍という言葉を農林大臣は御存じであるかどうか。而も治山治水などの美名に隠れて所有山林の温存に狂奔しておるのであるが、治山治水は、砂防、ダム等の築造、即ち科学的技術を以てしなければならないもので、農民に対する政策並びに国の食糧の喫緊性から比較して、これはとるに足らない机上論というのほかはありません。これは地主側が曽つて宣伝した、当局も又この宣伝に釣られたところの「開拓は行き過ぎ」だという合言葉と共に欺瞞に満ちたものであります。行き過ぎどころじやない。未だ目的の何分の一にも到達しておらないというのが現状であり、実情なんです。昭和二十年に緊急開拓政策がとられまして六カ年、すでに昨年十月現在で開墾された耕地は四十一万三千町歩、これは只今になりますると約三万町歩殖えておる、四十四万町歩と申上げて差支えないのでございます。この四十四万町歩という面積は、四国四県の全耕地面積を超えることが十六万町歩だ。北海道の全耕地面積の半ばを超えること五万町歩で、驚くべき立派な成績を挙げております。これより収穫しまするところの農産物は、主食換算にしまして、これは政府は二百五十万石と、たしかおつしやつておるかも知れませんが、実際はなかなかどうして八百万石といつたような推計が正当かと思われるのであります。先に申した開拓の適地二百万町歩の半分を開墾しただけでも、数年後には二千万石の不足分を優に補うに余りある勘定になるので、従つて只今の八千四百万の人口が近き将来に一億を算するようなことに相成りましても、びくともしないというのが私の見解であり、政府に申上げたいところなんです。  ここに新規入植者の大幅の増員と、これに対する補助などのけちなことでなく、思い切つた財政支出をなすべきこと、同時に既成農家の増反開拓に対する補助金の高額復活、これは是非とも復活してもらいたい。昭和二十四年度からは一銭も出さなくなつた。戦時中に農民の尻を叩いて、やれ増産、それ増産と言つたあの状態を想い起してもらいたい。その農民が今置き去りを喰つておる。これでは自由党政府には農村政策がないと言われても仕方がないのである。もののわからない農民は、いずれも政府に対して怨嗟の声を放つておるというのはこの一点なんです。加えまして未墾地の開放、取りわけ山林将軍からの開放行政を勇敢に断行すること、以上の諸点を挙げまして、是非とも国家公共事業のうちでも最も大切なところのこの開拓行政に対しては、勇敢に財政支出を施して頂きたい。  それから加えまするが、最近この天降り的に折角開拓せられたるところの用地を寄留軍の用地或いは警察予備隊の用地に提供せんとしておる傾向が顕著なのであります。これは御答弁の如何によつては再質問してもよろしいのでありますが、現にある。千葉の習志野、豊橋、宮城県その他二、三にもありまするが、かようなる残酷なことはやめるようにしてもらいたい。  以上要望を加えまして良心的な御答弁を願う次第であります。私の質問演説は終ります。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇、拍手〕

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) お答え申上げます。先ず第一に、国内の増産を積極的に行いまして食糧の確保をいたせということでございます。これは誠にその通りでございます。而してこの国内増産を推進するためには、開拓に重点をやるべきであつて、従つてそのために予算を大幅に増大せよとのことであります。これはお説の通りであります。その趣旨を以て明年度の予算折衝をいたしておる次第でございます。  その次には、これと相関連しまして、新規入植の増員を直ぐやる措置を講ぜよということでございまして、これも同感でございます。なお、これと関連しまして、既成農家の増反に関する奨励につきましても、これはでき得る限り予算措置又は農林漁業融通特別会計等の資金融資等も考えたいと存じております。(「その通りやつてくれ」と呼ぶ者あり)  その次には、未墾地開放のために、特に山林の開放について触れられたのでありますが、これにつきましては国有林の開放と民有林の計画的な收買が必要であると思います。これにつきましても、国有林の問題についてはいろいろ議論がありまして、小林さんの議論には、国有林は相当思い切つて切り拂つてもむしろ開墾を先にすべきである。こういう御議論のようでありますが、これにはいささか賛成しかねるのでございます。やはり治山治水の面或いは又日本の山林資源の育成等を考えまして、その点は総合的な見地に立つて調整いたしたいと存じておる次第であります。  なお、その次に、既成の開拓地が連合軍の軍用地として接収されることについて如何なる措置を講ずるかということのようでございます。これにつきましては、事実二、三あるのでございまして、今後も又そういう問題が出ることは、誠に開拓農民に対してお気の毒であり、又現在の農民に対して不満を與えまするので、でき得るだけこれは適地を他に求めるように折衝いたすほか、又この接収されたものについては補償並びに移転先等についてはでき得るだけの措置を講じて安定を期したい、かように考えておる次第でございます。(「できるだけ土地を與えてくれ」と呼ぶ者あり)     —————————————  更に、先般重盛議員から御質問ありました際、私、関係方面の連絡のために出席できなかつたので、この際お答え申上げます。  第一点は、米麦の統制撤廃に対して如何なる成算があるかという点であつたようでございます。これはしばしば本議場において御説明申上げましたごとく、政府の米麦統制撤廃の基本方針には変りはございません。諸條件の整備ができまして、そうして具体的な立法措置ができたときこれを上程するという方針でございます。  その次には、米麦統制撤廃の法案を国会に出すか又は政令で出すかということでございまして、これもしばしばお答え申上げました通り、主食の統制撤廃に関する手続については、法律によるべきものと、政令によつてなし得るものとあると存じます。従いまして、これにつきましては、おのおのその問題について検討の上、準備のでき次第その手続をとる、こういう考えでございます。  その第三は、ドツジ氏の来訪によりまして米麦統制撤廃の方針は変更したのか、こういう御質問でございますが、これは七日の政府の声明に明らかにした通り方針には変りはございません。ただ目下その時期と方法について関係方面との完全なる了解ができないために、これを更に再検討したいと存じます。  第四点は、食糧検査事務は統制撤廃以後もこれは必要であるから、増員する必要があるのにかかわらず、減員したのはどうかということでございまするが、(笑声)これは主食の検査につきましては御主張の通りでございまして、検査の国営は続けて行くのであります。併し政府はでき得るだけの簡素化したところの行政機構を持つて、行政事務の簡素化によつて人員整理を行うという総合的な観点からいたしまして、事務上簡素化し得る範囲において確認した次第であります。(「農林大臣やめたほうがいい」と呼ぶ者あり)  その次には(「池田大蔵大臣を出せ」と呼ぶ者あり)農林統計調査事務は非常に大事な仕事である。特に講和條約の附属宣言においても、我々は国際統計機構に加入するということを言つておるのに、どうしてこのような整理をしたかということでございまするが、これは農業統計は、農林委員会その他においても申上げましたごとくに、これは農業政策の樹立並びに執行の羅針盤と考えまして(「その通り」と呼ぶ者あり)これは確かに必要な制度であります。(「閣議で頑張れ」と呼ぶ者あり)この意味におきましてこれは存置しておるのでございまして、但しこれは統計の確度というものは非常に幅の広いものでございまして、精密を期するということになりますれば、各一筆々々についての実態を完全に把握しなければならんという説もございまするし、併しそのようなことをいたしますれば厖大なる機構と人員を要し、経費がかかりますので、やはり現在国際統計において承認せらるる限度においてこれを維持するということが必要であると存じます。その範囲内において、我々はでき得るだけの事務並びに方法の簡素化によつて、而も確度を維持すると、こういう方針の下に今回の整理になつた次第であります。(「知らんな」と呼ぶ者あり)以上簡単でございますが答弁いたします。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕〔「兼農林大臣」「自称副総理」と呼ぶ者あり〕

池田勇人自由党大蔵大臣

○国務大臣(池田勇人君) 食糧増産は我々の一大重大政策でございます。財政の許す限り、できるだけ金を出すように努力いたします。(拍手)      —————・—————

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 過日の重盛壽治君の緊急質問に対し、文部大臣から答弁のため発言を求められております。こり際、発言を許します。天野文部大臣。    〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕

