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10回国会両院1951/01/30

両院法規委員会 第1号

発言数
49
登壇者
6
会派数
2
開催日
1951/01/30

会議録

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) ただいまから両院法規委員会を開会いたします。  本日は参議院側の委員長が会長席につくという順番になつておりますので、私がその責を果したいと思います。  議事に入ります前に一言ごあいさつ申し上げます。参議院側の委員長でありました鈴木直人君が都合によりまして辞任されましたので、その後任としまして私が選任された次第でございます。はなはだふつつかな者でございまするが、諸君の御協力と御指導によりまして、職責を果すことができましたならば仕合せと存ずる次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  昨年の暮れのこの委員会におきまして、衆議院の法制局、参議院の法制局の両方から、両院法規委員会の研究事項として、数項目ずつ書いたものをお渡しくださつたのであります。それを拜見しますと、重大な問題もあり、また急ぐ問題もたくさんあります。これをどういうふうに研究して行つたらいいだろうかということが議題になりまして、いろいろ意見の交換があつたのであります。とにかく差迫つておる問題を先に解決することにして行こうではないかということに、大体皆さんの意見が一致いたしました。その結果として、次の集まりまでに、議案の撤回に関する再検討の件、それから継続審査案件に関する取扱いの再検討に関する件、とりあえずこの二つの問題について法制局で研究してもらつて、一応議事の進行をはかる便宜上、法制局の意見をこの委員会で説明してもらつて、議事を進めることにしたがよかろうということになりました。その準備が法制局の方でできたわけであります。本日はまず議案撤回の再検討の件につきまして、一応法制局の説明を伺い、御相談願つたらいかがかと存じますが、いかがですか。     〔「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり〕

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) それでは法制局の方から御説明を願います。

鈴木直人緑風会

○委員(鈴木直人君) その前に——私先般まで参議院側の委員長を勤めておつたのでありますが、今回緑風会の庶務部長をやらされることになりまして、同じく緑風会の竹下豐次君とかわることになつたのであります。委員長時代は、いろいろお世話なつたことを御礼を申し上げます。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 私参議院法制局の第二部長でありますが、局長は今不在でありまして、局長代理も所用のため、私がかわりまして御説明申し上げます。大体問題の要点から御説明申し上げたいと思います。  議案の撤回につきまして、現在国会法の第五十九條に、「内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となつた議案を修正し又は撤回するには、その院の承諾を要する。」という規定があるのであります。この規定につきましていろいろ疑問が起つたり、見解の相違が生じて参りますので、これを明確に法律で規定した方がいいのではないかということが、私の方で出しました議案の撤回に関する再検討の件という案件でございます。これは撤回に関する再検討の件でございますが、同時に提案者である内閣の議案修正とも関連して参る問題でございます。前の旧憲法時代の議院法におきましては、政府はいつでも議案の修正、撤回ができる、同時にそれは議会の承認をも必要としないという規定になつておるわけであります。