法務委員会 第3号
- 発言数
- 156 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1951/10/17
会議録
○押谷委員長代理 これより会議を開きます。委員長が渡米中でありまするので、理事であります私が本日より委員長の職務を行います。 検察行政及び法務行政に関し、先日に引続きまして質疑を続行いたしたいと思います。猪俣浩三君。
○猪俣委員 前会に引続きまして法務総裁に質問を申し上げます。国会議員を含めまするところの共産党の所属党員を追放いたされましたことにつきまして、その追放の根拠はマッカーサー司令官の覚書その他昭和二十二年勅令第一号、そういうところにあると存じまするが、この十九人の追放せられましたる人たちが、この覚書の趣旨に合致したる行動があつたかないかということは、その認定はいずこでなされたのでありまするか、承りたいのであります。
○大橋国務大臣 共産党の諸君十九名の九月の初めにおきまする追放の問題でございまするが、この追放は前会申し述べましたるごとく、最高司令官の措置として行われたるものでございまして、それがいかなる理由によつて追放せられたものであるかという点は、当然最高司令官において考えられたものであります。
○猪俣委員 私の今の問いに対して総裁はお答えになつておらない。その追放の法的根拠は、最高司令官の覚書その他の法規であることは私どもも存じております。ただその追放の理由が、その法規に触れるものであるという事実の認定は、いかなる機関がなされたのであるかという質問であります。 なおこれをお尋ねいたしますることは、徳田球一氏らが追放せられましたときには、われわれの聞き及んだところによりますれば、その人間の個別的な指定が司令部からなされてやられたということを聞いておる。今回はやはわさような状態であつたのか、あるいはこちらかも日本政府がこの覚書の趣旨を体し、法規を研究した結果、さような事実がありという認定のもとになされたのであるか。最終のその決定は、それは司令官でございましよう。私はそれを聞いているのじやない。この前の徳田球一らの追放の場合と本件の場合にはいささか趣を異にした点があると考える。その違う点は、今回ば日本政府が追放の理由ありという事実を認定いたされて、そうして司令部に報告し、司令部と相談の上で追放されたとわれわれは思つておるのであります。そこでさような認定を日本政府がなされたのであるかどうであるか、その点であります。
○大橋国務大臣 もとより日本政府といたしましては、国内におきまする情報については絶えず司令部にこれを提出しております。司令部がいかなる情報に基いて認定をされるか、日本政府の提出したる情報もまた一つの資料になるだろうと思いまするが、一司令部みずからにおいてもまた何らかの方法によつて情報を得られることが多いのでございまして、われわれといたしましては最後的に認定をされたということを知つておるだけであります。
○猪俣委員 法務総裁の答弁ははなはだ私は納得行かない。本年の九月十八日当委員会におきまして梨木委員が法務総裁に質問した際に、梨木委員はかような質問をしております。「最高司令官の発した日本共産党中央委員の追放指令に基くとびうのでありますが、この認定は政府がやつたのでありますか「それとも司令部の方で認定したのでありますか、これはどういうことになるのでありますか。」という質問に対して、大橋法務総裁はかように答弁しておる。「すべて公職の追放につきましては、形式上日本政府の権限になつておりますから、実質的の認定は、日本政府がやる建前になつております。」こういうふうに言つていられる。今日の答弁とはなはだこれは矛盾しておると思う。どういうわけでかようにおかわりになつたのであるか。私はそれを確かめておるのです。この前の私に対する答弁のときには、私はこの速記を見なかつた。その後速記を調べますると、かようになつておる。そうしてこれがまた常識上当然のことだと思う。しかるに大橋法務総裁は、私の質問に対しましては、これとまるでかわつた答弁をなさつておるということは、さような答弁を二、三にされるということに対しましては、はなはだ納得が行かないのであります。これはどういう趣旨でありますか。
○大橋国務大臣 速記を見まして、私もこれは梨木委員に申し上げた答弁が間違つておると思いまして、今改めておるわけでございます。
○猪俣委員 あなたは法務総裁として当委員会に正式に発言されておる。これは間違つたと称せられるのは、いかなるところが間違つておるのであるか、なお具体的にお答え願いたい。もう一ぺん読みます。「すべて公職の追放につきましては、形式上日本政府の権限にぬつておりますから、実質的の認定は、日本政府がやる建前になつでおります。」かような答弁のどこが違つておりますか。
○大橋国務大臣 公職の追放は日本政府が形式上の権限を持つておりまするが、これは実質的には最高司令官の指示によつて行うのであります。従いまして、これについての一切の認定之心うものは、日本政府のみの認定をもつて決定せらるべきものでなく、終局的には最高司令官の認定によつてきまるべきものであります。これが本問題についての私のあらためて申し上げまするお答えでございます。
○猪俣委員 そうすると、あなたの答弁によりますると、追放の理由の認定については、日本政府の認定と最高司令官の認定と両方あつて、最終的の決定は最高司令官がやるのである、かような趣旨に承つてよろしゆうございますか。
○大橋国務大臣 この認定は常に同じになるわけでございます。
○猪俣委員 どうもはつきりしない。この追放の理由の認定の中には、日本政府の認定も含まれておりまするか、一にも二にも全部が最高司令官の認定のみでありますか、いずれでありますか。
○大橋国務大臣 終局的には最高司令官の認定によつて決定せられるのでありまするから、その中間におきまして、いかなる認定がいかなる機関によつてなされるかということは、これは実質的に意味のないことであります。最終的には最高司令官の認定にはつて決定する、それのみがこの理由として決定的なものであります。
○猪俣委員 法律的にはさようなことになりましよう。ただ政治的に考えまして、最高司令官があらゆる材料を収集し、それによつて認定するのでありまするか。最高司令官の最終認定に対しましては、日本政府の材料の提供ということが行われるものでありますか、私どもはその間の事情がよくわからない。でありまするから、その点につきまして、何もあなたの責任を追究するわけでも何でもない。事実を知りたいりでお尋ねしておるのでありまするから、その追放の理由、理由たる事実を認定いたしますについて、日本政府は一体どういう働きをするのであるかを、法律的な最終決定の責任からせずして、事実問題としてお聞かせ願いたい。日本政府は、やるとするならば、一体いかなる機関がそういう認定の資料を収集し、これを司令部と打合せするのであるか、その点のことをお聞かせ願いたいと思うのであります。
○大橋国務大臣 資料につきましては、必要なるものは特審局において提供する場合もあります。
○猪俣委員 私は、法務総裁の参議院の文部水産連合委員会においての答弁、あるいは特審局その他の政府委員の答弁と、先般私が当委員会で質問いたしましてからの答弁というものは、相当そのいろどりにおいてかわつておると思うのであります。しかしこれ以上はお互いの良識で判断すればいいのありまするから、私は質問を打切ります。 次にお尋ねいたしたいことは、今度の国会議員を含めまするとこちの共産党員の逮捕の問題であります。これは刑事訟法の示すところによりまして、逮捕には逮捕の理由を示し、そうして逮捕されたことと存ずるのでありまするが、いかなる理由で逮捕ざれたものであるかを御説明願いたいと思います。
○大橋国務大臣 逮捕につきましては、検察庁においてそれぞれ所定の手続をとつておるものと思つております。
○猪俣委員 その逮捕の理由であります。どういう理由で逮捕なさつたのであるかを御説明願いたい。
○草鹿説明員 逮捕の理由は三百二十五号違反容疑で逮捕したのであります。
○猪俣委員 そんなことは答弁にならない。三百二十五号違反の逮捕にあらずしてだれにもこんな逮捕ができるものじやない。そんなことを聞いているのじやない。どういう点が三百二十五号に違反したものであるということで逮捕したに違いない。ただ三百二十五号に違反したということでは—そういう令状が出たのでありますか、出たとすると、それは問題だと思う。
○大橋国務大臣 この問題は、ただいまなお検察庁において捜査中の事件でございますので、これ以上申し上げることはお許し願いたいと思います。
