平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第4号
- 発言数
- 254 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1951/10/19
会議録
○田中委員長 これより会議を開きます。 この際お諮りいたします。理事の田嶋好文君から、理事を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長 御異議がないものと認めます。よつてさよう決定いたしました。なお田嶋君の辞任による理事の補欠は、前の選任の例にならい、委員長において指名するに御異議ありませんか。 (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長 御異議ないものと認めまして、並木芳雄君を理事に指名いたします。
○田中委員長 昨日に引続き質疑を継続いたします。塚田十一郎君。
○塚田委員 私は、両條約をめぐります財政経議のいろいろな問題について、少しお尋ねをいたしたいと考えておるわけであります。 初めに、本條約ができ上るまでに、予備折衝の段階から、最後にサンフランシスコにおける調印に至るまで、甚大なるお骨折りを煩わしました総理初め全権団に、厚く御礼を申し上げます。この條約を、初め何という気なしに読んでおりますときには、これは大したことはない、これは和解と平和の條約というこ芸、なるほどわれわれの立場を十分に考えていただいた條約だというように、非常に楽な気持で読んだのでありますが、だんだんよく読んで、世間のいろいろなうわさ、諸外国の本條約についてのいろいろな輿論、それからまた、過般の桑港会議におきましての各国全権の発言なんかを聞いておりますと、だんだんこれはたいへんな條約だ、こういうようなに感じられるようになるのであります。そこで、どうして初めに読んだときに決したことがないというように感じられたのかということを考えてみますと、どうもこの條約には大事な点がみんな書いてない。大事な点はほとんどみんなあとまわしになつている、こういうことにどうもあるらしいのであります。たとえば領土の問題は、ある程度最終的な結末をもつて書いてありますけれども、賠償の問題は大体の原則が書いてあるが、あとはこれから交渉するのだ。また通商條約なんかにいたしましても、これからやるのだ、漁業に関してもこれから話合いをしなければならぬのだというように、大事な問題がみんなあとに残されてあるわけであります。従つで、これはどうも條約としては未完成の條約だ、こういうように感じられるわけであります。未完成の條約だから、條約だけを見ていると何ということなしにこれは大したことはないのだ、こういうふうに感じられるのでありますが、さてそれでは不安がないのかというと、非常にある。そこでこの條約を、国民の立場に立ちまして承認すべきものであるということがほんとうに私どもにも確信を持つてのみ込めますまでには、これはいろいろな点において歳庭務丁寧な御答弁をいただかなければならぬのじやないか、こういうように考えておるわけであります。ところが本国会が始まりましてから昨日の委員会までの政府側の御答弁を伺いましても、私どもがほんとうに安心のできるような御答弁がなかなか得られないという点も多々あるように思うのであります。もちろん事柄の性質上、明確な御答弁の得られない問題も多いのだと私どもは了解はいたしておりますけれども、この未完成な條約の持つておる不安な面を、この答押までがまた未完成で終つてしまうというようなことのないように、ひとつ初めにぜひともお願い申し上げておきたい。條約が未完成の上に答弁が未完成であつて、審議が結局未完成にいつまでも完成しないと、これはなかなか国会を通らないというような結果になる、こういうように考えられますので、事柄の性質上、公にできない問題はやむを得ませんけれども、できます範囲は率直にお聞かせ願いたいと、こういうように考えるわけであります。 そこでこの條約に対しての国民の間の率直な気持というものをいろいろ探つてみますと、国民はこういうことを考えておると思うのであります。たいへんな條約ができた―あるいはたいへんということも気がついておらないかもしれないけれども―こういうような條約をわれわれが承認した場合に、一体われわれの国内の生活がどういうようになるのだろうか。もつと具体的に申し上げますならば、税金が高くてなかなか食つて行けないような状態になつておるのだが、これから先税金が安くなるのだろうか、あるいは安くならないのだろうか、もつと重くなるのだろうかというようなことを、国民が実は真剣に考えておるのであります。過日国会に御提案になりました二十六年度の補正予算を見ましても、当初予算と合せて、日本の予算は八千億近いところまで行つておる。そうすると、この予算の上にさらに両條約をめぐつて新しく出て来ると考えられるいろいろな国の必要というものを考えますと、来年の予算は八千五百億はおろか、九千億くらいになるのじやないだろうか。そこで税金は一体どういうぐあいになるだろうかと、こういうように考えるわけであります。そこでまず大蔵大臣にお尋ねしたいのは、一体二十七年度の予算というものはどれくらいのわくになつておるのか。この点について大蔵大臣の腹づもりをひとつお聞かせ願いたい。
○池田国務大臣 今年度の補正予算を編成いたしますにあたりまして、大体従来のやり方と同じように、明年度の予算の輪郭をも考えてやつておるのであります。それは本年度所得税等の減税、また法人税の若干の引上げを行いました。それが来年度において続けて実行できないとすれば、今年度の減税に影響いたしますが、来年度の財政の規模その他につきましても、大体考慮をめぐらして編成いたしております。従いまして今日財政演説で申し上げるつもりでおりますが、今年度の四百五十億円の減税を含む租税の調整は、来年度も続けて参るつもりであります。しかして来年度におきましては、今の日本経済の進展の状況から申しまして、国民所得はある程度増加を見込んでおります。従つて来年度におきましては、大体所得税におきまして千億円程度減税になり、法人税その他砂糖の引上げを考えておりますが、この増税と差引きまして大体八百億円程度の減税が行われると見込んでおるのであります。こういう場合におきまして、来年度の一般会計の財政規模がどれくらいになるかということにつきましては、私はできるだけ行政整理、その他政府の仕事を簡素にいたしまして、片一方では平和條約後起こりますいろいろな負担を考慮に入れまして、大体昭和二十六年度の補正を含みまする七千九百三十七億円、すなわち八千億円程度の規模と大差のない程度にとどめ得る見込みを持つております。
○塚田委員 大体明年度も八千億程度の予算で押えていただけるということで、まことにありがたいと考えるわけであります。 そこで次にお尋ねいたしたいのは、減税の、ことに直接国民の負担に影響して参りますところの所得税、それから資本蓄積に非常に微妙に影響して参るところの法人税、そういうものに対する税制の改革や減税の考え方というものは、今度のこの臨時国会にお出しになる以外に、来るべき通常国会に、さらにその上に何がしかを減税するというようなお考えはおありにならないかどうか。
○池田国務大臣 大体の構想につきましては、本国会で御審議を願いまする所得税の軽減、法人税の若干の引上げを続けて行くつもりでございますが、今回提案いたしておりまする所得税法の改正により、いわゆる変動所得につきましては、退職所得の大幅減税にとどめております。しかし資本の蓄積その他のことを考えますと、国民貯蓄の免税の預金限度の引上げ等は今折衝中でございまして、今国会に間に合うか間に合わないかわかりませんが、平和條約後の日本の経済を一層推し進めて行くために、税法上ある程度の考慮を加える点がなきにしもあらずで、こういう問題は今後検討して、次の通常国会に提案する見込みでございます。また所得税におきましても、他の税法との関係におきまして、税率その他で改正を加えなければならない必要が起つて来る場合も想像されるのでありますが、原則といたしまして、今の考え方で進んで行きたいと思います。
○塚田委員 それで大体了承できたのでありますが、同じような問題を重ねてお尋ねするようで、まことにしつこいようで恐縮でありますが、これは国民がほんとうにそのように考えて、また関心を持つておると思いますので、お伺いしたいと思うのであります。講和ができまして新しく国民負担がいろいろかかつて参る。その場合に減税の方針は大体今度がおもだつたもので、来る通常国会には大したものはないように今の御説明でうかがえるのであります。その程度の国民負担というもので、この條約をめぐるいろいろな負担というものが処理して行けるのだ、こういうようにお考えになつておるように私は拝聴したのでありますが、その点をひとつはつきりと御表現願いたいのと、それからついでにいま一点お伺いいたしたいのは、一応税制はその程度で、従つて名目的な意味の国民負担はこの程度で押えておくといたしまして、日本の経済の過去のいろいろな動き、それから、これから見通される将来の状態なんかを考えましても、政府はどういうようにお考えになつておるかは知りませんが、どうも物価がだんだんと上つて行く。従つてまた賃金も上げなければならない。公務員の給与もときどき上げて行かなければならないというような状態になつて、つまり経済界に変動が起きた場合に、それを補正するという意味の税制改革というものが―当然これは実質的な国民負担をこの程度で押えるとしますならば、少くともその補正をするという意味の減税というものは、なおなされなければならないと思うのでありますが、この二点をひとつ大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
○池田国務大臣 物価が高くなつたならば、国民の負担も軽くする必要があるではないかという御質問のようでございますが、私は、ただいまの物価の状況で参りましたならば、今回の減税措置によつて大体やつて行けると考えております。もちろん、八月から主食並びに電気料金、あるいはまた十一月から鉄道運賃、郵便料金等が上りますが、今回の減税で大体それをカバーし得ると考えておるのであります。また一昨年、昨年来物価が騰貴いたしましたが、これにつれまして賃金も上り、公務員の給与も実は今回千五百円上げますので、賞与を除きまして平均額一万六十二円に相成つて来たのであります。一万円を越えている。こういう賃金の引上げと、また今回で三回目の減税でございまするが、これによりまして、実質賃金は低下していないという確信を持つておるのであります。従いまして、今後世界の物価の動きにつれましてある程度物価が上ることはあるかもしれませんが、私は上げたくないと考えております。どういう事態が起りましても、今の税制でやつて行けるし、またやつて行つていただきたいと考えておるのであります。
○塚田委員 これは実はたいへん大事な点でございます。ただいまの大臣の御答弁によりますと、物価は上げないつもりでおるが、上るかもしれない。しかし上つてもこれでやつて行けると考える、こういうようにおつしやつたのでありますが、私がこの問題をこのように深くお尋ねいたしますのは、実はこういう考え方をいたしておるからであります。大体世界の、ことに民主主義国の最近の状態は、どこの国もみな軍備をしなければならないということで、減税はおろか増税という傾向にみななつておる。そこで私どもの国でもそういうことが考えられる上に、敗戦国で、條約を受諾していろいろな負担があるのに減税というものを政府が考えることそれ自体が、世界の他の国国、ことにわれわれに賠償のいろいろな要求を持つている国々に対して何がか悪いのじやないかというように考えられるわけであります。そこで実質的な負担を軽減するほどの減税をするということは、これからは、あるいはそういうような事情である程度賠償債務などを返済してしまわない限りは、悪いかもしれないと国民は考えるわけでありますが、しかしこれから税法はすえ置いても、他の面の状態がかわつて来たがために、総体的に税金が重くなるという意味の減税はこれはしてもいいのじやないか。これは後ほどいろいろお尋ねしたいと思うのでありますが、條約の第十四條の賠償に関する規定とも非常に関連があると思うのであります。少くともそういう意味の、総体的に負担が過重になるものを調整する意味の減税はやつてもいいのじやないか。またやつていただけるのだろうかどうだろうか、こういうように考えております。
○池田国務大臣 欧米各国が増税をしておるのに、日本が減税をするということはどうかという問題でありますが、これは日本の税金が高過ぎるので、できるだけ減税をして行つて国力の高揚に備えることが必要だと思うのであります。第二の御質問の、国民所得がふえ、そして一般の経費があまりふえない場合においては、今回のように減税したらどうか。すなわち今回は千五百六十八億円の自然増収でありまして、そのうち四百五億円の減税でありますが、こういう場合が将来起り得るかという御質問であつたと思います。その場合におきましては、そのときの情勢、すなわち世界各国、あるいは日本の国情等から考えて適当な処置をすればいいのだ。国民所得が非常にふえて、政府の出費がふえないときには、余つた金をどうするか、こういう御質問ならば、余つたときに考えればいいのではないかと思います。
○塚田委員 私がお尋ねする点と、お答えいただいた点とが少し食い違つておるように思いますが、お気持が大体のみ込めましたので、この問題はこの程度にいたしておきたいと思います。 次に、一番国民の関心の的になつている賠償の問題でありますが、実はこの賠償の問題も、私どもが終戰後この方ずつと今日まで賠償の問題について考えて来た考え方の径路をたどつてみますと、非常に何べんもかわつているように思うのであります。終戰の直後ポーレー氏がわが国に来られた時分のいわゆるポーレー案によりますと、これは賠償はたいへんなことになると考えられたのでありますが、それがだんだんとストライク報告になり、ジヨンストン案になるというように、賠償が軽くなるのだというように感ぜられて来た。そうして昨年ダレス大使が見えて講和條約に対するいろいろの折衝が始まるころになり、また講和條約の今度の最初の米国草案が発表された時分までは、その通り、日本の賠償というものは非常に軽いのだというように漠然と私どもは了解しておつた。ところがいよいよ英米との折衝その他東南アジア諸国との折衝で條約の最終決定を見ますと、十四條の表現そのものはそんなに強いとは考えられませんけれども、あの背後に蔵せられているところの賠償の実態というものは、これはなかなか容易なものではないというように実は考えざるを得なくなつておるのであります。そこで賠償問題については、いろいろの面からいろいろお尋ねいたしたいのでありますが、まず最初に、本條約に規定されている賠償に対して、政府はどういうようなものの考え方で対処しておられるのか。またこれから各国と御折衝になるにあたつて、どういう考え方を基本にして賠償の御折衝に当つていただけるのか、そういう点についてひとつお伺いしたいと思います。
○池田国務大臣 平和條約第十四條の規定を誠意を持つて実行に移したいと思います。これだけではおわかりにならないかもわかりませんが、あれにありますように、われわれ賠償の義務を承認いたしておるのでございますが、しかしその範囲は日本の存立が可能な範囲内でなければなりません。また他の連合国に追加負担をかけてもいけないのであります。またわが国の為替上の負担を増大してもいけないということになりまして、賠償の形式はいわゆる役務賠償ということになつておるのであります。しからば役務賠償、技術賠償をどういうふうにして行くかということですが、あそこには沈船の引揚げとなつておりますが、今まで申し上げましような前提において誠意をもつて賠償喜要求各国と話をして行けば、條約の精神に含んであるところの和解と信頼と共存共栄の立場から行けば、おのずからそこに通ずる道が開けて来ると考えておるのであります。
○塚田委員 そこで賠償の基本方針に関連してひとつお伺いいたしたい点があります。賠償という問題は国民全部に一応責任がある。政府にだけおまかせいたして、何とかうまくやつてください、国民はなるべく負担が軽い方がいいのだというようにばかり考えてはおられないという空気が国民の間にもあるように私どもも見るのであります。先日毎日新聞が賠償問題をめぐる輿論調査をされたときにも、一体これから日本の国民生活は苦しくなるのか楽になるのかということをお尋ねされたところ、回答の実に六六%までが、これから苦しくなるのだとお考えになつており、楽になるとお考えになつていた方は七%しかなかつたということで、国民もこれからある程度苦しくなるのだということを覚悟していただいておるということがわかり、非常に安心をしているわけであります。安心というのはちよつと言い過ぎかもわかりませんが、非常に心強く感じておるのであります。またそうした気持の現われとして、国民の間に賠償に充てるための献金運動を起そうじやないかという考え方もあるように聞いておるのであります。これもできれば非常にけつこうだと思うのでありますが、そういうような国民の考え方を基調にいたしまして、賠償に充てるために特別な税金を、賠償を目的とした賠償税というようなものをひとつお考えになつてみたらどうか、こういうように考えるのですが、その点について大蔵大臣のお考えはどうですか。
○池田国務大臣 賠償税を施行する考えはごごいません。これは日本国民全体が負担するのでございます。今までの税法その他の財源で拂うのが適当だと考えております。
○塚田委員 これはお考えがないということでありますから、これ以上追究してお尋ねするのもどうかと思うのでありますが、私は日本国民が全部負担するのであるから、ひとつ賠償税というようなものでもお考えになつてみたらどうか、こういうふうに実はお尋ねしたいのであります。ことに私が賠償税をお考えになつたらどうかと言うのは、国民の中にそういう気持があるのだ、国民も責任を持つて、また徳義上の責任を感じて賠償を拂うのだという気持になつておることが、賠償を要求される国々にもいい影響を与えるのじやないかというような考え方もあるのでありますが、この問題は一応この程度で打切りたいと考えるわけであります。 それから次に、今度の十四條の規定によつて賠償に充てられるものの中に、連合国にあつた在外資産がこれに充てられるということが書いてあるのであります。そこでお尋ねしたいのでありますが、一体連合国にどれくらいの在外財産があつたのかということを、私ども実はよく承知しないのであります。もちろん雑誌や何かでときどき数字を見ることがあるのでありまして、たとえば国有し産は五百億だ、それに対して、民有財産は二千四、五百億だというような数字も見たことがあるように記憶するのでありますが、この点について、政府は何らかの統計をお持ちになつておらないか。
○池田国務大臣 この問題につきましては、先般もお答えしたのでありますが、終戦直後、司令部の要請によりまして一応調べたものはあるのであります。しかし何分にも終戦直後の状態でありましてまたわれわれが実地調査をするわけにも参りませんので、一応の推算はいたしましたが、政府としてここで申し上げるほど確信のある数字でないので、これは申し上げない方がよかろうかと考えております。
○塚田委員 そこで在外資産に関連いたしましてもう一点お尋ねしておきたいのは、これは賠償というものの性質上、またこの十四條の規定を読んでみましても、その国に損害もしくは苦痛を与えたのでなければ賠償を拂わないのだということになると思いますが、在外資産がある国とその国の賠償要求債権との間の関係が一体どうなつておるのか、つまり在外資産はあるのだけれども、その国には、賠償債務というものが考えられないというような国があるんじやないか、こういうように実は考えるのですが、そういう点はないのでございましようか。
○池田国務大臣 在外財産で連合国にありますものにつきましては、一応われわれとしては放棄することに相なつております。先般も講和会議で、サルバドルでございましたか、憲法の規定によつて、日本の在外財産をとらないという発言をされた国もございましたが、私どもといたしましては、連合国にありまする在外財産は講和條約に基きまして放棄したことに相なろうと思います。
○塚田委員 これは西村條約局長に、法文の解釈上の点をお尋ねしたいと思うのですけれども、十四條の條文を読んでおりますと「日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支拂うべきことが承認される。」賠償を支拂う前提というものは、損害及び苦痛を与えたから、与えた国に対して拂うのだとある。それで、中略いたしまして「よつて、」こうこうこういうぐあいにとあるのだから、この在外資産を連合国が処分できるというあとの規定は、この冒頭の文句を前提にして出て来るのであつて、それがないところへは、これは在外資産だからといつて没収されるということにならぬのじやないかと思うのですが、その点どうですか。
○西村(熊)政府委員 この点は塚田委員が御指摘の通り、この條約案について意見を求められた際に、連合国にある日本の財産を処分する権利というものは、連合国が今度の戰争によつて損害を受けた場合に、その損害の限度において認められるべきものであるということを申し上げた次第であります。それに対しましては、理論上はそうであるけれども、そういたす場合には、この戦争によつて甚大なる損害を受けました一部の連合国によつて、そういう戦争によつて損害を受けない国における日本の財産を賠償に充当すべきであるという強硬な主張を誘発するに違いないから、條約面に日本の希望するような規定を設けることは賢明でないという説明でございました。平和條約の規定では、連合国がその領域内にあります日本財産を処分する権利が認められておりますが、心ず処分せよという意味ではございません。従いまして吉田全権は、サンフランシスコの受諾演説におきましてもその点に触れまして、第十四條の規定が、この戦争によつて何ら損害を受けなかつた連合国に対しても、その領域内の私有財産を処分する権利を認めておることは遺憾であるという趣旨を述べられた次第であります。
○塚田委員 その説明によつて了承いたしました。 次にお尋ねいたしたいのは、賠償のわくのきめ方として、十四條に書いてあります「存立可能な経済を維持すべきものとすれば、」というこの表現であります。これはどうも、読んでちよつとわかつたようで、ちつともわからないような字句でございますが、原文を読んでみますと、これはヴアイアブルエコノミーという字が使つてある。ところがこの字をどういうふうに説明していいのか、辞書を見ても適当な訳が出て来ない。そこで私は私なりに、いやこれは要するに、日本の国民が人間らしい生活を維持して行くだけのものはとられないように認めてもらえるのだ、こういうふうに実は考えておるわけであります。ところが、そういう考えましていろいろなものを読んでみますと、賠償問題についての終戦後からのいろいろな考え方の変化の上からも、どうも疑問が出て来る。これは連合国では、日本の賠償をとる場合に、日本の生活水準は、日本が侵略した国の水準以下であるべきなんだ、こういうふうに書いてある。しかしそれがストライク報告になりますと、日本は昭和九年と同等の生活水準を維持させるのだというようなことが書いてある。それで一体われわれに賠償を要求する国と、われわれの生活水準の程度がどういうものだろうかということをいろいろ調べてみますと、われわれの方は、一九五〇年の国連年報の発表によりますと、一人当り大体年に百ドルの国民所得がある。もちろんこれはアメリカに比べると十五分の一程度の非常に低いものであり、そういう順位からいたしますと世界で四十二番目、貧乏国の末席というようなことが書いてあるのでありますが、しかし、それでもわれわれに賠償を最も要求しておられるフイリピンでありますとか、インドネシアというような国の状態と比べると、フイリピンは四十四ドル、インドネシアは二十五ドルだというように書いてある。そうすると、われわれの方は賠償要求をされる国で百ドル、要求する方の国は四十四ドルや二十五ドル、一体われわれの今の生活水準をそのまま認めてもらうということが存立可能な経済を維持すべきものとする、こういう考え方なのか。いや日本の方は賠償を要求しておる国よりまだ生活程度が高いんだから、ある程度生活の切下げがあつても賠償をすべきであるのか。この辺がどうもはつきりしないのであります。そこでこの点についての政府の考え方をお伺いしたいのであります。
○池田国務大臣 賠償問題を考える上におきまして、平和條約にありますように、存立可能な経済―ヴアイアブル、こういつておりますが、これは日本経済全体として見て行かなければならぬ問題と考えます。従いまして被賠償国と賠償請求国との一人当りの国民所得その他によつてきめられるべき問題ではないと思います。存立可能ということは、あくまでもその経済を― 今の状態で申しますれば、経済がますます進んで行つて、世界の平和に貢献するような態勢に持つて行きながら賠償をいたすべきだ、こういう気持でおるのであります。それを一人当りの国民所得が被賠償国より上だから、そこまで切り下げて賠償をなすという考えは、私は持つておりません。
