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12回国会参議院1951/10/26

平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第4号

発言数
7
登壇者
5
会派数
3
開催日
1951/10/26

会議録

大隈信幸国民民主党

○委員長(大隈信幸君) 只今から委員会を開きます。  本日は吉田総理大臣、草葉政務次官及び西村條約局長から提案理由の説明を伺います。

吉田茂自由党内閣総理大臣・外務大臣

○国務大臣(吉田茂君) 平和條約と安全保障條約の内容や趣旨につきましては、本会議における施政演説におきまして説明をいたしましたし、今更繰返すほどのこともないように思いますが、政府といたしましては、国民の総意を体して交渉に当つたつもりでございます。又平和條約については、これが可能なものの最上なものと信じ、又安全保障條約については、現在の国際情勢の下において日本の安全と独立を確保する道は、これ以外にないと確信いたして締結いたした次第であります。従つて両條約は形式的には別個の條約でありますが、実質においては関連一体をなすものであります。故に両條約が共に国会が速かに大多数を以て承認せらるるよう対外関係から申しても切望するものであります。衆議院の委員会の経過を見ますると、なお空理空論を弄ぶと申しますか、或いは我が国の国民性に自信を欠き或いは為にする宣伝を行い、国民にいわれなき不安感を醸成しつつあるように考えられるのでありますが、信頼と和解の精神を以て我が国に自由と独立を與え、我が国を国際団体に迎えんとする諸外国の好意を惡く解するがごとき言辞を弄せらるるのは、私の甚だ遺憾とするところであります。  サンフランシスコ会議は我が国に対して好意と信頼と期待の会議であつたのであります。然るになおこの條約を以て平和を脅かす條約であるとか、平等独立を與えざる條約なりと妄評をなし、或いは共産主義の脅威を更に誇張するような嫌いのあるのは、私の誠に遺憾とするところであります。我が国は明治維新以来、興国の機運に乘じ国威頻りに揚りました結果、勢いの赴くところ遂に逆に不当に隣国に脅威を與え、又従つて国際間に誤解猜疑を起し、遂に開戰になり、惨敗の苦を拓くに至つたのでありますが、他国の脅威に対し恐怖、戰慄を感ずるがごときは曾つてなかつたのであります。今に至つて共産主義の脅威を感じ、戰争の脅威を云々して我が国の独立の前途に対して危惧の念を抱くがごときは、今日祖国再興の気概どこにありやと疑わざるを得ないのであります。  明日からの御質問に対しましては、政府として十分御納得の行くように説明いたしたいと考えております。  引続き草葉政務次官及び事務当局からそれぞれ提案の理由、逐條説明をいたさせますから御聴取を願いたいと思います。