天野貞祐文部大臣

○国務大臣(天野貞祐君) 七日の本会議において重盛議員から、公立学校教員の整理によつて、六二制の教育を破壊することになりはしないかという御質問でございましたが、私はおりませんでしたので、ここで答弁させて頂きます。  公立学校の教員の整理につきましては、現在のところまだ決定を見ておりませんです。文部省としては、義務教育の実施に支障を来たさないようこの問題について善処したいと考えております。(「整理の余地はない」と呼ぶ者あり、拍手)      —————・—————    〔江田三郎君発言の許可を求む〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 江田三郎君。

江田三郎日本社会党

○江田三郎君 私は主食統制撤廃に関する緊急質問の動議を提出いたします。

小笠原二三男日本社会党

○小笠原二三男君 私は只今の江田三郎君の動議に賛成いたします。

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 江田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。江田三郎君。    〔江田三郎君登壇、拍手〕

江田三郎日本社会党

○江田三郎君 私は社会党を代表いたしまして、吉田内閣の相次ぐ失政の中にありまして、最も驚くべき無定見を暴露しました米麦の統制撤廃に関して、若干質問をいたすものであります。  およそ食糧問題はお互いが生きて行ぐ根幹の問題であり、わが国のごとく必要量の二割以上を、はるばる海外から、而も外国船によつて運ばれる国にありましては、一歩これを誤りますならば米騒動にも発展する虞があるのであります。又零細経営を主体とする我が国農業にとりましては、問題の取扱如何は直ちに農民の生き死にに関するものでありまして、かかる見地からいたしまして、私どもは政府に対して、事、食糧問題に関する限り、その取扱には愼重の上にも愼重を期すべきことを従来しばしば警告して参つたものであります。然るに政府は本国会の首相の施政方針演説において、今や食糧事情は安定し、速かに現行食糧管理統制制度を撤廃する方針に決したと断言したのであります。いやしくも首相の施政方針演説は單なる党利党略的な宣伝や思い付きではないはずであります。政治の要諦は声なきに聞くところにありと言われますが、統制撤廃に関しましては、すでにその以前からいたしまして、消費者にも又生産者にも反対の声が大きかつたことは、如何に独善的な現内閣といえども認めざるを得ないところでございましよう。この反対の声の中に、常日頃、国会での責任ある発言を極度に避けられる吉田首相が、わざわざ速かに統制撤廃を行うと言明されたことについては、当然慎重な検討と用意の上に行われたものと受取るのが常識でありますが、首相のこの速かに行うはずの統制撤廃は、一体如何なる状態になつているかをお伺いしたいのであります。私どもの甚だ奇異に感じましたことは、この首相の演説の後にありまして、新聞を通じて見られる政府の方針なるものは、何ら確乎たる成案なきもののようでありまして、毎日のように変転して来たことであります。特に先月二十八日、ドツジ氏が来訪せられるや、政府の態度は誠に混乱と狼狽の頂点に達しまして、吉田首相のいわゆる独立を目前にしながら、権威あるべき施政方針が、ドツジ氏のたつた一声によつてあえなくも百八十度転換を余儀なくされたかのごとき印象を広く国民に與えておるのであります。(拍手)政府はこれに対し、七日の新聞に声明を発表いたしましたが、およそ、このたびの政府声明ほど空漠雲をつかむがごときものを私どもは知らないのであります。各般の條件が整い次第、米の統制撤廃を実施するというのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)いやしくも首相の施政演説の、速かに統制を撤廃するということは、條件が整つたとすればこそ言明されたはずでありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)事、今日に至つて條件が整い次第とは、余りにも国民を愚弄し、民心を惑わしめるものであり、惡政これに過ぐるものなしと断言し得るのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而もこの声明に附随いたしまして、首相の演説にあつても四月一日から統制撤廃とは言わなかつたと、一閣僚が新聞に発表しておるごときは、まさに官僚出身らしい白々しい責任回避でありまして、吉田官僚内閣の本質的性格とも言うべきであります。政府が統制撤廃との関連において農林職員の定員法の改正を国会に提出し、今やあわててこれを與党の手によつて修正ぜんとしておる事実を以てしても、四月一日と言わなかつたなどと空とぼけて済む話ではないと思うのであります。(拍手)撤廃するという閣議決定によりまして、生産者と言わず消費者と言わず、国民の大部分に非常な大きなシヨツクを與え、不安に陷れた政府は、今こそ率直にドツジ氏との交渉の経過を報告し、明確に今後の方針を発表さるべきものと信ずるのでありますが、首相並びに関係三大臣の所見を伺いたいのであります。(「吉田首相おらんぞ」と呼ぶ者あり)声明には時期と方法とを検討すると言われておるが、一体、政府の方針なり見通しなりと、ドツジ氏の見解との間に、如何なる点において差異があるのかということを説明して頂きたいのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)食糧のごとき国民生活に影響することの大きい問題は、いやしくも政府の独善によつて突如たる改変を行うべきものではなく、問題の所在点を明確に国民に周知せしめておくことによつて初めてに混乱を避け得るのであります。殊に多年に亘る統制の結果、取引流通は政府機構で行われて自由市場は喪失しておる。加工施設についてさえも政府の委託が主であり自由なる経営は行われていない。流通資金も財政資金によつて賄われて、民間の準備のない現状においては、たとえ食糧の絶対量において懸念するところなしといたしましても、混乱なしにこの切換を行うためには相当長期の準備を必要とするのでありまして、あえて今後の方針を明確に説明されんことを求めるものであります。一体、米はどうするのか、麦はどうするのか。事ここに至つて今更詭弁は通用しないのであります。若し方針が立たないなら立たないとして、その不明を天下に謝まり(「その通り」と呼ぶ者あり)はつきりと責任をとるべきであります。先刻のこの決議案に対しまして、先ほど農林大臣は答弁されましたが、一体あれで答弁ができたと思つておられるのか。あの決議案の趣旨は、米麦の統制撤廃を政令によらないという決議案であります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)これに返答しないならともかく、返答する以上は、もつとはつきりした、内容に触れた返答であつて然るべきでありまして、先ほどの佐々木君の質問に対しまして、議事進行だから答弁しないなどと言いますなら、私は改めてここで質問いたしますからして、この決議案の趣旨に副うた答弁を求めるものであります。(拍手)これが答えられないなら答えられないでよろしい。その代り農林大臣は、はつきりと責任をとつて頂きたいのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)  声明の第二項によりますと、本年度の供出は二千五百五十万石とありますが、この供出が完了するならば需給計画に何らの不安がないと考えておられるかという点を次にお尋ねしたいのであります。政府は国内食糧の不定に対して三百七十万トンの輸入を計画しておりますが、一体この買付けは果して可能であるのか。南方米の買付けに当りましても、インド等との競合が予想されますが、それよりも根本的なことは職人に必要な外貨の手当如何であります。成るほど現在の手持ドルは四億を超えており、この手持ドル全額を以ていたしますならば三百七十万トンの輸入は可能でありましようが、輸入を必要といたしまするのは單に食糧だけではございません。更に本年度の輸入がなされたところで、来年度の資金は一体どうなるのか。私どもはこれらの点を憂慮するものでありまして、この点の見通しをお尋ねしたいのであります。  一方、国内産麦の生産は、現在の低価格によりまして、農民の生産意欲は低下し、どこへ参りましても他の換金作物に転換しようとしておる今日、この麦の生産の見通しについては、どういうような考え方を持つておられるのか。更にそれよりも一層根本的な問題は、二千五百五十万石の供出は果して可能なりや否やという点であります。供出割当の当初計画たる二千三百五十万石のあの当時の収穫予想が、ルース台風等によりまして、二百二十万石の減収予想が立つた今日におきまして。二百二十万石が減収されたのに対して、供出割当を逆に二百万石も増加するというこの暴挙を、政府は果して押し通せると考えているのでありますか。而も米価は昨年度に比べまして特別加算を切下げられて七千三十円にされたかと思うと、今又更に六千円台に引下げられるのであります。如何に封建的環境に育つたとは直え、百姓には百姓魂というものがあるのであります。腹を立てるのが遅い代りに、一旦立てた腹は容易におさまらぬということを(拍手)農林大臣は、はつきりと御確認願いたいと思うのであります。而も統制撤廃のかけ声で、どつと農村に押寄せたブローカーによりまして買付けられた数量も考慮しなければなりません。一体、政府は、この農民を愚弄したところの二千五百五十万石の供出が若し完了されないとしますならば、強権発動でもやろうというのかどうか。如何に厚顔なりといえども、みずからの失政に幕をかぶせで、いじめ抜いた農民を、まるで奴隷の主人公のごとく又しても冷酷に鞭つことは、よもやできまいと我々は考えるのでありますが、二千五百万石はどこまで押付けるのか、又これの供出末完了農家には強権発動を行うものなりや否やという点を明らかにして頂きたいのであります。或いはそうではなしに、供出の奨励のために、米価について特別な考慮を拂うという意思があるならば、それをお伺いいたしたい。いずれにいたしましても私どもは来年度の需給計画に大きな不安を持つものでありまして、首相のいわゆる食糧事情の安定は思いもよらず、統制を継続いたしましても多くの困難に逢着すると考えられるのでありまして、ことの点、政府の見通しをお尋ねいたすものであります。  次に声明の第三に、麦類については別途成案を準備中であるとございますが、一体これは何を意図しているかという点であります。或いは麦だけを米と切離して統制を外そうというのでありますならば、私どもはその愚かさを指摘せざるを得ないのであります。米と麦とが組合わされておればこそ、米食率の変化によりまして、今日の配給操作が可能になつているのでありまして、若しこれを米のみ配給といたしまして、一体米産地と消費地との配給量をひとしくすることができるかどうか、或いは季節的に量の変化や遅配欠配を避けることができるかどうかということは、少し現状を検討しますならば、これが不可能は、はつきりとして来ると思うのであります。(拍手)我が国の勤労大衆の生活の現状におきましては、米は副食物の要らない一番安上りの食糧でありまして、この配給に季節的或いは地域的等差を付けるならば、それこそ収拾のつかない混乱を来たさざるを得ないのでありまして、この点、政府の考え方をお伺いしたいのであります。  これを要するに、首相の施政演説以来、米麦統制撤廃について政府のなし来たつたことは、何らの定見のない、その日その日の思いつきの連続に過ぎないのでありまして、その結果において、すでに消費者の闇買価格は、はね上つて、家計を脅かしております。生産農民を憤激さしておる。而も今日なお面子にとらわれて根本的な反省をなすことができず、一大蔵大臣の思いつきに禍いされて、過ちに過ちを重ねて、一歩々々底のない泥沼に落ち込みつつあるのが現状でありまして、私どもは前途の混乱測り知れぬものがあると憂慮するものであります。一体この責任は何人が生るのかということであります。私どもは、はつきりとした責任の結末を要求せざるを得ないのでありまして、この点、吉田総理に所見を承わりたいのであります。  更にこの際、根本的に反省して、どうせ失敗するにきまつているところの小手先細工の間接統制の考え方を投げ捨てて、直截簡明な直接統制を合理化し、且つ又その一方におきまして、いつまでも外国食糧に頼つて国の本当の自主性を失うようなとをしないで、国内食糧の一」大増産計画を確立すべきでありまして、いつまでも馬鹿の一つ覚えのごとき(笑声)自由経済の旗印にとらわれて、この上、国民を而も大事な食糧の問題において不安に落し込む亡とはやめて頂きたいと考えまして、政府の所見を尋ねるものでございます。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇、拍手〕