○塚田委員 これは非常に徴妙な問題でありますので、私ももう少し研究させていただきたいと考えますので、次の問題に移ります。 そこで十四條を読んで、もう一つ非常に心配になります点は「存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害及び苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の責務を履行するためには現在充分でないことが承認される。」「現在」ということがはつきり書いてあるのであります。そうすると現在十分でないから、賠償はこれからのものは「役務賠償にした方がいいだろう、それから在外財産はとるのだ、こういうように読める。そこで賠償の詳細というものは、これから賠償要求国との間に個々に折衝するのだということになりますと、これから私どもがいろいろ働きまして、国民所得がふえた、生活水準もある程度上げられたということになると、限りなく賠償しなければならなくなるのではないかという点が、やはり国民の立場からは非常に不安になるわけであります。こういう点について大蔵大臣はどういうようにお考えになつておるかお伺いいたします。
○池田国務大臣 この問題につきましては、実はやつかいな問題でありまして、平和会議におきましてもロムロ・フイリピン代表は、あなたと同じような気持のことを言つております。なおまたわれわれは金銭賠償の請求権を放棄するものでないということをはつきり言つておりまする。やつかいな問題ではございまするが、私は現在はないのだというので進んで行きたいと思つております。将来のことを今どうこうすべきときではないと思います。
○田中委員長 塚田君初め、委員諸君に申し上げます。池田大蔵大臣はやむを得ない所用のため十一時から席をはずされますので、大蔵大臣に対する質疑は後日適当な機会まで保留を願いたいと存じます。さよう御了承願います。
○塚田委員 それでは私の質問は、大部分大蔵大臣に対するものであり、順序として大蔵大臣に対するものを聞いてからでないと、他の大臣に対する分が順序がつかないものでありますから、あとに保留いたしまして、一時打切ります。
○田中委員長 松本瀧藏君。
○松本(瀧)委員 対日平和條約は和解と信頼の條約といわれております。それはダレス氏がしばしば語つておるところでありますが、この條約にうたわれているこの高い精神が、ほんとうに両国民の間の対等にして自主的な地歩が確保されるために貫かれているかどうかということは、単なる一部の為政者の独善的な理解のみをもつて満足されるものではないのであります。日本はこの條約の締結によつてすでに進むべき道ははつきりしているのであります。すなわち自由国家群の中にわれわれは身を投じているのであります。しかし日本がほんとうに自主独立の地位を確保して世界の平和と自由に貢献せんとするならば、本條約前文にうたわれておる精神が単なるお題目に終つてしまつたのではいけないのであります。国民の感情と意図とをあくまで締約国に徹底的に伝えるとともに、またこの條約の精神の意図するところのものを、わが国民自体にも納得するように説明せなければならないのであります。政府がこの点について懇切に徹底的に説明しない限り、国民のほんとうの協力は得られないのであります。よつて以下の質問に対しまして、誠意をもつてお答え願いたいと思います。 まず質問の第一点は、インドに関する問題でありまするが、日本がもしもつと努力をしたならば誤解が解けて、場合によつたならばインドのサンフランシスコ会議の参加も実現したのではないかということが感ぜられるのであります。インドには私どもも経験がありまするが、アメリカに対するところの政策に確かに一種の誤解がひそんでおるのであります。従つてもしも日本政府がこれらの誤解を解くべく努力したならば、もつとこの問題は円滑に運んだのではないかということを考えるのであります。インドもビルマもインドネシアも、すべてこれらの諸国は日本をたよりにしております。アジアにおける日本の地位を再確認確認すると同時に、アジア自由諸国と西洋のくさびになつて、日本は今後大いに活躍しなければならない重大使命があると思うのでありまするが、それらの点に関しまして総理の御所見を伺いたいのであります。
○吉田国務大臣 お答えいたします。インドの不参加は日本の努力が足りなかつたという御意見でありますが、従来日本は外交停止の状態にあるので、努力いたしたいと思つても方法がないのであります。しかしながら仕合せにしてインドは、終戦以来日本に対して多くの好意を寄せておる国の一つであります。従つてまたこのたびも講和條約調印後間もなく、日本との間の戰争関係は終了せしむるという声明を発しており、また日本との間に平和條約はなるべく早く締結したいという意思も表示しておりますから、インドと日本との間の平和條約は間もなく締結し得るという見込みであります。
○松本(瀧)委員 ただいま総理の御答弁の中に、外交状態は停止しておるというお話があつたのでありまするが、さきの国会におきましての外交委員会に沸きまして、在外事務所員のステータスの問題を尋ねました。そのとき外交官としてのステータスがあるということをお答えになつたのでありますが、この点について明確にひとつお答えを願いたいと思うのであります。
○吉田国務大臣 お話のような、外交官としてのステータスがあるということを私が断言した覚えはないのであります。少くとも事実はない。それからして現在在外の事務所に対して、権限の擴張については相談中でありますが、従来までは外交官としての待遇は与えられておりません。
○松本(瀧)委員 総理が断言されたというのではなくして、委員会におきまして、草葉政務次官も出席しておられましたが、外交官のステータスがあるということをはつきり言われたのであります。追つて速記録を調べまして、この問題をまたお尋ねすることにいたします。 次に平和條約は国連加入を前提としておることは、昨日総理の御答弁の中にもあつた通りであります。また国連憲章第三條の義務を日本が課せられておるということも明白であります。しかし総理は、国連の加入は将来の問題であるということを言われておるのでありますが、日本国民が知りたいと思つていることは一体いつになつたならばいかなる形において日本が国連に加入できるかという問題であります。もちろん安全保障理事会におきまして、ソ連が拒否権を持つておる限りにおいて、日本はイタリアやスペイン、ポルトガル等と同じ運命にあるでありましよう。従つて安全保障理事会にかけることなくして、総会においてレギュラー・メンバーにかわるべきアソシエート・メンバーシツプみたいなものが考えられておるかどうか。あるいは交渉の過程におきまして、そういう話が出たかどうか、お伺いしたいのであります。
○吉田国務大臣 日本の国連加入は、ただに日本国政府が希望しておるのみならず、米国その他も希望しておるのでありますから、国連憲章において加入條件等について不備なものがあつても、何かその間に便法が講じられるのではないか。いづれにしましても、米国政府その他は日本の加入を促進する努力を今いたしておりますから、その希望はやがて早晩達せられるものと思います。
○松本(瀧)委員 それでは次に移りまするが、ソ連が平和條約に調印しなかつたことによつて、ソ連は占領あるいは戦争状態に復帰するのではないかという問題につきましては、総理の昨日の、ポツダム宣言にかわるものが平和條約であるという御答弁によつてややはつきりしたのでありまするが、さらに総理は言われました、ソ連との今後の問題はソ連の出方一つによるのである。しからばお尋ねしたいのでありますが、万一ソ連が戦争状態を継続いたしました場合におきまして、日本におけるソ連の駐日代表部は一体これはどうなるものでありましようか。御見解を承りたいと思います。
○吉田国務大臣 ソ連の代表部は対日理事会に対して派遣されたものでありますから、よつて講和條約が成立すれば、総司令部は自然なくなるのでありましよう。従つてまた対日理事会に派遇せられたソ連の代表部というものも、自然その性格はなくなるものと了解いたしております。
○松本(瀧)委員 しからばもう一つお尋ねしたいことは、批准が成立いたしまして、在外公館が日本に派遣されます。その場合に、ソ連は大使館を置けるものかどうか、御見解を承りたいと思います。
○吉田国務大臣 これはソ連との間に講和條約が成立されない限りは、大使館もしくは外交機関の交換ということは考えられないことであります。
○松本(瀧)委員 次にお尋ねしたいことは、漁業問題に関連してきわめて重大な問題でありまするが、マツカーサー・ラインの問題であります。このラインが批准とともに修正される可能性が生ずるのか、あるいはこのままでずつと継続するものか、あるいは政府においてこれを修正すべき何か努力を拂う、あるいは更新意見というものがあるのかどうか、これをひとつ承りたいと思います。
○吉田国務大臣 対日講和條約には、主権の拘束は何にもしておらないのでありますから、マツカーサー・ラインによる日本の主権の拘束といいますか、日本の漁業に関する権利、主権といいますか、権能は復活されるもので、マッカーサー・ラインは消滅するものと私は了解しております。
○松本(瀧)委員 ソ連との問題が相当複雑になると思うのでありますが、あの北海道の近くにありまする線を修正できるものであるかどうか、たた単なる折衝によつてこれはできるものであるか、あるいは外交機関の復活してないソ連を相手どつて、その折価ができるかどうか、この間の事情を非常に国民は憂慮しておりますので、御説明できるならばしていただきたいと思います。
○吉田国務大臣 マツカーサー・ラインは消滅しますから、ソビエトとの間に講和関係がないとすれば、あとは技術上の関係になります。しかしてその技術上の関係がどうなるか、これは将来の事態にまつよりほかしかたがありませんが、しかしソビエトといえども、あえて事を構えるということはないでありましようし、かりに技術上の関係がしばらく続くとしましても、正常な関係に入ることをソ連に期待し、またそういう処置に出るであろうと思います。何となれば、ソビエトといえども日本に対して戦争状態を終らせたい、あるいは対日講和條約はなるべく早くする方がいいと言つておるのでありますから、今日まで日本に対して戰争するという意思表示はかつてしなかつたわけであります。従つて隣国の関係でありますから、さらに漁業問題ばかりでなく、いろいろの技術上の問題が出て来て、調整をしなければならぬという必要に迫られるでありましよう。たとい技術上の一時関係だけにとどまつていても、やがていろいろな隣国との関係の問題の処理のために、何らかの方法は講ぜられることでありましよう。また日本として講じたいと思つております。
○松本(瀧)委員 それでは次の質問に移りまして、私有財産の問題につきまして、まだ足りないところをひとつ、重複するかもしれませんがお尋ねしたいと思うのであります。近代的自由思想と民主主義は、個人の尊厳の上に立つて発達して来たのであります。一面また、私有財産制がこの基盤となつておることは言うまでもないことであります。個人の財産権の尊重は、いずれの先進国の法律においてもこれを認めておるところであります。また国際的法律もこれを認めております。しかるに平和條約の第十六條においては、戦争中、中立国並びに連合国と戦争をしていた国にある日本国民の私有財産が、すべて赤十字国際委員会に一方的に引渡されて、国の賠償の一部に充当されるように定められているのであります。かかる実例は、今日までのいかなる講和條約にも見られないところであります。総理もサンフランシスコの演説におきまして遺憾の意を表された通りであります。日本の軍部が連合国の捕虜に対して不当な苦難を与えたことに対しては、衷心遺憾の意を表しまするが、それに対する贖罪と賠償は、国自体がなすべきことが建前であると思います。何も関係のない、善良にして善意の日本市民の私有財産を剥奪する理由とはならないと考えられます。昨日大蔵大臣は在外資産の問題に関しまして、厖大な額であるからこれを支拂うことはむずかしい、半分拂うか一部拂うかというようなことも、まだ見当がついていないということを言われておるのでありまするが、中立国にあつた善良なる日本市民の在外資産に対して、さらに考慮を拂う御用意がありましようか、所信を承りたいと思います。
○西村(熊)政府委員 中立国にある財産を戰勝国が平和條約によつて取得するというような規定を設けた例は全然ございません。ただ第二次世界大戦後、連合国はスイス、スエーデンと協定を結びまして、両国にあるドイツの財産をすでに処分いたしております。これが唯一の例でございます。今度の平和條約につきまして意見を開陳する機会を与えられましたときに、日本政府としては、もちろんただいま松本委員がおつしやいましたような事情を述べて、この第十大條は條約の中に入らないことを熱望するゆえんを十分申し述べた次第であります。しかしながら連合国の一部におきます、戦時中捕虜として日本のために精神的並びに物質的に非常な苦難をこうむつた人たちの強い賠償要求の声、これもまた日本としては無視すべきでないということを懇々と話された次第はあります。従つて日本政府といたしましても、第十六條の規定を承諾するということになつた次第でございます。もちろん同條によつて引渡されまする私有財産の所有者に対する補償の問題もあると思いますが、それは他の條項によつて、連合国によつて処分される私有財産に対する補償の問題その他と一括して、慎重考慮されるべき問題であろうかと存ずる次第であります。
○松本(瀧)委員 それでは次の質問に移りたいのでありまするが、ただ一点領土の問題に関してお尋ねしたいのであります。ダレス全権はサンフランシスコの本会議の冒頭で、條約草案を説明いたしました際に、歯舞群島は千島列島に入らず、これについて争いがあれば第二十二條の規定によつて、国際司法裁判に付託することを強く主張されました。また総理も、色丹島も歯舞群島もともに北海道の一部を構成するものであるということを、サンフランシスコの会議でこれまた強く主張されました。その通りであります。しかしソ連はすでに一九四七年二月二十五日の連邦憲法改正で、またこれに即応いたしまして、ロシヤ・ソビエト連邦共和国は一九四八年三月十三日の同共和国憲法改正で、千島列島と南樺太はおのおのその領整憂し、従来のハロフスク県と合せてサハリン州を構成したのであります。また歯舞群島をその中に吸攻されております。グロムイコ・ソ連全権は、サンフランシスコ会議終了日の九月八日の新聞記者団との会見の際に、その質問に答え、歯舞群島はソ連国の領土であることを、従来の通りその立場を堅持しておるのであります。昨日北澤委員の質問に対しましてその、点にお答えがなかつたので、重ねてお尋ねしたいのでありまするが、ソ連邦が講和條約に署名しなかつたために、條約上の紛争を国際司法裁判所に付託して解決するという第二十二條の規定は、当然適用されないことになるわけであります。そこでこの歯舞群島、色丹島の領土問題を、今後いかなる方法によつて解決するのか、政府の御所見をお伺いしたいのであります。
○吉田国務大臣 両島は御承知の通り、たまたま両島に日本の軍隊がおつたという事実のために、ソビエト軍が侵入して来たのであります。そこで日本の両島に対する主権については常に争つており、また米国政府も了解して日本政府の主張を支持しておる次第であります。今後どうするか、これは結局国際紛議の一つの問題として残るでありましよう。政府としてはあくまでもその問題の解決に努力するつもりでありますが、今日はどうするかということになりますと、実際上の関係であります。相手方のソビエトがどう出るか。あくまでもその主張を堅持する。日本も同じく自己の主張を堅持する、こうなると衝突するよりしかたがありませんが、なるべく円満な方法でもつてこの問題を解決して行つて、日本国民に満足を与えるように努力したいと考えておる次第であります。
○松本(瀧)委員 領土問題に関しましては、南樺太、千島列島、歯舞群島、色丹島を合せまして、総理はサンフランシスコの晴れの舞台で強く主張されました手前もありますので、今後一層この問題に努力を傾注されんことを切望いたします。サンフンシスコ会議前におきまして、また先般の本会議におきましてもそうであつたのでありまするが、総理は戦争や侵略の脅威はないと述べられておるのであります。しかるにサンフランシスコの演説の中で総理は「日本はかつては北方から迫る旧ロシヤ帝国主義のために千島列島と北海道等は、直接その侵略の危険にさらされたのであります。今日、わが国は、またもや同じ方向から共産主義の脅威にさらされているのであります。」という演説をしておられます。それは単なる外交辞令であつたのか、あるいは総理はほんとうにそれを信じておやりになつたのか、お気持をお伺いしたいのであります。
○吉田国務大臣 それは脅威は始終感じております。何となれば、北海道その他で始終いろいろなうわさが出ておつて、北海道民としてはいろいろなうわさのために始終脅かされているといつたことは否定すべからざる事実であります。ゆえにこの事実を事実として述べたのであります。しかしこのためにただちに戰争になるかというまでには、これは相当の間があると思います。ゆえに脅威は脅威でありますが、これがやがて第三次戦争か、日ソの間の戦争になるか、たたちにそういう結論に達するのには少し早急である、こう思います。
○松本(瀧)委員 やはり総理におかれましても、相当その脅威を感じておられればこそ、あの演説をやられたのであろうと思います。従つてあらかじめこういうことを考えるのは神経戦であると簡単に片づけることははなはだ私は即断だと思います。時間の関係もありますのと、先にもつと重要な問題がありますから、この問題はこの程度にいたします。 総理は何回も繰返して言われたことがありますが、みずから国を守るべきである。そうでないと、国のプライドがこれを許さぬ。この前の国会の予算委員会での私の質問に対してもそうお答えになりました。そこでこの言は間違いなく再軍備を意味するものであると私ども解しております。その再軍備の時期の問題について昨日芦田委員の質問に答えて、総理は、日本はいまだ外国から完全に僻用されていないのだ、外国からいろいろと誤解を招くから、日本が民主化されたときに軍備をやるのだというような意味のことを述べられたのであります。しかるにサンフランシスコにおきまして、去る九月四日夕刻のあの開会式の席上で、トルーマン大統領は、日本は降伏文書を完全に実行した、その成果は前例のないすばらしいものであつたと述べておるのであります。従つてこれを敷衍いたしまして、秘密警察の廃止であるとか、日本新憲法の礼讃であるとか、選挙におけるところの九〇%以上の投票率の例をあげたりいたしまして、また婦人の選挙権、農地改革、労働組合の発展等々といろいろと例をあげて、日本の民主化をたたえられたのであります。そこでこれを説明した後に、かるがゆえに日本に完全な主権を回復せしめる時期が来たと言つておられます。また他の諸国の代表も―ダレス全権もそうでありまするが、日本の民主化と平和化を認めているのであります。それを前提として、サンフンシスコの対日講和会議が開催されたと私どもは心得ておるのでありますが、なかんずくトルーマン大統領が言つた、完全に実行したという降伏文書には、日本が民主化と平和化されたときに対日講和会議が招集されることが定められているのであります。また総理もサンフランシスコの演説中に、トールマン大統領の日本民主化の言葉を引用されております。これにつけ加えて、今日の日本は過去の日本とは違うのだ、平和と民主化と、自由との新しい国として、諸国の期待を裏切るものではない、こう述べております。昨日の総理の答弁とは相当差異があるような感じがするのであります。この点について御所見を伺いたいのでありまするが、もし差異がないというのであつたならば、総理の言つておられまするところの民主化されたときの再軍備、その時期、あるいはその民主化というのは一体どういうことを意味されておるのか、その御説明を願いたいと思います。
○吉田国務大臣 私の昨日の説明において、民主化されたときに再軍備をするということを私が断言したことは、記憶がないのでありますが、私の趣意とするところは、日本が再軍備というところに達する前には、まだいろいろな道程がある。まず外国は今なお日本に対して再軍備の脅威を感じており、また軍国主義の復活ということを言つておるのである。また国内においても、この上軍備のために増税をするということは国民の負担のよくたえるところではない、再軍備ということは審易に言うべからざることであるという趣意を昨日述べたつもりであります。再軍備前においてなすべきことをなすということをまず考えなければならない。それには、国内の治安については警察その他の機関を充実する、集団的攻撃に対しては安全保障によつてこれに応ずる。これをもつて日本の国力を培養して行き、外国の日本に対する脅威も去り、日本の民主主義の確立ということについて外国に何らの懸念も与えないという時期において、日本の国力相応のみずから守る方法を考えるべきじやないか、それが直ちに再軍備というべきものか、その他の方法か、それは将来の問題に属しますが、今日の考えとしては、再軍備は軽々しく論ずべからざるものである。再軍備を出すまでにはいろいろな道案を考えなければならない。内外の準備をととのえなければならぬじやないかというのが私の趣意であります。
○松本(瀧)委員 これも速記録をよく調べた上でないと、言葉じりをとることになりますので、これ以上追究することは遠慮いたしますが、あるいは途中でマイクが聞えなくなりましたので、私の錯覚であるかもしれませんが、確かに民主化されたときに再軍備をするというぐあいに私は承つたのであります。サンフランシスコ会議におけるトルーマン大統領、アチソン、ダレス両全権の演説を聞きましても、日本が自衛軍をつくることを既定の事実として演説をやつておるのであります。総理はこの問題については、何ら話合つていないと繰返して言われておるのでありますが、交渉の途中、先方の考えに対しまして何らこの点に対する疑問が起らなかつたのか、お尋ねしたいのであります。特に外交界の長老である吉田総理のセンスには、先方のこれらの要望というものがまつたく感ぜられなかつたのか、その間の御事情をひとつ承りたいと思います。
○吉田国務大臣 私とトルーマン大統領その他の間の話合いの内容についてはお話はできませんが、しかし條約にも規定されている通り、日本の主権に対しては、完全なる主権の回復を言つておるのであります。従つて日本が再軍備をするかしないか、いかなる兵力を持つかというようなことは、日本国民がみずから決定すべきことであつて、アメリカの要望がかりにあつたとしたところが、日本の国力がこれに耐えなければ応ずるわけにて行かないと私は思うのであります。
○松本(瀧)委員 それでは次の質問に移りますが、総理は国民の希望であるから、アメリカの軍隊が日本国周辺と国内に駐留することを米国に要請されたものであろうと考えるのであります。従つてその協定が成立したのだろうと思うのでありますが、しかしこうした一国の自主独立に最も重大な関係を持つ問題を軽々に決定することは、はなはだ遺憾に思うのであります。ほんとうに国民の意思に問われてからなされたというお考えであるか、それとも総理の勘で、日本人がそれを希望しておるからという気持でおやりになつたのか、御説明願いたいのであります。
○吉田国務大臣 私は日本国民が米兵の駐兵を希望しておるからと申したことはかつてないのであります。しかしながら再軍備は今日国民は希望しておらない。とすればどういうふうにして独立を守るか。安全保障條約のごときがその方法の一つと私は確信し、従つて国民も私の意見に賛成すると確信してあの條約に調印したわけであります。
○松本(瀧)委員 それは吉田総理の勘でおやりになつたという御答弁だつたと了承いたします。従つてこの問題につきましては、また機会をあらためて御質問することにいたしますが、一体あの平和條約調印のその日に、なぜ安全保障條約をただちに調印しなさつたかということが、どうもわれわれ不審なのであります。もしこれが無條件降伏に関連性があるからというのであつたならば、従つて向うからそういう希望があつたから、無條件降伏の建前からしてやつたのであるというならば、対等の講和ということにはならないのであります。何ゆえこの平和條約において与えられた期間内において、もう少し遅れて研究した後これに調印しなかつたか、その間の御事情を承りたいのであります。
○吉田国務大臣 この安全保障條約はにわかに締結したというようなふうに、昨日も芦田君が言われておりましたが、にわかにということは語弊で上ります。ダレスが本年の二月に来て以来、この問題は絶えず研究いたしておつた結論が、安全保障條約になつたのでありますが、これを條約の形にまとめるまでにも相当時間をとり、條約にして間に合つたから、便宜の問題として―われわれもサンフランシスコにおり、サンフランシスコには、アチソン以下の全権もおり、便宜の問題として、では調印しようということになつたのであります。しかしながら……。 (発言する者あり)
