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12回国会参議院1951/11/09

水産委員会 第4号

発言数
54
登壇者
6
会派数
5
開催日
1951/11/09

会議録

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。  本日は外務大臣の出席を正式に要求しましたが、余儀なき先約のために出席ができないという通知が参りました。外務次官も漁業條約のほうに出ておりますので、出席できない。農林大臣がお見えになつておりますので、皆さんからは漁業條約に関する問題について、農林大臣に御質疑願いたいと思います。  先ず私から概括的に農林大臣に質問したいと思います。今回日本国の要請によつて、アメリカ並びにカナダから漁業団の代表が合計十五名見えて只今條約の会議を開いていますが、こういう早期に一体アメリカ並びにカナダの使節を呼んで、そうして漁業條約をされるという理由を承わりたい。ダレス、吉田の交換文書によりますと、日本が完全に主権を回復した場合に速かに漁業條約を開くということがあの往復文書には書いてあり、ダレス氏もその旨を了承したと思います。サンフランシスコにおける講和條約においては速かに漁業條約を開くということはありますが、この速かにというのは、やはりダレス、吉田書簡による完全に日本の主権を回復した場合に速かに、こうだろうと私は解しております。それにもかかわらず非常に早期に招致されたというのはどういう事情であるか。それを先ず承わりたいと思います。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) お答え申上げます。只今委員長から、講和條約の第九條によりますれば、日本が独立発効後速かにと解釈すべきであるにかかわらず、今回未だ批准もできず、まだ日本が完全に主権を回復していないにもかかわらず、何故にそれ以前にアメリカ、カナダの代表を招致いたしまして漁業協約に関する会議を開いたかということの御質問でありまするが、御承知のように、現在我が国は占領下にありまして未だ独立はいたしておりません。この占領管理下にありまして、御承知のようにマツカーサー・ラインが設定されておりまして、我が国の漁業権はそれだけ制約されておるのであります。我々は独立回復後直ちに正式の條約を締結いたしたいと思つておりまするので、又一面におきましては、マツカーサー・ラインの撤廃若しくは擴張ということも要望がされておりまするので、事前にこの漁業に関する下打合せをしておりまして、條約締結が完全にできた場合、直ちに本條約に移るということのための準備の工作をいたしております。これによりまして、今まで制約されておる我が国の漁業を、一日も速かに公海上における我が国の漁業の権益を回復いたしたい、こういう意味におきまして、事前に予備的な打合せをいたしたい。これが趣旨でございます。

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) それから、然らば朝鮮とか或いはフイリピンとか、その他の日本の漁業を大いに伸展すべき諸国がありますが、この諸国に対しても招致をして漁業協定をなさるお見込ですかどうですか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) これは希望はいたしまするけれども、朝鮮につきましては未だ朝鮮は平和條約に調印いたしておりません。従いましてこの点については正式に招致する段階にないと考えております。フイリピンは調印はいたしまするけれども、未だその運びに至らないような状況でございまして、漁業権の問題におきまして最も密接な関係があり、而も又相手方においてもできるだけ速かに日本を漁業交渉に入りたいという準備ができておるのはアメリカとカナダでありますので、先ずアメリカとカナダとに対しましてこの予備的な交渉をいたしておる次第でございます。

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) もう一つお伺いいたしますが、この第一回の顔合せの場合に、農林大臣が議長として開会の辞をお述べになりましたが、この條約は主体は農林省であるか、外務省であるか、それを一応お伺いしたい。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) これは條約に関することでありますので、外務省が政府を代表してやるのが当然でございます。然るところ外務大臣が非常に多忙でありますので、実体的な漁業の権益に関する所管の農林大臣といたしまして、政府を代表して御挨拶を申上げた次第でございます。