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。(「しつかり」と呼ぶ者あり)質問の第一点は、ドツジ氏の来朝によつて政府の主食統制撤廃の根本方針が全面的に否定されたのではないか、これはどういうことかといううことのようでありまするが、七日の政府声明に明らかにいたしました通りに、これは統制撤廃に関して原則的に反対したのではない、原則的に了解いたしたのであります。(「よくわかつている」と呼ぶ者あり)ただ方法についで、時期については“未だ総司令部において検討しておるので、これに対しては完全なる了解をいたすわけにはいかない、これがその筋であります。従いまして政府の見解を、総司令部にこの具体的な実施方法並びに時期について、了解がしてなかつたことは事実でございます。(「了解させなかつたんだ」と呼ぶ者あり)  次にドツジ氏との交渉の内容を具体的に説明せよということでありますが、これはドツジ氏との交渉は主として大蔵大臣が当つております。(笑声、拍手)最終日において政府の措置要綱の裏付けをするところの資料を持ちまじて、大蔵、安本、並びに私の三人が参りまして説明を申上げ、いろいろと意見を交換いたしましたが、その前におけるところの交渉の内容については、池田大蔵大臣のほうからお話いたします。(「その責任者は誰だ」「池田農林大臣」と呼ぶ者あり)  その次には、先ほどの決議案に対する私の所見は答弁になつていないということでありますが、私は答弁いたしたのではございません、政府の所見を申上げたのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)御承知のように、国会の審議権に関するととろの尊重ということは、これは我々内閣として常に尊重して参つたことであります。但し本日の決議案の内容をなすところの主食の統制撤廃に関して、すべて法律でやらなければならないと、そうでなければ非民主的である、国会の審議権を無視するということになるということに関しては意見を異にしております。(拍手)我々はすでに幾たびもここで御説明申上げました通り主食の統制撤廃に関しましては、いろいろの措置を講じなければなりません。いわゆる流通規制の解除ということもありますし、又配給に関するところの規制もございます。なお又たとえ外した場合におきましても、これをそのまま自由放任という建前ではございません。従つて価格支持政策に基くところの需給調整法をやるとすれば、それも又必要と、こういう観点からいたしまして、我々は立法措置によるべきものと、行政措置においてなし得るものと、おのずから異なつているものがあるのであります。(「その通りと呼ぶ者あり)而してすでに皆さんがたが(「よく聞け」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)完全にここにおいて議決しておるところの法律に基いて、政府に委任せられたところの権限を施行することは、これ即ち国会の審議権を尊重している証拠であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)こういう意味において私は決議案に対しましてはつきりと政府は国会の審議権を尊重すると申上げたのであります。(「、ごまかすな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  その次には、本年の産米に関しまして政府は二千五百五十万石を割当てたのであるが、これは過当なる割当であるとのお説でありまするが、(「その通り」と呼ぶ者あり)それは断じてさようではございません。(「それじや二千三百五十万石はどうした」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)御承知のように政府の割当は、例年のごとくその生産予想に対し農家の保有量を差引いたのが、これが即ち供出割当の総量でございます。本年の收穫予想高を六千六十六万石と算定し、二千五百五十万石は断じて過当ではございません。その次に、二千三百五十何方石というものが出ておりまするが、これは政府は決定いたしたのではなく、統制撤廃に関する過程においていろいろ議論が出たことは事実であります。或いは千八百万石説、或いは二千万石段が出たことは事実でありまするが、閣議決定に至る間におきましてはいろいろの議論があることはこれは当然でございまして(「その通り」と呼ぶ者あり)政府はこれを正式に発表したことはございません。なお二千五百五十万石の供出量を確保することができるか。できるという方針であり、又是非これを実現いたしたいと考えておる次第でございます。  その次には、本年の輸入食糧の計画に基いて、これに対するところの外貨の手当については大蔵大臣から御説明があることと存じます。  供出の取締につきましては、現行の食管法の建前において実施いたします。(発言する者多し)  その次には麦の生産の見通しについてでございまするが、この麦の生産の見通しについては、我々は減産するとは考えてはおりません。豊凶の差はあるかも知れませんけれども、減産するという原因は考えておりません。従いまして江田さんの見解と私は見解を異にしている次第であります。  その次は麦の統制撤廃を米と別にやる方針であるかどうか。これについては目下検討中でございます。(笑声)麦の統制撤廃を実施する時期についても、大体一月以降において実施をいたしたいと考えて目下検討中でございます。(「閣議は不統一か」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  その次に本年の二千五百五十万石を割当てる場合においては、米の配給統制は続けるつもりかどうかということの御質問のようでありまするが、これは本米穀年度におけるこの二千五百五十万石は、明年の十月末日まで、即ち二十七米穀年度に至るまでこれは配給を続ける方針でございます。その次に国内食糧の大増産を実施すべきである、こういうことでありまするが、これは江田さんの御説と全く同感でございます。(拍手、「閣内不統一だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕

