平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第16号
- 発言数
- 188 件
- 登壇者
- 20 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1951/11/12
会議録
○委員長(大隈信幸君) 只今から委員会を開催いたします。 五章、六章、七章、それから議定書、宣言全部を問題に供します。 なお大蔵大臣は本日午後当委員会に出席の予定でございます。
○曾祢益君 私、通商産業大臣に御質問したいのでありまするが、第八條のこのサン・ジエルマン條約に関する日本の権利の放棄に関連いたしまして、御承知のようにコンゴー盆地條約に関する特権を放棄することになつておるのであります。そこで通商産業大臣に、今後このコンゴー盆地條約に関する特権の放棄に伴いまして、日本の輸出産業或いは通産上、一般的に如何なる不利不便が起るか。この点について伺いたいと存じます。
○委員長(大隈信幸君) 曾祢委員に申上げますが、まだ通産大臣はお見えにならないのですが、間もなくお見えになると思いますから、ほかの問題を六章、七章で先にお願いしたいと思います。
○曾祢益君 第十七條の、日本の捕獲審検所の決定又は命令を再審査することに関しまして、一体第十七條の(a)項の規定によりますると、捕獲審検所の決定若しくは命令というものは、如何なる基準を以ちまして再審査されるのであるか、この点が一向に明らかにされてないと思うのでありますが、これに関しまする御説明を願いたい。これは外務省から御説明願いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 再審査の基準は(a)項に国際法に従つて再審査せよとございますので、国際法に従つて再審査することになると思います。
○曾祢益君 そういたしますと通常の国際法、戰時国際法の原則に従つてやるということになりますると、多くの捕獲審検所の決定若しくは命令が恐らく再審査の結果、そう基本的に変えられることはないのではないかと思いまするが、政府のお考えでは、日本の戰時中にとりました捕獲審検所の決定乃至は命令というものは甚だしく国際法に反するような事例があつたとお考えであるかどうかをお伺いいたします。
○政府委員(西村熊雄君) 日本の捕獲審検所は、日本のあれは勅令でございましたか、捕獲審査令に従いまして裁判をいたしました。我が国の捕獲審査令はすでに第一次世界大戰中に制定されたものを、第二次世界大戰になりました後イギリスの捕獲審査令に従つて改正いたしたものでございます。でございますので、日本の捕獲審検所が準則として適用いたしました規則は、今度の戰争におきましては連合各国の捕獲審検所によりまして適用されました準則と殆んど同一の準則によつておりますので、再審査の結果、命令乃至決定を修正する必要を生ずる場合は極めて稀であろうと考えております。
○曾祢益君 私、通商産業大臣が来てから御質問申上げたいと思いますので、ほかのかたに御質問がありましたら代つて頂きたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) ほかに御質問ございませんですか。六章以下の平和條約全部でございますが。曾祢委員に伺いますけれども、六章、七章、それから議定書、宣言について御質問の通告があるのですが、御発言なさいませんですか。
○曾祢益君 私やはり順序を追つて、この前から通産大臣とそれから農林大臣に先に御質問をしたい、それでやはり準備の都合がございますから、今朝通産大臣がおいでになるということであつたので、まだ準備ができておりませんので……質問がないというわけじやないのですが、どうぞさように御了解願いたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(大隈信幸君) 速記を始めて下さい。
○曾祢益君 私、通産大臣からすでに同僚委員に対する御説明があつたやに聞いているのでありますが、事非常に重大でありまするので、この條約第八條に基きまするコンゴー盆地條約に関する日本の権利の喪失に伴いまして、一体如何にこれが日本の輸出に対しまする支障を来すのであるか、更に又これに対する政府の、通産省としての準備はどういうふうになつているか、この点を伺いたいと存じます。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 南阿にはすでに御承知のようにトラブルがありまして、我々も非常に憂慮しているところであります。南阿の貿易というものは日本に非常に重大なのでありまするし、又非常にあそこはうまく行けば伸びる期待が持てる地方なのでありますので、一層関心を持つているわけでございます。私から詳しいことを御説明ができませんから、政府委員に代つてこれまでの事情を一応御説明させたいと思います。お許しを願います。
○説明員(松尾泰一郎君) お答えいたします。 今回締結をせられました対日講和條約第八條の(b)項によりまして、我が国は一九一九年九月十日のサン・ジエルマン=アン=レイの諸條約に基く権利及び利益を放棄することと相成るわけでありますが、この諸條約の中に今御指摘になりました経済的に問題になりますコンゴー盆地條約が含まれておるわけでありまして、従つてこの條約に基く権利、利益も放棄することとなるわけであります。 コンゴー盆地地域と我が国との貿易を簡單に申上げますと、戰前の一九三七年から三九年頃におきましては、我が国の全体の輸出額の一・七四%、それから輸入額では、全体の輸入額の〇・六%に過ぎなかつたのでありますが、戰後におきましては、一九五〇年はそれほどではなかつたのでありますが、このコンゴー盆地地域と我が国との貿易は非常に比重を増大して参つておりまして、四十七年、四十九年頃におきましては、我が国の総輸出額中三・五%を占めておるわけであります。輸入額としましてはまだ全体の一%ぐらいでありますが、ともかくこのコンゴー盆地地域との貿易が戰後かなり順調な発展を遂げて来ておつたわけであります。そこでこのコンゴー盆地地域と申しましても英領、いわゆるケニヤ、ウガンダ、タンガニカやその他のフランス領というふうないろいろ地域がありますし、又ベルギー領のコンゴー地帶もあるということで、一概にこのコンゴー盆地地域と言いましても、又貿易の趨勢を見ましても、英領或いはベルギー領それぞれ傾向は違うわけであります。ともかくこういう地域との間におきまして貿易がかなり順調に伸びておりますところに持つて来てこういうサン・ジエルマン=アン=レイ條約に基く権利、利益の放棄ということで、一応若干の影響は免れないかと思うのでありますが、この協定の廃止によりまして直ぐどうこうという影響が出るか出ないかはいま暫く様子を見なければわからぬわけでありますが、英領地域及びベルギー領それぞれにつきまして、できるだけ影響が余り生じませんように今話合いのできるものは話合いをいたしますし、又今後の話合いにかかるものはその時期が参りますればできるだけそういう影響が出ませんように話合いをいたしたいということで、事務的にはいろいろ市場の分析その他をやつているというふうな状況であります。
○曾祢益君 只今のお話によりますと終戰後の貿易におきましても輸出総額の三・五%を占めておるというような相当重要な地域でございまするが、現在においては別に日本のコンゴー盆地條約に関する特権の上に乘つた輸出ではなかつたものと思うのでありますが、そこで只今のお話のように、はつきりと特権を放棄した結果、如何なる障碍が予想されるかという点については、はつきりお答えがなかつたのでありまするが、そこで如何なる障碍が予想されるか、それに応じてイギリス、ベルギー等の地方関係当局との間に如何なる話合いをして行く方針であるか、又それに伴つて第三に日本の輸出伸張の見地に対して如何なる貿易促進のための施設を考えておられるか、これらの点について通産大臣若しくは通産省の当局からのお話を承わりたいと思います。
○説明員(松尾泰一郎君) 通産省といたしましては、協定上の問題になりますと外務省といろいろ相談をいたすことも多いのでありまするので、まだこの場合はどうする、この場合はこうするというふうに仔細には連絡をいたしておらんのでありますが、まあ只今のところは、先ほども申しましたように、現状においてはそう大した支障もなかろうじやないかというふうに考えておるような次第でございます。時期が参りますれば、勿論今お話がありましたような話合いの問題、或いは先方に人をやりましていろいろ話をするというふうなこともできるかと思います。今ここで明確に御満足の行くようなお答えができないのは甚だ遺憾でありますが、一応これで……。
○曾祢益君 これは勿論相手方の出方も見なければならないから、従つて対策においてもまだ具体的には立てられないという点があろうかとも思いまするが、すでにこの特権を失うという以上は、十分な対策を練つて只今から……どうせ通商航海條約の問題、或いは例えばイギリス本国との関係におきましては、御承知のように第十二條に基きまする先方からの協定上の最惠国待遇を與えることに反対しておるような障碍もあることでありまするので、これらに対しましては十分な施策を立てられて、そうして事態に対処しなければならないと思うので、只今の御答弁では余りにその明確を欠いておると思うのであります。そこで今この点に関連いたしましていま一つ伺いたいことは、かような通商上の協定並びに通商航海條約等に関する政府の各機関の連絡の問題でございまするが、只今松尾次長かからも言われましたように、この通商の協定と申しまするか、或いは通商航海條約の問題は尚更そうでありますが、さような外国との協定に関しては外務省が所管してやられることになると思うのですが、それらの外務省が持ちまする権限と、実質的に通商の関係を一本に、国内関係を一本に握つておるところの通産省との関係が、これは過去におきましては、ややもすれば外務省と商工省の貿易局との間の関係が円滑に行つておらなかつた、かような歴史を我々は知つておるのでありまするが、この非常に重大な講和後の通商上の、通商の進展のために如何なる両者の円滑なる関係を考えておられるかというような点に関しまして、先ず通産省の御意見を伺い、更に外務省の御意見を伺いたいと存じます。
○国務大臣(高橋龍太郎君) この今のコンゴー盆地の件につきましては、種種非常に複雑しておりまして、私も非常に関心を持つておりますのですが、どうも率直に申しまして私自身が対策等の方針をまだきめかねておりますのです。率直に申上げて……。非常に複雑して、なかなかその説明を聞いても私にもわからない点が多いのであります。御注意の点は私も非常に関心を持つておる問題でありますから、十分注意をいたしまして御期待に副うようにいたしたいと存じます。が、なお、この通商協定について外務省と連絡は只今は至極円滑に両省の間では進めておりますので、さよう御承知を願いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 貿易、通商、金融関係につきましては、今後の我が国の対外的な問題としては中心になる問題だと存じます。実は現在もすでにそういう方法をとつておりまするが、現在は御承知のようにスキヤツプが中心になつて或いは貿易或いは金融の協定を結ぶ、それによつて通産省はいたしておりまするから、大体現在はすでに二十四ほど結ばれて、その後にイギリスなりスぺインなりドイツなり、或いはフランスなりというようにだんだん進んでおります。こういう問題につきましてもそうでございますが、今後は殊にこの対外関係が中心になつて参りまするから、それにはどうしても国内の貿易体制というものが基本になつて来なければならんのであります。従つてこういう点から外務省と通産省とは、或いは人の交流におきまして、場合によりましてはこの経済安定本部等もこれに加わつてもらいまして、従つて人員の交流、両方の最もよく事情の通ずる……、国内においては、国内的体制においては通産省、対外的な場合においては外務省と一体になつてやつて行く体制を現在もいたしておりまするが、今後は一層これを密接にしながら進めて参りたいと存じております。
○曾祢益君 通産大臣が極めて率直に、コンゴー盆地條約関連地域はいろいろな各地域ごとに複雑な事情があるので対策を考えておる。併しまだはつきりしたものがないということを言われたのは、その率直な点は大いに諒とするのでありまするが、どうぞ十分にこの複雑な事態に対処する施策を作つて頂きたいということを申上げておきたいと存じます。 それから通産省と外務省との関係においては極めて円滑に行つておるというように言われたのでありまするが、これは当然にそうなければならないのであつて、責任大臣の御答弁としては、まさかその反対のことをおつしやるはずはないのでありまするが、私が極めて個人的なソースから聞いておりまする情報は存外真相に近いのではないか。決してそれは円滑に行つておらないということを聞いておるのであります。そこで、さようなことであつてはならないのであつて、通商産業省ができた趣旨も、過去におきまして、一方は、外務省は対外関係は自分のほうである……ところが通商と言いましたならば当然に国内産業と直結しているものでありますので、これをはつきり分離することは極めて困難であります。ややもすれば外と中とが絡み合いまして、そこに役所同士の権限争いが起るのが常であります。これは甚だ不幸なことでありまするが、日本人の島国根性の現われでもあつたと思うのであります。そこで通産省ができた以上は、殊に通産局というものが非常に大きな機構としてでき、そこに外務省の知識を持つた人が行つて、更にそれが外務省と通産省との間の交流人事を形成するということに、私は通産省の大きな狙いがあつたと思う。然るに現状におきまして、いよいよこれからスキヤツプの手を離れて一人前の通商外交をやろうという事態になりますと、ややもすれば昔の繩張り争いの根性が顔をもたげておるというような実情であるらしいのでございます。私はプライべートのソースですが、存外、現に働いておる諸君の実情を聞いておるので、通産大臣は御承知ないような事実を私のほうが知つているかも知れない。そこで、この点について先ず通産省のほうにおいては、通商局の国内産業と貿易とのいわゆる一貫作業的なよさを十分に発揮しつつ、而も外務省との交流人事に対して十分なる、何といいますか、広い気持で交流人事を今後も続けて行くというようなお考えであるのか。それとも現に外務省の経歴のある人を入れてしまつたならば、それはそこで使い切りにしてしまつて、外務省に帰さない、或いは交流人事は困るというような狹い考えでおられるのか。又逆に外務次官に伺いたいのですが、外務省としても協定は自分の所管事項というような、これはそのことにおいて正しいのでありまするが、何でもかんでも通商問題について国内的な方面まで、折角通産省を作り通商局を作り、そこに外務省の練達の士を入れておるにかかわらず、狹い繩張り根性からこの通産省としての機能に対して邪魔をするというようなきらいがあるのではないか。果してそういうことがないかどうかについて、もう少し明確な方針の御説明を願いたいと存じます。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 御注意の点は、若し現在までに不都合な点がありますれば、十分外務省と連絡を取つて円滑に進めて行きたいと存じます。外務省当局も根本には現在のような重大な国情でありますから、通商協定については通産省の意見を現在も尊重してくれておりますが、一、二の点について意見が違いますことはこれは止むを得ませんので、違つた意見を十分に検討して結論を得なくてはいけないのでありますが、今御注意の点は私ども参考にいたしまして将来善処して行きたいと存じます。
○政府委員(草葉隆圓君) 外務省といたしましても、従来お話のように、ややともしますと、対外的、対内的において同じ問題、同一な系統の問題でございますから、トラブルを起しやすい状態がないとも限らないと存じます。これは殊にその内情はよく御承知でございますから、お話の通りであります。併し今後は在外公館等におきましても、中心は対外貿易というような面に移つて参る今後の状態であります。従いまして従来在外事務所へ人を出しまする場合におきましても、主として通産省の意見は十分尊重しながら、殊に具体的には、人的におきましてもこれを努めてそこに機構の中に入れるような体制をとりながら進めて行つておるのであります。又今後におきましても両方の人事交流は十分円滑にいたしまして、御期待に副うような努力をいたして参りたいと存じております。
○曾祢益君 只今両者の責任者から、十分に相互に権限を尊重しつつ円滑に且つ友好的な連絡を遂げ、なかんずく交流人事を十分にやつて行くということを言われたので、どうぞさように現実にやつて頂きたいということを希望申上げておきます。 更に続きまして、先般第十二條の例外、内国民待遇の例外事項について外務省の御見解を質したのであります。これを要するに、この第十二條の例外は、大体内国民待遇の例外については三つのことが書いてございまするが、いわゆる一般通商航海條約の解釈として、内国民待遇を與えなくてもいいという部分について、この條約の規定では必ずしも十分でないきらいがある。例えば発券銀行、日本銀行の株券の所持に関しては内国民待遇の必要がない。或いは鉱業権、マイニングのほうのことに関しても内国民にそれらの権利を留保しておくことが必要な場合がある。そういうことについても通商航海條約にはつきり現われた以外の例外事項として、国際的に認められておる。或いは土地の所有権等に関しても同様な通念があるということであつたけれども、それらに関して條約上は、はつきりした規定がない。そこで結局においては、この條約においては相互主義の原則に立つておりまするから、若しさような点について疑義が起つた場合には相互主義に立つ。例えばアメリカの国民が日本において発券銀行の株券を持つということをこの平和條約に関連する権利として主張した場合には、日本としてはそれに対するはつきりした断わる口実がない。唯一の口実は相互主義でやつてくれ、アメリカのフエデラル・リザーヴ・バンクの株券を日本に持たしてくれるならばというような、いわば逃げ口上的な遁辞しかないということが、條約の解釈としては明らかになつたと思うのであります。私はそれらのことを申上げまして通産大臣に伺いたいのでありまするが、果してそれらの点について国内産業の必要の見地から、十分なる国内産業の基本的なる面或いは公共的な面の維持の見地から、並びに日本の、通俗的な言葉でありまするが、民族資本が巨大なる外国資本に潰されない、さような見地からいいまして、この條約の規定で果して十分にやつて行かれるお考えであるか。その点について、これは通産省の所管事項のみでなくて、一層広汎な点もあると思いまするが、一般的の商工業の所管官庁であられる通産大臣のお考えをお伺いたいと思います。
○国務大臣(高橋龍太郎君) これも非常にむずかしい問題でありますが、私は大体差支えなくやつて行けるのじやないかと思います。いろいろなむずかしい場合も起きて来ると思いますが、その場合々々に善処して行くよりほか仕方がないと存じております。今、私はこういう事柄では非常に考慮しなくちやいけぬだろうというようなものを持つておりません。非常にむずかしい問題で、あなたが御心配下さることは御尤もであるし、私はむしろ感謝するのであります。
○曾祢益君 通産大臣は結局においては楽観的な見解をお持ちのようであります。私自身は、非常に何と申しますか、閉鎖的な島国根性的な考えを持つておらないつもりでございますが、併しこの点はやはり十分に考えて参らなければならないと思う。そこで、最近、あれは外資委員会からの情報として或る新聞に出ておりまして、その細かい数字は忘れましたが、日本における外国人の日本の株式の所持の数字が出ておりましたが、決して今のところでは非常に大きなパーセンテージを外国人が占めておらないということが数字的に現われておりました。併しこの問題はよほど十分にお考えにならないと、決して安心ばかりはしておられないと思うのであります。従つて成るほど、一面から言うと外資の導入が望ましい面がございましよう。併し同時に、外資導入という積極的な手が望ましい部面と、或る種の事業、産業等については、余り巨大な外国の資本的な勢力の進出が国の公共的な立場から言つても望ましくない場合と、更に又、いわば零細な民族産業、民族資本の擁護から言いましても望ましくない場合が多々あると思うので、只今のような、ただ一般的な楽観論に立つことなく、十分にその点を研究されて、それに対する対処の手段を考えられ、殊に事業の性質等によつて具体的な対策を立てられることが必要だと考えるのであります。その上に立つて、この條約では必ずしも明らかでない点について如何に対外的に対処するかという点については、それこそ外務省においてもいま一層国内産業に対する見解を深くされて、相互に連絡されて善処される必要があると存ずるのでありまして、この点、御希望申上げて、なお、これ以上、それらの問題について、まさか何も策を立てておらないわけでもないと思うので、更にお洩らし願えることがあるならば、極めて重要なことでありますから、政府の準備計画或いは対策等について更に御説明があるならば、この際、承わつて、私の質問を終りたいと思います。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 御注意の点は深く頭に残しておきます。只今の外資委員会の現在の、極く最近の模様は、私、今、聞いておりませんが、只今曾称さんのお言葉にもありましたように、現在のところはまだ国内の株を外人が所有しておりまするのは百五十万株ぐらいのものでございますして、特にそうパーセンテージの強いものでもありませんようです。このくらいな程度であればむしろ私は望ましいのではないか。やはり外人が自分で株を所有するために、その会社に非常に関心を持つて来るわけでございますからして、自然国内産業の、それらの事業の詳細を検討し、親しみができて来るわけでありますから、お言葉の通り或る方面の産業についてはむしろ望ましいのでないかと思います。まあこの程度ならば、だんだん日本の産業の実際の内容を海外の資本家が知ることになりますので、まだ一向弊害はないと思いますが、御意見の点は、私、同感でありますので、十分注意をいたします。