草葉隆圓自由党外務政務次官

○政府委員(草葉隆圓君) 只今議題となりました平和條約及び安全保障條約につきまして提案理由を御説明いたします。  先ず平和條約について申し述べます。御承知のごとく、わが国が一九四五年八月十四日にポツダム宣言を受諾いたしまして以来、我々は、日夜忠実にその條項を履行し、連合国、延いては世界のすべての国々との友好平和の関係が一日も速かに回復せんことを希望して来た次第であります。平和の回復のためには、これまで戰争状態にあつた国と平和條約を締結しなければなりません。我々はその日を鶴首して待つたのであります。併しながら我が国のこの希望は、我々の力では如何ともなしがたい国際間の情勢によつてその実現が延引に延引を重ねて参りました。すでに一九四七年即ち昭和二十二年三月に、時の連合国最高司令官マッカーサー元帥は、「今や平和條約のための会議を開始する時機が到来しておる」ことを声明いたしました。同年七月十一日、平和予備会議の招集に関する提案が米国政府から発せられたのでありますが、この米国の提案、即ち極東委員会の十一カ国で会議を構成し、三分の二の多数決による議決方式を主張いたしましたこの提案は、手続問題に関する関係国間の意見の対立によつて、約半年の外交交渉の後、一応見送られる形となりました。この状態は、その後一九四九年夏に至り再び対日平和促進の問題が、米国において取上げられるまで続いたのであります。  一九五〇年の四月には米国の共和党のダレス氏が国務長官顧問として対日平和問題を担当するに至りました。間もなく朝鮮に動乱が勃発いたしましたが、同年九月十五日、トルーマン大統領は、すでに日本が国際社会に復帰すべき十分の資格があることを述べました。爾来米国政府は、極東委員会構成諸国と非公式会談を行い、十一月二十四日、いわゆる講和七原則の基礎案を公表するに至りました。本年一月下旬にはダレス特使が来訪し、日本政府当局及び各界代表と意見の交換を行いました。三月末には、関係連合諸国との折衝の結果得られました対日平和條約に関する米国案の全貌が明らかにされた次第であります。その後、更に関係国間に交渉が重ねられ、一九五一年七月十二日、対日平和條約案の全文が米英両国政府により公表されまして、連合国五十一カ国がこの條約の署名会議に招請されました。條約案はその後更に各国の意見を入れて改正を加えられ、本年八月十五日最終案が公表されました。会議の招請を受けた国は、仏印三国を加えて結局五十五カ国となりましたが、インド、ビルマ、ユーゴースラヴイアが参加しなかつたので、結局日本を含めて五十二カ国が会議に参加いたしたのであります。  こうした経緯の後、去る九月八日サンフランシスコにおきまして、日本及び連合国四十八カ国により、平和條約の署名を見るに至りましたことは、誠に御同慶の至りであります。その間の事情の詳細につきましては、すでに周知のことでありますので、ここに繰返し御説明いたしません。これが本日本院の御審議に付せられることになつた平和條約であります。  この極めて簡單な経過の回顧からも推測されますように、この平和條約は、長い月日に亙る連合諸国特に米国政府の熱心な努力及び複雑な折衝を経て、多数の関係国の意見調整の結果、初めて成案を見たものでありまして、この種の国際間の意見調整が極めて困難な時代に、かくも多数の国による平和條約の署名にまで漕ぎつけた努力に対して、敬意と感謝の意を表明するものであります。若しわが国にしてこの機会を逸せんか、待望する平和條約の締結は、又々見通し困難の状態に陥り、これがために生ずる我が国の不利益、延いては世界の損失は、測り知るべからざるものがあつたであろうと確信いたすものであります。  條約の内容については、後ほど逐條説明を行いますので、ここに一々申し述べません。ただこの條約について注目すべき諸点を次に簡單に出し述べることといたしたいと存じます。  この平和條約の基調とするところは、和解と信頼の精神であります。誠にこの「和解と信頼」の精神は、降伏後連合国側に立つて共同交戰国として対独戰争に加わつたイタリアに対する講和にも見られなかつたところであります。勿論和解と信頼とが條約を流れる精神であるとは言え、平和條約は、日本が敗戰国であるといる事実そのものを否定するものではありません。領土條項、財産及び請求権の條項など、個々の場合に我々が苦悩と憂慮とを禁じ得ない規定も存することは事実であります。併しながら條約に盛られた一般的な内容は、過去の諸平和條約に比し寛大且つ公正であると言えるのであります。  安全保障については、第三章で規定するように、日本は国際連合憲章第二條の原則に従つて行動すべきことを約束し、同時に連合国においても日本との関係において同様の原則の下に行動することを明らかにいたしております。又わが国の将来に関しては、政治上経済上の永久的制限乃至は特別待遇を受けないことは勿論、軍事上の制限すらもこれを受けることかないのであります。これは、戰争を開始し、これに敗れた我々の世代にとつては、相携えて祖国の再建に邁進する勇気を與えるものであり、又後世に対しては、我々が残し得る最大の遺産であると確信いたすものであります。  この平和條約の関係文書として同時に署名された議定書及び二つの宣言があります。これらの文書は、内容上平和條約と一体的な関係に立つものでありまして、平和條約と共に一括御承認をお願いする次第であります。  これを要するに、現在我々が最も待望するものは、完全な独立と自由の速かな実現及び世界各国に対する完全な平和関係の速かな回復であります。而してこれら二つのものは、平和條約によらなくてはこれを求めることができません。これが、政府がこの平和條約を締結せんとする理由であります。諸般の情勢から明らかのように、連合国は先ず我が国がこの條約を批准することを希望いたしております。何とぞ愼御審議の上速かに御承認を與えられんことを切に希望いたします。  次にに安全保障條約について申し述べたいと存じます。国際の現状は、無責任な侵略主義がなお跡を絶つていないのでありまして、これに対しましては、集団的防衛の手段をとることが今日国際間の通念であります。平和條約の効力発生により独立と自由を回復した暁におきまして、わが国は軍備を有しない状態にあるわけでありまして、我が国といたしましては、自己の防衛延いては極東の平和、又世界の平和のために何らかの集団的防衛の方法を講ずることが是非とも必要となつて参るのであります。これが日米安全保障條約を締結するに至つた理由であります。  日米安全保障條約は、平和條約と同日にサンフランシスコ市におきまして署名されました。この條約により武備なき我が国の独立回復後における安全についても一応の安心が得られる次第であります。平和條約の効力発生は、必然的に、暫定的にもせよこの種の安全保障措置を必要ならしめるのでありまして、両者は実質的に密接な関係を有しますることは、只今総理からも申された通り再び繰返す必要もないと存じます。日米安全保障條約の内容につきましては逐條的に後刻御説明申上げたいと存じます。  安全保障條約の署名と同時に吉田首相とアチソン米国国務長官との間に、日本の国際連合に対する協力に関しまして、附属の公文の交換が行われました。この交換公文は、平和條約の第三章、安全の規定に掲げた原則を念のため明らかにすると共に、費用の点を明らかにしたものであります。安全保障條約と一括して愼重御審議の上速かに御承認あらんことを切に希望いたす次第であります。