池田勇人自由党大蔵大臣

○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げまするが、私とドツジ氏との会見内容は発表する自由を持つておりません。(「できないんだろう」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)ただ私は誤解をせられては困りますので申上げておきまするが、皆さんがたはドツジ氏が横浜に着いたときに、米の統制撤廃はできない、或いは税の軽減はできないというふうにおとりになつたんじやございませんか。(「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)そういうことになつておるのであります。(発言する者多し)そこで私は、ドツジ氏は統制撤廃反対だと皆さんが考えられては困るから、統制撤廃は賛成だと言わしたのが七日の政府声明であります。(拍手、「放言だ」「嘘をつけ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)国民が、統制撤廃ができるかできないかということを司令部の関係で心配しておる向きが多いから、ドツジ氏にあえて統制撤廃の政府の方針を是認さしたわけであります。(笑声、「放言だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  なお輸入資金の問題につきましては、たびたび申上げるように、外貨は相当溜つております。御心配は要りません。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕

周東英雄自由党経済安定本部総務長官・中央経済調査庁長官・物価庁長官・賠償庁長官

○国務大臣(周東英雄君) 統制撤廃に関する基本方針に関しましては、只今両相から答弁をいたされた通りであります。(拍手、「うまいこと逃げよつたね」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。      —————・—————    〔小泉秀吉君発言の許可を求む〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 小泉秀吉君。

小泉秀吉日本社会党

○小泉秀吉君 私はこの際、海運政策並びに第七次造船計画金融に関する緊急質問の動議を提出いたします。

原虎一日本社会党

○原虎一君 私は只今の小泉君の動議に賛成するものであります。

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 小泉君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。小泉君の発言を許します。小泉秀吉君。    〔小泉秀吉君登壇、拍手〕

小泉秀吉日本社会党

○小泉秀吉君 私は日本社会党を代表いたしまして、いささか海運政策並びに第七次造船計画の金融に関して御質問を申上げます。  参議院は過ぐる第十国会におきまして「外航船腹緊急増強に関する決議案」を満場一致を以て決定して、「政府は外航船腹増強に関し資金の確保等必要なる諸方策の急速且つ円滑なる実施に遺憾なきを期すべき」旨を明確に要請したのでありまするが、一方、政府におきましても、当時の林副総理は、「この決議の御趣旨に副いまして最善の努力を盡す決意であります。」と、政府の決意を披瀝せられたのは、諸君御記憶の通りでございます。併しながら最近における浩船融資に関する政府の態度に極めて不可解なものが認められまするので、私はここに緊急質問を行いまして、政府のお考えを明確に承知いたしたいと存ずる次第でございます。  先ず第一点は海運政策に関する問題でありまするが、我が国は地理的経済的事情によりまして、食糧その他生活必需物資並びに重要産業の原材料はこれを遠隔地よりの海上輸送による輸入に求めなければならず、このために必要最小限度の外航船腹は是非とも緊急に整備しなければならないことは今更申上げるまでもないのであります。政府が外航船腹の増強につきまして相当の努力をしていることは、私もこれを認むるにやぶさかではございませんが、それにもかかわりませず、なお明年三月末における外航船腹の不足は、海外よりの輸入物資の半分を日本の船舶で積取るといたしまして貨物船で約百万重量トン、タンカー即ち油槽船で約二十一万重量トン、合せて約百二十一万重量トンの船腹不足と推定されるのであります。而もこの船腹不足量は、政府におきまして適切なる船腹増強政策を実施されない限り、年々の日本貿易の発展に伴いまして昭和二十八年度には約百六十万重量トン、昭和二十九年度には百九十五万重量トンの不足増大が予想されるのであります。この船腹不足は、その限りにおきまして必然的に外国船腹によらなければならないことになりまするが、かようにいたしまするならば、單に国際収支の均衡を破壞するばかりでなく、国際情勢の推移如何によりましては必需物資の輸入確保を危うくせしめ、特に先般来いろいろ問題になつた食糧輸入にも支障を生じまして、我が国の存立自体を脅かすのであります。即ち海運政策にして一歩誤りまするならば、我が国の存立は重大なる危機に陷れられる慮れがありまするので、私は先ず海運政策につきまして特に吉田内閣総理大臣の御所見をお伺いしたいと存ずる次第でございます。第二は外国船の買入れの問題でございますが、政府は外航船腹緊急増強対策の一環といたしまして、外国船の買入策をとりまして、すでに四十六隻、二十五万総トンの買入れに対しまして許可を與えております。然るにこれらの買入船は一部を除きましては概して低性能で、今後最も船舶を差向けたい遠洋方面、特にアメリカ方面には大体不適当で、競争に堪えない実情にあるのであります。飜つて現在諸外国が競つて高性能優秀船の建造に邁進をしておりまするときに、外国が売物に出すような低性能不経済船によりまして急場の一時を糊塗いたしまする方策を今後も継続するならば、遠からずして日本の海運は世界における老朽船の墓場となりまして、世界海運から脱落することは、まさに火を見るよりも明らかでございます。従いまして外国船の買入れにつきましては厳選主義をとると共に、これに多くを依存すべきではないと確信するものでありますが、この問題に関しまして、私は運輸大臣並びに第十国会におきまする外航船腹増強に関する本院の決議に対して、外国船の買入れを強調されておられました池田大蔵大臣の御所見をお伺いしたいのであります。  第三は、第七次船後期分の建造計画とこれに対する融資の問題でございます。先ほど申述べましたように、外航船腹の不足は、本年度末におきましては、一般貨物船及びタンカーを合せて約百二十一万重量トン、即ち総トン数八十万トン内外と推定されますが、而もかかる船腹不足量は貿易の発展に伴いましてますます大きくなるのではないかと思うのであります。従いまして第七次船の後期分の建造計画といたしましては、少くとも二十万トンが建造されるべきものと私どもは考えておるのでありまするが、政府資金の確保をすることに難色があるように聞き及んでおるのであります。外航船腹の不足は結局日本経済が高い運賃を外国船会社に支拂うことになりまして、それだけ日本経済を圧迫することになるということは自明の理でありまして、申すまでもないのであります。又外航船舶の建造に注ぎ込まれる政府資金は、投資後一年後には多額の外貨の獲得或いは節約となつてリターンして日本経済を潤おすこと、これ又申すまでもないのであります。一方、最近の国際情勢の推移を見まするならば、諸外国におきますると同樣に、日本も外航船腹を緊急に整備するの必要度を増して参りました。最近運輸大臣に対しまして提出されました浩船業合理化審議会の建議書によりまするならば、世界各国の鋼材価格は最近急騰して、国際価格よりも高価であつた我が国の鋼材に対しても諸外国から引合が殺到しており、特に英国及びスウエーデンのような鋼材輸出国であつた国からさえ我が国に発注をして来ておるという状況にあるのであります。又国際価格より船価の上廻つておりました我が国の河船所に対しましても、大型タンカーの引合が最近とみに盛んになりまして、すでに引合は二十七万重量トン余に達しておるという趣きでございます。我が国におきましては、このような世界の大勢に逆行いたしまして、資金の不足を理由に未だに第七次船の後期分の当初計画である二十万トン建造計画をも決定し得ない。一方、大型浩船の船台は、十一月におきましては約五割、十二月においては七割に達する船台が遊休するというような驚くべき状態にあるのでございますから、若しこのままの推移に放置しておるならば、数万に達する優秀造船技能者の失職を生ずるか、然らずんば造船業合理化審議会の憂うるごとく、我が国の鋼材は輸出に向けられ、或いは造船所の大型船台は輸出船で占領されて、鋼船を作る余地なくなるというような事態が来るかも知れないということを私は憂慮するものであります。  以上申述べましたような事情を考えまするときに、第七次船後期分としては、少なくも当初計画の二十万総トンの建造を可能ならしめるように政府資金の配分を是非とも行うべきであり、これが所要資金に対する財政措置は、現在における我が国の財政力を以てしては決して不可能でないと考えますので、この点、池田大蔵大臣の御認識のほどを承わりたいのであります。なお、池田大蔵大臣は本国会におきまする財政演説におきまして、見返資金については電力及び浩船に対して百三十五億円の追加融資を行うようにお述べになりましたが、この追加融資の枠内におきまして第七次船後期分二十万トンの建造に要する本年度所要額約七十億円は確保されるものと了解してよろしいのか。若しこの確保ができないならば、政府は如何なる財政措置を用意せられておるのでありまするか。この点に関して大蔵大臣の明確なる御答弁をお願いをいたしまして、私の緊急質問を終ることにいたします(拍手)    〔国務大臣池田勇君登壇、拍手〕

