平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第14号
- 発言数
- 361 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 1951/11/09
会議録
○委員長(大隈信幸君) では只今から委員会を開きます。
○加藤正人君 ここで毎日各委員が熱心に質疑をされておりますることは、この條約はすでに調印済のものでもありますし、今更どう変更するということもできないものでありますけれども、日本といたしましては、この條約を調印した以上、この條約締結後に当然来るべき結果、その影響に対して正確な認識を持ち、あらかじめそれに対する心構えを作ることにほかならないと思うのであります。私はその意味において質問いたすわけであります。皆さんも無論そういう意味で質問なすつておるのであります。特にこの国際貿易に関する点については、その必要が大であると思います。 そこで通産大臣は、又問題によつては外務次官に御回答願うこともあると思います。條約第八條(b)項によりますれば、我が国はサン・ジエルマン=アン=レイの諸條約、即ちいわゆるコンゴー盆地條約による権益を放棄することになつておりまするが、條約局長も説明されたように、この條約を成立せしめるために、我が国といたしましては、涙を呑んで受諾せざるを得なかつたと言われるほど、我が国の輸出にとつては大きな損失でありまして、我々財界人といたしましては、誠に痛恨に堪えないものがあるのであります。而もそれらの権益は、いわゆる帝国主義的侵略によつて得た特殊な権益とは全くその性格を異にいたしておりまして、貿易上の門戸開放と機会均等という国際通商上の自由平等主義の原則の上に立つているものであることを思いますれば、一層その感を深くするものであります。このような権益の放棄は、主として英国の主張に基由すると言われておりますが、全くそれは肯けるものであります。英国は以前から日本綿布の競争を警戒して、その市場を制限しようと考えております。昭和九年二月に開かれた日英会商もその企ての一つであつたが、意見の一致を見なかつたために遂に決裂し、その後その年の五月七日にランシマン商相の声明で、英国植民地及び保護領における外国綿布……と申しますが、これは主に日本の綿布を指しておるのであります、及び人絹製品の輸入に関しまして、割当制が実施されましたが、英国領東アフリカにつきましては適用されなかつた。即ち該地域はコンゴー盆地條約によつて各国に平等の輸入権があり、割当の実施は不可能であつたからであります。こういう次第で、英国では英領東阿に対する日本品進出の防遏上障碍となつておるコンゴー盆地條約の改訂又は廃止について常に強い要望を持つておりまして、マンチエスターの商業会議所などは、頻りに政府に請願などを試みておりましたが、イギリス政府といたしましても、日本を含む締約国全部の同意を得なければ改廃できないために、この点は如何ともいたし方なかつたのであります。そこに今度の平和会議となつたのでイギリスといたしましては、この好機を逃すはずはないのであります。その結果損失をこうむるのはただに日本ばかりでなく、アフリカ土人も生活上同樣に非常に惡い影響を免れないのであります。一九三四年五月のロンドン・タイムス紙上に掲載された英領東阿地方の世論の一節にこういうふうに書いてあります。過去二年間東阿は低廉な日本品の輸入で多大の恩惠を受けおる。アフリカ土人の購買力は極めて制限されており、この不景気に僅かばかりの土人の購買力を有効に活用し、通貨流通を円滑にし、貿易の活況を維持し得たのは、主として日本品のお蔭だというのが一般の意向である。タンガニカの防疫官のごとき役人までが、廉価な日本製のゴム靴のお蔭で、土人の十二指腸患者が非常に減退したと言明しておる。こういうふうにロンドン・タイムスは報道しておるような次第であります。アフリカの市場は中国、満洲等の市場を失いました日本といたしましては、将来最も有望な市場として我々は多大の期待を持つておつた市場であります。 昨日堀木委員の質問に対しまして、條約局長は、この地方に対する最近の輸出数量を述べておられましたが、コンゴー盆地條約に含まれる地域は日本綿業にとりまして、戰前、即ち昭和十―十二年の頃には約一億四千万ヤールの綿布輸出市場であり、昨二十五年中には三千六百七十万ヤールの市場であつたのでありますから、同地域で日本品が差別関税を今後課せられるということは、非常に大きな問題であることは勿論でありまするが、我々の考えるところは、現在の数字でなく、むしろ将来の問題が大きいのであります。だから決して過小評価してはならないのであります。賠償も無論辛いには違いがないのでありまするが、これにはおのずから限度があるのであります。併しかように将来に多大の希望をかけておる市場の喪失ということは、日本経済にとつては一大痛恨事であると言わねばなりません。そうしてその英国は、我が国に対しては権利として最惠国待遇を與えることを留保するという態度をとつているということは極めて意味深長であると同時に、一方では我が国のガツト加入に対しては、各国の間にこれに難色を持つているものが多いのであります。この方面でも決して今後楽観を許さない情勢にあるのであります。これら一連のもろもろの事情を考えますれば、今後の我が国の貿易は容易ならんものがあると覚悟しなければなりません。一時我が国の産業界に活を入れるに役立ちました朝鮮特需というようなものは決して長きに亘るものではなく、又東南アジア開発の計画に対する協力もなかなか一般の考えているような安易なものでないといたしますれば、今こそ今後の貿易対策を最も真劍に考えねばならん時だと痛感するのであります。この意味におきまして、貿易問題を担当される通産大臣として、我が国に対するこの各国の態度を柔らげ、先ずガツト加入、又各国の最惠国待遇を獲得するためには、どういう具体的な策を考えておられるか。勿論通商協定締結の主役は外務省でありますが、これに対する通産大臣の見解、又構想というような点について、ここでお伺いいたしておきたいと思うのであります。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 只今御質問中に、非常に貴重な又御熱心な御意見がありましたが、これらは私は全然同感です。私も加藤さんの御発言のごとく、さように考えているわけであります。そうした最惠国云々の問題は、今度の條約でこういうふうになりましたことは非常に私は遺憾に存じているのであります。私民間におる時分のなにでは、これはもう少し有利にできるであろうかと期待しておつた次第なのであります。又この南阿の問題、いろいろお話ございましたが、そういう虞れは非常にあります。南阿ではちよつとトラブルも起きているのであります。日本の将来の貿易、殊に輸出を増進するということは、これは非常にむずかしいことで、各国が皆現在よりも一尺でも一寸でも進んで行こうというときなのであります。日本だけが増進を企てておるのではないのでありますので、各国がこれ以上に進んで行くというときに、そういう状况の下で日本の輸出貿易が一層進んで行くことは非常に困難であつて、いろいろな困難な問題、又いろいろなトラブルが起きることは覚悟しなければいけないのだと思います。輸出増進を奬励するような点はだんだんとつて行かなければなりません。最も競争の相手になりますイギリスのこれらの制度と日本の制度と比べて見ますというと、非常に日本は劣つておりますので、こういうものをいろいろ研究はいたしております。なお御質問の要点は、今度の條約で最惠国待遇について御指摘のようなことに調印されたのであるが、これに対する対策はどうかという、その点の私の所見をということのように在ずるのであります。これは、どうもそういうふうに條約にきまつた以上は、対策と申しましても、私は小細工の対策はないので、ただ将来日本が公正な貿易をする。各国から非難をこうむらずに、日本の貿易は如何にも公正であるという信用から築いて行くのでなければ、どうすることもできないだろうと、かように考えるのでありますが、なおそれらの点については、貿易には輸出入とも多年実際に御経験のある加藤君でありますから、何かの機会に一つ御意見を、御教示を願いたいと思います。
○加藤正人君 恐らくそういう御答弁があるということを私は期待しておりました。そこで我々はこういういろいろな権益を失つた上に、今や日本に対しては各国から非常な誤解が多いのであります。でありますから、我が国が今後決して不公正な取引を行うものでないということを各国に理解せしむることが私は根本であるということは申すまでもなく、もつと積極的な働きかけをなす必要があるのではないかと思うのでありまして、利えば在外事務所に優秀な商務官を置いて、我が国に対する誤まつた見解が海外で発表されたような場合には、すぐその現地において、その誤まりであるというゆえんを指摘するということ、つまり遠く離れた母国で幾日も経つてからその見解を発表しておるのでは、これは話にならん。これは今までそうであつたのである。これは過日加納久朗君がこの本委員会において指摘されたことであります。特にややもすればダンピングであるというようなことが言われるのであります。そういう場合には打てば響くというような、すぐその場でそうでないというゆえんを釈明するようなことに力を注がなければならんと思います。又あらゆる機会を利用いたしまして、我が国の正しい現状を理解するように、常に現地で働きかけるということが最も必要であると私は考えます。今後これらの意味で、外務省のことは外務省に任せるといつた態度でなく、今後の貿易上の重要問題として、通産大臣が積極的に外務省と提携して行くべきであると私は思います。右のような観点から、現在の在外事務所の陣容は果して適当であるかどうか。又そのような商務官の養成であるとか、或いは採用といつたような点について御構想を持つておられるかどうかという点についてお伺いして置きたい。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 只今の御質問も極めて適切な、なんでありますが、現在でも在外事務所には、通産省から大抵の在外事務所に一人、そういう通商上の世話をしまする者は入れてあります。将来新らしく置かれます在外事務所についても無論そういう方針でありまして、この通商の問題は今日までも外務省と非常に緊密な連絡をとつております。本省にも外務省の人を迎えておるような次第なのであります。なおこの人選につきましては十分注意をいたしまして、この仕事はなかなが実際にむずかしい仕事なので、養成、教育というようなことも非常に必要だと私も痛感しております。十分注意をいたすことにいたします。
○政府委員(草葉隆圓君) 外務省の立場からも、只今通産大臣からお話のありましたように、実は在外事務所の現在は、私も必らずしも満足いたしておりません。これは併しかような情勢下における、いわゆる最大限度と申しますか、一方から言うと最小限度と申しますか、それによつてやつておりますから、只今通産大臣からもお話のありましたように、通産省とは結局一体の考え方で、今後の日本の外交というものは、通商、航海その他のいわゆる貿易を中心にして行く以外には殆んどないくらいに貿易は大きい問題だと存じております。従いまして現在も在外事務所には商品の見本市なんかを展開いたしまして、今お話になりました通商関係の知識のある人々と同時に、日本の商品を陳列しながら適正な批判を受けるという方法を強くとつて、従来からの誤解を受けておりました態度を、各国に対する態度を成るべく了解してもらうような方法をとつて参つておる次第であります。
○加藤正人君 従来そういう立場の人は、通商を進展させるという点にのみ努力していれば足りたのでありますが、今、日本の置かれておりまする立場、先ほども申します通り、各国から非常に疑惑の目を以て見られる場合でありますから、特にそういう点に留意して行動するような意味で駐在するようにして頂きたいと思うのであります。 次に、在外公館の今言つたような働きと相待ちまして、貿易商社の出店が一日も早く海外に進出することが、我が国貿易の伸張と、又相互理解を深める道であることは勿論でありまするが、その実現を見るまでにはなお相当の日子を必要とするものでありまして、それまでの間は業者の渡航或いはその代理店の利用等、できるだけ現地の市場との接触を図つて行く必要があると思うのであります。然るに従来のこれらの費用に当てておりましたあの優先外貨制度というものが、去る六月に廃止されたままになつて今日に及んでおるのでありますが、これがために相当な不都合がほうぼうで発生していることは、もはや通産大臣といたされましては篤と御承知のことと思うのでありますが、これに代る新らしい優先外貨制度というものがまだできないというのは、一体どういう事情によるものでありまするか、前に日銀ユーザンス制度を始めるときに、日本政府の内部で繩張り争いというようなふうのことがありまして、徒らに議論を釀して貴重な約二カ月という期間を空費してしまつて、多大の損害を国家に與えたという、あのような事情が若しあるために遅れているものといたしますれば、これは国家のために誠に悲しむべきことであると私は思うのであります。そうでなければ誠に幸いでありますけれども、それにいたしましても、こんなにこういう大事なことが遅れているということは一体どこに基因するものでありましようか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 優先外貨のあの制度が、只今御指摘のように私、就任前でありますが、六月を以て廃止になりまして、遺憾ながら今日そのままになつております。私はああいう制度は是非必要だと、先刻述べましたように、この貿易増進のためにも、イギリスであるとか、或いはオランダがやつておるそうですが、イギリスのような国がやつておる一つの保護制度ですから、それはどうしても日本に欠くことはできないと存じておるのであります。それで期限が来まして、その機会に多小あの内容については是正してもいい、或いは是正するほうがいいような点もあるのですが、いろいろな事情で甚だ遺憾でありますが、まだ実現していない。併しすでに関係方面のほうと只今折衝しておりますので、私は間もなく実現するだろう。一日も早く実現さしたいと努力をしております。そうしで成るべく遡つて適用することにしたいと願つておるような次第であります。
○加藤正人君 もう、こう無力な日本になつてしまつたのでありますから、日本の経済を自立して行けるかどうかということは、もう日本の貿易規模の拡大、貿易の増進という手よりほかにないのでありますから、こういう貿易を伸張する上において、毎日その要請があるようなこんな大事なことは、何をおいても私は政府がこぞつて、それがむずかしい問題になつていれば、その打開に努力して頂くことが最も私は必要じやないかと思うのであります。折角御努力を継続されておるようでありますから、これに信頼して一日も早く実現して頂くように御希望をいたす次第であります。 最後にこれは御参考までに申上げるのでありますが、二、三カ月前のことだと思うのでありますけれども、稀少物資の国際割当会議がアメリカにあつたのでありますが、そのとき我が国の政府代表がそこに出席して、そして任務を果して最近帰朝したのであります。その人が非常に慨歎して話しておつたんであります。これはもう通産大臣なぞは御承知のことと思いまするが、資料の問題、稀少物資を国際的に割当てるのでありますから、各国共にその要求の裏付けとして資料を出さなければならない。そこで日本の代表は本国に向つて資料を送つてくれということを幾度も電報で要請したにもかかわらず、なかなか返事すらない。五回、六回に及んで初めて返事が来たのでありますが、ところがその送つて来た資料たるや、これは誠に杜撰なものであつて、アメリカ側が日本に関して持つている資料のほうがむしろ正確であつたというようなことがあるので、全くその代表は面目を失墜してしまつたという話であります。これは或る一つの物資についての話でありまするが、恐らくこれは全体の物資についてそうであつたということが想像されるのでありまして、誠にこれは考えねばならん問題だと私は思います。在外事務所にある我が商務官が、常に正しく我が国の実情を各国人に理解せしむるに足る活動が行える状態にあるかどうかということは、この一事でもほぼ想像されるのでありまして、今後はこういう点についても十分御注意を願いまして、更に又先ほど申しましたガツト加入であるとか、最惠国待遇の獲得というような点に今後とも一層御精進をお願いいたしたいと存ずるわけであります。こういう、今も申上げた資料を要求してもなかなか日本から送つてくれない。送つてくれた資料はアメリカ側の日本に関して持つている資料よりも甚だ杜撰なもので出せなかつたというようなことがあつたということは、これは私は大変な問題であろうと思うのであります。通産大臣の御見解を承わりたいと思います。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 甚だ痛いお叱りを受けて恐縮するのですが、どうも今の問題は必ずしも通産省だけの問題ではありません。ほかとの関係があるのですが、政府の統計資料が不完全な面があるということは事実あるのです。只今のような話を私も直接聞いておりますが、ただお言葉のうちで、そういう例によるというと、どの品目についても同じようにそういう程度だろうかと御推測下さることは甚だ苦しいので、たまたまその品物が非常にむずかしい品物で、それについて何にも資料がなかつたというようなことなのでありますから、それだけを一つ私弁解しておきます。なお御注意の点は十分警告をいたしておきます。有難うございました。
○加藤正人君 先ほども申します通り、もう日本は非常に落ちぶれたのでありまして、今後はどうしても海外貿易に依存して国を立てて行かなければならんということに境涯がなつたんでありますから、昔の日本の惰性で、政府の機構、民間の考え方というようなことでは到底日本が立つて行けないと私は思うので、この際非常な覚悟を以て官民共に、旧来やつていたようなことを再検討して、そうして貿易の伸長に全力を盡すということが私は最も必要であろうと思うのでありますから、通産大臣におかれましても、今後はできるだけこういう御方針の下に御精進を願いたいと思います。 最後に簡單でありますが、賠償のことについて、ちよつと通産大臣がおいでのうちに、これはこの問題をお取扱いになるときの我々の要望としてちよつとお聞きを願いたいのであります。講和條約の第十四條(a)項1号におきましては、日本国は、日本軍隊によつて占領し、且つ損害を與えた連合国中、賠償を希望するものに対して行う賠償は、日本国民の生産におけるサービス、沈沒船引揚げその他当該連合国のための仕事を行うこと。即ちいわゆる役務賠償乃至加工賠償によるべきことと定めてあるのでありますが、同時に又原料の加工を要する場合には、日本の外国為替に何らの負担をも生ぜしめないために、右原材料は当該連合国によつて供給されるものとすると定められておりまして、このような役務、技術によるところの労務賠償は、加工賠償を含むこと、及びそれは日本の外国為替收支に負担を及ぼさないものであることが明らかにされております。加工賠償の問題点といたしまして、このような加工賠償については、どの地域に対し、どのような品目について行われるか。従つてどの産業にこれを担当させるか。第二に、国内における加工方式をどうするか。終戰直後の加工貿易のような、公定加工賃によるいわゆる委託加工方式をとるのか。現在の特需やECA発注物資のごとき入札方式をとるのか。これらの諸点がこれは問題になるのであります。先ず我々の願うことは、正常なる貿易を圧迫しないことということであります。條約には特に日本に外国為替上何らの負担をも生ぜしめないためということが断わつてあります。ただ原料は当該連合国から供給を受けても、この加工貿易が、例えばフイリツピン向け金属製品や船舶、ジヤワ向けの綿製品、陶磁器などのごとく、正常なる貿易関係において重要輸出品となつているものを加工賠償の対象とするならば、従来我が国の重要な外貨獲得の源泉であつたものを失うことになります。我が国の輸出産業にとつて大きな打撃を與えるのみでなく、我が国の外貨收支から言つても大きな負担を受けることになるのであります。従つて加工賠償の品目及び金額の決定に当つては、正常な貿易によつて輸出が思わしく伸びていない地域及び製品に対して、且つ相手国の原料及び製品の供給状況を具体的に検討して行わるべきものであると思うのであります。併しながらこれはむずかしいことであつて、そういう所は果して賠償要求国に相当するかどうかという点もありますけれども、でき得ればそういうふうにお願いしたい。で、その限度も我が国の輸出産業の正常な輸出及び国民生活の必要物資生産のために必要な操業を圧迫しない限度に限つて頂きたい。そのような意味で、若し現在正常な貿易により輸出が必ずしも思わしい限度に達していないところの機械類、特にプラント輸出のごときものが加工賠償の対象となるならば、我が国重工業の発展に役立つことにもなり、又これらの製品の場合は、一時的にはそれが正常な輸出を圧迫しても、後日我が国の重工業製品の市場の開拓や、少くとも部分品輸出にとつて大いに役立つものと思われます。つまりまあ損して得とれというように、賠償で非常に困るけれども、将来に市場を獲得できるというような利点がそこに生れて来るだろうと思います。加工賠償が若し行われる場合には、その方式につきましては、公定加工賃による委託加工の場合は、終戰後の加工貿易当時の例から見ましても、これは丁度紡績がアメリカの綿を加工して賃金をもらつたというようなあれから見ましても、公定加工賃の算定はとかく産業の実情を無視して低く定められておる。そのために企業の復興意欲を減殺し勝ちであるのみならず、業者の販売上、品質上、技術上の責任や創意を生かさない委託加工方式は、産業の発展や合理化を阻害する虞れがあるということを御承知おき願いたいのであります。更にもう一つ、入札方式をとればどうかと言いますと、加工賠償が比較的少額で、これを引受けなくても操業上必ずしも差支えないというような場合には、一般市況の如何によつて、企業は一般市場と加工賠償とを比較して有利なほうを選ぶであろうということになりますから、数量金額の確保が不安定になるだろうと思います。若し加工賠償がそれを引受けなければ操業上差支えるほどの数量である場合には、今日のように企業が独禁法や事業者団体法による制約を受けておる際には、徒らに安価を競わせるということになつて国家的に不利を招くことになるのであります。従つて加工賠償を実施するにはこれらの諸点を考慮して、我が国の重要産業の復興上不当な負担を負わせないことが必要であるというような次第で、労務賠償、役務賠償の途をとる上においてあらかじめ考慮しておかねばならん点が大変あるだろうと思うのでございます。でありますから、今正常に安易に輸出ができているようなものは成るべく避けて、そうして今まで輸出の途があまりなかつたようなものを選んで、そうして賠償で失うところがあつても、将来その品物が海外に滲透して市場の開拓ができるというような、損して特とれというような方法をお選びになることを切に私たちは要望いたす次第であります。これは今後の御参考、又要望として我々が申上げておきたいと思いまして申上げる次第であります。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 只今の詳細に亘る御意見は私も同感であります。原則としてはそういうふうな考え方で行きたいと思います。
○加藤正人君 どうぞお願いします。私はこれで終ります。
○委員長(大隈信幸君) 今法務総裁が来られますが、通産大臣に対する御質問がありましたら、この際どうぞ御発言を願います。