○猪俣委員 そうすると、これはまだ捜査中であるから答弁できないとおつしやるけれども、私の聞くのは、逮捕の容疑がいかなるものであるかをお尋ねしているのじやないのであります。昭和二十六年九月四日、国会議員を含めるところの多数の人たちを逮捕いたしました、監禁いたしましたその逮捕の令状は、いかなる事実を示して逮捕したものであるかを承りたい、こういう趣旨であります。今後それがどういうふうに転換するかということをお尋ねしているのじやない。既定の、もう済んでしまつた、経過した事実を聞いておる。一体どういう逮捕令状を示して逮捕したのであるかを聞いておる。なおこれまた妙な答弁をせられると私は不愉快でありますから。念のため申し上げます。刑事訴訟法二百條に、令状には犯罪事実の要旨の記載が必要だとなつておる。だからそういう令状が出たに違いない。もし刑政長官の答弁のような令状なら、それは刑事訴訟法の違反であります。憲法違反になります。その意味で聞いておるのであります。その趣旨でお答え願いたい。
○大橋国務大臣 この逮捕状の原因となりましたる事実につきましては、いまなお捜査中に属しておりまするので、この席において申し上げることを避けさせていただきたいと思います。
○猪俣委員 そうすると、くどくど申し上げるようでありまするが、九月四日の逮捕令状にどういう趣旨が書いてあつたかということをお尋ねするのでありますけれども、それを答弁すると捜査にさしつかえがあるから答弁できない、こういう趣旨でございますか。
○大橋国務大臣 逮捕状そのものに記載をいたしてありまする事柄については、先ほど大体刑政長官のお答え申し上げた通りでございます。これ以上具体的事実の点につきましては、ただいま捜査中の事件でありますので申し上げかねる、こういう趣旨でございます。
○猪俣委員 そうすると、逮捕の令状には政令三百二十五号違反ということだけ書いてあつた令状だと承つてよろしゆうございますか。
○大橋国務大臣 この問題につきましては、なお検察庁と打合せをいたしまして他の機会におきまして申し上げることをお許し願えるとたいへん仕合せと思います。
○猪俣委員 しからば私はその点は、当局のお考えもありましようから、これで打切りますけれども、とにかく国会議員を含むところの共産党員十八名の逮捕は、非常な疑惑を世間に與えておる。また特審局の態度、検察庁の態度、はなはだ不可解なものがあるのであります。その意味におきまして私どもは国民になりかわつて、公明正大な政府の態度を明らかにしたいと思いまして質問しておるのであります。人間は間違いもあるのであります。これは神様にあらざる人間のやむを得ざる宿命でありまするがゆえに、誤りは誤りとして快く明らかになさつて、国民の疑惑を解いていただきたい。しかるにもかかわらず、どうもこ問題につきましては、答弁が二、三になつておる。すでに過去において発行いたしましたる令状の記載事項さえ発表できない。これは私どもは納得行かぬ。今後捜査の都合の有無にかかわらず、これは過去の事実であります。その事実を国会において明らかにできないという話は私はないと思う。しかしそれもどうしても明らかにできないということでありまするならば、それでは私は後日に護りまするが、至急検察庁と打合せて責任ある答弁をお願いしたい。 なお九月四日に逮捕せられましたるごの四人の国会議員初めみな全部釈放に相なりた。この政令三百二十五号違反のごとき占領治下におきましては重大な犯罪であるのみならず、法務総裁の答弁のごとくその最終決定がもしそれ最高司令官がなされたものであるとするならば、逮捕せられましたる者をむやみに釈放する道理はないと思うのでありますが、どういう理由で逮捕いたしましたか。しかも四名の国会議員は九月六日には追放せられました。何万票という投票によりましてかち得ました地位を一朝にして失つておる。人権の蹂躪これほどはなはだしいものはないと考えるのでありますが、どういう理由によつて検察庁はこれを釈放なされましたか。釈放するにはその理由があつたと思う。聞くところによりますれば、検察庁においてはあかつきの四時までかかつて大いに考慮された結果釈放するに決定したと承つておりまするが、いかなる事情のもとにこの重い犯罪人か逮捕しながら釈放されたのでありまするか、その事情を承りたい。
○大橋国務大臣 私の報告を受けておりますところによりますると、釈放をいたしましたのは、満期が追つたからであると聞いております。
○猪俣委員 満期が追つたから釈放したいという答弁でありまするが、つまらない犯罪につきましても、なかなかもつて満期が来たつて釈放いたしません。これが実情であります。満期が来たから釈放した。しからばこれだけの重大犯人でも満期が来ればことごとく釈放するのであるかどうか。しかるに実際はさような取扱いをしておらぬのであります。しからば一体被告人のいかなる人物、あるいは被疑者のいかなる人物かによつて釈放したりしないだりするのであるか。満期が来れば釈放してもいいという何か事情があつたのであるかどうか。その点を私は承つておる。いかなる人間でも、満期が来ればみな釈放しておるならばこの質問は出ません。しかし大体において懲役何年というような刑罰のついておりまする犯罪に対しまして、満期が来たから釈放するなんということはほとんど例外であります。なにがゆえにこの事件についてこの人たちに例外を適用したのであるか。例外には特殊の事情があるはずであります。それを私は承つております。
○大橋国務大臣 勾留期間が満了すれば、これはたれでも釈放するのが当然であります。刑事訴訟法上、それ以上勾留を続けることはできません。当然何人であろうが、これは釈放をいたしております。
○猪俣委員 そうすると、結局勾留期間の満期になる場合に、これを起訴するだけの事情がなかつたのであるということをみずから告白された次第だろうと思う。勾留期間の満期までに起訴する事情があるならば、起訴して、あらためてそのまま拘禁しておることが実情であります。起訴することができない場合に、釈放しなければならぬことは、あなたがおつしやる通り刑事訴訟法の規定であります。しからば問題をかえて、この勾留期間が満期になるまでの間に起訴するだけの事情があつたのであるか、ないのであるか。起訴する事情があつたけれども、起訴しなかつたのであるか、どちらかをお答え願いたい。
○大橋国務大臣 先ほど来申し上げますごとく、捜査中の事件でありまするので、この点についてのお答えは申し上げかねます。
○猪俣委員 どうも東條内閣時代の大臣の答弁のような感じを私は受ける。そんなことは明らかな事実でありまするがゆえに、何も臆する必要はないのであります。正直にお答え願いたい。起訴する事情があつたのかないのか。いや二十日の満期までにはなかつたのであるが、しかしなおこれも捜査中であるから、それは最終的には断言ができないということならわかりますが、釈放のその満期までの間に、起訴する事情ができたかできないかということぐらいは答弁できなければならない。責任ある答弁をすべきものだと思うのであります。検察庁においては、首脳部があかつきにかけて相談をしたという。そうして釈放されておる。しからばいかなる事情で釈放したかは、これは以心伝心でわかりますけれども、私は責任ある御答弁を願いたい。満期までに起訴することができずして釈放するに至つた事情はいかなる点にありや。なおそれを突き進めて言いまするならば、満期になるまでの間に起訴する事情があつたのであるか、ないのであるか。起訴を維持するだけの証拠があつたのか、ないのか。それが答弁できないに至つては、まるきり答弁しないことになるのであります。そうすると、国会議員を含むこれだけの人たちを逮捕監禁し、それをまた釈放し、しかしてそれらの事情についてはほとんど釈明することができない。令状にいかなることが書いてあつたかも釈明しない。あるいはまた勾留満期のどきまでに起訴する証拠があつたのかないのかも釈明できない。さすれば、本件については一切釈明しないという御答弁とわれわれ承つて乏しいか。
○大橋国務大臣 捜査中でありまするので、申し上げる時期でない、こう申しているのであります。
○猪俣委員 かような法務府の態度でありますると、私どもは非常に憂慮おくあたわざることができて来るのであります。いやしくも行政府のやつた行動については、この国会において明らかにし、その善悪是非を国民の代表である国会の審判にゆだねるということが民事政治の根幹である。しかるに、この事案が起きてからもう幾十日たつた今日においても、一切のことを答弁なさらぬということは、裏を返すならば、行政権が、あるいは警察権が、あるいは検察権がどういうことをやつても国会は捜査中というようなことによりまして、一切答弁を忌避せられるということでは、ほんとうの民主政治は行われません。私どもは政府のかような態度に対しまして多大の疑惧を感ずる。講和問題にいたしましても、われわれ最も重大なる影響のありまするいわゆる行政協定というようなものにつきましては、一切国民に知らせない。これは運の思想的背景から出ているものだと私は思う。かような意味からいたしまして、次にお尋ねすることに対しまして、私は非常に関心を持たざるを得ないと考えるのでありまするが、それは新聞紙の伝うるところによりまするならば、いわゆるゼネスト禁止の法案を提出するやに伝えられておるのであります。そこでいわゆるゼネス下禁止法案なるものをこの臨時国会に提出する意向なりやいなやをれを承りたい。
