厚生委員会 第9号
- 発言数
- 22 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1951/11/26
会議録
○松永委員長 これより会議を開きます。 前回の委員会におきまして、BCG接種に関して、厚生当局に対し、委員長から七つの項目をあげて質問書を発しましたところ、今日これに対して回答書が参つておりますので、一応読み上げてみます。 一、BCGワクチンの検定基準を高めることについては、現在検討を加えつつあり、近く具体的な結論を得て、検定基準を改正する予定である。 二、現在は二千倍ツベルクリン溶液を使用しているが、なお百倍等のツベルクリン溶液については、いまだ判定基準が確立されていないので、今後の研究結果により使用を考慮する方針である。 三、疑陽性者に対するBCG接種は、現在二千倍ツベルクリン溶液により判定して行つているのであるが、この二千倍溶液によるツベルクリン反応検査が、一層正確に行われるよう、通牒等により指導したいと考えている。さらに今後の研究の結果、一千倍あるいは百倍ツベルクリン溶液がBCG接種の適応を定める目的のツベルクリン反応検査に使用できるような段階になれば、疑陽性者に対するBCG接種については、省令の改正その他特段の措置を考慮したいと考える。 四、従来も独占企業を認めていたのではなく、今後も適当な施設と技術者を有する製造所については、これを認める方針である。 五、結核の専門的な研修は、特殊な施設、教材を必要とするが、可能な限りの機関を利用して広く行うようにしたいと考えている。 六、臨床的に問題になる接種部位の潰瘍、膿瘍は、以前に比較して非常に少くなつて来たが、さらに経皮法による接種等を研究し、できるだけ早く実施に移す考えである。 七、薬事法に基く基準に従つて、今後一層保存に注意させるとともに、保存施設については、予算的措置を講じて、できるだけ改善をはかるようにしたい。 以上のような回答書が厚生当局から参つております。 大体以上をもつて厚生当局の意向が察知せられると存じますが、この際前会に引続きましての本問題に対して、橋本厚生大臣より発言を求められて要りますから、これを許します。
○橋本国務大臣 前回の委員会におきまして、丸山委員からとりまとめて御質問がありましたので、この際BCG予防接種の問題に対しまして、過般来私の考えて参りましたところを、要約してお話いたしたいと思います。なお松永委員長からお話のありました七つの項目についての回答は、ただいま委員長のお手元へ差出した通りであります。 先般、BCGの予防接種については、種々疑問があるから、なお研究調査を要するということを、日本学術会議から進言を受け、また社会保障制度審議会からも、この予防接種については、愼重を期すべきであるという勧告を受けましたことについては、御承知の通りであります。これに関しまして、もし有害の疑いがあるならば、強制接種を停止するのか、あくまで強化するのかということを、記者諸君から尋ねられましたので、有害の場合もあるという疑いが明らかならば、強制を停止することを考えねばなるまいが、とにかく資料を受取つて、なお検討せねばならないと答えたことは、事実でありまして、私はこれは職責上当然のことを考えているのであります。 しかして、前回の委員会におきまして、丸山委員から詳細な、かつ具体的な御質問がありましたが、その要旨は、一には、接種対象者のうち、ツベルクリン反応の疑陽性者に対する取扱いの改善、二には、BCGの独占的製造の再検討とBCGの改良に関する研究の推進、三には、BCG接種の最終段階に至るまでの保存方法の改善と充実による力価の保持、四には、接種方法と接種技術の改善向上による局所副作用の防止または軽減、大体以上の諸点であつたと存じます。しかして丸山委員のお考えの根本趣旨とするところは、品質が優良で、かつ均等なBCGを確実に陰性な者だけに接種するという、結核予防法の根本的な行き方自体は誤つていない、要はこの行き方が確実に実施されるように改善すべきだということにあつたと存じます。 考えまするのに、日本学術会議から指摘された幾つかの疑問がありますが、その疑問の一つは、現行の乾燥BCGが、すでに長い間実施されて参つた液体のBCGと同様の優良かつ均等な品質を持つていないのではないか、またこれを持たそうと思つても、乾燥BCGでは持たすことがむずかしいのではないかという点にあるように思います。