それを国会法を制定いたしますときに、従来の協賛機関から、議決機関になりました国会の承諾なしに、提案者であるところの内閣が修正撤回をすることは適当でないという理由から、第五十九條で「その院の承諾を要する」ということになつておるわけでございます。しからばこの第五十九條で、すべての場合、内閣は承諾を得さえすれば議案を修正しあるいは撤回することができるものであるか。あるいは先議の議院の議題になつておる場合だけに、この法律の規定が働くのであるかという点で、疑問が起つて来ておるわけでございます。それで事務を扱つておる人たちの意見としては、大体において問題を複雑にしないで簡單にするという意味合いもあるかと思いますが、先議の議院だけの場合に限る規定であるという見解も、従来いろいろ言われておるわけでございます。はたして先議の議院の議題となつておるものだけに限る必要があるか、あるいはそれでよろしいか、あるいは後議の議院にそれが送付されました後、修正し、あるいは撤回するということにした方がよろしいか、また後議の議院で修正撤回ができるというならば、現に議題となつておる後議の議院だけの承諾だけでなしに、すでに議決をいたしました先議の議院の承諾を必要とするのではないかという点が、いろいろ考えられるわけでございます。  そこで繰返して申し上げますと、この規定の解釈を明確にするため、立法的に改正をいたします場合に、先議の議院にかかつておるものだけしか修正、撤回を認めないことに明確に規定するということが、第一の立場になると思います。その次には後議の議院にかかつておるものであつても、修正、撤回を認める。その場合には立法的には先議の議院の承諾をも必要とすることにする必要があると思いますが、そういう立場もとり得ると思います。第三の立場といたしましては、後議の議院にかかつておる議案につきまして修正を認めることにいたしますと、さらにその後議の議院でそれを議決いたした後に、先議の議院に返さなくてはならない。一旦議決をいたしたものにつきまして、また元のところにそれを返すことは、複雑な関係を生じて参りますし、そのほか手続的に疑問を生ずる余地がいろいろあると思いますので、修正は後議の議院においてはできない。但し撤回だけは後議の議院にかかつておる場合でも認めることにするという改正も考えられるわけでございます。  そこで私の方でいろいろ検討いたしましたが、この問題は内閣の議案提出権と、唯一の立法機関たる国会の議決権とのかみ合せの問題が、理論的には根底になると思うのでございます。ただいま申し上げました三つの見解の中で、一番最後の見解、すなわち先議の議院にかかつておる場合は、内閣はその院の承諾を得れば、修正撤回ができる。しかしながら後議の議院にそれが送付された後においては、修正は認めないで、撤回だけを認めることにする。その後議の議院にかかつておるものを撤回いたします場合には、先議の議院の承諾をも必要とするというふうに修正いたしたならば適当ではないだろうか。現在の議院内閣制をとつております憲法のもとにおきます内閣の議案提出権というものの裏をなす撤回権は、ある程度認めてもいいのではないかと考えておるわけでございます。なおこの点につきましては、手続とかいろいろな面にからんでくる問題もございますので、今後ももう少し愼重に研究いたしたいと思いますが、大体の要項といたしましては、ただいま申し上げましたような改正を明確に立法化することが適当ではないかと考えておる次第でございます。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) ただいま岸田部長から御説明のありましたところを承つておりますと、現行法の解釈をどうするかということをあとまわしにして、いかにあるべきかという実体問題を取上げられたように思つております。私の意見を言わしていただきますならば、やはりその順序で進んで行く方が結末を得るに都合がいいのではないかと思つております。その順序で進むことにとりはからつて、さしつかえございませんか。