○大橋国務大臣 ただいま猪俣君に、この事件については捜査中でありまするので、申し上げかねるということを申したのでありましてこのことは決して国会が国政を審議されることを否認しようという考えではございませんので、国会において国政を審議されると心うこともまた国政の円滑なる運営を期せられる趣旨と考えておるわけであります。かような捜査中の事件につきましては、国会におかれましても、理解ある御処置を私は希望いたしたいと存ずるのでございます。現に本件につきましては、同時に逮捕状の出ております数名の関係者はなお逃走中でございます。まつたく事件として全般に捜査中に属しておるのでございまして、この機会に申し上げることは、支障があるという理由で適当でない、こう考えておるわけでございます。決して国会の御審議の権限を拒否しようというようなりようけんに出発しておるのではないということを御了承願いたいと思いますヵ次にいわゆるゼネストに関しまする法案につきましての御質問でございましたが、この点につきましては、ただいま法務府と労働省におきまして、事務当局の間で研究をいたしておるわけでございまして、その趣旨は従来のわが国の実情から考えまして—現在におきましては、総司令官の権限によりまして、国民経済に重大な支障を與えるという現実の危険の迫りましたる場合においては、大規模な罷業に対しまして、これを制限するということも法律的に道が開かれ得る状態にあるわけでございまするが、講和條約後におきましては、かくのごとき事柄はすべて法律上の基礎を持たねばならないのでございまして、これがために、さような法律上の基礎を持つことが必要ではなかろうかという見解のもとに、この問題をただいま研究をいたしておるのであります。しかしながらこのことは決してある種の事業における、たとえば公益事業というようなものにおける罷業というものを、国民の生活に重大なる影響があるからという、それだけの理由で一般的に制限しようというような考えから出発しておるものでもありませんし、また公益事業等が経営上損失をこうむり、これがために事業の経営が不可能になる、それを予防しようとするような意図で罷業を制限しようという考えも全然ないわけであります。これはまつたくその事業が必要である。あるいは国民の生活に関係があるというだけではなくして、現実にその罷業の継続が、あるいは罷業の発生が国民経済の当蒔の実情並びに国民生活の当時の実情から見まして、経済並びに生活に対しまして回復すべからざるような打撃を與え、そのことが当然十分な公算をもつて予想をせられ、しかもこれを回避する手段としてはまつたく他にないというような場合におきまして、国民の経済並びに生活の上に差迫つておりまする回復すべからざる損害を回避する唯一の手段として、かような措置も必要ではないかという意味で考えておる次第でございます。
○猪俣委員 さきの追放及び逮捕の問題につきまして御答弁がありました捜査の御苦心に対しましては、私どもも御同情申し上げるのでありますけれども、私は国会ですべての事実が明らかになるということが民主政治の第一の要請だと考える。しかもこの問題につきましては、巷間いろいろなうわさが出ておつて、国民の疑惑になつておりまするから、事を明らかにしていただきたいという意味で質問を申し上げた。なお念のために申し上げておきますけれども、この前の共産党の徳田球一氏らの追放問題につきましても、アメリカにおける有力なる新聞紙であるクリスチャン・サイエンス・モ二ターにおきましては、その社説におきまして、かようなことを言つておる。今回の追放は、日共の政治局員が大衆の暴動を煽動したとして告発しておるが、しかし最近アメリカで共産党幹部十一名が起訴された場合のように、個々の犯行を明らかにせずないし司法上の手続をふむことをしていない。彼らが政治的に処刑されたように見えることは、共産主義者にいい口実を與えた、こういうふうに論じておるのであります。この前のときさえ、すでに外国の新聞紙がかように論じておる。今回のような場合におきましてはいかに論じておるか、まだ私は調べておりませんが、これはすでにアメリカにもイギリスにも相当の反響を起しておると聞いておるのであります。申すまでもなく昭和二十三年十二月十日、国際連合総会において可決されました世界人権宣言は、総裁もよく御存じのことだと思う。その第九條には、何人も専制的な逮捕、拘束または追放を受けないということが大きな原則となつて樹立されておる。私はかような点から見て、世界的にも日本が何らか反動性を示したような印象を與え、共産主義者には政府攻撃のいい口実を與え決してプラスではなかつたと思うのであります。この点につきましては、詳細なる具体的な答弁を後日お願いしたい。それが世界疑惑を解き、なお日本の民心を安定せしめるゆえんだと考えるのであります。 それはそれでおきまして、ただいまのゼネスト禁止の問題につきましては、まだ法務総裁の構想中であるということでありますので、ただ私がなお念を押してお聞きしたいことは、この臨時国会に提案する御意見で今構想中であるのか、そこはまだ考えておらないのであるか、その点について、もう一ぺんお伺いいたします。
○大橋国務大臣 私といたしましては、臨時国会中において提案をいたしたいという希望のもとに、研究をいたしておるのでございます。
○猪俣委員 そうすると臨時国会中に提案したい希望を持つて御研究になつておるというのでありますが、ただ、まだ構想中で閣議にもおかけになつておちないということで、その法案をわれわれは示されておりませんから、いずれ具体的法案が出ました際にお尋ねすることにいたしますけれども、質問と言おうか、希望と申しましようか、われわれが申し上げたいことは、この臨時国会に出す御意思で考えておるというそのこと自体の中に、われわれはなはだ危惧の念がひそむ。なぜならば、この法案のお手本といたしまするのは、アメリカのタフト・ハートレー法なんかじやないかと考えるのでありますが、アメリカと日本の労働組合なるものの発達の現状が非常に違う。それでありまするから、このアメリカにおきまする法案をだだちにお手本といたしまして、日本に適用するということは、これは十二歳にしかならない民主的な発達だとマツカーサ—元帥に言われたまうな日本に対しまして、日本の民主化の将来のためにゆゆしき問題を起すと思うのでありますが、それはさておきましても、このタフト・ハートレー法なるものが一体いかなる審議の過程を経て成立したか。これは一九四七年に上院におきまして公聴会を開くことに二十三回、下院におきまして公聴会を開くこと三十二回に及んでおります。もちろん公聴会を開くやいなやは国会の任務でありますから、政府の構想ではないのでございましようけれども、日本の政府はアメリカと違いまして多数党の政府であります。多数党の内閣であります。自由党と十分緊密な連絡の上で立案されることだと存じまするが、一体国会の活動といたしまして、アメリカにおきましても、これだけの愼重なる論議を盡した。上院において二十三回の公聴会を開いた、下院においては三十二回開いた。これだけの愼重なる論議を盡されましてつくつたこの法案を、ちよこちよこお手本にして、そうしてこの臨時国会、しかも大半は講和会議に費さるべきこの臨時国会におきまして、これを提案しようとお考えなさるその頭の中に、私は容易ならざるものがあると思う。これは政府のお考えとして提案なさることに対しても、われわれももちろん大いなる意見がありまするが、それはさておきましても、その心構えであります。わずか四十日のこの臨時国会に、こういつたような日本の将来をあるいは暗くしはせぬかと思われるような大法律を提出しようとお考えになるということは、基本的人権に対する、憲法二十八條に対しますところの御理解が私ははなはだ稀薄ではないかと思う。これを立案いたしまするにも、これを国会にかけなさるにも、国会を通過することを所期してお考えになつておることだと思う。いかに多数党なりといえども、この四十日のわずかなる期間、これにこういうふうな法案を提出して、多数の勢いで、押し通してしまおうとする。そういうお考え方は専制政治と何ら違わない思想の所有者じやないかと考えられる。そういうことに対する御意見を承りたい。
○大橋国務大臣 私の希望といたしましては、法案を提出いたしたいと考えておることは先ほど申し上げた通りでありまするが、提出せられましたる法案を国会においていかに愼重に御審議になるかということは、これは国会みずから決定せられるところでございまして、これを数によつて押し切るとか何とかいうことは、これは国会自体の問題でございまして、私の立場からかれこれをここでお答え申し上げる事柄ではないと思います。
○猪俣委員 これは私もお断りした通りであります。国会自体の問題である。しかしながら多数党の内閣であります。国会と日本の内閣というものは密接不離なる関連を持つておる。アメリカのごとくまつたく独立したものと違つておる。そうして総裁がこういう法案をこの国会に出そうとなさるには、通りても通らぬでもよい。とにかく慰めに出してしまおうという意味じやないのだろう。通ることを所期して御提出になるのであろうと思う。しかもあなたの属している政党が多数を占めておるこの国会であります。結局において自由党諸君の頭いかんによつてこの審議が進められることに相なると思う。そうするとあなたはこの自由党の多数を占めておる国会において、こり四十日間にこの大法律を出して通してしまおうというお考えでやつ、ているのじやないか。あなたの今の御答弁だというと、通るか通らぬか、それは国会のかつてであるが、自分はちよつと出してみるんだ。法案の国会通過を所期せずして今構想を練つておられるわけですか。