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) 私の質問はこれで終りますが、御質問がありましたらお願いいたします。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 私どもは今回の三国会談につきましては新聞紙上でのみ承知しておるのでありまして、農林大臣もお差支えのない範囲で現在どのような交渉過程にあるのか、伝えられるところによりますと、アメリカは九日には協定案を発表するというような記事もございますので、その辺お伺いしたいと思います。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) この会議は、先ほど委員長が御指摘になりましたように、アメリカ、カナダ、日本の三国代表が出席して会議を今進行中でございます。アメリカ代表並びにカナダ代表、日本代表もおのおのこの会議に当つて各国の態度を表明いたしておるのであります。アメリカの目的は代表ヘリングトン氏アメリカ側の意見の開陳をいたしておるのでありまして、これが只今櫻内議員から指摘された協定案ということではなく、私が今まで報告を受けておりますところによりますれば、これはアメリカ側の意見の開陳であると考えておるのであります。なおこれは二つの委員会に分れまして、基本的な原則を審議協議するところの委員会、それからもう一つは科学的資源その他の専門的な、技術的な方面を審議協議するところの委員会と二つに分れておりまして、漸時その委員会の審議の進行の過程において最終的には協定案の草案なるものができるものと考えておる次第であります。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 只今の御説明はその内容の点については何も触れておらないのでありますが、例えばアメリカの意見の開陳の範囲、或いは日本側乃至カナダ側のそれに対する意見なり、或いは日本、カナダの独自の意見の開陳等は如何になつておりますか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 私は名誉議長を仰せ付かつておるのでありますから、国会の関係がありまして、最初の開会式に列席した以外実は列席いたしておりませんので、内容の詳細については存じておりません。但し各国の意見を、おおむね報告を受けておるところによりますれば、いずれの国々も公海の自由という原則についてはおのおの認めておるところであります。但しこの公海における漁業資源というものは、これは人類共通の福祉のためにこれを維持しなければならない。その意味におきましては、資源の維持という観点からして、お互いにこの人類共通の資源を濫獲しないという方法をとるべきである。その意味において互いにこの点は強調すべきである、こういうようなことが各国とも共通の意見であるようであります。なお細部につきましては、いろいろと意見があるようでありますが、この詳細につきましてはいずれ明確になつてから、代表として出席しておる水産庁長官その他から報告する機会を持ちたいと思います。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 この三国会談によつてここに草案ができると、この場合に私どもが一番心配しておりますのは、三国間だけの問題でなくて、例えば先ほど委員長からも指摘のありました朝鮮、フイリピンの関係はもとよりでありますが、濠洲の関係も、或いはメキシコの関係も考慮しなければならないと思うのであります。この場合の朝鮮、フイリピンについての御見解は承わりましたがメキシコ、濠洲については、どのような三国の間の考え方であるか、又日本はそれについてどう考えておられるか、お聞きしたいと思います。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 三国において協定ができますれば、これが今後における、我が国が講和條約締結後におきまして、各国と漁業協定をする場合における一つの基準になると存ずる次第であります。その意味におきまして、これは三国協定ではありますが、これが延いては我が国と各連合諸国との間に結ばれる條約の一番基礎的な條件をここで確立すると、こういうような見解を以ちまして、今政府はそういう態度を以て臨んでおる次第でございます。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 今のお話で非常に私は憂うるのであります。この三国によつて、将来その他の国、只今濠洲、フイリピン、或いはメキシコ、インドネシア、こういう国との間の協定のモデルになるようなお考え、或いは三国間の方針のようでありますが、そうであるとするならば、この三国会談に並行して只今申上げました諸国間とも話合いがなければ、この問題で一番大きく影響を受ける国は、アメリカや、カナダではない、日本自体の問題であると考えるのでありますが、大臣に御見解を承わりたいと思います。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 御指摘の通りこの三国協定が今後我が国が他の諸国と協定する場合における基準になると考えますので、非常に重大視しておるのでございます。御指摘のように、これと並行して他の諸国との協商に入るべきだと御意見でありますが、他の連合諸国においてまだこちらと協商する準備段階ができていないような状況でございまして、こういう協商は相手方のあることでありますので、まだその機が熟していないということを我々は遺憾に思つておるのであります。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 委員長が冒頭に日本の招請によつて今回の会談が開かれたのではないかということを大臣に聞いたのでありますが、今の大臣のお答えからいたしますと、どうも話が食い違うように思うのです。日本が必要によつて招請をした、又今回の会談における日本の立場の重要性ということを御認識になつておりますならば、当然他の諸国との大臣のお言葉による協商が行われる段階において初めてアメリカ、カナダに対する招請が行われなければならんと思います。この辺の御見解は如何なんでございますか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) これは形はこちらのほうが主催国となり招請したことになつておりますが、それ以前に実はアメリカ、カナダにおきましても、いろいろと事前の連絡があつたようでありまして、そうして日本側の招請を望んでおる、こういうようなことでありまして、その意味におきまして、こちらが主催国になつた次第でございます。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 そうしますとお伺いしたいのでありますが、アメリカ、カナダはあらかじめ日本に対して何らかの原案と申しましようか、そういうものを示されておつたのでありましようか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) それは原案とかそういうものは示しておりません。アメリカ、カナダがどういうふうに両国間で協商して今日になつたかは存じませんが、アメリカ、カナダとも速かに日本と協商に入るということの意向で事前に連絡があり、日本側においてもこれを了承し、そうして日本側が主催国となるというような話合いの結果、ここに日本が招請いたした、こういうように考えておるのであります。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 先ほどのお答えの中に、今回の会談は予備的なものであり、事務的な打合せであるというお話でございましたが、それらの打合せが終りました後には仮調印のようなことが行われるのでありますか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) これは先ほど申しましたように、予備交渉とも言うべきものでございますので、正式の漁業協定は完全に日本が独立をして後なさるべきものと考えておる次第であります。従いましてこの協商がまとまりますれば、仮協約という形になるだろうと思いますが、これは私が主管でございませんので、外務大臣の主管でございますので、その外務大臣のほうから明確なる御答弁があることと存じます。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 大臣はこの調印は完全な主権の回復後ということを強調せられているわけであります。そういたしますと、時間的には相当ズレがございます。従いまして、今回の三国会談が何らかの成案を得ましても、それは絶対的な束縛力を持つものではない、情勢の変化、事情の変化というものは当然織り込まるべきものではないかと、かように考えるのであります。例えば朝鮮動乱がここで安定をして、朝鮮との話合いが進むとか、或いは先ほどのフイリピンとの関係もこの三国会談に基いて、それを基礎として話合いが進められて、三国会談の内容を変更しなければならんというような事態も起つて来ると思うのであります。それらの点は如何でありますか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 先ほど申しましたように、正式な漁業協定は独立後と私は考えております。なおこれは三国だけの漁業協定の予備の交渉でございまするので、進展の過程において、更にこれが四国、五国になるというようなことは現在考えておりません。御承知のように、漁業協定は平和條約の第九條に基きまして、連合国の一若しくは多数の国ということになつておりますので、これは個々にやつてもよろしいし、或いは又二、三の国と同時にやつてもいいことでありますから、それには束縛はないものと考えております。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 今回の会談で私どもが、或いは水産業界挙つて関心を持つております問題は、この会談が、先ほど大臣が言われたような、日本のために有効適切な協定が行われるというよりも、むしろいろいろな形で制限をされて来るんではないかということを恐れておるのでありますが、現在までのお話合いの上では、これらのいわゆる資源保存の見地からするそういう名目の下における制限條項というものはどんなものがありますか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 具体的な内容については私承知しておりませんが、これは先ほども冒頭に申上げましたごとくに、公海における漁業権については平等にして且つ公正適正なものであるという原則に立つのでありまして、我が国のみが制約されて他の国が自由であるということはとるべきではない。我が国としましては資源維持の立場に立ちましても、その資源維持に関しましては各国平等の立場においてこれはその制約を受けるべきである。こういう方針の下に我が国は立つておる次第でございます。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 この漁業問題に関します吉田、ダレスの書簡の往復がございました。この吉田、ダレスの書簡というものは今回の三国会談に対してどのような影響力を持つておるでありましようか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 吉田、ダレス会談に基く書簡の声明の内容は、御承知のようにこれは日本が独立いたしまして直ちに世界の各国々と同時に條約がすぐにできるとは考え得られないのであります。その際における状況におきましては、理論的に占領政策が終つたということによりましてマツカーサー・ラインが撤去されるのであります。従つて日本の漁業家は世界至る所公海において自由に漁業を営み得るという観点に立つべきが国際法上の通念であると考えられるのでありますが、そうした場合に、漁業條約を締結しないうちにそういうふうなことがあるというと、私は不測の摩擦を惹起する虞れなきにしもあらず、そういう観点におきまして一九四〇年までに我が国の漁業家が出漁していない所においては、自発的に日本はその地区については出漁しないということを声明したのが吉田、ダレス会談なのでございます。併し今度の漁業協定が更に進みまして本格的な條約が締結いたしますれば、それはダレス、吉田会談というものはこの漁業協定によつて修正されると言うか、それが違つたものになつて、はつきりと日本が国際條約に基く日本の漁業権が明確に各国間において是認せられる、こういうことになるだろうと存じます。