従つてこうした品質を持たすことができるならば、有数、無效問題の論議の大きな部分が、解決されるわけであります。また提起されました幾つかの疑問の一つは、現行のツベルクリン反応がほんとうに正確であるかどうか。それによつて一応陰性または疑陽性になつた人の体内には、ほんとうに結核菌が活動していないと言えるかどうか。特に小兒科の領域において心配があるという点にあるように思うのであります。従つて、現行のツベルクリン反応が正確であつて、ほんとうは陽性である者に誤つて接種するということが決してないならば、有害問題の大きな部分が解決をされるわけであります。従いまして、丸山委員御指摘の諸点を、行政的措置においてなるべくすみやかに解決をし、法律に規定されている疑陽性の場合についても、至急研究をしまして、現行法が予想した條件を整えて運用のできるように改善し、推進して行くことが、当面の責務であると思つております。これと並行して、さらに根本的な問題についても研究を進めて参るつもりであります。 以上が、今日私の考えておるところでありまして、御指摘の諸点の解決につきましても、また根本的な学術的検討につきましても、この上ともさらに省内において相談し、研究しました上、結核予防審議会にも諮問し、また広く学界の意見をも徴しまして、急速に措置すべきものは措置し、長く研究を続けるべきものはこれを続けまして、今後遺憾なきを期したいと思つておるのであります。
○松永委員長 ただいまの橋本厚生大臣の御答弁に対し、御発言、御質疑等はございませんか。
○岡(良)委員 橋本厚生大臣のおとりはからいも、実はわれわれ納得はできるのですが、ただその場合、たとえば前提として、結核菌が体内にない者を選別してBCGをするということは、もちろん鉄則になつております。そこで現在のマントー氏液では、結核にかかつておる者でも陰性に出る可能性がある。従つて二千倍溶液でいいか、もつと濃厚なものを使わなければいけないかということについても、検討を要すると思います。BCG接種の大前提について今後研究されるというのですが、一体どういう方法で研究をされるのか。何かこうしたならば鑑別できるという方法がありますか。これを公衆衛生局長にお伺いします。
○山口説明員 結核の感染、未感染を判定いたします手段といたしまして、現在ツベルクリン反応を使用いたしております。それは現在二千倍の稀釈液を用いておりますが、二千倍の稀釈液では不十分であるというような御意見がございます。しかしながら、現段階におきましては、百倍、千倍というようなものを用います場合の百倍、千倍の製造の基準というものも、まだ確立いたしておりませんし、また判定の基準も確立いたしておりませんので、将来その方面を研究いたしまして、実際に応用できるようになりましたならば、それを実地に移して行きたいという趣旨なのでございます。ただツベルクリン反応だけで、結核の感染、未感染を判定し得るかどうかということは、ただちにお答え申し上げることは不可能かと存じます。さらに他の診断方法によりまして、結核の感染、未感染を区別して行かなければならない、そういうふうに考えております。
○岡(良)委員 そうすると、BCGを強制接種するには、他の方法ということになりますれば、間接撮影も、現在かなり疑問を持たれておりますが、せめて間接撮影と聽打診等の物理的所見の探求についても、総合的にやらなければならないとおつしやるのですか。
○山口説明員 二千倍だけで不十分な場合には、百倍を用いて、さらにふるいの目をこまかくするということも考えられます。また必要があります場合には、精細な検査をしなければならないが、すべての場合にそういうことをやる必要はないのじやないか、そういうふうに考えております。
○岡(良)委員 それにしても、二千倍がいいか、あるいは百倍がいいかという判定の場合、二千倍では、まだ少し不十分ではないか。体内に結核菌を持つておる者でも、陰性に出る可能性があるという場合、出るか出ないかということを見るときは、やはり初感染者について、臨床的に探求をしなければならないのじやないですか。そうすると、現在の医学が、これは初感染者なりとして把握するということも、かなり困難ですし——またそれはできるにはできますが、一体こういうデータを集めることが実際問題としてできるのですか。そこまで行かなければ、二千倍溶液による陽転率が正確であるかどうかというものさしにはならないわけです。しかしそういうことが実際できますか、そこが心配なんです。