○大橋国務大臣 私は国会を通過して成立することを希望して案を検討いたしておるのであります。しかしながら国会の会期というものは、これは国会みずから決定せられるものでありまして、四十日で足りなければそれは国会みずからのことであります。私どもは別に国会において愼重審議されるのを—これは当然そうあるべきことである。そういう前提のもとに研究をいたしておるわけであります。先ほど申し上げましたるがごとく、国会の御審議は国会において御決定に相なるべき事柄でありまして、私の立場といたしまして、多数をもつて押し切れとか、あるいはどうしろというようなことを希望すべきことでもないし、またここで申し上げるべきことでもないであろう、こう存ずるのであります。
○猪俣委員 これはくどいようでありますが、私どもの希望でございます。この憲法の規定いたしまする基本的人権というものを法律において制定いたしまするということは容易ならざることであります。結局におきまして、公共の福祉という憲法の規定をその法律制定の根拠にするよりしかたがないと思うのでありまするが、これは容易ならざる大問題であります。憲法の基本的人権という思想と、公共の福祉というものをどの範囲に認めるかということは、民主国会におきましては容易ならざる大事業である。これをいとも簡單に考えるならば、それは警察国家の信奉者であります。これにつきましては最大なる研究と最大なる考慮のもとになされなければ、基本的人権なんというものは一切吹つ飛んでしまう。昔の警察国家に相なる。十八世紀時代におきまして、いわゆる国民の福祉ということを強調し、警察権が万能でありまして、歴史家はこれを福祉国家という。福祉国家というとまるで社会保障制度の完備した国家のように考えるのでありますが、まるで逆であります。公共の福祉ということをあまり強調して、あらゆる基本的人権を押えつけて、これを福祉国家、警察国家と称せられるのでありまするが、この二十世紀の日本の民主的憲法のできました今日におきまして、この憲法が保障しておりまする基本的人権を抑圧するような立法というものは、重大な考慮を拂わなければならぬと思うのであります。ことにストライキというがごときことは、憲法が保障いたしましたる人権でありまして、もともとは経済的な労資の闘争から起つておるもので、国家はどこまでも中立の立場においてその裁判するという態度でなければならない。これを一方の見方に有利のような法律をつくるということは、ゆゆしき問題であります。それはとりもなおさず反動だということに相なるのでありまして、日本の文化を逆転せしめるものである。アメリカにおきましては非常に労働組会が発達いたしまして、ワグナー法というようなものにおきまして実に労働組合が強化せられ、もともとが民主国家である上に、労働組合が非常に強大に相なつておる。そこでその弊害もありまするがために、タフト・ハートレー法なんというものができたのでありまするけれども、ここにありまするいわゆるインジャンクシヨンなるものにつきましては、自由なアメリカにおいても今紛争が起つて困つておる。こういうイソジヤンクシヨンによつて労働争議がしからば平静になるかというと、少しもなつておらぬ。ますます激化しているような実情であります。こういうことにつきまして、もちろん御配慮あることと存じますが、日本の民主化の尖端を行つておりまして、しかも凶暴なる分子は一齊に清算せられ、民主的労働組合が今中核となつて日本の産業をになつております今日におきまして、彼らを激発するようなそういう法案を今突如としておつくりになるということは、百害あつて一利なしと私は考える。ことに今の政府はわれわれから見るならば、要するに資本家、いわゆる資本主義に立脚している政府であり、ますために、労働組合とまつたく異質的な存在である。こう対立いたしました政権が、そのような法案をつくるということは賢明ではありません。ほんとうのゼネスト禁止法をつくり得るものがあるならば、それは社会党のような政党が政権を握つたときであろうと考える。こういう、異質的な存在であります。勢力によりましてそのような法案ができるということは、これは日本の民主化のためには不幸であると考えるのであります。どうぞ法務総裁はこの臨時国会に提案なさろうとして御考慮なさつておるそうでありますけれども、よくよくこれは最善の注意をなさつていただきたい。この点につきましては、いずれまた法案が出ましたときに論議をいたしまするけれども、こいねがわくはかような重大法案をこういう短期の臨時国会に提出することのないようわれわれ庶幾せざるを得ないのでありまして、心から政府の反省を促さざるを得ないのであります。 なおその次にお尋ねいたしたいことは、プレス・コードの法制化の問題でありますが、先般私がお尋ねいたしましたときは、これは団体等規正法には入れないが、いずれほかの方面で考えるというような御答弁があり、ゼネストについてもそういう御答弁があつて、こういう禁止法が今度は構想されておるのでありますが、一体プレス・コードの法制化というようなことも今御考慮中であるかどうか、そうしてそれをまた臨時国会、あるいは通常国会に提案されるつもりであるかどうか、この点についてなおあらためてお尋ねいたします。
○大橋国務大臣 プレス・カードの立法化といたしまして、現在ありまするようなプレス・コードをそのまま法律にするんではないかというような感じを受けられたる向きもあつたかと存じまするが、私がプレス・コードについて考えておりました事柄は、現在ありまするプレス・コードというものは、これはその法的基礎は政令第三百二十五号にあるわけであります。従いまして政令三百二十五号については、これをそのままの形で立法化するということはとうてい考えられませんから、自然講話條約の発効後においては、かような法規的な規律というものはなくなつて来る。しかしてこの場合においてかくのごとき法規をなお講話後に持続せしめ、あるいは何らかの形で置いておくということが必要であるかどうであるかということは、ひとつの法律の取扱いについての問題として研究すべきことであるということを考えまして、その研究をいたしておつたわけであります。そのことがプレス・コードをそのままの形で立法化するような計画があるのではないかというふうに誤り伝えられた節がありますことは、はなはだ遺憾に存じておつたところでありまするが、真意はただいま申し上げたように、その必要があるかないかということは、この機会において検討すべき一つの問題であると、こう考えたのみであります。かような考え方のもとに爾来いろいろと検討を続けて参つたのでございまするが、ただいまにおきまする研究の結果到達いたしましたる段階としての考え方を申し上げますると、現在の新聞の自由というものは、特に新聞に與えられたる自由と観念すべきものでなく、これはすなわち憲法によりまして国民各個人に與えられたる表現の自由というものを新聞が代表しておるものである。従いまして特に新聞に対しまして、国民各個人に許されたる言論出版の自由を各個人以上に制限する必要もなければ、また新聞に対して特に一般の国民に與えられたる以上の言論の自由というものがあるべきものではない。もちろん新聞を発行するにつきましての取材活動その他につきまして一般人以上に尊重せらるべきことは、これは新聞の公器たる性質から考えまして当然の事柄でありまするが、しかし言論主張の自由ということに至りましては、これは憲法において国民に許されたるところの自由を代表するものでありまするから、国民以上に制限される理由もなければ、また国民に許されたる以上の自由を與えなければならぬものでもない、こういうふうに考えておるので、ございまして、この意味におきまして、特に新聞のために特別の言論についての取締りをするということは、現在の段階において必要もないし、また適当でもない、こういうふうに今考えておるわけであります。
○猪俣委員 それではその程度にいたしておきまして、なお念のためにお尋ねいたしますることは、法務府におかれましては、特審局を増員なさる計画があるか、しかも特審局員に捜査権を持たせるような御計画があるか、それをお尋ねしたい。
○大橋国務大臣 この問題につきましてはただいま研究をいたしておりまするが、その研究の事項といたしまして、特審局の人員を増加すること、並びに特審局員に対しまして強制調査権を與える問題、これは一つの問題としてただいま研究をいたしておることは事実であります。
○猪俣委員 その特審局の強制調査権というものは、どういう範囲の御構、想でありますか承りたいのであります。
○大橋国務大臣 まだ構想という段階にまでは行つておりませんが、研究題目として取上げておりまする問題は、調査上必要なる場所、または物件につきましての捜査押収ということについての強制権を與えることはいかがなものであろうかという点でございます。