○吉田国務大臣 聞きたまえ……。
○田中委員長 静粛に。
○吉田国務大臣 にわかにとか何とかいうことは、二月以来の問題でありますから、にわかにということはいえないわけであります。便宜の問題として、サンフランシスコで調印した。しかしながらその中にある行政交渉といいますか、協定については、時間がないし、のみならず、安全保障條約は日本の安全を保障する原則を定めたのであり、あたかも平和條約において日本の賠償義務を認めて、その内容については今後に讓ると同じことであります。これはいかなる條約にもあることである。原則をまずきめて、いかにして日本の安全を守るか、中立によつて守るか、あるいは軍備によつて守るか、いろいろな原則がありましようが、政府としては安全保障條約による集団的防衛の方法が一番いいと考えて、この条約をわれわれは調印するに至つたのであります。
○松本(瀧)委員 さらに安全保障條約の問題についてでありまするが、繰返してお尋ねしなければならないことは、平和條約第五條(a)項の(iii)に規定されておる、国際連合にあらゆる援助を与える、エヴリ・アシスタンスというこの言葉であります。この意味がきわめて不明確であり、先般本会議におきましてもその質問があつたのでありまするが、お答えがなかつたのであります。あらゆる援助とはいかなる範囲のものであるか、国民はこれを知りたがつているのであります。西村條約局長は、それは国連が決定するものだと説明し、総理は行政協定でやると言われたのでありまするが、おそらくそれは感違いであると思います。西村局長の説が正しいと私どもは考えるのでありますが、もし国連において日本の警察予備隊を海外に派遣するという決議をした場合に、これは一体どうなるのか。安全保障條約第一條に「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」という文句があるのでありますが、第一條は日本文で読んでみますと、二、三回読まないと意味がわからないのでありますが、原文と少し感じが違うようであります。ちよつと脱線いたしますが、昨日芦田委員も指摘せられた通りでありますが、「ラージスケール・インターナル・ライオツツ・アンド・デイスターバンセス」という言葉が「大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため」云々とあります。これは少し原文と日本語の訳を比べますると、日本文の意味が一オクターヴ高過ぎるのではないかという感じがするのであります。私どもの常識では、もちろん英語はよくわかりませんが、インターナル・ライオツツ、このライオツツというのは騒擾であつて、デイスターバンセスというのはもつと軽いものではないか。そこに問題が起る。そればかりではありません。平和條約の方もいろいろ比べて会すると、第三條の原文に「オール・アンド・エニー」という言葉があります。これは、翻訳の方では「権力の全部及び一部」となつておりまするが、オール・アンド・エニーであつたならば、全部及びいかなる権力もという意味ではないかと思うのであります。こういつた点はいろいろありますが、もちろん英語の論議をするのではありませんから、省略いたしますが、その第一條におきまして、そういう場合に「極東における国際の平和と安全の維持」云々ということがありますから、従つて日本から海外に青年が派遣されるというようなことがあり得るのであります。総理は、警察予備隊は軍隊でないから、そんな決議には応ぜられないと言われるかもしれません。しかしもし国連から、あらゆる援助の建前からそれを要請された場合どうなるか、この点につきまして御説明願いたいと思います。
○吉田国務大臣 昨日この問題は、あらゆる意味については、さきの答弁を訂正をし、ほんとうの考えをはつきり申し述べておきました。 それからもし国連から日本の警察予備隊を出せと言われても、これは出せません。何となれば、そういう要求は第一しないだろうと思うのは、国連の総会等においての要求は、日本の国力もしくは日本の法制、憲法違反の行為までやれという要求をもられることは断じてないと私は思います。すなわち日本の法制によつて可能なことを日本に求めるということはあり得るでありましようけれども、警察予備隊をただちに海外に派遣しろというようなことは、言うはずが断じてありません。
○松本(瀧)委員 はなはだ僭越でありますが、それは総理の常識的判断なのでありましよう。実際そういうニユアンスというものが交渉過程において現われたのでありますか、ちよつとお伺いしたい。
○吉田国務大臣 これは総理大臣として、要求せられた場合には拒絶いたします。これはニユアンスも何もないのであります。
○松本(瀧)委員 それではもう一、二点御質問いたしまして、私の質問を終りたいと思うのでありますが、やはりこの安全保障條約の問題に関連してであります。行政協定のときに、米軍に対するところの免税であるとか、あるいは裁判権、その他人間に対するところの治外法権というものは、これは当然考えられるのであります。しかしここに私どもが心配いたしますのは、地域的治外法権のようなものがあわせて考えられるかどうかという点であります。これはきわめて重大な点になります。米国とフイリツピンとの協定は、かなり大幅に地域的治外法権を与えておるのでありますが、これに引きかえまして米国と英国の協定は、地域的治外法権的性質がきわめて少いのであります。英国の場合は、駐留しておるのはただ空軍であります。しかし日本の場合には陸、海、空軍とも駐留することになりますので、その性格はフイリツピンとの協定に近いものが見出されるのではないかということが考えられるのであります。もしそうであるとしたならば、平和條約に約束されておるところの、日本に対する完全な独立と完全な主権を与えるということに、矛盾を来すと思うのであります。また同時にこれは、日本国民の多くがこの点に関しましてきわめて憂慮し、きわめて聞きたいとしておるところの重要なポイントでありますので、一応御所見を承らしていただきたいと思います。
○吉田国務大臣 行政協定の問題については、まだ具体的にそう話をしておりませんから、お害えはできませんが、しかし気持としては、御懸念のような点はないと思います。何となれば、米国政府としても、なるべく日本政府もしくは日本国民にわずらいにたらないようにしたいということをしばしば申しておるのでありますから、非常な広大な広義の治外法権を認めるのは―私はアメリカとイギリスとどういう協定があるか今存じませんが、イギリスとの協定とフイリツピンとの依定の間に違いがあるとするならば、半国政府としてはイギリスととりかわした協約の線に沿うようになるだろうと思います。というのは、なるべく日本国民及び政府にわずらいをかけたくたいという趣意を繰返し言つておる。その趣意から考えても御心配のようなことはないと思います。
○松本(瀧)委員 イギリスの場合は、外務省からまわされました資料によつて私ども研究さしてもらつたのでありますが、総理の目にそれがとどまつておらないということは、はなはだ不勉強たと思うのであります。安全保障條約に期限がついてないことは、朝野におけるこれは大きな論争のポイントになつております。期限のついてないことは永久的に駐留をするという解理もできますと同時に、また米国側の都合で即時に軍隊を引揚げることができるというような解釈にもなると思うのであります。この点につきまして先般の本会議におきまして、三木君からも質問があつたのでありまするが、お答えがなかつたのであらためてお尋ねしたいのであります。考えますに、一応期限をつけて、必要があればそれを更新するというとりきめもできたのではないかということが考えられるのでありまするが、その間の事情につきまして、ひとつ御説明願いたい。
○吉田国務大臣 この安全保障條約はいわゆる暫定とりきめであつて、なるべく早くこのとりきめは終了せしめたいという趣意で書いてあるのであります。従つていつ幾日ということは書いてはないけれども、両国において安心のできる事態になつたならば終了するということは、ちやんと第四條に書いてあります。そこで米国政府が一方的に引揚げる、これは條約の締結に違つております。條約によつて合意になされたものを一方的行為によつて廃棄するとか、あるいはその條約の一部分を無効にするというようなことは、これは條約上の観念からしてあり得べからざることと思います。
○松本(瀧)委員 なお安全保障條約の問題につきまして一、二質問をしたいのでありますが、総理はこれまでの本会議やまた本委員会におきまする質疑の際に、いろいろとお答えになりまして、行政協定の内容はもちろん明らかでないというのは、まだその段階に入つていないということを言われておるのであります。批准を待つてからアメリカ政府と交渉するのだという意味のことを言つておられます。このような重大な決定にあつて、まつたく白紙で臨むということはとうてい私どもの理解できないところであります。もしそれが事実であるとしたならば、実に国民を愚弄するもはなはだしきものでけないかと考えられます。この條約は下手をすると、かつての総動員法に類するものになるおそれがあるのであります。あるいは場合によるとそれ以上のものになる危險があるのであります。総動員法の場合といえども、勅令の範囲はあらかじめ立法府の承認を得ております。個々の勅令の発動においては、総動員法審議会において審議せしめられておるのであります。今後行政協定を行うにあたつて、これらの問題を十分考えておられるかどうか、お聞きしたいのであります。政府は必ず国会に重要な問題を諮らなければならぬと思うのでありまするが、その問題に関しまして御意見をお伺いしたいのであります。
○吉田国務大臣 行政協定の話、これはしばしば出ますが、まだ成文になつておらない、條約成文にするまでに進んでおらない、お互いに話合いは進んで来ておりますが、成文になつておらない、成文になつた場合に、これが法律によるかあるいは予算によるかして、いずれ国会の協賛を経なければならぬことと思いますが、そのときにさらに御説明をいたします。しかしながら御心配のような、総動員法を重ねて施行するようなことは断じてありませんから御安心願いたい。
○松本(瀧)委員 総理のただいま言われた一々国会に諮つて民主的にやるという言葉、了承いたします。 簡単な質問でありますが、総理にちよつとお伺いしたいことは、総理のお考えでは、国際條約と日本国の憲法と比較いたしまして、どちらが優位にあるのであるとお考えになりますか。
○吉田国務大臣 どちらが優位かというような問題が出ましたときに御相誌をいたしますが、しかしながら憲法はあくまでも政府として尊重いたしますから、憲法に違反するような條約はできないと御承知を願います。
○松本(瀧)委員 私がただいま質問いたしましたゆえんのものは、もしも一部伝えられておるごとく、内閣の批准いたしまするところの国際條約が憲法に優先するものであるとしたならば、あるいはかつて委員会において説明がありましたような意味にこれをとりまするならば、その場合少数の内閣閣僚によつて日本の憲法が改正できるという、きわめて危険な余地を残すのであります。もし憲法の方が優位であるというお考えであつたならば、その憲法の精神にのつとつて、これらの條約ももつと国会が納得するような線に持つて行かれるべきであるということを私ども考えるのであります。安全保障條約による米国軍隊の駐留は、善意と協力に基かなければならないことはいまさら言うまでもないことであります。米国当局者もこの駐留が日本国民の自由意思であり、日本国民の理解のもとに置かれなければならぬ、日本国民の協力をまたなければいかぬ、また日本国民との親善関係においてでなけらねばならぬということをしばしば強調しておるのであります。私はアメリカは善意と親善をもつて安全保障條約を考えて来たものと信じたいのであります。そこで政府の説明不十分であるがために、国民の間において不必要な誤解を招くことは決して望ましいことではないのであります。安全保障條約には、目的と精神は明記してあるのでありますが、実行手段の原則はしるしてないのであります。この実行手段の原則は何であるかを、国民はほんとうに知りたがつておるのであります。この実行手段の原則に肉をつけるのが、とりもなおさず行政協定でなけらねばならぬのであります。また国民の一部には、安全保障條約は日本を戦争の渦中に投ずるものであると信じておるものも少くないのであります。もしこの安全保障條約が、真に平和と秩序を確保するためのものであるとしたならば、総理はもつと信念を持つてその理由を国民の納得するように明示するところの義務があると私は思います。真に平和を秩序を確保するのであるという指導理念をもつとクローズ・アツプして、それを実践過程において具体的に肉づけをして行くのが政治家としての総理の責任だと思います。もつと政治家としての見識と良心が必要ではないかということを痛感するのであります。今日までの政府の説明を聞きましても、また本日の説明におきましても、新聞紙上に記載されている事実以下のものしかないのであります。單なる主観ではなくして、いま少しフアクトを国民は知りたがつております。多くの国民が両條約に不信を持つている事実も、フアクトの説明の欠如にあるということを忘れてはならないのであります。よつて今後政府においては、日米両国の将来のためにも、もつと懇切に説明されんことを強く要望いたしまして、時間の関係上、本日の私の質問はこれをもつて打切ります。(拍手)
○田中委員長 午前の質疑はこの程度にとどめます。 午後は本会議において大蔵大臣の演説もありますので、本会議散会直後に再会いたすこととして、暫時休憩いたします。 午前十一時四十九分休憩 ――――――――――――― 午後一時九分開議
○田中委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を継続いたします。猪俣浩三君
○猪俣委員 平和偽約並びに安全保障條約につきまして、日本国憲法及び演理の問題につきまして質問いたします。 昨日吉田総理と芦田さんとの質疑応答を拝聴いたしまして、感銘深いものがございました。議会政治向上のために御両所に深く敬意を表します。ただこの再軍備問題につきまする論議におきまして、御両所とも日本国憲法の議論がなされなかつたということに、私は一抹のさびしさを感じたのであります。申すまでもなく吉田総理大臣は、日本国憲法の制定されましたるときの総理大臣であらせられ、なおまた芦山さんは憲法改正特別委員長をなされておつたのであります。この憲法第九條がどういういきさつにより、いかなる経過によつて制定せられたものであるかは、私どもが申すまでもないことでありまして、この御両所によりまして、再軍備問題をめぐりかような憲法議論を聞くことができましたならば、ほんとうに幸いであつたと存ずるの所存ありますが、この点については遺憾でございました。この憲法の第九條ができましたにつきましては、時のマツカーサー司令官の強力なる発言指示があつたことは明らかなところでございます。これによりましてこの憲法が国会において審議せられ、どういうふうな議員の質問があり、どういうふうな政府委員の答弁があつたか、立法当時の経緯というものを、われわれ今から顧み、これを深く考慮することが大切なことではないかと考えるのであります。今この憲法の制定せられまたる当時のマツカーサー元帥の考え方、あるいは日本政府の考え方、これは立法者の意見といたしまして、法律解釈上重要なる部分を占めておるものでございまするが、この九條をいかに解釈すべきかにつきましては、この立法者の意見というものを重要な参考にしなければならぬことは申すまでもありません。一体憲法第九條が自衛戦争を許しておるものであるやいなや、また自衛戦争を前提といたしまして、戦力の保持を許しておるものであるかどうか、かようなことは実に明白に相なつでおる。先ほど申しました、この憲法に強力なる発言と指示を与えましたるマツカーサー元帥がマツカーサー司令部の報告といたしまして、昨年合衆国の政府に報告せられました中には、日本国憲法のできました由来が書いてある。その中にマツカーサー元帥のノートが摘録せられておるのであります。それを見まするならば、この憲法草案をつくるにあたりまして、一体いかなる決意であつたかがよくわかる。その決意を日本に伝えられ、時の政府もこの草案の審議を進めたものであることは、申すまでもないと思うのであります。このマッカーサー・ノートなるものにどういうことが書いてあるか。国家の主権的権利としての戦争を廃止する。日本は国家間の紛争を解決する手段としてはもちろんのこと、自国の安全を維持する手段としてさえも戦争を放棄する。日本は今や世界を動かしつつある崇高な理想に自国の防衛をゆだねる。かように書き連ねてあるのであります。自国の安全を維持す手段としてさえも戦争を放棄する。しかるに今日相当これがゆがめられて来ております。なおこの草案を審議するにあたりまして、一体日本の議会はいかなる質疑応答を重ねたか。これまたわれわれは反省してみなければならない。これはいつも引合いに出されることでありますが、衆議院におきまして原夫次郎君が質問した。わが国を不意に計画的に侵略せんとする者たちが出て来た場合に、わが国の自衛権までも放棄したければならぬのかという質問をいたしました。吉田国務大臣は、第九條第二項において、自衛権の発動としての戰争も、また交戰権も放棄したものであります。かように答弁せられておるのみならず、なお越えて共産党の野坂希三君の、この戦争に二通りある、自国を守るための戦争は正しい戦争である、これはさしつかえないじやないかという質問に対しまして、吉田総理大臣は、私は国家正当防衛権による戦争なは正当なりとせらるることを認むることが、有害であると思うのであります。この野坂參三君の意見に対しまして、有害であると思うという答弁をたされております。なおくどいようでありまするけれども、貴族院におきまして高柳賢三君が質問いたしております。日本がある国から侵略を受けた場合でも、改正案の原則というものは、これに対して武力抗争をしないといここと、すなわち少くとも一時は侵略にまかせるということになると思うが、という質問に対しまして、金森国務大臣は、場合によりましてそういうことになることは避け得られぬということに考えております。なお高柳賢三君の、いわばガンジーの無抵抗主義によつて侵略にまかせる、しかしあとは世界の正義、公平というものに信頼して、そういうことが是正されておる、こういうことがすなわち第九條の精神であるというふうに理解してよろしゆうございますか、という質問に対しまして、金森国務大臣は、第二項は武力は持つことを禁止しておりますけれども、武力以外の方法によつて、ある程度防衛して損害の限度を少くするという余地は残つておると思います。と答をいたしております。私どもはかような憲法制定の経過に徴しまして、この憲法九條を理解いたします。なおまた小学校あるいは中学校におきまするところの教科書におきましても、この吉田総理大臣あるいは金森国務大臣の答弁せられましたるように憲法九條を解釈して、絶対に戦争をしない、兵隊は持たぬ、軍備は持たぬのだということを教科書として載せてあるのであります。これは文部省の編纂であります。しかるに今日かような経過によつてでき上りました憲法の九條に対して異論が起つて参りまして、教育者はその去就に迷い、日本教職員組合が再三の大会におきまして、この日本の平知憲法の精神を堅持して、あくまでもそれを貫こうとして努力しておるゆえんのものも、過去におきまして軍閥官僚の徒輩に誤られましたるその非を、日本の教育家がざんげいたしましての努力精進の姿と見なければならない。かように私は長々と前提をいたしましたが、この憲法九條のつくられましたる原因、経過が日本にいかなる影響を持つか。これは私はこまかいことは申しませんけれども、この憲法の九條がゆがめられましたる瞬間におきまして、日本の国の性格がかわり、われわれの子々孫々に及びますところのこれは実に重大なる問題であります。ある者はこれは理想に過ぐる、世界にそんな国はないじやないかと言う者があります。もちろんこの憲法こそは、文明世界における最大のエポツクを形成したるものであると私は確信しておる。そうしてわれわれがそのにない手であるということの光栄に浴しているのであります。それをいささかの国際事情の変化ということに籍口いたしまして、ここにまた憲法を改正するとか、あるいはゆがんだ解釈によりまして、今日再軍備をするとかいうことに相なりましたならば、国家百年の大計をまつたく誤るものであると申さなければなりません。これが理想的のものであることは、憲法をつくるときからすでに明らかなことである。憲法の前文に何と書いてあるか。この憲法は理想である。「日本国民は、国家の名誉にかけ全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と、これが崇高な理想であることを憲法の前文にうたつておる。それをわれわれが誓つたのであります。なおまた憲法の規定を見まするならば、これは国務大臣及びわれわれ国会議員といえども、非常な義務を負担しておる。憲法第九十九條には「天皇又は攝政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」いやしくも憲法の成文解釈はもちろん、この前文に含まれまするところの崇高な目的に対しまして、あらゆる努力をわれわれは拂わなければならぬのであります。かようなときにおきまして、私は吉田総理大臣から確固たる憲法擁護の信念をお漏らし願いたいと思う。今、日本におきまして最も強力なる政治家あなたが、ほんとうにこの国を救う意思がありますならば、今ごそ実に重大な、大切なときである。私は、諸説に拘泥せずして、われわれの子孫のために、世界人類の平和、文化向上のために、毅然たる態度をおとりくださるならば、将来世界の平和史を編纂する学者によりまして、実に陸離たる光彩を吉田総理大臣は放つことだと考える。こういう意味におきまして、私は第一に、これは法律議論としてではなく、吉田総理大臣の信念として承ればけつこうなのであります。それは、憲法九條を改正しなくとも再軍備ができるものだという議論をなす者がありますが、吉田総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。昨日吉田総理大臣に質問されましたる芦田さんも、さようなお考えを持つておるやに、私は承知するのでありますが、なおまた有力な憲法学者にして、さような説をなす者もあるのであります。私はこれは重大な問題だと思う。日本の性格を一変するようなこの大問題、これを、憲法を改正しないで再軍備ができるというような解釈をとるということになりますならば、この憲法を制定されましたとき、二百万の生霊を犠牲にいたしまして、その犠牲の上に立ちましたるこの民主憲法というものが、効力を発生してから四年数箇月にしてすぐもうゆがめられてしまうことになるのでありまして、こういうことは日本の運命のためにゆゆしき大事件である。吉田総理大臣は憲法改正の手続をしなくとも、将来再軍備ができるものなりという信念をお持ちでありますかどうか、まず第一点としてお伺いいたします。
○吉田国務大臣 お答えいたします。きのう芦田君からも、私が国家の自衛権を捨てたというような解釈で質問せられましたが、会議録にどうありますか、あるいは当時の記憶を呼び返しても、私の言つたことは、自衛権の名においてしばしば戦争が行われるから、自衛権という言葉は容易に使えないということを言つた記憶はありますが、そのために日本の国家の自衛権を放棄するというような、極端なことまで申したことはないつもりであります。またそういうことはあり得べからざることであります。いやしくも国が独立した以上は、その独立を守る権利は当然含まるべきものであつて、国の本体として当然有すべき権利でありますから、これを放棄するがごときことは、言つたことはないのであります。條九條の説明は、これは国際紛争の解決手段として戦争に訴えないということを規定してあるのであつて、再軍備ができるかできないかということは、サンフランシスコでも言つたように、これは日本の国民がみずからきめるべきものであつて、外国が主権を制限するようなことは考えないということを言つておるのでありまして、いずれの国も、国に自衛権を認めないということを主張する人はないでありましよう。それからまた憲法を改正せずして再軍備ができるかできないかということは、再軍備をするかしないかという実際問題にあたりてお答えをいたします。
○猪俣委員 昨日の芦田さんの自衛権問題は、私は今の吉田総理の答弁が正しいと考えます。私ども調べましたけれども、自衛権を否認しておる点は見当らぬのであります。ただ自衛権に基く戦争はりつぱに否認されておる。この自衛権に基く戦争、これを現在も否認される態度をおとりでありまするか、おかえになつたのでありまするか、重ねてその点をお尋ねいたします。
○吉田国務大臣 ただいま申した通り、自衛権は国に存在するのであつて、自衛権の発動としての戦争、その場合はいたし方ないのでありますが、しかしながらしばしば自衛権という名において侵略戦争が起されたことがあるから、自衛権という文字を使用することについては軽々になすべからざるものであるということを申した記憶があります。その他のことは記録を調べた上でお答えいたします。