鈴木直人緑風会

○委員(鈴木直人君) 撤回の場合には、今のような方法が妥当だと思います。すなわち両院において議決されまして、いわゆる成立をいたしまして、一つの法律というものになつて来るわけですが、その法律になる前の過程において、撤回をすることはあり得ることでありますから、先議の議院でそれを議決しまして、後議の議院で審議中に、これを撤回したいという場合には、先議の議院がそれを承諾した場合には撤回することはよろしい。こういうのは理論的にも正しいと思うのです。  第二の修正の場合でありますが、修正の場合においても、それが一つの法律にならない以前において、後議の議院で審議中に、あるいはどうしても修正したいという意思が提案者にある場合には、それを許さない根拠もないような感じがするのであります。その点については、今の法制局の意見とは違うのでありますが、ただそれを許すことになりますと、後議の議院でその修正を受理することになつた場合、後議の議院がその修正を加えて議決いたしますと、先議の議院において議決したものと違うことになります。それを先議の議院に回付することはやつてもいいだろうと思いますが、これについてはどうお考えですか。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 今おつしやいましたように、後議の議院におきまして修正を認めることになりますと、その修正はもちろん両院の承諾を必要とすることを前提としなければならないと思いますが、修正されました議案を後議の議院が議決いたしますと、現在ではそれを先議の議案に送るという手続規定がないわけでございます。従つてその規定を新たに設ける。その場合、もう一回先議の議院にその修正の分を含めたものを回付して、その修正を盛り込んだものについて異議がないことになつて、法律になるという形にしないと、修正の部分につきましてかりに前に承諾を與えておつても、それは手続的に、提出者が修正するということの承諾であつて、その修正の部分は先議の方の実質的審査を経ておりませんから、そういう手続をとらなければならない。これについて法制局が言うのは、こまかな理論になつて恐縮でございますが、たとえば衆議院先議の法案について、参議院にそれが送付され、参議院において政府がその修正を申上入れて参りまして修正をする。その後に参議院がいろいろの事情によりまして、その法案を六十日間審議しなかつたといたしますと、そのときに両院協議会の問題、あるいは衆議院の再議決の問題が起るわけであります。そのときに衆議院が再議決する議案は、衆議院が当初議決した議案なのであるか、あるいは参議院において修正を織り込んだ議案なのであるかという点が、非常に不明確になつて来るわけであります。再議決というものは、前の議決を繰返して議決するという趣旨でございますから、その点から申しますと、その場合にはむしろ再議決することはできないのではないかという疑問も起つて来るのでございます。そういう点でいろいろ疑問を生じてくる可能性が、修正については非常にありますので、むしろ修正は先議の場合だけに限る。かりに修正をしなければ、どうしてもその法案を通すことはできないという場合においては、議院の修正にまつ。議院自体の修正を求める。議院が修正することもできないような事情がある場合には、むしろそれを撤回して、さらに補正されたものをもう一回出し直すという形にした方が明確に行くのではないか。  それから御参考までに申し上げますが、旧議院法時代には、いつでも修正、撤回ができるという規定になつておりますが、過去の没革を調べてみますと、後議の議院において修正をしたという例は一つもないのであります。撤回の例は相当にございますけれども、修正の例はありません。それは回付の手続が規定されてないから、実行不可能であるということにせられるのか。あるいはそういう修正をすることになると、手続が非常に複雑になるという実際上の点を考慮して修正をやらなかつたのかわかりませんが、たとえば題名を改めることにいたしましても、一回撤回をいたしまして、新たに出し直しておるという例もあるように聞いておるわけであります。そういう過去の取扱い等もありますので、そういう複雑な問題を起すような修正という点はやめても、実際上さして支障がないと思いますので、先議の議院だけに限つたらどうか、こういうふうに考えておる次第でございます。