櫻内義雄国民民主党

○櫻内義雄君 そういたしますと大臣にお尋ねしたいのでありますが、この三国会談に臨むところの日本側としての基本的な態度でありますね、日本側はどういう考えで以て臨んでおるのか。これはこういう機会に大臣に是非明らかにしてもらいたいと思うのであります。というのは、我々としては本来でありまするならば、主権回復後に対等の立場でこの條約の協議が行われるべきだと思つておるのでありますが、現在のような場合に下交渉が行われると、とかく占領政策の範疇の中で行われておるような印象を国民に与えるわけであります。実際上においては真に主権回復後の問題を事前に行うわけでありますから、当然日本としてはこの会談に臨む基本的態度なり、或いは具体的なその構想というものを持つて臨まなければならないと思います。これを明らかにしておくということは、現在の政府としては当然とるべき措置ではないかと思うのであります。お尋ねします。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) お説の通りでございまして、その意味におきまして、今回の三国交渉に入る前におきまして、総司令部の外交局長シーボルド氏が、今回この協商は日本とアメリカ、カナダとが平等なる立場において協商することができるということを明確に声明をいたしておる次第でございます。この意味におきましては、現在完全に独立したと同じ立場においてこの協商に当つておるという解釈でございます。

千田正第一クラブ

○千田正君 特に農林大臣にお尋ねしたいのは、只今の御答弁で大体農林大臣の意向もわかりましたが、先般来新聞紙上で発表され、或いは又発表されるかも知れませんが、アメリカ側の代表の提案する、いわゆるアメリカ側の試案というものを持つて来ておられるようであります。これに対して対等の位置において日本側が條約を結ぶに際して、日本側の案というものがどの線に沿つてやつておるかということについてまだ明確になつておらない。恐らく農林省としましては、殊に主管大臣としましては、十分に大臣は研究しておられると思いまするが、いわゆるアメリカ側の提示しておるところの世界水産資源の保存、確保という非常な最高の理想を掲げておる。併しながら我々はアメリカとカナダと日本とこの水産の状態を考えて見る場合において、非常にその国の発達の過程において、又持てる重要度において、遙かに日本はこの二つの国よりも大きくウエイトがかかつておる。言い換えれば、日本の水産は、いわゆる水産を以て生活の根拠としておるところの漁民の数においても百数十万、或いはその家族を加えると五百万にもなんなんとしておるのでありますが、アメリカはこの水産を業としてそれによつて生活を維持しておるものが僅かに十七万しかない。カナダにおいても又然り。而もアメリカのこの太平洋沿岸におけるところの漁民というものは十万にも満たない。こういうような立場におけるところの問題と、日本の国内におけるところの漁民の生活問題は取りも直さず社会問題であり、経済問題であり、又財政の三分の一を負担するところの日本の水産業のウエイトというものは、農業に次ぐところの重大産業であるということは私が申上げるまでもないところであります。でありまするが故に、おのずからカナダ、アメリカなどとは産業のウエイトにおいて、それからその国内におけるところの経済負担において、社会問題において、遙かにカナダ、アメリカなどとはお話にならないほど日本の水産業というものが大きなウエイトを持つておる。そういう立場において、世界最高の理想を掲げる水産資源確保というこのアメリカ側の提案に対して、勿論その理想とするところには賛成しますが、実際の問題として果してそういうものは條約が結ばれた場合において日本の国内の水産並びに将来の日本のいわゆる公海自由の原則に基くところの水産業に及ぼす影響というものは到底アメリカやカナダの比ではない。この点は十分にお考えと思います。更にたびたび伝えられるところによりますと、この三国協定というものはモデル・ケースで   モデル・ケースであるということは一つのいわゆるそれを標準にして将来こういう問題に関係する條約がほかの国からも提示された場合の一つのモデルだとするならば、これは又大変我々としては憂慮に堪えない。ということは、サンフランシスコの会談においてさえも、いわゆるフイリピンであるとか、或いは濠洲であるとか、或いはその他のいわゆる南方の諸国がおのおのの主権を主張してやまない状況であつて、殊に漁業に関する問題につきましては恐らくこのモデル・ケースに基いた要求が将来なされるものとするならば、日本の水産というものは南方の水域においては到底十分なる発達も活動もできない。こういうような状況に及ぼされるところの影響というものは非常に甚大であるという立場から、日本のいわゆる水産行政を掌る大臣といたしましては、このたびの三国協定におけるところの日本側の提案に対しましてどれだけの覚悟とどれだけの案を以て今度の会議に臨んでおられるか、この点について明白に一つ我々にお示しを願いたい、この点であります。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) お答え申上げます。只今千田さんの御指摘の通り、我が国の水産業が国内経済に持つところの重要性、或いは食生活におけるところの重要性、これは御指摘の通りであります。而して今回の漁業協商に対する我が国の基本的な態度と申しますれば、これはやはりあなたの御指摘の通り、公海自由であり、且つ各国平等の立場において協商を結ぶということであります。なお又、これは世界共通の、人類共通の資源を各国平等に永続して保持する、この二つが原則なのでございます。従いまして、アメリカ並びにカナダがおのおのの立場において提案されるでありましようが、日本政府といたしましては、只今申上げました原則を貫くために交渉を続けたいと存じます。なお協商の交渉の過程において又いろいろと問題があると思いますが、こういう協商の内容については只今詳細に亘つて申上げる自由を持つておりません。

千田正第一クラブ

○千田正君 重ねてお尋ねしますが、然らば、アメリカの試案が現在提示されて会議の内容はすでに新聞で発表されておりますが、同時にカナダ側においても提案されていると思います。恐らく日本側においても提案するだろうと思いますが、提案するということははつきりしているわけでありますか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) その通りでございまして、今回の漁業協商におきましてはおのおの各国代表が順次にその所見並びに提案をいたしているのであります。日本側はカナダに引続きなされるはずでございます。

千田正第一クラブ

○千田正君 更に先ほどから国際公法上の問題と大分関連した問題が起きているようでありますが、資源保護という一つの非常に理想の美名を以て隠されるところの條約と思いますが、決定される條約であるかも知れませんが、これは一生物学者や、或いは生物学的の理想の下に結ばれるところの條約としても、恐らく我々日本としてはそういうものよりも生活を原則とするところの、国民生活を原則とし、又いわゆる国際公法上の公海の自由という、漁業の発達というものを根柢においた條約でなければならない。成るほど、生物学者から言えば資源の保護ということも必要でありましよう。又その永続ということも必要でありましよう。併し日本の現在の食糧政策からいたしますれば、私が申上げるまでもなく、四つの島に限られた領土の中に八千二百万の人口が、米麦以外に、蛋白給源としての必要から言いますというと、海以外にない、海が即ち無限の我々の沃土である。この沃土に制限を加えられるということは、非常に日本の国民にとつては、将来の日本の食糧政策に重大な影響を及ぼすと、こう思うのでありますが、この点についてはアメリカのように重大な食糧ではない、一週間に一回しか魚肉も欲しない、或いはカナダのように罐詰業のためにやるのだというような意味合いとはおのずからその根本において違つているということは先ほどから私もしばしば申上げております。ただ、この際マツカーサー・ラインの撤去が、当然批准が終れば失われるだろう、それに代つていわゆる資源保護という名前の下に隠される一つの保護圏が設定されるのじやないかというような予想さえもされるのでありますが、そういう杞憂は持たないほうがいいとお思いでありますか。私としてはどうもそういうふうにも考えられる、そういうふうな場合において、今のいわゆる公海の自由、漁業の自由という点において農林大臣の御見解は如何でありましようか。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 御指摘の通り、これもしばしば私から申上げましたように、公海の自由、それから資源保持のための協定が各国平等の立場においてなされるということを原則といたしておりまするので、これは私は杞憂といいますか、それほど心配しておらないのであります。但し今後の交渉の過程で如何なる態度にアメリカ、カナダが出るかわかりませんけれども、いやしくもこれらの先進的な国々が一方的に利益を主張し、日本を特に不利な状況に陥れしめるがごとき條約には私はならないものと信じております。