○岡本愛祐君 加藤君の御質問に関連しまして、主として外務当局に希望的に意見を述べて御答弁を承わつておきたいと思いますが、先ほど在外事務所等に関して加藤君から縷々御意見が出ました。私も従来から日本の大使館、公使館のあり方というものについて非常に意見を持つておるのです。又近頃できておる在外事務所というものについても、まあアメリカに二カ月ほど行つて参りまして、つくづくその無力であるということを感じて来たのであります。この戰争前におきましても、日本の大使館、公使館又は領事館というようなものは、内地から参りましたいろいろの旅行者、又商売関係で行かれる実業家なんかに対する取扱というものが非常に惡いのであります。それで態争前はもう大使館や公使館は相手にしない。むしろ軍部のほうの陸軍、海軍のほうのアタツシエと言いますか、そのほうを頼つて行くほうの人が多くなつておつたのでありまして、この点、私は費用の関係とか、いろいろな関係もありましようが、大使館、公使館のあり方としては非常に残念なことじやないかと思うのであります。今後平和條約が発効になりまして、又大使館や公使館がたくさん海外にできることでありましようが、もつと日本の旅行者又出張者に対しまして、親切に手の届くような世話をなさる、それが職務だと思うのでありますが、そうすれば、折角高い金を払つて外国に出て行く人々が非常によりよき收獲を挙げ、この本来の目的を達成することが容易になるのでありまして、その点が非常に足らないと私は思うのであります。外国語のできることも非常に必要でありましようが、そういう世話のよくできる人をやつて頂く、その世話のできる組織にしてもらう、これが日本のこれからの国際親善、国際活動をする上において非常に必要なことじやないかと思うのであります。その点をよく御留意を願いたいと思うのであります。又在外事務所は、今、所名は挙げませんけれども、アメリカ合衆国におきましては、殆んど在留邦人は相手にしていないと言つていいような有樣であります。在外事務所との連絡というものは日本人商工会議所と言いますか、それとの連絡も極めて薄い。もう殆んど相手にしないというような有樣でありまして、これなんかも本来の職務を円滑に遂行していないという感じがするのであります。まあ、これも、もう長いことないのでありますが、ある以上はもつともつと機能が発揮できるように、もつと豊富な財源をやる必要があると思います。自動車もろくに持つていないというようなことでは活動ができないのも無理はないのでありまして、その予算をとり得なかつた外務省の何と申しますか、職務怠慢じやないかと、こう思うのであります。まあ僅かな間ではありますが、それをもつと働けるようにしてやつて頂きたいと、こう思うのであります。この点について御意見を承わりたい。
○政府委員(草葉隆圓君) 誠に御注意謹んで拜承いたしました。実は在外事務所はお説の通りだと存じますが、これは実は現在の段階におきまして、御案内のように、法によりまして大体三人か四人でございます。そしてその費用は、外務省は相当大蔵省から予算は、いつでも在外支払の予算は相当多額持つておりまするが、その経費は全部許可を受けないと自動車一台買うのにも出せない仕末でございます。従いましてなかなかそれはそのようなことが実際はできない状態になつております。最近だんだんとこの状態が少しずつ緩和されて参つております。殊に最近はその取扱の範囲におきましても全面的に緩和されて参りましたが、従来は一つの範囲に限られておりまして、それ以上の活動をしてはいかないことに実はなつておつたわけであります。従いまして経費の関係、人員の関係等から、お出でになつた際に誠に不十分なことが多かつたろうと存じます。この点はそういう関係がありまして、経費等におきましても一カ月僅か百ドルくらいがその自由になし得る経費だと存じておりますが、そういう程度でございまするから、誠に不都合が多かつたろうと存じます。この点は一つ御了解を頂きたいと思います。今後におきまする在外公館が正式になされまする場合には、十分これらの点は注意して参りたいと思つております。
○委員長(大隈信幸君) 通産大臣に対する御質問ございませんでしようか……。なお法務総裁に対する御質問があるのでございまするが、まだお見えにならないので、先ほど加藤委員より五章について御質問がありましたので、この際五章関係で外務省当局に御質問のあるかたは御質問をお願いいたします。
○岡本愛祐君 それでは五章につきまして質問いたします。総括質問のときに、緑風会のほうでは主として楠見委員が質問をされたのでありまして、成るべく重複は避けたいと思うのであります。 先ず第一に、第十四條であります。この十四條につきまして、衆議院のこの條約の特別委員会における逐條質問のときの質疑応答を拜見いたしますと、或る委員はこの十四條を非常に不審に思つておられるのであります。それはこの役務賠償のみならず、ほかの賠償も連合国の要求によつてはしなければならんというふうに読めるというお話がございまして、政府はそれを否定しておられます。私はそういう衆議院のかたが読まれたようにはどうしてもこの條文は読めないと思います。この(a)と(b)項との書き方が、これが変なのでありまして、要するにこの(b)項が、この條約に別段の定めのある場合を除いて連合国は連合国のすべての賠償請求権その他のものを放棄すると、こういうふうに原則があり、ただ今度は(a)項に返つて来て、存立可能な経済を維持する範囲内においては、この1以下によりまして、そうして向うの請求があれば役務賠償をすると、こういうことだろうと思うのです。そのほか今度2によつて、こういうものは向うの権利を認めると、こういうふうにあるのであつて、ちつとも疑いはないと私も思うのでありますが、この書き方が少し悪い。それは妥協によつてこの(a)項の條文というものができて来た、こういうふうに考えますが、私の解釈で間違いがないかどうか、この点を伺つておきます。
○政府委員(草葉隆圓君) 間違いがないと存じます。殊に今回のこの賠償につきましては、従来から賠償の形式はいろいろあると存じます。まあずつと古いことは別にしまして、最近の第一次欧洲戰争後の賠償の方式にいたしましても、この前のヴエルサイユ條約は金銭賠償、今度の戰争でのイタリーの賠償は大体現物賠償、物品賠償、日本には金も物もないから、あるのは役務だから、従つて役務賠償、こういう形に変つて来たと思います。従いまして御解釈の通りだと存じます。
○岡本愛祐君 そこでこの(b)項について伺つておきたいのですが、これは連合国の賠償請求権とありまして、連合国国民のというのが拔けておるのでありますが、それはどういうわけで拔かしたのか。或いは「及びその国民の他の請求権」というのでカバーをされるのか、その点を伺つておきます。
○政府委員(西村熊雄君) 両者を含む意味でございます。
○岡本愛祐君 両者を含むというのは、或るところでは書き分け、或るところでは書き分けていないのはどういうわけですか。
○政府委員(西村熊雄君) 大体政府と国民とを総括的に申すときに、日本国と言い、又は連合国と言うのが條約上の慣行でございます。ときによつてその慣行が貫かれていない点がありますのは、こういうふうな五十カ国相手の交渉でございまして、各国の提案を寄せ集めた複合的條約になり、首尾を一貫することができなかつた節が間々あるのは、止むを得ない次第でございます。
○岡本愛祐君 そういたしますと、この(b)項につきまして、「この條約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権」と、これにあるのは連合国及びその国民のすべての賠償請求権と、こうあるべきが正しいのだが、それが拔けてあるのは同じ意味だと、これははつきりそう言えますね。
○政府委員(西村熊雄君) さようでございます。連合国が政府及び国民のため日本に対して持つておる賠償という意味でございます。
○岡本愛祐君 同一の條文の中で「連合国のすべての賠償請求権」と書き、又そのあとでは「連合国及びその国民の他の請求権」と、こういうふうにあるので、その点文字解釈だけからすれば、連合国とあつて「及びその国民」と拔けてあるときには、その国民の請求権は拔けておるのだと、こういうふうに我々の法律條文の文字解釈では解せられる虞れが多分にありますが、それは連合国側もよく了承しておるところでありますか。この点、念を押しておきます。
○政府委員(西村熊雄君) その点は三月の原案では連合国の賠償請求権だけあつたのであります。それに対しまして、私どものほうから、それでは範囲が不明確であると主張いたしまして、戰争遂行中日本国又は日本国民がとつた行動から生じた連合国政府又は連合国民の請求権という文句が入つた次第でございます。連合国の賠償請求権というだけでは誤解が生じやすいから、誤解を避ける意味において、明確にしてもらつたところでございます。
○岡本愛祐君 次に伺いますが、(a)項のほうの「存立可能な経済を維持すべきもの」という文句が出ておりますが、これはどういう意味であるか。どういう意味に通常国際公法上これが解釈せられてあるか。又せられてあるとすればその解釈の公定的なものをお述べ願います。
○政府委員(西村熊雄君) 存立可能なる経済というようなものは、国際公法上の観念でございませんし、むしろ経済上の観念でございますから、後刻大蔵大臣から御説明を願いたいと思います。
○岡本愛祐君 これは、そういたしますと、国際公法上では「存立可能な経済を維持すべきもの」というような言葉はない、これは経済上の問題だということになれば、條約上としては、そこに日本と又相手国との間にその範囲について紛議が起る、こういうようになつたときに、その紛議を解決するにはどういう方法があるか。
○政府委員(西村熊雄君) 十四條(a)項につきましては、関係各国の要請によつて日本と交渉することになつております。交渉でそういう点も問題になることがあろうと思います。誠意を盡せば必ず双方に満足な解決ができると思います。万一どうしてもこのような場合が起るといたしますならば、外交上の手段で飽くまでも解決いたしますし、それができない場合には、二十二條の規定がございますから、ヘーグの裁判所に参りましよう。併しそういうふうにならぬことを希望いたす次第でございます。
○岡本愛祐君 この(a)項の一の役務賠償で、この役務賠償の手続と言いますか、これは衆議院のほうでの質疑応答を読みますと、相手国のほうから日本国政府に言つて来て、日本国政府が生産者に言つて、そして出させるか、或いは連合国政府のほうから直接その生産者に命ずることもあるというふうなことが書いてあるが、そういうことになるのか。これは日本国政府のほうが、そういう一手に要求を相手国から受けて、そうしてやらなければならんように私は思うのですが、そういう勝手に連合国のほうから、相手国のほうから日本の生産者に言つて来るというようなことがあり得るのですか。
○政府委員(西村熊雄君) その点は、どうするかが、結局十四條(a)項について、関係国と交渉いたす場合の題目になるわけであります。その点については先刻加藤委員から業者としての御希望が開陳され、通産大臣から御同感の趣旨を述べられ、政府としても御意見を尊重してそういうふうにしたいという御答弁があつたのでございます。
○岡本愛祐君 私のお尋ねするのは、連合国のほうから直接その生産者に言つて来て、役務賠償をしろというような場合があるかというのです。これは皆日本政府で一手に引受けてやるべきじやないかというのです。
○政府委員(西村熊雄君) 役務賠償ということについて協定する場合に、その役務賠償の実施の方法は、無論関係両政府間の話合いできまるわけであります。政府が全部引受けてやる方式もございますし、両政府間で協定された枠の中で賠償請求政府が直接当業者に対して発注をする方式も考えられるわけであります。対イタリア條約の賠償條項の実施について、イタリアがギリシア、ユーゴスラヴイア、ソ連と協定を結んでおりますが、それらの協定によりますと、協定の枠内で賠償請求政府が直接イタリアの業者に発注をする方式をとつております。直接発注方式をとるのがいいのか、それとも政府が全部注文を受けて業者に下請をさせる方式がいいのか、又はそれの中間的の方式がいいのかというようなことは、全部今後の話合いによつて決定されることでございますし、その点については、日本の当業者としてもいろいろ意見もあろうかと考える次第であります。
○委員長(大隈信幸君) 岡本委員に申上げますが、通産大臣と法務総裁に対する質問を先にやりたいと思いますが、如何でございましようか。
○岡本愛祐君 それじやあとに廻します。
○石川榮一君 第四章の第十二條(c)項につきましてお尋ねしたいと思います。第十二條の(c)項は、通商協定を取結ぶことになつておりますし、その基本方針として内国民待遇、最惠国待遇を相互主義によつて締結することを約束することであります。この件につきましては、只今日本の通商状況は、ドル地域とポンド地域が主として日本の貿易を左右しているのでありまして、ポンド地域におけるイギリスの政府の考え方が、前の労働党内閣当時にも、新聞に伝えられているところによりますと、日本の経済的進出に対しまして、戰前におけるような恐怖がありました。ややもすると日本の商品に対しまして、差別待遇、いわゆる最惠国待遇を振り替えようとする空気があつたようであります。又新らしく組織されました現英国の内閣の方針ははつきりいたしませんが、これ又何らかその点につきましてははつきりした態度の表明がないようであります。聞くところによりますと、公式には日本品に対して或る種の制限を加えざるを得ないようなことになるようにも解釈される向があるのでありまして、この点につきまして、若し英国並びに英国を中心とする連合国ポンド地域の全部の国々が、それらの方針に従いまして日本品に対して差別待遇をするというようなことがありました場合には、日本の貿易に非常な支障を来たすのでありまして、日本の経済自立はこれがために非常な苦難をなめなくちやならん。或いはこの脆弱な日本の経済が立ち行かんときが来るのではないかということを憂えるのであります。若し英国がさような見地に立ちまして、公式的に日本品に対して差別待遇をすることに相成りました場合には、日本でもこの相互主義に則りまして、英国品に対して英国と同じように差別的な待遇をするのであるかどうか。又するだけのお覚悟があるかどうかを伺いたいのが一つ。先ず事前の仕事といたしましては、これらの空気を打開するために全力を傾倒して、英国に対する外交折衝を開始しまして、かくのごとき、ややもすると戰前にあります日本の経済の進出に対する恐怖が払拭されませんで、それを恐れるがために、差別待遇をすることのないように、事前に政府は十分な準備を整えまして折衝するだけの御用意がありますかどうか、これを承わりたい。 もう一つは、インドの存在でありますが、今インドは独立を回復しまして、弱小国家群を代表する正義感に徹したいわゆる主張を堂々なさつておるようであります。我々は本当にこの弱小国家群の立場に入りました以上、このインドの主張には相当に共感を感ずるものがあるのでありまして、幸い、その弱小国家群であり、長い間、植民地として苦難をなめて参りまして出ました現在のインド政府の主張は、相当日本の主張に同情するであろうということが考えられるのであります。こういう点から考えまして、英本国は勿論でありますが、ポンド地域に対するインドの発言権は相当大きいと思うのでありまして、日本の経済を復興させるということが、世界の平和に通ずるものがあるとするならば、インドを中心として、インド政府にできる限りの外交的措置を講じまして、同情ある活躍を求めまして、不当な日本品に対するボイコツト的なことのないように、英本国に対して盡力を煩わすということも一つの方法であろうと思うのであります。特にインド政府の動向は、中共との将来の国交の回復にも相当な役割を演じて頂かなければならないと考えるのでありまして、こういう観点から、インド政府に対して日本政府は最大の敬意と信頼を許せまして、インド政府を介してポンド地域における日本品の差別待遇のないように、又進んでは中共との間における国交の回復にも御盡力を頂けるようなことに国の方針を進めて頂きたい、かように考える。これらに対しまして通産大臣並びに政務次官に御意見を伺いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 実はイギリスの問題につきましては、前商相のお話がありましたようなことを九月発表されておりますことも承知いたしております。従いまして従来からの関係で、この日本品に対する最惠国待遇という問題で、なおイギリスが今後どういう態度をとるかは今後の問題であろうと思います。併しそういう場合に、日本政府がこれに即応して、この條約にあるように日本も最惠国待遇を與えぬようにする考えがあるか。これは現実の問題では、いわゆるスターリング地域、殊にイギリスからの輸入と日本からの輸出を考えますと、向うが最惠国待遇を與えないから、その逆手でこちらからも最惠国待遇を與えぬとしても一向イギリスは痛痒を感じない。向うは殆んど原料を多く輸入する、こちらから出しますのは製品が多いわけでありますから、従つてこの場合に限つては、その報復手段としてやるようなことは、報復手段にはならないと考えております。従つてお話のように、むしろそういうことよりも、事前において十分これらの折衝を円滑にして、できるだけイギリスの感情をやわらげる、そうして公正なる貿易がなされるような外交交渉並びにこれに対する日本政府並びに日本国民の態度をとつて行くということが、何よりも大事ではないかと考えております。 又インドの問題につきましては、幸いインドは対日感情が誠に都合よく参つておる最も有力な一つの国と存じております。御意見の点、十分私どもも同感に存じております。今後におきましてもさような方法を進め、十分外交の円滑なる運営を期して参りたいと存じております。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 通産省といたしましては、只今御指摘の点は非常に痛感しております。又心配をしております。イギリスが日本の貿易について今御指摘のような危惧と申しますか、或いは恐怖と申しますか、そういうのもあることも窺われるのです。これはどうしても努めて払拭しなければいかんわけであります。国としては、通産省としましては、つまり公正な貿易、公正な取引の範囲を絶対に逸脱しないように指導して行く、それが一番必要なことであろうと考えておるのであります。
○石川榮一君 只今の答弁によりますと、英国が万一我が国に差別待遇をするような態度に出た場合にも、我がほうからこれに対抗するような意思のないことを御表明になつたようでありますが、私はお互いに独立国家のなすべき通商協定でありますので、相手方が日本に対して差別待遇をするような場合、日本はこれに経済的に効果がないからと称して最惠国待遇を與えるような考え方は一応検討して頂く必要があるのじやないか。ややもいたしますると、弱小国家の立場から考えますれば、常にさようになり勝ちでありますが、この独立を回復しました日本におきましては、対等な立場から正々堂々と相互主義に則りまして折衝する決意がなければ、英国のその不公正な態度を是正することができないのではないか。これは経済上の影響ばかりでないので、将来の日本の独立に暗影を及ぼすようなこともあり得ると思いますので、毅然たる態度を持ちまして、私どもはこの資本主義に則る英国が、若し日本品に対して英国並びにそのポンド地域が特別な差別待遇をするようなことが公式に発表されることは非常に困るのでありますが、そういうような事態に対しましては、飽くまでも日本はこれに対しまして堂々と、それに報復とは言いませんが、対処するような、いわゆる独立国家としての面目を失墜しない態度によつて、それと相互的な観点から、例えば日本品に対して最惠国待遇を與えないということであつたならば、英国品に対しても、量の大小を問わず、やはりこれに対して最惠国待遇を與えないという立場を堅持すべきである、この堅持を貫ぬかなければ、ややもしますると、私どもは本当の独立を回復した国民の、この経済に関係を持つ国民の熱意を阻むような結果になりまするので、非常に事重大だと思いますから、もう一度政府のこれに対する御所信を伺つておきたいと思います。希望といたしましては、飽くまでも対等の立場で、日本品に対する差別待遇をするならば、我も止むを得ず英国品に対して差別待遇をせざるを得ないという御決心の表明こそ、英国をして公正に日本の経済に対して不公正な態度をとらせない一つの基本の線になると思うのでありまして、この点をもう一度はつきりお伺いしたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 私申上げましたのが少し不十分であつたかも存じませんが、九月十九日に前のシヨウクロス商相が今のいわゆる日本に最惠国待遇を與える考えはないという点から、多分今のようなお説が出て来たと存じます。併しこれは必ずしも私は現実においては、現在はそうではない。或いは表面上、法規上という場合は、現実の場合としては必ずしもそうではない。従つてそのような情勢を、今私どもが最惠国待遇を與えられない現実においての状態を考えて、そして今ここで、その場合には日本はこうするぞということは、十分これは愼重な態度を以て、愼んで参りませんと、却つて相手国にいろいろな問題を起す虞れもないとは限らないと存じます。従いまして、でき得る限り只今、先にお話がありましたように、これらの問題は、そのときになつて愼重な日本は態度をとる。従つて、今からかような場合にこうするぞということを、ここで政府の立場において申上げることは、むしろ却つて適当ではない。それよりもかような情勢を努めて回避するような、いろいろな方法をお互いにとつて行くことが最善の策ではないか、かような意味において実は御答弁申上げた次第であります。
○堀眞琴君 ちよつと関連して申上げたいのですが、只今外務政務次官、それから通産大臣からして、対英貿易に関する問題についての御答弁があつたのでありますが、外務次官の説明によりまするというと、イギリスの最惠国待遇を與えないことに対して日本側としては十分公正な態度を以てこれに臨むべきである。その通りだと思いまするが、併しながら、なぜイギリスがそういうような態度を示しているか。去る七月のイギリス政府の商務当局の言明に見ましても、或いは又イギリスの言論機関、例えば、マンチエスター・ガーデイアンとかその他の新聞の論説を見ましても、日本の貿易に対しましては非常に危惧を持つておるのであります。殊にこの平和條約の第八條の、例えばサン・ジエルマン・アン・レイの條約、コンゴー盆地條約などにおけるところのイギリスの態度に見ましても、今後相当大きな問題がそこに横たわつて来ると思う。特にこのコンゴー盆地條約の場合について見ますると、日本が今後コンゴー盆地に対しまして、自由なる通商、航行の自由というものがなくなるのでありまして、而もコンゴー地域に対する日本の貿易は、大体戰前で見ますると、コンゴーの総輸入の中で以て日本が第二位を占めておる。戰後におきましては大分その地位が落ちたのでありますが、併し綿糸布関係につきましては、依然として日本は、東アフリカに対しましても、コンゴー地域に対しましても依然として第二位を占めておる。総体の額から申しまするというと、必ずしも日本の貿易の中では大きいのではありませんが、併し東アフリカなりコンゴー盆地に対する日本の輸入の占める地位というものは非常に大きいのでありまして、これらの点から考えますると、対英貿易の将来ということは非常に重要な内容を持つているのではないかと考えられるのであります。そこで、適正なる、或いは公正なるこちら側の努力をいたしまするにつけても、私はなぜイギリスが日本に対してあのような態度をとらざるを得なかつたか、又とろうとしているかということを考えますときに、こちら側としてむしろ反省すべき点が多々あるのではないか。今後の問題に属するではありましようが、過去の日本の態度について我々は十分反省して、その上に立つて対英貿易、イギキリとの通商関係ということを考えなければ、到底このイギリスとの関係を打開することはできないという工合に考えるのでありまするが、その点につきましてもう一度通産大臣並びに外務次官の御答弁を煩わしたいと思うのであります。
○国務大臣(高橋龍太郎君) 只今の御説は私も全く同感であります。そういう点は非常に注意しなくてはいかんことだと考えております。
○政府委員(草葉隆圓君) 外務当局といたしましても全く同感であります。実はイギリスが戰後お話のように、この経済復興の中心を貿易に置いておる。そうしてその後いわゆる機械器具の金属製品を中心に輸出をいたしておりましたのが、あの四十七億ポンドの軍事拡充によつて、これが軽工業或いは綿糸布に変つて参つた現段階にある。従いまして従来の日本との纎維類のダンピング等におきます相当な競争が、最近におきましても再びそういう印象を受ける状態が、イギリス製品と日本製品との間に現われて来た現象になつておると存じます。従いまして、一方この点に対しまして過去におけるダンピング等のことが相当強く神経を刺激している現段階にある。もう一つは商標の模倣等が相当向うの神経を尖らしているのだと存じております。殊に陶磁器類におきまするこれらの問題につきましては、よほど神経を尖らしている。従いまして、お説のように、今後の対英貿易につきましては、こちらの貿易に、政府も国民も愼重な態度をとりまして、そうしてここに前文で謳いましたような国際間の公正なる商取引の慣行を十分尊重して、信用を何と申しますか、回復というのは言葉が適当でないかも存じませんが、信用を得まするような態度をとつて参ることが必要であろうと思います。