鈴木直人緑風会

○委員(鈴木直人君) 今の説明は、結局その方が私もいいと思つておるのですが、後議の——たとえば参議院が後議になりまして審議中にまた政府の方から修正案が出て来た。それを受理した場合には、その修正に関しては、参議院が先議というような解釈になると、いろいろやつかいな問題が出て来ることは今のお話の通りでありまして、今までは参議院としましては、そういう場合には正式の修正案として受理しないで、一応政府から参考資料のような形で議院がそれを受取りまして、議院の独自の考え方で修正をして行つたという経過になつておるのでございます。むしろそうすれば、先議ではありませんから、衆議院の送付案に対する参議院の修正、こういうことになるわけであります。非常に簡單でありますし、そういう取扱いの方がいいのではないか。どうしても政府が大きく修正しなければならぬ場合には、撤回の方法をもつてもう一度やりかえる、こういう方がやはり私はいいだろうと考えます。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 会長の言われるように、今後の撤回に関する手続のあり方というよりは、むしろ立法論的にこれを扱つて行くことはもちろんけつこうでありますが、その前に現行法の解釈、運営で、適切に事が運べるのではないかという解釈論から、もう少し研究してみる必要があるのではないかと思うのです。元来国会法第五十九條の意味を正確に把握するためには、單にこの條文だけでなく、他の法條ともにらみ合せて解釈をきめて行かなければならぬのであります。その場合に一番問題になるのは、一事不再議の原則とか、院議の尊重とか、そういつた基本原則を確認して、それらの原則に抵触しない方向に第五十九條の解釈を持つて行かなければならぬと私も考えるのです。先ほど来詳細な御説明を伺いましたが、その辺のことを考え合せて行くと、現行法でもまかない得るのではないかという考えでもないではないと思うのです。私自身第五十九條に対するごく簡單な、いわゆる文理解釈という立場から考えて行けば、議題となつた議案に対する修正と撤回は、扱い上区別する必要があるかどうかということが先ず第一点の問題であります。  それから第五十九條の末尾の方の「その院の承諾を要する」という「その院」というのは、最初の方の議題となつた各議院それ自体をさすのではないか、そうするとすでに後議の議院に案件が係属された場合には、先議の議院とほもう関係がない。すでに先議の議院は意思を決定して、いわば一事不再議といつたような段階に来ておる。ただ後議の議院にまわつた場合に、「その院の承諾を要する」というだけを文字通り解釈して行つていいのではないかと考えるのです。先ほどの御説明の中の最初の、何か例があるのかちよつと聞き漏らしましたが、そういつたことに解釈できるということは非常に簡明に行けると思うのです。その点についてどういう御解釈をなさつておるか、この機会に、そり部分に限つてちよつと御説明をなお補足していただきたいと思います。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 現行法の解釈といたしましては、ただいまおつしやいましたように、かりに第五十九條は後議の議院に係属しておるものに適用があるのだという見解に立ちますと、おつしやる通り、後議の議院の承諾を得さえすればよろしいということになると思うのであります。その点につきましては、ただいま一事不再議の原則という点を御指摘になりましたように、むしろ私たちは、先議の議院がすでに議決によつて意思決定キ盛り込んだその案件に、修正なり撤回というものを提出者が行うことを認めるのを、後議の議院だけの承諾だけでやることは、先議の議院の議決権についての考慮が足りないことになりはせぬか。むしろ先議の議院が法律案について何らかの意思決定を盛り込んでおる以上は、その院の承諾をもあわせ得ることにした方がよいのではないかと考えるのであります。但しその点につきまして、修正についてすでに議決をした院が承諾することは、若干一事不再議という原則から見まして、疑問の余地がありはしないかとも思うのでありますけれども、撤回につきましては、一旦この法律を成立させるべきものだということを先議の議院が議決したものではありますが、何らかの事情によつて撤回の手続が認められることについては、それについて承諾を與えることは、一事不再議の原則に反するということではないのではないかと考えるのであります。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 先ほどの御説明の中に、表題だけかえて、法案の内容はかえないで行きたいという政府の要望があつた場合、それをどう扱うかという例があげられたようてすが、法律の表題をかえるということであつても、それを審議することはやはり一事不再議の原則に抵触することになるのではないですか。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院(岸田實君) なかなかむずかしい問題だと思いますが、表題を改めることによつて、その法律の性格なり実質が相当かわつたものになるということになれば、一事不再議になるまいと思いますけれども、それが全然同じものであることになれば、一事不再議になると思います。