P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
12回国会参議院1951/10/24

厚生委員会 第5号

発言数
204
登壇者
14
会派数
4
開催日
1951/10/24

会議録

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) これより厚生委員会を開会いたします。  BCG予防接種の議題に先立ちまして癩に関する小委員長の御報告をお願いいたしたいと思います。

谷口弥三郎国民民主党

○谷口弥三郎君 癩に関しまする小委員会の経過を御報告申上げます。  前国会の休会中に小委員会を開きまして、政府当局から説明を聽取いたしましたことにつきましては前回御報告申上げている通りであります。今国会におきましてこの十月の二十二日に小委員会を開きまして協議いたしました結果、我が国の癩患者の分布状況と、療養所の諸種の問題とか、将来癩患者收容に対するところの問題でありますとか、又癩の予防、治療の問題でありますとか、貞明皇后様の記念事業の問題でありますとか、国立癩研究所設置の問題でございますとか、その他癩予防上参考となるようないろいろの問題につきまして、学者、專門家、権威者などのかたがたから厚生委員会におきまして参考人としておいでを願いまして、懇談会に意見を聞くことにいたしたいということに決定した次第でございます。  なお参考人のかたがたと申しますのは、癩の学会長、多摩全生園長の林芳信君、長嶋愛生園長の光田建輔君、国立予防衛生研究所長の小林六造君、名古屋大学教授の久野寧君、菊地惠風園長の宮崎松記君、こういうかたがたにお願い申上げたいと、こういうことになりました。以上御報告申上げます。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 小委員長の御報告通り承認することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 御異議ないものと認めます。   ―――――――――――――

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次に看護に関する小委員長の報告をお願いいたします。

藤原道子日本社会党

○藤原道子君 看護に関する小委員会を十月十七日、十九日、二十二日に開きまして、政府当局より実情を聽取いたしますると共に、次の改正点について慎重審議を進めました結果、次の結論に到達いたしました。  改正の主要点はいわゆる既得権者、即ち旧規則により保健婦、助産婦、看護婦の免許を受けた者は、国家試験若しくは認定講習によらないで新法による免許を與えることであります。  次に保健婦、助産婦、看護婦の外地からの引揚者についても当分の間、旧規則で免許が得られる途を講ずることとしたのであります。次は八月に文部、厚生省令で保健婦、助産婦、看護婦養成所指定規則が出ましたので、保健婦、助産婦、看護婦法第二十八條に、学校、養成所に関する委任規定を設けて法の形を整えたものであります。この法案の上程に関しましては、衆議院側とも種々打合せをいたしました結果、参議院側から先議にするということに了解が付いたということも一つこの際御報告さして頂きまして、本法案が上程されました節にはよろしくお願いいたします。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 只今の小委員長の報告通り了承することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 御異議ないものと認めます。  証人が来られます間、暫時休憩をいたします。    午前十時三十二分休憩    ―――――・―――――    午前十時三十五分開会

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 開会をいたします。  本日証人のかたがお見えになつておりまするので、委員長といたしまして御挨拶を申上げたいと存じます。本日は結核予防に関する問題中、特に最近新聞紙上に取上げられており、国民に多大の不安を抱かせておりますところのBCGの予防接種について、証人のかたがたの御出席を頂いた次第であります。参議院厚生委員会では、結核予防の重要性に鑑みまして、特に小委員会を設けて、結核予防の徹底を期するため各方両から調査をいたしておつたのでございます。ときたまたま日本学術会議の有志から厚生大臣に出されましたところのBCG強制接種に関する意見書が発表せられ、又厚生大臣談といたしまして、二、三有力新聞に、学術会議の学者からの意見もあり、結核予防の一部について一時停止、即ちBCG予防接種を一時中止、かういうようなことになるかも知れないことが報道され、又有害であれば法の一部改正をも考慮するといつたような意味の記事が発表せられたのであります。国民は少なからず不安を増大するに至りましたので、このことに関しまして御承知のごとく昭和二十三年六月、予防接種法が初めて制定せられたことにも関係いたしまするので、BCG強制接種に関する問題が重要な問題として国民の前に展開せられたのであります。更に本年三月、結核予防法が新たに公布されましたことは御存じの通りでありまして、この際BCG接種のほうは本予防法に移されて今日に至つたのであります。この際にも本委員会といたしましては、予防接種の問題には慎重審議を重ねた結果、現行通りの規定が設けられたのであります。以上の事実によりまして厚生委員会は本問題について重大関心を持つておりましたので、結核小委員長の提議に基きまして、意見書をお出しになりました学術会議のかたがた、及び斯界の專門の学術的な証言を得た後に適当な措置を講じたい、こういう考えからわざわざ本日証人のかたがたのおいでを頂いたのであります。種々御多忙のところを当委員会のために、曲げて御出席下さいましたことに対しまして深甚の敬意と謝意を表する次第であります。これより社会保障制度に関する調査の一環といたしまして、BCGの有害無害について証言を願うのでございまするが、その前に規定によりまして証人のかたがたに順次宣誓をお願いしたいと存じます。宣誓書の朗読をお願いいたします。総員起立をお願いいたします。証人宣誓、日本学術会議会員、日本医科大学学長塩田広重先生。    〔総員起立、証人は次ぎのように宣誓を行つた〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 塩田 広重

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次に專門家であるところの大阪大学教授堂野前維摩郷先生にお願いいたします。    〔証人は次のように宣誓を行つた〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 堂野前維摩郷

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次に学術会議会員の慶応大学教授の大森憲太先生にお願いいたします。    〔証人は次のように宣誓を行つた〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 大森 憲太

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次に專門家の東北大学教授海老名敏明先生にお願いいたします。    〔証人は次のように宣誓を行つた〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 海老名敏明

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 御着席を願います。次にBCGの有害無害に関する点につきまして順次証人のかたから御発言をお願いしたいと存じますが、都合上項目を分けまして、第一といたしましてBCGの効果について。第二点といたしましてBCGの副作用について。第三点といたしまして、BCG接種の身体に及ぼす障害の有無について。第四点としてBCG強制接種に対する意見について。第五点、BCG接種の改善に関する意見につきまして。第六点、その他BCGについての御意見をお願いしたいと存じます。順序を追うてお願いしたいと存じます。  日本学術会議会員、日本医科大学学長塩田広重先生にお願いいたします。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 私の申すべきことを申述べます前に、只今学術会議第七部の有志から厚生大臣に宛てた申入れと仰せでありましたが、実はこの十九日に、有志の意見を第七部の全会員が追認したということを、第七部長の私の名前で厚生大臣に宛て差上げたいと思つて、ここに持つておるのでありますけれども、その十九日は朝から晩までちやんと一つの席に坐つておらんならんことが続きましたので、今日までに及んでおりますが、その書面は次の通りであります。    BCG強制接種に関する件   去る十月四日BCGの強制接種に関する件について申入れをいたしましたが、本件は十月十九日の第七部会においては全員により追認されたことを御報告いたします。   昭和二十六年十月二十日  こういうふうでありますから、その点御承知置きを願います。  只今お申し付けになりました通り、この問題について一々この順序で申上げるということも一つの方法かとも思いますが、私は、かような申入れをいたしました順序もありまするし、一応私から申上げたいことをお聞き取り願いまして、そのあとで何か御質問下されば却つて時間も早いかと存じますので、お許しを願います。よろしうございますか。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) どうぞ。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 日本学術会議第七部有志、次いで第七部全員がBCG接種に関し厚生大臣に申入れを行なつたのは、同会議法にこういうことが示されております。「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させる」ということがありますので、その目的に従つて行なつたものであります。BCG接種につきましては学術会議においても本年初め頃から寄り寄り問題となつておつたのでありますが、本年七月「BCGをめぐる疑惑に答える」という通牒が厚生省から各郡道府県の衛生課宛に送られたにつきまして、その文中にBCGは有効無害なものである。それ故にこれを大いに努めて施せという記載がありましたので、私どもの注意を引いたのであります。そこで寄り寄り相談をいたしましたが、先ず第一に接種部位に膿瘍や潰瘍を生じて、数カ月から半年も治らんで難儀をしておる者が少くないのであります。なお、それが治りましてあとにケロイードと申しますと、蟹様腫と申しますか、醜い瘢痕ができたりして女の子などはひどく迷惑するということであります。それでこの潰瘍などは、行われる人によつても或いは何かワクチンなどにもよるか、ともかくいろいろの人の行い方によつて、私は数万人やつたけれども、そういうようなものは見ないというようなことを言われるかたもありまするし、或いは調べによりますと一〇%、或いは八〇%も三、四寸の瘢痕が残つて困つておるというようなことも確から筋から言われております。そこでこの点について二、三の專門家、日本で数えられるほどの專門家に聞いて見ますると、その潰瘍いうものはこれはどうも、そんなものは自然に治るから大して苦にするほどのことじやないと言うておられるかたもありまするし、或いは又どうも潰瘍は誠に困る、これを害と言えば害でありましようが、大勢の人が結核になるのを防ぐというためには、それくらいのことは、まあ犠牲者は気の毒だけれども我慢して頂かなければならんと、こう言うておられるかたもあります。或いは又或る專門家は、自分の方法によつて注意して行えばそういうものはできないのだから、まあ心配ないからと、こういうような答えでありました。併し、私の知つておりまする例におきましては、まあ半年とか数カ月潰瘍で困つておる人はかなりたくさん知つておりますけれども、專門家でありませんが、或る一例のごときは、接種された所から潰瘍ができまして、そしてそのお医者さんに来たときには長さが十センチにも及んでおつた、幅七センチというようなことであります。それでそこを切つて取つてまあ治つたけれども、二ヵ所くらい潰瘍が残つてなかなか治らん。そのうちに、それは左の上部でありますが、右の下腿にも又蚤に食われたような痕ができて、それがだんだんくずれて行つて、そこも取つたけれども、下手だつたから、とにかく潰瘍が残つて治らんで、二年半になる今日でもなお困つておると、こういうことであります。又もう一人は、上膊に接種されまして、その潰瘍が、潰瘍は余り大きいものではないけれども、その潰瘍の下部、つまり末梢にかたまりができて、熱がある。そうすると、それが少し治ると、又下のほうにずつと延びて行つて、上は治るが、だんだん延びて行つて到頭示指まで進んで行つて、示指の末節が取れてしまつた、こういうのがある。ここでちよつと一言申上げておきたいのは、その際に、そのお医者が非常に困つて学校医はやめたわけですが、こういうことでは非常に困る。何とかこれはしようがないものだろうかと、医師会のかたに相談をしたのですが、そういうことはまあ今荒立てると問題になるからもう暫らく待つておれと抑えられておるということであります。従つてこういうような例から考えますと、抑えられるというふうな、成るべく内証にして置くというような例がほかにもあるのではないかということも想像されないではないのであります。前の例の場合にもそういうようなことがありまして、保健所に行つて、どうも学校医としてこういうことがあると困る、何とか責任を持つてもらいたいというけれども、そんなことは責任持てんというようなことで困つておるということであけます。それは潰瘍の話。それから次には、この接種後間もなく発熱して、余り高いのじやないでしようけれども、三十八度くらいまで……、そして倦怠感がある。顔色がだんだん惡くなつて食欲も減退する。だんだん置いておくと憔悴して行く。治療を加えておるうちにX光線で見る肺に陰影が現われて来る。そういうようなことで、一年も入院したり、或いは通つて治療を受けたりしておる人が、私だけが知つておるのでも数人あります。それで以前は病気なんということなしに快活であつた子供が、後に神経質になつて風邪を引きやすいというようになるというようなことがあるので、これは接種されたところの細菌が拡がつてこういうようなことをなすというような証拠も勿論挙げられないことでありますが、それと同様に、それは偶然の出来事であつて、偶然の一致であつて、接種には何にも関係がないという証拠も挙げられないわけでありますが、併しこういうことの起る、接種に次いでこういうことが起るということは事実であつて、ひどく迷惑し不安を感ずるということであります。  次には又接種後に陽転化、つまりツベルクリンの反応が陽転化すれば大いにその後結核に罹ることを防ぐということになつておるようでありますが、併しそれは大体ということでありまして、接種して陽転したあとでも結核に罹つて死んだりした例を、私で開業している医者や、或いは療養所、病院の報告で知つておりますが、そのことに関して、專門家である戸田博士に聞いてみましたところが、いや、それは勿論絶対的のものではないから陽転したあとでも結核にはなる、半分くらいはなります。半分じや大変なことじやないですかと言うと、半分は大変と思われるかも知れんけれども、何しろ接種を受けている数が大変な数なんだから、その接種のために罹らん半分というのは相当多数だと、こう言われますが、私にして考えてみると、その接種のあとで半分くらいは又結核に罹つて、半分は罹らんと言われても、その罹らんといううちのどのくらいがBCGの接種によつて免かれておるのかということがわからないのではないかと思うのであります。それで、それはそんな話でありますけれども、本問題について長く研究をしておられる、我が国における最高権威者であつて私がひどく信用をしておりまする熊谷岱蔵博士が、本年の三月二十八日にこの参議院においてなされた証言のうちで申されておりますのは、このBCGは一定度まではきく、それでも疱瘡のようには無論きかない、無論とは言つておられませんけれども、きかない。陽転した後に結核に罹ることは、一人々々の例によればこれは幾らでもあると言うておられます。やはり私がほかの統計で見た例では、或いは戸田君に聞いた場合と同じよう、とにかく接種した、陽転したからというて、それで結核に罹らんというようなことは言えない、安心はできない、油断してはならんということであろうと思うのであります。  次に問題を転じまして、BCGの効果について申上げたいと思います。この効果についてというような細い專門的の問題は、私は專門外であつてよく存じません。私の経験によつてお答えするということはできませんが、これは皆さんとも相談したことでありますが、本邦においてBCGの効果について行われた大がかりな検査、曾つて学術振興会においてなされたものでありまして、このBCGの効果について云々される場合には、通常この問題が取上げられます。そうして大変効果があるのだということを述べられております。ところが先ほど申しました熊谷博士の衆議院における証言のうちに、一定度まではきくと言われているのは、この液体のワクチンの効果についてであります。併し乾燥ワクチンだとどのくらいきくかというと、博士の証言されるのにつきましては、実際私正直に言うとわからないのです、と言われております。なお同博士は、乾燥にすれば一般に菌が、菌がという字はそれにはありませんが、一般に菌が一五%ぐらい生きている、非常にいい場合でも三〇%内外生きていると言われている。且つその上に言われるには、死んでいても役に立つということは、理論的に主張できるかも知れませんが、実險もなく、実際この乾いたので病人を減したというのは誰もないのです、と、こう証言をされている。それ故に前に生菌の多い液体ワクチンを用いて有効であつたから、まあ似ているものだから――アナロギーと書いてありますが――似ているものだからいいじやないかというので、ツベルクリンのでき方によつて推量してやるより仕方がない、こういう漠然としたことであります。そうしてなおそこで言うておられるが、死んでしまつたものをさせばおまじないだと私ははつきり言います。こう言うておられます。私の知つておりまする、皆さんも名前を申せば御承知と思いますが、結核研究所で行われました乾燥ワクチンを用いての結果を見ますると、非常にこの検査のために注意深く行なつたところの陽転率は八〇乃至八八%にも及ぶそうです。併し普通三〇、よくて六〇%くらいの人しか陽転しないといわれますが、私は現在の都下の小学校の校医から検査された陽転率を聞いて見まするというと、それは一八%、それから今村博士のところに関係のある竹弘登氏の報告によりますると、二〇%という低率であります。即ち熊谷博士の言われておるところと一致する点があるのであります。かようにいたしまして陽転率がまあ少いから、これらの使用量を増したらどうだというような説もあるということであります。これは專門家から聞いたことでありますが、併しそうすると多少危險が起らんわけでもなかろうし、又、少くさしておけばできない潰瘍も、またできるというような傾きもあるようであります。従つてこれらのことも研究の余地があるのではないかと考えるのであります。  次に接種の方法等についても研究の余地はないでありましようか。その中で第一、問題となるべきものはツベルクリン反応だろうと思います。ツベルクリンの検査によつて、それが陰性であれば結核が体の中にないから接種するというようなことになるのでありますが、これはいつでも正しく体の中に結核がないという証拠になるでありましようか。多少結核が体の中に入つておつても陰性という結果を示すということは絶無でありましようか。それらのことはいろいろなところの説があるのでありまして、今更申すまでもないようにも思いますが、なお研究すべき問題であるかと思います。なお又このツベルクリン反応を判定するということはよほど慣れた人でもなかなか楽でない、困難を覚える。殊に境めのところ、つまり〇・五から〇・九ミリというような、いわゆる擬陽性と言いますか、そういうところの九ミリというところは余りぼんやりしておるものですから、九ミリというようなところは誠に少ない。そこで大抵これは十だろうとか、或いは八だろうというようなことで、そういうように專門家でも判定はむづかしいのでありますから、実際に事に当つておられるかたが十分これを判定することができ得ましようか。なお又、都市におきますのと、それから山村或いは農村等においての結核の少ない所にあるのとでは、その判定して得た結果、殊に境めのところなどをどういうふうに扱うかということが違うという説があります。それについてもなお研究されたら、或いはそういうことを十分に判定する力を持つた人に実際に行わせることなどについて、十分な研究が要るのではないかと私は考えるのであります。また接種の方法にいたしましても、いろいろな問題があるようであります。今までは皮下にやつておつたけれども、それでは潰瘍などができ易いから皮内でやろう。それよりもほかの乱刺法であるとか、多刺法であるとか、いろいろな方法があつて、これらも研究の余地があるように私考えるのであります。これらが私ども相談して挙げました点でありますが、昨年夏出ましたアメリカ公衆衛生局長及び実地について研究しておるところの者の二人の名前で出しました報告によりますと、これはアンダーソンとパールマンという人でありますが、このBCGについては研究がまだまだたくさん残つておる。今非常に大がかりの研究をしてあるから、数年の後には素晴らしい結果が出るかも知れんと言つておるが、今のところではアメリカ合衆国におけるBCGワクチンの使用について明確な推薦をなすことはできない。そうしてBCGを使用しておるところのフランスやデンマークが結核の死亡率が減少したと言うておるが、BCG接種が役立つたためだという結論に無条件で賛成できない。なぜかというとアイルランドではBCGを使つておりませんけれども、一九三〇年に十万人に二百人以上であつた死亡率が十八年後には僅かに三十余人に減つたという例があるからであると申しております。なお附加えて、いずれにしてもBCGを余り信じ過ぎて、他の結核予防の施設などを怠つてはならんということを附加えておるのであります。アメリカの人の言うことでありますけれども、我々も参考にしなければならんと思うのであります。  最後に強制接種の問題であります。これについて学術会議の七部の連中で相談いたしました。そのうち一人は現在のままの接種方法では反対であるけれども、自分のやるようなことを十分に取入れてくれれば必ずしも反対ではない。こういうようなことでありました。他の人はいろいろな意味で強制に反対をしております。例えばいやしくも毒力のある生きた細菌を体の内に入れるということは人道上賛成できない。絶対反対だ。こういうかたもありまするし、又精神病者を断種するというようなことは、世の中に非常に利益があるということはわかり切つておることであるにもかかわらず、それを強制的に断種するというようなことは差控えつつある今日である。同じような意味でBCG接種を強制するということには反対だという人もあります。或るいは又、先ほどから申し述べておりますようにBCGの效力というものが、殊に今申しておりますのは乾燥ワクチンのことでありますが、十分証明されておるとは思えぬ。又いろいろな害がある。或いは又、一方には今のようなやり方では陽転率を目安にしておるが、その陽転状態も少い。こういうものを強制するということには賛成できない。こういうようなわけであります。かような理由によりまして、日本学術会議の第七部におきましては強制までしてBCG接種を施行しておられるが、本邦の現段階にあつてはまだいろいろ研究の余地があるように思われます。従つて慎重に調査して遺憾ないようにして頂きたいという申入れをいたしたのは、不都合でないと私は信じておるのであります。  以上がお尋ねの件に答え、且つまた学術会議が申入れをした理由でありまするが、若しここに一言申述べることを許されまするならば、こういうような問題の立法に当りましては、專門家、つまりこのBCGの接種について研究しておられるいろいろな專門家のみならず、広く医家、法律等の意見を聽取して頂いて判断して頂いて、強制するとかしないとかいう問題を立法して頂きたい。これは申すまでもないことであります。若しこういうような機会に私に一言言わして頂くことができますならば、厚生省は、常に医師会、なかんずく学術会議と緊密な連絡をとつて、十分協力して当られんことを希望して、私の証言を終ることにいたします。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次は專門家の大阪大学教授の堂野前維摩郷先生にお願いをいたします。