千田正第一クラブ

○千田正君 これは私はまだ窺い知ることはできませんが、曾つて、一昨年でありましたが、日本に生存しないところのいわゆる水産動物に対しても日本は法律を作らなければならなかつた。非常に我々としては遺憾の意を表したのであります。当参議院といたしましては、日本の領土内に棲息しないところの「おつとせい」や「らつこ」というようなものでさえ日本が国内において法律を作らなくちやならないのか、言い換えればアフリカのライオンであるとか、マレーの虎であるとか、インドの象に対しても然らば日本が法律を作らなくちやならないかという一つの理論にもなるのでありますが、曾つて占領政策の一端として、日本は紳士的態度で法律を作れというような意味合いから、いわゆる日本の領土内に棲息していないところの、確認されておらないところのいわゆる水産動物であるところの「らつこ」、「おつとせい」、その他に対して水産動物の確保、或いはその販売さえも禁止するような法律が日本の法律としてできております。こういうような問題もこの條約のうちに入るとするならば、我々としては非常にこの点を考慮しなければならない。日本の領土内に住んでおらないもの、日本の保護下におらないところの動物をさえも日本が保護しなければならないということが国際條約の中に規定されるとするならば、その点に対しては日本はどういう態度を今後とるかという点についても一応根本農林大臣の御所見を伺つておきたいと思うのであります。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) これは一つの仮定の問題でありまするので、いろいろと議論することは避けたいと思いまするが、恐らくこの協商においてはさようなことは起らないものと考えております。