○猪俣委員 なおこの点につきましても私ども希望があるのであります。総裁も御存じの通り、終戦前の日本の状態は、いわゆる治安維持法をつくり、特高警察なるものをつくつて、そうして憲兵と警察の国家たらしめた。いかにわれわれが不幸であつたか、総裁はその当時役人であらせられたようであるから、あまり実感がないかしれませんけれども、実にわれわれは戦々きようきようきようとして生きて来た。これが終戦後占領軍の英断によりまして一刀両断にすべて廃止せられて、われわれは民主の日の光を浴びるように相なつたのでありまするが、この憲法が効力を発生いたしましてから四年数箇月しかたたない今日におきまして、何かしらまた終戦前のような空気がかもし出され、立法がなされる、そういうふうな方向に進んでいるのではないかという感じがするのであります。ことに特審局なるものが、拡充せられましてその人たちが捜査権を持つということになりまするならば、これは昔の特高警察に転化するのであります。これは容易ならざる問題でありまして、日本の性格がかわるような重大問題でありますから、どうぞ国家百年の大計をお考えになりまして思いつきでなされないように願います。そうして、風声鶴験、共産主義者あるいは共産党というようなものに対してあまりに神経過敏になり過ぎ、こいう特高網をまた張るようなことになりまするならば、知らず知らずのうちに日本は昔の反動国家に転化するのであります。これは私どもとしては極力防がなければならぬ。政府におかせられましても、いやしくも民主憲法の信念のうちに立つておられる以上は、終戦前の日本の姿というものをいい鏡といたしまして、かような特高的な存在というものを、あるいは人数を拡張したり、あるいは権限を増強したりするようなことをなさらぬように、われわれはくれぐもこれは願いいたします。かようなことがまたこの臨時国会に提案されるということは、これは非常な政府のマイナスになると私は思う。かような、ややともすれば反動化されようとする際におきまして、それに便乗するにあらずやと思われるような行動を至平公平をもつて鳴つておりまする法務府はおとりにならぬように、内閣にさような考えがありましても、法務総裁は先頭を切つてこれを押えるような役目をしていただきたいと思うのでありまするが、法務府みずからさような構想を推し進められるということは、はなはだ遺憾千万であります。プレス・コードの問題にいたしましても、特審局の問題にいたしましても、ゼネスト禁止法の問題にいたしましても、何らか運の脈絡があつて、日本の天地が暗くなるような予感が私どもはいたされまして心配にたえません。民主憲法を守つてこの国を朗らかな優秀国家として育て上げて行かねばならぬわれわれといたしましては、前途にかような暗雲がかかることのないように十二分なる御注意をしていただきたいと希望を申し上げる。まだ構想だけだというのでありますと、これは研究しなければならないでございましよう。研究するのは自由でございまするけれども、これを立法化するということは、よほど御注意あつてしかるべし。ことに総裁の属しておりまする自由党は多数党でありまするがゆえに、この内閣はことに細心の注意をしてもらいたい。この自由党を動かすならば、少くとも衆議院においてはいかなる法律でも通過する危険があるのでありますから、政府は、その点につきましてはどうぞ十二分なる御注意をしていただきたい。これは私どもの希望であります。私の本日の法務総裁に対する質問はこれをもつて打切りといたします。
○梨木委員 私は法務総裁に伺いたいのでありますが、過般のわが党の国会議員に対する公職の追放並びに逮捕勾留の問題を聞きたいと思うのであります。今猪俣委員からもお尋ねがあつたのでありますが、それに対して、九月四日の逮捕に関する容疑事実、これは捜査の秘密に属するから答えられないということでありました。九月四日に逮捕された人々は二十六日まで勾留されておるのでありますが、この勾留の理由はどういうことになつておりますか、これを伺いたいと思います。
○大橋国務大臣 勾留の理由はいまだ開示いたしておりません。
○梨木委員 勾留の理由は開示しておらないということを聞いておるのではないので、勾留の理由は、具体的にはどういうことなのかということを聞いておるのであります。開示しておらないということは私も知つております。
○大橋国務大臣 勾留は、裁判所の決定をもつてやつた事柄でありますので、裁判所において発表されれば格別でございまするが、検察庁といたしましては、なお捜査中の事件に属しまするので、この点についての御説明はいたしかねる次第でございます。
○梨木委員 勾留の理由は、要求があれば告げるということは憲法の保障するところであります。どういう理由で勾留しておるか。これは、正当の理由なくして日本人民は拘禁されないという保障の建前から、要求があれば必ずこれを公開の法廷において告げなければならないということになつておるのであります。そうして勾留状というものは、検察庁が裁判所に要求してやるのです。従つて、国会においてわれわれがこれを要求した場合に、検察庁が答えられないなどということはあり得ないじやありませんか。公開の法廷で要求があれば答弁しなければならぬ、理由を告げなければならぬことでありますよ。これは、捜査の秘密に名をかりて答えられないなどいうものでは決してありません。
○大橋国務大臣 この点は、梨木さんも御承知の通り、刑事訴訟法上の手続によつて、公開の法廷において勾留の事由は開示されることに相なつておりまして、われわれはその手続に参画いたしておりません。
○梨木委員 私は、そういう形式的なことをあなたに聞いているのではない。先ほどの猪俣委員の質問に対して、逮捕の理由は捜査の秘密に属するから答えられないとあなたはおつしやつた。しかしながら逮捕して、その後においてこれを勾留する限りは、少くとも勾留状の発付という手続がなされなければならぬ。これは、本人から要求があれば公開の法廷で告げなければならぬことである。ましてや、検察庁の検察のやり方に対して国会議員が不審を持つているのである。だからその理由を聞いているのであるが、本人から要求があれば、また利害関係人から要求があれば当然答えなければならないことを、国会の委員会においてなぜ政府は答えることができないのですか。私はそれを聞いているのです。
○大橋国務大臣 検察庁の立場といたしましては、この問題については、公開の席上においてまだお答えすべき事柄でない、かような段階であるということを私は申し上げているわけであります。訴訟法上の手続については訴訟法によつてお聞き取りをいただきたいと思います。
○梨木委員 そういうふうなへりくつを私は聞いているのではない。法務総裁が今言つていることは、少くとも明らかに国会を、無視していることです。なぜならば、非常に重大なことで、これを国会の委員会において今発表するならば捜査に非常に影響するというようなことならともかくも、すでにこれは、要求があれば公開の法廷において当然答えなければならないような事実なんです。これは捜査の秘密でも何でもありません。そういうことさえ隠してここで言わないということは、現に法務総裁の監督されているところの検察庁のやり方の中に、非常に不明朗なもの、自信のないもの、国会を納得させることができないようなもの、国民を納得させることができないようなものがあると言われても弁解の余地がありますか。
○大橋国務大臣 梨木君はよくおわかりになつていると思いまするが、勾留の理由というものは裁判所が開示すべきものでありまして。公式の要求に基きまして、裁判所が法廷において、どの程度いかなる理由を開示されるであろうかということは、第三者たるわれわれにはわからない事柄であります。それでありまするから、われわれは検察庁の立場といたしまして、公開の席告おいて、この理由を今われわれの知つている範囲において申し上げることは、捜査上に支障がある。従つて私どもの立場としては、申し上げたくないということを申しておる。裁判所は、聞かれれば答えなければならないじやないか、こう言つておられます。それは訴訟法上当然であります。しかし裁判所がどの程度において、一どういうお答えをなさるかということは、これは裁判所でなければわからないのでありまして、われわれは、なるべくその理由が示されないということが捜査土の便宜である、こう思いまするので、これ以上は道をもつて御要求になることをお勧めいたします。