池田勇人自由党大蔵大臣

○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。  お話のように新船を建造いたしますことは勿論賛成でございます。できるだけたくさんいたしたいのでありまするが、新船が間に合わない場合、又採算上、船を買つて来ることも必要でありますので、昨年来、買船も相当いたしたのであります。私は第一が新船、第二が買船と考えております。  次に七次の後期の建造計画如何というお話でございまするが、二十万トン作りたいという運輸大臣の御希望もありまするが、財政資金を以てしては只今のところ三十五億円しか予定いたしておりません。従いまして二十万トンが十万トンになるのですが、何とか十万トン殖やそうというので、実は本会議までにも運輸大臣と話合つておるわけであります。最後の決定はいたしておりません。  財政演説でお話申上げました見返資金からの百三十五億円は、百億円が水力でございます。水力発電。三十五億円が浩船でございます。而してこの水力電気と流船の関係を申しますると、政府資金は、今まで水力には百五十億、浩船には百八十八億出ております。造船のほうが多いのでございます。で、今回百億円を加えますと、水力は二百五十億円であります。流船は三十五億を予定しておりまして二百二十三億でございます。併し水力は二百五十億が主でございますが、造船のほうは二百二十三億に対しましてこれに倍額以上の一般市中金融機関からの融資があるのでございます。で、電力を先にするか船を先にするか、いろいろな議論はありましようが、今の産業の状態から考えますると、私はどうしても電力に主力を置かなければならんという考えを持つておるのでありまするが、実情は船のほうに殆んど倍近くが出ておることに相成るのであります。(拍手)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣及び運輸大臣の答弁は他日に留保されました。      —————・—————

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) この際、先に本院の議決に基きルース台風の被害状況調査のため派遣いたしました議員団の各班の報告を求めたいと存じます。先ず第一班の報告を求めます。島津忠彦君。     —————————————    〔島津忠彦君登壇、拍手〕

島津忠彦自由党

○島津忠彦君 このたび、大分、宮島、鹿児島の三県の災害状況を視察しました結果の大要を御報告いたします。  視察団一行五名は、先ず十二月二十六日大分県に入り、二十八日宮崎県、三十日鹿児島県を歴訪いたし、各県並びに市において災害の見舞を申しました上、災害の一般状況、応急の対策、今後の希望等を聴取いたしました。次いで現地について詳細災害の実情を調査いたしたのであります。即ち大分県においては県北、駅館川一帶、別府海岸、大分川、佐賀関方面宮崎県においては延岡を中心といたし、河川、港湾及び延岡より宮崎を経て都城に至る沿線の建築物並びに農作物被害を調査いたしました。最も大いなる災害を受けております鹿兒島におきましては、鹿児島湾の北岸及び東岸は、根占町以南を除きまして殆んど全部の町村を、又西岸は交通不能なる地区を除き全町村を視察、更に薩摩半島南岸は枕崎市に至る各町村、牛島を北上して笠沙、市来、東市来、串木野、各町村を調査し、川内市に入り、十一月二日を以て離県いたした次第であります。  ルース台風は十月十四日午後六時、枕崎西方を通過、串木野附近に七時上陸し、熊本東方、阿蘇山の西方を通り大分県に入り、森町附近より高田町に出て、午後十一時周防灘に去つたのであります。このため、いわゆる台風の危險半円に属しまする鹿児島、宮崎、大分に大災害を生じたのでありまして、特に台風の眼に当りました鹿児島県は実に惨澹たる状況を呈するに至つたのであります。本台風が日沒後来襲いたしましたので、十分なる予防活動が不可能であり、そのためにあらゆる面に被害の増大を来たしたものと考えられるのであります。本台風の特徴は、満潮に加うるに高潮を伴い、且つ風速の大なることでありまして、薩摩半島西端の野間池においては風速六十メートルと、基準面上約十メートルの高潮を記録いたしております。不幸中の幸いは、大分県、宮崎県を除き比較的雨量の少かつた点でありましで、若し鹿児島において降雨量の大なるものが加わつた場合を想像いたしまするならば、誠に肌に粟を生ずるを禁じ得なかつた次第であります。  右のごとき台風の特質に基きまして、被害は当然海岸地帯に多く、内陸はやや経度の災害で終つております。併しながらかくのごとく海岸地帯を中心といたしました災害であつて、なお被害総額、大分県におきましては八十六億余円、宮崎県では百三十九億余円、鹿児島県では三百三十二億余円であることは、如何に被害の深さが深いかを示しているものであります。先ず人的被害から申しまするに、死者及び行方不明は大分三十二人、宮崎三十四人、鹿児島二百一名を算しております。これらの犠牲者に対し深く哀悼の意を表するものであります。特に前述いたしました野間池においては一挙に十八名の生命を失い、且つ当日怒濤の中に漂流しておりました船舶を救助するために出動した消防団員二十名が不帰の客となつております。この行為に対し敬意を捧げざるを得ません。  次に本台風による被害の特徴は建築物の被害の大なることであります。即ち住家の全壊流失をとりましても、大分が千七百九十五戸、宮崎においては、都城を中心として五千百八戸、鹿児島に至りましては実に一万三千三百九十二戸を算するのでありまして、これに半壊、床上及び床下の浸水家屋を加え、更に家財の流失等の損害を加えますならば、その被害総額は莫大なものとなります。又学校等の公共建物の倒壊も大きな数に上つております。勿論これらの建築物の中には、終戦後の施工にかかりまする開拓者住宅、引揚者住宅等の簡易なものも含まれておりまするが、簡易な住宅にしか住み得なかつたこれらの人々の唯一の安息所を失つた心情を察するとき、この蒼生を如何にすべきか涙なきを得ないのであります。特に枕崎市におきましては千百二十五戸、串木野においては七百九十戸の全壊流失を見ておりまするが、現地は木材の小破片と海浜から打ち上げられた転石によりまして一見焼野原のごとき観を呈しておるのであります。農作物の被害も又甚大でありまして、大分、宮崎において水稻の減收率三〇%、鹿児島は六〇%と報告され、その他、陸稻、雑穀も四〇%乃至五〇%から九〇%を減収しております。これらの原因中最も大いなるものは干拓堤防の破壞、波浪による被害、更に潮風による被害等であります。鹿児島県の隼人町のごときは、耕地面積五百三十六町歩のうち、干拓地が二百三十町歩を占めておるのでありまするが、この干拓地を一瞬にして失つたのであります。鹿児島市の隣接町谷山町も干拓地によつて更生したと言われておりまするが、これも失われてしまつたのであります。又桜島から無水一帯は有数の柑橘類の産地でありましたが、回復に三年を要する被害を受けております。大分、宮崎の柑橘地帯もほぼ同樣であります。  水産関係の被害は鹿児島県において殊に著しく、漁船の沈沒流失千四百隻、大破千七百隻を示しております。このほか漁具、施設等を加えまして、その機能の喪失は莫大なものがあります。前述の枕崎、串木野等の大漁港の被害もさることながら、大分、宮崎をも通じて、小漁村における漁民の船舶、漁具等の主要生産手段を失つたものは数知れず、誠になすところを知らざる状況であります。以上生産に関連せる被害の主なものを申述べました。このほかに畜産、山林、鉱工業、商業関係の有形無形の損害は、各県共に恐るべきものがあります。例えば別府の護岸の全面的破壞損傷のごとき、又前述いたしました東国分、国分、帖佐、隼人、加治木、谷山等の干拓堤防の破壞のごとき、市町村全体の安全を著しく危殆に陥れておるのであります。又鹿児島、枕崎、串木野等の大港の防波堤、護岸工事の破損のごとき、商港とし、漁港としての機能を喪失せしめる危険性を持つており、これが速かなる復旧を必要とすることを示しております。道路も県及び市町村の非常な努力により漸次復旧しつつあります。ただ国道三号の破壞は著しく、この復旧には容易ならぬものがあります。生産活動の大動脈たる鉄道、電気、通信事業等もおのおの当局の適切なる方策によつて急速に回復いたしておりますことは、関係当局に対し敬意を表するものであります。  以上のごとく甚大なる被害を受けましたが、県民は再びこの復旧に立ち上つておるのであります。これら被害地の災害復旧に関する要望事項を見まするに、過年度災害の復旧工事が未だ完成しないうちに、次の災害が来襲するという状況にありまするので、災害復旧工事は成るべく重点的に完成するように行い、累年の災害不安を一掃して欲しいという切なる要望があつたのであります。又農業関係の災害復旧工事の補助率を引上げてくれとの要望も地方民の切なる要望と思われるのであります。更に水産関係では、漁船、漁具等の生産手段に差当つて融資の途を開いて欲しいという要望もあつたのであります。又各種の損害保険の支拂期日を早くしてくれ、平衡交付金や起債の枠を拡げて欲しいとの要望もあつたのであります。県、市、町村の財政を見まするに、前途に対し暗然たらざるを得ないものがあるのであります。これらの実情についての詳細はいずれ別途書面を以て報告をいたすことにいたしまして、ここでは、ただ、これらの災害復旧は、国会、政府、地元が一体となつて努力するのでなくては、回復は容易ならざるものがあると存ずる次第であります。諸君の御協力を望むこと切なるものがあるのであります。これを以ちまして御報告を終ります。(拍手)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 次に第二班の報告を求めます。矢嶋三義君。    〔矢嶋三義君登壇、拍手〕