○猪俣委員 そうすると、今総理のお答えは、自衛権に基く戦争は否認しない、ただそれを濫用することだけは困るということを言うたので、自衛権に基く場合においては戦争もまたやる覚悟であるというふうに承つてよろしゆございますか。
○吉田国務大臣 自衛権がある以上は、国自身の独立を保護するためにあらゆる手段をとるということは、これは自衛の範囲であり、自衛権の範囲であります。それが戦争になつたといつたところが、いたし方ありませんが、しかし私の言うのは、自衛権という言葉は濫用せられるおそれがあるから、軽々に用うべからず、繰返して申します。
○猪俣委員 どうもわかつたようでわからぬのであります。私どもは、この戦争放棄の規定は、いかなる場合において戦争手段には訴えないということを、日本のかたい決意として表明したものだと考える。それが自衛権の場合においては戰争をしてもいい、しからざる場合はしないというように、可分的に考えますると、今総理が申されましたような濫用が起つて来るどこまでの範囲が自衛戦争なのであるか。なぜならば、東京裁判におきまして、いわゆる太平洋戦争を惹起した張本人として処罰いたされましたる東條英機氏が何と抗弁をしておりまするか。これは戦犯記録に明らかである。彼は口をきわめて、これは日本自衛のための戦争である。それを確信を持つて、とうとういわゆるキーナン検察官をしてさじを投げしめたくらい強硬に終りまでそれを主張し続けておりました。これは明らかであります。これが自衛戦争だというと、そうなるのであります。それでありますから、日本の憲法制定者は、さようなまぎらわしいところの区分を捨てて、一切戦争に訴えない、そういう手段はとらない、自衛のためであろうが、侵略のためであろうが……、それが憲法の精神だとわれわれは理解しておる。またただいま私が読み上げましたるところの議会における審議の経過に徴しましても、そういう立法精神であつたことは明らかだ。しかるに今自衛のためならば戦争をしてもよろしいということに相なりまするならば、この憲法はわれわれの理解する意味と非常に違つたものになりまして、これはゆゆしき大問題だ。戦争をしてもよいということを前提といたしますならば、戦争の保持もいいということに相なる。私は憲法の議論を総理大臣とするつもりはございませんけれども、これは実に日本の運命にかかわる重大問題であります。それで私は真心から質問しておるのです。 第二点といたしまして、憲法九十六條の改正の手続によりまして、憲法九條を改正して、日本国は戦争も保持することができる、交戰権も持つことができるというように改正することができるかどうか、これも憲法議論としてでなく、吉田総理大臣の信念を承りたいのであります。憲法九條の交戰権及び戰争保持、それを改正の手続によつてまつたく改正してしまつて、戰争も保持してよろしい、戦争もしてもよろしいというふうに改正できるかどうか、その点について、これは吉田総理大臣にお伺いいたします。
○吉田国務大臣 大橋法務総裁からお答えいたさせます。
○大橋国務大臣 ただいま政府といたしましては、憲法九條の改正については全然考えておりません。
○猪俣委員 私は考えておるかおらぬかを聞いたのではありません。あなたが出るならば憲法議論をしてください。これが九十六條の改正の手続で改正できるものかどうか、大橋法務総裁が出るならば、内閣の法律顧問としての大橋法務総裁の見解を承りたい。
○大橋国務大臣 純粋に法理の問題としてお答えいたしたいのでございますが、先ほど申し上げました通り、具体的に政府といたしましては改正について何ら考えておらないという前提のもとに、純粋の法理問題としてお答えいたします。 わが憲法といたしましては、前文に明らかでありますごとく、自然法的な政治原理を認め、その基礎の上に立つておるものと考えられるのであります。従いまして、このような政治原理の否認ないし変更をいたしまするということは、憲法改正の限界外であるという学説が多く見受けられるのであります。しかしこの説に立つて考えてみましても、平和主義がわが憲法の基本原理の一つであるということは、これは申すまでもないのでございますが、それは恒久平和の念願ないしは世界正和の希求を基調といたすものでございまして、自衛のための戦争保持さえも否認するようなことを一つの政治原理として、これを取入れたものと解すべきものではない。これは今日の日本の段階におきまして、かくのごとき規定をいたしますることが、日本みずからのために心要である、こういう考えによつてできておるものと思うのであります。従いまして自衛のための戰争の保持ということにつきまして、もし国民が欲し、またそれが世界平和、国際平和並びに国の安全のために心要であるというようなことがかりにありましたといたしますならば、その前において憲法の改正をいたしますということは、これは法理上の問題といたしましては可能である、この言わざるを得ないと思います。しかし、あくまでもこれは単なる法理上の問題でございまして、現実の政府の政策といたしまして、この点について何らかの考えを仕つておるのではないということを、重ねてお断りをいたします。
○猪俣委員 法務総裁の法理上の説明を承りましたが、これは法務総裁といたされましても、それぞれの機関をお持ちでありまするから、十二分に研旅していただきたい。日本国憲法の二つの大きな柱、それは民主主義の徹底と絶対平和主義の徹底せる点であります。この二つの柱がゆるぐようなことに相なるならば、これは改正にあらずして革命である、さように理解するものでありまするこれを実際的に考えてみましても、もしこの憲法を改正いたしまして、いわゆる自衛権のために日本が軍隊を持つということに相なりまするならば、続いて起るものは統帥権をだれが持つか、内閣総理大臣を統帥権者にする。ところが選挙のたびにかわるようなものを統帥権の中心にはでさない。やはりこれは大元帥陛下というものが心要であるという議論が出て来ます。(笑声)笑い事ではない。現にそういう議論をやつている人がある。そういうことに鈍感な人はわからない。そこでここにやはりまた昔の天皇制の問題が出て来ないとも限らぬ。さあ宣戦布告は何人がやるか。これまたいろいろ問題が起り、内閣及び国会の組織権限にも検討しなければならぬということが起りまして、九條を改正することが憲法全体に響いて来る。かような状態であるから、私どもはこういうことを軽々に考えるべきにはあらず、憲法の改正にも限界がある、この民主主義と平和主義の限界は許すべからず、動ずべからず、私どもにはかような信念があるのであります。ところが吉田内閣におきまして、一体かような信念がありやいなや私どもとしては疑わしい。なぜならば、今回の平和條約及び安全保障條約を通じてながめられることは、今吉田総理大臣が答弁されたように、自衛のためなら戦争をやつてもよろしいという思想であります。そうして自衛のためならば戦争をやつてもよろしいんだから、もちろん軍備を持つということに相なる。まずアメリカの軍隊の駐留を願つておいて、その間に国力が回復したならば、財政が許すならば、自国の軍隊を持つ。自国の軍隊を持つよう忙なつたならば、太平洋集団安全保障というようなことで、集団的な中へ入つて行く。こういう経過をたどることは、もうこれは明らかである。こういうコースであるならば、必ず憲法の改正問題が起つて来る。そうしてこの改正問題について簡単にお考えになつておるのじやないか。憲法の改正などということは容易にできるものではないということならば、一体かような條約というものは軽々にできる道理はない。何と答弁されましても、この平和條約及び安全保障條約は、日本の再軍備ということを必然の構想とするものであります。これは私は日本の運命を狂わすと思う。絶対にそういうことがないとどうして言い切れますか。今までのダレス氏のいろいろな発表を見ましても、アメリカ側から出るあれを見ましても、もう日本が再軍備になることは時日の問題である。また吉田総理大臣は再軍備の問題について質問されても、憲法をたてにしてできないという答弁をなされない。財政上のことからできないというような答弁ばかりされておりまするから、これを裏返しにいたしますならば、財政さえ許すならばあすでも軍備をするということに相なる。かようなことは私どもとしては承服いたしかねるのであります。この点につきましては、この安全保障條約にもはなはだ危険な條項を含んでおる。私どもが心配いたしますることは、こういう條約を結んでおいて、今度は憲法改正問題でも起りました際には、外国の軍隊に国を守られるということはお互いはずかしいじやないか、自分の国は自分で守るのが至当じやないかという議論を必ず展開する。素朴なる民衆はそれに引きずられる。そうしていともやすやすと憲法を改正して再軍備をし、昔の姿に返る。かような一つの布石をここに打つたのじやないかと思われる。私どもはその巧妙なる手段には舌を巻くのでありますけれども、さような方法において、いつとはなしに菅の軍国日本に返るということを心配する。吉田総理大臣のような確固たる政治力を持つている方が、自衛権の濫用は絶対させないとがんばつておられるならばいいけれども、吉田総理大臣でも五十年、百年生きておられるわけではない。もしそれヒトラーまがいの者が出て参りまして、そういう際に憲法が改正されて軍備を持たれて来ますならば、これはまた昔通りに返つてしまう。さような意味合いにおきまして、私どものはなはだ安心ができない状態であります。それでありまするから、なお吉田総理大臣に最後にお尋ねいたしますが、吉田総理大臣は日本憲法九條の建前として、いわゆる自衛のためにおいても戦力は保持できないというふうな解釈をおとりになりませんか、なりますか、もう一度お答え願いたい。
○吉田国務大臣 ただいまは再軍備が現在の問題となつておりませんから、いよいよ再軍備の問題が実際的にできましたときに、また申し上げます。
○猪俣委員 あとはお互いにのれんに腕押しみたいなことになりますからやめます。 それから今度法務総裁にお尋ねいたします。法務総裁は昨日行政協定の性質をお話になりまして、国家間の文書による行為は條約だということに提示されておるのでありますが、あなたはこの行政協定は憲法にいう純然たる條約と理解されますか、あるいは條約の一部分であるというように理解されますか、あるいは純然たる條約と何か違うものであるという御理解でありますか、御説明願いたい。
○大橋国務大臣 御質問の御趣旨をよく理解できないのでございますが、もし御質問が、行政協定は憲法七十三條第三号の條約という字句の中に包含されるべき性質のものであるかないか、ということでありましたといたしまするならば、それは国家間の文書による行為でございまするから、当然憲法にいうところの條約の一つであると、こうお答え申し上げる次第であります。
○猪俣委員 もし憲法でいう條約でありまするならば、行政協定は国会の承認を得なければならぬと思うのでありますが、それはいかがでありますか。
○大橋国務大臣 憲法七十三條におきまして、條約は事前または事後において国会の承認を受くべきものであるという趣旨の規定がいたしてあります。ところでこの安全保障條約におきまする行政協定の性格でございまするが、安全保障條約におきましては。特に「両政府間の行政協定」という表現を用いておりまして、この安全保障條約それ自体を実施いたしまするに必要なる細目協定を、両国政府間の協定にゆだねておるのでございますから、安全保障條約が国会の承認を受けますならば、これに基くこの行政協定の締結もあわせて事前に承認されておる、こう考えるのが当然でございまして、今後行政協定が実現いたしましたる際に、それを一々国会の御承認にかけるという憲法上の必要はもはやないと、こう考えておるわけでございます。但し昨日以来総理大臣からもたびたび申し上げてありまするごとく、この行政協定を締結いたしましたる結果といたしまして、国内において法律を制定し、あるいは予算を定める必要があるというような場合におきましては、これらの法律案なりまた予算案につきましては、当然法律案あるいは予算案の形において国会の御審議をいただくべき筋合いのものでございまして、この点についての国会の権限は、何らこれによつて影響を受けることは法律上ないわけであります。
○猪俣委員 法務総裁は行政協定は條約であると言われる。條約であるならば国会の承認を得なければならぬというのは、まことに単純明白なことであると思う。ところが條約ではあるが、この安全保障條約なるものを承認すれば、この行政協定なるものはその中に含まれるのだから、それは承認はいらないというような御答弁であつた。どうも私どもは割切れない。この安全保障條約の第三條に「アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両政府間の行政協定で決定する。」これは将来行政協定なるものをするがどうだ、行政協定を予定することの承認だけなのであります。これを承認することは、これは明らかに行政協定なるものをするということを予告して、それを承認しただけです。行政協定なるものの承認じやありません。承認ということは、言葉の意味からいたしましても、何を承認するか、承認の対象がなければならぬ。何もないものを承認するということはあり得ない。でありまするから、承認という言葉の前には、その行政協定なるものが存在しなければならず、この行政協定なるものが條約であるとするならば、国会の承認を得るということは理の当然であります。たとえばはなはだ卑近な例を用いて申訳ありませんけれども、ここに相愛し合つている男女があつたとします。子供が生れたならば認知しようと言うた。しかし生れないうちに認知という法律行為は行われない。何が生れるかわからない、生れないかもわからない、生れるという約束をしたから、ただちに認知という法律上の効力が発生することはありません。生れてこそ、その前の約束によつてそれを認知するということが起つて来る、戸籍に載つけるということが起つて来る。承認するかどうかというようなことをきめてしまいましても、それはそれだけのものなんです。生れてみて、それを見てから承認する、こんなことは幼稚園の生徒にもわかるりくつじやないかと私は思う。どうして大橋法務総裁は妙におとりになるのであるか、どうも私には理解ができない。ないものを承認せよ、ないものを承認を受けたということは、まつたくの仮想じやありませんか、そんな白紙委任状みたいなことを国会が委任した覚えもないし、そんなことならできません。それで私が重ねてお聞きいたしますことは、行政協定も、昨日の説明によりましても国家間の文書による行為であることは明らかなのである。しからばこれは條約である。條約ならば憲法の規定に従つて国会の承認を得なければならない。その生みの親であるのはこの安全保障條約かもしれませんけれども、そこから出て来まするものはまだ何もわからない。総理大臣の説明でも、海のものだか山のものだかわからない。それは一切答弁なさらない。しかるに、ただこういう行政協定をするぞという規定を承認しただけで、それに基いて実際つくり上げましたものの承認はいらないということは、私は理解できない。一体どういう法理でそういうことが生れるのか、もう一度御説明願いたい。
○大橋国務大臣 ただいま猪俣君は認知の例を引いておられますが、なるほど認知というものは、生れた後に認知するものであります。しかしこの憲法第七十三條には、「事前に、時宜によつては事後に」とある。でありまするから、事前の承認ということは当然あるわけでございまして、この点は事後でなければ認知のできないのとは全然違うのでございます。この点はひとつ事前にという点をよくごらんを願いたいと思います。
○猪俣委員 事前に、事後にと申されまするけれども、しからば事前、事後というのは何を基準に申されておるのであるか承りたい。
○大橋国務大臣 これは條約締結の事前であるか、事後であるかという、締結そのことであります。
○猪俣委員 それも政府の一方的解釈でありまして、事前、事後の基準も非常に違つておる。事前、事後というのはさような意味じやないという学者の説が今多いと思う。私今ここに全部書類を持つて来ておりませんから、これはこれでとどめまして、法務委員会であなたとなお意見を闘わします。その次に移ります。今度のサンフランシスコ会議におきまして、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約の署名に際し、吉田内閣総理大臣とアチソン国務長官との間に交換された公文というものがありますが、こういう交換文書の効力はどういうことに相なりまするか承りたいと思います。
○西村(熊)政府委員 交換公文の効力でございますが、これは場合によつて違うと思います。両国間の合意を成立せしめる交換公文の場合、広い意味での條約の一種をなす公換公文の場合には、いうまでもなく国を拘束する。国を拘束するということは政府並びに国民を拘束するということでございます。
○猪俣委員 そうすると、この公文はどちらの性質のものでありますか。
○西村(熊)政府委員 後者の場合であります。
○猪俣委員 この公文にもありますが、平和條約の効力発生の後に、一または二以上の国連加盟国の軍隊が、極東における国際連合の行動に従事する場合には、当該一または二以上の加盟国が、このような国際連合の行動に従事する軍隊を、日本国内及びその付近において支持することを日本国が許しかつ容易にすること。これを実現いたしますると、国民の権利義務に関係するようなことが起りましようか、起りませんでしようか。
○西村(熊)政府委員 場合によると存じます。
○猪俣委員 そういう場合におきましては、立法手続をなされる意志であるか、どうでありましようか。
○西村(熊)政府委員 立法手続がいる場合には立法いたしますし、予算措置がいれば予算措置がとられることに相なります。
○猪俣委員 なおこの安全保障條約につきまして、今国会の承認を求められておるのでありますが、これがもし承認を得られなかつたということが起つたならば、このことはどうなりますか。また政府の責任はどういうことになるのであるか。吉田総理大臣の御答弁を伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 この條約は必ず国会の承認を得ると考えます。
○猪俣委員 吉田さんは非常に積極的にお考えになつておりまするが、参議院あたりの空気は、なかなかそう簡単におろさぬのではないかと思う。与党は多数をお占めになつておりまするから、御心配ないかもしれませんけれども、しかし無事というものはやはりちやんと理解しておかなければいかぬのでありますから、法律論といたしまして、どういう責任が政府に出て来ますか、お聞かせ願いたい。
○吉田国務大臣 通過すると信じまするから、その後のことはここに申す必要はないと思います。
○猪俣委員 それからこれは話がかわりまするけれども、東京に中国の代表団というものが存在いたしておりますが、この性格及び講和後はこれがどういうことになるのであるか。次官でもよろしゆうございますから、お答えください。
○西村(熊)政府委員 現在東京にあります中国代表団は、連合国最高司令官に対して派遣された機関でございます。平和條約が発効いたしますれば、その結果として最高司令官というものは解消いたしますので、これに派遣されておる各国の外交代表団というものも、当然解消することと考えております。
○猪俣委員 もう一点お尋ねいたしますことは、そうすると、この中国代表団なるものが解消するまでにいたしましたる諸般の行為の効力は、どういうことになりましようか。
○西村(熊)政府委員 先刻申し上げましたように、中国代表団というものは、連合国最高司令官に対して派遣された機関でございまして、同団がとられた行為は、最高司令官と代表部との間の関係でございます。直接日本政府との間の問題ではございません。連合国間の問題でございます。
○猪俣委員 いま一点。この條約が国民に対して効力を発生する時期はいつでございましようか。
○西村(熊)政府委員 條約二十三條の規定によりまして、連合国と日本との間にこの條約が効力を発生したときからであると解釈いたしております。
○猪俣委員 條約が公布されなくても、効力はただもに発生すると御解釈になりますか。
○西村(熊)政府委員 條約の規定によりまして、国家と国家との間に効力を発生すると同時に、日本の政府並びに国民に対して効力を生ずるものと考えております。
○猪俣委員 私の質問はこれで終ります。
○田中委員長 米原昶君。
○米原委員 日本共産党を代表して質問いたします。講和締結かいなかという重大なときにあたりまして、日本国民のひとしく憂慮しておる点は、この條約によつてはたして極東の平和が維持できるかいなか。それともこの條約によつてあるいは戦争に巻き込まれるのではないかという点だと思うのであります。いかなる事由にせよ、現在朝鮮で行われておりますように、平和な住民が、婦人や子供や老人が爆撃にあい、銃撃にあつて殺されまして、家が焼かれ、病院が焼かれ、病院にいるとこの患者の人まで殺されるというような悲惨な戦争、こういう戦争に日本が絶対に巻き込まれてはならないというのが、日本国民の念願していることだと思うのであります。その意味で私はこの條約について、最初にいわゆる安全保障の問題について質問したいと思います。 先ほど猪俣君と総理との応答の中で触れられましたが、安全保障とか共同防衛とか、自衛権の発動とかいうようなことを條約なりその他できめましても、それだけで安全が保障されるわけではないと思うのであります。今までの歴史を見ましても、あの第一次大戦を引起したのは、三国同盟、特にドイツ、オーストリアの安全保障協定である。またこれに対抗したところのイギリス、フランスの共同防衛協定であります。第二次大戦を引起したのは日独伊三国の防共協定であり、それが発展したところの三国軍事同盟であります。また日満議定書によりましても、その條文の中では、東洋の平和を確保せんがために、相互の安寧と存立に対する脅威から、相互の国家を防衛せんがためのものである、と防衛ということを建前としておつたのであります。しかしながら、その自衛権の発動とか防衛というものが、実際には侵略戦争の準備であり、侵略戦争を実際に引起したということが歴史にはむしろ多いのであります。 そこで私は第一にお尋ねしたいのは、こういう安全保障條約あるいは自衛権の発動ということによつて、侵略の口実にはしないというところの保証はいかなる点に求めるべきであるか。総理はその点をいかに考えておられるか、これを聞きたいのであります。
○西村(熊)政府委員 …… 〔「何で総理が答えないのだ」と呼び、その他発言する者多し〕
○田中委員長 静粛に願います。
○西村(熊)政府委員 要するに今日の世界平和と安全について、もしいささかなりとも懸念がありといたしますならば、それは世界各国、ことに国際連合に加盟している各国の中に、連合憲章の目的と精神に従つて行動しない国があるからだと思うのであります。そういう情勢のもとにおきまして、国際連合憲章の目的と原則とに従つて忠実に協力いたそうとしておる国々が、国際連合憲章の与える一般保障に加うるに、補足的な安全保障体制を固めておるのが今日の現状でございます。将来の見通しは各自によつて違いますでしようが、こういうふうな国際連合憲章の精神に従つて一致団結している諸国の勢力が固まり、体制が強くなり、それに対して、この憲章の原則を無視して行動する陣営の方が弱められ、やがて後退するようになつて、初めて世界の平和は安全たり得ると思います。日米安全保障條約は、今申し上げました自由世界の一般精神に従つて締結されたものであります。すなわち平和のための條約であるということは、今日世間の大部分の人が信じて疑わないところであろうと思うのであります。信じない方がもしあるとするならば、それはごく一部の方であろうかと思うのであります。
○米原委員 私は総理に聞きたいのでありますが、今條約局長から返事がありまして、世界の一部の人が信じないのであつて、大多数は信じておるような御答弁でありましたが、たとえば今度の講和條約にしましても、やはりこの條約が平和の條約ではなくして、戦争準備の條約であるということを発言しましたのは、ソ同盟のグロムイコ代表だけではない。そういう意見はオーストラリアでも言われており、インドでも言われておるのであります。そうしてまた今度の講和條約に調印した国と、調印しなかつた国との人口を比較してごらんになつても明らかであります。調印してない国の人口は約十一億、調印した国の人口が約六億ないし七億という状態である。私はそういうように簡単に、大多数がただいまおつしやつたような解釈を信じているとは、実際には認められない現状ではないかということをはつきり言いたい。吉田総理はサンフランシスコ会議におきまして演説をなさつている中で、日本の安全保障問題について「近時不幸にして、共産主義的の圧迫と専制を伴う陰険な勢力が極東において、不安と混乱を広め、且つ、各所に公然たる侵略に打つて出つつあります。日本の間近にも迫つております。しかし、われわれ日本国民は、何らの武装をもつておりません。この集団的侵攻に対して日本国民としては、他の自由国家の集団的保護を求める他はないのであります。これ、われわれの合衆国との間に安全保障條約を締結せんとする理由であります。」こう言つておられまして、この安全保障條約を締結された根本理由をはつきり述べておられると私は思うのであります。そこで総理はここに指摘しておられますような「公然たる侵略」、こういうものに対して日本を防衛するという意味だということをはつきり言つておられると思う。そうしますと、私はここでお伺いしたいのでありますが、この極東の各所において、「各所に」と、こういう言若が使つてありますが、「公然たる侵略」とはいかなる事実をさしておられるのか、聞きたいのであります。