堂野前維摩郷大阪大学教授

○証人(堂野前維摩郷君) 御質問になつている事項別に、引続き意見を述べさせて頂いてよろしうございましようか。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) よろしうございます。

堂野前維摩郷大阪大学教授

○証人(堂野前維摩郷君) それでは先ずBCGの効果についてでございます。BCGにつきましては昭和の初め、大阪大学教授今村荒男博士が結核予防ワクチンとしてこれが有効なことに着眼されまして、詳細なる家験的研究を行なつた後、昭和四年我が国で最初の人体接種を敢行されました。その後も引続き多数の人々にこの接種を行なつた結果、BCGを人体に接種しても何ら危險なことがなく、而も結核予防に対して相当の効果があるということを発表されました。この報告が学界の注目を引きまして、日本学術振興会第八小委員会、これはその当時の委員長は最初は長與先生、次いで熊谷先生であつたかと思いますが、この委員会において昭和十三年以来BCG接種に対する多数学者の共同研究が開始されまして、そうして五ヵ年に亘り、動物実験並びに数万に上る人体接種成績を慎重に検討した結果、昭和十八年BCGを接種すれば結核発病を二分の一以下に、又死亡を八分の一以下に低下することができるという結論を発表されたのであります。爾来BCGの接種が広く一般に行われるようになつたことは御承知の通りと存じます。私自身も昭和十一年から昭和十七年に至る六ヵ年間に亘りまして、当時奉職しておりました千葉医科大学附属病院において、病院の看護婦その他についてBCG接種の効果をいささか検討したことがあります。それは毎年この病院に入つて来る看護婦の生徒のうち、ツベルクリン反応が陰性であつた者を大体二群に分けまして、一群にはBCGを接種し、他の一群には接種せずにそのままにして置いて、その両群からの結核発病の状態を比較観察したのであります。その結果によりますというと、BCGを接種した百一名中からは結核を発病した者は七名、六・九%であるに対しまして、接種しなかつた群の百六名中からの発病は十七名、一五・六%であり、接種したほうの発病は接種しなかつた者の半分以下でありました。而もこの接種群から発病した者の経過は大変よくて、平均三、四カ月で治り、死んだ者は一人もなかつたのでありますが、接種しなかつた者で発病した者は病気が重くて、その経過は平均九ヵ月で、そのうち二名、一・九%が死んでおるという結果を得たのであります。以上のような私の乏しい経験ではありますが、自身の経験及び内外多数の者の研究成績から考えまして、私はBCG接種は初感染による発病及び死亡を相当に低下する効果のあるということを確信しておる次第でありまして、勿論この効果は先ほど塩田先生からも申されたように決して絶対的なものではありません。従つてその効果を過信して、ほかの結核予防措置を怠つてはならないということは、申すまでもないのでございます。  次にBCGの副作用についてでありますが、BCG接種の副作用には全身的及び局所的なもの、三つが考えられますが、今日のようなワクチンを使つた経験では、発熱その他の全身症状を起した場合を私どもは経験しておりません。併し又、一方たとえ症状が現われないでも、或いは潜在性の何らかの全身的の障害を起したのではないかというような疑いもあるわけであります。そこでそういつたことを究明する一助といたしまして、私は以前にBCGを接種した十五例につきまして、接種後一ヵ月間に亘りまして血液像及び赤血球の沈降速度を調べて見ましたが、それによりますと接種してから三日か七日の後に一過性の白血球が殖えたものが十例ありました。又赤血球沈降速度が五ミリ以上早くなつたものが四例ありましたが、いずれも短時日の間に元に復しまして、その後は何らの異常も認められなかつたのであります。かようなBCG接種による全身的な副作用は、余りそう取上げて言うべきほどのものはないと考えております。  次に接種局所の反応でありますが、最近私の教室の阿盛教授らが千七十名に乾燥ワクチンの皮内接種を行いまして、一ヵ月後に局所反応を調べた成績によりますというと、痂皮、即ちかさぶた、これのできておるものが六一%、これはちよつと多いのですが、それからその局所に硬結、しこりのできたものが二八%、それから膿疱、ちよつと膿を持つたような小さい水ぶくれができる、そういうものが九%ありましたが、潰瘍のできたものは僅かに一・四%でありまして、いずれも直径一センチ前後の小さいものばかりであります。三ヵ月後に調べたところでは全く治つていたのであります。このほか、私どもの教室員が関係して皮内接種をやりました。その他の集団でも世間によく聞く大きい潰瘍とか或いは膿瘍なんかのできて困つたという場合には遭遇しておらないのであります。併し世間ではときどきこういう副作用の起ることを耳にいたしますが、これはまあ何分多人数にやることでありますから、時には誤つて注射が皮下に入るというようなことのためではなかろうかと考えております。併し、まあ誤つて皮下に入つて膿瘍を作つても、私どもの経験では別に危險はないというふうに考えております。私も以前は皮下接種をやつていた時分にちよいちよいこういつた膿瘍のできるのを見ましたが、まあ大抵は二、三ヵ月で治り、遅くも五ヵ月以内には大抵治つたのであります。併しとにかく、そう多いものではなくとも、大きい潰瘍とか或いは膿瘍なんかのできることは。その人にとつては甚だ不愉快なことであり、又多少の苦痛も與えることになるので、大変お気の毒なことではありますが、併しまあ、一方これによりまして結核発病を相当に予防する効果があるということを考えてもらいますれば、まあまあ我慢して頂けることではないかと、私はそういうふうに考えております。  それから次の御質問、BCG接種が人体に及ぼす障害の有無について、これは誠に重大な問題でありますので、これを四つに分けて考えて見たいと存じます。  第一は、BCGワクチンの中に強力な結核菌が混入していまして、そのために結核病を起す場合であります。これは現在BCGワクチンについてはメーカーが一々自家検定もやりますし、更にその上、厳重な国家検定が実施されておりますから、このようなことはあり得ないと存じます。  第二に、注射されたBCGが人体内で毒力を取戻して、BCG自身のために結核が起ることがないかという点であります。過去において多くの学者がこの点について研究されましたが、現在まだまだBCGの毒力が復帰したという事実を認めていないのであります。併し、若しBCGが本当に結核を起すようなことがあると仮定いたしますると、BCGを接種した者のほうが、結核発病は、しない者よりもずつと多くなるはずでありますが、先ほどから申しましたように、事実はこれと全く反対でありますから、このようなことはあるとは信ぜられないのであります。  第三に、既感染者、即ちツベルクリン反応の陽性者、或いはすでに結核に罹つておるような人に誤つてBCGを注射した場合に、結核を誘発することがないかどうか、或いは病気を惡化させるようなことはないかという問題であります。私も少数例ではありますが、こうした場合の経験を持つておりますが、その場合、接種局所の反応が相当強く起りましたが、そのほかには全身的にも、又病巣に対しても特に惡影響を認められなかつたのであります。私のほかにも、もつと多数例について同じような観察をしておられるかたがありますが、やはり接種局所の反応が強い以外には、これによる大した惡影響は認めておりません。第四番目に、結核に感染していてもツベルクリン反応が陽転するまでには通常三週間乃至八週間かかります。その期間中にはすでに結核感染が起つておるにかかわらず、ツベルクリン反応が陰性でありますから、その時期に偶然BCGが行われ、そうして間もなく発病するというようなこともあり得るわけであります。こういう場合は素人にはBCGを接種したために結核に罹つたというように誤解され勝ちでありまして、世間で問題になつておるのは、恐らくはこうした場合が多いかと存じます。併し事実は自然感染によつて発病したのであつて、偶然BCG接種がその前に行われたということに過ぎないわけであります。ただこの際、BCG接種が自然感染による発病を誘発することがないかどうかということが問題であります。この点を人体接種の場合について、いずれとも科学的に決定することは困難でありますが、私ども自分の経験から申しましても、又他の諸家の報告から見ましても、確かにこういつた場合にBCG接種が発病を誘発したというような例を証明された例を見ないのでありますし、又前に述べましたように、すでに結核を持つておる人にBCGを接種しても、それほど病状なんかを惡化しないということから類推いたしまして、今のような場合にはBCG接種が結核を誘発するように作用するということは先ずあるまいと推定される次第であります。以上のように私は、今日まで多数の他の研究者の業績、乏しいながら私自身の経験から得ました知識の範囲におきましても、BCG接種がその人の生命に関するような、或いはその人の健康を著しく脅かすような身体的の障害を起すようなことはあるまいと信じておるものであります。併し何分にも今後BCGの接種が、一層多数国民に行われることでありますから、若しこの接種より著しい身体障害の起ると疑われるようなケースが出て来た場合には、できるだけこれを科学的に検討いたしまして、その真相を究明することが是非とも必要であると存じます。  次は第四の質問事項、BCGの強制接種に対する意見であります。私は以上申上げましたような理由によりまして、少くとも我が国のような結核の感染及び発病の非常に多い国では、BCG接種は結核の予防の一つの有力な手段としてこれを利用する価値があり、従つてこの接種は広く一般に行わるべきものであると存じます。併しその目的に向つて国としては、如何なる措置を講ずべきかということになりますというと、これは政治又は行政の部面に属することでありまして、いささか医学のみの範囲を超えた問題であると思いますが、御質問がありましたので、これについて私の意見を率直に申述べます。理想から申しますれば、国民全体が結核予防の重要な意味を十分に理解されまして、自発的に進んでBCG接種を受けられますことが一番望ましいことであります。併し現在、我が国民全般としての結核に関する知識の水準や、或いは社会的又は経済的の諸條件から考えて見まして、そういうことはちよつと望み得ないことでありますから、BCG接種を広く行うためには、現在実施されておる結核予防法のような考え方、これは本当の意味の強制かどうか私にはわかりませんが、そのようなやり方を採用することも止むを得ないと考えている次第であります。  それから第五点、BCG接種の改善に関する意見であります。およそBCG接種に限りません。他の予防接種にいたしましても、或いは又いろいろな診断とか治療の方法にしましても、これは絶えず研究され、そうして進歩すべきものであると存じます。BCGにつきましても、従来多くの学者により熱心に研究されました結果、液体ワクチンが乾燥ワクチンに変り、皮下接種が皮内接種に進歩いたしまして、現在のように広く一般に使用することのできる段階に到達したのであります。併し研究者としての立場かち申しますれば、現在のBCG接種は決して完全無欠なものとは申せません。従つてワクチンの製造法についても、又接種方法についても、今後更によきものを求めて大いに研究することが必要であると存じます。大体以上であります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 大分時間も経過して参りましたので、誠に恐縮でございますが、重複する点をお避け頂きまして、成るべく短時間に御説明頂ければ幸いと思うわけであります。次は学術会々員の慶応大学の教授の大森憲太先生にお願いいたします。

大森憲太慶応義塾大学教授

○証人(大森憲太君) お言葉に従いまして簡単に申上げるつもりであります。丁度前のお二方の例に従いまして、大体お問いの線について、すべての点について一応申上げて見たいと思います。併しこれは私が一般内科医であるという観点からこの問題を取扱つているということについてあらかじめ御承知置きを願います。私は一週二回、約五、六十人の病人を診て三十年になりますが、この頃BCG接種のあとで結核が起つたという例を多少見るのであります。勿論これはBCG接種前からすでに感染しておつてそれが発病したもであるかも知れません。その点丁度今堂野前君から言われた通りであります。又幾度も接種しないで僅かに一度であつたから感染したものかも知れません。併しそういう事情はとにかくといたしまして、BCG接種後、或いはそれらの事情のためか、何らかの原因で結核発病があることは一般内科医の承認している常識であります。これについて統計的の事実もありますが、これは後刻お尋ねがあれば御披露したいと思います。併し一方今堂野前君から言われましたように、学術振興会時代からこの予防接種の効果については、或いは発病を二分の一に減らすことができるという成績もありますし、又この頃東鉄の管理局の千葉保之さんからBCG接種のほうが感染後に特に健康指導、健康管理をやればなお三分の一にも結核発病を減らすことができるというお話は、私も誠に見事な成績であると感服しておる次第であります。併しこういう相違は一体どうしてできるのでありましようか。これは恐らく私は見方の違い、同じことを両方で見ておるからの違いであつて、例えば我々の臨床経験の場合でも、発病しない者が大勢あるということもこれは統計的に数字は出ませんが、認められるところであります。又健康管理等相当に注意をいたしましても何がしかはやはり発病者が出るというのでありまして、事実においてはただ数字の相違で、これは一致するところであると私は考える。ただここに一つ問題になりますのは、BCG接種の効果の程度は果してどの程度であるかという問題であると思います。少くとも私の見解によりますれば、天然痘の予防接種即ち種痘の効果に比べれば、種痘のために我々が国民一人もあばた面が今日ないというほどの効果を奏しておるのに比べれば、結核予防、BCG予防接種の効果は果してどの程度であるか、これは種痘の効果には及ばないものであると私は考えておるのであります。以上は併しいわゆる一般のBCGの効果についてでありまして、それに対する私の見解でありますが、現在行われておる乾燥ワクチンによる予防接種の効果についてこれから申上げて見たいと思います。但し一般に行われておる乾燥ワクチンの成績と申しますものは、両三年来のことでありまして、これがまだ発病阻止にどれくらいの効果があるか、或いは更に進んで死亡率にどのくらい効果があるかということは、これは少しく統計するには早いのではないかと思います。多少ないではありません。併し少くとも一応判定の基準としてツベルクリン陽転率を選ぶことが常識ではないかと思います。併しこれは広く一般に行われておることでありますから、多数の統計が、或いは多数の事実があることであると思いますが、私は信頼度の点から文部省の科学研究費による結核総合研究委員会の報告を拾つて見たいと思います。陽転率の点につきましては、三〇乃至約一〇〇%、とにかく非常に開きがあるのであります。このうち陽転率の低いのは三〇乃至六〇、これがさつき塩田先生の挙げた数字などもこの中に含まれるのではないかと思います。そういうのが又地方配給ワクチンなのであります。これも詳細の数字はあとで御披露申してよろしいと思います。その他局所作用につきましても比較的軽微であるとするのが多数でありますが、併しこれも再接種の場合におきまして、強い副作用、強い副作用の内容は膿疱、痂皮、潰瘍と書かれておりますが、それを八〇%も発生したという報告があるのであります。これもお尋ねがあればあとで御披露申上げても差支えありません。これらは恐らく製品の種類、注射量、注射法等の関係であると思われますが、これが私ども学術会議で取上げて、いわゆる現段階においては特にどうこうということを承わりましたゆえんであります。現段階の、即ち配給されたワクチンについての成績を我々は主として取上げておる次第であります。従つて現在の段階における量産の製品で、今のような注射方法によるワクチン接種についてはなお研究の余地がありはしないかと申すわけであります。これが委員長からお尋ねになりました効果並びに副作用についての私の見解でありますので、私はこれで医界にもなお疑問の余地があるということを声明文の中で謳つてあるのはこういう工合に解釈してあれに署名した次第であります。  なお強制接種の可否というようなことが、勿論これは大問題でありますが、これは私は大体こういう根本の考え方から決せらるべきものであると思います。即ちきき目の程度と有害度の大きさとの開き、これが大きければ強制すべし、これが完全或いは完全に近いものでなければ強制はどうであろう、こういう見解であります。例えば現在行われております種痘のごときは、強制をしてちつとも差支えはない。むしろ国民は喜んで強制接種を受けておるような実情である。それは効果が絶大、或いは絶大に近いからであります。ところがBCG接種については、これは今專門の堂野前さんからもお話になりました通りに、効果についてもそれは評価によつてはいろいろでありますが、副作用についても、これを種痘に比べれば格段の差異があるということは認めて差支えないと思う。そういう意味で、殊に最近の乾燥ワクチンに対するいろいろの調査事実等を考え併せて見ますると、今日果して強制接種が必要であるかどうか、これは私は決定的のことを申しませんが、どうぞ御明察を願いたいと思います。なおBCG接種改良の意見等は私の專門外に属しますので申述べません。全く結核の学問は非常に広く、深く、複雑であります。殊にBCG等の問題につきましても、決して学問上はそう簡単なものでない。従つて專門外の者がその改良意見等を申述べますのは、これはおこがましい話でありますが、ただ同僚戸田君等の話によりますと、なお製造法の改良も接種法の改良も必要であるように聞き受けておりますので、これは一応皆さんとくに御承知のことでありますけれども、私ここに披露して、私の意見に代えたいと思います。  以上甚だ簡単でありますが、若しも、併しお尋ねがあればここに多少のデータも持つて参つておりますので、御披露いたすことができると思います。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次は東北大学教授の海老名敏明先生にお願いいたします。