西村熊雄外務省條約局長

○政府委員(西村熊雄君) 平和條約と安全保障條約につきまして、簡略に逐條説明を申上げます。  平和條約は前文と七章、二十七條からなつております。前文は、あらゆる條約におきまして、その條約ができるに至つた事情と條約の指導精神を謳うのが通例であります。この條約の前文では、連合国と日本とは対等の主権国として協力、提携をする関係に入りたいということを決意したということと、戰争の結果生じた諸問題を解決する平和條約を締結することに決定したということを述べると同時に、日本は国際連合に加盟を申請し、国際連合憲章の原則を遵守し、世界人権宣言の目的実現に努力をいたし、国際連合憲章五十五條、五十六條の原則に従いまして、福祉と安定の條件を創造することに努め、且つ公正なる国際の商慣習の遵守をいたすという意思を宣言いたしまして、これに対して連合国のほうで日本のこの意思を歓迎することを明らかにいたしております。  本文第一章は平和でございます。第一條第一項でございますが、この條約が実施せられると同時に、日本と各連合国との間の戰争状態は終了いたすということが明らかにされております。いつ効力を発生するかは、本文第二十三條に規定があるのでございます。第二項におきまして、連合国は日本国民が完全なる主権を有するということを明らかにしております。  第二章は領土條項でございまして、第二條から第四條でございます。第二條におきましては、日本は朝鮮の独立を承認いたし、台湾及び澎湖島に対する権利、権原、請求権を放棄いたし、即ち領土主権を放棄いたし、千島及び南樺太に対する権利、権原、請求権を放棄いたします。又一九一九年のヴエルサイユ條約に基きまして、委任統治地域に対して有しておりまする権利、権原、請求権を放棄いたしますと同時に、日本が委任統治国となつておりました旧南洋群島に対しまして、合衆国の信託統治制度を承認いたしました一九四七年の安全保障理事会の決議を承認するということになつております。委任統治制度に対する権利、権原、請求権を放棄するという意味は、第一次世界大戰後できましたヴエルサイユ平和條約と対独平和條約に対しまして、日本は五大国の一、又は四大国の一といたしまして、委任統治制度におかれました旧ドイツ植民地及び旧トルコ領土に対して、或る種の権原を持つておる法律上の関係にあるからであります。又日本は南極地域に対しまする権利、権原、請求権を放棄するということになつております。これは一九一二年、我々がよく知つております通り白瀬探險隊が南極の一地域に到達いたしました事実がありますのと、その事実に関連いたしまして、一九三八年日本政府は米国国務省に対しまして、将来南極地域における主権の帰属が問題となる場合には日本の権原を留保いたし、如何なる場合にも日本政府が協議にあずかることを、あずかる権利を留保するということを公式に通告いたしておる次第もございますので、さような主張は今後はいたさないということになるわけでございます。  最後に日本は新南群島と西沙群島におきまする権利、権原、請求権を放棄するものとされております。そのうち新南群島は一九三九年、日本が一方的に台湾の高雄市の管轄に属せしめた地域であります。その群島につきましては一九三三年以来、日本とフランスの間にいわゆる先占権について紛争があつて遂に外交上妥結に達しないで、日本のほうで一方的に領域変更の措置をとつた経緯がある地域であります。西沙群島につきましては、日本は未だ曾つて領有権を主張した事実はございません。ただ中国とフランスの間にこの西沙群島の帰属が問題になつております。今日なお未決の状態にある次第でございます。フランスと中国の間に領有権の争いがある関係上、フランス政府から日本政府に対しても西沙群島はフランス領域に属するものであるという公文を受取つた事実はあるのでございます。  以上が二條でございます。この二條に関連しまして、台湾、澎湖島及び千島、南樺太につきまして日本が領土権を放棄するという面だけを規定いたしまして、この地域の最終的帰属を條約上規定し得なかつたのは、これらの地域の最終的帰属について連合国間に意見の一致を見ることができない問題であるからであると、こう米英代表によりましてサンフランシスコで説明が與えられております。  第三條は、北緯二十九度以南の南西諸島および孀婦岩の南にありまする南方諸島を合衆国が信託統治制度に付する提案をいたします場合には、日本はこれに同意いたすということと、米国がかような提案をなし、それが確定いたすまでの間、米国は同地域及び住民に対しまして立法、司法、行政の権利を行使することができる、こういう趣旨の規定でございます。この條につきましては、米国政府及び英国政府が明白に、第三條の規定は第二條の規定とは違つて、日本に対して領土、主権の放棄というものを規定していないから、これらの地域に対する主権は日本の手に残存するものであるということを説明されておるところは、我々のよく知つておるところでございます。  第四條は、第二條によりまして、日本から離れまする地域との関係におきまして、財産等請求権の処理の問題は、日本とこれらの地域に関連いたしまする当局との間の今後の特別協定によつてきめるという趣旨と、第二條と第三條に掲げてあります地域のうち、アメリカ軍政府が日本の財産を処分したものについては、その処分の効力を日本で認める、こういう趣旨、それから日本から離れる地域と日本とを繋ぐ海底電線があります場合には、それを折半にするということを明らかにしております。  第三章は、安全に関する條文でございまして、第五條と第六條であります。  第五條は、日本は国際連合に加盟をすることに前文で意思を声明しております。併しその国際連合加盟が実現いたします前におきましても、国際連合憲章第二條により原則を遵奉するということを明らかにしますと同時に、第二條に規定しておりまする七つの原則のうち、三つの原則を特に明記いたしております。その三つの原則は、一つは、国際の紛争を平和的に解決するということ、第二は、国際関係におきまして武力の威嚇又は武力の行使を愼しむこと、第三は、国際連合のとる行動に対して援助を與える、又国際連合が強制措置又は防止措置をとつておるこの対象となる国に対して、援助を與えることを愼しむこと、この三つが特に明記されておる次第であります。