○西村(熊)政府委員 ……。 (「総理に聞いているんじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
○米原委員 総理の答弁を求めます。私は総理が国際会議の席上でお話になつた点について聞いている。総理の答弁を求めます。(発言する者多し)総理の答弁を求めます。
○吉田国務大臣 私の説明よりも、政府委員の方が正確にあなたの御満足の行くような答弁をすると思いますから、政府委員からしていたさせます。
○西村(熊)政府委員 朝鮮における事態、インド支那における事態、マレー半島における事態をお考えになれば、総理の演説の意のあるところを御理解願えると思います。
○米原委員 それならばお聞きします。そうしますと、朝鮮における事態が共産主義の侵略である、こういうふうに言つておられるのか。一体共産主義の侵略ということをどうして言えるかということを聞きたい。侵略とは、一国が他国に対して武力侵入をやることである。朝鮮の飛行機がアメリカの都市に向つて爆撃をやつているわけでもない。朝鮮がアメリカを侵略している事実はありません。しかしながら、アメリカが朝鮮の国土に武力侵入をやつているのは明らかに事実である。そういうことについていかに考えておられるのか、総理の答弁を求めます。 〔「答弁無用」「何が無用だ、総理に答弁を求めているのだ」と呼び、その他発言する者多し〕
○田中委員長 申し上げます。米原君は総理に答弁を求められたのでありますが、総理は政府委員をして答弁せしめておるのでありますから、これを内閣を代表としての答弁として御承知ありたいと存じます。 〔「そんなばかな話があるか」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
○田中委員長 米原君、質問しませんか。
○米原委員 質問していますよ。私の質問に対してまだ答えていないじやないですか。 〔発言する者多し〕
○西村(熊)政府委員 御指摘のような事態が朝鮮半島において生起したということは、すでに国連の安全保障理事会及び総会において、絶対多数をもつて決定されているところであります。
○米原委員 その問題についてはもつとはつきりわかつている点がありまして、国連憲章の第二條の七を見ましても「この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権能を国際連合に与えるものではなく、また、右の事項をこの憲章による解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。」とはつきり明記してあります。このたびのイランにおけるアングロ・イラニアン会社の問題についても、イラン側がこの問題について同様な態度をとつておるように私は聞いておりますが、朝鮮の国内の二つのグループの戰いに対して、国際連合が干渉することはできない。国際連合憲章に国連の決定自体が違反しておるのであります。そうしてまた安全保障理事会においても問題になりましたが、国連憲章第二十七條にありますように「安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む七理事国の賛成投票によつて行われる。」という原則になつておる。しかるにこの常任理事国のうちソ同盟は明らかにこの投票には参加しておらぬのであります。投票の手続上の点でも明らかに違法であり、また国連憲章の精神からしても、こういう国内問題に干渉すること自体が違法であるが、こういうことを、政府はやはり国連憲章の精神に沿つたものであると解釈して、こういうすべての現象を侵略と見ておられるのかどうか、この点をはつきりしていただければいいのです。
○西村(熊)政府委員 国連安保理事会なり総会のとつた措置は、憲章の解釈上まつたく正当な措置であつたと政府は考えております。
○米原委員 私は総理にさらに聞きたいと思います。たとえば朝鮮の問題について、政府はそういう見解で、はつきりそういうふうに考えておられると言つておられた。それならば、ヴエトナムにおける事態が同様に侵略であるということがどうして言えるかということであります。また台湾海峡に対するアメリカ第七艦隊の出動がはたして侵略でないかどうか。明らかに台湾の領海を占拠しておる。こういう事態がどうして侵略と言えないか。これについては、国連安保理事会は何も決定していない。
○西村(熊)政府委員 ……
○米原委員 私は総理に聞いておるのです。
○田中委員長 條約局長に発言を許しております。
○西村(熊)政府委員 国連において問題にしていないのは、国連憲章から見て問題にならない事項であるからであります。
○米原委員 私は総理にはつきり聞いておるのでありますが、総理はこれに対して全然答弁できない。しかも総理自身が、無責任にもサンフランシスコ会議の席上でこういうことを言つておられる。しかもこれについて答弁ができない。答弁できるはずがないのです。まつたくでたらめなことを侵略と称している。実は侵略でないものを侵略と言う。これに対して安全保障という形で、―実際はかつての東條、ヒトラー、ムソリーニの防共協定と同じような形で、みずから侵略戦争をやろうとされておるのであると断言せざるを得ません。総理にもう一度その点をはつきり言つてもらいたい。
○田中委員長 政府から答弁がありません。米原君は発言を継続される御意思ですか。
○米原委員 総理の答弁を求めておる。総理は私に対して一ぺんも答弁しない。そういうばかなことはないと思う。 (発言する者あり〕
○田中委員長 委員外の不規則の発言を禁止します。
○米原委員 私は総理が答弁できるまで質問を打切ります。
○田中委員長 申し上げます。ただいま林君から委員長に対する不信任の動議が提出されました。私の一身上のことでありますがゆえに、理事倉石君にこの席を譲ります。 〔委員長退席、倉石委員長代理着席〕 ―――――――――――――
○倉石委員長代理 ただいま林君より委員長に対する不信任の動議が提出されましたから、米原君の質疑を中止して、この際これについて議事を進めます。 まずその趣旨弁明を許す順序でありますが、その発言時間は五分間以内とすることに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長代理 御異議がないと認めます。五分間と決定いたました。林百郎君。
○林(百)委員 田中委員長不信任の動議の趣旨の弁明をいたします。 このたびの講和並び安保両條約は、世界の二つの大きな勢力、要するに侵略的な政策を維持しようとする帝国主義的な政策と、平和をどこまでも守ろうという民主的な勢力との、二つの大きな対立から発生しておるのであります。われわれはこの條約は、世界の平和を熱望しておるところの民主的な勢力の意思を踏みにじつて、日本の国を外国の帝国主義の基地にし、日本の国を外国の帝国主義の基地にし、日本の国を外国の奴隷にしようとするような條約であるということを確信しておるのであります。従つてこうした世界の平和を愛好する勢力、日本の平和を愛好する勢力の代表の側から、首相に対して質問をするのは当然であります。ところが首相は、この異なつた立場に立つておるところのこの平和を愛好する勢力の質問に対しては、何らの誠意を示しておらないのであります。少くとも一党の代表であるところの米原委員の質問に対して、首相は当初首をうしろに向けただけであります。あとは西村條約局長に一切をまかせ、自分の責任を目をつぶつて押し通しておるのであります。しかしこの日本の国と民族の運命を決定するような重要な案件の最高責任者は、あくまで吉田首相であります。われわれは日本の平和を愛好する人民の名において、吉田総理の責任のある答弁を求めることは、国会言としてわれわれに負託された当然の義務であるし、われわれの責任だと思うのであります。(拍手)ところがこれに対して最高責任者である吉田総理は、何らの誠意を示さず、一方委員長は、これに対してただ拱手傍観、何らの誠意を示しておらないのであります。われわれはこの委員会は、われわれの生涯の中に二度とないような案件を審議している重要な委員会だと思うのであります。その委員会において、少くとも一党の代表が総理の答弁を求めているにかかわらず、一條約局長に答弁をまかして、てんとして恥じざる首相のこの態度をそのまま放置しておるような委員長には、この重要な委員会の全部の任務の統轄をまかせるだけの信頼感をわれわれは持つことができないのであります。(拍手)従つてわれわれは、かかる吉田総理の一味と通じているような委員長に対しては、絶対信任をすることはできません。従つてわれわれは、田中委員長に対して不信任案を提出すると同時に、新しい委員長は、党派を越えてこの重要な委員会の責任感と名誉のために、一議員の当然の義務と責任である質疑に対して、十分政府をして答弁させるだけの努力をされんことを心から希望して、私の動議の説明といたします。(拍手)
○島村委員 本動議に対する討論は省略いたしまして、ただちに採決せられんことを望みます。
○倉石委員長代理 ただいまの島村君の討論省略の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉石委員長代理 御異議なしと認めます。よつて討論は省略するに決しました。 これより採決いたします。田中委員長に対する不信任動議に賛成の諸君は御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○倉石委員長代理 起立少数。よつて田中委員長に対する不信任の動議は否決されました。 委員長の復席を願います。(拍手) (倉石委員長代理退席、委員長着席〕 ―――――――――――――
○田中委員長 これより議事を継続いたします。米原君。
○米原委員 それでは、総理は一体いかなるものを侵略とみなし、何に対して防衛するかという点を先ほどからただしてみますと、国内の争いというようなものに対して、これを侵略である、こういうふうな解釈だということが明らかだ。こういうことに対しても、防衛するために自衛権を発動するというのでありますから、明らかに内政干渉ということが、この安全保障條約の建前になつておると断ぜざるを得ないのであります。この安全保障條約の中でも、昨日も芦田議員から問いただされた中にも出ておりましたが、明らかに日本国内における暴動とか、内乱とか、その他の小さい騒擾までを含めて、外国の軍隊が出動するということを規定しておりますように、明らかにこの條約は、そういう各国の国内問題に干渉することを建前としておる、こういうふうに見ざるを得なくなるのであります。先ほどからの説明を聞いておりますと、ことごとくそうなつておるのであります。そういうつもりで、つまり共産主義の侵略と称されるけれども、必ずしも共産党だけの問題ではない。たとえばヴエトカムの問題にしましても、なるほど共産党もおるが、それ以外のあらゆる政党が団結して、民族独立の戰いをやつておる。そうしてヴエトナムの九割までを占めておる。そういうものに対しても、これを侵略だ、これに対して干渉する、こういう建前でおられるのでありますから、この性格は実にはつきりしておると思うのであります。 次にお尋ねしたい点は、それと関連して、吉田総理大臣とアチソン国務長官との間に交換された公文を読みますと、この朝鮮事件に対して、日本が今までに施設及び役務を提供してこれを援助したことがはつきり書いてある。ところが、今までわれわれがこの問題について国会でもたびたび伺つたのでありますが、吉田総理を初めとして、内閣の方は、朝鮮事件に対しては精神的に協力はしておるけれども、それ以外のことはやつていない。物質的な面は商行為である。こういう答弁をされている。たとえばことしの二月の本会議におきまして、わが党の川上貫一君が、明らかに日本におる軍隊はポツダム宣言に基く占領軍ではなくて、作戦軍の役割を果している。そういうものを援助しているではないかという質問に対して、吉田総理は、これは宣伝だとおつしやつたけれども、この公文書を見ますと、はつきりそういう援助をやつて来たことを認めておるじやないか。こういうふうに、あの当時は否認しておられたことが、はつきりこの文書で認められておる。これはどういうわけなのですか。これについ出て吉田総理大臣の答弁を求めます。
○吉田国務大臣 政府委員をしてかわつて答弁せしめます。
○米原委員 私は総理の答弁を求めておる。
○西村(熊)政府委員 朝鮮において日本が与えております物質的援助は、すべてコマーシヤル・ベーシスで行われております。
○米原委員 それではさらに聞きますが、この施設、役務の使用に伴う費用が、現在でも日本国政府によつてやられておるというふうに書いてありますが、この点はどうなのです。こういう費用が出ておりますか。
○西村(熊)政府委員 その部分は、文書それ自体に明らかであカますように、米国との関係でございます。
○米原委員 そうしますと、それは政府が政府の予算の中から支出しているということはないというのですか。
○西村(熊)政府委員 今日アメリカ軍は進駐軍として日本に駐屯いたしております。それに対しまして、日本は施設及び物資によつて占領軍費を負担いたしておるのであります。その意味において負担しておる経済的負担を、その文書は言つておるのでございます。
○米原委員 ここに書いてあるのは、明らかに朝鮮の問題について書かれてあるのでありまして、日本におけるいわゆるポツダム宣言に基く占領軍の活動についてではありません。でありますから、政府の今の見解によると、これがごつちやになつておりまして、われわれはその点を今まで聞いて来たから、聞いておるのであります。
○西村(熊)政府委員 文書の意味は、いわゆる占領軍に対する日本の分担すべき経費として負担しておるもの以外のものは、全部米国によつて負担するという趣旨でございます。
○米原委員 ではこの朝鮮の事変と関連して日本がいろいろな援助を与えていることは、形は違いますが、はつきり認めておられる。 〔発言する者多し〕
○田中委員長 静粛に願います。
○米原委員 そこで私は、今まで総理が否定し続けて来られた問題について一点お聞きしたいのであります。それは朝鮮の事件に対しては、日本からたとえば警察予備隊なり、日本人を兵隊として送り出したことはない。また今後も警察予備隊というようなものを出すことはないということを、今まで外務委員会でも、政府は、ことに吉田総理は、はつきりと答えられて来たのでありますが、最近の平壌発の電報によりますと、日本人が一人朝鮮の戦線において捕虜になつたことが発表されておる。今までも朝鮮において日本人が出ておるというようなことは、新聞で伝えられたことはあります。しかしそれは二世であるとか、何かの間違いだというふうに弁解されておつたのであります。ところが、今度発表されておるのを見ますと、これははつきり日本人だということを当人が語つておつて、そうしてしかも名前から住所から生年月日から、全部はつきりしておるのであります。こういう事態がはつきり報道されておるので、私はこれを政府に聞きたいのであります。それはこういう事件であります。 この九月四日に朝鮮の西部戦線で捕虜になつた安井タツフミという一等兵がある。これが朝鮮戦線に日本から強制的にかり出されたいきさつを次のように語つておるという電報であります。それによりますと、私の本籍は大阪市生野区大友町七十八番地であり、現住所は大阪府の布施市長堂一丁目三番地である。母親はケイ子というのでありまして、十人家族で住んでおる。私は大阪市でミシン修理工をしていたが、朝鮮戦争が勃発して間もなく、われわれ日本人青年たちは、いわゆる韓国義勇軍の名目で朝鮮戦線に動員された。そうして私は第二回韓国義勇軍として朝鮮戦線にかり出された。われわれの部隊は二千余名によつて編成されておるが、そのほとんどが二十才以上三十才以下である。昨年九月二十五日米軍第七師団で軍服を渡され、埼玉県朝霞に三日間とまり、米軍からテントの張り方を習い、再び横浜に行つてから船に乗り、米軍監視のもとに仁川に引きずられて来た。仁川に到着したわれわれは、それぞれ分散されて国連軍部隊に配置された。私が所属していた二十名の隊列は米軍第三百三十部隊にとどまつていたが、ここで約一箇月たつたころ、大邱から大量の朝鮮人部隊が来るようになつた。これらの部隊は五十六部隊、八十五部隊という名前を持つた部隊であるが、実は西日本において訓練を終えて来たものである。その後再び移動して京城に約一箇月おり、さらにここから移動して一週間訓練を受けたというようないきさつがずつと書いてあります。ここで特に朝鮮語を教えられて、前線で捕虜になつた場合に、日本人であることを頑強に否定して、朝鮮人であることを最後まで固持せよという命令が出て、本籍から父親、母親の名前まで朝鮮名前を教えられたということを言つておる。その後数回にわたつて移動した結果、最後に九月四日前線に動員されて、高地争奪戰で中共軍の捕虜になつた。こういうことをしやべつておるという非常に詳しい電報であります。これはもう名前から住所の番地まではつきり出ておるのでありまして、非常に重大なものだと思う。こういうことを吉田総理は実際においてやつておられるのかどうか、この点について聞きたい。
○吉田国務大臣 政府委員をしてかわつて答弁せしめます。
○草葉政府委員 さような事実はございません。従つて何かの宣伝ではないかと思います。
○米原委員 それでは、すでにこれは私の方で調査しておりますので、今後の委員会においてこの点をはつきりします。 それからこの安全保障條約でありますが……。
○田中委員長 米原さん、もう少し大きい声でお願いします。
○米原委員 この安全保障條約でありますが、先ほどからの政府の答弁で、私は結論をすでに出しておいたのでありますが、明らかに今まで同僚議員が論証されましたように、再軍備を予定しておることは明瞭であります。 〔「だれかかわれよと」呼び、その他発言する者あり〕
○田中委員長 静粛に願います。
○米原委員 そこで昨日から芦田委員との論戦の際にも明らかになりましたように、芦田さんが再軍備ということを言われたのに対して、吉田総理は、現在再軍備はやらない、税金が重くかかるからとか、そういう時期になつていないとかいうようなことを言つておる。しかしながら今までの論戦の経過で明らかになつておるのは、実際には吉田総理は何も再軍備を否定しておられない。そして今までのやり方を見ておりますと、事実は警察予備隊という形で軍隊の明らかな準備をしておられる。警察予備隊自体が、はつきりした軍隊と同じ活動をやつておりますが、その考え方を見ると、この警察予備隊という形で当分やつて行く、そうしないと、再軍備ということになると、国民の反対も多いし、困るというようなことから、ただそれをだますために警察予備備隊という形で、そしてこれを中心にして、ここ当分の間は、新しい軍隊の士官ないし下士官を、警察予備隊の形で準備しておいて、そして来年の秋ごろになつてはつきり防衛軍という形を打出して、徴兵をやるというな構想のように見受けられますが、この点について、首相の見解をお尋ねいたします。
○吉田国務大臣 政府委員をしてかわつて答弁いたさせます。
○草葉政府委員 再軍備の問題につきましては、再三総理から御答弁を申し上げた通りであります。御了承願つておるつもりであります。 なお警察予備隊は決して軍隊ではないということも、再三御答弁申し上げた通りであります。 〔発言する者多し〕
○田中委員長 静粛に願います。
○米原委員 ただいまの答弁は、私の聞いていることに答えられているのではないのでありまして、明らかに警察予備隊は、バズーカ砲を使つたり、戦車の訓練をやつたり、軍隊と事実上同じことをやつておる。だからいくらそういうことをおつしやつても、軍隊と同じことをやつておることは事実です。しかもこういう形で、かつてドイツが第一次大戦後に新しい軍隊をつくりましたように、最初は軍備が制限されておつたために、その制限された中で、士官と下士官を養成しておいて、そしてヒトラーが出るや、これを大きな新しい新ドイツ軍に編成した、こういうやり方をしておられるのじやないか。そうでないという根拠は、一つも今のやり方では出ていないではないかということを私は聞いているのです。この点について質問しましても、はつきりした御答弁がないから、次に進みます。 第二にお伺いしたい点は、今までの点で明らかになつたのは、政府が侵略ということに対して、全然普通の常識で考えられない解釈を持つている。その侵略に対する安全保障という形で、事実は新しい侵略戦争を、かつてヒトラーやムソリーニがやつたと同じ形の、共産主義から防衛するという形で、実は最初に問題にしました侵略を考えている。私が聞きましても、何ら総理が答弁できないのは無理がないのでありまして、安全保障條約とか共同防衛協定とかいうもので、何も安全保障ができるわけでも、共同防衛ができるわけでもない。事実は、そういう名目で新しい侵略戦争を準備していることが明らかだと私は思うのであります。 そこで次の問題でありますが、少くとも講和條約は、第一に敗戦国の主権を回復させることと、それから平和を回復することと、二度と戦争を起させないようにすることと、こういうことが平和條約の、ごく常識的に言つても歴史的に見ても明らかな條件だと私は思うのでありますが、この安全保障條約の点から見ますと、何らこれは新しい戰争を起さないのではなくて、むしろ新しい戰争を準備している條約だと断ぜざるを得ない。何らこれは講和になつていないということが言えると思うのであります。その次に日本の主権が、少くとも回復されたかどうかという問題であります。この條約によると、なるほど冒頭に、日本の主権が回復されたようなことは書いてある。しかし事実は、そういう言葉にもかかわらず、昨日来も問題になつているように、ほんとうにこれが独立国と言えるかどうかという点が多々あると思うのであります。たとえば特恵関税実施の義務とか、中立国にある日本資産の処分権放棄とかいうような問題も、これではたして主権が完全に回復されたと言えるかどうかという点に疑問がありますが、こういう小さい問題でなくて、一番問題になるのは、やはり日本に外国軍隊が駐留する点、こういうことによつてはたして主権が完全に回復されると言えるかということが、私は問題だと思うのであります。日満議定書におきましても、いろいろなことが書いてある中に、ただ日本の軍隊が満州国内に駐屯するという一項があるだけで、満州国は事実上は日本の植民地であり、日本によつて搾取されて来たのであります。インドやビルマがイギリスの直接支配を第二次世界大戦後離れるにあたつて、イギリスと友好條約を結びましたが、その中で経済的な特権の尊重とか、少数民族の保護等を約束したために、完全な独立ではないと国民から攻撃されておるのであります。それでもうイギリス軍の駐屯とか、イギリスとの共同防衛に政府が強く反対して、この点でイギリス軍を完全に撤退させたというのが実情であります。現在エジプトにおいてもあの問題が起つておる。スエズ運河地帯にイギリス軍が駐屯しておることが、エジプトを植民地状態に置いているということから、エジプトのある民族独立運動が起つておるのであります。もしも今のままでこの條約をわれわれが承認するならば、エジプトの人たちが今まで何十年間闘いながら、ようやくそれから脱しようとしているこの運命を、これから日本がたどることになると思うのであります。こういう点については、しかもこの駐兵については先ほども触れましたが、明らかにこの安全保障條約でも、内政に干渉するがごとき條項が入つておるのでありまして、こういう形での駐兵が、どうして日本の主権を回復させたということになるのか。しかも一番問題になつて来ました行政協定の点でありますが、私はこれが憲法上どうだとか、どういう條約であるとかいう議論はいたしません。実際問題で為ります。行政協定で一体何がきまるのか、常識的に考えましても、一体どこに基地を置くかとか、演習地はどれだけの権利があるかとか、そういうことがおそらくきまるのだろう。これは常識的にだれもがわかることであります。ところがたとえば演習地一つの問題をとつてみましても、今伊豆の伊東の沖合いがアメリカの海軍の演習場になつて、漁民たちはこれで生きることができないというので大きな反対運動が起つております。全国で二十五箇所のこの大きな漁場に立入り禁止地域ができておることは周知の事実であります。こういうようなものがこの行政協定でおそらくきまるのだろうと思うのであります。そうしてこういうことが依然として現在のごとく継続されるのではないかと思われるのであります。そういうことになりますと、国民は少くともこの講和條約が結ばれたら、今まで占領軍からこういう漁場をとられるとか、あるいは飛行場の土地をとられるとかいう問題で非常に苦痛をなめておる、これが少くともなくなるのだろうというふうに考えておつた。それが最近ではますます擴大されておる。このようなものがおそらくそのまま認められるのではないかと思う。そうすると、この行政協定をまだできてないから発表できないというだけで逃げておられますが、しかもこれは国会の承認を受ける必要がないというような説明をしておりますが、そういうことではたして済むべき性質のものであるかどうか。この行政協定の内容を発表しないで、どうしてこの講和條約の審議ができるかと思わざるを得ないのであります。これによつてむしろ講和の実態というものが出て来るのであります。この條約の前文に書かれておるものは、ある意味で形式的なものであります。これが講和の結果として日本の国民生活にどう響いて来るか、独立して自主的な生活ができるかどうか。実際としては土地の取上げの問題にいたしましても、また裁判の問題にしても、自動車にひき逃げされてどうにもできないという問題もある。それがすべて行政協定に含まれて来る。そういうものを発表せずして、どうしてこれで講和條約の審議ができるか。これは密接の関係があると思う。この点については政府は誠意をもつてむしろ発表すべきである、もしできないならそれまで講和條約の審議を延期すべきである。それを発表して国民の審議を受けよ、私はそういうふうに考える。政府はこの條約を承認しさえすればそれでよいのだ、批准すればあとの行政協定はどんどんやれるのであるから、発表しないでよいのであるという態度で臨まれるのかどうか。吉田総理にお聞きしたい。