○堀眞琴君 信用を回復するような公正な方法をとるということにつきましては、私も賛成であります。ところで通産大臣は十分反省の上に立つてこの打開に努められるということでありますが、問題は反省にある。いわゆるソシアル・ダンピングを日本が強行した。あの態度を根本的に改めるのでなければ十分な反省は恐らく見られないと思う。そこで私はその点に関しましてもう一度お尋ねいたしたいのでありますが、或いはこれは大橋法務総裁が出ておられまするから、大橋法務総裁のほうにお尋ねしたほうが適当だと思いますが、それは、ダンピングの原因は、何と申しましても労働賃金を犠牲にして商品を海外市場に送つたというところに根本の原因があると思うのであります。そこでこの労働賃金を犠牲にするというようなことにつきまして、従来ともこの委員会においてもしばしば問題になつておるのでありまするが、その点に関して例えば労働基準法、或いはその他の労働関係法規の改正が企図されておるということも、これも労働委員会などにおいて明らかにされておるのでありまするが、その点に関しまして、大橋法務総裁から労働法規の改正に関して、特に低賃金の犠牲において日本の商品を海外に進出せしめないという意味に関連しての御答弁をお願いしたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 労働賃金の問題は一つ労働大臣からお聞き頂きたいと思います。
○堀眞琴君 いや、法規の上の問題です。
○国務大臣(大橋武夫君) 法規といたしましては、労働賃金につきまして、今特にどうこうということは考えておりません。
○兼岩傳一君 私は通産大臣にお尋ねしたいのでありますが、私のこれからお尋ねしようとする問題は、去る本会議の総理に対する一般的な質問におきましても、又この委員会の劈頭においても行いましたところの総括質問におきましても、繰返し私が質問いたしました中国との交易の日本の経済において占める重要性、従つてこの平和條約が締結されました今後の日本の経済的な歩みにおいて、中国との経済提携においてどういうやり方をするかということが、私は今後日本の経済的な運命に対して、従つて政治的な運命に対しても決定的に重要であると考えますので、この点を通産大臣から明らかにされたいと思うのがこれからの私の質問の骨子なのであります。ところがこの重要極まりない経済的な問題に対して吉田首相は常に答えようとしない。彼のサンフランシスコにおける演説を引用いたしましても、事実よりも重要性を誇張されておることはいけないといつたまでだというような、抽象的な言葉の遊戯というべき答弁をしておられ、内容は挙げて通産大臣以下に一任しておられる。ところが通産大臣は高齢且つ最近台閣に列せられたかたでありますので、私はこの経済問題は、これは科学的な問題でありますし、同時に非常に政治的な問題でもありますけれども、精密な統計資料の上において論議せられるべき問題であつて、徒らに声を大にすべき問題ではないと思います。従つて私は必ずしも通産大臣の御答弁を求めません。雲のごとくおられる通産省の局長以下の担当官、或いは経済安定本部のこれに関連する吉田内閣の持つておられます官吏群の中で、最も俊英を一つ繰り出して頂いて結構でありますから、私の以下の幾つかの質問に対して、綿密な、且つ科学的な答弁が頂きたい。ところが通産大臣は、今日お聞きしますと、もうすぐこの席をお立ちになるようでございますので、ただここでは答弁を頂くと言うよりも、私のこれから申上げます質問の骨子だけを大臣に理解して頂きまして、具体的な一問一答は、午後大臣が最も適任と認められる局長なり、課長、場合によれば担当官でも結構でございますから、十分科学的にこの私の質問に納得できるようなかたをお手配頂く意味において私の質問の骨子だけを申上げます。細かなことはあとで申上げますが、大きな骨子はこういうことなのであります。 第一の質問は、中国との交易を、過去の戰争から戰後現在までを通した一切の日本の経済の足取りから考えて、およそどのように考えておられるか。総理が事実よりも重要性を誇張してはいけないというならば、誇張しない重要性をどう見ておられるか。その重要性をそう見られるためには、どのような数字的根拠と、どのような経済的な将来の見通しの上に立つておられるか。或いは現在やつておるようなアメリカから高い重工業原料と、地中海の方面から高い化学工業の原料を得て、これを東南アジアに売つて行くというような形で、果して日本の経済が今後維持できて行けるかどうか、こういう点が第一点でございます。 それから第二点といたしましては、これは今日の五日のワシントンから坂井特派員が発しておりますところのソ連圏貿易についての電報でございますが、これによりますと、去る九月二十七日ホワイト・ハウスの国家安全保障会議の報告において、日本のこの問題について論じておりますが、その報告によりますと、日本と中共地域との経済関係を検討いたしまして、今のような状態で日本の生産品が中共に輸出されない場合には、恐らくは中共はソ連ブロツク内にその供給を求めるようになる。こういう事態を長く続けて行くと、中共の市場に対して日本が原料を買うにしろ、製品を出すにしろ、市場を永久的に失う危險性を持つており、これは日本経済にとつて極めて重大である。例えば鉄鉱石をマライやフイリピンから輸入するには、先ず東南アジアを開発しなければならない。それからコークス用の石炭や鉄鉱石をアメリカ又はインドから輸入しておると、船舶不足と運賃高で非常に高いものにつく。それから落花生、樟脳のごときも東南アジア、南アジアから継続的に今後輸入して行くということは非常に適当でない。それからチエツコスロヴアキアから昨年輸入した肥料用苛性加里も、これを他に求めることは非常に困難である。それから大豆も中共以外から得ることは非常に困難である。それで、今後日本の自立経済を達成する上において必要な原料を、中共又はソ連ブロツクから輸入し、その代償として製品を外国へ輸出する場合に、バトル法、現在アメリカがバトル法によつてこれをやろうとしております。この第一次重要戰略物資品目、第二次戰略物資品目、こういうふうな点も明確にされまして、一つこの講和條約との関連において、日本が果して、経済自立を達成する上において、吉田内閣を代表されるところの総理がこのサンフランシスコにおける演説、こういう考え方で本当に日本の自立が達成できるかどうかということに対して、私は衷心から疑問を持つておりますし、私自身といたしましても、日本の復興と建設の根本的な基礎が経済にあり、この経済の基礎は大陸、特に中国との経済提携を基礎にする以外にはできないという点においては、この十数年来自分としては勉強して参つたつもりでございますので、こういう点につきまして一つ明確な御教示がありたい。これが通産大臣に対するこれから午後ずつと、必ずしも大臣でなくても結構でございますから、具体的に質問を展開したい二つの要点でございます。取りあえず何か通産大臣から一言聞かして頂けるならば聞かして頂きたい。
○国務大臣(高橋龍太郎君) それでは午後に又御指摘のような準備をいたして置きます。
○兼岩傳一君 それでは法務総裁がおられますから一言だけ。
○委員長(大隈信幸君) ちよつとお待ち下さい。実は法務総裁に対しまして御質問がいろいろあるわけでありまして、法務総裁は一時までここにおられますので、引続き委員会をやりまして、次の要領でやつて頂きたいと思います。御発言の順序を申上げますと、岡本委員、堀委員、杉山委員、木内委員、堀木委員、兼岩委員、その順序で御発言をお願いしたいと思います。
○岡本愛祐君 一昨日であつたと思います。政府委員に対しまして條約と憲法、條約と法律の効力ということについてお尋ねしましたところが、政府の公定解釈を伺えなかつたのでありまして、個人的意見として西村條約局長から、憲法は條約より効力が強い、又法律は條約より効力が弱い、又憲法は法律より効力が強いというお話がありました。これは第五條を理解します上に非常に大きな関係を生じて来ますので、政府の公定解釈を大橋法務総裁から伺いたい。
○国務大臣(大橋武夫君) 先般西村條約局長からお答え申上げました通り、大体政府としても同意見でございますが、改めて私から申上げますと、先ず憲法と條約との関係について申上げますならば、憲法第九十九條におきまして、国務大臣、国会議員等の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負うと明らかに規定いたしているのでありまして、内閣が憲法に違反し、従つてこれを改正するような條約を締結し、又国会がこれに承認を與えるというようなことは考えられない次第であります。又みずからを最高法規といたしております憲法の條規に反する條約の存在を認めるということは、到底考えられないのでありまして、このような條約を締結いたしますには、原則といたしまして憲法自体の改正が先決問題である、かようなことになると存じます。 次に條約と法律との関係について申上げますと、法律は公布によつて国内法上の効力を生じ、国民に対する拘束力を持つものでありまするが、條約に牴触いたしまして、従前の法律がそれに牴触する限りにおきまして効力を失うに至ることは当然であると考えます。然らば将来におきまして條約に牴触いたします法律が制定できるかということに相成りますと、憲法第九十八條第二項には「日本国が締結した條約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と、かように規定をいたし、又第九十九條は、国務大臣、国会議員等の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う、こういう規定にいたしておるのでありますから、このような法律は制定される道理がないわけでございます。仮に若しこのような法律が制定されるといたしましても、條約は憲法上これを遵守しなければならないのでありますから、直ちにこの法律を改正するための法律が制定され、恐らくは過去に遡つてそれが施行されなければならないこととなるものと存じます。若し又憲法に違反する條約が締結され、国会によつて承認されたとすればどうなるか、こういう点も問題となるわけでありまするが、この点につきましては、憲法の規定は少くとも明文上において明確を欠き、又学者の間におきましてもいろいろ議論があるところであり、一概に論じ去ることは困難であります。極く大まかに申上げまするならば、憲法改正の手続と條約締結の手続とを対比いたして見まするというと、條約は国内法としての効力においては憲法の下位にあると考えなければならぬと思います。尤も国際法規としては、たとえその條約が憲法に違反するといたしましても、国家を拘束するものでありまするから、内閣としてはこの拘束を免れまするために、條約の改訂に努力をいたしまするか、或いは又憲法を改正するための措置をとるか、いずれか方法のによつてこの矛盾から放免されるような措置をとらなければならんものと考える次第でございます。
○岡本愛祐君 只今の精細な御説明によりまして大体了解ができました。法律のほうの関係は別といたしまして、條約と憲法との関係、今の御答弁によりましてもなかなか複雑なようであります。国内的には割り切れましても、国際的にはなかなか割り切れない、恐らく国際法上はまあ議論がいろいろありまして帰一するところがないからであろうと思います。そこで政府としては、最初に御答弁がありましたように、今後條約を結ぶに当つて憲法に違反するような條約ならば、その前に一応憲法を改正して條約を締結する、こういうふうな手続をとるというふうに聞えましたが、果してそうでありますか、念を押しておきたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 御反問のありました通りに考えております。
○岡本愛祐君 そこで今度は最後に、お話にありましたように、誤つて憲法に違反するような條約を政府が調印をした、そうしてそれを又誤つて国会が承認したということになりましたときに、国際的には非常にあいまいなんでありますが、国内的には、その條約のその部分は憲法の規定から言つて無効であつて、国民を拘束することができないと、こう解釈してよろしうございますか。それも念を押しておきます。
○国務大臣(大橋武夫君) その点もお述べになりました通りに解釈いたしております。
○岡本愛祐君 それでは一応その程度にその問題はいたしておきまして、次に質問を出してございました憲法の第九條に申します武力、第一項に「武力」という言葉が出ております。武力とは何であるか、又第二項に言う「戰力」とあります。これは何であるか、その正確なる定義をお尋ねいたします。
○国務大臣(大橋武夫君) 憲法第九條におきまして「武力による威嚇」とか「武力の行使」というような用語が使つてありまするし、又同條におきまして「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」、「戰力」という字旬も用いてあるわけでございます。この差異につきましては、これをいろいろな角度から検討をすることが果して憲法解釈上必要であるかないかという点もありましようし、又解釈といたしましてもなかなか議論があることとは存じますが、一応只今までに研究いたしました結果を申述べさして頂きたいと存じます。武力と戰力との相違はどういう点であるかということでございまするが、いずれも戰争遂行の手段といたしましての力を意味するものでありまして、武力のほうは、武力による威嚇とか、武力の行使というようにその力を動的に把握いたしました概念であり、戰力のほうは、これを保持しないというように、これを靜的に把握した概念ではなかろうか、こういうふうに一応解釈をいたしておる次第でございます。いずれにいたしましても、これが戰争を遂行するための力を表現いたした言葉であるというふうに考えております。
○岡本愛祐君 それでは今の御答弁は、武力と戰力というものは、いずれも戰争遂行の手段たる力であつて、それを靜的に見たのが戰力、動的に見たのが武力だ、こういうような御解釈と了承します。そういたしますと、それと自衞力と申しますか、自衞権と申しますか、それとはどういう関係になりますか。これはこの前の総理に対する質問におきまして、一応法務総裁から御答弁を得ておりますが、はつきりどうもしないのであります。又一昨日の政府委員に対する質問におきまして、この点がぼやけて参つたのであります。それは法務総裁のほうでは、そこにおのずから一線が画し得るというよな御答弁に思いましたが、西村條約局長のでは具体的に一線を画すということはむずかしい、それよりも対象によつて違うのだというような重大な答弁があつたのです。その点について伺つておきます。
○国務大臣(大橋武夫君) 自衞権と申しますのは、国際法上の国の基本権の一つでありまして、国際法上、主体であります国家がその存立のために急迫不正の侵害に対抗するための権利を認められておるわけであります。その権利を遂行するために必要な実力が即ち自衞権と観念さるべきであろうと存ずるのであります。でありますから、くだいて申しますならば、自衞力という言葉を仮に用いますとしますると、これはが国家自衞のために必要とする力、或いは自衞のために用いる力を言うのであり、戰力或いは武力と申しまするならば、これは国家が自衞の必要性、或いは自衞上の動機、そういう点を論外といたしまして、戰争を遂行する手段として用いている力、こういうふうに考えたら如何かと存じます。
○岡本愛祐君 只今の御説明によりますと、自衞力は、国家が自衞のために用いる力である、戰力のほうは自衞上の動機を論外とした戰争する力である、こういうふうに承つた。そこで、そうしますと、自衞力の中には勿論戰力及び武力を含むこともありましようし、又それを含まない場合も出て来る、こういうふうに解釈してよろしゆうございますね。
○国務大臣(大橋武夫君) 現実の問題といたしまして、国際法上の実例を見ましても、自衞権行使の適例とされる場合におきまして、自衛権行使の手段として軍隊が使用されたことは往々あることでございまして、軍隊も必要に応じましては自衞力の一部として自衞権行使のために使い得るものと考えます。
○岡本愛祐君 それでは進みまして、その自衞権による戰争というものは、勿論武力を持つているときにはあり得るということは当然だろうと思うのです。そういたしますと、武力を持たない、つまり自衞のための、日本で言えば警察予備隊というものがありますときに、その自衞権の発動によつて戰争状態というものは起ることがあり得ると思うのです。それは憲法の第九條に認めておるのかどうか。その点を伺います。
○国務大臣(大橋武夫君) 戰争というものの観念のいたし方でございまするが、戰争におきましては、平生の関係国間の友好関係が全く破壞されまして、相互に攻撃防禦のために一切の実力手段を使う。もとより国際法上許されたる戰鬪手段でなければなりませんが、一切の手段を用いるということになるわけでございまするが、警察予備隊につきましては、御承知の通り、これは国内治安のために日本に設けられたる組織でございまして、これが自衞のために如何に必要でありましようとも、国外において職務を遂行するというようなことは到底考え得られないことでありまして、従いまして国内に侵入いたして参りましたものに対しまして実力を以てこれを制圧するということは十分考え得られますが、併し国外にまで出撃をするというようなことは到底考え得られないわけでございまして、かような状態を戰争と申し得るかどうか。私は大いに疑問があるのじやないかと考えます。
○岡本愛祐君 その点が非常に問題なのでありまして、この第五條に引かかつて来るのでありますが、この第五條の(c)項におきまして、連合国としては、日本が主権国として国際連合憲章第五十一條に掲げる集団的自衞の固有の権利を持つておるということを確認しておるのであります。集団的自衞の権利というものが固有の権利となりますれば、憲法第九條においても、その自衞力の中に集団的自衞力というものを持つのだろうと思うのです。この点、疑いないと思うのです。そこで、そういたしますと、日本とアメリカと安全保障條約によりまして同盟的立場に立つ。即ち集団的の自衞の関係もそこに生まれて来る、そうすればこの五條を受諾することによりまして、今連合国のほうで自衞的立場で朝鮮の戰線に侵略戰争防禦に当つておるのでありますが、その朝鮮まで集団的自衞の力としての日本のそういう予備隊というものが出て行かなければならんことが起りやしないか。そういうことは決してないということが言えるか。それは憲法に違反するならば、日本ではそういうことはできないということは言えると思います。ところが憲法には違反してない、それは飽くまで自衞力として出て行くのですから、憲法としては違反してない。ただ、そういうことは今の日本の警察予備隊のほうでは考えていないというだけであります。この義務を受諾することによりまして、即ち国際連合がとる如何なる行動についても、国際連合にあらゆる援助を與えるその義務を受諾するのでありますから、だから向うが朝鮮戰線まで集団的自衞として出てもらわなければ困る、第一線に立つのでなくても、後方勤務として出てもらわなければ困るということになつて来るのではないか。なつて来るのなら、そういうふうに国民を覚悟さしてこの條約を批准をするということにしてもらわなければならん。だから、これまでの総理大臣が答弁をしておられるような、義勇兵は許す考えはないとか、そういうようなものは決して国外には出さないとか総理大臣は言つておられても、この五條の受諾によつて、それは何にもならない。日本がそういう義務を負うのでありますから。そういうふうに考えられるのであります。その点がそうではないということを法律的に説明して頂きたい。
○国務大臣(大橋武夫君) 国際連合の安全保障理事会において自衞のために必要な措置を決定され、この要求によつて日本が警察予備隊を海外に出動させることを要求される虞れはないかという御質問の御趣意であつたかと心得るのでございまするが、この警察予備隊というものがさようなふうに用いられ得ないものであるということにつきましては、恐らく各国においても十分に事情を承知しておられることではなかろうかと想像いたします。現に日米安全保障條約におきましては、「日本国は、武裝を解除されているので、平和條約の効力発生の時において国有の自衞権を行使する有効な手段をもたない。」、このことは今日の警察予備隊というものが、御指摘のような使命にまで延長されて使用されるべきものではないということの理解を前提にしてでき上つておる事柄ではないかと思うわけであります。これらの点から考えましても、御指摘のような主張が起ることは実際問題としてはあり得ないと考えられるわけであります。
○岡本愛祐君 実際問題としてあり得ないということはともかくとしまして、この第五條を受諾することによりまして、そういう法的解釈が可能になりはしないかということを心配するのであります。それで、若しそういうふうなことになれば、そういうことを国民に覚悟をさしてこれを受諾するということにならなければならないので、そうではない、そうではないと言つて、そういうことが起るということは、これは国民を欺くことになる。法的解釈としてもそういうことにならないのだという答えが実は欲しいのでありまして、この集団自衞を固有の権利と、こう見る以上は、どうもそこまで行く危險があるのではないか、こういうふうに思うのですが、それは、そうではないという法的御答弁を、今すぐここで正確にできなければ、もう一度よくお考えになつてして頂きたいと思います。 なおもう一言附加えておきますが、答弁を要求した中に、その憲法第九條第二項の、国の交戰権と自衞権の関係はどうなるかという質問がしてあります。で、これも実は御答弁を得てあるのでありますが、それがどうもよくこの前わからなかつたのであります。それは国の交戰権を認めないということは、これは日本国が主体となつて戰争することを認めないという趣旨であると、こういうふうに御答弁になつておるのですが、そうすると国連軍の中に入つて、つまり日本が戰争するのじやない、国連軍としてまあ戰争の中に加わるのだということはかまわないという解釈にもなりそうなんですが、そういう御答弁だと、その点はどうなんですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 只今の我が国といたしましては一切の戰力を保持しない建前になつておるわけでございまして、国連軍はやはりこれは一つの軍隊と観念すべきものであると存じまするので、我が国といたしましては軍隊を持たざる以上、これに如何なる形においても国として加入をするということは事実問題としてあり得ないことと存じます。又法律的にも第五條からそこまでの要求をされるということはあり得ない、こう考えております。第五條につきまして御指摘の点は、日本が集団安全保障による義務を持つと、こういうことであるから、その方法として国連軍の一翼として日本によつて組織された部隊を従軍させるような虞れはないか、この点について法律的にないという理由を説明するように、こういう点でございましたが、この第五條におきましては、これは日本が再軍備をする自由を禁止したわけではないわけでありまして、その代り又日本の、それがために再軍備をしなければならんという義務をも課した規定ではないわけでございます。日本が警察予備隊をさような組織と見、海外に派遣するかどうかということは、これは日本自体が国内において自由に決定すべきところであります。そのことを第五條は何ら制限もしなければ、又それに関係して何ら日本政府の義務をも認めたものではない、これは全く日本政府に対して独立国としての当然の自由を認めておるわけでありまして、この自由を国内において如何に憲法化し或いは法律化するかということは、これは日本国内の問題ではなかろうか。その日本国内の問題とこの国際法上の日本の自衞権ということは、これは相互に別々のことでございまして、第五條によつて当然将来海外に日本の部隊を派遣しなければならんような事態が生ずるという解釈は出て来ないと、こう考えております。
○岡本愛祐君 それも一つの御見解でありましようが、この五條の(a)の第三号によりまして「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を與え、」これが非常に強いのです。そうすると日本の国内法で警察予備隊が自衞力として国外には出ないと、こうなつておりましても、結局朝鮮戰線が打破られて来れば日本の自衞に非常に支障を及ぼして来るんだから、集団的の自衞のためにアメリカ軍の後方勤務を是非やれと、本当の武力としてやるのでなくして、自衞としてやれというようなことがこの法律では可能になるのじやないかという気が私はするのであります。で、そういう事実が起るかどうかということは別問題として、法律的には可能になるのじやなかろうか、こういうふうに解釈し得るのであります。その点を伺つておるのであります。