私がお話しましたのは、詳しく資料を調べておりませんで、先例集で簡單に見ただけですから、あるいは間違いがあるかもしれませんが、ある法律の一部改正案として出したものを撤回して、題名を変更して何々に関する法律案として出したという先例集に記録がありますので、それをそんたくいたしますと、一部改正法律案では、その法律の趣旨が非常に適当でないようなもので、独立した法律とすることが、その法律を現わすのに非常に妥当であるという場合じやないかと思います。そういう場合でない別個の案件ならば、一事不再議の原則に反しないという解釈ができるのではないかと思います。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 旧憲法の時代の議院法においては、修正、撤回が政府に認められておつた。しかも実際においては、撤回だけやつて、修正された例はないという御説明のようでしたが、立法論としては、修正と撤回を区別するのが私は適切だと思う。というのは、撤回は政府の提案権を根本から放棄するものであり、修正の場合には、それと非常に意味が違つておるというふうに、本質的に修正と撤回とは性格が違つておる。従つてこれを同列に扱うことは、立法論としては避くべきではないかと私は考えております。そこで問題は、現行法ではいろいろ解釈の余地があるわけですが、今までの経験あるいは実際問題等から見てしからばどういうふうに持つて行つたならば、国会の運営とか、あるいは審議権の尊重とか、あるいはまた政府の提案権の尊重とかいう面から見て適切であるか、その案がここでもしお立ちになつておるならば、ごひろう願つて、それに合致するような解釈論ができればよろしいし、第五十九條でその解釈が許されないとするならば、今度は先ほど会長が言われたような立法論に入つて論議を進めて行くのが、むしろ穏当な扱い方ではないかと思います。その点についてもう一度御説明を願いたい。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 結局現行法の解釈としてでございますか。第五十九條の解釈としてでございますか。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 議案の扱い上、こうあればむしろ実際問題として理想的であるという一つの構想を出していただいて、その構想に合致するように現行法でまかない得るかどうか。もしまかない得ないならば、それを立法的にどう明確に改めて行くかという扱い方がむしろいいと思うのです。それでお伺いしておるわけです。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 先ほどちよつと申し上げましたが、こまかな手続にからむ問題ですから、もう少し愼重に時間をいただきまして、検討しなければならぬ点もあると思います。どういう手続によるか、あるいは撤回権を認める範囲をどの程度にしたらいいかということにつきましては、私の方では一院の議決もまだ全然済んでいない、すなわち先議の議院の議案となつておるものについては、修正、撤回を認める。修正の必要がある場合には修正を認め、撤回の必要ありと認める場合には、もちろんその先議の議院だけの承諾を得る。それが先議の議院の議決を経て、他の院に送付された後におきましては、修正は認めない。撤回だけは特別の事情がある場合には認める。その場合には後議の議院だけでなしに、両院の撤回の承諾を得させるということにすることが、政府の議案提出権をある程度尊重すると同事に、国会の議決権、両院の議決権を尊重することになるので、適当なかみ合せになるのではないかと考えておるのであります。そういう見解をもしとるといたしまして、第五十九條を解釈上当てはめて行くことになりますと、後議の議院にかかつておる議案について、撤回だけを認めて、修正は認めないのだという点が現われておらない。同時に先議の議院の承諾を要するという点も第五十九條では明確でない。これで「委員会において議題となつた議案」という「議題となつた」ということは、すでに議決を経ておるけれども、前にかつて議題となつた議案とも読める。そう読んで、その院は両院になるという解釈も無理にこじつければできる余地も若干あると思います。しかしすなおに読んだ場合には、この規定をそういうふうに読むことは少し困難ではないか。いわんや後議の議院にかかつておる議案を修正することはできないという趣旨は、第五十九條からはどうしても出て来ないのではないかと考えます。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 要するに、修正、撤回の時期と範囲というポイントを基礎にして考えてみると、先議の議院に係属中は修正も撤回も、その先議の議院の承諾だけでなすことができる。しかして後議の議院に送付されて後は、修正はいずれの院の承諾によるも好ましくない。撤回だけは先議及び後議の両院の承諾を得て認める方が適切であろう。そういう扱い方がよろしいというお考えのもとに、これが解釈で行けるか、あるいは立法でそういうふうに明確にするかという議論のように拜承するのです。私もその点はしごく賛成なんです。ただ私一個の考え方をもつですれば、そういう扱い方は現行法の第五十九條では無理が伴うのであつて、やはり改正にまつべきものだと考えます。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) ほかにどなたか御意見ございませんか。