○木内四郎君 今のに関連しまして……、今、曾祢委員の質問になつた点、字句の解釈について條約局長にちよつと伺つておきたいと思うのですが、ここに「その当事国の対外的財政状態若しくは国際收支を保護する必要に基くもの」では、これは差別的待遇でもまあ認められることになりますね、十二條ですが。ところがその最後に、そういう例外規定は「それぞれ内国民待遇又は最惠国待遇の許與を害するものと認めてはならない。」ということになつております。そこで簡單にこれを例を引いて申しますれば、現在イギリスが相当いろいろな対外的財政状態その他で考慮しておるだろうと思いますが、そういう見地から、今申しましたような対外的財政状態若しくは国際收支を保護する必要に基いて、イギリスが例外を設けたような場合には、これは相互主義から外れておつても差支えないという意味なんでしようか。「それぞれ内国民待遇又は最惠国待遇の許與を害するものと認めてはならない。」というこの解釈は、どういうことになりましようか。
○政府委員(西村熊雄君) これに規定してありますような三つの場合には、各場合の事態に相応しており、且つ、合理的な方法で適用をされておる限りにおいては、差別待遇をやつてよろしい。即ち内国民待遇や最惠国待遇の原則にとらわれないでやつてよろしいという、こういう趣旨でございます。
○木内四郎君 そうしますと、さつき曾祢委員の御質問になつた通商條約に通常規定されておる例外というようなものですと、大体標準があると思いますが、今、私が伺つた「対外的財政状態若しくは国際收支を保護する必要に基くもの」というようなことになると、相当適用の範囲が広いし、伸縮性があると思いますが、それでもそういう理由があるということであれば差別待遇も差支えないということになりますか。
○政府委員(西村熊雄君) そういうことになります。但し條件が付いておりますから、事態に相応しており、且つ、合理的な方法で適用される場合に……、二つの條件が付いております。
○木内四郎君 これは勿論相互主義の例外だから、向うはそういうことをやつても、こちらはそれに対しては、それを理由にして、こちらの取扱を変えて相互主義に持つて行くということは許されないのですか。
○政府委員(西村熊雄君) さようでございます。
○岡田宗司君 曾祢委員の質問に関連いたしまして通産大臣に一言お伺いいたしたい。通産大臣は、外国の資本の日本への導入の必要があること、現在の程度においては外国の資本によつて日本の産業が支配される虞れのないことを御指摘になつて、楽観論を述べられておつたのでありますが、併しながら外国資本が入る問題は、これは経済上の問題ばかりではなく、又いろいろな国民の感情等々の問題もあるのであります。外国資本が他国に入りまして、そのためにいろいろそういうむずかしい問題が起りましたことは、これはアジア或いは南米諸国において幾多ある。そこで私どもといたしましては、どうしても外国資本を導入いたしまして、日本がその資本の力によつて経済的発展を遂げる必要はあるといたしましても、これが国内の産業を支配いたしまして、そうして、それによつて国民がこれに対して不満を持つというような事態になることを私は欲しないのであります。南米や或いは中国その他におけるように、外国資本に対する排撃の運動が起り、これが一つのナシヨナリズムの運動として発展するというような原因を作り出すことを、私どもは欲しないのであります。そこで、どうしてもこれは国内法になると思うのでありますが、重要産業における外国資本の導入につきましては、将来いろいろな制限を設けなければならんと思うのでありますが、この点について、将来日本政府は外国資本の日本における産業の支配等の問題について制限を付する法律を作られる意思があるかどうか。そういう御用意があるかどうか。その点についてお伺いしたいのであります。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 只今そういう国内法を用意しておりません。無論、産業の種類によりましては、何か特別のそういうものが必要になる虞れもあるわけでございますが、まだ現在のところ何も準備をいたしておりません。
○岡田宗司君 通産大臣は重要産業に対する外国資本の支配の虞れについては御了解になつておられるようでありますので、これは、やはりこういうふうに條約があいまいなものを残しておるといたしますならば、国内法において、はつきりときめるべき点をきめておかなければならんと思いますので、政府としては速かにそうされるのがよろしかろうと私どもは考えるのでありますが、近くやる御意思があるかどうか。重ねてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 十分に研究をいたしてみます。
○羽仁五郎君 今のに関連して伺いたい。この平和條約成立後の日本と各国との間の相互主義についてなんですが、殊に日本とアメリカとの経済上の相互主義というものは、譬えて言えば私とロツクフエラー氏との間の相互主義のようなものであつて、実際においてそれが現実の相互主義をなさないということは火を見るよりも明らかです。だから條約局長なり外務省なりでこれを相互主義で安心しておられるということは、これはまあ止むを得ないとしても、その責任をとつておられる主管の政府当局が、その点において先ほどのような楽観論を唱えておられるということは、この條約の只今の條文の審議に対しても我々は非常な不安を感ぜざるを得ない。その点において四つばかりの点を通産大臣に伺いたいのであります。 第一は、今日非常に強大な資本を持つている国と、それからむしろ非常に経済が薄弱な国との関係において、先ず第一に問題になつて来ることは、すでに通産大臣もよく御承知のように、特に重要な産業のいわゆる国有化の方針というものはやはり具体的に問題になつて来ると思う。現在の政府は、自由党のいわゆる自由経済ということに立脚しておられるようですが、併し今日イランなどの例を引くまでもなく、保守的な又自由主義的な政府といえども、こういう点においては特に重要産業の国有化ということを考えることが必要になつていると思うのですが、この点については現在通産大臣はどういうふうにお考えになつているか。漫然と自由経済でよろしいというふうにお考えになつているのか。それとも、こういう平和條約が成立して、そうして強大なる外国資本とそれから日本の弱い経済との間の関係が單に相互主義で行くということは到底できない、重要な産業においては国有化の方針というものを考えなければならないというふうにお考えになつているか。それともそういう点については何らお考えになつていないか。これが第一点です。 それから第二の点は、小さいいわゆる中小工業に対する問題でありますが、この中小工業の問題がやはり今言うような我我とロツクフエラーとの関係のような相互主義に置かれてしまえば、日本の中小工業が片つ端から崩壞するということは火を見るよりも明らかです。そこで中小工業に対するやはり国家なり何なりの援助ということに対して、具体的な問題として、この平和條約が成立する際にはどういうお考えでおられるのかということを伺わなければ、どうしてもこれを安心して賛成することはできない。 それから第三は、日本も今日その列に属しつつあるところの経済的に弱い国々に絶えず起つて来る問題は、経済上においていわゆる生産財というものは入つて来ないで、むしろ奢侈品が外国から氾濫して入つて来る。そのために外国との経済関係によつて得るところの利益というものが、その国の生産のレべルの向上ということにはならないで、いわゆる植民地的な奢侈品の氾濫、そうしてそれは従つて單に経済上のみならず生活一般の混乱というものをも導いて来る。これが例えばイランその他においても非常に問題になつていたことは御承知の通りです。イランにイギリス或いは特にアメリカから奢侈品のみが輸入され、或いは現金が支拂われ、それに対して奢侈品が売りつけられる。イラン自身の産業状態の向上ということには少しもならなかつた。そういう問題があると思うのですが、こういう点についてどういうふうなお考えをお持ちになつているのか。 それから最後に第四には、これはいろいろな点で問題になつて来ることで、先日の本委員会の討議の際にも、国際関税協定に対する日本の加入の見通しがなかなか困難である、すでに西独は加入が認められておるのに日本は入れない。その加入の見通しもない。これについてはイギリスの反対なども強力なものがあるということを政府は説明されたのですが、併しこれの根本原因は一体何であろうかということを考えなければならん。それでやはりこれと関連して来るのですが、日本の国際的に遙にレべルを下廻つている低賃金、この低賃金問題のある限り、国際関税協定などにおいて、その他、外国との経済関係において、イギリスそのほかの国々の信頼を得ることができないという面が一面にありますと同時に、他面において、日本の低賃金労働というものを目的にする外国資本の進出というものが当然又ここに起つて来わけです。これは実に厄介な問題を生ずるわけでありまして、そこで低賃金の問題について、この面からどういうふうにお考えになつているか。日本の低賃金に対する外国資本の進出というような点について、特にこれと関連して、日本に相当に強力な労働組合というものが発達していれば、この低賃金目当ての外国労働の掠奪的な進出というものと対抗することができますけれども、併し強力な労働組合というものもなければ、そういうふうな抵抗をなすということもできないのでありますから、この第四の低賃金、或いは日本に強力な労働組合というものが存在するか否かということが、この外国資本の日本進出に対する関係において持つているところの意義、これらの点については現在の政府はどういうふうなお考えをお持ちになつているか。以上四点について、只今の第十二條を審議いたします上においても、我々がどういうふうに考えたらいいか。その必要から現在の政府のお考えを伺つておきたいと思うのであります。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 先ず第二の中小企業の御質問でありますが、日本の経済界における中小企業の役目は非常に重大でありまして、例えば日本の中小企業、極端に言えば九〇%まで中小企業とも言えるというような状態でありますから、これは非常に重大な問題でありまして、私はこれはできるだけ保護して、中小企業が安全に成り立つて行く方向に進むことは絶対に必要だと考えます。 次の第三の、外国から奢侈品が入つて来て云々という御意見でありますが、これも私は御同感であります。御同感でありますが、只今私どもはこれを何か法的に阻止するということは考えておりません。 第四の、日本の低賃金のために、外国の資本、外国の工業が入つて来る。それに対しての政府はどういうふうに考えておるかというお話のように承わつたのでありますが、現在の日本の賃金が不当に低賃金であるかどうかということは、これはこの際触れぬことにいたしまして、事実欧米に比べて低賃金であるということは事実であるので、そのために御指摘のような海外の資本が入り、工業が入つて来るということはあり得ることで、だんだん実現すると私は思うのです。これは又一面に、要するに程度問題で、一面に海外の進んだ技術が入つて来ることが、日本の工業の進歩を来たすもとにもなりますので、程度の問題だと思います。極端にそれが日本の工業を阻害するようなことは、これはどうしても避けなければいけない。そういう虞れがあればどういう方法をとつても避けて行かなければいけないのだと私は考えます。要するに、工業、企業の種類などについて、ケース・バイ・ケースに研究して行かなければいけないものだと思います。 それから最初の或る種の産業を国有化するというような考えはないかという御趣意のように承わつたのでありますが、これは今の内閣がどういうふうになにいたしますか、私は党人でもないので、このお答えをするのは適当ではないと思います。
○羽仁五郎君 只今の御答弁を伺つただけでは、この條項の審議について、我々は何らの確信を抱けなかつたのですが、通産大臣は非常な高齢でおられるので、甚だ恐縮ですけれども、併しイランのモサデグのような人もずいぶん御高齢な人であつて、それでイラン産業のために健鬪しておられるのでありますから、どうか更に一般と御研究を願いたいのです。 ここで一つ伺つておきたい事実があるのでありますが、これは通産省が直接に御関係になつて、どの程度まで御関係になつておられたかということは問題でありますが、今年の七月でありましたか、八月でありましたかに、御承知のように呉の旧海軍工廠の一部のドツクがアメリカの石油会社に売却乃至貸與された事実がございます。この事実について我々はいろいろな点から不安を感ずるのでありますが、先ずこれについて、御説明を願えれば、御説明を伺つてから質問したいと思うのでありますが、今そこに御用意が或いはないかと思うので、御用意がなければ次の機会に御説明を願いたいと思います。すでにこれは十月から操業を開始しておるであろうかと思うのであります。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 只今御質問の点の工廠の問題かと思いますが、これは私、就任前でよく承知いたしておりません。誰か適当な政府委員を差出して御説明をさすことにいたしましよう。
○堀木鎌三君 私、通産大臣に伺いたいと思いますことは、この條約に対しまして我々が先ず考えられることは、政治的には日本の国には安全が保障されるだろうかどうか。独立後日本の国の安全が保障されるかどうか。それから経済的に見ますると、要するに独立後自立経済が成立つて行くのだろうかどうかというふうな問題だと思うのでありますが、従いましてこの経済條項及び賠償請求権等の問題につきまして、通産大臣はこの條約締結後、即ち日本の国が独立以後どういうふうに日本の経済を持つて行かれようとするのか。今の内閣として国民生活の水準は落さないで……、事実は必ずしも、そう、うまく行かないと私は思うのでありますが、国民生活の水準を落さないで、而も賠償を拂い、そうして対外債務を支拂い、及び外国人の財産の損失を受けたものを補償しなければならないというふうな事情に当面しておられるわけであります。 で、ここで問題になつて来ますのは、然らばこれをどういうふうに実際に調節して参るか。要は日本の産業構造をどう持つて行くか。それが対外貿易の規模においてどう考えて行かなければならないか。そういうふうな問題に帰着して参ると思うのでありますが、大臣として、無論これは通産大臣の御所管外の分もございますが、一番主要な役割をなさるのは通産大臣だと私は思うのでありますが、如何にして国民生活の水準を維持しつつ、この講和條約によるところの我々に課せられたる義務を果して行くか。これは容易ならんことだと私は思うのであります。それらに対しまして、実際の今のところ我々が今までお聞きしたところでは、どうも安心して行けそうもなさそうな気がするのであります。無論国内におきまして楽観論もあり、悲観論もある、今の政府は比較的楽観的な考え方を持つていられるのじやなかろうか。賠償問題も、フイリピン、ビルマを始め、その他の諸国との国交がうまく行けば円満に行くだろう、こう言われるのでありますが、率直に言つて彼らのほうの国から言えば、賠償問題がきまらなければ、実際のこの條約に対しても日本の独立を認めにくい態度をとつておる。そうすると賠償支拂ということは確かにむしろ前提になつて参る。東南アジア開発計画も、いろいろゴアの鉱石その他が参つてはおりますが、これが本格的に参りますために東南アジア諸国とのそういう国交の回復ということが前提にならなければならん。又イギリスのほうは、先ほどコンゴー盆地條約についてもありましたが、前のこの委員会におきましても、いろいろな機会にイギリスの対アジア政策と申しますか、全体の世界経済政策と申しますか、そういう面から必ずしも我々の希望するように楽観ばかりは許さないというような問題が出て参つております。いわんやアメリカからの見返資金の援助のないあと、我々がドルに対して、どういうようなドルを獲得して行くような貿易が本当にできるのかどうか。そういうような問題がかかつて来て参るわけであります。而も一面国内の情勢を見ますと、ともかくも通産大臣としては、石炭問題にしても、電力問題にしても、必ずしも楽観をしておられるとは見えませんが、こういう基本産業が他の産業に沿うて発達していなかつた。即ち日本経済の規模を拡大いたして参りますのに、こういう基本産業のほうから制約を受ける。その基本産業を他の産業に合せるためには、よほど前から準備をしてかからなければ、頭打ちが起きてからかかつたのでは、それが完成するまでに相当な時間がかかる。日本の産業はどうしてもその面から制約を受けておる。而も貿易によつて、日本の何と申しますか、富を形成して行かなければならない。こういうときに、実際国民経済の水準を維持しつつ、この條約によつて自立経済を達成して行く。この條約の締結後日本が独立後どうしてやつて行くかという問題が一番大切でないかと思うのであります。それらにつきまして、通産大臣としての御抱負なり、御経綸なり、御方針なりというものを、ここで、はつきりお述べ願うことが、これらの問題を進めるに当つて我々一番希望しているところだと思いますので、是非その御方針を承わりたいと思います。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 非常に大きな問題でありまして、私、必ずしも楽観してはおりません。講和後、日本の自立経済を確立して行くことは相当困難だと思うのであります。この講和條約で第一に御指摘になりました賠償の問題がありますが、これもどういうふうに決定されますか、少くとも我々は半年前には、或いは賠償の義務を免れるのではないかしらと私は考えて、甚だ楽観に過ぎたわけだつたのですが、こういうようなことになつたのであります。 ところで通産大臣としては、この日本の自立経済を達成して行くというにはどうしても貿易を盛んにすることが第一であります。ところで、貿易を盛んにする、仮に輸出貿易について考えて見ましても、これは非常にむずかしいことだと私は思う。各国が現状以上に輸出を増進したいということを血眼になつて画策しているわけでありますから、日本がそれらと競争して現在よりも輸出を増進して行くということは、日本だけではありません、各国も同様に非常な困難であります。そこに、もつて来て、日本の実力が非常に低下している。その問題で私が一番現在痛感しますのは、輸出業者の実力が恐ろしく低下している。東南アジア貿易についてのお話がありましたが、例えばパキスタンにしましても、パキスタンの国民、政府は日本に現在非常に好意を持つているのですが、だんだん使節団、調査団などを出しまして、その報告を聞いて見ましても、日本の民間の貿易業者の力が非常に乏しいのです。そうしてこれらの商社が店を持つことも制約されている。で実際上事情がなかなかわからない。そこにもつて来て、向うのバイヤーというものが戰後に俄かに芽を出したバイヤーで、それらの信用が如何にもわからない、非常に如何わしいものがある。そうしてその実情が非常にわからない。それがために輸出保險等をやつて保護しておるのですが、そういう点で輸出貿易を殖やすということには非常な困難がある。そこへもつてきて、それらは当面の問題でありますが、日本の産業施設が如何にも老朽化して、これをどうしても近代施設に変えて行かなければ、正当な競争はできて行かないのです。原価も高く付く。品質も劣る。これにはその資本がない。私は日本の工業の近代化というものをどうしても二年くらいの間に目鼻を付けなければ、各国がやつておりまする軍備拡張が大体終りになるというと、海外にも輸出の余力ができて来ますし、日本が到底競争ができないというような大きな問題もあります。これらについては、だんだんそれらの対策としていろいろな法案を出しまして御審議を願わなくてはいかんと思つておりますが、要するに自立経済を達成して行くということは非常に大きな困難な問題だと私は考えております。決して楽観はしていないのです、いないのですが、大体に私は実は戰後二、三年の間は非常に悲観論者であつたのです。非常に悲観論者であつたのですが、最近は戰後の鉱工業の回復の程度等から見まして、又日本人の能力というものが決して捨てたものでないだろう、例えば特許庁等で日本の新らしい発明を調べて見ますというと、戰後もう非常に低下してしまつておつたのが、昨年あたりから相当いい発明ができて来ておるのです。で、そういうふうに一つ一つにぼつぼつ私の悲観を緩和する面もできてきております。非常に困難ではあるが、私は今日は我々が覚悟をして行けば、自立経済というものは達成して行けるのではないかと考えておるのであります。