海老名敏明東北大学教授

○証人(海老名敏明君) 簡単に御設問の点だけについてお話いたしたいと思います。先ほどから堂野前先生、大森先生がこのBCGはいわゆる天然痘に対する注射のようにはきかんというお話であります。これは御尤もなことであります。ところがBCGに対して世間はやはり種痘と同じような効果を期待しておるのではないか、これが結局世上で不安に考えられる一つの原因でないかと思うのであります。元来結核というものにこういう永続的な、完全な免疫というものはあり得ないのであります。従つてBCGというものにそれほど大きな期待を私どもはかけておらないのであります。併しながら、この事実から、BCGが無効有害であるという結論には達しないのであります。私どもの長い間の経験によりますと、やはりこの発病というものを非常に阻止します。それから死亡率を非常に減退するのであります。又感染した者も非常に軽症で済むものが多いのであります。これを全国民の立場から考えて見ますと、仮に二分の一に減じたならばどんな数になるかということをお考え下されば、やはりBCGというものは有効であるということを言わざるを得ないと思うのであります。戦前から私どもに外国の文献もたくさん入つております。この頃も外国の文献がたくさん入つて、外国ではBCGが一体どうなつておるのだろうかというので私ども研究者は注意して見たのでありますが、その後ブラジルだとか、或いはアルゼンチン、ノールウエー、デンマーク、カナダ或いは米国などで、たくさんの接種成績が発表されております。いずれ患者は非常に減じております。又発病した者も非常に軽症で済んでおります。私どもの乏しい経験から申しましても、これは非常な差があるのであります。先ず堂野前さんと同じように私どもは監獄だとか或いは学生で実験したのでありますが、これは勿論少し前のものであります。接種したのが三千八百十一人、そのうち患者が三十人、即ち、〇・七九%であります。ツベルクリン反応の陰性で、接種しないのが二千八百八十一人、それから患者が八十二名できた、ニ・八四%であります。即ち患者数は大体三分の一に減じております。結核で死亡した者を見ますると、非接種者からは〇・四五%、接種者からはこの場合はちつとも出ておりません。それから去年も岩手県の釜石の某工場へ行つて調べて来たのでありますが、昭和十九年度の調査によりますと、ツベルクリン反応陰性で、BCG非接種者からは一・六%の発病があつたのでありますが、BCG接種者群からは僅かに〇・六%であります。即ち約三分の一の減少であります。又同一工場に去年行つて調べた結果によりますと、これは二十二年にツベルクリン反応を調べて、三年間放つておいてあります。そうしますと、ツベルクリン反応陰性で、BCGを接種しなかつた者からは、一二・八%の肺所見者を出しております。これに反してBCG接種者からは四・五%の所見者を出しておるに過ぎないのであります。こういう、私どもの実験――動物実験でやつたのでありますが、いずれもBCGによつて感染を阻止するという結論に達しておるのであります。  次にBCGは一体有害であるかどうかという問題であります。これは堂野前先生からいろうお話があつたが、先ず第一問はBCGによつて一体結核になるかという問題であります。これは私どもの長らくの経験から、動物に、モルモツトに三十ミリという大量をいたしましても、これは結核で斃死するというようなことは絶対にないのであります。又人間に注射をして結核になつたということも、確証あるものは一例もないのであります。  第二、BCG接種者は自然発病をつまり促すかどうかということであります。つまり感染しておつた人がBCGをさされると、発病を早めるかどうかという問題であります。これは人間で実験するということはなかなかむずかしいものでありますが、動物にBCGをさしまして、それと同時に人型結核菌をさす、或いはその後BCGをさす、数ヵ月後にこの両群を殺して見るのであります。そうして見ると、私どもの実験によりますと、BCGを接種したからといつて、惡くなつたという動物は一匹もなかつたのであります。むしろBCGを大量さしまして、それと同時に人型結核菌を同時にさした群、病症は軽症だつたのであります。人間においてもBCG接種者に人型結核菌の感染があつて、両方入つて来るという場合におきましては、これはBCGの効果が、まだいわゆる免疫体ができてないうちに人型結核菌が入るのでありますから、これは防ぎ得ないと思うのであります。併しながらBCBを接種したために発病を促したと言われるような例というもの、或いはそれを証明し得た例というものを、私どもは知らないのであります。ノールウエーのゲルハート・ハーズベルグは、アチーヴメント・オブ・BCG・ワクシネーシヨンという本を一九四九年に書いておりますが、この問題に触れまして、BCGによつて自然感染者の発病を促すというような傾向は一つも見たことがない。併しながら自然感染と、同時にBCGをさす、或いは自然感染を仮にやつていた患者が、その初めの時期はツベルクリン反応が陰性なのでありますから、勿論ツベルクリン反応だけを見てBCGをさすということはわからない部分があるわけであります。こういう場合にBCGをさしてもやはり効果はないのであります。やはりこの患者、このさされた人は発病し得るのであります。これが先ほど堂野氏から言われたように往々にして問題を投げておることになるのであります。それからBCGによつて、例えばBCGが結核患者に誤つてさされた場合に結核病者が惡くなるかどうかという問題であります。これは私どもが局所反応を研究するために私どもの患者にBCGを打つたことがあります。そうしますとやはりこの局所反応が非常に強く出ます。いわゆる私どもはコツホの現象と言つているのであります。併しながらこのために患者が惡くなつたという例はちつとも経験しておらないのであります。又こういう実験もやつて見ました。確かに初感染と思われる患者でありますが、まだツベルクリン反応がはつきり出ない、併し何となくむくみがあるという患者に、こういう者にBCGをさせばアレルギーが早く出まして却つて病気がよくなるのではないかと私ども数年こういう実験をやつております。この場合におきましても格別に患者が惡くなるという例は私どもは知らないのであります。  次にこの接種部位の問題であります。これはBCGは先ほどから申されるように生菌であります。従つて局所に何らかの反応を起すということは、これは当然なのであります。これは或いは或る程度の反応は避けられない、これはまあ常識だろうと思います。ただどの程度の潰瘍にそれをとどめるかということが私どもBCGを研究する者の常に考えておる次第であります。それが初めは皮下接種がだんだん皮内接種に移つて来たというのも実はそういうことを考えてのことであります。初め私どもの研究時代には随分潰瘍が出て来た患者がおつたのでありますが、現在のワクチンでそれほどほうぼうから苦情を申込まれることがないのであります。で余り今のワクチンの、或いは今の接種方法ではそれほど大した潰瘍ができないでないかと私どもは考えておるのであります。これがBCG接種が身体に及ぼす障害の有無如何であります。  それから強制接種の問題であります。これは結核の予防というものはBCGなんか使わなくとも生活環境がよくなり、そうして衛生施設がよくなり、そうして裕福になれば自然結核などというものはなくなるだろうと思います。アメリカのような裕福な国家になりますと勿論BCGを使う必要は毫もないのであります。これはアーサーマイヤー、アメリカン・トルドー・ソサイエテイに教えてもらわなくても誰でも知つていることであります。併し実際日本の現状を見ますと、私どもは山村或いは農村、或いは山間僻地の部落に行つて見ますと、どこに行つても結核患者がうようよしておるのであります。従つて誰がどんなときにどんな場所で感染するかというようなことはちつともわからないのであります。従つて若しもBCGというものが幾分でも有効であるというものであるとするならば、これはこういうつまりお互いに結核であるということを知らない人がたくさんおるのでありますから、こういう家族だとか、そういうものに接種するのがこれは妥当だと思うのであります。若しもこれを先ほどから皆様がおつしやつたようにこれが自由意思で希望者にやるということは勿論理想でありますが、現在の日本で希望者を募つたならば恐らく知識階級の結核患者の家族に限られるだろうと思うのであります。先ほどから申上げたように私どもが山村を一軒々々廻つて見ますると、やはり患者が非常に多いのでありますから、こういう家族というものは絶対にBCGの恩典に浴し得ないという結果になるのではないかと思うのであります。私は余り法律のことは知りませんが、こういう意味合いから言いますればできるだけ多くの国民にBCGをさせるのがこれはよい方法ではないかと私は考えておるのであります。次にBCG接種の完全な方法というのでありますが、これは勿論私ども学問をやつておる者には完全なんというものはないのであります。完全なワクチンなんというものを探して行くならば恐らく永遠にできないのであろうかと思うのであります。従つてその場その場において最も完全なものを使うよりほか手がないのではないか。私どもが今日完全と思つておることも研究によれば明日になつたらこれは完全でなくなるのであります。これは何もBCGに限つたことでなく、学問というものは私はこういうものだろうと思うのであります。従つてBCGは今のところ勿論完全なものではない、併しだんだん完全なものにさせなければならんと、こう考えております。  それから乾燥ワクチンの問題であります。私はこれは戦争中から乾燥ワクチンの研究をやつておるものであります。勿論この乾燥ワクチンというものは生のワクチンより幾分弱く、これは止むを得ないわけであります。これは動物実験を見ましても幾分弱い、併し同じ量を動物にさしまして、そうして結核菌をかけて見ますとそう大した差はないのであります。勿論ワクチンでありますからいろいろの操作でやるのでありますから、或いは出来、不出来はあるでありましよう。併しこの出来不出来はこれは国家の検定によつて十分に検定すればよいものだと思うのであります。仮にこれを生ワクチンでやるということを考えて見ましよう。生ワクチンというものはせいぜい十日しか使われない、そうしますと、例えば十日で作つた製品を青森の端に持つて行つて各部落民にさすというと何日かかるでありましようか。恐らく私としては死亡したワクチンを使用せざるを得ないだろうと思うのであります。こういう目的からこの乾燥ワクチンというものを十分研究をして、そうして広く使うというふうにしなければいけないと私は思うのであります。それから接種方法の改善でありますが、これはいろいろあります。勿論恐らくアメリカでやつておるビルコーだとか、或いはローゼンタールとかいう、ああいう針でさす方法があるのでありますが、こういう方法もやはりだんだん私ども研究して、或いはそういう方法に移る機会が来るかも知れないのであります。併し現段階においてはまあ今の方がこれは止むを得ないのではないかと私は考えておるのであります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) いろいろと御意見の御開陳がありまして有難うございます。  これより質疑に移りますが、忌憚のない御意見の発表をこの際して頂ければ幸いと思います。これより質疑に入ります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 私は塩田証人に先ずお伺いしたいのでありますが、本日の朝日新聞の学芸欄を見ますと、こういうことが書いてあります。BCGのことを論じて最後に「BCG学者と非BCG学者の反目へと発展したと見ることも、医学界の内情を知る人々には笑つて済ませぬ現実である。」ということが終りに結んであります。私はお尋ねする前に一言申上げたいのは、学者の対立によつて万一、そういうことは私はないと信じますが、対立によつてBCGの問題が取られる。殊に現在これは法律になつて施行されております。それは学者の感情とか、或いは対立によつてこれが国政に及ぼすというようなことがありますということは、これは非常に考えてもらわなければならないのであります。なお若しも政治に学問が巻き込まれるとか、或いは何らかのためにする者のために学界の意見が曲げられるというようなことが万一ありますとすれば、これは学問の神聖のために私は嘆かわしいことと考えるのであります。こういうことを先ず前提といたしまして証人にお尋ねするのですが、只今証人の御発言では、このBCGが第七部会に取上げられたのは、厚生省から或る通告を出したのが、学術会議の名で出したところ、これを動議にして取上げたと、こういうふうに仰せになりましたが、この新聞にも書いてありますように、これは昨年の七月だかに、都留重人君がBCGの問題のような重要問題こそ学術会議で云々という発言があつて、これに端を発しているということを言うておられます。又先般九州大学の戸田証人は、ここでやはり同様に、この問題は都留という人が取上げたのに端を発しておると、こういうことを申しておられまするが、果してどういう機会からこのBCG問題が取上げられましたのか、そのBCG問題が取上げられました動機と、それから厚生大臣に何と申しまするか、申入書と申しますか、これも後に伺いたいのでありますが、勧告書と申しますか、こういうものが出ましたに至ります間の経過をお聞かせ願いたいのであります。殊にこのBCGの接種は、これは予防接種法が施行されたいわゆる二十四年の七月から実施されております。そして今日に及んでおります。その間に学術会議としても何らの御意見もなくして突如十月四日、二十六年の十月四日に出て来たのはどういうわけか。そういう点を一つ詳細に承わりたいのであります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) ちよつと御発言前に申上げますが、御自分の不利益になると考えられる御発言は、默秘権がございますので御遠慮頂いても結構であります。念のために申上げておきます。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 先ほど何か新聞に出ておつたとおつしやつた終りのほうのことがよく聞こえませんでした。どういうことですか。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 もう一回読上げますが、終りだけ申上げておきます。BCG学者と非BCG学者の反目へと発展したと見ることも、医学界の内情を知る人々には笑つて済ませぬ現実である……。何かBCGのBCGの学者と非BCG学者との反目からこういうふうに発展して来たというようなことで結んでおります。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) そういうことは私の夢にも考えないことで、今それを聞いて驚いておるのであります。反目とか何とかいうようなことは絶対にないことをここに証言いたします。  それから先ほども申しました通りに、大臣に申入れをいたしました道筋の一番初めは、時はよく覚えておりませんけれども、都留君が学術会議においてBCGを自分の知つておる人などが受けることについて、自分にこういうことを言うた。即ちどうもあのBCGというのは、どうもあれは危險だか何だかよくわからんが、あれをやらせんならんのは困る。医者は何か証明書か届け書を持たして行つて、学校でやつてもらうのを、医者の子供はやめておつた、そうして我々だけやらにやならんのはどういうわけか、こういうことがありました。時は忘れたのですけれども、そういうようなことがありましたので、初まり私が、あれは四月の部会が終つた懇親会の席上で……それは懇親会になる前、部会ですが、部会で相談いたしました。この問題は七部会でどういうふうに取上げようかと……そうすると戸田君なぞもいましたが、まあそれは学界でもいろいろ問題もあるし……問題というのは、反対とかどうとかいうのじやないのですが、きまつてもいないのだから暫らく見よう、こういうことでありました。この間併し新聞を見ましたところが、戸田君が何か席を外したところで、あとで何かそういうことを言うたように書いてあつたのでありますが、それが本当でありますれば戸田君の思い誤りで、私は戸田君を目当てにして相談したのでありますから、そうしてそのときは問題にならなかつた。八月にも部会がありまして、そのときにも申合せをして見ましたけれども、戸田君は留守でありまして、まあそのままになりました。そうしたところが、只今お話になりましたその通牒でありますね、あの件が学術会議でこういう決議がされたと新聞にもあつたようでありますし、一、二の雜誌にも出ておりました。おれは学術会議には何も知らんことだから一応取消しておかなければいかんというので、時事新報ですか、あそこへ取消し文を出しました。それが載つておりまた。それから厚生省へは私が行つたように覚えませんが、それが間違いであるということがどういう途だか、それも記憶がないのですけれども、伝わつて、山口局長が私のところへも見えて、あれは間違いであつた、と、それから学術会議にもわざわざいらしつて、間違いだつた旨を訂正されたのであります。そのように、私はそれについて何らそれにこだわるとか、何とかいうことは絶対にありません。何も関係しない、間違いですから……というのは、文部省の費用をもらつて研究をしておるところの接種の会合が学士院、即ち学術会議のある所で行われたのですから、部屋で……。それで思い間違えられたのだと私は思つておりますから、ただ世の中に訂正しておけばいい。そんなことは何も問題になつていません、私の頭には……。ただ併しその中に、先ほど申しました通りに、有効無害だということで、大いに盛んにやるべしという意味で通牒は出されておりますから、これは本当に無害なのかというと、どうもいろいろなところを調べて見ますと、有効無害というわけに私の頭ではできないのであります。ところが先ほど申したように、そういうことを專門にしておられるかたがたは、多数の人間のためだから、このくらいなことは気の毒だけれども我慢して、という人もありますけれども、それはそのほうがますますいいじやないかというくらいに片付けておられるかたもあるので、ははあ、これはどうもそうして見ると、そういうことを受けた人が困ることだ、これは今少し研究の余地があることじやないか。一方に聞いて見ますと、先生がたのようなかたが注意して行われるというと、反転する……反転といいますか、陽転する率も多いし、それから又そういういろいろな障害も少い、これはよくわかります。けれども、実際にその局に当つておられる末稍の……末稍というのはどういう意味かと、又叱られるかも知れませんけれども、実地に当つておられる人が、こういう先生がたのような注意や知識を持つてやつておられるのでありましようか、そうするとそれでもいろいろなことが起りますが、そういうことの注意について何かもつと慎重な研究なり施策なんかないでありましようか、こういうようなことで相談をした結果、今のような申入れをしたわけであります。何もその今おつしやつたような敵対であるとか何とかというようなことは絶対に私の頭にありません。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 塩田博士に伺いますが、権威のある日本学術会議がこの問題に非常な心配を持たれて、厚生大臣に御進言になつたことは、誠に然るべきことだと思うのであります。厚生大臣の話によりますと、権威のある学術会議のかたがたからこういうふうな御進言があつたので、それではどういう御調査があつて、どういうような反証をお持ちになるのであるか、ということをお尋ねしたらば、それはすでにできておる、いずれ文書にしてお届けすると、こういうことがあつたのだと、それで立派な御研究もあることと信じて、急遽箱根に行つて首相に会つて、権威のあるかたがたからかようなお申入れがあつたのだから、これは事によつたらば取りやめにしなきやならんかと思う、という進言をして、その承諾を得て帰つたのだということで、この問題は発表いたしておるのであります。そうしますというと、昭和二十四年以来すでに実施して参つておる結核予防法、そうしてすでに今日は強制にもなつておる重大なるこの問題が、今一大頓挫をしようといたしておる。恐らく地方ではそういうむずかしいものならば、別に罰則もないのだからもうやらんに越すはないと、こう言わないとも限らないという状態にまでなつておるのであります。その原因をお作りになりました日本学術会議第七部会、特に医学に関する專門家中の專門家が、こういう御進言をなすつたのに対するところのどういうような御調査が、どういう機関によつて行われたか、その結果をば我々も拜見することができれば非常に仕合せだと思うのであります。と申しますのは、先刻来証人のお話を承わつておりましても、いわば道聽塗説のような感じがする。一方学術会議の科学的な論争の結果というようなものが、私には拜聽できなかつたのであります。これは私非常に遺憾と思います。どういうような機関を通して、二十四年来の問題でありますし、それほど御心配になつておりますならば、どういう権威のある学者が、どういう結果をお持ちになつたか、その経過とその結果に対してどうか我々にもお示しを願いたい。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) お答えいたします。学術会議にはその調査機関がない、それで特別に調査をしてということではありません、正直に申しますと……それで、もとは厚生大臣に参りまして、どうもいろいろな点を考えるとこれを強制しておくということはよくないと思う、困る人が出て来る、それだからこれは任意にするようにしたほうがいいと、それで、あなたのほうで調査をして、そうして研究の余地があるようだから十分調査して頂きたい、こう言うたのであります。その書付の問題は。そうすると、厚生大臣のほうではそれは疑わしいと自分が考えたら調査もするけれども、そうでないから調査をやらん、こういうことでありました。それで私どもは医師会にも調査を願い、自分らも調査して、こういうことでは困るという例を拳げておるのであります。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 どうも私の厚生大臣から聞いたのと違いますが、厚生大臣はそういう重大なる御疑惑があり、権威のあるかたがたからの御申出であるならば、必ず御調査あつておるだろう、そういう実証があるに違いないと申出たところがある、文書にしてこれはお目にかける、後日お目にかけるということであつたと、私はさように聞いておる。後日というのはすぐにもというように聞いておるのであります。かような御進言をなさる以上は、只今のような道聽塗説ではない、はつきりしたところのデータを持つてのこれは御進言であつただろうということを、そのときに了解をしたのであります。なおそのとき私どもが疑いましたのは、我々は誠に素人でございますが、この十三人と言われるかたがたのお名前の中には、不幸にして細菌学、殊に結核に関する專門のかたはないように承わつております。ただ一人、戸田博士がおいでになるので、実にこれは不思議なことだというので、先般戸田博士をここに来て頂きまして、お話を聞きますというと、どうも話がすつかり違つております。今お話になつたこととは違います。これはいずれ速記がございますから御覽下さいますとわかりますが、私は学者というものは実に不思議な心理を持つておるものだということをそのとき感じた。私は自信を持たれているようでもあり、或いはこういうふうな仲間に加わつて重大なる疑義を御披瀝になるようでもあり、その一体影響というものをお考えになつていらつしやるであろうかどうかを私は少からず疑つたのであります。どうも学者の常識と我々の常識が違うという感じが頻りにいたしたのであります。これほど大きい問題が、而も今日は法律になつており、一方においては夥しい国費を費しておるBCGが効くか効かんかといつたようなことは、実は我々議員は知らないのであり、これは一にかかつて厚生省が十二分に調査した上での提案であり、又一方では現政府が継続的にやつておることであります。橋本厚生大臣は知らないか知れませんですが、年来各大臣がやつておる。それを今かように大いに影響を及ぼすような御提言をいたしまするところの私ははつきりした論拠並びに御調査がわからなければ非常な遺憾と思うものであります。その点につきまして重ねてもう一遍……、さつきからのお話は少し違う、厚生大臣が私に言つたことと違いますが、あなたはお出しにならんとおつしやつたのですか、お出しになるとおつしやつたのですか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) なると言つたのです。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 それはいつまでにお出しになる……。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) まだわかりません。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 いつまでに出すかわからない……。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) そんなことは聞いておらん。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 結局御調査になつたものがあつたと私は厚生大臣から聞いておる。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) これから加えてやるのです。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 あつたのだけれども……、お見せ頂けませんか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 何しろこの間、あのときから只今申しました通り学術会議が朝から晩までありまして、それから次いで厚生省の問題が朝から晩までありました、夜十時頃まで……、それか文部省の設置委員会というものが朝から晩まであつたものですから、それを整理する暇がありません。なおほかの会員諸君などの力を得て整理しようと思つております。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 私はどうも腑に落ちないのですが、整理なさつた結果をお持ちになつて厚生大臣に御進言になつたのじやないのでございますか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) ないのでございます。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 そういたしますと、どういう材料によつて御進言になつたのでございますか。