これは日本が非加盟国であるにかかわらず、国際連合及び国際連合加盟国が憲章の規定によつてすでに受諾しておる義務と同じ義務を、日本も今後国際関係における行動の原則を受諾する義務を負うわけでございますが、これに対応しまして(b)項で、連合国のほうでも日本に対する関係におきましては、国際連合憲章第二條の原則に従つて行動をするということを明記いたしておる次第であります。(c)項におきましては、日本が独立国といたしまして、国際連合憲章第五十一條に謳つておりまする自衛の権利を持つておるということと、それから安全保障のために取極を結ぶ機能を持つておるということ、言い換えれば完全なる主権国としては、当然国家が、日本として有する機能があるということを規定いたしておる次第でございます。第六條は、この平和條約が効力を発生すると同時に、占領軍は日本を撤退しなければならないということを規定いたしております。そうしてその占領軍が遅くとも條約発効後九十日以内に撤退を完了しなければならないと書いてあります。但し日本と連合国との間に安全保障取極ができまして、それによつて連合国が駐屯し、又は残留するということになつた場合にはこの限りでないと、こうされております。この但書の意味につきましては、連合国の一部と合衆国政府との間に要、不要の論が戰わされたことは皆様御承知の通りであります。連合国の一部の主張によれば、第五條の(c)項によつて、日本が安全保障取極を結ぶ権能を持つているということが明言されておりますから、日本が将来連合国の一国と安全保障上の協定は如何なるものでも結べる、だから駐兵協定をすれば、それによつて但書がなくても日本の領域に平和條約効力発生後連合国軍隊は留まれるということになるから、この但書は要らないという主張でございます。これは法理論としてはその通りであると私ども感ずる次第でございます。それに対してどうしても但書が必要だという説を合衆国政府はとつたわけでございます。その理由は、サンフランシスコ会議においてダレス氏の口によつてこういうふうに説明されました。私は非常に面白いと思つて聞いた次第でございます。ダレス代表の説明によれば、この但書は要らないという者がある、併し若し但書がない場合には、第六條の(a)項によつて占領軍が撤退しなければならんということになる、それで現在日本にいる駐屯軍は如何なる場合にも一旦全部日本領域を撤退して、更に又再び今度は五條(c)項によつて締結された日本と当該連合国との間の安全保障上の取極によつて、又、兵を日本に入れる必要がある、こういう誤解が生まれるかも知らん、平和條約発効後日本に駐屯された軍隊を一旦海上に撤退さして、又再びそれを日本に入れるという無用な手続をとらなければならないという解釈が、但書がない場合には生れる可能性があると思うから、アメリカ政府としては、連合国の一部の但書が要らないという議論を承服できなかつたという説明でございます。第六條には又それに関連いたしまして、占領軍撤退関係で、占領軍が使用していた物資であつて、なお代金が支拂われなかつたものは撤退前に日本に返さなければならない。但し連合国と日本国との間に特別の協定があればそれによる。こういう趣旨の規定があります。  第四章は政治及び経済條項でございます。第七條から第十三條まで。  第七條は、二国間の條約がどうなるかという問題を明らかにしたものでございます。戰争の二国間の條約に及ぼす影響ということについては、学説も先例も必ずしも確定いたしておりませんので、平和條約にこの問題の処理の原則を掲げるということは最近たびたびとられる方式でございます。この條約によりますと、連合国のほうで平和條約発効後一年以内に、自分のほうで効力を回復し、又は効力を存続させたい條約を日本に通告する。通告があつた場合には、三カ月前に通告があつた條約は有効とされる、こういう原則でございます。そういう通告の目的にならなかつた條約はすべて廃棄されたものと認める。こういうことでございます。  第八條は長い條文でございますが、大体内容は三つに分けられると思います。第一は、この第二次世界戰争の結果できました平和條約、即ちイタリー、その他の五つの平和條約が一九四七年にできておりますが、その平和條約の効力を認めるということと、今日までオーストリア及びドイツについて連合国間にできております平和回復のための諸取極、四つ、五つございますが、その効力を日本が承認するということと、国際連盟及び常設国際司法裁判所の終結のために連合国間でとつた措置を日本で承認すると、こういう趣旨の規定、それが先ず第一部類に入るものであります。第二部類の條項は、一九一九年のサンジエルマン・アン・レイの諸條約、これは二つございます。火酒取締條約とコンゴー盆地條約、この條約と、一九三六年のモントルーの海峡條約と、それから一九二三年の対トルコ平和條約の第十六條に基く権利、利益を日本が放棄するということでございます。第三のグループは、一九三〇年にドイツの賠償問題について作成されました諸取極、賠償それ自体と、賠億を履行する機関として設定されました国際決済銀行の設立に関する條約、この一連の條約から生れておりまする日本の権利、利益を日本は放棄するという趣旨のことでございます。この第二類と第三類とを合体して一言にして言えば、第一次世界大戰の結果、日本が五大国の一つとしてヨーロッパ及びアフリカにおいて獲得いたしました政治、経済上の特殊権益を全部放棄するということになる、こう一言すればよろしかろうと思います。條項は非常に長うございますし、これらの條約によつて得ておる権利、権原というものは種々雑多でございますが、実質的に日本に響く、痛いと感ずるものは、ただコンゴー盆地條約に基く権利を放棄させられる点にあると思います。それは今後本條約によつて、コンゴー盆地地域という厖大なアフリカの地域において日本は通商航海の自由と、それから無差別平等待遇の條約上の権利を持つておりまして、この通商航海の自由と無差別待遇の結果、戰前は勿論、戰後においても日本対アフリカ貿易というものは便益を受けていたということは事実でございます。この條約の保障が将来なくなつて、これらの地域の領有国との間の通商航海條約なり、通商協定なり、そういつた三国間の交渉によつて、この問題を将来日本としては打開して行かなくてはならんということになります。この点はこの平和條約全般を通じて見て、経済的に日本に痛い点の一つであると存じます。又これが痛いであろうということは、私どもがアメリカの人々と話をするときに先方においてもよくわかるということを言つてくれました。排しながらそういう日本にとつて痛い條項であろうけれども、結局これを呑むということがこの平和條約を成立させる途だと思うから、まあ難きを忍んで受けてもらうという説明を受けております。