○国務大臣(大橋武夫君) 御指摘のごとくこの五條の(a)におきまして、国際連合にあらゆる援助を與えるべきであるという趣旨の規定があるわけでございますが、このあらゆる援助というのは、これは国際連合憲章第四章の規定に従いまして、具体的な問題につき国際連合の安全保障理事会がその措置を決定いたしました場合に無論具体化されるわけでございますが、この行動に対する我が国の援助の範囲というものは、これは飽くまでも我が憲法下において我が国として可能な限りにおいてなし得べきものでありまして、我が国の憲法上不可能なる援助をも日本に義務付けるという趣旨においてあらゆる援助という言葉を理解すべきものではなく、全くこれは日本が憲法上なし得る限りのあらゆる援助、従つて海外に予備隊を派遣するというがごときことは、これは日本の国内法によつてなし得ざるわけでございます。その点についての日本に義務を強制されることは第五條によつてあり得ないと、こう解釈をいたしております。
○岡本愛祐君 そこが法律と憲法との区別になつて来るのでありまして、それで初めから前提を置いて、憲法と條約の関係、憲法と法律の関係ということを聞いて来たのであります。その憲法上は、今第九條によりまして自衞のために或る力を……戰力は持たないけれども、或る力を、自衞力というものを持てる、戰力にあらざる自衞力というものを持てるという解釈になつたのであります。その自衞は而も集団的自衞まで認めるのであります。そうしまして、それじや憲法に違反しないで、その自衞の力を集団自衞としまして朝鮮に出まして、第一線には戰力として立たないが、後方勤務ぐらいはできるんだというようなことで出て行くことは憲法に違反しない。併し今の警察予備隊、それはまあ政令でありますけれども、いずれ法律になるのでありましようけれども、その法律に、又政令に如何ようにきめてあつても、この第五條を受諾することによつて、この條約のほうが法律より力が強いのでありますから、これを受諾することによつてその国内の政令又は法律を当然変えて行かなければならんという結果になりはしないだろうか。即ち今は警察予備隊の建前として国外には出て行かない建前であります。これは明白であります。併しそれがその集団自衞のためには国外にも出て行く、出て行かなければならんという義務をこれで負うのじやないか。そういうふうに又法律でも規定し直さなければならんじやないか。そういう虞れが第五條を受諾することによつて起りはしないか。法律的には起りはしないか。こういうのが私のお尋ねする点であります。もう一点その点を。
○国務大臣(大橋武夫君) この点は五條の解釈の問題であると存じます。第五條の規定が、国内法に如何なる規定があろうとも、国際連合の安全保障理事会の要求があれば、何か組織的な部隊を海外に出さなければならないという趣旨の規定であると理解いたしますると、この点は確かに岡本委員の御指摘のような結果になるだろうと思います。併し日本政府といたしましては、この第五條の解釈といたしましては、日本の国内法において許されたるあらゆる援助を與えるという意味であつて、それ以上の援助を強要されるという意味は含んでいない、こういう趣旨に解釈をいたしているわけでございます。
○堀眞琴君 憲法第九條並びに平和條約第五條に関する岡本委員の質問に関連するのでありますが、先ほどの大橋法務総裁の御答弁によりますというと、国の力を動的に見たのが武力であり、靜的に見たのが戰力である、こういう御説明である。動的に見た、靜的に見たという言葉の内容が極めて明白を欠いているのでありまして、端的に武力という場合は、やはり陸海空のその武力、現実の力を、つまり軍備の力をこれは言うものと解釈するのが至当だと思う。第九條の第二項の戰力というものはもつと広い概念であるということも私は言えるのじやないかと思うのであります。その証拠には、第二項には「陸海空軍その他の戰力」という言葉を使つております。そういたしますというと、武力のほうより戰力のほうが概念としては広いのじやないかという工合に考えられるのでありますが、その点について御答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 考え方といたしましては、只今お述べになりましたごとく戰力という場合におきましては、これが陸海空軍のごとく組織されていると否とを問わず、いやしくも近代戰を遂行するに有効な力ならばこれは戰力という観念に含んでいい、こう存じます。
○堀眞琴君 そうしますと、戰力という概念は非常に広い概念だと、こう理解いたして差支えないと思いますが、警察予備隊はこの戰力の中に入るものでしようか、その点は。
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊は戰力に入らないと考えます。
○堀眞琴君 私は今ここに極東委員会の決定に関する文書を持つておりませんので、言葉の上の正確なことは期しがたいのでありますが、たしか極東委員会の決定によりますれば、陸海空の武力、それから警察の治安維持に必要なるもの以外を除いての警察の力、それから義勇軍といつたようなものを一切日本においては今後持たないのであるということの規定があつたように記憶しているのであります。そうしますというと、警察予備隊はその範疇の中に入るのではないかという工合に考えられるのでありますが、その点御答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊はこれは警察力の一部と考えております。
○堀眞琴君 なお警察予備隊に関しまして、これは総理大臣からの御答弁の中にあつたと思いますが、現在の警察予備隊の員数を以て十分とするというようなお答えがあつたように記憶しているのであります。尤も裝備の点に関しましてはこれは若干増強されるということも御説明があつたように記憶はあるのでありますが、その点は如何になつておりますか。
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊の増員ということは全然考えておりません。ただ裝備につきましては今後も増強をいたしたいという考えを持つております。
○堀眞琴君 昨日の新聞でありまするか、警察予備隊の責任者のかたの新聞に出た談話の形式による発表を見ますると、警察予備隊を七万五千から十五万、つまり二倍に増強するというようなことが出ているのであります。大橋法務総裁は当の政治上の責任者でありますが、この警察予備隊の責任者の談話がその通りのものであるかどうかということについてお答えを願いたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 昨日の読売新聞の夕刊に、御指摘のごとく警察予備隊を十五万に近く増員するかも知れないという趣旨の記事がありましたが、これは政府の方針と全く違つておりますので、私といたしましても如何なる事情からかような記事が出たかということについて早速調べたのでございまするが、増原予備隊長官もさような言明をいたしたという事実はない、こういう報告をいたしております。
○木内四郎君 私も第五條に関連して、この間、法務総裁のお留守中に伺つた問題をちよつと繰返したいのでありますが、先ほど岡本委員の御質問で或る程度わかつたのでありますが、自衞権を行使する場合の手段について法律上及び事実上制限はないものと了解してよろしうございますか。
○国務大臣(大橋武夫君) 自衞権は、これは国際法上の観念でございまして、国際法的に考えますと、必要の限度において一切の手段を用い得ると、こう考えられます。勿論これは方法、手段につきましては国際公法によるおのずからなる制限はあると思いますが、必要な程度において一切の手段を用い得るものと考えております。
○木内四郎君 国際法上のことは今御答弁がありましたが、條約局長からも伺いましたが、国内法的にも従つて制限はない、必要な一切の手段というふうに解釈してよろしうございますか。
○国務大臣(大橋武夫君) 国際法上必要な一切の手段を用い得るわけでありまして、国内におきましては、やはり自衞権の行使のための行動というものは、これは政府の行政行動に相成るのでありますから、おのずからこれを規律する国内法に従つて発動さるべきことは当然だと考えます。
○木内四郎君 国内法によつて規律される程度によるということは勿論でありますが、併し必要な一切の手段はやはり用い得るのではないでしようか。
○国務大臣(大橋武夫君) 必要な限度において国内法の規律するところに従つて一切の手段を用い得る、こう考えます。
○木内四郎君 それでは方面を変えまして、さつきお話にありましたように、国内法においては、警察予備隊というものは、国内の治安の維持に必要なものであるというお話でありましたが、その通りだと思うのですが、にもかかわらず、それは国内においては自衞権の発動としてこれを行使することができるというふうに岡本委員に御答弁になつたことは間違いないと解釈してよろしうございますか。
○国務大臣(大橋武夫君) 自衞権のために必要な手段として警察予備隊をその目的に従つて活動せしむることが適当であるという場合におきましては、当然警察予備隊はその目的に使い得るものと考えます。
○木内四郎君 いろいろ條件等につきまして嚴重になりましたが、結局警察予備隊も自衞権の行使のために必要があれば国内において使い得るという御意見だと了解するのですが、然らば万一必要があつた場合には国内で自衞権のために使い得るものは、万一国外においても必要があつた場合には、自衞権の発動として、国内においては使い得るが、国外においては使い得ないということはあり得ないと思いますが、如何でしよう。
○国務大臣(大橋武夫君) 国外において使い得ないというのは、警察予備隊の本質から来る問題でございます。国内において使い得るものは国外においても使い得るであろうということは、これは国際法上の日本の権利としてはそういうことは言い得ますが、その権利を行使するための規律というものは、飽くまでも日本国憲法並びに法律に従うことを要するわけでございます。この法律といたしまして、警察予備隊の使命、目的というものが明らかに定められておる以上は、警察予備隊を国外において使うということは、これは日本国内においては違法の行政措置である、こう観念せざるを得ないと存じます。
○木内四郎君 ちよつと、ものを混同して御答弁になつているように思うのですが……。勿論警察予備隊は治安の維持のために使うものです。それを、さつきのお話ですと、自衞権の発動として使い得るということはですね、必ずしも国内治安の問題だけじやないと思うのですが、その点はどうでしようか。
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊は国内の治安のためにあるわけでございまするから、急迫不正の侵害によつて国内の治安が乱れた場合において、その原因を除去するために必要があれば警察予備隊を国内において使うことは、これは当然適法でございます。併しながらその原因が国外にありまする場合において、その国外の原因を取除くために国外にまで警察予備隊を派遣するということは、日本の国内法に照らして適法ではない。こう考えるわけでございます。
○木内四郎君 どうもこの、国内において適法、不適法ということはありますけれども、自衞権の発動という場合には、国内の法規の違法性を阻却する点が多いのではないかと思いますが、それは、やはり国内の今の法律すべてに従わなきやならんというお考えですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 自衞権の行使ということは、これは政府の行政行動でございまするから、その行政行動というものは、憲法並びに国内法規に当然規律されることは、これは申すまでもないことと考えます。たとえ、それが自衞権の行使であろうとなかろうと、政府の行動はすべて法規に拘束される。これが根本的な考えでございます。
○木内四郎君 昨日條約局長の御答弁ですと、この自衞権の発動のためには国際法上の違法性も阻却されるという御答弁でありましたが、国内法においては飽くまで、例えば人を殺しちやいかんという刑法がありますが、人を殺しても、そのときはいいんじやないでしようか。必ずしも国内法、現行の法律にそのまま従わなきやならんということでない、自衞権の発動のためには相当の違法性が阻却されるというふうに解釈しちやいかんですか。
○国務大臣(大橋武夫君) ちよつと観念の混同があると思いますが、只今例として御指摘になりました、人を殺してはいけないという法律があるが、自衞権の場合には殺してもいいではないかというのは、自衞権の場合、即ち正当防衞のときには殺してもよいという刑法三十六條という国内法があるから、そこで御指摘のようによいわけでございます。この警察予備隊につきましては、海外に出動させるという国内法がございませんから、これは飽くまでも違法状態である。こう私は考えます。
○木内四郎君 国外に出動させるという規定はないが、併しあらゆる手段を使つて自分の国を護るというのが自衞権じやないでしようか。
○国務大臣(大橋武夫君) 自衞権と申しますのは、一国が急迫不正の侵害に対しまして、自国の利益を護るためにとることを許されました実力行為であります。それは相手方に対して、これを甘受しなければならん義務を課しておるのであります。それは政府と国民との間の関係ではなく、ただ急迫不正の侵害をしたもの、或いはさような状態を作り出すことを防ぎ得なかつたものに対しまする従忍の義務を課したものでありまして、これは飽くまでも国際法的観念でありまして、この国際法的に認められましたる自衞権を行使するということは、これは日本国政府の国際的な権利であります。これを行使する場合に政府が如何なる規律に従うべきかということは、これは国内法上の観念でありまして、国際法上の日本国政府の権利に基く行為であるということだけによつて、政府は国内法の拘束から免れることはできない。こう思うわけであります。
○木内四郎君 政府が自衞権の発動として警察予備隊を使う場合には、こういう方針で使うと言われるだけなら私はわかる。それならわかるのですけれども、いやしくも自衞権を発動して護ろうというときに、警察予備隊だから使つちやいけない、何だから使つちやいけないという制限はないと思うのですが、そういう制限はやはり法律的にあると解釈されますか。政府の方針としてそういうことはやらないのだと言われるならばわかる。併し法律的にはそういう制限がない。あらゆる日本の国内における力を動員して、みずからを護つて行くんじやないのですか、法律的にはそれだけのことをやり得るのじやないでしようか。ただ併し、政府は方針としてはやらんというのなら、これはわかります。
○国務大臣(大橋武夫君) これは大陸の中にある場合は別でございますが、少くとも我が国のごとく大陸と隔絶した所におきまして、国内の治安のために組織いたしました警察予備隊でございますから、これが海外に派遣されるというようなことは、現在の警察予備隊令の趣旨から見て私どもは到底考え得られないと思います。
○木内四郎君 政府のお考えは大体わかりましたから、私はこの点は余りこれ以上追求いたしません。が、さつき憲法と條約或いは法律が、どちらが上とか下とかいうお話がありましたから、それに関連して一言だけ伺つておきたいのですが、憲法は日本の領域全般に施行されておる。実質的に日本の領域に属しておる地域全般に施行されておる。人的には日本の国民に適用されるものと了解していいでしようか。極めて初歩の質問ですが……。
○国務大臣(大橋武夫君) 原則的にはその通りと存じます。
○木内四郎君 然らば、條約によつてその施行区域をする変更ということは、やはり憲法を実質的に変更するということになるのではないでしようか。従つて憲法と條約が上だとか下だとか言うのでなく、その場合々々によつて考えるべきものじやないですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 條約によつて施行区域を変更するというようなことは考えられないわけであります。
○木内四郎君 現に或る程度、今度は領土を割讓しておるでしよう。割讓しておるから、それだけ施行区域を排除しておるでしよう。委任統治について又然り。(「信託統治だ」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(大橋武夫君) 領土の割讓については、憲法上許された條約の結果として、当然その領域が縮小して来たわけで、これは憲法を改正するという問題ではなく、全然別箇の問題だと思います。
○木内四郎君 それですから、上とか下とか、どつちが効力が強いというのじやなく、條約を結んだら、それがたとえ憲法の施行区域を排除しようとも、憲法と多少違つておつたところで條約のほうが強いのじやないのですか。
○国務大臣(大橋武夫君) この点は憲法に違反する趣旨の條約であるかないかということが問題になるので、憲法のほうでも予想した條約であるかどうかという点で、如何なる部分で、如何なる点で牴触するかということによつて違つて来ると存じますので、先ほどは一般的の問題として、殊に憲法の條章に明らかに矛盾をいたした、そういうふうな内容を持つた條約の効力という点について申上げた次第でありまして、その場合には、やはり先ほど申上げたような考え方を容れる余地があると存じます。併し只今木内委員の御指摘になりましたごときは、又他の例であると存じます。
○堀木鎌三君 私岡本委員がお聞きになつた時おりませんでした。ほかの国会の用務で行つておりましたので、甚だダブつて申訳ない。どう考えましても申訳ないのでありますが、法務総裁に一度この憲法九十八條の規定でございますが、「日本国が締結した條約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」という第二項について、憲法との関係をはつきり法律的に御説明願いたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 先ほど岡本委員に対しましてお答えをいたした点を更に繰返しまするが、憲法第九十八條第二項に、日本国が締結した條約はこれを誠実に遵守することを必要とする、こういう規定があり、又第九十九條には御承知のごとく、国会議員等の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う。こういう規定があるのでございまして、内閣が憲法に違反し、従つてこれを修正するような條約を締結したり、或いは又国会がこれに承認を與えるというようなことは考えられないことでもあり、又みずから最高法規といたしておりまする憲法が、その條規に反する條約の存在を認めるということも到底考えられないのでございまして、このような條約を締結いたしまする場合におきましては、原則として憲法自体の改正が先決問題となるべきものである。こういうふうにお答えをいたした次第でございます。
○堀木鎌三君 行政運用として、それは誠にそうだと思うのでございます。殊に御引用の九十九條がある以上は、これは行政の方針或いはこの国会の運用その他について当然だと思うのでありますが、この九十八條の第一項で「この憲法は、国の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」、そうすると、あなたのような考え方だつたら、この第一項の規定は全然要らない規定なんです。かくのごとき国の最高法規であつて、それに反する法律なんということは考えられない問題なんでございまして、それにかかわらず、それをはつきり碓認して、第二項で憲法と條約の関係を規定している以上は、二項自身が法律的効果を何か持たなくちやいけない。私は、岡本委員が言われましたが、実は岡本委員はどういうふうに御了解なすつたのか知らないのでありますが、この憲法、條約、法律というような段階をお付けになつて了解をされたようであつて、実は非常に不思議に思つたので、もう一遍御議論の点を聞きたい、こう思つて急いで参りましたら、この点が終つておつたわけなんでありますが、第二項の法律的の効果そのものについての御見解を伺いたい。
○国務大臣(大橋武夫君) 御質問の要点は、憲法に違反した條約の効力はどうなるかという問題かと思います。この点につきましても先ほど岡本委員にお答え申上げたのでありますが、若し憲法に違反する條約が締結され、国会によつて仮に承認されたとするならばどうなるか。この点については、憲法の規定は、少くとも只今御指摘になりました條文におきましても、明らかに條約を落しております。明文上においては明確を欠いておるわけでありまして、学者の説にもいろいろと議論があるところであり、一概に論ずることは困難かと存じますが、極く大まかに申上げまするならば、憲法改正の手続と條約締結の手続とを対比いたして見ますと、條約は国内法としての効力におきましては当然憲法よりも下位にあるものと考えなければならないと思うのであります。併し一面においては国際法規としては、たとい、その條約が国内の憲法に違反いたしまするとしても、その国家を拘束する効力に至りましては何ら変らないわけでありまするから、内閣としてはこの拘束力から免除されまするためには、條約の改正に努力をするか、或いは又憲法を改正するための措置をとるか、いずれかの方法をとらなければ、この矛盾を解決することはできないであろう。こう思うわけであります。
○堀木鎌三君 非常に明快な私は御答弁だと思うのであります。でありまするから、要するにこの九十八條の第二項があります以上は、條約を結びましたときに憲法の條章と照らしまして、これと違反してそれが成立した場合には、国を拘束する力においてはこれは依然として変らない。つまり第一項にあるように当然無効というようなことはあり得ない。こういうふうに考える。それで、おつしやる通り、これについていろいろな学説がありますが、今おつしやつたのが政府としてのオーセンテイツクな解釈であるといたしますると、その意味におきましては條約が憲法に優位に立つておる。どうしても憲法の改正か、国内法規の改正か、又は條約の改正に努力するか、どちらかでなくちやならないということがある以上は、明らかに條約は憲法に優先して国を拘束するものである、こういうふうに今大橋法務総裁が解釈されたと思うのでありますが、私は、その意味におきましては、やはり條約上の義務が国を拘束する力は憲法以上と、こういうふうに考えざるを得ないと思いますが、念のためにもう一回お聞きして置きます。
○国務大臣(大橋武夫君) 国際的な関係におきましては、條約が憲法よりも優先する、こういう解釈でございまして、御指摘の点に同感でございます。
○堀木鎌三君 どうもこの点、国際的な関係にと、こうおつしやると、まだはつきりしない所がありますが、とにかく日本国を拘束するのでありますから、憲法自身を拘束しておることは確かであります。その点は私は、少くとも実際上の効力として国を拘束する力については、やはり九十八條二項というものが明らかにそれを定めたものであるという、こういうふうに解釈するのであります。実は私は、その意味におきまして、日本国との平和條約の第五條の問題につきましては、いろいろ御論議があつたわけでありますが、実は本質的に安全保障條約のところで御議論をしよう。この解釈だけをここで一致しておいて、第五條でなしに、実は安全保障條約の場合に、その解釈の上に立つてどうなるかということを論議するという、先ほどの岡本委員とのいろいろな具体的な応答はそうだと、こう思いますが、どうもいつの場合が適当であるかは存じませんが、今おつしやつた中でもう一つお聞きして置きたいと思いますことは、戰力というものが、戰力そのものは、法律的に見ると、自衞権に使われるとか、自衞権外に使われるとかいうものではなくて、戰力そのものは一色だと、これは金森説でありますが、この問題について戰力そのものは一色であるということはお考えになりませんでしようか。お考えになりましようか。どうも戰力をあつちこつちに使いわけなさるのですが、戰力そのものは一色ではないか。こういうふうにお考えになりませんか。この点をもう一つお伺いします。
○国務大臣(大橋武夫君) 御質問の御趣意がよくわからないのでございますが、例えば一定の武力が自衞のために使われる場合もあるし、又それが侵略戰争に使われる場合もある。併しどちらの場合においてもそれが戰力たる点においては変りないではないか。こういう御趣意でございましたら、私も同意見でございます。