大森憲太慶応義塾大学教授

○証人(大森憲太君) いろいろな御意見ということは又別に私は申しませんが、先ほど学術会議の一員としてこの点についての何がしか材料がある、こういうことをお尋ね下されば申上げたいと申しておきましたが、これがやはり学術会議から将来出さるべき資料の一部分になるかと存じますので、何がしか今のお答えに当るかと思いますから御披露申上げます。それは地方配給のワクチンの効果についての問題であります。発表は昭和二十六年九月二十九日、最近の総合結核研究委員会の予防接種科会において、この学術的権威につきましては私が申すまでもなく、日本における結核病学者の総合的研究機関で、先ず日本における最も信頼すべき材料の一つかと思います。それでその課題は地方配給のBCG乾燥ワクチンのツ反応陽性転化、研究者は今村荒男、宝来善次、今村荒男教授は今阪大の総長で、且つ結核研究のオーソリテイーであることは御承知の通りであります。BCG乾燥ワクチン〇・〇四ミリグラム、接種一年後のツ反応陽性転化、山間部のこれこれ小学校においては陽転率二二・五%、平坦部のこれこれ小学校においては陽転率五八・三%、市街地のこれこれ小学校では三四・六%、これこれ小学校では三五・七%、中学校では五八・二%、桜井高校、これはみんな奈良の例であります。桜井高校では三五・三%の陽転率がある。それで結論としては、以上各地方に配給して一般に接種されておるBCG乾燥ワクチンのツ反応陽転率は優れたものとは言うことができない、これが一つの例であります。  いま一つの例は昭和二十六年七月七日、やはり同様の予防接種科会で発表された、これは私どもの同僚石田二郎君及びその共同研究者の発表であります。慶応幼稚舎の乾燥BCG接種の調査成績、これは勿論配給になつたものであります。これは慶応の幼稚舎生徒約五百八十四名、このうちツ反応陰性の者に注射をしたのでありますが、二百八十三名陰性者がありましたが、このうちBCG接種を実施いたしました者が二百三十九名、六ヵ月後の陽転率は五三・五九ヵ月後の陽転率は六三・六、いずれも六十前後以下であります。それでこれがこの頃配給になつております、この乾燥BCGのツ反応陽転率の問題でありますが、なお何かそういうことについての学術的根拠というようなことでありますので、先ほど申しました局所反応のあつた例を一応御披露申上げたいと思います。これは同じく二十六年九月二十八日、最近予防接種科会で行われましたBCG接種とツ反応という題で、これは先般熊谷先生、新津君その他共同研究の報告であります。乾燥ワクチン〇・〇四一ヵ所、或いは〇・一一ヵ所及び三ヵ所接種の場合、これは再接種、一度接種をいたしまして、ツベルクリンが陽転しなかつたので、もう一回さしたと、こういう例の場合であります。こういうことが恐らくツ反応、このBCG接種の場合には一回では済まない、それはだんだん衰えるから二度も三度もやるということが大体定法になつておることは御承知の通りであります。従つてこの再接種の場合が重要な問題であると思います。再接種の場合、十四日の場合もありますが、三十二日後三ヵ所接種は一〇〇%陽性転化をいたしました。その他の二接種分では八五%内外、大変陽転率がよろしいのであります。ところが局所変化のうち下部、下に膿腫を有する、膿疱を有する、膿疱、潰瘍などの不愉快なる副作用を呈した人員の百分率は八四乃至八七%、こういう数字でありまして、この価値判断については、なかなかこれは一概には申せませんが、少くとも現在我々が信頼するに足る研究者たちの手になり、且つ信頼すべき学会において、研究会において発表されておるということは一応先ず医者たる我々ばかりではなく、皆様も一つ御了解を願いたいと、これはいずれ資料として塩田部長を通じて提出する所に提出する結果になるかと思います。まあ資料がこういう工合にあるということを一応御披露申上げておきたい。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 私どもはそういう学問的論証は一向知らんのであります。立法の府としましては、すでに長い間、大正年代から起つておるこの問題を、ここまで到達したいために、溺れる者は藁をも掴む意味で、結核を何とか平げたいというので、厚生省から出した成案を審議の上にも審議を盡して、そこで漸く死亡者を十万人以内に漕ぎつけたと、我々は厚生省を礼讃いたしておる。ところが今突如として、学界からかような問題を御提起になつた、これは由々しいことであるからして、それに対するところの有効ではあるが、有害であるという論証を一つ拜見したいのであります。どういう有害があるかということを、それをはつきりと論証せられたものを、この科学の権威によつてお示し頂ければ、法律なんというものはいつ変えても差支えないものである。併し法に権威があるので、朝令暮改というわけに参らないので、法令というものは、すでに出した以上は法の権威があるから、これを出すまでに十何年かかつておる、十数年かかつたものを……、今年の春きめてこの秋つぶすということに対してはよほどの論証がなければ法の権威にかけてできないし、国民に対して相済まない。この際我々は総辞職をしなければ相済まんかというように責任を感じておる。同時に現内閣は非常に大きな責任である。現内閣が出したものであるからこの疑問に対しては現内閣は非常に大きな責任である。こういうことがあるので、どうぞ有効ではあるが、有害であるというはつきりした論証をば学者の権威にかけて拜見いたしたいのであります。いつ頃までにお出し頂けますか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) わかりません。ちよつとそれは……。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 さような御自信のないものでございましようか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) こういうようなものは、話合いのときには大体出しますが、それをちやんと、ひとまとめにするのにはむずかしいですよ。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 それにしては大変……このような効果をお急ぎになつたことに対して遺憾の意を表します。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 塩田教授にお尋ねいたしますが、先ほど申上げましたように、二十四年予防接種法が施行されてから、強制接種をやつておる。ところが今のお話によりますと、都留さんからお話があつたんで、それから問題が起つて来た。それでその間は、それでは会議のかたがたとしては、これについては何にもお気付きにならなかつたのでございましようか。BCGの問題は、都留さんは恐らく私は医学者ではないと信じておりますが、医学者でないから御注意があるまで、学術会議のかたがたはお気付きにならなかつたか、この点はどうですか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) それは気が付いた人もおるし、気の付かなかつた人もおると私は思います。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 気が付いた人もあり、気が付かない人もあると、それで取上げたということですが、まあその点につきましては、学術会議に対して私の考え方もありますが、それで大体様子はわかりましたが、ところが、この十月四日に出された、この厚生大臣に対する私は申入れと言つておりますが、これは只今の御証言によりますると、有志で出したけれども追認された、追認ということはどういうことでございましようか。この間の七部会で決議されたという意味なんですか、決議じやないのですか、どういう意味なのでございましようか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) ちよつとお答えします。決議と書きまするといろいろなあれがありまして、すべて多数決できめるというような場合がありまして、多数決で一人は不賛成だけれども、或いは数名は不賛成だけれども多数決だから決議した、こういうようなことになる。そういうことを避けるために追認といたしました。すべての人が賛成して、そうしてこの申入れには異存がない、こういうことの意味であります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 それでは学術会議の皆さんがこれを認めた、こういう意味なんですね。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) ええ。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 そうすると或る意味においては決議ともとれるというようなことなのでございましようね。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) そうです。ただ決議とする場合多数決ということがあつてはいかんというのでそう書きました。意味はそういう意味とおとり下さい。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 過般の戸田教授の証言では決議ではない、ただ出したことだけを認めたのだ、出した事実を、出したからというこの事実を認めたのだ、こういう御証言がありましたのですが、多少食い違うように思いますが如何でございましようか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) その点にお答えするに際しまして、先ほど出して置きました、それをその意味を、と申しますのは、この強制ということにいろいろの意見を持つた人がおつた、或いは又絶対これは不幸だというようなかたもありますけれども、私の、そのうちに自分の方法を用いてやればそんなにひどい害などはない、だからそれでやるのだけれども、それができないで、現在のようであればそれは強制するのは不賛成だ、こういうような意味、先ほど戸田君はそういうような意味で申されております。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 それではこの申入れの件について伺うのですが、現段階に、世上にいろいろ問題のある、世上にいろいろ問題があるということは、これは具体的にはどういうことなんでしようか。先ほど大体お話を聞いたところから察しますと、松原委員のおつしやつたように、道聽塗説に過ぎん、又お話を聞いておつても潰瘍が大きくなつて云々これだけ、又大森先生のお話もあつて云々という問題、又感染を誘発するかどうかというところに問題があるというようなこと、並びに乾燥ワクチンに対する効果云々、こういうことなんですが、併しこれによりますと、世上いろいろ問題があり、医界にも疑惑を抱く者がある、こういうふうに、非常に言葉が広いが、これを全体を通じてみますると、予防接種そのものに大きな疑問があるから、今後これを研究しなければならない。即ちBCGの予防接種というものは現在まだ研究の段階にあるのだ、こういうふうに受取れるような申入れに我々はとるのであります。かなりこのために一般国民に対しても大きなセンセーシヨンを起しております。お聞きになつておると思いますが、場合によりまするとワクチンを返して来る者さえある、或いは毎日厚生省にはいろいろと問合せがあるというようなことを聞いておりまするが、こういうような大きな意味で御発言になつたとか聞きますと、今のところ陽転する云々乾ワクの効果、潰瘍の問題、こういうふうに限局されておるように思います。そうすると、何故こういうような誤解を招くような表現でなくて、具体的にこうこうこうこうのところは疑問があるから今後研究したらどうかというふうな親切な表現をされる必要があるんじやなかつたか、そういうふうに我々は考えるのですが如何でございましようか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 若しそういうふうに言うべきだということが正しければ私どもはまだ慣れないことかも知れませんが、いろいろな点に研究の余地があるということが主なんであります、例えば参議院で、すでに法律をきめられる前に参議院で熊谷博士のような権威のある方がBCGというものの効力についてはよくわからん。大変その生きている菌なども少いのだからそういうものを今のようなふうにして用いるのはいかん、まるで時によつてはおまじないのようなものであるというふうに言われておりますのが、それが一向に取上げられてない。そんなことは心配せんでもいいというふうな考えでありますか、今の法律になつておりますことを見るとそういう方の考え方が立法の方面に取上げられておられないように思いますが、これは今になつて考えることでありますが、私どもの極く純粹な気特でやつていることはどうもいろいろな他にぐるりにある潰瘍の諸先生方、またそういうことからBCGに困つたというのが世間にある説であります。それを道聽塗絶として取るに足らんとおつしやればそれまでであります。皆が賛成してBCGをやつているというふうな現状ではないと私は見ております。それは賛成しておられる方が多くて不賛成の方が少いとか、そんなことは調べておりませんけれども、とにかくそういうことがあるのだ。それだから、そして先ほど申しましたいろいろな点についてもつともつと研究すべき点があるんじやないか。だからそれをちやんとこういうふうな点とこういうふうな点が惡いからそれをよく直そうとおつしやつて頂いてればそれでよかつたのであります。ところが何かいろいろなことになつて発展したということであります。実際の問題は。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 こういう申入れが出ますには、先ほど松原委員も言われましたように、或る資料がちやんとできて、こういう資料がある、でこうこうだからこうと、こうあるのが大体我々は常識だと考えておりまするが、先ほどのお話を聞きますと勿論いろいろあちらこちらに御研究の方があつたかも知れません。学術会議としては何も揃つた理由はないのだ、そういうきまつておらんのにこの申入れが先へ出たという結果になつていると思うのでございますが、そうでございますね。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) そうでございます。その点は大森君に……。

大森憲太慶応義塾大学教授

○証人(大森憲太君) これは私ちよつと先ほど申上げましたように、内科その他臨床家は今御披露申上げたように多数の病気を見ておつてBCGを刺しても一応相当の発病があるという観念は常識的に持つているのであります。従つてここへ申合せ或いはBCGの強制接種に関する件というようなまあ題目で申入れをしたのでありますが、医界の疑いという中の解釈はこれは広くも狭くもとれますが、少くとも我々臨床家の立場からはそういう点が疑いの一つである。又殊に重要な問題はこの前の証言で、熊谷教授、これはもう御承知のごとく結核の最権威でありますが、この頃の乾燥ワクチンについて総合的に、我々のような部分々々ではなく、あの碩学の知識を以て総合的に判断して、今日の乾燥ワクチンではまだ効果の程度が十分でないからこれはどうかと思うというような御意見もあるというようなことで、我々はそのことも承知しておりますし、我々ふだんの臨床経験と照し合せてそういう一抹の不安を持つておつたのであります。従つてああいう有害の疑惑もあるというような声明が裏付けられたわけでありまして、決して突如としてああいうものが、いきさつについては今部長からお話の通りでありますが、我々が賛成しましたわけは、決して突如として事実が湧いたというような関係ではないのであります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 今年の七月七日に文部省総合研究会の予防接種科会及びBCG研究協議会から発表された署名文がございますが、これは御存じと思いまするが、これの結論に「以上述べるところにより、BCGは、有効、無害なものであつて、我が国の現状においては、特にBCG接種に重点をおいた予防対策を強力に推進せしむべきものと信ずる。」この中には今日おいでになつておりまする塩田先生、堂野前先生も御署名になつておりますのみならず、只今問題になつております熊谷先生もこれに御署名なさつておるのでありまするが、そうするとこの熊谷先生の言葉が証言として出まするというと、この熊谷先生のこれに署名されておるということ、否定するという意味でございますか。塩田先生に一つお伺いいたします。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) それは熊谷君がどういうふうでそういうことを言われたか知りませんけれども、有効無害だということの考え方にあるのだろうと思います。先ほど私が申しました通り、潰瘍などができても、そんなことは無害として片付けようというようなことであるのかも知れません。けれども熊谷さんの言われたことがどうであるということを今私が申上げるわけには参りません。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 学術会議としてこの問題をお取上げになるのは、一方においてこういうふうな強い表現から署名をされておるたくさんの学者がたがある、これ無視して突如こういうふうな勧告を出されるという。成るほど日にちについてはこれは七月だと思うのですが、七月の七日に出ております。それであなたがたの勧告は十月の四日に出ております。当然これは御覽になつておらなければならない、こういうふうなこともちよつとも今お聞きすると御考慮になつておらない、熊谷先生がどう言つたかわからんとおつしやるのは、これは読んでおらんのじやないか。こういうふうな慎重なところをもう少し学術会議としてもお取上げになつて御意見を出して頂ければよかつたんじやないかと思いまするが、これについてどういうふうにお考えになりますか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) こういう所で申上げるのは困るのでありまして、それこそ默秘権でもして置いたほうがいいかも知れませんけれども……。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) ちよつと何でしたら速記をやめてもよろしうございます。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) やめて頂きたいと思います。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 速記をやめて下さい。    〔速記中止〕