小林英三自由党

○委員(小林英三君) 今の修正の問題は、字句の修正ということはないのですか。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 字句の修正は、普通正誤と申しております。修正でなしに、印刷の間違いであつたということで、処理しておるわけです。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) ほかにどなたか御意見ございませんか。そうしますと、部長の説明の通りに準備を進めて行くことについて、御異議ございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) それではそういうことで進むことにいたしたいと思います。  ちよつと私からお尋ねいたしたいのですが、今の場合、内閣提出の案件を撤回し、あるいは修正するという問題ですが、そのほかに議員提出の問題があると思います。その問題につきましては、別に規定があつたはずだと思いますが、それはどういうふうに取扱つたらよろしいかという点についても、法制局の御意見を伺いたいと思います。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 議員提出、議員発議の法律案につきましては、国会法では修正、撤回の規定はございません。これは各議院の議院規定がありまして、衆議院では衆議院規則の第三十六條、参議院では参議院規則の第二十八條にこれに当る規定があるのであります。この規定によりますと、議員が発議した議案を撤回しようとする場合、発議者の全部からこれを請求して、その議案がかかつております委員会あるいは議院の許可を受ける。委員会か議院がよろしいと言えば、撤回ができるという、衆議院と参議院では多少表現は違いますが、大体同様の趣旨の規定がございます。この議員の発議案につきましては、修正の規定がないのでございます。撤回だけはそういう規定があるわけでございます。そこでその議員が所属しておりますハウスの内部におきましては、それについて最後の議決があるまでは撤回を認めておつて、修正の規定はないというのが現行規定でございます。そこで議員発議の法律案が成立して、今度はその所属しておるハウスの提出扶法案として他の院に送付された場合に、その撤回を発議の議員に認めるか、あるいはそのハウスに認めるのがよろしいかどうかという問題があるわけでございます。この点につきましては、実は私の方でもあまり深く検討しなかつたわけでございますけれども、政府提出案とは区別して、その発議議員自体に撤回権を認めるのは少しおかしいのではないか。これはハウスの構成員としての議員として発議しておることについて、それが一院の議決として成立して、その院の提出法律案として他院に移つておる場合に、発議議員自体に法律案の撤回権を認めるのはおかしいではないか。しからば院自体に撤回権を認めるかどうかという点があるわけでございます。この点は実際問題として、議員が発議し法律案をつくつて他院に送る場合には、期間もそう長いものでもありませんし、その国会において案をまとめて出すだけですから、実際問題として撤回権を認めなくてはならぬ必要があるかという点から、そういう必要はないのではないかと思われるわけであります。現行法は従来から原則的にそういうことに対しては認めておりませんし、しいてこの際あらためてそういう撤回権を認める必要はないのではないかと考えておるわけであります。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) さきに第五十九條の場合は、政府と国会の関係であるから、ああいうように厳格に規定し、また厳格に解釈運用しなければいかぬと思いますが、議員立法の場合には、そういう対外的な関係でなく、まずこれは内部相互の関係の問題ですから、私は現行法程度で必要かつ十分ではないかと思うのです。しかしなお実際問題として何かこれまでに困つたとか、困難を感じた問題があれば、将来はますます議員立法が建前上原則化されて行くわけでありますから、そういう事例を勘案して、あるいはなお改正を考えてみてもいいと思います。部長の方でそういう事例を扱つた経験がおありになりませんか。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) まだありません。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) ちよつと私から申し上げますが、先ほどの御説明の中にあつたのかもしれませんが発議者が撤回したいという場合に二通りある。一つはまだ他院にまわらない場合、一つほ他院にまわつた場合がある。まだまわつていない場合日には問題はないと思うのですが、他院にまわつた場合のことを考えますと、一応その先議した院の意思が盛られておりますから、その場合には両方の院の承諾を経なければならないことになるわけですね。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 現行法には、一旦仙院にまわつた場合に撤回権は認められておりません。これは参議院規則、衆議院規則でございますから、結局一院内部の手続規定で撤回権を認められておるので、内部的な関係だけの規定だと思うのです。それが他院にまわつた場合に、撤回権をもし認めるとすれば、参議院規則、衆議院規則ではいけないのであつて、国会法自体に規定を置くべきことになると思います。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) そうすると、その点は政府提案の場合と同様に、この場合におきましても他院にまわるのですから、同じような規定を設けないと、その間がちぐはぐなことになりはしないかという感じがいたします。その点はいかがですか。つまり現行法のままにしておると、他院にまわつた場合に手がつけられない。その場合にもやはり撤回をする道を開いておいた方がいいのではないか。言いかえれば、政府提案の場合と同じようなことになるわけですが、先議の院の承諾も求め、後議の院の承諾も求めなければならぬ。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) その場合にまた二つにわかれますが、発議議員自体に撤回権を認めるのか、あるいは先議のハウスに撤回権を認めるのかという意見があるわけです。議員が発議いたしまして、そこで可決されますと、その院の提出法律案として他の院に移るわけです。その場合に提案者の立場に立つものはハウスなのか、発議議員なのかという点が問題になるわけでありますけれども、私はやはりハウスじやないかという気がいたします。

高橋英吉自由党

○衆議院両院法規委員長(高橋英吉君) 私は途中から来たので、中心点がよくわからないのですが、今の御説明を聞いておると、国会法の第五十九條に、修正または撤回をする場合その院の承諾を要するとなつておるのですね。それで承諾を要することを規定してあるから、承諾しなければ修正または撤回ができないということを本質的に出したわけですが、議案を提出者において撤回、修正するのは何ら妨げるところでないという原則論に立つて、この第五十九條はできたのじやないのですか。例外規定の制限なのですか。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 法文の解釈上から見ますと、修正権なり撤回権があるということを前提とした表現になつておるように思います。それは没革的に申しますれば、議院法時代には、何どきたりとも修正し撤回することができ乙という規定があります。それを承諾を要するという規定に改めておるので、ただいまおつしやつたような意味合いで規定は表現されておるように思います。最近の一般の解釈では、従来の協賛機関と違つて、議決機関になつた国会としては、提出権についてそれほどの広い権限を認めるべきではない。むしろその規定によつて初めて修正なり、撤回なりの権限が與えられ、かつ承認を條件にされたのであるという意味合いに解釈されておる向きが強いのではないかと思うのです。