松浦清一日本社会党

○松浦清一君 私は一般論でなしに、具体的に少し伺いたいことがあるのですが、今度の漁業協定の交渉が開始されるということは、日本の政府がアメリカ、カナダに招請状を発して、それに応じてアメリカ、カナダが参画したのだと、こういう建前で漁業條約の交渉が開始されていることは、前回の委員会で水産庁の山本さんから御説明がありましたから私はそれを了承しているのですが、今度の漁業協定をするに当りまして日本は勿論、日本の招請に応じて参加しておりまするアメリカ、それからカナダも同様に公海自由の操業ということを基本理念としてこの交渉が始められているということは、これは私遅く来ましたから、若し私が参ります以前にそういういろいろな御質疑があつたかもわかりませんが、私が来てからも農林大臣の答弁によつて肯定されている。併しながらこれ又前回の委員会で山本次長の説明によつて司令部からは何らの干渉を受ける建前にこの交渉はおかれていない、独自の立場で双方とも平等な立場においてこの交渉が始められているということも私は了承いたした上の質問でありますが、漁業協定をするのに一応は平等の立場において交渉が始められるということは、理論上肯定はされても、今の日本の置かれている立場というものが、例えば総司令部から何らの交渉を受けないとは言つても、国際的なまだ独立国家としての立場を日本が持つておらない。そういう状況にあるときに、表面上平等の立場において交渉が始められるのである。又條約が締結されるということを考えて見ても、何の引け目も、何の遠慮もなしに、実際にその交渉が進められ、又條約ができるかどうかということに私は一つの疑問を持つている。この点について、日本政府の立場からの御所信を伺いたい。それから交渉が始まつてから、外務省の発表したところによりますと、今度の協定は、例えば海域或いは捕獲量或いは期間、そういう問題について漁業資源の保護のために協定される、そういう態度で日本政府は臨むのである、こういうことなんです。これが事実であるかどうか、これは新聞で見たのですからどうかわかりませんが、事実であるかどうか。それから公式にこういうことをお伺いしていいかどうか、又日本の立場に利益するかどうかわかりませんが、表面上は公海操業の漁業の自由という旗を掲げてはいるが、アメリカやカナダの考えていることを推定をしますると、戰前の日本の漁業が相当アメリカ、カナダの領海ではないけれども、漁業の操業地区と考えられていた所に進出をしておつたということは、これはもう想像ができるところなんです。そういうことはやらない、濫獲はやらない、侵略漁業はやらない、ダンピングはやらないと、こういうことは吉田、ダレス書簡の往復によつて、大体この漁業に臨む日本の態度として、吉田さんが表明されるということは、一応肯けるわけなんです。併しそういうことになると、向うのほうでは交渉する態度として、やはり期間の問題、それから漁獲量の問題、それから制限すべき海域の問題等について、相当日本の立場に不利益になるような條件を交渉の過程において持つて来るのではないかということが想像できるわけなんです。それが想像ができるのに、何が故に日本の政府が海域や漁獲量や期間の問題について、日本に多くの制限、つまり損になるような制限を受けそうな條件と態度を以てこの交渉に臨まれているか、この点についてのお考えを伺いたい。……私一遍に聞いてしまいますから……。それからもう一つは、曾つてこの委員会で講和條約の調印前に、私は水産庁の長官にお伺いをしたことがあるのです。講和條約が締結されるというと恐らくはマツカーサー・ラインというものは解消されると推定せられる、マツカーサー・ラインが解消せられると、観念的には制限を受けておつた日本の漁業というものが東支那海或いは北洋方面において制限を受けなくなる、こういう立場で一応日本の漁業が自由になる、こういう考え方を持つているが、実際問題として、講和條約にソ連、それから中共等は参加しないだろうということが想像される、そうするとマツカーサー・ラインは一つの日本漁業に対する制限ラインであつたと同時に、又一つの保護ラインであつたマツカーサーラインの内のほうで漁業をしている場合には危險はない、支那海等においては危險があつたのですけれども、ないと考えられておつた保護ラインである。併し曾つて中共に拿捕された船に乗つておつた船員の諸君が、こちらに送還されて帰つて来て、そうしてここで水産、外務両委員会の連合委員会を開いて、証人として喚問して、向うで抑留されておつた当時の実情について、又送還された経過、理由等についての証言を求めたことがあるのです。そのときに証人たちは全部言を同じくして、向うのほうではマツカー・サーラインというのは蒋政権の時代にこしらえたので、中共政府の関知せざるラインである。ラインの中におろうが、外におろうが、見付け次第にその船は拿捕するのである、而も船は資本家のものだから船は取つてしまうが、船員諸君には迷惑をかけぬから気楽に帰つてくれ、こういうような……その言葉通りではないでしようが、大体そう受取られるようなことを言つて送還をされて来た船員たちの証言であつたわけであります。そうであれば、そういう考えで中共がいるとすれば、マツカーサー・ラインが解消されるということは、日本の漁業が支那海において自由になるということではない。今までのマツカーサー・ラインの外に出てやつてもいいということではない。北洋方面においても然りである。