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 速記を始めて下さい。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 私は過去三年余り参議院の厚生委員会の中で結核対策委員会を作りまして小委員の立場からずつと研究しております。この間に我々が一一実際にBCGをやつて見る問題でもございませんが、学者の皆さんから、或いは各方面の資料からこういうふうなものを総合して、そうして万全を期するために法律を審議をして参りましたが、只今のお話を聞きますと、こちらのほうの学者ではおれの知らん間にやつたんだ、こちらのほうの学術会議のほうでも私はその日にいなかつたのだから知らんのだと、こういうようなことをおつしやるということは、我々は学界の意見というものをどう解釈したらいいか非常に困るわけであります。殊に塩田先生は最初に述べられました学術会議の意義は、学界の意見を科学に反映さすんだということをおつしやいました。その学術会議の意見を我々は反映してもらつて実行をしなければならん。而もそれがあれは知らんのだ、これも知らんのだと、どこを我々は信じていいのか甚だ学界の真意を疑うのであります。これに対してどういうふうにお考えになりますか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 知らんのだというのはどういう意味でありますか。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 知らん間に、どうやらわけがわからん間に署名してしまつたとか、或いは先ほどおつしやつたように学術会議でもいないうちにどうとか、こういうような御発言がありましたようですが。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) それは何かあなたのお考え違いだろうと思います。きちつとそこは訂正して置いて頂きたいのです。第一知らん間にとおつしやるのは戸田君の話でありましようが、戸田君は確かにそのときにおつて、そうして相談をしたのであります。まあ併しこの時期に取上げまいということになつておつたのであります。それは知らん間にというんじやないのであります。それからもう一つお答えするのがありますが、速記をやめて頂きたい。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 速記をやめて下さい。    〔速記中止〕

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 速記を始めて下さい。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 いずれにしましても、どうしたか、困つたから署名したとか、或いはいるいないはともかくとして、こういうものに署名されるとか、或いは決議をされる折には、めいめい信念を持つて責任を持つてやつて頂かなければならん。この責任なくしてこういうものを出されて、そうして置いて我々はこういうふうな問題を信用して、この資料を信用してここでやつておるのであります。そうしてあとからこれがどうだこうだと責任回避をされるということは私は非常に心外だと思いまするが、殊に学術会議の第七部会の会長であられる塩田先生としては、学問の上にこういうあとに、何と申しますか、信念のないような現われ方をするということについては、十分これは御警戒を願いたいと思いますが、私の質問はまだたくさんございますが、時間の関係もありますから、ほかのかたに一応お譲りいたしまして、時間がありましたら又いたしたいと思います。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 私は塩田証人に質問をしたいと思います。あなたがこういうような日本学術会議の七部長として、又十三名有志の一員として重大なる申入れを厚生大臣になされて、それに基いて厚生大臣はBCBを只今強力に接種しておるのをあなたは御存じのはずであります。然るに厚生大臣が自分で責任を感じてこれを中止しなければならんかと思うというようないわゆる箱根談話というものを発表したにつきまして、今日社会は大変な不安の念、疑惑の念を持つておることを御承知であろうと思うのであります。従いまして先ほどから我が同僚がいろいろあなたに対して質問を申上げましたように、これは誠に重大である。然るにあなたの御証言によりまするというと、先ほど松原委員の言われましたように、誠に学術的の根拠のないようなことをあなたはお述べになると私は思うのであります。私は御承のように昭和十三年以来昭和十八年まで最初のBCG研究者として私は参與した一人でありまして、なおこの厚生委員会において、私がただ一人BCG研究者の席を汚がしておるような一員でありますからし、私はあなたがこういうような重大なることに、甚だ根拠のないようなことによつてこの申入れをされた、そうしてかような只今のような世間に疑惑を招いておるというようなことについて、私は誠に遺憾に思うのであります。  お伺いいたしまするが、一体我々の医学の範囲におきまして、現段階において世上にいろいろ問題があり、意外の疑惑を抱くというようなことは、このBCGに限つたことでありましようか、どうでありましようか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) BCGに限つたことの話であります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 塩田さんもう一度。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 只今のお問いのことは、問題になつておる点はBCGのことであります。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 私は医学の面において疑惑がないようなものはないと思うのであります。疑惑があつて初めて研究があり、今のBCGが決して完全無欠なものであると誰も言つておらない、皆んながBCG委員会を組織して一生懸命に研究しておるのであります。あなたはそれを御存じのはずであります。然るに現段階において、医界にも疑惑を抱く者があるというような甚だあいまいな言葉をお発しになることは私は承知できない。あなたはこの点において十分疑惑をはつきりとさせて、そうして何がためにこういうことを御発言になつたかということについて責任をとられなければならんと私は思うのであります。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 先ほどもちよつと申しましたが、そういうことを研究しておる人でも、これを今日のままで強制したりしておるということは賛成できないということを言うておるということなどについて、医界でも疑惑があると、こういうことを申上げたのです。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 時間がありませんから、もう長く申上げませんが、今月の十二日に厚生大臣があなたがた日本学術会議で署名された中の数名を官邸に呼んであなたがたと懇談をされたはずであります。その内容について若しお差支えがなければ御発表願いたい。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) どなたでも結構でございます。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) そのことについて若しも私が申上げても間違つたことを言つたりするといけませんから、大して必要なことでもありません、私その通りのことを説明した、それだけ申上げます。

大森憲太慶応義塾大学教授

○証人(大森憲太君) 今有馬先輩のお話では学問に疑念がないものはない、塩田先生にこの学問の疑念があるというのはBCGの問題かと聞れましたが、塩田先生はBCGの問題だと言われた。それでこれは有馬委員の言葉を解釈すれば、BCGにはなお有馬議員は疑念を持つておられるという意味に解されると思いますが、そう承知していいでありましようか。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 私はこの疑惑ということについて、この文字について私はお尋ねしたわけでありますが、この学問に疑惑のない学問はないでありましよう。私はその点を言うのであります。我々がBCGを今日まで十三年間委員会を組織して研究しておるというのは、幾多の疑惑があるから研究をしておるのであります。然るにその疑惑を楯にとつて、これは学問上の疑惑であると私は思うのでありますが、そういう疑惑を持つていろいろの施策についてこれを左右しなければならんものであれば、これは事重大であると私は思うのであります。只今我が国のこの結核死亡率が非常に低下しておることをあなたがたは御存じのはずであります。そうしてその効果にも重大なる部分がBCGにあるということも十分考えられておるのでありまするから、これを多少の疑惑或いは塩田先生が言われるように、その副作用というような点に甚だ重きを置きまして、この重大なる施策を変更するというようなことがあれば、その責任は極めて重大であると私は思うのであります。従いましてこういうようなあなたがたの申出に対して厚生大臣がどういうふうに考えて、そしてあなたがたとどういう話をしたか、その内容によりまして、厚生大臣が談話を発表したということは誠に尤もであると我々は感ずるかも知れません。併し厚生大臣は十二日にあなたがたと相談をして、或いはあなたがたに諮問をしたのでありますが、その内容は私どもは不明であり、それを聞きたいと私は申上げたのであります。

大森憲太慶応義塾大学教授

○証人(大森憲太君) それでBCGの現段階、いわゆる乾燥ワクチンの今地方に配給されているものをああいう皮内接種でやるという方法については、これは有馬先生はそのほうの権威者でありますから、現在あれで完全であるというというなことにお考えになつておりましようか。なおこれは多少の疑惑があるというようなことにお考えになつているのでありましようか。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 大森さんのような研究家がそういう質問を私にされるのは甚だ遺憾至極であります。あなたも日本の医学のことについては権威者の一人であり、このBCGに疑惑がないというようなことを誰が考えましようか。それは初めから言つておりますように、BCGは幾多の研究すべき点が残されておるのであります。併しながらそれでこそ現段階、日本のようなかような結核患者がたくさんあり、死亡率が高く出ておるというような段階においては、どうしても不完全でもこのBCGぐらいのことはやらねばなるまいというのが我々の意見であります。大森先生も必ずそれは賛成のことと私は思うのであります。こんなことがわからんというような日本の医学者は、私は一人もないと思う。塩田先生も恐らくこの日本学術会議の七部長としてそのくらいのことは私はおわかりになると思う。然るに些細な潰瘍或いは硬結或いは発熱、殆んど取るに足らぬような事実を列挙されまして、これが論拠であるというようなことを申されるに至つては、私は承服できないのであります。そういうためには先生はもつと確かな專門家の意見をお聞きになるべきであると私は思うのであります。先ほどから堂野前、海老名両教授の御証言を得て、私どもかねて考えておる通りにBCGの有効なること、又副作用のあること等は私どもは承認するのでありますが、併しそれによりましてあなた方、即ち学術会議の方々が言われるようにこのくらいのことで、この大切な結核予防方策を変更するというようなことは、私どもは考えられないと思うのであります。如何でありましようか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 只今有馬氏は日本の結核が減つておる、それはBCGの力がかなり多いと考えられるというようなことをおつしやいましたが、BCGによつて減つたということがちやんとわかつておれば、問題はないと私は思うのであります。ところが先ほども申しました通りに、私の尊敬しておる熊谷博士は、この乾燥ワクチンによつてそれがどのくらいにきいたかということは、間違うといけませんから申しますと、実際この乾いたので病人を減したというのは誰もいない、こういうふうに申されております。それは即ち学者の間にでもいろいろ異論があるのではないかということの意味であります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 時間もありませんから、私結論的に塩田先生、大森先生に伺いたいのですが、現在のこの結核対策としてBCGの予防接種を取上げてやつております。これを遂行するほうが結核対策としては進むべき途かどうか、あなたがたの御進言によつてこれを一頓挫さしてやめるべきものかどうか、こういう点を第一に伺いたい。成るほど潰瘍の点、或いは乾燥ワクチンの効力の点については、これは研究の余地があるということは、堂野前、海老名両証人から言われております。こういうような点もだんだん研究されて、研究と実施とこれは併行して行かなければならない。そういう点を研究しつつ行くならば実施するほうがいいと、結核対策に対してはそれがいいということなのか。このBCGをやるのは予防対策としていいか惡いか、やめるべきか、又これを推進すべきかということを結論的にお伺いしたい。

大森憲太慶応義塾大学教授

○証人(大森憲太君) 藤森小委員長その他委員会の御努力によりまして、今日までのような結核の予防のことが取上げられ、今日こういう実施を見、且つその効果が相当に見るべきものがあるということは、我々感謝に堪えないところであります。併し今申されましたように、この予防接種のことを遂行すべきかどうかという問題は、私は大体限局して強制接種にすべきかどうかの問題に帰すべきものだと思います。今日の乾燥ワクチンの効力の段階において、これを強制するということは果して適当であろうか。勿論勧奨その他の方法によつて推進することには満腔の賛成、従つて十分の国民の努力を期待するものであります。私のこれに対する意見はこういうことであります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 よくわかりました。それでは結核対策の一つの方針として予防接種をやるということはこれは御賛成である、但し強制するかどうかということは問題だ、こういう御意見のように承わりましたが、この問題についてはこの法律の審議に当つても非常に研究いたしまして、殊に予防接種法においてはこれを強制しております。強制しておりますのは、結核予防法に取上げる折にも強制の問題について論議したのであります。けれども現在の日本の段階においてはもう少し結核が頭打ちするまでは強制で行くより仕方あるまいという結論に到達いたしましたが、併しながらこういうことについてはいわゆる人権の問題も考えなければならんという点から、これの罰則をとろうじやないかということで、これには定期以外は罰則はないはずなのであります。この罰則のないというところに非常な含みを持つてこれが立案されておりますので、絶対の強制という、勿論法律の手前では絶対の強制を謳つておりまするが、罰則のないというところに非常な含みがあるということをお考えになるならば、この強制という線から成るべく多数の人に実施されるという方針で行くのが穏当ではないかというふうに我々は考えておりまするが、そういうふうに罰則をとつておりましてもなおこの強制ということは駄目でしようか、どういう御意見でしようか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) お答えいたします。このワクチンを接種することをやめるかどうかというようなお話でありましたが、私は先ほど申しましたようなことで、つまり只今のワクチンが熊谷君が言われるように非常に生菌の少いものでありまして、それを射して、分量も又以前の液体のときのようなふうに射されておるということを伺つておりますが、そういうふうであれば、つまり大した害も起らないようになつておるかも知れませんけれども、大して效果もないのではないか知らんという熊谷君の証言から感じを受けるのであります。それだからしてそれらを十分に調査されまして、そういうワクチンがよくなり、そうして分量等も何か研究され、害もなくてそうして大いに国民の結核の被害を少くするということができますなら、そうして強制とはいうもののまあ断わろうと思えば断われんこともないというようなことであれば結構でありますけれども、そういうことのできるまで一時中止されても、ちやんとものが整うほうがいいのであります。勿論先ほど言われたように研究の余地なりというものはどこまでもある、終ることはないと言われた意味はわかりますけれども、そういう細かい意味でなしに、このくらいになれば大体よく効く、陽転率もよくなるしひどい障害も起らんというようなことがおわかりになれば結構であります。その間おやめになつても十分そういういい方法ができることを私は希望するのであります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 ちよつと関連して、それでは効果が十分であればやつていいと、こういえお話でありますね、私は極めて最近に予防接種をやりましたこれの成績を調べるつもりでおりますが、若し調査において相当な効果、相当な効果ということは非常にむずかしい言葉でありまするが、先ずやりまして五〇%以上或いは六〇%以上に陽転率があると、こういうふうな仮に成績が出ると仮定いたしましたら、これに対してはあなたがたは御異議はございませんか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 私は專門家でありませんから、そういう細かいことになるとお答えに苦しむのでありますけれども、熊谷君の話しておられるところによると、まあ七〇%ぐらいにはしたいものだなということが書いてあります。それで、そういうふうなことができ、そうして潰瘍なども少いしということであれば、それで罰金などもないということであれば、私もそのくらいならよかろうと、熊谷君の説に賛成します。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 熊谷さんのは、先ほど私が申しましたように、ここに署名しておられまして、そうして先ほど述べた通りに七月の何日かに発表されておりますので、あなたがいつお聞きになつたのか存じませんが、明らかにここには七月の七日の発表に熊谷さんは署名しておられるのであります。それから前でありまするならば、これは七月の七日以後の熊谷さんを御信用になるよりほかいたし方ないのではないかと思いますが、どういうことですか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) それは私は答えません。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 大分時間も過ぎておりますから余り御迷惑をかけたくないと思いますが、この際終りに海老名証人と堂野前証人にお伺いするのでありますが、両証人は、このBCGの接種を強制的に只今接種をしておるのでありまするが、この強制接種を肯定されるのでありますかどうでありまするか、その点をはつきりとここでお述べになつて頂きたい。

海老名敏明東北大学教授

○証人(海老名敏明君) 私は先ほど申上げたように、これはやらざるを得ないだろうとこう思います。肯定します。

堂野前維摩郷大阪大学教授

○証人(堂野前維摩郷君) 先ほども申上げましたように、これは理想ではないが現段階においては止むを得ないと、今の法律によつてやることは、広く行うのにはこれがよいと思います。この方法によるほかはないと、そういう意見です。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) お諮りいたします。次の証人もすでに来られて待つておりますので、時間割は午後一時からということになつておりますが、すでに一時を経過いたしておりまするので、この間の準備もございまする関係上、本日はこれにてこの午前の会議を終りたいと思いますが、御異議ありませんか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) ちよつと一言だけ申上げさして頂きます。ここに証人としておられるかたがたの行われます方法なり、薬なりといたしましてはいい成績が出るものと思います。このかたがたがおやりになるような方法なり、薬なりで、又只今私が申したようなことができないならば、せめてその間だけでもこういうかたがたのやられるようなふうに行なつて頂きたいということをお願いいたしておきます。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 それにちよつと関連して、それじやもう一つお伺いしますが、今御両氏から言われたような、いわば理論的に行われておる、理論的に行われているのはよろしい。けれどどつかに操作上に欠点があるとかどうとかいうふうなのには処置をしてくれと、こういう意味に了承してよろしうございますか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) それがたくさんあります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 そうしますと、現在のこの結核予防法として立案されておりますこの予防法の精神においては決して反対でない、御賛成だと解釈してよろしうございますね。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) いい薬と、いい方法で行われればよろしい。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 行われれば、條件によつてということなんですね。條件によつては賛成だ、この法律そのものの趣旨については賛成だと、こういうふうに解釈してよろしいですか。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) ええ、つまり有効無害な薬なり、方法なりができれば勿論私はよろしいと思います。併しこれは第七部会の総意ではありません。私の考えであります。

大森憲太慶応義塾大学教授

○証人(大森憲太君) これはまあ塩田先生の個人の意見というものでもありますし、いわゆる理想的な薬と理想の方法と概念的に言われましたが、そういう方法が現在今有馬先輩からも言われました通り、今日のBCGではなお多少の疑念があるというような段階、而も今日の乾燥ワクチンを量産をして日本のすみずみまで、それには医者の教育も必要であるという段階で、これは果して強制接種していいかどうか。私は一応先ほども申しましたように、皆さんの御明察に任せると申しましたが、一応ここで何か結論を出さなくてはならんとすれば、その態度を一応保留しておきたいと思います。強制接種についてはなお自分は疑問を持つておるというような程度のことを申上げておきたいと思います。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 実は学者がどういう御論争をなさろうと、それは誠に結構なことでありまして、権威ある学者に十二分に御論争をして頂きたいのであります。そうして我々に安心ができるような薬も治療法も発見して頂きたいのでございますが、今回問題になつておりますのは、既定の事実である一つの法律の施行に関しまして、権威のある学会の名を以て部長が直ちに行政の長官である大臣に御進言になつて、その大臣が急遽省議にも諮らず、或いは結核審議会という立派なものもあり、熊谷博士を中心としたる格別の專門の研究の機関もあるにかかわらず、それを拔きにして直ちに箱根の山に走つて首相の承諾を得て、これをやめるかも知れんと発表させたところに問題があります。これはどうぞ御了解を願つておきます。何かそこに野心があつての一つの政治的策謀じやないかと世間が見るのもそこにある。どうして学会の権威ある部会長が、どういう一体証拠と科学的なる論拠をお握りになつて厚生大臣を箱根の山に走らしたかということなんであります。この点について責任をお負い頂かなければ、私は学者というものは如何にも非常識なものだと申上げたい。

塩田広重日本医科大学学長

○証人(塩田広重君) 私は只今申したようなことを厚生大臣に申したのでありまして、それを箱根へ行けとか何とか言うたのじやありません。私にはそういう権利もなし、何もありません。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 以上で午前の委員会を閉じたいと思いますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) それでは午前の厚生委員会はこれを以て閉じます。    午後一時十六分休憩    ―――――・―――――    午後三時二十二分開会