これが第八條であります。  第九條は漁業関係の條項でございまして、公海の漁業に関して、日本は平和條約が発効後これを希望する諸国と速かに交渉をするという規定でございます。第十條は中国における特殊権益の放棄であります。一言にして言えば、中国と日本との間に存在しました不平等條約によつて、日本が戰前享有いたしておりました不対等的権益を全部放棄するという趣旨でございます。  第十一條は戰犯に関する規定でございます。この條約の規定は、日本は極東国際軍事裁判所その他連合国の軍事裁判所がなした裁判を受諾するということが一つであります。いま一つは、これらの判決によつて日本国民にこれらの法廷が課した刑の執行に当るということでございます。そうしてこの日本において刑に服しておる人たちに対する恩赦、特赦、仮釈放その他の恩典は、将来は日本国政府の勧告に基いて、判決を下した連合軍のほうでこれをとり行うという趣旨が明かにされております。極東軍事裁判所の下した判定については、この極東軍事裁判所に参加した十一カ国の多数決を以て決定するということになつております。一体平和條約に戰犯に関する條項が入りません場合には、当然各交戰国の軍事裁判所の下した判決は将来に対して効力を失うし、又判決を待たないで裁判所が係属中のものは爾後これを釈放する、又新たに戰犯の裁判をするということは許されないというのが国際法の原則でございます。併しこの国際法の原則は、平和條約に特別の規定がある場合にはこの限りにあらずということでございます。従つてこの第十一條によつて、すでに連合国によつてなされた裁判を日本は承認するということが特に言われておる理由はそこにあるわけでございます。戰犯に関する限り、米国政府の態度は極めて友好的であつたと私は一言ここに附加えておきたいと、こう思います。  第十二條は極めて重要な條文だと存じます。これは結局日本と各連合国との今後の通商関係の準則を定めたものでございます。十二條によりますと、連合国と日本とは、その間の通商関係を安定と繁栄との基礎の下に置くために、できるだけ早く通商航海條約を結ぶように交渉をするという意思を日本で宣言いたしております。併しこういう通商航海條約ができるまでは相当の年月がかかりますので、平和條約の最初の効力の発生のときから四年間置く、但し冒頭に申上げましたように、條約ができましたときにはその條約によること勿論でありますが、日本は大体次のような待遇を連合国の国民、産品、船舶に対して與えるということになるわけであります。要請されておる待遇は、簡單に申しますと、輸出輸入については最惠国待遇、経済的活動については内国民待遇でございます。もう一つの原則は、日本の特別通商企業体が国外において売買をなす場合には、商業的考慮に基いた行動をとらなければならんというこの原則であります。但しこういう待遇を與えますが、それは相互主義でございまして連合国の相手方、相手である連合国が日本に対して最惠国待遇なり内国民待遇なりを與える限度において與えればいいということになつております。従つて一方的ではなく相互主義でございます。それからもう一つは、こういうふうな待遇を與えなくてもいい場合が規定されております。それは三つの場合でございます。一つは、通常の通商航海條約の中に規定されて、その例外の場合であります。大抵の国の通商航海條約には、ほぼ同種類の事項が最惠国待遇なり。内国民待遇なりの例外になる、こう規定しております。そういう場合には日本も適用しなくてもよろしいということになります。大体内水航行だとか、沿岸貿易だとか、国境貿易だとか、それから動植物保護上の措置だとか、刑務所で作られた物品に対する特殊待遇だとか、美術、考古学上の国宝的品物の保護のための措置など数種類ございます。第二の部類は、国の対外財政状態、又は国際收支状態から来る必要な措置をとる場合であります。第三の場合は、国の安全保障上絶対に必要とされる措置であります。こういう三種の場合には冒頭で申上げましたような最惠国待遇なり、内国民待遇なりの原則の除外例として、差別待遇ができるということになつております。但しこの差別待遇は、各場合に応じて合理的な方法で、各場合に相応したものでなければならない、こういうふうになつております。それが第十二條でございます。  第十三條は民間航空関係であります。民間航空等につきましても、日本は連合国とできるだけ速かに民間航空輸送について協定を結ぶということが原則でございます。その條約ができるまで、この平和條約の最初の効力の発生から四年間、日本はこの平和條約が効力を発生するときに連合国に許與していた点について、利益を四年間は継続的に認めるということになつております。そうして日本が民間航空を運営する場合には、まだ日本は国際民間航空條約には参加いたしておりませんけれども、この国際民間航空條約が定める手続、方式、技術的基準に従つて民間航空を運営しなければならんということになつております。以上が政治、経済の條項でございます。  その次の第五章は請求権と財産に関する諸規定を含んでおります。  最も重要なのは十四條の賠償に関する規定でございます。十四條は賠償に関する規定でございまして、それによりますと、日本は賠償をしなければならんという原則が認められると同時に、今度は日本の資源を以てしましては、現在十分なる賠償支拂をなし、且つ他の諸支拂をなす場合には、日本としては存立可能な経済を維持することができないということも認められます。従つてこの相矛盾する二つの原則が認められますので、そこで、日本は賠償といたしましてもこの戰争の間その領土が日本軍によつて占領され、そうして日本国によつて損害を與えられた国から、希望があるときには、役務を提供することによつて賠償をしなければならん。但しこの役務による賠償については二つの枠が入つております。一つは、この役務賠償をやることによつて他の連合国に迷惑をかけてはいけない。第二は、役務による賠償が生産加工による賠償の方式をとるとき、そうしてその材料が日本にない場合には、生産加工を請求する国が原材料を日本に供給して、日本に外貨の負担をかけないようにしなければならんという條件であります。この役務による賠償と、いま一つ連合国に対しましては、この條約が効力を発生する日に、連合国の領域内にある日本の財産を処分する権利を認めております。この二つで日本の賠償というものはなされるという考え方でございます。