○堀木鎌三君 余り具体的な御答弁を頂戴するのは無理かと思いますが、ただ、今おつしやつた中で、例えばば朝鮮事変が勃発しましてから日本の鉱工業生産指数が飛躍的に増大した。内閣で考えておる自立経済三カ年計画というものが、鉱工業生産指数だけでとりますると、もうすでに達成されて来ておる。そういう面から見れば、これは何と申しますか、高橋さんの言われるように余り悲観しなくてもいい、こういうふうな考え方の裏付けになるかも知れません。ところが、ここで以てお考え願いたいことは、一体こういう調子で行けるのかどうか。現に基礎産業からの制約というものは、これは拭うべからざる事実だと私は思うのです。電力にしたつて、石炭にしたつて、幾ら高橋さんが通産大臣になられたからといつて、右から電力が発生し、左から石炭が増産するわけはないのであります。で、これらについては相当長い間の努力が必要なのです。これは、終戰時からこういうものからの制約、日本産業が制約されるだろうということは、これはもう誰しもおよそ産業界の人だつたら考えておつたのです。ただ、その日暮らしの経済をやつて参りました結果は、事実ここへ帰つて来ておるということは確かだと思うのです。それからアメリカの経済と結び付いてお考えになつて行くにしても、アメリカ自身がこれだけの統制経済に入つておる。実際日本の産業でも、まあ、あなたは党人でないから余計私は自由にものがお考え願えると思うのですが、自由党は野放しの、実際のところをいえば野放しの自由経済、これはそう言えると思うのです。周東安本長官は、いや野放しの自由経済ではない、そのときどきに緩急に応じてやるのだ、緩急に応じてやるつもりが、電力が詰まつてから電力に騷いでいる。急に電力の増産計画を考えなければならん。そんなことは計画さえあれば、もうきちつとわかつていたわけです。アメリカとの経済の問題でも、アメリカは統制経済に入つておる。アメリカからの援助を受けるならば、日本で稀少物資をはじめいろんな物資の統制というものは起らなくちやならん。で、一番自由主義経済の本山でありまする池田君ですら、金融については、すでに或る程度設備資金のほかにも量的にも統制に入らなければならないかと思つて、銀行法……評判の惡いために出し遅れておりますが、銀行法の改正をしなくちやならんかと思つておるような時代に入つて来ているわけです。必ずしも過去の経験だけお考えにならないで、この講和條約を結んで独立に入つたというところをお捕えになると、今までの産業経済政策だけでは行かない分ができて参ります。で、今のところ朝鮮の特需で息をついているわけで、実際のところを言いますれば、中共貿易も杜絶している。東南アジア開発計画といつたつて、これもそう急速にできない。そうしてこの賠償上の問題を処理して行かなければならない、見返資金の援助を打切られた以後の態勢としての経済を持つて行かなければならん。そうして国内においては、そういうふうな情勢でありながら、国際問題としては、更に物価問題は国際価格を上廻つて参る。これは上廻つて行くのは当り前なんです。中共貿易が杜絶して、ああいう原材料が遠くから来れば、海運賃が高くなつて来るのは誰でもわかつておる。すべてそういうものが、そのなるがままにしたときには、これはどうしたつて国民生活を低下させるよりほかに行きようがない。現に朝鮮の特需で成るほど一部には非常に景気がよくなつたが、国民の生活水準は八〇%近くまで行つたものが七〇%を切るようになつておるわけであります。だから、こういう問題をずつと深刻にお考え願うと、私は今までの経済のままでは行けないのだ。だから、ここでまあ特許を御覽になつて楽観をされるのもいいと思いますが、併し全体の構想として今までの経済政策だけではいけない。ここに通産省としては、新らしい経済政策、新らしい貿易政策というものが、私は立たなければやつて行けないし、国民に、いや、お前たちの生活は低下させないで、うまくこれらの義務を果して行けるのだとおつしやつても、これは納得できない。こう私は考えるのでございますが、重ねてそういう点についてお考えを伺えたら結構だと思います。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 私は決して楽観しておるのではないので、或いはその楽観の程度といいますか、悲観の程度もあなたと大体同じかも知れないと思うのです。決して楽観しておるのではないのです。今までの政策に非常に誤りがあつたじやないか、或いは電力の開発なんというものは今頃になつて騷ぐのは怪しからんじやないかというお言葉でありましたが、これも御同感です。御同感だが、この責任を私が背負うことは甚だ困るわけなんです。ところで、悲観の面は考えれば幾らもあるのです。私は非常に痛感しておるのです。痛感しておるのですが、そこで現在の通産省としまして……もう一つ前になりますが、今統制経済のお話がありましたが、統制という言葉が大変人気が惡いのですが、これはもう、なんでございましよう。率直に申しまして、こういう情勢が一層惡いほうへ進めば、ものによつてはだんだんそういう傾向に行くことは私は免れないだろうと思つております。ところで、その悲観材料は幾らでもありまするが、まあ私が楽観材料として先刻述べましたのも、或いは半ば強いてみずから慰めるために選り出したような楽観じやないかという御批判も出て来るだろうと思います。併し通産省としましては、現在においては、ただ悲観をして、うつちやつてしまうこともできないのですから、現状としましては、まあ私の程度くらいの楽観論者はこれでよろしいのではないかと思います。率直に私の所見を申上げておきます。
○堀木鎌三君 もう余りくどくどと御追及はいたしませんが、無論まあ楽観悲観は問いませんが、やはり私と違いまして大臣でいられるのです。それだけの御責任は私とはよほど違つて重くいられるわけです。従つて楽観悲観は問いませんが、この講和後に対しましてどうして行くのかということだけは、一応至急お立てを願わなければならない問題だ、今度の平和條約でも一番問題になる一つは、やはり経済関係が一体どうなるのだ、これで本当に経済自立ができるのかという問題が私は一番大きな問題の一つだと思うのです。でありまするから、内閣としてはそれをどうしてもお示しになる必要がある。お示しにならないで、実はどうなるか、よくなるか惡くなるかわからんし、お前らまあそう悲観することもないだろうとか、併しまあ考えれば悲観することもあるというふうな程度では、これは実際国民としては困るわけでございますから、大臣の御職責上是非その点について、経済政策の新らしい事態に即応するという問題に対してお立てを願うことを至急お願い申上げて、まあこれ以上の具体的な問題につきましては、いずれ予算委員会その他でお聞きいたしますことにして、これでとどめておきます。
○委員長(大隈信幸君) ではこの辺で一時まで休憩いたします。 午後零時十五分休憩 —————・————— 午後一時三十二分開会
○委員長(大隈信幸君) 休憩前に引続き会議を開きます。
○曾祢益君 私は第五章に関しまして大蔵大臣に御質問申上げたいと思います。 最初に第十四條の(a)に書いてありますように、日本は連合国に賠償を支拂うことがきめられているのであります。併しそのあとで、(a)の1によりまして、日本が賠償を支拂う相手方は、戰争中に日本国軍隊によつて占領され、又損害を與えられた連合国にして、日本に賠償を請求する国に限られているようにも見えるのであります。そこで先ず(a)項の初めに書いてありまする連合国、これは本條約のいわゆる連合国の全部を含むと思うのでありますが、連合国に対する賠償支拂の義務の原則と、1に書いてありますような特定の形をとつた役務賠償が支拂われる相手国と、この国の範囲について、この点は如何になつているかについて先ず御質問申上げたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 十四條に規定しておりますように、戰争中に生じた損害及び苦痛に対して、連合国に対して賠償義務があるという規定でございまして、連合国のほうで、戰争中に生じた損害及び苦痛に対して賠償の要求があれば、拂わなければならんと思います。その拂う方法は、ここに規定しておりまする前文の限度及び方法が1に規定してあります。
○曾祢益君 私の質問が少し不明確だつたかと思うのですが、私の伺いたいところは、現実に日本が賠償の交渉をなし、結局交渉成立によつて賠償の支拂いをなすことになるのは、(a)の1に基く役務賠償であり、且つその相手国というのは、1に書いてあります限定された連合国の一部であつて、日本が占領をして損害を與えた国であり、且つ向うからこれを希望する国だけに現実に限られるのか。それとも、それ以外の国に、(a)のほうの原則から言うならば、日本が賠償支拂の義務が認められているわけなんですから、それらの国とどう違うのか。例えて申すならば、イギリス本国、それからアメリカ合衆国、或いはソ連がこれと同様の條約を仮に結んだといたしましたならば、それらの、日本が占領し且つ損害を與えた国とは一般的に認められないような国に対しても、(a)によると賠償の義務が一応認められておるようにも見える。然るに1によりますると、日本が支拂うべき相手国は、これらの国は含まない。そうして日本が占領して破壞した国、これを地域的に言えば、非常に不正確な言い方かも知れませんけれども、大体東南アジア諸国と中国が問題になる。かように考えられるのですが、即ち現実に拂うべき相手国というのは、(a)の1によつてきまつちやつているのか。それとも(a)の初めに書いてある連合国全体に対する賠償の支拂ということが、ただ單なる抽象的な原則としてでなくて、現実の日本の支拂義務の履行にかかつておるのか。その点を伺つておるわけであります。
○政府委員(草葉隆圓君) これは賠償の問題として外務省関係から一つお答えさして頂きたいと思います。 (a)は戰争中に生じさせた損害、苦痛、それに対して連合国に賠償を支拂うべきことが承認される。その(a)の1は、その賠償の具体的方法として役務賠償をやる。その場合にどういう国にやるか。それは日本軍隊によつて占領され、日本国によつて損害を與えられた連合国が希望する。この連合国は、具体的に申上げますると、フイリピン、ヴイエトナム三国、インドネシア、オーストラリア、オランダ、イギリスは香港、シンガポールを占領いたし、アメリカはグアム、キスカ、アツツを占領いたしておる。連合国の中ではそれだけであります。そのほかは中国、ビルマ、インドがありますが、これは連合国に該当しておりません。その他の問題につきましては2以下に又申している次第であります。
○曾祢益君 そういたしますと、例えばフランス本国というようなものに対しては(a)によつても賠償の義務がない。即ち連合国の中で日本が(a)の1に書いてあるように、占領して損害を與えたもの、或いはその国の一部に損害を與えておる場合には、そつちに該当するものとする、ただ(a)だけの、要するに連合国に対する賠償の義務は、ここに原則が書いてあるが、佛し(a)の1に該当しない限り現実には日本が支拂う必要はない、かように断定ができるのかどうか。この点でございます。
○政府委員(草葉隆圓君) (a)の1にあります役務賠償につきましては、お話のように、さように解しております。
○曾祢益君 それでは僕らにはわからない。(a)の1に書いた役務賠償以外に、(a)に書いてあるような全連合国に対する賠償の義務というものが、本当にあるのか。ここではまあ言葉が過ぎるかも知れませんが、(a)に書いてあることが原則であつて、併し要するに存立可能な経済を維持するものとすれば、現実には賠償の能力がないことを認めて、いわば、それは相打ちになつてしまう。従つて現実に、「よつて」云々と書いてある1以下の役務賠償のほうだけで、現実に支拂う相手方及び支拂方法というものは、現実の賠償の義務というのは1によつてきめられておるのであつて、それ以外の賠償はないのか。それともやはり(a)に書いてある賠償の大原則、これは全連合国に対して例外なしに、その国が占領されようが、されまいが、いやしくもこの條約に認められた全連合国に対する賠償の義務がはつきり書いてあつて、従つてこの問題はあとまで尾を引くのか。その点を伺いたい。
○政府委員(草葉隆圓君) ここで2のほうには(ii)の規定を留保して、各連合国の條約の最初の効力の発生のときに、その管轄下にある財産、権利、利益というものはこれこれの條件によつて清算し、留置し、その他の何らかの方法をとる権利を有する。これは一つの賠償の対象物としてなされるものと考えております。従つてその他の役務賠償は、日本国軍隊によつて占領され、又日本国によつて損害を與えた範囲に限ると解釈いたしております。
○曾祢益君 只今の御答弁で大体わかつたのですが、連合国一般に対する賠償については、2のような在外資産の処分権、これは行使する国もありましようし、しない国もありましようが、これを與えておるというような以外については、1に言つているような役務賠償等は全然しなくもいい、こういうふうに了解してよろしうございますか。
○政府委員(草葉隆圓君) お話の通りでございます。
○曾祢益君 そこで次に伺うのでありますが、例えばフイリピン国の代表なんかが、いろいろ日本との賠償の問題について、新聞等に伝えられておる発言を見れば、只今の政府の御解釈とは必ずしも合つておらないように思うのです。即ちフイリピンは勿論この役務賠償の請求権を持つておると思うのでありまするが、現実に2の在外資産の処分というようなことをいたしましても、大した賠償がとれるはずがないのであります。従つてやはり(a)項に書いておるような何らか役務賠償以外の、而も2に該当しないような金銭賠償、現物賠償なんかを要求する権利が、この條約によつてまだあるやに主張しておると聞いておるのでありますが、その事実があるかないか。又それに対して日本政府はどういうふうに考えておられるか。これを伺いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) これは資料で差上げておるような意見があるようでございますが、正式にはこのようなことはまだ聞いておりません。この條約文から申上げますと、今回は(a)にありまするように、日本が存立可能な経済を維持するとすれば、これこれの状態であるから、従つて役務賠償というのを1に掲げております。従つてこの條約からは金銭賠償というものは考えられておらないのであります。具体的に申上げますると、第一次欧洲戰争のドイツは金銭賠償である。又イタリアの場合にはむしろ物品賠償でございましたが、日本には金銭も物品も独立可能な経済を維持するためには困難であるから、日本でやり得るものはいわゆる役務賠償である。従つて條約からは役務賠償に限られておるものだと解釈しております。
○曾祢益君 金銭賠償は、フイリピンその他の諸国がこれを希望することがあつても、日本の平和條約に基く義務としてはないということをはつきりしたものでありまするが、それでは次にこの役務賠償の程度と申しますか、この点について伺いたいのでありまするが、勿論(a)の1によりますると、この役務賠償をする場合におきましては、例えば原材料の供給による製造の場合には、その原材料は賠償を要する国から供給する等の方法によつて、いやしくも外国為替上の負担を日本が負わない、負わせないということと、今一つは他の連合国に追加負担をかけない、率直に言うならば、アメリカの援助に依存しておつたような日本の状況から考えまして、例えばアメリカに追加負担をかけるようなことによつて役務賠償をする必要がない。かような限界が一応あるのでございまするが、併し同時にこの役務賠償については一体金額的にも期限的にも何らの制限がないということも事実でございます。そうして、そういう点に関しまするというと、やはり大原則というものは1以下に書いてあるのではなくて、(a)に書いてあるのでありまして、日本は元来は賠償すべきである、併し存立可能な経済を維持するものとすれば、まあ日本の能力が必ずしも十分でないというふうになつておりますが、その必ずしも十分でないという書き方が非常に、将来日本の能力さえできれば役務賠償の形において無制限に、金額的にも無制限、又年限的にも非常に長きに亘つて日本を拘束するような主張を相手国に與えるような書き方になつておるのであります。即ち日本がこのすべての前記の損害の完全な賠償を行う、併し同時に他の債務を履行するためには現在十分でない、日本の能力が現在においては十分でない、将来は出て来るかも知れないということを予想した書き方になつておることと、現在においても完全なことはできないが、或る程度のことはできるという書き方になつていることは御承知の通りであります。従つてこれに根拠を置きまして、役務賠償の交渉に当りまする関係連合国側の気持といたしましては、現在は日本は能力が十分でないけれども、将来どんどん日本が回復して行くに当つて、幾らでも賠償が多額にとれる、金額上の天井はない。むしろ長きに亘つて日本の経済が回復して来れば、太つて行けば太つて行く分だけどんどんいつまでもそれをとつて行こう。かような期待を持つ可能性が非常に多い。そこで一方におきまして、これを日本の見地から言うならば、国民が非常な苦痛をなめて漸く独立を回復すると、そのとたんに、まさか……存立可能な経済を維持する、この限界が非常に曖昧ではありまするが、まさか国民生活水準をこれ以上に下げて、そうして賠償するということが不合理なことはわかつておりますし、さようなことはできもしない。やれもしないということを総理も明言されておつたと思うのでありまするが、この現在の生活水準がいつまでも釘付けにされるというような心配がありはせぬか。若しそういうことになるならば、日本国民は働けば働くだけこれが全部役務賠償の形において吸い上げられてしまう。かようなことは到底我々として賛成できない。実行もできないことである。そこでこの條約の規定がかかる曖昧さを残しているために、池田大蔵大臣が主体となつて連合国側と交渉をされるようでありまするが、大蔵大臣の交渉の前途には非常に大きな障碍が起り、そうしてその障碍は賠償問題の解決のみならず、東南アジア諸国との善隣友好関係に非常な支障を来たすのではないか。かように考えているのでありまするが、大蔵大臣のお考えを伺いたいと存じます。
○政府委員(草葉隆圓君) 実は第十四條賠償の関係で、第十四條として役務賠償、こういうことになりましたこの経過を考えて参りますると、御承知のように第一次欧洲戰争では、ドイツでは金銭賠償であのような状態、今度の戰争では、イタリアがほかの同盟連合国の中で特にソ連その他五つの国にいたされました賠償は、施設賠償、それから物品賠償、併しそれはその一定の金額を頭で抑えて、その中で施設賠償並びに物品賠償、それに少し頭を上げまして、役務賠償というのが初めて入つて参つたのであります。これは総額三億六千万ドルという賠償の一つの総額をきめて、その中において年々、七カ年間に物品や或いは役務をやる。こういうやり方をした。併し日本には金も物品もないから、役務を以て賠償して行く。で、イタリアのこの役務賠償等を考えて見ますると、役務賠償の場合には、なかなかいろいろな困難な問題があろうと思います。従いまして、イタリアがすでに四十七年の二月に條約を結んでも、現在まだ先に申上げました五カ国に対する賠償の協定も全部でき上つておりませんで、そのうち三つの国だけ現在賠償の協定ができており、そのうちでギリシヤの関係が四十九年の八月に初めてできて、この中に役務賠償というのが織り込まれて参つたのであります。それで、日本の場合を考えますると、日本にはいわゆる現金賠償、物品賠償という條件が付かないから、役務賠償によつて第十四條の(a)項でこれを一つやつて行こう。この場合におきましては、イタリアの場合のように金額によつて、それを満たすために、これだけの役務でやるということではなくして、或いは技術、或いは加工なんというものによる賠償、役務の賠償ということが考えられて参りまするから、従いまして将来いつまでも、経済が回復して来て、その上に更に追加々々をして行くという考え方ではなくして、日本の持つている力というものは役務賠償以外にはないのでありますから、役務賠償による両方の話合いの結果でき上つて来る。或いは加工、或いは技術なり、その問題を中心にして話が進められて来るべきものであると、かように一応は解釈をいたし、又考えている次第であります。
○国務大臣(池田勇人君) 講和会議におきまして、フイリピンのロムロ代表が、「フイリピン国政府が日本国政府より支拂を受くべき賠償の種願及び方式に関し、並びにその支拂い、又は引渡しの態様に関し、日本政府と交渉し、相互に協定するフイリピン共和国政府の権利は、本條約の反対の規定にかかわらず、ここに留保される。」こういうことを言つております。ロムロ代表が言われても、この平和條約の十四條の規定に従つて、お互いに善隣、共存共栄の建前から、條約の精神によつて話がまとまることを確信いたしております。なお、この問題は財政に関係いたしますので、私も加わるかも知れませんが、交渉は外務省でおやりになることも考えております。
○曾祢益君 只今草葉次官の御説明によりますと、イタリアの例も引かれまして、日本の場合は役務賠償である。それはその通りで、役務賠償以外にはこの條項に基く賠償はないわけであります。在外資産の問題は別といたしまして……。でありますから、金銭賠償の余地はない。これは池田大蔵大臣も、ロムロ代表の一方的留保にかかわらず、條約の権利義務としては、さようなものがないということを確認されておるのであります。併し私が先ほど質問しました点は、例えばイタリアの場合は、とにかくいろいろな種類の賠償であるけれども、一応総額がきまつておるので、順調に行くならば、支拂の年限もきまつておる。総額がきまり、年限がきまりますれば、従つて毎年の予算措置としても、毎年の予算にどれほど計上するかということもきまると思う。役務賠償というのは比較的新らしい観念でありますが、併し国家財政においては金銭賠償とあまり違わないのではないか。結局それだけがいわば外貨の裏付けのないような財政支出として、それだけ出て行くことになるのではないかと思うのであります。そういたしますと、やはりここになお総額的な天井がないということは、日本側から言えば、大蔵大臣の言われたように、日本としては善隣友好の関係に立つて條約の義務の範囲内において話合いはできないかと言われますが、他方において損害を受けた請求権国といたしましては、そこに厖大な要求をしなければ国内が納まらない。かような現実が控えておるのであります。従つてこちらが如何に総額においてそういう大きなものは拂わないとおつしやつても、(a)項には、現状においては能力が十分でないが、将来拂えると言わんばかりの條項がある。そういたしますると、ややもすれば非常に多額な賠償を役務賠償の形において支拂うということを向うから要求させるような根拠が(a)項の1によつて生れて来るのではないか。それが果して善隣友好関係を阻害することなく、合理的な話合いで且つこの條文の下においてスムーズにやつて行けるという根拠並びにその自信がおありであるか。この点を伺いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) この役務賠償の場合には必ずしも金額というのが出て来ない場合が多いのじやないかと考えられます。と申しますると、役務賠償を十分にものによりましてしようとすると、相手国、いわゆる賠償を受ける国、いわゆる戰勝国が相当な財源と相当な物資を持たないとできないという場合が多く起り得るのであります。例えば発電所を起す、それに対する技術の賠償をするという場合におきましては、発電所なら発電所に対するそれだけの資材と資金、それがなかつたら技術だけ出しましてもそれは有効じやない。従いまして、おのずから役務賠償というものの上には一つのバランスが出て来ると思います。そうして又技術というものは決して金の問題だけではなく、その技術は何十倍のいわゆる金額的な力を持ち得る場合が多いのでありますから、そこに、この役務賠償の実は頭を金額で抑えずに、事業の面なり或いは対象の種類なりによつて現われて来る面が多く起つて来ると存じております。