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 午前は引続いて厚生委員会を開会いたします。先日来問題となつております社会保障制度に関する調査の一環として、BCGの有害無害について四かたの証言をして頂きたいと思うのでありますが、その前に例のように規定によりまして証人のかたに御面倒でも順次宣誓をお願いしたいと存じます。宣誓書の朗読をお願いいたします。総員起立を願います。東京慈惠医科大学教授医学博士寺田正中先生。    〔総員起立、証人は次のように宣誓を行つた〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 寺田 正中

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次に国立東京第二病院長の西野忠次郎先生にお願いいたします。    〔証人は次のように宣誓を行つた〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 西野忠次郎

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 日本大学医学部長日本学術会議会員比企能達先生。    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 比企 能達

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次は專門家の東大教授の岡治道先生お願いいたします。    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 岡  治道

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 御着席を願います。四人の方に証人に来て頂きましたことに対しまして厚生委員長として一言お礼を兼ねて御挨拶を申上げたいと存じます。  結核予防に関する問題中特に御存じのように、最近新聞紙上に取上げられて、国民に多大の不定を抱かせておりますところのBCGの予防接種について証人の方の御出席を頂きましたことは当委員会として深く感謝申上げる次第であります。参議院の厚生委員会では結核予防の重要性に鑑みまして特に小委員会を設けて結核予防の徹底を期するため各方両から調査をいたしておつたのであります。ところがたまたま日本学術会議の有志から厚生大臣に出されましたBCG強制接種に関する意見書が発行せられて、又厚生大臣談として二三有力新聞に学術会議の学者からの意見を引用せられ、その上結核予防の業務について一時停止、即ちBCG予防接種は一時中止するかも知れない、有害であれば法の一部改正をも考えするというような意味の記事が発表せられまして、これに携るお医者様は勿論、国民に少からず不安を増大させて参つたのであります。御承知のように、昭和二十三年度六月予防接種法が初めて制定せられてから、それによつてBCGの強制接種が実施されて参つたのであります。更に本年三月結核予防法が新たに公布されるようになりました際、BCG予防接種のほうは本予防法に移されて今日に至つております。その際にも本委員会といたしましては予防接種の問題について慎重審議を重ねた結果、現行通りの規定が設けられたのであります。これらの事実によりまして厚生委員会は本問題について以来重大関心を持つておりましたので、折角小委員長の提議に基きまして意見書をお出しになりました学術会議の方々及び斯界の專門家に学術的な証言を得た後、法律的に適当な処置を講じたい、こういう念願から証人の方の御出席を要望したわけであります。御腹臓のない、忌憚のない御意見、御研究の結果の御発表を頂きますならば非常に好都合であろうと思うのであります。終りに会のために申上げておきますが、証言に対しましては当人の御不利になるような御証言は差控えて結構でありますので、默秘権の権利を御行使下さつても結構と存じますが、これから四人の先生方の証言を頂きたいと思います。順序に従いまして学術会議会員の慈惠大教授の寺田さんにお願い申上げます。先ほど来午前中永い間塩田さん以下御四人のかたから縷々内容について御説明がありましたので、この午後の席上では、非常にお忙しいことと存じまするので、特に四人のかたの特別な御意見を重点に御見解を頂ければ非常に参考になると思いまするので、時間の関係上そういうふうにお運び下されば当委員会としても非常に好都合でありますので、このことを御了解頂きたいと思うわけであります。学術会議員の寺田さんに御所見をお伺いしたいと思います。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) これは項目が六つばかりありますが、これに従つて申しますのですか。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) そのうちで重点的に先生の特に御見解の深い所を御証言頂ければ結構だと存じます。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) そうしますと、第三のBCGの副作用について、それからBCG接種が身体に及ぼす障害の有無について申上げたいと思います。私申上げまする前に、どこまでもこれは学問的の良心から申上げるのでありまして、ほかに他意がないということを一言付加えさして頂きたいと思います。実はBCGの副作用、身体障害に及ぼす影響につきまして最近私の所で調査いたしました。これは細かいことを申上げますというと時間が長くかかりますので、簡単に要点だけを申し述べさして頂きたいと思います。  東京、横浜、神奈川、千葉の五つの小学校、これは最近調査をいたしました。総数が千九百六名であります。現行BCGが本年の五月から九月の間に施行されたもののうち、それを調べてみたのでありますが、それを見ますると、潰瘍を形成している者が、学校によつて違いまするけれども約五〇%でございます。潰瘍を発生した二百三十名中二三%が四ヵ月以上続いている。中には約一ヵ月以上続いた者もありまして、なお潰瘍が比較的大きく数ヵ月持続いたしまして遂にこれを切除したものもあります。それがなお私の大学の、これは名前を省略さして頂きたいと思いますが、教授の一人お子さんでありますが、九歳でありまして、二十五年の六月に接種いたしましてこれも数ヵ月潰瘍が形成されまして斑痕形成が残つている。もう一人の教授のお子さんは十三歳でありましてこれも数ヵ月潰瘍が続きまして斑痕を形成している。もう一人教授のお子さんで九歳でありますが、それは二十四年に接種いたしまして六ヵ月間くらい潰瘍が続きまして、皮膚に斑痕と申しますか、ケロイドと申しますか、女のお子さんでありまして残つた。それから二十五年に接種いたしまして、これも現在潰瘍が数ヵ月続いておるというようなことを見ております。私も男の子でありますが接種いたしましてやはり斑痕潰瘍が数ヵ月続きまして、それがやはり一センチぐらいの斑痕を形成しております。まあこういう点でありまして、これはかなり調べますというと潰瘍を形成しているというのが、非常に比較的多いのじやないか。実は私どもも今まであまり気がつかなかつたのでありますが、母校を最近調査して見ますというと約五〇%潰瘍が形成されておりまして、これなどまあ副作用として、或いは身体に及ぼす障害として考えなければならん点ではなかろうかというように、実は考えておるような次第であります。  なおBCGにつきまして私の意見といたしましては、無効であるというようなことはないと思います。ただどれだけ現行BCGが有効かというようなことにつきましては、学問的な適正な統計が、これは私の希望でありますが望ましい。乾燥BCGについてはそういうような気がいたします。  その他私の考えといたしましては、時間もないそうでありまするから、まあ一つ冷静に公平に、一つ皆さんも考えて頂きまして、現行BCGがお互いに更に調査研究を進めまして、そうして科学上進歩したよりよきものに完成するというようなことが非常に私は望しいこと、こう考えております。時間もなんでありまするから、まあ重点的とおつしやいましたので、その点を申上げた次第であります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) ありがとうございました。西野さんにお願い申上げます。

西野忠次郎国立東京第二病院長

○証人(西野忠次郎君) 私は臨床家であります。それから学術振興会の第八小委員会というものが最初設けられまして、昭和十三年頃と思いますが、その時分から私は、その予防接種の方面を受持つて暫くやつておつたという立場から、BCGの影響その他効果といいますか、接種の人体に及ぼす関係を申上げたいと思います。従いまして只今のことと重復するような点があると思いますが、私も專らそのほうをやつておりましたのでそれを申上げたいと思います。  かなり長い間委員もやつておりましたので、そのデータはそのたびごとに委員長に差出しておりまして、それがまとめられて各雑誌その他にも発表に、なつておりまして、その方面のかたはすでに御承知のことと思いますが、今お話になりましたように潰瘍もできます。膿瘍もできます。併しそれはもう一つ途中でありますが、このBCGの注射の方法とか、或いはBCGの注射液の製造であるとか、保存であるとかということについては常々研究されておりまして、今日まで相当変遷を来たしておると思うのでありますが、最初は皮下に注射しておりましたので、その時分には潰瘍も膿瘍も多かつたと思います。成るほど長い間かかつて治つたというのもあります。併しながらことごとく治つておりまして、皆治ると信じております。そしてあとに瘢痕を残す。それが皮内注射ということに移りまして、皮下でなしに……そうしますというと、その潰瘍、濃瘍のプロセントが大分減つて来たということに……その数字、データ等については今手許にありませんけれども、数字が出ております。更に昨今は皮膚の乱刺法、一皮膚に直接、直接と言いますか、皮下から皮内に移つて、今日は皮膚それ自体に打つようになりました。それでありますと、今日まだ僅かな経験でありますけれども、潰瘍も殆んどできない。まあこんなようなことはだんだんに変つて行くであろうと思いまするし、注射液の保存とか、或いはその溶かす液体、食塩水その他のものによりましようし、保存にもよりましよう。それによつて変つて行くでしようが、大体そういう変遷をして来ておるのでありまして、これが有害か無害かということになりまするというと、これは害の定義になりますが、私はこれは局所反応ということで、害というような名を付けなくてもいい程度のものだろうと考えております。注射をいたしますというと、局所反応と全身反応とがまあ考えられるのでありますが、BCGに関する限り今日まで私ども全身反応と言いますか、全身症状というものは経験しておりません。又これによつて何か惡いものが、従つてこれによつて何か発病したというようなことも私は経験しておりません。  そんな点が私がやつて来たところであります。以上一応申上げます。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次は比企さんにお願い申上げます。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私の申上げる主要点だけを申上げます。私が考えております問題は、現在行われております乾燥BCGワクチンについてであります。前に遡りまして、液体のBCGワクチンにつきましては、我が国でも数十年の研究を重ねて、結核予防のため人体接種も統計的にはかなりいい成績を上げておりまして、これでありますならば、私は結核予防のために液体BCGという時代には必要であつたというふうに考えておりました。然るに乾燥BCGにつきましては、その実施期間も、実施年数と申しますか、実施期間も非常に短いのであります。而もその報告もいろいろまちまちでございます。例えて申しますならば、アメリカのアンダーソンなども乾燥ワクチンは新鮮のものに比較して陽転率が遥かに低いというような報告をしております。我が国におきましても、熊谷博士などは乾燥ワクチンでは生菌が非常に少いというような報告を曾つて申されましたこともございました。パーセンテージは略しておきますが、そういうようないろいろの報告がございますので、乾燥ワクチンが液体ワクチンと同じような効果があるというように私には考えにくいのでございます。こういう意味におきまして、液体ではよかつたけれども、現在行われておる乾燥ワクチンの効果ということについては疑念を持つておりますし、更に更に改良を加えなければならないものだと思つております。殊に結核のような慢性疾患である場合におきましては、短かい期間の観察ということよりも、是非とも長期観察が必要だと思います。例えばこれを人体に応用しまして、その実績を見る上におきまして罹患率が非常に減少したとか、或いは死亡率が減少したとか、こういうようなことを観察するのには、どうしても長期の観察が必要でなければならないと思います。こういうような観点からいたしまして、私は現在行われております乾燥ワクチンが絶対にきかないとは思いません。けれども、もつと効果的であるように改良すべきであると同時に、確かにきくかどうかということを確める上において長期の観察が必要である、こういうような考えを持つものでございます。その他のことは略しておきます。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 次に岡治道さんにお願いいたします。