矢嶋三義第一クラブ

○矢嶋三義君 今般院議によりまして、社会党の門田定藏君、民主党の岩男仁藏君及び第一クラブの私の三名は、島根県、山口県、福岡県及び熊本県の四県を十日間に亘り順次歴訪いたし、先般のルース台風による災害に対し丁重に慰問を行い、又災害の実情を詳細に調査いたしました。そり詳細は別途議長のお手許に提出いたしまする資料によつて御覧願いたいと存じますが、ここにその大要を御報告申上げます。  調査の方法といたしましては、土木、建築、農林、畜産、水産、鉱産、文教、厚生、衛生、運輸並びに財政関係等、格関係部門に亘り、その被害状況、復旧対策並びに要望等を、知事以下県当局並びに現地地方事務所、市町村関係当局より説明を受け、更に最も被害の甚大であつた現地を、日程の許す限り詳細に実地視察を行なつたのであります。又各県とも多小の差こそあれ、いずれも甚大な災害を受けておりますので、県当局を通じ或いは直接罹災者に対し、参議院の衷心よりする慰問激励の言葉を述べましたるに対し、いずれも感謝の意を表明されましたことは、一同深く感激いたしましたことをこの際特に御報告申しておきます。り  さて島根県の状況について御報告申します。今次台風は県下を縦断通過したために、全県下に亘り大降雨をもたらすと共に、通過の前後大暴風は沿岸を襲い、河川、港湾施設及び海岸に大被害を見たのであります。県下全般に亘る被害につきまして、人畜家屋の被害として、死者六名、負傷者十三名、行方不明一名、計二十名であり、住宅は全壊が六十一戸、半壊五百五十二戸を初め、流失、浸水、破損、計六千七百四十七戸の被害で、その罹災者数は二万九千五十八名に及んでおり、非住宅五百六十八、その他の建物七百六十一等、被害総額は約九千八百万円となつております。河川、砂防、道路、橋梁、港湾、漁港、海岸の被害による土木関係約十七億三千万円を筆頭に、農地関係約九億五千万円、農作物関係は水稻の減収見込約五万四千石を含め約五億八千万円、山林関係約一億七千万円、水産関係約二千九百万円となつており、以上全体の被害総額は実に三十六億一千三百三十二万円に達しております。本県は昭和十八年以来連年のごとく災害を受け、昨年十月にもキジア台風の惨害をこうむり、引続き本年七月には豪雨により被害を受け、今なお二十三年災害以来の復旧工事の途上にありしところに今回の風水禍に見舞われて、関係住民は疲労因憊の極に達する実情でありました。県においては、災害の応急対策として、管下の土木出張所、地方事務所、市町村、各河川の水防団員等の必死の水防作業を行いますと共に、災害発生後直ちに災害救助法を発動し、美濃郡、鹿ノ足郡を管轄する美鹿地方事務所に救助隊現地本部を設置し、又県庁に島根県救助隊本部を設達して現に災害救助に応急の措置を講じておりました。又罹災者の救済、治療、防疫等の衛生措置、道路、橋梁等の応急処置、農地の排水、農作物の手当を講じ、一方、漁船、漁具の災害に対しては、取りあえず融資斡旋、保險金の交付、漁船の入手等の応急手配を行なつているとのことでありました。最も甚大な被害地区の一つである高津川流域の被害状況を、石見益田から上流に遡上して順次実地視察を行いましたが、道路、護岸の崩壊、流域の田畑の被害は惨澹たるものがあり、殊にこの地方の水稻、陸稻の被害は、七月災害で三割減収、今回のルース台風により六割減収とのことであり、すでに刈り取つて稻はぜにかけていた稻が氾濫のため一度に押し流され、流域の竹藪や山林に簾のごとくかかつているのを一本ずつ拾い集めたり、泥土に埋まつたものを一株々々起している農民の姿を見て、深く同情の念に打たれたのであります。これら災害の原因として、流域諸山の濫伐、累次の災害による河川の荒廃、山間部の砂防施設の不備等が見られるのでありますが、流域は十一カ町村に亘つており、單に原形復旧工事にとどまることなく、速かに恒久対策を講ずることの必要を痛感するのであります。  次に山口県の状況について申上げます。瞬間最大風速四十メーター前後に達し、雨量最高三百四十八ミリ、時間雨量最高九十八センチという誠に驚異的な数字を示し、各河川も警戒水域を遙かに越え、人畜、家屋のこうむつた被害は勿論、堤防の決壊、土砂の崩壊等、悲惨な大災害を発生したのであります。而もたまたま時間が十四日より十五日にかけての夜半のため、その被害に一層の拍車を加えております。殊に県下東部錦川水系地域では未曽有の急激なる出水により、その惨禍は広域に亘つて、到底筆舌に盡しがたく、多数の人命を失つたことは痛恨に堪えないところであります。なお、河川のほか、海岸の堤防、港湾、漁港施設等、海岸部の被害も甚大でありました。県下全般に亘る被害状況を申上げますと、一般罹災関係は、死者二百五十二人、負傷者一千四百三十六人、行方不明百五十二人、一般罹災人員十四万九千百八十八人、罹災者総計十五万一千五百五十八人に及んでおります。家屋は、流失の一千五戸を初め、全壊、半壊、浸水等は合せて四万八千三百五十戸、被害金額約三十一億四千万円であります。土木関係約百四十億五千万円を初め、耕地関係約九十四億二千万円、水産関係約十億二千万円、山林関係約十三億六千万円、営造物関係は、学校四百三十六校約五億三千万円を初め、衛生、社会施設、産業その他で約五億九千万円、主要農産物関係は水稻の減收量約十二万七千石を初め約十九億二千万円、その他、塩田、鉱山、発送電施設等に約六億二千万円の被害でありますが、以上を総合いたしますと、山口県の被害総額は、実に三百二十一億一千五百六十五万二千円の多額に達しておるのであります。  次に、県下はもとより、全国的に見ても最も被害甚大で且つ異常なる災害を受けた錦川流域を、岩国市から上流広瀬町にかけて約十時間に亘り詳細に現地視察を行なつたのでありますが、その被害現場の光景は災害後旬日にしてなお酸鼻を極め、到底筆舌に盡しがたいものがありました。十月十五日の夜半の豪雨は時間雨量実に九十八ミリという未曽有の雨量でありまして、錦川は刻一刻増水し、岩国市の錦帯橋附近の目撃者の談によれば、僅かに十五分にして水位が十メートルも上昇したほどであつたとのことであつたのであります。又大小の山谷はいずれも山津波となつて、洪水と土砂、岩石を押出し、一瞬にして流域の家屋を流失、埋没、破壞し盡し、玖珂地方事務所管内三十カ町村において死者二百五名、行方不明百十二名、負傷一千二百二十九人、罹災者数万の被害を出すに至つたのでありまして、家屋の全壊、流失、浸水するもの一万四千六百九十五戸に上り、田畑、道路、橋梁、堤防、林道の被害又甚大で、橋梁も流失するもの七百二十七に及び、岩国市内は勿論、錦川本流においても上下を通じ僅かに錦橋がただ一つ残つたという惨状でありました。交通通信は全く杜絶し、食糧の供給もなし得ない状況下、ヘリコプターによる状況視察、物資の供給、激励文の投下を行つたのでありますが、奥地に到達することは極めて困難な状況でありましたので、遂に警察予備隊の出動を要請するに至りました。十月二十一日、山口県小月の警察予備隊三百名が徳山市から広瀬町に入り、河山村、桑根村を初め、八カ村を六日間に亘り道路の開鑿、食糧の運搬、救護等を行い、漸くにして奥地町村との連絡がついたのでありまして、今回の予備隊の出動並びに晝夜の活動は関係住民から深く感謝されております。かくて呆然自失していました罹災者も、県市町村当局、予備隊等の活動により、若し国家において何らかの救済の手を伸べてくれるならば、父祖伝来の土地を守つて再び立ち上らんとの精神を漸く取り戻しつつありました。その間において、更に消防団、青年団、医療関係者、看護婦等の必死の活動は誠に感激に堪えないものがありました。併しながら現場の実状は、漸く交通が開けたというにとどまり、今なお倒壊、埋没した家屋は施すに術もなく、僅かに家財道具の一部を掘り出して天日に乾し、或いは家を失い、親を失つた多数の罹災者は、学校、寺院等に収容され、衣類も着のみ着のままで山間の寒気はすでに酷しく、惨澹たる現場の道路上の焚火に僅かに寄り合つて暖をとる罹災者の姿を見る光景は、ときに鬼気迫るものさえ感じたのであります。学校も校舎の被害甚だしく、且つ学用品を失い、家庭の大災害のため未だいずれも授業を開始するまでに至つていないのでありまして、県下の会社、市町村の義捐金もぼつぼつ集まつおりますが、取りあえず雨露を凌ぐ住居を初め、衣料、日用品の更生資金等、速かに国家の救済の手を渇望する罹災者の声は悲痛なものがあるのでありました。