○吉田国務大臣 政府委員にお答えいたさせます。
○草葉政府委員 日本との平和條約が信頼と和解との上に立つた戦争の跡始末の従来にない條約でありますることは再三申し上げ、また内容をよくごらんになりますと御了承いただけることであると思います。また安全保障條約につきましても、たびたび御説明申し上げた通りであります。行政協定の内容はこれからの問題であります。
○米原委員 和解と信頼の條約である、ただそうおつしやるだけで、実際は和解と信頼の條約になつておるかどうかは行政協定でわかる。私は和解と信頼の條約であるという言葉だけで国民をだますわけに参りません。そういうものではない。そこが一番問題だと思います。和解と信頼の條約だと言われておる。たとえば軍備の制限もない。フアシスト団体や右翼団体の禁止、新しい侵略戦争を引起すような、そういうものを禁止する條項もない。そういうことが一つもないということで和解と信頼の條約だと言われておるが、私はこれは逆だと思います。もしもそういうものがあつても何ら恥じるところはない。日本の民主主義を保障するような制限條項があつても何らさしつかえない。日本人がそうやつて行くつもりだつたら少しもさしつかえない。ところがそういうことがない。いくらでも今度は軍隊をつくつて戦争してよいということになつておる。そういうことをもつてこれが和解と信頼の條約である。この和解と信頼とは新しい戦争を引起すための戦友との和解と信頼の條約、こう考えざるを得ない。何らこの條約の結果によつて日本の主権が回復されていない。沖繩や奄美大島の主権問題については、すでに多数論議されておりますから、繰返す心要はないと思いますが、何らこれは主権の回復でも何でもない。いくらここに主権があるといわれても、実際主権は行政権も立法権も司法権もない。こういうものがどうしても主権回復と言えるか。実際問題です。憲法論議や法律論はどうでもいいと思うが、私どもはそういうふうに考えざるを得ない。ことに先ほども猪俣君から問題にされましたが、外国軍隊が駐留して、そうして戦争が起る場合、明らかに極東の各地において、吉田総理の言葉による侵略が起つておのであります。吉田総理の説明によると、これは日本におる国連軍、アメリカ軍が当然出動することになるだろうと予想されるのであります。そうしてこれに協力する。こういう形になつておる。そうしてもし日本に軍隊ができたならば、おそらくこの軍隊も出動することもあり得るようにこの條約はできておる。そうすると、先ほど猪俣君から問題がありました宣戦布告の権利は一体どこにあるのか、日本の軍隊の新しいそういつた軍隊組織―軍隊と名づけなければ、戦備といつてよいかもしれません。こういうものの統帥権はどこにあるのか、何ら日本の憲法には、宣戦布告の権利はどこにあるか書いてないから、明瞭にできないと思いますが、実際上はアメリカ軍が戦争すれば、日本は必ずこれに協力しなければならぬと義務づけられておる。自動的に日本が戦争に引込まれるようにこの條約はできておる。主権の中でもおそらく一番重要なのは宣戦布告の権利であり、條約締結の権利であると思う。ことに宣戦布告の権利が日本にはない。そうして日本に駐屯しておるアメリカ軍が戦争行為に入つて行けば、日本も自然戦争に入つて行く。日本人民の意思によらずして戦争をやらざるを得ないような仕掛になつておる。こういう点についていかに政府は考えておるか。これがどうして主権の回復と言えるのか。これはまつたく主権の回復ではない。まつたく日本が植民地であり、従属地であるという傀儡政府になり下つておる。吉田政府は明らかにアメリカ帝国主義の傀儡であるということを形づける條約だと私は解せざるを得ないのであります。この点について御答弁を得たい。
○草葉政府委員 御質問の御趣旨、了解に苦しむのでありますが、大体従来御答弁申し上げましたことで盡きておると思います。
○米原委員 それではもう基本的な点でこの條約は主権を回復してもいない。戦争準備の條約であるということが明らかになりました。私は一応これで質問を打切ります。
○田中委員長 高倉定助君。
○高倉委員 本会議また昨日の委員会を通じまして、いろいろと條約問題につきまして質問がなされておりますので、われわれの言わんと欲することも大方言い盡されているような次第であります。実は二十四日に大体質問をする考えでおりましたし、本日は総理もお疲れのことと思いますから、頭を冷静にされてからお聞きした方がむしろいいかと思いますので、簡潔に二、三御質問申し上げたいと思います。 まず領土の問題でありますが、過般のサンフランシスコの講和條約の第二條の(C)項によりますると、日本国は千島列島の主権の放棄を認められたのである。しかしその千島列島というものはきわめて漠然としておる。北緯二五・九度以南のいわゆる南西諸島の地域の條文におきましては、詳細に区分されておるのでありまするが、千島列島は大ざつぱではつきりしていないのであります。そこで講和條約の原文を検討する必要があります。條約の原文にはクリル・アイランド、いわゆるクリル群島と明記されておるように思いますが、このクリル・アイランドとは一体どこをさすのか、これを一応お聞きしたいと思います。
○吉田国務大臣 千島列島の件につきましては、外務省としては終戰以来研究いたして、日本の見解は米国政府に早くすでに申入れてあります。これは後に政府委員をしてお答えをいたさせますが、その範囲については多分米国政府としては日本政府の主張を入れて、いわゆる千島列島なるものの範囲もきめておろうと思います。しさいのことは政府委員から答弁いたさせます。
○西村(熊)政府委員 條約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。しかし南千島と北千島は、歴史的に見てまつたくその立場が違うことは、すでに全権がサンフランシスコ会議の演説において明らかにされた通りでございます。あの見解を日本政府としてもまた今後とも堅持して行く方針であるということは、たびたびこの国会において総理から御答弁があつた通りであります。 なお歯舞と色丹島が千島に含まれないことは、アメリカ外務当局も明言されました。しかしながらその点を決定するには、結局国際司法裁判所に提訴する方法しかあるまいという見解を述べられた次第であります。しかしあの見解を述べられたときはいまだ調印前でございましたので、むろんソ連も調印する場合のことを考えて説明されたと思います。今日はソ連が署名しておりませんので、第二十二條によつてへーグの司法裁判所に提訴する方途は、実際上ない次第になつております。
○高倉委員 このクリル群島と千島列島を同じように考えておられるような今のお話でありますが、これは明活八年の樺太・クリル交換條約によつて決定されたものであつて、その交換條約によりますと、第一條に、横太全島はロシヤ領土として、ラペルーズ海峡をもつて両国の境界とする。第二條には、クリル群島、すなわちウルツプ島から占守島に至る十八の島は日本領土に属す。カムチヤツカ地方、ラパツカ岬と占守島との聞なる海峡をもつて両国の境とする。以下省略しますが、こういうふうになつておる。この條約は全世界に認められた国際的の公文書でありますので、外務当局がこのクリル群島というものと、千島列島というものの翻訳をどういうふうに考えておられるか、もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
○西村(熊)政府委員 平和條約は一九五一年九月に調印いたされたものであります。従つてこの條約にいう千島がいずれの地域をさすかという判定は、現在に立つて判定すべきだと考えます。従つて先刻申し上げましたように、この條約に千島とあるのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。但上両地域について歴史的に全然違つた事態にあるという政府の考え方は将来もかえませんということを御答弁申し上げた次第であります。
○高倉委員 どうも見解が違いますのでやむを得ないと思いますが、過般の講和会議においてダレス全権が、歯舞、色丹諸島は千島列島でない、従つてこれが帰属は、今日の場合国際司法裁判所に提訴する道が開かれておると演説されておるのであります。吉田全権はそのとき、千島列島に対してもう少しつつ込んだところの―歯舞と色丹は絶対に日本の領土であるとは言つておられますけれども、国際司法裁判所に提訴してやるというまでの強い御意思が発表されていなかつたようでありまするが、この問題に対しまして、ただいまあるいは今後も、どういうようなお考えを持つておられるかということについてお伺いします。
○吉田国務大臣 この問題は、日本政府と総司令部の間にしばしば文書往復を重ねて来ておるので、従つて米国政府としても日本政府の主張は明らかであると考えますから、サンフランシスコにおいてはあまりくどくど言わなかつたのであります。しかし問題の性質は、米国政府はよく了承しておると思ひます。従つてまたダレス氏の演説でも特にこの千島の両島について主張があつたものと思います。今後どうするかは、しばらく事態の経過を見ておもむろに考えたいと思います。これは米国との関係もありますから、この関係を調節しながら処置をいたす考えでおります。
○高倉委員 過般の本会議で私も質問したのでありますが、北海道の全地域にわたつて、まことに脅威の状態にあることは、総理も御承知の通りと思いますが、今日わずかの警察予備隊、海上保安隊の駐留によりましては、とうていわれわれ満足できないような状態でございます。これに対してもう少し強力に、われわれが安心のできるような範囲において、これらを擴張するところの御意思がありますか。
○吉田国務大臣 この問題については当局もいろいろ処置を講じておりますが、要するに今後治安のために要する警察その他の力は、増強いたす考えでおります。
○高倉委員 さらに最後でありますが、いろいろと論議されましたわが同胞が、まだ外地から三十数万帰還していないのであります。これらに対して今後いかなる処置によつてその帰還を実現されるか、簡単でよろしいのですが、これにお答え願いたい。
○吉田国務大臣 この問題はしばしば申しますが、終戦以来当局者として、あるいは外務省として頭を悩ました問題であります。当初から私がこれに関係しておつたのであります。従つてこの問題のいきさつはよく承知いたしております。その結果国連あるいは米国、あるいは関係政府に対しての交渉は絶えずいたしております。またしばしば説明もいたしましたが、これは日本だけの問題ではないのであります。フランスにしてもドイツその他にしても、なお未帰還部隊が相当あるのであります。ゆえに単に日本の問題ばかりでなく、連合国数箇国にわたる共同の利害を持つた問題として国連あるいは赤十字その他が日本の要請に応じ、日本及び同じ利害を持つ諸国の未帰還部隊のために相当霊力をいたしておるところでありますが、なおこの盡力が一層効力の出るように、希望が達成せられるように努力いたします。しばらく経過をごらん願いたいと思います。
○高倉委員 残余の問題は今後に残しまして、これで本日は終ります。
○田中委員長 黒田寿男君。
○黒田委員 私は本日は平和條約と安全保障條約とを合せて、多少根本的な問題を総理にお尋ねしたいと思うのでありますけれども、総理の方でおさしつかえがありまして、予定しただけの時間がいただけませんので、きようはただ一問だけ特に御質問申し上げたいと思います。あとはこの次の機会に質問する権利を留保させていただきたいと思います。 そこできようは、便宜上、私は安全保障條約の―この安全保障條約と申しますのは、今回の日米安全保障條約のことでありますが、この安全保障條約の性格について政府にお尋ねしてみたいと思います。私の見るところでは、日米安全保障條約は、名称は安全保障條約でありますけれども、実質的にはいわゆる安全保障体制の性格を備えていない。それでは一体何であるか、私も懸命に研究してみたのでありますが、結局私の結論は、安全保障條約ではなくて、むしろ保護国條約の性格を持つておる、あるいはその通りでないにいたしましても、それに非常に近い性格を持つておるものである、こういう結論に到達したのであります。これにつきまして私は自分の所信を述べながら、政府の御所信を承つてみたいと考えるのであります。 そこで第一に、日米安全保障條約は、本来の安全保障條約ではないと私は結論を下すのであります。なぜであるか、本来の安全保障体制であるためにはどういう條件が必要であるかと申しますと、すべての参加国が継続的にして効果的な自助及び相互援助を行うものでなければならぬ、こういう條件が必要なのであります。現に本来の安全保障條約でありまするところの北大西洋條約、米此相互防衛條約、オーストラリア、ニユージーランド、アメリカ合衆国、この三国間の安全保障條約等の本来の衆団安全保障体制を研究してみますと、すべてこの條件を備えておるのであります。しかして今日吉田総理が単独で調印されて参られました日米安全保障條約なるものは、この條件を備えていない。だから暫定的なものであるという言葉が用いられておるのであります。すなわち将来本格的な安全保障体制ができることを米国は期待しておるというておるのもあります。将来本格的な安全保障條約になるのであるならば、今は本格的な安全保障体制でないということは明らかである。この区別だけははつきりさせておかなければならない国民は、名称が安全保障條約というので、本来の安全保障條約ができるのであるかのごとく考えさせられているのであります。これは、私は非常に危険なことであると思うのであります。そこで今度首相の調印されて参られました安全保障條約なるものは、いわゆる暫定的なものであつて、本来の安全保障体制としての條約ではない。このことをはつきり国民に知らせておく必要がある。この点につきまして私と同じようにお考えになるかどうか、ちよつと総理大臣の御見解を承つてみたい。
○吉田国務大臣 これは安全保障條約の中にはつきり書いてあります。つまり日本が国連またはその他により、いわゆる恒久的なといいまするか、安全保障あるいは日本の独立を守るだけの措置ができたならば、そのときはやめると書いてあるので、暫定的というお話は私も同意であります。またこれをもつて何百年もやる考えはないのであります。しかしながら、日本は独立はできたが防備はない、その空間を満たすための暫定條約であつて将来国力が充実するか、あるいは国連その他の国際的機構が充実される場合には別に考えるべきで、独立を得たその瞬間における独立安全をどうしてはかるか、そのさしあたりの必要に応ずるためにこの條約はできたのであります。ゆえに暫定であります。またわれわれも暫定と考えております。
○黒田委員 これは文字通り暫定と書いてありますから、わかる人にはわかるのでありますが、国民がこの暫定ということに気がつかないで、いろいろと間違つた考えを持つのではなかろうかと思いますので、あえてこの点を明らかにしていただいたのでありますけれども、やはり総理も暫定だと申されますし、むろん私も総理のおつしやつたように暫定と考えております。 そこでその点を、はつきりさせておきまして、しからばこの安全保障條約が、本来の安全保障体制たることができないのはどのような條件が欠けておるか、このことを私は考えてみた。そうすると、それは言うまでもなく日本が自身として軍備を持つていないことである、こういうことがすぐ答えとして出て来るのであります。すなわち日本が自国の防衛のため漸増的にみずから責任を負い得るような條件をつくらなければ、安全保障体制に入ることができないのだ、こういうことが言えるのである。そこで、しからば日本は何ゆえにこの條件を欠かねばならぬか、こういう問題が次に出て来ると思います。それは言うまでもなく’今の憲法が嚴として存在しておるからである。この憲法が存在する限りは、日本は、この條件を満たすことができない、すなわち再軍備をすることはできないのであります。従つて安全保障條約の名のもとに、実際は安全保障條約でないところの、しかも実質は一種の軍事條約が結ばれる、こういうところに落ちて行くよりほかない、こういうことになろうとしているのであると私は考えるのであります。そこで総理にお尋ねしたいと思いますことは、日本が再軍備をしなければ、この日米安全保障條約はいつまでも存続して行かねばならぬという論理の帰結になるのでありますが、そういうように解釈してよろしいのでありましようか。言いかえれば、この暫定的安全保障條約から、本来の安全保障條約に入らなければならぬ條件を満たすためには、再軍備をしなければならぬ、この條件にかかつておる。こういうように私どもは考えざるを得ないのであります。この点についてはつきりと総理の御見解をお尋ねしておきたい。
○吉田国務大臣 お答えしますが、これは必ずびも再軍備―軍備とかあるいは兵力とかいうものに、一にかかつておるとは私は解釈しないのであります。日本の国力がどう発展するか、あるいはどう充実されるか、あるいは日本の今後における大勢といいますか、政治その他の條件あるいは客観情勢がどうなりますか、内外の情勢について判断すべきものであつて、いわゆる危險とかいうようなことは内外の情勢がきめるもので、その大きさ、その内容に従つて考えるべきものである。これは将来の事態の経過によつて判定すべきである。その事態において善処する。いかなる恒久平和條約ができるか、それはできたときに御相談をいたします。
○黒田委員 そういうお答えでありますと、念のためにもう一度しつこいようでありますがお尋ねします。この点は昨日芦田氏もお尋ねになつたのでありますけれども、尋ねる方も答える方も、何か歯にきぬをきせたような応答であつたと思いますので、私どもももやもやとした感じがまだとれておりません、そこではつきりひとつお尋ねしてみますが、この安全保障條約の中に書いてあります「日本が自国の防衛のため漸増的にみずから責任を負い得るような條件をつくる」ということは、軍備を再建するということではないのでありましようか。この点をはつきりと私ども国民としてお聞きしたい。
○吉田国務大臣 はつきり申しますが、これはいろいろの意案含んだ広義なものであります。
○黒田委員 それではそのいろいろな條件の中に、軍備の再建というものも含まれているかどうか、その点を質問いたします。
○吉田国務大臣 特に軍備を含むとかいうような、具体的な話はまだいたしておりません。
○黒田委員 まあこれはこの程度にしておきます。何べん繰返しましても今言うようなお答えしかなさらぬだろうと思いますから……。 そこで次の問題をお尋ねいたしたいと思いますが、その前に、ちよつと中間的にお尋ねしておきますが、日米安全保障條約が一種の軍事條約であるということは、これは政府もお認めになると思いますがどうでありますか。
○吉田国務大臣 お尋ねは軍事條約……。
○黒田委員 軍事的性質を持つた條約であるかということ……。
○吉田国務大臣 軍事的性質は持ちます。
○黒田委員 ちよつと聞き漏らしましたが、もう一度……。
○吉田国務大臣 アメリカの駐兵を許しておるのでありますから、軍事的性質を持つております。
○黒田委員 そこで今までの質問応答で、本来の安全保障條約ではない、しかもそれにもかかわらず、一種の軍事的な條約であるということがわかつたのでありますが、その次に私ども国民として真剣に考えてみなければならないと私の思いますことは、しからば一体この條約の性格は何であろうか。私どもは政治家として物事をいい加減に考えることは許されない。あくまで真相を突き詰め、真実を発見するという態度で国会におきましても働かなければ、議員としての役割を果すことはできないと考えます。そこで安全保障條約でないとすれば一体何かということを私は考えてみた。自助の力もなく、相互援助の力もない状態で、しかもそれは軍事條約でいるというようなものを締結するときに、その條約の性格は一体どんなものになるか、これを私は考えてみた。これは言うまでもなく、当方としては義務があつても権利はたい。先方様は権利があつても義務がない。こういう根本的な性格を持つ條約に落ちて行くよりほかには行きかたがないものであるが、事実私は日米安全保障條約の内容を見て、米国とわが国との権利義務の関係は、まさにこの通りになつていると考えるのであります。これについて政府はどういうふうにお考えになりましようか。多少私の説明が極端であるかもしれませんが、必ずしも今申し上げましたように日本には権利が全然ない、向うにはまた権利ばかりあつて義務がないとは申しません。けれども事の本質から見れば、とにかく日本の方には権利はなくて義務ばかりある、向う様には権利ばかりあつて義務はない、大体本質的にこういう性格の條約になつている。こう私は考えますが、一般論としてどうでありましようか。
○吉田国務大臣 いろいろ御議論もありますが、私はそう考えません。もし日本の平和が脅かされたとか、あるいは日本の治安が第三国の進出あるいは威嚇等によつて脅かされた場合には、日本としては当然米国軍を要求する権利がある。これに応ずべき義務がアメリカにはある。これは相互的な権利前務があるからこそ、ここに條約ができておると考えるべきであると思います。