連合国にある日本の財産については、無論全部が清算されるわけじやありませんで、この十四條の(a)の2ですか、規定がありますように、特殊の例外があります。又商標と著作権については、できるだけ好意的に取計らうということになつております。この上述いたしました賠償、これによりまして連合国は、その他この平和條約に特殊な規定がある場合は別といたしまして、この今申げました二つの賠償によりまして、連合国は日本に対する賠償要求を満たされたものといたしまして、その他のすべての賠償請求権、それから戰争中日本国又は日本国民がとりました措置から生じました連合国又は連合国人の日本人又は日本政府に対する請求権、それから直接の日本占領費に対する請求権は放棄される。連合国側の対日請求権の放棄は十四條の(b)によつてはつきりさしてあります。その最後の直接の占領費と言つておる点は、裏を近せば間接の占領費というものは放棄しない。言い換えますれば、終戰以来日本が合衆国から受けましたイロアとかガリオア援助資金ですが、あの二十億ドルと普通言われておるあの債務は有効な債務として残るという趣旨が明らかになつておるわけでございます。  第十五條は、日本にありまする連合国の財産、これの返還に関する規定でございます。開戰の日から終戰の日までの間のいずれかのときに日本国にありました、無論この日本国というのは、この平和條約によつて日本国とされる日本国でありますが、日本国にありまする連合国財産は、申請を待つて返還しなければならないということになつております。尤もこの條項は過去六カ年間の占領管理の下において、大半すでに返還が完了しておるということを御報告申上げておきます。併し開戰時に日本にありました連合園財産であつて返還が不能の場合、又は戰争によつて損害、損傷を受けておる場合には、日本で補償をしなければならんということになつております。その補償の基準は、今年七月十三日政府が閣議決定をいたしました例の在日連合国財産補償法案の定める條件よりも不利ならざる條件を以て補償しなければならない、こういうことにされております。又十五條は、連合国財産のうち、特殊の各工業所有権とか商標、商号などの取扱も又は著作権の取扱などについても規定いたしております。  第十六條は、中立国と旧敵国にある日本の資産を赤十字国際委員会に引渡す、その規定でございます。その引渡しの目的は十六條に明定してありますように、戰争中日本の補虜となつて苦しんだ連合国の軍人であります、その軍人に対する補償として、日本は中立国と旧敵国とにある資産を引渡さなければならないということになつております。これは従来の平和條約にも無論先例はございません。わずかに今度の戦争のあと、スエーデン、スイスにあるドイツの財産が連合国に引渡されておるという事実があるだけでございます。従つてこの條項が甚だ日本にとつて苦痛であるということは申すまでもございません。十六條について我我が意見を求められた際には、その点は十分述べたつもりでございます。併し合衆国の代表の説明によれば、戰争中日本軍の手によつて捕虜となり、それによつて物心両面に極めてひどい損害をこうむつておる連合国軍人の日本から何か補償をもらいたいという要望は極めて強いものがあるから、この條項は、苦しいということはよくわかるけれども、受けてもらいたいということを縷縷説明を聞きまして、その上で日本政府といたしましては、十六條に同意をした次第でございます。この対日本平和條約米英案が、七月でありましたが、公表された後、イギリスの議会で、政府から説明をしたそのときに、この十六條に説明が及んだときに、満場の議員が拍手をしたという報道を私どもは読んだことがあります。それから又、サンフランシスコ会議におきましても、濠洲のスぺソダー代表でありますが、日本政府が十六條の義務を受諾したことを自分たちは非常に感謝する、但し十六條から得る資金を以てすらもなお不十分であるから、もう少し日本政府として考えられることはできないであろうかというようなことを演説をいたしたことがございますし、又オランダの代表、ノルウエー代表なども、やはり十六條についてそういう趣旨の発言をいたしておるのを見ますと、十六條は成るほど我々にとつて愉快でない條文でございますが、それだけに又連合国の一部におきましては非常に関心を持つておることである、こういうことを痛感いたした次第でございます。  十七條は、特殊の事項を取扱つております。これは戰争中日本の捕獲審検所が下しました決定に対して、又は戰争の開始からこの平和條約が実施されるまでの間に、連合国人が原告又は被告として関與いたしました裁判において日本裁判所が下しました判決を、関係連合国人から申請があつた場合には日本で再審査をする措置をとらなければならないということであります。捕獲審検所の判定、決定、命令につきましては、国際法に従つて再審しろ、再審の結果修正をし、又はその申請が理由ありと認めた場合には、その裁判の捕獲審検の目的となりましたものを返す必要がある、その返す場合には、十五條の連合国財産返還の手続によつて返すという趣旨が規定されてありますし、又、日本裁判所の判決につきましては、その再審査の結果、理由があるときには裁判前の地位に連合国人を返すか、又は公正な補償をしなければならん、こうされております。  十八條は、これ又特殊の事項でございまして、戰争前に日本と連合国、日本人と連合国人との間にありました金銭債務、これは契約だとか、債券だとか、又はその他の権利から生じた金銭債務、だから金を拂う、受け取るということだけでありますが、この金銭債務は、戰争によつて何ら影響を受けないで残る、有効に残るということと、それから(b)項といたしまして、日本は外債に対する債務を承認し、その債務弁済のために、債権者とできるだけ早く交渉をすることと、今度は個人の場合については、個人がその債権者と交渉を早くするように政府がこれを援助し、そうして関係者の間に協定ができましたときには、その実行を日本政府が容易にするように援助するという趣旨が明らかにされております。  十九條は、十四條(b)項におきまして、連合国が日本に対する請求権を放棄いたしましたに対応いたしまして、この第十九條では、日本国、日本国民の、連合国、連合国人に対する請求権を放棄する趣旨を明らかにしておるわけであります。そうして日本の放棄の対象になるものは、戰争から生じた請求権と、それから戰争状態が存したが故に連合国がとつた措置から生じた請求権、それから日本に連合国軍隊、又は政府当局が存在していた事実から生ずる日本国及び日本国人の請求権、これを放棄することになつております。  