○堀木鎌三君 そういう意味でありますと、戰力は一色だ。自衞のために使われることもあるし、自衞でないときに使われることもある。併し戰力そのものとしては一色だ。こういうふうになりますと……安全保障條約のときに出て頂けるでしような。そうすると大体適当なところで……もつと巧緻な議論をしたいと思いますが、それでは次に出で下さいますか。……それじや委員長、申上げます。私のこの点に関する質疑は安保條約のときに、どうも吉田総理が出て本来答弁すべき問題なんですが、吉田総理はこういう問題はわかりませんから、せめて大橋総裁にお聞きしますから。 〔「休憩々々」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大隈信幸君) 永井さんがさつきから発言を求めておられますから……。 〔「簡單々々」と呼ぶ者あり〕
○永井純一郎君 簡單というわけにも行かんのですが、総裁に……時間があるならばこの次にしたいと思います。
○一松定吉君 ちよつと法務総裁にお伺いしますが、第九十八條第一項には條約に関する規定がない、こうあなたはおつしやつたのですが、「その條規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為」といううちには、條約締結は含まないのですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 国務に関する行為というのには、條約の締結行為は当然国務に関する行為と考えております。
○一松定吉君 含みますか。
○国務大臣(大橋武夫君) はあ、條約そのものは疑いがないと思います。
○一松定吉君 締結行為が含むなら、締結行為の結果できた條約そのものが憲法に違反しているとかいう時分に、この九十八條の一項には拘束云々という制限を受けぬとおつしやるのです。
○国務大臣(大橋武夫君) 先ほど申しましたのは、憲法の範囲内においては……無論これはその国内的な問題でしで、国内法といたしましては、憲法に違反した條約が直ちに国内法として有効であることは考えられない。国内法規としては、憲法よりは條約のほうが効力が劣るであろう。併し憲法に違反しようがしまいが効力があると申しましたのは、それは條約といたしましては国際法的に効力がある。国際法上の拘束力がある。こういう趣旨を申したのであります。
○一松定吉君 そうすると、九十八條のなんですが、「行為の全部又は一部は、その効力を有しない」ということは、憲法に違反して締結された條約はこの効力を有しないという以外だとおつしやるのですか。
○国務大臣(大橋武夫君) この憲法に規定いたしてありまするのは、憲法上の効力の問題でございまして、国際法上の効力の問題でない。つまり憲法上の効力と申しますのは、国内法的の効力という意味だと思います。
○一松定吉君 国内法的の効力、憲法上の効力、即ちいわゆる国民を支配する効力。そうすると、国内法的の効力であれば国民を支配するとおつしやるのですか。憲法の九十八條には、日本国民はこの憲法の規定によつて適法に締結された、適法に行動したものは効力はある。そうでないものは日本国民に対して効力はないということになります。然るに国際法であれば、日本国民に対して効力があるというようなことになつて来ますと、次に九十九條において「天皇又は攝政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」こういうような広大な義務を負わされておるものが、勝手放題に憲法に違反してそうして條約を締締する。そのときには日本国民はその條約によつて拘束されるのだ。こう御解釈なさるのですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 改めて申上げますと、九十八條の第一項における国務に関する行為というのは、これは條約そのものは入つておらないのであります。條約そのものにつきましては九十八條の第二項におきまして、特に條約の点を引出して規定をいたしておるわけでございます。そこで、先ず憲法に違反した條約は一体どうなるのかという点が問題になると思いますが、この点は只今一松先生も御指摘になりましたるごとく、第九十九條におきまして天皇、攝政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は憲法を尊重し擁護する義務を負つておるわけでございますから、その限りにおきまして憲法に違反したような條約が締結せられ、且つ国会によつて承認をされるということは、実際問題としてはあり得ないはずである。こういうことは先ほども申上げたところなんでございます。併し全くの仮定の問題といたしまして、誤まつて憲法に違反した條約が締結せられ、国会により更に承認を與えられ、批准によつて効力の生じました場合においては、それはどうなるか。その場合におきましては、この国内法としての効力におきましては憲法に劣るのでございまするから、憲法に牴触する限りにおいては国内法としてはその効力は成立たぬ。併し外国との関係において、日本国が外国と約束をした、その約束に基く條約上の義務というものは、ただ條約が国内の憲法に違反するだけでは免除されるということはないのであつて、その場合においては、どうしても内閣としては、この拘束を免がれるために、その條約を改訂する必要がある。若しそれが不可能ならば憲法を改正する措置をとつて、そうしてこの矛盾を調整しなければならない。これが政府の考えであります。
○一松定吉君 私は、成立した條約を、それが無効である、国内法において。但し国外法においては有効である。その有効なものを無効ならしむるためには、條約を改正するか、或いは憲法を改正するかという手続をとらなければならん。これは、あなたはそういう間違つたことをしたところの事後的の行動の話であるが、私のお伺いするのは、そういう憲法に間違つた條約というものは、締結しても効果があるかないかということです。それは九十八條の国務に関するその他の行為、その他の行為、即ち條約の締結権ですね。條約の締結権はその他の行為の一部に入る。それは七十三條のいわゆる「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。三、條約を締結すること。」とある。これによつて條約を締結するのですね。その締結することは憲法に違反しちやいけないと、こう言う。その違反していけないということは、九十八條の「国務に関するその他の行為」の中にこれが含むと、私はこう解釈する。そうすると、その他の行為の中に含まれた條約そのものが憲法に違反しておれば、全部又は一部はその効力を有しない。即ち、国内法的において有しない。国内法的において有しない條約は、国外においても、国際法上においても日本に対しては効力ないということなんです。あなたはそれを効力があるとおつしやる。それで條約改正をするか、憲法改正をせにやいかんと、こうおつしやるけれども、そういう條約というものは効果がないのです。例えば、売買、売買をする権限が全くない人間が売買ということをやつた。その時分にはその売買は無効だ。無効だとすれば、その売つた人間が無効であれば相手方の買うた人間もやはり無効、それを、無効であるけれども、国内法では無効だけれども、国際法では有効だ。こう解釈するのは、憲法の九十八條の後段の規定を無視した解釈だと私は思うのですが、それはどうなんです。
○国務大臣(大橋武夫君) 只今御説明になりました目的物を持つておらないにもかかわらず、仮に持つておるとして契約をいたした。この場合においてはそれは無効じやないか。目的物の売買におきましては、そういう契約は当然これは民法上無効になると思います。国際條約におきましても、やはり同樣な事柄があれば、これは法律行為としての有効、無効の一般的な見地から処理さるべきであります。例えば目的の不能であるとか、これは目的の不能というようなことは、これは当然やはり国際條約としても、果してその成立したる條約が有効なりや無効なりやということについては、法律行為の場合と同樣ないろいろな考え方があり得ることは当然であると思います。ただ、私のここで取上げておりまするのはさような当然無効な條約についてでなく、有効な條約が正しい手続によつて作られておる。併しその約束されました内容が、日本の国内法に照せば憲法の條章に違反をする。こういう場合におけるその條約の効力という問題を取上げて今論議をしよう。こういう趣旨でやつたわけであります。その点につきましては、やはり先ほど申上げましたのと同樣に、国内法としては、憲法に牴触する限りにおいて拘束力はないけれども、併し対国家間の関係においては飽くまで條約として日本国を拘束するものである。こう考えておる次第であります。
○一松定吉君 そうすると、いい例を挙げましよう。このあなたの御引用になつている九條ですね。日本は軍備を持つていない。軍備を持つていない日本が條約で軍備を持つて、あなたをあらゆる援助をするという條約を締結して来たらどうなる。憲法九條に違反して、軍備がない……
○国務大臣(大橋武夫君) これは全く仮定の御質問だと存じますが、仮に日本が憲法において、九條によつて再軍備を禁止されておる。その場合において軍備の保有ということを前提にした條約を結んだといたしまするならば、これは当然先ほど私の申上げたいい例になり得ると思います。その場合におきましては、仮に政府がさような條約を締結し、そうして更に国会が承認する、まあこういうことは万々ないと、現内閣としては無論絶対ないつもりでございますが、又国会としてもなかろうということを確信いたしまするが、非常な手違いによつてそういうことが発生したという場合において、その條約はそれでは如何なる効力を持つか、こういう御質問でありまするならば、それは国家に対する拘束力、即ち関係国間において日本のそういう條約の義務はこれは当然に有効に発すべきである。併し政府としてはこれを国内において実施するだけの有効な措置を持たないという矛盾した状態になると考えておるわけであります。
○一松定吉君 極端の例を挙げぬと、お互いの議論が通るか通らないかわからんから極端の例を言つておるのですが、九條で日本には軍備がない、軍備がないけれども、條約で、何か戰争が起つたならば、あらゆる方法によつてあなたのほうを援助します。即ち兵隊も出しましよう、兵力も持ちましよう、こういう條約を締結した、こう仮定したときに、これは国際法上は有効だとあなたはおつしやるのです。それはなぜかと言えば、国内的には憲法の規定によつてそういうことはない。国内において言えば、日本はさようなことはない。ですから軍隊がないけれども、軍隊は、憲法を改正して、そうしてその有効な條約に従つて兵隊を繰り出さなければならん。こういうようにあなたは解釈しておるように私は思う。條約を改めるか、憲法を改正するかして、その義務を果さなければならんとおつしやるから、こういう例が出る。私の解釈としては、つまり憲法が国の最高法規であつて、この憲法に違反したことは全部無効だと、こういうのです。あなたは條約というものがないからとおつしやるけれども、條約というものは第一項のうちの「国務に関すその他の行為」のうちに入る、「その他の行為」のうちに入る條約、その條約を締結することができる。締結することができるのは、憲法の制定によつて締結しなければならん。その憲法の規定に反する條約であれば無効だ。効力を有しない。無効じやない。効力を有しない。効力を有しないということは、法理的に言えば無効のことを言うわけですが、効力を有しない。併しながらそれは條約というものについての締結権はあるけれども……。できた條約そのものについては拘束されるのだ、こうあなたおつしやるから、おかしい結果になる。締結することができないものが締結した。それがこの九十八條の後段によつて効力を有しないのですから無効なんです。だから無効は、国内法においても無効であると同時に、そういうようなことは一体やることができないことをやつたのだから、それは義務も何もない。即ち一方に締結権がない。相手方に締結権がある。締結権があるものと、ないものがこうやつた場合には、意思の合致じやない。條約は意思の合致です。一方にはそういうことをする意思がない。一方にはその意思があつて……、その意思と意思が合致して初めて條約、而もそういうことができないのですからして、その條約はやはり無効だ。こう解釈することが正しいのじやありませんか。こう聞いておる。
○国務大臣(大橋武夫君) 御意見はちよつと私どもの考えと若干違うようであります。
○一松定吉君 私はあとで憲法の問題について意見を質すことがございますから、今日は時間もたつておりますから、この程度にとどめておきます。
○堀木鎌三君 時間もたつておりますから、私はほかへ議論をそらさないで……、大橋法務総裁は国内法規と国際法規とを使い分けされますが、この憲法の九十八條に書いてある二項は国内法規なんですよ。憲法のこの二項で書いてあるものは国際法規的な効力しかないのだと言われるのはおかしいので、その点は特にお使い分けなさらんほうが法律解釈としては正しいのじやないか。つまり二項にある以上は、国際法規上当然なことが……国内法規に関係ないことがここに出て来るわけはない。だから、この九十八條の二項は、まさに今の効力問題について国内法規的な効力を持たしておる規定なんです。それでなければ憲法の條章にあるわけがないのです。国内法規として何らの効力がないとおつしやることはおかしいのじやないかと思いますが、その点についでどうお考えになりますか。
○国務大臣(大橋武夫君) なおその点は、次回までに研究の上お答えいたします。
○委員長(大隈信幸君) それでは二時半まで休憩いたします。 午後一時三十一分休憩 ―――――・――――― 午後二時三十九分開会
○委員長(大隈信幸君) 休憩前に引続き会議を開きます。
○高橋道男君 第五章の(a)の役務の関係について條約局長の御解釈を承わりたいと思います。この役務の内容につきまして、「生産、沈船引揚げその他の作業」とございますが、「その他の作業」というものにつきましては、どういうような項目を御予定になつておりまするか、それを先ずお伺いいたします。
○政府委員(西村熊雄君) 「その他の作業」につきましては、全く相手国と話合の結果きまる問題でございまして、日本政府としては、まだ積極的にこれこれというふうに考える段階に来ておらないのであります。
○高橋道男君 今朝ほどの御解釈にもございましたが、政府との契約になりますか、或いは業者との契約になるか、その点もはつきりしていないような御答弁でございましたが、いずれにいたしましても、役務に従事するものの給與というものは、これは日本の政府から役務従業者に直接に支払われるものである、こういうように解釈してよろしうございますか。
○政府委員(西村熊雄君) その点も、あながち日本政府の負担であるべきだという考えではないのであります。役務が日本国内で提供せられる場合には、無論お説の通り日本政府の負担になることが原則と考えられます。併し技術提供というような場合を考えて見ますと、日本の技術者が現地において働いて生計を立てるということになりますと、その場合には、考えといたしましては、その給與の全部を日本政府が負担することも考えられますが、又相手国政府との話合では、その一部を現地政府の負担にすることも考えられると考えております。原則的に日本政府の負担でなければならないとは考えておりません。
○高橋道男君 そういたしますと、役務の従業者が先方の相手国の政府又はその業者によつて使われる場合があるということでありますれば、その役務従業者自体について考える場合に、それは日本の労働基準法によつて役務に従うかどうかということもわからないのでございますか。
○政府委員(西村熊雄君) その役務が日本国内で提供される場合には、日本の国内法でありまする労働基準法その他の法制に従うべきことは当然であります。問題は国外で役務が提供せられる場合、これは日本の労働基準法よりも、むしろ先方の国の法制が適用されることになるであろうと考えるわけでございます。いずれにいたしましても、そういう点も具体的話合いの結果法定を見ることであろうと思います。
○高橋道男君 もう一つ重ねてお尋ねいたしたいのは、内地での役務賠償の場合には、当然国内政府から給與が支払われると思いますが、国外のものも含めて、その当人のいずれにしても給與なり收益があるわけでありますが、それについての、例えば所得税というような税関係はどういうようになりましようか。
○政府委員(西村熊雄君) 無論、移関係も、国内で提供される場合には日本の税法に従うべきことは当然のことと存じます。国外で提供せられる場合には、税法関係はこれは原則としてその地域の国の税制によるべきものかと考えますが、いずれにしてもその点も又具体的話合いの結果、疑問が起れば話合によつて決定さるべきものであると考える次第であります。
○高橋道男君 今の場合に、所得税なり課税される場合に、それがどちらの政府の負担になるか、給與がどちらの政府から、或いはどちらの政府を通じて給與されるかということによつて課税の方法がきまるといたしますれば、その役務賠償に要した費用の計算というものが違つて来ると思うのであります。向うの政府を通じて給與される場合に、その課税額は先方の政府の收入になると思います。若し日本の国内の場合は、日本の政府から給與されるという場合には、恐らくその税收は日本の政府に納められると思うのでありますが、その場合に役務賠償に要した費用の総額というものの計算の基礎が少し違つて来るように思うのであります。その点は考慮をする必要はないのでありましようか。
○政府委員(西村熊雄君) 無論、税の問題は、役務が国外で提供せられる場合に問題になり得るわけでございます。その点は関係国間の話合で決定せらるべきであると思います。国内で提供される場合には、税の問題は相手国との間に何ら問題は起りませんので、特別話合いの対象になる余地はないと思います。
○高橋道男君 次の問題でお尋ねいたしますが、(a)の2の(1)に、「財産、権利及び利益で」云々。「処分する権利」ということがございますが、処分する権利を有するということは、必ずしも差押え、留置、清算などによつて先方に沒收されてしまうという意味だけではなしに、日本国或いは日本国民に返還されることの可能性も含んでおると解釈してよろしうございますか。
○政府委員(西村熊雄君) お話の通りであります。條約上は連合国がその権利を取得するだけでございまして、これを行使する義務は條約上ございません。我々としては連合国ができるだけ寛大にその権利を行使されることを要請したい次第であります。
○高橋道男君 次に(a)の2の(II)でありますが、「次のものは、前記の(1)に明記する権利から除く。」という文句が出ておりますが、ここには権利とだけ出ておるのでありまして、(I)のほうには「財産、権利及び利益」というように並べてあると思うのでありますが、これは(I)と(II)とは別なものでございましようか。(II)の権利で以て財産、権利、利益、すべてを含んでいると考えてよろしうございましようか。
○政府委員(西村熊雄君) 無論御指摘になりました権利という文字でございますが、その意味は2の(1)にあります権利、財産、利益の全部を含む意味での権利と解釈するのでございます。
○高橋道男君 それから先ほど処分する権利ということを伺いましたが、その場合にAとBの連合国があつて、そのAの連合国においては、処分すべきものを日本国或いは日本国民に返還をしてくれるということがありまする場合に、Bの国では処分をして、一切その国に取上げてしまうということがある、つまり両方の処分の方法が違う場合に、Bのほうの国におきまして、Aのほうで日本の国へ返還しようという意思を抑えてまでBの国へ取上げてしまいたいというようなことは、これは起らないものでございましようか。
○政府委員(西村熊雄君) 十四條の(a)の2の建前が、各連合国の領域内にある財産を対象といたしておりますので、一つの財産について二個以上の連合国の処分権が重複することはございませんので、御縣念のような場合は生じないと考えております。
○高橋道男君 それから2の(11)の(i)でありますが、「日本国が占領した領域以外の連合国の一国の領域」と、日本文で見ますと実にややこしいように考えるのでありますが、これは一つの国の領域のうちで日本国が占領した領域以外の部分、こういうようなことで解釈されるのでありますか。
○政府委員(西村熊雄君) お説の通りでございます。例えば一例を挙げますと、英国をとりますと、香港やマレーなどはこれは戰争中日本が占領した地域でございますので、戰争中香港やマレーに居住していた日本人の財産は差押え、留置、清算する権利を英国が持つわけであります。ところが英本国は全然占領したことがございませんので、戰争中英本国に居住していた日本人の財産は留置、清算の目的になることはないことになるわけであります。
○高橋道男君 その除外される財産のところに「宗教団体」というものが出ております。宗教が尊重される趣旨から申し、又政教分離の方針から申しましても、私は誠に結構なことだと思うのでありますが、この「宗教団体」ということは、現在の我が国の宗教人法ではいろいろなものを宗教団体としておるわけでありますが、その宗教団体の種類と申しますものは、連合国においても我が国の宗教法人法で認める宗教団体と全く同じように認められるというように考えてよろしうございましようか。
○政府委員(西村熊雄君) 大体さように考える次第でございます。併しいずれにしましても、その條項にも規定いたしてありまするように、同條項の適用が当該連合国の国内法に従つて行う、こういうことになつておりますので、原則的には措置をとる国の政府の解釈によると言わざるを得ない結果になります。
○高橋道男君 只今のような御解釈になると、少し実際問題として困るようなことが起るように思うのでありますが、例えばこれは私信で来ておりますので、正確にそういうことが法的に示されておるかどうか存じませんが、アメリカの最高裁判所において、反米団体としておおよそ二十の日本人の関係する団体を掲げて、そのうちに神社神道を掲げておるということを私信で私のところへ申して来たものがあるのでありますが、若しそうだといたしますれば、我が国において宗教法人法では神社神道は現在においては少くともはつきりと宗教団体として認められておりまするし、総司令部においても同樣の見解を持つておられるのでありまするが、事実アメリカ本国においての見解と違うようでは少々問題があると私は思うのでありまするが、その点の御見解を伺います。
○政府委員(西村熊雄君) 私ども高橋委員と同樣な気持を持つておる次第でございますけれども、何と申しましても、條約の文面に明らかにありますように、「前記の(I)に規定する日本財産を差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利は、当該連合国の法律に従つて行使され、所有者は、これらの法律によつて與えられる権利のみを有する。」というように、当該連合国の国内法主義が明定されておりまする関係上、合衆国大審院の御指摘のような判決がありとすれば、それに対して條約上異議を申出ることは困難な事情にあろうかと存ずるわけでございます。
○高橋道男君 その点この宗教団体或いは宗教法人に対する見解につきましては、いろいろ解釈もあると思いまするので、私は詳しく論じませんが、政教分離という建前においては、私はアメリカにおいても同樣の御見解だと思うのであります。なお、ほかの南方諸国においても同樣のことが言えると思いまするので、日本の宗教法人法によつて認められておる宗教団体につきましては、宗教尊重の上から同樣の態度が連合国間においてとられるように、又その財産についてもそういう保全ができるように希望を申述べて、この点の質問を終ります。 もう一点お伺いいたしますのは(V)の問題であります。保全を受ける中に「文学的及び美術的著作権」ということがございますが、これは我が国の現在の著作権法にはこういう規定をしてあるのでありまするが、それと同一に考えていいものであるかどうか。著作権法の第一條に、「文書演述図画建築彫刻模型写真演奏歌唱其ノ他文芸学術若ハ美術(音楽ヲ含ム以下之ニ同ジ)ノ範囲ニ属スル著作物ノ著作者」云々とあるのでありますが、この條約の(V)の項にありまする「文学的及び美術的著作権」というのは、只今申述べた「文芸学術若ハ美術ノ範囲ニ属スル著作物」というものと同じものと考えてよろしうございましようか。