○黒田委員 この点につきましては、きよう私はこれ以上総理に御質問いたしません。私は総理とは見解が違いますけれども、これはまた他の機会に條約局長にでも少し詳しく聞いてみたいと思ひます。そこで私は今申しましたように、一種の軍事同盟でありながら本来的の安全保障條約でない。わが国に権利がなく、相手ばかり権利を持つておる、こう申したのでありますが、私はこの見解から議論を進めるのでありますから、そのようにお考え願いたいと思う。 そこでこの安全保障條約の内容はこのようなものである、その本質はこうだというふうに考えてまゐりますと、一体その性格は何になるか、この疑問がなお私どもの頭に残る。政治家の良心はこれを探求せしめねばやまないのである。そにで私はこれをやつてみた。昨日芦田氏は総理に対する質問の際に、日米安全保障條約のような内容を持つ條約の例を知らない、こう言われた。芦田博士の博学をもつてしてなおその例がないと言われた。それは安全保障條約という名前を持つておる條約の中に先例を見出そうといたしますから、そういう條約の中には今回の日米安全保障條約のような屈従的内容を持つたものはない、こう言われる意味であろうと私は考えるのであります。私どもはこの点は芦田氏と同意見である。そで方面をかえて先例を探してみなければならぬというとろに私は来た。どういう先例を探求すべきか、私は安全保障という名称にとらわれないで、その実質から見て、この條約が非常に従属的性格を持つておるその面に目をつけて、こういう見地から私は過去の條約について先例を調べてみた。そうすると私は先例がないのじやなくてあると思う、確かにある。実にあるのであります。共産党の諸君は日満議定書の例をよく引用されます。私から見れば、なるほどそれもある程度の類似性を持つておりますが、もつと多くぴつたりした類似性をもつものが、私の目から見ると、あると思う。もつと適切な例を私は指摘することができると思う。私は過去の條約集を、根気を出して年代的にさかのぼつて、先にくとページを繰展げて調べて参りましたところ、実に今から約五十年前、明治三十七年の日韓保護條約の例に私は到達したのであります。私はこの條約に目を通したときに、実にこれだと思つた。実によく似ておる。今ごろになつて保護国というと諸君はおかしいと思われるだろう。国際関係におきましてそういうものは次第になくなりつつあります。今はもうほとんどないといつてもよろしいでしよう。ところがこの日韓保護條約の例に、この日米安全保障條約の例が実によく似ておる。この日韓保護條約は、名前のごとく、韓国が日本の保護国となつたときの條約であります。それは実に約五十年近く前のことである。幾昔も前のことであります。そして、それがやがてその次には日韓保護協約となりまして、それからその次には明治四十三年にいよいよ韓国併合條約、こういうところに行き着いてしまつた。もとより私は日本がそういうところに落ちるとは思いません。けれども韓国がこのようなところに落ちて行く、その過程に、日本に保護を求めるという條約が、韓国と日本との間にできましたその條約に今日の條約は実によく似ておると思う。そして朝鮮は、今私が申しましたような三つの條約の成立の過程を経て、結局日本の資本主義侵略の手中に落ち、遂に日本の植民地となつてしまつたのであります。そうしてあの長い苦難の経験を経て、太平洋戦争の後に今や独立に向つて進んでいる、その途中でまた今回私どもが見ておるごとき苦難の道をたどりつつあるのであります。しかしとにかく朝鮮の向う方向は、独立への方向であるということだけは私ども大づかみに認めることができる。しかるにわが国は、これからかつての韓国のごとき状態に陥れられるような條約がここでできるのではないか、何という情ないことであるかと私は思う。今私はここで両條約の内容を諸君の前で対比してみます。この條約はあまりにも古い昔の條約でありますから、最近の條約集を買つてみてものつておりません。私も一生懸命古本屋を歩いて、本郷の古本屋でやつと古い條約集を見つけてそれを見たところが、この條約があつた。そこで私はいかに両條約の内容が、共々に、みじめなものであるかということを明らかにいたしまして、吉田総理の御意見を承りたいと思うのです。日米安全保障條約というと、私どもはむしろ日本の利益になるような條約であると思つております、けれども、日韓保護條約のような保護條約と言われてみれば、これは考えてみなければならぬということになるのではなかろうかと私は思う。そこで私は、日韓保護條約はごく簡単な條約でありますから、参考のために日韓保護條約と日米安全保障條約の内容を比較してみたいと思います。日韓保護條約はわずかに六箇條にすぎません。それから日米安全保障條約は前文のほかに五箇條であります。しかしこのような條索の数がよく似ておるというようなことは、これは本質的な問題ではありませんので、ただこれだけのことを申し上げて、さて内容上はどうかということを私は申し上げてみたい。 日韓保護條約の第三條に「大日本帝国政府ハ、大韓帝国ノ独立及領土保全ヲ確実二保護スル事。」こういうな條文がありますが、日米安全保障條約にもやはり「日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。」アメリカは「この希望をかなえてやる、」こういうことになつておりまして、ちようどこの第三條のような関係が示されておるのであります。 それから日韓保護條約の第四條に「第三国ノ侵害二依リ、若クハ内乱ノ為、大韓帝国ノ皇室ノ安寧或ハ領土ノ保全二危険アル場合ハ大日本帝国政府ハ速カニ臨機必要ノ措置ヲ取ルヘシ。而シテ大韓帝国政府ハ右大日本帝国政府ノ行動ヲ容易ナラシムル為、軍略上必要ノ地点ヲ臨機収用スル事ヲ得ル事、」この点が日米安全保障條約に非常によく似ておるのであります。わが国とアメリカとの場合もやはり内乱問題が取扱われている。「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、」云々という言葉がありますが、ちようどこの日韓保護條約の第四條にこれと同じことが書いてあります。それから今も申しますように、日本国政府が必要の場合臨機の措置をとるということと同様なことが、日米安全保障條約の中に現われておるのであります。 それからなおよく似ておるところがある。それは日韓保護條約には、「両国政府ハ相互ノ承認ヲ経スシテ後来」―今後のことでありましよう。「後来、本協約ノ趣意二違反スヘキ協約ヲ第三国トノ間二訂立スルコトヲ得サル事」こういうように書いてありますが、これも安全保障條約の第二條の「第一條に掲げる権利が行使される間は、日本国は、アメリカ合衆国の事前の同意なくして、基地、基地における若しくは基地に関する権利、権力若しくは権能、駐兵若しくは演習の権利又は陸軍、空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない。」と書いてあります。これも非常によく似ておる。 それからもう一つよく似ておることがある。これで最後であります。ごく短かい。日韓保護條約の第六條にこう書いてある。 「本協約ニ関聯スル未悉ノ細條ハ大日本帝国代表者ト大韓帝国外務大臣トノ間二臨機協定スル事。」これは日米安全保障條約の第三條に「アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両政府間の行政協定で決定する。」こう書いて以るのとよく似ておるのであります。ほとんど日韓保護條約の全部が、ちようどこの條文も同じほどの数でありますが、ぴつたりと日米安全保障條約に当てはまる、生写しということがありますけれども、私は写せると思う、合せてみれば同じだと言えると思う。私はこういう條約があるということを発翻したのであります。私はこの條約を見て非常に深い感慨に陥れられざるを得なかつたのであります。年代があまりにかけ離れておりますから、人々は注意しないことでありましよう。けれどもその本質を調べてみると、このような類似点があるということは私どもも無視することができません。このような日韓保護條約があつたということは、これは政府もよく知つておいでになると思ひますから、こんなことがあるとかないとかいうことを質問する必要はないと思います。が、一体講和とは何であるか、講和とは日本が独立することであります。その日本が独立しようという講和條約の中から日米安全保障條約というものが出て来た。その安全保障條約の内容が実にかくのごときものであるということを見たときに、私どもが率直に考えてみて、国民の一人として、これが独立のための條約であるというように一体考えられるでありましようか、私には考えられない。おそらく吉田総理は、そうお考えになつたからあの平和條約と安全保障條約に調印して帰られて、そして今、国会にその承認を求めておいでになるのであると考えますが、私がどうしてもこれに賛成する気になれないのは、この條約のかくのごとき本質を知ることができるからであります。どうでありましよう、こういうように考えて行くと、どうも私は日本がアメリカの保護国的地位に落される條約になるのじやないか、そう思われるのであります。これは政府に質問いたしましても、まさか政府はそうだとはおつしやらないでありましよう。だから私は質問はしませんが、私の結論だけは申しておきます。政府がどう考えられましようとも、私はそう考える。こういうように考える国民もおるということだけは、吉田さんも、また自由党の諸君もよくお考えください、それでよろしい。質問は致しません。そうして、こういうところに落されて、それで独立だ独立だといつておることが、はたしてほんとうに日本の独立のためになるかどうかということを、私は心から御反省を願いたいと思う。元来私ども国家の種類を――今私がここで講義する必要はありませんが、国家の種類を考えますと、一方において主権国があり、その反面において非主権国あるいは半主権国、不独立国というものがあるのであります。私はこのような條約の、すなわち安全保障條約というけれども、実際上の安全保障條約ではなくて保護條約である條約のもとに日本人が生きてゆかなければならぬようになつたときに、一体日本は主権国であるか、それとも非主権国でないとしましても半主権国、少くともこういうところに落されてゆくのではなかろうかという心配を私は持つのです。この憂慮は私だけが持つのでありますならば幸いでありますけれども、わからないからそう考えていないだけで、わかれば私と同じような心配を持つ国民がこれからどんどんとふえて来ると思う。私はそう考えざるを得ないのです。そこでこのような條約は――これは質問して答えは得られないと思いますけれども、私から見れば半独立国くらいに日本がなる條約にすぎないと思うのでありますが、念のために総理の御見解を聞いておきたいと思う。
○田中委員長 この際ちよつと黒田君に申し上げます。総理大臣は四時からやむなき所用のために退席されるとのことでありますから、もう御承知のことと思いますがさよう御了承願います。
○吉田国務大臣 私の言うことは、黒田君には承諾あるいは是認されないと思いますが、念のため申します。今度の安全保障條約は、日韓議定書ですか、それをお手本にしてつくつたものではなくて、全然新構想でつくつたものであります。先ほど申した通り、日本が独立する、その独立をどうして守るか、日本には防備はない、その真空を埋めるためにこの保障條約をつくつたのであつて、日韓議定書を調べてつくつたものではないのであります。また当時の日本政府の気持と申しますか、状態、あるいは朝鮮の状態と、日本の今日の状態とは全然違うので、われわれの将来が日韓併合と同じようなことになるとは、第一アメリカ政府がそういうふうに考えますまいし、われわれもまたされようとも考えませんから、この点は御安心になつてしかるべきものだと思います。
○黒田委員 もとより吉田総理がおつしやいますように、日韓保護條約ができてそのあとに訪れた韓国の運命を、わが国が受けなければならぬようなことになろうとは私どもも考えておりませず、またそうならぬよう努力しなければならぬと思う。けれども今はあの当時よりもつと恐しい世界戦争というものがあるのです。あの時分にはこれほどの恐怖はなかつた、これほどの破壊のおそれはなかつた。けれども今やそういう我等のおそれがある。だから形の上で、必ずしも日韓保護條約が日韓保護協定になり、合併條約になつたというような途はふまなくとも、このような日韓保護條約的な條約の中に日本が引き込まれて行くと、日本の意思にあらずして外国と外国との戦争に巻き込まれる可能性を発生させるというようなことになつてしまう、そうなれば、この日韓保護條約の将来よりももつと恐ろしい将来が日本を訪れはしないかという心配もあり得るのであります。 今日は私はなおいろいろと総理に御質問申し上げたいことがございますけれども、委員長の御注意もありましたし、次会に総理に対する質問の機会をもち得ることを希望いたしまして、今日はこの程度で終了いたします。
○田中委員長 これより午前中に留保されておりました塚田君の大蔵大臣に対する質疑を継続いたします。塚田十一郎君。
○塚田委員 午前に引続きまして質疑を続けさしていただきます。 午前中お尋ねいたしましたところで、大体賠償のわくをきめる輪廓というものが、内容は決定はいたしませんでしたのでありますけれども、抽象的には一応わかつたということになつたと思うのであります。そこでそういうことを頭に置きましていろいろこの賠償の問題を考えてみますときに、問題になります一つの点は、この賠償債務が十四條の規定によつて他の債務の履行と同時に行われるということを前提にしておるということが一つの点であり、それから賠償は、相手方たる連合国に生じさせた損害苦痛、これがないときはもちろん賠償債務は発生しないのでありますが、かりにその損害苦痛があつたとしても、その全部を賠償するという考え方ではなくつて、ある標準によつて測定した日本の能力を基準にして賠償額がきめてもらえるということになる場合に、今度の條約にまだ調印をしておらない国との賠償の権衡の点、この二つの点が非常に問題にたつて来ると思うのであります。そこで未調印国の賠償の問題から先にお尋ねしたいと思うのであります。私ども悠約をいろいろ読んでみまして、もちろんこの條約の上からは調印をしておらない国は、この條約に基く賠償請求権は持つておらない。しかし当然の條理として賠償請求権をそういう国も持たないとは言えない。あとでそういう国がわれわれとこの條約と大体同じ程度の内容の條約を結びますならば、やはり同じような請求権を持つに至るであろうということが想像つくわけであります。そうするとそういうわれわれに対して賠償を要求しておる国としてはまずビルマがある。そこでビルマの賠償というものを、われわれは賠償折衝をするときに考えておかなくちやならぬ。それから條約の上からは韓国はわれわれに賠償請求ができるとは思わないのでありますが、この点も政府はどういうようにお考えになつておるか。それから一番問題になりますのは、ソ連の賠償請求権であると思うのであります。この十四條の規定の表明の仕方からいたしますと、ソ連の賠償請求権の内容というものは、ソ連の中にあるわれわれの財産ということに限られると思います。私も正確なことは承知しないのでありますが、役務賠償を請求する権利を持つ相手方としましては、現在の領域が日本国軍隊によつて占領された国でなくちやならぬ、こういうことになつてありますから、おそらくソ連には役務賠償の請求権というものは将来とも出て来ないと思うのでありますが、そうした場合に、昨日もちよつと問題になりました、ソ連が満州国及び北朝鮮から持つて行つた財産の処理はどういうことになるのか。昨日の大蔵大臣の御答弁では、それは、われわれのものではない、もうどこか他の国のものであるという御答弁であつたように記憶いたします。聞き漏らしてまことに恐縮でございますが、とにかくわれわれには発言がないのだというように御説明になつたように思うのでありますが、私はこれは違うのじやないかと思う。條約にははつきりと、在外資産で賠償に充てるのは、この條約の最初の効力の発生のときにその管轄のもとにあるもの、こういうように書いてあるのでありますからして、満州国及び北朝鮮にあつたわれわれの在外資産というものは、どの中国とわれわれが條約を結ぶことになるかどうかはわかりませんが、かりにどちらと結んだにしましても、中国の賠償というわけには行かない。そうすると、一体ソ連に持つて行かれたものは、ソ連の賠償にもならぬと思うし、中国の賠償にもならぬと思う。そうすると、われわれはあの財産に対してまだ発言権を持つておるのだ、こういうことになりはしないかと思うのであります。しかし発言権は持つておりましても、ソ連に行つておるのでありますから、これをどういうぐあいに解決するのかというようなことも、考えなくちやならぬ。これは條約の詳細に関することでありますので、條約局長に御答弁を願えばけつこうだと思います。
○西村(熊)政府委員 この條約に調印しなかつた国との賠償問題は、結局第二十六條によりまして、こういう連合国と日本との間に、この平和條約と同一の、または実質的に同一の平和條約ができましたときに、解決されるべきものであります。従つて第二十六條の規定によりますと、第十四條の(a)の原則に従つて解決されるということになると思います。 第二の御質問の点は、ソビエトがかりにこの平和條約と実質上同一の平和條約を日本と結んだ場合に、賠償請求権があるであろうかということであつたと思います。この点は、今度の戦争中、日本はソ連の領域を占領した事実もございませんし、損害、苦痛を与えた事実もございませんので、ソ連としては第十四條(a)による賠償を請求する根拠はないと考えております。また満州国における日本の財産がどうなるかということでございますが、日本政府としては、それは中国が留置、精算をする権利を持つておる財産であると考えております。三月の米国案におきましては、連合国の一が他の連合国の領域にある日本財産を処分した場合には、処分した連合国が所在国との間に勘定をつけなければならぬという條項がありましたが、おそらくこれは中国政府の要請によつて挿入された條項かと私ども推察いたしておりましたが、七月の米英合同案ではその條項は落ちました。
○塚田委員 事柄の解決の仕方は了承したのでありますが、そういうことになりますと、この在外資産の賠償を規定した十四條の(a)項の2号のと(1)いうものの表明が、少しく当らぬように思うですが、その点はどうなのですか。
○西村(熊)政府委員 ちよつと御質問の趣旨をとりかねましたが……。
○塚田委員 在外資産が賠償になるという場合には、その在外資産が「この條約の効力発生の時にその管轄の下にあるもの」ということを書いてある。そういたしますと、中国にあるものが―おそらくこの條約の最初の効力の発生はこれから何箇月か後でありましようが、そのときには中国の管轄のもとにはない、こういうことにならざるを得ないと思うのですが……。
○西村(熊)政府委員 御解釈通りかと思いますが、いずれにしろこの問題は連合国間の問題でございますので、私どもとしてはただいまは意見発表を差控えたいと思います。
○塚田委員 それではその程度にいたします。 そこで未調印国の賠償を頭に置いておかなければならないということになると思のでありますが、すでに講和條約の調印が終りまして、しかも相手国によつては、批准前にある程度賠償の内容を具体的にしたいという希望が非常に強いように承つており、また政府当局もぼつぼつ個別に賠償折衝に当つておられるように拝聴しておるのでありますが、そういう場合に、現在の未調印国の賠償というものを頭に置いて御折衝願つておると思うのでありますが、その点はどうか。またそういう問題がおそらく非常に将来問題を起すだろうと思いますので、ある程度賠償額が個別に話合いのついたときに、それを最後に総合するというような措置を何かお考えになつておるかどうか。この点を大蔵大臣にお尋ねいたします。
○池田国務大臣 お話の通りに、未調印国との問題もある。また調印した国におきましても、いつ批准をするか、全部批准するかどうかという問題もあります。たとい調印国が全部批准いたしましても、個々に折衝いたします場合におきましては、相手方の状況ばかりではなしに、他の相手方の状況も考えなければならぬことはお話の通りであります。はたして今交渉に当つておるかと申しますと、私に関する限り当つておりません。交渉に当る場合においては、批准国、調印国、または調印しない国、また招請を受けなかつた国等につきまして、総体的に考えて行かなければならぬと考えております。
○塚田委員 次にお尋ねいたしたいのは、他の賠償請求権、賠償債務と同時履行の債務というものについてでありますが、この同時に履行する債務のうちで、特に非常に微妙な関係を持つと思われますのは、私どもが終戦後アメリカから頂戴いたしましたところの例の援助資金に基く債務であります。これは大蔵大臣も先般来はつきり債務としてあるのだということを御言明になつておりますし、またこの十四條の(b)項の「請求権を放棄する」という債権の中には、「直接軍事費に関する連合軍の請求権」とはつきり書いてありますから、こういうものは含まれない、従つてこれは放棄されないのだから債務として存在するのだということになると思うのであります。それはまた事柄の性質上から常識的に考えても、いただいたものはただもらつておくという手はないと思いますから、お返しすべきであると思うのでありますが、ただ援助が債務になるのかどうかということは、初め私どもが援助を受けた時分からの考え方の径路をずつとたどつてみると、少し考え方に違いが出て来たんじやないかというように思うのであります。私どもは、まつたく素朴な考え方で恐縮でありますけれども、初めの時分には、アメリカが敗戦国の私どもに援助を持つて来るというのはどういう気持なんだろうかという幸うなことで、これはやはり管理をする上に直接の軍事費として持つて来るか、援助費として持つて来るか、どちらか二者択一ということで、両方合せて適当に日本の管理のしいいように出しておられるのだろう。これはまあ私個人のごく素朴な考え方でありますから、あるいは好意をもつてやつていただいたアメリカに対してたいへん失礼な考え方になつているかもしれませんが、とにかく考え方の経路としてはそんなように考えておつた。そうしてまたアメリカの国内の援助資金の予算上の扱いを見てみますと、なるほどアメリカの方でも、これはアメリカ国民から税金でとつたものをグラントとして持つて来るんだ、こういうように書いてある。われわれの国の予算の実例を見ました場合でも、これはインヴエントリー・フアイナンスというように、出資の形、投資の形、あとで返つて来る形のものはそのようにちやんと処理してある、一旦出て返つて来ないと考えるものは、ちやんとそのように処理してあるというような予算の扱い上の例から見ても、これはいただかれるものじやないのだろうかというような考え方も実はしていたわけであります。それからまたこれも実に素朴な考え方でありますが、私どもが終戦後この方終戦処理費というものをいろいろ出した。しかし終戦処理費も一年や二年はいいが、五年も六年も続いて出すということはどうもおかしいじやないかというような疑問がだんだんと国民の間から出て来たときに、われわれもそれはもつともだが、一方でわれわれは援助を頂戴しているのだから、ということも実は考えていたわけであります。そうすると、私どものそういうまことに率直な表現をいたしました場合の気持では、援助債務というものは、将来何とかアメリカの御好意によつて考えてもらえるのじやないか、というように考えていたわけです。それがしかし今度の條約では、はつきりあるのだということになつたのでありますから、これはあるのがあたりまえであり、私どもが今までそのように考えておつたのが間違いだつた、甘かつたということになる。その点は私も了承しておく。そこでこれを返さなければならない。幸いなことに、この援助に基く債務というものは、例のドツジさんが日本にお出でになつた初期のころから、これはただもらつたものだと思つておつてはいけない、お前の方で将来返す心組みでなければならないというようなお含みであつたと思いますが、これを見返り資金という特別勘定にちやんととつておけ、こういうことになつた。それを私どもがその通りにいたしまして、見返り資金という勘定で、これは投資ということで、使い道もはつきりして使わしていただいている、ということになつているわけであります。ただその前は何ということなしに、私どももこれは予算面のからくりの上で、いろいろな補給金の変態的なものとして使つてしまつた、こういうことになつた。そうすると、お返しをいたしますにしても、あの援助見返り資金の特別勘定をつくつたあとの分は、割にこれははつきりしておつたし、債務としてお返しするのはあたりまえだし、またできるのではないか。引き当てがある。その前のものは少し性格が違うから、これはそれだけでも何とかしてもらうくふうがないのだろうかというようなことも、実は考えられるわけです。そんなようなことをいろいろ援助債務について考えておるわけです。これは繰返して申し上げますが、国民の素朴な気持を代弁しておるだけでありますから、どうかその点御了承願いたいと思うのであります。援助債務についてはそういうふうに考える。そこでこれは返さなければならないにいたしましても、さてこの援助債務というものを頭において考えますときに、この債務と賠償債務とが一体優先の順位があるかどうか。これは繰返して申し上げますが、今度の賠償は、日本人の現在の能力というものを基準にして考えていただく。そうすると、現在の能力というものは、終戦この方これも正確にはどれくらいの数字になるのか、世上二十億ドル程度と伝えられておりますが、この二十億ドルの援助によつて持つて来たものがあつて、われわれの今日の賠償の能力というものができている、こういうようにも言えるわけであります。そうすると賠償能力というものは援助資金があつてここまで来たのだから、もしこれも返す債務であるとすれば、これは援助債務の方が優先するのか、どうもりくつではそう考えざるを得ないと思う。この点ひとつ政府はどういうようにお考えになつておるのか伺いたい。
○池田国務大臣 なかなかやつかいな問題でございます。まず対日援助は債務かどうかという問題につきましては、お話の通りわれわれは債務と心得ております。向うの予算ではお話のようにグラントとして相当な部分があると思います。今までの例を見ますと、イタリアにおきましては講和條約後アメリカが一方的に放棄いたしております。西ドイツの問題につきましては、今まででも、援助がありましたならば、五%はその都度ドイツの物資をアメリカに持つて行つております。先般来この五%が一五%ふえまして二〇%に相なつたと聞き及んでおるのであります。日本はそういうことはございません。そこでどれだけ拂わなければならないかということは、今後の問題であると思うのでありまするが、西ドイツにつきましては、はつきり債務を確認しております。われわれはそういう例を考えまして債務と心得ておると言つておるのであります。できれば拂いたいと思います。 次にそれでは賠償と対日援助とどちらが優先するかという問題につきましては、各国におきましていろいろな説があるのでありまするが、私の想像するところでは、はつきりしたことは申し上げません、各国によつて考え方が違いましようが、アメリカにおきましては、援助費が優先するという考え方が多いように聞いております。多数と聞いております。しからばその次に、もし優先するとした場合に、賠償請求国がどういう態度に出るか、また優先した場合に、お話の通りに―これが二十億ドル、十九億ドル、十八億八千万ドル、いろいろなあれがありますが、大体十九億程度でございます。これをどういうふうな拂い方にするかが問題になつて来ると思います。私は対日援助費と賠償が同時履行とまでは行きませんが、先ほどお話になりましたように、賠償の問題を考える場合において、対日援助の問題はそのうらはらになつて来るのではないかと思います。ことにこれはあとで質問があるかもわかりませんが、一緒に答えておきますが、外債の支拂いの問題につきましても、これは追加負担という言葉が使つてありますが、他の連合国に外債の支拂いが追加負担になるやならぬかという問題もあるのでございます。こういう点は、よほど今後の賠償請求国と、そうして対日援助による債権を持つているアメリカ、それから外債の債権を持つております英仏等との非常に複雑な関係が出て来るということは前もつて考えなければならぬことだと思います。