第二十條は、これ又特殊事項でございまして、日本にあるドイツ人財産の問題であります。これは一九四五年の連合国間の協定によりまして、すでにドイツに対する賠償に引当つてられることになつておりますが、従つて連合国としては、日本にある、ドイツ国及びドイツ人の財産を賠償に充当するために処分する権利を持つておるわけであります。その連合国の最終処分が完了するので、在日ドイツ財産を保管する責任を日本に負わする趣旨の規定でございます。  第二十一條は、これ又特殊の規定でございまして、一体條約は契約でございますから、契約当事国間だけがその権利関係に入りますわけでございます。無論その趣旨は、この平和條約の二十五條に明白にされておりますが、この二十五條に対する特則といたしまして、中国と朝鮮は、この平和條約の署名当事国ではございませんが、この平和條約の特殊の條項の利益を受けるということは明らかにしたものであります。中国が受益者となるものは二つありまして、第十條の日本による中国における脇殊権益の放棄、この放棄の利益を中国は受けるわけであります。いま一つは第十四條(a)の、即ち中国の領域内にある日本財産を処分して賠償に当てることができるという規定、あの條項の利益を中国は受けるということになります。朝鮮につきましては、第二條の(a)朝鮮の独立を承認するということ、それから第四條、朝鮮にあります財産及び請求権の処理について、要するに朝鮮の政府と朝鮮人、日本政府と日本人、相互の間にありまする財産或いは請求権の処理を両当事者間で話合いをしてきめるという趣旨が四條にありますが、その第四條の利益を朝鮮は受けるということになります。次に朝鮮は第九條、漁業協定を結ぶあの第九條の利益を受けられます。それから十二條、通商の原則、最惠国待遇又は内国民待遇によつて四カ年間通商の関係を規律するという規定が十二條にありましたが、あの十二條の規定の利益を朝鮮は受けられる、こういうことになつておるわけであります。  第六章は紛争の解決に関する條項でございまして、二十二條であります。この條約の解釈又は適用について、日本と連合国政府との間に紛争が起ります場合には、両当事国の間に特別の裁判所、又は特別の方法によつて解決することになり、それによつてもなお且つ解決ができなかつた場合には、最終的にへーグの国際司法裁判所に付託するという規定でございます。  第七章は最終條項で、例文規定でございますが、第二十三條が批准と効力発生でございます。この條約は日本の批准と、それから二十三條に規定してあります十一カ国のうちの多数国、だから六カ国、その中には必ずアメリカを含まなけれどならないことになつておりますが、この六カ国の批准書が寄託されましたときに効力を発生するということになつております。爾後批准書が寄託されたときには寄託の日に効力を発生すると、但し日本の批准書が寄託されたあと九カ月たちましてもなお今の原則に従つてこの平和條約の効力が発生しない場合には、批准書を寄託した国は、日本国と合衆国政府に通告することによつて、三国間のこの平和條約の効力を発生させ得ることになつております。従つてこの関係から申しましても、日本の批准が一日も早く合衆国に寄託されるということが、即ち平和條約の効力発生を早めるゆえんだと、こう考える次第でございます。  二十四條は、批准書がワシントンに寄託されるという規定でございます。  三十五條は、この平和條約に連合国という文学が随分使われておりますが、その連合国の定義でございます。一言にして言えば、日本と戰争をいたしておりました連合国全部を言うのでなくて、これらの連合国のうち、この平和條約に署名し、この平和條約を批准した国でございます。と同時にこの條項は、この平和條約に署名及び批准しない国がこの平和條約のどの條項によつても何らの権利利益を受けないし、又そういう国との関係において、日本の権利、利益は少しも毀損されないものであるということを明白にしております。  第二十六條は、二国間平和條約に関する規定であります。日本は、この規定によりますとこの平和條約が最初に効力を発生しましてから三年間は、この平和條約に署名しない国で日本と戰争関係にあつたもの、具体的に申しますと七カ国になります。それはソ連、ポーランド、チエコスロバキヤ、それからインド、ビルマ、ユーゴースラビヤ、それから中国でございます。この七カ国、この七カ国から申込があつた場合には、この平和條約と同一の條件、又は実質的に同一な條件で二国間の平和條約を結ぶ用意あるべきものとされております。そうしてこの日本の義務は三年間存続いたします。従つて三カ年経過後におきましては、この平和條約の拘束は全然受けないで、まあ自由に平和解決ができると、こういう結論になるわけでございます。なおこの三カ年間の間に、日本がこの七カ国のいずれかとの間に二国間平和條約を結ぶ際に、若しこの平和條項の條項よりも有利な條項を、有利な待遇を相手国に與えた場合には、同様の利益をこの平和條約に参加しておる連合国にも均霑させなければならない、こういうことになつております。  二十七條は、正文、それから認証等に関する規定でございますので、便宜省略いたしたいと思います。  この平和條約と同時に署名されまして議定書がございますが、この議定書は二十六カ国の連合国が署名いたしました。契約だとか、時効だとか、流通証券だとか、保險だとか、それから生命保險などに対する技術的の規定でございます。一々内容を説明するのも余りに技術的でございますので、ただ項目だけを申して置きます。この議定書は要するに戰前経済的関係が密接だつた国との間には極めて重要な規定でございます。それでは何故に日本と最も経済関係の深かつた、契約関係がたくさんあつたアメリカ合衆国はこの議定書に署名していないかということであります。これは合衆国におきましては、この議定書で解決しておりますような、いわゆる民法、商法上の私権関係の戰争による影響の、何と言いますか、処理という問題は、各ステイトの法律によつて解決されるべきものでございまして、中央政府としては、こういう内容の約束をする権限を合衆国の憲法上持たないからということでございます。この議定書の内容とほぼ同様の條項はベルサィユ平和條約の第十編、それから第二次世界大戰後のイタリー平和條約にも附属書として規定してありますが、両方とも合衆国政府は憲法上の理由で、これらの規定の適用を受けないという明文が置かれております。