この地区の災害に対しては、応急対策は勿論、総合的特殊対策を速かに実施する必要を痛感する次第であります。  次に、福岡県の状況について申上げます。豪雨のため河川は一瞬に増水、氾濫し大小河川、道路、堤防、橋梁の決壊続出し、水田の埋没、流失、堤防、水路の損壊、更に結実最盛期にある稻作その他の農作物のこうむつた災害、漁港、海岸堤防、漁船、林道、林産物の損害、建築物の浸水、流失、倒壊等、県下一円に亘る洪水と高潮の発生を見、殊に台風の経路である築上、京都両郡の惨状は甚大でありました。人的被害、死者五名、行方不明二名、負傷九名、合計十四名、家屋の全壊六百五戸、流失三十戸、その他、半壊、浸水等合計一万四百六十五戸、非住家九百戸となつております。土木関係は約十二億一千万円、建築関係約四億円、耕地関係約二億九千万円、農作物関係は水稻の減收量約一万二百石を含め約八億八千万円、山林関係約三億六千万円、水産関係約四億五千万円、畜産関係約三百万円、鉱産関係出炭減約二千トン、その金額約三千万円、文教関係九百六十八校、約一億四千万円、衛生関係五棟、約四十万円、以上県下の総被害額は実に三十七億六千三百八十八万六千円となつております。このほかに福岡陸運局管内交通機関の被害約四千九百万円となつております。  県としては、これが応急対策として災害地の生産業の復元、交通運搬の確保、海岸堤防決壊個所の応急閉塞、道路、橋梁、耕地の緊急復旧の措置を講じ、又築上、京都両郡の、ごとき災害地には災害救助法を適用し、極力民生の安定復興に日夜努力しているとのことであります。被害の最も甚大であつた築上郡、京都郡を先ず門司市の被害現地から順次歴訪して現地視察を行いました。相次ぐ災害に荒廃した河川が、今次のルース台風のもたらした豪雨により未曽有の氾濫となつて、道路堤防の破壞、人家、田畑の被害となつて現われている惨たる状況を見ては、速かに恒久対策を樹立するの必要を痛感させられたのであります。なお、中川の上流である築上郡山田村、西川の防災ダムを視察しましたが、これあるがため下流の災害を免れておりましたことを御参考に申上げておきます。一方、今回の災害は、河川のみでなく、漁港、海岸堤防等の被害が多く、又豊前海、周防灘一帯は枡網漁業が多いのでありますが、いずれも漁具を流失いたし、零細漁民は極度に困窮いたしております。視察順路の関係上、飯塚市において鉱害の実状を視察いたしましたる際、この二百余億円に上る鉱害につき遺憾なき対策を講ぜられたいと切実なる要望が県市当局並びに関係者から行われましたことをここに附言いたしておきます。  次に、熊本県の状況を申上げます。十四日夕刻から県下一帯暴風雨となり、最高三百ミリに達する降雨があり、この雨に強烈な大暴風を伴つて襲つた台風のため、県下各地に甚大な被害を與え、殊に球摩郡、阿蘇郡等の山間部における家屋の倒壊、農作物の被害と、天草郡の北部、海岸部の被害が甚大であつたのであります。被害の大要を申しますと、厚生関係、死者九名、行方不明三名、重傷十九名、軽傷五十一名、計八十二名。住家、全壊五百八十七戸、半壊一千四百四十五名、流失二十四戸、浸水四千三百七十七戸、非住家二千八百六十八戸、被害額約四億四千万円となつております。土木関係約六億二千万円、耕地関係約五億三千万円、水産関係約一億二千万円となつておりますが、「のり」養殖、「くるまえび」養殖地響の被害が甚大であつたことは本県の特殊事情であります。林業関係約八千六百万円、文教関係、全壊、半壊等約九十校に及び、約一億八千万円、開拓関係、住家二千二百六十三戸、約九千万円、畜産関係約一千五百万円、農作物、稲作減収約十二万九千石を含め約十億九千万円、その他、商工関係等、以上、県下総被害額は実に三十二億六千六十九万二千円に上つております。最も被害甚大な地域である天草北部海岸を中心に現地の実情を視察いたしました。即ち同郡阿村、合浄、楠浦、大浦、赤崎、上津浦、島子各村を経由して、更に本渡町から佐伊津、本渡、亀場、志柿の各町村を歴訪いたしましたが、海岸の道路は寸断され、海岸堤防は決壊して原形をとどめないものも多く、これがため家屋の流失したもの、漁港、船溜りの破壞されたもの等沿岸一帶に亘つて相続いており、村民総出動して応急の潮止め工事を行なつておりますが、何分にも海際のこととて、少しの高潮、風浪にも危險を感ずる有樣でありまして、これが復旧は一日もゆるがせにすることができないのが、緊急のうちにも更に緊急を要する特殊な事情にあることを痛感いたしたのであります。特に一瞬にして高潮のために十八戸を海上に奪われ、五十八戸を破壞された天草郡佐伊津村浜須部落の住民は、堤防の流失した海辺に茫然自失、急造した住居に戦々兢々としている姿は、真に悲惨そのものでありました。  以上、四県に亘る災害の概況を述べましたが、最後にこれら各県から特に復旧対策として要望せられましたもののうち主なる事項を申上げたいと存じます。  島根県知事から、一、森林、砂防、奥地林の植栽、河川砂防等、徹底的恒久対策を講じ、災害復旧事業を並行実施されたい。二、緊急経費に要する復旧費の増額を図り、爾後の災害を食い止め得る程度の復旧費はその年度内に手当されるようにいたされたい。三、予算措置については査定損害額を基本として全国一律になつておるが、財政貧弱県に対しては、県市町村共に高率の起債額容認、特別平衡交付金の特別交付等によつて従来の欠陥を是正されたい。四、水産において、これが早期復旧のため、国庫補助のほか、低利長期資金の融通の途を講ぜられたい。五、毎年災害の基となつておる高津川の改修については昨年まで通り今後も是非三分の二補助を継続せられたい。  次に山口県知事並びに岩国市長ほか玖珂郡三十カ町村長からの要望事項を申上げます。一、今次のルース台風による災害復旧については新たに追加予算を計上し、是非とも今次臨時国会において解決されたい。二、災害復旧土木工事は十五万円以下の災害を含め、全額国庫負担とされたい。三、農林水産業施設災害復旧工事費に対する高率補助を講ぜられたい。四、被災地においては国営住宅を至急建設されたい。五、国庫補助金の早期交付又は前渡し及び緊急融資をせられたい。六。起債償還の打切り若しくは繰延べをされたい。七、復旧は原形復旧にとどめず、進んで改良復旧とされたい。八、災害救助法について国の補助率を改訂し、適用物資の範囲を拡大されたい。九、公立学校の復旧費は全額国庫補助とされたい。私立学校に対しても復旧費を補助されたい。建物以外の損害についても補助金を交付されたい。その他、被災地に対する本年産米の政府買入割当の減免等、各般の対策につき詳細要望がありました。  次に福岡県知事の要望でありますが、ほぼ各県と同樣でありました。特に一、災害特別法の制定により救済に万全を期せられたい。二、各県に対する国庫の補助率は単純に被害総額の比率を適用することなく、土木関係費用等、その内容により比率の適正を図られたい。三、水産関係において長期低利資金の融資を図ると共に、漁網、漁具等に関し国家補償制度のごとき根本的保險制度を確立せられたいとの趣旨を強調せられました。  最後に、熊本県におきましては、一、公共土木及び水産施設の復旧費は初年度において少くとも三制以上の国庫補助配付を要望する。二、県関係事項として、短期融資四億円の配付、農林中金賢金融通の卯時大幅増額融資、漁船保險制度の改善強化、住宅復旧資金適用の枠拡大、罹災学校復旧資金適用の枠拡大、罹災者に対する税の減免、厚生資金の枠拡大と(「簡単々々」と呼ぶ者あり)即時配付等につき要望せられました。  以上四県に亘つて今次災害の大要を御報告申上げましたが、この大災害によつて打ちのめされたところの国民諸君が、本会議の光景を若しもテレヴイジヨンによつて見ることができるならば、恐らく災害国民諸君は衝突するでありましよう。かような大災害に対しては、国会、政府、地元当局が一体となつて速かにこれが解決に当るべきことを痛感いたしますので、何とぞ諸君の御協力をお願いする次第であります。  これを以て私の報告を終了いたします。(拍手)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 次に第三班の報告を求めます。中川幸平君。    〔中川幸平君登壇、拍手〕