○曾祢益君 まあ政府の考えておられる構想はわからないでもないのでありまするが、例えばおつしやるごとく、成るほどこれは生産賠償の場合でも同様でありまするが、日本に原材料を送つて、そうして日本が加工してこれを送るような場合においても、やつぱり先方の財政的な規模というようなものに自然に制約されるのじやないかというお話でありましたが、例えば日本人の技術の力を用いまして発電所を現地に造る、或いは鉱山の開発に技術的な役務賠償をやる、必ずしも日本の国庫上の負担は起らなくなるのではないかというふうな御指摘でございまするが、併し一方におきまして、これは新聞に伝えられたところでありまするから、その真僞のほどは知りませんが、フイリピンの代表が日本に内交渉に来る前後におきまして、日本側としては、外務省の意向とかいうので新聞に出ておりましたが、例えばフイリピンの鉄鉱の開発に技術的援助をするというようなことも役務賠償と考えておられた。まあ、そういうような構想を持つておられるように書いてあつたと思いまするが、そういうこと自身に対して、日本が向うの開発に援助するというようなこと自身に対して、現在のところでは少くともフイリピン国の国民感情は、飛んでもない、そういうようなことは真つ平御免だ、綺麗さつぱりと拂つて欲しいのだと、こういうような、心理的と言いまするか、政治的の反対があつて、実はさような開発援助、技術援助というような恰好で、なかんずく国庫の負担を必ずしも起さないような役務賠償をこちらが如何にお考えになつておつても、先方はこれを受入れるような決して気持になつておらないのではないか。それで、さような実情でありとするならば、私はさつき言つておりまするように、このような、こつちは余り金銭的な負担をかけないで、まあ、そう言つちや惡いけれども、あわよくば東京アジア開発計画に参加したい、非常に虫のよい考えを持つておられる。他方におきましてはこの條約の案文そのものから東南アジア諸国が受けるインプレツシヨンから行けば、必ずしもそんなところではなくて、できれば金銭賠償まで欲しいくらいなんです。開発援助なんかに加わつてくれるなんということは、日本が綺麗さつぱりと賠償の義務を果してから先のことだ、到底日本との間に今後通商上或いは経済開発上の協力関係なんということを考えるまでに気分的にできていない、かような非常なギヤツプがあるのではないか。従つてこの條約の案文をそのままに残して置くことは、却つて日本がその能力において支拂うことができるような賠償すらも困難ならしめ、更に東南アジアとの政治的、経済的の連繋に却つて累を及ぼすようなあいまいな字句になつておりやせんかと、かように考えるのでありまするが、それらの点に関する外務省及び大蔵大臣のお答えを承わりたい。
○政府委員(草葉隆圓君) 一応この條文を見ますると、お話のように、或いは将来に、或いはその限界がどうも不明瞭ではないかというような御意見も首肯し得る点もあろうかと存じます。併し従来からの、先ほども申上げましたような賠償の過程を考えて参りますると、日本に金銭賠償の能力がない。又物品賠償の能力もない。日本で賠償の範囲において現実にあり得るものは役務賠償である。併しこの役務賠償をいたすにつきましても、決して国庫の負担がないというものじやなしに、これはまあ相当な負担を場合によりましては考えにやならんと存じまするから、これはいろいろ條件を付けて存立可能な状態においての賠償ということになつて来ると思います。従いまして、お話のように、なお、まだこれから話は進めて参らねばなりませんが、国民感情として、プイリピン等では現金賠償とかいうのが強く叫ばれておるようでございまするが、これはだんだん話をいたしまして、日本の現実の姿が、幸にこれに署名しました連合国は、この十四條の規定を日本の現状であるという認識の下に署名をいたしてくれましたので、フイリピンといえども、だんだんこの点は了承して頂けるものだと考えております。又了承して頂けるように十分懇談を進めて行かねばならないと存じます。そうして又この十四條の條項は、これは先般も大蔵大臣のお話もありましたように、忠実に守つて、そうして善隣の誼を強くして来なければならないというのは、これはまあ当然でございまするが、と言つても、この金銭賠償は日本がその能力がないということを連合国も承認してくれておりまするので、役務賠償の範囲において忠実に誠実に話合いを進めて行く以外には日本はとり得る途がない。従つてこういう方針を以て進めて参りたいと考えております。
○曾祢益君 まあフイリピンあたりがもうだんだんに日本の現状がわかつてくれて、率直に言つて冷靜になつてくれるだろうということを御期待になつておるようでありまするが、一方におきましては東京温泉というようなものができて非常にフイリピン国の国民感情を刺戟しておるというような事実も、これは確かにあるのでありまして、決してさような意味において私は安心できない。そこで役務賠償の形によることは当然であるといたしましても、一体存立可能なる経済を維持する限界において、政府においては、大蔵大臣においては、役務賠償の国庫負担は一体どのくらいまでができるというふうな目安を作つておられるのかどうか。例えて言うならば、あとでも御質問したいと思つておりましたが、十五條の在日連合国財産の補償については、一カ年百億円を限度として補償するという、非常にいわば重大な一つの決定をされておるのであります。かような先例もあるとすれば、役務賠償の中で国内において補償しなければならない、国庫負担の一体年額的の目安というものを立てておられるのかどうか。おられるとすれば、これが日本の現状においての存立可能の限界における役務賠償の限界であるというような、数字的の目安を立てておるのならば伺いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 私の限界もないこともないのでございますが、そういうことは今ここで申上げないほうがいいと思います。 なおフイリピン或いはインドネシアその他の国からどれだけ要求があるかわかりませんので、私としての限度は一応胸には置いておりまするが、申上げる段階になつておりません。
○曾祢益君 この点は勿論先方との話合いに関連する問題でありまするから、強いて政府の目安をこの際発表しろとは申しませんが、これは非常に重大なことであり、殊に一方において連合国財産のほうは百億円というような、日本における連合国財産の補償は百億円というような一つの限界を立てられておるので、これはやはり相当大きな金額を向うが期待することに私はなるのじやないかという心配を持つわけであります。 そこでいま一つこの点に関連して伺いたいのでありまするが、役務賠償を要求する国の範囲につきましては、先ほども外務次官から御説明があつた通りでありまして、連合国の一部でございます。ところで、私が今度の第十四條の役務賠償について非常に心配しておりまする一つの点は、この條約には中国が入つておりません。おりませんが、この條約の規定によりまして、この條約と実質的に同一の條約が中国との間に速かにできることを期待されておるのであります。日本も又向う三カ年間さような義務を持つておるわけでありまするが、そういたしますると、現在日本に要求しておる国の賠償要求額でもすでに非常な大きなものでありまするが、これに中国が実質的同等の條件による單独講和をして、そして権利を以て要求して来るというような場合には、更にこの数字というものは非常な天文学的な大きなものになりはせぬか。この心配を持つのでありまするが、この中国との賠償関係については政府は如何に考えておられるか。私は中国に対して與えた損害は極めて大なることを当然に承知しておるものでありまするが、併しこの條約によりましてもわかつておりまするように、日本は中国に対してはいろいろな政治上の特権を放棄したり、又領土につきましては、この條約においてはその点がはつきりなつておりませんが、併しカイロ宣言の趣旨に根本的に反するようなことは、この條約も考えておらないと考えるのでありまして、従つて台湾、澎湖島に対する日本の領土権の放棄も、結局は中国国民のためにするものであることだけは私は間違いない。現状において、いずれの政府が中国の代表政権であるかという問題がからんでおるが故に、その最終的処分について日本は拘束されておりません。日本の気持から言うならば中国のために放棄する。そういたしますると、いろいろな特権を放棄し、領土を放棄し、更に在満の資産、これは非常に大きな資産を放棄しなければならない。この條件において、その中国と東南アジア諸国、これら東南アジア諸国の多くは、非常な、やはり日本が破壞した国でありますし、そこに対しては、日本は何ら領土権的な特権を與えておらない。而もそこにおきまする日本の公有、私有の財産で今度の條約によつて先方に取られてしまうのも、中国、在満資産に比べれば金額的にも内容的にも比較にならないほど軽微なものである。かような東南アジア諸国に対する役務賠償、これと中国に対して役務賠償をするということとは、よほど考えを変えなければならないのではないか。かように考えるのでありまするが、政府はこの点について、即ち東南アジア諸国に対する役務賠償……、中国が実質的に同様な條約を作つた場合に、一体、中国に対しても同等の権利を認めて行くという考えであるかどうか。或いは両者間に何らかの差等を設けて考えておられるか。この点を伺いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) お話の通りに、中国がこの條約によつて條約を申込んで参りまする場合におきましては、当然二十六條によりまして條約を締結して来るという段取りになつて参りまするが、中国に対しましては、すでに二十一條でこの第十四條の(a)の2の利益を與えておるのであります。そして現在でもそうでありまするが、今後お話のようにこの條約を結ぶに至りました場合を考えてみましても、この十四條にありまする條件が中心であります。従つて先ほどお話にありましたように、存立可能な経済を維持するというのと、他の條約上の義務を履行しながら連合国に追加負担をさせないということ、日本が外国為替上の負担を負わないということが根本になつたこの第十四條の状態を持続して参りますることと、それから、もう一つはお話のように、これは賠償でありまするから、相手国に與えた損害によつて話はおのずから変つて来ますることは当然であります。そして又、そこにありまするもろもろの在外資産等の関係も十分考慮するべき問題だと思います。
○曾祢益君 必ずしも明確でないようでありまするが、少くとも中国との間に同趣旨の條約ができた場合に、日本の重大なる中国に対する、何と申しまするか、権利の放棄、領土並びに在外資産上のこの点を、中国と日本の役務賠償をやる場合に十分に計算考慮に入れられるという意味において、一応了承しておきます。 次に十四條の2でありまするが、在外資産の補償でございます。これは、すでに各同僚議員と政府との間の応酬によりまして、ほぼ政府の所存も明らかになつたと思いまするが、併しこれは決して、憲法がいわゆる日本の領土外に形式的に施行されるものと認められないから、憲法にいわゆる私有財産の公正な補償の條項を適用せなくてもいいといつたような形式論で始末すべき問題ではないと思うのであります。この点はむしろ法律家というよりも、実際の財政経済の見地に立つておられると思われる池田大蔵大臣においては御同感ではないかと思うのであります。そこで、さような屁理窟でなくて、この在外私有財産も取られる場合に、その所有権者に対する補償は原則としてはやるべきではないか。ただ問題は、しばしば大蔵大臣が言われておるように、国内におきましていわゆる引揚者乃至は在外資産の取られてしまう人以外の国民といたしましても、戰争の犠牲については本来ならば十分な補償が與えられなければならないにかかわらず、現状におきまして必ずしも十分の補償が與えられなかつたという現状から考えまして、その間の公平な調整はどうして行かれるか。この問題について私は考慮されておるのだと思います。従つて果してさようなお考えであるか。即ち原則としてはこれは補償すべきものであるが、その補償の限度、これは国家の財政状態或いは国民の他のかたがたに対する均衡上から十分に愼重に考える必要がある。かような御意向であるかどうかを伺いたいと存じます。
○国務大臣(池田勇人君) この前からたびたびお答えいたしましたように、憲法上補償しなきやならんかどうかということにつきましては議論の存するところだと申上げておるのであります。政治問題といたしましては、これはお話のように政府はできれば補償したいという気持は持つています。問題は戰争犠牲者に対する均衡の問題と、日本の財政の問題、それがあるのでございます。従いまして、法律上の問題、政治上の問題、財政上の問題、こういう観点から只今検討を加えておる次第でございます。
○曾祢益君 時間がないようでありまするから私もう一点だけ伺つておきたいと思います。第十四條の(b)でございまするが、最後のほうにありまする「占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する」ということがありますが、この直接軍事費というものはどういうものであるか。この点について御説明願いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) なかなかむずかしい問題でございますが、御返答申上げます。大体、日本本土占領に関する経費のうち、軍人の俸給、軍隊の維持、給養費などが、大体これに当るものではなかろうかと、こう思うわけであります。先例を見ますと、ヴエルサイユ條約の第二百四十九條では、ドイツ政府は占領軍兵員の給養、宿舎、俸給、被服、輸送等に要する費用及び軍隊の訓練、兵力の維持等のために必要な一切の施設費等、占領軍の経費全額を負担するという規定になつておりますが、ここに列挙してありますうち、間接占領費というものに該当するものを除いたものが直接占領費という考え方になりまして、これは非常に技術的に漠といたしております。大体合衆国国防予算の組立て方その他を明らかにしておりませんので、今申上げたように極く漠として、俸給だとか、軍隊の維持、給養費のようなものであろうという程度のことしか御答弁できないのを残念に思います。
○曾祢益君 直接軍事費というものの範囲というもはなかなか技術的に困難だということは一応わかるのでありまするが、直接軍事費で放棄したもの以外のものがはつきりきまつていなければ、日本がこの條約を受諾する場合に非常な疎漏があると思うのでありまするが、そこで政府の御説明によりますると、例えばガリオア資金或いはイロア資金というものはいわゆる直接軍事費ではない、はつきり日本の債務に残るのだ、かようなことを言つておられると思いますが、果してそうであるかどうか。これが第一点であります。 それから第二点は、日本が円貨拂いの負担をした軍人さんの俸給とか或いはその他の労務費とかいう以外に、アメリカが日本に占領軍を置いておるのに伴つて間接に必要な、例えばあれだけの軍隊を置いておくから、国防省の国内における予算上、これだけの部分が日本の占領に関連する間接の費用だというような計算が一応できると思う。従つて、そういうものまで日本が支拂うべき、ここから除外されない間接占領費として日本の負担になつているのか。それとも、はつきりとガリオア資金、イロア資金といつたように、日本が現実に一応利益を受けたと申しまするか、現に日本に使用され、その金額もはつきりわかつているものだけが日本がここで免除されない債務として残るのか。その点を御説明願いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 従来の話合いの間に、終戰後日本が終戰処理費として予算面で以て負担した額は日本政府の負担になるということと、ガリオア、イロア資金として日本が受けました二十数億に上るドル貨は間接占領費であつて、十四條(b)項によつて放棄されることなく、日本が有効な債務として負担するものであるという点について明確な了解がございます。
○曾祢益君 最後に、それ以外には外貨拂いの間接占領費というものは考えていないのかどうかということを……。
○政府委員(西村熊雄君) 考えられておりません。
○平林太一君 関連質問……。
○委員長(大隈信幸君) 順次通告順によつて……。
○平林太一君 通告しなくちやいけないですか。
○委員長(大隈信幸君) 時間の関係もございますから、あとで願います。
○永井純一郎君 大体、曾祢委員から多面に亘つて質問があつたのでありまするが、その他の点について少し質問をしたいと思います。今の最後の問題に西村條約局長からお話があつた点、援助関係のドル貨で援助されたものは債務として残るんだという了解になつているということでありましたが、それでは返す場合には、これは、これから又相談をするんだということであるのかも知れませんが、どういう形でこれは一体返して行くのか。又これが見返資金としてあると思うのでありまするが、この見返資金はどういうふうに今後処理されて行くものであるか。これらの関係が出て来ると思いまするので、これは大蔵大臣なりから御説明願いたいと思います。 それからもう一つの点は、これは私は政府の非常に大きな責任であつたと思いまするが、このガリオア等は米国の心からの援助によつて、占領されておる日本の国民を救済するために只でくれるのだという宣伝を、これは政府が今日まで、して参りました。このために非常にいじけた気持を国民が持つて来たのであるし、又他面にはこれに非常にまあ感謝をしておつた面もあるかと思う。例えば非常に苛酷な税金をとつたり、或いは非常にこれは現物で出す供米、これらを強権を以て出させるときに、必ず政府が宣伝をし説明をしたことは、アメリカからの特別のガリオア等の援助によつて、我々はその恩惠によつていま国と国民が生活をしておるのであるから、無理でも出せということで強権を発動してやつて来ておつたのであります。ところが、それは依然として債務として残るのであつて、今後返すのだということのようでありまするが、これはなかなか国民から言わせれば、騙されたことになるのだ。そういうことは私は非常に惡いやり方であつたように思いまするが、なぜそういう説明を今日まで国民に長い間して来たのか。その理由を承知したいと思います。先ずそれだけお伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 対日援助費の支拂方法はまだきまつておりません。検討を加えております。対日援助を債務と心得ておるということは私は二年前から本国会で常に言つておるところでございます。
○永井純一郎君 最後の点をお願いいたします。大蔵大臣はそう言つたかも知れませんが、政府はそういうふうに税金なり供米について言つて来ておりません。その点はなぜそういう説明をして来られたかを政府として御答弁願いたいと思います。これは国民が聞きたがつております。
○国務大臣(池田勇人君) 私は国会では債務と心得ておるということは二年前から言つておる。援助というものは、これはもらつたものだとは政府も言つておらなかつたと思います。
○永井純一郎君 国会で大蔵大臣がそういうふうに言われたかも知れませんが、誰かその他にこの私の質問に対して責任のある一つ御説明を願いたいと思います。大蔵大臣でできないならば、総理大臣なり何なりから伺わなければ国民は納得しないと思います。それを委員長一つ総括質問のときなり、総理からでもしてもらえますか。
○委員長(大隈信幸君) 総括質問の際に、その質問をもう一遍繰返して頂いたらいいと思います。
○永井純一郎君 それではその次に入りまして、これもまだわかつておらないと、こう大蔵大臣はおつしやるかも知れませんが、役務賠償をやる場合に、その技術と労働の評価は一体どういうふうにしてなさるのか。これは相当具体的な問題にならなければわからないかも知れませんが、何かそういう標準を設け、例えば財政支出でやるとすれば、一つの会社なり企業体に財政資金で拂うことになるわけでありまするが、その場合の労働賃金というものは一体どういうふうにして評価して行くか。或いは技術の評価、そういつた点がわからないのでありまするが、御説明を願いたいと思います。 それから二つには、この役務賠償によつて、企業者側、資本家側は、やはり普通の利益を得ながら国庫からの支拂を受けるのかどうか。或いはその利益については、賠償でありまするから、格別の何か一定の標準で利益を制限する、成るほどと思えるような形のものを與えるように、利益を與えるようにして行くのかどうか。この点を知りたいと思います。差当りその二つを……。
○国務大臣(池田勇人君) 一般の経済原則によりまして、適正にやらなければいかんと思います。加工その他のときに引受けた会社に全然利益を與えないというふうなことは考えられません。一般の経済原則によつて適正にやつて行く考えであります。
○永井純一郎君 一般の経済の原則に従つて適正にと言われることは、これはいろいろな企業体によつて、その事業の種類によつて違うと思いまするが、その会社の、或いは企業体の事業を中心にして、この企業体にはこういうふうにこの程度の利益をやるのが一般の原則から言つて正しい、或いはこちらのほうはそうでないというふうに刻々変つて参りますが、自由の経済の場合はそうなつておりまするが、そういう意味をおつしやつたのかどうか、お伺いしたい。
○国務大臣(池田勇人君) 個々の場合によつて違つて来ると思いますが、観念はやはり一般の経済原則によつてやるよりほかにないと思います。
○永井純一郎君 抽象的な御答弁でありまするから、わかりませんが、これらの点につきましては、いまの企業体の利益、それから技術、労賃、これらをきめるについて特別のこういうことを審議をする……いまのように一般の原則に従つてというようなことでは、なかなか個々の問題については私は解決できないと思いまするが、適当なこういうものを審議する機関、そういうものによつてこれらを審議して行くほうが私はいいように思いまするが、そういう点についてお考えを伺いたい。
○国務大臣(池田勇人君) その場合には適当に考えたいと思います。