それから見ましてもわかりますように、全く合衆国が連邦制度であつて、この議定書の内容に対する條項については、中央政府として外国政府と約束を結ぶ意味がないというところから来ておる次第でございます。  平和條約と同時に、日本政府が署名いたしました宣言が二つあります。一つは国際條約に関するものでございます。内容は、第一節は、戰前に日本が参加いたしておりました国際條約は、この條約が効力を発生すると同時に、これらの條約に基く権利義務を日本は完全に回復することになるという趣旨の宣言でございます。これは国際法上まあ当然のことでございます。多くの平和條約、具体的に例えばイタリー平和條約等については、この点については何ら規定がないくらいでございます。規定がなくともこういうことになるわけでございます。第二の部類は、この平和條約が効力を発生しましてから一年の間に、日本政府が加入の手続をとる諸條約を並記しております。これは九種類になつておりますが、非常に広汎な内容の諸條約でございます。一言にして申上げますれば、第一次世界大戰から第二次世界大戰までの間に、主として国際連盟を中心にして締結されました経済的な、技術的な諸條約と申上げればよかろうと思います。こういう條約を今日までに日本が批准し乃至加入していなかつたということは、非常に、各條約についてそれぞれの理由はある事柄でございます。多くは国内法の改正を必要とするとか、そういつた種類の理由で今日まで批准なり、加入なりが遷延されたものでございます。それを一括して今後平和條約発効後、一年以内に加入手続をとるというのでございます。  こういうふうな宣言が生れました理由は、勿論できるだけ連合国側といたしましては、平和條約の中に條約義務としてこういうことを規定するよりも、條約外において日本の自発的宣言の形でこの問題を解決したいというところから参つたものでございます。その部類は一九四四年の国際民間航空條約と、一九四七年の世界気象機関條約に、日本は平和條約が発効後六カ年以内に加入手続をとるという事項の声明であります。この二つの條約は、第二部に掲げられました條約と違いまして、これに加入するについては国際連合の当該機関なり、又はこれらの條約によつて設置されておりまする総会とか執行委員会の議決を要して加入が認められるということになつておりまして、第二部に入れてある條約よりも複雑なものでありますので、二部と三部と区別して書いてあるのでございます。  第二の宣言は、戰死者の墳墓に関する宣言でございます。宣言の趣旨は、日本領域内にあります連合国軍人の墳墓とか記念碑を調査し、又は識別し、又は保存するために連合国の委員会だとか、適当な機関に日本はこれが便益を與え、又そういう団体が希望する場合にはその目的のために協定を結ぶ用意があるということを宣言いたしますと同時に、日本としては連合国領域内にある日本軍人の墳墓について又同様な用意が連合国政府にあることを期待するという趣旨でございます。  以上で平和條約の説明を終りまして安全保障條約について説明申上げます。  安全保障條約は極めて簡單な文章でございますので、お読みになればすぐわかると思います。前文の一項と二項は、この日米安全保障が必要となる事態、事由を解明したものであります。要するに平和條約が発効すると同時に日本は完全な独立国になり、自衛権を持つている、併し日本は軍備がない、ところが今日なお世界には無責任な軍国主義が横行しているこの状態では日本に危險がある、これがいわゆる事由であります。第三項は、日本がこういう條約を締結する権限を持つているという法律上の根拠を明らかにしております。これは日本国が法治国として固有の自衛権を持つているし、又安全保障取極を他国と締結する権能を持つているということを謳つて、法律上の規定を明らかにしておる。第四項は、日本が外国からの武力攻撃に対して自国を守るためにも合衆国において日本国内及び附近に兵隊を置かれることを希望するという希望を表明いたしております。第五項は、合衆国がこの日本側の望む世界の平和と安全保障のために若干の合衆国軍隊を日本国内及び附近に置く用意があるということを明らかにすると同時に、米国としては日本が漸増的に自己の自衛について責任を負うようになることを期待するものであるという、米国側の期待が附加されております。  本文第一條は、合衆国軍隊の日本国内及び附近に駐屯するその原則を定めたものであります。この日本にいる合衆国の軍隊は、日本に対する外部からの武力行為を防遏するためのみならず、極東の平和の維持のために寄與することもできると書いております。又日本政府の明白なる要請に応じて大袈裟の外部からの教唆又は干渉に基く大規模な内乱等があつた場合に日本政府を援助することができる、こうなつております。  第二條は、この安全保障條約がある間、日本は第三国に対してアメリカと相談しないで軍事上の権益を與えない。  第三條は、この日本国内及び附近における米国軍隊の配備に関する條件は、両政府間の行政取極で決定すると書いてあります。  第四條は、有効期間の條項でございまして、この條約は、国際連合の措置その他適当なる安全保障上の取極によりまして、日本地区の平和が有効に確保されたと日米両国政府が認めたときまで存続するということが明らかにされております。  第五條は、批准及び交換、それから効力発生の規定でございますが、これと同時に取交わされました吉田総理とアチソン国務長官の公文の趣旨につきましては、先刻草葉政務次官から御説明になりましたから私は省略いたします。  以上御説明を終ります。

大隈信幸国民民主党

○委員長(大隈信幸君) 本日はこれで散会いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉川末次郎日本社会党

○吉川末次郎君 委員会開会劈頭に資料の提出方について委員長にお頼みしたことが実行されておりませんが、どうなつているんですか。サンフランシスコ会議の議事録の英文は手許に配付されておりますが、外務省で当然に日本語に翻訳していらつしやると思うのでありますが……。

大隈信幸国民民主党

○委員長(大隈信幸君) お答えいたしますが、今週一ぱいくらいにはでき上るそうで、印刷中で、印刷ができ次第お配りいたします。  それでは本日はこれで散会いたします。    午前十一時三十八分散会

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