将来への考え方としては、講和條約には中共、ソ連が参加をしなかつたが、新たに別の方法において漁業協定が結ばれることに恐らく日本政府は努力されるでありましようけれども、それができるまでの空間ですね、その期間を一体日本の漁船をどういう機関でこれを保護して行くか、日本の立場から、言えばマツカーサー・ラインがなくなればそれより外に出ていいということになるわけですから、それより漁場を擴大して行く希望を持つに違いない。それらの漁船を一体どういうふうにして保護をして操業をやらしめるかということが問題であるが、その点について、講和條約に臨むに際して日本の政府の考え方、方針を聞かしてもらいたいと言つてお伺をしたところが、これは私一存でお答えができないので、政府部内での打合せの上で御答弁を申上げますということになつたつきり、私も水産庁などの立場の事情がよくわかりますから、追及しないで今日までに至つたわけです。いよいよ講和條約に調印をして今日になつて見ると、どうするかということを明らかに日本の方針としてきめなければならん段階に達している。そこで私どもが考え付くのは、安全保障條約の行政協定によつて取結ばれる内容について、水産の立場から一つ検討して見なければならんとい必要が出て来るわけです。この前も議論されたのですが、この間調印されただけの條文を見るというと、日本の国土が侵略された場合ということが書かれてある。一体日本の国土というものは陸だけを指しているのか、それとも商船や漁船が陸を離れてその航海の自由がどのようにして守られるかという問題、それから漁業の自由がどうして守られるかという問題が起つて来るので、行政協定をする際にその問題が考えられているかどうかということに対して、一つ農林大臣という立場でなしに、日本政府の立場としてどうお考えになつているかという、この三点につてい一応伺つておきます。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) 三点について詳細に亘る御質問がございましたが、先ず第一に、今回の漁業協定は一応平等の立場に立つているけれども、併しながら占領下においてであるからして結局気遅れして、非常な不利な立場になりやしないかということの御心配のようでありまして、これは先ほど千田さん或いは櫻内さんからも同様の御質問がありました。その意味におきまして実はそういうふうな誤解というものがあつてはいけないというので、今回漁業協定の冒頭におきまして、総司令部の外交局のシーボルド氏がわざわざ出席され、メモランダムを発表し、これは完全に平等なる立場において協定に臨むことを総司令部が認めておるのであります。従いまして我が国代表は全く平等の立場において我が国の主張をするという立場にあるのでございます。  その次には、外務省の発表なるものを実は見ておりませんが、海域或いは漁獲量、期間について協定をするというような発表だそうでございまするが、これは公式の発表かどうか私はよく存じませんが、これはこの資源保存の方法として、そういうことが考えられることはありましよう。併しながらこれは現在交渉の過程でございまして、今それについて交渉をするといういわゆる了解にも達していないと我々は感じております。今後原則的な條約の基本問題を審議するところの委員会、それから科学的、生物学的な審議をするところの委員会と二つに分かれて、その研究の過程において、こういう問題が或いは問題になるかと存じます。これが現在交渉の過程なので明確にいたされておりません。たとえこういう問題が起るといたしましても、我が国は公海における自由ということと漁業協定とは、いずれの国々も、その主権と利益が平等に保護されるべきであるという基本的な観念に立つて、この問題に対処したいというのが、我が方の基本的な態度でございます。  それからその次は、現在の占領下におけるマツカーサー・ラインは、一面においては我が国漁業の制限をいたしておる、半面において一つの保護の役割を演じておるということは一応認められることであると思います。併しながらこのマツカーサー・ラインが現存するにもかかわらず、やはりソ連並びに中共或いは蒋介石政権それ自身が、このマツカーサー・ライン内において拿捕しておることも又一面の事実でございます。この点は観念的には一つの保護ラインであるけれども、実情はそれほど確立されていないというのは誠に遺憾とするところでございます。今後我が国が独立して、マツカーサー・ラインが解消された場合において然らばどうなるかということの問題でありまするが、我が国が実質的にみずからを防衛する力を持たない今日は、誠にこれは困難な立場に逢着するのでありますが、併しながら国際法上並びに世界の良識は、この公海における自由ということを認める限りにおいて、これを無視して、公海における自由なる漁業を武力を以て妨害し、若しくわ拿捕するということは、これは国際輿論において制裁を受けるであろうと考えるのであります。こういうような不幸なる事態が起らないように政府としては極力或いは監視船を以て保護するとか、或いは集団漁業とか、万般の措置を以ちまして、不法なる武力侵略並びに拿捕に対する災害の未然防止に努めたいと考えておるのであります。なおこれと関連いたしまして、日米安全保障條約の行政協定にこれらのものが含まれるかどうかということのようでありまするが、これは現在行政協定の内容についてまだ交渉中のようであります。私自身その任に当つておりませんので、何とも申し上げられませんのですが、或いはこういうような問題についても研究されておるのじやないかと考える次第であります。なお中共、ソ連の立場も漸次こうしたものについては了解して頂けるように我々は善処いたしたいと考えておる次第でございます。