○永井純一郎君 これは安定本部長官か或いは大蔵大臣かどちらからかお答えを願いたいと思いまするが、東南アジアの開発をする。で、中国の経済、或いは中国との貿易が非常に大切であることは最近政府も認めて来られておるようでありまするが、例しこの前の国会のときにも大蔵大臣は、中国の重要性はわかる、併しながらやれないからというような意味の御答弁が、本会議であるか、あつたように思いますが、これに代るに東南アジアの開発、東南アジアとの貿易、そういう点を非常に大きく取上げて、これで埋め合せをして行こうというお考えであると思いまするが、実際に東南アジアの、我我の所で調べたところによりますると、東南アジアの経済を牛耳つている人たち、或いは東南アジア経済の実際の企業経営者、そういつた人たちがいろいろ調べて見ますると、全部いわゆる華僑であります。その総数は実に八百三十万に及んでおるのであります。例えばマレー、シンガポール等には華僑が二百八十万いる。これは殆んど総人口の半ばを占めておるようであります。タイが三百万、インドネシアが百五十万というふうに、ビルマ、比島、その他を加えますと、八百三十万という数字があるのであります。この華僑が大体、貿易、商業それから鉱山、ゴム等の農園等の経営をいたしておつて、東南アジア経済の実権を握つておるようでございます。ところが中国の革命の成功以来は、この東南アジアの華僑の人たちが、毛政権を特に昨今非常に積極的に支持をいたしておる実情がございます。こういう実情を政府が私は知らないはずはないと思います。又知らないで東南アジアの開発だとか、東南アジアの経済のことを考えることは、私は不可能であると考えるのでございます。その上に、もう一つ見逃すことのできないのは、この東南アジアの八百三十万に余る華僑が、昨今特に民族独立運動を非常に意識的に積極的にやりつつあるという事柄でございます。こういうふうに考えてみますると、政府がただアメリカ等の意向によつて中国との取引、中国との経済の結び付きができないで、ただアメリカにおんぶして行つて、アメリカの言う通りにしておればいいという方針が政府にありとすれば、すべて私はそうとしかとれないのでありまするが、そういう安易な、アメリカにただおんぶして行つて、アメリカがただそう言うからというのでやつておられるとしか思えない。そこで、こういういう華僑が実際の実業の、或いは経済の実権を握つておつてやつておりまするが、これらの動きをどういうふうに考えて、東南アジア関係の経済の開発或いは貿易、そういうものをやるおつもりでおられるか。この華僑の点の御見解を政府から聞きたい。こう思うわけでございます。
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。私ども東南アジア開発ということについて施策を進める上において、華僑の力というものを軽視いたしておるものではありません。が、同時にあなたの御質問の中に現われました事柄から推測いたしまして、そういうふうなものが相当力を持つているから、中国との関係を調整しなければ、一方的に押付けても駄目であろうという口吻を又私はそのままに受入れることはできないのであります。殊に私どもは今いろいろな事情で中共関係が貿易上におきましても制限をされておりますが、その埋合せだけを付けるために東南アジアの開発ということを考えておるのでなくて、現在及び将来に向つて世界的に、経済的に協力するためにも、又日本が本当に今後進むべき道として、日本の経済をよりよく、より大きく発展させるためにも、東南アジアの開発が必要であり、而もいろいろな未利用資源としてまだ開発されざる資源を、東南アジア地区における民族というものの福利を増進するといいますか、共存同栄の立場においてこれを開発して行つて、その未利用資源を商品化して民族の必要に備えると、こういう私どもは大きな立場に立つてこれが協力を求め、協力して行こう、こういう考えでおるのでありまして、従つてただ單に現在の中共貿易の制限を受けたることを埋合せるためにのみ開発するという考えでないことをはつきり申上げておきたいと思います。又華僑等の問題については、御指摘の点も十分我々は考えていますが、現在におきましても、そういうところにあつても、なお且つ具体的に鉄鉱石の鉱山というようなものを持つている者が、華僑のかたが持つておりまするが、而もそれが日本に来られて積極的に一緒に開発をするのについての資金というような問題についての御相談を受けておる具体的な事例もあります。その他インド或いはインドネシア方両についても、相当に私どもはそういう心持を以て進むことによつて協力はしてもらえる、又して行けると考えております。
○永井純一郎君 周東国務大臣の只今の御答弁は非常に抽象的であつて、よくわからなかつたのでありますが、これはただ單に中国関係の貿易の非常に大きな損失を東南アジアのほうで單に埋合せるつもりではないんだ、もつと大きな目的なり目標があるんだというお話でありましたが、それは勿論そうであると思いまするが、これは計数的に申上げれば、当初は安定本部が中心で作つた計数において、私はここに細かい数字を持つて来ておりませんが、中共関係の依存度が貿易のバランスの上に非常に高かつたのであります。その後、前年の中共貿易の制限等から、計数の実態は、これは大臣は御存じなかつたかも知れませんが、それだけ埋合せが付かなくなつた分を東南アジアのほうに、一割だか一割五分増しだか、一律に貿易の規模を大きくしておつたに過ぎなかつたのであります。これは我々は計数を検討しておるときにそのことが出て、事務当局も答弁に困つたことがありましたが、初めは何か非常に好い加減なものであつたので、私どもは非常に心配をいたしたのであります。これは政府に確固たる一つの方針なりがなかつたから、アメリカの指図による中共貿易の制限からそういう計数が生れたものだということを考えたのでありますが、……それは一応そうといたしまして、私が今ここに聞きたいのは、ただ心持とおつしやいましたが、心持だけではなくて、今、私が申上げるようなこの東南アジアにおける八百三十万の華僑の人々を、一部というようなふうにおつしやつたが、一部ではない。これは全く実力があり、実権を握つておるのでありますから、而もこの人たちが毛政権を非常に積極的に支持しておる、而も又民族独立運動を積極的にやろうとしておるという、この重要な、重大な動きを持つ、この華僑との結び付きは、私の考えでは、中共貿易を通ずることでなければ、具体的な政策として私は東南アジア経済との結び付きができないということを考えるのであります。具体的の方策としては、どうしても中共と結び付いて、ここを通じて東南アジアの開発があり、東南アジアの貿易があるというふうにしか私は考えられません。そこで、政府は心持とか何とかいうことではなしに、この華僑の実際の実情を十分に認識して、これとどう手を繋いで行つて、いわゆる目標にしておるところの開発や貿易をして行くか、その考え方を具体的に政府は持つかという質問を私はしておりますから、それらに触れて一つ御答弁をもう一度願いたいのであります。
○国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。私も数字はよく存じておるのでありまして、あなたは終戰後における中共関係の貿易は非常なウエイトを占めておるとおつしやいましたが、一番大きかつたときが二十五年の朝鮮事変の始まる直前でありますが、これはその後ようやく伸びて来ましたが、それだけ大きな数字を占めておりません。併し日本としては、やはり近くに鉄鉱石とか、粘結炭の供給場所のあることは望ましいのであります。併し伸びんとするときにああいうことになりましたので、それが近くにあることは望ましいが、それができなかつたということは甚だ残念であります。そのために応急措置としては、アメリカにこれを転換いたすということは事実でありますが、併しできるだけ近い所から運ぶことは結構であります。将来そういうふうなことに意を用いますが、これは一般的な問題で私はないと思います。あなたは是非とも、どういうことがあろうとも中共からは取れ取れとおつしやいますが、これはやはり国際的な問題もあり、又中共の占めておるいろいろな関係から急速に行かないことを遺憾といたします。而して南方方面、東南アジア地区における華僑の勢力をどうするかとおつしやいますが、先ほど申上げたように、これは決して無視すべきものでないということは、はつきり申上げておるのであつて、相当力を持つておると私は思う。併しそれが全部では私はないと言うのです。それは中共、華僑の問題だけでなくて、インドはインドについて直接いろいろな話が進められております。一部ではインドはサンフランシスコ條約に参加しなかつたから非常にアンチ日本であるというようなお考えのかたもありますけれども、サンフランシスコ会議の済んだ後におきましても、批准が済めば直ちに日本と休戰の措置に出るという話も、これ又現実経済問題としては、政府によつてすでに話が進められつつある現状を私は見ておるのであります。従つて東南アジア地区の開発について、フイリツピン、マレーにしても相当華僑の力があるということについては、十分そのほうと話合いを付けることが必要でありましようし、従来のような民族を抑えて行くという行き方はいけませんし、これはよく話合いを付けて進めば、今私が一例を挙げた例、マレーには、鉄鉱石のごときは華橋のかたが持つておるんです。そのかたがすでに今日、日本に来られて、具体的に鉄鉱石を開発して日本へ送ろうというところまで進んで来ておるところを見ても、これはよく考えなければならないけれども、あなたのように中共との貿易をやらなきや力は絶対出ませんぞというような考え方は、私は持たぬということを申し上げております。
○永井純一郎君 安定本部長官の答弁をお聞きしていると、言訳のように聞えるのでありまするが、私が聞かんとするところは、経済的に見ると成るほどそうだ、従つて政治の面としては、私、少くとも中共と日本とが政治的にも、まあ何と言いますか、早く仲直りをして、ここを通じて東南アジアというものと経済が結びつくことが一番日本のために経済的に見ればいいんだということが先ず言つて欲しいと思うし、又経済的には当然そうなる。そうなつたからと言つて……これはこういうことが非常に影響がいいのであつて、それをわざわざそうでないようなふうの言い廻しで言訳をなさることは私には聞えない。こういうことを私は申上げたいのであります。つまり政治的な面、民族独立運動といつたようなこと、それから昨今非常に毛政権を支持しつつあるというようなことから考えるならば、日本としては決して中共を、私は中共貿易が戰後非常に僅かな数字であるくらいのことはよく知つておりますが、併しこれは政治的に見ても非常に重要な隣国でもあるしするのでありまするから、政治的な要素のまずさから、日本の方策のまずさから、結局排日気分或いは日本の排貨、そういつたような昔あつたようなことになつて来れば、今政府が考えておるような目標、東南アジア経済に関するいろいろな考え方、目標というものは全く絵に画いた餅に等しいということになることは私は明らかである。こう思うから、その心配から私はこの質問をいたしておるのでございますが、併し御答弁はどうもそういう中心に触れ、政治的な要素に十分に触れないでの言訳のような御答弁としか私には聞き取れないのでありまするが、一応これで私の質疑を終りたいと思います。
○佐多忠隆君 先ほどから曾祢委員も言われ、永井委員によつて触れられたのですが、それでも、なお、はつきりいたしませんので、重ねて御質問いたしたいのですが、先ず第一は、第十四條(b)の規定によつて、連合国は、占領の直接軍事費に関する請求権を放棄しておるのでありますが、その場合に問題になるのは、先ほどからいろいろ論議されました経済援助費の問題でありますが、我々から考えれば、これは特に救済費勘定のごときは、今も永井委員からも主張がありましたように、占領のための経費であり、而も救済費でございますから、そういうものに対しても当然に権利を放棄すべきだと思うのですが、それがそうでなくて、これは債務であることが確定したというようなお話のようであります。この点については、先ほどからの御議論を聞いておりますと、大蔵大臣はしばしば自分はそういうことを言明しておる。従来から言い続けておるというようなお話でございますが、これも永井委員から触れましたように、政府全体としては必ずしもそういうふうにはつきりしていなくて、あれを一つの恩惠として感謝すべきいろいろな運動なり主張が繰返し述べられていたと思うのであります。そういう点から見ても、これに対する、これを單に債務として引受けるということに非常な疑問があるわけですが、特に大蔵大臣は繰返し自分は言つて来たと言つておられるにかかわらず、今度講和会議から帰られた第一声に、特にこのことを、これは債務であることを確認したんだ、或いは確認せざるを得なかつたんだというようなお話があつたように新聞で承知しておるのでありますが、事ほどさように、その問題が今まではそんなにはつきりしていなくて、今度はつきりになつた問題じやないかと、こう私たちは考えているのですが、これらの経緯はどういうふうであつたのか、その点をもう少し詳しくお示しを願いたい。で、特に話合いの間にそういうことが入つて来たんだ、こういうような御説明が繰返し従来からあつたようでありますが、ただ單に話合いの間にそれがわかつたという程度のものなのか、そうでなくても文書の上で、こういう基礎によつて、こういう根拠によつて、このことは、はつきりしておるんだというふうの性質のものであるのかどうか、その辺をもう少し詳しく御説明を願いたい。
○国務大臣(池田勇人君) 佐多君はこの前の国会でも、その前の国会でも、予算委員会で、木村禧八郎君とのお話をたびたびお聞きになつたことと承知しております。そのときにもこれは債務と心得ておりますと言つたんです。ただイタリアにおきましては講和條約でアメリカが一方的に放棄したのだ。ドイツの取極は放棄しておりません。これらについてもたびたび申上げたのであります。而も或いはサンフランシスコ会議から帰つて、確認せざるを得なかつたというようなことが新聞に載つておつたというお話でございますが、こういうことは私は言つた覚えはございませんが、何新聞に載つておりましたでしようか。私は前からたびたび言つているのでございまして、これはアメリカが一方的に放棄すれば別でございまするが、イタリアのように……。我々は債務と心得ておりますということは、これは二、三年前のマツカーサー元帥の声明にもあります。たびたび言つているのであります。今サンフランシスコ会議の話合いで、文書で押付けられた、そんなことはないのであります。又阿波丸議定書において多分確認されておつたかと思いますが、これは條約局長から御説明いたします。
○政府委員(西村熊雄君) 四十八年でございましたか、四十九年でございましたか、ちよつと今正確に思い出しませんが、阿波丸請求権放棄に関する日米協定の附属の了解事項といたしまして、これらの債務は日本政府において負つている有効な債務と認め、合衆国政府のみが放棄その他減額を決定し得るという文書が取交されておりますことは御承知の通りでございます。
○佐多忠隆君 その文書を更に御提出願いたいと思いますが、もう一つそれに関連しまして、そうだとすると、占領の直接の軍事費は、占領軍において負担する原則を認めておるわけでありますが、日本はその直接の占領費の一部分を終戰処理費の形で負担して来たと思うのでありますが、これは直接の占領費でございますし、直接の占領費は占領軍で負担するという原則が確立をされておるわけでありますから、それならば、この終戰処理費の形のものは是非占領国に負担してもらうように請求すべきではないのかどうか、この点は、成るほど対日経済援助として我々は二十億ドルの援助をもらつておるのでありますが、その代りに我々がまあ終戰処理費として五千三百八十五億の終戰処理費を二十六年度補正予算までに負担をしている。これを大蔵省のお出しになつた資料によつてドル換算をすると四十九億七千四百万ドルになつておるという資料を頂いたのでございますが、そうだとすれば、それらを相殺すれば、むしろ当方のほうが、よりたくさんのものを請求し得ることになると思うので、少くともそれらのものを勘案しながらこの対日経済援助費の問題も考えるべきではないのか。その点を政府はどういうふうにお考えになるのか。私がこう申しますのは、これは私の意見であるだけでなく、曾つてアメリカの租税負担者たちが、対日援助に対する負担が非常に租税負担者の負担になるというやかましい議論が起きたときに、陸軍当局は、たしかドレーバー陸軍次官だつたと思うのでありますが、陸軍当局は、いや、日本においては、対日援助費も相当なものを出しているが、日本国民はそれにも優つて多額のものを終戰処理費として負担をしているのであるから、むしろ日本国民の負担のほうが多いのだからということを、むしろ釣りが出るくらいだということをドレーバー氏自身が言つていたと思うのですが、そういうふうな議論もあることであるから、それらのことを考えるならば、もう少しそれらの問題と相対的に問題を考えて然るべきではなかつたか。條約においてそういうことをもう少し主張して、この点を解決しておくべきではなかつたかと、私はこう思うのでありますが、その点について大蔵大臣はどうお考えになるか伺いたい。
○政府委員(西村熊雄君) 佐多委員御質問の最初の点に思い違いがおありのようでございますからちよつと解明いたします。占領費は占領国が負担すべき原則が認められておるように思う、こういう御発言があつたようでございます。従来国際法乃至平和條約の先例によりますと、占領費は原則といたしまして戰敗国に負担させるのが通例でございます。日本の場合にも、四十七年に極東委員会が採択いたしました対日基本政策の賠償の條項で、占領費は賠償に優先して日本に負担せしめることができる趣旨の文句が入つておるくらいでございます。でございますから、この(b)項がございませんならば、先般、終戰以来日本が終戰処理費として円貨で負担して来ております占領費以外に、合衆国が自国の国防省の予算で負担しております日本における占領費も日本に負担せしめようとすればでき得る立場におるわけでございます。それを特に(b)項によつて、間接占領費を除いて、その他は全部放棄するという規定をおいてくれた次第でございます。
○国務大臣(池田勇人君) 今、佐多委員の言われました言葉はヴオルヒーズ陸軍次官が向うの国会で言つたということを聞いただけでございます。その点につきましては、私はここで御説明する責任はございません。
○佐多忠隆君 陸軍当局が、特にヴオルヒーズ陸軍次官がそういうことを主張した経緯等々を考えるならば、日本国の側からもそういうことを主張し、そういつたことを特に考慮してもらうというようなことを主張すべきだつたと思うのでありますが、その点については大蔵大臣は何ら御主張なさらなかつたのかどうか、改めてお伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 只今の條約局長が申しましたような事情でございますので、私は今対日援助費を棒引してくれという要求をいたしておりません。
○佐多忠隆君 條約局長のお話によりますれば、従来は原則的にそうであつたというお話でありますが、少くともこの平和條約は、和解と信頼によるものであるという特色を生かすためかどうか知りませんが、とにかく(b)項では、少くとも占領に対する直接軍事費は占領軍のほうで負担するということをお認めになつたものだと思います。そうだとすれば、それとの関連において、今言つたようなことを主張して然るべきだつたのではないか。その点もう一遍改めてお伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 私は債務と心得ておりますので、適当な方法、機会に拂いたいという気持を持つております。
○佐多忠隆君 その問題は、それ以上は議論になりますから、他の機会に讓ります。賠償の問題でありますが、先ほどからのお話を聞いておりますと、賠償に関しては、賠償支拂の限度なり、或いは支拂義務の履行の期間なり等々は何ら定められていないので、その点において非常に不安な條項であるということが繰返し述べられたのでございますが、私も同じような感じを持つわけでございます。そこで当初の、七月三日案でございましたか、当初の案に、賠償を行なつて債務を弁済する能力はないという、その能力がないという原則のときには、その考え方のときには、成るほど賠償支拂の限度なり、或いは支拂の履行の期間等々に対する定めがないことは当然でございますけれども、それがその次の八月十六日案では、日本の資源は現在十分でない、而も完全なる賠償を支拂うために十分でないというようなふうに修正されたわけでありますから、そういうふうな修正がなされたとすれば、その場合には、やはり支拂の限度なり、或いは履行期間を定めて、義務なり何なりを明確にしておくことが條約の当然の帰結じやないかと思うのでありますが、それにもかかわらず、それがなされておらない。先ほどからの御説明によりますと、イタリアとの條約においては、それがはつきりしておるにかかわらず、日本の場合にはしてない。そこで、してないことが私たちにとつては不十分であり不満足であるのですが、それはそれとして、それならば、やはりそれの限度なり、履行期間等の問題は大体においてどれくらいのものとお考えになつておるのか。その一つ一つの内容なり何なりについては大蔵大臣がしばしば言われておるように、勿論外国との交渉の問題になりますから、一つ一つを具体的に詳細に知ろうということではないのでありますが、併し日本国民として大体の心がまえなり何なりはしなければならないし、それが可能か不可能か判断もしなければならないので、そういう点をもう少し具体的にお示し願いたい。
○政府委員(草葉隆圓君) むしろ今度の日本との平和條約の特色は、額を定めて年限を切つておらないところが特色で、イタリアの條約と異なつておる点だと思います。先ほど申上げましたように、イタリアの條約では各国別に合計総額三億六千万ドルを、どこの国には幾ら、その期間はこれだけという範囲において物品で支拂う、こういうことをいたしております。或いは施設で支拂う。殊にギリシヤの場合だけはそれに附属して役務を認める。今度は日本の場合は役務だけでございます。役務だけの場合にはいわゆる金銭的な総額というものはちよつと出て来ないのであります。ギリシヤ等の例を考えますると、或いは発電の測量とか、鉱山の開発というような問題についての一つの特殊的な技術というものが出て参ります。従いまして日本にありまする賠償支拂の対象としては日本には役務しかない。その役務というのは、ただ單に働くという問題ではなしに、それは賠償としての国の力に応じて起つて来る役務でございます。それらの話合いによつて出て来る問題で、むしろ種類、数量というものが中心になつて来る問題だと考えております。こういう意味において、今後の内容につきましては、全くそれぞれの国と日本との間におきまする協定と申しまするか、話合いによつてこれは明瞭にだんだんとなつて来るべき問題と存じます。