○山口説明員 その問題につきましては、御説の通り、初感染者について、今後いろいろやつて行かなければならないと存じますが、これは今までいろいろ初感染者のツベルクリン反応について研究もされておりますし、議論もあるところでございますけれども、この点は今後專門家の方々に十分御研究いただきまして、ただいま岡先生の御指摘のような点を究明して行かなければならないと考えております。
○岡(良)委員 この前もちよつと申し上げておきましたけれども、石川県の実例、あれは昭和十六年から四年間、七十三万の総人口に対してマントー氏反応を二千倍溶液でもつて、陰性者には強制接種をやつたのです。その結量——もちろんそれのみの結果とはいえませんけれども、死亡率だけについてみても、万対死亡率が三十一名から二十一名に減つている。そういうことは、当時ぼく自身がやはり注射器を持つて中へ行つてやつておつたという体験から、実は来ているのです。ぼくはあれだけの組織的な、しかも集団的なレコードというものは、世界的にもないのじやないかと思う。ぼくはある一部の学者の言われることで、多少疑義があるとかないとか言うよりも、実際に政治的に何を信憑性のあるものとして執行に当るかといえば、やはりああいう集団的な、組織的な——あれは国自身が相当予算を出してくれてやつた。もちろん水わくを使いましたが、あの記録というものは非常に貴重なものだと思う。あの記録以上になお掘り下げて、今、力価検定——これは技術的な問題として今後やつてもらわなければならぬ問題でありましようが、あの記録だけでも、もうBCGは有效であるというりつぱな実績が、日本の国内において、数年前七十三万の大衆を中心とする実験において、りつぱに証拠立てられておると私は思うのだが、そういう点、山口さんのお考えはどうですか。
○山口説明員 BCGを結核予防接種法の中に取上げていただき、さらにまた結核予防法の中に取上げていただきましたのは、ただいま岡委員からも御指摘がございましたように、過去のわが国における実績から見まして、これが確かに有效であるという確信を持つて御審議いただいたわけでございます。御審議に際しまして、御賛成をいただいて可決していただいたわけでございまして、私どもといたしましても、過去にわが国におきまして実施されましたBCG接種の成績というものから判定いたしまして、BCGが有效であるということを確信して、現在行政に取上げて実施いたしているわけでございます。ツベルクリン反応を判定いたしまして、それでBCGの接種該当者をきめるという現在のやり方につきまして、私どもは過去の経験から考えて、二千倍の液を取上げて実施いたしておるのでございますが、さらにこれを深く掘り下げて、百倍あるいは千倍を使い得るという段階になりますれば、そういうものも使つて行きたい、こういう考えでございます。 ただ一言申し上げておきたいと存じますのは、過去の経験からいたしまして、たとい既感染者に実施いたしましても、局所の反応は現われて参りますが、病症そのものに何らの変化を来さないというのが、従来実施されました成績でございます。私どもも、その点を十分に考慮して、現在の方法を取上げておるのでございます。しかしながら、さらに学者の方々が研究されまして、よりよい判定の方法が出ましたならば、それを行政上取上げて行くべきではないかというふうに考えておるわけであります。
○岡(良)委員 その後の結核予防審議会の答申にもあるように、製造の技術とか、あるいは検定方法の改善とか、あるいは接種方法の技術的な改善とか、これは日進月歩の医学のことでありますから、やはり科学の発達の水準に沿うものは、行政執行上その都度あなた方の責任として取入れていただくということは、当然だと思いますが、いまさら、もう一ぺんBCGについては一応たな上げにしておいて、そうして先ほど大臣の言つた、マントー氏反応が、二千倍ではやはり陰性として出て来る危険性があるというようなところまで、なお改めてやつて行くということになると、今度はBCGの接種というものが、一年間も延期されるのではないか。大体どれくらい延期されるか、そのお見通しも伺いたいのでありますが、現在私どもの見ておる臨床的な窓口では、また結核が非常にふえて行くような感じがするのであります。そういう事態を見るにつけて、やはり私はBCGを一日も早く、マントー氏反能二千倍で陰性であつたならば、できるだけ漏れなくどんどんやつて行く方がよいと考えるわけであります。それが今の大臣の御答弁のようだとすると、一年先か二年先に延びてしまう、そういうことでは重大問題だと私ども考えて、公衆衛生局長の意見を伺いたいと思います。