○塚田委員 大体賠償の問題については以上でお伺いしたように思うのであります。なお詳細は、今後においてまた逐條審議のときにお伺いいたすこととして、最後にひとつ例の中間賠償というものが約一億六千万ドル程度行われておるということを承知しておるのですが、これがどんなぐあいになつておるのか。全部履行済みなのか。それからまた伺うことができれば、そういうぐあいに履行したものがほんとうにうまく相手方の国でそれだけの価値に利用されているかどうか。こんなことはよけいなことのようでありますが、うわさによれば、ああして機械類を持つて行つても、あまり役に立つていない面もあるというようなことも聞いているので、もしそうであるとすれば、将来の賠償の形なんかにも何かの参考になると思うのであります。この中間賠償のことについて……。
○池田国務大臣 中間賠償とは、終戰直後から二、三の間に日本の施設を持つて行つたことと考えておりますが、その金額につきましては、今つまびらかに私承知しておりません。またそれが持ち去られて、いかに利用されているということにつきましても、いずれ調査いたしましてお答えをいたしたいと思います。
○塚田委員 それでは、次に在外資産の問題に関連いたしまして、中立国及び枢軸国にある財産の処分の問題を少しお尋ねいたしたいと思うのであります。これも大体のことは、すでに同僚の委員からお尋ねしておるので、お答えを得た面もあると思うのでありますが、たた私どもは、一体在外資産というものが、今度の講和條約でとられたということ自体、これに少し問題が去るという議論が世間に相当根強くあることを承知しておる。そうしてそういう人たちが論拠といたしますところは、一つはへーグ條約の二十三條である。それには、戦争の必要上万やむを得ない場合を除いては、敵の財産を破襄したり、または押収することをしてはならないと書いてある。それからまた国連憲章の第五十五條には、基本人権の尊重ということが書いてあつて、個人の財産権は基本人権の最も大事な一つであるから、そういう意味においても、やはり今日の国際法上の観念から、これはどうもおかしい。それからして、そういう気持を持つておればこそこの條約の中に、連合国人の財産はお返しをしろ、また損害を与えたものは補償しろと書いてある。それからまた日本国憲法の二十九條も、そのような趣旨で私有財産の大事だということが書いてあつて、私有財産は正当な補償のもとにのみ公共の用に供することができると書いてある。そういうようないろいろな考え方からして、大体外国にある個人財産、この場合には国の財産は一応抜けて考えられると思うのでありますが、個人財産が賠償に持つて行かれることの考え方に、どうも少し無理があるのではないか、しかしそれも一応連合国にあつたものは、まだ実際上とられる感じが幾らか出て来ると思うのですが、中立国にあつたものの場合には一層そういう感じがする。それから、中立国にある財産を赤十字国際委員会に渡すのだと書いてあるが、国際委員会というものが、その性格上、個人の権利を侵害するようなことをやるだろうか、これは拒むのじやないかというようなことも考えられる。私は不幸にしてそういう点の詳細についてよく承知しないのでありますが、これはひとつ條約局長からこの辺の点をお聞かせ願いたいと思います。
○西村(熊)政府委員 賠償に私有財産を充当されることは、一八九九年、また一九〇七年のへーグの陸戦法規に規定してあります私有財産権の尊重という原則から見ておもしろくないということは、国際法学者のよく言うところであります。しかし、私有財産尊重の原則は、一九〇七年のへーグ万国平和会議当時に予想されたような戦争とはまつたく性質を異にしました第一次戦争の結果、ヴエルサイユ平和條約においてはくずされまして、賠償の資源としてドイツ人その他戦敗国人の私有財産が戰勝国によつて清算されたことは事実であります。むろん第一次世界大戦以上に苛烈な性質の近代戰でありました第二次世界大戰におきましては、やはり賠償の一資源として、施設撤去と連合国にある財産を接収することになつて来ております。従つて、近代戦争の性質の変化につれまして、十九世紀末ないし二十世紀初頭に考えられたような戰争法規がおのずと変更を加えられつつあるというふうに考えて行くべきものであろうと存じます。また中立国にあります私有財産を、平和條約によつて戰勝国の利益のために提供するということは、今塚田委員がおつしやいましたように先例もないところであるし、はなはだ受けにくい事柄であります。政府におきましても、その趣旨のことをるる陳情いたしたわけでございます。ことに公有財産はともかくとして、中立国にある私有財産を平和條約によつて戰勝国が取上げるというようなことはおもしろくない、はなはだ国民感情としても受けがたいこととであるいうことは衷情を披瀝して陳述したところでございます。しかし連合国側としては、何と申しましても、今度の戦争中において、日本によつて抑留された捕虜の待遇があまりに苛酷であつたがために、精神的、物質的に受けた損害について何らかの補償を日本政府が喜んでするということが絶対に必要である。今度の平和條約を成立せしむる意味において、日本政府の立場は了とするけれども、これはぜひ断行してもらいたい。結局それを日本政府が心よく受けるということが、要するに今回の平和條約を成立させ、それによつて連合各国の一部に存在する対日悪感情を一掃して、友好提携関係に入る第一歩であるということを懇々と説明された次第であります。そういつた趣旨で、政府においてはやむを得ないと考え承諾したわけであります。国際赤十字委員会といたしましては、人道、博愛のための国際機関でございますので、第十六條の目的が、戰争によつて特に被害を受けた軍人捕虜に対する救恤事業である性格から考えまして、必ず喜んで引受けてくれるものと日本政府は予期している次第であります。
○塚田委員 條約局長の御説明によりまして、国の立場として何かのものを連合国人の補償になすということは十分私も了承できるのであります。ただそれによつて、財産を没収される国民の立場に立つて考えてみると、ちよつと感じが違つて出て来る、こう言わざるを得ない。ことに先般同僚委員から、在外資産の没収を国が補償するのかということをお尋ねしたときに、大蔵大臣はとてもできないというようなことを御答弁になつた。そこで補償ができないということになると、たまたま中立国に財産を持つておつたということのために、もろに損害をこうむらなければならない。国の方はそれで立場が立つたが、個人はたまらない。国民相互の間の負担の平等という考え方からも、これは少し変になる。そこでこの十六條の規定を読んでおりますと、選択によつて等価なものを渡してもよいと、こういうように書いてある。これはどちらでも選択しで、中立国にあるものそのものを渡してもよいし、等価なものを渡してもよいとあるのだから、せめて中立国に財産を持つていられた方々の分くらいはこの選択により等価なものを渡すということにして、そうしてその負担を、国の全体の予算の中から国民平等に負担するということにしていただく、そういうことにしていただいた方がいいんじやないか。そこでついでに、一体中立国にあつて、こういう目的で没収される運命になつておる個人資産がどれくらいあるのか、その点をお聞かせ願い、あわせて今の質問に対してお答え願えれば非常にありがたいと思います。
○池田国務大臣 この前お答え申し上げた点は、主として連合国にあるものを主体にして答えたのであります。中立国にありまする財産につきましては、ただいま條約局長から話してあるように、今までに例のないことであるのであります。従いまして中立国の財産につきましては、十六條に等価のものを返すということがございますが、私は連合国にある場合と違えて考えなければならぬかどうかというような問題につきましては、相当研究を要すると思います。 また在外財産につきましても、全然補償しないという答えではないのでございます。戦争中に政府が負いました債務を戰後補償特別税でほとんど切つてしまつたり、あるいは預金その他の債券を金融機関再建整備法で相当痛めつけた、こういう問題もございます。また在外財産中相当額に上りますので、今の日本の財政経済の現状としては、なかなか困難な問題であるというので研究いたしておるのであります。従いまして中立国にある財産で、今回特に條約によつて赤十字委員会の方へ行つた財産をどうするかという問題は、今後研究しなければならぬと思います。私の記憶ではフランスに国際決済銀行の株がございます。これがほとんど大部分だと思います。スペインあるいはポルトガルにあるかもしれませんが、ありましてもその金額は大したものでないので、多分千八百万ドルくらいかと思います。これは正確ではございませんが、その程度でございます。
○西村(熊)政府委員 先刻の答弁の中で、一つ落しましたから追加させていただきます。 十六條によりまして、中立国にある財産を引渡すということの困難性を、日本政府におきまして陳情いたしましたに対しまして、いま一つ日本政府の再考を求められた理由がございます。それは現在すでに中立国にあります日本の財産というものは、連合国によつて凍結管理されておる。しかもその管理者の中にソ連邦が参加しておる。従つてかりに日本政府においていかにそれがいやだと言われても、またアメリカとして日本政府に同情的に考えても、実際問題としてソ連邦においてこれを離すことはあるまい。この実情をも考慮に入れて善処を望むという話があつたのであります。
○塚田委員 ただいまの御説明によつてまた新しい疑問が出て参つたのでありますが、大蔵大臣の御説明の中の、約一千八百万ドルとおつしやつたのは、例の国際決済銀行の株が約四百万ドルくらいあると聞かされておるのでありますが、それが入つての数字でありますか。
○池田国務大臣 国際決済銀行の分は入つていないかと思います。
○塚田委員 條約局長の御説明で疑問を生じました点は、そういたしますと、十六條の等価なものを選択し得るということは、選択し得るじやなく、実際問題として凍結しておつて離さない連合国があるから、当然そういう場合には等価なものを選択してやらなければならないというような、條約上の結果になるのでございましようか、その辺はどうなんですか。
○西村(熊)政府委員 そういうことではございませんので、等価物と書いてあつて、等価物を引渡すかどうかの選択権は日本政府にあるのであります。
○塚田委員 條約の表面の解釈はその通りでありますが、具体的な例を申し上げますと、こういうことがものによると書いてあるのであります。スイスにある日本人財産はこれを凍結されておる。またポルトガルにあるものも法律によつて移転及び名儀変更が禁止されてかる。そうするとそれらの国が凍結ないし禁止を解いてくれない限りは引渡せない、そういうことになると、それだけの価額のものを、やはりこれはこの場合には選択でなしに、義務として渡さなければならなくなるか、そういう点なのであります。
○西村(熊)政府委員 御質問のような中立国がそういう処置をとつておるのは、連合国の要請によつてとつておる次第であります。
○塚田委員 了解いたしました。それから、先ほどの大蔵大臣の御説明で、連合国にある個人資産で没収されたものに対して、全然補償しないというようにはまだ考えておらぬのだという大臣の言明を、私どもは非常に注意をもつて承つたわけであります。 そこで次に外債の問題に入りたいと思うのでありますが、どうもこの外債の問題は私どもいろいろ書類でもつて調べてみますと、発表されておる数字がものによつて違うのであります。たとえば、私が見ました二つばかりの資料でも―これは出たところをはつきり申し上げておく方がいいかと思うのでありますが、外務省情報部監修、日本週報社発行の「これからの日本」という書物の八十ページには、昭和二十六年の六月末の未償還額は元利合計で三億八千百万ドルだと書いてある。ところが十月十一日発行の「世界週報」の「講和特集号」百二十三号というものの中に、周東安本長官の名前である記事には、これは四億四千八百万ドルだ、こういうように書いてある。非常に違いがあるので、この機会にどういう数字が正しいのか、これをひとつ御発表願いたい。
○池田国務大臣 正確な数字は記憶いたしておりませんが、私がアメリカヘ立ちます一箇月以前の数字は四億ドル足らずであつたのであります。その後つぶさに各外債につきまして検討を加えてみますと、一九〇七年のポンド外債につきましては、情勢によつてドルが拂い得る、その期限の来たときのドルにコンバートする、こういうことが條項にあるのを発見いたしたのであります。そういたしますとポンド債は、われわれはニドル八十セントで計算して四億ドルと出しておつたのでありますが、一九〇七年のポンド債は一九四七年に償還期が来ておる。そうしますとその当時の為替相場すなわち四ドル三セントの換算にならざるを得ないのであります。それが私がアメリカへ立ちます前、八月の上旬ごろにはつきりいたしました。このポンド債がドルでニユーヨークで支拂われるということになりますと、四ドル三セントの換算で拂わなければならぬ。これでふえて来たと思います。それから日本が戦争中外貨処理法を出しまして、内地にある外債をつぶすのみならず、国債にかえるのみならず、外国にある外債につきましては、所有証明書があればつぶすことにいたしたのであります。しかしその外債は、証券は、アメリカその他の土地にあるのであります。しかしてこのアメリカその他の土地にありまする外貨債を、日本の法律によつて日本人が所有証明書を出したためにつぶしたのでありますが、これが適法であるかいなやということにつきましては、それが有価証券である関係上、なかなかやつかいな問題があるのであります。この金額が大体千数百万ドルであつたかと思います。これを加えますと、―すなわちポンドを四ドル三セントに換算し、またその外国にあつた証券で、所有者の内地における証明でつくつたものを全部加えますると、大体四億八千万ドルくらいになるのではないかと思います。そういう関係で一概に外債と申しましても、ドルに買うのもあるし、またそのドルに買うものでも、将来買うのならよろしいのでございますけれども、ポンドの切下げ以前に償還が来ておるものにつきましては、今申し上げましたような事情がありますので、個々の証券にあたつて再検討しておるのでありますが、ただいまのところ四億八千万ドル程度ではなかつたと思います。
○塚田委員 それでは、これはなるべく早い機会に、それらの詳細を何らかの資料にしていただければ非常にありがたいと思いますので、それをお願いいたしまして、詳細のお尋ねはいたさないことにいたします。 そこで、外債の返済の方法でありますが、今承るところによれば、この中に期限の到来した元本もある。また今までの滞りの利子もある。それだけでも七、八百億に上るものがあることになるというように承つております。そうすると、そういうものだけはとりあえず拂わなければならない。そこでこれから何年間かに分割してお拂いをすることにおそらくなるのだろうと思いまするが、この機会に考えられますることは、これを借りかえるくふうがあるかどうか。それに対する諸外国の意向というものが承れるかどうか。それから外資導入が非常に問題になつておる際でありますが、一応日本の予算のうちに能力一ぱいに計上しました場合に、それをお返しせずにお借りする、外資に振りかえるというようなくふうが考えられないものかどうか。その辺をひとつ、外資導入の見通しとあわせて伺いたい。
○池田国務大臣 外資導入のためには、今までの借金はきれいにお拂いすることが先決の問題と思います。しからば今までの外債をどういうふうにして拂うかという問題につきましては、私はこの際意見を申し述べない方がよかろうと思います。
○塚田委員 以上で外債の問題は一応打切りにいたします。 次に連合国財産の返還並びに損害補償の債務でありますが、私どもはごくぼんやりと、連合国財産というものは、大体例の昭和十六年十二月十二日付の敵産管理法というもので政府が差押え管理しておつたというように考えておつた。その後占領治下になりましてから、司令部の命令で逐次返して行つたというように記憶しておるのでありますが、政府は、連合国財産を全部管理しておつたものなのか、それとも政府が管理したものを何らかの形で民間に拂い下げるとかいうような処分をしたものなのか、その点をひとつ伺いたいと思います。
○池田国務大臣 政府が管理しておるのもありましたし、また一部売つたのもあると思います。
○塚田委員 そこでこの損害を補償するという債務についてでありますが、処分をしたものは、もし現物があれば、現物をとりもどしてお返しするのか。損害補償債務で賠償すればいいのか。それから、一体そういうようにしてこの十五條によつて賠償しなければならない総額というものは、ある程度政府で御推算になつたものがあるかどうか、これらの点について承りたい。
○池田国務大臣 返還の請求をされた場合におきましては、第十四條の規定によりまする先般の閣議決定の趣旨によつて支拂うことに相なります。その法案につきましては、今字句の訂正をいたしておりますが、近々御審議願うことにいたしております。この規定によりまして賠償がどのくらいになるかということですが、これは不動産あるいは外債の関係、株券いろいろの種類がございますが、大体二百億ないし三百億と考えておるのであります。その支拂いの方法といたしましては、一年に百億を限度にして拂うということに相なつております。
○塚田委員 この十五條に関連して、もう一点條約局長にお尋ねしておきたいと思うのです。頂戴したこの説明書によりますと、略奪財産を含むと書いてあるる。これは、今まで判明したものは当然返しておるはずでありますが、中にはまだ判明しない略奪財産があるかもしれない。将来これが略奪財産であるということが判明する場合があるとしまして、その場合に、この十五條に基く返還請求権は、これは九箇月で請求できなくなると書いてあるのでありますが、その辺の関係はどうなりますか。
○西村(熊)政府委員 略奪物返還の問題につきましては、本年の春いろいろ話をしました当初から、日本側としてはほとんど完了しておつて、わずかに一、二件の未解決の問題があるにすぎないのであります。従つて平和條約ができ、それが効力を発生するまでにはなお相当の期間があることであるから、その間に完全に解決済みになり得るという自信を持つている、従つて特に掠奪財産物の返還に関する規定は置かないでほしいという見解をとつたわけであります。この見解は事実上米国政府の同意を得た次第であります。従つて、原則的に掠奪物返還に関する規定はイタリア平和條約のように規定いたしてありません。しかしその後の実態を見ますと、なお未解決の案件がございまして、実施までに完全に完了するという見通しが立たなくなつたのであります。従つて十五條の解釈といたしましては、お手元に差上げてありますような次第になつておりますので、掠奪財産物といえども、結局戦争開始からこの終戰のときまででございましたか、いずれかのときに日本の管轄下にあつたものに該当いたしますので、この十五條によつてそういう問題が発生した場合には、解決し得るという解釈に両者一致いたしておる次第であります。むろん申請の期間が規定してあります。しかし略奪物というものの本質から申しまして、かりに期間経過後といえども、日本国内にある一つの物件が、客観的に確実に略奪物件であるという証明が立つ場合に、そうして、関係国政府から、事実を証明してこれの返還を求められました場合には、政府としては、申請期間はすでに過ぎておるから、これは日本のものであるという主張はとうていできないであろうというような気持であるわけであります。私どもとしては、ほとんど完了に近づいている略奪物財産返還の問題は、でき得べくんば、この平和條約の実施時期までに完了する、かりに完了いたさない場合にも、この條約に予定してございます申請期間に関係者から申請を受けて、それによつて処置を完了し得るようになることを希望しておる次第であります。
○塚田委員 最後にいま一点、防衛分担金のことについてお尋ねをいたしたいと思うのであります。これは事柄の性質上、おそらく昨日来問題になつております行政協定できめられると思うのでございまして、行政協定の内容は、まだ話合いもしておらぬからわからないという御答弁があつて、あるいはお尋ねするのがむしろやぶへびかとも考えるわけですが、ただ何もわかしなければ、行政協定でお話合いがあつてから伺うということでいいのでありますが、大蔵大臣のお言葉をお借りして申し上げるならば、巷間伝えられるところによると、これは大体所要額の半分は日本が負担するんだ、こういうようなことがまず書いてある。そうしてまた、それじや一体その半分に当るのがどれくらいなのかということを、いろいろなものを読んおりますと、ときどきそういう数字にぶつかるのであります。一つは、去る八月一日のUP通信が伝えるところによりますと、米下院歳出委員会の秘密会において、米空軍参謀次長のエドウイン・ローリングス中将の証言があるのであります。これによると、一九五二会計年度における米軍駐屯費と基地維持費は一億六千百四十万ドルだ、そうしてこれが大体所要額の半分であり、残りの半分は日本が負担をするのであると書いてある。それと符節を合せるように、十月十五日発行の日本週報の一八八号によりますと、これは安定本部作成の国債収支計画だということで、二十七年度の収支計画に、駐屯費のドル拂いとして一億六千万ドルというものが日本にドルで収入になるのだ、こう書いてある。そうすると、なるほど数字はよく似ているから、これは日本にアメリカが駐屯をするために使う費用が一億六千万ドルくらいあるのだな、これが半分だとすると、日本もこれくらい使うんだな、一億六千万ドルだということになると、これを邦貨に換算すると、五百七十六億くらいになるが、一体こんなにたくさんの駐屯費がわれわれの負担になるのかどうかということで、これはなかなか税金も安くならぬというように感ずるのでありますが、この辺の点はどういうことなのか。おわかりになつているならば、ひとつ最後におみやげに聞かしていただきたい、こういうわけであります。
○池田国務大臣 安全保障條約に基きまず駐屯軍の費用分担という問題は、非常にやかましい問題になつておるようでありますが、私は一切存じません。またそういう交渉には大蔵大臣は当つていないのであります。今お話の一億六千万ドルというのは、これは逆でございまして、一九五一年ないし五二年のの予算に一億六千万ドルというのが載つておつたかと思うのであります。今の終戦処理費が七月一日から半額―半額とは限つておりませんが、財政演説で申し上げましたように、ほぼ半額ぐらい向うが負担することに相なるのであります。それが一億六千万ドルであるのであります。従いまして安全保障條約ができた場合の向うの駐屯軍事費が一億六千万ドルと計上されておるのではないのであります。私は、アメリカの方でも保障條約ができたらそうなるのだということは聞いたことはございます。ただ今の駐屯軍事費の中で、七月一日から半額を負担することになつておるので、そうなつたのだと思います。従つて半分というのは、今の終戦処理費の負担のことを言つて、このぐらいになるのではないかという説が流布されるのでありますが、この点につきましては全然知りません。駐屯費々々々と申しましても、駐屯費というものの限界でございます。もちろん今の終戦処理費の中には、米軍の食費とか給料とかいつたいろいろな軍事費は入つておらないのであります。駐屯費というものが、日本の国内で使う日本人拂いの金を駐屯費というのならば、これはまたおのずからそこに議論の点がありますが私は、こういう問題はあまり議論をしない方がいいのではないかと実は思つておるのであります。取越し苦労をしない方が……。きのうから問題もございましたが、米国とフイリピンの軍事基地協定などの問題、イギリスにおきまする米空軍二万五千人の駐屯費のあれとは全然違います。また米比軍事援護協定、こういうものにつきましても、みな種類がよほど違つておるのであります。あまり議論するのはどうか、わけもわかりませんのでお答えしかねる次第であります。
○塚田委員 事柄の性質上、これ以上お尋ねしても、おそらくおみやげをいただくわけにも行くまいと思いますので、私の質疑はこれで打切ります。長時間ありがとうございました。
○田中委員長 以上をもちまして、両條約に対する総括的質疑は、一応終了いたしました。 明二十日は、午前十時より委員会を開き、各條約とに逐條質疑を行うことといたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十七分散会