○政府委員(西村熊雄君) 御意見の通り解釈いたしております。御指摘の文句はこの條約だけでなくて、文学的及び美術的著作物保護條約にもございますし、同條約第一條の規定に従つて我が国の著作権法の定義も下されておるようなわけでございまして、大体国際間に共通の意義を持つております。その意味で解釈したらよろしいと存じますので、御指摘通りの意味を持つておる文句と考えます。
○高橋道男君 もう一点だけ……。先だつて総理大臣から、松方コレクシヨンにつきましては、十分保護され得る見込であるという御答弁がございまして誠に結構でございますが、そういうまとまつた大きなものに対する所有権は、著作権は保持できましようが、例えば日本国及びその国民の財産の中の処分されるものの中で、例えば一つの建物の中にさういう美術品が掲げられておるといたしますれば、そういうものは国民の財産としてこの(V)に該当するものとして留置の対象から除外して扱われることができるかどうか。それとも日本国民の一般的な財産として処分されることになるのかどうか。
○政府委員(西村熊雄君) 御指摘の点、高橋委員の御関心の点は私どもといたしましても誠に御尤もと存じます。実は三月の米国案にはの(iii)の除外の宗教団体、慈善団体のほか教育団体、文化団体というのが入つておつたわけであります。それがありますれば松方コレクシヨンのごときは條約上の規定で当然除外されることになつたわけでございますが、七月の米英合同案で教育団体、文化団体というのが削除されたわけでございます。この点は甚だ遺憾に存じます。併し松方コレクヨシンにつきましては総理も非常に関心をお持ちになりまして、みずからフランス政府代表に日本の希望を陳述されたこともございます。又フランス政府におきましても、私どもの承知しておる限りでは、條約上の権利を行使しないで成るべくこれを日本に返したいということで、好意的に考慮してくれておるようでございます。又御指摘のような或る建物などの中に掲げられてあつた芸術的作品などを成るべく留置、清算の対象から除外して欲しいということは当然の希望でございまして、今後各連合国の外交関係が復活いたしますれば、この條約実施の面におきましてそういうふうになるように努力いたすことが、当然日本政府の義務であろうと考えておる次第でございます。
○木内四郎君 この條章につきましては、いずれ大蔵大臣或いは法務総裁に伺いたい点がありまするけれども、他の委員会の都合で極めて簡單に一、二條約局長に伺つておきたいと思うのです。この前、総括質問にもございましたけれども、ヴエルサイユ條約或いはイタリアの平和條約などによりまして、個人の財産を国家の賠償に充てた場合には、これに対する国家の補償の規定を挿入しておる。これは私有財産尊重の建前から当然なことであると思うのであります。勿論その国家にもおのずから支払能力がありまするからして、その規定があつても現実に払えないという場合も出て来るかも知れませんけれども、この條約におきましてはそういう先例或いは私有財産尊重の建前から離れておるように思うのです。前文おきましては非常に人権その他私有財産を勿論尊重すると書いてありながら、補償の規定を挿入しておらん。如何にも形をなしておらないし、これだけで見れば明らかに私有財産尊重の憲法の精神に反している。憲法の規定に反していると思うのですが、條約局長はどういうようにお考えになるでしようか。
○政府委員(西村熊雄君) 先ず第一点にこの平和條約に、賠償に充当された私有財産に対する日本政府の補償の條項が入つていないという点についてお答え申上げたいと思います。無論木内委員御指摘のようにヴエルサイユ平和條約にも、一九四七年にできました五つの平和條約にも、私有財産に対する補償の義務が戰敗国政府に課せられております。併しその実際を見ますと、ドイツの場合におきましても、イタリアの場合におきましても、空文に終りまして、実質的な補償は行われておりません。僅かに戰勝国に対して国際法上私有財産は尊重すべしという原則を満足せしめたという一種の自己満足のための行為に終つておる次第でございます。飜つて日本の立場で申しますと、戰争によつて財産上の損害をこうむつた人達たちは、ただに在外資産を喪失した者だけでなく、その他各般の人たちがございます。それから国の財政能力というものも勘案しなければいけないことであります。各種の戰災者に対する補償の間の公平の観念、それから国の財政能力との勘案の関係におきまして、空文的な補償條項を設けてもらうことは、却つて問題の解決を困難にするだけのことであります。この條約を作るに当りまして、米国政府は最小限度の條項を平和條約に盛つて、それ以外の事項はすべて日本の善処に信頼するという立場をとつた次第でございます。自然、イタリア條約に入りましたような補償條項もこの平和條約には入つておりません。この点は日本政府としてそれだけ善処する責任を負つたという結果になるわけであります。私有財産尊重の原則と在外資産の所有者に対する補償の問題を如何にすべきかということは、無論日本政府として当然お考え下さることだろうと思います。私からはその点お答え申上げかねます。
○木内四郎君 條約局長の御説明よくわかるのですが、イタリア平和條約その他によりましてもそれは死文になつた、実際そうであつたでしよう。併しこの国家の賠償に充てるのに他の物を取つて来て右から左に渡して、而もそれを第一に払える能力があるなしは別として、ただ私有財産を持つて来て充てて、そのままにして置いておくということは、私どもはどうも承服できない。現実に国家の能力として払えないというならこれは仕方がないでしよう。併し私有財産を国家の賠償に充てて、允て放しでいいというのではどうも法律的の処置として非常に不適当ではないかと、こういうふうに思うのですが、この点につきましては、勿論條約局長は、国内の善処の問題を御言及になつたのですが、この方策については自分の答弁する限りではないとおつしやいます。大蔵大臣から先日国内においても憲法の精神に反しないような処置をとるという御答弁がありましたから、私はこれ以上はこの際は追求しませんが、あとに、大蔵大臣その他に対する質問を留保して置きたいと思います。
○岡本愛祐君 午前の質問を続けたいと思いますが、この十四條におきまして、(b)項で、連合国が放棄する請求権を挙げております。この請求権以外のものは依然請求権を放棄しないで残つておると、こういう趣旨だろうと思いますが、アメリカで申しますればガリオアとかイロア資金、そういうものは日本にくれたのではなく、日本は返さなければならんのだというふうな考え方のようであります。これに挙げてないそういうものは当然の義務として残つている。こういうわけでありますか。
○政府委員(西村熊雄君) 御質問の御趣旨をはつきりとりかねましたが、この條約に別段の定めがある場合、これは請求権が存続いたしますが、それ以外のは放棄されているわけでございます。別段の規定がある場合といいますと、第十四條とか、第十五條とか、第十六條とか、第十七條、その他の條項に規定がございます。
○岡本愛祐君 そういう残る連合国側の請求権というものと、賠償請求権と、どちらを先にするか、そういう問題は大きな問題だろうと思いますが、どういうことになるのですか。この條文の文面だけでは解決ができないと思いますが……。
○政府委員(西村熊雄君) この平和條約の規定の上から行きますと、前後優劣の差はないわけでございます。
○岡本愛祐君 衆議院の委員会におきまする西村條約局長の答弁を見ますと、アメリカの二十億ドルに上るガリオア、イロアというものは、この賠償請求権に先立つて返さなければならんというようなことをお述べになつているようです。それはどういう理由によるのでありますか。それを承わつておきたい。
○政府委員(西村熊雄君) それは極東委員会の対日基本政策の賠償のところに明確に謳つてあります。従いまして、極東委員会の対日基本政策によつて規律せられる期間は、占領費というものが賠償に優先するという原則を連合国はとつたわけであります。この平和條約ができまして、平和條約が効力を発生しますと、それ以後は、この平和條約に参加しております連合国と日本との関係は平和條約が適用されますので、平和條約によつて日本に課せられている請求権の間には優劣上下の差をつけてないことになるわけであります。
○岡本愛祐君 それではその御解釈ならよくわかりました。衆議院における御答弁がそう読めなかつたものでありますから、不審を持つたのでありまして、この平和條約ができた以上は、今おつしやいました一九四七年かの極東委員会の対日基本政策の賠償の部というようなものは、効力がなくなると言つてはいけないかも知れませんが、優先しないということは当然だろうと思います。その点は明らかになりました。そこで、この十四條の(a)項によりまして、このアメリカに対する賠償というものも、なかなか二十億なんて大金でありますから、日本が存立可能な経済を、それを返すということになれば維持できないような虞れがありますが、それは賠償請求権のほうと同じように、アメリカから請求がなければそのままにしておいていいものかどうか。それを伺つておきたい。
○政府委員(西村熊雄君) ご質問の趣旨がわかりませんが、合衆国から請求がなければそのままにしていいかという御尋ねの日本の債務はどの債務でございますか。間接占領費のことでございましようか。それとも賠償のことでございましようか。
○岡本愛祐君 私はガリオア、イロアの話をしております。
○政府委員(西村熊雄君) 終戰後合衆国から受けました援助費二十数億ドルは、日本が合衆国政府に対して負つております有効な債務でございますので、合衆国から督促があるとなしとにかかわらず、日本政府としてはこれを支払うために努力すべきものであると考えております。
○岡本愛祐君 併しその(a)項におきまして、「存立可能な経済を維持すべきものとすれば……、完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには、現在充分でないことが承認される。」と、これに書いてあるのです。だから、その賠償請求権のほうは向うの希望するときは役務賠償でやらなければならん。こういうふうになつておつて、片一方の債務のほうは書いてない。けれども、ともかく存立可能な経済を維持するということが書いてあるのですから、それが十分になるときまで向うの請求がなければ放つておいていいのだろうと思いますが、どうですか。
○政府委員(西村熊雄君) 債務を持つておる日本政府として、猫ばばをきめるような立場はとるべきものでないと考えておるわけであります。十四条の(a)によります賠償債務の場合におきましても然りであります。対日援助債務のごときも、ひとしく日本政府の負つております債務でございますので、日本は可能な限り債務は返済すべきものであるとの誠意を以て臨むべきものであると思います。尤もこれは條約局長の答弁すべきものでなく、大蔵大臣から御答弁あつて然るべきものと思います。
○岡本愛祐君 私は主として法文のことを質問申上げておるので、日本の方針というものは勿論條約局長に質問すべきものではなかろうと思つております。それで私は主として條文の字句についてお開きしておるのです。存立可能な経済を維持することは、二十億ドルなんというものを返すということになれば容易なことではない。同時に役務賠償のほうをやつて行こうとすれば大変なことになる。だから向うに早く返せと言われても、なかなか返せもしないだろうし、又早く返せということになつて来ると、存立可能な経済を維持することができないというので、役務賠償をやらなければならんことになつて、なかなかそのかね合いが実際問題としてむずかしいだろうと思います。そこで存立可能な経済を維持すべきものというその認定を今朝お尋ねしたのですが、大蔵大臣の答弁に委ねられておりまして、なかなか重大な問題になつて来て、これは主としてアメリカと日本の解釈できまつて来るような気もするのです。早く返せというようなことになつて来ると、もう存立可能な経済になつて来たという認定がそこに下されたということに考えられるのですが、これはどうでしよう。
○政府委員(西村熊雄君) たびたび申上げておりますように、この平和條約上の日本の債務については優劣上下の差は全然ありません。優劣前後の差はないというのが條約局長の答弁でございます。そうすれば、限られた資力で見通しの非常に困難な日本の自立経済を維持しつつ、この平和條約から生れて来ます各種の債務負債を如何にして相手方を満足せしめるよう履行するかは、非常に困難な問題でありまして、大蔵大臣の御苦心もこの点にあると存じております。
○岡本愛祐君 では、その点についてもう一点お聞きして置きます。アメリカのほうからガリオア、イロアに関する債務を履行してくれと、こう言われても、それはまだ存立可能な経済を維持する見地から、その金額にはいろいろ交渉して、猶予してもらつたり、又それを延期してもらつたり、そういうことは自由にできると、こういうふうに考えられますが、その点はどうですか。
○政府委員(西村熊雄君) 私は決してそう考えておりません。二月のダレス、吉田両氏会談以来、日本政府が合衆国政府に負つておる経済援助債務は有効な債務と認めて、これは払うとの立場をおとりになつておるように了解しております。
○岡本愛祐君 私は払わぬというのじやない、払うにも時期が大事だというのです。これを払つて来ることになると、存立可能な経済を維持することになるのだから、あらゆる役務賠償をやつて行けということになつて来て、そこが非常にむずかしいことになりはしないかということの質問をするのであつて、やはりアメリカに対するガリオアを返却するにしても、存立可能な経済を維持するという見地に立たなければいかんじやないかということを質問しておる。
○政府委員(西村熊雄君) 二十億を超す対米債務を払うことによつて日本の経済が崩壞することは、決して合衆国の好むところでもありますまいし、又期待しておるところでもございますまいから、日本といたしましては自国の経済を存立せしめつつ、この平和條約で負つておる各種の債務を最大限に満足させて行くように大蔵大臣は御努力なされるであろうと存じます。そのことについては私が答弁する限りではございませんので御勘弁願います。
○岡本愛祐君 ではその問題は大蔵大臣にお尋ねすることにいたします。それから、ほかの問題はほかの委員がお尋ねになりましたから、一つ簡單な問題ですが、この十四條、(a)項の2の(c)に「日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体」とある、この所有した団体というのはどういうのでしようか、「日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体」……。
○政府委員(西村熊雄君) いま暫くお待ち願います。資料を探しまして御答弁を申上げようと思います。今資料が見当りませんので。
○岡本愛祐君 被接收船対策協議会というような会から、終戰後外地において連合国側に接收された本邦の民有の船三百四十四隻、合計十九万二千総トンに上る、それにつきましてこの第十四條と第十九條によつて、これはやはりもう請求権がなくなつてしまう、それでまあ非常に困つておる、で、何とかしてもらいたい、で、この船舶は在外にあつた資産と違つて別のものである。海外に投資をしたものでもなくて、国内にその船籍もあり、税も国内で払つておるものである。で、まあ特別扱いをしてもらいたかつたのだが、もういかない、とうとうこういうことになつてしまつたのだが、せめてこれに対して特に補償してもらいたいということが出ておるのですが、これに対して御意見を承わつて見たいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) その点はもうたびたび本院におきましても衆議院におきましても過去のいきさつを説明いたしております。従来のいきさつには触れないことにいたします。この條約におきましては、十四條の(a)の2にありますように、この平和條約の最初の効力発生のときに連合国の管轄の下にある財産を留置する権原を連合国に委ねております。従つて現在連合国の管轄下に引渡されておる日本の船舶に対しましては、この規定によつて連合国が留置、清算権を取得するわけでございます。従つてその所有者に対して、如何なる国内措置をとるべきかという問題がございますが、これは十四條(a)の2にありまする在外財産を留置、清算された所有者に対して如何なる措置を日本政府はとるべきかという問題の一部分をなすものでございますので、それに対しまする大蔵大臣の御答弁によつて御了解願いたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) 兼岩さん、根本国務大臣と黄田通商監か出席されておりますから。
○兼岩傳一君 僕の通商関係の質問は第五條に関係するんですが、農林大臣に質したいと思つておるのは九條の関係なんですが、差支えないですか。
○委員長(大隈信幸君) 差支えありません。
○兼岩傳一君 農林大臣のほうを先にいたしましようか……。私がお尋ねしたいのは漁業について大体二点或いは三点なんでありますが、この九條に基きましてサンフランシスコにおける吉田全権の下打合せに基いて、現在漁業関係の協定の準備を進めておられるようでありますが、我々は言葉だけきれいであるからと言つてそれを信用することはできないので、特にこの吉田内閣の従来のやり方は、美しい言葉は使われるけれども、内容がそれに副つてないということはもう事実だと思います。この漁業問題におきまして、私は太平洋方面及び南方の問題を第一に質して、それから北洋並びに東支那海の問題を第二に質したいのでありますが、先ず第一のほうの質問なんでありますが、非常に美しい言葉を使つておられる。例えば「漁猟の規制又は制限」であるとか、これはまあ美しくもありませんが、「漁業の保存及び発展」などというふうに非常に前途洋々であるかのごとき言葉を使つておられるが、我我の調査したところ、特に外電その他によれば、結局日本、カナダ、アメリカの目下進めておられるのは体のいい閉め出しではないかということなんであります。つまり漁業の保存だとか発展だとか言われるけれども、或いは公海の出漁は自由であると言われるけれども、そういう美しい言葉を使わないで、本当の事柄の御説明が願いたいのであります。
○国務大臣(根本龍太郎君) 只今兼岩委員から今回の日、米加三国の漁業協商の問題について、これが公海自由の原則に立ち、而も人類の共同の財産であり、福祉の根源であるところの海産物資源を保護するという立場において協定を結ぼうとしておるが、保存とか発展という言葉は美名であつて、実際上は日本にのみ一方的に制限を加えるのではないかと、こういうふうな御質問でございまするが、今回の漁業協商は、漁業協商開会の劈頭におきまして総司令部外交局長シーボルト氏から、これは日本が現在占領下にありまするけれども、今度の交渉においては完全なる平等の立場において協商を営むことを提議すると、こういうことになつておるのであります。なお保存及び発展のための美名の下に相当制限されるではないかということでありますが、これは現在進行中でありまするので、我々といたしましては公海の自由ということの原則と、又共通の資源であるところの公海における魚類につきましては、お互いに平等の立場においてその保全のために協約するということでありまするので、内容と表面は全く一致するものと考えておる次第でございます。
○兼岩傳一君 それでは、あなたの言われるように、議長には、あなたが名誉議長になつたり、それから常任議長には井口外務次官がなられたりして、何かなかなか平等以上に、非常に工合がいいような恰好をしておられるようですが、併し内容は、全権のサンフランシスコにおける下打合せ以来における発展の足取りを見ていると、むしろ我々の憂慮が着々と実際化されて行くのでありまして、恐らく私はこの結果は決して楽観すべきものではない。現に我々参議院の同僚千田、木下両君が、アメリカのほうにおいて生「まぐろ」の輸入問題に関連して、一ポンド当り三セントの関税が課せられると、こういう致命的な閉め出しの結果は、日本の一万の漁船及び多数の漁夫が失業するというふうに言つておりますが、あなたの今のお答えの、平等の原則に立つて進んでおります。……あなたが名誉議長になつて進めておられるものの内容と、このことはどういう関係になつておりましようか。関係ないのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 只今の御質問は関税の問題でありまするが、今回の漁業協定については関税まで行くとは考えられておりません。関税の問題につきましては通商協定の問題において問題となりまするので、そういう方面の関係大臣から御答弁があると存じます。
○兼岩傳一君 それは成るほどその現われて来る形態は関税の形態なんでありますが、本質は日本のつまり漁業、漁獲物の増加という点においてすでにこういう形が出て来ておる。従つてあなたはこれはまだ未定の問題だからと言つておられますけれども、非常に我々はこの第九條に基く結果としては憂慮すべきものがあると考えております。あなたは楽観しておられますか。若し楽観しておられるとすれば、その今後はどういうものか。あなたはどういう方針で、こういつた美しい言葉で言われておる原則が実際に移される場合には、日本の漁民が十分に活躍し得るような條件を獲得できるというお見込ですか。どういう方針でやられるのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 完全に平等の立場において協約は結ばれると思つておりまするので、悲観も楽観もいたしておりません。公正妥当にこれは交渉の結果妥結いたしたいと考えております。
○兼岩傳一君 平等か公正妥当という、そういう美辞麗句でなしに、その内容を承わりたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) これは交渉の結果きまることでありまするので、内容はあらかじめ今申上げるということには参りません。
○兼岩傳一君 方針を聞きたいのです、方針を……、どういう方針で……。
○国務大臣(根本龍太郎君) 方針は、先ほど申しましたように平等なる立場において、而も公海自由という原則に基いてやりまするので、この点においては我々の主張が認められると考えております。
○兼岩傳一君 何を獲得しようとしておられるのですか。そういう原則に基いて獲得しようとしておる……具体的な日本漁民に対する收獲としては何を問題にしておられるのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 質問の要点がはつきりいたしませんが、この内容と申しまするのは、いわゆる公海における自由の原則に基きまして、この協定で、海産物資源については締約国各国が平等の立場においてこの資源を利用できるということを獲得の内容と考えております。
○兼岩傳一君 各国というのはどこどこですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 只今協商に入つておるのは三国間でございますので、三国間平等の立場においてこの資源を利用できるということが、この條約の目的であると存じます。
○兼岩傳一君 それではあなたの御手腕を拜見いたしましよう。そしてその三国が果して平等に締結されるかどうか拜見することにして、第二の問題であるところの北洋漁業とそれから東支那海の漁業の問題について御所見を質しておきたいと思うのですが、現在我我が極く簡單に調査したところによりましても、日本の国民全体が一日に僅かなカロリー……「いわし」に換算すれば二尾か三尾の程度の栄養を與えるように計算いたしてみましても、大体二割の不足を少くも現在見ておる。即ちこの二割の不足がどこに栄養不良として出て来るかと申しますと、都市の比較的惠まれた階級にはどうにか従前のような形に出ておるけれども、農村に対して非常な栄養の不足になつて出て来る。これが将来次の国民の健康に大きな影響を與えておると思うが、これらのよつて来るところは、農村に供給をしなければならない、最も大衆的な北洋で得られるところの魚、而もこれはアメリカ、ソヴイエトで大して認めない、而も北洋で大量にあるもので、そしてこれは日本の農民及び中国の農民、勤労者に最も愛好されるところの漁獲物、こういう関係が、この第九條によつては、これは、まあ、この平和條約の根本的性格がこの漁業関係に出ておるのでありますが、農林大臣は所管のことだけお答え下さればいいのですが、北洋漁業についてはどういう方針を持つておるか。これは二十六條にも関係して参ります。私は二十六條、即ちこれと同じ條件でなければ結べないという一方的な平和條約の、アメリカ一辺倒的な性格にも由来しておりますが、こういうことと関連させて、あなたは今僕が質問をいたしましたこの北洋漁業に対して、これを二十六條との関係においてお答えを願いたい。どういうふうにしてこれを打開して行くか。どうして日本の大衆に最小限の栄養を確保するつもりか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 北洋漁場が我が国の国民栄養上並びに経済上重大な関係を持つことは御指摘の通りでございます。従いまして日本の漁民の大部分が北洋漁場の開放を要望しておることも事実でございます。我が国が完全に独立になりますれば、北洋漁場においても公海の範囲におきましてはこれは当然自由に航行し得る国際上の立場にはなるのでありまするが、不幸にしてソ連国家との間に條約が結べないということになりますと、そこに安定した漁業権が具体的に確立されないという不安のあることは事実でございますし、ソ連におきましても、日本に対して講和を結ぼうという提言はいたしますが、これが若し我が国民が要望する、円満なる両国間の平和関係が確立された場合にはこの不安がなくなると思うのでありまするが、未だその状態に至らないために漁業権が具体的に我が国民に保障されないことを遺憾とするのでございます。ソ連が日本の立場を了解し、そうして平和條約を結ばれることによつて、これが根本的に解決されるものと考えておる次第でございます。