松浦清一日本社会党

○松浦清一君 農林大臣の立場から答弁を願える範囲というものはそういうことでしようかね。これは政治的なことでなしに実際問題としてマツカーサー・ラインがなくなる、そうすると中共は東支那海内の領海、全部領海だから、内にあると外にあると問題じやらいと言われておると言うのですよ、抑留された船員が帰つて来て……。それを行政協定の中にどうするかということが、未だに或いはあなた本当におわかりにならんかも知れないが、農林省としてはやつぱりこれは確乎たる一つの態度を打立てなければならんと思うのです。結局不法に日本の船が拿捕され、船員が抑留されるということは、これは国際法上、よその国が見ておらぬだろうというようなことを言つたところで、道を通つていて、何にもしないものを横から惡いやつが飛び出して来て頬つぺたをぶんなぐる。世間はぶんなぐつた惡いやつをあいつ惡いと非難するだろうが、なぐつたやつに誰が制裁を加えるかと言えば、やつぱり警察に連れて行つて、それはいかんじやないかとか言つて、何とか処置をしなければならん、具体的には……。だからそういうところだけで拿捕された国のほうの問題というものは解決付かない。現実に今まで拿捕されておるし、又その拿捕というものが擴大されるという心配こそあつても、これが縮少されるという安心感を持てないわけですね、ソ連や中共の今までのやり口から見ても。それは具体的に、これは観念的でなしに、具体的に起つて来るであろうという問題に対して、農林省に打つ手がないということでは、これは困る。やはり行政協定を行う場合にはそれらの拿捕される船をどうしてそれを守るか。今までよりは一歩前進したわけですね。マツカーサー・ラインがなくなつて、そして中共やソ連との漁業協定が行われないでも、日本の船がもつと今までのラインを越えた外域において操業されるということは、これは一般の常識であるし、業者も又そうしたいであろうと思う。ところが今のような状況では、却つて危險が増大して来て、今までよりも安心して東支那海において操業できるという態勢にならない。だからそれが具体的な現実であるとするならば、マツカーサー・ラインがなくなつたのだから、その辺においては安心してその操業ができるのであるという日本政府としての態度を、これはやつぱり打立てなければいかんと思う。それをするのにはどうすればいいかと言えば、結局これは安全保障條約の、これはもう條約そのものの全体については賛否は別問題として、具体的な問題として行政協定のお考えの中に入れておかなければならんと私はそう思う。それを入れないで、そしてこれはむやみに船を拿捕すれば、恐らくそのほかの国は黙つていないだろうというようなことくらいでは、その現場において操業する船の問題は解決付かないと思う。だから今おお伺いしたところによりますと、その点についてまだ御返事がないようでありますから、恐らく行政協定とするに当つては、閣議で問題になることでしようからして、強く農林大臣からその点を一つ主張をしてもらいたいということを希望を申上げておきます。  それから今までの拿捕された船員について、船それから船員の送還について、しばしば水産庁の長官からも努力をしておるということは伺つたのですが、努力をしておるにかかわらずなお且つ送還されて来ない船員が二百数十名も残つておるわけでしよう。船も非常にたくさんある。今数字をここに持つていないのではつきり言えませんが、残つておる。而も講和條約の調印される直前までは拿捕が暫くやんだ。あの前後ですよ。八日の日に調印をされてから、急に又拿捕が殖えておる。中共の拿捕が殖えて来ておる。あの調印をされた後からでも、私の記憶だけでも十何雙になりはせんかと思うほど拿捕されておる。それだから今の東支那海、黄海方面において以西底曳で獲つて来た魚の供給区域と言えば関西一円に亘つて、約三割の魚というものが以西底曳で運ばれて獲つて来ておりますね。それがますます危險になつて、ますますできなくなるということになれば、やはり関西地方における漁業の魚の給源というものはこれは絶たれる、こういうふうなことになるのでありますから、これは水産食料の将来への確保のためにでも、單なる一雙や二雙の船の拿捕される問題だけではなく、大きな外交上の問題として一つ取上げてもらいたいということを希望申上げておきます。お急ぎのようですから、これだけ申上げておきます。

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) 條約委員会から要望されておるようですから、簡單にお願いします。