○佐多忠隆君 各国別に具体的に……、数字その他は各国別の交渉によつてだんだん具体的に明瞭になつて来るでありましようが、要は、そういう賠償に対する基本的な方針なり、或いは大綱というようなものを大体どういうようにお考えになつておるのか。それをはつきりお示し願えなければ、こういう條約に賛成するとか、反対するとかいう態度が具体的に出て来ないのじやないか。その点はすでに新聞の伝うるところによると、連絡協議会等を作つて、すでにそこで相当進歩していると思われるが、その一つ一つについて具体的に示せとは申しませんが、その基本的な方針なり、或いは大綱なりはお示しになつて、国民と共にそういう問題をば論議し、決定して行くという態度をおとりになることが然るべきじやないか。そういうふうに考えるわけであります。
○政府委員(草葉隆圓君) 御尤もでございます。この点につきましては、従来から総理からも、大蔵大臣からも、又外務当局からも申上げております通りに、誠実にして忠実に一つこの賠償の問題は相手国と善隣友好の関係において進めて行く。そうして、その具体的な問題は第十四條の範囲内においてやる。これは当然ここにきまつておる通りであります。第十四條には、いわゆる存立可能な日本経済の維持という枠があります。追加負担を課することをしない、外国為替上の負担を日本に課さない、こういう條件の下で、交渉を申込んで参りまする相手国との間に取極が結ばれる、こういう考えを以て進めております。
○佐多忠隆君 いや、その條約に謳つてあるそのこと自体は私たちも承知しておるのですが、この條約に従つて賠償の問題を進んで取極めて行く場合に、もつと具体的に、そういう方針なり、態度、大綱をどういうふうにお考えになつているかということを聞いておるわけなんですが、それじやもう少し視角を変えまして、今お話になつた存立可能な経済というお話が出ましたが、その存立可能な経済ということは相当長きに亘つての見通しにもなると思いますが、そういうものを一体政府は具体的に、内容的に、どういう規模のものである、どういう程度のものである、どういう輪郭のものであるというふうにお考えになつておるのか。それを少し具体的にお示しを願いたいと思います。これは外務省にもお願いをしたいし、更には安本長官なり或いは大蔵大臣にもお願いをしたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 私のほうに関係いたしますことから先に申上げたいと存じますが、結局賠償の具体的問題が起つて参る。或いは橋なら橋を一つ技術的にどうするという一つの問題がある。或いは一つの加工技術という問題が起つて、その材料はこうして持つて行くという場合におきまして、それらの問題が日本経済を圧迫せず、そうして国際收支に惡い影響を與えず、そうして、そこから起つて参りますることによつて合理的な日本の生活水準を破壞しないようにというすべての点から考えられて来ると存じます。従つてそれはおのずから具体的の問題としてはつきり……單に今申上げますると抽象的な問題になつて参りまするが、具体的の問題になりますと、はつきりと一つ一つが現われて参る。又向うへ参りました場合に、例えば現地のほうへ参りました場合には、現地において日本の技術でやる場合に、それに対してどうするかという具体的な問題が起つて参るのであります。
○佐多忠隆君 今の御答弁のような、非常に抽象的な、一般的に合理的な生活水準とか等々ということを聞いておるのではなしに、或いは又、その答弁の中にあつた具体的の一々の問題について、各国別に、或いは一つのサービス賠償をする場合に、具体的にどうするかというような問題を聞いておるのではなく、その中間にあるところの日本の現在の状態において、現在のような経済力或いは財政力、国力、現在の日本の置かれておる地位から見ての存立可能な経済というのが、現在或いは将来に亘つてどういうものを構想しておられるのか。それをもう少し具体的にお示しを願いたい。こういうことを言つておるわけであります。この点は特に安本長官にお願いをいたしたいと思います。
○国務大臣(周東英雄君) 大体外務省の政務次官からお答えになつたのでわかると思いますが、くだいて申上げて見ましよう。それは、私どもはこの両三年の日本国の努力或いはその他の国の友好的な援助によつて、ともかくも戰争直後及びその後二、三年の間の生活よりも国民生活の水準が上つておることは、これは佐多さんも御承知の通りだと思います。講和條約ができて後、お示しのように賠償その他の負担が増すということは事実でありますが、併しその内容というものは、それから相談ずくできまるわけであります。そのきめ方によつて、少くとも今日何も一〇〇%完全とは申しませんが、これを一足飛びに戰前の一〇〇%の水準まで持つて来るということは全然不可能でありましようし、又それは実際上、外にいろいろ賠償等を控えておる場合にはできますまいが、少くとも今日ある生活水準、これはあなたもよく御存じのように、一応昨年の六月頃には戰前の七八まで上りましたが、その後、朝鮮事変以後の状況で一時は六九まで下りました。再び物価の関係が横這いになつて来た関係で、少し又上つておりますが、併し今日の生活水準というものが戰争直後、及びその後の二、三年の状態よりよくなつておることは事実であります。私どもは一応は、この生活水準の今日の状態を更に圧迫して引下げることなしに、維持し又は除々引上げるということは私どもの一つの目標になつております。私どもの考えでは、若し電力その他の関係が今考えておる通りに行くならば、一%なり二%更に年々増加して行くというふうに考えております。これは一つの目標であります。これは佐多さんが何ぼおつしやつても、どういう程度にどうするかということは、今なかなかすぐにはむずかしいのですけれども、少くともその心構えを持ちつつ、これを押破つて、今後生産を増強いたしましても、それを全部外国に持つて行つてしまうというのであつたら、これはあなたがたの御心配のように、生活水準は今より引下げられて圧迫されて行く。それでは到底日本の経済復興にも役立たぬし、又日本の国民生活も引下つて行く。これであつてはならぬと、かように思いますので、そういう点を頭におきつつ、最近における経済の復興指数、又それを今後どのくらいに持つて行くかということの計画を立てつつ、それが今後折衝されてきまるべき賠償の額と申しますか、役務賠償であつても、それは交渉の結果、一つの金銭に見積られることになりましよう。それを何カ年の役務で、働くということによつて、なしくずしにして行くということがきまると思います。
○佐多忠隆君 どうも存立可能な経済の具体的な内容というものがはつきりわからないのですが、それではもう一つお聞きしますが、平和條約の前文には、国際連合憲章第五十五條によつて定められているところの安定及び福祉の條件を日本国内に創造するために努力するということを誓つておる。そうして、その五十五條は、私から御説明するまでもなく、「一層高い生活水準、完全雇用、並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の條件」を促進するということを非常に具体的に明示をしている。而もその後、国際連合においては、この生活水準なり完全雇用等々の問題は、具体的に、数字的に出して、各国論議し合うということになつて、非常に具体的な数字の問題として今まで発展して来ていると思うのです。そうだとすれば、この平和條約の前文においてこれを承認し、これを誓い合われた以上は、そういう問題に対して、具体的な、数字的なお見通し等々があつて、そうしてこの程度の規模のものが、或いはこういう政策によつてここまで上げることが、存立可能な経済の内容なのだということがはつきりして、それを背後に持ちながらこの條約を審議され……調印して来られたのだと思います。そういう意味において、この内容をもう少し具体的にお示し願いたい。この点はすでに前からそういう数字的な具体的な資料をお出し願つた上で更に詳しく御説明を願いたいということを実は要求しているのでございますが、未だに出て参らない。未だに出て参らないというのは、こういうことをただ空念仏として話合われただけなのか。もつと本当にまじめに、そういう問題を一応具体的に検討し決定して、その上でこういう誓約をなされたのかどうか。私はその後者であると信ずるものでありますから、是非それをばもつと詳しく、具体的に御説明を願いたい。殊に大蔵大臣或いは安本長官のお話を聞いておりますと、何か生活水準は現在程度より下げないことに努力をするというようなふうにしかとれないのでありますが、併しこの国連憲章の第五十五條にはつきりと謳つているように、一層高い生活水準を促進することの義務を我々も負つているわけでありますから、そうだとすれば、單に生活水準をこれ以上下げないのだというような御説明ではなくて、生活水準はここまで上ることが日本の存立可能な経済なんだということを、はつきり国民にもお示しを願いたいし、国際的にもそれを明示することによつて、それを前提にして、賠償、外債処理その他の問題を決定して頂きたい。そういう意味で是非これをもう少し具体的にその点を御説明願いたい。
○国務大臣(池田勇人君) 先ほど安本長官がお答えになつた通りであります。我々は国民生活を上げつつ善隣友好の関係を促進し、賠償の責を負担しようといたしておるのであります。で、どういう程度に、どういうふうな方法で行くかということは、これは調印後相手国と相談してきめることでございますので、今ここに腹案がありましても申上げるわけには行きません。
○佐多忠隆君 相手国とおきめになる問題は、個々的に、個別の国々とどうするというようなことをおきめになるでしようし、そういう問題はそれらの折衝の内容になりますから、或いは私たちが質問しないほうがいいかとは思いますけれども、そうでなくて、どの相手国をとるにしてもその前提條件としてきめておかねばならない存立可能な経済の構想なり或いは規模なり、従つて又それの重要な問題になる生活水準を、一層高い生活水準へ持つて行くための具体的な施策なり或いは数字なりというようなものは、個々の交渉の前に前提條件としておきめになつておかねばならない問題であると思うので、そういう意味ではその説明を回避される理由は何らないかと、こう思うのであります。
○国務大臣(周東英雄君) これは佐多さん、一方的に非常におつしやいますけれども、私どものほうで大体の案は持つていますが、これにつきましても、要するに日本の産業の増強の指数というようなものは、このくらいに持つて行かなければ、国民所得なり国民生活はこうならぬ。而もそれへ持つて行くには電気とかその他いろいろな問題について問題が残つておりますし、更に私どもの申上げたいことは、案があつても今更申上げにくいというのは、なかなか今後の折衝の段階においてむずかしいものがたくさん出て来ると思う。中には、御案内のように、こんなに国民生活を上げんで暫らく全部よこせというようなことになるかも知れん。これは打明けたざつくばらんの話ですが、これはこれからの折衝の問題です。今すぐそういうふうにはつきりと言う段階にはないと私は思います。併し一つの目安としては、何としても、私は今日まで二、三年の間にまあいろいろと片寄つた部面もございますが、とにかく終戰直後や戰争中よりは国民生活はよくなつておる。これを今後下げるというようなことでは、これはいけない。どうしても徐々にでも毎年々々少しでも上げて行くということの目標を以て考えたい、又考えつつあるということを私ども申上げておきたいと思います。
○岡本愛祐君 同僚議員から十四條についていろいろ質問が出まして、私のお聞きしたいと思うことは大分質問が出たのであります。それで簡單に一、二点お尋ねをしておきたいと思いますが、只今問題になりました存立可能な経済、この字句について外務当局に、国際法とか、そういう法律的に、こういう文字を用いて、はつきりした限界があるかという御質問をしたのであります。ところが、これは法律的の文句でなくて、経済的な文句であるから、これは大蔵大臣に質問してもらいたいということで、質問が保留になつておつたのであります。大蔵大臣は、同僚の楠見委員からこの字句についてお尋ねをしたときに、只今お答えがありましたと同様に、これは日本の国力その他から考えて、少くとも賠償を拂うために生活水準が下るといつたようなことは、私はしたくないと思う。まあ、こういうような御答弁であつたのであります。今、安本長官も同様のお話でありました。結論は結局そこに行くと思いますが、この存立可能な経済ということをもつと合理的に説明するには、実は少しくお考えが足らないと思うのであります。で、私はこの存立可能な経済ということは、結局日本が一人前の独立国として国際社会に立つて、少しでも世界の平和に貢献して行くため、どうしても社会不安というものをなくさなければならん、つまり社会不安を惹起しない程度の経済という意味であろうと、私は思うのであります。結局、それは日本の生活水準というものは今非常に低い。だから社会不安を惹起しない程度にするには、やはり現在のところでは多少とも水準を高めて行かなければならん。結論は同じでありますが、説明の仕方が私は下手である。こう思うのであります。この字句は非常に今後の交渉についても大事な点でありますから、私の考え方が間違つておるかどうか。それを大蔵大臣にお尋ねして置きたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 社会不安を起さぬ程度というのがいいか、或いは生活水準を少しでも上げつつ行くというのがいいか、これは考えよう一つでございますが、生活水準が下つて来るというようなことがあれば社会不安を起すというようなことになるかも知れないのでありますが、これはいろいろな表現の仕方がありますが、私はあなたのお気持も我々の気持も同じだと思います。
○岡本愛祐君 生活水凖を上げて行くんだというと、向うとしてはなかなか納得ができないのであります。そこに一つ前提が私は足らない、こう思うのでありますから、まあ念のために申上げて置いたのであります。 それからこの十四條の(a)項の2のほうに「次の(ii)の規定を留保して、各連合国は、次に揚げるもののすべての財産、権利及び利益でこの條約の最初の効力発生の時にその管轄の下にあるものを差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する。」こういう文句があります。そこで、これも大蔵大臣は楠見委員の質問に答えられまして、この「処分する権利を有する」と、こう書いてあるのであつて、何も処分することとする、ということに書いてない。だから、ゆとりがあるような御答弁をなすつたのであります。それで私も考えて見たのでありますが、成るほど処分する権利を有するというだけで、処分するとは書いてない。そうすると今後の日本政府の交渉如何によつては、この條項の権利をあちらをして讓歩させ放棄をさせるような余地があるのかどうか。余地があるとすれば、その政府の見通しはどうであるか。それをお尋ねして置きたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) ここにはお説のように権利を有するとしてありまするから、必ずしも権利をそのまま実行しなければならないという、連合国の話合いによりましてはお話のようなことに相成つて来ると思います。現にイタリアの場合におきましては、アリメリカにありまする資産を一九四七年の八月でありましたか、五百万ドルという一本にしてしまいました。そうして、その資産はそのままにして、五百万ドルの金を拂つて話合いをつけた、こういう先例もございます。従いましてこういう点につきましては今後十分交渉の余地はあり得ると考えております。
○岡本愛祐君 そういう余地があるとすれば、今後の政府の御努力に待つことが大でありますが、このいわゆる在外資産の帰属の問題につきまして、この條約の規定は最後的の決定はまあこの條文であろうと思うのであります。そこで在外資産乃至船舶なんかで、終戰後におきまして外国の、連合国の領海とか港の中にあつたものが差押えられて、管轄の下にあることになつているのでありますが、これに対して今日は大橋法務総裁は見えておりませんが、日本の憲法は在外資産には及ばない、だから日本には責任はなくて、賠償責任はないというような御答弁をなすつた。これには憲法上の疑義があるということは大蔵大臣もしばしばお述べになつているのでありますが、私は疑義の発生する余地はないのじやないかと思うのであります。なぜならば、大橋法務総裁が在外資産には憲法は及ばないと言われたことは、それは一方だけを見ておられる、領土主権のほうだけを見ておられるのでありまして、人民主権については、日本人が外国にありますときに、それはやはり日本の保護の下に置かなければならない。若し不当な拿捕なんかせられれば、十分日本が交渉してそれを取戻さなければならないのであります。これは日本の法律が、人に関する効力ということは外国にあつても同様であります。だから領土主権のほうからばかり見られないで、人民主権という点から見て行つて、その財産という問題になりますと、憲法はやはり在外の資産に及んでいるのであります。その財産についてそれではどうなるかと言えば、これは外国との関係におきまして日本で法例というものを作りまして、そうして法例の第十條で「動産及ヒ不動産ニ関スル物権其他登記スヘキ権利ハ其目的物ノ所在地法ニ依ル。」まあ外国法によるのだ、そうして「前項ニ掲ケタル権利ノ得喪ハ其原因タル事実ノ完成シタル当時ニ於ケル目的物ノ所在地法ニ依ル。」つまり外国法によるのだ、これによつて外国にある財産は外国法によつてその得喪がきめられることになる、これはわかります。併し若し外国が不当なこういう法律を作つたとしますれば、それは、やはり日本政府が十分交渉をして不当なる法律を改正してもらう、なくしてもらうという努力もしなければならないのであります。これはもう当然であります。そういたしますると、今度この條約によりまして外国にある財産に対してこれを外国が差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を與えることに日本が同意をするのであります。日本政府が同意をする。そういたしますると、これは日本の憲法に立ち帰るのでありまして、そういう最後的処分をすることに同意をした日本政府の責任というものが当然出て参る。即ち憲法二十九條による「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」この條文の適用があるのでありまして、そうして、こういう公共のために賠償として出す以上は、それに対して正当な補償を與えることはこれは当然であるということになるのでありまして、これは疑義も何もないことだろうと思うのであります。いろいろ御研究にはなつていると思いますが、又実際問題としては先ほど御説明がありましたように、日本の財政上の問題、戰争犠牲者に対する均衡の問題、それなんかでいろいろ政府もお考えにならなければならんことがあると思うのです。併しその憲法の規定には嚴として補償するという原則があるのでありますから、政府は賠償責任を逃れては私はいけないと思うのであります。この点十分大蔵大臣は今御研究ではありましようが、私の今まで述べたことに対してお考えを願いたい。又この機会に私の今述べたことが間違つておるところがあれば一つ御指摘願いたいと思うのであります。
○国務大臣(池田勇人君) 私は結論をまだ出しておりませんので、ここで申上げるわけにも行きませんし、又あなたのお考えにつきまして私がどうこういうのはまだ早いと思います。いろいろこれは今後の問題として出て来るので、暫くお待ち願いたいと思います。なお法務府の係官が来ておりますので、憲法上の問題は法務府としての意見を申述べることにいたします。
○政府委員(林修三君) 只今岡本委員の御質問につきましては、たしか法務総裁がこの席でお答えしたと私、記憶しておるのでありますが、大体その通りであろうと我々としては考えております。
○岡本愛祐君 その大橋法務総裁の答弁が我々が納得できなかつたので、納得できないということをこの席で明言しておるのです。それで、それに対して大蔵大臣のほうの答弁を要求したのでありまして、法務総裁のほうはよく調べてもう一度答弁してもらうことになつておるのです。その法務総裁の答弁は、委員長、一つ別の機会をお作り願いたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) 承知しました。
○片柳眞吉君 私は第十四條の(b)項の点で一点御質問いたしたいと思いますが、(b)項では、占領の直接費はこれは放棄いたしますが、占領の間接費用はこれは支拂うということになつておるのでありまして、従いましてこの前御説明がありましたように、ガリオア資金なり或いはイロア資金等で救済を受けましたものも、これはこの債務を償還をすると言いまするか、これは返すことになるわけでありまして、これは終戰直後の混乱を救つて頂いた関係でありまするから、お返しをすることが当然だとも思いまするけれども、ただ丁度私が当時ガリオア資金等による食糧の配給をいたしておつたわけでありますが、当時の国民の感情なり、或いは私どもが関係方面からレリーフをもらいましてやりました当時の感覚からしますると、何かしらこれは返さなくてもいいのだというような実は感じを持つておつたのであります。特に放出の條件等は非常に嚴重な條件で国民に配給もしておりましたし、又今でも勿論感謝はしておりまするけれども、主要食糧として配給をしました中には、或いはジュースの罐詰であるとかいうような実は非常に無理な物も国民に実は我慢をしてもらつたわけであります。(笑声)当時の状況を回想いたしますと、勿論これは返すのが当然だとは思いますが、そういうような当時の状況をよく、請求権による返済額を査定する場合におきましては、そういう事情を是非とも一つ主張して頂きたいということをこの際希望いたしまして、その辺どういうようなお考えをお持ちになつておりまするか、返さぬでもいいということを私は言うわけではないわけでありまするが、ともかく当時の感覚は無償でもらつたというような実は感じで私どもやつておつたわけでありますが、その辺はできるだけ一つ返すにいたしましても、その金額の査定につきましては当時の実情を十分一つ斟酌をして頂きたいということを実はお願いをいたしたいのでありますが、その辺に対しまして大蔵大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) これは今日も先ほど申上げた通りでございまして、私は前からこれは債務と心得ると、こう言つておるのであります。そうして又債務と心得るということを申上げると同時に、今までイタリアは債務と心得ておつたが、向うが一方的に、請求権を放棄した例もございますということを言つておるのであります。今ここで私はとやこう言わないほうがいいのではないかと思います。我々は飽くまでこの援助は感謝し、それで債務と心得ておりますと、この程度でいいんじやないかと思います。