○兼岩傳一君 どうやらあなたの説明を聞いていると、ソヴイエトがこの平和條約に対する日本の立場を承認するということが、北洋漁業問題解決の鍵だというように見ておられるようですね。その辺どうですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) さようでございます。
○兼岩傳一君 その点一つ具体的に拜聽したいですね。どういう点ですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 御承知のように日本が完全に独立になりますれば、先ほど申上げましたように公海における漁業の基本権利は当然国際法上認められるところでございまするが、ソ連との間の漁業協定が成立いたさなければ、そこに安定したところの漁業が確立しないという不安があるということでございます。従いましてソ連との間に漁業協定が結ばれる前提としての平和関係が結ばれることは、結局この北洋漁業権を完全に確立するという前提になるではないかと思います。
○兼岩傳一君 つまりこの二十六條によつて、このままの條件でソヴイエトが入つて来たら、漁業問題も解決するという御意見ですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 端的に申しますれば、そういう結果になると考えます。
○兼岩傳一君 私はそういう馬鹿げたものにソヴイエトが入つて来るわけはないと思うのです。自分に攻撃を受けるために、日本が軍事基地になつて、アメリカの軍隊が永久駐在して、そして南西諸島が完全にアメリカの領地になつて、軍事基地化されてですね、そして自分の攻撃を受けるための條約に賛成するわけはないと思うのです。だから僕はあなたからこの平和條約全体についての根本的な議論を拜聽しようと思つていないんだが、あなたの主管は、あなたは農林大臣なんだから、漁業関係の働く人たちの、経営者も含めて働く人たちの立場を確立し、且つ大衆、日本国民全体に対して蛋白資源を提供するところの所管の大臣として、こういう二十六條と九條を持つようなこういう條約を締結した上でもつて、如何にこの二つの問題、つまり漁業関係者の生業を保護すると同時に、国民大衆に対して最小限度の栄養蛋白を提供するという問題をどういう方法によつて農林大臣は打開して行く考えであるか、こういうことなんです。
○国務大臣(根本龍太郎君) 日本はこの平和條約によつて初めて独立国になるのであります。占領下にありましては、マツカーサー・ラインの範囲内においてより漁業がいたされませんので、完全に平和條約によつて独立国になつたときに、公海におけるところの自由なる漁業がなされるのであります。従いましてこの平和條約に基く、日本の主権の確立に基く日本漁民の漁業権の確立ということになりまするので、第九條と第二十六條との関係は不可分の関係においてこれは日本の漁民の利益の保護になるものと考える次第であります。
○兼岩傳一君 何ですか、独立するということは。
○国務大臣(根本龍太郎君) 日本が独立になつたという場合においてのみ初めて我々は公海の漁業の自由を持ち得るのであります。
○兼岩傳一君 どういうことですか、それは……。もつと説明して下さい。何です、独立すると、その公海の漁業ができるようになるというあなたの説明は……。独立じやないです。
○国務大臣(根本龍太郎君) 独立ということは、これは一般通念で考える、国際関係において日本の自主権が認められるということでございます。
○兼岩傳一君 そうすると、調印しない国々に対してはどういうことになりますか。調印した国々の範囲内においてだけ認められると、そうすると調印しない国々に対してはどういう関係になりますか。何が独立ですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) これはあなたの解釈に若干違うかも知れませんが、これは国際的な通念としまして、現在日本は占領下にありますので独立ではありませんが、多数の国々によつて日本が独立を認められた、そして国際社会に加入し得るということが独立でございます。
○兼岩傳一君 その国に関するだけね。
○国務大臣(根本龍太郎君) 不幸にして條約が結ばれないところにおいては、その国との関係の好転を待つほかはございません。
○兼岩傳一君 そうするとですね、独立して……、あなたは調印した国々とだけ独立を認められたと……、これはまあ非常に疑問ですがね。僕はまあ言葉の上だけだと思いますが、そういう論争は、あなたと僕との間においてだけは、まあ、やめましよう。だからあなたの言われるように独立したと仮定しましよう。そして独立を他の国々から認められない……、独立を全然認められていないこういう不当且つ効果のない講和條約の締結を基礎として漁業問題の解決に進んで行くということはですね、どういうつまり可能性がそこにあるのでしよう。どういう手法であなたは問題を解決されて行きますか。具体的には北洋漁業の場合、どういうことに、つまり独立したということがどういうふうに、あなたのおつしやるいわゆる独立したということが……。四十八カ国、そういうものに対して独立したということが、北洋漁業の解決のために、あなたが農林行政をあずかつて解決して行く上にどういうふうに役立つのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) これは何回も繰返して申しておるのでありますが、日本が完全な独立国になつた場合において、初めて公海における自由ということが国際法上これは是認されることであります。ソ連も独立国家として国際連合につておりますので、国際連合憲章というものをこれは当然認めるところの民主国家だろうと思います。この意味におきまして平和條約はこれは両国の間にできておりませんけれども、併し国際公法を守るということについては、恐らくソ連も当然守るであろうと思います。その意味におきまして国際公法上における日本の持つた権利は尊重してもらえると私は考えます。
○兼岩傳一君 あなたの言われるのは国際連合の何條ですか、何條によつて調印しない国々までも独立したという事実を認め、且つそれらに対して公正なる関係を取結ぶことになるのですか。第何條ですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 私は條文のことは申しておらないのでありまして、国際通念といたしまして、これは日本が独立した場合において、国際法上日本の主権が、当然国際法で認められるという前提に立つのであります。
○兼岩傳一君 今、あなた、そうは言わないですよ。国際連合の連合憲章、国際連合の規則に基いて、その多数が調印した以上は、調印しない国々もその公海自由の原則その他のもろもろの国際公法上の日本の立場を認めるから云々と、こう言われたわけでしよう。だから僕の質問したことは、国際連合のどういう規則に基いて、この平和條約に調印しない国々が、漁業について調印した国々と同じく認めると、そういう條件がこの法律のどこから生れるか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 私は法律を基礎にして申したのではございません。
○兼岩傳一君 何を基礎にしたのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 只今申しましたように、日本が独立を回復したときには、国際法上の権益が当然認められる、こういうことであります。ただソ連との関係においてこれが認められないということは残念でございます。
○兼岩傳一君 今たまたま北洋漁業の話をしていますが、これから東支那海に及んで行くとして、(笑声)アジアの中であなた流に言えば調印したのが一億か二億ある、調印しないほうが十億以上でしよう。だから、あなたは、あなたの最初言つたことを逃げないで、国際連合の規則で、調印しない国だつても、交渉するに非常によい條件が生れて来たというふうな最初説明した通り言えばよい。調査不十分ならあとでよい。明日でよいから、第何條によつてあなたの答弁が裏付けられるか、それを明快にすべきですね。そうでなければ改むべきは訂正するのですな。
○国務大臣(根本龍太郎君) 先ほどの私の言葉は不十分であつたと思いますから、その点は改めます。日本がこの平和條約によつて独立を認められるということを前提として、我々は公海の自由、漁業権が回復する。その前提の下に漁業協定を結んで、そうして日本の漁民の漁業権を回復するということだけでございます。
○兼岩傳一君 できんじやありませんか。あなたは、今度調印して独立を認められたとしても、アメリカ、イギリス等、国の数はたくさんあつても、人口の数から言つたら幾らもいないじやありませんか。問題は、ですから東支那海に問題を持つて行きましよう。どうして中国との関係で打開されるかという、これも一緒にしましよう。北洋漁業と東支那海のトロール漁業に対して、この條約の二十六條との関係における、この九條を承認する上に立つて具体的にあなたはどういうふうにして打開して行くつもりなんですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) これは農林大臣が国際上の問題を全部……、その平和條約をどうして結ぶかということの問題ではないのです。漁業問題は、平和條約を、いわゆるあなたが先ほど指摘したように、日本の独立を認めた場合において、その国との、これは独立国と独立国との條約になりますので、平和條約が基本になります。
○兼岩傳一君 そうすると、平和條約に調印していないソヴイエト、特にこの際、中国、北洋漁業及び東支那海の漁業は打開する考えなしと手を挙げているわけですね。
○国務大臣(根本龍太郎君) これは中国並びにソ連との平和條約が解決されなければ、根本的な解決には至らないことを残念に思います。
○兼岩傳一君 そうすると、あなたの今までの答弁によつて、平和條約二十六條を承認して向うさんが入つて来るのでなければ、打開は不可能である。又打開しようと努力する意思がない。こういうふうに拜聽していいんですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 日本の独立を認めない国と漁業協定を結べないことは当然のことでございます。我々はソ連並びに中共が日本とこの平和條約を結ぶことを期待する次第でございます。
○兼岩傳一君 独立というのは……あなたはよく独立々々と言いますがね。(笑声)独立といつても中国とソヴイエトがこの條約そのものを認めることが日本の独立のただ一つの途ですか。その独立というのは、こういう或る特定の條約に対して認めれば独立、認めなければ独立していないということですか。その国との関係においては、そういうものですか。そういう認識に立つて、これからあなたが漁業の行政を運営して行かれるのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 独立の問題については何回も繰返したのでありまするが、これは見解の相違になるようでありますから、これ以上私はあなたと独立の問題について質疑応答することを遠慮いたしたいと思います。
○兼岩傳一君 これは私は農林大臣に質して見て、どうも結論を得にくいですから、もう一遍質しておきますが、あなたの見解を僕が言い直して見ると、この條約そのものを中国及びソヴイエトが承認して、これに加盟しない限り、日本はソヴイエト及び中国との関係においては独立できない。従つて独立を得られない。この独立を得られない事実においては、漁業その他の打開については努力することが農林大臣として不可能である。従つて日本の漁業関係者並びに日本の国民の栄養問題は解決できない。これは止むを得ない、こういうことになるのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) どうもあなたの論旨は少し一方的な解釈……。
○兼岩傳一君 言い直して下さい、どうぞ言い直して明確にして下さい。(笑声)
○国務大臣(根本龍太郎君) これは漁業協定を結ぶということは、平和條約ができるということが前提だと私は考えております。いずれの国におきましても、條約というものは、独立国と独立国との間のこれは協定でございます。従いまして幾ら北洋漁業の問題を解決いたしたいと思つても、この両国の間に漁業協定を結ぶ前提としての平和條約ができなければ、それはその両国間の平和の回復を待つ以外には、根本的な解決が困難であると考えざるを得ないのであります。 〔委員長退席、理事楠瀬常猪君委員長席に着く〕
○兼岩傳一君 農林大臣はその程度にしておきましよう。なお未解決の問題については別途考えて、もう少し明快な形にして改めて御所見を質すことにして、今日はこの程度にして、通産関係に予定されております僕の質問に入りましようか。
○理事(楠瀬常猪君) 農林大臣は内閣委員会のほうに御出席になりますから、ようございますか。
○兼岩傳一君 それじややめましようか。通産関係についてお尋ねしましようか。
○理事(楠瀬常猪君) 黄田通商監がお見えになつております。通商監に……。
○兼岩傳一君 先ほど午前中に通産大臣に対して二つの問題を提出しておきましたが、繰返す必要ありましようか。第一の問題からお答え願つたらどうでしよう。そうしてなお一つだけ附加えておきたいことは、私がお尋ねする趣旨は、第五條の(iii)ですね。第五條の(iii)の後段の、「国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供與を愼むこと。」只今農林大臣に質問したのと多少似ておるのです。関連を持つておるのですが、この第五條の(iii)の後段によつて、日本が客観的にどういうふうに中国、アジア大陸、特に中国との貿易を希望しても、それができない。殊にこの條約によつて道が不幸にして塞がれておる。そういう條約なんですが、さて、それに対して勿論こういう條項を予定して、吉田総理が、中国との交易の日本の経済において占める地位は、重要性のあるところの事実よりも誇張されておるということを、この世界的な会議で言つておられる。これについて私はしばしば質問したけれども、明快な答えが得られない。大臣からも得られない。従つて通商監にこれに対して科学的な根拠に基いてこの点を明確にして下さることを望む。これが第一点であります。
○説明員(黄田多喜夫君) 今朝ほど我が国と中共との貿易を数字を挙げて説明せよというお話でございましたが、昨年の日本の中共からの輸入は約六百三十万ドルであります。それから輸出が千七百万ドルであります。それが今年になりましてずつと減りまして、輸出が九月の終りまでで六百十万ドル、それから輸入は同期間におきまして七十一万ドルというふうに減つております。これが戰前におきましてどうであつたかと申しますと、台湾、朝鮮も含めた数字でありますけれども、東南アジアとの貿易の額は、日本の総額の約半分ぐらいを占めております。且つ又そのうちで中国との貿易も、これは明確な数字を只今持ち合せておりませんけれども、相当大きかつたということはこれは事実であります。但し、平常なる状態において日本の貿易のあり方が、東南アジア殊に中国を主要な市場とすべきであるということは、これは論のないところでありますけれども、それは飽くまで正常なる状態ということを前提とした話でありまして、これが現実的にできるかできないかということは、これは別問題であります。私自身といたしましては、総理がサンフランシスコで申されました、中共との貿易がオーバー・エステイメートされておると言われた言には、全く同感でございます。
○兼岩傳一君 それがあなたの科学的な説明ですか。つまりどの程度然らばオーバー・エステイメートしないところのエステイメーシヨンを與えて下さい。
○説明員(黄田多喜夫君) それが私の科学的な説明でございます。しばしば鉄鋼が原料であるところのアイアン・オアとか、キング・エールというものがアメリカのほうから買わなければならん。これが支那のほうから入ればもつと減る、安くなるということを申されるのでありますけれども、私が科学的にこれを分解して見ましたところ、只今入つております石炭で、アメリカのほうから入れまして、それらのものを入れまして作つておりますのが、大体十九ミリの鉄鋼で一トン四万六千円しております。これが仮に支那から入つたといたしまして、三分の一で値段が済むというときに、それが幾らになるかということを私自身でやつて見ましたところ、それは四万円であります。その差は言われているほど決して大きくないのであります。そういうところからも、この支那から若し物が入つたならば、非常に日本の物が安くなりやしないかということは、過大評価されているということも申し得るのであります。
○兼岩傳一君 四万に対する十九ミリの前の数字は幾らですか。
○説明員(黄田多喜夫君) 四万六千……。
○兼岩傳一君 四万六千が四万円になるのですか。
○説明員(黄田多喜夫君) そうです。
○兼岩傳一君 これは、それじや一つこの資料をあとで御提供願えますね。正確な数字として。願えますか。
○説明員(黄田多喜夫君) はい。
○兼岩傳一君 それじやもう少しお伺いいたしましよう。現在の貿易の状態を少しあれして見ましよう。現在非常に貿易が不振であると、併し特需だけは大体非常に伸張しておると言われますが、如何ですか。
○説明員(黄田多喜夫君) 総観的に申しますと、恐らくそういうことになるかも知れません。と申しますのは、特需関係が大体今一日平均百万ドル少しそれから割りますけれども、大体百万ドル、年間にいたしまして約三億ドルでございます。去年の貿易の輸出の総額が約十億ドルだつたかと思いますけれども、その割合がそのくらいでありますから、只今輸出が少し伸びなかつた、或いは輸入が不振であつたとかいうことから申しますと、特需のほうが割合にうまく行つている。うまく行つていると申しますか、数字が相当大きいということは申し得ると思います。
○兼岩傳一君 十億のうちの……、十億に対する三億ですか。
○説明員(黄田多喜夫君) そうです。
○兼岩傳一君 然らばこの輸出の不振の原因はどこにあるか。日本の機械が東南アジアの国際入札等でいつも敗北を喫しておる。その原因はどこにあると見ておられますか。
○説明員(黄田多喜夫君) 物が高いからです。日本の物が高いからです。
○兼岩傳一君 物、特に何が高いか。
○説明員(黄田多喜夫君) 一般に高い。(笑声)
○兼岩傳一君 鉄鋼価格が高い……、機械の製作費のコストの大部分は鉄鋼だから、鉄鋼の価格が高いということが、東南アジアの国際入札で勝てない決定的な原因と考えられませんか。
○説明員(黄田多喜夫君) 先ほど引用いたしました鉄でありますけれども、このうちアメリカの鉄鋼石と粘結炭とを使いましたその占める部分は、それらの二つの原料が占める部分は一七・五%であります。それほど大きくありません。而も日本の鉄鋼は高い。こういうことになつております。従いましてこれらが高いが故に鉄が高いのだということは申し得ないのであります。
○兼岩傳一君 そうすると一七・五は何によるものですか、何によるものが一七・五%ですか。
○説明員(黄田多喜夫君) 只今申上げましたアメリカから只今強粘結炭……アイアン・オアとか、キング・コールとか入れております。それがスチールになる場合に、その二つの原価がどのくらい占めておるかということを研究しました結果、一七・五%であります。
○兼岩傳一君 そうしてその一七・五の原料の高さから来るところの鉄鋼価格の高価なために、国際入札で敗北を喫しておるというのに対して、どういう数字を占めておりますか。わかつておりますか。
○説明員(黄田多喜夫君) 御質問の趣旨がよくわからない。一七・五%ということも申上げました。それから若し仮に中国から石炭や鉄鉱石が入つて来て、それが三分の一で入つたとしたら、どうであるかという数字も申上げたのであります。従いまして日本の製品が高いというのは、その原料が向うから来るが故にという部分は、それほど大きくなくて、ほかに原因がありやしないか。ほかの原因というのは究明しなければなりませんが、もつと或いは合理化もできやしないかというような説もあります。それ以上只今何が原因かということは、これは只今のところ、ここで申上げるだけ私は資料を持つておりません。
○兼岩傳一君 調査できておりますか。
○説明員(黄田多喜夫君) 調査をやつております。やつておりますけれども、なかなかむつかしくて、そう簡單にできるものじやありません。とにかく只今行なつておりますことは、私が申上げますように、アメリカから原料を取つて来ておる部分が占める割合はそれほど大きくない。こういうことであります。
○兼岩傳一君 一七・五という数字を一応承認すると仮定した場合に、アメリカから高い鉄と石炭を持つて来ないで中国から持つて来ても、到底東南アジアの競争に勝てないという結論は出ておりますか。
○説明員(黄田多喜夫君) これは断言できません。と申しますのは、一七・五%、これを三分の一で持つて来たらその数字がどのくらいになるか、恐らくそれほど少くならんと思う。只今入札でやつておりますのは、そのパーセントよりも、もつと日本のほうが高いということになつておりまするので、恐らく分析いたして見ますると、中国からのものを持つて来ても必ずしも勝てるという結果は出ないだろうと私は予想いたします。
○兼岩傳一君 どのくらい高くて、どういうところに原因があるかということについては目下調査中ですか。調査しておられるわけではありませんか。今日でなくても頂けますか。
○説明員(黄田多喜夫君) しております。
○兼岩傳一君 いつ頂けますか。この国会中に間に合いませんか。
○説明員(黄田多喜夫君) それは私のほうでやつておりますが、いつできるか、これは申上げられません。
○兼岩傳一君 それでは鉄と石炭については一七・五%という数字であなたがそういう一応の説明をされたが、その先は何もわかつておらない。これは御調査を願うということにして、塩はどうですか。塩について、一切の化学工業の基礎である塩の問題は如何ですか。若し調査ができてなければあとで資料を頂戴しても結構です。
○説明員(黄田多喜夫君) 塩は、これは無論中国から入れば、これに越したことはないのであります。それが入りませんがために、地中海塩というものを買つております。のみならず中国から塩が入つて来るということになりますれば、これは私のほうでは喜んで入れるのでありまして、入つて来ないが故に買えないということになつておるだけなんであります。
○兼岩傳一君 僕は今あなたの説明されたそういう程度の答弁で、僕は日本とアジア大陸との提携を拒否するような平和條約の第五條の三の後段で「国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供與を愼むこと。」これを基礎にして中国との貿易が阻害され、延いてはソヴイエトとの貿易或いは北洋漁業等との決定的な制限を受ける條項に対して十分正しくエステイメートされた報告とは思えませんけれども、いずれも今調査中だそうだから、一つそれを頂戴することにして、第二の問題をお尋ねしたいと思うのです。 第二の問題は、これも今朝大臣へ言つたから、もう一度細かに繰返すことは避けたいと思いますが、今のは輸入の問題ですが、今度は輸出の問題になるのですが、日本の生産品が中国に輸出されない結果として、中国がソ連ブロツクの中に供給を求め、中共の市場が永久的に失われる危險を持つておる。これは日本経済にとつて極めて重大だ。これは九月の二十七日ホワイト・ハウスの国家安全保障会議の報告によるのですが、これに関連してバトル法によつて第一次重要戰略物資品目、第二次重要戰略物資品目、この第二次重要戰略物資品目は、日本政府と協議されるということになつておりますが、この関係、輸出について中国市場の占める重要性と、現在のような状態を続けて行くと、日本の市場が永久に失われる危險性を含んでおるという問題、これらについての説明をお願いしたい。