○梨木委員 そういう形式論理じやないんです。実質的なことを聞いているのです。よろしいですか、それじや裁判所ではどのようポ程度のことを発表なさるか、それは裁判所のやることだといわれますが、しかし常識的にお考えになつたつて裁判所において、公開の法廷で勾留の理由を告げる、それには少くとも、あなたはこういう嫌疑で勾留状が出ております、しかもこれは、あるいは逃亡とか、あるいは証拠隠滅のおそれがある、このことだけは最低限度発表しなければならぬことであります。こういう段階にすでに到達しているのです。それをあなたはお隠しになる。だからここで御発表なされないというところに、私は非常な遺憾な点を感ずるのでありますが、しかし私はこれ以上御発表なされないとおつしやるのですから、追究はこの程度にいたします。 しからばその次に伺います。あなたは捜査中だとおつしやる。しかしながらすでにこの逮捕状に書かれたところの容疑事実というもについては、検察当局はすでに捜査を打切つているじやありませんか。十月二日の朝日新聞によりますと、あなた方が九月四日に逮捕したところのいわゆる共産党の幹部と称せられるところの人々に対して、共産党の臨時中央指導部員という嫌疑で逮捕されたが、このことについて確証がないということで、公式に届出のありた椎野悦朗君、河田賢治君、鈴木市藏君、杉本文雄君、輪田一造君の五氏を除いて、その他の人々については、これは釈放したところの細川氏らと同様に追究を打切ることになつたということで、逮捕状の切りかえさえもやつておらないということが出ているじやありませんか。すでに捜査を打切つておいて、なぜここで発表することができないのです。
○大橋国務大臣 まず梨木君にもう少しお話しないとおわかり願えないかもわかりませんが、訴訟法によりまして開示をいたしまするのは、これは勾留を決定いたしましたる裁判所におきまするその裁判の理由なのであります。検察庁においていかなる理由によつて、勾留を請求したかということは発表すべき限りのものではございません。それはただ裁判所が勾留の決定をいたしましたる理由として、裁判所自体が認識をいたしておりまする限りにおいてのみ、裁判所によつて開示せられるべきものなのであります。これにつきまして、検察庁が捜査上必要ありと認めまして、その理由の説明をしないということは、これは十分にあり得ることなのでございまして、これは訴訟法上また他の法令上当然そうなつておるというわけでございます。この点をまず第一に御承知を願つておきたいと思います。 次に、問題となつておりまする事件について、検察庁において捜査を打切つておる、こう断定をしておられまするが、さような報告は、私受けておりません。いまなお捜査を継続いたしておるという報告を受取つております。
○梨木委員 それではこの新聞の記事はうそだとおつしやるのですか。十月二日の朝日新聞によりますと、「最高検では、さきに証拠不十分として九月四日逮捕の細川嘉六氏以下日共幹部六人を一せい釈放したが、椎野悦朗氏以下逃亡組十人の逮捕状の有効期限(一カ月)が一日で切れるので、ここ数日、東京高検、同地検などの意見を求め検討した結果、捜査の重点を日共臨時中央指導部員として正式に公然と届出ている椎野悦朗、河田賢治、鈴木市藏、杉本文雄、輪田一造の五氏にとどめることとし、その地位の不明確である保坂浩明、西沢隆二、岡田文吉、岩本巌、木村三郎五氏についてはさきに釈放された細川氏らと同様、一応追及を打切る方針を決定、一日東京地検で直ちにその手続をとつた。」こういう詳しいものが出ているのです。さらに十月七日の毎日新聞によりますと、その後捜査を打切つた分については、今度は団体等規正令の追放令違反ですか、これで追究することになつた、こういう詳しいことが出ている、これはうそですか。
○大橋国務大臣 私の申し上げたことと違つておるところはうそであります。
○梨木委員 あなたは発表なさらないとおつしるから、それでは私から具体的に事実をあげて聞きます。この九月四日の日本共産党員十九名に対する逮捕並びに勾留の容疑事実というのは、これらの被疑者が岩本共党臨時中央指導部の構成員であるが、他の同部構成員らと共謀の上、昭和二十六年七月中旬ごろより同下旬ごろまでの間、東京都内において連合国占領軍に対して反抗反対し、かつ連合国に対する虚偽または破壊的批判を記載した—それから五つの文書を掲げておりまして、この五つの文書をそれぞれ多数作成の上、同月下旬ごろこれら文書を日本共産党鳥取県委員会その他同党全国各機関にそれぞれ配布し、もつて団体等規正令第二條第一号、第三條、占領目的阻害行為処罰令第一條に違反する行為をなしたるものである、こういうようにわれわれの調査したところによると事実が判明しておるのでありますが、これは事実と違いますか。
○大橋国務大臣 捜査中の事件でございますから何とも申上げかねます。
○梨木委員 あなたは捜査中といいますが、それでは聞きましよう。私は佐藤検事総長一に会つているのであります。そうして今度の捜査の目的、それから二十六日、逮捕したうちの八名を釈放するに至つたいきさつを私は詳しく聞いたのでございます。それによりますと、逮捕並びに勾留したものの、この容疑事実を裏づけるほどの証拠がないので、釈放したのであると、はつきり答えているのであります。これは事実と違いますか。
○大橋国務大臣 捜査中の事件でございまして、何とも申し上げかねます。
○梨木委員 捜査中と言われるが、これを釈放しているじやありませんか。釈放して捜査しているのですか。釈放するということは、その程度において捜査の必要がなくなつたということと理解するのはわれわれの常識でありますが、それはどうなんです。
○大橋国務大臣 それは梨木君の常識が少し足りないことを物語つているのであります。
○梨木委員 それでは釈放した理由というのは、起訴するに足る証拠がなくて釈放したというのは間違いなんですか。これは事実と違うとおつしやるのですか。
○大橋国務大臣 釈放するのは証拠があるとかないとかいうのではありませんで、期限が来たから釈放したのであります。
○梨木委員 それでは八名のうちの二名はまだ勾留しておりますよ。期限が来ておるのですよ。期限が来ておつてまだ勾留しておるというのは、これはどういうわけなのです。
○大橋国務大臣 二名だけ起訴されておるということを聞いております。
○梨木委員 それでは釈放した六名はどうしたのです。起訴したのですか、起訴しないのですか。
○大橋国務大臣 まだ捜査中であつて、起訴に至つておらないということを聞いております。
○梨木委員 一応逮捕しておきながら釈放するというようなこと、それでまだこれから起訴するとおつしやるのですか。それじや何のために逮捕したのです。
○大橋国務大臣 捜査上の必要によつて逮捕いたしたのであります。
○梨木委員 捜査上の必要ということはどういうことなのです。調べるためでしよう。調べが全部済んだのでしよう、それで釈放したのでしよう、どうですか。
○大橋国務大臣 勾留期間中における調べは、一応時間の満了によつて終つておりまするが、この事件についての捜査というものは、全体としてはまだ終つておりません。ことに、同時に逮捕状の出ておりましたる数名は今なお逃走中でありまして事件の全貌をこの際において明らかにする段階になつておりません。
○梨木委員 それではもう一点その点を聞きましよう。とにかく、それなら検事総長は、釈放したのは逮捕の理由を裏づけるだけの証拠がないので釈放したのであると、こうわれわれに答えておる。ところがあなたはそうではなくて、期限が来たから釈放したと、こうおつしやるのですね。
○大橋国務大臣 その通り。
○梨木委員 だから検事総長の言うことと違うと了解してよろしいのですか。
○大橋国務大臣 検事総長が何を言つたか、私は聞いておりませんから存じませんが、私は、これは期限が来たから釈放したというふうに聞いております。
○梨木委員 それではその次に伺いましよう。追放した具体的な理由というのは具体的な理由ですよ、具体的な理由というのは、どういうことなのでありますか。
○大橋国務大臣 司令部の最終決定が具体的な理由であります。
○梨木委員 そういう司令部の最終的な決定ということを聞いておるのではありません。それではこう聞きましよう。前に共産党の中央委員二十四名、徳田球一氏を含む二十四名が追放されたときには、これは連合軍最高司令官が個々に名前を指定して、しかもその理由をあげて書簡というものが出されて、これに基いて追放しておるのであります。このたびの追放というものは、十九名に対して同じような書簡というものが出ておるのでありますか、どうでありますか。
○大橋国務大臣 書簡は特別に出た次第はございません。書簡としては出ておりません。
○梨木委員 それでは、その次に伺いますが、新聞アカハタの幹部、これも書簡によつて追放されておるのです。具体的な個々の名前をあげて追放という処分になつておるのでありますが、その後、衆議院議員の谷口善太郎君がやはり追放処分になつておるのであります。この谷口善太郎君のときの追放処置、これにつきましては、連合軍最高司令官から、具体的に谷口善太郎君を公職追放にせよという指令というものや、書簡というようなものが出た事実があるのかどうかをお聞きいたします。
○大橋国務大臣 書簡の形では何も出ておりません。
○梨木委員 そうすると、今度の十九名についても書簡というものが出ておらない、こう今はつきりおつしやつたわけですが、それでは何ら連合軍最高司令官の指令に基いてこの処置をやつたということの、具体的なわれわれを納得させるところの証明がないではありませんか。これはどういうことになるのですか。
○大橋国務大臣 これは、指令に基きましてやつたという事実以外には申し上げられません。