高橋英吉自由党

○衆議院両院法規委員長(高橋英吉君) 御説ごもつともですが、これは非常に重要な事項でして、もとよりそういう御解釈が妥当だと思うのです。けれども、この表現はそうなつておる。われわれ弁護士をやつおつて、民事訴訟とか、刑事訴訟なんかにおける提訴したものに対する検事の起訴の撤回とか、修正とか、または原告の告訴の取下げの問題とかいうことでやはり言つておるわけですが、あれよりもこれは公共性を帶びておりますし、今のような御解釈でいいと思うのですが、第五十九條だけ見ると、原則的に修正権、撤回権が提出者にあるということになるわけですね。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 先ほどの問題を元にもどして、議員立法だけの場合を考えてみると、一院の議決後に他院に送付されて、その後においてなお先議の議院の議員に、あるいはそのハウスに撤回権を認めるかどうかという問題は、かなり政治的な顧慮を要する問題になるのではないかと思います。というのは他の院のその議案に対する空気が惡いという場合には、先議の議院において、政略的にこれを撤回することがあり得る。これは両院の衝突といつたような、非常におもしろからざることを惹起する一つの契機をつくると思うのです。そういう意味から見ると、後議の議院にまわつた後に、なお先議の議院に撤回権を認めることは穏当ではないかというふうに考えられる。従つて現在の国会法で、その点についての立法的措置を講じなかつたというのも、そういう点を顧慮した結果ではないかと私は解釈するのです。従つて現行法通りで、議員立法の場合はさしあたりいいのではないか。しかし先ほど申しましたような場合に、もつとまじめな観点から、それが事実非常に不都合な場合が起り得るということであれば、第五十九條の改正と同時に考え合せていいと思いますが、さしあたつては、第五十九條の問題をここで今後取扱つて行くということに限定されて行つた方が、進行上いいのではないかと思います。一応私の意見だけを申し添えておきます。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) 今、両院の対立といういやな空気がもし出される心配があるという意味のお話でありますが、現在政府が多数党を持つて構成されておるということから考えれば、政府提出の場合でもやはり同じような心配が起るのではないか、五十歩百歩じやないかと思いますが……。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) それは政府対国会の問題であり、議員立法の場合には一院と他院の関係であつて、本質的には違うと思うのです。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) 形の上ではそういうふうに見えますが、事実はやはり五十歩百歩という気がしますがね。

小林英三自由党

○委員(小林英三君) これは参議院規則の二十八條ですか、末項の方に「前項の請求があつた場合は、委員会又は議院がその許否を決する。」ということがあります。議員提出の場合でもやはり先ほどのお話のように、一院を通過して他の院に行つた場合に、撤回するという事項が起つたときは、委員会または議院というものは両方含んでおるのだろうと解釈するのですが……。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 参議院規則というのは、参議院限りの規則なんです。従つてこの委員会あるいは議院というのは、参議院内部の問題になるわけです。

小林英三自由党

○委員(小林英三君) そうすると、政府が提出した場合と同じように、他の議院に行つた場合、撤回しようということが起つたときにはどうするかという問題は、ここでははつきりしないわけですね。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) そうです。規定がないわけです。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) 衆議院規則はどうなつておりますか。

岸田實参議院参事(法制局第二部長)

○参議院参事(岸田實君) 衆議院規則の第三十六條に書いてございます。表現は違つておりますが、趣旨は同じことでございます。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) どなたか今の問題に関して御意見ございませんか。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 本日はこの程度にして、なお後日懇談会を開いて協議されてはいかがですか。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) この問題については後日懇談しようという佐瀬君の御意見がございましたが、いかがですか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) それではこの問題はきようはこの程度で打切ることにいたします。なお問題が残つておるわけでございますが、これはいかがいたしますか。皆様の御都合はいかがですか。それは継続審査の件ですが……。

佐瀬昌三自由党

○委員(佐瀬昌三君) 私の方の都合もありますので、きようはこの程度で散会願いたいと思います。

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) それではきようはこれで散会することにいたしますが、なお毎週火曜日がこの会の定例日になつておりますけれども、今後両院の委員会長で必要と認めた場合、それ以外にも開くことにしてはいかがですか。問題が大分残つておりますから……。     〔「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下豐次緑風会

○会長(竹下豐次君) それではそういうとりはからいにいたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。次会は来週の火曜日に開きます。     午後三時一分散会

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