○説明員(黄田多喜夫君) 今朝ほどもあなたから、九月二十七日に坂井通信員が国家国防委員会の所論であるかのごとくに申されまして、今あなたがお述べになつたようなことをおつしやつたのでありますけれども、そんなことを私は国家国防委員会が言うはずがない。恐らくこれは坂井君の、或いは誤訳であるか、或いは自分の意見を言つたのか、或いはそういうことを言つている人があるということを言つていたのか、とにかくいずれにいたしましても、アメリカの国家国防委員会がそういうことをいうはずは私はないと思うのであります。その点、私、資料も何もありませんから、誰が言つたんだと申上げるわけには行きませんけれども、あなたが国家国防委員会の意見としてそういうことを言つているとおつしやるのは、恐らく私は誤りだろうと思うのです。従いましてそれを前提といたしましたところの御質問は私は意味をなさないと思うのです。
○兼岩傳一君 九月二十七日のホワイト・ハウスの国家安保会議の報告レポートというものは来てないのですか。来るとしてもまだ日にちの関係で来ていないのですか。若しも来てないのなら、あなたの答弁は甚だ僣越且つ独断ですね。来ているものを基礎にしてあなたは所論を立てるべきで、架空のまだ見てないものを通してそういう僣越な答弁は許されないですね。来るべきものが来てないのですか。事実こういうものは発表されていないという事実の確認の上に立つてのあなたの意見ですか。
○説明員(黄田多喜夫君) それは来ているかどうか、私、知りません。知りませんけれども、そういうことを言うはずがないということを私は確信を持つて言えるのであります。と申しますのは、私は四月から八月まであそこにおりまして、あそこで働いて、現にあそこの空気も私が今恐らく一番よく知つているだろうと思うのです。そんなことを今、国家国防委員会が言うはずがないということを私は確信を持つて申上げます。
○兼岩傳一君 君が八月までいたとかそんなことは僕の知つたことじやないのだ。僕はそういう君が物識りであるかどうかを言つているのじやなくて、九月二十七日付のプレス・コード下の日本の新聞が伝えておるからだ。若し新聞がそういう勝手に嘘を言うなら、これはプレス・コードで取締つたらいいだろう。民主的運動だけ取締つておいて、こういう重大なものを、君が軽軽に新聞記事に対して不信用の意を表明するならば、君は十分な責任をとつたらいいだろう。僕はそういうことを言つておるのじやなくて、今ここにあるところの資料によれば、九月二十七日のホワイト・ハウスの国家安保会議のレポートとして報告されておる、それを基礎にしておるのだ。だから、君がそういう僣越な言辞を弄して、そういう独断的な答弁をするならば、その責任をとつて、こういうレポートが出ているか、出ていないか。若し出ているとすれば、出ている中にそういう記事があるかないか。そういうことを基礎において国会において答弁してもらいたい。そういう自分の意見を何らの物的基礎もなくてそういう僣越な答弁をするということは重大な責任問題だと思う。僕はこの調査を要求します。委員長に対して……。この九月二十七日のレポートが出ておるか、出ていないか。若し出ていないものを勝手に坂井特派員が出ておるとして報道したならば、これは重要なプレス・コード違反である。それから新聞がプレス・コード違反を侵しているのか。君の僣越且つ極めて独善的な答弁が正しいのか。これを明快にして頂きたい。委員長に僕はお願いします。
○理事(楠瀬常猪君) 委員長においてさよう取計らいます。資料の点につきましては……。
○兼岩傳一君 そういう僣越な態度の政府委員に僕はこれ以上今日聞こうと思つていない。だから先ほど約束した今のレポートの問題とそれから鉄の計算、鉄の十九ミリのバーの四万六千円と四万円の計算を直ちに提出されたい。これは明日でも提出されたい。それから一七・五というパーセントの基礎を明確にされたい。それから東南アジアにおいて日本の機械が何故にどういう事情で勝てないか、なぜ我々の国の製品がそのような敗北を喫しておるかという点を、できるだけ速かに、この我々の国会の審議に間に合うように提出願いたい。それだけを委員長へお願いして、この政府委員に対する私のこの問題についての質問は打切りたいと思います。それから、あなたからの僕へのメモとして第三章についての質疑の全部をやつてよろしいという御趣旨ですか。
○理事(楠瀬常猪君) そうであります。
○兼岩傳一君 これに対しては法務総裁でないと答えにくいと思うのですが、私の質問したいのは第五條の(c)に対してですね。ここに明確な矛盾、この平和條約自身の中に持つている矛盾、これに対して質問がしたいのですが、如何でしよう。
○理事(楠瀬常猪君) 兼岩委員、あの通告は法務総裁に出してございませんので、どういたしますか。
○兼岩傳一君 大隈委員長に申出て承認を得てあります。
○理事(楠瀬常猪君) ああ、そうですか。今の事柄につきましては外務省のほうの答弁ではいけませんでしようか。
○兼岩傳一君 そうですね……。
○理事(楠瀬常猪君) 所管は外務省の所管になつておるように思われるので、お聞きになつては如何でございましようか。
○兼岩傳一君 そうですね。わかるだけ明らかにして、どうしてもわからんところは讓るということを御承認下さるならば、問題の点を明らかにしたいと思います。いいですか委員長、草葉次官がお答えになるのですかね。(笑声) 問題が二つに、二重に矛盾していると私は考えられるのです。その論点は、信託統治と安保條約の関係だから、これは安保條約の場合に讓つてもいいのですがね。それじや信託統治に関連するところの国連憲章との関係を質してみましよう。この第五條の(c)によりますと、連合国は「日本国が主権国として国際連合憲章第五十一條に掲げる個別的又は集団的自衞の国有の権利」を持つておる。この問題なんですが、私はこの條項は非常な大きな問題を含んでいると思うのです。全体として……。というのは、個別的又は集団的自衞の固有の権利、つまり自衞権はこういうような形で日本に許されるのが元来の国連憲章の精神でなくて、突然侵略が行われ、安保理事会によつて国連全体としてのそれに対する対抗措置がきまるまでの応急措置として取りあえず自衞権を発動するということであるですね。これは当然日本が独立して、そうして十分独立国として国際連合へ入ればいいのに、ここに平和條約の形であわただしくこれが挿入されて来ておるということ、これに対して私は非常に疑問を持つのですが、外務当局の御見解は如何でしようか。
○政府委員(草葉隆圓君) これは再三従来から御答弁申上げましたように、国際連合憲章第五十一條にありまするいわゆる自衞の権利、これは完全主権を回復いたしました日本といたしましては、当然固有の権利を持つておるという解釈は妥当であると存じます。と同時に、更にこれを第五條におきまして、(c)項として、はつきりと連合国としては、これを、日本の持つておりまするこの固有の権利、その固有の権利に基いて日本国が集団的安全保障の取極を自発的に締結することをここで承認いたすという態度をはつきり示したのであります。従いまして、いわゆる完全独立いたしました後におきまする日本の固有の権利の明白なる現われでありまするから、何も突拍子もないところに突拍子もなく出たというものじやないと思います。
○兼岩傳一君 そう言う僕の質問は、二つあるのですけれども、その一つのほうは、日本がこの五十一條に掲げる個別的集団的な自衞の固有の権利というような字句は、同じ字句は使つてあるけれども、本来国連憲章の考えておるものと全然違つているのじやないかという一点がありますが、これはあとにして、この第五條そのものを問題にして、当然平和條約が結ばれて、無論我々は全面講和を言つているのですが、この際はこれで目的が達成できるのだそうだから、独立を達成できると仮定して、そうして、その上で改めて全国民の協賛の上に国連に加盟し、そうして国連に加盟して第二條のもろもろの七項目の條項を受諾すればいいのに、この平和條約で非常に急いでこの第二條を受諾しなければならない、こういう平和條約の構造になつたのはどういうわけですかということです。
○政府委員(草葉隆圓君) その御趣旨がはつきり実は却つて呑み込めないのでありまするが、完全独立をしてから、そうしてゆつくり考えて国際連合に加盟を申請し、加盟を申請してから、この條項が当てはまる……、国際連合憲章は、御承知のように世界の平和と安全とのために世界のもろもろの国が六十カ国集まつてその目的で進んで行く。従つて日本が独立いたしますると、当然それらの状態における国際関係に入つて行く。従つてこれは如何なる状態になりましても少しも矛盾はないのであります。
○兼岩傳一君 独立を達成してからでいいじやありませんか。何も独立を達成しないうちにこういう平和條約そのものに入れてする必要はないじやございませんか。
○政府委員(草葉隆圓君) 独立を達成いたしますると同時に、当然固有の権利は生ずる次第であります。
○兼岩傳一君 だから、その独立した上で加盟したらいいじやありませんか。
○政府委員(草葉隆圓君) このような国際間における国際連合憲章の精神は、当然独立国となると同時に、日本は世界の仲間に入るならば、これを承認してかかるというのは当然なことであると存じます。従つて独立してからゆつくり考えるというような問題じやないと思います。
○兼岩傳一君 僕はゆつくり考えるとは言いませんよ。独立してそうして正規なる立場を以て入ればいいので、まだこの独立するための平和條約の中にそれが一部分拔き出されて、これに入れる必要はないではありませんかという正論のつもりなんですがね。
○政府委員(草葉隆圓君) それは独立に当つてなすという意思表示を、この独立の根本の法典としての平和條約の中に申した次第であります。
○兼岩傳一君 なぜですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 繰返すまでもなく、先に申上げた通りであります。
○兼岩傳一君 どういうことですか。どうしていけないんですか。
○政府委員(草葉隆圓君) いけないということよりも、今やるほうがいいということは当然じやないですか。その逆に……。
○兼岩傳一君 なぜですか。
○政府委員(草葉隆圓君) そういうことを水掛論したつてしようがありませんけれども、全文をよく御覽になりますると、全文におきましては、全文と申しますのは、全体の文章であります。あとで申しまする前文は、前の文章であります。全体の平和條約の全文を御覽になり、同時に前の前文を御覽になりますると明らかに示しておりまするように、日本は従来の戰争状態から、そのあと仕末のために平和條約を作る。作る以上は、現在の世界の情勢において国際連合憲章におけるこの考え方において世界の安全と平和と世界の国々が守ろうとしておる、それに当然日本も加盟を申請して、同時に独立しまする以上は、固有の権利は当然、完全主権を承認いたしまする以上は與えられることは当然であります。
○兼岩傳一君 独立してからゆるゆるやつちや工合が惡いような御趣旨なんですけれども、僕はゆるゆるやれというんじやなくて、正規の独立を達成した上で入るという正しい態度を、正規の態度をとらないで、取急いで平和條約の中に入らなければならない……。今、而もあとで質問すると、私の趣旨がもつと明快になりますが、全面的適用でなくて、第二條だけをここに持出して来て、これだけを特に承認するというような応急処置を、非常手段をとらなければならないところの根拠は何かということです。
○政府委員(草葉隆圓君) 只今の御質問は、第五條にありまする国際連合憲章の第二條をここへ置いた根拠はどうか、こういう意味であろうと思います。御承知のように国際連合憲章におきましては、第二條におきまして七つの義務を明記しておりまする中で、これは当然七つの義務を全部加盟国は負い、又日本が加盟いたしますると、当然その義務を負うのでありまするけれども、殊にその中心である、そして大戰争のあとに問題の解決として起すこの平和條約の中には、ここにありまする(i)、(ii)、(iii)、いわゆる平和的手段によることと、武力の排除によることと、防止並びに強制行動に対すること、この三つを特に中心になる問題として取上げたわけであります。
○兼岩傳一君 それではお尋ねしますが、第二條は義務だけでなくて権利も規定しておるのです。特に第六、第七、つまり国際連合は決して内政干渉はしないんだという七をわざわざ拔いたのはどういうわけですか、そういう権利を……。
○政府委員(草葉隆圓君) これはわざわざ拔いたというよりも、その中で特に重要なる平和の問題としての国際連合の義務の問題を三つ取上げて参つたのであります。従いましてこれらの問題については、日本がこの義務を負いますると同時に、この平和條約における連合国もこれと同樣な意味におけるこれらの問題に指針としてこれを持つて来る。こういう態度をとつたのであります。
○兼岩傳一君 だから僕が質問しているのでしよう。つまり国際連合に対する義務、同時に国際連合が日本に対して持つところの義務、この第二條の第七にあります内政干渉は決してしないのだと、こういう国際連合の憲章から言えば最も重大な條項を、なぜこれを拔いているかということです。
○政府委員(草葉隆圓君) 当然なことであるからです。
○兼岩傳一君 なぜです。どうして当然です。
○政府委員(草葉隆圓君) 完全な独立をする以上は、その国内の政治その他に対する干渉というものは全然起り得ないのが国際連合憲章の精神です。
○兼岩傳一君 当然だということを言うのだつたら、大抵の法律は大抵皆当然なことを規定しておるのであつて、当然だから規定しないのだと、こういう御趣旨ですか。つまり、わかり切つているからというのですか。
○政府委員(草葉隆圓君) これは、先に申しました七つのうちで特に重大なる第二條のこの目的の中の三つを取上げて、これに規定して来た、かように申上げたのです。併し内政干渉というのをここに入れておらないじやないか、従つて内政干渉の余地があるじやないかという意味を含んだように聞えました御質問であつたかとも実は存じまするが、併し国際連合加盟国は当然この第二條によつて全部これを履行する義務を帶びておりまするから、さような心配がないというのであります。
○兼岩傳一君 だから僕の最初の質問はここで明快でしよう。当然独立して正規の順序を経て国際連合に入れば、あらゆる国際連合に対する日本の義務を果すと同時に、国際連合また日本に対して義務を持つという全面的な適用になればいいものを、特にこの二條の中から日本の負うべき義務的なものだけを持つて来て、そうして日本に対して保障さるべき内政干渉の重要な原則を入れない。こういうやり方についてもあなたは説明できませんですね。
○政府委員(草葉隆圓君) それは平和條約の持つておりまするいわゆる戰争のあと始末として日本が受けまするこの條約の性格からしても、これは当然なことだと思います。
○兼岩傳一君 あなたがそういう答弁をされるのは、先ほど僕はちやんと聞いて驚いたのですが、この内政干渉をしないということは、平和の問題と大して関係がないと、あなたは言われたですね。そういう認識ですか。
○政府委員(草葉隆圓君) そうでは全然ないことは、国際連合憲章に明記しておる通りであります。
○兼岩傳一君 然らばなぜこの平和條約にこの第七が当然載せられないのですか。
○政府委員(草葉隆圓君) それからの問題よりも、これらの問題が中心であるから、これらの問題を取上げただけです。
○兼岩傳一君 私は、この内政干渉を国際連合がするものでないという、この七を非常に軽く、或いは取りわけて平和條約にとつて必要でないかのごとく草葉次官が答弁されるのは、実に賛成できない態度だと思うのです。朝鮮問題であれ、ヴイエトナムの問題であれ、およそ今後日本の問題において草葉次官も目を以てそれを見られるであろうと思うが、今後起きて来るであろう問題は、内政干渉の問題、あなたがたがそもそも真空状態ができるとか、或いは中国、ソヴイエトが侵略して来るなどということを非常に宣伝これ相努めておられるのですが、こういうことは、国の独立運動ということに国際連合の名において干渉をするということは、重大なこれこそ内政干渉であつて、その民族の問題は、朝鮮の問題は朝鮮人に任せろ、中国の問題は中国人に任せろ、日本人の問題は日本人に任せろという根本的な大原則、これが国連憲章の第二條の七で、このような重要な條項がわざわざこれから削除されて、そうして他の義務的な、例えば国際連合のためにはあらゆる援助を與えますとか、云々、云々と、こういう義務のほうばかりを負つて、将来日本の平和と独立の問題を根本的に保障するであろうこの第二條の七が入れられていないということは、あなたのもう少し明快な説明が必要だと思いますね。国民、納得しませんよ。
○政府委員(草葉隆圓君) これは、これ以上明快な説明は誰がしてもできないと私は実は考えております。それは国際連合憲章の本質が内政干渉はしないという本質の下に立つておるので、そうして、その殆んど多くの国々が日本との戰争状態の終結のために平和條約を結ぶ、その結ぶ場合に、従来いわゆる軍国主義と言われておりました日本が、今度そういう状態を脱ぎ捨てて新らしい日本になつて行く場合に、この第二條の問題の中で、特に七つの問題ではこれこれこれの三つを、いわゆる平和的手段、或いは武力排除、或いは国連協力というこの問題を最も中心に取上げて来ることは、これは当然じやないでしようか。特に私はこの点は、はつきりと一つお答え申上げる。むしろこれに第七項が入つておらないから内政干渉というような印象を與えるじやないかという兼岩君の御疑念には、全然納得できないし、同意できない。
○兼岩傳一君 それではちよつとお尋ねいたしますが、この「第二條の原則を指針とすべきことを確認する。」と、これはどういう意味ですか。
○政府委員(草葉隆圓君) これも再三実はお答え申上げたのです。この平和條約でいう連合国の中に、国際連合に加盟しておりませんのがセイロンとヴイエトナム等の四国があり、従つてその意味がありまするので、指針という言葉を使つております。
○兼岩傳一君 そうすると、七とは関係ないのですか。はつきり承わつておきたいのですが、七の問題をこういう形で省略的に不満足ながら入れておると解釈すべきですか。七は明確に拔いておるのですか。
○政府委員(草葉隆圓君) (b)にありまするように、「連合国は、日本国との関係において国際連合憲章第二條の原則を」と書いておりまするから、第二條の原則、それは国際連合憲章に御覽の通りに出ておりまするから、その第二條全体の原則を指針とするということになつております。
○兼岩傳一君 そうすると、大分あなたの今までの説明と違つて来るようですね。つまり全然拔いておるのではないかという質問に対して、あなたは肯定されたけれども、明らかにここではどちらでも逃げられるような形に、原則とするという程度にぼやかして、七に対しても内政不干渉の一応責任を負うと、こういう意味にもとれるのですね。この辺は若し何なら條約局長でも結構です。
○政府委員(草葉隆圓君) これは先ほども申上げた通り、何遍申上げましても、この第二條の中にある七項の中で三項を取上げた。併し(b)項においては、国際連合は当然に日本に対して義務を負うと同時に、国際連合の中には連合国で入つておらない国もあるから、これらの入つておらない国も当然これを義務付ける意味において指針というのを持つて来たのです。
○兼岩傳一君 そうすると、この第二條の原則の中には全部を含んでおるわけですね。
○政府委員(草葉隆圓君) これは第二條にあります通りであります。條文の通りであります。
○兼岩傳一君 條文の通りだつたら、あなたの説明は違いますよ。数カ国ではなくて全連合国と日本との関係においてこの第二條の原則は全部指針とすると、こういうことじやありませんか。
○政府委員(草葉隆圓君) 先の御質問に、(a)項において何で三項だけを取上げたかという御質問であります。今のは、(b)項においては何故に指針ということになつておるか、こういう意味でございました。それで、そうではないと申上げたのであります。
○兼岩傳一君 同じ問題ですよ。
○政府委員(草葉隆圓君) 国際連合加盟国は、当然ここに書いておろうがおりますまいが国際連合憲章の第二條を服膺することの義務があります。併し入つておらない国もありまするから、従つて(b)項に念のためにここと指針という言葉を使つてあるのです。
○兼岩傳一君 そうすると、七は入つておらないのですね。こういう非常にぼやかされた形において……、入つているのですか、入つていないのですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 先に申上げた通りに、七ばかりではありません。第二條の全部、いわゆるここにはつきり書いてある国際連合憲章、(b)にありまするように、憲章に従つて、国際連合憲章の第二條の原則は七つあります。
○兼岩傳一君 次に(c)についてお尋ねします。(c)は先ほどちよつと私が言つたように、元来こういうものでなくて、これは五十一條の自衞権の行使に当つて安保理事会がこの必要な措置ととるまでの間の自衞権の問題である。ところが字句は非常に似た字句が使つてあるけれども、ここに出て来ておる、この平和條約に出て来ておる(c)としては、何らそういうことでなくて、あたかもそういうことであるかのごとく、軽卒に読むと錯覚を起しそうな形で出て来てはおるけれども、併しそういう安保理事会、世界平和の維持について根本的であるところの五大国の平和的強調、それのこの国際連合での現われとしての安保理事会、拒否権を持つた安保理事会というものを通すという形において、世界平和を維持して行こうとする、最も国際連合憲章の重要な個所を、一番大事な所を、ちよいと飛び越えてしまつて、連合国としては、日本が主権国として個別的又は集団的自衞の固有の権利を有すること及び等々というふうに、国際連合の字句は非常に使つておりますが、つまり五十一條に規定するところのこの自衞でなくて、平和條約、この單独講和、英米一辺倒的な意味の自衞権という形になつておると考えざるを得ないが、五十一條におけるこの個別的、集団的な固有の自衞権というこの五十一條と、平和條約の五條の(c)とはどういう関係になるか、明確に説明が欲しい。
○政府委員(草葉隆圓君) (c)の中に五十一條のことをはつきり書いてある。よく御覽になればわかる。
○兼岩傳一君 そうすると、安保理事会が必要な措置をとるまでの自衞権なのですね。イエスですか、ノーですか。最初の質問の枝ですよ。日本が正式に独立を獲得して全面的に国際連合に入るなら問題はない。ところがそもそも拔き出して、そうしてこういう形で国際連合に入つたような入らぬような、入らぬような入つたような、義務だけを受けるような、こういう形で出て来ておるということがどこにあるかという質問、これは当然あなたとしては例の真空説、或いは中ソの日本侵略、そういうところへ持つて行かなければ説明つかんだろうと思うけれども、今日はそういう議論の御展開がなくて、甚だ物足りなく僕は思う次第です。それを僕は蒸し返す必要がないので、強いて蒸し返さないで、純法律的な立場で御質問申上げておるわけですが、この(c)は五十一條の個別的又は集団的な固有の自衞権、これなんですか。つまり安保理事会は国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの暫定的措置ですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 当然五十一條の措置でございます。固有の権利でありますから……。
○兼岩傳一君 そうですか。
○政府委員(西村熊雄君) そうです。
○兼岩傳一君 それでは僕はもう一つの質問がありますけれども、これは安保條約との関係において取上げる問題ですから、今日でなくてよろしうございますから、安保條約のときに質問いたします。 なお草葉次官かち頂いた答弁は、甚だどうも、二、三僕の、何といいますか、意に満たないところがありますから、そういう点をあとで整理して、ものによつては法務総裁にお尋ねしたい。
○理事(楠瀬常猪君) 本日の質疑はこれで終ります。明日は午前十時から委員会を開くことにいたしまして、本日はこれで散会いたします。 午後四時四十五分散会