○梨木委員 今あなたは書簡というようなものは出ておりませんとおしやつた。私は書簡という言葉を使つたが、指令と言つても同じであります。指令というものが出ておらないとあなたはおつしやつたではありませんか。にもかかわらず指令に基いたということはどういうことなんですか。
○大橋国務大臣 よく聞いてもらわなくては困るので、私はあなたが書簡が出たかと聞いたから、書簡は出ないと言つた。指令とか何とかということはまだあなたは聞いておらない。聞くならばこれから聞きなさい。
○梨木委員 それではそういうぐあいにしましよう。大体あなたは妙なことを言われますけれども、書簡とか、指令とか、要求とか、いろいろ書案表現されておるのであります。それでは私はこういうぐあいに聞きましよう。今度の九月六日の共産党員に対する公職追放については、連合軍最高司令官の指令というものが出ておるのかどうかというように伺います。
○大橋国務大臣 指令は出ております。
○梨木委員 その指令は何年何月何日、だれの名前でどこえ出されたんでありますか。
○大橋国務大臣 これは書面の形でなく、関係官の口頭の指示によつて與えられております。
○梨木委員 そうすると関係官というのは、司令部の方では何という方でどういう地位にあるお方です。日本政府に対してはだれに向つて出された指令であるかを具体的に御説明を願いたい
○大橋国務大臣 法的に申し上げますと、昨年六月の指令を根拠といたしまして、その後は個々の指示によつて指令が出されておるという形になつております。
○梨木委員 昨年六月六日の指令というのはどういう指令でありますか。
○大橋国務大臣 これは昨年六月六日の書面の中にありまするところの、手紙そのものの指令であります。
○梨木委員 あなたは今私を攻撃された言葉をすぐまた引用されておるではありませんか。昨年の書簡でしよう、これはあなたは指令と解釈しておるでしよう、しかもこの昨年六月六日の書簡すなわち指令、これは日本共産党の中央委員二十四名を追放せよという日本政府に対する書簡ではありませんか。
○大橋国務大臣 その通りでありまして、その中には、これと同様のものがあつたならば追放しなければならないという意味をも十分に含められた指令であります。
○梨木委員 そういう意味が含まれておるということはだれがそういうぐあいに認定しておるのですか。
○大橋国務大臣 これは最高司令官の指令でございまして、最高司令官の指令はいかなる意味を含んでおるかということは、最高司令官が最終的に決定せられるものであります。
○梨木委員 それくらいのことは私も知つております。一体その解釈はいつどういうぐあいに解釈が確定したのでありますか。
○大橋国務大臣 当初からその通り確定いたしております。
○梨木委員 当初からそういうように確定しておるならば、その後に出されたところのアカハタの幹部の追放については、別の書簡が出されておるではありませんか。
○大橋国務大臣 このアカハタの幹部の書簡と中央委員の書簡は、中をごらんになると書き方が違つておりますので、これは違うものですから、違う理由ができて違つた手紙になつておる。その後の谷口君であるとか、あるいは今回の諸君、これらは六月六日の書簡の趣旨によつて措置されておるわけであります。
○梨木委員 どうもごまかしが多いので、私たちの過去のいろいろこういうやり方についての経験から申しますと、この連合軍最高司令官の指令の解釈について日本政府が疑義を持つておる場合には、必ずこれを司令都側と打合せをしておるのであります。私はこの昨年の六月六日分指令を読みますならば、そういうように、この指令によつて無制限に、その後続々と日本共産党の中央委員を追放できるというようなことは、日本語的にこれを理解するならば、解釈できないのであります。しかしあなた方は、そういうぐあいに司令部が解釈したということについて、おそらく何か問合せをしておるだろうと思いますが、その解釈がきまつたのはいつのことでありますか。
○大橋国務大臣 これは、書簡の出た当時からきまつておるわけであります。
○梨木委員 書簡の出た当時からきまつておるというが、この書簡ではどうしてそういうふうに理解できるのですか、それを指示してください。
○大橋国務大臣 最高司令官が何ゆえにこの書簡をさような指令として解釈しておられまするかは、これは私の方から申し上げる事柄でないのであります。これは最高司令官の解釈であります。
○梨木委員 この六月六日の書簡によりますならば、これをこのまま読みますならば、当時の共産党中央委員徳田球一らを含む二十四名しか追放できない指令だと、われわれは日本語的に解釈するならば、これだけではそう解釈せざるを得ない。それを当時からあなたは、その後続々とこの指令で追放できるという御解釈ならば、どの文章、どこのどの字句によつてそういうふうに解釈できるのか。これは少くともこういうような国会議員を追放にするような重要な措置をなすについての法的な根拠を国民に納得させなければならないと私は思うのです。私は、これでは納得できないのであります。だから親切に、この書簡のどの文章によつて、そのように理解できるということを御説明願いたいのであります。これは政府としても、その説明をする義務があると私は考える。
○大橋国務大臣 最高司令官の指令の解釈を最高司令官から伺つて参りまして、それがどういう理由でそうなるかということは、私どもは別に聞いておりません。
○梨木委員 しかしあなたはそういうことを言われますが、指令についていろいろ疑義がある場合には、常に日本政府はいろいろな問合せをしておるのではありませんか。事実しておるのであります。そんな事実はないとおつしやるのですか。
○大橋国務大臣 われわれの方では司令官の解釈をその通り申し上げております。これはたびたび司令部に行つて打合せをいたしておりまして、この司会部の解釈というものは、われわれの理解しておるところとまつたく同じである、こういうことを確かめておりまするが、この指令のうちには、スキヤツピン五百四十八号に違反したものについては、同じく五百五十号によつて追放すべきものである。こういう趣旨があるわけでございます。この点からさような解釈が出ておることと存じておるのであります。
○梨木委員 とにかく昨年六月六日のマッカーサー元帥の指令というものは、はつきりここには、ここに私は貴下の政府に対し、日本共産党中央委員会を構成する左記二十四名の全員を公職から追放し一九四六年一月四日に公布した—今あなたのおつしやるスキヤツピン五百四十八号、五百五十号ですか、この禁止及び制限、責任條項及び同指令施行規定に従わせるために必要な行政措置をとることを命ずるとありまして、はつきりと二十四名というものの名前を指名して来ておるのであります。これ以外の者は、どうしてこの書簡で公職追放にすることができるのですか。あなたが今出されたスキヤツピソ五百四十八号あるいは五百五十号というのは、団体等規正令や、あるいは好ましくない者の公職からの追放の、あの勅令第一号の基礎になつている指令だというだけにすぎないのでありましてこのマツカーサー元帥の書簡によりますならば、この二十四名は追放上なさい、それをやるについてはスキヤツピン五百四十八号、五百五十号に基いてやるのだ、こういつているだけにすぎないのであります。違いますか。
○大橋国務大臣 それは違います。
○梨木委員 違うといつて、どう違うのかを説明しなければ私の方はわからない。どう違うのか。
○大橋国務大臣 最高司令官の指令でありまして、最高司令官の指令は、最高司令官のみが解釈権を持つておるものであります。その解釈に従つてわれわれは解釈をいたしておるのであります。それによれば、明らかにあなたの今の御解釈は違つておるから、違うと申し上げたわけであります。
○梨木委員 私どもは日本人としてこの書簡を見るならば、はつきりとこの左記二十四名を公職追放しろとだけしかないのですよ。これ以外の者をどうして追放できるのですか。
○大橋国務大臣 あなたがいくら日本人としてそれをごらんになりましようとも、この指令というものは、日本人だろうが、何だろうが、その人種に限つてどうこうというのでないので、これは最高司令官の指令でありますから、これは人種のいかんにかかわらず、その該当の人に対しては、平等に適用せらるべきものである、そういう意味におきまして、いくらあなたが言い張られましても、最高司令官の解釈は解釈である、こう言う以外にないのであります。
○梨木委員 私があなたに聞きたいのは左記二十四名とここにあるのですが、二十四名とだけしか書いてない、そしで名前が列挙してあるのです。これをその他の人々、今度追放した十九名がこの書簡によつて追放できるとあなたが説明なさるから、どうしてもこれはそういうぐあいにわれわれは解釈できないということを聞いておるのです。いくら最高司令官といつても、これは日本政府に対する指令でありますから、そしてそれが日本人に対して、具体的に、基本的な人権が大きな制限を受ける措置でありますから、従つてあなたはこの二十四名を追放にしろという指令によつて、これをしようとする場合には、どうしても、これでは、通常の日本人は納得できません。従つてあなたは、日本政府といたしましては、どうしてもこれではやりにくいのだが、一体どういうことになるのですかと聞く必要があります。あなたはこれを聞きましたか、聞かない以上は、日本人民を納得させることができないじやありませんか。これは單に私の方の共産党の国会議員に対する、ことでありますから、特に熱心なように聞えるかもしれませんが、しかしこれは一朝立場をかえれば、すべての国会議員に対する基本的な人権を侵害する問題にも関連しておるのでありますが、そういうずさんな解釈で一々国会議員を追放することができるという解釈を日本政府はとつておるのですか。重大問題でありますよ。