○山口説明員 ただいまの岡委員の御質問によりますと、ツベルクリンの判定の方法が、さらに精細なものができますまで、BCGの接種を一時中止するよう、行政当局としては考えているかというふうに承るのであります、大臣もそうでございますが、私どもといたしましても、決して現在のBCGの接種を中止する、あるいはたな上げするという考えは持つておりません。さらに、既感染者、つまりBCGを接種しなくてもいいというようなものをこまかく除き得るような方法ができれば、それを採用したいということでございまして、現段階におきましては、ツベルクリン二千倍の溶液を用いまして、BCGの接種の該当者をふるいわけいたしまして、現在通り強力に進めて行くつもりでございます。もしその点岡委員の方に誤解がありますれば、私から釈明させていただきたいと存じます。
○岡(良)委員 たとえば地方の衛生部長というような立場になりますと、ああいう大臣の言明のようなものがあると、気迷いを起すと思います。実際問題として、あれ以後府県の衛生部長なり、担当の係の方から、公衆衛生局の方へ、はたしてやるべきかどうかというような意味の伺いが来ていると思いますが、来ておりませんか、その点どうですか。
○山口説明員 十月の中旬に、そういう間合せが、一、二参りました。それに対し、私どもは口頭で、当時の情勢といたしまして何ら変更の意図はない、現在の法律通り実施して行くのであると回答を與えております。その後は、地方から衛生部長も上京して参りますし、私のところへもしばしば参りますが、地方におきましては、現在の法律通りBCGの接種は実施して行くのであると、地方の衛生部長も考えているようであります。但し、現実には末端で十分行われていないところもございますが、しかし、地方の衛生部当局といたしましては、現在法律に定められております通り、BCGの接種は強力に実施して行くのであるという意向を持つております。
○松永委員長 ちよつと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○松永委員長 速記を始めてください。
○岡(良)委員 BCGについては、この常任委員会においても、ずいぶん論議を盡したわけですが、もはや大体結論に近づいたと思いますので、この機会に動議を提出したいと思います。動議の内容を簡単に申し上げます。 結核予防法に規定されておるBCGの強制接種は、今後とも励行すること。しかしながら、結核予防審議会の答申にもあるがごとく、ワクチンの製造技術や予防接種等の方法については、医学の進歩に伴つたよりよき方法を取入れて行くことを十分に考慮しつつ、BCGの強制接種は、法にうたわれているごとく、これを推進することを、厚生省はこの際天下にはつきりと声明をしてもらいたいということを、厚生大臣が来たら申し入れる。 このことを動議として提出したいと思います。
○松永委員長 ただいま岡君の御動議、私もしごく同感でございますが、厚生大臣に対して、そういう申入れを行うことに対して御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松永委員長 御異議がないと思いますから、そういう申入れを行い、厚生当局に、よりよき行政措置をとつてもらうということで、この問題は一応打切ることにいたします。
○苅田委員 この前の委員会で要求したBCGの原価計算、並びに接種に至るまでの経費がどういうふうにかかつておるかということについての資料が、今日まで出ていないそうですから、この資料を出していただくことと、この資料に基きまして私の質問をさせていただく機会を、今後の委員会でとつていただくことをお願いいたします。
○松永委員長 承知いたしました。 他に御発言もないようでありますから、次会は明二十七日午後一時より開会することとし、本日はこれをもつて散会いたします。 午後四時十三分散会