○片柳眞吉君 私も実はそういう同じような感覚で申上げておるのですが、当時の実情はこれは是非とも一つお考えの中へおいて頂きたいということを希望いたします。 それからもう一つ、これを返す場合の財源と言いまするか、との関連でお聞きしたいと思いまするのは、かようなガリオア等の資金による救済物資、主として食糧でありまするが、これは国内には、関係方面の承認を得まして、その当時の適当とする価格で実は国民には有償で配給をいたしておるのであります。そういうものが現在の見返資金の財源になつておることは申すまでもないのでありますが、そうなつて参りますると、これを返す場合におきましては、すでにこの物資には国民は相当の対価、代償を拂つておるということが言えると思うのであります。従いましてこれを返すという必要が起りました場合におきましては、この償還資金を新たに又国民に課することはこれは適当ではないという実は私は感じを持つております。従いまして国内には相当の価格でこれは配給をされておる。その代価は回收済みでありまするし、それが見返資金等で運用をされておりますので、その返す場合においては見返資金勘定等の負担においてこれを清算して返すことで私はいいのではないだろうかという実は感じを持つておりまするが、これに対しましてのお考えをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 片柳君はよく御存じと思いまするが、見返資金ができたのは私が大蔵大臣になりました昭和二十四年の予算からでございます。二十年、二十一、二十二、二十三年は有償で食糧その他は配給しましたが、その外貨は例の為替相場がきまつていないので、どこへ行つたかわからない。どこへ行つたかわからないというような言葉は惡うございますが、複数為替レート的なものという……これは補助金になつてしまつたのであります。これでは折角アメリカの援助があつてもはつきり国民が知らずにおつたのじやいかんというので、大蔵大臣になりまして、対日援助見返資金というので積み上げたわけであります。その積み上げた金額は八億六七千万ドルになつております。邦貨に換算いたして二千八百億円になつておると思います。対日援助のこの分は今まで二十億と言われ、十八億八千万ドルと言われ、十九億二千万ドルと言われておりますが、大体二十億以下、十九億程度でございます。そのうち八億六千万ドルは昭和二十四年から対日援助見返資金として取つてあります。これは行方がはつきりしております。民間へ貸したのもありますし、鉄道、逓信に出したのもあります。とにかくはつきりしておりますが、第三次吉田内閣ができるまでは有償でやりましたが、その金は為替その他の補助金になつてしまつておる。あのとき、これじやいかんというので対日援助をこしらえたのであります。全部金が残つておるわけじやありません。半分足らずが残つておる。
○楠瀬常猪君 大分同僚議員によつて質問が展開されまして、私も賠償問題にからんだ在外資産の取扱の問題について二点大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。その一点は、只今岡本委員からお尋ねになりましたことにつきまして外務政務次官から一応條約上の解釈乃至は従来の取扱の上からのお答えがあつたわけでありますが、私は特に政府の実体的の考えを持つておらるる大蔵大臣に更に念を押しかたがたお尋ねをいたしたいのであります。と申しますのは、このたびの平和條約は非常に融和と親和の寛大なる條約と言われておつて、その連合軍の見識、態度には感謝しておるわけでありますが、いろいろの條項を見てみますると、やはり先ほども問題になつて参つたのでありまするが、この十四條の在外資産の取扱の問題といたしましての2の(IV)の項目がその一つであろうと思うわけであります。ということは、結局所有者は、「法律によつて與えられる権利のみを有する。」というあの條項の中に返還という問題が考えられるわけであります。私どもは、この條約を仔細に見まして、直ちに日本側にとつて有利なることばかりを狙つて、そうして不利なることは排除するといつたような、極めて一方的な立場とか考えというものは持ちたくないのでありまして、この平和條約というものを受諾いたしまして、日本側といたしましても十分一つ義務のあるところはこれを履行して参らなければならんのであります。併しながらその一方におきまして、こういうふうに日本が忠実に條約を履行する、又せんとするその行動乃至は気がまえの上におきまして、そこに連合国のほうにおきまして友好なる感情、関係というものが生じて参りましたならば、又そういうような関係に是非とも私どもは今後持つて参らなければならんのでありまするが、そういう場合に、特にこの日本が復興する、又平和産業の自立を図るという意味におきまして、連合国との友好提携という上から見まして、連合国のほうでも日本のことを考えてくれるように私どもといたしましてはいろいろ努めなければならんのが今後の私どもの態度じやないかと思います。そういう立場からいたしまして、イタリアの條約の先例にもありまする通りに、双方の、イタリアとアメリカとの経済関係を正常に復する意味から申しましてでありますが、イタリアとアメリカとの間におきましての在外資産の返還ということが特にアメリカ側の好意によつていたされたのであります。そういう点から申しまして、日本といたしましても只今申しましたような、非常に友好親和の関係におきまして、一つ今後日米友好提携の上からいつて、日本の復興、平和産業の確立というような意味から申しまして、この在外資産の上におきまして返還といつたようなことにつきましては、日本側といたしましても特にそういうことを一つ考えて見なければならんのじやないかと思うのであります。徒らに日本側が直ぐ有利な点のみを捉えて、そうして不利な点を排撃するという態度はこれは排除すべきでありますが、只今の点は、非常に融和と寛大なる親和の條約という上から申しましても、そこに一つの点があるわけであります。こういう点につきましては只今御返事があつたわけでありまするが、私は特にそういつた面におきまして財政経済の方面におきまして、実体的な政治を、行政を握つておられる大蔵大臣におかれましては、これは一つ相手方と交渉のあることでもあるし、或いは今後いろいろ條約の折衝の関係乃至は賠償等の関係もあるから、それは言いにくいことではあるが、そういつた態度が日本として望ましい、そういつた気持で是非今後進めて行きたいといつたようなお考えがおありかどうか。勿論おありじやないかと思うのでありますが、この点を特にお尋ねをいたしたいのであります。それが第一点であります。
○国務大臣(池田勇人君) 事が外交に関することでございまして、こちらの考え方を率直に言うことがいい場合も惡い場合もございます。やはり我々は日本国のため、そうして又世界平和のため、こういう考えの下に今後の折衝をして行きたいと思います。これは外債の問題にいたしましても、いろんないわゆる債務がたくさんあるのでございまして、できるだけ外国人から信頼を受けて、そうして話をうまく持つて行きたいというのが念願であります。
○楠瀬常猪君 只今大蔵大臣のお答えによりましても、日本側がこの條約を通じて殊に連合国側との信頼を博して、そうして今後こういつた問題について努力をして行きたいというふうに私は受取つたわけでありますが、正にそうあるべきものだと思います。これ以上具体的にいろいろ申上げることは却つていろいろ差障りが出るのじやないかと思つて、この第一点はこれだけにしておきますが、第二点は、この問題と関連いたしまして、そういうことは、これは政府当局といたしましては、はつきりおつしやることはできないでありましようが、極めてやらなければならん好ましい事柄であろうと思います。従いましてそういうような事態が設定、実現いたしまするまでの経過的措置として、政府は何かお考えになつておられるかどうかを伺いたいのであります。と申しますのは、このたびの平和條約によりまして私どもは政治的の自主という方面は無論得る、又得なければならんわけでありますが、先ほど来もいろいろ論議になつておりますように、経済上の自主といつた問題も政治上の自主と相並んで、車の両輪のごとく大事な問題でありますが、その経済上の自主の問題の一つといたしまして日本は、よく大蔵大臣の言つておられまするように、何と申しましても国際收支の均衡という問題が大きな問題である。その問題の中に貿易の振興という問題があり、又資金の調達という大きな二つの問題があるわけでありまするが、この貿易振興の問題にいたしましても、論出の振興という問題を本当に図るためには、原材料の輸入といつたこの問題が重大になつて参るわけであります。又資金の問題、これは低賃金という問題が徹底的に……労働者の犠牲のみによつてそういう方面に持つて行けない今日、やはり根本におきましては産業設備の合理化、近代化といつた面におきまして、私どもは成るべく低い、合理的な商品を生産いたさなければならんのでありますが、それにいたしましてもやはり資本が要るわけであります。そういうようなことを考え、又アメリカと日本との経済提携というようなことをいろいろ考えるというと、私はここに何がしかのやはり外資導入という問題が必要になつて参ると思うのであります。この外資導入の問題につきましては大蔵大臣もいろいろ苦心もしておられると思うのでありますが、併しながらこれも徒らに外資々々ということを喋つて、国内の合理化ということをあとにし、それを疎んずる、怠るということがあつてはならんわけでありますが、何と申しましても私は外資導入ということが大事だろうと思います。そういう点から申しますと、先ほど申しました在外資産の問題につきまして特別の取扱をしてくれるということが若し望ましいということでありますならば、私は経過的の措置といたしまして、連合国にありまするところの在外資産を担保といたしましてクレジツトを設定するというようなことも、一つの重大なる経過的の、日本経済といたしまして必要なことではないか、正にそこは御着眼になるべき一つの点じやないかと思うのであります。併しながらまだ講和條約の調印間もなくのことでありまして、いろいろその間の空気、折衝等もありまして、なかなかむずかしい問題もあるとは思うのでありますが、一つ連合国の友好提携の上におきまして、経過的措置といたしましてこの在外資産を担保といたしましてクレジツトというようなことを一つお考えになつて頂けぬものかどうか。この点につきましては折衝の問題でもあり、非常にいろいろな事情もあることでありましようから、具体的にはおつしやることはできないでありましようが、そういう方向において、先ほどお答えになりました、そういうような方向において一つ政府といたしましても今後よく考え、できる場合においては、やつてみたいというようなお考えを政府はお持ちでないかと思うのでありますが、この点、大蔵大臣のお考え、御方針をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 在外財産の処分権を放棄した後の問題でございまして、それが又今條約によりまして向うに仕されてしまつたので、向うのほうでその処分権を放棄した場合のこれは一つの考え方だと思う。今、私が放棄を前提として、それを担保にして借りるとか何とかという問題につきましてはお答えしかねる問題でございます。
○楠瀬常猪君 私の説明が或いは惡かつたかとも思うのでありますが、在外資産を先ず返還するということを前提といたしまして、その線におきまして、友好の関係におきまして何らか将来そういう返還乃至は処分ということが解除せられるということの、将来を一つ考えながら、今言つたような在外資産の特別の取扱につきまして経過的に一つ政府としても御努力なさるようなことをして頂けないものか、そういうお考えがあるかどうかということについて特にお尋ねをしたようなわけであります。
○国務大臣(池田勇人君) 在外財産の所有者のことでございまするので、その所有者が自分が担保にそれで金を借りよう、こういうことならよろしいのでございますが、政府が民間の人の在外財産を担保にして金を借りるとか何とかという話はまだ早いのではないかと思います。
○羽仁五郎君 各委員との質疑応答を伺つておる間に非常に不安を感じた点があるので、簡單に大蔵大臣なり安本長官に政府のお考えを伺つておかなければならないと思うのですが、第一に、質疑応答の間にもいよいよ不安を感ずるのは、賠償というものの原則について政府はどういう理論を持つておられるのか。何だか伺つておるとだんだんお先真暗のような感じ、無方針のような感じ、出たとこ勝負のような感じを受けるのですが、賠償の原則についてどういうお考えをお持ちであるか。どういう理論で賠償上の交渉を進めて行かれるおつもりであるか、いろいろ外交上のことだから余りここではつきり言えないとおつしやるのですが、なかなか現在の国際政情において、單に話をうまく持つて行くなんという程度のことで行くことは、殊にその南方アジアの国々との間には到底行かないだろうと思う。私はこの点について或いは政府が十分考えておられるんだろうと思うのですけれども、先ず第一にお尋ねしたいのは、日本がこの平和條約で承認するところの賠償というのは、言うまでもなく與えた損害に対する賠償ですけれども、與えた損害に対する賠償に対して、その與えた損害に対してどういう賠償を行われるかということについては二つの考え方があろうと思う。一つはつまり懲罰的な、プユニテイヴというか、懲罰的な考え方である。これで行けば、與えた損害というものの殆んどすべてを、日本が破滅しようとどうしようと、それは賠償しなければならない。それからもう一つの考え方というのは、日本がこういうような損害を與えたような原因を除去して、民主主義的な国になつて行くということを前提として考えられる賠償の問題があると思う。この場合には賠償も非常に苛酷であり、即ち第一次欧洲大戰のドイツに対する賠償問題のように、そのことはドイツ国内の民主主義の成長を極めて困難にして、それで却つてナチスなり何なり、侵略主義をドイツ国内に誘発するということになつて来る。これを避けようとしている点が現在では非常に重要に考えられるのではないか。だから、この第五章の現在の平和條約の條文ができるについて、絶えずそれを貫いているものは、日本が過去において與えた損害を賠償するのだけれども、併し同時にそこに、日本が過去において各国に戰争によつて損害を與えたようなことを繰返さない、即ち侵略主義的な国家とならない、民主主義的な国家となつて行くという考え方が強く主張されるものだと思う。この点の理論がはつきりしていないと、この賠償の交渉においても日本の立場というものが、何だか拂うような拂わないような、何とかすれば、まけてもらうというようなやり方でなくて、日本が民主主義的な国家として、或いは、もつとはつきり言えば福祉国家として成立して行くための諸條件というものがはつきりして来ると思うのです。で、先ほどの質疑応答を伺つている間に、その点についての政府の御所見というものが甚だ明瞭でないのですが、その点については、政府は果してそういう意味で、日本が民主主義的な国家として、従つて先ほど岡本委員からも言われたように、社会不安というものが発生しないような福祉国家としてやつて行く、そこに基凖を置いてこの賠償の問題を解決して行くという態度を、はつきりとらるべきだと思うのですが、その点について大蔵大臣なり安本長官なりはどういうふうにお考えになつているか。これを先ず伺つておきたい。で、これはその点に関連して総括質問の際にも質問したのでありますが、この平和條約の前文に誓約されているような日本の安定及び福祉の條件、その主なるものとしては、例えば社会福祉というものについて大蔵大臣又安本長官はどれだけの積極的な意思を今日お示しになることができるのか。ところが先ほどから政府の予算の編成その他を拜見しておりますと、むしろ社会不安が発生することを予定し、そうして、その社会不安に対する警察費の予算上の計上というようなことをやつておられる。そうすると、できて来るものは、日本は民主主義的な国家の方向に行くのじやなくて、警察国家的な方向に行く。従つて侵略主義的な国家になつて行く。そうなれば日本に侵略の危險が多大にあるということは、今日でも太平洋を中心とするいろいろな安全保障條約が締結される必要があるというくらいに認められておる。それがますます甚だしくなつて来れば、そういう方向を防ぐために非常に嚴格な嚴重な賠償を取り立てるという要求が起つて来るのじやないかと思うのです。この点で具体的に、この日本のウエルフエア・ステートというか、福祉国家として、最低限これだけのものは是非とも実現しなければならないという社会保障というもののお考えがあろうと思うのですが、それを伺わせて頂きたいと思うわけであります。 それから、その問題と関連しまして第二に伺つておかなければならんと思うのは、先ほど永井委員からの質問に対する御答弁の中に、この賠償に関係する場合の企業の利潤というものは経済上の常識というものに従うというふうなことを言つておられましたが、併しこれは池田大蔵大臣はそういう点で、例えばこの占領後連合国から日本に対して言われた、戰争というものは儲からないものであるということを日本国民に教えなければならないというふうに言われたような考え方に御賛成なのか御反対なのか。そうだとすれば、やはり或る意味において戰時における超過利潤を禁止するような立法的な措置というものと似たようなものが、この賠償に関係して来る事業において、客観的に見てこの利潤を制限する立法的な措置というものも決して不可能なことでないのみならず、或いは望ましいことであるかも知れません。戰争中軍需企業によつて儲けた人が、今度は又賠償で儲けて行くというような考え方は許されるべきではないというふうに思うのですが、この二点についてお考えをはつきり伺つておきたい。即ち存立可能ということには、日本が社会福祉を実現する国家としての意味を含んでいるのであつて、従つて社会福祉についてどれだけの、政府としては一定の社会福祉を必ず保障して行くというお考えがおありにならなければ、この賠償の問題を進歩的に解決して行くことはできないのじやないか。第二に、賠償についての利潤の制限の立法的な措置というものは、例えば戰時における暴利というか、その利益を制限する立法的措置というものが認められて来ておつたように、考えられるべきではないかという、この二点についてお考えを伺つておきたいと思うのです。
○国務大臣(池田勇人君) 今回の條約は和解と信頼に基くものでございまして、賠償の点につきましても報復的に取るというような観念はないと私は思います。日本が民主的になり、世界の平和に貢献することを期待してできたものでございまするから、報復的に取上げるという観念はどの国にもないと思います。而して存立可能な経済を営むという場合におきましては、社会保障制等の福祉国家として立つようになるのじやないか、こういうお話でございますが、我々も望むところでございまして、社会保障制度の費用は年々増額して来ておるのであります。 次に戰争は儲からないものだということを植えつける必要がある。尤もな話で、我々は常にそう考えておるのでありまするが、役務賠償、加工賠償をやります場合に、例えば甲なる会社に加工賠償が来た場合に、お前のところは一つも儲けてはいかんぞ、こういうことは私は不合理だと思うのです。これは普通の観念で行かなければなりません。それから例えば技術人をフイリピンへ行かす場合において、君の月給は儲かつちやいかん。貯蓄ができるような俸給は出すまいとは言えますまい。又沈船引揚を日本の近海においてやつた場合に利益がある、フイリピンでの沈船の引揚のときに一つも儲からないような契約は、これは無理だと思うのです。これは全体として適正なる方法で考えなければならん。それは飽くまで戰争は儲からないものだということは全般的の問題でございます。併し役務賠償をする個々の会社とか、技術をする個人について、戰争は儲からないものだから、お前ただで働けということは、これは不合理だと思います。