○大橋国務大臣 すべての国会議員がそういう指令に該当するような行動をされるということは、これはあなたがかりにそういわれたことで、われわれはそういうことは全然考えておりません。
○押谷委員長代理 梨木君、質問はゆつくりやつてもらつてけつこうですが、同じことを難しく聞くの時間も空費しますから、御注意していただきたいと思います。
○梨木委員 委員長の忠告はよくわかりますが、しかし私がなぜ同じことを繰返し質問しなければならないかと申しまするならば、どうも政府の説明が、私の納得を得させるようなものでないので、そういうことになるのですから御了承願いたいと思いますが、なるべくそういうことのないようにいたします。しかし私はこの点につきましてはどうしても政府の説明が納得できませんから、これはもつとゆつくり今度は速記録を十分検討いたしまして、この問題についての質問は留保しておきます。 さらに次に進みます。あなたは先ほど公職追放の具体的な理由というものは最高司令官の指令だとこうおつしやる。その具体的な内容はこれこれと—この六月六日の指令におきましてもいろいろな具体的な説明がある程度なされております。今度の場合でも私はそれがなければまつたく納得できないのであります。しかしこれはどうしても日本政府として説明することをなされないおつもりなのですか。つまり、連合軍最高司令官が十九名を追放にされた。しかしそれは司令官がなさつたことである、こうおつしやるが、しかしながら日本政府がやはり材料を提供する行為と相まつてこういうような決定というものは出て来ると思うのでありますが、日本政府が材料を提供していることについては、どういうようにお認めになるのでありますか。
○大橋国務大臣 材料は、何か日本政府から提供しただろう、こう言われるのでありますが、共産党のこれらの諸君の活動につきましての材料は、平素からいろいろ提供いたしております。
○梨木委員 その政府が提供した材料に基いて、連合軍最高司令官が今度の公職追放処分の指令をされたというように理解してよるしいですか。
○大橋国務大臣 どういう材料によつて決定されたかは、われわれは承知いたしておりません。
○梨木委員 今度の逮捕状の出た十九名というものは、日本共産党の臨時中央指導部員だということで公職追放にされたという事実はお認めになりますか。
○大橋国務大臣 公職追放の理由は、ただいま申し上げる段階でございません。
○梨木委員 なぜそういうかたいことをおつしやるのですか。これは非常に大事なことですよ。一体共産党の国会議員がどういう理由で公職追放されたかということは、それをされた国会議員、その政党の問題であるだけではなくして、この人たちを選挙した全人民の問題であります。従つてこれを説明しないで、切捨てごめんのような、そういう乱暴な処置をとるということは、少くともポツダム宣言、並びにこれに基いてこの日本の占領をやつておるところの連合軍最高司令部としても、さような非民主的なことがあり得ようとは考えないのでありますが、これを御説明なさらないというのは、説明してはいけないというような、連合軍最高司令部の命令でも出ているのですか。
○大橋国務大臣 説明することは適当でないと思うからであります。
○梨木委員 なぜ説明することが適当でないのですか。われわれの民主主義的な考え方から申しますならば、説明することこそが民主的ではありませんか。どうですか
○大橋国務大臣 ただいま説明いたすべき段階でない、こう思つております。
○梨木委員 ただいまは説明すべき段階でないとおつしやるのですね。いつになつたら説明できるのですか。
○大橋国務大臣 説明することのできるときには、むろん説明申し上げます。
○梨木委員 それでは、過失において説明なすつたのは、これはどういうことになるのですか。
○大橋国務大臣 御質問の意味がよくわかりません。
○梨木委員 あなたは今説明すべき段階でないとおつしやつた。これは衆議院の法務委員会ですよ。あなたは政府を代表して責任ある答弁をしておられるはずですよ。ところが、参議院の文部、水産連合委員会におきまして—これは九月の六日であります。ここでは、こういうようなことを、あなた並びにあなたの部下が説明されておるのであります。岩間正男君の質問に対して、国務大臣大橋武夫君ということで、あなたが答弁されております。「ちよつと追放の理由につきまして、さらに具体的に特審局次長から御説明をいたさせます。」こうして、説明さしておる。 「説明員(吉橋敏雄君)只今の御質問の点につきまして、追放理由について御説明申上げます。追放理由につきましては次のような理由に基いております。 日本共産党臨時中央指導部全員は昭和二十五年六月六日、同党中央委員らが連合国軍最高司令官より内閣総理大臣宛書簡により公職追放指定を受けた後同党の最高指導機関を構成し、現実に党活動の最高指導をなしつつ今日に至つているが、彼らの行動は、右中央委員らが追放指定された事由等をいささかも反省することなく、却つて法令に基く権威に反抗し、しばしば占領軍に反抗反対し、及び虚偽煽動的又は暴力主義的傾向を助長、正当化する言動に出でたものと認められる。政府は日本共産党の臨時中央指導部全員十九名に対し、覚書第五百四十八号、第五百五十号及び一九五〇年六月六日付書簡の趣旨を実施するため、右覚書第五百五十号に基く昭和二十二年勅令第一号により、本日公職より追放指定の措置をとつたものである。人名は先ほど大橋法務総裁から御説明願つております。」こう言つているじやありませんか。あなたは前にはこういうふうにちやんと説明させておきながら、今日になりましてその説明ができないというようなことは、明らかにあなた方のとつた公職追放の措置というものは非常に根拠のないものであるということが、今日明白になつて来たために、責任を回避するためにそのように答弁を二重に害せられているのではありませんか。この点はあなたはどうお考えになるのですが。
○大橋国務大臣 公職追放は最高司令官の指令に基いてなされる措置でございます。これにつきまして、ただいまの段階において、日本政府の立場においてその理由を説明するということは適当でない、こう考えているからであります。
○押谷委員長代理 梨木君、同じ問題で見解の相違があつて、どこまでも平行線で行く場合に、議論をせられることは、時間をとりますから、次々と先へ問題を進めてくださいませんか。
○梨木委員 もうちよつと。—ところが、私はせめてこの程度の説明でも聞かれるものと思つて聞いたところが、それはできないとおつしやりながら、前にはこういう説明をしているじやありませんか。この説明はあなたはうそだとおつしやるのですか。これは違うとおつしやるのですか。これはお認めになるのですか。どちらですか。
○大橋国務大臣 当時説明員をして説明させたのでございますが、後に私速記録によりまして調査をいたしましたところ、この説明は必ずしも当を得ておらぬ、こう考えまして、現在においては説明を申し上げる段階ではない、こう考えて、ただいまは申し上げておらぬわけであります。
○梨木委員 あなたはこの吉橋敏雄君が説明するときには同席されておる。同席されて、間違つた報告を国会議員に対してやつているのに、その場においてなぜその間違つている説明を訂正されなかつたのですか。
○大橋国務大臣 後に調査いたしましたところ明らかになつたからであります。
○梨木委員 それでは私が今説明を求めたときに、前に参議院においてこういう説明をさせたが、あれは間違いであるということを、なぜわれわれに一言この点について訂正をされないのでありますか。
○大橋国務大臣 今お聞きになりましたから、訂正をいたしておきます。
○梨木委員 それでは、国会議員に対してこういう間違つた報告をした吉橋敏雄君に対して、何か処分されましたか。これは重大な過失でありますよ。どういう御処置をなされたのですか。
○大橋国務大臣 注意を與えておきました。
○梨木委員 それでは、この参議院の説明はどの点がどういうように間違つているかをひとつ御指示を願いたい。
○大橋国務大臣 それはただいま申し上げる段階ではないわけで、それを申し上げれば、今言つたと同じことになります。
○梨木委員 それでは、きようはこの程度にしておきます。この速記録をよく検討じて、さらに質問を続行いたします。
○押谷委員長代理 それでは本日はこの程度にいたしまして、明日午後一時より開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時九分散会