岡治道東京大学教授

○証人(岡治道君) 私はここに書いてあります各項について私の意見を述べさして頂きます。  第一の「BCGの効果について」という諮問が出ております。この効果についてということにつきましては、私はこう考えております。結核は免疫を作る、そう思つております。この考え方は世界の細菌学者並びに病理学者が一様に持つておる考えと思います。そうしてその免疫のでき方を長い経験で見ておりますと、生きた結核菌を入れた場合が一番免疫が強いのであります。死んだ結核菌を使つても免疫はできます、できますが度合が弱いのであります。こういう予防接種をいたしますのは、目的は病気を発生させないことにあるのでありますから、発生させない程度の免疫を作ることが必要であります。かようにしましてBCGというものが取上げられました。で、それを研究いたしましたのは日本よりも外国のほうが先であります。日本並びに外国の成績を見ますと、一番成績の上らない場合で発病が二分の一になります。少しよくなりますと三分の一になりますが、それは環境でありますとか、栄養でありますとか、いろいろな條件によつて変るのであります。併し一番まずい場合でも二分の一になるという成績は、これは結核の予防においては重大な問題だと思います。それ故に私はBCGの効果を疑いません。  第二に「BCGの副作用について」という項目と「BCGが人体に及ぼす障害の有無について」、この二項を一緒にして意見を述べます。第一にBCGを接種いたしましても、全身的には熱は出ません。たまたま熱が出たということが報告されておりますが、大勢の人にBCGをさすような場合には、風邪を引いておるとか、何とかいうことと一緒になつて熱が出るのでありまして、BCGそのものでは出ないということは、私自身が普通に使います量の十倍以上のものを数回自分にさしまして、体温を計つて一度も出ません。私の子供にも十数回さしまして一度も出ません。即ちBCGによつては発熱しないものであります。又大勢の人に使いましたときにも計測いたしましたが、発熱は見なかつたのであります。又これによつて体がだるいというようなことも起らないのであります。又食欲にも関係がないのであります。即ち全身的な副作用は認められないのであります。  次にBCGをさした局所にどういうようなことが起こるかと申しますと、結核菌をさしますと、どういう場合でも必ず第一番には膿がその場所にできます。その膿が多いか少ないかの問題であります。皮膚に非常に浅くさされました場合には膿が小さくて、すぐそこに穴があいて破れて出てしまいます。即ち痂皮と申して「かさぶた」のようなものができて一ヵ月或いは一ヵ月半ぐらいで治ります。このような場合には普通の人は潰瘍とは思つておりませんが、これを医学の面から見れば、これも立派な潰瘍であります。膿が深くできるに従いまして、出口がふさがりますから、出るのがむづかしくなりますから、膿は大きくなります。従つてそれが破れました場合に潰瘍が大きくなります。併しこの場合、潰瘍が如何に大きくなりましても、筋肉に達することはないのであります。世間に指が入るような潰瘍ができたということを言われますが、そういう潰瘍はできません。そこでこの潰瘍と免疫効果、即ち病気をどれくらい予防し得るかということを考えてみますと、十数年の経験を集めてみますと、潰瘍のできたもののほうが、できないものよりも免疫効果は多いように見えます。これは理論の上から言つても正しいことだと思います。併しかような潰瘍を作るということは、この方法を一般に広めるのに甚だ障害になります。それ故に一般に使いますためには、効果がやや劣つても潰瘍の小さい、或いはできないような方法を考えなければならないのであります。この潰瘍の問題は曾つて三十年前にカルメツトが初めてBCGを人間に使いましたときに、すでに考えておつたのであります。それ以来三十年間世界の目でこの潰瘍が見られて参りました。非常にたくさんの反対論もありました。併し現在世界を見てみますと、WHO並びにユニセフは、三十年前に賛成者並びに反対者を集めまして、デイスカツシヨンを行いまして、その結果潰瘍を副作用と認めないで取上げることにきめまして、現在それを行なつております。それ故に私は潰瘍を副作用の中に入れないのであります。潰瘍以上に結核という病気になつた場合の恐しさを考えますと、私は結核にならないほうがいいと考えておる一人であります。  次にBCGをさして結核が起るかどうかという問題があります。これにつきましては二色の考えがあるのであります。第一が人間の体の中でBCGという菌が非常に強い毒性を持つように変りはしないか、そういう虞れを持つておる人がおります。併しこれは可能性を考えたのでありまして、この三十年間に恐らく何千何万回と行われた実験に、未だ曾つて一度もBCGの毒力が上つたという事実はないのであります。我々は仕事を行いますときに、過去の事実によつて即ちプロバビリテイによつてものを行います。可能性によつては物事はきまらないと思います。即ち我々が三十年間の事実に基いてBCGによる結核の発生はないと私は思つております。もう一つの問題に入ります。次にBCGをさすことによつて、若しその人の体の中に結核があつた場合は、その結核を誘発しはしないか、そういう又疑いが起ります。併しこれに対しても、結核患者にさした経験だけではございません。ほかの人の経験から見ましても、BCGによつて体の中の結核が活発になり、誘発されるという事実がないのであります。且つ又日本で現在使つておりますBCGは政府が検定をし、安全試験をワンロツトごとにいたしております。国民の前に安全を証明して出したものだけを使つております。それ故に私は現在日本で使つておるBCGが人間に有害であるとは思いません。四番目のBCG強制接種に対する意見について、私は次の理由から現在の日本の状態においては、BCGの強制接種に賛成いたします。即ち第一がBCGを接種することによつて、生命は勿論健康に全然害がありません。これは第一の前提として必要であります。第二に現在の我々の同胞日本人の考え方を見ますと、結核については個人的損害はよく認識しておられるようであります。併し結核が社会に対してどのくらい損害を與えておるかという認識については、私は認識に欠けるものがありはしないか、そう思つております。例えて見ますと、BCGをさして二分の一にしか発病が減らない、つまらないじやないか、そういうことを耳にいたします。併し今六十万人のここに患者がおると仮定いたします。この六十万人の患者が三十万人に減つたとしたならば、社会の負担がどれだけ違うでありましようか。一人に一年十万円かかつたといたしまして、六百億が三百億に減つたとしたならば、どれだけ社会の負担は少なくなるでありましようか。又結核は多数の優秀な人材を倒しております。若しそれらの人たちが二分の一でも救われたとしたならば、これは社会的に非常な利益だと思います。かようにしまして、社会的に日本は非常に損害を結核から受けております。それ故に私はこの観点からも現在の強制接種に賛成いたします。  第三番目、日本はヨーロツパ、アメリカとは結核の事情が違います。すでに結核の死亡率に非常な差がありますように、日本では殆んど至る所に結核菌を出す人がおると言つてよろしいと思います。諸官庁、或いは工場、或いは町を若し検診なさつたとしますと、少くとも二%、多いところは六%、更に多いところは一〇%の結核菌を出している健康者がおります。それらの人は健康な姿で結核菌を撒いております。誰が結核菌を撒いておるか、それは誰にもわかりません。そういう中にいて国民が安全にいられるためには、私は強制接種が必要だと思います。  次に今度の問題が起りましてから、法律があるにもかかわらずBCGの接種は非常に少くなりました。即ち誰も中止をしろと言つた人はないのであります。ないにもかかわらず、国民はBCGの接種を受けなくなつて来つつあります。結核の予防は絶えず行わなけりやならない。ほかの急性伝染病の予防とはその点大変違います。それが一ヵ月や三ヵ月遅れてもよかろうと思うということは、結核という病気を知らない人の言葉だと私は思います。かようにしまして、今日のような混乱を起しておるということは、日本人全体の非常な損害であります。又現在の日本の経済状態から考えまして、完全なる結核患者の隔離を行うということは到底望めないと思います。そうして結核予防の上で積極的な方策は現在BCG以外にはないのであります。あとは全部隔離でも何でも全部消極的な方法であります。私はBCGだけが予防方策とは思つておりません。併し日本のような国はあらゆるいいことを全部取上げなけりやならないと思います。そうでなければ容易なことではこの日本の結核を少くすることはできないと思つております。かようにしまして、私はBCGの強制接種が妥当である。これは国民のためになると、そう思つております。潰瘍のような区々たる問題ではないと思つております。  次に第五番目のBCG接種の改善に関する意見について。あらゆる予防ワクチン類はそのワクチンが使われる限り研究し、改善して行かれねばなりません。天然痘の痘苗にいたしましても、腸チブスのワクチンにいたしましても、あらゆるワクチンはよりよきものを作るように研究し、改善するのが、これは当然であります。BCGだけがその必要があるかないか、そういうような問題ではないと思います。でありますから、BCGの接種方法についての改善は当然今後も続けて行かれねばならないのであります。かようにしまして、私の所論といたしましては、現在のBCGの研究は人間の生命を侵す、健康を傷つけるという点においては研究の余地がないのであります。従つて若し研究するとすれば、よりよき接種方法、よりよきワクチンを作るという学問的な研究が残されておるのだと思います。  私の所論を終ります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 以上で四人のかたの研究或いは御意見等の御開陳がございましたが、これより質疑に移りたいと思います。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 その前にちよつと伺いたいのは、寺田先生、比企先生からは、いろいろ学術会議の立場から疑問の点を述べられておるわけであります。一方又西野先生、岡先生からは只今の通りの御所見がありました。これについて寺田先生なり、比企先生なりの何か御意見が、御訂正になるとか、或いは追加される御意見がございませんか。先ずそれを聞いてから質問を始めたいと思います。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 接種方法について、これから改良をすることが望しいこということは、これは皆さんの御意見のようであります、私もこの点においては全くその通りでありまして、皮内法から乱切法というような今お話がありまして、それも大変結構なことと存じますが、ただ皮内法から乱切法へ変化した場合に、それらの免疫効果と申しますか、発病を防止するような免疫効果にどの程度の変化が来るかというようなことについては十分に一つ検討をして頂きたいと思います。或る本などにはとにかく乱切法は陽転率が少くて、それからして免疫の持続期間も少いというようなことを書いてある本もありまするので、とにかく接種方法というものは、これはかなり実際問題として非常に潰瘍がトラブルになりますので、この点なども一つ将来十分に研究、調査してほしいというような考えを持つております。それからBCGが結核の古い感染を誘発しやしないかというような考え方も学問的に実は或る程度成立するように思います。私はその点につきましては、実際そういう例証を実地調査しておりませんから、何とも申上げられませんが、要するに一つこういう点も更によく考えて調査、研究をして頂きまして、そうして完全とは申しませんが、よりよきものへ一つ進んで頂くというような希望を学問的に持つております。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 それでは寺田証人と比企証人に、大体同じようなことだと思いますが、お伺いします。十月の四日に橋本厚生大臣に対して日本学術会議から申入れがございまして、これにつきましてはこの中に特に世上いろいろ問題がある、医界にも疑惑を抱く者があつて、なお研究の余地があるように思われると、こういうようなことでございまして、世上いろいろな問題ということにつきまして、午前中にも塩田証人にもいろいろ伺つてみましたが、潰瘍の問題、殊に潰瘍が非常にひどくなつて手まで切る必要があるというほどまでになつたという例があつたというようなことを承わつた。それから或いは医界にも疑惑を抱く者があるということについても、我々はもう一つ十分に了解するほどのできる御答弁を得なかつたのでありまするが、この二点についてどういうところが世上にいろいろの問題があるのか。医界において疑惑を抱くということは、どういう人がどういう意見を持つておるから疑惑があるのだという、いわゆる学問的な基礎に立つた疑惑の点を御説明を願いたい。それからなお研究の余地があるように思われるからということ、この表現がどうもBCGの研究というものがまだ未完成だ。それであるから研究の余地があるというふうに一般国民にはこれが反映しておりますので、そのために現在今岡証人から言われましたように、BCGの接種についていろいろ地方から厚生省のほうへ照会も来ておるそうであります。又BCGを返して来るという人さえあるということを聞いておりまするが、只今岡証人のお話によりますると、一刻もこれを緩めちやいけない、一月遅れる、又二月遅れるということは国民に対して非常に大きな影響を及ぼすじやないかという御注意もありましたが、この点についてどういうふうな御見解がありまするか。厚生大臣に申入れをされました学術会議の御署名をなさつたお二人に一つ御意見を伺いたいと思います。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 藤森さんどなたに御証言を求められておるのですか。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 お二人ともに……。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私は初めに申上げましたように、ワクチンの効力ということに重点を置きましたのでありますけれども、只今藤森さんから御質問の点も多少考えておりましたものですから、附加えてお話申上げます。世上……。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 文句を申上げましようか。世上いろいろ問題があり、医界にも疑惑を抱く者があつて、それからなお研究の余地があるように思われるから政府においては特に……。この三項に分れております。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 第一番目の世上いろいろ問題があるということにつきましては、私はいろいろな訴えを、統計的な意味ではないのですけれども、個々の人から発熱したとか、それから引続いて病気になつたとかいうことを聞きますのですが、然らばそれに対する立派なデータがあるかと申しますと、現在私は持つておりません。併しそういうような世上で言う考えありとすれば、これはどうしても実態調査をしなければならないということを考えております。その実態調査の上に立つて解決すべき問題だというふうに存じております。  その次に医界にも疑義を抱く者があるということでありますが、これは疑義と申しますと、いろいろのことがありますが、その毒性化するとか、誘発するとかいう問題につきまして、これは簡単な報告でありますけれども、硅肺動物でもBCGをやると結核を起すというような報告もございます。併しこれ一つを以て確かだというわけには参りません。併しそういうような報告もあるのですから、更に突き進んでこれは研究して見なければならない問題だと、こういうふうに私は感じております。今までの報告で余りそういう問題を見なかつたのですけれども、そういう報告もあるとすれば、更に突き進んで研究しなければならないというようなことを考えております。  なお研究の余地があるように思われるという点におきまして、私はそういう問題も研究ですけれども、私の立場としましては、BCGをもつと有効にするのにはどうしたらいいかということの研究、つまりBCGの改善、改良ということと、それから又更にそのBCGが確かにきいたというような証拠を持ちたい、そういうような研究をするために研究の余地があるようにも思われる、こういうように私は考えております。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) この世上にということでありますが、実は私も方々からいろいうことを聞きますので、それらについてもいろいろ学問的に考えなければならない、まだ調査研究もしなければならないというような考えを持つております。それで現行のBCGに反対するために反対するのじやなくて、学問的の立場から、これは再三申しますが、更によりよき完全なものにして、そうして国民の保健上に一つ役立てたいとういうな学的の良心から申しているわけであります。世上にとこう申しますのるのは、実はこれは或る病院の小兒科の先生でありますが、これが或る保健所で生れてから四ヵ月の子供でありますが、ツベルクリンが陰性でありまして、BCGを接種いたしましたところが、約一ヵ月後から熱発いたしまして、レントゲン線でとつて見ましたところが、両側肺門部の淋巴腺が多少実質性の浸潤を起した。そうして熱が続いておるというようなことがありまして、これだからBCGはとかく結核を誘発するのだという証明にはなりませんけれども、又そうでないということも非常に私はむずかしい問題じやないかと思います。そういうこともございまするし、それからなお最近アメリカのいろいろの参考書を、ちよつとBCGにつきましていろいろ調べて見たのであります。BCGというものに関してどういう考えを著者が持つておるというようなことを実は調べて見たのであります。これはアメリカだから、それは違うと申されればそれだけでありまするが、その一々の詳しいことは申されませんけれども、とにかく或る程度は有効であるけれども、まだまだこれは研究を要するので、まあ更にこれを研究を推し進めて欲しいというようなことが出ておりますので、まあ医学上と申しますか、そういうことも御参考に申上げたいと思います。  それから法的の問題になるのでありますが、私どもはどこまでも学問的の立場でありまして、行政的にこれをどう取上げようというようなことについては全然とにかく何してないのでありまして、これはもう行政官庁の事務と申しますか、そういう観点から、法的処置をとると、とるまいと、それはもう政治の問題だと思います。ただ学問上から申しまして、まあいろいろの点がありまするので、何とかBCGをもつとよりよきものに、お互に協力して……とにかく冷靜に公平に考えまして、お互に協力して、もつともつと完全なよりよきものにしたいというような考えが十分ございますので、ちよつと申上げておきます。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 それでは伺いますが、先ほどアメリカのほうからの報告ということも承わりましたが、それよりももつと我々の身近に、本年の七月の七日に文部省総合研究会の予防接種科会、そこのBCG研究協議会からBCGをめぐる疑惑に答えるということで、たくさんの專門家のかたが御意見を発表になつております。で、結論には以上述べるところにより、BCGは有効無害のものであつて、我が国の現状においては特にBCG接種に重点を置いた予防対策を強力に推進すべきものと信ずるというようなことが発表されておりまするが、この厚生大臣に申入れをされまする際に、この研究会に対して何か御意見をお聞きになりましたでしようか、お聞きになつておりませんでしようか。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 私実は存じておりません。私は聞いておりません。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 比企先生は……。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私も聞いておりません。何ですか、その御質問は、それに対してどういうわけだかということを聞いたかとおつしやるのですか。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 何かこれにお問合わせになるとか……。もう一遍読みます。こういうものが出ておりますので、こちらのほうには、厚生大臣に出されるときに、世上いろいろ問題があり、医界にも疑惑を抱くものがあると、こうしてあるのですが、こういう際には、いわばこういう專門家の御意見をお聞きになつて初めて政府に進言されるのだろうと思いまするが、そういう際に、この意見の発表については学術会議としては御意見をお聞きになりましたか、こういうことであります。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 別に私としては意見は聞きませんでした。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 今朝塩田部長に聞きましても、何ら基礎的の資料がないのだ、これから出すのだ。いつ出すかというと、いつ出すかわからんと、こういうふうなことを言つておられまするし、しかのみならず、これだけ專門家の堂堂たるかたが御意見を発表されておるにもかかわらず、こういう意見をちつともお聞きにならないで、そうしてただ世上いろいろ問題がある、医界にも疑惑を抱くものがある、こういう抽象的な言葉を取上げられるということは、学術会議からの厚生大臣に対する申入れとしては、どうも私は非常に軽率じやないかと存じまするが、先生がたはどうお考えになりましようか。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 私もお聞きしたいのですが、権威のある日本学術会議の、そのうちの第七部会なる医学部が、この問題を取上げて厚生大臣にお申入れになつた目的は何でございますか、それをはつきり承わりたい。その目的は結核をなくするために良心的にお申入れになつたのでしようか。或いはやはり武見氏が発表したような、日本の結核対策を撲滅するといつたような野心でお申入れになつたのでしようか。(笑声)或いは直ちに行動に移せとお申入れになつたのでしようか。文面から見ますると、政府においてはこの点について慎重な調査をして遺憾なきを期せられたいというのでありますが、政府の調査のどこに一体遺憾があつたのでしようか。学者の御見解として政府の調査の、今日までの調査のどこに遺憾があつたのでありましようか。そうして厚生大臣に対してお申入れになつたところが、これは塩田博士のお言葉ですが、厚生大臣は、我々は別に疑義は持たない、あなたのほうでお持ちになるならば、あなたのほうから科学的な論拠のあるデータをば、はつきりした資料をばお示しを願いたいということを言われた。それで自分のほうは今は持つておらんけれどもが、いずれまとめた上で出す、こういうことを答えられたので、私は今お持ちになつていないで、どうしてさような軽率な御提案をなすつたのでありますかと……。その結果がどうなつたかということは、厚生大臣は調査をしようとはしないで、直ちに総理大臣にこれを訴えて、権威のある日本学術会議が申出たのだから、これは事によつたらやめにやなるまいと世間に発表したのであります。そうして見るというと、それがすでに学術会議はその目的を以てお申入れになつたのであるかどうか、若し誤まつて、これがあなたがたのお申入れになつたのは学問的にもつと調査しろ、法律をどうしろというのじやないというようなことであり、結核も一日も早く撲滅するようにせにやならんという御意思であつたのだとすると、結果は非常に違つて来ている。当面の政治面において非常に大きな違つた現象がここに現われて、取返しが付かないように今はなつているわけです。私がここではつきり伺いたいのは学術会議のかたがたがお申入れになつたる真の目的は何かというので、その目的に向つて今進行しつつあるか、或いは誰かが慌ててこれを発表してしまつて取返しの付かないようなことになつているのかどうか。その点につきまして、一体学術会議のかたがたはどういう御心境を持つておいでになるか、我が事了れりでありますか、或いは非常に遺憾でございますか。大変妙なことを私は申すようですけれどもが、我々は政治に携わつている立法府の責任を持つているものでありますから、この及ぼす影響について我々は考えたい。学問のことについては実はわかりません、私ども素人ですからわかりませんけれどもが、一体学術会議は御発表になれば非常な権威があるのですから、その名前を以てのお申入れの目的をはつきりここで承わつて、それが今及ぼしている影響に対して、どういう御所感をお持ちになつておりますかを明らかにして置いて頂きたい。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 寺田さんございますか。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 私どもは純学問的な立場から、とにかくいろいろまだ研究するところがあるように思われますから、そういう研究をして欲しいというので、こんなBCGをやれとか何とかいう、そういう何でなくして、学問的な良心から、まだまだやらなければならんことがあるようだから、一つまあ研究を更に進めて頂きたいという意図でありまして、そのほか別に私ども申上げることはないのであります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 比企さん御意見ございませんか。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私は先ほども申しましたように、BCGというものに対しては非常に有効だということを曾つて考えておつたのでありますが、現段階のBCGですと、極めて不十分のように思うというような点から、これをどうにかして早く改良しなくちやいかん、こういうような熱意と申しますか、そういうような気持から出発しております。従いまして、こういう結核をなくするための目的で始まりまして、何ら破壞しようとか何とか、そんな野心は毛頭ございません。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 記録にはつきり残しておきたいのですが、厚生大臣に対してのお申入れは、厚生大臣の職権を以て学問的に調査しろとお申入れになつたのでありますか、或いは強制接種はまだ危いからやめろとお申入れになつたのでしようか、この二つを記録として残したいからはつきりお申出を願います。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 今しろというような強制的意味は全然ございません。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 文字がここら強制とある。では何を御要求になつたのですか、御要求の点をお聞きしたいのです。お申入れになつた点。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) つまり研究調査をして欲しいということで、それはとにかくどうしろとか、こうしろとかいうような意味は持つておりませんです。それから強制の点でございますが、とにかくいろいろまだ研究もしなければならん点も、これはあると思いますので、まあこれは厚生省、監督官庁の問題でありますが、どうかと思う。若しできればガイダンスというようなものによつて浸透すればなおいいのじやないかというような考えを持つているわけでありますけれども、これは強制接種の問題でありますから、我々が何と申しましても、強制接種を今どうしろというような意図はないのであります。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 記録として残して置きたいのですから、一つ是非今の続きをおつしやつて頂きたいのですが、そうすると、強制ということは、危險であるからして、強制は考えて欲しいが、接種はするがいいのでしようか、しないがいいのでしようか。強制はいけないが接種はすべきものでしようか、接種もしてはいけないという御見解ですか、これをはつきりとお聞きして置きたい。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 接種は、私は成るたけ先申上げましたいろいろの点に注意いたしまして、そうしてやることはとにかく差支えないと思います。ただ現在の乾燥BCGなどにも、まあどれだけ菌が生きているか、これは生菌ワクチンでありますから、どれだけ菌が生きているか、成るたけたくさん生きている菌で、末稍まで行つた場合にやはり生菌がたくさん含んでおりまして、そうしてそういうものを一つ十分、余り死んでいないようなもの、そういうようなものを一つ接種を続けられるということは私差支えないと思います。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 比企さん一つ。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私はBCGは効果が少なくあつてもBCGは接種したほうがよろしいという意見でございます。したほうがよろしいけれども、それは強制にするかしないかということは別問題でございまして、まあ少し強制にするならば、もつと効果的なものを作つて、いろいろな調査もして、十分にぬかりのないようにお願いしたいというような意味でございます。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 そこで今日午前中塩田部長もこういうことを言われました。厚生大臣からもあなたがさようなことをお申出になる以上は相当な資料があつてのことだろうと思う、学者としての科学的の資料をお持ちだろうからお出し願いたいといつたら、出すということを厚生大臣から聞いた。今日駄目を押したら、初めは出す意思がないようでしたが、いずれ集めて出すということをお話されたのであります。皆さん全体の十三人の御責任があると思いますから、ここで成るべく早い期間に、世間の納得の行くような御申言になつた調査の結果をばお示し頂きたいということを申上げておきましたが、私たちの国会が問題としますことは学問的の論争ではなくして、強制接種をすべく進行しつつある結核対策がここで一大頓挫をして、実は大多数の人が接種そのものすらも今日行わなくなるという影響力であります。この影響力が一部の学者の申言から出て調査をしろといつたのをば、厚生大臣が調査をしないで総理大臣に訴えて、やめるかも知れんといつたところに問題があるので、今日午前中に申上げておいたのですけれども、実は非常に大きな結果が参つている、現象が参つておつて、私どもその対策に実は困つている。我我の責任は法律がどう行われるかにある。これまで厚生省から出されたものも十数年の研究の結果というもので、これは実は承認したのですが、やつた結果についてそういうような横やりが入るということになりますと、今後は厚生省から出されるところの原案はこれはよほど念を入れて、我々はだまされるようなことのないようにしなければならんということで国民も非常に疑いを持つ、ここに我々の苦労があるのであります。先生方の権威のある名を以てのお申入れでありますから、どうか跡始末をお付け下さいまして、目的と違わないような結果が社会に現われるような責任を負つて頂きたいということを私は申上げておきます。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 大体わかりましたが、なお念のために申上げるのですが、寺田先生と比企先生とにお尋ねするんですが、ここに書いてある研究の余地があるということは、これは純学問的に研究の余地があるという意味で、決して予防接種をやつて行くということについて、お二人とも御異議がない、かように解釈いたしましてよろしうございますか。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私はやつて行くことには異議がありませんということを申上げております。それから先ほど申上げましたような改良を加える、研究をするという、そういう面において研究の余地があるというふうに考えております。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 私は続けてやつて差支えないと思いますが、ただ研究的にはいろいろな点があると思いますから、将来いろいろな点を十分研究いたしましてやつて行きたいと思つております。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 そこでもう一つ私は寺田先生のほうからも比企先生のほうからもあつたと思うのですが、問題は乾燥BCGの問題であります。乾燥BCGの効果ということについて生菌が少かつたとかいう問題が出ておりますが、殊に寺田先生から承わつておるところによりますと、現行BCGは学問的に研究の余地があるとおつしやられたこの点であります。岡先生も先ほど申上げられたと思うのですが、只今乾燥BCGについては、これは国家検定をやつております、国家検定をやつておるということにつきまして、私どもは効果というものについては先ずこれを国の機関がやつておるということに信用しております。若し乾燥BCGに疑問があるとおつしやるならば、国家検定そのものに疑問があるという意味でしようか、如何でしようか。これは御両所から承わりたい。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私は国家検定に疑問があると思つておりません。併し各地の報告を見ますと、ツベルクリン反応が陽転化する程度のパーセンテージはいろいろまちまちで、殊に中央でやつた柳沢君の報告を見ますと、非常によろしいのでございますけれども、地方でやつた報告ではかなりパーセンテージが低いものもございますが、これは国家検定が惡いというのではなくて、国家検定がよくても、その保存の方法とか、運搬の方法とか、取扱いということにも欠陷があるのではないかというふうに想像しております。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 大体私も比企君と同様の意見でありまして、国家検定をやつおりますから、まあそれを信用して差支えないと思います。ただ、乾燥BCGになりますと、生きたBCGから乾燥BCGということには非常に変化があるわけですね。ですからその効果の点などについてもまだ年月が浅いことでありますからして、そういう点も十分にこれから御研究御調査をお願いしたいと思う。それから乾燥して地方へなど行きます間に、いろいろの点で今まで生きておつたのだが、だんだん死んでしまつたというような、いろいろな技術的な問題もあるのじやないかと思います。そういう点も一つ十分に御調査御研究願つたら望しいこということであります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 そうしますと。乾燥BCGの国家検定ということについては先ずこれを信用する。それからBCGの予防接種というものも、これも施行して行つたらよろしい。結局末端の技術面において若干の疑問があるという結論になるかと思うのですが、そういたしますると、この厚生大臣に対しての申入れは、これは非常に大きな取り上げ方がしてありますので、国民は決して今あなたがたの言われた通りにとつておりません。BCGが根本から疑問があるというふうに国民はとつております。これに対して学術会議として御発表なさつたのと今の御表現とには少し意味が違つたとり方があると思う。これについて学術会議のこの御発表を訂正なさる意思はございませんか。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 私としましては別に訂正する必要もないと思つております。と申しますのは、これで私の考えております、先ほど申しました研究の余地があると思われるということで、私はその点で別にこれを変える必要もないというふうに考えております。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 先ほども松原委員からも言われました、私も申し上げましたように現在この学術会議からの申入が非常に大きな反響を呼んでおります。この事実を見られた場合に、若し国民がこれを過つて解釈した場合には、非常な国民が迷惑をしなければならん、こういうことをお考えになつた折には、先ほどの御意見から見ると、これに書いてある意味じやない。そうすると国民の疑惑を解くためにもなにかこれを御訂正なさるか、或いはこれは実はこういう意味だという只今御証言になつたような意味のことを国民に知らせて、国民の疑惑をお解きになる必要があるのじやございませんか。