○羽仁五郎君 今の報復でないということは、すでに我々も了承しているのですが、私は特に強調したいのは、その存立可能の経済というものの基礎に立つて、日本が賠償問題について今後政府が交渉なさつて行く場合に、社会保障についての一定のパーセンテージというものの基礎に立つて交渉して行くことは、現在の国際常識において許されることだと思うのです。それを相手方が否認するということになれば、日本の社会不安というものがそこに起つて来るのであります。或いは社会不安よりも遙かにもつと恐るべき、丁度非常に無理な賠償が、排外的な或いはナチスやフアシズム的なものを惹き起して再び侵略を繰返すというような、不健全な政治状態というものが起つて来るのですから、これは賠償権国においても望むべきところでないわけです。その点についての政府の態度が今まではつきりしていない。それはすでに補正予算なり或いは来年度の予算なりにおいても、実際は社会保障について日本はこれだけのものが必要なんだ、又これだけのもの、社会保障のパーセンテージの上に立つて賠償をやつて行くことが希望されるのだ、そういう態度がすでに発揮されて行くべきものだというふうに考えるのであります。 時間がありませんから第二の点について伺いたいのですが、第二の点は、第十九條の問題でありますけれども、この平和條約は今大蔵大臣も繰返されるように和解と信頼に基くということでありながら、第十九條はその点において、これは他の條項にもそうでありますが、全体に亘つては、和解と信頼というふうに言われておりながら、個個の條項においては余りに苛酷ではないかというふうに考えられるものがあります。第十九條のごときはその一つであります。殊にこれは先日、本委員会が参考人に意見を伺いましたときに、名古屋の山下教授からもその点が述べられたのでありますが、この條約全体においては、日本の戰争責任ということを特に原則的に追及していない。然るにこの十九條になつて来ると、具体的に日本の戰争責任というものを追及し、而もそれを戰争責任者でない、むしろ戰争被害者である個々人の財産というものに対してそれが追及されておる。而もこの第十九條なるものが、第十五條の(a)の最後に掲げられております「日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案」というものとは原則的に全く逆のものが、第十九條においては現われておるわけです。それで、日本の国内で、当時日本と交戰状態にありました国のいわゆる無差別爆撃によつて生じたところの損害というものが、その無差別爆撃を行なつた国に向つて賠償が要求せられることは当然であろうと思うのです。ところが第十九條ではそれは放棄されておる。そうして十五條に言及されておるところの日本国内閣が決定した、今これは国会に提案されておる法律案のようですが、連合国財産補償法案では、日本国内において行われた無差別爆撃の損害というものの賠償責任が、その無差別爆撃を行なつた国ではなくして、無差別爆撃を行われた国である日本の国の政府にあるというような立場がとられておる。これは国際的にも先例のないことであり、且つ又無差別爆撃に関する戰争責任の問題の原則的な問題にも関係して来ることだと思うのでありますが、これらの條項に対して署名をして来られた全権としての大蔵大臣は、どういう御了解の下にこれを御署名になつたのか。その点を伺つておきたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 敗戰いたしまして無條件降伏いたしました我々といたしましては、全体的には和解と信頼でございまするが、個々の点におきまして不利な條件があることは、これは止むを得ないと思います。従つて今の連合国人の財産で戰鬪行為に基きまする損害に対しましては我々は補償する義務があると考えておるのであります。
○羽仁五郎君 その御答弁は甚だ納得しがたいのですが、敗戰国でありましても、国際的な理念から見て不條理なものに服するということは、これは先例にもなることだし、極めて問題だと思うのであります。無差別爆撃によつて生じた損害の賠償責任が、無差別爆撃を蒙つた国にあるということを今後認めるという趣旨に対して、第十九條に対する御署名をなさつたのですか。
○国務大臣(池田勇人君) 今後の問題は存じません。併し私といたしましては、この平和條約調印に当りまして、そういうことがあるということは承知して調印いたしました。
○羽仁五郎君 最後に一点伺つておきたいのですが、これは本年の八月の十四日に、大蔵省とそれからアメリカの石油輸送会社であるNBC会社との間に、旧呉軍港のドツクについての売却或いは貸與の契約がなされております。こういうことは、この問題について、今時間がないので、簡單に伺つておきたいと思うのですが、第一には、これはどういう根拠に基いて行われたものであるか。それから第二には、こういうような事件の処理ということについて国会の承認、国会がこれを知らない間にこういうことが行われるということが望ましいことであるというふうに考えられますか、どうです。それから第三には、今後の平和條約が発効しないまでの間にこういうことを続けて行われる予定があるのでしようか。この三点について伺つておきたい。
○国務大臣(池田勇人君) 呉軍港のドツクの一部をアメリカのNBC会社に貸與したことは事実でございます。政府は産業復興の立場から、又失業救済の立場から、アメリカの資本を入れて造船をさすことを認めたのであります。而してこれは国有財産でございますので、政府は政府の考えで貸與はできるのであります。国会に承認を求める部分に入つていないと思います。予算上は、予算で計上いたしまするから、お話をする段階があるだろうと思います。なお、只今こういう問題があるかというお話でございますが、私の耳にはまだ入つておりません。
○羽仁五郎君 第二の点について、大蔵大臣は思いますというふうにおつしやるのですが、この旧軍港の処理というふうな問題は、單に国有財産の処分という程度の問題ではない関係を含んでいると思うのであります。殊にそれが売却され、そうしてこの契約では一応十年後に無償で日本に還付されるということになつているようでありますけれども、この賠償の問題とか或いはその他の問題と関連して、旧日本の軍国主義或いは侵略主義関係の施設というふうなものが処分される場合に、果してそれらの問題は、或いは個々の場合でないとしても、これら全体のこういう問題についても国会が十分の知識を持ち、又必要によつては討議するということは、私は望ましいことだというふうに考えるのであります。普通の場合の国有財産の場合とは違うのじやないか。又、今、自分の知る限りはかように思うと言われるのですが、これは或いはまだ承知になつていない問題で、こういう問題がある場合には、続けてこういうふうなことが平和條約発効以前に進行することが望ましいということをお考えになつているかどうか。それをお答え願いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 国有財産を売ります場合におきましては、一々私が署名するわけではございません。併しこれは大きな問題でございますので、係官から事前には報告を受けまして、成規の手続をとつて貸與契約をしたわけであります。今後そういう問題が事務当局で話があるかどうかは、私は今聞いておりませんが、数多い国有財産の中でございますので、或いはそういう話があるかもわかりません。私の耳に入つておりません。
○木内四郎君 先ほどからいろいろ質問もありましたし、時間の関係もありますので、私は多く質問しませんが、簡單に一、二点だけ伺つておきたいと思うのであります。この役務賠償についてどのくらいになるかという問題については、自分のほうでいろいろ能力についても言えないという大蔵大臣の御答弁御尤もだと思うのですが、この條約の條文で、例えば十五條、十六條或いはこの十四條の末項の間接占領費などについては、金額が非常にはつきりしているものもあり、又見積りもわかつているものもあると思うのです。これは大蔵大臣でなくても結構でございますが、この條約を受諾することによつて、財政上はつきり明らかになつて来る負担ですね。或いは対外の支拂い、例えば対外債務の問題或いは今の間接占領費の債務の問題或いは十五條、十六條によつて日本がどのくらい財政上負担しなければならないかというような問題、或いは個人の財産でも、これも、まあ、わからんかも知れませんが、或いは他の條文の関係などでも、この際こちらからはつきり言わぬほうがいいものもあるかも知れませんけれども、わかつている点、はつきり言つていい点について、大蔵大臣でなくても結構でありますから、適当な機会に、今日は時間も切迫しておりますので、他の機会にでも結構でありますから、この條約の受諾に伴つて生ずるところの負担で、はつきりしていると言い得るものを一応御説明して頂きたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 條約関係で負担することになりますものは、先ず第一に連合国財産の補償でございます。これは二百数十億円と見積つております。それから中立国にあります財産はスイスで一千八百万ドル、ポルトガルで一千万ドル程度だつたかと思います。それから外債は御承知の通り四億四千八百万ドル程度であります。それから対日援助費は先ほど申しましたように約十九億ドル程度でございます。ここで問題になります在外財産の問題は、十分なる調査をまだいたしておりません。一応の調査はいたしましたが、発表する程度のものになつておりません。以上のようなものが大体のものだと考えます。なお国内的の問題で平和條約に伴いまする経費がたくさんございまするが、例えば在外公館を殖やすとか、いろいろな費用がありますが、これは又別にこれからの問題であります。
○木内四郎君 その点は、できればちよつと書いた物でも出して頂くと結構なんですが、差支ない範囲において資料として出して頂くものがあれば、他の委員も大分今日はお帰りになつたようでありますから、出して頂ければ結構だと思います。 それからあとは簡單な字句の問題ですから、條約局長でも或いは他のかたでもいいですが、この十四條の初めに「日本人の役務を当該連合国の利用に供することによつて」、とあるのですが、これは政務次官からの御答弁だと、「利用に供する」というのは、無償の場合ばかりでなく、有償の場合もあるというふうに御答弁になつたように思うのですが、その点は如何でしよう。この点は簡單なようですけれども、これは今後において相当大きな影響があるのではないかと思うのですが、例えば日本人の技術を利用させるが、それに対して対価はもらうのか。
○政府委員(草葉隆圓君) お話の通りでございます。有償、無償、無償というのは、つまり、日本拂いというわけであります、有償というのは、多分向う拂いということだと思います。それは両方ともあり得る場合があると思います。
○木内四郎君 それから、そのあとの「追加負担」ということですけれども、これは別に現実的な支出を伴う場合だけに限らぬと思うのですが、この「追加負担」ということをどういうふうに解釈しておられますか。條約局長でもどなたからでも結構ですが……。相当広い意味じやないかと思うのですが。
○政府委員(西村熊雄君) 広い意味で、他の連合国に迷惑をかけてはならぬという意味であります。
○木内四郎君 そうすると、これは貿易上でも迷惑をかけることがあつてはならぬというふうに解釈していいでしようか。例えばドイツの賠償のときに、ドイツに賠償を拂わしたために、他のほうが間接的に経済的な圧迫を受けたということがあつて、それが世界の経済の復興のために非常な障害になるということが曾つて問題になつて、遂にドイツの賠償が放棄になつたことは御承知の通りだと思います。
○政府委員(西村熊雄君) そういう意味じやなくて、日本に対して與える援助額を増さなくてはならないようなことになつてはいけないというような意味の迷惑です。
○木内四郎君 そうすると、現実的の連合国の支出ということは伴うのですか。そう狹義に解釈していいのですか。
○政府委員(西村熊雄君) 支出をしなくていいときに、支出をしなければならないということが、迷惑になるということです。
○木内四郎君 だから、その支出を伴うということによつての負担ということですか。そういうふうに狹義に解釈していいですか。
○政府委員(西村熊雄君) 広く解釈しております。
○木内四郎君 局長は広くと言われるけれど、それなら非常に狹い解釈じやないですか。むしろ広く解釈しておくべきじやないですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 今條約局長が申しましたように、広い意味で解釈して、それが消極的な場合、積極的な場合、両方含めて解釈すべきものと考えております。
○木内四郎君 ちよつとわからないが、連合国が現実的に日本のために金銭的の或いは財政的の負担をする場合だけというふうに解釈されるのですか。それでは狹過ぎると思うのですが……。
○政府委員(草葉隆圓君) 積極的な場合は負担がふえる場合。消極的の場合は減るべきものが減らない場合。
○木内四郎君 それから、これは字句のほうですが2の(II)のあとのところの「関係国と日本との間における一九四五年九月二日後の貿易及び金融の関係の再開の結果として日本国の管轄内にはいつた財産」というのは、日本へ来たという意味ですか、それとも日本人に所属したという意味ですか、どういう意味ですか。
○政府委員(西村熊雄君) それは日本人のものになつたというふうに解釈すべきだと思います。連合国にある財産でございましても、終戰後正常な通商関係が開始されたあと、正常な取引として日本人の財産となつたもの……。
○木内四郎君 日本国或いは日本国人の財産になつたという意味ですか。
○政府委員(西村熊雄君) さようでございます。
○堀眞琴君 この賠償問題について私、若干腑に落ちない点があります。極く二、三の点だけお尋ねいたしたいのでありますが、先ず第一に、中間賠償の問題であります。御承知のように終戰になりましてから、施設賠償として日本では産業施設の若干のものを連合国に対して賠償の一部として中間的に撤去いたしておるのでありまするが、これは連合国のその後の通達によりまして中止されている。併し支拂われた賠償であることには間違いないと思うのですが、この中間賠償として撤去された施設賠償の額は、どのくらいになるのか。 それから又東南アジア諸国が今日要求していると新聞で伝えられているところの何十億或いは何百億という、その要求の中には、この中間賠償として撤去された施設賠償の部分が入つているのか、入つておらんのか、その点を先ず第一にお尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 中間賠償の額は、今ちよつと記憶がございませんが、中間賠償を前提としてこの平和條約が調印されたのでございます。
○堀眞琴君 そうしますると、東南アジア諸国の要求しておりますところの、例えばフイリピンが八十億を要求しておると伝えられているのでありまするが、その八十億という賠償の中には当然中間賠償が入つている、こう理解してよろしいのでございますか。
○国務大臣(池田勇人君) 私はそういうことはフイリピンに聞いておりませんので、入つて八十億と言つておるのか、別に八十億と言つているのか、私は存じません。
○堀眞琴君 大蔵大臣が御承知ないというのをこちらから重ねてお尋ねするのもどうかと思いますが、もう一点は、連合国におけるところの財産は、日本国或いは日本国民の財産は連合国がこれを処分するということになつておりまするが、直接日本と戰鬪行為のなかつた連合国、そういう連合国の財産も、当然十四條の規定によりまして、処分する権利をそれらの国々が持つと思う。中立国の場合につきましては、十六條によりまして、中立国乃至は曾つて日本と同盟関係にあつた国々にある財産については、赤十字の国際委員会に引渡すという規定になつておるのでありますが、現実に戰鬪行為のなかつた国の財産は、それらの国々で処分するということになつております。この処分された財産を賠償に当然含ましめるべきじやないかというように考えられるのでありますが、その点の御説明をお願いしたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) お話の通りでございます。連合国、直接日本軍によつて占領され又は損害を受けたことのない連合国にありまする日本人財産は、これによつて差押、留置、清算という権利を持つ。それから中立国は十六條でいたすのであります。併しこれは考え方の問題で、この問題につきましては、この前縷々條約局長から申上げましたように、殊に十六條のほうにおきましては、遺憾でありまするが、こういう状態に相成ります。連合国の場合におきましては、これもむしろ損害を受けなんだらという問題になりまするが、併し日本はすでに終戰以来六年を経過して、それぞれその後の敵産管理法、或いは処置法等によつてやられておる場合が多いのであります。そういうものと相比べまして、かような條項になつて現われた次第でございます。
○堀眞琴君 そうしますと、実際に日本によつて苦痛や損害を與えられない、日本とは戰鬪行為がなかつたそういう連合国は、いわばこの條約によつて不当に利益を受けるという結果になるのではないかと思うのであります。若し処分したならば、その処分した額だけを当然賠償の中に繰入れるべきではないかという工合に考えられるのでありますが、その点についてもう一度御説明願いたいと思うのであります。
○政府委員(草葉隆圓君) この点も前前詳しく実は御説明申上げたのでありますが、同様なことが、又占領いたしました地域においても同様に起り得るわけであります。従つてその損害と、或いはこのありまする財産との差引きの問題、いろいろ細かいことが起つて参りまするから、ここでは特別にその差引勘定という、具体的に申上げますると、そういうことは現わしておらん次第であります。
○堀眞琴君 どうも納得行かんのですが、十六條を見まするというと、中立国にあつた日本の財産、乃至はドイツやイタリアにありました日本の財産、これは捕虜に対する償いをするという意味において、赤十字の国際委員会に引渡す、こうなつておるのでありますが、その場合に、日本が選択するときは、これらの資産と等価のものを、という言葉になつておる。等価というのは、現実に実際にはどういうものを指すのか。それをお示し願いたいと思うのであります。
○政府委員(草葉隆圓君) 或いは現金によつて支拂うこともできます。
○堀眞琴君 そうしますというと、私は、やはり賠償に関係するだろうと思いますが、やはり金銭賠償も一部は日本が行わなければならん、こういうことになるのでありまして、日本の賠償は全部役務賠償だということにはならんのではないかという工合に考えるのでありますが、如何でしようか。
○政府委員(草葉隆圓君) 原則は、それが中立国或いは連合国にありまする財産を当てるのであります。併し相談の結果は等価のものというようなこともできる、本質といたしましては、現金賠償というのは全然考えておりません。
○堀眞琴君 最後に賠償問題と財政経済との関係について、大蔵大臣の御答弁をお願いいたしたいのであり、役務賠償であり、金銭賠償でないから、国庫の負担にはならないというのが、大蔵大臣の御説明のように想像されるのでありまするが、併しながら技術を提供し、乃至は労働力を提供いたしますにいたしましても、技術や労働力に対しましては、政府としては当然補償しなければならんという関係が出て参ると思うのであります。殊にそのサービスの提供、国内の例えば民間会社にこれを行わせるという場合ではなくて、むしろフイリピンならフイリピン、或いはビルマならビルマの現地においてサービスを行わしめるというような場合においては、相当そういう問題が起つて来るのではないかという工合に考えられるのであります。この点につきまして先ず第一にお伺いいたしたいのであります。 それから第二は、国民経済に対する影響であります。役務賠償とは申しましても、結局はそれは日本が例えば生産加工するということで行うわけでありまして、その加工された生産が日本の再生産に役立つというようなものでないこともこれは明瞭であると思う。その点と、それから、それだけ例えば加工生産を行うということによりまして、その加工生産が日本の一般の産業方面に相当食い込んで来る部分があるだろうと思う。そういう面から申しますというと、この賠償が日本の国民経済に與える影響は極めて大きいのではないかという工合に考えますが、この日本の国庫に與える影響、それから国民経済に與える影響、この点について御説明をお願いしたいと思うのであります。
○国務大臣(池田勇人君) 私は賠償が財政上の負担にはならないというようなことを言つたことはございません。先ほどここでも申上げましたように、役務賠償にいたしましても賃金を拂わなければならん、こういうことを申上げているのであります。而して賠償をやります場合には、役務賠償にしましても、加工賠償にしましても、国民経済には相当影響があることを覚悟していなければなりませんので、賠償の額その他につきましては、日本の経済を破壞しない、存立可能な経済を営みつつ善隣友好の気持でやつて行こう、こういうことであります。
○堀眞琴君 善隣友好の関係において賠償を行うことは、私もそうなくてはならんと考える。殊に東南アジア方面に日本として将来とも進出しなければならん関係にありますので、その点から申しましても日本としては十分誠意を盡さねばならんと思います。併しながら日本の国民経済に與える影響というものは、これは單に重大であるということを大蔵大臣が言われるだけでは私は十分でないと思うのです。やはり例えば東南アジア諸国の中では、これだけの賠償を要求しておる、これに対して日本政府としては、こういうような態度で臨むべきであるというようなことが十分示されて、そうして、その上で善隣友好の関係を取結ぶ、こういう形がとられて行かなければ十分でないと私は考えるわけです。そこで、もう一度お伺いいたしたいのですが、一体その役務賠償の総額、予定されております……、これも大蔵大臣は恐らく向う様の要求で、まだ具体的の交渉に入つておらんから、わからんというお答えになるだろうということを予想しておるのでありますが、併し一応新聞やその他によつて、フイリピンがどれだけ、インドネシアがどれだけということは、おわかりになつておるだろうと思います。それから又フイリピンやその他の国とも若干何等かの交渉と申しますか、そういうことも或る程度進んでおるのではないかということも想像されます。又現実に多額の賠償を要求しておる東南アジアの諸国に対しまして、アメリカとしましても、日本の自立経済という観点から、或る程度は何等かの話合いがアメリカ政府と日本政府との間に行われておるのではないかということも想像されるのでありますが、その点に関して最後にお尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 賠償に対しまする方針は、先ほど来申上げた通り、この平和條約の條章に従いまして、誠心誠意できるだけのことをやると、こういうのでございます。而して具体的の問題につきますると、これは交渉に当つてはきめますが、今ここで申上げるわけには参りません。それから新聞に出ておりました各国の賠償要求額につきまして、私はここでそれを是認したり、否定したり、論評することは避けたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) 他に大蔵大臣に対する御質問がなければ、本日はこれにて散会いたしたいと思います。明日は午前十時から開会いたします。 午後四時四十五分散会