千田正第一クラブ

○千田正君 さつきから農林大臣の御答弁はよく承わつておりますが、たつた一言だけ聞きたいのは、公海自由の原則、いわゆる国際公法上の原則の上に打立てられる今後の條約というものは、何ら協定の間に矛盾が起らないというふうの信念で農林大臣がお答えしておられるようでありますが、どうもその点が我々には不確定に考えられるのであります。なぜかというと、公海自由の原則の下に立つて、更にこの協約の中にそこに何かの仮に保護区域とか、或いは一定の海域が一つ布かれて、その海域内におけるところの操業の禁止というようなことになると、頗るそこに矛盾した條約が生れて来るという虞れを我々は考える。そこで飽くまでも国際公法上の原則、いわゆる公海の自由という原則の下に打立てられる條約というものであるならば、そういう海域の禁止区域とか、或いは指定区域というものはあるはずはないと思いますが、この点については一応農林大臣の御所信を伺つておきたいと思います。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) お答え申上げます。公法上のこれは平等ということは当然であります。併し同等の立場において各主権国が平等な立場における協約によつておのおのその主権の一部を制約するということは常にあることであります。或いは通信、或いは又航空についても常に行なわれることでありまして、これが我が国のみが不利な立場に置かれるということにおいては、その原則が否定されることでありますけれども、これは国際公法上常にあることと存じますので、問題は国際公法上自由であるから、何でも各国が勝手に公海において濫獲してもいいというような立場においては、これは結ばれないだろうと思います。

千田正第一クラブ

○千田正君 ただ一言、これは我々の要望でありますが、その際におきまして、日本の占める水産業の、いわゆる国内において占めるとよろのウエイト並びに水産業から出て来るところの水産加工品、その他におけるところの貿易上に占めるところのウエイトというものと、カナダ若しくはアメリカが占めておるところのその国々の国内における漁業のウエイトというものは十分勘考され、愼重に考慮されなければならない問題だと思いますので、この点日本の国内におけるいわゆる経済上又社会問題上、それから日本民族の長い間の歴史の過程において育つて来たところの水産業という重大なる産業というものの原則というものを十分認識されて、この協約に当つて頂きたいということだけを特に要望しておきます。

松浦清一日本社会党

○松浦清一君 一言だけ。今のマツカーサ・ラインの区域の、マツカーサー・ライン解消後に操業される自由を安全を保障するために行政協定の中でそれを話合つて行くということは未だわからんというお答えだつたけれども、考えて見ると、それでは満足できないのだ。だから農林大臣としてそれをやるかやらんかを肚を立ち割つてお答え願いたいと思います。農林大臣の肚で行政協定のときに強く主張するということを言つておいて頂きたい。

根本龍太郎自由党農林大臣

○国務大臣(根本龍太郎君) そういう行政協定の問題については、すでに総理が言つておるように、まだ協定のことについては非常に徴妙な段階にありますので、これは一切申上げられません。そういう意味におきまして私の立場を了とせられ、今日は追及しないようにして頂きたいと思います。

松浦清一日本社会党

○松浦清一君 御努力する御意思はありますね。

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) 農林大臣は平和條約委員会から要請をされておりますから、ここで退席されます。  私からちよつと水産省の次長にお伺いしたいと思います。農林大臣にお伺いするつもりでありましたけれども、もう退席されますので……、私らが、私と千田君及び衆議院の富永、鈴木の四人が丁度メキシコ海岸のニユーオルレアンスにおりましたときに、こういう手紙が参つております。宛名は水産議員団、内容は、貴団らの滯米中における水産関係についての発言は、米国官民を痛く刺戟しつつあり、今後の折衝にも惡影響があるため、以後愼重を期せられたし、親友として心からお願い申上げます。という私信が自由党の或る幹部から参つた。これに対して水産庁は全く関知しないという話をしておられますが、山本次長、どうですか。

山本豐水産庁次長

○政府委員(山本豐君) 全然関知しておりません。

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) こういうことがあつたということを御存じありませんか。

山本豐水産庁次長

○政府委員(山本豐君) 初めて聞きました。

千田正第一クラブ

○千田正君 その私信の便箋が農林省の便箋であるのでありまして、我々非常に不可異議に考えるのは、いやしくも官庁の便箋がさようなことに利用されるということは私は誠に遺憾に存じます。そこで恐らく山本次長は関知しないかも知れませんが、少くとも農林省部内において、そういう便箋を使つた人がおるということだけは、便箋によつて確認しますので、この点を一つ一応愼重に御詮議願いたいと思います。

松浦清一日本社会党

○松浦清一君 それはこの前の委員会で、廣川弘禪君でしよう。差出人は……。それはこの間発表されましたから、嚴重に一つ、どういうところがいけなかつたか、糺明をするということに、この前委員会でなつておるのですから、委員長、一つ、御会いになつて、農林省は知らないのだから、お会いになつて事情を糺明して、なんぼ廣川弘禪君、であろうとも、水産委員会の代表として米国に遣いしておる者に、私信であろうとも、そういうことは以てのほかだと私は思うので、糺明されて、事情を質した上で強い抗議を申込んでもらいたい。

木下辰雄緑風会

○委員長(木下辰雄君) そういたします。ほかに御質問ございませんければ、どうですか……。それでは本日の委員会はこれを以て閉会いたします。    午後二時五十九分散会

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