松原一彦第一クラブ

○松原一彦君 学者の権威にかけてお考え願います。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) どうも私どもがなにしましたことが非常に波紋を喚び起こしたのでありますが、これはどうもいろいろ言論機関でありますとか、雑誌に随分間違つたいろいろの記事やなにかが出ておりまして、我々の考えていることとは随分違つた、例えば或る雑誌などにはBCGを中止すべしというように学術会議がなにしたというようなことがありまして、そのほかいろいろのこともありまして波紋がここまで来たのでありますが、私どもとしてはそんななにはないのでありまして、とにかくまあ学問的に例えば乾燥BCGにいたしましてもまだ施行されましてから日が浅いのでありますからして、そういう点も十分一つ調査研究して欲しいというのでありまして、そんなにこれは中止しろとかなんとかいうようなことは毛頭考えていないわけであります。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 勿論中止しろとかどうとかいうことをお考えにならなかつたとは存じまするが、併し結果において中止するに近いようなことができた場合には、これは学術会議の御発表になつたかたがたとしても責任がある。この責任をどういうふうに国民に対して御解決なさるか。この点を、あなたがたの責任を伺いたい。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) どなたかお二人のうち……。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 ちよつと関連して。この重要な申入れを学術会議の十三名のかたがなさつたのでありますが、一体首唱者は誰でありますか。誰がそういうことを提言して皆さんが賛同なさつたのか。それをお二人のかたにお伺いいたします。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) 誰だかはつきりと私覚えておりません。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 私もどうも誰が首唱者だというようなことを言われますと……。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 岡先生にお尋ねしたいのですが、先ほど寺田先生はこのBCGに対して、アメリカ方面からの云々があるということを承わりましたが、私どもはこのBCGに関しては、日本の研究が非常に進んでおる。恐らくアメリカのBCGの研究よりも遥かに優れたものだというふうに平常解釈しておりましたのですが、今アメリカからマイヤース、その他の少数の意見が出ましたが、これによつて日本のBCGの意見が覆されるとか、或いは動揺するというふうには考えておりませんのですが、專門の御見解の先生の御意見は如何でありますか。

岡治道東京大学教授

○証人(岡治道君) 只今の御質問でありますが、私は現在の段階におきましては、まだBCGの研究は日本のほうが進んでおると思います。それは事実といたしまして、例えば乾燥ワクチンの製品でありますが、アメリカにはバークホーク、ローゼンタール、エアロンソンの三人のBCGの專門の研究者がおります。そのエアロンソンのところでも乾燥ワクチンを研究しておるらしいのでありますが、エアロンソンから私の聞きましたところでは、予防衛生研究所の柳沢君のところに日本の乾燥ワクチンが一番いいから、今後は自分のところに送つてくれという申入れがありました。そうして日本から上げることになつておるはずであります。そのほかBCGの効果に関するデータはアメリカと日本では、日本のほうが歴史が古いということもございますが、数において非常な違いがあるのであります。文献の数が非常に違いがございまして、現在の段階においては日本のほうが確かに進んでおります。只今お名前が出ましたが、アメリカのマイヤースさんというかたは七十近いかたでありまして、世間的にはいろいろな会長をしておられる有名なかたでありますが、アメリカ人に直接聞きますと、アメリカ人に対する影響のない人であり、又BCGは一遍も扱つたことのない人だそうであります。私どもが文献を調べましても、マイヤースがBCGを研究したという記録は一つもございません。  次にマイヤースが本年の八月にアメリカ医師会雑誌に論文を書いております。これは日本にも飜訳されて先日配られたようであります。併しあの論文の中にはたくさんの誤謬があります。如何にマイヤースがBCGについて勉強していなかつたかという事実がわかります。これは日本で飜訳されたものを皆さんが御覧になればよくおわかりになります。又只今出ましたアメリカの教科書をお作りになつたかたがたが、果してBCGの研究をなさつたことがおありになるかどうか、私存じません。アメリカでは極く限極された人だけしか、現在のところBCGを扱つておりません。日本のようにですね。日本の学者のほうがBCGの研究者は遥かに多いのであります。従つてBCGの研究者は遥かに多いのであります。従つてBCGに関する常識も日本のほうがアメリカよりは、学問的にも、又社会的にも遥かに広く且つ高いと思います

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 西野さん、御見解如何でございますか。

西野忠次郎国立東京第二病院長

○証人(西野忠次郎君) 題はどういうのでございましようか。ただ全般に対しての意見ですか。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 私は岡先生に伺つたのです。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) それじやよろしうございます。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 岡先生にお伺いしたのですけれども、今のお話で御見解がありましたから重ねて承われれば結構でございます。

西野忠次郎国立東京第二病院長

○証人(西野忠次郎君) それじや折角立ちましたし、一言述べさせて頂きますが、どうも問題の中心がもう私は皆さんのお話でもう盡せておるように私は思うのであります。けれどもこれは私の考えでありまするし、私も強制接種ということのところで一つ何させて頂きたいと思います。  私はこれは是非必要だと思います。有効であり、又無害であるということは私は信じております。そうすればやるほうがいいことは勿論であります。又強制ということになりますと、何かこの字を私は甚だ勝手を申しますけれども、気に入らない。強制というふうな、嫌な人まで引きずつてという感じで、私はそういう意味じやなかろう、皆やれという意味だろうと思うのですが、もう進んでやりたいという人も勿論たくさんあると思います。現にまあそういう質問も受ける。やりたいのだが、どうも議論があるが、どうなんだというようなことで、私ども実は昨今迷わされておるのであります。そういう受けたいような人はたくさんおるのでありますが、この強制というのは、まあいわば一部のものじやないかと思うのでありますが、ともかくすべての人に、條件が揃つたといいますか、自覚があるといいますか、そういう人には私は全部やるべきだと思います。それはやらんで済むような日本を私は希望するのでありますけれども、今日の日本は私が申すまでもないと思いますが、伝染源になる患者をことごとく入れるだけのまだベッドもできておりませんし、又こういう慢性の殊に結核性の疾患に対しては、衣食住その他のこと、或いはカロリーそんなようなことはたくさん必要なものがあるのでありますけれども、そういうことがどうも日本の今のところではなかなか、国情が満たされないのでありまして、こういうときにはやはり積極的の予防接種、而も害もないのでありまするし、やつて行くということはもう楽しいのでありまして、私がこういうことを申上げるのは蛇足かも知れませんが、お呼びを頂いたのでその点を申述べさせて頂きました。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 強制接種のことが、強制ということから学術会議のほうで大変な問題になつたというふうに午前に塩田証人、大森証人から承わりましたのですが、或いは学術会議の両先生もそういうふうなお考えがあるかとも存じますので、申上げるのですが、この結核予防法に謳つておりまする強制というのは、法律上は強制をしておりますが、これは只今西野先生のお話がありましたように、国民多数にやりたい。而も、日本の結核の現状を考えるときには、どうしても国民全部を対象にする勢いで行かなければ、結核は頭打ちをしないということから出発して、強制という点を我々は採用したのであります。併しながら一方には個人、人権上どうも考えまして、これには罰則を付けておりません。この罰則を付けておらないというところに大きな含みがあるということをお考え下さるなれば、現在の強制ということに御了解ができるのじやないかと思いまするが、そういうことを申上げて、現在の制度の強制接種ということになれば、御賛成が願えるかどうかということを両先生に承わりたいと思います。比企先生どうですか。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) おつしやるように強制接種のそういうことにとらわれることは若干ありますけれども、併しこの問題は、そういう罰則があるとかないとかいうこともまあ考えに入れるべきでしようけれども、強制接種という以上は、やはり人権というようなことも考え合せられまするので目下そういう意味ではやはり今のところはお研究の余地があるのだからと、大体考慮して行くべきじやないかというふうに私は考えております。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 寺田先生如何でございますか。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 強制と申しますと非常に強く響きまして、これは行政上の問題でありまするから、我々学問的からは、これをどうしろと言われても、たびたび申しましたように、するのではございませんので、ただ行き方としていろいろのまだ研究すべき点があるのだから、一つ納得の上にまあデモクラテイツクなガイダンスという方向へ進んで行つて頂けたら大変結構じやないか。こう考えるわけでありまして、これは行政上そんなことを言つておられないのだということになれば、これは私は別問題だと思います。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 併し今の、現在の日本の結核の状態を見ますると、これは忽せにならんということは、これは両先生もよく御了承になるところであります。それでは強制という姿をとつて、而も罰則のない強制の姿をとつて国民多数を対象にしなけりやならんということはまだ惡いと言われると、それじやどうしたら国民大衆を最大に、有効にこれを対象にすることができましようか。そういう点については何か御腹案でもございましようか。ただ御腹案も何もなくてただ強制が惡い、強制が惡いということだけでは、実際の国民のこの結核の蔓延している状況を見て我我は考えさせられるのでありますが、何かそれに対する御対策のお考えでもございましようか、承わりたいのですが……。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) これは対策というほどではないんですけれども、今まで機会あるごとに相当ガイダンスでやつて来て、まあ熱心の度も強かつたんですけれども、相当成績を拳げて来られた。そういう意味におきましてガイダンスではかなり成績を挙げられて来たから、そういうふうに考えまして強制接種をするならば勿論いいのではないかというふうに考えております。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) これは問題でありますが、どうしたらいいかということは、これは要するに学問的の考え方と行政面と別になつたり離れたりしておりますので、非常にこれは問題もむずかしい問題になつて来ると思います。将来の希望といたしましては、やはりこれは例えば英国などでは大然痘なども強制をやつておりませんですし、でき得ればああいう形態に持つて行つて、科学の成果をガイダンスによつて国民につまり知らせるというような行き方がとれたら、これは大変いい方法だろう、こう私は考えておるわけです。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 結核のお話を申上げておるので、私は結核のほうについて申上げますが、或いは英国であるとか、或いは米国であるとか、その他においても強制はやつておらない。こういうことはこれは私のほうで賛成いたします。又私個人としても強制ということは決して好ましいことではないとは考えておりまするが、併し現在のアメリカであるとか、或いは欧米諸国のような結核の状態が落ちついておれば勿論これはやる必要はない。これは任意にやつたらいいのだ。併しながら現在のこの姿をどうするのかということについて、我々はこういう考えをするのでございまして、その点をよくお考えを頂きたいと思います。ただ理想だけをお述べになりまして、これは理想は理想としてよく承わります。そうして行政面或いは政治面に触れないとおつしやるのですけれども、実際この勧告書といいますか、申入書が厚生大臣に出たということは、これは学術会議が即ち行政面、政治面に出たということなんです。ただこういうものを出して置いて無責任に我々学問のことだけだと言われることには、我々少し納得が行きにくい。こういう点についてどうお考えになりますか。決してこれは政治面に触れておらない、行政面に触れておらないというふうに逃げられることではない。この中で御証言になつておられるあなたがたの責任は如何でしよう。

有馬英二国民民主党

○有馬英二君 藤森さんの今言われたことの裏を私は述べます。即ちこういう考えでないかと私は思うのです。この申入れの文面、或いは意味が厚生大臣のところに行きまして、厚生大臣がこれから発展して、つまり現行の結核予防の方法について新らたな構想で、即ちBCGを中止するかも知れないという考えを覚えたわけであります。即ちこれが原動力であります。然るに証人らのお話を承わつておりますると、何もそれほどの考えでやつたのではない。行政方面に対しては俺たちは知らない……、俺たちは知らないという御意見ではなかつたかも知れませんが、そういう意味に聞える。即ち我々は学問的に考えて行くべきである。研究の余地がある。よりよきものを得たいというのに過ぎないのであるということをお二人が、寺田さんと比企さんと両方共そういうことを御発言になつておる。然るに事実は先ほどから同僚の藤森委員が言われまするように、これが非常に発展いたしまして、世上に非常な混乱と疑惑と不安を招いておるのであります。その責任を誰が一体とるかということであります。勿論これを提案する人がとらなければならないのであります。皆さんは……皆さんというよりは、この十三名の日本学術会議の有志のかたはその点において重大なる責任を持つておられる。我々はこの三月にこの厚生委員会におきまして重大なる結核予防の法案を審議したのであります。私どもは責任者であります。然るに今承わつておりますると、強制接種がいかんとおつしやる。或いはそれについて考慮しなければならんとおつしやるならば責任をお感じにならなければならない。そこで私はこういうことを伺う。我々は、即ち、あなたがた学術会議のかたがたは、これを出したが、これは自分たちの意思ではなかつたのだ。これは厚生大臣が勝手にそういうことをやつたのだという工合にお考えになるのでありましようか。若しそうでありますならば、これからよく十三人の有志のかたがお考えになりまして、相談をし直して、そうしてこれに対する新らたなる処置をおとりになる意思はないか、これを伺いたい。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 寺田さん御意見ありませんか。

寺田正中慈惠医科大学教授

○証人(寺田正中君) 只今有馬さんからおつしやられましたのでありますが、これは私一個人としては何でありますので、よくおつしやられた何を酌みまして、いずれ又いろいろの問題の相談があると思いますので、それがどう行きますか、とにかくおつしやられましたことなどもよく一つ考えまして、又相談したらどうかというように私考えておるのであります。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 比企さん、御意見ございますか。

比企能達日本大学教授

○証人(比企能達君) こういうものを提案した以上、勿論責任を持たなければならないということは承知しておりますが、今すぐにはどういう責任をどういうふうにして今後どういうふうな方法を以てするかということをお答えしろということは私もすぐには考えは浮びません。責任を持つということにおいては当然のことだと思つております。それから有馬さんの、相談して又意見を発表しなくてもいいかというような御質問でありますけれども、これはまあ相談はいたしましよう。相談はいたしますけれども、必ず意見を発表するということのお約束はできません。

藤森眞治緑風会

○藤森眞治君 私は決してこの学術会議のかたがたを責めているのでもなし、又攻撃しているのでもございませんので、殊に我々はこの学術会議の会員のかたがたの選挙に当つては、どなたかに私どもの投票も入れております関係で、非常に尊敬もしております。ただここにこういう問題が起きましたということは、国民に非常に迷惑をかけた一つの大きな原因になつたということについて、直接あなたがたの耳には入りませんかも知れませんが、私どもの耳にはたくさんいろいろなことが入つて来ます。そうして結核予防対策というものに対する一つのここに大きな故障が起きたというふうにとつておりますので、これを一日も早く解決をして、そうして国民に勧めるところは勧める、又やめなければならんところはやめなければならんという態度をとらなければなりませんので、極めて私どもは慎重な意味で、決して攻撃するとかどうとかという意味じやございませんから、そういう意味で本当の御意見を出して頂きたいということを御希望申上げて置きます。

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) 大体証人のかたの御意見なり御研究のほどは御発表になられましたので、当委員会といたしましても非常に裨益するところが多かつたと存じます。只今各委員会からの希望もあり、更には又專門家の研究に待つところも多いと存じますし、学術会議におきましては然るべく万全の御処置が頂けることを希望を持つて待機しておりまするので、学術会議の皆さんがたよりより御協議下さいまして、結核対策のために絶大な御研究のほどをお願い申上げまして、甚だ失礼ではございまするが、本日の証人の証言はこれで終りたいと存じます。長い間御究研のほどを御発表頂きましたことを、この席上から厚くお礼を申上げます。  それでは委員会のかたにお諮りいたしますが、本日はこれで散会して御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

梅津錦一日本社会党

○委員長(梅津錦一君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