中川幸平自由党

○中川幸平君 ルース台風災害状況調査の命によりまして、河崎ナツさん、高良とみさん、並びに建設委員会調査員中島博君と一行四名は、先月二十四日東京を出発いたしまして、本月二日まで十日間に亘つて、香川、徳島、高知、愛媛、広島の各県を視察して参りました。被害の詳細につきましては追つて文書を以て御報告申上げるつもりでありますので、それによつて御承知をお願いいたすことといたしまして大略の状況を御報告申上げます。  このたびの十月十四日、十五日の西日本一帶を襲いましたルース台風が予想外の被害を各地に及ぼしておりますことは、すでに各位の御承知の通りであります。四国地方について申上げますると、台風は十四日夕刻鹿兒島県に上陸、九州を縦断して周防灘を横切り、山口県の西部を進んでおりますので、直接台風の中心通過は避けておりますが、愛媛県の三時半島では最大風速六十七メートルを記録しておるほどでありまして、猛風と高潮による影響が最も大きかつたのであります。雨量について申しますると、山間地の最も多い所で三百ミリ程度でありまして、いわゆるこの大洪水による被害は比較的少かつた模樣であります。更に四国地方の被害の特徴といたしましては、南海地震以来の地盤沈下による影響が大きく作用いたしておりますことは見逃せないところであると思います。四国四県の被害総額は地元の調査によりますると総額約百六億円に達しておりますが、愛媛県の被害が最も大きく、約六十四億円、徳島県が約二十四億円、高知県が約十億、香川県が約八億と見積られております。香川県では燧灘に面する沿岸地方及び小豆島地方一帶の高潮と突風による被害が多く、徳島県では瞬間風速三十九米に及ぶ暴風、特に山間部の三好地方の過去三十年来と言われる突風と、三百ミリ以上の雨量による被害、又小松島、鳴門地方等海岸沿線地帯の高潮による被害が多く見受けられております。高知県では西南部の幡多郡及び海岸地方に暴風雨と高潮による被害をこうむつております。愛媛県は、瀬戸内海に面した東予の宇摩、新居、越智の三郡地方が最も激甚で、次いで南予地方の治岸市町村、島嶼部に暴風雨と高潮による被害をこうむつております。被害の特徴といたしましては、人的被害の多いこと、家屋建築物の被害の大きいこと、海岸施設の被害の大きいこと、果樹農作物の被害の大きいこと等でありまして、死傷者七百六名、住家の全半壊千八百二十戸、公共土木施設被害十六億、農作物の被害三十四億に達しております。  次に広島県の状況について申上げます。広島県は、台風の中心進路が県境近く山口県を西北に抜けておりますので、従つて災害は県の西北部に集中している状態であります。その被害状況は昭和二十年九月の大災害に匹敵すると言われ、殊に木野川、八幡川流減等山間地の佐伯郡が未曾有の惨害をこうむつている次第であります。風速四十九メートルに及ぶ暴風と三百ミリに及ぶ雨量が山間地の伐木期を過ぎた直後に訪れ、倒木と流木が水流を堰きとめ、これを一気に破壞し、或いは不測の地点へ奔流して、暗夜部落を襲つておるのでありまして、ために人的被害は死傷者五百二十七名、家屋の流失、全半壊二千三百三十三戸に及んでおる始末であります。又沿岸島嶼部が異常な高潮による被害をこうむつておりますことは愛媛県におけると同樣の模樣であります。被害総額は約百四億円と言われており、うち土木関係約四十億、耕地関係二十一億、農業水産関係約二十五億、建築物関係約十億を数えております。  今次の災害に際しましていち早く災害救助法を発動いたしました県は、広島県四十八カ町村、愛媛県四市十五カ町村、徳島県三市七地区でありまして、いずれも応急救助に非常な努力を拂つております。  異常な災害に際しまして、地元側の強く要望しているところを少しく申上げますると、第一に、四国、中国地方はここ数年来毎年に亘る災害を受け、殊に本年はケイト台風に次ぐ二度目の被害であり、市町村及び県財政は極度に疲弊しており、殊にこのたびのごとく個人災害の非常に多い場合、その救助法とてもなく、地方税牧への影響は極めて大きいために、国庫補助又は平衡交付金の増額を強く要望している点であります。第二に、災害救助法並びに公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の基準になる標準税収入については、県税収入の調定額を基準とせずに、地方財政委員会の示す基準財政収入額を基準として計算せられたいということ。又災害救助費に対する国庫補助は、現行の収入見込額の百分の一を超過する場合とする基準を、五百分の一を超過する部分に対して補助するよう改正をして頂きたいという要望であります。第三に、災害復旧工事国庫負担の対象額十五万円以上となつておりますのを、五万円乃至十万円に引下げて欲しいということ。その他、米穀供出割当に関すること、融資に関すること、住宅金融公庫の優先貸付に関すること等、多数に上つておりますが、詳細は省きます。  最後に被害地を実地に視察して参りまして一、二感じました点を申上げてみたいと存じます。その一つは、学校建築の倒壊被害が非常に多いことでありまして、その原因も直接には異常な強風によるのでありましようが、その多くは建築経過年数五十年から三十年という老朽学校が過半を占めており、而もその補強対策がとられておらなかつたという点、更に戦後新築されました最近のものまで倒壊している例が多いことは、その原因の一端が耐風建築物としての構造基準を欠いていると見受けられ、甚だ遺憾でありまして、これが根本的再検討を強く感じました次第であります。その二は災害に対する予防でありまして、すでに昭和二十四年デラ、ヘスター台風等数次に亘る経験で、沿岸島嶼の逃難施設、或いは台風接近時の気象通報の組織機能等、十分に活かされてなければなりませんところが殆んど顧みられず、過去同樣の惨事を繰返している点でありまして、これも災害国として改めて検討を要することと感じた次第であります。最後に、おびただしい住家の災害に対しましては、すでに冬期を迎えております今日、早急なる救助対策を要望いたすのであります。なお愛知県下の被害状況調査の連絡を受けましたが、日程の都合上立ち寄ることのできなかつたことを遺憾と存じている次第であります。  以上御報告申上げます。(拍手)

佐藤尚武緑風会議長

○議長(佐藤尚武君) 次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれを以て散会いたします。    午後一時二十分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長の補欠選挙  一、日程第一 国会の審議権尊重に関する決議案  一、食糧増産に関する緊急質問  一、主食統制撤廃に関する緊急質問  一、海運政策並びに第七次造船計画金融に関する緊急質問  一、ルース台風被害状況調査派遣議員の報告      —————・—————

国会会議録検索システムで原文を見る ↗